ボクとキミは何かがズレてる (23)

ボクの感覚が他人とズレていると感じたのは、つい最近の事だった
赤色は依然として赤色のままだし、別に1+1が3だと思っているわけでもないのに
それでもボクは普通の人ではなかったようだ
なぜ突然こんなことを言い出したのかと言うと、入学式が終わってそうそう隣の席から掛けられた声が原因だ

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「お前、変わってんな」

開口一番ボクへそう言い放ったその人は、ボクの姿を見てケラケラと笑っていた
今まで変わっているなんて言われたことも無ければ、思ったこともなかったボクは
その言葉に面喰って茫然としてしまった
奇抜な髪色に、ヘンテコな髪形、極め付けに胸元から垂れた鎖のアクセサリー
どう考えても変わっているのはボクじゃない

キミの方こそ、変わってると思うけど

そうボクが返すと、彼はさらに笑い出す
その声を隠すつもりはないらしく、見ると教室の半分ぐらいの視線がこちらへ向いていた
ボクは恥ずかしくなってその人から目線を逸らすと、とりあえず他人の振りをすることにした

「よう、お疲れさん」

次にその声が聞こえてきたのは、学校の説明がもろもろ終わった放課後
後ろから肩をポンと叩きつつ掛けられた声にボクはため息混じりに振り返った
正確には、学校の説明もろもろの間にもこの声は聞こえていたのだが
それは声とも言えぬ声、というかいびきだったのでカウントしないでおく

何か用?

「別に」

そう言いながらも、彼はボクの隣を着いてくる
下駄箱を抜け、校庭を通り、正門まで来たところでボクはまた振り返った
彼は、ん?と言った表情でこちらを見返し、自分から何か言うつもりはないらしい

ボク、こっちだから

「おう、そうか」

そう言ってまた歩き出したボクの隣に、また彼が並ぶ
帰り道がたまたま一緒なのだろう、とボクは思うことにした
会話も無く、接触も無く、ボクらはゆっくりと歩を進めていった

ボクの家、ここ

「ん、そうか。それじゃ、また明日な」

結局最後まで着いてきた彼にそう告げると、彼からやっと言葉が返ってきた
そしてボクの顔を最後にちらりと見ると、そのまま来た道を逆方向へと歩いて行った
どうやら帰り道は一緒ではなかったらしい
ならば一体、なんだったというのか

「オッス、おはよう」

……おはよう

昨日のなんだったのかという感情は、今日のコレですべて解消された
目の前には、昨日家の前で別れた彼が鎖を指に巻きつけながら待っていた
どうしてここに?と言いたかったが、今は遅刻しそうなので黙っておく

「教科書貸してくれねぇ?忘れちまった」

……はい


彼の席の隣になって数日、分かったことがいくつかある
まず、彼は基本的に教科書を持ってこない
と言っても、見せてあげても寝ているのであまり意味はないのだが

「食堂行こうぜー」

うん、いいけど

二つ目、彼は基本的に弁当などを持参しない
ボクは母親の作ってくれる弁当があるので、食堂で弁当を食べることになるのだが
いつも彼が頼むのは素うどん(300円)で、席は窓際一番手前

「お前、それで本当に足りんの?パン食べる?」

ボクはそんなに食べないよ

「そうか、ならいいんだけど」

そして最後に

「オッス、待たせちまって悪いな」

……いいよ、ボクも今終わったところだから

彼は相変わらずボクの家まで着いてくる
着いてくる、という表現はもう正しくないかもしれないが

無言のまま並んで歩く街並み
聞こえるのは二つの鎖の音だけ
もう慣れてしまったそれを、ボクは少し違う気持ちで聞いていた

「ほらこれ、俺とお揃い。どうよ?」

やはり彼は変わっている
こんなものをボクに渡したり、ボクと無性に絡んできたり

「それじゃ、また明日な」

……また明日

また明日って、言ってくれたり

一年ぐらい一緒にいて分かったことは

「先輩、付き合ってくださいっ!」

「あー……んー……ゴメンな」

「っ……!」

彼は女の子にすごくモテる
しかも特に後輩にはモテモテだ

可愛い子だったのに、よかったの?

「茶化すなよなー……これはこれで大変なんだぞ」

頭を掻きながら、そう言う彼の首元で、ボクが上げた手作りのチェーンアクセサリーが揺れた
クールを装いながら、実を言うとボクはいつも焦りと安堵の繰り返し
彼が言った通り、ボクは変なのだろうか?

「美味いなこれ」

……うん、おいしい

いつもの帰り道、ボクが見つけた穴場のたい焼き屋に彼を連れて行く
たい焼きの袋にはたい焼きが3つ
屋台のおじさんが気を利かせてくれたのだが、むしろこういう余分な1つは争いの火種だと思う
そんなことを思っていたら、彼がその火種をひょいと摘み上げ二つに割った
きっとこういう考えの人が世界中にいれば、争いがもう少しだけ減る……気がした

「それじゃ、また」

うん、また

もう何回と繰り返された挨拶を、ボク達は交わす
きっとどちらかが何かをしなければ、これはずっと変わることもなく
変わっていくのはボクの中での彼の横顔だけで……それがなんだか無性に悔しい
だから今日は背伸びしてみる

ねぇ、こっち向いてよ

「ん……?」

少しだけ背伸びしないと届かない彼の顔が、ボクの間近にあって
そこから先はあんまり覚えてない

「お疲れ様です、先輩っ!タオル、どうぞ」

「あぁ、すまんな」


「先輩、この資料なんですが……」

うん、目を通しておくね

さらに一年が立つと、お互いだんだんと忙しくなり彼と会える時間も減ってしまって
そんな期間が長くなるにつれて、ボクはどんどん変になっていく
出会った最初は、彼の事を変だと思ったのに
今じゃボク自身がボクを変だと思う始末だ

「何してんだ?お前」

……別に

並んで歩く彼の背は、出会った時よりも大分伸びて
背が低いことが悩みのボクはさらにその悩みを深くする
彼はそんなボクを見てまたケタケタと笑う
そんな風に彼とボクの時間は流れていく

ボクは焦った
自分だけがどんどん変になっていくのに、彼はどこ吹く風で
だからボクはこんなことをしてしまったのだろう

ん……あっ……く

「……痛いか?」

へ……い、き

本当は泣き出したいぐらいに痛かったけど
こうすることで少しでも彼に近づけるなら、それでもいいと思えるほどに
ボクはもうなるところまでなってしまっていたのだ

「……閉めっぱなしだったな、窓。どうりで蒸し暑いわけだ」

もう夏、だもんね

夕暮れを眺めながら、窓際に並ぶボクとキミ
ふと気づくと、彼の視線がボクを捉えている
いつにもなく真面目で、真っ直ぐな彼の瞳
それがおかしくて、思わずボクは吹きだした

「なっ……」

それが肩すかしだったのか、彼はふぅと小さく息を吐いてからケラケラと笑った
笑いながら彼はボクの頭をそっと撫で、小さく呟く

「やっぱりお前、変だわ」

「馬子にも衣装ってか?」

……からかわないで、これでも恥ずかしいんだから


慣れない正装に身を包んだボクを見て笑う彼に手刀を入れつつ乱れを正す
今まで親にしか見せたことのない恰好を公で見せるのは、卒業生代表の言葉よりもずっと緊張して
実際、数十人の生徒はボクの姿を見て驚いていた
でもこれでボクも、少しは普通になれたかな?

「別に変でもいいじゃねーの?ムリしなくてもさ」

……ボクなんかでいいの?

「お前だからいいのさ」

なんて歯の浮くようなセリフを吐いた彼に、ボクはスカートをひらりとなびかせながら蹴りを入れる
伸ばした髪がさらりと揺れて邪魔だったが、構わずボクは走り出した
あの日みたいな夕焼けが、ボクと彼を染め上げて
追いついてきた汗だくの彼をそっと抱き寄せて、二人で笑う

人間ちょっとズレてるぐらいがちょうどいいな、なんて思う今日この頃だった

おわり

暇潰しに書いたらこんな時間だった
読んでくれた人は感謝しますね

http://minnanohimatubushi.2chblog.jp/archives/1784620.html
http://minnanohimatubushi.2chblog.jp/archives/1828074.html

過去作品も晒すのでよかったら読んでください
どれも大した長さではないです

それじゃおやすみなさい

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