ジャムパンマン「ジャムおじさん!パトロールに行ってきます!」 (66)

ジャムおじさん「気を付けるのだよ、ジャムパンマン」

ジャムパンマン「はい!」

彼はジャムおじさんが初めて作った命あるパン。

そして、誰よりも心優しい正義のヒーロー。

ジャムパンマン「ほら、カバオ君、ジャムパンでよければお食べ」

カバオ「ありがとうジャムパンマン!」

ベースとなる身体がなく、顔の交換システムもなかった頃だった。

彼の全身はパンで出来ていた。

定期的に核となるジャムの中にあるイチゴを取り出し、新たに煮詰めて作ったジャムをパンに込める。

そうして彼は脆い身体を愛と勇気でカバーしてはパトロールへ繰り出す。

盾にもならない身を呈して弱きを守り、傷付ける事も出来ないその手で強きを抱き締め許す。

おなかを空かせた子には自らの身体を分け与える。

純粋な善意、見返りを求めない自己犠牲。

そのジャムパンは、とても優しく、温かく、母のように柔らかで、甘く。

美味しいと評判のジャムパンだった。

カバオ「助けてー!ジャムパンマーン!」

その声が途切れる前に、彼は駆け付ける。

ジャムパンマン「カバオ君、どうしたんだい?」

カバオ「ウサ子ちゃんが、ウサ子ちゃんが攫われちゃったんだ!」

ジャムパンマン「僕が必ず助けるからね、どっちにいったのかな?」

カバオは泣きじゃくりながら鬱蒼と生い茂る森を指差した。

その時ジャムパンマンの頬にポツリと一滴の雨が染み込んだ。

ジャムパンマン(雨……!急がないと、でも森の中ならまだ濡れずに済みそうだ!)

脱兎の如く走り出す、カバオの声も聞こえない程遠くまで。

ジャムパンマン「ウサ子ちゃーん!いるのなら返事をしておくれー!」

ジャムパンマン「ウサ子ちゃーん!」

ジャムパンマン「いないのか、それとも話せない状況なのか……」

ジャムパンマン「どんな小さな事も見逃さないように慎重に進もう」

雨は強さを増し、蓄え切れず葉は雨水を滴らせる。

ジャムパンマン「急がないと、身体が持たない!」

その時遠くに人影が見える、その人影の近くにはふたつの白い耳が揺れていた。

ジャムパンマン「見付けた!」

ふやけて脆いくなった身体に鞭を打ち、追い掛ける。

ジャムパンマン「そこまでだホラーマン!」

ホラーマン「怖いですねぇ、恐ろしいですねぇ、早いですねぇジャムパンマン!」

ジャムパンマン「ウサ子ちゃんを離すんだ!」

ホラーマン「危ないですねぇ!」

雨に脆くなったのはジャムパンマンだけではなかった、柔らかな腐葉土も、彼の足元も、その崖も。

なんとか木の根を掴むも、ふやけたパンに耐えられる強度などあるはずもなく。虚しくもジャムパンマンは深く、暗い谷底へ。



ジャムパンマン「……ぐっ……」

ジャムパンマン「ウサ子、ちゃん……助け、なくちゃ……」

身体は言う事を聞かない。

それもそのはず、右手は千切れ、身体も至る所が破れ、その真っ赤なジャムを飛び散らせていた。

ジャムパンマン「あっ……」

雨は容赦無く降り注ぐ。



どれ程の時間が経ったのだろうか、気付けば雨は止んでいた。

しかし相変わらず身体は動かない。

ジャムパンマン「ウサ子ちゃん、ごめんよ……カバオ君、約束を守れなかったよ……」

ジャムパンマン「ジャムおじさん、もう駄目なのでしょうか……バタ子さん、チーズ……」

ジャムパンマン「ああ、みんなに会いたいです……」

彼が見上げるその狭く小さな空に、何度太陽と月が登ったか数える事も辞めた頃。

違和感。

ジャムパンマン「身体が……動く……?」

千切れた右手も、破れた身体も、歪ではあるが、繋がっていた。

叫んでいたせいで声も枯れてしまったが、そんな事はどうでもよかった。

またみんなに会える、それだけでよかった。



谷底を歩いて進み、倒れていた時間に届こうかと言う程の長い時間、まともに動かない身体を引きずる様に、少しずつ、でも確かに、進んだ。



しかし彼を待ち受けていたのは再会を喜ぶ歓喜の声ではなく、嫌悪の視線と罵声だった。

「あっちへいけ!」「怖いよママー!」「こっちにこないで!」「なんだあいつ気持ち悪い!」「やだー!汚ーい!」「うえー!」「ばっちー!」

ジャムパンマン(なんで……どうして……)

ジャムパンマン(そうだ!ジャムおじさんに治してもらおう!)



パン工場のドアが開かれた。

ジャムおじさん「はいはい、どちらさまかな、パンはもうすぐ……!」

バタ子「ひっ」

ジャムおじさん「だっ駄目だよ、ここは食べ物を作る所なんだ、すまないがそんな格好は困るんだ」

ジャムパンマン「……ジャム、おじさん……」

チーズ「……くーん……あんっあんっ!」

ジャムおじさん「なんだって?」



ジャムおじさん「君は、ジャムパンマン、なのかい?」

ジャムパンマン「ただいま、ジャムおじさん……」



ジャムおじさん「そうか、そんな事が……いや、ウサ子ちゃんなら心配いらないよ」

バタ子「そうなの、カバオ君の勘違いだったみたい」

チーズ「あんあんっ!あんっ!」

ジャムパンマン「ホラーマンと、お母さんの、為に、薬草を、探して、いた……」

ジャムパンマン「なんだ、よかった……後でホラーマンに謝らないといけませんね……」

ジャムおじさん「それは治してからだね、ほらほらそこに横になって」



時間が経ちすぎていた。

ジャムパンマン「治せ、ない……?」

ジャムおじさん「すまない、君の魂とも言える正義のイチゴが……その、腐って、しまっているんだよ……」

ジャムパンマン「そんな、じゃあ……僕は、もう……」

ジャムおじさん「すまないジャムパンマン、すまない……力になれず……」

ジャムパンマン「ジャムおじさんのせいじゃ、ありません、よ……」

力ない足取りでフラフラとドアへ向かう。

バタ子「ジャムパンマン!そんな身体でどこへゆくの!」

答えない。

チーズ「……くーん……」



工場を後にして、山へと向かうジャムパンマンの背中に、カバオが叫んだ。

「やーい!バイキーン!」

廃墟となった古城で一人佇むジャムパンマン、彼はずっとそこに座り続けていた。窓もなく、暗く湿った部屋で。

歪に繋げられた身体は、皮肉にも食品の大敵、カビだった。そのカビが全身を覆い、漆黒に染まった頃。

彼は、絶望していた。

見返りなんて求めなかった、だからといって、罵声を受ける謂れなんてなかった。

しかし、それでも誰かと繋がっていたいと、願った。



彼は自分の胸にフォークを突き刺した。

その胸から取り出されたのは正義のイチゴ、腐ってしまった正義のイチゴ。白カビが生えている。それを握り締めて流れ星に祈った。

話し相手が欲しいと。



願いは叶えられた。

赤い身体に白い顔、イチゴと白カビ。

自分の心臓だったそれに由来して、ドキンと名付けた。

しかしそれはまだ産まれたばかりの赤ん坊のようなもので、身の回りの世話から言葉を教えるまで全て彼ひとりで頑張っていた。

それはとても忙しかったが、彼の顔は、歪んではいても、とても幸せそうに笑っていた。



ドキン「つまんないつまんなーい!お出掛けしたーい!こんな暗い所やだー!」

ジャムパンマン「駄目だよ、外は怖い人がたくさんいるんだ」

ドキン「ぶー!」

ドキン「……ねえ、なんであなたはジャムパンマンなの?」

ドキン「私、勉強したから知ってるわ、あなたはどこからどうみてもジャムパンなんかじゃないわよ」

「……そうだね……」



「じゃあ、カビにまみれているから、僕の事はバイキンマンとでも呼んだらどうかな」

ドキン「あら!いいわね!ふふ!」

ドキン「バイキンマーン!」

バイキンマン「なんだい、ドキンちゃん」

ドキン「呼んでみたの!」



雨季。

締め切られた古城にカビが繁殖する、バイキンマンの身体はどんどん大きくなる。

ドキン「バイキンマン、そんなに大きくなったらこの部屋から出られないわよ」

バイキンマン「うーん、どうしたらいいかな……」

その時、腐敗ガスが溜まって身体が弾けた。

ドキン「きゃっ」

バイキンマン「うわっ」

バイキンマンは小さく、元通りになった。しかし飛び散った身体にも新たな命が宿っていた。

「ルンルン♪」

ドキン「なにこれ!変なの!」

バイキンマン「ははは、可愛いじゃないか」

ドキン「うげー、変な趣味ー」

バイキンマン「そうだ、これはカビルンルンと名付けよう」

「ルンルーン♪」



彼は、少しだけ、希望を取り戻していた。こんな小さな世界だけれど、こんなにも幸せなんだと。

そして、それをジャムおじさんに伝えたいとも思った。

バイキンマン「……ドキンちゃん、少し、出掛けてくるよ……」

ドキン「ズルイ!私も行く!」

バイキンマン「駄目だよ、外は駄目なんだ、駄目なんだよ……」

ドキン「じゃあどうしてバイキンマンは行くのよ!そんなに危ないならバイキンマンも行っちゃ駄目よ!」

バイキンマン「わかった、わかったよ……」

バイキンマン「でも、これだけは約束して、僕から絶対に離れちゃ駄目だよ」

ドキン「やったー!するする約束する!やったー!」

バイキンマン「はあ……」

ドキン「おっ出掛け、おっ出掛け~♪」



変装したふたりが城を出る。

ドキンちゃんは初めて踏み締める大地に喜び、跳ねるように歩く。

初めてみる景色に感動し、全てを見るように忙しなく頭を左右へ回す。

バイキンマン「足を挫くよ、首を痛めるよ」

彼は心配そうに見守る、それでもなんだか嬉しそうだ。



懐かしい工場が見えてきた。

ドアから出てくるジャムおじさんとバタ子さん、チーズが裏から駆け寄ってくる。

バイキンマンは言いようのない高揚感に、どうしたらいいのかわからず、落ち着かない様子で手を動かす。ドキンちゃんがそれを見て笑った。

もう声も届こうかという距離。

バイキンマン「ジャムおじーー」



アンパンマン「ただいまパトロールから戻りました!」

カレーパンマン「街に異常はなかったぜー!」

食パンマン「みんな笑顔でなによりです!」



あるはずのない、自分の居場所が奪われた気がした。



ジャムおじさん「ん、今声が聞こえたような……?」



バイキンマン「僕は……俺は……俺様は……」

バイキンマン「バイキンマンだ!」

アンパンマン「やあ!よろしく!僕はアンパンマン!」

カレーパンマン「俺はカレーパンマン、よろしくな」

食パンマン「僕は食パンマン、よろしくね」

バイキンマン「うるさいうるさーい!馴れ馴れしく触るな!」

ジャムおじさん「こら、そんな失礼な事を言ってはいけないよ」

バイキンマン「パンなんかなんだい!正義の味方気取りなんかしちゃって!かっこつけてんじゃねー!」

カレーパンマン「なんだとー!」

食パンマン「やめたまえカレーパンマン!」

アンパンマン「どうして君はそんな事を言うんだい、僕が何かしたのなら謝るよ」

バイキンマン「へん!そのあんこみたいに甘ったるい口調と鼻につく正義感が気に食わないんだよ!」

食パンマン「落ち着いて下さい、彼にも何かパンに嫌な思い出があるのかもしれません、ですからーー」

ドキン「食パンマン、様……」



彼女は、元々はジャム。

その性質からか、食パンマンに恋をしてしまった。



バイキンマン「………………ドキン、ちゃん……?」

ドキン「食パンマン様ー??」

食パンマン「わっどうしたんだい、好かれるのは嬉しいけれど、君はちょっと、積極的過ぎるかな」

ドキン「食パンマン様、食パンマン様ー??」

バイキンマン「ドキンちゃん、ドキンちゃん、ドキンちゃん……」

バイキンマンの身体が脈打つように膨らむ、縮んだかと思うと、空を埋め尽くすようなカビルンルンが溢れ出した。

ジャムおじさん「なんだこれは!」

アンパンマン「うっ……カビで、力が、出ない……」

カレーパンマン「ふにゃ~」

食パンマン「これは一体……!」

バイキンマン「………………」

ドキン「嫌々!食パンマン様!死んじゃ駄目ー!」

ドキン「バイキンマン!なんて事するのよ!食パンマン様になにかあったらどうするつもりよ!」

バイキンマン「……てやる……」

ドキン「なによ!」

バイキンマン「……してやる……」

ドキン「はっきり言いなさいよ!」



バイキンマン「こんな世界ぶち壊してやる??????????」

ジャムおじさん「いけない!バタ子!早く予備の顔を焼かなければ!」

バタ子「もう焼いてるわ!もうすぐよ!もうすぐ焼き上がる!」

チーズ「あんあん!」



カビルンルンは増えるばかり、パンのヒーローは3人とも地面に倒れ込んでいる。

バイキンマンは自分の胸をえぐったフォークを取り出し、アンパンマンの頭に突き刺した。

アンパンマン「……やめ、るんだ……バイキンマン」

バイキンマン「こんな世界に、守る価値なんて、あるもんか」

バイキンマン「……見返りなんて求めず……どれ程尽くしたって……少し見た目が変わったくらいで……あんな仕打ち……」

バイキンマン「こんな世界!こんな畜生供!救う価値なんかあるか!あるもんか!なんで俺様を救ってくれなかった!」

バイキンマン「弱いものいじめをする奴こそ弱いんだ!いじめられたそいつらも弱いからいじめられるんだ!そしてそいつらもまた自分より弱いものをいじめる!それは弱いからだ!どこまでも続くんだ!もしそこでいじめをしない奴がいたとして!そいつになんの救いがあるって言うんだ!自己満足でしかないんだ!そいつがいじめなかった事で救われる奴なんかいない!結局他の誰かにいじめられるんだ!救いなんてあるか!」

ジャムおじさん「バイキン、マン……君は……もしかして……」

バイキンマン「うるさい!やめろ!おまえなんか嫌いだ!」

アンパンマン「バイキンマン……」



バタ子「焼き上がったわ!アンパンマン!新しい顔よ!」

バイキンマン「だから!俺様は!そのいちばん最初の弱い奴になるんだ!」

アンパンマンに新しい顔が届く、バイキンマンは古い顔に弾かれて転んでしまった。

アンパンマン「勇気百倍!」

アンパンマン「バイキンマン、君にどんな過去があったのか知らない、けれどどんな理由であれこの世界を壊す理由にはならない!」

アンパンマン「力づくでも止めさせてもらう!手加減はしない!いくぞ!」

アンパンマン「アーンパーンチ!」



あれから数日、彼はまたひとりで古城に寝転んでいた。

ドキンちゃんは帰ってこない、カビルンルンを出す気力もない。

またひとりぼっちだった。

思い付きで書いてみたけれど、もう眠いです……
今日は休みなので起きたら続きを書きたいと思います、念の為酉付けますね……
すみません、それではおやすみなさい。

遅くなりました、再開します。

唯一と言ってもいい、彼の話し相手だったドキンちゃんを失い、その正義のイチゴを取り出した時に付けた、胸の傷が痛んだ。



僕はなんの為に生まれたんだろう、何をして生きたらいいのだろ。

ドキンちゃん、何が君の幸せなんだろう、何をしたら喜んでくれるのだろう。

何もわからないまま、終わってしまうのだろうか。

そんなのは嫌だ。



そうだ、元々は愛と勇気だけが友達だったじゃないか。



ドキンちゃん「ただいま」

彼は驚く気力すらもなく、声が聞こえた方を振り向いた。

バイキンマン「ドキン、ちゃん……?」

ドキン「なによ、私が帰ってきたら困るとでもいうの?」

バイキンマン「でも、君は……」

ドキン「私の家はここなんだから帰ってきたっていいじゃないの」

バイキンマン「……今までどこに……?」

ドキン「……振られたのよ、食パンマン様に……あの人は優しいからそんな直接的ではなかったけれど……」

バイキンマン「……」

ドキン「でも諦めたりしないわ、どんな手を使ったって彼を振り向かせてみせる」

バイキンマン「……それが、君の夢?」

ドキン「夢?」

ドキン「まあ、そう、夢……ね、そうよ、それが私の夢」

バイキンマン「……わかった、俺様がそれを叶えてあげる、それが俺様の夢だ、それこそが生きる喜びだ」

バイキンマン「例え、どんな敵が相手でも、俺様はドキンちゃんの為だけに生きる」

ドキン「……優しいのね」

バイキンマン「ドキンちゃん、食パンマンさえいれば他のパン達はどうなってもいいかな?」

ドキン「ええ、彼が哀しんでしまうのは辛いけれど、私が慰めてあげるわ」

バイキンマン「わかった、僕がみんなやっつけてあげる」

バイキンマン「……でも、この身体は脆い、その為にも鎧を作らなければ……」

ドキン「なーに鎧なんてちゃっちい事言ってるのよ!ロボットよロボット!おっきなロボットで町をめちゃくちゃにしてやりましょう!」

バイキンマン「ロボット?」

バイキンマン「僕にそんな科学力なんて……」

ドキン「あら、カビルンルンを動力にしたらいいじゃない」

バイキンマン「作れるかな……」

ドキン「作るのよ、私の夢を叶えてくれるんでしょう?」

バイキンマン「……俺様、とんでもない約束しちゃったかな……」

ドキン「なんか言った?」

バイキンマン「いえいえなーんにも、さーてロボットでも作りましょうかねーっと」

ドキン「なによ!その態度は!待ちなさいよ!」



おしり

思ったよりも長くならなかった、このレベルなら寝る前に書いてしまえばよかった……
なにはともあれ読んでくれてありがとうございます、メロンパンナちゃんにメロメロにされたいです。

フレンチトーストマンで続編書けや

ミミ先生でも可、ていうかミミ先生にメロメロ。

>>36
バイキンマン「食パンマンを俺様のミルクでグチャグチャにしてやる~!」

みたいな?

じゃあとりあえず書いてみる。



ドキン「食パンマン様のミルク、コンデンスミルクみたいにどろっどろで甘くて美味しいわ」

食パンマン「やめるん、だ……ドキン、ちゃん……なんで、こんな……うっ」

ドキン「すごい、すごいわ……さすが正義のヒーロー、何度でも立ち上がるのね」

食パンマン「こんな、事、間違ってる……無理矢理、して、いいものじゃ……ない、よ」

ドキン「でも、食パンマン様のここは、とーっても、気持ち良さそうにしているわよ?」

食パンマン「うっ……ああっごめん、ごめんっ出るっ」

ドキン「んっ……んっ……ぷはっこんなに出したのに、まだ出るのね、子宮が疼いちゃう」

ドキン「まだまだ飲み足りないけれど、続きはこっちで、出しましょうね」



彼女は立ち上がると、股に挟んでいた槍が糸を引きながら落ちる。

そのコスモスのように小さく、綺麗で、可憐な秘所は、彼女のイメージカラーの赤よりもずっと紅く、充血し、いやらしくてらてらと光り輝いていた。

食パンマンに跨り、ゆっくりと腰を下ろす。彼はもう抵抗する事もなく、自分のものと彼女のものがゆっくりと近付いてゆくのを眺めていた。

ドキンちゃんはそんな彼をみつめては、濡らす。とめどなく溢れるその粘性の体液は、彼のその先端に落ちる。

左手は彼の胸に手を付き、右手でものを掴み、自分の中心にあてがう。しっかりと入るように、少しだけ、前後に動かした。

その刹那、今まで感じた事もない程の快感が、電撃を浴びたかのように彼女の背骨を通り抜ける。

耐え切れず、失禁。

食パンマンの恥骨からへそに、勢いよく音を立てながら、途切れ途切れに彼女の尿が噴射される。

ドキン「やっ駄目っ見ないで!見ないで!お願い!止まって!やだ!」

しかし、癖になったのか、勝手に動いてしまうのか、ものを右手で握り締めたまま、腰を前後に動かした。彼の熱い先端が、彼女の入り口から、敏感な粒までを滑らかに擦り上げる。上から下へ、下から上へ。腰が止まらない。

ドキンちゃん「あっ!駄目!駄目!また出ちゃう!出ちゃう!」

どこにそんな水分があるのか、また大量の尿を食パンマンのそれに浴びせる。今度はちょうど食パンマンのその先端で出された。止めようとしているのか、彼女は彼のその先端と、自分の尿道を合わせて排尿する。勢いよく出された尿は、食パンマンの尿道に微かに逆流してゆく。その感覚と、周りに流れてゆく勢いのある尿によって彼はまた果てる。彼女の尿道にあてがわれたまま。

ドキン「ひぐっ!うっ!あっ!駄目!出しちゃ!駄目!そんなの駄目ぇ!」

押し付けられたまま、彼女の敏感な粒に向けて、愛する彼のミルクが勢いよく吐き出された。彼女は膝と腰をガクガクと震わせる、しかし右手は離さない、その秘所同士も離さない、その為震えもまた快感に変わる。

その時、身体の力が抜けて、腰が落ちる。充分過ぎる程に濡れていたそれは、簡単に受け入れた。彼女の一番奥に、彼女の全体重を掛けて、叩き込まれた。

絶頂。そして軽く失禁。

もう尿も残っていないのか、ぷしゅぷしゅと出る程度だ。

ドキン「あっ??あはっ??あー??」

快感から腰が引ける、すると彼女の降りてきた子宮を弾くように彼のものが抉る。驚いて腰を戻すも今度はぷつぷつとした壁、彼女のGスポットを自分自身で抉る結果になってしまった。

ドキン「ああああああああああ??」

また勝手に腰が引ける、子宮が弾かれる、また勝手に腰が戻る、Gスポットを叩かれる、また勝手に腰が引ける、また勝手に……壊れたおもちゃの様に、自分の意思ではなく、反射のみで、前後に腰を振り続けた。何度も絶頂を迎えた。もう狂ってしまうかとも思った、いや狂ってしまったのかもしれない。

彼もその激しいグラインドに耐え切れず、彼女のその最奥で、射精。

ドキン「~~~~~~~??」

もう言葉にすらならなかった。

そこで意識は途切れていた。

ドキン「んっ……あっ!」

ドキン「ごめんなさい!私ったら!食パンマン様の上に寝てしまうなんて!」

食パンマン「……いや、いいんだ、もういいんだ……もう、なにもかも、どうでもいい……」

食パンマン「理不尽なこの世界に、守る価値なんてあるのか」

食パンマン「僕が誰かを助ける、じゃあ僕は誰が助けてくれると言うんだ」

ドキン「っ……ごめん、なさい」

食パンマン「いいんだよ、気持ちよかった、こんなに気持ちがいいものがあるだなんて」

彼はその赤い手袋をした両手で彼女の尻を掴む、彼のそれはまた大きくなっていた。

勢いよく、挿入。同時に子宮を押し潰す程に叩き付ける。

ドキン「食っパンマンっ様っ??」

結局の所、グラインドは自分で動いていたから、どんな快感がくるのかはわかっていた。それでも失神する程だったが。しかし今は違う、彼が、快感の為だけに、道具として、一心不乱に彼女の中を、縦横無尽に擦り上げる。

快感からくる失神、そして快感により覚醒。それを短時間に何度も何度も何度も、繰り返された。

ドキン「駄目っ駄目ぇ??狂っちゃうっ狂っちゃうのぉ??私のっ子供部屋っ壊れちゃうっ??おかしくなっちゃう??おち○ぽ部屋にされちゃうっ??」

一際大きな絶頂を迎え、仰け反った。そのまま彼女を押し倒し、両足首を掴み、乱暴に腰を打ち付ける。皮膚を叩く音は乾いた音ではなく、粘性のいやらしい音になっていた。

そして失禁。腰を浮かされている為、その全てが彼女の顔に掛かる。尿と、男女のむせ返るような匂いが立ち込める。それでもまだ彼の腰は止まらない、もう何度も出しているのだ、絶頂はまだ先にある。

ドキン「っ??っ??っ??っ??っ??」

もう声も出ない。

それは、夜が明けて、また夜になるまで続いた。



食パンマン「ドキンちゃん、舐めて、綺麗にして」

ドキン「あっ??あーっ??あはっ……あーん??」

咥えて、愛おしく、丁寧に舐め上げる。そしてそのぬめりが取れた頃、付け根を舐め、玉を舐め、その裏も舐める。彼女の顔の横で、また大きくなった。それを横目に見ながら、彼女は瞳孔の開き切った目で、笑った。



そして、また夜が明けた。

彼女はまた彼のものを掃除していた、もちろんその小さな口で。

途切れ途切れの意識が、その作業の邪魔をする。そのたびに彼の指は彼女の粒をつまみあげる。彼女は背を反らし、腰を震わせると、彼の顔に、どちらのものかもわからぬ体液が噴射する。

その時だった。



ランプが彼の身体目掛けて倒れ込む、避ける暇もなかった。だがドキンちゃんだけは突き飛ばした、それは彼の中の最後の良心か、正義の心か。今となってはもうわからない。



焼け爛れた顔を引き攣らせて笑った。

「……君の卵子やら、僕のミルクやらに塗れ、焼かれてしまうなんて……」

新たに焼き上げられたそのパンのヒーローは。

「フレンチトーストのようだね、あははははは、あはははははははははは」

狂ってしまった。

「僕の事はこれからフレンチトーストマンと呼べ」

ドキン「フレンチトーストマン様ぁ??」

フレンチトーストマン「嫌だなあ、ドキンちゃん、喋る暇があるなら咥えてよ、舌を動かすなら舐める事だけに使ってよ、その唇は、その身体は、僕の快楽の為だけにあるんだから」

ドキン「んむっ??んっ??んーっ??」

フレンチトーストマン「それが終わったら、僕をバイキンマンの所へ案内して欲しいな、彼の前で君を犯してあげるからね」

両乳首をつねり上げる。

絶頂、失禁。



バイキンマン「ドキンちゃん、遅いなあ……告白、うまくいったかなあ……それが俺様の夢なのに、どうしてこんなに哀しいんだ……」

フレンチトーストマン「やあ、バイキンマン」

バイキンマン「その声は!」

バイキンマン「食パン、マン……?」

彼が目にしたものは、うっすらと面影を残しながらも、狂気に満ち満ちでいて、焼け爛れた顔。

そして、彼に不自然な位置で抱かれながら上下に揺れる、愛しのドキンちゃんだった。

バイキンマン「………………何を、しているんだ……?」

バイキンマン「っそれよりっおまえはっ誰だっ!」

フレンチトーストマン「僕はフレンチトーストマン、いや、食パンマンって言った方がわかりやすいかな?」

バイキンマン「その、顔……どうしたんだ……?」

バイキンマン「それにっ……ドキンちゃんは、何をしてるんだ……?」



フレンチトーストマン「見ればわかるだろう、ウブな子供じゃあるまいし……まさか、まだしてなかったのか?」

フレンチトーストマン「だとしたら!ドキンちゃん!あれが最初か!」

フレンチトーストマン「とんだ淫乱だ!最高のジョークだ!傑作だ!あははははは!あはははははははははは!」



バイキンマン「うっあっ……ああっあああああっ……ぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁっ??????????」

フレンチトーストマン「やめなよ、君が僕に勝てるわけがないだろう」

正面から膝を蹴る、その膝は逆に曲がってしまう。そしてバランスを崩した所でバイキンマンの顔面に膝が叩き込まれる、触覚を掴まれもう一度。上下共、前歯が砕けて地面に散る。触覚を掴んだまま、左へ。力なくよたよたと着いていく。そして勢いよく右へ、片方が千切れてしまった。砕けた左膝を庇う様に、無様にも這いつくばる。その四つん這いになった無防備な腹部を、思いっきり爪先で蹴り上げる。紫の体液を口から吐き出した。倒れ込んだ彼の、その砕けた膝を、踵で思いっきり踏み潰す。声にならない声。もう一度、もう一度。

バイキンマン「やめてくれ!僕が!何をしたって言うんだ!」

フレンチトーストマン「何を言っているんだ、殴り掛かってきたじゃあないか」

バイキンマン「そんな事じゃない!なんで!ドキンちゃんがそんな事になってるんだ!」



フレンチトーストマン「これは彼女が望んだ事さ、最初は僕が彼女に犯されたんだ、何度も何度も」

バイキンマン「そんな……嘘だ、そんな事……そんな……」

フレンチトーストマン「事実だよ、今となってはどうでもいい事だけれど」

バイキンマン「嘘だ……嘘だ、あるわけ……ドキンちゃんが、そんな……」

フレンチトーストマン「しつこいなあ、本当だったら……正義のヒーローが嘘を吐くとでも?」

バイキンマン「おまえの!どこが!正義のヒーローだ!」

バイキンマン「気に食わないが!ヒーローってのは!アンパンマンのようなやつを言うんだ!」

バイキンマン「おまえなんかに!使っていい!肩書きじゃない!」



フレンチトーストマン「はあ、もう本当面倒くさいなあ、本当面倒くさい……」

フレンチトーストマン「なんでもいいからさ、君の事を聞かせてよ、バイキンマン」

フレンチトーストマン「なんだか、君からは似た様なものを感じるんだ、癪だけれど」

それは、バイキンマンも同じだった。夢破れた正義のヒーローの、痛々しいまでの末路。フレンチトーストマンに、いや、食パンマンに感じていた。自分に重ね合わせていた。

そして、自分の事を語り出した。

フレンチトーストマンは静かに聞いていた、相槌も打たず、ただ静かに、バイキンマンの目をみつめていた。縋り付くドキンちゃんをなだめるその姿は、かつてのヒーローの姿にも見えた気がした。



フレンチトーストマン「………………」

バイキンマン「これで、全部だ……俺様の、誕生秘話」

フレンチトーストマン「そっか、ありがとう、話してくれて」

バイキンマン「話したら、なんだかすっきりしちまった」

フレンチトーストマン「先輩、だったんですね」

そう呟いたフレンチトーストマンの目から流れた涙は、彼の顔を少しだけ湿らせる。

フレンチトーストマン「やっぱり、この世界に価値なんてない」



飲み物を取りに行ったバイキンマンを待たずに、彼は城を後にした。

バイキンマン「フレンチトーストマン……?」

カバオ「ふんふんふーん♪」

カバオ「あーあ、歩いてたらおなか空いちゃった」

カバオ「アンパンっ ̄ ̄」

その名を呼び終わる前に、フレンチトーストマンの右膝が彼の背後から右耳の付け根にめり込む。勢いよく吹き飛び、地面に顔を擦る。フレンチトーストマンは気怠そうに歩み寄り、カバオの左足首を踏み付ける。

カバオ「んぎっ」

フレンチトーストマン「正義のヒーローを、なんだと思ってるんだ、このクソガキは……おまえの腹を満たす為だけにいるわけじゃあないんだぞ?」

カバオ「あっ……助けっ」

軽やかなステップでカバオの正面に回り込み、その開いた口にブーツを捻じ込んだ。

フレンチトーストマン「駄目駄目駄目、こんな事でヒーローを呼んだら駄目じゃないか、全て君の自業自得だよ……その前に、僕だって、ヒーローさ」

その右足に体重を掛けてゆく、みしみしと顎が軋み、下の歯が砕けてゆく。砕けた歯は、唇、歯茎、舌を傷付けてゆく。

カバオ「んむっ!んー!んぐっ!」

ゴポゴポと血を吐き出し、彼の赤いブーツを更に紅く染める。

口からブーツを抜き出し、その汚れを見ては顔を歪めた。

フレンチトーストマン「あーあ、ブーツが汚れちゃったじゃ……ないかっ!」

カバオの顔面を蹴り付ける。カバオが悲鳴とも嗚咽とも言えるような声を出すと、勢いよく鼻血が吹き出した。

フレンチトーストマン「っ!また!汚れた!」

顔を蹴ろうとしたが、カバオが反らしたせいで、その爪先は左の鎖骨を粉々に砕いた。

カバオ「んあっ!」

叫び声を上げる前に、今度は左の横顔を蹴り飛ばす。

フレンチトーストマン「……おまえのような畜生に、飯を食わせるのが正義か……?」

フレンチトーストマン「僕らの正義って、なんだ……?」

彼はカバオを抱いて、5m程浮かび上がると、彼を離した。

カバオ「んぎゅっ」

身体もうまく動かせる状況ではなく、意識も朦朧としている。その上、突然の出来事に対処出来るはずもなく。右前腕、左肘、右膝が砕けてしまった。

そして彼はまたカバオを抱き上げる。

カバオ「あっ……やめげ、やめでぐだざい……ごべ、ごべんあざい、ごべんなざい……」

また5m浮かび、離す。

カバオ「ぐっ」

左前腕、左大腿骨、肋骨各所、下顎接合部、骨折。右前腕、開放骨折。右頬骨、ヒビ。

また抱き上げ、浮かび、落とす。

抱き上げ、浮かび、落とす。

声も小さくなり、皮膚は至る所が破れ、骨が飛び出し、全身がぶよぶよと柔らかく、赤黒く腫れ上がった所で。彼はずっと高くまで飛び上がった、白い雲を抜け、太陽の熱をもっとずっと近く感じる程に。

そこはとっても静かで、美しく、壮大で。全てがもうどうでもよいとさえ、思える程だった。



その手を離した。

その後、彼はアンパンマンに羽交い締めにされ、カレーパンマンに頭を落とされた。そしてジャムおじさんに新しく頭を作ってもらったが、身体に染み付いた記憶が彼の心を壊してしまった。元の生活に戻るまでは時間が掛かったが、なんとか日常生活を送れるくらいには回復した。しかし、カバオを殺してしまった事から、周囲の人とはうまく行かず、山奥でひっそりと暮らしていた。

ドキンちゃんとバイキンマンは古城から出てくる事はなくなった。食パンマンの帰りを待ちながら自分を慰めるドキンちゃん、自分ではない名前を呼ばれながら狂ったように腰を振るバイキンマン。泣きながら、何度も何度もドキンちゃんの中に出した。ドキンちゃんは今も窓の外を眺めながら、彼の名前を呼び、バイキンマンに犯されている。

ヒーロー達は、食パンマンのようになってしまうのではないかと恐れられ、住人から距離を取られてしまっていた。しかし、それでも平和を守る為に。



嗚呼、アンパンマン、優しい君は。
行け、みんなの夢守る為。



おしり

こっちが本編なのか?なんだ?どういう事だ?

読んでくれてありがとう。
アイデアをくれた>>36もありがとう。

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