モバP「少女は星を望む」 (42)

菜々さん誕生日おめでとう。

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――事務所


安部菜々「えっ、う、ウサミン星にですか!?」


池袋晶葉「ああ。せっかくだからと思ったのだが、まずかったか?」


菜々「い、いえっ、大丈夫ですよ!なんたって晶葉ちゃんの頼みですから!」


晶葉「そうか。すまないな、急に」


菜々「いいんですよ!せっかく晶葉ちゃんがナナの誕生日を祝ってくれるんですから!」


菜々「ウサミン星くらい、すぐにでも……ああ、いえっ、明日までにはご招待できるようにしますよっ」


晶葉「そ、そうか……それは嬉しいんだが、14日だからな?」


菜々「あっ……そ、そうでしたね」


晶葉「プレゼントも用意するから、期待するといい」


晶葉「ウサミンにぴったりのプレゼントを開発中だからな!」


菜々「なーんて、晶葉ちゃんに言ったのはいいんですけど……」


菜々「どうしよう、お片付けしなきゃ……」


P「んー?どうした、菜々」


菜々「いえ、お家を片付けなきゃなーって思って。今、お部屋がちょっと……」


菜々「はっ!?Pさん、いつからそこにっ!?」


P「さっきからだ……ってか、部屋どうなってんだよ」


菜々「あぁ~っ、わ、忘れてください!前よりはずっと綺麗ですから!」


P「そうだな、前の時はいつのか分からない雑誌とか……」


菜々「忘れてくださいって言ってるじゃないですか!」


P「気を付けろよー。17歳なんだから、ビールの空き缶とかちゃんと捨てとくんだぞ」


菜々「はーい……って、ナナは17歳ですからね!?お酒なんて飲んでませんからねっ?!」


P「ははは。すまんすまん」


P「でも、14日まででいいからな。そこまで急がなくていいぞ」


菜々「はーいっ……あれっ、どうしてPさんが知ってるんですか?」


P「晶葉から提案されたからな。どうにかスケジュールを調整できないかって」


菜々「そ、そうだったんですか……でも、それだったらナナの誕生日でもいいんじゃないですか?」


P「当日は、ちひろさん事務所で祝う気まんまんだぞ?」


菜々「あー、確かに……ちひろさん、事務所でみんなのお誕生日祝うの好きですよね」


P「いる人かき集めてパーティーするのが、ちひろさんの楽しみだからなぁ」


P「……おかげで、毎回参加費がな……楽しいからいいんだけどさ」


菜々「あぁ……それは確かに」



千川ちひろ「呼びましたか、プロデューサーさん?」ニコッ


P「げぇっ」


ちひろ「いやぁー、少しだけ立ち聞きさせてもらいましたが……」


ちひろ「何やら楽しそうですね!私も混ぜてくださいよ」


P「ちひろさんからもお金取りますよ」


ちひろ「お祝いなんですから、それくらいは」


P「それじゃあ、メンバーは菜々含めて4人、と」


菜々「あれっ、他の皆は来ないんですか?」


P「ああ……予定が上手く合わなかったんだ。忙しくてな」


ちひろ「今事務所に残ってるスタッフが私達しかいませんからねー。皆さん出払ってますから」


菜々「そうだったんですか……で、でも、お祝いしてもらえるだけでも、とっても嬉しいですよ!」


P「15日は皆集まれるみたいだから、14日は俺達だけで我慢してくれ」


ちひろ「私達からのささやかなプレゼント、楽しみにしててくださいねっ!」


――菜々宅


菜々「……えーっと、これで大丈夫、だよね……」


菜々「ちょっと押入れが……あぁ、これも片付け、なきゃ……っ」




菜々「……懐かしいなぁ」


菜々「ナナの宝物……これがなかったら、ナナは……きっと」


菜々「みんな、元気かな……うん。今度、お母さんにも連絡しなきゃ」




菜々「……さぁーてっ!早く片付けなきゃ!」


菜々「うん。早く片付けて……たまには、連絡取ってみようかな」


――14日



P「お疲れさん、晶葉」


晶葉「ああ。見てくれP、完成したぞ」


P「ウサちゃんロボの改良型か」


晶葉「色々と機能を付けてみたんだ。日常生活で役に立ってくれること間違いなしだ」


P「ルンバみたいに掃除とかするのか?」


晶葉「ちゃんと掃除機を使ってくれるぞ。問題ない」


P「……何かおかしい気がするんだが」


晶葉「ん?どうした?」


P「なんでもない」


晶葉「そうか……?まあ、これもウサミンのためさ。ウサミンには色々と助けてもらっているからな」


晶葉「……ウサミン星のことについてはあまり教えてくれないがな」


P「ウサミン星、ねぇ」


P「……晶葉は、ウサミン星は存在すると思うか?」


晶葉「……どうした、P?」


晶葉「存在するもなにも、ウサミン星人が私達の目の前にいるんだからないとは言い切れないな」


P「ウサミン星人ってのは、菜々の――」


晶葉「本人がそう言うのだから、彼女はウサミン星人で、ウサミン星から来たんだ」


晶葉「存在する確率は限りなく低いが……科学は宇宙人を否定はしない」


晶葉「ゼロパーセントじゃないんだ、ならば彼女を信じるほかあるまい」


晶葉「まあ、何よりも……彼女は私の友人だからな」




P「――ああ、そうだったな」


P「何より俺たちが信じないと誰も信じやしない、か」


晶葉「そうだ。私は一人の友人としてウサミンを信じる、それだけさ」


――菜々宅


ピンポーン


菜々「はーいっ、ウサミン星へようこそ!」


晶葉「うむ。お邪魔するよ、ウサミン」


P「おおっ、片付いてる」


ちひろ「菜々さんに失礼ですよ、プロデューサーさん」


菜々「ちひろさんっ!ちゃん付けでいいって言ってるじゃないですかぁ~っ!」


ちひろ「そんなっ、菜々さんは菜々さんですから!」


P「……お互い年齢が……」ボソッ


晶葉「おいP、それ以上はやめておけ」ヒソヒソ


菜々「二人とも、聞こえてますからねっ!?」


ちひろ「あら、何か言いましたか?」


P「いえいえ、何も」


P「それより、ちひろさん」


ちひろ「ああ、そうですね。お台所借りますね、菜々……」


菜々「……」ジーッ


ちひろ「……菜々ちゃん」


菜々「はいっ、いいですよー」ニコッ


P「俺とちひろさんで色々買ってきたから、なんか作るよ」


ちひろ「できあがるまで、二人は待っててくださいねっ」


菜々「い、いいんですか?そんな……」



晶葉「さて……せっかくのウサミン星だからな。新しい技術は……っと」


菜々「あーっ!!晶葉ちゃん、ダメっ!そこは開けちゃ、ダメですからっ!!」


菜々「こ、ここから先はウサミン星の極秘事項ですっ!」


晶葉「そうなのか?」


菜々「ダメです!地球にはまだ知られていない大変なものとか、お母さんから送られてきた段ボールとか……」


晶葉「ほう、地球にはまだ知られていない技術か?それは是非ともこの目で見なくては!」


晶葉「……むむっ、あんなところに謎の雑誌が!?」


菜々「はっ!?まさか片付け忘れが……」


菜々「……あれ?」


晶葉「済まない、ウサミン!」ダッ


菜々「ああっ!!」


ガラッ



晶葉「……っ!」


晶葉「……おい、どういうことだ」


菜々「あ、あはは……それ、見ちゃいました?」


晶葉「どうして君が、これを」


菜々「だから、菜々はウサミン星人だって言ったじゃないですか」


晶葉「ウサミン、まさか君は……だって、これは」



P「おーい、晶葉ー!ちょっと手伝ってくれー!」



晶葉「……まあいい、後ほど聞かせてもらうよ」


晶葉「P、今行く!少し待っていたまえ」




菜々「……はぁー……まさか晶葉ちゃん、ひと目で気付いちゃうとは……」


菜々「やっぱり、いつかは話さないと、ですかね……」


P「おーい、菜々ー。料理できたぞー」


菜々「はーいっ!テーブルはちゃんと片付いてますよーっ!」


ちひろ「私達で運ぶので、菜々ちゃんは待っててくださいねー」




菜々「おおっ……お二人とも、料理できるんですね」


P「あれ、知らなかったのか菜々?事務所のパーティー、ちひろさんが作ってることたまにあるぞ」


ちひろ「あまり人が多すぎると出前取っちゃいますけどね」




晶葉「……」ジーッ


P「どうした、晶葉?」


晶葉「いや、なんでもない……さあ、誕生日には一足早いが、乾杯しようではないか!」


ちひろ「晶葉ちゃんと菜々ちゃんにはジュースを……私達はどうしますか?」


P「ん?そうですね」ジーッ


菜々「ど、どうしてナナを見るんですか?」


P「ジュースにしましょう。菜々が可哀想ですし」


菜々「もーっ、ひどいですよPさん!」プンプン


P「ははは、悪い悪い」


ちひろ「いちゃつくのもいいですけれど、早く乾杯しちゃいましょう?」


晶葉「そうだな。ほら、ウサミン」


菜々「えっ、ナナがですか?」



菜々「えー、では……こほん。一日早いですけど、ナナの17歳の誕生日を祝って!」



菜々「乾杯!」


菜々「わぁっ、ちひろさんお料理上手なんですね!」パクッ


ちひろ「いえいえ、そうでもないですよ?簡単なものだけですし」


P「食べるのもいいですけど、ケーキもちゃんと買ってありますからね」


晶葉「ほう、ケーキか……!」


P「主役は菜々だからな?」


晶葉「分かっているぞ?……分かっているとも」


菜々「いいんですよ、晶葉ちゃん」


ちひろ「じゃあ、ケーキ持ってきましょうか?」


晶葉「む……そ、そうだな」


ちひろ「ではケーキも持ってきましょう。プロデューサーさん」


P「どうして俺をこき使うんですか」


P「ほら、持ってきたぞー」


晶葉「おお!これはおいしそうだな……」


P「主役よりはしゃぐんじゃない」


晶葉「う……そうだな」


菜々「あっ、ナナの砂糖菓子が乗ってます!」


P「ああ、特注だぞ」


ちひろ「それじゃあ早速、ろうそくを立てて……」


P「ろうそく……」


菜々「どうして手が止まるんですかっ!?ナナは17歳ですよ?!」


晶葉「ほら、早く並べようではないか。この際ろうそくは17本でも18本でもいいだろう」


菜々「17本でいいですからね!?」


カチッカチッ


P「ほら。菜々、おめでとう」


ちひろ(どうしてライターが菜々ちゃんの家から出てくるのかしら)


菜々「へへ……ありがとうございますっ!」



フゥーッ


菜々「あ、あれ……まだ消えてませんね。もう一回!」


フゥーッ


菜々「……あっ、やったっ、消えましたっ!!」


晶葉「ふふ……おめでとう、ウサミン」


晶葉「そうだ、君へのプレゼントを……さあ、受け取ってくれ」


菜々「わぁっ……かわいいウサちゃんロボですね!」


晶葉「ああ、この子は舞台よりも生活面に特化したロボなんだ」


晶葉「……地球と、ウサミン星の友好の印だな」


菜々「……そ、そうですねっ!あはは、ありがとうございますっ、晶葉ちゃん!」


ちひろ「ウサちゃんロボ、すごいですよね」


P「ライブでもどこでも大活躍ですからね」


晶葉「ふふ、君の生活に役立つこと間違いなしだろう」


菜々「えへへ……大事にしますからねっ!」


晶葉「ああ……可愛がってあげてくれ」


晶葉「さて、ではケーキを……うむ!甘くて美味しいケーキだな!ふふっ」


ちひろ「色々とルートがありますからね。お安く売ってもらえたりするんですよ」


P「あくまでも菜々の為のケーキだぞ?」


菜々「いえ、晶葉ちゃんが嬉しそうですからいいですよっ」


晶葉「そうか?すまないな……」エヘヘ


菜々「ではナナも……んっ、美味しいですねっ♪」


晶葉「ふふふ、ケーキは凄いな。一瞬で人を笑顔に変える力が……」


晶葉「……ふむ。そうか!」


P「また徹夜するのはやめてくれよー」


ちひろ「晶葉ちゃんらしいですけどね。思いついたら即行動、って」


ちひろ「それでこの前……あら、もうこんな時間ですか」


P「そろそろ晶葉は帰らないと、明日は朝からだしな」


晶葉「ふむ、確かにそうだな」


菜々「あ、本当ですね……」


P「……」ジーッ


菜々「Pさん、どうかしました?ナナの顔に何か付いてますか?」




P「あー、ちひろさん。晶葉送って行ってもらえますか」


ちひろ「え?はい、大丈夫ですが……」


晶葉「何かあったのか?」


P「色々と話があったの、思い出しまして」


菜々「……へっ?」


ちひろ「いいですけど……プロデューサーさんも明日はお仕事ですからね?」


晶葉「……まあいいだろう。ただ、君が遅れては示しが付かんぞ」


P「ええ、分かってますって」


菜々「ちょっと、ナナ何も聞いてませんよ」


P「まあ、まあ」


ちひろ「それでは、晶葉ちゃんを送ったら連絡しますので」


晶葉「ふふ……では二人とも、いい夜を」


菜々「えっと、はい……おやすみなさい?」




菜々「……Pさん、どうしたんですか急に」


P「なんとなくだな」


菜々「もう終電も逃してますよ」


P「どっか泊まれるところでも探すさ」


菜々「この辺何もないですよ」


P「どうにかなるだろ」


菜々「……一体、どうしたんですか?」


P「こうして話がしたかっただけだよ」


菜々「……Pさん」




菜々「……本当に偶然ですが、ナナのお家にはお布団がもう一組あります」


菜々「それでよければ、お貸ししますよ」


P「……本当にそういうつもりじゃなかったんだが……ありがとな」


P「……菜々はさ」


P「ここまでずっと、頑張ってきたもんな」


菜々「まだ、ゴールじゃないですけどね。2位ですから」


P「もちろん。まだまだ、上がいるからな」


P「……でも、今日くらいは色々忘れてゆっくりしても、いいんじゃないか」


菜々「そうですねぇ……ナナもびっくりしましたからね、あのお仕事」


菜々「まさかあんな形で無重力体験とは思いませんでしたよ……」アハハ


P「俺もあんな仕事が来るとは思わなかったよ」ハハ


菜々「……ナナは、ウサミン星人ですからね。無重力だってなんのその、ですよっ」


P「地球に来る時も、大変だったろ」


菜々「ええ、それはもう」


P「本当に、ウサミン星人なんだな」


菜々「もちろんです」


P「今じゃウサミン星人の人口も増えたもんな」


菜々「……ええ、ナナもびっくりですよ」




菜々「……ウサミン星人の皆さんのおかげで、ナナは今日も頑張ろうって自信を持てるんです」


菜々「本当にこっちでやっていけるのか、不安でしたからね」


P「……そうか」




菜々「何か飲み物、取ってきますね。Pさん」


P(……しかし、菜々の家……よく片付けたな)


P「……?」


P(押入れから、何かはみ出てる……箱か?)


ヒョイッ


パカッ


P「……何だ、これ?」


P(金色の……レコード?ジャケットには色々絵が描かれてるな)


P(見たことある気がするが……思い出せん)



菜々「お待たせしました……あ、Pさんも見ちゃいましたか」


P「ああ、すまん。勝手に見ちまった」


菜々「いえ、いいんですよ。見られて困るものでもないですし」


P「そうなのか?」


菜々「ええ。ナナの宝物です」


菜々「それのおかげで、ナナはこうして、ここでアイドルを続けていられるんですから」


P「……そうか」


菜々「あ、あまり触らないほうがいいですよ。まだ危ないかもしれませんから」


P「え?」


菜々「ですから、ちゃんと片付けて……」


菜々「押入れに、ぽいっと」




菜々「……見られると、恥ずかしいですし」


菜々「ささ、それよりも……ほら」


P「あ、ああ……」


菜々「……もうそろそろ、魔法の解ける時間ですね」


P「そうだな」


菜々「魔法が解けたら……ナナは、一体誰になるんでしょうか」


P「……いつだって、菜々は菜々さ。そうだろ」


菜々「そうですね……ふふ」




カチッ……カチッ……


P「……菜々」


カチッ


P「誕生日、おめでとう」


菜々「ありがとうございます、Pさん」


菜々「……ねぇ、Pさん」


P「どうした?」


菜々「Pさんは、ナナの本当の姿を知っても……好きで、いてくれますか?」


P「……ああ、そりゃあもちろん」


菜々「ふふ、そうですよね!だから、ナナは、今だけは……」


菜々「永遠の17歳じゃなくて、ただの、……歳の、女の子です」


P「そうだな」


菜々「ここには、大人しか……いませんから」




菜々「ほら。Pさんもどうぞ」


P「ああ……そうだな」



「……乾杯」


菜々「さっきのナナの宝物……あれを見つけてから」


菜々「ナナはずっと、この世界に憧れてきたんです」


P「そうだったのか」


菜々「はい……だから、学校を卒業して、すぐにこっちに引っ越して……」


菜々「そこまではよかったんですけどね」


P「そういえば、菜々と出会ったのはメイド喫茶だったな」


菜々「……店長さんに拾ってもらえなかったらと思うと、ぞっとしますね」


菜々「でも……誰も知らない、何も分からない中で、本当のナナを見つけてくれたのは」



菜々「他でもない、Pさんだったんですよ」


菜々「お店で働かせてもらってたら、偶然Pさんに出会って」


P「そうだな。あの時は一目惚れだったよ」


菜々「あの時、すごく必死でしたね」


P「俺も若かったからな」


P「とにかくこのチャンスを逃しちゃいけないって焦ってたんだ」


菜々「ナナも、ずっと夢だったアイドルになれるチャンスが来るなんて思いませんでしたよ」


P「地元のみんなとかも、驚いてたろ」


菜々「あー……どうでしょうねぇ。あまり連絡、取ってないですし……」


P「でも、菜々の活躍は皆にも届いてるんじゃないか?」


菜々「……届いてると、いいですけどね」


P「届いているさ、きっと」


菜々「……Pさん」


P「ほら、ウサミン星は電車で一時間だろ」


菜々「……ええ、電車で一時間です」


P「だから、会いに行けば……」


菜々「電車で一時間……電車に乗れれば、ですけどね」


P「……?」


菜々「電車に乗れるのは……ごくわずかの人だけです。それだけ高いですから」


菜々「電車に乗れないと、片道数年はかかっちゃいますからね」


菜々「……ウサミン星って、とっても遠いんですよ」




P「ウサミン星って……菜々、まさか」


菜々「……グラス空ですよ、Pさん」


P「……ああ、そ、そうだな……」


菜々「……本当は」


菜々「ずっと、反対されてたんです。こっちに来るのに」


P「どうしてだったんだ?」


菜々「……とっても遠いですからね、ウサミン星は。簡単には帰れないんです」


菜々「別に、いいんですけどね。帰れないことなんて覚悟の上でしたし」


P「それでも、憧れていたんだな」


菜々「ええ……あの宝物を見つけてから、ずっとです」


菜々「ナナは、ずっと……」




菜々「地球に、憧れていたんですよ」




菜々「こんな星があるんだって知って、ナナはずっと行ってみたいと思って」


菜々「いっぱい、勉強したんですよ」


菜々「……その時に知ったことは、全部時代遅れになっちゃってましたけどね」


P「菜々……」


菜々「……そうしてナナは、こっちに、地球に来たんです」


菜々「そこからは、Pさんの知ってるとおりです」


菜々「メイド喫茶の店長さんに拾われて、何年かしてPさんに出会って」


P「そう、だったのか」


菜々「それで、アイドルナナが生まれたんです」


菜々「……本当は、怖かったんですよ」


菜々「この広い星の中で、ナナはずっと、一人ぼっちだったんですから」


P「……菜々」




P「……大丈夫だよ」


P「もう、菜々は一人じゃないんだ」


菜々「Pさん……」


菜々「そう、ですね……はい。ナナには、皆が」


菜々「Pさんが、いますから」


菜々「でも、今日のことは……忘れてあげてくださいね」


P「菜々」


菜々「……Pさんは、そう、不思議な電波を受信しちゃったんです」


菜々「ナナは嘘つきですから。本当は17歳じゃありませんし、ウサミン星なんてのも本当は」


P「待て、菜々……」ガタッ


フラッ


P「うっ……」


菜々「あー……飲み過ぎですよ、Pさん」




菜々「お布団に入ったら少しずつ……Pさんは今日のお話、全部忘れちゃいます」


菜々「……お休みなさい、Pさん」







菜々「……Pさん、ちゃんと寝ましたか?」



菜々「ぐっすり寝てるみたいですね」



菜々「こんな時間だけど……出てくれるかな」





菜々「……もしもし、お母さん?うん、ナナですよ」


菜々「お星様が綺麗だなーって思って……うん、元気でやってます」


菜々「あ、誕生日覚えててくれたの……ありがと、お母さん」



菜々「地球でも頑張ってるよ……ふふ、ナナは大丈夫ですから」


菜々「忙しいからあんまりウサミン星には帰れないけど……心配しなくても、元気だからね」



菜々「うん、ありがと……な、泣いてないですからねっ!」


菜々「ああ、もう……それじゃ、また連絡するね……うん」




菜々「……ふふ」


菜々「……空に輝くあの星達のどれかが、ウサミン星なんですよ、なーんて」


菜々「それを知ってるのは、まだ……ナナだけでいいんです」


おわり。

最後に酉だけ。
解釈は皆様にお任せします

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