悪魔「天使さんと俺」(120)


 狭間の世界。

悪魔「おーっす」

天使「きたんだ」

悪魔「そりゃ来るゃ。こんな癒やしスポット魔界にはないし」

悪魔「あ、隣良い?」

天使「どうぞ」

悪魔「んじゃ、失礼しまーす」ストン

天使「……………」

悪魔「……………」ゴロン

悪魔「夜空に浮かぶお月さん。湖面に映って双子さんー」

悪魔「広がる草原真ん中湖、湖畔で転がる天使と悪魔ー」

天使「私は転がってないけど」

悪魔「転がる悪魔ー、視線は天使、乳天使ー、おっぱいおっぱいおっぱいぱい」

天使「おいセクハラ悪魔」


悪魔「なんて馬鹿言っても、キミは眉一つ動かさないわけで」

悪魔「天使って表情無いのかよ、寂しいな」ケラケラ

天使「怒ってほしいわけ?」

悪魔「どちらかといえば笑ってほしい」

天使「セクハラしといて何を言うか」

悪魔「悪い、出来心だったんだ」

悪魔「でも、俺は悪魔で男だから、あんまり無防備にしてると襲っちまうぞ」ケラケラ

天使「ふんっ、へたれ悪魔に出来るものか」

悪魔「お、言ったな。んじゃ試してやろうか」ニヤリ

天使「さて、ここで無防備に寝ていた私の周りをぐるぐる歩き回ったあげく正座してヒトの寝顔を眺め最後には優しく上着をかけて去った悪魔はいったい誰だったのだろうか」

悪魔「起きてたのかよ!」ガバッ

天使「うん」

悪魔「あああああぁああああ!!見られてた!俺の恥ずかしい一連の動き見られてたぁあぁああ!!」ゴロゴロゴロゴロ


天使「男として据え膳が何だって?」

悪魔「すみませんすみませんへたれでいいです俺へたれでいいです」

天使「別に襲っても良かったのに、」

悪魔「え!?」

天使「なんて言ったら?」

悪魔「………天使さんは真顔で冗談言うから困る」

天使「そうだよ、今のは冗談」
天使「間違えても襲っちゃ駄目だ。君、死んじゃうよ」

悪魔「あ、やっぱり?」

天使「きっと辛い。繋がった所から君は天使の力に犯されるわけだ」ニヤリ

悪魔「初の真顔以外の表情がここで出るか」

天使「笑ってほしいのなら笑ってあげるよ」ニコッ

悪魔「………………、」ポカーン

天使「」ニコニコ

悪魔「……………、」ポカーン

>>1初っ端から痛恨の誤字。そりゃ来るゃ×そりゃ来るよ


天使「黙ってないで何か言って。私がばかみたいじゃないか」

悪魔「……あ、ごめん。見とれて言葉が出なかった」

天使「…………、」フイッ

悪魔「…………、」

悪魔「照れてる?」

天使「むかついたから照れ顔は見せない」

悪魔「それは残念だ」


 狭間の世界。

悪魔「よっ、」

天使「きたんだ」

悪魔「そりゃ来るよ。天界にもないだろ?こんな癒やしスポット」

悪魔「あ、隣良い?」

天使「どうぞ」

悪魔「じゃ、失礼します、っと」

天使「…………」

悪魔「…………」ゴロン

天使「確かに無いかも。こんな癒やしスポット」

悪魔「なんせ天界に俺はいないからな!」

天使「一面に広がるこの夜空も、小さな世界を明るく照らす月の光も、水と草の匂いを運ぶ風も、」

天使「地を覆うこの草だって柔らかくて、寝転がるには最適だし、」ゴロン

天使「湖も、底が見える程澄んでいて、程良く冷たい」

天使「何もかもが心地良い世界だ」


悪魔「………………、」ゴロゴロゴロゴロ

天使「自分で言った冗談で恥ずかしがるなら最初から言うな」クスッ

悪魔「俺の精一杯の冗談を物の見事にスルーしてさ、」

天使「君はもういっそ笑えるぐらいそういった台詞が似合わないね」

悪魔「口が上手いっていうか、冗談でもあんなのぽんぽん口に出来る奴って凄い」

天使「憧れる?」

悪魔「憧れる」

天使「君はそのままで良いんじゃないかな」

悪魔「そのままの俺が好きってこと?」

天使「」ニヤニヤ

悪魔「その笑いやめろってぇええ!!駄目だ俺やっぱ駄目だ!!」

天使「駄目だね」

悪魔「そのままの俺でいます!」

天使「そうしてよ」クスクス


 狭間の世界。

悪魔「やぁ、」

天使「きたんだ」

悪魔「そりゃ来るよ。ここ好きだから」

天使「私も好きだ」

悪魔「…………」カァ

天使「何故赤くなる」

悪魔「熱があることにしておいてくれ」

天使「なら計ってやろう」グイッ

 コツン

悪魔「!!!!!!」
悪魔(おでこをこつんだと!?)

天使「ふむふむ、さらに赤くなり体温があがったと」ケラケラ

悪魔「からかうのはやめろよ、ドキドキするだろ!」バッ ゴロゴロゴロゴロ

天使「よし、ならばそのドキドキを計ってやろう」


悪魔「やめて!俺の理性がもたない!」

天使「ならやめとくか」
天使「君が死んでしまうから」ヘラリ

悪魔(……触れるだけは平気なんだよな、)ゴロン

悪魔「…………」ゴロゴロ

天使「転がって近寄るのか君は」

悪魔「…………」スッ

天使「なんだ、手を出して。起こせというのか?」ギュ グイッ

悪魔「っと、ありがとう」

天使「どういたしまして」

悪魔「…………、」ジー

天使「どうした?自分の手をまじまじと見て」

悪魔「……いや、さ」

悪魔「キミに触れたいとは常に思ってるんだけどな、って」


天使「…………、」

天使「それ、素?」

悪魔「え、あ、何が?」

天使「素の発言の方が脅威だ、」ボソッ

悪魔「なんだよ、そっぽ向いてぼそぼそ言うなんて酷いぞ」

天使「君といると調子が狂うって言った」
悪魔「……何を今更、」

悪魔「それはお互い様だろ?」ヘラリ


 狭間の世界。

 サクサク
悪魔(……魔界と天界の狭間に何やら空間があると思ったら、)

悪魔(こんな世界があるとはな、)

悪魔(……小さな世界だ。端から端が見える。広がる草原を、闇が囲んでいる)

悪魔(光源は……空に浮かぶあの月か。アレもこの世界の一部、俺が知る月ではない)

 フワリ
悪魔(ん?)
悪魔(水の匂い。近くに水辺でもあるのか?)サクサク

悪魔「あ、」

 チャプン

悪魔(湖だ。底が見える程に澄んでいる、……おや?影湖面が月を映して、)フッ
悪魔(どうやらこの世界の月は双子らしい、)

 チャプン

天使「…………」ジー

悪魔(視線を感じる、気配なんて無かったはず--)

天使「…………」ジー マッパ


悪魔「ぶっ!ちょえ、ああ!?ななななな、何で真っ裸なんだアンタ!!!」

天使「水浴びしてたからに決まってる」チャプン

悪魔「そうかごめん!!」グルッ ストン

悪魔「後ろ向いてるから早く何か着てくれないか!」

天使「断る」

悪魔「何でだ!!」

天使「水浴びしてると言った」

悪魔「俺いるんですけど!!」

天使「気にならないからいい」

悪魔「気にしろよ!」

天使「私は気にならない。そっちこそ気になるならずっとそのままでいれば良いじゃないか」チャプチャプ

悪魔「ああああ!音って色々想像をかきたてられるよな!!!」

天使「……………」ハァ
天使「うるさい悪魔だな君は」


 狭間の世界。

悪魔「来たよ」

天使「来たんだ」

悪魔「お隣に失礼」ストン

悪魔「…………」ゴロン

天使「…………」

悪魔「今日も綺麗なお月様だ」

天使「そうだね」

天使「…………、」
天使「君との出会いを思い出していた」

悪魔「」ブッ
悪魔「その話はやめよう!思い出しちゃうだろ!俺モロに見ちゃったから!!」カァァァ

天使「生娘じゃあるまいし、たかが思い出話で赤くなるな」ケラケラ

悪魔「いやいや、真っ裸ですよ真っ裸。初対面が真っ裸とか天使さん」


天使「主にどこ見てた?」

悪魔「お尻と太もも」

天使「……用意していた台詞は、お気に召す胸でしたか?だったんだけど」

天使「おっぱいおっぱい言ってたくせに……」

悪魔「えっと……おっぱいも好きです」

天使「…………」
悪魔「…………」

天使「……この話は止めようか」

悪魔「賛成」


 狭間の世界。

悪魔「早いね、天使さん」

天使「早いよ。なんせここに住んでるから」

悪魔「マジで!?」

天使「嘘に決まってる」ケラケラ

悪魔「……天使さんは嘘つくの上手いよなー」

天使「誉め言葉として受け取っておこう」ケラケラ

悪魔「……ほんとに、変な天使、」

天使「君こそ、変な悪魔じゃないか」
天使「敵対してる天使に全く手を出さないなんて」

悪魔「……いや、だって俺争い事嫌いだし」

天使「悪魔なのに?」

悪魔「皆が皆血気盛んだと思わないでくれよ」

天使「そうか、ふふっ、そうだよな。悪魔にだって色々いるに決まってる」

天使「君は争い事が嫌いで、穏やかで、実に悪魔らしくない」クスクス


悪魔「もし、さ」

天使「?」

悪魔「あの時俺が、敵対する通りの事をしていたら、君はどうした?」

天使「応戦していた」

悪魔「……その……真っ裸で?」

天使「真っ裸で」

悪魔「……俺悪魔にしては比較的穏やかで良かった……!!」

天使「駄目か?真っ裸」

悪魔「駄目だそれ絶対駄目だ!どっちが勝ってもなんかその後の展開的にマズい!!」

天使「……よし、じゃあ一緒に、もしも、ということでその後の展開を想像してみようか」

悪魔「想、像……?」
天使「想像」コクン

悪魔「…………………、」ソウゾウチュウ
天使「…………………、」ソウゾウチュウ




悪魔「あああああああ」ゴロゴロゴロゴロ

悪魔「やめよう、やめようこんな事!!」

天使「……君は……その、意外と激しいんだね、」ポツリ

悪魔「ああああああああああ!!!」ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ

天使「おや、これはまた随分と遠くまで転がって」

天使「無論、今のは戦いの話。勘違いしてはいけない」ケラケラ

悪魔「…………」ゴロゴロ

天使「それに、私と繋がると君は死んでしまうんだ。よもや忘れたわけじゃないだろう」

悪魔「…………」ゴロゴロ

悪魔「自分の煩悩が憎い」

天使「その煩悩の刺激するのが楽しくて仕方ないんだがどうすればいい?」

悪魔「畜生、絶対手ぇ出せないからって……」

天使「精神を強くもて。さすれば動じることもない」

悪魔「キミが言うか」


 狭間の世界。

悪魔「ふぁぁあ、」

天使「大きな欠伸。眠いなら眠ってしまえばいいじゃないか」クスクス

悪魔「……それもいいな、」ウツラウツラ

天使「膝枕してあげようか?」

悪魔「ん、頼む」

天使「え!?」ビクッ

悪魔「!!!」
悪魔「いいい今の無し!!今の無しで!!!」

天使「い、いやいやいや、受けてたとうじゃないか!なんせ自分で言い出した事だし!」ドキドキ

悪魔「ボーっとしてる奴にそんな事言うから!言うから!!どうせからかったんだろまた!!」ドキドキドキドキドキドキ

天使「ううううるさい!!さあ来い!!準備は出来ている!!」ドキドキ

悪魔「ままままじかホントに膝枕してくれるんですか!!」ドキドキドキドキドキドキ

天使「しつこいぞ!来いと言っている!」ドキドキ

悪魔「わかりました!ではお膝をお借りさせて頂きます!!」ドキドキドキドキ


天使「…………」ドキドキ

悪魔「…………」
悪魔(膝枕、天使さんの生足に、頭をのせることになるなんて、)ドキドキドキドキドキドキ

 ソッ

悪魔「……あ、あの……重くないですか」ドキドキドキドキドキドキ

天使「……大丈夫。……そちらこそ、その、寝にくくは、ないですか」ドキドキ

悪魔「柔らかくてすべすべで、最高だと思います、」ドキドキドキドキドキドキ

天使「そんなことを訊いたんじゃないぞ……!!」カァァァ

悪魔「!!天使さんまさか今赤くなってます!?」

天使「うるさい見るな!!寝ろ!」グッ ドキドキ

悪魔「ちょ、無理やり瞼閉じさせるのは!」バタバタ

天使「何だ!君は目を開けたまま眠ると言うのか!!」ドキドキ

悪魔「いやちゃんと目閉じて眠りますけど!!--前々から言おうと思ってましたが天使さんの手もずっと触れていたくなるような感触で」
天使「~~~!!!もう喋るな!!次口を開いたら膝枕はやめるからな!!」ドキドキドキドキ


悪魔「!!」ピタッ

悪魔「……………」

天使「それで良し」

悪魔「……………」

天使「……………」

悪魔「……………」

天使「……………」ソッ

悪魔(…………天使さんが、俺の頭を撫でている、)
悪魔(だが襲い来る睡魔。くっ……髪をすくように撫でるもんだから、)
悪魔(……心地良い、ん、だよな……)スゥ

悪魔「…………」zzz

天使「眠ったか、」ナデ ナデ

悪魔「…………」zzz

天使「…………眠ってるよな、」ナデ ナデ


悪魔「…………」zzz

天使「ふふっ、我ながら、柄にでもないことをしている……」

天使「……キミといると心が安らぐんだ」

天使「ずっとこうしていたい、けれど」

天使「…………、」

天使「少しだけ、君と出会ってしまったことを、後悔しているよ……」


 狭間の世界。

悪魔「アンタ、ここにはよく来るのか?」

天使「私だけの世界だった」

悪魔「……なんか悪いな、見つけちまって」

天使「いいさ。何時消えるともしれない小さな世界だ、」

天使「もう一人ぐらい、覚えてくれる存在がいてもいいだろう」

悪魔「そうか、」

天使「…………」フィッ テクテク

悪魔「!!待ってくれ!どこ行くんだ?」

天使「天界」

悪魔「……ああ、そうだよな。天使だから、もう帰るのか」

天使「私はこの世界を十分満喫した。次は悪魔、お前が満喫したらいい」

悪魔「……いや、俺も、今日は戻るよ」

天使「?何故、」


天使「この世界は居心地が良いのに、」

悪魔「それはわかってるけどさ、その……」

悪魔「また来るよな、」

天使「……私がか」

悪魔「ああ」

天使「……来るだろうな。満喫したのは今回の話。ここは私の唯一のお気に入りだ」

悪魔「わかった」
悪魔「今度、また、アンタがいる時にここに来るよ」

天使「………………、」

悪魔「……嫌なら来ない」

天使「この世界は誰の物でもない。それこそ、神や魔王の、そのどちらでも」

悪魔「…………そうか、なら、」

天使「好きにしろ」テクテク

悪魔「了解」クスッ


 狭間の世界。

悪魔「俺達の関係って何だろうな」

天使「敵対関係。現在戦争中」

悪魔「それは種族そのものの関係だろ?」

悪魔「俺達は敵対なんかしてないし、ただ月見ながらゴロゴロして喋ってるだけだ」

天使「…………そうだな、」

天使「月見仲間、なんてのはどうだ」

悪魔「月見仲間か。良いな、それ」

天使「月見仲間といっても、この世界での話だ」

天使「外に出れば、敵対関係になるのだろう。戦う相手だ、殺し合いをする相手だ」

悪魔「そうなんだよなぁ、」

悪魔「外の世界で……アンタとだけは、会いたくないよ」


 狭間の世界。

悪魔(そういえば、)
悪魔(湖には一度も入ったこと無いな、)

天使「…………」ジー

悪魔(とりあえず指先だけ)チャプチャプ

悪魔(お、冷たい)チャプチャプ

天使「指先だけなど生ぬるい!」ドンッ

悪魔「--は?」

 バチャン

悪魔「ぶはっ!湖に突き落とすなんて何考えて、」
天使「そして私も行こう」バッ

悪魔「--へ?」

 バチャーン

悪魔「」ブクブクブクブク

天使「」ケラケラ

悪魔「ぶはっ!!何してんの天使さん!!本当に何してくれてるの天使さん!!」


天使「そういえば湖に入ってる所見たこと無いなと思って」

悪魔「無いけど突き落とすのは駄目だろ俺服着たままだよ!」

天使「私も着たままだ。これでおあいこだ」キリッ

悪魔「おあいこじゃねぇよ納得出来る要素が、ぁあああああ!!!!?」バチャバチャバチャバチャバチャバチャ

天使「水の中というのになんという高速後ずさり。凄いな君は」

悪魔「ふ服透けてますよ天使さん!!」

天使「服?」チラッ

天使「…………、」カァァァ

天使「~~っ!!わかっててやったに決まっているだろう!!何を今更!!」

悪魔「今の反応はわかってなかったろ!正直水に濡れたら服が透けるって事忘れてただろ!!」

天使「ええい!それ以上言うな!!」バシャン

悪魔「うおっ!?突き落としただけじゃ飽きたらず水までかけるか!!」

天使「かかってこい悪魔!!どうせぐしょ濡れだ!」

悪魔「おーけー!やってやるよ天使さんよお!!」バシャン


天使「くっ!」バチャバチャバチャン

悪魔「なんのっ!!」バチャバチャバチャン

天使「!!」バチャンバチャバチャバチャバチャバチャバチャバチャ

悪魔「ちょ、ぶ、やりすぎやりすぎ」

天使「なにこれ楽しい」バチャバチャバチャバチャバチャバチャバチャバチャバチャバチャバチャバチャバチャバチャバチャ

悪魔「やりすぎだってのー!!!」フォン

 バシャン!

天使「むむっ!魔法か!水の壁で防御とは!」

天使「面白い!」フォン

 シュパッ バシャン

悪魔「うああ!?壁が切れた!!?」
悪魔「洒落にならない魔法使うなよ!当たったら死--あれ?」

悪魔「どこ行っ、」
天使「」ニュ

悪魔「おおおっ!?近い天使さん近」バシャン


悪魔「」ブクブクブクブクブクブク

天使「ブクブクブクブク」ニヤニヤ

悪魔「ぷはっ!」

天使「ふふふ、私の勝ちだな!」ドヤ

悪魔「もう天使さんの勝ちで良いよ」チラッ フィッ
悪魔(服が張り付いて、身体のラインが丸わかりだ……)

天使「…………、」ハッ!
天使「……真っ裸を見られたんだ、これぐらい、恥ずかしくないから」ボソボソ

悪魔「…………」ガッ

天使「!!ななな何だ私の肩を掴んで!」

悪魔「…………」ジー

天使「……恥ずかしくなんかないぞ、」フィッ

悪魔「天使さん、」

天使「!!な、何だ、」

悪魔「…………、遊びは終わり」グルン

天使「む」


悪魔「さあ岸に戻りましょうねー」グイグイ

天使「…………、押さなくても自力で戻れる」

悪魔「また引きずり込まれたら俺もう我慢出来ないんだよ、ここはおとなしく従いなさい」グイグイ

天使「…………」
天使「…………、やりすぎた。すまなかった」

悪魔「おー、」
悪魔「天使さんは自分の可愛さをもう少し自覚しような」

天使「……………、楽しいかなと思った」

悪魔「楽しかったよ」ケラケラ

悪魔「外の世界を一瞬忘れられるぐらいには、楽しかった」


 狭間の世界。

天使「……」

天使「……………、」

天使「…………………、」

天使「最近、会わないな」

天使「ここに来る度会えたのに、」

天使「…………………」

天使「死んでしまったのだろうか、」

天使「いや、」

天使「時間が合わないだけだ、」

天使「………、こんなにも小さな世界だというのに」

天使「君がいないと、広く感じるよ」

天使「何故かな」


 狭間の世界。

悪魔「久しぶり」

天使「久しぶり」

悪魔「お隣失礼します」

天使「ん」

悪魔「…………」ゴロン

悪魔「死んだかと思ってた?」

天使「少しだけ」

悪魔「そっか」
悪魔「でも俺、結構しぶといからさ」ケラケラ

天使「そう思って、」
天使「もしかしたら、この世界に飽きただけなのかもと、」

悪魔「それは無いよ。この世界に飽きることは絶対有り得ない」

悪魔「だって、キミがいるから」

天使「!」
天使「~~~、」グイグイ


悪魔「え、何?俺押しのけて何?近付くなってこと!?」

天使「転がれ」グイグイ

悪魔「ああ、うん。いいけど」ゴロゴロ

天使「戻れ」

悪魔「あ、うん」ゴロゴロ
悪魔「えっと、何がしたかったんだ?」

天使「その質問は禁ずる」ムゥ

悪魔(何で怒ってるんだろう)

天使「これが慣れか、それとも変わってしまっただけなのか、」ボソボソ

悪魔「?」


 狭間の世界。

悪魔「久しぶり」

天使「久しぶり」

悪魔「…………」ストン

天使「…………」

悪魔「…………、」ゴロン

悪魔「戦争、終わらないな」

天使「そうだね」

悪魔「何でみんな戦っちゃうかな」
悪魔「俺争い事嫌いなのに、」

天使「でも、君は生きている」
天使「沢山殺したんだな」

悪魔「うん。死にたくないから」
悪魔「キミの同族を沢山屠ってきた」

悪魔「俺を嫌になったならちゃんと言ってくれなきゃわからないぞ」ケラケラ

天使「君に会えなくなる方が嫌だ」
天使「それに、私も同じだ」


悪魔「うん、そうだろうな」

悪魔「この馬鹿げた殺し合い、どうすれば終わるんだろう」

天使「神か魔王、そのどちらかが死ねば終わるだろうな」

悪魔「……そうだよな。魔王のせいだもんな」
天使「神のせいでもある。私は神が大嫌いだ」

悪魔「種族の長に嫌いなんて言ってやるなよ」ケラケラ

悪魔「ま、俺も魔王は嫌いだけどさ」

悪魔「最初から種族間の仲は最悪だったけど、まさかこうもこじれるとは」

天使「神も魔王も馬鹿みたいに強すぎたんだ。だから勝てると思ったんだろう」
悪魔「滅ぼせるって思っちゃったんだろうな」ケラケラ

天使「外は、嫌いだ。嫌な世界だ、」

天使「…………」
悪魔「…………」

悪魔「なぁ、」

天使「?」


悪魔「どっちが勝つと思う?」

悪魔「魔王と神が、戦ったらさ」

天使「……魔王かな」

悪魔「俺は神だと思うけど」
悪魔「冷酷無比、慈悲の欠片も無い。出会った悪魔は生きて帰さない。滅茶苦茶に強い女神様だって聞いてる」

天使「魔王だって同じだ。出会った天使は誰一人ヒトの形を保っていない。表情一つ変えず天使を殺すと」

悪魔「伝わることはどの陣営でも同じってか」ケラケラ

悪魔「でもさ、普通ここは自分んとこの長を推さない?」

天使「私は神が嫌いだと、言ったじゃないか。君こそ、」

悪魔「嫌いだな、魔王は」ケラケラ

天使「……神は負けるよ。この戦争はきっと、天界側が負ける」

悪魔「…………何で?」

天使「………神は、」

天使「天使と悪魔が争う外の世界が、大嫌いだからな」


 狭間の世界。

悪魔「てってれてってーてってれてってーてー」

天使「なにそれ」

悪魔「俺達って月見仲間なんだろ?だからこれ、」スッ

天使「白くて丸い……一つ一つが一口サイズ。これは、何だ?」

悪魔「わからん。下界で見つけたんだ。月見のお供なんだってさ、」

天使「食べ物か」

悪魔「そのようだ」

天使「…………」

悪魔「安心しろよ、毒は入れてない」ヒョイ パクッ

天使「…………」

悪魔「別に無理して食わなくても良いからさ。俺達戦争してるわけだし」モグモグ

天使「」ヒョイパクッ
天使「」モグモグモグモグ

天使「…………」ゴクン


天使「」ヒョイヒョイパクッパクッ

天使「」モグモグモグモグモグモグモグモグ

悪魔「お気に召したようで、」ケラケラ ヒョイパクッ

天使「」ヒョイヒョイヒョイパクッ
天使「」モグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグ

悪魔「口一杯に詰め込むなよ。顔凄いことになってるぞ」モグモグ

天使「」モグモグゴクン

天使「控えめな甘さだな。もちょもちょしていて美味い」

悪魔「それは良かった」ヒョイパクッ

天使「下界の物だと言ったな、」

天使「よく行くのか?」

悪魔「時々、な」モグモグ

天使「ふぅん、」


悪魔「悪くないぞ、下界も」
悪魔「ここには負けるけどな」

天使「そうか、」

悪魔「機会があれば行ってみるといい」

天使「そうする」

天使「……強いんだな、お前は。下界とこちらを無事に行き来出来るなんて」

悪魔「まぁ、弱くはないつもりだよ」

悪魔「アンタだって、そうだろ?」


 狭間の世界。

悪魔「なぁ、天使さん」ゴロン

天使「何?」

悪魔「もし、さ。もしの話なんだけど」

悪魔「俺が一緒に逃げようって言ったら、逃げてくれるか?」

天使「…………ぷっ」

悪魔「わ、笑うなよ!」

天使「っ、くく、あはは、あははははっ!!」

悪魔「ここでこれまで一番の笑いをとってしまうか俺は」

天使「ごめっ、ぷくく、ごめん……」ヒーヒー

悪魔「畜生!呼吸困難起こす程か!」

天使「はぁ、はっ、……ふぅ、」
天使「すまん笑いすぎた」

悪魔「いいんだ、ふふっ、俺の存在なんてさ」ズーン

天使「落ち込むなよ。悪かったって」


悪魔「…………」

天使「……じゃあ真面目に答えよう。君が本気で逃げようって言ってくれるなら、きっと私は頷いてしまう」

天使「でも、」ヘラリ

天使「私が逃げると神が追ってくる。到底逃げることは出来ないだろうね」

天使「だから、そんな魅力的な話、私にするんじゃないぞ」

悪魔「……魔王がいなくなれば、キミは自由になれるのかな」

天使「……どうだろう。それはわからないな」

天使「ああ、そうだ。一つ訊きたい。君は……神を殺せるか?」

悪魔「……ははっ、何だよそれ」

悪魔「無理だって、絶対無理。俺はそこまで強くない」

天使「……そうか、そうだよな、」

天使「君は優しいからな」


 狭間の世界。

悪魔「ここって、生き物がいないんだな」

悪魔「こんなに澄んでいるのに、湖には何一つ動くものがいない」

天使「ここは植物すら生きていない、この小さな世界の一部として、存在しているだけだ」ゴロン

悪魔「アンタは、じゃないや。天使さんは長いのか?この世界を見つけて」

天使「天使、さん?」ゴロリン

悪魔「月見仲間にアンタ呼ばわりはどうかと思って。とりあえず敬意を払ってみた」

天使「ふむ、なら私もお前から君にランクを上げようじゃないか。月見仲間だしな」ゴロゴロゴロゴロ チャプン ビクッ

悪魔「そっか、ありがとな」

天使「質問にも答えよう。長くはない、が……全力でくつろぐぐらいにはこの世界と付き合っている」チャプン チャプン

悪魔「へぇ、」
悪魔「だからそんなに自由なんだな」

悪魔「周りを確認しないで転がるから、もう少しで湖に落ちてたぞ」
悪魔「すでに足落ちちゃってるしな」

天使「勘違いするな。故意的に落ちた」

悪魔「……天使さんがそう言うなら、そういう事にしておくよ」ケラケラ


 狭間の世界。

天使「!」

悪魔「……久しぶり」

天使「久しぶり」
天使「……初めてだね。君が先に来ているなんて」

悪魔「最後だから、出来るだけ長くこの場所にいたかったんだ」

天使「……っ、」
天使「……隣、良いか?」

悪魔「どうぞ」

天使「…………」ストン

悪魔「………………」
天使「………………」

天使「最後だからって、どういう」
悪魔「天使さん」

天使「…………何?」
悪魔「頼みがあるんだ」


天使「言ってみろ」

悪魔「三つぐらいあるけど、」ヘラリ

天使「言うのはただだ。言ってみろ」

悪魔「手、握らせてほしい」

天使「いいだろう」スッ

悪魔「ありがとう」ギュ

悪魔「……天使さんの指、細いな」

天使(お互いの指が、絡む)
天使(こうして手を繋いだことは……今まで、一度も、無かったな)

天使「…………次は?」

悪魔「抱きしめさせてほしい」

天使「っ…………」

悪魔「駄目、か?」ヘラリ

天使「…………構わない」ドキドキ

悪魔「ありがとう」グイッ

天使「ひゃっ」トスッ

悪魔「……………」ギュゥゥ

天使「……………」
天使「少し、痛い……」ドキドキ

悪魔「ごめん。でも、もう少し、このままで」

天使(……鼓動を感じる、)
天使(なんだ、結局は君も、私以上にドキドキしているじゃないか)クスッ

悪魔「天使さんは、温かいな」
悪魔「それに、良い匂いがする……」

天使「!」
天使「そういうことは……言わなくていい……」

悪魔「いやだって本当のことだし」
天使「うるさいばか!耳元で喋るなばか!」

悪魔「ごめんごめん」ニコニコ

天使「……あと一つは?」

悪魔「………、」

天使「三つ目は、何だ?」

悪魔「………、怒るなよ?」スルッ

天使「怒るか怒らないかは、その頼み事による」

天使(……抱きしめていた腕が、緩んだ)天使(……君は何故、こんなにも穏やかに笑っている、)

悪魔「………天使さん、」スッ
天使「むぐっ」

天使(なっ……!!)

悪魔「…………、」ギュ
天使「っ……んんっ……」バタバタ

天使(これは、駄目だ、駄目だ駄目だ駄目だ!!)
天使(抱きしめられて思うように動けない……!離さなければ、早く私から、)

天使「ふっ……ん、だ……めっ、ぅんっ……」グイグイッ
悪魔「…………っぐ、」ドクン

天使(繋がるのは駄目だ、キスなんて、こんな長く……!!)

天使「だめっ……んんっ、だめだっ……」グイグイッ
悪魔「ぅ、ぐっ、」ドクンドクンドクン

天使「……っは、駄目だ……!!」ドンッ
悪魔「…………、」ゴポッ

悪魔「………けほっ、」フラッ
天使「!!」

悪魔「」パタリ


天使「馬鹿だ、馬鹿だお前は……!!」ウルッ

悪魔「…………、あ、」ゴポッ

悪魔「君、から……お前、に……ランクが……下がった、な……」ヘラリ

天使「お前なんか、もう貴様で十分だ!」

悪魔「……うわぁ、……やっぱ……怒るよな、」スッ

天使「なんだ貴様、手なんか伸ばして!私はここにいる!!」ギュ

悪魔「……あー、天使さんは、そこにいる、のか……」ギュ
悪魔「……げほっ、っぐ……声、上擦ってるな……泣いてたり、する……?」

天使「……視えない、のか、」

悪魔「……時間がたてば、回復、する……はず、だ」
悪魔「……言ったろ……?俺、しぶとい、ん、だよ……」

天使「…………、」ギュ

悪魔「…………でも、まずい、な……これは、ちょっと……きいた、かも……」カクン

天使(握る手から、力が--)


 狭間の世界。

悪魔「…………、」

悪魔「…………俺、どれぐらい意識飛んでた?」

天使「……5分程」

悪魔「そっか。ってうぉ!?」ゴロン

天使「目覚めた貴様に貸してやる膝など無い!」キッ

悪魔「天使さんの怒った顔、初めて見た」ムクッ
悪魔「目、赤いな。……天使さんのせいじゃない。俺が勝手にしたことだから、気にしないでくれ」

天使「気になどするものか!お前が……勝手に、やったことだろう……!!」

悪魔「でも、ずっとしたかった事だ」

天使「君は馬鹿だ!」

悪魔「馬鹿でも良い。自分のしたことに後悔はない」
悪魔「……君を泣かせてしまったことには後悔してるけど」

天使「ふざけるな!次はない!!次やったら死ぬ寸前まで力を流し込んでやるからな!!覚えておけ!」

悪魔「……了解。覚えておくよ」ヘラリ


天使「………………、身体は、」
悪魔「ん?」

天使「……身体は、もう、大丈夫なのか?」

悪魔「大丈夫」スクッ
悪魔「ほら、この通り。立って歩けるよ」

天使「死なせてしまったと、思った」

悪魔「死なないよ。天使さん自身に、今俺を殺す気がなかったんだし」

悪魔「辛いのは覚悟してた。あんなに辛いとは思わなかったけど」

天使「……君は、大馬鹿だ……君なんか……嫌いだ……」

悪魔「俺は、天使さんのこと、」

悪魔「…………」グッ
悪魔(今更、言えるわけがない、)

悪魔「--三日後」

天使「…………?」

悪魔「魔界側が、全軍で天界に攻め込む。神がいる城を目指して、魔王と共に」

悪魔「次の一戦で決める気なんだ。次で、天使と悪魔の存亡が決まる」


悪魔「天界側には止められない。魔界側は、城だけを目指す。神だけを目指す」

悪魔「魔王と……神を、戦わせるために」

悪魔「悪魔ってのは馬鹿でさ、魔王が勝つって信じてやまないんだ」

悪魔「激しい戦いになるよ。きっと、沢山死ぬ。天使も、悪魔も、」

天使「…………そんなこと、私に話していいのか」

悪魔「駄目だろうな」

天使「なら、どうして……!」

悪魔「本気で考えてたんだ」
悪魔「キミと一緒に逃げる方法」

悪魔「どんなに考えても、駄目だった。逃げ切れなかった。これも、俺が弱いからだろうな」

悪魔「天使さん、」

天使「……君は、やっぱり、気付いて、」

悪魔「ごめん、ありがとう」

悪魔「さよなら」


 三日後。
 天界最深部。

魔王「…………、」ツゥ

悪魔「魔王様。壁なんかなぞって、何か気になる事でも?」

魔王「……………」

悪魔「…………、」ジー
悪魔(微かに魔法陣の一部が見える)

悪魔「魔法陣、ですね。それも広範囲。破壊系……発動すれば、かなりの範囲が吹き飛ぶ」

魔王「……当たりだ。目が良いんだな」

悪魔「……お褒めにあずかり光栄です」

魔王「本音はどうだかな」

悪魔「………………、」
悪魔(……バレてるのか、他の悪魔と違って、アンタのこと憎んでるって)

魔王「俺の側付きだからってこんな所までついて来て」
魔王「あわよくば殺してやろうと思ってるだろ」


悪魔「…………」

魔王「まぁいいや。邪魔さえしなければ」

悪魔(強さには自信があった。けれど--コイツだけは、一瞬でも殺せるなんて思ったことはない)

魔王「………………、」ザワザワ
魔王「……神は、あっちか。空気が揺れてる、ははっ、呼んでるみたいだな」

悪魔(でも、まだだ。諦めない)
悪魔(相手は神だ、必ずチャンスはある)

悪魔(コイツが死ななければ、この殺し合いは終わらないから)


 天界最深部。


天使「………………、」

魔王「神はこの扉の向こうか」

悪魔「!!」
天使「……」チラッ フイッ

悪魔(天使さん、)

魔王「……俺が用があるのは神だけだからな。逃げるなら見逃してやるよ、」

天使「馬鹿言え。貴様など女神様に会わせてたまるか」フォン パシッ

悪魔(よりにもよって何でここにいるんだか、)

魔王「剣、か……、まだ俺に挑む馬鹿がいたとはな」フォン パシッ

魔王「来いよ、死に急ぎ野郎」

天使「」ヒュン

悪魔(速い、)


 ガキィィィィン

天使「………」ギリギリギリ
魔王「………」ギリギリギリ

悪魔(あの魔王に剣を受け止めさせた……!)
悪魔(でも、)

魔王「……、」スッ
天使「!!」

 ガガガガガガガガガッ
天使「くぅ、」ガガガガガガッ

悪魔(駄目だ、手数が違いすぎる!)
悪魔(………このままじゃ、)

悪魔「…………」キッ

魔王「勝てないってわかってるくせに、お前の目、諦めないんだな、」フォン

天使「ちっ、」フォン
天使(魔法--障壁間に合うか!?)

 ズガガガガガガッ

魔王「似たような目してる奴を知ってる」


 ヴゥン
悪魔「……………」
悪魔(殺傷能力だけを極限までに高めた、大量の黒い棘、)
悪魔(一つ一つが腹立つぐらい大きい。……障壁、間に合わなかったら天使さん大怪我じゃすまなかったな、)

魔王「--ちょうど目の前にいるな、」

魔王「天使は皆殺しって命令、受けてるはずなんだが」

悪魔「その命令自体気にくわないんですよね」

魔王「背くわけか。--なら、わかってるな、」ザワザワ

悪魔「っ、」
悪魔(これが魔王の殺意か、放出される魔力だけでも痛いな、)

天使「お前……馬鹿か!何で庇った……!」
悪魔「!?馬鹿とはなんだ!キミがやられそうになったからに決まってるでしょうが!」
天使「庇えと頼んだ覚えはない!」

悪魔「なら勝手に死にそうになるな!」
悪魔「悪魔にだってね、恩を感じる心はあんのよ!!これで借りは無しだから!!」

天使「とんだ大馬鹿だな!!こっちは助けたつもりなど、」
悪魔「うっさいわね頭に石でも入ってんの?堅いにも程があるわ!!」
天使「なんだと!?そっちこそ頭すっからかんなんじゃないか!?」

魔王「ぷっ」
魔王「くくっ、はははははは!!」


天使「!!」
悪魔「!!」

魔王「やけに仲良いんだな、天使と悪魔のくせに」

悪魔「なによ、悪い?」
悪魔「天使だって皆が皆悪魔敵視してるとでも思ってんの?魔王のくせに何もわかってないのね!」

魔王「……………、」

悪魔「私達悪魔だって皆が皆天使に敵意を持ってるわけじゃないのに!!アンタなんかがいたから天使嫌いの馬鹿が調子にのってこんな殺し合いが始まったのよ!!」

魔王「…………、」

悪魔「アンタなんか、」
悪魔「さっさと死ねば良かったのよ!!」

魔王「    、」フォン

天使「!」ドンッ
悪魔「きゃ、」

 ドスッ
天使「っぐ!」ゴポッ

悪魔「天使さ……っ」
悪魔(地面から、棘……!!よくも、)


悪魔「やったなぁぁああ!!!」フォン
魔王「…………」ガシッ

悪魔(首を、)

悪魔「はぅ……ぐ……」バタバタ
魔王「…………」ギリギリギリ

天使「くっ、そ……!!」フォン

魔王「……お前は寝てろよ」フォン

天使「っあああああああああ!!!!!」バリバリバリバリ

悪魔(天使さん……!!)
悪魔(くそっ、くそっ……!!何も出来ないまま死んでたまるか……!!)フォン


魔王「…………本当に、諦めないんだな」フォン

悪魔(魔法が、打ち消さ--)


魔王「ごめんな、」フォン


悪魔「!!!!!!!!」バリバリバリバリ

悪魔「」ダラン


魔王「……………、」ソッ


悪魔「」
天使「」


魔王「死ねばいい、か」


魔王「言われなくても、わかってるよ」


 天界最深部。


魔王「さっき、面白い奴らに会ったんだ」

魔王「天使と悪魔なのに、仲が良さそうだった」

魔王「隙あらば俺を殺そうとしてた側付きの女の子と、」

魔王「ここで俺の前に立つってことは、天使はキミの側付きのヒトかな」

魔王「俺が目の前にいて、尚且つピンチなのに言い争いしてるんだよ」

魔王「必死に魔王やってたのに、我慢出来ずに笑っちまった」

魔王「殺したつもりはないから、多分生き延びると思う」

女神「そうか、」

女神「だから君は、そんな酷い顔をしているんだな」

魔王「わかってる事とはいえ、面と向かって言われるとそれなりにクるわけで」ヘラリ

女神「……………」
魔王「……………」

女神「ここに来るのがキミじゃなければ良いのに、そう思っていた」

魔王「俺も、勘違いであってくれ、ってずっと思ってた」

眠い。次の更新で終わるからあと少しだけ付き合ってくれると嬉しい。最後まで飛ばすつもりだからおとなしく書きためしておく。


魔王「………………」
女神「………………」

魔王「……俺さ、今は魔王なんて呼ばれてるけど、元々はどこにでもいる普通の悪魔だったんだ」

魔王「どこにでもいる、ってのは違うか。どこにでもいる普通の悪魔より格段に強かったから、俺は魔王に担ぎ上げられた」

魔王「求められていたのは魔王としての強さだけ。あとは……ただのお飾りだな」

魔王「元の身分なんて最下層、上の悪魔が考えることなんてわからないし、わかる気もなかった。お飾りでいいと言われたから魔王の任に就いた。……文句なんてなかったよ、最初は」

魔王「……気付いたら後戻り出来ない所まできていた。全部が全部、俺の命令として皆に伝わる。俺の知らない所で、俺は天使を殺せと言っていた」

女神「……………」

魔王「こうなったのは俺のせいじゃない、そう言って、逃げたかった。……でもさ、魔王は魔王なんだ」
魔王「最初で俺が止めておけば、こんなことにはならなかったんだよ」

女神「…………耳が痛いな」

女神「……追ってくるのは、神や、魔王としての責任、か」

魔王「逃げられるわけがないんだ」
魔王「俺は弱いから、責任を放って逃げるなんて、出来ない」


魔王「今は皆頭に血が上ってるから、ショックの一つや二つ受けてくれないと止まらない」

女神「…………だから、私か君のどちらかが死ねば、か」
女神「……本当に敵同士になってしまったな。……月見仲間は、あの小さな世界限定での話」

魔王「……言ったじゃないか、外の世界でキミとは会いたくないって」

女神「……思い出してみると、君の変わりようは凄いな。会う度に見せる表情が増えていった。雰囲気も会う度に緩んで、一緒にいて安らぐぐらい、穏やかになって」

魔王「キミこそ、最初は無表情で変な天使だったくせに」
魔王「ずっと一緒にいたいって思わせるぐらいに、変わってさ。いちいち可愛いんだよ、もう自重しろよってぐらいに」

女神「ふふっ、言ってくれるね。可愛いなんて、君以外に言われたことはないよ。なんせ、こんな姿、君以外には見せないから」

魔王「そっか、それは嬉しいな」

女神「…………、」
女神「因果なものだな。仲良くしていた相手は魔王か」

女神「だが……狭間の世界、あの小さな世界を見付けた時点で、答えは出ているようなものか」

女神「…………、駄目だ、」

女神「君と長くいると、せっかくの覚悟が揺らいでしまう」


魔王「…………、」

女神「君は言ったな。自分に神は殺せないと」

女神「そうだな。それは、そうだ」

女神「だって君は、優しいから」

魔王「…………っ、」

女神「……身体、震えてる。おまけに、顔はさらに酷くなったな。今にも泣きそうじゃないか」ウルッ

女神「どちらかが死ななければならないのなら、」
女神「せめて私が、君の命をもらおう」

魔王「………俺は、」
女神「喋らないでくれ、」

女神「私も泣いてしまうだろ?」

女神「……キスというものは愛情表現のはずなのに、私と君とでは逆になってしまう」ソッ
魔王「……………、」
魔王(俺を抱きしめる手が、震えてるいる、)

女神「……長くは苦しませないから、」
魔王(--唇が、重なる、)


女神「…………、」
魔王「…………、」ドクン

女神「…………、」ポロッ
魔王「…………、」ドクンドクンドクン

女神(君の身体から、力が抜けていくのがわかる)

女神「…………、」ポロポロ
魔王「…………っあ、ぐ、」ゴポッ

女神(--血の味、)
女神(もうすぐ君は、いなくなってしまうんだ)

魔王「…………、」ドクンドクンドクン フォン
女神「…………、」ポロポロ

女神(ずっと言えなかった。口に出せば君をこの手で殺せなくなると思って)

魔王「…………、」ドクンドクン グッ

女神(--君が、好きだ)

 ドスッ

女神「…………、あ、」ゴポッ

魔王「…………、」


女神「……どう、して……?」
女神(……胸から伸びる、この刃は、)

魔王「…………、思ったんだ」ズルッ

女神(きみの、もの………)フラッ

魔王「キミが嫌いだっていうこの世界に、キミを一人残していくわけには……いかないって」グイッ ギュ

女神「……………、」クスッ
女神「……情けないな、私より泣いているなんて、」ポロポロ

魔王「俺が格好良くない奴だって、キミは知ってるじゃないか」ボロボロ

女神「……ああ、そうだったな」ポロポロ

魔王「……安心、してくれ。キミが、ここに仕掛けた魔法陣でやろうとしていたことは、俺がやるよ……」ボロボロ

女神「……なんだ、気付いて……」ポロポロ

魔王「……だってさ、俺も同じの、仕掛けてきたんだ」ボロボロ

女神「そうか……同じ考え、だったのか……」ニコッ

女神「--ああ、そうだ……君は、私に、頼み事をしたな……」
女神「……私からも、一つ。頼みが、ある……」

女神「笑ってくれ、」

魔王「……………、」ボロボロ
魔王「おう、」ヘラリ

女神「……見事な、泣き笑いだ……」ヘラリ

魔王「なんだよ、精一杯の笑顔なのにー」ボロボロケラケラ

女神「ふふっ、………、」
魔王(ああ、そうか)

女神「……ありがとう、」
魔王(本当に、俺は、)

女神「あと、」
魔王(キミを、この手で、)

女神「……ごめん…………」
魔王「…………っ、」ボロボロ

女神「………………」

魔王「…………ぅ、う、あ……、あああああああああ!!」ギュウ

魔王(ごめん、は、俺を残して、逝くことか、)
魔王(……最期の顔すら、もう、視えない)


天界最深部。

 キィィィィィン ゴゴゴゴゴゴ

魔王「……………けほっ、」ゴポッ
魔王「…………」グイッ

魔王(キミの死をキッカケにして展開を始めた、この大きな魔法陣)

魔王「………………」フォン
魔王(……範囲は急速に広がっていく。天界の半分に届く勢いだ)

魔王(この魔法が発動すれば、その範囲を全て消し飛ばす)

魔王(……そうだよな、俺達は、そう出来た悪魔でも天使でもないから、)
魔王(もちろん、恨みはある。俺達がこうしないといけなかった、この世界に)フラッ

魔王(…………まずいな、時間がない)トンッ
魔王(壁を支えにしないと、自力で立っていることすら辛い)チラッ

女神「」

魔王(視力が回復することはもうないか、……当たり前だよな、気力で動いているようなものだし、)

魔王(……とにかく、限界がくる前に、魔法陣をなんとかしないと)フォン

魔王(こんなもの仕掛けるから、自己治癒に回す魔力がなくなるんだ)
魔王(俺もだけどさ、)


魔王「……………」フォン キィィィィィン

魔王(--やっぱり君も、本気で天界を壊す気はなかったということか、)
魔王(でないと、外部からの刺激ですぐに威力を軽減できるようには仕掛けない)

魔王(範囲は……天界の三分の一程度に、戦えない天使が避難している場所は最初から外すはず……さて、威力は、)

魔王(……脅し、みたいなものだ、これは)

魔王(神と魔王が戦えばこうなる、天使と悪魔が戦えば、いずれ必ずこうなる。そう知らしめるための、)

魔王(種族間の争いが無くなることは難しい。けれど、これから先、こんな大掛かりな殺し合いだけは、させるわけにはいかない)

魔王(……威力を軽減する気は無かったが……希望は見えたしな、)
魔王(やっぱりいたんだ、種族が違っても仲良く出来る奴らは)

魔王(威力は、半減する。俺から話を聞いたキミだって、きっとそうするだろう)キィィィン

魔王(…………、指先の感覚が無い、)
魔王(……急がないと、次は俺が魔界に仕掛けた魔法陣を……)フォン

 ドスッ ザシュ

魔王「!!」

 ズルッ ボトッ

魔王「…………、しばらくは、目覚めないと、思っていたが、」ズルズル


悪魔「…………」ハァ ハァ
天使「…………」ハァ ハァ

魔王「……丈夫だな……お前ら……」

魔王(急所を刺され、右腕は落とされたか、……もう、立てそうにない)
魔王(……さて、魔界側は、どうやって止めようか)

悪魔「トドメを刺さなかったことを、後悔することね……!」

天使(……女神様、)タタタッ

女神「」

天使(……仇は、とりました……!)

魔王「はは、そうだな……もう少し、痛めつける、べきだった……」
魔王「……諦めなかった、お前等の、勝ち……だな」

悪魔「……女神様には感謝するわ。命をかけて、アンタをここまで追い詰めてくれたんだから」

魔王「………………、」

悪魔「女神様のこの魔法、せめてアンタを道連れにしようと思ったのね。……天使だろうと悪魔だろうと、範囲内にいる何百人を犠牲にしてでも、」

天使(……………、)
天使(………、違う、)


魔王「……そうだな、魔王と神が戦うということは、そういうことだ」
魔王「……沢山死ぬ、おまけに世界が壊れる、それはそれは、悲しいこと、だな」ケラケラ

悪魔「誰かが死ぬことがそんなに笑える?アンタって本当……最低ね」

天使(……女神様は俺達天使を恨んでいた。俺達が無理やり、神の座においたから)
天使(この魔法は女神様のものだ、しかし、範囲と威力を容易に書き換えられるよう作られている、)

天使(そして、すでに書き換えられている。書き換えたのは、誰だ?)

悪魔「アンタには苦しんで死んでほしかったけど、今すぐ息の根を止めてあげる」

魔王「……どっちにしてももうすぐ死ぬんだがな」ケラケラ
魔王「……まぁいい、俺を追い詰めたご褒美だ。受け取れよ」スッ

天使(死に顔は、泣き濡れた、悲しい顔だ。それが、この世界を呪ってのものではないとしたら、)

悪魔「なによ、腕なんかだして。そんなのいらないに決まってるじゃない」

魔王「……いいのか?ご褒美と言っただろ?」
魔王「……受け取らないならそれでいいさ。魔界に仕掛けた俺の魔法が、沢山殺すだけだ」ケラケラ

魔王「……俺が死ねば、魔法は発動する。--俺は悪魔の長だからな、俺が死ぬんなら、皆道連れになるのが当然だろ?」ケラケラ

悪魔「アンタは、どこまでも……!」

魔王「……ご褒美は、その魔法の支配権。この手を取れば、与えてやるよ」
魔王「……まぁ、罠かもしれないわけだが」ニヤニヤ


悪魔「……っ、」
悪魔「わかった……受け取って、やろうじゃないの」スッ

魔王「……死にかけを酷使するな、さっさと俺の手をとれ」フリフリ

悪魔「…………まさかアンタ、」ソッ
魔王「…………」ガシッ フォン

悪魔「……くっ、」バチッ
悪魔(魔力が流れ込んでくる……本当に、魔法の支配権だ。これで……止められる)

悪魔(でも、どうして?……あの魔王が、わざわざ魔法の支配権を私に?)
悪魔(考えてみれば、おかしい。どうして私達を生かした?--あれはまるで、殺さないよう配慮した、攻撃、)
悪魔(そして魔王は、目が視えていない)

魔王「……受け取ったな?精々頑張って止めて見せろよ、」

天使(あの魔王が、俺達の攻撃を防げ無かったのは何故だ?罠にしても、あの様子では本当に死ぬだろう)
天使(死にたかったというのか?……それにしては、全く、俺達に気付いた素振りを見せたかった)

悪魔(魔王に外傷は無かった。外傷無しに、私達が近付くのを気付けない程、追い詰めることなんて、)

天使(--女神様の傷は、胸を刺された傷の一つ限り。魔王と戦ったにしては傷が少なすぎる、)

天使「まさか、」


天使「……まさか、お前は……!!」

魔王「…………」

天使「お前、だったというのか、世界に絶望していた女神様を、救ったのは、」
天使「支えていたのは、お前だったのか、」

天使「女神様はお前のために、泣いていたのか……!!」

魔王「…………、」

悪魔「!!」
悪魔(魔王は元々政治に参加しないお飾りだと言われていた)
悪魔(表に引っ張り出されるようになったのは、戦争が始まってからだ)
悪魔(それが、悪魔達を煽動するために、仕組まれたことだとしたら、)

悪魔「説明しなさいよ、」
悪魔「アンタは何がしたかったの!?」

魔王「…………、」

天使「女神様の魔法を書き換えたのは、お前だな、」
天使「この魔法は、警告のつもりか。それぞれの長が死に、沢山の天使と悪魔が死に、土地にすら損害を与えたとあれば、」

天使「どちらも、これほどの戦争を起こそうとは……もう、」


魔王「…………、」
魔王(--何も、聞こえない)


悪魔「……ふざけないでよ、」
悪魔「何か、言いなさいよ……!!」


魔王(……そうか。俺は、死ぬのか、)

魔王(…………、)

魔王(……そういえば、結局、言えなかった、な……)


悪魔「言いなさいよ、ちゃんと……言ってから、死になさいよ、」

悪魔「何でアンタ……泣いてるのよ……!!」


魔王(キミが、好きだ、って)










(昔から、同じ夢ばかり視ていた)

 いつかの未来。

 魔族領。某国。魔王城。


魔王「お父さんは心配だ。お母さんも心配しているぞ」

青年「……父上や母上に心配されるような覚えは無いのですが、」

魔王「あるだろ。大きな問題があるだろ!!!」

青年「……本当に、心当たりは無いのですが」

魔王「……お父さんは怒らないぞ、お母さんも、お父さんと同じく覚悟はしている」

青年「………?」

魔王「正直に言ってくれ息子よ」

魔王「お前ガチホモなの?男が好きなの?」

青年「」ブッフォ
青年「な、なななななな!!?いきなり何言って!?俺が、俺が……!?」

魔王「どうなの?とーちゃん怒らないから正直に言おうよ」


青年「全力で否定させてもらいます!誰がガチホモだって!?俺は女の子が心から好きだ!!」

魔王「ほんとにほんと?」

青年「この世界に神なんていないけど!誓ってやりますよ!俺は女の子が好きだ!」

魔王「……ふぅ、」
魔王「安心したわ」

魔王「だってお前いい年して女遊びの一つもしないんだもん」
魔王「私の息子だから寄ってくる女の子いっぱいいるのにまったく手出さないし、誘ってものらないらしいし」

魔王「例えガチホモな息子でも私達の息子だって私かーちゃんと話し合って覚悟までしたんだぞ」

青年「まったく、母上巻き込んで何やってるんですか、」ハァ

魔王「しかし安心した!これで話は決まりだ!!あとはお前に行ってもらうだけだな」

青年「……何の話ですか?」

魔王「お見合いの話」

青年「……誰の?」

魔王「お前の」

青年「……誰と?」

魔王「魔族領唯一の若き女魔王。見た目お前の外見年齢よりちょっと下ぐらい。あとすごく可愛い。映像がこちら」フォン


青年「映像魔法までして、って、マジで可愛い!!驚きの美女!!」

魔王「とりあえずこの魔王とお見合いしてこい。あっちは小さい国だし気に入ったんならとーちゃんごり押しでお前の嫁にしてやるから」

青年「それは遠慮します。こんなのはお互いの気持ちってものが、」

魔王「私の息子なのに真面目なんだからなお前」

青年「正直乗り気じゃないです」

魔王「拒否は許さんぞ。明日にも女魔王がいる国へ発ってもらうからな」ニコニコ ザワザワ

青年「…………笑顔で脅しますか」ハァ

青年「わかりました。行きますよその国へ、してきますよお見合いを」

魔王「可愛い嫁さんちゃんと連れて帰ってこいよ!」ニコニコ

青年「善処します」ハァ

 人間領 勇者協会。
 地下の隔離部屋。

勇者「おい見てるか相棒」
相棒「見てる見てる。これはすごい」

相棒「まさか勇者協会の地下にこんな部屋があって、」
勇者「おまけに綺麗な女のヒトが捕らわれてるなんて、」

美女「………………」

勇者「表情無いな。生きてるのかな」

相棒「首輪に手錠までして吊されてる、一種のプレイかな」

勇者「お前どこでそんな言葉覚えたんだよ」

相棒「私だってもう子供じゃないんだから、そっち方面も学ぶようにしてるんだ」

勇者「マジか。--そうだよな、俺達もう子供じゃないもんなぁ」ウンウン

美女「…………ふふっ、」

勇者「あ、笑った」
相棒「笑うとさらに綺麗だねお姉さん」

美女「綺麗、ね。ありがとう」
美女「あと、プレイとかじゃないから。捕まってるだけだから」クスクス

勇者「捕まってるってことは、お姉さん何か悪いことでもしたのか?」

美女「……上司の息子と無理やり結婚させられそうになってね、嫌だったから拳で拒否したんだ」
美女「その結果がこれだ」

相棒「えー、それは拒否するよ拳出るよ」
勇者「そうだそうだ。結婚ってのはお互い好きな者同士がするもんだと思います」

美女「世の中全てがそうではないさ」

勇者「……………、」シュン
相棒「……………、」シュン

美女「未来ある若者がそんな悲しそうな顔しちゃ駄目だ」クスクス

勇者「……お姉さんだって、悲しそうな顔してるけど」
相棒「まるで、自分に言ってるみたいだ」コクン

美女「…………、目ざとい子達だ」

勇者「……俺達さ、好きなヒトがいるんだ」
勇者「ずっと一緒にいたいと思ってる」

勇者「お姉さんは、そんなヒト、いないの?」

美女「……いるよ」

相棒「じゃあ、どうしてこんな所に?会いにいかないの?」

美女「会えないとわかるのが怖いんだ。彼はもう、この世界にいないかもしれないから」


相棒「それって確定なの?」

美女「……いいや」

勇者「じゃあ駄目だって、こんな所にいちゃ。会えないとわかるのが怖いなんておかしいよ、」

勇者「ここにいることでもう会えなくなってしまう事の方が、怖いに決まってる」

美女「…………、」
美女「…………、確かに、そうだな」

美女「目が覚めたよ。とりあえず、ここから、」

 ヒュン ガシャン ガシャン

美女「……あ、」ガクン
相棒「っと、お姉さんをキャッチ!」

勇者「脱出すらなら協力するよ!」

美女「…………、私を逃がしたとあれば、君達はもう人間領にはいられなくなる」

勇者「全く問題ないよ。な、相棒」

相棒「うん、そうだね。だって私達、魔族領に住んでるし」ニコニコ
勇者「だから、人間領にいられなくなっても困らないんだ」ニコニコ


 魔族領。
 某国。魔王城。

青年「お見合いかぁ、」ハァ

双子妹「兄様ー!」ズタタタタ
双子弟「兄様ー!」ズタタタタ

青年「」ヒョイ

双子「」ビターン

双子妹「酷いですわ兄様!可愛い私達を壁に激突させるなんてっ!!」
双子弟「酷いよ兄様!ほら見て僕達のおでここんなに赤い!」

青年「はいはいごめんごめん」
青年「でも兄ちゃんお前らにタックルされて倒れて頭割ったことあるから怖くてな」

双子妹「過ぎ去った過去を何時までも!カッコ悪いです!ああそんなことより!聞きましたわ兄様!!」
双子弟「他国の女魔王とお見合いするって本当ですか!?」

青年「まぁ、うん。父上がなー、」
青年「正直気がのらないんだけど、もう約束しちゃったみたいだし、行くしかないんだよ」

双子妹「やだぁああああ!!やだやだやだやだあ!!嫌ですわ兄様行っちゃ嫌ですわぁああ!!」ジタバタ
双子弟「兄様は僕達がかわいくないんですか!!こんなに慕ってるのにお婿に行ってしまうなんてー!!」ジタバタ

青年「婿にいってもいいけど父上は嫁連れて帰れ言ってたからなぁ、」


双子妹「連れ帰る!?でしたら安心です!!兄様童貞だからお嫁さんを連れて帰るなんて無理無理!!」キャッキャ

双子弟「おまけにインポだからね!兄様をお婿さんにするなんて、相手の方からお断りだよ!!」キャッキャ

青年「…………」
青年「にいちゃんは耳おかしくなったのかな、今双子の兄妹の口から聞き慣れない言葉が、」

青年「……にいちゃん怒らないから、ゆっくり、最初から言ってみなさい」

双子妹「兄様は童貞」スパッ
双子弟「おまけにインポ」スパッ

青年「ゆっくりどころかはっきり即答で該当箇所完全に抜き出してるじゃないか!!」

青年「つか子供がそんな言葉口にしちゃいけません!!それににいちゃんは……」

双子「「童貞じゃないの?」」

青年「……少なくともインポではないぞ、」

双子妹「兄様は童貞」キャッキャ
双子弟「兄様はやっぱり童貞」キャッキャ

青年「にいちゃんはその……そういうのは、本当に好きなヒトとやるものだと考えていてだな、」


双子妹「そんな事言ってー。兄様まだよく夢に出るっていう女のヒトのこと好きなんでしょ」
双子弟「そりゃ好きになりますよ、その女性は、兄様の好みで形成されてるんですから。いい加減現実に戻って下さい」

青年「う……」

双子妹「それに、安心してよ!私達が兄様より強くなったら兄様を私達のお嫁さんにしてあげる!」
双子弟「僕たち男女の双子でよかったです!例え兄様がガチホモでも対応できますから!」

青年「だからにいちゃんはガチホモじゃないし、それに、兄妹で結婚は出来ないんだぞ」

双子妹「でも私達血は繋がってないじゃない」
双子弟「兄様は父様や母様から生まれたわけじゃないですもん」

青年「なんだ、知ってたのか」

双子妹「最初はショックでしたけど……兄様と結婚出来ることに気付いて私達歓喜しました!」
双子弟「これで僕達がずっと一緒にいられると確定したわけです!」

青年「ったく」ワシャワシャ

双子妹「ふあっ!いきなり頭をわしゃわしゃしないでください!」ニコニコ
双子弟「髪が乱れるじゃないですか!」ニコニコ


青年「どうせお前等にも、いつか本気で好きになるヒトが出来るんだよ」
青年「それまではブラコンでいさせてやるから」ケラケラ

双子妹「へたれ童貞のくせにむかつきます」ムゥ
双子弟「へたれ童貞のくせに調子にのってます」ムゥ

青年「よく言うよな、お前等は」ケラケラ

双子「「………………」」

双子妹「出立は明日だとききました」
双子弟「僕達は心配です。兄様が怪我しないか、ちゃんと帰ってくるのか、」

青年「にいちゃんは強いから大丈夫だって、ちゃんと帰ってくる」

双子妹「本当ですか?」

青年「うん」

双子弟「でも兄様、お見合いに乗り気でないというわりに」

双子妹「すごく楽しみだっていう顔をしてますから」

青年「あー、うん、なんつーかな、お見合い自体は嫌なんだけど、」


青年「大切な誰かと、また会える、そんな気がして」


 人間領。
 勇者協会。

 ヴーヴーヴーヴーヴーヴー

勇者「あ、警報だ」ケラケラ
相棒「バレたみたいだね」ケラケラ

美女「君達は、こんな時でも本当に楽しそうに笑うね」

勇者「ああ!楽しい!」
相棒「これから帰って、みんなに会えるって楽しみもあるからね!」

美女「魔族領が、人間領と同じく国ごとに魔王をたてるようになったのは知っていたが……」
美女「まさか勇者とその連れが、魔王と繋がっているとはね」
美女「種族の差は気にならないのか?元は戦っていた相手だろう?」

勇者「気にならないよ、まったく」
勇者「だって俺、魔王様のこと好きだし」ヘラリ
相棒「魔族だからなんだー、って感じだよ。魔族にだって良いヒトはいっぱいいるんだ」

勇者「--あ、もしかして、お姉さんが魔族領に行くのってまずい?」
相棒「あ、そうだね。だってお姉さん天使さんだし」

美女「……堕ちた天使を天使と見破ることは、普通天界の者にしか出来ないことだが」

美女「どうやら君達は、私の予想をはるかに上回る力を持っているらしい」
美女「協会の……私がいた場所に侵入した時点で、相当な手練れだとは思っていたけれど、」


勇者「本当はさ、強そうなヒトがいる気がして、適当に突き進んでただけなんだ」
相棒「怪我だらけでボロボロなお姉さんに今言っちゃうのもなんだけど、」

相棒「怪我が治って元気になったら、」キラキラ
勇者「俺達と闘ってほしいな、って」キラキラ

美女「君達が言う戦いは、殺さない闘いなのか?」

勇者「そうだよ当たり前じゃないか!」
相棒「私達殺しとか嫌いだもんね!」

美女「そうか、」クスッ

美女「いいよ。受けて立とう」ニコリ

勇者「やった!」ニコニコ
相棒「やった!」ニコニコ

勇者「ああ!そうだ、話を戻してお姉さん!魔族領にいっても大丈夫なのか?」
相棒「すごく昔、魔族が悪魔って呼ばれてた頃、天使と悪魔が近付くと大変なことになるって、本で読んだことあるよ」

美女「…………大丈夫だよ、アレは昔の話」
美女「今は違う。それに私は堕ちた身だから、もう天界との縁は切れてる」

勇者「そっか、じゃあ安心だ!」

相棒「--ねえお姉さん、追っ手をまいて落ち着いたら、会いたいヒトの話、聞いてもいい?」
勇者「あ、それ俺も聞きたい」

美女「…………、」クスッ
美女「いいよ、話しても」

美女「何故かな、君達と話してると、前向きになれる。世界が広がった気がするよ」

勇者「そう言われるとなんだろう、嬉しいな」ニコニコ
相棒「でもちょっとこそばゆいね」ニコニコ

勇者「でもまずは!」フォン
相棒「追っ手を振り切らなきゃ」フォン

勇者「とばすよお姉さん!!」


美女(根拠はない。けれど……、もうすぐ、会える気がしてきたんだ)

美女(--君に)



 --再会まで、あと少し。


 おわり。

誤字多いし大事な所で三つ分の台詞を抜かしてさらに不可解になったりしてるのに、読んでくれた人、ありがとう。羞恥心に耐えられたのはレスくれた人のおかげ。ありがとう。

レスありがとう。とても嬉しい。
最後で何だこれって思ったかもしれないけど、このssは元々勇者と相棒メインにした別ssシリーズの番外編として作った話なんだ。独立した話だから投下してもいいかなと思って投下した。駄目だったのならごめん。
いつかどこかで見かけて、ああコレかと思ってくれて、尚且つ少しでも楽しんでくれたのなら、さらに嬉しい。

おまけとして、少しだけその後の再会の話を投下する。
読んでくれた方、本当にありがとう。


 魔族領。某国。
 魔王城。

兵士「やべぇ!勇者さん達が戻ってくる!」タタタッ

兵士b「タイミング悪っ!!今まさに魔王様お見合い中じゃねぇか!!」

兵士c「まずいことになった…!!あの魔王様大好きっ子が事情知ったら乗り込んじまうぞ!相手は大国の王位継承者だ、下手なことでもしたら……」

兵士a「とりあえず勇者さん達の現在地把握して、戻る前に、いやせめてここ--城門で止められれば」キィン

兵士c「魔法で探すしかないよな、頼むわa」

兵士b「あとは城の兵に連絡回して……お見合い終わって魔王様の口から事情説明しないと勇者さんどうにかなっちまうんじゃ」


 スタッ
勇者「魔王様が、お見合いだって?」ザワザワザワ


兵士ズ「……………」

兵士a「現在地、言った方が良いか?」

兵士b「いいよ言わなくてもどうせ後ろだろ」
兵士「早いマジ早い脅威の早さでの到着」
兵士c「つか何でもう知ってんの振り返れば確実に死んだ目とご対面じゃんか」


 スタタッ
相棒「勇者ー、私達置いて行っちゃ駄目だよ」
美女「凄まじい速度で走っていたな、おまけに目が死んでいる」ケラケラ

兵士a「美女でおっぱいの匂い!」グルン
兵士a「ひい!勇者さんマジ目が死んでる!!」ビクッ
兵士a「そして美女!相棒さんが美女!素晴らしいおっぱいの美女さんを連れてる!!」パァァ

兵士「え、お客さん連れてるの?」クルッ

兵士b「お客さん以前に勇者さんなんとかしないとまずいだろ」クルッ
兵士b「勇者さんから放出されてる魔力洒落にならない量だぞ」

兵士c「あー、もう!どこでお見合いの話聞いちゃったんだか!」クルッ
兵士c「とりあえず俺達の所で止まってくれたんだから良いか……」ハァ

勇者「魔王様がお見合い……魔王様がお見合い……お見合い……結婚……」ブツブツ

相棒「……一応どこか行っちゃわないように勇者の腕掴んで、」ガシッ

相棒「あ、お兄さん達、ただいまー。お客さん連れてきたよ」

美女「どうも。初めまして。堕天使です」ペコッ

兵士a「おかえり。そして初めまして美しいおっぱいさん、って堕天使!?」
兵士「おかえりー、んで初めまして、堕天使さんー」


兵士b「また堕天使なんて凄いお客さんを連れて。--初めまして、よろしく。んで、二人共おかえり」
兵士c「元気に帰って来てくれてよかったよ。おかえり、二人共。--また堕天使さんとは珍しい。初めまして、よろしく」ペコッ

相棒「堕天使のお姉さんについてはちゃんと紹介したいんだけど、今は勇者の方止めないとマズいかも」


勇者「お見合い……無理やりお見合い……魔王様が……望まない、結婚……」ブツブツ


相棒「城向かう途中、町のヒトが魔王様のお見合いについて教えてくれたんだ。どうやら大国の魔王から無理やりねじ込まれた話らしいって、」
相棒「おまけに下手したら望まない政略結婚になっちゃうでしょ?皆止めてって言うし勇者はこんなになって私達置いて走っちゃうし」

相棒「お兄さん達見付けて止まったってことは、勇者にも理性は残ってたんだね。残ってなかったらもう乗り込んじゃってるから」

兵士「吃驚するぐらいこちらが認識している通りのことを知ってしまっている」

兵士a「どうしよう今の勇者さん止められる情報持ってないぞ俺達」


兵士c「……魔王様はお見合い中だし、こりゃ側近様に通信入れないとマズいな」

兵士b「ついでにお客さんのこともな。堕ちてるとはいえ天使のお客さんだ。二人の連れだから問題無いとはいえ、耳には入れておかないと」

兵士c「はいよ、了解」フォン

 ピーガガッ
兵士c「こちら第一部隊所属、c。緊急でお伝えしたい事が--」


美女「……勇者くん達は、こちらで随分と信用されているんだね、種族が違うというのに」

兵士b「もう身内みたいなものだからな、この二人は」
兵士b「だから、いくらアンタが堕天使でも、この二人の連れってことなら無条件で信用出来るんだよ」

兵士b「種族差は気にしないようにしてるし、なにより、本当に危ない奴をこの国に入れる程、コイツ等は優しくないからな」ケラケラ

美女「ふふっ……そうか。二人が言っていた通りだ」
美女「民や兵士までもこうなら、件の魔王様に会うまでもなく、ここは良い国だな」


兵士b「ありがとな、そう言ってくれると嬉しいよ」



兵士「相棒さん結構本気で勇者さんの腕掴んでるだろ」

相棒「あ、わかる?勇者そろそろ限界みたいでさ。魔力も本人としては放出してるつもりはないと思うんだ」


勇者「」ブツブツ


兵士a「無意識怖い無意識怖い」

相棒「救いは……同時に側近さんにもお見合いの話が無かったことかな」

兵士「ははっ、確かに!二人を止められる奴って限られてるもんなー」ケラケラ

相棒「でしょ?大変なことになっちゃうよねー」ケラケラ


勇者「」ブツブツ ザワザワ

兵士a「勇者さんやばい本格的にやばいって放出された魔力が魔法形成し始めてるよおおお!!」





 魔王城。とある一室。

青年「形だけでも、ってことでこんな席まで用意してもらって、本当に申し訳ない」

魔王「お気になさらず。開口一番、『このお見合いは無かったことにしてほしい』と頭を下げられたんです。ですから、これはわざわざこの国まで足を運んでくれた貴方を歓迎するという意の、」

青年「お食事会、というわけか」クスッ

魔王「ええ」クスッ
魔王「私としても、貴方がそう言ってくれて助かりました。こちらとしてもどうにか断る気でいたんです」

魔王「どうもお互い、理由があるようですね」クスクス

青年「そのようで」ケラケラ

青年「じゃあついでにもう一つ。俺があの国の王位継承者だからといって気を使わなくてもいい。この国に突然お見合いの話をふっかけて迷惑をかけたのはこちらだ」


青年「俺は養子だからな。王位継承の順列は第三位。王位は俺の弟か妹が継ぐよ」

青年「だから、普通に話してくれて構わない。この件は大事にならないよう俺もちゃんと動くからさ」

魔王「あら、そう?」
魔王「その方が有り難いわ。貴方となら、国家関係抜きに仲良くなれそう」クスクス

青年「俺としても美人な魔王様と仲良くなれるなら、ここまで観光に来たかいがあったよ」

魔王「ふふっ、観光、ね。いいわ、今後うちの国を贔屓してもらうためにも、手は回しておかなきゃ」

青年「そりゃどうも」ケラケラ

 コンコン ガチャ
側近「会談中申し訳ない。緊急の通信が入った」

青年「いや、お気になさらず」

魔王「緊急……?まさか、」
側近「……そのまさかだ。勇者が戻った」

青年(……風の噂で、この国が人間--それも勇者と懇意にしてると聞いていたが、本当だったか)
青年(しかし、何でまたこうも緊迫してんだか)


魔王「……何を知って、どんな様子?」
側近「表向きの事情を知って、様子は……想像通りだな」
魔王「……べ、別に裏切ったわけじゃないしその、私最初から、断るつもりで……!」

青年(へぇ……、魔王様の理由ってのは勇者ってわけか、)
青年(種族差なんて関係無い、これは応援してやりたいなぁ)

側近「……乗り込んでくる寸前だそうだ。そうなれば青年殿が……」チラッ
魔王「危険……」チラッ

青年「ははっ、仕方ないよ。表向きはこっちが悪いしな。大丈夫、事情はちゃんと説明するよ」

魔王「……失礼ながら、貴方は見た所魔力耐性が高くかなりお強いと思うのだけれど」
魔王「その認識に、間違いは?」

青年「……それなりに自分の身を守れるぐらいには、」
青年(少し離れた所で、膨大な魔力を感じる。--これは強そうだ)クスッ

魔王「こちらも、手は出させないよう努力はするわ。もし失礼をしても、その……大目に見てほしいの」

青年「了解。--どうやら貴女の彼氏さんには本格的に悪者として伝わってるみたいで」ケラケラ


青年「!!!!」ガタッ

魔王「!いきなり席を立って、どうかした?」青年「堕天使、って……今、この城に、天使がいるということか?」

魔王「……ええ。何か気になることでも?」

青年「すまない。少し席を外させてもらう!!」フォン

魔王「転移魔法陣!?ちょ、ちょっと!!」


青年「」ヒュン


魔王「……堕天使って聞いて、突然、」
側近「俺達も行くぞ。向かう先はおそらく件の堕天使のもと。そこには勇者もいる」フォン

魔王「わかったわ。事情は後で聞くことにでもしましょう」

側近「転移先--城門、」

 ヒュン

一行抜けた?


 魔王城。城門付近。

 スタッ
青年(……初めて来た場所だから、転移の座標がうまく掴めない、)
青年(けど、あそこに見える人影の中に、堕天使がいる)タタタッ

青年(--堕天使、その天使が彼女とは限らない。寧ろ全くの別人の可能性の方が圧倒的に高い)

青年(わかってる。それは十分わかってるはずなのに足が止まらない。転移すらしたくない、目を離せばその一瞬で消えてしまうように思えてしまう)

青年(見えるのは六人。四人の男はこの国の兵士か、魔力を放出してるあの男が勇者で、その腕を掴む女性は--知らない、)

青年(そして、その後ろに、いる、のは!!!)

青年「天使さん!!!!!!!!」



 城門前。

勇者「!」
相棒「!」
美女「!」
兵士「!」


兵士「あれ?--今転移して来たのって」
相棒「?見たことない男のヒトが駆け寄ってくる」

美女「………っ、」

青年「天使さん!!!!!!!!」

美女「!!!」タタタッ

相棒「お姉さん?」
勇者「!」

兵士b「おいアレ魔王様のお見合い相手じゃ」
兵士c「……馬鹿それ言うな!」

勇者「…………相棒、」
相棒「あ、正気に戻ったんだね」
相棒「--私もそう思うよ。きっとあのヒトだ。あのヒトなんだ」



青年「……会いた、かった……!!ずっと、ずっと!!!」ダキッ
美女「……それはこっちの台詞だ、」ギュウ

美女「ふふっ、馬鹿だな私は……諦めていたんだ、君はこの世界にいないものだと、」
美女「この広い世界で、もう一度君に会うことなど、出来ないと……!!」ウルッ

青年「ごめん、ごめん……!!探すべきだった、諦めないで、キミを……」ポロッ


美女「いいんだ、いいんだ……!!また、会えた、また君に、会えたから……!!」

青年「もう離さない。今度こそは、ずっとキミと、一緒に……!!」
美女「言ったな、言ったからには離すなよ……!私だって、君のことを、離してはやらないからな……!!」
青年「約束する、絶対だ、離れない。もう……二度と!」

青年「だから、言うよ。あの時、言えなかったこと、」

青年「キミが好きだ」
美女「君が、好き」

青年「…………、」スッ
美女「………んっ、」

 チュ

美女「……辛くはないか?堕ちたとはいえ、一応は天使だ」
青年「……そうだな、少しピリピリする。--でも、」


青年「癖になりそう」ヘラリ
美女「言ってくれる」ニコッ




兵士「えんだああああああああああ!!!!」

兵士b「おうおう何だか知らんが歌っとけ歌っとけ」

魔王「」
側近「」

兵士a「何時の間に合流しちゃった魔王様と側近様が二人のラブシーンに赤面したままフリーズしてるんだが」

勇者「…………」
相棒「…………」

兵士c「勇者さんと相棒さんも同じく。こっちまで赤面するから勇者さん達や魔王様達連れて解散するぞー」

兵士ab「おー」

兵士「いやあああああああああああ!!」

 人間領。
 勇者協会前。

ハーフ「ふぅ……、天使さんも大変ね。私みたいな人間と魔族のハーフに付き合う羽目になるなんて」

ハーフ「上の人間の考えることはわからないわ。敵対してる魔族の女を妾にするなんて」
ハーフ「ま、その馬鹿親父が神官だったから私はこうして協会にこき使われてるわけだけど」

天使男「…………、」

ハーフ「協会が堕天使を監禁してたことには吃驚したけど、まさか逃げられるとは、」

ハーフ「おかげで私が連れ戻しに駆り出されたわけで」
ハーフ「捨て駒も良いとこね、その堕天使が逃げたのって、あの勇者が入れ込んでる国じゃない」

ハーフ「これって、お目付役の天使さんも危ないんじゃないの?」

天使男「…………、」

ハーフ「なによ。ずっと黙って。何か話しなさいよ。私ばっかに喋らせて、」

天使男「…………俺は、あの方連れ戻す気などない」

ハーフ「へ?」

天使男「お前も、勇者協会に飼われているべきではない」

ハーフ「……………?」

天使男「さっさと行くぞ」


ハーフ「行くけど……、変な天使さん」

天使男(……彼女は昔のことを覚えていない)
天使男(……今度こそは、コイツが幸せになれるよう、)





 魔族領。某国。魔王城。

魔王「え、お前達本気でアイツのこと好きなの?」

双子「」コクコクコク

魔王「そっかー、ブラコンがすぎるとは思ってたが、」
魔王「妹、お前が本気ならいいぞ。アイツ婿にとっても」

双子妹「ほんと!?お父様大好き!!」パァァ
双子弟「やった!!お父様大好き!!」パァァ

魔王「アイツは使えるからな、お前が婿にとればずっと繋いでられるだろ」

魔王「……あー、でもどうしたもんかな、アイツお見合いにやっちまったしな」

双子妹「いきます!私達で!!」
双子弟「連れ戻します!僕達で!!」


双子「だから行かせて下さい!!その女魔王のいる国へ!!」

魔王「んー、どうしようかな」

双子妹「お父様お願い!!」
双子弟「お願いお父様!!」

魔王「…………、」

魔王「ま、いっか。いいぞ行っても」

双子「!!!!」

魔王「だが条件が一つ。絶対離れないこと。お前等は二人一緒ならそこそこ強いからな」
魔王「大事な後継ぎをとーちゃんは失いたくないんだよ。約束出来るか?」

双子「はい!!」

魔王「よーし、とーちゃんは応援してるぞ。準備が出来次第、いっておいで」

双子弟「ふふふっ!待ってて下さいですお兄様!!」
双子妹「絶対に連れ戻してやりますから!」





 おわり。

>>109
一行どころじゃないです。
やらかさないよう注意したはずでしたすみませんすみません。>>107>>108の間に以下の文が入ります。



魔王「かかかか彼氏っ!?そそんな関係じゃないわまだ!だってまだ、まだ私そんなまだお友達で、そうよまだお友達なのよ!」アワアワ

青年「ははっ、悪い悪い。まだ、な。うんうん」

側近「……落ち着け。客人の前で取り乱すな」
魔王「貴方こそこうなったら絶対取り乱すくせに!断言出来るの?自分は絶対取り乱さないって」
側近「うっ……そ、それは、」

青年「…………」ニヤニヤ

魔王「そこっ!ニヤニヤしない!!」

青年「はい、魔王様の仰せのままに」ニコニコ

魔王「くっ……ニヤニヤが駄目ならニコニコ笑うなんて……このヒトやってくれるわ……」
側近「落ち着け。報告はまだある。二人には連れがいるようだ」

魔王「連れ……?お客さんってことかしら」
側近「ああ。素性が少々特殊のようだ。一応俺達の耳に入れておくべきだと判断したらしい」
魔王「……で、その特殊な素性というのは?」

側近「元天界の住人。堕天使だ」

魔王「堕天使……?」

慌てるとミスばかり。重ね重ね申し訳ない。
これにておまけ終了。全くしまらない残念な終わりでごめん。もう本当にごめん。

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