志保「永遠を月に載せて」 (29)

アイドルマスターミリオンライブ!のSSです

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のんびりゆっくり行きます

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-○年5月9日-


志保母「ふぅ…洗い物は、これでお終いね」


いつもの家事をこなし、一段落。
少し、休憩しましょうか。


志保母「はあー…」


休日の昼下がり。
一通りやることは終わり、気が抜けます。

今日、お父さんは何時に帰ってくるかしら?
晩御飯は何にしようかしらねー…。

志保「おかあさーん!」


まだ5歳の娘が、とてとてこちらに近づいてきます。


志保母「どうしたの、志保?」

志保「えへへー」

志保母「?」


何か企んでいる顔ね、これは。
よーく見てみると、後ろ手に何かを持っています。
まさか、脱皮した蛇の抜け殻とかじゃないわよね……。

少し身構えつつ、待ってみます。

志保「…はい!これ!」

志保母「へ?」


小さな紙切れ。
お父さんのメモ帳から取ってきたのかしら。

中に書いてあるのは…。


『 まっちーじけん
  あと5かりつカえます 』

志保「おかーさんのひ!おめでとー!」

志保母「…!」


言葉が出ません。


志保「…おかーさん?」

志保母「あ、ごめんね、ちょっと疲れてて。マッサージ券、ありがとうね」

志保「だいじょーぶ?」

志保母「だいじょーぶ。そうだ、コレ、早速使っちゃおっかな」

志保「!ほんと!?」

志保母「ほんと。お願いします、志保せんせい」

志保「うんっ!」

小さな拳で肩を叩いてもらいながら、幸せってこういう事かなぁと考えます。

さっきのメモ、きっと「まっさーじけん あと5かいつかえます」って書きたかったのね。

貰ったものよりも、こうやって一緒に居られることが、何よりも嬉しいです。

前半ここまでです
残りは夜に

投下します

-△年5月11日-


志保「どうしよう、こんなに遅くなっちゃった…」


陽は既に沈み、光のもとは人家やお店のもののみ。
街に人気はほとんどない。


志保「それもこれも、全部静香のせいだわ、静香がプロデューサーさんに噛みつかなければもっと早く…」


いや。
私が我儘を言った部分もあった。
静香だけに責任を押し付けてはいけない。

それに、今更何を言っても仕方がない。
今はこの先の事を考えなくては。

この先。


今日は、母の日。
いつも根を詰めて働いてくれている母に、少しでも感謝の気持ちを渡したい。


しかし、アイドル業の給料はほとんど家の生活費になっている。
収入元ではあるけれど、あくまで中学生、14歳の私が自由に使えるお金は多くない。


だから、お気に入りの雑貨屋さんに寄って、ハンカチでも買おうと思っていた。

志保「何で、今日に限って『店主の都合で早仕舞いします』なのよ…っ!」


語気をかなり荒くしつつ、悪態をつく。
でも、本当にどうしよう。
他にプレゼントできる品物がある店なんて、一つも知らない…。


志保「……ん?」


前方に柔らかい光が差した。
青臭いにおい、同時に甘い香りも漂ってくる。

何だろう?
近くに寄ってみる。

店員「いらっしゃいませー」


店の奥の方から、女性の声が聞こえる。
明かりで良く見えるようになった店の入り口には、沢山の鉢、そして色とりどりの様々な花。
こんなところに花屋があったなんて、知らなかった。


店員「あら。…北沢志保ちゃん、よね?」

志保「!…は、はい、そうです、けど」

店員「テレビ見てますよ。うちの娘が大好きでね、ファンなんですって」

志保「あ、えっと、ありがとうございます」


少し、気恥ずかしい。

店員「そうだ、サイン貰ってもいいかしら」

志保「えっ?」

店員「あ、ダメだった?事務所の関係で出来ないとか?だったら…」

志保「いえっ、大丈夫です!」


意外だっただけだ。
確かに最近、テレビ出演も増えてきたけれど、まさかファンだと言って貰えるだなんて。
それに、サインを書いて欲しいと言われるなんて、思ってもみなかった。


店員「そう?ありがとう、ちょっと書くもの持ってくるから、待ってて」

志保「あ、はい」


奥の方へと消える女性。

手持ち無沙汰の私。
何とはなしに、周りを見渡してみる。

志保「あれ、何だろ…」


やたらと目を引く青い花。
青というより、紫と言った方が良いだろうか。
白っぽい薄紫から、黒のように見える濃い紫まで幅広い。
何という名の花だろうか。

ぽーっと見惚れていると、ドタドタという音。
意識が現実に引き戻される。

店員「ごめんなさい、手間取っちゃって。…えぇと、これにお願いできますか?」

志保「はい」


女性に色紙とマジックペンを渡され、サインを書く。
娘さんの名前も、書いた方が良いだろうか。


志保「あの、娘さんのお名前は?」

店員「千穂といいます」

志保「ちほ?」

店員「一、十、百、千、の千に、稲穂の穂です」

志保「千穂さん。えーっと…」


こういうのを書くのは初めてなので、何を書いていいか分からない。
そういえば、先輩方は「いつも応援してくれてありがとう」とか、書いていたような…。

志保「……」



『千穂さんへ。
 いつも、応援してくれてありがとうございます。
                  北沢志保』


名前の横に、猫をモチーフにしたサインをつける。
可愛くて結構気に入っているのだが、静香やプロデューサーさんからは「私らしくない」と言われている。
それでも、このサインを変える気はない。
……やっぱり、可愛いから。

志保「はい、どうぞ」

店員「わぁ、ありがとう。娘も絶対喜ぶわ。無理言って、ごめんなさいね」

志保「いえ。……あの、このお花」

店員「え?あぁ、これ。珍しいでしょ、青いカーネーションなの」

志保「青いカーネーション?」


ふふ、と少し茶目っ気を含む笑い方をする女性。
そんなに私の反応が面白かったのだろうか。


店員「どこかの…ナントカっていう会社が開発したものでね。『全てを優しく包み込む月の光』をイメージして作られたらしいわ。綺麗でしょう?」

志保「はい…思わず、見惚れてました」

店員「今日は何の日か知ってる?」

志保「母の日…ですよね」


母の日のプレゼントを探して駆け回っていたのだ。
当然、知っている。

店員「アイドルで忙しいかもしれないけど、何かしてあげた?」

志保「それが…雑貨屋さんで何か買おうと思っていたんですけど、私が行った時にはもう閉まっていて」

店員「何も買えてないと」

志保「……はい」


だと思った、とでもいう風に女性は笑う。


店員「これ、お母さんにどうかしら?」


突然の提案に、少し驚く。
けれどそもそも、母の日にはカーネーションを贈るのが慣例だそうだから、何も間違ってはいないのだ。


でも…。

志保「とても有難い提案なんですが、今ちょっと手持ちが…」


女性は驚いた様子で私を見る。
そして、


店員「あっはっはっは!」

志保「!?」


何がおかしいのか、突然笑い出す女性。
おろおろする私は置いてけぼりだ。

店員「いいのよそんな、堅苦しい」

志保「いえ、堅苦しいとかそういうのじゃなくて…」

店員「だってほら、サイン書いてもらったじゃない、それで十分よ」

志保「で、でも…!」

店員「まあまあ、いいからいいから。サインのお礼…娘からだと思って、受け取って?」

志保「う…」


そう言われてしまうと、返す術がない。

志保「えと…では、お言葉に甘えて…」

店員「じゃあ、ちょっと待っててね」


てきぱきと女性が青いカーネーションを包んでいく。


店員「はい、どうぞ」

志保「ありがとうございます」


綺麗にラッピングされたカーネーションを受け取り、礼を述べる。

志保「……あ。あの」

店員「ん?何かしら」

志保「青いカーネーションって…花言葉とか、あるんですか?」

店員「えぇ、あるわよ」

志保「教えて頂いても良いですか?」

店員「青いカーネーション、ムーンダストっていうんだけど」

志保「ムーンダスト」


言葉を刻むように、反復する。


店員「ムーンダストの花言葉は、『永遠の幸福』」

志保「…本当に、ありがとうございます。それでは、失礼します」

店員「良かったらまたどうぞ」

花屋を後にする。
風が吹くと、冷たい空気が身体を包み、身に纏っていた花の甘ったるい香りが離れていくのが分かる。


志保「…永遠の、幸福」


少し顔が緩む。
今度、あの店でスズランでも買おうかな。

お母さん、きっとまだ起きてるだろうな。
この青いカーネーション、喜んでくれるかな?

お粗末様でした
何とか、母の日中に間に合いました

さて、青いカーネーションですが、実際に開発されております
青というよりは、志保も言っている通り紫に近いのですが…


昔は一般に目にすることは少なかったそうですが、最近では一般的なものになりつつあるようです
私の周りでは全く見かけませんが


皆さんは何か贈られましたでしょうか
私はラファールなる抹茶色のカーネションを母に贈りました
まだ贈られていない方も、遅れても気持ちを込めればきっと喜んでいただけると思います

余計なお世話でしたね


それでは

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