とある魔神の上条当麻 (858)

 注意!
 ・このスレは、とある魔術の禁書目録の二次創作です。
 ・SS投降初心者です。勝手がわからない事もあるとおもいますが、生暖かい目で見守ってください。
 ・キャラ崩壊、こうじゃない感があると思います。ご了承ください。
 ・批判、批評は絶賛受付中です。ガンガン指摘してください。改善できるようでしたら改善します。
 ・独自の設定が結構あります。
 ・更新は不定期だけど10日は開けないようにしたいです。
 ・文の構成力、漢字力がとても酷いと思われます。

これでもよろしい方はどうぞ。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1399731110

何がいけなかったんだろう?




何日もそのままなのだろうか?服は汚れやつれている。

地平線が見えるほど広く、何もない大地にまだ10歳にも満たないような一人の少年がぽっつりと立っている。

いや、何もないという表現はおかしいかもしれない。

なぜならそこにはさっきまで“町”があったのだから。

だから正しくは、”何もかもなくなった大地”が正しいだろう。

ではなぜそこに少年は立っているのか? 

答えは簡単だ。


 
その少年がさっきまであった町を消し飛ばしたのだ。

信じられないような話だろう。しかし、今の少年にはそれができる。

不幸とか幸運とかそんな物関係なく奇跡と呼んでいいほどの偶然が何十何百何千回と重なって

少年は 「魔神」になったのだ。

きっかけは些細なことだった。

ただその少年がとても“不幸”で、それを何とかしようとした心優しい両親がオカルトに手を出したのだ。

普通、オカルトなんて信憑性がない物を信じるなんて事はできないだろう。

しかし、その少年の両親は必死だった。

自分の愛する子供がただ“不幸”と言うだけで周りから蔑まれ、疫病神と呼ばれるのに耐えられなかった。

「運がよくなるお守り」などと言った至極くだらない物をもはや病的に集め家に飾った。

ひとえに、我が子のことを思ってのことである。

大半の物はインチキで効果など全くないだろう。

だが、何個かはインチキな物などではなく“本物”だった。

「魔翌力」帯びていたのである。

その本物が偶然か奇跡か、ちょうどそろった数だけ集まり、風水や地脈に対し完璧に並び。

インチキ物のお守りとリンクし、お互いがお互いの力を高めあい。その術式が完成した。


  人間を「魔神」にする術式が。

結果その術式は発動した。

そして、「不幸なことに」その術式の中心にいた少年にその術式がかかった。

そこまでならまだよかった。まだ何とかできた。

しかし、そこでも「不幸」が発生した。

少年や両親が知るよしもないがその少年の右手には例え神の奇跡だろうと打ち消すことができる不思議な能力が宿っていたのだ

結果。その術式とその少年の右手とで激しい反発が起こりその衝撃で町を消し飛ばした。

そしてその吹き飛ばされた大地の中心点に気がつくと少年は立っていた。

“不幸”な少年がみんなと一緒に消し飛び何もなくなるという“幸運な結果”は神が許さなかったらしい。

神は少年に町の人を消し飛ばし罪悪感に否まれ、独りぼっちにさせるという試練という名の「不幸」を与えた。

しかしここでも「不幸」が発生した。少年にではない。

「神」に対してである。

神の予定では少年は自分の不幸に苛まれながらこの後の人生を生きさせる予定だったらしい。

しかし、神の奇跡すら打ち消す右手を持つ少年にはそんな予定は通じなかった。

少年が「魔神」になってしまったのである。

神の奇跡すら打ち消す右手にも許容量がある。この術式は遥かにその許容量を超えていた。

結果。右手だけを残しほかの体の部位すべてが作り変わり、少年は魔神になった。

神は戦慄する。

自分と同じ「神」という称号を持ちながら、神の奇跡を打ち消すことのできる存在など恐怖の存在だ。

しかし神には何もできない、例え神であろうが起こってしまった事象に対して何か行動を取ることは許されないのだ。

いや、例え許されたとしても何もできないだろう。

その少年は神をも超える力を身に宿したのだから。

神はその少年とその少年が関わることすべてに対し何もできなくなった。

しかし神は安堵する。

その少年はまだ子供でその神をも超える力を使うことはできず、また、生きていくために必要な物すべてを少年が壊してしまったのだから



その少年に“幸運”はない。助けが来ることなどあり得ないだろう。じきに空腹で死ぬだろう。

だが忘れてはいけない。その少年の「不幸」はもはや神にまで通用することを。

雨が降ってきたのだろうか?大地が少しずつ濡れていく。

大地を濡らしているのは雨だけではない。その少年の涙だ。、

悲しくて泣いているのか、空腹で辛くて泣いているのか理由は定かではないがその少年は泣いていた。

土砂降りではないが雨の中、声も出さずにしかし、確実に泣いていた。

涙を流す子供がいれば誰かがよってくるだろう。

しかしここには誰も居ない。

少年を含めここには“人間”は誰も居ない。

ならば神に「不幸」を与え、少年に「幸運」という名の「助けの手」を差し伸べるのは誰だろう?

???「………………どうしたんだい少年?こんな雨の中こんなところで泣いていて」

人間ならここには居ないならば居るのは必然的に限られるだろう。

???「………いや、もはや君はただの少年ではないな…。言い直そう、魔神に成り立ての少年君」

いつの間にか少年近く一人の青年が立っていた。

しかし少年にとっては今現れた青年よりも「魔神」という聞き慣れない単語に反応する。

少年「………魔神……なにそれ?お兄さん誰?」

少年の絞り出した声はこの雨の中では聞こえるとは思わないがその青年は聞き取った。

???「いや~悪い悪い自己紹介が遅れたね。私の名前はオッレルス。……君のような魔神になりたい人間だよ」

どうやら青年は「オッレルス」という名らしい。

オッレルス「私は自己紹介したんだから君にも自己紹介して欲しいな。君の名前はなんて言うんだい?魔神の少年君?」

魔神という聞き慣れないし、理解できない単語に苛々しながらも名前を答える。

少年を愛し、また、少年が愛した大好きな両親が付けてくれたその名を…

少年「上条……上条当麻だよ………」

ッバタリ!!

そこまで言って少年は倒れた。糸が切れた操り人形のように…

第一投降終わり。如何でしょうか?感想待ってます。

今回登場したキャラクターの設定だけ書いて今回は終わりです。次回に期待してる人は期待しててください。
次の投降は明日か水曜日くらいになります。

上条当麻(8歳(現時点では))
性別:男
右手に神の奇跡すら打ち消す基準点たる能力「幻想殺し」を持ち。魔神になってしまった少年。
次回からしゃべり出す。なので口調のアドバイス求む


上条刀夜・上条詩菜(28歳と27歳)
性別:刀夜・男
性別:詩菜・女
上条当麻の母と父。このSSでは死去している。二人とも上条当麻のことを心から愛していた。
年齢に関しては推測による独自設定

オッレルス(16歳)
性別:男
年齢については独自設定。
まだ魔神じゃないけど魔神になりたがってる。
口調がよくわからない。アドバイス求む。

投稿します。

漢字は素で間違えてました。指摘ありがとうございます。

しばらくは上条君は8歳のまま話が進みます。

※>4の「魔翌力」はミスです。正しくは「魔力」です

オッレルス「目が覚めたかい?上条当麻君?」

次に上条当麻が目を覚ますとそこは見たこともないような部屋にいた。

辺り一面分厚い本に囲まれ。怪しげな道具がいくつもあり。脱いだ服が散らかしてあるなど。

ぶっちゃけすごく汚かった。

オッレルス「汚いのは勘弁してくれ。なにぶん私は掃除や片付けが苦手でね。今まで他人にやって貰ってたから勝手がわからないんだ」

上条「…?掃除したこと無いの?」

オッレルス「ないよ。これでも少し前までは結構な家に住んでいてね、使用人とかが全部やっててくれたから掃除道具に触ったことすらない」

上条「お金持ちだったの?」

まだ8歳の上条には「結構な家」という表現の意味がよくわからないが、多分お金持ちなんだろうかと想像する。

なので片付けとか掃除ができなくても仕方がないなあ~と思った。

オッレルス「まあ、その理解でおおむね正しいよ」

上条はきれい好きなわけではないが、流石にこんな汚い部屋に居るのはやだった、なので思ってしまった。

”この部屋が綺麗にならないか”と。

上条「!!??」

オッレルス「わお、すごいな。なっきまであんなに汚かったのが嘘みたいだ……少しやりすぎだけど」

次の瞬間にはさっきまであんなにも汚かった部屋はとても綺麗になった。

しかし、”綺麗になった”と言うよりは”綺麗にした”という表現が正しいだろう。

なぜなら先ほどまであった本も道具も脱ぎ散らかした服も跡形無く消えてしまったのだから。

オッレルス「…しかしコントロールがうまくできないみたいだね。何個か無事な物もあるけど7割方消えてしまった」

上条「コントロール?今、俺なんかしたの?」

少しばかりしょげているオッレルスをよそに上条は質問する。

オッレルス「“力”を使った自覚はないようだね…成り立てだからしょうがないか」

上条「成り立て?何が?」

オッレルス「君がだよ上条当麻君。改めて言おう、君は「魔神」になったんだよ」

上条「魔神?魔王なら俺知ってるよ。ゲームで何回も倒したもん」

オッレルス「まず魔神という言葉すら知らないか…。君の言う「魔王」とは“魔”の“”王様”で、私の言う「魔神」とは“魔”の“神様”だ」

上条「違うの?」

オッレルス「違うよ。神様と王様だよ。全然違うだろう?」

上条「神様も王様も偉いんでしょ?同じじゃないの?」

オッレルス「う~ん難しいな。偉いのは王様で、すごいのが神様かな?」

上条「ピッコ○が大魔王様で魔神ブ○が神様って事?」

オッレルス「その例えはよくわからないけど、多分違うと言っておこう」

子供って難しいなぁ~と考え込むオッレルス。しかし8歳にもなれば神様と王様の違いくらいわかるものだろう。オッレルスの説明が下手なの

ではない、上条が馬鹿なだけだ。

オッレルス「う~んこう言えばわかるかな?神様は雲の上にいて王様はお城にいるんだよ」

上条「それならわかる!」

ようやく魔神という言葉の意味を理解?してもらえた。これでようやく話が進むと息を吐くオッレルス。

上条「ところで今の話が俺が魔神なのと関係あるの?それに多分話し脱線してない?」

オッレルス「全く関係ないし、話が脱線したのは君のせいだとう…」

オッレルス「とりあえず話を進めよう。“魔法”という言葉くらいなら聞いたことがあるだろう?」

上条「あるよ。魔法使いがするメラ○ーマとかマヒャ○とかホ○ミでしょ?」

どうやら上条はゲームとか漫画とかが好きらしい。

オッレルス「ゲームの中の話だと思うけどそれで合ってるよ。

     「君にわかりやすく言うなら「魔神」とはものすごい魔法使いだと思ってくれ。

     「そしてそれは実在するんだ」 

上条「本当?魔法ってあるの?」

すげえやといってはしゃぎ出す上条。その様子をほほえましく見るオッレルス。

オッレルス「あまりはしゃぎ回らないでくれ、せっかく綺麗になったのにまた散らかってしまう」

上条「はぁーい」

このまま行くとまた話が脱線しそうなので上条を落ち着かせ自分の前に座らせる。

オッレルス「君はそのすごい魔法使いである魔神になったんだ。奇跡と言っていいほどの偶然が重なってね」

上条「?じゃあ俺すごい魔法使いなの?どうやってなったの?」

オッレルス「一つずつ質問に答えていこう。君は確かにすごい魔法使いになったんだよ。力の制御はできていないがね。

     「そして魔神になった方法だが、難しく言ってもわからないだろうから簡単に言うよ?こっちも頑張って説明するから君も頑張っ

      て欲しい」

どうやら上条はオッレルスに馬鹿だと認識されてしまったらしい。
 
上条「うんわかった、頑張る」

オッレルス「よし、いい子だ。まず魔神になった理由だがこれはもはや奇跡というほかないだろう
   
     「まず“地脈”という物がある、まあ大地の不思議パワーと思ってくれてかまわない。
   
     「そして君から聞いた君の家に何個もあったらしいお守りやお着物がその不思議パワーである地脈をエネルギーにして魔方陣が完

      成したんだよ、魔神を作る魔法のことだ。

     「そして運悪く、いや、この場合は運がよかったのかな?その魔方陣の中心にいた君が効果の対象になってしまった。

     「結果、君はすごい魔法使いである魔神になったんだよ」

上条「へぇ~そっか~」

なんとも気の抜けた返事が返ってきたので、自分なりにこれ以上ないくらい簡単に説明したつもりのオッレルスは心配になる。

オッレルス「…ちゃんと私が言ったことがわかったかい?」

上条「俺は魔方陣?の真ん中にいたから魔神になったんでしょ?そんぐらいわかるよ、子供扱いすんな」

オッレルス「………」

神様と王様の違いさえわからないような子供を子供扱いしないなどというのは無理だろう…

上条「オッレルス、質問!質問!」

オッレルス「何だい魔神の少年?私に答えられるなら答えよう」

上条「俺の父さんとか母さんとか町のみんなが居なくなったのはどうして?」

オッレルス「………………………」

一番難しい質問だろう。答えることが難しいのではない、

まだ10歳にも満たない小さな子供に自分のせいでみんなが居なくなったという辛い現実を教えることがだ。

嘘をつくこともできるだろう。騙すことだってできるだろう、答えないという選択肢もあるだろう。

オッレルス「………………………………………………………」

今まで以上に長い沈黙、その沈黙の長さがオレッスルの考えの長さを表す。苦断の末、答えは決まった。

オッレルス「…君の両親や町のみんなが決めたのは君のせいだよ小さな魔神の少年君」

魔神になりたい青年は、真実を告げることを選んだ。

上条「俺のせい?俺なんかしたの…?…俺なんもしてないよ……。嘘だよ!みんな勝手に消えちゃったんだ!お父さんもお母さんも町のみん

   なも!俺一人残してみんなどっか行っちゃったんだ!」

叫ぶ上条。無理もないだろう、いきなり自分の知っている人すべてが消えてしまって、それが自分のせいだと言われたのだから。

オッレルス「嘘じゃない。みんなどっかに行った?その方があり得ないだろう、ならなんで町は消えたんだい?みんながどっかに行っただけ

      なら家とか公園とか物が残ってるはずだろう?」

オッレルスの口調は消して攻めるような物などではない。優しく、しかし、確実に上条を追い詰めるような、さとすような口調だ。

オッレルス「もちろん君のせいだけだとはいえない。普通の人間なら君の家で発動した人間を魔神にする術式はただの人間に耐えられるよう

      な物などでは決してない。

     「君が寝ている間に君の体を色々と調べさせて貰ったが驚いたよ。

     「君の体にはどうやら生まれついての“能力”があったらしい。

     「その能力と術式とが互いに反発し合って破裂しその衝撃で君の言う「みんなや、町」は塵一つ残らず消し飛んだよ」

上条「……じゃ、じゃあ俺の父さんや母さんは?」

祈るように、願うようにオッレルスの次の言葉を待つ上条。ここまで聞けば両親がどうなったかなど聞くまでもないだろう。しかし、思わずにはいられない。疫病神と他人に蔑まれた少年にとってその二人は支えであり全てなのだ。

だが、現実は何よりも残酷だ。オッレルスは非情にも真実を告げる。

オッレルス「……ああ、君の両親は  

 
     「   死んだよ    」

叫ぶ、大粒の涙を。先ほどとは比べるのも躊躇うほどの涙を流しながら。

上条「あ…あ…あぁぁああああぁあああああああああ!!!!」
 
魔神には基本何も通用しない。しかしたった一つだけ効果がある物がある。

それは“言葉”であり”真実”だ。

オッレルスの言う物はまさしく”真実である言葉”だった。よって魔神になった上条には強く、深く響いた。

泣き叫ぶ魔神。それを目をつむり見つめる魔神になりたい青年。

もしここに第三者がいたとしたら一体どんな言葉をどちら掛けるのだろうか?

しかし、泣き叫ぶ上条をよそにオッレルスの言葉は止まらない。止まる必要のない言葉は止まることがないからだ。

オッレルス「君はその能力を持っていた助かったんだ。

     「君がもしその能力を持っていなかったら魔神の術式は失敗し君の死だけで被害はすんだだろう。

     「不幸か幸運かで言ったら半々だろう。君は生きていたが、君のほかに人間は死んだのだから。

     「だが君の能力のすごいところは君を生かしたところではない。

     「魔神の力をただに人間に押さえ込み、完璧な存在にしてしまったことだ。

     「魔神の力なんて物はただの人間には押さえることはできない、しかし君は押さえ込んでしまった。

     「そして魔神とは本来完璧な存在だ。しかし完璧であるが故に失敗と成功の確率を半々に持つ。

     「しかし君のその力はその半々の確率を魔神の力を押さえ込んでしまったがために完全にしてしまった。

     「君の望むこと全ては実現し、君の欲す物全ては手に入る。

      「代償として君はかけがえのない物を失ったがね」 

そんな代償に得られる力など全く嬉しくはないだろう。

泣き叫ぶ上条、しかし、泣いたところでその現実は変えられない。

魔神になった少年が一番はじめにはじめに経験したことは。自分のしてしまった“罪”を“業”を認めるということだった。

しかし、泣き叫ぶ上条をよそにオッレルスの言葉は止まらない。止まる必要のない言葉は止まることがないからだ。

オッレルス「君はその能力を持っていた助かったんだ。

     「君がもしその能力を持っていなかったら魔神の術式は失敗し君の死だけで被害はすんだだろう。

     「不幸か幸運かで言ったら半々だろう。君は生きていたが、君のほかに人間は死んだのだから。

     「だが君の能力のすごいところは君を生かしたところではない。

     「魔神の力をただに人間に押さえ込み、完璧な存在にしてしまったことだ。

     「魔神の力なんて物はただの人間には押さえることはできない、しかし君は押さえ込んでしまった。

     「そして魔神とは本来完璧な存在だ。しかし完璧であるが故に失敗と成功の確率を半々に持つ。

     「しかし君のその力はその半々の確率を魔神の力を押さえ込んでしまったがために完全にしてしまった。

     「君の望むこと全ては実現し、君の欲す物全ては手に入る。

      「代償として君はかけがえのない物を失ったがね」 

そんな代償に得られる力など全く嬉しくはないだろう。

泣き叫ぶ上条、しかし、泣いたところでその現実は変えられない。

魔神になった少年が一番はじめにはじめに経験したことは。自分のしてしまった“罪”を“業”を認めるということだった。

今回の投稿は第一話の半分です。

もう半分はまだ書き終わってないので書き終わり次第投稿しようと思います。

次回投稿予定は水曜日くらいを予定しています。

では次の投稿まで(^^)ノ

連投失礼しました>29と>30は同じです

感想ありがとうございます。

思ったより早くできたので投稿します。

オティヌスは一応出す予定はありますがもう少し先です。

オッレルス「それで君は何が欲しい?どうしたんだい?」

泣き叫ぶだけ泣き叫び、涙も声も涸れ果てた上条にオッレルスか語りかける。

オッレルス「君は確かに魔神になり何でもできるようになった、しかし、君が消し飛ばしてしまった人々や町を元に戻すことはできない」

      「不思議に思うだろう、何で何でもできるのにそんなことができないないのって?     

      「君が消してしまった人々や町は君のその能力と魔神の術式の反発で消えてしまったんだ。

      「だから君が魔神の力を使って元の戻そうとしても君のその能力が邪魔をして元に戻すことはできない」

オッレルスは言う、真実を、そして突きつける、現実を。

神をも超えた少年を縛り付けるのは、神をも殺す我が身に宿る能力だ。

魔神の力を使えば世界を作り替えて元とは少し違ってしまうだろうが上条当麻の身の回りの世界を元に戻すことができる。

しかし、オッレルスはそのことを伝えない。

これは魔神を目指す彼にとってのささやかな抵抗であり嫌がらせでももあるが、それと同時にこの少年のことを思ってである。

この少年は文字通りまだ少年でしかない。

少しのことで悪にも善にも傾いてしまう。

もしここでそのことを少年に告げれば少年はどうなるだろうか?

彼の推測になるが、世界は少年のおもちゃになってしまうだろう。

魔神になってしまった少年はもはや誰にも止めることはできない、魔神とは完全な存在であり、すでに止まっているからだ。

だが例え神といえど善悪を考える心という物がある。

もし少年が悪に染まり、世界を好き勝手に変えてしまったらどうなるかなど想像できない。

だから少年にわからせる必要があるのだ、自分の力を、そしてその意味を。

上条「お…おれは……」

泣き叫び枯れてしまったのか上条の声は何とも小さく頼りない。

しかし聞き取らなければならない。聞かなければならない。

文字通り神となった少年の決定は絶対だ。もし少年が破滅を望むなら彼は持てる力全てを使いそれを阻止するだろう。

彼だけではない、世界中全ての人間がそれを阻止すよために抵抗するだろう。

勝てるわけなど無い、何せあいては神なのだから。例え力の制御ができてはいないといえ神なのだから。

しかし、彼らは戦うだろう。世界のために。

世界はすでにこの少年の手の中にある。

だからオッレルスは再び聞いた、魔神になった少年が一体何を望むのかを。

世界に何を欲し、どうしたいのかを。

オッレルス「君は…何が欲しいんだい?どうしたんだい」

返ったきた言葉はオッレルスには考えられないようなものだった。




上条「友達が欲しい……誰かと一緒にいたい…」


魔神になった少年は世界には何も望まず、ただ一緒にいてくれる誰かを望んだ。

青年もそれを望み魔神を目指し、また、少年もそれを望んだ。

そしてそれは皮肉にもいずれ彼が出会うであろうもう一人の魔神も望んでいる物だった…。

オッレルス「そうか。君もそれを望むのか…」

上条「君も?オッレルスもそうなの?」

少年の答えを聞き、オッレルスの口からは自然にこの言葉が出ていた。

オッレルス「私が魔神を目指していることは言っただろう?私が魔神を目指す理由も君と同じなんだよ」

オッレルスは語り出す、自分の生い立ちを、魔神を目指す目的を。

オッレルスは元々は貴族の出身だ、貴族の家に生まれるのは幸せなことだろう。

しかしそれは客観的な位置から感想を述べているに過ぎない。

確かに欲しい物は手に入るし、好きなことも好きなようにできるだろう。

だがそれは自分の力ではない。

手に入る物、近づいてくる人全ては”自分が貴族だから手に入った物で、自分を貴族の人間としか見ない人”なのだ。

もし自分が今の家に生まれていなかったら今ある物全て何も持ってはいないだろう。

誰も本当の自分を見ようとはしてくれない。「貴族の子供」としか見てくれない。

小さい頃から頭のよかったオッレルスはそのことをとても嘆いた。

だから頑張った。

自分を「貴族の子供」と見るのではなく「ただの少年オッレルス」と見てくれる人を作るために。

そして魔術の存在を知った。

独学で様々な術式を作り出し色々なことをした。

全ては他人に認めて貰うために、自分を自分と見てもらうために。

そしてオッレルスはその努力の成果である魔術を家族や友達に披露した。

オッレルス「今思えばなんと滑稽なことだったのかと思うがね」

       「そんなことをすればどんなことになるかなんてあの頃の私にもわかったいただろうに…」

人は特殊や特別と言った“優れた物”なら評価し、称えるだろう。

しかし、異常や異質といった“怖い物”は批評され、排除される。

オッレルスのしたことは特殊でも特別でもなく、異質で異常だった。

しょうがないと言えばしょうがないとしか言いようがない。

「魔法」とは古来から恐れられる物なのだから。

結果オッレルスは家から追い出された。

今でも両親の「化け物!」と言って自分を家からたたき出したときの表情は覚えている。

だからオッレルスは魔神を求めたのだ。

「化け物」の隣には誰も居てはくれない。しかし、

「化け物」なら恐れられても「神」なら認めてもらえる。

「神」と認めてもらえればもう一度隣にいてくれる人ができるかもしれない。

そう信じて今もオッレルスは魔神を目指しているのだった。

オッレルス「君には今の話は少し難しいかな?」

語り終えたオッレルスは上条を聞く。俯いたままなので上条の顔は見えない。

元より彼らの生い立ちなど全く違うし、同情して貰うために話したわけではないが、今の自分の話を聞いて魔神になった少年が何を思ったのがが気になったからだ。

上条「………………」

上条は無言だ。

(オッレルス「そうか、何も思いはしないか…まあそうだろうな」)

回答を求めたわけではないが俯いたまま落胆するオッレルス。しかし、そうではない

上条は答えられないのではない、答えることができないのだ。

枯れたと思った涙を再び流し上条は泣いていた。

そして上条はオッレルスに抱きついて頭をなでてきた。

オッレルス「っ!!??」

当然の上条の行為に驚くオッレルス、しかしふりほどくことはできない。抱きしめて伝わる体温が、頭をなでてくる小さな手がなぜだかわからないがとても暖かく感じて嬉しかった。

上条「オ…オッレルスは…」

かすれる声で何かを喋る上条、魔神になったとはいえ声は枯れる。そして魔神である上条に言葉が通じたように、魔神になりたいオッレルスにも思いの乗った言葉は通じる。

上条「優しんだね…そんで、寂しかったんだね…」

オッレルス「そ、そんなことはない…。私は自分勝手な人間だよ…自分のことしか考えていない」

事実である。オッレルスが上条を助けた理由は魔神の術式についてなにかにか情報を得ようとしただけだし、それさえ終わればもう用はなく見捨てる予定だった。

上条「嘘だよ。だってオッレルス自分のことだけ悪く言って家族とか友達のことは一度も悪く言ってないもん。

   「本当に自分勝手なら家族とか友達のせいにして何でもできたのに何もしなかったし、

   「それに今でもその人達のことを信じてるんだから魔神になろうと頑張ってるんでしょ?

   「前にお父さんが言ってたんだ。
 
   「「他人のために何かをするのは簡単だが、自分のために何かをするのは大変だ」って、

   「意味とかはよく分かんないけどオッレルスは自分を認めてもらえるよう自分一人で頑張ってるんでしょ?

   「辛くても悲しくても泣きたくても自分一人だけでずっとずっと…」

今度はオッレルスが涙を出す番だった。上条の言ったとおりオッレルスは家から出されてからは一人だけでずっと頑張ってきていた。

もちろんそんなことを上条に言った覚えはない、上条はオッレルスの過去の話を聞いただけでそう思ったのだろう。

家族のや友達に見捨てられたとき、暴れればよかった。訴えればよかった。泣けばよかった。

しかしそれをしなかった。上条の言ったとおりオッレルスは

”優しかった”のだ。

誰かに怒りを、苦しみをぶつけられるような”弱さ”を持たず、”強さ”という優しさを持っていた。

しかしその優しさは誰にも理解されたことがなかった。

家族や友達にはもちろん、魔術師となったオッレルスはその辺の低脳な魔術師と違って一線を画していた。

そのため誰一人として理解してもらえず、魔神に近い魔術師となった今も「化け物」と呼ばれていた。

だがいくら「化け物」と罵られ虐げられながらもオッレルスは諦めなかった。

また誰かと一緒に笑って過ごす事できるを本当に祈って信じているから……

だけど“寂しかった”。

“いつか”という未来を信じ、一人を覚悟してはいたが寂しかったのだ。

上条「俺を助けてくれたのは俺から魔神についての情報を知りたかったからでしょう?」

オッレルスの考えていたことを言い当てる上条。事実なので抱きしめられたまま顔を見ることができない。

上条「でもさ、本当に魔神の情報について知りたかっただけなら俺が寝てた間に色々できたでしょう?でもそれをしなかったみたいだし、話を聞いてくれたし話もしてくれた。終わったら終わったでとっとと俺みたいな疫病神…今は魔神なんだっけ?捨てればよかったしね」

オッレルス「君は疫病神なんかじゃない!!」

思わず顔を上げて憤るオッレルス。今この瞬間にも自分を救ってくれた、一人だった自分を理解してくれた上条に自分をそんな風に呼んで欲しくなかった。あろう事か捨てるなんて自分をゴミのように言って欲しくなかった。

上条「ほらね、優しいよ。自分の事じゃなくて他人のことで怒れるんだから」

顔を上げたことで上条と目が合う。上条の涙は止まってはいたがその顔は微笑んでいて、オッレルスには聖母のようにまぶしく見えた。

気がつくと顔が赤くなり思わず顔を背けてしまう。

上条「優しくて強くて自分のために頑張れるオッレルスならきっといつかできるよ”一緒にいてくれる人”が…」

上条は励ますように言う。

その言葉だけでオッレルスは救われた。

魔神を目指す青年も魔神になった少年も同じ物を求め、そして青年の方は見つけた。

上条「じゃぁ、俺もう行くね。本とか散らかってたの消し飛ばしちゃって?ゴメン」

オッレルス「?行く?一体どこに?」

そんなオッレルスの言葉を無視して上条は立ち上がる。どこに行くと言うんだろう?

上条「ねえオッレルス。俺が消し飛ばした本とか服とかって元には戻せないの?」

部屋をぐるっと見渡して言う上条。魔神になったときとは違い、魔神の力で消し飛ばした物なら元には戻せる。

オッレルス「君が思えば元に戻るよ。“戻れ”って思ってごらん」

オッレルスが言い終わった途端部屋の中は上条が目覚めた時と変わらない有様に戻っていた。

上条「本当だ~すげ~!!」

自分が魔神という魔術師になったことを改めて自覚したのだろう。上条は魔法を使えたことに対してとても喜ぶ。

オッレルス「流石魔神だ。何でも思いのままだね」

オッレルスの言葉は驚きと同時に優しさに満ちていた。まるで我が子が初めて字を書けたと言ってきているような気がした。

オッレルス「ところで行くってどこに行くんだい?トイレかな?」

上条「トイレ?違うよ。どっかにいくんだよ」

オッレルス「どっかってどこだい?」

上条「どっかはどっか。人に迷惑掛けたくないからできれば誰も居ないところがいいなぁ~」

上条はどうやらこの家を出て行くらしい。

先ほど上条は「オッレルスならきっといつかできるよ」と言ったが「なら」とはそうゆう意味だったのかと今更理解した。

オッレルス「なぜだい!?どうして!?」

はんば叫ぶようにして上条の肩をつかみ揺さぶるオッレルス。一体なぜ上条はこの家を出て行くと言うんだろう。

上条「お、お、おち、落ちちゅいてオッレルス!揺らさないで!気持ち悪くなっちゃう~!」

オッレルス「落ち着いてなどいられるか!何で君はこの家を出て行くんだ!?なんで…なんで!!」

上条「だ…痛って舌噛んだ。俺だって一緒にいたいけど俺が居るとオッレルスに迷惑かけるから…」

オッレルス「ああすまない…。迷惑なんてあるもんか!いたいならいればいいじゃないか!?」

上条「でもオッレルス俺の体のこと調べたんでしょう?なら俺の不幸体質のことも知ってるよね?」

オッレルス「っつうぅう!!」

息をのむ音が聞こえる。確かに寝ている上条の体を調べたときその右手に宿る能力のせいで幸運を打ち消してしまうことは知っていた。

オッレルス「確かに君のその体質は厄介だが、そんなもの私がいくらでもサポートできる」

上条「でも俺、オッレルスが家族とか友達とかを傷つけたくないように俺もオッレルスを傷つけたくないんだ…」

オッレルスはまたも驚愕する。オッレルスが他人を傷つけたくないと考え始めたのは12歳の頃くらいだ。

話によると上条はまだ8歳らしい。10歳にも満たないような子供が自分と同じように他人のために傷つくなんて事はあってはならない。

そもそも自分のような「化け物」を救って理解してくれたこんなにも心の優しい少年が傷つくなんて許せない。

オッレルス「調子にのるなよ魔神とはいえ子供風情が…そんなちっぽけな不幸なだけの体質に私が傷つくはずがないだろ!」

思わず声に怒り先ほどの冷静な口調ではなくなる。

認めない、認めてなるものか。自分を救ってくれた人間が救われず、自分だけが救われるなんて。

そんな馬鹿げたことが許されいいものか…

あまりの怒りにオッレルスを中心に怒りの魔力が放出される。一般人はもちろん並の魔術師すら失神させるほどの怒りの魔力を押さえようとなんてせずにオッレルスは吠える。

部屋の中は再び散らかるが知ったことではない。

オッレルス「傷つくか傷つかないかは私が決めることだ!だから君が心配する事じゃない!」

上条「……いいの?きっと迷惑掛けるよ?」

オッレルス「迷惑なんて思わない」

上条「……またなんか消しちゃうかもよ?」

オッレルス「そしたらまた出せばいいし、いざとなったら買えばいい」

上条「……怪我させちゃうかもよ?」

オッレルス「怪我なんてしない、仮にも君のような魔神を目指している男だぞ?」

上条「……オッレルスの知らないゲームとか漫画のネタも言っちゃうよ?」

オッレルス「…それは私も頑張ろう」

上条「………………」

オッレルス「………………」

お互い無言になる。オッレルスは上条の次の言葉を待ち。上条は次の言葉を考えているのだろうか?

上条「……俺、縄とかに縛られたり、鞭でたたかれたりする趣味なんてないから趣味合わないと思うよ?」

オッレルス「……タンスの上にあった本については忘れなさい」

先ほどの魔力の放出で落ちてしまったのだろう。部屋の中には所々そのようなことが表紙の本が何冊か落ちている。

上条・オッレルス「「………………………………………………………………」」

上条・オッレルス「「………………………………………………………………ククク」」

上条・オッレルス「「アハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」」

シリアスな雰囲気?をぶっ壊す上条の一言。思わず二人とも笑い出す。

上条「…俺、ここに…オッレルスの近くにいていいの?」

一通り笑い終わった後、上条はオッレルスに問いた。

オッレルス「いいとも。むしろ居て欲しい」




こうして魔神を目指す青年は“一緒にいて欲しい人”を見つけ。

魔神になった少年は”新しい家族”を見つけた。

少し無理矢理感もありますが「 第一話・魔神になった少年 」はこれで終わりです。

受験勉強の逃走のために書いてる作品ですので投稿が遅れることが合うかと思いますが、投稿している以上は完結させるつもりなので読んでいる方はもう少しお付き合いください。

第二話の次回予告だけして今回の投稿は終わります。

次回予告


「借りた物は返そうよオッレルス…」
魔神になった不幸体質を持つ少年ーー上条当麻


「そうだなぁ…返すついでにお手伝いさんでも探してみるか~」
魔神になりたがっていた青年ーーオッレルス


「なんだいこの幸薄そうな子供とそこのヨレヨレTシャツ野郎は?」
英国王室派の近衛侍女の巫女聖人ーー???


「君が魔神の少年かしら?」
英国第一王女ーー???


「部下いちごーにしてやるし」
英国第二王女ーー???


「お友達になりませんか?」
英国第三王女ーー???


「オッレルス…お前そんなプレイが好きだったのかい?」
英国女王ーー???


「少しは国のトップって自覚を持ってください…」
後の騎士団長の青年ーー???


「どうしたのであるか少年よ?」
英国の若き精鋭傭兵ーー???


「貴様が魔神か…」
見かけ痴女ーー???



「 第二話・そうだメイドに会いに行こう。」

投稿します。

>54 指摘ありがとうございます。減らせるよう努力します。これではまだ多いでしょうか?

第二話はちょっと長めになると思うので何回か分けて投稿します。キリがよくでき次第投稿します。


第二話・そうだメイドに会いに行こう。


グチャッ!!

上条「はぁ~また失敗か…」

オッレルス「今のは少し惜しかった。もう少しだよ」

上条がオッレルスと暮らし始めて早一ヶ月。台所では何時もの光景が広がっていた。

上条「ねえオッレルス。こんなんで本当に魔力のコントロールができるようになるの?」

オッレルス「できるよ。むしろこのくらいできないようなら危なっかしくて魔法は教えられないな」

今の「グチャッ」という音は上条が卵を割るのを失敗した音だ。

上条とオッレルスが暮らしていく上で一番の問題点は、魔神になった上条の魔力の暴走である。

初日のように本や服が消えるだけならまだいいが、加減を謝ってこの家を壊したり、はたまた世界を壊されたりなんかしたらたまらないからである。

なのでオッレルスは上条が魔力をコントロールできるよう“卵割り”を教えている。

上条「コツとか教えてよ~」

ふてくされる上条。無理もないだろう。この修行を初めてもう3週間たっているが一回として成功したことがないのだ。

オッレルス「こればっかりはその人自身の感覚の問題だからね、教えることはできないな」

この修行の内容は“魔力だけで卵を割る”という物だ。

ある適量の魔力を与えると卵が割れるような術式を卵にかけ。その適量の魔力を自分で判断し卵に与える。

与える魔力が少ないと卵は割れず、また、多すぎると先ほどの上条のように潰れてしまう。

さらに卵一つ一つに掛けてある術式は一つとして同じ物はなく一度間違えた経験は次に生かすことはできない。

凄腕クラスの魔術師でもなかなか難しい内容だが魔神たる上条にはこれくらいが丁度いいのだ。


オッレルス「今日の卵の残りももう無くなったし…そろそろ終わりにして朝食にしようか」

上条「くそぉ~。今日もできなかった」

流石に「できるまでやる!」などと言うことはしない。卵の数にも限りがあるしストレスがたまって暴走したりしたら大変だからだ。

上条「今日の朝ご飯は何でせうか~」

オッレルス「何時もと同じでハムエッグとトーストだよ。……っていうかその「せうか」ってなんだい?」

上条「ふっふっふ。これは昨日”上条さんが”寝る間も惜しんで考えた口癖なのです!……って、そげぶ!」

オッレルス「“俺”と言わなくなったのはいいけど夜はちゃんと寝なさい」

教育的指導として上条の頭にチョップするオッレルス。そんなに強くやった覚えはないが16歳のオッレルスの手加減はまだ8歳の上条には強いらしい。

頭を抱えてうずくまる。

上条「いいじゃんべつに…。それに知ってるか、頭を叩かれると色々忘れちゃうんだぞ!」

オッレルス「忘れるほど大切なことを覚えたのかい?」

上条「馬鹿にされている気がするぞ。上条さんだってちゃんと覚えてることとかあるんだからな」

オッレルス「へえ興味深いな。一体何を覚えたんだい」

上条「お父さんのこととかお母さんのこととか…」

オッレルス「………………………」

上条は故意ではないとはいえ自分のせいで両親を殺してしまっている。二度と会うことができなくなった両親を覚えておきたいというのは当然だろう



オッレルス「すまなかった。君は両親を…」

上条「あとオッレルスの趣味の本が何冊あるのとか、オッレルスがタンスの裏に隠してる隠してる縄とか…あとそれから……」

オッレルス「前半はいいとして後半のことわ忘れなさい。じゃないと私の「教育的指導チョップ」が火を噴くぞ」

さらに言い続けようとする上条を羽交い締めにしようと身構えるオッレルス。夢の魔神Vs魔神モドキの実現だ。

上条「また挑むのでせうかオッレルス。上条さんに勝てたことはまだないだろう?」

いくら魔神モドキとはいえ本物の魔神である上条に勝てた試しはない。現在の戦績は34対0で上条の圧勝状態だ。

オッレルス「私には…いや男には負けるとわかっていても戦わなければならないときがある!!」

せっかく用意した朝食をぶっ飛ばし、上条はオッレルスを迎え撃つ。

オッレルス家は今日も平和だ。


上条「結局オッレルスは朝ご飯食べられなかったね」

オッレルス「それは当麻もだろう」

結果、何時もの通り上条がオッレルスを打ち負かし悲惨になった部屋を見渡す上条とオッレルス。机はひっくり返り、皿は割れ、料理は床に落ちてい

る。どう考えてもこの部屋で朝食を作って食べ直すのは不可能だろう。

上条「俺が元にもどそっか?」

オッレルス「いや、何度も当麻の…魔神の力に頼ってはいけない。できることは自分たちでしないと」

魔神の力を使うことをオッレルスは極力許可しない。それは魔神の力の暴走のことを考えてだが、それ以前に上条という小さな少年を魔神の力だけに

頼り切ってしまう駄目人間にしないためだ。

上条「そういえばオッレルスは何時もそのカップだけは守ってるね。なんででせうか?」

オッレルス「あぁこれかい?これはね…」

そう言って手に持った見たかんじ高級そうなカップを見せるオッレルス。

これまで上条とオッレルスのくだらない勝負は今日で35回目を迎えるがオッレルスはどんなことがあってもそのカップだけは死守する

オッレルス「これはイギリスの王室から借りた物なんだ。だから割ったりしたら私が怒られてしまう」

上条「王室ってお城のことでせうか?じゃあ王様から借りたんだ」

オッレルス「王様ではないな、私がこれを借りたのは女王様からだよ」

上条「ふ~ん。そんな大切な物返さなくていいの?」

オッレルス「いやぁーそれが思いのほか気に入ってしまってね。返すのを忘れていたんだ」

上条「泥棒じゃん!!いや…きっとまだ大丈夫だ、希望を捨ててはいけない!」

オッレルス「…っていうか黙って持ってきてしまってるから怒られるのが怖い」

上条「やっぱ泥棒じゃん!!借りた物は返そうよオッレルス…」

オッレルス「でも今更返したところでどうってこと無いだろうし、やっぱり怖いし……」

上条と暮らすようになって人間味が出てきたオッレルス。しかしこれでは駄目人間だろう。

上条「つべこべ言わない!ほら返しに行こうよ。上条さんもついて行ってあげるから」

年齢では上条の方がオッレルスの半分なのにこれではどっちが年上なのかわからない。

上条「そうだ。うまくいけば朝ご飯がもらえるのでは!?上条さん頭いい!」

オッレルス「よし!じゃあ行くか!」

上条「ここぞとばかりに元気出さないでよ…それに返ってきたら掃除だからね」

めんどくさいなぁ~と言うオッレルス。魔神の力を使えば一瞬だが使わないことにしているので掃除などは手作業だ。

オッレルス「そうだなぁ…じゃあ返すついでにお手伝いさんでも探してみるか~」

上条「本当に家事する気ないねオッレルス…」

こうして上条とオッレルスはイギリス王室に借りたカップを返しに行くことになりました。

上条「到着したぜ、イギリスのお城!さあ朝ご飯を食べに行こう」

オッレルス「朝ご飯と言うよりはもう昼ご飯と言っていい時間だけどね。それに君こそ目的を見失わないでくれ、本来の目的はこのカップを返すこと

なんだから」

着いたと言ってもまだお城の中にいるわけではなく、城の正面門の真ん前に立っているだけなのだが、初めて見るだろう城に上条は興奮している。

移動も上条を日本から連れてきたように瞬間移動すればよかったのだが。最近のオッレルスは妙に人間味を出しバイクに乗り始めてしまったのでバイ

クでここまで来た。

オッレルス「アポなんて取ってないけど大丈夫かなぁ…」

上条「アポってなに?林檎のこと?」


オッレルス「それはアップルだろう。私が言ってるのはアポ。面会の約束を意味する物だよ」

上条「?」

オッレルス「わからないなら別にいいよ。まぁなるようになるか…」

そして上条はオッレルスとともに正面門にいる兵隊らしき人に話しかけた。


オッレルス「あの~すいません女王にお会いしたいんですけど…」

上条「会いたいんですけどー」

鎧の受けからでも筋肉ががっしり付いているのがわかる兵隊に臆することなく話しかけるオッレルス。

兵隊「失礼ですがどちら様でしょうか?一体どのようなご用件で?」

上条「借りた物を返しに来ました」

オッレルス「……という用件なのですが」

兵隊「借りた物を返しに…。失礼ですが一体何を?あとできればお名前を、そうしました何かかわかるかもしれませんので」

オッレルス「失礼、私はオッレルス。ここの少年は…」

上条「上条当麻だ!魔神なんだぞ!」

オッレルス「こらっ馬鹿!!ちょっとこっち来い当麻。失礼、少しお時間をください」」

兵隊から少し離れて話し込む上条とオッレルス。

オッレルス「当麻が魔神なことは言っちゃいけないの!」

上条「なんで?」

オッレルス「ばれると色々めんどくさいから。だから言っちゃいけないよ、わかった?」

上条「お、おう…、わかった」

兵隊の前に戻り直す上条とオッレルス。すると兵隊が

兵隊「失礼ですがオッレルス様も上条当麻様も今日はお会いする予定は取っていませんね。お手数ですがアポを取ってからまたお越しください」

上条「そんなぁ~せっかく来たのに…」

オッレルス「しょうがないよ、アポを取って出直すとしよう」

そう言って帰り支度をし出すオッレルスと上条、しかし、救いの神がいた。

??「おい兵隊。なんだいこの幸薄そうな子供とそこのヨレヨレTシャツ野郎は?」

……救いの神と言うよりは口調からして荒ぶる神っぽいが。


上条「お姉さん誰でせうか?」

??「おいこらガキンチョ。人に名前を聞くときはまず自分から名乗るってことを知らないのかい?」

いきなり出てきた女性にいきなり説教され始める上条。端から見ればできの悪い弟を叱っている姉の図ができている。

兵隊「シルビア様。一体こんなところで何を?」

オッレルス「シルビア……それにこの魔力。聖人か」

どうやらこの女性はシルビアと言うらしい。

しかし、兵隊は思わず敬礼しているし、オッレルスは何かつぶやいている。一体どんな女性なんだろう。

シルビア「また第二王女が第一王女を連れて遊び回ってるんだと、で、それを捜索中」

兵隊「またキャーリサ様ですか…。お疲れ様でございます。」

上条「俺の名前は上条当麻なのです。お姉さんの名前はなんていうんでせうか?」

シルビア「うるさいねガキンチョ。私の名前はシルビアだよシルビア。見ての通りメイドだよ」

上条「メイドさん?そうは見えないんでせうけど…」

シルビア「何だとこのガキ!やんのか」

上条に近づいていくシルビア。どうやら彼女の逆鱗に触れたらしい。しかし、大きなゴーグルを頭に付け 作業着のような服に白いエプロンを纏い、動

き易そうな靴という格好の人物をどうやってメイドと判断するんだろう。

オッレルス「やめておいたほうがいいよシルビアさん。いやここは王宮所属の巫女聖人さんと言った方がいいのかな」

瞬間。シルビアは目にも止まらない早さでオッレルスに掴みかかる。


シルビア「……お前は一体誰だ。”あっち側の人間”か?」

オッレルス「”あっち側の人間”で合ってるよ。最もそこの少年は“あっち側”だが“人間”ではないがね」

兵隊「シ、シルビア様!?」

思わず兵隊が臨戦態勢に入る。しかしシルビアはそれを片手で制し。

シルビア「お前は下がってな。おいヨレヨレTシャツ、名は?」

オッレルス「オッレルス。そう伝えてもらえればわかる」

シルビア「聞いただろう、オッレルスが来たと女王に伝えな」

兵隊は「はい!」っと言って急いで伝えに行く。その間もシルビアは片時もオッレルスから目を離さず。

シルビア「私が聖人と知っていると言うことは私の強さも知っているはずだろう?ならなぜ”やめておいたほうがいい”なんだい?」

オッレルス「答えは簡単だ。君では例え本気を出したところでその少年に傷一つ付けることはできないからだよ」

一般人なら見ただけで失神しそうな目つきでオッレルスを見るシルビア。等のオッレルスは全く持って余裕だ。しかし、その余裕がシルビアの逆鱗に

触れる。

シルビア「ずいぶんとそのガキの力を買ってるみたいだね。でも流石に傷一つ付けられないなんて事は…」

オッレルス「東洋の島国で起きた事件を知っているかい?その少年はその事件の被害者であり加害者であり当事者だ」

シルビア「な…、まさか…」

オッレルス「知っていたようだね。そう、その少年は“魔神”だ」


シルビア「そんな…まさか。こんなガキが…」

オッレルス「ああ本当さ。そこの少年こそが…」

思わずシルビアはオッレルスから目を離し上条を見るそして固まる。つられてオッレルスも見て固まる。

上条「ガキガキ言うな!怒るぞ!」

そこには目を離した隙に土と砂だらけになった魔神がいた…というか上条がいた。

シルビア「……魔神?」

オッレルス「……私も自信がなくなりつつあるが魔神だ」

上条「なんだよ上条さんを見るなり固まるなんて」

オッレルス「ちなみに当麻。その体に付いた砂と土は?」

上条「そこのお姉さんがオッレルスに掴みかかった時着いた」

シルビア・オッレルス「「……………………………………」」

このときの二人の心境は一致しているだろう。

(シルビア・オッレルス「「こんな砂も土も避けられないようなやつが魔神??」」)

思わず力が抜けたのか掴みかかっていたオッレルスを解放するシルビア。等のオッレルスも力が抜けたのか猫背になる。そしてその原因の魔神様は…

上条「人を見るなり残念そうな顔をしてはいけません!失礼ででせうよ!お父さんに教えて貰わなかったのか?」

説教をしていた……。


しばらくすると兵隊が駆け寄ってきて。

兵隊「シルビア様。そこのお二方の入城が許可されました」

シルビア「…あ、ああ。ありがとう。じゃあお前は何時も通り門番してな、この二人は私が連れて行く」

気が抜けてしまったのか反応が遅れたシルビア。兵隊は何時ものシルビアを知っているのか、何事かと心配になるが。

シルビア「心配なんかしてんじゃないよ。私を誰だと思ってるんだい?」

兵隊「いえ、それもありますが。…。王女様達の捜索はよろしいのですか?」

シルビア「あぁ…それに関してはもういいよ。どうせほかの兵隊達が探してるんだしすぐになんとかなるでしょ」

兵隊「わかりました。ではよろしくお願いします」

そう言って城の門を開門し三人を中に入れる兵隊。ついに城の中に入るのだ。


城に入ってそうそう上条はシルビアに話しかける。

上条「人探してんでせうか。手伝おっか?」

シルビア「お気遣いどうも。別にいいけどなんかしてくれるならどうぞ」

オッレルス「なにをする気だい当麻」

上条「実験♪ところで探してる人ってどんな人でせうか?」」

シルビア「王女様達だよ。一人は赤いドレスを着ていてもう一人は白いドレスを着てる。両方とも金髪さ」

上条「オッケ~」

二人の特徴を聞き捜索を始める上条。いつの間にか覚えたのか詮索魔術を展開する。しかしその規模は普通の魔術師とは規模と質がまるで違った。

シルビア「魔神というのは本当のようだね。この城だけじゃなくイギリス全土を詮索魔術の範囲に含んでやがる」

オッレルス「想像以上だな。もうここまでできるのか…。だけど当麻、どうやってこの魔術を?」

オッレルスは未だ上条には卵割りしかやらせていない。術式や魔術やり方なんて教えていないのである。

いくら魔神とはいえゼロからここまでの魔術を構築することはまだできないだろう、不思議に思うオッレルスだが…。

上条「あぁ、オッレルスの本棚に置いてあった本に書いてあったぞ。字は読めなかったけど魔方陣っていうのが書いてあってそれ覚えたら使えるよう

になってた」

シルビア「流石魔神様だね。魔方陣を見ただけでその魔法を完成させるんだから。このクラスの魔術になるとそこらの魔術師じゃ使えるようになるのに

5年はかかるのに」

オッレルス「そうか私の持っていた本を見て…ん、ちょっと待て当麻。見たって一体何の本を見たんだい?」

上条「緑と黒色の蛇が表紙で絡み合ってるやつだけど…」

オッレルス「”原典”を見たのか…私でさえ読むときは目に保護魔術を掛けるのに。やはり成り立てとはいえ魔神はスケールが違うな」

シルビア「ちょっと待て!“原典”を読んだってのかい!?」

シルビアが驚いている”原典”とはそんなにすごいものなのだろうかと上条は不思議がっている。

上条「一体全体どうしたのでせうかシルビアさん?別に楽しい本だったのですことよ」

シルビア「原典を絵本感覚で読んでるのかい…。こりゃどこぞで人生を賭けて原典を読み続けている”禁断目録”が救われないね………」

上条「禁断目録?何それ」

オッレルス「君はまだ知らなくていいよ…それより王女二人は見つかったのかい」

話を中断させるオッレルス。どうやら上条には”禁断目録”という言葉のことは知って欲しくないらしい。

上条「見つけたよ。ここから500mくらい行った先の廊下の天井裏を歩いてる二人がそうじゃない?」

シルビア「天井裏ってあの二人はジャパニーズ忍者なのかよ……」

オッレルス「ジャパニーズ忍者。何だいそれは?」

上条「オッレルス忍者知らないの?おっくれてる~」

オッレルス「なぜかわからないがその言い方はものすごくむかつくな」

珍しく苛々しているオッレルス。しかしあくまで紳士ぶって冷静な表情を崩さないところに彼の人の良さを感じる。

上条・シルビア「おっくれる~♪」

オッレルス「二人そろってそんなこと言うな!!いつの間に仲良くなったんだよ!!そしてシルビア、メイドとしての威厳はどうした!?」

流石に二人がかりの言葉攻撃には耐えられなかったのか叫ぶオッレルス。

………もう少し踏ん張れよ。


上条「どうする。あの女王さん達ここに連れてくる?」

シルビア「できるのか?」

上条「できるよ。上条さんは魔神だもん!」

自信満々に答える上条。

上条「引力魔法ってやつを俺流に改造したやつがあって、それを使えばできるよ」

シルビア「へえ~魔法の改造もできるんだ。やるじゃんチビッコ魔神」

勝手に話を進める二人。一人だけ置いてきぼりを食らっているやつがいるがその置いてきぼりを食らっているやつは……

オッレルス「私は遅れてなんか無い…私は遅れてなんか無い…私は遅れてなんか無い…」

体育座りでしょぼくれていた。

どうやら二人はスルー体制をとるようだ。

上条「オッレルスもそれでいい?」

シルビア「そこのヨレヨレTシャツは無視しとけ、どうせ何お役にもたちゃしないんだから。さっさと連れてきちゃいな」

上条「了解。いくぜ、上条さん流引力魔法改造版。”俺が中心の世界だ(センター・イズ・マイ)”」

幾重にも重なった魔方陣が突如上条の目の前に現れ光り出す。魔神による改造魔術が発動した。

??「わあぁぁぁーーーー一体何事だし~!?」

??「きゃぁぁぁーーーー何なのですかーー!?」

発動した途端どこからか二人分の悲鳴がどんどんこちらに近づいてくる。


シルビア「ん?そういえばチビッコ魔神。その魔術“引っ張ってきた後”のことは考えてあるのかい?」

上条「………………てへ♪」

シルビア「てへっじゃねえよ!!どうすんだよ!!今から飛んでくるのは王女だよ!?」

そう言っている間に叫び声はどんどん近づいてくる。どうするんだろう。

上条「ど、どうしようシルビア~。この魔法途中じゃ止められないんだよ」

シルビア「ああ~もうしょうがない。おら立てボンクラ。少しくらい役に立て」

オッレルス「私は遅れてなんか無い…って一体何!?ってグボォ!!」

??「「キャッ!!」」

体育座りでしょぼくれていたオッレルスをつかみ上げて盾のように立たせるシルビア。

状況を理解していないオッレルスの体めがけて二人の王女は突撃してくる。

??「やっと止まったと思ったらなんか気持ち悪い物にぶつかったし-」

??「止まったのは嬉しいですけどなんか気色悪い物にぶつかってしまいました」

オッレルス「…ゴホゴホ。いきなりぶつかってきて気色悪いとか気持ち悪いとか言われるなんて、私が何をしたんだ……」

上条「オッレルス、ゴメンね」

シルビア「なんか盾に使っといてわるいけどあやまっとくわ。ゴメンね」

オッレルス「なんでだろう…謝られてるのに全く気持ちが晴れない。むしろさらに悲しい…」

投稿します。

感想ありがとうございます。めっちゃ嬉しいです(^^)

待ってくれてた人はお待たせしました。誤字脱字については注意するように心がけますがありましたらどんどん指摘してください。素で間違えてる場合があるので(笑)

今回の投稿ではまだ第二話は終わりません。これで大体半分くらいです。

キャーリサ「名乗り遅れてわるかったし、私は第二王女のキャーリサ。そこのちっこいのが妹のヴィリアンだし。よろしくなー」

ヴィリアン「ちっこいなんて酷いですよ姉上…。見苦しいところをお見せして申し訳ありませんでした。改めて始めまして、姉上に紹介されましたが第三王女のヴィリアンです。よろしくお願いします」

キャーリサという第二王女は全身赤を基本としたドレスや靴などに身を包んでおり、いかにも強きな性格を表している。

それに対してヴァリアンという第三王女は、白や黄色を基本とした明るいドレスや靴を履いており、優しく穏和な性格を表していて何とも対照的な姉妹であることがわかる。

オッレルス「こちらこそ挨拶が遅れてすまないね。私の名前はオッレルスという。よろしく」

上条「え~わたくしの名前は上条当麻といたします。よろしくお願いいたします?」

キャーリサ「なんで疑問系だし?」

上条「敬語の使い方がよく分からないから不安なのです」

キャーリサ「堅苦しいからやめろし。っていうかなんかキモイし」

上条「……………」

上条としては相手は王女様なので失礼の無いように敬語で話した方がいいかなと頑張ってみた結果なのだがどうやら第二王女には不評のようだ。

ヴィリアン「き、気にしちゃだめですよ上条さん。姉上はちょっと言葉が厳しいんです」シクシク

上条「………………」

姉とは対照的に、まだ、さっき言われた「ちっこい」のショックで軽く泣いているヴィリアン王女。上条はこっちの王女となら仲良できる気がした。

オッレルス「私にはノーコメントかい…それともこれが無視というやつかな?」

シルビア「無視だろうよ…。まぁ気にしたら負けだ」

シルビアの優しさは嬉しかったが現実は悲しかった。


シルビア「王女さん達。今日はどうして脱走したんだい?」

一通り自己紹介が終わるとシルビアが話題の切り替えをする。ヴィリアンは何とか泣き止んだがオッレルスは「おっくれてる」の時とは違ったショックを受けまたもしょげていた。そんなオッレルスを無視して会話は進む。

上条「ん?”今日は”。てことはいつも脱走してるんでせうか?」

キャーリサ「いつもとは失礼なやつだし、仮にもイギリスの王女なんだぞ私達は」

上条「そうでせうよね。仮にも王女様がいつも脱走なんて…」

キャーリサ「週7回ペースくらいだし」

上条「いつもじゃなくて毎日じゃん!」

ヴィリアン「でも雨の日はしませんよ?」

シルビア「そうゆうことじゃないよ…」

王女が毎日脱走(雨の日を除く)する国なんて大丈夫なのだろうか?と心配になる上条。それを察したのかシルビアが説明をする。

シルビア「脱走って言っても城壁の中だけだよ。流石に外に出させないさ」

上条「それなら“脱走”じゃなくて、散歩とかじゃないんでせうか?」

シルビア「勉強中に先生を気絶させて逃走したり。部屋に「見つけないと城の外に出ちゃうぞ☆」って書き置きさえなけりゃ散歩でいいんだけどね」

上条「……お疲れ様です」

シルビア「ありがとう」

キャーリサ「今日の脱走にはちゃーんと意味があるし!」

上条とシルビアが話し込んでしまい、会話の外にいたキャーリサが大きな声で発言する。

シルビア「意味?どんな?」

ただ遊びたいからという理由の脱走と違い、意味のある脱走ならそれなりに興味がある。シルビアはキャーリサの話を聞くことにした。

キャーリサ「今日脱走したのはヴィリアンが外に出たーいと言ったからだし」

ヴィリアン「ちょっと姉上!それは言わない約束ですよ!」

シルビア「へぇ~ヴィリアンが…でも一体何で?」

何時も脱走する王女達だが大体はキャーリサがヴィリアンを無理矢理連れ出すというパターンなので今回のパターンは珍しい。なおさら理由が聞きたくなるシルビア。

ヴィリアン「それは、えっと…その………」モジモジ

シルビア「煮え切らないね…キャーリサ、なんで」

キャーリサ「それがいくら言っても外に出たがった理由を話してくれないんだし」

脱走の理由はヴィリアンらしいがそのわけは解らない。行き詰まっていると…

上条「もしかして会いたい人でもいるんでせうか?」

ヴィリアン「え~!何で解るんですか!?」

上条が答えを言った。

キャーリサ「そうなのかヴィリアン?でもそれなら呼べばいいんじゃないか?」

シルビア「解ってないねキャーリサ。女の子が脱走してまで会いたいような人なんだよ。なら答えは一つしかないだろう」二ヤリ

キャーリサ「………会いたいような人……あ、そうゆうことかだし」ニヤニヤ

シルビアとキャーリサは少し離れてコソコソと内緒話を始めた。しかし、その顔はニヤニヤという表現がぴったりに表情をしている。

ヴィリアン「う~。なんで言っちゃうんですか上条さん。とういかなんで解ったんですか」

上条「う~ん。何となく」

キャーリサ「おーいヴィリアン。汗臭いじゃないかそんな大切なことをこの姉上に言わないなんて」

シルビア「それを言うなら水臭いだよキャーリサ、汗臭いならただ臭いだけだろ。それよりヴィリアン。そんな大事なことを何であたしにも言わなかったんだい?」

内緒話を終えたのか二人が近づいてくる。その表情から全てを悟ったのかヴィリアンは顔を真っ赤にする。

ヴィリアン「……プシュー」バタンキュー

上条「おわ!大丈夫でせうか!?」

耐えきれずオーバーヒートし上条に倒れ込む。当然のことなので反応できず一緒に倒されてしまう。

キャーリサ「…まだからかってすらいないはずだし」

シルビア「下手に頭がいいと困っちゃうね。からかいがいが無くなるよ」

上条「お二人さーん。助けてくださーい。このままじゃ上条さんが大変なことになってしまいます!」

今の上条の状態はヴァリアンを抱きしめたまま地面に倒れているという図だ。

キャーリサ「うるさいし。それに上条、もしヴィリアンを重いなんて言ったら打ち首だし」

シルビア「いっちょまえに恥ずかしいのかいガキンチョ。でも役得だろ?しばらくそのままヴィリアン王女の体の柔らかさでも味わってな」

上条「打ち首!?それに上条さんはそんなオッレルスみたいな変態じゃありません!」

オッレルス「誰が変態だって当麻」

上条「オッレルス!」

ようやくオッレルスが復活し、上条の上に乗っかっていたヴィリアンを起こして近くの椅子に座らせた。

ヴィリアン「…は!私は一体…」

オッレルス「思い出さない方がいい。その方が君のためだ」

シルビア「ようやく復活したのかい”遅れてて無視された人”」

オッレルス「グフゥ!!」

オッレルスに大ダメージ。しかしオッレルスは耐えた。

オッレルス「一度通じた技が私に二度も通用すると思うなよ、私だった進歩する!!」

キャーリサ「うるさいしおっさん。キモイからあっち行けし」

オッレルス「ガッハァーー!!!」

まだ私は16だと言ってオッレルスは再び倒れた。しばらく復活は無理のようだ。

上条「二人とも何するんでせうか!せっかく助けてくれたのに。オッレルスが何したと言うんせうか」

キャーリサ「なんかあいつ嫌いだし別に私は王女だし~」

上条「職権乱用!?」

シルビア「あたしは別にあいつのこと嫌いじゃないわよ」

上条「ならなんででせうか?」

シルビア「なんかあいつ見てると虐めたくなるのよね~」

上条「まさかのS!」

おそらく「ド」が付くだろうがあえて追求しない。そしてオッレルスがドMなこともあえて言わない。

シルビア「じゃあ王女さん達はその会いたい人とやらに会いにいきな、あたしはこいつを女王に届けてくるから」

オッレルスを担ぎ上げてシルビアは言う。

キャーリサ「シルビアも一緒に行かないのか?」

シルビア「あたしは一応ここのメイドだからね。客ならちゃんとつれてかないと。あんたはどうするガキンチョ。一緒に来るかい?」

そう、シルビアはこのイギリス城のメイドであり別に不真面目だというわけではないのだ。ちゃんと気配りもできる。

上条「なんかこっちの方が面白そうだからいいや。あ、でも何か食べ物くれると嬉しいな」

シルビア「腹へってんの?」

上条「朝ご飯もまだです」

シルビア「朝じゃなくてもう昼だけど…まあ悪いね、今持ってないよ、後で持ってきてあげる」

上条「ありがと」

シルビアの優しさを感じる上条。別にSなだけで悪い人ではないと言うことを確認し感謝する。

キャーリサ「じゃーなシルビア。また後で」

ヴィリアン「シルビアさん。このことは母上には内緒ですよ」

シルビア「じゃあね。また後で」

シルビアはオッレルスを担いで城に向かっていった。

<上条side>



キャーリサ「よーし。ちょっと道草食ったけど新しい手下もできたしよしとするし」

上条「ちょっと待って。待ちなさい。待って下さい三段活用」

新技「三段活用」を上条は覚えた。

キャーリサ「ん?どうかしたし手下128号」

上条「手下128号ってどうゆうこどでせうか?上条さんはあまりの急展開について行けないんですけど」

ヴィリアン「あ~また始まった…」

なにかが「始まった」らしいが何が「始まった」のか検討も付かない上条。そんな上条に対しヴィリアンは説明する。

ヴィリアン「姉上は自分が出会った家族以外の人間を手下って呼ぶんですよ。母上にはやめなさいって言われてるんですけど…」

上条「なんで手下なのでせうか?」

キャーリサ「お前そんなこともわかんないのか?」

上条「全くわかりません」

キャーリサ「はぁ~しょうがないから一から説明してやるし。まず私は王女だろ?王女なら偉いだろう?だから私と私の家族以外は手下なんだし」

○ャイアン理論みたいだ。

上条「……………………すいません全く解りません。そして訂正を要求します」

ヴィリアン「無駄ですよ。姉上のあの理論はどんなことをしても変えられません」

上条「ならせめて手下じゃなくて部下にしてください!」

ヴィリアン「それなにか違うんですか?」

上条「手下より部下の方がかっこよくないでせうか?」

ヴィリアン「そうでしょうか?」

上条にとっては手下より部下の方がいいらしい。意味的にはほぼ同じだが何かこだわりがあるんだろう。

キャーリサ「手下は嫌なのか。じゃ、部下いちごーにしてやるし」

上条「ははぁー。ありがたき幸せでございます」

ヴィリアン「部下ということに文句はないんですか…」

上条「ところでこれから何するんでせうか?」

キャーリサ「話聞いてなかったのか?これからヴィリアンの愛しい人に会いに行くんだし」

ヴィリアン「ちょっと姉上。そんな愛しいだなんて…」

キャーリサ「それだけ恥じらってて愛しくないなんて無理があるし」

ヴィリアン「でも、ちょっと、あの、実は…別に、……あう~」

またも顔を赤くして何か否定の意見を言おうとするヴィリアン。しかし、恥ずかしさの方が勝ってしまうのかうまく話せなくなる。

キャーリサ「赤くなるのはいいけどまた倒れるなよヴィリアン。今度は起こしてくれるやつがいないから倒れると大変だし」

上条「要するにこれからヴィリアンさんの好きな人に会いに行くんでせうね」

キャーリサ「ちょっ!!お前ストレートに言い過ぎだしそんなことしたらまた…」

真実という名の爆弾発言をする上条。威力はいかに!?

ヴィリアン「えへへ。そんな好きだなんて♪ウフフ♪アハハハハハハハハハハ♪」

((上条・キャーリサ「「ヴィリアン(さん)が壊れた」」))

強すぎたようだ。

キャーリサ「……まぁさっきみたいに赤くなって倒れるよりはこっちの状態の方が多分マシだし、なんとかなるし!」

上条「イエーイ!ナイス、プラス思考」

これでは問題をあえて見ないふりをしているだけなので何の解決にもなっていないが、問題に直面している二人がいいならいいんだろう。

キャーリサ「おいヴィリアン。お前の会いたーいやつはどこにいるし?」

ヴィリアン「ウフフ♪え?多分今の時間なら訓練室で訓練してるんじゃないかしら~」

上条「……これ直さなくていいんでせうか?}

キャーリサ「気にしたら負けだし、戦略的撤退だし」

スルー体勢を崩さないことが決定したようだ。

キャーリサ「よし、部下いちごー。訓練室に言ってその人を連れてくるし」

上条「アイアイサーって言いたいけど上条さんは訓練室の場所も誰を連れてくればいいのかもわかりませんことですよ」

キャーリサ「そういえば誰だかはまだ聞いてなかったし、おい、お前が会いたいやつの名前はなんていうし?」

ヴィリアン「アハハハ♪ヴィリアムよ」

キャーリサ「聞いただろ「ヴィリアム」ってやつをここに連れてこい。訓練室はここをずっと真っ直ぐいって右に見える四角い建物だし」

上条「了解しました。だけどキャーリサ様が行った方がいいんじゃないんでせうか?」

キャーリサ「この状態のヴィリアンを相手してくれるなら私が行くし、それにヴィリアンをお前みたいな頼りないやつに任せてはおけないし」

上条「お任せします」

脱走しても王女。ふざけていても姉である以上妹を何とかする義務は自分にあると理解しているキャーリサ。

こんな一面があるからヴィリアンもキャーリサについて行くんだろう。

キャーリサ「返事したならさっさと行くし、打ち首にするぞ」

上条「全力で行かせていただきます」

文字通り8歳の体の全力疾走で訓練室を目指す上条。

しかし、混乱したヴィリアンを見て気が動転しているのか、せっかく改造して作った先ほどの魔術を使えばいいことにきずいてはいなかった。

上条「真っ直ぐ行って右ってどこまで行けばいいんでせうか~~~~!!」

全力疾走を初めてもう5分はたっただろうか。まだ右に訓練室は見えない。

上条は忘れていたのだ、ここが城であることを。

上条「やばい、このままじゃキャーリサ様に打ち首にされる」

本当に打ち首にするのかは解らないが、可能性がゼロではない以上全力を尽くさなければならない。

上条「行きだこんだけかかるなら戻りも会わせると…打ち首決定!?」

まだ到着してすらいないが戻る時間も考えると10分以上は確定だろう。そうなればあの第二王女のことだ100%遅いと怒るだろう。

上条「う~ん…どうすれば………は、待てよ魔神の力を使えば何とかなるんじゃ」

今更になって気がつく上条。遅すぎだろう。

上条「そもそもあの引力魔術を使えば一瞬ですんだのに~…。悔やんでも仕方ない。初めてだけどやったみよう」

立ち止まり集中し始める上条。ここに魔術を使える者がいれば今の上条の周りに渦巻いている魔力量を見ただけで腰を抜かすだろう。

上条「足に集中すれば早く走れるようになるか?」

そう言って魔力を足に集中する上条。集中のし過ぎで周りの空間が歪んでしまっているがそんなことを気にしてはいられない、事は一刻を争うのだ。

上条「いくぞ~。よーい………ドン!!」

上条が一歩を踏み出した途端。“音”という物が消滅し空間が消し飛んだ。そして魔力を使って走り出した上条の走りの速度は光速を超え一つの流星のような物を描いた。

<オッレルスside>


シルビア「いい加減に起きな、そろそろ担ぐのも疲れた」

オッレルス「…う、私は一体何を?なぜシルビアさんに担がれているんだ」

シルビア「「さん」はいらないよシルビアでいい。敬語で話されるのは慣れて無くてね」

オッレルス「わかった。それと一つ言いたいんだが、どちらかというとこれは担ぐと言うより人攫いに攫われているような図なのだが…」

事実、今のオッレルスはシルビアに山賊に攫われているお姫様のように担がれている。

シルビア「わざわざ運んでやったのに文句言うのかい。今この瞬間にたたき落としてもいいんだよ」

オッレルス「いや聖人の腕力は改めてすごいなと思っただけだ。重かったかな?」

シルビア「ああ、ものすごく重かった。肩が外れるかと思ったよ」

オッレルス「それは悪かった」

「よいしょ」といってオッレルスはシルビアから降りる。聖人であるシルビアにとって人一人分の重さなど普通の人間にとっての鼠と同じくらいなのだがここは恩着せがまし

く言っている。

オッレルス「重いというのは嘘だと思うけど取りあえずこれで君には恩が一つできたな。何か言ってくれていいよ、私にできることなら何でもしよう」

一応、いい家で育っている分、礼儀正しい。そうでなくても女性に迷惑を掛けたのだこのくらいは当たり前だろう。

シルビア「そうか…じゃあ二つだけ…いや三つか。聞きたいことがある」

オッレルス「いいよ。答えられる範囲で答えよう」

シルビア「一つ目。”あんたは一体何者”だ?」

オッレルス「その質問には答えられるよ、私はオッレルス。ただの魔術師だ」

シルビア「ただの魔術師なんていないし嘘つくんじゃないよ。担いでみて解った、あんたの体内魔力量は異常だし質が普通の魔術師と全く違う。その辺の魔術師の持つ魔力量がゴミ屑に見えちまうよ」

オッレルス「それくらい別に不思議じゃないだろう?確かに私の体内魔力量は普通の魔術師より多いし魔力も少し特殊だが問題ではないはずだ」

確かに少し複雑な、それか珍しい魔法や術式を使う魔術師なら魔力の量や質がおかしくても問題ではない。しかし、シルビアがオッレルスをただの魔術師でないと思う理由は

ほかにある。

シルビア「ならなぜあんたは“原典”が読める?」

オッレルス「………さっきのはどうやら失言だったようだ。痛いところを突かれた」

原典という物は魔術師にとって兵器であり猛毒だ。この世に存在する原典の多くは読むことすらかなわない。

いや、読むことができないと言った方が正しい。

原典は確かに強力な力を持つが、見ただけでその猛毒は読者を犯し、最悪の場合は死に至る。

故に、例え目に保護魔術をかけようが普通の魔術師が読むことなどできはしないのだ。

オッレルス「言い逃れはできないようだね…では真実を語ろう。私はただの魔術師ではない“魔神のなり損ない”だよ」

シルビア「魔神のなり損ないに本物の魔神か…一体そんなあんた達がどんなようでここに来たんだ?イギリスの乗っ取りでもする気か?」

オッレルス「それは質問の二つ目かい?」

シルビア「ああそうだよ。それとも答えられないのか?」

オッレルス「いや、別に答えられるよ。しかし、君の望むような答えかは判断しかねるが」

魔神の名し損ないに魔神。どちらか片方が来ただけでも魔法世界を揺るがすほどの大事件なのだ。

それが同時に両方とも来たとなるとただ事ではない。一体どんな理由で来たんだ…と真剣に悩み始めるシルビア。

オッレルス「おそらく信じてもらえないと思うし、自分で言うのも何だが馬鹿みたいな理由だよ。それでも聞きたいかい?」

シルビア「ああ、答えてもらおうか」

身構えるシルビア。例えこの身が砕かれようとイギリスの世界のために戦いを覚悟する。

オッレルス「そんなに身構えなくてもいいよ。ただ借りた物を返しに来ただけだ」

シルビア「借りた物を返しに?一体何を?」

オッレルス「いやこのティーカップを返しに来ただけなんだけど…」

ずっこけるシルビア。80年代の漫画みたいにずっこけている。

シルビア「ただ食器を返しに来ただけ!?そのためだけにあんた達みたいな超大物が二人も来たって言うのかい?」

オッレルス「そうだよ。あとできるなら朝食を頂きたい」

シルビア「あたしの覚悟とシリアスな場面を返せ!!」

シルビア「あ~~頭痛くなってきた。何で仮にも魔術師にとって頂点である魔神と魔神となり損ないが食器を返すついでに飯を欲しがるんだよ」

オッレルス「仕方ないだろう。私達だっておなかは減るし、人間なんだから借りた物は返さないと」

シルビア「魔神だから人間じゃなくて“神”だろ。あんたもあたしから見たら十分魔神だよ」

オッレルス「私達は人間だよ。人であろうとする限り全ての人は皆人間だ」

オッレルスや上条にとって一番辛いことは“異端”や“異常”と言って避けられることだ。なのでこの一点だけは何があっても譲れない。

シルビア「そうだね……悪かったよ」

それを理解したのかどうかは解らないがシルビアは素直に謝る。彼女も“聖人”として何か思うところがあるのだろう。

オッレルス「解ってもらえたならいい。私もすまなかった、少し熱くなってしまった」

シルビア「そう言ってもらえると助かる。じゃあ悪いけど最後の質問だ」

オッレルス「いいよ。ではその質問にはどんなことがあっても本心と真実で答えることを誓おう」

歩きながら話していたためいつの間にか王室の扉の前にいる二人。時間的にもこの質問が最後になるだろう。

シルビア「じゃあ聞くよ。あんたにとってこの世界とあの魔神のガキンチョはなんなんだい?」

投稿します。

あとついでに色々答えます。

>103 受験生です。高校受験をします。推薦狙ってるので勉強は少ししかしてません。ついでに理系です。

>105 ありがとうございます。本気で間違えてました。

>107 >109さんの言うとおりです。せうせう言いたい年頃なんです。

>110 8歳ってこのぐらい喋れないんでしょうか?弟が8歳なのでそれを基本にしてるんですけどもう少し幼くしたほうがいいでしょうか?

オッレルス「質問の意味がよくわからないな。”なんなんだい?”とは具体的にどう解釈すればいい?」

シルビア「意味も何もそのままだよ。……言い直すとすれば、”世界はあんたにはどう見えて”、”あの魔神のガキはあんたにとってどんな存在なのか”だね」

シルビアのこの質問は純粋に興味からくるものだ。

かつて魔神を目指し、魔術の頂点を極めんとした者の目に世界はどう映るのか?

また、どこぞの吸血鬼ではないが、どんなことにおいても頂点とはただ一人である

神とは常に”1”しか存在できない。魔神という神の座を上条当麻に取られたことでオッレルスは魔神になることはできなくなった。

自分の目指していた魔神という存在を、悪い言い方をすれば横取りした上条当麻をどう思っているのか?

この質問に答えることができるの世界の中でたった一人、オッレルスだけなのだ。

オッレルス「…………………」

オッレルスは無言だ。目を閉じているので何を考えているのかは全く解らない。

シルビア「答えられないのかか……まぁそれでもいいか。何となく聞きたかっただけ「私にとって」!」

オッレルス「私のとって世界は醜いものに見えていたよ」

ようやく返ってきたオッレルスの解答。しかし、その答えはシルビアがまったく予想していないものだった。

シルビア「醜い?どうしてそう思うんだい?」

退屈だとか窮屈だという答えを予想していたシルビアにとって「醜い」とは理解の外の解答だ。

オッレルス「君も同じなんじゃないのかなシルビア?……いやこの場合は”聖人シルビア”と言った方がいいかな?」

シルビア「ますます意味がわからないんだけど?」

今現在のシルビアや聖人シルビアにとっても、オッレルスの答えの意味は理解できない。

もしかしたら理解したくないのかもしれない。理解してしまったら自分の大切な何かが壊れるということを直感で感じているのかもしれない。

オッレルスにはそのことがわかっている。だが関係ない。聞かれたから答えているだかなのだから。

オッレルス「ではこう言えば解るかな…。君も私と同じように世界が醜く見えていたんじゃないのかな?」

シルビア「!!」

真実であり現実を。

ドン!!!

シルビア「何を言ってんだい!アタシはそんなこと思っちゃいない!!」

オッレルスが言い終わると同時にシルビアは胸ぐらをねじり上げて壁に叩きつける。

あまりの衝撃に壁にはひびが入っている。しかし、叩きつけられた本人であるオッレルスは涼しい顔をしている。

そのことがさらにシルビアを苛立たせる。だが、そんなシルビアの苛立ちを気づいていながらオッレルスは言う。

オッレルス「そんはずはないだろう。君の目は私と同じ“世界に絶望した目”をしている」

シルビア「………黙れ」

壁に叩きつけられていたオッレルスの体が一瞬宙に浮いたと思うと次の瞬間にはその壁をぶち破り吹っ飛んでいく。

シルビアが殴ったのだ。聖人としての全力で。

聖人のパワーはただの人間とは比べものにならない。象と蟻を比べるようなものだ。

殴られたオッレルスはぶち破った次の壁を何枚も破壊したまま吹っ飛んでいきようやく止まった。

シルビア「ハァ………ハァハァ……」

ただの人間なら死ぬだろう。例え凄腕の魔術師だろうが聖人の全力で殴られたら防御魔術を展開しようが結果は変わらない。

だが、オッレルスはただの人間でも凄腕の魔術師でもない。

オッレルス「私を黙らせたいならこんなものでは全く足りないよ」

シルビア「!?」

魔神のなり損ないなのだから。

オッレルス「君だって理解しているはずだ、……いや、君なら理解しているはずだ。この世界が醜い理由を」

体に乗っていた瓦礫や、服に付いたほこりを払いながらオッレルスは立ち上がる。

シルビア「………もう一度言う、黙れ。それ以上何か言ったら消す」

例え人間を越えた力を持つ聖人であっても、神を目指した彼の前では一般人と大差ない。

そのことを今の一撃により理解していてもシルビアは止まらない。止まれない。

オッレルス「君では例え奇跡が起きようと私を倒すことなどできはしない。「殺す」ではなく「消す」と言っている時点でそのことは明白だ」

シルビア「確かにアタシじゃ逆立ちしたってあんたをぶちのめすことはできない。でも、口を塞ぐくらいならできんだよ!!」

基本シルビアは「結界」を専門とする魔術師でる。

現時点では結界を張る事しかできず、攻撃魔術は習得していない。しかし、その結界魔術を応用し攻撃に転換することができる。

オッレルス「ほぉ……。体に結界魔術を重ねて張ることで防御力と攻撃力を上昇させているのか。基本防御にしか使えない結界を攻撃に利用するなんて見かけによらず随分と頭脳派のようだね」

シルビア「レディーに対して失礼なやつだね。だけどこれならさっきの攻撃よりは効くんじゃないのかな?」

強靱な肉体を持つ聖人だからこそできる戦い方である。聖人でもない魔術師が同じ事をすれば重ねて張った結界の圧力にその肉体を押しつぶされて死んでしまう。

オッレルス「確かに。さっきのよりは効きそうだ。だけどそんな状態で暴れたりなんかしたらこの城も無事じゃすまないよ」

シルビア「安心しな。ってか気付いてるんだろ?さっき殴った時と違ってこの空間には逆転防御結界が何重にも張られていることを」

確かにオッレルスとシルビアの周りの空間は結界に覆われているせいか多少歪んでいる。

<<防御し封印するための結界を裏返しにし、敵と自分を閉じ込め、中の戦闘による攻撃を結界の外に一切逃さない>>それが彼と彼女を覆っている結界だ。

シルビア「アタシはどうも力の加減がうまくできないからさ、周りの物を色々とぶっ壊しちゃうんだよ」

    「だから何時も手加減してばっかで苛々してたんだ」

    「それで色々考えたんだよ、アタシが本気で暴れるにはどうすればいいのかを」

オッレルス「その結果がこの結界か……すごいな」

シルビアの結界を素直に賞賛するオッレルス。

一つの新しい魔術や術式を作ることは並の努力ではできはしない。例え基礎となる物があろうともだ。

その努力に、その決意に感動する。

オッレルス「やる気満々のところ悪いが別に私には君と戦うつもりはないよ」

シルビア「それは勝負にすらならないっていう余裕か?だとしたら随分とアタシもなめられたもんだね」

すでに臨戦態勢に入り今にも飛びかかりそうなシルビアを前にオッレルスは冷静だ。どうやらこの男を焦らせる事ができるのは上条当麻くらいのようだ。

オッレルス「いや、そうではなくて。私としてはただ質問に答えただけで今の状況に至るわけであって、そもそも戦う気なんて全くない」

シルビア「アタシにもそんな気はなかったんだけどね。あんたがあんなこと言いさえしなければ」

オッレルス「だが事実だろう?」

オッレルスのその台詞を合図にシルビアは目にもとまらぬ早さで殴りかかった。

実際、聖人の脚力による走りの速度は音速を超え。姿をとらえることすらできない。

先程とは違い今度の攻撃には助走距離も多重結界によるコーティングもあり、威力は比べものにならない。

殴りかかったシルビアでさえこの一撃が決まればオッレルスに多大なダメージを与えることができると確信していた。

しかし、





オッレルス「やれやれ、どうやら君と話し合いをするには少々手荒なまねをする必要があるようだ」

音速を超え迫り来るシルビアに対しオッレルスは確かに言った。

その表情は落胆でも怒りでも笑いですらなく冷静そのものだった。


オッレルス「ようやく話ができるかな?」

シルビア「………………」

最初と変わらない口調でオッレルスは言う。対するシルビアは無言のふくれっ面だ。

結果で言うと勝負は一瞬にして終わった。………というか一発で終わった。

殴りかかった来たシルビアをオッレルスは片手で受け止め、そのまま廊下に叩き突けた。

訂正も弁解の余地もなく、ただそれだけだ。

聖人としての全力も、結界を使う魔術師としての全力を持ってしてもオッレルスには遠く及ばなかった。

流石にまた行動を起こすほどシルビアも馬鹿ではない。

思えば最初の一撃を当てることができただけで奇跡だったのだろう。

偶然は重ねて起こることがあるが、奇跡は重ねては起こらない。

偶然を超え、奇跡的に起きるから奇跡は奇跡と呼ぶのだ。

オッレルス「……そこまで無言だと逆に心配になるよ。大丈夫?どっか痛めたりしたかい?」

シルビア「………………別に、どこも痛めちゃいないよ」

オッレルス「ならよかった。…しかし、君にとってこのことは辛いことだったのかな?ならば今更だがこの質問は無視して次の質問「言え」に……え?」

シルビア「聞こえなかったのか?”言え”と言ったんだ。あんたがそう思った理由を」

オッレルス「いいのかい?」

オッレルスの声には疑問が混じっている。”その理由”を言うことでシルビアがどうなるかを理解しているからだ。

シルビア「いいよ。別に。ここまでくりゃ聞いときたいんだよ」

傷つくことを、事実と向き合うことを覚悟したシルビア。その顔はなぜだか晴れ晴れとしていた。

オッレルス「私が世界を醜いといった理由を一言で表すなら”厳しいから”だな」

シルビア「厳しい?何に対して?」

オッレルス「それこそ解っているだろう。………全てにだよ、弱者にも強者にも有能にも無能にも異端にも異常にも」

シルビア「っ!!」

唇を噛み、何かを堪えようとするシルビア。何か思うところがあるのだろう、その体は過去の恐怖のせいなのか震えている。

オッレルス「私が魔神を目指した理由は他人に認めて欲しかったからだが、なぜだと思う?」

シルビア「差別か拒絶をされたんだろ」

特に迷うこともなく答えを言い当てるシルビア。その表情は俯いてしまったせいで見ることができないが、その声にははっきりとした意志を感じる。

オッレルス「………君もそうだったのかい?」

シルビア「どうだろうね。だけど同情ならいらないよ。辛いとか悲しいとか感じる度合いは人それぞれだ。アタシの経験があんたの経験より酷かったなんて比べることなんてできないんだから」

オッレルス「そうだね。では次の質問に答えようか。………何だったっけ?」

シルビア「あぁ……別にいいよもう。何か飽きた」

オッレルス「飽きたって………まぁ私としても別にいいんだけど。だけど君にはやって貰うことができたようだ」

シルビア「壊した壁の掃除か?殴った事への謝罪か?」

自分なりにオッレルスの頼みを推測するシルビア。どちらも確かにやらなければならないことだがオッレルスのまじめな顔を見たところ、そんな小さな頼みではないようだ。

オッレルス「壊した壁については君に任せるし、殴られたことは別にいいよ。君にやって貰いたいことはこの結界の外にいる人たちの説得だよ」

思わず振り返ると結界の外には兵隊や傭兵やメイドやらが中の様子をうかがおうと躍起になっていた。

オッレルス「この結界は中から外は見えるのに外から中は見られないのかな?」

先程とは違って理由で頭を抱えるシルビア。今更ながら自分のしたことの重要さについて理解したようだ。

オッレルスもそれが解らないはずがないがいつまで経ってもマイペースで冷静なままだ。

シルビア「あぁ……アタシはなんてことを」

オッレルス「いや、質問に答えてくれよ」

シルビア「こんな事、女王に知られたら……」

オッレルス「無視しないでくれよ。そして答えてくれ」

シルビア「壊した壁は給料で弁償するとして………いくらぐらいかかるかな?」

オッレルス「無視はしてないんだね。だけど質問を質問で返している上にそんなこと知るか」

シルビア「ッチ。役に立たないヤツだね」

舌打ちしやがった。だけどなぜか似合っている。

オッレルス「何だろう…さっきのお返しを無性にしたくなった」

シルビア「女の子の暴力を振るうきかい?紳士の風上にも置けないね」

オッレルス「紳士だからこそ怒るときは怒るんだよ。っていうか今更だけど君いくつ?女の子?」

直後、オッレルスの体がまたしても宙に浮いた。結界に衝突し鈍い音を立てている。

基本、無敵っぽいオッレルスにも隙ができれば攻撃は当たるようだ。

シルビア「女に年を聞いちゃいけないって知らないのかい?」

オッレルス「なら女の子はそんな簡単に手を出しちゃいけないってことを知らないのかな?」

立ち上がるオッレルス。やっぱり無傷でノーダメージだ。

シルビア「知らないね。代わりにいいこと教えてやる。女に年を聞くヤツは八割以上がマゾなんだよ」

オッレルス「わ、私はマゾなんかじゃない!!」

シルビア「怪し~いねぇ~」

オッレルス「君とは一度、腹を割って話し合う必要がありそうだが、今はそれよりこの結界から出してくれ」

シルビア「あんたならこんな結界くらい片手で壊せるんじゃないの?」

実際、オッレルスなら片手を使わずともこんな結界くらい壊せるだろう。

張っておいて今更ながら小自分とオッレルスの力量差を理解したので当たり前の疑問を口にする。

オッレルス「できないこともないんだけど…多分壊すついでに周りの人たちもふっ飛ばしてしまう」

シルビア「加減くらいできないのか…」

オッレルス「なにぶんなり損ないなのでね、力の調節がうまくできないんだよ」

単純に身体能力や防御力を上げるといったコントロールなら習得したのだが、攻撃用に使うとなると話は別だ。

下手に使えば世界を壊すことすらできる力であるがために訓練もしにくいし特訓相手すらいない。

上条のように完璧な魔神なら世界を壊したところで元に戻せるからいいが、オッレルスではそれができないので慎重になる。

シルビア「でもアタシ、結界を作るのは得意なんだけど解除するのは苦手なんだよね」

オッレルス「頑張れ聖人」

シルビア「はぁ~。解ったよ頑張ってやる。その代わり外の奴らの説得はあんたがやりな」

オッレルス「ちょ、ちょっと待ってくれそれ一番の重役じゃないのか!?」

シルビア「五月蠅いな~。五月蠅い男は嫌われるよ。……………ほい、解除完了」

オッレルス「待って!まだ心の準備が…」

結界が解除されると彼らの前にはおよそ30人くらいの人に囲まれた。

オッレルス「………え~。本日はお日柄もよく…」

兵隊「誰だ貴様は」

何とか友好的な関係を築こうと頑張ったオッレルスだが、兵隊の一言によって一刀両断される。

シルビア「あんた友達とか少なそうだね」

オッレルス「そうだなぁ。まず友達とはどこからどこまでの範囲を含むのかを明確に言って貰わないと…」

シルビア「もういいよ、それ友達がいないヤツの台詞だし」

オッレルス「もういいとはなんだ!!まだ試合は始まってすらいないぞ!」

シルビア「ならせめて「いない」って所を否定しろよ」

否定できないから否定しないのだが、それを言葉に出してしまったら何だか負けた気がするので言わない。

兵隊「さっきから何度も言っている!貴様は何者だ!」

しびれを切らした兵隊が吠える。周りを囲んでいたほかの兵隊や傭兵達もじりじりと距離を詰めてくる。

オッレルス「私はオッレルスという者なんだけど、アポは今日取ったばっかりだけど一応客人になるかな」

兵隊「嘘をつくのも大概にしろ、仮にもこの城の客人がなぜシルビア様と戦っている?」

オッレルス「……シルビア様?君、偉かったの?」

シルビア「この城の兵隊や傭兵はみんな”あっち側”に通じてるからね。あたしが聖人な事も知ってて自然と称えられちゃってね」

メイド達に関してはシルビアはこの若さでメイド長のようなものなので言わずもがなだ。

オッレルス「……彼らには、私が君と戦ったと勘違いされているようだが」

シルビア「アタシが戦いにしか結界を使わないこと知ってるからさ」

本当のところ、戦いにすらならずオッレルスの余裕勝利なのだがあえてそのことは言わない。

兵隊「何ボソボソと言っている!シルビア様も離れてください、危険かもしれません」

オッレルス「私って危険に見える?」

シルビア「見えるね。むしろ安全そうな所がないくらいだ。近づいたら妊娠させられそうだよ」

オッレルス「よし表へ出ろ。そして状況を何とかしろ」

シルビア「表に出るのは遠慮するよ。だけど何とかするなら何とかできる」

オッレルス「では何とかして貰おうか……ってグハァ!?」

するとシルビアはどこからか頑丈そうなロープを取り出し。オッレルスを縛り上げて床にたたきつけた。

オッレルス「一体全体何をする!?私はこんなことされても喜んだりしないぞ」

シルビア「……黙って、アタシに任せときな」

兵隊「シルビア様。一体何を!?」

シルビア「こいつは確かに怪しダサイし格好悪いし馬鹿面だし幸薄そうだけど女王の客人だよ」

オッレルス「そこまで言われる覚えはないぞ!?」

兵隊「そうですか…。シルビア様がそう言うならそうなのでしょう」

オッレルス「兵隊さん…いや兵隊様!納得しないで!怪しいのは仕方ないけどほかは否定して!!」

シルビア「ありがとう。壊した物については後でアタシが何とかしとくからあんた達は何時も通り仕事してていいよ」

兵隊「了解しましたでは失礼します」

そういって兵隊達や傭兵達やメイド達は去っていった。シルビアに対する信頼の強さが伺える。

オッレルス「もうヤダここ」

シルビア「じゃあ改めて王女に会いに行くか」

オッレルス「私は何か大切な物を失った気がするけどね。王女に会うのがこんなに大変なことだとは思わなかったよ」

失った物はこの城の兵隊や傭兵りやメイド達からの信頼だと思われる。違うかもしれないが。

シルビア「じゃあ出発~」

オッレルス「では行こうか……あれ、シルビア、ロープがほどけてないんだけど」

シルビア「♪~~~」

まだオッレルスはシルビアのロープに縛られたままだ。芋虫のような状態なので立つの難しいだろう。

そしてそのロープの先端はシルビアに握られている。

オッレルス「待って!ロープがほどけてないから今君は私を引きずっているっ…て痛い!地味に痛い!」

シルビア「五月蠅いな~人が気分よく歌を歌ってるのに。芋虫みたいに頑張ってウネウネ動きな、そうすりゃ引きずられずにすむから」

オッレルス「芋虫みたいにってなんだ!」

シルビア「何?芋虫への文句ならアタシは容赦しないよ」

オッレルス「私が文句あるのは君にだ!だから君が聞け!!」

シルビア「やだね、知るか」

その後もオッレルスの抵抗は何度も続いたが、その成果は実らず引きずられたままだった。

コンコン

シルビア「お~い王女。オッレルスとか言う芋虫…間違えた変態を連れてきたよ~」

オッレルス「まだ間違ってるぞ、変態ではなく客人だ」

シルビア「それも間違いだろ、正確に借りパクした盗人なんだから」(借りパク=借りたままパクッタ(貰ったor盗んだ)

今だめげていないオッレルスの根性はなかなか強い。だがそれ以上にシルビアの虐め癖が強い。

??「王女。シルビア様が見えましたよ」

??「解ってるよ。今行くとこだ、……やっぱジャージでいいか、オッレルスだし」

??「駄目ですよ、少しは国のトップって自覚を持ってください…」

??「え~面倒臭いなぁ~」

??「子供みたいな事言わないでください。もう若くないんですから」

??「よしお前はクビだ」

??「なんで!?」

??「むかついたから」

オッレルス「……………ねえ、この先に本当に王女が…」

シルビア「…………言うな」

すいません。突如パソコンがフリーズして残りの書きためが消失しました。

次回の投稿で消失した分と続きを出します。

実は122~123の間にシルビアの過去の話を入れていたんですけど。入れた方がいいですか?

国のトップなら王女じゃなくて女王かな

投稿します。

今回の投稿で第二話終わらせる予定でしたが前の書き溜め消失と、思ったより長くなりそうな感じになったのでもう少しかかります。次回の投稿で第二話終わらせる予定ですのでもうしばらくお付き合いください。

>>133 間違い指摘ありがとうございます。

??「ならせめてクビになる前にエリザード女王!テメェに一発くれてやる!」

エリザード「ふん、英国女王の私にそんなことができるものか。やれるもんならやってみ…ってワォ!!ほんとに攻撃してきやがった!?」

??「チッ。うまく躱したな。次こそは……」

エリザード「マジでやりやがったよコイツ!?もう容赦しねぇ、英国女王の底力見せてやる!!」

ドンガラガッシャン!!ドカーーン!!バコーン!!

扉一つ隔てた向こうでは壮絶な戦いが繰り広げられているようだ。

オッレルス「これは何とかしないとまずいんじゃないのかな?」

シルビア「じゃあ放り込んでやるから何とかしてこいよ」

オッレルス「ならせめてこのロープを解いてくれよ」

シルビア「解かずに何とかしてみろよ、男だろ」

オッレルス「男関係なくないか!?男女差別反対!!」

シルビア「ガタガタ言わずにやれってんだよ」

オッレルス「ちょ、待っ!!」

右手でオッレルスを構え、左手で扉を開け、放り込んだ。


投げ込まれたオッレルスが見たのは英国で代々王家に伝わるカーテナという剣を持ち、見るからにド派手なドレスに身を包む女王と、若いが身に纏っている気配が只者ではない青年が普通の剣で鍔迫り合いをしていた。そして、

エリザード「惜しい男だったがくたばれ次期騎士団長!英国国宝”カーテナ=セカンド全次元切断スラッシュ”!!」

次期騎士団長「英国最大の霊装使うとかアンタこそマジじゃねえか!!ならこっちこそ…英国騎士団最終奥義”主神の一撃”(オーディンストライク)!!」

今まさにお互いの大技を繰り出そうとする瞬間だった。

ガキィィィィィイイン!!

甲高い金属音を立ててお互いの剣が交差し、その衝撃によって吹き飛ぶ。

エリザード「っ!!??」

振る者に超人的な魔力と身体能力を追加させ、聖人をも凌ぐ力を授ける剣であるカーテナ=セカンドを使用するエリザード女王に対し、これといった魔力的および霊的性質を持たない普通の剣を使用する次期騎士団長の剣のよる技ではその力量差は比べるまでもないはずなのに互角の威力を見せた。このことに対してカーテナの力を理解しているエリザードは驚きを隠せない。

エリザード「なぜだ!お前の剣にはカーテナに及ぶ力などないはずだ!」

次期騎士団長「いつまでも俺たち騎士達の力や戦い方が変わらないわけ無いだろう?」

エリザード「くそっ、なぜ………いや、待て、この魔力反応…まさかお前」

挑発してくるような態度に苛立ちと驚愕を隠せないエリザード女王だが、次期騎士団長が持つ剣に込められた”複数の魔力”に気がついた。

次期騎士団長「お気づきになられましたか…。確かに私一人の力ではあなたの持つカーテナの足下にも及ばないだろう、だが、その力が数十、数百、数千となれば話は別でしょう?」

エリザード「”協力”か…」

”協力”一人の術者に対して、その術者を信頼する者たちが自分の魔力を分け与えるという術式。本来その魔力を分け与えてくれる者の人数は多くても数十人が限界だがカーテナに拮抗するほどの魔力を貰っているのならその人数は数千を超えるだろう。しかし、常人ならそんな数千人もの魔力に耐えられるはずもないのだが”英国の騎士団長”などといった”特殊”な人間なら話は別になる。

エリザード「騎士団長クラスの人間になればこのカーテナから多少なりとも“天使の力”を授けて貰い、それで数千といった人達からの魔力供給にも耐えられるようになるからな」

次期騎士団長「後悔っていうのは後にするから後悔って言うんですよ。よかったですね、一つ失敗して一つ賢くなりましたよ」

エリザード「後悔などしていないよ。私はお前を次期騎士団長に任命したことを今この瞬間ですら誇りに思っている」

次期騎士団長「っ!?戯れ言を!」

エリザード「戯れ言なんかじゃない、本心だ。英国のためにその身も心も全てを捧げ精進してきたお前という人間を私は誇りに思っている」

次期騎士団長「エリザード様………」



オッレルス「ねぇ。さっきの戦いが嘘みたいになっていい話にまとまり始めてるんだけど…」

シルビア「……………黙ってな。これからが見物だよ」

オッレルス「?」

次期騎士団長「エリザード様、私が悪かったです。どうかお許しいただけないでしょうか」

エリザード「ふっ。何を言う次期騎士団長。私がお前を許さないと思っているのか?」

頭を垂れ膝を突く次期騎士団長の目の前まで彼女は進み、その頭を優しく撫でる。その姿はオッレルスやシルビアからすれば聖母マリアのように見え、神々しかった。

次期騎士団長「私を許してくださるのですか…?あなたに剣を向けたこの私を…」

エリザード「許すも何も私がそんなことくらいで怒ると思うか、だとしたら随分と安く見られたものだな」

次期騎士団長・オッレルス・シルビア「「「………………………」」」

ぶっちゃけこの城にいる人間の99%以上はエリザード女王の事をそう見ている。(ちなみに残りの1%未満はヴァリアンと今日来たばかりに上条)

エリザード「……けどな、私はそんなに高くもないんだよっ!!」

次期騎士団長「っう!!」

頭を撫でていた手を突如停止させ。調和によって強化された剣を蹴り飛ばすエリザード。その表情には先程までの聖母マリアの面影はなく、悪神ロキのようにすら見えた。

次期騎士団長「今までのは全て嘘だったのですか、エリザード様!!」

エリザード「嘘などではでない全て本心だ。だが甘いな、甘すぎるぞ次期騎士団長。物事とは全て勝てばよかろ~なのだ!!」



オッレルス「少し見ない間に彼女も随分変わったね」遠い目

シルビア「前見たときはどんな人だったんだい?」

オッレルス「一言で言うなら対象追跡型爆撃機能付のハリケーンかな?多分今のけ蹴りも剣じゃなくて頭にやってた感じ」

シルビア「じゃあ随分と丸くなったんだね」遠い目

ーーーーーーーーーー数分後ーーーーーーーーーーー



土下座の状態のまま頭だけ床に埋まっている騎士が一人いて。その背中の上に優雅に乗っている一人の女性がいた。

というか、埋まっているのが時期騎士団長で、乗っているのがエリザード女王だった。

………目を背けた後、回れ右をして立ち去りたくなるような光景だが、それはしてはいけないだろう。

シルビア「おーい、エリザード様。オッレルス連れてきましたよ」

エリザード「ん?おーオッレルス。おひさー」ヒラヒラ

オッレルス「この状況を見てよく君も女王も普通でいられるね」

シルビア「じゃあどうすればいいんだよ?」

オッレルス「取り合えず埋まられたまま座られている次期騎士団長さんを助けるべきじゃないのかな?」

正論だ。だが、それができるやつはたぶん勇者とか英雄とか呼ばれるようなやつだけだろう。

エリザード「別によくないか、このままで?」

オッレルス「よいと思うなら病院に行くことをお勧めします」

エリザード「やだ!まだ私ピチピチだもん!体のどこにもガタなんてきてないもん!」

シルビア「うぜぇー。っかキモ!!さっさと行けよ。そんで帰ってくるな」

エリザード「シルビアがひどい!まさかの反抗期!?」がーん

誰が見てもわかるくらいショックを受けるエリザード女王。背景にがーんと言う文字が見えるくらい動揺している。

オッレルス「そりゃあ人間なんだから反抗期の一回や二回くらいあるでしょう」

エリザード「黙れオッレルス。リメリアは人間不信だし、キャーリサは一年中反抗期だから城の中で味方してくれるヴィリアンやシルビアが反抗期になってみろ、私は職務をボイコットするぞ」

オッレルス「仮にも女王なのに城の中に味方が二人しかいないのか?」

シルビア「むしろその見方二人にアタシが含まれてたことに驚いてるよ」

エリザード「うわーーーん。裏切られたーー。味方だと思ってたのにー」

エリザード「もうやだこんな生活………。癒しと味方が一人しかいないなんて。……………そうか、やっぱヴィリアンが天使だったのか」シクシク

シルビア「泣くのはいいけどそろそろどいてあげたら?さっきまで何とか動いてた次期騎士団長の手が止まってるよ」

言われて見れば先ほどまで頭が埋まりながらも文字通り必死の抵抗を続けていた次期騎士団長の体が停止している。

オッレルス「ちょっと待って!いや、待たないで早くどいて!それやばいんじゃないの!?」

エリザード「静かになったと思ったら止まってたのか。おーい次期騎士団長大丈夫かー?」

シルビア「………………返事がない。どうやら屍のようだ」

オッレルス「勝手に殺さないであげて!助けてあげて!っつうかいい加減にこのロープ解いてよ!」

シルビア「驚くことにオッレルスはいまだロープでグルグル巻きの芋虫状態のままなのでした  まる」

エリザード「ん?そういえばオッレルス…お前そんなプレイが好きだったのかい?」

オッレルス「嫌いじゃないと答えられないのがとてつもなく悔しいけれど、今、この瞬間は大嫌いだよ!」ウネウネ

ロープでグルグル巻きの芋虫状態のまま這いずりながら進みだし、次期岸団長の救出を試みるオッレルス。見ようによっては16歳の少年がこんな状況でそんなことをしていること自体が特殊なのだが。どうやらこの城の住人たちには一般的な常識は通用しないらしい。

ーーーーーさらに数分後ーーーーーー

オッレルス「つ…疲れた。多分人生で一番疲れたー」

次期騎士団長「どなたかは存じませんが、本当にありがとうございました」ペコリ

オッレルス「いえいえ。人として当然のことをしたまでですよ」

あれからどうやったのか芋虫状態のままオッレルスは次期騎士団長の救出に成功していた。

エリザード「本当に芋虫状態のまま救出しやがったよ。すごいな魔神」

オッレルス「魔神のなりそこないだよ。もし本物の魔神ならそもそもロープごときに動きを制限なんかされないからね」

もしロープでグルグル巻きにされていたのが本物の魔神である上条なら、そのままの状態ですらどんなことでもできてしまうが、オッレルスでは流石にできることとできないことがある。

エリザード「なりそこない?なぜだ。まだ誰もその領域には到達していないんだから一番近いお前が魔神で間違いないだろう?」

シルビア「その領域に到達したやつがいるんだよ。っか今この城に来てるよ」

エリザード「マジで!?来てんの!?本物の魔神が!?何で!?」

シルビア「マジで。オッレルスの付き添いで来てるよ」

エリザード「何!戦争でも仕掛けるつもりかオッレルス!?全面降伏するから許してくれ」

次期騎士団長「エリザード様!国のトップともあろうお方が軽々しく全面降伏などといわないでください!」

エリザード「黙れ次期騎士団長(笑)!もし本物の魔神とオッレルスが国取りを考えてるならたかが一国の戦力を全部つぎ込んだくらいで勝てるようなもんじゃないんだよ!」

オッレルス「あのー…。盛り上がってるとこ悪いんだけど国取りとか戦争とかそんなつもりは一切ないよ」

魔神というものを少ししか理解していない次期騎士団長を羽交い絞めにしながら頭を下げているエリザードに対しオッレルスは申し訳なさそうに言う。隣ではシルビアが「そりゃそう思うよね…」といいながら呆れ顔をしている。

エリザード「国取りや戦争が目的ではない?ならいったい何を…。まさか私が目的か!?」

次期騎士団長「それだけはないでしょう。誰が好き好んで40過ぎのおばさんを狙う…グ…バキ!!………………」シーン

カーテナ=セカンドで強化された筋力を無駄に使い、武道の世界王者クラスが驚くほどの速さで折った。

エリザード「お前はもう少し女心というものを学べ」

シルビア「…………それ首折れたんじゃない?」

オッレルス「せっかく救出したのにものの数分で死亡!?」

エリザード「安心しろ。この程度でくたばるような鍛え方はしていない。仮に折れているんだとしてもガムテープで補強してやるよ」

シルビア「いや、それ確実に折れてるよ」

オッレルス「ガムテープで補強って何!?ギプスで固定してあげて!」

エリザード「お前らそろって五月蝿いなー。何なの、実は付き合ってたの?」

シルビア「そんな訳「そんな訳ないでしょう。「イラッ…「失礼だが私はもう少しおとなしめ子がタイプですか「………オラ!!「グヘェ!?」

芋虫状態のまま反対するオッレルスを聖人の脚力で踏みつけるシルビア。一度では収まらずに度三度と何度も踏みつけている。

エリザード「聖人の本気怖っ!っか床!割れてる!シルビアストップ!床が抜けちゃう!」

エリザード「シルビア、マジでそろそろ止めて。床が抜けちゃう」

シルビア「オラ、オラ、オラ!!……ん?どうした女王。もう少しでいいとこなんだけど」

エリザード「いやいや意味わかんないし。てかオッレルス縛ってたロープも切れちゃったからそろそろやめて」

どのへんがいいところなのかは全くわからないが取り合えず床の崩壊は間逃れた。

怪我と巧妙というべきか、シルビアの踏み付けでロープも切れオッレルスは自由となった。

オッレルス「自由って素晴らしいッ!!」

エリザード「おー元気だなー。さっきまで踏みつけられていた男とは思えないぞ」

シルビア「こんだけやってダメージゼロとか結構ショックだよ」

オッレルス「精神面でいったらもう赤ゲージに入ってピコピコ点滅してるけどね」

エリザード「あーーまーあれだ、あれ。話脱線したけどお前は何でここに来たんだ?国取りや戦争以外の目的でお前や本物の魔神が来る理由なんて見当もつかんぞ


オッレルス「本日何回目かの説明になるかわからないが、食器を返しに来ただけだよ」

ついでに朝食を恵んでもらいたかったのだがその点についてはもう諦めた。

エリザード「ふーん、そっか。借りたものちゃんと返しに来るとかお前以外といいやつだったんだな」

シルビア「軽ッ!!てか信じんのかよ。ちょっとは疑ったりしないの!?」

エリザード「おいおいシルビア。人はまず信じることで前に進むんだぞ。取り合えず信じてからじゃないと話が進まないときもあるしな」

シルビア「アンタ仮にも国のトップだろ。騙されるとか裏切られるとか疑わないわけ?」

イギリス女王であるエリザードは政治面ならず他の様々な分野でも他人と関わる。その関わった結果でイギリスの今後が決まることだってあるのだ。ならば信じて進むのではなく、疑って進むというのが正しいあり方だろう。

エリザード「別に裏切られようが騙されようがどうでもいいよ。私は私が信じたいと思ったから信じるんだ」

シルビア「その結果、裏切られたらどうするんだ。それでもまだ信じるのか」

エリザード「100回人に裏切られり騙されたりしたら101回人を信じればいい。それだけの話だろ?」

シルビア「   」

絶句するシルビア。裏切りや騙しという行為に日常をおくエリザードの言葉だからこそ重みがあり響く。その心の強さに驚愕すると同時に感動すらしているように見える。

オッレルス「相変わらずあなたには適う気がしないよ」

見つめ合う二人の後ろではオッレルスが独り言のようにつぶやいた。

エリザード「じゃあさっそくその食器を返してもらおうかな。つうか何かお前になんか貸した記憶なんてないんだどなー」

オッレルス「さぁ記憶違いじゃないのかな?」汗

借りているという勝手に貰ってるという状態なので彼女の認識は正しい。だが面と向かって持ち主に「勝手に貰ってました」なんて言えるほどオッレルスの神経は図太くない。

エリザード「まぁいっか。帰ってくれば同じだし。どれどれ、どんなやつを貸したかなー…。よりによってそのカップかよ」

シルビア「ていうかよくアタシの攻撃を受けながらそれ守れたね」

オッレルス「最近になって日常的に物を守る経験が増えてね」

上条と一緒に生活するようになってからオッレルスは、上条の力で家のものが壊されるのをなるべく防ごうと物を守るためのスキルを格段にあげていた。

オッレルス「ん?このカップがどうかしたのかな?」

エリザード「どうもしないよ。このカップが王家に代々伝わるもので、これが無くなったせいで城中で大騒ぎになったり、誰かが盗んだってことになって盗んだと思われるやつを拷問したりしたぐらいだよ」

オッレルス「………………………………え?」

シルビア「そういえば、アタシが来る前にそんなことをしたって聞いたことがあるよ」

オッレルス「…ち、ちなみに何人ほど犠牲に?」

エリザード「確か千人は言ってなかった気がするけど…。何人だっけ?」

オッレルス・シルビア「「………………………………」」

先ほどとは違った意味で気まずい雰囲気に包まれる。代表してシルビアがオッレルスに聞いた。

シルビア「何か言うことは?」

オッレルス「すみませんッッッしたァァああああああああああああああああああああ!!!」

英国歴史史上おそらく最高に綺麗で高速な土下座が決まった。

エリザード「おっ。なんか運動部っぽいな」

シルビア「アンタも中々のんきだね」

エリザード「まぁいいいさ、過ぎたことを悔やんでも仕方ない。拷問したやつらがあの世で幸せに過ごしてることを祈っとこう」

シルビア「そうだね」

オッレルス「すいません。ごめんなさい。許してください」

今度は土下座し謝罪を続ける状態のオッレルスを椅子にしてエリザードとシルビアが座っている。…隣では次期騎士団長が安らかにしているが。

エリザード「いいって言ってるだろう、気にすんな。無罪だったことは確かだがそもそも盗んだと疑われるようなことをしてきたやつらも少なからず悪いんだから」

オッレルス「だが、私のせいで何の罪もない人たちを死なせてしまったわけだし…」

シルビア「あぁもうじれったい。女王がもういいって言ってんだからいいんだよ」

エリザード「そうさ!いやなことは忘れよう!」

シルビア「それはただの現実逃避だよ」

エリザード「( ゚д゚)/」がーん

シルビア「キモいわ!!おばさんが顔文字使うな!」

エリザード「おばさんだとー?このピチピチグラマースーパー女王をおばさんと言ったのか小娘ぇーー!」

(オッレルス「どのあたりがピチピチスーパーグラマスなんだろう?」)

実のところ確かに女王は若く見えるがそれといっていいわけでもない。

シルビア「小娘で結構。おばさんよりはマシだもんねー」(笑´w`)ケラケラ

エリザード「…潰す!!」

オッレルスの背中でカーテナを構えるエリザード。対するシルビアも自分の体に先ほどオッレルスを攻撃したときのような身体強化のための結界術式を展開する。

オッレルス「私の上で何をする気だ!?」

エリザード「おいオッレルス、力を貸せ。この小娘に現実の厳しさと私の美しさを叩き込むために」

シルビア「ならオッレルス、アタシには魔神のガキンチョを貸せ。あんたら二人のコンビならそれくらいしないと公平じゃないだろ」

オッレルス「当麻とのコンビなら君たちの勝ちに決まってるじゃないか。それに私は今、当麻の居場所なんて…」

ゴゴゴゴゴッゴゴゴゴゴゴッゴゴゴゴゴゴ!!!!!

オッレルスが次の言葉を続けようとした瞬間。城の中庭で莫大で異質な魔力の反応を感じ取った。

エリザード「この魔力…いや、これは本当に魔力なのか?あまりにも異質すぎるぞ」

シルビア「こんな魔力感じたことがない。一体どこのどいつ………まさかアイツか!?」

オッレルス「当麻だよ、間違いない。だが一体なぜこれほどの魔力を…一体なぜ?」

感じ取った魔力は聖人のシルビアを震え上がらせ、カーテナという英国最大最強の霊装を持ち天使長と同じクラスの力を持つエリザードすら驚愕するレベルだ。

エリザード「当麻…。発音から日本人か?そいつなのかこの魔力の正体は」

シルビア「その当麻ってやつが魔神なんだよ。だけどおかしくないか?さっき王女達を探してたときはこんな魔力じゃなかったはずだ」

オッレルス「おそらくさっきの捜索魔術や引力魔法はベースとなる術式があったから普通の魔力で発動できたんだよ。純粋な魔神の魔力で魔術を発動したらこんなことになるのか…計算外だ」

魔神のなりそこないのオッレルスも確かに一般魔術師と比べれば異質な魔力を持っている。上条と違って完璧な魔人ではないためにオッレルスは自分の生命力を魔力に転換することで魔神に近い力を使用しているからだ。

ゆえに、多少の違和感や違いはあれどオッレルスも根本的なところでは一般魔術師に似たり寄ったりなのだが、完璧な魔人である上条の魔力は格や規模、質、量その他もろもろ全てが違っていた。

エリザード「さすが魔神だな人間とは文字通り次元が違う、人間に使えるような力ではない」

シルビア「でもなんだってあのガキはこんな力を使ってなんか…」

オッレルス「ここで議論しても仕方ない。当麻のところに行こう」

先ほどとは違い真面目な表情になるオッレルス。その雰囲気から危険度を感じ取ったのか二人の緊張も高まる。

シルビア「次期騎士団長は置いといたままでいいよな?」

オッレルス「かまわない。そもそも万全の状態だろうが彼の力では何もすることはできないよ」

エリザード「その言い方だと私たちやお前なら何かできると解釈していいのかな?」

オッレルス「さぁね。万に一つの可能性もないが当麻が…魔神が暴れているなら何もできないよ」

世界に20人といない聖人シルビア。英国最大最強の霊装を持ち天使長の力を授かったエリザード。魔神のなりそこないのオッレルス。

この三人が集まれば冗談抜きで世界を狙えるパーティーだが、今から相手をするかもしれないのは世界を手玉にとって遊ぶことができるほどの絶対者であり、魔術界の頂点である魔神だ。勝負になどなったりしたら勝てる見込みなどない。

シルビア「もしオッレルスの言うとおりあのガキが暴れてるなら、あたしたちはわざわざ負け戦に行くことになるよ。バカみたいだね」

エリザード「そんなことないさ。勝てなくても戦ったっていう記録が残れば天国じゃヒーローかもよ」

オッレルス「ヒーローか…男たるもの一度はなってみたいものだな…」

シルビア「アンタ達って天国行けんの?」

アハハハハハハと笑い始める三人。人生最後の会話になるかもしれないのだから楽しくしたいのだろう。

オッレルス「じゃあ、バカな会話はこのくらいにして行きますか」

そして三人は魔力の発生地点へと向かった。その立ち姿はまるで戦いに行く騎士のようだった。




………これだけ覚悟しているところ悪いが、その魔力発生の理由がただ上条がウィリアムのいる建物に行くために魔力を使った全力ダッシュをしただけなのだと知ったらどうなるのだろう?

<上条side>


上条「…」

オッレルスたちが先ほどの上条の魔力を感知し向かってきている中、上条はおそらく人生で一番のピンチに陥っていた。

魔力を使った全力ダッシュをした上条は踏み切った瞬間から一秒足らずで訓練室の扉の前に到着し、打ち首にされるのが怖いので全力ダッシュの感想を持つ暇なく訓練室の扉を開けた。

扉を開けたまではよかったのだが、開けた途端に中で特訓をしていた騎士や傭兵たちに発見されてしまい捕まった。

そもそも今いる場所はお城でそんな中に子供がいたら「遊んでたら入っちゃいました♪」じゃすまないだろう。

騎士「…それでー僕。一体どうやってこのお城に入ってきたのかな?一応聞いとくけどお城の住人じゃないよね?」

子供の扱いになれていそうな兵隊が上条に問いかける。対する上条はキャーリサの命令で急いでいるのと大勢の大人に囲まれているので完全テンパっていた。

上条「えーと。お城には朝ごはんのバイクで来て」(※朝ごはんをもらうためにバイクで来て)

騎士「バイク食べるの!?」

上条「シルビアさんがオッレルスいじめて担いでバイバイして」

騎士「シルビア様がいじめ?オッレルスって誰?」

上条「キャーリサ様がここ行けって言って遅くなったら打ち首だから急いでるの!」

騎士「意味がわかんねえよ!!ってグボォ!?」

怒鳴られた瞬間、騎士が宙を舞う。

上条「!?」

上条としては大人に怒鳴られるなどといった経験があまりないので泣きそうなっていたところ、目の前にいた大人が一瞬にして視界から消えたので助かったやら何事だと混乱してしまう。

??「子供に怒鳴るなどそれでも英国の誇り高き騎士であるか?」

慌てて声がする方向を見ると先ほどまで騎士がいたところに一人の細マッチョ青年がいた。

??「すまなかったである。仲間の非礼を変わりにわびる」

気がついたら目の前に知らない人が現れたり怒鳴ってた人が宙を舞っていたりといろいろとデンジャラスナな中。いきなり謝られたりするなどした上条は一言だけ言った。

上条「不幸だ…」

??「どうしたのであるか少年よ?」

騎士を宙に舞わせたと思われる細マッチョな青年が黙ってしまった上条に対し心配そうな声をかける。

??「ああ、飛んでいったやつなら気にする必要ないのである。英国騎士団の騎士はあれくらい大丈夫なのである」

傭兵「そうさ、あのくらいなら軽い致命傷だろ」ケラケラ

周りの人たちはそういって笑っているが致命傷に軽いも重いもあるのだろうか?

??「そういえばまだ名前を聞いていなかったであるな。少年、君の名はなんと言う?」

上条「上条…当麻です」

??「上条当麻…。日本人であるか?」

上条「うん」

少しだが警戒が解けて緊張がほぐれたのか多少の受け答えはできるまで回復した上条。

取り合えず目の前にいる青年は名前を聞き出すことに成功したので安堵している。子供と話すのが苦手なのだろうか?

上条「ねーねー。お兄さんの名前はなんていうの?」

??「ん?そういえばまだ名乗っていなかったか。我輩の名はウィリアム=オルウェル。ただの傭兵である」

本当に愛されるssって荒らし全く付かないから、単純な話で作者の技量次第なんだよな。荒らしを擁護するわけじゃないが、作者の力不足の問題でもあると思う。

本当に愛されるssって荒らし全く付かないからな。単純な話で作者の技量次第なんだよな。荒らしを擁護するわけじゃないが作者の力不足でもあると思う。

>>1です。これ以上荒らされるのもいやなので謝ります。

「ごめんなさい」

>>208>>209さんの言っているように荒らしが付かないようなSSを目標に頑張ります。
ちょっと用事ができたので今日の夜に投稿します。待ってて下さい。

上条「ウィリアム=オルウェル…。あれ?あのウィリアムさん?」

ウィリアム「あのウィリアムさんかどうかは分からないのであるが、取り合えずウィリアムさんで間違いのである」

騎士①「坊主ーその兄ちゃんはすげぇんだぞ。まだ20もいってないのに英国の傭兵の中で一番強い超スゲーやつなんだ」

先ほど宙を舞っていた騎士がいつの間にかこちらに歩み寄ってきている。本当に軽い致命傷だったようだ。

騎士①「おいウィリアムー。いきなり吹っ飛ばすとか酷いじゃねーか」

ウィリアム「英国騎士として小さな子供に対し怒鳴り散らすような輩には当然の報いである。…どうしたのであるか少年よ、我輩に何かようか?」

どうやらウィリアムという青年はかなり厳格な人間であるらしい。緊張が解けたからなのかそんなウィリアムに対して服のすそを引っ張るという行為をする上条。対するウィリアムは子供に対しての接し方が分からず多少緊張しているように見えるが礼儀正しく上条に接する。

上条「あのね、ヴィリアン様の顔が真っ赤でね。キャーリサ様がウィリアムを連れて来いって行ってるの」

騎士②「…ようするにヴィリアン様の容態が悪くなぅたからキャーリサ様がウィリアムを連れて来いって言ったのか?」

ウィリアム「そうなのであるか?」

上条「よーだいって何?」

騎士②「容態がわかんねえか…。元気かどうかってことだよ」

顔が真っ赤なんて言葉からは体調を崩したくらいしか想像できないらしく上条の言葉から推測で解釈する騎士とウィリアム。

騎士③「でもなんだってウィリアムなんだ。体調を崩されたのならシルビア様のほうが対処とかはできるだろうに…。つうかお前ヴァリアン様に名前覚えてもらうほど面識あったか?」

ウィリアム「…確か一度キャーリサ様の遊びに付き合わされて困っていたところをお助けしたことがあるくらいのはずである」

傭兵①「じゃあ少なからず面識はある訳か。でも傭兵たちの仲でも一番の堅物といわれるコイツを呼ぶなんて何事だ?」

訳が分からんといって考え込む騎士たちやウィリアム。戦いが基本の彼らには頭を使うことが苦手のようだ。

上条「ヴィリアン様は元気だよ」

騎士②「はぁ?元気なのに顔が真っ赤なのか。どうゆうことだ?」

もともとあまり多くない知識を総動員して上条は言った。

上条「うんとねー。ウィリアムって人にキャーリサ様が会いに行こうって言ったらヴィリアン様が顔真っ赤にしてプシューてなったの」

騎士①「顔真っ赤でプシュー……。あっそうゆうことか」

一番最初に上条に話しかけてきた騎士が納得したように言う、なんとか伝わったようだ。周りにいた傭兵や騎士たちも理解したのか頷いている。だが、

ウィリアム「プシュー?…それは一体なんであるか?」

一人だけ伝わってない人がいた。ぶっちゃけ一番伝わってほしい人だったのに。

上条「うんとープシューて言うのは…モゴモゴッ!!??」

騎士②「坊主悪いけどちょっと黙ってくれないか、久々に面白いことが起きそうなんだ」

頑張ってプシューの意味をウィリアムに伝えようとした上条の口を一人の騎士が塞ぐ。その後、プシューの意味を考えているウィリアムを無視して上条と周りの騎士や傭兵た

ちで円陣を組み密談が始まる。

(騎士①「坊主ありがとな。最近面白いことも特になかくて退屈してたから助かったぜ」)

(上条「?プシューのこと教えちゃいけないの?」)

(傭兵①「ああダメだ。それで一体どうすりゃいいと思うお前ら?」)

(騎士②「取り合えずウィリアムをヴァリアン様のところへ行かせないと話が始まんねえぞ」)

(傭兵②「でもここまで言われて気がつかないウィリアムをどうやって行かせんだよ?)

(上条「あの~」)

(上条以外「アーダ、コーダ、ガヤガヤ、ヒソヒソ」)

(上条「すみませ~ん」)

(騎士③「ガヤガヤ…ん?どうした坊主?なんかいい案でも思いついたか?」)

(上条「遅くなったら打ち首にするってキャーリサ様が言ってたよ」)

(騎士①「…………」)

(騎士②「…………」)

(騎士③「…………」)

(傭兵①「…………」)

(傭兵②「…………え、それ本当?」)

(騎士①「……新人、一つだけ教えてやる。…キャーリサ様ならやる」)

(傭兵②「ど、どど、どうすんの!?冗談抜きでまずいじゃん!!」)

(騎士②「こうやって俺たちが話している間に死刑執行の時間はどんどん迫ってくるのか…」)

(傭兵①「おい待て騎士②。諦めるのまだ早いぞ」)

(騎士③「ははっ聞いてくれみんな。俺来月結婚するんだ。子供の名前ももう決めてあるんだぜ」)

(傭兵②「騎士③さん死亡フラグ建てないで!てか他の騎士さん達も諦めるの早いですよ!!もう少し頑張りましょうよ。まだ希望はあります!!」)

(騎士①「いいよな~新人。お前はキャーリサ様の傍若無人さを知らないんだから」)

(傭兵②「頑張りましょうよ。ここを乗り切ってデートとかしてるウィリアムを尾行したりしましょうよ!」)

(傭兵①「お前結構最低なこと言ってるぞ」)

(騎士①「そうだよな~。確かに傭兵②の言ってることは最低だけど尾行とかしてみてえーよな。そんで返ってきたウィリアムを酒で酔わせて根掘り葉掘り聞いていじってやりてえな」)

(騎士②「いや、お前もなかなか最低だぞ騎士①」)

(騎士③「そう言いながらお前も実は尾行とかしてみたいんだろう?実はむっつり騎士②君?」)

(騎士②「………表でろ騎士③。格の違いを見せてやる」)

(傭兵①「おうやれやれ~。リア充はみんな滅んじまえ~」)

(傭兵②「あ~もう収拾がつかないじゃないですか。………あっ。俺いいこと思いついたんで試してみてもいいっすか?」)

(騎士①「おう。やれやれ」)

(傭兵②「他の案もあるわけじゃないしやっちまえ」)

(傭兵②「じゃあタイミング見計らって試すんで何とかそれっぽい会話に繋いでください」)

(傭兵②以外「まかせとけ」)

もはや上条がどうしてお城にいたのかなんてどうでもよくなっているようだ。


傭兵①「おーいウィリアム。プシューの意味は分かったのか?」

ウィリアム「……プシュー、爆発の意味を持つのか?しかしそれでは……ブツブツ…ん、話し合いは終わったのであるか?」

円陣内の会話に混ざれなかったことに対してはなんの不満もなかったらしい。むしろ一人で黙々とプシューの意味を考えていた。

騎士①「ていうかウィリアム。お前俺たちが話し込んでる間にヴァリアン様のとこに行こうとか思わなかったのか?」

ウィリアム「何の事前知識も持たないまま行くのは危険だと考えたのである。聞けばヴァリアン様もあまり危険な状態ではないようだからな、少しくらい向かうのが遅れたと
ころで何の問題もないはずである」

騎士③「相変わらず堅いね~。こんな場面だったら普通「何、女王様のピンチ!?なら我が輩が助けに行くのであ~る」とか言って馬にでも乗って格好良く行こうとか思わな
いわけ?」

上条「何かおじさんが言うと格好悪い…アウチ!?」

騎士③「俺はまだおじさんと呼ばれるほど歳食っちゃいねえぞ」

おじさん呼ばわりがいやだったのか上条に軽くチョップする騎士③。しかし、騎士と言うだけあって体は逞しいし、顔も数々の修羅場をくぐってきたからなのかかなり渋めの

人をおじさんと呼ぶ上条は実はあまり間違っていない。(ついでに言うと騎士③は29歳である)そしてそれには他の騎士や傭兵達も同意しているようで…

傭兵①「確かに、いつでもおちゃらけてる騎士③が言うと格好いい台詞も格好悪く聞こえるな」

騎士①「まだ30いってないのに見た目完璧に50くらいだもんな」

傭兵②「えっ。騎士③さんってまだ20代だったんですか!?」

騎士②「そう見えても仕方がないぞ傭兵②。騎士③に中身は完璧に50過ぎのオッサンだからな」

ウィリアム「…一応先輩を悪く言うのは怒るべきなのであるが事実なのでフォローのしようがないのである」

騎士③「………俺泣いていいかな?」

騎士③は精神的にフルボッコにされた。

傭兵②「ところでウィリアムさん。プシューの意味分かりました?」

ウィリアム「すまないがまだ分かってないのである。意味を知っているのであれば教えてはくれないだろうか?」

泣き始めた騎士③を慰めているウィリアムに対し、今がベストタイミングだと言って傭兵②が話しかける。

(騎士①「一体傭兵②はどうやって教えるんだろうな?」)

(騎士②「ストレートには言えないしな。つうか言わないで行かせた方が面白いしな」)

(傭兵①「傭兵②は口達者だからな。多分いいように言いくるめて行かせると思うぜ」)

最低な奴らである。こんなやつらが英国を守っているんだと思うとなんだか心配になる。

(上条「騎士③さん大丈夫?」)

(騎士③「ありがとな坊主。優しいのはお前だけだ」)

傭兵②が何を言うのかは知らないので期待する騎士①②と傭兵①。傭兵②の話を聞くために騎士③は一人になってしまったが今度は上条が慰めている。

そしてついに傭兵②がウィリアムにプシューの意味を教える。

傭兵②「…プシューの意味は………爆発直前ってことなんですよ」

傭兵②を除く全員「!!??]

ウィリアム「それはどうゆうことであるか!?」

傭兵②「どうゆうこともないですよ。そのままの意味です。このままだとヴァリアン王女は爆発して最悪の場合、命を落とします」

傭兵②の答えに対し驚き詰め寄るウィリアム。自分の国の女王が爆発寸前と聞かされれば誰だって驚くだろう。

傭兵②「落ち着いてくださいウィリアムさん。対処法とか解決法がない訳じゃないんですから」

ウィリアム「あるのであるか。ヴァリアン女王を救う方法が!?」

どうやら本当にプシューの意味が爆発だと信じ込んでしまったウィリアム。

周りの奴らはプシューの本当の意味を知っているので冷静だがここからどうやってウィリアムにプシューの本当の意味を知らせずに女王の所に向かわせるのか興味があるようで静かにしている。

傭兵②「詳しい説明は時間がないから省きますけど、プシューってのは体の中に貯まったある物が限界を超えている状態なんですよ。だからその貯まった物を押さえ込むことができれば爆発はしません」

貯まっている物とはこの場合恋とか愛とかに関する物なので危険なんて物は全くないが、こう言われるとなんだか危険な物のように聞こえるから不思議だ。

ウィリアム「時間がないのは分かっているから無理な追求はしないが、どうやってその貯まった物を押さえ込めばいいのであるか?」

傭兵②「覚悟して聞いて下さい。……抱きしめればいいんです」

誘導会話が開始した。

ウィリアム「だ、抱きしめるのであるか?そんなことで…」

傭兵②「そんなこと?そんな事って言いましたかウィリアムさん。これはそんな簡単なことじゃないんですよ」

ウィリアム「なぜであるか?ただ抱きしめるだけでは…」

傭兵②「あのですねウィリアムさん。まずヴァリアン様もそろそろお年頃を迎える女の子ですよ。そんな女の子を言っちゃ悪いが貴方みたいな人が抱きしめるって事の難易度が分かんないんですか?」

ウィリアム「っ!そうであるな。確かに特に好意を持っているわけでもない男に抱きつかれたりなどしたらかわいそうである。ならば余計我が輩のような傭兵がするわけなど…」

(ウィリアムを除く全員「好意なら持ってるよ、プシューってなるくらいもってるよ!」)

傭兵②「分かってませんねぇ~。確かに抱きしめるだけなら王女やシルビア様の方がいいかもじれませんがこれは危険なんですよ。下手したら爆発するかもじれないんですから」

危険なんかねえよ。こんな説明で納得するわけ…

ウィリアム「なるほど。王女やシルビア様を万が一にも危険な目に遭わせるわけにはいかないから我が輩のような傭兵が選ばれたのであるな?」

納得すんのかよっ!!

傭兵②「やっと伝わりましたか。なら速く行ってあげて下さい。事は一刻を争います」

ウィリアム「うむ、わかったのである。少年、ヴァリアン様はどこにいるのであるか?」

誘導会話は成功した。

上条「城の門の近くにいるよ。近くにおっきな木があるところ」

ウィリアム「大きな木…。となるとあそこか。助かったぞ少年。では我が輩は行って参る」

傭兵②「あっウィリアムさん!もしかしたらヴァリアン様は終始顔が赤いままかもしれませんが抱きしめ返してくるまで抱きしめ続けといて下さい」

ウィリアム「抱きしめ返してくるほど回復するまで離すなということであるな。分かったのである」

もはや何を言ってもいいように解釈して納得するんだろう。そう思った傭兵はさらにたたみかける。

傭兵②「あっあと!できればキスもしといて下さい。その方が貯まってる物を押さえ込みやすいんで」

(傭兵②とウィリアム以外「いくら何でも流石にそれは無理だろう…」)

ウィリアム「わかった。抱きしめながらキスすればいいのであるな?」

(ウィリアム以外「どこをどうしてどう納得したんだ!!??」)

ウィリアム「では行ってくるのである。……もし、我が輩に何かあったら傭兵①、お前が次の傭兵長となってくれ」

傭兵①「わかった…まかせとけ」

そう言ってウィリアムはヴァリアンが居ると思われるところまで走って行ってしまった。その速度は目にもとまらない早さですぐに見失ってしまうほどだった。

そして後には一仕事終えた男達が手を取り合っていた。

傭兵①「いや~おれたちいいことしたよな~。これでウィリアムとヴァリアン様の距離も縮まっただろ」

騎士①「ああ、間違いなくいい仕事したぜ。さて、それじゃあウィリアムがヴァリアン様を抱きしめるのを見に行くか…」

騎士②「馬鹿言うなよ、流石にそりゃまずいぜ。近くにはキャーリサ様もいるんだろ?下手すりゃ俺たち殺されるぞ」

騎士③「そうだな。後でドギマギしてるウィリアムに話を聞いた方が実際見に行くより安全だし面白そうだ」

傭兵②「それよりどうでした俺の話。なかなかうまくなかったじゃないですか?」

傭兵①「ああ、最高だったぜ」

ウィリアムが行って少しした後、男達はすでに雑談に花を咲かせていた。しかし一つ大切なことを忘れているのではないのだろうか?

上条「プシューの意味ちゃんと教えなくてよかったの?」

そう、侵入者(?)である上条のことだ。

騎士①「あ?いんだよ。その方が面白いんだから。つか結局お前何なんだ。客なのか?」

上条「きゃく?違うよ。オッレルスが借りてたカップを返しに来たからそれに付いてきただけだよ」

騎士②「だからオッレルスって誰だよ」

会話が振り出しに戻ってしまった。だが先程の密談円陣で緊張や警戒がほぐれたのか会話が成立するようになった。

騎士③「待て、オッレルスって名前ならどっかで聞いたことがあるような気がするぞ」

傭兵①「俺も聞いたことがあるぞ。確か王女の知り合いだった気がする…。あっそうかあのオッレルスか」

傭兵②「あの?一体どのオッレルスなんですか?」

騎士②「お前ら知ってるのか?」

古株である騎士③や傭兵①はどうやらオッレルスについて何か知っているようだ。それに対して入隊して間もない傭兵②や騎士②は聞いたこともないらしい。

傭兵①「お前らも聞いたことくらいあんだろ、昔、王女様三人が攫われたことがあるんだよ。そん時それを救出したのがそのオッレルスってヤツだった気がする」

騎士③「気がするじゃなくて本人だよ。確か魔神とか言うヤツに最も近いヤツとか言ってたな…」

騎士②「魔神?魔を極めた者がたどり着ける最終地点である魔神にか?」

騎士③「ああ。ていっても5年も前のことだからな…女王様達もまだ10歳いってなかったし。今はどうか知らん」

傭兵②「そんなすごい人がいたんですか…。それならその連れだって言ってるこの子供はそいつの子供なんですかね?」

騎士③「でも確かあいつそん時はまだ11歳だった気がするぞ。そうすると今は16か…まだこんな大きな子供がいるには若すぎるんじゃないか?」

傭兵①「できちゃった婚は無理があるな…。おい坊主。お前はオッレルスの何なんだ?友達か?」

話しについて行けずオロオロしていた上条に傭兵①がいきなり話しかける。いきなりで驚いていたが聞かれた質問の意味を理解し胸を張って答えた。

上条「上条さんはオッレルスの友達なんかじゃないよ。大切な家族だよ」

傭兵①「家族?じゃあオッレルスがパパなのか?」

友達でもなく家族というなら残された選択肢はそうなるだろう。

上条「オッレルスはパパじゃないよ。拾って貰ったの」

騎士①「拾って貰った?どこで?」

上条「日本!!」

騎士②「ハラキリとかスキヤキとかニンジャとかの日本か?でもここはイギリスだぜ。日本って言ったら東洋の島国のはずだよな、なんで日本で拾われた子供がイギリスにいるんだ?」

上条「連れてきて貰ったの。ビューンって!」

傭兵②「いや、ビューンじゃ意味分かんないし」

ビューン=空間移動魔術なのだが流石に説明はできないし伝わらなかったようだ。

騎士①「まあビューンなんかどうでもいいよ。ってかお前は日本に帰りたかったりするのか?」

オッレルスのお陰で何とか侵入者扱いを逃れた上条。取りあえず無難な質問が飛んでくる。

上条「上条さんはオッレルスと一緒にいたいから日本に帰る気はありません事ですよ」

傭兵①「ふ~んそっか。まぁお前の気持ちが第一だもんな。でもたまには祖国に帰ってやれよ。待ってる人とかもきっといるぜ」

上条「待っててくれる人……誰でせうか?」

騎士③「そりゃお父さんとかお母さんとか友達とか色々いるだろ」

上条「いないよ。みんないなくなっちゃったもん」

上条が魔神化する際に周りのもの全てを消滅させたせいで上条には帰るべき場所も待ってくれる人も全てを失ったのだ。そのことなど知らない騎士や傭兵達は不思議に思いながらもあえては追求しなかった。上条の「いなくなっちゃった」と言ったときの悲しそうな寂しそうな表情を見て何かを悟ったのだろう。

静まりかえる訓練室。耐えきれなくなったのか別の話題を話そうとした傭兵の声を遮って新たなる侵入者の声がどこからともなく響く。

??「いやいるぞ二人だけだがな。しかしまぁ正確には二人という単位が正しいかどうか分からないがお前が日本に帰ってくるのを待つ者はいるぞ上条当麻。それとも魔神様といった方がいいかな?」

その声が訓練室に響いた途端、先程までふざけていた男達の纏う空気が一変した。上条と違い、この声を発している人物から伝わる殺気にも似た気配を感じ取ったのだろう。

??「おいおいそんなに身構えるなよ。私は何も争いに来た訳じゃないぞ、そこの魔神いや…上条当麻という少年を一目見に来ただけだ」

男達が一斉に声の聞こえた方向を見上げた。この訓練室には上に方に大きな窓があり、その窓の柵に声の発信者は座っていた。

上条「…妖精みたい」

上条がこんな感想を持つのも無理はないだろう。窓の柵に座っている人物は人間とは思えないほど白く綺麗な肌で黄金色の瞳をしている少女だった。着ている服はローブのような物で決して美しい物だとは言えないが、そんなことが気にならなくなるくらい綺麗な金色の長髪を優雅に泳がせている。どこかの絵から飛び出してきた妖精そのもののようだった。

騎士③「貴様何者だ?なぜここにいる」

??「話を聞けよ、そして持ってる武器を置け意味なんて無いんだから。それにさっきも言っただろう?そこの少年を一目見に来ただけだよ。他の目的なんて物は全くない」

傭兵①「こんな殺気をバリバリ飛ばしてくるようなヤツの言うことなんか信じれる訳ねえだろ」

数々の修羅場をくぐり抜け、様々な経験をしてきた騎士③と傭兵①だけが謎の侵入者に対し会話をしている。最も警戒を怠らず手には訓練用ではない本物の剣が握られているが。

??「困ったなぁ。私が出してる殺気は呼吸と同じような生理現象のようなものだから止めることはできないんだよ。ってこう言っても信じてはくれないか…」

上条「殺気ってなに?」

ピリピリとした緊張が訓練室を包み込む中、無邪気にも上条の発する声が響き渡る。この殺気に対して何の恐れもなく、また、謎に侵入者に対して何の警戒や緊張を持っていないようだ。

騎士②「坊主感じねえのか?この全身が切り刻まれるような殺気を」

??「そこの少年には殺気を感じると言うことは不可能だよ。元々のスケールがお前らみたいな凡人とは比べものにならないんだから」

鼠がライオンに対して本気ですごんだところでライオンは気にもとめないだろう。警戒する必要がないからだ。同じように上条は侵入者の殺気を無意識だが警戒する必要がない物だと判断したので何ら影響を受けていない。

傭兵②「つまり、この坊主がお前より強いから殺気を感知することができないって事か?」

??「まあその理解で間違っていないよ。そもそもそいつは……」

騎士③「問題なのはそこじゃねえ」

侵入者の声を遮り騎士③の声が響く。その声には怒りにも似た感情が含まれていた。

騎士③「つまりお前は俺たちがお前より弱いって言いたいんだろ?」

??「?。何を言っている、当たり前だろう?貴様らが束になったところで私には警戒するに値しないし、無論貴様達から見れば私は最大限警戒するべき存在なんだから」

つまりは上条>侵入者>騎士&傭兵という図式が成り立っているのである。

答えを聞いた途端男達は手に持った剣を握り締め直した。仮にも英国のために戦う自分たちがこんな少女にこけにされているのだ腹が立って当然である。それを見た侵入者は至極面倒臭そうに。

??「はぁ~わかったよ。文句があるならかかってこい。話し合いよりは速そうだ」

言い終わると同時に男達は侵入者の少女に向かって斬りかかった。手加減など皆無、全身全霊本気の一撃だ。それに対し侵入者の少女は無表情のまま…

??「一人ずつだと面倒臭いな……………一瞬で終わらせてやるか」

髪の毛一本すら動かさず迎え撃ち、迎撃した。

上条「?……………!!??}

男達が少女に向かって斬りかかるのを間近で見た上条の感想である。あえて説明するなら…

①男達が剣を振りかぶって。

②少女に飛びかかって。

③次の瞬間には壁にめり込んでいた気絶していた。

??「英国の傭兵や騎士と言ってもこんな物か…。一人くらい躱すと思っていたんだがな。どうやら少し過大評価しすぎていたようだ」

上条「妖精さんがなんかしたの?」

??「うぉっ!!急に目の前にくるなよ驚くだろ」

気がつけば上条は少女の目の前に立っていた。どちらかというと少女の目の前に浮いているといった方が正しいのだが。

上条「ん?………えっ。何で上条さんは飛んでるんでせうか!?」

??「飛んだことの自覚は無いのか…。どうやらお前は全能であっても全知ではないようだな」

上条は何でもできる=全能だが、何をしているのかを理解していない=全知ではない。ということだろう。

上条「ねーねー妖精さんがなんかしたのー?」クイクイ

??「ええいっローブを引っ張るな。これ取れたら私は裸なんだぞ!?少年が美少女を裸にするとかどんな状況だよ!!」

自称美少女らしい。

上条「妖精さんこの下服着てないの。でも知ってるよ、確かこうゆうの痴女っていうんでしょ?」

??「私だって好きでこんな格好してるんじゃないぞ。それに痴女なんかじゃない!あとお前のそんないらない知識を教えたヤツを教えろ、物理的地獄に送ってやる」

上条「オッレルスだよ」

??「あの魔神のなりそこないの糞野郎!!一体何教えてるんだよ!?」

??「つうかお前そこの騎士達の心配とかしないのか?一応加減はしたつもりだが壁にめり込んだまま動いてないぞ」

何とか上条に裸にされずにすんだ痴女(?)が聞いてくる。今後の自分の保身(?)のためにも何とか会話をそらそうとしているようだ。

上条「大丈夫だよ。………多分」

??「多分でいいのかよ…。まあお前がいいなら別にいいけど」

意外と薄情な上条。単純に信頼からくる物なのかもしれないが軽い気がする。

上条「ねーねー妖精さん。妖精さん。妖精さんは何しに来たの?」

??「だからさっきも言っただろう。お前を一目見に来ただけだよ…。とゆうかなんだその妖精さんって?私の呼び名か?」

さっきからずっと上条が呼んでいるその名前についてようやく質問する自称美少女。何とか精神状態が落ち着いてきたのだろうか?

上条「だって妖精みたいに可愛いんだもん。それにまだ上条さんは妖精さんの名前を聞いてないんでなんて呼べばいいのか分かんないんです~」

??「だからって妖精さんはないだろう…。そりゃあ妖精みたいに可愛いと言われて悪い気はしないけど…///」

可愛いと言われてほんのり顔を赤く染める少女。口ではあまり喜んでいるように聞こえないがその顔を見れば喜んでいるのは一目瞭然だ。

上条「じゃあ妖精さんの名前はなんて言うんでせうか?」

??「名前…。そういえば名前なんて物付けて貰った記憶がないな」

上条「名前無いの?」

??「無いな。じゃあ別に妖精さんでいいか…「よくないよ!」え?」

上条「名前は親から貰う物で体の次に大切な物なんでせうよ!」

??「いや、でも、だから貰ってないんだって」

空中で力説する上条。その気迫に押されたのか多少ではあるが少女のペースが乱れている。

上条「よし、なら上条さんが妖精さんの名前を一緒に考える!そうすれば問題ない!」

??「いやあるだろう問題。お前はあれか、私の名付け親にでもなりたいのか?」

上条「名付け親?違うよ。上条さんは妖精さんと友達になりたいんでせうよ」

??「……………………………」

言葉を失う少女。面と向かって友達になりたいなんて言われたらどうしていいのか分からず困惑しているんだろう。なんと反応すればいいのか…

上条「よし!じゃあ一服脱ぐか」ヌギヌギ

??「一服じゃなくて人肌だよ馬鹿野郎!」チョップ!

…本当に脱ぎ始めた上条に取りあえず常識として突っ込んでおいた。

ーーーーーしばらくしてオッレルス達到着ーーーーー


オッレルス「………ねえこれなんて状況?」

エリザード「………流石の私もこんな時どうしたらいいかなんて分からんぞ」

シルビア「………取りあえず回れ右して帰っていい?」

戦闘準備万端の三人が目撃したのは壁に埋まった騎士や傭兵達の動かない尻と…

上条「スーパーは入れようよ~。絶対格好いいよ?」

??「お前こそ名前付けるって事なめてるだろう?スーパーなんて恥ずかしくて付けてられるか。…それよりも私が考えた美貌神の意味があるフレイヤのほうが…」

上条(魔神)が初めて見る少女と何か言い争いをしている光景だった。

オッレルス「…あの~当麻?そこのお嬢さんは一体誰?それと女王様達は………」

上条「じゃあティン○ー=ベルは?なんか似合ってる気がするよ?」

??「お前まともな名前付ける気無いだろ…」

オッレルスは無視された。続いて女性軍のターン。

エリザード「おーい少年。そちらの少女は誰だい。あと、私の娘達はどこにいるの~?」

シルビア「仮にも自分の娘のことを後回しにするなよ…」

上条「ごめんねシルビアさん。今いいとこだから後でにして」

??「五月蠅いぞおばさん。今はそんなことに答えてる暇はない」

無視されなかっただけオッレルスよりはマシだが被害で言ったらこっちの方が大きかった。

エリザード「おばさんじゃないもん。確かにもう40入ったけどまだまだいけるもん!」( ノД`)シクシク

シルビア「おばさんだって…ブホォ!wwwwww…キリッ………プッ、ゴメンやっぱ無理wwwwwwwwwwwwwwww」ゲラゲラゲラ

結果。一人は泣いて一人は大爆笑した。

取りあえずできてる所だけ投稿しました。

前の約束を破って申し訳ないのですが、2話完結させるにはこれで6割か7割くらいなので次の投稿で本当に終わらせます。

次に見に来たときに荒らされていないことを祈って失礼します。

お待たせしました。投稿します。

書きたい内容が頭の中で決まってたので早く書けたんですが、かなり長くなっちゃいました。

誤字脱字欠字については脳内変換をお願いします。

第2話は審議の末、2の神の右席編にします。1も多分書くと思うので禁書目録編をお待ちの方はもうしばらくお待ち下さい。

妖精さん(決まるまで)「おい魔神。あそこにいる奴ら無視していいのか?」

上条「待って。もう少しですごくいいのが思いつきそうな気がしなくもない…」

妖精さん「どっちだよ」

少女が気にするのも無理はないだろう。なぜなら少女が言っている奴らは今…

シルビア「ブホッwwww…ゲホッゲホッ!!やべ、過呼吸かも…ゲホっゲホ」

オッレルス「無視された…。当麻にまで無視された…」orz

エリザード「まだいける…。まだ大丈夫のはずだよな?」

なんだか悲惨な状況になっていた。

??「あなたたちは一体何をしているの?」

妖精さん「っ!?お前一体どっから出てきた!?…なんか今日は驚いてばっかだな」

上条「お姉さんは誰でせうか?」

リメエア「あなたたち私のこと知らないの?…ならいいかもね。私の名前はリメエアよ、よろしくね」

幽霊のようにいきなり現れてきた人物はリメエアと名乗った。なぜだかわからないが上条達が自分を知らないことに対して喜んでいるようだ。

リメエア「ところでそこの人たちの話を聞いたのだけれど…君が魔神の少年かしら?」

上条「そうだよ。あっそうだ、お姉さんも一緒に妖精さんの名前を考えようよ」

上条から見たらリメリアは1オッレルスと同じ位の歳の聡明そうな少女で。目元が少し暗く元気がないように見えるが、そんなことお構いなしに巻き込む。

リメエア「妖精さん?そこの貴方の事かしら?」

対するリメエアも上条が魔神と言うことについてはそれ以上は追求せず。会話の輪に入る。

妖精さん「名前が決まるまでの仮の名だがな。それに手伝ってくれると助かる。こんな事は今まで経験したことが無くて結構困っている」

リメエア「ふふっ。妖精さんの名前を考えればいいのね?じゃあ微力ながら手伝っちゃおうかしら」

上条「わーい。じゃあ一緒に考えようー。えいえいおー!」

リメエア「おー!………ほら妖精さんも」

妖精さん「わ、私もか?………お、おー///………はっ」

恥ずかしがりながらも「おー」といった少女が見たのはニヤニヤしている上条とリメエアだった。

妖精さん「なに笑っているんだお前たち?」

上条「妖精さん可愛いなーって思って。ねー」

リメエア「ねー」

妖精さん「かっ、可愛いとか言うな馬鹿!///。ていうか何で会ってまだ一分も経ってないのに仲良くなってんだよ?」

上条「友情に時間は関係ないのだ!」

リメエア「ないのだ!」

すでにもう息きぴったしである。それを見た妖精さんは少し寂しそうに…

妖精さん「なんだよ。やっぱり私だけ仲間はずれか…グスン」

上条・リメエア「「……………コクン」」ギュウウーー

その妖精さんの姿を見て上条とリメエアは無言でアイコンタクトした後、頷いて抱きしめてきた。

妖精さん「///お前達いきなりなんだ!?」

リメエア「大丈夫よ。私も…えーと「上条当麻だよ」そう、上条君も妖精さんのこと大好きだし友達だから」

上条「上条さんも妖精さんのこと大好きだし友達だから大丈夫だよ?だから泣かないで妖精さん」

妖精さん「グスン…ありがとう上条にリメエア」

三人の友情が深まったワンシーンであった。これを見たもはや空気の三人と言えば…

エリザード「やばいうちの子マジ天使」

オッレルス「何を言う。状況なんて全く分かってないが天使というなら当麻に気まっている。異論反論は認めない」

エリザード「聞き捨てならないな。この世で天使なのはうちの子三人だ、それだけは譲れないな」

シルビア「あんた達あんないい子達がいる前でドンパチやる気かい?それならあたしが本気で止めるよ。ってかカメラ持ってない?1000枚ほど撮りたい写真ができたんだ

けど」鼻血ツー

なんというか親バカ丸出しの二人と変態一人がいた。

リメエア「よしっ!じゃあ妖精さんの名前を決めちゃいましょうか」

抱擁が終わった後にこの中で一番の年長者だと思われるリメエアが仕切って妖精さんの名前決めが再開された。

妖精さん「とは言ってもなかなかしっくり来るヤツがないんだよな…。どうする?」

上条「上条さんの考えたヤツは全部駄目なのでせうか?」ガーン

妖精さん「ゴメンな。気持ちだけ貰っとくよ」ヨシヨシ

上条の考えた物は全て却下されたようだ。ショックを受けた上条を妖精さんが頭を撫でて感謝を言葉だけではなく行動で表した。

リメエア「ところでこんな名前にしたいとかって言う希望はあるの?」

妖精さん「なんかこう…神々しい名前が言いな。格好いいヤツ」

上条「じゃあスーパーかハイパーを付けよう!」

例え今までのは全て却下されたとしても上条はまだ諦めてはいなかった。

リメエア「んー?スーパーやハイパーより格好いい名前って言うなら私は神様の名前が思いつくわ」

上条「神様の名前?」

妖精さん「おお。そういえば神の名前はどれも私好みの格好いいヤツだからな、それならいいのが決まりそうだ」

リメエア「じゃあ神様の名前って事にしてどれにしましょうか?」

妖精さん「う~ん。迷うな~有名なヤツだけあげてくとしても軽く50はあるしな…ん?どうした魔神、おすすめの神の名があるのか?」

上条「あのね。上条さんは神様の名前ってあんま知らないの。どんなのがいるの?」

まだ魔術という物に触れて間もない上条は神様の名前をほとんど知らない。そのためリメエアや妖精さんの会話について行くことができない。

リメリア「詳しくはWikipediaで探せば分かるわ」

上条「なにそれ?」

妖精さん「気にするな。じゃあどうしたもんか…」

一緒に考えると言った以上、仲間はずれを作るかもしれないなら神々の名前から自分の名前を決める事を諦めた妖精さんだったが…

リメエア「なら私が候補を挙げて上条君に選んで貰うって言うのはどうかしら?」

そう言うとリメエアはメモ用紙を取り出し、そこに神々の名前を書きまくっていった。

妖精さん「おお、そりゃいい。お前頭いいんだなリメエア」

上条「?上条さんは何をすればいいんでせうか?」

リメリアの説明をうまく理解できなかった上条が不安そうに聞いてくる。

妖精さん「んーとな。今からリメエアが名前の候補の神を適当に書いていくからお前にそれを選んで欲しいんだ」

上条「………上条さんが選んでいいの?」

妖精さん「お前に選んで欲しいんだよ。その結果がどんな物でも受け入れてやるさ」

名前を選ぶという一生に関わるの大役を上条に頼む妖精さん。信じているのだろう、上条ならば自分にとって最高にピッタリくる名前を選んでくれると言うことを。

リメエア「できたわよ~」

妖精さん「準備万端のようだな。任せたぞ魔神…いや上条」

上条「!!任せといて妖精さん」

リメエア「さぁ、どれでも好きなのを直感でいいから選んでね」

妖精さん「い、意外と多いな。100くらいあるんじゃないか?」

上条「すげー。お姉さんこんなに知ってたの?」

妖精さんが上条に名前を選んで欲しいと告げている間にリメリアの座っていたところには100枚以上の神々の名前が書いてある紙が散らばっていた。

リメエア「正確には108よ。日本ではきりのいい数字と聞いているから」

妖精さん「つうかお前これ全部英語じゃないか。これじゃ当麻には読めないだろ」

リメエア「読めない方がいいでしょう?その方が直感で選んでもらえるし、何より私が選び抜いた名前よ?決まったとしても恥ずかしい物なんて一つもないわ」キリッ

妖精さん「すごい自信家がったんだなお前。…よし上条!この中から私にふさわしい名前を…「どれにしようかな~」もう選び始めてる!?まぁ、こうゆうのは出だしが

肝心だし…「よしこれに決めた!!」早いよ!!もう少しくらい迷えよ!!」

上条はすでに選び始め、全てを見るなんて事はせずに真ん中にあった一枚の紙を躊躇無く選び取っていた

リメエア「惚れ惚れするくらい男前ね………ん?大丈夫よ狙ってなんか無いから。そんな怖い顔しないで」

妖精さん「ね、狙ってなんか無いわ!!そ、それより上条一体どれを選んだんだ?」

顔を真っ赤にしながら急な話題の転換を試みる妖精さん。確かに上条が何を選んだのかは気になるのでそれに乗るリメエア。

上条「これなんて読むんでせうか?」

選び取った紙を二人の目の前まで持ってきて見せる上条。途端に二人の表情が何とも形容しがたい物へと変わる。

妖精さん「………Odin (オーディン)か…」

リメエア「流石と言うべきなのか運が強いのかと言うべきなのか迷うけどよりによってこれとはね…」

上条「これそんなに格好悪いヤツなの?」

読み方すら知らないのだから選んだものがどんな神なのかも分からず不安そうになる上条。読み取った二人の表情から察するにあまりいい名前ではないと感じているのだ

ろう。

妖精さん「格好いいか格好悪いかで言えば格好いいヤツなんだけどな…。なんたって主神だし」

上条「主神?」

リメエア「神様の中で一番偉いって事よ。…主神の他にも色んな意味がこもってるから一概にいい名前とは言えないんだけどね」

オーディインの呼称は「全知全能の神」・「万物の神」などといういい意味での呼び名も数々と持つが、神話では戦いの神でもあり最後には悪神ロキの作ったフェンリル

という狼に食われるという結末を迎えたなんともめんどくさい神なのである。

リメエア「ていうか仮にも女の子の名前なんだからオーディンは駄目なんじゃないのかしら?」

上条「う~ん。確かに格好いいけど…妖精さんには似合わない気がするなぁ」

妖精さん「私は別にいいぞ。なんたって魔神が選んだものだしな。………ボソッ…それに、ある意味では私には相応しい名だしな」

最後の方は聞くことができないほどの小さな声だったので上条にもリメエアのも届いてはいなかったが、届いていないならいないで二人はさらに話し合いをしていた。

リメエア「どうする?もう一回選び直す?」

上条「なんかもっかい選ぶのはいけないと思うんだ…」

妖精さん「だから私はこれでいいって言ってるだろう。確かにあんまり女っぽくない名前だけど私好みの名前だしな」

上条「そうだ!このオー…オー、ディ……まぁいいや。とにかくこれをもっと可愛く改造すればいいんだよ!!」

妖精さん「話聞けよ。つうかお前すごいこと言ってるの分かってるのか?」

妖精さんの意見などスルーして勝手に改造などといったアイディアを出す上条。神の名前を勝手に改造するなんて罰当たりもいいとこである。

リメエア「確かに改造…いえ、改名っていうのはいいアイディアかもね」

妖精さん「リメエア、お前まで何言って……」

上条「ねーリメリアさん。この名前って他の読み方とか無いの?」

リメエア「確か…えっと。オティヌスって言い方があったと思うんだけど…」

妖精さん「確かゲスタ・ダノールムが呼んだ名前だったかな…確かにそれならオーディンよりマシな気もするが」

二人ともまだ見た目は子供なのに頭の良さと知識量だけで言ったらすでに並の大人を上回っているのだからなんだか難しい会話になっている。それについて行けない一般

人の上条は…

上条「オティヌス?じゃあオティちゃんだ!!」

オティちゃん「おい待て!いや待って下さい!そんなオティちゃんなんていう可愛いやつならオーディンの方がまだマシです!!」

仰天のあまり敬語になっている妖精さん改めオティちゃん。流石に名前に「ちゃん」が付くのは嫌なのだろう。

リメエア「まあ待ちなさいオティちゃん(笑)。オティちゃんをニックネームにして、本名をオティヌスにすればいいんじゃないのかしら?」

オティちゃん「ニックネームならまだいいか…?いや、でも、流石にオティちゃんは………」

上条「オティちゃん嫌なの?」ウルウル

涙目でオティちゃんを見上げる上条。そんな顔で見てきたら断れるはずもなく…

オティちゃん「あぁああ!!分かったよ。いいよ、別に。ただしオティちゃんは駄目だ、オティヌスにしてくれ」

上条「やったーー!!じゃあ妖精さんの名前は今からオティヌスね!!」

ついに妖精さんの方が折れてオティヌスに決定した。

リメエア「じゃあそろそろ私は失礼するわ。…そろそろあそこの三人が復活しそうだし。また今度一緒にに遊びましょ」

名前が決定して少しの雑談を三人で仲良くした後、急にリメエアが立ち上がり言った。

上条「ほえ?お姉さん帰っちゃうんでせうか?」

(妖精さん改め)オティヌス「あそこの三人が立ち直ると何かまずいのか?」

リメエア「う~ん。状況的にいえばまずいのかしら?ちょっと訳あって話せないけど取りあえずまた今度ね上条君、オティヌスちゃん」トタタッ

上条「行っちゃったね…」

リメエア「なんなんだあいつ?………それでどうする?私も当初の目的は果たせたし、そろそろ帰ろうと思ってるんだが」

上条「え~オティちゃんも帰っちゃうの!?上条さんはどうすればいいの?」

オッレルスがいるだろうオッレルスが。

オティヌス「オティちゃん言うな、オティヌスと呼べ。私のそうだがお前なら会おうと思えば何時でも会えるだろう?」

上条「だろわないよ?」

「だろわない」という新しい日本語がおそらく完成した瞬間である。(>>1は友達とよく使ってます。ある言葉だと思ってたらなかったので驚きました)

オティヌス「だろうんだけどな~。まぁ暇なら遊びに行ってやるから待ってろ」

上条「本当?嘘言ったら針千本だよ!」

オティヌス「針千本?なんだそれは」

上条「お父さんは針を千本飲むことだって言ってたよ」

オティヌス「針千本も飲むのか!?日本怖っ!!」

日本の一種の教訓のような物なのだがオティヌスとっては本当のことように聞こえるらしく、かなり怖がっている。

上条「だから約束だよ?」

オティヌス「ああ分かった約束だ。流石に針千本も飲みたくはないしな………なんのようだ魔神のなりそこない」

そう言って立ち去ろうとしたオティヌスを止める者がいた。

オッレルス「いや、話は終わったのかと思ってね」

オティヌス「私といいお前といい、何かと苦労があるようだな」

上条「オッレルス、オティヌスと友達なの?」

オッレルス「申し訳ないが会うのは初めてだと思うよ?それとも昔会ったことでもあったかな?」ウーム

腕を組み、自分の記憶をさかのぼるオッレルス。どうやら本当に心当たりがないようだ。

オティヌス「私とお前は確かに初対面だよ魔神のなりそこない、ついでのそこの魔神もな。ただし、全くの無関係者かと言えば違うがね」

オッレルス「………一つ聞いていいかな?私が魔神のなりそこないだって事は魔術界でもごく一部の限られた人しか知らないはずなんだけど、君はどうやってその事を知

ったのかな?」

オッレルスが魔神のなりそこないであるという事を知っているのは世界中で5人もいないだろう。英国の女王のエリザードもその一人だがそう易々と他人に教えるほど口は

軽くないはずである。

オッレルス「そしてどうやら当麻が魔神だって事も知っているようだ。………改めて聞こう。君は誰だ?」

オッレルスの周りに説明できないような魔力が集まる。返答によっては目の前の少女に対し攻撃をするという意思の表れであり、並の魔術師なら失神するほどの魔力をま

き散らしながら問う。しかし、少女は余裕の表情のまま………

オティヌス「一つずつ答えていこう。まず「どうやって知ったか?」。これは簡単だ。教えて貰ったんだよ…私の親と言うべき存在にね」

オッレルス「親?君には親がいるのか?」

オティヌス「当たり前だろう。カッコウが運んでくる訳なんかじゃないんだから。…まぁそのほうがマシだったけど。続いて二つ目の質問に答えよう。「君は誰だ?」こ

う聞かれれば私は一部に人間にはこう答えると決めていてね」

オティヌス「私は人工的に魔神を作ろうとした結果の失敗作だよ」

オッレルス「人工的に魔神を作る?一体どうゆう意味だ」

オティヌス「そのままの意味だ。お前の他にも自らの力で魔神になろうとした人間がいてな。それでどうやっても魔神になることができなかったから”人間という物を最

初から魔神になるために作ってみよう”という実験が行われてその結果が私だ」

人間は生まれながらに人間として生きることを義務づけられている。人間が魔神になると言うことはその義務を放棄し自然の摂理の輪からはみ出すと言うことだ。ならば

、最初から魔神になるために、人間としての義務を授かる前に魔神になるように調整されれば魔神を作り出すことができる。そんな無茶苦茶な理論の基に作られたのがオ

ティヌスなのだ。

オッレルス「人工的に人間を…魔神を作り出すとはね…。ならば君を作った人が君の親なのかな?」

オティヌス「いちいち質問の多いヤツだな、答えてやるけど。正確には親ではないな、私は私を作った人間の細胞から作られたクローンという物らしいぞ」

オッレルス「………神への冒涜だね」

オティヌス「神になろうと言うんだ、冒涜どころか唾だって吐いてやるさ。それに魔神としての完成度で言えばお前よりは上だが失敗作なぶん、色々と面倒な事になって

いるから罰は受けたよ」

上条「ねーねー二人とも何話してんの?」

神への冒涜、まさに外道である人間のクローンの製造。今二人が話している内容は聞き手によれば世界を揺るがいかねないほどの物だが、幼い上条にはまだ理解ができて

おらず暢気な調子で会話に入ってこようとする。

オッレルス「ちょっと難しい話だよ。心配しなくていい。……そうだ、あそこにいる女の人二人に会いに行ってごらん。ドレスを着てる方は王女様なんだよ」

上条「王女様!?じゃあトランプの兵隊は!?」o((・_・彡 ・_・))o

オティヌス「いや、トランプの兵隊はいないと思うぞ………多分。聞いてみたらどうだ?」

上条「じゃあ聞いてくるね~。オッレルスもオティヌスも喧嘩しちゃ駄目だよ」トタタタッ

エリザードにとシルビアに向かって走り出す上条。その背中を見る二人の目はとても温かい。

オティヌス「かわいいものだな。随分と甘やかして育てているようだが」

オッレルス「念願の友達でもあり新しい家族だからね。私にできることなら何でもしてあげたいのさ」

オティヌス「クククッ。あいつにできないことがお前にできるのかな?なりそこない?」

オッレルス「できるできないは問題じゃない。やるかやらないかが問題なんだよ」

そういうオッレルスの言葉お聞きオティヌスは黙り込む。何か思うところでもあるのだろうか?

オティヌス「助け合いというやつか………。おかしい物だな、私達のような人の道を外れた者達が助け合いなどといったことに関わるなんて」

オッレルス「人の道を外れたとか外れてないとかそんなことは関係ないだろう。そんなことが助け合いをしない理由になんかならないのだから」

オッレルス「そうか?私は人工的に作られた魔神の失敗作のクローン。お前は自らの努力で魔神を目指したが横取りされたなりそこないの人間でも魔神でもない中途半端

な存在。あいつにいたっては奇跡と呼ぶべきか不幸と呼ぶべきなのか両親とその他を犠牲にしてできた完璧な魔神。………確かに私達なら全てを助けられるだろう、だが

私達が助けた者達は感謝してくるのか?こんな化け物達を。むしろ差別し、拒絶されて終わりだろう」

普通の人から見たら、いや、例え魔術師が見たところでここにいる三人の人間は異質であり怪物であり化け物だろう。助けたところで恐れられるのがオチだ。否定ができ

ないのかオッレルスは何も言わずただ俯いてしまった。

オティヌス「無言か…それもいいだろう。ではこっちから最後に聞いておこうか、お前は今の自分、魔神のなりそこないという存在で幸せか?」

オッレルス「そ、そ、それは………」

オッレルス「まあいいさ。その答えは次に会った時にでも聞くとしよう」

「魔神によろしくな」といってオティヌスは霧のように消えた。最初から存在なんかしていなかったかのように…

そしてオティヌスという存在が消えた後、残っていたのは一人の触れば折れてしまいそうなほど脆そうな青年だけだった。

上条「あれ~オッレルス。オティヌスは?」

オッレルス「………はっ。当麻か。どうかしたのかい?」

呆けていたオッレルスに上条の声が響く。オティヌスの最後にしてきた質問に対して何か考えていたのだろう。

上条「オティヌスはどこって聞いてるの!!」

オッレルス「ああ、彼女なら帰ったよ。当麻によろしくだってさ」

上条「えー帰っちゃったの?もっと一緒に遊びたかったのに…」

エリザード「うん?さっきの女の子、オティヌスって言うのかい?帰っちまったのか…お土産くらいあげようと思ってたんだけどね」

シルビア「お土産も何もあんた手ぶらじゃないか。一体何をあげるつもりだったの?」

エリザード「いや、この王冠でもあげようかなって………そげぶ!?」

シルビア「少しくらい王女としての自覚持てやこの婆!!」

バコーンッ!!というシルビアがエリザードをはたき乾いた音が響き渡る。上条に話しかけて貰ったおかげなのか二人とも何とか復活したようだ。

エリザード「痛いぞシルビア」

シルビア「痛くしたんだよ。ていうか何で聖人の一撃をノーガードで耐えられるんだよ?」

エリザード「さぁ?」

人間の神秘の片鱗を覗いた気がするシルビアだった。

シルビア「そういえば、ガキンチョ。女王さん達はどこだい?」

エリザード「おおそうだ、そうだ。リメエアは戻ったみたいだからいいとして…キャーリサとヴァリアンはどこにいるの?」

上条「キャーリサ様とヴァリアン様ならおっきな木があるところにいるよ。でもいまウィリアムさんが行ってるから行っちゃだめだよ」

大きな木と聞いただけで大体の場所が分かったのかその場所に行こうと知る二人。それを上条が引き留めて言った。

シルビア「ウィリアムさんって傭兵長のウィリアムのことだよな。何で行っちゃ駄目なんだ?」

エリザード「傭兵長が向かってるなら護衛に関しては問題ないと思うが…ウィリアムとやらは一体何しに行ったんだ?」

自分の娘を、自分の使えているところの重要人物の所に行ってはいけないと言われれば気にもなるだろう。そして答えを聞いた二人はどうなるのか…

上条「抱きしめてチューしに行ったんだよ」

般若が現れるかと思われたそのとき、扉が開き、三人の馬鹿が現れた!!

ウィリアム「してないのである!!」扉ドカーン!!

ヴァリアン「///されてません!!………して欲しかったけど」抱えられ真っ赤

キャーリサ「離せし~~~!!」抱えられ暴れ中

エリザード「おい、貴様か?私のかわいい天使にキスをした糞野郎は?」

エリザードはカーテナ=セカンドをウィリアムの喉元に突きつけながら問う。答えによっては躊躇無く切りつけるつもりだろう。

ヴァリアン「///だからされてませんよお母様!!」

キャーリサ「そんな真っ赤な顔で言っても説得力ゼロだし」

ウィリアム「事実である。信じて欲しいのである!!」

ブチ切れ間近のエリザードを必死というか決死でなだめるヴァリアンと自信の無実を主張するウィリアム。抱えられていた二人はいつの間にか離されており、母に対して

何があったのかを伝えている。

エリザード「本当かヴァリアン。本当に何もされてないのか?」

ヴァリアン「本当ですお母様。私を信じて下さい」

ウィリアム「我が輩も英国騎士道に誓ってしてないのである」

エリザード「………そうか、それならよかった」

何とか冷静さを取り戻し二人の話を信じ始めたエリザード。何とか丸く収まるかと思われたが…

キャーリサ「でも抱きしめはしたし」

爆弾が再び投下された。

エリザード「おい貴様、確かウィリアムとか言ったな。今から英国王女ではなく一人の母親として貴様を物理的地獄へたたき落とそうと思うんだが何か遺言はあるか?」

ウィリアム「………英国騎士道に誓いはしたが、それは接吻はしていないと言うことだけである」

エリザード「それが遺言か」

カーテナを構え直し、再び燃え上がるエリザード。

キャーリサ「おおー。かー様の目が珍しくマジだし。……逃げといた方がいいか?」

シルビア「逃げる前に聞かせな。アタシは状況を全く把握できてないから最初から説明しろ」

キャーリサ「う~ん。全部分かってる訳じゃないから、所々だけでもいいし?」

シルビア「いいよ。何となくでも分かれば対策が打てるからね」

キャーリサ「こんな感じだったし」


①ヴァリアンの好きな人(ウィリアム)に会いに行こう
    ↓
②ヴァリアン、恥ずかしさでショート
    ↓
③ショートしたヴァリアンを私が何とかしとくことにして、そこの部下(上条)に好きな人(ウィリアム)を連れてこいと命令
    ↓
④ヴァリアンがようやく落ち着いた頃、ウィリアム到着
    ↓
⑤再び顔が赤くなったヴァリアンをウィリアムが抱きしめてキスしようとするが、ヴァリアンがオーバーヒートしてキス失敗
    ↓
⑥ウィリアムが仲間達にこうするよう言われたと主張
    ↓
⑦私が事情を聞き、嘘だと指摘
    ↓
⑧キレたウィリアムに抱えられてここ(訓練室)までつれてこれられる
    ↓
⑨そして、現在に至る


シルビア「⑦の時に嘘付けばよかったんじゃないの?」

キャーリサ「流石に妹がキスされそうになったからテンパッちゃったし」

シルビア「流石お姉ちゃん。妹にピンチに頑張っちゃったか」ヨシヨシ

キャーリサ「くすぐったいし///」

エリザード「英国の国宝であるカーテナに斬られたことを誇りに地獄に行け」

ウィリアム「罪とは例えどんな理由があろうと正しく裁かれるべきである。潔く斬られよう」

カーテナを構えるエリザードに対し、ウィリアムは直立不動のまま立っている。その立ち姿はまさに英国騎士としての全てを物語っていた。

ヴァリアン「お母様待って、話を聞いて!!ウィリアムさんも逃げて!!」

エリザード「ふん、最後は誇りある騎士を演じるか。ならば糞野郎は取り下げよう、くたばれウィリアムっ!!」

ウィリアム「我ウィリアム=オルウェル。英国騎士として誇りある人生を「何諦めてんだよ傭兵長さん!!」おくっ……グハッ!!??」

エリザード「シルビアっ!?なぜ邪魔をする!」

娘の決死の叫びも届かず、カーテナをを縦に振りかぶり、ウィリアムの体を真っ二つにしようとしたエリザードの斬撃は空間を切り裂き全てを消し飛ばした。しかし、咄

嗟にウィリアムをシルビアが横に蹴っ飛ばしたことによりウィリアムは無事だった。

シルビア「邪魔するも何も一回落ち着いて話を聞け、まず…」

キャーリサ「おーいシルビア。蹴っ飛ばしたウィリアム動いてないぞ」

シルビア「マジ?………マジじゃん!!おい、死ぬなよ!!」

見れば蹴っ飛ばされたウィリアムは壁にめり込んだままピクリとも動いてはいなかった。その足下には少しだが血溜まりも見える。

エリザード「えっと…つまりどゆことヴァリアン?」

状況を説明してくれるかと思われたキャーリサとシルビアは蹴っ飛ばしてしまったウィリアムの介護をしており説明なんてできそうもない。そこで、ヴァリアンが説明し

た。

ヴァリアン「かくかくしかじかって事です」

エリザード「まるまるさんかくって事だな?」

上条「オッレルスもあれで分かるの?」

オッレルス「魔神になるために蓄えた知識と経験を全力で使ったとしても理解不能だよ」

エリザード「あーそのーなんだ。ゴメンなウィリアム」

オッレルス「どっちかって言うと謝るのは貴方ではなくてシルビアじゃないのかな?」

ヴァリアンの説明を受け、なにがあったのかを理解したエリザード。謝っているが結局の所、彼女は何もしてはいないのでその謝罪には意味がない。

ヴァリアン「ウィリアムさん大丈夫ですか!?」

ウィリアム「うぅ………………」

シルビア「何とか止血はすんだよ。骨折も数カ所してはいるけど命に別状はないみたいだから安心しな」

キャーリサ「安心も何もこれやったのシルビアだし」

エリザード「…ねえこれ後で私ヴァリアンに殺されたりしないよな?」

オッレルス「分からないな。恋する乙女は世界すら敵に回すらしいからね」

ヴァリアン「お~か~あ~さ~ま?少~~しお話があるんですけれど、よろしいですよね?」

エリザード「ひぃいいっ!!?今だかつて見たことがないくらいヴァリアンが荒ぶっているぅ!?ていうかこれやったのシルビア………」

ヴァリアン「お 返 事 は?」

エリザード「か、……SI、こまri……ま,siた……あぁぁぁあ!!」

いつの間にかエリザードの目の前まで来たヴァリアンが、片手で自分より遥かに身長の高いエリザードを首を締め上げて持ち上げている。

キャーリサ「ヴァリアンってあんなに力強かったんだな……。ていうかどうやって持ち上げてるんだし?」

シルビア「……実はヴァリアンって聖人だったりしないわよね?」

キャーリサ「た、多分?、……でも聖人だってとしても不思議じゃないし」

聖人とは生まれもってその性質を持っている場合と、後からその力が覚醒して聖人になるという二つのパターンがある。多くの場合は前者だが、まれに後者のパターンも
ある。(ちなみにシルビアは後者の設定)

オッレルス「英国の女王という存在なら例え聖人だとしても何ら不思議はないしね」

シルビア「あー解説してくれてるとこ悪いんだけどあんた達あれ何とかできないの?このままじゃ明日の英国新聞の一面が大変なことになるよ」

多分見出しはこんな感じだろう「驚愕!英国王女殺害。犯人はかの有名な第三王女ヴァリアン!!」

キャーリサ「死因は窒息死だし」ケラケラ

シルビア「”娘の男に手を出して”って死因も忘れたらいけないよ」ケラケラ

ヴァリアン「あっ。シルビアさんにお姉様も後でお話があるので よ ろ し く お 願 い し ま す♪」

キャーリサ・シルビア「「………」」ダッ!!

キャーリサとシルビアは逃走した。

ヴァリアン「そこの男性。あの二人を捕まえといてくれないかしら?」ギロッ

オッレルス「かっかしこまりましたぁぁあ!!」

しかし、ヴァリアンの下部となったオッレルスの魔神クラスの拘束魔術に捕まってしまった。

キャーリサ「離せ変態!!いや、離して下さい変態様!!」

シルビア「くそっ解除しろオッレルス。アタシにはまだやることが残ってるんだよ!!」

オッレルス「……私も命が惜しいんだよ。大丈夫!多分殺されはしないはずだ」

もやはこの場を支配しているのは英国第三女王ヴァリアンだ。しかし、ついに世界すら支配できる魔神が動いた。

上条「とりあえずウィリアムさんを何とかすればみんな仲良くなるのかな?」

数メートル先では何の力も持っていなかったヴァリアンが聖人と王女と女王と魔神のなりそこないを従えている中、上条は暢気にも未だ目を覚まさないウィリアムの所へ
と歩いて行った。

上条「大丈夫?寝てたら返事して」ペチペチッ

できるか!

ウィリアム「う……うぅ…。ん、少年は確かあのときの…」

できたよっ!

上条「あのねーお怪我を治す魔法教えてー」

ウィリアム「…少年。君は魔術が使えるのであるか?」

上条「できるよ。でもまだホイミのやり方は教えて貰ってないからできないの」

ウィリアム「ホイミ?」

流石にホイミは伝わらなかったらしい。

ウィリアム「ホイミというのがなんだかは知らないのであるが、回復魔術の術式を簡単に説明するなら、天使を呼び出してその恩恵で体の回復力を上げるという感じであ
るな」

上条「天使?頭に輪っかがあるあれ?」

ウィリアム「その認識で間違ってはいないが…天使すら知らない君が本当に魔術を使えるのであるか?」

回復魔術とは本来とても繊細な魔術であるために使用できる者は数少ない。なぜなら失敗したときの代償で回復させたかった人間を殺すこともあるからである。

上条「できるよ~。もぉー本当に凄いんだから、見ててよ~………。あっでも待って。天使の名前教えて」

ウィリアム「回復の術式を発動させるのであれば癒しの天使であるラファエルが望ましいが…。我が輩は基本、力の天使のガブリエルを多く使用するタイプの魔術師であ
るからガブリエルが望ましいのである」

上条「ガブリエルね。………よし、出てこいガブリエル~~」

瞬間、人間界に一体の天使が降臨した。

ガブリエル「zxcvbml我kjhgf降臨dsqwrtyp」

なにやらノイズの混じったような声だか音なのかを発生させて喋るガブリエル。その姿は身長2メートルを超える上条から見たら巨大なもので、大理石のような白い肌に青
と金色を基準とした鎧のようなものを纏っていた。顔に至っては頭の上には棘のようなものが付いた輪っかが浮いており、その表情は彫刻のように完成された美であった


上条「おー、こんにちはガブリエル……さん?俺の名前は上条当麻です」

降臨した大天使ガブリエルに無邪気にも自己紹介し、握手を求め手を差し出す上条。性別が分からないのか(そもそも天使に性別があるのか)「さん」でいいのか不安の

ようだ。

ガブリエル「qw魔神rtyplk認識jhgfdszx手?cvbm」

上条「握手知らないの?お手々とお手々をギュッってするんだよ」

ガブリエル「qz握手ws理解xchfvbg試行tyhmjklp」手をギュッ

上条「おぉおおー天使さんと握手できたーー!!」キャッキャッ

ガブリエル「plm喜kjhbv握手gytfcx理解drwszq」

恐れ多くも人類史上初、天使と握手ができた瞬間である。ついでに上条は何となくだが意思の疎通ができているようだ。

ウィリアム「少年…貴殿は一体?そこにいるのは本物の天使なのであるか?」

上条「上条さんは魔神なのです。超凄い魔術師なのです」

ガブリエル「qrw我thgfガブリエルdxzlp、trshgf証明yrghds」

ガブリエルが自らを天使であると証明するため翼を広げた。その翼は水晶のような美しい翼で明らかにこの世の持てるわけがないことを表し、天使であることを証明した

ウィリアム「本物の天使であるか…だが魔神とは一体…?」

オッレルス「その質問には後日私が答えよう。……天使なんか呼び出して何をする気だい当麻?」

気がつけばいつの間にかオッレルスも近くまで来ており上条に問いかける。

エリザード「たまげたな…。大天使ガブリエル…いや、例え大天使ではなくとも生きているうちに人間が天使を見ることができるとはな」

シルビア「こいつ…あんたが呼んだのかい…ガキンチョ?」

キャーリサ「あれ本物の天使だし?」

ヴァリアン「何か神々しいですね」

ガブリエル「hy褒trws照れるdgfxc、zっv下界kpytlk久々jmglkcvdf」

さらにいつの間にやらその他のメンツも間近まで来ており緊張した面持ちでガブリエルを眺めている。ガブリエルが無意識に放出している魔力からその危険度を感知取り
警戒しているようだ。…ヴァリアントキャーリサは暢気に構えているが…

上条「うんとねー。ウィリアムさんのお怪我お治して貰うの~」

ずっこけた。80年代の漫画みたいにオッレルスとシルビアとエリザードがずっこけた。

オッレルス「そ…そんなことのために天使を降したのかい?」

シルビア「天使ってそんな簡単に降ろせるものなの?アタシの術式はあんまし天使とかと関わらないからそこんとこよく分かんないんだけど…」

エリザード「馬鹿言え…。そんな簡単にこんなものが天界から降りてきてみろ。世界なんか一瞬で終わるぞ」

ガブリエル「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」バンバンッ

キャーリサ「何かめっちゃ笑ってるし!?」

ヴァリアン「天使の笑顔ってもっと素敵なやつを想像してたんですけど…ちょっと怖いです」

どうやら三人の転び方がツボに入ったらしく大爆笑している。しかし、いつまで経ってもお願いを聞いてもらえない上条は…

上条「ねーねーガブリエル。早くウィリアムさんのお怪我治してよ~」

ガブリエル「!?plkjh失礼gytrws服従dxzclkmb離してghtpfrdlkvfc!」

オッレルス「当麻ぁ!?」

あろう事か天使の輪を掴むという暴挙にでた。

ガブリエル「mklr天輪wtyhgb返還vfcdzxm要求klhkfg」シクシク

上条「おー天使の輪っかだ…。何か軽いね、何でできてるんだろ?」クルクル

オッレルス「間違っても右手で触れるなよ当麻。壊したりなんかしたら洒落じゃすまないぞ」

上条はなんとガブリエルの頭の上にあった天使の輪を奪い取り指でくるくる回して遊んでいる。そして、ガブリエルはその上条の隣で恋人を取られた女のように泣き崩れている。

キャーリサ「おーい部下。その輪っか貸せし」

ヴァリアン「私にも貸して下さい」

ガブリエル「plk譲渡mhtrdfws駄目h、zxv魔神bcrt返還swq要求dgh」

上条「ガブリエルが貸しちゃ駄目だって-。…ウィリアムを治してくれたら返してあげるよ」

ガブリエル「wrfsd了解qwryth迅速jkbchzbc試行vjdlfgcyっsjhc」

上条のお願いをようやく聞き入れ、ウィリアムに対して回復魔術を使用するガブリエル。どうやら魔神である上条の言うことは聞いてくれるようだ。しかし…

エリザード「ん?待てよ。回復魔術って天使の恩恵で体の回復力を上げて怪我を治すタイプの魔法だよな。本物の天使がやったらどうなるんだ?」

シルビア「天使っていったら神の代理人だからね、凄く早く治ったりするだけじゃないの?……そこんとこどうなの魔神のなりそこないの知識を持つオッレルスさん」

オッレルス「推測になるが…おそらく「天使の力」による回復術式を展開するんじゃないのかな?威力というか効果は桁外れになるだろう」

天使が魔術を使うなど、人類にとっては初の行動だ。その効果や威力がどのくらいになるかなどはいくらオッレルスでも想像できない。

シルビア「「天使の力」ねぇ。そう言えばアタシ(聖人)も「天使の力」とは結構関わってるな…」

エリザード「ちゅうか前提条件として聖人でもないウィリアムに「天使の力」を使った回復魔術なんて耐えられるのか?」

シルビア「!!」

オッレルス「当麻!!ガブリエルに術式を中止させろ!!」

聖人といえど「天使の力」を使える量には限りがある。肉体の許容量を超える力で身を滅ぼしてしまうからだ。ならば、聖人でもないただの人間が「天使の力」を直に使われるとなると迎える結末は…

ガブリエル「mklv天使の力gbxcsdf充電完了dhs、vcmdgv回復魔術kfrwsqf発動dgzvcxbchgprtym」ブオォォォォン

二人の叫びも届かず回復魔術が開発動された。それに使われる「天使の力」の量は聖人であるシルビアですら耐えられるようなものではなかったはずなのに…

ウィリアム「おぉ、力が漲ってくるのである…」

…ウィリアムは無事だった。

エリザード「あれ?何か大丈夫みたいだよお二人さん」

シルビア「な…なんで?あれだけの「天使の力」を体に浴びたりなんかしたらアタシでさえただじゃすまないのに…」

オッレルス「当麻。一体何を?」

驚愕する二人をよそにウィリアムの体はどんどん回復していく。よく見ればガブリエルの影に隠れて見えなかったが、上条がウィリアムに触っていた。

上条「ガブリエルがね。この人間は私の魔術に耐えられないだろうから力を貸してくれって言ったの」

ガブリエル「p肯定wr。tysh魔神ds協力dxvz、gckfb見るvjldlrqd」

上条「見れば分かるってさ」

オッレルス「見れば分かるって…一体何を見れば…なるほど、そうゆうことか」

シルビア「一体どうゆうことだい?」

見れば上条がウィリアムの体にガブリエルの鎧の一部をくっつけていた。

オッレルス「当麻がガブリエルの鎧をウィリアムさんに融合させることで人間としての強度を聖人以上の物にしたんだよ」

耐えられないなら耐えられるようにすればいい。そのためにウィリアムの体にガブリエルの鎧を融合させ膨大な「天使の力」に耐えられるような体に変えたのだ。

オッレルス「天使の鎧を脱がせたり触ったりましてや融合させるなんて私でさえできないよ…当麻とガブリエルにしかできない方法だな」

上条「………どゆこと?」

シルビア「お前何も分かんないでそれやってたのか?」

上条「だってガブリエルが。「私の鎧をこの傷ついた人間に当てていて下さい」って言っただけでその通りにしてるだけだよ?」

ウィリアム「……我が輩の体に天使の一部が混じったとゆうことであるか?」

オッレルス「その認識で間違ってないよ。すでにガブリエルの鎧は君の体と同化してしまっている。並の聖人すら軽々超える文字通り「天使の力」をその身に宿したんだ」

体が全回復したウィリアムが立ち上がりオッレルスに問う。確かに先程までとは違った魔力をウィリアムから感じる。ガブリエルの鎧が付けられていた箇所にはもう何も残っておらず、完全に同化したらしい。

シルビア「じゃあそこの傭兵長さんはこの数分でアタシより強くなったんだ…」

オッレルス「「神の子」に似た性質を持ち、天使の力の片鱗を使う聖人の君と、天使の一部をその体に宿し、天使の力を常時本気で使える彼とでは次元が違うよ。恥ずべき事じゃない」

ウィリアム「なんだかずるをしたみたいな気持ちであるのだが…」

エリザード「ずるなんかじゃないさ。もらえる物もらってないが悪い」

ショックを受けているシルビアをオッレルスが慰め、ずるをしたんじゃないかと落ち込むウィリアムをエリザードが励ます。何とか収拾がつき始めたようだ。

キャーリサ「………なんだかよく分かんないうちにまーるく収まったみたいだし」

ヴァリアン「ウィリアムさんが元気になってよかったんです」

上条「女王様達~。ガブリエルがもうすぐ帰るから触るだけならいいって」

キャーリサ「マジかしっ!?おっしゃあ!天使に触った女の子一番乗りだし!!」コチョコチョ

ヴァリアン「姉上ずるいです。じゃあ私は二番乗り~♪」ペタペタ

ガブリエル「swq我mklp接触dfg?hbvcxzklptお返しrwhkld」キャッキャッ

キャーリサ「うぉっ!?天使がくすぐり返してきたし!?」

ヴァリアン「おっきな手ですね…あっ、以外と柔らかい」プニプニ

ガブリエル「rty我kljhgf手plk柔らかmj?hbg人間vfdどこcszds柔らかwqwgdyrmg?」頬プニプニ

ヴァリアン「えっちょっガブリエル様。どうひらんれすかぁ?」

どうやらガブリエルはサービス精神全開のようだ。女王達にくすぐられても触られても怒ったりしないし、むしろお返しするくらい楽しい性格をしているらしい。

上条「あっそうだ、輪っか返すねガブリエル」

ガブリエル「gyt感謝rwq魔神s。zxdcv天界gbhm我jkpytr帰還hgfmlkjvcds」

水晶のような綺麗な翼を広げガブリエルが立ち上がる。女王達と遊ぶためにしゃがんでいたが、上条から天使の輪っかを返して貰うと女王二人との遊びをやめて天界への帰還を準備し始めたようだ。

キャーリサ「えー帰るのかし?もーちょっと遊ぼうしー」

ヴァリアン「駄目ですよ姉上。ガブリエル様にも用事とかがあるはずです。だから、また今度遊びましょう」

ガブリエル「zxd別れwcsf。vgbh約束mjkl了解prwqs今度dhgcvl遊ぶkdszxt」

天使と遊ぶ約束をする女王達も凄いが、また天使と遊ぶと言うことの意味と危険度を分かっているのだろうか?

ガブリエル「qzx魔神cvbさらばmlkjhgfrtlkjh天界gzxcvbp帰還ytdfgh」

上条・キャーリサ・ヴァリアン「「「じゃーねー(です)(だし)(でせう)」」」

降臨したときもそうだが、何の前触れもなくいきなり消えた。帰還と言っても飛び立つとかではないようだ。

エリザード「あれ?ガブリエルは帰ったのかい?」

ウィリアム「ガブリエルは天界に帰還したようだが…我が輩の体に融合された一部はどうなったのであろうか?」

シルビア「ぱっと見ても変化なんかしてないしね。そこんとこもどうなんだいオッレルス」

オッレルス「ウィリアムさんの体に融合したガブリエルの鎧の一部はすでにウィリアムさんの物だよ。……できればもう少し詳しく調べたり意見を述べたいと思うがそろそろ私達も帰るとするか」

エリザード「何だ、帰るのか?もう少しゆっくりしてけばいいのに…」

ウィリアム「我が輩としても自分の体がどうなったのかを詳しく知りたいのであるが…なにか用事でもあるのか?オッレルス殿」

オッレルス「確かに私としても天使の体の一部が融合した人間について詳しくは調べたいんだが…このままここにいるのは非常にまずい」

シルビア「まずい?どっちかって言うとまずいのはアタシの方だろ。城ぶっ壊したし」

シルビアはエリザードの所へオッレルスを連れて行く際、城の内部を一部破壊している。

エリザード「えっ。来るときに壊れてた廊下とかってお前が壊したの?」

オッレルス「その話も後でしてくれ。取りあえず私達は退散するとしよう」

シルビア「待ちな。急ぎの用事なんかあんた達にはないはずだ。どうしてそんなに急いでるんだ?」

オッレルス「………君たちも知っての通り私や魔神のなりそこない。当麻は完全な魔神。魔術界にとっては世界レベルで警戒されるべき存在であることは分かるだろう?」

シルビア「そんなこと分かりきってるよ。実際、この一時間足らずであんたら二人のすごさは痛いほど実感したんだから」

シルビアはオッレルスに攻撃をしたが、その全てが防御すらされることなく無傷に終わり。逆にオッレルスの一撃で倒れてしまっている。

オッレルス「だからこそだよ。私達のような存在はなるべく知られたくないんだ。知られたりなんかしたら世界中を逃げ回る羽目になるかもじれないしね」

エリザード「それに天使を下界に降臨させるって偉業をしちまったしね。実際、今この城に向かってそのことを調査しようという名目で天使の情報を得ようという輩がもうすぐ到着しそうだよ」

捜索魔術を展開しているわけでもないが、第六感にも似た直感のような物でこの城に向かってくる人間を察知するエリザード。伊達に王女ではないらしい。

ウィリアム「……迎え撃ったほうがいいであるか?」

オッレルス「それはおすすめできないな。迎撃すると言うことは天使を降臨させたと言うことを認めたような物だしね。のらりくらりと穏便に解決させることをおすすめするよ」

シルビア「それにアンタは天使の鎧の一部が体に融合してる状態なんだ。それについて調べもしないうちに暴れるのは危険だよ」

オッレルス「そのことについては近日中にもう一度私が来て調べようと思うんだが…いいかな?」

天使については文献などでしか知られておらず、またその情報が載っている本などは多くが原典クラスの凄い物だけなので生半可な知識で調整や調査をしたら危険である。

ウィリアム「よろしくお願いするのである。天使について我が輩は基本的なことしか知らないのである…なのでオッレルス殿のような賢者なら安心して任せられる」

オッレルス「決まりだね。早いほうがいいだろう…じゃあ2,3日したらもう一度来るからそのときまであまり魔術を使わないようにしておいてくれ」

ウィリアム「心得た」

オッレルス「当初のも目的も果たせたし、いい頃合いだろう。………当麻。帰るぞ~」

上条「ほえっ?まだご飯貰ってないよ?」

オッレルス「そういえばそんな目的もあったっけ…じゃあ帰りにどこかレストランでも寄っていこう。それでいいだろう?」

ぶっちゃけた話。魔神のなりそこないであるオッレルスや魔神そのものである上条にとって食事は必要なことではないのだが、人間味という物を学ぶため二人とも毎日3食欠かさず食べるようにしている。

上条「レストラン!!じゃあ……ハンバーグがあるところね」

キャーリサ「なんだ、お前も帰るのか?」

上条「うん。また今度も遊ぼうね♪」

キャーリサ「(可愛い!?)////ま、まぁ部下の面倒を見るのは者の責任だし、また遊んでやるし」テレテレ

ヴァリアン「今更ですけど…お友達になりませんか?」

上条「何言ってるんでせうか?もう友達ですことよ?」

ヴァリアン「………」涙ブワッ!

上条「な、なんで泣くんでせうか!?」オロオロ

ヴァリアン「嬉しくて…私、何でだか知らないんですけど友達があんまりできないんですよ。だからそう言ってもらえるのがとっても嬉しいんです」

(オッレルス「………あんまり人見知りしたりするタイプには見えないけど…何で友達があんまりできないんだい?」)

(シルビア「………そういえばヴァリアンがキャーリサやリメエア以外と遊んでる姿ってみたこと無いわね」)

(キャーリサ「………かー様がいけないんだし。かー様のせいでヴァリアンには友達ができないんだし」)

(シルビア。オッレルス「「エリザード(さん)のせい?」」)

(キャーリサ「………かー様がヴァリアンの友達になろうとするやつ(男限定)は英国王女の権限でなんかしてるらしいし」)

(シルビア。オッレルス「「………………………」」)

(エリザード「………安心しろ殺しはしてない。二度とヴァリアンに近づかないと思うようにするだけだ」)

(シルビア「………過保護すぎなんじゃないの?」)

(エリザード「………何を言う!もし友達になりたいと言うヤツの悪影響でヴァリアンがぐれてみろ、英国は一日で滅びるぞ」)

(キャーリサ「………それかー様が滅ぼしてるんだし」)

(オッレルス「………邪魔をしてこないって事は当麻が友達になることを許可してくれるのかな?」)

(エリザード「………まぁ上条君だったかな?あの子なら大丈夫だろ。ていうか今邪魔なんてしたら私がヴァリアンに殺されそうだ」)

(シルビア「………以外とあの子強かったわね。下手すりゃ将来化けるんじゃないの?」)

(キャーリサ「………私より強くなるのは許さないし」)

(オッレルス「………じゃあ頑張るんだね」)

オッレルス「では失礼するよ。またね」

上条「じゃーねー。ヴァリアン様にキャーリサ様」(^o^)ノシ

シルビア「元気でなー。もう脱走するんじゃないぞ姫さん達」

ヴァリアン「私はしませんよ。姉上がしてるんです」

キャーリサ「ちょっヴァリアン!!お前姉を売るのか!?…はっ!?待て母上、話し合おう!」

エリザード「前々から思ってたんだよ、ヴァリアンみたいないい子が脱走なんかするはず無いって。犯人はお前だったかキャーリサ!」

ヴァリアンの脱走の理由を知り、キャーリサに向かって近づいてくるエリザード。目がマジである。

キャーリサ「あぁ~もうシルビアもヴァリアンも覚えとけよ。…じゃあな上条。また遊びに来ないと死刑だしーーーー」ダッ!

エリザード「逃げるなキャーリサ!!ウィリアム手伝え!」ダッ

ウィリアム「了解したのである。ではオッレルス殿また後日よろしくお願いするのである」ダッ

ヴァリアン「待って下さい母上!ウィリアムさん!……じゃあさようなら上条君、オッレルスさん」ダッ

逃げ出したキャーリサを追いかけてエリザードに続きウィリアムにヴァリアンも追いかけていった。残された三人は…

オッレルス「なんだか前来たときより楽しいことになっていた気がするよ」

上条「みんな楽しそうだね」

シルビア「楽しくなきゃ王族なんてやってらんないさ。…ところでお前らどうやってここまで来たの?」

上条「バイクで来たよ」

シルビア「バイク?あんたバイク運転できるの?」

オッレルス「失礼な!免許は取り立てのホヤホヤだがちゃんとできるんだぞ」

シルビア「……そのバイクって三人乗れる?」

上条「乗れるんじゃない?オッレルス見栄張っておっきいヤツ買ったから」

シルビア「そっ。ならよかった。じゃあ帰ろうか」

上条「違うよ。先にハンバーグだよ」

シルビア「ハンバーグくらいアタシが作ってやるからとっとと帰るよ」

オッレルス「その方が安上がりかな?じゃあお願いしよう」

そして三人は英国を去った。




上条「ところで何か忘れてる気がするんでせうけど…」

バイクを運転しているオッレルスにしがみつきながら上条は言う。

シルビア「そうかい?気のせいだろう」

バイクを運転しているオッレルスにしがみつく上条にしがみつきながらシルビアが上条の疑問を否定する。

オッレルス「何か忘れてるかな…」うーむ

シルビアがしがみつく上条にしがみつかれながらオッレルスは考える。

シルビア「運転に集中しな。事故なんて起こしたらそれこそ面倒だよ」

オッレルス「そうだね。帰ってから考えるとしよう」

そうって会話は中断され、オッレルス家に向かってバイクは走り続けた。


…一人多い乗客を乗せて。

ーーーーーーー日本のとあるビルの中ーーーーーーー



一人の少女と一人の人間が対面している。

電気などは付いておらず窓が無いようでそのビルの中は漆黒に包まれているが、その二人がいる地点だけは不気味に明るい。

??「帰ったのか」

他に物音を立てるような物がないのか、初めからビルにいた人間の声が響き渡る。その声は大人なのか老人なのか子供なのかも分からず、また、女なのか男なのかも分からない。

オティヌス「ふん。帰って来たくはないが一応ここが”家”だからな」

対する少女は先程英国で上条らリメエアと遊んでいたオティヌスだった。

??「どこに行っていたんだ”我が娘よ”」

オティヌス「”我が娘”ではなく”我が分身”といった方がいいんじゃないのかな”私”よ」

オティヌスは苛立ちや不満を隠そうとせず、敵意と殺意を丸出しにして皮肉を言う。

??「そう言うのもいいがそれでは何かと不便だろう?そしてもう一度聞こう、どこに行っていたんだ?」

オティヌス「聞かずとも分かっているのだろう。どうせ私の体の中にはナノマシンより小さい発信器や盗聴器が入っているんだし」

??「どうも信用がないな…。そんな物を入れる必要性など皆無だろう」

オティヌス「貴様を信用するくらいならその辺のチンピラを信頼する方がまだ安心できる」

??「歩み寄りの距離は皆無のようだな」

オティヌス「ああ。むしろ貴様がそんなことを考えていたことに驚くよ」

よほどそこにいる人間と一緒にいたくないのか、オティヌスは会話の切り上げを暗に要求する。しかし、それをを分かっていながらその人間は会話を続ける。

??「ふむ、どうしたものか…ならばアプローチを変えてみよう。我が娘よ「その呼び方をやめろ」…おや?君の方から喋るのを邪魔されるのは初めてじゃないのかな?」

オティヌス「邪魔する価値もないからな。だが、今日からそこだけは譲れないんだよ。私の名前は”我が娘”ではない”オティヌス”だ」

??「ふむ。オティヌスか。君にはぴったりの名前じゃないか。考えた人間には拍手を送りたいね」

オティヌス「………近づいてみろ。私の全力を持ってお前を殺してやる」

もし近くに誰か人間がいればその気迫だけで殺すほどの殺気をまき散らしながらオティヌスは言う。事実、オティヌスはその場から一歩すら動いていないのに壁や床には不思議に亀裂が走っている。

これ以上の会話は無意味なのかオティヌスはローブを翻しながらその人間から離れていく、しかし、急に足を止め後ろを向かないまま喋り出した。

オティヌス「………一つだけ教えておいてやるよ。今日私が会ったヤツはお前のその大切な”プラン”とやらを破壊してお前を殺しうる存在だ」

??「?………クックックッ…は!「はは!「ははは!「はははは!「ははははは!はははははは!「ははははははは!」

オティヌスが言い終わると同時にその人間の笑い声が響き渡る。その笑い声は地獄の亡者の叫びのようであり、天界の天使の笑い声のようなおぞましい物だった。

オティヌス「……お前の笑い声なんて初めて聞いたな。もう一度聞きたいとは思わないが」

??「私も感動しているところだよ。まだ私には“笑う”という機能が付いていたことに私自信でさえ驚いている」

オティヌス「二度と笑えないようにしてやるよ………アレイスター=クロウリー」

アレイスター「そのときを楽しみにしているよ我が分身、オティヌスよ」

そう言ってオティヌスは今度こそその場を去った。後にはアレイスターと呼ばれた人間だけが残っていた。

これにて第二話「そうだ、メイドに会いに行こう 」は完結です。

独自の解釈や設定が色々出ましたが、何か矛盾しているとかがありましたらご指摘お願いします。改善したり解説したりします。

第三話の次回予告だけして今回の投稿を終わります。ではまた次の投稿まで。

次回予告


「お城と宮殿ってどう違うの?」
魔神になった不幸体質を持つ少年ーー上条当麻


「なら、君を触らずに連れて行くとしよう」
魔神になりたがっていた青年ーーオッレルス


「次アタシに触ってみろ。美少女に痴漢したって訴えてやる」
英国王室派の巫女なのにオッレルス家にいる聖人ーーシルビア


「おじいさんでいいよ…。泣いてる女の子すら救えない哀れなおじいさんさ…」
ローマ教皇ーー???


「…初対面の人にそんなこと言われたのは初めてですねー」
ローマ正教禁断組織「神の右席」左方担当ーー???


「この世界に救いなんて無い」
ローマ正教禁断組織「神の右席」右方担当ーー???


「取りあえず世界中のジェットコースター全部ぶっ壊すか…」
ローマ正教禁断組織「神の右席」前方担当候補ーー???



「第三話・初めての一人旅」


今後はオティヌスがレギュラー枠に入る予定とかある?

何とか10日以内に間に合った~。投稿します。

>>482 レギュラー枠予定にはまだ入りません。しばらくはたまに登場するくらいになるかと思われます。

上条「……………ダメでせうか?」

周りに民家の一つもないような一本道で一台のバスが停車しており、その乗車口には一人の少年が立っていた。

バスの運転手「こればっかりはダメなんだよ」

バスの運転手は乗車口で立ちすくんでいる上条に申し訳なさそうに言う。

バスの運転手「規則だからね~。お金がないと乗れないんだよ。ていうか君、ご両親とかは一緒じゃないの?」

上条「お父さんとお母さんならいないよ」

バスの運転手「(いない?一緒じゃないって事かな?)そっか、一緒じゃないのか……。しゃあ仕方がないけど諦めもらうしかないね」

どうやら上条はバスに乗るためのお金を持ち合わせてはいないらしい。そのせいで乗車口で立ち往生しているようだ。バスの運転手は仕事だからと非情になり上条に諦めてもらおうとするが…

??「運転手さん、その子の料金は私が払いましょう。少年、どこに行きたいのかな?」

乗車していた一人の老人が救いの手を差し伸べてきた。

バスの運転手「いいんですか?この子の行きたいところまで結構かかりますが…」

??「大丈夫さ。多少なら手持ちがあるのでね」

運転手は先程上条からどこに行きたいのかを聞いているので、その料金の高さを危惧しているが、老人は大丈夫だという。それを聞いて上条は遠慮しながらも自分の行きたい行き先を答えた。

上条「バチカンの………お城?までお願いします」

?「バチカンの城というと…サンタンジェロ城でいいのかな?」

上条「サンタ…?そうじゃなくて確かえーと……サン・ピエトロなのとかっていうところ!」

バスの運転手「多分サン・ピエトロ大聖堂のことを言ってるだと思いますよ。丁度今日パレードでしたっけ?してるみたいですし」

運転手が補足を加えて上条の言いたいことを説明する。事実、今日の午後からサン・ピエトロ大聖堂前ではパレードが行われる予定だ。

??「ほう。どうやら私と行き先は同じようだね」

上条「おじいさんも同じとこ行くんでせうか?」

??「私はどちらかというと帰るという表現の方が正しいんだけどね。これも神の縁だ、一緒に来るかい少年?」

そう言って老人は手を伸ばしてくる。元より上条はそこになんとしてでも行きたかったので断るはずもなく、その伸ばしてくる手を掴む。掴んだ途端、言い表しがたい安心感のような暖かさが上条を包み込み柔らかな雰囲気となる。

上条「お願いします、おじいさん!!」

その掴んだ手から伝わる暖かさに包まれ、上条はこの老人に対して元気よく答える。

バスの運転手「こらっ僕。つれてってくれる人に向かっておじいさんはないだろう」

??「運転手さん気にしなくていい、元より名乗るほどの者ではない。おじさんでいいよ…。泣いてる女の子すら救えない哀れなおじさんさ…」

そう言う老人は悲しそうな、寂しそうな、自分の無力が憎たらしそうな複雑な表情を一瞬だけ見せたが、すぐに柔らかな笑みの表情と戻り上条の手を掴みバスに乗車させた。

すぐにバスは発進し、少しして老人は老人は一つだけ訪ねてきた。

??「ところで君はなんで一人なのかな?」

上条「う~んとね……………………………」

上条が一人でバチカンのサン・ピエトロ大聖堂に行こうと思ったわけを語るため、物語は数時間前へと遡る。

シルビア「次アタシに触ってみろ。美少女に痴漢したって訴えてやる」

英国城から去って2日目。オッレルス家では二人の人間が机を挟んでそれぞれにらみ合っていた。

オッレルス「なら教えてもらおうか、君は何でここにいるんだ?」

シルビア「別にいいじゃないかそんなこと。それにアンタらにとったらアタシがいる方が家事とかもしなくてすむんだぞ?」

上条「シルビアのご飯美味しいよ」モキュモキュ

時間的にはまだ朝食時なので上条はシルビアの作った料理を美味しそうに食べている。

オッレルス「それについては全面的に同意するが。君がここにいることで私がエリザードさんに怒られたらどうするんだ」

シルビア「そんなことアタシが知るか」

オッレルス「………君ってかなり男前だね」

シルビア「アタシ自信も男に生まれてたらモテモテだったと思ってるよ」

納得だと言わんばかりにオッレルスは賛同する。もし、シルビアが男に生まれていたらかなりの美男子になることは間違いないだろう。

上条「シルビアって男だったの!?」

シルビア「魔神様にはアタシが男に見えるのかい?」ニコニコ

表情はニコニコしているが確実に怒っている。机を掴んでいる手があと数センチでグーになってしまうくらい怒っている。

オッレルス「当麻。確かにシルビアは男勝りな人だけど女性なんだよ」

上条「だけどオッレルスよりシルビアの方が格好いいよ?」

上条が言い終わると同時に、何とも形容しがたい空気が部屋を包む。そして…

オッレルス「………笑えよ」

シルビア「……………アハハハハハハ」

乾いた笑い声が響き渡った。

オッレルス「気を取り直して行こう。私は今から英国城に行く…OK?」

上条「オーケー!」

シルビア「勝手に行けば?」

何とか持ち直したオッレルスが今日の予定を確認し始める。まだシルビアとは机を挟んでにらみ合ったままだが返事はもらえた。

オッレルス「よし。次に今日は当麻は連れてかない…OK?」

上条「なんでっ!?」

シルビア「そりゃ初めて聞いたね。なんでだい?」

オッレルス「実を言うとウィリアムさんのこともあるし連れて行きたいのが本音なんだけど…ちょっと帰りに寄りたいところがあってね、そこに当麻を連れて行きたくないからだよ」

上条「危ないところなの?」

シルビア「魔神が危ないんじゃ全人類共通で危険地帯じゃないかそんなとこ」

オッレルス「いや、危険度で言えばさほどは高くないんだが…釘を刺しに行くというか、警告しに行くというか…取りあえず大人の仕事をしに行くんだよ」

どうも言葉を濁してはっきりとしないオッレルス。あまり話したくないことなのだろうか?

シルビア「そうゆうことなら諦めな。大人の仕事を子供が邪魔しちゃいけないよ」

上条「シルビアが言うなら…分かった。今日はお留守番してる」

オッレルス「私が言ってるんだけどね…。じゃあ最後に、英国城にはシルビアを返しに行く」

シルビア「ハイ却下ぁー!!私はここに残りま~す。魔神と一緒にお留守番してま~す」

そして一つ前に戻る。

上条「上条さんはダメなのにシルビアはいいんでせうか?」

シルビア「そうだそうだっ!男女差別反対!」ブーブー

上条が自分は連れて行ってもらえないのにシルビアが連れて行ってもらえることに文句を言う。シルビアはブーイングを飛ばしている。

オッレルス「いや差別じゃないし。というかシルビアは連れて行くんじゃなくて帰ってもらうんだよ」

シルビア「私に帰る所なんか無い!ここが私の家であり墓だ!!」ドンッ!!

上条「何かよくわかんないけど格好いいっ!!」

オッレルス「台詞は格好いいけど、本来君がここにいること自体が大問題なんだよ?」

シルビア「別に問題なんて無いだろ?あんた達は家事全般してもらえるし、あたしはメイドとしての経験値が詰めるしギブアンドテイクじゃん?」

シルビアが来てからと言う物(まだ2日しかいないが)オッレルス家は未だかつて無いほど綺麗になっており、食事もプロのシェフ顔負けの凄く美味しい物になっている。

オッレルス「確かにその点についてはとても感謝しているよ。しかし、君がここにいていい理由にはならない」

シルビア「厳しいね。そんなにアタシに英国城に帰って欲しいの?」

オッレルス「…欲を言えば君にはいて欲しい。事実、家事が楽になったのは本当に助かっているし、当麻や私にとって君のような優しい人と一緒にいれることはとても嬉しい」

シルビア「なら別に「だけど」」

オッレルス「だけど、私達のような危険な化け物といて君を守れる自信がないんだ」

次に告げられた言葉はシルビアを絶句させるには充分だった。。

苦しそうに自分たちのことを「化け物」と言うオッレルス。確かに今の上条やオッレルスという存在は世界に取ったら脅威であり、いつ襲われたりしたとしても不思議はない。襲ってくる人々からすればこの二人は人間ではなく化け物なのだ。

シルビア「……聖人なめんなよ。その辺の魔術師なんて一撃でノックアウトにできる。……アンタらに守ってもらわなく立って自分の身くらいなら守れるんだよ」

なんとかオッレルスに言葉に対し反抗するシルビア。その反抗は自らの強さに絶対の自信を持つからなのか。それとも…

オッレルス「……過信するな。君レベルの魔術師なら少なくとも私は100人以上は知っている。中には当麻はともかく私でさえ危険なレベルの魔術師だっているんだぞ」

シルビア「それでも…それでもアンタ達なら」

オッレルス「そして何より。君にはこちら側に来て欲しくない」

なおも諦めないシルビアにオッレルスは冷たく言い放つ。先程のオッレルスの言葉を聞き、自分の力が及ばない世界にこの二人がいることを知ったからなのかシルビアの口調には何時もの元気がない。

シルビア「こっち側に来て欲しくない?少なくともアタシはこっち側(魔術側)にいると思うんだけど…」

オッレルス「魔術の世界にも色々あるんだよ。戦いに身を置く世界と平和に暮らす世界がね。君はどう考えたって平和に暮らす世界の住人だ」

シルビア「…ならあんた達は戦いに身を置く世界の住人だとでも言いたいのか?」

オッレルス「毎日ドンパチしている訳じゃないけどね。だけど君が来る前までは2,3日に一回は攻撃されていたよ」

驚愕するシルビア。その理由は自分が今までいた世界が平和な物だと知ったからなのか。それとも、まだ幼い上条や同い年くらいのオッレルスが戦いに日常を置いていることなのかは分からない。

シルビア「…要するにアタシを守る自身がないから突き放すって事か」

オッレルス「弁解のようになるが少し違う。君のような人には明るい戦いとは無縁な世界で笑っていて欲しいんだ。君の笑顔はこちら側で輝いていい物じゃない」

そう言うオッレルスの顔は表面上は笑顔だが、何とも脆く弱々しい物だった。

シルビア「………分かった。アタシは英国城に帰るよ」

話し合いの末、シルビアは英国城に帰ることを決意した。

オッレルス「…すまない」

聞こえるか聞こえないか分からないくらいの声量でオッレルスがオッレルスが謝罪する。その姿は唇を噛み締め、血がにじむほど拳を握りしめていた。

シルビア「早いほうがいいんだろ?さっさと行こう…」

上条「モグモグゴックン……ん?シルビアどっか行くの?」

ようやくご飯を食べ終わった上条が会話に混じってくる。というか先程までの会話が難しくてついて行こうとしたけどついて行けなかったのである。

シルビア「話聞いてなかったのかよ。帰るんだよ英国城に」

上条「帰るの?じゃあ次はいつ来てくれるの?」

オッレルス「当麻。シルビアはもうここには来ないんだ」

上条「…もう会えないの?」

シルビア「まぁ。一生会えないって訳じゃないさ、たまに英国城に遊びに来てくれれば何時でも相手してやるよ」

上条「お城でお仕事があるから帰るの?」

シルビア「そうだよって言いたいんだけど…。アタシって仕事をあんましたことなんだよね。ここでの仕事が初めてっていっていいくらいだよ」

英国城でのシルビアの立ち位置は確かにメイドだが、聖人と言うこともあってやろうとした仕事を他のメイドや手伝いがしてしまうことが多く、働いたことはほとんど無い。そのためこのオッレルス家にいる間だけはメイドとして生きることができていたので充実した生活を送ることができていたのだ。

上条「お仕事しに帰るんじゃにならここにいればいいじゃん。上条さんもオッレルスも大歓迎ですことよ?」

オッレルス「だからそれがダメなんだよ。私達の危険な日常にシルビアを巻き込みたくないんだ」

上条「……シルビアって強いんでせうよね?」

シルビア「確かに腕には自信があったんだけど、オッレルスの話を聞く限りアタシじゃアンタらの荷物になっちまうのさ」

オッレルス「たまにだけど黒いマントを着た人たちが来るだろう?その人達からシルビアを守ることが私達ではできないんだよ。当麻だってシルビアが怪我するのは嫌だろう?」

何とか上条を納得させようと努力するオッレルス。もしここでシルビアがいなくなるのが嫌だとだだをこねられれば収拾が付かなくなるからだ。しかし、魔神である上条の考えた答えはそこにいる二人の想像の遥か上を行った。

上条「なら上条さんがシルビアを守りますことですよ」

シルビア「守るたって。…だからそれができないんだってオッレルスが言ってるのが分からないのかい?」

オッレルス「当麻。例え君が人間を越えた魔神だとしてもできることとできないことがあるんだよ」

上条「上条さんは何でもできるんじゃないんでせうか?」

上条は魔神でありその力は絶大にして絶対だ。<<望むこと全てを実現させる力>>が上条の能力の一つである。しかし…

オッレルス「君の持つ魔神の力は“攻撃”と“自己防御”に関して言えば最強で無敵だが、”何かを守る”という事に関してはかなり不安定で難しいんだよ」

シルビア「言ってる意味がよくわからないね。どゆこと?」

オッレルス「話すより実際に見てもらう方が簡単かな…。当麻。この林檎を今から私が攻撃するから守ってごらん」

そう言うとオッレルスは上条の目の前に一つの林檎を置いた。何の変哲もないただの林檎だ。

上条「これができたらシルビア帰らなくてもいいの?」

オッレルス「いいよ。…どうせできないんだから」

言い終わると同時にオッレルスは自分の持つ不完全な魔神の力でその林檎を攻撃した。

上条「ガード!!」

その攻撃に対し、上条は林檎を守るために魔神の力を使った。オッレルスは一瞬の間に数十数百数千数万数億個の魔術をその林檎に向けて放ち上条はそれを防御した。しかし結果。

シルビア「…なるほど。確かに魔神の力は“他人を守るため”には使いにくそうだ」

シルビアが言う目線の先には確かに傷一つ無い林檎があるが、その林檎の周りは無事ではなかった。

上条「机がなくなっちゃった…」

オッレルス「ほらね。林檎は無事だが周りは無事ではないんだよ」

上条やオッレルスの言うとおり、確かに林檎は無事だが、乗っていた机は木っ端みじんになっている。

上条「オッレルス。机壊すことはないんじゃないの?」

シルビア「林檎だけを攻撃したんじゃないの?机まで吹っ飛んじまってるよ」

オッレルス「勘違いしてもらっては困るな、私が使った魔術は全て”机の上に乗っている林檎をだけを壊す”というものだよ」

シルビア「でも現に林檎だけじゃなくて机まで…」

オッレルス「林檎を守ったのは当麻だけど、机を壊したのも当麻なんだよ」

上条「上条さんは林檎を守ろうとしただけでせうよ?」

どうも会話がかみ合わない。それを不快に感じたのかオッレルスが少し強めの口調で言う。

オッレルス「だ~か~ら。当麻の防御魔術が強すぎて周りを吹っ飛ばしたんだよ」

シルビア「防御の魔術の結果でその周りが吹っ飛ぶ事ってあるの?」

シルビアが使う魔術は結界魔術が基本だ。封印などが主な使い方だがシルビアはそれを少し改造して攻撃や防御などにも使っている。なので防御魔術についてに知識はそれなりにあるはずなのだが、今オッレルスに説明されたことについての理解ができない。

オッレルス「普通はない。というか絶対無いよ。防御魔術は文字通り”防御”の魔術だ。攻撃力なんて物は一切無い」

防御のために使う盾などを攻撃に使用するとかならまだしも。”守りたいと思った物を守る”という能力しかない防御魔術にはそんな使い方はできない。

シルビア「でも壊れてるじゃん」

オッレルス「当麻の場合はその威力というか効果が桁違いなんだよ。…当麻。一体どんなふうに林檎を守ろうと魔神の力を使ったのかな?」

上条「林檎を守ろうとしただけだよ?」

シルビア「そんな当たり前のこと聞いてどうするの?」

オッレルスの質問の意図が分からず二人は頭にハテナマークを浮かべている。なのでオッレルスはさらに説明をわかりやすくしようと試みた。

オッレルス「質問の仕方が悪かった。じゃあ何に対して林檎を守ろうとしたのかな?」

上条「全部!!」

オッレルス「つまりそうゆうことだよ」

シルビア「どうゆうこと?」

オッレルス「当麻の防御魔術は私の攻撃だけでなく、その林檎が乗っている机や、周りを浮遊している物質や空気、重力でさえ林檎を傷つける物として防御し、排除し、拒絶したんだ」

シルビア「そりゃまた何というか…桁違いだね」

上条「どうゆうこと?」

今の説明でシルビアは納得がいったのだが上条にはまだ納得ができないらしい。しかし、これ以上簡単な説明はできないのでオッレルスは少しオーバー気味に言う。

オッレルス「つまりね。当麻がシルビアを守ろうとするたびに、周りにある物とか人とかが全部吹っ飛んじゃうんだよ」

上条「ほえ~。じゃあこの防御魔術っていうのを使わなきゃいいんでせうね?」

シルビア「防御魔術使わないでどうやってアタシを守ってくれるんだい?」

なおも諦めない上条に対してシルビアが問い詰める。その声には一途の期待が混じっているようにも聞こえた。

上条「簡単だよ。上条さんがシルビアを守る“盾”になればいいんだよ」

オッレルス「盾だって?そんな危ないこと私が…」

上条「でも大丈夫なんでしょ?「“攻撃”と“自己防御”に関して言えば最強で無敵」ってオッレルス言ってよね?」

まだ8歳ながらもちゃんと理にかなった自分の考えを述べる上条。オッレルスも自分で言ってしまってるので否定ができない。

シルビア「でも盾になってくれるって言っても。そんなのどうやって…」

オッレルス「………私と当麻の力の本質はほんの少しだか似ている。だからこそ言おう。私達の力は盾になどなれはしないんだよ」

オッレルスは辛い表情で言う。過去にオッレルス自身が誰かを守ろうとして失敗したことでもあるのか、その声には覇気こそ無いが信憑性を感じられた。

上条「そうなの?…でも使い方の問題だと思うんでせうよ」

オッレルス「使い方?」

そう、と上条当麻は頷いて、笑顔で、

上条「守りたいものを背中にかばって、それを傷つけるものにうでを伸ばす。そんだけで上条さんならなんだって守れるんじゃないんでせうか?」

オッレルスが考えたことも無いようなことを言った。

シルビア「………アハハハハハハハハハハハハ!!これは一本取られたんじゃないの魔神のなりそこないさん?」

オッレルス「………………………………………」

上条のその言葉を聞いた二人の反応は対照的だ。シルビアは腹を抱えて大爆笑していて、オッレルスは唖然としている。そんな対照的な二人の姿を見て心配になったのか上条が。

上条「上条さん、そんなおかしいこと言った?」

シルビア「はぁ…はぁ…。いや、おかしくなんか無いよ。そんなこと考えることができるあんたのツンツン頭に驚いたんだ」

上条「失礼なこと言われてる気がするっ!?………できないかなオッレルス?」

オッレルス「できないことはないよ。私もそのことにもっと早く気がつきたかっただけさ」

そう言ってオッレルスは上条の頭を撫でた。その目と表情には先程の絶望や後悔を含んではおらず、希望と光に満ちていた。

オッレルス「当麻はきっと生まれついてのヒーローなんだな」

上条「ヒーロー?上条さんヒーローになれるの?」

シルビア「なれるさ。アンタならきっと…。現にここにいる二人は今アンタに救われたよ」

上条「ならマント探さないとっ!!」ダッ

そう言って上条は部屋の奥へとマントを探しに行った。上条の中ではヒーロー=マントという数式が成り立っているらしい。そして、上条の言葉を聞きオッレルスは…

オッレルス「ではシルビアのここへの移住を許可しよう。そして、どんなことがあろうと私と当麻で守ることを魔法名に誓おう」

シルビア「魔法名に誓ってもらえるなんて光栄だね。じゃあ英国城には行かなくていいのかな?」

オッレルス「いや、英国城には一緒に来てもらうよ?」

上条「シルビア言っちゃうの!?」ドタバッタン!!

オッレルス「家が壊れるからもう少し大人しく登場しなさい」

シルビアを英国城に連れて行くと聞き、上条が色んな物を持ったりぶら下げたりしながら現れる。

オッレルス「一緒に行くって言っても王女様に許可を取りに行くんだよ」

シルビア「許可?何の?」

オッレルス「シルビアをオッレルス家で預かるって言う許可さ」

一応シルビアは英国城の巫女聖人なので、その主であるエリザードに許可を頂くのが礼儀なのだが…

上条「いるの?」

シルビア「いらないんじゃないの?つうかあの王女なら黙っても大丈夫だと思うけど…」

オッレルス「ぶっちゃけ私もいらないとは思っているんだけど…、君に英国城に対してしなきゃいけないことがあるだろう?」

シルビア「別れの挨拶とかのこと?」

オッレルス「それもあるけど、私との戦闘で壊した物の弁償とかがあるんじゃないのかな?」

オッレルスが初めて上条を英国城に連れて行った際に二人は戦闘をしており、城の内部を一部だが壊している。

シルビア「そういえばあったね。…今までの給料全部で足りるかな…?」

オッレルス「その点に関しては私も責任があるから一緒に払ってもいいが…」

シルビア「あたしが全額払うよ。借金したって払ってみせるさ。けじめは付けないとね」

オッレルス「やっぱり君、男前だよ」

シルビア「やめろ。会話が最初に戻る」

上条「じゃあ上条さんはやっぱりお留守番のままなのでせうか?」

オッレルス「シルビアには許可を取ったらすぐ帰ってもらうがそれでも時間が少しかかるな…」

シルビアの移住は許可され、何とか問題は解決したが上条のお留守番については何も議論していなかった。

シルビア「じゃあどっか遊びに行ってきたら?」

上条「でもこの辺に公園とかはありません事ですよ?」

シルビア「一人で公園とか寂しすぎでしょ。…確か今日バチカンのサン・ピエトロ大聖堂でパレードとかしてんじゃなかったっけ?」

オッレルス「バチカンってここからかなり遠くないか?」

シルビア「バス使えば二時間もしないよ。そんなに迷うとこでもないしね。遊びに行っといで」

上条「パレードって何?」

シルビア「日本じゃこういう言い方じゃないのかな…え~と、お祭りみたいなもんだよ」

上条「お祭りっ!?行きたい!!」

シルビア「よし、じゃあ善は急げだ。行ってきな。夜には帰ってくるんだよ」サイフポイッ

上条「よしいくぞ!!」サイフキャッチ&ダッシュ!

オッレルス「待って!当麻一人で遠出なんて危ないじゃないか!というか私の意見は!!??」

シルビア「子供はね。かまってばっかりじゃ成長しないんだよ。たまには試練を与えなきゃ」

待ってとオッレルスは言っているが上条はすでに家を飛び出しバス停に向かって走って行ってしまった。今から追いかければ何とか間に合うかもしれないが、シルビアが邪魔をする。

シルビア「そんな落ち込むなって。あのガキンチョならなんかあっても大丈夫に決まってんだろ?」

オッレルス「君には分かるものか。当麻は天使なんだぞ。もし危ない魔術師でも来たらそうするんだ!!」

シルビア「そりゃあ…危ない魔術師の無事を祈っとくとしよう」

オッレルス「………落ち着いて考えてみればそうだったね。悪い、取り乱した」

行く手を遮られ、上条を追いかけることができなくなったオッレルスだが何とか何時もの冷静さを取り戻し平常時に戻る。

オッレルス「いや~。バチカンには先程私が言った君より遥かに強くて私でさえ危険なレベルの魔術師が確認できるだけで3人はいるんだが確かに当麻なら大丈夫だろう」

シルビア「ちょっと待て。今早口で何かとんでもないキーワードが聞こえた気がするんだが…」

オッレルス「まぁ当麻のことは当麻に任せて、私は私の仕事をしに行こう」

シルビア「ねえ無視?今度は私が無視されてるの?さっきの危ないキーワードもう一回言ってよ」

オッレルス「うん?何をしているんだいシルビア?早く準備をして英国城に行かないと当麻より私達の方が帰るのが遅くなるよ」

シルビア「やっぱアンタ怒ってる?謝るから許して」

先程からオッレルスはシルビアの言葉は全て無視して自分の用件だけを伝えている。顔こそ面と向かってはいるが目は合っていない。流石に恐怖を感じたのかあのシルビアが謝罪をしている。

オッレルス「…冗談はさておき。一応聞いておこう、私が帰りに寄るところに君は付いてくる気はあるかい?」

シルビア「アンタ達のテンションの上げ下げには生まれ変わったって付いてける自信がないよ………」

シルビア「別にどっちでもいいよ。面白そうなら付いてくし、危なそうなら一人で帰るよ」

オッレルス「まあ君なら付いてきてもさほど問題はないから直前で決めてもらっていいけど」

シルビア「じゃあ聞くなよ。………それに何があったとしても守ってくれるんだろう?魔法名に誓って」

魔術師にとって魔法名に誓うと言うことは、その命を賭け、その誇りを賭けることに等しい。魔法名を賭けて行われる行為の全ては魔術師にとって全てより優先される最優先事項なのだ。

オッレルス「ああ誓おう。私の魔法名<<pugnare616>>に」

シルビア「pugnare…”戦う”か。一体何と戦うってんだい?」

オッレルス「それは流石に教えられないな。まぁ別にそれが「repugnantia444」…え?」

シルビア「えじゃねえよ。アタシの魔法名だよ。魔法名を賭けた以上、命を賭けてもらうんだ。アタシも魔法名を名乗るのは当然だろ?」

オッレルス「そんなホイホイと言っていいはずの物じゃないんだけどね」

シルビア「アンタは”戦う”。アタシは”抵抗”。何か親近感がわいてね。言いたくなったんだよ」

偶然か奇跡か二人の魔法名にかけた思いは似ていた。それに何かを感じたのかある意味命よりも大切な魔法名を暴露するシルビア。それは信頼なのか、それとも…

シルビア「生まれも育ちも全然違うのに魔法名が似てるって結構珍しいんじゃないの?」

オッレルス「さぁね。でも、もしかしたら私は君のようになっていたのかもしれないな」

シルビア「だけどアタシはどんなに頑張ったってアンタみたいにはなれなかったと思うよ」

オッレルス「それでいいさ。人は人だ」

シルビア「そうだね。みんな違ってみんないいのさ」

オッレルス「それどこかで聞いた事があるぞ?」

シルビア「いい言葉ってのは自然に生まれるんだよ。……じゃあ行こうか」

会話を打ち切り、二人は英国城に向けて家を出て歩き始める。その二人の魔術師としての距離は途方もなく広く深いが、今この瞬間だけはまるで長年寄り添った相棒のような距離を歩いていた。

立ち止まることなどせず。真っ直ぐ前だけを見つめる二人の目には一体どんな光景が広がっているのだろうか?

オッレルスの魔法名<<pugnare616>>は「神の運命と戦う者」。

シルビアの魔法名<<repugnantia444>>は「残酷な運命に抵抗する」。

両者とも運命という物に対して何らかの行動を起こすことをその名に誓い、今も、そしてこれからも歩み続けるのだろう。


………しかし、ほんの少しでいいから下を見て欲しかった。上条の落としたシルビアの財布が落ちていたのだから。

こんな時間ですが投稿します。

書く時間があまりなかったので今回の投稿は結構少なめです。

来週、投稿ができるか分からないので続きは気長にお待ち下さい。

おじいさん「………つまり、そのオッレルスとシルビアっていう人が仕事で出かけるから君は一人なのかな?」

上条「仕事なのかは知らないんでせうけどね~」

バスに揺られながら、なぜ上条は一人なのかを聞いた経緯を聞いた謎のおじいさんは確認のために質問をする。それに対する上条の答えはあまり望ましい物ではないが何とか納得することができたようだ。

おじいさん「もう一つだけいいかな少年。話の中で”英国城”と言っていたが君はいつ英国城に招かれたのかな?」

上条「3日!…あれ?2日前だったかな?………どっちだっけ?」

おじいさん「私に聞かれても困るが…そうか、2,3日前なのか…」

(おじいさん「2.3日前というと英国城で巨大な天使の力が観測されたのとほぼ同じ日だな…。それに話の中に出てきた”魔神”という単語…。この少年には何か巨大な秘密でもあるのか?……」)

上条の答えを聞き、考え込むおじいさん。それを見た上条は今更のように、

上条「上条さんの名前は上条当麻というのです。おじいさんの名前はなんて言うんですか?」

おじいさん「?」

上条「自己紹介です。人に名前を聞くときは自分から言うんだって教わったのです」

おじいさん「小さいのに偉いな。そうか、君は上条君というのか…。では私も名乗ろうかな。私の名前はマタイ=リースという」

上条「マタイさん?リースさん?」

マタイ「どっちで呼んでくれてもかまわないよ。呼びやすい方で呼んでくれ」

上条「じゃあマタイさん!!」

マタイ「ああ、よろしく上条当麻君」

出会ってからすでに一時間半ほどが経過し、目的のバチカンまではあと少しと言ったところでようやく自己紹介を終える二人。端から見ればその光景は何ともほほえましい物なのだが、二人の正体を知るものから見れば、この二人の出会いはもはや奇跡と言ってもいいくらいだろう。

マタイ「そういえば上条君はバチカンにはパレードを見に行くんだよね?」

上条「そうだよ。パレードってお祭りなんでしょ?」

マタイ「………なんというか、とっても言いにくいんだけどパレードがあるのは夜からだよ」

上条「え?」

マタイから衝撃の言葉を聞き、思わず来返す上条。

マタイ「夜と言っても6時くらいなのだがね。君は何時までならパレードに参加していいのかな?」

上条「分かんないけど…暗くなる前には帰りたいな」

マタイ「暗くなるまでと言うと…今は日が出ている時間が長い時期だから6時ならまだ明るいが、それだと帰る頃には真っ暗になるな」

オッレルスの家からバチカンまでは上条の移動速度だと2時間ほどかかる。1時間だけ参加したとしてそれから帰ると最低でも9時になってしまうだろう。

上条「せっかく楽しみにしてのにな……」グスン

マタイ「そこでだ、私の用事に少しつきあってくれないかな?」

上条「マタイさんのお仕事のお手伝いするの?それ楽しい?」

遊ぶ事ができなくなってしまい、涙ぐんできた上条を慰めるためにマタイが一つの提案をする。

マタイ「楽しいかどうかで言われれば何とも難しいところだけど……、サン・ピエトロ大聖堂には入れてあげられるよ」

上条「サン・ピエロ…?それってイギリスにあったお城みたいなヤツ?」

マタイ「バッキンガム宮殿のことかい?少し違うな、あっちは宮殿でこっちは聖堂だからね」

上条「せいどー?」

マタイ「王様が居るか居ないかの違いだよ。………そろそろ付きそうだし、ちょうど”迎え”も来たようだ」

??「勝手にどこに行っていたんですか。……貴方、自分の立場が分かっていないんですね-」

バスから降りた上条とマタイを迎えたのは緑色の修道服を纏った色白の男だった。

マタイ「決定形で話すな。それに私の立場くらい私が一番よくわかっているさ」

それに対するマタイの態度は至って普通そのもので、まるで友人と話しているようにすら感じられた。

??「まったく。…おや?そこにいる少年は一体誰ですか?異教徒ですかねー?」

謎の男はマタイの修道服の後ろに隠れた上条を見つけ質問してくる。

マタイ「この少年は上条当麻君と言ってね。途中で知り合った子供だよ。パレードを見に来たらしいんだが…」

??「………パレードって夜でしたよね-?」

マタイ「どうやら開催時間を知らなかったらしくてね。だけどせっかくバチカンに来てくれたんだ、少しくらい案内しようと思ってね」

??「貴方がすることじゃないでしょうに…。少年。私の名前はテッラと言います。よろしくお願いしますねー」

礼儀なのか社交辞令なのかテッラと名乗った男は上条に歩み寄ってくる。しかし、それに対する上条の答えは…

上条「ト…」

テッラ「ト?」

上条「トカゲみたい」キラキラ

テッラ「…初対面の人間にそんなこと言われたのは初めてですねー」

歩み寄ろうとしてテッラなりに努力した結果がトカゲだったので結構ショックを受けているようだ。しかし、そんなテッラの心情など知らず上条は、

上条「トカゲさんはマタイさんの友達なの?」

テッラ「トカゲさんじゃなくてテッラさんと呼んで欲しいですね-。正確には友達じゃなくて上司と部下みたいな関係なんですけどねー」

マタイ「友達でいいじゃないか。神の名の下に人は皆、平等だろう?」

テッラ「ローマ教徒限定ですけどね-」

そう言うテッラの表情は笑ってこそいるが、表現しがたいような何かを含んでいた。

上条「テッラさん」クイクイ

テッラ「はい?何ですかねー上条君?」

マタイの友達だと分かったからなのか、それともトカゲみたいだからなのか上条はテッラに対しておびえることをやめた。

上条「お空のあれ何?」

テッラ「………君にはバチカン上空の結界の魔方陣が見えているんですか?」

バチカンはローマ正教の総本山であり、他のイギリス聖教や魔術師達などから情報漏洩や魔術的攻撃の防御のために超高度な防御魔術の結界が展開されている。その精度は例え”原典”クラスの魔術を駆使したところで破るとこはできず、さらに、日々進化し変化するので解析はおろか、発動させた人物ですら解除することすら不可能と言われるほどである。

テッラ「並の魔術師すらこの結界を認識することは難しのに…。マタイさん。この少年は何者なんですかね-?」

マタイ「私もさっき考えているところだよ。少なくともイギリス聖教側の人間でないことは確かなようだがね」

上条「なんかフヨフヨしてるよ~。あっ色が変わった!」

二人の話題の核にいる上条はそんな怪しむような目線には目もくれす、変化し続ける結界の魔方陣を楽しそうに見つめていた。

マタイ「ところで“あの子”と”あいつ”は?」

テッラ「”あの子”の方は今日は穏やかですねー。特に問題もなかったですし。”あいつ”も何時も通りですねー」

いったん上条のことは置いといてなにやら相談を始める二人。”あの子”と”あいつ”とは一体誰のことなのだろうか?

マタイ「そうか…。なら会わせても大丈夫かな」

テッラ「まさかとは思いますけど………、あの少年を”あの子”会わせる気ですかね-」

マタイ「ダメか?」

テッラ「貴方が決定したなら逆らいませんけどねー。大丈夫なんですか?」

マタイ「なぜかは分からないがあの少年なら“あの子”を何とかできる気がするんだよ」

テッラ「下手したら殺されちゃいますけどねー」

マタイはどうやら上条を”あの子”という人物に合わせたいようだが、それに対しテッラが少しの心配をする。

上条「ねーねーアレ触っていいの?」

テッラ「ダメですねー。というかどうやって触るつもりなんですか?」

バチカン上空に展開してある結界は少なくとも高さ300メートル以上の地点にある。そんなところにある物をどうやって触るつもりなのだろうか?

上条「う~~ん。ジャンプ?」

マタイ「届かないだろう…。ところで上条君、私の仕事を手伝ってくれる決心は付いたかな?」

上条「いいよ~」

随分と軽く答える上条。初めて見る物だらけでテンションが上がっているようだ。

マタイ「では行こうか、サン・ピエトロ大聖堂へ」

上条「これがせいどーか………なんだかお城みたいでせうねー」

テッラ「お城じゃなくて聖堂なんですけどね-」

上条「英国城となんか違うの?」

テッラ「あんな忌々しい異教徒のサル共の宮殿なんかと比べて欲しくないですね-」

上条「………お城と宮殿ってどう違うの?」

マタイ「言い方が違うんだよ」

少ししてサン・ピエトロ大聖堂に到着した上条は馬鹿みたいな質問をしてそれに対して答えてもらった。

テッラ「おや、珍しいですね-。この大門が閉まってるのなんて久しぶりじゃないですか-?」

マタイ「確かに珍しいな…。一体どうして……」

上条「このでっかい門、上条さんが開けていいでせうか?」ワクワク

テッラ「君みたいな小さな子に開けられるわけがありませんね-」ケラケラ

サン・ピエトロ大聖堂の閉まっている大門を指さし、上条が言う。しかし、それをテッラが笑う。

マタイ「神の国への扉は誰も拒みはしない。やってみたまえ」

上条「おっしゃあぁあああああっ!!!」トトッ!!

大門に向かって突進する上条。マタイはそれを優しい目つきで眺めているがテッラは、

テッラ「…というかこの少年って異教徒なんですか?それとも信者なんですか?」

マタイ「……神を信仰しているのかすら怪しいところ何だよ。バスの中で自分のことを話すときに“魔神”というキーワードも出ていたし……一体彼は………」

上条「か~い~も~ん」

テッラとマタイの会話を無視して上条は門に触れた。

そして、それは起きてしまった。



パキィィィィィイイイイイイイイッンンンン!!!



甲高い金属音を立て、サン・ピエトロ大聖堂の大門が砕け散った。

前回の投稿から10日経っちゃったので少ないですが投稿します。

上条「消えちゃった!?どゆこと!?」

砕け散った門に一番近いところにいる上条が騒ぎ出す。自分でも何をしたのかが分かっていないらしい。

テッラ「こりゃまー………ねー?」

マタイ「あ、ああ………………」

騒ぎ出す上条の近くではテッラとマタイが呆然と立ち尽くしている。二人にも今、目の前で起こったことに頭が追いついておらす混乱しているようだ。

テッラ「取りあえず私の”光の処刑”で裁いていいですかねー?。ローマ正教の本山であるサン・ピエトロ大聖堂を破壊したんだから異教徒決定でいいでしょうし」

マタイ「待て、まだ…「マタイ様!テッラ様!お戻りになられていたのですか!?」…ビアージオか、そんなに慌ててどうした?」

ビアージオ「お見苦しいところをお見せして誠に申し訳ありません。実は先程、異教徒共がここを襲撃してきたのでもしやと思ってしまって…」

そう言って深々と頭を下げるビアージオと呼ばれた男性は法衣を着ていることからどうやらローマ正教の教徒らしいことがわかる。

テッラ「異教徒に襲撃された-?私がマタイさんを迎えに行ったのはほんの数分前ですよ、そんな短い間に襲撃されたんですかー?」

マタイ「おそらくお前がいなくなったところを狙ったんだろう。まだ完成していないとはいえお前の使う魔術は強力だからな。…ところでその襲撃してきたという者たちはどこだ?追い払ったのか?」

テッラ「今、このバチカンにいるローマ正教の魔術師で、突如襲撃してきた異教徒を数分で追い払えるほどの実力者なんていますかねー。それともまだ交戦中ですか?」

襲撃してきた者たちの目的は不明だが、ローマ正教の総本山に攻撃を仕掛けることができるほどの魔術師なら相当手練れのはずである。それを数分で追い払うことのできるテッラやマタイといったレベルの魔術師はローマ正教の魔術師などかなり限られる。

ビアージオ「いえ、戦闘はもう終わっております。”あの方”が”一撃”で決着を付けましたから」

テッラ「確かにあいつならできますけど…。あの引きこもりがそんなことしますかねー」

マタイ「あいつもローマ正教の一員であり最終兵器の一人だからな。たまにはそれらしいことでもしようとしたんじゃないのか?」

”あの方”と言われただけでこの二人にはどうやら伝わったらしい。詳細は不明だが”あの方”とはどうやら相当の実力者のようである。

ビアージオ「ですが驚きましたよ。異教徒を一瞬で片付けるにはとどまらずこの大聖堂の大門すら粉砕したんですから」

テッラ「………やっぱりあいつも粛正しといた方がいいですかね-?」

マタイ「これくらい許してやれ、負傷者は出なかったみたいだしこれでいいじゃないか。…では先程大門が砕け散ったのはあいつの仕業なのか?」

ビアージオ「いえ、決着が付いてすぐあの方はお戻りになられたので違うと思います。それにしても私が大門を修復している途中のことでしたので驚きましたよ」

時間軸で表すと。「襲撃される→”あの方”が追い払う→ついでに大門粉砕→“あの方”が去る→ビアージオが大門を修復していた→修復途中で大門粉砕」という感じらしい。

テッラ「ならビアージオの修復魔術が途中で失敗して砕け散ったんでしょうね-」

マタイ「可能性で考えればそれが一番有力だな」

ビアージオ「私も修復魔術なんて専門外でしたからね。どこかで術式を間違えたのかもしれません」

三人はどうやら大門の大破はビアージオの修復失敗と言うことで納めることにしたようだ。上条のような一見何の力も持たないような子供が破壊したよりはずっと信憑性があるからだろう。

上条「よく分かんないけど…上条さんのせいじゃないの?」

テッラ「むしろ疑ってすいませんでしたねー。よく考えれば君みたいな少年がこの聖堂の大門を破壊できるわけありませんしねー」

マタイ「私からも謝っておこう。少しとはいえ疑ってすまなかった。…ビアージオ、門の修復は任せたぞ」

この推測があとで覆されることになるなんて、今の時点では誰一人として考えすらしなかった。

ビアージオ「かしこまりました。ところでその少年は一体?それとどちらに行かれるのですか?」

マタイ「どこえと聞かれればそうだな……、この少年に会わせたい人がいるのでね。その人の所だよ」

ビアージオ「その少年に会わせたい人がいる?………失礼ですがその子供はローマ正教の信者なのですか?どうも東洋の人間のように見えますが」

途端にビアージオの纏う空気が変化する。ビアージオはローマ正教こそが第一と考える原理主義者であり、異教徒分かれば女、子供でも容赦しない。異教徒嫌いと言うことではテッラと通じているところもあるが、そのレベルはかなりかけ離れている。

マタイ「おそらく異教徒だと思うが…」

ビアージオ「ならば私が裁きます、ローマ正教以外の教徒なんて絶滅すべきなのですから」

上条「ん?なんかまたよく分かんないけどピンチっぽい!?」

上条が異教徒と分かった瞬間、ビアージオの眼から光が消えた。異教徒である上条を排除するというスイッチが入ったらしい。

マタイ「待てビオージオ。その少年に手を出すことは私がゆるさん」

テッラ「おや、マタイさんが「ゆるさん」なんて言うの久しぶりに聞きましたね-」

ビアージオ「なぜですか?この少年は異教徒なんですよね?ならば何の問題もないでしょう?」

上条「よ~し。こいやー!!」щ(°д°щ)カモーン

マタイ「上条君!?なんで挑発しているんだい!?」

何とかマタイがビアージオを押さえようとしているところで上条がまさかの挑発をする。一体何を考えているのだろう?

上条「シルビアが「売られた喧嘩は100倍で買え」って言ってたから」

マタイ「取りあえずそのシルビアって言う人を連れてきなさい。ビアージオを止めた後に私が直々に説教するから」

テッラ「というかシルビアって誰ですかねー」

………どうやら何も考えていなかったようだ。

ビアージオ「異教徒のガキ、貴様は一つ重大な勘違いをしているぞ」

上条「ん?上条さんなんか間違っちゃったっけ?」

マタイの制止ですら止まらずビアージオが上条に近づきながら言う。

ビアージオ「先程貴様は「喧嘩は100倍で買う」と言ったな?違うぞ、私が今からするのは喧嘩などではなく異教徒である貴様への粛正だ」

上条「しゅくせー………」

粛正の意味が分からなかったようだ。…なかなかシリアスな雰囲気になれない。

テッラ「悪いやつを裁くって事ですねー」

上条「じゃあ上条さんは悪いやつなの?」

テッラ「まぁ異教徒なら悪いやつのカテゴリーに入ってますしね-」

マタイ「というかテッラ。お前もビアージオ並みに異教徒嫌いじゃなかったか?」

確かにビアージオと比べれば幾分かレベルは低いがテッラも異教徒嫌いであることは間違いない。なので、ビアージオとともに上条に対して粛正をしてもおかしくないはずなのだが…

テッラ「なんかその少年には手を出しちゃいけない気がするんですよね-。なんだか取り返しの付かなくなるような事が起こる気がするんですよ-」

実力魔術師の直感というべき物なのか、テッラは上条から表現しがたいような何かを感じ取ったのだろう。そしてそれは正しい。

ビアージオ「テッラ様のお手を煩わせるまでもございません。こんなガキ、私一人で大丈夫です」

上条「あれ~。おじさん上条さんに勝てると思ってるの~~~?」┐(´ー`)┌ムリムリ

ビアージオ「………遺言はそれだけか?」

ビアージオの余裕の言葉を聞き、さらに上条が挑発する。ビアージオの表情はすでに始めてみたときの物とはかけ離れ、神に仕える者の身でありながら悪魔のようにすら見えた。

マタイ「…確かにあの少年の余裕の態度は何かしらの力を感じるが。…だがお前が警戒するほどだろう、ビアージオは大丈夫なのか?」

テッラ「大丈夫だろうが大丈夫でなかろうが私にはどちらでもかまいませんしね-。ぶっちゃけの少年の”力”には興味がありますし、例え力が無かったんだとしてもローマ正教の教徒に粛正されれば大丈夫でしょう」

マタイ「しかし、もしそれで…「静かに、始まるようですね-」」

ビアージオを止めようとするマタイをテッラが止めている間に上条とビアージオの距離はもう3メートルもなくなっていた。この距離なら大人であり、リーチの長いビアージオの距離だ。そして…

ビアージオ「十字架は異教徒への裁きを示す!!」

ビアージオの手に持つ十字架が突如巨大化し、上条に向かって振り下ろした。しかし、それに対して上条はテッラの言うような力を発動させるようなそぶりは全くない。

テッラ「あれ?やっぱなんの力も持ってなかったようですね-」

マタイ「今からでも間に合うかっ!?」

テッラはビアージオが巨大化した十字架を振り下ろしているさなかつまらなそうに呟き。マタイはテッラの制止を今更振り切って上条を守ろうとしていた。だが………

上条「なんだ、オッレルスの方が強いじゃん」

マタイが上条を庇うより早く。上条は呆れたように呟いた後、反撃に出ようとした。

上条から見ればビアージオの振り下ろす巨大な十字架なんて目をつぶっても避けられるほど遅く見えているし、例え当たったとしても傷一つすら付かないだろう。しかし、今から上条がするのは回避ではない、攻撃だ。よってこの後地面に這いつくばるのは上条ではなくビアージオのはずだったのだが…



??「なんだ、今日はやっぱりラッキーデーだったんだな」

いきなり現れた全身赤色の服を身に纏う青年の”右手”に制止された。

??「異教徒の屑共に襲撃されたりしたから今日はアンラッキーデーだと思っていたが、どうやらこのための前座だったようだな」

いきなり現れた全身赤色の青年は上条とビアージオの間に割ってはいるように出現し、上条を制止させていた右手を前に出すことで、ビアージオの振り下ろしていた巨大十字架を途中停止させた。

ビアージオ「な、なぜ、あなた様が…」

赤い青年が現れた途端、ビアージオの態度が先程とは一変した。蛇に睨まれたカエルのように萎縮してしまっている。

??「おいおい、俺様がどこにいようと俺様の自由だろう?それとも何だ、お前程度の力で俺様の自由を制限する気か?」

ビアージオ「っ!!めっ、滅相もございません」

そう言って青年がビアージオを睨み付けた途端にビアージオは自らの持つ巨大な十字架を基の大きさに戻し、頭を垂れた。

テッラ「どうしましょうマタイさん、あいつが外に出るなんて何か大きな災害の前触れですよ、今日のパレードは中止にした方がいいんじゃないですか?」

アタイ「お前はフィアンマを何だと思ってるんだ?ていうかいつもの「ねー」はどうした」

ビアージオを止めに入ろうとしていたマタイも、フィアンマと呼ばれる青年が上条を庇ったことで安堵し、また、テッラも冗談交じりにそんなことを呟いた。

上条「お兄さん誰?」

フィアンマ「ん?俺様の名か?俺様はフィアンマという。いずれ世界を救う男の名だ覚えておいて損はないぞ子供」

お待たせいたしました。投稿します。

上条「フィレンツェ?」

フィアンマ「おい待て、俺様の名前はイタリア共和国中部にある都市の名前なんかじゃないぞ、俺様の名前はフィアンマだ」

上条「ごめんなさい。噛みました」

フィアンマ「いや、わざとだろ?」

上条「かみまみた」

フィアンマ「わざとじゃないのか!?」

上条「カレー食べた?」

フィアンマ「別に俺様の服が赤いのはカレーをこぼしたからじゃないぞ!!」

というかカレーをこぼしたら赤じゃなくて黄色か茶色じゃないのだろうか?

テッラ「躍起になってるところを見ると実に怪しいですね-」

フィアンマ「聖職者としての俺様から貴様に最後の言葉だ…懺悔だけなら聞いてやろう」

青筋を額に浮かべてフィアンマという青年がテッラに迫る。顔を見れば分かる、間違いなく“本気”だ。

テッラも近づいてくるフィアンマから本気の殺気を感じ取ったのか後ずさり始めている。

テッラ「お、大人げないですよフィアンマ。それに聖職者ならもう少し大きな心の器を持ちましょうねー……」

フィアンマ「大人げない?これは笑えるな。俺様はまだ貴様の年齢の半分にも届いていない若造だぞ?それに例え聖職者だとしても笑うときに笑い、悲しいときに悲しみ、怒るときに怒れなければそもそも人間としてダメではないのかな?」

テッラ「マ、マタイさん」

すがるような眼差しでマタイにヘルプを求めるテッラだったが…

マタイ「救われるときは救われ、裁かれるときに裁かれるのが人といものさ…」

上条「どゆこと?」

マタイ「取りあえず死なないように頑張れってことだよ」

テッラ「最終的に丸投げですかねー!?」

どうやら無理だった。

テッラ「少年っ!何とかして下さい!!」

年上の大人の威厳などすでに捨て去り、上条に近づいて言う。おそらくフィアンマといえど子供には手を出さないだろうと考えているのだろう。

上条「喧嘩はダメだよ?」

フィアンマ「子供、貴様が原因なんだぞ?それともなんだ、貴様が俺様のこの怒りのはけ口になってくれるのか?」

マタイにヘルプを求めたが失敗に終わり、何とか抵抗をしようと試みようとしているテッラに近づくフィアンマの目の前に上条が立ちふさがる。

テッラ「おお少年。私のために頑張ってくれるのですか!?やはり異教徒として裁かなかった私の眼に狂いはなかったんですね-」

フィアンマ「お前この子供を盾にする気か?なら随分といい盾を選んだな」

テッラ「?」

上条「?」

テッラと上条が不思議そうな顔をする。フィアンマの言ったことの意味がよくわからないらしい。

フィアンマ「おいおい、まさかローマ正教の億単位いる信者の中で最終兵器と呼ばれる神の右席・左方のテッラともあろう人物がこの子供の価値について何も理解していないなんてことはないだろうな」

テッラ「この少年の価値?確かに何かしらの力のようなものを感じますが…」

マタイ「フィアンマ、お前は一体何を言っている?」

フィアンマ「………テッラならともかく教皇まで落ちぶれたのか…。まぁいい、そこの子供はただの子供ではないぞ、今から俺様が直々に証明して見せよう」

そう言ってテッラから上条へと攻撃の方向を定めたフィアンマの右肩に膨大な魔力が集まっていく。そして、それはやがて“右手”のような物を形成していった。

テッラ「奇跡の右だと!?すでに完成していたのか!?」

フィアンマ「完成なんてしていないさ。よく見てみろ、今にも砕けてしまいそうなほど脆そうだろう?」

驚愕するマタイだったがフィアンマの言うとおりよく見れば右肩に形成された“奇跡の右”と呼ばれるものは所々に亀裂が走り、今にも空中分解しそうである。

フィアンマ「元々この魔術は今の俺様では日に数発が限界なのは知っているな?先程の異教徒の撃退ですでに一発使ってしまったから、この2発目が使えるかと言われれば正直微妙なところだが…まぁ形成することができたんだし大丈夫だろう」

フィアンマの使う魔術である“奇跡の右”は使いようによれば世界を変えてしまうほど威力を秘めており、魔神級の魔術と言っても過言ではない。しかし、未だ完成していないがために不完全であり、回数制限があるなどの弱点がある。

マタイ「ま、まさか、奇跡の右を上条君に向けて使うつもりじゃないだろうな?」

フィアンマ「ここで出しておいて使いませんは無いだろう、安心しろ、見ていれば分かる」

そしてフィアンマは奇跡の右と呼ばれた異形の手を上条に向け、振った。

眼を潰すほどの眩い閃光が上条に向けて襲いかかる。

ここでフィアンマの使う「奇跡の右」という技について部分的にだが説明しておこう。

この技は大天使の一角「神の如き者」であるミカエルの属性を持つ技である。先に述べたとおり回数制限などの弱点などがあるがその威力は魔神級であり、ほとんど反則に近い。

例えばこの技には「破壊力はいらない」。

この技が触れただけで全ての物は等しく終わるのだから、壊すための努力が必要ないのである。

また、例えばこの技には「速度はいらない」。

例えどんなに遠くにいようと、どんなに早く動いていようと振れば届くし当たるのだから、当てるための努力は必要ない。

わかりやすいようにRPGの戦闘で例えてみよう。

戦う、防御、呪文、道具、逃げるなどのコマンドが一般的だろうか?

「戦う」を選べば相手に攻撃してダメージを与え、

「防御」を選べば相手の攻撃や呪文などから自分や他人を守り、

「呪文」や「道具」を選べば戦うと同じように攻撃したり、防御と同じように守ったり、回復や補助などをする、

「逃げる」を選べばその戦闘から離脱する。

奇跡の右を持つフィアンマのコマンドにはこれ以外に「倒す」という冗談のようなコマンドが直接存在しているようなものである。

速度や筋力、技術などがいくら劣ろうとも、あまりにも圧倒的で巨大な「力」は敵対者が直前まで取っていた行動を全て無視して一気に撃破する。

故に魔術という物に対して適切な表現かは分からないが、常識的にこの技を防御や回避することはできない。

だが、使った相手が悪かった。

使われたこの少年は常識なんて小さな物など破壊し尽くす!!

ガッギィィィィ!!………バリィィィィンッ!!

拮抗するような音が炸裂した後、甲高い金属音が炸裂した。

最初の音は上条の右手とフィアンマの奇跡の右が放った閃光が激突した音だった。次に響いたのは大門を破壊したときに似たような音で、眼を潰すかと思われたほど眩しかった閃光が完全に消去された音だった。

フィアンマ「やはりな、それにしても面白い」

マタイ「まさか………」

テッラ「…どうやら大門が壊れたのはビアージオではなく、彼のせいだったようですねー」

その光景を見ていた三人の反応は別々だった。

フィアンマはまるで欲しかったおもちゃが見つかった子供のような顔をして笑っており、マタイは驚愕のあまり膝を付き、テッラは先程とは違った真剣な表情で今起こった現象について考察していた。

フィアンマ「おい子供。その様子を見てる限り理解しているとは思えんがその“右手”は一体何だ?」

フィアンマが声を投げかける先には右手を前に突き出して立ちすくんでいる上条がいた。今目の前で起こったことに対して理解が追いついていないらしい。

上条「えーと、これはその……」

フィアンマ「やはり自分でも理解してはいないようだな…、まぁ貴様が理解していようがいまいが俺様にはどうでもいいがな」

上条がフィアンマの放った奇跡の右に対して右手を前に突き出したのはほとんど反射に近かった。本能と言い換えてもいいかもしれない。

ただなんとなくだった。ぶっちゃければ右手を前に出さず立っていただけでも後ろへ吹っ飛ばされこそすれダメージを負うことは無かった。

フィアンマ「混乱しているところ悪いが一つだけ聞こう。面白い手を…俺様が望んでいた手を持つ子供よ」

上条「う~あ~お~……ん?なに?」

フィアンマ「貴様の右手、世界を救うために俺様にくれる気はないか?」

上条「世界を救う?お兄さんヒーローさんなの?」

フィアンマ「ヒーローなんて小さなものなんかじゃない。俺様は救世主だ」

上条「きゅーせーしゅ?」

フィアンマ「救世主が分からないのか?簡単に言えば神様みたいな力を持つヤツのことだ」

上条「じゃあ上条さんもきゅーせーしゅだ!!」

フィアンマ「なんだろうな。貴様が言うと本当のように聞こえる気がする…」

実際、上条は魔神という一種の神のカテゴリーに分類される存在なのでフィアンマ理論で考えると救世主であってもおかしくはない。

フィアンマ「とにかくだ、貴様の右手を俺様に寄こせ。そうすればこの世界が救えるんだ」

上条「なんで?」

フィアンマ「いちいち質問の多い子供だな。分からないのか?この世界に救いなんて無いって事が」

そう言うフィアンマの表情は何とも辛そうな物であり、また、何かを哀れんでいるようでもあった。

フィアンマ「そもそもだな…「フィアンマ、ちょっと待って欲しいですねー」…なんのようだテッラ?今結構重要なことを話しているんだが」

テッラ「別に貴方のくだらない話なんてどうでもいいんですけどー、貴方が聖職者でありながら自らを神や救世主と名乗る愚か者なら”神の右席”の一角として排除しなければならないんですよねー」

そう言ってフィアンマと上条に近づいてくるテッラの手には黒光りするギロチンが握られている。

フィアンマ「………俺様の話をくだらないと言ったことは聞かなかったことにしよう。だが、なにか俺様は間違ったことを言ったか?事実、そこの子供の右手と俺様の右手がそろいさえすれば神や救世主を名乗ることすらできるのだからな」

ギロチンを手に近づいてくるテッラに対し余裕に表情のフィアンマ。神の右席といえどテッラとフィアンマの力量差は途方もなく大きい、何時もならテッラの敗北でフィアンマの勝利が決まる。

そう、何時もなら。

テッラ「神の右席である私達は普通の魔術が使えません。まぁ元々持っている魔力の性質が特別なせいで極端に調整した特注品とも呼べる魔術しか使えないというのが正しいんですけどね-」

フィアンマ「それがどうした?」

不思議そうな顔をするフィアンマ。テッラが何を言いたいのかが伝わっていないらしい。

テッラ「わからないんですかねー。つまり、今の貴方、奇跡の右が使えない貴方なら私でも充分に倒すことが可能なんですよ-」

フィアンマ「………クッ……クッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!」

突如、バチカン中に響き渡るかと思えるほどの笑い声が響き渡る。

テッラ「一体何がおかしいんですか?それともとうとう頭が狂っちゃいましたかねー」

笑い出したフィアンマを冷徹な眼差しで睨み付けるテッラ。その瞳には殺意にも似た狂気が秘められているようだ。

フィアンマ「はぁ…はぁはぁ……。いや、おかしくなってなどいない。テッラ、お前は俺様を笑い死にさせるつもりだったのか?なら惜しかったな、もう少しでそれは達成できていたぞ」

テッラ「分からないんですか?いくら貴方といえど奇跡の右が使えなければその辺の魔術師と大差ないんですよねー。多少なら一般的な魔術も使えるでしょうが、そんな子供だましなレベルの魔術では私の“光の処刑”の前では無力同然なんですよ」

神の右席・右方担当のフィアンマが”神の如き者(ミカエル)”の属性を持つ「奇跡の右」を使うのなら、神の右席・左方担当のテッラは”神の薬(ラファエル)”の属性を持つ「光の処刑」という魔術を使う。

未だ完成していないという点についてはフィアンマの奇跡の右と同様だが、こちらには回数制限などがほぼ無い。

完成していないと言ってもどのくらいの効果や威力があるのかが測定できていないことによる実験不足に似た物なので近い将来完成する事は確実だ。

フィアンマ「確か万象の順位変更だったか?お前の使う“光の処刑”の能力は」

聖書にある「人より上位の存在である神の子を、神の子より下位の存在である人間が殺した」それを実現させるために開発・調整された魔術がテッラの使う光の処刑という魔術である。

簡単に説明すれば、「○○を上位に、□□を下位に」というテッラの声を合図に発動し、上位となった○○は下位となった□□を無条件で破壊・操作・命令などができるようになり、下位となった□□は上位となった○○に対してはいかなる手段を使ったとしても反逆することができないようになる。

テッラ「まぁそもそもの発動条件として大量のパンや酒を摂取する必要がありますけどね-」

フィアンマ「神の血と肉を表すためだったか?今日も食べていたしな」

どんどん険悪な雰囲気になる二人。どうやら常日頃から隙あらばお互いがお互いを排除したかったらしい。

テッラ「奇跡の右は確かに強力ですが回数制限のことさえ知っていれば貴方を倒すことなど造作もありません。ジャパニーズ風に言うと、え~と…まな板の上の鯉のごとく裁かれちゃって下さい」

フィアンマ「奇跡の右が使えない程度で俺様と貴様の差が埋まるとでも?」

話し合いはそこまでだった。テッラはギロチンを振りかぶり、フィアンマは大天使ミカエルが堕天使ルシファーを殺した神剣を出現させる。

周囲の空間が二人の放つ魔力の余波で蠢き揺らぐ。まだ極端にわかりやすい爆発や衝撃波が起こっているわけではないが、遠巻きにここにいる四人を眺めていた他の聖職者達が一目散に逃げ出す。

テッラ「ギロチンを上位に、人体を下位に!!」

フィアンマ「はぁっ!!」

そして二人は互いに握りしめた武器を振りかぶり地面を滑るようにして突進する。この二人の勝負が始まればバチカンが崩壊してもおかしくはない。

止めることなどできない。戦い始めたこの二人を止めることができる実力者など世界に10人もいないだろう。

魔神である上条なら余裕で止められるがまださっきのことを理解できず固まっていて止められそうにない。

だがしかし、このバチカンのこの場所には一人だけいる。今のこの二人なら止められるほどのことができる実力者が、



マタイ「止まれ、フィアンマ、テッラ」

フィアンマ・テッラ「「………」」

マタイ「二人とも少し黙っていなさい」

マタイ=リース。言わずとしれたローマ正教のトップであり。教皇である老人。

信仰者や同業者からの信頼は厚く強く。人間としても善人であることでよく知られ、優しさと慈愛に満ちあふれた人格者である。

また、魔術師としても有名な実力者でありその力は今の現時点のフィアンマやテッラを凌ぐほどである。

人間が持つ原罪を限りなく弱めることで並の魔術師はおろか神の右席すら使うことが困難な高等魔術を得意とており、超人とも呼べる二人の戦いをいとも簡単に止めて見せたことからその実力が伺える。

マタイ「光の処刑は今の時点では声で発動するからな、お前達の周りの空間ごと停止させてもらった」

声とは音であり音は空気を振動することで伝わる。今の二人の空間はマタイの空間掌握魔術により空気と空間を固定させて声の発生と体の自由を奪っている状態にある。

上条「二人とも固まっちゃってるよ」

マタイ「正確には二人の周りの空気と空間を固定させて動けなくしているだけだよ。心配しなくていい、害はないしこの二人なら数分で解除できるだろう」

上条「………さっきみたいに上条さんが右手で触ればこれも解けるの?」

マタイ「おそらく解けるだろうがやめておいてくれ。同僚や信者達が集まるこんなところで争い始めようとしたんだ、少しくらい反省してもらいたい」

上条「そっか。じゃあ触らないどこ」

そう言って上条はオブジェのように固まったフィアンマとテッラから離れる。

そのままマタイは上条を手招きし、そしてようやくサン・ピエトロ大聖堂の大門をくぐることができた。

オープンキャンパスって面倒臭いんですね。何か精神的にものすごく疲れてしまったので投稿が遅れてしまいました、すいません。

感想ありがとうございます。少ないですが投稿します。

マタイ「上条君。フィアンマも言っていたが君の右手は一体何なんだい?」

聖堂の中に入り、マタイに連れられるまま歩いていた上条に問いかける。

それに対する上条は、聖堂の中に置かれている様々な物をクルクル回りながら答えた。

上条「う~ん。なんだかよく分かんないけど…オッレルスは”基準点”だって言ってたよ」

マタイ「基準点?」

オッレルスの説によれば、世界には不思議な力で満ちていて、その力のせいで世界の基準が変わってしまうこともあるらしく、そうならないように願う人々の思いが上条の不思議な右手を生んだらしい。

マタイ「そうか基準点か……。魔術師の視点から見れば恐ろしい力だね」

上条「でもねー。いいことだけじゃないんだよ?」

マタイ「?」

上条「この右手はね-……っいて!」

マタイ「大丈夫かい!?」

突然上条が何もないところで転んだ。少し驚きながらもマタイは転んだ上条に向かって手を伸ばす。その手を掴んで上条は立ち上がる。

上条「ありがとー。…やっぱ痛いのは痛いや」

マタイ「どうかしたのかな」

上条「ううん、なんでもないよ。あのね、この右手は魔法とかだけじゃなくて、神様の奇跡とか加護も消しちゃうんだって」

マタイ「なんだって!?」

目に見えてマタイが驚愕する。神の奇跡や加護を打ち消すと言うことは、運などといった人間が持つべき大切な物まで消しているということに等しいからだ。

上条「なんだかそのせいで上条さんは不幸らしいよー」

神の加護を打ち消しているせいで上条は常に不幸がつきまとい、さっきのように何もないところで転んだりしてしまうことも少なくはない。

魔神の体がいくら桁違いでも不幸についての対処など起きてからでしかできないし、痛覚も一応だがある。

幸運を打ち消している右手も含めて体の全てが魔神に作り変わっていればこんな事にはならなかったのかもしれないが、過ぎたことを悔やんでもしかただ無いとなんとなくだが上条は割り切っている。

………もっとも自分の不幸体質についてはどうだかわからないが。

マタイ「一度君のその力を解析した人と話がしてみたいな…」

そしてマタイは聞くのだろう。「この少年のこの力をどう思う?」と。

まだ幼いながらも神の加護を打ち消しているせいで幸運に恵まれず、辛い過去を持つであろうこの上条当麻という少年に対して私達大人ができることとは一体何なのだろう。

上条「ねーねーマタイさん。さっきからずっと奥に向かって歩いてるけど…どこに行くんでせうか?」

マタイ「どこって言われても奥としか答えられないな…もうちょっと頑張ってくれ」

上条「上条さんはもう歩き疲れましたので~す」

大理石の床に座り込んで上条がふて腐れる。確かに聖堂の中には上条の見たことのない骨董品やら聖職者が使う道具やらが置いてあって珍しいには珍しいのだが流石に飽きてしまったのだろう。

上条「奥って言ってももうここって随分奥なんじゃないの?真っ暗だよ?」

マタイ「暗いのは仕方ないんだよ。ここはもう聖堂の地下なんだから」

上条「いつの間に降りたっけ!?」

マタイ「気づかなかったのかな?」

マタイはこうはいっているが上条が気がつかなかったのも無理はない。このサン・ピエトロ大聖堂は魔術的特殊構造をしており、一部の魔術師しか入れないような特殊な道や部屋が数多く存在する。

マタイはローマ正教の最高権力者であるために制限など無くこの聖堂の中を歩き回ることができ、マタイのそばを一緒に歩いていればどこにでも行ける。

上条「そっかー地面の下なんだここー………。上条さん歩いてて大丈夫かな………」

マタイ「なぜだい?」

上条「うんとねー。上条さんは今まで地面の下に行ったことがないんでせうよー」

上条の不幸体質なら。「不幸にも」地震が起きて地下の壁やら天井が落ちてくる可能性があるかもしれない。その危険性を心配した上条の両親は上条を地面の下などの不幸な事故が発生しそうな可能性のあるところには極力近づかせなかったのだ。

マタイ「そういうことなら心配しなくて大丈夫だ。今私達がいるところの天井や床や壁が崩れる事なんて絶対にないから」

上条「でも地面の下なんでしょここ?地震とか来ても大丈夫なの」

マタイ「地下と言ってもここはある意味では別空間だと考えてくれていい。置いてある霊装や並んでいる部屋の数、立ててある柱の形や本数などから独自の術式が完成していて、それがあるおかげでこの地下空間は地上で何が起ころうとも一切の影響を受けないんだよ」

上条の右手は魔術の術式は破壊できる。しかし、この地下にかけられている術式を破壊するためにはこの地下全体を触るなどのことをしなければならないので事実上不可能に近い。なのでマタイは上条に対して絶対という言葉を使えたのだろう。

上条「シェルターみたいなもんなのでせうか?」

マタイ「シェルターみたいな物と言われればそうだと言えるけれど…まぁその理解で問題ない」

何とか立ち上がった上条の手を取りマタイは薄暗い地下を進んでいく。

薄暗い道を照らしているのは松明ばかりだったが、進むにつれ黄色の光を放つ装飾品などが置いてある道になってきた。

上条「黄色が多くなってきたね………明るくていいけど」

マタイ「もうすぐ着くからだよ」

やっと到着すると聞いて上条は目に見えて嬉しそうにする。しかし、流石に黄色だらけの道を不思議に思ったのかマタイに問いかける。

上条「この奥に黄色が好きな人でもいるの?」

マタイ「彼女の対応している属性が黄色だからだよ」

上条「たいおー…ぞくせー………?」

当然知らない言葉がマタイの口から出てきたので上条はオウムのように繰り返してみるがマタイはそれ以上のことは言おうとはせず、黙々と足を進める。

道を進むにつれてマタイの表情が少しずつだが険しい物になっていく。そこからこれ以上喋るのは無粋だと感じたのか上条も黙ってついて行く。

そしてついに黄色まみれの道が終わると二人の前に前には見るからに重く分厚い扉の前に到着した。

コンッ…コンッ…。

マタイ「私だ。入ってもいいかな?」

扉をノックをした後にマタイが扉の中にいるであろう人物に向けて問いかける。

上条「い~い~で~す~か~?」

上条もそれに続いてこの状況には似合わないような元気な声で問いかける。オッレルス家で一般的なマナーくらいなら習っているのでマタイに続きノックをしようと試みるが………

??「どっか行け」

扉の中の部屋から小さくも明らかに拒絶の意志を含んだ返答があったので急遽ノックをしようとした手を中断させる。

上条「………ダメって言われちゃったよ?」

マタイ「頼む、今日は何時もの用事できたのではない」

??「……………………………何のようだい?」

扉の前で懇願するマタイの言葉から何かを感じ取ったのか扉の中の人物は話を聞くことを決めてくれたらしい。

マタイ「君の救いになるかもしれない子を連れてきたんだ。会って欲しい」

上条「救いになるかもしれない子供です!!」(@`▽´@)/

??「………帰れ。それにアタシは救いなんか求めちゃいない」

マタイ「なら…なら一体君は何を求めているんだ」

そう言うマタイの顔は今にも涙がこぼれてしまいそうなほど悲しそうで、隣にいる上条でさえマタイがこの扉の向こう側にいる人物を大切に思っているのかが分かる。

しかし、返ってきた答えは…

??「アタシが求めてるのは………アタシが欲しいのは救いじゃない、復讐するための”力”だ」

マタイ「君はまだ……。そんなものを、そんなものを欲しても………クッ!!」

上条「!!??」

言葉を続けようとしたマタイの頬が裂け、血が滴る。上条としては当然隣にいた人の頬がいきなり裂けたので驚愕する。

??「そんなこと?アタシにとって……アタシにとって復讐こそが全てだっ!!」

扉の奥から怒りを含んだ桁違いの魔力が漏れ出す。どうやら扉の奥にいる人物が扉の外にいるマタイの頬を魔術によって斬ったらしい。

上条「マタイさん大丈夫?」

マタイ「あぁ大丈夫だ」

??「そこにいるガキを連れて帰れ」

切れた頬を押さえるマタイに上条が寄り添う。そして斬ったらしい本人はマタイを斬ったことなどどうでもいいと言わんばかりに言い放った。

マタイ「やっぱり、ダメだったのか………」









上条「扉の中の人!マタイさんに謝りなさい!」

しかし、上条は食い下がらずに扉の中の人物に向かって騒ぎ出す。

??「聞こえなかったのかガキ?帰れって言ってるんだよ」

上条「帰らないもん」

お互いに顔も見えないまま言い争う。上条の表情はマタイを傷つけられたことによる怒りで赤く染まり、扉の中にいる人物の顔は純粋な怒りで赤く染まっている。

??「もう一度だけ言うぞ、帰れ。これで帰らなかったらそこにいる爺みたいに体をぶった切るぞ」

マタイ「上条君。一回ここから離れよう。このままいると君まで危険な目に…」

上条「やだ、この扉の奥にいる人をマタイさんに謝らせるまでは帰んない」

??「………忠告はしたからな」

地獄の底から聞こえるような恐ろしい声がしたかと思うと扉の隙間からまたも桁違いの魔力が溢れ出す。それは周囲の空気を巻き込んで風の刃を形成し上条の喉元めがけて発射された。

マタイ「上条君っ!!」

咄嗟にマタイが上条の周りの空間を先程のテッラとフィアンマの戦いを止めたように掌握し固定させて防御しようとする。

先程のフィアンマの奇跡の右は閃光を伴う攻撃だったので上条も何とか防御ができていたのだが今度の攻撃は風という無色の攻撃魔術なので右手による防御ができないだろうと考えた結果だった。しかし、

??「老いぼれめ…。確かにあんたの魔術は強力だけど速度だけならローマ正教最速の魔術師はアタシだ!!」

マタイ「なっ!?」

マタイが空間を固定させるよりも早く扉の奥にいる人物の形成した風の刃が上条に襲いかかる。

先程マタイの頬を斬ったも音は比べものにならないほどの魔力が込められた刃だ、生身の人間が斬られれば無事では済まない。

しかし、ここで忘れてはいけないことがある。

各人の上条に対する認識だ。

マタイはまだ上条を奇妙なな右手を持つ不思議な子供としか認識していなかった。

扉の奥の人物は対面すらしてはいないが上条などただの五月蠅い子供としか認識していなかった。

この二人の間違った認識のままだと、上条当麻という人間はこのままなすすべ無く風の刃に斬られて殺されるだろう。

そう、人間なら。

上条「吹っ飛べっ!!」

そう上条が叫んだ途端。襲いかかってきた風の刃や、ようやく完成したマタイの空間掌握魔術がかき消され、重く分厚かった扉を豆腐のように破壊した。

上条「何この部屋!?真っ暗じゃん!」

そのままズンズンと部屋の奥に進んでいく上条。扉や他の二人の魔術を消したことなどどうでもいいようだ。

状況を理解できていないのかマタイは呆然と立ち尽くしたままピクリとも動いていない。

上条「どこだ~。出てこ~い」

部屋の中心と思われる場所に陣取った上条は、光一つ灯っていない部屋をキョロキョロと見渡す。

まだこの暗さに目が慣れていないためにほとんど何も見えていないからだ。

カサッ。

上条「そこかっ!」

物音がした方向を見れば確かに人影があった。ベットの上に座って上条の方を見ているらしい。

部屋の暗さにようやく目が慣れてきた上条は、そこに向かってマタイに謝罪させるために歩き出したのだが、

上条「さぁマタイさんに謝りなさ………」

突如として言葉と歩みが止まった。しかし、上条が止まったのも無理はないだろう。なぜならそのベットの上で破壊された扉を見ていた人物は女性でしかも…

??「アンタ………何者?」

服など着ていない、ほぼ半裸の状態でいたのだから。

お待たせしました、投稿します。最初に言っておきます、作者(>>1)はヴェントが大好きです。

現在この部屋に居る人物

上条当麻(男・8歳)半袖短パンの黒髪ツンツン頭

??(女・?歳)ほぼ半裸の金髪美女

(部屋の外には唖然としたマタイがいる)




上条「………………………」

??「………………………」

部屋に入った上条も、部屋に入ってこられた女性にも気まずい沈黙が訪れる。

上条としてはマタイに謝罪させるために意気込んでいたのに部屋の中にいたのは半裸の女性だったし。部屋の中にいた女性としては扉を破壊し、入ってきた上条と半裸の状態で目が合ってしまったわけで、お互いどうすればいいのかを悩んでいるようだ。

??「………あー、えーと、取りあえずアンタ誰?」

上条「あ、えー…上条当麻です」

??「ふーん。カミジョ…ウトウマ…。東洋人?」

上条「に、日本人だよ」

??「日本人は東洋人だよ」

上条「へー。そっ、そうなんだ-」

??「………………」

上条「………………」

またも気まずい沈黙が訪れる。両者とも何とか会話を成り立たせようと努力はしたのだが失敗に終わってしまった。

上条「………取りあえず…服来て下さい」

??「なんで?」

上条「いや、着るものだよね…服って?」

あまりにも堂々と言い返されたので思わず自信が無くなる上条。言っている本人は上条が何を言っているのかが分からないよう様子だったが、上条が男であることを確認し、自分の今の格好を見て上条の言葉の意味に気がついたようだ。

??「あーそゆこと…。別にいいでしょ?減るもんじゃないし」

上条「でも着てくれないとお姉さんのこと見れないし…」

??「アタシは別にいいんだけどね。………ん?ちょい待ち、お姉さん?アンタって今いくつでアタシのこと何歳くらいに見えてるの?」

上条「上条さんは今、えーと8歳です。お姉さんは……オッレルスと同じくらいに見えます」

??「………オッレルスってヤツは何歳?」

上条「確か16歳って言ってたよう「マジか…」な?」

上条がオッレルスの年齢を言った途端、女性の方が明らかにショックを受けた。どうしたのだろう?

??「いや、何でもない…。分かってたことだけどちょっとショックを受けただけだ」

上条「何歳なの?」

??「………………9歳だよ」

上条「一歳違いなの!?」

今度は上条がショックを受けた、上条から見れば今ベットにに座っている女性…女の子がとても自分の一歳上には見えなかったからだ。

身長は1聖人女性の平均より少し低いくらいで、髪は輝くような金髪。豊満な胸にくびれた細い腰に長く細い脚。顔にはまだ幼さが残ってはいるものの、薄い青色の鋭い眼光が大人っぽさを表している。

*結果*「どう見ても9歳には見えません」

上条「でも、お姉さんとっても綺麗だし…大人っぽいし」

??「お世辞はいいよ。アタシがこんな大人っぽいのにも色々訳があるんだけど…まぁいいや。っうかいい加減にお姉さんをヤメロ。アタシの名前は……今はヴェントだ」

上条「じゃあヴェントさん。服来て下さい」

ヴェント「ヤダ。」

上条「即答っ!?」

ヴェント「だって面倒臭いし」

上条「子供みたいなこと言わないでよ…」

ヴェント「じゃあいいじゃん、アタシ子供だもん」

駄々をこねる金髪美女の9歳児(女)をなだめるツンツン黒髪チビ頭の8歳児(男)の図ができあがった。

ヴェント「つううかこの部屋服なんかないし」

上条「なんで?」

ヴェント「そこのクローゼット開ければ分かるよ…。アンタじゃ届かないかな?アタシが開けようか……」

上条「待って待って!!立たないで!!上条さん頑張って取るから!」

今のヴェントの状態はほぼ半裸だと言ったがこれは訂正しよう。おそらく全裸だ、腰にかけているモーフを落としたら生まれたままの状態になることに違いない。そんな状態のヴェントに立たれたりしたら上条も色々とやばい。

上条「うんしょ、うんしょ…開いたよ」

ヴェント「じゃあ中見てごらん」

上条「………なんで服全部ビリビリに破れてるの?」

ヴェント「……………八つ当たりだよ」

クローゼットの中には確かに服はあった。しかし、一枚として無事な物はなく、全てズタズタのビリビリに破れている状態だ。

ヴェント「ほらね、服なんてあるけど無いだろう?じゃあアタシはこのままで言い訳だ」

無茶苦茶理論が完成した。

上条「じゃあ上条さんの服貸すからそれだけでも着てよ」

ヴェント「はぁ~~~分かったよ。じゃあアンタの服貸して」

上条はパンツだけを残して自分の服をヴェントに手渡す。ヴェントと上条の身長差はかなりあるのだが、上条の着ている服は元々はオッレルスの物だったし、ヴェントも細身なので何とか着ることができた。

ヴェント「何かぬくいね…ていうアンタはパンツ一枚でいいの?」

上条「上条さんは男の子だからいいのです」

ヴェント「じゃあ話の最初に戻ろうか。アンタ一体何者?どうやって扉を壊したの?」

上条「上条さんは上条当麻です。扉は根性で壊しました!!」

ヴェント「いや、意味分かんないし」

何とか会話ができる状態に戻った二人は、先程までヴェントが座っていたベットの上で向かい合うように座り会話を始める。

上条「そんなことよりヴェント。怪我させたマタイさんに謝りなさい」

ヴェント「この野郎…。一個違いだと分かってから急に態度変わったな…」

上条「気のせいじゃな~い?そんなことより、ほらほら」

ヴェント「うざっ!!………はぁ~分かったよ。……………悪かったよ、ごめん」

いまだ扉の外で破壊された扉を呆然と眺めているマタイにヴェントが謝罪をする。それに対するマタイは自分に対して謝罪がされていると知ると途端に意識を取り戻し。

マタイ「いや、私の方こそすまなかった。できれば私としても色々とやることがあるからここは君たち二人だけにしてもいいかな?」

ヴェント「別にいいよ。さっさと行け」

上条「マタイさん、お仕事あるんでせうか?頑張ってね!」

マタイ「あぁ。じゃあ少ししたらまた迎えに来るよ」

そう言ってマタイは来た道を戻り、去っていった。それを見送った後、残された二人は会話を再開させる。

ヴェント「だからアンタは何者なの?オチビ凄腕魔術師?あの扉壊すのって結構難しいのよ」

上条が根性?で破壊した扉はかなり特殊な物だ。対魔術用の仕掛けが色々とあるからである。

上条「チビじゃないもん!!」

ヴェント「アタシよりチビならチビだよ」

上条とヴェントの身長差は少なく見積もっても30センチはある。上条の自慢のツンツン頭の分を足しても肩にぎりぎり届くぐらいしかない。

上条「そのうち…そのうち大っきくなるもん!!ヴェントのことチビって言えるくらい大っきくなるもん!!」

ヴェント「例えアンタがアタシより大きくなってもチビって言ったら殺すわよ?」

上条「すみませんでした」

軽く始まった口喧嘩だったが十秒もしないうちに上条の敗北で決着した。もうちょっと頑張って欲しかったが…

上条「そういえば何でこんな所にいるの?お外の方が楽しいよ」

ヴェント「アタシはここでやることがあるから出ないだけだよ。まぁ…そのうち出るよ」

上条「そのうちっていつ?」

ヴェント「アタシが”力”を手に入れるまでだよ」

上条「………その力ってさっき言ってた復讐のため?」

ヴェント「そうだよ」

扉を破壊する前のヴェントとマタイの会話の中でヴェントは「力が欲しい」と言っていた。それをマタイの隣で聞いていた上条はあのときの辛そうなマタイの表情を思い出し思わず聞いてしまった。

上条「何で復讐したい……の………?」

言葉を続けようとする上条の言葉が途中でかすれる。なぜなら…

ヴェント「聞かないでくれ」

悲しそうな表情で涙を流しながら懇願するヴェントの姿が目に入ったからだ。

ヴェントはほんの数ヶ月前までは普通のどこにでもいる女の子だった。

公園で友達と一緒に遊んだり、休みの日には両親の手伝いをしたり、教会にお祈りをしに来ることがあるような女の子だった。

特に運動ができたり頭がよかったり人気者だった訳じゃない女の子だった。



そんなヴェントの唯一の自慢は優しい弟だった。



自分のことよりも他人を優先できる心優しい弟で、友達や家族の喜びをともに喜び、友達が虐められていればボロボロになるまで守り抜くような弟であり男だった。

ヴェントにとって父と母、そして弟さえいてくれればよかった。

それ以上なんて望まず、このままの幸せな生活がいつまでも続くことだけを祈っていた……………。



しかし、悲しくもその祈りは届かなかった。

数ヶ月前のある日のこと。

(※ヴェントの過去の名前が分からないのでヴェントのままのにしておきます)




ヴェント「ねぇー××。お姉ちゃんのこと好き~?」

××「大好き~!!」

そう言ってヴェントに抱きつく弟の××。そしてそれを優しく抱き返すヴェント。それを横から眺めてる両親は…

父「微笑ましいよな…お母さん」

母「本当に……」

父「しかし………どうしようかお母さん?」

母「何がですかお父さん?」

急に真剣な表情になり母に問いかける父。まだ結婚してから数年しか経っていないが夫のそんな表情は初めて見るので妻のにも緊張が走る。

父「……もし、もしだよ?ヴェントが悪い男連れてきちゃったりしたらどうしよう!?」

季節は初夏のはずなのにこの二人の地点だけ絶対零度の風が吹いた気がした。

母「………………………朝のハムエッグはハム抜きでいいですかお父さん?」

父「冷たいなお母さん!?」

ヴェント「お母さ~ん。私にそのハムちょ~だい」

××「僕にもちょ~だい?」

母「大丈夫よ私の天使達、ちゃんとあげるから。それに、この人の朝ご飯なんかトーストの耳だけでいいわ」

父「氷河期到来なのかお母さん!?だってもしヴェントが彼氏連れてきました~なんて言ってチャラチャラした男連れてきたらどうするんだ!?」

涙目で母にしがみつく父。そんな父を鬱陶しそうにしながらも取りあえず妻としての責任なのか会話を続ける。

母「あの子なら大丈夫ですよ。きっと王子様みたいな格好いい男を連れてくるに決まってますよ」

ヴェント「わたしお姫様-」

弟「じゃあ僕王子様-」

そう言ってキャッキャッと回り出したり格好つけたりする二人。今の二人には涙目で母にしがみつく父の姿など見えていないのだろう。

父「ヴェント、ちょっとこっちにおいで」

ヴェント「な~に?おとうさん」トテトテ、ボスン

何とか立ち直った父はヴェントを手招きして膝の上にのせる。母は今朝食の片付けをしていて弟はそれを手伝っている。(朝食は本当にトーストの耳だけだった)

父「ヴェント、お前今好きな男の子とかいるか?」

ヴェント「いないよ~。でもお父さんとお母さんと××は大好き~」

涙腺が崩壊したのか洪水のような涙を流し始める父。しかし、膝の上に座るヴェントに涙をかけないようにしているところにこの父の優しさを感じることができる。

父「ズビビッ!!……………ヴェント、悪い男になんか騙されるなよ?絶対だぞ?」

ヴェント「うん」

そう言ってとびきりの笑顔で父と指切りをするヴェント。そんな可愛らしい事をされたからには父は…

父「よし、やっぱり今日にしよう。………お母さ~~ん。××~~~片付け終わったらちょっと来てくれ~~」


しばらくして………


母「どうしたんですかお父さん?朝食ならもうありませんよ」

××「ハムは僕とお姉ちゃんで食べちゃったよ?」

父「大丈夫だよ××。そう言いながらお母さんが冷蔵庫の奥に余り物で何か作ってくれたのを隠しているのを私は見たから」

ヴェント「お母さん優しいね-」

父「ねー」

母「//////………用事ってそれですか!?掃除があるのでそれじゃっ!」

父「ちょっと待って母さん、それもあるけどほかにもあるからっ!!」

顔を真っ赤にしながら逃げようとする妻の手を掴んで止める父。そのまま胸ポケットを探った後、数枚の紙切れのような物を取り出した。

父「いやね実はここに来週オープンする遊園地のチケットがあります」

××「ゆえーんち!?」

ヴェント「違うよ××、ゆーえんちだよ」

母「まだ違うわよヴェント、遊園地よ」

父「そうだぞ遊園地だ。そしてこのチケットは…な、な、なんと来週に始まるはずの遊園地で一日無料で遊べる無料券なのだ!!」

そう言いながらそのチケットを掲げる父。その遊園地とは、最新の科学技術の力を取り入れた新感覚のアトラクションが盛りだくさんと言うことでチケットの入手はとても難しいと言われているのだ。

××「?ん????」

ヴェント「つまりね、ゆーえんちで遊べるって事だよ」

××「マジで!?ちょー凄いじゃん!!」

母「××、そんな言葉遣いどこで覚えたの?後でお話があります。それにしても凄いじゃないお父さん。どうやって手に入れたの?」

父「フッフッフ。実はお父さんのお友達がこの遊園にの建設に関わっててね、本当はその友達が行くはずだったんだけど急に用事が入っちゃったみたいでお父さんが貰えちゃったんだよぉー」

ヴェント「よぉー?」

××「よぉおーー?」

母「貴方たち…ちゃんと学校行ってるの?」

我が子の頭を少し心配する母であった。

父「………つまりね。一週間後に開く遊園地にこの家族だけ他の人より一週間早く遊びに行けるんだ」

××「じゃあ行こう!すぐ行こう!!」

ヴェント「お父さんもお母さんもなにしてるの!?早くお着替えして行かないと!!」

話を理解した瞬間の二人の動きは迅速の一言だった。××は一瞬にして玄関までダッシュし扉を開ける準備をして、ヴェントはどうやったのか一瞬のうちにお気に入りの服に着替えて父と母の手を引っ張っている。

父「早いな~二人とも。だけど待ちなさい××、靴紐ほどけてるぞ?貸してみなさい」

母「ヴェント、帽子を持って行きなさい。今日はお日様が強いから日焼けしちゃうわよ」

ヴェント「いらないよ~。だって帽子あると走れないもん」

××「靴紐が結べないなら裸足になればいいじゃな~い?」

父「よくねえよ」

母「お日様はお肌の天敵なのよ、油断してたら痛い目見るわよ」

母も父もそう言いながらいつのまにか動きやすい服に着替えている。もう準備は万端のようだ。

××「じゃあお父さんお願いしま~す」

ヴェント「大丈夫。お日様なんてわたしがそのうち倒しちゃうから」

父「それは楽しみだな~」

××「そのときは僕もお手伝いするんだよ?」

母「それじゃあ、倒せるように頑張って勉強しないとね」

ヴェント&××「「やだ」」

四人は笑いながら玄関の扉を開けて遊園地へと向かい歩き出す。

その足取りは見ている人からすれば幸せでいっぱいだったのだろう。



………そして悲劇が起こってしまった。

最新の科学技術で作られているはずのジェットコースターで誤作動が発生したのだ。

速度が基準値よりも速かったせいでコースターがレールから飛び出し、乗客を空中から地面へと叩き付けた。



そして、丁度乗っていたヴェントと弟の××が巻き込まれた。

二人は血だらけのまますぐさま近くの病院に運ばれた。

どちらかというとヴェントの方が重傷だった。弟の××を守ろうとしたからなのか、××を抱きしめたまま地面に衝突したようで意識はなかった。

弟の××はヴェントに守って貰えたからなのか重傷であることには変わりはないが意識はあった。

二人の両親は大粒の涙を流しながら医者に懇願した。

「息子と娘を助けてくれ!!私達にできることがあれば何でもする!!」と。

しかし、ヴェントと弟の××の血液型はとても珍しい物で輸血用の血液が一人分しかなかった。

母は泣き崩れた。息子か娘、どちらか一人しか助けられないという現実を知り、叫び声を上げ、涙を流しながら座り込んでしまった。

父は諦めなかった。私の血ではダメなのか?全部使ってくれていい!!他の病院から持ってくるのでは間に合わないのか?半分ずつではダメなのか?頭が焼き切れるほどの知恵を振り絞り考え得る可能性全てを言い続けた、

だが、二人の珍しい血液の予備など他の病院にはなく、またその血液はその血液型からしか輸血することができず父の案は全て駄目だった。

涙を流しながら他の可能性を考える父、しかし時間には無情にも過ぎていき、このままでは二人とも助からない。

医者がそのことを悟り、両親に語りかけようとしたとき、その医者の裾を掴む手があった。


弟の××だ。

××は血が流れ出て行き、どんどん白くなっていく顔のまま笑顔で答えた。





××「お姉ちゃんを助けてください」




消えそうなか細い声だったが医者と二人の両親には届いた。

ただ一人、××の隣で意識がないまま死にかけているヴェントを残して。




助ける方が決定してしまった。

二人は別々の手術室へ運ばれることになり、病院の通路の中で別れた。

両親はついて行くことができなかった。止まらない涙と叫びが足を止めているからだ。、

分かれ道のさしかかると、最後だからと言って医者にに許しをもらい、自分とは違う手術室の運ばれる姉にの手を掴み、××は最後の言葉を残した







××「大好きだよ………ヴェントお姉ちゃん」







そして、同時刻。一つの手術室では一つの命が助かり。もう一つの手術室では一つの命が消えた。

次にヴェントが目覚めたのは手術から数日経ったある日のことだった。

目が覚めた途端、朝も夜も関係なく寄り添っていた母に抱きしめられた。

母「ヴェント、お母さんのこと分かる!?」

ヴェント「お…母さん?」

母「ヴェントっ!!」

父「母さんヴェントの容態は……ヴェント!!気がついたのか!?」

ヴェントがさらに強く母に抱きしめられると同時に病室のドアが開き、父が入ってきた。

意識が戻ったことを確認すると一目散に駆け出し、母の上からヴェントを抱きしめた。

ヴェント「ゆーえんちは?」

母「覚えてないの?」

父「記憶が飛んでいるのかもしれないな…」

少しして両親の抱擁から解放された後、ヴェントが二人に質問する。どうやら事故のショックで記憶が飛んでしまっているらしい。

父「……………遊園地で事故があってな、お前達は巻き込まれちゃったんだ。お前の父親でありながら…守ってやることができなくて本当にすまなかった」

母「本当に危なかったんだからね。………でも、生きててくれてよかった………」

ヴェント「大丈夫だよ。わたしチョー強いもん」

深く頭を下げて自分の無力さを謝罪する父と、涙を流しながら我が娘の無事を喜ぶ母。

そんな二人を気遣うようにヴェントは笑いながら答えた。

しかし、その後のヴェントの次なる質問で二人の心はさらに傷んだ。

ヴェント「ん?………××はドコ?トイレ?」

ヴェントが××のことを言った途端、両親の表情から先程まであった笑顔が消えた。

母「お父さん…私、外に出てもいいですか?」

父「ああ。………ヴェント。今から私達が言うことをちゃんと聞いて欲しい」

そう言って病室から立ち去っていく母を止めもせずにヴェントの顔を目をしっかりと見つめる父。ヴェント自身、父のこんなにもまじめそうな顔を見るのは初めてなので戸惑ってしまう。

ヴェント「どうしたのお父さん?わたし何か悪いことしちゃった?」

父「いや、お前は何も悪くない。悪いのは全部お父さんだ…」

ヴェント「?」

話ながらなのにどんどんとヴェントに対し頭を下げていく父。そんな父の態度にどんどん不安になるヴェントは話の催促をしてしまった。

ヴェント「頭上げてよお父さん。それに××はドコにいるの?」

父「……………………死んだんだよ」

ヴェント「えっ?」

頭を上げるようにヴェントに言われても上げる事はせず、顔を伏せたまま真実を言う父。

頭を下げたままなのは謝罪のためなのか?それとも涙を見られたく無いからなのだろうか?

ヴェント「………うそだよね?うそなんでしょ。××が死んじゃうわけ無いもん」

父「本当なんだ」

ヴェント「うそだよっ!!」

父の言葉が嘘だと確認し否定するヴェント。しかし、ヴェントの確認を受けてもなおそれが事実であることが伝わると声が叫びとなった。

ヴェント「なんで…なんで!?どうして…誰が××を殺したの!?」

父「誰が殺したかと聞かれれば…私なのかもしれないな」

もし、父が友人から遊園地のチケットをもらっていなかったら。

もし、あのジェットコースターに乗っていなかったら。

もし、父や母の血液型が二人の血液型と同じだったら。

もし、父が諦めずに何か二人を救うことができる案を思いついたのなら。

上げていけばきりがないが、たったどれか一つでもその「もし」が叶っていたのならこのような悲惨な現実は訪れなかったのだろう。

父「お前達二人が乗ったジェットコースターが誤作動を起こしたんだ、それで二人とも大怪我して…。お前達の血液型は珍しいヤツでな輸血用の血が一人分しかなかったんだ………」

そう言う父の拳は血が出るほど堅く握られていて、自分の不甲斐なさに怒っているようにすら感じられた。

だが、そんな父の思いなどつゆ知らずヴェントは…

ヴェント「じゃあ何でわたしだったの!?××が死んじゃってわたしが助かったんじゃ「××が…」!!」

父「××が言ったんだ「お姉ちゃんを助けて下さい」って…だから…だからっ!!」

ヴェント「あ、ああ、あああ、ぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

その瞬間、幼いヴェントは全てを理解した。

自分の身より何時でも他人のことを大切にする弟の××。

もし、そんな××が自分の身か他人か、どちらか一方しか救えないとしたのなら迷わず××は他人を救って欲しいと言うだろう。

そして今回の場合その他人とは××の大好きなお姉ちゃんであるヴェントだった。

意識を失っていたので見てはいないが、きっと××はあの笑顔で先程の父が言った台詞を言ったのだろうと簡単に推測できた。

死体もまだ見てはいないが、父のこの態度から全てを悟ったヴェントは母と同じように泣いた。

それは悲しみの叫びであると同時に、怒りの砲口であるように聞こえた………。

それからしばらくしてヴェントは退院した。

最初の頃は暴れ回ったりととても大変だったが、××の遺体を見てからヴェントの全てが変わった。

ヴェント「なんでよ…………何で幸せそうに寝てつのよ」

ある日ヴェントは隠れながら××の死体が安置してある部屋に入った。そして、遺体となった××を見たヴェントの第一声がこれだった。

本当は分かっていた。だけど確認したくなかった。

信じていたかった。父や母が言ったことが本とは全部嘘で××はちゃんと生きているって信じていたかった。

だがもう駄目だった。見てしまったのだから。

ヴェント「お姉ちゃんを一人にしないでよ…」

一人の少女のすすり泣く声が病実のこだまする。

遺体となった××の胸に顔を埋めながらヴェントは泣いた。

握り替えしてくれることのない冷たい手を握りしめながらヴェントは泣き続けた。

しばらくして他の医師に見つかりヴェントは退室させられる。

両勝手に病室を抜け出した上、遺体の安置室に勝手に入ったのだから怒られて当たり前だったのだが誰一人として怒る事のできる人はいなかった。

ヴェント「……勝手にお部屋出て行ってごめんなさい。………勝手に××の所に行ってごめんなさい」

悲しみで張り裂けそうなヴェントの表情を見て、謝罪の声を聞いて両親すら言葉を失った。

子供が、しかも女の子がこんな悲しい目に遭うなんてここにいる誰が一体想像できただろう?

涙のながしすぎで目元が腫れたヴェントを母は優しくベットに寝かせ。額にキスをして去っていった。

父「大丈夫だぞヴェント。………××は守る事ができなかったが、お前だけは…お前だけは何があってもお父さんとお母さんが守ってやるからな」

そう言って父は眠るヴェントの頭を優しく撫でて母に続いて病室を去っていった。








しかし、この父の決死の誓いは守られることはなかった。







数日後、両親が突然死んだ。

一ヶ月も更新できず申し訳ありませんでした。
言い訳になりますが、色々あって前回の投稿日の次の日に親からPC禁止令が出たので投稿が出来ませんでした。m(__ __)m
何とか今日から使えるようになったのでまた書いていきたいと思いますのでお願いします。
取りあえず今日書けた分だけ投稿します。


両親が死んだ。

その時のことをヴェントは正確に覚えてはいない。

事故だったのか殺害だったのか自殺だったのか、そんなことすらどうでもよかった。


しかし、ただ一つだけ確信し、解っていることがある。




「両親も弟も科学によって殺された」


ということだった。

ヴェントは上条の言葉を聞きながら、これまでのことを思い出していた。

最愛の家族を失い、怒りと悲しみに明け暮れていたヴェントをマタイが発見し、そして保護された。

マタイは善意でヴェントを保護し、その心を救おうとしたのだが、運命は優しくはなかった。

ヴェントには魔術師としての才能が眠っており、成長さえすればローマ正教が秘密裏に作っている「神の右席」という組織に入れるほどだったのだ。

マタイ「この子の体を!目を!心を見てみろ!そんなことをするべきではないはずだ!!」

教皇であるマタイは必死にヴェントを魔術師にさせると言うことに反対したのだが、

ヴェント「力を………力を私に寄こせっ!!」

ヴェント自身が復讐のために力を望んだため、魔術師になることが決まってしまった。

まず、魔術的知識を覚えさせるのは後回しにして、ヴェントの中に眠っている魔術師の力に耐えられるように体を急成長させた。

そのせいで上条とは一歳しか離れていないはずのヴェントの肉体は大人びている。

しかし、今になって復讐を第一に考えるヴェントの凶暴性ををローマ正教の重鎮達は恐れ、この大聖堂の地下深くのこの部屋に閉じ込めた。

見かけは成長したとはいえ精神的にはまだ10歳にも満たないような少女を閉じ込めるなど許されざる事だったのだがヴェント自身はこれを受け入れていた。

余計なことを考えることが無くなるからである。

魔術とは才能のない者が才能のある者に追いつこうとして生み出された力だ。

知識や訓練などはもちろん必要であり重要だが、それ以前に必死で強い思いがあればあるほどその力は研ぎ澄まされ強くなる。

ヴェントの魔術師としての力は家族を失った憎しみという感情一点のみに集中したせいなのか、ローマ正教最強クラスの魔術師まで一気に上り詰めた。

つまりヴェントは力を手に入れることに成功したのだ。

しかし、ここで一つの疑問が発生する。

ヴェントが自分の過去を振り返っているなど知るよしもなく、上条は何とかこの雰囲気を変えようと一つの提案をする。

上条「じゃ、じゃあ外に行こうよ!一緒に遊ぼうよ?」

ヴェント「………それもヤダ」

却下されてしまった。

上条「……………」

ヴェント「久しぶりにアンタみたいなヤツと会話できて楽しかったよ。………だから、帰り…」

そう、「力を手に入れたのにもかかわらずヴェントがこの部屋からでない」これが疑問である。

ヴェント自身、先程マタイに言ったように今、手に入れた力に満足していないという理由もあるが、本当の理由はもっと他にある。それは…




上条「も~。ウジウジしてちゃつまんないでしょ?お外行くよ」



ヴェントはおそらく「帰りな」とでも言いたかったのだろうが、それを遮って上条が喋った。

上条の言葉は魔神の言葉だ。

そして、魔神の言葉は神の言葉だ、故に”実現した”。

ヴェント「だから行かないって言って………?……ッキャーーーーーー!!??」

上条「眩しっ!暗い部屋に居たから太陽が眩しいっ!!」

面倒臭そうに「外に行こう」という上条の言葉を否定しようと顔を上げたら大地が広がっていた。




………というか空中だった。


ついでに絶賛落下中である。

ヴェント「何これ落ちてるの!?それともアタシ飛んでるの!?つうかどうしていま外にアタシとアンタがいるんだよぉおおお!!??」

上条「うん落ちてるね、これ。………出る場所ちょっとずれちゃった」

ヴェント「ちょっとどころじゃねえよ!ていうかアンタ一体何したの!?」

魔神である上条が力を使い、空間移動のようなことをして外に出たのはいいのだが、出る場所の地点を間違えてしまったらしい。

上条とヴェントが出てきた場所は、サンピエトロ大聖堂の遙か上空だった。

上条「た、大変だよヴェント!」

ヴェント「ああ大変だよ!落ちてるんだから!!」

かなり上空から落下しているので上条もヴェントも何とか会話が成立している。

見たところヴェントの方は完全にテンパッているが上条の方は若干余裕が感じられる。

上条「今の上条さんはパンツ一枚だけの姿なのでこのまま地面に着いたら変態さんになっちゃいます」

ヴェント「もっとでけえ問題に現在進行形で直面中だろうがぁあああああああ!!」

上条が「若干余裕が感じられる」というのを訂正しよう。むしろ楽しそうだ。

ヴェントが「完全にテンパッている」を訂正しよう。ブチ切れだ。

しかし、そんな二人の現状はどんどん落下速度を上げている落下中である。

ヴェント「試したこと無いけどやってみるかっ!」

上条「この格好だと風が冷たいっ!」

どうやら上条にこの状況を何とかする気がないと言うことを悟ったヴェントが術式を発動し始めた。

上条自身、魔神なので何とかしようと思えばいくらでもできるのだが、なんだか楽しくなっているようで現時点では何もしようとはしていない。

ヴェント「風を操るのを応用して空気をクッションみたいに固める!それに乗れば後はゆっくり降りるだけだから何とかなるはずだ」

攻撃目的でしか使ったことのない自分の魔術を咄嗟に組み直し展開する。

短距離専門のランナーが、いきなりフルマラソンに挑戦するような物なのだが………

上条「お?なんか下の方に出来てきてる?」

ヴェント「よし!成功した」

二人の落下している少し下を見れば空気が固められて出来た、透明に見えるが少し白い丸いクッションのような物ができあがっていた。

どうやら初めてだったにもかかわらず何とかヴェントの試みは成功したようだ。

ヴェント「おいチビッ!アンタは後でぶっ飛ばしてやるからその前のあの丸いのに乗れ!」

上条「何か怖いこと聞こえたけど取りあえずアレに乗ればいいんでせうね?」

ヴェント「そうだよ、つうか今度は変なことするなよ」

上条「…なんで?上条さんが変なことなんてするわけ無いじゃないでせうか~」┐( ̄ヘ ̄)┌

ヴェント「アンタが変なことしたせいで今滅茶苦茶ピンチなんだよっ!!」

そう言い争っているうちにヴェントの方が無事先に乗った。

「乗った」というよりはベットのような物にダイブした感覚に近いらしく優しく受け止められている。

そして、受け身も何もない乗り方だったにもかかわらず無事だったことから、衝撃を吸収したりすることが出来ると伺える。

上条「よ~し.上条さんも………と~~う」

そして上条も乗ることに成功した。しかし、その乗った後に問題があった。それは…


ピタッ



パキィイインンンンンッ!!!

上条「なんで!?…………………ハッ!!……」(;¬_¬)チラ

ヴェント「………………………ニコッ」(#^ω^)ピキピキ




金属をぶつけ合わせたような甲高い音を立てて、ヴェントが決死の努力で制作した空気のクッションは跡形もなく消滅する。

魔術を全て打ち消すことの出来る上条の右手で触ってしまったのだ。

つまり………

二人はまた空中落下を開始する。


ヴェント「やっぱするんじゃねえかこの…馬鹿野郎ぉぉおおおおおおおおおおお~~~~~!!!!!」

上条「ワザとじゃないよぉおおおおおおおおおお。つうか不幸だぁああああああ~~~~~!!!!!」

空中落下中の二人も気になるが、少しだけ時間を戻してみる。

まぁ戻す時間は数分程度だ。

しかし、その数分が結果的に二人を救うことになる。

上条をヴェントの部屋に送り届けたマタイは、歩いた地下道を逆に歩き上層部である聖堂に向かって歩いていた。

コツンッ………コツンッ………と、ゆっくりしたマタイの足音だけが薄暗い地下道に反響している。

普段なら慣れたとはいえこの地下道という空間があまり好きではないマタイは、なるべく急いで歩くのだが今の歩くスピードはとても遅かった。

あることを考えてるからだろう。

この聖堂の地下に閉じこもってしまったヴェントという少女についてである。

マタイはヴェントを救おうとしてローマ正教で保護したのだが、結局は救うことなど出来ずさらなる傷を負わせたのかもしれないと感じてしまったのだ。

マタイ「私は………間違っていたのか…?」

そう嘆くように呟いたマタイの一言は、彼の心を移したかのように薄暗い廊下に吸い込まれていった。

返ってくる答えなど当然として無く、彼はまた歩き出した。

マタイ「………?」

歩いてしばらく立った頃、もうすぐ聖堂に出られるかというところでマタイは不思議な現象に遭遇した。

コツンッ……………コツンッ……コツンッ……………コツンッ………

マタイ「足音が……多い?」

途端に立ち止まり確認をする。するとやはり、

コツンッ………コツンッ………

マタイが立ち止まれば必然的に足音は止まるはずなのに、何者かの足音が響いている。

この聖堂の地下空間はローマ正教の人間といえど入ることの出来る人間は限られている。

マタイを除けば現在のバチカンにはフィアンマとテッラくらいだろう。

マタイ「………誰だ?」

一応警戒も込めて歩いているであろう人物に向かって問う。

??「人に名を尋ねるときはまず自分から名乗るという礼儀を知らないのか?」

するとその声に主は特に隠れるなどせず、マタイの進んでいた方向から堂々と現れた。

そして、薄暗い廊下から現れた人物を見てマタイは絶句した。

それはその人物が少女であったこともあるが、何よりもその美しさに見とれてしまったからだろう。

暗い場所にいるはずなのに、不思議と光り輝く美しい金色の髪。

白い修道服のような服から伸びる手足は、大理石で出来た彫刻のように傷ひとつなく、また、人間なのかと疑ってしまうほど白い。

そしてその目は、世界中のどんな宝石よりも美しかった。

下手をすると、生まれて初めてマタイは他人に見とれてしまった。

マタイ「私はマタイ=リースというものだ」

なんとかいつもの精神状態を持ち直し、問われた問いに対して答えるマタイ。

出来るならば永遠に眺めていたいほどの美しさを持っているので返答に少し遅れてしまった。

??「マタイ=リース……あぁ、ローマ教皇か」

マタイの答えから、ローマ教皇であることを今更ながら思い出したように語る少女。

しかし、その口ぶりはマタイがローマ教皇だと知ったとしても少しの変化もしなかった。

マタイ「出来れば答えて欲しいことがあるんだが………いいかな?」

??「まぁ私もお前に聞きたいことがあるからな、別にいいぞ、答えてやる」

あくまで上から目線で会話をする少女。普段ならそんな態度を取られれば多少は嫌な感情を持つのだが、この少女に対してはそんな感情は少しも持てなかった。

マタイ「君は誰だ?なぜここにいる?」

??「「誰だ?」と言われればそうだな…つい最近名付けてもらったばかりだが私はオティヌスという。この先にいる魔神に用があるから来た」

マタイ「魔神………上条君のことかな?」

オティヌス「なんだ面識があるのか?なら多く語る必要はないな」

魔神=上条と通じただけで多く語る必要はないと言い、オティヌスはさらに先に進もうとマタイを抜かしていく。

マタイ「ッ!?ちょっと待ってくれ!まだ…」

オティヌス「なんだ………別に急いでいるわけではないが、無駄なことに時間を割くほど私は暇じゃないぞ」

慌ててオティヌスを引き留めるマタイ。引き留められとティヌスは渋々ながらも立ち止まってくれた。

マタイ「上条君自身も言っていたが魔神とは一体何なんだ?」

マタイがオティヌスを引き留めたのは何となくだった。なんとなくだが引き留めなければならない気がしたのだ。

オティヌス「アイツから聞いていないのか?」

マタイ「取りあえず、自分のことを「魔神だ」と言っていたこと意外な何も聞いていない」

オティヌス「まぁ……アレだよアレ。数ヶ月前の日本で事件が起こっただろう?その事件の影響で魔神になっちゃったんだよアイツは」

マタイ「日本で起きた事件のことなら私も知っているが……なら上条君は本当に魔神なんだな」

フィアンマの奇跡の右を止めたり、ヴェントが閉じこもっていた部屋の扉を粉砕したことから何らかの力を持っていることは推測できたのが、それが魔神の力だったのだと解ると何となくだが納得できた。

オティヌス「アイツが魔神ならどうした?ローマ正教の戦力にでも加えるのか?」

マタイ「そんなことはしない」

オティヌス「………そうか」

即答だった。迷うそぶりすら感じられないほどだった。

オティヌスもそのマタイの返答速度に一瞬驚くようなそぶりを見せたがすぐにもとの調子に戻った。

オティヌス「聞きたいことはそれだけか?なら私はもう行かせて欲しいのだが」

マタイ「邪魔をしてすまなかったね」

本音を言えば聞きたいことはまだ数点あるが、これ以上引き留めるのも迷惑だろうとマタイは考えたようだ。

オティヌス「あぁ…そういえばさっきお前が言っていたことだが」

マタイ「さっき私が言っていたこと?」

歩き始めてマタイを追い抜かしたオティヌスは立ち止まらずにそのまま喋りかける。

しかし、さっき自分が言った言葉と言われてもピンとこないマタイは…

マタイ「すまないが何のことかな?私は……」

オティヌス「”私は間違っていたのか?”聞き違いでない限りお前はそう言っていたんじゃないのか?」

マタイ「ッ!!」

驚くマタイ。どうやって先程呟いたはずの言葉をオティヌスが聞いたと言うことよりも、聞かれていた事への恥ずかしさと驚愕で目を見開く。

マタイ「聞いていたのか」

オティヌス「もちろん聞こえるだろう。この廊下以外と声が響くんだから」

止まらず歩き続けたまま言葉を投げかけてくるオティヌス。不思議と硬直してしまったマタイは振り返ることも出来ず、オティヌスに背を向けたまま言いようのない感情が自分の心の渦巻くのを感じていた。

オティヌス「まぁどうでもいいが、私から一言だけ言わせてもらおう……………そんなこと考えるだけ無駄だ」

マタイ「無駄だと?」

オティヌス「その人間の行動や考えが間違っているかいないかなんてその人間本人が決められる事じゃない。そういった正誤を判断するのはいつだって他人であり歴史だけだ」

マタイ「……………」

呟くように、だが歌を歌うように聞こえるオティヌスの言葉をマタイは無言で受け止める。

オティヌス「他の物に正誤判断されるんだから自己の考えなんて無駄でしかないよ」

マタイ「だが…例え無駄と解っていても考えてしまうだろう、私達は人間なんだから」

オティヌス「なら考えるな」

マタイ「は?」

オティヌス「何時だって、どんな時だって、考えるなんて面倒臭いことはせず、後悔なんて下らない事をしないように全力で挑め。考えている無駄な時間が好機をを奪い、後悔していては前に進めないぞ?」

オティヌスのその言葉は、まるで自分に言い聞かせているようにも聞こえた。

そして、言うだけ言ってオティヌスはさらに歩いて行く。もうほとんど声も聞こえないだろうが、マタイは

マタイ「ありがとう」

一言だけ呟いた。

そして二人の距離はどんどんと離れていく………









オティヌス「はぁああ~~~~!?」

綺麗に別れたと思ったらオティヌスの方から間の抜けた、しかし多少の怒気を含んだ声がした。

マタイ「どうした~~?」

もう随分と距離が離れてしまったので大きな声で問いかけるマタイ。

オティヌス「あの野郎…せっかく私自ら出向いてやったのに…」

マタイ「一体どうしたんだ~?困ったことがあるなら私も手伝うぞ~」

そう言ってマタイはオティヌスのいるであろう場所へ向かいだそうとした。途端にマタイの横を金色の閃光が通り抜ける。

オティヌス「おい教皇。お前も急いで外に出た方がいいぞ」

どうやらマタイを横切ったのは閃光ではない、金色の髪を優雅に靡かせつつ高速移動をしているオティヌスのようだ。

マタイ「どうしたんだ!?」

オティヌス「魔神が空間移動した。移動先にもう一つの魔翌力反応もあるから多分誰か巻き込んでる」

マタイ「誰か巻き込んだ………っまさか!??」

上条があの部屋で巻き込める人間と言ったらヴェントしかいない。

そうと解るとマタイも高速移動の魔術を発動させ、外に向かって全速力で走る。

マタイ「しかし、空間移動したと言ってもどこへ?」

マタイが疑問を投げかけると前を走っていたオティヌスノ速度が少しだけ落ちた。どうやら走ると同時に正確な位置を測定し始めたようだ。

オティヌス「………これ言わないと駄目か?」

マタイ「そ、そんなに大変なところに移動したのか!?」

オティヌス「………この聖堂の上空約5000mくらいのところだな」

マタイ「……………どうしてだ?」

オティヌス「私が知るかっ!!」

そう言ってマタイを置き去りにし、下手をすると光速を超えているんじゃないかという速度でオティヌスは走っていった。

投稿します。

ヴェント「このまま落ちたらどうなるのかねぇ~」

上条「潰されたトマトみたいになるんじゃないの?」

ヴェント「………トマトなんて滅びちまえ」

上条「トマトは美味しい食べ物でせうよ?」

ヴェント「あんなののどこが美味しいんだよ?」

上条「う~ん?………あれ?そういえばトマトってどこが美味しいんだろ?」

ヴェント「ホラな。美味しさが良く分かんない食べ物なんて無くなっていいんだよ」

上条「でもトマトって甘いから田舎じゃおやつ代わりになるって近所のおじさんが言ってたよ?」

ヴェント「東洋のトマトって甘いの?アタシが食べたことのあるヤツってほとんど味とかしなかったけど」

上条「じゃあ今度食べに行こうよ」

ヴェント「生きてたらね………ってことでこの状況何とかしろ」

下らない話をしてはいるのだが二人とも現在進行形で落下中であることに変わりはない。このままだとあと数十秒で地面と衝突してしまう。

上条「このまま落ちたらきっと痛いよね~」

ヴェント「痛いとかじゃなくて死ぬよ」

上条「擦り傷ぐらいですむかな?」

ヴェント「いやだから死ぬでしょ。良くても全身骨折だよ」

オティヌス「お前って骨折するのか?」

上条「するんじゃない?あれ、しないのかな?」

ヴェント「いやするでしょ。人間なんだから」

オティヌス「いや多分しないだろ。魔神なんだから」

ヴェント「魔神てなに、つうかアンタ誰?」

オティヌス「魔神とは魔術を極めて神の領域に踏み行った者のことだのことだ。ところでお前も誰だ?」

上条「あっ、オティヌス。久しぶり!」

落下中のメンバーにオティヌスが加わったゾ☆

オティヌス「あぁ久しぶりだな。ところでこれはどういう状況なんだ?」

上条「色々あって落ちてるの。なんとかできる?」

オティヌス「お前もできるだろ…これくらい」

ヴェント「だからアンタは誰だって………えっ?」

気がつけば三人とも無傷で大聖堂の屋根の上に着地していた。

あれほどの速度で落下していたにもかかわらず屋根をぶち抜くことはなかったし。擦り傷も骨折もしていなかった。

どうやら上条が上空に空間移動したのと同じように、オティヌスも空間移動をしたようだ。

上条「おぉーオティヌス凄い」

オティヌス「お前だってこれくらい余裕できるだろ。というかその格好は何だ?」

オティヌスに指摘されて改めて自分の格好を見れば上条はパンツ一枚のままだった。

上条「いやん恥ずかしい!!こっち見ないで」

オティヌス「乙女かっ!」

上条「もうお婿に行けないっ!」

オティヌス「///なら私がもらって………違う違うそうじゃない。何でそんな格好なのかを聞いてるんだ」

若干変な発言もあったがコント?は終了した。

上条「ヴェントに貸しました」

ヴェント「貸されました」

オティヌス「………ならせめて貸すに至った経緯を説明しろ」

上条「あっ。紹介するねこっちが弁当」

ヴェント「誰が弁当だ。つうかさっきはちゃんと呼んでただろ」

説明が面倒臭いのか、それを放棄してオティヌスに対しヴェントを紹介する上条。

オティヌス「よろしくな弁当。今手持ちがないんだが値段はどのくらいなんだ?」ケラケラ

ヴェント「ぶっ飛ばすぞテメェッ!!」

上条「で、こっちがセリヌンティウス」

オティヌス「お前が名付けた名前だろ!何で間違えるんだ!?」

今度はヴェントに対しオティヌスを紹介する上条。

ヴェント「よろしくな全裸ダッシュシスコンの親友」ケラケラ

オティヌス「………どうやら消し飛ばされたいようだな」

上条「あれれ?何か険悪ムードになってる!?」

ヴェント・オティヌス「「お前のせいだろっ!!」」

二人の綺麗なストレートが上条に炸裂した。

ついでに言うと上条はワザとではなく本気で言い間違えていたりする。

上条「うぅ~不幸だ」シクシク

殴られた両頬をさすりながら上条が言う。自業自得だろう。

オティヌス「なんだ。もう一発欲しいのか?」

上条「上条さんも痛いのは痛いんでせうよ…」

ヴェント「そんなこと知るか」

上条「理不尽!?」

オティヌスもヴェントも攻撃的な性格をしているので上条の意見は無視するようだ。

上条「うぅ~………あれ?オティヌスは何でここにいるの?」

オティヌス「あぁ。それはな………」

ヴェント「ちょい待ち。その前にさっきアタシに起こったことについて全部説明しろ」

上条「上条さんが外に連れ出して-」

オティヌス「私が着地させただけだが?」

ヴェント「そんな簡単な説明で解るかっ!!」

ついにヴェントが切れた。何か後ろでは爆発が起こってそうな勢いである。

オティヌス「五月蠅いヤツだなぁ~。私はコイツには用はあるけどお前みたいな無駄乳女には用はないんだぞ]

ヴェント「無駄乳女っ!?」

上条「コイツじゃないよ。上条さんは上条当麻だよ?」

コイツと言って上条を指さし、無駄乳女と言ってヴェントの方を指さすオティヌス。

上条の方はコイツ呼ばわりされて名前の訂正を要求し、ヴェントの方は顔を真っ赤にしながら自分の胸を両手で隠して吠えた。

オティヌス「なんだ無駄乳女、そんな乙女らしい声を出して。どうせその脂肪の塊でコイツを誘惑でもしてたんだろう?」

ヴェント「してねぇよ!!つうかその呼び方やめろ!!」

オティヌスと上条は年齢通りの子供らしい体型をしているが、ヴェントの体は魔術を使えるようにするため急成長させているので大人びている。

それね、オティヌスが言うとおりヴェントはなかなかのナイスバディーなので無駄乳女と呼ぶ呼び方にも無理は無くない。

上条「確かにヴェント胸大っきいよね-」ジロー

ヴェント「まじまじと見るんじゃねないよ!!」

オティヌス「憎たらしいがなかなか形もいいしなー…サイズは……最低でDはあるか?」ジロー

ヴェント「テメエも見てんじゃねえよ!!………て、手をワキワキさせながら近づいてくんな!!」

気がつけば上条もオティヌスも手をワキワキとさせながらヴェントに近づいている。

端から見れば、サン・ピエトロ大聖堂の屋根の上でナイスバディーの金髪美女に子供二人が手をワキワキさせながらソロソロと近づいている絵である。

………○コレ珍百景に投稿したら採用されてしまうのではないのだろうか?。

ヴェント「それ以上近づくなよ?近づくんじゃねえぞ?近づかないで下さい!!」

上条「ゴメンねヴェント。何か男としての本能?ってやつがしちゃえって言ってるんだ」ワキワキソロソロ

オティヌス「腹をくくれよ。減るもんじゃないだろう?」ワキワキソロソロ

ヴェント「やめてっ!!こないでっ!!………キャーーーーー!!」




◇◇◇しばらくお待ち下さい◇◇◇


オティヌス「なかなかよかったぞ無駄乳女。特別に今度からはちゃんと名前で呼んでやろう」ツヤツヤ

上条「ヴェント大丈夫?」

ヴェント「はぁ……はぁ………アンタ……ぶっ飛ばしてやる」

ヴェントの胸を堪能した?オティヌスは心なしか肌がツヤツヤしているように見える。上条の方はノリだけでしてはいなかったのでヴェントの怒りには触れなかったようだ。

オティヌス「おいおい。お前如き魔術師が私をぶっ飛ばすだと?寝言なら寝て言え」

ヴェント「んなこと知るか!!取りあえず肉ジュース確定だこの野郎!!」

そう言い終わった途端、ヴェントの体から膨大な魔翌力があふれ出す。やがてそれは周りの風を巻き込んで聖堂の屋根の上に巨大な竜巻を作り出した。

ヴェント自身、自分とオティヌスや上条との力量差は解っている。しかし、例え無駄で無謀だとしても女としてのプライドが立ち向かわせた。

上条「上条さん飛んじゃう!?」

オティヌス「………お前は何を遊んでるんだ?」

竜巻による突風で吹き飛ばされそうになっている上条と、それを余裕の表情と体勢で呆れるように見つめるオティヌス。

普通の人間ならその突風に何も出来ず吹っ飛ばされ、並の魔術師ですらその突風に混ざっている魔翌力に当てられて気絶してもおかしくはない。しかし、

普通の人間でも並の魔術師でもないオティヌスと上条は余裕に満ちている。

ヴェント「流石にこれくらいじゃ効かないか…ならっ!「あーあれだな」っ!?」

飛ばされそうになっている上条を無視して吹き荒れる突風の中、オティヌスがゆっくりと近づいてくる。

オティヌス「取りあえずこのままお前が竜巻出したままだと色々と面倒臭いから……」

その声は突風にかき消されることなくヴェントの耳にもハッキリと聞こえていた。

次の言葉を喉から絞りだそうとしても、他の魔術を発動させようとしても、オティヌスの体から溢れ出る自分とは明らかに異質な迫力に硬直してしまい何もできなかった。

そして、ついにヴェントの目の前にオティヌスは立った。そして…

オティヌス「少し寝て黙ってろ」

ヴェント「ッ!?……………………」

鳩尾にボディーブローをぶち込んで気絶させた。

上条「ああぁぁぁあああ~~れぇぇぇぇぇぇぇええええぇぇぇぇぇぇぇ~~~~~………」

ついでに上条は飛んでいった。

オティヌス「本当に何をしてるんだお前!?」

オティヌス「いいか?次に私の手を煩わせたら殴るからな?」

上条「ふぉふなふっうふぇるよ(もう殴ってるよ)」

オティヌス「何か言ったか?」

上条「ふぅん(ううん)」

ヴェントの鳩尾に拳をぶち込んで気絶させた後、そこに寝かせて飛ばされた上条を助けに行く。

ついでに上条にこれ以上私の手を煩わせたら殴ると釘を刺す(もう殴っているが)

意外と多忙なオティヌスであった。

上条「ヴェンふぉ寝けふの?(ヴェント寝てるの?)」

オティヌス「正確には寝かせたんだがな。私の隊術もなかなかのものだろう?」

上条「………ふぁいふぉーふなふぉ?(大丈夫なの?)」

オティヌス「加減ぐらい出来るさ。そもそもこんな細腕で殴ったところで死にはしないよ」

上条「………………」

魔神を物理的にボコボコに殴れるヤツが言っても説得力が皆無なのだが、そのことを言うとまた殴られてしまいそうなので黙っておくことにした。


上条「それよりオティヌスは何しにここに来たんでせうか?上条さんと同じくパレード見に来たの?」

何とか普通に喋れるまで回復したようだ。

オティヌス「パレード?今日やるのか?」

上条「やるよ!!上条さんはそれを見に来たんだよ!!」

オティヌス「じゃあなんで地下にいたと思ったら上空にいたんだ?」

上条「………色々あったのです」

言葉の通り色々とあったのだが、それを一から説明できる自信がなかったので簡単に済ませた。

オティヌス「そうか、まぁどうでもいいがな」

上条「………」

横暴だとか理不尽だとか叫びたかったが何とか堪えた。上条も成長するのである。

オティヌス「なんだその目は。それよりアレだ。お前暇か?」

上条「う~んとねぇ~………」

オティヌス「まあどうせ暇だろうとそうでなかろうとどうでもいいんだがな」

上条「じゃあ何で聞いたの!?」

オティヌス「五月蠅いなぁ~。このまま殴って物理的に暇にさせてもいいんだぞ?」

上条「パレード見たいので暇ではありません!!」

精一杯の勇気を振り絞って言う。しかし、物オティヌスの言う理的に暇にさせるとはどんな事をする気なのだろう?

オティヌス「じゃあ今度でいいか。別に急ぐことでもないし」

上条「何を?」

オティヌス「ちょっとお前に手伝って欲しいことあるんだよ。まぁ今日は無理そうだな…少ししたらまた会いに来るからそのとき手伝ってくれるか?」

上条「いいよ!」

オティヌス「……そうか」

オティヌスが何を頼むか。どんなことを手伝わせるつもりなのか。それも何も聞かないまま一瞬の迷いもなく上条は答えた。

それが信頼の表れなのか、それともただ何も考えていないだけなのかは判断できない。

しかし、なぜだかは解らないがとても嬉しかった。

だから、

オティヌス「ありがとう」

上条「!」

自分でも初めてするんじゃないかと思えるくらいの笑顔でそう言った。

その笑顔は、話慣れている上条でさえ言葉を失わせるほどの優しく、美しい笑顔だった。

オティヌス「じゃあ私はもう行くよ。このままここにいたら色々と面倒臭そうだ」

呆けている上条を無視してオティヌスは言う。

確かにオティヌスの言うとおり下を見れば、先程ヴェントが起こした竜巻による野次馬が出来ていた。

このままここにいると見つかってしまうだろう。

上条「おー………はっ!見ろ!人がゴミのようだ」

オティヌス「似てないしつまらんぞ。20点」

上条「 (´・ω・`)」

手厳しい判定だった。

オティヌス「お前も私も人に知られすぎるのは困る存在だしな…このまま逃げるか」

上条「知られ過ぎちゃ駄目なの?」

オティヌス「お前は魔神だし私は…まだ言うべきではないか。とにかく駄目だ」

オッレルスには教えているがオティヌスは魔神の失敗作であると同時にある人間のクローンである。

魔術界的にも常識的にも知られすぎては不味い存在なのだ。

オティヌス「取りあえず私はもう行くぞ。そこで寝ている…ヴェントだったか?のことは任せた」

上条「えっちょっとオティヌス!?」

オティヌス「じゃあな」

そう言い終わった瞬間、オティヌスはその場から消えた。まるで初めからそこに存在していなかったのように跡形も前触れもなく消えた。

おそらくこの後の面倒事(ヴェントの介抱とか野次馬とか)から逃げたんだろう。

解っていたことだが、オティヌスという少女はかなりの面倒臭がりのようである。

そして、後のことを全て押しつけられた上条は

上条「不幸だぁぁぁぁぁああああ~~~~~~~」

屋根に上りに来た野次馬が驚くくらいの大声で叫んだ。

投稿終了です。
投稿が遅れたのはパズドラのせいです。オーディンが当たっちゃったのが悪いんです。

いやダメだろ
因みに何色?私緑

本当にすみません。頭の中で考えてた展開と矛盾しちゃって書き直ししたり、学校で色々あったりして更新が遅れてしまいました。
少なくとも二週間に一度は更新できるように頑張りたいのでこれからもお願いします。
かなり少ないけど投稿します。
>>635 当たったのは赤です。だけどランク低いせいでコスト的に問題があったり進化素材も集まらないのでボックスで大人しくしてもらってます。

マタイ「それで。一体どうしてここにいたはずの君たちがあんな所にいたのかな?」

上条「え~と、あの、ちょっと………」

野次馬により屋根から降ろされた上条とヴェントは、マタイに連れられてまた地下室へと戻されて質問を受けていた。

ちなみに、取りあえずパンツ一枚のままだった上条だったがローブのような物を貸して貰い、普通?の格好になっている。

テッラ「深いと言うより高いところにいましたけどねー」

フィアンマ「というかなぜ俺様までこんな薄汚い所に連れてこられたんだ?」

そして、なぜかフィアンマとテッラもいる。

テッラ「”達”と言いましょうよ。”達”と」

フィアンマ「貴様みたいなトカゲ野郎と俺様のような人間を一括りにして言い訳がないだろう?」

テッラ「………マタイさん。この引きこもりを処刑する命令と権利を下さい」

マタイ「少しでいいから黙っていてくれ」

硬直中だった二人がもはやなんらかのオブジェと勘違いされ、大変なことになっていたので取りあえず連れてきたマタイだったのだがかなり後悔していたりする。

上条「……ヴェントぉ~起きて~。説明するの手伝ってよぉ~~」コソコソ

自分で説明することが難しいと判断した上条はヴェントに手伝ってもらおうと考えたようだ。

ヴェント「私は今寝てま~す。グーグーグー」

上条「それ起きてるよね!?」

ヴェント「あのな。私はムシャクシャしてる時は寝るか暴れるって決めてるんだよ。だから今は寝るの、OK?」

上条「OKじゃないよ!!逆にしてよ!!」

OK→逆→NOということだろう。

ヴェント「えっ、KOがいいの?」

上条「なんでそうなるの!?」

NOにして欲しかったのに、KOになってしまった。

さらに寝たまま拳を放つようなポーズをするヴェント。もはや寝ているふりをしていることは明白だ。

マタイ「君たちは黙らなくてもいいけど、まず私の質問に答えてくれないか…」

上条「え~とね。取りあえず外に出ようと思ったら高い所に出ちゃって。落ちてたら屋根の上に乗りました」

ヴェント「お前、あの空中での出来事をそんな簡単にまとめるのか?」

何とか落ち着いたのでマタイに対し説明を開始する上条。ヴェントが不満を言いたそうだが要点は伝えているのでギリギリ及第点の解答だ。

上条「あっ、あとね。途中でオティヌスと会ったよ」

テッラ「おや、初めて聞く名前ですねー?誰ですかその人?」

ヴェント「アタシが次に会ったら一発喰らわせてやるヤツの名前だよ」

説明になってない上に、おそらくヴェントではオティヌスに一発喰らわせてやることは不可能だろう。

ヴェント「つうかあの女といいアンタといい何者なの?ただの魔術師じゃないわよね」

上条「上条さんは魔神なのです。オティヌスは……良く分かんない」

ヴェント「だから魔神って何よ、魔神って」

どうやらヴェントには魔神の意味がよくわからないらしい。

マタイ「魔を極めし者の称号のような物かな。神の領域に足を踏み入れた者という解釈でもいいが」

ヴェント「説明どーも。………まぁどうでもいいか」

解りやすくマタイが説明してくれたので何となくだが理解できたようだ。

上条「………あれ?よく考えればオティヌスについて上条さん何も知らない?」

マタイが魔神という存在についてヴェントに説明している間に上条は、オティヌスについて自分の知っていることを考えてみたが何もなかったらしい。

ヴェント「何も知らないようなヤツと関わってたら痛い目見るよアンタ」

どうやら魔神という言葉よりも、オティヌスという存在に論点が移ったらしい。

というか、そもそもオティヌスは自分がクローンという非人道的な存在であり、魔神の失敗作であることを上条には伝えていない。

今現在そのことを知っているのは、オティヌス自身とオティヌスを造った人物とオッレルスだけである。

マタイ「そうなのかい?彼女の方は君をよく知っているようだったが」

上条「マタイさんはオティヌスを知ってるんでせうか?」

マタイ「君たちと別れた後に会ってね。君を捜していたよ」

会っただけではなく、話し合ったりもしたのだが、マタイはそのことは話そうと思わなかった。

あの数分にも満たない会話の中でマタイは新しい何かを見つけたのだ。

そのことは自分の胸の中にそっと納めておく方がいいだろう。

フィアンマ「………ここに俺様は必要なさそうだな。ということで俺様は帰る」

会話に参加できず。壁により掛かって傍観していたフィアンマが言い放つ。

元々他人と会話したり会ったりすることがあまりないタイプだったので、色々と辛かったのだろう。

テッラ「久々の運動で疲れちゃったんですか?引きこもり君」

フィアンマ「この程度で疲れたりなどしない。早急にやることが出来たから俺様は退散させて貰うぞ」

テッラ「まぁ引きこもってくれてたほうが私的にはありがたいですしねー」

茶化しているがフィアンマの言っている「やること」とはある意味で世界が変わる可能性さえ含んでいる。

完成にはほど遠いが自身の力であり能力である”奇跡の右”。100%の力で使うことさえできれば世界を変えるほどの威力を持つ能力。

100%の力で使うことなど夢のまた夢だと思っていたのに、それが可能になるパーツが見つかったのだ。

ならばそのために調整をし直し、準備を整える事が今のフィアンマの目標になった。

フィアンマ「あ、そうだ子供。貴様の右手、いらなくなったり不要と感じたら俺様の所に来い、貰ってやる」

上条「上条さんの右手が欲しいの?」

部屋の出口目前というところで後ろを向いたままフィアンマが言う。

上条自信、自分の右手の力はよくわかっていないし、発想はまだ子供レベルなので自分の体の一部を欲しがるというフィアンマの考えが解らない。

フィアンマ「喉から手が出るほどな。しかし、今貰っても使えないし、保管も出来ないからな」

上条の右手に宿る力はフィアンマの望んでいた力に違いない。しかし、まだそれを使うために必要な準備も力も万全ではないので取りあえず今日の所は引き下がるようだ。

テッラ「あの引きこもりの言ったことは忘れていいですよ。…ではまた、会えたら会いましょう」

最後に意味深なことを言ってテッラも部屋から出て行った。

残されたのは上条とヴェント、そしてマタイだけになった。

上条「何か…凄い人たちだねあの二人」

フィアンマとテッラが去った後、出て行った扉の方を見ながら上条が呟く。

自身の経験上。あの二人は初めて関わるタイプの人だったので素直に凄いという感想しか出なかった。

マタイ「自由と言うか、つかみ所がないと言うか…願わくば、もう少し年相応の振る舞いをしてほしいなものだな」

ヴェント「つうかあの二人って何歳なの?」

マタイ「フィアンマのほうはまだ二十歳に届いていないはずで、テッラの方は…何歳だったかな?」

ヴェント「アンタも知らないの?」

新事実発覚である。話し方に特徴があるとは言え、フィアンマの安い挑発に乗って喧嘩をするテッラだが、その年齢は不明だった。

上条「30歳くらいじゃないの?」

ヴェント「いや、アレは40か…下手したら50いってるね」

マタイ「少なくとも私より上と言うことはないと思うが…」

ヴェント「分かんないよ。もしかしたら同い年くらいかもよ?」

マタイ「そういえば今まで聞いたことがなかったな。よし、今度聞いてみよう」

気になったり迷ったら即行動。今までになかったマタイの新しい方針である。

マタイ「さて、これから君たちはどうする?」

二人が去って一段落した頃、マタイが話を切り出した。

ヴェント「どうするもこうするも………あぁああああ、頭の中ゴチャゴチャする~」

科学という存在を滅ぼすために力を欲し、身に付けたヴェント。

しかし、今日上条に出会い、突然現れた謎の人物に気絶させられるなど様々な経験をしてしまったせいで色々と考えたり、思うところができたようだ。

上条「出ないの?」

ヴェント「う~~…出たくないの……かな?」

上条「あの赤い人みたいに引きこもりっていうのになっちゃうよ?」

ヴェント「よし、じゃあ出よう」

マタイ「決断が早くないか!?」

0.1秒の考える素振りすら見せずにヴェントは決断した。頑張ってこの地下室からヴェントを出そうと何日も努力してきたマタイが派手にショックを受けている。

ヴェント「あのトマト野郎と同じになるくらいなら外に出ようと思うのが当然だろ?」

マタイ「………答えていいのか迷うな」

上条「上条さんならお断りだなぁ~」

ここにはいないのになぜか蔑まれるフィアンマであった。

上条「出るって言ってもどこに出るんでせうか?」

ヴェント「…上(聖堂)に出るって言ってもアタシってシスターってキャラじゃないし……どうしよ」

この聖堂にいる女性はほとんどがシスターなので、ヴェントが上に出るということはシスター兼、神の右席の前方担当ということになってしまう。

マタイ「私としては、出来ればシスターとなって魔術との関わりを断ち切って平和に過ごして貰いたいのだが…」

ヴェント「やだね。アタシの科学への復讐は決定事項だ」

自分の決めたことに否定形など存在せず、全てを肯定し、確定形にする。それがヴェントの決めた生き方であり生き様なのだ。

上条「…………」

ヴェント「……んだよガキ。言いたいことがあるならハッキリ言いな」

”復讐”という言葉を聞き、上条の表情が少し曇る。それを不快に思ったのかヴェントが上条に詰め寄る。

科学への復讐という目標の否定はヴェントの存在の否定に等しい。

だから、否定させるわけにはいかない。間違っているなんて言わせてはいけない。

もし上条の次の言葉が復讐を否定するものなら戦うことを覚悟してヴェントは聞いた。

しかし、上条の次の言葉は、ヴェントがなぜ復讐という思いを胸に秘めているのかさえ知らないのに

上条「ヴェントの大切な人はきっと復讐とかして欲しくないって思ってるよ」

ヴェントの一番の核心に触れた。


今回の投稿はここまでです。少なくてすみません。

お待たせしました。投稿します。

ヴェント「ッ!?」

驚愕するヴェント。

自分がなぜ科学に復讐したいのか、それを上条には伝えていないはずである。

知っているのはマタイとローマ教会の重鎮である数名だけだ。

目の前にいる上条がローマ教会の重鎮と関わりを持っているとは思えないし、マタイが教えると言うことはないだろう。

だからこそ驚く。自分のことを何も知らないと思っていたはずの人間に、自分の一番大切なことを知られていたのだから。

ヴェント「…アタシが何で科学に復讐したいのか……アンタには言ってないはずだけど」

心の中が焦りと驚きでグチャグチャになりながらも、震えそうになる声を必死に押さえて言う。

上条「うん、知らないし聞いてないよ」

ヴェント「……………なら」

上条「え?」

ヴェントが小さい声で何かを呟いた後、部屋の空気が凍ったような感覚に上条は陥った。

この部屋には照明器具など無く、明かりと言えば部屋の四隅にあるロウソクの火だけだったのだが、それが一瞬のうちに消える。

途端に部屋の明かりはなくなり暗闇がこの部屋を包み込む。

ヴェント「絶望も…怒りも…何も知りすらしないテメェみたいな幸せそうなヤツが………」

そんな暗闇の部屋の中で光る物は四つだけだった。

上条「ヴェント?」

そのうちの二つはヴェントを心配そうに見つめる上条の瞳の光で

ヴェント「知ったような事言ってるんじゃねぇっ!!」

もう二つはある二つの感情目を輝かせるヴェントの瞳だった。

ヴェント「関係ねぇんだよ…関係ねぇんだよっ!!復讐をしてほしいとかしてほしくないとかなんてもう関係ねえんだよ!!」

上条の胸ぐらを掴みあげてヴェントが吠える。

顔が見えないせいで声でしか判断できないが、その声には確実に怒りと

ヴェント「もう止まれねぇんだよ…」

悲しみが混じっていた。

上条「………」

上条は何も言わない。そして胸ぐらを掴みあげられたまま暗闇の中で輝くヴェントの怒りと悲しみに満ちた瞳を見据える。

マタイ「いや、君はまだ止まれるよ」

そう言うマタイの声が響いたかと思うと部屋に明かりが灯った。

突然明るくなる部屋に上条もヴェントも思わず顔をしかめる。

マタイ「すまないね。顔が見えないままじゃ何かと不便だろう」

見ればマタイの手には、小さいがこの三人を照らすには丁度いいくらいの光を放つ球体があった。

その光は四方に別れ、消えていたロウソクに火を灯し、部屋に明かりをもたらした。

マタイ「ヴェント、君は「マタイさんちょっといい?」ん?どうしたのかな上条君」

上条「ヴェントとは俺が話させて欲しい」

先程までとは雰囲気が一変した上条がマタイの言葉を遮断しヴェントとの会話を要求した。

マタイ「………いいだろう。どうする?私はこの部屋から出て行った方がいいかな?」

その上条に何かを感じたのか、マタイはヴェントに掛けようとした言葉を押しとどめ、会話を譲った。

上条「マタイさんの好きなようにしていいよ」

マタイ「ならいさせて貰うとしよう」

そう言ってマタイは上条とヴェントから少し距離を取り、近くになった椅子に腰掛けた。

マタイ「出来るなら見せてくれ、私に救えなかった彼女が救われる瞬間を」

椅子に腰掛けたマタイが上条に対し願いを言う。

自分では彼女のヒーローにはなれなかった。だが、そこで彼女と見つめ合う彼にならヒーローになれると思った。

そして

上条「任せといて」

それを聞いたヒーローはマタイの方を向いて笑顔で答えた。




ヴェント「人に胸ぐら掴み上げられたまま喋るなよ」

上条「うん。だから降ろしてくれると上条さん的には助かるしポイント高いです」

上条「でもなぁ~」

ヴェント「?」

上条「いやー実のところですね。何も知らないしできそうにない上条さんは一体どうすればいいのかなー?って思ってます」

ヴェント「はぁ!?じゃあアレか?知らないしできそうにないくせに「任せて」なんて言ったのか?」

上条「おうっ!!」

自信満々に胸を張って答える

ヴェント「知ってたけど、やっぱお前馬鹿だな」

上条「馬鹿とは何だ!!上条さんに失礼でせうぞ!」

ヴェント「この場合はアンタがアタシに失礼なんだよ!!」

呆れられたのか馬鹿らしくなったのか、取りあえず掴みあげられた状態からは戻して貰えた。

上条「確かに何にも知らないけど、1つだけならちゃんと知ってるよ」

真剣な顔つきになって上条が言う。

たった今、自分は何も知らないと言っていたのに、それでも知っている事があると言ったのだ。

ヴェント「………なんだよ」

だから興味7割、期待3割くらいの心持ちで聞き返してみた。

上条「ヴェントには復讐なんてことが似合わないって事を知ってるよ」

ヴェント「…………はぁ?」

上条「だってヴェントって可愛いしさぁ~」

ヴェント「はぁあ!?」

上条「それにとっても綺麗だしぃ~」

ヴェント「★○◇※★♪!!??」

顔を真っ赤に染めながらヴェントが意味不明な声を上げる。

面と向かって可愛いとか綺麗と言われた経験があまりないために混乱してしまったようだ。

上条「それに以外に優しいし」

ヴェント「以外は余計だ以外は」

上条「………」

ヴェント「…何だその目は」

数分前までの自分を振り返って欲しいと願う上条である。

上条「あと背も高いし」

ヴェント「関係あるのかそれ?」

上条「おっぱい大っきいし!!」

ヴェント「そこだけ胸張って言うなよ!!つうかそれこそ関係あるのか!?」

上条「きっとあるよ?」

ヴェント「絶対ねぇよ!!」

なんだかもう会話が無茶苦茶になってしまった。

その後も上条の下らないようなヴェントを褒める(?)攻撃が続くと

ヴェント「………ククク」

上条「?」

ヴェント「アッハハハハハハハハハハ!!!!」

可笑しくなってしまったのか大声で笑い出すヴェント。

その姿は、年相応のヴェント本来の姿のように感じられた。

上条「それでいいじゃん」

ヴェント「ハッハッハ……ふぅ~なにが?」

笑い出したヴェントを同じくらいの笑顔で見つめながら上条が言う。

上条「復讐なんてつまんなそうなことより、そうやって楽しそうに笑う方がヴェントには似合ってるよ」

ヴェント「でもアタシには笑う資格なんて……」

自分が弟や両親の命の犠牲の上に生きていると考えているヴェントは、自分に許されたことは復讐だけと考えている。

だから笑う資格などないし、幸福になる資格さえもないと思っている。

自己犠牲で自己満足に過ぎない感情だが、その感情こそがヴェントと家族を繋ぐ唯一の物なのだ。

だからこそヴェントは科学への復讐を心に誓ったのだ。

ヴェント「……………」

上条「資格?っていうのは上条さんにはよくわかりません」

俯いているヴェント。

今のヴェントの心情は上条に言われたことと、自分が心に誓った事への葛藤で大きく揺れている。

上条「ヴェントが科学をものすごく嫌いなのにも理由があるんだろうから、上条さんにはヴェントを止められない」

上条の口調は穏やかだ。咎めるようでも攻めるようでもない。

上条「もちろん手伝いもできないし、したくないよ」

むしろ優しく、暖かくヴェントの心に響く。

上条「だから上条さんに出来るのは多分これだけなんだと思う」

そう言って俯いているヴェントの顔を持ち上げる。

そして、顔を持ち上げたヴェントから数歩下がった上条は言った。

止めることもできず、協力することもできないなら、上条にできるのはただ…





上条「約束しよう。一緒に前に進むって」





約束だった。



ーーーーーオッレルスと出会う少し前ーーーーー



幼い上条は疫病神として恐れられ、そしてとても不幸だった。

石を投げられるのは当たり前、気味悪がられるのは何時ものこと。怪我をしなかった日は無かった。

買い物に出かければ強盗に襲われ、旅行に行けば火事が起こる。事件や事故に巻き込まれない日が珍しいくらいだった。

幼かった上条だが、世界や自分の不幸という物を言葉に出来ないくらい憎んでいた。

そんな不幸で最悪なある日のこと………

刀夜「あいたた………イタッ!!染みるぞ当麻、もっと優しくしてくれ」

当麻「………我慢して」

上条の父、上条刀夜が傷だらけで仕事から帰ってきた。

都合が良かったのか悪かったのかは解らないが、母・詩菜が偶然家にいなかったので当麻が手当をしている。

怪我をしない日が珍しい当麻にとって骨折や殺傷以外の傷なら楽々治療が出来る。

刀夜「なに、反抗期か当麻!?お父さんのお願い聞いてくれないなんて悲しくてお父さん泣いちゃうぞ?」

当麻「………」

無言のまま当麻は消毒液を傷口に直接ぶっかけた。

刀夜「ぎゃぁぁぁああーーー!!!!!!染みる~!染みてる~~!!というか当麻!!消毒液の使い方違うぞ!!」

当麻「俺の方がもっと痛いもん………はい、これでおしまい」

そう言って傷口に絆創膏やらガーゼやらを貼っていく当麻。

この頃はまだ不幸という物に対して折り合いが自分の中で付いておらず、現在の姿と比べると幾分か雰囲気が暗い。

刀夜「おーありがとう当麻。助かったぞ。よし、ご褒美に今日は当麻の好きな物食べに行こう」

当麻「いいよべつに、どうせ食ちゅー毒になっちゃうもん」

上条親子が当麻と一緒に外食に行くと結構な高確率で三人の中の誰かが食中毒になったりして倒れるため、上条家は基本外食をしないのだ。

刀夜「…そうか、じゃあ何か欲しいものあるか?それとも何か他にして欲しいことでもあるか」

当麻「……じゃあ教えて、その傷って俺のせい?」

刀夜「当麻、これは……」

当麻「俺のせいなんだね?」

人当たりが良く、優しく、気さくな刀夜は基本人に恨まれたりすることはない。(女性関係で何かを起こしたときは別だが)

そんな刀夜が怪我をするのは、何かに巻き込まれた時か当麻のせいだ。

刀夜「違うんだ当麻。この怪我は不良にカツアゲされてた人を助けたときに…」

当麻「嘘だよ。父さんが誰か助けたならその人ここにいるはずだもん」

刀夜「おかしなことを言うなぁ当麻。そんなホイホイと父さんみたいな人に着いてくる人なんていないし、連れてきたりするはず無いだろう?」

当麻「でも父さんが助けた女の人は全員着いてくるんでしょう?」

刀夜「………………」

否定できない刀夜。事実、刀夜が誰かを助けてそれが女性だった場合。超高確率でフラグを立ててお持ち帰りしてきている。

………その度に別の意味で助けたとき以上の試練(妻・詩菜との対決(制裁))がある。

刀夜「いや、アレだ。今日助けたのは男の人だったんだ!」

当麻「なら今頃その人と仲良くなってどっか遊びに行ってるんじゃないの?」

刀夜「………今日助けたのは子供だったんだ!!」

当麻「なら怪我してるかもしれないって言って家に連れてくるはずだよ」

アフターケアも万全。安心安全の上条刀夜である。

刀夜「………当麻は本当に頭がいいな」

当麻「母さんの子供だからね」

刀夜「そこは嘘でも「父さんの」って言って欲しかった」(ToT)

ついでに我が子に言い負かされ、泣いてしまう残念な大人、上条刀夜だった。

当麻「………ごめんなさい」

一通りの馬鹿らしい会話が終わったかと思うと刀夜に向かって当麻が頭を下げた。

刀夜「当麻、それは何に対する謝罪なんだ?」

すると先程とは雰囲気が一変した刀夜が険しい顔になる。

当麻「だって俺のせいで父さんが怪我したんでしょ?だから………」

当麻が大切に思い、また、当麻を大切に思ってくれている刀夜を自分のせいで傷つけた。

それが当麻の謝った理由だった。

刀夜「当麻のせいじゃないさ。それに誰のせいでもない。そして…」


「不幸」


それが上条当麻の周りに、まるで死に神のように取り憑いている。

不確定要素であるものだが、それは確かに上条当麻とその両親を苦しめている。

刀夜の今日の怪我も、実のところは当麻を気味悪がる人たちに襲われたときにできた怪我だ。だが…


刀夜「そんな下らない事が理由ならその謝罪は取り消せ、当麻」


刀夜にとってはそんなことはどうでも良かった。

刀夜「いいか当麻。ただ「運」が悪かっただけなんだ。父さんも、もちろんお前だって誰も悪くなんか無いんだ」

上条刀夜という父親は「不幸」を否定する。

下らない物と否定し、どんなことが起こっても当麻の見方の立場に立つ。

当麻「で、でも…」

対する上条当麻という子供は「不幸」を肯定する。

自分だけではなく他人をも苦しめてしまう自分の「不幸」を憎んでいる。

刀夜「でもじゃない。むしろ凄いんだぞ?」

当麻「すごい?」

刀夜「ああ、だってお前を怪我させずにすんだじゃないか」

おそらく今日一番の笑顔で言う。

刀夜の言うとおり、もし刀夜が今日襲われていなかったら襲われていたのは当麻の方だっただろう。

それに、怪我をしようが嫌われようが泣かされそうになろうが…

刀夜「だから今日のこの怪我は父さんにとっての勲章だな」

それが上条刀夜という父親だから。

当麻「………ッ」

言い終わると同時に当麻は刀夜から顔をそらす。

そんな我が子の姿を見て刀夜は…

刀夜「あーあれだ、泣きたいなら父さんの胸くらいかしてやるぞ?……うおぉおぉぉぉぉおぉ!!??」

無意識で使うフラグ建築時の時のような決め顔をした刀夜の胸に。当麻は全速力で飛び込んだ。

こんな疫病神と言われる自分の味方でいてくれる人がいる。

それが涙が出るほど嬉しかった。

刀夜「おー当麻、そんな顔くっつけたら息できないんじゃないのか?」

当麻「……でぎるもん」

だが男のプライドなのか、心配を掛けたくないのか泣き顔は見せたくないらしい。

そんな我が子の可愛く、愛らしい姿を実感した刀夜は。

刀夜「気の済むまでこのままでいいぞ」

優しく当麻を抱きしめた。



しばらくした後、



刀夜「当麻、一つ大事なことを言っておくゾ☆」

当麻「………」

いい年してる大人(刀夜)が泣きまくって顔の真っ赤になった子供(当麻)を抱きしめ、☆が飛び出してきそうなウインクしながら言った。

刀夜「せめてなんか言ってくれないか?コレ言うのかなり勇気がいるんだゾ☆♪★」

当麻「………大丈夫?」

刀夜「キモイとか言われた方がまだマシだった!!」

態度こそ素っ気ないが、当麻は両親をとても愛し、大切に思っているので”キモイ”とか”嫌だ”思ったりしないし言いもしない。

そのことをうまく理解していなかった刀夜は、てっきり罵倒でも言われるのかと身構えていたので純粋な当麻の心配に精神的大ダメージを受けた。

当麻「じゃあ…なに?」

刀夜「…当麻の切り替えの早さ父さん助かるな~」

このまま心配そうな瞳で見つめられ続けたら色々な意味で危なかった刀夜なので、かなり助かったらしい。

刀夜「当麻、今からお父さんの言うことを良く聞くんだぞ」

当麻「うん」

刀夜「メモしたっていいぞ?」

当麻「心のメモ帳にメモしとくよ」

刀夜「便利な物持ってるなぁ~父さんにも今度貸して?」

刀夜「いいか当麻。例えどんな事をされようが仕返しとかを考えるんじゃないぞ」

当麻「………」

刀夜「考えてたのか?」

当麻「うん」

今まで当麻や両親が受けてきた仕打ちを考えればそう考えてしまうのも納得できなくもない。

「不幸」という物に仕返しはできないから、せめて両親を傷つけた人たちに何らかの形で報いることを幼い当麻は計画していた。

両親には内緒にしているが、机の中には「父さんと母さんに悪いことしたやつノート」が取っといてあるので抜かりはない。

刀夜「そっか」

当麻「怒らないの?」

刀夜「だって当麻は自分に何かした人たちには仕返しするつもりはないんだろう?」

当麻「!?」

刀夜「何で知ってるの?って顔してるな。答えてやろう、父さんだからだ!」

言ってないはずだから知られてないと思っていたことが知られていたんだと知り驚愕する当麻。

先程の抱きつかれていた体勢と違い、今は刀夜に当麻が寄りかかっている体勢なので当麻から刀夜の表情は伺えないが、

声から「どうだ?すごいだろう」というような感情が感じ取れた。

刀夜「多分当麻は自分に何かした人には何もしないで、父さんや母さんに何かした人に仕返しするつもりだったんだろ?」

当麻「…だって父さんや母さんはなんも悪くないじゃん」

そう言う当麻の声には、大人である刀夜ですら萎縮してしまうほどの怒りを含んでいた。

「自分が何をされてもいいが、自分の大切な人に何かされたら本気で怒る」

見方や考え方によっては素敵な感情だ。

だが、

刀夜「理由を他人に求めるな。自分の意志で、自分の考えで行動しろ」

当麻「………どゆこと?」

刀夜「父さんが今の当麻くらいの頃かな?父さんの父さん…当麻のおじいちゃんが馬鹿にされたことがあったんだよ」

当麻「じいちゃんが?」

当麻は自分の祖父が馬鹿にされそうな姿を想像できない。

田舎に住んでいるので数回しか会ったことはないが、刀夜より強い詩菜より強く感じる人物なので、当麻の中での祖父の強さは人類最強にランクインしている

刀夜「どうやって馬鹿にされたのとかは覚えてないんだけどな、取りあえず馬鹿にしてきた奴らをボコボコにしてやるっ!!て家を飛び出そうとしたら拳骨喰らって気絶させられた後そう言われたんだ」

当麻「大丈夫だったの?」

喰らったことこそ無いが、祖父の拳骨の痛さは余裕で想像できる。

できれば一生喰らいたくないし、そもそも喰らわせられるような場面に出くわしたくもない。

刀夜「大丈夫か大丈夫かで言われたら大丈夫じゃなかったな、気絶しちゃったんだし。今でもその時のこと思い出すと頭痛するし」

当麻「やっぱじいちゃんって母さんより強いんだ…」

刀夜がフラグを建築するたびに詩菜からきついお仕置きを受けているのを日々目撃している当麻だったが

気絶している姿は見たことがなかったのでそのことから祖父の強さを推測したようだ。

刀夜「というか話がそれたな…何の話だっけ?」

当麻「仕返しはしちゃいけないって話だよ」

刀夜「おおそうだったな。いい子いい子」

そう言って当麻の頭を優しく撫でる刀夜。

こういう紳士的な優しさがフラグ建築士としての能力なのだろう。

当麻「…それで、じいちゃんの言ったことの意味って?」

刀夜「………誰かのために何かをするっているのは素晴らしいことなんだと思う、だけどな、それじゃ意味がないんだ」

急に父親らしい顔つきになって刀夜が言う。

それは当麻に言っているのと同時に自分に言っているようにも聞こえた。

当麻「しちゃダメなの?」

刀夜「ダメってわけじゃない。いいときもあるしな。だけど誰かのためにしか動けないヤツはいつか絶対後悔する」

当麻「こうかい?」

刀夜「自分で物事を決められなくなるんだよ。それでいつか失敗して、その責任を誰かに押しつけるようになる。そしたら自分も責任を押しつけられた他人もみんな傷つく。それで結局、責任を押しつけたことを後悔して自分が一番傷つく。だからダメなんだ」

当麻「………よくわかんない」

幼い当麻には刀夜の言うことが理解できないのかわからないと言った。

ようやく小学生になったばかりの子供には重くて難しい話だからだろう。

刀夜「今はまだ解らなくてもいい。父さんも初めて言われたときは意味解らなかったからな」

「それにな」と続けて言う。むしろここを言いたかったんだと言わんばかりに。

刀夜「誰かを傷つけたとして一番傷つくのは傷つけた本人だ。父さんはこれ以上当麻には傷ついて欲しくない」

それは刀夜の本心からの言葉だった。

どんどん体にも心にも傷が増えていく自分の子供を助けたいという思い。

刀夜は今日に限らず、当麻が関わることで襲われたときは決して反撃しない。

反撃することでその攻撃してきた人を怪我させたら一番傷つくのが当麻だと解っているからだ。

刀夜「それにな当麻。そんな後ろ向きの事ばっかり考えてたら幸せが逃げてっちゃうぞ?」



当麻「幸せ…」

「幸せ」言い換えれば「幸福」

それは「不幸」が代名詞の当麻にとって最もイメージじずらいものだった。

刀夜「当麻。お前にとっての“幸せ”ってなんだ?」

当麻「…」

答えられない当麻。

そもそも「幸せ」というものがどんなものなのか全く分からない。

刀夜「じゃあ聞き方を変えよう、当麻にとって楽しかったり嬉しかったりすることは何だ?」

「楽しかったり嬉しかったりすること」と言い換えたら先程とは違い、少し考えるような素振りをする。

そして、少ししてから何か思いついたような顔をしたが俯いてしまった。

刀夜「どうした当麻?恥ずかしがらずに言ってごらん」

当麻「………笑わない?」

よほど恥ずかしいのか、普段はあまり変化しない当麻の顔色が林檎のように真っ赤に染まっている。

これから言われるであろう事よりもその顔の方が可笑しくて笑いそうになってしまった。

刀夜「笑わないよ」

当麻「………父さんと母さんと一緒にご飯食べること」

刀夜「…」

当麻「三人で一緒に笑いながらご飯を食べてるときが…俺の一番幸せで楽しいときだと思う」

普通の人から見ればとても小さな幸せかもじれない、しかし、それが上条当麻という人間にとって一番幸せを実感している時間だった。

刀夜「クッ…」

当麻「?」

刀夜「クッハハハハハハッハハハハハハハハハハッハハハ!!」

当麻「笑わないって言ったじゃん!!」

笑わないと約束しながらも笑い出す刀夜を怒る当麻。

本当ならパンチの一発でも食らわせてやりたいところだが、後ろから抱きしめられている状態なので精々ジタバタするくらいしかできない。

刀夜「暴れるな暴れるな………はぁ~悪い悪い。笑っちゃったな」

当麻「……父さんの嘘つき。今日寝てる父さんの傷に唐辛子とか辛子とか練り込んでやる」

刀夜「どこで覚えたそんな拷問方法!?」

当麻「母さんが教えてくれた」

刀夜「母さーーーーん!!当麻に何恐ろしいこと教えてるんですかーーー!!??」

今家にいない妻・詩菜に向けて叫ぶ刀夜。というかなぜそんなことを教えたのだろう?

当麻「母さんが母さんのいないときに父さんが女の人を家に連れてきたらそうしなさいって言ってた」

刀夜「妻に信用されてない………なんでだ?」

見えないが確実に大ダメージを受けている刀夜。理由が分かっていないところがまた憎たらしい。

当麻「何で笑ったの?やっぱり可笑しかった?」

いまだ怒っているのか、抱きしめられている状態でジタバタ攻撃を続ける当麻。

しかし、そんな状態でも父の笑った理由が分からないのか少し不思議がっているようだ。

刀夜「何で父さんが笑ったのか、それが分かったらまたこういう話をしような」

当麻「へ?」

そう言って抱きしめていた当麻を解放する刀夜。

対する当麻は急な父の変化に驚いたのか、ジタバタ攻撃をやめて大人しくなった。

刀夜「さぁ話は終わりだ。そろそろ母さんの帰ってくるだろうし夕飯の準備でもしよう」

当麻「え?え?もうお終い?」

急な父のテンションの変化について行けず混乱する当麻。

これからというところで話を終わらせられたのだ、無理もないだろう。

刀夜「今日の所はな。……そうだ当麻、最後に一つだけ約束しよう」

混乱する当麻の頭の上に手を置き。少し乱暴にクシャクシャと撫でながら刀夜が言う。

当麻「うわっぷ!!なに?」




刀夜「どんなときでも笑って前に進む。それを父さんと約束してくれるか?」




そう言う刀夜の顔は、今まで当麻が見てきたどんな刀夜の顔よりも「父親」らしく、そして「男」らしかった。

だから、「息子」として、そして一人の「男」として

当麻「うん」

迷うことなど無く頷き、そして約束した。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



上条「復讐って仕返しって事でしょ?そんなことしてヴェントは幸せになれるの?」

ヴェント「だけど…アタシは幸せになんかなっちゃいけないんだよ」

幸せになりたいという思いは少なからず持っている、しかし

ヴェント「だってアタシのせいでお父さんもお母さんも…弟も死んだんだ。そんなアタシが幸せになっていいわけ「あるよ」え?」

上条「ヴェントが幸せになっていいわけあるよ」

ヴェント「でもアタシは…」

上条「じゃあさ。ヴェントは上条さんが幸せになっていいと思う?」

なおも否定するヴェントだったが、当然上条が話を変えて言う。

突然の質問だったがヴェントはあまり迷う素振りもなく答えた。

ヴェント「いいんじゃないの?だってアンはべつに「一番少なくても1000」は?」

上条「何の数だかわかる?」

ヴェント「……わかんない。一体何の数なの?」

ヴェントは自分の犯した罪と向き合い、その罪の意識から逃げようと復讐という道を選んだ。

上条「俺のせいで死んじゃった人の数だよ」

だが、上条当麻は自分の犯した罪と向き合っている。

マタイ「は?」

ヴェント「え?」

上条が答えた途端、座って傍観を決め込んでいたマタイでさえそんな間の抜けた声を出した。

上条「比べちゃダメとは思うけど、三人死なせちゃったヴェントより上条さんの方が悪いヤツなんじゃないの?」

マタイ「ちょ、ちょっと待ってくれ1000人以上だって!?君は一体何をしたんだ?」

傍観を決め込み、喋るつもりの無かったマタイだったが上条のこの言葉には驚きを隠しえなかった。

まだ見かけ10歳にも満たないような子供が背負う罪にしては多すぎる数だ。

上条「……俺は魔神って言う存在なんだって。それで魔神になる時に住んでた町と町のみんなを消し飛ばしちゃったんだ」

「コレが証拠」

そう言って上条は左手を掲げ”複数の魔法陣”を発生させた。

ヴェント「それって…」

マタイ「まさかそれは…」

上条「”竜王の殺息”っていう、魔法だよ。っていっても上条さんがやると”竜王達の殺息”っていうのになります」

僅かしか明るくなかった部屋が光で満たされた。

今回の投稿はコレで終了です。一月中にはあと一回か二回投稿できると思います。
 
誤字脱字欠字があったらすみません。

面白いな
重箱の隅をつつく様で悪いが667の以外は意外じゃないかと
次の更新待ってます

この魔神ってのは独自設定なのか

原作開始はいつかな?

投稿の約束を守ることが出来ずに申し訳ありませんでした。投稿します。

>>687 感想と誤字の指摘、ありがとうございます、気をつけます。

>>690 独自設定です。そのうち原作っぽくなると思います。

>>691 原作開始は次の話を予定しています。



ーーーー数日前のオッレルス家ーーーーーーーーー



上条「オッレルスー、ちょっといいでせうか?」

オッレルス「いいでせうよー」

読んでいた本をパタンと閉じ、それを椅子に座る自分の膝に丁寧に置いてオッレルスが上条と向かい合う。

前までのオッレルス家なら椅子を置くスペースなんてものはなかったのだが、シルビアが来てからは家中が整理整頓されたので置けるようになったのだ。

上条「んとねー…あれ、シルビアは?」

オッレルス「シルビアならさっき買い物に行ったよ。彼女も必要なのかい?」

上条「いたら助かったんだけど…いないならいいや」

オッレルス「当麻がいいならそれでいいけど…」

話をせかすと上条は少し言葉を選ぶような素振りをした。

上条がこんなふうに何かを相談する姿はあまり見たことがなかったので。話の内容が気になったのである。

上条「あのさ、上条さんて魔神なんでしょ?」

オッレルス「そうだよ?」

話の内容が気になっていたのに、確認のようなことをされたので少し不思議がるオッレルス。

上条「凄い魔法使えるんでしょ?」

オッレルス「まぁ凄いというか何というか…使えるには使えるのかな?」

上条の言う「凄い」の基準と、魔術師から見た「凄い」の基準はかなり違うので少し曖昧な答えになる。

というか、魔神である上条が使えば魔術としては初級の…例えばマッチ棒くらいの火を付けるという初級火炎魔術ですら国一つを燃やし尽くす超火炎魔術へとなりかねないので、上条の使う魔術はほとんど凄い。

上条「オッレルスには必殺技あるでしょ?」

質問の連続である。だが律儀にもオッレルスは答える。

オッレルス「北欧王座のことかな?」


”北欧王座”

つい先日完成したばかりのオッレルスの必殺技のことである。

元々オッレルスが創作中の魔術だったのだが、様々な問題や課題があり、完成はほぼ諦めていた。

しかし、そこに上条当麻という完成した魔神の肉体から得られた情報と、聖人であるシルビアの使っていた結界術式、その他諸々を応用、発展させ完成した。

どんな魔術かと言われれば一言で説明できる、


「説明できない力」


表現不能、説明不能、理解不能、射程不明、予備動作不要。

使っているオッレルスにしか理解、説明が出来ず。必殺技の名に恥じず、使用すれば必ず相手を戦闘不能に陥れることが可能。

魔神級の魔術と言っても過言ではなく、凄いのである。



上条「だからさ、上条さんにも何かしらの必殺技がほしいんでせうよ」

オッレルス「当麻が使う魔術なら全部必殺技になるよ?」

むしろ上条なら新しい魔術を作り出すことすら簡単なはずである。しかし、

上条「んーそうじゃなくてー…。何かこう…使えば魔神とか凄い魔術師だって事がすぐわかるような魔術がいいの」

オッレルス「使えば魔神と解るような魔術?ふーむ………」

使えば凄いと理解させる以上、新しい魔術ではダメなのだ。

上条の要望を叶えるような魔術がないかと頭の中の知識を検索するオッレルス。

魔神になるために魔術の知識を貪り集めたオッレルスの頭には、世界中の魔術や術識が記憶されている。

少しして…

オッレルス「うー…。何かダメだな~。もう少し具体的なイメージとかってある?」

上条「んーとね。なんかこう…凄いけど綺麗なヤツがいいな。あっ、あとオッレルスとか普通の人が使えないようなヤツね」

オッレルス「凄くて綺麗…私を含め、通常の魔術師が使えない…………あ」

どうやら見当が付いたようだ。

上条「あったの!?」

オッレルス「あるにはあったし、多分出来ると思うけど…絶対人に向けて使わないって約束できる?」

上条「できるよ!」

どうやら教えようとしているのはかなり危険な魔術であるようだ。

そして、上条が一度した約束は決して破らないことを知っているオッレルスは安心して教えることを決意した。

オッレルス「まずその魔術の名前から教えよう」

上条「格好いい名前でせうか?」

オッレルス「当麻の趣味には合うんじゃないのかな。その魔術の名前は……”竜王の殺息”っていうんだ」


ーーーー現在ーーーー


”竜王の殺息”

それは「聖ジョージの聖域」で発生した空間の亀裂から放たれる、直径数mもの光の柱を発射する魔神級の超魔術。

その威力は伝説にある聖ジョージのドラゴンの一撃と同義らしく、その光の柱に触れる全てを塵も残らないほど消滅させるなど、魔術の頂点と言っても嘘で
はないくらいの破壊力を持つ。

しかし、この魔術を使用するには見るだけで死ぬ可能性すら含む”原典”に書かれた膨大かつ凶悪な魔術的知識が必要となる。

使える可能性があるとすれば、魔術の世界において最重要人物の一人である「インデックス」と言われる少女くらいだったのだが…





ヴェント「竜王の殺息…。あれマジでそうなの?」

マタイ「私も実際に使われたところを見たことがないから確実とは言えないが、おそらく本物だよ」

ヴェント「……ローマ教皇であるアンタが言うなら本物なんだろうね」

魔術の世界には「取りあえずこうゆう事すれば凄い魔術が発動するだろう」みたいな理論だけ完成して、実際には使われたことがない魔術が数多くある。

というか「使われたことがない」ではなく「使えないという」と言った方が正しい。

理由として、原典の知識が膨大に必要だったり、詠唱するのに百年単位の時間がかかったり、それを使うための霊装や道具・場所がなかったりなどがある。

上条が今使っている”竜王の殺息”その部類に入るので鑑定が難しい。

上条「信じてくれた?上条さんが魔神だって」

自分を中心に複数の竜王の殺息の魔方陣を展開しながら上条が問う。

魔神とはいきなり「魔神です」と言われて「そうなんだ」といえるほど軽いものではないのだが、これだけの力を示されたら

マタイ「信じよう、君が魔神であると言うことを」

ヴェント「まぁアタシは魔神てものをよく知らないけど、とりあえず信じてあげるよ」

こう答えるしかなかった。

上条「じゃ、止めまーす…えいっ」

二人の答えに満足したのか、竜王の殺息の魔方陣を消していく上条。

消すと言ってもマジックのようにパッと手を叩いて消すのではなく、一個ずつ移動して右手で魔方陣に触り消滅させている。

その度に金属同士をぶつけたような甲高い音が鳴り響いた。

その音に紛れてマタイとヴェントが小声で会話する。

ヴェント「アレもし発動してたらどうなってたの?」

マタイ「天に撃てば宇宙まで届き、地に撃てば国を滅ぼすと言われる超魔術だから想像もしたくないな」

ヴェント「ちょー怖いじゃん」

しかもそれは”竜王の殺息”一発での話である。

上条が使用した”竜王達の殺息”は複数の魔方陣が展開していたことから連発出来ることが推測できる。

一発でマタイの言うほどの威力があるとすると、数発撃ってしまったとしたら冗談抜きで地球クラスの危機だ。

上条「よ~し、コレで最後だ」

パキィィィイインッ!!

上条の右手が最後の一個の魔方陣を消滅させた。

そのため再び部屋が薄暗くなったが発射されるよりはマシだしいいだろう。

マタイ「…つまり」

上条「え?」

一仕事終えたと休もうとした上条にマタイが声を掛ける。

マタイ「君は魔神で、その力で人を1000人以上死なせてしまったということかな?」

上条「…ちょっと違うけどそんな感じだよ」

偶然と奇跡により完成してしまった魔神になる魔術。

その魔術と上条の右手に宿る力とが反発し合い、その余波のようなもので1000人以上の人が死んでしまっている。

上条自身、オッレルスから一応説明を受けているが、ちょっとしか理解していないので少し答えが変になる。

マタイ「そうか…。ならあと一つだけ聞いていいかな?」

しかしマタイは深くは聞かなかった。なぜなら

上条「…いいよ」

どうやって死なせたかより、どうして死なせたかが重要だからである。

マタイ「それは事故だったのかい?」

この答えが事故ならば上条当麻という子供は、マタイからすれば救われるべき対象であり、同時に罪を背覆った強い人であると言える。

しかし、逆に事故ではなく暴力による虐殺で殺したのならマタイは上条と敵対するだろう。

マタイと敵対すると言うことはローマ教会に属する魔術師全てを敵に回すと言うことだ。

その勢力は魔神である上条にとってはほぼ無に等しい物だが、その人数は億を優に超える。

結果は見えてはいるがその被害は世界規模になるだろう。

そんな世界の命運がかかる問いに対して上条は



上条「事故だけど俺のせいだよ。俺が”不幸”だったからみんな死んじゃったんだ」

もし、あの日のあの時、上条が家にいなかったら。


もし、上条家が違う土地に建っていて住んでいたなら。


もし、家に置いてあったお守りや置物の位置があと少しずれていたら。


もし、上条の右手に不思議な力が宿っていなかったら。



もし、上条当麻という子供が生まれていなかったら。



こういった「もし」を言っていけばキリがないが、このうちのどれか一つでも本当になっていたのなら誰も死なずにすんだ。

だが上条当麻は「不幸」である。

そんな都合のいい「もし」を一つとして本当にすることができない。

可能性で表せば何千分、何億分、何兆分の確率の「不幸」だけを毎回引く。

つまり

上条が「不幸」じゃなかったら魔神になんてならなかったし、「不幸」でなければ誰も死なずにすんだのだ。

ヴェント「………アタシの弟と両親は科学のせいで死んだんだ」

突然黙っていたヴェントが口を開いた。

俯いているせいでその表情は見えないが、その拳がは程までと違って固く握りしめられている。

ヴェント「だからアタシは復讐するって決めたんだ、アタシの大切な家族を殺した科学に。…アンタが死なせたどうでもいい奴らとは命の重さが違うんだよ!!」

上条「どうでもよくなんかないっ!!」

叫びとともに部屋の中で見えない何かが爆発した。

初めて聞いた上条の怒りを含んだ叫びに驚くと同時に、マタイとヴェントを残した部屋の物全てが壁に叩きつけられた。

予備動作なしで魔術を発動させる上条に恐怖を感じながらもヴェントは反論しようとする。

ヴェント「どうでもいいだろ、大切じゃないヤツの命なんて。アタシは家族を「俺もだよ」…え?」

上条「ヴェントの場合は科学のせいかもしれないけど、俺のせいで俺の父さんも母さんも死んだんだ」

誰か他人が上条のこの話をちゃんと聞けば上条のせいではないと励ましてくれるかもしれない。

「不幸」だっただけなのだから。

ヴェント「だったら………だったらアンタにも理解できるはずだ!!大切な人を失った悲しみが!辛さが!怒りが!」

上条「わかるよ。だけど……父さんと約束したんだ」

ヴェント「約束?」

上条「「どんなときでも笑って前に進む」って」

いかにも子供と親がするような馬鹿らしい約束に絶句するヴェント。

しかし、この上条当麻という人間にとってこれほど難しい約束はない。

上条「悲しくても、辛くても、怒りたくても。誰かを困らせるくらいなら俺は我慢するって決めたんだ」

ヴェントの場合は憎むべき「科学」という対象がある。

だが、上条にはそれがない。「不幸」なんていうものに復讐なんて不可能なのだから。

対象がない怒りはただの八つ当たりだ。

上条「父さんはきっと天国から見ててくれてるんだ。だから俺は約束を守るんだ」

笑って前に進むのなら、立ち止まって過去を振り返り、涙を流すことも怒りで何かを破壊するということもしてはいけない。

それは上条が自分にかけた戒めであり、心に誓った誓いだ。

ただ先の未来へ突き進む。

それが上条当麻と上条刀夜の約束だった。

ヴェント「……関係ないじゃないか。アンタとその親父の約束なんてアタシには関係ないじゃないか!!」

できなかった。上条のようにヴェントは「耐える」ことができなかった。

進めなかった。自分と同じくらいの悲しみと怒りを背負う上条のように前に進むことができなかった。

上条「関係あるよ」

ヴェント「………」

ヴェントは喋ることができない。

元々あまり喋るタイプではなかったせいもあるが、これ以上喋れば自分の中の何かがどうにかなってしまいそうだったからだ。

上条「だってヴェントは上条さんの友達だもん」

ヴェント「…とも……だ…ち?」

上条「そうだよ友達。だって今日一緒に遊んだじゃん」

かすれた声で聞き返すヴェントに力強く答える上条。

「遊んだ」という言い方にヴェントにとって違うのかもしれないが、上条は今日ヴェントと一緒に遊んだつもりである。

上条「上条さんも良く分かんないけど…友達って困ってたり、悲しんでたり、間違ってたり、泣いてたら何とかしてくれる人のことでしょ?」

ヴェント「………」

上条「今のヴェントはどう見ても困ってるし、間違ってるから止めるし、このまま復讐なんかさせたら絶対悲しくなって泣いちゃうから友達として何とかします!」

「そんなことない」その一言すら言えずヴェントは上条の言葉に耳を傾ける。

上条「それに友達が泣いてるんじゃ上条さんも悲しくなっちゃう。だからお願いします」

いつの間にかヴェントの目の前まで来た上条は俯いたままのヴェントに対し頭を下げた。





上条「友達の涙を見たくない俺のために。復讐なんてしないで下さい」








身長差により頭を下げる上条を俯いたままの姿勢で見ることができるヴェント。

そしてわかった。

上条がこのお願いを本気でしているということが。

上条「………………………」

ヴェント「………………………………」

上条「…………ヴェント…ぉおおおおおお!?」

ヴェント「チッ。避けたか」

上条「何するんでせうか!?」

ヴェント「アンタのボディーへの蹴りだけど?」

上条「ねぇどうして?どうしてそんな笑顔で女の人ってそんな怖いこと言えるの?」

頭を下げた姿勢のまま数分ほど固まっていた上条だったが。何も反応してくれない変との様子を伺おうとしたところに蹴りが飛んできた。

避けなくてもダメージなんて負わなかったのだが間一髪という感じで避けることに成功していた。

ついでに言うと上条の言っている「女の人」はシルビアだったりする。

ヴェント「つうかアンタは何で避けてんのよ?」

上条「当たれと!?」

ヴェント「うん♪」

上条「すっごい笑顔でそんなこと言わないで!」

ヴェント「アッハハハハハハハッ!!」

先程の張り詰めた空気とは打って変わって楽しい感じになってきた。

…ヴェントは大笑いをして、上条はいじけて泣き始めているが。

ヴェント「ハハッ………わかったよ」

上条「なにがでせうか?」

また蹴られることを警戒して距離を取っていた上条だったが、笑い終えたヴェントのほうから声がかけられた。

ヴェント「聞いてあげるって言ってるのよ、アンタのお願いを」

上条「本当でせうかっ!!??」

ヴェント「ウソって言って欲しかったら言うけど?」

なんとも面倒臭い性格をしているヴェントだった。

上条「言わないでよ!!」

ヴェント「言わないわよ。それに、友達のお願い聞くくらいアタシにとっちゃ簡単なんだよ」

上条「ありがとっ!!」

ヴェント「っ!?いきなりくっつくな!!」

感極まったらしい上条がヴェントの抱きついた。

お願いを聞いてくれたことが嬉しかったというのもあるが、なにより自分を友達だと認めてくれたことが嬉しかったのだろう。

上条「う~~父さん母さん。上条さんは今日友達が増えましたことですよ」(ToT)

ヴェント「泣いてないでいい加減離れろこの野郎!!///」

嬉しくて泣き始めた上条だったが、家族以外の人に抱きつかれたことのないヴェントにとってこのスキンシップは恥ずかしすぎるらしい。

さっきまでの表情がウソだったように真っ赤に染まっている。



マタイ「………なんか私空気だな」

ヴェント「…それで、これからアタシは何を目的に生きていけばいいの?」

上条「目的?」

何とか上条を引き離すことに成功したヴェントが状況を仕切り直すかのように真面目な雰囲気を放つ。

復讐を目的にしていたヴェントだったが、それが中止となったためにやりたいことが無くなってしまったのだ。

ヴェント「アタシの復讐って目的をやめさせたのはアンタだ。ならアンタがアタシの次の目的を決めてよ」

上条「………それっているの?」

ヴェント「は?いるに決まってるでしょ。目的がなかったら何すればいいのか分かんなくなるじゃん」

上条「そうかな~」

ヴェント「アンタには親父さんとの約束を達成するって言う目的があるんでしょ?、アタシの場合はないとなんかこう…不安なんだよ」

復讐を決意して、それ以外のことをほぼ無視していたヴェントだったので、いざ何もなくなるとたまらなく不安なのだろう。

だが上条はそんなヴェントの不安がうまくわからないらしい。

上条「上条さん的には好きなことすればいいと思うのですよ」

ヴェント「好きなこと…好きなこと……アンタを虐めることかな?」

上条「それは嫌いなことになって欲しいです!!」

ヴェント「いい案だと思ったんだけどなぁ~」

上条「どこらへんが!?」

ヴェント「だってアタシは好きなことで来て楽しいし。アンタはアタシに虐められて楽しいだろ?」

上条「上条さんは虐められても喜んだりしませんことですよ!?」

必死に自分に虐められて喜ぶような性癖がないことを主張する上条。

ここで否定しておかないとヴェントにとっての上条は変態となり、色々と大変なことになる。

ヴェント「まぁこの案は置いておいて…」

上条「捨てようよ!!ゴミ箱にポイッて捨てようよ!!」

ヴェント「黙れ、頭に響くからギャーギャー喚くな。他のこと考えてあげるから。アタシのしたいことねぇ………」

上条「上条さんに何かする関係のことはなしタイプでお願いします!!」

肉体的には無傷ですんでも精神的にボコボコにされたら例え魔神である上条といえど辛いのだ。

切実にヴェントに他に何かしたいことがあることを祈る上条だった。


ヴェント「あっ、あった。やりたいこと」

上条「本当っ!?」

部屋の中を歩き回りながら考え込んでいたヴェントがついにやりたいことを見つけたようだ。

ヴェント「あの変な女をぶっ飛ばす」

上条「変な女?」

いきなり言われてもその「変な女」に心当たりがない上条。

だが、「ぶっ飛ばす」と言っている以上何かしら恨みのある人物のようだ。

上条「誰のことでせうか?」

ヴェント「さっきまでお前も会ってただろ?あの金髪の女……えーと…オティヌスだっけ?」

上条「………無理っぽくない?」

変な女=オティヌスだということを否定しない上条。

面と向かって言うのは怖いから言わないが、上条から見たたオティヌスは良く分かんない変な女の子である。

ヴェント「あの女ってそんなに強いの?」

上条「勝負とかしたこと無いから分かんないけど…ヴェントよりはずっと強いと思うよ」

ヴェント「ふーん……じゃあアンタから見たアタシとあの女の強さを例えるならどれくらい?」

上条「………オティヌスがティラノサウルスでヴェントがハムスターって感じかな」

戦闘経験がほぼ無い上条にとって他人の力量を比べると言うことはかなり難しいことなのだが、ヴェントとオティヌスを比べることくらいならできる。

両方の使っていた魔術のレベル、肉体的な強さ。

上条が感じ取った評価になるがヴェントとオティヌスの強さの差は天と地ほどの差があり、それを上条風に例えると恐竜とハムスターになったらしい。

ヴェント「そんなにあるの?」

上条「そんなにあるよ」

ヴェント「ちなみにアンタの強さはどのくらいなの?」

上条「…ゴジ○くらいかな」

ヴェント「なにそれ?」

上条「えっ○ジラ知らないの!?」

ヴェント「知らないよ。だけどティラノサウルスよりは強そうだね」

上条「絶対強いよ!!」

ヴェント「まぁ可能性はゼロじゃなさそうだし、頑張ってみますか」

上条「頑張る?」

ヴェント「アンタのその評価は今のアタシの評価なんだろ?。ならアタシが今よりもっと強くなればハムスターからレベルアップくらいできるでしょ」

ティラノサウルスとハムスターでは勝負にならない。というか同じ戦いの土俵にすら立てない。

だから最低でも同じ土俵で戦える強さまで強くなる。

ヴェントの当面の目的が決まったようだ。

ヴェント「………ってことでよろしく頼むよ」

上条「何をでせうか?」

ヴェント「アタシをあの女に勝てるくらいに強くしろ」

上条「………はい?」

ヴェント「アンタは魔神って言う「神様」なんだろ?ならお願いの一つくらい叶えてよ」

無茶苦茶である。

あくまで魔神とは魔術を極めた魔術師の別称であり、何でもできたり思い通りもままというわけではないのだ。

上条「ヴェント、多分それ無理」

ヴェント「どうして?何か貢ぎ物とか祈りとか必要な物があるって事?」

上条「そうじゃなくて…上条さんがヴェントを強くしようってヴェントの体になんかしたら多分…殺しちゃうから」

魔神である上条の力はかなり特殊だ。

魔術師としての魔翌力と生まれついて持った右手の力。

それが混ざって完成した特殊な魔翌力で上条は魔神としての力を振るう。

一般的な魔術師にもしこの上条の魔翌力を注ぎ込まれれば、体も心もその力に耐えられず崩壊する。

上条「ウィリアムさんの時はガブリエルがいたから何とかなったけど……ヴェントの場合だと危ないと思う」

ヴェント「なんか凄い事が聞こえた気がするけど無視するよ。つまりアンタじゃアタシを強くするって事は無理なわけ?」

上条「うん」

ヴェント「まぁ危険ならしょうがないか。じゃあ地道に頑張るろっかな~」

上条「というかお友達になればぶっ飛ばさなくてもいいんじゃないの?」

本音を言えばヴェントとオティヌスに仲良くなって欲しいと考える上条。

自分の友達が喧嘩をするなんて嫌なのである。

ヴェント「なめられたままこのヴェント様が終われるか。絶対ギャフンと言わせてやる」

だが、やっと目的を見つけたヴェントに水を指すわけにはいかなかった。だから

上条「…怪我しないでね」

ヴェント「善処するよ」

心配だけすることにした。

…どうせヴェントじゃオティヌスを怪我させることなんてできないと思っていたのは秘密だ。

ヴェント「じゃあアンタ実験台決定ね」

上条「実験台?なにそれ?」

どうやら上条は実験台という単語を知らないらしい。

回るときは凄く回る頭なのに知識量的には穴だらけのようだ。

ヴェント「アタシの攻撃があの女に聞くかの実験台。アンタに効けばあの女にも効くでしょ?」

嫌な予感しかしない実験台だった。

上条「や「アン?」…喜んでやります!!」

目が語っていた。

”やだって言ったら[ピーーー]”と。

ヴェント「取りあえず明日からするよ」

上条「明日?上条さんはここに来るの大変なんでせうけど…」

ヴェント「アンタこの近くに住んでないの?」

上条「うん。一時間ちょっとバスに乗ってきたんだよ」

ヴェント「ここに住めばいいじゃん」

上条「でもオッレルスもシルビアも待ってくれてるし…」

初めてでた二人の名前にヴェントの表情が少し曇る。

ヴェント「誰その二人?」

上条「上条さんの今の家族です」

オッレルスもシルビアも今の上条にとっては大切な家族だ。

その家族から抜けるようなことはしたくないらしい。

ヴェント「ふーん。……いい奴ら?」

上条「うん!!」

上条「ヴェントがこっちに来たらどうでせうか?」

ヴェント「アタシがアンタとその二人と一緒に住むって事?」

上条「うん」

ヴェント「…悪いけどそりゃダメだ。アタシもここが気に入ってるし」

決して悪くなく、むしろいい提案だったのにヴェントは断った。

ヴェントなりにここは思うところがある場所なのだろう。

ヴェント「じゃあアレだ、たまに実験台になりにココに来いよ」

上条「うんわかった、遊びに来るね!」

ヴェント「?」

実験台になるとは言わず、遊びに来るという上条。

そして、自分の小指をヴェントに向かって突き出した。

しかし、小指を突き出されたヴェントは訳が分からないといった様子だ。

上条「アレ?もしかして、”指切り”知らない?」

ヴェント「知らない。東洋の儀式?」

上条「儀式とかじゃなくって…なんて言うんだろ…約束のを守ることを約束することかな?」

ヴェント「へ~おかしなことするんだね東洋じゃ。どうやんの?」

取りあえず上条と同じように自分の小指以外の指を折りたたみ、指切りのポーズを取った。

ヴェント「そしてこの指を切ると…ジャパニーズって怖いね、こんなことするんだ」

上条「違うよ!?そんなことしないよ!」

ヴェント「だって指切りなんでしょ?指切るんじゃないの?」

上条「二人の小指を結ぶの!で、それを切るから指切りっていうの!」

ヴェント「???、結んで切る?意味分かんないんだけど……えっなに?」

上条「こうやるんでせうよ」

なかなかうまく指切りが伝わらない上条。

説明するのを諦めて実践に移した。

上条「こうやって指を結んで、言葉を…ヴェントどうしたんでせうか?」

ヴェント「にゃ、にゃんでもにゃいわよ」

呂律が回っていない。というか猫語になってしまっている。

ただ指を繋ぐだけならここまで恥ずかしくなかったのだろうが、どういうわけか上条の顔の位置がものすごく自分の顔の位置の近くなったので恥ずかしくなったようだ。

上条「だ、大丈夫?ヴェント」

ヴェント「だっ大丈夫に決まってるでしょ?アタシを誰だと思ってるの?」

顔が今まで見たことがないくらい赤くなってしまったヴェントを本気で心配する上条。

それが嬉しくもあるが、同時にさらに近くなった上条に何か友情とは違った感情を大きくしているヴェントだった。

上条「大丈夫ならいいけど…じゃあ指切りね。今から上条さんの言うこと同じ事を一緒に言ってね」

ヴェント「わかった」

何とか平常時に戻ったヴェントは繋がれている自分の小結を見つめ、そして今日会ったばかりなのに自分を変えてくれた少年を見た。

上条「ゆ~び切りげんまん、嘘付いたら針千本飲~ます、指切った…だよ?」

ヴェント「おっそろしい約束だこと、オッケー………アンタ…上条だっけ?」

上条「上条さんは上条当麻で間違いないことですよ?」

ヴェント「じゃ上条でいいか。…上条」

上条「!…なに?」

初めてヴェントに自分の名前を呼んで貰えて事に驚き、そして嬉しそうな顔をする上条。

指切りの台詞すら言い忘れてその言ってきたヴェントを見た。

満開の笑顔が咲き誇っていたその顔を。



ヴェント「これからもよろしくね」



上条「うんっ!!こっちこそよろしくね!!」



小指を繋ぎ合ったまま、二人の子供は年相応の可愛らしい笑顔で笑い合っていた。

そこには魔術師とか魔神などと言った無愛想な言葉は全くに似合わなかった。













マタイ「………優しい友達ができたな」

ヴェント「…アンタまだいたの?」

マタイ「…出て行くタイミングがなかったんだ」

ヴェント「ださいローマ教皇だこと」

指切りを終えた上条が帰ってしばらくした後、今の今まで空気同然だったマタイが喋りだした。

マタイ「優しい少年だったな。信者として欲しいくらいだ」

ヴェント「………言っとくけど。もし上条に何か危害を加えるならアンタだろうが誰だろうが[ピーーー]よ?」

全てを凍てつかせんばかりの冷徹な瞳で言い放つヴェント。

しかし、そんなヴェントをマタイは温かい瞳で見つめる。

ヴェント「…なんだよその目は」

マタイ「いや、嬉しくてね」

ヴェント「はぁ?嬉しい。何が?」

マタイ「誰にも心を開かなかった君が、心を開くことができる人に会えたことがだよ」

ヴェント「……ほっとけ」

照れたのかマタイから顔を背けるヴェント。

苦し紛れに泳いだ視線は上条が去っていった扉のほうを自然と見つめていた。

ヴェント「…次はいつ来るかな、上条のヤツ」

マタイ「……………………あっ」

ヴェント「どうした?」

寂しそうにそう呟くヴェントを見て感慨にふけっていたマタイだが大変なことを思い出した。

マタイ「上条君はパレードを見ないまま帰ってしまったのだろうか?」

ヴェント「そういえば上条のヤツ、パレード見に来たとか言ってたね。…帰っちゃったんじゃないの?」

マタイ「せっかくここまで来てくれたのに…可哀想だな」

ヴェント「まぁいいんじゃない。パレードなんて何時でも見に来られるでしょ」

マタイ「それはそうだが……」

心配される上条だったが、帰ってからもう結構時間が経っていたので追いかけて連れ戻すの不可能と判断できる。

本来の目的を忘れたまま帰ってしまった上条に少しの同情を感じながらマタイは深いため息をついた。

そのせいなのか





ヴェント「友達か…悪くないかもね」




そう小さく呟いたヴェントの声はマタイには聞こえなかった。





ついでに、

オッレルス家に帰ってからパレードを見忘れたことを思い出して叫んだ上条を、機嫌が悪かったらしいシルビアが無関係のオッレルスを巻き込んで物理的説教するのだが、それは別の話だ。

第三話はコレで終わりです。

次の話からはオリジナル展開を加えながら原作を追いかけます。

それと、”まりょく”って漢字が投稿前は何度見ても正しいはずなのに投稿すると「魔翌翌翌力」になってしまいます。治す方法をご存じの方は教えて下さい。

予告だけして終わります。次回の投稿も申し訳ないのですが少し遅くなると思うので気長にお待ち下さい。

次回予告


「コレが高層ビルって言う建物でせうか?」
魔神になった不幸不幸体質を持つ少年ーー上条当麻


「飛行機食ってものをまだ食べたことが無くてな」
元・痴女ーーオティヌス


「無視しないで欲しいんだよ…」
腹ぺこ魔術師ーー???


「貴方達は一体何者なんですか?」
聖人魔術師ーー???


「ふざけたこと言うと燃やすぞ?そのウニ頭」
バーコード魔術師ーー???


「イギリスってコーヒー旨いのかァ?」
意外と親切?な白もやしーー???


「第四話・学園都市は騒がしい」

おつー
メル欄にsagaを入れたら殺すも魔力も普通に投稿できるよ
ついでにsageだと更新わかりにくいから>>1は入れなくてもおk

始まりの所だけ何とか完成したので投稿します。

今月は25日以降にあと一回だけ投稿できると思います。

誤字の解決方法は>>715さんのようにメール欄にsage sagaと入れればよろしいのでしょうか?



上条「………ええそうですとも。アレから色々ありましたよ。具体的には上条さんがオティヌスと出会ってからは」

オティヌス「色々なんて言うほどあったか?」

上条「もう八年も経ってるんだぞ?無いって言う方が難しいだろ」

上条当麻という少年とオティヌスという少女が出会ってもう八年の歳月が経っていた。

そしてそれは上条当麻という少年が魔神という存在になってから過ごした年月でもある。

上条「でもさぁオティヌスさん?流石にこんなことされたらいくら温厚な上条さんもでも怒っちゃうんですよ?」

オティヌス「そんなに酷いことかコレ?」

上条「グレイプニル使って人をグルグル巻きにしてる人が言う台詞かそれってどうなのよ…」

「グレイプニル」とは北欧神話に登場する魔法の紐のことで、主神オーディーンを喰い殺すフェンリルを捕縛するためのドワーフ製の神具である。

主神を殺すとする怪物すら捕縛するこの紐でなら、魔神である上条の動きも少しは制限できる。

とは言っても上条の右手だけは厚手の手袋で覆って、その上から縛っている状態だが。

オティヌス「コレ作るの大変だったんだぞ?こういうときに有効利用しなくてどうする」

上条「え~と確か…猫の足音とか魚の息とかが材料なんだっけ?でもさぁ、こんな物使わなくても上条さんは逃げたりしませんことですよ」

オティヌス「いや、マリアンが性能をチャックして欲しいから使ってくれって言ってきたから使ってるだけだ」

上条「マリアンめ、今度会ったら理不尽な説教をしてやる…」

マリアンという人物については後で触れるとして、上条に逃亡の意思はないようだ。

オティヌス「というかアレだぞ、コレに縛られたら私やお前クラスの魔術師でないと動くことはもちろん、心臓の動きとか呼吸まで止まるらしいぞ」

上条「………捨てた方が良くないコレ?」

何気ない事を言ったつもりの上条だが、このグレイプニルを捨てると言ったら魔術界で争奪戦という名の戦争が起きる。

上条「………ってかオティヌがほどいてくれるって言う選択肢は…」

オティヌス「あると思うのか?」

上条「知ってたけどやっぱないのかよコンチクショーー!!

上条「じゃあせめて肩から降ろして下さい」

オティヌス「引きずれと言うことか?」

上条「今のお前と上条さんの状況を良く見てみなさい。シュールだよ。ザ・シュールだよ」

オティヌス「何かスタ○ドっぽいな」

見るからに怪しい紐でグルグル巻きに縛られた男を肩に担いで歩いている少女。

うん、これシュールだ。周りの目線が痛い。

上条「というか何でこんな所に上条さんは来たんでせうか?」

オティヌス「言ってなかったか?」

上条「じゃあ何時言ったのよ?」


☆上条当麻の今日一日の出来事☆

朝、普通に起きる
   ↓
顔を洗おうと洗面台へ
   ↓
洗っている途中、誰かが訪問してきたらしく顔を拭いてから玄関へ
   ↓
玄関開けたらオティヌス参上
   ↓ 
いきなりグレイプニルで縛られ拉致される
   ↓
グルグル巻きに縛られ、オティヌスの肩に担がれたなら移動
   ↓
  現 在


上条「ホラ見なさい。一体何時言ったのよ?」

オティヌス「じゃあ今言えばいいのか?」

上条「そういうことじゃ無いんだけどなぁ…まぁいいか」

謝るつもりも悪びれる様子も全くない目の前の少女に軽い目眩と怒りを覚えるがグッと我慢する。

単純な強さなら上条が上だが、言い争いになれば勝ち目はないと言うことを理解しているのだ。

オティヌス「というかここに来る理由なんて一つしかないだろ」

上条「そりゃそうなんだけどさぁ………」

グルグル巻きの少年を担ぐ少女。もとい上条とオティヌスがいるのは…

上条「何で空港?」

オティヌス「後で話すよ」

イギリスの空港だった。

それからなんやかんやあったが上条とオティヌスは無事に飛行機に搭乗した。

上条「おかしい…絶対におかしい」ブツブツ

オティヌス「ブツブツ五月蠅いぞ魔神。飛行機とは黙って乗る物だとあの野蛮人と変態に教わらなかったのか?」

上条「いや、だってね。明らかにおかしい所が3つもあるんだよ?」

野蛮人と変態についてが誰だか一瞬で解ったが追求しない、後が怖いから。

オティヌス「どこがだ?」

上条「まずこの乗ってる飛行機…飛行機なのかコレ?乗ってる乗客が上条さんとオティヌスだけっておかしくない?」

今二人が乗っているのは一般的な大型旅客機より一回り大きい、全体的に黒いフォルムの飛行機だった。

大きさは優に80メートルを超えるのに乗客席がほとんど無く、今乗っているのは乗客は上条とオティヌスだけ。

明らかにおかしい。

オティヌス「最先端技術の塊らしいぞ?私達みたいな科学とはほぼ無縁の生活を送っている者からすれば、どの辺が最先端なんて毛ほども解らないけどな」

上条「最先端技術の塊ねぇ……」

取りあえず何か自分でも解るところはないかとキョロキョロと機内を見渡す上条。

しかし、どんなに見渡してみてもオティヌスの言うとおり毛ほども解らなかった。

頑張って配線らしき物を目で追っかけてみたが途中でこんがらがって目を回した。

上条「……まぁ最先端技術の塊って言うからしょうがないのか…じゃあ次のおかしい所だ」

オティヌス「言ってみろ」

上条「何で俺たちが飛行機なんかに乗るんだ?」

その気になれば自分たちの位置をそのままに、地球を無理矢理回転させて望む場所に運んで貰ったり、

空間に穴を開けて座標移動すらできる二人なので飛行機などといった乗り物に乗る必要など皆無なのだ。

オティヌス「飛行機食ってものをまだ食べたことが無くてな」

滑り落ちた。

グルグル巻きのまま椅子に座る上条にできる精一杯のリアクションが滑り落ちるだった。。

上条「お前が突拍子のないことをするのは何時の事だけど、今回ばかりは流石の上条さんも驚きで腰が抜けましたことですよ」

例えば「聖人の髪の毛ってどうなってるんだろうな」と言って世界中の聖人の髪の毛をこっそりお採取するのを手伝わされたり。

また例えば「なんか今私の悪口が言われた気がする」と言って世界中を連れ回されたり。

さらに例えば「ホワイトハウスの椅子に座りたくなった」と言ってホワイトハウスに突入したり。(座ったよ?そしたら大統領と友達になったよ?)

などと、この八年の間でオティヌスと突拍子ないことをしまくった上条はオティヌスの行動に対して少しは慣れたつもりだった。

しかし、

上条「ここまで理不尽で馬鹿らしい理由で早朝から連れ出されたのは初めてじゃないか?」

オティヌス「理不尽で馬鹿らしいとは失礼だな、私がどれだけ飛行機食という物を待ちわびたか知っているだろう?」

上条「知らねぇよ!!??」

上条「じゃあ最後のおかしい所だ。というかコレがぶっちゃけ一番重要だ」

オティヌス「まだあるのか…」

上条「何で上条さんはいまだにグレイプニルでグルグル巻きのままなのでしょう?」

オティヌス「…………………………」

上条「おいそこの金髪眼帯。いきなり目をそらすな」

オティヌス「ピ~ピ~ピ~~~」

上条「下手くそな口笛を吹き始めるな。いい加減ほどけ」

オティヌス「飛行機って意外と大きいんだな…」

上条「ほどけ~~~!!!」

ついに上条が切れた。いつぞやの英国城でシルビアにグルグル巻きにされたオッレルスは我慢できていたが上条には無理だった。

というかオティヌスの様子がおかしい。何というか焦っているように見える。具体的には「ほどけ」と上条が言った辺りから。

オティヌス「まぁ…まぁいいじゃないか。しばらくそのままでも。格好いい………ぞ?」

上条「疑問系じゃん!ってかお前何でそんなに慌ててるんだよ?慌てたいのは上条さんの方なんですよ!!」

オティヌス「実はな、……ほどけないんだ」

上条「はい?」

オティヌス「知っての通り私の名前はオティヌスだ。それがオーディンの別称でもあることは知っているよな?」

上条「知ってるも何も俺とリメエアで決めた名前だろ?知らないと思ってたのか」

八年前、英国城でリメエアと上条がオティヌスという名前をこの少女に付けた。

最初はオーディンと言う名前になるはずだったのだが。

「オーディン」という名前が女の子っぽくないといった上条の意見を取り入れたリメエアが別称である「オティヌス」と提案し、決定したのだ。

オティヌス「そしてだ、お前を縛っているのはオーディンを喰い殺すとされる巨大狼フェンリルを縛るグレイプニルだ」

上条「………つまり?」

オティヌス「その紐をほどくということはフェンリルの解放を意味するから私ではほどけないんだ」

上条「………無理なの?」

魔術の世界ではよくあることだ。

自分の名前や持っている物のせいで何かが限定されると言うことは。

オティヌス「………属性的というか存在的にというか……無理です、はい」

何とも珍しい光景である。あの自信家のオティヌスが「できない」なんて台詞を言うのは。

上条「………切っていいよね?」

オティヌス「待て切るな!!私がマリアンに怒られる!」

上条「知るかそんなもんっ!!自業自得だ馬鹿野郎!!」

ピンッピキッ………っと

神を殺すとされる怪物でさえ封じ込めるグレイプニルから嫌な音がする。

なぜなら今縛っているのは神を殺す怪物すら殺すことが可能な魔神・上条当麻。

相性というか相手が悪かった。

オティヌス「まっ待て。………そうだ機長今すぐ発進だ!!急げ!!」

上条「待つかっ!そして甘いわ!!飛行機が急発進すれば”G”とか言うので衝撃を受けるらしいが、この魔神である上条さんがそんな物に負けるか!!」

オティヌス「私達がブラックアウトしてもかまわない。取りあえず大きな動きをしてくれ!!」

もう上条がグレイプニルを切るまで10秒かからない。

しかし、その10秒で充分だった。

最先端技術の塊……学園都市製・超音速旅客機は3秒あれば発進できる。

そして。もう3秒。計6秒あれば…最高速度の時速7000Kmまで加速できる。

上条「あばばばばばっばばばばばっ!!????」

オティヌス「くうううううううう!!!」

ご要望通り普通の旅客機には……いや、戦闘機にすら出来ないような複雑で大きい動きをして超音速旅客機が発進した。

二人ともGの影響なんて受けてはいないが、固定されていない状態で乗っている乗り物が複雑な動きをすれば中にある物は縦横無尽に転がり回る。

グルグル巻きの上条は虫籠の中に入れられた芋虫のように船内をぶつかりながら転げ回り。

座ってはいたがシートベルトをしていなかったオティヌスは、転げ回るのがプライド的に嫌なのか必死に椅子にしがみついている。

二人をよく知るもの達が見れば爆笑の光景だった。



そして超音速旅客機は飛ぶ、目的地である<<学園都市>>へと。













??「はァ~~~なンで俺がこンなことしてんだよ」

退屈そうに、そして面倒臭そうに学園都市のとある場所で一人の真っ白い少年が呟いていた。

彼が立っている場所は研究所の跡地らしく、周りには何もない、ただ広い空き地のような所だった。

??「っうか時間の指定ぐらいしろってンだ」

そう言って足下に置いてあるビニール袋の中から缶コーヒーを取りだし飲み始める。

暇つぶしに作っている飲み終わった缶コーヒーのピラミット(もうすぐ5段目が完成)を眺めながら今朝のことを思い出していた。

取りあえず雨風がしのげる場所。それが今日、彼の目覚めた場所だった。

昨日までは一応住んでいた場所があったのだが訳あって住めなくなり、取りあえず寝られる場所を探した結果、この廃墟についた。

埃まみれだがいいソファーがあり、それを布団代わりに寝たので珍しく寝起きがまぁまぁよかった。

今日は何して暇を潰そうかなァ~と寝そべっていたまま考えていたのだが、これまた珍しく彼の携帯がメールの着信を告げる。

何時もならメールをしてくる知り合いなどいないので悪戯か何かだと無視をするのだが今日は機嫌が良かったので見てみた。

差出人の名前や件名はなく、ただ内容に一言だけ


「今日、学園都市の××に来るある二人組を歓迎しろ。彼らと関わりを持てば少しは退屈しなくなるぞ」


とだけ書いてあった。


??「悪戯なンですかねェ~?」

まじまじと携帯の画面を眺め続ける彼だったが、それ以上のことは書いておらずそう呟いた。

しかし、何度も言うように今日の彼は珍しく機嫌が良かった。

??「まァ暇つぶしになれば、悪戯だろうとなンだろうとどうでもいいか…」

立ち上がり、必要もないのにストレッチをしてからその廃墟を彼は出た。

誰も通らない寂しい道を、一人歩く。

白い肌に似合う鋭く光る赤い瞳が、空で輝く太陽を鬱陶しそうに見つめる。

??「晴れてンじゃねェよ………俺は曇りが好きなンだよ」

彼の名は”一方通行”

超能力者で溢れる学園都市の能力者の中でも最強の段階と言われるレベル5の第一位。

そして、

一歩通行「ン?そういや今日は新しい缶コーヒーの発売日だったけか?」

重度のカフェイン中毒者だった。

短いですけど今回の投稿を終わります
一方通行の喋り方がよくわからないのでアドバイス頂けましたらお願いします。

何とか今月中に間に合いました。投稿します。

言葉が通じるということについてですが、その辺のこと全く考えてありませんでした。すいません。
漫画やアニメのお約束って事にしておいて下さい(SSですが)

感想と応援ありがとうございます(^^)

一方通行「………………ようやくお出ましか」

缶コーヒーピラミットが六段目の頂上を飾った瞬間、一方通行の目の前で二回の爆発が起きた。

正確にいうとそれは爆発ではなかった、上空から何か二つの物体が高速で落下して起こった現象らしい。

その衝撃で辺りのアスファルトが粉微塵に吹き飛び、あたかも爆発のように見えたのだ。

??「……ったく………お前……だぞ…!!」

??「……………お前だって………馬鹿…………が…!!」

舞い上がる粉塵の中心あたりで姿は見えないが、会話が聞こえる。

声から判断するに、片方は男でもう片方は女らしい。

何かを言い争っているような感じだが、かまわずに一方通行は声をかけた。

一方通行「ァ……一応ゥ確認しとくけど、お前らが学園都市の人間じゃねェよな?」

??「…だから……ッ!!………ん?誰だお前?」

??「知るか……………ッ!!………あ?ああ、上条さんもオティヌスも学園都市の人間じゃないぞ」

どうやら男の方は上条という名前で、女の方はオティヌスという名前らしい。

そしてようやく粉塵が収まり、視角から得た情報で女と男の二人組であると確定できた。

(一方通行「なンだこの二人、変な格好だな」)

自分だってウル○ラマンみたいな変な格好をしているのに、変な格好だなと心の中で呟く一方通行。

そして、一方通行が言う二人の変な格好とは

上条の方が黄色と赤色のヨレヨレ水玉パジャマで、オティヌスの方が黒色と金色のゆったりとしたトルコ系の民族衣装だったりする。

だが、そんな変な格好なんてどうでもいいほど一方通行には気になることがあった。

一方通行「学園都市の人間じゃねェのになんで能力が使えンだ?」

一方通行の知る常識の中では、地球上で学園都市以外に能力者を作れる場所はないはずである。

先程のこの二人の登場で起きた衝撃から計算をすると、最低でも上空1000m以上の所から落下してきたと考えられる。

能力者でもない人間がそんな高さから落下したら死亡確定だ。

上条「別に能力なんか使ってないぞ」

一方通行「はァ?じゃあどうしてあンな登場ができたンですかァ」

上条「それは上条さんとオティヌスが魔…ブエッ!!??何するんですかオティヌスさん!!」

上条がなにやら不思議な言葉を言おうとした瞬間にオティヌスの腹パンチが飛んできた。

そして体がくの字のに折れ曲がり、顔の高さが同じくらいになった上条の顔を引き寄せ、小声で会話を開始し始めた。

オティヌス「学園都市の人間に私達の正体を教えてはいけないといったはずだよなぁ?」ゴニョゴニョ

上条「魔術関連のことは全部ダメって事か…」ゴニョゴニョ

オティヌス「そうだ。そもそもあんなヤツがここにいるんだ…アイツの差し金か?」ゴニョゴニョ

上条「悪い、なんて言ったんだ?もう一回頼む」ゴニョゴニョ

オティヌス「たいしたことじゃない、取りあえず話を合わせろ、いいな?」ゴニョゴニョ

上条「了解であります」ゴニョゴニョ

オティヌス「急に無視して悪かったな、私達は………なにをしているんだ?」

一方通行「………修復ゥ?」

上条とオティヌスが内緒話を始めたせいで暇になった一方通行は、彼ら二人の登場の衝撃で崩れた缶コーヒーピラミットの修復作業に入っていた。

自分が知りたくないことは知りにいかない、という考え方を持っているらしい。

そして、暇が嫌いらしい。

上条「お前…どのくらい前から俺たちのこと待ってたんだ?」

一方通行「……2時間くらいだなァ」

上条「2時間でそんなにコーヒー飲んだのか!?」

六段のピラミットが完成していることから飲んだ数は21本。

一本が約200mlだから約2.2Lのコーヒーを飲んだ計算になる。

コーヒーをあまり飲まない上条だが、明らかに飲みすぎだと思った。

一方通行「コーヒーはなァ、俺の血で肉だ」

オティヌス「いやいや、100歩譲って血は分かるが肉は無理だろ」

一方通行「なに言ってンだ、俺の血は黒色で肉は焦げ茶色だぜ?」

上条「怖いよ!!何処のゾンビだよ!?」」

一方通行「ンなことより」

上条「んなことよりですんでいいの、コレ!?……ボヘッ!?」

これ以上の議論の余地はないらしい。

一方通行の血と肉について怖いながらも知りたかった上条だが、再びオティヌスに腹パンチされて沈黙した。

一方通行「学園都市の人間じゃなェってことは能力者じゃねェはずだ。なンで能力が使える?」

オティヌス「私達がいつ能力なんて便利な物を使ったんだ?」

一方通行「能力者でもねェのにあの高さから落ちてあの衝撃を喰らえば人間挽肉の完成だ。しらばっくれてンじゃねェ」

オティヌス「偶然だろ、奇跡と言ってもいい。私達は学園都市の外部の人間、一般人なんだぞ?能力なんて使えるわけがない」

あくまで自分も上条も能力者ではないと主張するオティヌス。

魔術に関わる者は学園都市の能力者をという存在を知っているが、逆に、学園都市の能力者は魔術について存在すら知らない。

それは魔術側と学園都市側の戦争を避けるための措置なのである。

そして、「嘘言えば潰す」という視線と「潰してみろよ」という二人の視線が沈黙する上条の上で交差する。

その後10秒ほど睨み合い、片方が折れた。

一方通行「分ァ~たよ。奇跡ってことにしといてやるよ」

オティヌス「初めからそうだと言っているだろう」

どうやら一方通行が先に折れたようだ。

普段の一方通行なら決して自分の意志を曲げることなど無いのだが、本能的にこれ以上追求しては危険と感じ、何より面倒臭いので折れた。

暇なのも嫌いだが、それ以上に面倒臭いことはもっと嫌いなのである。

一方通行「じゃあテメェらは学園都市に何しに来たンですか?」

オティヌス「人探しだな、それとこの馬鹿をあるヤツに紹介しに来た」

一方通行「ほォ~。じゃあ学園都市の内部、しかも上層部と関わりを持ってンだなお前は」

オティヌス「………なぜそう思う?」

一方通行「なンでなンだろうなァ?」

一方通行がそう言ったのにはちゃんと理由がある。

それは上条とオティヌスが学園都市に来た手段だ。

一瞬のことだったが、この二人が落下してくる少し前、一方通行の頭上を超音速旅客機が飛び去っていった。

おそらく、いや、確実のこの二人はそれに乗っていたに違いない。

超音速旅客機は学園都市でしか作れず、また、使用できるのは学園都市の上層部の一部の人間だけだ。

上条の方は紹介で連れてこられたと言っていたし、そうなると関わりを持っているのはオティヌスの方だろう。

ならばこの答えはすぐに考えられる。

一方通行「人探しには興味ねェから聞く気はねェが、その馬鹿を紹介したいヤツってどんなヤツなンだ?」

オティヌス「教えるつもりはない。というかお前は何でこんな所にいるんだ?出迎えを頼んだ覚えはないぞ」

上条「白い人に上条さんが馬鹿だと認識されている!?」

復活した上条が二人の間で叫ぶ、

何気に上条が馬鹿という認識で話が進んでいるがそこは無視しておく。

一方通行「迎えなンかじゃねェ、朝メールが来てたンだ。ここに来れば退屈しなくなるってなァ」

オティヌス「………私達如きで退屈は解消できそうか?」

一方通行「今のところは無理そうだなァ、お前らなンか面白いことしたりする予定とかあるか?」

オティヌス「今のところはないな」

一方通行「へェ~~”今”のところはねェ…………」

どこかの黒色のノートを持った死神のような表情を浮かべる一方通行。

その表情が表すのはただ一つの感情「期待」だ。

最強である一方通行を苦しめる唯一のものは“退屈”である。

その退屈が解消されるなら一方通行は自分の力を出し惜しみなどせず、全力で使う。

上条「あれ、何処行くんだ白い人~?」

一方通行「帰ンだよ。コーヒーも切れちまったしな」

上条「まだ飲むのか!?」

オティヌス「私達に付いてきたりはしないのか?」

試すような口調のオティヌス。しかし、一方通行はそれには乗らない。

一方通行「お前らならなンか勝手に面白いことすンだろ?なら、面白そうになったら付いてってやるよ」

最初から一方通行自身が物語に関与したら最悪の場合、物語自体が壊れる危険性がある。

そんなことはしたくなし、そもそもつまらない前段階や伏線なんて興味がない。

一方通行の興味があるのは何時だって最高に盛り上がるラストシーンの場面だけだ。

上条「でも上条さん達お前の連絡先とか知らないぞ?」

一方通行「………じゃあアレだ。面白そうになったらどっから見ても分かるくらいのド派手な事しろ。それが連絡代わりだ」

上条「ド派手な事ね、オッケー分かった」

そう言って一方通行は後ろにいる上条やオティヌスに別れの言葉すら言わず、去っていった。

追おうと思えば追える速度だったが、不思議と追う気にはなれなかった。

上条「アレ?そういえば名前聞くの忘れてない?」

オティヌス「まだ名乗るべき時じゃないってことだろ。………私達もそろそろ行くぞ」

そう言って上条とオティヌスは、一方通行が去っていった道とは逆の道を歩き出した。

その後のその場所には二つの小さなクレーターと缶コーヒーのピラミットが残っていた。

上条「コレが高層ビルって言う建物でせうか?」

オティヌス「違う、コレは”寮”という建物だ」

上条「………寮?これが?」

オティヌス「そうだ」

上条「この縦にも横にも100m以上ありそうな建物が寮だ…と!?」

一方通行と別れた後の上条とオティヌスは、普段、学園都市の学生が使う学生寮に来ていた。

オティヌスに連れられて世界中の色々なところを見て、その中にはもちろん寮もあったが、ここまでのサイズの物はなかった。

横の長さだけが100m以上の寮ならまだ何とか信じられる。しかし、高さも100m以上なのだからもう無理だった。

上条「建築のことなんか全然分かんないけど、こんだけ高くてでかいんだから普通に考えて建物自体の重さで潰れるんじゃないのか?」

オティヌス「学園都市に存在する物を外の基準や常識で考えるな。頭が痛くなるぞ」

上条の言うとおりこれだけ縦にも横にもでかいのなら自重で潰れてもおかしくない。

しかし、その無理を押し通すのが学園都市の科学技術なのだ。

オティヌス「学園都市に滞在する期間の宿はここだ、文句はあるか?」

上条「文句なんかないけど…何でここなんだ?お前ならどっかのホテルとかが良かったんじゃないのか?」

世界中をオティヌスに連れ回された上条だから分かる。

オティヌスは選ぶことができるなら少しでもいい方を選ぶ傾向があるのだ。

住んでいる寮生には悪いが、こんな普通の寮より、多少金がかかろうとどこかの高いホテルに泊まりたがるはずだ。

オティヌス「学園都市にあるホテルは大体泊まり尽くしたからな、そこから選んでも良かったんだが、せっかくだし趣向を変えてみたんだ」

上条「まぁ野宿とかじゃないだけいいけど」

泊まり尽くしたなんていうブルジョワ発言があったが無視する。

そこまで貧乏なわけでもないが質素な生活を送る上条には一生縁がない言葉だし、深く追求したくない言葉なのだ。

オティヌス「ちょうど開いている部屋があってな、そこを貸して貰ったんだ」

上条「どのへんなんだ?」

オティヌス「確か………44階の444号室だったかな?」

上条「不吉だなぁおいっ!!不幸な匂いがプンプンするぜ!!」







上条「……………中は普通だな」

オティヌス「どんなのを想像していたんだ?」

上条「扉が自動ドアだったり、床が動いてたり、小さいロボットが掃除してたりとかかな?」

オティヌス「そんな感じのホテルならあるぞ。一泊が日本円で20万くらいだが」

上条「普通って最高ゥ!!」

本当に44階の444号だった。

あまりにも不吉な番号だが気にしてもしょうがないと割り切る上条だったりする。

上条「つうかあの白い人は誰だったんだろうな、見た感じ結構…」

オティヌス「強そうだったか?」

上条「強いと思うよ、並の聖人クラスの魔術師でも笑いながら勝てるレベルの人だと思う」

オティヌス「ほぉ~随分と高評価だな」

いつの間に出したのか、座布団を数枚重ねてその上に座りながら答えるオティヌス。

早くもくつろぎモードである。

上条「オティヌスはあの白い人のこと知ってるのか?」

オティヌス「あぁ。ヤツは私を知らんだろうが、少なくとも私はヤツを知っている」

上条「不思議な関係だな、………ん?じゃあ名前も知ってるのか?教えてくれよ」

オティヌス「ヤツの方から名乗るまで私の方からヤツについて何か言うつもりはない」

この話はコレで終わりだと言わんばかりの両手を上に上げるオティヌス。

こうなったオティヌスは何を言っても何も言わないので、黙って次の言葉を待つことにする。

オティヌス「ん、ん~~。お前を紹介するヤツについてはあの飛行機の中で言ったとおりだ、だから探す人のことを話そう」

あの従来の飛行機はおろか、戦闘機でもあり得ない動きの超音速旅客機の中で、やはり上条はグレイプニルを切ってしまったので通常の飛び方をして貰い、

学園都市に着くまでの少しの間に上条を会わせる人についての話は済ませたのだ。

上条「そういえばまだ聞いてなかったな。一体誰を探してるんだ?また組織のメンバー探しか?」

オティヌス「いや今回の探すヤツは組織に入れるつもりはない。依頼みたいな感じだ。本音を言えば入れたいところだが戦争は起こしたくないんだ」

上条「戦争の引き金になるほどやばいヤツなのか…」

オティヌスの人探しの手伝いはよくしている。

戦闘が得意な魔術師だったり、物を作るのが得意な黒小人だったり、前科のある科学者だったりと様々だ。

今回もそういう感じだろうと思っていた上条だがどうやら違ったらしい。

オティヌス「ではまず私が調べた情報を言っていくぞ」

上条「おう」

オティヌスと向き合うようにして座る上条。その距離は10cmも離れていないが、今のこの二人の距離感はこれくらいなのだ。

オティヌス「第一に性別は”女”だ、ついでに年齢は14歳らしい」

上条「らしい?正確には分からなかったのか」

オティヌス「調べようと思えば調べられたんだが…別に大体の年齢が分かればいいかなと妥協したんだ」

上条「お前が妥協するなんて珍しいな。他の特徴は?」

オティヌス「長い銀髪とエメラルド色の瞳をしていて小柄だそうだ、そして衣服は”歩く教会”を常時着用しているらしい」

上条「歩く教会を着用?……まさか今回の探し人って」

嫌な予感がする上条。

そして、上条の嫌な予感は百%当たる。

オティヌス「誰だか分かったようだな。そうだ今回の探し人はIndex-Librorum-Prohibitorum、通称”禁書目録”だ」

  

   <歩く教会>


それは教会における必要最低限の機能を抽出した霊装であり、言い換えれば「服の形をした教会」である。

完璧に計算しつくされた刺繍や縫い方が魔術的意味を持ち、結界を構成しているらしい。その防御力は聖人クラスの魔術も完全に遮断・吸収すると言われている。

一着コレを作るだけで国家予算クラスの材料費が必要になることから、世界広しと言えど着ている人物は一人しかいない。

それがIndex-Librorum-Prohibitorum、通称”禁書目録(インデックス)”。イギリス清教に所属するシスターである。





上条「何でそんな魔術界の超重要人物がこんな科学の街にいるんだよ」

オティヌス「さぁな。今回はあくまで私も依頼された側だ。詳しいことは知らん」

上条やオティヌスは魔神や魔神の失敗作としては一部の人にしか知られていないので魔術界においての重要人物度はあまり高くない。

しかし、インデックスという少女は魔術界において、科学で例えるなら核兵器クラスの超重要人物なのである。

読んだだけで人を発狂させ、狂わせるという“原典”を10万3000冊を保管し、その全てを記憶していると言われるシスターなのだ。

イギリス清教がローマ教会などの他勢力や学園都市に対して優位な立場にいるのは、そのシスターのおかげと言っても過言ではないのである。


上条「歩く教会かぁ。まだ見たこと無いけどどんなのなんだろうな?」

オティヌス「私も実物はまだ見たことがないからよく知らないが、純白の布地に金の刺繍がしてある修道服らしいぞ」

上条「へぇ~あんなの?」

オティヌス「ん~~?そうそう、あんな……の………っ!!!??」

珍しくオティヌスの顔が驚愕に染まる。

上条が何気なく指を指すベランダの方を見れば何か布団のような物が引っかかっていたからだ。

純白の修道服のような形をしていて、金の刺繍も確かにある。

上条「………ねぇ、アレっぽくない?」

オティヌス「アレっぱいな。……………なんて言うかアレだな、コレは超幸運なんじゃないのか?」

上条「上条さんが行こうか?」

オティヌス「頼む」

おそろおそるベランダの方に進む上条を見守るオティヌス。

なんだかライオンに近づく兎と、それを応援するハムスターのようだ。

上条「あ~~もしもし、貴方は布団さんですか?」

30cmも離れていない距離まで行き、ついに上条は布団(?)に声をかけた。

??「お腹………」

喋った、布団では無いようだ。

上条「はい?」

??「お腹がすいたんだよ……何か食べ物くれると嬉しいな」

ギギギギッと音がしそうな速度で顔を回し、上条はオティヌスの方を振り返る。

上条「………………………オティヌス。ほんとにコイツ?」

オティヌス「顔写真とも合致する。間違いなくそいつだ」

再びギギギギッと音のしそうな速度で顔を回し、位置を元に戻す。

??「あっ。自己紹介がまだだったね。私の名前はイン…」

上条「知ってるよ」

少女の言葉を遮り、上条が言う。そして、オティヌスが次の言葉を繋いだ。

オティヌス「初めまして”禁書目録”。お前を助けに来てやったぞ」



物語が動き出した。

今回の投稿はコレで終わりです。

次回の投稿は3月の中旬頃になると思います。

遅くなりましたが投稿します。


インデックス「な、んで…この街の人が……私のことを、知ってるのかな?」

上条「なんでって言われてもなぁ~………。俺たちもお前と同じ側の住人だからかな」

インデックス「同じ………側の。住人?」

オティヌス「お前と同じ魔術サイドの人間と言うことだ。というか禁書目録、お前大丈夫なのか?声がかすれてるぞ」

先程からのインデックスの声には元気がない。

所々途切れていて聞き取るのが難しいくらいだ。

インデックス「もう………限界か、も……」

かすれる声でそう呟き、引っかかっていたベランダの柵から部屋側の方にインデックスは滑り落ちた。

上条「大丈夫か!?」

心配した上条がインデックスの所へ駆け寄ると、

グゥウ~~~~~~

という何とも可愛らしい音が聞こえた。

その音を立てたと思われるインデックス本人は

インデックス「スー………スー………」

上条「これって…」

オティヌス「寝てるな。限界を超えた空腹をこれ以上感じるのが嫌で意識を切ったんだろう」

言っていたとおり限界だったらしくインデックスは寝てしまった。

色々と聞きたかったり言いたいことがあったのだが、この状態ではしばらく無理だろう。

上条「どうする。インデックスが起きるの待つのか?」

オティヌス「無理矢理起こしてもいいがそれはそれで後が大変そうだ、待とう」

ベランダに横たわるインデックスの体を引きずり、部屋の中に入れながらオティヌスが言う。

引きずられているインデックスだが、全く起きる気配がない。熟睡しているらしい。

上条「でも起きたら起きたで腹は空いたままなんだから、また寝ちゃうんじゃないのか?」

オティヌス「なら、ちょっと空間移動してきてお前の家から食えそうな物ここに持ってこい」

上条「えっ、別にその辺のコンビニとかに行けばいいんじゃ……」

オティヌス「お前財布持ってるのか?貸してもいいが一分で9割の利子を付けるぞ」

上条「……言ってきます」

そう言って上条の姿がこの部屋から消える。

オティヌスに言われたとおり、上条の家であるオッレルス家に空間移動を使って食べ物を取りに行ったらしい。

今日来たばかりのこの部屋には食べ物なんて何もないし、朝いきなり誘拐されたから財布なんて持ってないのである。

オティヌス「さて、上条がいないこの間に私の用事を済ませるとするか」


上条の空間移動なら、学園都市のこの部屋からオッレルス家を往復するのにかかる時間は5分かそこらだろう。

食べ物を探す時間を含めても10分位だと考えられる。

ではその10分の間にオティヌスが済ませる用事とは何か?

それは、<掃除>と<閲覧>である。

オティヌス「まったく、プライバシーという物を知らないのかあの男は」

突如、部屋の中で小さいが爆発が連続して発生した。

爆発自体はとても小さく、空耳と思えるほどの音しか発生していなかったが部屋の中に無数にあった何かが確実に破壊された。

オティヌス「名称は滞空回線だったか?趣味の悪い物だ」

滞空回線(アンダーライン)

学園都市に5000万個ほどの数が散布している情報収集用の機械である。

大きさは70ナノミリメートルと極小だがその性能は抜群であり、学園都市の全ての情報を集めているといってもいい。

使用目的や使用者、その大きさなどの問題により一般には存在すら明らかになっていないもなのだがオティヌスは知っていたらしい。

オティヌス「見る必要なんて無いくせに、何でこんな物を使ってるんだ…あの男は」

どうせやることなどバレているだろうが、見られ続けるのは嫌らしい。

オティヌス「さてコレで掃除は終わりだ。次の用事を済まそう」

そう言ってオティヌスはインデックスの近くに寄っていく。

次の用事とは<原典の閲覧>だ。


オティヌス「10万3000冊の原典を保管していると聞いたが見当たらないな……。書庫の鍵でも持っていると言うことか?」

歩く教会のポケットなどを探してみるが鍵どころか何もなかった。

原典でなくとも、10万冊以上の書物を保管しているというのだから、隠し場所の鍵でも持っていると推測していたのだが当てが外れたらしい。

オティヌス「こいつ自身が鍵と言うことなのか?それとも………時間も少ないし面倒臭いな、考えるのはやめだ、直接抜き取ろう」

歩く教会の帽子をおろし、インデックスの頭に手を伸ばすオティヌス。

その手が置かれた瞬間、オティヌスの手とインデックスの頭から黒い光が溢れ出す。

オティヌス「どれだ?迎撃用システムが作動する前に終わらせたいのだが………」

オティヌスがしていることは、インデックスの頭の中に記憶されている原典の知識の抜き取りだ。

魔術の世界では記憶を操作する、消去する、上書きするなどの一般的な魔術が存在しているが、それの応用技術である記憶の抜き取りという魔術がある。

読んで字のごとく、その対象者の記憶を向き取って自分の物にするという魔術である。

オティヌスがインデックスを探すという依頼を受けた理由がコレをしたかったからなのだ。

オティヌス「あった、これか。………では頂くぞ禁書目録。この原典の知識を」

インデックスは原典を保管していると同時に記憶していると言われる魔術師である。

保管されている物が貰えればそれが一番良かったのだが、それができないならその記憶から引っ張り出すしかないのだ。

オティヌス「ん?少し毒にやられたか。まぁこれくらい料金としておくか」

そう言ってインデックスの頭から自分の手を引くオティヌス。

その手は毒されたように紫のような黒のような不気味な色で染まっているがあまり気にしていないようだ。

原典の持つ特有の毒にやられたらしい。

常人はおろか、凄腕の魔術師すら死に至るほどの激毒なのだが、オティヌス相手には効果が薄かったらしい。

オティヌス「ほっとけば治るしこのままでいいか、さて、そろそろ上条も戻って「呼んだ?」うぉっ!?「グボッ!?」」

ドゴンッ!!

という音を立てて戻ってきたばかりの上条の体が部屋の壁に叩きつけられる。

流石学園都市製の壁、強度も素晴らしい。

上条「な、ぜ、上条さんはいきなり殴られたのでしょうか?」

オティヌス「私を驚かせたお前が悪い」

上条「理不尽っ!?不幸だ………」


インデックス「うみゅ?何の音かな?」

オティヌス「起きたか、体調はどうだ禁書目録?」

インデックス「お腹は減ったままだけど大丈夫。……あれ?何か頭が軽くなった気がするんだよ?」

オティヌス「気のせいだろ」

上条が壁の叩き付けられた音でインデックスが起きたようだ。

その少し横には叩き付けられた上条が転がっているが二人とも気にしていないらしい。哀れだ。

オティヌス「それより禁書目録。お前腹が空いていると言っていたな。コイツが持ってきた物だが食べるか?」

インデックス「食べるっ!」

オティヌス「ということだ、出せ」

上条「上条さんへの謝罪はないんですね。コノヤロー」

そう言いながらも持ってきた食べ物床に置いていく上条。衛生面的に問題があるかもしれないが机がないのでそこは勘弁して貰いたい。

サンドイッチやフランスパン、ロールパンなど数種類のパンが並べられていく。

オティヌス「パンばかりだな……米はどうした米は。お前元・日本人だろう」

上条「元じゃなくてちゃん日本人です!つうか見た目百%日本人じゃないお前が何で米を食べたがるんだよ?」

オティヌス「前にお前が作ってくれた……こう、なんか……三角の米の塊?アレが意外と旨かったから」

上条「おにぎりのことか?じゃあ今度作ってやるから「ねーねー」ん、どうしたインデックス?」

手で三角の形のジェスチャーをするオティヌスからおにぎりのことを連想していた上条だったが、インデックスに呼ばれたので振り向いた。

インデックス「もっと欲しいんだよ」

上条「もう、ないだとっ!?」

オティヌス「10コ以上あったはずだよな?」

インデックス「私の食欲をなめてもらっちゃ困るんだよ。今の三倍は余裕なんだよ」

無い胸を張りながら自信満々に言うインデックス。

その小さな体の何処にそれだけの量が入るのか全く分からない。

インデックス「失礼なことを言われた気がするよ?」

オティヌス「知らん。今は我慢しておけ」

インデックス「え~~~~~~もっと食べたいんだよ、hungry me なんだよ」

オティヌス「変な英語を作るな。丸焼きになっていいなら話は別だがな」

上条「物騒なこといきなり言うなよオティちゃん……んっ!!??」」

オティヌス「オティちゃん言うな、蹴っ飛ばすぞ。それに事実だ。このまま部屋で食事をしていれば丸焼きだ」

上条「蹴ってから言うなよっ!!」

インデックス「あわわわわっ、大丈夫なのかな!?」

蹴っ飛ばすぞという一瞬前に既に上条を蹴っ飛ばしているオティヌス。口より手(足だけど)が早いとはこのことだろう。

ギリギリで防御が間に合ったがまたも壁まで飛んでいく。

上条「どうした~オティちゃ…オティヌス?………またですか」

振り返ってきたオティヌスの口角が怖いほど上がっていたので言い直す上条。そして何故か疲れた顔をする。

知っているからだ、オティヌスの口角が上がると何が起こるのか。そしてそれは

オティヌス「お前ももう気づいていたんだろう上条?客だ、出迎えようじゃないか」

自分に刃向かってくる敵を蹂躙するときだけだ。


オティヌス「そういえば戻ってくのが随分と早かったな。どうしたんだ?」

「出迎えようじゃないか」と言ったオティヌスに続き、近くにあった何もない空き地に移動してきて三人。

すると、不意にオティヌスが疑問に思ったことを上条に問いかけた。

上条「………子供がたくさんいたんですよ」

オティヌス「はぁ?子供?」

上条「なんか上条さんがお前に誘拐された後、探しに行ったオッレルスが人身売買の組織を潰して連れてきちゃったらしいんだよ」

オティヌス「あの馬鹿は朝っぱらから一体何をして……」

言っている途中で不思議なことに気がつく、

いつもなら、「そう言う自分だって朝っぱらから誘拐事件を起こしているくせに」と今頃大声で指摘してくる上条の声が聞こえてこない。

不思議に思って上条の方を向いてみると…

上条「子供怖い子供怖い子供怖いシルビア怖い子供怖い子供怖いシルビア怖い子供怖い子供怖いシルビア怖い子供怖い子供怖い子供怖い」

オティヌス「一体何があったんだっ!?」

メンタル面もかなり強いはずの上条が震え上がっている。

所々聞こえる「シルビア怖い」なら経験からギリギリ分かるが「子供怖い」とは一体何だろう?

インデックス「それもそれで気になるんだけどそれよりも私を解放して欲しいんだよっ!!」

オティヌスの肩で先程の上条のように担がれたインデックスが叫ぶ。

ジタバタと暴れ回って何とか逃れようとしているのだが、逃れられないので抵抗として大声で叫んでいるらしい。

インデックス「そもそも何で私は連れ出されたのっ!?説明をよーきゅーするんだよ!!」

オティヌス「すぐに分かるさ。そら、敵のお出ましだ」

暴れながらもオティヌスが向いている方向に目線を向けるとインデックスは沈黙した。

その視線の先には

??「一応最初に聞いておくけど、その肩に担いでいる彼女を大人しく僕に渡すつもりってある?」

自分を追っていた魔術師がいた。


オティヌス「YESと言ったらどうなるんだ?」

??「君たちには危害を加えないことを約束しよう。僕たちの目的はあくまで彼女だけだからね」

そう言いいながら魔術師はゆったりとした歩調で三人に近づいてくる。

身長は2m超えの長身痩躯で、方まで届く赤髪。

右目の下にはバーコードの形をした刺青があり、耳には大量のピアスをしている。

それだけならただの不良と判断しそうになるが、身に纏っている漆黒の神父服がそれを否定している。

??「ああ、自己紹介だけでもしておいた方がいいかな?僕の名前はステイル=マグヌス。見た目の通り神父だよ」

上条「ステイル…マグヌス……あっ、ルーンの魔術師か」

そう上条が呟いた途端、辺りの空気の質が変わった。

熱い見えない何かが重力と重なり、この空き地一帯を包み込んでいく。

ステイル「何故君のような学園都市の学生が僕のことを、ルーンのことを知っているのかな?」

いつの間にか上条達三人とステイルの距離は5mも無いほど縮まっていた。

2mを超える身長を持つステイルなら二歩かからずにつぶせる距離だ。

オティヌス「おいおい、魔力が漏れてるぞ。一般人が当てられたらどうする?}

ステイル「君もなのか…心配ないよ、人払いの術式はもうセットしてあるから。この空き地にはあと一時間、誰も訪れはしない」

その言葉を聞いた途端、担がれたままのインデックスが辺りを見回す。

今いる空き地はもちろん、そろそろ帰宅している生徒で溢れてもおかしいはずの道には誰もいない。

人払いの術式により、文字通り人が払われ、誰もこの空き地には近づいてこれないのだ。

そして、人払いの術式を確認したインデックスがステイルという魔術師を見ると

ステイル「もういいかな?あまり時間が無くてね」

ルーンという文字が刻まれた魔術を発動させるための紙を辺りにまき散らし、既に臨戦態勢に入っていた。

インデックス「逃げてっ!!」

インデックスが上条とオティヌスに向かって叫ぶ。

紙に書いてあるルーンの文字、そして追われていた時の経験から目の前にいる魔術師が発動するのは炎系統の魔術だと考えられる。

そして、その範囲は

インデックス「私を置いて速く逃げてっ!!あのルーンの書かれた紙の配置からするとこの空き地一帯が魔術の範囲なんだよっ!!」

上条「インデックスまで巻き込むつもりなのか?」

ステイル「うん?魔術について知っているくせに彼女の着ている歩く教会については知らないのかな?」

上条「あっ、なるほど」

インデックスからすれば、魔術が発動すれば一瞬で消し炭になるのに全く恐れず、逃げる素振りさえしない上条とオティヌスが不思議でたまらない。

確かに魔術を発動するステイル自身と、歩く教会を着ている自分ならなら、このレベルの炎の術くらいノーダメージで防げるが、この二人はそうはいかない。

魔術のことは知っているから防御魔術でも発動するんだと思っていたのだが発動のための準備すらしていなかった。

ステイル「彼女の言うとおり逃げた方がいいよ、発動こそまだしていないがこの魔術が発動すれば君達は消し炭になるからね」

オティヌス「炎系の魔術、ルーン、長身赤髪………やはり炎のルーン魔術師・ステイル=マグヌスで間違いないようだな」

ステイル「……同業者だったのかな?なら交渉の必要はないみたいだ」

上条「お前ってもしかして短気?カルシウム取ったら?」

交渉の余地なしと判断し、今すぐにでも魔術を発動させてインデックスと自分以外のこの空き地にある物を全て焼き尽くそうとするステイルだったが動きが止まった。

ステイル「それが遺言かな?僕は聖職者である神父だからね。最後の言葉くらい聞いてあげよう」

上条「ならあっちのビルの上にいるもう一人の方を呼んでくれよ、あっちの方がまだ話ができそうだ」

ステイル「ッ!?」

驚くステイル。確かに今回自分はインデックスを一人では追っていない。

もう一人、自分より格上のある友人と一緒に追っていたのだ。

しかし、そのもう一人はこの空き地から10km以上離れたビルの上からここを見ているはずである。

ここからそのビルは角度や距離的にも見えないし、そもそも肉眼での確認なんて不可能であるはずなのに、その方向を見つめる目の前の男がステイルには不気味に見えた。

ステイル「その必要はないし、お喋りはここまでにしよう。だけど最後にもう一度だけ聞いておく。彼女を渡せ」

オティヌス「その言い方じゃ問いじゃなくて命令だろ?」

オティヌスのその言葉を合図に、この空き地一体が範囲の魔術が発動した。

地面から歩く教会を着ているインデックスと使用者のステイル以外を燃やし尽くす火柱が爆裂する。

インデックス「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」

インデックスが爆炎の中で何か叫ぶが全く聞こえない

爆裂した火柱は100m以上も空に向かって伸びていき、空き地に存在していた物全てを一瞬で消し炭にした。。

これほど巨大な火柱が起これば街は大混乱になってもおかしくないが、人払いの術式が発動しているせいで誰もその火柱を認識することができない。

ステイル「少し火力が強すぎたかな?これじゃあ遺骨も残らないな」

いまだ燃え続ける火柱の中でステイルの声がする。

どうやら火柱の中の一部分だけ燃えていない箇所があるらしく、そこに立っているようだ。

摂氏1000度以上の火柱の中にいるのだから、例えその炎に当たっていなくても熱死してしまうと思われたが、言っていたとおり本人には効果がないようだった。

ステイル「さて、邪魔者は消えたことだし、君を回収させて貰うよインデ「ぬるいな」ッ!?」

パキィイィィィィイインッ!!

聞こえるはずのない声が聞こえ、金属同士をぶつけたような音がしたと思ったら、今の今まで燃え上がっていた火柱が一瞬にして消滅した。

聞こえるはずのない声が聞こえたことと、自分の魔術が一瞬で消滅したことで二重のショックを受けているステイルの目線の先には

上条「大丈夫かインデックス?」

燃やし尽くしたはずのツンツン頭の男と

オティヌス「私には聞かないのか?」

上条「聞く意味ないでしょ、オティヌスには」

消し炭にしたはずの金髪の女がインデックスを肩に担いだまま平然と立っていた。


インデックス「な、なんで?」

上条「いや、だってオティヌスにこのレベルの魔術なんて効かないし」

当たり前だろう、みたいな感じで返されてしまった。

むしろ何でそんな分かりきったことを聞くんだ?と言わんばかりの口調だった。

インデックス「そっ、そういうことじゃなくて。あれ、そういうことなのかな?…ああもうっ、そうじゃあなくてっ!!」

ステイル「………君たちは一体何者だ。どうやって僕の魔術を防いだ?」

頭の中で言いたいことがまとまらないインデックスを代弁してステイルが言う。

その問いかけてくる瞳には敵意と動揺が込められている。

上条「何者かと言われてもなぁ~。相手が相手だし言ってもいいのか?」

オティヌス「別に言ってもいいぞ。まぁ言う価値があるほどの相手には思えないが」

上条「何時も気になってるんだけどさぁ、何でオティヌスさんはそんなに上から目線なんでせうか?」

インデックス「っ!!前を見て!!」

何もなかったかのような様子でステイルという存在を無視し、会話するオティヌスと上条。

だがようやく肩から降ろされたインデックスの叫びがその会話を止めた。

ステイル「この炎剣の名は”吸血鬼殺しの紅十字”………」

見れば、ステイルの手には長さが軽く2mを超える炎の剣が握られていて、それを二人に向かって構えていた。

この技はステイルの得意な技であり、また、当たりさえすれば全てを焼き切るという絶対の自信を持っている技だった。

ステイル「さっきの技とは威力が違う。避けなきゃ死だ」

広範囲を攻撃するために威力が低い先程の火柱と違い、炎を一点に集めたこの技の威力は桁違いである。

水鉄砲は穴が小さい方が良く飛ぶ理論みたいな感じだ。

オティヌス「いいからさっさと来いよ、口だけ達者な不良神父。地獄を見せてやる………上条が」

上条「そこで上条さんなのっ!?そこはオティヌスなんじゃないの!?」

オティヌス「バトル関係はお前の土俵だろ。戦いの時は何時も一番最初に突っ込んで行ってるし」

上条「違うからな。何時も一番最初に上条さんが突っ込むのは余計な犠牲を出さないためだからな。それに戦いの基本は会話ですぅ~。と言うことで話をしようぜ!ステイル=マグヌス!!」

ステイル「ふざけたこと言うと燃やすぞ?そのウニ頭」

話し合いの余地はなかったらしい。

そして言い終わると同時にステイルはその足を踏み出し、その炎剣を上条に向かって振り下ろした。

インデックス「避けてっ!!」

叫ぶインデックスの声も空しく、、無慈悲にも上条に向かって振り下ろされる炎剣。

この距離なら避けられない、この速度なら躱せない、この温度なら触ることすらできない。

しかし、そういう絶対の自信を持って振り下ろしたのに。





上条「だからさぁ~話し合いをしようぜ?ステイル」





面倒臭そうに言う上条の左手が、その炎剣を軽々と受け止める。

今回の投稿は終了です。ちょっとしかなくてすみません。

感想ありがとうございます、投稿します。


ステイル「ッ!!」

思わず握っていた炎剣を手放し、上条から距離を取るステイル。

何とか距離を取って冷静になろうとしたステイルだったのだが、その頭の中は混乱で満たされていた。



躱せないはずだった。触ることさえできないはずだった。

燃え尽きているはずだった。焼き切ったはずだった。

自分のこの技で灰にできない物なんて存在しなかった。

なのに


インデックス「わ、私は夢でも見てるのかな?そ、それとも目が疲れてるのかな?」

上条「んー。どうしたインデックスー」

インデックス「………貴方って今その炎の剣を素手で受け止めてる?」

上条「そうだけど………、それがどうかしたか?」

インデックス「どうかしすぎてるんだよっ!!意味分かんないんだよっ!!」

そう言いながら目の前にいる男は、その受け止めていた炎剣を握りつぶす。


何故この男は軽々とこの炎剣を受け止めた?

なんで切られていない?どうして燃えていない?

そして

何故、そんな楽しそうに彼女と会話している?


上条「いやだって。こんな炎の剣振られたら受け止めるしかないだろ?なぁオティヌス」

オティヌス「そうだな。そんな炎の剣が振られてきたら受け止めるしか選択肢はないな」

インデックス「避けようよっ!……っていうか避けるって選択肢はないの!?」

戦いにおいて無駄なリスクを背負うべき行動はしない方がいい。

それは当たり前のでありる。

避けれる攻撃なら下手に受け止めるなんてリスクのあることはせず、避けることが正解のはずだ。

だが、上条はステイルのこの技を避けなかった。つまりそれは

ステイル「僕の技なんて避ける価値すらない………」

リスクを負わないと判断されたということだ。

そしてそのことは

ステイル「ふざ…けるな」

彼のこれまでの”彼女のため”の努力を否定することだ。

上条「悪いけど何か言ったか?コイツが五月蠅くて聞こえなかった」

インデックス「………もしかして貴方の言うコイツって私のことかな?」

上条「お前以外に誰がいるんだよ」

インデックス「ムキィィィイーー!!レディーに対する礼儀がなってないんだよっ!」

上条「レディーはそんな顔しませんことですよっ!!」

上条の言葉に怒ったのか、インデックスの顔が鬼のように怖くなる。

普段、リアルな鬼(誰とはいわないが)に色々されて耐性が付いているはずの上条が思わず後ずさる程の怖さだ。

インデックス「一応聞いておくけど、そんな顔ってどんな顔なのかな?」

上条「い、今のインデックスさんみたいな顔であります。ぐ、具体的に言うと、じ、地獄の鬼の百倍くらい怖い顔であります」

インデックス「噛み砕き決定なんだよっ!!」

怒りが頂点に達したようで、今、まさに上条に飛びかかろうとするインデックスだったが

オティヌス「止まれ禁書目録」

インデックス「うみゃ!?何するのかなっ!?」

後ろからオティヌスに頭を捕まれて急停止させられた。

オティヌス「何するのかはお前だ禁書目録、それに上条、今はそんな「Fortis931……」何?なんと言った?」

珍しくオティヌスが説教を始めようとしたところで、ステイルの口から言葉が発せられた。

聞き取ることは出来なかったが振り返ってステイルの姿を見てみると、先程とは違った雰囲気を纏っていた。

ステイル「Fortis931…”我が名が最強である理由をここに証明する”僕の魔法名だよ。その魔法名に誓い、今から君たちを……殺す」

もはや燃えかすしか残っていないこの空き地一帯に、自らの持つ全てルーンが書かれたカードをまき散らし、配置していく。

オティヌス「やっと本気で来るのか。まぁ本気だろうと何だろうとお前ごときの力では私もこの男も倒せんがな」

まるでそれが意志を持っているかのように狙った配置にセットされていくカードを見ながらオティヌスが言う。

その手には未だ上条に飛びかかろうとするインデックスが抱えられたままなので、なんか格好が悪い。

ついでに上条は抱えられながらガルルルッと睨んでくるインデックスに脅えている。更に格好が悪い。

ステイル「本気?倒す?何を言ってるんだい」

カードの配置が終わったのか、姿勢を整えたステイルがこちらを向きながら言う。

その表情には、一瞬前まであった怒りや動揺などの感情が全く感じられない。

ステイル「今から僕が君たちに向けるのは本気じゃなくて殺す気きだし、倒すんじゃんくて……」

むしろ余裕すら感じる程だ。

これから発動する自分の魔術によほどの自信があるのだろう。

ステイル「塵一つ残らず燃やし尽くすんだから」

途端、配置されたカードからカードへ光の線が繋がれ始め、一つの巨大な魔方陣が完成した。

そして、その魔方陣の中心に立つステイルを背に

ステイル「顕現しろ。”魔女狩りの王(イノケンティウス)”」

爆炎を巻き上げ、紅蓮の炎を纏う10メートルを余裕に越す炎の巨人が現れた。


魔女狩りの王と呼ばれた炎の巨人が現れた途端、辺りの空気の温度が5度くらい上昇した。

そしてさらに、その巨人の体を纏っている紅蓮の炎は、既に燃えかすとなっている空き地の大地を塵に変えていく。

オティヌス「ほぉ~、さすが天才魔術師と言われるだけあるな。やるじゃないか」

自分より10倍以上大きい炎の巨人を見上げながらオティヌスが言う。

抱えられたインデックスが、そんな事言ってる場合じゃないと講義の声を上げているが完全に無視している。

上条「かなりレベルの高い魔術だよな…教皇クラスくらいあるんじゃないのか?」

そして上条は、さっきまでインデックスに脅えていたのにいつの間にかいつもの調子を取り戻し、冷静にステイルの“魔女狩りの王”を観察している。

そんな二人の余裕の態度が、ステイルを更に怒らせる。

ステイル「コレを見てそんなに余裕の態度を取ってる人間なんて初めて見たよ」

そう言って、ステイルが右腕を上から下え振り下ろす動作をすると、



ドガァァアアアアアアッンン!!



鼓膜が破れるんじゃないかと思うくらいの爆音が鳴り響き、核爆弾でも爆発したんじゃないかと思う程の衝撃が発生した。


オティヌス「なるほど、攻撃特化型の魔術というわけか」

インデックス「あわわわわ」

上条「…直撃したらさすがの上条さんでも危ないんじゃないの?、これ」

炎の巨人の片腕が振り下ろされ、既に燃えかすしか残っていない空き地を地割れで割れたかのように殴り割った。

追撃が来るかと炎の巨人を見上げる上条とオティヌスだったが、動きは止まっている。

どうやら力の誇示のための行動だったらしい。

ステイル「よく避けたね。直撃したと思ってたんだけど」

未だ魔方陣の中心に立ったままのステイルから声が掛けられる。

もはや自分が動くまでもないという余裕の表れなのだろう。

オティヌス「確かに攻撃力は高いが速度が話にならんな、当たる方が難しいんじゃないか?」

距離を取りつつも挑発的な態度を突オティヌス。

対するステイルだが、この状況では挑発しかできないのだろうと推測し、更に余裕の表情になる。

ステイル「それは僕も頭を悩ませている改善点でね。まぁ魔方陣の中から出れないって問題もあるけど、掠りさえすればそれで終わりだからね」

オティヌス「なら特別にもう一つ改善点を教えてやろう」

ニタァっという擬音が滅茶苦茶に合う笑顔でオティヌスが言う。

この状況でそんな笑顔をするオティヌスに苛立ちを覚えながらもステイルは聞き返す。

ステイル「言ってみなよ」

オティヌス「その大きさだ、的にしてくれと言っているようにしか見えんぞ。………やれ上条」

上条「どうせ上条さんなんですね…コンチクショー!!」

そんなふざけた言葉を叫びながら上条は自分の右拳をその炎の巨人に向けて真っ直ぐに打つ。

当たり前の事だが上条と魔女狩りの王と呼ばれる炎の巨人の距離は10m以上離れており、その右拳は届いてすらいない。

なのに、


ギュィィィイイイイインンッ!!


ステイル「は?」

インデックス「え?ええ?えええぇぇぇえええっ!!??」

オテォヌス「上出来だ」

何時もの甲高い金属音とは違い、気味の悪い不協和音を奏で、魔女狩りの王の上半身が消滅した。


インデックス「えっ?ちょっと待って。貴方は一体今何をしたの!?」

上半身が消え、足と腹だけしか残っていない魔女狩りの王と上条を交互に見ながらインデックスが大声で言う。

見られて質問されている上条だが、拳を打ち出したポーズのまま固まっている。

しかし、聞こえてはいたようで、

上条「ぶん殴ったんだよ。見てなかったのか?」

インデックス「届いてなかったよねっ!?」

そう、上条は拳を打ち出しこそしたが全く届いていなかったはずだ。

どこぞの海賊王を目指している麦わら帽子の船長ではないのだから、拳が伸びるわけなんて無いのである。

ならば魔術で攻撃したと考えられるが、インデックスの持つ魔術の知識の中には、あんなふざけたやり方であのレベルの魔術を消滅させる魔術など記憶されてい

ない。

だから不思議でならない。

上条「ふっ、良いことを教えてやろうインデックス。………上条さんの拳に射程範囲なんて下らない物は存在しないのですよ」

インデックス「………貴方は頭がおかしいのかな?それとも私の頭がおかしいのかな?」

上条「その気になれば宇宙にだって届くんだぜ?」

インデックス「聞いてねぇーんだよ!!つうか知らねぇんだよ!意味分かんねーしっ!!」

オティヌス「どうどう落ち着け禁書目録。キャラがブレまくりだぞ」

インデックス「私は犬じゃねぇーしっ!!」

力強く大地を踏み、その白く小さな人差し指を上条に向けながらインデックスが叫ぶ。

ここまでキャラがぶれると色々と面倒なのでオティヌスが押さえに向かう。

だが、

オティヌス「っ、上条っ!!」

上条「分かってるよっ!!」

インデックス「聞いてるの!?無視しないでっ………あわわっ!?」

いきなりオティヌスが叫ぶと同時に、尚も叫び続けるインデックスを上条が抱きかかえ、その場から橫へ飛ぶ。

すると、先程まで上条とインデックスがいた位置に、


ドガァァアアアアアアッンン!!


またも、炎の腕が振り下ろされ、空き地に新たな地割れの傷を刻んだ。


上条に抱えられ、最初は異性に抱えられる恥ずかしさから叫び散らそうと思っていたインデックスだが、その口は驚愕で開ききり、次の言葉を発すことができない。

なぜなら

ステイル「やれやれ。まさかあんなふざけたやり方で僕の魔女狩りの王の60%以上を消滅させるとはね。冗談抜きで驚いたよ。まぁ……」

そう言うステイルの後ろに

ステイル「もう回復したけどね」

上条が消滅させたはずの上半身を復活させた魔女狩りの王が、顕現した時と変わらない姿で立ち、先程まで上条とインデックスがいた位置にその巨大な腕を振り
下ろしていた。

オティヌス「なるほど、攻撃特化型魔術ではなく防御型魔術で、さらに自動再生防御機能搭載型魔術だった訳か」

上条「………あのーオティヌスさん、もうちょっと分かりやすく言ってくれませんか?」

インデックスを抱え右に飛んだ上条が、左に飛び、冷静に魔女狩りの王を解析するオティヌスに言う。

オティヌス「推定3000度を越える炎の体から繰り出される物理攻撃から攻撃型の魔術と推測していたが違ったらしい。この魔術は攻撃型なんかではなく…」

インデックス「防御型なんだよ」

抱えられたインデックスから声が上がる。

そして、説明するのが面倒くさいのか、上条への説明をオティヌスはインデックスに譲った。

上条「防御型?いや、でも結構攻撃力あるぞ」

そう言って、魔女狩りの王が腕の一降りで起こした地割れを見る。

ここまで攻撃力に特化した魔術は、上条の記憶する限りでは10もない。

インデックス「確かにすごい攻撃力だよ、でも考えてみて。この攻撃力を生み出してる本体はどうなってるの?」

上条「………すげー熱そうに燃えてるな」

インデックス「そう、その燃える体が攻撃力を上昇させていると同時に、触ることが出来ない防御力を生み出してるんだよ。それに…」

上条「自動再生機能が付いてる」

そう、再生力とは=で防御力なのである。

いくら攻撃され、崩れ去ろうと元の姿に再生するならそれは立派に防御力と称して問題ない。

超高熱により触れる物全てを溶解・燃焼させる攻撃力。

そして触れずに破壊できたとして攻撃力はそのままに再生可能な防御力。

それが

ステイル「ご名答、では改めて言わせてもらおう。コレが僕の防御兼攻撃特化型再生機能搭載魔術”魔女狩りの王”だよ」

上条「長ったらしいんだよ馬鹿野郎っ!!」

上条のその言葉を合図に、再びその右腕が上条とインデックスに、左腕がオティヌスに振り下ろされる。



ステイル「この一撃で終わりだ!」

いつの間にか咥えていた煙草を吐き出し、ステイルが勝利宣言する。

上条と呼ばれる男も、オティヌスと呼ばれる女も魔女狩りの王の攻撃は全て”避けている”

つまりそれは「魔女狩りの王の攻撃は危険と判断している」というだ。

そして

ステイル「避けようとしても無駄だ、今度の一撃は確実に君たちに当たるよ」

先程の攻撃から二人の移動速度を割り出し、今度の攻撃はそれを越す速度で放っている。

最初の一撃もさっきの一撃も、この確実に当てる一発のためだけにワザと遅く放っていたのだ。

上条「うぉ!?さっきよりはえぇ!?」

インデックス「きゃーーーーー!!」

オティヌス「……………」

ステイル「ああ、安心して良いよインデックス。この魔女狩りの王の攻撃は君には効果がないように設定してあるから」

そして、先程と同じ爆音を二度響かせ、魔女狩りの王の両腕が振り下ろされた。

ステイル「魔女狩りの王に負けることは恥ではない」

腕が振り下ろされた場所を見つめながらステイルが言う。

そして、その足はインデックスがいるであろう場所へと進んでいく。

ステイル「一撃で60%以上消滅させたことは確かに驚いたよ、だけど結局、この魔女狩りの王の攻撃力と防御力の前では無に等しかったのさ」

その足は止まった。

そして振り下ろされていた右腕が持ち上がり、その下にいる人物をステイルに見せる。

ステイル「そうは思わないかい?インデックス」

インデックス「………………」

インデックスは無言だ。

無言のまま辺りを見渡し、その後、自分の近くの土を掘り始めた。

ステイル「無駄だよ。見て分かるだろう、骨の一個すら残らず彼も彼女も燃え尽きたのさ」

立ち上がり、今度は左腕が振り下ろされていた地面の方へ行き、辺りを見渡した後、またもその近くの土を掘り始める。

ステイル「………やめてくれ」

尚も土を掘り続けるインデックスの腕をステイルが掴み上げる。

見れば、爪は欠け、所々切れたのか血が滴り、綺麗だった白い手は土と血の色で染まっていた。

インデックス「……………生きてるよ。二人とも生きてるんだよ。早く助けてあげないと」

ステイルの手を振り払い、血まみれ土まみれの手でまた土を掘り始めるインデックス。

その姿を見るステイルの手は、血がにじむ程堅く握られ、その顔は苦悶に満ちていた。

ステイル「………今の君に言っても分からないかもしれない、だけどもう一度言おう、そして誓おう」




ステイル「たとえ君は全てを忘れてしまうとしても、僕は何一つ忘れずに君のために生きて死ぬ」


    「君を害する物があれば何だろうが誰だろうが燃やし、君を守り、喜んで罪の十字架を背負おう」


インデックスはその言葉を、誓いを聞き一瞬だけ動きが止まる。

そしてステイルは、その手を動きが止まったインデックスの肩に手を置き

ステイル「Index-Librorum-Prohibitorum…禁書目録、君を保護させてもら「喜んで十字架を背負うだって?」ッ!!??」




??「なら」

ステイル「なっ!誰だっ!!」

インデックス「この声っ!」

どこからら声が響く。

聞こえるはずのない声が、

驚きからステイルは瞬きをしてしまった。そして、次に目を開けた瞬間に見た物は

??「ロリコンと完全敗北って文字が刻まれた十字架でも背負ってろっ!この燃焼系神父っ!!}。

ステイル「ばっ、馬鹿なぁぁあああああっ!!」

インデックスをかばうように立つ、焼き殺したはずの男の拳だった。

当然避けられるはずもなく10m以上吹っ飛んでいくステイル。その勢いは、空き地の外にある民家の壁にぶつかることでようやく止まった。

ステイル「ぼ、僕は、君を…………うっ」

何かを喋ろうとしたらしいが気絶するステイル。

使用者が気絶して魔力の供給が止まったためなのか、魔女狩りの王は今度こそ消滅した。

そして、その殴り飛ばした拳の主は…

インデックス「ウニ頭っ!!」

ウニ頭「上条さんですよっ!?ウニ頭って誰ぇ!?」

オティヌス「お前以外に誰かいうるのか?ウニ頭って……」

ウニ頭こと、上条当麻だった。


インデックス「無事だったの!?」

上条「まあな。まぁこんなこと……」

インデックス「貴方じゃないんだよ」

上条「酷い!?」

そい言いつつ、オティヌスに飛びつくインデックス。

捨てられた子犬のような上条の目線は完全に無視している。

オティヌス「おっおっ!?なっなんだっ!?」

インデックス「………良かったんだよ。ホントに死んじゃったと思ったんだよ」

いきなり抱きつかれ驚くオティヌスだったが、本気で心配していたらしく、目尻に涙を浮かべながら無事を喜ぶインデックスを見て

オティヌス「まぁ、その、何だ。しっ、心配かけたな」

彼女にしては珍しく、素直な気持ちを述べた。

その反則的な強さ故から、滅多に他人に心配されることがないオティヌスだったので、こういった経験に慣れていないのだ。

インデックス「どうやってあの炎の腕を躱したの?」

オティヌス「ああ、それは……なんだその目と顔と髪は」

上条「いやー、オティヌスが純粋に嬉しそうなのって久しぶりに見るからなんか俺まで嬉しくってな…って目と顔は分かるけど髪って何!?」

見れば、まるでわが子に初めて名前を呼んでもらえた時の親のような顔でオティヌスを見ているヤツがいた。

というか上条だった。

オティヌス「一度離せ禁書「インデックス!!」…インデックス、あの馬鹿を殴り飛ばすから」

言っていることは同じなのだがオティヌスの禁書目録呼びがインデックス呼びに変わった瞬間だった。

上条「いや離すなインデックス!せっかく助かった上条さんの命が再び危険になる恐れがあるっ!!」

インデックス「う~ん。ウニ頭のことはどうでもいいんだけど」

上条「どうでもいいって言うなよっ!!つうか何回でも言うぞ、俺の名前は上条当麻だ」

インデックス「とうまのことはどうでもいいんだけど、オティヌスの抱き心地が気持ちいいから離さないであげるんだよ」

そう言って両腕をオティヌスの後ろに回し、更に抱きつくインデックス。

すると、

オティヌス「/////////」

上条「おおーオティヌスの顔が今まで見たことがないくらい嬉しそうだ。つうかすげぇ真っ赤だ」

恥ずかしさと嬉しさが頂点に達したらしく、オティヌスの顔がとなりにリンゴやトマトを並べても遜色ない程真っ赤に染まった。

普段は大理石のように美しく、そして輝く白い肌を持つオティヌスなので色の違いが分かりやすいのだ。

オティヌス「は……な…せ///」

インデックス「や~なんだよ~♪」

上条「今度カメラでも買うか?あ、携帯があればいいのか」

今の今まで戦いをしていたとは思えない程の柔らかい状況になった。

このままほんわかした雰囲気でいけると思ったが、



??「羨ま……じゃなかった。コホンッ、インデックスを渡して下さい」



そうはいかなかった。

上条がさっき言っていたもう一人の魔術師…敵が襲来した。


インデックス「あっ貴方は……」

??「………そう私は」

オティヌスに抱きついていたインデックスがその両目をカッと見開き、現れた敵を見つめる。

その一瞬を付き、オティヌスはインデックスから脱出しその敵を正面から見た。

そしてコンマ一秒かからず、この敵を形容するのに相応しい言葉を見つける。

オティヌス「痴女だな」

上条「ナイスファッションだな」

言い終わった上条の顔面にオティヌスの裏拳が飛び、更にインデックスの無言パンチが鳩尾にクリティカルヒットする。

ナイスコンビネーションだ。

そして、一仕事終えたたぜ、と言う顔で無言のアイコンタクトをし、もう一度現れた敵を見てみた。すると、

??「違いますっ!コレはそういう術式の服装なんです!!」

顔を真っ赤にしながら叫ぶ、ジーンズの片方は太腿の際どい所まで切断して露出し、Tシャツの片方の裾を根元まで切断している長身でスタイルのいい痴女(美女)がいた。


今回の投稿はコレで終わりです。
次の投稿は4月の10日迄に出来るよう頑張ります

すみません。頑張って結構書いていたんですけど保存してなかったみたいで最初の所以外消えちゃいました。

何とか内容は覚えているんですけど、それを書き直してたら寝落ちすると思うので、今回は残ったところだけの投稿になります。


上条「不良神父の次は美人痴女って……何なの、今日の学園都市は変態と変人のバーゲンセール中なの?」

オティヌス「どっちが変態でどっちが変人なんだ?」

上条「不良神父が変人で美人痴女が変態」

??「…………あなた達の馬鹿漫才につきあうつもりはありません、インデックスを保護させてもらいます」

そう言って敵魔術師は持っていた刀の柄を握りしめる。

服装が衝撃的すぎて見落としていたが、どうやら刀、それも日本刀を持っていたらしい。

??「ステイルからも言われていると思いますが、もう一度だけ私も言いましょう、インデックスをこちらに渡して下さい」

オティヌス「ほぉ~、東洋の聖人は随分とお優しいことだな」

??「………私を知っているのですか」

一瞬驚いたような表情をするがすぐに凜とした表情に戻る。

精神的にも中々強い魔術師のようだ。

オティヌス「名前は神裂火織でよかったか?」

神裂「ええそうです。私の名前は神裂火織、そして貴方が言うとおり”聖人”です」

<聖人>魔術の世界において20人にも満たない人間を越えた力を持つ魔術師。

その速さは音より速く、その力は大地を割ると言われる程の存在である。

さっきまで戦っていたステイルとは別次元の強さを持った相手だ。


上条「聖人ねぇ」

空気が緊張で張り詰めていく中、何とも間の抜けた声で上条がつぶやく。

今の上条の家族であるシルビアも聖人であるが、その人間を越えた力はオッレルスのお仕置きでしか使われたところを見たことがない。

なので上条にとって聖人の凄さがうまくイメージできないらしい。

神裂「私が聖人と知っているのなら話は早いですね。無駄な戦いはしたくありません、ですからインデックスを「優しいんだな」…何が言いたいんですか?」

上条とオティヌスを普通の魔術師と考えている神裂は、聖人である自分との戦いは無駄でしかないという警告をするつもりだったのだが、それをオティヌスがを遮る。

オティヌス「いや、何度も言うようだが本当に東洋の聖人は優しいんだと実感したんだよ」

神裂「私は…優しくなんかありません」

刀に置いた手を下げ、俯き、何かを後悔するように神裂は言う。

だが、そんな神裂にオティヌスはしてはいけない追い打ちをする。

オティヌス「そうだな、自分の足手まといだと理解した途端、世話になっていた弱小組織…天草なんとかだったか?を捨てるような聖人だもんな」

オティヌスが喋り終わった途端、目の前にいたはずの神裂の姿が消える。

そして、

神裂「黙れど素人がっ!お前に私の何が分かるっ!!」

オティヌスの背後で怒りの表情をし、音速を超えた速度で拳を振り抜く聖人・神裂火織がいた。




何度も言うようだが聖人の身体能力は人間を遙かに超えている。

走る速度は音速を楽々と越え、

軽く跳ぼうとしただけで100mは余裕に過ぎ、

反射神経はライフルの弾ですら至近距離で交わせる程だ。

そして、そんな肉体を持つ聖人の攻撃力は地球上最強である。

本気の聖人の一発でも喰らえば、全ての生物はただの肉界になる。



「聖人は聖人でしか止められない」

それが魔術の世界での常識だ。


神裂「っ!」

オティヌスの無防備な背中と自分の拳がとの距離があと5cmを切ったところで神裂は冷静さを取り戻した。

(神裂「まずい、このままだと彼女を…」)

いくら敵対する魔術師とはいえ殺すつもりはない。だが、このまま自分の拳が振り抜かれれば確実にその命を奪ってしまう。

急いで自分の拳を引っ込めようとする神裂だったが、

(神裂「まっ、間に合わないっ!?」)

怒り我を忘れ、滅多に出さない全力を出したせいなのか、拳を戻そうとする力より拳を振り抜こうとする力の方が強いらしく止まらない。

(神裂「な、なら狙いを変えるっ!」)

今攻撃に使っていない筋肉を無理矢理動かすことで、体のバランスや重心を狂わせ狙いをそらす。

ただの人間なら絶対に出来ない芸当だ。だが聖人である神裂ならできる。

(神裂「よし、なんとかそれた、後は体勢を立て直すだけ」)

オティヌスの背中の中心に直撃のコースだった拳は、そこから右に少しそれ何もないところに向かって進んでいく。

後は心の中で考えているとおり、体勢を立て直そうとした神裂だったが。

神裂「なっ!?」




オティヌス「おいおい待てよ、聖人の本気の一撃を喰らうという貴重な経験を私にさせないつもりか?」




ついてこれるはずのない聖人の攻撃速度についてきたオティヌスが、軌道が変わった神裂の拳の狙う先に自分の右手を差し出し、そして



当てさせた。


全てが黒く焼け焦げた学園都市のある空き地で、四人の人間が固まっていた。

一人目は驚愕に口を広げ、

二人目は茶化すように口笛を吹き、

三人目は不安定な体勢で拳を振り抜いたまま固まり

そして最後の一人は

オティヌス「フム、やはり私は聖人の本気の一撃だろうと止められるようだな」

背中を見せたまま、三人目の振り抜かれた拳を片手で受け止めていた。

オティヌス「分かっていたことだがこれで確認が出来た、礼を言うぞ東洋の聖人」

何とも軽い調子でオティヌスが神裂に向けて言う。

対する神裂だが、驚愕なのか動揺なのか、その体は完全に停止している。

上条「どうだったオティヌス。聖人の本気の一撃って」

オティヌス「予想より威力が高かったが誤差の範囲だ、これなら不意打ちでされようと十分対応できる、さて」

「もう興味は失せた」と言わんばかりの態度でオティヌスは神裂の方を見る。

すると、ようやく体の硬直が溶けたのか、神裂が口を開く。

神裂「あ、貴方達は一体何者なんですか?」

インデックス「わ、私も知りたいんだよ」

神裂に便乗してインデックスも言う。

禁書目録として、そして魔術師としてこの二人のことをちゃんと知りたいと思ったからだ。

オティヌス「そうだな、教えてやってもいいが…タダで教えるのもつまらん、だから条件を出そう」

先程と同じようなニタァァっという効果音がぴったりの笑顔をしながらオティヌスが言う。

その笑顔に引く上条とインデックスだが、かまわずに神裂はオティヌスにその条件を聞く。

そして、これまでの付き合いからオティヌスがこんな笑顔をする時は決まって大変なことが起こると知っている上条は、インデックスの手を引き二人から距離を取る。

神裂「条件?一体それは」

オティヌス「なぁに簡単だ。ただ……」

神裂「ただ?」

オティヌス「私に魔術無しの肉弾戦で勝つだけだ。そしたら教えてやるしオマケでインデックスも渡してやる」

失敗作魔神VS聖人……化物対人間の戦いが始まる。



無事だったのはこれだけです。近いうちに消えたところも投稿したいと思います。それでは今回の投稿を終わります。

はよ(ノシ 'ω')ノシ バンバン

はよ(ノシ 'ω')ノシ バンバン

はよ(ノシ 'ω')ノシ バンバン

はよ(ノシ 'ω')ノシ バンバン

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年05月13日 (火) 21:03:58   ID: cN1Vx9Yb

最高です!

2 :  SS好きの774さん   2014年05月15日 (木) 18:14:12   ID: rk3wXGPS

続き書いてください!

3 :  SS好きの774さん   2014年05月17日 (土) 17:59:55   ID: 1mMSBPKu

4 :  SS好きの774さん   2014年05月18日 (日) 01:56:59   ID: WITiZVNd

面白い‼

5 :  SS好きの774さん   2014年05月18日 (日) 17:56:36   ID: XimI83e_

面白い!つまんねぇとか言ってる奴はROMってろよ

6 :  SS好きの774さん   2014年05月20日 (火) 17:00:48   ID: Za5a9teT

>>5
人それぞれ好みがあるんだから、むやみやたらと自分が気に入ってる作品に対してあまり好感度に思ってない人を貶すのはやめろよ。わざと低評価付けてる人はまだしも、本当に素直な気持ちで評価してる人の事考えたら?お前みたいな奴のコメント見たら気分悪くなるわ。自分の考え方が全部正しいと思ってるガキじゃねえだろ。

7 :  SS好きの774さん   2014年05月20日 (火) 17:06:30   ID: lD3-m5rT

続きお願いします!

8 :  SS好きの774さん   2014年05月21日 (水) 06:39:50   ID: jHmkk6vH

続きお願いします!

9 :  SS好きの774さん   2014年05月21日 (水) 23:58:01   ID: EtWiA5rU

続き待ち♪

10 :  SS好きの774さん   2014年05月23日 (金) 23:02:05   ID: QvZUOFjZ

☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆

11 :  SS好きの774さん   2014年05月25日 (日) 13:16:38   ID: J2_u59oR

続きお願いします!

12 :  SS好きの774さん   2014年05月26日 (月) 23:47:50   ID: EWdG734u

まだですか?

13 :  SS好きの774さん   2014年05月27日 (火) 09:41:19   ID: PNVyO11M

久々に良作を見つけた。続きまだですか?

14 :  SS好きの774さん   2014年05月27日 (火) 23:25:53   ID: _OyETyGe

続きを...

15 :  SS好きの774さん   2014年05月29日 (木) 00:20:19   ID: aBS15eri

たまらなく、おもしろいでせう

16 :  SS好きの774さん   2014年05月30日 (金) 08:07:53   ID: XDG_WJSL

禁書厨の作品か……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………

17 :  SS好きの774さん   2014年05月30日 (金) 23:08:08   ID: t_nPDqMV

頼む!早く続きを!

18 :  SS好きの774さん   2014年06月11日 (水) 22:13:27   ID: J7pDfXr4

続き書いてください!

19 :  SS好きの774さん   2014年06月13日 (金) 21:15:56   ID: TLxuAdz1

やべ、超面白い
続き期待

20 :  作者です   2014年06月16日 (月) 22:29:10   ID: bY5aOt-A

信じてもらえないかもしれませんが作者本人です。

感想ありがとうございます。嬉しいです。
基本、書けるのが週末だけになっちゃったので土日に投稿します。

まだまだ続ける予定なので末永くお付き合いください。

21 :  とある永遠の発情鬼   2014年06月16日 (月) 22:46:37   ID: flG01eau

オモローw続きはよはよー

22 :  作者です   2014年06月19日 (木) 21:42:10   ID: fdMdXZCY

信じてもらえないかもしれませんがまたまた作者本人です。明日にでも投下できるかもです!頑張ります!

23 :  SS好きの774さん   2014年06月20日 (金) 21:41:17   ID: PbBafT5O

頑張~~

24 :  SS好きの774さん   2014年06月21日 (土) 00:11:08   ID: lRztjG2Q

面白い❗️

25 :  SS好きの774さん   2014年06月21日 (土) 05:52:18   ID: jta7rDQU

毎週楽しみにしてます!

26 :  SS好きの774さん   2014年06月22日 (日) 15:03:55   ID: l_xu1Js4

大丈夫だよ>>6さん。>>5 みたいな奴に限って本当にROMってるからwwwww自分で自分の首絞めてる只のDQNだからwwwww

27 :  SS好きの774さん   2014年06月22日 (日) 16:43:58   ID: l_xu1Js4

むしろ>>5みたいな奴が荒らしに余計な刺激を与える。油に余計な火種をばらまくのと同じ。確かに荒らしを許す道理も理由もないが、自分達がまず気持ちに余裕を持てる存在にならなければ何をしても絶対に全部無駄になる。まずこちらが成長する事が一番大事なのでは??

28 :  SS好きの774さん   2014年06月25日 (水) 02:14:40   ID: U22lYUgQ

おもしろいよ?おもしろいけどさ…
ヴァリアン…(白目)

29 :  SS好きの774さん   2014年06月29日 (日) 21:14:53   ID: zCgGhe2T

中もこっちも結構騒いでるな…

30 :  SS好きの774さん   2014年06月30日 (月) 00:18:21   ID: n12yvGFW

続き楽しみ

31 :  SS好きの774さん   2014年07月01日 (火) 07:49:52   ID: Z1FE0tyh

信者もこれなら荒らしと変わらないな。

32 :  SS好きの774さん   2014年07月03日 (木) 17:17:29   ID: nLQ1cJmW

ヴァリアン・・・・?

33 :  SS好きの774さん   2014年07月03日 (木) 23:14:58   ID: knQSp6ZF

続きが楽しみです。なんかシルビアがついてきたwww

34 :  SS好きの774さん   2014年07月04日 (金) 22:05:39   ID: Gz9qLTWp

*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .。.:*・゜゚・*

35 :  SS好きの774さん   2014年07月05日 (土) 13:37:27   ID: WZlIDRz-

上条が大人になった時には相当みんなのフラグがたてられてると思うな〜( ̄▽ ̄)(あとヴァリアンじゃなくてヴィリアンだと思う( ̄▽ ̄))

36 :  SS好きの774さん   2014年07月07日 (月) 15:07:24   ID: BvOzAR6s

ヴァリアンとかヴィリアンとかうぜぇんだよ。作者さんがちゃんと謝罪してんだからもう触れるなや。荒らしかお前らは。

37 :  SS好きの774さん   2014年07月09日 (水) 12:23:08   ID: X5QxZMen

クセのあるssには必然的に屑が集る。

38 :  SS好きの774さん   2014年07月09日 (水) 18:02:45   ID: oW1-Uel3

なんか、斬新

39 :  SS好きの774さん   2014年07月20日 (日) 20:13:26   ID: dBHy5Qv7

続き待ってます!

40 :  SS好きの774さん   2014年07月21日 (月) 23:13:00   ID: lFEmwr-s

続き見たいです

41 :  SS好きの774さん   2014年07月25日 (金) 22:10:16   ID: tongS8Rz

いつも楽しませてもらってます。
作者様のご都合のいいときまで待ってますので、焦らず自分の調子で頑張ってください!

42 :  SS好きの774さん   2014年08月01日 (金) 21:47:59   ID: 4ce5bbZQ

続き見せてくださいませ。

43 :  SS好きの774さん   2014年08月10日 (日) 21:07:51   ID: dGnv1AvE

おもしろいです

44 :  SS好きの774さん   2014年08月11日 (月) 22:21:23   ID: qf4ctHye

待ってました。続きが早く見たいです。

45 :  SS好きの774さん   2014年08月23日 (土) 21:03:15   ID: xTyCrsPX

どうか続きを‼︎

46 :  SS好きの774さん   2014年09月20日 (土) 13:59:08   ID: N-NoTaSR

続きお願いします

47 :  SS好きの774さん   2014年09月27日 (土) 22:35:08   ID: FQWuKYUZ

いきなり禁止令が出たのならしょうがないね。
続きが見れて嬉しいです。

48 :  SS好きの774さん   2014年10月01日 (水) 17:17:40   ID: 7ofyhQwj

楽しみにしてます

49 :  SS好きの774さん   2014年10月06日 (月) 00:28:08   ID: e3Rg9v04

続きだーーー!!

50 :  SS好きの774さん   2014年10月19日 (日) 17:43:41   ID: 9aGja1PV

無能な管理人がいる〇〇め速報が出してるssすべてがゴミに見える程の良作です!!頑張って下さい!!

51 :  SS好きの774さん   2014年10月19日 (日) 21:59:56   ID: 8QtDAzLV

まぁ確かにあそこのサイトつまらんけどさ

52 :  SS好きの774さん   2014年11月04日 (火) 22:00:37   ID: o88G2MhV

続き見たいです♪

53 :  SS好きの774さん   2014年12月01日 (月) 11:17:22   ID: yqvjfk6d

まだかなぁ

54 :  SS好きの774さん   2014年12月08日 (月) 20:59:02   ID: zEs1iOP6

続き楽しみに待ってます。

55 :  SS好きの774さん   2015年01月02日 (金) 22:56:54   ID: -1HRKc7r

良作。とても期待。

56 :  SS好きの774さん   2015年01月05日 (月) 20:04:26   ID: WIbEG-sa

めっちゃおもしろい
ゆっくりでもいいから完結させて下さい!

57 :  SS好きの774さん   2015年01月06日 (火) 00:07:13   ID: bhDpRehE

続き楽しみにしてます

58 :  SS好きの774さん   2015年01月11日 (日) 23:12:46   ID: 4nhILfUh

待ってました‼️

59 :  SS好きの774さん   2015年01月14日 (水) 14:25:30   ID: 9n0vjcxA

続き楽しみです。

60 :  SS好きの774さん   2015年01月31日 (土) 22:58:10   ID: ySuScbpu

煽りでも何でもなく純粋にそこまで評価されるほど面白いか?

61 :  SS好きの774さん   2015年02月12日 (木) 14:45:29   ID: RVqV5XK5

俺はこいう感じのやつあまり見ないから新鮮で面白いと思うな。今月あと何回更新されるかな♫

62 :  RAZIEL   2015年02月13日 (金) 13:45:35   ID: UjcvZXVd

良いぞ、もっとやれ!
作者よ!
「神の秘密」も応援しているぞ!!

63 :  SS好きの774さん   2015年02月14日 (土) 20:01:46   ID: c1-A3c5v

これは期待

64 :  SS好きの774さん   2015年03月11日 (水) 15:57:27   ID: FXNDS03S

面白すぎwww
他の作品も面白いけど今まで読んできた中では一番好きwww

65 :  SS好きの774さん   2015年03月15日 (日) 13:40:54   ID: nKyHYUHU

Follow ; early

66 :  SS好きの774さん   2015年03月16日 (月) 16:54:57   ID: 0oIWSwWM

もう三月の中旬やぞ!はよ更新せい!(和)

67 :  SS好きの774さん   2015年03月20日 (金) 12:06:22   ID: 2oYrimCa

halley up
halley up
halley up
halley up
halley up
halley up
halley up
halley up
halley up
何時でも待ってるから、もっと多く投稿してくれー!

68 :  SS好きの774さん   2015年03月22日 (日) 07:38:37   ID: 9ASr61Xn

やっぱりいい……待つのも苦にならないほど面白いです。内容的にめっちゃ好きなので更新スピードや量は気にしないで頑張ってください(^ー^)ノ

69 :  SS好きの774さん   2015年05月01日 (金) 16:06:55   ID: 2nQFjn0C

なんなンですかァ面白すぎますゥ
続き期待しますゥ

70 :  SS好きの774さん   2015年05月17日 (日) 09:04:45   ID: v4oxnKgK

学園都市入って上条さんのチートっぷりが際立ってるな〜
いいぞ、もっとやれ

71 :  SS好きの774さん   2015年06月04日 (木) 23:47:21   ID: DI3bKK8j

続きをはよ下さい!

72 :  SS好きの774さん   2015年06月22日 (月) 23:59:02   ID: WIhlcwUI

え!?完結!?

73 :  SS好きの774さん   2015年06月28日 (日) 22:06:22   ID: 8eMnj1Io

めっちゃ面白かったのに残念

74 :  SS好きの774さん   2015年06月30日 (火) 22:06:14   ID: tZ5M0hM4

私はそれでも待ち続ける。。。。

75 :  SS好きの774さん   2015年07月06日 (月) 01:20:09   ID: enf1GKHg

帰ってきてくれ〜

76 :  SS好きの774さん   2015年08月09日 (日) 12:25:30   ID: 135kbDVr

はよ

77 :  SS好きの774さん   2015年11月28日 (土) 18:28:22   ID: t4y0nVN7

つ、つづきはどこですか!?

78 :  SS好きの774さん   2015年12月05日 (土) 00:37:03   ID: rIB9XfZe

続きまだですか?

79 :  SS好きの774さん   2016年11月23日 (水) 01:54:48   ID: tRNo2xde

続きたのしみにしてます!!!!

80 :  SS好きの774さん   2017年02月08日 (水) 10:33:45   ID: J-zLxp5l

続きが来るわけないだろ。現実をみろよ

81 :  SS好きの774さん   2017年06月30日 (金) 00:04:45   ID: EZHCVeKQ

また新しいスレがたってるぞ。現在進行形で。

82 :  SS好きの774さん   2018年05月08日 (火) 20:41:41   ID: F3fQ6twL

早しろボケ

83 :  上条侑奈   2018年06月16日 (土) 09:14:10   ID: jMUQ6jTk

はーやーくーつーづーきー!!!

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