サシャ「同じ味を、知りたいですから」(69)

・1『サシャ「キスの味、私に教えてください」』
 2『サシャ「この味は、ウソをついてる味ですね」』
 3『サシャ「二人だけの、秘密の味です」』
 4『サシャ「とくと味あわせてあげましょう!」』の続きです。

・ネタバレほんのりとあり

・虫注意。できるだけ配慮してますが本当に注意。

・詳しい資料がないので、寮の構造などは想像です


―― 消灯時間前、男子寮

エレン「そろそろ灯り消すぞー?」

ベルトルト「そうだね。ちょっと早いけど、明日は立体機動の訓練だし寝ちゃおうか」

ライナー「アルミン、本はもういいのか?」

アルミン「うん。ちょうどキリのいいところまで読み終わったから大丈夫だよ」

ミカサ「やめどきを覚えてくれて、私は嬉しい。アルミンはいい子」ナデナデ

アルミン「ちょっとやめてよミカサ、くすぐったいよぉ」アハハ

エレン「おーっし、じゃあ消すぞー」

ベルトルト「……待って、待ってエレン。どう考えてもおかしいから」

エレン「? いや、別にどこもおかしくないと思うけどな」

ライナー「お前らには自然な状況かもしれないが、俺やベルトルトにとっては不自然だ」

ライナー「それで……ミカサ、何故ここにいる」

アルミン「え? ミカサ? いるわけないじゃない。やだなぁライナーったら」ハハッ

ベルトルト「現実を見るんだよ……アルミン」

アルミン「全然見えないよ?」

エレン「おいミカサ、お前寝ぼけてるぞ? ここは男子寮だ。とっとと帰れよ」

ミカサ「寝ぼけていない。私は正常」

ミカサ「というか、その……今日は、帰りたくない」モジモジ

エレン「またお前は……わがまま言うんじゃねえよ」ハァ

ミカサ「違う。今日はちゃんと理由がある」





ミカサ「……女子寮にアレが出た」

アルミン「」ビクゥッ!!

ベルトルト「アレって……あの……?」

ミカサ「黒光りした虫。動きがとっても素早い。本気を出されたら私でも追いにくい」

ライナー「大袈裟だな、どうせ一匹だろう?」

ミカサ「一匹なら、こんなところまで逃げてこない」

エレン「お前逃げてきたのかよ……で、何匹なんだ? 二匹か? 三匹か?」ハァ

ミカサ「あの……私が備品倉庫から持ち出してきた麻袋に、ちょっと良からぬものが入っていたらしくて……」ボソボソ

ミカサ「ミーナがその麻袋を不注意で蹴飛ばして、中身をぶちまけてしまって……」ボソボソ

ミカサ「その時ちょうどお風呂から帰ってきたアニが、扉を開けた……ので」



ミカサ「およそ百匹前後、女子寮に放たれてしまった……」



ライナー「」

ベルトルト「」

ライナー「……深刻だな、それは」

ベルトルト「なんとかしないと眠れないよね……」

エレン「廊下に出たんならそのまま全部外に行ったんじゃねえの? 考えすぎだって」

ミカサ「私もそう思っていたんだけれど、その直後にクリスタやユミルの悲鳴が聞こえた」

ミカサ「私たちの部屋とユミルたちの部屋は結構距離がある。ので、被害は甚大」

ベルトルト「うわぁ……」

ライナー「ミカサ、お前なぁ……」

ミカサ「……反省はしている」ショボン

エレン「反省してても逃げてきてちゃしょうがねえだろ? 他の奴らどうするんだよ」

ミカサ「あぅ……返す言葉もない」ズーン...

エレン「ったく、俺も一緒に謝ってやるから。後でちゃんとみんなに謝ろうぜ? な?」

ミカサ「そうする。ごめんなさい……」シュン

ライナー「しかし、百匹か……なんとかしてやりたいが、その数は一筋縄じゃいかないな」ウーン...

ベルトルト「女子寮に無断で入るわけにもいかないしね。――アルミン、何かいい方法ないかな?」

アルミン「そうだね、火でも放ったほうが早いんじゃない?」

ベルトルト「アルミン、アルミン。戻ってきてお願いだから」

アルミン「焼き払え」

ベルトルト「アルミーン! 帰ってきてー!!」オーイ

エレン「……おいアルミン、拗ねるなよ。ミカサが困ってるんだからなんとかしてやろうぜ?」

アルミン「……エレンも知ってるでしょ。僕はその虫嫌いなんだよ」プイッ

エレン「苦手だからって逃げるような男じゃないだろ、お前は」

アルミン「……僕は、みんなの足手まといにはなりたくないんだ」

アルミン「あいつらの……あの虫の前に出たら、きっと僕は足が竦んで動けないと思う。何もできない」

エレン「……アルミン」

アルミン「――でもね、ミカサの力になりたい気持ちは、ないわけじゃないよ」

アルミン「だから、あいつらの前に出る以外のことなら、協力するよ。……それじゃダメかな、ミカサ」

ミカサ「……ううん、それで充分。とても嬉しい。ありがとう、アルミン」

アルミン「……ごめんね、情けない男で」

ミカサ「そんなことはない。アルミンはとっても頼もしい」

アルミン「ありがとう、嬉しいよ。――じゃあ、僕はちょっと教官のところまで行ってくるね。女子寮に入れるように、なんとか説得してくるよ」ガチャッ バタンッ

ライナー「……お前ら、本当に仲がいいんだな」

ベルトルト「うん。羨ましいよ」

エレン「二人も一緒にいれてやろうか?」

ベルトルト「いや、僕たちはいいよ。三人の関係を壊したくない」

ライナー「……話を戻すぞ。エレンはアレは平気なんだな?」

エレン「ああ、平気だぜ」

ライナー「ベルトルトはどうだ? いけるか?」

ベルトルト「得意っていうわけじゃないけど、人手が必要だろう? 僕も行くよ」

ライナー「助かる。……三人じゃ少し厳しいだろうが、仕方がないか」

ミカサ「いえ、他にもアテはある。たぶんもう少しで来る」

ライナー「アテ?」


                              \タッタッタッ... ガチャッ/


ジャン「おいうるせえぞ死に急ぎ野郎! こっちは寝てるんだから静かにしろよぉぉおおいミカサ!? は!? なんで!?」

ベルトルト「……よくわかったね、ミカサ」

ミカサ「聴勁という。興味があるなら教えてあげる」ニンニン

ベルトルト「いや、遠慮しとくよ……」

ジャン「おいなんでミカサがここにいるんだよ! 誰が連れ込んだんだ!? ていうか本物か!?」

ミカサ「私は私の意思でここにきた」キリッ

エレン「俺が連れ込んだんじゃねえからなー」

ベルトルト「それと、紛れもなく本物だよ」

ライナー(深夜に寮に忍び込んでいること知ったら、発狂するかもな……)アワレミ

ジャン「はぁ!? なんで本物がここにいるんだよ! おかしいだろ常識的に考えて!!」

ライナー「女子寮にアレが出たから逃げてきたそうだ」

ジャン「アレ?」

ミカサ「黒光りした虫。動きがとっても素早い。本気を出されたら私でも追いにくい」

ジャン「……ああ。なるほどな、アレか……」

エレン「そういえばさっきからなんでみんなアレって呼んでるんだ? 名前で呼べばいいだろ? ゴ」

ベルトルト「やめようね、エレン」クチフサギ

ジャン「だとしてもよ、どうせ一匹や二匹だろ? ミカサが逃げてくるよりも、そこの死に急ぎ野郎がサッと行ってパッと帰ってくるほうが早いんじゃねぇの?」

ライナー「いや、百匹だ」

ジャン「」

ベルトルト「しかも女子寮に拡散済みだって」

ジャン「」

エレン「なんだよジャン、怖いのか?」

ジャン「いや、怖いとかの問題じゃねぇだろ……なんだその数。自然発生にしちゃ多すぎだろ」

ミカサ「……ごめんなさい、それは私のせい」ショボン

ジャン「あ、いや……ミカサを責めてるんじゃねえから、うん」

ライナー「ところでジャン。これから暇か?」

ジャン「えー……俺にも手伝えってのか? めんどくせえなぁ……」ボリボリ

ミカサ「ジャン……私からも、お願い」ウルウル

ジャン「」

ジャン(ミカサの涙目……!!)

ジャン「……あーもー、わぁーったよ。ついでにマルコとコニーにも声かけてくる。起きてるかどうかわかんねえし、そもそも来るかどうかも別だろうけどな!」

ライナー「ああ、頼んだぞ」

ジャン「気にすんなよ、仲間だろ。……じゃあ、後でまたここに来る」ガチャッ



エレン「お前目薬もなしでよく嘘泣きできるよなぁ」

ミカサ「お色気の術。エレンにかからないのが悔しくてならない」ニンニン

ライナー「……さて、これで少なくとも四人か」

ベルトルト「あとはアルミンの結果待ちだね。まあ、心配する必要ないだろうけど」

アルミン「――ただいま。今雄叫びあげながら廊下を走ってるジャンとすれ違ったけど何かあったの?」ガチャッ

ミカサ「きっといいことがあったんだと思う。――それでアルミン、どうだった?」

アルミン「女子寮に入る許可は出すから自分たちでなんとかしろ、だってさ。教官はこの件にはノータッチだって」

アルミン「それと、見回り用のランタンもいくつか貸してもらえるように頼んできたから。後で取りに行ってきてね」

エレン「ランタン? 何に使うんだ?」

アルミン「あの虫は基本的に暗いところに隠れたがるでしょ? だから室内の灯りだけじゃ、どうしても見落としが発生すると思うんだ」

アルミン「まあ、ランタンでも限界があると思うけど……ないよりはマシかと思って」

ベルトルト「……すごいな、アルミンは」

ライナー「ああ。感心した。気を回してくれてありがとうな」

アルミン「僕にはこれくらいしかできないから……頑張ってね、みんな」

ジャン「おい、連れてきたぞー。マルコは寝てたからコニーだけだけど」ガチャッ

コニー「……お前ら、明日は立体機動の訓練だってのに元気だなぁ」アクビ

エレン「別に元気だからって行くんじゃねぇよ。ジャンから話聞いたか?」

コニー「百匹はありえねえと思います」キリッ

ベルトルト「ちゃんと伝わってるみたいだね」

ライナー「そうだな。――よし、じゃあ人も揃ったし行くか?」

エレン「ああ。―― 一匹残らず駆逐してやろうぜ!」



アルミン「……いってらっしゃーい」フリフリ

――消灯前 女子寮、談話室

ジャン「……混んでるな、談話室」

ミカサ「女子のほとんどが集まってるから、仕方がない」

ライナー「寮の見取り図はあるか?」

ミカサ「寮母さんから借りてきた。これ」ピラッ

エレン「……こうして見ると結構広いよなー、ここの寮」ウーン

コニー「だよなー。でも男子寮と構造はほとんど一緒だな」ジーッ

ライナー「ミカサたちの部屋とユミルたちの部屋はどこだ?」

ミカサ「ここと……ここ」ユビサシ

ベルトルト「これは……かなり遠くまで拡散してるね。ほぼ寮の端と端じゃないか」

クリスタ「ランタン、借りてきたよー」ゴトッ

ユミル「これ、見かけより結構重いんだな。ほらよ」ゴトッ

ライナー「数は……四つか。四人しか回れないな」

ベルトルト「片っ端からみんなで手分けしようか? 消灯まで時間もないし」

ジャン「いや、あまり手抜き仕事だとまずいだろ。ただでさえ小さいんだから見落としも発生しやすいだろうしよ」

コニー「? 見落とさなきゃいい話じゃねえの?」キョトン

エレン「だよなぁ。いくらちっせえって言ってもあいつら動き回るし、場所なんて簡単にわかるだろ?」

ジャン「ずっと動き回ってるわけねえだろ……これだから死に急ぎ野郎は」ボソッ

エレン「……今死に急ぎは関係ねえだろ?」ギロッ

ライナー「やめろ。喧嘩は後でやれ」

ミカサ「……それで、どうするの? 確かに四人で手分けした方が手っ取り早い。でも、見落としが発生する確率もあがる」

ライナー「そうだな……俺の作戦を話してもいいか?」

ミカサ「何かあるなら話してほしい。いいかどうかは聞いてから決める」

ライナー「なら……まず、中央の階段を境にして二手に分かれよう。東と西だ」

コニー「? 四つじゃなくて二つなのか?」

ライナー「ああ。一人が先行して、もう一人が後から追っかける。つまりダブルチェックだな。これを東西でやるから、必要な人数は二人×東西二つで四人。ランタンを持っていくのはその四人だ」

ライナー「そして、残りの一人は廊下で待機。全体を見て、状況に合わせて動いてもらう。廊下を移動している奴らもいるだろうしな」

エレン「えーっと……つまり、一つの場所を二人で見回るってことか?」

ライナー「そういうことだ。これなら見落としは大分減るだろう」

ライナー「四人で手分けするより時間はかかるが、このほうが確実だ。……というわけだが、どうだ?」

ジャン「ま、それで問題ねえと思うぜ。時間はかかるけど二回も見回りゃ漏れも減るだろ」

エレン「ライナーが考えた作戦に文句は言えねえよ。俺よりも頭いいんだし」ハイッ

コニー「右に同じ。他にマシな案も浮かばねえからな」ハイッ

ベルトルト「僕もそれでいいよ、ライナー」

ライナー「そうか。……悪いな、アルミンならもっとうまい作戦を立てるんだろうが、俺にはこれが限界だ」

ミカサ「いえ、悪くない作戦だと思う。アルミンがいたら、きっと賛成してくれたはず」

ライナー「反対意見が出ないと逆に不安になるんだがな。……じゃあこの作戦で行こう」

エレン「それで、誰がどこを受け持つんだ?」

ライナー「それも考えてあるが……俺が勝手に決めていいのか?」

コニー「時間もねえしさっさと進めようぜ。文句あるならその都度出すからよ」

ライナー「わかった。なら、東は俺とエレンだ。西はコニーとジャンが担当してくれ。先発組は俺とコニー。ベルトルトは廊下を頼む」

ジャン「……ライナーが廊下じゃねえのか?」

ライナー「ああ。……何か問題あるか?」

ジャン「……お前がそれでいいなら、別にねえよ」

ライナー「? そうか。――他の三人は? ベルトルトは灯りがないがいいか?」

ベルトルト「いいよ。いざという時は近くにいる誰かに頼んで借りるから」

エレン「俺も文句なし」ハイッ

コニー「右に同じ、だな」ハイッ

アニ「……遅くなったね。全員部屋から出したから、もう入れるよ」ガチャッ

ミーナ「談話室に集合でよかったんだよね?」

ミカサ「大丈夫。――アニもミーナもありがとう」

ミーナ「まあ、蹴飛ばしちゃった私のせいでもあるわけだし……」ショボーン...

アニ「被害を寮に広めたのは私だしね……」ズーン...

エレン「気にすんなって。もうやっちまったんだから、後でみんなに謝ろうぜ?」

ミカサ「うん、そうする。――それで、他に何か私たちが手伝えることはある? できることならやるから言ってほしい」

ライナー「ああ。これから五人で見回るが、できれば女子の何人かについてきてもらえないか?」

ミカサ「? 私たちが戦力になるとは思えないけれど」

ライナー「いくら教官が許可したと言っても、男子が女子寮を一人でうろついていたら嫌だろう」

ライナー「それに、いざという時にランタンを持ってもらうかもしれないしな。つまり、監視役と手伝い要員だ」

アニ「……じゃあ、ライナーはサシャと組みなよ」

ライナー「……こんな時にまで変な気を回すな。アニ」

アニ「違う。人手は多いほうがいいでしょ? サシャはアレが平気なんだよ」

ライナー「サシャが?」

アニ「うん。最初にユミルたちの部屋に出たゴ……虫を、潰したのはサシャだよ」

アニ「エレンにはミカサがつくだろうし、ジャンやコニーじゃサシャは扱いきれないんじゃないかな。あの子、時々暴走するから」

アニ「そして、貴重な戦力をベルトルトと一緒に廊下に置いておく理由もない」

アニ「だから、先発組のあんたと組むのが一番いいよ。ライナー」

ライナー「……筋は通っているな」

アニ「小細工なんかしないよ。こっちは一大事なんだから」

アニ「それと、見回り組の残りの三人は私とミカサとミーナで受け持つよ。私たちの責任でもあるわけだし」

ミーナ「えっ、私も!?」ビクッ

アニ「これくらいしないと他のみんなに申し訳がたたないでしょ。覚悟決めなよ」

ミーナ「うう、そんなぁー……」ガックシ

ライナー「それで、サシャはどこにいるんだ? さっきから見ないが」

アニ「あそこに座ってるよ」ユビサシ

ライナー「……あいつはあんな隅でどうして一人でいるんだ?」

アニ「さあね。クリスタとユミルがランタン取りに行ったから、手持ちぶさたになったんじゃないの?」

アニ「他の班分けはこっちで決めとくから行ってきなよ。――王子様」ボソッ

ライナー「……ユミルから聞いたのか?」

アニ「さあ、知らないね」スタスタ...

サシャ「……」ボーッ

ライナー「――サシャ」

サシャ「……? ライナー、どうしたんですか? ここは女子寮ですよ?」キョトン

ライナー「俺たちが作戦会議してるの知らなかったのか?」

サシャ「作戦会議……?」クビカシゲ

ライナー「ああ。細かいことは後で話すが、お前は俺と同じ組だ。一緒に行こう」

サシャ「一緒に行っていいんですか?」パァッ...

ライナー「……そんなに喜ぶことか? 虫退治だぞ?」

サシャ「そ、それもそうですね……」テレテレ

ライナー「それで、いけそうか? アニからは虫が平気だと聞いたが」

サシャ「はい、へっちゃらです。……一緒に頑張りましょうね!」ニコッ

――西班 先発組 コニー with アニ

コニー「……あのさぁアニ。ランタン持ってくれるのはありがてぇけど、ちゃんと照らしてくれよ。どこにいるかわかんねえじゃん」

アニ「私はか弱い乙女なんだ」

コニー「いや、扉の隙間から腕だけ出してるのはこの際いいからさ、せめて立っててくれよ。足元だけ照らされても困る」

アニ「私はか弱い乙女なんだ……」プルプル...

コニー「だからさー、部屋の外にいるんだから中は見えねえだろ?」

アニ「私はか弱い乙女なんだ……っ」ジワァ...

コニー「それはわかったって。俺そこまで馬鹿じゃねえよ」

アニ「私はか弱い乙女なんだ……っ!」グスッ

コニー「……もういいよ。俺一人でやるから貸せよランタン」ハァ

―― 西班 後発組 ジャン with ミーナ

ミーナ「部屋の中、あんまりジロジロ見ないでよね。ジャン」ジロッ

ジャン「へいへい。わかったわかった。じゃあ失礼しますよーっと」ガチャッ


                                   \グチャァッ.../


           \デローン.../


ジャン「……」

ジャン「……」バタン

ミーナ「ちょっとジャン、なんで閉めちゃうの?」

ジャン「……なんかの巣? ここの部屋」

ミーナ「あのねジャン。ここはね、女の子の部屋だよ」

ジャン「……あー、わかったわ。きっとここに巨人が入ったんだ。そうだろ?」

ミーナ「ううん、巨人は入ってないよ」

ジャン「……いや、違うだろ? 女の部屋って違うだろ? こうじゃないだろ?」

ミーナ「ジャン。作戦行動で一番大切なのは、現在の状況を正確に把握することだよ」

ジャン「……こう、ほのかにいい香りなんかしちゃってさ。なんつーの? 花の匂い的な?」

ミーナ「ジャン。現実から目を背けないで」

ジャン「なあ」

ミーナ「ジャン」

ジャン「……」

ミーナ「ジャン。現実を見て」

ジャン「うるせえよ! なんだよ……なんだよ!! なんだよここ!! ふっざけんな!!」ダッ

ミーナ「ちょっと、どこに行くのよ!」

ジャン「いつまでもこんなところにいられるか! 俺は寮に帰る!」

ミーナ「ミカサにジャンが怖じ気づいたってチクるよ」

ジャン「ぐっ……くっそぉぉおおおおおお!!!」

――東班 後発組 エレン with ミカサ

エレン「しゅっ! しゅっ!」スリッパブンブン

ミカサ「え、エレン……気をつけて、何かいる気配がする……」ギュッ

エレン「先に行ったライナーがほとんど全部潰しちまったからつまんねえなー」シュッシュッ


                             \カサカサカサカサ.../


ミカサ「!? エレン逃げて!!」ガシッ!!

エレン「いってえ!? ミカサしがみつくなよ、潰せねえだろ!!」ジタバタ

ミカサ「ダメ! 私がエレンを守る!! 守る!!」ギュウウウウウウ

エレン「今のお前に何が守れるんだよ!! もういいから外行け外! ていうか手ぇ放せ! もげる!!」ジタバタジタバタ

ミカサ「いや!! エレンは私が見ていないとすぐ死に急ぐ!!」ギュウウウウウウ

エレン「【ぴーっ】ごときで俺が死ぬわけねえだろ! 今死に急いでんのはお前だ!」

ミカサ「!? ひどいエレンなんで名前言うの!? なんでなんで!?」ユサユサユサユサ

エレン「揺するなあああああああああああ!!」グラグラグラグラ

――廊下組 ベルトルト with クリスタ+ユミル

クリスタ「気をつけてね、絶対に気をつけてね」ブツブツ

ユミル「クリスタったら情けねえなぁ」

ベルトルト「あの、二人とも……そんなにしがみつかれたら、歩けないんだけど」

クリスタ「大丈夫だよ。気をつけてね、絶対に気をつけてね」ギュウウウウウウ

ユミル「クリスタったら情けねえなぁ」ギュウウウウウウ

ベルトルト「ユミルも人のことは言えないんじゃ……」ハァ

ユミル「……ところでベルトルさんよ。この作戦、考えたのはライナーか?」

ベルトルト「よくわかったね。その通りだよ」

ユミル「あんたのこの役割、ぱっと見は余り物みたいに見えるが全然違うだろ?」

ユミル「周りの状況に合わせて動かなくちゃいけない……ここの役割は、いわば全体の流れを見る指揮役だ」

ユミル「そんでこの面子なら、指揮役はどう考えてもライナーだろ。正直あんたに務まるとは思えない」

ベルトルト「……手厳しいね」

ユミル「事実だろ? 見落としを気にしてたジャンを後発に据えたのに、どう見ても慎重そうに見えないエレンを同じ後発組にしたのはおかしすぎる」

ユミル「私だったら、ライナーを廊下、あんたを後発、エレンを先発にするね。そうだな……きっと、ジャンもそうしただろう。ミカサも気づいてたんじゃねえかな」

ユミル「でもな、もっと腑に落ちないのは……あんたがそれに気づいていたのに、見逃したってことだよ。ベルトルト」ジロッ

ベルトルト「……ライナーはそういう人だからね。仲間のために、危険を率先して引き受けに行くから」

ベルトルト「僕はそういうライナーに、ついていくって決めただけだよ。あまり意見はしたくない」

ユミル「……へいへい、そうかよ。詮索してどうもすみませんでしたっと」

ユミル「でも、ライナーの自己犠牲もそこまで来ると病気だな。もう病んでるんじゃねえの?」ケッ

ベルトルト「まさか。……ライナーは大丈夫だよ」



                                   \...カサッ/


クリスタ「!? いやあああああああああ!! 今何か動いたぁっ!!!」ギュウウウウウウッ!!

ベルトルト「ちょっ……!? クリスタ、しがみつかないで潰せないから! どこにいたの!? ねえ!!」

ユミル「クリスタったら情けねえなぁ」ギュウウウウウウッ!!

ベルトルト「ゆっ……ユミル、肘、肘に極まってる……っ!」

クリスタ「早くっ! 早く潰してええええええええええ!!!」ギチッ!!

ユミル「クリスタったら情けねえなぁ」ギチッ!!

ベルトルト「ふ、二人とも、いいから早く放して……お願い……」グッタリ

――東班 先発組 ライナー with サシャ

ライナー「結構いるもんだな」バシッ

サシャ「ですねー。こっち側に偏っていたんでしょうかね?」バシッ

ライナー「しかし、あのミカサも虫が苦手とはな。意外だった。……よし。次行くぞー」ガチャッ

サシャ「はぁーい。……あの、ライナーは、虫が苦手じゃない女子は嫌ですか?」スタスタ

ライナー「むしろ今は助かってるな。サシャの潰し方は迷いがなくていい」ガチャッ

サシャ「……もっと褒めてくれていいんですよ?」バシッバシッ

ライナー「いや、虫の潰し方を褒めるってのはどうなんだ……?」バシッ

サシャ「私の虫歴は長いですからねー。ちょうちょとかよく追いかけてましたし。なんなら虫トークします? 一時間くらい。……ここも大丈夫そうですね、次に行きましょう」ガチャッ

ライナー「男と一時間も虫トークして楽しいか?」スタスタ

サシャ「それこそ女の子同士で虫トークなんてしませんよ? 普通。……失礼しまーす」ガチャッ

ライナー「確かに、虫の話題で盛り上がってる女子は想像つかないな」バシッ

サシャ「でしょう? 最近はちょうちょでも怖がって逃げていく子も多いんですよね。でも服やアクセサリーだとちょうちょって結構人気なんですよ。わけがわかりません」バシッ

ライナー「ほう、人気なのか……よし次行くぞ」ガチャッ

サシャ「わかりましたー。……あ、そういえばテントウムシも人気ですね。テントウムシっていいながら星が足りないものも多いんですが」スタスタ

ライナー「あまり名前にこだわりがないんだろうな」ガチャッ

サシャ「具体的な名前だと本物を連想しちゃうんでしょうねえ。……あ、そっち行きましたよ」  \カサカサ/

ライナー「結局虫には変わりないのにな」バシッ

サシャ「ですよね。まあでも虫のほうも悪いところがあると思うんですよ、私は」バシッ

ライナー「悪いところ? ……よし、いないな。次だ」ガチャッ

サシャ「はい。……外見ですよ外見。全然かわいくないじゃないですか、虫って」スタスタ

ライナー「まあ、確かにな」ガチャッ

サシャ「もうちょっと親しみやすい外見だったらよかったんですけどねえ。虫は栄養たっぷりでおいしいのに」バシッ

ライナー「最終的に食に結びつくのはなんとかならないのか?」バシッ

サシャ「あはは、性分なもので……すみません」バシッ


ライナー「……」

サシャ「……」

ライナー「……話してたらあっという間に終わったな」

サシャ「かなり熱中してましたからね……どこか見落としてるかもしれません」

ライナー「そこはもう、エレンとミカサを信じるしかないだろう。――じゃあ、談話室に戻るか」

サシャ「はい、わかりまし――」



                                  \ブゥーン.../



          ――ボトッ!!



サシャ「――!!」サー...

ライナー「……サシャ? どうした?」


サシャ「あの、せっ、背中……背中に……!」ガクガクガクガク

ライナー「背中?」



                             \モゾッ/



サシャ「ひぁ……っ!」ゾクゾクッ

ライナー「おい、どうし――」

サシャ「い……っ!! やだやだやだやだやだやだぁっ!!」シガミツキッ

ライナー「!? サシャ、いきなりどうした!?」

サシャ「せなっ、背中に虫が入ったんですっ! 入ったんですっ! 取ってください取ってください取ってくださいっ!!」ギュウウウウウウッ!!

ライナー「!? ――わかった、今取ってやるから落ち着け!」グイッ




                                 \――ブチッ/



ライナー「おいサシャ、取ったぞ」

サシャ「……もういませんか?」グスッ

ライナー「ああ、今潰した」

サシャ「……本当に?」

ライナー「ああ。もう大丈夫だ」

サシャ「……信じますよ?」

ライナー「信じられないのか? 俺が」ポンポン

サシャ「……ライナーは、ずるいです」ギュッ

―― 消灯前 女子寮 談話室前の廊下

ミカサ「おかえりなさい。二人とも」フリフリ

ライナー「……なんで後発組のお前が先にここにいるんだ?」

ミカサ「最後の部屋でいい雰囲気になっていたのが見えた。ので、エレンを連れて先に帰ってきた」

ミカサ「他の女子はもう部屋に帰した。あなたたちの組以外のランタンは、エレンとベルトルトに返しに行ってもらった。他に質問はある?」

ライナー「あそこで真っ白に燃え尽きているジャンは?」

ミカサ「よくわからない」



ジャン「ウソだ…………女の寮なんかじゃねえよここ…………」シクシクシクシク

コニー「おい、もう帰ろうぜジャン。いつまで座ってんだよー」ツンツン

ミカサ「私からも質問したい。ライナー」

ミカサ「何故サシャをお姫様抱っこしているの?」クビカシゲ

ライナー「まあ……いろいろあってな、さっきから離れてくれないんだ」

ライナー「ミカサ、悪いが連れて行ってくれないか? 俺はもう帰るから」

ミカサ「断る」プイッ

ライナー「お前なぁ……」

ミカサ「談話室はもう誰も使ってない。ので、サシャが落ち着くまで一緒にいてあげてほしい」

ミカサ「文句があるなら削ぐ」ジャキンッ!!

ライナー「……消灯時間になったら帰るからな」

ミカサ「それで充分。――ごゆっくり」

―― 消灯前 女子寮 談話室

ライナー「……落ち着いたか?」

サシャ「はい……ありがとうございます」グスッ

ライナー「ちょっと話し込みすぎてたな。最後の一匹、気づかなくて悪かった」

サシャ「違いますよ……見落としてたのは私もです。ライナーのせいだけじゃありません」

ライナー「いいや、俺が悪い。……いくら平気だからって、女を虫退治に付き合わせるべきじゃなかったな」

サシャ「……ライナーも、私と同じでよくばりですよね」ムー...

ライナー「俺は他人の物を欲しがったりしないぞ?」

サシャ「今、私から取ろうとしてるじゃないですか。あげないって言ってるのに」ムスッ

サシャ「あの。……この前街に行った時のこと、覚えてます?」

ライナー「……ああ、ちゃんと覚えてる」

サシャ「私、あの時みたいな迷惑を……もう、ライナーにはかけたくないんです」

ライナー「いや、心配はしたが……迷惑だなんて思ってないぞ?」

サシャ「ライナーがそう思っていても、私は嫌なんですよ」

ライナー「……そんなに頼りなく見えるか? 俺は」

サシャ「違います。……頼りになりすぎるから、甘えたくないなって思ったんです」

サシャ「さっき、一緒に行こうって言われた時……すごく嬉しかったんです」

サシャ「女の子扱いはとっても嬉しいですけど、それだけじゃやっぱり嫌なんです」

サシャ「肩を並べるのは無理かもしれませんが、寄りかかるような関係には、なりたくないんです」

サシャ「この前の、氷菓子みたいに……同じ味を、一緒に知っていきたいですから」

サシャ「だから、最初から置いていこうとしないでください。連れて行ってください」

サシャ「ミカサみたいにはいきませんし、限界があるでしょうけど」

サシャ「私、頑張りますから。一生懸命食らいついていきますから」





サシャ「……ライナーの隣にいる権利、私から取り上げないでください」ギュッ...

ライナー「……ははは」

サシャ「わっ、笑わないでくださいよ! 私は真剣なんですよ!」プンスカ

ライナー「いや、悪い。別に馬鹿にしているわけじゃない」



ライナー「……俺は手加減しないぞ? 付いてこられなかったら置いていくからな?」

サシャ「望むところです。――ライナーこそ、私に負けないでくださいよね?」

―― 数日後 消灯時間前 女子寮 談話室

ミカサ「――サシャ、髪を濡らしたままだと風邪をひく」

サシャ「んー……ちゃんと拭いてきたはずなんですけどね……」ゴシゴシ

ミカサ「あまり強く拭くと髪が傷む。……貸して、やってあげる」フキフキ

サシャ「わ……ありがとうございます。こうして遅くまで勉強も教えてもらってるのに、髪まで……」

ミカサ「構わない。こういうお手伝いは、私も楽しい」フキフキ

ミカサ「……できた。かわいい」ナデナデ

サシャ「ミカサには敵いませんよ、私なんて……」

ミカサ「私を倒すくらい頑張らないと、ライナーには追いつけない」

ミカサ「だから、頑張って私を倒しに来て。その手伝いはちゃんとする」

サシャ「……なんか変な関係ですよね」エヘヘ

ミカサ「こういう関係、サシャは嫌?」

サシャ「いいえ、とっても嬉しいです!」

ミカサ「うん。私も嬉しい。――頑張ろう」

サシャ「はい!」



サシャ「――同じ味を知りたいですから……精一杯頑張ります!!」



おわり

終わりです。読んでくださった方、レスしてくださった方ありがとうございました!
男子の作戦会議が書きたかっただけです……ダブルチェック(キリッ
それと、前回はタイトルミスすみませんでした……! 恥ずかしすぎて穴に入りたい
at○k仕事しろ!!

ところでこのシリーズ、止めどきがわからないんですけどどうしたらいいんですかね……?
妄想しすぎて終わりが見えない

おお……ありがとうございますありがとうございます、すごく嬉しいです
ノロノロ進行ですがこの調子で進めていこうと思います!

書けるかな……スマホからテスト

おお書けた
スレ立ての件ですが、一度ひねり出したものは速やかに流して、新たなものは真っさらな気分で出してしまいたい派なので、このまま別スレでやっていきたいなーと思ってます
それに一応ローカルルールでもサクサクスレ立てokって書いてあるからいいかな……と

良いんじゃないかなー

>>68さん ありがとうございますー 一応次スレでももう一回書いておきますね
というわけで次スレ立ててきます

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