イクラ(18)「バブー!」 (65)

タイコ「あらイクラ、おはよう。今日は早起きね。」

イクラ「チャーン!」

タイコ「今晩はサザエさんのところでクリスマスパーティーだから、早めに帰ってくるのよ。」

イクラ「ハーイ!」

タイコ「じゃあ気をつけてね。行ってらっしゃい!」

イクラ「バブー!」

おれの名前は波野イクラ。ごく普通の高校三年生だ。
朝起きて母親の作った朝食を食べ、学校に行き、授業を受け、部活動をして、適当なファミレスで友達とダラダラと喋り、自宅に帰る。
こんなどこにでもいる高校生なのだが、ひとつだけ普通ではないことがある。
話せる言葉が3つしかないのだ。
「ハーイ!」「チャーン!」「バブー!」この3つの言葉以外は口に出したことがない。

近所の人「あらイクラくん、行ってらっしゃい!寒いから風邪引かないようにね!」

イクラ「バブー!」

周りの人たちは、もはや当たり前のように接してくれている。
だが、やはり初対面の人には受け入れられないことも多い。

続き?
中島の人か?

>>5
中島の人ですが、全く別の話です

店員「いらっしゃっせー!」

イクラ「バブー?」

店員「はい?」

イクラ「バブー?」

店員「ハーブっすか?このコンビニではそういうのは扱ってないんすよねー。」

おれはフリスクがどこに置いてあるのか聞いただけだ。
なぜそれが伝わらないのか。
まぁいい。
こんなことは日常茶飯事だ。

彼氏「今日はすんげぇイイ感じのフレンチレストラン予約したからよ、楽しみにしとけよ!」

彼女「うふふ、彼氏くんったら素敵なんだから!」

彼氏「おいお前邪魔だよ、どけ!」

イクラ「バブー!」

今日はクリスマス。
どこに行ってもリア充カップルたちがイチャイチャしている。
おれ?彼女なんているわけないだろ。
誰がいつまでも赤ちゃん言葉の男と付き合ってくれるんだよ。
まぁ、こんなことでイライラしても仕方ない、これが現実だ。

子「ママー!サンタさん、クリスマスプレゼント持ってきてくれるかなー?」

母「そうねぇー。今日も良い子で過ごせたら、来てくれるんじゃないかしら?」

子「やったー!じゃあ今日もお片づけとかちゃんとするね!」

ドンッ

子「あっごめんなさい、よく前を見てなくて…」

イクラ「チャーン!」

子「うぇぇぇぇーん!この人気持ち悪いよぉぉぉぉ!」

母「何なんですかあなた!チャーンって何ですか?子どもだってちゃんと謝ってるじゃないですか!」

イクラ「チャーン…」

子「ヴぁぁぁぁぁーん!」

今日はタラヲの実家でクリスマスパーティーだ。
サザエおばさんお手製の七面鳥はなかなかイケるから、毎年楽しみにしている。
それと、ワカメちゃんに会えるのも、けっこう楽しみにしていたりする。
今年こそ...なんていつも期待しながら、結局毎年何もなくお開きになるが。

プルルルルルッ...
イクラ「ハーイ!」

タラヲ「イクラちゃんデスかー?こちらタラヲデスー!」

イクラ「チャーン!」

タラヲ「今夜はウチでパーティーするデスー!知ってるデスかー?」

イクラ「ハーイ!」

タラヲ「ぼくは大学で実験が終わったら、リカちゃんも連れて一緒に帰るデスー!」

イクラ「バブー?」

タラヲ「そうデスよー!夏くらいから付き合ってるデスー!」

イクラ「チャーン!」

タラヲ「お祝いしてくれるデスかー?ありがとうデース!じゃあまた夜に会おうデース!」

タラヲ、彼女できたのか。
しかも実家のクリスマスパーティーに連れてくるとか、やるなあいつ。
しかもリカって女、そういえばけっこう可愛かったよな。
くそっおれもワカメちゃんとあんなことやこんなこと...やってみてぇなぁ。

花男「おっす、イクラ!そんなゆっくり歩いてたら授業遅れちまうぞ!」

イクラ「チャーン!」

花男「おっ?なんだなんだ?またあのパンツまる見えミニスカート女のこと考えてたのか?」

イクラ「バブー!」

花男「顔も可愛いし愛想もいいし、社長秘書だっけ?すげぇよなぁ。おれにも紹介してくれよー!」

イクラ「バブー!バブー!」

花男「怒んなよー、悪かったって。」

こいつの名前は花沢花男。
カツオさんの奥さんである花子さんの弟だ。
そして、おれの一番の親友でもある。

花男「なぁイクラ。今夜何か予定あんのか?高校最後のクリスマスだし独り身同士カラオケでも行ってパーッと盛り上がろうぜ!」

イクラ「バブー!バブー?」

花男「えっクリスマスパーティー、おれも参加していいのか?」

イクラ「ハーイ!」

花男「やった!サンキューイクラ!あのパンツまる見え女にも会えるんだな!」

イクラ「チャーン!!」

花男「うそうそ、冗談だってー!」

キーンコーンカーンコーン

昼休みだ。
おれはいつものように売店で焼きそばパンを買い、放送部室へと向かう。
ここで毎日おれは昼休みを過ごしている。
さて、何かリクエストが来ていればいいが...。
よしっ、いくつかリクエストがきてるな。

『ハーイ!バブー!バブー!』

クラスメイトA「おっ、放送部のラジオが始まったぞ」
クラスメイトB「私、この時間のために生きてるようなものなのよー」
クラスメイトC「おれのリクエスト曲、流れるかなぁー」

『ハーイ!バブー!』

♪お魚くわえたドラ猫ぉ~♪

クラスメイトA「あぁー今日も爆笑したぜー」

クラスメイトB「タメになる話もあったし最高ー」

クラスメイトC「おれのリクエスト曲、流れなかった…」

3語しか話さないラジオDJなんて全世界探してもこのおれだけだろう。
何度か取材に来た新聞社もあったが、インタビューの際のおれの受け答えがさっぱり理解できなかったらしい。
結局記事はお蔵入りになった。

キーンコーンカーンコーン

あぁ、次で最後の授業か。
早くクリスマスパーティーでワカメちゃんに会いたいなぁ。

先生「では授業をはじめます。」
クラスメイト達「よろしくお願いしまーす!」

先生「波野くん、この問題の答えは分かる?その答えに至った理由も教えてね。」

イクラ「バブー。」

先生「その通り。完璧ね。」

クラスメイトA「うわー!すげーなイクラ!」

クラスメイトB「波野くん素敵!」

クラスメイトC「なんでおれのリクエスト曲流れないんだよ…」

やっと授業が終わった。
サザエおばさんのとこに手土産でも買って行くか。

花男「お疲れ!」

イクラ「チャーン!」

花男「早くパーティー行こうぜ!」

イクラ「バブー。」

花男「おぉ、手土産買って行くのか。おれも買い物付き合うよ!」

イクラ「ハーイ!」

プルルルルルル

タイコ「もしもしー!あらイクラどうしたの?」

イクラ「チャーン!」

タイコ「わかったわ!家には帰らず直接サザエさんのところに行くのね。気をつけてね!」

ガチャン

タイコ「うふふ。イクラ、そのままカツオちゃんの実家に行くらしいわ。もう少し楽しめるわね。」

カツオ「やったねタイコおばさん!この身体をまだまだ堪能できるなんて幸せだなー!」

タイコ「やだぁカツオちゃんったら!」

ズッコンバッコン ズッコンバッコン

花子「アハハハ!ミヤネ屋面白いわねー!あら?もうこんな時間!磯野家に行く準備しなくちゃ。それにしても磯野くん遅いわねぇ。」

カツオ「ただいまーごめん遅くなって。ちょっと寄り道してたんだ。」

花子「また中島くんと野球してたんじゃないでしょうね!」

カツオ「そんなわけないだろう。もう子どもじゃないんだから。まぁちょっとした運動はしてたけどね。フフッ」

花子「まぁいいわ!カニが小学校から帰ってきたら出発するわよ!」

カツオ「わかってるって。」

バタバタバタッ...ガラガラッ

カニ「大変よパパママ!中島さんが、すぐそこで倒れてたの!」

カツオ「なに!?」

カニ「ちょうど救急車が到着したところよ!」

花子「すぐ行きましょう!」

ピーポピーポ

イクラ「バブー。」

店員「はい?」

イクラ「 バ ブ ー 。 」

店員「は、はい?」

イクラ「バブー!!」

店員「バブルですか?シャボン玉でしたら3階のおもちゃ売り場にございます。」

おれは乾杯用のシャンパンが欲しいと言っているだろう。
なぜ分からないんだ。
まぁいい、こいつは仕事ができないやつなんだろう。


花男「イクラ、ワカメちゃんに何かプレゼント買って行ってやればいいんじゃないか?」

イクラ「ハーイ!」

花男「おれトイレ行ってくるから先に店で選んでてくれよ!」

イクラ「バブー!」

店員「バブ?申し訳ございません。こちらはコンドーム売り場でして。入浴剤は2階でございます。」

イクラ「チャーン!」

店員「こちらの商品でよろしいのですか?失礼ですがお客様、お年は?」

イクラ「バブー!」

店員「お年は?」

イクラ「バブー!!」

店員「おいくつですか?」

イクラ「バブー!!」

店員「ぼくー、なんちゃいでちゅかー?」

結局、プレゼントは買わなかった。
店員がキチガイだったために買えなかった。
意思疎通が出来ないのに、店頭に立つなんておかしいと思うが、これがゆとり教育の弊害というやつなのか。

イクラ「チャーン!」

サザエ「いらっしゃいイクラちゃん!久しぶりじゃないのー!」

イクラ「チャーン!」

花男「お邪魔しますサザエさん。」

サザエ「あらー花男くんまで!おっきくなったわねー!さ、入って入って!ご馳走用意してあるわよー」

イクラ「チャーン!」

フネ「あらまぁ賑やかだねぇ。タラちゃんももうすぐ帰ってくるから、それまで少しくつろいでなさいね。」

イクラ「チャーン!」

波平「バッカもーん!!」

花男「!?」

波平「中島くんが救急車で運ばれたくらいでクリスマスパーティーに遅れるなんて、許すわけなかろう!!わしは早くパーティーがしたいんじゃ!!」

フネ「どうしたんですかお父さん?電話でそんな大きな声を出して。」

波平「カツオが中島くんを心配して病院に向かっとると言うのじゃ。わしは早くパーティーがしたいんじゃ!!」

このじいさんはキチガイだ。
カツオさんは結婚、ワカメちゃんも就職、タラヲも大学に通うために一人暮らしを始めて以来、すっかりボケちまったらしい。
あ、そういえばワカメちゃんはまだ仕事なのだろうか。

アナゴ「フゥーグ田くぅんー。ワァーカメちゃんは最近どぉーなんだぁいぃ?」

マスオ「えぇぇええ!?」

アナゴ「ぼぉーくは知ってるんだぁよぉー。ワァーカメちゃんとただならぬ関係だってこぉとをー。」

マスオ「えぇぇええ!?」

アナゴ「ぼぉーくも混ぜてくれよおー。さぁーもないとサァーザエさんにバラしてやるずぅぉー?」

マスオ「えぇぇええ!?」

ワカメ「あらマスオさん。まだ仕事中かしら?社長は奥様とクリスマスディナーに行ったから私も今日はもう仕事終わりなの。一緒にお姉ちゃんの七面鳥食べに帰りましょうよ。」

アナゴ「ワァーカメちゃぁーん。フゥーグ田くんとは最近どぉーなんだぁいー?ぼぉーくもワァーカメちゃんと楽しいことしたぁいんだけどどぉーだいぃー?」

ワカメ「うるさいわね。あんたなんか社長に頼めば一発でクビなんだからね。」

アナゴ「...。」

マスオ「さすが社長秘書だねワカメちゃん。さぁ一緒に帰ろうか。」

ワカメ「うんマスオ兄さん。」

マスオ「それにしても助かったよワカメ。ぼくらの関係をサザエにバラすって脅してくるんだよ、アナゴくん。」

ワカメ「あんなタラコじじいのことは気にしなくていいわよ。ていうか私は…お姉ちゃんにバレた方がいいな…」

マスオ「えぇぇええ!?」

ワカメ「そうすれば私たち、夫婦になれるじゃない。早くマスオ兄さんとお姉ちゃん別れて欲しいなぁ。」

マスオ「えぇぇええ!?」

ワカメ「なぁーんてね。そうだ!帰る前にちょっとあそこの公園でセックスしていかない?」

マスオ「えぇぇええ!?」

ズッコンバッコン ズッコンバッコン

どなたかご覧いただいてますでしょうか

ありがとうございます続けます

カツオ「はぁ…はぁ…」

花子「アハハハ!」

カニ「病院に着いたわ!中島さん大丈夫かしら?」

カオリ「磯野くんたち!来てくれたのね!」

カツオ「カオリちゃん、キミの旦那は!?中島は大丈夫なの?」

カオリ「それが…とってもひどい状況なの。タラ&リカForeverデース!って文字が描かれた真っ赤なスポーツカーに跳ね飛ばされて…全身複雑骨折に内臓破裂で今は意識もないわ。」

花子「センスの無い車ねぇ。」

カオリ「うっ…」

花子「どうしたのカオリちゃん?」

カオリ「…陣痛よ。もう…もう生まれそうだわ。」

花子「誰かー誰か来てー!アハハハ!」

ナース「カオリさん、分娩室に行きましょう!」

カオリ「磯野くん、中島くんのそばにいてあげて。33病棟のA病室にいるわ。」

カツオ「33のAだね。わかった!」

花子「33A?サザエじゃない!アハハハ!」

イクラ「チャーン!」

花男「おぉ!すげぇなイクラ、マリオブラザーズ1分で全クリじゃねーか!」

イクラ「チャーン!」

波平「わしは早くクリスマスパーティーがしたいんじゃ!」

フネ「まぁまぁお父さん。」

サザエ「あっ誰か帰ってきたわ!」

ガラガラッ

マスオ「帰ったよー!」

ワカメ「寒かったー早く七面鳥食べたいわ。」

フネ「そんなパンツまる見えのスカート履いてるから寒いんですよ。もう少し落ち着いた格好をしなさい。」

マスオ「お母さん、そんなにキツく言わなくても。この格好してくれてると、けっこう興奮するんですよ。」

波平「バッカもーん!!そんなくだらん話をする暇があれば早く席につかんか!わしは早くクリスマスパーティーがしたいんじゃ!」

タイコ「こんばんはー。」

サザエ「タイコさん!わざわざありがとうー!...ん?このニオイ...?」

相変わらずワカメちゃんは可愛いな。
最近はますます大人っぽい色気が出てきている。
きっと彼氏もいるんだろう。
それにしてもサザエおばさんのあの表情はどういう意味なのか。
おれの母親が入ってきた瞬間、何かを感じ取ったようだ。

カツオ「中島!」

中島「うぅっ...」

カツオ「おい中島しっかりしろ!」

中島「い...そ...の...」

カツオ「死ぬなよ!中島!まだお前と酒飲んでバカみたいに騒いだり、昔みたいに野球したりしたいんだよ!」

中島「お...おれ...もう...限界だ...」

カツオ「中島!」

中島「磯野...おれたち...生まれ変わっても...」

ナース「中島さん!もうすぐ赤ちゃん生まれますよ!頑張って生きて下さい!」

カツオ「中島頑張れ!」

中島「生まれ変わっても...野球...しよう...ぜ」ガクッ

ピィーーーーーーーーー

カツオ「中島ぁぁぁー!!」

赤ちゃん「イソノー!イソノー!」

カツオ「!?」

カニ「生まれたのね!」

花子「泣いてるけど、オギャーじゃないわね?…磯野くんのこと呼んでる!きっと中島くんの生まれ変わりよ!」

赤ちゃん「イソノー!イソノー!」

カツオ「な...中島?」

赤ちゃん「オーイイソノー!ヤキュウシヨウゼー!」

カオリ「...」

カツオ「ただいま。」

花子「おじゃましまーす。アハハハ!」

カニ「こんばんはー。」

サザエ「3人ともおかえりなさい!」

フネ「中島くんは無事だったかい?」

カツオ「死んだんだけど、また生まれてきたんだ。」

フネ「どういうことだい?」

カツオ「中島は死んだんだけど、中島が生まれてきたんだ。」

フネ「あらあら。お父さんに続いてカツオまで頭がおかしくなったのかしら。」

サザエ「タラちゃんは少し遅れるようだから先に始めましょうか!」
イクラ「ハーイ!」

波平「わしは早くクリスマスパーティーがしたいんじゃ!」

サザエ「ささっ、タイコさんも早く座って!」

タイコ「すみません気を使っていただいて。」

サザエ「いいのよー気にしないで。...あれ?この白い液体は...?」

タイコ(まずいわ...カツオちゃんの精液が顔についたままだったわ!)

サザエ「ペロッ。こ、これは、カツオの精液じゃないの!」

フネ「なんですって!ペロッ。本当だわ!どういうことなのかしら?」

タイコ「ごめんなさい。私から無理矢理カツオちゃんを襲ったんです。」

カツオ「そうなんだよ。」

花子「じゃあ磯野くんは悪くないわね。アハハハ!」

花男「よし!パーティーをはじめましょう!」

まさか自分の母親がカツオさんとヤってたとは思わなかった。
これは父親には黙っておいた方がいいだろうな。
いくらお調子者のあいつでもさすがにヘコむに違いない。

ワカメ「マスオ兄さん、こっそり抜け出して庭でセックスしましょうよ!」

マスオ「えぇぇええ!?」

ズッコンバッコン ズッコンバッコン

タマ「ニャーオ」

フネ「タマが鳴いているねぇ。イクラちゃん、ちょっと見てきておくれ。」

イクラ「ハーイ!」

タマ「ニャーオ」

イクラ「...チャーン!!」

マスオ「イ、イクラちゃん!これは違うんだ!」

ワカメ「違わないわ。私たちは愛し合ってるの!姉さんには絶対離婚してもらうわ!マスオ兄さんは渡してのものよ!」

ズッコンバッコン ズッコンバッコン

さすがにこれは驚いた。
まさかこんな形でおれの初恋が終わりを迎えるとは。
こうなればもうリカちゃんをタラヲから奪うしかない。

ノリスケ「やめてくれよタラちゃん。どうしてこんなことするんだ!」

タラヲ「うるさいデスー。ぼくは中島くんを轢き殺してしまったデース。だからノリスケにはぼくの身代わりになってもらうデスー。

リカ「そうよ。あなたは今から自殺するの。そのあと、自分が中島くんを轢き殺したって書いた遺書が見つかるの。」

すごい場面に遭遇してしまった。リカちゃんに告白しようかと考えていたが、それどころではないようだ。今は物陰から隠れて3人の様子を伺っているが、このままではまずい。おれも殺されてしまう。

タラヲ「このまま殺すのももったいないデスー。おーいイクラちゃん、そこにいるのは分かってるデスよー!」

イクラ「!!」

ノリスケ「イクラ!何をしている!早く逃げるんだ!」

イクラ「バブー。」

タラヲ「自暴自棄になってるデスかー?」

イクラ「チャーン。」

タラヲ「え、カツオとタイコが?それにマスオとワカメが?そうだったデスかー。そして今度はノリスケと自分も殺されかけている、面白いデース!」

イクラ「バブー!」

タラヲ「取り引きしたい?どんな取り引きデースか?」

イクラ「ハーイ。チャーン。バブー。」

タラヲ「ハハハ!それは面白いデスー!」

...あれから30年。
おれは今、ある大学の研究室にいる。
タラヲの研究への協力を取引条件に、幸いにも命を奪われることなくこの時を迎えることができた。

研究員「イクラさーん!もうすぐタラヲ教授の会見が始まりますねー。」

朝昼晩と毎日3回、30年間で3万回以上も精子摂取をされてきた。
すべてはタラヲが推進するあの計画のために。
いよいよだ。
いよいよタラヲのとんでもない計画が世に放たれる。

記者「タラヲ教授、今日はいったいどうされたんですか?緊急記者会見だなんて。」

タラヲ「本日みなさんに集まってもらったのは他でもありませんデスー。ぼくの30年以上に及ぶ研究の成果を発表するデース。」

記者「どんな研究なんですか?」

タラヲ「あれは今から30数年前のことデース。ぼくが大学生の頃、日本は深刻な少子高齢社会に突入し、未来の日本には絶望しかありませんでしたデスー。そこでぼくは考えたデス。」

イクラ「ハーイ!」

ザワザワ ザワザワ

記者「そちらの方はどなたですか?」

イクラ「チャーン!」

タラヲ「イクラちゃんデース。」

記者「ただのおっさんに見えますが...」

タラヲ「ぼくは、卵子に受精しなくても精子単独で人間を作り出す技術を開発したデスー。そしてイクラちゃんから抽出した全精子から人間を作り出すことができたデスー。」

記者「す、すごい数になるのではないですか!?」

タラヲ「大勢のイクラちゃん達がいれば、みんな働かなくて済むデスー。少子高齢化問題も解決デース。ぼくは日本の、いや世界の救世主デース!」

ノリスケ「おーいイクラ達!こっちにおいでー!」

イクラ達「ハーイ!」「バブー!」「チャーン!」「バブー!」「ハーイ!」「チャーン!」ハーイ!」「バブー!」「チャーン!」「バブー!」「ハーイ!」「チャーン!」

ゾロゾロ ゾロゾロ

記者「うげっなんだこれ気持ち悪っ!オェェェェ!」

タラヲ「10兆を超える数のイクラちゃんデスー。ぼくは人類の神になるデスー!」

イクラ達「ハーイ!」「バブー!」「チャーン!」「バブー!」「ハーイ!」「チャーン!」ハーイ!」「バブー!」「チャーン!」「バブー!」「ハーイ!」「チャーン!」

よし。
これだけの数なら、ひとりだけいなくなっても誰も気づかないだろう。
30年間、この瞬間を待っていたんだ。
やっと自由になれる!
普通の生活に戻れるんだ!

ゴソゴソ ゴソゴソ

タラヲ「こらこらイクラちゃん。勝手に動いちゃ駄目デスよー。イクラちゃんにはこれからイクラ食糧化計画の実験台になってもらうデース!」

イクラ「チャーーーーン!!」

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom