ほむら「ほら、まどか。これをくわえなさい」まどか「えっ!?」 (96)

まどか「ほ、ほむらちゃん、これって……つまり、そういうことだよね?」

ほむら「そういうことも何も、見ての通りよ、まどか。ほら、口を開けて」

まどか「だ、だめだよほむらちゃん。だってここ、教室だよっ。みんな見てるんだよ!?」

ほむら「あら。言われてみれば、そうね。確かに行儀のいいことではないわ」

まどか「だ、だよね!」

ほむら「けれども、あなた、これ好きでしょう?」

まどか「え」


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まどか「す、好きって、それは……」

ほむら「知ってるのよ。あなたが杏子のこれをおいしそうにほおばっていたところを、何度も見たもの」

まどか「そ、それはそうだけど、あれは杏子ちゃんのだったし――」

ほむら「杏子のはよくて私のはダメなの? そんなのおかしいじゃない」

まどか「だ、だって、ほむらちゃんの場合は杏子ちゃんと違うっていうか、その――」

ほむら「違うって……別に違わないわよ。色も形も一緒でしょ? 杏子のを参考にして、同じものを用意したんだもの」

まどか「い、一緒って、それはそうだけど……ものがどうこうじゃなくて、えっとぉ……」

ほむら「……? 何が言いたいの? まどか。とりあえず口を開けて……」

まどか「だ、だからっ。ほむらちゃんを相手にみんなの前でこういうことをするのは、恥ずかしいの!」

ほむら「え」

まどか「うぅ……ごめんね、ほむらちゃん!」タタタッ


ほむら「……」ポツーン

さやか「ああー、その、何だ、ほむら」

ほむら「さやか……。なによ、私を笑いに来たの……?」

さやか「いや、そんなに卑屈にならないでよ」

ほむら「慰めなんてもっといらないわ……ワルプルギスの夜を乗り越えて、まどかともせっかく仲良くなれて、これからだと思って勇気を出してみた結果がこれよ……」

さやか「だーかーらーっ、暗くなるなってのうっとうしい。まどかだって別に悪気があって断ったわけじゃないんだろうしさ」

ほむら「……そうかしら」

さやか「そうそう。ちょっとタイミングが悪いというか、お前は場所を考えろっていうか。そんなとこだよ」

ほむら「……その、私、一定期間以上の時間を過ごした友達がいままでほとんどいなかったからわからないのだけど……今の、そんなに変なことだったかしら?」

さやか「変っていうか……まあ、普通は教室じゃしないんじゃない?」

ほむら「そう、かしら。確かに教師に見つかったら面倒なことになるわね。まどかみたいな純真で良い子には付き合わせてはダメなことだったかしら……」

さやか「いや、そういう問題じゃなくて、人目のつくとこでやるなっての」


ほむら「なぜ? あなたも杏子に会うたび、彼女のをおいしそうにつまみぐいしてるじゃない」

さやか「うげ……なぜバレてる」

ほむら「隠してるつもりだったの? というか、杏子が寝ている間に勝手につまむの、やめなさい。あの子、いろいろとおざっぱだから発覚してないけれども、ばれたら怒られるわよ」

さやか「いや、だっておいしいんだもん……」

ほむら「だもん、じゃないわよ。……あの子だって、あなたがちゃんと頼めば、断ったりはしないはずよ?」

さやか「あー、はいはい。その件はあたしがわるーございました。反省してます。でもいまはまどかのことじゃないの?」

ほむら「そうだけど、そもそもそんなに変なことかしら。……まどかにロッキーを食べさせたかっただけなのに」

なんかすごく申し訳なくなった。

まどほむのいちゃらぶロッキーゲームを書くから許してください

さやか「あ、なんだ。ロッキーゲームを教室でおっぱじめようってわけじゃなかったのね」

ほむら「はあ? こんな公衆の面前でそんなことするわけないじゃない。バカなのあなた。……ごめんなさい。バカだったわね、あなた」

さやか「バカっていうな! あたしだってワルプルギスの夜を乗り越えて成長したんだよっ。ていうか『くわえなさい』とか言うから、まどかにくわえさせた反対がわからあんたもロッキーをかじり始めるのかと思ったの! あんたの言い方が悪い!」

ほむら「ただ友達として、お菓子の食べさせあいをしたかっただけだから、そんな些細な言い方で変なとらえ方をされても困るのだけれども……あなた、普段わたしをどんな目で見てるのかしら?」

さやか「でも、まどかもそう思ったから逃げちゃったんじゃないの?」

ほむら「そんなわけないでしょう。友達から校則違反のはずのお菓子のつまみ食いを勧められたから、困って逃げちゃったのよ。ローカルルールを順守しようという美しい姿勢……さすがまどかだわ」

さやか「いや、そうかな……まどかはそこまで融通効かない性格じゃないと思うけど……」

ほむら「とにかく校則を失念していた私がうかつだったわ。とりあえず、巴さんのお茶会の時にも同じことを提案してみるわ。こうなると、是が非でもまどかにこのロッキーを食べてもらいたくなったもの!」パクリ

さやか「へー」

さやか(……何か勘違いしてるっぽいけど、面白くなりそうだから黙っとこ)

さやか「ま、とりあえず、あたしにも一本頂戴」

ほむら「え?」

さやか「……え?」






まどか「はぁ、はぁ。思わず逃げてきちゃったけど……教室でロッキーゲームをしようなんて、ほむらちゃん、大胆すぎるよぅ」ドキドキ

――放課後――


さやか「いやー、今日もみんな無事ですんでよかったねー!」

杏子「まあな。何せワルプルギスの夜を乗り越えたメンバーがそろってんだ。そこらの魔女でやられたりはしないだろ」

マミ「あら、それでも油断は禁物よ。魔女を相手にしては、何が起こるかわからないのだから」

ほむら「巴さんの言う通りだわ。わたしはちょっとした油断で命を落とした魔法少女を、何度もこの目で見てきたもの」

まどか「ほむらちゃん……」

杏子「そーいう説教はごめんだね。……まあ、ケーキと紅茶があれば別だけどさ」

さやか「おっ。何だ杏子―。いいこといってんじゃないぞー!」

マミ「ふふっ。じゃあみんな、今日はうちに来る?」

さやか「行きます行きます!」

まどか「もちろんですよ、マミさん!」

杏子「よっしゃ、ただ食いただ飲み!」

ほむら「……ねえ、巴さん」ヒソ

マミ「あら……。どうしたの、暁美さん」ヒソヒソ

ほむら「もちろん私もお呼ばれしたいのだけれども……今日のお茶菓子、私に任せてくれないかしら。いつもあなたにごちそうになっているのも心苦しいもの」ヒソヒソ

マミ「え? そんな気にしなくてもいいけど……そうね。そのご厚意は受け取るわ」ニコリ

ほむら「ふふっ、なら私に任せなさい」

――マミホームーー


マミ「はい、みんな。これが今日の紅茶よ」

ほむら「あら。相変わらずいい匂い」

まどか「ほんとだね。そんな味がするんだろう」

マミ「ふふっ。それは飲んでからのお楽しみね。それで……今日のお菓子は、これよ」

まどか「え? これって……」

さやか(……これ、誰が用意したのか考えるまでもないな)

杏子「おい、マミ……ケーキはどこだよ」

マミ「あはは……今日のお菓子は、わたしが用意したものじゃないのよ」

ほむら「今日は私が用意したロッキーがお茶請けよ」

まどか「……」

杏子「はあ? 何だよほむら……。ロッキーなんていつでも食えるだろうがよ……」

ほむら「あら。たまには紅茶と一緒に食べてみるのもよいわよ。あなた、いつも単品で食べるだけでしょう?」

杏子「そりゃそーだけどさ。あたしはマミのケーキのほうがいいなぁ」

さやか「おおー? なんだ杏子ぉ? ただ飯食いに来たとか言っておきながら、やっぱりマミさんの手作りのものが食べたいのかー?」

杏子「ばっ。別にそういうわけじゃねえよ! 単純に、マミのケーキのがうまいんだから

ほむら「全然ツンになってないツンデレね」

杏子「……おいほむら。ケンカ売ってんなら買うぞ。時間停止が使えなくなったあんたなんて、もはやさやか以下だからなぁ……!」

ほむら「……聞き捨てならないわね。気の長い私とはいえ、聞き流すのが不可能な暴言はあるわ」

さやか「……ほむら。あんたの目的洗いざらいこの場でぶちまけてやろーか?」

マミ「ちょっと、みんな。ケンカは――目的……?」

ほむら「……杏子。実はこの間、あなたが寝ている間に――」

さやか「いいよねロッキー! お茶請けには最高だよ! さすがほむらセレクション! よし杏子! みんなで食べようぜ!」

杏子「……ちっ。まあ、あたしだって別にそこまでこだわってるわけじゃねーからな」

さやか「だよね! じゃあ、とりあえず食べよう!」

ほむら「そうね。巴さんの淹れてくれたお茶が冷めてしまうわ」

マミ「それじゃあ、みんなの意見もまとまったみたいだし、いただきましょうか。ふふっ。ちょっと新鮮だわ」

まどか「……ちょっと待ってください」

ほむマミ杏さや「?」

マミ「どうしたの、鹿目さん?」

まどか「すいません、マミさん。どうしても確認しておきたいことがあって」

杏子「確認しておきたいこと? 何だ?」

まどか「ちょっとね。……ねえ、ほむらちゃん。これは、どういうことなのかな?」

ほむら「え。ど、どういうことって……見ての通りよ?」

ほむら(ど、どうしたのかしら。まどかの顔が、ちょっと怖いような……)

まどか「見ての通り……ってことは、これは教室でできなかったことの続きって考えていいのかな?」

さやか(……あー。そういえばまどかのやつ、勘違いしてるッぽかったよな)

ほむら「あら、ばれちゃった? そういう下心があるのは認めるわ。今日の教室で一緒に食べられなかったから、それなら巴さんのおうちで、みんなでって思って――」

まどか「そんなの絶対おかしいよ!」バンッ

ほむら「!?」

ほむら「お、おかしいって、いったい何が……あ! もしかしていちご味のほうが良かったかしら。それならすぐに買いに――」

まどか「そういう問題じゃないよ! 教室の続きをみんなでしようってどういうことなの!? ほむらちゃんのこと見損なったよ!」

ほむら「!?」

マミ「か、鹿目さん? いったいどうしたの?」

まどか「どうしたもこうしたもないですよ、マミさん! そもそもみんなでって、どうするんですか!? 一人二本のロッキーをくわえて五角形を作るんですか!?」

マミ「え?」

ほむら「み、みそこな……まどかに、見損なわれた……」

まどか「よしんばそうしたって、一人二本をくわえた状態じゃあ、かじり進めないですよね! 意味がないじゃないですかっ!」

マミ「え、え? そのよくわからないけど、ロッキーは一本ずつ食べればいいんじゃないかしら……?」

まどか「一本ずつ……わたしと、ほむらちゃん。さやかちゃんと杏子ちゃんで……マミささんはどうするんですか!?」

さやか(変な会話に巻き込まないでほしいなぁ……)

杏子「何の会話してるんだこいつら」モグモグ

マミ(鹿目さんが何を言ってるのかよくわからないわ……)

ほむら「まどか。その、よくわからないけど……もしかして、嫌なの?」

まどか「え」

まどか「そ、その、嫌ってわけじゃないんだよ? ほむらちゃんとなら、そのぅ」モジモジ

ほむら「そ、それなら!」

さやか「ロッキーうまー。あ、マミさんも食べますか? あの二人の会話は気にしなくていいですよ」

マミ「あら、そうなの? ありがとう。いただくわ」

杏子「やっぱりロッキーはうめーな」モグモグ

まどか「でも、みんなでっていうのはおかしいし……。それに、やっぱり人前だとちょっと……」

ほむら「そんな……ここは気心の知れたメンバーしかいないのよ?」

まどか「だ、だめだよほむらちゃん! いくら仲良しだからって、やっぱりこういうことは、二人っきりで……」

さやか「……あー!」

ここまでー


マミ「あら、どうしたの、美樹さん」

さやか「いやー、実はあたし、いま唐突にロッキーのいちご味が食べたくなっちゃんですよねー」

まどか(さ、さやかちゃん! この状況を察してくれたんだね! さすがさやかちゃん!)

さやか(任せろ親友!)

まどか(さやかちゃん! ありがと――)

ほむら「あ、さやか。それなら私が買ってくるわ。今日のお茶菓子担当は私なんだから、多少の要望には応える義務が――」

さやか「いやおいそれはねえわ、さすがに」

ほむら「え?」

まどか「そうだよほむらちゃん。なに考えてるの? ほむらちゃんがここからいなくなってどうしろっていうのかな?」

ほむら「え? え?」オロオロ

さやか「ということで、マミさん案内してくれませんか? そうですね。できれば往復三十分くらいのところで十五分くらい探し回りたいんですけど」

ほむら「あの、だから私が――」

さやか「お前は黙ってろ」

まどか「ほむらちゃんは黙ってて」

ほむら「――はい。ごめんなさい」

杏子(何やってんだこいつら……)モグモグ

マミ「えっと、美樹さん。歩いて五分もかからないでコンビニに着くわよ。そこじゃダメなのかしら」

まどか「だめです、マミさん。片道十五分の所にあるコンビニかスーパーにさやかちゃんを案内してあげてください」

マミ「え? え?」

杏子「どうでもいいけど、行ってらー。追加のロッキー待ってるわ」

さやか「はははっ、お菓子専門家のお前もついてこーい」グイ

杏子「え、おい、ちょ、なんであたしまで――」ズルズル

さやか「じゃあ、まどかとほむら。あたしはマミさんに片道約十五分のコンビニ化スーパーに案内されて、そこでお菓子に詳しい杏子と十五分ぐらい相談しながらいちご味のロッキーを探して、帰り道の十五分はマミさんと杏子とゆっくり話しながら帰るから!」

まどか「わかったよ、さやかちゃん! つまり四十五分出かけるってことだね!」

マミ(何かしらこの会話……)

ほむら(いつまで黙ってればいいのかしら……)

杏子「おい。だからなんであたしまで――」

さやか「それじゃ、行ってきます。まどか、頑張れ!」

まどか「うん、頑張る!」


ほむら「……」ポツーン

まどか「……」マドマド

ほむら(ど、どうしましょう。まどかとポッキーの食べさせあいっこをしたかっただけなのに、なんで二人きりに? できれば、自然な流れで和やかに、みんなでわいわい盛り上がりながらやりたかったのに)

まどか「えっと、ね、ほむらちゃん。その、二人きりになれたね」マドマド

ほむら「え? え、ええ。そそそそそうねっ」

ほむら(二人きりで食べさせあいなんて、き、緊張して、そんなことできるわけないじゃない! ここはさやか達が戻ってくるまでの四十五分間、何とか話を逸らさないと……!)

ほむら「そ、そういえば、二人きりになるのも久しぶりね。ワルプルギス前夜以来かしら?」

まどか「うぇひひ、そうだよね。あの時のほむらちゃん、かっこよかったよ」

ほむら「あら、そうかしら。あの時はあなたの言葉に勇気づけれたからこそよ」

まどか「そうだったの?」

ほむら「ええ。じゃなかったら、きっとまた、私はワルプルギスの夜に負けていたわ。改めて言わせて。ありがとう、まどか」

まどか「ううん。当たり前のことを言っただけだもん。わたしだって、あの時のほむらちゃんがいたからこそ、魔法少女にならないで、いまここにいるんだよ? ……でも懐かしいなぁ」

ほむら「そうね。何もかも、もう終わったことだものね」

ほむら(ふぅ。何とか話はそらせたわね……)ホッ

まどか「……ね、ほむらちゃん」

ほむら「なにかしら、まどか」

まどか「教室での続き、いまならいいよ」

ほむら「え」

まどか「ね、ほむらちゃん。……しよ?」

ここまでー

まどか「えっと、それで、その。どっちからしよっか?」マドマド

ほむら(くっ……暁美ほむら。腹をくくりなさい。そうよ。たかがお菓子の食べさせあい。誰もがやっていることよ。その程度できず、まどかの友達を名乗れると思ってるの!?)

ほむら「分かったわ。私から、するわ」

まどか「そ、そっか」


ほむら「それじゃあまどか、口を開けて?」

まどか「わ、わかった」アーン

ほむら「はい、ロッキーよ」

まどか「うんっ」パクッ

ほむら(よしっ! できたわ! 日頃ヘタレだ鈍感だって言われてきたけど、私にだってこのくらいできるのよ、さやか!)

まどか(……ほむらちゃん、早く反対側くわえてくれないかなぁ)


まどか「……」

ほむら「……」

ほむら(……なぜまどかはロッキーを食べ始めないのかしら? え? もしかしてあれかしら? 私の手が付いたロッキーなんて食べられないという無言の表明!?)

まどか「……ほむらひゃん」

ほむら「へ? な、何かしら?」

ほむら(やっぱりロッキーをくわえたまましゃべってる……。やっぱり、私なんかが触ったロッキーは食べれないの、まどかぁ)

まどか「あにょ、こふいうのせかしゅのもひゃれだけど、ほむらひゃんもロッキー食べひょう?」

ほむら「え? あ、うん。そうね。まどか一人だけじゃ食べにくいわよね。それじゃあ私もいただくわ」

まどか「うん!」コクコク

ほむら(よ、よかった。私の手渡しが嫌だとかじゃなかったのね)

ほむら「それじゃあ、いただきます」パク

ほむら(本当は、まどかに『あーん』してもらいたかったのだけれども……まあいいわ。食べさせてあげられただけでも大進歩よ)モグモグ

まどか「!?」

ほむら「……」モグモグ

まどか(ほむらちゃんが自分一人でロッキーを食べ始めた)

ほむら「……」モグモグ

まどか(ほむらちゃんは自分一人でロッキーを食べ続けてル)

ほむら「……」ヒョイ パクッ

まどか(ほむらちゃんが自分一人でロッキーの二本目を食べハジメタ)

ほむら「……」モグモグ

まどか(ほむらちゃんが自分一人でロッキーの二本目をタベ終ワリソウ)

ほむら「……」モグモグ ヒョイ

まどか(ホムラチャンガサンボンメノロッキーヲタベヨウトテニトッタ)

ほむら「……」パクッ モグ

まどか「ひょんなのふぇったいおかひいよッ!!」

ほむら「!?」

ここまでー


ほむら「ど、どうしたのまどか? あなた、今日ちょっと情緒不安定よ? もしかして体調が悪いんじゃないの?」

まどか「そんなわけないでしょ!」バンッ

ほむら「!?」ビクッ

まどか「そもそもどうしたのってわたしが聞きたいよ! なんでほむらちゃんはひとりでロッキーを食べてるの!?」

ほむら「ぇ? え? 私、一人で食べてるの? 今の私、まどかと一緒に食べていないの? え? 一緒に食べてる、わよね? 夢じゃないよね?」

まどか「わけがわからないよッ!!」

まどか「わたし、ほむらちゃんの言うことを信じたいだけなの。嘘だなんて思いたくないって、それだけなの……」

ほむら「ほ、本当にどうしたの、まどか? あの、心の底からごめんなさいって思ってるだけど、あなたが怒っている理由がさっぱり――」

まどか「ねえ、ほむらちゃん」

ほむら「――あ、はい」

まどか「ほむらちゃん、ワルプルギスの前夜に言ってくれたよね。わたしのこと、大好きだって。ずっと守ってくれるって、わたしのこと抱きしめながら言ってくれたよね? あれは、嘘じゃないよね……?」

ほむら「……! 当たり前でしょう!? わたしはあなたのためなら、永遠の迷路に閉じ込められたって構わない!」

まどか「じゃあなんで? なんで今日のほむらちゃんは、思わせぶりの言動ばっかりなの? あの時のカッコいいほむらちゃんはどこにいっちゃったの?」

ほむら「?」

ほむら「えっと、思わせぶりな言動って、一体……?」

まどか「だって、ほむらちゃんから誘ってきたんだよ? それなのに……」

ほむら「え、ええ。確かに私から誘ったわね」

まどか「だよね」

ほむら「だからこうして、一緒に食べてるんじゃ……?」

まどか「え? 一緒に食べてくれてないよね?」

ほむら「え?」

まどか「え?」


ほむら(……なにかしら。何かが決定的に食い違ってる気がする)

まどか「え? え? どういうこと?」

ほむら「どういうことって、えっと、わたし、教室でまどかを誘ったわよね」

まどか「う、うん。ほむらちゃんが誘ってくれたんだよね。わたし、あの時は恥ずかしくて断っちゃったけど」

ほむら「ええ。あの時は私も場所を考えて誘うべきだったわ。ちゃんとルールをわきまえないとね」

ほむら(恥ずかしくて……?)

まどか「そうだよね。場所選びは、雰囲気づくりに大切だもんね」

まどか(ルール……?)

ほむら「それで、教室でダメなら巴さんの家でやろうって思ってたのよ」

まどか(どうせならほむらちゃんのお家に招待してくれたらよかったのに)

まどか「うん。それでさやかちゃんが機転を利かせて、二人きりにしてくれたんだよね」

ほむら(どうせなら一緒にいてくれたらよかったのに)

まどか「だから、しようって誘ったんだよ?」

ほむら「ええ。わたしもこの機会にって思って誘いを受けたわ」

ほむら「お菓子の食べさせあいを」まどか「ロッキーゲームを」

ほむら「……」

まどか「……」

ほむら「……ロッキー、ゲーム?」

まどか「ぁぅ」

ほむら「あの、まどか。ロッキーゲームって、その、一本のロッキーを二人でくわえるっていう、あれ?」

まどか「ぁぅう」

ほむら「それを、わたしと――」

まどか「わたし、おうち帰る!」ダッ

ほむら「ま、待ってまどか!」ガシッ

ここまでー

まどか「離してほむらちゃん! わたし、ちょっと頭を冷やしに川に飛び込んでくるから!」

ほむら「落ち着いてまどか! 頭が冷えればそんなバカなことしようなんて考えないから、ちゃんと話しましょう!?」

まどか「無理だよ! 落ち着いて考えれば、わたし今日一日、変なことばっかり言ってたもん!」

ほむら「そんなことないわ!」

まどか「そんなことあるもん!」

ほむら「ないわ! まどかが変だなんて、そんなの絶対ありえないもの!」

まどか「……ほん、とう?」

ほむら「本当よ、まどか。あなたはいつだってまっすぐで正しいわ」

まどか「でも、だって、一人二本くわえて五角形とか言ってたんだよ? マミさん、いま思えばポカンとしてたけど、わたしの気のせいだったのかな……?」

ほむら「あ。それは私もよくわからないわ。どういうことなの?」

まどか「さよならほむらちゃん! いつかまたもう一度逢えるから!」ダッ

ほむら「ダメよ! 行かないでまどか!」ガシッ


まどか「止めないでほむらちゃん! わたし、もう恥ずかしくて死んじゃいそうなの! キュゥべえに頼んでほむらちゃんとおそろいの時間遡行の魔法を手に入れてくる!」

ほむら「大丈夫よまどか! よくわからないけど、よくわからないからこそ誰も気にしてないわ! だから契約しないで!」

まどか「……本当? ほむらちゃん、気にしてない?」

ほむら「これっぽっちも気にしてないわ!」

まどか「……マミさんや杏子ちゃんも?」

ほむら「あの二人も特に理解してないわ!」

まどか「…………さやかちゃんは?」

ほむら「さやかは気づいてたと思うわ。ちょっと呆れてたかも」

まどか「だよね! ほむらちゃん、また明日ね!」ダッ

ほむら「まどかぁ!」ガシッ

まどか「もうちょっと、もうちょっとで玄関を出れる……!」グググッ

ほむら「だめよまどか……! あなたを魔法少女にさせるわけにはいかないわ!」グググッ

まどか「わかったほむらちゃん。魔法少女にはならないから、家に帰ってお布団にくるまってちょっと死にたい気分になってくるだけだから……!」グググッ

ほむら「なおさら放っておけないわっ。あなたがつらい時に力になれないなんて、私だってつらいもの……!」グググッ

まどか「ごめんねほむらちゃん……。いまは、ひとりになりたいの」グググッ

ほむら「そんな! まどかのためだったら、わたし、なんでもするわ!」

まどか「もうなにを言われたって――……ん? いま何でもって言ったよね?」

ここまでー


ほむら「え? え、ええ。まどかの言うことなら、私はなんでも聞くわ」

まどか「わかったわたし帰るのやめるよほむらちゃん!」

ほむら「え?」

まどか「ほ~むらちゃ~んが~♪」ニコニコ

ほむら「……」タラリ

ほむら(一瞬でまどか機嫌が直ったわ。それは、それはいいんだけど、なぜかしら。冷汗が吹き出て、止まらない……!)

まどか「な~んでも~♪ 言うことを~♪」ウキウキ

ほむら「…………」ダラダラ

ほむら(わたし、もしかして早まったことを言ってしまたのかしら。いえ、そんなわけないわ! まどかのためになら、わたしは何だって――)

まどか「なんどでも~♪ 聞いてくれる~♪」ルンルン

ほむら「何度でも!?」

まどか「え? 違うの」キョトン

ほむら「ぇ、それは、その」

ほむら(まどかの言うことなら何だって聞いてあげたいけど、何度でもというのはさすがに断っておかないと何かがまずいと本能が警告してるわ)

ほむら「さすがに、ちが――」

まどか「ぁ。そっか。またわたしの、勘違……」ショボーン

ほむら「――わないわ! あなたの言うことなら何度でだってなんでも言うことを聞くわ! だからなんでも言って、まどか!」

まどか「だよね!」ウェヒヒ

ほむら「と、当然よ……!」

ほむら(あれ、私もしかして詰んだ……いえ! 心優しいまどかがそんな無茶を言ってくるはずないわ!)

まどか「じゃあ、ほむらちゃん。まずは――」ゴソゴソ

ほむら「……」ドキガクドキブル


まどか「――これをくわえて?」ヒョイ

ほむら「え? これって」

まどか「うん。ロッキーだよ?」

ほむら(こ、これはつまり、ロッキーゲームを始めようってことよね。ふふっ、そうね。嘘を真にするいい機会だわ。まどかの名誉を取り戻すためにも、受けて立ちましょう。平静を保って口を開けて閉じればいいだけよ、暁美ほむら!)

ほむら「わわわわわわかったわ」ドキドキドキドキ

まどか(うぇひひ。真っ赤になっちゃって、ほむらちゃん、かわいいなぁ)ニコニコ

まどか「うん。それじゃほむらちゃん、あーん」

ほむら「あ、あーん」パクッ

ここまで。
引き伸ばし、もとい、じらしもここまで。
次からロッキーゲームフェスティバルの開催だぁ! けど、ロッキーゲーム一回につき、練習がてらそれぞれ選択安価で書き方変える。
以下、番号安価。

1、このまま台本形式

2、三人称の地の文あり

3、ほむら一人称の地の文あり

4、まどか一人称の地の文あり

5、健全空間維持のため、あえてマミ杏さやのほのぼの台本形式

6、QB一人称の地の文あり

地の文ありでも台詞前に名前は付けます。
今日の23:59まで一番多かった番号で、一回目のまどほむロッキーゲームを書く。
それじゃあお休み。

三人称がQB並に人気ないや。

じゃあ、ほむら一人称で今から書きます。

 どくん、と大きく跳ねる心臓の音が聞こえる。

 魔力で強化しなければ人並み以下の心臓のはずなのに、何故かしら、と思う。大きく大きく跳ねて全身に血を送っているのがはっきり分かる。

 こんなに働けるのなら、実は最初から通院なんてする必要なんてないんじゃなかったのかも、なんて現実逃避気味な思考は

まどか「じゃあほむらちゃん。わたしも」

 まどかの言葉で、一瞬にして引き戻された。

ほむら「え、ええ。わわわわわかったわ」

 緊張してるとばれるのは恥ずかしいから、動揺なんておくびも出さないように答える。

 ロッキーを食べるだけロッキーを食べるだけロッキーを食べるだけ。来るべき時が来ただけで、慌てるようなことは何もないのよ暁美ほむら。

 そうよ。

 人生最大の難事だったワルプルギスの時を思い出しなさい。あの時と今を比べてみなさい。あの時は全身全霊を尽くして戦う覚悟と準備が必要だったわ。いまなんてたかが13.5㎝のお菓子をまどかと一緒に食べきるだけよ。そうよ。

 どう考えてもワルプルギスに特攻したほうが楽ね!

ほむら「ごめんなさいまどかっ。やっぱり――」

まどか「えいっ」

ほむら「――ぁ」


 言葉とともに近づいてきたまどかの顔に、思わずぎゅっと目を閉じてしまう。

 舌に触れるチョコレートが、甘い。触れてるだけでとろけていく。たった数ミリ、薄くコーティングしてあるだけのチョコが、しびれるほど甘く感じる。

 さくり、さくり、とまどかがロッキーを食べ進めるたび、私がくわえているロッキーもわずかに揺れる。

 そのリズミカルな感触が、さくさくと鳴る音が耳に心地いいような、何故だかとてつもなく恥ずかしいような、どっちつかずのふわふわした気分のままロッキーは短くなっていく。

 あと、どのくらいかしら。

 たったの13.5㎝。三秒もあれば食べれてしまう一本が、とても長い。

 まどかにされるがままで、私はまだ一口も食べ進められないまま、それでもロッキーは短くなっていく。

 半分を、過ぎたか。

 そんなタイミングで何故か、音が止まった。

あれこれ時間かかる……。

今日はここまで。

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