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男「くそっ!ウルガモス、戻れ!」
―――分かりきっていたことだ。
男「ガブリアス!行け!」
―――私の力は、
男「その技はミュウツーは覚えられたのか……!?」
―――『作り物』なのだから。
***
ポケモンレンジャーのエルザ「ここが《ポケモンの村》奥地ね……」
エルザ「14番道路でのスコルピ大量発生の任務が終わってからしばらく休みがあったと思ったら……」
エルザ「今度は随分と大きな仕事ね」
エルザは手首に付けた小さな機械に目をやった。隅に小さく『MADE IN SHINNOH』と書いてある。カロスの人間は知らない者も多いがシンオウではチャンピオンシロナ……の友人も愛用する『ポケッチ』である。
エルザ「…………」
支給品のポケッチには短く『危険視されるミュウツーの捕獲』とだけ書いてあった。
小さくため息をつくとゆっくりと洞窟へと歩を進める。さっきから嫌そうにしていながらもその足に迷いはない。
暗闇に身体を浸してすぐにエルザは洞窟がそこまで広くないことに気が付いた。そもそも明るすぎる。
もちろん洞窟なのだから外などより暗いことは間違いないが。
エルザ「(……こんなところに本当にミュウツー……)」
エルザ「……っ!?」
エルザはいきなり暗闇の中から『プレッシャー』を感じた。ポケモンレンジャーとしての経験はもちろん、トレーナーとしての経験もかなりのものだ。
特性『プレッシャー』のポケモンは幾度となく相対してきたがこれほどの圧力は感じたことが無い。
間違いなかった。
エルザ「アーボック」ポン
アーボック「シャー……」
エルザ「(相性はよくない、けど麻痺状態にすれば捕獲のチャンスも……)」
ミュウツー「ここから去れ」
エルザ「ッ!!」
エルザ「(人間の言葉を……!?)」
ミュウツー「……私から襲うつもりはない」
エルザ「……に、人間の言葉がわかるのね。ポケモンを相手に仕事するものとしては本当に助かるわ」
ミュウツー「……」
エルザ「仕事、そう……仕事」
エルザ「森の向こう、エイセツシティの住民からの申請よ。あなたが存在しているだけで恐怖し、おびえてる人々がいるってこと」
ミュウツー「それでお前は私をここから追放するつもりなのか?」
エルザ「……まあ上からは捕獲しろと言われてるのだけど、ここから出て行ってくれるのならそれで構わないわ」
ミュウツー「はたしてそれに意味があるだろうか?」
彼女は驚かざるを得なかった。
そもそも人間の言葉をしゃべることが驚きではあるが、それ以上にそもそも攻撃的な姿勢をとらないことや議論に応じようとしていることに。
エルザ「あなたが移動しても今度はその移動した先で同じようなことは確かに起こるかもしれない……わね」
ミュウツー「そういうことではない」
エルザ「……?」
ミュウツー「……そういう意味ではないのだ」
エルザ「……なぞなぞごっこはあんまり好きじゃないのよね」
ミュウツー「お前は私を……捕獲するのか?」
エルザ「……」
エルザ「……あなたこそ、私に本当は何を話したいの?」
ミュウツー「……」
エルザ「ここに残りたそうにもしてないし、私を試すみたいに変なことばかり話している」
ミュウツー「《ここ》は確かに私の住処にとてもよく似ている。岩の配置、暗明の加減、すべてにおいて等しい」
エルザ「あなたの故郷、カントーの《ハナダの洞窟》の話?」
ミュウツー「…………」
ミュウツー「…………私には」
エルザ「…………」
ミュウツー「私には《帰る場所》が無い」
ミュウツー「……私には《帰る場所》が無い」
人工ポケモンは確かめるように繰り返した。
天井を見上げる。満天の星空を遮る黒い岩をただ見る。
エルザ「カントー地方に住んでいたのでしょう?」
ミュウツー「…………」
エルザ「確かにカントー地方は人が多いしグレン研究所はあなたにとっていい思い出ではないかもしれないわ」
ミュウツー「……私はこの世界のポケモンではない」
エルザ「…………」
エルザは迷っていた。このままでは埒があかないようにも思える。
目の前の生き物は社会を恨む青年のような幼さが見られたが、同時に全てを悟る使者のようにも見えた。ポケモンにはかなり自信があったがあの妙な雰囲気から少し不安がある。
刀を抜けばおそらく落ち着いて交渉というわけにもいかなくなるだろう。
エルザってのはXYの14番道路のモブトレーナーです
また来ます
エルザ「ですから、あのミュウツーは少し特殊で……」
エルザ「ハルトさんの言い分はわかります……けど」
ポケモンレンジャー幹部ハルト「けど、なんだ? 仕事を放棄して帰ってきた言い訳が『ポケモンが変だったから』か?」
エルザ「…………」
ハルト「……わかった、今回の件はお前には厳しかったのだろう」
エルザ「……違います。そうではなく、もっと慎重に」
自分の実力が無かったと見なされたことをすぐに否定する。元々、仕事には誇りを持って臨むプライドの高いタイプだった。
しかし、同時に自分のレベルの低さというよりも特別な状況に対応できなかった事実は否定できないでいる。できることならこの上司をミュウツーに会わせてみたい、と子供じみた言い訳すらも出てきた。
ハルト「お前の同期のユタカかユウトを派遣することにする」
エルザ「……」
***
エルザはミアレシティのカフェ、《カンコドール》に来ていた。裏メニューのクロックムッシュが絶品のミアレにあるカフェにしては小さな店である。ポケモンレンジャー・カロス本部があるオフィスビルの向かいにあるのも相まって彼女はよく利用していた。
ここは常連よりも観光客を大事にするスタイルなのだが慣れなれしくされなくて済むため、そこも彼女は気に入っている。
エルザ「…………」
あのミュウツーはなんだったのか?
ミュウツー『……私はこの世界のポケモンではない』
なぜあんな謎めいたことを言っていたのか?
《この世界》のポケモンでないのなら《別の世界》があるのか?
ミュウツー『私には《帰る場所》が無い』
ミュウツー『…………私には《帰る場所》が無い』
ポケモンの姿を過去の自分と重ねていた。そのポケモンと過去の自分を重ねるのはまったくの筋違いのような気もする。
が、彼女は歌の歌詞を勝手に自分にあてはめるようにやはり重ねざるを得なかった。
エルザ「……納得が行くまで、調べてみても悪くはないはずよね」
レスありがとうございます
更新遅い上に短くてすみません
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