エルヴィン・スミス氏の日常(159)

※崩壊・捏造



――― 846年・王都


ダリス・ザックレー「……まもなく総統選が始まる」

「…現在のところ、候補者は3名に絞られたかと思います」

「南地区の最高責任者、ドット・ピクシスは総統選に乗り出す気はないようですから」

ザックレー「あくまでも現場に拘るか… 実にピクシスらしい」

ザックレー「候補者の能力と兵士の支持などを鑑みて、最終的に王が任命…」

「既に閣下にはこれまでの実績もございますし、次期総統の座も決まったようなものでしょう」

ザックレー「しかし3名のうち、一人の候補者が気になる……」

ザックレー「奴は中央憲兵とも太い繋がりを持っているからな」

「ご心配であれば手駒といいますか、誰かこちらの派閥に引き入れては如何です?」

ザックレー「心配事はないに越したことはない。 誰か手頃な者はおるかね?」



「近ごろ憲兵団の師団長になった、ナイル・ドークという者がおります」

「相当な切れ者だという噂です」

ザックレー「頭の切れ過ぎる者はいかんな。 …扱いづらい上に、いつ寝首をかかれるか分かったものではない」

ザックレー「多少バカである方が、従順で扱いやすいだろう」

「それでは調査兵団のエルヴィン・スミスは?」

ザックレー「エルヴィンか… 団長任命式の時に挨拶したきりだが… どんな男なのだ?」

「さぁ… 彼が団長になったのもごく最近の事ですから、特に噂などは耳にしておりませんが……」

ザックレー「フム、一度時間を取って会ってみるか」

「では、早速使いを出しておきます」



エルヴィン「………」パッカラパッカラ

エルヴィン(王都……)

エルヴィン(…任命式の時に来たきりだな)

エルヴィン(あの時はリヴァイも一緒だったが……)

エルヴィン(一体何故呼び出されたのだろうか)


エルヴィン(ダリス・ザックレー)




エルヴィン(………誰だっけ?)



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エルヴィン「……失礼します」ガチャ

ザックレー「待っていたぞ、エルヴィン」

ザックレー「任命式以来だな。 その後息災か?」

エルヴィン「おかげさまで…」

ザックレー(長身で体格の良い男だな…… 口も重そうだ)

エルヴィン(……思い出した。 そういえばいたな、この人)

エルヴィン(ヒゲ凄いと思って見てたんだ、確か)

ザックレー「…単刀直入に言おう、私の派閥に入らないか?」

エルヴィン「派閥……?」

ザックレー「そう… 今度の総統選に向け、私に協力して欲しいのだ」



エルヴィン(派閥…… 以前の『団長補佐見習い心得』という、訳の分からない非公式の役職の時には聞いた事もない単語だ)


ザックレー「……当惑するのも無理はない」

ザックレー「調査兵団の前の団長は、ピクシスと懇意にしていた」

ザックレー「君もおそらくはそうなのだろう」

ザックレー「裏切るという程ではないにしても、ピクシスを差し置いて私と手を組むことになるのだからね」

エルヴィン「………」

ザックレー(むぅ… 表情の読めない男だ)

ザックレー(一体何を考えているのだ……)


エルヴィン(ピクシス… ピクシス…… 誰だ?)

エルヴィン(…そうだ、駐屯兵団のハゲ)

エルヴィン(いつも『司令』としか呼んでないから、名前が分からなかったが……)

エルヴィン(そうか、ピクシスというのか)

夜また来る。カチョバカ好きなんだ



エルヴィン「………」

ザックレー「…何とか言ったらどうなのだ?」

エルヴィン「それではひとつ、質問を……」

ザックレー「何だね?」

エルヴィン「その派閥とやら… 年会費はおいくらですか?」

ザックレー「……そういうのは取ってない」

エルヴィン「ほほぅ… では、入会金は?」

ザックレー「……無料だ」

エルヴィン「お得ですね」



ザックレー「あのだな、エルヴィン…… 悪いが、もう帰って貰って構わん」

ザックレー「せっかく呼び立てたのに申し訳ないが…」

エルヴィン「イエ… それでは失礼します」

  ……ガチャ



ザックレー「……私は確かに多少バカの方が扱いやすいとは言った」

「ハイ……」

ザックレー「…だが、アレはどうだ?」

「………」

ザックレー「アレはどうも… 私の目から見ると、本当のバカにしか見えないのだが……」

ザックレー「何と言ったらいいのだろう… 完璧なバカ…… そう、パーフェクトなバカだ」

「し… しかし! ただのバカが調査兵団の団長になれるはずがありません!!」

「アレはひょっとして… バカを装っただけなのでは……?」

ザックレー「そうか…! やはりピクシスの事を気にして…」


ザックレー「フフ…… 私とした事が、してやられたものだ」

ザックレー「覚えておくぞ、エルヴィン・スミス……」




エルヴィン(夕食は何だろうか……)パッカラパッカラ

おしまい

さっき気づいたけど、『補佐代理心得』だった。
今後はカチョバカに限らず、ネタを使ったり使わなかったり。
短いのを少しずつ載せていきたいです。

あと、こんなくだらねーの誰も載せないと思うけど、転載禁止でお願いします

勿体ないな。

>>15 勿体ないとは? 何か変なコトしてたか?



――― 847年・調査兵団本部執務室


ナイル「……エルヴィン、いるか」ガチャ

エルヴィン「ん?」

ナイル「何故寝巻き姿で寛いでんだ。 …ていうかお前、朝から着替えてないのか?」

エルヴィン「いいじゃないか。 寝巻きの何が悪い」

エルヴィン「私は兵団一、偉いのだからな」

エルヴィン「寝巻きを着ていようがノーパンであろうが、私の勝手だ」

ナイル「……ノーパンなのか?」

エルヴィン「いや… ノーパンというよりは、もっとこう… パンツをはかない主義なんだが…」

ナイル「それをノーパンと言うんだ!」

エルヴィン「全くうるさい奴だな…」モソモソ

ナイル「ここで寝巻きを脱いでパンツを履くんじゃあない」



エルヴィン「それで一体何をしに来た」ビシッ

ナイル「ようやくちゃんと着替えたか…」

エルヴィン「私はこれでも忙しいのだ」

ナイル「お前達が昨年壁外から持ち帰った種… 文献を調べ、それが米という食物だったという事は以前話したろう」

ナイル「開拓地での栽培に成功してな。 収穫した物を届けに来た」

エルヴィン「それはワザワザすまなかった」

ナイル「別に俺自ら来る必要はなかったんだが、お前の仕事ぶりを見てみたかったんでな」

ナイル「来年は更に栽培量を増やす予定だが、水田を作るのに向いた土地を探すのが大変なんだ」

エルヴィン「うむ」ガタッ

ナイル「どこか行くのか?」

エルヴィン「外だ。 そろそろ時間でな」

ナイル「?」



エルヴィン「……」スタスタ

ナイル「壁外調査は今回のような成果も確かにあるが… 内地の問題についてはどう考えているのだ、エルヴィン」スタスタ

エルヴィン「それは決して軽視してはいない」

エルヴィン「…我々が壁外に出ている時以外は遊んで暮らせるのも、人類の安定から成り立っている」

ナイル「エッ?」

  ワーワーワーワー

エルヴィン「もう始まっていたか…」

リヴァイ「…遅いぞエルヴィン」

エルヴィン「あぁ… すまないリヴァイ、無駄な来客がな」

ナイル「無駄!?」

リヴァイ「まぁいい… 先に始めているぞ。 …今日はオルオだ」



ハンジ「さぁ皆! 締まっていくよーーッ!!」

ペトラ「…ヘイヘイ! ピッチャーびびってるよー!!」

グンタ「ヘイヘイ! でもピッチャーそんな自分を嫌いにならなくてもいいんだよー!!」

エルド「俺はピッチャーのいい所たくさん知ってるよー!!」

オルオ「クソォ……!!」


  ワーワーワーワー


ナイル「な、にを… やっているんだ? コレは………」

エルヴィン「ン? 知らんのかナイル、勉強不足だな」

エルヴィン「これはBaseball……『野球』だ」

エルヴィン「去年王都に行った時、ついでに図書館に寄って文献を見つけたのだ」



ナイル「………」

エルヴィン「調査兵団の兵士には、ちゃんと掛け声も覚えさせた」

エルヴィン「娯楽の少ない壁の内で、何か発散させるものはないかと思ってな……」


ナイル「……最近」

ナイル「所々でおかしな掛け声と球が飛んでくると思ったら……」

ナイル「お前かエルヴィンーーッ!!」

ナイル「お前が流行らせたのかアァァァーーーーッッ!!!」

エルヴィン「ン、内地でも流行り始めたのか?」



ナイル「つーか、お前ちゃんと仕事しろよォォォーーー!!!」





おしまい



エルヴィン「――― 駐屯兵団まで行ってくる」

リヴァイ「ほぅ、珍しいじゃねぇか」

エルヴィン「司令… あのハゲに呼び出されたのだ」

ハンジ「前の団長の時には割と頻繁に行き来していたけどね」

リヴァイ「代替わりしてからは、会う機会もめっきり減ったな」

ハンジ「久しぶりなんだし、手土産くらい持って行ったら?」

エルヴィン「…ウム、では行ってくる」



エルヴィン「………」パッカラパッカラ



――― トロスト区・駐屯兵団本部近く


エルヴィン(手土産を買い忘れたな)キョロキョロ

エルヴィン(……まあこの辺の草でいいか)

エルヴィン(案外喜んでムシャムシャ食べるかもしれん…)ムシリムシリ

エルヴィン(あと小石を少々… よし、これでOK)


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エルヴィン「……失礼します」ガチャ

ピクシス「おぉ、待ちかねたぞエルヴィン」

エルヴィン「相変わらず駐屯兵団本部は、酒と加齢臭の混じった不快な匂いですね」

ピクシス「不快!?」ガァーン!

エルヴィン「あ、コレお土産です」

ピクシス「あ、あぁ… スマンな」ゴソッ



ピクシス(…………草!)

ピクシス(そして、石!!)

エルヴィン「それで用とは何です? 早く帰りたいのですが」

ピクシス「来て早々、帰りたいとか言うんじゃあない」

ピクシス「来週、王都で行われる会議の件なんじゃが……」

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エルヴィン「……それでは私はこれで失礼します」ガタッ

ピクシス「あぁエルヴィン、その… 手土産をどうもな」

エルヴィン「イエ… それでは」

  バタン…

ピクシス「…ちょっとは皮肉が通じたかのう?」




エルヴィン(あんなに喜ぶとは…… 少し頭がおかしいんではないだろうか)パッカラパッカラ



――― 会議の日


エルヴィン「…何故わざわざ一緒に行かなくてはならないんです?」パッカラパッカラ

ピクシス「まぁそう言うな。 どうせ同じ道を行くんじゃからの」

エルヴィン「今日の会議は夕刻から… 長引くでしょうか?」

ピクシス「何か問題が?」

エルヴィン「せっかく王都に一泊するのなら、夜は外で遊びたいと思いまして……」

ピクシス「ほぅ! エルヴィンはそちら方面は鈍い男だと思っとったが…」

ピクシス「なんのなんの! やはり男は男じゃのう!!」

エルヴィン「………騒がしいジジイだ」ボソリ

ピクシス「何か言ったか?」

エルヴィン「何も」



ピクシス「…しかし若いうちは、遊ばんとなぁ」

ピクシス「ワシがお前くらいの年の頃には、そりゃあ…」

エルヴィン「……老害」

ピクシス「なんだかサラリとひどい事を言われた気がするが…… ン?」

  リーンゴーン…

ピクシス「おや… もう昼か」

エルヴィン「エルミハ区…… 私はちょっと用があるので、しばらくここで待っていて貰えませんか?」

ピクシス「あぁ… 構わんが」

  ―― 30分後

エルヴィン「戻りました」

ピクシス「エルミハ区で何か用があったのか?」

エルヴィン「………」



ピクシス「まぁエエわい… それにしても腹が減ったな」

ピクシス「どこかでメシでも食っていくか」

エルヴィン「あ、私は今済ませてきましたから」

ピクシス(……用事って!)ガァーン


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エルヴィン(フゥ… 会議は面倒だ…)

エルヴィン(しかし途中で抜けられない以上、先に小用を済ませておくか)パタム

「……はぁ~ん、あんあん♪」

エルヴィン(あの声は、ヒゲのザックレー総統!)

エルヴィン(ここは便所… そして総統は個室……)

「フン、ふふぅ~~ん♪」

エルヴィン(おそらく総統は、ここに誰もいないと思って鼻唄を歌っているのだ)

エルヴィン(……これは、すごく恥ずかしい!)



エルヴィン(総統が出てくる → 私と出くわす → 総統、鼻唄を聞かれて思わず赤面)

エルヴィン(そして何となく私も赤面……)

エルヴィン(ここはひとまず退散だ!!)

エルヴィン(足音を立てぬよう、立ち去らねば…)

  バタン!

エルヴィン「!!」

ナイル「…お! もう来ていたのかエルヴィン」

「…………」ピタリ

エルヴィン(は… 鼻唄が止まった)

エルヴィン(私の名が聞こえてしまったのだろうか…)

エルヴィン(何という事をしてくれるのだナイル!)

  ジョォーーー

ナイル「例の水田の件だがな、エルヴィン…」

エルヴィン(どうする私… このまま逃げるか?)



エルヴィン(イヤ、今さら逃げても後で余計気まずいだろう)


ナイル「…どうしたエルヴィン?」

エルヴィン「イヤ、その… 実はな……」


ナイル「……エ! あのザックレー総統が鼻唄を!?」

エルヴィン「声がでかいぞナイル! もう少し声を小さく、ナイル!」

ナイル「それは間の悪い事をしてしまった…」

エルヴィン「まぁ気にせんでいいだろうナイル。 心配する事はないさナイル」

ナイル「何故、俺の名を連発するんだ? …まさか」

エルヴィン「そうだナイル、お前の名も総統の耳に届いた。 …これでお前も道連れだ」

ナイル「なんて真似を…」




ザックレー(………もう、どっか行けよ)



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ナイル「……そこで開拓地の地質調査をした所、水田に適した土地がいくつかありました」

ナイル「人員も増やし、来年度はさらなる生産増加が見込まれるでしょう」

ザックレー「なるほど… さすがはナイル、そこまで話を進めているとは」

ピクシス「エルヴィンは? 米に関して何かないのか」

ナイル「…というか仕事してるのか、お前は?」

エルヴィン「失礼な奴だな。 私だってたまには仕事をするぞ」

エルヴィン「我々は調査兵団。 私達は今、壁外だけにとどまらず、壁の内にもその調査網を拡げています」

エルヴィン「それはズバリ市場調査…… 顧客のニーズを掴むのです」

ナイル「何だかそれらしい事を言っているが、具体的には?」



エルヴィン「今年、米を購入した者に対してアンケートを実施しました」

ザックレー「ほほぅ…」

エルヴィン「そこで分かったのは…… 米を研ぐのが面倒くさいという事」

エルヴィン「しかも、研ぎ方次第で米は美味くもまずくもなる」

ピクシス「パン生地こねる方が面倒じゃと思うが」

ザックレー「しかし全ての家庭でパンを焼いている訳ではないからな」

ナイル「その点米に関しては、家庭で研ぎ家庭で炊く事がほとんどですからね」

ナイル「初めて試してみた時には、研ぎ過ぎて米を粉々にしてしまいました」

ピクシス「ワシの時は、研ぎが足りずにヌカ臭くてのう」

エルヴィン「そこでコレを持って来ました」ドン

ピクシス「馬の後ろに積んでおったヤツか」



エルヴィン「自動米研ぎ器です」

ザックレー「なんと!」

エルヴィン「中に米を入れ、ハンドルを差し込みグルグル回し……」グルグルグルグル

エルヴィン「遠心力と吸引力で米とヌカを分離させるのです」

エルヴィン「ちなみに分離させたヌカは肥料などとして使えます」

ナイル「確かに便利だが、金額はどのくらいなんだ?」

エルヴィン「一般市民の賃金、およそ2か月分」

ピクシス「高い! そりゃ高いぞエルヴィン」

エルヴィン「大量に作ればコストを抑えることもできますが、しばらくは無理でしょう」

ナイル「仮に商会や貴族なんかが購入しても、故障なんて事になったら大変だぞ」

ピクシス「奴らはそういう事にはうるさいからのう」



エルヴィン(めんどくさいな…)

エルヴィン(たかが『米研ぎ』の話で、何をそんなに騒ぐんだ?)

ザックレー「米の生産を進めている我々にしわ寄せが来ては困るな」



エルヴィン「………分かりました」

エルヴィン「私が全責任を取りますよ」

ナイル「な、なんだと!?」

ピクシス「どう責任を取るというんじゃ?」

エルヴィン「……『米研ぎ器』が壊れて誰かが文句言ってきたら、機械に代わって私が米を研ぐって事で」

ナイル「む… 無謀過ぎる!」



ザックレー「簡単に言うが… 君に米が研げるのかね?」

ザックレー「研げるというのであれば、研いでみるがいい」

エルヴィン「分かりました、研ぎましょう!」…ザッ!

ナイル「エェ!? 本当かエルヴィン!」


エルヴィン(米研ぎは心…… 機械に負ける訳にはいくまい)シャッシャッシャッ

エルヴィン(肘を支点とし、繊細に… 大胆に研ぐ!)シャッシャッシャッシャッ



ピクシス「おぉ……」



エルヴィン「……ご賞味下さい」ゴトッ



ザックレー「米が… 光っている! 炊いてもいないのに、これほどの光沢が!!」

ピクシス「このまま食べても美味いぞ!」ポリポリ

ザックレー「そうか…」

ザックレー「……どんなに素晴らしい米も、研ぎ方が悪ければ砂と化してしまう…」

ザックレー「私達は、大切なものを見失っていたようだ……」

エルヴィン「私の言いたい事が分かって頂けましたか?」

ピクシス「……ウム!」


ザックレー「米は手で研ぐのが一番!!」



ナイル「それじゃ『米研ぎ器』の立場は!?」






おしまい



――― 848年・憲兵団本部執務室


ナイル「」ガチャ

エルヴィン「……待っていたぞ、ナイル」

ナイル「来ていたのか」

エルヴィン「もうすぐ戻るというので、待たせて貰っていた」ガリガリガリガリ

ナイル「あ!? ナニ彫ってんだ人の机に!!」

エルヴィン「イヤ、記念に…」

ナイル「人の机を勝手に彫るな! お前は訓練所に入りたてのガキか!!」

ナイル「しかも『エロス』ってお前……」

エルヴィン「上手く彫れた」

ナイル「一体何をしに来たんだ!!」



エルヴィン「実は今度、駐屯兵団と野球の試合をする事になってな」

ナイル「また野球か」

エルヴィン「試合は10日後… ハゲへの恨みを果たしてやる時が来たのだ」

ナイル「ピクシス司令に何の恨みが…… 大体野球がどうしたというんだ」

エルヴィン「キャッチャーがいなくて困っている」

ナイル「キャッチャー? そんなの誰でも構わんだろう」

エルヴィン「誰でもいい訳ないだろうが!」バンッ!

エルヴィン「キャッチャーはデブでなければならんのだ!!」

ナイル「デ、デブだと!?」

エルヴィン「そう… キャッチャーはデブと相場が決まっている」

エルヴィン「しかし生憎、調査兵団にデブはおらんのだ」

ナイル「だからって、何故俺の所に……」



エルヴィン「デブを貸してくれ」

エルヴィン「憲兵団には昼間から飲んだくれている者が多いのだから、デブの2~3人くらい都合がつくだろう」

エルヴィン「とにかく憲兵団のデブをかき集めてくれ」


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「…失礼します。 デブを連れて参りました」ガチャリ

ナイル「2人か…」

エルヴィン「もちろん野球はできるんだろうな?」

「それが……」

「まずこちらのデブは運動神経抜群ですが、野球を全く知らないデブです」

デブ1「………」

「そしてこちらのデブは野球の知識は豊富ですが、運動神経ゼロのデブです」

デブ2「………」



エルヴィン「難しいな……」

「なかなか『3拍子揃ったデブ』というのはいなくて…」

ナイル「そもそも運動神経ゼロで、どうやって憲兵団に入ったんだ」

「師団長! もう1人デブがいました!!」ガチャッ

ナイル「…どんなデブだ?」

「このデブは運動神経も鈍く、野球の知識もないのですが……」

デブ3「………」

「しゃがむのが得意なデブです」

エルヴィン「よし! このデブだ!」



ナイル「エルヴィン… 本当に野球を知っているのか?」



ナイル「大体キャッチャーはデブ… という考え方自体が間違っているんじゃないか?」

ナイル「捕手というのは、ずっと座っているポジションと思われがちだが、そんな事はない」

ナイル「重いプロテクターを身に着けながら、鋭い動きを要求される」

ナイル「そしてピッチャーをリードし、ゲームを取りまとめていく大事な存在だろう」

エルヴィン「フム… 少しは勉強したようだが、ナイル…… つまりお前は、デブを馬鹿にしているのか?」

ナイル「エッ!?」

エルヴィン「お前の言い方は、『デブに大事なポジションは任せられない』と言っているようなものだ」

エルヴィン「…その発言は問題だと思うが」

ナイル「……う」

デブ1「……軽い気持ちで言った事が、人を傷つけることもあります」

デブ2「デブにだって、心があるんです……」

ナイル「ス、スマナイ… 俺が悪かった」

エルヴィン「…分かってくれればいいんだ」



「……師団長ォォーーー!!」バタァーーンッ

「いましたよ、いいデブが!!」

ナイル「何だと!?」

「まさに野球をやる為に生まれたデブです!」

「遠投120m超え、100mは11秒台…」

「しかも以前の野球仲間の間では、『意表を突く攻撃的なリード』が売りだったそうです!!」

エルヴィン「素晴らしい… 完璧じゃないか」

「ただ… ひとつだけ問題がありまして……」

ナイル「何だ? それは…」

デブ4「………」

「太り過ぎて、しゃがめないんです」


エルヴィン「やっぱり駄目だな、デブは………」



ナイル「……エルヴィン?」

おしまい
あの世界、デブいなさそうだけど



――― 偉いサンの部屋


サネス「……ですが、アレは仕事もロクにしない馬鹿だと、もっぱらの噂です」

「君はそんな馬鹿が、調査兵団の団長になれるとでも思っているのかね?」

サネス「イエ、それは……」

「総統選の時もそうだ… 私とザックレーは事前の調査では僅差だったはず…」

「ザックレーが総統に任命された後に聞かされた」

「エルヴィンが秘密裏にザックレーと手を結んだのだと…!」

「今期はもう仕方がない。 …しかし、私は次回選に向けての準備を怠るわけにはいかぬ」

「エルヴィンには秘密が多い」

「今、壁内での栽培を進めている米… 元々はエルヴィンが壁外から持ち帰ったものと聞いた」

「それに市場に出回ってはいないが、米研ぎ器… これもエルヴィンの発案だという」

「奴自身が、見事な米研ぎの技術も持っているらしい…」

「……何にせよ君はエルヴィンを調査し… その一部始終を私に報告してほしいのだ」



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サネス「……つったって、誰行かせりゃいいんだよ」

サネス「参ったなぁ……」

サネス「ま、誰でもいいだろ。 オーイ! A・B~~」



中央憲兵A・B「…私達がですか?」

サネス「馬鹿だ馬鹿だと言われてはいるが… 本来のエルヴィンは油断のならない男のハズだ」

サネス「調査兵団の… エルヴィンの秘密を必ず探って来い!」

中央憲兵A・B「ハッ!!」



A「……で、具体的にどうすりゃいいのかなぁ」

B「そりゃ調査兵団本部の資料庫とか、エルヴィンの机を探ったりとかじゃないか?」

A「だよなぁ…」


――― 調査兵団本部・深夜


A「………なぁ」ガサガサ

B「何だ」ワッサワッサ

A「もうだいぶ調べたけど… ここ機密情報なんて、ないような気がするんだが……」

B「うるさいぞ、黙って仕事しろ!!」

  ギイイィィィーー

A・B「!!」

エルヴィン「ン…… 誰だ? 君達は」



A「あの… エット」

エルヴィン「見ない顔だな… 何をしてるんだ? こんな夜中に」

B「イ、イエその… 仕事を…」

エルヴィン「何!? 仕事だと…?」

A・B「………」

エルヴィン「この大事な時に、仕事などやっとる場合かァー!!」

A・B「…エ?」


--------------


A・B「」…ブンッ、ブンッ

エルヴィン「もっと脇を締めろ! 脇を!!」

A・B「ハ、ハイ!!」



A・B(一体なぜ俺達はバットを振っているんだ……?)ブンッ、ブンッ

こういう話あったな^^。

>>57 これには続きがある



――― 翌日


B「………昨日はひどい目にあった」

A「エルヴィンは駐屯兵団との対抗試合のメンバーに、俺達を加えるとか言っていたぞ?」

B「どうやら俺達を調査兵団の兵士と勘違いしているようだな」

A「よほど野球で頭がいっぱいなんだろう…」

A「しかし、このエルヴィンの机……」ガサガサ

A「バレないようにと一生懸命カギをこじ開けたのに…」

A「……やはり機密情報など、一切ないような気がするのだが」

B「うるさいぞ! 黙って仕事しろ!」

B「……む!?」



A「何だ!? 何か見つけたのか!」

B「……これだ!」

B「ついに入手したぞ! 調査兵団トップシークレットを!!」

A「な… 何が書いてある!?」

B「………」

A「どうした? 早く読んでくれ」



B「……落ち着いて聞いてくれ」

B「今度の野球大会…… お前、補欠だぞ」

A「何ィ! 俺が補欠!?」

A「じゃあお前は!?」

B「俺は8番ライト… 一番どうでもいいポジションだ」



A「チクショウ! エルヴィンめ… クリーンナップが空いていると言っておきながら…!」

B「俺達は、奴の手のひらで遊ばれていたようだ……」

B「……って、ちょっと待て」

B「何故、いくら探しても野球関係の情報しか出てこないんだ?」

A「そういえば… グラウンドの見取り図とか、土の種類とか……」

A「まさか野球の試合がそれほど重要なのか…!?」

B「…とりあえず、一度上に報告しておこう」

A「どやされそうではあるが…」


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サネス「何……!?」

サネス「資料庫にも… エルヴィンの机にも、野球情報しか入っていないだと…?」

B「はい… いくら探しても壁外の情報や、駐屯兵団とのやり取りなどに関する書類が出てこないのです…」



サネス「そうか… 分かったぞ!!」

サネス「野球は巧妙なカモフラージュだ」

サネス「対抗試合の裏に、秘密が隠されているに違いない」

B「ま… まさか、そんな事が…!?」

A「では、我々は一体どうすれば……?」

サネス「決まってるだろう……」


サネス「………4番を取れ」



A・B「」…ブンッ、ブンッ



A・B(一体なぜ俺達はバットを振っているんだ……?)ブンッ、ブンッ





おしまい

まだ続きがあった。

――― 試合当日


エルヴィン「………という訳で」

エルヴィン「対抗試合は中止になりました」

ピクシス「そんな!?」

ピクシス「『グラウンドを取り忘れた』とは、どういう事じゃ!?」

エルヴィン「ハァ… ついうっかり」

ピクシス「初歩的なミスじゃな」

ピクシス「どうしてくれるんじゃ、全く……」

エルヴィン「……うるさいなぁ」

エルヴィン「たかが野球ぐらいで、そんな大騒ぎしないで下さいよ」

ピクシス「たかが野球とは何じゃ!」



ピクシス「元はと言えばエルヴィンが『野球、野球』と大騒ぎしていたから、皆やる気になったのではないか」

ピクシス「ワシなんぞ、ようやくルールを覚えたんじゃぞ!」

エルヴィン「だから謝ってるでしょう」

ピクシス「本当に反省しとるのか!?」バンッ!

  ピキーーーンッ!!

ピクシス「アタッ! こ… 腰が……」

エルヴィン「あぁもう… そんな年甲斐もなく、大声出して机を叩いたりするから」

ピクシス「ス、スマンがエルヴィン… あちらの部屋にいる、ワシの従卒を呼んできては貰えんだろうか」イタタタ

エルヴィン「分かりました」クルッ スタスタ


エルヴィン「…………ジジイの時代は終わったな」ガチャリ

ピクシス「クッ… 去り際にボソッと辛辣な捨て台詞を残しおって…」



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エルヴィン「………という訳で、司令が腰を痛めたので対抗試合は中止になった」

リヴァイ「元気なジイサンだと思っていたが…」

ハンジ「それじゃ仕方がないよねぇ」

デブ3「やっとキャッチャーというものに慣れてきたのに…」

エルヴィン「ウム… 私も残念だ」




中央憲兵A・B(俺達は4番を取るまで帰れないんだが……)



中央憲兵A「……ひとまず野球はさておいてだ」

中央憲兵B「日常のエルヴィンを探ってみよう」

B「幸い、俺達が中央憲兵の人間だとは誰も気づいていない」

A「誰も気づかないってのもスゴイ話だけどな」

B「…シッ! 執務室から出てきたぞ」

A「裏庭へ向かっているのか?」

B「追うぞ」サササッ


―― 裏庭


A「…石段に腰掛けている」


エルヴィン「さて… 今日は何をするかな」

B(仕事しろよ……)



エルヴィン「よし、久しぶりに彼女に会いに行くか」

A(エ! 彼女いるのか!?)

B(嘘!!)

エルヴィン「そうだ、プレゼントでも持って… いや… 待てよ」


エルヴィン「彼女いなかった…」

A・B(いなかったーーー!!)


  ……カァー カァー


A「なぁ…… 俺達、もう帰ってもいいんじゃないか?」

B「……ウン、そうだな」




おしまい
こうしてエルヴィンと調査兵団の秘密は守られた



――― 849年


ピクシス「……それで、固定砲の改良についてなんじゃが」

ピクシス「以前よりも砲身の可動範囲が広がっての」

エルヴィン「………」

ピクシス「壁にくっついている巨人にも撃てるように…… って」

ピクシス「聞いとるのか、エルヴィン!」

エルヴィン「あ… 今、鳥の数数えてるんで」

エルヴィン「気が散るので1人で喋らないで下さい」

ピクシス「ひ… 1人で喋ってるんじゃあない!」

ピクシス「全部、お主に語りかけているんじゃ!!」



ピクシス「全く… 先が思いやられるわ」

ピクシス「……ところでな、エルヴィン」

エルヴィン「何です? 邪魔しないでくれと言ったでしょう」

ピクシス「聞けィ!!」

ピクシス「お主… 言い交わした女などはおるのか?」

ピクシス「何を考えているのか理解できないが、お主に惚れとる貴族の女… というのが意外に多くてのぅ」

ピクシス「勿体ない事に、控えめで… 夫を立てそうな婦女子ばかりなんじゃが……」

エルヴィン「……必要ありません」

エルヴィン「私は調査兵団の団長… 色恋などにかまけている暇はないのです」

ピクシス「………ほぅ」



エルヴィン「それに……」

ピクシス「それに?」

エルヴィン「私の理想を満たす女は、貴族などにはいないでしょう」

ピクシス「……参考までに聞いておくが、エルヴィンの好きな女性のタイプとは何じゃ?」

エルヴィン「それは… それは、やはり優しくて……」

ピクシス「ほぅほぅ」

エルヴィン「そして… 臆することなく、目上の人にもガツンと当たっていける強さを持った人… ですかね」


ピクシス「………」


ピクシス(優しいかどうかはともかく……)

ピクシス(平気で草と石を手土産に持ってくる男… そして明らかな自分の非を他人に擦り付け…)

ピクシス(平気で人の痛い部分ををエグる… こんな人間、お前だけで十分じゃろうがァ!!!)




おしまい

あと、ぼちぼち変態とかcpとか入ってくるかもしんないから
無理な人はやめたほうがいい



ハンジ「……今年もそろそろ体験入団の季節だね」

リヴァイ「またうるせぇガキどもがやって来るのか…」

エルヴィン「そう言うな、リヴァイ」

エルヴィン「これは入団志願者を募るためのものでもあるのだからな」

ハンジ「これ以上人数が減ったら、駐屯兵団の一部署に格下げされる可能性もあるからねぇ」

エルヴィン「あのハゲの兵団に組み込まれるのは、断じて阻止せねばならん」

リヴァイ「フン… しかしうるせぇ事に変わりはねぇ」

ハンジ「ま、1週間くらいあっという間だよ」

エルヴィン「それに、この制度のお陰でエルド達は調査兵団に入団したのだぞ」

エルヴィン「フフ… あの時も色々あった」



ハンジ「そうそう、オルオの服が突然バリーンと弾け飛んだり…」

エルヴィン「グンタは自分の掘った穴に何度も落ちていたな」

リヴァイ「ペトラがやたら俺の足を踏みつけてくるのには参った」

ハンジ「私は今回、座学の講師担当だけど…」

リヴァイ「俺は立体機動か」

ハンジ「エルヴィンは?」

エルヴィン「私はまぁ… 監督だな」



ハンジ「今年はどんなコ達が来るんだろう」

エルヴィン「楽しみだ……」



――― 体験入団・初日


ジャン「……緊張するぜ」

マルコ「憲兵団や駐屯兵団での体験は、何事もなく終えられたからね」

ライナー「人類最強か……」

ベルトルト「一体どんな人なんだろう…」



ミカサ「……エレン、エレン、ここは調査兵団」

ミカサ「あなたがずっと入りたがっていた所」

ミカサ「だから、そこかしこでオシッコしては駄目」

エレン「」ショー



―― 座学


ハンジ「ここから私独自の推測を交えて解説すると……」

コニー「ふあぁ…」

サシャ「…お腹空きました」



―― 立体機動


リヴァイ「そうじゃねぇ。 そういう時は………」


リヴァイ「オイ… 今度はお前がやってみろ」

ジャン「ハ、ハッ!」パシュッ



サシャ「……お腹空きました」



----------------


エルヴィン「……おや? 一人の少女が座り込んでいる」

サシャ「お腹が空いて動けません……」グンニャリ

エルヴィン「…君、そこの訓練兵の君」

エルヴィン「もしかして空腹なのかね? 丁度良かった、このパンを… サシャ「!!」ガバアァッ!!

  モサモサモサモサモサモサモサモサッ

エルヴィン「ハハ、喉に詰まらせてはいけないよ」

サシャ「」モグモグモグモグモグ

エルヴィン「ハハハ、それは私の指だ」

サシャ「」マ゛リ゛マ゛リ゛マ゛リ゛マ゛リ゛

エルヴィン「ハハハハ… イタイイタイ、それは私の指だってば」



-----------------


リヴァイ「……どうしたエルヴィン? 指先から出血しているぞ」

エルヴィン「ああ、これは少し齧られたのだ」

エルヴィン「ところで今年の訓練兵はどうだ?」

リヴァイ「まぁ飲み込みは悪くねぇな」

エルヴィン「そうか… 先が楽しみだ」

ハンジ「たださぁ、教えられる事は今日教えちゃったから、明日以降やる事がないんだよね」

エルヴィン「何だと?」

エルヴィン「我々には、壁外で得た経験… そして壁内で得た知識があるだろう」

ハンジ「それなら明日はエルヴィンが指導してよ」

リヴァイ「今日は挨拶ひとつしてねぇだろ」

エルヴィン「フム… それもいいか」


エルヴィン(…今日はたまたまだったが、明日はパンと牛乳を持って歩こう)



―― 翌日


  ザワザワザワッ!


ジャン「だ… 団長だ! エルヴィン団長が出てきたぞ!!」

エレン「!!」ショー

アルミン「オシッコを止めるんだ、エレン!」


エルヴィン「訓練兵の諸君、ようこそ調査兵団へ。 さて……」




104期「」…ブンッ、ブンッ

エルヴィン「もっと脇を締めろ! 脇を!!」

104期「ハ、ハイ!!」




104期(一体なぜ俺達はバットを振っているんだ……?)ブンッ、ブンッ



------------


エルヴィン「…フゥ、やはり野球は良いな」

ハンジ「明日の指導はどうする?」

エルヴィン「フム… 明日は掛け声を覚えさせ、ポジションを決めよう」

リヴァイ「何だエルヴィン、また指先から出血しているぞ」

エルヴィン「あぁ、今日も少し齧られた」

リヴァイ「何にだ?」

エルヴィン「訓練兵の少女だ」

ハンジ「そういえば昨日、座学の時間にお腹を鳴らしていたあのコかな」

エルヴィン「フフ、なかなか賢い娘だ」



エルヴィン「昨日、私がパンをやった事を忘れていなかったようだ」

エルヴィン「パンをちぎると、すかさず大きい方へ口を持っていくしな」

ハンジ「へえぇ…」

エルヴィン「それに牛乳はコップに入れ渡したんだが、まだ残っているのが分かったのだろう」

エルヴィン「もう1杯貰うまでテコでも動こうとしなかった」

リヴァイ「ほぅ… それは中々見所がある」


-----------------


エルヴィン「さて… それでは今日は休むとするか」



エルヴィン「………オヤ?」


エルヴィン「………」



――― 体験入団・3日目朝


エルヴィン「……リヴァイ、リヴァイ」

リヴァイ「何だエルヴィン、お前らしくもない。 何を慌てて…… !?」

エルヴィン「…気付いたか」


リヴァイ「テメェ… 何で勃起してやがる」

エルヴィン「それが… 私にも分からんのだ」

エルヴィン「私も昨夜寝る前に気付いたんだが… 一晩眠ったら元に戻ると思っていたのに、一向に戻らない」

リヴァイ「昨夜って… ずっと放っておいたのか?」

エルヴィン「別に疲れても興奮してもいないからな」

リヴァイ「……今日はパンツは?」

エルヴィン「こんな状態じゃアレだから、一応履いている」



ハンジ「…今、鎮静剤を切らしていてさぁ」

ハンジ「ポジション決めはしておくから、医者でも行って来たら?」

エルヴィン「むぅ… それは私も同席したい」

ハンジ「そっか、それじゃ今日は……」

エルヴィン「アレがあったろう。 ホラ… 前にちょっと試して意外と良かったアレ」

リヴァイ「……長距離索敵陣形か」

エルヴィン「そう、それ」

ハンジ「じゃあネスにでも頼むとしよう」

エルヴィン「あぁ… リヴァイ、これを」スッ

リヴァイ「…パンと牛乳?」

エルヴィン「彼女に会ったらあげてやってくれ。 それでは私は医者に行ってくる」



---------------


エルヴィン「………効かんな」

ハンジ「ダメ? それなら今夜は娼館にでも行って来たら?」

エルヴィン「そんな気分でもないんだが……」

リヴァイ「そうだ… これ、返すぞエルヴィン」スッ

エルヴィン「おや? パンと牛乳… 彼女に会わなかったのか?」

リヴァイ「イヤ、あの小娘はいたんだが……」

リヴァイ「お前と匂いが違うからか、俺の周りをグルグル回っているだけで、それ以上近寄って来なかった」

リヴァイ「その場に置いてきても良かったんだが、それはそれで癪でな」

エルヴィン「そうか…… それではこれは後で私がやるとして、先に風呂に入るとしよう」

ハンジ「今の時間は、訓練兵の皆が入ってるんじゃないかな」

エルヴィン「いずれ同じ兵団の仲間になるのなら、今から裸の付き合いをしても構わんだろう」



リヴァイ「……フルボッキで訓練兵と風呂入って大丈夫なのか?」

ハンジ「でもエルヴィンだからねぇ… 大丈夫でしょ?」


―― 風呂


  カポーーーン…


ジャン「……長距離索敵陣形ってのは、エルヴィン団長が考案したんだろ?」

アルミン「ウン。 それで生存率が飛躍的に伸びたんだってね」

コニー「やっぱスゲェんだな! 調査兵団の団長って!」

エレン「」コクコク

マルコ「昨日は野球とかやっていたけど… あれはやっぱり僕らの緊張をほぐすためだったんだね」



ライナー「……しかし、もし試合をやるとしたら… 俺がやはりキャッチャーなんだろうか」

ジャン「そりゃ4番ピッチャーは、ミカサ以外いないだろうからな!」ハハハ

エレン「」ムッ! ツカツカ

ジャン「ちょ… エレン! さっきまでションベンしてた手で俺を触るんじゃねぇ!!」

ベルトルト「でも湯船でしなくなっただけ、大分マシじゃない」

ジャン「そういう問題じゃ…… お前、4番にこだわってんのか!?」



  …ガララッ!


アルミン「エッ……?」

エレン「!?」

マルコ「エルヴィン団長!?」

エルヴィン「あぁ… スマンスマン、そんなに緊張することはない」

エルヴィン「訓練兵の皆と、背中を流し合ってみたくなっただけなのだ」



アルミン「エルヴィン… 団、長……?」

ベルトルト(勃…… ってる!?)

エレン「!?」



ジャン(それは屹立し……)

ジャン(…普通のちんこというには、あまりにも大き過ぎた)

ジャン(大きく、太く… 重そうで、そして大雑把過ぎた)

ジャン(それは… 正に鉄の棒だった…)



エルヴィン「ドコを見ているのだ君達は……」


エルヴィン「あぁ… これはどうも私にも原因が分からんのだ」

エルヴィン「…だから、あまり気にしないでくれたまえ」



ライナー(気にするなと言われても…!)


――― 体験入団・4日目


マルコ「…今日はポジション決めだって?」

ライナー「昨日、風呂で団長が言っていたからな」

ジャン「野球なんかやってていいのかね?」

エレン「」ムッ!ガシィッ

ジャン「だから掴むなって!」

アルミン「『なんか』って言葉が気に障ったんだよ、ジャン」

ベルトルト「野球だって、足腰を鍛えているコトにはなるからね」

ミカサ「瞬時の判断力を養う事もできる」

エレン「」コクコク

サシャ「…早くお昼になりませんかねぇ」


コニー「お! 団長や兵長がやって来るぞ!!」



マルコ「そういえば団長と兵長… どっちが4番なんだろう?」

ジャン「そりゃ… 団長じゃねぇのか? だって団長なんだし」

コニー「イヤ、そこは兵長だろ。 なんたって人類最強だぜ?」

ライナー「俺もそう思うな。 人類最強はダテじゃない」

エレン「」ウンウン



エルヴィン「ハテ… 先程から『人類最強』という言葉が聞こえてくる」

エルヴィン「それがリヴァイを指しているのは、分かるのだが……」

エルヴィン「そもそも君達は何を以て、『最強の男』と言うのだと思うかね?」

アルミン「それは… 巨人の討伐数などの実績ですとか」

エルヴィン「フム、それも間違いではない」

エルヴィン「しかし人が人として… 男がより男らしい男であるためには、討伐数などは関係ないように私は思う」

リヴァイ「俺は『人類最強』なんて言われても、鬱陶しいだけだしな」



エルヴィン「………そこでだ」

エルヴィン「ポジション決めはひとまず置いて、『最強の男』というものを決めてみたい」

リヴァイ「だが、何を基準に最強ってのを決めりゃいいんだ?」

ハンジ「ウ~ン…」


-------------


ハンジ「……とりあえず3人に絞ってみたよ」


エルヴィン「………」

リヴァイ「………」

アルミン「エッ?」


ミカサ「……アルミン?」



アルミン「ちょ、ちょっと待ってください!!」

アルミン「なぜ僕がノミネートされているんですか!」

オルオ「馬鹿野郎コッチのセリフだ! さっさと下がれ!!」

エルヴィン「…彼を推薦したのは私だ」

オルオ「団長が!?」

エルヴィン「ウム… 『最強』は、単なる腕っ節だけとは私には思えんのだ」

エルヴィン「彼からは何故だか『漆黒の意志』を感じる。 ……つまりだ」

リヴァイ「…お前の中に棲む悪魔が見てぇんだよ」

アルミン「サ、サッパリ意味が分からないんですが……」

エルド「それで、どうやって最強を決めるんですか?」



ミケ「やはり殴り合い……か?」

ハンジ「でも3人だと最初に2人が戦って、勝った方がもう1人と戦うワケでしょ?」

リヴァイ「フン… 俺がエルヴィンとやったら、お互い無傷では済まねぇだろうな」

エルヴィン「下手をすると共倒れになりかねん」

ライナー「なるほど… 順番によっては、不戦勝でアルミンの優勝という事もあり得るワケだな」

アルミン「イヤイヤイヤ、それはないから!」

リヴァイ「それに本当に強い男ってのは、むやみやたらとその拳を振るうモンじゃねぇだろ」

エルヴィン「そうだな。 普段はどっしりと構え、ここ一番という時に動く… その方が格好良いだろう」

ジャン「確かに普段からギャーギャー吠えてる奴は大したコトねぇな」

マルコ「君が言うのもアレだけどね」

ベルトルト「つまり… 真の強さとは、我慢強さってコトなんだろうか」

グンタ「…俺にもひとつ言わせてくれ」

エルド「あぁ、言ってやれ」



グンタ「俺達は… 俺やオルオ、エルドやペトラなんかは、小さい頃から散々苦労して訓練所に入り… そして卒業してココに入団したろ?」

ペトラ「…そうね。 その先にある熱いものに、本当はずっと憧れていたのかもしれない」

オルオ「そうさ! 熱い情熱… 燃えたぎる心… そんな熱を持った男に憧れ、調査兵団に入ったんだ!」

エルド「いつの時代でも、男が憧れる男に変わりはないんだな」


サシャ「お腹空きましたねぇ…」


エルヴィン「フフ… 私は子供の頃、自分の父親には絶対に勝てないと思っていた」

リヴァイ「ガキの頃ってのは、親父の背中がデカく見えるモンなんだろうよ」

ハンジ「…とすると、最強の男の条件として『力強い背中』は外せないね」

アルミン「僕の背中はこんなにも華奢なのに!」

ミケ「……とりあえず、今までの話をまとめるとだ」

リヴァイ「『我慢強くて、力強い背中を持った熱い奴』が最強の男になるのか…」

エルヴィン「難しいな… しかし、その条件を満たす勝負で決めるしかなかろう」

ハンジ「よし! やってみよう!」



------------------


エルヴィン「………」ジリジリジリジリ…

リヴァイ「………」ジリジリジリジリ…

アルミン「………」ジリジリジリジリ…



ライナー(………何故)

マルコ(……どうしてお灸なんだ)



リヴァイ「熱っちぃ!!」バッ!

エルヴィン「クソッ! 駄目だったか!!」バッ!

アルミン「か… 勝ったァァーーーー!!」



ジャン(……な~~~んか納得いかねぇ)



ハンジ「ウ~ン… 訓練兵皆と、こちらの意見を合わせて考えた結果……」


1番  センター   コニー
2番  ファースト  ベルトルト
3番  キャッチャー ライナー
4番  ピッチャー  ミカサ
5番  ショート   ジャン
6番  セカンド   マルコ
7番  サード    エレン
8番  レフト    サシャ
9番  ライト    アニ


ハンジ「こんな感じなんだけど… どうなんだろう?」

エレン「!!」ガクッ! ブルブル

ジャン「そんなにショックだったのかエレン!?」

ミカサ「エレン! エレン… ポジションなど、後からいくらでも替えられるから!」

エレン「」ブンブン!



エルヴィン「それでは今日の残りの時間は… ナナバ、ゲルガー、掛け声を教えてやってくれ」



エルヴィン「そちらの監督は『最強の男』の称号を獲得したアルミン・アルレルト…」

エルヴィン「そしてこちらは今回、これでいく」


1番 ピッチャー  リヴァイ
2番 ショート   エルド
3番 ファースト  ミケ
4番 セカンド   エルヴィン
5番 サード    オルオ
6番 センター   グンタ
7番 ライト    ペトラ
8番 キャッチャー デブ3
9番 レフト    ハンジ

監督エルヴィン


エルヴィン「7日目… 最終日の試合に向けて、後は練習あるのみ!」

全員「「オォー!!」」



――― 体験入団・最終日


  ザアアアァァァァーーーーー


エルヴィン「……大雨か」

リヴァイ「…ま、えてしてこんなモノだ」

ハンジ「色々ツイてないよねぇ…」

エルヴィン「世の中、そううまくはいかないものだろう」


エレン「」ウグウゥッ!


エルヴィン「……しかしこれは次回戦に向け、さらなる練習を積み重ねる事のできる期間だと思えば良い」

エルヴィン「今回決めた打順・ポジションは、あくまでも一時的なものに過ぎん…」

エルヴィン「君達の更なる努力を期待する!」

エレン」パアアァァ!



ハンジ「……それじゃ体験入団もこれで終わりだし、最後にエルヴィンから何か挨拶してよ」

エルヴィン「そういうのは苦手なのだが……」

リヴァイ「適当に何か言えばいいだろう」

エルヴィン「フム… では、少しだけ……」コホン

エルヴィン「来春訓練兵を卒業し、どの兵団であれ兵士を目指す君達に、この話をしよう」



エルヴィン「これは私が訓練兵団に入団し、2年が過ぎた頃の話だ……」

エルヴィン「今でこそ12歳を過ぎて訓練所に入らねば臆病とされる時代だが…… 以前は違った」

エルヴィン「超大型巨人の襲撃以前……当時訓練兵を志願する者は、よほどの変わり者か… または家が貧しかったりなど、行くアテのない者ばかりだった……」

エルヴィン「無論、そんな環境で育った者の集まりでは、秩序など無いに等しく」

エルヴィン「訓練所は荒れ… 訓練兵は荒れに荒れまくっていた………」

エルヴィン「そんな頃の話だ……」



~~~~~~~~~~~~


エルヴィン(むぅ… 今は座学の時間なのに、誰1人として真面目に聞いている者はいない……)

エルヴィン(……というか、皆眠っている)

エルヴィン(ひどい者など、講義室に毛布まで持ち込んでいるではないか…)

エルヴィン(訓練兵団に入ってから、こういう時はいつもナイルと俺で何とかしてきたのに……)

エルヴィン(…今日、ナイルは高熱を出し医務室……)

エルヴィン(ここはまず、俺1人で何とかせねばなるまい)

エルヴィン(……よし、まず手始めに隣のCを起こしてみよう)

エルヴィン(彼はおそらく今期の訓練兵で一番強暴だし、凄く怒るだろう)

エルヴィン(下手したら殺されるかもしれんが… だがここは挑戦するしかない)



エルヴィン「オイ……」ユサユサ



エルヴィン「オイ、起きるんだ」

訓練兵C「…あぁん!? 何だコラ?」

エルヴィン「今は座学の講義中… 目を覚ました方がいい」

訓練兵C「…なるほど…… オレにケンカ売ってんのか?」

エルヴィン「そうじゃあない。 腹が立っているなら謝るが…」

訓練兵C「……チッ!」


エルヴィン「…分かった。 百歩譲って寝るのは良しとしよう」

エルヴィン「だがしかし、ただ漠然と寝ているだけでは何の進歩もない」

エルヴィン「…ちなみに寝ている間、どんな夢を見ていた?」

訓練兵C「あ…? いちいち覚えてねぇよ、そんなの」

エルヴィン「夢を見るというのは人間の想像力を養う上で、非常に大切なものだと思うんだ」



エルヴィン「ちなみに俺は、先日とても面白い夢を見た」

訓練兵C「そんなに面白いのか?」


エルヴィン「……夢の中で、壁内は暗黒に包まれていた」

エルヴィン「邪悪な巨人どもが壁の中を支配し… また人々を食らっていた」

訓練兵C「一歩壁の外に出たら、そんな感じだと思うんだが?」

エルヴィン「まぁ聞け」

エルヴィン「当然俺はその巨人どもを倒すべく、勇者となって戦う事を選んだ」

訓練兵C「ヘェ… 夢の中とはいえ、お前結構勇気あるな」

エルヴィン「……ところが意外な所に落とし穴があった」

エルヴィン「巨人どもを倒すためには、まず役所で公認勇者として登録の手続きをしなければならなかったんだ」

訓練兵C「何で巨人倒すのに手続きが必要なんだ?」

エルヴィン「さぁ… そこは夢だからな」



エルヴィン「ともかく俺は役所へ向かったワケなんだが… これがまた、凄い行列ができているんだ」

訓練兵C「あぁ… 皆、勇者の登録をしに来てたんだな」

エルヴィン「ところがどっこい」

エルヴィン「何と他の連中は、婚姻の届出だの戸籍の発行だの、収入の申告などで並んでいたんだ」

エルヴィン「そして巨人を倒すための手続きは一番後回し… アレはさすがに腹が立った」

訓練兵C「何だと! どいつもこいつも自分の事しか考えてねぇな!」

エルヴィン「どうにかこうにか窓口に辿り着いてみれば、正式な登録にひと月はかかると言われ……」

エルヴィン「…それで、つい俺は手続きを済ませず巨人どもを倒してしまったんだ」

訓練兵C「スゲェじゃねぇか!!」

エルヴィン「…だが世間からは非難ごうごう」

エルヴィン「『ルール違反』だの『無法者』だのと罵られ…」

エルヴィン「しかも駐屯兵団の司令が先頭に立って、一番怒っていた」



エルヴィン「…その日以来、俺は司令が大嫌いになった」

訓練兵C「そんなの… 悪いのは司令だ! お前は間違っちゃいねぇよ!」


訓練兵C「…で、結局お前はオレに何が言いてぇんだ?」

エルヴィン「ウーン、つまり俺が言いたいのは…」

エルヴィン「何をするにも、手続きはちゃんとしなければならないという事だ」

訓練兵C「なるほど… そんじゃ、寝る時にも手続きをした方がいいってコトか」

エルヴィン「そうじゃあない気もするが… ま、そんな感じだろう」

訓練兵C「けど、『寝るための手続き』ってどうすりゃいいんだ?」

エルヴィン「とりあえず紙に何か書いて教官に提出すればいいんじゃないか?」

訓練兵C「何て書けばいいんだよ…」

エルヴィン「よくは分からんが、お前の『寝たい』という気持ちが伝わるのが大事なのでは?」

エルヴィン「『やってられない』とか『だるい』とか… 何故寝たいのかを細かく書いたら、より分かって貰えるだろう」

訓練兵C「よ~~~~し! 何だかオレ、ヤル気が出てきたぞ!!」カリカリカリカリ



――― 翌日


エルヴィン(昨日は良い事をした)

「……オイ!Aが退団届けを出したらしいぞ!!」

ナイル「何!?本当か!!」

エルヴィン(ウソ!?)


~~~~~~~~~~~


リヴァイ「………で、結局何が言いたいんだ?」

エルヴィン「自分でも、さっぱり分からん」ハテ


アルミン(でも… 意図せず、当時の訓練兵イチ凶暴な男を退団させた…)

ジャン(話してみれば、割とイイ人そうだったのにな……)




とりあえず体験入団おしまい



エルヴィン「………ハァ」

ハンジ「?」

エルヴィン「フゥ……」ボーッ

ハンジ「どうしたの? いつにも増してボンヤリして…」

エルヴィン「イヤ……」

リヴァイ「4番のクセに、近頃バットも振ってねぇじゃねぇか」

エルヴィン「ウム… 何故だろう…… どうも、その気力がないようなのだ」

ハンジ「元気がないのは、体験入団が終わった後からみたいだねぇ…」

リヴァイ「そういや、お前… アッチの方はどうなんだ?」

エルヴィン「あちらとは? あぁ…… ずっと勃ちっぱなしだ」

エルヴィン「体験入団4日目からはもう上に向け、紐で腰に括り付けていた」

エルヴィン「ズボンも1サイズ大きめの物を履いて… 今はもう、そんな事をする必要もないのだが……」



ハンジ「だから娼館に行けばって言ったじゃん」

エルヴィン「そういう気も起きないのだ」

リヴァイ「年なんじゃねぇのか?」

エルヴィン「そうではなくてだな……」

エルヴィン「最初は勿論気付かなかったのだが… 今にして思えば、心当たりがある」

リヴァイ「ほぅ…?」

エルヴィン「どうも私は、ある人の事が頭から離れないようなのだ」

ハンジ「へえぇ… それは驚きだね」

リヴァイ「ドコのどいつだ?」

エルヴィン「確証がある訳ではないんだが… 訓練兵の少女だ」

ハンジ「こないだの訓練兵? それは随分若いねぇ」

リヴァイ「まさか、あの……」

エルヴィン「ウム、パンと牛乳の少女だ」



エルヴィン「…どうも今思い出してみれば、キッカケはあの少女だったような気がする」

ハンジ「エルヴィンってロリコンだったんだ?」

エルヴィン「これまでそんな嗜好を持った事もないのだが……」

リヴァイ「確かに聞いた事はねぇな」

エルヴィン「おそらくあの攻防… 指を食うか食われるかの緊張感…… まぁ食われるのは私だけなんだが」

エルヴィン「それを思い出すと、どうにも胸が落ち着かん」

ハンジ「フゥン… そんな事もあるのかねぇ……」

ハンジ「ま、こっちも壁外に出ればいつ死ぬか分かんない身の上だけど、とりあえず交際でも申し込んでみたら?」

リヴァイ「正式に付き合うのは卒業後としても、予約くらいはできんだろ」

ハンジ「彼女が年上好きならね」

エルヴィン「ふむ… 善は急げと言うからな。 とりあえず訓練所に行ってくる」



-----------------


エルヴィン「」パカラッ…


リヴァイ「……戻ったか、エルヴィン」

ハンジ「それで? 彼女の返事は?」

エルヴィン「ウム、結婚する事になった」

リヴァイ「ほぅ… そりゃ随分と性急な話だ」

エルヴィン「今すぐという訳ではないがな」

リヴァイ「まぁそうだろうが…」

ハンジ「でも、とりあえず婚約という事なら… ピクシス司令には、一言挨拶を入れておいた方がいいねぇ」

エルヴィン「行かなきゃ駄目か?」

ハンジ「一応、お世話にはなってるし… それに結構、エルヴィンの相手を自分なりに考えてくれてたみたいだよ」

エルヴィン「それこそ余計なお世話だが… まぁいい、今度行ってくる」

エルヴィン「若い嫁を貰い、これで私の老後は安泰だと自慢してくるのもいいだろう」



――― 後日


エルヴィン「……すまないね、休日に」パッカラパッカラ

サシャ「訓練所にいても飢えるだけですから」



エルヴィン「ハテ… ハンジにあれだけ言われたのに、また手土産を買い忘れた」キョロキョロ

エルヴィン「ま、どうせその辺の草でも喜ぶのだからいいか」

エルヴィン「草…… と、小石」

サシャ「そこら辺にキノコを見つけました」

エルヴィン「それは素晴らしい! では、そのキノコも……」ムシリムシリ



-------------------


ピクシス「……で? 婚約の報告に来たと?」

エルヴィン「そのようなものです」

エルヴィン「彼女は現在16歳… もう結婚もできるのですが、一応卒業して17歳の誕生日を迎えたら」

ピクシス「若き訓練兵よ…… 本当にエルヴィンでいいのかね?」

サシャ「??」

エルヴィン「余計な事は言わなくていいです。 …あ、コレお土産です」スッ

ピクシス(……また草と石?)

ピクシス「キノコが入っとる!」ガァーン!

ピクシス(いつもいつもそこらの雑草と石ばかりだったのに…… これが嫁(仮)の力か)

ピクシス「フム… 良い香りだ。 …オォーイ! このキノコを少し炙ってから、持ってきてくれ」

ピクシス「…良い酒の肴になりそうだ」

エルヴィン(飲兵衛ジジイが……)



ピクシス「……キノコが良い香りじゃなぁ…」ホカホカ… パクリ

ピクシス「ほぅ… 味も良い。 ところでコレ… まさか毒キノコとかじゃあるまいな?」

エルヴィン「大丈夫でしょう」

ピクシス「そうか、良かった……」モグモグ

ピクシス「……ン?」

ピクシス「オヤ… 何だか頭がクラクラするんじゃが……」

ピクシス「……やっぱりコレ、毒性とかあるんじゃあないか?」

エルヴィン「そうでしたか。 …特に考えもしないで大丈夫といってスミマセン」

ピクシス「ワシ、なんかフラフラする。 …キノコの毒が効いてきた気がする」

サシャ「大丈夫でしょう」

ピクシス「イヤ… 何故、考えもしないで大丈夫って言うのかと…」フラフラ

サシャ「だって世の中にはどうでもいいコトってあるじゃないですか」


ピクシス(………エルヴィンが2人!!!)


おしまい
ピクシスはこの後、サンバのリズムで追いかけて来る巨人の幻覚にしばらく悩まされた



――― 850年・春  TOILET


エルヴィン「……しまった」ジャーー

リヴァイ「………」

エルヴィン「リヴァイ…」

エルヴィン「…リヴァイ、この濡れたズボンを見ろ」

エルヴィン「実は今… 手を洗っていたら、水がはねてしまったんだ」

リヴァイ「……そりゃ災難だったな」

エルヴィン「くどいようだが、本当に水濡れてしまったんだ。 信用してくれ」

リヴァイ「まぁ… お前がそこまで言うのであれば、それは真実なんだろうよ」

エルヴィン「…本当に信じてくれるか?」

リヴァイ「あぁ…」



エルヴィン「本当の本当に…

ナイル「お、どうしたエルヴィン! 股間を濡らして…」バタン

エルヴィン「ナイルか。 …これは今リヴァイにも説明したんだが、手を洗っていたら水で濡らしてしまってな」

ナイル「へぇ… そうなのか」

エルヴィン「実はお前達2人とも、そんな事を言いながら心の中では『コイツ漏らしてる』…とか思っているんじゃないのか?」

リヴァイ「別に思ってねぇ…」

エルヴィン「ナイルも?」

ナイル「全然思ってない」

エルヴィン「本当は少しくらい思っているのでは?」

リヴァイ「いいや」

ナイル「これっぽっちも思っていないが?」



エルヴィン「……怒らないから正直に言ってみろ」

リヴァイ「…まぁ少しだけ」

ナイル「だって、いきなりそんなトコ濡れてたら…」

エルヴィン「やっぱりそう思っていたのか!!」ガクリ…

ナイル「エ!? わ、悪いエルヴィン」

エルヴィン「お前達だけは信じていたのに……」

リヴァイ「そんなに重大な事か?」

エルヴィン「……ここは審議所」

ナイル「先日トロスト区が襲撃された際に巨人化して穴を塞いだという訓練兵の査問会が行われるんだぞ」

ナイル「ていうかエルヴィン… あの日、わざと壁外調査に行っていたんじゃあるまいな?」

エルヴィン「そんな訳、あるはずなかろうが!!」

ナイル「あ… そうだよな、スマン……」



エルヴィン「……しかし今は、こちらの方が大事だ」

エルヴィン「これから査問会だというのに… なんとか、このシミを隠す方法はないか?」

リヴァイ「もう時間もねぇからな…」

エルヴィン「…そうだ!」モゾモゾ

エルヴィン「ズボンの前と後ろを逆に履けばいいんだ!!」バァーン



ナイル・リヴァイ「………」



エルヴィン「………変か?」


ナイル「まぁ…」

リヴァイ「……かなりな」



エルヴィン「そうか……」モゾモゾ

エルヴィン「……よし! これならば」

ナイル「オイ! ズボン脱いで下パンツだけとかやめろ!!」

リヴァイ「今日はパンツ履いていたのか」

エルヴィン「こんな事もあろうかと思ってな」

ナイル「予測してたんならズボンの替えを持ってこい!」

エルヴィン「まぁ漏らしたと思われるより、この方がマシだろう」

ナイル「そうかぁ!?」

エルヴィン「むしろシミ付きのズボンを履いている方が恥ずかしい」

リヴァイ「フン… そうと言えなくもねぇな」

エルヴィン「要するに、お前達がそんな恰好をしているから俺が目立つんだ」

ナイル「無茶言うなよ」

エルヴィン「いいからお前達も脱げ!」

ナイル「エ~~~~!?」



リヴァイ「オイ…… ブーツは履いたままなのか?」モゾモゾ

エルヴィン「当たり前だ。 最低限の身だしなみは守れ」

ナイル「……コレだったら、シミ付きのズボンを履いた方が良いんではないかと思うんだが…」モゾモゾ

エルヴィン「お前はヒトゴトだから、そんな風に言えるんだ」


リヴァイ「……やはり変じゃないか?」

エルヴィン「ウ~ム……」

ナイル「人の姿を見て、やっと分かったか」ホッ


エルヴィン「フム、やっぱりシャツの裾は中に入れないと」ゴソゴソ

ナイル「そういう問題か!? …って、人のパンツに触るな!!」



エルヴィン「ブーツも脱いだ方がいいか…?」

ナイル「だから、そういう問題じゃない!!」

ナイル「とにかく! ズボンは履かないと駄目だろ!!」

エルヴィン「だがシミが……」

リヴァイ「エルヴィンは細かい事を気にし過ぎなんじゃねぇのか?」

ナイル「そうだ! 細かい事ばかり気にし過ぎて、重要な事を見逃してしまう… そんなことわざがあったろう!」

エルヴィン「どんなことわざだ?」

ナイル「イヤ… それは忘れたが……」

エルヴィン「全くいい加減な男だな」

ナイル「そんな恰好をした人間に言われたくない!!」



エルヴィン「そもそもお前達は、今回の査問会の重要性を理解しているのか?」

エルヴィン「年若い訓練兵の未来が、今日決まってしまうのだぞ」

エルヴィン「貴族に商会の人間… それに何故かウォール教の司祭まで出席するという」

エルヴィン「私達の身なりひとつが、各兵団の沽券にも関わってくるのだ」

ナイル「ウ… ウム」

リヴァイ「まぁそうだな」


-----------------


ハンジ「……エレンが思ってることを、そのまま言えばいいさ」

ハンジ「何だかんだで私達は、結局盲信するしかないからねぇ…」バタン…


エレン「!!??」キョロキョロ



ザックレー「……さぁ、始めようか」

ザックレー「今回決めるのは、君をどちらの兵団に委ねるかだ」

ザックレー「憲兵団か……」チラリ

ナイル(下パンツ)「………」

ザックレー(エッ?)

ザックレー「ちょ、調査兵団か……」チラ

エルヴィン・リヴァイ(下パンツ)「………」


ザックレー(何だろう… エルヴィンに関してはもう、あまり驚かない)

ザックレー(リヴァイまで… とは思うけれども……)



---------------


ナイル「………なので、彼には我々人類の英霊となって頂きたい」

ザックレー(…恰好良く言ったって、お前今ズボン履いてないから! …グフッ)


ザックレー「ちょ、ちょ… 調査兵団の意見は……?」ブルブル

エルヴィン「彼の力でウォール・マリアを奪還しようかと」

ザックレー「ち… ちなみに今後、どこから出発するのかね?」

ピクシス「トロスト区の扉は塞いでしまったしのぉ……」


ザックレー(ピクシス… あ奴、何故笑わずにいられるのか……)ブルブル


ピクシス(これはおそらく、エルヴィンの仕掛けたガマン比べ……)プルプル

ピクシス(ザックレーより先に、笑う訳にはいかん!!)


ピクシス(というか…… 他の者達は大丈夫なのか!?)



貴族・商会関係「………」ウグググ

ニック司祭「……」キョロキョロ

ザックレー(皆、視線が泳いでいる……)

ピクシス(今、審議所は一触即発!!!)


  ―― バキイィィッッ!!!


リヴァイ(下パンツ)「いいから黙って全部コイツに投資しろォォォォ!!!」


ほぼ全員「「ブフオォォーーーーッッ!!」」





おしまい
こうしてリヴァイ(下パンツ)の活躍によって、エレンは調査兵団に託された



エルド「……この後は、新兵勧誘式か」

グンタ「調査兵団に入団するような酔狂な新兵なんているのか?」

ペトラ「自分のコト酔狂とか言っちゃうようなね」プススー

グンタ「なぁエレン、お前の同期にウチを志願するような奴はいるのか?」

エレン「??」ショー

エルド「またションベンか」



--------------



コニー「……まだかな」

サシャ「早くゴハン食べたいですねぇ」



ジャン「………」ザッ

アルミン「ジャン…」

コニー「そういやお前、どうして突然調査兵団に? 憲兵団行くんじゃなかったのかよ」

ジャン「…別に巨人が怖くないから調査兵団に決めたワケじゃねぇ」

ジャン「いいか? くれぐれも俺をエレンみてぇな変人と一緒にすんなよ。 ……俺はな」

ジャン「誰かに説得されて自分の命を懸けるワケじゃない」

ジャン「……こればかりは自分で決めずに務める仕事じゃねぇよ」

サシャ「もう先に帰ってゴハン食べちゃいましょうかねぇ」

ジャン「聞けよサシャ」


「訓練兵整列! 壇上正面に倣え!!」


コニー「お、やっとか…」



エルヴィン(……駐屯兵団に組み込まれるのは、断じて阻止せねばならん)

エルヴィン(その為には、新兵の人数の確保が何よりも大事……)

エルヴィン(だが先日のトロスト区襲撃を受け、新兵が巨人の脅威を知ってしまったのは事実)

エルヴィン(厳しい戦いになるが…… しかし、この後の私の演説次第だろう)


エルヴィン(よし… 戦うぞ!)



アルミン「団長の話が始まる…」ゴクリ



エルヴィン「…諸君らは既に見知っていると思うが、私は調査兵団団長エルヴィン・スミス」

エルヴィン「調査兵団の活動方針を王に託された立場にある」



エルヴィン「本日私が諸君らに話すのは、やはり調査兵団への勧誘に他ならない」

エルヴィン「調査兵団は常に人材を求めている」

エルヴィン「隠したりはしない。 私は駐屯兵団… まではいかなくとも、せめて憲兵団と張り合える位の人員を欲している」

エルヴィン「新兵が最初の壁外遠征で死亡する確率は5割といった所… そして、それを越えた者が生存率の高い優秀な兵士へとなってゆく」

エルヴィン「この惨状を知った上で、自分の命を賭してもやるという覚悟のある者は、この場に残ってくれ」

エルヴィン「だが、ひとつ言っておこう…… 『覚悟』とは、犠牲の心ではないッ!」

104期「!!!」

エルヴィン「『覚悟』とは! 暗闇の荒野に! 進むべき道を切り開くことだッ!!」


エルヴィン「自分に聞いてみてくれ。 …私の為に心臓を捧げる事ができるのかを」



エルヴィン「………以上だ。 他の兵団の志願者は解散したまえ」



ジャン(クソ… 頼むからこれ以上、自分の事を嫌いにさせないでくれ…)ブルブル

「♪~」クルリ… テクテク

アルミン(…エッ?)

ジャン(な… 何故……?)

アルミン(何故、サシャが真っ先に踵を返してこの場を抜けようとしているんだ?)

ライナー(アイツ… エルヴィン団長と婚約したんじゃなかったのか……?)

ベルトルト(もうひと仕事終えたみたいなイイ顔してる……)




ジャン(………それからの団長は凄かった)

アルミン(まるで水に飛び込むみたいに、壇上から綺麗な姿勢でサシャの足元に飛び……)

ライナー(サシャのズボンが脱げそうになるくらい、しがみついてた)

ベルトルト(そして団長は… まるで子供のように泣いた)



アルミン(団長は泣きじゃくっていたから、何を言っているかはあまり聞こえなかったけど…)

ベルトルト(……それを聞いたサシャは、渋々その場に残ったんだ)

ジャン(スンゴイ嫌そうな顔で……)

コニー「……あれ? あの2人って結婚すんじゃなかったっけ?」

アルミン(そのハズなんだけどね、コニー)

ジャン(つーかサシャは婚約者を置いて、ドコへ行くつもりだったんだ…)



アルミン(……結果的に、その場を去ったのはたった1人。 アニだけだった)

ライナー(他の者は皆、調査兵団…)

ベルトルト(残った者はきっと団長の、所構わず泣きじゃくるような人間臭さに魅かれたのだと思う)

ジャン(無論、サシャの考えているコトは分からないが)






エルヴィン「……やはり、あの演説が心に響いたのだろうな」フフ


おしまい
グダグダしてきたから、ボチボチ終わるよ

エレン一体何があった。

>>143 エレンは無口なんだよきっと



――― ウォール・ローゼ内での巨人発見からおよそ30時間後


エルヴィン「……各班! 巨人を引き連れたままでいい!! 私について来い!!」

エルヴィン「鎧の巨人がエレンを連れて逃げる気だ! 何としてでも阻止するぞ!!」



エルヴィン「―― 総員! 突撃!!」

コニー「なッ…!?」


エルヴィン「引かぬ! 媚びぬ! 省みぬゥゥーーー!!!」ドドドドドドドドドド


エルヴィン「エレンを奪い返し、即帰還するぞ!!」


エルヴィン「進めエェェェェェ!!!!」ドドドドドドドト……



――― 1週間後


エルヴィン「……右腕なくなっちゃった」

リヴァイ「だが、もう既に第一関節くらいまでは齧られてなくなっていたろう?」

エルヴィン「あぁ… だからまぁ、片腕になったのはそんなに気にしていないのだが……」

エルヴィン「彼女は来ていないのか?」キョロキョロ

エルヴィン「エレン奪還では一緒にならなかったが、もうこちらには戻っているはずだろう?」

ハンジ「彼女はその……」

ハンジ「巨人発見の翌日、ヤルケル区の支部に一度現れたらしいんだが… その後、行方が知れないんだ」

ハンジ「ただ、手紙だけは送られてきていた」

エルヴィン「見ていいのか?」

ハンジ「エルヴィン宛だからね」

エルヴィン「そうか……」ガサガサ



サシャの手紙『サ がさ ナイで、ク だち イ』


エルヴィン「………」

ピクシス「どうしたエルヴィン? まさか婚約破棄か?」

エルヴィン「イヤ… そ んなハズ、は……」

リヴァイ「お前… 何を… 笑ってやがる」

エルヴィン「別に……」ガタガタ

ハンジ「とにかく今は、ラガコ村の住人にエレンとヒストリア… 考えなきゃいけない事がいっぱいあるからねぇ」


エルヴィン「……エレンとヒストリアはリヴァイの所で面倒みろ」

エルヴィン「班の人選は任せる」

リヴァイ「…そう言うと思って、新しい班の人員はもう決めてある」



リヴァイ「できればソコにお前の婚約者も入れたいんだが……」

エルヴィン「でも… 今いないし…」

エルヴィン「もう老後の介護もして貰えないし……」ブルブル


ピクシス(……こんなエルヴィン、初めて見るのぅ…)


  バタアアァァーーーーン!!!


サシャ「できましたああぁぁぁぁーー!!!」

エルヴィン「君!? 一体今までどこへ!!?」

サシャ「ドコって… 腕を失くしたと聞いたので、義手を作りに」

エルヴィン「私の為に!?」



サシャ「私の故郷の外れにシラヌイさんという技師がいて、ソコへお邪魔してました」

サシャ「まず、肩にはめ込むように1つ目のパーツ、それから肘下に2つ目のパーツ…」

エルヴィン「おぉ……」ギュムギュム

リヴァイ「義手ってのは、そんなに自由に動く物なのか?」

サシャ「何でも精神エネルギーを基にしているからとか…」

エルヴィン「私の為にこんな物を!!」ブワッ!

サシャ「老後も自分のコトは自分でやってもらわないと困りますから」


ピクシス(…優しいけど厳しい! まさにエルヴィンの理想通り!!)


サシャ「ちなみにこれ、肘下だけ外すと銃になります」

ハンジ「まさかそんな」



サシャ「試してみてください。 …そっちへ向けて」

ピクシス「ちょ! ワシの方へ向けるんじゃあないッ!!」

エルヴィン「……どうすれば撃てるんだね?」

サシャ「それは精神エネルギーですから、撃とうという気持ちが大事なのでは?」

エルヴィン「フム、それでは………」カッ!

エルヴィン(撃、てえェェェーーーイ!!!)

   ドッゴオオオオォォォォォーーーーン!!!

ピクシス「ヒイイイィィィーーーッ!!??」



  パラパラパラパラ……



ハンジ「オヤオヤこれは… 想像以上だったねぇ」



エルヴィン「ハ… ハハ……」

エルヴィン「イケる… 今なら惑星さえも撃ち砕いてみせる!!」

リヴァイ「頼もしい事だ」

ピクシス「た… 建物がメチャクチャではないかアァァーーーー!!」

サシャ「そんなの… 世の中にはどうでもいいコトってあるじゃないですか」


ピクシス(やっぱりエルヴィンの嫁エェェーーーー!!)



果たして巨人との戦いに終わりはあるのか!
王政は彼らに味方してくれるのか!
頼れる仲間はみんな目が死んでる!

でも大丈夫! 右手にサイコガン! 左には若い嫁がいるぞエルヴィン!!
戦えエルヴィン! 負けるなエルヴィン!!
明日なき戦いにその身を焼き焦がせエルヴィン!!!





終わり

面白かったよ。サシャとエルヴィンの組み合わせが良いな。乙。転載禁止が勿体無い。

>>152 ありがと
あとオマケ的なの1個書こうとしてるんだけど、死ネタなんで駄目なら読まないでくれ

オマケ「リヴァイ班の最期」


――― 第57回壁外調査・巨大樹の森


オルオ「いいかガキンチョ? おウチに帰るまでが壁外遠征なんだからな」ヒョオォォーーー

エレン「」フゥ…

エルド「ペトラもオルオも初陣でションベン漏らして泣いてたクセに……」

エレン「!?」

ペトラ「ぎゃあああぁぁあ!!!」

オルオ「違う! アレは違うぞエルドォォ!!」

ペトラ「そうだよ! アレはただ、したかったから、しただけ!!」

オルオ「エレンだって、そこかしこでやってんだろうがアァァァァ!!!」

エレン「」コクコク

グンタ「続きは帰ってから話せエルド!!」



グンタ「それと俺達がどれだけ苦労してココへ入ったんだか、後で教えてやれ」

グンタ「『アンラッキーエンジェルズ』と呼ばれた俺達の過去を話してやれ!!」

エルド「そうだなぁ… お? 前に何か飛んでるぞ!」

グンタ「ン、兵長か……?」ヒュンッ


    ヒュゥゥゥウーーーー   ザンッ!


エレン「!!」

エルド「グンタ!?」

グンタ「」……プラーーン

オルオ「グンタアァァァーーーー!!!」

エルド「グンタ!!」



エルド(… 家業を継いで漁師になろうとしたが船が爆発し
やむなくチラシ配りを始めたが1枚も配れず家はドロボウに入られた
そんなついてない人生にも負けず、ここまで頑張ってリヴァイ班に入ったグンターー!!)



オルオ「止まるなエレン! 進め!!」シュゴォォーーーー


エルド「やはり女型の巨人か!!」ヒュゥーン

エルド「削ォいでやるうゥゥゥゥー!!!」ギョーーン ザクザクッ!


ペトラ(…何かエルドが女型を色々切った! もう大丈夫なの!?)

女型「」パクリッ!

エルド「タコス!」


ペトラ「エルドオォォーーー!!!」


オルオ(少しでも家計の助けにと子供の頃から近所の町医者で手伝いを始めたが医療器具が爆発し
     クビにされた上に家はドロボウに入られて女子患者には「割とキライでした」と告白され
     それでも人生を諦めず巨人殲滅に全てをかけたエルドーー!!)



オルオ「避けろペトラァァァーーーーッ!!」

ペトラ「…アァッ!? 何かエルドが切り刻んだハズなのに回復が早いイイイィィィーーー!!!」メメタァ!

オルオ「ペトラァァァァァーー!!」


オルオ(幼い頃から服飾関係の仕事に就く事を夢見て必死で働いて、やっと自分用の足踏みミシンを買ったが
     糸が通せず家はドロボウに入られミシンは爆発した
     そんな不運にも負けず調査兵団に人生をかけたペトラァァァーー!!!)


オルオ「……刃が… 通らねぇ……」ギョーーン

エレン「!!!」ゴオオオォォォォーーー


オルオ(俺、オルオは小っこい頃、親に頼み込んで王族御用達の役者を目指し
     俺自身… 昼は内職、夜も内職と必死に働いたが内職が爆発し
     家はドロボウに入られ所属していた劇団はよく見たら何かの宗教だった
     …そんなついてない人生にもめげずに頑張ってこのリヴァイ班で新しい夢を掴んだのに………)


オルオ「ここまでかよチクショーーーー!!!」パギョオオォーーーーッ



エレン「……ッ!!」ギリギリッ!!

終わり

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