杉崎「最悪のクロスオーバーじゃないッスか!」(22)

私立碧陽学園。
此処は個性的な仲間が集まる不思議な学校。

まずまともな人間は一割にもみたないだろう。

それぞれのが仲間がにかしらの個性をもち、一つのクラスに集められようとも、その個性はぶれる事がない。

そして、不思議なことが常日頃から起こっているのだ。

例えば、昨日あったはずのものが今日には消失していたり、昨日まで居なかった人間が今日いきなりクラスの一員になっていたり。

ただ、その事には誰も気づくことはできない。

だから、これから伝えることは、誰もが創作だと認識するだろう。

だがこれは本当にあった事実だ。

揺るぐことのない事実なんだ。

しかし、誰もが忘れてしまえば、それは虚偽にすらならない。

無になるのだ。

だからこそ、僕は記そう。

誰もが忘れてしまおうとも、この出来事が無になってしまわぬように……

「おい、杉崎。ちょっといいか?」


いつもの2年b組のクラス風景。

つい先程まで現役アイドルにして自称学園1の美少女こと星野巡(これは芸名だが)と戯れていた杉崎鍵が机に突っ伏し体力の回復をはかっていると、横から声をかけられる。
「ん? なんだ。守か」


杉崎に声をかけたのは杉崎が机に突っ伏している原因となった人物の弟である守(本人の意思により苗字はふせる)だった。


「なんだとはなんだ! なんだとは!」

「あーはいはい」

「適当に片付けるな!」

彼の姉にいろいろとやられ、少しストレスがたまっていた杉崎はいつものように軽くからかってやろうと思い、守に向き合ったがそんな考えは一瞬で吹き飛んだ。


「なにかようか?」

「ようやく話をきく気になったか」

「ああ、そんな真剣な顔をされればな」


守の表情は杉崎が見たことないくらいに真面目だった。

「なんか、よくわからないんだが、ヤバい」
屋上へと場所を移して守が最初に言った言葉はそれだった。
「は?」
杉崎は自分でもどうかと思うほど気の抜けた声で守に返した。
「上手く言えないんだが、いろいろとおかしいんだよ!」
「……どんな感じだ?」
守がふざけているように思えない杉崎はとりあえず話を聞こうとした。
「こう、なんか、いつもはふわふわしてるんだけど、最近は妙に刺々しいっていうかさ……」
「うむ……」
しかし、守からの返答はどうにも抽象的でいまいち伝わらない。
杉崎は頭をかかえた。
「いつもの超能力か?」
杉崎が悩んだ末に守に問いかけたのは守の超能力についてだった。
守は超能力が使える。
未来予知、マインドリーティング、サイコメトリー、テレパシー、透視、等々。
しかし、守も人の子だ。
この超能力は効果というか、的中率というか、どうにもそういうものが「微妙」なのだ。
「それともまた違う感覚なんだよ。生物の本能に直接作用するような」
「とりあえず、守はなにがしたいんだ?」
このままでは埒が空かないとふんだ杉崎は単刀直入に守にたずねたのだった。

「ああ、そうだった。杉崎、これを持っておけ」

そう言って守が杉崎に手渡したものは小さな御守りのようなものだった。
数にして3個、紫の布の袋に紐が通してあり、ストラップのような形になっていた。


「これはなんだ?」


「俺があらゆる書物を3日3晩読み上げ作りあげた御守りだ。あらゆる干渉から持ち主から完全とはいかずとも守ってくれる」


杉崎は守から渡された御守りを握りしめ、守の顔を見る。

最近、寝不足気味に見えていたのは間違いではないことに気付き、その原因が自分のためだったことに杉崎は少し罪悪感が働いた。


「ありがとう、守。でもなんで3つもあるんだ?」

杉崎だけならば一つでいいのだ。

しかし、杉崎の手元にある御守りは3つ。

2つ多いのだ。

残りの2つはお前が信用できて力を貸してくれて、かつ使えるやつに渡してくれ」

守はその問いに眠たそうに答えた。

「は?」

「なにが起こるかはわからない。だけど、確実に不幸なことで、中心にはお前がいる。だったら友達(ダチ)として出来る限りのことはしてやりてぇんだよ」

「守……」

杉崎は感謝と嬉しさでいっぱいだった。

しかし、内面に止めなんとか外にはださなかった。

出してしまえば、同時に涙も溢れてしまいそうだったのだ。

「俺は帰って寝るわ。姉貴にどやされるかもしれないが、いい加減に眠りたいからな」

そういって屋上から出ていこうとする守に杉崎は呼び掛けた。

「守!」

そして杉崎は自然な動きで御守りを一つ守にめがけて投げつけた。

「んあ? っと」
きれいな放物線を描き、御守りは守の手の中に収まった。
「お前が1個持っておいてくれ」
杉崎の気持ちは最初から決まっていた。

「さて、残りの一つだが……」

「や、やあ、杉崎くん! 奇遇だね!」

「……どうした中目黒」

これで杉崎が目の前の少年、中目黒善樹に教室以外で合うのは8回目だった。

一般生徒が放課後にとくに用もなくうろつくことはまずない。

と、なると杉崎と守とのやり取りを覗かれていたのだろう。

「いや、とくに用事ってほどでもないんだけどね……」

「そうか、じゃ、またな」

「ま、まって! 杉崎くん!」

三十六計逃げるにしかず、杉崎は足早にそこを後にしようとするが、中目黒に止められてしまう

「どうしたんだ? 中目黒」

「あ、あのね! 僕は杉崎くんのためならなんでもできるよ!」

「いきなりなんの告白だ!?」

「大丈夫、最初はキツいかもしれないけど、僕、頑張って受け止めるから!」
「お前はなんの話をしているんだ!?」
終始このようにペースを持っていかれた杉崎はいつの間にか御守りを中目黒に渡していたのだった。

「なんだ……これ……」

朝起きた杉崎は異変に気がついた。

「俺は……昨日ちゃんと着替えて寝たはずだ。なんで制服を着てるんだ? それに、どうも記憶がおかしい……」

杉崎は汗を吸ったシャツとワイシャツを脱ぎ記憶を整理する。

「俺はたしか昨日、守から御守りをもらって……いや、携帯を弄ってたか?」

どうにも記憶がおかしい。

杉崎は昨日、確かに守から御守りをうけとっている。

それは杉崎の手首に巻き付けてある御守りがありありと昨日の出来事が真実であると証明している。

だが、杉崎の頭には守と過ごしていたはずの時間と全く同じ時間に携帯を弄っていた記憶もあるのだ。

「……まさかな」

杉崎は変に思いながらも携帯をズボンのポケットから取り出し、使用履歴を調べた。

「嘘……だろ……?」
その携帯は杉崎が守と過ごしていたはずの時間に使用されていた。

「……なにがどうなっているんだ」
学校に登校した杉崎は、自分の教室である『2年c組』の席に座っていた。
おかしい。
絶対におかしい。

杉崎はそう思いながらも教室を出れずにいた。

というのも先ほど2年b組に行き追い出されたからだ。

本来ならば受け入れてくれる人たちからの拒絶ともとれる行為。

杉崎にはすこし堪えるものがあった。

「ずいぶんと暗い顔してるじゃないか、杉崎」
そんな杉崎に声をかけるものがいた。
「ま、守じゃないか! どうしてここにいるんだ!?」
その人物は守だった。
「ばっ、声がでかい! 声が!」
周りからの注目を浴びながらも、気にせず杉崎は守に問いかける。

「いったいなにがどうなっているんだ! ワケがわからん!」

「ああ、もう! すこし黙れって! またいつもの悪ふざけか?」
守がそう言うと、周りの人たちは「ああ、また杉崎が守をからかってるんだな」と口々に呟き、杉崎と守から視線を外した。
しかし、杉崎はさらに混乱した。
「お、おい! どういうことだ!?」
守までもが変わってしまっているのではないか、と杉崎は内心慌てていたのだ。
「場所を変えるぞ」
そんな杉崎に守は冷静に答えた。

「周りの環境が変わっている?」

屋上で守から話を聞いた杉崎は幾分か落ち着きを取り戻していた。

「僕も驚いたよ。教室に行ったら君の教室は隣だよって言われたんだもん」

全く危機感のない声で杉崎が来る前に守に呼ばれて屋上にいた中目黒が言う。

杉崎が幾分かとはいえ落ち着きを取り戻したのは中目黒による影響がでかいだろう。

中目黒は杉崎に心酔とはいかないまでも多大なる信頼をよせている。

中目黒に危機感がないのも、杉崎くんならなんとかできるはず! という考えから来ているものだろう。

このような人の前でだらしのない姿を見せるわけにはいかないと杉崎は気を引き締めたのだ。

「ああ、どうにもおかしい。俺たち三人は2年c組に元からいたことにされていて、俺たちには2年c組で過ごしているという記憶もある」

「それと同時に2年b組で過ごした記憶も変わらずにある、か?」

守が話そうとしていた内容を先に言うことができるほどまでに杉崎は落ち着きを取り戻していた。

「ああ、その通りだ。次になんで記憶が混ざっちまったかというと」

「あ、僕わかるよ! この御守りだよね?」

「……ああ、そうだ」

2回続けて先に台詞をとられた守は不機嫌そうに中目黒にかえした。


「次にだが、どうにも今まで杉崎がいたポジションに別のやつがいるらしい」

「は? どういうことだ?」

守の言葉に杉崎はすっとんきょうな声をあげた。

「そのままの意味だよ。一般生徒sに成り下がった杉崎くんとは別に一般生徒からユーモアあふれる変態生徒会副会長に成り上がったやつがいるんだよ」

「……なんか生徒会副会長の前にいらない前置詞ついてなかったか?」

「さて、なんのことかわかんねーな」

「守くん、なんで一般生徒sなの?」

「いい質問だ善樹。それはね杉崎だからさ」

「「つまんない」」

「うぐぅ……」

二人からバッサリ切られた守は唸ったあとにこう続けた。

「さっきの話だが、変態生徒会副会長ってのはあながち間違いじゃないんだ」

杉崎と中目黒は守を見た。

「どういうことだ、コラ!」
自分がバカにされたと思った杉崎が守にふざけてつかみかかる。
「違う、違う! 杉崎じゃない。成り上がった方だ!」
「どんなひとなの?」
ジタバタと暴れる守に中目黒が問いかける。
「なんか、とにかく節操がないらしい。すこし親しくなると直ぐに体を求めるような感じのやつだ」
「なんだ、そいつは。明らかに俺のような主人公じゃないな」
「お前は主人公じゃないだろ」
「す、杉崎くんは僕の永遠の主人公だよ!」
「お前はなにをいってるんだ!?」
こんなことになってもこのようなやり取りができる三人は親友と呼ぶにふさわしいのだろう。
「そして、一番俺としては辛いのは、姉貴は多分もう毒牙にかかってる」

「巡がか!?」

「ああ……俺の頭に「私、ついに大人の女になったよ!」って言ってニマニマしてた気持ち悪い姉貴の記憶がある」

苦しげに告げる守。

「そんな……巡さんが……」
中目黒が呟く。
「そいつの名前はなんだ?」
杉崎が静かに守にたねる。

「お前のポジションまで成り上がった奴の名前は……」

「名前は?」

守は杉崎の目を見つめて答える



「伊藤 誠だ」

ひとまずここまでです。
読んでいただきありがとうございました。

>>1



>>1



誠死ね

あ、>>1

俺には無理だ
みんなあとは任せた

>>18
1 なの?

プロローグからして既にアカン

「んー、どうやら前までの俺は周りと良好な関係は築けてなかったみたいだな」

杉崎は腕を組み神妙そうに言った。

「あくまで、俺も杉崎も善樹もいきなり見ず知らずの同姓同名に憑依したようなもんだからな」

「それでも前も僕たち三人が仲良しだったのは良かったよね!」

「ああ、一緒にいても怪しまれないから、その点は助かった」

いつものように屋上に集まった三人は現状を整理していた。
最初は混乱したものの、喚いても仕方ないという結論に至った三人は一先ず現実を受け止め、改善することにした。

「現段階、わかっていることは」

「俺たちに今のところ味方はいなくて」
「生徒会や2年b組のみんなと接触するのは難しいってことだね」

杉崎が言おうとしたことを先に守と中目黒が言う。
「そうだな。その通りだ」
杉崎は苦笑して答えた。


「なにはともあれ、伊藤誠に接触しないかぎりには始まらない」

杉崎はそういって立ち上がり教室をでていってから早10分。

守と中目黒は教室で杉崎の帰りを待っていた。

「杉崎のやつ遅くないか?」

「そうだね。時間がかかりすぎかも……」

二人にとって、杉崎の存在は大きく、二人の不安は拭えなかった。


「そういや、生徒会で発行していた小説、途中で止まってたな」

「伊藤くんが書くのがめんどくさいってやめちゃったみたいだね。みんな楽しみにしてたのに……」

「それに、生徒会の仕事が満足にされてないみたいだ」

「8割くらい杉崎くんが一人でやってたからね。毎日残って遅くまで書類を書いて……」

「伊藤はすぐに帰ってるらしい。生徒からの苦情も対処するのは紅葉先輩だけみたいだしな」

「……この学校って杉崎くんに支えられていたんだね」
「かもな……
二人は深いため息をつき、机に突っ伏した。

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