春紀「暗殺に成功して帰ってきたのに厄介なことになってた」 (137)

悪魔のリドルSS
多分、完結は明日明後日までかかると思う

春紀「暗殺に失敗して帰ってきたら厄介なことになってた」ってSSの続編

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1399472612

春紀「暗殺に失敗して帰ってきたら厄介なことになってた」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1399151775/)

前作URL



あたしの名前は寒河江春紀。ミョウジョウ学園十年黒組、元生徒。
あの学園から退学処分を受けて、一週間程前に実家に戻ってきたあたしだが、
穏やかな日々を送ることは許されなかった。
帰って来たあたしを出迎えたのは、かつてのクラスメート、クレイジーサイコレズのシリアルキラー。
そう、武智乙哉だった。

なんでも鳰の紹介で、あたしの家なら警察に感付かれてないから安全だとかなんとか。
安全かどうか、その判断を下すのは勝手だが、あたしに許可無くこんな危険な奴を
放り込むだなんて、鳰の奴も大概だ。今度会ったらブン殴ってやる。

それからなんやかんやあって、そのまま流れで武智と組んで一仕事することになり、
なんとか目標を達成して家に到着した。

のが、大体三十分くらい前の話だ。
なんだけど。
おい。

「あたしは知らないぞ」
「頼む、他に行くところがないんだ」
「だからって」
「まーさー、今更一人二人増えたからって関係なくない?あははは」
「お前が言うな!」

暗殺の仕事から帰って来たら今度は神長があたしを出迎えた。
クソレズ変態シリアルキラーと、ドジっ子テロリスト。
あたしの大切な家に、変な奴がどんどん増えていく……。


春紀の部屋



神長「というわけで、よろしく頼む」

春紀「はぁ……ま、アンタは武智と違って常識ありそうだからいいけどさ」

神長「そうか。ありがとう、すごく助かる」

春紀「食費とかは出してくれよー?」

神長「そんなの当然だ、わかってる」

乙哉「え!?なんで!?なんかあたしの時より緩くない!?あたしのときすごい反対してたじゃん!」

春紀「お前は自分の置かれた状況をもう一度考え直せよ!」

乙哉「えー?なんでー?ちょっと警察に追われるだけじゃーん」

春紀「 ち ょ っ と じ ゃ な い だ ろ 」

神長「っていうか警察に追われるって相当だぞ」

言い忘れてたけどおそらくギャグに分類されると思う
細かいところはスルー&脳内補完してもらえると助かる


神長「それにしてもお前ら、仲良かったんだな」

春紀「はぁ?ないって。ないない」

乙哉「そーなのー、あたしたちラブラブだもんねー。春紀さん大好きー」ギュー

春紀「つい数時間前にターゲットの愛人を嬲り殺しにしようとしてたことについては?」

神長「お前らどこで何してきたんだ」

乙哉「あーまー、ほら、ちょっとの浮気くらいでケチつけちゃ駄目だって!ね!」

神長「そうか、それを浮気というのか。私には理解しかねる領域だな」

春紀「そもそもあたしはお前とそんな仲じゃねーっつの」


春紀「あたし達は暗殺の仕事でちょっとな。もう終わったけど」

神長「あぁ、それでターゲットって言ってたのか」

春紀「そうだ。途中で武智が暴走して、ターゲットの愛人の女を殺すって言い出して…面倒だった」

乙哉「酷くない?!色々あったのに最終的な感想が「面倒だった」って酷くない!?」

春紀「で、神長。あんたは誤爆だろ?」

乙哉「無視された……」

神長「あぁ……さっきも言ったが、自分の部屋を吹き飛ばしてしまってな……しばらくは家に帰れなくなった」

春紀「というか、なんで自分の部屋でそんなことしてるんだよ」

神長「……予習と復習だ。私はまだまだ技術を磨かなければいけない身だから」

春紀「アンタなら復習で復讐できそう」

乙哉「春紀さんの家でやったら駄目だよ?神長さんの先輩みたいにはなりたくないもんねー」

神長「ストレートに本当のこと言い過ぎだろお前ら」


春紀「まぁいい。大体の事情はわかった。ちょっとあたし達寝るから」

神長「あ、そうか。暗殺から帰ってきたばかりなんだっけか」

乙哉「そうそう……あたしもバイク運転したし、すごい疲れたよー……」

春紀「運転お疲れさま。とりあえず助かったよ、もう二度と後ろに乗りたくないけど」

乙哉「えー?じゃあ毎日バイクで二人で出かけよ?」

春紀「ふざっけんな」


神長「私は、どうしたらいい…?」

春紀「あぁ……?うーん、適当にしててくれ。そうだ、妹が起きたら家事を手伝ってやってくれないか」

神長「なるほど、わかった。じゃあ二人はゆっくり休んでくれ」

春紀「おう……」

乙哉「……」スカー

神長「って、え!?一緒に寝るのか!?二人とも!!」

春紀「!?」ビクゥッ!!

乙哉「な、なにぃ?大きい声で……」

神長「いや、お前ら、それは、ちょっと……」

春紀「神長、考え過ぎだから……客用の布団なんて無いんだよ、うちは」

神長「そ、そうか……犬飼が知ったら」

春紀「!」

乙哉「え?二人ってそうなの?」

春紀「いい加減にしろ!寝ろ!」


・・・

・・・



春紀「ふわぁ……今何時だ……?」

冬香「おはようございます」

春紀「お、おぅ……!?どうしたんだい?勝手にあたしの部屋に入ってくるなんて。なんかあったのか?」

冬香「何かあったかと聞かれれば、何かあったということになりますし、何も無かったよな?と聞かれるならそれもまた事実でしょう」

春紀「何言ってんだ!?」

冬香「神長さんが………はーちゃん、なんとかして………」

春紀「神長が…?」

ガチャッ!

神長「冬香!できた!できたぞ!!!」

冬香「ほ、ホント……?」

神長「あぁ!」

乙哉「……んー、と。みんな何をそんな騒いでるの……?」

春紀「あたしにもわからん」


冬香「はぁ……でもよかった……」

春紀「なぁ、わかんないってば。何があったんだ?」

冬香「えっとね、神長さんがお米研ぐのに失敗して排水溝にお米ぶちまけたの」

乙哉「なんだ、そんなこt」

春紀「もったいねー!!」

乙哉「まぁ春紀さんはそう言うよねー…」

春紀「お前、お米のことバカにしてんのか!?」ガシッ!

乙哉「そ、そんなことないよー。でも、ほら、台所が爆発するよりマシでしょ?」

神長「いくら私でも普通にしててどこかを爆破する訳ないだろ」

春紀「確かに……台所が吹っ飛ぶよりかはマシか……」

神長「納得されるとはこれ如何に」


春紀「はぁ、神長アンタって人は……」

神長「だからさっき言っただろう?できたって」

乙哉「出来たって何?」

冬香「あ!はーちゃん達に言っちゃだめ!」

神長「全部拾い集めたぞ」キリッ

春紀「……………………」

乙哉「食べたくない………」

冬香「だから黙ってようねって言ったのに……」

神長「すまない………」

春紀「すげーな。この空間で幸せな奴が一人もいない」


夕方 春紀の部屋



春紀「うし。そんじゃ、鳰に連絡入れるとするか」

乙哉「うん!あたし掛けるね」

神長「何故走りに連絡を?もしかして、私という存在のクーリングオフか?」

春紀「違ぇよ」

乙哉「っていうかそんなことできるの」

春紀「そもそもあたし達、こいつのこと買ってないよな」

乙哉「それね」

神長「あー……なんか爆弾が作りたくなってきた………」

春紀&乙哉「ごめんって」


春紀「言ってなかったか?あたし達がやってきた暗殺の依頼って、鳰からの依頼なんだ」

神長「そうだったのか!」

乙哉「そういえば報酬ってどうやってもらったらいいんだろうね?」

春紀「さぁな。口座とか伝えなきゃいけないならメールしないとなー」

神長「報酬ってどこから支払われるんだ?まさか走りじゃないだろ?」

乙哉「そそっ。鳰ちゃんはあくまでこっちに仕事流してくれただけなんだよねー」

春紀「ま。誰が振込んでくれてもいいけどな、正直」

乙哉「そだね。さーてと、電話するよー」

春紀「スピーカーにしてくれ、そっちの方がいいだろ」

乙哉「了解」ピピッ


鳰『もしもーし、鳰っス!』

春紀「よぉ。いまヘーキか?」

鳰『ヘーキじゃなかったら電話取んないっスよー』

乙哉「今ちょっとイラっとした」

鳰『え』

春紀「わかる。あ?ってなったよな」

鳰『そんな』

神長「確かに」

鳰『確かに!?』


鳰『えーっと、神長さんもうそっちに着いてたんスね』

春紀「あぁ。かなりビックリしたけど、これはどういうつもりだ」

鳰『どういうつもりって……だって乙哉さんは逃亡中の身ですし、消去法で春紀さんのとこしか紹介しようがなかったんスよー』

春紀「はぁ………お前はどうしてそう勝手なんだ……」

神長「私は、許可貰ったって聞いてたんだが……」

春紀「………まぁいい。これはもう済んだ話だ」

鳰『お!いいっスね!細かいことは気にしない!さすが!女の中の女っス!』

春紀「ただ、お前は次会ったときに一発ブン殴るから。そのつもりでいろ」

鳰『っひょえー……もう二度と会いたくないっスね、春紀さんには』


鳰『そうそう、この間バイク支給したじゃないっスか』

春紀「あぁ。取りに行ったところにアンタはいなかったけどな」

鳰『いやいや、うちガッコあったんスよ?無理っスよー』

春紀「よく言うよ……」

鳰『まぁまぁ。いやー、ホント、お疲れさまだったっスね』

春紀「……!!」

乙哉「あれ?成功したの、知ってるの?」

鳰『えぇ、聞いてるっスよー。やっぱ春紀さんに依頼して正解だったっスねー』

春紀「別にヨイショはいらんよ。報酬さえもらえれば、それで」

乙哉「あ!ねぇねぇ、目撃者出しちゃったんだけど」

鳰『あぁ。あの人っスよね。愛人の』

乙哉「そうそう!」

鳰『あれは別口で雇ってたスパイっスよー。どうしたんスか?気に入っちゃいました?』

乙哉「うん……殺したいなぁ、って………♥」

神長「可愛くおねだりしてるつもりなんだろうけどすごく怖い」


乙哉「あたし、久々に燃えてきちゃったっていうの……?だから」

春紀「お前あたしの家に転がり込む前の週にヤってきたって言ってただろ」

神長「スパンが短過ぎる」

鳰『いくら武智さんのお願いでも駄目っスよー。依頼主が一緒なんス。こればっかりは諦めて欲しいっス』

乙哉「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

春紀「うるせぇよ」

神長「息どんだけ長いんだよ」


鳰『というわけで、残りの報酬の振込先はあとでメールしといて欲しいっス』

乙哉「おっけー!じゃあ春紀さんからメールしてもらうねー」

鳰『あれ?山分けじゃないんスか?』

乙哉「あたしはいらないや。実際仕事したのは春紀さんだし。トランシーバー代だけ返してくれればそれで」

神長「太っ腹だな」

春紀「……ちょっと待て」

神長「…?どうした?」

春紀「おい……”残りの”報酬って、どういう意味だ?」

鳰『……へぇ、さすが。お金にはうるさいんスね』

春紀「こちらとら貧乏人なんでね。なんだ?ちょろまかそうってのかい?」

鳰『はは。ウチは斡旋料なんて取ったりしないっスよ』

春紀「だったら」

鳰『バイク、用意するとは言ったっスけど、タダとは言ってないっスよね?』

乙哉「え、でもあれは依頼人のご厚意って」

鳰『えぇ、そうっスよ。あんなの用意しようと思ったらもっと時間がかかるもんなんス。それに、成功するかもわからないのに報酬から差っ引く形で妥協してくれたんスよ?有り難いと思わないと』

春紀「………悔しいが、アンタの言う通りだ」


春紀「はぁ……」カチカチ

神長「何をしてるんだ?」

春紀「鳰の奴にメール打ってんだよ」

神長「なるほど、報酬は早く確認したいよな」

春紀「へっ、そーゆーこと」

鳰『いやそれあとでいくないっスか!!?!?なんでウチとの通話中にあたかも「電話終わりました」みたいな空気作ってまでやってんスか!?』

乙哉「まー、でも確かにもう鳰ちゃんに用事ないのは事実だし。切るねー」

鳰『え、ちょちょ!ちょっと待ってくださいっス!』

春紀「もー、なんだよー」

鳰『もう一つ仕事を依頼したいって言ったら、どうするっスか?』

乙哉「……」

神長「……」チラッ

春紀「…話してみろよ」


鳰『って言っても今回は簡単な依頼っス』

春紀「?」

鳰『人は殺しても殺さなくてもいい、とりあえず時間稼ぎをして欲しいんス』

乙哉「時間稼ぎ?」

鳰『そうっス。とある製薬会社にハッキングをかけるつもりらしいんスが。さすがにセキュリティがキツいらしくて』

神長「当たり前だろう。製薬会社にハッキングだなんて、馬鹿げてる」

鳰『そこで、お三方には陽動作戦のおとりの方をお願いしたいんス』

春紀「なるほどな。だけど、あたし達でパソコンに詳しいのなんて……」

鳰『あぁそんなのは関係ないっスよ。もしこの依頼を受けてくれるなら研究所の図面を武智さんのタブレットに送るっス。その施設内で破壊の限りを尽くしてくれれば、それでいいっスよ』

乙哉「楽しそう!♥」


鳰『結構おっきいとこからの依頼っスからね。後始末のこととか考えずに、好き勝手やっちゃって欲しいっス』

神長「どうするんだ?寒河江」

春紀「鳰、一番大事な情報が抜けてるだろ?」

鳰『わぁーかってるっスよ。報酬は一人辺り50万っス。結局はただのおとりっスからそんな高くないっスよ』

春紀「はっ、暴れまくっただけで50万か。いいね、乗った」

乙哉「紐使いの春紀さんが暴れるって言っても限度があると思うけど」

春紀「よぉーし、武智。表出ろ」


神長「しかし、私達は暴れるだけでいいのか?それでセキュリティは」

鳰『要するにおとりのおとりっスよ』

乙哉「すごい、なんかチームみたいだね」

鳰『そう思ってもらって差し支えないっスよー。ハッキンググループとセキュリティ解除グループと、おとりのグループがあるみたいっス。ま、ウチも斡旋する上で必要な情報しか渡されてないんで、これがホントかはわかんないっスけどね』

乙哉「どういうこと?」

鳰『ウチに悪意があろうとなかろうと、どこかから情報が漏れる場合もあるじゃないっスか。そうなったときに作戦の全容を知ってる人物は少ない方がいいっスからね』

春紀「だな。ま、あたしらが言われたことをやるだけだ。どちらかと言うと施設の破壊に努めた方がいいんだろ?」

鳰『もちっス!人なんて殺し始めたらキリないっスからね。それにあまりそっち方面で派手にやられると庇いきれなくなるかもっスよ』

春紀「まぁ、当然だな」


神長「しかし、何故私達に……?わざわざアサシンじゃなくてもよさそうなものだが」

鳰『そうっスね。三人とも足がつかなさそうだったからじゃないっスか?』

春紀「じゃないっスか?って、あんたが独断と偏見で振ってきたんじゃないのか」

鳰『今回の依頼は依頼主からのご指名っスよ』

乙哉「へー!なんかかっこいいね!」

鳰『さっきも言ったっスけど、足がつかなさそうだからって理由だと思うっスよ?』

乙哉「いーじゃんいーじゃん、ご指名ありがとうございまーす、だよ!」

鳰『神長さんの話したら依頼主が興味持ったっていう』

神長「絶対嫌な紹介の仕方しただろお前」

鳰『嘘は言ってないっスよ。依頼人も大爆笑で是非神長さんに!って』

神長「お前ら全員殺してやる」


・・・

・・・



春紀「それにしても連続で仕事とは、なかなか珍しいな」

神長「バイト始めるって話だったよな?大丈夫か?」

春紀「あぁ、そうなんだ。ただ、制服が用意出来たら連絡するって言われててさ」

神長「なるほど、連絡待ちなのか」

春紀「あぁ。だから平気だろ。ま、決行日にもよるが……」

乙哉「……」ツーン

神長「?」

春紀「?」


春紀「武智?どうした?」

乙哉「神長さんと春紀さん、普通に会話しててズルい」ツーン

神長「どの口が言うんだ」

春紀「会話のキャッチボールにならないお前が悪いんだろ」

乙哉「そんなことないもーん」ツーン

神長「そもそもキャッチが出来てないからな」

乙哉「ちょっと」

春紀「いや、キャッチボールしようって言ってるのにバット構えてる状態だろ」

乙哉「やめてよ!」

神長「しかもそのあと打ち損じて、ボールが顔に当たって『いや、顔面セーフだから!』って言ってる感じだよな」

乙哉「何それ!キチガイじゃん!」

春紀&神長「え……?うん」

乙哉「どうしよう、二人とも可愛く見えてきた♥」

春紀&神長「ごめんなさい」


春紀「で?鳰の奴からメールは?」

乙哉「いまちょうど受信中だよ」

春紀「そうか。決行日に余裕があるなら色々道具とか揃えたいな」

乙哉「だよねー!紐じゃどうしょうもないもんね」

春紀「お前ホントあたしの武器いじり好きな」

神長「あ、もし扱えるならこれ、使ってくれ」スッ

春紀「!?」

乙哉「なんかすごい丁寧な感じで銃出てきたけど!?」

神長「銃くらいで驚くなよ。なぁ?寒河江」

春紀「銃口をこっちに向けるな!」


神長「まぁまぁ。ちゃんと安全装置付いてるから。いくら私でもそんなヘマはしないs」

バキューン!!

春紀「!!?!?」

乙哉「!!?」

神長「……すまない」

春紀「すまないじゃない!髪の毛ハラハラ…ってなったろ!!」

乙哉「そうだよー。ただでさえ最近春紀さんストレスで髪の毛ハラりそうなんだからさー」

春紀「そのストレスの原因の半分以上がアンタだってわかってるか?」

神長「ハラるってなんだ…?ハラリンピック?」

乙哉「そんな競技大会嫌だよ…」

春紀「っていうかそれを言うならパラリンピックだろ!いい加減にしろ!」


神長「えっと、これが替えのマガジンだ。私は他にも持ってるから、これは好きに使ってくれ」

春紀「あ、あぁ…」

乙哉「あたしはいらないよ?ほら、美学に反するから、あたしの」

春紀「当たり前だ、そもそもあんたに銃持たせたらとんでもないことになるだろ」

神長「ある意味、鬼に金棒だな」

春紀「もしくは青ぷよが3つ揃ってる状態のところにやってくる青ぷよみたいな」

乙哉「消えるじゃん」

神長「しかも上下に赤ぷよ2個ずつ挟んでるんだろ」

乙哉「連鎖じゃん」

春紀「あぁ、そしてそれ以上のぷよは存在しないんだ」

乙哉「全消しじゃん」


春紀「道具の調達は必要なさそうだな」

乙哉「そだね。あ、メール開くね」

神長「そういえば受信してたんだっけな」

乙哉「えーと…うっわ、ひろっ」

春紀「この中で暴れろって…一人1フロア暴れてもお釣りがくるぞ……」

神長「確かにな。ただ、重要な装置が各階に備え付けられてる訳ではないだろ」

春紀「それもそうか」

乙哉「じゃあそこを重点的に攻める感じだね」

神長「そうなるな。この制御室辺りが怪しいな。ここに爆弾を仕掛けよう」

春紀「ってことはそれまでは大人しく潜入した方がいいか」

乙哉「うんうん、じゃないと爆弾仕掛ける時間なくなっちゃうもんね」


神長「いや、待て。きっとこの裏手側が警備が薄いだろう」

春紀「うーん、そうだな。正面切って潜入って訳にはいかないだろうな」

神長「施設に入ったら別行動というのはどうだ?私が作った爆弾を渡すから、お前らは施設内の離れたところで暴れるんだ」

乙哉「えーと……」

神長「私達も陽動作戦をする、ということだ。どうだ?」

春紀「……その、神長が作った爆弾を誰が爆破させるんだ?」

神長「…?それはお前たちのどちらかだろ」

乙哉「……あたし、まだ死にたくない」

春紀「あたしだって……」

神長「誤爆前提で話を進めるな!!!ちゃんと作るから!!!」


春紀「そうだ。これ、決行日はいつなんだ?」

乙哉「えーと……うわ」

神長「どうした?」

乙哉「明日の夜だよ……」

春紀「はぁ!?」

神長「また随分と急だな」

乙哉「準備がどうの、言ってる場合じゃなかったね」

春紀「そうだな……」


・・・

・・・


春紀「まぁ、こんなもんか」

乙哉「じゃない?あとはもうどうにでもなれ、って感じ」

春紀「爆弾はそれまでに用意出来るのか?」

神長「あぁ、急げば」

春紀「悪い予感しかしない」

乙哉「えっと…それ、ちゃんと爆発するんだよね……?」

神長「当たり前だ!起爆出来なかったら爆弾とは言わないだろ!」

乙哉「いやそうじゃなくて」

春紀「あたし達が訊きたいのは”ちゃんとしたタイミングで爆発するのか”ってとこなんだけど…?」

神長「……主よ」

春紀「祈るな!!!!」


春紀「そうだ、鳰に手配したか?」

乙哉「したした。明日の夕方にバイク受け渡ししたところに来てくれって返事が来たよ」

春紀「そうか、ならよかった。この作戦の一番の肝になるところだからな…」

神長「それを私が……」

乙哉「だって経験あるの香子ちゃんしかいないんだもん……」

神長「ん?いま私のこと、香子ちゃんって…」

乙哉「あれ?ダメだった?」

神長「いや…嬉しい……学校では首藤くらいしかそう呼んでくれなかったから」

春紀「あんたは首藤のこと首藤って呼んでるのにな」


神長「それは言わない約束だ。名前で呼ぶの照れくさいんだ。はぁ、首藤…」

春紀「あんたらもなんだかんだ仲良かったもんな。寂しかったりするのか?」

神長「まぁ、それなりに。武智、ちょっと首藤っぽく喋ってみてくれ」

春紀「相当首藤分不足してるじゃねーか」

乙哉「香子ちゃん、ワシは寝るぞよ?」

春紀「アンタもリクエストに応えなくていいから」

神長「しかも若干口調がおかしいっていう」

乙哉「してあげたのにこれだからね」


神長「これは、どうやって寝たらいいんだ?」

春紀「あたしは冬香と寝るから」

乙哉「っえー!一緒に寝ようよー!」

神長「じゃあ私がそこら辺で寝るとしよう」

春紀「いや、それも悪いって」

神長「……」チラッ

春紀「……」チラッ

乙哉「あ、悪いけどあたし、絶対譲らないから」

春紀「オイ」


神長「で、結局こうなるのか…」

春紀「おい、武智。布団持ってきすぎ」

乙哉「んー気にしなーい」

春紀「あたしが気にするんだよ!!」

神長「私なんてもう毛布掛かってないからな」

乙哉「それは端だからしょうがないよ」

神長「お前も恥だろ。…あ、間違った」

春紀「いや、間違ってない」

乙哉「泣きそう」


翌日 昼間



春紀「よし、そろそろ受け渡し場所に行くか」

乙哉「だねー。爆弾は?どう?」

神長「大丈夫だ、問題ない」

春紀「よし」

神長「……多分」ボソッ

春紀「おい、今なんかフラグ立った気がするんだけど」






乙哉「あたし達は身軽だけど…」チラッ

春紀「神長、すごい重そうだな」

神長「あぁ。でも仕方がない」

乙哉「そのリュック何が入ってるの?」

神長「爆薬とか」

乙哉「それ全部!?」

神長「まぁ、機械を爆破するんだ。火薬は多目に設計したよ」

乙哉「すごーい!で、それ転んだらどうなるの?」

神長「……」

春紀&乙哉「……」スタスタ

神長「待って!置いてかないで!!」

頑張ったけどダメだった
明日の夜にまた来る
おやすみ

おつおつ
前スレHTML化依頼出しとけよ

戻った

>>54
終わってからすぐに出してるが


受け渡し場所



春紀「これだな」

乙哉「確か鍵はこのキーボックスの中に……あったあった」

神長「で、私がこれを運転するのか…」

春紀「あの、頼むよ?マジで?」

乙哉「あたし達死にたくないからね?」

神長「じゃあお前らが運転すればいいだろ…」

春紀「アンタが運転出来るって言ったからこの作戦にしたんだけど」

乙哉「それにしても大胆だよね、春紀さん」

春紀「え?」

乙哉「だって、この間の暗殺の報酬をこの車に回しちゃうんだもん」

春紀「全額じゃないけどな。どーせ足のつかない中古車だ。これくらいの出費は覚悟してたさ」

神長「それが今から廃車になるのか…感慨深いな…」

春紀「頼むから事故るの前提で話しないでくれ」


ブゥン!!

神長「二人共準備はいいか?」

春紀「あぁ、着替えも終わった。機器点検の連絡入れるように言ってあるんだよな?」

乙哉「うん、それは昨日鳰ちゃんに言って手配済み」

春紀「よし。じゃあ、神長。頼んだ」

神長「あぁ」

シュコー…

乙哉「……」

春紀「なんでウォッシャー液出した」

神長「すまん、間違った」

乙哉「無事にたどり着ける気がしない…」


神長「えっと、気を取り直して、行くぞ!」ブゥン!!

ブオー・・・

春紀「お、おぉ……!」

乙哉「走ってる…!走ってるよ……!」

神長「走ってるだけでこんなに感動されるなんてな」

春紀「現場までの地図、頭に入ってるか?」

神長「あぁ、大丈夫な筈だが…」

乙哉「あたしナビしよっか?」

神長「いいのか?」

乙哉「もっちろん!香子ちゃんは運転に集中してくれていいからね!」

神長「ありがとう。だけど私は、お前らが”どっちが助手席に座るか”で命がけのじゃんけんしたこと、忘れないからな」


神長「い、いっぱい車が走ってる通りに出てきてしまった…!」

春紀「落ち着け、なんでもないから。自分のペースで走ればいいんだよ、な?」

乙哉「春紀さんがいつになく優しい」

春紀「刺激しちゃダメなんだって」

乙哉「立てこもり犯みたいな扱いだね」

ブロロロ・・・

神長「立てこもり犯でもなんでもいい、私は…!」

春紀「いや遅いって!」

乙哉「20キロ!?これじゃ怒られちゃうよ!」

プップーッ!!

乙哉「言わんこっちゃない…」

神長「あ…あ……あ……!!」

春紀「ヤバい!カオナシみたいになってるぞ!!」


神長「だって、私のペースでいいって」

春紀「落ち着こう、とりあえず法定速度で走ろう?な?」

乙哉「そ、そうだよ。ほら、なぁんにも怖くない」

神長「でも……でも…50キロで走ると前の車にぶつかりそうで……」

乙哉「いやそこは適度に調整しよう!?」

神長「適度に…?調整……?適度…って、なんだ……?」

春紀「こいつドジっ子っていうよりテンパり屋なのか、もしかして」

乙哉「あぁ!ごめん!あたしいい加減なこと言った!うんうん!あたしが悪かった!」

神長「えっと…えっと…」

乙哉「50キロで走って車間距離がなくなってきたと思ったら45キロに落とそう!?ね!?」

春紀「そ、そうだ!それがいい!ほら、深呼吸深呼吸!」

神長「はぁー…はぁー……」

乙哉「こわい」

春紀「知能テスト受けてるゴリラみたいになってるな」


神長「うん、慣れてきた」

春紀「……」ホッ

乙哉「よかったぁ……これで事故ったら助手席に座ってるあたし即死コースだよぉ」

神長「はは、悪いけど私の運転じゃ死ねないぞ?もう大丈夫だ」

乙哉「おっ!言うねー!」

春紀「何はともあれ、余裕が出てきたみたいでよかっt」

乙哉「あ、今のとこ右」

神長「!!?!?」

キキィィィィィィl!!

春紀「ちょっ!!!?」

乙哉「あっぶなー…何いまの神がかったコーナーリング」

春紀「今のはお前が悪い」

神長「はぁ……はぁ……!!!」

春紀「あぁもう!せっかく余裕出てきたのに!!」


乙哉「これやっぱりあたし死ぬんじゃ?」

春紀「アンタのナビが唐突過ぎるんだよ!」

乙哉「だってー。あたしも「あっ」って思った時にはそこだったんだもん」

春紀「もっと前もって言ってやれ」

乙哉「んー。あたし地図読むの苦手なんだよねー」

春紀「 貸 せ 」

神長「あ、赤だ」

キィィィィィ!!!ガシャン!!

春紀「……」

乙哉「春紀さん、後ろの席から前に飛んできたけど」

神長「まぁ、そういうこともある」

春紀「人生初の体験だよ!!いてーな、この!」


研究施設 地下駐車場



春紀「帽子、ちゃんと被れよ?面割れたら面倒臭いことになるかもしれないからな」

乙哉「うん、オッケー」

神長「私も大丈夫だ」

春紀「神長は今すぐそのサトシがポケモン勝負で気合入れた時みたいな帽子のかぶり方を直せな」

「おい、止まれ」

キッィィィ・・・

神長「防災機器の点検業者だ。本日18時からの」

「……ふむ、確かに予定にあるな。よし、通れ。車は業者用のスペースがあるからそこに停めてくれ」

神長「分かった」

ブロロロ・・・

乙哉「…案外チョロかったね」

春紀「あぁ、第一段階クリアだ」


ブゥン・・・

春紀「あとは車を停めたら、各自持ち場で暴れる、と」

乙哉「だね」

ブゥーン・・・

春紀「持ち物は?問題ないか?」

乙哉「うん、って言ってもあたしはいつもの鋏だけだけど」

ブゥーン・・・

春紀「そうだったな。あたしはいつもの獲物に、拳銃に…神長にもらった爆弾か」

乙哉「あぁ、そういえば作ってもらった閃光弾があるんだった」

ブゥン・・・

春紀「発動のさせ方は分かるな?」

乙哉「うん、この紐を引いて投げるんでしょ?あ、紐と言えば春紀さんの武器も」

春紀「それ以上言ったら殺す」

ブゥン・・・

春紀「なぁ、神長。さっきから何やってるんだ?」

神長「……バックで駐車できない!!!」

春紀「はぁ!!?」

乙哉「何この思いがけない障害」


春紀「……で、結局あたしが停めたっていう」

乙哉「最初から春紀さんが運転したらよかったんじゃない?」

神長「私だって頑張ったろ!そういうこと言うな!」

春紀「へいへい…とにかく、準備はいいな?」

乙哉「うん!」

神長「施設の破壊が終わったら、もしくはミッションコンプリートの連絡があった場合、もしくは2時間後、ここに集合。だよな?」

春紀「あぁ、間違いない」

乙哉「へぇーそうだったんだ」

春紀「もう不安しか無い」


神長「あとは…連絡は随時トランシーバーで取り合う、だろ?」

春紀「だな。神長がトランシーバー持ってて助かったよ」

乙哉「うんうん!またAVショップ行かなくちゃかと思ったよねー」

春紀「おいやめろ」

神長「その節は大変ご迷惑を…」

春紀「ホントにな」


春紀「じゃあ、あたしは地下1階の警備室を」

神長「私は7階の制御室を」

乙哉「あたしは爆発を合図に適当に出くわした人刻んでくねー」

春紀「…いいなぁ、アンタ。気楽で」

乙哉「そう?」

神長「人生楽しそう」

乙哉「ねぇそれ絶対馬鹿にしてるよね」


地下1階



春紀「こちら寒河江、地下1階。どーぞ」

神長『こちら神長、現在3階。さらに上を目指す。どーぞ』

乙哉『こちら武智、2階の社員食堂。どーぞ』

春紀「何やってんだよ」

乙哉『なんかおばちゃんに見つかちゃってさー。内緒でご飯食べてけって』

春紀「 仕 事 し ろ 」

乙哉『あたしだってそうしたいけど、なんか断れなくてさー』

神長『あまり情が移るとやりにくくなるぞ』

乙哉『あ、それは大丈夫』

春紀「さすがサイコキラー」


春紀「!一旦切るぞ」

乙哉『どしたの?』

春紀「警備室に着いた」

神長『なるほど、制御室の爆破が終わるまではあまり派手にやるなよ?』

春紀「わかってるって」

コンコン

「なんだ?まだ交代の時間じゃないだろ?」ガチャ

春紀「どうもー」シュッ!!

「!?」

ガァン!!

「どうした!?」

春紀「二人で警備か、チョロいな」シャッ!

「!?」

ギリギリギリ・・・!!

春紀「安心しな、殺しはしない。今のところな」

「……」ドサッ!


春紀「こちら寒河江。警備室はクリアだ、どーぞ」

神長『早いな』

春紀「ま、二人だったからさ。神長はどうだ?」

神長『今5階だ。制御室に急行してる』

春紀「階段の踊り場で体育座りしてるのお前だろ」

神長『どうしてそれを!?』

春紀「カメラで丸見えなんだよ!」

神長『すまない、ちょっと疲れてしまって…』

春紀「走らなくていいからせめて歩け」

神長『歩いた結果がこれだが?』

春紀「救いようねーじゃねーか」


春紀「……武智」

乙哉『ん!?』

春紀「お前」

乙哉『大丈夫大丈夫!ちゃんと待機してるよ!』

春紀「だからカメラで丸見えだって言ってるだろ!!」

乙哉『あちゃー。ごっめーん』モグモグ

春紀「謝りながら鯖の煮付けを頬張るな!!」


7階



神長「こちら神長、制御室の前にいる」

春紀『あぁ、見てる。中に人はいない。早速だけど…』

神長「任せておけ。失敗はしない」ガチャ・・・バタン

春紀『頼んだ。そっちに誰か行ったらすぐに知らせる。トランシーバーは切るなよ』

神長「了解。取り付けにかかる」カチャカチャ

神長「……」カチャカチャ

神長「……あ、ドライバー忘れた」

春紀『オイ』


神長「い、いや、大丈夫だ。もう少し時間をくれ」

春紀『…!男二人がそっちに向かってる!』

神長「!?」

春紀『ちっ。どうやらお目当ては制御室らしい。隠れられそうなところはあるか?』

神長「いや、無いな……」

春紀『……あれ?』

神長「どうした?」

春紀『いや、武智がいない。さっきまで食堂でご飯食べてたのに』

神長「今アイツの話はどうだっていいさ」

ガチャ…!

神長「きた…!」


男1「貴様!そこで何をしている!」

神長「ちっ…!」チャ・・・!

男2「拳銃…!?」

神長「まだ事は起こしたくなかったけど、仕方がない!」

パァァン!!パァァン!!

男1「ぐぁ…!!」

神長「足に命中、上々だ……」

パァン!!パァンパァン!!

男2「ちっ…!」ダッ!

神長「これで最後か…当たってくれ…!」

パァン!!

春紀「どうだ!?二人共仕留めたか!?」

神長「いいや、外した」

春紀「もうね。ホントにね」


男2「くっそ、なんなんだお前!早く本部に連絡しないと…!」

「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃーん」

男2&神長「!?」

乙哉「やっほー。乙哉ちゃんだよー」

男2「複数犯か!」

乙哉「ごめんねー……死んで?」ザクッ!!

男2「!?」

神長「うわっ…」サッ

春紀『カメラじゃよく分からないんだけど…殺したのか?どーぞ』

乙哉「さぁ?脇腹刺しただけだから死んでないんじゃない?っていうか野郎のことなんてどーでもいいよ。あー鋏に汚い血ついちゃった、最悪ー」

春紀『……(怖ぇー…)』


男2「くっそ、なんなんだお前!早く本部に連絡しないと…!」

「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃーん」

男2&神長「!?」

乙哉「やっほー。乙哉ちゃんだよー」

男2「複数犯か!」

乙哉「ごめんねー……死んで?」ザクッ!!

男2「!?」

神長「うわっ…」サッ

春紀『カメラじゃよく分からないんだけど…殺したのか?どーぞ』

乙哉「さぁ?脇腹刺しただけだから死んでないんじゃない?っていうか野郎のことなんてどーでもいいよ。あー鋏に汚い血ついちゃった、最悪ー」

春紀『……(怖ぇー…)』

ありゃ、連投しらさってる
スルーしてくれ


乙哉「ここはあたしが見とくから、香子ちゃんは爆弾設置に専念して」

神長「あ、あぁ。助かる」カチャカチャ

乙哉「はぁ…これで綺麗なお姉さんがいれば最高なんだけどなー…」

神長「お前のその趣味はなんとかならないのか」

乙哉「なんとかなったらこんなところいないよー」アハハ

神長「……確かに」

乙哉「どんな感じー?」

神長「いま終わった。走るぞ」

乙哉「へ?」

神長「時間が無くてリモコンまで作ってられなかったんだ、時限式だぞ!」ダッ

乙哉「そういうの前もって言っておこう!?」ダッ


地下1階



ドゴォォォ・・・!!!

春紀「おぉ、始まったか」

プォォォオン!!プォォォォン!!

春紀「うるっさいな。はは、この施設、防災機器ちゃんと動いてんじゃんか」

プシャー……!!

春紀「あー。スプリンクラーは切っておけばよかったな。すっかり忘れてた。うっざ」

春紀「ま、いいや……さってと。じゃ、あたしも行くかな」

ガチャッ!!

春紀「おぉ、早速か」

「お前、施設に何をした!」

春紀「あたしはなんにもしてないさ」

「とぼけるな!では何故ここに」

春紀「そこ、危ないぜ?」シャッ!

「!?」

春紀「上だよ、バカ」

ガシャーン!!


4階



乙哉「なんとなくこっちに逃げて来ちゃったけど…香子ちゃんとはぐれちゃった……トランシーバーも通じない……」

乙哉「ま、いっか。爆弾は作動したみたいだし」

乙哉「ここからはヤりたい放題なんだっけ?」ジャキッ…!

乙哉「……」スタスタ

乙哉「誰ともすれ違えない。寂しい…そこら中水浸しだし…」

乙哉「あれ…?ここって……?」

乙哉「女性社員用仮眠室……?」

乙哉「へぇー…サイッコー……」ゾクゾク


2階



春紀「思ったより人が少ないな。よく考えたら就業時間外だったのかもな」

春紀「ま、無闇に人殺すのは趣味じゃないし」

春紀「どっかの誰かさんと違って」ボソッ

春紀「えーっと…」

春紀「警備室の爆破は完了しただろ?」

春紀「あとは……3階の資料室も爆破しておくか」タッ!


7階



神長「いたたた……どうやら起爆はちゃんとしたみたいだな…」

神長「怪我もしていないみたいだし。良かった…」

神長「あとは6階の実験室も爆破しておこう」

神長「そういえば、爆発にリュックの中身が巻き込まれなくて良かったな」

神長「……」

神長「え。もしかして巻き込まれてたら死んでたんじゃ…?」ゾッ


4階 女性社員仮眠室



乙哉「女性社員仮眠室、だってー♥お邪魔しまーす♥」ガチャ

バタンッ!

「ひぃ…!」

乙哉「……」

「この騒ぎは、あなた達が…?」

乙哉「……行って、どうぞ」

「はい…?」

乙哉「好みじゃないから」

「すごくムカつく」


乙哉「……で、綺麗じゃないお姉さんは逃がして…あとは誰もいないのかな」

「んー…よく寝た……サイレン?どうしたんだろ?」

乙哉「!?」バッ!

「うわ、何よこれ!水浸しじゃない!」

乙哉「お姉さん、こっち向いて」

「え?何?」キョロキョロ

乙哉「ねぇ。お姉さんってば。ねぇねぇ、絶対美人でしょ?だって声が美人だもん」

「えーと…?」ヒョイ

乙哉「!!ビンゴ!やっぱりねー!」

「なに?…え?え?」

乙哉「ねぇ、白衣のお姉さん。あたしと、イイコトしない?」


「えーと…いいことって?実験か何か?」

乙哉「ふふ、あはははは!お姉さんアレ?もしかしてリケジョってやつ?かぁーわいー♥」

「あり、がとう?」

乙哉「それもいいんだけどぉー、そうじゃなくて、もっと素敵なコトだよー?」

「えっと、逃げなくていいの?なんかサイレンが…私が寝ぼけてるのかな……?」

乙哉「いーのいーの!あーもーどうしよう…!!お姉さんの血で?お姉さんの白衣が真っ赤になるの?なにそれすっごい素敵……!!!」

「……怖い!」

乙哉「今更遅いよー、ほら。楽しもう?ね?」シュ!

「!?」

ザシュ!!

「っきゃああああああああ!!!!」

乙哉「……るっさいな、このサイレン。せっかくの悲鳴が台無しじゃん…」イライラ


3階 資料室



春紀「よし、これでいいな」

春紀「あとはスイッチを押して30秒後に爆発…」

春紀「怖い…」

春紀「警備室を爆破したのはリモコン式だったけど、これは手動なんだよな…」

春紀「……」

春紀「いや、神長を信じるんだ。あいつはいつだって……」

‐適度……?適度ってなんだ……?

‐あ、ドライバー忘れた

春紀「どうしよう、信頼できる要素がどこにもない」


春紀「……うし!女は度胸だ!」カチッ!

春紀「……!」ダッ!

春紀「出来るだけ遠くに離れないと、どれくらいの威力かもわからないし」タッタッタッ

春紀「……」

春紀「………」

春紀「……………???」

シーン………

春紀「ここに来て不発とか」


春紀「ったく………意を決してスイッチ押したあたしはなんだったんだよ……」

春紀「……え」

春紀「………あれ、回収しないと駄目だとか言わないよな?」

春紀「こちら寒河江だ、どーぞ」

神長『首尾はどうだ?』

春紀「順調、だったんだが……一つ問題が生じた」

神長『どうした?怪我でも』

春紀「あーいや、それは大丈夫さ。ただ」

神長『……?』

春紀「アンタの作った爆弾が作動しないんだが」

神長『こちらのトランシーバーは、電源が入っていないか、電波の入らないところに』

春紀「おい!!」


神長『しかし不発に終わるとはな……』

春紀「スプリンクラーの水で駄目になったのか?」

神長『いや…おそらくそれは構造的にありえない、はず……うーん、何故だ……』

春紀「で、聞きたいんだけど…あれ、別に回収しなくてもいいだろ?」

神長『いいや、駄目だ。回収してくれ』

春紀「なんでだ……危険過ぎるだろ……」

神長『私はストイックな女なんだ』

春紀「?」

神長『己を奮い立たせる為に、自分にプレッシャーをかけていく』

春紀「………で?何が言いたいんだ?」

神長『起爆させないとマズいって気合いを入れる為に、ポエムを書いて中にしまってるんだ』

春紀「世に晒されろバカ」


神長『だ、駄目だ!そんなの!恥ずかし過ぎる!』

春紀「あんたが自分に科したルールだろ?爆発しなかったんだ。しょうがないじゃんか」

神長『ぬぅぅぅぅ……!!』

春紀「ぬぅぅぅってなんだよ。そんなに嫌なら入れるなよ」

神長『今まで、爆発のタイミングが早まったことはあったけど、爆発しないことなんてなかったのに……』

春紀「そっちの方の誤作動じゃなくてよかったって心底思ったわ」


春紀「はぁ……まぁ、とりあえずそんなところだ。作製手順からお前だと割れることはないんだな?」

神長『それはないだろう。ポエムに記名はしていない』

春紀「してればよかったのに……」ボソッ

神長『なんか言ったか?』

春紀「いーやー?」


神長『私は実験室に爆弾を仕掛けた。なんだかヤバそうなものがゴロゴロあったよ』

春紀「ヤバそうなものって?」

神長『Tウィルスってラベルの怪しげなボトルとか』

春紀「それ爆破しちゃ駄目なやつだろ!!!!おい!!!!」

神長『冗談だ、冗談』ハハハ

春紀「アンタなぁ……」

神長『本当はボトルじゃなくて試験管だった』

春紀「神長さぁぁん!!!」


4階



乙哉「…まだ生きてるー?おねーさん」

「……はぁっ……はぁ」

乙哉「えらーい♥息あるんだー♥」

「も……やめ………」

乙哉「うん、もうそろそろ止めにするよ。あたしも、あとちょっとでイけるから……♥」

ドゴォォォ……!!

乙哉「?また爆発?」

「何が……起こってるの……?」

乙哉「さぁ?あたしにもよくわかんない。っていうかどーでもいいよね?おねーさん死ぬんだし」


3階


春紀「………あれ、爆発させてやった方がいいのか」

春紀「まぁ、騒ぎデカくするなら爆破させるに越したことはないよな……」

乙哉「やっほー♪」

春紀「っひゃぁあ!!!!?」

乙哉「どうしたの?こんなところで考え込んで」

春紀「いや、いや……え?」

乙哉「あたし上から降りてきたんだー♪」

春紀「そうだったのか。びっくりした…」

乙哉「で?何見てたの?」

春紀「あれだ」

乙哉「あれなに……?あ、もしかして香子ちゃんの爆弾!?」

春紀「あぁ。ただ、ボタン押しても作動しなくてさ」

乙哉「あちゃー…」


春紀「神長は爆発させて欲しいみたいなんだ。確かに爆発させた方が目的とも合致するしな」

乙哉「要するにあれが爆発しなくて、させたくて考えてたの?」

春紀「あぁ、そうだ」

乙哉「なんだー、そんなの簡単じゃーん」

春紀「へ?」

乙哉「ちょっとこれ借りるね♥」スチャッ

春紀「へ?……はぁ!?お前、正気か!?」

乙哉「いっくよー」

パァン……!!!!

ドゴォォオ!!

春紀「!!?!?」

乙哉「一件落着~だねっ」

春紀「マジかよ……」


神長『こちら神長だ、どーぞ!』

春紀「こちら寒河江だ、どーぞ」

乙哉「香子ちゃん!無事だったんだね!」

神長「!?武智か!寒河江と一緒にいたんだな」

春紀「へ?どういうことだ?」

乙哉「制御室の爆発ではぐれちゃったんだよねー」

春紀「あえて別行動取ってた訳じゃなかったのかよ」

神長『ちょっとしばらく気を失っててな。それより、爆発したんだな。こっちまで音が響いてきた』

春紀「あぁ。武智が銃でブチ抜いたんだ」

神長『お前、まともに銃扱えたのか……!』

乙哉「ううん!ノリで!」

春紀「神様って遊び心で要らん才能授けたりするんだな」


神長『手持ちの爆弾も全部使ったし、そろそろここを脱出しよう』

春紀「そうだな。もうほとんど人もいないし、十分だろ。ズラかるか」

乙哉「っていうか急がないとー。いくら通信装置切ったからって、警備会社の人来ちゃうんじゃないの?」

神長『そうだな』

春紀「………」

乙哉「え?」

春紀「…………ごめん、忘れてた」

神長『はぁ……!っはぁ……!!』

乙哉「香子ちゃんがまたゴリラみたいになってる!!」


春紀「いやー……悪いけど、神長。ダッシュで降りて来てくれ。3階の西階段で落ち合おう」

神長『お前ってやつは!!』

春紀「あたしだってすっかり忘れてたんだよ!」

乙哉「ほら、言い合っててもしょうがないよ。とりあえずあたし達も移動して香子ちゃん待とう?」

春紀「……こいつに宥められるなんて」

乙哉「怒るよ」


3階 西階段



春紀「そろそろかな、神長」

乙哉「今のところ来てないっぽいね、警備会社の人」

春紀「だけど、制御室が爆破された段階で通報は行ってるだろ?早く逃げないとマズいだろうさ」

乙哉「だねー。誰かがすっかり忘れてたからねー」

春紀「悪かったって…」

神長『こちら神長、どーぞ』

春紀「おー、寒河江だ。そろそろか?どーぞ」

神長『転んで膝を擦りむいた、どーぞ』

春紀「知らねーよ、どーぞ」

神長『痛い、どーぞ』

春紀「いいから早くこい置いてくぞ、どーぞ」


神長「はぁ……はぁ………」

春紀「おぉ、来たか」

乙哉「おっひさー♪」

神長「二人とも……!」

春紀「上の方はどうだった?」

神長「追っ手は来てない。ただ、下の方が出くわす可能性は高いだろ」

春紀「そうだな。ただ異常発生箇所は7階の制御室だろ?」

神長「あぁ、なるほど。……さて、ここから先はどうだろうな」

乙哉「それじゃ、見つからないことを祈って行こっか!」

春紀「だな」ダッ

神長「あっちょっ待って……」


1階



春紀「なんだかんだ順調だな」

乙哉「あともう少し。駐車場は地下2階だから、えっと」

春紀「あと階段2つか。最短で、な」

神長「いま……追われたら……絶対……捕まる………」

春紀「……はぁ、ほら」

神長「え?」

春紀「こいよ。まだ余裕あるし、しょうがないから」

神長「……?」ギュッ

春紀「なんであたしの背中に抱きついてんだよ!!///」

神長「え?こいよって言うから」

春紀「それでお前の体力回復するのか!あたしは回復アイテムか何かか!!」


春紀「もう……おぶってやるって言ってるんだよ」

神長「え。でも」

春紀「早くしな。足手まといなんだよ。ほら」

神長「……ありがとう」ギュッ

春紀「よし、行くぞ」

乙哉「ねぇ?おんぶされたの、初めて?」

神長「……言われてみれば、そうだな」

乙哉「じゃあ春紀さんが香子ちゃんのおんぶ処女を奪っちゃったんだね」

春紀「どうしていちいちそういう気色悪い言い方するんだお前は」

乙哉「だって事実じゃーん」

神長「人を不快な気持ちにさせる言い回し選手権優勝間違い無しだな」

乙哉「褒めすぎー♥」


ピチャピチャ

乙哉「そういえば、スプリンクラー切るのも忘れてたよね。歩く度に水音がうるさいなー」

春紀「あぁ。しょうがないだろ、施設の破壊なんて初めてだったし」

神長「いいんだ。そうやって人は大きくなっていく」

春紀「誰目線だよ」

乙哉「さっきから、遠くの方であたし達とは違う水音が聞こえてくるの。気のせいかな?」

春紀「あー……あたしもそれ、いま言おうとした」

乙哉「ってことは……」

神長「こわいこわいこわいこわい……」ギュ?!

春紀「首……!しまってるから……!!!神長………!」


春紀「武智。そこの廊下、見てきてくれ」

乙哉「おっけー」スタスタ

神長「どうだった……?」

乙哉「駄目だね。むりむり。逃げらんない」

神長「…………」

乙哉「見つからないままはね」

春紀「つまり……?」

乙哉「うん、鬼ごっこするしかないかなーって感じ」

春紀「……神長走れるか?」

神長「腰が抜けたっぽい」

春紀「捨ててきてぇー……(そうか、わかった)」

乙哉「逆逆、逆だって春紀さん」


春紀「よし、そこを突っ切って階段を下りる。多分突っ切るときに見つかると思うが、ゴリ押しだ。いいな?」

乙哉「ま、なんとかなるよ。香子ちゃんにもらった閃光弾もあるしね」

神長「そういえばそんなの作ったな」

春紀「忘れるなよ」

乙哉「もう1階まで来たんだし、大丈夫大丈夫。いざとなったら皆殺し♪」

春紀「そういえば武智、その作業着についた血痕はなんだ?」

乙哉「転ばないように気をつけないとね!」

春紀「さっきからめちゃくちゃ機嫌いいよな、アンタ」

乙哉「さっ、いっくよー」

春紀「おい無視すんな」


タッタッタッ!!
ピチャピチャ!

「誰かいるのか!」

乙哉「あー、やっぱ見つかっちゃったねー」アハハ

春紀「走るぞ!」

乙哉「はいはーい」

「待てー!」

神長「進行方向から人が来なくてよかったな…」

乙哉「確かに。だったらもうどうしようもなかったかも」

春紀「お前ら気楽に話してるけど、あたし今めちゃくちゃ大変だかんな」ゼェ…ハァ…

乙哉「大丈夫だってー、春紀さん力持ちだし」

春紀「いくら力あるからって、人間背負って階段ダッシュだぞ!辛いに決まってんだろ!」

神長「わ、私に出来ることは……あ!犬飼の写真、目の前にぶら下げようか?」

春紀「???喧嘩売ってるのか????」


地下1階 廊下


「いたぞ!こっちだ!」

春紀「やっば」

神長「距離が縮まってる、ヤバいな……」

乙哉「そうは問屋が大根おろしー!」

春紀「おいお前いまなんて言った」

乙哉「神長さん!これ、紐引いて投げればいいんだよね!?」

神長「あぁそうだ!」

春紀「なるほど、さっきの閃光弾か!武智!頼んだ!」

乙哉「ほいっとー!」カチッ…ヒュン!


ドゴォォォォッォォォ………!!!



乙哉「」


春紀「!!?!?」

乙哉「え、ちょ、ちょっとあれ、閃光弾じゃ」

神長「のつもりで作ったんだが、もしかしたら材料間違えたのかも」

春紀「何をどう間違えたらそうなるんだよ!今度から”中国”って呼ぶぞ!!?」

乙哉「ビックリしたぁー……直撃はしてなかったと思うけど……今ので廊下が崩れて追手こなくなったよ」

神長「結果オーライ、だな」

春紀「そんなノリじゃ許されないだろ!」

乙哉「だね!」

春紀「いいのかよ!」


地下駐車場



春紀「ほら、早く乗れ!」

乙哉「えっと……」

春紀「動かし方は大体わかった。あたしが運転するから早く!」

乙哉「わかった!香子ちゃん、大丈夫?歩ける?」

神長「あぁ、余裕だ」

春紀「オイそれもそれでおかしいだろ。なんのために今までアンタのことおぶってたんだよあたし」


ブォォン!!

春紀「よし。シートベルト締めたか?いくぞ」

キキィィィ!!!

乙哉「速い、速いって!」

春紀「追っ手が来てるかもしれないんだ!我慢しろ!」

神長「トイレ……トイレ行きたい………」オエェ……

乙哉「車酔いするの早くない!?」

prrrrr…

乙哉「あ、鳰ちゃんからだ。もしもーし?」

鳰『どもーっス!いやぁー随分と派手にやってくれちゃったみたいっスねー』


乙哉「鳰ちゃんがそうしろって言ったんでしょ?」

鳰『そうっスけど、ここまでとは……あっぱれっス!』

乙哉「で?ハッキングは上手くいったの?」

鳰『さぁ?でももう撤退してくれって連絡が入ったっスよ』

乙哉「実は今出てきたところなんだー」

春紀「ま、ハッキングの成功はどうでもいいさ。報酬はもらうからな」

鳰『もちろんっス!神長さんの暴れっぷりに依頼人も大満足っスよ』

神長「いちいち腹立つな、そいつ」


鳰『にしても鮮やかだったっスねー』

乙哉「なにが?」

鳰『まぁーたまた謙遜しちゃってー』

神長「いや、してない。武智がそんなことできない性格なのはお前も知ってるだろ」

乙哉「ちょっと」

鳰『そうだったっスね』

乙哉「鳰ちゃんったらー♥」


鳰『いやぁー、あそこは警備会社と本部、それと施設の警備室が連絡を取り合ってるんスよ』

神長「なるほど、どこかで異常を察知したらすぐに対応できるようになっているのか」

春紀「のわりに、警備室の警備はゆるゆるだったぞ。ウィダーinゼリー飲んでる間にカタがつくレベルだ」

鳰『設備や体制に胡座かいてたんじゃないっスかね?』

乙哉「あー、ありがちなやつだねー」

鳰『一般社員の通報で危険を察知した本部と、制御室の防災装置作動で異常を察知した警備会社。そして連絡が取れない警備室。随分情報が錯綜したみたいっスよ?』

春紀「……」

鳰『向こうが一番解せなかったのは、施設を本当に爆破するほどの力を持っている実行犯達が警備会社への通報装置を切らなかったのは何故かっていう』

乙哉「あー……」

鳰『罠かと勘繰った人もいたそうっスよー。やってることがちぐはぐで向こうもこっちの真意をはかりかねてたみたいっスね。とにかく心理戦乙っス!!』

春紀「………あぁ、まぁな」

乙哉「あー!装置落とし忘れただけなのに『あえてそうしました』みたいな顔したぁー!」

神長「卑怯者!!!」


鳰『なんスかー、そうだったんスか』

乙哉「たまたまだよ、たまたま」

春紀「っていうかなんでそんなこと知ってるんだ?」

鳰『ハッキンググループが通話記録やら解析したときにそういう履歴が見つかったとか。依頼人から聞いたんスよ』

神長「なるほど」

鳰『なぁーんだ、ウチせっかくお三方のこと見直したのにー違うんスねー』

春紀「っさいなぁ!あ、そうだ」

乙哉「どうしたの?」

春紀「鳰、この車多分ナンバー警備会社に割れちまったと思うんだ。それで」

鳰『あー、なるほど。ま、いっスよ。それはウチの方でなんとかしとくっスから』

神長「……お前、本当に何者なんだ?」


鳰『ウチの方でっていうか、まぁ、依頼人に口利きするだけっスよ?受け渡し場所まで回せそうっスか?』

春紀「あぁ。多分問題ないだろ」

乙哉「少なくともいま尾行されてる感じはなさそうだよね」

春紀「暗くてよく見えんけどな。まぁいいや。じゃあ車を置いてカギは元あった場所に戻しておけばいいか?」

鳰『そっスね!いやぁー、夜遅くまでお疲れさまっした!そいじゃ!ウチ依頼人に報告しなきゃなんでまたっス!』

乙哉「はいはーい、んじゃねー」ピッ

神長「……なぁ、寒河江」

春紀「なんだ?」

神長「お前、なんでそんな運転上手いんだ?初めてなんだろ?」

春紀「なんでって、見よう見まねだよ」

神長「………………」

乙哉「やっ!違う違う!香子ちゃんのドライビングテクがあったからじゃない??ね?春紀さん???」

春紀「っあー、そうだな!神長が先に運転してくれなきゃこう上手くは行かなかったな……!?」

神長「………もういい。私、後ろの席で爆弾作ってるから」

春紀「おいやめろ」

乙哉「爆死確定じゃん」


ブロロ………

春紀「適当に停めちゃったけど、別にいいよな?」

乙哉「いいんじゃない?カギはあそこの下に入ってたよ」

春紀「あぁ、わかった」

神長「私、もう運転しない……!」

春紀「機嫌直してくれよ!マジで!」

乙哉「いま何時?」

神長「そーね、大体ねー♪」

春紀「急激に機嫌直り過ぎだろ」

神長「22時12分。どうする?私はお腹が減った」

春紀「あたしも腹減ったぁー……」

乙哉「冬香ちゃん、あたし達のご飯用意してくれてるかな…!?」

神長「もう遅いし」

春紀「いや、きっと待ってるよ。……二人とも、うちに帰ろうぜ」

神長「……!」

乙哉「うん!!」


そうして早送りのような一日が終わった。
まだ神長が家に来て二日目だが、とてもそんな風には思えない。
それについては学校で顔を合わせていた期間がそれなりにあったから、ということにしておこう。

整備工場跡地のような受け渡し場所を離れるとあたし達は家に向かって歩いた。
この二人ととある研究施設で大暴れしたなんて、いまだに実感が湧かない。
飄々としたシリアルキラーと、完璧主義者の爆弾魔。
肩書きを見るだけで胸焼けしそうなくらいに濃いメンツだ。
あたしもあたしで暗殺者だしな。

途中、繁華街に入るとようやくそこでまともに呼吸が出来た気がした。
夜の街はこんなあたし達をすんなりと受け入れてくれたからだ。
やっと、暗殺者でも何でも無いあたし達になれた気がする。
着替えも終わったし、きっとあたしらがあの研究施設にいただなんて誰もが想像出来ないだろう。

「こうやってずっと遊んでられたらいいのにねー」
「遊びじゃないっての」
「全くだ。武智には緊張感というものが足りない」
「えー、ひどーい」

いつものように無駄口を叩きながら歩き続けた。
いつまでもこんな時間が続くわけないって、頭の何処かで感じながら。


・・・

・・・


二日後、あたし達は近所のファミレスにいた。
三人だけの小さな祝勝会だ。
通された席に座り適当に注文を済ませると、武智がタブレットを取り出して
あたし達に見えるように立てかけた。
何が始まるのか、何がしたいのか、視線でそれを訴えかけると、察した武智が口を開いた。

「実はさっき鳰ちゃんから連絡があってさ」
「へぇ。なんて?」
「ニュース見てみろってさー」

武智は言いながらタブレットを何度かタップして映像を出した。
そこに映し出されていたのは、誰もが知ってる製薬会社の倒産のニュースだった。
その扱いがトップニュースであることは、普段こういった番組を観ないあたしにだって一目瞭然だ。
ハッキングされた情報一つがこんな大企業の運命を左右するなんてな。

「…これ、もしかして」
「うん。あたし達がこないだ潜入した研究施設の大元の会社、だね」
「ここだったのか…知らなかった」

しかし、研究施設の破壊についてニュースは一切触れていなかった。
きっと闇に葬られてしまったんだろう。
改めてあたし達はそういう世界の人間なんだ、と思い知らされる。


prrrrrr……

春紀「おっと、悪い。電話だ」

乙哉「犬飼さん?」

春紀「なんでそこで伊介様が出てくるんだよ。知らない番号からだよ」

神長「へぇ?」

春紀「もしもし。あ、はい、寒河江です。え?本当ですか?分かりました、じゃあ2日後の朝10時に伺います」ピッ

神長「?どこかいくのか?」

春紀「バイト先からだ。制服が用意出来たってさ」

乙哉「そうなんだ!良かったね!」

春紀「あぁ。これでやっと普通に生活できる…」

神長「それはどういうことだ?」

乙哉「あたし達とじゃ普通じゃない、みたいな言い方だよねー」

春紀「自覚ないって怖いよな」

乙哉「次に春紀さんの家に来るの誰だろー?」

春紀「退学=あたしの家に居候、みたいな流れホントやめろ」




おわり

というわけで終わり
次の退学者がどこぞのヅカ巨乳だったら続編書く
そんじゃ

6話観たけどクソ笑った
まぁ、続編は気が向いたら

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年05月11日 (日) 12:10:41   ID: cf1crzB_

続編キタ━━━(゚∀゚)━━━━!!!
今回も面白すぎる
ボケとツッコミがいい具合なんだよな~
次回も期待!

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