男「幼なじみはMTR?」(22)

男友「幼なじみはNTRらしいぜ」

男「ん? 幼なじみはMTR?」

男友「ねとる? ねとられ? なんかそんな意味らしい」

男「ねとる……?」

男友「俺もよく意味は分かんねえんだけど、なんかそれがネットの小説とかそんなんで流行ってるんだってさ。頭文字取ってそう呼ぶらしいぜ」

男(あれ……頭文字でねとる? でも男友が言ったのってMTRじゃなかったっけ? ってことは『めとる』の聞き間違えかな? 幼なじみを娶る? あぁ、幼なじみを娶って幸せにする小説が流行ってるってことかな)

男友「ま、お前には最愛の幼ちゃんがいるわけだし、幼なじみ関連の話は知っといた方がいいと思ってさ」

男「うん、ありがとう男友!」



男「MTRかぁ。幼を娶って幸せにする……」

男「恥ずかしいけど、幼に伝えておこうかな。大人になったら幼を娶って幸せにするって!」

男「幼ー」

幼「あ、男ー。どうしたの?」

男「突然こんなこと言ったら驚くかもしれないけど、僕、MTRって最高だと思ってるんだ! ……その、将来的にはそうなりたいって思ってるから……!」

幼「……へ?」

幼(今NTRって言ったよね? どういうこと? 寝取られたいってことなの……?)

男「その……急だし、驚くのも無理ないかもしれないけど、この気持ちはずっと変わらないって約束するから……!」

幼「え? え? 何? 私、寝取られればいいのかな?」

男「う、うん! でもまだ早いと思うから、未来の話になるけど……」

幼「ふぇ? えっと、その……」

男「と、とにかくそういうことだから!」

幼「え、あ、男っ! ……行っちゃった」

幼「まさか男に寝取られの趣味があったなんて……、ずっと一緒にいたのに知らなかったよぉ……」

幼友「やっほー、幼! ってあれ? どうしたのよ、そんな暗い顔して」

幼「幼友……。私、どうやったら寝取られるかな?」

幼友「はぁ!?」

幼友「ふむ。そんなことがあったのね」

幼「うん……それで、どうすれば寝取られると思う?」

幼友「どうしてそこでそうなるのよ! 寝取られたいわけ!?」

幼「嫌だけど……でも、私が寝取られたら男が喜んでくれると思うから……」

幼友「幼はちょっと純粋過ぎるわね。そんなことだといつか詐欺に遭うわよ?」

幼「そ、そんな、大丈夫だよ!」

幼友「そうは見えない、というか今現在クズ男に絶賛騙され中だったわね。ちょっと男シメてくるわ」

幼「へ? 幼友ちゃん、待って! ……って行っちゃった」

幼「うーん、寝取られかぁ」

幼「将来的にはって言ってたけど、練習しておいた方がいいのかなぁ……」

イケメン「あれ? 幼さん?」

幼「あ、イケメン君……」

イケメン「暗い顔してるけど、どうかしたの?」

幼「これも男のためだよね……あの、私を寝取ってくれませんか?」


幼友「ごるあああああああああああああ!! 男おおおおおおおおおお!!」

男「わっ! な、何っ!?」

幼友「てめええ! 寝取られたいとか何ほざいてやがるこのクズ男が!」

男「ちょ! 幼友さん!? 胸倉掴まないで!」

幼友「あぁん!? さっき幼に言ったこと、忘れたとは言わせないわよコラ!」

男「ほ、ホントに何? さっきのってその……プ、プロポーズ染みた言葉のこと?」

幼友「そうよ! てめえ寝取られてほしいとかほざきやがって……って、ん? プロポーズ?」

男「そ、そうだけど」

幼友「寝取られ大好きだから寝取られろとか言ったんじゃないの?」

男「ねとられって何? 『ね』じゃなくて『め』だよ? 娶りの話」

幼友「……あれ? 娶り?」

男「そうだよ? その、将来娶って幸せにするって言ったんだ……」

幼友「でもNTRが最高だって言ってたって……」

男「NTR? MTRじゃなくて?」

幼友「違うわよ! どこで聞いたのよそんな言葉!」

男「友達に教えてもらったんだけど……。娶って幸せにするって意味じゃないの?」

幼友「そんな意味じゃ無いわ! NTRで寝取られ。幼が誰かに取られちゃうってことよ!」

男「え!? じゃあさっき僕が言ったのって……」

幼友「そうよ! 幼はそう解釈したのよ。だから幼、寝取られようとしてるかもしれない……!」

男「そ、そんな……」

幼友「早く幼のところに行って誤解解いてきなさい!」

男「う、うん!」

幼「って言うことがあって……」

イケメン「そっか、それで――」

男「幼ー!」

幼「男っ!? そんなに急いでどうしたの!?」

男「はぁ、はぁ。幼、実は――」

イケメン「ちょっと待ってくれないか?」


男「イケメン君?」

イケメン「他人の恋愛事情に口を出すのは野暮だってのは分かってる」

イケメン「それでも言わせてほしい。男君、君に幼さんと付き合う資格はない!」

男「え? あの?」

イケメン「寝取られたいって言ったそうだね。最低だよ、君は」

男「あの、それは――」

イケメン「黙れ! 僕は人が不幸になるのが一番嫌いなんだ! 君は幼さんを私利私欲のために傷つけたんだぞ! そんな君に幼さんは任せられない!」

男「ッ…………」



イケメン「少し頭を冷やすんだな。行こう、幼さん」

幼「で、でも!」

イケメン「いいから!」

幼(……あ、そっか。これって寝取られなんだ。ということは男のあれは演技で、ホントは喜んでるってことね)

幼「ごめん、男。イケメン君と行くから……」

男「ッ!」

イケメン「………………!」

イケメン(しまったああああ! 男君は寝とられが趣味。ってことは、これじゃ男君が喜ぶだけじゃないか!)

イケメン(ど、どうしよう……)

男「い、嫌だ!」

イケメン&幼「!」

男「……僕は幼が好きなんだ!」

男「確かにNTRをMTRって間違えて幼を傷つけたかもしれない!」

イケメン&幼(ん? MTR?)

男「だって幼なじみはNTRなんて、そんな不幸な言葉あるはずないって思ってたから……!」

男「だから、MTRって……幼を娶るって意味だと思ったんだ!」

イケメン&幼(娶るって……そ、そういうことだったんだ……!)

男「こんな間違いしないようにちゃんと知識もつけて、幼に相応しい男になるから!」

男「だから幼! いかないで! 僕と一緒にいてください!」

イケメン(……どうしよう。勘違いして男君にきついこと言っちゃったし、なんとか誤魔化す方法は――)

イケメン「ふっ、その言葉を待っていたんだよ、男君」

男「イケメン君……?」

イケメン「幼さん、男君のところに戻りな。きっと今の二人なら幸せになれるさ」

男&幼(もしかしてイケメン君……全部わかっててこんなことを……!)

幼「イケメン君! ありがとうございました!」

イケメン「いいってことよ、早く男のもとへ行ってやりな」

幼「は、はいっ! 男っ!」

男「幼っ!」ダキッ

幼「勘違いしてごめんね」

男「こっちこそ勘違いするようなこと言ってごめん」

幼「男、幸せにしてください!」

男「うん! いつか娶って絶対幸せにするから!」



イケメン「……幸せになれよ、二人とも」

幼友「ったく、友達に聞いたって言ってたけど、どこのバカよ! 男にNTRなんて教えたのは!」

幼友「あの二人の関係を壊そうとするなんて――私の親友を不幸に陥れようとするなんて、絶対に許さないんだから! 見つけ出してトラウマ植え付けるまでめちゃくちゃに――」

男友「あ、幼友ー! 知ってるか? さっき男にも教えたんだけどさ、幼なじみはNTRらしいぜ」

終わりです

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