阿笠「できたぞ新一、光彦君を1mm間隔でスライスする装置じゃ!」(47)

コナン「そうくると思って既に光彦は捕まえておいたぜ!」

光彦「んーっ!んーっ!!」ジタバタ

灰原「それじゃ装置に拘束するわよ」

阿笠「よく観察できるように邪魔な衣類は全て剥ぎとってしまおう」

歩美「それじゃ縛り付ける前に裸に剥いておけばよかったね」

元太「大丈夫だぜ、ハサミで全部切り取ればいいんだからよ」

コナン「今日はあくまで光彦のスライスが目的だから、ハサミで傷つけたりするなよ?」

元太「わかってるって」チョキチョキ

光彦「んんっーー!!」

阿笠「もういいじゃろう、そろそろ光彦君の猿轡を外してやりなさい」

コナン「ほらよ光彦」

光彦「ぼ、ぼくをどうする気なんですか!?」

コナン「足から順番に1mm間隔でスライスするんだよ」

光彦「なんですって!!」

光彦「どうしてそんなことするんですか!!」

光彦「こんなの絶対におかしいですよ!!」

阿笠「しかしのう、せっかく作った装置を無駄にしてしまうのもの……」

灰原「エコじゃないわね」

元太「そうだよな、もったいないよな!」

歩美「だから光彦くん、がんばってね」

光彦「いやあああああああああああああああああああああああっ!!!」

コナン「それじゃスイッチオンッ!」ポチッ

ウイーーーン

ビーーー

光彦「ひいっ……!!」

ジュッ

光彦「ぎゃあああああああああああああああああああああ!!!」

阿笠「安心するのじゃ光彦君、まだ足の裏の皮を一枚剥いただけじゃ」

灰原「もちろん、これからどんどん削れていくけどね」

ザクッザクッザクッ

光彦「ひぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!!」

阿笠「レーザーで止血しながら切断しておるのでな、失血死の心配はないぞい」

元太「スゲーな博士!!」

阿笠「ほっほっほ、足元から脳天まで1mm間隔でスライスを終えるまで殺させはせんよ」

阿笠「さて、スライスしたから分かり易いじゃろうが」

阿笠「足の裏は平坦ではないのじゃ」

阿笠「踵と親指の付け根、そして小指の付け根を繋ぐ上向きの弓なりのアーチを作っておるのじゃ」

灰原「土踏まずの部分を見れば分かり易いわね」

阿笠「この構造が体重を上手く分散し、足への負担を減らしているのじゃよ」

阿笠「そのアーチが崩れてしまった状態が、いわゆる外反母趾じゃな」

コナン「足は人体で一番負担がかかる部分だからな」

歩美「歩美聞いたことある!足の骨だけで体全体の骨の4分の1を占めてるんだって!」

阿笠「その通りじゃ、さらにその骨が靭帯でしっかりと接合されておるのじゃよ」

元太「人間は他の動物と違って二本足だもんな」

コナン「だから他の動物よりしっかりした足の構造が必要ってわけだ」

光彦「ひあっ……いぎっ……」

コナン「お、そういってる内にふくらはぎまでスライスできたみたいだぜ」

元太「おい光彦、声にさっきまでの元気がねーぞ!」

歩美「叫び疲れちゃったのかな?」

阿笠「太い血管が止血し切れずに血を噴いておるの」

灰原「失血死しないように輸血しておくわね」プスッ

光彦「ひぐっ……ボクの足がぁ……」

コナン「足は第二の心臓って呼ばれてるぐらいだからな、血が噴き出るのも仕方ないさ」

元太「どういうことだコナン?」

コナン「人間は心臓から血液を送り出してるけど、足に向かった血液は重力で下に引っ張られるだろ?」

コナン「それで足に溜まった血液を送り返す為に、足の筋肉を動かす必要があるんだ」

コナン「足の静脈には数センチおきに逆止弁がついてて、筋肉で血管が押されると上に血液が流れるのさ」

コナン「だから運動不足で足の筋肉が衰えると、むくみをはじめとする様々な体調不良の原因になるんだよ」

歩美「だってさ、元太くん」

元太「お、俺だってちゃんと運動はしてるぞ!」

灰原「そうよ、この中で一番運動が必要なのは……」チラッ

阿笠「いやはや、哀君の視線が痛いのお」

光彦「ううう……」

歩美「もう太腿もなくなっちゃったねー」

元太「足が無くなったら次は……」

光彦「ぎあああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」

灰原「ペニスの切断が始まったわね」

コナン「ここで一端ストップするぜ博士」ポチッ

元太「なんでだコナン?」

コナン「鼠蹊部から股間にかけては生殖器や肛門があるからな」

コナン「一気にスライスせずに解説聞きながらゆっくり観察しようぜ」

阿笠「それならコマ送りモードがあるぞい」

阿笠「ボタンを押す度に1mmずつ削って行くモードじゃ」

阿笠「今の断面の観察を終えたら、次に観察する断面まで切断を続ければいいぞい」

コナン「サンキュ博士!」

灰原「今の円谷君のペニスは、亀頭部が切断されて尿道と海綿体が露わになった状態よ」

歩美「ここがおしっこをする穴なんだね!」

灰原「それだけじゃないわ、精巣で作られた精子を体外へ放出する経路でもあるのよ」

元太「精巣って要するに金玉のことだろ?」

灰原「ええ、そうよ」

灰原「この白い海綿体が充血することで勃起し、勃起したペニスが刺激されることで」

灰原「精嚢に貯留された精子が前立腺の分泌液と混合されて射精管へと流れていくわ」

灰原「このとき射精管閉鎖筋が収斂、射精管の蠕動運動で内部の圧力が高くなり」

灰原「閉鎖筋が緩むことで一気に圧力が解放されて射精するの」

歩美「勃起って?」

元太「チンコが硬くなることだよ」

歩美「え、おちんちんって硬くなるの!?」

コナン「光彦、折角だから歩美ちゃんに見せてやれよ」

光彦「バカ言わないで下さいよ!!」

光彦「チンコの先っぽを切断されてどうして勃つっていうんですか!!」

灰原「仕方ないわね」プスッ

光彦「あ……ああっ……っ!?」

コナン「灰原、なんだそれは?」

灰原「勃起させる薬よ」

灰原「痛みに対しても鈍化するからあまり使いたくはないのだけれど……」

阿笠「うむ、ショック死を避けるためにも仕方あるまい」

灰原「吉田さん、ほら見てみて」

歩美「ホントだ、光彦くんのおちんちんが大きくなったよ!」

コナン「あちゃー、切断面から血が噴き出してるな」

阿笠「海綿体は毛細血管の塊じゃからな、仕方あるまい」

歩美「でもなんで硬くなるの?」

歩美「骨でも入ってるの?」

元太「チンコには骨なんてねえよ」

阿笠「実は陰茎に骨がないのは人間の特徴なのじゃがな」

元太「マジかよ博士!?」

阿笠「イヌやネコを始め、人間以外の霊長類にも陰茎骨と呼ばれる雄性生殖器を支える骨格があるのじゃ」

阿笠「まあ、高等霊長類では1cm程度と、ほとんど無意味なほど小さく退化しておるがの」

歩美「それで何でおちんちんって硬くなるの?」

阿笠「さっき哀君が説明してくれたが、基本的には海綿体に血液が流入するからじゃ」

阿笠「海綿体の周囲には白膜と呼ばれる丈夫な膜があっての」

阿笠「それに制限される形で流入した血液によって血管がそれ以上膨張できず、内部圧力が高まるのじゃ」

阿笠「さらにその圧力によって陰茎背静脈と呼ばれる静脈が圧迫され、出てゆく血液の量も制限される」

阿笠「その結果、血液の圧力だけで挿入可能な硬さを得ることが可能なのじゃよ」

阿笠「ちなみに陰茎の細胞組織のコラーゲン繊維の配列は特殊で、それも硬度の維持に一役かっておるそうじゃ」

歩美「?」

コナン「風船に空気入れると膨らむし、硬くなるだろ?」

歩美「あっ、そういうことかー」

灰原「まったく、博士は説明が下手ね」

コナン「お前が言うなよ」

元太「コナン、そろそろ続きいこうぜ!」

コナン「そうだな、それじゃスライスを再開するぞ」ポチポチポチ

光彦「ひぎいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」

コナン「よし、こんなところか」

コナン「いい感じに金玉の断面が見えてるな」

光彦「あは、あはははははっ!!」

元太「おい、こいつ笑ってやがるぞ」

阿笠「思ったより狂うのが早いのお」

灰原「まあいいわ、解説をつづけましょ」

灰原「精巣は精細管と呼ばれる管がびっしとり中に詰まっていて」

灰原「その中で精祖細胞が減数分裂を経て精子となるのよ」

灰原「でき上がった精子は精巣上体に送られる、ヒトでは最大10億程度が貯蔵可能らしいわね」

灰原「この精子はまだ未熟で、精巣上体から輸精管への経路の中で活性化し」

灰原「運動性を得たり受精可能となったりするのよ」

歩美「?」

灰原「ようするに赤ちゃんのもとを作っているのよ」

歩美「へえー」

歩美「じゃあどうしてそんな大事な部分が体の外に出てるの?」

灰原「精子を作るのに、人間の体温では高すぎるからよ」

灰原「体温より若干低い温度の方が精子の製造には向いているとされるの」

灰原「だから危険を冒してまで、体外にぶら下げる必要があるのね」

歩美「すごーい!哀ちゃん物知り!!」

博士「……ワシの説明ではそんな顔してくれんかったのに」

コナン「博士、こういうのは諦めが肝心だぜ」

コナン「お次は肛門だな」ポチポチポチ

歩美「おちんちんもタマタマも無くなっちゃったね」

灰原「スッキリして見やすくなっていいんじゃない?」

阿笠「まず最初の入り口の部分……まあ肛門じゃから最後の出口の部分と言った方がいいかも知れんが」

阿笠「そこにあるのが静脈叢と呼ばれる静脈が集まった部分じゃ」

阿笠「この結合組織によって肛門がキッチリ蓋をされておるのじゃが……」

阿笠「椅子に座りつづけるなどするとこの部分に負荷がかかり、静脈瘤ができてしまいポッコリ腫れるのじゃ」

灰原「要するに痔ね」

阿笠「その中でもいぼ痔じゃな」

阿笠「ちなみにこの静脈叢は肛門のさらに内側の部分にももう一つあって」

阿笠「そちらが腫れれば内痔核、外側の方が腫れれば外痔核と区別されとるぞ」

阿笠「痛みを感じる知覚神経は外側の方にしかないから、内痔核は出血だけで痛みを伴わない場合が多いぞい」

コナン「博士……ちょっと詳しすぎねえか」

灰原「まさかっ……!!」

阿笠「」

阿笠「ま、まあそれは置いておいて」

歩美「博士、どうして外側の痔だけ痛いの?」

灰原「だから内側には神経が通ってないからよ」

歩美「なんで?」

灰原「え?」

阿笠「ほほっ、歩美ちゃんは良いところに気が付いたの」

阿笠「肛門は口の方、内側から下りてきた消化管と、お尻側から窪んだ皮膚が繋がって穴が開いたものなのじゃよ」

阿笠「この結合部分を歯状線というのじゃが……」

阿笠「その歯状線より下は皮膚の肛門上皮、上の部分は直腸の腸粘膜なのじゃ」

阿笠「皮膚は痛みを感じられるが、内臓そのものには痛覚は無いのでな、それで肛門の出口付近に出来た痔核だけが痛くなるのじゃよ」

歩美「へえ、人間のからだって面白いね!」

阿笠「ちなみにこの肛門上皮の裂傷が切れ痔で、歯状線の分泌腺が化膿してできたものが痔瘻じゃ」

コナン「この痔に関する知識量はやっぱり……」

灰原「江戸川君、ヒトにはそっとしておいた方がいい部分もあるのよ」

阿笠「」

コナン「さて、こうやって肛門のスライスを続けると」ポチポチポチ

灰原「見えてきたわね、前立腺よ」

歩美「前立腺って?」

元太「前立腺がんとかよく聞くけどよ、結局これってなんなんだよ?」

灰原「精液の15~25%を占める前立腺液を分泌すること以外、よく分かっていないのよ」

灰原「射精時に収縮を繰り返して精液を送る役目もあるみたいだけど……」

灰原「よく聞く前立腺の手術は、更年期でこの前立腺が肥大化することで尿道を圧迫、排尿障害を引き起こすことに対する施術なのよ」

光彦「ひひひっ……」ジョロロロロロ

コナン「うわっ、こいつ漏らしやがったぞ!!」

灰原「違うわよ江戸川君、膀胱頸部筋が切断されて排尿を制御できなくなったのよ」

灰原「ちょうど精嚢も見えてきたわね」

歩美「精嚢って?」

灰原「よく精子の貯蔵庫と勘違いされるけど、それはさっき言った精巣上体の方」

灰原「こっちは精液の70%を占める精嚢液を分泌する器官よ」

灰原「基本的に精子がこの中に入ることは無いわ」

コナン「膀胱の中が見えてきたな」

灰原「この管が尿管で、尿をつくる臓器である腎臓に繋がっているのよ」

元太「ここにおしっこが詰まってたのかよ、ばっちいな」

歩美「みんなの前でおしっこ漏らすなんて、歩美信じられない!」

コナン「まあ光彦だしな、仕方ねえよ」

光彦「くふ、くふふふふ……」

コナン「そういえば豚の膀胱が再生医療に使えるっていう話があったな」

灰原「細胞外マトリクスの抽出物でしたっけ?」

コナン「あれって続報もないけどどうなったんだろうな」

灰原「日本でもコラーゲンを足場にして周囲の細胞の成長を促す再生医療は認められているわ」

灰原「しかしそれは医療グレードの高度に精製されたコラーゲンを使用した場合」

灰原「アレは由来も不確かな上に、ブタの遺伝子には人間に感染するレトロウイルスが含まれている可能性も……」

コナン「まあ、そんな素晴らしい物があるならもっと広く知れ渡っているよな」

歩美「ねえコナンくん、そろそろ次にいこうよ」

コナン「すまねえ歩美、それじゃそろそろ自動スライスに戻しとくか」ポチッポチッ

コナン「気づけば次の内臓より先に指先が切断され始めてるな」

元太「でもよお、人間の手ってすげえよな!」

歩美「やっぱり人間の手って一番進化してるところなんじゃないかな?」

灰原「いえ、実は人間の手の構造はチンパンジーより原始的と言われているわ」

歩美「え?」

灰原「あのチンパンジーの長い指はブラキエーションと呼ばれる樹上移動に特化したものよ」

元太「そのブラキなんとかって何のことだよ」

灰原「雲梯を思い出せばいいわ、ぶら下がりながら交互に腕を前に出して進む移動方式のことよ」

灰原「この移動に特化する為にチンパンジーの指は長く進化したと言われているわ」

コナン「でもよ灰原、人間の手と類人猿の手には決定的な違いがあるだろ?」

灰原「それは拇指対向性のことかしら?」

歩美「ぼしたいこう……?」

コナン「歩美、『オッケー』のハンドサインしてみろ」

歩美「こう?」

コナン「そう、それだ」

コナン「親指と人差し指を綺麗にくっ付けることができるだろう?」

コナン「これが『拇指対向性』だ」

灰原「実はチンパンジーなどの類人猿では、このような親指の動かし方は難しいの」

灰原「つまむ力……いわゆるピンチ力はとても低いわ」

元太「でもよお灰原、チンパンジーの握力って200kgあるんだろ?」

灰原「握力にも、通常の握力測定で使用される握力計で測定できるクラッシュ力の他に」

灰原「さっき言ったピンチ力、握った物を保持するホールド力と種類があってね……」

コナン「ま、親指でつまむ力が無くても、手の平全体で握りしめるような圧力が強いってことさ」

灰原「この親指の動かし方は人間の生活の中でも特に重要よ?」

灰原「小銭を財布から拾い出したり、ペットボトルのキャップを開けたり……」

灰原「意識して親指を使わずに生活しようとしてみればそのありがたさが分かると思うわよ」

コナン「手指の欠損機能障害の後遺症等級でも親指は特別視されるからな」

阿笠「ちょうど親指の根元が切断されとるから見てみるとよいぞ」

阿笠「ここが手根中手関節、親指の可動性はここに起因するものじゃ」

阿笠「このような構造は鞍関節と呼ばれておってな、関節の接触面は乗馬用の鞍が噛みあったようになっておる」

阿笠「他の指はこの鞍関節の構造が不完全でな、親指だけが大きく円を描くように可動させることが可能なのじゃ」

灰原「こうやって指を動かすことで脳が刺激され、それが人間の知能の進化に一役買っているとも言われているわ」

灰原「指は人間にとってとても重要な器官なのよ」

歩美「でもいつの間にか光彦くんの指、全部スライスされちゃったね」

灰原「まあそれが目的だからね」

コナン「おっと、そろそろ他の内臓が切断されるころだ」

コナン「みんな胴体の方に視線を戻そうぜ」

コナン「次は大腸と小腸か」

歩美「うわっ、臭ーい」

コナン「そりゃウンコ作ってるところが輪切りにされてるんだからな、臭っても仕方ねえよ」

元太「そういえばよお、なんで腸って2種類に分かれてるんだ?」

元太「ひとつながりの管なんだろ?」

灰原「小嶋君にしてはいい質問ね」

元太「あれ、俺バカにされてねえか?」

灰原「気のせいよ、話を戻すけど大腸と小腸では実は機能が全く違うの」

灰原「食物は小腸、大腸の順で通過していくんだけど、小腸は消化と栄養の吸収、大腸は水分の吸収を主に行うのよ」

歩美「へえ、名前を変える意味ってちゃんとあるんだね」

歩美「でも見た目でどこまでが小腸でどこからが大腸かは見分けられるの?」

灰原「大腸の大部分は、外見上数cm置きに紐で結束したように見えるため、結腸の名で呼ばれているわ」

灰原「その結腸には外縦走筋が外側に膨らで発達した結腸ヒモと呼ばれる3本の筋が観察できるわね」

灰原「また結腸には漿膜下組織の脂肪が垂れ下がった腹膜垂と呼ばれる組織がぶら下がっているの」

灰原「以上の3点の特徴で小腸と大腸を区別することが可能よ」

灰原「一方、小腸の方は腸管の内側の構造が大腸と大きく異なるわ」

灰原「大腸の腸粘膜のヒダは不規則なのだけれど、小腸粘膜は輪状ヒダといって、内腔に飛び出した粘膜構造を見せるの」

灰原「これは小腸の内壁の表面積を出来る限り増やして、栄養吸収の効率を上げるための構造と言われているわ」

灰原「この表面積を増やす工夫は更に続いていて、輪状ヒダには絨毛と呼ばれる構造がびっしりと並んでいるの」

灰原「更にその絨毛の表面は約6000個の栄養吸収細胞で覆われており、その表面にはさらに細かい微絨毛が生えているの」

灰原「小腸の吸収面積は、絨毛と微絨毛の存在により、普通の管の状態より600倍にも拡大されていると言われているわ」

元太「なんだかよく分からなくなってきたぞ……」

コナン「簡単に考えればいいんだよ」

コナン「内側がつるつるの状態で600m必要なところが、凸凹にすることでたった1mですむってことだよ」

元太「なんだよそれ、スゲーじゃん!!」

阿笠「小腸を拡大していくと、次々と毛が密集して生えたような構造が続いていくのじゃ」

阿笠「こういう構造を自己相似図形、フラクタルと呼ぶんじゃぞ」

コナン「シェルピンスキーのギャスケットとか、メンガーのスポンジとかで有名なアレか?」

阿笠「そう、それじゃ」

阿笠「小腸の他にも血管や肺や神経の枝分かれなどもフラクタルになっておるぞ」

歩美「さっきの話で小腸については分かったけど、他はどんな利点があるの?」

阿笠「肺の場合はガス交換の効率を上げるために肺胞の数を増やす必要があるからの」

阿笠「フラクタル構造によって気管に繋がった微細な構造を多く内包することが可能になるのじゃ」

阿笠「血管についても、多くの細胞に酸素や栄養を行きわたらせるためにフラクタル構造は好都合じゃ」

灰原「生物発生の視点から言えば、肉体を作り上げる時に必要な情報を節約できるというのもあるわね」

元太「どういうことだよ灰原?」

灰原「例えば『ここから何cm進むと枝分かれしてその先に……』と一つ一つの細胞を指定しては莫大な情報量になるわ」

灰原「そこで一定のルールで同じ構造を繰り返させることで作れるフラクタル構造を利用するのよ」

灰原「起点とルールさえあれば、あとは好都合な構造が勝手に作られていくのだからこれほど楽なものは無いわよ」

灰原「遺伝子に含まれるタンパク質の配列情報だって有限なんだから、節約できるところでは節約するべきでしょ?」

元太「難しすぎてよくわかんねえや……」

灰原「この辺り、実際にプログラムでフラクタル図形を描写させてやったりすれば理解が早いのだけどね」

阿笠「まあ、生物が長い時間をかけて獲得した知恵の一つといったところかの」

コナン「さてと、更に進んで……今度は腎臓か」

コナン「腎臓は大雑把に言えば小便を作ってる臓器だ」

歩美「えー、やだ汚ーい!」

元太「大丈夫かよコナン、また光彦のおしっこが吹き出したりしねえのか?」

灰原「それはさっき膀胱でやったでしょう」

灰原「確かに、腎臓自体が150g程度しかないのに対して、毎分1L以上の血液が流入し、1日当たり200Lもの原尿が作られているわ」

灰原「でもその99%は再吸収されて、最終的に1日の排尿量は1.5~1.8L程度になるのよ」

灰原「今スライスされてる腎臓から尿が吹き出すことなんて考えなくても大丈夫よ」

元太「200Lってすげえな、どこにそんな水分があるんだよ」

灰原「だから再吸収されてるんだって」

灰原「なんども再吸収されてその度に残った老廃物が濃縮されてゆくのよ」

灰原「ここで言う老廃物にも色々あるけど、窒素の最終代謝物である尿素の排泄が主ね」

阿笠「人間を始め哺乳類、両生類、軟骨魚類の場合だと窒素の排出は尿素の形で行うが」

阿笠「硬骨魚類ではアンモニア、爬虫類と鳥類では尿酸の形で排出されるのじゃよ」

阿笠「サメやエイの肉がアンモニア臭いと言われるのはこのためじゃ」

阿笠「また尿酸は水に不溶性の白色結晶での、鳥の糞の白い部分はこの尿酸なのじゃ」

阿笠「総排泄口から一緒に出てきとるが、アレはウンコではなくおしっこだということじゃよ」

阿笠「ちなみにこの尿酸は、人間でもプリン体の代謝によって生産されたり、細胞の破壊で流出したりしておってな」

阿笠「これが尿路系に沈着すれば尿路結石に、関節液で結晶化すれば痛風の原因になるのじゃ」

灰原「尿路結石に痛風……」

コナン「そうだよな、その歳になると怖いもんな」

阿笠「痔の話をしたときもそうじゃが、君たちはワシをどうしたいのかね?」

灰原「博士、なにか勘違いしているようね」

コナン「老人の被害妄想ほど痛々しいもんはねえよな」

阿笠「ぐぬぬ」

歩美「大丈夫だよ博士、歩美たちは博士が病気になっても気にしないよ?」

元太「そうだぞ博士、その体じゃそろそろガタがきても仕方ねえよ」

阿笠「君たちも……フォローするのか追い打ちをかけるのかハッキリしてくれんかのお」

コナン「いけね、博士を弄ってる間に進んでら」

コナン「えーっと、一気に色々出てきたな……」

灰原「胃、膵臓、胆嚢、脾臓、肝臓ね」

灰原「この辺り、働きも密接に関わってるからまとめて説明した方が好都合よ」

コナン「あれ、脾臓って違うくね?」

灰原「まあついでだし、それに東洋医学における五臓六腑の『脾』は消化器官に含まれるし……」

コナン「アレって膵臓と機能がごっちゃになってたって話じゃなかったっけ?」

灰原「そういうことらしいけれど、一緒に断面に出てきたんだから説明しておいてもいいじゃない」

コナン「わ、悪い灰原……そう怒るなって」

灰原「別に私は怒ってないわよ、ねえ吉田さん?」

歩美「ひっ!」

灰原「……ねえ?」

歩美「……う、うん!哀ちゃんは怒ってなんていないよ!!」

灰原「ほらね?」

コナン(灰原……必死だな)

灰原「そういうワケで先に脾臓について話しておくわ」

灰原「脾臓は血液関係の機能を持つ臓器よ、造血、古くなった血球の破壊、血液の貯留、免疫機能など……」

灰原「でもそのどれもが循環器系の一部で機能の代替が行われるため、手術などで全摘してしまっても大丈夫なのよ」

灰原「実際に膵臓ガンなどで膵臓の尾部を摘出する際は、栄養動脈である脾動脈が失われるためいっしょに摘出することもあるの」

灰原「脾臓が摘出された人は肺炎球菌やインフルエンザなどに感染すると重症化しやすいらしいから、必要な臓器ではあるのだけれどね」

阿笠「ちなみに急激な運動によって脾臓に貯留された血液が一斉に体内に送り出されて一時的な虚血に陥ることがある」

阿笠「この時激しく脾臓が収縮するのじゃが、これが運動不足の人が感じる脇腹の痛みの正体じゃと言われておるぞ」

灰原「やっぱり普段からの運動は重要よね」チラッ

阿笠「今日のワシの扱いは一体何なのじゃろうか……」

コナン「気にすんな博士、いつもの通りだぜ」

元太「そうだぜ博士、だいたいこんな感じじゃねえかよ」

歩美「うん、こんな扱いこそ博士には相応しいと歩美も思うよ」

阿笠「」

灰原「さて、消化器系がまとまっているけど、胃から話を始めましょうか」

灰原「胃の機能は食物の貯留、胃酸による殺菌とpH調整、消化酵素ペプシンによるタンパク質の加水分解が主ね」

元太「そういえばよ灰原、牛って本当に胃が4つあるのか?」

灰原「実はあれ、第4胃……ホルモンで言うギアラだけが本当の意味での胃で、他は食道が変化したものなの」

元太「マジかよ灰原!?」

灰原「牛の第1胃から第3胃までは前胃と呼ばれていて、消化液の分泌などは行わないわ」

灰原「その代わりに共生細菌によって食物繊維を分解発酵させて、それで生じた栄養素を吸収しているの」

灰原「この分解発酵を促進する為に胃から固形分を口に戻し、咀嚼による繊維質の破砕と唾液との混合を行うのが反芻よ」

灰原「植物そのものの栄養素では無く、共生細菌から生じた栄養素を吸収しているのだから」

灰原「草食動物ではなく微生物食動物と呼ぶべきではなんて言われたりもしているそうね」

元太「へえ……灰原、よくそんなこと知ってるな」

灰原「人間の消化器とは関係ない話だから、そろそろ本筋に戻るわよ」

灰原「胃で胃酸と混合され、タンパク質を分解された食物が次に通るのが十二指腸よ」

灰原「ここで胆嚢から送られた胆汁と、膵臓から分泌された膵液を混合するのよ」

灰原「ちなみに膵液は膵臓から分泌されるけど、胆汁は肝臓から分泌されるの」

灰原「胆嚢は胆汁を貯留・濃縮するためだけの臓器で、胆汁を分泌しているワケでは無いので注意が必要ね」

阿笠「胆嚢と言えば『熊の胆』じゃな」

阿笠「熊の胆嚢が漢方薬として使われておるのは有名な話で、四字熟語の臥薪嘗胆の『胆』はこの熊の胆のことじゃ」

阿笠「越王勾践の軍が破られた折、再起のため苦い胆を嘗めることで屈辱を忘れず富国強兵に励んだというエピソードじゃな」

阿笠「それぐらい古来から熊の胆嚢は利用され、重宝されてきたということじゃ」

阿笠「その需要は現在でも変わらず、胆汁の採取のために中国や韓国では熊農場が経営されておるほどじゃぞ」

歩美「熊農場って、日本の北海道や奥飛騨にもあるアレのこと?」

コナン「バーロー、ありゃ『クマ牧場』だ、動物園の一種に過ぎねえよ」

コナン「熊農場っていうのは熊を完全に家畜として扱ってるから別物だよ、クマ牧場じゃ熊由来の生産品なんて出荷しねえしな」

灰原「ちょっと二人とも、関係ない脇道に逸れ過ぎよ」

阿笠「スマンのう哀君、そう怒らないでくれんか」

コナン「そうだよ灰原、機嫌直せって」

灰原「……胆汁の機能としては、胃酸によって強酸性となった食物の中和、脂肪分解酵素リパーゼを作用しやすくするための脂肪の乳化」

灰原「膵液に含まれるその他消化酵素の活性化、そしてヘモグロビン代謝物の排泄よ、消化酵素そのものは胆汁自体には含まれていないわ」

灰原「この中でも特にヘモグロビン代謝物について詳しく話しておくわね」

灰原「古くなったり損傷を受け寿命を迎えた赤血球は、脾臓中のマクロファージによって取り除かれるわ」

灰原「このとき赤血球の中のヘモグロビン……血液の赤色の元となるタンパク質は分解され、黄色いピリルビンまで還元されるの」

灰原「ピリルビンは肝臓に運ばれ胆汁の成分として分泌、十二指腸へと放出される」

灰原「その後小腸で腸内細菌によって黄色いウロビリノーゲンと呼ばれる物質に変化し再吸収、尿と共に排出されるわ」

灰原「小腸で吸収されなかった分は大腸で更に茶色のステルコビリンへと変化し、大便と共に排出されるの」

灰原「これらが尿の黄色、大便の茶色の元となる色素となっているのよ」

灰原「またこれらの排泄機能が十全に働かないとビルビリンが体内で濃縮され高ビリルビン血症を引き起こすわ」

灰原「この高ビリルビン血症が慢性化し組織に黄色い色素が定着してしまった状態が『黄疸』よ」

元太「灰原が言ってること、今までで一番意味分かんなかったぜ……」

コナン「要するにウンコが茶色いのもおしっこが黄色いのも胆汁が原因なんだよ」

コナン「で、その色の元が上手く排泄できないときにおこる症状が黄疸ってことだよ」

元太「うへえ、あんなに難しい言葉ならべて、灰原はウンコやおしっこについて語ってたのかよ」

灰原「仕方ないでしょう、今は消化器について話しているんだから」

灰原「その最終生産物である排泄物に話題が及ぶことも仕方が無いことよ」

灰原「ついでに膵液についても説明しておきましょう」

灰原「膵液は胆汁と違って消化酵素そのものを多く含んだ消化液の一種よ」

灰原「炭水化物分解酵素であるアミラーゼ、脂肪分解酵素であるリパーゼ、タンパク質分解酵素であるトリプシン」

灰原「そして核酸分解酵素であるヌクレアーゼなどを含んでいるわ」

灰原「これらの消化酵素は十二指腸に分泌されてから初めて活性を持つような仕組みになっているわ」

灰原「でないと膵液を分泌している膵臓自体が、タンパク質分解酵素によって分解されダメージを受けてしまうものね」

灰原「ちなみに、何らかの原因で膵臓内でタンパク質分解酵素が活性化すると自家消化による急性膵炎になってしまうの」

灰原「膵臓の体積の90%以上はさっき説明したような消化酵素を分泌する外分泌部が占めているのだけれど」

灰原「残りはランゲルハンス島と呼ばれる内分泌部、つまりホルモンを分泌する機能を持っているわ」

灰原「血糖値を上昇させるグルカゴン、逆に血糖値を下げるインスリン、その他ソマトスタチンやグレリンなどを分泌するの」

灰原「膵臓は内分泌腺と外分泌腺の両方の機能を備える臓器なのよ」

コナン「膵臓はあまり名前を憶えて貰えないマイナーな臓器だけど、その働きはかなり重要なんだな」

灰原「そうよ、膵臓癌で膵臓を摘出してしまうと消化不良や糖尿病を引き起こすのはさっきの説明で分かると思うけど」

灰原「更に肝臓や腸管に近く、体の中心近くに位置しているせいで手術の時の難易度も高いと言われているわ」

灰原「折角肝臓の名前も挙がったことだしこのまま通して説明してしまいましょうか」

灰原「肝臓の機能は……これは細かく分類すれば500以上に上ると言われているわ」

灰原「あまりにも多機能なため人工臓器として肝臓を作成するのは不可能だと言われるほどね」

灰原「肝機能を大雑把に分類すると二つに分けられるわ、代謝機能と解毒機能ね」

灰原「解毒機能の方はアルコール分解でお馴染みね、その他の薬品や毒素の無毒化や排泄も一手に引き受けているわ」

灰原「代謝機能も多岐にわたり、糖・脂質・タンパク質の代謝、エネルギー源としてグルコーゲンの合成と貯蔵など」

灰原「詳細に説明しだすといつまでたっても終わらないわよ」

阿笠「まあそれだけ重要な臓器ということじゃ」

阿笠「そのためか再生能力も高く、正常な肝臓なら実に四分の三もの部分を切除しても大丈夫だと言われておる」

阿笠「その分、多少のダメージでは本人も全く気付かず、手遅れなほど病状が悪化して初めて病気が明らかになる『沈黙の臓器』として怖れられてもおる」

阿笠「多機能であることと再生能力の高さから、癌を始め脂肪肝や肝硬変など主要な病状も多いのお」

灰原「脂肪肝……」

コナン「肝硬変……」

阿笠「君たち、そろそろそういうのは止めにしないかね?」

元太「そういえばフォアグラってガチョウの肝臓だったよな」

コナン「よく知ってるな元太、過剰な餌を与えることで人工的にアヒルやガチョウを脂肪肝にしたものがフォアグラだ」

コナン「ちなみにニワトリの脂肪肝も白レバーって呼ばれて流通してるけど、一般家庭には出回りにくいらしいな」

元太「アンコウとか魚のキモも肝臓でいいのか?」

コナン「その通りだ元太、ちなみにカニミソは味噌とは名がついてるが脳味噌じゃなくて肝臓に近い中腸腺って組織なんだ」

元太「マジかよコナン!肝臓ってどんな動物でも美味いところなんだな!!」

灰原「でも気を付けて、肝臓は解毒作用や代謝機能のおかげで、毒物や重金属の蓄積なんかも起きやすいの」

灰原「生で食べる場合も寄生虫には十二分に注意する必要があるわ」

コナン「よっし、やっと次は心臓……あれ?」

灰原「ちょっと博士、これって!」

光彦「」

博士「しまった!光彦君の心臓が停止しておる!!」

歩美「え……光彦くん死んじゃったの……?」

灰原「そういえば彼、途中から呻き声一つ挙げていなかったじゃない」

灰原「私としたことが解説に夢中になってすっかり忘れていたわ……」

コナン「バアアアアアアアアアアアロオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

コナン「光彦が死んじまった!?」

コナン「そんなこと認められるわけねえだろ!!」

元太「コナン……」

灰原「現実を認めるのよ江戸川君」

灰原「円谷君の肉体は、1mm間隔でその約半分を刻まれることに耐えられなかったの」

コナン「だってまだ肺も心臓も脳味噌も残ってるんだぞ!?」

コナン「上半身まるまる残ってるんだぞ!!?」

コナン「それなのにもう死んじまうなんて……そんなのってねえよ……」

歩美「コナンくん……」

元太「コナン……」

灰原「江戸川君……」

コナン「なあ博士、どうにかならねえのか!?」

コナン「お願いだ、光彦を助けてやってくれ……」

コナン「このまま終わるなんて、あんまりだ」

阿笠「……一つだけ手がある」

コナン「ホントか博士!?」

阿笠「新一の血管を光彦君に繋ぐことで、光彦君の心肺機能を代行させる」

コナン「ッ!?」

阿笠「新一や、君に光彦君を救うために……それだけの覚悟があるかのお?」

コナン「何言ってるんだ博士、あたり前だろう!!」

コナン「アイツは……光彦は俺たち少年探偵団の大切な仲間だ!!」

コナン「その光彦を救えるためなら俺の体ぐらい……」

阿笠「その言葉が聞きたかった!」

阿笠「いいじゃろう、あとは全てワシに任せるのじゃ」

コナン「頼むぞ博士……光彦の命は博士の手に委ねられたんだ」

阿笠「ワシを誰じゃと思っておる?」

阿笠「安心するがいい、かならず光彦君の命だけは救って見せる」

元太「博士……あいつのことよろしく頼むぜ」

歩美「歩美からもお願い!光彦君を生き返らせて!!」

灰原「大丈夫よみんな、博士がこういったからには絶対に成功するわ」

阿笠「それでは手術を行うのでな、新一以外は悪いが一度部屋から出て行ってくれ」

―数時間後―


阿笠「ふう……」ガチャリ

灰原「博士、江戸川君と円谷君は……」

阿笠「大丈夫じゃ、手術は成功したぞい」

歩美「良かった……コナンくん、光彦くん」

阿笠「そろそろ覚醒するはずじゃ、様子を見てみるか?」

灰原「ええ、お願い博士」

光彦「う……ううう……」

光彦「こ、ここは……?」

コナン「目覚めたか光彦」

光彦「コナン……くん……?」

コナン「無理に動こうとするなよ、なんせ下半身と両腕の肘から下がなくなってるんだからな」

光彦「え?」

コナン「でも大丈夫だ、まだお前は生きてる」

コナン「俺の心臓がお前に繋がってるんだ、感じるか?」

光彦「なん……で……」

コナン「当たり前だろ光彦」

コナン「死にかけてるお前をほっとくなんて、できるワケねえよ」

光彦「ありがとう……コナンくん……コナンくううううううん!!」

光彦「うわああああああああああああん!!」

元太「おっ、光彦のやつちゃんと目が覚めたみたいだぞ!」

歩美「よかった、光彦くん……ちゃんと生きてるんだね」

光彦「歩美ちゃん、元太くん……」

灰原「全く、ひやひやさせないでよ」

灰原「あなたが心停止したって知ったとき、私がいったいどんな気持ちだったか……」

光彦「ごめんなさい灰原さん……」

灰原「いいのよ、円谷君の命が無事なら、私はそれで」

阿笠「術後の経過もいいようじゃの、意識もしっかりと覚醒しておる」

阿笠「それでは」

阿笠「続きを始めるとするかの」

光彦「え?」

灰原「さあ、次は肺と心臓よ」

阿笠「心臓の機能は停止しておったが動いておるところを輪切りにしてみてみたかったからの」

阿笠「儂が独自に開発したペースメーカーの一種で無理やり鼓動させておるぞい」

光彦「な、なにを……」

コナン「光彦、今度こそ最後まで死なないでくれよ?」

コナン「俺と繋がってるおかげで、心臓を全部切り刻まれても、喉を切り裂かれても大丈夫だ」

コナン「脳味噌の最期の一片まで、キッチリなますにしてやるからな」

元太「そうだぜ光彦、安心してバラバラになれよな!!」

灰原「それじゃ装置を再稼働させるわよ」ポチッ

光彦「い、いやだっ……もうあんなのはゴメンですっ!!」

コナン「安心しろ光彦、俺たちがついてる!」

光彦「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」


(完)

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年05月10日 (土) 21:11:12   ID: djtBokCJ

何がすごいって、マジキチなのにかなり正確に解説がなされてるのがすごい

2 :  SS好きの774さん   2014年05月24日 (土) 16:59:03   ID: IWhfnNoz

ついこの間授業でやったばかりなので親近感に近しい何かを感じる

3 :  SS好きの774さん   2014年07月01日 (火) 23:24:43   ID: AiTtXZHO

読んでたら力が入らなくなってきた

4 :  SS好きの774さん   2015年03月28日 (土) 18:15:05   ID: iPLbjC4i

感動した

5 :  SS好きの774さん   2015年12月19日 (土) 10:04:52   ID: LEVWJYXw

どんだけ臓器に詳しいんだよWWW

6 :  SS好きの774さん   2015年12月26日 (土) 07:38:35   ID: O0XIVI_d

マジキチを越えてる感動

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