一「痴女……かな?」 初美「痴女ですかー?」 (50)



...........タタンタタン............タタンタタン............


一「…………」

初美「…………」

一(よし。落ち着いて考えよう)

初美(冷静になるのですよー)

一(東京に出てきたついでという事で、透華が龍門渕グループの東京方面の視察に出ているから――)

初美(――姫様が神社本庁に出向いているから、残った私達は自由行動になったわけですがー)

一(たまたま乗った電車で――)チラッ

初美(――凄いものを見てしまったですよー)チラッ



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............タタンタタン............タタンタタン............


一(隣に座っている人――)

初美(――凄い服装してますねー)

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一(電車に乗ったときは混んでて気付かなかったけど――)

初美(――乗客が殆ど降りてしまった今では、嫌でも目に付きますよー)

一(巫女服姿なのはいいとして、胸がはだけすぎというか、むしろ見せ付けてると言ってもいいレベルで――)

初美(――生地の部分が少なすぎて、あれでは服と言うよりは紐ですよー)

一(あんな服装で電車に乗るなんて――)

初美(――なかなか大胆ですねー)

一(…………)

初美(…………)

一(……あれ?)

初美(……もしかしてー)

一(あの顔、見覚えが――)

初美(――インターハイで見かけたー)


一「……薄墨さん?」

初美「……国広さんですかー?」



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............タタンタタン............タタンタタン............


一「……薄墨さんの高火力は結構有名でしたからね」

初美「それをいうなら去年の龍門渕の快進撃もなかなかですよー」

一(まさか、隣に座っていたのがこんな有名人だったなんて――)

初美(――びっくりですよー。こんな偶然あるんですねー)

一(おかげで話すきっかけが掴めて――)

初美(――気まずい沈黙が払拭できて、よかったですよー)


一(ところで――)

初美(――せっかく会話が出来た事ですしー)


一(あの服装について――)

初美(――聞いてみたいですよー)



一(とはいえ――)

初美(――どう切り出したら良いのか、悩みますねー)

一(ここはうまく話題を――)

初美(――何とか切り替えてー)


一・初美「「ところで――」」


一「あっ、すみません。どうぞお先に」

初美「いえいえ、そちらが先で良いですよー」

一「えっと、ではお言葉に甘えて……」

一「その……なかなか大胆な着こなしですね」

初美「!」

一(い……言ってしまった……)

初美(言われてしまった……)



初美(そうですかー。やっぱりそこが気になりますよねー)

初美(理由を言ってもいいのですが、この人はどうなんでしょうねー?)

初美「……着こなしってこれのことですよねー」

初美「この巫女服はうちの神社に古くから伝わる正装で、この着方も含めてこれが正しいんですよー」

一(正装? でも、あんな格好が正装なんて……)

初美「肌の露出が多いって思いましたかー? ですが、これでいいんですよー」

初美「巫女として神々と接する時は、出来るだけ身に付けるものを減らして、生まれたままの姿であたるのが一番良いのですよー」

初美「ですから、むしろ積極的に肌を露出させているわけですねー」

一(う……うーん。ボクは神事に詳しいわけではないから、そう言われてしまうと「なるほど」としか言えないな)

一(確かに、余計なものは身に付けないほうがいいというのは、納得できる理屈だけど……)

初美「それに……それを言うなら、その服だって結構きわどいですよー?」



一(う! まあ、こっちが聞いたんだから、聞き返されても文句は言えないよね)

一(しかし、これを言っていいものか……)

一「……ボクの父はマジシャンでね、ボクも色々なテクニックを父から教わったんだ」

一「それで……昔、ボクはそれを麻雀に使ってしまったんだ」

一「でも、それは見つかって、当然失格になった。団体戦でね……ボクはチームの皆に迷惑をかけてしまった」

一「それから……まあ、色々あって、一時は麻雀そのものをやめていたんだけど、今はこうして麻雀に戻ってきた」

一「でも、もう二度とイカサマをする気はない。だから、あえて目立つ上に物を隠せる場所の少ないこの服を着ているんだ」

一「……まあ、インターハイでは制服を着るから、練習試合なんかでしか意味はないけどね」

初美「それは……嫌な事を思い出させてしまって、すみませんでした……」

一「いえ、元はといえば、ボクが変な事を聞いてしまったからなので、気にしないでください」



............タタンタタン............タタンタタン............


一・初美((……沈黙が重い))

初美(まさか、こんな展開になるとは意外でしたねー)

一(うーん。ミスったかな?)

初美(一応、ちゃんとした理由があって、あんな服装をしている可能性もあるかも……とは考えましたが、正直、十中八九趣味だと思ってましたよー)

一(顔と名前を知っているとはいえ、初対面の相手にあの事を話すのはどうかと思ったけど……)

初美(やっぱり――)

一(でも――)





一・初美((露出趣味があるって言わなくて――))

初美(正解でしたよー)

一(正解……だったのかな?)



初美(同じ趣味を持つ人になら、ばらしてしまってもいいかもと思いましたが、まさか違ったとは……)

一(あの服装に理由があるって聞いて、とっさに建前のほうを言ってしまったけど……)

初美(念のために建前のほうを言っておいて、良かったですよー)

一(本当に良かったのかな?)

初美(……でも、さっきの話、あれって本当に――)

一(――どうも、あれだけが理由じゃない気がするんだけど)

初美(そういえば、気になる所が――)

一(――うん。その事を聞いてみようか)


初美「あの――」

一「あ――」


初美「あっ、お先にどうぞー」

一「いえ、ボクのほうが後からだったので、薄墨さんからどうぞ」

初美「そうですかー? では……」



初美「さっき、目立つためにあえてその服装をしていると言っていましたがー」

初美「それは、視線を集めることでイカサマを見つかりやすくした、という事ですかー?」

一「……はい」

一「ボクに視線が集まれば、イカサマをしてもすぐにばれる。だからボクが変な気を起こしても、すぐに気付かれる」

一「そして、それがわかっているのにあえてイカサマをしてしまうほど、僕の理性は愚かじゃない」

一「あえてそうすることで、ボクは自分にブレーキをかけようと――」


初美「ミスリーディング」

一「!」

初美「観客の目を余所にひきつけて、手品の種から眼を逸らす手法……でしたっけ?」

一「…………」

初美「素人の私でさえ聞いたことがあるんですから、プロなら知っていて当然ですよねー」

初美「マジックでは、視線を集めることは、必ずしも不利にはならない。ですよねー?」

一「……そうだね」

初美「まあ、そんな事にまで気が回らなかったのかもしれませんがー」

一「…………何が言いたいのかな?」

初美「そういえば、麻雀のイカサマには色々と手法があるそうですが、牌のすり替えに関しては、大半が手の中だけで行われるそうですねー」

初美「牌を数枚、ほんの僅かな間隠すだけなら、隠し場所は手の中だけで十分って訳ですねー」

初美「こういうのを、マジックでは“パーム”って言うんでしたっけー?」

一「…………」



初美(ちょっと言い方がきつくなっちゃいましたねー)

初美(とはいえ、こちらも露出に関心のない人に私の性癖を打ち明けるのは、さすがに無理ですしねー)

初美(私が言ったことは、到底反証になりえるようなものではありませんが、これが誘い水になってくれれば……)

初美(私も人の事は言えませんが、これで本当の事を言ってくれれば、私も謝罪して本当の事を――)


一「……自由行動」

初美「……え?」

一「今日は自由行動だ……って、さっき言ってましたよね」

初美「そ、そうですけどー」

一「では、遊びにいかれるんですか?」

初美「まあ、そのつもりで――」

一「遊びに行くときも巫女服なんですね」

初美「え!? いや、これは普段着みたいなもので……」

一「そうですか。ボクはてっきり学校行事だから制服を着なくてはならない……なんて事を言うのかと思ってましたが」

初美「……あ、えっと」

一「普段着、ですか。今の時代に巫女服を普段着にして、神事と関係ない時にも着ていく人がいるとは、思ってもみませんでした」

初美「いえ、そのですね……」

一「“遊びに行く”んでしたよね?」

初美「……はい」

一「この辺りに知り合いはいないから、迷ったらどうしよう……って、確か言ってましたよね」

初美「……その」

一「じゃあ、知り合いの神社に行くって訳でもなさそうですし……」

初美「…………」

一「迷わないように気をつけてくださいね」ニコッ

初美「…………はい」



一(嫌な言い方になっちゃったな)

一(それに、あんなのは強く言い返されたら吹き飛んでしまうような、反論とも言えない物だけど……)

一(ボクが疑っているという事は示せたはずだ)

一(ボクだって秘密にしている以上、虫のいい話だけど――)


一・初美((向こうが先に言ってくれれば……))


一・初美((あるいは、自分から言い出したほうが……?))



............タタンタタン............タタンタタン............


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............タタンタタン............キッ......キキッ............


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                      | ̄ ̄ ̄
                      |


............キキィ――――......プシュ――......


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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



一(駅……か)

初美(ここで降りる……というのも、一つの方法ではありますがー)


一(この局面で、オリなんて――)

初美(――ないない! そんなの……っ!!)



一(とはいえ、ここで誰かがこの車両に乗ってきたら――)

初美(――ちょっと、いえ、かなり話しにくい雰囲気になりそうですねー)


............ジリリリリ――――............


一(発車か――)

初美(――取り越し苦労だったみたいですねー)


............ジリリリリ――......タタタッ......


┏━┳─┳━━━━━┳─┳━┓

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一(ん?)



............ジリリリリンッ......タタタタ――ッ......


┏━┳─┳━━━━━┳─┳━┓

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 ̄ ̄ ̄│ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

───┘


初美(あらー?)


............キキーッ............プシュ――............


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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


??「ふーーっ!」

一(偶然……にしては、やりすぎだと思うけど――)

初美(――いえ、インターハイのスケジュール的には、今日、出場者同士が街中で出会うことは、不自然ではないかもしれませんが……)

??「ま~にあったー!!」

一(何か――)

初美(――意図的なものを感じますよー)

穏乃「って、あれっ!? 国広さん、それに、薄墨さん!?」




┏━┳─┳━━━━━┳─┳━┓

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│                          │
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┗━┻─┻━━━━━┻─┻━┛


............タタンタタン............タタンタタン............


穏乃「いやー、それにしても、本当に奇遇ですね!」

一「……そうだね」

初美「……ですねー」

一(多分、高鴨さんは純粋に言ってるんだろうけど――)

初美(――この組み合わせは、別の意味で奇遇ですよー)

一(以前対局したときは卓があって気付かなかったけど――)

初美(――そのジャージ、座ると対面から股間が見えてしまいますよー!)



穏乃「?」

一(表情からすると、わざとやっているようには見えないんだけど――)

初美(――もしも意図的にやっているんだとすると、私達とはレベルが違いますねー)

一(なにせ、薄着をしたり胸をはだけたりと言った小細工ではなく――)

初美(――最初から履かないという、言い訳の仕様もない大胆な行為ですしねー)

一(半オリしているボク達とは違って――)

初美(――全ツッパなその姿勢、ある意味尊敬しますよー)

穏乃「……で、それが……」

一(……さて、高鴨さんは、いったいどっちなんだろうね?)

初美(確認してみますかー)



一「……高鴨さんも、麻雀が好きなんだね。聞いててよくわかるよ」

穏乃「え? いやー、あはは」

初美(おっと、これは、どう切り出すんでしょうかー?)

一「じゃあ、麻雀以外に、趣味とか好きな事はあるのかな?」

初美(って、直球できましたねー! ちょっと大胆じゃないですかー?)

一(直接顔をあわせた事のなかった薄墨さんは躊躇するかもしれないけど、一度練習試合で会ったことのあるボクなら、高鴨さんの人となりは多少はわかる)

一(高鴨さんなら、ストレートに聞いたほうがいいはず。むしろ、これでもオブラートに包んでいるほうだ)

穏乃「麻雀以外ですか……」

一(さあ――)

初美(――どう転ぶんでしょうかー)

穏乃「だったら山登りですね!」

一(……あれ?)

初美(……あらー)



穏乃「……なんです。特に……」

一(うーん。これははぐらかしているのかな? それとも――)

初美(――どうやら、当てが外れたみたいですねー)

穏乃「……ですねー!」

一「……そうなんだ。いや、急に話題を変えてごめんね」

一(もし、高鴨さんにそっちの趣味がないんだったら――)

穏乃「いえいえ、そんな事ないですよー!」

初美(――露出趣味の話題は、消滅ってことになりそうですねー)

穏乃「麻雀も好きだけど、山登りも好きなんです! だから、こんなに話せてよかったです!」

穏乃「そうそう、山登りと言えば――」

一(まあ、高鴨さんが楽しそうだから――)

穏乃「――山頂を制覇したときの気持ちよさは格別で、何と言うか、神秘的? って言うんですか――」

初美(――まあ、別にいいですけどー)





穏乃「――そこで服を脱ぐと、なんだか山々と話してるような気分がいっそう高まって――」



一「……え?」

初美「……は?」



穏乃「――すっごく気持ちいいんですよー!」




一「え……え?」

初美「は……はいー?」

穏乃「……あれ?」

穏乃(……何か変なこと言ったかな?)

穏乃(…あっ! そうだ。確かあの時も――)





憧「……ちょ、ちょっとシズ、あんた何言って――」

穏乃「? 私、何か変な事言った?」

憧(……え? 何、本気で言ってるの!?)

憧(ど、どうしよう。シズになんて言えばいいの?)

憧(あの様子だと、絶対恥ずかしいとか思ってないよ~!)

憧(これじゃ、恥ずかしいから止めろって言っても、効果はなさそうだし……)

憧(どうやったらシズを止められるの~!?)



穏乃「ね~、憧ったら~!」

憧「……な、何でその事を私に言ったの?」

憧(もしかして、シズ……)

穏乃「え? だって、憧ん家って神社でしょ?」

穏乃「だったら、こう、神様? だか何だかわからないけど、そういうのと話したこととかあるのかな~って……」

憧()

穏乃「? どうしたんだよ憧~」

憧(……あ~もう全く!)

憧「そうね。聞いた私が馬鹿だったわ」

穏乃「え~? 何だよそれ」

憧「いいの。気にしないで」

憧(……気持ちを切り替えなきゃ。さっき、シズが何かヒントになりそうな事を言ったような――)

憧「――シズ。この事は誰にも喋っちゃだめよ」

憧(よし。これでいこう)



憧「シズがやったのは、新子神社に古くから伝わる神事の一つよ」

穏乃「神……事?」

憧「そう。秘伝中の秘伝なんだけど、たまにシズみたいに偶然出来てしまう人が出るの」

穏乃「秘伝!? なにそれすっごい!」

憧「黙って話を聞く! いい!? 秘伝だから、この事は他の人に喋ってもらっては困るの」

憧「もし喋ってしまったら……」

穏乃「しゃ、喋ってしまったら……?」

憧「シズの口を封じなければならなくなるわ」

穏乃「おお~!」

憧「喜ぶんじゃないの! まったく……」

憧「いい? 何処の誰だろうと、この事を話しちゃ駄目よ! 私だけじゃなく、全国の神社仏閣が見張ってるからね!」

穏乃「全国! そんな大きい組織なのか!」

憧「そ……そうよ」

憧(これくらいスケールの大きな話にしておけば、シズも本気になるかな?)

憧(まあ、全国って言っちゃったけど、裸になると神様と近くなるなんて話、私以外で大真面目に言い出す人がいたら、見てみたいものだけど……)



憧(それにしても、こんな話を信じてしまうシズの将来は、かなり不安だけど、今回ばかりは助かったわ)

憧(とにかく、これでシズが迂闊に変な事を口走るようなことにはならないはずよね)

憧(あとは、話の流れ上順番が後回しになったけど、シズがもう二度とそんなことをしないように、釘を刺しておかないと……)

穏乃「うおおおお~! あれってとっても凄いことだったんだな!」

憧「ちょ、ちょっとシズ、落ち着きなさい! あのね、シズがやった事はとても危険な……」

憧「って、シズ、聞いてる!? あ、こら、待ちなさ、どこ行くの! あんたテンション上がると走り回る癖、いい加減に、ちょ、聞きなさいってば!」





穏乃(……そうだ、思い出した)

穏乃(憧から口止めされてたんだっけ。うっすらとしか覚えてなかったよ)

穏乃(他にも何か言ってた様な気がするけど、よく聞き取れなかったし、まあいいか)

穏乃(でも、そっか。そりゃ口止めされるような話なんだから、急に話しても驚くだけか)

穏乃(……あ。でも、あのとき憧は――)



一「えっと、あの……」

初美「さっき、なんて……」

穏乃「すみませんでした!」クルッ

一(!? 高鴨さんが、いきなり薄墨さんの方を向いたけど……)

初美「ど、どうしたんですかー?」

穏乃「いきなりこんな話をしてしまって……」

一(た、高鴨さん?)

初美「あ、いえ……」

穏乃「でも、大丈夫ですよね!」

一(は、話の流れが読めない……)

初美「な、なにがですかー!?」

穏乃「だって――」

穏乃(――憧は、“全国の”って言ったから――)

穏乃「(巫女の)薄墨さんなら、(神事の事を)よく知ってるはずですし、話しちゃっても大丈夫ですよね!」

一(よく知っているって――)

初美(――露出の事ですかー!?)



一(ど――)

初美「――どうしてそう思ったんですかー?」

穏乃「え? だって、その服装を見れば、(巫女さんだって)一目でわかりますよ!」

一(ま、まあ――)

初美(――こんなに肌を露出していれば、そういう趣味だって思われても不思議ではないですがー)

穏乃「……あれ?」

穏乃「……ごめんなさい! 違ってましたか!?」

穏乃(あの巫女服は趣味で着ているだけで、実は巫女さんじゃないとか?)

一「…………」

初美「…………」

初美(高鴨さんがこんなに言い切ってくれたんだから、私も――)

初美「いいえ。あっていますよー」

穏乃「うわぁ~っ! よかった~! 違っていたらどうしようかと……」

一(確かに、露出趣味を理解してくれる人じゃなかったらと思うと――)

初美「――気持ちはわかりますよー」

穏乃「本当ですか! やっぱり(秘伝中の秘伝だから)他の人には言えませんからね~」




穏乃「その、薄墨さんも、(神事を)やったことあるんですか?」

一(全裸の事かな?)

初美「(全裸なら)一度だけやったことがありますが、中々……」

一(あ、やっぱり全裸はハードル高いよね……)

穏乃「そうですよね! (山との一体感は)すっごく気持ちいいですよね!」

一(た、高鴨さん……!)

初美(やっぱり私達とはレベルが違う!)

穏乃「?」

一(負けた……完敗だよ)



一「……実は、ボクもやったことがあるんだ」

初美(や、やっぱり……)

穏乃「! そうなんですか!」

穏乃(国広さんも巫女だったりするのかな? それとも、私みたいに偶然出来たのかも)

一「とはいっても、高鴨さんほど凄い事をやったわけじゃないんだけどね……」

穏乃(……って事は、山頂までは辿り着けなかったのかな?)

穏乃「だったら、今度私と一緒に行きましょうよ! (登山は)とっても気持ちいいですよ!」

一(イ――)

初美(――イクって、気持ちいいって、そういう意味ですよねー!? )

穏乃「そうだ! ここで会ったのも何かの縁ですし、3人で行きましょう! あ、勿論予定が空いていたらの話ですけど……」

一「あ、ありがとう。ちょっと緊張するけど、ボクなんかでよければ、喜んで参加させてもらうよ」

初美「わ、私もやってみたいですー。3人でっていうのは初めてで――」

穏乃「大丈夫です! 仲間がいれば、怖くないって聞いたことありますし!」

一「く、詳しいんだね」

初美「聞いたっていうのは……」

穏乃「(登山の)雑誌でです!」

一(雑誌って言うと――)

初美(――投稿写真的な雑誌ですかー!?)



穏乃「……あ、雑誌で見たことをえらそうに喋るなんて、駄目ですね……。すみませんでした!」

一「い、いや、そんな事はないよ。教えてくれるだけでもありがたいし……」

初美「……そうだ! 確か、この沿線沿いに、いいスポットがあるって雑誌に載ってましたー!」

穏乃「……え?」

一「あ! それボクも見たことがあるよ! いい(露出)写真が取れるんだよね!」

初美「そうです! 多分、同じ場所ですね! そこを紹介しますから、おあいこって事でどうでしょうかー!」

穏乃「写真ですか! (山の)写真は取ったことないんですが、写真を眺めているだけでも楽しめますよね!」

一(おお……)

初美(何か、上級者っぽいですねー)

穏乃(……あれ? でも、こんな街中に山なんてあったかな?)

穏乃(もしかして、ボルダリングのジムか何かかな? それならそれで気になるけど……)



一「そうだ、いっそこのまま行っちゃいませんか? 今日は特に予定立ててないですし……」

初美「いいですねー! 私も賛成ですねー」

穏乃「うーん。私も……って言いたいところですけど、私は――」

一「あ、そうか。高鴨さんは予定があるって言ってたっけ」

初美「確か、○○駅で降りるんですよねー。だったら、途中までは一緒に行けますよ!」

穏乃「本当ですか! では、途中までご一緒します!」

一「だったらそれまで色々と話が出来るね」

初美「いいですねー。麻雀の話もですが、他にも色々と話したいですねー」

穏乃「私もです!」



............ワイワイガヤガヤ............


............タタンタタン............キッ......キキッ............


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╋━┛  ┗━一━初━┛  ┗━╋
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┗━┻─┻━━━━━┻─┻━┛

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............キキィ――――......プシュ――......


┏━┳─┳━━━━━┳─┳━┓

╋━┛  ┗━一━初━┛  ┗━╋
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╋━┓  ┏━━穏━━┓  ┏━╋
┗━┻  ┻━━━━━┻  ┻━┛
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一「あっ、着きましたよ」

初美「もう着いちゃいましたかー。あっという間でしたねー」

穏乃「そのスポットってどっち方面ですか? もし方向が一緒なら――」


............ワイワイガヤガヤ............


┏━┳─┳━━━━━┳─┳━┓

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┗━┻  ┻━━━━━┻│┻━┛
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                      ↓


............ジリリリリ――......プシュ――.......


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┗━┻─┻━━━━━┻─┻━┛

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............タタン............タタンタタン............


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        ││
┓  ┏━╋╋━┓  ┏━━━━━
┻─┻━┛┗━┻─┻━━━━━

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............タタンタタン............タタンタタン............


━━━━━┳─┳━┓┏━┳─┳

那━━━智┛  ┗━╋╋━┛  ┗
                  ││
━━誠━━┓  ┏━╋╋━┓  ┏
━━━━━┻─┻━┛┗━┻─┻

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............タタンタタン............タタンタタン............


┏━┳─┳━━━━━┳─┳━┓

╋━┛  ┗那━━━智┛  ┗━╋
│                          │
╋━┓  ┏━━誠━━┓  ┏━╋
┗━┻─┻━━━━━┻─┻━┛

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



智葉(対面のジャケット姿に帽子を目深に被った奴……)

智葉(先程からこちらと目線をあわせようとしないが、意識はこちらに向けられている)

智葉(顔は良く見えないが、どこかで見たような感じがする)

智葉(手はジャケットの中で何かを握っているようだが……)

智葉(どこかの組のヒットマンか? だとすると、狙いは誰だ?)

智葉(横に立てかけてあるバッグが狙撃銃を入れるためのものだとすると、私を狙ったものではないだろう)

智葉(だが、あれがダミーで、ジャケットの中に握りこんでいる得物が本命だとすると……)

智葉(警戒しておくに越したことはないだろうな)



那岐(隣に座っている人、カタギの人間とは思えない……)

那岐(尋常じゃない殺気を放っているけど、まさかこちらを狙っているわけじゃ……)

那岐(ああ、なぜ座るときに気付かなかったんだろう)

那岐(そりゃ私が乗ったときには、車内はそれなりに混んでて、たまたま空いた席に深く考えずに座ってしまったけど……)

那岐(もっと注意していれば、あの殺気に気づくことができたかもしれないのに……)

那岐(乗客がこんなに減った今では、因縁をつけられそうで、迂闊に席を移ることもできない)

那岐(ああ……岡山に帰りたい)




誠子(私の左前に座っている女、何だあれは……)

誠子(なぜ刀を2本もさしているんだ!)

誠子(コスプレか何かか? いや、だとしても、あれは絶対職務質問に引っかかるぞ!)

誠子(あの刀、本物じゃないだろうな……。いや、模造刀だとしても、あんなものでぶっ叩かれたら骨が折れても不思議じゃない)

誠子(どちらにしろ、係わらないように眼を伏せて、でも注意だけは向けておかないと……)

誠子(せっかく時間が空いて、釣りにいけると思ったのに、何てことだ)

誠子(最悪、こっそり隠し持ったこの100号オモリを投げつけて、ロッドケースも場合によっては置いて逃げよう)

誠子(ライフジャケットに防刃性なんて期待できるんだろうか……?)



智葉・那岐・誠子(((まったく、なんて電車に乗り込んでしまったんだ……)))



続かない

以上です
割と酷いレッテルを張った気がしますが、各キャラに悪意があるわけではありませんので、一応断りを

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