小鳥「ただいまー♪」舞「おかえりー♪」 (21)


小鳥「帰ってください」

舞「自分が家を間違えた可能性を考慮しないのはどうかと思うわ」カチャカチャ

小鳥「ここは私の家です」

舞「そうね」セッセッ

小鳥「どうしているんですか?」

舞「旦那は出張、娘はロケ、家で一人寂しい奥様が他人の家に来るって言ったら……一つしかないでしょう?」パッパッ

小鳥「暇つぶしですね、分かります。出てってください」

舞「冷たいわねー」キュッキュッ

小鳥「さっきまでホットだったんですよ! イチャイチャしてきたんですから!」

舞「誰と?」ピタッ

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小鳥「同僚です」

舞「あぁ、例のプロデューサー」

小鳥「例のって?」カバンオロシー

舞「765プロの情報ってなぜか入って来るのよねー。愛の好きなアイドル多いし」

小鳥「それで内部の話は普通入らないと思いますけど」

舞「そちらのアイドルにはいつも愛がお世話になっております」

小鳥「どういたしまして」ウワギバサー

舞「お風呂わいてるから入っちゃって。ご飯もうすぐできるから」

小鳥「私今日飲むつもりだったんですけど」サッサッ

舞「そう言うと思っておつまみに徹したわ。炊飯器が寂しそうにこっち見てたけど無視したげた」

小鳥「心底何しに来たんですか?」

舞「ヒーマーなーのー」

小鳥「私以外に友達いないんですか?」

舞「主婦仲間ぐらいいるわよ」


小鳥「勝手に入ってきて勝手にお風呂沸かして勝手に料理してるみたいですけど、食材とかどうしたんですか?」

舞「買ってきたわ。あと勝手に掃除もした」

小鳥「うわ本当に暇だこの人」

舞「ちなみに今は作り置きの用意もしているわ」

小鳥「くっ……うざいのにありがたいから何も言えない!」

舞「フッフッフ、暇を持て余した主婦のウザさはこんなものじゃないわよ?」

小鳥「と言うと?」

舞「背中流したげよっか?」

小鳥「舞さん、私は愛ちゃんの代わりじゃありません」

舞「えー」

小鳥「えーじゃありません。寂しがりは大人しくしててください」


―――
――


小鳥「ふぅー……」

舞「湯上りなのに見せる相手がいないのも寂しいわね」

小鳥「放っといてください」

舞「可愛いのに勿体無い」

小鳥「見せる相手ぐらいすぐできますよ」

舞「だといいけど」

小鳥「舞さんは見せないんですか?」

舞「愛がいるから」

小鳥「構いすぎると私みたいになっちゃいますよー」ガチャ

舞「こら、缶を開けるな。ビンあるから」


 プシュー!

舞「はい、ビール」トクトク

小鳥「美人についでもらえるのは嬉しいんですけど」

舞「私じゃ不服だっての?」

小鳥「いいえ、舞さんだからいいんですよ」

舞「あら」

小鳥「みんなの憧れのトップアイドルについでもらえるってのがいいんですよー」

舞「すっかりおやじくさくなっちゃって。ほーれほーれ」トクトク

小鳥「舞さんも、すっかり元・トップアイドルって感じになりましたね」

舞「愛を生んだ時にはとっくになってたわよ。今は母親。母親サイコー。母親楽しい」

小鳥「おつまみとってくれません?」

舞「ほい」ヒョイ



小鳥「ふぅ……はぁ……」プハー

舞「いつもおつかれさま」

小鳥「分かってるなら、来る時に連絡ぐらいしてください」

舞「連絡しちゃったら身構えられちゃうじゃない」トクトク

小鳥「ビックリしたくないんですよ、疲れてる時は。というかどうやって入ったんですか?」

舞「舞ちゃん頑張っちゃった」

小鳥「ウフフ……壁を壊してないってことは、正攻法で入って来たんですね」カリカリ

舞「そんなにいつもいつも壁は壊さないわよ」チビチビ



小鳥「はい、舞さん、ついであげます」クイッ

舞「ありがと」スッ

小鳥「寂しい主婦に慰めを」トクトク

舞「持つべきものは小鳥ねー」

小鳥「どういたしまして」

舞「はーあ……」ユラユラ

小鳥「家に誰もいないとそんなに寂しいですか?」

舞「今日は特別そーゆー日」

小鳥「これから我が社のアイドルがメインを張る番組が映るんですけど、一緒に見ます?」

舞「お言葉に甘えるわ」チビチビ


―――
――



舞「可愛いわねぇ」

小鳥「765でもトップクラスの人気がありますからね、この子たちは」

舞「人気の理由も分かるわ。楽しそうでいいなぁ」

小鳥「もし舞さんの現役時代に、彼女たちがいたら、舞さんどうしてます?」グイッ

舞「ん~……どうにもならなかったんじゃない?」チビチビ

小鳥「歯牙にもかけないと?」

舞「どのみち結婚して引退してたわよ」

小鳥「それもそうですね」パクパク

舞「あぁ、でも……そうね、この子たちと同じ時代に生まれてたら、私は別の形でアイドルやってたかも」

小鳥「ありがとーございまーす」チビチビ




舞「このさー、天海春香ちゃん」

小鳥「お目が高いですね」

舞「それは私が言ってしまうと親バカになってしまうわ」

小鳥「違うんですか?」

舞「甘いだけじゃ親はやれないわ。私は早い内に母親になったから、特にね」

小鳥「何よりです」

舞「それで、春香ちゃんよ。愛がよく話してくれるんだけど、この子いいわ」

小鳥「べた褒めですねー」

舞「この子ならさー、日高舞なら仕方ないだの、日高舞は別だの言わないで追いかけてくれたんじゃないかなーって」

小鳥「未練、あります?」グイッ

舞「現役時代が最高だったっていうのは変わらないわ。最高のスタッフ、最高のファン、最高の環境、最高の私……」

小鳥「……最高のライバルは、いませんでしたね」

舞「いたわよ。いたの」グイッ

小鳥「……いませんでしたよ」チビチビ


小鳥「はぁ……」コト…

舞「溜め息は幸せを私に吸い取られるわよ?」

小鳥「はいはい、凄いですね」

舞「……今の私が気が利いて仕事ができて顔も性格もいい男だったら、あんたどうする?」

小鳥「そうですねぇ……なーんとも思いませんね」

舞「じゃあ、あんたが帰ってくる前にイチャついた男だったら?」

小鳥「……」

舞「小さな鳥ってそうよね。可愛くて愛でたくて近付いても、怖がりなのかしらすぐ逃げちゃう」

小鳥「捕まえてもらいたいです」チビチビ

舞「無理よ。飛んでっちゃう方が早いもん」

小鳥「一度逃げることを覚えるとそれしかないんですよ、きっと。生存本能って言うんでしょうか、そういうの」プフー

舞「物は言いようね」

小鳥「いいえ、事実ですよ。籠に入れてもらえる保証なんてないじゃないですか」ポー

舞「行き先が籠とは限らないじゃない。家の中飛び回ってもいいと思うわよ」

小鳥「経験者ですね」

舞「ええ、経験者」



小鳥「……愛ちゃん最近どーですかー?」ポーーー

舞「落ち込んだこともあったけど、元気よ」

小鳥「さいですかー……」ポーー

舞「いつまでも安心させてくれなくて、くるくるして……楽しそうでいいなって思うわ」

小鳥「なによりですよ。私も嬉しいですー……」ポーーー

舞「……寝る?」

小鳥「うーーーー……」

舞「……」

小鳥「……」zzz

舞「……」オヒメサマダッコー


小鳥「ん~……」

舞「ほい」フトンバサー

小鳥「ふーーー……」

舞「……ねぇ、小鳥。私ね、復帰したいって思ってるのよ。あんたはどう思う?」

小鳥「……」zzz

舞「今がこんなに楽しそうで、愛も大きくなって、私にも何かできるんじゃないかって」

小鳥「……」zzz

舞「また夢を見させてくれたのは、あなたたちよ。ありがとう」


 ガチャン! カチャカチャ……


小鳥「……」

小鳥「どうして鍵持ってるんですか、もー」

小鳥「どうして起きてる時に言わないんですか」

小鳥「本当、勝手ですよ」

小鳥「……本当に」

小鳥「一言、言えばいいのに」



おわり

終わりです

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