やえ「すべては…あの時から始まったのね……」 (62)



わあぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――


実況『さあ誰が決勝戦に駒を…いや牌を進めることができるのか!間もなく始まるインターカレッジ全国大会準決勝戦!!』

実況『まだ試合開始30分前だというのに、会場は凄い熱気に包まれております!!』


観客席。


わーわー


由華「いよいよですね先輩……いよいよアイツに……」すっ

由華「松実 玄にリベンジする時が来ましたね……」ぐっ


 

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やえ「ええ…そうね」

由華「でも…先輩。そんな大事な時にこんな…観客席なんかにいて大丈夫なんですか?」

由華「控室に居た方が、まだ落ち着けると思うんですけど……」

やえ「いいの…今は会場の空気に触れておきたかったから…それに静か過ぎると、かえって落ち着かないからね」

由華「そうですか…先輩がそう言われるなら……」

やえ「……もうそろそろ時間かな」

由華「先輩…私…先輩なら必ず勝てるって信じて…いえ確信しています」ぐっ

やえ「ああ。ありがとう巽」にこ


わあぁぁぁぁぁぁ―――――

 


やえ「…………さて。そろそろ行こうかね……」

由華「先輩…頑張って下さい―――――」

やえ「ああ。有り難う。往ってくるさね――――」

わぁぁぁぁぁぁあ―――――

すぅぅ……

やえ「うん」こく…

すく…………




そして――――――



        スタジアムに響き渡る歓声を吸い込んで



                          あなたはゆっくり立ち上がる―――――



 


会場内通路。


やえ「……………」

すたすた


?「あっ!?こんな所にいたのか。探したよ。てっきり控室に居るとばかり思っていたから……」

やえ「菫さん……」

菫「ここを通って来たということは、観客席の方から来たという事か……」

やえ「ええ…」

菫「そうか…控室に居た方が、良かったんじゃないのか?」

やえ「それ、巽にも同じことを言われたから」ふふ…

菫「…………」

やえ「でも…私はその方が気分を高められる上に、落ち着くと思ったから……」

菫「そうか…ふふ…アナタらしいな」

やえ「うん……」

 


菫「まぁ…アナタにとっては…今はインカレ決勝進出そのものよりも、目の前の宿敵を打倒する事の方が大事な事に思えるのかもしれないが……」

やえ「……そんな事…ないわよ……」

菫「しかし…不思議なものだな……」

やえ「えっ?」

菫「いや…アナタは一昨年のインハイの予選で、松実 玄に借りを作り、私はインハイの準決勝でその姉に借りを作ってしまった……」

やえ「そういえば…そうね……」

菫「だが…私は幸いにも機会に恵まれ、直後の決勝戦で借りを返す事が出来た」

やえ「…………」

菫「だから、時間は掛かってしまったが、これでアナタも必ず借りを返す事が出来る」

やえ「だと…いいけどね」

 


菫「……それに私は知っている。アナタがこの時の為に、どれだけの努力をしてきたか……」

やえ「そうね…確かに私はこの時の為にやれる事はやってきた心算だし、彼女の打ち方、傾向なんかも研鑚してきた」

やえ「それに私自身の地力も…あの時とは比べ物にならない位に付けたと思う……」

菫「ああ」こく

やえ「でも…やっぱり…それでも不安なの……」ふるふる…

やえ「あの時の私は自身の塊だった。それこそ…あんな地方大会で負ける事なんて有り得ないと思ってた……」

やえ「でも…そんな私のプライドを自負を松実 玄に粉々に打ち砕かれた……」

やえ「もう貴女には何度も言ってるけど…私の母校の晩成高校は地元の奈良では、比肩し得るものすら無い程の名門校だった」

やえ「でも私の所為で晩成は全国大会連続出場の道を絶たれ…その看板に泥を塗ってしまった……」

菫「・…………」

やえ「それが…あの時のショックが今も心の奥底で燻って…どんなに努力しても、研鑚しても不安になってしまうの……」

菫「やえさん……」

  


やえ「ねぇ…菫さん…」

すっ……

ぎゅっ……

菫「!!…………」

やえ「少しだけ…こうしててもいい?」

菫「ああ…勿論。時間の許す限り……」

やえ「ありがとう……」ぎゅっ

 


……。

菫「もう大丈夫かな?もうすぐ試合が始まってしまうぞ?」

やえ「も…もう少しだけ…あの時みたいに……」ぎゅっ

菫「……そう…だったら仕方ないな……」

すっ…

やえ(えっ!?)


ちゅっ…


やえ(あっ……///////)


やえ「ん…………//////」


…。

ぷはっ…


菫「こうした方が手っ取り早く色々なものが、吹き飛んでいくのではないかな?」

やえ「ふぁ……」ぽー

へなへな…

菫「ふむ…取りあえず軀の力は抜けた様だな」にこ

やえ「もっ…もうっ!こ…こんな所で//////だっ誰かに見られたらどうすんのよ!!?//////」

 


菫「ふふ…それでこそ、いつものアナタらしいよ」にこ

やえ「まったく…あなたは誠実が人の皮を被ってる様な佇まいなのに、ヤル事は強引なんだから……」

菫「ふふ…私はどうしてもアナタの事になると、強引になってしまうな」

やえ「でも…ありがとう…吃驚したお蔭ですっかり、身体と精神(こころ)の力が抜けたわ……」

やえ「抜け過ぎちゃった感もあるけれど……」

菫「それは済まない」

やえ「ま…許してあげる。それに…こんなこと言えるのも…するのも・…されるのも菫さんだけだしね」にこ

菫「そういってもらえると嬉しいな」

やえ「そして…私たちが≪こういう関係≫である事である事を知っているのも、当の私たちだけ……」




やえ(≪あの時≫から始まった…誰も知らない…私と貴女の秘密のカンケイ……)


 



あの時――――。


麻雀部部室。


TV『わーわー』


やえ(……やっぱりドラを切ったら…遅くても三巡目以内に上がっている……)ふむ…

やえ(私とやった時には決して切る事はしなくて、そこに付け入る隙があると思っていたのに……)

やえ(でも。今は…その隙さえもない……だけど…寧ろそれを逆手に取ることが出来r―――――)


?「小走さん」ぽん


やえ「ひゃいっ!?」ビックーン

やえ「ひ…弘世さんか……もう突然、後ろから肩叩かれたから、吃驚しちゃったじゃないの」どきどき

菫「ああ。済まない。一応、声掛けはしたのだが、返事がなかったからつい」

やえ「ああ、それは悪かったわね。TVに集中してたから気付かなかったわ」

菫「これは…もしかして去年のインハイの?」

やえ「ええ…個人戦決勝のヤツ……」

菫「確か…阿知賀の松美姉妹の妹が勝ったんだったな」

やえ「ええ…私は彼女とちょっと因縁があってね…まぁ一方的なものだけど……」

 


菫「因縁?」

やえ「ええ。私の出身は奈良の晩成って処で、奈良では敵無しの全国出場の常連校だったのだけど……」

やえ「私が先鋒戦で彼女にやられて、そのまま波に乗れずに、地区予選一回戦敗退」

やえ「地区予選の一回戦敗退なんて、晩成の歴史始まって以来の事だった」

菫「…………」

やえ「それが悔しくて情けなくて、申し訳なくて……私は彼女に勝つために研究し研鑚してきたの」

やえ「ほら」すっ…

菫「これは…マメ……?」

やえ「ええ。幼い頃からずっと牌を握り続けて、小3になる頃には出来なくなっていたのに……」

やえ「彼女に勝ちたくて練習してたら…知らない内に、また出来ちゃってた」はは…

やえ「まったく…私は根っからの麻雀バカなのよ」にこ

菫「――――――!!」ドキッ

 


菫「小走さん……」すっ…

やえ(あっ…指を…絡めて……?///////)どきっ

やえ(……細くて…長い指………)

菫「アナタは私が思っていたよりもずっと努力家なんだな……」

菫「私にはこのマメの一つ一つが、とても誇らしいものに見えるよ」にこ

やえ「!!」ドキッ

やえ「そ…そんな事……////」かぁ

菫「あるさ」きっぱり

やえ「弘世さん……」どきどき

菫「アナタの様な人が同じ部の、同じチームの一員である事を…私は誇らしく思う」

やえ「……ありがとう・・…でも…私は……それでも彼女に松実 玄に勝てるか分からない……」

やえ「私みたいな小さな人間が彼女に勝てるのかって思ったら、不安で堪らないの……」

やえ「もう一度対局して…またあの時みたいになるのかと思うt――――」

菫「小走…いや、やえさん」すっ…

やえ(えっ!?顔がちk―――――)


ちゅっ


やえ(―――――!!!!?//////////)

菫「……………ん…んん――――」

やえ(~~~~~~~――――っ!!?///////)

 


ぷはぁっ…

やえ「あ……ひ…弘世さん…な…何を・……//////」

菫「すまない…今のアナタを見ていたらつい……」

やえ「つ…『つい』で貴女は…イキナリ好きでもない女の子キスなんてするの?」

菫「……アナタだからだよ…私は小走 やえという人に惹かれたから…だから…誰にだってという訳じゃない――――」

やえ「えっ!?//////」

菫「小走さん…私は…実を言うと前からアナタの事が気になっていたんだ」

菫「……だけど切っ掛けが掴めずに今に至ってしまった……」

菫「だが…今のアナタを見ていたら…もうそんな事は言ってられなくなった」

菫「私は…アナタの事をもっと知りたい…特別な仲になりたいんだ」

やえ「…………弘世さん……/////」

菫「イキナリ過ぎて…申し訳ない。でも私は―――――」

やえ「………………うん………そういう事ならいいよ……」

 


菫「え!?」

やえ「私もね…実は前々から貴女の事が気になってた……ううん、と言うよりも貴女にして憧れに近い感情を抱いてた……」

菫「憧れ?」

やえ「ええ…私は顔も子どもっぽくて、ナリもこんなちんちくりんだから……」

やえ「どうしても…貴女みたいな、すらっとした凛々しい佇まいの大人っぽい人に憧れてしまうの」

菫「そうなのか…それは知らなかったな……」

やえ「そりゃ…今まで誰にも言ってこなかったからね……ふふ…どうしてかな?貴女には素直にいえちゃった」にこ

菫「―――――!!」どきっ

菫「……でも…アナタは私に対して、そんな事を思っていたのか……」

やえ「ええ…無い物ねだりってやつかもしれないけどね……」

菫「私からすれば、貴女のその可愛らしい容姿は、十二分に魅力的に思えるのだがな……」

やえ「……そんな風に思ってくれてたんだ…嬉しい事を言ってくれるじゃない」

菫「これは偽らざる本心だし…それに今のアナタの努力を惜しまず頑張る姿を見たら、余計にその思いが強くなったよ」にこ

やえ「――――!!/////」かぁぁ

やえ「まっ…まったく口が上手いんだから……でも嬉しい……」

菫「やえさん……」

やえ「これから公私ともよろしくね…菫さん……」すっ

菫「ああ…こちらこそ……」すっ


 

>>17 少しだけ訂正します


菫「え!?」

やえ「私もね…実は前々から貴女の事が気になってた……ううん、と言うよりも貴女にして憧れに近い感情を抱いてた……」

菫「憧れ?」

やえ「ええ…私は顔も子どもっぽくて、ナリもこんなちんちくりんだから……」

やえ「どうしても…貴女みたいな、すらっとした凛々しい佇まいの大人っぽい人に憧れてしまうの」はは・・・

菫「そうなのか…それは知らなかったな……」ふむ

やえ「そりゃ…今まで誰にも言ってこなかったからね……ふふ…どうしてかな?貴女には素直に言えちゃった」にこ

菫「―――――!!」どきっ

菫「……でも…アナタは私に対して、そんな事を思っていたのか……」

やえ「ええ…無い物ねだりって…やつかもしれないけどね……」

菫「私からすれば、貴女のその可愛らしい容姿は、十二分に魅力的に思えるのだがな……」

やえ「……そんな風に思ってくれてたんだ…嬉しい事を言ってくれるじゃない」

菫「これは偽らざる本心だし…それに今のアナタの努力を惜しまず頑張る姿を見たら、余計にその思いが強くなったよ」にこ

やえ「――――!!/////」かぁぁ

やえ「まっ…まったく口が上手いんだから……でも嬉しい……」

菫「やえさん……」

やえ「これから…公私ともよろしくね…菫さん……」すっ

菫「ああ…こちらこそ……」すっ


ちゅっ…


 
 
 



やえ「すべては…あの時から始まったのね……」

菫「………………」


やえ「ねぇ菫さん…この大会が終わったら……」

菫「終わったら?」

やえ「……ううん。何でもない。またその時になったら言う事にするわ」

菫「……そうか。分かった」


…。

すっ…

やえ「……さて…そろそろ行こうかね」

菫「うん。いつものやえさんだ。ご武運を祈ってるよ…もっとも今のアナタには、私の祈りなど必要ないのかもしれないが」

やえ「そんな事ないわ。ありがとう菫さん。私の事…しっかり見ててね」にこ

菫「ああ勿論」こく


やえ「じゃあ…行ってきます」すっ

菫「ああ。いってらっしゃい」すっ




―――――――


 

 

とりあえず、ここまでです
それでは。



対局会場


わぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!


実況『さぁ最後の選手も卓に付き、いよいよインターカレッジ全国大会準決勝戦が始まろうとしています!!』

実況『ここまで勝ち上がって来たこの四人の強者の中で、決勝の卓に辿り着けるのはたったの一人!!』

実況『一体誰がこの戦いを制し、勝ち上がるのか!?』


実況『一番の注目選手は何といっても、前年度インターハイ個人戦の覇者!松実 玄選手でしょう!!』

実況『昨年のインターハイでは、あの今年のインターハイ覇者の宮永 咲選手に加え――――』

実況『その年の高校生実力ナンバーワンと謳われた、荒川 憇選手を抑えての優勝ですから、注目が集まるのも無理はありません!』

実況『彼女自身。勿論、プロ入りの話もありましたが、敢えてそれを蹴って進学の道を選びました』

実況『本人曰く《家業の事もあるから取り敢えず進学しました》との事。因みに松実選手のご実家は、旅館業を営んでいるとの事です』

実況『さぁそんな松実選手は一体、今日はどの様な麻雀を私達に見せてくれるのでしょうか!!』


実況『……………続いて紹介する選手は―――――――』


 




実況『―――――――最後の紹介は最後に卓に着いた、小走 やえ選手』

実況『先日行われたインターカレッジ団体戦で、準優勝に輝いたチームの主力選手です』

実況『そして先に御紹介した松実選手とは、一昨年のインターハイ予選で対局しており、およそ2年振りの対局となります』


玄「お久しぶりですね…小走さん。今日はお手柔らかにお願いします」にこ

やえ「……残念だけど、貴女相手に柔らかくなんて出来ないわ。当り前だけど今日はガッチガチでやらせてもらうから」

やえ「――――あの時の借りを返させて貰う為にね」

玄「それは残念です。でも……これまた残念ですけど―――――」

玄「今日は更に貸しを増やさせて貰いますね」にこ

やえ「上等」ニヤリ

やえ(それでこそインハイチャンプで、私を変えてしまったヤツらしい――――)



実況『さぁいよいよインターカレッジ準決勝戦開始です!!――――――』


ビーーー!!


わあああぁぁぁぁーーーーー!!!!


 



――――。

わーわー


かちゃ…かちゃ…


タンッ――――

玄「―――――ツモ…4000 8000 です」


実況『松実選手!開始早々いきなりの倍満上がりだ―!!!』


やえ(くっ…早い!!流石に一筋縄ではいかないな)

 



―――――。

かちゃ

トン

かちゃ…

やえ(私と対局した時は、ドラは絶対に切らなかったのに、去年のインハイ時の対局を視たのと同じ様に、ドラを躊躇いなく切ってくる……)

やえ(やはり…あの時とは比べ物にならない位に強くなってる……だけど―――――)


やえ(私も『あの時』とは違う――――――!!!!)


玄「…………」

すっ…

タンッ


やえ「ロン12000――――」


玄「!!!?」


実況『小走選手!お返しとばかりに松実選手に親満炸裂ーーー!!!!獲られた分を一気に取り返したーーー!!!!』


玄(やられた!この人…あの時も強かったけど…それより更にすっごく強くなってるのです……)


やえ(まだまだ…これから……私は絶対に負けない!!!)


 



―――――――――――――


実況『さぁこの白熱した戦いももう終盤!いよいよオーラスです!!』

実況『この局の終了時にトップだった選手、一人が決勝の卓に辿り着けるわけですが―――――』

実況『現在トップは松実 玄選手!』

実況『そして二位は小走選手!トップとの差は3700点で十分逆転が可能な点差です』

実況『3位と4位の選手はかなり点差が開いており、逆転するには相当な役が必要な状況になっています!!』



観客席。


由華「……………」

?「オーラスのこの場面。小走さんが崖っぷちだって云うのに、随分と落ち着いているんだね」

由華「渋谷…当り前だろう…私は先輩の事を高校…いや中学の時から、ずっと傍で見てきた」

由華「その私が見る限り…先輩は十分に勝算が有るって表情をしてる様に見える」

尭深「そうなんだ」

由華「ああ。ずっと先輩を見続けて私が言うんだ。間違いない」

由華「それに…何よりも、後輩の私が先輩(あのひと)の勝利を信じないでどうするんだ?」

尭深「そうだね。でも…ホントに巽さんは小走さんの事を慕っているんだね」にこ

由華「慕っているか…そうだな…こんな事を言うのもなんだが…私はあの人の事を、心の底から敬愛している」

尭深「そっか……」

由華「そうじゃなかったら、奈良の片田舎から…こんな東京の弱小だった大学の麻雀部まで追い掛けたりはしない」

尭深「……そう…」

尭深(…………その点は私も…一緒かなのかな……でも巽さん…あなたのその≪敬愛≫する先輩は――――――)

 




由華「だが…私からすれば渋谷。お前の方が私より、落ち着いている様に見えるのだが」

尭深「そうかな?」

由華「ああ。お前にとっても先輩は、同じ部の同じチームの選手だっていうのに」

尭深「そう見えるだけだよ。私だって緊張してるし、勿論。小走さんに勝ってほしいと思ってる……」

尭深「でも…私よりあの人にずっと親しい、アナタが落ち着いているのだから、私もそうしていられるの」

由華「そうか…改めて言おう。心配はいらない。この勝負…先輩が必ず勝つ」ぐっ

尭深「うん」

尭深「ふふ…でも巽さんは小走さんの事なら何でも知ってるみたい」

由華「何でもは知らないさ…知っている事だけだ。それを言うならお前も、弘世さんの事なら何でも知ってるんじゃないのか?」

尭深「えっ!?」

由華「だってお前も…あの人を追い掛けてきたんだろ?」

尭深「……………うん…でも―――――――」


尭深(……私は…あの人の事が知りたいのに、何にも知らない…分からない……)

尭深(あの人も私の事は何にも知らない…それ以前に…あの人は私の事を知ろうとも、分かろうともしてくれない……)


由華「ん?どうした渋谷?」

尭深「…………ううん。何でもない。そんなことより。今は小走さんを応援しないと」

由華「!!ああ…そうだな」


由華(先輩…絶対に勝って下さい―――――)ぐぐっ…


 


?「ついにオーラスか……」

菫「そうですね。先輩」

先輩「点差的には…必ずしも絶望的なものではないが……」

先輩「松実 玄が親でない以上…小走が上がるか、誰かが松実を低からず高からずの役で、直撃しなければならないか……」

菫「ええ。状況だけ見れば…かなり苦しいですね」

先輩「その割には、かなり落ち着いているな」

菫「?小走さんが…ですか?」

先輩「ああ…小走もそうだが。弘世、お前もな…私にはこの状況でも、二人とも負けない自信に満ちている様に見えるが」

菫「……彼女がここまで来るのに、どれだけ努力をしてきたか。そして何よりもその努力に裏打ちされた実力を私は知ってい
ますから」

 


先輩「そうだな……私達のチームがインカレで全国2位になれたのも、彼女の存在が大きかったからな」

菫「ええ」

先輩「勿論。お前や巽に渋谷もよく頑張ってくれたと思っている」

菫「有り難う御座います。先輩」

先輩「ところで弘世……」

菫「何ですか?」

先輩「お前と…その…小走は・…………」

菫「?どうしました?先輩」

先輩「…………いや…何でもない。そろそろ始まるぞ。彼女の努力の顛末を見届けるとしよう」

菫「はい」


 


――。


かちゃ…

玄(どうにかトップを守れてるけど…小走さんの火力…ううん斬力からしたら、こんな点差はないにも同じだよ……)

玄(でも…私は負けない…負けられない!!私はあの時―――――)




あの時(一昨年)。


玄さんのお宅。


玄『えっ!?お姉ちゃん大学行かないの!?』

宥『うん。高校卒業したら…松実館(ここ)でお手伝いしようと思って……』

玄『でも…お姉ちゃん大学行きたくないの?』

宥『そんなことないけど……どうしてもってわけじゃないから……それに…大学に通わなくても勉強は出来るしね』

玄『ホントに…それでいいの?』

宥『うん。これは私の意志だから……だからって訳じゃないけど、玄ちゃんも自分のやりたい事をやってね』

玄『お姉ちゃん……』


玄(あの時…私の中の『何か』が変わった……)

玄(あの時までの私は、気紛れで手元に来た龍を…鎖で繋ぎ止めるだけで精一杯だった……)

玄(だから一度手を放したら、再び手に入れるまで、時間が掛かっていた)

玄(でも…私はあの時から、龍を自在に支配出来るようになった…立場が一気に逆転するかのように――――)



玄(今の…龍の支配者たる私は誰にも負けない。目の前のこの人にも、たとえ誰であろうとも!!)


 



やえ(…………これを切るか……)す…

トン…


やえ(私が成すべき事…それは、松実 玄…≪龍の支配者≫が黒き龍達を揃える前に……)

やえ(私が…≪龍殺しの騎士≫が奴を屠る【装備】を揃える事……)


やえ(イメージしろ……)すっ…


すぅぅぅ……

ぴっちり。

やえ(…………って!何でビキニアーマーなんてイメージしてんのよ!私は!?//////)

かちゃ…

やえ(まぁいいわ……よしっこれで鎧も楯も揃えた…あとは―――――)


やえ(剣か牙か―――――)



やえ(今こそ見せてやろう!死せる王者から甦りし!!)



やえ(龍殺しの騎士の打ち筋を――――!!!!)



 



玄「…………」す…


玄(去年のあの時……)



去年のあの時。


宥『玄ちゃんはプロに行かないの?幾つかお誘いを受けているんでしょ?』

玄『うん…そうだけど……私は大学に行こうと思うんだ…プロになったら純粋に麻雀を楽しむことなんて出来そうにないし……』

宥『そうなんだ』

玄『うん。それにプロなんて今まで考えたこともなかったし…松実館(ここ)の事もあるから……』

宥『そっか…うん。玄ちゃんの好きにすればいいと思う』

玄『ありがとうお姉ちゃん。私はお姉ちゃんの分まで、目いっぱい、麻雀を楽しんじゃうからね』

宥『うん』


玄『私はあの時、決めたんだ。就職しても、プロになっても,う純粋に麻雀を楽しむ事は殆どできなくなる』

玄『だから…麻雀を楽しめる間は目いっぱい、力いっぱい楽しむんだって……』

玄『まだ私には時間はあるのかもしれない…でも…それでも私はこんなところで――――――』


玄『立ち止まる事なんてしたくない――――――――!!!』

トン

実況『おおっと松実選手!ここでドラ牌を切ったーーー!!!』


 



やえ(牙か―――――!!!!)

やえ(これで…全ての装備がそろった!!!!!)すッ…


タンッ

玄「!!!?」ドキッ!!



やえ「ロン………………4200」



ブーーーー!!


実況『決まったーーー!!!小走選手!松実選手の捨てドラ牌を使った牙の槍を、松実選手に突き立てたーーー!!!!』

実況『オーラスの逆転和了で小走選手!!見事に決勝戦進出を決めたーーーー!!!!』

実況『そして昨年のインターハイ覇者の松実 玄選手!!ここで姿を消すことになりましたーーーーー!!!!」


 



―――――。

ぎし…

やえ(……これでやっと…一区切り着いたかな……)ふぅ…


?「小走さん」

やえ「!?」びくっ

やえ「ま…松実 玄…?いや…松実さん……」

玄「お疲れ様でした」ぺこり

やえ「お疲れさまでした…って殊勝だね。自分を負かした相手に改めて挨拶するだなんて」

やえ「それに…負けたのに全然平気みたいだし」

玄「全然…平気なんかじゃないですよ。もう悔しくって仕様がありませんよ。でも――――」

やえ「でも?」

玄「自信を…ううん。勝ちを確信して切ったドラでやられちゃったのが、凄く悔しいのに…でも……」

玄「何故か妙にすっきりした気持ちになって…そう思ったら、どうしても小走さんとお話したくなって……」

やえ「そう……私はあの時、あなたにやられた時は、悔しさを通り過ぎて、自分の人生観も変わっちゃったくらいだったんだけどね」はは…

玄「えっ!?ど…どういう事ですか……?」おろ…

やえ「いや…そう心配そうな顔をしなさんな。結果的に私はそうなって良かったと思ってるから」はは…


 


玄「そうですか……」

やえ「それにアンタはこれから先、もっともっと強くなる。いづれ私の手が全く届かなくなるくらいに……」

玄「え…そんな……」

やえ「だけど…私がアンタと同じ土俵にいる内は、まだまだ負ける気はないから」

玄「私だっていづれとは言わず、次にやるときは必ず勝たせてもらいますから」

やえ「ふふ…そうか……楽しみにしてるよ」

玄「はい」

やえ「あと一つ」

玄「?」



やえ「ニワカは相手にならんよ」ニッ



玄「―――――?」キョトン

やえ「そうハトが豆鉄砲くらった様な顔なんかしなさんな」ぷっ

玄「…………!!」はっ

やえ「あはは」

玄「あははは」


やえ・玄「「あはははははははは」」


 



……。


玄「……でも…あの時から…一昨年のインハイの時に私たちの練習相手をしてくれた時から、ずっと思ってたんですけど……」

やえ「何さね?」

玄「小走さんって、ホントに優しくて…でもそれでいて…とってもかわいい方なんですね」にこ

やえ「!?//////」

やえ「なっ何を言って―――――////」

玄「頼りになる先輩で…お姉さんで……でも―――――」

ぎゅっ…

やえ「―――――なっ!?///////」

玄「こんなにも小っちゃくて…カワイイ……」ぎゅうっ

やえ「~~~~~~~~―――――っ///////」かぁぁぁ

玄「……………………」ぎゅうっ

やえ「ちょっ…ちょっと――――!!」

 


玄「――――!!」はっ

ばっ

玄「ごっごめんなさい!!小走さん見てたら…つい…感極まってしまって……」ぺこり

やえ「ま…まぁ……よく分からんけど…いいわよ」はぁ

玄「本当に御免なさいなのです」しゅん…

やえ「まぁそう気にしなさんな…たまに酔っぱらった時の巽にも、今みたいにされるしな」

やえ(菫さんにもね……)

玄「あ…ありがとうなのです……」


やえ「じゃあ…そろそろ」

玄「あっ小走さん……あの……」すっ

玄「私に勝ったんですから、決勝戦も絶対に勝ってくださいね」

やえ「ん?まぁ約束は出来んが…やるだけの事はやってみるさね」にこ

玄「はいっ!」



玄「あの…あと一つ……」もじもじ

やえ「何さね?」


玄「あの…また今度…どこかでお逢い出来たらいいですね……その…対局場以外で……」

やえ「ああ。そうだな。またどこかで会おう」にっ


玄「はい―――――――――」にこっ


 

今回はここまでです
それでは。



――――――。


巽「先輩!!おめでとう御座います!!」

尭深「お疲れ様です」ぺこり

やえ「ありがとう」

尭深「ふふ…巽さん。まるで…もう小走さんが優勝したみたいだね」くす

巽「ついに…あの憎っくき松実 玄も斃しましたしね!!」

やえ「ん…?でもまぁ憎っくきではないけどね……」

巽「先輩?」きょとん

やえ「いや…何でもない」

巽「とにかくあと一つで優勝ですね!!私…先輩が勝つって信じてますから!!!」

やえ「はは…ありがとう。まぁとにかくやるだけはやるさね」

巽「はい!!」



やえ(……正直…この一戦で、少々燃え尽きてしまった感は否定出来ないが……)


 



?「や…小走さん。決勝進出おめでとう」にこ

やえ「す…弘世さん……ありがとう」にこ


尭深「………………」


菫「これで…アナタの念願の一つが叶えられたな」

やえ「ええ…」

菫「アナタの努力も無駄にならなくて本当に良かった」

やえ「うん……」こく


?「小走…おめでとう。ついにあと一つだな」

やえ「先輩…はい。ありがとうございます」ぺこ


先輩「小走…お前には感謝している。弱小だった麻雀部を…私を全国の舞台に立たせてくれ……」

先輩「それに個人でも、お前がこうしてここまで勝ち進んでくれた。お前には本当に感謝している」ぺこり

やえ「そんな…先輩……それに私だけじゃないですよ」

先輩「ああ…弘世に巽、渋谷。お前たちにも感謝しないとな」ぺこり

先輩「お前たちがいなければ、私はあの…全国の舞台で打つ事など、とても出来なかった」

先輩「私にとって、全国の舞台で打てた時は本当に夢のような時間だった……」

菫・由華・尭深「「「先輩……」」」

菫「私たちも先輩に感謝しています。先輩がいなかったら、私たちがこうしてチームを組む事はなかったかもしれませんから……」



 


先輩「そうか……三年の私はこれで事実上の引退だが、これからはお前たちが、新しいチームを作って……」

先輩「今度こそ全国優勝の出来るチームにしてほしい。そして私はお前たちならそれが出来ると信じている」

やえ・菫・尭深・由華「「「「先輩……」」」」

先輩「頼むぞ!私に…そして我が校の麻雀部にもう一度『夢】を見せてくれ!!!」



菫・やえ・由華・尭深「「「「はい!!!!」」」」




――――。


巽「先輩そろそろ帰りm――――」



やえ「ねぇ弘世さん…ちょっと話したいことがあるの?」

菫「ああ…分かった。じゃあ…ちょっとそっちに行こうか」

やえ「うん」




巽「…………………」



 



――。

菫「それで…話というのは?」

やえ「うん…あのね……私たちの事…何なんだけど……」おずおず

菫「私とやえさんの?」

やえ「うん……そろそろ皆に話してもいい頃だと思うの……」

菫「その事か……」

やえ「うん…もともと秘密って訳でもなかったと思うけど……あの時からああなって……」

やえ「それが余りに突然だったから…皆に言いそびれてしまって…今まで来ちゃったと思うけど……」

菫「……………」

やえ「この大会が終わったら…いい機会だから、話してもいいかなって……」

菫「そうか……」ふむ

やえ「ど…どうかな……?」ドキドキ…






菫「……………いや…このままにしておこう」



 




やえ「えっ!?……ど…どうして……?」

菫「私たちの事を知られると…巽さんあたりが怖いからな……」ふふ…


やえ「こんな時に冗談言わないで」

菫「冗談ではないよ。真面目な話。ここで…こんな事で、私たちのチームの和を崩す訳にはいかない」

やえ「そんなっ…巽はそんなんじゃ――――」

菫「やえさんは『そう』思っているのかもしれないが…彼女自身は本当に【そう】思っているのかな?」

やえ「でも……」

菫「やえさん…分かってほしい。来年は私にとっても、やえさんにとっても、事実上最後の年になる」

菫「それに次こそは全国で優勝出来るチームになれるかもしれない。それなのに…こんなな事で躓きたくないんだ」


やえ「…………それは……」

菫「それに…いかに秘密であろうと…誰にも知られてなかろうと……」すっ…

やえ「あっ……/////」


ちゅっ……


菫「ん……」

やえ「……んん…」

す…

ぷはっ

菫「私のアナタに対する想いは変わらない」キリッ…


やえ「…………はい……///////」ぽー

やえ「わ…私も貴女と想いは一緒だから……//////」

菫「ああ。それでこそ私のやえさんだ」にこ

やえ「はい」にこ




私は…この人に唇を塞がれてしまうと…どうしても何も言えなくなってしまう――――――



 

夜に再開します



――――。


やえ(結局。私の成績は個人戦全国3位に終わった)

やえ(この時の打ち筋に、松実 玄の事や菫さんとの事が影響したのかは判らない)

やえ(……いや、私はあの時も全力を出し切ったし、対局中は彼女たちの事など頭の片隅にも浮かばなかった)

やえ(それ位に集中していたし、相手は格上の選手ばかりだったのだから、純粋に私の雀力がそこまでだったのだろう)

やえ(だから私はこの結果に納得しているし、また次への目標を立てる事が出来た)


やえ(と、いうか…正直に言って…よく此処まで辿り着く事が出来たのだと思う)



 




そして翌日。


先輩「小走」

やえ「はい。何ですか?先輩」

先輩「昨日の事だが、改めておめでとう。よく戦ってくれた。私はお前を誇らしく思う」

やえ「先輩……有り難う御座います。私があそこまでやれたのは、ひとえに先輩のご指導の賜物です」

やえ「先輩には本当に感謝しています」ぺこり

先輩「はは。嘘でもそういってくれると嬉しいな」にこ

やえ「そんな…先輩……」

先輩「そんな事より、弘世たちにはもう伝えたが、今度の合宿の場所が決まったぞ」

やえ「えっ?どこなんですか?」

先輩「奈良の吉野という処だ」

やえ「吉野…ですか?」


先輩「ああ。お前の出身がそちらの方だと聞いて、観光地でもあるし、そこにしようって決まったんだ」

やえ「そうなんですか……」

先輩「まぁお前にとっては里帰りみたいなもので、新鮮味の欠片もないとは思うが……」

やえ「そんな事は……」

先輩「その代りと言っては何だが、今大会のお前の活躍に対して、ご褒美として合宿の交通費と宿泊費を部が負担してくれるんだそうだ」

やえ「えっ!?本当ですか?」

先輩「ああ。チームとしても部に貢献したとして、宿泊費を部が負担してくれるらしい」

やえ「でも…そんな……いいんですか?」

先輩「ああ。勿論だっ…て私が言うのもなんだが、後で領収書を出してくれればいいから、お前はそのまま帰省してくれてもいいんだそうだ」


 


やえ「うーんでも……」

先輩「まぁ。今まで弱小だった部をあそこまで引き上げたんだ。その評価として、今回くらいは甘えさせて貰おうじゃないか」ニッ

やえ「…………そうですね。そうさせてもらいましょう」にこ


先輩「あとだな…宿泊先も既に決まったらしくてな、確か…松実館という名前の結構な老舗の旅館らしい」

やえ「松実館……」

先輩「どうもそこは、麻雀設備にも力を入れているらしくてな、予約さえすれば、結構な数の雀卓を貸してくれるらしいんだ」

やえ「そうなんですか……」

先輩「まぁウチは強豪校ってわけじゃないから、そんなに根詰めてはやらないだろうが……」

先輩「それでも一応、合宿だからな。少しはそれらしいこともしないと駄目だろうからな」

やえ「そうですね……」

先輩「ん?どうした小走。浮かない顔して。何か都合の悪い事でもあるのか?」

やえ「いえ…そういうわけでは……」

先輩「ならいいが…で、出発は一週間後なのだが、予定は大丈夫か?」

やえ「はい。大丈夫です」


 



先輩「そうかよかった…じゃあそう云う訳で頼むぞ?」

やえ「はい。分かりました」

先輩「じゃあ。またな」

やえ「はい…また……」









――――。



やえ「…………………………」




やえ「……松実館…か…………」




おしまい。





 



おまけ。


華菜「玄。改めて。お疲れさまだし」ぺこり

玄「改めて。ありがとう華菜ちゃん」ぺこり

華菜「でも…今思ってもやっぱり準決勝…惜しかったし、もう少しだったし」

玄「うん…でも……相手の人…特に小走さんはとっても強かったし、私の対策を凄くしていたみたいだったから……」

華菜「そうなのか?」

玄「うん…だから、最後に振り込んでしまったのも、負けちゃったのも…たまたまなんかじゃないって思ってるんだ」

華菜「ふーん。実際に対局した玄がそう言うんなら、そうなんだし」

玄「うん」

 


華菜「でも…負けたっていうのに、ナンか嬉しそうに見えるし?」

玄「そうかな?」

華菜「うん」

玄「試合が終わってすぐに小走さんと、ちょっと話したんだけど……」

玄「頼りになる先輩って感じなのに…小さくて、すっごく可愛いい人で、思わずぎゅってしちゃった」てへぺろ

華菜「ふーん。キャプテンみたいな感じなのかな?」

玄「福路さんの事?うーん。そう言えば似てるかもしれない。タイプは違うと思うけど」

華菜「そっか…で、話は変わるけど、玄はこれからどうするし?実家に帰るのか?」

玄「うん。そのつもりだよ。華菜ちゃんは?」

華菜「華菜ちゃんも帰る予定だし。キャプ…福路先輩と一緒に帰る予定だし」


 



玄「そうなんだ、私はお姉ちゃんが今こっちに来てるから、お姉ちゃんの用事が終わったら一緒に帰るんだ」

玄「今…ウチの旅館が忙しいらしくて、来週くらいに大学生の団体さんが、合宿しに来るから手伝えって、お父さんに言われてるのです」

華菜「そうなんだ…玄は実家に帰っても忙して大変だな」

玄「その代り。しっかりアルバイト料は貰うつもりだから」

華菜「はは。のほほんとしてる様でちゃっかりしてるし」

玄「えへへ…」


玄「でもお姉ちゃん…実はこの前の私の対局も、会場で観ててくれていたんだけど……」

華菜「どうしたんだし?」

玄「うん…終わってからどうもちょこっとだけ…様子がおかしい感じで……」

華菜「うーん。玄が負けたのがショックだったのかな?」

玄「…………そうではないと思うんだけど…訊いてもそんな事ないよって言うだけし……」

玄「でも…ほんとにちょっと気になっただけだから…私の気の所為かもしれないし……」

華菜「そうか……じゃあ今夜は、そんな玄のもやもやを、帰省する前に晴らす為に、パーっと一杯やっとくし!」

玄「うん!そうだね。ありがとう華菜ちゃん」にこ




玄(……大学の合宿かぁ…どんな人たちが来るのかなぁ?)ふーむ





おまけのおしまい。



 

これで全部おしまいです
ありがとうございました。

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