小狼「朱鷺戸沙耶と秘宝」 (78)

ツバサ RESERVoir CHRoNiCLEとリトルバスターズ!のクロスみたいなもの

朱鷺戸沙耶ルート
シナリオの中心はアニメ リトルバスターズ!EX
オリジナルは殆ど無いです
設定に少しだけって程度です

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1399191995

モコナ「次の世界に到着~」

ファイ「今度はどんなとこかなぁ?」

黒鋼「俺の居た世界じゃねえな」

小狼「俺の居た世界でもありません」

恭介「ん?見ない顔だな…それにここの学生じゃないようだ」

黒鋼「あぁ?誰だてめえ」

恭介「俺は棗恭介。この学園の三年だ。そちらはどちら様かな?」

小狼「俺は小狼と言います」

黒鋼「黒鋼だ」

ファイ「俺がファイで、この子はサクラちゃん。そしてこの白くて可愛いマスコットみたいなのが」

モコナ「モコナだよ」

小狼「俺たちは旅をしています」

恭介「旅か…」

ファイ「急にここに現れたのに驚かないんだね」

恭介「まあな。別の理由では驚いているがな。それにどうやら次元を渡れるようだな…次元の魔女のお陰か…」

ファイ「へーあの魔女さんのこと知ってるんだ」

恭介「ああ、俺も世話になったからな」

小狼「それでこの世界はどんな世界なんですか?」

恭介「それを教えることは出来ないな。この世界には秘密がある。時が来たら話すことも出来るかもしれない…それまでは教えることは出来ない」

黒鋼「そう言うなら何でだかは聞かねえ」

ファイ「それより俺たちこれからどうしようか。寝泊まりする場所が無いね」

恭介「そうだな。部屋を用意しよう。問題はないだろう」

部屋
小狼「無事部屋を借りることが出来ましたね」

黒鋼「ああ」

ファイ「それより彼何者なんだろうねぇ。次元の魔女さんのこと知っているようだし、俺たちの身の周りのことも普通に対応出来るなんて…」

モコナ「阪神共和国での空太と嵐たちみたいに知っていたのかな?」

ファイ「んー?どうだろうねぇ」

黒鋼「それより姫の様子はどうなんだ?」

小狼「眠ったままです」

ファイ「まあ無理はさせないようにしないとね」

コンコン

恭介「失礼する。この世界を知りたいんだろう。小狼とサクラの制服だ。小狼は明日から通うといい。黒鋼とファイは学生でもないだろう。用務員になって貰う。これで校内は自由に動けるだろう」

小狼「ありがとうございます」

ファイ「はーい。黒様と一緒かぁ」

黒鋼「用務…員て何だ?」

恭介「形だけの話だ。特別なことはない」

黒鋼「ならいいけどよ」

恭介「じゃあゆっくりしてくれ」

ファイ「本当何者なんだろう彼」

黒鋼「さあな」

小狼「今日はもう休みましょう」

ファイ「それもそうだね」

モコナ「モコナ、サクラと寝るー」

ファイ「モコナ、今日はサクラちゃんとは我慢してね」

モコナ「はーい。じゃあ黒鋼とー」

黒鋼「何で俺だよ!」

モコナ「黒鋼こわーい。やっぱ小狼と寝ることにするー」

小狼「おいでモコナ」

モコナ「わーい」

小狼「それではおやすみなさい」

ファイ「おやすみー」

黒鋼「ふん」

翌日
小狼「おはようございます」

ファイ「おはよう小狼君」

モコナ「黒鋼起きてー」

黒鋼「起きてるよ白饅頭!」

モコナ「わお」

ファイ「さて折角恭介君に服も用意して貰ったから、今日は情報収集でもしようか」

小狼「はい。まずはどんな世界なのか知らないと」

黒鋼「まあそーだな」

モコナ「モコナはモコナはー?」

小狼「モコナはさくら姫をお願いします」

モコナ「分かった。モコナちゃんとサクラのこと見てるね」

小狼「頼んだよモコナ」

モコナ「任せて」

校地内
ファイ「学校かー。何を学ぶのかなぁ?この世界は魔法ないようだし」

黒鋼「俺が知ったことか」

ファイ「でも何か…」

黒鋼「違和感があるって言いてえんだろ」

ファイ「流石黒様…あ、すみませーんちょっとお尋ねしたいんですけどー」

2-A教室
教師「珍しい時期にだが転校生だ」

小狼「小狼と言います。よろしくお願いします」

教師「席は朱鷺戸の隣だな」

小狼「はい」

小狼「小狼です。よろしくお願いします」

沙耶「朱鷺戸です」

昼休み
小狼(折角周りに人がいるんだ。話を聞いてみよう。まずは隣の席の朱鷺戸さんだ)

小狼「朱鷺戸さん」

沙耶「何かしら?」

小狼「この世界のことについて色々知りたいんですけど」

沙耶「世界ってあなた面白いことを言うのね。まあいいわ。ここは___」

部屋
サクラ「……?」

モコナ「サクラ目が覚めた?小狼たちは今この世界を探索?してるからいないよ」

サクラ「そうなんだ」

モコナ「サクラ、お部屋でゆっくりしてね」

サクラ「うん」

放課後 部屋
小狼「目が覚めましたか?」

サクラ「うん」

ファイ「あ、サクラちゃん目が覚めたんだ」

サクラ「あのこれ…」

ファイ「この世界のって言うか、学校の制服なんだ。黒様のは用務員の服だってー。似合ってるよねぇ」

モコナ「似合ってるー」

黒鋼「うるせえ」

ファイ「それでどうだった?小狼君学校はー」

小狼「少しは分かりました。この国の言語や数学、歴史といったものを学びました」

ファイ「じゃあ学校自体の存在は普通のようだねぇ」

黒鋼「俺たちが聞いたこともそんなところだ。特に何か巧断や魔法があるって訳じゃねえ。刀や武器も持ってねえしな」

ファイ「特に何もなく、他の国ともあまり根にある文化は変わらない世界っていうのも珍しいねぇ」

黒鋼「それで明日からどうすんだ。羽根探すんだろ?」

小狼「はい、これから学校に忍び込んで探してみようと思います」

モコナ「探すのー」

ファイ「いいんじゃないかな。夜は人もいないようだしね」

モコナ「皆寝てるのかなー?」

黒鋼「夜ならそうだろうな」

サクラ「小狼君大丈夫?」

小狼「大丈夫です。姫は皆と待っていてください」

サクラ「でも…」

小狼「羽根は必ず取り戻します」

黒鋼「そう言うのなら無事に帰ってこいよ」

小狼「はい」

校舎入口
小狼「この建物の中に羽根があるかもしれません」

ファイ「この学校と言うかこの世界何か違和感あるんだよねぇ」

黒鋼「ああ」

小狼「モコナ、羽根の気配は?」

モコナ「分からない。でもすごく大きな力を感じる」

小狼「どこから?」

モコナ「…下」

小狼「では見てきます」

サクラ「気をつけてね小狼君」

小狼「はい」

ファイ「いってらっしゃい」

廊下
モコナ「暗いね」

小狼(確かに暗いな…人の気配も感じない。いや…)

バッ!

小狼「!?」

モコナ「わっ!?」

??「何故この時間に校舎にいる」

小狼「誰だ?」

??「振り返らずに廊下を走り切り正面の非常口から外に出ろ。手を離したらスタートだ。いいな」

小狼「…」コクリ

??「よし行け」

小狼「…」ダッ

非常口 外
小狼「ハアハア…何者だろうか?さっきのは」

モコナ「モコナも分からないよ」

小狼「ここで戻る訳にはいかない。探索の続きを」

パンッ!

小狼「今のは銃声か?行ってみよう」

廊下
小狼「……。何だこれは…生徒…手帳?」

モコナ「小狼どうするの?」

小狼「取り敢えず探索は続ける」

モコナ「やっぱり下からすごく大きな力を感じる…」

小狼「そうか、ここは特に何もなさそうだ」

小狼「ここはどうだモコナ?」

モコナ「下にすごく大きな力を感じるだけ…どこも変わらないよ」

小狼「そうか…探索は一旦終わりにしようか。戻ろう」

部屋
ファイ「おかえり小狼君。どうだった?」

サクラ「小狼君大丈夫?」

小狼「大丈夫ですよ。ただ何者かに襲われました」

モコナ「急に倒されてモコナびっくり」

小狼「それと生徒手帳というものを拾いました」

黒鋼「生徒…手帳?」

小狼「身分証明のようなものです」

ファイ「誰のかな?えーと、朱鷺戸…沙耶って子かなぁ」

小狼「朱鷺戸沙耶?」

黒鋼「知ってるのか」

小狼「はい、同じクラスの隣の席の方です」

サクラ「じゃあ明日渡した方がいいね」

小狼「はい」

翌日 2-A教室
教師「昨日に続いてまた転校生だ」

サクラ「サクラです。よろしくお願いします」

教師「席は笹瀬川の隣な」

サクラ「はい」

休み時間
小狼「朱鷺戸さん」

沙耶「はい?」

小狼「これ、生徒手帳です。落としていましたよ」

沙耶「え?ん…んー…あれ?ない…」

沙耶「ありがとう」

小狼「どういたしまして」

沙耶「……」

沙耶「あ…次の休み時間屋上で待ってます」

小狼「?…分かりました」

屋上
小狼「何でしょうか」

沙耶「あなたは死ぬのよ」

小狼「え?」

沙耶「あなたはこれから死ぬの。可哀想に」

小狼「俺が死ぬ?」

沙耶「夜中に校舎をうろついていたからでしょうねあなたは今夜にも拉致されるでしょう。闇の執行部に」

小狼「闇の…?」

沙耶「そして尋問を受ける。夜の校舎で誰と会ったかを」

小狼「朱鷺戸さんだったんですか。あそこにいたのは」

沙耶「え?まさか気付いてなかった!?」

小狼「はい」

沙耶「墓穴掘った…」

小狼「朱鷺戸さん?」

沙耶「ええそうよ。勘違いして墓穴掘ったのよ。滑稽でしょ、笑えるでしょ、笑えばいいじゃない!」

小狼「何があったか分からないですけど落ち着いた方がいいと思いますよ」

沙耶「どっちにしたって闇の執行部はあなたを尋問してそこにいたのはあたしだということを探り当てるわ。鼻の利いた猟犬の様に、購買部に新メニューが出ることを知る生徒たちの様に」

小狼「いや、あの」

沙耶「だからあなたはここで死ぬの…ここで…」

小狼「…!」ガシャン

沙耶「ゲームスタート」

小狼「あ、うわっ」

小狼「朱鷺戸…さん?」

沙耶「ふん」ゲシッ

小狼「何か勘違いしている。俺は君の敵じゃないし、何も話しません」

沙耶「薬には抵抗出来ない」

小狼「誰がそんなものを」

沙耶「闇の執行部」

小狼「聞いたことがない」

沙耶「あなたは黙って死ぬの」カチャ

小狼「銃ですか…」

沙耶「そうよ」

小狼(手が限界だ…)

黒鋼「小僧ー。何してやがる」

小狼(黒鋼さん!)

小狼(受け止めて下さい。お願いします)バッ

部屋
小狼「…ん」

黒鋼「小僧大丈夫か?」

小狼「ありがとうございます黒鋼さん」

黒鋼「なら、んな危ない真似すんなよ」

小狼「黒鋼さんを信じてましたから。本当にありがとうございます」

黒鋼「ふん」

小狼(黒鋼さんがいなければ本当に死ぬところだった。闇の執行部とは何だ。それにあんなにタイミングよくフェンスが外れるなんて)

3年教室
小狼「恭介さん…聞きたいことがあります」

恭介「何だ?」

小狼「闇の執行部とは何ですか?」

恭介「闇の…執行部だと!?その名をどこで聞いた?」

小狼「朱鷺戸沙耶さんからです」

恭介「小狼、二度とその言葉を口にしない方がいい」

小狼「やはり何かあるんですか?」

恭介「奴らは俺の天敵のような存在なんだ。俺の弱点を知り尽くしている」

小狼「恭介さんの弱点を…」

恭介「妹…鈴の存在だ。俺が何かしようものなら鈴が無事ではいられない。闇の執行部には何一つ出来ないんだ」

小狼「…」

恭介「いいか、どんなことがあっても奴らとは関わるな。それとももう何か起きてしまっているのか?」

小狼「大丈夫です」

渡り廊下
小狼(恭介さんはもちろん、さくらを巻き込むわけにはいかない)

シューン

小狼「!?」

影「お前は例の者と接触した。奴は誰だ?」

小狼(ここは逃げるべきだ)ダッ

野球部部室
小狼(あれが闇の執行部なのか)

シュワーンシュワーン

小狼「ここにも…」

小狼「うっ…あっあぁ…(首が絞まって…)」

ファイ「ふっ」シュバッ

小狼「ハアハア…ありがとうございます」

ファイ「大丈夫?悪戯にしてはたちが悪いねぇ」

小狼「ファイさんがいなければ危なかったです」

ファイ「誰かが部室の裏を走っていったねぇ」

小狼「どんなやつですか?影、それとも女の子ですか?」

ファイ「妙なことを聞くねぇ。だけど答えは両方かな。人影で更に俺の目が確かなら恐らく女の子だよ」

小狼(ファイさんの目に狂いはないはず。朱鷺戸沙耶だ。また俺を殺そうとしたのか。自殺にでも見せかけて。罠はまた張られるだろう。救われるという偶然が2度続いたが、3度目はないだろう。折角だ。この金属の棒を持っていこう)

小狼「探そう彼女を」

校地内
小狼(屋上に人影?)

小狼「!?」ダッ

ガシャン!ビリビリ!

小狼(電柱が倒れてきた!?まずい、避けないと…)

シュッ

小狼「!?」ビチャビチャ

小狼(塩水?濡れれば通電しやすくなるからか…)ダッ

小狼(考えろ、考えるんだ)

小狼「!?あれが電気の流れる元か!この棒を投げれば…」シュッ

ガシャーン

小狼「よし、落ち着いた。今の内に」ダッ

部屋
小狼「ハアハア」

沙耶「小狼君あなた面白いわ」

小狼「!?」

沙耶「あたしはもうあなたを殺さないことにしたわ」

小狼「本当ですか」

沙耶「あなたは3度あたしの罠を掻い潜り生き抜いてみせた」

小狼「2度は助けられましたが」

沙耶「それもあなたの力だと思う。あなたはそういう星の元に生まれて来た人間なのよ。あたしに必要なものを持っているんだわ」

小狼「何が言いたいんですか」

沙耶「あたしと手を組まない?」

小狼「朱鷺戸さんに殺されかけた俺と?」

沙耶「パートナーが欲しいの」

小狼「随分と都合のいい話ですね」

沙耶「交渉決裂なら今夜あなたは奴らに…闇の執行部に囚われる。どうするの?あなた一人では逃げきれないと思うわよ」

小狼「逃げ切ります」

沙耶「そ。案外固い頭してるのね。せいぜいやってみることね。たった一人で」バタン

タタタタタ ガチャ!

沙耶「やっぱり駄目!あたしは運が悪いの!人類史上最悪と言ってもいい運の悪さなのよ!ラッキーボーイが必要なの!」

小狼「ええ!?」

沙耶「パートナーになりなさい。でないと殺す!今すぐ殺す!取り敢えず殺す!」

小狼「えっと…」

パン! パン!

シュワーン シュワーン

沙耶「奴らよ!モタモタしないで!」

タタタタタ パン!パン!

沙耶「早く!」

草陰
沙耶「分かったでしょ?あなたはもう執行部にマークされているの」

小狼「え?」

沙耶「あたしのパートナーになるしかないのよ。分かった?あなたはあたしと手を組むの。えと、名前何だっけ?」

小狼「小狼です」

沙耶「じゃ、小狼君」

小狼「その前に君は何者なんですか?」

沙耶「あたしは諜報員。いわばスパイよ」

小狼「…」

沙耶「どこの機関所属かは聞かないでくれる?」

小狼「目的は?」

沙耶「聞き分けが良くて助かるわ。移動しながら説明するわ」

沙耶「私の目的はこの学園に隠された秘宝」

小狼「秘宝?この学校に埋蔵金か何かが?(もしかしてさくらの羽根?)」

沙耶「いいえ、そんな単純じゃない。革命的な秘宝よ。具体的にはまだ教えられないわ」

小狼「その秘宝を探して夜の校舎を歩いていたのか。闇の執行部とは一体何ですか?」

沙耶「彼らはこの学園の秩序を守るものよ。何か問題が起きたら人知れず、彼らがなかった事にするの。手段は選ばずに」

小狼「彼らは人間なんですか?」

沙耶「彼らは一応この学園の生徒、またはOBと言われているわ。体は別に存在するのよ」

小狼「体と影は別々なのか」

沙耶「ここよ。探しに探して遂に目星をつけた」

目的の教室
沙耶「この教室に入口があるはず」

小狼「入口?」

沙耶「地下へ入る入口よ」

小狼「地下へ?(もしかしたらモコナが言っていたところに出るかもしれない。羽根があるかもしれない)」

沙耶「あたしが入口を探すから、小狼君あなたは奴らを足止めして。はい、銃」

小狼「分かりました」

沙耶「取り敢えず当たればどこでもいい」

小狼「しかし、影の本人に影響は?」

沙耶「無いわ」

小狼「そうですか」

沙耶「頼んだわよ」

ゴト

小狼「床が沈んだ?

沙耶「何かの仕掛けなのよ。お宝の入口が隠されているはず。こっちとこっちでは沈む深さが違うのね。何故かしら?」

小狼「場所によって沈む深さが違う…」

沙耶「どうやら沈む範囲は限られているようね」

小狼「外周のタイルは同じ圧力で深く沈む。中心に近づくと深さが変わっていく…、その床をならすにはどうすれば…ピラミッドです!」

沙耶「ピラミッドを作ってどうするの?」

数分後

小狼「これが最後の一つです」

ガタガタッ

小狼「後ろの黒板からですね」

沙耶「入口を探すわ」

シュワーン シュワーン

沙耶「影よ!小狼君撃って!撃つのよ!」

小狼「はい」パンッ!パンッ!

沙耶「…あった入口よ!」

小狼「危ない!」パンッ! パンッ!

沙耶「早く小狼君!」

小狼「はいっ」

沙耶「この奥にあるのよ秘宝が!」

迷宮内
沙耶「この向こうに迷宮が広がっているのよ」

小狼「こんなところに迷宮があるなんて…凄い」

沙耶「この一番下の階にあたしの探している秘宝がある。注意して、いつ奴らが襲って来るか分からないわ。闇の執行部は秘宝を守るためにあたしたちの命を奪うつもりなの」

小狼「…」

沙耶「行きましょう」

小狼「はい」

最初の迷宮
小狼「これは?」

沙耶「二つの扉の内どちらかが下に降りる階段へと通じているはずよ。さ、どちらに進む?間違えるとトラップに掛かって死ぬわ。あなた選びなさい」

小狼「俺…ですか?」

沙耶「他に誰がいるのよ。あなたはあたしの仕掛けた罠を何度も潜り抜けた。そういう運の持ち主なのよ。あなたは死なないわ。そういう人なのよ。だから連れて来たのよ」

小狼「そうなんですか」

沙耶「早く決めなさいよ!」

小狼「分かりました。左に行きましょう」

沙耶「小狼!」バッ

小狼「うわ!」バタッ

小狼「朱鷺戸…さん?」

沙耶「頭下げて!」

シュッ ゴーン ゴロゴロゴロゴロ

沙耶「大きな岩が転がってきたわ!隣の部屋に行くわよ!」

小狼「!?」

沙耶「早く!ぺしゃんこになりたいの?」

右の部屋
小狼「俺の勘は外れましたよ」

沙耶「でも死ななかったでしょ」

シュー シューーー

小狼「何だこの音?」

沙耶「ガスの臭いよ!」ダッ

小狼「ここもトラップか…」ダッ

次の部屋
小狼「?」

蛇「シャー」

沙耶「キャー」ダッ

小狼「くっ」ダッ

タタタタタ

次の部屋
ビリビリ ビリビリ
沙耶「キャー」

小狼「電流!?」

タタタタタ

次の部屋
バッ

沙耶「?」

小狼「床が開いた!?」

沙耶・小狼「うわぁー」シュー

沙耶「うっ…何とか地下三階まで辿り着いたようね。やっぱりあなた運がいいようだわ」

小狼「これでも…ですか?」

沙耶「連れて来たあたしの作戦勝ちということね」

小狼「しかし凄いトラップですね。誰が何のために作ったのでしょうか?」

沙耶「さあね。それはあたしにも知らされていないわ」

小狼「そうですか」

沙耶「どんなスパイも拷問されて敵に漏らす危険がある以上余計な情報は与えられていないの。もし、何か知っていてもあなたに教えるはずがないわ。あたしが住んでいるのは歪で非情なスパイの世界なの。時には恩人を捨て駒にすることもある。愛する人を死地に追いやることも。それが出来ない者は死ぬしかないの」

小狼「…」

沙耶「さ、次は地下四階よ。ここから更に厳しくなるわ。一度降りたら何日後に戻って来られるか…覚悟するのね」

グゥー

沙耶・小狼「…」

沙耶「ええ、そうよ!お腹が鳴ったのよ!悪いかしら?ここへ来るまで何日も徹夜だったのよ!その間何も飲まず食わずで必死に!」

小狼「ここから先が長いとしたら一旦戻って食料を調達した方がいいんじゃないですか?秘宝に辿り着く前に空腹で倒れたりしたら元の子も…」

沙耶「そうねぇ、って何あなたが仕切ってるのよ!あたしが決めることでしょ。そうよ!長時間の探索に備えて、水に食料、装備を整えて出直しましょう。明日の放課後、ここへ来るまでに買い出しに付き合うこと。言っておくけど待ち合わせの時間は厳守よ!」

部屋
小狼「今夜は遅くなります」

ファイ「そうなのー?忙しいねぇ」

小狼「はい、すみません。それでさくらを頼みます」

ファイ「OK~任せてよ。黒様が」

黒鋼「俺だけに押し付けんな!」

小狼「ではいってきます」

ファイ「いってらっしゃーい」

モコナ「気をつけてねー小狼ー」

集合場所
小狼「遅いな。まさか…奴らに!」

トコトコ

沙耶・小狼「…」

沙耶「うう……そうよ!これは袖を当てて寝てたあとよ!無防備に眠りこけてたのよ!あなたに時間厳守と言っておいて…滑稽でしょ、間抜けでしょ、笑いたいでしょ、笑えばいいわ!あっーはっはっはっはっは、あっーはっはっはっはっは、あっーはっはっは」

小狼「はい?」

沙耶「…もしかして、頬のあとに気づいてなかった?」

小狼「そ、そうですね」

ガクッ
沙耶「寝てた…」

小狼「それは人ですから」

沙耶「スパイともあろう者が遅刻したのよ…」

小狼「それよりも無事で良かったです。奴らに捕まったのかと本気で心配しましたから」

沙耶「え?…あなた、じわじわ来るのね。いっそ笑い飛ばしてくれた方がありがたいんだけど」

小狼「ふふ」

沙耶「あ、あなたといると何か調子狂うわ。とっとと行きましょう」

小狼「…はい」


小狼「水はこれ位ですか。後は食料ですね」

沙耶「…」

小狼「どうしました?」

沙耶「べ、別に何も見てないわよ」

小狼「これは何ですか?これに興味があるんですか?」

沙耶「ゲームよ。興味なんてないわ。見るからに下らなさそうじゃない」

小狼「やったことないんですか?」

沙耶「そりゃスパイなんだからそんな暇は…」

小狼「少しだけやってみたらどうですか?これ手に入るようですし」

沙耶「ぬいぐるみなんて欲しい訳ないでしょ。あたしはスパイなのよ」

ピコン
沙耶「ん、ぐぬぬ。いけっ!」カチャ

沙耶「いけっ!そこだ!いっけぇぇぇ!」

ピロピロリン

沙耶「よっしゃとったぁぁぁ」

沙耶「くぅぅ、たまんないわあ」

小狼(スパイとはこんなに目立って良いのでしょうか?)

沙耶「次はどいつを頂こうかしら?」

ピコン カチャ ピロピロリン

沙耶「きたぁ!あたし超天才ー!」

帰路
沙耶「要は空間把握能力ね。何のために訓練を受けて来たかっての」

小狼「立派に役に立ちましたね」

沙耶「このために…って何でこんな所でスパイの能力を遺憾無く発揮してるんだあたしはー!」

沙耶「ふ、ふふ、滑稽でしょ。背後から刺されまくっても気づかない位だったのよ。馬鹿丸出しね。笑うがいいわ、ほら笑なさいよ!あっーはっはっは、あっーはっはっは」

小狼「いいじゃないですか、息抜きというものですよ」

沙耶「あれ?小狼君はプレイした?」

小狼「いえ、見ていただけです」

沙耶「一人で遊んでたー!」

小狼「でもいいじゃないですか。沙耶さんを見ていただけで俺も楽しかったですから」

沙耶「そ、そう?」

小狼「はい」

沙耶「全く、本当あなたといると調子狂うんだから」

迷宮階段
沙耶「さ、準備も万端。今夜こそ秘宝まで辿り着いてみせるわ。小狼君、覚悟はいい?」

小狼「はい大丈夫です」

沙耶「あら、頼もしいわね」

沙耶「それじゃ行くわよ」ツルッ

小狼「あ…」

沙耶「あっと…おっととととととととと」

小狼「えと…」

沙耶「う、うう」

小狼(階段で滑って躓くなんて、沙耶さんは自分で思っているよりもずっと危なっかしい人だな)

地下迷宮
小狼「行き止まり…」

沙耶「どこかに下に降りる階段が隠されているはずよ」

小狼「どこに…」

沙耶「探しましょ」

小狼「(不思議な模様だ)もしかしたらこれがヒントなのか」

沙耶「小狼君!来たわ、奴らよ」

小狼「はい」

シュワーン シュワーン シュワーン

沙耶「ふっ」パンッ! パンッパンッ!

小狼「…!」

沙耶「あなたは階段探して!あたしが援護するわ」

小狼「分かりました!」

パンッ!パンッパンッ! パンッ!パンッパンッ!

パンッ! パンッ!

小狼(このタイルがヒントになっているのは間違いない。だが、数が多すぎる)

小狼「!これは…そうか…ということは」

小狼「やっぱり…ここだ」ガコッ

ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

小狼「見つけた!沙耶さん!」

沙耶「くっ」パンッ!パンッ!

小狼「!?」

沙耶「先に行ってて、あたしはこいつらを…」

小狼「沙耶さん!」

沙耶「ああっ!(くっ、抑え込まれた)」

小狼「はあっ」パンッパンッ!

沙耶「…あ」

沙耶「よし、抜け出せた。今よ!ふっ!」パンッ!パンッパンッ!

小狼「ふう」

沙耶「また来たわよ!」

小狼「こっちです早く!」

地下階段
沙耶「ハアハア…危なかったわ。でも流石にここまでは追って来られないでしょうね」

小狼「怪我はないですか?」

沙耶「掠っただけよ。何ともないわ」

小狼「良かった…」

沙耶「あなたがいなかったら今頃あたしは…」

小狼「ふふっ」

沙耶「な、何よあたしの顔に何かついてる?」

小狼「いえ」

沙耶「けど、何かしらこの熱気」

小狼「俺もさっきから気になっていました…」

地下迷宮
沙耶「へ?」

小狼「これって?」

沙耶「そうか、この地下迷宮には熱湯を貯める場所があるってデータを入手していたの。ここだったんだわ!…丁度いい湯加減…あなたがいなければ中に入って顔も体も洗えるのに…」

小狼「いや、遠慮しなくていいですよ。その様子だとかなり気持ち悪いでしょう?」

沙耶「そうだけど…」

小狼「入っても安全かどうか俺が確かめます」ジャブジャブ

沙耶「どうやら安全のようね」

小狼「問題なさそうです」

沙耶「入ってもいいのかしら?」

小狼「ええ」

沙耶「ん……」

小狼「あ…見ませんから」

沙耶「絶対?」

小狼「絶対です」

沙耶「小狼君なら信用出来そうね」

小狼「俺は周りを見張っています」

沙耶「約束よ。見たら殺すから」

沙耶「はぁ…、いい気持ち」ジャブ

沙耶「まさかこんな所でほっこり出来るなんて…普通は上が空なんでしょ?」

小狼「空?そうなんですか?」

沙耶「そうらしいわ。確か露天風呂と言うはずだわ。一度でいいから入ってみたいわ」

小狼「…」

沙耶「夢が叶うのがいつになるか…のんびり温泉に旅行するとかそういう生活とはあたしは無縁だから。素敵なんでしょうね。上が星空だったら」

小狼「そうでしょうね。きっといいものだと思います」

小狼「そうだ、そろそろ食事にしましょう。お腹空いたんじゃないですか?」

小狼「はい、お水です」

沙耶「ありがとう」

小狼「何かピクニックみたいですね」

沙耶「ちょっと楽しいと感じない?」

小狼「そうですね」

沙耶「ふと思ったのよ。これがスパイごっこだったら最高なのにって…」

小狼「かも…しれませんね」

沙耶「この任務が終われば息つく暇もなく次の場所へ向かうことになるのよね」

小狼「次の場所?」

沙耶「いつものことよ。ミッションが終わればもう二度と小狼君に会うことはなくなる」

小狼「俺と似ていますね。俺は旅をしているんです。大切な人の大切なものを取り戻すために…」

沙耶「そう…なんだ」

小狼「そうして、たくさんの世界を渡り歩いてきました。別れは必ず来ますが、だからこそ俺はまた会えると思います。沙耶さんともまたいつか会えると思います」

沙耶「そっか…」

小狼「どうして泣いているんですか?」

沙耶「泣いて…なんか…」

小狼「えーと、まだまだ先はありますからしっかり休みましょう」

通路
小狼(この地下迷宮はどこまで続いているのだろうか。奥に隠されている秘宝とは何なのか。そして、スパイと名乗る沙耶さんは一体何者なのだろうか。何もかもがまだ謎だ)

沙耶「次は地下五階よ。どこかに階段があるはずよ…何よ?」

小狼「いえ」

沙耶「いつ奴らが襲ってくるか分からないのに、あなたときたらまるで緊張感ゼロなんだから。だから素人は困るのよ。そんなんで秘宝でも見つけられるとでもぉっーと…」コケッ

小狼「…はは」

沙耶「…あなたのせいよ!あなたがあたしを見てるから」

小狼「まあまあ。!あれを見てください」

沙耶「ん?」

小狼「天井に紐のようなものが」

沙耶「多分引っ張れば入口が開くんでしょうね」

小狼「しかし届きそうにないですね」

沙耶「肩を貸して」

小狼「はい」

沙耶「上に乗るから」

小狼「では、どうぞ」

沙耶「いいわ、立って」

小狼「はい」

沙耶「そのまま、うぅ。あとちょっとだわ。小狼君ジャンプするから」

小狼「ジャンプですか?」

沙耶「いくわよ!うおぉぉぉーっく!ふん。ふーんくっ!でやっ!」ガコンッ

沙耶「よっしゃー」

ゴゴゴゴゴゴ

沙耶「行きましょ」

小狼「はい」

地下迷宮
小狼「何でしょうか、あれは」

沙耶「見た通り石像ね」

カタ カタカタ ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

小狼「動いた!?」

沙耶「ふふっ、力対力。直接対決ってことね」

小狼「倒しましょう」

沙耶「そうね。こいつを倒すしか先に進めないもの。小狼君は攻略法を探して。あいつを止める鍵があるはずよ」

小狼「分かりました。沙耶さんの力を信じます」

沙耶「あたしが戦わなくて誰が戦うのよ。素人でもなし、簡単にやられるかっての。いくわよ!」ダッ

ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

沙耶「このクソ野郎!」パンッ!パンッ!

沙耶「チッ」ダッ

ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴ パンッ! パンッ! ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴ パンッ!パンッパンッ!

小狼(…あれは剣?)

沙耶「くっ…」

ガシッ
小狼「こっちだ!俺が相手だ」

ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴ ゴトゴト

沙耶(あの構え方、小狼君戦い慣れしている?)

ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴ キンッ!
沙耶「いぃぃぃぃぃうわぁぁ」
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴ キンッ!

沙耶「!」

ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
沙耶「うわぁぁぁぁぁ」スポン

沙耶「?(これは…鍵穴みたいな?)小狼君剣を投げて!」

小狼「分かりました!」ヒュッ

ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
沙耶「よし」パシッ

沙耶「うあぉぉぉー」シャキン

ズゴゴゴゴゴドドドドドドド ドーン
小狼「沙耶さん!」

小狼「石像が崩れて扉が」

沙耶「…っ」

小狼「足を怪我したんですか?」

沙耶「そうみたい」

ヒョイ

沙耶「な、何するのよ」

小狼「こんな所に奴らが来たら一たまりもないですよ」

沙耶「お、おおお降ろしてよ!立てるから!」

地下迷宮
小狼「しかし何で石像の側に剣があったのでしょう?」

沙耶「え?」

小狼「この迷宮はどこか侵入者を弄んでいる体があると思いませんか?」

沙耶「まあ、そうね…。そんなことより先に進みましょう」

小狼「はい」

最後の迷宮
沙耶「あそこに最後の難関が待っているわ。あれに触らないで通り抜けなきゃならないわ」シュッ

シュバーン

小狼「石がビームで砕けた!?」

沙耶「そう」

小狼「どうしましょうか」

沙耶「行くしかないわ!」ダッ

小狼「分かりました」ダッ

シュー ビー ポーピー沙耶「ふっ!よっ!っと!ふっ!はっ!う!わあ!」シュー ビー ポーピー小狼「ふっ!はっ!」ビー

シュゥゥゥゥー

沙耶「っと」タタ

小狼「…」タタ

沙耶・小狼「ほっ…」

沙耶「とうとう来たわね。最終決戦の場に…」

小狼「最終決戦?」

沙耶「最下層の秘宝に着く前にここで奴と戦うことになるわ」

小狼「奴?」

沙耶「闇の執行部の幹部、この世界最強のラスボスよ。あの先で待っているはず」

沙耶「ねえ小狼君。この地下迷宮に眠る秘宝って何だと思う?」

小狼「え?」

沙耶「金銀財宝のようなものじゃなく革新的なものらしいわ」

小狼「そうですか…俺は探しているものがあります。大切な人の、とても大切なものです…それは世界を動かすことも出来る力を持つと言われています。ここに眠っているものがその探しているものだったら…と俺は思います」

沙耶「そうなの。そんな力があるなら、アメリカもロシアも躍起になるわけだ」

小狼「本当にそうなんですか?」

沙耶「さあ?どうかしらね」

小狼「沙耶さんは何だと思いますか?」

沙耶「そうねえ、あたしの推測ではね、秘宝はタイムマシン…」

小狼「タイム…マシン…」

沙耶「もし手に入ったらいつに行きたい?」

小狼「俺は………秘密です」

沙耶「そう。何かあるのね。まあ、聞かないでおくわ」

小狼「ありがとうございます。沙耶さんは?」

沙耶「そうねえ、あたしは小さな時に戻りたいかな…そしてやり直したい」

小狼「そうなんですか」

沙耶「さ、この話は終わり。行きましょう。待っているわ黒幕が」

??「黒幕?お前に言われたくない」

沙耶「出たわね。この世界最強のラスボス」

??「俺は闇の執行部部長 時風瞬」

小狼「…」カチャ

時風「ほう…様になっているな」

沙耶「良いのよ小狼君…」

小狼「…」スッ

シュゥゥゥ

小狼「時風が奥へ…」

沙耶「小狼君。ここからはあたし一人で行くわ」

小狼「一人で…?危険です!」

沙耶「分かっているわ。でもルールなの。この世界のルールに従った上で達成しなければ秘宝は手に入らない…」

小狼「…」

沙耶「…」トットットットッ

小狼「沙耶さん!」

ガララララ ガチャン

小狼「扉が閉められた!?」

沙耶「小狼君、いつかまた会いましょう。必ず」

小狼(最後の言葉…約束)

沙耶「ふっ…」カチャ

沙耶「消えやがれっ!うおらぁぁぁぁぁぁぁ」

パンッ! パンッ! シュゥゥ パンッ!

沙耶(約束したから、また会える…また…)

パァァァーン…

沙耶(会えるの…きっと…)

小狼「沙耶さん…沙耶さぁぁぁぁぁん」

GAME OVER
→ REPLAY
GAME END

G A M E S T A R T

廊下
沙耶(そしてあたしはまた小狼君を待つ)

モコナ「暗いね」

小狼(確かに暗いな…人の気配も感じない。いや…)

小狼「!?」

モコナ「わっ!?」

沙耶「何故この時間に校舎にいる」

小狼「誰だ?」

沙耶「振り返らずに廊下を走り切り正面の非常口から外に出ろ。手を離したらスタートだ。いいな」

小狼「…」コクリ

沙耶「よし行け」

小狼「…」ダッ

沙耶(小狼君…あたしのパートナー)

シュワーン シュワーンシュワーン

カチャ パァァッン!

______
沙耶(母親はいなかった。父親は貧しい人たちを治療する医者。4歳のあたしを連れてこの国へ来た。あたしはいつも一人だった。銃撃戦、毎日誰かが死んでいく。乾いた日常の唯一の救いは日本人ボランティアが置いて行った本。あたしはその漫画学園革命スクレボを数え切れない程読んだ。)

沙耶(やがて外国での仕事を終えた父はあたしを連れて生まれたこの国へ帰った。ここはその日の飲み水の心配をする必要もない夢の様な国)

そんなある日

ザーザー ゴゴゴゴゴゴゴゴゴドシャー

沙耶「…」

父「あやぁー!あやぁぁー!あやぁぁぁー!」

沙耶(冷たい…)

ザァァァーザァァァー
_________

パァッン!パンッパンッ!

沙耶「くっ…」パンッ!パンッ!パァッーン!

沙耶(あたしはまた同じ光景を繰り返していた)

_________

小狼「朱鷺戸さん」

沙耶「はい?」

小狼「これ、生徒手帳だ。落としていた」



沙耶(小狼君に会うのは何度目だろう?)

小狼「秘宝?この学校に埋蔵金か何かが?(もしかしてさくらの羽根?)」
_________

沙耶(小狼君は知らない。同じ冒険が何度となく繰り返されていることを…あたしはいつも不安になる)

沙耶(そして…)

小狼「沙耶さん!沙耶さん!」

沙耶(あたしは死ぬ。何度も死ぬ。その繰り返し)

GAME OVER
REPLAY
GAME END

沙耶「アホかあたしはぁぁぁぁー!」

GAME END?

沙耶「Why?」

→REPLAY

沙耶「これで何度目!?あたしは死にまくって何をしてるんだ!」

G A M E S T A R T

時風「ふん。また来たのか。いつまで繰り返す気だ?」

沙耶「まるでクソゲーね。失せろこの野郎!」パンッ!パァーン!ドカッ!

沙耶「うっ!」

時風「無駄だ。この世界のゲームマスターは俺だ。お前に勝ち目はない。お前はここにいてはならない存在だ」

沙耶「分かっているわ。あたしはこの世界のイレギュラー。いつかは消えなくてはならない。いいわ。次のゲームオーバーで本当の終わりにするわ。消えてあげる。だから最後にもう一度だけトライさせて。あと…一度でいい」

沙耶(とうとうラストゲーム。もうリプレイはない。今度こそ終わりだ。小狼君といられる最後の時間。こんなに楽しい時を一緒に過ごすのはもうこれが…)

小狼「どうしたんですか沙耶さん?」

沙耶「あなたいつの間にあたしのこと沙耶さんって」

小狼「いつからでしょう?」

小狼「…!?どうして泣いているんですか?」

沙耶「泣いて…なんか…」

迷宮
小狼「俺たちとうとう秘宝に辿り着くのでしょうか?」

沙耶「…」

小狼「沙耶さん…秘宝って一体何でしょうか」

沙耶「そうねぇ…タイムマシンとか?」

小狼「タイムマシン?」

沙耶「もしそうだったら小さな時に戻ってみたいな。そしてやり直したい。子供の頃から…」

沙耶「さあ!行きましょう!最後の決着をつけに」

小狼「最後の決着?」

沙耶「あいつを倒さなければならないの…小狼君。あたしの切り札になってくれる?」

決着の場
トットットットッ

時風「…」カチャ

時風「THE ENDだ…と言いたい所だがこんな茶番に付き合わされるとはな」

小狼「…」

時風「囮作戦か…引っかかるとでも思ったか?」

小狼「…」

沙耶「あなたの負けよ時風瞬!」カチャ

時風「ほう…何故?」

沙耶「あなたは小狼君が邪魔であたしを撃てない。角度を変えてもあたしは常に対角線上に動く。それぐらいの反射神経持ってるわ」

時風「つまり囮ではなく仲間を盾にしたのか」

沙耶「ええ」

時風「どうして俺が撃てないと思う、お前のパートナー」

沙耶「色々な状況を鑑みてね。あなたは撃てないわ小狼君を」

時風「じゃあ撃とう」

小狼(俺が撃てばいい。しかしこの人は影ではない…生身の人間だ)

沙耶「小狼君!その人は死なない、安心して!」

小狼「ふっ」パァッン!

コロン カランカラン

小狼(銃声は三発…三人がほぼ同時に撃った!?)

小狼「沙耶さん!無事ですか?沙耶さん!」

沙耶「無事よ…」

小狼「撃たれたんですか!?」

沙耶「擦り傷よ…大したことないわ。あなたは?」

小狼「大丈夫です。あの人は?」

沙耶「とうとう勝ったわ…」

小狼「…」

沙耶「二人の銃が左右の肩を撃ち抜いたのよ。でも死んではいない。暫くしたら起き上がるでしょう」

小狼「この先はどうしますか?秘宝がある最下層にはどうやって」

時風「奥に最下層へ行くエレベーターがある」

沙耶「それはどうもありがとう」

小狼「待ってください。罠という危険性は?」

沙耶「大丈夫」

時風「もう罠も仕掛けもねえよ。そいつは俺を倒した。秘宝を得る権利を勝ち取ったんだ」

沙耶「そういうことよ小狼君。それがこの世界のルールなんだから」

トットットットッ ポーン

エレベーター
小狼「いよいよですか」

沙耶「秘宝は最下層地下六十階にあるわ」

小狼「六十階?」

沙耶「…」

小狼「…?」

ポーン

小狼「秘宝はあの中ってことですね」

地下六十階
小狼「もっと荘厳な感じかと思ってました」

沙耶「あたしが入るわ」

小狼「え…?」

バタン カチャリ

小狼「…」

パチッ パチッ カチャン

沙耶「…」

チッ パチッ ウィーン

沙耶「あ…」

小狼「沙耶…さん?」

沙耶「…」

小狼「どうしたんですか?怪我ですか?沙耶さん?聞こえてますか!何があったんですか!返事をしてください!」

沙耶「小狼君…冷静で…っていつも冷静か…聞いて欲しいの。秘宝は生物兵器だったの…」

小狼「生物…兵器…」

沙耶「だからここでお別れよ…」

小狼「そんな…」

小狼「出てきてくださいよ!何が起きたか説明してください!」ドンッドンッ

沙耶「小狼君…あたしと出会うルートはBAD ENDなのよ…」

小狼「…」

沙耶「そういう終わりしかここにはないの」

小狼「終わり…?」

__________

時風「あと一度だけ…か…。どうやらお前は真実に気づいているようだな」

時風「朱鷺戸沙耶は俺の愛読書、学園革命スクレボの中の登場キャラクター。たがいつの間にか事故で亡くなった少女の魂がこの世界へ迷い込み朱鷺戸沙耶を名乗り活動を始めた…」

沙耶「知っていたわ…。あたしはここにいてはいけない存在。いつかは消えなければならない。だから…だからっ…あんなに頑張ったじゃない!だって恋も初恋も知らないまま死んじゃったんだから!こんな所にあたしが駆け抜けたかった青春が、こんな優しい世界があったから…分かってるわ。皆優しいことを…あなただってあたしを消そうと思えばいつでも消せたはずよ。あたしの気が済むまで待っていてくれたんでしょ。心配は無用よ。あたしは自分で消えるわ」

時風「どうやって」

沙耶「あなたはゲームマスター。秘宝も思い通りの物に出来るのよね?」

時風「ああ…秘宝の正体はまだ原作でも明かされていないからな」

沙耶「秘宝を生物兵器にして…そしたらあたしは冒険を最後までやり遂げた喜びを抱いたまま…この世界から消えることが出来るわ」

時風「本当にそれでいいのか?」
__________

小狼「くっ!はあっ!」ドンッドンッ

沙耶(ごめんね小狼君。遊びに付き合ってくれてありがとう。今日という一日をありがとう。これがこの世界の去り方…)

沙耶「ふぇっ…ふぇっえぇぇ、ふぇぇぇぇん…(あれ?泣かないつもりだったのに…あたしはこんなにこの世界を大好きだったんだ。この優しい世界で小狼君と同じ時間を過ごした。あたしの青春…精一杯小狼君と駆け抜けた。ありがとう小狼君…)」

小狼「…(何故銃を頭に向けているんだ…)」ドンッドンッ


パァッン!

銃声が響いた

そして俺は目を覚ましました

小狼「ん…」

モコナ「あ!小狼起きたー」

ファイ「目が覚めた?小狼君」

サクラ「大丈夫?小狼君…」

小狼「姫、ファイさん、黒鋼さん、モコナ…」

恭介「…」

小狼「恭介…さん…」

恭介「そうだ小狼…闇の執行部の連中が出し抜かれたという話を聞いた」

小狼「…!」

恭介「追跡中だった要マーク人物朱鷺戸沙耶というスパイがまんまと逃げたらしい」

小狼「逃げた?」

恭介「小狼…無くなっていたんだ」

小狼「?」

恭介「闇の執行部が所有していたタイムマシンが無くなっていた…俺がそう言ったら信じるか?」

小狼「…」

恭介「何者かが乗って逃げた痕跡があったらしい…」

小狼「そうなんですか…(良かったですね沙耶さん)」


恭介「行くのか?」

小狼「はい…どうやらこの世界に俺たちの探しているものは無かったですから…」

モコナ「うん。もう特別な力感じないよ」

ファイ「残念だけどねぇ…」

黒鋼「無駄足かよ」

サクラ「でも小狼君の表情は晴れてるね」

小狼「ここで出会った方の願いがきっと叶ったはずですから」

サクラ「そうなんだ」ニコッ

ファイ「次はどんなところかなぁ」

黒鋼「知るかよ」

小狼「恭介さん、身の周りのことありがとうございました」

恭介「ああ…」

ファイ「恭介君たちもうまくいくといいね」

恭介「そうだな…」

モコナ「」ガバァ

恭介「この先も気をつけてな」

小狼「はい」

恭介「…行ったか」

恭介「ふ…一つ目的が成された。さて、俺も真の目的を果たさなければな…」

______________________________

??「あたし生きてる?そんな馬鹿な…あれ?小さな手だな…」

父「起きたかい?あや」

あや(沙耶)「…」

父「どうした?夢でも見てたのかい?」

あや「とても長い夢だった…地下の迷宮を探検して銃撃戦するんだよ。あたしにはパートナーがいたの」

父「そうなのかい。そうだ、またあの子が来ているよ。こっちに戻ってから毎日遊んでいる男の子。お父さんの予想ではあやのことが好きなんじゃないかな?」

あや「ふぇ!?」

父「ほら、早く行きなさい」

あや「うんっ!」

ガチャッ

あや「あっそぼー!りっきくーん!」

あや・理樹「あはははは、あははははは」


終わり

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小狼「三年三組と災厄」 - SSまとめ速報
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元々一作目はこっちの予定だったけど製作中に先にAnotherのクロスが完成したんだよなあ

オリジナルのシナリオは中々作れない…
オリジナル作れるといいなあと…

我ながら中々羽根が関わらない
羽根の存在はある意味自由に改変出来るから出せそうで案外扱いが難しい

次の作品は出せるといいなあ(次回作があるとは言ってない)

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