イケメン「ドラえもん」男「のび太の、僕の人生ってなんなのさ」(86)


男「──はぁ…」

男(そりゃ授業中に居眠りしてたのは悪いんだけどさ)

男(今時、バケツ持って廊下に立たせるかね…)

男(小学校ならともかく、もう高校生だぞ)

男(また女さんに笑われちゃったなぁ…)


キーンコーンカーン…


男(あ、授業終わりか)


DQN「おう、男。いいザマだったな」

チビ「へへっ、だっせえ」

男「ほっといてくれよ」


チビ「お前、本当にすぐ寝るよな」

DQN「それしか特技無いのかよ」

男「はいはい、どうせ無いよ」


チビ「ずいぶん気の無い返事だな、男の癖に生意気だぞ」

DQN「まあいい、帰りがけカラオケ行こうぜ」

男(げっ、勘弁してくれよ。お前、嘘みたいに下手くそじゃないか)


チビ「カ…カラオケはこの前行ったからさ、ボウリングどうかな」

DQN「ああ? …まあ、それもいいか。男も来るよな?」

男「…解ったよ、行くから」


チビ「だからその言い方が生意気だってんだよ」

男「行きます、行かせて下さい」

DQN「よし、じゃあ1ピン10円な」

チビ「ええ? みみっちいな…100円でいいじゃん」

DQN「あんまり額がでかくなると男には払えなくなるからな」

チビ「それもそうか」

男(…まあ、カラオケを回避して1ピン10円なら許容範囲かな)


……………
………


…夜、男の自宅


男(…結局、2000円以上負けちまった)

男(4ゲームもやるなんて、聞いてないっての)

男(女さんは今日も秀才と下校してたし)

男(……なんで俺ってこんなにいいとこ無しなんだろ)


…ジャキッ

バスッ!バスバスッ!

クルクルクル…カチャッ


男(…この時代、こんな世の中でエアガンの射撃が得意だったからってどうなるってんだ)

男(そういやガキの頃は母さんに習ってあやとりなんかもやってたし)

男「ははっ…のび太君かっての」


男(俺が野比のび太だってんなら、もう一人無くてはならないキャラがいるだろ)

男(青いカラーリングのタヌキ型ロボットがよ)

男「この机の引き出しがタイムマシンで──」ガラッ


──ヒョコッ


?「あれ? いいタイミングだな」

男「うわあああああぁぁあぁぁぁっ!?」

?「悪い、脅かしたか。ちょうどのタイミングで引き出し開けてくれるから、なんか勘付いてるのかと思ったぜ」

男「ちょ、誰!? …え!? なんで引き出し…! どうやって!?」


?「ああ…いっぺんには説明しづらいんだけど、アレだ。一言で表すなら…ドラえもんだよ」

男「馬鹿言え! ドラえもんなんか本当にいるかよ!」


ドラ「まあな、この時代にはいないわな。でも原作の通り22世紀にはいるわけよ」

男「そ…そりゃ、いつかはあんなロボットだって開発されるかもしれないけど…」

ドラ「おう、そこを理解してくれりゃ後は早い。つまりあの話の通りだよ、タイムマシンで来たんだ」


男「夢でも見てんのか…俺は…」

ドラ「夢じゃないと思うぞ。ここは21世紀の日本、お前は『男』だろ?」

男「そうだけどさ…」

ドラ「喜べ、お前の未来を良いものにするために派遣されてやったんだ。概ねの理由とかは原作知ってりゃ解るだろ」

男「まじかよ」

ドラ「いいねぇ、その驚いた間抜け面。いかにも常識の範疇を超えた事象に遭遇したって顔だ」


男「だ、だってよ…俺の知ってるドラえもんはタヌキみたいだけど猫型ロボットだぞ?」

ドラ「ああ、俺も一応原作はざっと把握してる」

男「お前、どうみても人間じゃねーか。髪や上下の服の色は青でインナーが白…その配色以外ドラえもん要素ぜんぜん無えぞ」


ドラ「まあ…そこはな、さすがに22世紀でもあそこまで複雑な思考回路をもったロボットは出来てないんだ」

男「じゃあ、お前はやっぱり人間なのか」

ドラ「試験管培養だけどな。遺伝子は人間のそれと同じだよ」


男「未来では倫理的な問題は無いのかよ」

ドラ「クローンやアンドロイド。技術が確立されていくほどに、そういう倫理観は薄れていくものさ」



男「でも、じゃあお前…ドラえもんといったら…」

ドラ「おう、そうだよな。信じてもらおうと思ったらそれが一番手っ取り早い」バサッ

男(上着の下…白いシャツに半月型のポケットが…!)


ドラ「何がいい? やっぱアレか? 原作の第一話で出した……よっと」ゴソゴソ


…ピョン、キコキコキコーン!


ドラ「ヘリトンボー」

男「タケコプターじゃないのか」

ドラ「いや、最初はそう呼んでたみたいだからさ。まあ、タケコプターだよ」


男「…でも、それが本当に飛べるのかは置いといたとして。その大きさだとポケットから出てきても驚かないじゃん?」

ドラ「飛んでみりゃいいだろ」

男「そりゃそうだけど、どこでもドアみたいなデカい道具を小さなポケットから出せば、それで納得するだろ」

ドラ「しょうがねえな…」ゴソゴソ


…ピョン、キコキコキコーン!


ドラ「どこでもドアー」

男「小せえよ、普通にポケットに入る大きさじゃねえか。これでどうやって使うんだよ」


ドラ「文句多いな…ちっとは頭使えよ」

男「お前、言っとくけどここ二回連続で胡散臭さの方を高めてんだぞ」

ドラ「いいから、次があんだよ」ゴソゴソ


…ピョン、キコキコキコーン!


ドラ「ビッグライトー」

男「ただの懐中電灯にしか見えねえよ。何がしたいかは解るけどさ」

ドラ「解ってんなら黙ってろって」ピカー


…ホワワワワワーン


男「うお! どこでもドアがデカくなった!」

ドラ「当たり前だろ。実際ポケットから出した瞬間に元の大きさに戻るなんて、出しにくくてやってらんねえよ」

男「ま、まあな…」


ドラ「後はこのどこでもドアで、本当に移動できたら信じるしかねえだろ?」

男「ああ…って、ちょっと待て! 行き先はどこだ!?」

ドラ「あ?」


男「それ、まさかどこかの家の風呂場に通じてねえだろうな!?」

ドラ「しずかちゃんの家のか?」

男「俺には源しずかなんて知り合いはいないけど、もし高校生がああなったら社会的に死ねるぞ」


ドラ「心配すんな、座標を設定しなきゃどこにも通じてねえよ」

男「えらく現実的な夢のマシンだな」

ドラ「行った事も無いのに、思い浮かべただけでそこへ着くようなアバウトな機械ねーよ。そんなん事故多発過ぎるわ」


男「それもそうか…で、座標は?」

ドラ「携帯持ってるよな? この時代のツールでも緯度経度の座標くらい調べられるだろ」

男「ああ、そういう…ちょっと待ってくれ」


ドラ「高さは自動的にそこの標高に調整されるし、何か物と重なる時も勝手に修整されるから心配すんな」

男「んじゃ…北緯20度25分32秒、東経136度4分52秒


ドラ「…なんかエラー出たぞ」

男「沖ノ鳥島なんだけど」

ドラ「秒単位だと30mくらいのズレがあるからな。たぶんそれ海の上か、設置不可なくらい凸凹なとこだ。真面目にやれ」


男「わかったよ…北緯25度ちょうど、東経20度ちょうどならどうだ」

ドラ「お、通じた。ヤバイ場所じゃないだろうな?」

男「大丈夫だよ、たぶん」

ドラ「よっしゃ、開けるぞ」


…ガチャッ
ヒュウウウウゥゥゥゥウゥゥ…


男「……すげえ、まじでサハラ砂漠の真ん中に通じやがった」


パタンッ…


ドラ「信じたろ?」

男「ああ…信じるしかねえな」


ドラ「そういうわけだ、まあよろしく頼む」

男「つまり俺の子孫が、俺の将来を良くするためにお前を送った…そういう事なんだな」

ドラ「その通りだ」


男「で、まさかお前は押入れに住むとか」

ドラ「そういう設定だからな」

男「原作の設定とか、気にしなきゃいいんじゃないのか?」

ドラ「それじゃ面白くないだろ」

男「面白い面白くないの問題なのか? まあ、俺はいいけど…家族がどう言うかな」

ドラ「そんな時はコレよ」ゴソゴソ


…ピョン、キコキコキコーン!


ドラ「桃太郎印のきびだんごー」

男「それ、食ったやつ家来にすんじゃねえのか」


ドラ「家来っつーか、仲間にするんだよ。動物なら超馴れた状態に、人間なら家族や友達みたいに仲良くな」

男「なんか微妙に原作とは違うような」

ドラ「何もかもが漫画の通りにはならないって。道具をしまっておく時のサイズもそうだったろ?」


男「じゃあ、もしもボックスみたいな無茶苦茶な機械は?」

ドラ「もちろん無えよ。あんな技術は開発されてないし、あっても規制を通らなくて当たり前だ」

男「ある意味良かったよ。あんな世界を終わらせられる機械が出来てなくて」


ドラ「実際、俺が今ポケットに入れてるのは『通り抜けフープ』とか『お座敷釣り堀』みたいな平和的な道具ばっかだな」

男「ガリバートンネルとかは?」

ドラ「未来にはあるけど持ってはないな。機能がスモールライトやビッグライトと被ってるから、意味ないし」

男「なるほど」


ドラ「それでもこの時代だ、どこでもドアやタケコプターだけでも使えりゃ相当モテるだろ?」

男「そうかもな」


ドラ「お前、このままじゃ将来はDQNの妹と結婚すんだぞ。頑張って明るい未来に変えてこーぜ」

男「げっ、まじかよ」


ドラ「漫画みたいに説教臭い事は言わないから、上手く道具を使って環境を変えて…」

男「上手く…なぁ」

ドラ「もちろんその結果、お前が人間として成長できりゃそれが一番だ」

男「……なんか、にわかには信じられないけど。すげえチャンスな気がする」

ドラ「当たり前よ、タイタニックくらいの大船に乗ったつもりでいろって──」

《つづく》


……………
………


…翌日、学校


男(──すげえ)

男(今回のテスト、完璧だ)

男(昨夜の内にテスト範囲全体を暗記パンで覚えたから…)


女「…男君、なんか嬉しそうだね?」

男「ああ、ちょっと今日のテストは自信があってね」


DQN「ぎゃははっ! 2~3問くらい解るのがあったってか」

チビ「男なら0点じゃないだけで好成績だもんな」


男「言ってろよ、思い知らせてやるから」

DQN「お…おう…?」

チビ「なんだ今日のこいつ、こんな堂々とした奴じゃないはずなのに」


女「ふふ…でもオトコらしくて素敵よ」

男「そ、そうかなー! あははは…」


………


…放課後


DQN「よし、今日はお好み焼き屋に寄って帰るぞ!」

チビ「男は金が無いだろうから、優しい僕達が奢ってやるよ! へへへっ!」

男「それ、元々は俺の金だろ…」


DQN「賭けで勝った金を、負けた奴のためにも使ってやる思いやりが解らねーのか」

チビ「この恩知らず!」

男「はいはい…」


チビ「あれ…? なんか校門のところに人だかりができてない?」

DQN「女子がいっぱい集まってんぞ、俺様の出待ちか!?」

男(…よく言うわ)


キャー カッコイイー!
アオイ カミ ガ ステキー!
コッチ ムイテー!


男「ど…ドラえもん!」

DQN「ドラえもん?」

チビ「あの青い服着てる奴?」


男(いけねえ、あんまり開けっぴろげにしない方がいいか……なんで来てんだよアイツ)


男「い、いや…服のカラーがドラえもんっぽいなーって」

チビ「なんかこっち見て、手を振ってんぞ」

DQN「男、知り合いか?」

男「いや、全然──」


ドラ「──おう! お疲れ、男!」


男「うん、知り合いだった。間違いない」

DQN「なんか変な髪の色だけど、すげえイケメンだな…」


男「お前、なんで学校まで来たんだよ」

ドラ「悪い、母さんに買い物頼まれてさ」

男「はぁ? きびだんご効きすぎだろ…」


チビ「男の家のおつかいに行くって、知り合いってか…何? 家族?」

DQN「男の身内なら、こいつも俺様の子分だな!」


ドラ「まあまあ、お近づきの印に」

チビ「なんだこれ? きびだんご?」

DQN「きびだんごとか要らねーし、俺様はこれからお好み焼きを──」


ドラ「そう言うなって」グイッ

DQN&チビ「お、おい…むぐっ」ゴクンッ

男「ちょ、おいっ…!?」


チビ「……これが運命の出会い?」

DQN「心の友よ…!」ガシッ

ドラ「いやー、心の友とか照れるな。ヨロシク頼むわー」キラッ


男「お前…周りの女の子達にもきびだんごを?」

ドラ「馬鹿言えよ、これは俺自身の魅力の賜物だ」


DQN「よし、今日はお前にも奢ってやる! お好み焼き屋行くぞ!」

チビ「ぼ、僕も出すよ…!」

ドラ「そうか、悪いなあ」


男「お前、ちょっとこっち来い」グイッ

ドラ「おっ…? ど、どうしたよ」


男「どうしたじゃねえよ。お前、アイツらにも自分の正体バラす気か」

ドラ「だって原作でもジャイアンやスネ夫はドラえもんの事知ってるだろ」

男「漫画と現実は違うだろ、大騒ぎになるぞ」


ドラ「ならねえって、あいつらは原作通り俺の正体を知っても言いふらしたりはしないはずだ」

男「なんでそんな確信をもってるんだよ」

ドラ「調査済みだからだよ。それにいざとなったら俺の道具でなんとでもなるって──」


……………
………



男(──結局、ドラえもんはDQNやチビ、そして女さんと秀才にも自らの正体を明かした)

男(もちろんそれを知るのは俺の両親も含まれる)

男(いつの間にかドラえもんは、まさに原作のように家族の一員的なポジションを獲得していた)


男(俺は不安だったが、経過は確かにあいつの言う通りだった)

男(真実を知らされた者達は突拍子もない話に驚きつつもそれを受け入れ、特に今のところ変な噂が広まる気配は無い)


男(そこに秘密道具の力が働いているのかどうかは判らない)

男(訊いてみたところで、ドラえもんはのらりくらりとはぐらかすばかり)

男(次第に俺は一人で気を揉んでいるのが馬鹿らしく思えてきた)



男(ただ、その限られた人々…言わば原作での主要キャラ的な立ち位置の者以外に対しては、ドラえもんは正体を明かそうとはしなかった)

男(どこでもドアにせよタケコプターにせよ、目立つ道具を使用する際は必ずセットで『石ころ帽子』を併用する)

男(もちろんその脱着なども、かなり厳重に周囲を確認して行う)


男(ドラえもんの持つ道具は様々あるが、確かにそれらは平和的で日常を楽しく彩ったり便利にしたりという種のものに限られているようだ)

男(なんだか俺の人生を良いものに変えるために来訪した…というよりは、あまりに楽しく不思議な友達が増えただけという感が否めない)

男(とにかく見た目の違いはあれどいかにも『ドラえもん』的な、ドタバタとした驚きに満ちた日々はこうして幕を開けたんだ──)

《つづく》


……………
………



男「ドラえもーん」

ドラ「どうしたんだい、のび太くん」

男「のび太くんじゃねーし」


ドラ「様式美ってやつだ。で、どうした」

男「DQN達が俺を置いてテーマパークに遊びに行っちゃったんだ…」

ドラ「ハネにされたか、可哀想に。メンバーは?」

男「DQNとチビ、それだけなら行きたくもないんだけど女さんも行くって」


ドラ「へえ、なんでお前は置いてけぼりにされたんだ」

男「チビの家の車で行くって言うんだよ、五人乗りの」

ドラ「じゃあチビと両親、DQNと女さんで五人いっぱいか。約束してたのに後から除け者にするなんて酷いな」


男「いや、約束はしてない」

ドラ「ん? じゃあ、いつ決まった話なんだ?」

男「春休みくらいから計画してたらしい」


ドラ「お前は計画に参加しなかったのかよ」

男「誘われたけど、その時は女さんが来る予定なかったんだ」

ドラ「酷くないな、それ。当たり前の結果だわ」


男「そこをなんとか」

ドラ「なんとかも何も、どこでもドアしかねーだろ。ほらよっ!」


ピョン、キコキコキコーン!


男「よーし、テーマパークの中に…」

ドラ「ちょっと待った、それは犯罪だからゲートの前な」

男「ええ…堅い事言うなよ」


ドラ「だめなんだよ。ドラえもんはお子様向けでもあるんだから、そういう法に触れるズルは禁止だ」

男「ちぇっ、あんまりお金無いんだけどなー」

ドラ「それなら誘われてても最初から行けなかったんじゃねーか」

男「うっせ、無理すりゃ何とかなるよ」


ドラ「よーし。んじゃ、俺の分まで頼むわ!」

男「はぁ!? ふざけんな、そんな余裕ねえよ!」


ドラ「断ったら本当に除け者にした分、DQNよりよっぽどタチが悪りーぞ」

男「チッ、しゃあねえ…」


…ガチャッ


男「ここなら目立たなさそうだな」キョロキョロ

ドラ「早くしろ、ドアを片付けなきゃいけねえ」

男「解ってるって、あっちがゲートだな…」


男「おーい、みんなー!」

DQN「あっ! 男…お前どうしたんだよ」

チビ「来ないって言ったくせに、さてはどこでもドアだな」

女「まあいいじゃない、メンバーは多い方が楽しいよ」


男「さっすが女さん、話が解る。というわけで、入ろうぜ」

DQN「調子のいい野郎だぜ」

チビ「よーし、隠れ◯ッキー探すぞー」


ドラ「…おい」

男「ん? どうしたよ、ドラえもん」


ドラ「ここ、まさかあの腐れネズミの夢の国じゃねえだろうな」

DQN「まさか、ドラえもんってやっぱりネズミ嫌いなのか」

ドラ「当たり前だ、耳かじられた記憶は無くとも、ドラえもんたる者ネズミだけは許しちゃおけねえ!」


◯ッキー「ハハッ! ようこそ、夢の国へ!」

ドラ「出やがったな、化けネズミ!」

◯ッキー「おやおや、君のその青と白のカラーリングは◯ナルドのイメージかな?」

ドラ「ふざけんな! 日本人にとって永遠のマスコットはドラえもんなんだよ! 海外ネズミはすっ込んでろ!」


◯ッキー「ドラえもん…? ハハッ、あのタヌキかい?」

ドラ「やろう! ぶっ殺してやる!」

男「やめろよ、マスコット同士の争いは醜いものだ──」


……………
………



ドラ「すげーな、資料で見た通りのレトロな街並みだ」

男「この時代はこれで普通なんだよ」

ドラ「解ってるって、馬鹿にしてるわけじゃない」


男「まあ、そこの八百屋は今の風景からしてもレトロだけどな」

ドラ「八百屋…? なんか、見た事ある奴がいるぞ」

男「…アイツの家だからな」


DQN「お? 男とドラえもんじゃねーか、ウチの売り上げ貢献に来るとは感心な事だぜ」

男「買わないけどね」

DQN「ざけんな、このメロンくらい買ってけっつーの」


ドラ「うお、このメロン五千円もするぞ。美味いんだろーなー」

DQN「味は保証付きよ、ウチは悪い品は置かないぜ」

男「だから買わないって」


ドラ「メロンがこのキュウリくらいの値段なら買うんだけどなー」

DQN「無茶言ってんじゃねえ」


男「…まさか、何か手があるのか?」

ドラ「へっへっ…よく訊いてくれたな」ゴソゴソ


ピョン、キコキコキコーン!


ドラ「ウルトラミキサァー」

DQN「おい、ウチの商品に変な真似すんなよ」

ドラ「見てなって、このキュウリとメロンを両側に当てて…」ペタッ

男「あっ、両方消えた…!?」

DQN「ちょっ…!」


ドラ「はい、出来上がりー」ジャーン

男「いや、それキュウリじゃん」

ドラ「食ってみな」


男「ええ…塩も無いのにキュウリ食うのかよ」ムシャ

DQN「ど、どうなんだ…?」


男「メロンだ、味も香りもとろける舌触りも…完全に高級メロンだ」

ドラ「だろ? これでキュウリの金さえ払えばオッケーってわけよ」

男「うん、こりゃ三本で198円の価値は充分あるわ。はい…DQN、代金ね」

DQN「毎度あり」


ドラ「せっかく三本あるんだから、みんなで一本ずつ食べようぜ」

男「金払ったの俺だぞ…まあいいか、ほら二人ともどーぞ」

DQN「悪いな、頂くぜ」


ドラ「そんじゃ」

男「DQN、また明日」

DQN「おう」


DQN「………」


DQN「…あれ? なんかおかしいような…?」

釣りロマンばかりでこっちは更新しないの?

>>49
申し訳ない
だいぶ書き溜めてたが、読み返すと納得がいかなくなって手直し中です
後半に矛盾が生じなくなると判断できたら、その分ずつ投下します


……………
………



DQN「うおお…明日から期末考査か…憂鬱だな」

チビ「終われば楽しい夏休みだよ。僕は半ば頃からはオーストラリアでスキーの予定なんだぜ、ヘヘッ」

DQN「それくらい楽しい事が控えてりゃ、気持ちも明るいかもしれねえがな…」ゲッソリ


男「まあまあ、期末考査なんてなんてこと無いって」

女「あれ、男くん余裕あるね」

チビ「気持ち悪いな」


DQN「分かってんのか、明日はいきなり英語からだぞ? 俺、野菜の英名ならよく解るんだけどなぁ」

チビ「言えても書けないくせに」

DQN「うるせえ」ボカッ

チビ「痛い! 乱暴だなあ…」


秀才「ははは、だけど今のはチビ君が悪いと思うよ」

男「やっぱり秀才は余裕しゃくしゃくだね」

秀才「そんな事ないよ」


男「でも今回は負けないぜ」

秀才「…不敵だね」

チビ「なんだよ、男のくせに」


女「ぷっ、あははっ…面白い事言うね!」ケラケラ

男「笑うなんて失礼だな、女さん。こう見えても記憶力には自信があるんだからね?」

女「クラスでいちばんわすれんぼの貴方が?」

男「ひっでえ、見てろよ!」


チビ「いや、いいから。そういうの」

DQN「そうそう」

秀才「ドラえもんがいるからね…」


男「…やっぱりそうなるか」

女「そりゃなるよ、記憶力って暗記パンでしょ?」クスクス

チビ「英語については翻訳蒟蒻かもな」

男「全部バレバレかよ…」ガクッ


女「現実にはドラえもんがいる時点で、どんな異常事態もまずはそこを疑ってかかるよね」

男「あ、あの…女さん、異常事態とまで言わないでくれる…?」グスッ


……………
………



DQN「おう、邪魔するぜー」

チビ「男、言われたモノ持ってきたぞ」

男「オッケー、部屋の鍵閉めて」


DQN「で、チビ。どんなのがあるんだ?」ハアハア

男「見せて見せて」ドキドキ

チビ「焦らないでよ……ほら、これとかどう? パパのコネで一緒に写ってもらった写真」

DQN「うおお! これ、SKB148の現センターじゃねえか!」


男「ドラえもん、いける?」

ドラ「当たり前よ、ただ横のチビは目障りだから写真切ろうぜ」

チビ「無茶苦茶言うなぁ、大事にしてる写真なんだぞ」

男「どうせ撮ったのはデジカメだろ? また印刷すればいいじゃん」

チビ「うーん…まあ、いいか…」


DQN「頼むぜ! 心の友よ!」

ドラ「よっしゃ、出すぜ…」ゴソゴソ


ピョン、キコキコキコーン!


ドラ「さかさカメラー! これに写真を入れると普通のカメラとは逆に──」

男「解説パス、早く」ソワソワ

ドラ「チッ…」カシャッ


…パアアアァァァ


男「出た! 完全立体のホログラム!」

DQN「やべえ、興奮MAX」

チビ「ちょっとまって、すごいなコレ」

ドラ「そりゃそうよ、スカート下から覗いてみ?」


DQN「……うおおおおおおお!!! …って、やっぱりスパッツ履いてんじゃねーか!」ガーン

男「スパッツの良さが解らないとは素人だな、DQN」ハアハア…ジュルリ


チビ「ちなみに他にも色んなエロ画像をL版印刷してきてるけど、要る?」

男「心の友よ…!」ガシッ!

DQN「台詞とんなよ」


……………
………



TV《ユメノ ラクエン、ミナミノシマヲ マンキツ! ホンジツノ ミステリーハンター ハ…》ジャーン、チャラッチャッチャーー♩

書き込みミスったかも、スマホからだと今の>>59が見えない

念のため記号を消してもう一度、ダブって見えたらすみません

……………
………



TV《ユメノ ラクエン、ミナミノシマヲ マンキツ! ホンジツノ ミステリーハンター ハ…》ジャーン、チャラッチャッチャーー


男「いいなあ…南の島とか、サイパンでもいいから行ってみたい」

ドラ「どこでもドアで行けるけどな」

男「そう言ってくれると思った!」


ドラ「でも、ダメだ」

男「なんで…!?」


ドラ「さすがに外国に本格的に滞在するとなると、いろいろトラブルとかあったら面倒だろ」

男「そんなの道具でチョチョイのチョイじゃん」

ドラ「それをさせられる俺が面倒だって言ってるんだよ」

男「ええぇ…」ガッカリ


ドラ「ま、そのうちな。…今日はもう寝るわ、お先に」

男「えらく早寝だな。ちぇっ…いつか連れてってくれよ?」

ドラ「気が向いたらなー、おやすみー」フワワ…


………


…二時間後


男(さーて、俺も部屋に戻って寝るか…)ガチャッ

男「…ん?」


男(どこでもドア…なんで出しっ放しなんだ?)

男(もうドラえもんは寝てるし。…ははーん、なんだかんだ言って『行ってこい』って事か!)

男(翻訳蒟蒻とか欲しいところだから明日の朝から行くとしても、ちょっと座標合わせて下見くらい…)カチカチ…


男(サイパンは大して時差ないし、向こうも夜なんだから石ころ帽子無くても平気だろ)

男(念のため砂浜…人がいなさそうなところを)

男(おっし…サンキュー、ドラえもん。今夜はすぐ帰ってくるからな──)ガチャッ…


…パタンッ


…スーーーッ、ストンッ


ドラ(…行ったか)

ドラ「あれー? しまった、どこでもドア出しっ放しだったなー」

ドラ「いやぁ、うっかりうっかり…片付けなきゃ。よっ…と、スモールライトー」ピカーーーッ

ドラ「これでよし!」


ドラ(…いいテコ入れになりゃいいがな──)


……………
………



男「うわぁ…」

男(すごい星空、東京とは全然違うなぁ…)

男(緯度が違うんだ、星座の見え方とかも違うんだろうな)


男(……よく見るとあちこちにカップルがいる)

男(ここへ女さん連れてくれば、イケるか…!?)

男(…でもドラえもんの存在を知ってるんだから、どこでもドアの事も解ってるわけで)

男(その場合、本当は秀才と来たいんだろうな)


男(確かにドラえもんの道具を好き放題に利用すれば、女さんや…他の美人さんだって何とかなるかもしれない)

男(だけど実際には漫画じゃあるまいし…俺自身はそれで納得できるのかな)


男(まあいいか…)

男(少なくともアイツが来てからの日々は、すごく楽しい)

男(俺の未来を『明るいもの』にするんだろ?)

男(どこにゴールがあるのかは、解らない…ってね)


男(さて…明日からを本番として、今夜は帰るか)

男(一応普段着だけど、金はほとんど持ってないしな)

男(…ま、DQNやチビも誘ってみるかなー)


男(どこでもドアは、あの椰子の木陰辺りに…)


男「…あれ?」

男(ドアの場所、違ったかな)

男(じゃあ、あっちか──?)




男「──どういう事だよっ!?」

男(ドアが…無い!)

男(ドラえもんが片付けちまったのか…?)


男(たぶん小さくしてポケットに収納した時点で、いわゆるスイッチみたいなものはOFFになるはず)

男(…そりゃ、開けて出た先がポケットの中ってんじゃ駄目だもんな…)ハァ…

男(いやいや、納得してる場合じゃねえよ──)


………



男「ははっ…こりゃ綺麗だ」

男(水平線から昇る朝日、初めて見たな)

男(…まさか砂浜で一夜を越す事になるとは)


男(さあ…どうする?)

男(問題は一度スイッチが切られたどこでもドアに、最後にセットされた座標が残ってるかどうかだ)

男(俺がどこにもいないと気付けば、ドアを出しっ放しにしてた事が理由だと気付くだろ)

男(座標の記録が残ってるなら、きっと来てくれる)


………


…昼間


男(…参った、来ないぞ)

男(やべえ…喉渇いたな…)

男(そこの露天、ジュース置いてるけど…翻訳蒟蒻も無けりゃ金も日本円しか持ってない)


男(でもこのままじゃ、死ぬ)

男(…身ぶり手ぶり、なんとかなるだろうか)

男(日本円は世界的に信頼が高いって言うし、ダメもとだ!)

男(どうしてもダメなら、水でも貰おう──)



男「あー、ごほん……は…はろー?」

店員「……?」


男「あいうぉんとジュース、オーケイ?」

店員「Beg pardon…?」

男「お・れ・は・ジュ・ー・ス・が・欲・し・い! オーケイ!?」ジタバタ


店員「…日本人ノ方デスカ?」

男「話せんのかよ!」

店員「サイパン デ 観光 ノ 商売 ヲ シテル 人 ハ、ダイタイ 話セマス」


男「あああ…頑張って損した。じゃあ、このジュース下さい。ただ、お金がコレしかないです」

店員「日本円、大歓迎デス。ホトンド ノ 店 デ 使エマスヨ」ニッコリ

男「なんだそりゃ、朝メシ我慢しなきゃ良かったぜ…」


………


…夕方


男「…駄目だ、来ねえ」ゲンナリ

男(どうする…? その辺の店の人に国際電話のかけ方でも訊いて、ドラえもんに伝えるか?)

男(さすがに公衆電話は日本円じゃ無理だしな…両替してもらえるかな)


男(ただ心配なのは、荷物の一つもドルも持たずに普段着でここにいる俺が怪しまれないかって事だ)

男(万一パスポートとかを持ってないとバレたら、密入国扱いだろうからな…)

男(…いや、密入国そのものか)


男(ここは慎重にいかなきゃな)

男(理想は優しそうな日本人観光客に声をかけて、両替と国際電話の方法を教えて貰う事…)

男(あわよくば携帯を使わせて貰う事だ)


男(幸い、日本人はたくさんいる)

男(…ってか、観光客は日本人ばっかだ)

男(そりゃこれなら観光商売してる人は日本語喋るわ)


男(あの人は…金持ちそうだな、なんか話し掛け辛い)

男(カップルもちょっとな…)

男(できれば人のいい感じの、中年夫婦とか──)


?「──あの、男さん…?」



男「は?」

?「やっぱり、そうだ。男さんですよね?」ピコピコッ

男「…なんで、俺を?」


男(誰だ、この娘…)

男(少し年下か? 黄色い薄手のパーカーに白いシャツ、綺麗な金髪)

男(めっちゃ可愛いけど、それよりも。濃ピンクのリボンの両脇でピコピコしてるのは…)


男「君、なんでネコ耳つけてんの──?」


?「──解りませんか? お兄ちゃんとの配色の違いでピンとくるかと思ったんですけど」

男「お兄ちゃん…? まさか…」

?「気づいた顔ですね。そう…ドラえもんの妹といえば?」


男「ドラミちゃん…!?」

ドラミ「正解っ、助けに来ましたよ!」


男「まじか、ドラミちゃんまで存在してるのか」

ドラミ「お兄ちゃんと同じ、いわゆるクローンですけどね」

男「…その耳は?」

ドラミ「一応本物です。でもただの飾り」ピコッ

男(金髪ネコ耳妹系美少女……萌え要素盛り込み過ぎだろ! 藤子F不二雄先生、恐るべし…)


男「でも、よかった……ドラミちゃん、早くどこでもドアを」

ドラミ「無いです」

男「ん?」


ドラミ「どこでもドアは無いです。あれは18歳になって免許を取得しないと所持できないので」

男「……じゃあタイムマシンで来たんだろうから、そこへ」

ドラミ「無理です」

男「ん?」


ドラミ「タイムマシンは未来から過去への使用は可能ですが、過去の人を乗せてはいけない事になっていますから」

男「…ん?」


男「ちなみになんで俺がここにいる事は知ってたんだ?」

ドラミ「未来では記録に残ってましたから。貴方が勝手にどこでもドアを使ってサイパンに行くって」


男「だったらタイムマシンで現在の東京に行って、ドラえもんに俺の居場所を伝えれば良かったんじゃ」

ドラミ「……ああ、なるほど」ポンッ

男(だめだこの娘、原作のドラミちゃんより明らかに抜けてる)


ドラミ「でも帰る方法ならありますよ」

男「そうか、じゃあそれを──」ホッ…


ピョン、キコキコキコーン!


ドラミ「──タケコプター!」

男「待てよ、おい」


ドラミ「…お気に召しませんか」

男「タケコプターって、スピードはどのくらい出るっけ?」

ドラミ「100km/hくらいは出ますけど、電池の消耗が激しいです。80km/hで8時間駆動くらいが適正使用ですね」


男「東京とサイパンって、直線距離でどのくらいあるんだ」

ドラミ「ざっと、2,500kmです」

男「航続距離、足らな過ぎだよね」


ドラミ「大丈夫、北マリアナ諸島沿いに硫黄島方面を目指せば乗り継げますよ!」

男「…他に画期的な案は無いの?」

ドラミ「はいっ!」ニコッ


ドラミ「食べ物や飲み物は『グルメテーブル掛け』があるから心配無いです」

男「でも夜はどうするんだ」

ドラミ「中継地の島に降りて『折りたたみハウス』を使えば問題ありませんよ?」


男「……国際電話でドラえもん呼ぼうか」ニッコリ

ドラミ「ご…ごめんなさい…私…役立たずでした…ね…」グスッ…


男「解った、タケコプターで飛ぼう。だから泣くなって」アワワ…

ドラミ「はいっ!」

男(…その笑顔と泣き顔は卑怯だ)


ドラミ「もう夜になりますから、出発は明日の朝にしましょう!」

男「ああ…じゃ、折りたたみハウスを──」

ドラミ「──だから今夜は観光ですね!」ウキウキ

男「……助けに来たって言ったよね」ボソッ

だめだこれ
どーやってこねくりまわしても面白いと思えるものにならない
大変申し訳ない、このままsageて落として下さい
エタらせるのは初めてだ…書き溜めは手元に残してるので、いつか納得できる展開を思いつけたらリベンジします

ありがとーう

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