【艦これ】花 道 艦 隊 (381)

えー、初めてSSなるものを書かせていただきます。

・基本、日常小ネタとガチ戦闘ネタを交互に織り交ぜていきます。

・肉弾戦の戦闘有り。

・提督が主人公。なお、>>1と提督は何の関係もありません。

・月光条例リスペクト。

・今のところはネタ募集などはしていません。

・更新速度が遅い可能性あり。



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バスケでもやるのかと

というより、昨日スレ立てして全く書いてない時点で立て逃げクサイ・・・

>>4
題名に関しては…ノーコメントで…

>>7
立て逃げではないです…。ただ、反応を見ていつ投下しようか悩んでいました…。

─海─
─軍艦─
─海軍─
─艦娘─
─深海棲艦─
──提督──
2013年、春、太平洋にて。
突然太平洋の深海から姿を現した生命体、<深海棲艦>。この生き物らは、現代の客船やボート、漁船に片っ端から攻撃を始める。
これに対策を立てる、世界各地の海上自衛隊や政府だが、今の自衛隊や政府ではこの被害をどうすることもできない。
そして日本では<艦娘>が誕生した。第2次世界大戦時の大日本帝国海軍の軍艦の遺志を継ぎ、武装を担いで海へ出る彼女らは人類唯一の深海棲艦に対抗する手段だった。
そしてこの艦娘を使い、深海棲艦と戦う為の<大本営>を設立。
この大本営に所属する<提督>は、艦娘を使い深海棲艦と戦う任務を任された存在。
提督になるには、新海軍兵学校を卒業しなければならなかった。

─兵学校生徒─

生徒「何か…海が赤いな」

チンピラ1「何余裕かましてんだ?お前」

チンピラ2「勝手に俺らの間に入って、通り抜けようなんて考えてんじゃねぇぞ?」

生徒「本当…お前らみたいなの大好きだぜ?だから通してくれや」

『花道には苦手なものは3つある。一つは、悪いヒト。大嫌いだけど、どうも見てるとちょっかいを出したくなるらしい。2つ目は海。海を見てると、何かやるせないような寂しさに襲われるんだってさ。』

チンピラ1「てめ…花道…覚えてろよ」

花道「てめぇらみたいな怖い人、覚えてるに決まってんだろ」

『残りの1つは何かだって?それは、いつか明らかになるだろう』

次の日。花道はいつものように海軍兵学校へ通う。

女子1「あ、花道だ!やぁねぇ、ああいうアブナイ奴がなんで兵学校にいるのかしら?」

女子2「私の彼氏が昨日、アイツにぼこぼこにされたって言ってたわ…」

花道「・・・」

男子1「おう、花道。校長が呼んでたぜ」

花道「…ああ」

校長「花道くん…君はまた騒ぎを起こしたのかね?」

花道「いやぁ…あいつらが道ふさいでたもんで…」

校長「…君には呆れたよ。罰として明日から、君は○○鎮守府へ配属となる。やったな」

花道「うぃ~っす…って,は!!?」

提督「つう訳で来たのぁいいが…誰もいねぇでやんの…。とりま、きたねぇから掃除と模様替えでもすっかな」

1時間後、夜7時。
段ボールやらで殺風景だった提督室は、敷布団と折り畳み式の机、その上のパソコンとゲーム機、いかにも引きこもり少年の部屋という感じだった。

提督「これで良し。コンビニで飯でも買うべ」

数分後、帰り道。

提督「そういやぁ、着任した場所には最初から艦娘が一人いるって聞いたけど、居なかったな」

その時、道の横の海から声が聞こえる。
そこへ向かうと…

叢雲「沈みなさい!!」

軽巡ホ級「・・・」ドン!

叢雲「きゃあ!!」

提督「何だ…ありゃ…」

目の前の浅瀬で戦いを繰り広げる艦娘と深海棲艦。だが深海棲艦の太い腕に、艦娘はのど元を掴まれる。

叢雲「う・・・」

提督(こいつ…助けを求めてる…?)

提督「そうとなりゃ…!」

提督は艦娘の腕を掴み、力いっぱい引っ張る。すると深海棲艦の腕から首が離れ、無事解放された。
だが艦娘は懲りずに敵に向かっていく。そして背中に背負った艤装が、大きな音を立てて何かを発射する。
砲撃は敵に命中すると、敵は動かなくなり、海にゆっくり沈み、消えていった。

叢雲「ふぅ、助かったわ。一応礼は言うわ。ありがとう」

提督「おう、いいって事よ」

叢雲「こんな所に敵の残党が居るなんて…私は早く○○鎮守府に行かなきゃ」

提督「あのよ、その○○鎮守府って…俺が居る場所なんだけど…」

約10分後。
叢雲という艦娘は、急きょこの鎮守府に配属となったらしい。
そしてこちらに向かっている途中、港まで流れてきた深海棲艦の残党に襲われた…と。

叢雲「改めて自己紹介するわ。特型駆逐艦5番艦、叢雲よ。まぁ、せいぜい頑張ることね」

提督「随分と謙虚だな、コラ」

叢雲「そりゃどうも。じゃ、まずは十分な戦力を蓄えるために<建造>でもすれば?」

提督「建造って何だよ?」

叢雲「あんた建造も知らないで提督になったの?<建造>っていうのは…うんたらかんたらで資材を使ってカクカクシカジカで…」

提督「とりま、最低値で第1艦隊が埋まるまで建造すりゃいいんだな?まかせろぃ」

叢雲「ちょ…ま」

5回建造した結果…

天龍「フフフ…怖いか?」

暁「ごきげんようです」

夕立「早く出撃したいっぽいー!!」

長月「よろしくな、司令官」

那珂「那珂ちゃんだよっ!!新任提督さん、ヨロシクねっ!!」

提督「おう、ヨロシクな!」

叢雲「資材が早くも残り少ないから、出撃とか仕事についてはまた明日やるわ。おやすみ」

提督「だってさ、お前ら。明日からビシバシ行くってよ」

こうして、提督となった花道の最初の艦隊が出来上がった。
これが提督の人生を大きく変えることになるとは、誰も知らない。



ここでネタ募集したいと思います。
今まで登場した艦娘に関するネタでお願いします。

↓1
↓3

それより叢雲が急遽配備なら最初からいる艦娘って誰だったんだ?

>>15

この提督は誰も入る予定のなかった鎮守府に来たので、最初からの艦娘の代わりに叢雲を急遽配備した、という形になります。

ネタを書いてくださった方、ありがとうございます。
見てくれている方は居ないと思いますが先に初出撃編を投下してから那珂ちゃんを投下したいと思います。

提督「…」イライラ

叢雲「…」

提督「字が上手く書けん。秘書艦なら代わりに書いといて」

叢雲(本当にどうしてこんな馬鹿が司令官に選ばれたのかしら…)

『初出撃編』

提督「よぉし!!今日はいよいよ…鎮守府正面海域に出撃する…準備はいいか?」

第一艦隊メンバー「いいです!!」

提督「よぉぉぉぉし…」ニヤリ

叢雲「んで、目的は敵主力艦隊の撃破ね。私たちはこの待機艦艇に乗って戦闘海域に出るわ」

提督「何だそりゃ?」

叢雲「このお話だけの設定。司令官も一緒に出撃する時はこの待機艦艇に乗って出撃するわ。いいね?」

提督「ウィッス」

─戦闘海域へ突入─

提督「んで、俺は何をすればいいんだ?」

叢雲「いいから、ただアンタのやりたいように指示出せばいいのよ!」

天龍「敵艦発見!!1隻だけみたいだな…」

提督「んじゃ、火力の高い天龍、撃てー!」

駆逐イ級「ギャース」ドカン

提督「沈んでくな…倒したのか…」

叢雲「もたもたしてる暇は無いわ。さぁ、主力艦隊のお出ましね!!」

軽巡ホ級「コォォォォ…」ガシャン

駆逐ロ級×2「…」ジャコン

提督「あの真ん中の野郎…前に居た気が…まぁいいぜ!!砲雷撃戦、開始!!」

暁「やぁー!!」ドン

長月「ちっ…痛いじゃないか!」

天龍「お前ら、ちょこまか動くな…グハッ!!」

那珂「敵駆逐艦轟沈だよ!!」

夕立「軽巡洋艦大破!!叢雲ちゃん、止め刺してほっしいっぽい!!?」

叢雲「沈みなさい!!」ドン

─艦隊帰投─

提督「お疲れー。じゃあ被弾しちまった奴は入渠?とやらの場所に行って休むように。」

叢雲「どう?初めての出撃は?」

提督「何か思っていたのと違う…まぁ命令出すだけだから楽ちんでいいんだけどよ」

叢雲(こいつ、やる気あるのかしら…)

『何よりもアイドルがしたい那珂ちゃん』

提督「おい、那珂…だっけ?悪いけど、任務消化に、正面海域行ってもらえる?」

那珂「えー…那珂ちゃんはこれからカラオケに…」

提督「困ったなぁ…ご褒美に正面海域突破記念のパーティーのステージに出させてやろうと思ったんだけどなぁ…」

那珂「それじゃあ那珂ちゃん、出撃しまーす☆」

提督「ちょろいぜ(パーティーに出すとは言ったがパーティーをやるとは言ってないしな)」

結局、提督の知らない所でパーティーは開かれ、那珂ちゃんはステージに立つことができたそうな。
そんな事知らされていない提督は枕を濡らしましたとさ。


ここから秘書艦ネタを書きます。
これが終わったら、長編の戦闘ネタを書いていく予定です。

『艦娘と交流~叢雲編』

提督(午前10時。今日の午前は叢雲が秘書艦か…あの日から頑張っているけど、ちょっと俺に対する扱いが酷い希ガス…)

叢雲「何ジロジロ見てんのよ?」ギロリ

提督「何でもねぇやい」

叢雲「そういえばさ、あんた次の南西諸島沖警備、いつやるのさ?」

提督「ん、そんなんお前の入渠中に済ました」

叢雲「え?」

提督「天龍があまりにも行きたいっていうしよ?しかもお前入渠時間なげぇしよ…」

叢雲「~~~~~~!!そりゃ一番レベル高いんだから仕方ないでしょうが!!」(鉛筆投げ

提督「遅いぜ」(避け

『艦娘と交流~天龍編』

天龍「さてと、午後は俺が秘書艦だな!!」

提督「あぁ、そだね」

天龍「元気ないじゃねぇか…俺にビビってんのかぁ?まぁ世界水準軽く超えてるからなぁ?」(グリグリ

提督(天龍…かなりの戦闘馬鹿。そして何かとウザい。けど、第一艦隊では結構頑張ってんな…)

提督「なぁ、寿司の出前でもとるか?」

天龍「お、気が利くじゃねぇか。じゃあ、まぐろとサーモンと甘海老をサビ抜きで!!」

提督「え?サビ抜き?」

天龍「だーっ!!間違えた!!サビ多めで頼んどいてくれ!!」

30分後…

提督「届いたぜ…いただきまーっす」

天龍「お、おう…わさびが寿司からはみ出るほどまんべんなく塗ってあって…旨そうじゃねぇか…」

提督「うめぇじゃねぇか!やっぱし本場の寿司は旨いもんだな…ってお前、食わねぇのか?」

天龍「おう…いや、食うぜ…」(パクッ

提督「どうだ?うめぇだろ?」

天龍「」(大破


長月「それで、天龍さんが倒れたって?」

暁「らしいわ。多分、敵のスパイが現れたのよ」

長月「おっかないな…こんな小っちゃい鎮守府にまで敵が入り込んでいるとはな…」

では、戦闘ネタを投下していきます。
実際に艦これで最初に6隻そろったときの編成が叢雲、天龍、暁、長月、那珂、夕立だったからしゃーない。

『覚悟』

大本営軍提督条文…『歪んだ深海の艦は猛き艦娘によって滅されなければならない。その猛き艦娘を指揮するにあたり、我、命を懸ける覚悟有り』

提督「ゴメンだね、俺だってやりたくてやってる訳じゃねぇし、どうせ他のでっかい鎮守府の提督様がほとんどやってくれるさ。俺は海に出るだけで、命を懸けるつもりはねぇな…」

叢雲「あんた…やる気あるの?」

提督「そもそも、女を使って自分の地位を上げるってのは、ハナから気が進まなかったんだよ。俺はこうしてコーラを飲みながら優雅な時間を過ごすんだ…」

叢雲「ちょっと…」

その時、外から巨大な砲撃音が聞こえる。

提督「んだ?あの黒い服着た奴ら…」

叢雲「あれは…戦艦!!しかも重巡級が4体もいるわ…あとは、5体の駆逐艦…まだ沖の方に居るけど、アレだと陸を襲撃する可能性があるわ!!」

提督「あったぜ、望遠鏡…ありゃあ、陸に向かってるんじゃなくて何かを探してるな…」

コンコン

曙「ちょっと…あたし深海棲艦に追われてるのよ…助けてほしいんだけど!」

提督「は?誰だお前…?」

叢雲「あんた…曙?」

提督「んで、何で俺が本屋まで来てそいつの為にベンキョーしなきゃいけぇんだよ…」

曙「うっさいわね、そんなに嫌なら別に来なくてもいいのに」

叢雲「この間抜け面したのが、司令官ね」

曙「ふん、ちんけな奴ね」

提督「『あけぼの』たぁ、小学生の教科書じゃねぇんだからよ。んで、叢雲はコイツの事知ってんのか?」

叢雲「えぇ。この曙とは、昔造船所が一緒だったからね。まぁ、喧嘩は後にして早く沖に居る敵艦隊をやっつけないと…」

提督「イヤだね!!別にお前らなんか居なくても、あんな奴ら素手で倒せそうだしな。でもソイツの為に喧嘩すんのはイヤだ!」

曙「馬鹿ね、普通の人間がアイツらに勝てるわけないじゃない。アタシもそんな男に守られるのはゴメンよ」

提督「ところで、何でお前は追われてんのさ?」

曙「気が付いたら、アイツらと一緒に居て、それで逃げてきたのよ…」

提督「なんでお前はそんな場所に居たのよ?それによ、お前の足、何か変じゃねぇか?」

曙は気づかなかったのだろうが、曙の右足は黒く変色しており、所々白い物体が突き出している。

─鎮守府正面海域─

戦艦ル級(…製油所地帯の我が艦隊から逃げた…あの『艦娘』はどこだ…?)

重巡リ級(正面海域まで追ったが、ここもいないとなれば…)

ル級(陸しかあるまい…)ニヤリ


提督「んで、曙は正規空母って奴を護衛しきれなかったのか…」

曙「仕方ないじゃない…敵だって、強かったんだしさ…」

提督「まぁいいよ。俺の艦隊の奴らも連れてきたし、多分行けるさ」

叢雲「何言ってんの?相手は戦艦と重巡よ!!こんな小さい艦しかいない艦隊で勝てるわけないじゃない…!」

曙「そうよ…もしこれで奴らが陸にまで来て沢山の人が死んだら…アンタの所為よ!!クソ提督!」

提督「んん~、嬉しいねぇ、正規空母を守れなかった張本人から『アンタの所為だ』のその台詞!」

曙「…」

ドカァン!!

ル級(何と脆い保護壁か…まぁいい、この艦隊ごと、お前も殺してしまおう)

曙「き、来た…」

提督「でけぇ砲だな…当たらなきゃいいんだろ?」

叢雲「もういいわ、頭にきた」

提督「ちょ」

叢雲「私たち、第一艦隊”だけ”であの艦隊と戦うわ」

曙「叢雲…アンタも馬鹿じゃないの?こんな小さい艦隊で勝てるわけないじゃない!!ちゃんと提督の命令が無いと…」

叢雲「残念だけど、司令官が私たちを指揮したとしても、あの艦隊には勝てないわ。戦いにおいて、大事なモノってあるのよ。曙にも、司令官にも無いモノを、私たちは持ってる」

駆逐ハ級5体「…」ガシャン

大本営軍艦娘条文…『歪んだ深海の艦は猛き艦娘によって滅されなければならない。その猛き艦娘として戦いに参加するにあたり、我、命を懸ける覚悟有り』

提督・曙「…!」

叢雲、天龍、那珂、夕立、長月、暁の第一艦隊は、敵駆逐艦5隻を寄せ付ける暇もなく攻撃していく。
彼女らは提督の見ていない場所で、人数が少ないなりに努力をしてきたのだろう。
提督と曙はどんな事を思ったのか、目を合わせる。

提督「…けっ」


曙「でもさ…今の撃ち合いでも、アンタ達ダメージ負ってるじゃん…痛くないの…?」

天龍「おう、痛いぜ…」

夕立「だけど、私たちも痛くても苦しくても、敵を倒さなきゃいけない時ってあるっぽい」

提督「…」

ル級(…じれったいな。ではこのどんな武器よりも大きく、重く、強い…私の主砲で焼き払ってやろう)ドォン

曙「み、港が…一回の砲撃で…無くなった!!」

ル級(これでお前らのめりこんだ瓦礫の山が完成~~!!)

提督「何考えてんだか知らねぇが…喋れんなら喋りやがれ、このトンカチィ!!」

ル級「…ブ…」

提督の放った拳がル級の顔面にクリーンヒットする…が、人間の攻撃など深海棲艦に到底通用するはずもなく、提督は後方に吹っ飛ばされる。

ル級「馬鹿なのか、お前は!!人間が…しゃしゃり出てくるな…」

提督「やっぱし、喋れんじゃねぇか…」

天龍「何やってんだ…お前が深海棲艦を倒せるわけねぇだろ!!」

提督「ちょっと、その魚雷貸せよ…これなら、アイツらに効くんだろ?」

暁「…え?」

提督の掴んだ魚雷が回転したかと思うと、ル級は空中に浮いていた。

提督「こっちゃ…『覚悟』ってのを決めんのにいそがしいんでぇ!!」ブン

ル級「ま、待って…」ゴキッ

魚雷はル級の装甲を砕き、腹を殴る。

ル級「」

提督「やべ、魚雷…粉々になっちまった…」

リ級(何だ…あの人間は…あの人間は──だ…)

リ級(あぁ、──であるあの人間の指揮する艦隊には…今は勝てない…)

残党の重巡リ級4体はこちらを見つめながら、ゆっくりと海に潜り、どこかに行ってしまった。

長月「何がともあれ…勝ったのか…?」

那珂「でもまだ、戦艦が…」

ル級「うぅ…私は…一体?暗い海の底…眠っていて…」

提督「…コイツ…青い目が黒く…」

ル級「あ…」

提督「テメェ…艦娘だったのか?」

提督「もういいってよ…」

大和「いえ!先ほどの私に勇敢に立ち向かって正気に戻してくださり、誠に有難く恐悦至極に存じ、まさに欣喜雀躍の…」

提督「もういいって~!!」

大和「そうは参りません…私は提督に対して余りにも不躾な発言をしたのですよ」

提督「アレはマジでカチンと来たけどよ…って、俺んとこ『提督』って呼んでるって事ぁ…」

大和「はい、非常に図々しいと思われますが…その…大和も提督の艦隊に加えてくださらないかと…」

提督「……ま、使ってやらねぇ事もねぇぜ…」

那珂「あ、提督さん、顔が少しニヤニヤしてる」

夕立「戦艦さんが手に入ったのが、余程嬉しいっぽい!」

大和「それにしても、提督は本当に強いのですね…」

提督「あぁ、ちょうどいいサイズの魚雷が有ったからな…やり過ぎたかな…?」

大和「いえいえ、提督があそこまで艦娘の武装を使いこなすと、まるで私たち『艦娘』のようではありませんか!」

提督「へへっ、まっさかな!俺は人間だぜ?」

大和「うふふ、そうですよね」

曙「…(覚悟…か)」

大和「それに…私が壊してしまった港…偶然にも人は居なかったようですが…」

叢雲「そうね…人間じゃなくても、もし私たちに命中してたら、『轟沈』してるところだったわ」

提督「轟沈?訳わからん」

大和「あのですね、轟沈というのは…」

叢雲「駄目よ、この馬鹿には説明しても無駄ね」

提督「そういや、曙。おめぇ、足は大丈夫…か?って、居ねぇや」

一難が去り、数日後。

提督「そういや、港ぶっ壊したから書類が物凄いぜ!大和、大体お前の所為だから、これ運んどけよな!」

大和「は、はい~~~!!」

曙「…二ヒヒ」ガチャリ 叢雲「!?ちょっと、司令官、司令官!!」

提督「うるせぇな、こっちは忙しいんでぇ!!」

『覚悟』終了です。
う~ん、この下手な話…もっと面白い文章にしなくては…

『提督の居場所』

─「ホラ、お前、生まれたぞ!俺に似てハンサムな面してるぜ!」

─「うふふ、私たちの子供ね…うんと可愛がってあげましょうね…」

─「おぎゃあ おぎゃあ」

─「おう、元気だなこりゃ…」


提督「…~~~~!!」

提督が鎮守府の庭から見ているのは、すぐ向かい側に出来た食堂。
その食堂には行列ができており、賑わっている。

<中華 鳳翔>

提督「大変だぜ、鳳翔さん!!」

鳳翔「あら、どうしましたか提督?」

提督「そんな呑気に本読んでる場合じゃねぇぜ!!そこの角に出来た店に客とられてんじゃねぇかよ!」

鳳翔「しょうがないですよ…こっちは鎮守府の横にある小さい店なんですから…あちらは人気食堂のチェーン店ですし…」

提督(チラシ見てみると…結構美味そう…)

鳳翔「別に気にしなくていいんじゃないかしら?」

提督「でもよ、そうなりゃ俺たちが食ってけなくなるぜ?」

天龍「おーっす、鳳翔さん!お、提督何してんだ?」

提督「ちっ…こうなりゃやるしかねぇか…ワリ、ちょっくら出かけてくるぜ」

大和「こんにちわ、提督が出ていきましたが…」

天龍「あぁ、ちょっと出かけてくるってよ」

大和「そうですか…」

バキッ

提督「テメェ…まだやんのか?コラ」

チンピラ1「すいません許してください何でもしますから」

提督「ん?今、何でもするって言ったよな?んじゃ、そこに鎮守府あんだろ?鎮守府の横の『中華 鳳翔』で飯でも食え。免許はあずかった…もし食いに来なかったら殴りに行くぜ。晩飯時でも深夜でも安心すんじゃねぇぞ…?」

チンピラ共「ひぃ~~~!」

提督「よし!」

叢雲「よしじゃないわよ…勢いよく飛び出したから見に来てみれば…鳳翔さんが憲兵に捕まるかもしれないじゃない!」

提督「うげ、よく考えればそうじゃん!!」

叢雲「馬鹿なんだからホントにもう」

チンピラ1「みそラーメン大盛り一丁!」

チンピラ2「ネギ味噌ラーメンにゆで卵トッピングで!」

チンピラ3「激辛みそラーメン一丁!」

天龍「な、何だ?目つきの悪い男がぞろぞろと…」

鳳翔「天龍ちゃん、大和ちゃん、悪いけど手伝ってくれない?」

チンピラ4「この中華ラーメン、濃すぎず薄すぎずのスープが最高に効いてるぜ!」

チンピラ5「うめーなコレ!」

チンピラ1「ごっそさんした!」

チンピラ2「美味かったっす!」

大和「あのお客さんで最後ですね…」

チンピラ6「…ごちそうさん」

大和「はい、600円になります!」

チンピラ6「払わねぇぜ」

天龍「兄さん、食い逃げかい?」

チンピラ6「今日ここに来た奴ら、全員目の鋭い鼻のとんがった奴に脅されて来たんだ」

鳳翔「そ、そうなんですか…(提督ったら…一体何を…?)」

チンピラ6「警察や憲兵にチクられたくなけりゃ、これからタダでラーメン食わせろよな!」

大和「…私には、貴方が脅迫されてここに来たことと、タダで料理を出すということの因果が分かりません」

チンピラ6「何だ、女ァ!ぶっ[ピーーー]ぞ!!」

大和「今、貴方が仰ったことは『脅迫』ではありませんか?では私からも要求させてもらいます。『お金をお支払いください』」

チンピラ6「…ホラよ、700円。じゃあな」チャリーン

鳳翔「見た目によらず、結構気が強いのね」

大和「差し出がましいことをして申し訳ありません…!」

天龍「丸く収まった方がいいじゃねぇか。俺のあんまし気の長い方じゃねぇしよ」

鳳翔「でも、大和ちゃんって随分仕事熱心ですね…」

大和「私たちは、元は兵器です。闘って役に立って人に認められることが、居場所を作る方法だったのです。だから私がここに居るだめには、何でも死ぬ気でがんばらないと…!!」」

天龍「お前に似た奴を俺は知ってるよ。何を焦ってんのか、自分の居場所を守ろうとしてよ。他人の迷惑なんて考えようともしねぇ」

提督「ただいま!」

鳳翔「居場所にお金や物なんて要りませんよ。お金なのではなく自分を使って見つけるのです」

提督「何話してんだよ?」

大和「…なんでもありません!」

『提督の居場所』完

これらのメンバーに関する描いてほしいネタを募集します。

提督
駆逐艦…叢雲、暁、長月、夕立、曙
軽巡洋艦…天龍、那珂
軽空母…鳳翔
戦艦…大和

安価で
↓2
↓3
ネタを書きたいと思います。なお、大和さんの場合は戦闘ネタは無しの方向でお願いします。

『艦娘と交流~暁編』

暁「今日の秘書艦は私ね!頑張っちゃうんだから!」

提督「おう、この前にゃお前の魚雷、ぶっ壊しちまって悪かったな。今度、4連装の奴あげるからさ」

暁「…え?い、いいのよ!別にそんな気を遣わなくても…///」

提督(暁…か。背伸びしてる子供…とでも言えばいいだろうか。これぐらいのガキを扱うのにゃ慣れてるからな。とりあえず物あげて褒めまくっときゃいいんだぜ)

暁(司令官って最初は怖そうって思ったけど、意外と優しいよね…)

提督「コラ、窓から景色眺めてる暇有ったら、この建造リスト工廠に持ってっといてくれ」

暁「はーい」

提督「…へっ、うっとおしいモンだぜ」

暁(司令官は心と口が逆に動くのよね…)

『島風』

陸軍兵「もうすぐ奴が来る…いいか!絶対に奴を陸に上がらせてはいけない!何としてでも我々の手で奴を抑えるのだ!!」

ドカン ボカァン

陸軍兵「き、来ました!!兵が次々に吹っ飛ばされていきます!」

弾丸が飛び交う中を突き進んでくる2本角の鉄塊に、それに乗った1人の娘。
2本角の鉄塊はどうやら銀色で短い四肢と、頭に砲がくっついた怪物で、それは物凄いスピードで陸へ突っ込む。

陸軍兵「駄目だ…奴が陸へ上がってしまった…あの深海棲艦化した…島風が~!」

島風「陸には速いモノが沢山あると聞く。楽しみね」


天龍「んだテメェ、俺らに喧嘩売ってんのか!?」

木曾「へっ、いいぜ…摩耶サンの妹分のこの俺を殴っても」

天龍「摩耶?」

木曾「くくっ、怖いぞォ…この前なんか陸軍士官学校の不良共10人を病院送りにしたらしい…」

長月「だよな…摩耶って奴は戦闘でも艦載機すら寄せ付けない対空持ってるしな…」

木曾「おう…昔対空火器がジャラジャラ付いてたってよ…」

夕立「そうよね~夜戦でのあの迫力は夕立も見習いたいっぽい」

木曾「んで、なんでお前らそんな詳しいんだ?」

叢雲「だって…摩耶ってうちの鎮守府所属だし…」

提督「おいコラ…こんな公園まで来てやるつもりかよ…?摩耶」

摩耶「この前、アタシのダチがお前に殴られたってよ…」

提督「けっ、殴ってくれって言ってきたのはあっちだぜ?面白かったぞ」

摩耶「そうかよ?お前と決着がついたらもっと面白いぜ」バキッ

提督「やったなぁ…女でもグーで行くぜ!」ドカッ

摩耶「いっ…オラッ!」

提督「効かねぇなぁ…バイクなんか乗ってるから体がなまってんだろぉ!」

摩耶「そっちこそ、筋肉がボーキサイトでできてんじゃねぇのか?」

提督「ボーキサイトたぁ、随分褒めてくれるじゃねぇか…」



木曾「でもよ…俺も今日来たけど、提督がどこにも居ないんだが…」

叢雲「それなら、外の公園で摩耶と喧嘩でもしてるんじゃない?」

木曾「まさか…摩耶サンが言ってた目障りな奴って…」

天龍「提督の事だろうな!」

叢雲「でも、あの2人をいくら喧嘩させても駄目よ。アイツら、いつも決着ついたこと無いのよ。女相手なのに、情けない司令官よね」


摩耶「なんでお前は…アタシの足元に倒れねぇんだ…?」

提督「ケッ、女のパンチじゃ膝つくのもめんどうだぜ…」

摩耶・提督『アァ!?』

キャアーーーーーーーッ

一般人「ひったくりよ!誰か捕まえて!!」
ヤンキー「おい兄ちゃん、金出せや…」

摩耶「また…あいこだな…」

提督「次にゃゼッテー決着付けるぜ…」

すると2人は一斉に走り出し、提督はひったくり犯をぶっ飛ばし、バッグを持ち主へ渡す。
摩耶は、学生からカツアゲしようとしていたヤンキーをぶん殴り、学生の背中を押し、帰るように言う。

提督「次に腹立った時にゃ、覚悟しとけよ…」

摩耶「チッ、ムカムカするから、走りにでも行くか…」

その日の夜、赤城山中腹…

摩耶(アタシにとって車やバイクは命の次に大事なモノよ…走りで勝った時の達成感、最高だぜ…)

摩耶(だけど、一番恐ろしいのはクラッシュ…いつ不運と踊っちまうか分からない…)

摩耶「いいぜ…乗ってきた!前の奴を抜かして、残り3キロか…勝てる!!」ギュイイイイイ

ギャラリー『おおっ、スゲェぞあの女!!』

ズシャッ ズシャッ

摩耶「ん?何だありゃ…トラックか?いや、全然ちげぇ…カバか?」

摩耶(んな訳ないか…どうせクレーン車か何かだ…)

摩耶「ま、抜かせねぇぜ。得体のしれない車…じゃない!!」

摩耶の車を追い越して行ったのは、銀色の体で角の生えた怪物。
その怪物の角には、白い髪の女が立っていた。

島風「遅いのね、地上の自動車!連装砲ちゃん、降りちゃって!!」

<連装砲ちゃん>と呼ばれた走る怪物はガードレールを飛び越え、下の道路を走ってどこかへ消える。

摩耶「ありゃ…まさか、深海棲艦!?って、ギャアアア」

ガシャーン

提督「う~~ん…やっぱイチゴパフェか?」

曙「違うっての!王道はチョコパフェでしょうよ!!」

天龍「あの2人、何してんだ?」

大和「はぁ…このお店でデザートも販売して客を寄せようとしてるのですが…意見がまとまらず…」

天龍「それにしても、大和ってばもう鳳翔サンからラーメン作るの任されてるのな」

大和「鳳翔さんが『大和ちゃんが作った料理の方がウケがいいでしょう』って…」

天龍「ふーん、あ、そうだ提督。最近、深海棲艦が陸に上がって暴れまわってるらしいぜ」

提督「まさか…大和の時みてぇに艦娘が深海棲艦化した奴が…?」

天龍「らしいぜ…」

ニュース『昨夜未明、赤城山中腹の道路で女性の乗った車がガードレールに衝突しました。』
ニュース『ですが、乗っていた少女Aさんによると、<深海棲艦>が横を追い越していったと…』
ニュース『ははは…深海棲艦が山道に居る訳がありませんよね?酒でも飲んでいたのでしょうか?』

摩耶「酒なんざ飲んでねぇよ!!」

木曾「ま、まぁ…落ち着いてくださいって…」

摩耶「今日の奴が現れるポイントは?」

木曾「今日の夜からいろは坂に現れるって…」

摩耶「このアタシがやられっぱなしな訳ねぇだろ!相手が深海棲艦とわかりゃ、容赦なく沈めるだけだぜ!!」

提督「んだよ、少女Aってお前の事かよ」

摩耶「提督…んでこんな所に」

提督「ここは俺の鎮守府の医務室だぜ?俺が居て当然だろうが。ところで、お前を事故らせた奴に用がある。教えな!」

摩耶「…チッ、夜7時からいろは坂に来るぜ…」

提督「おう、サンキュ。そんじゃ安静にしてろよな」

摩耶「待てよ」

提督「連れて行かねぇぜ?俺だってお前の提督だ…ケガしてるお前を連れて闘う訳にゃ行かねぇ」

摩耶「んじゃ…どうやって闘うんだよ?」

提督「俺が、ぶっちめる!」

摩耶「…だけど、あいつに適うスピードはあるのかよ?アタシは車の運転だってできるんだぜ?」

提督「ケッ、仕方ねぇな。中破でもしたら飯抜きだぜ?」

摩耶「くくっ、何、パラレルの世界の事喋ってんだよ?」

島風「遅いわ…この『いろは坂』には速い乗り物が沢山集まると聞いたけど…ふふっ、元気のいい子が来たみたいね」

摩耶「そういや、提督の野郎はどうしたんだよ?」

大和「それが…先に目的地に行ってると仰って、お先に…」

摩耶「あの野郎、なんで乗らねぇんだ?ま、いっか」

提督「来たな…おーい!」

摩耶「早く乗れよ」

提督「お、おう、時間との勝負だぜ!」

島風「貴方たち…艦娘か…」

大和「島風さんとお見受けします。貴方が道路で暴れますと、人間たちに多大な迷惑が掛かります。どうか、お辞めしますようお願いします」

島風「答えは…NOよ」

提督「おっしゃ、行くぜ大和ォ!!」

大和「主砲、撃てーッ!!」ドォン

島風「連装砲ちゃん、避けられる?」

<グオオオオ ギィン

提督「外れた…あの走ってる化け物、素早いぜ」

島風「隙有り!」

大和、提督『うおーーーっ!!』

摩耶の車のボンネットの上から戦っていた大和と提督は、横を並走していた<連装砲ちゃん>にタックルをかまされ落ちそうになる。

摩耶「うおっ…なんで窓の端に掴まったまま動かねぇんだ…?って、おいちょっと待てよ…まさか…」

提督「~~~~~~~!!」

摩耶「車酔いかよォ!!?」

オゲェーッ

島風「何がしたかったの?あの提督は…」

島風「車酔いするマヌケ!そのマヌケな提督に連れてこられたマヌケ!そのマヌケを乗せた車の運転手!!みんな私のスピードの敵では無かったわね!」

島風(深海か…真っ暗は深海は再び私に艦艇としての力を与えた。そして私はスピードを求めてこの陸に来た。スピードと初めて出会ったのはいつかしら…あの遅い艦を追い越して砲を撃ちまくる楽しさ。遅いモノは選ばれたかったダメなモノ、だから蹴散らしてもいいの)

摩耶「」←あのまま走り続けてりゃ勝てたかもしれねぇのに車酔いで負けるとは何事だコラ←大体こんな感じのセリフ

提督「」←テメェの運転が下手くそだから吐いちまったんだよこのチンパンジー的なセリフ

大和「」←2人の言い合いを止めに入って突き飛ばされた大和さん

摩耶「何のマネだ?」

提督「俺が運転して奴を追う」

摩耶「また吐くぞ?」

提督「…吐いても良いぜ。マリオカートで鍛えた運転の腕があるんだよ。一か八か行ってくるぜ」

摩耶「行っちまった…事故っても知らねぇぞ!!」

そのころ、線路を走る電車の中では…

一般人「ふふ、もうメール打てるんだな、ユミ。もうすぐ帰るよ…っと。え?馬鹿な…」

<化け物だ~~~~!!

島風「意外と遅いな、蛇のような乗り物さん!遅きものは蹴散らしてあげる」

連装砲ちゃんが体を傾け、数メートルまで飛び上がる。
そして太い腕を掲げ、今まさに電車を脱線させようとしたその時、現れた。

提督「待てコラガキ!!」

提督は野球ボールほどの石を連装砲ちゃんの額に当たる部分にぶん投げる。
石は額にクリティカルヒットし、連装砲ちゃんは道路に倒れこむ。

島風「貴様ァ!!」

提督「どうした!?もうレースとやらは終わりか?」

連装砲ちゃん「」

島風「私の乗り物はもう動かない…でも…負けたくない」

提督「なんでテメェはそんな競争したがるんでぇ?俺にゃワガママ言ってるようにしか見えねぇ」

島風「私は最初から性能だけはピカイチだった…だけど同型艦も姉妹艦もいない。その寂しさが分かるか?」

提督「分からねぇ。だけど、お前はその『強さ』ってのにいまいち納得してねぇんだろ?」

島風「…!」

提督「同型艦とかが居ねぇ奴なんてもっと居るぜ。それなのにテメェだけがダダこねてスピードスピードってよ…」ゴゴゴ

島風(納得していない?でも…やっぱり負けられない!)

島風「連装砲ちゃん2号!出ておいで!」

すると島風の上着のポケットから銀色の車が飛び出してくる。

島風「まだレースは終わっていない…今から追いつけるか!?」

島風は銀色の車に乗り、最大出力で発進させる。
車は提督の居る地点からどんどん離れていく。

提督「レースだァ?んなモンはな…」ギュルン

提督は足を振り上げ、駆け出すと足があり得ないスピードで回転する。
そのままぐんぐんスピードを上げ、島風の車のボンネットに飛び乗る。

島風「何ー!!?あの男…丸腰で私の車に追いついてきた!どうして…こっちは300キロ以上で走っているのよ!?」

提督「うおおおおお…テメェにゃ居場所はいっぱいあんだろうが!鎮守府や泊地、そこが嫌なら海の底にでも沈んでりゃいい!<居場所>がある奴は、とっとと帰りやがれ!!」

ガシャアン

島風(あの腕…あの蒼く光る腕が車を粉々に…)

車が無くなり、道に投げ出された島風に蒼く光る拳を振り上げる。

島風「嫌ァ!やめてぇ!!」

摩耶「やめてっつってんだろが、このもやし!!」

提督「ぶげっ」

いよいよ拳を島風にぶつけようとした提督の顔面を蹴飛ばしたのは摩耶だった。
島風はポカーンとした顔でその光景を見つめ、蒼く光っていた提督の腕は元に戻り、後ろに倒れる。

大和「やっと追いつきました…」

島風「貴方は…最初に私とレースをした艦娘か?」

摩耶「あぁ、そうだぜ」

島風「私とのレースはどうだった?」

摩耶「全然楽しくないぜ。車は壊されるしよ…散々だぜ」

島風「そうか…私は一緒に走ってくれる人を探してただけなのかもね…おとなしく『居場所』とやらに戻るわ」

摩耶「何言ってんだ?様子を見てりゃ、まだレースは途中なんだろ?そんなら、あの駅まで競争だ!」

島風「ま、待って…かけっこじゃ負けないよ!」

摩耶「ノリがいいじゃねぇか。お前さんなら分かるかもしれねえが、乗り物を動かすってのは気分がいいよな!」

島風「う、うん!あの周りの景色がビュンビュン通り過ぎていくのとかもう最高よ!」

摩耶「だよな!あとは、あのフォルムだよな!車なんて70年前とは全然形が違うからよ!」

島風「話が合うわね。摩耶さんだっけ?やっぱり、不思議な人だったね、”提督”って」

摩耶「…”提督”が?」

島風「物凄いダサい人かと思えば、人間離れしてる所もあって…やっぱり、あの私を叱ってくれた時の態度…」

摩耶「駄目だぜ、あんなヤツ…馬鹿でマヌケで…絶対アイツは足手まといになるぜ」

島風「へえ~?摩耶さん提督の事…?」

摩耶「馬鹿野郎!んな訳ねぇだろ!!」

島風「へへっ、いっちばーん!」

摩耶「畜生、負けた~~!!」

島風「私とのかけっこで、しっかり並んで進んでくれたのは摩耶さんが初めてよ…」

摩耶「何か言ったか?」

島風「ううん、私も貴方たちの鎮守府に行ってもいい?」

子供「だから~本当にだってば~」

子供2「そんなのウソだよ。<しんかいせいかん>が車に乗ってたなんて~」

子供「うわぁ、またケンカしてるよ、あのお姉ちゃんとお兄ちゃん」

摩耶「テメェコラ…またアタシのダチを脅して無理やり店に行かせたらしいじゃねぇか…」

提督「おかしいな、飯食いてぇって言ったからオススメを紹介してやったんだぜ?」

摩耶「コノヤラァ!!」

子供「うわ~あのお兄ちゃん、お姉ちゃんの鼻の穴に指突っ込んでる~…」

子供2「あのお姉ちゃん、お兄ちゃんの大事なトコロ蹴ってるよ、すごく蹴ってるよ~」

─でも、あの2人はいつも決着ついたこと無いのよ─

木曾「お前も、そろそろ休んだらどうだ?そんなタービンばっかり磨いてさ」

島風「だって、速い方がいいに決まってるでしょ!!」

『島風』─完─

『怖いモノ』

提督「だから、次はどんな奴が深海棲艦化したんだって?」

叢雲「『伊58』という潜水艦よ。早く退治に行かないと…」

提督「それならもう、アイツが向かったぜ」

叢雲「別に、木曾も摩耶の仲間なんでしょ?そんなにアイツの事気にすることないでしょ?」

木曾「あ?き、気にしてねぇよ!だいたいアイツはな~!!」


伊58「おい、ぶつぶつしたタコさんよぉ、海は何してなんぼだぁ?」

タコ<潜水 して なんぼさ

伊58「んじゃ、泳ぐの辞めると死んじゃうマグロさんよぉ、最期まで頑張って生き残った潜水艦は誰だぁ?」

マグロ<とっても心の汚いお前だよ

伊58「ぎゃはははは!!海に住んでるお前らと会話できるこのゴーヤ様は無敵よ!どんな奴が出てこようともなぁ!」


伊58「よォ、ゴミみてーなカモメ共。ここを金髪をポニーテールにした女の子が通ったかよ?」

カモメ<通った、通った。この海流の向こうに行ったよ

伊58「毒々しい色の珊瑚野郎、教えねーと砕いちまうぞ」

珊瑚<あっち いったよ
フジツボ<うん、このサンゴ礁を抜けた先に居るよ

伊58「ケッ、説明が下手だねカス野郎は」

皐月(き、来た…!ボク、どうしよう…!!)

伊58「見つけた~」

皐月「や、やめてよ!」

クラゲ<ああ、可哀想に あの子つかまっちゃったよ
イカ<せめて黙ってあげる事はできなかったの?
カサゴ<ダメだよ、骨でできてるサンゴはあまり頭がよくないんだ
タイ<人間にあんま大きな声で尋ねられたら思わず答えちゃうだろ

伊58「ええい、おとなしくしろぉ!」

カレイ<あ、殴った。
プランクトン<かわいそうに いたそう ちがでてる
鯨<でも、あの邪悪な人間は変だな。まるで深海の汚れた匂いがするな

伊58「へへ、思い知ったか」

しーん……

伊58「アレ?何も聞こえなくなった?」


木曾「だいたい奴の話をした時の駆逐艦共が静かになるのが気に入らねぇ!一瞬目を大きく開いてどもってよ…」

カクレクマノミ<なんかきたよ

伊58「何が来るってんだよ!?」

ニシキハゼ<強い奴。そしてとっても怖いよ

伊58「怖いだとぉ?夜の海よりも怖いってのかよ!?」

ハリセンボン<アレは怖いよね
クサフグ<めっちゃこえぇよ
アオザメ<お前より怖いだろ

伊58「そいつはどんな武器もってんだ…」

ウバザメ<おっきいてっぽうみたいなやつ
ダイオウイカ<俺様は魚雷だって聞いたぞ
エイ<ワイは爆雷持ってるて聞いたった

伊58「分かったからもういい!どこから来るんだ?」

皐月(この隙に…)

伊58「逃がすかよぉ、ゴーヤ様の大事な夜食なんだよ!!」

皐月(やっぱり…ボクはここで…)ギリギリギリ

ホホジロザメ<誰か知りたいなら教えてやるよ

メキメキメキ
突然、前方から飛んできた爆雷が命中し、爆発する。

伊58「誰だ…お前…」

<<<<<<<<天 龍 だ よ>>>>>>>>

天龍「本当にゴキゲンだぜ、お前」

『怖いモノ』─完─

提督「大分この鎮守府も大きくなり、所属する艦娘も増えた…」

叢雲「そうね」

提督「伊勢型に高翌雄型に吹雪型…青葉型古高型長良型綾波型とか…」

叢雲「他にも大分増えたわね」

提督「一番問題なのが…」

叢雲「ソイツね」

ヲ級「ヲッス」

提督「コイツだ」

叢雲「何で深海棲艦がここに居る訳?」

提督「チンピラにいじめられてのを助けたんだけどよ、懐いちまったみてぇでよ…」

ヲ級「…」

提督「あと、コイツ見てると…何か懐かしい感じがすんだよな…」

叢雲「でもソイツ…何で頭尖がってるの?」

どうも皆さんこんにちわ、夕立です。
私、実は提督さんとあんまり話したことないっぽい…。最近ここに来た駆逐艦の子は皆提督の事を怖そうって言ってるのです。
でも夕立が提督さんの良いところをビデオに収めて、皆に提督さんは良いヒトだって証明してあげるっぽい!
まずは、提督さんのあとを付けてみようと思うっぽい…。

夕立(あ、提督さんが部屋から出ていきました!どうする気なんだろう…)

提督(コンビニ言って昼飯でも買ってこよ…)

夕立(外に出ていったっぽい?追いかけなきゃ!)

─鎮守府前の歩道─

提督「お婆ちゃん、大丈夫ッスか?」

夕立(早速、提督さんが転んだお婆ちゃんをおんぶしてるところ発見!しっかり撮影しないと)

夕立「引き続き尾行開始するっぽい!!」

─近所のコンビニ─

提督「すいません、コレください」

夕立(コンビニ内では特に目立った行動なし…)

─帰り道─

夕立(結局、お婆ちゃんをおんぶしてる所しか撮影できなかったっぽい…)

チャラ男1「アレ?君そんなカメラ持って何してるの?」

チャラ男2「暇なら俺たちと一緒にどっか行かない?」

夕立「え!?夕立に何か御用っぽい!?」

チャラ男1「君夕立っていうんだー。面白い名前だねwwww」

夕立「そうじゃなくて…」

チャラ男2「え?来てくれる?よかった~(難聴)」

提督「いや、気持ちはありがたいッスけど、俺は行かねぇッス」ズイッ

チャラ男2「んだ、テメェ!」

チャラ男1「オラ、早くどっか行かねぇと…」

提督「一体、何してくれるんですかねぇ…」ギリギリギリ

チャラ男1,2「」

提督「てか、夕立はこんな所で何してんだ?」

夕立「うーん、なんでもないっぽい」

提督「そうかよ。んじゃ帰るか」

チャラ男1「頭、割れるかと思った」

チャラ男2「耳、めっちゃ痛い…」

夕立(あ、今の撮影しとけばよかったっぽい…)


その日の夜、駆逐艦寝室。

夕立「今日の提督さんったら、すごくカッコよかったんだから~!」

曙「へえ、アイツが?信じられない」

暁「い、一人前のレディーだったらそんなの司令官が居なくてもへっちゃらなんだから!」

夕立「だから本当っぽい~~!!」

赤城「航空母艦、赤城です!これからお世話になります」

天龍「あぁ、新任の空母さんね。今提督は庭に居るから用有ればそこ行けよな」

赤城「あっはい、そうなんですか…」


提督「ホレ、ボーキだぞ!取ってこーい!!」

ヲ級「ヲッ!」

赤城「……」

提督「あれ?どちらさん?」

赤城「…あ、あぁ!えっと、今日からこの鎮守府に入りました、赤城です!」

提督「何か今日空母が来るとか言ってたな…まぁヨロシク」

赤城「ところで…あの…その深海棲艦は…」

提督「何か拾ったら懐かれちゃってよ。仕方なく遊んでたってこった」

赤城「は、はぁ…(うわぁ、変な鎮守府に来ちゃったかも…)」


摩耶「!?」

木曾「どうしたんすか?」

摩耶「いや、今誰かこの鎮守府を変て言った気がした…」

木曾「気のせいでしょう…あ、アイス食べます?」

『頼りになる』

大本営提督会議室

提督「…」ゴゴゴ

「うわ、花道さんってばまた何かイライラしてる…」

「あんな部屋の隅っこで花道があんな顔して外見てると何か落ち着かないんだよなぁ…」



昨日…

加賀「やっぱり、図書館は落ち着きますね…涼しくてとても楽になれます」

ガシャアン

提督「いいから探せ!艦橋がでかい戦艦姉妹がどんなんか探すんだよ!」

大和「これじゃない…これじゃない…」

加賀「あの、提督。ここは図書館ですのでお静かに…」

提督「加賀サンよ、艦橋がでかくて色々と失敗作な戦艦って知ってるか?」

加賀「…仕方ありませんね、恐らくそれは…」

提督「沖ノ島海域…ようやく追いつめたぜ…」

ル級「…」(大破

ル級「…」(中破

提督「お前ら…扶桑と山城ってんだってな…テメェらの弱点はきっちり調べてきたぜ」

摩耶「欠陥戦艦は、捨てるぞ!」

ル級「」ガーン

伊勢「スピードが遅くて足手まといだったんですってね!」

ル級「」バリーン

日向「もう艦隊に入ることさえできなくなったな」

ル級「ヤメテ」

天龍「艦橋が変な形なんだってな!」

ル級「グハッ」

大和「おまけに最期には、真っ二つになって沈んだんでしょう?」

ル級「イヤァヤメテ」

ル級「キャアアアア」

提督「大成功だぜ、メンタル破壊作戦…んじゃ、赤城!止めさしてやれ!!」

赤城「攻撃隊、発艦…え?」

その時、横から飛び出してくる人物。
そいつはジャラジャラ装備した魚雷発射管を2隻の戦艦に抜けて構える。

ル級「待って…もう私たちは…」

??「魚雷発射」

ズガッ ドオン

提督「なんだ、テメェ!」

摩耶「バラバラかよ…」

伊勢「何か…」

??「残酷だな、と思った?どうせこの深海棲艦化した姉妹はすぐ元に戻るさ。あ、知らなかったかしら?」

大井「だって、貴方たち、『違法鎮守府』の人達ですものね」

大和「違法とは何ですか!?私たちにはしっかり提督もついてて…」

大井「それだけじゃダメなのよ。じゃあ、その提督は免許持ってるの?」

大和「え…そうなんですか?」

大井「違法行為を犯す提督や鎮守府が増えてるから免許持ってる提督じゃないと鎮守府をやってけない決まりが決まったのよ」

提督「おいコラ、横からしゃしゃってきて随分上から挨拶してくれるな…どうやらお前も艦娘らしいけどよ…」

提督は大井に近づいていき、胸ぐらをつかみ、低い声で呟く。

提督「あんましケンキョすぎんとシメんぞ、コラ」

大井「へぇ、そうかい?やってみなさいよ」

大井の後ろに並んでいた兵隊が銃を提督たちに向ける。
提督は仕方なく手を放し、後ろに下がる。

『伝令!沖ノ島海域最深部にて戦艦ル級フラグシップ、戦艦ル級エリートを討伐完了!直ちに回収し、処置を始めろ!!』

大和「まさか…今は艦娘が提督無しに海に出てるなんて…」

大井「最初、その提督が鎮守府に入ったとき、誰も居なかったでしょ?違法鎮守府には最初から艦娘は配備されないのよ。分かったら落ち着きなさいって」

大和「落ち着けるものですか!?艦娘が提督無しに勝手に敵と戦うなんて、そんな事が許されるわけ無いでしょう!?」

大井「プッ、あはははは!このヒト、マジになってる!」

大井は大和を大声を立てて笑う。
大和は悔しそうに歯をかみしめながら睨みつける。

提督「このヤロォ!」

大井「あと一つ。貴方の鎮守府にも、提督無しで任務に向かえる許可を貰った艦娘が居るから」

提督「…」

って事があったようです。

叢雲「ちょっと、司令官!」

提督「あ?なんでここに…」

叢雲「都会で深海棲艦が発見されたわ!急いで!!」

提督「何級だ?」

叢雲「見た事のないタイプだったわ!多分アレは滅多に見られない”護衛要塞”ね!」

提督「あ?”ごごのようせい”って何だ?」

叢雲「イイから、鎮守府まで来て!助っ人が来てるから!!」

叢雲に連れられ、建物を出ると数人の集団にぶつかる。

提督「コラ、気をつけやがれ…!?」

??「oh…スミマセーン、大丈夫デスカー?」

提督「お前ら…」

金剛「おや?もしかして、この人がテートクデスカ?」

叢雲「この人たちが今回の助っ人よ。金剛型の2人ね」

比叡「都会で暴れる深海棲艦と戦う助っ人でこちらに来ました!比叡です!」

金剛「私は金剛デース!ヨロシクねー!…ところでテートク、前にどこかで会った事ありませんかネー?」

提督「馬鹿言え、俺とおまえは今が初対面だぜ?」

金剛「そうデスよね、人違いでシタ…」

叢雲「んじゃ、貴方たち三人は現場へ向かってちょうだい!私は武装を取ってくるわ」

提督「了解!」

東京 八王子市

護衛要塞「フシュー…」

この東京の八王子市に出現した護衛要塞は普通の護衛要塞より何倍も大きい。
直径10メートルはあるだろうか。

一般人「何だありゃ?」

護衛要塞「ガパアァァ」

護衛要塞は口を大きく開き一般人が固まっている場所で口を閉じる。
するとまるで物体が削り取られたかのように、そこにあったモノが無くなる。

一般人「うわあああああ!地面に大穴が!」

そのまま巨大護衛要塞は地面を削り取りながら地中にトンネルを掘っていく。
そしてトンネルの中で、護衛要塞は口から削り取った人間を吐き出す。

たかし「ここ…どこ?」

大和「大丈夫ですか?」スッ

たかし「ありがとう…お姉ちゃんもあの丸いのに食べられちゃったの?」

大和「はい、私としたことが…カレーに牛肉を使うか鶏肉を使うか迷っていたらうっかり…」

たかし「え、何それは」

大和「そういえば、お名前は何というのですか?」

たかし「僕は、たかし…」

提督「さすがに3人でバイクは無理か~!」

比叡「急いでくださいよ!これ以上被害が出る前に…」

オーイオーイ

提督「?…んだ、妖精かよ…危ねぇからどっか行ってな…」

エラー娘「もごもご…!」

提督「何言ってんのか分からねぇな…そういや、アレがあったぜ!」

提督はカバンから伊58の髪飾りを取り出す。
そしてそれをもみあげに引っ掛ける。

提督「ゴーヤの野郎が間違えて捨てた奴拾ったんだけど…」

エラー娘「あの護衛要塞を攻撃しちゃダメ!要塞を狙った攻撃は全て穴の中に送り込まれるんだよ!」

提督「穴ってなんだよ?」

エラー娘「あの要塞は穴を掘ってそこに人間を溜めてるんです!」

提督「んじゃ、どうすりゃいいんだよ…」

大井「目標、大型護衛要塞!ミサイル発射!!」

提督「間に合え~~!!」

ドカァン ドカァ

ミサイル2発は護衛要塞の腹部に命中する。
そしてトンネルの中では…

大和「ミサイル!危ない!!」

大和は艦娘ならではの飛翔力でミサイルの軌道をずらし、住民に当たらないようにする。
だが、爆発に少し巻き込まれ落下し、地面に叩きつけられる。

たかし「大丈夫!?」

大和「なんとか防ぎましたが…もう限界です…せめて武装が有れば…」

提督「駄目だァ、間に合わねぇ~!」

憲兵「攻撃妨害で身柄を拘束する!」

提督「いててて…」

金剛「ちょっ、離してくだサーイ!あの要塞を攻撃すると全部穴の中に送られるんだって~!!」

提督「妖精から聞いたんだよ…」

憲兵「何?その妖精はどこだ?」

大井「困るなぁ、違法の連中が邪魔しちゃ…」

比叡「邪魔なんてしてません!ただ攻撃するなって伝えに来ただけですよ!」

その時、提督の携帯電話が鳴る。
それを金剛が拾い上げ、着信を押す。
<誰か…居るの?>

たかし「大和っていうお姉ちゃんが死んじゃう!!助けてよ~~!!」

提督「大和も…穴の中に居るのか…」

憲兵「撃て!」

ドドドドドド

護衛要塞「…」

金剛「ヤメテください!中の子供だって泣いてるんデスよ!」

北上「…持ってきたよ、大井っち」

加賀「…持ってきました」

大井「ありがとう、北上さん、加賀さん…急に呼んでごめんなさいね」

北上「いいよ…」

比叡「そんなでっかい空中魚雷ぶっ放したら、穴の中が滅茶苦茶に…」

大井「貴方たち違法者だから知らないのね。”深海棲艦に殺された人間はその深海棲艦を倒せば生き返る”んだよ」

北上「大井っち…最初から…」

大井「何?穴の中の人達は生き返るんだよ?問題ないじゃない」

金剛「そんな…見殺しなんて…」

提督「ケケッ、それがお前らのやり方か…」

憲兵「コイツ…なんて力だ…」

提督「ブラウザゲームみたいにF5押せば全部元通りってか…」

憲兵「おい、数人で抑えるん…」

提督「オモシレーよなぁ!!?」ガン

憲兵「」

大井「何怒ってんのかしら、この人。ねぇ、北上さん?クスクス」ヒュッ

バキン

提督はグーで大井を殴りつける。
大井は後ろに倒れこむ。

加賀「…艦娘に暴力を振るうなんて…最低ですね!」

提督「だよな、俺は最低野郎だ…でもよ、小さいガキに『生き返るからいっぺん氏ね』なんて言う奴らに言われたくねぇな」

加賀「…違う、私は…」

提督「おいコルァ!!こんな公衆の面前で小汚ねぇ面晒してんじゃねぇ!!」

護衛要塞「…シュウウウ」(なんて言った?)

提督「聞こえねぇのか、いい耳してんな!」

叢雲「戻ったわ!一応”あのヒト”の艤装も持って来たわ」

提督「たこ焼きは、おとなしく大阪で食われてろバーロー」

護衛要塞「ガアアアアアアア」

提督「んだよ?」

大井「私が殴られた…あんな、違法野郎に…」

加賀「やっぱり、そのミサイルはやめた方がいいのでは…?」

大井「大丈夫よ。これはあの要塞に当たった瞬間に爆発するようになってる。穴の中に攻撃を流す時間は無いはずよ」

叢雲「怪しいわね~、あんま信じないほうがいいかもよ?」

大井「何?」

叢雲「アンタ達、さっきから全然汗かいてないもの」

北上「汗…?」

叢雲「昔、私の艦長だったなんとかって奴が言ってたわ。”汗をかかない人間を信じるな”ってね」

護衛要塞「オオオオオオオオ」

提督「遅いぜ…俺は今ゴキゲンなんだよ!」

提督の右腕が島風と戦った時のように青く光る。
そして護衛要塞の額に飛び乗り、拳を振り上げる。

提督「お前をイイ子イイ子したくて仕方ねぇや!!」

ゴパァン

提督の拳が護衛要塞の一部を吹き飛ばす。

護衛要塞「ギャアアアア」(なんでだ…攻撃は全て穴の中に送れるのによ…)

提督「そりゃ残念だな!」

大井(あの提督が速すぎて吸い込めないのか…)

大井「北上さん、奴の好きにはさせないわ!空中魚雷発射!!」

提督に気を取られている護衛要塞の背後に魚雷が迫る。

大井「いける!!」

提督「避けろぉ!」

提督が叫ぶと、護衛要塞は間一髪で魚雷に気づき、それを受け流す。
外れた魚雷は空中で爆発を起こす。

大井「」
北上「」

提督「アブねぇな…」

大井「アンタ馬鹿ァ!?アレが当たれば勝てたのに…」

提督「あのミサイルだってどうせ穴の中に吸い込まれるんだろ!?」

大井「それは…」

金剛「気を付けてくだサーイ!」

提督と大井、北上が振り向くとすぐ後ろに護衛要塞が大口を開いて迫っていた。
そして『ガオン!!』という音を立てて道路ごと3人が穴の中に吸い込まれる。

北上「おーい、離して」

提督「わり」

大井「さっさと北上さんから離れて!」

北上「私たちをかばってくれたの?」

提督「んなわけねぇぜ。テメーが違法だとかぬかしたあの戦艦だけどな、テメーの100万倍は頼りになるぜ」

大井「あれって確かデカいだけで役に立たなかった戦艦でしょ?何ができるっていうのよ」

大和「あ~提督~!!提督まで吸い込まれてしまわれたのですか~!!」

大井「あの動揺、シロウトの証拠ね」

提督「大和、お前の艤装は持ってきた…あのたこ焼き野郎、ぶっ飛ばせるよな?」

大和「…はい!!」

ボカァン

護衛要塞「!?」

トンネルから飛び出した大和と提督。
そして大和の砲撃で体半分が吹っ飛ぶ護衛要塞。

提督「もう一発!」

大和「はい!!」

護衛要塞「ギャアアアアアアアアア」

大井「何よ…あの戦艦の火力…あのヒト、あんなに強かったの…?」

大和「これでトドメよ、撃てーッ!!」

ドッカァン

金剛「やった~~~!!」

大井「あ、あんなのが許されるはずない…そうだわ、人間の警察に…」

北上「まぁでも、こっちだって一般人巻き込もうとしたんだし、ね?」

大井「それは…うん、そうね…」

比叡「ひえ~、私たちの出番無かったじゃないですか~!?」

大井「ねぇ、今回は貴方たちの事を大目に見てあげるわ。でも、いつか出頭命令が出るけどね」

叢雲「何よ、えらっそーに」

大和「よ…よよ…よろしいですとも!!」

加賀「…」

加賀(提督…最初に出会った時から程度の低い人間だとは思っていたけど…)

加賀「あの、提督…」

提督「なんだよ?」

加賀(知らなかった…攻撃がトンネルの中に吸い込まれるなんて。提督が居なければ、きっと大勢の人が…)

加賀「いえ、提督は…頭の悪そうなクセに生意気ですね…」

提督「んだと?」

大和「何という人でしょう!?失礼にもほどがありますッ!」

叢雲「でもそれは間違ってないわ」

加賀(私が思ったのはそうじゃない…もっと別の事を強く思ったんだ…)

エラー娘「提督さん!このたこ焼きまだ残ってますよ?」

提督「お、まだ居やがったのか…」

エラー娘「一部の妖精の言葉は人間には聞こえないんです。そんな中話を聞いてくれたのは提督さんだけでした」

提督「たまたま58の髪飾りがあったからな」

エラー娘「そうですか…。コラ、これからお前を海に流すから覚悟してくださいね」

護衛要塞「キュ、キュウウン…」

金剛「一件落着デスネー。これからテートクの鎮守府にお世話になるとしマスかー…」

提督「…気のせいだよな…(あの金剛とか言う奴と俺は、前にどこかで会ってるのか?)」

『頼りになる』 完

『金欠は誰もが通る道』

那珂「甘いお菓子が食べたいな!ファミレスとかで大きいパフェとか、屋台で売ってるクレープもいいよね!」

赤城「駄目ですよ、那珂ちゃん。今我が鎮守府の資材と資金は貯蓄中ですので、ワガママは言ってはいけません」<グキュルルル

提督「コラ、赤城!こんなスーパーの中で大声で言うんじゃねぇよ!!」

摩耶「元はと言えば、提督が馬鹿みたいに正規空母と戦艦入れた編成で馬鹿みたいに出撃しまくったのが原因だろ…」

提督「んじゃ、バカみたいに鎮守府の金盗んで遊んでたのはどこの誰よ?」

摩耶「…う、でもよ、備蓄のボーキを盗み食いしてのは誰だよ!?」

赤城「」ギクッ

提督「…赤城…?」

那珂「はぁ…」

提督「そんなに甘いの食いたいなら自分の金で買えばいいだろ…」

那珂「今金欠なの…」

赤城「…あぁ…」


提督「んでよ、この店はどうなのよ?」

鳳翔「えぇ…、前に提督が連れてきた男の人達が結構来てくれるので前よりはいいのですが…」

提督「結局、パフェか何かは売ってんのか?」

鳳翔「売ってますが…」

提督「売り上げは?」

鳳翔「上々ですね。もう少しすれば資材や資金も元の戻るかと…」

提督「あとは俺らの頑張り次第って事だな…」

─完

和田長官「…君は護衛要塞が出現したとき、何といって出撃した?」

大井「…」

和田長官「君の免許は一旦取り上げる。君にはとある鎮守府に所属してもらい、そこでの戦果次第で免許については考えよう」


大和「提督、今日から新しい艦娘さんが来るらしいですね」

提督「北上に続く”じゅうらいそうじゅんようかん”らしいな」

大和「開幕雷撃の要員が増えると考えれば…」

提督「重雷装巡洋艦って聞くといつぞやのあんにゃろうしか思い浮かばねぇけどな…」

??「失礼します」コンコン

大和「来たみたいですね…」

提督「入って、どうぞ」

大井「こんにちわ、重雷装巡洋艦大井です!ヨロシクお願いしますね(はぁと」

提督「あ」

大井「げっ!」


大井「はぁ~…」

北上「あら?大井っち、どうしてここに居るの?」

大井「あぁ、そっか、北上さんも木曾も姉さんたちもここに居るのね…」

北上「もしてしてここに移転?」

大井「そんな感じね…」

北上「元気出しなよ~ここも案外いい場所だよ。提督もうるさく物言わないし、ちょっと貧乏なの除けばね」

大井「明日から出撃だけど、頑張るわ」

『シンデレラ』

比叡「へ?シンデレラ?」

魔法使い「そうさ。主役のシンデレラがどっか行っちゃってね。代役をアンタにやってもらおうと思ってさ」

比叡「ここって、もしかして絵本の世界ですか?」

魔法使い「そうさね。主役の居ない絵本を読む子供の気にもなってみなよ~可哀想じゃろ~?」

王子「提督さん達が本物のシンデレラを連れてくるまで、どうか!」

比叡「人助け、もといキャラ助けができるならやりますけど…もし私がシンデレラじゃないって読んでる子たちにバレたらどうなるんですか?」

魔法使い「」
王子「」

比叡(あぁ、これは大変なことになりますね…)

「ちょっとシンデレラ~」
「なにしてんの~」

魔法使い「脇役の子たちが来るね、それじゃ」

比叡「ちょっと!どこいくんですか~?」

王子「我々の出番はもっと先なので、先に行ってまする」

比叡「まだ大事なことが…」

姉1「掃除もしないで何してんのよ~」

姉2「さっと行くよ」

比叡(シンデレラってどんな話だっけ?)

彼女はシンデレラのストーリーを思い出そうと、その脳みそをフル回転させて情報を探る。
彼女は驚くほどモノを知らない。
持ち前の明るさとスタイルでオールマイティーな感じのする比叡だが、実は!
本は読んだことがないのだ。

─比叡の頭の中─

比叡『てやんでぇ!この『シンデレラ』っちゅうお話の内容知ってる輩は居ませんかねェ?』

比叡『恐らく、『デレラ』の新しいバージョンみたいのじゃないかと…』

提督『デレラって何だよ…』

摩耶『そこ行くわけぇ衆!ちょっと待った!』

比叡『なんですかい?』

木曾『うっ、腹に魚雷が…』ガクッ

摩耶『死んでらぁ』

比叡『『シンデレラ』です』

叢雲『顔も見たくない!なんなら腕だけ残して消えてよね』

提督『お~そうかい!んじゃあな!!』

叢雲『素直になれない私…』

提督『ツンデレだ』

比叡『『シンデレラ』ですってば…』

金剛『ヘーイ、比叡!何か困ってるようデスネ~!』

比叡『流石お姉さま…困った時には頼りになります…!』

金剛『前に『シンデレラストーリー』って話をしマシタよネ~?』

比叡『はい、女優さんが偶然の出来事で有名人に成り上がる、みたいな話ですよね?』


姉1「何ぶつぶつ言ってるの、シンデレラ」

姉2「次は私の髪を結いあげて、宝石のアクセサリーで縛ってちょうだい」

比叡「…はい?」

姉2「もー、しっかりしてよね、シンデレラったら」

比叡(なら、私はまだ無名な時なのね、だったら…)

比叡「へぇ!あいスミマセンおじょーさまぁ!あたしゃ山だしのイナカモンですって、へぇ!何も知らねぇでスマンこったぁ」

姉1「え、ちょ…どうしたのさ~シンデレラ~」

比叡(あとはシンデレラがどうやって有名になるのか、手がかりを探さなくちゃ)

比叡『お姉さま、何かほかに知りません?』

金剛『そうデスネ~、『シンデレラストーリー』で選ばれた女優サンの本質を見抜いたプロデューサーに選ばれたんデスよ!』

比叡『そう、んじゃ誰かに選ばれて有名になるのね!』


比叡(でも、誰に選ばれるの…?)

姉2「今日のあんた、ちょっと変じゃない?熱でもあるの?」

姉1「私たちは今晩の準備しないといけないのよ!」

比叡(何だっけ…『シンデレラコンプレックス』みたいな言葉を聞いたことあるような…)


比叡『あ!思い出した!一週間くらい前…』

一週間前─

比叡「へ?シンデレラコンプレックス?」

暁「鳳翔さん、私たちカッコいい男の人が欲しいって話してただけよ?」

鳳翔「それがね、新聞にこう書いてあるわ。『男性依存型の女性がいつか自分がカッコいい男の人に選ばれる、って思ってる事をそう言うらしいわ」

比叡「あはは、何ですか依存って!」

龍驤「でもな~、そうなると比叡の王子さんって…」

暁「司令官じゃないの?」

比叡「あっはははは!確かに司令の事は慕ってるけど、それは無いですって~」

龍驤「でもアンタ、提督と喋っとるとき、声変わっとるで?」

比叡「え…何それは。気のせいでしょう?」

比叡『思い出したわ!つまりシンデレラは王子様に選ばれるのね!でもいつよ、それ」


姉1「いつって、今夜よ。今晩舞踏会が開かれるのよ」

比叡(今晩、王子様に選ばれるのね!これでようやくシンデレラのストーリーが分かったわ!)

比叡「へへぇ、アタスったらなんでことを、へぇ!ホンにスマンこってす~、へぇへぇ!」


比叡「はぁ~やっと休憩…きっと、お城で勝ち抜いて、王子様に護衛役か何かに選抜されるのね」

ビュッ

比叡「本当のケンカはできないけど、訓練での戦い方は覚えてます!”武道会”ね!『シンデレラ』って結構体育会系なストーリーね!」

継母「んもう、娘の準備はまだなの?」

召使「ただいま、末の娘様が…」

継母「ほほほ、あれを娘と呼ばなくてもいいのよ、”灰かぶり”でいいわ」

姉1「お母様~」

姉2「だずげで~」

比叡「こらぁ、お姉さまたち、そんな髪型じゃ上手く闘えませんって~」

姉1「何よ~こんな頭にして何考えてるのよ!?」

比叡「だって敵は髪を掴んでくるかもしれないんでさぁ、髪はショートにするべきだと思うんでぇ、あっしは」

姉2「ちょっと~私のドレスどうしてくれるのよ~」

比叡「そんなドレスはフットワークが鈍るんでさぁ。グラウンドに持ち込まれたら逃げられないっすよ~」

姉2「グラウンドって何よ~」

継母「シンデレラ、貴方何してるのッ!?」

比叡「おばさんも出るんですか?”武道会”」

継母「おば…!?舞踏会でしょ?ええ、出ますよ。貴方は留守番でもしなさい」

姉1「かーさん、しーっ!」

比叡「え~?それは負けるカッコだな~?」

継母「え?」

<ここで確認しておきますが、比叡は”舞踏会”を”武道会”と間違えています>

比叡「そういえば、留守番してなって言われたのにどうやって参加するんだろ?まぁいいや、シャドウプレイでもしてよ」

魔法使い「シンデレラよ、嘆くでないぞよ」

魔法使い「お前の清らかな心が、舞踏会に行きたいと願ったお前の涙が!大魔法使いのこの仙女を呼んだのだよ」

比叡「あ」

魔法使い「ってか泣いてもいないし清らかっぽくない事をしてるッ!?」

比叡「おばーちゃんオッスオッス」

魔法使い「お前さんなぁ、『あ、近所のおばーちゃん、肉屋でも行くの?』みたいなノリで言うんじゃないよ~ここは見せ場なのにさ~」

比叡「ごーめーんってば~」

魔法使い「ホラ、早く演技するんだよ!」

比叡「くううっ、何故私だけがッ!城で開かれる武道会にエントリーできないのかッッ!!地獄のような特訓に血反吐を吐いたというのにッ!!その成果を今見せるべきなのにッッッッ!!」

魔法使い「ダンスの練習に血反吐は吐かんだろ…まぁいい、連れてってやろうじゃないか!」

比叡「あれ?こんな動きにくそうなドレスで参加するの?」

魔法使い「だけど、踊るには十分さ」

比叡「手は何もつけないの?」

魔法使い「手袋をつけてるじゃろ?」

比叡「ベアナックルで闘うのね!パンチじゃなくて掌底を使わなきゃ拳を痛めるわ…」

魔法使い「蝶のように舞って王子様の気を引いてきなッ!」

比叡「んもー、比喩表現がいちいちかっくいいんだから、おばあちゃんってば!」

魔法使い「いろいろ食い違ってる気がするけど、ほれ、この馬車で行ってきな!12時まで帰ってくるのよ」

比叡「了解よ!きっと夕食を用意してくれるのね!」

王子「次だ、次の娘が…」

隊長「は…比叡殿ですね…」

王子「この城の兵隊に告ぐ!本物のシンデレラ殿の代役をしてくれている比叡殿には、少々不自然な言動が見られるかもしれないが、そこはうまく合わせるように!」

比叡「私がシンデレラだ!武道会に招待していただき、感謝する!私の一回戦目の対戦相手は誰だ!?」

王子・隊長「はぁ!?」

王子「まさか…比叡殿は、舞踏会と武道会を勘違いなさっている!」

「何かしら、あのヒト」
「やぁねぇ、灰かぶりの名の通り野蛮な娘だわ」

隊長「一か八か、彼女に話を合わせまする!」

ドズン

隊長「わははははは!!またせたな、貴様の相手はこのワシじゃあ~~~!!」

兵士「隊長、何を…?」

隊長(合わせろ、合わせるのじゃ…)チラッ

兵士「あっ…(察し)」

「へっへっへっへぇ…」
「そりゃあ、ねえでしょう旦那ァ!」
「そいつを倒すのはあっしらですぜぇ?」

隊長「よし…」

比叡「気合!入れて!いきます!!」

王子「どうした!?早く比叡殿に真実を伝えないのか!?」

兵士「王子…それが、あの娘の動きが速すぎて近づけません!」

隊長「比叡殿!話を聞いてください!」

比叡「ジャーマンスープレックスね!そうはいきません!」

隊長「あ、そちらは舞踏会の会場…!」

ガシャーン

比叡「あ、ドレスを着た人が…踊ってる…」

隊長「そうですな」

比叡「んじゃあ、武道会じゃなくて…?」

隊長「少し、勘違いされましたな?」

王子「”比叡”というのか…そなたが美しく見える!」

周辺「」

比叡「は…は…はずかし~~~~!!」

王子「あ、待ってください!!ガラスの靴を落としていったようだが…」

シンデレラ(本物)「え?この靴が私の足にぴったり?」

王子「えっと、その、はい!とにかくぴったりなんで城まで来てもらえますか!?」

シンデレラ「え~~~!?」

─────────

比叡「はずかしいよぉ~あ~…ハッ!寝てませんってば~!!ってアレ…?」

提督「お前って立ったまま寝れるんだな、スゲェよ…」

比叡「夢ですか…」

提督「何の夢見てたんだか知らねぇが、寝る前にゃ歯磨けよ」

比叡(変な夢だったなぁ…まぁいいか。歯磨いて寝よう)

『意味不茶番・シンデレラ』完

『通り雨』

こんにちは、海軍士官兵学校の生徒の村田です。
その雨の日は、朝からとても最悪なものを見てしまった。

「やだねぇ、ヤンキー同士のケンカだ」
「あれ、確か春から居なくなった花道じゃん」

花道からの報復を恐れておとなしくしてたヤンキーが花道をシメようとしてんだと思う。
暴力は最低だと思う。だから同じクラスだった花道も大嫌いだった。
ようやく忘れられそうだったのに、どうしてまた思い出しちゃったんだろう。



村田「なぁ、池田、そろそろ帰るか」

池田「あ、あぁ…」

「よぉ、池田、帰る前に約束の3000円置いてけよ」

村田(げ、3年の不良3人だ…)

池田「え…『はい』なんて言ってないじゃないすか」

「うるせぇぞ!コラ!」バチン

池田「いてっ」

「テメェは俺らのパシリつーことで生かしてやってること忘れるなよ?」

金剛「コラ、貴方たち何してるデスか!?やめなサーイ!」

「何だァ、お前は」

村田「…」

「邪魔だぞ、コラ!」

金剛「いたっ…」

村田「その人は関係ないだろう!?」

「邪魔だぞ、コイツ!」バチィィィィン

村田「ぐふううう…」

畜生…だからこんな奴ら、嫌いなんだ…
でもその時だった。花道がさっそうと現れて、奴らに立ち向かっていった。
それはすごい光景だった。暴力はさらに強いモノの暴力で簡単に駆逐される。

「ゴメン、ゴメンって~」
「花道君~~!!」

僕のいちばん嫌いな考えだ。

提督「今朝、お前の財布をカツアゲしてた奴らに話付けた時、あいつら3人だけ居なくてよ。助かったぜ」

何を言ってるんだ…謝るのはこっちだろう。
それとは別に、僕はその女の人に恋をしてたと思う。

金剛「テートク、助かりマシた~」

でもそれがすぐに失恋だと分かったのは、金剛さんの顔で分かった。
この花道も、少しは良い奴なのかな。

『通り雨』完

※キャラ崩壊注意です


『ビスマスク プラス 扶桑姉妹』

山城「ねぇさま…一体、どうしたのでしょう…?時雨ちゃんは…」

扶桑「こんな町のど真ん中で主砲を構えて…何をするの?」

時雨「どうして、君たちはあんなに簡単に沈んじゃったの?一緒に戦いを乗り越えようって約束したのに」

扶桑「それは…」

天龍「コラぁ、こんな街中で何してんじゃド阿呆がァ!!」

木曾「そうだぜ…この姉妹を攻撃すんだったら深海棲艦の首でも噛み千切ってやがれ!!」

金剛「あの2人、珍しく意見があってマスネ…」

時雨「チィッ、ひとまず態勢を…」ダッ

天龍「オイ、逃げるんじゃねぇぞー!!」


山城「これが”ラーメン”ですか…初めて食べました」

扶桑「あの、鳳翔サン、ありがとうございます…」

提督「こっちゃ今はあんまし売り上げが伸びてねぇんだ。しっかり金は払えよ…」

赤城「まぁ、いいじゃないですか…扶桑さんと山城ちゃんの悲劇に怒っていらっしゃるのは分かりますが…」

提督「うるせいやい。こいつ等は昔、やむを得ず海戦に引っ張りだされたんだろ?」

赤城「そうみたいですが…」

提督「それが結局、沈んでちゃダメなんだよ」

赤城「何か言うべきだわ、大和さん!」

大和「ずびばぜん、この姉妹のエピソードはあまりに不憫なものだったので…私もお力になりたいと…」

ドバアアアア

鳳翔「何かしら、水道が…」

水道から水が漏れだしたかと思うと、外で爆発音が聞こえる。
店の中にいる面々が外に出ると、はずれたマンホールから勢いよく海水が噴き出していた。

提督「なんだこりゃあ…まさか…」

??「”艦娘”の気配のする方へ移動してみたら…日本の提督に会えるなんてね」

大和「あの戦艦は…ビスマルク!!」

ビスマルク「私はビスマルク型弩級戦艦、ビスマルク!」

提督「テメェ、今すぐ海水を止めやがれ!!」

提督と大和が同時にビスマルクを取り押さえようと突っ込んでいく。
だが2人は何者かの横からの攻撃に行く手を阻まれる。

ビルマルク「レーベ、ナイスよ、助かるわ」

提督「うおおおお!」

Z1「コイツ、人間なのになんという力…!」

提督「大和!お前は皆を連れてどっか逃げろ!!」

大和「は、はい!皆さん、行きましょう!!」

ビスマルク「逃がさないわよ!」

赤城「くっ…」

ビスマルクの背後から白い触手のようなものが飛び出し、逃げ遅れた赤城を捕まえる。

ビスマルク「ちっ、2人だけか…ま、いいわ。きっとすぐに地球全体が海になる…そうなれば艦娘も人間も、足なんて要らないわよね?」

提督「テメェそいつに何かしやがったらタダじゃおかねぇぞ!」

Z1「おっと、よそ見はしちゃいけないなぁ、ちゃんとパンチでもうってくれよ」

提督「オラァ!」

Z1「僕には効かないなぁ、少なくとも人間は少なくとも艦娘の艤装が無いと攻撃できないんだろ?」

提督「そうだった…」

Z1「この国の人間は阿呆ばっかりだなぁ!!」ビュン

提督「ぐふッ…」ドカッ

赤城「あったわ、予備の流星!念のためもっといてよかった…提督、掴まってください!」

赤城は上着から流星を取り出し、それを発艦させる。
そして片方の翼につかまり、、そのまま提督の腕を引っ張る。

ビスマルク「逃がしたか!」

Z1「見失ってしまった…」

ビスマルク「逃がしたならさっさとこの世界を海に…って、どうして私たちは海水なんかをぶちまけているのかしら?」

ドプーン

ビスマルク「誰!?」

山城「あ、見つかってしまった…」

ビルマルク「まぁまぁ、レーベ、離してやりなさいな。ねぇ、貴方、海は好き?」

山城「…へ?」

Z1「海は好きかと聞いているんだ、マヌケ」

山城「嫌いじゃないけど…でも私、あまり海に出たことが無くて…」

ビスマルク「海はいいわよ!透き通った青い海の上を滑るのはどんなに楽しいか!」

山城「…」

ビスマルク「そこで、貴方は考えた事はある?”この世がすべて海ならよかったのに”と」

Z1「ビスマルクさんの言う通りです!」

ビスマルク「のう、レーベよ!こんな島国、すぐに沈没だな!」

山城「…でも、人間も艦娘も海の中じゃ息ができないわ、私も貴方たちも…」

ビスマルク「?この世を海にするですって?誰が?」

山城「…へ?」

ビスマルク「海水ストーップ!!」

ビスマルクがそう叫ぶと、マンホールや民家の水道から吹き出し続けていた海水が止まる。

ビスマルク「ああ、私は日本の人達に迷惑をかけてしまった!青く透き通った海は好きだけど、あのどす黒い深海のエネルギーが私たちをおかしくしているのよ!」

Z1「もちろん、本当の僕たちは世界を海にしようなんて考えてないから!」

山城「じゃあ、今は正気なの?」

ビスマルク「ああ、だけどおかしくなる時間が次第に増えてきている…」

Z1「思い出したよ!僕たちが日本に来たのは、海にするとかそんなんじゃない!」

ビスマルク「一番深海棲艦の被害の多い日本へ送り出された艦娘よ!私たちは…」

扶桑「助かりました…」

大和「一応、警察署まで逃げてきましたが、ここもいずれは…」

提督「はぁはぁ、戻ってこれたぜ…」

赤城「到着しました…」

鳳翔「無事でしたか…」

ドッカアアアン

提督「ビスマルクの野郎が来やがったぜ…深海棲艦の艦隊を連れて…」


ビスマルクサイド

ビスマルク「なんでよ~!なんで深海棲艦が付いてくるのよ~!」

Z1「多分、僕たちの事を仲間だと思ってるんだよ…」

ビスマルク「一刻も早く、あの提督に私たちが敵じゃないことを知らせないと…」


提督「この世界を海水でいっぱいするにゃ、それを邪魔する俺らをまずに消したいんだろうぜ…」

ビスマルク「さぁ、提督!と、その他!私たちは敵じゃないわ!」

Z1「そうだよ、僕たちが暴れたのは一時的なもので…」

大和「皆さん、下がっててください!」

Z1「話を聞いてくれそうにないね…」

ビスマルク「少し強引だけど、やるしかないわね!」

ビスマルクが背後に居る深海棲艦の艦隊に命令を出す。
するとその深海棲艦はわっと散り、辺りにいる警官や憲兵を縛って動けなくする。

ビスマルク「さぁ!提督、聞いてちょうだい!私たちは…」ドクン

Z1「…」ドクン

提督「どうした?」

ビスマルク「あーあ、貴方たちがぐずぐずしてるから、深海棲艦の発作が、起きてしまったじゃないの!!」

Z1「さぁ、深海棲艦!あの艦娘たちを捕らえよ!」

大和「くっ、離して…」

鳳翔「艤装や艦載機が無いと…」

赤城「どうにもできない…」

扶桑「わたしはもうだめ…」

山城「…」

提督「なぁ、山城。お前は、どっちにつく?」

山城(え?どっちにつくって…もうこっちの皆は捕まっちゃったし、相手は多い…もう駄目じゃないの…?)

山城「私は、いつも役立たずなのよ…肝心な時に動けないし、動けたとしても所詮使えない欠陥戦艦…」

提督「ちげぇよ」

山城「だから、再び生まれた時も、提督のおかげで正気に戻れたと思ったら、雷巡にバラバラにされて…そんな最低の人生…」

提督「ちげぇな。お前の人生が最低なのは、お前が役立たずだったからじゃねえよ」

山城「え?」

Z3「くくっ、諦めなさい…世界を海にするのを邪魔した貴方たちには、ここで消えてもらうわ」

赤城「う…」

Z3「くっくっく…おぶ!」グシャッ

ビスマルク「何だ…?」

提督「ワリぃな、綺麗なドイツ艦風情様に体も心も真っ黒い深海のお客様よ。俺は自分でも嫌んなるくれぇのへそ曲がりでよ」

Z1「…」

提督「好きな曲も、人気アイドルのJ-POPよりも、しょっぱい歌手のアニソンばっかだぜ…」

ビスマルク「この計画は音楽なんかで済まされないわ…」

提督「どんな曲にだって名前はある。気を付けな、”ビスなんとか”さんよォ」

ビスマルク「お前に勝ち目はないわよ?この大勢を前に…」

提督「だからさ、おとなしく世界を海にさせろなんていわれりゃ、お断りよ」

ビスマルク「ごちゃごちゃうるさいわね…さっさと消えなさい!」

提督「ゼッタイ イヤダネ!」

ドグシッ

提督は素早く回し蹴りを繰り出すと、提督に背後から迫っていた重巡リ級の顔面にヒットする。

Z3「この提督は馬鹿か!この人数に1人で、しかも人間が勝てる訳ないだろう!!」

山城(驚いた…私は多分人生で一番驚いたわ。この状況でビスマルク達に喧嘩を売る人が居るなんて…)

そうさ、人数もずっとビスマルク側の方が優勢なのに、提督は1人で突っ込んでいく。
でも、本当に強い…素手であそこまで深海棲艦の艦隊と戦えるなんて…あれじゃまるで…。
いや、気のせいよ。でも、どうして私の人生は最低じゃないって提督は言ったの?どうして?

鳳翔「提督、もうこのへんでやめにして逃げましょう!」

提督「なんでだよ、ここでケリつけとかねぇとダメだろうが!」

重巡リ級「…」ジャキッ

提督(こいつら、確か殴り倒したはず…)

赤城「人間は最低でも艦娘の艤装を使わないと攻撃は通らないのよ!」

提督「グハッ…」

提督(んじゃあ俺は、今までただ殴ってただけってことかよ…」

Z1「僕たちは頭に来たよ…」

Z3「よくも私たちを散々殴ってくれたなぁ!?」

ゲシッ バキッ

Z1「よくも僕を足で蹴ったね!」

Z3「仲間に手を出した分、食らうといいわ!!」

警官「もういい…やめてやれ…」

憲兵「彼はもう動けないではないか!」

提督「」ドサッ

山城「ホラ、こんな時に私は何もできない…役立たずで最低だよ…」

提督「テメェ、だから違うっつってんだろ?」

山城「なんで…!?あんな大勢に立ち向って死んじゃったら、無駄死にじゃないの!」

提督「うるせぇんだよ、コラ!お前が俺の価値を勝手に決めてんじゃねぇ!俺の『モノサシ』じゃこれが最高だ、バカ野郎!」

山城「モノサシ…?」

提督「お前の人生が最低なのは、お前が最低だって思ってるからだ…。いいか?何か大きなことを成し遂げるには、何か大きなものを捨てなきゃいけねぇ覚悟を決めんだ。俺がアイツらをぶっ倒すには俺が沢山殴られなきゃならねぇ」

提督「俺のモノサシじゃ、その覚悟を決めるのが最高の事なんだ!」

Z1「そうか、ならば最高の気分のまま消えて行け!!」

提督「るせぇぞサンピン!!」ガシッ

提督はZ1の膝蹴りを掴んで止め、離さない。
そして提督の髪の毛が、まるで下敷きで頭をこすった時のように髪の毛の一部が逆立っていく。

Z1「な、なんだお前!」

Z1「僕の膝蹴りを止めただと…?」

提督「もう一回言うぞ、サンピン…俺は今、山城と喋ってんだよ!!」

ドゴォン

提督はZ1の頭を掴み、地面に叩きつける。
Z1は床に顔を突っ込んで動かなくなる。

ビスマルク「だから分からないのかしら!?人間の攻撃は我々に効果が無いと何度言えば…」

Z3「ははは、そうよ。ねぇ、いつまで寝たふりして…」

Z1「」ゴロン

Z3「…気絶してる」

ビスマルク「何だとぉ!?」

提督「なぁ山城…お前には大切な人はいなかったのかのかよ?」バキンッ

深海棲艦「ギャアアア」

山城「居ますけど…」

提督「んじゃあ、時雨も最上も満潮も、お前を最低って言ったかよ?」

山城「う、ううん!」

提督「扶桑は…お前の人生を最低って言ったのか?」

山城「ねぇさまがそんな事言うはずない!いつも私を励ましてくれた…」

提督「だろ?俺が言ってたモノサシってのはな、それぞれが持ってる心の基準みたいなやつよ。みんなそれぞれモノサシのメモリの大きさは違うんだ。だから、他人に自分を評価させるんじゃねぇ!」

山城「はい…」

提督「もう一度聞くが、お前の人生は最低じゃねぇ。なら何だ?」

山城「私の人生は…最高だったわ!欠陥戦艦と罵られ、ろくに戦果も稼げずに沈んでも、私は最高だったと思う!」

提督「なら言え!歯を食いしばって『最高だ』って言え!それができりゃ、立派な『艦娘』ってモンよ」ヒュ

深海棲艦「グアアアア」

Z3「貰った!この主砲を撃ちこんでやる…」

提督「テメェで最後か!?」

バキリ

Z3「うげ…」

鳳翔「警察と憲兵の方々。貴方たちは1人で何人の暴漢を相手に出来ますか?」

憲兵「ハッ、せいぜい上手くできて2,3人は仕留められるかと」

赤城「犯罪者よりも強い生物をあんなに沢山倒すなんて…」

扶桑「いくらなんでも提督、強すぎじゃありません?」

ビスマルク「馬鹿な…ただの人間が、武器も艤装もなしであそこまで闘えるなんて…そんな事人間としてありえない…」

ビスマルク「それじゃ、あの男は一体…なに?」

Z1「ビスマルクさん、あの提督ってば強すぎるから、僕たちやられちゃいました!」

Z3「私たち、いったんドイツに戻ります」

ビスマルク「えぇ、そう…行ってらっしゃいな」

Z1「ビスマルクさんもとっとと提督に正気に戻してもらった方がいいですよ?」

ビスマルク「うむ、そうするから帰って、どうぞ」

その時だった、3つの人影がこの警察署の中に飛び込んでくる。
2つの影が1つの影を怒鳴りながら追いかけているようである。

天龍「テメェいつまで逃げる気だ!」

木曾「いい加減、おとなしくしろ!」

時雨「ひいいいいい」

提督「コラぁ、テメェら!せっかくイイ感じに収まりそうだったのによ!」

ビスマルク「ハイヤーッ!」

時雨「ぶほほっ」ガクッ

提督「テメェ…」

ビスマルク「もう、最初に人の話を聞かなかったのは誰よ?カクカクシカジカ…」

提督「えぇ…先に言えっての…」

大和「とはいえ、一件落着ですね…」

ビスマルク「さて、もう私の艤装もボロボロ。一度ドイツに戻るわ。ごめんなさいね」

提督「もう大丈夫なのか?」

ビスマルク「大丈夫よ!もう私は完全に正気だわ。それじゃSehen wir uns wieder」

ビスマルク「そうそう、貴方、人間じゃないわね?」

提督「ヘッ、何言ってんだよみんなしてよ…俺は人間だぜ?」

─パッ─

うわああああああああああああ

提督(なんだこれは…泣き声か…?」

だ…も…れなかった…うわあああああああああああ

提督(すげぇ、悲しそうな声だな…)

「「提督!」」

提督「あ…」

鳳翔「どうしたんですか?ボーっとして」

提督「何でもねぇよ…さ、ビスマルクもどっかいったし、鎮守府へ戻るか!」

山城(…自分を最高だと思え、か…。でも提督って、ちょっと不思議な人ね)

扶桑「どうしたの?山城、行きましょう」

山城(姉様にも話してあげよっ)

山城「さっきの提督、見ましたか?なんたって…」

『ビスマルク プラス 扶桑姉妹』完

金剛「テートク」

提督「あ?」

金剛「そんな毎日パソコンばっかやってるんじゃなくて…たまには私とデートでもシマせんカ~?」

提督「えっ、何それは…俺は外で危ない連中に絡まれるよか、こうして自室にこもって遊んでる方がいいね!」

金剛「ウ~ン、強情ですネ~、テートクは」

提督「ヘッ、木曾達が時雨を追いかけまわしてた時にはぐれて公園で泣いてたのはどこの誰よ?まぁ、すぐ終わるんだったら行ってやらねぇでもねぇけどよ…」

金剛「くっくっく、素直にそういえばいいデース」


提督(街の方まで来るのなんて何か月ぶりよ…)

「あ、あのヒトすごい美人ね!」
「え、横にいるのは彼氏か?」
「まさかぁ、友達かなんかでしょ」
「だよな、あんな寝ぼけづらとじゃ釣り合わねーよな」

提督「…テメェらコラ、その口ひっちゃぶいてやろうか?」ゴゴゴ

金剛「ハハハ、すいまセーン、皆サン、アハハ…」

金剛(んもう、人にちょっかいかけちゃダメって言ったじゃないデスカ~)ヒソヒソ

提督(だってよ~あの野郎どもが先に…)ヒソヒソ


提督「そういやよ、お前らってあと2人妹居るんだろ?もしかして別の鎮守府に居るのか?」

金剛「いえ、まだ…出会えてないだけデス…」

提督「んじゃあよ、いつになっか分かんねぇけど、妹どもがうちに来たら、少しはおとなしくなれよな…」

金剛「それはわかりませんヨー?もっとうるさくなるかも知れまセーン!」

提督「へへっ、迷惑だよな本当に…」

『ビッグ7と妹2人』

北上「くうっ…強い…!」

??「そうか、貴様も”46cm砲”を持っていないのか…ならば、死ぬるがいい」

北上「避けられない…」

ズバン


村田「なぁ、絶対おかしいって!」

池田「そうかな?よくある事じゃないの?」

佐崎「でもよ、何か気味悪くねぇか?」

金剛「あ、この間の…何話してるんデスか~?」

村田「お、金剛さん…いや、大した話じゃないんですけど、都市伝説みたいなものですよ」

金剛「どんな?」

池田「八王子の小学校の横の塀に青いビニールシート貼ってありますよね?」

金剛「あー、ありマシタ!!」

佐崎「そこで、そのビニールシートにそっと耳を澄ますと、声が聞こえるんですよ」

金剛「そんなの、結構いくつもあったような…ね、ねぇ、今晩、行ってみない?」

─3日前、大本営本部─

大井「花道提督の罪はもう決定ですよ!深海棲艦化した艦娘を元に戻すのが私たちの仕事。それを毎回毎回横取りしてるんですよ!?」

憲兵「わかったわかった…」

憲兵「彼の鎮守府の行為は抑えてある。あとは証言なのだが…」

大井「証言?するする!!」

憲兵「助かる。これで花道提督の取り調べをすることができる」

ピロロロロロ

大井「あ、電話…はいはい、大井ですよー。あら、北上さんどうしたの?」

憲兵「…」

大井「…」

大井「悪いけど北上さん、八王子のあの区域に出没している今回の”深海棲艦化した艦娘”は… 最 悪 よ。それに、あの高速戦艦の2人も仲間につけてるってきいてるわ」

そしてそのころの花道の鎮守府。
1人出かけた提督は文房具店で何やらポーチのようなものを買う。
その文具屋の横のスーパーに入ろうとする大和。

大和「暑い日には食欲がなくなりますから、豚しゃぶをポン酢でいただきましょうか…」

大和がスーパーに入ったと同時に文具屋から出てくる提督。
帰り道で提督は公園の大きな滑り台が目に入る。

提督(誰も居ねぇよな…)キョロキョロ

大和「あの、提督?何をしてらっしゃるのでしょうか…?」

提督「~~~!?声くらいかけろよ馬鹿野郎!!」

大和は大声を出されてビックリした拍子に買った物を全て空中に放り投げてしまう。
が、大和はカポエイラのような体術で全て拾い上げる。

提督「すげぇもんだ…日頃のおめぇからは考えられねぇ…」

大和「恐れ入ります」

提督「いろいろと見えてるから早く戻れよッ!!?」

大和「日頃はあまり戦闘には出させてもらえませんが、この前は1人で敵空母6隻をあっという間に沈めてさすが大和とお褒めの言葉を…」

提督「へいへい」

憲兵「休日に大変失礼する。花道提督と…丁度いい、その鎮守府の艦娘に話がある。悪いが保安局までご同行願う」

提督「おいまて、いてててて」

─花道提督、大和の身柄拘束─

そして今。

村田「生臭い、べとべとした風だ…」

金剛「何~?もしかして怖いんデスカ~?」

佐崎「いやそうじゃねぇけど…」

池田「な、何やってんだろう…あれ…」

北上「うう…まさかこんな場所で出くわすなんて…」

??「馬鹿め、隙だらけだ!」

北上「避けられない…」

北上と交戦していた者は所持している刀で北上を真っ二つに斬りさく。
そしてそばにあった青いシートも一緒に斬れると、中には同じく動かない数人の艦娘が壁に寄りかかっている。

??「<46cm砲>を持たぬ艦娘と、そこに偶然居合わせた艦娘と3人の人間よ…死ぬるがいい」

金剛「…アブナイ!」

村田「?」

ザクッ

その者が再び剣を振り下ろすと、金剛、池田、佐崎の首がスパンとちょん切れる。
だが体はまだ脈打っているし、血が出ていない。

村田「うわあああ、く、首が~~!!」

長門「ちっ、斬り損ねたか…ならば、粉々に吹き飛ぶがいい!この、『日本一の戦艦長門』によって!」

比叡「そこの人!掴まってください!」

村田「は、ハイ~~」

突然比叡が現れ、村田を手を掴むと思いっきり塀の向こうへ投げる。
村田は一応察したらしく、小学校の校庭を横切って逃げる。

比叡「偶然お姉さまを見かけてついてきてみたら大変なことになっていました…」

長門「めんどうだが、栓のない…」

妙高「さぁ、深海棲艦化した艦娘よ、とっとと正気に戻りなさい!」

榛名「この榛名にそんな安い攻撃が通ると思っているのですか?」

妙高「は、速い…」

ドカァン

榛名「砕けてしまいなさい!!」

妙高「う…無念です…」(大破!


霧島「次に私にたてつく輩は誰だ!?」ゲシッ

深雪「ぐっ…」

白雪「うぅ…」

吹雪「深雪、白雪…ッ!」

霧島「もっと強い敵は居ないのかぁアッ!!?」

吹雪「ぶっ…」グシャリ

吹雪「」

霧島「やっぱり私は強いな…こりゃ長門の次に強いのが私で確定だな…」

榛名「はぁ?アンタ何言ってんの?2番は榛名に決まってるじゃない」

霧島「んだとコラァ…」

長門「やめないか、お前たちのランクはお前たちで決めろ。日本一はこの長門であることを忘れるな」

霧島「はい…だからこそ、長門には日本一の武器がふさわしい」

榛名「46cm連装砲!あの戦艦大和が持っているといわれる最強の主砲…」

長門「一度撃てばどんな艦でも貫通し、一撃で爆散させる!そんな武器はこの長門にこそふさわしいだろう。では、大和を探すぞ」

和田長官「ここで長門が出現したと聞いたが…遅かったようだ」

憲兵「恐らく長門はこれまでの証言を聞くと、どうやらある武器を捜しまわっているようです」

和田長官「そして、長門と榛名、霧島は我々に『私たちはまだまだ人を斬り続ける。これ以上犠牲を出したくなければ、46cm砲を渡せ』と…」

大井「北上さんとは、ほど同じ時期にこっちへ入ってきたんだ…私はこんな性格だから友達もできなかった。だけど北上さんは何度無視しても私に話しかけてくれる。そんな…大事は親友の北上さんをこんなにしやがって…長門のクソ野郎は私が絶対にぶちのめしてやる!!」

和田長官「待て、大井君!単独行動は規約違反だぞ!第一、君は今免許を持っていない!」

大井「解決したら、軍法会議でもなんでも開いてちょうだい」

村田「ま、待ってください!僕もつれてってください!」

大井「人間、死ぬわよ?」

村田「それでも、いいです…僕のせいで友達と金剛さんは…」

大井「好きにしなさい」

憲兵「そういえば、肝心の花道提督と大和は連絡がついているのですが?」

和田長官「それがな、ここ2日連絡が付いていないのだ…」

村田「でも、長門っていうのの居場所と花道君の居場所って知ってるんですか?」

大井「私、知ってる」

大和「もう!何という方達でしょう!」プンスカ

提督「おまぇ随分怒ってんなぁ…」

憲兵「大和さん、面会希望者がおります」


大和「誰かと思えば、大井さんじゃないですか。もう私たちに御用はないかと」

大井「それについては謝る。どうもすみませんでした」

大和「…どうなされたのですか?」

大井「事情が変わった!今すぐ来て!」

大井は面会室のガラスをたたき割り、そこから大和を引っ張り出して窓から連れ出す。

大井「長門と言う奴が貴方が持ってる主砲を探して暴れまわってる。艤装を持ってすぐについてきて!!」

廊下を走って出口を目指す2人だが、天井から檻の壁が降りてきて2人を閉じ込める。
檻は叩いてもちっとも壊れない。

大井「くそ…私は友人の敵もろくに討てないの…?」

大和「その涙に偽りはないですか?」

大井「あぁ…」

大和「では、その魚雷を私に」

憲兵「大井!大和に武装を渡すな!!」

憲兵がそう叫ぶが、もう遅い。
戦艦でありながら大井の魚雷発射管を構えその魚雷を発射すると、保安局の大部分が崩壊する。

村田「来た!大井さんと大和さんだ!」

大井「待たせたわね、村田とかいう人。それじゃ運転して」

村田「ぼ、ぼくがですか!?」

大井「はやくして」

村田「は、はい…どうなっても知りませんよ~!」

大井「流石はシロウトの運転。滅茶苦茶だけどスピードは物凄い…」

大井「それにしても、戦艦の癖に魚雷を軽くぶっ放してあの威力…すごいわね」

大和「あの方たちにはストレスを感じていましたので、ちょっぴりやりすぎてしまいました…」

大井「ちょっぴりって…」

村田「ボクやっぱり運転なんて無理!」

大井「仕方ないわね、変わってあげるわよ。私も初めてだけど」

大和「あ、もう現場につきましたよ!」


ブツブツ…

村田「斬られた北上って人…半分になっても何か喋ってる…」

大井「『大井っちには勝てない。早く逃げて』だってさ…私は貴方の為に戦いに来てるのに」

大和「体は斬られても魂は残っているのですね…」

村田「かわいそうに…」

大和「村田さんは良いヒトですね…では、1つ頼まれてくれますか?提督をここに…」

村田「分かった!」

大和「普通の人間をここに居させるわけには参りませぬ…」

大井「貴方って、何ていうかいうか…そんなに強いんだったら提督に使われるのが嫌じゃないの?」

大和「そんな事はありませんよ?むしろ最近は私が提督に釣り合うように背伸びしているのです…なぜなら提督は…」

長門「誰だ貴様らは!!」

大井「大将さんのお出ましよ…」

長門「ついに見つけたぞ…さぁ、私にその主砲を渡せ…誰よりも上手に使ってやろう」

大和「貴方に必要なのは、貴方を正気付かせる一撃だと思いますが…」

長門「ふん、こいつもそう言っていたな…」

長門はちょん斬った比叡の首を地面に投げる。

大井「キサマァ~~~!!ぶっ飛ばす!!」

大井は酸素魚雷をじゃらじゃらと構え一斉に発射する。
だが長門は腰に下げた剣で魚雷をはじこうとする。が、逆に剣が魚雷によってへし折られてしまう。

大井「剣は折ったわ!さぁ、覚悟しなさい!」

長門「馬鹿め、甘いわ!」

折れた剣の先っちょを足の指で挟み、それを大井の右目に突き刺す。

大井「が…」

長門「勝負あったな!」ジャキン

折れた剣で長門は大井の左腕を斬りおとす。

憲兵「しばらくここに入ってろ!くそ…この保安局が壊れたのも全部私の責任だ!」

提督「ちょっと…俺のせいじゃねぇだろが!」

憲兵「しばらくは出さんぞ!」

ゴロゴロゴロ

憲兵「なんだ?騒がしいようだが…」

村田「花道君~!どこだよ~!大変なんだ、金剛さんが首を切られちゃったんだよ~!」

ガイイイン

提督「何か言ったか?村田…」

提督は金属の扉を蹴り破って出てくる。
そして抑えようと掴んでくる憲兵を軽く投げる。

提督「野郎がどうしたって?」

村田「あ…長門っていうやつに首を切られて…今は大井さんと大和さんが現場にいます…」

提督「長門ってのに仲間は?」

村田「榛名と霧島ってのが居るってきいたよ…」

提督「何にでも首突っ込むからだ、バカたれが…」

村田「…」

提督「加勢が必要だな…わりぃけど、誰でもいいから俺の鎮守府から助っ人を連れてきてくれ…頼む」

村田「う、うん…」

長門「さぁ、貴様を殺して私は46cm砲を手に入れる…」

大和「貴方には絶対に、渡しません!」

長門「たわけがぁ!!」ビュン

大和「グハッ…」(大破

長門「他愛もない…」

榛名「私たちが居るまでもないわね」

霧島「ちっ、長門め。全部1人で片づけやがって…」

長門「ついに…手に入れたぞ…念願の46cm砲だ!!さて、行くぞ」

大井「ま、待って…」

長門「お前か…」

大井「重雷装巡洋艦の大井ってのよ…アンタ、何逃げてんの?」

長門「ふっ、欲しかったものは手に入れた。お前に用はない」

大井「うるさい!」ドプ

大井は目に刺さっている剣の破片を引き抜く。
それを使って長門に向かって斬りつけようとする。

大井「とどけ!北上さんの敵!!」

長門「ぐ…」

榛名「やらせないわ!」ドォン

剣の先が長門の額に触れた瞬間に榛名の放った砲撃が大井に命中する。

大井「くそ…もう少しで…届いたのに…だけど私は砕けるか!」

霧島「そうさ、お前は砕けねぇ。この霧島に蹴り殺されるのさ」ゲシッ

大井「ぐ…」

霧島「榛名、徹甲弾を」

大井「長門…一対一で闘いなさい…」

榛名の放った徹甲弾が大井の右腕を壁に釘のように固定する。

大井「長門~~~!!」

榛名「何言ってんのよ、雑魚の分際で」

霧島「オラ、とどめは私が刺す」

榛名「は?何言ってんの?私よ!!」

大井(ちくしょ~、体が動かない…動かないよ…)

霧島「んじゃあ、止めは2人で同時に刺すか。せ~の…」

大井「ごめんね、北上さん…ごめんよおぉおおお!」

ザッ

提督「…」

霧島「なんだぁ、テメェは!?見たところ人間だな…」

榛名「人間が私たちに勝てるとでも…」

提督「ル セ ェ よ」ギロリ

榛名「う…」

霧島「何だコイツ…;」

大井「提督、か…余計なことはしないでちょうだい…」

提督「そういうと思ったさ。でもよ、そのついでに、何か頼まれてやらァ…」

大井「…くっ…」

大井「本当は提督に頼み事なんてゴメンだけど…長門をぶちのめして!」

提督「気が向いたらな!」

霧島「長門ォ、あの人間殺してもいいよなぁ?」

長門「許す!」

提督「さぁ、どいつからだ?」

榛名「自己紹介もなしか…」

霧島「ま、どっちみち消えてもらうけどな!!」ビュン

霧島は提督に飛びかかり、殴ろうとするが提督は霧島の拳を左手で掴み、自分に引き寄せる。
そして勢いがついたところを右手で思いっきりこめかみを殴る。

霧島「」ガクッ

提督「俺の名前は…花道ってんだ。次」

榛名「こ、コイツ…」

榛名は後ろに背負っている艤装から砲撃を放つが、全て提督に避けられ間合いを詰められる。
そして砲口を捕まえ、身動きが動けない所を、顔面に拳がヒットする。

榛名「」

大井「提督のバカ…強い…」

長門「…貴様、私から大事な艦娘を取り戻すために来たのではないのか?」

提督「はん、そんなんどうでもいいなぁ…」(鼻ほじ

長門「…」

提督「さぁ、2人は片づけた…思う存分闘おうぜ…」グサッ ドカッ

さっきまで倒れていた榛名と霧島が提督に制裁を加えた。
榛名は三式弾を提督の腹に突き刺し、霧島は提督を殴りつける。

大井「提督~~!!おい…」

提督「な、なんでぇ…くたばりぞこない…」

大井「貴方、ビスマルクの時には素手で深海棲艦を倒したって聞いたわよ…」

提督「あんなこと、あれ以来一度もできてねぇし…でも、村田がさっき教えてくれたのよ。大将には仲間が2人居るって」

大井「だから…何よ…」

提督「だからよ、村田にはそのまま助っ人を呼びに行ってもらった…」

大井「助っ人?」

提督「そうさ…だから俺がここでやりあうのは、助っ人が来るまでの時間稼ぎさ…」

村田「急にスミマセン、貴方が花道君と張り合えるほど強いって聞いたんですけど…なんで貴方が両足首捻挫してるんすか~~~!?」

摩耶「落ち着けって~、テレビでよ、バイクでゴミの山を飛び越えてる奴がいてよ、アタシもやってみようと思ったらよ、失敗してこのざまよ」

村田「え~…じゃあ他に誰か助っ人に来られそうな人居ないんスか~!?」

摩耶「…」

村田「?」

摩耶「そういや、アイツ、えらい強かったっけ?」

村田「アイツ?」

摩耶「…島風…」

村田「1人はその島風って人で決定で、あと1人は?」

摩耶「さぁ?俺が知ってる強い奴で残ってるのは島風だけだ…」

村田「そうすか…」

木曾「今来れそうな強い助っ人なら、俺知ってるけど」

摩耶「誰かいんのか?」

木曾「あぁ、ドイツにな…」

ビスマルク「今度は日本からお呼ばれなんて、随分とアブナイみたいね…」

ビスマルク「まぁいいわ。待ち合わせはあの提督の居た鎮守府か…」

村田「あ、ビスマルクさんが見えました!」

島風「何やってるの?そのビスマルクって人、遅いなぁ~」


ビスマルク「あら、助っ人と聞いてたけど、こいつは随分小さいわね」

島風「イイトシしたおばさんだったなんてね!」

ビスマルク「何か言ったかしら?お嬢ちゃん」

島風「そっちこそなんでましょう!?おばさん!」

村田「すごい仲悪そうだけど…」

木曾「大丈夫かコレ…?」

ビスマルク「でも、貴方が持っている武装は、提督の邪魔するものを轢き飛ばしてくれそうね」

島風「貴方のその見たことない主砲こそ、敵を吹き飛ばしてくれそうね…」

村田「あれ?ひょっとして上手くいってる?」

木曾「信じられねぇ!」

島風「さ、私の連装砲ちゃんに乗ってよ、おばさん」

ビスマルク「あいよ、ちびすけ」

島風「木曾さんと…えっと誰だっけ?」

村田「村田です」

島風「村田さんも乗ってね~」

ビスマルク「それじゃ、行くわよ…戦場へ!!」

大井「もう、やめてよ…そんなにボコボコになって…」

提督「うるせぇな…」

長門「霧島、艦娘を殺した場合の判定は?」

霧島「応急処理要員の妖精どもを連れていなければ、<轟沈>!!」

長門「では榛名、人間を殺した場合は?」

榛名「はい、<死亡>!!」

長門「ではあの艦娘と人間は、一緒に消すしかないようだな!!」

「「「アハハハハハハハハ!!」」」

大井「死にたくない…北上さんの敵を討たないで、死にたくない…」

提督「護衛要塞の時のあの子供も、お前と同じ気持ちだったろうな」

大井「あの時は、瞬間爆発のミサイルのおかげで勝てる勝算があった!今は勝てる勝算なんて無いのよ!?

提督「あるさ…」

大井「あっても…提督は私の事が嫌いなんでしょ?ならどうしてそこまで…」

提督「テメェが…まだ艤装を長門に向けてるからだよ…」

大井「え…?」

長門「もういい、あの男を榛名、お前が消し飛ばしてしまえ!」

榛名「食らいなさい!!」ドカァン

ビスマルク「ハイヤーッ!!」

榛名の砲撃が提督に向かって飛んでいくと、そこにビスマルクが割って入り、砲撃を跳ね返す。
すると砲撃は榛名に命中する。

「グオオオオオオッ」

続いてやってきた怪物と化した連装砲ちゃんが長門と霧島を轢こうとするかの如く突進する。
だが長門と霧島は間一髪で避ける。

霧島「馬鹿か!そんな化け物には当たらねぇよ!」

ビュン

霧島「アブねぇな…私を蹴ろうとしたのはお前か!?」

島風「貴方たち、提督に何してるの!?」

ビスマルク「そうよ!下郎が提督に何をするの!?」

提督「この声…覚えてるぜ…またスゲェのを連れてきたな…なんてことしてんだよ…」

村田「ごめん…でも、何か役に立つことをしたかったから…」

提督「本当に…何て奴らを連れてきてんだよ…村田。サイコーだぜ!」

島風「ねぇ、おばさん。あのチャチな戦艦知ってる?」

ビスマルク「知らないわ。私がこんな辺境の艦娘なんて知ってる訳ないじゃない」

村田「あ…ダメだよ、そんなこと言ったら…」チラッ

ゴゴゴゴゴゴゴ

長門「貴様ら…ゆ・る・さ・ん…!!!」

島風「連装砲ちゃん!行っちゃって~!!」

霧島「この小娘…意外と速い!いや、疾すぎる!!」

霧島に連装砲ちゃんと島風の攻撃が命中する。
怪物と化した連装砲ちゃんは威嚇するようにうめき声をあげる。

島風「相手するのが車ばっかりじゃ、飽きるよね?」

ビスマルク「金剛型の姉妹だか知らないけど、ドイツの最新鋭の戦艦に、しかも深海棲艦如きが勝てるとでも?」

榛名「ぐううう…強い…!」

ビスマルク「海戦は、まだ始まったばかりだものね…」

提督「さぁ、数は釣り合った…これでようやくタイマンはれるじゃねぇか」

提督は長門に顔を近づける。

長門「キサマ…」

提督「ボスはボスどーし、仲良くやろーぜ!!」

木曾「姉さん!大丈夫か!?おい、村田。お前はそっちの弾を引き抜け!」

大井「やっと…解放された…。提督は…?」

提督「長門…テメェを、蹴りてぇなぁ」

長門「ふん、蹴るがいい。私を剣や砲術だけだと思うな。体術も強いぞ」

ビュン

村田「何やってんのさ、花道君!予告通り蹴るなんて…長門は足を折る気まんまんじゃん!」

長門「ばかめ…ん?」

ピタリ

ドガン

長門「何…?」

木曾「そうか…提督の奴、うまいぞ!さっき『蹴りたい』って言ったのは、長門を挑発して格闘戦に持ち込み、無意識に足に注意を寄せるため…」

村田「そうか、下半身に視線を集めて、本命はパンチか!」

長門「おのれが!!」

長門は提督を叩こうとするが、提督は再びパンチを繰り出そうとする。
が、長門の目の前で拳を止め、顎を蹴り上げる。
そして次に右手で殴ると思わせておいて左手でパンチ。

村田「花道君、凄いな…」

木曾「つられまいとしても、最初のデカいのが一発入ってるから体がどうしても反応しちまうんだ…。艦娘にも深海棲艦にもあそこまで喧嘩慣れしてる奴は居なかったか…」

村田「そうかもね」

長門「キサマ…卑怯な手ばかり使いおって…ならばこちらは<46cm砲>だ!!」

長門は大和の腰についている艤装を引きはがし、自分に装備する。

長門「この世界最大の主砲と私の力が合わさった一撃で…貴様を吹き飛ばしてやる!!」

木曾「ありゃ…やばくねぇか…」

村田「やばいって、何が?」

木曾「お前あの武器の強さ知ってんのか?聞いた話だと港を吹き飛ばすとか…そんな武器を加減の効かない長門が使ったら…」

長門「見るがいい!これが、世界最強の主砲の力だ~!!」

ドカン ドカァ

長門が砲撃を撃つと、突風が生じ提督は瓦礫と共に吹っ飛ぶ。
そして背後にあった金剛の首がくっついている塀に激突する。

長門「ふははは!!どうだ!?軽く撃っただけでこの威力よ!!」

提督は起き上がり顔を上げると、目の前の今は動かない金剛と目が合う。
提督は見開かれた金剛を目を見ると、鼻を指でピンとはじく。

提督「何やってんだ…都市伝説を見に行くなんてよ…そんなん、帰ってからやれよ…とっとと、帰るぜ」

金剛(うふふ、帰ろうデスって…誘われちゃった…こんなの初めてデース…でも、テートク、どうしたんデスか!?その背中から流れてるのは血じゃないの…テートク、どうしたんですか!?)

長門「吹っ飛べ~~!!」

ザワザワザワザワ

ガイン

提督「もうちょっとテメエをクールに殴ってやりたかったが…我慢できねぇや」

木曾「何だよ…あの提督の髪型…」

提督の髪の毛が高く巻き上がっていく。
その髪の毛は先が尖がり、長門が何度砲撃を撃っても効かない。

長門「な、何故効かぬ!?なぜだ~~!」

金剛(そういえば4日前に、テートクのお父様が来たんだった…)

『こんにちわ、息子がここでお世話になっていると聞きます』

金剛『ゴホン、私がテートクと永遠のラヴを約束した金剛…』

叢雲『ちょいコラ、何勝手なこと言ってんのよ?』

大和『提督のお父様ですか!こちらこそ、ご迷惑をおかけしてます…』

『ははは、今日は皆さんにお伝えしたいことがあったので…ここに居る君たちだけに教えます。花道は、本当は人間じゃないかって思うんだよ』

叢雲『へ?』

『花道は喧嘩じゃ負けた事なんてない…強い子だ。でも、花道が中学生の時に家に強盗が入った時だ。花道の腕が光ったかと思うと、あっという間に強盗4人を片づけてしまった…その時、俺は確信したんだ…。花道は人間じゃないって。でも、花道は今も昔も、俺と亡くなった母さんの可愛い息子だ』

金剛『それじゃ…テートクはどこから来たのデスか?』

『さぁ、どこから来たのだろうね』

提督は長門の背負った主砲をへし曲げ、足を掴む。
そのまま振り回し車にぶつけ、何度も地面に叩きつける。

霧島「あの長門が…全然歯が立たない…」

榛名「あの長門が殴られ振り回され、叩きつけられる…あの男は一体何者なの!?」

長門「げふ…」

提督「自分の腕を自慢してぇんだか知らねぇが、人の首をポンポン斬りやがってよ…テメェの首も千切り毟ってやろうか?」

長門(なんだこの人間は…こんな奴に勝てる訳がない…)

長門「う、うわあああああああああああああ」

提督「今だ、大井!北上の敵を討つんだろ!?」

大井「行きたいけど…もう、動けないのよ…」

木曾「しっかりしろぉ、姉さん!!」ガシッ

大井「傷が治って…目が見える…これは…?」

木曾「姉さん知らねえのか?鎮守府のドッグじゃ高速修復剤が貰えるんだぜ?」

大井「これが…高速修復剤…」

提督「諦めな、長門。テメェの負けだ」

長門「このビッグ7の長門が負けるだと!?ふは、ふははは」

提督「なんだぁ、そりゃあ」

長門「これはな、修復剤の輸送艦隊を襲撃したときに奪った修復剤よ…。それ!!」

長門は修復剤の2つを霧島と榛名に向けて投げる。
すると2人の体に修復剤がかかり、みるみるうちに2人のダメージが回復していく。

長門「私もこれでビッグ7再来!!」

霧島「キタァッ、これで全回復!」

大井「取らせないわ!」ビュン

榛名「あ…修復剤が空中でこぼれた…」

大井「1対1なら…いける!!」バシュバシュ

榛名「あぁ…大量の魚雷が…うわあああああ!!」

霧島「馬鹿め、榛名、負けてしまうとは…。私は足にも腕にも、羽が生えたみたいに軽い!」

霧島(でも、何故だ?何故この小娘には1つも当らんのだ!?)

霧島「当たれ!当たれ!!」ビュン ビュン

島風「だって、貴方、とっても遅いのだもの」ドカン

霧島「」ガクッ

長門「待たぬか!花道ィ!!剣や主砲が使えぬとも、ひき肉にしてくれるわ!!」

村田「早くやっつけちゃってよ、花道君~!!」

木曾「いんや、そりゃ無理かもしれねぇ。もう提督はだいぶ出血してるし、長門は新品でこっちはボロボロ…」

大井「苦戦なの、提督!?」

提督「なんでぇ、遅いじゃねぇか無能艦娘が!」

大井「む、無能ですって!?」

提督「おう!オメェがあんまりにも遅いから俺が長門をぶっ飛ばす所だったじゃねぇか!」

大和「うぅ…残念ながら、それは提督でも無理かと存じます。この大和が一緒に闘わなければ!」

長門「ぬおおおおおお!皆、この私をコケにしやがって~~!!」

提督「くらえや、長門~~~!!…なんてな」

長門「何!?」

提督「大井、テメェの出番だ!」

大井「うおおおおおお!!」シャッシャッシャッ

長門「なぁにぃ~~~~~!!?」

ドゴォン

長門「この…ビッグ7の長門が…無念…」

木曾「終わったな…」

提督「ワリ、ビスマルクに島風…」

村田「ボク、何だか信じられないな…長門と戦うためにドイツまで行ってビスマルクさんを呼びに行ったりとか…」

木曾「深海棲艦化した艦娘が殺した人間やけがをした人間はそいつが元の艦娘に戻れば全て元通りになるんだよ」

村田「ってことは…」

大井「そうよ、見て!私の腕!」

北上「大井っち!!」

大井「北上さんも…元に戻ったのね…」

北上「アタシは大井っちの活躍を半分になっても見てたよ!」

村田「元に戻るんだね、池田も佐崎も…」

提督「ちっと…疲れたぜ…」バタリ

金剛「テートク!大丈夫デスカー!!?」

村田「金剛さんも…」

その後の事を話そう。
池田と佐崎は復活した。首だけになっても一部始終は見てたらしい。もうコーフンしてひどかった。
そのあとぞくぞくと、有名な艦娘さんが元に戻って…大井さんとビスマルクさん、島風さんに礼を言っていたよ。
そうそう、長門たちは…

長門「誠に許されないことを…貴方方に何という無礼を…傲岸な態度でふるまい、首を斬りおとし武器を無理やり奪うなど…」

大和「それは…私の武器を高く評価してくださっての事でしょう?」

比叡「もう、元に戻った長門さんに罪は無いですよ!」

北上「まー、気にしないでもいいってば~」

霧島「いえ、姉様たち2人を見殺しに…」

榛名「これはさすがに許されません…」

無事に霧島さんと榛名さんも正気に戻ったようで安心したよ。
それで、長門さんが体調検査のためにいったん大本営に戻るときの事だ。
いくら深海棲艦だったとはいえ、何度も地面に叩きつけられてて大きなケガでもしてたら大変だからね。

長門「そういえば、提督はどこだ?私と戦ってるときに誰よりも傷を負ったはずだが…どこぞで倒れているのかと心配だ…」

それともう一つ分かったことがある。
だって、長門が花道君を探す時の目は、あの狂った目とは全然違ったから。

大和「そういえば、金剛さんも姿が見えませんが…」

もうひとつ…さっき花道君と金剛さんの影がここから離れていった。
金剛さんが花道君を追いかけるようにして。そのあとは知らない。
でも、2人のうえに大きなハートが浮かんでいる。

『ビッグ7と妹2人』完

『変な平和』

提督「長門の事件のあとから、海全域で深海棲艦の数が明らかに減ってるんだって?」

叢雲「そうね。だから、その泊地や鎮守府じゃ仕事が減って毎日ちゃらんぽらんよ…」

提督「んじゃ、ここの仕事も減ってんの?」

叢雲「そうよ」

提督「でも、俺は鳳翔サンの店の手伝いを日曜日もしなきゃならんのよ…」

叢雲「超ドンマイ」

提督「心がこもってないゾ^~」

叢雲「誰がアンタにそんな心配してやるって言ったのよ?」

提督「でもよ、何か引っかからねぇか?こんなにピッタリ敵の勢いが無くなるなんてよ…。ここんところ陸に上がりたがる深海棲艦が増えてるのと関係があるのか…」


大本営会議

元帥「えー、みんな知っての通り、近頃陸に進出する深海棲艦が増えると同時に、逆に海では深海棲艦の被害報告が激減している…。これは皆の努力や艦娘の力があってこそだ!もうすぐ我が大本営にもちょっとした夏休みが入る…とくに問題を起こすなよ…花道ィ!」クワッ

モブ提督「元帥サン、花道は居ませんよ?」

元帥「んじゃあどこ行ったんだ…」


村田「あ、金剛さん!」

金剛「アー、村田さんじゃないデスカー!ところで、テートク見ませんデシた?」

村田「花道君なら、見てないな…」

金剛「朝は見たんデスけどネ~。なんかボーっとしたような感じで出ていきマシタ」

村田「え、でも大体いつもボーっとした感じじゃ…」

金剛「それ、なんとなく分かりマース!」

村田「でもこの前はすごかったよ、長門の時。まるで人間じゃないみたいだったよ」

佐崎「おぅい、外で花道が喧嘩してたってよ!」

村田「じゃあその相手は今医務室にいるんだね」

佐崎「それがさ、あの花道がやられっぱなしだったって!」

金剛「oh…」

佐崎「殴られても蹴られても、すました顔で何もしない。んで全然倒れないから相手も全員バテちゃったんだて。そしたら花道が低い声で『いっていいか?』って…それ聞いたら、誰も止める気になれなかったってさ…」

金剛「その後テートクはどこに行きマシタカ?」

佐崎「さぁ?」

ピロロロロロロ

金剛「モシモーシ…え?テートク?」

ミーンミーンミッチョワミッチョワ

提督「…」

金剛「oh,レディーを呼び出す時はもっとオシャレな喫茶店やホテルって相場が…」

提督「ほれよ」ポイッ

金剛「え?これ、ポーチじゃないデスカ…」

提督「俺が前に川に落っことしたのは、確か黄色い奴だったけどな…それで勘弁してくれや」

金剛「勘弁してくれって…らしくないデスネ~、あなた本当にテートクデスカ!?」ビシィッ

提督「ポーチはもう返しただろ?さっさと帰んな」

金剛「テートクこそ、そんな場所に居たら日射病になりマスヨ?」

提督「ならねぇよ。俺はこの前長門の奴を思いっきり振り回したんだ。物凄い力でよ…そんな野郎が日射病なんかになるかよ」

金剛「なりませんネ…」

提督「大和の武器は港を丸ごと吹っ飛ばすすげぇ武器だ。それを、防具も付けてねぇのに俺は頭ではじき返したんだ…」

金剛「何が言いたいんデスカ…?」

提督「前からチラチラ思ってたんだけどよ、俺って、なんなんだろな」

(花道は人間じゃないんじゃないかって)
(さぁ、どこから来たのだろうね)

金剛「…」

金剛「何言ってるんデスカ、アンタはアンタじゃないデスカ!テートク!」ギュー

提督「いててて!!」

金剛「あんまりらしくない事言ってると、禿げマスヨー?」

提督「オメェはノーテンキだなぁ…まったくよ」

金剛「みんなから言われマス」

提督「ってか降りろ!何してんだ!?」

金剛「ジャングルジムはてっぺんが気持ちいいんじゃない」

提督「ちぇっ」

『変な平和』完

『プール』

「すげえ、キレイだなぁ」

加賀「…」

「彼氏とかいるのかな?」
「ばっか、どうせ俺らじゃ決して届かない頭のよろしいイケメン君だろうぜ」

加賀(私は艦娘です…そんな彼氏なんて作れる立場じゃありません。…でも恋愛なんて考えたことも無かったわ。少なくとも頭の悪い男の人なんて…)

提督「よぉ、あっちぃな…」

加賀「提督…そんな小学校のプールで何してるんですか?」

提督「おう、この小学校のプール掃除係の代わりさ。500円でやってやってんだ。いくら給料もらっても、直接財布に入ってくる分はすくねぇからな」

加賀「そんな事、上司か先生にバレたら怒られますよ?」

提督「あったりめーだ、ふー」

ミーンミーン

提督「泳いじまうか…」

加賀「え?」

提督「ひゃっほーーーーう!!」

ドボーン

提督「けけけ、気持ちいいぜ~」

加賀「もう提督、服を着たまま泳いじゃいけませんって…」

提督「オメェも泳いじまえよ、加賀サン」

加賀「いえ、私は…」

提督「んじゃあそこで日干しになっちまえ~ひひひ」

ボシャーン

加賀「ぷは…」

提督「おめぇも服のままじゃねぇか…」

加賀「私も泳いじゃいました…」

提督「くけけけけ!!」バシャバシャバシャバシャ

加賀「やりましたね…頭に来ました」バシャバシャ

提督「がぼっ…へへ、やるじゃねぇか。俺ぁ、アンタは戦闘中しか映えねぇと思ってたけど、水ン中でも映えるんだな」

加賀「もう、映えるとか映えないとか失礼ですね…」


金剛「今日こそ…テートクをちゃんとしたデートに誘いマース」

霧島「やめといた方が…わざわざ場所まで突き止めて…」

金剛「何言ってるんデスカ!?私の本気の誘いを断ると思いマスカ!?」クワッ

榛名「でも、提督は涼しい部屋でゴロゴロしてる方が好きなんでしょう?」

金剛「」

比叡「しかも何度も断ってるんですよね?」

金剛「提督だって思春期の男の子デス…甘い言葉と気配りで心を開いてくれないハズが無いデース!」

比叡「それで、何に誘うんですか?」

金剛「夏は海水浴に決まってマース」

霧島「そうですか…それじゃ私たちは大事な用があるのでこれで…」

提督・加賀「あ…」

金剛「どゆこと?なんで私の誘いは断り続けてるテートクが加賀さんとプールに?」

提督「暑いからプールに飛び込んだだけだっつーの!」

金剛「え?」

提督「コイツ、暑さにゃ弱いとみてすぐに飛び込んだぜ」

金剛「な、なんだ…私はてっきり『夏のプールでドキドキデート』かと思ってマシタ…」

加賀(提督ったら私をそんな風に思っていたのね…)

金剛「それはそうとテートク、明日一緒に海に行きまセンカ?」

提督「いんや、俺は行かねー。てか海ならお前ら毎日見てんじゃん」

金剛「そういう海じゃなくて~!もっと砂浜はあって、寄ってくる波が乾いた砂をぬらす…そんな感じの海デスよ~」

提督「まぁ、行ってやってもいいけどよ…」

金剛「やった~~~~~!!」

提督「(でもコイツと2人なんてな…コイツのする事なんて目に見えてるし)でも、加賀も一緒に行くならな」

金剛「ええ~~~~!!!」

大本営第3保安局

大和「へ?今回の『長門事件』で私たちがやったことは水に流すと仰るのですか!?」

憲兵「そうだ。拘束状態からの脱走、この保安局の破壊についての君たちの罪は無くなったわけだ」

木曾「なんでだ?かなり酷かったはずだぞ?」

憲兵「すべては暴走した長門を食い止めるため。やむを得なかったそうだ」

木曾「んじゃあ誰がやむを得なかったっていうんだよ?」

大井「だからぁ、長門事件解決の功労者のォ、この大井さ!」

木曾「姉さん、何が功労者だよ。俺の助けでちょっと最後にがんばっただけだろ?」

憲兵「ちょっと大井さん、いくら功労賞受賞者でも、出て行ってください」

大井「はいはい。そうそう、それと提督と貴方たちの無免許の件だけど、あれも問題無くなったから。じゃーね」

大和「もし!?それはいかなる理由で…」

和田長官「それは、大井が君たちについての証言を取り下げたのと、私が特例を認めたからです」

憲兵「わ、和田長官!?」

和田長官「はじめまして、私がこの『艦娘特例任務団体』の責任者である、和田六三四です」

大和「はぁ、和田六三四…貴方、もしかして…」

和田長官「流石は大和さん、察しが良い。本題ですが、これ以降是非とも貴方方の鎮守府に協力して貰いたい事があるのです。協力して貰えますか?」

大和「はい、話を聞かせてください」

<中華 鳳翔>

叢雲「何よ、あんたらすっかりここに馴染んじゃって」

ビスマルク「いいじゃない、日本の文化に触れるっていう事で…」

島風「ところで、提督は何してるの?」

金剛「いいじゃないデスカ~、ぜひ二人きりで~~!!」

提督「イヤだね!土曜は忙しいんだ、ラーメン屋がサボれるかよ!?」

鳳翔「明日は私、友達と旅行なんですよ。明日は店は休みです」

金剛「休みデスって!ホラ、海水浴行きマショウ!!」

ビスマルク「え!?海水浴行くの!?私も連れてって~」

島風「私も~」

摩耶「海行くならアタシも連れてけ~」

叢雲「私も~」

提督「テメェらどこから湧いてきた!?」

金剛「じゃあみんなで行きマショウよ~、ネ!?」

提督「逆にメンドクサイからイヤだ」

金剛「皆サン~!?テートクってば、この前、市民プールで泳いでる女の子をずっと変な目で見て…」

提督「分かったよ、行けばいいんだろ~~!?」

ザパーン

金剛「ついたワ!海デース!!」

ビスマルク「さっそく泳ぎましょうか!」ダッ

島風「あ、やばくない?」

ビスマルク「あっちいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」


金剛「じゃーん、実は服の下にすでに水着を着てたのデシタ!」

加賀「金剛さん、貴方の海への執着は私にとって異世界だわ…」

提督「それでよ、何でお前らも来てんだよ?」

大井「なんですか?ダメなんですか?」

北上「ケチー」

摩耶「まぁまぁ、クソ提督さんよぉ、このふざけた空気に身をゆだね、楽しく過ごそうじゃないの」

叢雲「そうそう、せっかくの海水浴なんだしー」

提督「俺はそんなキャラじゃねぇの…」

売店員「お待ち~フランクフルトです~」

提督「サンキュ。ほらよ」

叢雲「ありがとう…」

提督「うめぇの?それ」

叢雲「あ、皆着替え終わったみたい」

加賀「ちょっとキツくないですか、コレ…」

金剛「いいのいいの」

摩耶「は、早くいくぞ~~~!!」

ビスマルク「うわー、はやく行こう、島風!」

島風「ぴゃー、楽しそう!!」

大井「北上さん、行きましょ!」

北上「楽しみだねー!」

金剛「ホラホラ、テートクー。女の子の水着デスよ?嬉しくないんデスカ?」

提督「いいから早く行って来い」

金剛「んじゃあ、加賀サン行きましょ~~!!」

加賀「うわ、ちょっと…」

提督「みんな行っちまったな…」

叢雲「行っちゃったわね…」


提督「おい、ちょっと悪いけどこの荷物半分持ってくれ…あいつら置いてきやがった…」

叢雲「ア…うん」

提督「ふぅ、スイカ冷やしたし、荷物も運んだし、準備OKだな。んで、オメェは泳がねぇのか?」

叢雲「私は海なんかで泳いだりするほど子供じゃないわよ…」

提督「へぇ…」

叢雲「アンタ、意外とお節介焼きなのね」

提督「まさかな…」

叢雲「でも、マメじゃない。コワそうなのに…」

提督「親父の性分がうつっちまったんかもな」

叢雲「前に訪ねてきた人?」

提督「え…親父来てたの?まさか余計なこと喋ってねぇよな?」

叢雲「多分大丈夫よ」

提督「んー、何かと世話を焼きたがるおっさんでよ、口悪い癖に約束は絶対守るんだ。だから、親父の周りにゃ人がいっぱい集まってくる…」

叢雲「アンタは、お父さんみたいになりたいの?」

提督「…そりゃねぇな」

叢雲「でも皆とここに来てるじゃない…」

提督「アイツらはダチじゃねぇぞ、虫だな」

暁「あはは!!何それ、ひっどーい!」

提督「へっへっへ…」

和田長官「実は、硫黄島周辺で大量の深海棲艦と謎の艦艇が目撃されている」

大和「謎の…艦艇?」

和田長官「そうだ。最近はやけに深海棲艦化してしまった艦娘が陸に進出する事件が続出していたが、今回の敵は、普通の深海棲艦ではない。『霧の艦隊』!!異世界から出現した『霧』が硫黄島を占拠している…。硫黄島に乗り込み情報を探りできることなら霧の艦隊を元の世界へ追放してほしい!!」

大和「はい!!」

和田長官「では、大和、君は花道提督と共に早速硫黄島に向かってほしい!同行者は長門!!」

大和「ええええ!!?」

和田長官「今は正常であるし、君たちと協力したいという本人たっての希望だ」

長門「うむ、では大和よ。早速提督の居る場所で向かおう」


加賀「あら、海の家のカレーライスって意外とおいしいんですね」

島風「これが『かれーらいす』かー。おいしいね」

北上「ねー、島風っち、ちょっと味見させてよー」

大井「なら私は北上さんのチャーハンを一口貰うわ」

金剛「ラーメンも美味しいデスね、テートク?」

提督「おう、うめぇなぁ!なんでかな、ダシかな?」

摩耶「だいたい、何だテメェは!海まで来てジーパンって…」

提督「うるせぇな、大和と叢雲と後で一緒に重要な任務に行くから履き替えてなかっただけだよ…」

大井「重要な任務?」

提督「あぁ、お前知らされてないのか…お、電話…。おう…あー…」

金剛「何だって?」

提督「もうすぐで大和達が到着するそうだ」

北上「あ、アレじゃないのー?」

長門「あ、あの…その節は…」

金剛「何よ~、アンタはワタシの首…斬ったんデスヨ…?」ガクガク

長門「誠に済まぬことをした!!」

ビスマルク「金剛のアレはトラウマと言ってもいいわね」

島風「無理ないでしょうね。今は正常だと言っても…」

提督「もういいだろ、離れろよ金剛!」ブン

長門「ひぃ!?」ビクビク

ビスマルク「あらら、トラウマがあるのは…」

島風「長門も同じみたいね」

提督「俺がトラウマ…?」

提督(何だよ…お前、世界のビッグ7じゃなかったのかよ…そんなに俺ってコワいのかよ…?)

提督「じゃあ俺は…何なんだよ?」

大和「提督、ではこれから私と木曾さん、長門さんと一緒に硫黄島に向かってもらいます」

木曾「っていうか俺は後から、味方の艦隊を連れて向かうからよ」

提督「おい大和、俺がそんな野郎どもの命令で動くと思うのかよ?ヤダよ、バーカ!!」

大和「そう言うと思いました…」

提督「よくわかってんじゃん」

大和「ですが…硫黄島を占拠している霧の艦隊のうちの『伊401』は、提督の謎を知っているでしょう」

提督「…」

大和「それを知りたくば、飛行機に乗ってください」

長門「さ、行こうぞ」

摩耶「おい、待てィ!なんでアタシ達が待たなきゃなんねぇんだよ!?」

金剛「私たちも行きマース!!」

大和「ちょ…もう、知りませんよ~~~!!」

提督、大和、長門、叢雲、金剛、加賀、摩耶、大井、北上、ビスマルク、島風らは硫黄島の霧の艦隊迎撃作戦に向かう。

※以下、アルペジオキャラ登場、キャラ崩壊、つたない表現が含まれますので注意


『ミストメモリー』

提督「狭い…」

大和「見えました、アレが硫黄島です…」

長門「…何かさっきから、この飛行機を何かがかすめているようだが…」

ビュン ビュン

提督「!?島から弾丸が飛んでくる!飛行機を墜落させる気だ!!」

摩耶「落ちる~~~!!」

ガシャアアン ドォン

・・・・・・・・・・・・

そのころ、飛行機の残骸が転がる海岸では、大井、北上、ビスマルクの3人が無事着地できた。

大井「…は!皆、無事!?」

北上「私たちは無事だけど…」

ビスマルク「深海棲艦の艦隊に…囲まれてるわ…」


別の場所では、金剛と加賀、島風が落下した。
また別の場所では、叢雲が落下し、少し離れた場所に摩耶。
そして…

提督「どうやら、みんなバラバラになっちまったみたいだな…」

長門「それにしても、思わぬか?」

大和「何がですか?」

長門「最初に出会う相手は…もう少し弱そうな奴ならよかったのにと…」

イオナ「…」

提督「俺は全然思わねぇぜ」


オナ「君たちも、バカだなぁ。隠れてこの島に侵入するつもりが、実はバレバレで仲間とは離れ離れ…」

提督「けっ、バカなのぁテメェかも知れねぇぜ…」

長門「待て、ここは私と大和のコンビに任せてもらおう」ズイッ

大和「ど、どうしましょう~」

提督「やってみな」

大和「はいっ!!」

長門「そんな元気のいい返事…」

イオナ「…」ビリビリ

大和「気を付けてください、あの艦は巨大なエネルギーを溜めています…!」

長門「よし!日本一と世界一の攻撃を食らうがいい!!」

イオナ「超重力砲、発射」ビィィィィン ドォォォォン

大和「そ、そんな…」

長門「いきなり…通用しない…」

イオナ「そんな攻撃、効かないよ」

提督「大和…アイツに向けて一発デカいのを撃て」

大和「え、何を…?」

提督「いいから撃て」

大和「は、はい!」ドォン

提督「よっと!」

大和がイオナに向けて撃った徹甲弾に提督がつかまる。
すると提督をくっ付けたまま徹甲弾はイオナに向けて一直線に飛んでいく。

イオナ「…そのまま…飛び降りた!?」

提督「テメェにゃ、聞きてぇことがあるんだ…よ!!」ビュン

イオナ「ぶっ…」ガン

提督は徹甲弾がイオナの真上を通ったところで手を放し、落下していく。
そして落下しながら拳を振り上げると、青い紋章が提督の腕に浮かび上がる。

イオナ「お前は…まさか…」

イオナの本体に拳が命中し、伊401の船体が光る。
光るとどんどん小さくなっていき最後には青いカプセルのような物になってしまう。

イオナ「君たちも、バカだなぁ。隠れてこの島に侵入するつもりが、実はバレバレで仲間とは離れ離れ…」

提督「けっ、バカなのぁテメェかも知れねぇぜ…」

長門「待て、ここは私と大和のコンビに任せてもらおう」ズイッ

大和「ど、どうしましょう~」

提督「やってみな」

大和「はいっ!!」

長門「そんな元気のいい返事…」

イオナ「…」ビリビリ

大和「気を付けてください、あの艦は巨大なエネルギーを溜めています…!」

長門「よし!日本一と世界一の攻撃を食らうがいい!!」

イオナ「超重力砲、発射」ビィィィィン ドォォォォン

大和「そ、そんな…」

長門「いきなり…通用しない…」

イオナ「そんな攻撃、効かないよ」

提督「大和…アイツに向けて一発デカいのを撃て」

大和「え、何を…?」

提督「いいから撃て」

大和「は、はい!」ドォン

提督「よっと!」

大和がイオナに向けて撃った徹甲弾に提督がつかまる。
すると提督をくっ付けたまま徹甲弾はイオナに向けて一直線に飛んでいく。

イオナ「…そのまま…飛び降りた!?」

提督「テメェにゃ、聞きてぇことがあるんだ…よ!!」ビュン

イオナ「ぶっ…」ガン

提督は徹甲弾がイオナの真上を通ったところで手を放し、落下していく。
そして落下しながら拳を振り上げると、青い紋章が提督の腕に浮かび上がる。

イオナ「お前は…まさか…」

イオナの本体に拳が命中し、伊401の船体が光る。
光るとどんどん小さくなっていき最後には青いカプセルのような物になってしまう。

提督「これでよし…ッ!?」

提督が青いカプセルを拾い上げると、オレンジ色の塊が提督を弾き飛ばす。

提督「な、何だァ!?」

ヒュウガ「さぁ、そのイオナ姉様を返してちょうだい!」

提督(やべえぜ…あのカプセル取り返されたら…)

提督「長門、パス!走れェ!!」

長門「あ、おう!!」

ヒュウガ「待ちなさい!」

提督「行かせるかよ!!」ビュン

ヒュウガ「愚かな小僧め!!」

ヒュウガの背後から謎のアームが飛び出し、提督の腕を掴む。
提督はその腕を引きはがそうとするが、逆に投げ飛ばされてしまう。

大和「提督!」

ヒュウガ「そういえば、カプセルはどこ?2人とも持ってないみたいだし…仕方ない、引き返しましょう」

長門「ふぅ、奴も地面の中までは探さなかったようだな…」ボコッ

大和「…」

提督「…」

長門「何を考えている?提督よ」

提督「強かったなぁ、さっきのクルクル頭。あんな強いのがこの島にうじゃうじゃ居るって事かよ?」

大和「まぁ…はぐれてしまった方々も心配ですし…」

提督「それでよ、ずっと考えてたんだ。俺があの霧の奴らから、はぐれた連中を守れるくらい強くなる方法をさ」

パシッ

提督「でもよ、分かんねぇから聞いてみることにしたんだ。コイツによ」

提督は長門から青いカプセルを奪うと、そのカプセルを割る。
すると中から伊401の船体とイオナが現れる。

大和「でも、この霧の艦艇はさっきと様子が違うのでは…」

イオナ「ん。さっきの提督の力で、私を支配していたどす黒い深海の力が全てぬけ去った。これが本当の私のメンタルモデル」

長門「メンタルモデルとは何だ?」

イオナ「我々のような特定の霧が生み出したコア。そのコアを人と同じにすることで…」

長門「わ、わかった!もういい…」

大和「さては、この霧の者にさっきの敵の弱点を教えてもらうのですね!?」

イオナ「残念、霧の弱点を教えることは、私の弱点を教える事。だけど、『倒せ』というのなら…」

提督「違うな。俺が頼みたいことはズバリ、『俺に霧と同じ力』をくれ!!」

長門「提督、お前なんて事を…まさか霧の艦艇にでもなりきるつもりか!」

大和「それは私たちの力だけでは足りないと!?」

提督「あの時俺たちは本気だったよな?このイオナみてぇのが他の奴らを襲ってると考えたら、絶望的だ。それに、お前は俺の正体を知ってる…らしいじゃねぇか?」

イオナ「…正確には知ってるというよりも、『知る手がかりを作り出せる』というほうが正しい」

提督「それで、回答は?」

イオナ「いいだろう。つまり、提督が望むことは『霧の力を使えるように』なる、『自分の正体を知る』という事。それには1つだけ方法がある」

提督「それは?」

イオナ「私の艦内で、とある人物に会ってもらう」

提督「…よし、連れてけや」

大和「それは罠かもしれません!」長門「そうだ!もうちょっと情報を探ってからでも…」

提督「わりぃ、俺今アセってんだ…一刻も早く野郎どもを助けなきゃならねぇ」

イオナ「じゃあ、私につかまって」

提督がイオナの手を取ると、イオナと提督は艦内に吸い込まれていく。
そして伊401の船体は再び小さくなり、青いカプセルに戻る。

長門「…おい…」

同時刻、ビスマルク、大井、北上が不時着した海岸。

ビスマルク「ふん!」

海岸では深海棲艦の艦隊と、武装もない3人が交戦していた。
ビスマルクの投げた飛行機の残骸が敵駆逐艦に命中する。

大井「ちょっと…どうすればいいのよ~~!?」

北上「とにかく、ビスマっちが敵を引き付けてる間に安全な場所に…!」

大井「この艦隊を指揮してる奴が近くに居るはずよ…」キョロキョロ

タカオ「…決めた」

ビスマルク「…!?二人とも、アブナイ!!」

大井、北上「え?」

ギュウウウン ズバン

大井「何よ…この攻撃は…!」

北上「」

タカオ「やった!2人戦闘不能!あとはあの女だけね!」

ビスマルク「コゥラ、そこの奴!出てきなさい!」

ズガァァァァン

タカオ「さ、命令通り出てきてあげたわ!」

ビスマルク「…何?あの艦艇は…?」

タカオ「超重力砲!発射!」

ギュオオオオオ

ビスマルク「ひーん…」(大破!

タカオ「ここのエリアの3人戦闘不能…じゃあね」

そして、別の場所に不時着した金剛、加賀、島風。

リ級(何をしている!?相手は武装のない艦娘3人だけだろう!?)

ル級(だけど…アイツらには化け物ととんでもないスピードで走る車が!)

連装砲ちゃん1「グオオオオオオオッ」ドガン

金剛「すごいデース…深海棲艦を吹っ飛ばしてマース…」

加賀「もうちょっとゆっくり走れないのですか…」

島風「連装砲ちゃん!もっとやっちゃって!!…!?」

ドカカカカカッ

島風「え…!?」

ハルナ「…」

連装砲ちゃん1「」バタリ

ハルナ「目標…銀色の怪物、戦闘不能。誘拐目標…あの娘か」

金剛「どこから攻撃ガ!?」

ハルナ「キリシマ、確保用の網を」

キリシマ「了解だ、ハルナ」

バシュン

金剛「キャン!?これは…光の網のようなものガ…」

加賀「金剛さん、大丈夫ですか!?」

キリシマ「お前たち、ようこそ硫黄島へ!我々2人の任務はその娘を連れていくこと。任務達成したので、我々は退却させてもらうぞ」

金剛「NOOOOOOO!!」ジタバタ

加賀「待ってて…必ず助けに行きますから!!」


叢雲「ここは…どこよ?多分硫黄島だと思うんだけど…」

叢雲(誰も見当たらないけど…さっきから見られてる感バリバリ…)

ドン

叢雲「誰よ!?」

あきつ丸「かかか、誰よ、だとさ~」

まるゆ「かっこわるいですね~」

叢雲「さっきから私のあとを付けていたのは貴方たちね?」

あきつ丸「そうであります」

まるゆ「誰って、この大発動艇に乗った陸軍艦艇の『あきつ丸』と『まるゆ』に決まってるダルルォ!?もぐもぐ~」

あきつ丸「ほら、早速着弾~であります!」

叢雲「く…」ドカン

まるゆ「ほら、もう一回~!」

叢雲(たったの2発でバッドエンドか…情けない…)

カキィィィン

摩耶「オラ、ホームランだぜ~!!」

あきつ丸「うわぁ、砲弾を撃ち返された~~!?」ドカァン

叢雲「助かったわ…」

摩耶「ははは、ウロウロしてたらあの2人が飛んでくのが見えたんでよ。来てみたら…って事よ」

叢雲「そうなの…他の皆は?」

摩耶「アタシは知らねぇなぁ。連中を探さねぇと…」

叢雲「摩耶!後ろ!後ろ!!」

摩耶「ん?」

ズガァン

あきつ丸「かかか、ざまーみれ~!!」

叢雲「アイツら…あの船の乗り物で…轢きやがった…」ガクン

摩耶「」

まるゆ「とりあえず、基地まで持ってって、人質にしますか?」

あきつ丸「そのほうが、邪魔な連中を始末しやすくなるからな…そうするであります」

????「何?人質ができただと?」

あきつ丸「は、はい…であります…」

まるゆ「人質が居れば、作戦は簡単に進むと思い…」

????「そうだな。確かに人質はベンリかもしれない」

まるゆ「ところで、何故そのような姿でいらっしゃるのですか?」

????「『ミカサ』の、今の姿さ。ところで、サブ目的の娘は?」

ハルナ「それなら、連れて来た。ギャーギャーうるさいから口縛ってあるが」

金剛「んー!んー!!」

????「なぁ、貴様。ひどい話なのさ、『ミカサ』は帰ってやらなかったんだ、『コンゴウ』は待ってたんだろうにな!でもオレは帰らなかったんだ!」

金剛(『俺は』?じゃあ、コイツ…コンゴウっていうの?私と一緒…それに、今『ミカサ』って言った?)

コンゴウ「『ミカサ』は今、どこに居ると思う?」

提督「ここがイオナの艦内か…やけに広いな…」

シーン…

提督「おーい!イオナァ!!とっとと俺にその手がかりってのを出してくれや!それが何かわかれば、俺はあのクルクル頭の野郎みてぇに霧の力を覚えられるんだよな!?」

??「ふふ、正しくは『覚える』っていうよりも、『思い出す』の方が正しいと思いますな」

提督「おっさん、誰だよ?いつから居た?」

??「さっきからこうして、畑を耕していましたが?」

提督「待った、ちょっと待った!まずお前は誰だよ!?バリバリに日本の昭和感出しやがってよ!ここは霧の艦艇のイオナの艦内だぜ!?それに今聞き捨てならねぇ事を言ったな!俺が霧の力を『思い出す』たァどういう事だよ!?」

??「ははは…」

提督「じゃあ何か!?俺は霧のメンタルモデルか、チキショー!!」

イオナ「提督、この人の姿を見ても、まだダメ?」

??「まぁ、気軽に行きましょう…」

イオナ「この人を思い出したとき、きっと提督の全ての望みが叶う」

提督「何だ?それじゃ、俺が何か忘れてるっていうのか?」

??「いやねぇ、君は昔、この硫黄島に来たことがあるのだよ」

提督「…何だと?それじゃ、俺が何かを思い出したらオールオッケーじゃないかよ」

??「All okay.か。まさにその通りだ」

提督「何か、お前さっきから上から目線で…まるで軍の偉いヒトみてぇだな」

??「ふふふ、私は昔、海軍の少将をやっていてね…その時のあだ名は『ショーフク』と言ってね。その時のすぐ人に偉そうにする、悪い癖なんだ」

提督「へぇ…んで、俺はどうすればいいのよ?」

ショーフク「イオナ君、彼の意識に細工をしてくれ」

提督「ちょっと待てよ!俺の頭に何かするのか!?」

イオナ「問題ない。提督の頭の中で消された記憶を送り込むだけ…」

消された記憶───

時代は太平洋戦争開戦直前。
この時代の、人では認識することのできない『艦娘』の存在。

三笠「哨戒任務、頑張ってね、金剛さん」

金剛「はーい、頑張ってくるわね!戦争が終わったら、いつかまた戦争後の世界で会いましょう!!」

1923年、9月20日に除籍。
後に廃艦として解体が予定される。

ちくしょう…たかが地震で沈んだだけで…何が解体だ…
なら、解体されるまでの間に人間にこの戦争は無意味だと思い知らせてやる…


金剛「あ、三笠…どうしたの?」

三笠「うるさいなぁ…私は戦争なんかしなくていいって事が分かったんだ…」

金剛「え?ちょっと待って…」

三笠「戦争なんか必要ないのよ」

戦艦三笠…彼女は真っ暗な深海から力を貰った。
世界で初めての深海棲艦であろう三笠の、特別な物語が幕を開ける。

薩摩──

薩摩「…私も除籍か…はぁ…まぁ仕方ないよね…」

三笠「よォ…」

薩摩「あなた…誰?」

三笠「いいか?お前はこれから、金剛共の標的艦に使われるんだ…そんなの嫌でしょ?」

薩摩「…私は…」

三笠「それじゃあ、来て」

三笠(そうさ…まずにこの子を助ける…これから行く場所は、深海の不思議な力が教えてくれた。あの島…)


─硫黄島──

三笠「…だから、私にお前の力をちょうだい、って言ってるの」

<<ダメだ>>

三笠「…なんで?」

<<私の力は、将来『霧』と呼ばれる力。その力をくれてやる事はできない>>

三笠「…」

<<ただ、『霧の艦艇』として存在したいのなら、『ナノマテリアル』を分けてやらんこともない>>

三笠「くくっ、もったいぶりやがって…じゃ、はやくしな!」

それから、三笠はナノマテリアルで城と人形の兵士を作り、城を守らせた。
その城は人間には認知できないので、誰にも邪魔されずに、力を蓄えた。

三笠「何を見てるんだ?」

薩摩「…ん、海よ」

三笠「海だァ?そんなん今見る必要があるの?」

薩摩「昔は私も戦いに出た海…」

三笠「ははは、でもお前はこれから痛くなることも、わざわざ海に出て沈みに行く必要もねぇんだ」

ドカァン

薩摩「飛行機が…!」

三笠「チィッ、来やがった…艦娘の野郎どもが!」


武蔵「…この屋敷は包囲した!各自、三笠を見つけ次第正常に戻し、薩摩を救出せよ!」


三笠「くそ…逃げられねぇ…あいつら、とんでもねぇ…」

薩摩「あいつらって?」

三笠「私を捕まえようとする集団さ。でもな、私は奴らには絶対負けねぇ。私が負ければお前は標的艦をして沈められちまうんだ…そんな事させるかよ」

薩摩「三笠…」

三笠「くっ、可哀想な薩摩に傷なんか追わせやがって…許さねぇ…こっちに逃げるよ!」

メキメキ

松島「逃がすか!」

三笠「ぐああッ…腕が…」

厳島「よし、人質救出と犯人確保!」

薩摩「三笠、どうしたの!?」

厳島「薩摩ちゃんよ、お礼はどうした?おっかない犯人から救ってやったんだ、「ありがとう」の一つも言えないのか?」

薩摩「三笠はそんなんじゃない!おっかなくなんてない!」

厳島「なぁにぃ~、せっかく助けてやったのに!」

薩摩「うっ…」ドシャ

三笠「…」プツン

厳島「松島、そろそろソイツやっちゃってよ」

松島「あぁ、へへ、覚悟しな…!」ブン

松島が持っていた竹刀を振り下ろすと、突然三笠の体が縦に割れる。
そしてなんと三笠は2人に分身する。

三笠「私を誰だか知ってんのかよ?」
三笠「私は戦艦三笠、霧の力を持った大魔法使いだぜ?」

松島「うわああああ!」

分身した片方の三笠の腕が伸び、松島の首を掴むと、松島を城の壁にぶつける。

厳島「ひぃ…!」

三笠「ひっこんでろ、コラ」

厳島は三笠が作った火の馬に突き飛ばされる。
三笠と薩摩は日の馬に乗り、城のバルコニーを走り抜ける。


「駄目です、武蔵長官!飛行機や、出撃した兵が皆三笠に倒されていきます!」

武蔵「ぬぅ…厳島に通信をつなげ!」

厳島『こちら…厳島です…松島が戦闘不能…他の艦も意識を失う重体。今三笠は日の馬に乗ってそちらへ向かっております…」

武蔵「そうか…」スッ

「武蔵長官、どちらへ!?」

武蔵「私が出る」

「そんな…武蔵長官自らが出ることはありませぬ!」

武蔵「これ以上被害を出さぬためだ…止むをえん」

ドカァァァァン

「三笠だ…」

三笠「私…イヤ、俺が負けるかよ…俺は無敵の大魔法使いだぜ?」

武蔵「三笠。覚悟!!」

三笠「誰だ…てめえは!?」

武蔵「戦艦武蔵だ!!お前を正気に戻す!!」

三笠「ケッ、やってみな!」

三笠は乗っていた日の馬を巨大な龍に変化させ、武蔵に向かわせる。
だが武蔵は木刀のようなもので火の龍を真っ二つに斬る。

薩摩「三笠!!」

三笠「う…次は氷の虎だ…!」

武蔵「出させるものか!」ドキュン

三笠「ぐああああ!」

武蔵が三笠の横を走り抜けると、一瞬で三笠の腕や足が爆発し、曲がってはいけない方向に曲がる。

武蔵「三笠よ、貴様は何だ?貴様は薩摩を誘拐し、不思議な力を使い交渉にも応じずに、傷つけられた者も居るのだぞ!?」

三笠「テメェ…一体誰だよ…?」

ドカン

三笠「」ドサリ

武蔵「お前は知らない…未来の戦艦、武蔵だ」

薩摩「三笠!大丈夫!?」

武蔵「君は離れていろ、アブナイぞ。ソイツのような自分の使命を捨てて勝手な行動をし、本来の自分の力以上の能力を使って暴れまわるモノは、こう呼ばれるのだ」

武蔵「怪 物 め」

三笠「怪…物…?」

摩「三笠はそんなんじゃないよぅ!!」ガシッ

武蔵「離れていなさい!」バシ

薩摩「うぅ…」

ガシンッ メシメシ

武蔵「ッ…」

三笠「テメェ…優しくしろよ…そいつは、これから人間の勝手な理由で痛い思いして沈む可哀想な奴なんだよ…」ゴゴゴゴゴ

武蔵「やめろ!それ以上、魔法をつかえばお前は死ぬ!そうすれば…人間の歴史が変わってしまうのだぞ!!」

三笠「怪物は…そんな事考えねぇんだぜ…俺は…」

プシュッ ゴキゴキ

三笠「コイツを助けて、戦争を終わらせるんだァァァ!!!」

武蔵「間に合わない…!」

ドカァン

三笠「…」

武蔵「やってしまった…まさか、彼がボロボロの状態で大きな魔法を発動させようとするとは…」

薩摩「三笠…そんな…足も手も吹き飛んで体が縦に裂けて…」

三笠「」

薩摩「駄目だよ…死ぬのは戦艦三笠じゃなくて…薩摩なんだよ…うわあああん…」

ザッ

金剛「…三笠…」

薩摩「お姉ちゃん、誰?」

金剛「私は金剛って言うのよ…三笠は本当に自分の事は考えないで他人の為に突っ走って…。薩摩ちゃん、三笠は死にません…一緒に願えば…」

薩摩「願うって…何を…?」

金剛「こう願うのよ…」

─『        』─

シュウウウウウウウ

武蔵「ぬ…三笠の体が…元に戻っていく!?」

三笠「…」パチリ

三笠「薩摩…それに金剛まで…ゴメンよ…」

長門「どうやら、終わったようだな…」

武蔵「長門殿か…」

長門「確かに、三笠のいう事も一理あるかもしれません…我々は兵器。人間の思うがままに使われ、いつかは朽ちる。武蔵殿、こう考えた事はあるだろうか?」

長門「我々、兵器はどこから来てどこへ向かっているのか」

武蔵「どういうことだ?」

長門「三笠の言う通り、今行われている戦争は無意味な事なのかもしれません。本当に戦争に意味がなくなり、戦争が無くなったとき、我々兵器はどうするべきなのか」

武蔵「…」

長門「ならば、その戦争が無くなった時代での我々の存在意味は何でしょう?人間からも求められなくなり、廃れるだけの存在となった兵器を助けてやりたいという事はそんなにも罪なのでしょうか」

武蔵「確かにな…」


三笠「え、今なんつった?」

薩摩「だからね、私、あの基地に戻ろうって言ったの」

三笠「戻させるかよ…お前、標的艦になって死んじまうんだぞ…」

薩摩「だって、それが私の使命なんだよ」

三笠「俺だってただ廃艦になって、解体されるだけだ…俺なんてお前に比べれば…」

薩摩「でもいいのよ。これが、何かに繋がるなら。三笠、今までありがとう。それじゃあ」

薩摩は兵士に連れられ、飛行機に乗る。
三笠はそれを見るとへなへなと地面に座り込む。

ポタポタ

三笠「うぅ…俺は結局、何も達成できなかった…」

三笠「うわああああああああああああああああああああああああ」

金剛「三笠…泣かないでください…私は待ってるから、また一緒にお話ししたりしましょう…」

三笠「俺は…誰も助けられなかった…うわあああああああ…」

金剛「泣かないで…」

三笠「俺は同情される価値なんてねぇんだ…ほんとのこと言えよ…『馬鹿だなぁ』ってよ…」

金剛「言わない」

三笠「お前は…本当の事言わねぇなぁ…本当の事言わねぇ”悪いヒトは嫌い”だぜ…」

ザパァン…ザパァン

三笠「へへへ…きれいな海…俺はこんなに汚れてるのに、綺麗にふるまいやがって…俺、”海が嫌い”になっちまったかな…」


武蔵「金剛、さっきは一体何を願ったのだ?」

金剛「こう願いました…」

─『三笠に、新しい使命を与えてください』─

三笠「…」

──────────────

提督「…」

ショーフク「思い出したのかね?」

提督「うん…俺は昔、三笠だった…アンタと出会うまではな…」

ショーフク「では、私の事も思い出したのだね?」

提督「あぁ、全部な」


あきつ丸「コンゴウ様!貴方が直接出向かぬとも、私どもが必ず奴らを捕まえて見せます…!」

コンゴウ「テメェらが…?無理だから俺がいくって言ってんだ。テメェらじゃ武装なしの重巡と駆逐艦しか無理だろうが」

まるゆ「では、一番格下の自分らが言える立場ではありませんが…他の霧に行かせればいいのでは…?」

コンゴウ「いいから。俺が残りの奴らを捕まえてくる。そうだな…お前らはあの女…金剛を人質にでもして敵の増援部隊の動きを止めな」

コンゴウ「大井、北上…ビスマルクに島風…長門と大和…そして一番厄介な、花道!!」

まるゆ「お許しください…」

あきつ丸「今、奴らが隠れそうなところを片っ端から…」

コンゴウ「久しぶりに運動したくなったんでな…それともなにか?」」

コンゴウ「俺を力づくで止めてみるかい?」ゴゴゴゴゴ

あきつ丸「い…いや…」

長門「まだか、提督は…」

大和「はい、遅いですね…中で何かあったのでしょうか?」

ゴオオオオオオオオオ

コンゴウ「みーつけた」

大和「提督…」

長門「なんだ…脅かすな…いつこのカプセルから出たんだ?気づかなかったが…」

大和「もう霧の力は習得したのですか?」

コンゴウ「カプセル?習得?何言ってんだ、お前ら」

大和「…?提督…ですよね…?」

長門「大体、提督は私たちを待たせておいて…」

大和「長門さん、気を付けてください!!この人は提督にそっくりですが、提督ではありません!」

コンゴウ「察しが良いな…嫌いじゃない…ふん!!」ブン

長門「…ぶ…」ガクン

大和「貴方は誰ですか!?」

コンゴウ「お前は知ってるんだろ?」

大和「ぐは…」ガシャン

コンゴウ「霧の大戦艦…コンゴウだって」

北上「う~~、さっきの奴が進んでった方向を歩いてるけど…何にも見当たらないね…」

大井「あ、何か基地みたいのが見えるわ!」

ビスマルク「他の人達は大丈夫なのかしら?」

大井「大体、アンタが戦艦なのに役に立たないのがいけないんでしょ~~!」

ビスマルク「お、言ってくれるじゃない!魚雷しか能が無いくせに~」

北上「まぁまぁ、二人とも、今は喧嘩してる場合じゃないでしょ~」

ビスマルク「あら、アレ、提督じゃない?」

コンゴウ「…!…よう、お前ら」

大井「あ、電話だ…」カチッ

ビスマルク「ちょっと聞いてよ、今敵を追いかけてきたんだけど、青い髪の敵って見た?」

コンゴウ「あぁ、そりゃ霧の重巡洋艦タカオってんだ。ソイツなら、”俺の”基地に居るぜ」

ビスマルク「…うん…」

大井「え…だから何よ、大和さん…じゃあこの提督そっくりな奴は…」

ビスマルク「提督…何か変じゃないかしら?」

大井「北上さん、ビスマルクさん!!避けて!!」

コンゴウ「ふん」ブン

シュパッ

コンゴウ「どこに行った?」

ビスマルク「ショックだわ…提督からハイキック。って、アンタ誰さーッ!!?」

ブチブチ

コンゴウ「知らないかい?」
コンゴウ「霧の大戦艦…コンゴウさ」

北上「うそ…2人に分身した…!?」

コンゴウ「姐さん、ドイツに帰ってシュトーレンでも食ってな」ビュン

ビスマルク「ぐは…」ドサリ

コンゴウ「さぁ、数は釣り合ったぜ!」

大井「くっ…このさっき敵から奪った魚雷で…」

コンゴウ「そっちが武器を使うってんなら、こっちも武器を使わねえとなぁ!!」

北上「今度は分身した片方を変形させて鎌にした…!?」

大井「魚雷でガードを…」

コンゴウ「遅いぜ!」

ガシャァァァァン

大井「」ガクッ

北上「う…やっぱり私って長門の時みたいにあっけなくやられる役目?」

コンゴウ「うん」コク

バキッ

北上「ひーん」ガクッ

コンゴウ「次は…島風と加賀…」

加賀「もうちょっと早くいけないのですか!?」

島風「なんなのさ、貴方!遅くしろって言ったり速くしろって言ったり!」

加賀「金剛さんが連れ去られたのですよ!それに、他の皆さんも心配ですし…」

島風「特に心配なのは、提督でしょ?」

加賀「そ、そんなことはありません」キリッ

島風「ま、皆が心配なのは私も一緒だけどね…」

加賀「っていうか、貴方みたいな子供が車を運転していていいのですか?」

島風「大丈夫よ。そもそも、私結構前に深海棲艦になりかけて、道路で大暴れしてたんだ。その時の影響が連装砲ちゃん達にはまだ残ってて、自在に深海棲艦だった時の姿になれるの」

加賀「そうですか。深海棲艦を味方にできるなんて、凄いですね」

島風「だから、もう深海棲艦じゃないってば~」

加賀と島風ペア、その連装砲ちゃん2号のスピードの力で知らぬうちにコンゴウ達の目を欺く事が出来た。
そして、霧の艦隊のメンタルモデル達のアジトである旧基地に向けて車を走らせる。


加賀「ようやく、着きましたね。敵の本拠地に…」

島風「しっ!何か足音がする…!」

<ガヤガヤ

あきつ丸「これが、コンゴウ様の捕まえた奴らでありますな。大和に長門に、大井、北上、ビスマルク…」

まるゆ「もぐもぐ~、やはり海軍の奴らってダメな奴ばっかなのね」

あきつ丸「コラ、霧の方々も海軍の艦艇であるのですから、聞かれたらまずいでありますよ!」

島風「ビスm…むぐっ!!」

加賀「いけません…ここで飛び出しても勝てる勝算はありません!待ちましょう…!!」

(えっと…ここはどこだっけ…そうだ、皆と海水浴に行って…硫黄島に行って…提督そっくりな奴にぶちのめされて…)

大井「おのれえええええええええ!」

叢雲「おぁ…大丈夫なの?」

大井「あら、ここは…?」

摩耶「地下の牢だってよ…増援部隊の攻撃を邪魔するために、人質にされちまったぜ、アタシら…」

大井「皆は…まだ寝てるのね…」

叢雲「今、起こそうとしたのよ…ホラ、皆起きてー!!」


摩耶「それでよ…霧の奴ら、とんでもねぇ事…考えてんだぜ」

大和「とんでもないこととは?」

摩耶「さっき、見張りのあきつ丸とまるゆって奴の話聞いてたんだけどよ…奴ら、深海棲艦を大量に使ってアタシ達の鎮守府の艦娘を全員消そうとしてんだぜ…!」

叢雲「そして、それを企ててるのが、『霧の艦隊』。霧の奴らも、多分深海棲艦の力でおかしくなってるって感じだわ…」

摩耶「まず手始めに、俺たちを殺してしまおうってクチらしいぜ」

大井「さっき、提督そっくりの『コンゴウ』とか言う奴が私たちを殺さなかったのは、何故かしら…」

長門「ふふふ、うつけモノめ、この長門はよそ見をしていたから攻撃を食らってしまったが、よそ見をしていなければあんな奴イチコロだぞ」

大井「ふん、私はアンタの3倍油断してたからよ」

長門「こっちはよそ見してた上にお前の6倍油断しててからだ」

ビスマルク「なんの張り合いしてんのよ…?」

摩耶「そんで、提督のバカはどこだ?」

大和「それが…」ヒソヒソ

摩耶「何だと!?霧の力を覚えるために、霧の艦艇の中に入っただとォ?」

長門「そして、その艦艇が圧縮されたカプセルは、コンゴウにとられてしまった…」

ピロロロロロロ

大和「通信です…はい、もしもし…あ!和田長官ですか!!」

和田長官『こちらは、今硫黄島の海岸に居る。霧のタカオとヒュウガと、人質の交換についての交渉だ』

大和「人質?私たちのほかにまだ居るのですか?」

和田長官『あぁ、多分そっちに居ない者が1人いるだろう。金剛君だ』

大和「そういえば、金剛さんが見当たりませんでした…」

ザーザー…ツーツー

大和「切れてしまいました…和田長官も電話をできない状況に置かれているのでしょう…」

あきつ丸「あははは!!実は、この大発は通話を妨害するのであります」

まるゆ「コンゴウ様の命令で、お前らを完全に拘束するように頼まれたんですよ」

摩耶「テメェら…アタシを大発で轢いた野郎だ…アタシはあのあきつ丸って野郎だけは絶対に許さねぇ!」

あきつ丸「へぇ」

摩耶「俺だって、ドライヴァーの端くれだ!だけんど、一回も乗り物を人にぶつけようとした事はねぇぜ!」


島風「ぶえっくしょん!!」

加賀「いつ、敵が来てもおかしくありません。あまり大きい音は立てないように」

あきつ丸「なんですか?この陸軍の強襲揚陸艦のあきつ丸様に文句を言いたいのでありますかァ?」

あきつ丸「武装もねぇただの蛆虫共がァ」

摩耶「こんの…クソヤロォ~~!!」

あきつ丸「ナガラ!出番であります!」

ドォン ドカァン

大和「天井に地上への穴が…!」

北上「穴が広がっていく…あって、霧の艦艇がいっぱい!」

まるゆ「今の霧の方達の力で同じ艦艇を複製するなど、簡単」

あきつ丸とまるゆは、大発に乗ると一番先頭のナガラ級の甲板に乗り移る。
そしてナガラ級たちは、一斉に超重力砲の発射口を大和たちに向ける。

「「「ふん!」」」

だが突然、砲撃が飛び交いナガラ級に命中する。

あきつ丸「誰でありますか!?」

木曾「へっ、こいつら人質にして、俺ら増援部隊の進行を止めさせるつもりだったんだろうが、残念だなぁ。人質は回収完了だ」

島風「ふーっ、この人たちが来てよかった…」

加賀「助かりました…」

増援部隊として駆け付けたのは、木曾、長良、日向、高翌雄、榛名、霧島の6人。

日向「ここは任せて、お前たちはあっちの基地へ向かえ!!」

あきつ丸「待つでありますッ!!」ビュン

まるゆ「待て~」

島風「連装砲ちゃん2号、行っちゃって!」

島風の背中にくっついていた連装砲ちゃんが車に変化し、一行はそれに乗り込む。
あきつ丸とまるゆが一体のナガラ級に乗って追いかけてくる。

榛名「よし、皆行ってくれたみたい…さて、私たちはこの霧の艦艇軍を倒さないと…ッ!?」

コンゴウ「超重力砲!発射ァ!!」

日向「うおおおっ!!?」

高翌雄「ぐぅ…」

コンゴウ「やっぱし、あの2人じゃダメだったか…ま、俺がお前らを叩き潰すからよ…」

霧島「コイツ…提督そっくりだけど、違う…」

長良「これが、コイツの艦艇…」

コンゴウ「ほぅら、アブラカダブラ…ってか!?」

ビィィィィン ズドン

一同「」

コンゴウ「さてと、俺は、タカオとヒュウガのとこに行かなきゃな」

そして、車に乗って逃走中の島風、ビスマルク、摩耶、叢雲、加賀、大井、北上、大和、長門

大井「あーもう、狭いわね!戦艦の貴方たちが重いうえにデカすぎるのよ!!」

長門「何!?でかいだと!?」

島風「いいから、動かないでね…振り落とされるよ」

あきつ丸「待~て~~~!!」

摩耶「チッ、やかましい野郎だぜ…アタシがあいつをぶちのめしてくる!!アイツだけは、アタシがやる!!」ピョン

あきつ丸「うつけモノが!ナガラの砲撃で消し飛ばしてやる!!」ドン

フワン

叢雲「摩耶の奴、避けるのがうまいわね!そのまま行っちゃえ~!!」

まるゆ「まだまだ!」ドンドン

摩耶「ぐッ…!!」ブシャリ

北上「摩耶っちの肩から血が…!」

あきつ丸「あはは!貴殿が態勢を崩した、今がチャンスであります!超重力砲!!」

ビュン ギィィィィィン

長門「ふん!このナガラとかいう艦艇はこの長門に任せよ!摩耶は、あの陸軍の野郎を狙うがいい!!」

長門は超重力砲に命中しそうになる摩耶を突き飛ばし、自らが敵の攻撃の餌食となる。
モロに攻撃を食らった長門は動かなくなりその場に倒れる。

長門「私と摩耶の事はいい…お前たちは進め!!」

摩耶「でえぇぇぇぇぇいいい!!」タッタッタッ

まるゆ「アイツ…ナガラの装甲を上ってくるッ!」

あきつ丸「何だと!?」チラッ

摩耶「ヨォ…ようやく、その面に一発フカしてやれんな!」ブン

ゴキン メキメキメキ

あきつ丸「ぶ…ぶげ…」メキメキ

摩耶「どうでぇ、あきつ丸…正面衝突はイテェだろ…」

あきつ丸「うぎゃあああああ!!」ドテン

まるゆ「あぁ…あきつ丸が落ちていく!チクショッー!!」

摩耶「テメェにも一発、当ててやりてぇが…もう無理そうだ…」ヒュン

まるゆ「アイツも落ちていく…」

あきつ丸撃破、長門、摩耶リタイヤ─

まるゆ「くそ…なら私だけでッ!アイツらを捕まえてやる!」

島風「追いついてきた!!」

大和「…ここは、私にお任せ下さい」

大井「え、アンタが一人で!?」

大和「忘れましたか?私はどんな武器も上手に使えるのですよ?」

大井「ア…そういえば…でも、心配だから、私も行ってあげるわ!」

大和「助かります」

まるゆ「ナガラ!とにかく撃ちまくれ!あの車を粉砕してくれ~!!」

ドン ドン

まるゆ「ん?」

大和「大和型超弩級戦艦一番艦大和、推して参ります!」

大井「重雷装巡洋艦、大井!行くわ!」

まるゆ「おーおー、武装もないお前たちに何ができる!」

大和「大井さん、あのまるゆの注意を下に向ける事はできますか?」

大井「やろうと思えば」

大和「下を向いたとき、私がナガラの上にいれば、私たちの勝ちです!」

大井「おーい!出来損ないの潜水艦!私、対潜能力には自信あるんだけど?」

まるゆ「う…だが、ナガラが居れば!」

大井「一人じゃ何にもできないんでしょ!?」

まるゆ「何を~…私だってやればできるもの!!」

大井「…今よ、大和!!」

大和「はい!」

加賀「アレは…まさかアレを使うつもりですか…?」

叢雲「アレって言うと…自分の艦艇と同じ重量を纏う事?普通の艦娘は自分の本来の重さに耐えきれないから使わないけど…」

まるゆ「何~~!!」

大和「これで、ぺしゃんこです!!」

まるゆ「あった!この大発で逃げるッ…!」

グシャリ ドカァン

大井「うぐ…凄い爆風…ッ!」ガクッ

ナガラ級破壊、大和、大井リタイヤ─

顕在組、島風、ビスマルク、加賀、叢雲、北上

叢雲「大和!大井!!」

ビスマルク「大丈夫よ…大和なら、死んではいないわ…」

加賀「…心配です」

北上「それにしてもあのまるゆって子、まだ追いかけてきてる…凄い執念ね…」


そのころ、硫黄島の海岸。
そこでは、霧側のタカオとヒュウガと和田長官が向かい合っていた所であった。

和田長官「霧の艦隊のタカオとヒュウガだな?私は、『艦娘執行組織』の責任者の和田六三四だ。人質たちの身柄を受け取るために来た。ところで…人質達が見当たらないのだが…」

タカオ「人質なら居るわよ。一人だけだけどねぇ?」

金剛「スミマセン~」

和田長官「いや、君があやまる事は無いが…花道提督の鎮守府所属の子だね?」

ヒュウガ「あはは!私たちは人質全員なんて言ってないしねぇ!?」

和田長官「とにかく…約束が違う。残念ながら、君たちを見逃すことはできない」

タカオ「バッカ正直に1人で来るんじゃなかったわね!」

ヒュウガ「逆にここで潰してあげるわ!」

タカオ「私の艦艇よ!!」

ゴゴゴゴゴゴ ガタァン

金剛「こ、この卑怯者~!」

ヒュウガ「ほらぁ、1人じゃ勝ち目無いわよ?どうする?」

和田長官「こちらはそっちの言い分を聞いて、一人で来た。なのに、人質は返さない…私を殺そうとする…完璧な作戦だと思うさ」

和田長官「だが、貴様らはミスをおかした。それは『私がなぜ一人で来たのか』を考えなかったことだ」

タカオ「なぁによ~?」

ヒュウガ「強がりは言っても無駄よ?」

和田長官「つまり、いくら相手が多勢でも私は…絶対に負けないのだ」

ヒュウガ「…貴方…何者!?」

カッ

「非!」
「理!」
「法!」
「権!」
「天!」

武蔵「戦艦…武蔵だ!!」

タカオ「うそ…ヒュウガの艦艇が…破壊された…」

ヒュウガ「くう…」


金剛(やっぱり、このヒトは…強い…)

武蔵「少々、待たせたな…金剛よ」

金剛「アナタ…噂の和田長官って武蔵だったんデスネ…」

武蔵「ふ、私は人間に迷惑をかける存在を許さない。そして、人間を救うには人間の気持ちを理解しなければ…それで人間に扮していたのだ」

タカオ「くっそ~…深海棲艦共よ!今こそ飛び出し、アイツらを倒すのだ!」

タ級「…」ギャキン

ル級「…」ジャキン

他にも駆逐艦、軽巡、重巡などが武蔵と金剛に向けて砲を向け、敵空母から放たれる艦載機が空中を覆い尽くす。
だが武蔵は金剛を肩にかついだまま、身をぐっと下げる。

武蔵「むん!申し訳ないが、沢山の艦載機は御免こうむる!!」キキンキン

タ、ル級「…」ドン ドカン

武蔵「そんな攻撃が…当たるか!!」ドカァン

タカオ「げぇ~ッ…23体の深海棲艦を数十秒で…強い!だが…こっちにだってできることはあるわ!」ビィィィン

金剛「アッ…」

タカオの船体に取り付けてあったクレーンが、武蔵と金剛の居る崖に突き刺さる。
これで崖を揺らし、武蔵を振り落とすか降りさせるつもりだったようだが、力を込めすぎてしまったようだ。
崖の先端がガラガラと崩れ、武蔵と金剛は崖の下の砂浜に落下していく。

タカオ「しまった!やりすぎた!」

金剛「イタタ…無茶するんダカラ…」

武蔵「無茶をしたのは…お前だろう…武装もない、ほぼ裸に近い状態になのに私のクッション代わりになるなど…」

金剛「さ、掴まってくだサーイ!」

武蔵「お、おい…大丈夫なのか?肋骨が折れているようだが…」

金剛「よ…いしょっとぉぉぉ!!!」

武蔵「馬鹿な…私を背負って登れるわけ…無いだろう…」

タカオ「大丈夫かな~、アイツら…」

ヒュウガ「何言ってんのよ、最終的には殺してしまうんでしょ?なら…もうあの2人は用済みよねぇ?霧に逆らった艦娘がどうなるか、見せしめにでもしてやろうかしら」

タカオ「でもさぁ~!」

武蔵「もう…私は動ける…離してくれ」

金剛「いいわよ…もう、私に思い残す事なんて…無いから」

武蔵「そうか…私は薄情者なのかもしれんな…傷だらけのお前さんを放って敵を倒しに行くなど…」

武蔵はそう言い残すと、崖をピョンピョンと登っていく。

金剛(そう、私に思い残す事なんか…。ッ…!?)

金剛(アハハ…なんでこんな時に、提督の笑顔を始めてみた時を思い出すのカナ…?」

提督『あっちぃなぁ…』

金剛『暑いデスネー…っていうか、飲み物ぐらい奢ってくれないんデスカー?』

提督『ばっきゃろー、誰がお前なんかに買ってやるかよ』


元帥『あぁ、来てくれたのか。大げさだなぁ、簡単な手術だって』

嫁さん『ほら、お兄さんお姉さんに笑われちゃうよ?あっくん、離れなさいな』

アツシ『…』ギュー

元帥『昨日、手術を受けた患者さんが亡くなっちゃうドラマを見たらしくてな…さっきから離れようとしないんだ』

提督『なぁ、アツシって…呼んでもいいかよ?』

アツシ『…』コクリ

提督『父ちゃんが絶対に帰ってくる、おまじないを教えてやろうか?』


金剛『ホント、さっきはビックリしたワー…アツシ君、急に離れて、手術に行くのを見送ったんだもん』

提督『約束』

金剛『へ?』

提督『好きな奴に帰ってきて欲しい時は、約束するんだとよ。ゆびきりげんまんってあるだろ?それ教えてやったんだよ』

金剛『…』

提督『でもよ、無理せずに、ダメだと思ったら諦めて帰ってこい、って意味も入ってるんだと』

金剛『へー、へー!』クルクル

提督『な、なんだよ…?』

金剛『じゃ、ハイ!私とも約束!』

提督『は?何を約するってんだよ…?』

金剛『それは…「世の中の戦争を全て終わらして、世界中を平和にしちゃう」ってヤツデス!…って、もういいデス…好きに笑ってくだサイ…』

提督『へー、お前にしちゃ、いい約束じゃねぇか…』ニコ

金剛『じゃあ約束してくれますカー!?』

提督『いんや、俺はしねぇぜ』

金剛『チョッ、そんナ~!』

金剛(あの時、5月だったのに凄い暑い日で…。あの時、約束してたら、帰って…また会えたのかな…)

フラリ

金剛(あ、手が離れちゃった…最期にもう一度会いたかった…提督…)


武蔵「ウオオオオオオオオオオ!!」ドカン

タカオ「ヒィッ…コイツ、さっきより強くない!?」

武蔵(一刻も早く、こいつらを倒して、金剛を救わなければ…)

ヒュウガ「そんな…何かないかしら!…あった!イオナ姉様のコア!!これで…貴方たちなんか吹き飛んでしまえェ~~!!」

ヒュウガ「さぁ!出てきてください、イオナ姉様!!」

カタカタ…シュバッ

ヒュウガ「ちょ、ちょっと!どこ行くの~~!!」

シュウウウウウウン
パシッ

金剛(え…落ちるのが止まった…?私、もう死んだのかな…)

金剛「って、なーんだ。貴方だったノ…」

金剛「花ちゃん」

花道「お前、いつから花ちゃんなんて呼ぶようになった?」

金剛「もぉ…どこ行ってたんデスカ…」

花道「うん…大昔の事思い出しに、霧の中によ…。んじゃ、ちょっくら暴れるから、掴まってな!!」

ギュイイイイイイイン

ヒュウガ「な、何だお前はァ!!」

タカオ「401はどうした!?」

武蔵(花道提督か…だが、私はもっと昔にこの人と会っている…)

花道「ケッ、呼ばれたから出てきてやったんだぜぇ?なら俺は霧の艦艇じゃあねぇのかァ!?」

ヒュウガ「ふざけるなぁ~~~!」

花道「どっちがだ!バ~カ!!」バチバチ ビュン

ヒュウガ「ぶ…は…」メキメキメキ

ドカァァァァン

タカオ「ヒュウガをぶん殴って吹っ飛ばした…人間にこんな事できるはずない…やっぱ、コイツはメンタルモデル…なの?」

花道「はずれ。俺は、鎮守府の提督だ。名前は『花道』ってんだ!」

タカオ「げ~!魔法を使う提督なんているの~!!」

武蔵(今、花道提督は魔法…つまり霧の力を使ったのか…それなら…奴は…)

タカオ「全砲門、開け~~~!!」

ガシャンガシャ ウィイイイイン

タカオ「消し飛びなさい!!撃て~~~~~~!!」

金剛「テートク~~!!?」

花道「見てな」

花道の持つナノマテリアルで腕を変化させて、金属バットに変える。
そのまま撃たれる砲弾を全て撃ち返す。

タカオ「きゃ~~~~~~!!こうなったら、超重力砲だァ~~~~!!」

花道「テメェ!俺の艦娘共に何しやがった!!?」

金剛「え?」

タカオ「潰してあげるわ…」

グウウウウウウン

花道「オラァ!」ドン

ガキイン

タカオ「クラインフィールド、突破できるかしら!?」

花道「かてぇな…」

タカオ「再び一斉射撃よ!」

花道「おい、金剛。テメェはアブねぇから降りな」

金剛「いいよ、そのまま…やっちゃって」

花道「おう!!」グイ ダダダダダダ

タカオ「砲弾の上を走ってくるだと…!」

<Nano material>

タカオ「なんだ、花道とか言う奴…両腕をトランペットに…?」

花道「行くぜェ!」

ボ ドカン

タカオ「そ、そんな…艦体に穴が…クラインフィールドが破られた…そんな~~~!!」

タカオは艦橋に隠れるが、提督はお構いなしで艦艇を破壊していく。
装甲は全てぐちゃぐちゃに変形し、所々炎上している。

金剛「も、もういいデスヨ…タカオはもう抵抗できマセン…!」

花道「うるせぇ、お前は黙ってな」

タカオ「私は…誰も殺してないわよ…少し、貴方の仲間に撃ったけど…」

金剛「この人は私をここに連れてきただけで何もしてないんデスヨ…」

花道「俺はコイツが崖から金剛を落とすのを見てたんだよ。だから、沈める

タカオ「ひぃ…」

花道「俺はな、今、アタマに血ィ登ってんだ」ズガン

タカオ「ご、ごめんなさ…」シュー

武蔵「花道提督、君の戦い…見事だった」

花道「アンタ…和田長官。武蔵だったんだな」

武蔵「何故、武蔵を知っている?」

花道「俺とアンタは昔会ってるじゃねぇか。あんときは、世話になったな」

金剛「え…?テートクは一体何なんデスカ?」

花道「あんまし、言いたくねぇんだけどよ…」

ギュルルルルル

コンゴウ「いい気なもんだぜ、花道。人間のふりをする、バカ艦娘だよ」

金剛「アッ、さっきの提督そっくりな人!」

武蔵「…花道提督に、金剛。逃げろ。コイツからは尋常ではない凶悪な真っ黒い気を感じる…」

コンゴウ「残念だな、逃がさないんだなそれが」

武蔵「む!?」

ギュイイイイ

花道「なんてこった…武蔵の野郎が…一撃で…やられちまった」

武蔵「に、逃げよ…」

コンゴウ「おっと、コイツは貰ってくぜ」

コンゴウは気絶した武蔵を自分の艦艇に放り込む。

花道「くそ…食らえ!」

<Nano material>

花道は手の平から火の馬を作り出し、それをコンゴウにぶつけようとする。
だがコンゴウは冷静に、左腕をかざす。

コンゴウ「ほんとに馬鹿だなぁ。この黒の艦隊旗艦様にナノマテリアルだってさ」

<ナノマテリアル>

コンゴウも負けじと水の虎を呼び出し、火の馬にぶつけ相[ピーーー]る。

金剛「あっちも…テートクと同じような魔法を…!」

コンゴウ「さぁ、花道…この俺の長年の恨み…今こそ食らうがいい…!!」ゴゴゴゴゴゴ

花道「長年の…恨みだと…?テメェは、誰だよ?」

コンゴウ「俺は『コンゴウ』。黒の艦隊の旗艦だ…」

花道「…」チッ

金剛「?」

花道「俺が聞きたいのはそうじゃねぇ。”なんで俺と同じカッコしてんだ”って聞いてんだ。”三笠”は、この俺だぜ!」

金剛(テートクが…あの…三笠…?)

コンゴウ「じゃあ、お前のカッコしてるコンゴウって、何なんだよ?」

ズバン

花道「う…が…」

金剛「テートクぅ~~~!!?」

ドン

コンゴウ「」ザク

花道「ピィピィ泣くんじゃねぇ。俺は今、ナノマテリアル使ってんだ!アクティブデコイ…いや、分身を作るなんざ朝飯前よ!」

コンゴウ「くっ…この俺に、味なマネを…」

花道「仕方ねぇな…金剛、ホラ、これ乗れ」

花道は右腕を分裂させ、それを偵察機に変える。
そして、胴体の切れたコンゴウが元に戻ろうとしている間に無理やり金剛を上に乗せる。

金剛「ちょっと待ってくだサイ…テートクが三笠なら、どうして三笠がテートクになったの…?」

花道「今は話す暇がねぇ、帰ってから話す。”約束”だ」

金剛「ハイ!」

花道「ソレェッ!!」ビューン

金剛「FOOOOOOOOOOO!!」

金剛を乗せた偵察機は霧の基地に向けて飛んでいく。
元に戻ったコンゴウが艦載機を追いかけようとする。

花道「させるかよぉ!!」ガキン

コンゴウ「愚か者が!テメェは”瞬間移動”って知ってっか?」

花道「ま、まさか…!」

コンゴウ「ご名答。それじゃ、先回りするぜ」バシュン

花道「クソ~~~!!」バシュ

コンゴウ「あばよ」

花道「お、遅かった…」

花道「だけんど、こうなっちゃいられねぇな。さっさと奴の基地に飛んでかねぇと…」

花道(そう、俺が『三笠』から『花道』になったのぁ…ショーフクのおかげなんだ…)


花道の記憶の続き…それは三笠が深海棲艦による狂気から覚め、硫黄島で海を眺めていた時の事。

三笠「俺は…結局、何も…できなかった…」

三笠「真っ青な…海…胸が苦しいよ…」

胸が苦しくなると、自分の体がだんだん煙になっていくのに気付いた。
恐らく、日本の母港に無理やり戻されようとしているようだ。

シュワァァァァァァア

三笠「ここは…?どこだよ…海軍の基地じゃねぇな…じゃ、そこだ…?」

ザッ

ショーフク「おや、こんな場所に、先客がいらしていたとはな」

気が付いたときには、もう俺はそこに居て、ショーフクと初めて出会ったんだ。

三笠「あ、アンタ誰だ?そしてここはどこだよ?」

ショーフク「人に名を訪ねるときには、まず自分から名乗るのが礼儀ではないのかね?」

三笠「あ?」

ショーフク「おっと、また説教をしてしまった。どうやら前までの癖が抜けていないようだな」

三笠「癖?」

ショーフク「すぐ偉そうにする、悪い癖なんですよ。私は昔、海軍の少将をやっていまして、地元の人は私の事をからかってこう呼ぶのです。『ショーフク』とね」

三笠?「少将だった?んじゃもうちげぇのか?」

ショーフク「当然です。もう戦争は終わっているからね」

三笠「ちょ…今なんつった!?」

ショーフク「今は、ただの農家のおっさんですよ」

三笠「農家の朝は早いんだ…だから夜中にこんな場所来ないはずだぞ…」

ショーフク「まぁ、私の家に来てうすいかゆでも食べますか?君のようなハイカラガールには合わないかもしれんが」

────────

ザクッザクッ

村人「おーい、ショーフクさん!おらんちの畑の肥料のあんばいさ、見てくなんせ!」

ショーフク「はい、ただいま!」

村人「ほぉ~、ありゃショーフクさんよか鍬入れが上手いんでねぇか?」

ショーフク「いやぁ、お恥ずかしい…」

村人「でも、ショーフクさん確か可愛らしいおなごだと言っていたんだけんど…」

村人「ありゃ、立派な若い衆じゃねぇだか…」

三笠「…」ザクッザクッ

俺は気づいていた。
俺をここに送り込んだのは、何か特別な力が働いている。
ここに飛ばされるとき、頭をよぎった文章『三笠に、新しい使命を与えてください』。
金剛と薩摩の野郎は、有り得ないことに一番どうでもいい願いをしちまった。
そのおかげで、俺は戦争が終わった時代までタイムスリップ。
確か1960年代だと思うけど。俺の姿も、性別もだんだん変わっていった。
まぁ前の顔が良かったとも自分では言いにくいが、鼻が尖がって、眠たそうな細い目になって、髪型も普通の男の髪型になっちまった。
何より驚いたのは性別だ。顔が変わってくると同時に、体型まで変わったんだから。
ゼンゼン分からない。俺の姿を変えてこんな所に放っておいて、それが俺を助けることになるのか。
俺はショーフクに自分の正体を明かした。
戦艦三笠だってな。でも、当の三笠は何十年も前に使われなくなったらしい。
なのに、なんで俺はこうしていられるのか。

ショーフク。変なおっさんだ。
昔は海軍の少将、まぁ戦争終了の間近に中将になれたようだが。
いわば、戦争を起こした野郎の仲間だ。今は、そんな怒りの感情は持ってないが、このショーフクはどの軍人より、何かが違った。

俺はと言えば、もう三笠って名乗るのも嫌になってきた。
まぁ俺が三笠だろうがなんだろうが、俺に変える場所なんて…無かったんだから。

三笠「はぁ…」

謎の女「あの…もし」

三笠「…何ですか?」

謎の女「お仕事中失礼いたしますが、ショーフクさんはこちらだとうかがったのですか」

三笠「…あぁ、ショーフクなら、下の畑に…って、あんた誰?」

謎の女「そうですか。ありがとうございます…あ、そう、名前は…『伽耶(かや)』と申します」スッ

それが、この変な女との初めての出会いだった。
そうだ、名前を考えなきゃ…え~っと…

三笠「おう、俺は…『三吉』ってんだ…」

その女は伽耶と名乗った。
昔、ショーフクに世話になったんだろうか。それはどーだってよかった。
目。あの伽耶の悲しそうな眼。でも俺はその眼をとこかで見たことがある気がした。

三笠「何考えてんだ、俺は。どーでもいいだろ…」

ショーフク「だから、肥料はうんたらかんたらだからミミズや蛾の幼虫なんかが居る土が~…」

三笠「俺にゃ何言ってんのかチンプンカンプンだぜ」

ショーフク「まぁ、お茶でも入れますか、三吉」

三笠「からかわないでくれよな」

コンコン

ガチャリ

伽耶「ショーフクさん、どこに行ってらしたのですか?探したんですのに…」

三笠「あ、さっきの…」

伽耶「ぁ…」ギロリ

三笠「何を睨んでやがんだ…」

その後、伽耶とショーフクが畑やら田んぼやらについて話し始めたから、俺は外に散歩に行くことにした。
1時間ぐらい歩いてから、もう一回ショーフクの家に戻った。
まだ居た。伽耶だ。今まさに帰る支度をしているようだが、また目は俺を睨んでいる。

伽耶「さようなら」

ショーフク「あぁ、またね…」

三笠「じゃ、じゃあな…」

伽耶「役立たずは、早く自分の家に帰る事ね」ボソッ

三笠「…!」

沈黙が続いた。
ショーフクは今のが聞こえなかったようで、俺と伽耶との間のにらみ合いを不思議そうに見ていた。
伽耶はプイッと視線をずらし、ドアを出ていく。

三笠「…」

ショーフク「おや、何か話したいことがあるのかい?」

三笠「アンタ、いろんな人を助けて感謝されてるんだなぁ…ハナ持ちならねぇな」

ショーフク「はは、君は本当の事を言いませんね」

三笠「あんたに何が分かるんだよ?」

ショーフク「分かるんですよ、暗い深海に、君の事を教えてもらったんだよ…」

三笠「ふざけんな!!人に感謝されてるアンタに俺の事が分かってたまるか!俺はなぁ、やりたいこと何にもできなかった役立たずなんだよ!あの女は『早く家に帰れ』って言ってたけど、俺にゃその帰る家がねぇんだよ!!どうやったらアンタみたいな人間になれるんだよ…教えて…くれよ…」

ショーフク「ゴフッ!!」

三笠「ど、どうした!!?」

ショーフク「私のようになっちゃあいかんぞ…私こそ、本当に役に立たない、いわばデクノボーなのですから…」

医者「ふむ、ついに発作が始まったか…」

三笠「ショーフクはなんて病気なんだ?」

医者「胃ガンだね。前にもあまり体を動かすなと忠告しておいたのだが…」

ショーフク「…」

医者「まぁ、薬は安くするからもう帰って安静にしてなさい」


そう、ショーフクはガンだった。
この時代は治療が難しく、薬で少しでも発作を抑えるしかなかった。

三笠「酒も、ひかえろよな」

ショーフク「はは…そうしようか」

沈黙が続いた。
街灯のともった通りを、蛾や羽虫が盛んに飛び交っている中、俺はショーフクをおぶって家に向かっていた。

ショーフク「さっきの話の続きをしようか…三笠がさっき自分をデクノボーと言ったのは、三笠自身がそう思っているからです。だから、自分が最高と思えることを『モノサシ』で見つけるんだ」

三笠「モノサシ…」

ショーフク「私にもモノサシはあります、自分のモノサシで計って、自分が良いと思うことをしているのです。他人のモノサシで自分を評価はしません。三笠が自分をデクノボーと言ったのは、三笠以外の人のモノサシで計ったからじゃないのか?」

三笠「…」

ショーフク「私は自分で最高だと思うことをやってのけたんだぞ、と自慢してやりたいのです」

三笠「そうか。でも、死ぬかもしれないのにあんなに働いていいのか?」

ショーフク「たとえ、それが敵国の兵隊でも、道に迷ったハイカラガールでも、助けてあげたいのですよ」

三笠「ちぇ…」

それから、家に戻って3日ぐらいが経ったか。
家に誰かが訪ねてきた。

三笠「誰だろな…出るぜ」

叢雲「あ…家間違えたかしら…」

三笠「要件は…何だったんだよ?」

叢雲「あのさ、ショーフクっている?」

三笠「…いるけどよ、お前は誰だよ?」

叢雲「あんで見ず知らずのアンタに名乗らなきゃいけないのよ!」

三笠「まぁ、呼んでくるぜ…あ」

ショーフク「おや、叢雲。どうしたのかね…?」

伽耶「ショーフクさん!お体は…お体は大丈夫ですか!?」

また出た。伽耶。なんでこの女はショーフクに尽くそうとする?
よくわからない。

叢雲「そこの港に、『トゥースチャップ』が現れたわ…でも、今は発作が出てて無理そうね…」

そこで俺は、思ったことを言い張ってやったさ。

三笠「今、見ての通りショーフクは調子が悪い。何でもするから、俺を連れてけ」

伽耶「なんで貴方なんかと行かなければいけないの?」

叢雲「仕方ない…私たちは人間が居ないと戦えないの…頼んだわ」

そんで、後から聞いたが、コイツは叢雲っていうらしい。
昔の俺と同じ、艦の魂の具現化みたいなやつだ。どういう訳が、俺がタイムスリップした数十年でその具現化した少女『艦娘』と呼ばれ、人間にも目視できる存在になったらしい。

ドォン ドカァン

現場に来ると、黒い体で真っ白な歯を汚く剥き出した生物が港の建物に体当たりをかましたり、何やら砲を撃ったりして暴れていた。
俺は、その怪物どもの目と自分の目が似ていることに気付いた。
この時代は、この怪物どもを『深海棲艦』と呼ばずに、『トゥースチャップ』と呼んでいたらしい。
意味は、歯の頭、という意味らしい、なるほどね。
そこでもう一つ気づいた。伽耶の目がどこかで見たことあると思っていたら、伽耶の目、俺の目、深海棲艦の目は似ているのだ。
敵は、今でいう駆逐イ級3体に、重巡リ級一体の艦隊だった。
だが当時の武装を持っていない艦娘は、人間用の武器で闘うしかなかった。


伽耶「ふん!」

伽耶と叢雲は持参した鍬を振り回し、駆逐艦と戦っていた。

駆逐イ級「」

やっと、駆逐イ級を叩きのめした。
だけんど、背後から別の駆逐艦が一体、砲を構えている。

イ級「…」ガシャ

三笠「まずいぜ…!」

伽耶「次は誰!?」

伽耶はまだ背後から撃とうとしている駆逐艦に気づいていない。
そこで俺は伽耶の後ろに立つ。
その瞬間、俺の体を数発の弾丸が命中する。

伽耶「アナタ…」

三笠「いてて…初めてじゃあねぇよ…」

イ級「…」ガシャン

三笠「テメェ!今、人と話してる最中だろうがよ!!」バシュ

イ級「」バキン

三笠「ショーフクに、自分が役にたつって事を証明すんだろ?」

伽耶「ど、どうして…?」

三笠「俺ぁ、アンタの居場所を盗ろうなんて、思っちゃいねぇよ。俺みてぇな奴に、ここで居場所が見つかるなんて思っちゃねぇさ…」

伽耶「居場所が無いのは、私も貴方も一緒でしょう?」

三笠「…?まぁいいぜ、残りの雑魚共の相手だ!!」

叢雲「私無視されてる?」

それから、俺と伽耶、おっと、プラス叢雲と一緒に駆逐艦3体を倒した。
残るは、偉そうに仁王立ちしてる重巡リ級だった。

リ級「フッ…」ガシャン

三笠「気味の悪い野郎だ…」

直後、再び伽耶の後ろから飛んでくる砲弾。
どうやら倒したはずの駆逐艦のうち一体が最後の力で弾を一発撃ったらしい。
全く、悪役の雑魚がこんな所で根性を見せるんじゃない。

叢雲「おりゃっ…しまった!」ブン

叢雲が割って入り、弾を弾こうとするが、弾は鍬を破壊し伽耶をまっすぐ狙う。

伽耶「避けられない…ッ!」

ギュルルルルルルル
ザワザワザワザワザワ…

ガキィン!

今まで失っていた力が一気に戻ってきた。
すると、髪型が前に尖がって突き出るように巻き上がっていく。
恐らく、三笠だった時に被っていたが武蔵と戦った時に紛失した海軍帽の形を組んでいるらしい。

叢雲「アレは…まさか…」

伽耶「艦娘だったの…?アイツ」

三笠「オイ待て、伽耶」

伽耶「放してよ!私は死んでもアイツを倒すわ!!」

三笠「んじゃあ、一緒に、やろうぜ!!」

ビュン

リ級「!?」

三笠「うおりゃあああああ!!」バシッ ガン

リ級「…ウ…」(中破

伽耶「トドメよ!!」ブゥン

リ級「グハ…」ガクッ


ようやく一難が去って、深海棲艦どもを海に捨てた…いや、海に還してあげた。
問題はその後。

叢雲「その帽子の形した髪型、どっかで見たことあると思ったら、アンタ、三笠?」

三笠「あぁ、俺は昔、三笠だった。ショーフクと会うまではな…」

その後、叢雲は駆け付けた警察と一緒にどっかに行ってしまった。
いつもまにか、伽耶もどこかに行っていたので俺もその場を後にした。

三笠「海…やっぱり見てると胸が苦しくなるなぁ…」

カサッ…

三笠「驚いた…」

伽耶「何を…驚いたの?」

三笠「いや、急に現れたアンタが、一瞬、人魚姫に見えてよ…」

伽耶「私は何十年も流離って来たわ…そして、ショーフクさんに会ったの。あれほど心が広くて、優しい人はいないわ」

三笠「何十年?でも、アンタ若く見えるぜ」

伽耶「私がいつ人間だと言ったの?」

三笠「まさか…お前も艦娘?」

伽耶「いえ、違うわ。でも、貴方は先刻、いいことを言ったわね」

三笠「へっへ…まさか、お前、海の人魚だってのかよ?」

伽耶「そのような…モノね」

三笠「お前…何者なんだ?」

伽耶「言っても、信じないわ…」

伽耶「さっき、三吉…いえ、三笠の過去を見てきたの」

三笠「は?どうやってだ?」

伽耶「それは内緒…。だから、私の事も少しは言わないと不公平だと思ったの。それに…助けてもらったから…」

三笠「助けた…?」

伽耶「さっき!私が矢に刺さりそうになったときに、受けてくれたでしょ!?」

三笠「あ、あぁ…大した傷じゃねぇけどな…」

伽耶「もう…」

三笠「…まぁ、それとは別にだな…ショーフクの傍に居たいなら、負けんな!手に入れた居場所は、絶対に手放すんじゃねぇぞ!」

伽耶「プッ…」

三笠「何がおかしいんだよ!?」

伽耶「アナタ、変な人ね…」

三笠「へ、変なアイサツだなぁ!ゴキゲンだぜ!自分は何者か教えねぇくせによぉ…せめてどこから来たかぐらい言えよォ!」

俺がそういうと、伽耶は遠くに見える海を見つめながら、言った。

伽耶「さぁ?どこから来たのかしらね…」

伽耶はその後急いで歩いて行ってしまった。
伽耶、何か気になる女だ。でも、なんだか俺はもう一回、あの女の笑顔を見たくなってた…。

次の日。

三笠「んじゃあ、ちょっくら行ってくるぜ!」

ショーフク「三笠!君は働き過ぎだ!休みなさい、少しは…」

三笠「俺はどうでもいいんだ。ショーフク、アンタはちゃんと飯食って、安静にしてろよな!」

そうさ、艦としての居場所が無くたって、俺にゃショーフクって奴がいる。
伽耶にも居場所をつくってやる。他の人達のためにだって何かできるさ。
俺、その時、結構楽しかった。
それは生まれて初めて俺が経験した、本当に楽しかった日々だったと思う。
だけど、それは終わりを告げる。


三笠「お、伽耶。どうしたんだ?」

伽耶「先生が居ないの!!」

昭和35年、ついにショーフクは病院に強制搬送されちまった。
胃癌が悪化して、もう助からないそうだ。

三笠「なんで…放っておいたんだよ…」

ショーフク「昔からおかしな人間でね、私は。私は海から全てを教えてもらいました」

三笠「へ…俺の事も教えてもらったのか?」

ショーフク「そうですな。君が如何に海戦で頑張ったことも、君が薩摩の為にどれだけの血を流したのかも」

三笠「…」

すると、ショーフクはごつごつした手の平で俺の頭をなでた。
俺は最初は抵抗しようとしたが、ショーフクの笑顔を見て、受け入れた。

ショーフク「私も、もう長くないだろう。これから君に…『使命』を与えます」

三笠「使命…?」

ショーフク「伽耶を…伽耶を…幸せにしてやってくれ」

三笠「…へ?」

ショーフク「伽耶は、人間じゃあないんだ」

三笠「それは…昨日、本人から聞いたぜ」

ショーフク「そうなのか。それなら、話は早い。伽耶とは、十年前くらいに近くの海岸沿いで出会ったんだ。明るい満月に照らされた白い髪に、無表情な青い目。当時の私は、気味悪がって、毛布と食べ物を置いてその場を後にした」

三笠「ちょっとまて!アイツぁ、黒髪だし、目だって茶色だぞ!?」

ショーフク「まぁ聞いてくれ。次の日、仕事場に向かう時にそこを通ると、昨日の女がまだ居たんだ。でも、髪の毛は黒いし、目も茶色くなってた。身なりもきちんとしていて、美しく見えた。その時、深海から私の頭の中に声が響いたんだ」

『これから、貴様に彼女を頼んだぞ』

彼女とは、誰…ですか?

『それは、深海に棲む者にだ』

ショーフク「伽耶は、私を慕っていた。でも、私では彼女を幸せにすることはできない。病気を抱えたデクノボーには、だれも救えやしない…」

驚いた。ようするに伽耶は深海棲艦、いや、この時代では『トゥースチャップ』だったって事だ。
それを、自分では救えないから、三笠が彼女を救ってくれと。

ショーフク「私が死んだら、伽耶はどれほど悲しむだろう」

三笠「だから…冷たくしてたのか…」

伽耶「こんにちは、ショーフクさん、お見舞いに来ました」

ショーフク「うん…ありがとう」

伽耶「ねぇ、三笠」ツンツン

三笠「な、なんだよ…?」ビクッ

伽耶「なんで、そんなに驚くのよ?アナタ、私がここに来るまでショーフクさんと何話してたの?」

三笠「アンタ、『トゥースチャップ』なんだってな」

伽耶「…何だ、そんな事…。信じてないでしょう?」

三笠「バッカ、信じたくなくても信じちゃうだろ。俺だって、元は戦艦三笠なんだぜ?」

伽耶「うふふ…そうね」


─『三笠に、新しい人生を。彼が思うままに生き、使命を成し遂げられるような、真新しい人生を、与えてあげてください』─

昭和36年2月14日、昼過ぎ。

ザァァァァァァァァァァ

打ち付ける雨。
病院の外で、俺と伽耶はただただうつむいていた。

伽耶「あんなにお加減が悪かったのに、昨日の夜も製塩業の話し合いを一時間も…」

三笠「…」

伽耶「何故…ですか…」

俺はまだ無様にここに居た。
ショーフクが死を悟った時に、心の中で必死に願った願い事。
俺には聞こえていた。俺の人生なんか…どうでも良かったんだ。
なんで、自分の事を願わねぇんだ。

三笠「駄目だよ、ショーフク…伽耶は、アンタが幸せにしてやんなきゃ…」


『もう、思い残すことはありません。軍に入っていた時の軍服や、対潜学校の生徒だった人たちや、大切に育てた畑も。かつての部下たちも。私は、デクノボーです。幼い時から、親や上官全てに反発し、かといって色んなものに手を出したあげく何も成功させなかったデクノボー。三笠、君は可哀想な薩摩を助けるためにすべてを投げ出した。普通の人間は、義務や責任というものを感じで、行動の前に一瞬立ち止まるモノだ。だけど、三笠はそんな事は全然考えない。考えないで目的の為に突っ走るんだ。人の感情やしがらみを超えた本当のデクノボーとは、君の事なんだ、三笠。そして私は、君のようになりたかった』


伽耶「あの、暖かい手を私から奪った三笠を、私は許さない…」

三笠「あったかい手…だったなぁ。俺、頭を撫でてもらったんだよ。うれし…かったなぁ」

伽耶「三笠…」

三笠「誰も俺に、そんなことしてくれなかった…また、撫でてくれよ…なぁ。俺、体いっぱいふいてやるからさぁ…」


「なぁ、お前、他に欲しいモノはあるか!?」

「何でも言ってください!」

ショーフク「…」

ピーピーピーピー

ボン シュワアアアアアアア

三笠「おい、俺をどこに連れてくんだよ…!ちょっと待てよ!俺はまだショーフクに最期の別れだって…!伽耶!」

俺の体が、浮いて透明になっていく。

伽耶「貴方も、私を一人ぼっちにしてしまうのね…」

三笠「伽耶!!」

伽耶「さよなら、三笠…」

ギュン

俺は、伽耶を手を掴めなかった悔しさを胸に、転生したんだ。
記憶も、能力も、全部捨てて。


─「ホラ、お前、生まれたぞ!俺に似てハンサムな面してるぜ!」

─「うふふ、私たちの子供ね…うんと可愛がってあげましょうね…」

─「おぎゃあ おぎゃあ」

─「おう、元気だなこりゃ…」

─────────

提督「…」

ショーフク「思い出したのかね?」

提督「うん…俺は昔、三笠だった…アンタと出会うまではな…」

ショーフク「では、私の事も思い出したのだね?」

提督「あぁ、全部な。ショーフク…」ポロポロ

ショーフク「おや、さっきまでの尊大な様子はどうしたのかい?」

提督「そんなの、くそくらえだ…もう一度、会いたかったんだよ…」

ショーフク「私は本物ではありません。花道君の記憶を引き出すために、イオナ君がナノマテリアルで作った幻なんですよ?」

提督「でも、嬉しいんだ…」

ショーフク「君が思い出した霧の力は、残念ながら短時間しか使うことができません。さ、早く自分の役目を終えてきなさい」

提督「…うん」グスッ

ショーフク「君に課せられた、使命はなんでしたか?一つは、君に使命を与える事…その使命とは?」

提督「…伽耶だ!!」

ゴオオオオオオオオオオッ

加賀「ついに着きました…」

島風「だね」

ビスマルク「奴らのアジトに…」

北上「なんか、不気味ね~」

叢雲「気を緩めないでちょうだい。一刻も早く、奴らの野望を阻止しないと…」


コンゴウ「急げ!深海棲艦の兵士どもよ!今こそ、花道の鎮守府の忌々しい艦娘共を抹[ピーーー]るのだ!」

その時、コンゴウの後ろに控えていたブカブカのフードを着た2人組のうちの、小柄な方が前に出る。

コンゴウ「どうした?大鳳」

大鳳「今、残った5人がこの基地の入り口から侵入したようです。私は…相手をしてまいります」

コンゴウ「ふん、いいだろう。摩耶、大和、大井、長門、日向、高翌雄、長良、木曾、榛名、霧島は紐で拘束してある」

大鳳「そのようですね…」

コンゴウ「お前なら、行けるだろう。行って来い」

大鳳「了解」

キリシマ「…フン」

ビスマルク「何か、誰も来ないってのも腹立つわね…まるで無視されてるみたい」

北上「そうね…見張られてる感じはするのに、誰も来ないんだもの」

島風「そうよね~、こんなとこで寝そべっても、何も起きたんだもん」ゴロゴロ

大鳳「お望み通り、来てあげたわよ?」

加賀「アナタ…大鳳ですか?」

大鳳「正解。武装も持ってないでそんな格好してると、栄光の一抗戦も形無しだなァ?」

加賀「な、なんてことを言うの…?」

大鳳「ホラ、烈風と流星!この編隊を食らえ~~!!」

ガシゥ

大鳳「な、体が…動かない…艦載機を操作できないッ…!」ギギギ

叢雲「何だかわからないけど、今がチャンスよ…え!?」

ググググ  ブヂン

大鳳「か…は…」

ビスマルク「な、何…?大鳳とか言う奴の…胸に穴が…」

キリシマ「ふっふっふ…大鳳、か…貴様も元は艦娘だろう?生かしておくわけがないだろう?」

加賀「アナタは…金剛さんを攫った2人組の一人!!」

キリシマ「おお、威勢がいいじゃあないか!私は霧の大戦艦キリシマ!」

大鳳「」ガクッ

北上「酷い…仲間の胸を貫くなんて…」

キリシマ「ふん、まずに艦娘を消して、その後はあの寝ぼけづらの提督をコンゴウが直々に始末するのだ!」

??「今、提督を馬鹿にしましたカ?」


加賀「あ、あの声は…」

叢雲「まさか…」

金剛「提督や人間が全て!ワタシたちは提督の為に闘うのデス!!」

金剛が花道の作った艦載機の上に載って登場した。
金剛は艦載機から飛び降り、キリシマの前に着地する。

キリシマ「お前か…タカオとヒュウガはどうした?」

金剛「私が…教えると思いマスカ?」

キリシマ「教えないな」

金剛「サァ!ここはワタシが食い止めマース!貴方たちは、奥へ向かってくだサーイ!!」

叢雲「分かったわ!皆、行きましょう!!」

キリシマ「まぁいいさ。いずれは、全員が消えるんだ…だから、今死んでも変わらないよなァ!?」

金剛「ぶ…」メキメキ

キリシマは金剛に素早く近づき、ラリアット。
そして後ろに倒れた金剛を蹴り飛ばす。

キリシマ「お前はもう二度と提督とやらに会えまい!!」ゲシゲシ

金剛(そ、そんな…もう提督と会えないなんて、イヤです…)

金剛「グハッ…ハァ…ハァ…」

キリシマ「ん?何か、近づいてくるな…」

キリシマ「はっはっは、忘れていたな。この硫黄島で、付け焼刃の霧の力を覚えた愚かな人間の事を。私は無敵の大戦艦だ。それでも、やってみるか?」

ギュウウウウウウウウウウン

キリシマ「花 道 と や ら」

花道「テメェエエエエ!その足をどけやがれ!金剛は…俺に使命を与えてくれたんだ!!」

金剛「…提督…?」

花道「うおりゃああああああああああ!!」

バッコオオオン

キリシマ「な、何ィ!!?」

花道「オラ!顔面を蹴られた気分はどうだァ?」

キリシマ「や、やったなぁ~~~!!来い、私の艦艇よ…」バキッ

花道「おせぇよ…オラオラオラオラオラァ!!」

キリシマ「そ、そんなぁ~~~~!!?」

花道「これは金剛の分だ!!」

ドカァン

キリシマ「」

金剛「提督、来てくれたんデスネ…」

花道「何やってんだ!武装なしで霧の奴らに戦いを挑むなんてよ!?」

金剛「ご、ごめんなサイ…」ショボン

花道「ふぅー、全く…じゃ、俺がすべて解決して戻ってくるまで、ここでおとなしくしてな」

花道「歪んだ艦はぜんぶ、俺が代表してぶちのめす!!」

コンゴウ「よぉし…ここに集まった101体の深海棲艦軍…こいつら、全員俺の命令で動くんだぜ?」

摩耶「お、おい…本当に、アタシたちを消すんかよ?」

長良「木曾、この鎖ほどけないの?」

木曾「無理だ…ナノマテリアルの組み込まれた紐は、俺たちじゃほどけん…」

コンゴウ「あぁ、本当に消すぜ?俺が一回命令を出すだけで、お前らは一瞬の痛みを感じずに粉々になるんだ。だから、ほどく必要なんてないよなぁ?」

日向「く…私たちが居なくなったら、悲しむ人間が居るんだぞ!少しは人間の事も考えろ!」

コンゴウ「バァカ、人間なんか、お前らが死んだところで代わりはいくらでも作れるんだぜ?」

榛名「でも、おかしくないですか?」

霧島「そうよ、なんで霧の貴方が、深海棲艦になんか協力するの?」

コンゴウ「ま、いいさ。どうせ、他の霧の連中も消すんだから」

一同(え?それは、どういうことだ?)

コンゴウ「深海棲艦共に命令をする!さぁ、まずにここに居る艦娘を全て消し去れ!『撃…』…ん?」

高翌雄「アレは…何かしら?空から人が降ってくるようだけど…」

コンゴウ「何だと…?イテッ…!!」ゴツン

キリシマ「」ゴロン

コンゴウ「キリシマが…降ってきただと?」チラッ

花道「うおおおお!!ニセコンゴウめ!好きにゃさせねぇぜ!」

一同「「「て、提督~~~~!!」」」

花道「ぶっ飛ばす!!」

コンゴウ「ふん、そりゃ無理だな。俺が、いつ一人で闘うって言った?」

花道「何っ!?」

コンゴウ「出てこい!戦艦武蔵!!」

シュウウウウウウ

武蔵「…」フシュー

コンゴウ「今じゃ、コイツは俺の命令で自在に動く操り人形よ!!…花道をやれ」

武蔵「おおう!!」ドカン

花道「ぐおお…」ブシュ

武蔵「おおおおおおお!!」ドカン ドカン ドッカァン

花道(クッ…今の俺なら、本気出せば勝てる…だけど、昔に迷惑かけた武蔵と戦うなんて…ゴメンだぜ…!)

コンゴウ「さて、深海棲艦共よ…『撃…』…今度は何だ!」

まるゆ「待ってください、コンゴウ様!」

ハルナ「コンゴウ、待て」

コンゴウ「何だァ?まるゆに、ハルナ」

ハルナ「さっきのは聞いていたぞ…艦娘だけでなく、私たちも消すようだな…」

まるゆ「そうですよ…少なくとも私とあきつ丸だけは残すって言ってたじゃないですか…」

コンゴウ「あぁ、お前らは消さないって言ったな」

ザク ザクッ

コンゴウ「ありゃあ、嘘さ」

ハルナ「コ、コンゴウ~~~!!」

まるゆ「ハ、ハルナ様~~!!」

大井「な、何て奴なの…自分の仲間のハルナを…」

長門「真っ二つに…!」

コンゴウ「まるゆ、腕が飛んだだけで良かったな。ま、後で消してやるからよ」

まるゆ「う…うぐ…」ドパッ

花道「…ちくしょう…」

花道(武蔵の奴、問答無用で殺しに来やがる…)

パコン

ショーフク(さぁ、何も気にせず、闘いなさい!!君は、いざとなれば周りなんか気にしないんだ)

花道「全く、無茶言ってくれるぜ…」

花道「悪いが、武蔵!テメェに恨みはねぇが、全力でいかしてもらうぜ!!」

コンゴウ「はぁ?笑わせるな、『全力』で闘ってたくせによぉ!」

花道「いくぜェ!!」

武蔵「キエエエエ!!」ザン

ボキン

大和「あぁ!提督の体がぐしゃぐしゃに…!」

コンゴウ「ざまぇねぇな!!案の定、変な形になって即死よ!!」

<Nano material>

摩耶「あ、アレは本物の提督じゃない!?」

長門「分身か!!」

コンゴウ「なら、本物の花道は、どこだ?」

ザクン

大和「…提督!」

花道は刀に変えた腕を使って、大和を縛っていた紐を斬りおとす。

花道「ワリ、お前の力が必要なんだ…」

武蔵「オオオオオオ!!」

花道「大和、行くぜ」

大和「はい!!」

日向「おお!大和だ!大和が行くぞ!!」

長良「いっけぇ~~!!」

大井「安心するのは早いわよ、そんな簡単に…!」

長門「大井、何を言っているのだ?アレはな…大和であるぞ」

武蔵「ヌオオオオオ!!」ドカン

キィン ボカァン

武蔵「…ッ!!」

コンゴウ「武蔵の一撃が…はじき返された!!」

花道「大和!今だ!!」

大和「武蔵!覚悟してください!!」

武蔵「キエエエエエエエエ!!」

ドカン

武蔵「」ガクン

花道「せいや!!」

コンゴウ「ぐおおお!!」メキメキ

榛名「提督の拳が…命中したわ!!」

コンゴウ「テメ…グウッ…花道ィ~~~~!!」ギュウン

<ナノマテリアル>

両腕を恐竜の頭のような物に変えたコンゴウはそれを使って花道に攻撃する。
が、花道も負けじと両腕を砲身に変え、ガードする。

長門「あ、アレが…霧同士の戦いか…」

木曾「スゲェ…」

花道「ケッ、ゴキゲンだな!!」

コンゴウ「轢きつぶしてやる!!」グワン

<ナノマテリアル>
<Nano material>

ガキィン

大きなトラックに変身したコンゴウと、ショベルカーに変身した花道が激突する。

花道「コンゴウ!テメェが分からねぇ!!」

コンゴウ「あぁ?」

花道「なんでお前が、艦娘を全員消そうとするんだ!?」

ンゴウ「お前には分かんねぇよ…なんせすっかり、忘れちまってるんだからなぁ!!」

花道(俺が、何かを忘れてる…?俺は、全部思い出したじゃねぇか。薩摩の事も、ショーフクも、伽耶の事も…)

コンゴウ「このボケェ~~~!!!」

ガシャァン

花道「ぐわあああああ!?」

コンゴウ「なんて気持ちいいんだ!」

摩耶「くっそ~!!アタシ達も闘いてぇよ…」

長門「駄目だ…紐はほどけたが、皆戦いで体力を失ってしまった…」

木曾「がんばれ~~~!!」

花道「こっち見るな!!」

木曾「え?」

花道「今の俺を面を…見ねぇでくれ」

<Nano material>

コンゴウが今度は自分の艦艇を使って、花道を潰そうとしてくる。
だが、花道は両腕をトランペットに変え、それでコンゴウの艦艇を殴る。
さらにもう一発。
艦艇の装甲が大きく凹み、艦艇は後ろへひっくり返る。

コンゴウ「やったなァ!?」

花道「もっと、あそぼーぜ」

花道はそばにある海岸の近くの海に出る。
するとコンゴウもそれを追いかけて海に出る。

大井「大和、見た?今のアイツの顔」

大和「よくは見えませんでしたが…」

摩耶「アイツは、マジギレした自分を見せたくねぇのさ。いつも、アイツが本気でキレた時のケンカは姿が見えねぇ暗闇でやってやがったな…」

海。真っ青な海。俺がかつて戦場として戦った青い海。
俺の海も、アイツに真っ黒に塗りつぶされちまう…。

コンゴウ「待てェ!!花道ィ~~!!正義の味方気取って、艦娘共を助けようと舞い上がりやがってよ!」

花道「舞い上がっちゃ悪いか!」

コンゴウ「テメェはダメだな!」ドン ドン

確かにうれしかったさ。
校長に、鎮守府の提督やれって言われたときはな。マジでいいことができると思った。
でもそのせいでどうなった?

カキン カキン

俺の大馬鹿野郎!
あの空が塗りつぶされちまったのは、俺の所為だ!!

コンゴウ「け!ミサイルを殴り弾いたか!なら、これはどうだ?超重力砲~~~!!」

ビイイイイイン ドッカァァァァアアアン

花道「うおおおおお!!」

花道は超重力砲に直撃してもかまわずにコンゴウに向かって突撃する。
そして、拳を振り上げ…

コンゴウ「馬鹿な!止まらないだと!?」

ゴシャアア

コンゴウ「ぶは…やったなぁ!!」

花道「ハァハァ…」

コンゴウ「テメェ、誰かの為に、怒ってるな?憎い、憎いぞ花道…お前は自分が何をしたのかも知らず、そうやって今どっかのクソの為に闘ってるんだ…」

花道「クソだと?テメェには、空はねぇんだろうが…」

コンゴウ「空だと?」

花道「空は、つかめねぇ。でも必ず晴れの日はやってくる…テメェはそれを…」

コンゴウ「何だと…俺…私の空は…」ボソ

花道「だまれよ」

大和「早く、あの大量の深海棲艦をどうにかしなければ…」

大井「でも、アイツら、私たちは眼中にないみたい…」

高翌雄「しかも、奴らの視線の先は…」

謎の女「…」

長門「アレは!コンゴウの横に居た、2人のフードのうちの1人!」

謎の女「…フフフ」

振り向いた黒いフードを着た女。
赤い目に、先端が赤く染まった2本の角、風になびく長い黒髪。

謎の女「…」チラッ

霧島「あれは…」

霧島の見つめる先は、取っ組み合いながら岩の向こうの海岸に吹っ飛んできた花道とコンゴウ。

コンゴウ「俺は全ての艦娘をぶち消すまで死なねぇよ!!」

花道「どんな艦娘も、殺そうとするんじゃねぇ!!」

コンゴウ「んじゃあテメェが死ぬか!?」

コンゴウの体を黒い甲殻が覆い、カニのような手足に龍の顔の尻尾が生える。
そして大きな白い歯の生えた腕を花道に振り下ろす。

花道「どんな艦娘もな、生まれた意味ってモンがあるのよ!!」ガン

グシャッ

コンゴウ「う、腕が~~~!!」ボキン

花道「誰も、無駄なんて言えねぇんだ!!」

コンゴウ「うるせぇ…俺が、艦娘を邪魔だって言ってんだ!!」

花道「消させてたまるか!!」

だよな、ショーフク。

バコン

花道はコンゴウの尻尾を掴み、地面に叩きつける。
そして、顔面に一発。

コンゴウ「こ、この…」

シュルルルルル

花道の髪型が、水兵の帽子の形に巻き上がっていく。
そして、体の周りに青いベールが発生し、そのベールは衣服へと変わっていく。
ズボンを履いているのを除けば、かつての三笠と同じ服装へと変わっていた。

花道「うぉら!!」

バッコォン

コンゴウ「なんで…」

花道「…」ギロリ

コンゴウ「なんでこんなに殴るのよォォォォォ!!?」

花道「キサマが悪いんだろうが!!」

コンゴウ「私は悪くない!!私が何をしたって言うんだ!お前こそ人の気も知らねぇで!!お前を待ってた私がどんな思いをしたか分かってんのか?」

花道「今更、何言ってんだ?寝言は、寝てからほざきな!!」

ドムン

ビリィ

コンゴウ「…あ…」

花道「テメェ…女だったのか…ずっと俺と同じ格好してるから、気づかなかったぜ…」

コンゴウ「…」

場所は変わって、加賀サイド。

加賀「大鳳、大丈夫ですか?」

大鳳「えぇ…キリシマが倒されたのでしょう、傷がふさがっていきます…」

ビスマルク「早く、霧たちの企みを阻止しないと…!」

島風「ちょっと待って、何か聞こえない?」

北上「そーう?」

…ヨー・・・テヨー・・・

ビスマルク「あっちだ!!」

マヤ「誰か、出してよ~」

加賀「貴方は…霧、ですか?」

マヤ「そうよ!霧の重巡洋艦、マヤ!」

そこに居たのは、鉄の大きな鳥かごに入れられたマヤだった。

島風「下がってて!!」ビュン

ガシャン

マヤ「ありがと…それより!早くコンゴウを止めないと!!」

加賀「えぇ、私たちも止めるために奴らを探しているところです」

マヤ「あんなことになったのは、マヤのせいよ~…」

叢雲「とりあえず、行きましょ!!」」

コンゴウ「お前は…私の事は覚えてないの…?」

花道「お前は…誰だよ?」

コンゴウ「私は…なぁ…」

シュウウウウウ

コンゴウ「霧の大戦艦、コンゴウだ…」

花道「…」

マヤ「ハァ、ハァ…ちょっとそこの人…コンゴウをあんまり苛めないでね…」

花道「誰だ、お前?」

マヤ「私は霧のマヤっていうの!コンゴウがこうなっちゃったのは、私のせいなのよ~!!」

花道「どういうことだよ?」

コンゴウ「お前は、霧と艦娘の違いを知っているか?艦娘が艦の魂の擬人化だとすれば、霧は艦艇そのものの事。お前が100年前、三笠だった時代の金剛は、私でもあるのだ…。100年前の金剛は、霧の大戦艦としてのコンゴウと、艦娘としてのコンゴウと分裂したのだ…」

花道「そんな事は、どうでもいいんだよ…お前があの時の金剛と同じって言うなら、なんで艦娘を全員消すなんてこと考えたんだよ?」

コンゴウ「スマン…」

マヤ「ま、まぁ、私の話を聞いて!!」

数週間前。

マヤ「う~ん、もしも大切な人が帰ってこないなら、その人が居る場所を全部壊しちゃえば、コンゴウのところに戻ってくるんじゃないの?」

コンゴウ「…」ゴゴゴゴゴ

マヤ「な~んて、冗談だけどね…」

その時、海上に発生した黒い深海棲艦の魔の手がコンゴウを襲う。

コンゴウ「くっくっくっくっく…」

マヤ「こ、コンゴウ?どうしたの…その格好?」

コンゴウ「いい考えじゃねぇか、マヤ。アイツの今いる場所を全て消す、か。そうすりゃアイツ、居場所がなくなって絶対戻ってくるぜ!あはははは!!」

【金剛「はーい、頑張ってくるわね!戦争が終わったら、いつかまた戦争後の世界で会いましょう!!」】

その約束を胸に、金剛とコンゴウは三笠、つまり花道と再び出会うことを夢見て、100年以上もただただ待っていたのだ。
だが、マヤの何気ないアドバイスにより、コンゴウの心に隙間が生じた。
そしてあっという間に深海棲艦はコンゴウの心の隙間に入り込み、利用したのだ。

花道「…」ザワザワ

マヤ「悪いのはマヤなの…だから、コンゴウや、他の霧の人をあまり責めないで…」

<この岩の向こうだ!
<この向こう側で、提督とコンゴウが戦ってるのね…

コンゴウ「すまなかった、三笠…」クルッ

花道「待てや、コンゴウ…」

コンゴウ「…え?」


加賀「マヤさんは、いつの間にどこに行ったのでしょうか…?」

島風「えぇ、皆揃ってるみたいだけど…」

叢雲「アイツ、誰よ?」

謎の女「…」

摩耶「お前ら、無事だったのか…気を付けろ、あの野郎…ただの深海棲艦じゃねぇぜ」

謎の女「ふん、『黒の艦隊』め…しくじったのね…まぁいいわ。所詮は、害悪な兵器だった…」

長門「おい!貴様は何者だ!?」

謎の女「教える必要もないわ。もうすぐ、貴方たちは、沈むのよ…不浄なる害悪な兵器どもよ」ボウゥッ

大和「アレ…一瞬でこの場から消えた…」

大井「何だったの?今の…」

日向「さて、次はあの岩の向こうで闘っている提督だ…」

木曾「あぁ、俺たちも闘うぜ…」

大和「時に、武蔵…コンゴウを捕まえたら、霧の艦体の方達にはどのような刑罰が?」

武蔵「うむ、最終的な処置は向こうの世界の者に任せるが、『もとの世界に還すまでの間の発言を禁止』、『艦娘との接触を禁止』、『透明な見えない鎖に繋がれ100年』」

大和「重い刑ですね…」

大井「ざまーみろってんのよ!!」

コンゴウ「私は、外に出て謝ろう。そして、皆で元居た世界に帰るのだ」

花道「待てや、コンゴウ…オレは、長い旅をしてたんだよ…。なぁ、デクノボーってのは、バカだよなぁ…自分の思うことにだけ突っ走って、周りの迷惑なんて考えないで…」

コンゴウ「やめろ…私が…」

花道「叱られるのは、お前じゃねぇ。俺さ」

コンゴウ「…三笠…」

花道「俺のいう事を、聞いてくれ…」


叢雲「あ、アレ!!」

長良「提督と、コンゴウが…あんな岩の上で闘っている!!」

コンゴウ「中々、やるじゃねぇか…褒めてやるよ、花道…」

花道「艦娘を全て消すってか…できもしねぇ計画は夏休みの予定だけにしときな…」

コンゴウ「う る せ ぇ!!」ギュルルルルル

摩耶「提督!気をつけやがれ!!」

島風「今助けに…って、間に合わない!!」

花道「バーカ」ビュン

ドグシャ

コンゴウ「な、何だと…」ガクッ

北上「やった~!!コンゴウをついに倒した~!!」

武蔵「イヤ、待て…アレは…」

シュルルルルルル

ビスマルク「コンゴウの体が…提督に吸い込まれていく…!」

──アクティブデコイ!!──

花道「…」スタン

摩耶「提督…テメェ…」

叢雲「コンゴウは…アンタの分身だったって事…?」

長門「そんな…提督がコンゴウの本体…」

まるゆ「私たちを導いてきたコンゴウ様が…あんな奴の分身…?」

武蔵「花道提督!まことかッ!!今回の事件は全て提督の仕業だったのかァ!?」

花道「へへ…武蔵サンよ…そんな事、昔会ったアンタが一番よく知ってるんじゃねぇのかよ?」

武蔵「…」

花道「へ、どうしたよ?昔作った分身が、深海棲艦になって勝手に暴走しちまったから、俺が後始末付けただけだぜ?」

摩耶「ざけんじゃねぇぞ!テメェがこの事件の犯人だったのかよ!」

花道「俺じゃねぇよ!分身だぜ!!」

大井「今更分身が動きまわるの~!?」

花道「でもよ、俺だって今まで自分が艦娘だったって知らなかったんだぜ」

長門「しかし、提督のせいで、我々は随分苦労したんだぞ…」

花道「だから、どうしたってんだよ…?」

長門「この野郎…」

日向「提督、見損なったぞ…」

高翌雄「そうです…謝りもしないなんて…」

榛名「前に私たちを倒したときは、勇ましいお方だと思ったのに…」

まるゆ「コンゴウ様があんな奴の分身だったなんて…」

あきつ丸「まるゆ殿~~~!!」

まるゆ「あきつ丸さん~~!!」

加賀「あら…」

ヒュウガ「いてて…」

タカオ「私たちが間違ってたわ…」

キリシマ「うむ…お前たち、悪かったな…」

大鳳「どうかしてたんです…深海棲艦の魔の手に落ちるなど…」

加賀「倒された霧の人達や艦娘が、正常に戻っていますね…」

北上「一件落着ってとこかな…」

ハルナ「そうか…迷惑をかけてすまなかった」

ビスマルク「じゃあ、本物のコンゴウはどこなのかしら?」

花道(コンゴウとマヤなら、もうとっくに潜航しながら遠くに行っちまったぜ)

加賀「…」

武蔵「花道提督…いや、三笠よ!神妙にせい!!『透明な鎖』で提督を縛り付ける!その鎖はどこまでも伸びて、『大本営』が直接裁きを下すまでお前の動きを制限するだろう!」

花道「なんだ、体中がんじがらめじゃねぇのか」ジャラジャラ

武蔵「その鎖を甘く見ないほうがいいぞ。それに縛られている間は、艦娘としての力も『ナノマテリアル』も一切使えないのだからな」

花道「今更、そんな力がいるかよ…」

大井「だけど、いつも馬鹿だ馬鹿だと思ってたら、とんだ最低野郎だったわけね…」

ビスマルク「ちょっと、やりすぎたんじゃない?」

長門「ぬぅ、貴様は反省の色もないのか?」

島風「ね、ねぇ…提督が悪いんじゃないんだよね…分身が勝手に悪いことしただけなんだよね…」

花道「残念だが、分身と本体は考えることが似たり寄ったりだ。それはお前の見た手違いだなぁ?」

コンゴウ「…」

マヤ「仕方ないよ、あの人が全部罪を背負うって言ってるんだから…」

コンゴウ「そう、だな…」


武蔵「さぁ、きびきび歩け!霧の連中はここに残って、元の世界からのお迎えを待て。他の者は、全員で帰るぞ!!」

花道「全員?いんや、一人忘れてるな…」

加賀「あ…」

叢雲「そういえば…」

大和「見ないと思いました…」

花道「居なくてもいいやつなんだけど、俺が行って連れてくらァ」

日向「待て!逃げる気か!!」

武蔵「そうだ!そんな事が許されるとでも…」

花道「俺に触るんじゃねぇ!!」ビリビリビリビリ

武蔵「う…」

花道「今更逃げねぇよ。この鎖、ちょっと伸ばしてくれや」

花道(無事だよな…金剛!!)

昭和36年、2月15日。

「あれぁ、あんなに戦争中、頑張ったんだなぁ…」

「この文章…これぁ、あの人の夢、そのものじゃないですか…」


ジャラジャラジャラ…
ガシャガシャ…

花道「ハァ、ハァ…この鎖、結構重いんでやんの…」

花道(くっそ…金剛の野郎…俺が行ってやらねぇと…)

花道「…フッ」

金剛「…ッ…」ウロウロ

花道「心配して、損したぜ…おーい、バーカ!!」

金剛「アーッ!!テートクぅ!!ぶへっ」ドテッ

花道「何やってんだよ…帰るぜ。帰ってから、またゆっくり海に行こうぜ」

─帰ろう。帰れば、また来られるからな─
                    木村正富

『ミストメモリー』─完─

提督の親父「こりゃ、今日も暑くなるな~」

提督「…」

親父「んで、昨日行った海水浴、どうだったのさ?」

提督「別に…」

親父「お前の鎮守府の艦娘さんと、一つ屋根の下…」

提督「…は?」

親父「運命の告白とかされてよ~そのまま…」

提督「何が言いてぇんだ、オヤジ!!」

親父「お前に彼女でもできれば、少しは暴力沙汰も減るんじゃねぇかって思ってよ~!!」

提督「でっけぇお世話だ馬鹿野郎!!」

親父「あーあ、お前が艦娘さんの誰かと所帯でも持ってくれたら、俺も楽隠居だと思ってたのに…」

提督「気がはえぇよ!!ってか、隠居たぁそんなに店やるの辛いのかよ?」

親父「いんやぁ!!お前ら夫婦の料理の味にいちいち文句言ってやろうと思ってよ!」

提督「ケッコン、ゼッテーしねぇかんな!!」

親父「しねぇんじゃなくて、できねぇんだろ?」

提督「」

親父「すまねぇ、母ちゃん!息子をこんな女にもてねぇボクニンジンに育てちまった~!!」

加賀「…」

赤城「あら、加賀さん。庭に居るなんて珍しいですね」

加賀「提督の事…」

赤城「あぁ、何か分身を使って私たちを殺そうとしたんですって?」

加賀「今までの深海棲艦化した艦娘は、罰を受けていないのに提督だけ…」

赤城「…気にすることないわ、加賀さん。あんな人、もうすぐで退役よ。でも、疑いが晴れるといいですね」

加賀「えぇ…」


提督「あ?」

叢雲「大変失礼いたします。花道司令、私と一緒に『大本営艦娘執行組織』の査問会にご同行願います」

提督「なぁ叢雲。俺とおまえが出会って、2か月がたった。でも、俺とお前は50年前に会ってるはずだ。なんで知らないフリしてたんだ?」

叢雲「私語は禁止されてるわ」

提督「…ちぇ。ま、いいか。どのみち分かんない事だらけだもんなー」


『汝は罪を犯した!その罪は複合的であり、通常の艦娘が深海棲艦化して事件を起こした時とはわけが違う。
まずに、花道被告の罪状とそれにあたる刑罰を言いあげる。その間、被告の発言は禁ずる。
では罪人、実存在名三笠!人間名花道、これに!』

提督「やれやれ、大げさだな…」

『まず、三笠は急に暴れ出し、日本から離れる。その時標的処分される予定であった戦艦薩摩を連れ、硫黄島に潜伏。
その時は、武蔵によって暴走を止められた。普通、深海棲艦化した艦娘が罪を犯してもその不可抗力的事故から、罪を問われる事はない…であるから、ここまでならば三笠の罪はさほど重くなかった』

提督(そうか、100年前は深海棲艦なんて皆知らなかったんだな。だから、深海棲艦化して暴走した俺を、ただ気が狂って暴れただけだと思ってやがるな)

『問題はその後だ。三笠は薩摩と金剛によって一命はとりとめたが、さらに逃走を続けたのだ!
逃走先は、50年後の日本。つまり、三笠は50年間も逃げ回っていたのだ!そこで三笠は恐らく、硫黄島で手に入れた霧の力を使い容姿と性別を変え、人間に紛れ込もうとした』

提督(そりゃ、紛れ込もうとしてはねぇけどよ…勝手に姿が変わったんだぜ…)

『そして正体の発覚後、再び逃走。その時叢雲はお前の正体を知っていたようだが、不思議なことに叢雲の記憶からは艦娘に関する記憶が抜けていたようだ。
さらに!50年前から深海棲艦を似た生物が存在していたようだが、それは三笠がナノマテリアルで作り上げた生き物だろう。
そして再び逃走をする際に、『艦娘』『チュースチャップ』のデータをこの世から抹消した』

提督(俺は知らないな。つまり、お前らは50年前から居たのに、『自分は最近生まれた』って思い込んでるだけだろう。ま、それやってくれたのは、ショーフクなんだろうけどな…)

『そして、今回の事件!艦娘を全て殺そうとする霧の艦隊の旗艦が、三笠の分身だったとは!
100年前、三笠は分身を使ったことは知られている。
それが、何故100年以上も単独で活動できたのかが謎なのだ』

長門「お、おい…さっきから説明のできない事は全て『霧の力』で解決しようとしてるが、それはおかしくないか!」

武蔵「黙れ、長門!お前に発言権は与えていない」

長門「しかし…!」

陸奥「長門姉さん、落ち着いて…」

提督「当たり前だろ。俺がナノマテリアルを使って分身を作って、その分身に全部やらせたんだよ」

『では、動機は何だ?』

提督「性格の良い、仲間思いで優しい艦娘も居れば、性格が悪くて口も悪い艦娘もいるだろ?いっそのことみんな一緒に無くなっちまえば、公平でスカッとすっかなって思ってよ!」

『…』

提督「おい!へなちょこの『艦娘執行組織』の連中共!俺の能力は凄かったろ!?逃げまくって人間に紛れて、正体がばれちまったから、最期のナノマテリアルを使って転生したんだ!!」

提督(そうさ、霧の奴らは悪くねぇ。コンゴウや、イオナ…他の連中に罪を着せるものか)

『…では、処分を申しわたします。我々大本営直属の『艦娘執行組織』は花道提督を危険人物とみなす…』

提督「それで?」

『お前は7日後には提督を辞退!以降、艦娘との関わりは全て禁ずる!!』

提督「…1週間か。鎮守府からおさらばするにゃ、キリの良い時間だぜ…」

『7日の猶予は、お前に与えられた我々の情けと考えよ。その間に悔いの残らぬようにし、7日後にお前は、また平凡な学生に戻るのだ』

提督「1週間か…」プシュ

夕焼けに染まる公園のジャングルジムの上に座る提督。
提督は下を見下ろすと、クスリと笑う。

提督「ここ、あの日に喧嘩した場所…じゃねぇか…」

あの日。提督がこの公園を通り道にして帰ろうとしたとき、邪魔をしてきたチンピラを成敗した日。

提督「確か、5月のはじめの夜だっけ。あのチンピラ共と喧嘩して、校長の野郎に呼び出されて…それで提督に抜擢されたんだっけ…。その後、深海棲艦と闘ってる叢雲と出会って、それから…」

提督はもう言いかけて下を向く。
今までの事を思い出す。一気に建造して、着任数時間で鎮守府の資材が底を尽きた事。
天龍と食べた寿司、大和の仲間入り、摩耶、大井、島風、ビスマルクとの出会い。

提督「でも、俺は大犯罪者なんだ。艦娘らの目、軽蔑した感じにもなるよな…。ま、俺だって付き合いの広いほーじゃないし…
でも奴らと居て…少し、楽しかったかな…」

ザッ

ヲ級「…ヲ(なんかあったの?)」

提督「お前にゃ関係ねぇよ…こんなとこに居るの見つかったらやべぇぞ?」

ヲ級「ヲ(関係なくないわ。だって、提督は私を救ってくれたんだもの)」

提督「けっ、何言ってんだ。俺がお前を救った?なんのこっちゃ」

たった1か月ぽっちだったけど、俺はお前ともお別れなんだ。
さいならだ。じゃあな。

提督「なぁ、お前は遠くに行くやつに何をしてもらったら嬉しいんだよ?」

ヲ級「…ヲ(…それは、たとえ、一年に一回でも…会えたら嬉しいな…)」

提督「…」

ヲ級「…」

提督「バ、バーカ、何マジになって答えてんだよ?冗談だよ、ジョーダン」


ひとつ、可能性の話をすれば、この物語そのものが、深海棲艦によって狂わされているのかもしれない。
花道艦隊が『花 道 艦 隊』のねじれを正す章。
謎が今、明かされる。

『深海の世』

人は皆、一人で生まれて一人で死んでいく。
よく聞く言葉だ。そして人は言う「私は孤独だ。孤独だからこそ心理を見いだせる」
フザケナイデ。
貴方たちは本当の孤独というのもを知っているの?
私は何度でも深海からひり出される。そうやって何十年もの間、繰り返し繰り返し繰り返す孤独の生。
貴方たちの人生は一度。だけど私の人生はまたどこか海の底から始まるの。
同じ時を歩いて、「そうそう」とうなずきながら歩いてくれる人は居ない。
私が何をした?さびしいよ、さびしいよ。誰か私の話を聞いてよ。
誰か…。
だけど、その時私は彼に出会ったのだ。


近所の河川敷で開かれる、年に一度の夏祭り。

加賀「提督、待ちましたか?」

提督「何だ、呼び出したのってお前かよ…」ズイッ

加賀「な、なんですか…」

提督「俺んとこ、キモチワルクねぇのかよ?」

加賀「私は別に、何とも思いませんが」

俺はあと6日で加賀ともおさらばする。
でも一つだけ気がかりがあった。伽耶を幸せにすること。
今もどこかに居る伽耶。俺は伽耶を放っておいて提督を辞退していいのだろうか。
今まで気づかなかったが、ひょっとして、こいつ…

提督「う、う…ん」

加賀と伽耶は似てるんだ。
そっけない態度、何を考えているのか分からない無表情。
うかつだぜ!なんで今まで気付かなかったんだ!!

加賀「どうしたのですか?さっきからブツブツ言って」

提督「あのよ、話したいことが…」

それで、運命のめぐり合わせとか言う奴を箇条書きで纏めるとこうだ。
・100年雨、俺に新しい使命とやらが与えられることになった
・使命を与えられるために50年後にタイムスリップ
・『伽耶を幸せにする』という使命を与えられる
・それをこなすために現代に転生した
ってところか。そして今、使命の最終目標である伽耶がここに居る!!

加賀「わ、私もです…」

提督「何だよ…?」

加賀「そっちこそ…」

親父「おい花道!屋台に飾る笹、タンザクに願い事書いてないからお前書きな!」

提督「わーったよ…どれどれ…」

親父「花道んとこの人ですか?野郎と喋ったらうがいしてくださいね~」

<花道の寝起き悪い病が治りますように
<花道のモテない病が治りますように
<花道の短気病が治りますように
<花道のケンカ癖が治りますように

提督「おい、俺は病気の塊か?」

川沿いの土手

提督「なぁ、アンタはどんな事書いてんだ?」

加賀「だ、ダメです!」

提督「なんで?」

加賀「どうせ、私なんて戦闘の事しか頭にないと思ってるんでしょう?」

提督「思ってねーよ!」パシッ

加賀「ダメです!」ガバッ

<私に彼との時間をもっとください

提督「私に…彼との…?」

加賀「だ、誰でもいいでしょう、そんな事」

提督「いいじゃねぇか、栄光の一航戦に好きな奴が居たってよ…。もしアンタが物語の主人公なら、しっかり者の艦娘加賀と好かれた奴の物語の始まりだ…」

加賀「アナタ、変な人ね…」

提督「…」

加賀「でも、私はアナタが好き」

提督「…え」

加賀「…」

提督「…で、でもオレは頭は悪いし、やることは雑で…おまけにお前も殺そうとした犯罪者なんだぜ?」

加賀「…でも好き」

提督「…俺にゃ、やることがあってよ」

加賀「やること?」

提督「伽耶って女を幸せにしなきゃいけねぇんだ」

加賀「その人の事、好きなんですね…」

提督「ちげぇな、アイツが好きな奴は別にいるんだ…でも、俺は一瞬、アンタが伽耶かと思っちまったぜ…」

加賀「伽耶さんは、私に似てるのですか?」

提督「あぁ、似てるな。でも、伽耶は絶対に俺に『好きだ』なんて言わねぇ」

加賀「…」

提督「悪いな、加賀サン。じゃあな」

加賀「…そう」

提督辞退まであと6日。

アルペジオの世界─太平洋

コンゴウ(そういえば、私は何故…あの時、霧の奴らも全員消そうとしたのだ?霧も[ピーーー]つもりで命令をすれば、自分も死ぬはずなのに…)

謎の女『艦娘なんて必要ないの』

コンゴウ「!?」

謎の女『艦娘なんて、必要ありません。もちろん、貴方のようなメンタルモデルも必要ありません。兵器は兵器らしく、ただただ人を苦しめればいいのです。兵器などが感情を持ってはいけません。メンタルモデルも艦娘も、全て消してしまいましょう』

コンゴウ(…私があの女に吹き込まれたのか…。まだあの女は諦めていない。何事もないといいのだが…)


提督「この鳳翔サンの店には入れるのも、これで最後になるかもしれねぇ…掃除でもしようかな…」

サッサッ
コンコン

提督「客かな…いらっしゃいま…って、何だお前か…」

ヲ級「…」

提督「どうした?飯でも食うか?」

フワリ…

謎の男「お前が、空母ヲ級5-65を預かっていた人間か」

提督「あ、えっと…誰さん?」

店に入ってきた男は、身長は提督よりも少し小さめ。
青白い肌に、少し長めの白い髪。黒と青の混じった着物は海を連想させる。
そして何よりも…口が吊り上がっており、ニヤついた口元から歯が剥き出す。
さらに、驚いたことにその男は鼻や目、眉毛が存在しないのである。
そしてその男は、提督の鎮守府で暮らしていたヲ級を連れていた。

謎の男(以下、レックス)「そういえば、名乗っていなかったな。余は『レックス』。深海棲艦の王にして…深海棲艦を統率する”提督”だ!」

提督「…深海棲艦の…王様…!」

レックス「そして、お前の鎮守府で生活していた、空母ヲ級5-65…いや、『伽耶』を、引き取りに来た」

提督「お、おい、ちょっと待て!あの『伽耶』がヲ級の野郎だってのかよ…!!」

レックス「知っているのか、そうだ。このヲ級が地上で名乗っていた名の一つが、『伽耶』だ」

提督「まじかよ…」

レックス「俺も忙しいので、要件を伝えよう。6日後、我々深海棲艦は総力を上げて、この空母ヲ級5-65を迎えに来る。そして、空母ヲ級5-65を無事にこちらに渡してくれれば…深海棲艦は海から出ていこう」

提督「そりゃ、本当か!?」

レックス「本当だ。約束だ」

ヲ級「レックス、では6日後に…」

レックス「あぁ、待っていろ。花道とやら、して見るとなかなかの面構え。流石は、5-65の性根や面体を変えてしまう男だな」

提督「一つ聞いていいか?ヲ級は…幸せになるか?」

レックス「なる!」

提督「そうか…じゃあいいんだ…」

レックス「では、余は戻る。さらばだ」

フワリ

ヲ級「実は私…喋れたんだ…」

提督「…」

ヲ級「な、何とか言ってよ、提督…」

提督「フフフ…よかったぜ!!」

ヲ級「…!」

提督「俺は、ショーフクとの約束守れなかったんだ…お前を幸せにするって約束をよ…でもやっと叶うんだ…よかったなぁ!」

ヲ級「…そうだよ」

提督「よぅし!今日は俺のラーメン、タダで食っていきな!!」

ヲ級「ヲーッ!そうこなくっちゃ!」

お前はあの時から今まで何してたんだよ?

しばらく泣いて、その後海でずっと闘ってた

へぇ、だけどもう無意味に戦わなくて済むんだぜ…

…そうだね

提督「へい、お待ち!」

ヲ級「いただきます…」

本当によかったぜ。
お前も幸せになるし、俺も何も思い残すことなく元の生活に戻るんだ。
他の艦娘にとっても、犯罪者なんて邪魔だろうしな。
もっとイケメンな提督が新しくこの鎮守府に着任して楽しくやってくれればいいんだ。
それで、いい…。

その日の夜。
コンビニから鎮守府に続く途中にある港近くの海沿いの道を歩く摩耶、大和、叢雲、天龍、龍田の5人。

摩耶「まさか、あの提督が実は艦娘で、アタシたちを消そうとした犯人だったなんてよ…」

天龍「俺もだぜ…。あの寝ぼけ面の提督があんなこと考えてたなんてな…」

叢雲「…でも、変じゃない?アイツだって、霧の艦隊なんて知らなかったはずなのに、まるで霧の連中を元から知ってたような口ぶりだった…。おかしい…おかしくない?」

龍田「私は、提督が犯罪者でも寝ぼけ面でも、結構好きだけどね~」

摩耶「…へへ、アタシはアンタのとこ、性格悪そうな女だなって思ってたけど、意外といい奴なのかもな」

天龍「でも、提督はあと6日で会えなくなるんだぜ?」

龍田「あら、そんな事どうでもいいのよ。ただ私が、提督を好いてるだけよ~」

大和「…」

摩耶「あ…」

5人の前方から歩いてくるのは、白髪の男を筆頭に、その後ろをついている黒いフードつきのマントを羽織った9人の合計10人の集団が歩いてくる。
5人がぺこりとアイサツをすると、先頭の男もぺこりと頭を下げ横を通り過ぎていく。
だが、9人のフードのうちの一人が立ち止まる。

天龍「関わらないほうがいいぜ、絶対アイツら何かの宗教団体だぜ」

謎の女「…」

その女はフードの端をくいっと上にあげると、先端が赤黒く染まった1対の角が見える。

叢雲「あれ、アイツ…」

天龍「あ?どうかしたか?」

大和「…!?天龍ちゃん、危ない!!」

天龍「?」

ズドン ドカァァァン

摩耶「…へ?」

謎の女「…チッ」

赤い瞳を向ける角の生えた女は、左手の掌から砲身が伸びており、そこから砲撃を放ったようだ。
左腕の砲身は煙が上がっている。

龍田「…許さないわ」サッ

謎の女「…戯け奴が」

龍田は背中に隠していた剣をとると、角の女に向けて斬りかかる。
が、角の女は右手も砲身に変え、剣をガードする。

提督「この鎖…ちょっと走るだけでも重労働だな…」ジャラ

5人が歩いていた方向とは別の方向から歩いてくる提督。
透明な鎖がどうも邪魔なようで、何かを引きずっているような足取りである。
それは普通の人間から見れば変な人に思われるだろうか。

提督「お、アイツら…じゃねぇか、おーい!…え?」

呼んでみると、視界に入ったのは、掌から生えた砲身を龍田に向ける角の生えた女と、剣をその女に突き立てる龍田。

大和「龍田さん、逃げてください!!」

提督「気を付けろ、龍田ァ!」

ピチョオオオオオン…

ゴカァァァン

謎の女「お前たちこそ、許さないわ…私の計画をことごとく失敗させて…死んで報いるがいい…」

天龍「アイツの砲撃一発で…龍田が…粉々に…」

提督「おい!どういうことだ!?」

叢雲「アンタ!」

謎の女「そこを退きなさい、人間。退かないと吹き飛ばしてやるわよ…」ジャキン

大和「この者は…『戦艦凄姫』!かつて、鉄底海峡に出現したという、姫クラスの深海棲艦!!」

戦艦凄姫「私は、そう呼ばれているようね…」

提督「んな事はどうでもいいんだよ…ぶっとばす!」

摩耶「おい!提督は今、透明な鎖で能力を制限されてんだろ!?んじゃあ攻撃が通るわけ…」

提督「目の前で、俺の艦娘を殺されたんだ…こっちは殴る事しか考えられねぇ!!」グッ

戦艦凄姫「なら、アナタが先ね、人間!!望み通り…沈むといいわ!!」ガシャン

提督「ふん!」ブゥン

ガシッ

戦艦凄姫は掌から突き出した砲身を提督に突き付け、砲撃を構える。
だが、提督は態勢を低くして腕の下に潜り込むと、その腕を掴む。

戦艦凄姫「な…何だと…ッ!!?」

提督「オラァッ!!」ズガン

戦艦凄姫「ぐ…が…」

提督は態勢を低くした状態から思いっきりジャンプし、その額で戦艦凄姫の顔面に頭突きをかましてやる。
すると戦艦凄姫はヨロヨロと後ろに下がる。鼻からはどす黒い色をした血がポタポタ垂れている。

摩耶「すげぇ!!あの敵を、提督が掴んだ!」

提督「摩耶!皆を連れて逃げろ!!」

戦艦凄姫「触られたッ…人間に…攻撃を受けた…くっ…」ヨロヨロ

提督「…」ギロリッ

戦艦凄姫「ひっ…」

提督「俺ぁ今、頭に血ィ登ってんだ!!」ガンッ

ブシャッ

戦艦凄姫「また…触られた…殴られた!こ、来ないでェ~~!!」

提督「ふんッ!!」

ズガンッ

戦艦凄姫「3度も…殴られた…敵わない…」ダッ

天龍「あっ、逃げるぜ、あの野郎!!」

戦艦凄姫は海に飛び込むと、一目散に沖に向かって逃げていく。
それを見た提督は、膝からガクリと倒れる。

大和「大丈夫ですか!?」

提督「あぁ…姫クラスか…凄いプレッシャーだったぜ…しかも、くそったれの鎖が重いのなんの…」

大和「先ほど、白髪の小柄な男と、それに付きまとう9人のフードの姫が通りかかりました…ですが、そのうちの一人『戦艦凄姫』はその場に残り、私たちに向けて発砲したのです…」

提督「レックス…どういうつもりだ…?」

摩耶「レックス?」

提督「何でもねぇよ…」

提督(本当にどういうことだ…レックスは、もう攻撃はやめると言ったが、さっきの戦艦凄姫の行動で全て怪しくなった…)

摩耶「あぁもう、分かんねぇな~~!!こうなりゃ、さっきの野郎にちょくせつ聞いてみるしかねぇのかよ~~!?」

提督「奴らに直接、聞いてみるか?」

叢雲「は?アンタ、何言って…」

提督「奴は、まだ遠くに行ってねぇはずだ…今すぐ追いかければ、追いつく」

大和「ですが、私たちのスピードでは、追いつけないのでは…」

提督「バーカ。現在の船の速力、なめんなよ」

提督「コイツを使うんだよ…」ドン!(50ノットボート

大和「あの、それは…」

提督「ん、名前は『月光丸』って言って、俺が子供のころ親父がよく乗ってたんだ…。今じゃ俺のモノだけどな。まぁ深海棲艦が出るかもしれないからって、10年くらいこのボート使ってないんだけどな」

摩耶「まさか、テメェ一人で行くんじゃねぇだろうな…?」

提督「そうだよ、お前らを[ピーーー]訳には行かねぇだろ!?」

摩耶「はぁ?何テメェだけ抜け駆けしようとしてんだ!?」

提督「まぁ、大和と摩耶なら大丈夫そうだが…天龍と叢雲!お前らは残りな…。さっきので分かっただろ?奴らは軽巡洋艦一隻くらいなら一瞬で消せるんだ」

天龍「お、おう…」

叢雲「分かったわ…」

提督「それじゃあ、大和、摩耶、乗ったか?」

大和摩耶「はい!(おう!)」

提督「それじゃ行くぜ!発進!!」ブルゥゥゥウン

戦艦凄姫「くそっ…何なのよ、あの人間は…。…頭が痛いわ…」

ボオオオオオオオオオ

戦艦凄姫「?…ギャッ!?」ガン

提督「よォ、ボートで追いかけてやったぜ…お前らの目的を教えな!ついでに、レックスの野郎の所に連れてけ!」

戦艦凄姫「うぅ…それは、できないわね!!何故なら…」

提督「…?」

戦艦凄姫「今から貴方たちは私たちの世界で、死ぬからよ!!」

ゴポゴポ…ザアアアアアァ

提督「な、何だあ!?いつの間にか海にでっかくて黒い穴が!!」

摩耶「このままじゃアイツごと、アタシ達も落ちるぜ!」

大和「ってもう落ちてます~!」

提督「うわーッ!!?」

───────────────

油のような液体が滴る音、何か巨大なモノが地面を這いずる音、生臭い空気、真っ青な風景…。
俺は、何をしていたんだったか…。

提督「やべっ…おい、起きろ!」

摩耶「…あ?」

大和「ここは…」

提督「来ちまったぜ…深海棲艦共の…世界に!!」

大和「何でしょう…青白い光に包まれてますね…」

摩耶「何かの滅菌室みてぇだぜ…きもちわりぃ…」

青白い光に満ちたそこは、恐らく深海棲艦共の棲み家だろう。
ここは砂浜のようで、側には海水の緩い波が押し寄せている。
上を見上げるとさっき落ちてきた場所は水で閉ざされているが、天井の水は何故か落ちてこない。
砂浜を見れば、腐りはてた深海棲艦の死骸が転がっている。

提督「ひでぇ…これ、全部死体だよ…」ザュザッ

摩耶「何してんだ?」

提督「ちゃんと埋めてやらねぇと、可哀想かなって思ってよ…」

摩耶「バッカ、お前それ人殺してるかもしれない深海棲艦に同じこと言えんの?」

大和「あ…あそこで、何かが…」

摩耶「え?」

浮翌遊要塞「…」ザクザク

提督「何だありゃ…浮翌遊要塞に、体が生えてるぞ…」

大和「深海棲艦の亡骸を埋葬しているのでしょうか…?」

摩耶「あの、重巡級っぽいのは何をしてるんだ?」

重巡リ級「~~~!!」

摩耶「深海棲艦が言葉なんて…」

提督「いや…」

リ級「お待ちください!この重巡リ級はまだ死んではおりません!!」

浮翌遊要塞「ええい!くどいわ、勤めの邪魔である!!」バシッ

リ級「うぐっ…」ドサッ

浮翌遊要塞「遅かれ早かれ、お前もいずれ死ぬのだ。いっそ、姉妹一緒に死ぬのはどうだ!?」ビュッ

ゴシャッ

提督「遅かれ早かれ、お前もいつかシメられんだ。いっそ、ここでシメてやろうか?コラ」

浮翌遊要塞「な、何だと…」ボコォ

リ級「こ、このエネルギーは、まさか…地上の光…」

浮翌遊要塞「貴様ら!どこから来た!?」

提督「どこって、お前らがよくお出かけに来るとこだよ!」

摩耶「テメェ、また後先考えねぇで…」

提督「うるせぇな…カッとなっちまったんだよ…!」

リ級「では、では…貴方たちは…地上から参られたのでしょうか?」

遊要塞「こちらを向け!我らに手を上げた事、たやすく死んで後悔するがいい!」

提督「…俺が行く」

ビュン パァン!

浮翌遊要塞「は、速い…」ガクッ

摩耶「あの敵が倒れた…ウッソだ~提督の野郎、あんなに強かったか~?」

大和「私も前から不思議に思っていたのですが、今まで提督が見せたお力は、本当に『前世が艦娘であったから』だけなのでしょうか?」

浮翌遊要塞(しまった…取り付けていた体が外れてしまった…!)

浮翌遊要塞「ゥ…アァァァァ!!」

提督「オラァッ!」ビュン

浮翌遊要塞「」ドカン

摩耶「確かにな。奴にゃ、何かあるぜ…」

リ級「何かあるのは、貴方達も一緒でしょう?」

摩耶「…あ」

提督「俺たちに、何があるって?」

リ級「貴方たちは、気づいていないのですね…貴方たちの体からあふれ出る『エネルギー』こそ…」

ゾボッ ズボッ ザッザッ… ボコッ

提督「何だ~~!?地面から深海棲艦が~~…」

摩耶「ゾンビだ~~!!」

リ級「死にかけた私たちを救う『地上の光』!貴方たちはその『エネルギー』を発しているのです!!」

提督「そんなこと言われても…」

摩耶「何のことやら…」

リ級妹「姉さん…」

リ級「やっぱり、死にきっていなかったのね…」

リ級妹「えぇ…助かりました!あの人たちの『エネルギー』で!」

他にも、地面から出てきたさまざまな種類の深海棲艦は蘇り、仲間と共に復活できたことを喜んでいる。
そしてそれらの深海棲艦は、口々に提督たちにお礼を言っていく。


リ級「何十年も昔、深海棲艦は、いつ、どこで生まれたのか分かりません。この深海の世界で生まれたのか、深海棲艦がこの世界を作ったのか、わかりません。深海棲艦が地上へ攻撃を始めたのは去年の春頃です」

リ級妹「我々は本能的に王や姫から命令を受け、海に出ます。そして、地上での攻撃によって沈められると、この海岸に流れ着きます。意識のあるものは再び出撃に備えます。逆に、意識のない者は私のように埋められてしまいます…」

大和「本当に死んでしまったかどうかも確認せずに…」

リ級「はい。そして、これこそ重要なのです。轟沈した物体、艦娘は…同じく自然にこの海岸に流れ着く場合があります。流れ着いた物体や艦娘などは…この世界で”深海棲艦に成り果てるのです”!!」

提督「な…んじゃあ、お前たちの話が本当だとすると…!」

摩耶「アタシたちが今まで必死こいて沈めまくってた連中は…元艦娘って事かよ…」

リ級妹「ですが、深海棲艦は地上の『光』を食らうと、浄化されます。私たち姉妹も、元は深海棲艦として戦っていましたが『光』によって浄化されているので、このように理性を持って会話することができます」

大和「…では、私が元に戻った時も…」

リ級「おそらく、浄化されたのでしょう…」

提督「つまり、纏めると…」

・深海棲艦の起源は不明
・この世界に流れ着いたモノは深海棲艦になる
・↑は、地上の光を持ったものによって浄化される

提督「こういう事か?」

摩耶「お前、そういうの好きだな…」

リ級「アレをご覧ください」

提督「何だ…さっき俺らが乗ってきた『月光丸』の残骸が…」

大和「岩に吸い込まれていきます…」

リ級妹「すると、見てください…出てきます…」

月光丸「シャァァァ…」ウロウロ

月光丸の残骸が岩の隙間に入っていったかと思うと、その岩の反対側から小さな白いトカゲのような生物が這い出てくる。
そのトカゲは甲高い鳴き声を上げると、どこかに走り去っていく。

摩耶「何だ、ありゃあ…」

リ級「アレは、ボートの残骸からなる深海棲艦の一種ですね。ボートが比較的良好な残骸で流れ着くことは少ないので、珍しい種類でしょう。彼は砲も魚雷も何も持っていませんが、単なる生命体としては驚異でしょう」

摩耶「それで、そろそろ話してくんねぇかな?アンタがたの、王について」

提督「そうだよ(便乗)。俺の鎮守府には空母ヲ級5-65って奴が住み着いてるんだが、それを渡してくれれば地上への進撃はやめるって言ってたんだが、何か知らねぇか?」

リ級「…あの男がそんな事を…!」

リ級妹「あの男が攻撃を辞める訳がありません…むしろ、今、地上を滅ぼすための大軍勢を準備しています!!」


提督「な、何だって…!?」

摩耶「最近深海棲艦を滅多に見かけないと思ったら…」

リ級「いったん、勢力を蓄えているのです。そして6日後、レックス率いる深海棲艦軍は、一気に地上を制圧するべく全総力を上げて闘います」

提督「なんてこった…」

リ級妹「では、そろそろ案内しましょう。あの王たちが巣くっている城へ」


摩耶「テメー重いんだよ!このリ級さんが落ちるじゃねぇか!」

提督「お前が言うか、それ…」

大和「2人とも、お静かに…」

リ級「見えました、あれが王の城です」

摩耶「すっごいでっかい…直径2キロくらいあるんじゃねぇか?」

リ級妹「あそこが入口です…」

提督「でもよ、危なくねぇのか?こんな場所に入って…」

リ級「いいのですよ…我々は貴方達のおかげで、再び人の心を持つことができました。その貴方たちの役に立って世界を平和にすることが…」

キィィィィィン…
ズゴッ

リ級「し、幸せ…」ブシャッ

戦艦ル級『侵入者!属性不明ノ者ガ、コノ城二侵入!排除セヨ!』

重巡リ級『強襲部隊、出ヨ!』

摩耶「やっぱ、ケンカしかねぇか!」

大和「かかってきなさい!」

リ級「妹よ、この人たちを頼みます…」

リ級妹「心得ました…!」

提督「早くその、突き刺さった弾を抜けば…」

リ級「いいのですよ。この世界で滅多に言う言葉じゃないけど…」

提督「おい!!」

リ級「『さらばだ』」

ジュギュン ゴシャッ

戦艦ル級(何だこの重巡級は…強いッ!)

リ級「貴方たちから戴いたエネルギーのおかげで、この通りです。さぁ、私に任せていきなさい!!」

リ級妹「皆さん!行きましょう!!」

戦艦ル級『逃ガスカッ…ナニッ!?』ギュッ

リ級「行かせないわよ…」ギロリッ

戦艦ル級(ウッ…)

リ級(何故、私はあの時、こうして闘わなかったのだろう!敵との圧倒的戦力差に恐れをなして戦うことを放棄した結果…その結果、妹までをも巻き込んでしまった!)

重巡リ級『構ワン、ウテェ!!』

ドキュン ドキュン チュン
ズバッ グサリ

リ級「ぐは…」

戦艦ル級(分かるぞ、あの者たちは地上の人間と艦娘だろう?さては奴らの発するエネルギーに汚染されておかしくなったな)

リ級「おかしくなった、か。違うな。私は今までおかしかったんだ、今正常に戻ったのだッ!」ボタッボタッ

戦艦ル級(ええい!諦めてそこを退け!)

リ級「遅かったけど、ようやく言える。『ヤダヨ、バーカ』」

戦艦ル級『ナラバ、死ヌガイイ!』

ドン ドン ドガン バシュン バシュッ
グサッ グシャッ グチャッ パキッ バキッ

リ級「…」

戦艦ル級『コイツ、生体機能ガ停止シテモ、一歩モ動カナイ…』

重巡リ級『別ノ道カラ行クゾ』

リ級「やっと、諦めて道を変えてくれた…」

リ級「…あぁ、見てください、提督…太平洋が真っ赤に染まって、綺麗…ですね…」

重巡リ級『居タゾ!アソコダ!』

リ級妹「ふん!」ビュン

重巡リ級『グハ…』ゴシャリ

戦艦ル級『消シ飛ベ~!!』ジャキッ

大和「危ない!」(蹴り

戦艦ル級『…』

摩耶「おらっ!」(殴り

戦艦ル級『…』ニヤリ

摩耶「やっぱり、素手じゃ効果ねぇか…」

提督「ひっこめ!ゴルァ!!」(ぶん殴り

戦艦ル級『』ガクッ

リ級妹「…」

摩耶「なんでお前の攻撃だけ効くんだよ!?」

提督「俺だってわかんねぇよ!」

リ級妹「提督さんは、その空母ヲ級5-65という人と”接吻”をなさったことはありますか?」

摩耶「せ、接吻って…お前…」

提督「ないない!ない!!」

リ級妹「でも何かしら、接触があったのではありませんか?」

提督「ア…頬擦りとか、何かしてたけど…」

リ級妹「もしかしたら、5-65は提督さんに、何かお礼をしたかったのかもしれませんね…」

提督「だから、俺の攻撃だけ効くのか…」

大和「ヲ級さんのエネルギーを体内に蓄えた提督だけが、素手でも深海棲艦と戦える、ということでしょうか…」

リ級妹「さぁ、王の間まであと少しです!」

ウーウーウー ガシャァン

ホ級『…』ジャキ

ト級『…』

提督「追っ手だ!軽巡が2体、駆逐艦が5体…水雷戦隊か…!」

ホ級『アァァ!!』ガシッ

摩耶「うっ、足を掴まれた!引きずりおろされる!」

大和「きゃああああ!?」

提督「大変だ!摩耶と大和が捕まっちまった!」

リ級妹「今行きます!」

ホ級『フシューッ…』ジャキッ

摩耶「うっ…こんな至近距離で撃たれたら、死んじまうぜ…」

ポタッポタッ…

大和(なんでしょうか…あの、ぶら下がっている刃物のようなものは…)

ホ級『…』

ザクリッ

摩耶「…オイ、マジかよ…!」

大和「あ、アレは…!」

リ級妹「…!?」

ホ級『カ、カハ…』

ホ級の背後をぶらぶらしていた刃物ような鋭いモノがホ級を背後から一突き─鮮血が飛び散る。
そしてリ級妹、提督、大和、摩耶が刃物が貫通したままのホ級の背後にある壁のひび割れを見つめる。

提督「…『月光丸』!!」

月光丸「シャアアアアアアア!!」

先ほどはマムシほどの大きさしかなく真っ白い体を持っていた月光丸が、人間ほどのサイズに成長し、黒い甲殻を纏っている。
後頭部が長くなっており、目は無く、白い歯がむき出しになっている。
体型は人間に近いが、背中から突起が生えていたり指が6本であったりと、どちらかというと深海棲艦に近い姿である。
そして透明の体液の滴る顔を悶えるホ級に近づける。

ホ級『ゥ…アァ…』

月光丸「キャア!」

月光丸の口から細い管のようなものが飛び出し、ホ級の脳天をかち割る。
ナイフのような先端の尻尾をホ級から引く抜くと、他の深海棲艦を威嚇する。

ト級『…カァァ…!』

月光丸「シャアッ!」

リ級妹「彼は私たちにには興味が無いようです!今のうちに逃げましょう!」

提督「お、おう。行くぞ、2人とも」

摩耶、大和「…はい」

グキャァーッ ドン ガシャン
キエーッ

摩耶「すげぇ…深海棲艦共の悲鳴がここまで聞こえるぜ…ざまぁ見やがれ!」

リ級妹「この通路を曲がれば、王や上級の艦の間です!」


戦艦タ級(何か面白いことないかなー。流れ着いてきた雑誌読んでるのも飽きたなー)ペラッ

戦艦タ級『アレハ…』

提督「深海棲艦が一匹!」

リ級妹「短時間ですが、私と一緒に行動していたことで攻撃一発なら届くでしょう!」

摩耶「おう、ありがてぇ!」

大和「やらせていただきます!!」

戦艦タ級『ナ、ナンダオ前タチ!』ジャコン

ゴシャリッ

摩耶「どうだッ!?」

戦艦タ級『』ガクッ

リ級妹「さぁ、行きますよ!」

大和「あ、新たな追っ手が来ます!どうしましょう…!」

空母ヲ級『オ前タチカ!?地上ノ人間ト艦娘ヲ手引キシタ奴ハ?』

空母ヌ級『他ノ…侵入者ハ…ドコダ…?』

リ級妹「貴方たちの言っている、侵入者は私が殺してしまいました…。さぁ、私をどうする気です?」

空母ヲ級『ヌゥ、仕方ナイ、腕ヲ縛ッテ王ノ間へ連レテ行コウ…』

空母ヌ級『了解…!』

提督(バレねぇもんだな…)

摩耶(だな…)

大和(静かに!リ級さんが王の間へ行き、レックスから全てを聞き出すために、私たちは体を縮めてもらってリ級さんの腕の中に居るのです!)

空母ヲ級『オ前、ナンカ腕ガデカクナイカ?』

リ級妹「知らないのですが?私のように経験と練度を重ねた者は武装が強力なものになっていくのですよ」

空母ヲ級『…ヘェ~』キラキラ

提督(コイツ、バカだな…)

レックス「全く、お前は本当に愚かなことをしたな」

リ級妹「申し訳ありません…」

レックス「まぁいいわ。お前は埋葬任務に従事してもらう。姉のように死ぬよりはいいだろう?」

リ級妹「…何故、姉は殺されたのですか?」

レックス「当然だ。この世界に不浄な艦娘を連れ込み、兵に手を挙げたのだからな」

リ級妹「…そう」

戦艦ル級「レックス!!』

レックス「何だ!?」

戦艦ル級「第25通路で暴れまわっていた、正体不明の深海棲艦を捕らえました!」

月光丸「アァァァァァァ!!」ドンドン

2メートルぐらいの檻に、両手と尻尾を固定された月光丸が入っている。
月光丸は、高圧で打ち出す舌で檻を攻撃したり、檻にタックルしたりしている。

提督(月光丸…!)

レックス「これから墓掘り人として従事するお前にも教えてやろう。お前は詳しく知らないだろうからな」

リ級妹「6日後の、地上への大進撃の事ですか?」

提督(よっしゃ!向こうから話を進めてくれたぜ!)

レックス「そうだ。我々は、全深海棲艦を集めて総力を結成し地上へ最後の戦争を挑む!そして…」

摩耶(ヲ級か…)

レックス「あの、空母ヲ級5-65を抹[ピーーー]る!!」

提督(な…!!)

レックス「あの空母ヲ級5-65は、地上のエネルギーを大量に秘めている。数十年分の膨大なエネルギーだ。そのエネルギーが溜まっているヲ級を殺してしまえば、あふれ出た膨大なエネルギーはこの世界を末永く反映させるだろう!」

提督(野郎…ヲ級を連れて帰れば闘う必要はないって言ってたのは、そのためか…)

レックス「さぁ、もう行って仕事を始めろ」

リ級妹「地上の方々、お聞きの通りです…ですが、私に一つチャンスを!」

レックス「…貴様、何を言っている?」

ジャキン

リ級妹「レックス!覚悟!!」

ガシャガシャ…ビシュ バキュン

リ級妹「…ガ…!」

南方凄鬼「私たちは、この深海を世を統べる存在…」

飛行場姫「レックスを殺そうなんて、馬鹿な事をしようとしたものね…」

装甲空母姫「ふふふ…」

大和(アレは…9人の姫と鬼です!)

摩耶(アイツら…さっき陸でレックスとすれ違った時に後ろにくっ付いてた奴らだ!)

提督(あぁ、一番後ろで退屈そうに天井を見てる野郎が…龍田を殺した…戦艦凄姫だ!)

戦艦凄姫「…」

リ級妹「…」

レックス「ふん、もうすぐ死ぬか…」

泊地凄姫「今すぐ、止めを刺すか?」

レックス「死にゆくお前に教えてやろう。我々はな、6日後地上へ出撃するときにな、地上の艦娘を全て[ピーーー]!まずは、あの花道提督とか言う奴の鎮守府の艦娘だけでも、殺してしまえばいいだろう。これこそ、『立つ鳥跡を濁さず』の精神ではないか?」

摩耶(チクショウ、それじゃあ鎮守府の仲間がやばいじゃねぇか…!)

花道(大和、摩耶、こっからせーので飛び出るぞ)

せーのッ!!

提督「全部聞いたぞォ、レックス!!」

レックス「!?」

摩耶「うおおおお!!」

提督「くらいやがれっ!!」ビュン

レックス「あぶねッ!」

大和「避けられました!」

摩耶「もう一発だ!」

提督「おう!」

南方戦凄姫「そうはさせないわ!」

泊地凄鬼「唯一の勝機を逃したお前たちには、死んでもらうわ」

戦艦凄姫「…」

大和「やれるもんならやってみなさい!」

リ級妹「さようなら、地上の立派な方々…」

レックス「リ級8-12!貴様、まさか…」

ドガァァァァン

摩耶「妹さんが…天井を壊した!!」

大和「水があふれてきます!!」

泊地凄姫「レックス、こっちよ!」

レックス「8-12!俺の邪魔をするのか!?」

リ級妹「ふふふ…これこそ『立つ鳥跡を濁さず』…なのですよ。ゴフッ!!」

提督「おい!掴まれ!この海水の流れに乗れば助かるかもしれない!!」

リ級妹「残念ながら、もう指を動かす力も残っていません…。皆さん、私に人の心を思い出させてくれて、ありがとうございました…」

提督「く、くそぉ…ガボ…」

月光丸「キャアアアアアア!!」

既にレックスやその周りに居た深海棲艦はその場から居なくなっており、天井からは海水が流れ込んでくる。
その海水は提督たちを物凄い勢いで押し込んでいき、最初に流れ着いた海岸まで流される。
そして海岸まで来ると水は上に向けて突き上げていく。

チュンチュン

カモメ<…?

月光丸「…アァァァ…!」

カモメ<!?   バサバサッ

月光丸「キュウ…」

提督「…なんだ、テメェも、流されたのか…月光丸」

摩耶「あいてて…もう朝だ…!」

大和「早く、真実を皆さんに伝えなければ!!」

提督「あぁ、そうするぜ!大和はヲ級を探してくれ!俺と摩耶は呼びかけに行く!」

大和「はい!」

提督辞退、レックスの襲撃まであと5日

ブッゥゥウゥン

摩耶「おーい!皆、出てきてくれ!!大事な話があるんだ!」

提督「武蔵はいるか!?」

憲兵「何だ、誰かと思えばお前たちか」

提督「お、長門事件の時の憲兵の野郎か。頼む、武蔵…いや、和田長官を呼んでくれ!」

憲兵「何を言い出すかと思えば…要件は何だ?」

提督「5日後に、深海棲艦の大軍勢が鎮守府を襲撃してくる!それを話したいんだ…」

憲兵「ははは!事件かと思えば、トホーもない夢のお話か!」

摩耶「アタシはコイツと関係ないけど、本当だってばよ~」

大井「誰かと思えば、提督じゃない」

提督「大井!本当なんだ、信じてくれ!」

大井「あまり近寄らないで、犯罪者」

提督「…あ?」

五十鈴「提督が私たちを消そうとするなんて、見損なったわ」

球磨「しかも、自分の分身に悪いことさせたんだくまー」

鈴谷「それマジ?最低じゃん」

最上「霧の艦隊のコンゴウに罪を着せようとするために、分身に『コンゴウ』って名乗らせたんだってね」

利根「戦艦三笠じゃったと…」

提督「…ぅ…!」

摩耶「それとこれとは話が別なんだ大井!」

大井「うるさい!ふざけないでこの犯罪者!出ていかないと力づくでも追い出すわよ!」

摩耶「くそぉ、誰も話を聞きやがらねぇ…もうどうなっても知らないぞ…大体、お前らが協力してくれなきゃアタシもやばいんだって…」

提督「なぁ、摩耶」

摩耶「あ?」

提督「お前は女の癖に居るだけで暑苦しい、嫌な奴だ。特にその頭のアンテナみたいなやつがな」

摩耶「何が言いてぇんだ、コラ」

提督「だけど、頼みがある。レックスの軍勢とケンカするための準備のために、力を貸してくれ」

摩耶「お前は嫌な奴だ。特にその三角目と尖がった鼻が気持ち悪い」

提督「…」

摩耶「ケッ…んで、何すればいいんだよ?」

提督「叢雲と天龍に、渡りをつけてくれ」

摩耶「…分かった」

提督「でも、明日からでいい。明日までゆっくり休んで、それから準備に取り掛かる」

摩耶「テメェにしちゃ気が利くじゃねぇか…」ニヤリ

提督「ふん!」ニッ

提督辞退、レックスの襲撃まであと4日

─執務室─

天龍「…」

叢雲「…」

天龍「…龍田、死んじまったんだよな…」

叢雲「…うん」

天龍「提督、摩耶、大和は無事だったけど、何か変なの連れてきてるし…」

月光丸「…シャアアア…」(尻尾振り

叢雲「はぁ…この先、どうなるのかしら…」

バタン!

摩耶「お前ら!聞いてくれ!!」ズカズカ

天龍「何だァ、いきなりでけぇ音出しやがって!!」

摩耶「簡潔に言うぞ、4日後にアタシ達は全員死ぬ!!」

叢雲「…は?」

摩耶「お前ら2人なら見ただろ!龍田が戦艦凄姫の野郎に消されるところ!!」

天龍「そら、見たけどよ…それと何の関係が?」

摩耶「いいか、今、深海棲艦が一匹も目撃されないのは何でだと思う?」

天龍「…さぁ?絶滅したとか?」

摩耶「ばっか、するわけねぇだろ。じゃあ、深海棲艦の拠点はどこだ?」

叢雲「知るはずないじゃない…海底から湧き出るんじゃないの?」

摩耶「…説明するのが長くなりそうだ…」

深海棲艦は海の底の果てにある異世界を拠点にしている。
その異世界とこの地上は見えない穴で繋がっている。
その穴は丁度4日後の夜明けに永遠に閉じる。提督が辞退するのと同じ日だ。
なんで永遠に閉じるかというと、この鎮守府にいるヲ級が、大量のエネルギーを溜めているからだ。
そのヲ級を4日以内に連れて帰れば、地上と繋がっていなくとも異世界は繁栄する。
そして、ヲ級を連れて帰るついでに、この鎮守府の艦娘を全員抹[ピーーー]るんだ。
それも、全ての深海棲艦を集めての総力戦だ…

摩耶「カクカクシカジカ…だから、アイツらは最後の大掃除に、この鎮守府ごと艦娘を殺していくんだ…」

叢雲「…」

天龍「…」

摩耶「さすがに、信じねぇよな、こんな事…」

天龍「いや、やっぱり信じるぜ。俺は実際に、そいつらに龍田が殺されるのを見たんだ」

叢雲「いやでも信じちゃうわよ、そんな事」

摩耶「…よぅし。お前たちが仲間になりゃ、心強いな!」

暁「はぁ…やっぱり温泉はいいわね…」カポーン

暁「司令官か…あの人ももうすぐ辞退…。でも、何かスッキリしないのよね…」

カーカー バサバサ

暁「あぁもう!悩んでてもしょうがないじゃない!司令官は最低人間だった!これで決まり!」バサー

摩耶「全裸で何してんだ、お前…」

暁「きゃああああ!入るなら声くらいかけなさい!」

摩耶「アタシ、今日は風呂掃除だし、ってかこんな時間になんで入ってるんだよ?」

暁「…そう」

摩耶「…」モジモジ

暁「…」

摩耶「なぁ、暁、ちょい頼みがあるんだけどさ…」

暁「何よ?」

摩耶「でもなぁ、怒るかもなぁ…」シュン

暁「何でも言いなさい!一人前のレディーに聞けないお願いはないわ!」

摩耶「ん?今、何でも言いなさいって言ったよな?」

暁「レディーに二言は無いわ!」

摩耶「じゃあ、はい」

提督「よ」

暁「ぎゃあああああ!司令官!!」

摩耶「何でも言えって言ったよな?」

暁「私たちは、本当は司令官と話しちゃいけないのよ…」

提督「あぁ、分かってる。少しだけでいいんだ…話を聞いてくれ」

暁「私は覚えてるわ、私がここに来たばかりの時に、司令官は駆逐艦全員に『お子様』って言ってた…。だけど、そのお子様に話を聞いてくれって…お子様はどっちよ!!」ブン

ペチン…

提督「…」

暁「ふ…小さいわね、私は…」

提督「いや、今までもらったパンチで一番効いたぜ…。じゃあな、俺が甘かった。俺はお前に向ける面なんて無かったんだ」

摩耶「…あ、行くか?」

暁「ま、待って。司令官に私の事を一人前のレディーといて認めさせたいのよ…だから、目線を同じにすれば対等よね。話を聞いてあげるわ」

提督「~~~~~!」

摩耶「~~~!?」

暁「…?」

提督「~~~~~~~!!」

暁「…」

提督「俺らが話したいことは以上だ…」

暁「到底信じにくい話ね…。でも、司令官はへそ曲がりだけど、こういう時に嘘はつかない」

提督「おう、ありがとな。じゃあ駆逐艦の野郎どもにも同じことを伝えといてくれ」

暁「わかったわ!」


摩耶「次はどこに行くんだ?」

提督「…霧の連中の…所さ…」

摩耶「あっ…」

太平洋…
霧の艦艇、伊401─

群像「何?我々のメンタルモデルの力で…君の望みをどうにかしてほしい?」

提督「頼む…」

群像「イオナ、どうするんだい?」

イオナ「群像に任せる。私は別に構わない」

群像「君の願いとは…自分の事ではないですよね?」

提督「…あぁ」

群像「では、何を頼むつもりで?」

提督「…『          』」

イオナ「了解」

群像「…本当に、それでいいのか?」

提督「あぁ。これから新しい提督といろんなことやってくアイツらが、居なくなっちゃこまるからな…」

群像「ご武運を」

提督「サンキュ」

摩耶「んで、何て言ってきたんだ?」

提督「『          』ってよ」

摩耶「ばか…それじゃ、お前は一人で…」

提督「いいか?俺は絶対に…艦娘共を消させたくないんだ…」

摩耶「…で、どうすんだ?アタシ達にできることなんかもうねぇぜ…」

提督「これからだ。奴らと戦うには、大量の武装が居るだろ?」

摩耶「あぁ、なるほど!」

提督「ま、貸してもらうんだどよ」


提督辞退、レックスたちの襲撃まであと3日

日向「何?私の瑞雲を…貸してほしいだと?ええい、ダメに決まってるだろう!」

提督「そこをなんとかよ~」

日向「駄目と言ったらだめだ!摩耶もそんな奴にたぶらかされたのか!」

摩耶「でもコイツ、自分の為に言ってる訳じゃ…」

日向「提督でもないただの犯罪者に、大切な瑞雲を貸せるか!」


あきつ丸「え?あきつ丸の大発動艇と…」

まるゆ「まるゆの、鉄球を貸してくれって?」

提督「あぁ、大発は敵の攻撃をかわすのに役立つ…鉄球は振り回せれば奴らに大ダメージだ」

あきつ丸「残念ですが、提督殿は深海棲艦化した私たちをいいように操ってよからぬ行為をさせた張本人であります」

まるゆ「申し訳ありませんが、武装をお貸しすることはできません…」

あきつ丸「それに、深海棲艦の大軍勢?信じられないであります…」


瑞鶴「いやですよ!提督さんとは関わるなって言う知らせが来てるから!」

翔鶴「すみません、提督と関わるなという知らせは破れませんので…」

摩耶「ははは…誰も、何も貸してくれねぇでやんの。アタシにもとばっちりが…」

提督「諦めんなよ、また頼もうぜ」

摩耶「うるせぇ!なーにが、『あの、えと、深海の穴から来るレックスの軍勢が、いや、レックスは深海棲艦の王で、その穴が閉じるから、立つトリあとを殺さずだから、えっと、お前らを殺しに来るの』だ」

提督「おう」

摩耶「コミュ障にもほどがあんだろ!」

提督「悪かったよ」

摩耶「分かればよろしー。バーカ、もうあきらめろよ。誰も取り合ってくれねぇぜ」

提督「また霧に頼ることになっちまうが、でっかいのを聞いた」


提督「おす」

タカオ「ははは花道~!きゃあああああああ」

提督「どうした?」

タカオ「あ、アンタ犯罪者なんでしょ~?帰ってよ~」ビクビク

提督「ん~、お前に持ってきてほしいモノがあるんだけど」

タカオ「…まぁ、私たちを正気に戻してくれた恩はあるし、聞いてあげないこともないけど?」

提督「そうか。それじゃあ…」


タカオ「”白鯨”、か」

提督「あぁ。3日後までに持ってきてくれ」

タカオ「いいけど、何と戦争するんだって?」

摩耶「おう、お前らとつるんでた深海棲艦よりもずっと怖い奴らだぜ…」

タカオ「ふ~ん」

摩耶「でも、お前はやりあわなくていいんだ。これは、俺のケンカだからよ」

タカオ「そう、頑張ってね」

提督「そっちも元気でな」

摩耶「よかったぜ、これで一隻でかいのが手に入った」

提督「何もないよかマシさ。一旦帰るぜ」

大井「ちょっと待ちなさい!」

帰ろうとした提督と摩耶を引き留めたのは、数十人の憲兵を連れた大井だった。
どうやらあちこち探し回っていたようで、息が若干切れている。

大井「和田長官が尋ねたいことがあるそうよ、逮捕して尋問するから来なさい」

摩耶「うげ、こいつらに捕まったら3日はかかるぜ…」

提督「大井!聞いてくれ、深海棲艦の大軍勢が俺の艦娘どもを…」

大井「殺しに来るんでしょ?よくもそんなホラ話を並べられたわね。もう深海棲艦が海上に現れる兆しはない、そんなはずはないわね」

摩耶「ちったぁ話を聞いてやれよ!」

大井「人間のチンピラと艦娘のチンピラが何を言っても無駄よ」

提督「放せよ!本当に艦娘を殺しに来る大軍勢が居るんだって!」

大井「ねぇ、提督、いくら提督って言っても所詮は人間の不良じゃない。得意の暴力で正気に戻された艦娘を叩きのめしてきただろう?そんな事された艦娘は全員泣きながら提督の鎮守府に入ってきたのよ?ま、仕方がないわね。不良には不良のやり方があるものね。でもね、貴方たちが全ての深海棲艦化艦娘を倒し切ったのは運が良かったからじゃない?」

摩耶「テメェ、その口ひっちゃぶいてやろうか、コラ!!」ビリビリ

大井「だって本当の事じゃない?」

提督「そうさ、俺は所詮、ただの不良だ。俺は艦娘に感謝されたいなんて思ってねぇ。だけどな、艦娘と出会って喧嘩したり喋ってるうちに分かったんだ…」

憲兵「お、おい」

提督「艦娘はいいもんだ、ってな」グググ

憲兵「おとなしくせんか!」

提督「艦娘はいい奴から悪い奴まで、人間の為に闘うことに必死だ。このおっかなかったり悲しかったり、不幸なことで溢れかえってる世の中で、『アイツら』はいつでも人間を励まし続けてる…。『ひょっとしたらこの子は自分と同じなのかも』って思わせたり、『この子みたいに一生懸命生きてればいいことあるかも』って希望を持たせてくれるんだ。その希望がこの世にどれだけ必要か…俺はそんな連中が、だんだん好きになってった」

大井「…」

提督「大井!この世に艦娘は必要だ!!俺を信じないならそれでもいい!ただ他の奴らに警告だけしてくれ!」

大井「バ、バカ!あんたのいう事が本当なら、どうやって私たちは生き延びるのよ!?」

提督「俺が戦う!!」

摩耶「アタシだってやってやるぜ!!」

大井「うるさい、うるさい!妄想もいい加減にして!」

憲兵「いいから来るんだ」グイッ

提督「いてて…そんな暇ないんだって!」

摩耶「はなせよ!」

大井「!な、何よ、貴方たち!?」

提督「お、お前ら…!」

金剛「ヘーイ、大井サン…」

長門「さっきからお前ら…」

ゴーヤ「酷くないでちか?」

大鳳「ろくろく話も聞いて差し上げず…」

扶桑「そうよ、提督はこういう時に嘘をつくような人じゃないわ」

山城「さっきの演説、感動しましたね、姉様!」

ゴーヤ「皆、そんなにひどいことされてないでち。一発気持ちよく食らっただけだよ」

Z1「逃げて、提督!僕たちは信じるから!」

提督「お前ら、俺らが正気に戻した奴らじゃねぇか…」

ゴーヤ「あの、てーとく。これ、ゴーヤの髪飾り、使ってくだち…」

提督「お、おう…」

長門「ふっ、私の応急修理要因だ。念のために持っていくといい」

提督「あぁ、さんきゅ」

扶桑「これ、私たちの髪飾りです、お守りだと思って…」

提督「あんがとよ」

大井「こら~、待ちなさい!!」

摩耶「待てと言われて待つ奴がいるか~!?」

エラー娘「こっちだよ、提督さん!」

提督「そっか、ゴーヤの髪飾りつけてると、人間以外の声が聞けるんだったな…」

エラー娘「屋上へ行って!あと、闘う時になったらすぐに駆けつけますから!」

提督「おう!摩耶、行くぜ!」

大井「屋上の守備隊!そっちに行ったわ!!」

憲兵「逃がさないぞ!」バッ

摩耶「うらっ!!」ビュン

憲兵「」ガク

提督「摩耶、ジャンプだ!」

ドシャァァァァン

憲兵「飛び降りたぞ!庭の林だ!!」

木<そっちのラーメン屋の裏口なら誰も居ないよ
鳥<裏口に出たら道をまっすぐ走って
猫<このあたり?おいら、詳しいよ。そこのアパートのあの部屋、不動産屋がカギ閉めわすれてんだ

提督「なんとか…逃げ切ったぜ…」

摩耶「便利だな~、それ」

─夜─

提督「そうか、3日探してもヲ級の野郎は居ないか…」

大和「ハイ、どこに行ってしまわれたのか…」

摩耶「くそ~…」

大和「それで、武装は手に入ったのですか?」

提督「あぁ、白鯨って言う潜水艦に、ゴーヤの髪飾り、扶桑と山城の髪飾り、龍田の剣…そして応急修理要因とこの妖精だ」

摩耶「心もとないよなぁ…」

大和「でも、何もないよりはいいでしょう!!」

提督「そうだぜ、ポジティブにいこうぜ、ポジティブ!」

摩耶「ハイハイ…」

─深海棲艦の世界─

ギュウウウウン…

泊地凄鬼「レックス!2日後、地上へ攻め入る軍勢の準備は上々!」

装甲空母姫「あと2日でその日は訪れる!」

レックス「地上と俺たちの世界をつなぐ通路が永遠に閉じるその夜、必ず空母ヲ級5-65を連れ帰り、花道の艦娘を全員抹[ピーーー]るのだ!」

衛兵「では、レックスと共に前線で戦う9人の姫と鬼よ、ここに!」

レックス「まずに、泊地の姫と鬼の2人は全力で花道を潰せ!いいな?」

泊地凄姫「分かってるわ、レックス。必ず大穴開けた奴の死体を…」

泊地凄鬼「お見せしましょう…」

レックス「その意気だ。次に、装甲空母の姫と鬼!お前らは前衛の侵攻部隊を指揮せよ」

装甲空母鬼「了解」

装甲空母姫「ふふっ…」

装甲空母鬼「何がおかしい!?」

装甲空母姫「貴方は前衛を指揮するんじゃなくて、前衛に守ってもらう方が適任じゃないかと思って…」ニヤ

装甲空母鬼「何だとッ…!?」

レックス「やめろ!見苦しいぞ。次に、かつて南方を統べていた3ツ砲よ、お前達は部隊を率いて艦娘を抹殺しろ」

南方凄鬼「…はい」

南方凄戦姫「水底じゃなく、血の海に沈めてやるわ…」

南方凄戦鬼「貴方じゃ無理よ…」

レックス「そして、空母軍を率いて旗艦を守れ。飛行場姫」

飛行場姫「分かってるわ」

レックス「…最後に、戦艦凄姫。お前は負傷して帰投した兵の処理に回れ」

戦艦凄姫「…はい」

レックス「全く、お前が提案し実行した『艦娘深海棲艦化計画』…艦娘の原型をとどめたまま精神を狂わされた艦娘を日本に送り込む作戦。失敗に終わったようだな」

戦艦凄姫「申し訳…ないです」

レックス「そして、花道に後れを取ったと…。まぁいい、頼んだぞ」

戦艦凄姫「…」ギリ

和田長官「むう…花道提督たちは見つからないのか…早く話を聞かねばならないのに…」

大井「すみません、私はあの時捕まえていれば…」

加賀「和田長官…いや、武蔵さん!」

和田長官「ど、どうしたのかね?加賀サン…」

加賀「どういうことですか?何故提督たちが逮捕なのですか!提督たちはただ私たちに迫る危機を伝えに来ただけではないですか!?」

大井「だ、だってアイツらは…」

加賀「貴方はだまりなさい。大井、貴方は彼らのいう事を妄想と決めつけて批難しました」

和田長官「加賀は…提督と会ったのだな?」

加賀「はい、彼は自首するそうです。ただし、条件があると」

和田長官「それは?」

加賀「海軍士官兵学校に、花道提督の鎮守府に所属している艦娘を全て集めろ、とのことです」

和田長官「なるほど…いいだろう」

加賀(私は昨日、提督たちから全てを聞きました。その話は到底信じられない事でしたが、必死に訴える彼らを見て私はそれを信じ、尽くすことにしました)

和田長官「大井!皆を集めて、士官学校へ向かうぞ!」

提督辞退、レックスの襲撃まであと2日

─海軍士官兵学校─

提督「悪いな、わざわざ来てもらって」

イオナ「約束だから」

ヒュウガ「私はイオナ姉様が行くって言うから来ただけよ」

摩耶「おう、来た来た!アタシ達を捕まえようとしに来たぜ、アイツら」

提督「でも、捕まえられないんだな、それが。ま、奴らに最後のアイサツをしてこようじゃねぇか」

武蔵「提督よ!私だ、和田長官だ!提督の要望通り、我が鎮守府に所属している艦娘を全て集めて連れてきた。全てを聞かせてほしい!何故、龍田が行方不明になってしまったのかもだ!」

提督「それじゃ、行ってくるぜ、じゃあな」

叢雲「ちょ、ちょっとアンタ!」

提督「ん?」

叢雲「そ、その、私とアンタが初めて出会ったとき、私が一人で勝てていればアンタの鎮守府に行くことは無かったわ。場所も知らなかったんだからね。あのね、だから、その…巻き込んで、ごめんなさい…」

大和「で、でしたら私だって…!」

提督「バーカ、いろいろとおまえらと一緒に戦ったよなぁ!楽しかったぜ、相棒!こっちこそ、巻き込んでくれてありがとよ」

大和「て、提督しゃん…」ジワ

叢雲「ば、ばか…こんな時に何言ってんのよ…」グス

提督「天龍と摩耶もだ!お前らが…」

摩耶「待ちな…アタシにはそういう事言わなくていいからさ…わり」

提督「そっか。じゃあ天龍、正直言って最初はお前なんかちっとも怖くなかった。でもな、いつもボロボロになってもこれでもかと戦おうとするところ、おっかなかったぜ、お前はよ…」

天龍「へへ、そうか…俺が怖いか。でもな、あんなことを霧の連中に頼んじまった提督のほうが、よっぽど怖いぜ!」

提督「俺は、深海棲艦からお前らを守ることが第一で、ヲ級を守るのがその後だ。お前らを守る下準備をイオナとヒュウガにしてもらったら、あとは俺に残った大仕事よ」

大和「それは…」

提督「親父への最期のアイサツさ。俺は、この戦いで死ぬかもしれねぇんだ」

摩耶「…」

提督「…へっ。じゃあな」

睦月「あ、提督だ!」

日向「お前はまだ騒ぎを起こしたりないのか!」

陸奥「誰かあの透明な鎖を引っ張って引きずり落としちゃってよ!」

曙「アンタなんか提督じゃない!勘違いして高い場所に立つな!」

吹雪「んで、話って何ですか!?」

提督「マリアナ海溝に通路がある!それは深海棲艦共の世界と繋がってるんだ!」

霧島「頭がおかしいんじゃないの?」

提督「そして、沈んだ艦娘がその通路に流されて、流された場所で深海棲艦になっちまうんだ!」

武蔵「な…」

金剛「…」

提督「そしてその通路は2日後に完全に閉じる…これから!深海棲艦がその世界から総力を挙げて襲撃してくる!奴らはお前たち艦娘を掃除してから帰るんだってよ!」

鈴谷「あはは!掃除だって!ウケる~!」

熊野「随分と律儀な深海棲艦だこと」

武蔵「何故、それを知っているのだ…?」

提督「深海棲艦の世界に行って、見てきたからさ、武蔵」

大井「そんな事、ホラに決まってますよ!っていうか、笑わせないで、提督!そんなヨタ話を信じて私たちに闘えって言うの!?」

瑞鶴「アホウの提督!提督が私達に闘えって!?」

提督「いや、お前らは闘わなくていいんだ。なんせ、奴らの砲撃一発でお前らが消し飛んじまうんだ。龍田みてぇにな…」

武蔵「龍田…」

大井「バーカ!だったら誰が戦うのよ?」

提督「俺が戦う」

龍驤「あっはは!何を言うてるんやあのアホウは!ウチらを消そうとした犯人がウツらの為に闘うって?」

<バーカ!
<ハイハイワロスワロス

提督「あぁ、バカに任せとけ」

シュワァァァァァァァア

武蔵「な、何だこれは!?」

金剛「体が薄くなっていく…!」

イオナ「…」ゴゴゴ

ヒュウガ「…」ゴゴゴ

叢雲「アンタは…大ばか者よ~!!」

摩耶「ま、待ってくれ!」

イオナ「ん?」

摩耶「そのさ、私だけ、…頼む」

イオナ「わかった」

大和「ま、摩耶さん…な、にを…」

バシュン!

その時、その場にいた艦娘はその場から消えてしまった。
イオナとヒュウガがナノマテリアルで彼女たちに細工をしたのだ。

提督「…」


そして、静まり返ったその場を後にして提督は実家へ戻る。
父親に別れを告げるためだ。

客「ごちそうさまでした~」

提督「ありがとやんした~」

客「そういえば、花道君さ、鎮守府の人と言った海水浴どうだったのよ?」

親父「それが、ワルイ友達と祭りだったってんだからロクなもんじゃねぇぜ」

提督「だってよ~」

親父「『だって』は言い訳に使う男らしくねぇ言葉だ!」

提督「でもさぁ~」

親父「『でも』もだ!」ガツン

提督「いてーッ!」

客「でも、花道君がラーメン作るとこ、結構様になってるんじゃないの?」

親父「まぁまぁってとこですかね…」

客「それにしても花道君、いい顔してたね~」

提督「俺がっすか?」

客「さっき親父さんに怒られてるとき、何か嬉しそうだったよ」

提督「そ、そうっすかね…」

親父「いや~、暑くなるのか雨が降るのかハッキリしてほしいよな~」

提督(親父…)

親父「花道、お前今日は珍しく真面目に働いたな」

提督「うるせいやい、暖簾下げてくらぁ」

親父「あぁ、頼むぜ」

提督「…『親父、俺実は』…いや、『話したいことが』…何て言えばいいのか…」

親父「なぁ、花道。俺に話があるんだろ、言ってみな」

提督「あぁ、うん…」

親父「花道、お前は暑い夏の日に俺と母さんの間に生まれた息子だ。だから、死んだアレは毎年夏が来ると心配してたっけ、『花道は夏になると死んでしまうんじゃないか』って。そんな時が、来たのか?」

提督「親父、ごめん…」

パコォン

提督「いってーな、何すんだよ!」

親父「うるせぇ、俺には殴る権利があるだろ!せっかく赤ん坊のころからおむつ変えてお世話してよ、やっと店を継がせられると思ったらそろそろおいとましますってか!けっ、ふざけんじゃねぇ!」

バコォン

提督「いてえなぁ、パコパコ殴りやがって!」

親父「で、いつ出ていくのよ?」

提督「明日の夜」

親父「すぐじゃねーか!」バコン

提督「だって深海棲艦がよ~」

親父「やい花道!どうしても行くのかよ!?」

提督「あぁ、行かなきゃ、ダメなんだ…日本の未来を背負ってる艦娘の為に、俺は闘って、死ぬかもしれねぇ…」

親父「そうかよ!」バキッ

提督「くそぉ、何発も殴りやがって…それじゃこっちも行くぜ!」

親父「おう!こいや!」

グゥ ガシッ

親父「こいつめ、こんなに大きくなりやがって!」

提督「親父…」

親父「そうか、じゃあお前は人間の希望を守るために闘うんだな!」

親父『おい、こんなにうまいぜ!花道は天才かもしれねぇな!』

親父『たかがクラスメイト2、30人に嫌われたがなんでぇ。日本には俺と母さんをふくめて一億二千万人も居るんだぜ!』

親父『俺は泣かねぇ。母さんはしみったれたのが嫌いだったからよ。だから、悲しくても泣くな、花道!父さんがついてる、父さんがずっとお前についてるからな!』

提督「ふ…ふぐぅ…」グスッ

親父「おいおい、なくなってばよ~」ナデナデ

こうして、花道とその父親との短いけれど尊い一日が過ぎた。
そして、深海棲艦が攻めてくる当日になった。

朝、スズメの声が開け放った窓の外から聞こえる。
その自然の音以外に何も聞こえない、静まり返った鎮守府。
廊下に散らばっている艦娘の所持品や衣服は、2日前に艦娘が集められたときにそれだけ騒々しかったのかが伺える。
執務室は、艦娘からの嫌がらせだろうか。提督の服や荷物が、落書きだらけのダンボール箱に乱暴に押し込められていた。

提督「…」

ピンポーン

提督「客かな?」

村田「やっほー、花道君!」

提督「村田…それに、佐崎と池田も…」

佐崎「いやぁあのさ、明日から海軍は長期休みじゃん?」

池田「だから、休み中に一緒にキャンプでも行こうと思って…」

なんだよ、なんで、ここにきてこんなに…

提督「ふ、気が向いたらな!」

提督「迷惑だなァ、全くよ…」


大本営第4ビル会議室

元帥「えー、知っての通り、深海棲艦は海から消えた!これも皆のおかげだ。だから、上層部から海軍は1か月ほどの休暇を貰った!」

<ワーヤッター
<アーソウナンデショ
<ウミイコウ

提督「…ふっ」

帰り道

チンピラ1「あ、花道君!」

提督「あぁ、お前ら…」

チンピラ2「中華鳳翔に行ったら、店閉まっててびっくりしたよ~」

提督「あぁ、しばらく休みなんだ…」

チンピラ6「んじゃ、また、今度は花道君のラーメン食べさせてくれよな~」

提督「今度…。おう…」


提督「俺、海なんか大嫌いだったのに…同僚も、建物も込みで、皆俺に行くなってよ…」

─そうだ、お前だけが貧乏くじを引くことはない。今なら間に合う、全てを見捨てて、お前は生きるのだ。

提督「バーカ、ヲ級はどうすんだ?」

─…

提督「んじゃ、行くか!」

夕方

親父「よいしょっと」

提督「おい、別に店閉めなくてもいいだろォがよ!」

親父「バカヤロー!息子が出発する前に、おちおち店なんかやってられるかよ!」

提督「普通に見送れって言ったろ!フツーによ!!」

親父「俺はお前が不憫で仕方ねぇのよ…女の一人にも見送られねぇで死にに行くんだなぁってよ」

提督「俺が戦いに行く理由はもう1個あるんだ。俺には見送らせる女なんていねぇけど幸せにしたい奴なら、居るんだぜ…」

ヲ級「やっほー!」

提督「…お前…!」

親父「深海棲艦…!」

親父「ふん、でも、それがもう1個の理由だってんなら、もう何を言わねぇぜ…!」


親父「したっけ、俺は飲み会に行ってくるからよ、火の元だけ気を付けて出発しな…」

提督「あ、うん…」

親父「じゃあな…」

提督「あ、あの…親父…!」

親父「わかれーるーこーとは、辛いけど~♪しかたーがないんだ~、君のため~♪別れに星影のワルツをうたおう♪」

提督「…ッ…」

提督「今まで、どこに居たんだよ?大和がずっと探してたぜ…」

ヲ級「防府市に、行ってたの…」

提督「あぁ、ショーフクと住んでたところだな…」

ヲ級「忘れられないとこなんだ…」

提督「あぁ、ショーフクがいたもんな…」

ヲ級「ばか、提督さんと居たからよ…」

提督「へへ、バッカ言ってらぁ!」

ヲ級「もうすぐ、日が落ちる…。レックスは本当はこの艦娘たちを全員消して帰るつもりだったの。でも、大丈夫…私が大人しく連れていかれれば、レックスは艦娘に手を出さないって言ってたの…」

提督「たった今、お前は深海の世界に帰れなくなった」

ガラ

イオナ「失礼する」バッ

ヲ級「え?あ、貴方は…!提督さん、これどういうこと!」

提督「いや、お前は帰らなくていいのさ」

シュパッ

提督「サンキュー、イオナ!」

イオナ「がんばって」(敬礼

北西太平洋

フリンク「ジーザス…よ、ようこそ…オハイオ級原子力潜水艦『モンタナ』へ…」

提督「すまない、急に話を付けちまって…」

フリンク「私はモンタナの艦長である、フリンク・エドモントだ」

提督「ありがとう、エドモント」

ヲ級「どういうこと…私をこんな潜水艦に瞬間移動させて。まさか、提督さん、レックスたちと戦うつもり…?」

提督「日落ちは7時10分、日の出は4時10分…約9時間の間、お前が連れ去られないように時間を稼げば、俺の勝ちよ」

ヲ級「…提督、これを持ってって!」

ヒュン パシ

提督「これは…?」

ヲ級「私の頭に乗ってる奴よ!60年間分のエネルギーが溜めてあるわ、危なくなったら、これを奴らに投げて!」

提督「ありがとな!んじゃ、エドモント、じゃあな」

提督は再び光に包まれると消えてしまった。
恐らく、イオナがまた提督を瞬間移動させたのだろう。

その日、いつもと変わらない夏の夜。
時刻が7時10分になり、夜が訪れる。
だが、それは普通の夜ではない。大海の不可思議な法則によって今日まで開いてきた深海の通路。
その通路は9時間後の夜明けとともに永遠に閉じる。
今、そこから深海棲艦と呼ばれる軍勢がやってくる。
彼らの目的は花道の艦娘を全員抹[ピーーー]ることと、たった1人の深海棲艦を連れ帰る事。
迎え撃つは、花道提督ただ一人。

レックス「ふふふ…」

そして、めいっぱい開いた深海の通路から、深海の世界の禍々しいエネルギーが漏れ出でる。
浜辺にはいつも波がうっているが、今夜の波は普通の波ではない。
レックスの大軍勢を共に連れてきたのだから。

提督「ついに来たかよ、レックス。また大勢で来やがって」

ジャラッ…

提督「俺の持ってるのは、地上の草木や動物、海の魚や生き物を始めとした喋らないモノの話が聞けるゴーヤの髪飾り。それに扶桑と山城の髪飾り…」

提督はゴーヤの髪飾りをもみあげに引っ掛ける。
そして扶桑と山城の髪飾りをズボンのベルトに結び付ける。

提督「それに、白鯨…。十分な武装だぜ!」

装甲空母姫「レックス!打撃翌用の軍勢は既に花道の鎮守府に向かったわ」

泊地凄姫「ものの数分で、奴らを消し去るでしょう」

レックス「あぁ、皆殺しだ」


キュイイイイン…

戦艦ル級「強大で巨大な我が軍勢は、花道の鎮守府の破壊を目指す…」

戦艦タ級「覚悟なさい、艦娘!」

しかし、鎮守府は明かりはついているが、電探には何も反応が無い。
辺りを見渡しても、妖精一匹見つからない。

戦艦ル級「だ、誰も…いない?」


提督「…」ニヤ


飛行場姫「レックス、鎮守府には艦娘や妖精が…一人もいないと…」

レックス「な、何だと…では、どこに行ったというのだ!?」

武蔵(ここはどこだ…?確か、提督に呼び出され、そして急に…)

大和「武蔵!武蔵!」

武蔵「聞こえてるぞ、大和…」

摩耶「あぁ、提督の奴は霧の奴らにこう頼んだんだ…『俺の艦娘を全員、北極に移動させてくれ』ってな」

武蔵「なら、ここは…北極か…」

天龍「そうだ、提督は俺たちを隠したんだ…」

叢雲「私たちが、殺されないように…」


南方凄鬼「ええい、艦娘共はどこへ消えた!?」

戦艦凄姫「分からないわ…地下室とかは無かったの…?」

レックス「騒ぐな!」

南方凄戦姫「う…」

レックス「消すべき奴らは、他にも居るだろ?」

戦艦凄姫「さすがに、それは…」

レックス「ふん、奴らも同類だ。消してしまえ」

戦艦凄姫「…」

そのころ、何も知らない他の泊地や鎮守府の提督と艦娘たち。
ようやく深海棲艦が海から居なくなり、仲間たちが死んでいったかいがあったと喜びと安堵に浸っている。
だが、彼らにも悲劇が訪れる。


他所鎮守府─

イケメン提督「はぁ~、明日から仕事は無し…ようやく部下たちにも楽させてあげられる…」

他所艦娘「そうですね、でも提督の戦略があったからですよ!」

イケメン提督「はは、そうか…え?」

他所艦娘「か…は…」ズルッ

浮翌遊要塞「…」ガシャッ 

イケメン提督「な、なんで深海棲艦が…!」


他所泊地─

T督「さて、世の中は深海棲艦の支配から解放され、安息の時が来た…ならばやることは!」

他所艦娘「…?」

T督「艦娘とイチャイチャすることに決まってるだろう!」ガバッ

他所艦娘「きゃああああ!!」

T督「そんなに引かなくてもいいじゃないか…」

他所艦娘「ち、ちが…アレ…」

T督「え?」

重巡リ級「…」ガシャ

戦艦ル級「…」ガシャリ

ドカン


さらに他所鎮守府─

ショタ提督「わー、明日からお休みだ…。もう、闘う必要が無くなった皆とは別れちゃうのかな…」

ドンドン

ショタ提督「入っていいですよ…」

他所艦娘「…」(白目

ショタ提督「ど、どうしたの…?」

空母ヲ級「…」ニヤ

ショタ提督「深海棲艦が艦娘さんを…引きずって…!」

空母ヲ級「…」シュバ

ショタ提督「うわああああああああああ!」

日本中の鎮守府や泊地、基地がレックスの軍勢に襲撃される。
それは小さな鎮守府から大きな鎮守府まで、見境無く攻撃していく。


女性提督「う、うぐ…」

駆逐イ級「…カハァ…」ドン ドン


<きゃああああああ!
<誰か助けて!
<仲間が…姉さんが…!

提督(聞こえてくる!このゴーヤの髪飾りに聞こえてくる!世界中の艦娘と提督の断末魔の叫びが!)

提督「しまった!奴らの狙いは俺の鎮守府だけじゃなかったのかよ!」

提督(奴らは全世界の艦娘を抹[ピーーー]るつもりだ!)

提督「やっぱ、自分たちだけ守ってても駄目だよな…」

ガシ ゴゴゴ

提督「だから出ろや!”白鯨”!!」

ザパァァァァァ

提督「約束通り貸してもらうぜ!出航だ!」

飛行場姫「前方から正体不明の艦艇が接近中!」

レックス「ふん、人間どもの儚い抵抗か…」

飛行場姫「水雷戦隊は前方の艦艇の正体を突き止め、できることなら沈めてしまえ!」

軽巡ホ級「は!!」ビュン


提督「来やがった、深海棲艦だ」

軽巡ホ級「馬鹿め!そんな艦艇で我々に太刀打ちできると思っているのか!?」

軽巡ト級「瞬時に消せ!」

提督(知ってるぜ、だからこの船にはタカオのナノマテリアルで強化してあるんだ…)

白鯨「しっかり踏ん張っててください、提督!」

提督「え?」

白鯨「そぉりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

ドン ズガン

駆逐イ級「な、何だと…!」

軽巡へ級「あの艦艇が…我々を撥ね上げた!」

白鯨「ふふふ、どうですか!?私は霧のナノマテリアルで強化してあるのです、押しつぶしてあげますよ!」

軽巡ト級「ぐああああ!」

提督「お前、喋れるのか?」

白鯨「提督がもみあげにつけてる髪飾りのおかげですよ」

提督「りょーかい!」


レックス「あっちから出迎えてくれるとはな、花道提督!!」

白鯨「私にはナノマテリアルでたっぷり強化してあるんだ!ぶつかれば痛いよ!!」

提督「くく、頼もしいな、白鯨」

白鯨「私も頑張りますが、提督は丸腰で奴らと戦うつもりで?」

提督「いや、ある野郎が気を利かしてくれたんでよ、俺の拳は深海棲艦に効果抜群なんだってよ…だから…」

ギュルン バキン!

軽巡へ級「ぶげっ!」

提督「こんな風にぶん殴ればいいんだぜ!」

チッ

提督「…!」

軽巡ホ級「ば、バカめ!いつまでも避けていられるものか!ハチの巣にしてやる!!」

ガキイイイイン

軽巡ホ級「な…!」

剣「提督、あまりご無理なさらぬように」

提督「た、龍田の剣…!」

剣「提督の付けた髪飾りによって会話できるようになったのは白鯨だけではございません。この龍田殿の剣も、使ってやってくだせぇ!」

軽巡ホ級「つけあがるな!たかが艦娘の近接戦闘武器の分際で!」

提督「そりゃあ!」ブン

ガキン メシメシ…

軽巡ホ級「信じられない…装甲が…うわあああ!」

修理妖精「さすが提督さんね!」

エラー娘「剣を振るのがお上手で!」

提督「長門の応急修理要因の妖精に、エラー娘!!お前らも喋れるのかよ?」

修理妖精「当たり前でさぁ!さっき白鯨と剣が言った通りですよ!」

エラー娘「それに今夜は私たちのパワーは最強なんですよ!」

提督「最強だと?」

エラー娘「それはですね…」

修理妖精「そんな話はあとじゃ!提督、敵はまだまだ来ますぜ~!」

レックス「見苦しいな…俺たちの兵士たちが、たかが人間を相手に普通に戦っている…それとも花道に、何か特別な力でもあるのか…」

飛行場姫「そんなはずはない…はず…(困惑)」

レックス「そう、言い切れるのか?」

南方凄戦姫「5-65に張り付いていた人間だから、もしかすればなんらかの…」

南方凄戦鬼「レックス!私が行ってすぐに奴を始末するわ!」

南方凄姫「それならこの私よ!」

レックス「すでに装甲空母の鬼が向かっている。そんな事より…5-65はどうした?」

飛行場姫「それは、今、捜索隊が探してるわ」


重巡リ級「増援に駆け付けたが、何だこれは!相手はたかが潜水艦が一隻だろう!?」

ザワザワザワ…

提督「おら!」ビュン

駆逐ロ級「ぐううう!!」

重巡リ級「雷巡部隊はどうした!?」

雷巡チ級「魚雷、一斉発射~~~!!」

横一列に並んだ数百体以上の雷巡チ級は一斉に魚雷を放つ。
その大量な魚雷は白鯨をめがけて突き進んでいく。


泊地凄鬼「ふん、最初からこうすればよかったんだ」

南方凄姫「あの魚雷と、同時に放たれる雷巡の副砲は逃れられない…」


エラー娘「魚雷があんなに!」

提督「ちっ、白鯨!音響魚雷を撃て!あんな小っちゃい魚雷なら相殺できる!」

白鯨「了解!!」

ドンドン キィィィン


装甲空母姫「思ったより、速く動くわね。だがしかし…」

レックス「あぁ、奴らは真上からの副砲の砲弾に気付いていない…」


ヒュウウウウウ…

修理妖精「提督、危ない!」

提督「え?」

ザクン

飛行場姫「命中!花道の潜水艦、攻撃停止!」

レックス「つまらないな。戦艦級や、戦闘用艦艇を出すまでも無かったか」

泊地凄姫「止めを刺してしまえ」


修理妖精「気をしっかり持って!」

エラー娘「だ、大丈夫ですか~?」

修理妖精「は、速く私を使って下され!さすれば体力回復よ!」

提督「いや、まだつかわねぇ…」

エラー娘「でも、こんなでっかいのが足に突き刺さって…!」

提督「死なねぇよ…。体の中から力が湧き上がってくる…それで手から溢れたその力が、俺を簡単に死なせてくれねぇんだ」

修理妖精「そ、その力って?」

提督「この感覚は、覚えてるぜ…アレだ…。お前ら、今夜は私たちのパワーが最強とか言ってたな…」

ズブブ ドバッ

エラー娘「あ~!出血で死んじゃう!!」

提督「なんで、今夜妖精であるお前らや、艦娘の道具が最強なのか…」

ギリギリ…

提督「気が付かなかった…『深海棲艦化』だ~!!」

白鯨「…」

提督「レックス共が大勢で来るために深海の穴をでっかく開けたから、そこから奴らの世界のエネルギーが漏れて、それが俺たちに異常な力を与えてるんだ!だからお前たちも、元は艦娘の俺も、半深海棲艦化してんだ…!」

シュウウ・・・

修理妖精「て、提督の傷が治っていく…」

提督「ヤロウ、俺は簡単にはくたばらねぇぜ!白鯨、どうせお前も深海棲艦化してるんだろ?」

白鯨「そのようですね。まいりますぞ~~~~!!」

雷巡チ級「は、反撃が来たぞ~!!」

重巡リ級「くぅ…重巡部隊も出動せよ!撃ちまくれ!!」

陸奥「それは本当なの?大和」

大和「今、話した通りでございます。もう信じますよね?提督は霧の方々にこう頼んだのです」

『深海棲艦が深海の穴を通って帰るまで、俺以外の全ての妖精、艦娘、武装を北極に隠してくれ』

武蔵「深海の穴とはなんだ?」

大和「今夜、彼らの世界から深海棲艦が来る為の通路は、夜明けとともに永遠に閉じるの」

大井「だから、深海棲艦が夜明けまでに私たちを見つけられなければ…」

大和「私たちの勝ちです」

武蔵「夜明けまでか…間に合えばいいのだが…」

大和「其のために、提督は一人で闘っているの」

武蔵「時間稼ぎか。何故、我々に相談しなかった?」

摩耶「お前らが話を全く聞いてくれなかったんだろ?」

武蔵「くっ…」

那智「馬鹿馬鹿しい!何が時間稼ぎだ!皆で深海棲艦共をやっつければよかったではないか!?」

足柄「提督が素直に話せばよかったのよ!」

如月「許可もなく私たちをこんな所に置いてね…」

青葉「自分一人でみんなを助けて、ヒーロー気取りですよ!?」

大井「そうよ、私たち全員で力を合わせれば勝てたはずよ!」

霧島「私たちの生存のための戦いは私たちがするべきよ!」

菊月「あぁ、司令官は間違っている!」

龍驤「自分に酔って、無駄死にの道を選んだんや!」

大井「大体、その軍勢なんて来てるの?来てなっかたら私たちはとんだマヌケよ?」

ビリビリ…

大井「な、何これ…頭に何か、映像が…」

大和「きっと、霧の方が私たちの脳内に真実を映し出しているのでしょう…」

武蔵「何か見えるぞ!あれは…」

扶桑「提督よ…深海棲艦と戦っているわ…」

ゴーヤ「見たことない、夥しい数の深海棲艦でち…」

Z1「ほ、本当だったんだ…」

大井「な、なんでよ…やっぱり提督はダメな奴よ!私たち仲間を信用してないから、黙って一人で無駄死にに行ったのよ!」

那智「そ、そうだな…」

大井「えぇ、あんなになってるのは自業自得さ…仲間に何にも言わないで…ッ?」

バチィン

暁「…」

大井「あ、暁…何するのよ!?」

暁「仲間仲間って、うるっさいのよ!私たちも貴方たちも、一度でも司令官を仲間として迎えたことがあった!?」

大井「う…」

暁「無いでしょう?皆、司令官を怖いだの、犯罪者だのって避けてただけでしょう!?確かに司令官は顔だって良くないし、暗いし、コミュ障だけど、大好きなのよ!私たちの事が!大好きだから、絶対に死んで欲しくないのよ!」

大井「私たちの…事が?」

暁「そうよ!でも、そんな大好きを口で言えないから、司令官のように全部背負って黙って戦うしかないのよ…それを、なんでわかってあげないのよ…」

大井「あ…」

長門「まずい…提督に、鬼クラスが接近している…」

提督「オラオラ、どうしたァ深海棲艦共!そんなヘボい艦種ばっか連れてきても無駄だぜ!!」

駆逐イ級「ぐあああああ!」

提督(とにかく挑発だ、挑発しろ…そうすれば、もしかすればこの部隊を指揮してる奴が出てくるかもしれねぇ)

白鯨「背後から、大型の深海棲艦が艦載機と共に接近です!」

提督「来やがった…。いいか、お前ら。今近づいてきてる奴の事を気づかないフリしてろ…」

エラー娘「了解…」

修理妖精「がってん」


南方凄戦鬼「ふん、最初からお前が出ればよかったのに。そうすれば、兵を無駄に消耗することも無かったのに」

装甲空母姫「えぇ、同じ装甲空母と呼ばれるのも恥だわ」


ビュン

装甲空母鬼「…爆撃!」

提督「そぉりゃああ!!」ブン

カイン スパァン

剣「お前たち深海棲艦の力でパワーアップした拙者は、敵艦載機も全て真っ二つじゃ!」

装甲空母鬼「これなら、どう?」ブン

ガキィン

提督「ぐ…コイツ、下にくっ付いてる化け物の腕で殴ってきやがった…!」

剣「拙者の刃が欠けてしまった…!」

提督(くそ、やっぱ体が思うように動かねぇ!)

装甲空母鬼「あははは!これで、トドメよ!!」

ズバン

長門「く、提督が…奴の一撃を受けてしまった…」

大井「でも、提督はすばしっこいから、本当は急所をぎりぎり外せたかも…」

武蔵「いや、提督がすばやく動けるはずはないのだ…」

日向「アレか…」

長良「アレね…」

武蔵「こんなことになるなら、外しておけばよかった…」

大井「そうか、どこまでも伸びて動きを制限する、体感重量180キロの…透明な鎖!」


装甲空母鬼「なんてのろい男だったの…。私の剛腕にかかれば一瞬だった」

エラー娘「提督!言われた通り気づかないフリして隠れてたけど…」

修理妖精「私を使ってくだせぇ!潰された体も元に戻ります!」

装甲空母鬼「こんな所に妖精が居たのね。消していこうかしら」

ビュン

装甲空母鬼「ハッ!?」

提督「オラ!」

装甲空母鬼「ば、バカな…確かに、腕で殴って骨や内臓を砕いたハズ…何故生きているの!?」

ガンガン 

装甲空母鬼「撃っても、殴っても効かない!貴様、何か防具をつけているわね!?」

提督「あぁ、今はアリガタメーワクだけどな!」ジャラ

装甲空母鬼「そんな防具、破壊してやるわ!」ドン

ドカン ドカン ガキン

ガシャァァァァン

装甲空母鬼「あはは!壊してやったわ!花道の防具を破壊してやったわ!!」

エラー娘「アイツが提督の透明な鎖を破壊した!これで…」

装甲空母鬼「これで、止めを刺すことができる!撃てェ!!」

シュン パッ

装甲空母鬼「な…避けられた…」

提督「ふん!」ブン

装甲空母鬼「な、殴られた…この私が人間如きに…!」

ガン ガン

装甲空母鬼「ぐああああ!」

暁「じゃ、司令官はそんな思い鎖を付けて今まで闘っていたのね…」

日向「せめて、もっと早い段階で外していればな…」

大井「外していたら?」

武蔵「大井も見ただろう、硫黄島の霧の艦隊事件の時。提督が腕力を振るい、ナノマテリアルを駆使しどれほど強かったか」

大井「あ、確かに…」

武蔵「今、鎖のはずれた提督は、艦娘の中なら無敵!人間界では…最強!!」

大和「それは、私も考えていたわ。提督は、深海棲艦に素手で立ち向かっていました。そこで皆さんは考えた事がありますか?どうして艦娘が人間の指揮下のもとで深海棲艦と戦うのか」

大井「まぁ、私たちの<艦娘執行組織>は別としてね。そういえば、なんでかしら?」

大和「理由は、人間は艦娘など比較にならないほど膨大な、何らかのエネルギーを持っているからです。そのエネルギーは深海棲艦に効果抜群です。しかし、人間はそのエネルギーを直接深海棲艦にぶつけることはできません。そこで、人間は艦娘を通して、エネルギーを深海棲艦にぶつけるのです」

大井「なるほど、人間の指揮下に居る艦娘の方が、人間の指揮下無しで闘う私よりも強いって訳ね」

大和「そして提督は、その膨大なエネルギーを送り込むための艦娘を必要とせずともエネルギーを直接、深海棲艦に与えることができる人間なのです」

大井「そ、そんな…じゃあ、人間は全員そんな事できるの?」

大和「いいえ。提督だけが、ただただ…特別なのです」

ハッ・・・ハッ・・・ハッ・・・

装甲空母鬼(当たらない!何故、爆撃、砲撃、打撃攻撃が当たらない!?私はコイツの一挙手一投足まで正確に捉えているのに…こんな人間ごときに!)

ブン シュパッ

装甲空母鬼(くそぉ…ならばあの男の軍服のボタンの模様が分かるまで、集中するんだ…!)

当たれ 当たれ 当たれ 当たれ 当 た れ ~ !

装甲空母鬼「お、おのれぇぇぇぇぇ!!」ドォン

ビリィ

ヒラヒラ…

装甲空母鬼(アレ、おかしいわね…あの真っ二つに破れた軍服だけが、空中にヒラヒラ浮かんでいる…花道はどこに行った?そういえば、私は何をしていたのだったか…)

ゴシャリ

装甲空母鬼「ぶ…」

提督「撃破完了だぜ、コノヤロウ」

装甲空母鬼「な、なんなのよ…コ…イツ…ぎゃあああああ!」

ドボン

剣「やった…海に落ちていった…!」

白鯨「わ、私も、戦いを邪魔させないようにするのは、これ以上無理です…」(ボロボロ

提督「わり、白鯨…こんなボロボロにしちまって…」

重巡リ級「こんな潜水艦如き、装甲一枚も残すな!」

提督「…」プツン

重巡リ級「…え?」

ビュン ドカァン

重巡リ級「ぎゃああああ!」

護衛要塞「さっきと動きが全然違う…速すぎる!!」

修理妖精「へへーん、提督を縛っていた透明な鎖が解けたのだ!」

剣「だから、お前らなんか提督殿の足元にも及ばぬわ!」

白鯨「あはは…きっと、レックスなんかイチコロだったんでしょうね…提督は強いから…」(崩れながら

提督「…」

白鯨「殴られるレックスの顔、見たかったな…。でも、鬼の一人を倒したんですね。これで、駒城艦長にも、顔を立てられます…。さよなら、提督…」

提督「白鯨~~~!!」

ボカァン

エラー娘「白鯨が、骨組みだけになって…ぎりぎり浮かんでいる状態です!」

提督「くそぉ…」

レックス「何だこの、不始末は…」

戦艦凄姫「こうなってしまったのなら、艦娘を捜索している部隊を5-65捜索に回せばいいんじゃないかしら…?」

レックス「ふん、艦娘共を消すなと言いたいのか?」

戦艦凄姫「そうよ、一番重要なのは5-65を連れ帰って[ピーーー]こと。こんな、花道提督抹殺や艦娘抹殺に兵を割いていたら時間の無駄だわ」

レックス「俺が連れてきたこの軍勢は、俺とお前も含めて8億体もの兵と戦闘艦艇が2000。これだけ居れば、3つの事をこなすのは余裕だろう」

レックスが引き連れてきた軍勢は、膨大な数であった。
普通の深海棲艦兵は5億、白兵戦用の衛兵が3億、大型戦闘艦艇が1000、中型戦闘艦艇が1000、待機船舶が500隻。



ザクン ズバッ ジキン

提督「ふん!…はぁ…はぁ…!」

修理妖精「こいつら、斬っても斬っても湧いてくる…!」

剣「まだ、拙者の刃は敵を欲しておりますぞ!」(ボロボロ

提督「でもおめぇ、そんなにボロボロじゃねぇか…」

戦艦ル級「そのまま破壊してやる!」

提督「させるかよ!!」ブン

戦艦ル級「ぐ…」

ゴオオオォォォォ…

泊地凄鬼「花道!この泊地凄鬼が貴様を海の底に沈めてあげるわ!!」ドォン

バリィィィィン

提督「た、龍田の剣が砕けちまった…!」

剣「む、無念なり…!」

泊地凄鬼「これでアナタは丸腰ね!」

提督「く…!避けきれねぇ!!」

泊地凄鬼「ははは!私は砲術の司頭なのよ?避けきれる訳ないでしょう」

提督「1人でアイツと戦うのは、無理だな…」

提督(せめて、武器が有ればな…!)

泊地凄鬼「さて、そろそろ止めを…」

泊地凄姫「待て、その人間のとどめは私が刺させてもらう…」

泊地凄鬼「お前か…。いや、黙って見てなさい。これは1対1の勝負よ、邪魔はするな」

泊地凄姫「ふん…」

武蔵「むぅ、提督一人で、しかも武器もなしでは厳しいか…!」

摩耶「そろそろ、アタシの出番だな!」

叢雲「え?ちょ、ちょっと!」

摩耶「それじゃあ皆、もう二度と会えないかもな」

天龍「何言ってんだ、お前…!」

木曾「何する気なんだよ…!」

摩耶「姉さんたちも、さいならだな。上手く隠れきれよな」

高翌雄「摩耶…」

愛宕「摩耶ちゃん…」

鳥海「どこに行くというの!?まさか…!」

摩耶「残念だけど、霧の奴らにな、『アタシが望んだときに、提督の所へ連れてってくれ』って言ってあんだよ…」

大和「もう、行くのですね…」

摩耶「あぁ。じゃあな」ビュン

暁「行っちゃった…!」

泊地凄鬼「いいか、この世は全て終わりと中断で成り立っているの。生き物も、心臓が止まれば死ぬ、戦争だって終わればそれで良し。私も…自らの肉体と心を終わらせ、この力を手に入れた…」

提督「…」

泊地凄鬼「お前の命も終わりを迎えれば、私の名誉に繋がる。死になさい、花道!」

提督(終わらせる…中断…そうか、分かったぜ…)

提督「来い!エラー娘!!」

エラー娘「は、はい~~~~!!」

泊地凄姫「気を付けろ」

泊地凄鬼「何をしようが、もう遅い!!」ブン


─よっしゃ、あと1回でゲージ破壊完了だ…
─お前のサーバ、確かあそこだろ?
─大丈夫大丈夫、安心しろよ^~
─通信エラーでゲーム中断になるときあるからな

ブォン

泊地凄鬼「あ…何故、私の砲が…いつの間にか消えているッ!!」


─あ、通信エラーだ
─言わんこっちゃない…
─くそ、ページ更新しても入れないぞ

泊地凄鬼「では、私の砲は…まさか…」

提督「これの事か?」(泊地凄鬼の砲装備

泊地凄鬼「何だとォォォォォォ!?」

提督「うおおおお!」ブン

ガキン (砲身で殴る音

泊地凄姫「なるほど、あの妖精は我々の一部の能力を解除できるのか…。そんな兵器があるとはね…最初から叩き落としていればよかったものを…」

エラー娘「やった!敵の武器を奪いました!」

泊地凄鬼「ひ、卑怯よ!武器を貸して!」

泊地凄姫「ふん、どうせ、あの面妖な妖精に奪われてしまうわ」

泊地凄鬼「あ、アナタ…私を見捨てる気…?」

ボゴン ビュン

泊地凄姫「見捨てるものですか。だけど、花道は私が倒す」

泊地凄姫は自らの周囲に展開させている小型の護衛要塞を放つ。
すると、花道の乗っていた白鯨の残骸は大きく揺れるとともに空中に跳ね上がる。
提督たちは同時に放り投げられてしまう。

エラー娘「アブナイ!」

シュパッ

泊地凄姫「ぬぅぅ、消えた…という事は…」

泊地凄鬼「奴は、日本本土に移動した…」

─臥龍公園─

提督「おい!こっちに戻ってきてどうすんだよ!?」

エラー娘「あのまま海に落ちれば、私たちは溺れ死んでいました。それよりはマシでしょう」

提督「そうだな、じゃあ、もっかい行くぜ!…ガフッ」

修理妖精「え、提督!?」

提督「問題ねぇ…ちょっと肺が傷ついただけだ!」

エラー娘「え、へーきって…」

修理妖精「そ、そういえばなんでそんなにボロボロなのに、私を使わないんですか!?それに、出発前にヲ級さんにもらったあの帽子だって、被ればアイツらなんでイチコロですよ!」

提督「まだ使わないし、被らん!!てか、今何時だ?」

エラー娘「えぇっと、11時ですね…」

提督「まだ時間はたっぷりあるんだ。楽しみは取っておきたいんでよ。あと、5時間だ、5時間の間ヲ級と艦娘を隠しきれれば俺たちの勝ちだ」

泊地凄姫「なるほど、時間稼ぎね。通りで艦娘も5-65も見つからないと思ったわ」

修理妖精「い、いつの間にここに!」

泊地凄姫「アナタは自分に注意を引かせたがっているのね」

提督「じゃ、てめぇもぶん殴って告げ口できねぇようにしてやるぜ」

修理妖精「こっちにはエラー娘が居るんでぇ!」

エラー娘「武器なんか取り上げてあげる!」

泊地凄姫「その妖精の能力はこの私には効かないわ」


泊地凄鬼「誰か、砲を…砲塔を寄こしなさい!」

戦艦タ級「お言葉ですが、今は泊地凄姫様がお出ましなので、近寄れば身共まで…!」

泊地凄鬼「チッ…爆炎の…姫か…!」

ジュワアァァァァァァァ

泊地凄姫「ふん」

プチンプチン…

提督「な、なんだ…アイツの周りに炎が…!」

泊地凄姫「この口を縛ってある小型の護衛要塞…口を開ければ!!周囲を圧倒的な火力で焼き払うことができる!」

提督「なんで、俺を燃やしちまわなかった?」

泊地凄姫「やはり私も艦なのでね、お前を撃ちぬきたいのよ。そのために、お前はその妖精の力を使うな」

エラー娘「ぐ…体が動かない…!」

泊地凄姫「そして、私が周囲を焼き払えるという事は、ここに居る人間どもも焼き払えるという事…後はわかるわね?」

提督(くそぉ…何も、手が思いつかねぇ…!)


泊地凄鬼「な、何これは…艦娘が北から来る…北から!」

摩耶「邪魔だ!」ギュン

泊地凄鬼「うわ!艦娘が、北から…」

提督「ぐは…」

泊地凄姫「あははは!抵抗できまい!?」

提督(ぐ…抵抗すれば、ここら一帯が焼き払われる…それを回避するにゃあこっちが多人数になる必要があるな…)

ガン ボキリ

提督「ぐ…!」ゴキゴキ

泊地凄姫「ん?今何か折れた音がしたけど気のせいかしら?」

修理妖精「卑怯だぞ、泊地凄姫~!!」

泊地凄姫「ムシケラは黙っていろ。ねぇ花道、アレが見える?お前がせっかく取り上げた、彼奴の砲だ。捨ててしまわなければお前は今頃私を倒していたでしょうに…」

提督「いらねぇな、そんなストローみたいな砲なんてよ…!」

泊地凄姫「もういいわ、お前は消えなさい…」ジャキン

ビュウウウウウン…

泊地凄姫「粉々になりなさい!」

ザザーッ

花道「ま、摩耶…!」

摩耶「へっ!」

摩耶は泊地凄鬼の砲を拾い上げると、自らの武装にそれを追加する。
そして地面に手をついて、飛び上がり…

泊地凄姫「な、なにィ~~~~!!?」

ズガン

泊地凄姫の顎に蹴りを一発。
態勢を崩したところに、提督の渾身のパンチがめり込む。

泊地凄姫「い…ギザマ、何者だ~~!?」

摩耶「おう、アタシは摩耶ってんだ。立てなくなるまで可愛がってやるから、覚悟しな」

泊地凄姫「たかが艦娘ごときが~~~~!!」ビュン

提督、摩耶「うおおおお!」シュバッ

ズガン

泊地凄姫「がは…卑怯な…」

提督「はァ?卑怯だァ?」

摩耶「勝てばいいんだ、勝てばよ!」(ゲス顔

泊地凄姫「そんな…!」

ガン

泊地凄姫「か、勝てないわ…!」

泊地凄鬼「大丈夫!?」シュバ

泊地凄姫「あ、アナタ…」

提督「これで丁度2対2だな、ぶっ飛ばしてやんぜ!」

泊地凄鬼「まぁ待ちなさい。お前は艦娘共と5-65を守るために時間稼ぎをしている。だが鎮守府に艦娘は居なかった…」

提督「何が言いてぇんだ!」

泊地凄鬼「ということは、艦娘共と5-65をどこかに隠しているとしか考えられない。その隠し場所は…」

泊地凄鬼「北 極 か」

提督「…あ…」

摩耶「しまった…アタシがやってきた軌道を読まれたのかッ!」

泊地凄鬼「私は既に軍に伝えた。今頃、北極上空には空を覆い尽くす程の艦載機と戦闘艦艇があるだろう」

提督「ヤロォ…なら、俺たちに出来ることは一つだ…!」

摩耶「あぁ、さっさとコイツらを倒すことだな!」

泊地凄姫「さぁ来なさい!全力で相手するわ!!」

ガシャン バタン …

重巡リ級「…」

ガタッ

重巡リ級「…!!」ドン

シーン…

重巡リ級「違ったか…」

<こちら、第67艦隊。北極に大量の艦娘が隠れているとの知らせが入った。すぐに向かうぞ

重巡リ級「あぁ、了解…ん?」

ピコンピコン…

重巡リ級「待て、レーダーに反応がある」

<仲間じゃないのか?

重巡リ級「分からない、だがこの動きが深海棲艦ではない…!」

<距離は?

重巡リ級「近づいてくる…10m、9m、8m、6m、5m…」

<おい、お前が居る部屋から5メートルって言ったらもうその部屋に入っているはずだろ。壊れてるんじゃないのか?

重巡リ級「4m、3m、2m…どこだ、どこにいるの!?」ドドドド

放った弾丸は壁や机に当たるが、反応の持ち主はどこにも居ない。
反応との距離残り1m。これならもう目の前まで迫っているはずだが…。

重巡リ級「はぁ、はぁ…まさか…!」

ガシャァン バチッ

重巡リ級「上だァァァァァァ!!」

月光丸「カァァァァ…」

重巡リ級「きゃ、きゃあああああああああ」

グサリ

<どうした!?返事をしろ、返事を!!何があった!?

戦艦ル級「どうした!?」

重巡リ級「」

戦艦タ級「酷いことするのね、艦娘の仕業?」

戦艦ル級「艦娘が刃物を持っていたとしても、コイツの装甲ごと体を貫くことはできないだろう。それに…」ネバァ…

戦艦タ級「何かの粘液?」

戦艦ル級「これは深海棲艦のモノだが、こんなに粘液を出すヤツは居たか?」

戦艦タ級「分からない、地上の動物が紛れていたんじゃないの?」

戦艦ル級「その可能性が一番だろう。何か、この鎮守府に潜んでいた動物にやられたのだ」

戦艦タ級「…」

戦艦ル級「どうした?」

戦艦タ級「あ、アレ…」

月光丸「シャアアア…」

戦艦ル級「な、何なんだアイツは…」

グシャッ ドムッ ブシャア

戦艦ル級「」

戦艦タ級「」

月光丸「…グゥゥゥゥウウ…」

─そのころ、ヲ級が隠れている潜水艦内部。
ヲ級は触手のような領巾を伸ばし、輪を作りその輪の中には北極の艦娘たちとその上空の艦載機軍を見ていた。

ヲ級「艦載機が凡そ11万以上…揚陸艦が30隻、空母級の深海棲艦が1000体…このままじゃすぐに消し炭にされるわ!」

ガタン

ヲ級「ここが見つかるのも、時間の問題ね。見つかればこの艦の乗員に迷惑掛かっちゃうし、提督には悪いけど、私は彼女たちを守るために闘わなくちゃいけない」

フリンク「ん?どうした、シーシップガール?」

ヲ級「私、行きます。緊急脱出艇を一つ、出してください」

フリンク「了解」

ヲ級「えっと…こうして…」

フリンク「お前さんは、生きたいか?」

ヲ級「…え?」

フリンク「ガール、お前さんはやりたいことをやりたいんだよな?俺みたいな部外者が言うのもあれだけどナ、やりたいことをやるには、生きていないとな!逆に、生きているからにはやりたいことをやらなきゃな!!」

ヲ級「はい!」

花道の鎮守府の工廠…

浮翌遊要塞「いない!工廠にも居ないとは…」

護衛要塞「これは一体どういうことだ…」

浮翌遊要塞「連絡が来た!なんだと、北極に艦娘共が隠れている!?」

護衛要塞「マジか…おいおい…」

軽巡ホ級「居たぞ!艦娘ではないようだが、消してしまって損は無いはずだ!」

ヲ級(なんとか、全力でここに駆け付けたはいいけど、見つかっちゃった…)

軽巡ホ級「艦娘め、その憎き首をもらうぞォ!」

ヲ級「私は第108機動部隊所属空母ヲ級5-65だ!」

護衛要塞「馬鹿め、こんな場所に5-65が居るものか!」

浮翌遊要塞「たわけめがァァァ!!」

ヲ級「…そう」

ドムッ バキリ ドォン

軽巡ホ級「うげ…」

護衛要塞「こ、この領巾の力は…まさか…」

浮翌遊要塞「本物の…5-65だ!ぐああああああああ」

ヲ級「はぁ…はぁ…」

ヲ級(さっき提督に渡した、私のエネルギー溜めた帽子…やっぱりアレが無いと、立ってるのもしんどいわ…)

ヲ級「あなた…」

月光丸「シャアアア…」

ヲ級「なるほどね、この工廠はロシアの造船所に通じてるのね…霧の人の力?」

月光丸「…」コク

ヲ級「なら、すぐに北極にまで行けそうね。手伝ってくれる?」

月光丸「…」コク


ロシア─アルタ
とある海軍造船所

娘「わー、いろんな船があるね~」

母親「当たり前でしょう、海軍造船所ですもの」

娘「ママったらいやねぇ、歳を取ると心に新鮮な感動が無くなって」

母親「あら、このムスメ生意気ね。ていうか私は貴方の母親じゃないでしょう?」

娘「そんなこと言ったら私だって娘じゃないじゃん…」

母親「それもそーね」

娘「あ、来る」

母親「やっぱり来ちゃう?長い間待ってた甲斐があったね」

娘「じゃあ、行きますか!!」

ビリビリビリ…

ドバァン

ヲ級「やっと着いた!ちょっと荒っぽかったけど…」

月光丸「アァァ…」

ヲ級「でも…」

重巡リ級「待て!逃がさんぞ!!」

一般人「なんだ!?1人の女と怪物を、大量の深海棲艦が追いかけていく…」

ヲ級「あぁ、地上のエネルギーが体に入ってくる…あともう少し…」

月光丸「ガァァァァァアア!!」ビュン

護衛要塞「いてっ!」

重巡リ級「なんだ、貴様!我々と戦うのか!?」

戦艦ル級「見たところ、我々の世界で生まれた出来損ないだな…すぐにバラバラにしてあげるわ!」

月光丸「グゥ…」ブシャ

ヲ級「無理しないで!…え!?」

ジャキン ドォン ガキン!

戦艦ル級「何者だ、貴様ら!?」

母親「あら、何者だなんてひどいわね」

娘「やっぱり、深海棲艦ってモノを知らないわよね」

母親→ビスマルク「この戦艦ビスマルクと…」

娘→島風「島風も知らないなんてね~」

ヲ級「び、ビスマルクさんに島風ちゃん…!提督は自分の艦娘を全員、北極に隠したんじゃ…!」

ビスマルク「だからね、私はそれよりも前に…」

島風「人間になってたのよ!!」

ビスマルク「一旦、艤装を全部解体してね…。んで、また同じ艤装を作るのに苦労したわよ~」

ヲ級「無理やりね…」

島風「まぁ、そこはお話の都合って事で…」

ビスマルク「私にはすぐわかったわ、提督がわざと自分を悪く見せてるってね」

ガキン ドオン バァン

戦艦タ級「強い…なんでこんなにも強いの!?」

戦艦ル級「」

ヲ級「本当に、なんでそんなに強いのよ…?」

ビスマルク、島風「分からない?」キュイイイイ

ゴウン・・・ゴウン…

響「アイツら、私たちを探してるけど、すぐに見つかってしまう…」

陸奥「こんな雪に埋もれてるままじゃ、逃げることもできないわ!」

イムヤ「逃げたとしても、どこに逃げるのよ…」

暁「もう、バカ~~!!何をみんなで絶望ムードになってるのよ!?」

長門「暁…」

暁「誰も味方になってくれない、助けてくれないなかで絶対にあきらめなかった男がいるわ…。私たちが罵り、批判する中で、ひたすら私たちを守ろうと、闘ってきた人が居る。放っておけばよかったのよ、そうすれば痛い思いも苦しい思いもしないですんだのに…」

大井「…」

暁「でも、花道提督はあそこで闘っている!私たちがここでおめおめと死んだら、提督はどう思う?皆、提督に文句の一つも言いたいでしょう、だけど、もう一度提督に直接会いたくはない?提督に褒めてもらって、一緒にお話しして…」

北上「提督…」

加賀「提…督…」

暁「諦めたらそこで戦闘終了よ!」

空母ヌ級「おかしい…電探には反応があるのに、上からじゃ見当たらないぞ!」

空母ヲ級「ふん、どうせ雪の下にでも隠れてるんでしょう。ならば、ここを全て破壊してしまえばよい」

衛兵「全艦載機、爆撃翌用意!揚陸艇、機銃、主砲開門!!」

衛兵長「発射!!」

ドォォォォォン


電「はわわ!隣の雪原が吹き飛ばされたのです!」

武蔵「うろたえるな、皆の者!今こそ、我々艦娘の反撃だ!」

暁「武蔵さん…」

武蔵「暁の一喝が無ければ、私たちは戦意を失っていたぞ。そうか、提督も一人で闘っているのだ、艦娘が提督に無理をさせてはいけないだろう?」

暁「…」

長門「さぁ、皆の者!今飛び出し、戦いにゆくぞ!」

武蔵「あぁ、そして、海へ向かって一直線に走れ!!」


衛兵長「残りは、あの雪原か。あれを吹き飛ばせば、艦娘を捜しやすくなるだろう」

衛兵「爆撃開始、砲撃開始!!」

ドゴォン

衛兵長「な、何だ!?この艦に…何かが衝突したぞ!」

ビスマルク「Feuer!!」

衛兵「ぐあっ!」

島風「今よ!皆!」

長門「敵の揚陸艇の動きが止まった!ここから出れるぞ!!」

武蔵「うむ!!」

ザパァァン… キラキラ…

叢雲「凄い…海から、深海棲艦のエネルギーが溢れてる…」

武蔵「深海棲艦の世界とこの世界をつなぐ穴は、目いっぱい開いているからな」

大和「深海棲艦エネルギー…あっ…」

暁「大和さん、どうしたの?」

大和「こ、この感じは前に…まさか、武蔵…!」

暁「な、何?どういう事よ…」

大和「暁ちゃん、恥ずかしいけれど…」

ビリビリ メキッ

大和「こういうことです!!」(深海棲艦化

ゴーヤ「あはは!あの時と同じ力が湧いてくるでちッ!!」(深海棲艦化

大鳳「邪な感情はありませんが、私は深海棲艦と化しています!!」(深海棲艦化

長門「…」(深海棲艦化

天龍「へっ…」(深海棲艦化

木曾「これなら、十分だな…」(深海棲艦化

暁「皆、深海棲艦になっちゃった!って、私も…」(深海棲艦化

大井「む、武蔵さんは、これを目的として…」(深海棲艦化

武蔵「そうだ。だが、今夜の奴らの世界のエネルギーはいつもの数十倍…それを受けた我々は、すなわち数十倍もパワーアップするのだ!!」

衛兵「あの雪原の上に、突如、多数の艦娘の反応あり!」

衛兵長「よし!先刻、僚艦を破壊した奴らを沈めた後、奴らを消し飛ばす!」

島風「そうも、いかないのよねー」

衛兵長「き、貴様…ぐぎゃああああ!!」

島風「バイバーイ」

衛兵「ぬ、いつの間に!?」

島風「雪原の上に皆が出てる…やっぱり、アレを進んで受けたんだね、私たちみたいに」

ビスマルク「ええ、深海棲艦化すれば、あの大軍勢に対抗できるわ」

ヲ級「そんな事すれば…二度と戻れないかもしれないのよ?」


武蔵「うおおおおおおおお!」ブン

長門「ビッグ7の力、侮るなよ!!」ドン

天龍「怖くて声も出ねぇか?オラオラ!!」ビュン

衛兵「突如現れた艦娘共が、この揚陸艇と兵に攻撃を仕掛けています!」

衛兵長「ふん、この揚陸艇に収容されている衛兵全てを出せば、奴らもすぐに消えるだろう」

衛兵「もう出しています!」

衛兵長「なに!?」

衛兵「それに、いつもと全く違います!普通の艦娘とは比較にならないスピード、火力、装甲!!全く太刀打ちできません!」

衛兵長「うつけもの共め!所詮は、小さき艦娘。戦闘艦艇の一斉射撃で消し炭に出来る。増援を用意しろ!」

戦艦長「もう4隻が来ている。戦闘艦艇、主砲開け!砲撃翌用意!!」

空母ヲ級「コイツら、どこから湧いて来たのだ!?」

空母ヌ級「強い!全く攻撃が通用しない!」

空母ヲ級「戦闘艦艇が砲撃を準備している!この艦娘共にだ」

空母ヌ級「そんな…味方の我々ごと吹き飛ばすつもりか!?」

ドォン

衛兵長「ぬう!この揚陸艇が破壊された…!?」

ドカァン

戦艦長「何!?この戦闘艦艇に砲撃を放ったのは誰だ!?」

大井「船?味方なの?」

叢雲「あ、アレは…艦娘移動船舶!」

北上「と、それに乗っている…ビスマっち、島風っち、それに、ヲっちゃん!と、提督が連れてきた変なの…」

ヲ級「皆、深海棲艦化しちゃったの?それだけは止めたかったんだけど…」

戦艦長「たかが地上の艦艇が一隻だろう!?消し飛ばせ!」

ヲ級「この艦娘用に作られた船舶もまた、深海棲艦化している…」バッ

ビスマルク「ちょ、ちょっと!」

ヲ級「私の友達に何をするーッ!」

シュババッ

キィィィィィィン バラッ ドォン

島風「す、すご…触手みたいなのを大きくして、まるでスプーンに水を放った時みたいに跳ね返した…」

ビスマルク「信じられないわ…」

空母ヲ級「4隻の戦闘艦艇の砲撃を全て弾いた…アレは間違いなく、本物の5-65だ!」

戦艦長「そうと分かれば、すぐに敵対行動を止めさせ、連れてこい!」

木曾「この隙だ、一気に奴らを倒すぞ!!」

大井「えぇ!そうするわ!」

ヲ級「手出し無用よ!」

陸奥「な、何…?ヲ級ちゃんの声が、直接頭に響いてくるわ…」

ヲ級「貴方たちは、きっと進んで深海棲艦になったのね!だったら、もう覚悟したのね?」

暁「ど、どういうこと?」

ヲ級「見て、私が居るからこの者どもは…もう貴方たちを追いかけられない。だから…」

シュル ビシ グググ…  バリィィィン

ヲ級は背中から伸びる触手を目いっぱい広くし、それを敵戦闘艦に巻き付ける。
そして、触手を引っ張ると、いとも簡単に戦闘艦が砕け散る。

ヲ級「貴方たちの行くべき戦いに行きなさい!!」

ヴォン バリィィィン

ヲ級「私には分かるわ、皆が何のために深海棲艦化したのか」

戦艦長「うおおお!これが最強のエネルギータンク、5-65の力か~~!!」

大井「行くべき戦いって何のことよ?」

北上「そのうち、分かるよ。大井っち」

大井「う~ん、提督を助けに行くって事?」

北上「違うね~、私たちと同じヒトを助けに行く戦いだよ」

大井「も~、皆分かったような顔して!!」

ヲ級「提督は、皆を死なせまいとして戦ってるから、絶対に行ってほしくないけど…こうなっちゃったら、仕方ないわね!」

武蔵「だが、ヲ級はどうするのだ?」

ヲ級「見たでしょ?私は大丈夫!提督だって私が助けるから大丈夫!」

戦艦ル級(f)「かかれ!艦娘共は一人残らず殺せ!そして5-65を連れ帰るのだ!」

飛龍「フラグシップ艦があんなに…これじゃ無理ですよ!」

ヲ級「さーね、やってみなきゃ、わかんないよ…」フラ

ドサッ

加賀「ヲ級さん!」

ヲ級「…やぁ」

加賀「いきなり、船舶の甲板に落ちるなんてって、こんなにやつれているわ…きっと、エネルギーを全部使ってしまったのね」

ビスマルク「あとは私たちが戦うわ!あなたは休んでて!」

島風「私も闘うから、ヲ級ちゃんはゆっくり休んでエネルギーを補充して!」

加賀「私だって島風さん達と戦います」

天龍「俺も一緒に…」

叢雲「な、なら私も!」

大和「私もです」

ヲ級「それが休んでも居られないのよ…速く、皆を送り出さなくちゃ…」

天龍「どこにだよ?」

ヲ級「それぞれの、行くべき戦いの場所へ」

武蔵「それでは皆の者!それぞれは早速戦いの場え向かえ!武運を祈る!!」

蒼龍「はい!」

雷「頑張るわ!」

雪風「雪風は沈みません!」

武蔵「大井に暁よ、我々艦娘にとって、一番大事な守るべきものはなんだ?」

大井「それは、人間でしょ?」

武蔵「では、その人間の声が聞こえないか?」

暁「聞こえるわ…自分の艦娘を脅かされたり、鎮守府を破壊されたりして絶望している人間たちの声が…」

武蔵「そうだ。人間を絶望させ無いためには、何を助ける?」

大井、暁「あっ…(察し)」

武蔵「私たちはもう行く。何も、強制ではないからな。好きなことをすればいいのだ」ビュン

大井「そうだったのか…このままじゃ、私たちだけじゃなくて他の鎮守府の提督や艦娘も殺されちゃう…」

暁「だから、それらを助けに行くのね…」

─他所鎮守府─

戦艦タ級(f)「ふふふ…私たちから逃げられるとでも思ったか?人間とその艦娘共め」

他所提督「ぐ…これまでか…」

他所艦娘「ハァ・・・ハァ…」

戦艦タ級「消えろ」

グシャッ ドォン

戦艦タ級「ぶは…だ、誰だ…私を砲身で殴った奴は…」

武蔵「大和型戦艦2番艦の武蔵!」


長門「戦艦長門だ!」


赤城「航空母艦、赤城です!」


イムヤ「伊号型潜水艦伊168、イムヤよ!」

ゴーヤ「海の中からこんにちわー!ゴーヤだよ!」


愛宕「愛宕よ!」


隼鷹「隼鷹さ!」

飛鷹「飛鷹よ!」


日向「航空戦艦日向と…」

伊勢「航空戦艦伊勢よ!」


レックス「無様な…鬼と姫が2人がかりでも、たかが花道と艦娘一匹も倒せないとは…。あの2人は花道を制したとしても、罰を与えてやる」

飛行場器「レックス、5-65発見の報告もあるわ」

レックス「映せ」

飛行場器「映したわ…って、これは…」

レックス「どういうことだ!5-65が、俺たちの戦闘艦を潰している!!」

衛兵長「レックス!鎮守府撃滅に乗り込んだ各艦隊からの報告が!」

司令官「突如現れた花道の艦娘共によって、わが軍が次々と倒されていきます!」

レックス「な…なんだと…」

戦艦長「こちら、北海道近海に出撃した、第309艦隊!突然現れた花道の艦娘によって、部隊が壊滅していきます~」

艦隊長「本州に向かった艦隊です!本州に向かった25つの艦隊のうち、すでに10の艦隊が倒されています!」

レックス「何という事だ…」

他所艦娘「うぐ…」

T督「おっ、大丈夫か大丈夫か」

他所艦娘「皆、バラバラに別れてしまいました…他の娘たちは今頃どうなっているか…」

T督「いいから、俺たちだけでも逃げるんだよ…」

他所艦娘「だめよ、アイツらからは逃げられないわ…」

空母ヲ級(f)「その通りだ、害悪なる兵器め。お前たちは私たちから逃げることなどできないのだ、疾く消えよ…ん?」

夕立「ここで、素敵なパーティーやってるっぽい?」

空母ヲ級「あ?何だお前…」

夕立「ここでパーティー…」

空母ヲ級「やっておらぬわ、そんな地上のバカ騒ぎなど!」

夕立「それじゃあ、やっつけちゃおうかな…」ガシャ

空母ヲ級「夢でも見ているのか!?愚か者め!!」

夕立「夢は寝て見る物でしょ?あなたも、寝ればきっと素敵な夢見れるっぽい」

空母ヲ級「ぎえ…」ドカァン

そう、我々、花道提督の艦娘は他の鎮守府の艦娘、妖精、武器、提督、憲兵を助けるために戦う。
命を懸けて。
命はもう惜しくない。我らは命懸けで闘う。
我らは既にこの深海棲艦の大軍勢と戦う力を得てしまった…奴らの世界のエネルギーを浴びて。
<深 海 棲 艦 化>
深海棲艦化した我々は海に飛び出し闘い続ける。もう元に戻れない。
我々を元に戻すには、地上の強いエネルギーをぶつけなければならないからだ。
<花 道 艦 隊>
では、その強いエネルギーを持つ者はどこにいる?
花道すらも深海棲艦化の影響を受けているので花道には頼れない。
それならば、他の鎮守府の艦娘に元に戻してもらえば、だって?
ダメだ、もう普通の艦娘では我々に太刀打ちできるものはいない。
つまり、我らを元に戻せる者は一人もいないのだ。
だから、我々は他の鎮守府の為に戦う。
この世界から、艦娘、いや、人類の希望を守るため。

長門(だから、残された提督よ、スマン…がんばってくれ…そして何一つ、レックスの思い通りにさせるな!)


泊地凄姫「爆炎を喰らえ~~~!!」

ガキン ガキン

摩耶「効かないなぁ、アタシは今、お前らの世界のエネルギーを浴びて強くなってるし、お前らの武器も持ってるんだぜ?」

泊地凄鬼「ならば、上と下からだ!一斉に飛びかかられて、バラバラに吹き飛ぶがいい!!」

提督「もうお前らに出来るのは、たんこぶこさえる事しかねぇんだよ!」ビュン

バキン

摩耶「おりゃああッ!!」

ゴキン

泊地凄鬼「ぐは…そうか…そういう事だったのか…!」

泊地凄姫「ふ、2人掛かりとは卑怯なァ~~~!?」

提督、摩耶「寝言は寝てからほざきな、タコ!!」ブン

ガキン

泊地凄姫「私も…戻れるのか…青い海の上に…!」ガクッ

提督「寝てな。よく眠れる、良い月夜だぜ」

泊地凄鬼「」

泊地凄姫「」

提督「ふぅ、んで、来ちまったのかよ?」

摩耶「ふん、お前と決着をつけるのはこのアタシだ。深海棲艦になんか、お前を倒されてたまるかよ。でも、皆が隠れてる場所、バレちまったな…」

コツン…

提督「バーカ!なっちまったものはしょうがねぇ!こうなりゃ敵のアタマのレックスを今すぐにぶちのめすだけよ!」

摩耶「そりゃあ、何か策でもあるのか?」

提督「ああ、あるぜ」

エラー娘「うわあ、提督さんが勝った~~!!」

修理妖精「私は信じてましたよ~!」

提督「使えばどんな傷でも復活する応急修理要因、敵を戦線離脱させられるエラー娘…コイツらとおまえが居ればな!」

摩耶「そうだな…」

提督「ここは長野…海まで時間かかりそうだな…エラー娘、俺たちをここから離脱させるんだ、できるな?」

エラー娘「はい!」

>>1です。

乙ありがとうございます。こんなつまらん話ですが、一言だけでも何か感想をいただければ励みになります

─艦娘待機船舶甲板上─

加賀「まだ敵は来ます、応戦して!」

天龍「大丈夫か、ヲ級!こんなに弱っちまってよ~」

ビスマルク「無理もないわ、さっき少しだけ補給したエネルギーを全部使っちゃったのよ。しばらく動くこともできそうにないわ」

島風「もう皆がそれぞれの戦いに出発したから、加賀さん、天龍、叢雲、大和さんのやることはもうない。ここの敵は私たちが一掃するから!」

大和「では、私たちはこの後どうすれば…」

天龍「分からねぇか?ちょっと悔しいが、一番安全にヲ級を守る方法はいっそのことヲ級を提督のところに連れていくことだ」

雷巡チ級「魚雷発射~~~!!」

ビスマルク「分かったら、さ、行って!」

叢雲「行くわ!」

雷巡チ級(f)「逃がすか~~~!!」

島風「行かせないよ。なんたって私には殴り[ピーーー]気まんまんの連装砲ちゃんに、轢き[ピーーー]気まんまんの連装砲ちゃん2号!」

連装砲ちゃん<ガァァァァァァァ!! (ガキン

雷巡チ級(f)「ぐあっ…!」

ビスマルク「うふふ…前は海水で日本を沈めようとしたけれど、今度はこの海水で貴方たちを沈めてあげるわ!」

ドパァァァァン

戦艦タ級(f)「な、何!?突然海水が噴き出して…海に引きずり込まれる!」

天龍「アイツら、無茶しやがって…」

ヲ級「ゴホ、ゴホ…私なんていいのに…」

加賀「いえ、皆で提督に大きな恩を押し付けてあげましょう!」

叢雲「そうね…一生頭が上がらないようにしてあげるわ!」

北太平洋海上─

修理妖精「どうします、提督!敵は球体の陣形を組んで、その中にレックスの乗っている旗艦を隠しています!」

提督「さて、どうするかな…」

エラー娘「あ、敵です!深海棲艦が4隻ほど接近してきます!」

摩耶「4隻?なんで4隻なんて数でよこしたんだ?」

戦艦レ級(e)「小賢しい人間、花道め!」

戦艦レ級「この戦艦レ級が、今までの深海棲艦と同じだと思うなよ!」

ドォン

摩耶「あぶねぇ!」

戦艦レ級「機銃を撃ちまくれ!一発でも当てればいい!」

戦艦レ級「そうだ、当てれば動きを鈍くすることぐらいはできる!そこを嬲り殺しにするんだ!」

摩耶「ちぃ、一旦距離を取るぜ!」

提督「待て、アレはずっと避けられねぇ…ワリィがお前ら、少し無茶するぜ!」

戦艦レ級(e)「あはは、バカだなァ!正面からまっすぐに向かってくるぞ!この艦載機軍に囲まれて撃たれるがいい!」

ビュゥン

戦艦レ級(e)「は、速い!横をすり抜けていった…どこだ!?」

戦艦レ級「ば、バカ…お前の背中だ!」

戦艦レ級(e)「なに~~~~!?」

提督「貰うぜ、この尻尾とお前らの上着」

ブチッ ビィィ

レ級尻尾「ギャアアアアア!」ビチビチ

レ級s「」

摩耶「そうか!お前が尻尾と上着を盗ったのは、一撃で死なないための装備か!」

提督「一応尻尾が2つとパーカーが2着ある…これを着てれば、運が良ければ敵の陣に紛れ込めるかもしれねぇ」

エラー娘「なるほど!」

提督「おい、海に落とされなくなければおとなしくしてろ」

レ級尻尾「グウ…」

提督「でも、まだ厚着しなきゃな…」

戦艦レ級「まてぇ!!」

修理妖精「あ、また大量のレ級が追いかけてきます!」

エラー娘「また移動しますね!」

バシュン

大型戦闘艦艇─

飛行場姫「…」

衛兵「花道め、また得体のしれぬ技で瞬間移動を!」

衛兵長「せっかく奴の位置を捉えたのに、また移動するか!」

飛行場姫「慌てないで、私には分かるわ。この、『心眼のヘンダーソン』にはね」

衛兵長「心眼…ですか…」

飛行場器「奴の瞬間移動には法則がある。それは、『戦闘が行われている場所から』、または『つい今まで戦闘が行われていた場所』からしか移動できない。あ、今花道は戦艦レ級の武装を奪ったわ。だがまだよ、花道はまだ武装を手に入れるつもりよ」

衛兵長「奴は次に何を狙うのですか?」

飛行場器「分からないけど、次に現れたら私の一撃を喰らわせてやる。この『心眼』でな」


南方凄姫「この大軍勢の旗艦である我々が乗っている艦艇『クイーン』はその全長800メートル!そしてこの『クイーン』を球体状に取り囲んでいる兵はその数79万5千5百!衛兵、その数5万名!」

レックス「この陣を突破できるはずはない!だが、花道には何か企みがあるようだな」

南方凄姫「そうね。だけど、すでにヘンダーソンが向かったわ」

レックス「『心眼』…花道め、その恐怖をとくと味わうがいい!」

衛兵「レックス!花道に敗北した鬼と姫が帰還しました!」

レックス「アイツらには失望したぞ…帰ればどうせ重労働の刑だが、今は捨て置くがいい。戦艦凄姫でも行かせてやれ。負け犬同士気が合うだろ」


戦艦凄姫「…」

装甲空母鬼「…」

泊地凄鬼「…」

泊地凄姫「…」

戦艦凄姫「そう」

小型戦闘艦内─

提督(レ級変装)「…」

摩耶(レ級変装)「…」

戦艦長「花道はどうした!?」

提督「ここに居るぜ!」

戦艦長「なにィ~~~~!?」

エラー娘「…」キュイイン

提督「悪いが、エラーが発生した。おととい出直して来いバーカ」

戦艦長「ぬああ!何だと…気が付いたら艦の甲板からはじき出された…」

摩耶「これで、この戦艦は乗っ取れたな」

エラー娘「お役に立てて何よりですよ~」

修理妖精「お前さんが少し力を使っただけで、この戦闘艦の敵乗員が全員海に弾き飛ばされるんだもんなぁ」

提督「よっしゃ、すぐにあの球体に飛び込むぜ!」

エラー娘「どうせなら、もっと厚着しますか?」

提督「いんや、これ以上デカい艦だと小回りが利かなくなるからな」

エラー娘「そうですか。では、ちょっと前を失礼しますよ~」

提督「あぁ」

飛行場姫「見えた!小型戦闘艦『矢笹目』!私の心眼がお前を捉えたわ、花道!お前のその頭を砕いてあげるわ…」
                イッシュン  トドキ ウガチ モドル  メテオ
飛行場姫(心眼のヘンダーソン…『一瞬で 届き 穿ち 戻る 隕石』!!)

ガシュッ

スパァァァァン…

エラー娘「あが…」

ズゴォォォォン

提督「がッ…!」

摩耶「て、提督ーッ!?」


飛行場姫「よし、これで花道の頭は粉々に弾けただろう!私たちの勝利よ!!」

衛兵長「やりましたね、ヘンダーソン様!全艦、全兵は小型戦闘艦『矢笹目』に集中攻撃だ!」

ガシャン ガシャン ウィィン ジャコン


修理妖精「な、何か艦載機みたいなのが凄い速さで飛んできて、エラー娘を切断して…提督の頭を砕いた…!」

摩耶「おい!提督!!」

エラー娘「…」ボオオオオ

修理妖精「む、むごい…切断された時の摩擦で、燃えているのか…」

摩耶「しっかりしろよ、コラ!せっかく、敵の武装も戦艦も手に入れたじゃねぇか!お前がここで死んでどうすんだよ!?」

提督「…カグヤ姫、だな…」

摩耶「提督!!」

提督「ありゃあ、不憫な話だぜ…月の奴らが一人の娘を勝手に夫婦に押し付けて、勝手に連れ帰るっていう話だ…」

摩耶「生きてたぜ!多分、エラー娘が前に居たから狙いがずれたんだな…!」

提督「かぐや姫、どれだけ悲しかっただろうなぁ…姫が地上で築いてきたじいちゃんばあちゃんとの思い出も全部無視でよ」

提督(まるで、俺じゃねぇか…俺だって、せっかく親父にここまで育てられて、ここからだって時に…)

提督「クソォ…レックスの野郎め…絶対に許さねぇ…!!」ゴゴゴ

修理妖精「そんなに血が…立ってはいけない、私を使ってくだせぇ!!」

提督「ヲ級だってそうだ、ヲ級が皆といた日々や思い出なんて無視よ…だけどな、ヲ級は絶対にかぐや姫にさせねぇ」バン

摩耶「お前…」

提督「修理妖精、お前を使いてぇが暇が無い。見ろ」

修理妖精「あ!無数の戦闘艦や深海棲艦がこちらを狙って…!!」

エラー娘「でも、あと一回は移動できますよ…私は…」メラメラ

提督「そうか…どこまで行けるか分からねぇが、最後のジャンプだ!」

エラー娘「…」ギュイイイイイ

パュ

戦艦長「な…『矢笹目』が突然消えたぞ!!?」

飛行場姫「な…消えた!?花道は私が殺したからもう移動はできないハズなのに…それとも、移動することについては花道は関係ないのかしら…?まぁ、いいわ!私が直接行って確かめるわ!」

パシュン

提督「チッ、レックスのとこまで飛べなかったが、球体の前まで来てやったぜ!」

摩耶「ヤリィ、今はほとんどの護衛役が出撃してて、陣はがら空きだ!」

修理妖精「でも、戦闘艦が一隻います!」

飛行場姫「丁度いい!私が成敗してやるわ!」

提督「仕方ねぇな…突撃だ!!」


そのころ、世界各地で深海棲艦と戦っている艦娘たち。

リンゴーン リンゴーン

ビスマルク「ふん!」ドン ドン

戦艦タ級「ぐああああああ!」

ビスマルク「流石に…もう…ボロボロね…」(ボロ

リンゴーン リンゴーン

ビスマルク「闘いながら、こんな街の上に来ちゃったなんてね。って、ここ…ドイツじゃない…」

戦艦レ級「おとなしく沈めェェェェ!!」ビュン ビュン

ビスマルク(そうそう、提督ったら、最初はただの人間だと思ってたけど、だんだん人間離れしてって…)

ドキュン バキッ

戦艦レ級「やった!2発命中!!」

ビスマルク「いったいなぁ、もう!!」ドカァン

戦艦レ級「ぬぎゃああああああ…!」ガクッ

ビスマルク「あーあ、艤装も壊れちゃった…」

浮翌遊要塞「止めを刺せ!!」ビュン

ビスマルク「私もそろそろ、帰ろうかな…ちょうど祖国の上に居るんだし…」

─Auf Wiedersehen

バァン

連装砲ちゃん<グオオオオオオオ! (ドォン ドォン

戦艦タ級「ぐああああああ!!」

重巡リ級「ぐ…」

戦艦ル級「ぬぅ、これだけの数を相手にまだ粘るか…」

戦艦レ級「いい加減、我々の攻撃を受け入れろ!そうすれば痛みを感じて苦しむこともなかろう!」

島風「ふん、お前たちのせいで死ぬんじゃないもん、戦いで力尽きて死ぬんだもん!」

重巡リ級「この小娘め!!」ドン

島風「ぐ…」

戦艦ル級「早く消えるがいい、艦娘め!」ドン ドン

連装砲ちゃん<ギャアアア!

戦艦ル級「ははは、おかしな怪物も死んでいくぞ!」

島風「きっと、私たちが死んで、私たちの鎮守府が無くなっちゃったら、周辺に住んでる人は思うだろうね。『悲しいな、これでここの鎮守府は無くなってしまったから深海棲艦が入ってくるぞ』とかってね。でも、私たちが皆死んでも他の鎮守府は健在!だから他の鎮守府がある限りはまたチャンスがある!」

戦艦ル級「な、何を言っているんだァ…」

島風「さぁ、2号ちゃん…そろそろ行こうか…」

連装砲ちゃん2号<… (穴ぼこだらけ

島風「なぁんだ、先に行くなら言ってよね…」

重巡リ級「くっ…」ドン ドン

島風「…カハ」ブシュッ

重巡リ級「痛みを覚えたか!そのまま沈んでいくがいい!!」

島風「みんな、私…とても速かったでしょ…?」

オアァァァァァァァァ…

戦艦ル級「何だ、この咆哮は…」

バシャ バシャ 

月光丸「シャアアアアアアアア!」

重巡リ級「な、なんだあの怪物は!あれもこの小娘の仲間か!!」

島風「…」

あぁ、この海を全力で駆け抜けるこの感覚、久しぶりで最高だなぁ
だけど、それを邪魔しようとするクソ野郎どもが居る

戦艦ル級「くっ…吹き飛ぶがいい!」ドン

お前たちが憎い
一般の船から、海に出ることを禁じたお前たちが憎い

月光丸「キャアアアア!」

ガブン

重巡リ級「うあ…く、首が…アガ…!」

嬉しかったさ、久々に海に連れてってもらった時は
お前たちの世界に入り込めたのも運が良かった
おかげで、お前たちをぶちのめせる力を手に入れたんだからな

戦艦ル級「く、来るならこ…」グサリ

月光丸「…」

戦艦ル級「」

島風「あな…た…速いのね…」

月光丸「…」

さてと、あとは偉そうに腕組みしてやがるアイツだ

戦艦レ級「…」ニヤァ

コ ロ ス

月光丸「オァァァアアアアア!」バッ

ガギィ

レ級尻尾「グルル…」

戦艦レ級(かかった…見えないように海面ギリギリで隠しておいた尻尾の真上に来るとは…。このまま噛みついている力を強くして、体を砕いてやるわ…)

メキメキ

月光丸「キャアアアア!」ジタバタ

戦艦レ級(それいけ、潰れるぞ…)

グシャリ

戦艦レ級「…は?」

レ級尻尾「キャ…」ピクピク

月光丸「…アァァ…」

戦艦レ級「そんな…!何故尻尾の口が裂けている!何故潰れているのがアイツではなく…こっちの尻尾なのだ!」

月光丸「アァァアァァァ!!」

戦艦レ級「ぎゃあああああああ」

島風「…」

力尽き、意識が遠のいていく島風。
その島風が沈みゆく瞬間に見たモノは…

月光丸「キュアアアアアア!」ザシュ ガシュ

戦艦レ級「や、やめ…グ…ブハッ…」

深海棲艦を現代の船が制する姿。
それはまるで

戦艦レ級「」

月光丸「…オオオオォォォォォォォ!!」

深海棲艦によって海に出ることを禁じられた全ての船の、人類の─
怒りを体現しているようでもあった。

─横須賀鎮守府

長門「うおおおお!この鎮守府の艦娘を消させはしないぞ!」


─呉鎮守府

武蔵「この鎮守府の者には指一本触れさせはしない!」


─佐世保鎮守府

赤城「気持ちの悪い手でこの鎮守府の人達に触らないでください!!」


─舞鶴鎮守府

比叡「私たちが死んでも!」

榛名「他の鎮守府は残る!」


─大湊警備府

長月「他の鎮守府が残っていれば!」

夕立「いつか希望はあるっぽい!」


那珂「サインなんかあげないから、どっか行っちゃえーッ!!」


曙「しつっこいなぁもう!!」


鳳翔「深海棲艦!そちらの思い通りにはさせないわ!出ていきなさい!」

浮翌遊要塞「ぐああああああ!!」

鳳翔「はぁ…はぁ…」(ボロボロ

他所提督「ありがとう…!」

鳳翔「いえ、こちらこそ…」

龍驤「鳳翔はん…工廠に居た深海棲艦は全部ウチらが追い払ったで…」

鳳翔「ありがとう、龍驤ちゃん…。いつか、またお店に来てね…」

龍驤「あぁ…胸がでかくなる料理でも作ってや…」

ガク バタン

他所提督「だ、大丈夫か!?」

ガキン

赤城「討伐完了!!」(ボロボロ

他所艦娘「あ、ありがとうございます…」

赤城「ふふ、この鎮守府にも『赤城』が居るのね…。食費が大変そうですね」

バタリ

他所艦娘「た、倒れてしまった…」


榛名「姉様!」

比叡「分かったわ、榛名!」

戦艦レ級「ぬあああ!弾き出される…ッ!?」

榛名「出ていきなさい!」

戦艦レ級「ぬああああああ!」

比叡「ハァ…ハァ…これで、できることは全部やったわね」

榛名「お疲れ様です…金剛姉様特製の紅茶でもいただきましょうか…貴方たちもどうぞ」

T督「あ、ありがとう…」

夕立「ふぅ…疲れたっぽい!夕立にも紅茶くださーい」

長月「こっちも討伐完了だ…」

榛名「どうぞ」

比叡「私たちにとって一番大事なのは人間。私たちは彼らの為に生まれたのね…」

榛名「同感です、姉様…」

比叡「あはは、何度もカレーを食べさせてごめんなさいね」

榛名「次からは私にも手伝わせてくださいね…」

比叡「次からそうしようかな…」

夕立「うふふ…」

長月「ははは…」

T督「…ん?」

シーン

T督「居ない…何だったのだ、彼女らは…」

ゴキィ

長門「く、いくつかの鎮守府を助けたが、この鎮守府で最後か…」(ボロボロ

武蔵「武蔵、今参ったぞ!!」

長門「武蔵!」

武蔵「長門よ、少し退屈だったからな!少し、残党処理に手伝ってくれ」

長門「貴様の頼みとあれば、断れないな…」

武蔵「すまんな」

長門「さすがの私も、そろそろ音をあげてしまいそうだ…」

武蔵「仕方があるまい、すでに長門は147の鎮守府を救ってきたのだろう?」

長門「そういう武蔵は?」

武蔵「ざっと…800程だ」

長門「…さすがだな。私はな、ずっと考えていたのだ…あの光に当たってからも…」

武蔵「何をだ?」

長門「武蔵は覚えているだろうか、『我々、兵器はどこから来てどこへ向かっているのか』と私が言ったことを」

武蔵「それの事か…私も考えていたぞ。私はこう考えた。船というものは人間の生活をより効率の良いものにするために生まれた…」

長門「そして、船は人間の思うがままに進化していった」

武蔵「まずに浮かぶモノを改良して舟、その舟をより近代化して船!その舩に砲を付け軍船!軍船をより海戦に特化させて軍艦!」

長門「そうだ…このように進化してきた船も、いつもそばには人間が居た!」

武蔵「そして、我々がなぜ艦娘として再びこの世界に生まれたのか…それは!今度は人間が我々に寄り添うのではなく、我々が人間に寄り添う番なのだ!」

長門「そ、そうか…人間を慰めるために、人間を支えるために艦娘は生まれたのか!艦娘は闘うだけの存在じゃ無かったんだ!」

戦艦タ、ル級「…」ドォン

ショタ提督「…ひ…!」

ザク ザク ドビュッ ドスッ

長門「ガハ…」

武蔵「ウグ…私はな、君のような人間を憎んだこともあったよ…人間が居なければ、我々は兵器として生まれることも無かったのにとな…」

長門「だが…我々の守るべきものを憎むとは…」

武蔵「一番やってはいけないことだな…長門よ!」

長門「アハハハハ!!」

武蔵「わはははははは!!」

戦艦レ級「何だコイツら…何発撃てば息絶えるのだ…ブゲーッ!?」

武蔵「ははは!」

長門「アハハ!」

ショタ提督「あの、ありがとうございます…貴方たちが来てくれなければ、僕の鎮守府は跡形もなくなっていたところです…」

シーン

ショタ提督「あれ?どこに行ったのですか!?おーい!!」

飛ぶ。飛んでいく。
今宵、海上を銀色の光が飛んでいく。
しかし、その光は不思議なことに一か所に向かって飛んでいく。

衛兵長「なんだこの飛来物体は!?人間の攻撃か!?」

衛兵「い、いや…全て我々の通ってきた『深海の穴』に吸い込まれていきます!」

衛兵長「拡大するぞ…」

レックス「これは…」

衛兵長「わが軍の兵です!世界中で倒された我が兵が、深海の穴に吸い込まれて我々の世界に帰っていきます!」

衛兵「単冠湾泊地、ラバウル基地、タウイタウイ泊地…その他の軍を派遣した場所から兵がはじきだされていきます!」

南方凄姫「な、何故こんな事になった…?」

南方戦凄姫「花道の艦娘共が自らの<轟沈>と引き換えに我々の世界のエネルギーで数十倍にもパワーアップし…」

南方戦凄鬼「我々とここまでまともに戦えるようになったのか…我々が奴らに力を与えただと?」

レックス「なんという屈辱だ…」フルフル

衛兵長「で、ですがレックス!どうせ死ぬのなら結果は同じでは…わが軍の兵は死んでいるわけではありませんし…!」

グサリ

衛兵長「」

レックス「お前らに誇りは無いのか?」

衛兵「ヒィ」

レックス「我々の目的は、何一つ成し遂げられていないじゃないか。この世のすべての艦娘の根絶…そして、重要な5-65回収…いいか、方法はどうでもいい!!軍を全部出して5-65回収に向かわせろ!」

衛兵「し、しかし、全軍を5-65回収に向かわせますと、この旗艦の守りが…!」

レックス「進言無用!いいから命令通りに全軍を出せ!」

そのころ、ベーリング海を通ってマリアナ海溝近海に向かう艦娘用移動船舶。
その船舶に乗るのは航空母艦加賀、戦艦大和、軽巡洋艦天龍、駆逐艦叢雲。
そして空母ヲ級5-65。

ヲ級「待ってて、提督…すぐ行くから!」

天龍「おい…お前は休んでろよな…敵が来たら俺たちが戦うからよ!」

叢雲「それにしても、何?さっきから海の上を流れてる光…」

ヲ級「アレは、艦娘に倒された深海棲艦が、深海の穴に吸い込まれていくんだわ…」

天龍「それじゃ、アイツら、やったんだな!」

ヲ級「そして、皆轟沈…」

天龍「どういうことだ?」

ヲ級「深海棲艦化した艦娘は、他の艦娘に倒してもらわないと元に戻れない…だけど、治せる艦娘はもう居ないし、他の鎮守府の艦娘じゃとてもじゃないけど太刀打ちできない」

天龍「アイツら…かっこつけやがって…」

ヲ級「…何か来るわ」

叢雲「なんですって?」

大和「敵の戦闘艦です!」

装甲空母姫「5-65の回収…あの船に乗っているのね」

加賀「誰かが船から降りてこちらにやってきます」

装甲空母姫「沈め!!」ドォン

天龍「チィィ、来やがったか、姫クラス!」

叢雲「だけど、敵も一体だけみたいね、すぐにやっつけるわ!」

装甲空母姫「そうはいかないわ!」

ゴォォォォォオオオオ

叢雲「う…凄い波!!」

装甲空母姫「その船ごとひっくり返して、ゆっくりと海中に引きずり込んであげるわ…」

天龍「なぁ叢雲…」

叢雲「何よ?」

天龍「俺たちの出番だな」

叢雲「えぇ」

加賀「2人とも…何をするつもりですか…?まさか!」

天龍「あぁ、今度は俺たちが時間を稼ぐ。その間にお前たちはとっとと提督の所へ行きな」

大和「それはなりません!言ったら失礼かもしれませんが、貴方たちのような小さい艦が時間を稼ごうとするよりも、私や加賀さんのような大きな艦のほうがより時間を稼げます!」

叢雲「それじゃあダメなのよ。いい?もし貴方たち2人が時間稼ぎをして、それが成功したとするわ。でも提督の所についてからは誰が戦うのよ?だったら、ここで弱い私たちを使っておいた方が後が楽だわ」

加賀「そんな…」

天龍「じゃあな!」バュ

叢雲「さようなら」バュ

装甲空母姫「ほぉう、軽巡と駆逐艦を出すかァ」

天龍「俺ァ、天龍型一番艦、天龍だ!!」ドカァン

装甲空母姫「おっと」ヒョイ

叢雲「叢雲よ!!」ボォン

装甲空母姫「ははは、受けた方がマシな砲撃だなァ…」ヒョイ

天龍「クソッ…」

ヲ級「その者たちに手を出すな!」

装甲空母姫「ホォ、バカな奴だ。せっかく仲間が死ぬ気で時間を稼いでいるのに、肝心なお前が出てくるとは」

天龍「お前…休んでろって言ったろ!?」

ヲ級「いいから…私も一緒に戦うのよ…ゴホッ…そうすれば、皆死なないかもしれない…!」

叢雲「もう領巾もボロボロじゃない!」

ヲ級「いいのよ…私はどうせ死なないから」

装甲空母姫「そうだ、5-65は死なない。だから、私たちの世界に5-65を持ち帰り、そのエネルギーを永遠に使ってやるのだ」

天龍「テメェ…」ドォン

装甲空母姫「効かぬわ!!」ドカン

天龍「ウゲッ…なんて威力だッ…!」

ヲ級「やめなさい!!」ドパァン

装甲空母姫「ゲッ…さすがは動くエネルギータンク…敵に回したくはなかったな」

叢雲「…」

装甲空母姫「まずはお前だ、軽巡!」

天龍「そんな体で何言ってやがる、コノヤロウ!うおおおお!!」ビュン

装甲空母姫「ふん」ドカァン

天龍「グッ…」

天龍(くそぉ…避けられねぇ…何か方法は無いか…アイツに一発デカい一撃をぶつける方法は…)

天龍「あの岩…」

装甲空母姫「…トドメだ」

叢雲「待ちなさい、まだ私が居るわ!」ビュン

装甲空母姫「チィィ…」

ヲ級「ハァ・・・ハァ・・・立ち去りなさい…!」

装甲空母姫「小癪な…!」ドォン

叢雲「ガハッ…!」

天龍「オリャアアアア!!」ブン ブン

ガキン ガキン

装甲空母姫「どこを狙っている?剣を使おうとも、当たらなければ意味が無いぞ」

天龍「俺が狙ってるのは、お前じゃねぇよ…よく見てみな…」

装甲空母姫「何!?」

ヲ級「海面から顔を出している…岩?」

叢雲「…えいッ!」ドン

ガラ…

天龍「ヲ級、頼む!岩をコイツに投げてくれ!!」

ヲ級「分かったわ!」

ガシッ グイイイイイ

装甲空母姫「なぁに~~~~~!!?」

叢雲、天龍「いっけえええええええええ!!」

ヲ級「よいしょおおおお!!」

ガコン ヒュウウウウウン

ドスン

装甲空母姫「ピャッ」グシャ

ヲ級「…」

天龍「やったか…?」

叢雲「待機船舶まで戻るわよ」

ヲ級「さ、掴まって…連れてくわ」


天龍「この梯子を上って、甲板に行くんだな…お前行ける?」

ヲ級「行けるわよ…」

天龍「そんなにやつれてるのに無理してよ…押してやるから早く登れ」

叢雲「あの…私もさっきので足折れたみたい…」

天龍「しゃあねぇな…俺の背中に縛ってやるからな…」

叢雲「…ありがと」

カン カン

天龍「よいしょっ…」

叢雲「…」

天龍「お前も、随分素直になったよな」

叢雲「え?」

天龍「最初はツーンとして、いつも屋根の上に座り込んでよ…それが今じゃ『ありがと』だもんな」

叢雲「なッ…それ今いう事!?」

天龍「へへ…悪かったよ」

ガシィ

装甲空母姫「逃がさんぞォ!!」

叢雲「…アイツも梯子を上ってきてるわ!」

天龍「なに!?」

ドン

ブシャ

天龍「ぐ…胸に弾丸が…!」

突然胸に弾丸を撃ちこまれ、天龍は思わず梯子から手を放してしまう。
だが、直前で今度は叢雲が梯子を掴みなおす。

叢雲「誰か…撃って!!」

大和「くたばりなさい…ッ!」ドン ドン

装甲空母姫「おおおおお!!」ヒュン ヒュン

大和「当たってッ…」ドォン

バキュン

装甲空母姫「ガ…」(額にヒット

叢雲「…うぐううぅ…!」

大和「確かに敵は倒せましたが…天龍ちゃんの足を掴んだまま絶命したようです…」

天龍「…」カチャカチャ

叢雲「な、何を…」

天龍「…」カチャン ギリギリ

叢雲「諦めないで、天龍!助かる方法はあるから!!」

天龍「…じゃあな」ジョキン

ヒュウウン… ドボン

叢雲「そんな…」

─天龍、敵の残骸と共に落下し、轟沈。

─マリアナ海溝付近

提督「チッ、レックスのとこまで飛べなかったが、球体の前まで来てやったぜ!」

摩耶「ヤリィ、今はほとんどの護衛役が出撃してて、陣はがら空きだ!」

修理妖精「でも、戦闘艦が一隻います!」

提督「仕方ねぇな…突撃だ!!」


衛兵「花道の奪った戦闘艦が、構わず体当たりを!」

飛行場姫「うろたえるな!死んだはずの花道がなぜ瞬間移動できたのか、私が行って確かめてくるわ!艦載機!!」

ビュン ドカカカカカ

提督「何だ…敵艦載機が壁を壊して入ってきたぞ!」

摩耶「その艦載機に、何かつかまってるぜ!」

飛行場姫「驚いた、私の狙いが外れていたとはな…」

提督「テメェが俺を狙った野郎か…エラー娘の敵、取らせてもらうぜ!」

飛行場姫「心眼のヘンダーソンよ…中途半端に飛んで私とまみえたのが運のつきだったわね。即、死ぬるがいいわ!」

ビュン ビュン

提督「なんてスピードの艦載機だ…!」

摩耶「提督、アブねぇ!!」

ザクリ スパン グシャ

提督「か…!」

摩耶「アァ…提督の…左手足が…」

修理妖精「飛んじまった…」

金剛「ハァ…ハァ…これでここらの深海棲艦は一掃できましたネ…」ボロボロ

コンゴウ「あぁ…でも、お前は花道に会わなきゃいけないんだろ?」

金剛「そうデシタ…まだナノマテリアルは残ってますか?」

コンゴウ「あと少しだけだ」ボロボロ

金剛「それと、届け物デスネ~」

コンゴウ「行くぞ」


提督「く…」

飛行場姫「ふっふ…終わってみると、あっけないわね。これで、我々に直接刃向った初めての人間も、これでお終いね」

提督「かは…クソ…」

飛行場姫「…私はね、お前がどんな男かと期待してたのよ。あの、『プレデター』の性根を変えた男がどんな男なのか、とね」

提督「『プレデター』ってなんだよ…?」

飛行場姫「空母ヲ級5-65の事よ…エネルギーの最大級の受けて…その溜めたエネルギーをひとたび破壊に向かわせれば我々のどんな力をもってしても止められない…『恐怖』と『破壊』を呼び寄せる圧倒的なエネルギーの『捕食者』…それを我々は…
『プレデター』と呼ぶのよ」

提督「勝手なことを…」

飛行場姫「我々は、あの世界から『プレデター』をずっと監視していた。そして、『プレデター』の目に負の力が溜まっていくのが分かった。だが、数か月前のある日、『プレデター』の目からどす黒い負の力が消えていったの。ある人間と出会ったからよ。その男とはもう分かったわね?お前が死ぬから教えてあげたのよ。だけどレックスは、負の力の溜まっていく『プレデター』を見て笑っていたけどね」

提督「そうか、レックスは笑ってたのか…」

飛行場姫「それが?当然でしょう?」

提督「当然、か…それじゃ当然お前らは許せねぇよなァ!!」ビュン

ガギィ

飛行場姫「ウゲ…!」

提督「このままアイツにくっついてる滑走路を奪っちまえば…!」

飛行場姫「今のは油断した…『プレデター』を変えた男があまりに普通の男で失望しただけよ!」

提督(くそ…また艦載機を構えてやがる…避けられねぇ!!)

ガキイイイン

飛行場姫「!?」

キラキラ 

????「その男を殺そうとするとは、とんだマヌケな深海魚もどきだな…」

提督「お前…」

????→コンゴウ「気味の悪い深海魚は駆除してくれるぞ…この、大戦艦コンゴウがな!」

飛行場姫「私の艦載機を弾くとは!何者よ!?」

コンゴウ「黙れ!私を艦娘と一緒にしない事だな!!」ブン ブン

飛行場姫「ぐ…速いわね…」

金剛「ヘーイ、テートクー!」

提督「金剛…なんでお前まで…?」

金剛「それは、まずに私たちが隠れてる北極に深海棲艦軍が迫ってきたので、私たちは皆、意を決して戦いに臨みました…」

提督「あの…コンゴウは?」

金剛「深海棲艦が私たちの鎮守府以外にも侵攻しているのは知ってますヨネ?深海棲艦軍が霧の方が住んでる世界にも侵攻していったので、そっちに向かったら…コンゴウさんと出会ったのデース…」

提督「じゃあ…お前らは自ら深海棲艦化して、戦ったのかよ…?それじゃ、誰も元に戻せないじゃねぇか…」

金剛「いいんデス…他の鎮守府を救えれば…」

提督「そんな…」

金剛「だって、大事なものを守る戦いだもん…テートクが、あのコンゴウにしてあげたように…」

提督「俺が、何したってんだよ…」

コンゴウ「ぐあ…!!」

飛行場姫「助成が弱くて残念だったわね、花道!いくらその女が不思議な術で化け物になろうとも、私には及ばないわ!」

提督「大丈夫か…コンゴウ!逃げるんだよ!!」

コンゴウ「残念だが、私のナノマテリアルはあと少し残してあるんだ…最期に、私の願いを聞いてくれ!」

提督「…バカヤロウ!そんな事できるわけねぇだろ!!」

飛行場姫「時間切れよ!」

コンゴウ「私は、深海棲艦共と戦って、ボロボロだ…これしか、アイツを倒す方法は無い!」

飛行場姫「死になさい!」ビュン

ザクッ

コンゴウ「うぐ…」ガシ

飛行場姫「ぬ…艦載機を掴んで離さないか!ならば、艦載機を着艦させるようにこちらに引き込んで、そこを攻撃してやる!」

─あの艦載機は放ったら戻さなければならない…だから、私が掴んだのなら…後ろから…

バッ

提督「うおおおお!!」

飛行場姫「後ろに隠れていたか!だが、その肘から先のない左腕で何ができる!?」

提督「ルセェ!テメェみてぇなサンピン、これで十分だ!!」シュル

ザワザワザワザワザワザワザワ…

ガキン

飛行場姫「な、何だお前!?腕が元に戻って…髪型が変化して…!」

ドムン メキメキメキ

コンゴウ「私の最後の…ナノマテリアル…」シュウウ

飛行場姫「」

提督「コンゴォ~~~!!…そんな…。でも、お前のナノマテリアル…最高だぜ。俺の傷も全部治って、しかも硫黄島の時みてぇな力に溢れてる…一時的に三笠の能力が復活してんだ」

ひびの入ったコアだけになった金剛を手に取り、それをポケットに押し込む。
冷たいコアの感触が、提督の気持ちを静めた。

金剛「今、艦娘の皆が命を懸けて闘ってマス…」

摩耶「そうか、お前も大変だったな…」

金剛「そうデスネー、じゃ、先に行って待ってマスカラ…」

摩耶「あぁ、じゃあな」

金剛「オーイ、テートクー、一回しか言えないからよく聞いてくだサーイ…。あそこの大きな箱を見て!あそこには沈んでった私たちの艦娘の武装やアイテムが入ってる!」


あきつ丸『金剛殿、呼びつけてワルイでありますなァ…私の大発動艇と…』

まるゆ『まるゆのこの鉄球…持ってってください』

金剛『だって貴方たち、まだ必要デショウ?』

あきつ丸『いいんでありますよ、我々にはもう少しで必要なくなるからね』

まるゆ『私は、提督さんを勝手に犯罪者と決め込んで、頼みを一方的に断ったんだ…だから、提督さんに会ったら、「ごめん」って言っといてください』


日向『呼び出してスマンな、金剛!これを提督に持ってってくれ!』ビュン

金剛『これは…飛行甲板デスカ?』

日向『それと、提督に「ゴメン」って言っておいてくれ!頼んだぞ!』


提督「これを、皆が?」

金剛「うん、戦いに使って、ほとんどボロボロなのもあるけど…」

提督「アイツら…」

金剛「さーて、私もやる事やったし、そろそろ行こうカナ…」

提督「行くって、どこにだよ?」

金剛「でも、その前に!」

提督「何だよ?」

金剛「ホラ、硫黄島での約束!『なんで三笠が花道になったの』って。時間が無いので早くお願いしマス」

提督「あぁ、待ってな…コンゴウからもらったナノマテリアルで、記憶を送り込むからな…」

シュウウン パン

金剛「…」

提督「なぁんだ、そういう事だったんデスカ…もっと早く教えてくれれば、こんなに苦労しなくてもすんだのに…」ガクッ

摩耶「提督…」

提督「大丈夫だ、死んじゃいねぇ。ナノマテリアルで小さくして、俺が持ってる」

摩耶「ところで、この袋、どうする?」

提督「中はどうなんだ?」

摩耶「こりゃあ…スゲェぜ…」

ゴオオオオオオオ

大和「しっかりしてください、もう少しで提督が戦っている場所まで尽きます!」

加賀「ハッ…前方から、大量の戦闘艦が!」

ヲ級「…数千はあるわ…レックスは全力で私を捕まえる気ね」

大和「砲撃準備!」

ガシャン

南方戦凄姫「アレが、艦娘待機船舶だ。取るに足らないただの船舶だけど、気を付けて…なんせあれには『プレデター』が、乗っているからな!」

衛兵「『プレデター』…恐ろしい光の受け手だ…」

南方戦凄姫「だが、恐れることは無い!報告によれば、『プレデター』は弱っている!全艦、砲撃であの船舶を破壊してしまえ!」

衛兵長「しかし、それでは『プレデター』が死んでしまうのでは…」

南方戦凄姫「ふん、『プレデター』が死ぬものか!撃てェ!!」

ドン ドン ドォン

大和「敵戦闘艦、一斉に砲撃を始めました!」

ヲ級「…わ、私が居るから…大丈夫…」フラッ

シュル ビン

ガキィィィィン

南方戦凄姫「な…砲撃が全て跳ね返り…」

ボカン ドゴォン

南方戦凄姫「我が艦隊に…命中だと!?これが『プレデター』の力か!」

南方戦凄姫(だけど、『プレデター』は弱っている…何度も防げるはずがない!)

南方戦凄姫「全艦、再装填!続けて発射せよ!!」

大和「だ、大丈夫ですか!?」

ヲ級「平気よ…まだいける」

加賀「敵戦闘艦、再び一斉発射をしようとしてます!」

大和「よ、避けられません!」

ヒュン ドゴォン

大和「…あれ?何かが、私たちを守った…?」

南方戦凄姫「な、何が起きた?鉄の塊のような物が、砲撃を受けたぞ…」


暁「皆、無事ね!?」

加賀「あ、暁ちゃん…?」

大和「暁ちゃんが握っているのは、艦娘にしか見えない、透明な鎖…その鎖が海から伸びている…」

大井「貴方たち、私たちが助けに来たわ!」

北上「私もねー」

木曾「やっちまえ、暁!」

暁「了解よ!」グゥン ザパーン

衛兵長「敵が…海から何かを引き上げ、それをこちらに振り回してきます!敵が振り回しているのは…艦艇です!艦艇そのものを振り回して、わが戦闘艦軍にぶち当てています!!」

戦艦長「ぐわああ!」

南方戦凄姫「そ、そんな…」

暁「どう?深海棲艦!さっき投げたのは、軽空母隼鷹の艦艇、今投げたのは戦艦陸奥の艦艇よ!!深海棲艦め、群れてる分当たりやすいわ!私たち艦娘の大きい怒りを喰らうといいわ!!」

大井「わけは後で話す!私たちが戦うから、この隙に逃げるのよ!!」

戦艦長「突如現れた敵の援軍が、艦艇を振り回し我が艦隊を壊滅させていく!兵力の損耗甚大!回避せよ!!」

衛兵長「だ、ダメです!密集陣形をとっていたため、戦闘艦たちが思うように攻撃を回避できず、次々に破壊されていきます!」

深海棲艦は自分たちの膨大な数を集めた軍勢を見ただけで、艦娘はひれ伏すと思っていた。
自分たちは安全に、遊び半分で艦娘を狩るつもりだったのだ。
だが、すでに花道の艦娘たちは自分たちと同じかそれ以上のパワーアップをしていた。
自分たちの深海の穴から漏れ出でたエネルギーにさらされればさらされるほど、艦娘は強くなる。
この約数千の戦闘艦を集めた艦隊は、慢心ゆえにそれに気づくのが遅れ、油断から作戦を立案しなかった。
通常であれば、挟撃や方位をするべきの「対 艦娘用待機船舶戦」をそうしなかったことにより、完全に混乱に陥っている。
自分らの艦艇よりもはるかに重く、大きな地上の艦艇に、陣形を組むことすらできなかった。
そして、かろうじて無事な戦闘艦から出撃した深海棲艦兵は、ある者たちと出会うことになる。
重雷装巡洋艦の大井、北上、木曾の3人である。
この3人の圧倒的な夜戦火力に、深海棲艦はことごとく沈められていく。

戦艦レ級「アイツらだ!助勢するアイツらを止めろ!!」

大井「何人来ようと、私たちの魚雷弾幕は突破できないわ!!」

戦艦タ級「きゃああああ!」

木曾「何やってんだお前ら!今の隙に、提督の所に行くんだろ?」

加賀「は、はい!」

北上「ヒューッ、やっぱすごいね、私たち!」

大井「私は、暁と一緒に多くの鎮守府を助けて、その後に北上さんと木曾と出会って、ここにきた…」

北上「…」

大井「でも、私は…私はさ…提督に、謝らなくちゃ…」

木曾「…」

大井「私はあの人に、ひどいことをした…よく考えればアイツがそんなことするわけないし、いう事も全部無視して、逮捕までしようとした…提督は長門事件の時に、血まみれになって戦ってくれたのに!」

北上「謝りたいなら、謝ろうよ」

木曾「其のためにゃ、生きてこの戦いに勝たなくちゃな!」

大井「待って、あの一際大きい艦艇から、何か来る…」

ヒュン

南方戦凄姫「私は南方を統べる鬼と姫のうちの一人!そこを退きなさい下郎、私が直々に5-65を回収してやるわ!」

木曾「一人で来るたぁ、アレはきっと位の高い奴だな!」

大井「ええ、分かってるわ!」

南方戦凄姫「私は回転のジャハンよ!その回転の意味、とくと味わうがいいわ!」ジャキ

ギュルン

南方戦凄姫「弾丸を横に回転させながら撃つ!」

木曾「な、何やってんだ、アイツ…」

北上「砲撃は的外れな方向に飛んでいく…今なら攻撃できる!」

南方戦凄姫「遅いわァ!!」ザシュ

北上「う…」

大井「北上さんに手を出さないで!連撃!!」バシュ バシュ

南方戦凄姫「あはは!私の回転防御にはそんな攻撃当たらないわ!!全て受け流してくれるわ」クルン クルン

大井「くそぉ…」

キラン

北上「…ん?二人とも、危ない!!」

木曾「!?背後から砲撃が!避けろ!」

大井「え?」サッ

南方戦凄姫「かすっただけか…」

木曾「分かったぜ、通常は砲弾をスピンさせながら射出するが、コイツは砲弾をブーメランのように回転させるんだ!そしてその砲弾は円の軌道を描いてしばらくしたら戻ってくる…」

南方戦凄姫「お前、少しは賢いようね。知ったところで何もできるがな!!」

>>336 誤字

『できるがな!!』を『できぬがな!!』に脳内変換オナシャス!

戦艦長「『プレデター』はほぼ不死身だ!なので残りの戦闘艦と兵の一斉射撃であの船舶を破壊して、のちに回収せよ!」

暁「ところが、艦艇はまだあるのよ!」

ズオォ 

暁「装甲空母大鳳、戦艦扶桑、山城!重巡高翌雄、愛宕!」

衛兵「艦艇が目標の周りを取り囲んで、攻撃が当たりません!」

戦艦長「チィィ…」

大和「凄いわ!暁ちゃん!でも、その力はどこで?」

暁「この艦艇たちは、私が助けた海軍基地の人達からお礼にってもらった物よ。この力は、翔鶴、瑞鶴、利根、筑摩、最上型の4人の馬力を貰ったのよ!皆がもう必要ないからって、自分らの『馬力』をくれたものだけどね…」

加賀「…そう、あの子たちも…」

暁「そういえば、天龍と叢雲は?」

大和「叢雲さんは、大けがで控室で休んでいます。天龍ちゃんは…」

加賀「…」

暁「…。でも、これからは私が皆を守るわ。司令官の所に行くんでしょう?」

ヲ級「どうして…?こんなに…なったのも、私のせいなのに…」

暁「司令官の事もヲ級ちゃんの事も大体教えてもらったわ。もうゴチャゴチャ言わないで。私も皆も、本当はヲ級ちゃんの事が大好きだからよ!」

ヲ級「…」

加賀「私、貴方の事をただの背伸びしてるお子様かと思ってましたが…」

暁「…」

加賀「アナタ、いつから立派なレディーになったの?」

暁「うるさいわね、加賀サン」

ヒュウン バコォン

大井「いたた…」

北上「大丈夫?」

木曾「くそう…アイツは強いぜ…」

暁「アイツ?」

南方戦凄姫「そんな場所に逃げれば、私に5-65を差し出すようなモノよ!」

大和「アレは…南方戦凄姫じゃない!」

暁「南方戦凄姫とやら、これを喰らいなさい!」

ビュウン

南方戦凄姫「また艦艇か!」

ビン

南方戦凄姫「ぬ、投げつけたのではないのか。だとすれば、あの艦艇から奴らが…」

大井「ふん!」

北上「行くよ、大井っち!」

南方戦凄姫「2人だけか。いいわ、じゃあその艦艇をお前たちの墓場にしてやるわ!」

大井「海の藻屑にしてやるわ!」

『おいコラ、横からしゃしゃってきて随分上から挨拶してくれるな…どうやらお前も艦娘らしいけどよ…』

『あんましケンキョすぎんとシメんぞ、コラ』

アイツとは、最初からサイアクだった。
何か学校の校長の推薦で飛び級で提督になった、無免許の提督の癖に、横柄な態度とムカつく顔。
何より、北上さんをはじめとした<艦娘執行組織>の同僚がアイツの鎮守府にどんどん入っていくのが気に食わなかった。
だから、無免許の事を理由に逮捕したりしてやった。
でも、長門事件の時。
アイツは私の味方をした。
そしてアイツはボロボロになりながら私の為に戦ってくれたんだ。
その時、私はアイツを『かっこいい』って、思ったのよ。
確かにアイツは顔だって良くないし、言葉も少ないし、有言不実行野郎だ。
でもアイツが通ったところは必ず治まってしまう。
凄いと思ったよ、密かにああなれたらいいなって思った。
でもさ、アイツは私たちを混乱させた張本人なのに反省もしないが逃げもしなかった。
アイツは私をだましてたんだ。幻滅した。
でも、アイツは本当は何もしてなかった。
アイツに悪いことしたなぁ。
一人で闘ってくれてた男を、私は馬鹿にしたんだ。


南方戦凄姫「堕ちなさい!」ドォン

北上「くぅ…」

南方戦凄姫「ふん、こんな艦艇の甲板まで逃げて、どうするつもり?どうせ、死ぬのは時間の問題なのに」

大井「うるさいわね…私にはやることがあるのよ…それをせずに、[ピーーー]ないわ…」

南方戦凄姫「もう飽きたわ、首を吹き飛ばしましょう」

大井「首を飛ばされるのは、どっちかしらね?アナタ、私たちの夜戦火力を知らないでしょう」

南方戦凄姫「何だと?だがお前たち2人に何ができるの?」

大井「2人?後ろを見なさい」

木曾「馬鹿野郎、3人に勝てる訳ないだろう?」ジャキ

南方戦凄姫「な…お前、いつからそこに居た!?か、回転防御で後ろに下がって…」ギュルン

木曾「…」スッ

ギュイイイイイイイイイイイイイ スパン

南方戦凄姫「な…が…そんな…」

大井「確かに、アナタの回転防御はどんな攻撃も受け流せるわ。だけど、剣はどう?」

北上「私たちに意識がいってて、気づかなかったね。回転してるときに剣を少し押し当てるだけで…」

木曾「リンゴの皮を剥いた時みてぇに、バラバラだ」

南方戦凄姫「…」バタリ

木曾「だけど、この作戦を考えたのは、あそこに居る加賀様だ」

加賀「やりました」

大井「やったわ、皆!」

北上「加賀っちの考えた作戦をおかげだよ!」

大井「あはは…さ、船舶に戻って提督のとこへ行きましょ」

木曾「あぁ、そうだな」

南方戦凄姫「…」

南方戦凄姫(おのれ、艦娘の分際で…私をこんなにした計画を立てたのはあの空母か…だがあの空母に今攻撃を仕掛けてもきっと私は軽く倒される…ならば、残った力で誰か一人は仕留める!)ドン

ヒュルルル…

大井「ねぇ北上さん、私が謝ったら、提督の奴びっくりするかなぁ?」

北上「きっと提督ならなんでもない顔してこういうと思うよ、『ふーん、そりゃどうも。それよか、風呂掃除やっといてくれ』ってね」

大井「あはは!」

ヒュン

大井「アレは…北上さん、危ない!!」

北上「え?」

ズキュゥン

大井「ぐ…ぐは…まだ、倒せてなかったんだ…」

木曾「大丈夫か!?コノヤロウ…!」バシュン

南方戦凄姫「ギャン!」ビリィ

北上「倒した…?」

南方戦凄姫「」

北上「ゴメンね、大井っち…あたしを庇って…」

大井「仲間の事を守るのは、当然でしょう?私は、それをしてもらったから…」

木曾「提督、だな…」

大井「私は提督に謝らなくちゃ…」

加賀「そんなの、けがを治してからです…」

大井「アイツに酷いことしたのよ、私…」

北上「あたしが代わりに謝っておくから…」

大井「そんなカッコわるいこと、できないわ…ちゃんと提督の目を見て謝るんだ…ごめんなさいってさ…私は提督の事カッコいいって思ってたのよ、ってさ…。そうやって謝りたいな…ゴメンね、ゴメンね提督…。許して、くれるかな…」

北上「大井っち!大井っち!!」

大井「…」

─ごめんなさい、提督─

旗艦『クイーン』機関室

衛兵「花道提督の乗っ取った小型戦闘艦『矢笹目』大破!さっきから攻撃を喰らっても動かないという事は、恐らく艦内で花道が倒されたのでしょう」

レックス「…つまらんな」

衛兵「レックス、何と?」

レックス「何でもない、忘れてくれ」

南方戦凄鬼「何だ、お前たちは?花道に敗れ、レックスに謹慎をくらったんでしょう?」

戦艦凄姫「…」

装甲空母鬼「…」

泊地凄姫「…」

泊地凄鬼「…」

衛兵長「動きがありました!『矢笹目』から艦娘と人間の反応が!」

南方戦凄鬼「とぼけた事を言うな!アイツの艦載機は誰も避けられないのよ!?」

衛兵「ですがアレは、花道提督と艦娘です!!」

レックス「はは…やはりな、あぁそうだ…そうこなくっちゃあな…」

レックス(俺は、いつからわが世界に居たのか覚えていない。気が付いたら、あの世界の王になっていた。そして、いつも地上を見ていた…)

レックス「この旗艦『クイーン』の周囲には球体の陣が形成してある!何が有ろうが、中には入れる物か!陣を形成している兵の一部を向かわせろ!」

修理妖精「提督、敵が来ます!」

提督「わかってらぁ。でもこっちも丸腰じゃねぇ。コンゴウが届けてくれた、俺の艦娘の武器や艤装が入った箱だ」

スッ

金剛「…」

提督「待ってな、金剛…俺は絶対…レックスの野郎をぶっ飛ばす!!」

摩耶「おう!」

重巡リ級「つけあがるな、汚らわしい虫野郎め!」

軽巡ホ級「王のもとへは行かせぬわ!」

提督「虫は虫でも、こっちはカマキリとかスズメバチかも知れねぇぜ!?俺が今履いてるのは翔鶴の履いてたブーツよ!最大級

の馬力の代物だから、海で浮けるし高速で移動もできるんだぜ?」バキン

重巡リ級「ぐえええええ!」バタ

戦艦ル級「花道の動きがさっきまでと違う!」

戦艦レ級「ひるむな、ただ水上移動ができるようになっただけだ!」

摩耶「あたしを忘れるなよ!まるゆの持ってた鉄球だ!当たればイテェぞ~」ビュン

戦艦ル級「はぎゃッ!?」

戦艦レ級「おのれぇ、取り囲んで潰せ!」

提督「囲い厨か、テメェらはよ!潰せるもんなら潰してみろ!」スッ

46cm砲「ぶっ放してぇなぁ、よぉ!!」

提督「武蔵の46cm砲だ!」ドォン ドォン

戦艦レ級「く、くそおおお!」

<Nano material>

ヒュウウン バッカァァァン

提督「それに、俺ぁ今ナノマテリアルを持ってんだ。好き勝手できるぜ?」ギュウウウン

戦艦レ級「」

衛兵長「花道が得体のしれない魔法や強力な武器を使って、こちらにどんどん近づいてきます!」

レックス(そうだ、それでこそ、アレではないか…俺が昔から見ていた、アレだ…。だから、皆の世界の為に俺が戦って、兵や"彼女”を救うんだ…)


午前1時50分。
夜が明けるのは4時。
つまり、深海棲艦の軍勢が夜明けとともに自分の世界へ帰っていくまであと、2時間と10分。

摩耶「摩耶様のお通りだ、退きやがれクソ共!」

46cm砲「うっひょおおお、ぶち抜きてぇなァ~~~!!」

提督「ふん!」

修理妖精「コイツら、倒しても倒しても湧いてくる!」

ビュウウウウン ドカァァァン

浮翌遊要塞「な、なんだ~~!?鉄塊がぶつかってきただとォォォォ!?」

暁「せえええええええいいい!!」ブン

木曾「ハハハ、スゲェぜ!艦艇で守って艦艇をぶつけるなんざ、奴らも考えもしなかっただろうぜ!」

提督「…なんだか知らねぇが、スキができた!今のうちにここを突破だ!」

摩耶「おうよ!」

ガクン

提督「な、何だ…このブーツ、調子悪くなってきたぞ…」

46cm砲「提督よぉ、そりゃしゃあねぇってやつよ」

提督「どういうことでぇ?」

46cm砲「皆、死力を尽くして戦ったんだ…もう艤装も少しは壊れてても不思議じゃねぇ」

提督「そうか…だからこのブーツも…」

46cm砲「って訳だから、一発で港を吹っ飛ばせる俺も、あと4,5発撃てば壊れちまうから、そこんとこヨロシクな」

戦艦タ級「居たわ!叩き落として!!」

提督「いっくぜ、武蔵ィ!!」

46cm砲「ぶっ放してぇなぁァァァァァ!!!」ドォォォン

ガキィィィィィィン

ビリビリビリ

提督「くそ…この球体の陣、揺れるだけで崩れねぇぜ…」

46cm砲「でも、壊れるまで何度でもやるぜ!!」

ドォォォォォン ガァァァァァァン

バラ…

提督「よぅし、あと一発で崩れるぜ!…!?」

南方戦凄鬼「それ以上この陣に触れるでないわ!わが名に冠する得意技は…『重撃』だ!!」ドカァン

46cm砲「あぶねぇ!」ガギイイン

バリバリ

提督「うおおおお、吹き飛ばされる…!」

46cm砲「なんてぇ、重い一撃だ…」

大和「まずいわ、提督がやられる!」

暁「いや!敵が責任感のある奴ならきっと…よいしょおおお!!」ズウウウン

南方戦凄鬼「トドメよ!」

提督「く…」

南方戦凄鬼「…!」ビュン

提督「なんだ、何で急に飛び上がって攻撃を辞めた?」

南方戦凄鬼「ぬううううう!!」ドカン

バコオオオオオン

46cm砲「スゲェ…アイツ、陣を守るために飛んできた艦艇を破壊したぜ…」

提督「いや…」

木曾「守れねぇ…提督の場所から移動するのがちょいと遅かったんだ…」

暁「どうしたの?バラバラになった艦艇の残骸が、貴方の守るべきものに…当たってるわ!」

ズウウウウウン

提督「敵の陣が…一気に崩れた…?」

摩耶「おい、大丈夫か!?」

提督「…一体どんな奴が、助けてくれたんだ?」

摩耶「あの船か…ちょっと見てくるぜ!」バシュ

木曾「あはははは!やったやった!アイツ、相当へこんでるだろうぜ!」

摩耶「何だ、お前だったのかよ」ザシュ

木曾「あ、摩耶さん!無事だったんすね!」

摩耶「バッカ、アタシがおっ死ぬ訳ないだろう?」

木曾「それと、やったのは俺じゃなくて暁…あれ」

シーン

木曾「やれやれ、暁もかよ…」

摩耶「もういい、お前も疲れてるだろう。今度は、アタシの一転攻勢だ!」

南方戦凄鬼「おのれえええ!艦艇を投げたのは貴様だな!わかるぞ、その船舶からは5-65の匂いがする!」

戦艦レ級「くう、これでもくらえ!」ガン

提督「う…」ビュウン

ガツン

摩耶「おい、どうしたんだよ?」

そのまま待機船舶に投げ飛ばされる提督。
提督は摩耶の居る甲板に衝突し、46cm砲はその衝撃で摩耶の目の前に落下する。

46cm砲「ぶっ放してぇなぁ!」

摩耶「…お前…」

46cm砲「おい女、俺を使えい!」

南方戦凄鬼「お前か、すぐに殺してやるわ!」

摩耶「うるせぇ、ボケてんじゃねぇのか!?」ドォン

ガイイイン

南方戦凄鬼「何故、ただの艦娘の癖に私の一撃を受け止められる?」

摩耶「う…るせぇ…摩耶様だからだよ…!」

提督「うぐ…おい、もうやめろ…俺が戦うぜ…」

摩耶「黙ってな…。艦娘は、人間を助けなくちゃいけねぇんだ…」

南方戦凄鬼「私をバカにしているの?そんながら空きの構えで何をするの?お前たち艦娘はすぐ大破するから、防御や回避が大

事なのでしょう?」

摩耶「言った通り、力を溜めてるか?」

46cm砲「あぁ、溜めてるぜ…」ビリビリ

南方戦凄鬼(奴は私の最初の攻撃は避けるかガードし、その後に攻撃に出るだろう。仕留めるのはその時だ…)ドォォン

摩耶「…」ゴゴゴ

南方戦凄鬼「な…避けも防ぎもしない…すでに上半身と下半身がちぎれているというのに…!…あ」

摩耶「…」ジャキッ

シャッ<46cm連装砲
シャッ<泊地凄鬼単装砲
シャッ<レ級尻尾

ドオオオオオオン

南方戦凄鬼「ぐ…私がこの程度でェェェェ!」

提督「やれやれ…最期はやっぱし、いつもぐっだぐだだなァ…最後は俺が、ぶん殴ってやるよ!」バッ

ガツン

南方戦凄鬼「」

46cm砲「へへ…やってくれたな、アンテナ女。ぶっ放したら、スッキリしたぜ…あばよ」パリーン

摩耶「ありがとな…でもやったのはアタシじゃなくて提督だ…」

提督「いや、やったのはお前だ…」

摩耶「覚えてるか?アタシと提督が初めて会った時の事…」

夜の街中だったっけな…。
アタシはそのころから荒れてて、街中をトボトボ歩いてた。
その時、路地裏からでっかい買い物袋を持った男が出てきた。
なんといってもソイツのむかつく目つきと尖がった鼻。
アタシはその男に喧嘩を吹っ掛けると、その男もこちらに向かってきた。
すぐに大喧嘩になり、見かけた一般人が止めるまで止めなかった。
結局は引き分けな感じで終わった。
そこでアタシは決意したんだ。死にもの狂いで施設を卒業して、その男を捜して決着をつけるってな。
やっとこさ卒業して、さぁ捜すかという時にまた会ったんだ。
服装的にソイツは提督で、アタシは迷わず提督の鎮守府に入った。
決着をつけるために。
でもお前はどんどんアタシとの差をつけていく。
お前はどんどん強くなってって、前世は魔法使いの艦娘だってほざくんだぜ。

摩耶「そりゃあ、決着だってずっとつかねぇよな…」

提督「もういい、喋るんじゃねぇ…」

摩耶「でもよ、近頃思ってたんだ…誰かの為に死ぬんだったら、お前のためならしゃあねぇなってよ…」

提督「待ってろ…今、修理妖精で元に戻すからな…って、アレ…無いぞ…」

ヲ級「これのこと?」

修理妖精「て、提督~…」

提督「修理妖精…ヲ級…それ、どこで?」

ヲ級「いや、一人で私のとこまで…来てくれたのよ…」

提督「そうか、ようやく出番だぜ…こっち来い」

修理妖精「今まで絶対に私を使わなかったくせに…」

提督「悪いな、お前があまりにもいい奴なんで、もったいなかったんだよ…」

修理妖精「すごいなぁ…提督は…」シュイイイイ

摩耶「…」

提督「ようし、分かれた体はかろうじてくっついたか…。なぁ摩耶…俺たちみてぇなたかが小さい鎮守府の奴らが、何やってん

だろうな…ゴクロウサン」

ガバ

ヲ級「よかった…よかった…提督…!」

提督「俺も良かったぜ…このまま直進したらお前、レックスのとこに行っちまうだろうが…ほい、コレ」

ヲ級「…これは?」

提督「あきつ丸の大発だ…これで、皆を日本に送ってくれ」

ヲ級「提督は?」

提督「俺は、レックスに言いたいことがあるんでよ…」

ヲ級「素直にぶん殴りに行くって言えばいいのに…でも、私が提督を1人で行かせると思うの?」

大和「私も、提督と一緒に行かせてもらいますよ」

提督「大和…。んじゃあ、大和は俺と一緒に行ってもいいが、お前はダメだな」

ヲ級「私も、行く…」

提督「駄目だな」

ヲ級「連れてって」

提督「皆を送って家で寝てな。たーこ」

ガン

提督「いってえな!」

ヲ級「いいから連れてってよ!昔からの仲じゃない!!…?」

ポロ

ヲ級「まさか…私の帽子、使わなかったの?」

提督「使うかよ。お前のじゃん。はやくそれ付けな」

ヲ級「大和さん…私が提督にあげたこの帽子はね、60年分の地上のエネルギーが溜めてあるのよ。人間が使えばすごいんだか

ら…」


衛兵「レックス、あの船舶の破壊命令を!」

レックス(何をしている、花道…俺はお前と闘って、ヒーローになりたいんだ…お前はここにたどり着かなければならないのだ

ぞ…)

レックス「仕方ない、全艦、一斉発射を許す」

衛兵長「了解!旗艦『クイーン』、全主砲、全副砲開け!」

ウィイイイイイン ガシャン ガシャン ジャキン


ヲ級「おかえりなさい、私の帽子ちゃん!」

大和「凄い…ヲ級ちゃんのやつれた体が元に戻っていきます!」

ヲ級「残念でした…」ギュルウウウウウ

ビン ガキイイイイン


衛兵「あの船舶を巨大な触手が包み込み、その触手が砲弾を全て跳ね返し、僚艦が大打撃を!」

衛兵長「あれはまさか…」

装甲空母鬼「力を発現させているのか…」

泊地凄姫「地上のエネルギーを溜めることのできる『エネルギー受け手』…」

泊地凄鬼「あふれ出る『力』の源流…」

戦艦凄姫「移動する巨大なエネルギー増殖炉…『プレデター』!!」

ゾワゾワ

衛兵長「うわああ!『プレデター』がこちらを攻撃しようとしている!」

ヲ級「ふん…!」

ヲ級の帽子から伸びる触手はどこまでも伸びて敵戦闘艦に巻き付けて振り払い、一掃していく。
一掃した戦闘艦の残骸は自然と『深海の穴』に吸い込まれていく。

提督「スゲーな…」

ヲ級「私は怖かったんだ…こんなの見せたら、皆に気持ち悪いとか思われそうで…。行きなよ!提督のしたいこと、私が邪魔さ

せない!」

木曾「それで、俺たちはもう戻らなくちゃいけないのか?」

提督「あぁ、今までゴクロウサン…加賀サンも、北上もな…」

加賀「提督、どうか無事に帰ってきてくださいね…」

北上「じゃあね、提督…。摩耶っちも連れてくから」

提督「あぁ、ちょっと待ってくれ」

ボン

金剛「…」

提督はポケットからナノマテリアルで小さくした金剛と、コンゴウのコアを北上に渡す。

提督「これも頼むわ」

加賀「了解です」

ヲ級「じゃあ、この船舶を突っ込ませるよ!」

提督「おう!」

ビュウウウウン

ドカァァァァァアアン


衛兵長「敵船舶衝突~!『クイーン』に花道が侵入してきます!」

衛兵「レックスや甲板上の兵は急いで批難せよ!」

レックス「やっと来たな…そうでなくっちゃ」

提督「あぁ、来てやったぜ!レックス!」

大和「敵が来ます!用心してください!」

提督「今の俺たちにゃ、怖いモン何てねぇぜ!」

<Nano material>

ドカァン

戦艦レ級「ぎゃあああああ!」

駆逐イ級「ギャス」

空母ヌ級「こ、こいつめ~~!!」

ヲ級「提督、しゃがんで!」

提督「あいよ!」

空母ヌ級「ぬああああ!外に弾き出される~~!」

ヲ級「私の提督に触らないで」

提督「おめぇが居たら、俺なんて要らないじゃんかよ…」

ヲ級「外から増援が来るわ、私が片づけてくるね」

提督「お、おい!」

ヲ級「提督は俺なんていらないって言ったけど、そうじゃないよ。レックスをヘコますのは、提督じゃないとダメなの!」

提督「まかせな。記念にレックスの髪の毛毟ってきてやるぜ」

ヲ級「…私、提督のそういうとこに弱いのよね…」

提督「へへ、バカ言ってら!」

ヲ級「提督はいつもそういうの本気にしないよね…」

提督「ははは、お前はショーフクの事が好きだったんだからよ。それじゃあな!」

ヲ級「ちゃんと帰ってきてよ!…ちぇ」

タッタッタッタッ…

提督「広いな…レックスの野郎はどこだ?」

大和「あ、アレは…!」

戦艦凄姫「…」

装甲空母鬼「…」

泊地凄姫「…」

泊地凄鬼「…」

提督「またアイツらか!倒したはずだぜ!?」

ザッ

提督「なんだぁ、急に跪いて…」

装甲空母鬼「もう私たちは、貴方たちに敵対するつもりはないわ」

泊地凄姫「私たちは貴方と戦い、そして敗れた」

泊地凄鬼「我らには寸分の理もない…レックスの行為には『正義』のひとかけらのないことに気づいた…」

提督「俺をだます新しい手かよ…?」

戦艦凄姫「それは違うわ…」

提督「お前は?」

戦艦凄姫「戦艦凄姫…本当の名を『メイジ』と言います…」

提督「…あの時の…」

戦艦凄姫「あの時は屈辱でいっぱいだった私の心だけど、次第に溢れてくるものがあった…地上の暖かいエネルギーがじわじわと入ってきた。それは私を悪夢から覚ますように、正気に戻してくれた…」

泊地凄姫「私は『エイヒ』。そう、レックス…ただ特殊な力を持った兵を地上に放ち、その身に溜めたエネルギーを使おうとし、あげくの果てに、今の地上のささやかな希望となっている艦娘を全員殺そうとする…」

泊地凄鬼「私は『エイキ』というわ。そのようなレックスの行動のどこに正義などあるのか!」

装甲空母鬼「『リー』よ。きっと、その狂った夢から覚ましてくれたのは、花道提督…貴方に違いない」

提督「マジかよ…」

戦艦凄姫「私たちを信じないのも無理ないでしょう。でも、貴方はレックスと戦うつもりでしょう?私たちも協力するわ」

泊地凄姫「ここから先に機関室がある!ここからそこに続く通路には絶対に誰も居れないわ!」

泊地凄鬼「私たちの腕は、戦った貴方が一番知ってるでしょう?」

提督「ああ、まかせたぜ!」

大和「ありがとうございます!」

戦艦凄姫「さぁ、機関室はこちらです!」

戦艦ル級「だめだ!『プレデター』のせいで、援軍が近寄れん!」

南方凄姫「うろたえるな!数に敵うはずはないだろう!」

戦艦レ級「無理だ、一度に来る援軍の数よりも、『プレデター』が一度に薙ぎ払う兵の数の方が圧倒的に多い!」

戦艦ル級「『ナージャ』様!気を付けてください!」

南方凄姫「ぬ…?うわあああああ!!」

ヲ級「アナタも自分の世界に帰りなさい!」


レックス「…」クル

衛兵長「レックス、ようやく非難するのですね…って、そっちは違います!」

レックス「おお、ついに来たなァ…花道ィ…!」

提督「…」

大和「…」

戦艦凄姫「レックス、もう一度考え直す気はない?」

レックス「そこの後ろで何か言ってる雑魚はどうでもいい。さぁ、花道ィ、勝負だ」

戦艦凄姫「残念です。…砲撃」サッ ドン ドン ドン

戦艦凄姫の撃った砲撃はレックスの服の袖から出てきた剣によってむなしく撃ち落される。
そしてレックスは戦艦凄姫との間合いを詰め、その剣を振るう。

戦艦凄姫「うぐ…」

スパン

レックス「くはは…腕一本飛んだだけで済んでよかったなァ?」

提督「チクショー、やってやるぜ!大和!」

大和「はい!」ガシャン

戦艦凄姫「待って!これは私たちの不始末…私たちの戦いよ…」

提督「メイジ…」

戦艦凄姫「レックス、覚悟!!」ドォン 

レックス「そんなしつこい女には、お仕置きが必要だな!!」ブウン

戦艦凄姫「ぬ!」

グチャッ

戦艦凄姫「」

レックス「ははは、上半身を潰してやったぞ。花道、お前もこうなるのだ」

衛兵長「おおお!レックスの最強のエネルギーの使い手の力を発現するぞ!」

レックス「うるさいぞ!俺の戦いを下らぬ声援で、邪魔しないでもらおう」

衛兵長「う…」

レックス「さぁ、この宝剣『ミツルギ』で、お前らをまとめて切り裂いてやろう!」

提督「俺はコイツをぶっちめる!力を貸してくれ大和!」

大和「撃てーッ!!」

ガイン

レックス「ほう、俺の剣を受け止めるとは…花道とその艦娘、強化されているな?」

大和「当然です。私はそちらの世界のエネルギーでパワーアップし、提督はヲ級さんからエネルギーを貰って強くなっているのですから!」

レックス「そうか!だが強くなったイコール勝てるという訳ではないぞォ!」ドォン

ドゴン

大和「うぐ…まさか、レックスが砲塔も持っていたなんて…」

提督「大丈夫か!?艤装がボロボロじゃねぇか…」

大和「あのレックスが持っている剣と艤装はとても硬いです…私とてそう何発も受けられません…」

提督「チッ…やっかいだぜ!」

レックス「ホラホラ、剣と砲撃のコンビネーション攻撃を喰らうがいい!」ザシュ ドン

提督「く…」

大和(提督の動きがさっきまでと違う…明らかに動きが鈍くなっている…まさか!私を守りながら戦っている…)

大和「提督!逃げてばかりではだめです!私の事はいいので、全力で戦ってください!!」

大和(提督はとことん優しい…私のせいで…何とかしないと…あの剣と砲塔をなんとかしないと!)

レックス「逃げてばかりじゃなく、お前も攻撃をしないのか?この宝剣『ミツルギ』と、この艤装『アマツキ』はこの地球上のどこを探しても、こんな軽く鋭く、重い一撃を放つ武器は存在しないだろう…」

大和「提督」

提督「うるせぇな、こっちゃあの武器をどうにかする方法を考えてるんだ」

大和「私も同じことを思いつきました」

提督「じゃあそれ以外の方法があるなら、言ってみな…」

大和「提督は優しいのですね…いつまでもお慕いしますよ」

レックス「何をゴチャゴチャ言っている!さぁ、粉々に砕け散るがいい!」ドォン

ザッ

大和「ふん!」ガシィ

レックス「な…この女…俺の『ミツルギ』と『アマツキ』を…奪いやがった!?」

大和「…」グシャリ

提督「うおおおお!」ブウン

レックス「よし、剣と砲は掴んだ…ぞ。…!?」

バコォォォン

提督の渾身のパンチはレックスの顎に命中し、その衝撃でレックスは空中へ投げ出される。
同時にレックスの掴んでいた剣はレックスの手から離れ、艦橋の壁をどこまでも切り裂きながら、海に落下していく。
砲塔もレックスの手から離れていき、穴の開いた壁の外に放り出される。

現在、時刻は3時半。
レックスたちが帰らなければならない時間まであと…30分。

提督「大和、大丈夫か!?」

レックス「…」

大和「前を向いてください、提督!戦いはまだ終わっていません!」

提督「おう」

大和「きっと、勝ってくださいね…」

提督「あぁ、せっかくでっかい艤装が取れたんだ、ゆっくり休みな」

大和「…」

提督「さぁ、これからは素手同士のケンカだぜ!行くぜレックス!」

ブシャ

レックス「お前は…お前は違うだろ!いい加減にしろ!!」

提督「な…何が違うんだよ…」ズル

ガン  ズガン  ドム  ガシャン

レックス「敵の最強の武器を無効化するために味方が犠牲となる…そんなのはお前の役じゃないぞ!お前は俺に倒される悪なのだ!」

提督「ぐは…」

レックス「俺はな、昔から深海の世界の王だ。いつから俺があの世界に居たのかは覚えていないが、とにかく最初から王だった。兵と会話をし、兵の装備の設計をしたり、時々流れ着く地上の道具を調べて過ごす。だがな、無いんだよ」

深海の世界には、何かが無いんだよ。
その何かが無いまま、俺はずっと生き続ける。

レックス「地上に送った偵察部隊が撮ってきた映像を暇つぶしに見てるうちに気が付いた。いつもお前たちの生活の後ろで目に入ってくる、漫画、アニメ、ドラマ、ゲーム。それの主人公やヒーロー…」

『お前はもう、死んでいる』『かめはめ波!』
『ゴムゴムのピストル!』『真実はいつもひとつ!』
『こ↑こ↓』『テメーは俺を怒らせた』

レックス「そこにあった。俺は求めていたものがそこにあった!俺が見たヒーロはな、どんなに敵から攻撃を受けても諦めないんだ…」

提督「何言ってんのか、わかんねぇぜ…」

レックス「何度でも守りたい者のために…立ち上がるんだ!」

提督「めんどくせーヤローだな!!」ブウン

レックス「口では自分本位な否定的な発言をしながら…」

ゴシャア

レックス「ぐ…ヒーローは弱い者や戦うすべを持たない者のために戦う…そんな時、ヒーローは普段の何倍も強くなるのだ!」

ドン

提督「オラァ!」ブン

ゴギ

レックス「そ…そして、決して恩を着せたりしない…」

提督「だからテメェはさっきから何が言いてぇんだ!?」

レックス「だからお前は悪役であって、ヒーローじゃないんだよ!」

提督「んな事当たり前だ、俺はヒーローなんかじゃねぇよ!喧嘩の最中に何くだらないこと言ってんだこのターコ!」

レックス「いいから聞けェ!大事なことだ!!…ヒーローはな…」

戦艦レ級「レックス、今加勢に…」

レックス「来るんじゃない、俺がせっかく一人で闘っているんだ!!」

戦艦レ級「ひっ…」

提督「テメェ、仲間を…」

レックス「いいか、ヒーローは一人で闘うものだ!ヒーローはな、過去の出来事で心に傷を負っていたり、誰にも正体を明かせなかったり、誰にも味方になってもらえなかったりするが、自分だけの信念をどこまでも貫くのだ!」

提督「あぁ…最後の一人んなっても、負けるもんかよ…」グ

レックス「そして最後まで一人で戦い抜くんだ!!」

『へへっ、迷惑だよな本当に…』
『どんな艦娘もな、生まれた意味ってモンがあるのよ!!』
『何やってんだよ…帰るぜ。帰ってから、またゆっくり海に行こうぜ』

レックス「~~~~~~!!」

見ていた…俺はな、見ていたんだ。
漫画やアニメと同じように、花道提督、お前を見ていた。
5-65を監視するときには、いやでもお前が目に入る。
お前の今までの戦いや行為は全て見ていたぞ…全てな。

提督「レックス…ヘンダーソンって奴から聞いたぜ」

レックス「何を?」

提督「お前は…何十年も放っておいたヲ級の事を、笑ってたんだってな…」

レックス「ははは!5-65は俺たちと同じ深海棲艦だぞ!?それがどうした?」

提督「それがよ…許せねぇんだ…」ペッ

レックス「だから何だ、悪魔の末端め~~!!」ガン  ガン  ドォン

ガキ ガキ ガキ 

提督「あのな、レックス…この悪の権化がな、テメェにずっと前から、言いてぇことがある…!」

レックス(くそ…なんでこいつはこうなんだ…なんでこいつは『こう』なのだ!!)

提督「うおおおおおおお!!」ブウウン

レックス「あぁ…くっそおおおおやっぱりかあああああ!!?」

ガツゥン

提督「ヲ 級 は も う 深 海 棲 艦 じ ゃ ね ぇ よ !!」

レックス「ぶ…ぶげ…」

レックス(花道、お前は凄い奴だ)

提督「分かったか、ゴルァ!!」

レックス「ぐは…!」バタン

提督「分かったらとっとと消えやがれ!」

レックス「くく、ふはははは…お前は本当に凄い奴だ…」ググググ…

提督「な…レックスの体が膨れてきやがる…!」

戦艦レ級「うわああ!レックスが全能力を開放するぞ!逃げろ!!」

レックス「俺を本気にさせたんだからな!!」バツン

提督「!?」

レックス「食らえ花道ィ!!」ビュオン

提督「オウッ!?」

ドゴオオオオオオン

レックス「わーっは!…まさか壁を突き破って吹っ飛んでいくとは…」


ヲ級「レックスの旗艦の艦橋が崩れてる…まさか、レックスったら後先考えないで全能力を解き放ったんじゃ!?」

ヒュン

ヲ級「待ってて、すぐ行くから!」

提督「ぐ…」

レックス「あーあ、美しかった旗艦『クイーン』の艦橋が、もう穴だらけでボロボロだ…。でもな花道、『クイーン』がボロボロなのも、お前が凄い奴だからだ」

提督「何言ってんだ、俺のどこが凄いんだよ?」

レックス「バーカ、俺はお前を表面を評価してるんじゃあない…お前のやってきたことを評価しているんだ。いいか、俺はお前の事をずっと見ていたんだ…。お前は他者を救おうとする!誰の賞賛も礼も求めず、ただひたすら自分の身を捨ててな!」ニコ

提督「へえ…」

レックス「そして、倒れても何度でも立ち上がる!」

提督「驚いた…王様はずいぶんと暇なんだな…でもな、教えてやらァ…俺は今まで誰一人として助けてねぇよ…。あのかわいそうな薩摩も、新しい人生をくれたショーフクも、金剛も叢雲も摩耶も大和も…そして、伽耶…」

バチッ

提督「誰も助けてやれなかった糞みてぇな俺を、なんだってテメェはそんな事言うんだチクショー!!」

レックス「馬鹿野郎!それはお前の薄っぺらな判断だ!お前はいつも相手の事を考えないからな!思い出せ、最後に見た相手の顔が全ての答えだ!」

提督(なんて、悲しそうな顔してるんだ…)

レックス「俺はお前のようなヒーローになりたかった。だが、俺の世界でそれは有り得なかった。なぜなら俺に刃向う悪も、倒すべき悪に涙する弱者も、居なかったのだからな!だから悔しかった!お前が事件を解決していくたびに俺は歯ぎしりした…お前のようになりたくてなりたくてたまらなかったんだ!!だが違った!」ブウン

ビュン ゴシャン

提督「が…馬鹿力め…そんなに俺をヒーローと勘違いして殺したいんだな…」

レックス「勘違いか…そうだ、俺は間違っていたのかもしれない…いいか、お前のやったことはすべて無駄に終わった!何も達成できていない!そんなお前はもうヒーローではない、この『デクノボー』が!」

提督「…あ?」

レックス「くくく、お前を見ていた時におぼえたのさ…ヒョロヒョロのおっさんがそう言っていたな…。だからヒーローじゃない、ただの『デクノボー』のお前を、俺が成敗してやるのだァ!」ブン

自分の全能力を開放し、膨張した筋肉に包まれたレックスから放たれる一撃…

ガシィッ シュウウウウ…

だが提督はそれを片手でつかみ、そのままグッと力を込めてレックスの拳を握りつぶす。

レックス「ぐあああ!拳がァ…!」

提督「ひょろひょろのおっさんじゃねぇ…ショーフクと呼びな。ヲ級はその人のモンだ…」

ブン ガァン

レックス「な、なにィ…」

提督「その人が教えてくれたんだ…物事はどうしても上手く回らない時がある!」ブウン

ズガン

レックス「ぐあああ!」

提督「だから、上手く回るようにするために誰かが犠牲にならなきゃならない時ってのがあんだ…」

レックス「なんだコイツは…!」

提督「でもそれは間違ってるのかもしれねぇ…別に犠牲にしなくてもいいのかもしれねぇ…別のやり方があるのかもしれねぇ…」ブン

ズドォン ガシ 

レックス「うわあああ!」

提督「テメェみたいなアタマをいい奴から見れば、無駄だらけの笑える奴なんだろうな…でもなァ!世の中正しい理屈で溢れかえってる!やってる奴をやらねぇ奴が見て笑ってんだ!」

レックス「ぶは…キッサマァ花道ィ!!」

提督「俺は愚かでもあったけぇほうが良い!優しくて優しくて!!」

提督(そして、ショーフクみてぇな…とっても哀しい…)

提督「デクノボーがいい!!」

レックス(花道!お前は俺が望む『ヒーロー』の全てだ…だが実際は違った!ならばお前の代わりは誰がやる!?ならば俺が…お前の代わりに『ヒーロー』になって、犠牲にやってやろう!!)

提督「うおおおおおおおおお!!」シュルルル… ビュウウン

レックス「ぬおおおおおお!!」ブウウウン

ゴシャアア ブシャ 

ドオオオオオオン

レックス「~~~~~~」

提督は自分のやり方らしく拳で、レックスは自分の爪を使って鋭い抜き手を…。
レックスの抜き手は提督の腹に突き刺さるが、威力に欠けた。
鋭すぎたせいで提督を吹っ飛ばすことができなかったのだ。
そして提督の全身の力を込めたパンチはレックスの顔面に命中し、レックスは壁を突き破って吹っ飛んでいく。


イオナ「…!?」

ヒュウガ「…終わったのかしら…?」


戦艦ル級「ええええい、そこを通せ!!」ドン ドォン

泊地凄姫「うぐ…」ブシャ

泊地凄鬼「まだまだァ!」ブシャッ

戦艦ル級「何故、貴方たちはそんなになってまで闘うの!?」

装甲空母鬼「…馬鹿ね…私たちが犠牲にならなきゃ、この悲劇は終わらないのよ…」

戦艦ル級「ぬううう!レックスに見捨てられた分際で何を言うか!」

月光丸「オアアアアアアア!」ビュン

戦艦ル級「なんだ、コイツは…ぎゃああああ!」

泊地凄姫「あとは…頼んだわよ…」

泊地凄鬼「最後に、いい経験ができたわ…」

装甲空母鬼「頑張って…『プレデター』と、不思議な提督…」


摩耶「あそこで、提督が戦ってんのか…?」

叢雲「私たちはいつも一緒だったじゃない…全部背負いこんで自己犠牲なんて…」

木曾「ちいィ…無事かよ…提督たち」

加賀「…」

北上「きっと、大丈夫だよ…」

金剛「…提督…」

夏の雨ね…これは私の最後の夏の夕立。
深海棲艦が私を弱らせようと砲弾を雨あられのように撃ってくる。
でも、ただの雨だわ。私を誰だと思ってるの?
この地上に60年も放っておかれ、地上のきれいなエネルギーをこの身に溜めた、光と破壊の具現…。
『プレデター』よ!
そして、私が今誰の為に戦ってると思う?
兵よ、お前たちは私を捕まえたら、きっと提督と戦ってるレックスを助けに行くんでしょう?
じゃあ今降ってるこの雨は、提督を邪魔する雨。
その雨を、私が払ってあげる。いつか、提督が私にしてくれたように…。

ヲ級「みんな!そろそろ帰り支度をする時間よ!今夜の夜明けは4時!今は3時40分!あと20分すれば貴方たちは二度と元の世界に戻れなくなるわ!いっておくけど、甘くはないわよ!」

戦艦長「……全艦、引き上げる準備をしろ…」

ゴウン ゴウン


提督「レックスの野郎、きっちり当ててきやがって…クソが」

ガクッ

提督「それに、腕と足ももげかかってる…コンゴウからもらったナノマテリアルがもうほとんど無いんだ…」

ギイ…

提督「こんな所に、隠し扉か…?」ズッ

重い金属の扉を開けると、そこには真っ暗な通路が続いている。
その通路に入り、中を見渡す。
そこには深海の世界の入り口の海岸のようなべたべたした砂がばらまいてあり、砂の上には点々と深海棲艦の死骸や骨が落ちている。
そしてふと上を見上げると、乳白色のブヨブヨした袋が天井に吊るされている。
その袋は何かの管のようで、先っちょからは液体が滴っている。
提督は好奇心から、この管がどこから続いているのが見てみることにした。
管をたどりながら通路を進んでいくと、広間のような場所にたどり着いた。
そして、広間の真ん中には、巨大な生き物が固定されていた。

コオオオオオ

その生物は戦艦凄姫の艤装の怪物をもっとデカくしたような姿をしており、よく見ると上に何者かが顔を出している。
だが、かなり衰弱しきっているようで、顔はしわくちゃで力なくグッタリしている。

クイーン「地上の方ですね…?我が王の無礼を…お許しください…」

提督「…お前は誰だ…?」

クイーン「私は『クイーン』と言います…深海の世界では女王とされている存在です…」

提督「アンタ、全部知ってるんだな…」

クイーン「はい…長いことここに隔離されていますが…」

提督「…レックスは、一体何なんだ?」

クイーン「レックス…彼は私たちの住む深海の裏世界の王です…。レックスは、かつての戦争で死んでいった人間の無数の怨念の塊…」

提督「…アンタは?」

クイーン「私は昔から、深海棲艦を産みだす役目を担っています…そこの通路の天井に連なっているのが産卵管…。ですが、私は寿命でだんだん弱っていき、深海棲艦を産みだすことができなくなりました…。そこでレックスは、沈んで裏世界に流れ着いた艦娘を深海棲艦に変えてしまうという恐ろしい行為をするようになりました…。王はそんな事をしなくてもいいように、私の代わりの母体を捜し始めました…。そこで見つけたのが、空母ヲ級5-65です…。そんな王のしようとしていることは正しいとは思っていません…でも、私はそれを言い出すことができないのです。王は根はやさしい…王は私を心配して、地上のエネルギーで私を回復させるために連れてきてくれたのです…。でも、私はもう数分と持ちません…深海の世界を裏で支えている私が[ピーーー]ば、深海の通路は永遠に閉じてしまうのです…」

提督「…」

クイーン「申し訳ありません…申し訳ありません、地上の方…」

ビュウウウウン バリン ガシャン ゴオオオ

ドボーン

レックス(…ここは、海の中…か。という事は俺は負けたのか…)

キラン

レックス(いや…俺は勝ったぞ!花道!!)

ヲ級「アンタ…レックス!」

レックス「5-65~~~~!!」ビュル

ガシッ

ヲ級「うぐ…」

レックス「ははは、捕まえたぞ!やはり、俺が世界を救う『ヒーロー』なのだ!」

ゴウン ゴウン

レックス「見ろ、5-65!俺が目的を達成したことを知って、兵たちが通路を通って帰っていく!俺たちも帰るぞ!」

ヲ級(ゴメン、提督…必ず帰ってきてって、約束したのに…ずっと、元気でいてね…)

夏の夜。
うっすらと白み始めた空が朝日の到来を告げている。
海がうすい日光によってきらめく…ただし、この海はいつもの海とは違う。
異界とこの地上をつなぐこの通路は夜明けとともに永遠に閉じるのだ。
深海棲艦達は今、慌てふためきながら通路を通って帰っていく。

レックス「ぬぅ、俺を差し置いて勝手に帰ろうとするとは…」

ヲ級(ゴメン、提督…もう会えない…)

飛行場姫「レックス、無事だったのね!」サッ

レックス「おぉ、ヘンダーソンか」

ゴオオン ゴパァン

大破して炎上し、船体を傾けながら沈もうとしている旗艦『クイーン』の壁が爆発する。
その爆発から飛び出してきたのは…

提督「待ちやがれレックス!!」

ヲ級「提督!?」

提督「待ち…やがれ…!」ガクン

レックス「その体で何ができる!?ヘンダーソン、奴を食い止めろ!」

飛行場姫「…」

提督「ヘンダーソン、テメェもう一回ぶん殴られてぇか!?」

飛行場姫「いや、もう十分よ。掴まって、花道!」

提督「お前…!?」

飛行場姫「私は貴方に殴られて正気に戻った…これが私にできる償いよ」キュイイイン

提督「すまねぇ」

レックス「ヘンダーソン、何をする!?」

飛行場姫「さぁ、帰るわよレックス!」

提督「ふん!」ビリィ

ヲ級「やっと抜け出せた…」

提督「よォ…遅かったかァ?」

ヲ級「そんなになってまで…」

提督「もたもたすんな、逃げるぞ…」ガフッ

ヲ級「大丈夫!?」

レックス「逃げられるものか!俺が一度体を貫いたんだ…自由に動ける訳が無かろう!」

ヲ級は提督を連れて、旗艦『クイーン』の艦橋のてっぺんに降りる。
そして提督をそこに寝かせる。

ヲ級「ゴメンね…痛いよね…ゴメンね…」ジワ

ポタポタ…

シュウウウ

提督「俺の傷が全部治っていく…お前の涙が、キズグスリだったとはな…」

ヲ級「もう、バカ!」

提督「でもよ、初めてお前と協力して喧嘩したって感じだな…」

ヲ級「私、艦娘の皆にやきもち焼いてたんだよ…いつも、提督と一緒に居たかったから…」

提督「やきもちをやく相手が違うぜ?」

ヲ級「あのね、ショーフクはお父さんよ。私が好きなのはずっと花道…今も昔も…。昭和から平成でまた会うまで、どっかいってたけど…」

提督「…へッ、いつも一緒だったさ…」

ヲ級「見て、提督!星がいっぱい!」

提督「あぁ、いっぱいだ…。俺の親父が言ってたぜ、星の数だけ神様がこっちを見てるってな…」

ヲ級「じゃあ、神様は私たちの『物語』をずっと見てるんだね…」

提督「あぁ…」

ヲ級「じゃあさ、私は物語の脇役がいいな!」

提督「何言ってんだ、お前はお前の物語の主人公だろ?」

ヲ級「え~、私は提督の物語の脇役がいいの!」

提督「じゃ、頼むか!」

レックス「ええい、どけ!」ブン

飛行場姫「うぐ…」

レックス「ここまで来て5-65を連れ帰らずにいられるか!」

バサ

レックス「あそこだな!世界を救うための道具を奪われたレックスは、悪のニセヒーローを倒すために最後の戦に赴くのだった!」


提督「来やがったか!」

ヲ級「えへへ、でもね提督…脇役でも私、すごい目立つわよ!主人公の提督を食っちゃうくらい、大活躍するんだから!」

提督「そんならよ、俺がラスボス級のスゲェ奴とやりあった時にゃ…」

ヲ級「…?」

提督「一緒に…死んでくれるか?」ニコ

ヲ級「…死なせて…」

その昔、2人のデクノボーが居た。
片方のデクノボーが、もう一方のデクノボーに命を懸けて頼んだ願い…
「ずっと一人ぼっちだった女を幸せにしてやって欲しい」
その願いはついに叶えられることになった。
何故なら、伽耶…空母ヲ級5-65は、今、生涯で一番の幸せに満ちていたからだ。
そして花道提督も、胸の内から来る得体のしれない感情に満たされていた。
だが全く摩訶不思議な事に、その感情はもう一人からもたらされていた。

飛行場姫「戻ってきて、レックス!もう通路が閉じるわ!」

レックス「おのれ花道!5-65を洗脳し味方につけ、なお抵抗するか!?」

提督「そう思いてぇんだな、レックス!お前の気持ちは分からなくもねぇ!」

レックス「な…なんだと?」

提督「教えてやらァ!『幸せ』は一個!でも、『幸せ』は受け取る側によっていろいろ違うんでぇ!」

レックス「…どういうことだ?」

提督「お前は正義の戦いをやってるかもしれねぇが俺にとっちゃお前に付き合わされたメーワクな『ごっこ遊び』なんだよ!」

レックス「ご、ごっこ遊びだとォ…!?」

提督「思い出せレックス!お前は大好きなアニメや漫画を見てるときなんて思った?嫌いなキャラとか好きな展開とかいろいろあったろ?お前はそのいろいろの中から大好きなヒーローを選んで、そのまねをしたんだろ!?みんながみんな自分の感じ方がある!深海で独りぼっちだったお前が唯一心の底からホッとできて自分の心のままに楽しめたのは物語だけだったんだろ?その物語に、自分もこうなりたいなって希望を感じたんだろ?」

レックス「な、何を言う…俺は…」

提督「お前が消そうとしたのは、そんなかけがえのない『希望』なんだよ!」ブン

ゴギイ

レックス「うぐ…」

提督「でもな、そんな絶対に許せないお前にも、俺は礼を言わなきゃなんねぇ!」

レックス「な…」

提督「テメェに言われなきゃ気づかなかったんだよ!俺のしてきたことに値打ちがあったって事にな!俺は助けようとした奴らも助けられなくて、生きる価値も無いと思ってた俺に、敵のはずのお前が教えてくれたんだよ!ホントの『幸せ』ってのは、どんなに糞みてぇな自分にもまだ値打ちがあるって気づけることなんだってな!」

レックス「…俺のあこがれだった花道が…俺を褒めてくれただと…?」

レックス(嬉しいなぁ…)

レックス「だが5-65は渡さんぞ!」グイ

ヲ級「きゃ…!」

提督「渡すかよ!」ガシイ

レックス「ならば、2人とも俺と一緒に帰ることを許す!」バン

提督「くそ、ほどけねぇ…」

ヲ級「レックス!提督だけでも離してあげて!」

提督(異界から来るエネルギーよ…おれに力をくれ!)グググググ…

レックス「なんだコイツ!?」

ビリイイ

提督「よっしゃ、逃げるぞ!」

ヲ級「う、うん!」

レックス「逃がすかァ!」

ヲ級「でも、もう通路が閉じる!間に合わない!」

提督「それじゃ気分転換だ!想像の話でもしようぜ!お前は俺の話の脇役だったな?」

ヲ級「うん!」

提督「そりゃいいな!俺たちの物語はそうやって始まるんだな…!」

ゴシャ パリン

提督「ぐ…ブーツが粉々に…!」

レックス「待て~~!その女を連れて帰らねば、『クイーン』がァァ…!」

提督「…」

ヲ級「提督、もういいよ…提督さんが一緒に来てくれるなら…」

提督「今気が付いたぜ!!」ヒョイ

ヲ級「え?何を…!」

提督「俺シアワセだーッ!!」ブン

ヲ級「きゃあああ!提督!!」

提督は歓喜の叫びと共に、残り数十センチで閉じる深海の通路の入り口の外にヲ級を弾き出す。

ピシャリ

その時、通路の入り口が閉じる。

レックス「うおおおお…!!」

提督「安心しな!俺も一緒に行ってやるからよ!!」

提督とレックスは殴り合いながら、完全に水没してしまった通路に消えていく。
こう水没してしまえば、世界に戻れるのはレックスだけである。
提督は水の中では息ができないからだ。
今、深海の世界と地上をつなぐ通路は永遠に閉じたのである。

『深海の世』─完─

ミーンミーン ミッチョワミッチョワ…

その後、一夜にして世界中の軍基地や鎮守府に深海棲艦が攻め込んできたが、すぐに引き返して行った事件は世界的に取り上げられた。
その攻め込んだ深海棲艦を追い出したのは、日本の小さな鎮守府に所属していた艦娘たちとその提督であったと。
世界中は大騒ぎになった。

一か月後の花道の鎮守府─

大和「…」カキカキ

提督、お元気ですか?大和です。
もうお盆になり、あの戦いから一か月が経ちます。
気持ちの整理がつくのに一月も経ってしまいました…あの晩からの出来事を手紙に書きます。
短気な提督は「まどろっこしい」というかもしれませんが、手紙にしてどこかに居る提督に送ります。
まず一番に伝えたいことは、皆さんの復活です。
深海の通路が閉じた後、ヲ級さんは必死でまだ助かる可能性のある艦娘を回収しました。
私は運よく気絶していただけだったので、一命をとりとめられました。
たくさん、どんなに捜しても見つからない艦娘も居ました…。
ですが、残っていたのです。健康診断で採取し、保管してあった皆さんの血液が。
そこで生き残った私たちは、資材をかき集めて、その血液を元に建造を繰り返しました。
結果、大本営の医学部とたくさんの妖精さんによって皆さんは見事に復活を遂げました。
記憶はそのままで。
今は皆で壊れかけのこの鎮守府を修理しているところです。
皆、めいめいの自分のやるべきことをやっています。
でも、龍田さんは…。
深海の通路が閉じた今も深海棲艦による被害報告はあります。
自分らの世界に帰り損ねた残党か、それとも進んで地上に留まった者たちか…。
まだ艦娘と深海棲艦の戦いは続いているようです。
ヲ級さんは普通に鎮守府で暮らしています。
普段は人間に扮して、鳳翔さんの店で働いています。
でも、皆…何か心に穴が空いたよう…かくいう私もですが。

叢雲「…はぁ…」

天龍「…」

摩耶「…あぁ…」

叢雲「静かね…」

天龍「あぁ…」

摩耶「別にいつも静かだろ…」

叢雲「そういう静かじゃなくて、寂しいっていうか、今まであったモノがなくなっちゃったみたいな…」

天龍「なんとなくわかるぜ…」

摩耶「あぁ…」


和田長官(武蔵)「…」ボケー

憲兵「長官?」

和田長官「…」ボケー

憲兵「長~官~!」

和田長官「…ハッ!?ど、どうした?」

憲兵「も~、しっかりしてくださいよ~…○○鎮守府の資材配給の分量ですが…」

和田長官「…はぁ…」


金剛「hey!比叡!今日も元気デスカ~?」

比叡「…普通です」

金剛「そうデスカー。朝ごはんどうするネー?」

比叡「…姉様は悲しくないんですか?」

金剛「それは私も悲しいデス…でも悲しんだところで何もならないカラ!」

比叡「姉様はいつも元気ですね…朝ごはんは自分で済ませますので…」

金剛「了解デース!それじゃあ!」

金剛「…」


あ、そうそう。今度から新任の提督さんと艦娘さん一人が着任するようですよ。
どんな方なのか、楽しみです。
もちろん、『物語』はハッピーエンドが一番!そう思いますよね?
それでは提督、また面白いことや伝えることが有ったら、また手紙にします。
さようなら。 

大和「…よいしょっと」


??「…今更、顔なんて出せねぇよな…」

??(花道はクールに去るぜ…ってな)

─花道─

花道「何か…海が赤いな」

『花道には苦手なものが3つある。』

チンピラ1「随分余裕かましてんなぁ、花道…」

チンピラ2「これから俺らにモノスゲーボコられんの、分かってんのか?」

花道「本当…お前らみたいなの大好きだぜ?だから通してくれや」ブン

ゴシャリ

『その3つ以外は大体大丈夫だ』

チンピラ1「ぶ…」

チンピラ2「上等だオラァ!」

チンピラ3「ぶっ飛ばしてやんぜ!」

ガン ゴシャ 

『一つは、悪いヒト。大嫌いだけど、どうも見てるとちょっかいをかけたくなるらしい。2つ目は海。海を見てると、何かやるせないような寂しさに襲われるんだってさ。』

バコオオン

チンピラ4「ぎゃああ!」

チンピラ5「」

花道「何だお前ら、5人で一万ぽっちしか持ってねぇでやんの。付けてるアクセサリーは高そうなのに…。いいか?世間のイベントにゃ入場料ってのが必要なんだぜ?」

チンピラ1「てめ…花道…覚えてろよ」

花道「てめぇらみたいな怖い人、覚えてるに決まってんだろ」

『残りの1つは何かだって?それは、「不幸せ」はことだ。花道曰く、「自分に価値があるってことに気付ける」事が幸せって奴らしい。』

花道「やべえ、もうこんな時間だ、じゃあな!」


かつて、世界中のささやかな希望を守り抜いたたった一つの艦隊。
その艦隊は、何十年後にも語り継がれていく。
その艦隊の名は…

『花 道 艦 隊』

後日談…


花道「ぬわああああああん間に合わないもおおおおん!!」


大和(おかしいですね…今はヒトサンマルマル、新しい提督が着任するのはヒトフタマルマル…一時間も遅れているなんて…)

コンコン

大和「あ。どうぞお入りくだ…」

バタン

花道「ワルイ、遅れたぜ!」

大和「へ?」

花道「あ?」

大和「きゃああああああああ!!幽霊!?」

花道「バッカ、生きてるわ!何か勝手に死んだことにされてるみたいだけどよ~」

大和「驚いていいのか喜んでいいのか…あ、だとすると、新任の提督と一緒に来る艦娘って…」

花道「…龍田だけど」


天龍「喉乾いたな~」

叢雲「しょうがないわね、麦茶でいい?」

摩耶「あぁ、アタシも頼むぜ」

叢雲「はいはい…」

龍田「えぇ、それなら私が持ってくるわ~」

叢雲「ああ、じゃあお願い」

天龍「頼んだぜ…」

摩耶「じゃあ、さっそく…」

龍田「ちょっと待っててね~」

叢雲「…」

天龍「…」

摩耶「…」

叢雲、天龍、摩耶「「「ファッ!?」」」

<皆聞いて!提督と龍田さんが生きてたって!
<これマジ?生命力高すぎでしょ…

武蔵「皆の者、静かに!これより、無事生還した花道を、正式に、再びこの鎮守府の提督として迎える!では、花道提督、お言葉を」

花道「えっと、こういう場で話すの苦手だから短くするけど…。俺はこの通り生きてます。そして、またこの鎮守府の提督をやらせてもらう事になったから、よろしく…」

シーン…

花道(ヤベ、滑った…)

「「「「「提督~~~~!!」」」」」ガバッ

花道「うおっ!?」

大和「ヤマドハウレジイデズ!マダゴウジデデイドグニアエルナンデ…!」エグ

花道「大げさだな…ってか鼻水飛ばすんじゃねぇ!」

叢雲「アンタ、生きてたんならどうしてすぐ戻ってこなかったのよ~!!」

摩耶「バカヤロー!もう会えないんかと思ったぜ…。あ、別にアタシはお前がくたばろうが別にいいけどさ…」

金剛「テートクー!会いたかったデース!!」

天龍「俺は一回沈んだけどまた蘇ったんだぜ!どうだ?」

加賀「提督…嬉しいですよ…また逢えて」

暁「どう!?私、凄かったんだから!!」

木曾「無事だったんだな!色々聞かせてくれよ!」

島風「私は提督は何もしてないって信じてたよ!だから、北極にも行かずに戦ったよ!」

ビスマルク「私もよ!提督を信じて闘い続けたわ!!」

武蔵「提督よ、すまなかった…貴方は必死に我々の危機を伝えようとしていてくれたのだな…」

長門「この長門は100以上の鎮守府を救ったぞ!」

鳳翔「また、提督と一緒にお店で料理ができると思うと涙が止まりません…疑ってすみませんでした…」

ゴーヤ「ゴーヤの髪飾りは役に立った!?」

花道「お前ら…まぁいいぜ、気にすんな。…ありがとな」

龍田の剣「提督殿~~!!」

修理妖精「よかったでさぁ!!」

エラー娘「提督さん、あの戦いは私にとってもいい経験になりました!」

ゴゴゴゴゴゴ…

花道「ん?外から何か音が…」

イオナ「やほー」

コンゴウ「…」

タカオ「無事で何よりだわー!」

白鯨(提督…)

花道「お前らまで!それに白鯨も!!」

龍驤「ほんまにすまんかった!!」

鈴谷「あんなこと言ってマジゴメン!」

日向「すまなかったな、提督…」

夕立「夕立、ずっと提督さんのとこ疑ってたっぽい!」

長月「最初の頃からの付き合いだもんな、司令官がそんなことするはずは無かったんだ…」

那珂「ごめんなさい、提督!これからも那珂ちゃんのファンで居てくれる?」

提督「分かったから、一人ずつ話してくれ!」

ワイワイ…ガヤガヤ…

大井「……」

ポン

北上「大井っち…」

大井「北上さん、どうしたの?私は靴ひもを結びに…」

北上「行きなよ。ちゃんと、目を見て謝るんでしょ?」

大井「…うん!」


大井「提督!!」

花道「…ん?」

大井「そ…その…あの…あの時は本当にごめんなさい!!あ、あと…私、提督にあこがれてたのよ!!」

花道「…ふ、ふーん、そりゃご苦労なこった。そんな事よか、今日の風呂掃除頼むわ」

大井「はい!!」

花道(一件落着かな…。だけど、レックスを倒して深海の通路をふさいでも、まだ深海棲艦の目撃情報はある…この戦いが終わるまで、俺はくたばんねぇからな!)

提督「…」

親父「お前はよ~心配かけやがって結局生きてたなんて、恥かかせるんじゃねぇよ…」

提督「恥?」

親父「おう!お前を心配して歌まで歌いながらかっこよく去ってったのによ、バカみてぇじゃねぇか!!」

提督「それって俺が悪いんか?」

親父「まぁ、ともかく、生きててよかったけどよ」

提督「…あぁ」

女子高生「あの~、文化祭の記念写真を撮りたいんですが、撮ってもらえますか?」

提督「あ…いいっすよ。…はい、チーズ」

パシャン

結構いい写りだ。
写っている7人の女子高生は笑顔で写真に写っている。

女子高生「ありがとうございます!」

提督「別に良いっすよ。それじゃ」

親父「おぉ、終わったか?」

提督「悪い!早く行こうぜ」

女子高生「…約束は守ったよ、提督…」

提督が背を向けた時、1人だけがその場に残り、頭を下げる。
まだ暑い日が続き、蝉の声も響いている。

─END─

最後に。
まずは、このお話を読んでくださった数少ない読者の方々、お疲れ様でした。
そして、心からありがとうございます。

「艦娘を消すって事はよ…」
「艦娘には皆、意味があるのよ…」
「へへ…迷惑だなぁ…」

なんでこんな少女たちをいつ死ぬか分からない戦闘に引っ張り出させるゲームなんて考えやがった!
最初はそう思っていました。
この提督を主人公にして物語を書くほど、そんな見えない危険があるのにも関わらず、いつも提督や仲間を気遣い、個性を出しまくっている艦娘が好きになっていきました。
この物語の第2の主人公ともいえるレックスは、こうしてアニメや漫画を好きになったのかなぁとも思います。

これでこの物語は終わりますが、寂しい時や悲しい時にこの物語を読みに来てくれるとうれしいなぁ。

「艦娘は、沈んでも、姿かたちが変わってもずっと覚えている。艦娘は、決して提督を裏切らない」

花道も大和も摩耶も叢雲もうなづいてますよ。
だって、そんな事当たり前ですからね!

この物語のモデルとなった『月光条例』ですが、個人的にこの漫画は大好きです。
なので大幅にパク…アイデアを貰っていますww。

では、読んでくださりありがとうございました!

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年09月02日 (火) 01:06:29   ID: 0-ApTLZx

これはひどい
チラ裏でやれ

2 :  SS好きの774さん   2014年09月05日 (金) 17:36:17   ID: Engj_Y8c

こういう↑みたいなやりもしないやつが一生懸命やってる人のとこをバカにするんだよな。

3 :  SS好きの774さん   2015年08月11日 (火) 16:38:32   ID: ltRmgimc

一生懸命やろうが駄作は駄作だろ?
艦娘の名前だけ借りた様な地雷見せられたら不快にもなるだろうにエアプじゃないなら

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