照「激しく燃えた夏の日の夜」 (124)

ミステリーっていうか何ていうか……

地の文多用
キャラ崩壊有り



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 一体どれだけの時間が過ぎたのだろう。
 数年かそれとも数日か。どちらともとれる奇妙な感覚は今でも慣れない。

 ベッドから抜け出し、窓から空を見上げた。

 半分、闇に食い尽くされた月は私とテルの関係だと思う。
 テルとサキなら月など無いのだから。

淡「……テル」

 呟きを落とし、私は数ヵ月前のことを思い出した。

 インターハイ。王者白糸台は団体戦で優勝した。
 お祭り気分の中、私は夜中、ホテルから抜け出し、公園で月を見ていた。

 どれだけ時間がたったのだろうか。私の鼓膜を叩いたサイレンの音で我に返った。

 嫌な予感はよく当たる。
 ホテルへ戻ると、火に包まれた私達の寝床。先輩達や他の部員は皆大丈夫だったらしい。ただ一人を除いて。

 菫先輩からテルが一人取り残されたと聞いた。たちの悪い冗談だと一瞬思ったが、先輩の震える声は疑うことを許さなかった。

 インターハイチャンピオン宮永照、不運の事故で死亡。
 朝のニュースでそれを見たときから私の世界は色を失った。

 嫌なことを思い出した。
 再び布団に入り目を瞑るが瞼の裏ではあの日のことが鮮明に浮かんでくる。

淡「ああ……私が何をしたの!?」

 自分でも、精神が限界なことくらい分かる。だが、私以上に塞ぎ混みたい先輩方が耐えているのに壊れてたまるか。

淡「……やめた」

 もう立ち止まるのは飽きた。そろそろ遅れたけど前に進もう。テルだってそれを望んでいるはずだ。

 テルの葬儀の日、私の家に送られてきた一通の手紙がある。

 差出人は宮永照。

 私が弱いせいでまだ封を開けていない手紙を机の引き出しから取り、丁寧に開けていく。

 その内容はにわかに信じられるものではなかった。

 久しぶりに見たテルの字は私や先輩方への懺悔。それと、宮永咲の無実を証明してほしい。と。

淡「テルの遺言……最後くらい後輩らしいことしようかな」

 そこからの行動は迅速だった。
 寝巻きから白糸台の制服に着替え、黒のパーカーを羽織り、家を出た。

 時間は午後6時と少し。まだ、部活は終わっていない。

 家を出て、私は白糸台高校まで走った。

 部室にたどり着いたとき、私の額から頬にかけて大粒の汗が流れ落ちた。

淡「ヤッホー。淡ちゃんだよー」

菫「大星……やっと来たのか」

 菫先輩や尭深先輩、亦野先輩は何とも驚いた表情で私を見ていた。

 テルが欠けた虎姫の部屋へと足を踏み入れた刹那、視界が歪み、暗くなった。

ーーーー
ーーーーーー

「お……お……星…………大星!」

淡「ん……どうしたの?」

菫「よかった……心配かけさせるな」

 ああ、そっか。私、倒れたんだ。情けないなぁ。これだけ体力が落ちてるなんて。

菫「しっかり食べてるか?」

淡「いや、ほとんど……」

 ほとんど何も食べていない。
 病的に痩せ細った私の腕がそれを裏付けている。

尭深「淡ちゃん、お茶飲む?」

淡「お願いします」

誠子「大星、久しぶりだね。何か適当に食べるもの持ってくる」

淡「すいません」

 何て後輩思いの先輩なのだろう。こんな時でも私を甘やかしてくれる。

 そもそも、何故私がここまで痩せてしまったのか。

 引き込もってたからなんだけど。

淡「菫先輩、テルの遺言を持ってきました」

 空気が変わった。

菫「本当か?」

淡「はい。宮永咲、サキは無実です……真犯人を見つけましょう」

 少し、説明をしよう。
 ホテルの出火の原因は外部からの放火だったらしい。

 その翌日、宮永咲は警察へ自首したらしい。私が放火しました。と。

 閑話休題。

 菫先輩は私を見据える。嘘を言っていないことは分かってるのだろうけど、何を疑っているのか。

菫「宮永咲が犯人でないとしたら、誰が真犯人だと言うんだ?」

淡「分からない。けど、ある程度絞ることは出来ますよ」

 ふう。と、一息つき、尭深先輩が淹れてくれたお茶を飲む。
 なんて美味しいんだろう。

淡「単に放火したかったからとかなら話は別だけど、白糸台麻雀部を宮永照を殺したい。そうなら、容疑者は絞れますよね?」

菫「……確かにそうだ。愉快犯の場合を除けば疑いがかかるのはーー」

淡「そう。インターハイ出場校の全ての選手です。有名な白糸台のホテルなんてマスコミに聞けばすぐに分かるだろうし」

 亦野先輩が持ってきてくれたのはコンビニのサンドイッチだった。
 封を開き、一口食べた瞬間、吐いた。

 そういや固形物食べるの何日振りだったっけ?

淡「えほ……すいま、せん。今すぐ掃除します」

誠子「いいから、ゆっくり食べて。私と尭深がやっておくから」

淡「すいません。ありがとうございます」

 怠い体をソファーに預け、処理を任せる。

菫「大星、お前、落ち着いたな」

淡「え?」

菫「先輩に対しての口のききかただよ」

淡「そうかな? ま、長い間引き込もってたから色々考える時間があったからかな……お陰で留年だけど」

 自嘲気味に笑いながら、視線を動かす。
 誇りひとつ無い雀卓。それだけで私の思い出は甦る。

 負けたことは何度もある。だが、私自身は記録よりも私を負かした相手の腕を見ていた。

 誰に対しても私は負けたと認めなかった。サキでも高鴨穏乃でも、ここにいる先輩方にも。テルを除いて。

 思えば、宮永照は私の目標だった。
 初めて心の底から負けを認めたが、それ以上にその強さに惹かれた。

 手の甲に雫が落ちてやっと私が涙を流していることに気が付いた。

淡「……そろそろ本題に入りません?」

菫「ああ。照の最後の頼み、叶えてやろう」

誠子「そうですね。最後くらい文句言わずに」

尭深「はい。それが私達の恩返しです」

 掃除が終わった二人は雀卓の前に座った。釣られて、菫先輩と私も従う。
 いつもなら賽子を回すが、今はそれどころではない。

 当然、話を切り出すのは私だ。

淡「まず、さっきも言いましたけど宮永咲は無実です。テルの手紙を信じればですけど」

菫「私はお前も照も疑わないよ。それはこの二人も同じだ」

 頷く二人を見て、何か腹の底から上がってくるものを感じる。いつから私は涙脆くなったのだろう。

淡「ありがとう菫先輩。まず、容疑者から私達虎姫と宮永咲は除外するね」

誠子「数ある人数からたったの5人か……」

淡「仕方ないですよ。少しずつ削るしかないよ。その方法だけど、それが分からないんですよ」

菫「……手がかりは宮永咲か」

 将棋で言う詰みかけの状態だと思った。逃げ道が一手しか存在しない。

 なら、私はそこから活路を見いだしてやる。

淡「私がサキと話して来ます。先輩方は他の高校と接触していただいてもらっていいですか?」

菫「大丈夫か? 私も一緒に行こう」

淡「いや、いいですよ。今から準備するんでお先です」

 立ち上がろうと足に力を入れたが、思うように力が入らない。結果、菫先輩の手を借りてしまった。

菫「やっぱり私も行こう」

淡「……お願いします」

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 私が宮永咲を知ったのは白糸台に入学して少したった頃だった。
 テルと身の上話に花が咲き、そのときに知らされた。

 私には出来た妹がいると。

 そして、全国大会。サキの試合の録画を見て感動した。

 私と同じくらい強い。それもテルの妹。運命を感じた。とでも表現すればいいのだろうか?

 インターハイ大将戦オーラス。私はサキに満貫を振り込ませ、王者白糸台の優勝を決めた。

 立ち上がったとき、雀卓に足が当たり立ったままのサキの手牌が崩れ、私に見えた。

 カン出来たはずの私の上がり牌。それを何故、サキは切ったのか。
 考える以前に価値を譲られた気がして私は震えた。

 だからテルが出ていくんだよ。と。こんな勝ち、嬉しくない。

 そうサキに言い放ち、私は部屋を出ていった。待っていた原村和に睨まれたのはサキに対して暴言を吐いたからか、私達が優勝したからか。

 どうでもいい。私は試合に“勝たせてもらって”勝負に負けた。

 私を支配していたのはテルのときとは違う圧倒的敗北感だった。

 待合室に戻ると喜んでくれていた先輩達と表情にこそ出ていないが、何かおかしな態度のテル。中継で私の暴言を聞いていたのだろうか。

 そんな中、団体戦の祝勝会が始まった。

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菫「淡、ここに宮永咲はいる」

 菫先輩に連れていかれた先は女子刑務所と呼ばれる所だった。
 少年院のワンランク上だと思えばいいらしい。

 壁に隔てられたその中に私と菫先輩は入り、手続きを済ませる。
 面会室へと通された私達の先には少し痩せたサキがガラス越しに座っていた。

淡「サキ、久しぶり。元気だった?」

咲「どう、だろう? 体は元気かな。淡ちゃんは……そうでもないみたいだね」

淡「お陰さまで。菫先輩、もういいです。二人で話がしたい」

菫「いや、しかし……」

淡「お願いします」

菫「……分かった」

 菫先輩を見送った私はサキへと向き直る。
 地味な囚人服を着たサキの瞳には光がない。生気がないと言った方がいいかな?

淡「サキ、私が何で来たか分かる?」

咲「文句を言いに?」

淡「だれがそんな下らないことの為に来ると思ってるの?」

咲「……淡ちゃん?」

 敬愛するテルの妹だか何だか知らないけどぶん殴っていいかな?

淡「宮永照」

 考えもなく姉の名前を出したのだが、サキの肩がピクリと動いた。

淡「火を放ったの誰か教えてよ」

咲「……私だよ」

 何故、サキは犯人を庇うのか。私が逆の立場ならあっさり吐いて日常に戻るのに。

 何となくだけど、テルの事となるとサキは何をやらかすのか分からない。
 テルの手紙のことはギリギリまで黙ってよう。

淡「……この話は後でしよう。そういや誰か来た? 私以外」

咲「部長が来たよ」

淡「へー。何て?」

咲「ただの報告。和ちゃん以外は部活に来てるって」

淡「あーあのピンク。どうかしたの?」

咲「塞ぎ込んでるらしよ」

 原村和がか。どれだけメンタル弱いんだ? アンタはテルと何も接点ないよね。
 一雀士が死んだことにそれだけ心を痛めたのか?

 ……メンタル弱いのは私も一緒か。

淡「どうでもいいや」

咲「でも和ちゃん、もうすぐ転校なんだって。優勝出来なかったから」

淡「…………サキ、アンタ殺したい程ムカつくね」

 駄目だ。抑えろ私。心を、怒りを殺せ。宮永咲から何か手がかりを聞き出すんだ。

淡「その原村和もアンタのせいで転校するんだよ?」

 言ってはならないと分かっていても、既に私の支配を抜け出している口は動く。

淡「アンタが居るから原村和もテルも菫先輩も亦野先輩も尭深先輩……私もおかしくなるんだよ…………ねぇ、何でテルの妹なの?」

 サキは小さく笑った。無表情だったサキの今日初めての変化は私のでしゃばる口を止める程に冷たかった。

 ほんの少しの静寂の後、静かにサキは口を開いた。

咲「私が生きてたのが間違いだったんだ。お姉ちゃんも皆も……そうだよ。私が“宮永咲”だったのが駄目だったんだ」

 何度サキの位置が羨ましいと思ったか。テルの昔話を聞くたびにサキとすり変わりたいと何度思ったことか。

 なのに、どうしてサキはこうも壊れてしまったのだろうか。

 羨ましいどころか、同情すら感じる。

咲「お姉ちゃんの居ない世界に私が生きている意味なんてないよね。誰か殺してくれないかな? 淡ちゃんなら殺してくれるよね?」

 サキの穏やかな声に乗せられて届いた音は私の肌を粟立たせた。
 震える手を握り、サキの睨み付ける。

淡「絶対に殺さない。サキはここから出て、罪を償わせるから」

咲「何で? 淡ちゃんは私が憎いんだよね? なら、殺してよ」

淡「……勿論。私に勝ちを譲ったんだから。でも、本当に憎いのはサキに罪を擦り付け、テルを殺した真犯人。あっ、サキの罪は私を虚仮にしたことね」

咲「なっ……あ、わ……」

 目を見開き、震えながら私を見つめるサキの表情は複数の感情がひしめき合っている。

 本当は言うつもりは無かったけど、唾を吐かせてもらおう。

 いつか、前言撤回が出来なくなるように。

淡「テルから手紙来たよ。サキは無実だって。私が、私達虎姫がそれを証明するから」

咲「止めてよ……止めてよ! 何で! 私を助けようとするの!? 何で! ねぇ、何でよぉぉぉ! 私はもう生きたくないの!」

 顔を真っ赤にしてガラスを叩くサキに私は精一杯笑顔でーー

淡「じゃあね。宮永咲」

 そうして私は部屋から出ていった。

菫「大星、大丈夫か? 顔が青いが」

淡「栄養が足りてないのかな?」

菫「……我慢しなくていいんだぞ」

淡「怖かった……ほんとに怖かったよぉ……す、みれ先輩ぃ」

 菫先輩に抱きしめてもらいながら私は一つだけ確認した。

 サキが壊れていたのはつい最近のことではない。昔からそうだったんだ。

 宮永照の妹だからだったんだ。

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 白糸台の虎姫専用の部室に戻った私と菫先輩を迎えてくれたのは亦野先輩と尭深先輩だった。

 だが、二人とも表情が固い。

淡「どうしたんですか? 絞れなかったとか?」

誠子「いや、それもあるんだが……」

 妙に歯切れの悪い亦野先輩。尭深先輩に至っては目も合わしてくれない。

誠子「……大星、驚かずに聞いてくれ」

淡「分かりました」

誠子「お前の家が焼かれた」

淡「は? 焼かれたって……火事?」

誠子「放火だそうだ。死者、怪我人は0」

 力が抜け、座り込んだ私に尭深先輩はお茶を差し出した。
 気を使ってくれているつもりなのだろうか。何にせよありがたい。

 尭深先輩にお礼を言って亦野先輩に続きを促した。

誠子「恐らく、私達はどこかで見られている。次の狙いは多分、大星、お前だ」

淡「……分かった。けど、可能性が一番あるのは虎姫ですよね。信じてますけど」

尭深「うん。何にせよ、淡ちゃんはどこかに逃げて」

 どうしてだろう。自分の家が燃えたと言うのに冷静に受け止められている自分がいる。
 何でだろう? サキに毒されたのかな?

淡「それじゃあ私は少しの間身を隠すね。こまめに生存確認だけはしてください。お疲れ様です」

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 テルの葬儀の日、そこにはトッププロ、インターハイの魔物など並々ならぬ顔立ちが揃っていた。

 そこに居なかったのはサキだけだった。噂では聞いていたから驚きはしなかった。

 私はテルについて勘違いしていたらしい。いつもお菓子ばっかり食べているクールで優しい先輩。そう思ってはいたが、ここまでテルに交流があったとは。

 証拠に誰もが涙を流し、別れを惜しんでいる。

 私も涙は流した。
 けど、私の涙は皆の様に綺麗じゃない。

 もう、越えることの出来ない悔しさだった。

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 私の家が燃えてから数日後、私は大阪、梅田駅に来ていた。

恭子「大星、大丈夫か?」

 私の隣を歩くのは末原恭子。夏、誰よりも、私よりもサキに拘った人だろう。
 直接話を聞いたわけではないが、対局を見ていたら分かる。

 何故、私が末原さんに保護されたかというと、菫先輩が連絡したかららしい。事情込みで。

 二つ返事で了承してくれたと。

淡「……大丈夫です。ありがとうございます」

恭子「気にすんなや。大星、それよりこの話、私にも一枚噛ませてもらうで」

淡「何で自分から巻き込まれにいくんですか?」

恭子「そら、私も宮永に仕返しがしたいからやな」

 この状況で笑える末原さんはどれだけ肝が座っているのだろう。私には到底真似できない。

恭子「悪意も人情も何もかも受け入れる。そんな町やで大阪は」

淡「そうですか」

恭子「ほな、家に案内しよか」

 そう言って歩く末原さんの後ろを着いていったはずなのだが、迷子になった。

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 末原さんの部屋はそこまで物が置かれているわけではないらしい。必要最低限の物と雀卓。それだけだ。

恭子「話を聞こか」

 そう言ってテーブルの前に座り、胡座をかく末原さんに私は自分の知っていることを包み隠さず、全て話した。

 相槌こそするが、横槍を入れることなく話を聞いてくれた末原さんは考える素振りを見せる。

恭子「……怪しいのは長野勢やと私は思う」

淡「聞かしてもらってもいい?」

恭子「そら、簡単なことや。決勝戦、オーラスまで勝ってた清澄を捲ったからな」

淡「私が悪いって言うの?」

恭子「ちゃうちゃう。堪忍な。そんなつもりやあらへん。清澄の勝ちを応援していた……それこそ、予選で清澄に負けた高校は清澄に勝ってほしいやろ?」

淡「そりゃ、まぁ」

恭子「ほな、一つ仮定が出来たな」

 この人は賢い。どこまでも状況を正しく認識できるんだ。
 こんな簡単なことだって分からなかった私とは何なのだろう。

恭子「それと、宮永照を殺した犯人と大星の家を焼いた犯人が一緒とも限らんで。証拠が無いんやからな」

 言われてみればそうだ。前回も今回も犯人は捕まっていない。同一犯だと断言することは出来ない。

 末原さんはテーブルに置かれているコップを掴み、中身を喉へ流し込む。

恭子「それに、私にはもう一つ分からんことがあんねんけど」

淡「もう一つ?」

恭子「せや。宮永照からーーこんな言い方はあれやけど、死人からどうやって手紙が届いたんや? 筆跡まで同じで」

 そのことについては私も疑問に思っていた。テルが、インターハイの日で時間が止まったテルがどうして未来へ手紙を書けたのか。

 どうして犯人がサキじゃないと分かっていたのか。

恭子「宮永照があらかじめ誰かに手紙を託していたのなら可能や。けど、この可能性は限りなく0やろうな」

淡「そうですね。仮に白糸台の誰かに預けたのなら、サキは捕まってない。そもそも、その日に火事が起こるなんて予想なんて出来ない」

恭子「けど、確かに手紙は存在する」

淡「していた。だけどね。私の家と一緒に焼かれました」

 そうやな。と、末原さんは言ってクローゼットから上着を取り出した。

恭子「ま、考えるのは後や。ほら、着替え。ちょっと小さいやろうけど入るやろ」

淡「え? どうして?」

 白のパーカーを受け取りながら、私は末原さんに訊いた。

恭子「優勝チームの大将が有名やないわけないやろ? それも制服で。噂がたったら動きにくくなるで?」

淡「あー、確かに。ありがとうございます」

恭子「ほな、生活用品を揃えに行こか」

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 大星淡と末原恭子。タイプが違う私達の共通の話題は麻雀しかないのだが、末原さんは私を気遣ってか、その話題を避けてくれている。

淡「……末原さん」

恭子「どないしたん?」

淡「優しいですね」

恭子「……当たり前のことしてるだけや」

 赤くなってそっぽを向く末原に私は笑いかけ、腕を引いた。

淡「照れなくていいのに。それより、服見ましょう服!」

恭子「あーはいはい。大星、金あるんか?」

淡「一応、財布は無事だったから口座のカードはあります」

 中身がどれだけあるのかは覚えていないが。
 そもそも、私は貯金なんてしない。あるだけ使ってしまう。

 以前、テルに言ったことがあった。金は天下の回りものだから使っても大丈夫だと。
 テルは私みたいな人がいるから回るんだと言っていたっけ。

恭子「ほな安心やな」

淡「……はい。それよりも麻雀したいなぁ」

 ふとこぼれ落ちたことだが、多分、本音だ。最後に牌に触ったのは数ヶ月前だ。

 末原さんが驚いた表情で私を見ているが、テルがいたから麻雀が好きなわけではない。

 私はただ、純粋に麻雀が好きなんだ。だから、インターハイの決勝でサキに怒ったし、悔しかった。

恭子「……ことが終わったら皆でやるか」

淡「うん!」

恭子「ま、次は勝たしてもらうで」

淡「首を洗って待っててね。皆、跪かせるから」

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 買った物は着替えと歯ブラシ、お箸。後、携帯の充電器だけだった。

 末原さんの部屋に戻った私達はテーブルを挟んで座っている。

恭子「ほな、今後の身の振り方を考えようか」

淡「長野に向かおうと思います」

恭子「それが一番早いんやろうけど、私としてはやめてほしいな」

淡「何で?」

恭子「大星に何かあったら嫌やからや。大阪におる間は私が保護者や」

 ジコロなのか? 恥ずかしげもなくよくそんなことが言える

恭子「長野勢については私に任せてほしいねん。大星には一番の難題をやってほしい」

 一番の難題。それはテルが私に寄越した手紙のことだろう。
 テルがどの様にして私に手紙を送ったのか。その意図と方法を見つけること。

 末原さんが私にそれをやるように指示した意図は分かっている。

 私が宮永照の後継者だからだ。

 宮永咲ではなく、大星淡がそこに居座っているから。

淡「うん。分かりました。私はただ、この部屋で頭を悩ませます……そう言えば末原さん、学校は?」

恭子「緊急事態や。そこまで長いことは無理やけど、休むわ」

淡「すいません」

恭子「謝らんでええよ。私がやりたいからやってるんやから。それにしても大星、一つええか?」

淡「何?」

恭子「痩せすぎや。東京に戻るときまでには元に戻すで」

 分かりました。と、私は言って末原さんのベッドに入った。

淡「寝るね。昨日からほとんど寝てなかった」

恭子「晩ごはんには起こすわ」

淡「お願いします」

 目を閉じると、精神が沈んでいく感覚がした。
 そっか。昨日からじゃない。インターハイの日から私の寝不足は続いていたんだ。

 誰かが側に居てくれるだけでここまで安心できるんだな。

恭子「おやすみ。大星」

 末原さんが何か言っているが、微かに残った意識では認識することが出来なかった。

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ーーーーーー

 私が起きたのは夕方だった。
 酷く喉が乾くし、寝汗で体も気持ち悪い。

 ゆっくりとベッドから体を起こし、辺りを見渡すと、テーブルの上にペットボトルが一本だけ置かれていた。

淡「…………」

 ペットボトルを取り、ギャップを外す。中身を一気に流し込み、回らない頭で思い出す。

 そうだ、私は末原さんの家に転がり込んだんだった。

 部屋の主は不在。いつもの私なら部屋を勝手に漁るのだろうけど、何故かやる気がでない。

恭子「おはようさん」

淡「おはよう」

 音もなくドアが開かれた。足音さえ聞こえなかったし、私に対してそこまで気を使ってくれているのだとしたら、やめてほしいな。

淡「末原さん、私にそこまで気を使わなくてもいいです」

恭子「何言ってるんや。それより、長野勢と話つけてきたで。ま、食べながら聞いてや」

 末原さんに差し出されたのはたこ焼きだった。
 まだ熱いたこ焼きを口に放り込み、末原さんが切り出すのを待つ。

恭子「まずは龍門渕やけど、あれは事件に関係してへんわ。当日は長野に帰ってたそうや」

淡「裏は取った?」

恭子「ん? ああ、取ってないで。つうか、これだけ時間がたってるんやから無理やわ」

 堪忍な。と、付け足す末原さんを横目に私はたこ焼きを食べていた。
 まだ、胃は回復していないせいか、少し気持ち悪い。

恭子「続けるで? 鶴賀は清澄の応援でまだ東京に残っていたけど、親戚の家にいたらしい」

淡「次は風越ですか」

恭子「せやな。ま、風越からは池田と福路しか東京に来てなかったんや」

淡「個人戦ですか」

恭子「せや。それより、大星、次は個人戦も出るんやで?」

 末原さんの言った通り、私は個人戦に出なかった。
 火事騒ぎのせいで予定が遅延したものの、出る気には慣れなかった。

 宮永照、宮永咲。そして、大星淡。自分で言うのもなんだが、大会を賑わせた3人は出場していない。仕方がないことなんだけど。

淡「来年は出ますよ。それよりも続きを聞かせて下さい」

恭子「せやな。ま、二人は火事のとき、コーチとミーティングしてたらしい。犯行は不可能やな」

 龍門渕、鶴賀、風越と外れが続き、残すところは本命清澄。
 容疑者としてサキは除かれるが、他の四人は疑いがかかっている。

恭子「清澄はあの時間帯、各々別行動やってんて。だから、犯行することは誰でも可能。それこそ、宮永咲でもな」

淡「でも、テルの手紙には……」

恭子「宮永照が嘘を書いた可能性は?
“妹を庇うことは姉として普通”やと思うねんけど」

淡「……でも! テルがそんな嘘をつくはずがない!」

恭子「そら、私もそう思うで? ま、何でも否定してたら身動きとられへんな」

 末原さんの言葉が頭の中で響いている。
 テルがサキを庇うために嘘を書いた。

 ……テルならしてしまいそうだ。
 もし、そうならこれでエンディングを迎えてしまうことになる。

 だが、そんなこと納得出来るはずもない。
 それに、テルが私に嘘をつくはずがない。

淡「末原さん、一ついいですか?」

恭子「ん?ああ、どうしたんや?」

淡「テルは嘘を書いてない。その方向で考えましょう……私はテルを信じます」

恭子「そうか。分かった。なら、私は大星淡を信じるわ」

 そう言って笑う末原さんに私はありがとうございます。と、礼を言って私はトイレに行くと告げた。

 ……気持ち悪い。

ーーーー
ーーーーーー

 夏の終わり。
 部屋の片隅で小さくなっていた私の額から大粒の汗が落ちた。

 窓も閉め切り、エアコンも付けずにいればそうなるだろう。

 食事が喉を通らなくなったのはこの頃辺りだろうか。
 自分は悪くないと分かっていても罪悪感で潰れそうになる。

 あの時、私がふらふらと外に出なければーー

 テルは助かったのではないのか?

 そう考えるだけで自分が酷く醜い何かに思えてくる。

 テルを知らなかった以前の私は何を考えて、何を生き甲斐にして生きていたのだろうか。

 でも、それは色褪せた世界なのだろう。

 私の世界に色を、輝きを与えてくれたのはテルだった。

 私の自信を砕き、上を向かせたくれた。

 毎日が楽しかった。テルと、虎姫の皆と話し、麻雀する日々が何よりも大切な宝物だった。

 …………テルが、宮永照がいない世界で私は何を夢見ればいい?
 何を越えればいい?

 ああ、そっか。

 サキが壊れていたように、私も壊れていたんだ。

 宮永照という太陽に星が依存していたんだ。

 どれだけ偉そうにしていても、どれだけ先輩に生意気言っても私はちっぽけな星だったんだ。

 太陽に近すぎて自分が大きな輝きを放つ惑星だと勘違いしていた。

 私が皆に偉そうに言う資格はーーあるはずない。

 けどね、どれだけ私が悔やんでもーーやっぱり真犯人、アンタが一番悪いよ。

ーーーー
ーーーーーー

 次の日、 私は病院に連れていかれた。
 診断結果は拒食症。ストレスが原因らしい。心当たりがありすぎる。

 末原さんはやっぱり。と、呟き、医師に改善の方法を尋ねていた。

 私自身、痩せすぎたと思っている。おそらく、同年代の平均よりも相当軽いだろう。

 伴って、運動能力の低下。これが一番辛い。

恭子「今日は吐いたらあかんで」

淡「……はい」

 帰り道、末原さんは私にそれだけしか言わなかった。
 心配や同情されるのは嫌いだ。だから、末原さんには感謝をしている。

 あくまでも同じ目線で話をしてくれる。

 この数日間、彼女と暮らして分かったことがある。
 末原恭子は大人なのだ。私の気持ちを汲んでくれるだけの余裕がある。

 そして、底抜けに優しい。

 テルとは違うベクトルで憧れるな。

恭子「せや、大星」

淡「どうしましたか?」

恭子「明日から学校行くわ。よければ、部活参加するか?」

 麻雀が打てる。それだけで何も考えずに頷きそうだったが、あえて首を横に振った。

淡「魅力的ですけど、止めときます」

 今の私に打つ資格などない。こんな精神で打つなんて相手に失礼だ。

 だから、今回の事が終わるまで麻雀は封印。どうせ打つなら気持ちよく相手を叩きのめしたいしね。

恭子「さよか。出来るだけはよ帰ってくるわ。オカンの手伝いしてやってや」

淡「任されました」

 話は脱線するが末原さんの両親も素晴らしい人だった。
 菫先輩が一通りの事情は説明したのだが、私が狙われていることを知っても住むことを了承してくれた。

 大阪人は本当に器が大きい。

 将来は大阪に住むのもありだとか考えていると、ポケットに入れていたスマホが震えた。

 着信は菫先輩。

淡「もしもし。生きてますよ」

菫『それはよかった。近況報告だ。何か発展はあったか?』

淡「容疑者から龍門渕、鶴賀、風越が抜けました。そっちは?」

菫『あれからは何もない。放火の犯人も捕まっていない』

淡「それで、事件の真相にたどり着けそうな情報はありますか?」

菫『……悪いな。そっちも進展はない』

淡「ま、そう簡単に見つかったら苦労しませんよね。それじゃあ切りますね。お疲れ様です」

菫『ああ、お疲れ様』

 通話を終了し、ポケットにスマホを入れる。
 数日振りに聞いた菫先輩の声はどこか懐かしい感覚がした。

恭子「ええ先輩やな。わざわざ電話くれるなんて」

淡「そうですね。尊敬できる先輩です。末原さんも」

恭子「やめーや。恥ずかしい」

 ほんのりと赤くなってそっぽを向く末原さん。どうしてこうも照れ屋なのだろう。

 からかってやろうと口を開こうとしたとき、再びスマホが震えた。

淡「もしもしー、何か言い忘れでも?」

 軽口を叩いた私だったが、返ってきた台詞はあまりにも重かった。

菫『……宮永咲が自殺を謀った』

 くらりと歪んだ視界。足場を無くしたような感覚に陥り、咄嗟に末原さんを掴んだ。

恭子「大星、私が代わりに話す」

 スマホを末原さんに差し出し、私は空を見上げた。
 眩しい太陽はうっすらと雲に覆われていた。

恭子「…………電話変わったで………………そうか。分かった。すぐ向かう。ほな」

 末原さんは私にスマホを返し、私の手を引いた。

恭子「今から東京に向かうで。金欠やからバイクでな」

淡「乗れるの?」

恭子「一応、中免は持ってる。学校には内緒やで」

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ーーーーーー

 再び東京に戻った私は菫先輩と合流し、病院へ向かった。

 途中、休憩したインターチェンジで末原さんに聞かされことはサキが首を吊っているところを発見、保護されたこと。

 病院へ搬送された時には意識は回復していたらしい。

 宮永咲と書かれたプレートを見つけ、部屋に入る。
 真っ白な空間に据え置かれたベッド。上体を起こして私達を見据えているサキ。

 私はサキに近付き、頬を叩いた。

 乾いた音が響くのと同時にサキの胸ぐらを掴み、睨みつける。


淡「無駄なことしないでよ! アンタを助けようとしてるのに、アンタが死んだら意味ないじゃん!」

咲「……助けてなんて言ってないよ」

淡「はぁ? ふざけるのも大概にしてよ! 」

 私の怒号を聞いたらしいナースが慌てて駆け寄って来たが、菫先輩に止められていた。

 サキは目も合わしてくれないが、話だけは聞いてくれているだろう。

淡「アンタが死んで喜ぶ人がいるの? ねぇ、テルがいなくなった今、私は誰を目標に進めばいいの!?」

咲「…………」

淡「何か言ってよ…………言えよ!」

 再び右手を振り上げたところで、腕を掴まれた。

咲「……あ、和ちゃん」

淡「はら、むら?」

 病室の入口で私に対して刺すような視線を飛ばしている。
 そして、腕を掴んでいたのは菫先輩だった。

菫「……大星、少し外してやれ」

淡「……はい」

 私の方へ歩いてくる原村は今にも殴りかかって来そうな雰囲気を纏っている。

 ビンタの一発でも覚悟していたが、原村は私の横を通り抜け、サキの手を取った。

和「咲さん……」

咲「和ちゃん、エトペン、ありがとう。部屋に置いてるよ」

 サキと原村のやり取りを横目に私は病室を出た。

菫「お前が手を上げたの始めてみたよ」

淡「そうですか。見苦しいとこ見せてすいません」

菫「いや、それはいい。末原は?」

淡「そう言えば、いないですね」

菫「まぁ、待合室で待ってるか」

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 待合室には末原さんと私の知らない男性が何やら話していた。

 私達に気が付いたのか、男性は立ち上がり、小さく頭を下げた。

恵「始めまして。原村恵だ。和の父親だよ。インターハイ、見ていた」

淡「どうも。大星です」

 会話に混ざる気になれなかった私は菫先輩にカフェオレを奢ってもらい、聞きに徹する。

恭子「どないでした? 娘の晴れ舞台は」

恵「久しぶりに熱くなったよ。特に決勝の大将戦は。有休を使ったかいがあった」

恭子「姫松は出とらんのですけどね。そう言えば原む……和さんは大丈夫なんですか?」

恵「久しぶりに娘の顔を見たよ。恥ずかしい話、私も妻も仕事が忙しくてね。ここ数ヶ月まともに帰れないんだ……今日、引きこもってる和が連絡をくれたから部下に仕事を押し付けて急いで帰って来たんだよ」

 どうでもいい。原村の家庭事情に興味なんてない。

 私は菫先輩に少し出てくると言って待合室を出ていった。

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 廊下で病室から出た原村とばったり鉢合わせした。

淡「お話は終わり?」

和「……貴女を咲さんの病室には入れません」

淡「あっそ。入るって言ったら?」

 私は原村が嫌いだ。
 あのインターハイで睨まれたときからずっと。

 まともに話したのは初めてだが、やっぱりそれは変わらない。

和「……後悔さしてあげます」

淡「あー怖い怖い。入れないよー……これで満足?」

 同族嫌悪。多分、これだろう。

 テルという拠り所を失った私はサキを新しい拠り所にしようとしているんだ。
 だが、サキの隣には原村が既に立っている。

 だから、嫌いなんだ。邪魔で仕方がない。

 原村なんて嫌いだ。

 私自身はもっと嫌いだ。

和「一々腹が立ちますね。それより、一ついいでしょうか?」

 私に話しかけるな。

淡「……なに?」

和「どうして末原さんがいるんでしょうか?」

淡「……別に。咲が心配だからじゃない?」

和「そうですか。なら、話は終わりです。帰って下さい」

 むかつく。

淡「……言われなくてもそうするよ」

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 ごめんなさい。
 薄暗い部屋で私は呟いた。

 ろくに食事もせず、栄養ドリンクだけで生活していた。

 とっくに壊れてしまった私はいっそのこと死んでしまおうかと考えていた。

 何度も何度も何度も何度も何度も何度も自殺を考えていたが、どうしても実行に移せなかった。

 私をこの世に繋いでいたのは宛名が宮永照と書かれた一通の手紙だった。

 先日、送られてきたと母親が私に差し出したのだが、開けることができない。

 中身を見てしまえば全てが終わってしまうと思っていたからだ。
 私が弱いばかりに開封すらされていない手紙は机の上に鎮座している。

 開封されるのはまだまだ先の話だ。

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 サキの自殺未遂から一月が過ぎた。
 私の変化と言えば、拒食症がある程度改善され、体重も少し戻っている。

 まだ運動すると体力の低下を感じるが、普通に生活をする分に関しては問題ない。

 あれから数回、菫先輩は東京の精神病棟へと移されたサキの病室に足を運んだらしいのだが、毎回原村に追い返されるらしい。

 寧ろ、サキより原村をぶちこんだ方が……。

 私と末原さんだが、頭を悩ませることが増えた。

 サキが首を吊ったロープはどこから仕入れてきたのか。
 サキに生きていられては困る人間がいるらしい。

 裏を返せばこれで宮永咲の無実は確定したと言ってもいい。

恭子「……クリスマスやな」

淡「まぁ、私達に関係ないですよね」

 世間はクリスマスに向けてお祭り騒ぎの中、私と末原さんは出してきた炬燵でのんびりしていた。

 一応、ケーキは買ってきているが雰囲気を出すのには些か足りない。

恭子「せやなぁ。炬燵から出る気せえへんなぁ」

 炬燵の魔力とはとてつもないものだ。
 一度、入ってしまえば抜け出すことは出来ない。

 どのみち、クリスマスを楽しむ余裕は今の私にはない。

 閑話休題と前言撤回。

 1ヶ月間、私が体力と体重を取り戻すことにだけに尽力していたわけではない。

淡「エトペン……」

恭子「あのペンギンがどないしたん?」

淡「あの中にロープを入れていたら……」

 サキがロープを手に入れる方法など外部から持ってきてもらうしかない。
 私が面会に行ったときは清澄の部長しか会ってないらしい。

 サキの話を信じるのなら報告だけを済まして帰った。

 私より後に原村がエトペンの中にロープを隠して持ってきたのなら、サキが自殺を謀る条件が揃う。

恭子「せやけど、父親の話は原村が引きこもってると言ってたで」

淡「その前に仕事が忙しくてまともに家に帰れないとも言ってました。両親がいないときに出ているのなら?」

恭子「そうか……それやったら辻褄が合うな。ようやったで」

 末原さんに褒められて自然と顔が綻ぶ。

恭子「とりあえず、謎が一つ解けたな。証拠は?」

淡「サキの牢に置いてあるエトペンを調べたら出てくるんじゃないですか?」

恭子「ほな、行くか」

淡「菫先輩に頼みましょう。そっちの方が早いです」

 前言撤回だ。サキに生きてもらったら困る人間なんていない。
 サキの一言で動く人間が存在したんだ。

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 結論からいえば、ロープをサキに流した犯人は原村だった。
 エトペンの底に小さな、それこそロープ一つ程が何とか通る穴が空いていたらしい。

 これをネタに原村に詰め寄ってもいいのだが、少し泳がせることにした。

 放火の疑いを原村にかけるのはまだ早い。証拠も何も無いのだから。

 なぜ、原村がロープをサキに渡したのか。これは簡単に説明がつく。

 原村和は宮永咲の頼みなら何でも叶えようとするだろう。

 テルと私の関係と二人の関係は同じようなものだ。

 今、こうして犯人を探している様に私もテルの為なら何だってする。

 似ているからこそ、分かる。

 それは酷く歪な、けれど、紛れもない愛だ。

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 年が明けた。
 午前中は何故か姫松のレギュラー陣と初詣に行っていた。

 大阪に長期間滞在しているお陰で知り合いは増えた。

 主に千里山と姫松の連中だけど。

 午後は末原宅で昼を食べた後、何故か私までお年玉を貰ってしまった。
 恩返しは来年もインターハイを賑わすようにと笑いかけられ、思わず泣いてしまった。

淡「もしもし、サキ?」

咲『淡ちゃん?』

 病院に無理を言ってサキに繋いでもらった。
 せっかくだしね、挨拶しようと思って。

淡「明けましておめでとう」

咲『今年はよろしくしたくないかな』

淡「ううん。何がなんでもよろしくしてもらうよ。ところで、原村はいる?」

咲『……和ちゃん、電話』

 原村はサキのすぐそばにいるらしい。正月からよくやるよ。

和『代わりました』

淡「明けましておめでとう。原村和」

和『用件はそれだけですか? 切りますよ』

 連れないやつだ。
 隣で情けない表情で炬燵を堪能している末原さんを横目で見て、私は笑った。

淡「ね、教えてよ。サキがロープをどうやって手に入れたか」

和『……知りませんよ』

 明らかに声音が変わった。知らないのなら動揺するなよ。

淡「ふうん。ま、何でもいいけど。そうそう、いいこと教えてあげようか? 今、私は地元に戻ってるよ。それじゃあね」

 一方的に通話を終了し、虎姫全員へのメールを作成する。

 罠は張った。後は運と、先輩方を信じるだけだ。

恭子「えらい意地の悪いことするんやな」

淡「何のことですか?」

恭子「嘘までついて原村を誘い出そうってか?」

淡「勿論。私の家を放火したのが原村なら、今度こそ私を殺しに来るはずです」

恭子「大阪まで来た方が早いんちゃうの?」

淡「原村は絶対にしません。サキの近くにいたいですから」

恭子「東京から離れたくないわけやな」

淡「そうです。原村はサキにロープを渡しても死んでほしくはなかった。サキの言われるがままに行動しても本心はそこにはなかった。妥協点として、東京内。もしものときにいち早く駆けつけられるから。ですかね」

 推理とも言えない、稚拙な仮説だが、正解からそこまでかけ離れている訳ではないだろう。

 末原さんも納得したようで、深く頷く。

恭子「お前、ホンマに大星か?」

淡「へ?」

恭子「私の知ってる大星淡はもっとポンコツやったで」

淡「うるさいなぁ!」

 失礼極まりない。
 確かに以前の私はどうしようもなかったと思う。だけど、ポンコツだなんて言い方は少し傷付く。

恭子「堪忍な。最近、あまりにも頭が回ってるから別人や思うたわ」

 笑いながら末原さんは「せやけど」と、続ける。

恭子「せやけどな、私は今の大星の方がええわ」

 無自覚ならたちが悪い。自覚しているのならもっとたちが悪い。
 私は末原さんに落とせない人はいないと思う。

 顔色一つ変えずに歯の浮くような台詞を並べるのだから。

 けど、ここで落とされる私ではない。

淡「ふふん。私の部下Aにしてあげてもいいよ」

恭子「なんやねんそれ……」

淡「どうする? 臨時収入も入ったし、豪遊でもする?」

恭子「空いてる店コンビニくらいやで」

淡「……あ、そうだった」

 今は正月だった。

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 原村は姿を現さなかった。
 私の考えを読んでいたのか、単に私の思い違いだったのか。

 正月に先輩を使った謝罪のメールを送信し、事が済んだら奢りが決まった。

恭子「振り出しか?」

淡「違います……予想が正しければーー」

 そう言って私は病院に電話をかけた。
 受け付けからサキに繋いでもらう。

咲『もしもし』

淡「やっほー。さっきぶりだね」

咲『今度は何かな?』

 テンションを上げている私とは対照的にサキの声音は苛つきが混じっているように聞こえる。

淡「原村に何か言った?」

咲『……淡ちゃん、どこまで気が付いたの?』

 やっぱりサキはこの事件、全ての真相を知っているし、関わっている。

 けれどね、サキ。

 それ、墓穴なんだよ?

 サキを地獄の底から引き摺り上げ、真犯人を奈落へと叩き落とす為の穴を自分で掘ったんだよ?

 私は原村に何か言ったのかと訊いたんだ。サキ、少し抜けてるね。

 テーブルの上に置いてあるメモ帳にペンを走らせる。

淡「んー? まぁ、ある程度かな?」

咲『あっ、和ちゃーー』

和『お電話代わりました』

淡「……原村、私はアンタが嫌いだ」

和『奇遇ですね。私も貴女が嫌いです』

 末原さんに出かける準備と必要なものを紙に書いて指示を出す。

淡「それはありがたいね。これで心置き無く戦える」

和『戦う?』

 準備に取りかかった末原さんを横目に私は更に会話を続ける。

淡「だから、私はアンタが嫌いって言ったじゃんーー地獄に落としてやるよ」

 自分でも驚くほど低い声だ。
 迫力があったのか、物騒な言葉を使ったのかは分からないが、末原さんの動きが止まった。

和『……意味が分からないのですが』

淡「ふうん。吠えるのは今の内だって言ってんの」

和『…………地獄に落ちるのは貴女です』

淡「あは。いいね。待っといてね……クソ女」

 先程と同様に一方的に通話を終了した。

 制服を着て、その上に白いコートを羽織る。
 決戦だ。白糸台の大星淡として、白糸台の宮永照の後輩として全てを終わらせよう。

 これは決別だ。過去と、今までのテルに依存していた頃の私との。

淡「一応、外れたときの保険を考えておいてよかったよ」

恭子「ほんま、誰やねん……ほな、行くで」

淡「はい。行きましょう」

 私の顔には笑みが張り付いていた。

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 末原さんに乗せてもらうこと数時間。
 昼前に再び東京に着いた私はサキの病室へと向かった。

 末原さんには外してもらった。一対一で原村と話したいから。

 病室は殺風景で、どこか孤独感を覚える。

淡「サキ、久しぶり」

咲「…………」

淡「原村、屋上で話そう。病室じゃ迷惑だよ」

和「……分かりました」

 見送るサキの表情は何か悟ったような、諦めたような印象を受けた。

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 冷たい風が金色の髪をすり抜け、頬を撫でた。

 屋上。と言っても、自殺防止の為か格子鉄線が張り巡らされているせいか、解放感など全くない。

 そして、雨風で塗装が剥げ、錆びついた表面が年季を語るタンクと梯子。

淡「事の始まりはインターハイ団体戦が終わった後。放火したのはアンタだ」

和「…………」

 だんまりか。いいよ。寧ろ茶々を入れられる方がやりにくい。

淡「テルから手紙が来たんだよ。サキは無実だって。けど、サキはアンタを庇った。宮永照のいない世界に自分が生きる意味なんてない。それなら、友達の為に私が身代わりになる。こんな理由で」

 どうやってサキが知ったのかは予想はついている。
 火事から逃げてきた現場に私がいなかったのを見て、喜び勇んで報告したのだろう。

 咲さんに暴言を吐いた大星淡は殺したって。

 ただ、偶々その現場にいなかっただけなのに。

淡「それからニュースか何かで死者を確認した。私の名前を見て笑う為にさ。でも、予定外だよね。死んだのが大星淡じゃなくて、宮永照だなんて」

 分かっている。原村は最初からテルを殺す気など無かった。
 サキが悲しむのだから。

 保護欲。とでも言えば良いのだろうか。

 サキに少しでも危険のあるモノを徹底的に排除する。それが原村和だ。

 インターハイでその片鱗は見えていた。
 通り過ぎ際に私を今にも殺しそうな勢いで睨んでいたこと。

 確信したのは病室の廊下で原村と話したときだ。

 サキの病室に入れないと、後悔させると言った。

 私がサキにとって毒となると判断したのだろう。まぁ、間違っていないが。

淡「予想外のことにサキが壊れた。サキのことだからアンタを庇ったんでしょ? 犯人が掴まったんだ。警察はそこで調査終了。よかったね、犯人だとばれなくて」

和「……」

淡「まだ、黙ってるんだ。数ヶ月後、アンタは私の家に火を放った。勿論、最初の目的は私を殺すことなんだから。私の運がいいのか、また、生きていた。残念だったね」

 ここだけは確信がない。
 威嚇の為に火を放ったのか、本気で私を殺したかったのか。

 それは後から訊けばいいことか。

淡「サキの自殺を手伝ったのはアンタだ。エトペンの中にロープを隠して鑑識の目を誤魔化した。これは裏も取ってあるよ。アンタは自分の心を殺してまでサキに従ったんだね」

 サキは原村を庇おうとした。
 サキの指示で原村は自分を助ける為にロープを用意したのだ。

和「そうですか。そこまで気付いているのですか」

淡「これが事件の真相。確信したのはサキのテルに対しての執着と台詞。後、アンタの私に対する態度。雰囲気が違うんだもん。ほらーー言い返してみろよ」

 吐き捨てるように私は自分の推理を憶測混じりで言い切った。

 けれど、こうじゃないと辻褄が合わない。

 束の間の静寂。

 原村はクスリと笑った。

和「言い返すも何も……間違っていませんよ? まあ、貴女の家に火を放ったときに外出されていたのは予想外でしたが」

淡「間違っていないなら、サキを解放してあげて」

和「嫌ですよ。咲さんに私は自由でいてと言われたのですから……そうですね、諦めていましたが、やっぱり貴女は殺しましょう」

 原村は頭のネジが吹き飛んだのか、ケタケタと笑いながら、上着のポケットに手を突っ込んだ。

和「あは……そうですよ。貴女が死ねば真実を知る人はいない」

 原村が、手を抜いた。

 太陽の光に反射するナイフが原村の手に握られている。

淡「……嘘」

和「言っておきますよ。火を放ったのは貴女だって。これで私も咲さんも自由ですよ!」

 脅しなのかは誰に訊いても満場一致で否定するだろう。

 本気なのだ。主に目が。

和「私と咲さんの為に死んでください!」

 スローモーションで時が流れている。

 原村が踏み込み、私に向かって走ってくるのも頭では理解できた。

 理解できたのに、体は動かない。

 初めてリアルに体験した死の恐怖で足が動かない。

淡「動いてよ!」

 叫び声と共に私の足は動いてくれた。
 動いてくれたのだが、足がもつれて尻餅をついた。

 嗚呼、ごめんねテル。

 最後の最後で私の負けだよ。

 全てを諦めて、小さく笑った刹那ーー

 血が宙を舞った。

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恭子「うっ……こら……ごっつい痛いわ……のぉ、原村」

 目を開くと、左腕を差し出している末原さんがいた。

淡「末原さん……」

和「なっ……どうして……」

恭子「やかましいねん! お前は黙っとれ!」

 末原さんは空いている右手で原村を殴った。グーで。

 原村がよろけたときに末原さんからナイフが抜けたらしく、末原さんが苦悶の声を上げた。

 けれど、末原さんは怯まなかった。
 今度は蹴りをかます。

恭子「タンクの裏で待機しとったけど……お前、淡に何しようとしたんや?」

 ……いつから末原さんは武道派にジョブチェンジしたのだろう。

恭子「悪いけどなぁ、録画させてもらったで。タンクの上見てみろや」

 尻餅をつく原村に言ったのだろうが、私も釣られてタンクの方へ視線を流した。

 確かにビデオカメラが鎮座していた。

 原村がビデオカメラに驚いている隙に末原さんはナイフを蹴り飛ばした。

和「まだ……貴女達を殺せば……」

 私も立ち上がり、臨戦態勢を取ったところで、病院内へと続く扉が開いた。

咲「和ちゃん、もう、終わりだよ」

和「さ、きさん……」

 振り向いた原村はワナワナと震え、サキに近づいた。

咲「ごめんね。和ちゃん、もう守れないや。淡ちゃんを見て、私も前を向きたくなったよ」

 サキにあと一歩で手が届く位置で、地面に手をついて崩れ落ちた原村から視線を外し、末原さんと私は笑いあった。

ーーーー
ーーーーーー

菫「大星、よくやったな」

淡「いえ、末原さんに最後まで助けてもらいました」

菫「そうか。ま、これで照も心置き無く成仏できるだろう」

淡「そうですね。本当に良かった」

 今、私と菫先輩は待合室で恭子さんを待っている。
 傷は深くないものの縫わなければならないらしい。

 原村はビデオカメラと共に警察に引き渡し、サキもそれに付き添った。

菫「大星、お前、少し雰囲気変わったか?」

淡「こんな経験したんですよ?
老けますって」

菫「いや、そうじゃなくてだな。落ち着いたと言ったらいいのか」

淡「疲れているだけです」

 菫先輩に褒められるのは何だか照れ臭い。末原さんの気持ちが少し分かった気がした。

 待合室に私の乾いた笑いが響く。

菫「大星、留年の件だがな、お前転校しろ。先生方が無理矢理何とかしてくれるそうだ」

淡「じゃあ白糸台でいいじゃん」

菫「大人の事情だ。選べ、白糸台で留年するか、転校して進級するか」

淡「……そうだな。姫松にでも行こうかな?」

 次のインターハイ、姫松が優勝すれば少しは末原さんに恩返しできるかな。

恭子「ほー、大星、やっと麻雀する気になったんか」

 治療室から出てきていた末原さんはにこりと笑い、自販機に小銭を入れた。

淡「末原さん、見ていて。私が全国優勝に導くから」

恭子「期待してるで」

淡「任せてください。話は変わりますけど、テルの手紙、あれだけ分からなかったな」

 どれだけ考えてもテルが私に手紙を送った仕掛けだけが分からない。

菫「あー、そのことなんだがな、あれ私が送った」

淡「はぁ? いや、どうやって? 筆跡もテルのものだったですよ」

菫「あれは紛れもなく逃げ遅れた照が書いたものだ。火事があったその日、重りが巻き付いて地面に落ちてあったんだ。ホテルから投げたんだろう。誰かに託したんだ」

淡「……中身は?」

菫「勿論、読んでいない。ちなみに手紙は2通あった。もう片割れは宮永咲の元に送ってある」

淡「何だ。そんなことだったんだ。スッキリしました。何で、早く送ってくれなかったんですか?」

菫「すまない。私も立て込んでいたんだ」

淡「そうですか。それじゃあ、行きましょう」

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 後悔と懺悔の日々は無駄ではなかった。
 私を成長させてくれた。事実を受け入れさせてくれた。

 テル、私は間違ってなかったよ。

 テル、サキを……妹を助けてあげれたよ。

 テル、ありがとう。貴女がいたから私は前を向けた。

 私はーー前に進むよ。

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咲「淡ちゃん、どうして私を助けたの?」

 数日後、長野に訪れた私を出迎えてくれたのはサキだった。

 どうやらサキはサキで落ち着いたらしく、自分を傷つけることはしていない。
 カウンセリングは行くらしいが。

淡「ん? サキがいなかったら私は誰にリベンジすればよかったの?」

咲「……オーラス、ごめんね」

淡「忘れてた……理由を教えてくれたら許してあげる」

>>81って咲さんなの?

咲「お姉ちゃんが淡ちゃんに負けを認めさせたら、認めてあげるって」

淡「……なるほどなぁ。確かにサキの勝ちだ」

 私は負けを認めるしかない。
 テルにもサキにも。

淡「それで、サキの手紙には何て書いてたの?」

咲「家に届いていたみたいで、さっき見たけど一言だよ。咲はやっていないって私は信じてる。これだけだよ」

淡「なんだ。結局テルも分かってなかったんだ」

 宮永の血には恐らく、一生かかっても勝てない気がした。

 けれど、私の心は穏やかだった。

ーーーー
ーーーーーー

恭子「大星、これからどないするん?」

淡「私の家は燃えたから暫く居候させてください」

恭子「勿論や。帰るで、私達の家に」

 くるりと向き直り、その場を後にする。

 最後に振り向いた。

 お墓に沢山のお菓子が置かれている。

 私のお年玉はこれで無くなった。

 けれど、これでいいんだ。

淡「そう言えば、あの時名前を呼んでくれましたよね」

恭子「……今そんな話するなや」

淡「もう名前でいいじゃないですか。恭子さん」

恭子「……知らん。はよ行くで……淡」

淡「ほんと、照れ屋ですよね。ま、そこも大好きなんですけど」

恭子「……帰りは飛ばすで」

 私はもう宮永照の後継者でも、白糸台の大将の大星淡ではない。

 でも、それでいいんだ。
 もう、誰の手も借りずに自分の道を進むよ。

 テル、見ていて。

 私は何にでも頂点を目指すから。

 それが私の恩返しだから。

 大好きな私の尊敬する先輩への。

淡「そう言えば、その腕で運転出来るんですか?」

恭子「知らんわ」

カン

終わったぁ

最後、投げやりになったけど

>>115
所々入る物語と繋がっていないのは全部淡ちゃんです


拝読ありがとうございました。おやすみなさい。

前作は「宮永咲の姉妹が○○だったら」です

……ミステリーってこれでいいんだっけ?

あっ、忘れてた。
次は怜主人公で短編集する

栄養ドリンクで長期間生活できるのかは知らん

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