喜多見柚「イチバンボシ」 (19)

柚「えい」フリフリ

P「? なにかけてんだ」

柚「柚子胡椒」
柚「えへへ、アタシと同じ名前だなーって♪」

P「…楓さんに今度教えてあげるといいぞ」

柚「? 分かった」

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柚「いただきまーっす」

P「おあがり」

ズルズル…

柚「んーおいしい。あったまるねぇ」

P「…たしかに、にゅうめんに柚子胡椒は合うよなー…あ、俺もにゅうめん食べたくなって来た」

柚「でもPサンお茶漬け頼んじゃったじゃん」

P「うん。だからちょっと頂戴」

柚「えー」ブー
柚「ってのは、冗談、冗談。器貸してー」

P「サンキュ」

柚「いえいえー♪」

店員「おまたせしましたー」

P「お、来た来た」ズルズル…
P「うん。やっぱさっぱりして締めにいいな」

柚「そうだねっ」

P「お前は飲んでないだろ」

柚「雰囲気雰囲気」ズルズル

柚「なんだか豪華だねー」

P「具がいっぱいだな。家だと面倒で、こんなに用意する気にならんし」

柚「それはお茶?」

P「…たぶん、昆布茶じゃないか。飲む分にはあれだけど、お茶漬けにするのにはさっぱりしていいぞ」

柚「詳しいね。さすが飲んだくれP♪」ズルズル

P「人聞きの悪い…あの人たち、俺が見てないとそれこそ飲んだくれちまうからなぁ…」ハア

柚「今日はだれと来てたの?」

P「和久井さん、川島さん、三船さん…と、ルキトレさんだな」

柚「? ルキトレさんって、お酒飲めないよね?」

P「ああ。だからかわいそうに、川島さんに絡まれてたな」

柚「あちゃー」

P「…よしっと。頂きます」

柚「ご飯の最中にもう一度頂きますをするのもおかしいね」ケラケラ

P「…たしかに」ズズ…

柚「ねーPサン、アタシもお茶漬け食べたいなー」

P「そうか? じゃあ取り分けて…」

柚「そのまま器ごとちょーだい?♪」

P「…別にいいけど。はい」

柚「ありがとー♪」ヒョイ

P(…せっかく反対側を向けて渡したのに、俺が口をつけた方からすするんだな…)

柚「ン、おいしいかも…ほんとだね。さっぱりしてる」モグモグ

P「だろ?」

柚「まー出してくれたのはお店の人だけどねー」ケラケラ

P「仰る通りです」

柚「ありがとー。おいしかった」ヒョイ

P「おう」
P「…それで?」パク

柚「ン?」

P「…どうして雨の中、あんなところに突っ立ってたんだ?」

柚「…それは…」

P「和久井さんたちをタクシーに乗せるようと思って表に出なけりゃ、気づかなかったかもしれない」
P「…なにか、あったのか?」

柚「……」ズルズル…
柚「別に、なにかあったってことも、ないけどね」

P「…そうか?」

柚「うん」

柚「雨が降るとさ、寒いよね」

P「夜だしな」

柚「うん。…それでね? 傘を差して、ぽてぽてーって、一人で歩いてると、なんだか急に凍えて来て」
柚「ぶるぶるってなって、フードをしてみたんだけど治んなくて」

P「…」

柚「……それで、気がついたらしゃがみ込んでて。足が動かなくなっちゃったんだー」

P「…柚」

柚「ねえ、Pサン? …アタシ…は、」

P「柚」

柚「……なに?」

P「そろそろ出ようか。もう食べ終わっただろ?」

柚「…ン、そうだね。そうしよっか」

柚「ご馳走さまー。あったまったー」ポカポカ

P「それはなにより」

柚「ひょっとして、Pサンはこのあとアタシのことを家まで送ってくれたり?」

P「自分で言うのか、それ」
P「残念でした。俺も飲んだからな。そうするとしても、代行運転を呼ぶしかない」

柚「そっかー」

P「うん。だからまあ、とりあえず事務所まで一緒に歩くか?」
P「それからタクシーを呼んでもいいだろ」

柚「うん」


テクテク


柚「ちょっとだけ…雲が切れて来たね」

P「上を見ながら歩くと転ぶぞ」

柚「ほら。涙がこぼれないようにね?」テヘ

P「…そうか」

柚「えいっ」ヒョイ

P「…落っこちないようにな」

柚「うん」テクテク

P「…器用なやつ。猫みたいだな」

柚「そう? けっこうPサンには懐いてるつもりなんだけどにゃ〜」

P「はいはい」

柚「あ、オンナノコの台詞をそんな風に聞き流しちゃだめなんだよー。アタシ以外の子にそんなことしちゃだめだよー」メッ

P「…了解」

柚「ねえPサン」

P「ん?」

柚「ほら、上見て。星がきれいだよ」

P「…」



何の気なしに上を見上げると——塀の上から俺を見下ろす柚の顔が、目と鼻の先だった。

いたずらっぽく舌を出す彼女と不意打ちで目が合った。



柚「てへ」

P「てへじゃねえよ」

P「…そうだな」スッ

柚「ン?」

P「たしかに、一個だけずいぶんキラキラしてる星があるな。おかげでその星しか目に入らなかったけど」

柚「……」
柚「…うわ、臭い台詞…」

P「うわってなんだよ」

P「なあ。いま俺は、柚に言われなければ星に気がつかなかったんだ」

柚「? うん」

P「そんなもんだよ。どんなに輝いていたって、遠いとけっこう気づかないもんだ」
P「もっと近づいて、声をかけて、上を見上げてもらう努力をすればいい。なにも持って生まれたもんが全部じゃないしな」

柚「…それ、微妙にフォローになってないんじゃないカナ…」

P「え、そう?」

柚「…うん…まあ、いいけどさ」

柚「はー。Pサンってば…もう」
柚「なんか、なに悩んでたのか、分かんなくなっちゃったよ…てへ」

P「それでいいんじゃないか?」

柚「そう?」

P「うん。悩んだって仕方ないさ。反省することは必要かもしれないけれど、…上手く行かないなって思い煩うのはよくないよ」

柚「…うん。そうだね。そーかも」

柚「アタシ、もうちょっとだけ——頑張ってみる」

P「そっか」

柚「だからま、ぼちぼち応援しててね」

P「ぼちぼち、な。了解」

柚「ありがと。よろしくー」ニヘラ

終わりです。
ウッヒョーってノリで書いたら短かった…またちゃんとした柚ちゃんSSそのうち書きたいです…。

では、お読み頂いた方には感謝です。柚ちゃん可愛い!

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