P「Xbox360より愛をこめて」 (47)


おかえりなさい、プロデューサーさん。

私は765プロのXbox360。

今日は、私のこれまでを聞いてほしい。



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私が765プロにやって来たのは、美希の入社日と同じだった。

事務所にいるみんなはデビューしていないアイドル候補生。

事務所では、真美と亜美を中心に私を使って遊ぶのが日常だった。

少し経つと、真美も亜美もPSPやニンテンドーDSといった携帯ゲーム機で遊ぶのが多くなって、

私はちょっと休息の日々となった。


それから、響と貴音が入社して、男性のプロデューサーが765プロに来た。

そして、プレステ3が私の隣に置かれた。

これからが彼女たちの始まり。


変わらなく流れていた日常が

少しずつ変わり始めている

少女たちの想いをのせて……


みんなは私で遊ばなくなった。

プレステ3に面白いソフトがあるみたい。

でも、律子や伊織や亜美、あずさは、時々だけど、4人いっしょに私で遊ぶ。

その時間は私にとって幸せだった。


賑やかなみんなを見るのは楽しい。

事務所にいれば、いろいろな景色が見えるのだ。

それに、みんなの秘密も私は知っている。

あずさがこっそりプリンを食べていたことを知っているのは、私ぐらいだろうか。


876プロの3人が事務所にやってきた。

芸能事務所対抗運動会の優勝パーティーを一緒にするらしい。

私にも口があれば、食べたり飲んだりできるのだけど…


今日は珍しく事務所に誰もいない。

765プロの大きなライブがあるみたいだ。

私は知っている。みんなが今まで頑張ってきたこと。


そして、彼女たちはきらめくステージへ


みんなはとっても忙しくなった。

ホワイトボードは文字でびっしり埋まって、なかなか全員が事務所に揃わなくなった。

プレステ3でさえあまり出番は無くなった。私は完全に沈黙している。


大きなクマのぬいぐるみが事務所に来た。

真とプロデューサーが連れて帰ってきたみたい。

あの子には、この事務所はどんな風に見えているんだろう。


千早が事務所に来なくなった。

でも、私には何もできない。


千早が慣れない手つきでコントローラーを握ったかつての日。

手から伝わった温もりを、今も覚えている。


プロデューサーが私の方をじっと見ている。

そして何かを思い出したように、「よしっ」とだけ言った。


小鳥が社長たちと喜んでいる。

千早のステージが成功したようだ。



小鳥たちは気付いていないみたい。

小さな千早と、千早によく似た男の子が事務所にいることに。

これから始まる、千早の第2章


今日は久しぶりにみんなが事務所に集まった。

とても懐かしい、賑やかな空気。

雪歩の誕生日をみんなでお祝いした。

私の大好きな765プロの光景だった。



でも、春香だけは少し複雑な表情だった。


事務所にみんながいないのは普通になった。

一日ずっと見ない子がいるのも珍しくない。

それでも、春香だけは殆ど毎日事務所に来た。

その姿は、ドアを開ける度に覚束ないものになっている気がした。


千早が海外から帰って来たかと思うと、

今度はプロデューサーが事務所に来なくなった

事務所にいる誰もが暗い顔をしている。


春香が姿を見せなくなった。

765プロは完全に異常事態だった。


私の知っている765プロは

いつでも笑い声で溢れていて、

いつでも誰かの笑顔がそこにあって、



でも…でも今、あの優しい声は…


私はゲーム機だから、誰かを楽しませることが仕事だ。

でも、こんなときに私は何の役にも立たない。

私は所詮娯楽家電。夢をみせるための機械。


だから、みんなお願い。

あの時と同じ楽しかった765プロを…


春香以外のアイドル全員が事務所に集結した。

テレビ局のカメラがホワイトボードの正面に据えられる。

そしてみんなが、春香の名を呼ぶ。

欠けていた大切なピースが、再びあるべき場所に戻る。

おかえり、春香。


小鳥と社長が事務所引越しの話をしている。

引っ越しする時に捨てられないか、ちょっと自信がない。


プロデューサーが事務所に帰ってきた。

みんなは笑顔で、彼を迎え入れる。

引越しの件は無くなったみたい。少し安心。

私はもうしばらくここにいられそうだ。


最近ホワイトボードに写真が貼られるようになった。

今貼ってあるのは、みんながお花見に行ったときの写真かな。

きっとたくさんの思い出が、これからも重ねられていくのだろう。


今日はみんなが事務所にいる。

これから屋上で星を見るのだという。

それなら、と私も祈りをひとつ。

765プロのみんながもっと輝けますように。

…あと、もう少しみんなが私で遊んでくれますように。


みんなは南の島に行くらしい。

私も一度くらい青空の下で稼働してみたいものだ。

青空の下じゃなくても、稼働する機会はあまりないけど。

最近はまたPSP熱が大きいみたい。

PSPさん、私より先輩なのにまだ現役ってどういうこと。


なにやら事務所のみんなが盛り上っている。

春香がアイドルアワードを受賞したらしい。

みんなに祝福されて、嬉しそうな春香。

おめでとう。765プロの物語はまだ続きそう。


忙しいスケジュールを調整しつつ、みんなが事務所に集まった。

プロデューサーがみんなにアリーナライブ決定を告げる。

12人の驚く大きな声は、事務所の外まで聞こえたんじゃないかな。

つい最近まで全員出演の映画を撮っていたと思ったら、

今度は全員でアリーナライブ。本当にみんなでする活動が好きなんだなぁ。

私も多人数同時に遊べるゲーム機に生まれていたら、稼働頻度が違ったのかもしれない。


それからみんなは合宿に出かけ、久しぶりに事務所が静かだった。

今回も海に近い所に行くと言っていた。765プロの海好きは本物だと思う。

やよいがいないので、掃除されない私に埃がたまっていく。

ふと思う。私はこうして部屋に出されているだけ幸せなんじゃないか。

押し入れで眠ってしまうより、恵まれているのでは。

そう思うと、こうしてオブジェのままでいるのも悪くないかもしれない。

でもきっと、ゲーム機としては失格だな…私。


今日は765プロのバックダンサーを務める女の子たちが事務所に来ていた。

みんな浮かない顔をしているので、きっと状況はよくない。

暗い空気が事務所を覆う。また、春香たちに試練が訪れた。


しばらくして、またみんなが事務所に集結した。

一人の女の子を捜しに行くみたいだ。

頑張れ、みんな。あの時と同じ気持ちをもう一度…


バックダンサーのメンバーが全員そろった。

よかった。彼女たちがもう迷わないように、私も応援してあげたい。


プロデューサーと長い間お別れすることになった。

彼が帰ってきたときに、私がまだここにいるといいけど。

去り際の彼が、私に向かって「忘れないからな」と言っているような気がした。


765プロでときどき起こるゲームフィーバーはなんなのだろう。

今の765プロはではプレステ3が大流行。なんでもまた面白いソフトが発売したとか。

そのせいで律子も伊織も亜美もあずさも、すっかり私で遊ばなくなってしまった。

PSPさんといいプレステ3くんといい、私より老いているのにこの元気はどこからくるのかな。


でも、私はもうプレステ3のゲーム画面に目を輝かせるみんなを見ているだけで満足だ。


いつもやよいが掃除をしてくれて、楽しい765プロの日常を見れて、

遊びにきた杏奈と美奈子と絵理が、亜美と真美と一緒に、私を起動して格ゲーする。

そんなたまらなく愛おしい毎日がある私には、どれだけの頻度で起動するかなんて、もう問題じゃない。


私は知っている。

美希が私で遊びながら、「ミキ茶髪の方がカワイイかな?」とつぶやくのを。


私は忘れない。

春香がコントローラーを握りしめ、「全然ヤバくないです!」と慌てる姿を。


私は待っている。

いつかプロデューサーが私の電源を入れ、とあるゲームでこのセリフを選ぶことを。


『運命の出会いを、信じてる?』



「あれ、美希がなんか珍しいゲームしてるぞ」

「響もやってみる?これなかなか面白いの!」

「わたくしもぷれいさせていただいて良いでしょうか…」

「二人とも、その前に一つ聞いていい?ミキって茶髪似合うと思う?」


「なんだそりゃ…美希なら似合うとおもうけど…」

「ふふ、おかしな美希ですね」

「むー、二人にも見せてあげたかったなぁ」

「どういうこと?」

「はて?」

「あはっ☆なんでもないの!」


私は765プロのXbox360。日課はアイドルの成長を見守ること。

さあ再び、変わり始める彼女たちの世界。

おかえりなさい、プロデューサーさん。



新しい夢、また765プロから。



                       P「Xbox360より愛をこめて」
 

以上です。
OFA記念ということでメタとアニマスの混ぜ混ぜです。

OFAで覚醒美希がみれるといいなぁなんて。

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