【ガルパン】西住みほ「二回戦・マジノ女学院戦です!」 (126)



 見事サンダース大付属高を打ち破ったことで、大洗女子学園戦車道チームは大いに盛り上がっていた。

 練習を重ねて練度も向上しチームワークも深まったし、そして何より、新たに発見されたルノーB1bisを即戦力とできるのは非常に大きい。

 生徒会メンバーとの作戦会議も、以前と比べれば心は軽やかであった。


桃「二回戦で戦うであろうアンツィオ高校は勢いに乗られると手強い、やっかいな相手だ! 西住、今回も作戦指揮は任せたぞ」

みほ「はい。アンツィオ高校は機動力を生かした包囲戦術が得意ですから、こちらは地形を利用して逆に挟撃できれば……」

優花里「お任せ下さい西住殿!! 私が囮の任に着きます! ルノーをお任せいただいたこの重責、必ずや果たして見せましょう!!」


 乗員の決まっていないルノーB1bisは秋山優花里を車長として、各チームから計二名を借りた状態での運用が予定されていた。
 

みほ「うん。一両増えるだけでもだいぶ戦略の幅も広がるし、迎撃もしやすくなると思う」

杏「いや~……気合い入れてくれてるトコ悪いんだけどさ~」


 ふんすと息巻く優花里を横目に、それまで寝そべりながらノートパソコンを眺めていた杏が顔を上げた。


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優花里「?」

桃「会長?」

杏「なんか負けちゃったみたいだよ?」

みほ「?」

杏「アンツィオ高校」

柚子「え?」

杏「マジノ女学院にさ。一回戦で」

みほ「え?」

優花里「えぇぇぇええええええええ!?」


【マジ学戦・観戦の手引き】

・マジノ女学院の登場に伴いオリキャラあり

・公式の戦車道試合規則3ー01に合わせて、一部実際の歴史とは異なる描写があります

・面白味が半減するので、戦車道試合規則とは異なりますが決勝のマウスと同じくで相手戦力は知らない設定で

・二回戦参戦車両はコミック版準拠

・本SSはフィクションであり実際の歴史、実際のガルパン本編、実際のWorld of Tanksとは一切関係ありません


……

アンチョビ「……悪夢だ。我が同胞たちが……、我がカルロ・アルマートが……、セモヴェンテが……、タンケッテが……こ、こうまで蹂躙されるものなのか……ッ!!」



 戦車道全国大会の一回戦会場において、白旗の上がった戦車たちが死屍累々の様相で転がる中、アンチョビは呆然と立ち尽くしていた。

 対戦相手のマジノ女学院は伝統深い文化を持つ名門校でこそあったが、戦車道においては大きな成績を残せぬまま毎年を終えていたはずであったのだ。


 大戦中の戦車開発においてイギリスの後塵を拝したフランスとイタリアは現代の戦車道においても各々の学園艦にその歴史を根深く残す。

 マジノ女学院はアンツィオ高校とともに歯噛みしながら聖グロリアーナを睨みつけるポジションだったはずだ。なのにそれが……





アンチョビ「それが……我が校の切り札P40が全く太刀打ちできんとは……。いったい何だと言うのだ! あの……あの……バケモノ戦車はぁーーーーーッ!!」





 …………



 マジノ女学院は弱くなかった!?



 …………



 一回戦でアンツィオ高校に敗退したマジノ女学院が、もしもその真の力を発揮していたら?



 …………



 今、恐るべきフランス戦車軍団が大洗女子学園へと襲いかかるッ!!



 …………


優花里「本当なんですか? アンツィオ高校が負けたって!」

杏「まぁ日本戦車道連盟のサイトで発表されてるんだしね~。や~強いんだね。マジノ女学院ってトコ」

桃「いえ。マジノ女学院は戦車道全国大会が開催されて以来、ほぼ全て一回戦で敗退しています」

柚子「桃ちゃん頑張って調べてたもんね」

優花里「マジノ女学院は文化的にもアンツィオ高校に近いところもありますからね。一矢報いたかったんでしょう」

みほ「……」


杏「見事に一矢報いたことにはおめでとうって言いたいけどさ~、そんな強力な戦車持ってるの? そのマジノ女学院って?」

桃「!?」

優花里「……いえ、マジノ女学院が戦車道において積極的に採用しているフランス車両はドイツやイギリスと比較すると能力的には劣っています。というのも、戦車が最も活躍した過去の第二次世界大戦におけるフランスの方針は……」

杏「はいはい。つまりさ~、本来勝ち上がってこないはずの相手が勝ち上がってきてるってことだよね。ホントに弱いと思っちゃっていいのかな~マジノ女学院のコト?」

みほ「それは……」


……

-聖グロリアーナ学園 校内-


 ダージリン達の所属する聖グロリアーナ女学院は戦車道以外においても英国文化を深く継承しており、家屋や調度品はもちろんのこと、往年の歴史にならったお茶会も頻繁に開催されていた。


オレンジペコ「アメリーさん。一回戦突破、おめでとうございます」

ダージリン「まさか貴方たちの勝利をお祝いできる日がくるなんてね。『運命とはチェスよりも宝くじに近いもの』だとは良く言ったものだわ」

アメリー「ふふ、そうね。運で勝利したという事実を否定はしないわ」


 今現在もまさに、マジノ女学院戦車道チームの指揮官であるアメリーを招いてのお茶会の最中である。

 陽光の様な明るい金髪を縦ロールに誂えたその少女は、ダージリンにとっても旧知の関係であった。


アメリー「でも、運が味方したのは私たちの戦車道そのものにでは無くってよ」

オレンジペコ「……?」

ダージリン「あら、どういうことかしら?」

アメリー「運命が私たちへと運んできてくれたのは『ある事実』のみ。それを用いて勝利したのは我々よ」


ダージリン「……『運命がカードを配り、我々が勝負する』ということかしら。その口振りでは相当な切り札を得た様子ね」

アメリー「ふふ、もったいぶるつもりは無くってよ。貴方たちが黒森峰を破って決勝まで進めたなら、その時は間近で存分にお見せできるわ」

ダージリン「まぁ、余裕なようね。もう決勝まで進んだつもりだなんて」

アメリー「そうね。油断は大敵。でも今の私たちには、あのプラウダであっても、臆するに至らなくてよ!」

ダージリン「その言葉、友人として楽しみにしておくわ」

アメリー「ええ。貴方とは良き友であったけど、私は貴方の好敵手にはなり得なかったわ」

ダージリン「……」


アメリー「でも、それも昨年までの話よ。……さてと、今日はそろそろ失礼しますわ」

オレンジペコ「また、いつでもお待ちしてます」


 文化的にはもちろん、海上における距離的も比較的近い両学園艦はヘリコプターで目と鼻の先の関係であった。

 学園艦の元となったフランスとイギリス両国の関係は、必ずしも親密であるとは言えなかったがそれも遠い地の過去の話。

 個人的に気軽に招待しあえる関係であった両者は互いに感じていた。



 全国大会の決着が付くまでは次のお茶会は無いだろうと。


ダージリン「アメリー」

アメリー「……?」


ダージリン「友である貴方にはこの言葉を送るわ。『先を見すぎてはいけない。運命の糸は一度に一本しかつかめないのだ』とね」

アメリー「あら……チャーチルの言葉ですわね」

ダージリン「大洗女子学園の指揮を執っているのは昨年、黒森峰で副隊長を務めた西住みほよ」

アメリー「あの、西住流の? ……ありがとう。でも今年の私たちはどんな相手であろうと、負けるつもりはないわ」

 アメリーはにっこりと微笑むと部屋を後にした。


試合当日

-二回戦 会場-


※試合中は上記マップに準じた展開となります。
 別ウィンドウで開きっぱなしにしておくと見やすいかもしれません。



 ようやく着いた試合会場は、学園艦から陸へと降りてそこから更に2時間もバスに揺られた先であった。


沙織「ん~~~~。やっと着いたーーー!」

華「ずいぶん山の方まで来ましたねぇ」


 来た道と観戦席を除けば眼前に広がるのは芝と生い茂る木々のみ。緑一色に広がる大地を見て思わず深呼吸してしまう。


桂利奈「すごー! カブトムシとか超いっぱい居そーーー!!」

梓「なんでカブトムシ……?」

麻子「ほぅ……昼寝のしがいがありそうだ……」


カエサル「山岳戦か!? えぇい! サムニウム人をここへ!!」

エルヴィン「我ら山岳猟兵部隊に敗北はない!!」

おりょう「ほう、母成峠の戦いぜよ」

左衛門佐「いや、これは……三増峠の戦いかっ!!」


「「「それだっ!!!」」」



優花里「……起伏に富んだステージですね」

みほ「うん。開けた場所でも射線が通るとは限らないし、俯角にも気をつけないと。それに場所によっては草木で視界が遮られるから伏兵にも注意しないと」

優花里「我が校の戦車ですと稜線射撃に適した装甲厚の砲塔を持つ車両が少ないですから足を止めての撃ち合いは避けたいですね」

みほ「でも上手く側面をとれればM3LeeとB1bisの手数で瞬間的に圧倒できるし、III突もこの地形なら待ち伏せが上手くき利くかも」

優花里「はい!! 西住殿の作戦があれば今回も必勝間違いなしです!!」

杏「今回も期待してるよ~。西住ちゃん」

みほ「は、はい」

杏「んじゃ、試合開始まではまだ時間あるし、準備すませてゆっくりくつろごっか~」


 杏の言葉に一同が歩みを進めようとしたその時、ふと沙織が道路を指さし声をあげた。


沙織「あ、みてみて! 道路の向こう側。サイクリングしてる人たちがいるよ。イケメンかも!!?」

華「いえ、あれは……女性じゃないですか?」


 見れば数十台の自転車が一列になって走ってくる。


あや「すごーい。こんな所まで自転車でくるんだ」


優季「ロードバイクっていうのでしょ~。カレに聞いたことある~」

あゆみ「へぇ。で、それホントに彼氏なのぉ?」

麻子「待て。あのジャージの文字……」

沙織「……? なになに、見えないよ? 麻子、目よすぎなんだもん」

みほ「あれは……」


 麻子の言葉に目を凝らしてみれば、ジャージには確かに『Maginot Femmes College』の文字がプリントされていた。


優花里「マジノ女学院です!」

妙子「応援の人たちかな?」

あけび「気合い入ってますね~」


 そうこう話している間にサイクリストたちは眼前まで走ってきてしまった。


みほ「あ、えっと。こんにちは」

アメリー「ご機嫌よう。貴方が西住さんかしら」


 サイクリストがヘルメットを脱ぎサングラスを外すやいなや、優花里の目が丸くなる。


優花里「……!? こ、この人!?」

沙織「……? 知ってる人なの?」

優花里「マジノ女学院の隊長のアメリーさんです!」

みほ「えぇ!? じゃあ……」

アメリー「いかにも、私たちがマジノ女学院戦車道チームでしてよ」


 気づけばアメリーの後ろにはぞろりと揃いのジャージを来た女子が整列していた。


みほ「ど、どうも西住みほです。凄いですね。途中からわざわざ自転車で?」

アメリー「……? あらあら……ふふふ。西住さんたら面白いことをおっしゃるのね」

みほ「……あ、そうですよね。到着してから散歩がてらに……」

アメリー「もちろん港から走って来たに決まっていましてよ」

麻子「……いや。港からこの会場までは80km以上あるぞ」

アメリー「その程度、目と鼻の先の距離ですわ。しかし、まぁご存じないのも無理ありませんわね。でも本場のツール・ド・フランスは23日間で3000km以上、山を幾つも越えながら走りますのよ」

桃「さ、さんぜっ!???」


アメリー「それにフランスが世界に誇るタイム社のロードバイクなら、この程度の坂道は平地のようなものですわ」

華「まぁ! 凄いんですね! アクティブで格好いいです」

典子「よぉぉーし! 私たちも帰りは港までランニングだ!!」


「「おーーーっ! 気合いだーっ!!」」


忍「それ、出航に間に合いますかね?」

アメリー「ふふふ、愉快な方たちばかりでとても楽しい試合ができそうですわね」

みほ「は、はい。宜しくお願いします」


アメリー「でも……」

杏「……?」

アメリー「この程度で驚かれている様では、本当の力を手にした私たちの戦車道の敵ではありませんでしてよ」

みほ「ぇ……ぁの……」


アメリー「それでは、試合開始を楽しみにしていますわ」


 狼狽するみほを意に介さず、恭しく頭を下げるとアメリーたちは早々に自陣へと向かってしまった。


杏「や~流石にお金持ち学校は違うね~~。西住ちゃんも深く気にしない方がいいよ~」

桃「いや、予算があれば、普通は車で来ると思いますが」

杏「でもタイムだからね~。あの自転車、フレームだけで50万円くらいするよ?」

桃「ごごごごごごじゅっ!!!??」

柚子「桃ちゃん!? 大丈夫!?」

杏「あれにデュラ一式でマヴィックのコスミックカーボンだからね~。自転車一台で150万円くらいにはなるんじゃない?」

桃「ひゃくごっっじゅっっ……ブクブク……ブクブク」
  
柚子「桃ちゃん!! 気を確かに!! 桃ちゃーん!!」


……

-大洗女子学園 待機所-


 休息をとり、戦車の調整、砲弾の準備を終えて試合開始を待つばかりとなった待機所では各々が雑談に花を咲かせていた。


カエサル「しかし、相手の隊長は大した自信であったな」

おりょう「あれはただのハッタリには見えんぜよ」

左衛門佐「エルヴィン、どう見る?」

エルヴィン「うむ。第二次大戦を振り返っても、フランスと言えばいまいち奮わぬ戦績が注目されがちだが、これは良い指揮官が育つ環境がなかったことも勿論ある。だが予算的にも切迫していた為、刻一刻と進化し続けるドイツの戦車に対抗できなかったことも大きいと言える」

おりょう「つまり?」


エルヴィン「そこまで強力な車両は無いはず」

左衛門佐「ならば奴の自信は計略によるものか」

カエサル「ならば、心配はあるまい」

エルヴィン「うむ。古今東西、名将は数あれど……」

カエサル「……我らが隊長に勝る指揮官は後にも先にも居はしない!!」


「「「「はっはっは!!!」」」」


優季「あや、一人で大丈夫~?」

桂利奈「寂しくなったらメールしてね! あ、操縦教えてあげよっか?」

紗希「……」 コクコク


あや「いやいや、一人じゃないし。秋山先輩とエルヴィン先輩と一緒だし」

あゆみ「あやも回らない砲の苦しみを味わうんだね……」 ウルウル……

梓「ルノーはM3よりも正面装甲が厚いらしいし、車長が秋山先輩なら指揮もしっかりしてくれるだろうし大丈夫だよ」

優季「歴史トークは凄いことになりそうだけどね~」

あや「うぅ……そこは不安すぎる……」


……

-マジノ女学院 待機所-


 皆が好き勝手にお喋りする大洗女子の待機所とはうって変わって、マジノ女学院の待機所では厳粛に、だが優雅に作戦会議が行われていた。

 すでにサイクルジャージは脱ぎ去り、全員がタンカージャケットへと着替えている。

 鮮やかなトリコロールカラーのジャケットに飾りリボンが付き、各車長には金糸で編まれた肩飾りまで施されている派手な色合いであったが、全員が見事にそれを着こなしていた。

 フラッグ車を除いた9両の乗員全員が車長を先頭にアメリーの声に耳を傾ける。


アメリー「プラウダや黒森峰から嘲笑を浴びていた去年までの私たちは、最早この世のどこにも居ないわ。私たちは遂に、伝統と栄誉ある我が校の歴史に相応しい戦車を手に入れた」


 勿論、大洗女子学園に恨みなどないし、戦車道は戦車道であって過去におけるフランスとドイツの関係などに影響されている訳でもない。
 まして彼女たちは日本人だ。

 だがそれでも、自分たちの愛するフランス戦車がドイツ戦車から嘲り笑われるのは耐えられないのだ。


アメリー「38(t)を、III号突撃砲を……IV号戦車を……叩き潰して差し上げるのよ!!」


 アメリーの言葉に、少女達は自信に溢れた目で頷いた。


キャラクター・車両紹介【1】

【アメリー】

 マジノ女学院戦車道チームの隊長。明るい金髪の縦ロールヘアが特徴。

 フランス文化を継承した学園艦で育ったこともあってか、多分に漏れず非常にプライドの高いお嬢様。

 マジノ女学院自体が令嬢を集めたお嬢様校である為、金銭感覚はちょっとおかしい。

 戦車道においては、長年一回戦敗退が続いていたことを屈辱としていたが……


……

沙織「うわぁ。向こう、なんか凄い服だね」

華「えぇ。前衛的でとてもお洒落ですね」

沙織「そ、そうかな?」


 それぞれの選手達がみほとアメリーを先頭に整列するが、どうしてもマジノ女学院のパンツァージャケットのトリコロールカラーに思わず目を奪われてしまう。


麻子「確か青が自由、白が平等、赤は博愛の色だったか?」

桂利奈「え? あれガンダムのコスプレじゃないんですかぁ?」

優花里「……流石は冷泉殿ですね。でもそれは俗説で正確にはフランス革命軍の帽章の赤、青とブルボン朝の白百合を合わせた三色だと言われています」

麻子「ほう」

華「へぇ。由緒ある色づかいなんですね」

アメリー「……」

みほ「……」


アメリー「不思議そうですわね。……昨年まで一回戦敗退が続いていた弱小校が、どうしてこんなに自信に溢れているのか」

みほ「い、いえ。そんなつもりは……」

アメリー「かまいませんわ。もしも貴方がこの自信を虚勢と受け止めていたなら、貴方は我々にとって取るに足らない相手であったでしょうね」

みほ「……」

アメリー「でも、貴方は今、私たちの自信の裏に在るものを探ろうとしていらっしゃる。認めて差し上げましてよ。これはプラウダ戦の前哨などではない……貴方たちは強敵だわ」

みほ「…………ありがとうございます」


審判員「それでは、戦車道全国大会・第二回戦、大洗女子学園対マジノ女学院の試合を開始します! 一同、礼!!」



「「「「「宜しくお願いします!!」」」」」



……

マップ【Jー3】


-B1bis-
エルヴィン「いよいよだなグデーリアン。しかしルノーの初陣が対フランス戦車群となるとは、運命とは数奇なものだ」

優花里「はい。敵はソミュアでしょうかね? オチキスでしょうかね?」

あや「……えっと。よく分かりませんけど頑張ります」


-38(t)-
桃「西住! 全員に改めて作戦指示を出せ」


-IV号-
みほ「はい。皆さんマップを参照して下さい。こちらの『J-3』に対して相手チームの開始位置は『C-9』です」

沙織「左下と右上だね」

みほ「遮蔽物が多く稜線射撃に適した丘上を斜めに通る『E-5』付近を押さえることが出来れば、通常は戦況を有利に運べますが、当然相手も同じことを考えているでしょう」


-B1bis-
優花里「しかし相手の10両に対してこちらは6両しかいません」


-IV号-
みほ「はい。数で劣るこの状況下で中央の丘を陣取っても挟撃で潰されてしまいます。なのでこちらはあんこうチーム(IV号)とカメさんチーム(38t)で『C-3』以北を抑えて、逆に中央を包囲します。カバさんチーム(III突)はフラッグ車を守りつつ西から援護射撃をお願いします」


-III号突撃砲-
左衛門佐「しかし、それでは敵将が後方に陣を構えた場合突破に時間を要するのでは?」


-IV号-
みほ「はい。なのでアヒルさんチーム(八九式)と即席チーム(B1bis)には最南端~最東端を経由してこっそり敵陣深くまで入り込んでもらいます。これは途中の索敵も兼ねてのものなので出来るだけ砲撃は控えてこっそり行ってください」


-89式-
典子「つまり敵の親玉の所に飛び込んでスパイクを打ち込めばいいんですね! やるぞーーーー!! 気合いでいくぞーーー!!」


「「おーーっ!!」」


忍「いや、目立ったら意味ありませんから」


-IV号-
みほ「南東付近に到達するまでは、なだらかな丘陵地帯が多く身を隠せるほどの丘や草木を中々見つけづらいと思いますが、相手チームが斥候を出していたとすれば接触するのは7~8ラインへ入ってからだと思いますので、大きくなった起伏と木々を使って身を隠してください」


-38(t)-
杏「なるほどね~。北西組は戦線を張って攻めてくる敵をやっつけて、東南組はコソコソ進むわけだ~」


-IV号-
みほ「はい」


 と、丁度みほの説明が終わったところで、試合開始を告げるアナウンスが流れた。


『両校ともに準備が整いましたので、これより試合を開始いたします。……試合開始!!』


 審判席より信号弾が打ち上げられると、待ちかねたと言わんばかりに全車が一斉に動き出す。


-IV号-
みほ「それでは、警ドロ作戦……開始ですっ!! Panzer vor!!」


【大洗女子学園】
フラッグ車:M3Lee
残存車両:6/6

-IV号戦車-
車長・装填手:西住みほ
通信士:武部沙織
砲手:五十鈴華
操縦手:冷泉麻子

-38(t)-
車長:角谷杏
砲手・装填手・通信士:河嶋桃
操縦手:小山柚子


-89式-
車長・装填手:磯辺典子
通信士:近藤妙子
砲手:佐々木あけび
操縦手:河西忍

-III号突撃砲-
車長・通信士・装填手:カエサル
砲手:左衛門佐
操縦手:おりょう

-M3Lee-
車長:澤梓
砲手(75mm)・装填手:山郷あゆみ
砲手(35mm)・装填手:丸山紗希
通信士:宇津木優季
操縦手:阪口桂利奈

-B1bis-
車長・砲手(47mm):秋山優花里
装填手・通信士:エルヴィン
砲手(75mm)・操縦手:大野あや


【マジノ女学院】
フラッグ車:???
残存車両:10/10


【E-2】


-IV号-
みほ「ウサギさんチーム(M3Lee)は西側にて待機。カバさんチーム(III突)は丘上と中央の両方を狙撃可能な位置でウサギさんチームを護衛してください」

みほ「Bラインの安全が確保できたらお知らせしますので、合図があったら移動してください」


-M3Lee-
梓「了解です!」


-III号突撃砲-
カエサル「承知!」


【K-4】


-B1bis-
エルヴィン「さて、まずは速やかに南東まで移動せねばな」

優花里「はい。木々に紛れて上手く相手をやり過ごせればいいんですけど……」


-89式-
典子「なるほど、つまり全速前進!!」


-B1bis-
優花里「あ、こっそりお願いしますよ!」


-89式-
典子「……!? あれ?」

あけび「キャプテン?」

典子「今、正面の林で何か動いたような……」


-B1bis-
あや「えぇ!? もう敵が!?」

優花里「いえ、相手の開始位置は『C-9』ですから。もうKラインに到達しているとは考えにくいですし……」

エルヴィン「見間違いではないのか?」


-89式-
典子「……」


【Cー3】&【Eー2】


-IV号-
沙織「やった! 丘、おさえられたね! これで有利に戦えるんでしょ?」


 C-3北西よりの斜面を陣取ったことで北側はB-4~Aー5までを射界に収め、南側へは稜線射撃による援護が可能という有利な状況が構築できた。


みほ「カメさんチームは北東から迂回してくる車両がないか警戒してください。中央を抜けてくる車両に対して……!? あれは……」


-III号突撃砲-
カエサル「『Dー4』に敵影、二両確認!」

おりょう「エルヴィンがいないと車種がイマイチ分からんぜよ」


-IV号-
みほ「あれは、二両ともオチキスH35?」


 見渡す限り、他に敵影は見あたらない。


みほ「カバさんチーム、ウサギさんチーム。他に車両は見えますか?」


-III号突撃砲-
カエサル「いや、二両のみだ!」


-M3Lee-
梓「同じく、同一車両が二両のみです!」



 オチキスH35は正面装甲34mm。主砲の威力もM3Leeの正面装甲で弾ける程度だ。


-IV号-
みほ「……迎撃します! ウサギさんチームは砲撃せずに後方に控えてください。カバさんチームは向かって右を。手前は……華さん、お願い」

華「任せて下さい。俯角ギリギリで仕留めます。合図しますので前進は最低限で結構です。冷泉さん」

麻子「ああ、分かった。制動後は再び丘の裏へ後退でいいんだな?」

みほ「うん。お願い」

沙織「……なんか分かんないけど、華がいつのまにか凄いテク身につけてる……」


 みほの指示は極めて的確であったが、先だってIII突を視界に収めていたであろうH35の主砲は一瞬早く火を噴いた。
 発射された敵弾は正確にIII突へと吸い込まれ……


-III号突撃砲-
左衛門佐「……!? 砲撃されたぞ!」

カエサル「いや、弾いたな。流石は冬戦争を戦い抜いた戦車だ!」

おりょう「ぜよ」


 III突の80mmの正面装甲に弾かれた。

 装甲を介して車内の空気までもがビリビリと振動に揺れたが、だがそれだけだった。

 H35の主砲の37mm砲は貫通力40mm程度であり、正面からの撃ち合いではまともな戦果を望むべくもない。


左衛門佐「今度はこっちの……」


-IV号-
華「……番です!!」


 対するIII突の75mm砲は貫通力100mmを越える。


-III号突撃砲-
左衛門佐「ふっ! 討ち取ったり!」


-IV号-
華「やりました!」


 瞬く間に二本の白旗が上がる。


沙織「すごい! さっすが華! 一発でやっつけたよ!」

みほ「偵察目的……? こちらのフラッグ車の位置は探られてないとは思うけど……」


-38(t)-
杏「かぁしま~。暇」

桃「しっかり北東を見張っててください!」



-IV号-
華「あれは……!! みほさん! 11時方向に新たな敵影です!」

みほ「……! 確認します! あれは…………?」


-III号突撃砲-
おりょう「んん? あれは……戦車なんぜよ?」

カエサル「なにを言っている、おりょう」

左衛門佐「ここにいるのは戦車だけだ。眼鏡の度は大丈夫か?」

カエサル「どれどれ……ん? あれは……?」

左衛門佐「……? なんだ、あれは?」


-IV号-
華「とても前衛的なデザインですけど、あれは何という戦車なんでしょう」

みほ「……あれは、もしかして」


-M3Lee-
桂利奈「『ぼのぼの』だぁ~~~! ぼのぼのがいるよ!!」

優季「いや、桂利奈ちゃん。意味分かんないよ」

あゆみ「そうそう、試合会場にぼのぼのが居るわけ…………ぼのぼのが居るーーー!」

梓「みんな落ちついて。あれはぼのぼのじゃなくて、ぼのぼのみたいな戦車で偽ぼのぼのだから」

紗希「…………いじめる?」


-IV号-
みほ「AMX40?」

麻子「有名な戦車なのか?」

みほ「ううん。設計書が作られただけのマイナーな車両なんだけど……」


-III号突撃砲-
カエサル「装填完了! とにかく仕掛けろ!!」

左衛門佐「合点っ!!」


 左衛門佐の砲撃は見事にAMX40の砲塔へと吸い込まれ、そして弾かれた。


左衛門佐「なんとっ!」

おりょう「全く効いておらんぜよ!」


-IV号-
華「ならば車体装甲に!」


 続けざまに放たれたIV号からの砲撃も容易く弾かれる。


沙織「ちょ、なにあれ! そんなにおっきくないのに、あんなに頑丈な戦車なの?」

みほ「もちろん装甲も凄く頑丈だけど、全体に傾斜装甲が施されて『被弾径始』が効いている上に『食事の角度』をとられてるから……」

沙織「食事の角度?? 戦車の中でお弁当食べてんのぉ!?」

みほ「そうじゃなくて、相手車両に対して自車を11時方向、若しくは1時方向へ傾けることで装甲に対して斜めに砲弾を受けることができるの。人によっては『昼飯の角度』って呼ぶ人もいるけど」


沙織「……??? 斜めに撃たれたって砲弾の威力は一緒でしょ?」

麻子「なるほどな。……確かに砲弾の威力は同じだが、それが問題だ」

華「どういうことでしょう?」


麻子「大工が厚手の木材に釘を打つ様子を想像して見ろ」

沙織「うん」

麻子「木材の厚みより少し長い釘を、まっすぐ打ったらどうなる?」

沙織「いや、そりゃあ後ろに突き抜けちゃうけど」

麻子「ならそれを斜め45度に打ったらどうなる?」


沙織「どうって、そりゃあ……! あれ、長さ全然足りない!? 同じ釘と同じ木材なのに……貫通しない!?」


麻子「斜め30度なら?」

華「全く貫通しないどころか、下手をすれば滑って表面にすら刺さりませんね」

麻子「ああ。そうゆうことだろう?」

みほ「ありがとう。麻子さん」

沙織「どーすんの? ちょ~やばいじゃんそれ!!」

みほ「うん……あれを貫徹するには、側面に周り込まないと。AMX40の装甲厚は確か、えっと……沙織さん。優花里さんに通信できそう?」

沙織「即席チームとアヒルさんチームは隠れながら進んでるはずだから大丈夫だと思うけど……即席チーム、聞こえますか? 即席チーム? もしもし……あれ……これって……」

みほ「どうしたの?」


沙織「みぽりん、大変! 即席チームとアヒルさんチームが敵車両と交戦中!」


みほ「……!?」


キャラクター・車両紹介【2】

【AMX40】
 戦後に製造された『AMXー40』とは全く別の車両。

 独特の丸みを帯びたフォルムが特徴のフランス戦車。特に卵形の砲塔には平面部位が一切無く全面が傾斜装甲となっている。

 1940年に企画設計されたが、ほどなくフランスの降伏があった為、実車は一台も製造されることなく計画終了となった幻の車両。

 アメリーはこの当時の設計書を入手し、戦車道試合規則3ー01に基づいて実車を完成させた。


……

【観戦席】


 両校の関係者や戦車道のファン達が集まる観戦席。その一角に明らかに周囲と異彩を放つ空間があった。

 紅茶を携えた二人の少女、ダージリンとオレンジペコの為に設けられた特設席であった。


オレンジペコ「……凄い。あんな戦車があったなんて……」


 AMX40のことではない。


ダージリン「……『兵は神速を尊ぶ』と言うけれど、まさかあんなものを用意していたなんてね」


 今、二人の視線を釘付けにしていたのは、南側の戦況を映し出したモニター。


 追いつめられ行く優花里たちであった。


……10分前

【K-4】

-89式-
典子「……いや、あそこでやっぱり何か動いた気がする。河西! 右前の林に注意して進んで。皆、いつでもレシーブ出来るように構えてね」

忍「はい!」


-B1bis-
エルヴィン「……どうする、グデーリアン?」

優花里「現時点で敵車両がここまで来ていることはあり得ませんが、大きな時間的ロスがある訳でもありませんし、ここは磯辺殿の言うとおり索敵しておきましょう」

あや「じゃあアヒルさんチームについて行きますね……って、あれ?」

優花里「大野さん? どうしました?」

あや「あ、いえ。今、あそこ……左の方で何か動いた気がして」

エルヴィン「正面の次は左か。戦場においては……疑心暗鬼にとらわれ幻覚を見るものもいると言うが……」

あや「い、いえ。そうゆうのじゃなくて……」


 その瞬間。耳を劈く砲撃音が響いた。


優花里「!?」


 砲撃したのは89式だ。


エルヴィン「アヒルさんチーム、どうした!!?」


-89式-
典子「敵戦車を確認しました! 撃破失敗!!」


-B1bis-
優花里「……!! あれは!」


 そして優花里は思い知った。典子もあやも、何も見間違えてなどいなかったのだ。

 砲撃を受けた木陰から飛び出して来たのは、紛れもなくマジノ女学院の軽戦車であった。


あや「そんな! だって地図で言ったら敵のスタート位置は右上で……もうこんな所まで!?」

エルヴィン「いや……確かに道理に叶っているっ!」


-89式-
典子「はい! この戦車……!」

妙子「速いです!」

忍「っていうか……は、速すぎるっ!」

あけび「砲塔の旋回が全然追いつきません!」


-B1bis-
エルヴィン「グデーリアン! あの平べったい車両は一体!?」

優花里「快速戦車は数あれど……登りを交えた起伏に富んだ地形をこれだけのスピードで走れる車両はそうそういません。まさか実物を目にすることになるとは……」


-89式-
忍「も、もったいぶらずに教えて下さい!」


-B1bis-
優花里「ELC AMXっ! ほんの僅かの試作車が作られたのみで量産も配備もされなかった幻の快速戦車です。……その開発コンセプトは……空輸可能な戦車!」

エルヴィン「く、空輸!?」

優花里「その車重はなんと僅か6.66トン。ちなみに我が校の車両で最軽量を誇る38(t)でも9.34トンです!」

あや(この人、歩く戦車図鑑だ)

あや「……って! さっき私が見かけたのはあれじゃないです! もっと左でした!!」

優花里「……!!?」



 あやが言い切るが早いか、気づけばさらに二両のELC AMXが飛び出して来た。


エルヴィン「3両も!?」

優花里「……っ! 速すぎて全く照準出来ません! 大野さん、河西さん! ELCは走行中には砲塔を全周旋回できません。相手の斜線に入らないように待避しつつ後退してください」

エルヴィン「グデーリアン。相手は軽戦車だ。被弾を覚悟で仕留めてはどうか?」

優花里「いえ。ELCの主砲は……!?」

エルヴィン「どうした?」


 三両現れたELCの内の最初の一両がぐるりと周りを旋回しつつ砲を89式へと向けたのを優花里は見逃さなかった。


-89式-
典子「っ! 相手の斜線に入った!? もっとジグザクに後退して!」

河西「む、むちゃ言わないでください!」



 優花里たちを強襲した三両のELC AMXを駆るのはマジノ女学院の強襲偵察チームだった。
 二人乗りのELCにおいて車長兼砲手をそれぞれ務めるのはアメリーに反射神経と判断力を買われて選出された二年生トリオである。

 小隊長格のボルヴィックは照準もままならぬままに89式が後退を始めたのを見逃さなかった。


-ELC AMX1-
ボルヴィック「エヴィアン! ヴィッテル! あのノロマちゃんに仕掛けますわよ!」


-ELC AMX2-
エヴィアン「……了解」


-ELC AMX3-
ヴィッテル「心得ましたわ」


-89式-
典子「っ!!」


 いくら砲塔が全周出来ないとは言え、時速60kmで周囲を走り回られては、こちらの迎撃も満足に行えない。

 初動を誤った89式の砲塔は未だ明後日の方向を向いたままである。


-B1bis-
優花里「いけない! すれ違いざまに撃ち込む気です! 大野さん。2時方向へ旋回、全速で前進してください!」

あや「ぜ、前進!? は、はい!」

エルヴィン「おい、グデーリアン?」

優花里「一か八か。こうなったらルノーの正面装甲を盾にしますっ!!」

エルヴィン「11時側にいる敵に側面を晒すことになるぞ!!」

優花里「相手も車体ごと旋回しなければ撃てません。撃たれる前に待避します。このままではアヒルさんチームが直撃を受けるのを待つばかりです!」

あや「も、もうどうにでもなってーーー!」

優花里「アヒルさんチームは全速後退を維持してください! 下りに入れば一端射線を外せます。……上手く被弾経始にかかって下さいよ……!」


 飛び出すと同時にELC1号車の主砲が火を噴き、B1bisの車体を激しく揺らした。

 ELCは一度も停止することなく、そのまま走り去る。


-89式-
典子「秋山さん!?」


-B1bis-
優花里「……大丈夫です!」


 車体が大きくきしみ、装甲を通じた振動はいまだに残っている。

 だが、白旗は上がっておらず、B1bisは健在だった。


優花里「正面装甲を大きく削られましたが、上手く斜めに当たったおかげで相手の砲弾を弾けました。大野さん! 今の内に全速で後退します」

あや「はい!」

エルヴィン「一歩間違えばやられていた。軽戦車とは思えない砲だな」

優花里「はい。あの主砲は75mmSA44。貫通力は100mmですからまともに受ければ我が校の戦車はみんな正面装甲で受けても一撃です」

あや「」ガクガク

エルヴィン「……ぞっとする話だ」

優花里「西住殿は大丈夫でしょうか……?」

エルヴィン「……! 噂をすれば武部さんから通信だぞ。なに!? III突が敵戦車群より集中砲火を受けている!?」

優花里「!!?」


キャラクター・車両紹介【3】

【ELC AMX】
 フランスが誇る快速戦車。最高速度に優れるのは勿論、車重が軽いため急発進や登坂も難なくこなす。また全高が低い為、相手からすると極めて照準し辛い車両と言える。

 アンバランスなほど強力な火砲を備える。

 1956年に立案されたELC計画の産物と言われているが、近年の研究で1945年に初案の企画設計が完了していたことが明らかになり、マジノ女学院OGの働きかけによって戦車道連盟より使用が許可された(※)。


※このSSはフィクションです


【ボルヴィック】
 マジノ女学院の強襲偵察チームのリーダー。ELC一号車の車長。

 ちょっとキツめの目つきと金髪の姫カットが特徴のお嬢様。

 乗員が二名の為、ELC AMXの車長は全員、砲手・通信士・装填手を兼ねる。


【エヴィアン】
 ボルヴィックとは幼なじみの少女。二号車の車長。

 片目が隠れるほどのアシンメトリーヘアと、への字口がチャームポイント。

 
【ヴィッテル】
 同い年ながらも二人から頼れるお姉さんとして慕われている。三号車の車長。

 おっとりした顔立ちと肉感溢れるわがままボディが魅力的。

ELC AMXは1956年の物だけどそれは
使ってokということでいいのかな?


【Cー3】&【E-3】


-IV号-
沙織「ど、どうしよう!? みぽりん!」

みほ「うん。AMX40の装甲は驚異だけど、南東からの攻めが途絶えた以上、北側は慎重に攻めるしかないかな」

華「今のところ他の戦車は出てきませんね」

みほ「うん。敵の規模は分からないけどいまは優花里さんたちを信じて、こっちも耐え抜こう」


-III号突撃砲-
左衛門佐「あの『ぼのぼの』、装甲はまるで本田忠勝だが、よく見れば相当な鈍足だな」

カエサル「うむ。最大時速40kmのIII突なら容易に回り込めるな。おりょう」

おりょう「承知ぜよ」

>>46
絶対言われると思ってました
だって出したかったんだもん

詳しくは>>45をゴニョゴニョ


-M3Lee-
桂利奈「あれ、カバさんチームが前進するよ?」

あゆみ「ホントだ? 梓、どうするの?」

梓「でも隊長の指示は待機だし……」

優季「え~。ここで置いてけぼり? 怖くな~い?」

桂利奈「カバさんチームに守ってもらうっていう指示だし、ついてこっか?」

優季「それがいいよ。行こ行こ~」

桂利奈「あいー」


-IV号-
みほ「……! AMX40が後退していく? ……あれは!?」


 キューポラから周囲を見渡したみほが目にしたのは敵戦車の側面をとらんと前進するIII突であった。


みほ「カバさんチーム、待ってください! 迂闊に前進するのは危険です!」


【Cー4】AMX40
【Cー3北西側】IV号 & 38(t)
【E-5】III号突撃砲
【Eー4】M3Lee


-III号突撃砲-
カエサル「む? 出すぎたのか?」

左衛門佐「いや、まぁしかし家屋が密集していて東からの射線は通っていないし、大丈夫だろう」


 しかし左衛門佐が言葉を終えたその瞬間、車体が大きく揺らされた。


左衛門佐「何事だ!?」

カエサル「隣の家が吹き飛んでいるぞ! 崩れた壁材がのし掛かってきたんだ」


 続いて、周囲の地面が次々と炸裂して土埃を舞い上げる。


おりょう「こ、こいつは!? 全速離脱ぜよ!」


 おりょうがギアを入れた瞬間、III突の車体は今一度大きく揺らされた。


-M3Lee-
桂利奈「わわっ!! やばくない?」

あゆみ「桂利奈ちゃん! ストップストップ!!」

梓「カバさんチームが……西住隊長に報告しなきゃ!」


-IV号-
沙織「みぽりん! ウサギさんチームから通信。カバさんチームが攻撃されてるって!!」

みほ「……! やっぱり! 石造りの壁程度じゃAP弾は簡単に貫通してしまいます! カバさんチーム、援護しますから全速で後退してください!」


-III号突撃砲-
左衛門佐「そ……それが」

おりょう「履帯をやられたぜよ……」

カエサル「面目ない」


-IV号-
みほ「……っ!」

 砲撃位置を特定せんと身を乗り出すと、遠目に煙りの残る砲身が数本見受けられた。

みほ「全部町には入ってない……」


-38(t)-
杏「こっちも確認したよ~。町の北東を斜めにぴったり陣取ってるね~」


-IV号-
みほ「最初のオチキスはこの布陣を組む為の……っ!! 前進します! カバさんチームの援護を……」


 しかし、みほの指示は一際大きい砲撃音で遮られた。



……

【Dー6】

-ARL44-
アメリー「ふふ、まずは一両ですわね」


 フラッグ車であるARL44のキューポラからあたりを見回して、アメリーは微笑んだ。

 まるで巨大な工具箱が車体の上に乗っているかのような、角張った砲塔が印象的な戦車であったが、車体、砲塔ともに正面装甲100mmを越えるまさに鉄箱である。

 左右にはARL40 V939が三両、そしてAMX40が横並びに陣取っていた。

 III突の装甲を撃ち抜いたのはV939の105mm砲だ。


アメリー「賽は投げられましたわ。我々が誇る鉄壁の布陣。マジノ・ラインの恐ろしさを存分に味合うがよろしくてよ……」


 車体よりも砲身の方が長いという恐ろしくアンバランスな駆逐戦車、それがV939であった。

 ELC AMXの超高速機動戦闘。

 攻撃を寄せ付けないAMX40の傾斜装甲。

 無敵の破壊力を誇るARL40 V939。

 そして、ARL44の文字通り鉄壁の装甲。


 過去の歴史においては、ついぞ日の目を見ることの無かった、幻の試作車、設計書を集めて再編されたフランス戦車軍団。それこそがアメリーの切り札であったのだ。


【大洗女子学園】

フラッグ車:M3Lee
残存車両:5/6

IV号戦車
38(t)
89式
III号突撃砲【撃破】
M3Lee
B1bis



【マジノ女学院】

フラッグ車:ARL44
残存車両:8/10

ARL44
AMX40
ELC AMX ×三両
ARL40 V939 ×三両
H35 ×二両【撃破】【撃破】


キャラクター・車両紹介【4】

【ARL44】
 マジノ女学院のフラッグ車。

 1944のフランス解放と同時に企画された重戦車。

 1947年に実際に生産された車両は『格好いい砲塔』と90mm砲が据えられている。

 しかし戦車道試合規則3ー01を満たす、1945年までに企画設計されたのは車体に四角い箱状の砲塔と76mm砲を搭載した試作モデル。

 アメリーはそのあまりにシンプルすぎるデザインを気に入って、好んで搭乗している。


【ARL40 V939】
 III突と同じく駆逐戦車であり、回転砲塔は持たない。

 1940年に軟鋼製の試作車が1両作られただけの企画設計車。

 その洗練されたデザインをアメリーが気に入って、戦車道用に製造させた、世界にたった三両しかないワンオフ戦車。

つづく


【Kー4】

-ELC AMX3-
ヴィッテル「あら……逃がしちゃいましたの?」


-ELC AMX1-
ボルヴィック「いいえ。稜線を越えられただけですわ」


-ELC AMX2-
エヴィアン「このELCなら、すぐに追いつく」



-89式-
妙子「なんとかしのげましたけど……このままじゃ……」

あけび「あの平べったい戦車、凄く速いですし」

忍「後退しても、すぐ追いつかれちゃいます……」


-B1bis-
優花里「せっかく、西住殿より大任を賜ったのに……どうすれば……」

あや「なんとか逃げ切ればきっと隊長がなんとかしてくれますよ!!」

優花里「……はい。ここは何とか逃げ延びて逆転を……」



-89式-
典子「いいや! 後退する必要なんて無いわ!!」


妙子「キャプテン!?」

典子「確かに3対2で不利だし、相手のクイックは手強いけど……今は相手のマッチポイントよ!! 逃げ切りを目指す場面じゃない!!」

あけび「……!」

忍「……!」

妙子「……!」

典子「ピンチの時に必要なのは、ミスしない慎重さじゃないわ! 必要なのは逆転するための気合いと土壇場で攻める勇気っ!! そして……」


「「「……根性ですっ!!!」」」


典子「うん!」



-B1bis-
エルヴィン「しっかりしろ!! グデーリアン!」


優花里「……!?」

エルヴィン「私には隊長のような才は無いが、ここで退路を探すのが愚策だということくらい分かるぞ!」

優花里「……エ、エルヴィン殿!?」

エルヴィン「ここで我らが退いて突破されれば、こちらの布陣は明るみとなり、隊長たちは前後から包囲されることとなる!」


あや「……あ、たしかに!」


エルヴィン「なればこそ! 我らに必勝の策をくれグデーリアン! お前はグデーリアンなのだろう!!」


あや「……」

優花里「…………はい! せっかく頂いたソウルネームに泥を塗るところでした……」

エルヴィン「……ふっ」

優花里「確かに、この状況では逃げ切るのは不可能です! ……迎撃しましょう!」

あや「でも……わ、私たちだけで、大丈夫でしょうか?」


優花里「あのアメリーさんの自信……このELCだけによるものとは思えません。我々がここを自力で突破して、西住殿を援護しなくては! 磯辺殿!! 作戦をお伝えします」


-89式-
典子「はい!!」


-B1bis-
エルヴィン「うむ!」


……

 ボルヴィックたちが稜線を越えるとすぐに、二両が視界に入り込んできた。


-ELC AMX2-
エヴィアン「……いた」


-ELC AMX1-
ボルヴィック「ノロマちゃんは大変ですわね。……エヴィアン! ヴィッテル! もう一度フォーメーションで仕掛けますわよ」


-89式-
典子「追いつかれた!?」


-B1bis-
優花里「落ち着いて。ELCは正面から左右30度程度までしか砲撃できません!」


 優花里が指摘したELCの弱点、それは当然ボルヴィックたちにとっても周知のことである。

 それゆえの三両一体のフォーメーションであった。

 周囲を高速で旋回しつつ包囲を狭め、砲塔の背後をとる必殺の布陣が今優花里たちを覆い込もうとしていた。


-ELC AMX3-
ヴィッテル「エヴィアン、援護を頼みましたわ」


-ELC AMX2-
エヴィアン「……了解。あとに続く」


 一見すると順調な攻撃態勢だが、ボルヴィックはふと違和感を感じた。


-ELC AMX1-
ボルヴィック「……あれは!!」


 理由はすぐに分かった。89式の砲塔の回転だ。

 旋回するヴィッテルを追う方向では無く、逆に回転している。


-ELC AMX3-
ヴィッテル「同じ方向ではこのELCの走行速度に追いつけないからから逆向きに?」


-ELC AMX2-
エヴィアン「無理。こちらは時速60km。砲塔旋回速度を足せば、射撃機会は一瞬にも充たない」


 エヴィアンの言葉は至極当然のものだった。正面や背後をとったならまだしも、横切る最中を狙うなど不可能な話だ。


-ELC AMX3-
ヴィッテル「それに、それならば回りきるより先に仕掛ければ……!?」


 そう。たとえ砲塔を逆から旋回させたとて、こちらを向くまでには時間がかかる。

 そう考えていたヴィッテルは、89式を見て思わず息を飲んだ。


ヴィッテル「砲塔だけではなく……車体まで信地旋回を……?」


 ただでさえELCの走行速度に砲塔旋回速度が上乗せされているのに、車体まで同方向に旋回すれば更にその速度までが加算される。

 それに車体の旋回はそれだけで砲塔を揺らし、射撃精度を大きく損なわせる。


-ELC AMX2-
エヴィアン「間に合わないのを悟ってヤケになっただけ。……あんな状態で射撃なんてしても無駄」


 だがボルヴィックの胸騒ぎは収まらなかった。

 武道や剣道の達人が相手の立ち振る舞いから習熟度を測れるように、幼い頃から戦車道を学んできたボルヴィックには感じることが出来た。

 あの89式は普通ではない。何かある。


エヴィアン「射線に重なる」


-ELC AMX3-
ヴィッテル「当たるはずないですわ。三号車、回避後に次のアプローチで仕掛けますわ」


……


-89式-
典子「絶対に当たる訳無い……向こうはそう思ってるはず」

妙子「時速60kmの相手に逆から車体ごと砲塔旋回したんじゃ、重なるのはほんの一瞬未満……」

あけび「でも強豪校の殺人スパイクは時速80km以上なんて当たり前!」

忍「そう。そして、どこに打ち込まれるか分からないボールに、一瞬の内に飛びつくのがバレーボール!!

典子「鉄壁のブロッカーの動体視力、見せてやれ!!」


あけび「…………今ですっ!!」


 バレー部きってのブロッカー、あけびによって撃ち出された57mm弾は……


-ELC AMX3-
ヴィッテル「あ、当たる訳……っ!」



 57mm弾は吸い込まれるようにELC三号車の側面へと着弾した。


-ELC AMX1-
ボルヴィック「……なっ!? ヴィッテル!!」


-ELC AMX3-
ヴィッテル「……きゅぅ~……」


 衝撃で逆向きに転がった車内で、ヴィッテルは目を回す他なかった。


-89式-
あけび「当たった!」

妙子「相手の戦車が吹っ飛びました!!」

忍「凄い……89式凄い!!!」

典子「さすが……!!! さすが89式だーーーー!!」

あけび「89式の性能のおかげです!!」

妙子「強い! 強いです89式!!」

典子「やっぱり89式は凄い!!!」


-ELC AMX2-
エヴィアン「……よくもヴィッテルを!」


-ELC AMX1-
ボルヴィック「エヴィアン! 一度態勢を立て直した方がいいですわ」


-ELC AMX2-
エヴィアン「89式は砲撃したばかり……。今の内に倒……っ!!」


 言い切るよりも速く、小刻みに揺れた車体にエヴィアンは思わず言葉を途切れさせた。


エヴィアン「……! なに!?」

操縦手「履帯をやられました! ルノーから榴弾の至近弾を浴びたようです!!」

エヴィアン「……っ!! でもこれで相手は二両とも装填中……」


-B1bis-
優花里「……なんて思っているのかも知れませんが」

あや「75mm砲を忘れないでください!!」


 M3Leeと同じく、二門の砲を持つB1bis。

 その車体に据えられた砲は今エヴィアンのELC二号車を捉えていた。


-ELC AMX1-
ボルヴィック「こうなれば、先んじてB1bisを撃ちますわ! 下から回り込んで!」

操縦手「しかし、89式に側面を見せてしまいますが……」

ボルヴィック「まだ砲塔は完全に裏側を向いていますわ。こちらがB1bisを撃つほうが速いはず!」


 ボルヴィックからすれば、まずはB1bisを仕留めるのが先決だった。

 89式の乗員がどれだけの腕を持っていようと一対一ならば車両の性能差で圧倒できる。



 だが、ボルヴィックはすぐさま自身の判断が過ちだと気づいた。


-89式-
典子「今よ!! アターーーーーーック!!!」

「「「アタッーーーーーーク!!!」」」


-ELC AMX1-
ボルヴィック「こ、こちらに突進してくる!!?」


 89式は砲塔を旋回させるでもなく、下りの斜面を利用して突進してきた。


ボルヴィック「こ、このELCに体当たりなんて、当たる訳ありませんわ!!」


-89式-
典子「河西!! スパイクよ!! 思い切りセンターに叩きつけて!!!」

河西「はい!!」


-ELC AMX1-
操縦手「あわわわ……」

ボルヴィック「か、回避!! 旋回……いえ……加速…………きゅ……急停止ですわ!!!」


-89式-
河西「バレーのアタックに重要なのは相手の動きを読むこと!! ……その程度、見え見えよ!!」


-ELC AMX1-
ボルヴィック「ひぃぃぃ……」


-ELC AMX2-
エヴィアン「……ca m'etonne」


 89式が突っ込むと同時にB1bisの75mm砲が火を噴き、二本の白旗が上がった。


【Cー3北西側】IV号
【Eー4】M3Lee


-38(t)-
杏「いや~III突がやられちゃったのはキツいね~」


-IV号-
みほ「はい……相手チームは強固な守りの車両が揃っていますから」

麻子「これ以上伏兵はいない様だが、どうする? 丘上から仕掛けるのか?」

みほ「ううん。あの布陣……迂闊に稜線を越えたら集中砲火をあびることになる」

沙織「じゃあ正面から攻める?」

みほ「それもやっぱり、町を真ん中より向こうに行ったあたりで稜線を越えることになっちゃうから、一斉に撃たれて終わりかな……」

華「どうしましょう……」

みほ「残りはもう中央の窪地へ一端下って上り直すかだけど……」


-ARL44-
アメリー「ふふふ。攻め倦ねて尻尾を出すのも時間の問題でしょうけれど、それを待って差し上げる気は無くってよ。ラインを押し上げますわよ!」


 アメリーの声に五両が連れだって前進する。


-M3Lee-
梓「あれは……? 隊長! 建物の向こう側に相手のフラッグ車を確認。前進してきてます!」


-IV号-
みほ「……向こうから動いてきた!? ウサギさんチームは後退して下さい!」

沙織「どうすんの、みぽりん?」

みほ「麻子さん! 九時方向へ旋回してください。『Bー4』から顔を出して相手の出方を確認します」

麻子「分かった」


-M3Lee-
桂利奈「撃ってきた!!」

梓「まだ……二両しか見えない? カバさんチームの話では『D-5』~『E-6』に五両いるはず……」

優季「あゆみ、反撃! 反撃して!」

あゆみ「む、無理! こんなに揺れてちゃ75mmは無理!」

梓「紗希、35mmは?」

紗希「……」 コクリ……


あゆみ「あ! 当たったよ!」

梓「初めて撃って走りながらで、凄いよ!!」

優季「でも全然効いてないかも~~~!!」

紗希「……」 ウルウル……

あゆみ「紗希のせいじゃないよ! あいつが堅すぎるのが悪いんだよ!!」

優季「そうそう。ってまた撃ってきた~」

梓「『E-2』まで後退して敵を引きつけるよ! 上手く追いかけてくればくれば隊長たちが背後をとってくれるはず!」

桂利奈「あいあい~!!」

ガルパン好きだけど戦車分からんという人にも楽しんでほしくて気をつけて書いてるつもりだったが
WoTプレーヤーらしきレスばかりですな

このSS自体にはゲームよりもガルパンらしさを重視してますんで多少の違和感は大目に見てください

WoTやっとらんが楽しく見とるで。
ガルパンらしさてんこ盛りで2828しとる。是非走り切ってくれー


【Bー4】
-IV号-
みほ「……!」

華「これは!!」


 作戦通り、丘を隔てつつ東へすすんだIV号だったが、思いがけず足を止めることを余儀なくされた。


沙織「な、なんでここにも敵がいるの? さっきまで町沿いにいたじゃん!!


 町沿いに展開していた戦車群に対して、北から側面、若しくは背面を伺うはずであったIV号に対して、待ち受けていたのは真正面から砲を構えるV939であった。


華「相手の布陣が『B-4』から『C-5』に移っています……? 一体いつの間に……」


みほ「……」


【C-5】

-ARL44-
アメリー「西住さんは今頃驚いていることでしょうね」


 IV号視認の報告を受けて、アメリーは満足げに微笑んだ。


アメリー「私のマジノ・ラインには穴なんて無くてよ。仮に突破口があったとしても、それは時とともに塞がってしまう虚ろなもの。変幻自在、金城鉄壁のマジノ・ラインで押しつぶして差し上げますわ!」


 あえて数両を相手の視認範囲へ残し、その間にライン左翼の車両を右翼側へと移動させるアメリーの作戦は、強行突破の叶わない大洗女子学園
にとってはまさに鉄壁と言えるものだった。


アメリー「V939、AMX40、砲撃開始ですわ!」


【観戦席】

オレンジペコ「出ましたね。アメリーさん必殺のマジノ・ライン」

ダージリン「えぇ。自在に戦線を操る彼女の才に、鉄壁の装甲が加われば正に鬼に金棒、駆け馬に鞭と言えるでしょうね」

オレンジペコ「はい」

ダージリン「でも、どんなに強固な城壁でも抜け道はあるものよ」

オレンジペコ「……?」

ダージリン「過去の歴史においてマジノ線は一度も突破されたことはない。にも関わらず、フランスはドイツに破れてしまったわ」

オレンジペコ「……確かに! でもアメリーさんは自在に戦線の位置を変えることで穴を塞いでしまいます」

ダージリン「そうね。あれを今から突破するとあっては大洗女子の戦力では絶対に不可能だわ」

オレンジペコ「……?」


 逆転は不可能という言葉と裏腹に、ダージリンの口元には笑みがこぼれていた。

 自身がライバルと認めた西住みほを、旧知のアメリーが打ち破ったことを祝福して?


オレンジペコ「……」


 そうではない。ダージリンの瞳が雄弁に語っている。

 この試合はまだ終わっていないと。


【Eー3】

-M3Lee-
優季「隊長たちも敵車両と交戦中だって!」

あゆみ「ええ!? 町沿いに敵がいたから北からぐるって回り込めるんじゃなかったの!!?」

紗希「……」


 そう言っている間にも至近弾が飛び交っていく。


あゆみ「か、桂利奈ちゃん! もっとジグザクに!」

桂利奈「あいあい!!」

優季「もっともっとジグザグに!」

桂利奈「あいあいあいっ!!」

梓「きっと、こっちから見えてる数両を残して北側に先に回り込んでたんだと思う……」

桂利奈「そんな~~! このままじゃ……」


【Bー4】

 麻子によって車両が急速後退させられると、直後にそれまで居た場所から盛大に土煙があがった。


-IV号-
沙織「み、みぽりん! このままじゃ……」


 V939の105mm砲が相手ではIV号の装甲は紙細工も同然。
 命中すれば被弾経始など語る暇も無く撃破されてしまう。


麻子「どうする? このままじゃ……」

みほ「はい。このままいけば……」


 再び眼前で地面が炸裂する。
 みほの眼は盛大にあがる土煙ごしに、マジノ・ラインを捉えていた。


みほ「このままいけば……、マジノ線突破です!!」


【Cー5】

-ARL44-
アメリー「ふふ。必死に逃げていらっしゃるようですが……私のマジノ・ラインを見誤ったのが運の尽き。最早時間の問題ですわね」


 逃げまどうIV号とM3Leeをの姿にアメリーは勝利を確信した。


アメリー「二両とも速やかに撃破して差し上げなさい!! …………?」


 ふと、自分の口から出た言葉に違和感を感じた。


アメリー「二両!?」


 あわててキューポラから周囲を見渡す。

 IV号の周囲には何もいない。


アメリー「……!?」


 M3Leeに随伴車両は……いない。


アメリー「……!!?」


 いない。
 先ほどまでいたはずの38(t)がいない。


アメリー「先んじて後退して丘下から迂回する気ですの? しかし今更……!?」


 そこで念のためにと背後を眺めて、アメリーは言葉を失った。


-38(t)-
杏「お~、西住ちゃんの言ったとおりの戦局だね~」

桃「はい。向こうも先んじて北側のAラインを突破されていたとは思わなかった様ですね」


 マジノ・ラインの後方、戦線の内側を軽快に走る38(t)を見て、思わず言葉を失いそうになりつつも、アメリーはすぐに指示を飛ばした


-ARL44-
アメリー「AMX40! V939! 後ろですわ! ラインの内側に敵がいましてよ!!」


 アメリーの言葉にすぐさま二両が動くが、回転砲塔を持たないV939では背後の敵への対処はすぐには行えない。


-38(t)-
杏「小山。先にあの『ぼのぼの』に仕掛けるよ~。かぁしま。履帯狙ってね~」

柚子「はい。桃ちゃん。しっかりね」

桃「この38(t)の37mm砲ではあの装甲を相手に撃破は望めない。ならば……履帯を破壊すれば済むことだ!」


 モノクル越しに、桃の眼はAMX40の履帯を捉えた!


桃「その鈍足ではいい的だ!!! 食らえっ!!!」


 万全の狙いで発射された砲弾は見事にAMX40の車体ど真ん中に命中した。


桃「っんな!!」

柚子「桃ちゃん、狙うのは履帯だよ!」

桃「な……千載一遇のチャンスだったのに……私は……」


 38(t)の主砲ではどう足掻いてもAMX40の装甲に傷など付けられない。


杏「お~~~。撃破したね~~~~」


 そう、38(t)の主砲ではせいぜい履帯を狙うのが精一杯なのだ。


桃「それが……履帯の破壊すらしっp…………っへぁ? げ、撃破!?」


杏「やるじゃん、かぁしま~~!」


 見ればAMX40は黒煙を上げながら白旗をなびかせている。


柚子「後ろの排気口に当たったんだよ! 桃ちゃん!!」

桃「撃破? 私が? ……はは……はははは! ど、どどどうだ!? 西住! や、やったぞ!! 撃破! 一両撃破だっ!!!」

杏「お、敵のゾウさんがこっち向いてきてるよ~」

桃「撃破……一両……撃破!」 ……フンス

柚子「回避……間に合いません」

桃「や、やったよ……見てた? 柚ちゃん?」

杏「105mm砲じゃ38(t)はかすっただけでイチコロだね~」

柚子「や、やられ……」


 38(t)から見てV939の砲身が正円を描いた瞬間、V939から白旗が上がった。


桃「ふふ、IV号もIII突も倒せなかった戦車を私が……ふはは」

柚子「……!? た、助かった!?」


-IV号-
華「……間に合いましたね。上手く側面を狙えました」

沙織「さっすが華!!」


-38(t)-
杏「や~危なかったね~」

柚子「はい。IV号のおかげで助かr……!!!」


 一同が安堵した直後、38(t)轟音と共に横転した。

 残るV939が側面から迫っていたのだった。


柚子「あいたたた……せっかく助けてもらったのに……ごめんね皆」

杏「ありゃ~。やられちゃったね~」

桃「ふふふ……私が一両撃破……」


【大洗女子学園】

フラッグ車:M3Lee
残存車両:4/6

IV号戦車
38(t)【撃破】
89式
III号突撃砲【撃破】
M3Lee
B1bis



【マジノ女学院】

フラッグ車:ARL44
残存車両:3/10

ARL44
AMX40【撃破】
ELC AMX ×三両【撃破】【撃破】【撃破】
ARL40 V939 ×三両【撃破】
H35 ×二両【撃破】【撃破】

>>81-83
ありがとうございます

普段は書き溜めて1日で終わらせちゃう場合が多いから
たまにはゆっくり書こうと思ったら思いのほか遅筆になってしまった……
完走はするつもりなんで最後までお願いします


【Bー4】

-IV号-
華「カメさんチームが!」

沙織「大丈夫。全員無事みたい。でも……これでこっちはウサギさんチームと私たちだけになっちゃったよ!!?」

華「いえ、ルノーと89式が東から来てくれるんじゃないですか?」

沙織「……あ! そっか! ゆかりん達が相手を後ろからやっつけてくれるかも!! ゆかりんに助けてって通信すれば……」

みほ「……」

華「みほさん?」


麻子「無理だな」

沙織「え?」

みほ「そうだね。優花里さんがいるから心配ないとは思うけど……助けには来てくれないかな……」

沙織「な、なんでなんで! ゆかりんが私たちを見捨てるの?」

麻子「いや、最後の通信の時点で二両がいたのはKー5だ。起伏に富んだ地形で東から回り込んでも北東で大きな坂がある。時速25km強のあの戦車では回り込むにはもう3、4分はかかるだろう」

みほ「うん」

沙織「そんな……」


【Cー5】

-ARL44-
アメリー「西住流。まさかここまでおやりになるとは……。ですが、IV号戦車の主砲ではこのARL44には傷ひとつ付きませんわ」


 実は杏の構想には密かにIV号の強化計画があった。将来的にはF2型の砲に換装し、100mm越えの貫通力を手に入れることも夢ではない。

 だが、今のIV号の主砲ではせいぜい中戦車の側面装甲を抜くのが関の山だ。

 重戦車を相手にしたのでは例え背面へ撃ち込んでもなんの成果も期待できない。


 ましてやアメリーが駆るARL44の正面は車体、砲塔ともにのっぺりとした一枚板だ。

 戦車道の試合規定に基づいてカーボンコートされた車体であっても、通常弱点と言うべき扉や窓への直撃は被弾判定に考慮される。

 だがこの戦車の正面にはそれすら一切無い。


アメリー「IV号はこのARL44で引きつけますわ! V939は二両とも前へ! フラッグ車を倒せばこちらの勝利でしてよ!」


【Bー4】

-IV号-
麻子「どうする? 向こうの背後まで走り抜けるか?」

みほ「……ううん。確かにARL40 V939は上手く側面に当てれば撃破出来ると思うけど。きっと私たちを無視してウサギさんチームを追うと思うから……」

華「ではウサギさんチームと一緒に後退しますか?」

みほ「それも……無理かな。向こうの正面装甲と真っ向から戦うことになっちゃうから」

沙織「ど、どうすんの、みぽりん!? せっかく生徒会チームが『ぼのぼの』をやっつけてくれたのに」

みほ「うん。押しても鉄壁の装甲の前では全然効かないし、退いてもV939の火力じゃどこを撃たれても一撃でやられちゃう」

華「……」

みほ「私たちだけじゃどうやっても負けちゃうね」

麻子「……」

沙織「そ……そんな……」


 杏たちの活躍を以ってしても形勢逆転には至らない。

 戦車道における戦車の性能差とはそれほどまでに残酷なものだった。



みほ「だから、優花里さん達に助けてもらおっか」


沙織「………………はぇ?」

華「秋山さん達にって……」

麻子「さっき間に合わないと私に説明させただろう」

みほ「うん」

華「……?」

みほ「だから……」

沙織「……?」

みほ「……そこは戦術と腕かな」


 たった一言だった。


沙織「…………うん!」


 たった一言だけで、一瞬前までの絶望的な雰囲気は消え去り少女たちの眼には活力が戻っていた。


【C-5】


-ARL44-
アメリー「西住流。確かに素晴らしい戦略眼ですが、この試合は私たちの勝利ですわ。IV号の主砲では何百発撃たれようと私には傷ひとつ付けれられませんでしてよ!」


 V939は稜線を越えようと既に前進している。


アメリー「さぁ、こちらもIV号を追げk……!」


 いざ逃げるIV号を追わんと指示を出しかけたところで、アメリーは丘から勢いよく飛び出してきたIV号に目を丸くした。


アメリー「……! 無駄なことを! 勝てないと悟ってヤケにでもなりまして!?……」


 自身で口にして、だがアメリーはすぐにそれを否定した。

 ここで無策に突撃してくる程度の者が相手ならば、とうに決着はついている。


アメリー「……何を、お考えなのかしらっ!?」


 スピードで攪乱しつつ背後へ回り込むつもり?

 いやそんなことをしている間に、V939が二両がかりでM3Leeを撃破するだけだ。

 それにIV号の砲ならどこから撃たれてもARL44は傷ひとつ付かない。


アメリー「ならば……いったい……?」


 ましてや伏兵など居るはずもないとアメリーが周囲を見渡したとたん、数メートル先の地面が弾けた。


アメリー「……!? 砲撃!! まさか、回り込まれたと言うの?」


 アメリーは確信した。やはり西住みほが何の勝機もなく一両で突撃してくるなどありえない。

 背後に迫っている。


 すぐ後ろに、敵が居るのだ。


-IV号-
みほ「麻子さん! 今です!!」


 ARL44の至近が炸裂すると同時に、これまで回避コースをとっていたIV号は一気に方向転換した。


-ARL44-
砲手「よ、IV号が向かってきます!」

アメリー「……!」

砲手「……っ!」


 いかに頑強な戦車に乗り換えようとも、これまで身につけた感覚や癖はそうそう抜けるものではない。

 いくら回り込まれても、いくら撃たれても平気と分かっていながらも、砲手は焦るあまり尚早に迎撃の砲弾を放ってしまった。


-IV号-
沙織「きゃあっ!!」


 大きく揺れた車内に思わず悲鳴が響いたが、だがそれだけだった。


麻子「あんな見え見えの反撃に当たるか」


 すんでの所で回避行動をとったIV号は、勢いを殺さずARL44へと突進した。


-ARL44-
アメリー「……なぜ! 一体どこへ回り込まれたというの!」

砲手「IV号、突撃してきます!」


 背後の敵は見えぬままだが、かといってIV号を自由にさせる訳にもいかない。


アメリー「……っ!」


 一先ず眼前のIV号への対処をとアメリーが正面を見れば、再び背後で地面が炸裂する。


アメリー「……! これは……!」


 だが今度は抉れた地面の角度から入射角がハッキリと見て取れた。

 砲弾は背後から撃ち込まれたものでは無かった。

 アメリーが迷わず振り向いた先に、確かに89式はいた。


アメリー「あんな遠くから!!?」


【Eー9】

-89式-
典子「装填完了! 撃て撃てー! 倒すまで撃てーーー!!」

あけび「はいっ!」

忍「いや、この89式の主砲じゃ密着してても無理ですよ」


 E-9の南東、崩れた橋の途中に89式はいた。

 見晴らしもよく狙撃には最適のポイントだ。適切な威力の砲があれば絶好のポイントといえる。

 だが89式の砲ではとうてい撃破など望めない。


妙子「あ、でも相手のフラッグ車の動きがさっきまでと違います! 作戦成功です!」


 そう。普通の指揮官や戦車長ならこんな指示は出さない。

 だがこんな無意味な、意味の無い距離から砲撃すること。


 それ自体にこそ大きな意味があった。


【C-5】

-ARL44-
アメリー「なんてこと! はじめから撃破など考えずに……!」


 本来なら無視してしかるべき攻撃に、驚異を感じてしまったアメリーは一瞬、ほんの一瞬の隙を生んでしまう。


操縦手「旋回、間に合いません」


-IV号-
みほ「麻子さん、突撃です! みんな衝撃に備えて!」

麻子「……っ!!」


 ほんの僅かだけ射線から逃れつつ突進したIV号は、全速力でARL44へと衝突した。


-ARL44-
アメリー「--っ!!?」


 大きく揺さぶられる戦車内で、だがアメリーは背筋が寒くなるのを感じた。


アメリー「こ、後退よ。態勢を立て直しますわよ!」

操縦手「駄目です! 衝突で履帯が!」

アメリー「--ならば迎撃を。砲手!」

砲手「ね、狙いが……!」


-IV号-
みほ「……」


 車体が大きく軋むほどの突撃をかけたIV号は、いまや完全にARL44の砲身の懐にいた。

 言うなれば右ストレートを躱して相手へ密着したボクサーのような状態だ。


みほ「華さん!」


 そして突き出されたままの拳では超ショートレンジから放たれるアッパーを躱す術はない。


華「はい!!」


 IV号の砲では360度どこから撃ってもARL44の装甲を貫徹出来ない。

 だがそもそも、人の作った機械に対して7kgもの鉄の塊が初速385m/sで撃ち込まれて、何の影響も無いはずが無いのだ。

 それが正確無比の照準で撃ち出されたものならばなおさらだ。


-ARL44-
アメリー「っく!!?」


 再びARL44の車内が揺らされた。


砲手「ターレットリングに異常! ほ、砲塔が回りませんっ!!」

アメリー「……」


 アメリーは身が震えるのを感じた。

 砲撃に恐怖した訳ではない。

 通常、武道の試合において身の危険に恐怖するという状況は彼女の知る限りない。


 にも関わらず、体はおののき震えた。


アメリー「絶対に太刀打ちできないであろうはずの、このARL44に、よもや突進してくるなんて……こ、これが……西住流!!?」


 試合前のそぶりばブラフだったに違いない。

 恐るべき胆力と策略だ。


アメリー「……!! V939は何をしてますの!? は、早く相手のフラッグ車を!」


 だがいくら西住みほが恐るべき存在でもフラッグ車さえ倒せば終わる。

 だがアメリーの耳に届いたのは予想だにしない報告だった。


通信士「V939から通信です! M3Leeに突破された模様!」

アメリー「ど、どうして!!?」

通信士「側面よりB1bisの奇襲を受けたようで……」

アメリー「な……。あ、相手のフラッグ車は……!?」


 続きの言葉を紡ぐ必要はなかった。

 アメリーの目にはIV号の後方から突進してくるM3Leeがはっきり見えた。


アメリー「迎撃でしてよ!」

砲手「ほ、砲塔が回らないのに無理ですっ!」

アメリー「V939は!?」

通信士「いまだB1bisと交戦中です」

アメリー「っ!!」


-M3Lee-
優季「あんこうチーム、本当に体当たりしてる!」

紗希「……」

梓「隊長たちが作ってくれたチャンスだもん! 絶対にやっつけよう!」

あゆみ「うん!!」

桂利奈「あいあいーーーーっ!!!」




 75mm砲の発射音とともに、白旗が上がった。


-ARL44-
アメリー「…………」


 M3Leeの75mm砲の接射ならば鉄壁に等しいARL44の装甲に対して、有効打が望める。

 アメリーにも分かる。決して勢い任せなどではない。

 すべて窮地においやられたあの一瞬のうちに、西住みほによって計算された作戦だった。



『ARL44、行動不能……大洗女子学園の勝利です!』



 アナウンスを聞いても、不思議とそう悔しくはなかった。



アメリー「作戦、胆力、指揮力……全て完敗ですもの。当然ですわね」


 納得のいく敗北だった。

 まさに軍神としか評しようの無い最強の相手に負けたのなら、やむなしというものだ。


華「みほさん!」

麻子「おい」


 そんな思いで戦車を降りると、ふとIV号の乗員たちの声が聞こえてきた。

 見れば西住みほがちょこんと膝をついて座っている。


アメリー「……?」

沙織「大丈夫!? みぽりん!!」

アメリー「……どうかなさいまして?」

みほ「……あ、アメリーさん!? ……必死でARL44の懐へ飛び込んだんで、なんだか腰が抜けちゃって……」

アメリー「……ぇ?」


 目の前の少女は重戦車を相手に躊躇無く突撃してきておいて、腰が抜けたと言った。

 自分たちを打ち負かしたのは無敵の軍神のはずなのに。


アメリー「……」


 だからこそ敗北も納得できたのに。


みほ「あの……」

アメリー「……」

みほ「……アメリーさん?」


アメリー「…………っぷ! ぷぷ……ふふふ……あははははは……」

麻子「……!?」

沙織「ちょ、どうしちゃったんですか!?」

アメリー「ふふふふ! そうでしょう!! そうでしょうとも!! 我が最強のマジノ・ラインとARL44を前にしたんですもの。その反応を恥じることはありませんわ」


みほ「あはは……真っ向から戦っても勝ち目が無いのは分かってましたから」

アメリー「でも、それでいてなおも突破の策を練り、最後には自ら立ち向かってきた貴方には敬意を表しますわ」

みほ「アメリーさん……」

アメリー「さぁ。お手をお貸ししますわ」

みほ「あ、ありがとうございます」





アメリー「でも、次は負けませんでしてよ!」

みほ「はい。私たちもです!」




…………

 翌日、学園へ戻っても戦勝ムードは止まぬままだった。

桃「諸君の働きのお陰で無事に二回戦も……って聞けーーーー!!」

杏「や~友好の印にってロードバイク一式とローラー台までくれるなんて太っ腹だね~」

柚子「こっちから差し上げたのは干し芋ですけどね」


忍「ローラー台……これは持久力トレに最適ね」 ガーーー

妙子「景色が変わらないからちょっと退屈だけど」 ガーーー

あけび「でもケガもしにくいからオフトレに使う球技の選手も多いらしいよ」 ガーーー

典子「よし! 全員ケイデンス100維持であと5時間!!」 ガーー

「「「はいっ!!」」」 ガーーー


あや「で、そこで秋山先輩が~」

優季「またその話~?」

あゆみ「それを言うなら相手のフラッグ車をやっつけたのは私だよ~」

梓「いや、それは隊長たちが事前に攻撃してくれたからじゃん」

紗希「……私も……命中させた」

桂利奈「ね~~~」



おりょう「よもや敵の術中にああも見事にはまるとは……失態だったぜよ!!」

左衛門佐「これは……修行不足だ! 山籠もりだ! 滝行だ!!」

エルヴィン「まぁ私は十分な戦果を上げたからな……。無事を祈っているぞ……」

左衛門佐「待て! 我ら生まれた時は違えども、死すべきとは同じはず!」

エルヴィン「いや、皆同じ歳……えぇい! はなせ!!」

カエサル「諦めろ、エルヴィン」

エルヴィン「カエサル、お前もか!」


優花里「いや~まさかELCやAMX40をこの目で見られるとは……私は幸せものですぅ!」

沙織「でも、アメリーさん大丈夫かな?」

華「何がです?」

沙織「だってずっと戦車道負け続けてたから、今年は再起を賭けてたんでしょ? マジノ女学院。なんか悪いじゃん」

麻子「仕方ないだろう。それが勝負というものだ」

みほ「うん。麻子さんの言うとおりだけど、アメリーさんは今年で卒業だし、沙織さんの言うこともちょっと分かるかな……」

華「ですが、同じ道を歩む身です。いつかまた重なることもありますよ」


みほ「うん……そうだよね。…………って!!?」

沙織「みぽりん?」

麻子「なんだ急に大声を上げて」

みほ「あれ! テレビ、テレビ見て!!」

優花里「……あれは!」



アナウンサー『今年も女子自転車道の世界大会が間近に差し迫ってきました。今回も注目は優勝候補に数えられる屈指の強豪、マジノ女学院! 今日は主将のアメリーさんにお話をお伺いしたいと思います』



【完】


読んでくれた方ありがとう。

今回は遅筆と分かってたこともあって初めて酉使ったんだけど
次はちょっと趣向を変えたガルパンもので書くつもりなので、ガルパンものの時はまた同じ酉で書きますわ。

ではまた次も宜しくお願いします。

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