【ib二次】イヴ「美術館から」ギャリー「抜け出すわよ!」メアリー「三人で!」 (276)

フリーゲームibの二次創作です。

時々安価があります。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1398770138

「もう、これしか方法はない!」

ギャリーがライターの火をつけた。

「やめて!お願いッ!やめてーーーーッ!!!」

メアリーが悲痛な声を上げる。額縁に移った火は勢いよく燃え広がった。ガラスが割れ、
キャンバスも燃え始める。

「ああ、あれ?私…何で、こんな…」

メアリーの体が黒ずみ、そして、炭の様に粉々に崩れ落ち、彼女は消え去った。

「はあっ、はあっ!」

私達はその場にへたり込んだ。

「大丈夫?ケガしてない?」

 ギャリーが私を見て言う。

「ギャリーこそ、手をケガしてるよ?」

「あらホント、さっきガラスでやっちゃったんだわ。ま、これくらい平気よ」

 私はハンカチを取り出しギャリーに渡した。

「え?これレースじゃない?もう遅いけど。まあ、いいや。じゃあしばらく借りるわね」

………そして桃の鍵を使い下に降り、『絵空事の世界』の前まで私達は来た。

「「イヴ!」」

絵の中からギャリーが、私の前でお母さんが、手を差し出している。

目の前のこの人は、ホンモノのお母さんじゃない。ギャリーを見る。私は『絵空事の世界』に駆け寄り、ギャリーの手を掴んだ。

………………

「…あれ?」

目を開ける。ちょっと目を瞑っただけの様な気も、長い事眠っていた様な気もする。

何だかとても疲れた。「初めての」美術館だからかな。

少し頭もぼうっとする。

私は立ち上がり、フラフラと歩きだした。

階段を降り、真っ直ぐ進む。

バラのオブジェが目についた。ボロボロのコートを着た男の人の隣に立ち、オブジェを眺める。それにしても、この人、前にどこかで見た気がする…。

男の人が私のしせんに気づいた。

「何か用?おじょーちゃん」

「この像は何なの?」

「『精神の具象化』って言う名前の作品らしいわ」

…あれ?この人男性、だよね?

「この絵をみてるとさ、何だか切ない気持ちになるのよねえ。何でかしら…、って急に言われても困るわよね。ごめん、イヴ」

やっぱり、この人と私はどこかで会った事がある。でも、どこで…?

「あれ、…誰よイヴって?」

 それは、私の名前。

「え?アンタの名前?アンタ本当にイヴって言うの?変ね、アタシ別にアンタの事知らないのに。何か口走っちゃったの。変なの」

そこで少し言葉を切って、男の人は言葉を続けた。

「でも、何か…私達前にどこかで会った様な気が…あ、いやごめん、変な事聞いて。今のは気にしないで、じゃあね」

 男の人はそう言って立ち去ろうとした。

「ん?」

しかし、何かに気づいたようで立ち止まる。

「何これ、ハンカチ?こんなの持ってたっけ?」

 …っ!それは!私は目を見張った。そのハンカチは!私は男の人に駆け寄った。

「え?これアンタの?あらホントだわ“IB”名前が入ってる。でも何でアタシのポケットに?しかも血がついて…」

頭のはじっこで、ある筈のない記憶がチラつく。

「…ケガ…ケガしたんだわ、手に。それで…女の子が、イヴが…ハンカチを私に!」

それは男の人の方、ギャリーも同じらしい。

「そうよ…このハンカチ、貸してもらってたんだわ!イヴ!思い出したわ!」
 
「そうだ、私はギャリーとおかしな世界をさまよってたんだ。それで…」

安価を取ります。選択によってENDが変わります。
安価下1
1、ハンカチの事
2、マカロンの事
3、メアリーの事

私はギャリーと美術館を歩きながら、あの美術館での事を互いの記憶を確認し合う様に話した。

「アタシ達、よく戻って来れたわよね…」

2階の『逆さ吊りの男』の前でギャリーが呟く。

「2人とも無事で戻ってこれたなんて」

うん、2人で…。

「やっぱり、気になってるのね、メアリーの事」

「うん」

私はメアリーの事を思い出す。

「本当に、これしかなかったのかな」

「しょうがなかったのよ。あの子が外に出るためには、私かイヴがあの世界に残らなくちゃいけなかったんだから…」

『逆さ吊りの男』の横で目を瞑るギャリー。


………あれ?

「ギャリー、ここに元々あった絵って『逆さ吊りの男』だった?」

「そうよ?私はこの絵を見ていた後にあの世界に行ったんだから」

何か、別の絵があったような…、そう、丁度ギャリーの様な人の絵が……。

私は必死に思い出そうとする。しかし、

「あら?イヴ、こんな所にいたの。そろそろ帰るわよ」

お母さんが階段を上がって来て私を見つける。

私はギャリーと「また」会う約束をして、美術館を後にした。


イヴの背中を見つめ、アタシは呟く。

「…青いバラの花言葉は『奇跡』よね?これだけじゃあ、『奇跡』とは言えないわよ」

END.9 小さな奇跡

…新しいルートが解放されました。

ここまでが序章です。

ここから、少しづつですがハッピーエンドを目指して書いて行きたいと思います。

昼下がりの灰色の空の下、私はお父さんとお母さんと美術館に向かっていた。

「さあ着いたわよ。…イヴは美術館は初めてよね?」

お母さんが私の顔を覗いて尋ねる。そうだった、かな?

何だかずっと前に来た事があった様な気もするんだけど。

「今日、観に来たのは『ゲルテナ』って人の展覧会なのよ」

『ゲルテナ』と言う名前、どこか懐かしい響きがする…。

「絵の他にも彫刻とか色々と面白い作品があるらしいから、きっとイヴでも楽しめると思うわ」

やっぱり、何かこの感じには覚えがある。そう、きっと次は…


安価下1

1、お母さんがパンフレットを貰おうと言う
2、お父さんが受付を済まそうと言う

「受付、済ませてしまおうか」

お父さんがそう言ってカウンターに寄る。

あれ?外れた…、気のせいだったのかな。私は早く美術館を巡りたくなった。

お父さんとお母さんに言って奥に進む。

    「へえ、これが雑誌とかによく載ってるやつなのか」

   「この作品、生で観てみたかったの!」

     「やっぱり、本とかで見るのと全然違うわ…雰囲気がもう…もう……ね!」


次のフロアでは沢山の人がざわついていた。目の前の床には、海の底の絵がある。

地上から見れる深海かあ…

安価1
1、飛び込んでみる
2、他の作品を見に行く

私は少し後ろに下がって距離を取った。

軽く屈身をする。

両手両膝を地面に付けた。

ヒザを上げる。

軽く息を吸って、

スタート!

思いっきり走って、ジャーンプ………

「ぐすっ…ぐす…っ!」

「まったく、イヴがあんな事するなんて思わなかったわ」

「でも、作品に傷がつかなくて良かったよ」

 美術館に入ったと思ったらいつの間にか出ていた。何を言っているか分からねえと思うが(以下略)

END12.もう、イヴったらうっかんりさん♪

まさか真っ先にこのエンドに行くとは思わなかったww

コンティニューしますか?

ID変わってるけど1です。

見間違えた。変わってなかった…ごめんなさい。

はじめから行きます。


昼下がりの灰色の空の下、私はお父さんとお母さんと美術館に向かっていた。

「さあ着いたわよ。…イヴは美術館は初めてよね?」

 お母さんが私の顔を覗いて尋ねる。そうだった、かな?何だかずっと前に来た事があった様な気もするんだけど。

「今日、観に来たのは『ゲルテナ』って人の展覧会なのよ」

 『ゲルテナ』と言う名前、どこか懐かしい響きがする…。

「絵の他にも彫刻とか色々と面白い作品があるらしいから、きっとイヴでも楽しめると思うわ」

やっぱり、何かこの感じには覚えがある。そう、きっと次は…

安価下1

1、お母さんがパンフレットを貰おうと言う
2、お父さんが受付を済まそうと言う

「受付、済ませてしまおうか」

お父さんがそう言ってカウンターに寄る。お母さんもそれに続いてパンフレットを貰いに行った。

当たった…。何だろう、この変な感じ…。私は早く美術館を巡りたくなった。先に行く事をお父さんとお母さんに言って、奥に進む。

「へえ、これが雑誌とかによく載ってるやつなのか」

「この作品、生で観てみたかったの!」

「やっぱり、本とかで見るのと全然違うわ…雰囲気がもう…もう……ね!」

次のフロアでは沢山の人がざわついていた。目の前の床には、海の底の絵がある。

地上から見れる深海かあ…。引き込まれそうな気がして思わず後ずさる。

他にも一階にはバラのオブジェとかきれいな石が入ったケースとかがあった。

二階に上がってみる。

二階に上がって最初に目に飛び込んできたのは首のないマネキンだった。辺りを見るがどこにも首はない。どうやら『無個性』と言うタイトルらしかった。

他の絵も見て回る。

『赤い服の女』と言う絵は変に生々しい雰囲気で少し怖かった。

『口直しの木』はきっと綿菓子か何かをイメージしたんだろうな。

青くてドロドロした像は字が難しくて名前が分かんなかった。

ネコの絵、目の絵を見て先に進む。

…あれ?この反対側の廊下ってこんなに長かったっけ?

何だか廊下の長さが変な気がする。試しに一周してみる。

『無個性』の廊下を曲がって、『赤い服の女』の廊下を曲がって、『口直しの木』の廊下を曲がる。

やっぱり変だ。4回とも真横に曲がったし、『無個性』の廊下と『口直しの木』の廊下は同じ位の長さだった。
それに、ネコの絵を見てたお母さんと子どもはこの絵が見えていないような感じだった。

私は目の前の大きな絵を見る。題名を読んで見ようとすると電気がまたたいた。電気はすぐについたが、何か変だ。

…いつの間にか2階から人がいなくなっていた。

「…え?何で?」

さっきまで結構人がいた筈なのに。

一階に下りてみる。

トコトコトコトコトコ!

二階から床を踏み鳴らす音が聞こえた。

「何だやっぱり誰かいるんじゃない」

二階にもう一度上がる。ふと窓の外に何者かの気配を感じた気がした。

近寄ってみる。どうしよう…

安価下1
1、窓をのぞく
2、窓をたたく

そっと窓をのぞこうとする

バンッ!

「きゃあっ!」

窓の外から誰かがいきなり窓を叩いた!?びっくりして尻餅をつく。
…ここってそう言えば二階じゃない?じゃあ、窓の外の人はどうやって叩いたの?

「きゃあああっ!」

二階を走り廻り、誰かを探すがやっぱり誰もいない。

「はあ、はあ」

私はまた、不思議と長い廊下にある大きな絵の前に来ていた。

「何か垂れてる…」

いつのまにやら額縁の下から何かが垂れていた。

「あれ、絵の具かな」

近寄ってみる。それは、

安価
1、青色の絵の具
2、黄色の絵の具
3、赤色の絵の具

額縁の裏から黄色い絵の具が流れている。
指で触ろうとした瞬間…、後ろの床がバンバンバンバンッ!と鳴った。
びっくりして後ろを見る。そこには

「おいでよイヴ!いっしょにあそぼ!」

と黄色い絵の具で書いてあった。

絵の方に向きなおると、垂れていた絵の具が文字になっている。

「深海の世なう」

深海の世って、確か一階にあったやつだっけ。

…と言う訳で『深海の世』の前に来てみたんだけど、

「この中に入るの?」

ちょうちんアンコウもどきみたいなのが回遊してるんだけど…。

安価下1
1、入る
2、やっぱり止める


………

気が付くと私は知らない場所にいた。廊下が左右に続いている。

階段を挟んで左右の壁に赤い絵と青い絵があるけど、どっちから行こうか…。

考えて私は青い絵の方に進む事にした。

おいでおいでおいでおいで………

壁一面に「おいで」と黄色い字で書いてある。

「何これ…怖い」

そう言った瞬間、字が変わった。

「諦めんなよ!諦めんなよ、イヴ!! どうしてそこでやめるんだ、そこで!!もう少し頑張ってみろよ! ダメダメダメ!諦めたら!私のこと思えよ、応援してる人たちのこと思ってみろって!あともうちょっとのところなんだから!」

「暑い…」

まだ知らないあなたの事を思ってもしょうがないじゃん…。しょうがなく先に進むと花瓶に赤いバラが活けてあった。

バラを取ってみる。何だか自分にしっくりきた。

ふと机の後ろを見ると、扉がある事に気づいた。

「よいしょっと」

机をどかして扉を開けて見る。

中には女の人の絵と、緑色のカギがあった。

「すごく怪しい…」

安価下1

1、カギを取る
2、笑いを取る

すみません。何か違う気がしてたら。ここは青のカギでしたね。補完しといて下さい。

女の人の絵をじっと見て見る。

あ、ちょっと動いた。

更に見つめて見る。

やっぱりこの絵は動いている。カギを取った瞬間に驚かす気だ。

じいっと見つめると、必死に無表情を作ってるのが分かる。

変顔をしてみた。

「ブフッ!!」

たまらず吹き出す女の人の絵。よし、勝った。

私は青のカギを拾って部屋を出た。

外に出ると壁の文字がまた変わっていた。

まけたまけたまけたまけた…

「そんなに悔しかったのかな」

歩いていると床がバンバンバンと鳴り、「ずるい」と文字が出た。

「じゃあ、今度また勝負ね」

反対側の廊下にあった扉を青のカギで開けて先に進む。

今度は緑色の部屋に出た。

虫の絵が飾ってある。…本物の虫も床を歩いてる。

あ、こっち向いた。

「ぼく、アリっ!ぼく、かっこいい!じゃなくて、ぼく、大好き!じゃなくて、ぼく、絵が好き!ぼくの絵、カッコいい!ぼくの絵、見たいけどちょっと遠い所にある!!」

 アリが喋った…。

安価1

1、無視する
2、連れて行く

アリをつまんで肩に載せてみた。

「うわ、高い!」

そのまま歩いて近くの扉を開けて見る。

一刀両断する感じで床に穴が開いてる。幅はそれほどでもなさそうだけど、とても深い穴だ…

安価下1
1、飛び越える
2、引き返す

飛び越えれるかもしれないけど…、ギャグ補正でもない限り危ないから戻ろう。

戻って反対側の柱にある注意書きを読む

「はしにちゅうい」

真ん中を通れって事でしょ。簡単簡単。

しゅっ!と右の壁から肌色の手が出てきた!
必死にスカートの端を掴もうとしている!

「いやっ!」

しゅっ!と左の壁から黒い手が出てきた!
パーを出している!

「私はチョキよ」

しゅっ!しゅっ!と左右の壁から黒い手が出てきた。
親指を上に立てている!

「ありがとね!」

しゅっ!と正面の壁から黒い手が出てきた!
人差し指を下に向けている!

「ひょっとして、あっちむいてホイ?」

手の隣にアリの絵が飾ってあった。

「あ、ぼくの絵だ!うっとり。アリは一匹だけどありがとう」

絵の更に隣には扉があった。が、開かない。

「またカギを探さなきゃいけないの…」

あっちむいてホイをしていた手が人差し指で真っ直ぐ指している。

「あっちなの?」

親指を上げていた2つの手とジャンケンで負けた手が、
クイックイッと廊下の角を指差している。

「ありがと!」

スカートをめくろうとして来た手がうなだれている。

「だって嫌だったんだもん!」

そして、私はまた大きな穴の前にいる。

「…この穴の向こうって事ね」

どうやって向うに行こうかな。

安価1
 1、飛び越える
 2、アリに行かせる

肩に乗っているアリを笑顔で見つめる。

「アリさん」

「なに?」

「私、アリさんの願い叶えたよね?」

「うん!ありがとう!」

私は黙って穴の対岸を指差す。

「え?」

私は黙って穴の対岸を強く指差す。

「え!?」

私は黙って穴の対岸を力強く指差す。

「ぼく、用事gっ!あっ!止めてっ!?」

アリをつまんで振りかぶる。

「ぼく、羽アリじゃないよっ!?」

「大丈夫!」

そーれ!


………

「アリさん、ありがとう!」

「うん。ぼく、働きアリ。ぼく、働く。ぼく、出来る。ぼく、カッコいい」
私がしばらく待っていると、アリさんはちゃんと緑のカギを持ってきてくれた。一体の『無個性』と共に。

今、穴の両岸を結ぶ橋として足元にいるのはその『無個性』Aだ。

「じたばたしないで、今助けてあげるから」

私は『無個性』Aの手を掴んで引っ張った。

『無個性』Aの足が対岸から離れる。

「重っ!」

思わず手を放してしまう。

『無個性』Aは落ちて行ってしまった…。

「………さ、行こうか?アリさん」

「うん。ぼく、働きアリ」

私達は緑の扉を開いて先へと進んだ。

「ト○ロ?」

「これ、ネコ」

緑の扉を開けると正面の壁一面に大きなネコの顔が描かれた小部屋に出た。

「サカナの窪みだ」

ネコの絵の口辺りにサカナの窪みがある。

辺りを見渡すと左右の壁に扉が見えた。

「サカナを探せって事かな」

あれ、そう言えば前にもこんな事あったような…

左の扉を開けて中に入る。そこには8つのパネルがあった。
そのうち7つはカーテンで隠れている。

「ぼく棒人間。ぼく、隠れる。ぼく、探して!」

一つだけカーテンが付いてないパネルの中から棒人間が話しかけてくる。

「ぼく、棒人間!」
  
  「ぼく、アリ!」

「対抗しなくていいから…」

「ぼく、隠れる!ぼく、探して!」

そう言うと棒人間は消えてしまった。

「カーテンに隠れたパネルのどこかにいるってことね」

何だか私には不思議な事に、どこに棒人間がいるか分かる様な気がした…。

真っ直ぐ一つのパネルを目指し、黄色のスイッチを押す。

「…見つかった。景品あげる」

ゴトリと向こうの方で音がした。

音がした方へ行くとサカナの頭が『板前の腕』と言う絵の下に落ちていた。

それを拾って部屋を出ようとして、ふと気になる。

そう言えば、他のカーテンの下には何があったんだろう…

安価下1

1、他のカーテンも開けてみる
2、このまま部屋を出る

シナリオ分岐もフラグもありますよ!

行きつく所まで行ったら、
どんなフラグが立っていたのかなども解説したいと思います!

気になったので、他のカーテンも開けて見る事にした。ボタンを押す。

鎌の絵?…っ!鎌の絵が動いたっ!

振り降りてきた鎌をとっさに両手で受け止める。

「これ何かに使えるのかな…」

私は鎌を手に入れた。

部屋を出て、サカナの窪みを見る。

「う~ん。半分じゃ開かないよね…」

右側の壁にある扉を見る。しっぽはあそこにあるのだろうと何となく思った。

右側の扉を開けて中に入る。そこは資材置き場だった。

「しっぽはどこだろう…」

取りあえず。段ボールを探して見る。

「ないなあ…」

何体か置かれている『無個性』の像と人間の上半身の像を見る。

「これのどれかが隠し持ってるなんて事、ないよね…」

安価下1

1、一体一体調べて回る
2、一旦、部屋から出る

私は一旦部屋を出てみる事にした。

しばらくあちこち探してみるが、やっぱり見つからない。

「うーん、サカナのしっぽがみつからないよう…」

私はネコの壁の前で途方に暮れていた。

肩にアリを乗せ、手には鎌とバラを持ち、立ち尽くす私。

ん?鎌?


………
「ねえ、ネコさん、ここ通してくれない?ダメ?」

ニ゛ャーーーー!!

………

「ありがと、ネコさん!大好きよ!」

「鎌、こわい。鎌、あぶない。鎌、いやだ。鎌、鎌、鎌鎌鎌鎌鎌鎌…」

アリが肩で震えているので鎌は元のパネルに戻し、

私は無事に先へ進む事が出来た。

通路を進むと黄色の部屋に出た。…ルールタビーユさんカッコいいよね。

目の前の通路を挟んで左には舌をヘロヘロさせている絵がある。
さっきの鎌、持ってくれば良かったかな。

右の壁には何か書いてある。

「もーしん…ちゅうい?」

通路を更に進んで見ると、壁に唇がついていた。

安価下1

1、近づく
2、離れる

「注意って言ってるし。危ないよね…」

私はそっと唇から離れた。

戻って、奥に続く通路を見る。

通路の壁から生えた黒い手が、クイッ!クイッ!と手招きをしていた。

「そっちに何かあるの?」

手招きされるままに奥へと進んでみると、

「うわあ…」
天井から沢山の人形が逆さまに吊るされていた。

「さすがに、これは…ちょっと、怖いかも…」

ふと、その内の一体と目があった。

ん?何かごそごそしてる?
足の縄を持って、縄から足を外して、宙返りして飛び降りた!?

ストン!スタスタ。

こっちにやってくる。

人形は自分の服を指差した。

18

服には緑色の文字でそう書いてあった。

戻る人形。
ジャンプして、縄を掴んで、足を入れて。逆さにぶら下がった。

…人形さんも大変だなあ。

それにしても緑色の18と言う文字、
確か、どこかで見た事があったような。

…でも、あの時の人形はドサッ!って、

あれ?「あの時」ってどの時?

逆さづりの人形の下を通り、その先にあった扉の前に立つ。

000

扉には数字を入れるダイヤルがついていた。
ダイヤルの上には式が書いてある。

緑×赤+青=?
私は例しに、思いつく数字を入れて見る事にした。

安価下1

1、162
2、164
3、166
4、168

「1、6、6っと」

カチャリ。扉が開いた。

何で私はこの暗証番号が分かったのだろう…。

お父さんとお母さんと美術館に来てからずっと、不思議な違和感が私の中にある。

前にも同じ様な事があったような、でも、やっぱり全然違う様な…。

部屋の中にはリンゴの木のオブジェがたくさん並んでいた。

一つ手に取ってみる。

「いい匂い。」

リンゴの甘酸っぱいにおいがする。
でも、木製だ。

リンゴを手に部屋を出ると、

「くいものよこせえ~~~~~~っ!」

遠くで何やら騒いでいるみたいだった。

「もーしん」さんの所に戻る。

「くいものお!くいものおおっ!!」

「もーしん」さんがガチンガチン歯を鳴らしている…

安価下1

1、サカナの頭をあげる
2、木のリンゴをあげる

サカナの頭と木のリンゴを見比べる…。

私はサカナの頭を「もーしん」さんの中に投げ入れた。
…正直あのサカナの頭ちょっと生臭かったんだよね。

バリッ!バリッ!ゴキンッ!

あっという間にサカナの頭を噛み砕く「もーしん」さん。

「シハ―ッ!ほねが、歯にはさまった。取ってくれたら。ここ通す」

「もーしん」さんの歯を見る。あ、ほんとだ。
私は小骨を取ってあげ、ついでに口周りを拭いてあげた。

「おまえ、やさしい。こことおす。おれの口の中、くぐっていけ」

あんぐり口をあける「もーしん」さん。
私はちょっと生臭い口の中を通って、先へと進んだ。

扉の先には廊下があった。壁には何枚もの絵が続いている。
ギロチンの絵だ。しかも連続写真みたいに段々上がっている。
廊下の角あたりの絵は完全に刃が上がっている。…危ないな。

「アリさん、ちょっと向こうまで行ってきて」
アリを先に歩かせて様子を見る。あ、ギロチンが落ちてきた…。ちょっと心配。

「アリさーん!大丈夫?」

「うん!ぼく、働きアリ!」

ほっ。よかった。ギロチンの刃はスッと消えてしまった。
どうやらもう落ちてこないらしい。

どんどん進んで突き当りの扉を開ける。
今度は赤い部屋に出た。

赤い像と青い像が対になって置いてある。
『「あ」』『「うん」』

真ん中の奥には扉があった。

「やっぱり開かないのね」

カギを探す。

対になっている「あーさん」と「うんさん」に聞いてみた。
「あーさん、うんさん、カギ知らない?」

「あー?」
「う~ん…」

ダメだ。役に立たない。

右奥を見て見る。

『赤い服の女』

ああ、きっとあれだ。
あの絵が持ってるに違いない。

でもなあ、絶対何かあるよね…。

安価下1

1、近寄る
2、近寄らない

やっぱり近寄るのは危ないよね…、なら。

「アリさん。ちょっと降りてて」

アリを肩から降ろす。

手に持つのは木のリンゴ。固さを確かめる。うん、固い。

振りかぶる。

ブンッ!

きゅう…。

『赤い服の女』は動かなくなった。

「こうして見ると、ホントにただの絵ね」

ゴトリ。赤いカギが落ちる。

私はリンゴと赤いカギを拾い、アリと共に扉の先へ進んだ。

扉を開けて中に入ると、小さな部屋に本棚が並んでいる。

「図書室かな?」

「ぼく、アリ!ぼく、かしこい!」
アリが得意げな顔をする。アリが。

「そう、本読めるの?」

「うん!」

「何が好き?」

「『アリとキリギリス』!キリギリスwww」

私は目につく本を手に取ってみた。

「どの本から読もうかな」

安価下1

1、『キャンバスの中の女たち』
2、『ゲルテナ』
3、何か難しそうな本
4、『うごくえほん 作/絵XXXX “うっかりさんとガレッド・デ・ロワ”』
5、『世界の美術館』

何かこの世界の事が分かるかもしれない。
もしかしたら、私の中にある、この奇妙な違和感の事も…。

そう思い、私は『ゲルテナ』と言う分厚い本を手に取ってみた。
ゲルテナが描いた色々な絵がのっている。

始めのページを読む。

「ワイズ・ゲルテナについて」

開き癖のあるページだ。しかも、紙が一度濡れたのかぐしゃぐしゃになっている。

ゲルテナの生い立ちや遍歴が書いてあるようだ。

ふと、端の余白に落書きを見つける。

「あいたいよ、パパ。」

黄色のクレヨンでそう書いてあった。

作品紹介のページをパラパラとめくりながら流し読みをする。
今までに見てきた絵やまだ見た事のない絵、怖い絵、日常の絵、可愛い金髪の女の子の絵、沢山の絵がのっていた。

…さすがに動き通しで疲れてしまった。もう少しここで本でも読んで休憩しよう。

「さて、次は何の本を読もうかな」

安価下1

1、『キャンバスの中の女たち』
2、何か難しそうな本
3、『うごくえほん 作/絵XXXX “うっかりさんとガレッド・デ・ロワ”』
4、『世界の美術館』

次に『世界の美術館』と言う本を手に取ってみる。

凄くくたびれた本だ。裏には○○美大と書いてある。名前はかすれて読めない…。

ページを開いてみる。

色々な美術館の写真がのっている。余白にメモが沢山書いてあった。

“○○の作品はココ”
     “ここは○○がある”
   “この美術館の喫茶店はマカロンがうまい!!”
“ レポートはこれにしよう”

美術品に関するメモと菓子の情報でいっぱいだった。

「この本の持ち主は甘党なのね…」

 本を棚に戻す。

「さて、次は何を読もうかな…」

1、『キャンバスの中の女たち』
2、何か難しそうな本
3、『うごくえほん 作/絵XXXX “うっかりさんとガレッド・デ・ロワ”』

安価下1でお願いします。

何か難しそうな本を手に取ろうとした。

本の間に紙切れがはさまっているのを見つけた。
引き抜いて見てみる。するとそこには一言、

“たのしいね!”

とあった。

アリが肩で頷いている。

私も笑ってアリさんを見た。

「そうね!」

さて、次は何にしようかな…

安価下1
1、『キャンバスの中の女たち』
2、『うごくえほん 作/絵XXXX “うっかりさんとガレッド・デ・ロワ”』

『キャンバスの中の女たち』と言う本を開いてみる。

「これって、さっきの絵の事よね…」

“ここの女性はすぐに人の物を欲しがる。目をつけられるとたいへん??である。
なんせ彼女たちは、自分が満足するまで??に追いかけて来るからである。”

ふーん…

さっきの扉を開けて赤い部屋に戻ってみる。

『赤い服の女』は気を取り戻していた。

「ねえ、コレあげようか?」


私が木のリンゴを振りかぶる。

『赤い服の女』は逃げ出した!

壁から降りて、両腕を使ってガサガサと反対へ逃げてゆく『赤い服の女』。

「欲しくなかったのかな?」

私は本のあった小部屋に戻る事にした。

「この本だけ何か違うのよね…」

『うごくえほん 作/絵XXXX “うっかりさんとガレッド・デ・ロワ”』

分厚い専門書が数ある中で、この本だけがクレヨンで書かれている。

「それにしても、XXXXってどこかで見た気がしたんだけど…」

ページを開く

“うっかりさんとガレッド・デ・ロワ”
うっかりさん・A・B「誕生日おめでとう」
青髪「ありがとう」
うっかりさん「今日は、あなたのためにガレッド・デ・ロワを作ったの」
(途中省略)
お母さん「書斎のカギがないわ。このテーブルに置いておいたはずなのに…」
うっかりさん「このコイン、パイの中に入れたはずなのに…。もしかして」
お母さん「どこいったのかしら。お父さんに怒られちゃうわ…」
うっかりさん「どうしよう…」

「そのナイフで青髪の子のおなかを開いて「私ってばうっかりしてたわ♪いま、ドアを開けるね!」なんてベタなオチはつまらないわよ?」

うっかりさん「…………」

「どうしたの?」

 うっかりさん「どうしよう…」

幕間に引っ込むうっかりさん。


………
「…ちょっと何するの!?」
ドスドスッ!ドスッ!ドスッ!
 「お願い!出して!お願い!」

………しばらく待っていると、顔が腫れたうっかりさんと、おなかをさする青髪の子が出てきた。

うっかりさん・青髪の子「今、扉を開けるわね」

カチャリと奥のドアが開くおとがする。

「ありがとね!」

絵本はスウッと消えてしまった。

扉を開ける。次はどんな部屋なんだろう…。

扉を開けると、左右に伸びる廊下に出た。

右に行ってみる。

「うん?誰か…倒れてる?」

廊下に人の形をした何かが伏していた。

また、ゲルテナの作品だったら嫌だなあ…。
そろり、そろりと近づいてみる。

どうやら、本物の人間の様だ。

「ぼく、アリ!こいつ、男!」

 伏しているのは若い男の人だった。でも、この人どこかで見たような…。
あ、元の美術館の2階で見たような!

…でも、ほんとにそれだけかなぁ。

声を掛けてみる。

「大丈夫ですか?」

「…うぅ。…………たい……」

男の人の手に小さなカギを見つける。

「これ、どこのカギ?」

震える手で廊下の反対側を指すギャリー。

「あっちにあるのね」

私は指差す方へ走って行った。

「アイテム、取る!先、進む!」

「そうね、何だかゲームをしてるみたい」

アイテムやカギを探して先に進んでゆく事を繰り返してきたからか、
何だか本当にゲームをしているような感覚になって来ていた。

それも、一度クリアしたゲームをやっているような…。

廊下の反対側にある扉の前に立つ。
中からは何やらガサゴソと物音がしていた。
カチャリ

小さなカギを使って中に入る。すると…

青い服を着た絵画の女が飴の入った袋をあさっていた…。
そういう事ね…。

私と目が合う。

ガサガサガサッ!猛烈な勢いで寄ってきた!?

慌てて部屋から出る。

なるほど。さっき読んだ『キャンバスの中の女たち』にあった事は、ほんとらしい。

扉を閉めてほっと一息をつく。が、

バンバン!バリーンッ!!

扉の横にあった窓が割れて『青い服の女』が飛び出してきた!?何で!?

すぐに部屋に戻ってみると、窓の下にイスが置いてあった。

「なるほど。これをよじ登って窓を割ったのね」

飴の入った袋を取って部屋を出る。

再び寄って来る『青い服の女』っ!

「木のリンゴでジャストミートしたいけど速すぎて狙えないよお!」

「リンゴ、投げる。遠くに!イヴ、逃げる!」

必死で逃げる私にアリさんが肩から助言してくれる。

「それよ!」

私は後ろを振り向き、リンゴを突きあたりの壁に向かって投げた。
それを追ってゆく『青い服の女』。

私は何とか男の人の所まで戻ってくる事が出来た。

「助かったわ、アリさん」

「フラグ、たった!」

それはないなぁ…。

床に伏して嘆く男の人の顔をのぞく。

「ほら、飴よ」

私はさっきの会話を思い出す。


……
「大丈夫ですか?」

「…うぅ。飴が食べたい……」

男の人の手に小さなカギを見つける。

「これ、どこのカギ?」
……


「うーーん…。あぁ、おいしかった…」

男の人は袋から飴を一つ取り出して食べると、笑顔になった。

「あなたはこんな所で何をしていたの?」

私が聞くと、

「いつの間にかこの変な美術館に迷い込んじゃって、そしたらあの『青い服の女』が「よこせぇーーー」って追いかけてきたのよ。だから思わず袋を投げ渡したんだけど…」

諦めきれずに床に伏して咽び泣いていたって訳ね…。

「そんな事より、アタシの他にも人がいたのね!アンタも美術館にいた人よね?よかったわ。こんなとこにずっと一人でいたら、おかしくなっちゃうわ!」

「おまえ、おかしい!」

「失礼ね、何、このアリ?」

でも、飴が欲しくて床に伏して咽び泣いている人は、私もおかしいと思う…。
しゃべりかた、女の人みたいだし。

「アタシ、ギャリー。アンタは?」

あれ?ギャリーって名前………、さっき思わず呼んだ気も…。

何なんだろう、この感覚。

「私はイヴよ。こっちはアリさん」

「イヴ、って言うのね。とりあえず一緒にここから出る方法を探さない?さ、行きましょ?」

そう言って歩き始めるギャリー。

キャア!ドシンッ!

あ、絵につば吐きかけられた。

「さっきのはちょっと驚いただけよ…。本当よ?」

はいはい。
進んだ先には扉があったが、『無個性』が塞いでる。

「何これ、邪魔ね。イヴ、ちょっと離れててくれる?」

ギャリーが『無個性』をどかして扉を開ける。

私達2人と一匹は次の部屋へと入って行った。

やっとギャリーを登場させれました…。

あれ?バラは?と思っている人もいるかもしれませんが、
その辺りの事はおいおい分かってくると思いますので、
ご了承ください。

「手だ…」

目の前にはワキワキしている手が二本ある。

『悲しき花嫁の左手』 『悲しき花嫁の右手』

それぞれの手の後ろには二枚の悲しそうな絵がある。

『嘆きの花嫁』    『嘆きの花婿』

「どうして悲しんでいるのかしら…」
私が呟くと、

「できちゃった!」
とアリさん。

「イヴに変な事言わないでよ。…きっと政略結婚なのよ。可哀そうに。」
とギャリー。

2人とも何を言ってるんだろう…。

更に先に進んでみる。どこから見て回ろう…

安価下1、
1、床に窪みのある廊下
2、左の小部屋
3、右の小部屋

床に何か窪みが沢山あった。
近づいてみる。…すると、

「ぎゃああっ!!」
ギャリーが後ずさる。
窪みから目が沢山出てきた…。一個だけ何故か充血してる。

「『悲しき花嫁の右目』とか言わないわよね…」

「ギャリー、怖いよ」

「あいつ、花粉症!」

へえ…、私はためしに充血した目にバラを近づけて振って見た。

パタパタパタパタ。

~~~~~~ッ!!

あ、目が逃げた。

目は右奥の壁の中に消えてしまった。

「イヴって結構お茶目なのね」

「イヴ、怖い」

目が消えた右奥の壁をギャリーが調べる。

「あ、隠し部屋よ!」

中には赤い玉が落ちていた。

赤い玉を手に入れ部屋から出て、少し歩くと、

「これ、ここにあった奴なんじゃない?」

とギャリーが指差す。

そこには目の部分が窪んだ蛇の絵が飾ってあった。

そっとはめて見る。

「はめたら動き出すとか、ないわよね…」

ギャリー、そんな事を今更言わないでよ…。

少し後ずさる。

カタン!

隣の絵が落ちた。

「裏に何か書いてあるわ」

ギャリーに言われて私も額縁の裏を見る。

「木の後ろよ!」

何の事だろう…。
とりあえず覚えておこうっと。

「ねえ、こっちの部屋凄いわよ!」

左の小部屋からギャリーが私を呼んでいる。

「迷路だ…」

左の小部屋に入ると、入口入ってすぐの壁にプレートが掛かっていた。

『ラビリンス』

「ちょっと行ってみましょうよ!」
意気揚々と歩き出すギャリー。絶対罠があると思うんだけどなあ…。


「大丈夫よ。片手を壁につけて歩けば絶対に迷わないわ!」

私はアリさんを肩から降ろす。

「アリさん、ちょっとここで待ってて」

「ぼく、働きアリ。ぼく、働く。ぼく、ついてく!」

「何かあったら。呼ぶから。その時は出口まで道案内してね」

「わかった!ぼく、待つ!」

ギャリーと一緒に迷路を進む私。
やがて、狭い通路を曲がると、

『無個性』A「やあ!」

『無個性』さんが現れた。

「ぎゃあ!イヴ!バック、バック!」

驚いて戻るギャリー。

『無個性』B「こんにちは!」

隣の角からも現れる『無個性』さん。

「うわわわわわっ!」

適当に走り出すギャリー。

追いかける私と『無個性』A・B

………

「じゃあね!」

最終的に私達は『無個性』A・B・Cを引き連れて迷路をさまよい、
何やら変なスイッチを押し、迷路を脱出したのだった。

「よくイヴは平気ね…」

「何が?」

「あの『無個性』よ。アレ、頭無いのよ?怖くないの?」

「頭無いから噛まれたりしないでしょ?」

「怖がってたのは私だけだったのね…」

「さっきのスイッチって何だったのかな?」

「さあ、迷路の外からカチャンって音が聞こえたけど…」

「さっき、音した!あっち、部屋ある!」

「あ、アリさん!」

アリさんについていくと新しい扉が現れていた。

安価下1

1、新しい部屋に入る。
2、右の小部屋に入る

新しく出来た部屋に入ってみる。

中にはいくつかの美術品が置いてあった。

「『ワインソファ』?」

大きなワイングラスが斜めにカットされていて、
中に赤いクッションが入っている。

「ワインよりカルーアミルクよ」
とギャリー。

私は隣の像のタイトルを見る。

『憂鬱』

「ねえ、ギャリー。このタイトルなんて書いているの?」


「ん?どれどれ。『ゆううつ』ね。……イヴとは無縁の言葉よ」

次に私は隣の色々な色で塗られた骸骨を見る。

「ねえギャリー!この骸骨『パズル』なんだって。やって見ていい?」

「あっ!イヴ!ちょっと!」

………

「これ奥歯?前歯?」
   「イヴ、それ指よ」
 「肋骨一本余ったんだけど…」
   「大腿骨ってどっちだっけ…」

…………

「難しいね、コレ」

「諦めましょ」

そして一番奥にあるオブジェを見る。

「もしかして木ってこれの事じゃない?」

さっき額縁の裏で見た「木の後ろよ!」と言うメモを思い出す。

「あ、指輪だ!」

「結婚指輪ね」

木の後ろに銀色の指輪が落ちていた。

「ああ、あの入口の花嫁と花婿!指輪がなくて嘆いていたのね」

花嫁と花婿の絵まで戻る。

『悲しき花嫁の左手』の薬指に指輪をはめて上げると、絵の表情が変わった。

『幸福の花嫁』 『幸福の花婿』

『幸福の花嫁』がブーケを投げてくれた。
ギャリーがブーケを拾って私に差し出す。

「アタシはもうバラを持ってるから。イヴにあげる」

「ギャリーもバラ持ってるの?」

「ん?イヴも持ってるの?」

「うん!」

私は赤いバラをギャリーに見せる。

「へえ、綺麗ね!」

「ギャリーのバラも見せて!」

「いいわよ。はい」

「ギャリーのも綺麗ね!」

「ありがと。ま、ブーケはとりあえずイヴが持ってなさい」

「やったあ!」

ブーケを持って右奥の通路へ進む。奥に青い顔の絵があった。

「何か嫌な顔ね…」

青い顔の絵が何か呟いている。

「えへへへ、へへへへへ。いいなあ、おはな…」

安価下1

1、イヴのバラを渡す
2、ギャリーのバラを渡す
3、ブーケを渡す

「このブーケ欲しい?」

私はブーケを絵の前に差し出す・

「そのおはな、くれたらここ通してあげるよ。えへへへへ」

うーん、でも。

「あげたいけど…あなた手がないじゃない。」

「えへへへへ…、え?」


……

「ぐすん、ぐすん…」

「ブーケはここに置いてあげるから、手が生えたら存分に楽しみなさい」

涙目の青い顔の絵はしぶしぶ私達を通してくれた。

小さな通路を通って更に先に進む。

「頭がいっぱいある!」

「やっぱりこれは嫌よねえ…」

進むと、両端に頭がいっぱい並んだ長い廊下に出た。

「『無個性』さんの頭かな?」

「それはそれで嫌ね…」

廊下を進んで奥の扉を開ける。出たのは灰色の部屋だった。

「うわあ、これが動き出したらキツイわね…」

灰色の部屋には女の人の絵がたくさん飾ってあった。

『赤い服の女』『緑の服の女』『青い服の女』…

部屋を見て回る。

「これ、アタシが元の美術館で見てた奴だわ」

ギャリーが指差す。
女の人の絵に混じって『吊るされた男』が飾ってあった。

「何で吊るされたのかな?」

「覗きね」

「こいつ、覗いた。女、怒った!こいつ、吊るされた!」

「ホントにそうだったの!?最低ね!男として許せないわ!」

アリさんの言葉にギャリーが憤慨する。

「でも、さすがに可哀そう…」

「イヴ、あなたってば優しいのね!」

私は絵の上下を変えてみた。

「あら、この男の服…」

ギャリーが何かに気づく。

『吊るされた男』の服には「6295」と書かれていた。

「ずっと「5629」だと思ってたわ…」

入口入ってすぐの細い通路と一番奥の隅、部屋の真ん中手前に扉を見つけたが、
どれも鍵が閉まっていた。

今、私達は左右に並んだ二つの扉の前にいる。さて、どっちの扉を見ようか…。

安価下1

1、右の扉
2、左の扉

左の扉には4ケタのダイヤル錠がついていた。

「これって、そういう事よね」

ギャリーが6295と打つ。

カチャン

扉が開いた。

中は小部屋になっていて、イスとキャンバス、そして机にのった花瓶があった。

イスの辺りから声がする。

イス「あー、絵を描きたいけど机の位置が悪いなあ!」

「誰かが、いる?」

「みたいね」

イス(仮)「机の位置を直したいけど、ぼくは筆とパレットで手がふさがってるからなあ!」

「ギャリー、なんかチラッ、チラッて視線を感じるわ」

「ええ」

イス(仮)「ああ!誰か机の位置を直してくれないかなあ!」

「うるさいわね。直せばいいんでしょ!」

ギャリーが机をガタゴトと動かす。

イス(仮)「もっと左!…違う!…行き過ぎ!…少し後ろに!…そう、そこ!」

そう、イス(仮)が言った途端、どこか遠くの方でドアのカギが開くような音がした。

「ああ、ありがとう!これで僕の芸術が…

イスを思いっきり後ろに引く。

ドシン!姿が見えない何かが尻餅をついたような気がした。
きっと気のせいだ。

「ギャリー、早く行こっ!」

「そうね!」

私達は小部屋から出た。

部屋を出ると『赤い服の女』が1人、いや1体、…1枚?ガサゴソと床を這っていた。

「あれって何て数えればいいのかしらね」

そんなことより、次はどうしよう。

安価下1

1、音のした方へ行く
2、右の扉を調べる

「音は奥の方からしたわよね!」

「うん!」

『赤い服の女』に追われつつ、私とギャリーは走っていた、

奥の隅にあった扉に手を掛ける。

「開いてるわ!早く入って!」

ギャリーに促され、私は部屋へと入った。

ドンドン!ドンドン!と扉を叩く音がする。

「ハア…ハア…」

「そっか、絵は扉を開けれないんだっけ」

「なにそれ?」

私はギャリーに『キャンバスの中の女たち』で読んだ事を伝えた。

「へえ、良い事を聞いたわ…」

ギャリーは部屋の中を見回す。

「それにしても、何にもないわね。この部屋」

あるのは奥の壁の鏡一枚だけだった。

「…怪しい」

ギャリーと二人で鏡を見る。

「どうって事のない普通の鏡よねえ」

と、私はある事に気づく。…ギャリー、後ろ、後ろ。
後ろを振り向くギャリー。

「え?」

扉の前をマネキンの首が塞いでいた。

「はは、きっと何かの見間違えよ。それか幻覚だわ」
 ギャリーと二人でもう一度鏡の方をむく。

鏡に映る私とギャリーとマネキン。…え?

「ちょっと、音もなく近づくなんて卑怯よ!」

ギャリーが憤る。

静かにおどかす系は苦手だなあ…。

「入口は開いたし、さっさと出ましょう!」

ギャリーはズンズンと進んで扉を開く。

「イヴ!早く!」

「う、うん!」

私はギャリーに続いて、マネキンの首を持って部屋から出た。

「ギャリー!待ってよー!」

少し前を歩いていたギャリーが振り向いて、ぎょっとする。

「何でその首を持ってきてるのよ!」

私から思いっきり距離を取って叫ぶギャリー。

「だって、『無個性』さんにのせて見たいんだもん」

でも、結構この首重いんだよね…。

「はあ、イヴってこんなに奔放な子だったっけ…。」

とギャリーが何かを拾ったみたいだ。

「イヴ!こんな所にカギが落ちてたわよ!」

ギャリーが灰色のカギを持ってこっちにくる。

「ギャリー!後ろ後ろ!」

ギャリーが後ろを向く。

ガサガサガサッ!
 ガサガサガサガサッ!

『赤い服の女』と『青い服の女』がギャリーを追って来ていた・

「ぎゃあああああーーーー!!」
走って戻ってくるギャリー。
私とギャリーは壁に追いつめられてしまった。

にじり寄ってくる『赤い服の女』と『青い服の女』
と、ギャリーが私の手からマネキンの首を取って言った。

「この首がどうなってもいいのっ!?割るわよっ!?」

後ずさる『赤い服の女』と『青い服の女』。

ギャリーがマネキンの首をゴロゴロと横に転がす。
『赤い服の女』と『青い服の女』はそれを追って行ってしまった。

「さ!今の内に早く行きましょ!」

安価下1

1、右の扉に行く
2、真ん中手前の扉に行く

「さっき見なかった右の扉見てみようよ!」

右の扉まで戻ってみる。

扉には、

「この部屋にある女の絵の数を答えよ」

と言う文と「00」と言う2ケタのダイヤル錠があった。

「女の絵の数?」

「確か14だったわね」

ギャリーが手早くダイヤル錠を回す。

カチャリ。

私とギャリーは左の扉の中に入った。

「ギャリー絵の数を数えてたの?」

「…え?ええ!アイツがどこに何体いるかは数えてたのよ。だって危ないじゃない?」

「ギャリー、さすが!」

アリさんがギャリーを誉める

「やっとアタシの凄さが分かったの?アリさん!」

得意げな顔でふんぞり返るギャリー。アリに…。

「ギャリー、凄いね」

「きゃ~、イヴに誉められちゃったぁ!!」

ギャリーってホントに年上の男性なんだろうか…。

「この部屋は何なのかな…」

 奥の壁にある張り紙を読んでみる。

「作品にはお手を触れないようお願いします(イヴは除く!)
万が一、備品や作品に何らかの損害を与えた場合は、
あなたの を持   賠 させ  ます(イヴは除く!)」

「何か凄く差別を感じるわね…。可愛いは正義って事なのかしら?」

後ろからギャリーが覗き込んで呟く。

「?」

「何でもないわ」

ギャリーは本棚の本を手に取った。何を読んでいるのか見て見る。

『楽しい毎日』

“美術館はちょっと不気味な遊園地。おかしなものがたくさんあるのよ。”

「ここは特別よ。こんな美術館が他にあってたまるもんですか…」

“ここで遊んでいるとあっという間に1日が終わってしまうの”

「ねえギャリー?元の美術館に戻ったら時間とかってどうなってるのかな?」

「んー。“元の世界では全く時間がたっていなかった”が定番よね」

「逆に“何年も経っていた”って事もあるよね」

「怖い事言わないでよ…でも一つ気になるのよね」

「何?」

「もう、失われてしまった筈のゲルテナの作品もここには置いてあったのよ。案外ホントに時間の流れはメチャクチャなのかもね。…自分で言ってて怖くなってきたわ」

私達は本の続きに戻った。

“とっても素敵でしょう?だけどここには……”

「あら、このページこの先がかすれてて読めないじゃない」

次のページをめくってみる。次のページには

“大丈夫!ここにはみんながいるから!”

と書いてあった。

「何なのかしら、この本…」

ギャリーが本を棚に戻す。

「結局、この灰のカギはどこで使うのかしら?」

私達は真ん中手前の扉に行ってみた。

「ねえ、遠くから「赤服さん」と「青服さん」が来てるよ」

「え?ホントだ!あ、開いたわ。イヴ、早く中に!」

ベンベン!ベンベン!と扉を叩く音が外から聞こえる。

「全く!レンジャーもびっくりの、ほふく前進だわ」

「女、鍛えてる!女、腕すごい!」
アリさんが震えた声で言う。

確かに、今は私の肩にいるから大丈夫だけど、普段のアリさん目線であの女の人達を見たら相当の恐怖だろう…。

「その情報は知りたくなかったわね…」

ギャリーはそう言いながら部屋にあった本棚の一つを窓の前に移動させていた。

「何してるの?」

「ほら、あの女たち、窓なら割って侵入してくるじゃない。それを防ごうと思って」

部屋には元の美術館にもあったソファ『指定席』と…、

「これ…」

壁に飾ってある大きな絵を私は見る。

「ん?何?この絵がどうかしたの?…あら?これって…」

「この絵、私の家族だわ」

絵には、お父さんとお母さん。そしてその間で二人の手を握って笑っている私が描かれていた。タイトルは…

『家族』

「とても、暖かな絵ね…」

しばらく私達が感慨に浸っていると、

ドンドン!ドンドンッ!!

部屋の壁全体から叩く音が響き始めた。

「まずい!囲まれたわっ!」

慌てるギャリー。私は左の壁を思いっきり叩いてみた

ドンッ!!!

右側の壁は静かになった。

続いて左の壁も叩く。

左の壁も静かになった。

最後に奥の壁を蹴っ飛ばそうとした。

バゴン!蹴る前に壊れる壁。顔を出す『黄色い服の女』

「あ、ごめん!」

足が『黄色い服の女』の顔に直撃してしまった…。

「こいつら壁も壊せるの!?」

驚くギャリー。

「ギャリー!早く出よう?」

壊れた所から私達は外に出た。まだ見ていない扉はあと一つ。
先に進むのは入り口近くの細い通路にあった扉に違いない。

「赤服さん」「青服さん」 「黄服さん」「緑服さん」「無個性さん」  

沢山の作品たちがワラワラと寄って来る。

「イヴ!こっちよ!早く!」

扉を開けてギャリーが私に手を伸ばす。
急いで入る私。

イヴ~~!イヴ~~~ッ!

扉の向こうから物悲しい声が聞こえてくる。

「これはこれで怖いわね…」

と呆れるギャリー。

更に進むと、小部屋があった。
カギは開いている。

「特に何かがある訳ではなさそうね…」

部屋の周りを見渡すギャリー。

「さっきの部屋じゃ休めなかったし、少しここで休憩しましょ」

確かに、ここまで色々な事がありすぎて少し疲れたな…。

「ギャリー、少し寝てもいい?」

「え、ええ…。多分大丈夫だと思うわ」

私は少しだけ目を閉じる事にした。


………

いつの間にか、私は不思議な美術館の出口まで来ていた。
でも、一人だ。
ギャリーは?

いつの間にか、私は元の美術館に戻っていた。
あ、ギャリー!
アンタ、だれ?
え?

私達、ずーっと一緒だね!
うん。でも、何故かとても悲しいの…

あれ、これギャリーの肖像画だ。
…何で美術館に?

そうだ。何度も何度も悲しい事があったんだ。
いつも、誰かが悲しい思いをしていたんだ…。

何で?何でこんな事に?
矛盾する、沢山の「経験した事のない」思い出が私の頭を駆け巡る。

そう、これはただの夢。起きたら忘れてしまう悪い夢。
だから、だから…………

安価下1

1、目を覚ます
2、もう少し寝ている

「…ヴ、…イヴ」
ギャリーの声が遠くから聞こえる。

さあ起きて、全部忘れなきゃ。

楽しくて不思議な美術館に戻らなきゃ…

―本当にそれでいいの?――

え?

―ハッピーエンドへのカギはもう揃ってるのに?――

どういう事?

―ギャリーと私は無事に元の美術館に戻った――
うん。

――けれど、それだけじゃ満足できなかった―――

何で?

――足りなかったから――

――みんな一緒が良かったから――

――ギャリーが「小さな奇跡」を起こしてくれた――

――それにあなたも前と比べてずいぶん変わった――

――あなたは忘れているだろうけれど―――

――思い出して――

――XXXXを―

「…ヴッ!イヴ!?大丈夫?」

「うーん…」

目を開けると、心配そうなギャリーの顔が目の前にあった。

「ギャリー?どうしたの?」

「いや、何かイヴがうなされてるみたいだったから…。怖い夢見たの?」

うーん。何かとても大事な夢を見たと思うんだけど…

「ううん。ただ…」

「ただ?」

「何か悲しかった様な、でもそれだけじゃなかったような…」

「まあ、飴でも食べて落ち着きなさい」

「うん。ありがと」

私の体にはいつの間にかギャリーの上着がかけられていた。
その上着の中から飴を取り出し私にくれる。

…飴を食べたらとても元気が出た。これ、ほんとにただの飴なのかな…。

「飴!飴!」

アリさんが手をバタバタさせてせがんでいる。

「はいはい。ちょっとだけよ」

もう一つ飴を取り出し、はじっこを砕いてあげているギャリー。

「ギャリー、良い人!ぼく、大好き!」

「すっかり懐かれちゃったわね…何か新鮮」

ほっこりしているギャリーに畳んだ上着を持っていく。

「ギャリー、上着ありがとね」

「いいわよそんなのぉ」

「この上着、端がボロボロだけど直さないの?」

「これはこういうファッションなのよ。まあ、使い込んでるから確かにボロボロにもなってるけど」

「私が寝てる間はアリさんと話してたの?」

「ええ。中々いいヤツよ。こいつ。それにしても、「アリさんと話していた」って改めて聞くと相当変なセリフよね」

 ギャリーは大丈夫だと思うな。

その後もギャリーと私はしばらく部屋で雑談をして過ごした。

さて、そろそろ部屋を出ようかと思い立ち上がる。

「イヴ?もう大丈夫なの?」

「うん、もうすっかり大丈夫。ホントにありがとねギャリー。大好きよ!」

「~~~~~~~ッ!?!?」

「ぼくも、ギャリー好き!」

「はあ、アタシ幸せ………」

部屋を出て、廊下を歩く。

「何かあるわね…」

そこには柵で囲われた一角があった。『無個性』さんが3体ほど待ち構えている。

「どうする?イヴ?ってちょっと待って!早い!入るの早いっ!」

まあ、さっきの『ラビリンス』とは違って周りが見渡せるし。
それに、何か入らなきゃいけないような気がしたんだよね…。

私を追って柵の中に入るギャリー。

カシャン

「「あ…」」

もしかして、閉じ込められた?

ヨタヨタと寄って来る『無個性』さんA。

「イヴ!あそこにボタンの絵があるわ!」

ギャリーが壁にある3枚の絵を指す。

私は左端の赤いボタンの絵を押した

「そっちじゃないわーーーーッ!」

ヨタヨタと動き出す『無個性』さんB。

ギャリーが真ん中の青のボタンの絵を押す。

カシャン

反対端の柵が開いた。

「イヴ!出口はあっちよ!」

出口へ私を引っ張ってゆくギャリー。でもここまで来たらやっぱり、ね?
…もしかしたら『無個性』さんが動きを止めるかもしれないし。

右端の緑のボタンを押す。

『無個性』さんCが動き出した…。

「イヴ―――――っ!」

柵から脱出して一息つく私達。

「凄い引っかけだったね!」

「イヴ、アナタ楽しんでるでしょ?」

「うん!」

「楽しそうで何よりよ…」

そしてまた歩き出す。

「あ、これ『ミルクパズル』だわ」

ギャリーが壁に掛けてある真っ白なパズルを見て言う。

「ミルクパズル?」

「まあ、その名の通りミルクの様に真っ白なパズルの事よ。絵が付いてないから普通のパズルより難しいんですって。頭がいい人はすぐ完成できるらしいけど…」

「ねえ、ギャリー…」

「ダメよ?ガイコツのパズル忘れたの?」

しゅん…。

「絵を描く道具があればなあ…」

ゴトリ。

と、私が言ったその時、後ろの方から音がした。

音がした方へ走って戻ってみる。

「ちょっとイヴっ!?あら?……通路が出来てるわ?」

さっきまで壁だった所に道が出来ていた…。

角を曲がり、新たに出来た通路に入る。

「きゃっ!」
「わっ!」

誰かとぶつかった。

「あなたは…」

そこに倒れていたのは金髪の女の子だった。

「ちょっと、大丈夫?」

私は女の子を助け起こす。

「………!」

遅れて入って来たギャリーが女の子を見る。

「あら、あなたも美術館にいた人でしょ?」

「あ………」

「やっぱり!アタシはギャリー。こっちの子はイヴって言うの」

「ぼく、アリ!」

「え?」

私の肩にいるアリさんを見て目を丸くする女の子。

「アタシたちも、美術館にいたのに気づいたらこのワケわかんない場所に迷い込んじゃってて……。今、何とか2人、と一匹で出口を探してるワケなんだけど。アナタもそうじゃない?」

「わ、私は…人を探してて…、そしたらこっちの方で音がしたからここまで来たんだけど。そしたらこれがあったの」

そう言って女の子が出したのはクレヨンのセットだった。

「「…………」」

言葉を失う私達。

「ギャリー、これってもしかして…」

「イヴが“絵を描く道具が欲しい”って言ったからなのかしら…」

2人で顔を見合わせる。それをみてニコニコしている女の子。

気を取り直したギャリーが女の子に言う。

「ま、まあ女の子一人じゃ変なのうろついてて危ないし、一緒に出口探さない?」

女の子は満面の笑みで答えた。

「うん、行く………!」

「じゃあ、決まりね!あ、そう言えば名前まだ聞いてなかったわ。なんていうの?」

「メアリー………」

「メアリーね!…………よろしくメアリー」

「うん!」

私もメアリーに挨拶をする。

「よろしくね、メアリー」

「よろしく!イヴ!」

そうして私達は『ミルクパズル』の前に戻ってきた。

「せっかくクレヨンがあるんだから、何か描いちゃいましょう。好きな絵がパズルになってこそ、やりがいがあるってもんよね」

「よいしょっと!」

メアリーが額縁を壁から外す。

「ねえねえイヴ!何の絵を描く?」

クレヨンを持ってはしゃいで聞いてくるメアリー。

「うーん…」

「じゃあアタシたち三人の絵を描きましょうよ」

ギャリーがそう提案をする。
それを聞いて満面の笑みをメアリーが浮かべた。

「いいね、ギャリー!イヴはどう?」

「うん!良いんじゃない?」

クレヨンで三人の絵を描く。

私はギャリーを、ギャリーはメアリーを、メアリーはイヴを描いた。

………

「よし、出来た!」

メアリーがパズルの絵を広げる

それを見て、私の中にまた奇妙な感覚が芽生える。…あれ?この絵どこかの「びじゅつかん」で見た事がある様な…。私はこの感覚の正体を思い出すため、更に集中しようとした。が、

「ぼく、アリ!ぼく、いない!」

…アリさんの声にさえぎられてしまった。

「ねえイヴ、このアリは何なの?」

メアリーが聞いてくる。

「一番最初に出会った生物がアリさんだったのよ。で、次がギャリー」

「ふーん」

「何かアタシ、今アリと同列に語られた気がするんだけど…」

メアリーが黒いクレヨンでアリさんを描き足す。

「はい!これでどう?」

「ぼく、うれしい。うっとり」

肩で頷くアリさん。
それにしても、

「何か、このパズルを崩すのが惜しくなっちゃったね」

ギャリーとメアリーが頷く。

「じゃあ、これは戻しておきましょ」

ギャリーが絵を元の壁に戻して私とメアリーに聞く。

「さて、これからどうしましょうか?」

安価下1

1、『ミルクパズル』の先へ進む
2、新しく出た通路の先へ進む

「ねえ、ギャリーこの先まだ見てないよ?」

私は『ミルクパズル』の先に続く廊下を指差す。
頷き、歩き始めるギャリー。

「そうね。そっちを見てみましょうか」

「「おー!」」

私とメアリーは腕を上げて後についた。

「また鏡だわ…って割れてる?」

廊下を進むとその先の壁に割れた鏡があった。

「イヴもメアリーもケガするからよっちゃダメよ」

「「はーい」」

割れた鏡を避けて先に進む。
一番奥には五十音のタッチパネルがついた扉があった。

「あ、この絵、私が入った所だ」

パネルの上には、元の美術館の床にあった私が飛び込んだ深海の絵と、問題文が小さくのっていた。

「“この絵のタイトルは?”…何だったかしら『深海の…『深海の…」

私とギャリーが『深海の「あ」』から順番に五十音を当てはめ始めようとする。
すると、

「確か、『深海の世』だったと思うよ?」

メアリーが教えてくれた。

「ああ!そうだったわ!」

ギャリーがパネルを押す。

扉が開いた。中に入る。

中には左右の奥端に本棚と、壁の真ん中に『決別』と言う絵があった。

「何か、嫌な絵ね…」

私は思わずそう呟く。

「誰にでも、別れはあるのよ…」

メアリーが目を伏して続ける。

「でも、何かとの別れは別の何かとの出会いでもあるんじゃないかしら?」

ギャリーがなんか良い事を言った。

メアリーが左隅の本棚をあさっている。

「ねえギャリー?コレなんて書いてあるの?」

私とギャリーはメアリーが持つ本を見る。

“私はその艶めかしく美しい肢体に指を滑らせ…”

「って、こんな本を子供は読んじゃ駄目よ!」

ギャリーが赤面して本を棚にしまう。

「ちぇーっ!」

頬を膨らませるメアリー。
「イヴも気になるよね?」

あの本、お父さんのベッドの下に落ちてたな。帰ったらお父さんに聞いて見よ。

私は右隅の本棚の本を手に取ってみる。

“ここの女性たちは皆、花占いが好き”

「ふーん」

私は手に持っていた赤いバラを見る。

赤いバラの花びらを一枚つまんでみた。

「イヴッ!」

慌てて私の手を掴もうとするメアリー。

が、私は既に赤いバラの花びらを一枚ちぎってしまっていた。

「…なに?メアリー?」

「…え?イヴ?何とも、ない、の?」

きょとんとした顔で私を見るメアリー。

「まあ、いくら造花とは言えバラも可哀そうだから、むやみにちぎるのは止めなさい」

とギャリーが言う。

「はーい」
あれ…、そう言えばこのバラってもっと大切な物だった様な気がするんだけど。
私は少しの違和感を持ちながら、赤いバラの造花をポケットにしまった。

「そろそろ先に行きましょうか」

ギャリーが部屋の外に出る。
きょとんとしたままのメアリーを連れて私も部屋を出た。

メアリーと出会った所を過ぎて先に進む。
相変わらずきょとんとした顔でついてくるメアリー。

「メアリー、もしかしてバラが好きなの?」

もしかしたら自分の好きな花をちぎられる所に驚いたのかもしれない。
そう思って私は尋ねてみた。

「え?あ、うん。バラは好きだよ。沢山の色があるもん」

「そうだよね。私は赤いバラだけど、ギャリーは青のバラだし」

「私もイヴも、このおかしな美術館に入ってすぐの所で拾ったのよ。
もしかしてメアリーも持っているんじゃない?」

「…うん。私も持ってるよ。黄色いバラ」
メアリーが私達に見せる。

「キレイ…」
メアリーのバラは髪の色にも似た鮮やかなイエローだった。

「まるで金色だわ…」

優しい目でメアリーのバラを見るギャリーを見て私は不思議な感覚に襲われる。

“二人ともしっかり持ってるのよ。なくしたりしたらダメよ。誰かに渡すのも危ないからね。それから…”

急に、私とメアリーに口を酸っぱくして注意をするギャリーの声が頭に響く。
なんだろ、ギャリーがこんな事を言った時なんてない筈なのに…。

廊下をしばらく歩くと壁に張り紙が貼ってあった。

“一体どちらが正しいのか”

…どういう事だろう。

更に先進むと左に曲がる道と真っ直ぐ行く道があった。

「メアリー、さっきの張り紙って…」

私がメアリーの肩をつつくと、丁度私が言おうとした事を言った。

「これって、どっちかに進むのが正しいって事なのかな?」

「左から行ってみましょ」

そう言ってギャリーは道を曲がってゆく。

「「あ、ちょっと待ってよギャリー!」」

付いて行く私達。
曲がった所の壁に絵が飾ってあった。

『嫉妬深き花』

「何にも描いてないね」

私がそう言うとギャリーが

「これには描いちゃダメよ」

と釘を刺してきた。

「「……フフッ」」

顔を見合わせて笑う私達。

曲がった先の扉を開けるとアトリエの様な場所に出た。

「うわぁ…」

部屋には両側の壁に置かれた沢山の青い肌地の人形と、それを写した絵があった。

絵のタイトルは『赤い目』

「確かに赤い目をしてるね」

一つ一つ見て回る私。
入って左手前に置いてあった人形の一つをギャリーが手に取って私達に見せた。

「これなんて青い肌に赤い目、黄色い服でアタシ達の色が全部あるわよ」

メアリーが私とギャリーに聞く。

「この人形達、怖くないの?」

「ちょっと怖いけど、よく見ると愛嬌があっていいじゃない」

とギャリーが答える。頷く私。

「メアリーは怖いの?」

と私が逆に尋ねると、

「私は可愛いと思うけど…」

と尻すぼみな声で答える。

「なら良いんじゃない?」

とギャリーは微笑み、再び人形を手に取って見始めた。

その時、後ろの方からカランと言う音が聞こえた。

後ろを向くと紫色のカギが落ちていた。

「人形さんがくれたのね。ありがと!」

礼を言って私はカギを拾った。

「さ、カギも手に入れたし行きましょ」

部屋を出るギャリー。私とメアリーもそれに続いて部屋を出た。

「多分、さっきのカギで反対側の道の先の扉が開くのね」

とギャリーが『嫉妬深き花』の前で立ち止まって言う。
すると、どこからか地響きのような音が聞こえ始めた。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

私達は『嫉妬深き花』を見る。

すると、さっき見た時はなかった筈の花の絵が、段々近づいてきている様だった。
やがて額縁からはみ出る程になる花。

「イヴ、メアリー!危ないっ!」

ギャリーが叫ぶ。

床を突き破って、大きなツタの様な物が生えてきたっ!?

ツタが壁となり、私は右側に、ギャリーとメアリーは左側に、分けられてしまった。

「イヴ!?大丈夫?ケガしてない?」

ツタの向こうからメアリー心配そうな声が聞こえる。

「うん!」

「どうしようかしら…」
ギャリーの困った声が聞こえる。

うーん。このツタを切る何かがあればいいんだけど…。あ、そうだ。

「私、先の部屋に行って、このツタを切る物がないか探してくるね!」

私がこう言うと、ツタの向こうから、

「え?大丈夫なの!?でも、…しょうがないわね。気を付けて行って来るのよ?アタシ達も何とかできないか頑張ってみるから!」

「気を付けてね!」

とギャリーとメアリーの声が聞こえた。

・Sideギャリー

イヴはどうやら扉の先に進んだみたいだ。

「ふう、大変な事になっちゃったわね」

アタシはツタの壁に背中を預けて腰を下ろした。

「イヴ、大丈夫かなぁ…」

イヴを心配しているメアリー。

「大丈夫よ。……イヴは強い子だし、それに頼りになるアリさんもいるわ」

「そう、ね」

俯くメアリー。

「メアリーはイヴが心配?」

「うん…」

弱々しく答えるメアリー。

「イヴの事、好き?」

「…うんっ!」

今度は力強く頷いた。

「ねえメアリー?」

「なに?」

顔を上げるメアリー。

「正直に答えてね。アタシの事嫌いでしょ?」

そう、アタシにとってはこの質問が重要だった。頼むわよ…。
すると、予想よりもいい答えが返ってきた

「うーん…好きではない、かな?」

「何で?」

「だって、イヴと仲がいいんだもん」

ふふ、そうよね。それが、『メアリー』だもんね。

「でも、アリさんもイヴと仲がいいわよ?」

「あれは別よ」

「あはは」

「でも、ギャリーが優しいって事は知ってるよ?」

………この子ったら。

「ありがとね。絶対、外に出るわよ?三人で」

アタシはメアリーの目を真っ直ぐ見て言う。

「…うん」

メアリーは少し目を伏して小さく頷いた。


……
………
この世界はとびっきり変だ。アタシはそう感じていた。

アタシもイヴもメアリーも、この世界を何度も何度も繰り返している。

原因はいつかの「アタシ」が奇跡を願ったから。

始めは何が起きたのか理解できなかった。

イブと二人で元の美術館に戻って、メアリーの話をして、別れた所でアタシの目の前が急に暗転したのだ。暗転した瞬間に見えたのは、あのゲルテナの世界で赤の部屋の前の廊下に隠されていた一枚の絵。

『魂を啜る群集』

だった。

最初のループでアタシが気を付けた事は、
・『告げ口』でアタシの失言をメアリーに聞かせない事
・アタシがメアリーと衝突しない事

だった。

でも、イヴがメアリーのバラが造花である事に気づいて、結局ダメだった。

また、何週かして分かったのだが、普通にスケッチブックの「おもちゃ箱」の中まで行ってしまうと、
イヴのバラはギリギリのラインまで減ってしまう。
イヴのバラが減らないように気を付けると、今度はメアリーがイヴのバラを盾にアタシのバラを要求してきてしまう。

でも唯一の救いは、どんな世界でも常にアタシが、イヴより先にこのゲルテナの世界にくると言う事だった。

だからアタシは、いつからか、赤と青のバラの造花をこの世界に持ち込むようになった。

すり替える事で、イヴにバラの本当の意味を分からせないように。

これでイヴはメアリーが造花を持っていても気にしなくなり、メアリーがおもちゃ箱でバラを要求してくる事もなくなった。

でも、おもちゃ箱まで何事もなく進むと、メアリーが警戒心を持っていない為に二階をツタで塞がなくなってしまう。
結果、イヴは二階に上がり『メアリー』を発見してしまう。

アタシが行き詰っていた所、ひとつ前の世界で変化が起きた。
イヴがゲルテナの世界にやってこなかったのだ。
元の美術館でイヴが何かをした結果、ゲルテナの世界が出現する前に美術館から出てしまったらしい。

おそらく中途半端に記憶を思い出してしまった結果だと思う。

なのでアタシはメアリーと二人でゲルテナの世界を回った。
するとスケッチブックへと進む道が、出口となる『絵空事の世界』まで続く道に変わったのだ。

「バイバイ、ギャリー」

そう言ってメアリーはアタシを『絵空事の世界』へと突き飛ばした。

そう、どんなに頑張ってメアリーを出口まで連れてきても、「代わり」がいなければメアリーは外に出られない。

スケッチブックには行かせてはならない。
だけど、ただ『絵空事の世界』まで連れて行くだけではダメだ。

アタシとイヴは難なくゲルテナの世界から脱出することが出来る。
でも、どうすればメアリーを助けられるのかがアタシには分からない…。

アタシはまたしても行き詰ってしまった。

そしてこの世界だ。この世界は前の世界に輪をかけておかしかった。

ゲルテナの世界に着いたアタシは、いつも通りイヴが来る前に急いでイヴのバラの所まで行き、造花と取り換えた。
そしてアタシはイヴと出会う場所で伏して待つ。とびっきり笑える状態で。バラを理由に出来ないからだ。

そしてやってくるイヴ、とアリ。

まずイヴが肩にアリを乗せている事に驚いた。
アリに聞いた所によると、アタシの所に来るまでに他にもずいぶん色々としたらしい。

更に、メアリーも今までと行動が少し違っていた。

『ミルクパズル』の先にある小部屋で停電が起きた後に出会う筈が、部屋に行く前に現れた。

アタシは完全に前の記憶を持っているからなるべく狙った言動だけを変えて様子を見てきた。
だけど、イヴとメアリーは中途半端にしか前の記憶を持っていない。
それは意識に上るか上らないかのわずかな物だ。

だから一つ前の世界での経験を経た二人は、ここに来て好き放題に変えてきたのだ。
この先どうなるのかは…、アタシにも分からない…。

「…リー、ギャリー!」

ん?考え事をしてウトウトしてたみたい。メアリーの声でアタシは起きた。

「ねえギャリー?イヴ、遅いよ?ホントに大丈夫かな?」

メアリーがアタシを揺さぶって聞いてくる。

「…イヴは大丈夫よ。アタシ達もさっきの部屋もう一度調べて見ましょ」

きっと今頃は『寡黙な視線』の辺りかしら。アタシがスイッチを押さないと進めないわね。
さっきの部屋の右隅の本棚を動かし先に進む。すると、そこには三角柱のオブジェが既に落ちていた。

え?何で?イヴったら、どうやって『寡黙な視線』をおろしたのかしら…?


・Sideイヴ

紫のカギを使って私は先に進む。
現れる段ボールの山と『無個性』さん達。

段ボールの中の一つからパレットナイフを見つけた。

「これじゃさすがに切れないわね」

私はパレットナイフを箱に戻した。何だか持っていると悪い事が起きる気がしたから…。

先へ続く扉を開けようとすると。後ろでガタガタ音がした。
私が入って来た扉を塞いでいる『無個性』さんが手で自分をアピールしている。

「別に後で通してくれれば良いよ?通してくれなかったら…」

私はパレットナイフが入った段ボール箱をチラッと見る。

『無個性』さんは静かになった。

扉の先には階段があった。進んでいると上から赤いボールが転がってくる。
私はそれをそっと拾った。結構柔らかい。

階段の一番上には鼻のないピエロの絵が飾ってあった。

「はい。もう鼻落としちゃダメよ?」

はめ込んで先に進む。

その先には部屋を二つに分けている大きな穴があった。

穴の横の壁の上には緑色をした顔のような絵がある。

「おめめさーん!」

私がそう呼ぶと目をこっちに向けて反応してくれた。

「私のスカートの中、見たくなーい?」

そう言うとツツツツツと壁を降りてきて、橋の代わりになってくれた。

靴を脱いで、痛くないようそっと目の辺りを踏んで対岸に渡る。

ピギーッ!

「ありがとね!」

変な癖がつかないといいんだけど…。
ついでに変な三角のオブジェがあったので穴に落としておいた。

「さ、先に進もう!ギャリーとメアリーが私の助けを待ってる!」

「イヴ、カッコいい」

アリさんがほめてくれた。
(久々にアリさんの声を聞いた気がする。気のせいだよね!)

※後半に入る前に少し補足します。

普通のルートでは紫の間かおもちゃ箱で詰んでしまいます。
ですので、まずはそれを回避する必要がありました。

メアリーの大目的は「外に出ること」でした。
「イヴと外に出ること」は中目的。
「ギャリーとイヴと外に出ること」はほぼ諦めていました。

ただ、【ある絵画の末路END】やスケッチブックの「びじゅつかん」を見る限り、
ギャリーを積極的に嫌ってはいないようでした。

これら諸々を打開する策が「ループ補正」です。

しかし、イヴ主体でループしてしまうと、
ギャリーがメアリーを積極的に助けるよう動く事が難しくなります。

152さんの言う通り、ギャリーは「メアリーは仕方がない」位に考えていました。
そこで、まずは「(イヴの為にも)メアリーを助けよう」と思わせる為にイヴからの働き掛けが必要でした。
それがイヴとギャリーの「メアリーに関する会話」です。

更に、ループを可能とする為のガジェットが必要でした。
そこで目を付けたのが『魂を啜る群衆』です。

更に【イヴってばうっかりさん♪END】は、
イヴは後に「ギャグ補正」を獲得するきっかけに
ギャリーはメアリーと二人で行動を共にする事で、
イヴの為だけでなくメアリーの為に自分の意志で「助けよう」と動くきっかけに、
メアリーはギャリーへの評価を改めるきっかけに

必要でした。

今、この周回では、

イヴは中途半端にしか記憶を持っていないので、三人で出る事を当たり前と思っています。
ギャリーは完全に記憶を持っている為、絶対に三人で出るんだと決意しています。
そしてメアリーも、出来れば三人で出たいと思っています。

ここまで下準備を整えて、やっとこれからメアリーを救う物語が始まります…。

・Sideギャリー

三角のオブジェを床の窪みにはめて扉を開ける。
アタシ達は先へ進んだ。

「ギャリー、人形がいるよ」

メアリーが指差す。壁際にさっきのアトリエでもみた青い肌地の人形がいた。
前のアタシなら無視してたんだけどね…。

人形の側の壁に文字がある。

“こんにちはギャリー、私一人でさみしいの。だから一緒に連れて行って”

アタシは人形に声を掛けた。

「いいわよ、ついてきなさい。メアリーも、良いわよね?」

メアリーが頷くとトコトコと人形は歩き始めた。

曲がりくねった通路を進むアタシとメアリーと『赤い目』。
ふと後ろを見ると、メアリーと人形が手を繋いで歩いていた。

「ギャリー早いよー!」

ああ、人形の歩幅が小さいのね。

「アタシも手を繋いでいいかしら?」

『赤い目』とはさすがに身長差があり過ぎてダメだけど…。

アタシはメアリーと手を繋いだ。
メアリーはアタシと『赤い目』と手を繋いでご機嫌だ。

長い通路の先に扉が見える。
アタシ達は扉を開いて紫の間に進んだ。

「広いわね…どこから見ようかしら」

取りあえず真っ直ぐ奥に進んで角の部屋へ行く。
絵の具玉を集めないとね…。

“七つの色彩……絵の具玉を集めよ。
さすれば部屋は色づき、そなたの架け橋となるだろう”

「この台座に絵の具玉ってのを7つ集めてはめればいいのかしら…」

「何だか冒険みたいね!」

はしゃぐメアリー。こうしてる分には可愛いのよね…。

部屋を出ると、近くの床で黄色の絵の具玉を見つけた。

「ギャリー!何か落ちてた!」

メアリーが拾って持ってくる。

「黄色だよ!黄色!」

アタシに絵の具玉を渡そうとすると、絵の具玉は消えてしまった。

「ちぇー!」

すねるメアリー。

すると『赤い目』が自分のお腹をゴソゴソと探り出した。

「あら、これアタシにくれるの?」

『赤い目』がアタシに差し出してきたのは赤い絵の具玉だった。
アタシが手に取るとやはりスッと消える絵の具玉。

「あー!ずるい!私にも頂戴!」

メアリーが頬を膨らませて『赤い目』にねだる。
すると『赤い目』はトコトコと歩き出した。

「ついて来いって事かしら?」

『赤い目』について行くアタシ達。
黄色の絵の具玉が落ちていた近くの扉を押して『赤い目』はその中に入って行った。

ここって…。

そっと扉を開けるアタシ。
中にはアタシの記憶通り、たくさんの『赤い目』がそこらじゅうに座っていた。

その奥から白い絵の具玉を持ってくる『赤い目』。

「え?これ私にくれるの?わーい!」

メアリーは『赤い目』から白い絵の具玉をもらって喜んでいた。

「きっと、ここがアノ子の場所だったのね」

「バイバイ!仲良くね!」

アタシとメアリーは部屋から出た。
次に『聞き耳』がある部屋の様子を見てみる。

「ここも鍵が閉まってるわね…」

イヴはまだ木の鍵を手に入れてないらしい。

続いて『ジャグリング』の絵の前に行く。

「わー!凄い凄いっ!」

『ジャグリング』を見て拍手をしているメアリー。
『ジャグリング』が質問をしてきた。

「我 誕生 いつだ」

「6223年でしょ?忘れちゃったの?」

メアリーがさらっと答える。

「せ い か い で す」

コロンと青い絵の具玉を落とす『ジャグリング』

というかメアリー、アンタ隠す気ないでしょ?
『ジャグリング』ちょっと畏まってたわよ…。

さて、残る絵の具玉は三つだけど、その内二つは『聞き耳』の部屋にからイヴが木のカギを使ってくれないとダメだし。
今行けるのは「アノ部屋」しかないわね…。

アタシは『ジャグリング』の絵の向かいにある部屋へ行く。
扉を開けた瞬間溢れ出す熱気。

部屋の中は暑いガスが充満していた。すぐそこに紫の絵の具玉が見える

…さて、前までなら人目がなかったから本物のバラを回復させつつ行けたんだけど、
今回はメアリーが見てるからね。どうしましょうか…。

「ねえ、ギャリー。ここ危ないよ?」

メアリーが心配そうな顔で聞いてくる。メアリーが心配してくれるなんて…。
ちょっとウルッと来たわ。

「だ、大丈夫よ!」

アタシは覚悟を決める。
本物のバラが残り2枚位になっても大丈夫よね!多分…。

「ギャリー、ごめんね…」

メアリーが謝ってくる。

「女の子にこんな所行かせられるワケないでしょ?ちょっと待っててね。すぐ行って来るから」

多分、メアリーが謝ってるのはそれだけじゃないでしょうけど…。

アタシが部屋の中に入ろうとしたその時。

「あっ!ギャリー!待って!」

メアリーがアタシにストップをかける。

アタシはメアリーの方を向く。すると、

そこには3体の『赤い目』がいた…。

「な、何なのかしら…」

『赤い目』の一体と目が合う。
すると、その『赤い目』はペコリとお辞儀をしてガスの充満する部屋の中に入って行った。
続く残りの2体。

あっけにとられていると、間もなく部屋のガスが止んだ。
紫の絵の具玉を持って出てきた『赤い目』A
赤い傘を持って出てきた『赤い目』B
そして、ガスのスイッチがある奥からひょっこり顔を覗かせて戻ってきた『赤い目』C

「きっとギャリーにお礼がしたかったんだね!」

と感心しているメアリー。

アタシは三体の『赤い目』の頭を撫でていった。

「ホントにありがとね。助かったわ」

コクコクと頷いて部屋に戻って行く『赤い目』達。
何だかホントに可愛く見えて来たわ…。

それにしてもこの傘どうしましょ。『赤い目』達のおかげで使わなかったんだけど…。

あ、そうだわ!

未だに施錠されている、下へ続く扉の横にある『釣り針』と言う絵を見る。

「針が垂れているわね…」

持ち手を針に引っかける。ツツツと額縁の上に引きずり込まれて消えてゆく傘。

「あははっ!何これっ!?おもしろーい!」

笑っているメアリー。つられてアタシも笑い返した。

・Sideイヴ

『ピエロ』の絵を通り過ぎて長い一本道を通ると、その先には茶色の部屋があった。
取りあえず見て回る。

絵の題名がパスワードになっている部屋、
カギが掛かっている部屋、
色のない部屋、
『傘をなくした乙女』と言う絵とマネキンの首がある部屋。

「あ、カギだ!」

マネキンの首の横で木のカギを見つけた。
拾って部屋を出る。すると、さっきまでは唯の崖の絵だった『釣り人』と言う絵に人間が写っていた。

「イヴ!傘!」

アリさんが肩で叫ぶ。
見ると、釣り人らしき人間が赤い傘を釣り上げていた。
絵の中の人間が傘を私の方に投げる。赤い傘が絵の外に飛び出てきた。

「あら?傘の柄に何か書いてる?」

傘の柄には『ミドリのよる』と書かれていた。

さて、次はどこに行こうかしら。

安価下1
1、絵の題名がパスワードになっている部屋、
2、色のない部屋、
3、『傘をなくした乙女』と言う絵とマネキンの首がある部屋。

「イヴ!傘!傘!」

アリさんが「傘」を連呼する。

「あ、傘ってもしかして…」

私達は『傘をなくした乙女』の絵がある部屋に行く事にした。

「それにしてもこのガスは何なのかしら」

『傘をなくした乙女』の部屋の横には暑いガスが噴出していて通れない通路があった。
不思議に思いつつも部屋に入る。

「はい、傘だよ!」

絵に傘を近づけるとスッと絵の中に入っていった。
乙女が傘を差す。すると部屋の中にザーっと雨が降り始めた

「雨っ!雨っ!ぼく、アリ!ボク、飴好き!ぼく、雨嫌い!ボク飴っ!雨っ!?あm…」

肩でアリさんがパニック状態になっている。私は急いで部屋から出た。
すると、さっきまであったはずのガスが止み、通路が通れるようになっていた。

雨が降って来たからガスも止んだのかな…。何か違う気もするけど…。

次に私達は扉にパスワードが付いている部屋へ行った。

「ミ・ド・リ・の・よ・る、っと」

カシャン。…扉が開いた。

中は小さな小部屋になっていて、いくつかの本棚があった。
右奥の壁にはこれまた小さな額縁が飾ってある。

『一つの鍵穴』

私は木のカギを差し込んで回した。

………特に何もない?

私は色のない部屋の様子を見に行くことにした。

「えーっ?何にも変わってないの?」

色のない部屋は相変わらず色のない部屋だった。
てっきり色がついてるかと思ったんだけど…。

色のない部屋は、手前と奥との間が大きな穴で分断されていた。
奥には台があり、その上にカギのような物が置いてある。

私はアリさんを見た。

目を背けるアリさん。

「ねえ、アリさん?」

「………」

「頼みたいことがあるんだけど?」

「………」

ヒューン!

「ぼく、アリ!ぼく、戻れないっ!!」

アリさんがカギを背中にのせて対岸の淵から抗議をしている。

「ごめんねアリさん!アリさんならきっと出来ると思ったの!」

「ぼく、戻れないっ!」

「例しに“橋よ出ろ”って念じてみて!アリさんなら出来るよきっと!」

「ぼく、頑張るっ!」

何やら怪しい手つきを始めるアリさん。すると…、

「橋、出た!ぼく、出来た!」

「うそっ!?」

色がなかった部屋にパッと色が付いたと思ったら、
アリさんの前に虹の橋が架かった!?

ゆうゆうと戻ってくるアリさん。

「ぼく、凄い!」

エッヘンと胸を張っているアリさん。

「うん!アリさんホントにすごいねっ!?」

びっくりした…。アリさんって、意外と凄いのかも……。

私は茶のカギを抱えるアリさんを肩にのせて部屋から出た。

・Sideギャリー

『釣り針』に傘を引っかけてしばらくすると、
『聞き耳』の部屋の扉の上にあった木の芽のような物が成長して木になった。

「あそこが何か変わったわ。行って見ましょ」

アタシはメアリーの手を取った。すると、

「ギャリー…、私達本当に三人で出れるのかなあ…」

思いつめた顔でそう聞いてくるメアリー。

「出るのよ、絶対に」

そう返すアタシ。メアリーは、

「あのさギャリー…、お願いがあるんだけど良い?」

と聞いてきた。

「お願い?なあに?」

メアリーの顔を見てアタシは先を促した。

「あのね…、

・Sideイヴ

茶のカギを使って扉を開けると、下りの階段があった。降りてみる。
降りた先は紫の間だった。一つ一つの部屋を見て回る。

ある部屋にあった本棚で『ゲルテナ作品集(下)』と言う本を見つけた。

「そう言えば、ずっと前の部屋にも『ゲルテナ』って本があったね」

「ゲルテナ、凄い!ぼくも、凄い!」

「はいはい」

パラパラとページをめくってゆく。

「………あ」

開いたページには…、『メアリー』と言う絵が載っていた。

ザ、ザザ…

頭にノイズが走る。脳裏に溢れかえる、体験した事のない「記憶」。

「…思い出した」

私は、全てを、思い出した。

たまらず部屋から飛び出す。

いない、いない、いないいないいないいないいないっ!

ギャリーとメアリーはどこに行ったの!?

すると、隅の扉からギャリーとメアリーが入って来た。

「あら?…イヴじゃない!」

「わーっ!イヴだぁっ!」

私は二人に近づいた。ギャリーを見上げて言う。

「久しぶり、ギャリー」

ギャリーは少し考えるような素振りを見せた後、微笑んで口元に人差し指を当てた。

やっぱり。ギャリーは全部知ってたんだ。
それにしても、一体扉の向こうで何をしてたんだろう…。

ギャリーがメアリーを見て言う。

「ねえメアリー?イヴにも言って大丈夫よね?」

「うん!イヴにも手伝ってほしい!」

笑顔で頷くメアリー。一体何だろう…。

「実はね、メアリーはお父さんを探してるのよ」

「え?」

メアリーのお父さんって、それってつまり…
混乱する私。

「お父さんがこの世界にいるかどうか、手掛かりになる物はないか探したいんですって。
もしお父さんだけこんな世界に取り残したままだったら大変じゃない。イヴも手伝ってくれるわよね?」

そう言ってメアリーの後ろからウインクするギャリー。
ああ、そうか。私は理解する。

「うん良いよ!メアリー、一緒にお父さん探そ?」

私がそう言うと手を握って飛び跳ねるメアリー。

「でね、アタシとメアリーでちょっと前までの部屋を調べて来てたのよ」

そう説明するギャリー。…あれ?

「でも、あのツタはどうしたの?」

「ああ、あれね。我ながら恥ずかしい話なんだけど、実はライター持ってたのよ。それを付けたら燃えて通れるようになってね」

そうだった。ギャリーはライター持ってたんだった…。

「ええーっ!?じゃあ私一人で行く事なかったじゃん!」

「本当にごめんね!イヴ!今度、美味しいお菓子おごってあげるから!」

「ホントに?」

「ええ、ホントよ。もちろん、メアリーも一緒にね?」

ギャリーがメアリーを見る。

「え?私も?…良いの?」

「「もちろんよ!」」

私とギャリーの声が被る。

「…うん、ありがと!」

メアリーが泣いてるような、笑ってるような、不思議な顔で頷いた。

「で、何か手がかりとかはあったの?」

私が聞くと、

「それが今までの部屋にはなくって」

と答えるギャリー。

「…じゃあ、三人そろった事だし!先に行きましょう!」

何か吹っ切れたような変に明るい声でメアリーが拳を突き上げた。

茶色の間に戻り、ガスで塞がれていた道を進む。
下り階段を塞ぐ『無個性』さん。

「よいしょっと」

ギャリーが脇に退ける。

ついてこないとは思うけど…。ついつい気になり後ろを振り向くと、
壁に手で掴んでこっそり顔(首)を覗かせている『無個性』さん。
家○婦は見た!みたい。

メアリーを先導に階段を降りてゆく。少しづつ、ぼやける様に先が揺らいでゆく階段。
次はスケッチブックか…

と思いきや、階段はスケッチブックへ行くピンクのものではなく、黒い無機質なものに変わった。
顔を見合わせるギャリーと私。

何これ…。

階段を降りて通路を曲がる。そこにあったのは…、

「ここ、元の美術館にそっくり…」

元の美術館の受付にそっくりな場所だった。

ただ違うのは、床から壁から全てが真っ黒である事、
そして、受付の向かい側に、地下へ続く階段が口を開けていた事だった。

「何、これ?」

地下へ続く階段を見てメアリーが呟く。
そして、唇だけを動かした。

「私、こんなとこ知らない」

そう言っている様に、私には見えた。

「アタシがあの美術館に入って行った時の入り口にも似てるけど…」

ギャリーが地下への階段を少し降りて調べる。

「でも、こんな寒くはなかったわよ?」

地下からは冷気が吹き上げて来ていた。…何だか嫌な寒さだ。
メアリーも眉を寄せて地下の暗闇を見つめている。

「イヴ、メアリー、どうする?」

ギャリーが聞く。

「…私は、行って見たい。この先に何があるのか、知りたい」

メアリーが小さく、しかし強く言う。
私も頷いた。

「決まり、ね。じゃあ行きましょう」

階段を降りてゆく。すると小さな部屋に出た。
あれ?こんな形の部屋を見たような…。あ、

「やっぱり、形はアタシが入って来た入口と同じだわ」

そこは私がギャリーの飴玉袋を取り返しに行った部屋と同じ形だった。
そう言えば、

キョロキョロと辺りをメアリーが見渡している隙にギャリーに尋ねる。

「ねえ、私のバラはギャリーが持ってるの?」

「ええ。ちゃんと大切に持ってるわよ」

「ありがとね」

「イヴー!ギャリー!こっちにも何かあるよー?」

メアリーが扉を開けて私達を呼んでいる。

「今行くー!」

私はメアリーの所へ駆けて行った。

外もギャリーと出会った辺りとよく似ていた。
一つ違うのは横長に続いていた廊下が消え、左に扉があると言う点だ。

先に進むと、通路には絵が二枚飾ってあった。

『隠した秘密』『既視感』

三者三様、顔を見合わせる。各々思う所があるのだろう。
多分、メアリーも私達が何かを隠している事にはうっすらと気付いていると思う。

でも、何も聞かない。
私も、何も聞かない。
ギャリーも聞かない。

へへっと三人で笑いあった。

これで、良いんだよね?きっと。

奥の扉を開ける。
底は橙色をした、やけに明るい部屋だった。

「ねえねえっ、イヴ…」

メアリーがひそひそ声で私を呼ぶ。その視線の先には…。

「ヘビ、ね」

ギャリーもひそひそ声だ。

額縁からヘビの上体がはみ出ていた。ヘビは床に突っ伏して寝ている。

「これもゲルテナの作品なのかしら?」

ギャリーがまじまじと見て言った。

「たぶん…」

きっと、そうなんだろう。私は初めて見たけど。

「でも、さっきの二枚の絵もそうだったけど、私こんなの初めて見たわ…」

それはメアリーも同じだったらしい。

「ぼくも、はじめて」

アリさんもひそひそ声だった。

私達はそろり、そろりとヘビの横を抜けた。

× 底は橙色をした、やけに明るい部屋だった。

〇 そこは橙色をした、やけに明るい部屋だった。

進んで角を左に曲がると、通路を分断する大きな穴があった。

床には何やら生き物がチョロチョロとしてる。

「ぼく、シロアリ。床抜けてて、帰れない。ぼく、帰りたい」

「知り合い?」

私は肩のアリさんを見る。

「アリさん?」

アリさんはワナワナと震えていた。

「お前、敵!ぼく、戦う!」

「ちょっとアリさん!?」

指でつまんでアリさんをなだめる。

「イヴ、離して!ぼく、戦う!あいつ、敵!」

「アリさん、落ち着いて!」

私達はいったん、通路を右に入った場所へ行ってアリさんを落ち着かせることにした。

そこにはカラフルな額縁で5枚の絵が飾られていた。
手前から赤い額縁、青い額縁、黄色い奴、紫の奴、緑の奴。

「アリさん、落ち着いて。どうしたの?」

私が聞く。

「ぼく、アリ。あいつ、シロアリ。ぼく、あいつ嫌い!」

「…種族の争いって事なのかしら」

ギャリーがしみじみと言った。

「あのシロアリ、帰りたいとか言ってたよね?」

メアリーが言う。そう言えばそんな事を言ってた気がする。

「…あら?紅茶の香りがするわ」

クンクンとギャリーが鼻を利かせる。

「「ホントだ!」」

「紅茶、甘い。ぼく、好き!」

三人と一匹で香りを辿る。奥の方からだ。
香りの元は紫の額縁に入っている紅茶の絵だった。
絵から湯気が立ち上っている。

「これはこれで酷いわね…。生殺しじゃない…」

「そうだよ!」

ギャリーとメアリーがうなだれる。
…あれ?

「ねえ二人とも!」

私は紅茶の絵の右側、一番奥の緑の額縁に入った絵を指差す。

「これ、もしかしてアリの巣じゃない?」

「あ、ホントだ!」

「確かに、そう見えるわね」

ギャリーとメアリーが頷く。

「ちがう!」

と声を荒げるアリさん。

「何で?」

と聞くと、

「これ、アイツの巣!」

と答えた。

「アイツって、さっきのシロアリの事かしら?」

ギャリーが聞くとむすっとして黙るアリさん。

「取りあえず、この絵をシロアリに見せようよ!」

メアリーが額縁ごと壁から外して抱える。

私達は通路を分断する穴の場所へ戻った。

「あ、それぼくの巣!」

絵を見て喜ぶシロアリ。絵を穴を塞ぐように置くと、

「帰り道、戻った!」

と言って絵の中に消えて行った。その瞬間、

「まて、戦え!」

アリさんも続けて穴の中に入って行ってしまった!?
しばらく待っていると…、

「これ、あった」

と言って橙色のカギを抱えたアリさんが戻ってきた。

「ありがと、アリさん。どうだった?」

とメアリーが尋ねる。

「なかなか、いいやつ」

と一言。

「男の友情かしらね…」

とギャリーが苦笑した。

白アリの巣の絵を橋代わりにして先に進む。

『手の届かぬ場所』『キャンバスの中の光源』

と、絵が飾ってある。

「光源って言う割には火がついてないじゃない」

『キャンバスの中の光源』に描かれているのは火のついてないロウソクだった。

角を曲がって更に進む。

『挑発』

ナイフを持った人の絵だ。

「挑発って言うより脅迫だよ。これじゃ」

とメアリーが呟いた。

『挑発』の右には扉が、さらにその右には大きな時計のオブジェがあった。

「このオブジェのタイトル、空白ね」
 
ギャリーがプレートを見て言う。

「このタイトルを考えて見よう!みたいな?」

とメアリーが首を傾げる。

「それじゃ、国語の問題だよ」

2人で笑う。

「『無題』って言う題の絵もあったけど、これは更にその上を行くわね」

大時計(仮)の右にも扉がある。その更に右にはさっきのヘビが寝ている。
どうやらグルッと一周したみたい。

「このヘビの絵の裏側ってどうなってるのかな!?」

ワクワクした声でメアリーが聞く。確かに…。

「二人とも、目がキラキラしているわよ?」

そう言うギャリーも目が輝いている。

私達はヘビを起こさないようそっと隣の扉を開けて中に入った。

中は資材置き場の様な部屋だった。
入って右を見てみる。

「「「しっぽだ…」」」

そこにはあのヘビの物であろう下半身がニョロンと垂れていた。

「本物かなあ」

メアリーがしっぽを撫でさする。

「ちょっと、メアリー。止めた方が良いよ」

私はメアリーに注意をするも、

「ねえイヴ、これとっても障り心地良いよ!」

とグイグイ引っ張るメアリー。すると、

「あ…」

ズルン!

メアリーが引っ張り過ぎたのか、ヘビの上体が少し部屋の中に入ってきてしまった。

「「………」」

凍り付く私とギャリー。
メアリーも引きつった笑みを浮かべていた。

音もなく最速で私とギャリーの陰に隠れるメアリー。
私とギャリーも無音かつ最速でヘビと反対の角へ逃げた。

………ピクリとも動かないヘビの体。

「…なんだ、動かないんだ」

私達はホッと一息をついた。

「…これ、何だろ」

メアリーが近くの壁に飾られている絵を見て言う。

『失敗作』

プレートにはそう書いてあった。

「失敗作も額縁に入れて飾ってるのかしら…」

ギャリーも首を捻る。

それは、顔が黒く塗りつぶされた人の絵だった。

まじまじとそれを見るメアリー。そして、

「これ、私のお父さんに似てる気がする」

と言ったのだ。

「えっ!?」

「ホントに!?」

驚く私とギャリー。
つまり、これはゲルテナの自画像って事?
でも、失敗作って…。

「手掛かりが見つかって良かったじゃない!」

とギャリーが喜ぶ。

「でも、せっかくの手掛かりが『失敗作』だなんて…」

とメアリーは頬を膨らませていた。

そこで私はふと気になった。
もし、メアリーのお父さん、つまりゲルテナに関する何かが見つかったなら、その時メアリーはどうするのだろう。
全てを話してくれるのだろうか…。
私もギャリーも、全てを話すのだろうか。
私達はどうなるのだろう…。

「イヴ、ギャリー!行くよ!」

ズンズンと部屋の奥へ歩いてゆくメアリー。
私は、どんな形であれ、この長い冒険にも終わりが近づいている様な、
そんな気がした。

ヒュン!ヒュンヒュン! …カンッ!カンカンッ!!

何かが飛んで壁にぶつかっているような音が部屋の奥からしている。
部屋の奥には細い通路が続いていた。

通路は進んですぐに右に曲がっている。角を曲がってみた。

「何これ…」

ギャリーが絶句している。

通路は今度は左に曲がっているのだが、その左の壁から三本のナイフが突き抜けて、右の壁に刺さっては消えてゆく…。
そこにあるのは紛れもなない「敵意」や「害意」、「殺意」や「悪意」と言った良くない感情に基づく物だった。
と、メアリーがスタスタ歩いてゆく!?

「メアリー!危ないよ!」

私は止めるが、

「大丈夫、大丈夫!二人はちょっと待ってて」

と言って行ってしまう。

私とギャリーはナイフを避けつつ、慌ててメアリーを追いかけて行った。
すると、ふとナイフが飛んでこなくなる。私達は奥にいるメアリーの下へ走って行った。

「このバラ踏んづけちゃったらナイフも止まったの…」

メアリーは足元で粉々になっているバラを見る。

「黒いバラね…」

ギャリーが呟く。黒いバラの花言葉って…

「憎しみ…」

バラの先では通路が左右に伸びていた。

右側の端にある絵を見る。

『晴天の彼方』

「この絵、好き」

アリさんが言う。

「へえ」

私は続けて「何で?」と聞こうとした。が、

「この絵、いい匂い。甘いの、好き」

とアリさんが続けた。

「甘い香りなんてするかしら?」

ギャリーが絵をクンクンと嗅ぐ。

「特にそんな匂いしないけど…」

メアリーが首を傾げる。私にも特に匂いは感じられなかった。

左端へ行ってみる。そこには壁にピン止めされた蝶がいた。

ピク、ピクッ!

蝶がわずかに動く。

「この蝶、生きてるわ…」

ギャリーが驚く。

「可哀そう」

メアリーはそう言うと蝶を止めているピンをそっと抜いた。

フワッと羽ばたき宙に浮く蝶。

蝶はメアリーの頭を二周程回ってから通路を戻り始めた。

私は蝶の下にあったプレートを見る。そこには、

『捕らわれの炎』

とあった。

蝶はヒラヒラと飛んでゆく。
やがて、部屋の扉の前で止まった。

「もしかして、廊下に出たいのかな」

扉を開ける。…ガシャンッ!
何故か右横の壁から音がした。

振り向く私。
肩にはアリさん。隣にはメアリーとギャリー。そして後ろには『失敗作』。

メアリーとギャリーもつられて振り向き、固まる。

顔が黒く塗りつぶされた男(?)がヨタヨタとゾンビみたいに寄って来る…。

「「「うわわわわわわわわっ!!」」」

慌てて部屋から飛び出す私達。扉を閉める。

「びっくりした…」

一息つく私。

「メアリー、あれ、お父さんなの?」

ギャリーがメアリーに聞く。

「絶対違う!あんなのパパじゃない!」

首を振って強く否定するメアリー。
私も、あんなパパは嫌だ。

「あ、そう言えば蝶は?」

辺りを見る。蝶は私達が来た道を戻っていた。

「あ、待ってよぉ!」
トテトテと追いかけてゆくメアリー。

「「可愛い…」」

メアリーの後姿を見て、私とギャリーの呟きが重なった。

メアリーを追って角を曲がるとその先でメアリーは壁を見ていた。

「どうしたのメアリー?」

私が聞くと、

「イヴ、蝶がこの絵に入ってったよ…」

見ると、『キャンパスの中の光源』のロウソクに火が灯っていた。
凄く眩しい。

「これ、ライト代わりになるわね」

ギャリーが絵を外す。
額縁の裏には丁寧な事に持ち手がついていた。

「ねえギャリー。それ、私が持っていい?」

メアリーが尋ねる。

「良いけど、ちょっと大きいわよ?」

ギャリーが言うと、

「だって、イヴにはアリさんがいるでしょ?ギャリーも人形さんに懐かれてたじゃない。だから…」

それを聞くとギャリーは笑ってメアリーに額縁を渡した。

「わーい!」

再び大時計(仮)の前まで戻って、今度は左の扉を開けて見る。

「真っ暗ね…」

中は真っ暗だった。
手で辺りを探るが、明かりのスイッチは見当たらない。

「私の出番だわ!」

メアリーが額縁を掲げ、意気揚々と暗闇に突入して行く。

「ギャリー、ライターは?」

私が聞くと、

「それが…、オイルが切れちゃったのよ」

とギャリー。

と言う事はメアリーの持つ額縁だけが光源なのか。

私達は輝くメアリーを追った。

「また段ボールだ…」

「イヴ、バックバック!」

部屋は暗闇の上そこら中に段ボールが積まれており、さながら迷路みたいだ。

「またキャンバスがあったよ!」

「今度は何?」

「黄色の3だって!」

段ボール迷路の中にはたまにキャンバスが置いてあり、
これまでにも緑の1や紫の9、橙の8や赤の7を私達は見つけていた。

「ねえイヴ。私達この部屋から脱出できるのかな…」

メアリーが不安げな顔で聞いてくる。

「だ、大丈夫。片手を壁に付けて歩いて行けばいつかは出れるよ!ね?ギャリー?」

「そ、そうよ!?最悪段ボールを崩せるわ」

そう言ってギャリーが暗闇に手を伸ばす。

ガチャーン!

大きな音を立てて何かが割れた。

「わっ!?」

灯りをかざす。どうやらギャリーの手が花瓶に当たって落としたらしい。

「もう!びっくりさせないでよ…」

「ごめんね」

更に迷路をさまよう私達。

「何だろ、何かスイッチの絵があるよ…」

メアリーが灯りをかざしてスイッチを押す。

「え?それ押していいの?」

ギャリーが額縁の下のプレートを読む。

『時計の目覚まし』

「ヘビ、起きてないと良いね…」

「うん」

「そうね……」

更に私達は青の2と言うキャンバスを見つけ、迷路から脱出する事が出来た。

扉を少し開けてそっと廊下の様子を窺って見る。

「大丈夫。ヘビは寝てる」

こそこそっと廊下に出る私達。
すると、大時計(仮)に変化が起きていた。

『さぼり癖のある秒針』

時計の下に数字を入れるパネルがある…。

「5ケタなの?でもさっき見つけた数字は6つだったよね?」

パネルを見てメアリーがギャリーに聞く。

「ええ。橙の8、赤の7、黄色の3、青の2、緑の1、紫の9。6つだったわ」

「と言う事は、一つはダミー?」

「多分そうね…。どれがダミーかしら…」

私とギャリーが首を捻っていると、メアリーが突然言った。

「ダミーは橙の8よ!」

「え?何で?」

私が聞くとメアリーが話す。

「まず。7と2と3は絶対いるでしょ?」

「メアリー、何でそう言えるのよ?」

ギャリーも聞くと、

「だって私達の色じゃない!」

そう断言して得意げに続けるメアリー。

「それで、最初ギャリーとイヴは二人だったから紫の9もいるでしょ?
次は私とギャリーが一緒だったから緑の1もいるでしょ?
だから、答えは赤・青・黄・紫・緑で、72391よ!」

メアリーは「一緒だったから色も混ぜる」と考えているみたいだ…。

ピッピッピっとパネルに数字をいれてゆくメアリー。

いやいや、そんな当てずっぽうで当たる訳が…。
と思っていると、『さぼり癖のある秒針』が動き出した!

時計は秒針を刻むと音を立てた。暗くなる廊下。

「夜が来たって事かしらね…」

ギャリーが驚き呆れる。

エッヘン!と胸を張っているメアリー

まさかメアリーのが当たるなんて…。
あ、そうか…。赤・青・黄・紫・緑

私はさっきシロアリの巣があった場所を思い出す。
あそこには五枚の色の違う額縁があった。
確かその並びが赤・青・黄・紫・緑だった筈。

だけど、

「ねえねえイヴ!私、凄いでしょ!」

笑顔のメアリーを見ているとそんな事どうでも良くなった。
当たったんだから細かい事は良いよね!

「…あ」

三人で歩いていると、
不意にメアリーの持つ『キャンバスの中の光源』から『捕らわれの蝶』が出てきた。
ちょうど縁のあった場所だ。

メアリーが額縁を壁に戻す。蝶はまたヒラヒラと私達を導くように先を飛んで行った。

「ついて行ってみましょ」

蝶はさっきまで激しく動いていた『執拗な花』と言うオブジェの奥へと入って行く。
『執拗な花』は今はおとなしく床に伏していた。

「花も寝てるのかな」

「かもね。それにしても奥に扉があったのね。花が動いてる時は残像で気づかなかったわ」

さっきシロアリの巣から出てきた橙のカギを使って扉を開ける。
私達は先へ進んだ。

×ちょうど縁のあった場所だ。

〇ちょうど絵のあった場所だ。

扉を開けると目の前には『社交界の女王』と言う大きな絵があった。
どこからか湧き上がる拍手。

「楽しそうな絵ね」

ギャリーの言葉にメアリーが反論した。

「そう、私にはさみしそうに見えるけど…」

私も絵を見る。真ん中でスポットライトと喝采を浴びている女の人。
この人が『社交界の女王』なのかな。

「あ…」

私は気づく。

「ね?イヴ。さみしそうでしょ?」

メアリーの言葉に私は頷いた。

「ギャリー、この人は1人なんだよ」

この人はきっと社交界で凄い人なんだろう、地位も、実力も。
だからスポットライトや喝采を浴びている。だけど、
誰も寄ってはこないんだ…。

「ゲルテナは、何を思ってこの絵を描いたのかしらね…」

ギャリーが腕を組んで思案する。

この絵の女王はきっと、ゲルテナ自身を表してる。
遠巻きに見て拍手をしている人達は世間だ。

財産目当ての人脈でなく、本当の意味で人間的な繋がりを、
ゲルテナは欲しかったのかもしれない。

「あ、蝶だ…」

メアリーが後ろを見て言う。

私達が開けた後ろの扉から『捕らわれの蝶』が入って来ていた。
メアリーの側をヒラヒラと飛んでいる。

「懐かれた、わね」

ギャリーが微笑んだ。

階段を昇って折り返し、扉をくぐる。

『環状の女』と言う彫刻のある通路を進み、出たのは青緑とでも言えばいいのか、
あの『深海の世』の深海にも良く似た色の部屋だった。

大きな彫刻作品が三つ飾ってある。
その後ろには何も入っていない額縁があった。
一つづつ見て回る。

『弾力のある石』

ギャリー「ちょっと触ってみたい気もするわね…」
メアリー「ねー二人とも!これプニプニしてて気持ちいいよ!」
…あ、ホントだ。柔らかい。

『死後の逢瀬』

ギャリー「何でゲルテナはこれを作ったのかしら」
メアリー「………」
私は赤いバラの花言葉を思い出した。

『呑み込める夜』

ギャリー「この空みたいなのどうやって浮いてるのかしら…」
メアリー「おいしそうだよね」
私「ねー」

壁一面に掛かっている大きなカラの額縁を見る。

「これも真っ白なプレート?」

額縁の下のプレートをギャリーが見て言う。

「何ていうか、ゲルテナの感性には驚かされるわ…」

辺りの壁からいくつかの部屋に続いている様だった。

適当に見て回ろうとする。すると、

「これ、キャンバスの一部じゃない?」

メアリーが指差す方のは『呑み込める夜』と『死後の逢瀬』の間。
そこに大き目な正方形のカケラが落ちていた。

手に取ってみる。すると、

「あ、消えた…」

カケラはスッと消えてしまった。

「これ、絵の具玉と同じだわ…」

後ろでギャリーが呟く。私は後ろのギャリーを見上げた。すると、

「ギャリー、メアリー!後ろ見て!」

2人が後ろにある大きな額縁を見る。

「あら!」

「おおっ!」

さっきまではカラだった額縁の右上に、私が拾ったカケラがくっついていた。

「ってことはやっぱり、この周りにある部屋から絵のカケラを探し出さなくちゃいけないって事ね」

「よーし、探そー!」

頷くギャリーと拳を突き上げるメアリー。
いくつか部屋があるみたい。中には入口にプレートが掛かってる部屋もあるけど、
どこから見ようか…。

安価下1
1、『習作・単眼の微笑み』の部屋
2、『永遠の通路』の部屋
3、大きな額縁の左の扉
4、大きな額縁の右の扉
5、右奥の上り階段
6、『呑み込める夜』の向かいの部屋
7、『弾力のある石』の向かいの部屋

私達はまず、左壁から続く部屋を見る事にした。
扉の入り口にあるプレートを読む。

“『習作・単眼の微笑み』
目を凝らして見てごらん。
生命を持つ者はどこだろう?”

「でも、この世界の絵って大体が生命を持ってるじゃない」

ギャリーがプレートに突っ込んだ。

部屋に入ると部屋一面に一つ目の女の絵がびっしりと飾られていた。
どの絵も特に動く気配はない。

「わあっ…」

「これだけ同じ絵が揃うと圧巻ね…」

メアリーとギャリーが見始める。

壁半分ほどを見た所でメアリーが止まった。

「メアリー、何かあった?」

私が聞くと、

「これ、全部違う絵だ」

と、ポツリと言った。
ギャリーも顎に手を置き、それぞれの絵を真剣に見つめて言う。

「ええ。良く似てるけど、全部少しづつ違うわ。これは、ゲルテナの習作なのよ」

…うん?確かにプレートにはそう書いてあったけど。どういう事だろう。
疑問に思う私を見て、メアリーが二枚の絵を指してたずねる。

「例えばイヴ、これとこれはどっちが上手だと思う?」

「んー。こっちかな?」

私が答えると、また違う二枚を指すメアリー。

「じゃあ、これとこれは?」

「こっち?」

同じやり取りを何回かして、ようやく私にも理解出来てきた。

「バラバラなんだ…」

「そういう事。ゲルテナが描いた『単眼の微笑み』を、ここでは描いた順ではなくてバラバラに飾ってるのよ。そしてこの中に一つだけ、ゲルテナが魂を注ぐことが出来たホンモノがある」

「イヴ、どっちがホンモノ見つけるか競争しよ!」

メアリーと手分けして(競争して)、見て回っていると部屋の隅に何かが落ちていた。

「あ、絵のカケラだ」

手にとった瞬間にスッ消えるカケラ。

私の言葉に反応してこっちに来るメアリー。
「え?じゃあこれでこの部屋はおしまい?」

目を丸くしてメアリーが聞く。ギャリーも首を傾げていた。

「変ねえ…。絶対ホンモノの『単眼の微笑み』を見つけて絵のカケラをゲットって言う流れだと思ったのに…」

「「うんうん!」」

「一応、ホンモノも見つけましょ。何かあるかもしれないし」

「わかった!」
ギャリーの言葉に従う私。

「わかった、けど、どこまで見たかわかんなくなっちゃった…」

どうやら自分が最後に見ていた所を見失ったみたい…。


「えーと…えーと…」と確認をし直しているメアリー。すると、その頭上に付いていた『捕らわれの蝶』がスッと舞い上がった。
一番上段にある『単眼の微笑み』の一つをその羽の光で照らしだす。

何だろう…、あ。

「あの『単眼の微笑み』、動いてる…」

私が指を指して二人にも伝える。

「ホントだわ」

ギャリーが見上げる。

「“ホンモノ”は、あなたね!」

メアリーがビシッと指差すと、『単眼の微笑み(真)』の額縁と壁の間からコトリと絵のカケラが落ちてきた。

「メアリーの蝶が見つけたからメアリーの勝ち?」
と私。

「でも気づいて指差したのはイヴじゃん」
とメアリー。

「「ねえ、ギャリー!どっち!?」」

2人でギャリーに詰め寄った。
…まるでこれじゃお母さんが見てるドラマみたいね。

少し考えるギャリー。そして判決は、

「最後に決めたのもメアリーだったから2対1でメアリーの勝ちね」

「やったーっ!!」

クルクル回って喜ぶメアリー。

「よーし!これでこの部屋はクリアね!次いこーっ!」

「わわっ!」
「メアリー、そんなにあせらなくてもっ!」

メアリーが右手で私を、左手でギャリーを引っ張って進んでゆく。

一体メアリーは、次にどの部屋へ行くつもりなんだろう…。

安価下1

1、『永遠の通路』の部屋
2、大きな額縁の左の扉
3、大きな額縁の右の扉
4、右奥の上り階段
5、『呑み込める夜』の向かいの部屋
6、『弾力のある石』の向かいの部屋

メアリーは『習作・単眼の微笑み』の部屋を出ると、
そのまま右に曲がって『弾力のある石』の向かいの部屋へと私達を引っ張って行った。

「さーて!次の仕掛け掛かってこーい!…って、え?」

私達の手を握ったまま固まるメアリー。
私はメアリーの横に移動した。
メアリーの後頭部で見えなかった部屋の様子を見て、私も固まる。

イー!イーイー!
イーッ!
イーイーイーッ!!

沢山の黒い棒人間さんが部屋中を走り回っていた。
中に一匹(?)だけ、赤い棒人間さんも混じってるけど…。

「みんな黒いのに、1匹だけはバラよりも真っ赤。走るのが誰よりも速かった」

ギャリーが何か教科書で聞いた事がある様な台詞を言う。

「イヴ、ギャリー、これ!」

メアリーがプレートを扉の横で見つける。

“赤に触れずに黒を追え”

「なるほどね」
ギャリーが両手をほぐし始める。

「今度は三人で勝負よ」
メアリーが屈身を始める。

私も軽く首を回した。

「「「かかれーっ!」」」


………

残りの棒人間さん(黒)は、後1匹。

「あの棒人間、小鳥に乗って優雅に逃走してるわね」

スイー…スイー…

「何かこっち見て笑ってる気がする。棒人間に顔なんて無いけど」

「メアリー。挟み打ちしましょ」

「わかった!イヴはあっちからね」

「「せーのっ!」」

スイー…

メアリーと私が挟み打ちを仕掛けるが、軽く避けて逃げる棒人間オンザバードさん。

しかし、避けた先には丁度ギャリーがいた。

「捕まえた!」

結果、私5匹。メアリー5匹。ギャリー7匹と1羽。

「何か、小鳥に私懐かれたみたい…」

「良いじゃない、可愛くて!」

と私が言うとメアリーが、

「イヴはアリさんで、私が蝶。ギャリーが鳥ね!」

と言った。…私だけ何か地味だなぁ。
アリさんを見る。

「ぼく、アリ。ぼく、カワイイ?」

「はいはい…」

で、捕まえたは良いけど、どうすればいいんだろう…?

「…スケッチブック?」

メアリーの突然の言葉にドキッとする私とギャリー。
ま、まさか…。

「ねえ、これスケッチブック?」

メアリーが部屋の隅に落ちていた茶色い冊子を持ってきて私達に見せる。
なんだビックリした…。

「それはクロッキーブックね」

ギャリーが教えてくれた。

「何それ?」

「クロッキーは速写って意味のフランス語よ。鉛筆で速く書きやすい、薄くて滑らかな紙が使われてるのが特徴ね」

「ふーん…って何!?どうしたの!?」

クロッキーブックを見るなり手の中で暴れ始める棒人間さん達。

もしかして…。クロッキーブックの紙に捕まえた棒人間さんを押し当ててみる。
吸い込まれる棒人間さん達。

メアリーとギャリーも捕まえた棒人間さん達をクロッキーブックに入れた。
すると現れるパズルのピース。

それをゲットして私達はこの部屋から出た。

イー!

扉を閉める瞬間、赤い棒人間さんの声が聞こえる。少し悲しげに聞こえた。

部屋を出て、奥にあるカラだったキャンバスを見る。そこにはこれまで見つけたカケラがついていた。
1、2、3、4、…5?

「あれ?一つ多くない?」

私が聞くと、

「ああ、さっきの棒人間の部屋にもう一つ落ちてたのをアタシが拾ったのよ」

とギャリーが答えた。一体いつの間に…。


そろそろ私も活躍したいな。どこに行こう…。

安価下1

1、『永遠の通路』の部屋
2、大きな額縁の左の扉
3、大きな額縁の右の扉
4、右奥の上り階段
5、『呑み込める夜』の向かいの部屋

私は最初この部屋を見て回った時から気になってた場所を見る。

『永遠の通路』

部屋に入って右にあるプレートだ。

「イヴもあれ気になる?」

とメアリー。

「うん。何か行ってみたいよね」

「じゃあ、次はあそこに行きましょうか」

ギャリーが中に入る。私とメアリーも後に続いた。

中は細長い通路になっていた。が、

「なーんだ…。奥が見えてるじゃん」

メアリーががっかりする。

確かに長い通路ではあったが、突き当りは普通に見えていた。
三人で歩き出す。

トコトコトコトコ…トコトコトコトコ………トコトコトコトコトコトコ………

「おかしいね」
「うん」
「何なのかしら、これ」

歩いても歩いても先が縮まらない。
突き当りの壁の見える大きさが一向に変わらない。
後ろを見る。

「「「…………」」」

目の前に入って来た入口があった。

「私達、歩いてたよね」

メアリーに聞く。頷くメアリー。

「『永遠の通路』ってこういう事なのね…」

ギャリーが壁にもたれて呟いた。

「こういうのってさ、後ろ歩きで進むのが王道じゃない?」
メアリーが提案する。

「ごめん。アタシちょっと疲れちゃったわ…」

ギャリーが壁際に座る。メアリーは私を見た。

「うん。一緒にやろ!」

私はメアリーと一緒に入口の方を向いた。
後ろ向きに歩き始める。
…………………。

「景色変わらないね」
「うん」
「ダメだったみたいね」
「うん」

三人で壁際に座る。

「一体、どう言う仕掛けなのかしらね…」

「後ろ歩きでもダメだったし」

「いけると思ったんだけどなぁ…」

「アリさん、楽しい?」

私はアリさんに話しかけてみる。
私達の側ではアリさんと蝶さんと小鳥さんも3匹で寄り集まっていた。

「ともだち、いっぱい!」

と満足げなアリさん。

「友達って、良いよね」

メアリーがそれを見てポツリと言った。

「うん」
「そうね」

即答する私とギャリー。

「アタシも、こんな可愛い友達が2人も出来て幸せだわ」

とギャリーが続けた。

「友達?」

きょとんとした声で聞き返すメアリー。

「私とギャリーって友達なの?」

「嫌だった?」

「嫌じゃない!」

ギャリーが聞くと、ブンブン首を振って答えるメアリー。

「じゃあ、私とメアリーは親友ね!」

私はメアリーを抱きしめた。

「…うん!」

大きく頷いてメアリーも抱きしめてくれた。

「なら、アタシとイヴはっ!…」

「知り合い!」

私が笑顔で答えるとぼーぜんとするギャリー。

「ご、ごめんね。冗談だよ?」

「イヴ~っ!!」

あれだけたくさん一緒にいて、知り合いな訳ないよね。
…うん?あれ?

私達が話している間に、アリさん、蝶さん、小鳥さんの3匹がどこかへ行ってしまっていた事に気づく。
そんな遠くに行っている訳ないんだけど…。あ!

「ギャリー、メアリー!あれ!」

私は『永遠の通路』の奥を指差す。

「えっ!?」
「どうやって!?」

驚く2人。

そこにあるのは、
三匹が一列になって『永遠の通路』の奥を歩いて(飛んで)いる光景だった。

やがて一番奥にたどり着く3匹。

あ、小鳥さんが壁に消えた…。
何か落ちた?あれってもしかして…

アリさんと蝶さんが絵のカケラを持って帰ってくる。

「アリさん、ありがとう!」

アリさんにお礼を言う。

「ねえねえっ!どうやって奥に行ったの?」

メアリーがアリさんに詰め寄るとアリさんは、

「鳥に、ついてった!」

と答えた。

「どういう風に行ったのかしら?」

ギャリーも興味津々だ。

私達はアリさんに通ったルートを先導してもらった。

通路の真ん中に立って真っ直ぐ2歩。曲がって右の端まで。
1歩進んで左端へ。2歩進んで真ん中へ。そして奥まで真っ直ぐ。

「着いた!」
「行けたわね」

アリさんの案内に従って歩くと、あっさりと最奥にたどり着いた。

「小鳥さん…」

私は左の壁に飾ってある絵を見る。

『あたたかな居場所』

小鳥が2羽、寄り添っている絵だった。

「ゲルテナは、こんな絵も描いてたのね…」

「はぁ~」

何だか心がじーんとする、とても優しい絵だ。
しばらく眺めている私達。

「…そろそろ、行きましょうか」
「うん」

入口へ歩き出すギャリー。
メアリーはまだ絵をじっと眺めている。

「メアリー、行こう?」

「…うん」

私はメアリーと手を繋いでギャリーを追った。

安価下1
1、大きな額縁の左の扉
2、大きな額縁の右の扉
3、右奥の上り階段
4、『呑み込める夜』の向かいの部屋

『永遠の通路』を出て、部屋の様子を見た私は気づく。
段々終わりに近づいて行っている様な感覚、それはこれだったんだ。
ギャリーとメアリーも部屋の様子を見て驚いている。

「コレ…」
「段々、大きくなってってるの?」

部屋の床全体に、深海の色をぶちまけたような大きなシミが広がっている。
『単眼の微笑み』、棒人間、『永遠の通路』、それぞれの部屋から出て来る度に段々シミは大きくなっているんだ…。

このシミで床が覆い尽くされたら…どうなるんだろう…。

確実に変わってゆく様子を見て、私の心は少しざわついた。

少しの不安を抱きながら、私達は『永遠の通路』を出てすぐ左にある、
『呑み込める夜』の向かいの部屋に入る。
部屋の中はたくさんのサボテンが広がっていた。

入り口入って横のプレートを見る。

『サボテンの園』

「まんまね。で、あれを取って来るのね」

『サボテンの園』には人一人分ぐらいの狭い道がついて奥まで続いている。
ギャリーはその途中途中に見える2枚の絵のカケラを指していた。

「狭いしアタシだけで行ってくるわ」

「気をつけてね!」
「行ってらっしゃい!」

見送る私とメアリー。

ギャリーが『サボテンの園』に足を踏み入れると、

スイー…。

私の隣で何かが動き出した。

「「何、コレ?」」

カラフルでグチャグチャな「何か」がフワフワと移動し、ギャリーへ向かい始めた。

「ギャリー!何か行ったよ!ホントに気を付けて!」

メアリーの言葉に振り返るギャリー。

「何コレっ!?」

私達と同じ事言ってる。

私の隣にあった今は真っ白の絵のプレートを見る。

『色彩の暴力』

「ギャリー!それ『色彩の暴力』って言うんだって!」

私は大きな声でギャリーに伝えた。

「触れたらダメそうな名前だよね」
とメアリー。

「うん。それに結構スピード速いよね」

あ、ギャリーが絵のカケラを一つ拾った。
でも、

「ギャリー!『暴力さん』が近づいてるよ!」

『色彩の暴力』はギャリーが絵のカケラを拾う隙にその距離を縮めていた。
それにしてもメアリー、『暴力さん』って…。

「いやーーーっ!!」

走るギャリー。

何とか一番奥に行ったけど、ギャリー、壁際に追いつめられてない?
と、ギャリーを追いつめていた『色彩の暴力』がフッと掻き消えた。

私は横にある真っ白になった絵を見る。
真っ白なままだ。どうやら『暴力さん』は消えてしまったみたい。

ギャリーがサボテンに触れないよう気を付けながら戻ってくる。

「一番奥に黒いバラがあったのよ。サボテンで自分を守るみたいに。それ砕いたらあの絵も消えたわ。さ、次行きましょ」

部屋から出るギャリーとメアリー。
私は最後に『サボテンの園』をチラリと見た。
ギャリーの“サボテンで自分を守るみたいに”と言う言葉がやけに引っ掛かった。

『サボテンの園』の部屋から出ると、床のシミは更に大きく広がっていた。

「あの絵も大分埋まって来てるわね…」

ギャリーが奥の大きな額縁を見て言う。
絵は右半分が完全に埋まっていた。

「…残りは、後4枚位、かな?」

メアリーが額縁の空白部分を見て呟く。

「何の絵なんだろうね」

私が話しかけると、

「あれ、背中に見えない?」

と絵が埋まっている右半分を指してメアリーは静かに言った。

「ああ、そう言われればそうにも見えるわね…」

「後見てないのは、額縁の両脇の扉と、階段の上だよね?どれから見る?」

私は指を指して二人に尋ねた。

安価下1
1、大きな額縁の左の扉
2、大きな額縁の右の扉
3、右奥の上り階段

「んー、階段の方行ってみない?」

ギャリーがそう言うので3人で階段を昇ってみた。

「「「………」」」
階段を昇ると、床いっぱいに広がる穴と壁に掛かる『失敗作』があった。
そして、穴と『失敗作』の間に置いてある絵のカケラ。

「罠だね」
「どう見ても罠だよね」

お互いを見て苦笑いする私とメアリー。

「いいえ、ゲルテナの事だもの。罠と見せかけて実は…何て事もあり得るわよ?」

とギャリー。

「どうしようか…」


………

結局、
「イヴとメアリーが盾になって、アタシがカケラを拾うのはどう?」
と言うギャリーの提案にのってみる事になった。

「イヴ、メアリー、ちゃんと守ってよね?」

そーっとかがんで絵のカケラを拾うギャリー。
私とメアリーは『失敗作』を見ている為、ギャリーに背中を向けている。

「大丈夫?どう、拾った?」

メアリーが首だけをギャリーに向ける。

「ええ。拾ったわ」

私が続けて、「じゃあ、慎重に階段まで戻って」と言おうとしたその時っ!

ガシャン!

後ろの壁から嫌な音がした。
飛び出してきた『失敗作』

振り向きざまによろけるメアリー。

もつれる私。

穴に落ちてゆく、ギャリー。

「「…あ」」

『失敗作』もギャリーを追って穴へと落ちて行った。

「「ギャリーーーーーーッ!!!」」

穴に向かって叫ぶ私とメアリー。

ギャリー…
 ギャリー…
  ギャリー…

が底の見えない穴に空しく木霊するだけだった。


……
「ギャリー!ギャリー!」

泣きじゃくるメアリー。

「大丈夫よ。きっとギャリーは元気にしてるわ」

私はメアリーの背中をさすった。

「どうして分かるのよぉ…」

そう、私はギャリーが無事である事が分かっている。
何故なら私が何ともないからだ。

ギャリーは私のホンモノのバラを持っている。
ギャリーが無事でないならば、私のバラも無事じゃない筈だ。
だから、ギャリーは大丈夫。きっと。

「ギャリー…ギャリー…。せっかく仲良くなったのに…ギャリー…」

おいおいと泣くメアリー。…あ、

「ねえメアリー?」

背中を丸めてうずくまるメアリーに私は尋ねる

「…なに?」
俯いたまま返事をするメアリー。

「正直に答えてね。ギャリーの事好き?」

「大好きよぉ…。こんな私にも優しくしてくれて、一緒に笑ってくれて。助けてくれて。大好きな、大好きな友達だったのに……私がよろけたせいで…」

そしてまた泣き出すメアリー。

「だって!良かったね、ギャリー!」

「………え?」

メアリーが涙に濡れた顔を上げる。

「メアリーのせいじゃないわ。それに、アタシ無事だったし、ね?」

階段を上がってきたギャリーは笑ってメアリーにそう言った。

「…ぐすっ、ぐすっ。何で、ギャリーは、ピンピンしてるの?」

私が貸したハンカチで涙を拭きながらメアリーが尋ねる。
ギャリーは穴の近くにあったプレートを読みながら答えた。

「この穴『コルぺにクス的転回の展開』って言ったのね。…2人も穴に落ちてみれば分かるわよ」

そう言ってほほ笑むギャリー。

「私、先に行って待ってるわね」

ギャリーは再び穴に飛び込んで行った。

「イヴ、ハンカチありがとう。ところで、あのギャリーってホンモノ?何かが化けてたりしない?」

メアリーが鼻をすすりながら聞いてくる。

「大丈夫、ホンモノよ私達も一緒に行きましょ?」

2人で手を繋いで、せーので私達も穴に飛び込んだ。

ヒュ~~~~ン…

落ちてゆく感覚はあまりない。
ふわふわと浮いているような感覚が少し続いた。
周りには土星や太陽、天体が見える。
まるで生身で宇宙にいるような感覚だった。

「っとと!」

気が付くと私もメアリーもギャリーに抱えられていた。
辺りを見回す。

「…ギャリー、ここは?」

「ここはあの額縁の右にあった部屋よ。さっき通った宇宙みたいな空間と上の穴を合わせて、
一つの作品『コルぺニクス的転回の展開』なんでしょうね」

「じゃあ、これは?」

部屋の真ん中に鎮座している箱(何か蓋の周りに歯が付いている)を指してメアリーが聞く。

「それは『誘う宝石箱の魔窟』よ。これが絵のカケラをもう一つ持っていたの」

「オレ、昔はもっと良いの、もってたぞ。きれいな石とか、ゆびわとか。もうないけどな」

「やっぱりじゃべるのね」

もう、しゃべらないゲルテナの作品の方が珍しいんじゃないかな…。

「ハラの中、スース―する。何かくれ」

『宝箱』さんが私達に頼む。するとギャリーが、

「そうね。絵のカケラ持ってっちゃったし。これあげるわ」

ザラザラザラザラッ…

『宝箱』さんの中に飴玉を流し込んだ。

「いらnっ!?!?!?」

モガモガしている『宝箱』さん。

「どう?おなかいっぱいになった?」

「…うん」

優しく笑って聞いてくるギャリーにしぶしぶ答える『宝箱』さん。

「そろそろ出る?」

私が聞くと、

「ここは、退屈。たまにトリとあそぶくらいだ。」

と『宝箱』さん。

「イヴ、『宝箱』さんが可哀そうだよ…」

メアリーが呼び止める。もうちょっとここにいよう。

………

「ほうせき」

「きのみ」

「み、みかん。あ、オレのまけだ…。もう一回」

………
「たき」

「きいろ」

「ロマン。あ、またオレの負けだ。しかも何か恥ずかしい。ちくしょう」

そう言えば、トリってあの『あたたかな居場所』のあの鳥さんかな?
一体何して遊んでるんだろう…。

「ねえ『宝箱』さん?」

「なんだ?」

「トリさんとは何をして遊んでるの?」

「…トリはオレに近づく。オレはトリを閉じ込めようとする。閉じ込めたらオレの勝ち。逃げれたらトリの勝ち」

中々スリルある遊びをしてたのね、あの鳥さん…。
『宝箱』さんが満足げな声で私達に言う。

「オレ、久々に楽しかったぞ」

「良かったね!」

我が事の様に嬉しそうなメアリー。

「じゃあ、アタシ達そろそろ行くわね」

「うん。元気でな」

そうして私達は『誘う宝箱の魔窟』の部屋から出た。

部屋を出て、額縁の左にある部屋へ向かう。
床のシミはもう殆ど黒に近い青になって部屋全体を覆っていた。

「あと、2枚…」

メアリーが殆どの絵が埋まった額縁を見て呟く。
残っている空白は左上の2枚分だけだった。

絵の内容もほぼ見えてきている。
これは、キャンバスに向いている人の後姿だ。

それが何を意味するのか、3人とも察しがついていた。
黙って額縁を見上げる。

「………」

「………」

「…さ!イヴ、ギャリー!最後の部屋に行きましょ!」

メアリーが空回りした明るい声を出して前を歩く。
誰も、何も言わなかった。まだ、「それ」に触れる時じゃないんだ…。

「ここが最後の部屋ね!」

メアリーがバーンと扉をあけ放つ。

「何か久しぶりに普通の部屋を見た気がするわ」

ギャリーがほっと一息ついた。

中は本棚が並ぶ普通の小部屋だった。

「な~んだ。最後の部屋だから、もっと派手なのを期待してたのに。…つまんないの!」
メアリーがむくれる。

「でもここに残りの2枚があるんだよね?」

私が聞くと、

「そっか!よーし探すぞー!」

とメアリーが「元気よく」こぶしを突き上げた。

三人で手分けして探す。

本棚は丁度、入口入って左右に一つづつと奥の壁際に大きなのが一つだったので、
左を私が、右をメアリーが、奥をギャリーが探す事にした。

『キュビズム』と言う本を手に取って開く。
すると中からコロンと絵のカケラが落ちた。

…見つかっちゃった。早いよ。

他のも調べて見るが、もうこの本棚には何もないみたいだった。

2人の様子を見てみるが、
メアリーもギャリーも私が見つけたのに気づいていない。

私はまず、メアリーの所へ行った。

「メアリー」

「何?」

「絵のカケラが1つ見つかったよ」

「えっ?はやいよっ!?」

驚くメアリー。

「うん。だから他の人のを手伝おうかなって。今は何見てたの?」

「これ…」

メアリーが差し出したのはボロボロの手記だった。
所々文字が読みにくいが頑張って読んで見た。

“作品は、完成した時点でその輝きを失う”

「そうだよね」

メアリーが頷く。

「あの額縁の絵もカケラが足りないから、こうして完成を目指して頑張ってるけど、いざ完成した絵をみたら。ああ…、ってなると思うもん」

メアリーの言葉を聞いて、「じゃあ完成させなければ…」と言いたくなるのを私はこらえるしかなかった。

メアリーの本棚にも他には特に何もなく、私達はギャリーの方へと行った。

「ギャリー!」

「ねえねえギャリーっ!」

「あら、どうしたの?」

「イヴがねー、カケラを一つ見つけたんだよ!」

「あら、凄いじゃない」

「メアリーの本棚も探したんだけど、なかったからこっちに来たの」

「そう、アタシは今これを見てた所よ」

ギャリーが私とメアリーに見せたのは『ゲルテナ作品集 目』と言うものだった。

「“め”?」

「そう、ゲルテナの作品の中には“目”をモチーフにした物が結構あるみたい」

「なんでだろう?」

私の疑問にギャリーが答えてくれる。

「目は、人の心を映し出す鏡みたいな物だからね。ゲルテナは色んな目を描く事で人そのものを描きたかったのかもしれないわ」

「これ、さっきの部屋のだ」

メアリーが見つけたのは『単眼の微笑み』だった。

「私、これ見たよ!」

私が見つけたのは、スカート見たさに橋になってくれた「おめめさん」、『寡黙な視線』だった。

「アタシはこれを絵の具玉取る時に見たわ」

ギャリーも『悟り』と言う絵を見て感慨に浸っている。

今まで、色々な事があったなあ…。
今までのループの事、この世界での沢山の「新しい」事。
沢山沢山…。

「…ヴ、ねえイヴ!」

メアリーが私の肩を叩く。

「なに?」

「見て見て!本棚にあったの!」

メアリーが見せてきたのは『秘密の部屋の入り方』と言う本だった。

「良い香り…」
この本からは、何だか不思議な良い香りがした

「何か、見つかったの?」

ギャリーも来て3人で読んで見る。

“入り方…どこかの本棚の裏を見てごらん”

ギャリーが右の本棚の裏で文字を見つける。

「“次は、大きな本棚の後ろの隙間を覗いてごらん”ってあるわ」

メアリーが奥の本棚と壁の隙間から小さな紙を見つける。

「“今度はキャンバスを見てごらん”だって」

本を置いてキャンバスを探して見る。
キャンバス、キャンバス…キャンバスは入り口の近くにあった。
文字が書いてある。

「“目を瞑って3秒数えてごらん。これで準備は整うはず”」

「「「1、2、3」」」

3人で目を瞑ってみる。目を開けると、

「あれ?あんなのなかったよね?」

部屋の真ん中に紐が垂れていた。

「あれ、引っ張ってみる?」

「引っ張るしかないでしょ?」

「そうよねえ…」

三人で紐を持って引っ張ろうとする。しかし、

「あ、ちょっと待って!アリさん!」

アリさんが本のページの上をウロウロとしていた。

「アリさん、早く!」

アリさんをつまんで肩にのせる。

「じゃあ、せーので引っ張るよ?」

「「「せーのっ!」」」

紐を引っ張った瞬間、カチン!と音がして部屋が暗転した。


……
さっきまでの小部屋より、更に二回りほど小さな空間に私達はいた。
目の前には小さな額縁の右から左へ長い絵がスクロールで流れている。
下についているプレートには

『○匹のカラスと5□の□□□』

とあった。そして左には数字のパネル。右には文字のパネル。


イヴ「6匹!」
ギャリー「4匹!」
メアリー「5匹!」
「「「???」」」

………
イヴ「リンゴ!」
ギャリー「なまず!」
メアリー「ほし!」
「「「???」」」

………

「いい?確認するわよ?カラスは3匹、5つあったのはサカナで良いわよね?」

ギャリーが私とメアリーに念押しをする。

「うん。大丈夫だと思うよ」
「大丈夫!やっちゃって!」

ギャリーが数字のパネルに3と入れる。

ピンポン!

小さく音が鳴った。

続いて文字パネルの方にサカナと入れる。
再びなる正解音。

3人でパネルを見ると

『3匹のカラスと5匹のサカナ』

とタイトルが付いていた。
出て来る絵のカケラ。

「これが、最後の1枚…」

メアリーが肩を強張らせる。

「最後はみんなで、ね?」

私がメアリーとギャリーを見て手を出す。
3人でそっと最後のカケラに触れた。
今まで通り、フッと消えるカケラ。

これで部屋に戻れば、あの額縁の絵が完成している…。

「ところでさ」

ギャリーが私とメアリーに向いて言う。

「どうやってこの秘密の部屋から出れば良いのかしら?」

「「え?」」

秘密の部屋には窓も扉も何もない。じゃあ、一体どうやって出れば良いの…。

「て、てっきり、正解を出したら出口も出るんだと思ってたけど」

メアリーが口の端を引きつらせる。
だが、出口は一向に姿を現さない。

「どうしよう?」

「え?もしかしてアタシ達、このまんま?」

「そんな…」

動揺する私達。するとアリさんが、

「右下の壁、見る!」

と言い出した。

「右下の壁?」

「正面がこの絵だとすると…ここかな?あ、何かあるよ!」

メアリーが何かを見つけた。

「スイッチだ!」

「これを押せばいいのかしら?」

押して見る。

カチッ!

再び部屋が暗転し、あっという間に元の小部屋に戻っていた。

「いや…焦ったわ。出れなくなったかと思った」

ギャリーがホッと一息つく。

「アリさんがいなければ、私達あそこに閉じ込められてたわね」

とメアリー。

「何でアリさんは出口のスイッチを知ってたの?」

私が聞くとアリさんは、

「ぼく、賢い。ぼく、これ読んだ」

と言って広がっている本のページの上を歩いた。
秘密の部屋に行く前にアリさんがウロウロしていた所だ。
そう言えば前に本が好きみたいな事言ってたな…。

“秘密の部屋から戻って来るには…その部屋の絵のタイトルを完成させた後に、右下の壁を調べてごらん。
戻り方を誤ると、二度と部屋から出られなくなるので注意して”

「「「………」」」

冷たい物が背筋に走った。
最後の一文が頭の中でリフレインする。

“二度と部屋から出られなくなるので注意して”

本当にアリさんがいて助かった。

思えば、今回のこのゲルテナの世界で一番の功労者はこのアリさんなのかもしれない。
そう、穴の対岸に投げ飛ばしたあの時からずっと…。

「ま、まあ無事戻って来れたし、結果オーライよね?」

ギャリーが取り繕う。

「そ、そうそう、アリさんのおかげよね…」

「「「ありがとうございましたっ!!」」」

世界中を探しても、アリに平伏した事のある人間は私達だけだろうな。


……
私達3人はまだ小部屋にいた。
なんてことのない話をして、ひとしきり笑って、かと思えば静かになって。

みんな分かってるんだ。

ここを出たら、

もう最後なんだって。

だから、

この部屋にずっといたいんだ。

外の部屋がどうなってるか。

床のシミはどうなってるんだろう?

額縁に完成した絵は、どうなっているんだろう?

これから、私達はどうなるんだろう?

みんな気になってるんだ。

だけど。

気にしたくないから…

だけど!

「「「行かなきゃ」」」

「「ギャリー…、

「「メアリー…

「「イヴ…

お互いがお互いの“目”を見る。

互いが互いに合わせ鏡。

きっと、おんなじ物が写ってる…。

3人一緒に立って、

私達は小部屋の外に出た。

床は黒に近い青で染まっている。
その床をうろついている者がいた。

「『失敗作』だ…」

私の言葉にギャリーが

「私と一緒に穴に落ちてきて、扉から出てっちゃったのよ」

そう言えばそうだったなと思い返す。

私達は完成した絵を見る。
キャンバスと、それに向かう人の背中を描いた絵。

『ゲルテナ』

真っ白だったプレートには、今はそう書いてあった。

絵が動き始めた。
アングルがより遠くからになる。
キャンバスの全体が映る程、背中だけでなく後頭部までが写る程…。

メアリーが私とギャリーの方を向いて言った。

「ごめんね、二人とも」

キャンバスには金髪の女の子の絵が、『メアリー』が描かれていた。

・Sideメアリー

ずっと、パパに会いたかった。
きっと、外にいるんだと思った。
だから、外に出たかった。

外は楽しそうだった。
いつも見てるだけだった。
うらやましかった。
一緒に遊びたかった。

とても可愛い女の子を見つけた。
友達になりたかった。
でも、私は「むこう」にはいけない。
だから、「こっち」に呼んだ。

でも、その前に誰かを呼ばなきゃいけなかった。
じゃないと、私が外に出れないから。
だから、もう1人呼んだ。

始め私は、ギャリーを「代わり」にしてイヴと2人で外に出ようと思ってた。
でも、私の中の「何か」がおかしかった。

イヴを呼ぶ時、バラへ案内した時、クレヨンで落書きしようとした時、

何度も何度も、既視感のような物を感じた。
何だか、自分自身に「こうしちゃいけない!」と言われている様な気がした。

イヴとギャリーと出会って、3人(と1匹)で『ミルクパズル』に絵を描いて、

…幸せだった。

『嫉妬深き花』で分断された時、私はギャリーと一緒になった。
本当はイヴと二人になりたかった。
でも、ギャリーと話して「3人で出よう」って言葉を聞いて、嬉しかった。
一緒に部屋を回って、楽しかった。

だから、私は決めた。

ギャリーも友達だ。
ギャリーは私をどう思ってるか分からないけど、でも友達だ。

だから、現実の世界に行くのは、戻るのは、イヴとギャリーだって。

でも、もうちょっと一緒に居たかった。
だから、私はギャリーに「パパを探して」って無茶な事を言った。

あの美術館は私の世界。
あそこにパパの手掛かりなんてない事くらい、
私が一番よく知っている。

でも、
もうちょっとギャリーと、
そしてイヴと一緒にいたかったから。
私の最後のワガママ。

その、はずだった。

手掛かりなんて当然なくて、

2人を『絵空事の世界』に連れて行こうとした時、

そこには、私の知らない世界があった。

きっと、神様がくれたボーナスステージだと思った。

もうちょっとだけ、いいよね?

私は、イヴとギャリーと初めての世界を楽しんだ。

パパの手掛かりもこの見知らぬ世界で本当に見つかった。

まるで、夢のようだった。

イヴとたくさん遊んで、たくさん笑った。

ギャリーが穴に落ちて行った時は本当に悲しかった。
失うって事はこんなに辛い事なんだって、初めて知った。
ギャリーが無事で本当に良かったって、自然にそう思えている自分に驚いた。

でも、この世界ももうおしまい。

イヴとギャリーに、ぜんぶ話さなきゃ。

私の事を、全部。


……

「ごめんね、2人とも。ずっと言えなかったんだけど、私のパパは、ゲルテナなの」

2人の目をしっかり見て、なるべく冷静に話す。

「私もね、絵なの。ゲルテナの遺作『メアリー』。それが、私なの。ずっと騙してて、ごめんね」

絶対に嫌われる。でも、騙してたのは、悪いのは、私だから。しょうがないよね。

ギャリーが口を開いた。

「知ってたわよ」

………え?今、何て?

「アタシもイヴも、メアリーが本当は絵だって事、知ってたのよ」

続けてイヴも私に言う。

「私達も、メアリーに話してない事、いっぱいあるの。聞いてくれる?」

それから2人が私に話してくれた事は、信じがたい事ばかりだった。

私達が、何度も何度もこの世界をやり直していただなんて。

『魂を啜る群集』は他の絵とは明らかに違う雰囲気を持ってたから遠ざけてたんだけど、
まさかそんな力があったなんてね…。

イヴは泣きながら私に謝ってくれた。
「私はメアリーを見捨てた」って。
私だってギャリーを見捨ててた筈なのに。

みんなお互い様ねってギャリーは笑ってくれた。
やっぱりギャリーは優しい。

「イヴ、ギャリー。私はもう大丈夫よ」

「でも…」

イヴが反論しようとする。

「私はもう充分に楽しんだわ。だから、笑ってお別れさせて。ね?」

「でも、アタシ達はメアリーの願いを叶えれなかったわ」

「もう、外に出れなくてもいいの。友達も出来た。パパの手掛かりも見つかった。充分よ」

黙って私を見る2人。

「ギャリーとイヴが何度もやり直してくれたおかげで、こんなに楽しい思いができたわ。ありがとう。だから…だから……っ」

ダメだ。もう、がまん、できない…。

「だって…「代わり」がいなきゃっ!私はこの世界から出れない!でも、誰も「代わり」になんてしたくないっ!
これ以上っ!望む事なんて出来ないの!」

目から熱い物が零れ落ちた。たくさん。たくさん……。

「もっと一緒にいたいよおっ!イヴと遊びたいっ!ギャリーと話したいっ!3人でお菓子食べたいっ!
雪も見たいし、海も見たいし…もっといっぱい色んな事がしたいよ!でも、でもっ!!」

でも、でも…

膝から力が抜ける。2人の前で私は崩れ落ちた。

後ろから肩を叩かれる。

でも変だ。イヴもギャリーも私の前にいる筈なのに…。

後ろを向いた。

そこには『失敗作』がいた。

『失敗作』はそのまま『ゲルテナ』の方へ歩いて行き、
その中に吸い込まれるように消えて行った。

…え?どういう事?何が起きているの?

「…メアリー。まだ先があるみたいよ?」

鼻をすすりながらイヴが手を差し伸べてくれる。

「アタシ達も、行って、見ましょ?」

ギャリーがくしゃくしゃな笑顔を私に向けた。

私達は『ゲルテナ』の中に入った。

絵をくぐると、そこには黒い大きなベッドが置いてあった。
私達に背中を向けて、そのベッドを触っている『失敗作』。
『失敗作』がこっちを向いた。…え?

顔を塗りつぶしていたものがキレイに取れている。

「………来たのか?」

そこに立っていたのは、パパだった。

「…パパ?」

私は信じられずに思わず聞いてしまう。
パパは私を見て、少し考る風にしてから、

「…そうか、キミは『メアリー』か」

パパはイヴとギャリーを見て、「この人たちは?」と聞いた。

私は話す。ここまであった、楽しかった事、嬉しかった事、幸せだった事、
悲しかった事、辛かった事、嫌だった事、全部。…全部。

パパは目を細めて、私の言葉一つ一つに頷いてくれた。
一通り話した所でギャリーがパパに尋ねる。

「アナタは、ゲルテナですね?」

頷くパパ。当然よ。私がパパを見間違う訳がない。

・Sideゲルテナ

私は芸術家だ。
己の魂を削り、作品を作る。

世の者達は私を指して天才だ、いや鬼才だと持て囃すが、
そんなものは関係ない。
私は、私が作りたいものを作る。
ただそれだけだ。

しかし、世の中は私を孤独にはさせてくれなかった。

私が私である為に、作品を作れば作る程、
私は私でなくなっていった。

取材だなんだと押し寄せる馬鹿共。
作品に価格を付ける下種共。
地位や名声、そんなものに釣られて添い寄って来る屑共。

そんな者達に囲まれる生活は苦痛の一言だった。

ある日、息子の為に描いた『サーカス』に値段が付けられた。
思い出も、団欒も、私が残したい物は全て「金」に変わってしまう。

それが決定打となり、私の中に、狂気が生まれた。

私の「狂気」を宿した作品の内のいくつかは、それまでの作品達を呑み込んで、
やがて一つの世界を創り出した。

小さな世界だ。
大部屋とそこから続くいくつかの小部屋。
ただそれだけ。

だが、こここそが私の世界であり、私その物だったのだ。

「あの娘」が来るまでは。

私が見つけた時、「彼女」は床に倒れていた。

散りかけた黄色いバラを持って。

聞けば美術館にいた筈が、迷い込んでしまったそうだ。

私の世界に勝手に入ったのだ。
襲われても文句は言えまい。

始め私はその程度に思い、何も言わなかった。

だが、彼女は純粋だった。

一つ一つの作品を、私を、知ろうとしてくれていた。

何が彼女をそうさせているのかを聞くと、
「楽しい事だって、いっぱいある筈だから」

とそう言った。

私は「彼女」を出口まで案内した。

私は、彼女を見つける直前まで、
この世界で残っている自らの魂全てを使って、己自身を一つの作品にするつもりだった。
そうする事で、私はやっと私になれるのだ。

その為に、この世界に来ていた、筈だったのだ。

だが「彼女」を見て、やるべき事が一つ増えた。

「彼女」を見送ってから私は、
恐らく外の世界では最後の作品になるだろう絵を描いた。
私にとっての「希望」の象徴としての一枚、

『メアリー』を。

私は今度こそ、目的を果たす為にこの世界に来た。
そして、本当の意味での最後の作品を私は作り始めた。

『最後の舞台』

これで私は、やっと私になれる。

すると、『失敗作』がやってきた。

これも、私の一部だ。
私は『失敗作』を自分の中に受け入れた。

しかし、来たのは『失敗作』だけではなかった。

私は思わず尋ねる。
「戻って来たのか?」
「彼女」が若者と少女を連れて立っていた。
…いや、違う。

言ってすぐに気づく。
そこにいたのは、ついさき私が描き終えたばかりの『メアリー』だった。

話を聞いて分かったのは。
どうやら、この世界の時間は少しおかしいらしいと言う事と、
『メアリー』は、私に会いに来てくれたのだと言う事だった。

最後の最後で、奇跡が起きた事に、私は満足した。

だが『メアリー』は…
そして私は、どうするべきか…。

私は、私のこれからと、そして『メアリー』のこれからを決める為に、
『メアリー』に尋ねた。

・Sideメアリー

「『メアリー』、外の世界に出るか、私とずっと一緒にいるか、どっちがいい?」

パパの質問は、とても難しいものだった。

パパはこれから、自分を一つの作品にする。
だから、パパを代わりに私は外の世界に出る事が出来る。

でも…、

ずっと、パパに会いたかった。
ずっと、友達が欲しかった。

今、目の前にはパパがいる。
今、目の前には友達がいる。

でも、選べるのはどっちかだけ。

どっちを選んでも私は必ず幸せになれる。

私は、私は…

最終安価下1

1、パパと一緒にいる
2、外の世界に出る

考えて、考えて、考えて。私は口を開いた。

「私は…パパと一緒にいるわ」

後ろで、はっと息を飲む音が聞こえる。
後ろを振り向いて私は2人に言った。

「イヴ、ギャリー。…本当に、ありがとねっ!」

パパが私に、もう一度尋ねる。

「本当に、それでいいのかい?」

「……うん!ずっと、パパと一緒に居たかったから。だから、いいの!」

目からポロポロと落ちる涙。
嬉しさと、悲しさがないまぜになった不思議な気持ち。

「…メアリーが、そう言うなら、しょうがないわね」
ギャリーが涙を拭いながら笑って言う。

「メアリー…。メアリーっ!」
イヴが駆け寄ってきて、私の体を強く抱きしめる。

ギャリーもやって来て、三人で抱き合って、ワンワン泣いた。

「良い「友達」じゃないか」

しばらく泣いて、ようやくお互いを離して立ち上がった所で、
パパは微笑んでそう言った。

「イヴちゃん、ギャリーさん。ここまで『メアリー』を連れて来てくれて、本当にありがとう。イヴちゃんの「情熱」と、そしてギャリーさんの「奇跡」がなければ、こうはならなかっただろう。本当に、ありがとう」

ギャリーがパパに尋ねる。

「本当に、もう元の世界には戻らない気ですか?」

「ああ。…絶望したから、だけじゃないよ。今はね。出口はこの奥だ。さあ、行きなさい」

イヴとギャリーは『最後の舞台』に、私とパパに背を向けて、ゆっくりと歩き出した。

奥の出口を2人が出る瞬間、私は大声で2人へ伝える。

「イヴ、ギャリー!大好きだよっ!だから、…またねっ!!」

手を大きく振って答える2人。
そして2人の姿は、見えなくなった。

私とギャリーは『絵空事の世界』を通って元の世界へと戻って来た。

「メアリーは、あれで良かったんだよね?」

私の問いかけに。

「ええ。とても、幸せそうだったもの」

とギャリー。

「「はあ………」」

2人して大きな溜め息をつく。

「うう…、メアリー……」

「メアリー…」

まだまだ未練たっぷりの私達だった。

2人で一階へ降りると館内が少しざわついていた。

「お客様!大変申し訳ありません!道をお開け下さい!」

美術館のお姉さんがアナウンスをしている。

「なんだろうね?」

「なんでしょう?行ってみましょうか?」

『深海の世』と『精神の具現化』の間にある何も飾られていなかった廊下、
そこに大きな絵が運び込まれていた。

「…ギャリー。これって!」

それは、大人の人(多分男の人だ)の膝に嬉しそうに座っている女の子の絵だった。
大人の人は首から下の部分しか描かれていないけれど。
これは、きっと…。

ギャリーが解説を読む。

“ゲルテナの遺作、ついに公開。
架空の少女だが、実在しているかの様に見る者に錯覚を与える。
描かれている三色のバラも興味深い”

続きの文を2人で読む。

「赤のバラは、愛情を、」
「青のバラは奇跡を表しているが、」

「この黄色はただの黄色ではなく、イエロードットのバラである」
「イエロードットのバラの花言葉は」

「「君を忘れない…」」

「ふふ。こんな笑顔で言われたら。未練も吹き飛んじゃうわね」
「私達も、忘れないよ。絶対に」

「イヴー、そろそろ出るわよ?」

お母さんが私を見つけて呼ぶ。

「じゃあギャリー、またね!」
「ええ。また今度ね」
「お菓子おごるって約束、忘れないでよ?」
「あら、覚えてたの?」
「もちろん!」
「ふふっ、食べに行きましょうね?」
「うん!」

私はもう一度、振り返って絵を見る。

『とある親子の肖像』

プレートにはそう書かれていた。

Happy End

ここまで見て下さり、ありがとうございます。
没ネタ集として、書いたは良いものの選ばれなかった選択達をお送りしようと思いますが、需要はありますか?

もし、イヴがサカナの尾を探す為に、像を一体一体探して回っていたら(58<より分岐)

「ねえ、あなたサカナのしっぽもってない?」

「あなたは?」

「あなたは?」

一体一体聞いて回る。

『無個性』は何故か全員がもの凄い勢いで手を振って否定した。

「鎌、こわい。鎌、あぶない。」

肩でアリも震えている。へんなの♪

続いて人間の上体の像に聞いて回る。

まずは入り口近くの隅っこに一体でいる象から。

「ねえ、あなたサカナのしっぽ持ってる?」

ぶんぶんぶん!首を必死で横に振る像。

「そう、ありがと!」

次に奥の方で四体で固まっている像たち。

「ねえ…」

ぶんぶんぶん!首を横に振る4体。

「まだ、最後まで言ってないのに…」

最後に残ったのが5体で横に並んでいる像たちだった。

「ねえ、あなた達の誰かがサカナのしっぽもってたりしない?」

首を動かして真ん中の一体をじっと見つめる他の4体の像。

「………そう、教えてくれてありがとね」

真ん中の一体に聞く。

「ねえ、あなたサカナのしっぽ、持ってるでしょ?私にちょうだい?」

目をそらす像。

鎌の刃を首筋に当てる。

「ちょうだい?」

ゴトン!真ん中の像がサカナのしっぽを落とす。

「ありがとね!大好き!」

私はサカナのしっぽを手に入れた。

「鎌、こわい。鎌、あぶない。鎌、いやだ。鎌、鎌、鎌鎌鎌鎌鎌鎌…」

肩でずっとアリが震えている。流石にかわいそうなので鎌を元のパネルに戻してあげた。

もう一つのEND(240<より分岐)

考えて、考えて、考えて。私は口を開いた。

「私は…、2人と一緒にいたい。外に出たいわ」

パパが微笑む。

「ああ。そうしなさい。『メアリー』、君は私にとっての希望そのものだ。
外の世界へ行って、もっともっと、輝いてきなさい」

パパがイヴとギャリーに向いて言う。

「イヴちゃん、ギャリーさん。ここまで『メアリー』を連れて来てくれて、本当にありがとう。イヴちゃんの「情熱」と、そしてギャリーさんの「奇跡」のおかげで、私は本当に幸せだ。本当に、ありがとう。そして『メアリー』を、「彼女」をよろしくお願いします」

ギャリーがパパに尋ねる。

「本当に、もう元の世界には戻らない気ですか?」

「ああ。…絶望したから、だけじゃないよ。今はね。出口はこの奥だ。さあ、行きなさい」

「メアリー。ゲルテナさんに何も言わなくていいの?」
イヴが私に聞く。

私はパパを見た。

「パパ…」

ポロポロと涙が溢れ出てくる。

「パパ…パパっ!」

私はパパを強く強く抱きしめた。
パパが頭を撫でてくれる。とても大きくて、優しい手だ。
パパの服からは絵の具とか石膏とかの色々な匂いがした。
とても落ち着く優しい匂いだ。

ずいぶん長い事、抱きしめていた気がする。

パパも、イヴもギャリーも、私の気が済むまで、笑って待っていてくれていた。

「パパ。本当にありがとう。行ってくるね!」

私はパパに大きく手を振って、イヴとギャリーと共に奥の出口へと向かった。


……
私達は『絵空事の世界』を通って元の世界へと戻って来た。

だが、

「あれ、メアリーは?」

私の問いかけにギャリーも辺りを見回す。

「…嘘、でしょ?」

2階を探し回るが、メアリーはどこにも見つからなかった。

2人で一階へ降りる。すると、館内は少しざわついていた。

「お客様!大変申し訳ありません!道をお開け下さい!」

美術館のお姉さんがアナウンスをしている。
メアリーに関する何かが分かるかもしれない。

私とギャリーはお姉さんの下へ行った。

お姉さんが私とギャリーを見る。

「…あら?」

「「…え?」」

キレイな金髪のお姉さんが私とギャリーを見て微笑む。
「…ずっと、ずっと待ってたんだからね!」

目の前にいるお姉さんは、メアリーだった。

今、私とギャリーとメアリーは喫茶店にいる。
私達はあの後、一旦別れて後日改めて会う事にしたのだ。

「で、メアリー…さん?一体どういう事なのかしら?」

「メアリーで良いよぉ、もうっ!つまりね、説明すると、メアリーは、実在してたんだよね。実は。」

「え?だって…」

私がしゃべろうとすると人差し指で塞がれた。

「イヴ、聞いて」

そしてメアリーさんは説明を始めた。

「『メアリー』は、ゲルテナの世界に迷い込んだ女の子がモデルだったの。つまり、私ね。あのゲルテナの世界は時間の流れがおかしかったのよ」

そう言ってメアリー(さん?)がメモにペンを走らせる。

・元の世界
①『メアリー』が描かれる→②私がゲルテナの世界に迷い込む→
③2人がゲルテナの世界に迷い込む→④3人でお茶をする(今ココ!)

「これが本来の順番ね。で、こっちがゲルテナの世界での順番」
②私がゲルテナの世界に迷い込む→①『メアリー』が描かれる→
③2人がゲルテナの世界に迷い込む→④3人でお茶をする(今ココ!)

ギャリーが「ホォ」っと息を吐いて言う。

「つまり、存在しない少女って言うのは…」

「そう!(まだ)存在しない少女って事だったのね!」

私は手を挙げた。

「メアリーさん質問です!」

「もう!イヴまで!メアリーって呼んでよねっ!で、何?」

「それだと迷い込んだメアリーと描かれた『メアリー』の2人がいる事になりませんか?」

「ふふっ、そうね。『メアリー』は、ゲルテナの一部ではなく、私の一部だったのよ。だって、ゲルテナは私の心を描いたのだから。だから、ゲルテナは『メアリー』にとっては間違いなく生んでくれた、「パパ」なのよ」

「じゃあ、「代わり」はいらなかったって事?」
そうギャリーが質問するとメアリーは首を横に振った。

「ううん。人は必要だったの。「パパ」であるゲルテナと、もう一人以上の誰かがね」

「どういう事?」

「つまり、『メアリー』は私の一部だから、私の所まで戻らなくちゃいけない。その為にはまず、生みの親であるゲルテナが『メアリー』をゲルテナの世界から切り離さなくてはいけないの。でないと『メアリー』は絵のまんまだから。そして『メアリー』を元の、この世界にまで案内する人も必要だったの」

「それが、アタシ達だったって事ね」

「そう。『メアリー』だけだと、元の世界に戻れない。そして、ゲルテナの協力がなければ『メアリー』は絵のまんま外に行く事になる。真相はこういう事だったの」

何となく聞いてはいるけど、私にはちょっと難しい話だった。

ギャリーとメアリーさんがそんな私を見て簡単に説明をしてくれた。

「つまり、アタシとイヴが頑張らなくちゃ、『メアリー』はこのメアリーさんと一つになれなかった、っていう事よ」

「そしたら私はただの美術館の職員でしかないから、イヴやギャリーを見ても何も思えなかったっていう事ね」

そう言って笑う2人。

「……うん、何となく分かった!」

私は頷いた。

「でも、イヴとギャリーにも「私が実在する」って気づくヒントはあったのよ?」

「え?」
「どこに?」

「イヴ、『メアリー』が書いた『うっかりさんとガレッド・デ・ロワ』って覚えてる?」

「あ!覚えてる」
あの私がネタを潰しちゃったやつだよね…

「じゃあギャリー、元の世界の『悪意なき地獄』の横の説明書きは覚えてる?」

「え?ああ、あの“ワイズ・ゲルテナ展へようこそ”ってやつね」

「それらには、書いた人の名前もあったと思うんだけど、2人とも覚えてるかしら?」

「XXXXだったよ」
「XXXXだったわよ」

「「…え?」」

目を丸くしてお互いに顔を見合わせる私とギャリー。

「それ、私の苗字よ?」

満面の笑顔でメアリーがそう言った。
メモにまた、何かを書きつけて私とギャリーに見せる。

XXXX(美術館の職員)=XXX(うっかりさんとガレッド・デ・ロワの作者)
=私!!

その笑顔を見て、何というか、やっぱりメアリーだなあと私は思った。

「お客様、お待たせいたしました」

店員がお盆を運んできた。

ギャリーが「マッカロン、マッカロン♪」と手を合わせる。

「こら、ギャリー?」

メアリーがギャリーをたしなめている。
面白い光景だった。

三人で手を合わせる。

「「「いただきます!」」」

私達はこれから、きっとずっと、一緒にいれるんだろう。
そう思うと、とても嬉しかった。

True End

おまけ:あの日運び込まれた絵を見に行った所、赤いバラと青いバラ、そしてゴールデンイエローのバラが活けてある花瓶の横に、アリと蝶と小鳥がいる様子をキャンバスに描く男の後ろ姿が描かれていた。

タイトルは『素敵な友達』

今度こそ本当におしまいです。
私の駄文にここまでついてきて下さり、本当にありがとうございました

「XXXX」は原作に沿った表記です。ここには何らかの苗字が入っています。
それは”WISE”かもしれませんし、全く違う何かかもしれません。
それは、読んでくださった皆様の想像にお任せいたします。

あと裏ネタとして、ゲルテナの世界の時間の流れがおかしいのも、度重なるループの結果という設定がありました。

以上です。

264<さんから質問があったのでルート分岐等について解説します。

ルートは全部で12ありました。

本編の7つ。

1、再開の約束
2、いつまでも一緒
3、片隅の記憶
4、忘れられた肖像
5、ひとりぼっちのイヴ
6、ようこそゲルテナの世界へ
7、ある絵画の末路

新規ENDで

8、小さな約束
9、小さな奇跡
10、とある親子の肖像
11、三人の絆
12、イヴったらうっかりさん

の12ルートです。

6<の

安価を取ります。選択によってENDが変わります。
安価下1
1、ハンカチの事
2、マカロンの事
3、メアリーの事

で1を選ぶと1番に、2を選ぶと8番に、3を選ぶと9番に分岐しました。

ループ補正は9番に一度行かないと付きません。
又、ループ補正が付かないとギャグ補正を付ける為に必要な、12番も解放されません。

しかも、ギャグ補正をつけるには、ループ補正を付けた後でそれを折らなくてはいけませんでした。


具体的に言うと、

14<
安価下1

1、お母さんがパンフレットを貰おうと言う
2、お父さんが受付を済まそうと言う

で1を選ばなくてはいけませんでした。

「ib原作を知っている人なら、14<の安価で間違えるはずがないだろう」
と意地の悪い事を考えてのルート配置だったのですが、

私の考えを見透かすように15<で2を選ばれてしまい、
見事にループ補正+ギャグ補正がついた状態で真っ直ぐ、10番・11番へと書き進める事になってしまいました。

ループ補正ではいくつかの場面で、安価ではなくオートで話が進み、物語展開の難易度が下がります。
+ギャグ補正では、ほぼ全ての重要安価がオフになり、ほぼオートで10番か11番へ行きます。

イヴとギャリーのバラは、ギャグ補正がないと通常設定で減ったりします。もちろんGAMEOVERもあり得ます。
もし、15<で1を選んでいたら、イヴとギャリーはループ補正のみでメアリーを助けようとし、
おそらくは1番、もしくは6番か7番に行っていたと思います。
10番・11番への分岐もあり得ますが、非常に難しかったでしょう。

それに、ギャグ補正がないので読む方も書く方もつまらなかったと思います。

アリさんは当初は一期一会の関係で終わるはずが、
別れるシーンを書き逃してしまい、結局最後までついてくる事になってしまったと言う経緯がありましたが、
困った時のアリ頼みでとても助かったので結果オーライでした。

ありがとう。

×「で1を選ばなくてはいけませんでした。」

〇「で2を選ばなくてはいけませんでした。」

ややこしくて自分でも間違えてしまいました…。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年11月13日 (木) 21:16:50   ID: MoSUYs71

トゥルーエンドはもちろん、安価でたどり着いたエンドも素晴らしかった。
キャラ崩壊にもちゃんと理由があったり。

2 :  SS好きの774さん   2015年07月31日 (金) 09:40:48   ID: 0AG6k3Gr

ゲーム化してくれないかなぁ

3 :  SS好きの774さん   2015年11月24日 (火) 04:01:00   ID: mngEsER_

よく練られてるな

4 :  SS好きの774さん   2016年09月02日 (金) 19:51:21   ID: IQP4xpXM

こういう、幸せなENDって良いですね!\(^_^)/よかったね、メアリー!!

5 :  SS好きの774さん   2016年12月10日 (土) 15:41:59   ID: ZfRV7Tux

洗われたでござる

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