【安価】殺伐!能力者学園動乱記 (75)

 4月ッ! この鳥兜町にも春がやってきた。そう、入学シーズンである。
 鳥兜商店街にある桜並木も見頃を迎え、新入生たちを暖かく見守っている。そこをまっすぐ抜ければ、かの有名な「私立鳥兜学園」が見えてくる。
 時刻は午前8時、学生たちがお喋りに興じながら通学する姿を見かけることも多いだろう。何より今日は特別な日。「入学式」だ。通学する学生らに混じって、新入生が新しい学校生活に不安と期待の合わさった複雑な心境で校門をくぐる。
 そこからが地獄の始まりだ。

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 これを読んでいる君たちに「何故、『鳥兜学園』は有名であるか」を説明しよう。

 それにはまず、この世界の話からしなくてはならない。この話については校長先生の詰まらないスピーチ程度に思って読み流しても良い。要するにこれは、『能力系バトル』の物語であることに違いないのだから。

 現在、日本各地で超能力者が増えて続けていることは知っているだろうか。ひとえに超能力と言っても色々な種類の超能力がある。能力内容の範囲は広く、『時間停止~手から唐翌揚げ』までだ。

今や国内人口の40%が超能力者だ。原理がどうこうより、今まさにそこで行われている大規模な戦闘を毎日のように見せられている政府も、彼らの存在を認めざるを得なかった。(これは政府内部でも能力に目覚めた者もいるので当然とも言える)

現在、能力力者同士の内乱も激しく警察及び自衛隊の手が回りきらない。そんな今の日本の状態を例えるならば『世紀末』。しかし、そんなヒャッハーな世界の中でも、鳥兜町はギリギリではあるが平和を保っている。

 ここからやっと本題に入る。ここまで読んでくれた君に感謝する。

 この世界の学校は、学習機関としての機能はもちろん、所謂自治組織という顔も持っている。

 超能力を持つ学生は、学区内を『ナワバリ』と呼び、それを自分達のテリトリーとして扱い、護っている。そして、日夜彼らは自分達のナワバリを広げようと、虎視眈々と他校のナワバリを狙っているのだ。

 国盗り合戦ならぬ、『学校盗り合戦』。鳥兜学園は、創立以来無敗を誇る有名校だったのだ。

この戦いは、超能力を持つ学生に宿命付けられたもの。命を懸けてナワバリを攻め、護り、戦う超能力者学生達の浪漫。あとは勇気とか友情とか……アレだ。戦う理由なんてあってないようなものだ。若さ故に有り余る体力を何かにぶつける為に彼らは戦う。

 ここで全ての説明は終わる。

 さて、視点を学園の校門に戻そう。一人の新入生を見てみよう。彼の名前は……↓2

(版権キャラ名は避けてください。性格は名前書き込みのコンマで決まります。0に近いほど良い性格、9に近づくほど悪い性格になる)

(キャラは名前の感じで勝手に作っていきます)

 彼の名前はノーベンバーグ。外国人のような名前の通り、彼は日本人とアメリカ人のハーフである。父の仕事は転勤が多く短期間のうちに、他国を転々とする生活が続いていた。

 幼少期を海外で過ごし、他国の言葉を短期間でマスターする優秀な頭脳を持ち、家庭内の日常会話も英語で交わされている。

転入したどこの学校でも持ち前のリーダーシップを発揮。誰からも好かれ、誰からも憧れられ中心となり中学校では一年生から卒業まで生徒会長を勤めあげた。

 金髪蒼目の整った顔立ちは、男女問わず誰もが振り向く。そんな彼も超能力者高校である鳥兜学園の生徒。例に漏れず超能力者だった。

ノーベンバーグの能力。それは……↓2

 彼の能力は『視界範囲内の5秒間を停止、早送り、コマ送り』。

 実際、ノーベンバーグは生活の中でこの能力を普段使うことはない。自分の能力があまりに特殊過ぎて、使う場面が少なすぎるからというのもある。だが今、彼は

 この力を学園を護る為、十分に発揮できる

 ――そう思っていた。母の生まれ故郷であるこの鳥兜へ転勤すると決まった時、飛び上がる程喜んだ。「学校盗り合戦」の話は母から聞かされていて、以前から興味を持っていたのだ。

 彼の「何かを無償で護る」ことに尋常でない喜びを感じる性格が、何時何処で死ぬかさえ選べない戦いに身を投じさせたのだろう。緊張して、顔を強張らせる他の新入生らとは違い、彼の表情はこの学園に入学できた喜びに満ち溢れていた。他の感情が入り込む場所などない。

 校門をくぐると校庭で地獄を見た。彼の目の前に広がるのは惨状。

 70人は倒れている。何者かに攻撃され伏した生徒は皆、学園指定の緑のスカーフを巻いている。その色から狙われたのは一年生のみだとすぐ分かった。

「一年生……」

 倒れ動かない新入生を見、ノーベンバーグは呟く。すると

「おぉ、次は君か!」

 野太い声が聞こえた。声は、校庭の中央から来ているようだ。視線をそちらに移すと大男が「入学おめでとう」と書かれた大旗を振っているではないか。

 ノーベンバーグはその大男の顔に見覚えがあった。

――確か学園案内の生徒会の名簿で見た……

大男の名前……↓2
(性格の良し悪しは、最初と同じようにコンマで決まります)

「あなたは……生徒会の豆谷地 駿之(とうやち としの)先輩……ですよね?」

「如何にも! ワシが鳥兜学園生徒会監査、豆谷地 駿之であるッ!」

 旗を地面に突き立て叫ぶ。ノーベンバーグと豆谷地とはかなり距離があるが、その3mもあろう巨体と空気をビリビリと揺らす声、何よりその謎の威圧感は、彼に明らかに他の生徒とは違うという印象を持たせた。

 何が違うのだろうか。その巨体から発せられる普通の高校生からは出ない威圧感、または殺意が理由だろうか。違う。恐らく豆谷地が作り出したとされる新入生の山がそれを演出しているのだろうか。それも違う。

――そもそも格が違う。レベルの問題なんだ。先輩は数々の戦いを生き抜いて来た。それが僕をそう感じさせるのだろう

 張り詰めた空気の中、ノーベンバーグは自分の中で「何故、自分の脚がこんなにも震えているのか」という疑問に答えを出す。

 豆谷地 駿之が恐ろしいから

 豆谷地は足をガクガクと震わせながらも、自分を真っ直ぐ見つめ立っている新入生に好感を持った。弱い新入生は自分のオーラに恐れをなし、逃げてしまった。

「肝は座っているようだな」

 少し嬉しそうに笑い、首を鳴らす。

『学園を、ナワバリを護るはずの生徒が弱くては話にならない』

 数時間前、生徒会長が豆谷地を始めとした生徒会員に言った言葉だ。会長の言葉は絶対。生徒会は入学式へ向けて、半年前から準備を重ねてきたのだ。当日は会長の指示に従い持ち場に着いている。

 豆谷地が会長により下された指令は「新入生を篩にかけること」。これは学園の伝統行事でもあり、新入生らの最初の壁となるだろう。生徒は先輩の能力を避けるか、先輩を倒すかし、校庭向こうにある校舎にたどり着かなければならないのだ。

「新入生、これからキミはワシを倒すか、ワシを突破して校舎に入るかしてもらう。それが新入生が入学式前に行う最初の行事だ」

「…………」

「聞いているのか!? 貴様もここに転がる有象無象のようになりたいようだな!」

 ノーベンバーグは黙っていた。先輩の話を聞いていない訳ではない。怒りに震えていたのだ。「行事」にかこつけて、人を傷付けるということは許せない。そう思っていた。目の前にいる大男は最早同じ人間には見えていない。倒すべき『敵』。

 これほどの怒りが自分の感情を支配するとは驚くべきことだ。しかし、ここに倒れている生徒達の分も自分は戦わなければならない。

「それが僕の使命だ!」

 策はある。怒りが彼を突き動かし、先輩「豆谷地 駿之(とうやち としの)」という壁を打ち壊そうと走り出す。彼は『正義』の超能力者だった。

 先ほどの恐怖などの忘れ走り出す新入生を見、豆谷地は動かずどっしりと構える。勿論、彼も超能力者。その能力は……↓2

 『足の裏からこの世の全ての臭いを発せられる』能力。それは自分が実際に嗅いだことのある匂いに限られるものの、効果は絶大であった。

 豆谷地は能力で悪臭を放ち、相手の感覚を鼻にのみ集中させ注意力を欠かせる戦い方を好んでいた。人間の五感の中で嗅覚というものは鋭く、悪臭は相手に短時間でストレスを与えることができる。ストレスは生体バランスに悪影響を及ぼし、僅かな「ズレ」を生むのだ。

 豆谷地は生徒会活動の他、柔道部の副部長も務めている。敵の「ズレ」を見抜き、攻撃を仕掛ける戦法は彼ほど鍛えていなければ使えないものだろう。何より人間が匂いに影響されやすいといえど、影響の度合いは個人差があるし、余程犬並に嗅覚が優れたものでない限り一発KOという訳にもいかないのだから。

 しかし、今回はその例外があった。校庭に転がる新入生の中に「戌田 狼介(いだ ろうすけ)」という男子生徒がいる。彼の能力は「イヌ科の特性を持ち、鋭い牙と爪を持つ」というもの。運が悪かった、犬並に嗅覚が優れていたのだ。彼のイヌ科並の鼻は、豆谷地から発せられる強力な悪臭にヤられてしまったのだ。

 豆谷地を凌駕する驚異的な身体能力で地面を蹴り上げ、飛びかかろうとしたものの悪臭に驚きバランスを崩し見当違いの場所に落下。その後、暫く狂ったようにキャインキャインと叫びながら自分の尻を追いかけ回し暴れていたが、少し目を離しているうちに二度と動かなくなった。

 超能力者である限り死に場所は選べない。篩にかけられるのはノーベンバーグか豆谷地か。少なくとも豆谷地は先ほどの戌田のように死にたくはないと願っている。

 ノーベンバーグは走りながら考える。相手はあの体つきを見るに、武道の心得のある者。それに比べ自分は戦う為に使えるものは何もない、と。

 鞄はもう投げ出している。ポケットに手を入れると何かの感触。そういえば↓2を入れてきていたことを忘れていた。

(ポケットに入りそうなものを答えよ)

 ポケットの中にはパンツが一枚。叩いても増えない。しかも、女の子の物だ。彼のような好青年がこのパンツを持っているのには訳がある。別に盗んできたわけではない。

 遡ること十分程前、彼は通学路にてそれを発見した。落ちているパンツ。通学路のど真ん中。ノーベンバーグは迷いなどなく拾った。

 何故ならそのパンツには名前が書いてあったからだ。名前が書いてあるからには届けなくてはいけない。だからといって大体の人はそれを触ろうともしないだろう。だが、彼は拾う。パンツを無くして困っている人を見過ごす訳にはいかない。そう思い今の今まで綺麗に折り畳みポケットの中に仕舞っていたのだ。

 ご丁寧に名前や学校名まで書いてあった。

『鳥兜学園2年 (名前↓3)』

 「雲馬場 五里羅(うんばば ごりら)」。変わった名前だ、なんて思わない。一刻も早く豆谷地を倒し、彼女にパンツを届けねば。

「そろそろ射程範囲だな」

 呟くのは豆谷地。動かず構えているだけで、自らの匂いが及ぶ範囲にあの新入生が入ってくるのは簡単に予測可能だった。足の裏に力を入れ、匂いを発生させる。

「……何の匂いだ?」

 五感を研ぎ澄ましていた為か、ノーベンバーグはその匂いにいち早く気づくことができた。記憶を辿り、その匂いは何のものか予想する。

「こ、この匂いは……↓2か?」

 猛烈な不快感の正体は洗っていない陰部の臭い。いや、ノーベンバーグ自身はいつも綺麗に洗っている為、これは予想に過ぎないのだが。

 悪臭による不快感が与えるストレスというものは、精神的なストレスとは違いその臭いが解消されるまでストレスも解消されることはない。

(この悪臭は僕を混乱させる為のものか? 毒性はないみたいだけど……)

 距離にして5m。臭いについては今のところ我慢できるとして、恐れるべきはあの巨体から繰り出される攻撃の一発。まずは、一気に近づいて攻撃。自分がこの戦いで優位に立つ方法を考える。

(僕の能力で相手が反応するより早く接近する方法。2つ……か)

 2つというのは、彼の能力『視界範囲内の5秒間を停止、早送り、コマ送り』の内の『停止』と『早送り』を指す。どちらにしても、相手に近づくということに変わりはないのだが、その方法に微妙な違いがある。どちらにもメリットデメリットがあるが、それは後で説明しよう。

(迷っている暇なんかない! ↓2して接近する!)

※今回は時間の「停止」または「早送り」のどちらかを選んで答えよ

 『時間停止』と『加速』は違う。

 『時間停止』は時を完全に静止させ、5秒間の間自分だけ自由に動き回れること。誰にも能力を使ったことを認識できない。デメリットは、攻撃翌力の低さ。ノーベンバーグには体術の心得などない。アメリカにいた頃、中学校の体育の授業で『JUDO』をやったくらいだ。止まった世界で止まった人間に攻撃をすることはできる。素人の攻撃が身体が筋肉の鎧で覆われた豆谷地に通用するだろうか。いや、しない。

 一方、『加速』は文字通り自分の身体の動きを加速させるものだ。空気抵抗諸々を無視して5秒間人間の数百倍の速さで動くことができる。人間の数百倍の速さで動けるということは、『攻撃翌力』もその分上昇する。能力の認識は『停止』には劣るものの、普通の人間の目に彼を捕らえることは難しいだろう。デメリットは『身体への負担』。空気抵抗その他を無視できるとは言えど、筋肉また器官への負担はかなりのものだ。かなり疲れる。その為、連発はできないのだ。

(そして、僕が選んだのは……『加速』ッ!)

 世界は止まったかのように見える。これは見せかけの停止であり、よく見れば空気は動き草を揺らし雲が動いていることも分かる。しかし、能力の制限時間は5秒。それを確認している暇などなかった。

 一秒経過。豆谷地は新入生の能力が何なのか未だ見抜けていない。ただただ面食らうだけだった。

 二秒経過。ノーベンバーグが異変に気付く。自分が能力を発した途端、異臭が強くなっている。それもそのはず、空気中に漂う臭いの粒子は加速しても振り払うことができない。動かす筋肉も普通の数百倍、一度に吸い込む空気の数百倍。

 そう、加速した今の彼は常人の数百倍豆谷地の足裏から出した洗っていない陰部の臭いを嗅いでいることになるのだ。吐き気が襲い、目が回る。ただ、今のところ足だけは豆谷地へ動いてはいた。

 三秒経過。どうにかなってしまいそうだ。失神以前に発狂寸前のところを正義感だけで抑えている。自分を励まし、しっかりと前を見据え走りつづけた。

(気をしっかり持て、ノーベンバーグ。アソコの臭いにやられるなんてカッコ悪すぎるじゃないか!)

 そこで彼の脳裏に一つの言葉が浮かぶ。『避難訓練』。とうとう頭がおかしくなってしまった……わけではない。日本の小学校にいたときに習った避難訓練。害のある煙を吸わないようにハンカチで口に手を当て防いでいた、ということを思い出したのだ。

 無駄ではないかもしれない。ハンカチティッシュは毎日必ずポケットの中に入れて持ってきている。右にはティッシュ、左にはハンカチだ。左ポケットに手を入れ、素早く取り出す。

 淡いピンク色のレース生地。リボンのワンポイント。

(そうそう、これこれ……ん?)

 もう一度見直す。

 淡いピンクのレース生地。リボンのワンポイント。そして端の方に書かれている『鳥兜学園2年 雲馬場 五里羅』。

 取り出したのはハンカチではなく、さっき拾ったパンツだった。

 今さらパンツをしまい、ハンカチを出している暇などない。能力には制限時間があるのだ。鼻と口にあてがうのは、このパンツで行わねばならない。いや、他にも何か方法がある(あった)はずなのだが、余裕のない彼の精神状態でそれを思い付くのは無理なことだった。

 躊躇。躊躇してしまう。ただ数秒悪臭から逃れる為に少しだけ鼻と口を押さえるだけなのだ。それだけなのに躊躇してしまう。

(会ったことない女の子のパンツに口をつけるなんて……破廉恥だ。破廉恥すぎる!)

 彼は真面目すぎた。そして、童貞だった。端から見れば馬鹿馬鹿しい問題だが、この16年の人生の中で一番悩んでいる瞬間なのだ。

 そこで、4秒経過。

 彼(ノーベンバーグ)が出した結論は……↓2

(『パンツで鼻と口を押さえる』か『押さえない』かで選んでください)

 何事もなかったかのように静かにパンツをポケットにしまった。健全な男子たるもの、女子のパンツを口に当てるなど破廉恥なマネはしてはいけない。それが彼が出した結論だった。

 今、ノーベンバーグの目の前には豆谷地の股間がある。最初の見立て通り彼と奴との身長差は倍程あったのだ。

 同時にここは臭いの震源地。鼻を刺すのは洗っていない股間の臭い(足から出ているのだが)。精神力のみで「どうにかした」。打ち勝ったのだ、臭いに。打ち勝ったのだ、自分に。打ち勝ったのだ、豆谷地に。

「未来ある新入生を生徒会活動とはいえ、奪ったあなたを……僕は許さないッ!」

 その言葉は豆谷地の耳には早すぎて聞き取れないだろう。右の拳を握り、脇の下まで引く。そして、それを素早く相手の股間に当てる。助走は充分付いている。これを『加速』の能力を使わずやっていたら、簡単に止められていただろう。

 常人の数百倍の速さのパンチが股間に当たるということは、股間にのみ電車がぶつかることと同じ。これから豆谷地は何も分からないまま、何も見えず聞こえず衝撃により後方に吹き飛ぶのだ。

「まだ0・3秒あるな」

 追撃は豆谷地の何とは言わないが両の玉を潰した。

 これで、5秒。

 豆谷地は最早再起不能であった。再(び)起(たず)、不能になってしまった。身体中から出すものを垂れ流し倒れる姿を写真に収めようと、生徒達が携帯のシャッター音を鳴らし始める。彼を倒した張本人であるノーベンバーグがいるであろう校庭には誰も見向きもしない。

 ノーベンバーグは嘔吐していた。加速を解いた瞬間に来る疲労は何物にも耐え難い。臭いは身体に染み付いて明らかに臭う。気が狂う程ではないが、不快であることに間違いはなく思わず吐いてしまったのだ。

 吐いた場所には豆谷地に倒された生徒がいた。吐瀉物がかかった一人の新入生をジッと見ているうちに、自分が今までやってきたことの重大さに気づき始める。

 しかし、後悔はしていない。自分は正しいことをしたのだ。気持ちは明るい。今はここに倒れている生徒(生きている者だけ)を起こし、校舎へ連れて行こう。入学式開始は午前9時から。それまでに会場に来なかった生徒は皆入学取り消しとなるのだ。

 口を拭い校舎を見る。上部に輝く鳥兜の花の校章が太陽に反射して眩しい。校門をくぐった先は地獄だった。しかし、この学校のどこかには天国があるかもしれない。或いは……いや、それは考えないでおこう。

 腕時計の針は午前8時10分を刺していた。

 ここで視点は2年生の教室に変わる。

 「雲馬場 五里羅(うんばば ごりら)」はゴリラ女子だ。時折、筋肉が凄く身体がゴツゴツした人間を「ゴリラ」に例える場合がある。雲馬場に関してはそうではない。ゴリラなのだ。

 ゴリラ。文字通りのゴリラ。動物園に行ったなら、一度は見たことはあるだろう。

彼女は能力の副作用でゴリラになってしまった。いくら人間に近い動物だとしてもコミュニケーションを取ることは難しい。心は人間なので、筆談を試みたこともあるが握力が強すぎてペンが折れてしまい諦めた。携帯、スマホ、パソコンも同じく。コミュニケーションツールは全て試したが、全てゴリラ特有の怪力で壊してしまった。

 雲馬場はゴリラになることが能力ではない。それはあくまで能力の副作用である。

 彼女の能力は……↓3

 彼女は「1日1時間だけ絶世の美少女に変身できる」能力を持つ。その姿が彼女の本当の姿なのか、能力で美少女になっているだけで本当の姿は別にあるのか、答えを知る本人はすっかり忘れてしまった。

 能力を初めて発動させたのは中学3年の頃。最初は驚きに驚いたが、さすがにもう鏡に映る自分の姿も見飽きてしまった。

 最近の悩みは、ゴリラの姿でいると野生の本能が蘇ってくること。伸縮自在の特注制服を着て登校している為、何とか人間としての尊厳は守っているものの、何だか自分が自分で無くなってしまうような感覚に襲われ泣きたくなる日もある。しかし、泣いたり笑ったりするだけで、その鳴き声や仕草がうるさいと近隣から苦情が来る為、人間の姿に変身していても感情を押し殺すようになった。

 今日も通学途中、便意を催した時に野生に戻った状態でパンツを脱ぎ捨て拾わずに学校へ来てしまった。ノーパンだ。気分は最悪。バナナ食べたい。

 通学路に落としたパンツ。誰かが拾っているはず。在校生として入学式に参加するというのに、ノーパンで……という訳にはいかない。

(校内の誰か親切な人が私のパンツを持っている……?)

 パンツを持っている生徒を探し、↓3へ向かう。
(校内にありそうな場所が好ましい)

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