希「食欲の秋も終わり」 (78)

ごくりっ………



名前を言うのも忌まわしい『それ』がウチの目の前にある



嫌やけど、どうしても確かめないと




『それ』に右足をのせる



そして動く『それ』の数字




※希がダイエットする話です。
 そういうネタが苦手な方やストレスを感じた方は、読むのをやめるようお願いします。
※あと、希は太ましい子ではありません。包容力があるだけです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1398508528

み、見たくない………


思わず目をつむる


体の重心が右足に移る




ああ、数字が増えていくのがわかる



ゆっくりとゆっくりと左足も『それ』にのる

猫の人だ!

ドクドク、心臓の鼓動が聞こえる


得体のしれない緊張感がウチを襲う


深呼吸をしよう………そうしたら少しは数字が減るかも




すーはーすーはー



ゆっくりと目を開け




視線を下の数字に移す







ががーん!


た、体重が増えてる~!?

クラっと立ち眩みがしてな



壁にもたれかかって深くため息をついてん






心当たりはあった



新米だよ!って花陽ちゃんからおにぎり貰ったり



穂乃果ちゃんと帰る時にクレープ食べたり



凛ちゃんとはラーメン食べたり


エリちがお芋さんくれたり


真姫ちゃんからは――――

にこっちには――――

うう………



もうちょっとセーブするんやった……




とにかく元の体重まで戻さんと


ことりちゃんに衣装のサイズ大きくして、とか言いたくないよ


何気にお腹見える衣装多いし


このままやったら一人だけ浮くやん




グッと心の中で決意する


ダイエットなんてやったことないけど、頑張って痩せるよ!

チュンチュン


いつもより早く起きて



神社のお手伝いに行く前にジョギングすることにしたんやけどな


希「うう、さむ………」


ぴゅう、って吹く風がきつくて


12月入ったばかりやけど早朝は寒くてな


あかん。いま挫折したら本格的に冬が来る




そしたらおせちとかお餅とか食べられんやん


穂乃果ちゃんちのお餅楽しみにしとるんよ




………頑張らなね

はっ…はっ……


町内をぐるっと一周


最初は寒くて仕方なかったんやけど


寒さは走ってるうちに慣れてしまって


むしろ今は少し暑いくらいやね




おっと、公園やん


丁度いいしちょっと休憩しようかな

希「はぁ………はぁ………ふぅ…」


良い汗かいたなぁ


ベンチに腰掛けて、首に巻いてたタオルで汗を拭きとる


早朝のジョギングは初めてやったけど、意外にええなこれ




「あら、希ではないですか」


横から聞き慣れた声


ウチが声のした方をみると海未ちゃんがおってんな

海未「おはようございます。ジョギングですか?」


希「おはようさん海未ちゃん。あ~…――――」


希「そ、そうやね、ちょっと早く起きてしまってな」



ダイエットって言いづらくて、ちょっと嘘をつく



海未「奇遇ですね。私も少し早く目が覚めてしまいましたので、稽古の前に少しジョギングを」




稽古…………そういや海未ちゃんの家、日舞の家元やったね


毎朝稽古してからμ'sの練習してるんやっけ


ウチにはとても真似できんよ

海未「それでは、私はこれで」


希「あ、うん。また学校でな」



軽く会釈して海未ちゃんが走って行った




ウチも海未ちゃんみたいに頑張らんと痩せれないんかな……





ようし、まだ時間あるしもう少し走ろうかな


パシンと頬を叩いて気合を注入や

――――――――――――

――――――――

――――



「希、希。起きてください」


誰や……ウチ、もうちょっと寝て――――


ユサユサ



誰かがウチを揺すって―――





「希。もう皆行ってしまいましたよ」


ユサユサ


希「ふぇ………海未ちゃん……?」

放課後の部室



誰よりも早く来たウチは、朝の疲れが今頃きたのか


とにかく眠たくなって、皆が来るまでちょっと目をつむっていたんやけど



海未「いつまで寝ているんですか。もう皆屋上ですよ」


希「んー…………ごめんなあ。なんか疲れてん…」



ふぁ…、欠伸が出る



皆が来るのを待ってたはずが、いつの間にか眠ってしまってたんやね




海未「大丈夫ですか?体調が優れないようですが…」



希「心配してくれてありがとうな。すぐ準備するから、海未ちゃん先行って――――」


ぐぅ~

大きな大きなお腹の虫の音


わ、わわ!


思わずお腹を押さえる



海未「希、ちゃんとお昼食べましたか?寝ている間もずっとぐーぐー言っていましたが…」



えっ、ずっとお腹なってたん?


めっちゃ恥ずかしいやん



希「は、はは……。今朝からちょっと食欲なくてな…‥」



顔が赤くなっているのが自分でもわかる。すごく恥ずかしいよ

海未「………本当ですか?」


希「う、うん。本当――――」

海未「本当ですか?」



こくんと頷く



すると、険しい表情で海未ちゃんが近づいてきてな



海未ちゃんなんかすっごく怖い

すりすり


海未ちゃんがウチのお腹をさする



ぐぅ~


それに反応するウチのお腹



も、もう恥ずかしい………!

面白い

可愛いなあもう

再開します

>>3
猫の人です。にゃー

>>17
ありがとうございます。

>>18
のんたんが可愛いのはいつものことやん?

はぁ……



海未ちゃんが大きなため息をついてな


海未「嘘……ですよね?ダイエットですか?」


って



な、なんで分かったんや?


海未「図星ですか。どうして分かったのかって顔をしていますね」


海未「希は極端すぎます。やっていることが穂乃果と一緒ですよ」

海未「突然早朝からの運動、そして食事はとらない。穂乃果も時々するのでピンときました」


海未「無理なダイエットは逆効果って事を、希は分かっていると思っていましたが…」


希「知ってた、知ってたよ。けど――――」




言葉が詰まる


だってそうやん


分かってたのに、やってしまっているなんて馬鹿みたいやん

海未「……希。本当に痩せたいのですか?」



突然の言葉に目をぱちくりさせてしまったけど、思い切り頷いたんよ


そしたら、今まで険しい顔やった海未ちゃんの顔が緩んでな



海未「それでしたら明日、今朝私たちが会った時間に私の家に来てください」


海未「私がきっちり特訓メニューを組みます」


海未「でも、その前にまずは栄養補給です。購買で何か買ってきて食べてください」

海未「体が資本です。いつも希やにこが言っている事ですよ」




本当、そうやんなぁ


自分で言ってる事なんに、ウチがそれを守ってないなんて


思わず苦笑してしまってな



海未「夕食も朝食もきちんと食べてくださいね」



うん、正直キツかったから助かるよ


海未ちゃんありがとうな



チュンチュン



海未ちゃんに言われた通り、海未ちゃんの家に来てん


前に来たこともあったけど、すごく大きいなぁ


お城みたい。普段あまり意識してないけど海未ちゃんってやっぱりお姫様なんやね




さて、こんな早朝に呼鈴を鳴らしてもええのやろうか



そんな疑問が脳裏をよぎったんやけど



海未「お待たせしまた希」

後ろから海未ちゃんの声


振り返ると海未ちゃんと…………




凛「ん~!」


なんか猿轡をして簀巻きにされてる凛ちゃんがいて



海未「凛を連れてくるのに時間がかかってしまいましたが、何とか間に合いました」


なんだか満足げな海未ちゃん

海未「せっかくの早朝練習なのですから、凛を誘ってみました。が、断られたので連れてきました」


それ、誘拐なんじゃ



海未ちゃんがごそごそと猿轡を外す


凛「ぷはっ……!海未ちゃんいきなり何するにゃー!」


海未「ふふふ、私や希と仲良く剣道しましょうか?」


凛「け、剣道!?い、嫌にゃ!凜はかえ――――」


海未「ではどうぞ中に入ってください」



ずるずる。凛ちゃんを引っ張って中に入って行ってん


中から聞こえる凛ちゃんの叫び声


これ、助けた方がいいんかな?

海未ちゃん家に併設されてる道場に案内されてな



更衣室でお着替え中やね




凛ちゃんは諦めたのか渋々着替えててな


海未ちゃんスイッチ入るとなかなか止まらんからなぁ



凛「うう………なんでこんなことに……」


ごめん、多分ウチが原因


でもまあ、案外楽しくできるかもよ?

海未ちゃんが用意してくれた袴を着たんやけどな


巫女装束とは雰囲気が違って、気持ちが引き締まって少しドキドキ



凛「うう……さむいにゃ……」


凛ちゃんは肩をすくめてぶるぶる震えてる



凛ちゃんなんで巻き込まれたんやろうね

道場の入り口で待ってた海未ちゃん



ウチと凛ちゃんを見て、似合っていますよって言ってん


ちょっと嬉しかったけど、すぐ海未ちゃんの顔が引き締まって



海未「それでは始めますよ」


そういうと、海未ちゃんは道場に一礼をして、すたすたと中に入ってな


ウチと凛ちゃんも真似するように一礼して入ろうと――――





希「あひゃあ!?」


凛「うひゃぁ!?」




変な声をあげるウチと凛ちゃん

道場の床がめっちゃ冷たい!



寒さにはある程度慣れていると思ったけど


足の裏は全然駄目やん



海未「どうしたのですか。早く来てください」


凛「そ、そう言われてもにゃ…」


希「ゆ、床がな……」

海未「床がどうかしたのですか?」


希「床が冷たくて――――」


海未「気合でどうにでもなります」


即答




凛「気合でもどうにでもならないにゃー!」


凛ちゃんが抗議するも


海未「早くしてください。時間は限られているんですよ」


と一蹴する

確かに時間がないのは分かるけどな


無理なものは無理っちゅうか、これ大丈夫な海未ちゃんが特別ちゅうか





道場の入り口でうだうだしてるウチと凛ちゃんに業を煮やしたのか


海未「ああ、もう!時間がないって言ってるじゃないですか!」


がしっ!


ウチと凛ちゃんの腕をつかんで無理やり中に……!




ああっ!?アカン!だめや!冷たいっ!痛い!


海未ちゃん放して!放してぇっ!

海未「さあ、時間も押してますし始めますよ!」


海未「いつまでもふたり抱き合ってないで、竹刀を持ってください!」



凛「そ、そんなこと言っても…」


希「このままやったら足がしもやけになってしまうよ…」



海未「しもやけがなんですか、泣き言を言わないでください!後で薬を塗れば大丈夫です!」

アカン。今の海未ちゃん、なに言っても聞き入れてくれない


若干の後悔



海未「それにまだ12月になったばかりです。もっと冷える日もありますし、今日はまだ温かいほうです」


海未「あ、こら凛!裾を踏んではいけません!」


凛「ひゃ!?ご、ごめんなさい」


海未「だいたい凛も希も最近だらけ過ぎです!」


海未「凛、あなたは特にだらけていたので今日呼んだのですよ!」


海未「怠慢な心は今日ここで捨てて―――――」

説教に近い注意を受けてる間に足は慣れてきてな


なんだかもう慣れたっていうか、足の感覚が麻痺してきたっていうか


凛ちゃんも慣れたんかな





なんか涙目な気がするけど



海未「ふぅ………それでは始めますよ。希、剣道の経験は?」


希「ウチ?えーと……中学校の授業で少しやったかなぁ」


海未「なら大丈夫ですね」

ふぅ……




そう一呼吸を置いて



海未「ヤアーーーーー!」




ブンと、竹刀を一振り



海未ちゃんの声が道場に響いてな



ウチ、鳥肌がぶわーって立ってん

普段の海未ちゃんでも、ライブの時の海未ちゃんでもなく


きゅっと引き締まっているっていうか


お姫様っていうより、お姫様を救う王子様みたいでカッコええな




ことりちゃんが前に「海未ちゃんに男装させてみたい」って言ってたけど


くすくす。なるほど、これはウチも見てみたいな



海未「さ、ふたりともやってください。………ってなに呆けているんですか?」

はっ……



いかんいかん。つい見惚れてしまってたよ



凛ちゃんも見惚れてたみたいやね




しょうがないよ、海未ちゃんカッコええもん

凛「にゃ、にゃああああー!」



凛ちゃんが涙を浮かべながら竹刀を一生懸命に降って



海未「ですから、にゃあではないと何度言えばわかるんですか!」



バシン!


海未ちゃんがバシンと、凛ちゃんの竹刀の先を叩く



凛「にゃあ!?ご、ごめんなさ~い!」

海未「希もさっきと構え方が違います!ちゃんと直してください!」


ひゃあ、こっちにもゲキが飛んできてん




やああーーーっ!



海未ちゃんには及ばないけど、一生懸命声を出して竹刀を振る




けど、だんだんと腕が痛くなってきてな


ちょっと竹刀を振り上げるのを小さくしたら


海未「希、もっと振り上げてください!子供の遊びではないのですよ!」

海未ちゃん厳しい



掛け声が小さい、構え方がおかしい、泣くな、文句言うな


まさに鬼教官



凛ちゃんが嫌がっていた理由がわかったよ


次第にウチも涙が出てきてな、凛ちゃんと泣きながら竹刀振ってん




ウチの為にやってくれるのは嬉しいけど、もうちょっと優しくしてほしいかな


ウチら褒めて伸びるタイプなんやし……なんて、口にもだせん

海未「…………あら、もうこんな時間ですか」


海未「残念ですが、そろそろ終わりにしましょう」




お、終わった………


力が抜けて、ウチと凛ちゃんはその場でへたり込んだんやけど




海未「最後に、跳躍素振りを100回して終わりますよ」



にっこり笑顔で悪魔の一声



ひ、ひぃー!もう許してー!


ウチもう力が入らんよー!

希「はぁ………はぁ………もう………無理……」


凛「凜ももう嫌だにゃ…」



肉体的に限界なウチと精神的に限界な凛ちゃん


そんなウチらをしり目に海未ちゃんが



海未「いつまでもそこで座ってないで、雑巾がけしますよ」





は、はは…………

手足がくがくで


今日一日の体力全部使い切った感じで


もう、今日学校休もうかな




このまま家に帰って、学校には仮病で――――


なんてことも海未ちゃんにはお見通しで



海未ちゃんがウチらを逃がさないようにと、朝ごはんは一緒に済まそうって

今朝の凛ちゃんの事も考えると



これはどうやっても逃げられないって観念して



さっき海未ちゃんからもらった肝油ドロップを口に含んだ



久しぶりに食べた肝油ドロップの味を楽しんで



できることなら休校にならないかなぁ



って、儚い願いをしつつ


朝食ができるまでの間、凛ちゃんと壁にもたれかかって少しだけ寝たよ

次の日からは、ウチらが行かずとも海未ちゃんが迎えに来てな





花陽ちゃん家に逃げてた凛ちゃんもあっという間に捕まって




仲良く3人竹刀を振る



これが1週間続いてな

減量目標なんて3日目には達成できたけど


海未ちゃんのやる気スイッチが中々切れんで



5日目には、なんでか穂乃果ちゃんも巻き込まれてたな



なんか申し訳ないよ




くすくす。でも、なんだか楽しかったなぁ



あれなんかな。ほら、苦労を共にした仲ちゅうか



これで結束力が高まったちゅうかな


でもやっぱり



好きなもんばかり食べてたら



最後には自分に戻ってくるんやから、しっかりせんとね



おせちや穂乃果ちゃんちのお餅、楽しみやけど抑えて食べよう



そうせな、また海未ちゃんの地獄の朝練が待っとるよ



暴飲暴食はせんように




ウチとの約束やで?





おわり

最後まで読んでいただきありがとうございました。
凛ちゃん可愛い。
のんたんは太ましい子じゃありません。包容力があるだけです。

ちなみにですが、次回どちらを見て見たいですか?


A.にこまき 
ダイアリーにこと真姫ちゃん
にこまき初挑戦の為、とんでもないことになるかも


B.のぞこと 
アンジャッシュネタ。下ネタあり。


雰囲気よかった
にこまき見たい

>>53-66、70-72
たくさんの回答ありがとうございます。
次回作の参考にさせていただきます。
下ネタありって書いた割に、書いていくと下ネタじゃ済まない可能性急浮上


そして某まとめサイトさんで私が予想していたことが起こってしまい、大変残念に思います。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年04月27日 (日) 01:28:47   ID: XpyItzTQ

C.ことうみ

2 :  SS好きの774さん   2014年04月28日 (月) 19:18:43   ID: RyVOwasY

のんたん推しとしてはのぞこと気になるなあ
予想していたことってそういうことなのかな。せっかくいいSSなのにね

3 :  SS好きの774さん   2014年04月28日 (月) 21:20:03   ID: 9A2fVpTI

どうせ森きのことかそこらへんだろ
もうコメント欄撤廃した方がいいんじゃねえのかああいうサイト

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