オティヌス「私は」 (57)

短編
1時までには確実に終わります

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1398434556


私は何のために生まれてきたのだろう


私はどうして生まれてきたのだろう


これまでの長い人生の中で、その答えをずっと探し続けていた


どれだけ考えたところで、良い答えなど浮かびはしなかった




私は世界の誰からも必要とされていない


私は世界の誰からも疎まれる存在だ




どれだけ世界を作り変えても


どれだけ希望を持っていたとしても




それだけは、変わることが無かった


私は欲しかった


絶対に、何があっても変わらないものが


だがそんなものはどこを探したって見つかるわけがない


この世界に変わらないものなんてあるわけがないのだから


私はそれを誰よりも思い知っているのだから




私の望みは叶わないことばかりだ




だから…だから……私は……!!


私はもう、元いた世界へ帰ることが出来ない




前へ、前へ、前へ



そうやって進んできた結果がこれだ




私は


私は帰りたい


元いた世界へ


もう一度


そのためには――


私は、あの世界へ戻りたい


けれど、今までの世界を無かったことにするなんて都合のいいことは出来ない


作るしかないのだ


もう一度、元いた世界を


私の手で


もう一度―――

私は作り変えた


元の世界を目指して


少しでも近づくように―――




私は帰りたい


あの世界へ帰って……そして……








そして……?



私は妥協した


どれだけ似せて作ったところで、それは私のいた世界ではない


必ずどこかしらズレが生じてしまっている


だがズレとはいっても非常に小さなものだ


この世界の人間は、そのズレに絶対に気付かないだろう


そうして、この世界で幸せに過ごして、笑顔の絶えない素晴らしい生活を送っていくことだろう


この世界の小さな小さな穴を知っているのは、この世界で私一人しかいない


いや……分かっている


この場合、おかしいのは世界ではない


私の方だ


私は決意した


もう一度、あの世界へ挑戦することを


一度は手放した力を、また握らなくてはならない


私は自分の力が怖かった


どうしようもなく


だが、あの世界に戻るためならば―――


私は壊した


槍で力を整え、世界をぶち壊した……もう何度目のことだろうか


そうしてまた、ここへ戻ってきた


何もない、黒一色の空間へと


だが、あの頃とは少しばかり状況が違う


私以外に、もう一人―――


幻想殺しを右手に宿した人間、上条当麻がいた


こいつは私を止めようとし、そしてなす術もなく失敗した


ざまあみやがれ


その右手さえなければ、お前のようなちっぽけな存在など……


私はこの男の心を徹底的に折りにかかった


もう二度と立ち上がってこないように


だがこいつは折れなかった



どうして折れないんだ!

これだけの地獄を味わってもなお、希望を持っているとでもいうのか!?



……認めるしかあるまい


こいつの精神力は、大したものだ


だが、それは「人間」というカテゴリーの中での話だ




次の世界で必ずこいつは折れる

すいません寝落ちしました
人がいたら投下します

>>19
カモーン!

どっちがいいのか分からないのでとりあえず夜で
>>22申し訳ないです

今度こそ投下します


私は上条当麻に伝えた



お前はこの世界に不必要なのだと



上条当麻という人間は、どういうわけか自分よりも他人の都合を第一に考える馬鹿野郎だ


だからこの世界を作った


誰もが幸せなこの世界を


自分がいなければ、こんなにも世界は幸福で包み込まれていることを思い知ったか


自分は不必要な存在なんだ


この世界の誰からも必要とされていないんだ


分かったか?






分かっているのか……私は……


私は促した


自ら命を絶つことを


こいつの心はもう完全に壊れているはずだ


そして


こいつは、私の予想通りに、自ら命を絶つことを決めたようだった


それでいい


これで、私の中で、ようやく一区切りできる


これでいいんだ―――


私は何のために生まれてきたのだろう


私はどうして生まれてきたのだろう



見つかるはずのない答えを探し続けて、私は一体何を求めている?


もう何度目になるのか分からない問答を、ただ一人、静寂に包まれた校庭で繰り返した



きっとこれから先の未来でも、この答えが出ることはないだろう


きっとこの問答に意味などないだろう


そもそも、答えなどあるはずがないんだ





その時、足音が響いた―――

私は今、疑問を浮かべていた


幻想殺しを持つ人間―――上条当麻


あれだけ地獄を味わってもなお


あれだけ打ちのめされてもなお



まだ、私の前に立ちはだかるというのか―――




私は尋ねた



今更何を埋め込まれたのか、と



こいつは答えた





「きっと、お前の知らないものを」



私は、未だに未練を捨て去ることが出来ずにいるのか?


目の前に立ちふさがる不遜な人間を吹き飛ばし、切り刻み、爆散させた


そのたびに無限の地獄へと放り込んだ


それなのに

それなのに!

それなのに!!


殺したら殺した数だけ、こいつは這い上がってきた


そうして私の前に立ちふさがってくるのだ

私は槍を握る手に一層力を込めた


上条当麻という人間は気が遠くなるほどの回数殺されながらも、私に喋りかけることをやめなかった


私は激昂した


手に握っていた槍を目の前の人間へと放つ


世界は瞬く間に崩れ去り、まっすぐ上条当麻に向けて伸びていく


だがこいつは真っ向から立ち向かった


真っ向から槍を破壊した



「俺は、ちゃんと、終わらせたぞ……」



上条当麻は笑っていた


そうして私に語りかける


私は腹立たしくて仕方が無かった



人間ごときが私を語るな!知った風な口を利くな!

お前に何が分かる!これまでの私の何が分かるんだ!!

私がこれまでどれほど苦しんできたか……!!



「俺とお前は共にこの地獄みたいな道を歩いてきた」


何を……!


「今の俺なら分かるよ、そういうの」


…………

私はもう一つの可能性、「失敗100%」を開花させた


この人間を殺す


確実に


もう終わらせるんだ


元の世界はもういらない


もう迷わない



新しい世界を


次の世界を!


私は進むんだ!!




前へ!!!


私は放つ


世界を個へ


私は放つ


元の世界への道を断ち切る矢を


私は放つ


第一希望を捨てて、新たな道を歩くために!!






私は―――!!!











―――私は何のために生まれてきたのだろう?


私は勝利した


こいつはもうじき死ぬ


今までとは違う、完全なる死だ


上条当麻はゆっくり口を開いた



「こいつを、役立ててくれよ」



……何だと?


私は一瞬言葉が出なかった


しかしそれを表情に出すことなく平然を装う


そしてこう伝えた


お前の願いを叶えるいわれはない、と


上条当麻は首を振る


ぎこちなく、ゆっくり、ゆっくり言葉を紡ぐ


こんな状況だ


最期は他にもっと言うべきことがあるだろうに


それなのに、こいつはその命が尽き果てる瞬間まで、私に言葉を紡ぐことを止めなかった




「挑戦しろよ、オティヌス」



私は、本当に微かなぬくもりを感じていた


上条当麻の右手が、そっと私の頬を撫でた


ぎこちなく、弱々しく、優しく


そっと




「……一番初めに、何をしたかったんだ」




一番……初めに……?




「それを叶えない限り、お前も俺と同じ……幸せな世界に押し潰されるだけの、惨めな迷子になっちまうぞ……」




私の頬を撫でていた右手が、だらりとぶら下がった


上条当麻は死んだ


私が殺した


私は考えていた


元の世界へ帰りたいと思ったのは、帰りたいと思う目的があったから


その目的は


そうだ


そうだよ


私は





「……『理解者』が欲しかったのか、私は」




私は、今この手の中で息絶えている上条当麻をまじまじと見つめた



―――この男は私と誰よりも長い時を過ごした


―――この男は私と同じ道を歩み、同じ苦しみを知っていた


―――この男は誰よりも私を理解してくれていた




私は、欲しかった


何度世界を繰り返しても

どれだけの犠牲を払ってでも


私の痛みを分かってくれる絶対の理解者が



私は欲しかった


私はなおも上条当麻の亡骸を見つめた



そうだ



私が欲しかった理解者は間違いなくこいつだったんだ


上条当麻こそが、私が求めていた理解者だったんだ


だが


こいつはもう動かない、こいつはもう喋らない


死んでいるから


私が殺したから





「本当に……ひどい一撃だな、ちくしょう」





―――私は何のために生まれてきたのだろう




ずっと探し続けていた答えを見つけた気がした


あるはずのない答えを探して何になるんだと、そう思っていた


だが、答えは確かにあったんだ




私は




私は、上条当麻という一人の人間と出会うために生まれてきたんだ




答えは決まった


元の世界にあれと同等の理解者などいない


ならば、選択肢は一つしかない―――






to be continued

新約10巻に向けた最後のオティヌスSSでした
次はバードウェイかみさきちを書きたいと思います
読んでくれた人ありがとうございました

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年04月26日 (土) 00:21:09   ID: Mas41P_U

この作者オティヌス愛が大きすぎる…これが吉と出るのか凶と出るのか…

2 :  SS好きの774さん   2014年04月26日 (土) 10:13:52   ID: 7S_T4dWm

恐らくこの作者の願いは届き、新約10巻でオティヌスは死なない

3 :  SS好きの774さん   2014年05月14日 (水) 19:01:56   ID: mqaG0w4I

流石だな(^_^)

4 :  SS好きの774さん   2014年05月19日 (月) 22:43:32   ID: AFlona9Q

>>2
当たったwwww

5 :  SS好きの774さん   2014年05月30日 (金) 23:30:46   ID: t_nPDqMV

最高だアアアアアアアアアアアアアアアア!

6 :  SS好きの774さん   2014年07月16日 (水) 21:51:30   ID: 7WibL3sI

ちくしょう
なんてひどいSSなんだ(涙)

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