【神のみ】  歩美「私と勝負しなさい」  桂馬「へ?」  【アスピオの人】 (216)

■神のみぞ知るセカイが題材のssです。

■桂木桂馬と高原歩美のカップリングです。
 嫌な人は戻る推奨

■アニメしか見てない人でも分かるように作っています。
 極端に言えば、一期の第一話さえ見ていればなんとかなります。

■2人がくっつくまでの過程が長い。
 とっとといちゃつけって人には向かない。

■R指定は特にありません。健全?な内容です。

■創作キャラ(女子生徒など)はいます。多少は物語に絡んできます。

■矛盾点やらキャラ崩壊があるかもしれません。
 その際はご指摘していただければ幸いです。

■自分の作品は完結後、ピクシブに上げる予定です。作品名はスレタイのままです。
 ピクシブの小説カテゴリで、検索ワードにスレタイを入力していただければ
 作者の作品は見つかると思います。
 読み直したいという方はどうぞご利用ください。

■作品の更新や、新作の投稿はツイッターでお知らせします。
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※ここから下は作品の内容や更新については関係のない注意書きです。
 作品を読みたいだけ、コメントはしないという方は飛ばしてくださって問題ありません。

■続編を読みたい、別の作品を書いて欲しいと言ってくださった方へ
 自分が書いていることを知らせるため、これ以降スレタイの末尾に
 【アスピオの人】
 と書き加えます。

■作者は基本的にコメントしてくださった方全員に返信をします。
 返信はいらないという方は、お手数ですがその旨をお伝えください。
 ただしスレの混乱を避けるため、乗っ取り、批判、
 作者や作品に全く無関係なコメントなどには返信しません。

■以下は作者のこれまでの作品です。(未完結作品を含みます)
 ・ユーリ「俺、アスピオに引っ越すことにするわ」 リタ「へ?」(完結)
 ・ユーリ「飛ばしていきますか!」 リタ「小ネタ集!」
 ・【神のみ】  歩美「私と勝負しなさい」 桂馬「へ?」 【アスピオの人】

■若木先生、6年間の連載お疲れ様でした。

※この作品を読む前に

1.この作品はもしも冥界や新地獄、駆け魂が無ければ、
 桂木桂馬が付き合っていたのは高原歩美ではないか?
 という考えに基づいて作成しています。

2.物語の開始時点は、アニメ第一期、第一話の冒頭からです。
 漫画の第一話冒頭と同じです。

3.冥界や新地獄、駆け魂隊が存在しないという設定です。
 そのためハクアとノーラ、ユピテルの姉妹は出ない予定です。本当にすみません。
 ただし、エルシィは桂馬の双子の妹、桂木エリとして登場します。
 二階堂先生もいます。

それでは、投稿を開始します。


――――これで10000人目のヒロイン攻略だ

私立舞島学園高校2年B組の授業中、
眼鏡をかけた身長174cmの青年、桂木桂馬は心の中でそう呟く。

桂馬「(ボクに解けないギャルゲはない・・・
   フハハハハハ)」

桂馬はそう思いながら、携帯ゲーム機のPFPを見る。
そんな桂馬に担任の教師、二階堂由梨が歩み寄る。

二階堂「ゲームは楽しいかい? 桂木君
    担任の授業より楽しいのか? ああ?」

桂馬「すいません、セーブポイントまで待ってください」

二階堂「・・・」

二階堂の中で、なにかがブチりという音と共に切れる。




――――

桂馬「・・・ったく、あの暴力教師め。
   何もここまで殴ることないだろう」

桂馬は授業の後、ぱんぱんに腫れた顔で廊下を歩いていた。
    
???「オタメガネー!!」

桂馬「ん?」

桂馬が振り返った途端、一人の女子が桂馬にぶつかる。


桂馬「ぐおおっ!?」

???「あいた!」

桂馬「・・・うおおお!
   僕のPFPがああああ!」

桂馬はぶつかった衝撃で壊れたPFPを持ちながら叫ぶ。

???「悪い、悪い、
    スピードで過ぎてブレーキの限界超えてた」

桂馬「(・・・こいつ、同じクラスの高原じゃないか)」

桂馬にぶつかったのは2年B組の女子、高原歩美だった。

歩美「ねーオタメガネ
   今日あんた一人で屋上の掃除やっといてくれる?」

桂馬「へ?」

歩美「今日の掃除当番、あんたと私じゃん?
   私、あんたと違って忙しいからさ」

桂馬「(・・・ぶつかっておいてそれかよ
    ・・・これだから現実女は)」

桂馬は苛立ちを感じながら、歩美に言い放つ

桂馬「断固断る!!」

しかし、桂馬が振り返ると、そこに歩美の姿は無かった。
代わりにホウキが一本横たわっている。

桂馬「・・・・・・」



――――――学校の屋上

桂馬「・・・ったく、
   なんて理不尽なやつらだ」

桂馬は屋上を一人で掃除しながら、そう言う。

桂馬「僕が好きなのはゲーム女子だけさ!
   現実なんてクソゲーだ!」

桂馬は掃除を終え、携帯通信機を取り出す。

桂馬「さーて、今日も迷える子羊たち・・・
   もといギャルゲーマーたちからのメールが届いているな」

桂馬は自分宛に送られたきたメール一つ一つに丁寧な文章を書いて返信する。
そうしていると、一人の女子が桂馬に歩み寄って来る。

???「にーさん、何してるんですか?」

桂馬「うおっ!?
   ・・・なんだ、エリか」

桂馬に近づいてきたのは桂馬の妹、桂木エリだった。
妹といっても、エリと桂馬は双子であり、年齢は同じである。

エリ「まーたゲームをしてるんですか?
   先生に怒られちゃいますよ?」

桂馬「これはゲームじゃない・・・
   一体、何の用だ?」

桂馬は通信機をポケットに入れ、エリの方を向く。

エリ「一緒に歩美さんの応援に行きましょう!」

桂馬「・・・は?」


エリ「だから、歩美さんの応援ですよ!
   私たちと同じ2年B組の高原歩美さんです!」

桂馬「・・・応援?」

エリ「はい、もうすぐ歩美さんは陸上競技の大会に出るんです!
   優勝できるよう応援しましょう!」

桂馬「・・・」

高原歩美という、今一番聞きたくない名前を出され、桂馬はイラつく。

桂馬「・・・誰が行くか」

エリ「えっ・・・」

桂馬「そんなに行きたきゃ一人で行け」

エリ「・・・にーさんは歩美さんのことが嫌いなんですか?」

桂馬「あーそうだ
   嫌いだね」

エリ「・・・」

エリはその言葉を聞いて、目に涙を浮かべる。




桂馬「な、なんで泣くんだよ?」

エリ「だって・・・歩美さんはすごくいい人なのに・・・」

桂馬「(僕一人に掃除を押し付けるあいつのどこがいい人なんだよ・・・)」

エリ「クラスが変わって、みんなと馴染めなかった私に・・・
   初めて・・・声をかけてくれた人なのに・・・」

エリの瞳からは、徐々に涙が流れだす。

桂馬「わ、分かった!
   僕も応援に行くから! な?」

エリ「本当ですか!」

先ほどの悲しみの表情から一転、エリは笑顔を浮かべる。

桂馬「(・・・こいつ、わざとじゃないだろうな)」

エリ「エヘヘヘ・・・」


――――――学校のグラウンド周辺

エリ「いました! にーさん」

桂馬「見れば分かる・・」

エリと桂馬は、学校のグラウンドで陸上競技の練習をしている歩美を見つけた。

エリ「さ、応援しましょ!
   にーさん!」

桂馬「応援ねぇ・・・」

エリ「歩美さん、ガンバレー!」

グラウンドにいた歩美はその言葉に反応し、エリに手を振る。

エリ「ほら、にーさんも」

桂馬「・・・ガンバレー、タカハラ」

エリ「(全然気持ちがこもってない・・・)」

エリはがっくりと肩を下ろす。



桂馬「(・・・大体髪をくくってない陸上部とか、
    陸上部失格だっての)」

歩美「さぁ、気合入れていくわよ!」

桂馬がそう思った瞬間、歩美は自分の髪をくくる。

桂馬「っ!?」

桂馬はその偶然により、動揺する。

エリ「どうしたんですか? にーさん?」

桂馬「・・・なんでもない
   (まだだ! まだブルマをはいていない!)」

桂馬はわけのわからない言い訳を心の中で言う。


――――

それから5日後

エリ「がんばれー! 歩美さん!」

桂馬「(・・・よくもまぁ飽きずに続けられるな)」

エリと桂馬は、この数日間休まず歩美の応援を続けていた。

3年の陸上部女子A「ちょっとぉ、歩美!」

グラウンドで練習していた歩美は、先輩の女子に呼ばれる。

歩美「はい! なんですか?」

3年の陸上部女子A「なんであんたらが先に走ってるわけ?」

3年の陸上部女子B「2年はうちら3年が走るまで待機でしょ?」

3年の女子たちは、鋭い目つきで歩美を睨む。

歩美「先輩方は今日は来られないかと思って・・・
   本番まで時間もありませんから・・・」

3年の陸上部女子A「聞いたー? 本番だってさ」

3年の陸上部女子B「すーっかり選手気分ねー」

歩美「・・・」


3年の陸上部女子A「なんで私が補欠であんたが代表なのよ
         たまたま一回だけいいタイムが出ただけじゃん」

沈黙を続けていた歩美はとうとう耐え切れなくなり、口を開く。

歩美「罰なら早くお願いします!
   本当に時間がないですから! 本番まで!」

3年の陸上部女子A「・・・何こいつ! 
         外周してきなさい! 外周30週よ!」

歩美「了解!」

そう言って歩美は走り出す。

エリ「・・・うー、嫌な先輩
   ああいう人もいるんですね」

桂木「・・・・・・」

桂木はただ沈黙し、その状況を見続けていた。




―――――

その翌日

エリ「さあ! 明日はいよいよ大会当日です!」

桂馬「長かったな・・・」

エリ「私たちの応援で歩美さんを一位にしましょう!」

桂馬「へいへい・・・」

エリ「そしてあの先輩たちを悔しがらせましょう!」

桂馬「(・・・先輩というものに嫌な思い出でもあるのか?)」

エリと桂馬が会話をしていると、突然グラウンドから大きな声が上がる。

桂馬「なっ、なんだ?」

桂馬がグラウンドを見ると、倒れたハードルと足を押さえる歩美の姿が目に映る。

エリ「まさか、歩美さんが怪我を!?」



―――――――学校の保健室

2年の陸上部女子A「ええー!? ねんざ!?」

歩美「なんで・・・大会は明日なのに・・・」

2年の陸上部女子A「なんか変じゃなかった?
         今日のハードル?」

2年の陸上部女子B「そうよ!
         あそこだけ台と台との間隔が短かった!
         でなかったらすっ転ぶわけないよ!」

2年の陸上部女子A「・・・誰が動かしたのかな」

歩美「・・・・・・」



――――

エリ「大丈夫ですか、歩美さん?」

歩美「心配してくれてありがとう、エリー
   ・・・大会には出れそうにないけどね」

エリと桂馬は保健室にいる歩美のもとを訪れていた。

歩美「オタメガ、一応あんたも応援してくれてたんだよね?
   ・・・ありがとね」

桂馬「・・・」

歩美「・・・こんな結末になっちゃって、ごめん」

エリ「歩美さん・・・」



――――

それから数時間後

歩美「・・・どうしたのよ、桂木
   こんなとこに呼び出して
   ・・・エリーはいないみたいね」

桂馬「ああ、先に帰った」

桂馬は歩美をグラウンドに呼び出していた。

歩美「・・・呼び出しの手紙を乗っけたの、
   お見舞い用のフルーツバスケットじゃない
   これ、イヤミ?」

桂馬「・・・」

歩美「こんなもんもらって喜ぶ訳ないでしょ!」

体に力が入っている歩美とは対照的に、桂馬は冷静を保つ。

桂馬「それ食べて元気だせよ
   明日大会だろ?」

桂馬がそういい終わると、
歩美はフルーツバスケットに入っている果物を桂馬に投げつける。

桂馬「うお!?」

歩美「この足見て言え!
   大会なんか出られると思うの!?」

桂馬「思う」

桂馬は間髪入れずに答える。

歩美「なっ・・・」



桂馬「・・・だって怪我なんかしてないから」

桂馬は真っ直ぐな視線を歩美に向ける。

桂馬「ハードルで転んだくらいで、怪我なんかするわけないだろ」

歩美「走ったこともないくせに!
   スピードを考えてよ!」

叫ぶ歩美を相手に、桂馬はゆっくりとした口調で話す。

桂馬「・・・確かに全力で走ってたら危険だったろうな
   でも、あのとき高原は全力で走ってなかった」

歩美「!?」

歩美は動揺する。

歩美「な・・・なんでわかるのよ・・・
   そんなの・・・」

桂馬「あのとき、髪くくってなかっただろ?」

歩美「!?」

歩美は思わず髪を抑える。

桂馬「本気出すときはいつもくくってただろ
   ・・・もしかして、最初からコケるつもりだったのか?」

歩美「・・・・・・
   これで良かったのよ」

歩美は今まで使っていた松葉杖を放す。



歩美「これで先輩たちも大会に出られる・・・」

桂馬「・・・」

歩美「先輩たちの言うとおりだよ・・・
   たまたま先生が見てるときにいいタイムが出てさ
   それで選手になっちゃって・・・」

歩美は下を向きながら言う。

歩美「ずっと練習してんだけど、それ以降いいタイム全然でないし・・・
   私なんか・・・私なんか出ないほうがいいんだよ・・・」

歩美の瞳から涙がこぼれる。

歩美「どうして走れなくなっちゃうのさ・・・
   こんなに練習してんのに・・・」

桂馬「・・・」

歩美「もういいの・・・
   ビリになったりでもしたら、おしまいだもん」

桂馬「・・・一生懸命走ったなら、それでいいじゃないか」

歩美「えっ?」

桂馬「ビリだったとしても、気にしなくてもいいんだよ」

歩美「・・・何言ってるのよ、
   あんたは無関係だからそんなこと言えるんでしょ!」

桂馬「・・・」

歩美「あんたが私の立場だったら、
   口が裂けてもそんなこと言えないわよ!」

再び、歩美の体に力が入る。



桂馬「・・・高原は何で陸上やってるの?」

歩美「えっ?」

桂馬「好きだから? 得意だから?」

歩美「・・・・・・
   一番近いのは得意だから、かな」

桂馬「だろうね
   ビリになったらおしまいって言うからには、
   得意だから続けてる意味があると思ってるんだろ?」

歩美「・・・だから何よ」

桂馬「仮にビリになっても・・・
   走れなくなったとしても、
   それがどうしたっていうんだ?」

歩美「なっ・・・
   あんた、自分が打ち込んできたものが台無しになっても大丈夫だって言うの!?」

桂馬「・・・僕はギャルゲーが無くなったら人生終わりだね」

歩美「ほら、見なさいよ」

桂馬「でも、走れなくなっても高原は終わりじゃないだろ?」

歩美「!?」

桂馬「・・・エリのやつが言ってたよ
   高原は本当にいい奴だって」

歩美「・・・」

桂馬「高原の友達は・・・
   少なくともエリは、走れなくなったからといって高原のことを嫌ったりしないよ」

歩美「・・・」

桂馬「ああ、あと僕も」

歩美「!?」



桂馬「走るのが速かろうが遅かろうが、高原は高原だよ
   それは僕の中では・・・みんなの中では変わらない」

歩美「なっ、何を・・・」

桂馬「陸上競技が無くなったとしても、高原には友達がいる
   走るのがダメなら、他に得意なものを見つければいい
   ・・・高原は全然終わってなんかいないんだよ」

歩美「・・・」

桂馬「いや、むしろこれから始まるんじゃないかな?
   ・・・だから気にしなくていいんだよ
   ビリかどうかなんて」

歩美「・・・」

桂馬「・・・困ったことがあったら僕が力になるよ
   掃除当番を代わるくらいならいくらでもしてやる」

歩美「桂木・・・」

桂馬「・・・だから、走ってこいよ
   後のことなんか気にせずさ」

歩美「・・・」

歩美はしばらく沈黙を続けた後、ゆっくりと口を開く

歩美「・・・私に走ること以外の取り柄なんて、
   本当にあると思う?」

桂馬「・・・人に好かれる才能はあると思う
   実際クラスで高原の悪口とか聞かないし」

歩美「・・・それ以外は?」

桂馬「・・・正直、僕には分からない
   でも、これから見つければいいんじゃないかな」

歩美「何よそれ、無責任じゃない」

桂馬「無責任なんかじゃないさ
   さっきも言っただろ? 
   困ったことがあったら力になるって」

歩美「・・・」





桂馬「仮に陸上競技ができなくなったとしても、
   他に高原が得意なもの、
   打ち込めるものが見つかるまで協力するよ」

歩美「・・・本当に?」

桂馬「ああ
   だから、明日は気楽にやればいいさ」

桂馬は軽く微笑みながら、歩美にそう言う。

歩美「・・・明日も応援に来てくれる?」

桂馬「・・・行くよ 
   行かないとエリが怒るから」

歩美「ふふっ、何よそれ
   私はどうでもいいの?」

桂馬「・・・嘘だよ
   高原に勝って欲しいから行くよ」

歩美「・・・ありがと」

歩美はフルーツバスケットを見る。
その中には、競技用のシューズが入っていた。




――――――2年B組の教室

数日後

エリ「やりましたね! にーさん!」

桂馬「ああ・・・」

歩美はあの後大会に出場し、ぶっちぎりで優勝した。

2年女子A「すごい! 歩美!」

2年女子B「おめでとう!」

歩美「ふっふっふっ、どうだ?」

登校してきた歩美はクラスに入った途端、賞賛の嵐を浴びる。

エリ「おめでとうございます!
   歩美さん!」

歩美「ありがとう! エリー!
   あんたのおかげで勝てたようなもんよ!」

そう言って、エリと歩美は抱き合う。

桂馬「(・・・どうやら問題なさそうだな)」

桂馬がそう考えていると、歩美が近づいてくる。



歩美「あ、あのさ、桂木」

桂馬「ん?」

歩美「・・・優勝したよ」

桂馬「そうか・・・
   高原、おめでとう」

歩美「あ、ありがと・・・
   それじゃ、私取材があるから行くね」

桂馬「ああ」

歩美は教室から出て行く。

桂馬「(・・・何をやってるんだろうな、僕は
    現実なんか放っておけばいいものを・・・)」


表向きは無愛想な態度をとっているが、実は困っている人を見ると放っておけない。
桂木桂馬は未だに自分がそういう人間だということを自覚していなかった。



~小ネタ オタメガごっこ~

歩美「――僕に攻略できないギャルゲーはない」キリッ

2年女子A「――リアルなんてクソゲーだ」キリッ

2年女子B「――すいません、セーブポイントまで待ってください」キリッ

エリ「――エンディングが見えた」キリッ

歩美「・・・・・・
   ふふふ・・・
   はははは!
   あいつ名言多すぎ!」

2年女子A「本当にイタ・・・凄いよねー
     あははは」

2年女子B「なんべん聞いても飽きないわ
     ふふふ」

エリ「――火と車輪とネジ、火薬と羅針盤と活版印刷

   文明の転換期には、必ず三つの大発明が関与している。 
   今の時代は何か!?  
   答えはギャルゲーとギャルゲーとギャルゲーだ!

   疑うヤツは石器時代からやり直せ!」」キリッ

歩美「あっはははは!
   やめてよエリー!」

2年女子A「あははは!
     お腹痛い!」

2年女子B「あいつ天才だわ!
     ははは!」

桂馬「・・・・・・」

~終わり~



以上で第一章終了です。
需要があれば以降も投稿を続けます。


需要しかないから続きも頼む

どっちも読んでた
期待乙

早く続きを投下しろ

>28
ありがとうございます。
これからも投下していきます。

>29
ご期待ありがとうございます。

>30
申し訳ありませんが、今回は前作と違い、書き溜めがありません。
全体の構想自体は既に練ってあるので立て逃げはありませんが、
何日かに一回の投稿になるかと思います。
更新はツイッターの方でお知らせしますので、よければご利用ください。

最初の3レスキモ過ぎワロタ

返レスは構わないんだけど、ssの投下以外はageるの止めろ
これくらいは最低限のルールだろ

>33
申し訳ないです。
ずっと間違ってメール欄にsagaを入力していたようですね。
以降気をつけます。
ご指摘ありがとうございました。

この度、神のみ原作が終わってしまったことについて一言どうぞ

>35
あまり悲しいという気持ちは無いですね。
一番好きな子が幸せになったので、作者にとっては最高のエンディングでした。
ただ、作者はその子とほとんど同じくらい歩美が好きなので、
どうしても今回のssを書きたくなりました。

天理かわかわ

>37
ほんとにかわいいですよね、天理
ただ、このssには出ません、申し訳ないです。
ヒロイン全員が幸せになることを切に願います。

ちひろが一番好きだから、そのエンドはいいんだけど
もっといちゃいちゃするところがみたかった

>39
>もっといちゃいちゃするところがみたかった
作者も同じ気持ちです。
最初はちひろと桂馬のその後のssを書こうかと思っていました。
でもなんだか蛇足な気がして、どうしても書けなかったです。

>>33
出た、ただの俺様ルールをマナーだと言い換える輩

ドクロウが神にーさまがギャルゲーやって
にへら顔してるたびに嫉妬してゲームを没収してたかと思うと萌える

>41
おそらく私を擁護するために書いてくださったと思います。
お気遣いありがとうございます。
しかし、【SS速報VIPに初めて来た方へ】というスレに載っているよう、
sageを入力するのがここの暗黙のルールであり、
悪いのはそれを破った私ですので、ここは穏便にしていただければ幸いです。


>42
本当にかわいいですよね、ドクロウ
最終話の笑顔は反則だと思います。

続きマダー

お待たせしました。
第二章、投稿していきます。


――――――桂木家

数週間後

桂馬「入るぞーエリ・・・
   なんだ、今日も来てるのか高原」

桂馬はエリの部屋のドアを開け、そう言う。

歩美「べ、別にいいじゃない」

エリ「にーさんも一緒にやります?
   人生ゲーム」

陸上の大会が終わってから数週間後、
歩美はエリと遊ぶためによく桂木家を訪れるようになっていた。

桂馬「僕はギャルゲー以外はやらない
   それより、母さんがケーキを用意してくれてるぞ
   食卓に行ってこい」

エリ「わー、ケーキだ!
   行きましょう、歩美さん」

歩美「う、うん」

桂馬「それじゃ、僕はこれで」

そう言って立ち去ろうとする桂馬の腕を、歩美が掴む。

桂馬「・・・なんだよ」

歩美「・・・あのさ、勉強教えて?」

エリ「私も私も!
   にーさん、一緒に来てください!」



桂馬「断る
   僕はゲームをするんだ」

桂馬はそう言って立ち去ろうとするが、歩美は桂馬の腕を放さない。

桂馬「お、おい
   放せよ」

歩美「・・・逃がさないわよ」

歩美は女子とは思えない握力で、桂馬の腕を握る。

桂馬「・・・言うとおりにするから放してくれ」




――――――桂木家 食卓

エリ「わー、おいしそう!」

歩美「ありがとうございます、麻里さん」

麻里「どういたしまして、ふふ」

桂馬とエリの母、桂木麻里は優しい笑みを浮かべる。

麻里「それじゃ、私はお店に戻らないといけないから」

エリ「はーい
   いってらっしゃい」

桂木家は喫茶店が兼ねてあり、麻里は普段そこで働いている。

歩美「麻里さんって最高だね
   優しいし、美人だし、料理は上手だし」

桂馬「元暴走族だけどな」

桂馬は小声で言う。

歩美「えっ? 今なんて?」

桂馬「なんでもない
   さっさと食って、勉強もすぐに終わらすぞ」




――――

それから数時間後

桂馬「・・・今日のところはこんなもんだろ」

歩美「ふぅー疲れた」

エリ「本当です・・・くたくた」

桂馬「やりたいって言ったのはお前らだろ・・・」

桂馬たちは数時間ほど続いた勉強に区切りをつけた。

桂馬「それじゃ、僕はゲームをするからこれで」

そう言って桂馬は立ち上がる


変に改行しない方がいいよ




歩美「えっ、行くの?」

桂馬「他に何か用があるのか?」

エリ「一緒に遊びましょうよ、にーさん」

歩美「そ、そうよ
   せっかく三人いるんだから一人で遊ばなくってもいいじゃん」

桂馬「ギャルゲー以外の遊びに興味は無い!」

そう言い放った後、桂馬は自分の部屋に戻っていく。

歩美「・・・あいつのアレ、なんとかならないの?」

エリ「私もお母さんもお手上げなんです・・・」


>50
改行したほうが読みやすいかと思ったのですが、
そうでもないでしょうか?
しばらく改行無しで投稿します

――――――桂木家 喫茶店

それから数時間後

麻里「あら? どうしたの、二人とも
   もうお店は閉めちゃったわよ?」

歩美「お店の後片付けを手伝いに来たんです
   ケーキのお礼に」

エリ「私も私も」

麻里「あらあら
   そんなに気を使わなくてもいいのに」

歩美とエリは喫茶店の後片付けを手伝い始める。

――――

数10分後

麻里「ありがとう、これでお終いよ」

歩美「お役に立てて良かったです」

麻里「ねえ、エリ
   悪いんだけど外の洗濯物取ってきてくれない?」

エリ「はーい」

エリは外に出る。
歩美と麻里は店内で二人きりになる。

麻里「・・・ねぇ、歩美ちゃん」

歩美「はい、何ですか?」

麻里「・・・もし間違ってたら申し訳ないんだけど」

歩美「はい?」

麻里「あなた、少しだけ、ほんっの少しだけ・・・
   桂馬に興味を持ってない?」

歩美「!?」

歩美は動揺する。

麻里「ごめんなさいね、変なこと聞いて
   別に答えによってどうこうしようってわけじゃないの」

歩美「・・・」

麻里「ただ、桂馬と話してるとき、
   あなたが照れてるような気がしたから・・・
   間違ってたらごめんね」

歩美「・・・当たってます」

麻里「え?」

歩美「その・・・なんというか
   気になってます」

麻里「それって・・・」

歩美「いや、好きとかそういうわけじゃないんです
   ただ、なんというか・・・」

麻里「・・・」

歩美「色々あって・・・
   辛いときに助けてもらったりして・・・
   ・・・男の子の中では、一番気になってます」

麻里「!!」

歩美「そ、そんなところです」

麻里「・・・うっ・・・ぐすっ」

麻里は突然泣き出す。

歩美「ど、どうしたんですか!?」

麻里「ごめんなさいね・・・
   つい嬉しくって・・・」

歩美「え?」

麻里「あんな変な子を気に入ってくれる女の子がいるなんて・・・
   もう、感動で感動で・・・」

歩美「・・・・・・」

――――

それから約10分後
歩美は桂木家の玄関にいる。

歩美「お邪魔しました」

エリ「また来てくださいね」

桂馬「とっくに日も暮れたからな
   気をつけて帰れよ」

歩美「あ、ありがと」

麻里「桂馬、送ってあげなさい」

桂馬「えっ?」

麻里「歩美ちゃんを、家まで、送り届けなさい」

桂馬「・・・」

歩美「い、いいですよ!
   大丈夫です」

このとき歩美は気づいていなかった。
麻里が桂馬に殺気を放っていることを

桂馬「・・・送るよ
   いや、送らせてくれ」

歩美「えっ・・・」

麻里「ゲーム機は持っていかないわよね?」

桂馬「うん・・・」

麻里「よろしい」

麻里は笑みを浮かべる。

普通に改行してない?好きにやりゃいいけど

――――

歩美「ったく、あんたって懲りないわよね
   何度二階堂先生に殴られれば気が済むのよ?」

桂馬「むしろあっちが何回僕を殴れば気が済むのか聞きたいね」

歩美と桂馬は歩美の家までの道中、雑談を交わしながら歩いていた。

歩美「・・・ねぇ、桂木」

桂馬「なんだ?」

歩美「・・・ありがとう」

桂馬「なにが?」

歩美「この前の陸上競技大会の前日のこと
   ・・・ちゃんとお礼を言っておこうと思って」

桂馬「・・・今更そんな昔のこと持ち出さなくても」

桂馬は歯が浮くようなセリフを言ったことを思い出し、顔を赤くする。

歩美「私、あんたのおかげであの大会優勝することができたんだ」

桂馬「いーや、僕がいてもいなくても高原は一位だったね」

歩美「そんなことない!」

歩美は思わず叫ぶ。

桂馬「!!
   ・・・それならそういうことにしておくよ」

歩美「うん・・・」

二人はいつの間にか、歩美の家の前まで来ていた。

歩美「送ってくれてありがと」

桂馬「どういたしまして」

歩美「・・・本当にありがとね」

歩美は照れながら言う。

桂馬「・・・まぁ、困ったことがあったら力になるって言っちゃったしな
   僕は一応約束は破らない男なんで」

桂馬は頭をかきながら言う。

歩美「そう・・・」

桂馬「じゃあ、またな」

歩美「うん、またね」

歩美に別れを告げた後、桂馬は自宅に向かって歩き出す。

――――――桂木家

歩美「・・・またあいつ部屋にこもってんの?」

エリ「いつものことです」

あれから数日後、歩美は再び桂木家を訪れていた。

歩美「・・・よし、今日こそあいつを引きずり出してやる!」

エリ「歩美さん?」

歩美はそう言って、桂木の部屋に向かう

歩美「桂木ー!
   いるー?」

歩美は桂馬の部屋の前でそう言う。

桂馬「・・・何の用だ?」

扉越しに桂馬の声が聞こえる。

歩美「出てきなさいよ」

桂馬「どうしてだ?」

歩美「外でバトミントンやるから、あんたも来なさいよ」

桂馬「・・・何で僕がそんなもんやらきゃいけないんだ?」

歩美「いつまでも部屋にひきこもってたら、ひ弱になるわよ?」

桂馬「僕はギャルゲーができる体があればそれでいい」

歩美「・・・」

桂馬「話は済んだか?」

歩美「・・・入るわよ」

そう言って歩美は勝手に桂馬の部屋のドアを開ける。

桂馬「おっ、おい?」

歩美「・・・」

歩美が部屋に入ると、壁に掛けられた10台を超える数のディスプレイが目に入る。
そしてその画面全てに、ギャルゲーらしきものの映像が映っている。

歩美「・・・何、これ?」

桂馬「落とし神モードだ」

歩美「へ?」

桂馬「僕は最大で、ギャルゲーを12本同時に攻略できるのさ」

桂馬は眼鏡を上げながら言う。

歩美「・・・」

桂馬「見てのとおり僕は忙しいんだよ」

歩美「・・・へぇ、そんなにゲームの女の子と話すのが楽しいんだ?」

桂馬「もちろん」

歩美「・・・私と遊ぶよりも?」

桂馬「ああ」

桂馬が即答すると、歩美の中で何かがブチりと音をたてて切れる。

歩美「・・・」

歩美は桂馬に詰め寄る。

桂馬「な、なんだよ?」

歩美「そんなこと言うんだったらさぁ・・・」

桂馬「・・・」

歩美「私と勝負しなさい」 

桂馬「へ?」」

~小ネタ もののけヒロイン~

――――――桂木家

歩美「いただきまーす」

エリ「いただきまーす」

桂馬「いただきます」

麻里「はい、召し上がれ」

歩美「ありがとうございます、麻里さん
   お昼ご飯いただいて」

麻里「歩美ちゃんのためなら、
   これくらいかまわないわよ」

桂馬「・・・」ピコピコ

桂馬は食事中にもかかわらず、ゲームをしている。

歩美「・・・桂木、食事中くらいゲームやめなさいよ」

桂馬「・・・」

桂馬は歩美の言葉を無視する。

歩美「・・・」イラッ

怒った歩美は桂馬からゲーム機を取り上げる。

桂馬「なっ、返せ!」

歩美「やなこった」

桂馬「その子を解き放て! その子は人間だぞ!」

歩美「はぁ?」

桂馬「お前にヒロインが救えるか!?」

歩美「・・・」カチッ

歩美はゲーム機の電源を強制的に落とす。

桂馬「ああっ!」

歩美「はい、返してあげる」

歩美はゲーム機を桂馬に渡す。
桂馬はすぐにゲーム機の電源を入れる。

桂馬「・・・良かった、オートセーブされてた
   ヒロインよ、生きろ
   ・・・そなたは美しい」

歩美「ったく、必死になっちゃってさ
   みっともないったらありゃしないわよ」

桂馬「黙れ小娘!」

歩美「・・・」

~終わり~

短いですが、以上で第二章は終了です。
誤字によってスレタイのとこが台無しなってしまったようです。申し訳ない
明日は休みが取れたので、今から第三章を書き上げます。
なんとか今日の午前1:00までに間に合うよう頑張ります。

>58
>普通に改行してない?好きにやりゃいいけど
おそらくヘッダとフッダの改行が邪魔だったのではないでしょうか。
以降はヘッダとフッダの改行を無くします。


個人的には改行あった方が読み易いかな

まぁどっちでもいいけど>>1が読みやすいだろうなっていう書き方でいいんじゃないかと

>68
今日の午前1:00でなくて明日の午前1:00の間違いでした。
グダグダで申し訳ないです。
これからは文章を投下する前に見直すよう心掛けます。

>70
ありがとうございます。
自分で比較しても、ヘッダとフッダの改行は無いほうが読みやすい気がします。
以降は無くします。

お待たせしました。
第三章を投下します。

桂馬「・・・なんだよ勝負って」

歩美「・・・これから私と1ヶ月間付き合って」

桂馬「!?」

歩美「それで、もしあんたが私といる方が楽しいって思ったならあんたの負け
   そのときは、ギャルゲーよりも私を優先しなさい」

桂馬「・・・一ヵ月後、僕がギャルゲーの方が楽しいって思ったら?」

歩美「あんたの勝ちよ
   もう二度とゲームをやめろなんて言わないわ」

桂馬「・・・馬鹿馬鹿しい
   やらないね、そんな勝負」

歩美「へぇ? あんた負けるのが怖いんだ」

桂馬「は?」

歩美「そりゃ、あんたみたいなモテないオタメガが現実の女の子と付き合ったら、
   メロメロになるに決まってるわよね」

桂馬「・・・」

歩美「なんなら一ヶ月じゃなくて、一週間にしてあげようか?
   それでもキツい?」

桂馬「・・・調子に乗るなよ現実女の分際で」

歩美「へ?」

桂馬「いいだろう、乗ってやるその勝負」

歩美「!?
   ・・・上等じゃない」

――――――桂木家 喫茶店

翌日

麻里「・・・それで、桂馬と付き合うことになったと」

歩美「はい・・・
   (なんであんなこと言っちゃったんだろ・・・)」

歩美は桂木家の喫茶店のカウンター席に座り、麻里と話していた。

麻里「・・・よし、私も協力するわ
   あの子の好きな食べ物とか全部教えてあげる
   手料理なんて作ってやったらイチコロよ」

歩美「本当ですか!
   ありがとうございます!」

麻里「お願い、現実の女の子に興味を持たせてあげて
   私もいい加減、あの子のゲーム好きにはうんざりしてたから」

歩美「ですよね・・・」

麻里「ただし・・・」

歩美「はい?」

麻里「歩美ちゃんに限ってそんなことは無いと思うけど、
   うちの息子をおもちゃみたいに弄んだりしたら、そのときは覚悟してね」

歩美「!?」

僅かではあるが、歩美は麻里から放たれる殺気に気づく。

歩美「む、息子さんとは真剣にお付き合いさせていただきます!」

麻里「あら、ありがとう」

歩美「・・・」

――――――桂木家

それから数10分後

エリ「歩美さんとにーさんが付き合うなんて、
   感動です」

歩美「エリー、お願いだから他の人には内緒にしておいてね」

エリ「はい、もちろんです」

桂馬「付き合うと言っても一ヶ月だけだ
   しかもこれは単なる勝負に過ぎない」

エリ「またまたそんなこと言っちゃってー
   嬉しいくせに」

桂馬「・・・」

桂馬は冷めた目でエリを見る。

歩美「言っとくけど、付き合ってる間、
   私と一緒にいるときはゲーム禁止よ」

桂馬「・・・分かったよ」

桂馬は気が進まなそうに答える。

歩美「じゃあ早速、今週末デートに行きましょ」

桂馬「デート?・・・
   一体どこに行くんだ」

歩美「それはね・・・」

――――――映画館

数日後

桂馬「映画館か」

歩美「そうよ、デートの定番でしょ?」

桂馬「まあな」

歩美と桂馬は映画館に来ていた。

桂馬「それで、何を見るかは決めてあるのか?」

歩美「ふっふっふ、これよ」

そう言って歩美が指差した看板には、
赤黒い色で【戦慄の宴】という文字が書かれている。

桂馬「・・・ホラー映画か?」

歩美「ええ、そうよ」

桂馬「構わないが、どうしてこんなものを選ぶんだ?」

歩美「べ、べつに
   ただ、なんとなくよ」

桂馬「・・・そうか」

歩美「(吊り橋効果が狙いなんだけどね・・・)」 

――――

それから一時間半後

歩美「ひっ!」

桂馬「そろそろホラーの描写が目立ってきたな」

歩美「いやっ!」

歩美は恐怖のあまり、思わず桂馬の腕を掴む。
女子とは思えない握力で

桂馬「おい、腕を放せ!
   放してくれ!」

歩美「・・・」

歩美は映画に夢中で、桂馬の言葉が届かない。

桂馬「お、おい!
   どんどん掴む力が強くなってるぞ!」

桂馬がそう言った瞬間、スクリーンに血だらけの男が映る。

歩美「きゃあああぁぁぁぁ!!」

桂馬「ぎゃああああぁぁぁぁ!!」

桂馬の腕はミシミシと音をたてる。

――――――公園

桂馬と歩美は公園のベンチに腰掛けていた。

桂馬「・・・まだ痛いぞ」

桂馬は真っ赤になった腕を見ながらそう言う。

歩美「だからごめんって・・・」

そう言った後、歩美はカバンから弁当箱を取り出す。

歩美「はい、あんたのために弁当作ってきてあげたわよ」

桂馬「弁当?」

歩美「ええ、そう
   手作りよ」

そう言って歩美は弁当箱を開ける。

歩美「・・・食べて」

歩美は照れながら言う。

桂馬「あ、ああ・・・
   ・・・いただきます」

家族以外の女性の手料理を食べるのは初めてであるため、
桂馬は緊張した面持ちになる。

桂馬「(このおかずの品揃え・・・
    母さんかエリのどちらかが、歩美に僕の好物を教えたな・・・)」

桂馬は弁当の中からカラアゲを箸でつかみ、口に運ぶ。

桂馬「・・・う!!」

歩美「ど、どうしたの?」

桂馬「・・・これ、生だぞ」

歩美「えっ?」

桂馬「見てみろよ、赤いだろ?
   この部分」

歩美「あ・・・
   ・・・ごめん」

桂馬「・・・まぁいいか、これくらい」

そう言って桂馬はカラアゲを食べ続ける。

歩美「べ、別にいいって!
   無理して食べなくても」

桂馬「無理なんかしていない
   お腹空いてるんだよ、食べさせてくれ」

歩美「・・・」

――――

それから数時間後

歩美「送ってくれてありがと」

桂馬「どういたしまして」

デートを終え、桂馬は歩美を家まで送り届けていた。

歩美「・・・どうだった?
   今日のデート」

桂馬「100点満点で言うと、30点だ」

歩美「・・・」

桂馬「でもまぁ、楽しかったよ
   ・・・意外と」

歩美「ほ、本当?」

桂馬「まあな
   ゲームの方がずっといいけど」

歩美「・・・」

桂馬「今日のところは高原の負けだ」

歩美「・・・はぁー
   ま、いいわよ
   まだ期限まで20日以上あるし」

桂馬「きっと無駄だと思うけど」

歩美「今のうちにせいぜい言ってなさいよ」

そう言って、歩美は自宅のドアを開ける。

歩美「・・・ねぇ、桂木」

桂馬「なんだ?」

歩美はドアを開けながら、桂木の方を向く。

歩美「・・・お弁当食べてくれてありがと」

桂馬「!!」

歩美は顔を赤くしながらそう言った後、そそくさと家の中に入っていく。

桂馬「(・・・あいつ、狙ってやってるのか?)」

こうして、桂木桂馬と高原歩美の初デートは終了した。

短いですが、キリがいいのでここまでを第三章とします。
第四章以降は、明日から書きます。
期待せずお待ちください。

>88
ありがとうございます。
4/27には四章の投稿が間に合うよう努力しますね。

お待たせしました。
それでは第四章、投下していきます。

――――――喫茶店

ちひろ「ははは、笑えるわね、それ」

京「いいねー」

エリ「すっごくおもしろいです!」

歩美「でしょ?」

歩美とエリはある日の放課後、同じ2年B組の小坂ちひろ、
寺田京と共に喫茶店で雑談をしていた。

ちひろ「ところでさ、二年になってから二ヶ月ほどたったけど、
    みんな気になる男子とかできた?」

歩美「!!」

京「私はいないかな」

エリ「私もです」

歩美「・・・」

ちひろ「私は何人か気になるイケメンを見つけたけどね
    歩美は?」

歩美「・・・へっ?
   ああ、どうかな、はは・・・」

ちひろ「・・・」

京「・・・」

歩美は明らかに動揺している。

ちひろ「・・・いるんだ」

歩美「えっ!?」

京「・・・それで隠してるつもり?」

歩美「・・・」

歩美は下を向き、沈黙する。

ちひろ「まぁ、言いたくないのなら言わんでいい」

京「そうだね、無理に聞き出すこともないし」

歩美「あ、ありがと」

エリ「内緒ですよね、歩美さん」

歩美「!!」

歩美はエリの予想外の言葉に驚く。

ちひろ「・・・へぇ、エリーには言ったんだ」

京「・・・私たちには言えないことも、
  エリーには言えるんだ」

歩美「・・・・・・
   四人だけの秘密だからね」

――――

ちひろ「えええぇぇぇ!? 桂木ぃ!?」

ちひろは思わず叫ぶ。

歩美「ちょっとちひろ、声が大きいって」

京「驚いた・・・」

エリ「(にーさんの評価って・・・)」

ちひろ「一体全体どうしてなのさ!?」

ちひろは歩美に顔を近づける。

歩美「色々あったんだよ・・・
   お願いだからあんまり聞かないで」

京「何がどうなったら桂木に気を持つんだか・・・」

ちひろ「やめときなって
    歩美、あんた男子に人気あるんだよ?
    あいつで妥協することないって」

歩美「別に妥協したわけじゃ・・・」

京「で、今桂木とはどんな関係なの?」

歩美「そ、それは・・・」

エリ「内緒ですよね、歩美さん」

ちひろ「へぇ・・・」

京「ふうん・・・」

歩美「・・・エリー、あんたわざとじゃないよね?」

エリ「へ?」

エリは首をかしげる。

歩美「・・・ここまで言ったら全部言ってやるわよ、もう」

――――

ちひろ「つ、付き合ってるううぅぅぅ!?」

ちひろは思わず立ち上がる。

歩美「だから声大きいってば!」

エリ「一ヶ月間だけですけどね」

京「いや、それにしたって・・・
  なんか夢でも見てるみたい」

ちひろ「歩美、あんた大丈夫!?
    あいつに弱みでも握られてんの!?
    それとも頭でも打った!?」

ちひろは歩美の肩を掴む。

歩美「どっちも違うわよ・・・」

京「それで、どうして桂木と付き合うことになったの?」

歩美「それは・・・」

――――

ちひろ「要するに、あいつが歩美よりもギャルゲーを優先するのがムカついたと」

歩美「まぁ、そんなとこ」

京「(・・・単なる焼きもちじゃん、それ)」

エリ「それで勝負することになったんです」

ちひろ「・・・てか、歩美が勝ったらどうすんのさ?」

歩美「え?」

京「歩美が勝つってことは、
  桂木が歩美を好きになるってことだよね、多分」

歩美「そ、それは・・・」

ちひろ「あんなモテないオタメガが、歩美に惚れないわけないじゃん

    あいつが告白でもしてきたらどうするのさ? 
    振ったりしたら、ストーカーにでもなるんじゃないの? 
    あー怖い怖い」


エリ「に、にーさんはそんな人じゃ――」

歩美「桂木はそんな奴じゃない!」

歩美は思わず立ち上がる。

ちひろ「!!」

京「!!」

歩美「・・・そんな奴じゃないよ」

そう言いながら、歩美は座る。

エリ「歩美さん・・・」

ちひろ「(・・・・・・
     ダメだこりゃ)」

京「(・・・もう手遅れね)」

しばらくの間、辺りは静まり返る。

ちひろ「・・・はぁー
    歩美がそこまで言うんなら、もう私は何も言わんよ」

京「・・・そうだね、見守るよ」

歩美「あ、ありがと」

エリ「二人とも分かってくれて嬉しいです」

京「・・・で、どうやってあいつを落とすの?
  なんか計画でもある?」

歩美「今のところは、特にないかな」

ちひろ「だったら、一応とっておきのがあるけど」

歩美「へ?」

――――――屋内プール施設

歩美「とっておき、ね・・・」

歩美はちひろの助言を聞き、桂馬とプール施設でデートをすることにした。

歩美「水着姿を見せてやればイチコロか・・・
   そんなに単純かしら、あいつ」

物思いにふけっている歩美に気づかれないよう、隠れて見守る三人組がいる。

ちひろ「(・・・まーた胸でかくなりやがったな、歩美のやつ)」

エリ「やっぱりこういうのは良くないんじゃ・・・」

京「ここまで来てそんなこと言わないの
  にしても遅いわね、桂木のやつ」

三人が会話をしていると、一人の男が歩美に近づく。

???「高原か?」

歩美「遅かったじゃない、 
   桂・・・木?」

桂馬「仕方ないだろ、僕は目が悪いんだから
   ここまでくるのに苦労したんだぞ」

ちひろ「!!」

京「!!」

歩美に近づいてきたのは整った顔立ちの美青年、眼鏡を外した桂木桂馬だった。

歩美「(嘘・・・)」

ちひろ「(あいつ、本当はあんなに顔がよかったの?・・・)」

京「(最近驚かされっぱなしね・・・)」

エリ「(にーさん眼鏡無しでちゃんと歩けるかな?・・・)」

桂馬「それじゃ、行くか」

歩美「え、ええ・・・」

――――

数10分後

歩美「プールも久しぶりねぇ」

桂馬「どうせあと数ヵ月後には、学校でプール授業が始まるけどな」

歩美と桂馬はプールの中で佇んでいた。

桂馬「人が多くなってきたな・・・」

歩美「そうね、今が混雑のピークかしら」

桂馬「高原」

歩美「なに?」

桂馬「・・・腕、掴んでもいいか?」

歩美「!?」

突然桂馬から発せられる予想外の言葉に、歩美は同様する。

歩美「な、何を・・・」

桂馬「ほとんど顔が見えないから、人と人との区別がつかないんだよ
   腕を掴んでないと、すぐに見失うんだ」

歩美「・・・」

歩美は無言で桂馬の腕を掴む。

桂馬「!?」

歩美「・・・こっちの方が自然でしょ?」

歩美は伏し目になる。

桂馬「あ、ああ・・・」

桂馬は照れたのか、横を向く。

ちひろ「何で腕掴んでんのさ・・・」

京「どっからどう見てもカップルじゃん・・・」

エリ「わぁ、すっごくいい感じです!」

――――

それから数時間後、歩美と桂馬はプール施設内のレストランにいた。
二人はレストランの中にある円形テーブルを挟んで座り、雑談をしている。

桂馬「小阪の口の悪さ、どうにかならないのか?」

歩美「ん? 何が?」

桂馬「ほぼ毎日僕のことをキモいだの、うざいだの言ってくるんだよ」

歩美「・・・へぇ、あんたそんなの気にしないと思ってた」

桂馬「流石に日常的に言われたら、いくら僕でもうんざりするよ」

歩美「ちひろは本当に嫌いなやつは無視するからさ
   ある意味好かれてるんだよ」

桂馬「動物界、脊椎動物門、哺乳綱、霊長目、ヒト科、
   小阪ちひろの愛情表現方法は罵声ね・・・
   図鑑に書いとかないとな」

歩美「やめなさいよ、その言い方
   ・・・ふふ」

桂馬「笑っちゃうのかよ・・・」

ちひろ「(・・・あいつら、覚えてろよ)」

二人は他愛のない会話を続けている。
ちひろたちは気づかれないよう、レストランの中からそんな二人を見守っている。

京「(なんか楽しそう・・・
   あの二人、結構相性良いんじゃ・・・)」

エリ「(本当に付き合ってるみたいです・・・)」

桂馬「ちょっと手洗いに行ってくる」

歩美「あんた目が悪いんでしょ? 
   一人で行けるの?」

桂馬「一度行ってるからな
   道も場所も覚えてる、大丈夫だ」

歩美「ならいいけど」

桂馬は立ち上がり、トイレを目指して歩いていく。

京「あっ、桂木がどっか行った」

エリ「どこ行くのかな・・・
   あれ? ちひろさん、どこかに行くんですか?」

ちひろ「ちょっとトイレに行ってくる」

ちひろは一旦エリと京から離れる。

――――

数分後

ちひろ「確かここらへんだったかな」

ちひろはトイレを探していた。

ちひろ「おっ、あったあった」

ちひろがトイレを見つけ、入ろうとしたそのとき

水着姿の男「君、一人?」

ちひろ「えっ?」

ちひろは突然見ず知らずの男に話しかけられる。

水着姿の男「良かったらさ、俺と一緒に遊ばない?」

ちひろ「(ナンパかよ・・・
     でも、この人結構格好いいな・・・)」

水着姿の男はそれなりに整った顔立ちをしている。

ちひろ「ごめんねー
    気持ちは嬉しいけど、今日は友達と来てるから」

ちひろは少しもったいないという気持ちになりながらも、男の誘いを断る。

水着姿の男「いいじゃんそんなの、行こう行こう」

男はちひろの腕を掴み、強引に引っ張る。

ちひろ「ちょっ、放してよ」

水着姿の男「こっちの方が楽しいから、ね?」

男は強引にちひろを連れて行こうとする。

???「その子を放せ」

ちひろの様子を見かねて、一人の男が声をかける。

ちひろ「(!?
    なんで桂木が!?)」

声をかけてきたのは、桂馬だった。

水着姿の男「あ? なんだよお前?」

桂馬「その子の連れだ」

水着姿の男「・・・・・・ちっ」

水着姿の男はいらつきながら去っていく。

桂馬「・・・あんまり一人で歩かないほうがいい
   それじゃ、僕はこれで」

ちひろ「ちょっ・・・
    待ってよ!
    なんで私を助けたのさ?」

ちひろは桂馬の方を向いて言う。

桂馬「単なる気まぐれだよ
   どこの誰だか知らないけど、これからは気をつけるんだな」

ちひろ「(!? 
     ・・・こいつ、私だって気づいてないのか)」

桂馬は去っていく。

ちひろ「・・・」

――――

桂馬「待たせた」

歩美「お、戻ってきたか」

桂馬は歩美と共に座っていたテーブルに戻る。

ちひろ「お待たせ」

京「はい、お帰り」

エリ「お帰りなさい、ちひろさん」

桂馬とほぼ同時に、ちひろも戻る。

京「複雑そうな顔してるけど、なんかあったの?」

ちひろ「べっ、別に・・・」

――――

しばらく歩いていると、桂馬は何人かの女性に指を差される。

京「さっきから女の視線集めまくってるわね、桂木
  歩美も結構な数の男を振り向かせてるけど」

ちひろ「・・・」

水着姿の女性A「ねぇ、あの人格好良くない?」

水着姿の女性B「お、本当だ
        かっこかわいいって感じね」

桂木はまたも女性に指を差される。

歩美「・・・」

歩美は突然桂木の腕を抱く。

桂馬「ど、どうしたんだよ!?」

歩美「別にいいじゃん、私たち付き合ってるんだから」

桂馬「だからそれはただの勝負だろ・・・」

京「(歩美のやつ焼いてるわね・・・)」

エリ「(歩美さん大胆です・・・)」

桂馬「それで、今からどこに行くんだ?」

歩美「あれとかどう?」

そう言って歩美が指差した先には、ウォータースライダーが見える。

桂馬「・・・なんか子供っぽいな」

歩美「そんなこと無いって
   行きましょ!」

歩美は桂木の腕を引っ張る。

――――

桂馬「なるほど・・・
   この浮き輪、穴が二つ開いてるから二人乗りなのか」

歩美「そうよ
   これに乗って滑るの」

歩美と桂馬が会話をしていると、二人は並んでいる列の一番前に来る。

歩美「ほら、私たちの番よ」

桂馬「お、もう順番か」

二人は浮き輪に乗る。

歩美「行くわよー」

桂馬「どうぞ」

そして二人を乗せた浮き輪は滑り出す。

歩美「ひゃっほー!」

桂馬「うおっ!?」

滑る浮き輪はどんどん加速していく。

――――

二人はウォータースライダーの終着点に着く。

歩美「あー楽しかった!」

桂馬「まぁまぁだな・・・」

歩美「もう一回乗ろ!」

桂馬「へ?」

歩美は桂馬の腕を掴み、引っ張っていく。

桂馬「ちょっ、ちょっと待てよ」

歩美「さー行くわよ!」

――――

数10分後

京「・・・あの二人、あれから10回以上滑ったね」

ちひろ「歩美はああいうの好きだからねぇ」

エリ「にーさん顔真っ青です」

桂馬「・・・・・・」

桂馬は気持ち悪そうな表情で座っている。

歩美「ご、ごめん、やりすぎた
   大丈夫?」

桂馬「・・・もう二度とあれは滑りたくない」

――――

それから数時間後

桂馬「そろそろ日も暮れてきたな・・・
   暗くならないうちに帰るか」

歩美「そうね」

歩美と桂馬はプール施設の出口に向かって歩いていく。

京「お、もうお帰りね」

エリ「順調なデートで良かったです」

ちひろ「・・・そうね」

京「わたしたちも帰ろうか」

エリ「はい」

ちひろ「賛成
    なんか疲れたし」

ちひろたちは、二人に気づかれないようしばらく間を空けてから出口へ向かった。

――――――高原家 玄関口

歩美「悪いわね、毎回送ってもらって」

桂馬「付き合うと言った以上、これくらいは当然だ」

桂馬は歩美を家まで送り届けていた。

歩美「・・・で、今日のデートはどうだった?」

桂馬「50点だ」

桂馬は即答する。

歩美「・・・・・・
   ちなみに何点だったら私の勝ちなの?」

桂馬「100点取ったら高原の勝ちでいい」

歩美「じゃああと50点ね」

桂馬「無理だと思うけどな」

歩美「言ってなさい
   後で吠え面かかせてやるわ
   ・・・あのさ」

桂馬「ん?」

歩美「・・・私の水着姿、どうだった?」

桂馬「!!」

歩美は顔を赤くしながら桂馬に聞く。

桂馬「・・・悪いがよく見えなかったから、
   なんとも言えない」

歩美「そう言うと思った
   今回はいいけどさ、次一緒にプールに行くことがあったら、
   そのときはちゃんと見てね」

桂馬「わ、分かったよ」

桂馬は照れているのか伏し目になる。

歩美「じゃ、またね」

桂馬「ああ、また」

歩美と桂馬はお互いに別れの言葉を告げる。

          【番外編】結成、2B Pencils

――――――喫茶店

ちひろ「皆忙しいんだよねぇ・・・
    どうすれば皆集まって練習できるかなぁ」

ちひろ、歩美、京、エリは趣味でバンド活動をしている。
ある日、四人はバンドの演奏練習を終えて喫茶店に入った。

エリ「それなら、軽音部を作ったらどうでしょう?」

歩美「そうだね、部活なら休み時間も放課後も練習できるし」

ちひろ「・・・よし!
    舞校軽音部立ち上げだー!」

歩美&エリ&京「おー!」

――――――舞島学園高校 職員室

児玉「却下!」

文科系部活動主任、児玉一郎はそう叫ぶ。

ちひろ「・・・・・・」

児玉「何が部活だ! もうすぐ期末テストだろうが! 勉強しろ!
   ・・・ったく、お前らみたいに、
   思いつきで部活動申請するやつらなんか山ほどいるんだよ」

ちひろ「思いつきなんかじゃないんです! 私たち真剣なんです!」

児玉「・・・ほう」

児玉はちひろを睨む。

児玉「そこまで言うなら、全員次の英語のテストで100点取ってこい」

ちひろ「100点!?」

児玉「もし取れなかったら全員補習だ」

ちひろ「・・・」

ちひろは後ろの三人を見る。

歩美「・・・やってもいいよ」

京「私は問題ない」

エリ「だ、大丈夫です!」

ちひろ「・・・分かりました
    飲みます、その条件」

児玉「・・・いい度胸だ」

――――――2年B組

ちひろ「・・・で、どうしようかな」

歩美「京に勉強教えてって頼む?」

ちひろ「京は塾で帰ったよ・・・」

ちひろはため息をつく。

歩美「・・・こうなったらあいつに頼むしかないわね」

ちひろ「あいつって?」

ちひろがそう言った瞬間、教室の扉が開く。

エリ「連れてきましたよー」

そう言ってエリが捕まえてきたのは、桂馬だった。

歩美「でかしたエリー」

ちひろ「か、桂木?」

桂馬「・・・なんなんだこの状況は」

――――

エリ「――という訳なんです」

桂木「(児玉のやつ、ふざけたことをいいやがって・・・)」

歩美「お願い、教えて」

桂木「・・・」

ちひろ「い、いいよ別に
    オタメガなんかに教えてもらわなくたって」

桂馬「・・・そうだよな
   そこまでして作りたくなんかないよな、バンドなんて」

ちひろ「!!」

桂馬はちひろを挑発する。

ちひろ「な、なめんな!
    こっちは本気でやってんだよ!」

ちひろは桂馬に拳を突きつける。

桂馬「・・・じゃあ僕に勉強を教えてくださいって言ってみろよ」

ちひろ「はぁ!?」

歩美「やめなって桂木
   そんな子供みたいなこと言うの」

エリ「そうですよ、にーさん」

桂馬「こいつが本気なら言えるはずだ」

桂馬は真っ直ぐな視線をちひろに向ける。

ちひろ「・・・あんた、本当に私に100点取らせてくれるの?」

桂馬「ああ、僕の言うとおりにすればな・・・
   僕は今までずっと100点を取ってきたんだ
   信じてみる価値はあるだろ?」

ちひろはしばらく沈黙した後、口を開く。

ちひろ「・・・分かったわよ
    ・・・勉強を教えてください」

そう言ってちひろは桂馬に頭を下げる。

歩美「ちひろ・・・」

エリ「ちひろさん・・・」

桂馬「・・・」

桂馬は無言で黒板に文字を書き始める。

ちひろ「・・・何やってんの?」

歩美「まぁ見てなさいって」

桂馬は10分ほどの時間をかけ、英語の長文とその解説らしきものを書き上げる。

桂馬「・・・ここに書いてある内容を覚えれば90点は確実だ」

ちひろ「何でたらめなこと言ってんのさ」

歩美「そう思うじゃん?
   それが当たるのよ、こいつの予想」

ちひろ「マジで・・・」

桂馬は手についたチョークの粉を払う。

桂馬「あと10点分は個別に教える
   エリと歩美はいつも勉強見てるから10分ずつ教えれば十分だ
   小阪、お前は40分間教える」

ちひろ「な、40分も!?」

桂馬「それだけやれば確実に100点を取れるはずだ」

――――

桂馬「よし、一時間経った
   僕は帰る」

歩美「えーもう帰るの?」

エリ「もうちょっと教えてください、にーさん」

桂馬「僕はゲームをするんだ
   何がなんでも帰る」

歩美「ちぇっ、ケチんぼ」

ちひろ「・・・あのさ、桂木」

教室から出ようとする桂馬をちひろが呼び止める。

桂馬「ん?」

ちひろ「その・・・ありがと」

桂馬「・・・どういたしまして」

――――

数日後

歩美「ちひろ、100点取ったよ!」

京「あたしもー」

ちひろ「あたしも取れた・・・
    本当に桂木が予想したとおりの問題が出てたよ」

歩美「エリーは?」

エリ「・・・」

エリは涙を浮かべながら、二桁しか数字が書かれていない答案用紙を見せる。

エリ「ごめんなさい・・・」

ちひろ「・・・・・・
    まぁ、しゃあないか」

エリ「折角ちひろさんがにーさんに頭を下げたのに・・・
   すみません・・・」

ちひろ「気にしなくていいのさ、いい思い出になったから」

歩美「そうだね、楽しかったよ」

京「エリーは頑張ったよ」

ちひろ「・・・でもこんだけやったんだから部室くれんかな、児玉」

歩美「ダメもとで頼んでみようよ」

――――――舞島学園高校 職員室

児玉「舞校軽音部? いいとも、やりなさい!」

ちひろ「えっ、でも全員100点じゃない・・・」

児玉「全然オッケー! 頑張る姿に感動した!」

ちひろ「・・・」

――――

歩美「やったね、部室もらえたよ」

エリ「良かったぁ、私のせいで台無しにならなくて!」

ちひろ「いやぁラッキーだったよ」

京「でもなんであんなに上機嫌だったんだろうね? 児玉?」

歩美「そういえばなんでだろうね?」

ちひろ「何かいいことでもあったんじゃない?」

――――――2年B組

翌日

歩美「(あれ? 授業中なのに桂木がゲームをやってないじゃん)」

ちひろ「(珍しいこともあるもんだね・・・)」

京「(雪でも降るんじゃないの、今日?)」

児玉「おやぁ? 桂木君
   今日は真面目に授業を受けてるようですねぇ?」

桂木「・・・約束を守れませんでしたから」

児玉「よーく分かってるじゃないか!
   君は前回の期末試験、99点だったからねぇ!
   ゲームをやってもいいが、100点を取るいうのが私たちの約束だからな!」

ちひろ「!!」

歩美「(えっ、嘘? あいつが?)」

京「(ああ、だからあんなに児玉の機嫌が良かったんだ)」

桂木「・・・少なくとも次の期末で100点を取るまでは、
   児玉先生の授業中にゲームをしませんよ」

児玉「そうだ、それでいい!
   はははは!」

ちひろ「・・・」

――――――舞島学園高校 裏庭

ちひろ「・・・見つけた」

ちひろは休み時間中、学校の裏庭でゲームをしている桂馬に歩み寄る。

ちひろ「桂木!」

桂馬は一旦ゲームを中断し、ちひろの方を見る。

桂馬「・・・なんだ?」

ちひろ「さっきの児玉の話・・・
    期末の点数99点だったんだって?」

桂馬「そうだ」

ちひろ「・・・あんた、わざと1点落としたわね?」

桂馬「わざとな訳ないだろ
   純粋につづりを間違えたんだよ」

ちひろ「・・・いつも100点取ってるのに?」

桂馬「ああ」

ちひろ「たまたま今回だけ?」

桂馬「そうだ」

桂馬は淡々と言う。

ちひろ「・・・歩美があんたに気を持つのも、
    なんだか分かった気がする」

ちひろは小声で言う。

桂馬「ん? 何か言ったか?」

ちひろ「なんでもない」

桂馬「そうか・・・
   用事は済んだか? 
   僕はゲームをするぞ」

そう言って桂馬はゲームを再開する。

ちひろ「・・・桂木」

桂馬「まだ何かあるのか?」

ちひろ「歩美を泣かせたら許さんから」

桂馬「へ?」

ちひろ「それじゃ」

桂馬「・・・・・・
   なんだよ一体」

ちひろは軽やかな足取りで去っていった。

以上で第四章は終わりです。
ここからは物語の後半に入ります。

期待してくださる方々、お待たせしました。
今日も休みが取れたので一気に書き上げました。
今から最終章まで投下しようと思います。
どうぞ最後までお付き合いください。

――――――鳴沢市 デゼニーシーランド

桂馬「ここが今回のデートの場所か」

歩美「そう、定番のデートスポットよ」

歩美と桂馬は隣町にある遊園地、デゼニーシーランドに訪れていた。

歩美「ほら、早く行きましょ」

そう言って歩美は桂馬の腕を掴み、引っ張る。

桂馬「おっ、おい・・・」

――――

桂馬「それで、何に乗るんだ?」

歩美「やっぱ遊園地といったらあれでしょ」

そう言って歩美はジェットコースターを指差す。

桂馬「・・・言っとくけど一回しか乗らないからな」

歩美「まだウォータースライダーのこと根に持ってるんだ・・・」

――――――ジェットコースター

歩美「あー楽しかった!」

桂馬「(・・・途中の三回転ループはかなりきつかったな)」

二人を乗せたジェットコースターは、出発点まで戻ってくる。

歩美「ねぇ、桂木
   私もう一回乗りたいんだけど」

桂木「僕は降りる」

歩美「・・・」

スタッフA「お客様」

歩美「はい?」

スタッフA「後ろに並んでられるお客さんがいませんので、
      もう一度楽しみたいのでしたらこのまま発進しますが」

桂馬「いや、もう降り――」

歩美は桂馬の口を手で防ぐ。

歩美「はい、もう一回乗ります
   出しちゃってください!」

桂馬「(な、何を?)」

スタッフA「了解しました」

桂馬「なっ・・・」

歩美「さぁ行きましょう!」

そしてジェットコースターは再び発進する。

――――

桂馬「・・・・・・」

桂馬は真っ青な顔で座っている。

歩美「ご、ごめん・・・」

桂馬「・・・今日はもう二度ジェットコースターには乗らないからな」

歩美「分かったわよ・・・」

――――

二人が園内を歩いていると、歩美がある文字を見つける。

歩美「ねぇ、桂木見て
   プリクラって書いてあるよ」

歩美はそう言って、遊園地内にあるゲームセンターのような施設を指差す。

桂馬「プリクラねえ・・・」

歩美「ここだけの限定バージョンだって
   記念に撮ろうよ」

桂馬「・・・別にいいけど」

――――――プリクラ機の中

歩美「はい、チーズ」

桂馬「・・・」

カシャリという音と共に、二人の姿が撮影される。

歩美「・・・さて、ここからがプリクラのお楽しみよ」

桂馬「ん? 何が?」

歩美「取った写真に色々飾り付けができるのよ
   例えば・・・こう」

そう言って歩美は写真の中の桂馬にスキンヘッドのヅラをかぶせる。

歩美「ははは!
   ほらね? おもしろいでしょ?」

桂馬「・・・じゃあ僕もやってみよう」

桂馬は写真の中の歩美にヒゲメガネをつける。

桂馬「はは、悪くないな」

歩美「・・・へぇ、じゃあ私も」

歩美は写真の中の桂馬にアゴヒゲをつける。

歩美「ふふふ・・・こっちのほうがいいわね」

桂馬「・・・」

――――

数分後

歩美「よくもやってくれたわね!
   今度は耳に毛を生やしてやる!」

桂馬「何を!
   お前の目に眼帯付けてやる!」

二人は不毛な争いを続けていた。

――――

歩美「なんであのまま印刷しちゃったんだろね・・・」

桂馬「お互い原型を留めてないな・・・」

二人はプリクラを撮り終え、園内のベンチに腰掛けていた。

歩美「そろそろお昼ご飯にする?」

桂馬「そうだな、腹も空いてきたし」

歩美はカバンから弁当箱を取り出す。

歩美「・・・食べて」

桂馬「あ、ああ」

桂馬は弁当箱のフタを開ける。

桂馬「(・・・品揃えは前と同じだな)」

桂馬はカラアゲを箸でつまみ、口に運ぶ。

桂馬「!!」

歩美「・・・どう?」

桂馬「・・・美味い」

歩美「え?」

桂馬「まるで母さんの料理みたいだ・・・」

桂馬はそう言って、次々とおかずを口の中に運ぶ。

歩美「(・・・そりゃ麻里さんに料理を教えてもらってたからね)」

――――

二人は食事を終えた後、園内を歩いていた。

桂馬「さて次はどこへいくか」

歩美「お、あれおもしろそう」

そう言って歩美はお化け屋敷を指差す。

桂馬「・・・腕を掴むのは禁止だからな」

歩美「わ、分かってるって・・・」

――――――お化け屋敷

歩美「へぇ、入ってみると造りとか本格的ね」

スタッフB「お客様、心拍計はご利用なされますか?」

桂馬「ん?」

スタッフB「こちらの心拍計を腕に付けていただくと、
      心拍数でどれだけ驚いていたか判定することができます」

歩美「へぇ・・・」

桂馬「こんなものもあるのか」

歩美「・・・ねぇ、これ使って勝負しない?」

桂馬「勝負?」

歩美「そう、これを使ってどっちの方が驚いてたかで勝敗をつけるの
   負けたら・・・
   そうね、この遊園地にある子供用の列車に一人で乗るっていうのはどう?」

桂馬「・・・おもしろい」

歩美「決まりね」

――――

歩美「ひっ!」

桂馬「おっ、壁から腕が出てきた」

歩美と桂馬はお化け屋敷の中を歩いていた。

歩美「(・・・こいつ全然動揺してないじゃん)」

桂馬はいつもと変わらない表情で歩いている。

歩美「(このままじゃ負けちゃうわね・・・
    よし)」

桂馬「あと少しで出口だな・・・
   あれ?」

桂馬が後ろを振り返ると、いつの間にか歩美は消えていた。

桂馬「・・・どこに行ったんだ?」

桂馬は周囲を見回す。
しかし歩美の姿は見当たらない。

桂馬「おい! 高原! どこだ!?」

歩美からの返事は無い。

桂馬「・・・もう出たのか?
   いや、高原はずっと僕の後ろにいたからそれはないか・・・」

桂馬は不安にかられる。

桂馬「・・・まさか、どこかで動けなくなっているのか?」

桂馬は走り出す。

桂馬「高原! 無事か!?
   どこにいる!?
   ・・・くそっ」

桂馬はしばらく走った後、立ち止まる。

桂馬「どこだ・・・
   どこにいるんだ・・」

歩美「ここよ」

桂馬「うおっ!?」

歩美は桂馬の背後から話しかける。

歩美「ごめん、ちょっとトイレ行ってた」

桂馬「・・・・・・
   心配かけさせるんじゃない、まったく」

桂馬は息を整える。

歩美「(・・・ちょっと悪いことしちゃったかな)」

――――

歩美「どうやら私の勝ちみたいね」

桂馬「・・・」

心拍計は、歩美よりも桂馬の方が驚いていたというを結果を示している。

歩美「心配かけさせちゃったから、
   今回は引き分けにしてあげてもいいけど?」

桂馬「・・・いいよ、負けは負けだ」

――――――子供列車

スタッフC「さぁ、出発進行だよー!」

子供A「おー!」

子供B「しゅっぱーつ!」

桂馬「・・・・・・」

桂馬は無表情で座っている。

歩美「くくく・・・
   あいつ目が死んでるじゃん」

歩美はそんな桂馬の様子を傍観している。

子供A「ねぇ、お兄ちゃん一人?」

子供B「どうして子供用の乗り物に乗ってるの?」

桂馬「・・・僕に話しかけないでくれ」

その後、子供列車は園内を一周した。

――――

歩美「あーおもしろかった!
   あんた終始無表情なんだもん」

桂馬「・・・」

歩美「さーて、次どこ行こうかな」

桂馬「・・・だったらあれとかどうだ?」

そう言って桂馬は一つの建物を指差す。

歩美「・・・スペースポリス?」

――――――アトラクション スペースポリス

歩美「へぇ、乗り物に乗りながら銃で的を打っていくアトラクションね」

桂馬「そうだ、そして最後には各個人の点数が表示される」

歩美「ほー・・・」

桂馬「僕が何を言いたいか分かるか?」

歩美「・・・勝負ね?」

桂馬「そういうことだ」

歩美「で、罰ゲームはどうすんの?」

桂馬「そうだな・・・
   それじゃ負けた方があれを付けるっていうのはどうだ?」

桂馬の視線の先にはこの遊園地のマスコットキャラ、
デゼニーマウスの耳を模したカチューシャを付けている子供がいる。

桂馬「負けた方があの耳を付けるんだ」

歩美「・・・おもしろいじゃん」

――――

二人が乗り物に乗ってから数分後

歩美「(嘘でしょこいつ、
    的が出る場所全部予測してるじゃない!?)」

桂馬「・・・・・・」バキューンバキューン

桂馬は常人離れした速度で次々に的を打っていく。

歩美「くっ・・・」

――――

桂馬「僕の勝ちだな」

歩美「・・・」

桂馬は歩美に大差を付けて勝利する。

桂馬「それじゃ、例の耳を買ってくる」

桂馬はそう言って売店に行き、5分ほどで戻ってきた。

桂馬「ほら」

桂馬はマスコットキャラの耳を模したカチューシャを歩美に差し出す。

歩美「・・・分かったわよ」

そう言って歩美はカチューシャを頭に付ける。

桂馬「!!」

歩美「・・・どうよ、おもしろい?」

桂馬「(これは・・・)」

桂馬は思わず目を背ける。

歩美「ん? どうしたのよ?」

桂馬「い、いや、別に」

歩美「・・・」

桂馬「も、もう十分楽しんだから外してもいいぞ」

桂馬は顔を赤くしながら言う。

歩美「・・・あれ? あんた照れてるの?」

桂馬「そ、そんな訳ないだろ」

歩美「なんだ、可愛いとこあるじゃん」

歩美はにやにやと笑う。

桂馬「(・・・・・・
    やらせなきゃ良かった、こんな罰ゲーム)」

――――

それから数時間後

桂馬「そろそろ日も暮れてきたな」

歩美「それじゃ、最後の締めにあれ乗ろう」

そう言って歩美は観覧車を指差す。

桂馬「・・・いいけどそろそろその耳を外せ」

――――――観覧車

歩美「見て見て桂木!
   あれ私たちの町じゃない?」

桂馬「ああ、学校が見えるな」

二人はゴンドラの中で、向かい合って座っている。
二人がゴンドラに乗ってから、5分ほどの時間が経過した。

歩美「・・・ねぇ、桂木?」

桂馬「ん?」

歩美「・・・あんた、私と一緒にいて楽しい?」

歩美は不安げな表情で聞く。

桂馬「・・・正直、付き合い始めた頃はつまらなかった」

歩美「・・・」

桂馬「でも、今は楽しい」

歩美「!!」

桂馬「・・・ゲームの女の子はさ、
   顔は可愛いし言うことも面白いけど、決まった事しかできないんだ」

歩美「・・・」

桂馬「でも高原は違う
   会う度に違うことを言うし、デートする度に違う表情を見せてくれる」

歩美「なっ・・・」

歩美は顔を赤くして下を向く。

桂馬「これを変化っていうのか、成長っていうのか分からないけど・・・
   でも、変わっていく高原を見ているのが楽しいなって・・・
   最近そう思うんだ」

歩美「・・・」

桂馬「だから、今は高原と一緒にいるのが楽しい」

桂馬は照れながら言う。

歩美「・・・あ、ありがと」

桂馬「・・・高原こそ、僕と一緒にいて楽しいのか?」

歩美「うん、あんたイジりがいがあるしね!」

歩美は屈託の無い笑顔で言う。

桂馬「・・・」

――――

桂馬「そろそろ頂上か・・・」

あれから数分後、二人を乗せたゴンドラは頂上に着く。

歩美「・・・ねぇ、桂木」

桂馬「ん?」

歩美「まだ誰にも言ってないんだけどさ・・・
   私、陸上選手目指そうと思うんだ」

桂馬「陸上選手?」

歩美「うん
   何人も日本代表選手を出してる大学から、推薦の話が来てるんだ」

桂馬「へえ・・・」

歩美「・・・桂木はどう思う?」

桂馬「いいんじゃないか?
   悪くないと思うよ」

歩美「・・・私、プロでやっていけるほどの才能あるかな?」

歩美はうつむきながら桂馬に聞く。

桂馬「僕は素人だから分からないよ
   でも前にも言ったとおり、走れなくなったらいつでも僕が助けてやる」

歩美「桂木・・・」

桂馬「・・・失敗したときのことなんか考えず走ってこいよ」

桂馬は軽く微笑みながら、そう言う。

歩美「・・・ありがと
   今の言葉で決心ついたよ
   私、陸上選手目指してみる」

桂馬「それは良かった」

歩美は立ち上がり、桂馬の隣に座り直す。

桂馬「な、なんで隣に来るんだよ!?」

歩美「いいじゃん、私たち付き合ってるんだから」

桂馬「だからそれはただの勝負だろ・・・」

桂馬は歩美から目を背ける。

歩美「・・・ねぇ、桂木は何か将来なりたいものとかないの?」

桂馬「なりたいもの?
   ・・・特に無いな
   僕はギャルゲーさえしていられればそれでいい」

歩美「・・・」

歩美は呆れる。

桂馬「定時で上がれる会社に入って、ギャルゲー三昧の生活をする
   それが僕の将来の予定だ」

歩美「・・・もったいないよ、そんな人生
   折角あんた頭がいいのに」

桂馬「僕の頭はギャルゲーを攻略するためにあるんだ」

歩美「・・・・・・はぁー」

歩美はため息をつく。
その後しばらくして、二人を乗せたゴンドラは最下点へ到着した。

――――――高原家 玄関口

歩美「送ってくれてありがと」

桂馬「どういたしまして」

デートを終え、桂馬はいつもと同じように歩美を家まで送り届けていた。

歩美「・・・今日の点数は?」

桂馬「90点だ」

歩美「!!」

歩美は予想外の高得点に驚く。

歩美「ほ、本当?」

桂馬「・・・普通のギャルゲーより楽しめたよ」

桂馬は頭をかきながら言う。

歩美「なら100点ももうすぐね!」

歩美は笑顔で言う。

桂馬「調子に乗るんじゃない
   90点と100点の間には、分厚い壁があるんだよ」

歩美「そんなもん軽くぶち破ってやるわよ!」

歩美はそう言って、自宅のドアを開ける。

歩美「次のデート、楽しみにしてなさい!」

歩美は自宅の中に入っていく。


桂馬「・・・期待してるよ」

~小ネタ よっきゅん~

――――――桂木家

歩美「ねぇ、桂木」

桂馬「何だ?」

歩美「あんたのやってるギャルゲーってやつ、
   そんなに面白いの?」

桂馬「面白いなんてもんじゃない
   僕はこれをやるためだけに生きていると言ってもいい」

桂馬は胸を張って言う。

歩美「はぁ・・・
   そんなに面白いって言うならさ、
   オススメのやつ一個私に貸してよ」

桂馬「!!」

桂馬は歩美のその言葉を聞き、目を輝かせる。

桂馬「・・・僕は現実女の評価を改めなければならないようだ」

歩美「へ?」

桂馬「この人類の至宝に興味を持つ女がいるとは・・・
   現実女も捨てたものではないな」

歩美「(これって褒められてるのかな・・・)」

桂馬「いいだろう、最高のゲームを貸そう」

そう言った後、桂馬は自分の部屋から一本のゲームを持ってくる。

桂馬「これだ」

桂馬はゲームを歩美に手渡す。

歩美「何これ・・・
   One Leaf?」

歩美は桂馬から手渡されたゲームを見る。
そこにはOne Leafというタイトル名と共に、
お世辞にも上手とは言えない女の子の絵が描かれている。

桂馬「ああ、ギャルゲー界の宝だ」

歩美「・・・ここに書かれてる女の子がヒロインなの?」

歩美は納得がいかなさそうな顔で言う。

桂馬「・・・確かに僕も最初に見たときは気に入らなかった。
   だが実際にやってみると、いつの間にかよっきゅ・・・
   ・・・そのヒロインの虜になってたよ」

歩美「はぁ・・・」

桂馬「ゲーム機本体も貸そう」

歩美「・・・どうも」

――――――歩美の家

歩美「さて、それじゃ試しにやってみますか」

歩美は自宅に帰った後、ゲーム機を起動させる。

歩美「本当にこの絵の女の子がヒロインなのね・・・
   何考えてるのよ、このB's wareって会社」

歩美は不満を言いながらもゲームを進める。

――――

数時間後

歩美「・・・へぇ、結構おもしろいじゃん
   毎日ギャルゲーやってるやつが勧めるだけはあるわね」

歩美は徐々にゲームに没頭し始める。

――――

それからさらに数時間後

歩美「へっ? もうこんな時間?
   ・・・どうやら熱中しちゃったみたいね」

歩美はゲーム機の電源を落とす。

歩美「今日はもう寝よ・・・」

そう言った後、歩美はベッドに倒れこみ、眠りにつく。

――――

翌日

歩美「さーて、今日もやりますか」

歩美は起床した後、そう言ってゲーム機を起動する。

歩美「今日は休みだから、存分にできるわね」

――――

数時間後

歩美「呼び名を選べ、か・・・
   四葉ちゃんは普通すぎるし、よっちゃんはなんか駄菓子っぽいし・・・
   おもしろそうだから、ここはよっきゅんにしとこ」

――――

半日後

歩美「どこまでいい子なのよ、よっきゅん・・・
   もうやめてよ、涙が出てきた・・・」

歩美はもはやゲームの虜となっている。

――――

数時間後

歩美「よっきゅん! 私も大好き!
   よっきゅん! よっきゅうぅぅん!」

歩美の母「うるさいわね! 今何時だと思ってるの!
     静かにしなさい!」

――――――桂木家

翌日

歩美「・・・」

桂木家に訪れた歩美は無言で桂馬に詰め寄る。

桂馬「な、なんだよ・・・
   ・・・ん、どうしたんだ? 
   目にクマができてるぞ?」

歩美「これ・・・」

歩美はゲーム機を手に持ち、桂馬に差し出す。

桂馬「高原・・・
   お前、まさか・・・」

歩美「・・・最高だった」

桂馬「同士よ!!」

歩美「よっきゅん万歳!!」

そう言って桂馬と歩美は硬い握手を交わす。

エリ「・・・」

麻里「・・・」

~終わり~

――――舞島学園高校 昇降口

歩美「桂木ー!」

桂馬「ん?」

ある日の放課後、
歩美は昇降口で帰宅しようとしていた桂馬を見つけ、声をかける。

歩美「一緒に帰ろ」

桂馬「部活はどうしたんだ?」

歩美「今日は無いんだ
   バンドも今日は休み」

桂馬「そうか・・・」

歩美と桂馬は並んで歩き出す。

桂馬「いいのか? 
   僕と一緒に帰ってるとこなんか見られたら、陰口叩かれるぞ?」

歩美「そんなん気にしないって」

歩美は即答する。

歩美「それよりさ、来月陸上の大会があるんだ
   応援に来てくれない?」

桂馬「別にいいけど」

歩美「ありがと!」

歩美は笑顔で言う。

歩美「あとさ、バンドの練習も見に来てよ
   きっとエリーも喜ぶよ」

桂馬「・・・まぁその時暇だったら」

歩美「待ってるからね」

そう言って歩美は軽く桂馬の背中を叩く。

桂馬「・・・なんか楽しそうだな」

歩美「うん、楽しいよ!
   毎日が充実してる感じ」

歩美は満面の笑顔で言う。

歩美「楽器の演奏とか最初は下手だったんだけど、
   練習していくと徐々に上手くなってくんだ
   陸上競技と一緒だよ」

桂馬「へぇ・・・」

歩美「最初は辛いし、苦労するけど、
   頑張ってると段々楽しくなっていくんだ
   その過程が楽しいんだよ」

桂馬「・・・」

歩美「それよりさ、今週末が期限だよね、勝負の」

桂馬「・・・そうだな」

歩美「絶対100点取ってやるわ
   見てなさい!」

桂馬「・・・期待してるよ」

――――――桂木家

桂馬「・・・・・・」

桂馬は歩美と一緒に帰った後、自宅に到着し、自分の部屋にいた。
桂馬は自室のベッドの上で仰向けになって寝ている。

桂馬「・・・・・・」

――ねぇ、桂木は何か将来なりたいものとかないの?

歩美の言葉が桂馬の中で蘇る。

桂馬「・・・」

――もったいないよ、そんな人生

再び歩美の言葉が頭に浮かぶ。

桂馬「・・・余計なお世話だ」

――――――舞島学園高校 2年B組

翌日

歩美「桂木!」

歩美は教室の中の桂馬に呼びかける。

桂馬「ん?」

歩美「今日バンドの練習するから見に来てよ」

桂馬「・・・今日はゲームの新作が発売する日だから帰る」

歩美「ちょっとだけ、一曲だけでいいから、ね?」

桂馬「うるさいな!!
   僕は帰るんだ!!」

歩美「!?」

突然声を荒げる桂馬に歩美は驚く。

ちひろ「ちょっと、一体なんのさ? あんた?」

その様子を見ていたちひろは桂馬に近寄る。

ちひろ「歩美は練習見にきてって頼んだだけじゃん!
    なんでそこまで怒られなきゃならんのさ?」

桂馬「・・・帰る」

そう言って桂馬は教室から出て行く。

ちひろ「・・・・・・
    なんなんあいつ! ムカツク!」

京「ちょっとあれは無いよねー」

歩美「・・・・・・」

悲しげな表情を浮かべる歩美に、エリが話しかける。

エリ「歩美さん、気にしないで下さい
   にーさん最近気が立ってるんです」

歩美「え?」

エリ「家の中でもずっと不機嫌なんです
   ・・・多分最近嫌なことがあったんだと思うんです」

京「へぇ、あいつ陰口叩かれた程度じゃ怒らないのにね
  一体何があったんだろ?」

ちひろ「何があったか知らんけど、他人にあたんなっつうの!」

歩美「・・・」

――――

それから数10分後

桂馬「・・・・・・」

桂馬は一人自宅へ向かって歩いていた。

――うん、楽しいよ! 毎日が充実してる感じ

桂馬は歩美の言葉を思い出す。

桂馬「・・・何が充実だよ
   リアルなんかクソゲーじゃないか」

――最初は辛いし、苦労するけど、頑張ってると徐々に楽しくなっていくんだ

再び歩美の言葉が桂馬の頭に浮かぶ。

桂馬「・・・楽しくなんかならないよ
   例え一時そうだったとしても、またすぐに苦しくなるんだ」

桂馬は立ち止まる。

桂馬「・・・なのに、なんでお前は頑張れるんだよ
   ・・・高原」

桂馬は空を見上げる。

桂馬「僕は・・・僕は・・・





   現実から逃げているだけなのか?」

――――――桂木家

翌日

エリ「ただいまー」

歩美「お邪魔しまーす」

歩美は放課後、桂木家に遊びに来ていた。

歩美「おっ、桂木の靴があるじゃん
   あいつもう帰ってたのね」

エリ「・・・」

歩美「あいつも呼んでくる」

そう言って歩美は桂馬の部屋に向かおうとする。

エリ「あの、歩美さん!」

歩美「ん?」

エリ「・・・多分、そっとしておいた方がいいと思います」

エリは不安げな表情を浮かべる。

歩美「・・・大丈夫だって、私に任せときなさい」

歩美は桂馬の部屋に向かう。

――――

歩美「桂木ー!
   いるのは分かってるのよ、出てきなさい!」

そう言って歩美は桂馬の部屋のドアをノックする。
しかし、桂馬からの返事は無い。

歩美「・・・昨日は悪かったわよ、無理矢理誘って
   ・・・謝るから出てきてよ」

桂馬「別に謝らなくてもいい」

歩美「!!」

扉越しから桂馬の声が聞こえる。

歩美「そ、そう・・・
   さぁ出てきなさい、一緒に遊ぶわよ」

桂馬「・・・高原」

歩美「ん?」










桂馬「お前の負けだ」


歩美「えっ?・・・」

桂馬「僕はお前を・・・リアルを好きにはならない
   ・・・なれないんだよ」

歩美「・・・・・・
   なっ、何言ってんのよ!?」

桂馬「それじゃ、そういうことで」

歩美「ちょっと、ふざけんな!」

歩美は何度も桂馬の部屋のドアをノックする。
しかし、桂馬からの返事は一切無い。

歩美「くっ、開かない・・・
   鍵が閉まってる」

歩美は桂馬の部屋のドアを開けようとするが、
ドアの鍵が閉まっており、開けることができない。

歩美「・・・まだ勝負の期限まで何日かあるでしょ!
   今決着をつけるなんてルール違反よ!」

ドアの向こうからは何も聞こえない。

歩美「・・・いいわよ、あんたがそういう態度取るなら、
   こっちにも考えがあるわよ」

歩美はその場に座る。

歩美「あんたが出てくるまで、私はここを一歩も動かない!
   覚悟しなさい!」

桂馬「・・・勝手にしろ」

桂馬は歩美に聞こえないような小さな声でそう言った。

――――

それから数時間後

桂馬「もう夜の8時か・・・
   いい加減帰っただろ」

桂馬はゲーム機を片手に持ちながらドアの鍵を外し、少しだけドアを開く。

桂馬「!?」

桂馬がドアの隙間から外をのぞくと、そこには歩美がいた。

歩美「!! 
   開いた!」

桂馬「くそっ!」

桂馬はすぐにドアを閉め、鍵を閉める。

歩美「・・・ちっ、間に合わなかった」

歩美はそう言って再び座る。

歩美「ま、いいわよ
   とことん付き合ってあげるわ」

桂馬「お、お前何を考えてるんだ!?
   一体何時までいる気なんだ!?」

扉越しに桂馬の声が響く。

歩美「あんたが出てくるまでいるわ」

桂馬「親が心配してるだろ!」

歩美「ご心配無く
   友達の家に泊まるって電話しておいた」

桂馬「明日は学校だろうが!
   帰って明日の準備をしなくていいのか!?」

歩美「学校なら、今の用意のままで行くわよ」

桂馬「・・・風呂とか入りたくないのか?」

歩美「風呂なんか、一日くらい入らなくても大丈夫よ」

桂馬「・・・・・・
   どうしたら帰ってくれるんだ?」

歩美「あんたと私でじっくり話し合って、
   私が納得できたら帰ってあげる」

桂馬「・・・はぁー」

桂馬はドアを背にして座る。

桂馬「・・・話すのは扉越しでいいか?」

歩美「・・・それで許してあげる」

桂馬は息を整え、話し出す。

桂馬「・・・気づいたんだよ、
   僕はずっと現実から逃げてたってことに」

歩美「逃げる?」

桂馬「理不尽な現実に嫌気が差して、ずっと逃げてたんだよ
   ゲームだって現実逃避のためにやってたんだ」

歩美「・・・」

桂馬「・・・でも高原は違う
   高原はそんな現実に負けずに立ち向かっている」

歩美はただ黙って聞いている。

桂馬「辛いことや、苦しいことと必死に戦っているんだ
   ・・・僕はその姿を見るのが嫌になったんだ」

歩美「・・・」

桂馬「高原と一緒にいると、
   現実から逃げている自分の姿が浮き彫りになるんだよ」

歩美「・・・」

桂馬「僕は・・・お前と一緒にいると辛いんだよ・・・」

歩美「・・・」

桂馬「・・・だから、僕はゲームを選ぶ
   お前の負けだ、高原」

しばらくの間、沈黙が続く。

歩美「・・・・・・
   桂木、ドアから離れてて」

桂馬「へ?」

歩美「ドア、壊すから」

桂馬「な!?」

歩美「おりゃあっ!!」

桂馬「うおおっ!?」

桂馬が飛び退くのとほぼ同時に、歩美はドアを蹴破る。

歩美「はぁー・・・はぁー・・・」

桂馬「・・・」

絶句する桂馬に歩美は詰め寄る。

歩美「・・・だから言ったでしょ、
   10点の壁なんか軽くぶち破ってやるって」

桂馬「・・・・・・」

桂馬はただ呆然としている。

歩美「・・・あんたねぇ、私を特別な人間みたいに言ってるけど、
   私だってあんたと変わらないのよ!」

桂馬「!!」

歩美「嫌なことがあれば逃げたくなる、忘れたくなる!
   そういう人間なのよ!」

桂馬「・・・」

歩美「でも・・・それでも辛いことに立ち向かっていけるのは、
   自分を支えてくれるもの、救ってくれるものがあるからよ
   ・・・あんたが私を助けてくれたみたいに」

桂馬「・・・」

歩美「あんたが辛い目に遭ったら、私があんたを支えてあげるわよ!
   現実から逃げたくなったときは、何度でも私を頼ればいい!」

桂馬「高原・・・」

歩美「どんなに辛いことがあったとしても、私だけはあんたの味方でいてあげる
   だから・・・」

桂馬「・・・」


歩美「だから、私と向き合ってよ!!
   現実を好きになってよ!!」

しばらくの間、沈黙が続く。

桂馬「・・・失格だ」

歩美「へ?」

桂馬「無理矢理フラグを立てて、勝手にイベント起こしやがって・・・
   僕を・・・プレイヤーを置いてきぼりにするお前はヒロイン失格だよ」

歩美「な、何よそれ・・・」

桂馬「・・・・・・
   でも、最高だった」

桂馬は笑みを浮かべる。

歩美「!?」

桂馬「最高に楽しかったよ・・・
   こんなに心が騒いだのは初めてだ・・・」

歩美「・・・・・・」

桂馬「だから高原













   お前の勝ちだ」


桂馬はそう言った後、手に持っているゲーム機の電源を落とした。

――――――舞島学園高校 昇降口

それから数日後

歩美「(勝ったのはいいけどさ・・・
    勝敗がついちゃったから、付き合うのはやめることになるんだよね)」

歩美はため息をつく。

歩美「(・・・これなら前の方が良かったかな)」

歩美がそう思いながら自分の靴箱を見ると、中に一枚の手紙が入っている。

歩美「ん? 何これ?
   差出人は・・・桂木?」

――――――舞島学園高校 グラウンド

桂馬「・・・来たか」

歩美「どうしたのよ、こんな夜中にグラウンドに呼び出して
   しかも分単位で来る時間を指定するってどういうこと――」

歩美が話していると、突如グラウンドの照明全てが点灯し、歩美と桂馬を照らす。

歩美「なっ・・・何これ?・・・」

桂馬は歩美の正面に立つ。


桂馬「高原・・・いや、歩美
   お前が好きだ」

歩美「なっ!?」

桂馬「この現実を、お前と一緒に生きていたい」

歩美「・・・」

桂馬「僕と付き合ってくれ」

歩美「桂木・・・」

歩美はしばらく動揺していたが、呼吸を整え話し出す。

歩美「・・・しょうがないわね
   私がいないと、またあんた引きこもっちゃうだろうし・・・
   いいわ、付き合ってあげる」

桂馬「ほ、本当か!?」

歩美「ええ、感謝しなさい」

歩美は腕を組み、胸を張る。

えんだあああぁぁぁぁ

桂馬「・・・ありがとう」

桂馬は照れながら頭をかく。

歩美「・・・にしてもなんなのよ、この演出
   もうちょっと普通に告白できないの?」

桂馬「なっ・・・
   告白ってのは最大のイベントなんだぞ!
   これくらいの演出は当然だ!」

歩美「まったく・・・ここはゲームの中じゃないっての」

そう言いながら歩美は桂馬に近づき、桂馬の胸に額を当てる。

桂馬「!?」

歩美「・・・でも嬉しかった
   ありがと」

桂馬「あ、ああ・・・」

歩美「それじゃ・・・行こう」

桂馬「ん? 行くってってどこにだよ?」

歩美は桂馬の手を掴む。

歩美「どこでもいいじゃん
   私とあんた、二人なら」

桂馬「・・・そうだな」

そして歩美と桂馬は歩き始める。











二人が予想することのできない未来、
――――神のみぞ知るセカイへ向かって

以上でこのssは終了です。
このスレは3、4日後にはhtml化依頼を出します。
読んでくれた皆さん、若木先生、本当にありがとうございました。

>>201
タイミング絶妙すぎで笑いました。


気の早い言葉を間に挟んでしまって申し訳ない

で、後日談もあるんですよね?



歩美一番好きだからうれしいよ

>>208
ここまでお付き合いいたただきありがとうございます。

>>209
>で、後日談もあるんですよね?
もうネタも気力も尽き果てました。
ご期待に添えず申し訳ありませんが、おそらく書きません。

>>210
ありがとうございます。
ちなみに作者は歩美とちひろが同じくらい好きです。
いや、ちひろの方が僅差で好きかも(えっ

作品をピクシブのほうに掲載しました。
小説カテゴリで
【神のみ】  歩美「私と勝負しなさい」  桂馬「へ?」
で検索していただければ見つかると思います。
字数制限のため、タイトル末尾の【アスピオの人】は省いています。

>>214
ありがとうございます。
楽しんでいただけたなら幸いです。

見ておられるかどうか分かりませんがまとめサイト管理人さんへ
転載する際、末尾の【アスピオの人】は省いていただいて問題ありません。

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