モバP「よォし!総員出撃ッ!!」 「「了解ッ!!」」 (46)



 第一話:遂に現れた悪夢!





 銀河歴10083年7月25日 晴れのちくもり

   日差が強い。要日焼け止め。
   水分補給も忘れずに。
   

   島村卯月、17歳。

   右利き、趣味は長電話。
   O型、出身は東京。


   アイドル、やってます!



「凛ちゃん、こっち!」

「ごめん、待ったよね?」

「それは……大丈夫!」

「ふふ、ごめんね」

  渋谷凛ちゃん。

  クールでかっこよくて、でもちゃんと女の子な私の大切な友達。

「……奈緒は?」

「遅れるって、凄い息切らして電話があった」

「……大丈夫なの?」



「っはぁ、…ぜぇ…ぜぇ……」

「わ、悪い……」

「だ、大丈夫?」

「噂をすればなんとやら、かな」


  神谷奈緒ちゃん。
  恥ずかしやがりさんで荒っぽいしゃべりだけど、その実ずっと優しいやっぱり私の大切な友達。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1397890769



「い、いや、ちょっと、な……」

「全然分かんないよ、熊でも出たの?」

「コンクリートジャングルにはそんなもの住んでねぇ!」

「良かった、ツッコミは出来るみたいだね」

「あははっ!」


  今日は学校もお仕事も全部休み。

  アイドルとしては微妙だけど、女の子としてはとっても嬉しい。

「今日はどうしよっか?」

「お洋服見て、ケーキ食べて、カラオケとか…」

「カラオケ?…奈緒と行くと知らない歌が流れるからなぁ……」

「うるさいなぁ…こっちからすりゃお互い様だよ」

「そう言えばこの辺に美味しいクレープ屋さんがあるんだって!」

「ああ、あたしも聞いた」

「じゃあ行ってみる?」

「近くだったと思う」

「じゃあ決まりだな」

地の文少なめなら台詞前に名前あった方が嬉しいよ

未央、加蓮「…」




「…なんだ、そーでも無かったな」

「あはは……」

  
  言っても、所詮クチコミって事かな。
  話のネタにはいいけど、情報としては微妙かも。

  所変わって、お洋服見てます。


「あ、いたいた」

「凛、何やってたんだ?」

「奈緒ってさー……」


「こういうの、着ない?」

  取り出したのは、ひらひらのまさに『可愛い』っかんじの服。奈緒ちゃんの今の格好とは似ても似つかない。

「ばっ!?またお前は……」

「いーじゃん偶には着てみなって」

「そーいうのは仕事だけで一杯一杯だ!」

「私も見てみたいかも…」

「卯月ぃ!?」

「あ、ほら、試着室空いてるよ」

「やめ、押すな!」

>>3 了解 …だけどこのレスと次レスだけは演出で付けない

>>4 後で出す!




  薄暗い部屋に液晶の光が嫌に目立ち、キーボードを叩く無機質な音だけが虚しくこだまする。
  それも数十。数は多いが、不思議とそれだけ虚しさが増す。

「プ……ガバナー」

「何だ?」

  苛つきから自然と語気が強くなってしまう。これではいけない。
  もっとも、それを気にする彼女ではないが。

「甲型三号機、整備率五十%。あと3日ほどあれば完了とのことです」

「あまり嬉しい数字ではないな」

「仕方ないでしょう、あんな無茶な運用……」

「黒川さんを見習って欲しいものです」

「奴と比べては酷だろうに……まぁ、痛手なのは確かだが」

「お金だって有限だっていうのに……」

「結局、そこに落ち着くのか……」



「ッ!!プロ……ガバナー!!」

「何が起こった?」

「亜空間隔絶率の大幅な低下を観測したわ!!」

「何だと!?」

  突如発せられたそれは、あまりに衝撃的かつやっかいな物だった。

「座標は……モニターに出す!」

「これは……」


  訂正、かなりやっかいな物だった。






奈緒「部屋に押し込んだって着ないもんは着ねぇ!」

凛「絶対可愛いから!ね!」


  相変わらずというか、そんなやりとり。
  加蓮ちゃんがいたらもっと凄いんだろうな。


「…あれ、凛ちゃん、奈緒ちゃん、携帯鳴ってるよ?」

「あれ、…」

「ホントだ」

  二人同時なんて、珍しいこともあるんだなぁ。


  会話を始めた二人だけど、内容はあんまり良くないみたい。
  二人とも青い顔して、携帯からも怒鳴るような声が聞こえてくる。


「うん、……わかった…」

「それじゃあ……ったく、こんな時に……」

「奈緒、聞いた?」

「ああ、…空気読んで欲しいぜホント」

「二人とも同じ話題?」

「卯月………」


「ごめん!!」

「この埋め合わせはまたな!」

「あっ…」


  それだけ言うと、二人は走って行っちゃった。





「はぁ……」

  結局連絡も付かなくなっちゃって、一人でケーキを食べる事になっちゃった。

「美味しいなぁ…」

  あてつけみたいに感じるくらい。


「そこの姉ちゃん」


  皆で食べたかったなぁ……


「ちょっと」

「あ、私?」

  隣に立っていた、うわ、チャラそうな人。

「可愛いね!今一人?」

「そう、ですけど……」

  変装はしてきてるから、アイドルだってバレてないけど……弱ったなぁ……いつもは友達と来てるから、こういうことは無いんだけど……

「良かったら、お茶しない?」

「あー……ええと…」

   良くありません。…って、言いたいなぁ。



「ええと、…私……」

「一人で居たら勿体ないって!」



「おい!ありゃ何だ!?」


  お店の中に居た誰かが不意に叫びました。

  その人は空の向こうを指さしていて…


「……ぇ?う、そ…」


  嘘みたいな光景。
  空が歪んでいて、おっきな穴が空いていました。
  中に入ったら二度と出て来れなさそうな、暗くて、深くて、不気味な穴が。

  でも、もっと嘘みたいだったのは───


「化け、物……?」


  思わず呟いていた。

  気付いたら皆悲鳴を上げていて、パニックになって逃げまどっていて、私だけが座り込んでいました。
  呆気に取られているうちにも、見る見るその数を増やしていって。

「……逃げないと」

  独りごちて、立ち上がった時、既に店の中には私しか居ませんでした。

  

  一心不乱で逃げました。

  人混みに押しつぶされそうになっても、泣きたくなっても。
  だって、まだ私はやらなくちゃいけないことがあるから。一杯皆とお話して、おいしい物食べて、遊んで、笑って、なによりアイドルとして……


「っ……はぁ…ふぅ…」


  なんとか路地裏に入り込んで、一息。
  

  後に私は振り返ります。
  なんで、此処に逃げ込んだだけでちょっぴりでも安心したんだろう。

  『あいつら』からしたら、何処にいようと関係ないのに。



「っ!!」

  耳に強い圧が押し掛けてきて、考えるより先に耳を塞いだ。

  それでも、足りないくらいに響いてくる音。

  脳みそを掻き回すみたいな、空気を粉々に砕いてしまいそうな不愉快な音。
  耐えきれずその場にへたり込みながらも、音の発生源、空を睨みつける。


「ぁ………」


  目が、合った。
  ぬめる甲殻、毛の生えた六本の脚、高速で上下する、本能的に嫌悪を覚える胴体と口、何処も見ていないのに、全てを見渡していそうな複眼。
  怪物。どうしようもなく。

  気付いたら目の前を光が覆っていて。


  ああ、私、死ぬんだろうなって。

  何も出来ないのに頭だけは恐いくらい動いて。

  例えば。買っただけでまだ読み進めてない漫画とか。
  例えば。観たいなって思ってた映画とか。
  例えば。未央ちゃんに話してないことがあったなって。
  例えば。まだ親孝行が済んでないって。

  謝った回数は百じゃ足りない。
  後悔の回数は数えられる訳もなく。

  圧縮された時間の中、どれだけ長く感じても……無情、時間は止まってくれない。

  世界から音が消えて、もう光しか見えなくなる。

  少しでも現実から逃げたくて、瞼を堅く閉じる───



「───ッ!!」


  辺りを突風が突き抜けて……


  突き抜けて……



「ぁれ……?」

  生きてる?


  瞼を開くと、また別の存在が目の前に在りました。

  怪物がいればそれを倒す者も居る。
  それはもしかしたら当然の事なのかも知れません。

  南からぎらぎらと照りつける太陽を、全身を包む蒼い鎧に反射させて。

  そびえ立つ脚は、固く地面を踏み締めて、嵐が吹こうと揺らぐ事は無さそうに思えた。

  それが支える胴体は、見るだけでその質量をしかと伝え、異様な存在感を放っています。

  そこから延びるのは、腕。振るわれるだけで街をなぎ払ってしまいそうな、強大な腕。

  それらは人の持つようなそれだけど──あまりに大きく、あまりに無機質。

  私はこれをなんと形容すべきか知っている。
  でも、これは液晶の向こうとか、紙の中にしか存在しないはずで。でも、確かに目の前に在って。

  その巨人は、その手に握られた引き金を引きます。
  弾けた爆音はやがて空気を押し出し、辺りを吹き飛ばさんとする突風になって、反射的に周りの人々を踏ん張らせる。
  音速を超えて撃ち出された弾丸は行く先の全てを切り裂き、怪物さえ貫きました。

「大丈夫!?卯月ッ!!」


  知らない質量。知らない大きさ。知らない存在。
  けれど聞こえてきた声は聞き慣れたなんてものじゃなくて───  







  静かだった薄暗い部屋が嘘のように慌ただしくなる。これこそが此処の在るべき姿であり、あってはならない姿である。

「亜空間隔絶率なおも低下!もう時間の問題よ!!」

  焦る怒号を受けモニターの先、二人の少女を見つめる。

「甲ニ、乙三の準備は良いか!?」

『パイロットはオーケーだよ!』

『ったく!こっちは休日だってのに!!』
『時間も場所も最悪だ!!』

『奈緒、文句は後にしよう』

『分かってるよ凛、プロ……ガバナーにたっぷりな!』

「それだけ話せれば十分だな!」

  諫めるような事はしない。
  彼女等の言い分はもっともで、こちらも大体同じ事を考えているからだ。

「座標認識確認、亜空間転移可能!!」

「五秒時間をやる!身構えろ!!」

「了解、カウント開始!」


「五!」

「四!」

「三!」

「ニ!」

「一!」



「転移!!」

  瞬間モニターにノイズが走り、苦悶の声が二つ。

  その強い振動はこの部屋まで伝播して、その場の全員がしがみつく手を支点に体を揺さぶった。


「頼むぞ……!」

  おそらくは聞こえていない。それでも言う。
  それはまるで、祈りのようだった。



『転移!!』

「く、ぅ」

  合図と共に前面の空間が色とりどりのまだら模様に変わり、同時にコックピットが揺らされる。

  この瞬間はどうにも慣れない。今でこそ少し不愉快なくらいだが、初めはよく吐き戻しそうになったものだ。

  妙な空間に投げ出されたのも束の間、また景色が変わる。目の前に穴が空いて、その先に機体が吸い込まれていく。

  抜けると、装甲越しでも空気が変わるのが分かった。

  東京、さっきまで私達が居た街──の、上空。

『凛、また吐いたりしてないな?』

  通信機から奈緒の軽口が飛んでくる。

「全く……いつの話してるの?」

『そうだな…んなことより!』

「うん、うじゃうじゃと……礼儀がなってないね」

『それじゃあ、あたし達が教えてやらないとな!』

「オ・シ・オ・キッ!覚悟してよッ!」

  鉄の手足から青い炎が吹き出て、自由落下する機体を制御する。

  突き出された右手には、銃が一丁。
  重力に流され、各部のスラスターで姿勢を保ち引き金をニ度引く。

  125mm。戦車砲に匹敵する口径の銃身を持ち、遙かに凌駕する威力を持った弾丸──否、光線が発せられる。
  気流、コリオリ、重力。諸々を無視して一直線に飛び一発は怪物の頭を、一発は怪物の羽を貫いた。
  大気圏において始原的な飛行方法をとっていた故にその体を中空に維持できず、重力に囚われた巨体がビルの中腹にめり込む。
  窓を割り、壁を砕き、床を貫き地面に突っ込む。支えを失った上階が崩れ落ち、怪物に降り注いだ。共に瓦礫が飛び散り、地面に当たった次々と砕ける。雨霰と降り注ぐそれに民衆は更なるパニックを起こし、壊れたビルを中心とし、人混みに波紋が広がった。
怪物にさほどのダメージは無かったが、上がった粉塵を目掛けて突撃する影が一つ。

『だらぁぁぁあああ!!』

  赤い影が降り立ち、大地を揺らす。轟音と振動が周囲に伝播して、大地を割って更なる粉塵を上げる。人々は矢継ぎ早に降りかかる受難にただただ悲鳴を上げた。
  その中心にある影のその手は大上段に構えられ、両のマニュピレーターには一振りの十数メートルにも及ぶ刀。
  陽光を照り返して輝く刀身が怪物の体を両断し、今度こそそれを絶命させた。

  
  

  一つ殺して後三つ。

  敵を斬り伏せた奈緒は次の目標を見定め大地を蹴り込んだ。
  足下のアスファルトに更なる亀裂が走り、同時に健と背部から噴き出したロケット炎が辺りに熱風となって吹き荒ぶ。

  そのあたりで私も地面に着地し、別の目標を遠距離から狙撃しようと構える。


  が。

  浮かぶ怪物の先に、気になる人影が見えた。思考とシンクロしたモニターがその人影を拡大する。粗いモザイクのような画像が写されるも間をおいて修正が始まり、くっきりとその人影を映し出した。
  それは───

「卯月!?」

『どうした!?』

「卯月が危ない!!」

『何だって!?』

  一度膝を曲げ、そこから一気に蹴り出し、反動をロケットで増幅して空中に舞い上がる。
  その勢いを殺さず適切な推進器を全て全力で吹かし、軌道上に轟音と熱風を撒き散らしながら飛翔する。
  比較的軽量の機体を生かした力業。戦闘機には及ばなくともかなりの速度で上空を駆け抜ける。
  適当なところで姿勢制御スラスターを起動して着地の姿勢を作る。見れば奴は既に攻撃の体勢に入っている。時間がない。安全に着地する余裕は無いか──!
  地面に対して低い角度で滑り込み、共に勢いを殺すように反対のスラスターを吹かす。地面を削り、並み居る瓦礫を蹴散らす。コックピットがガタガタと揺れ、何時の間にか歯を食いしばっていた。
  怪物の目の前に止まった時には既に攻撃が放たれようとしていた。攻撃を受けるのは時間の問題。

「ピンポイントバリアッ!」

  左手を伸ばす。
  淡い光が掌に集中し、怪物の口腔に翳された。
  ──瞬間光が放たれ、指向性を持って襲い掛かったそれは掌の光に阻まれその殺意を発揮する事無く六つに分散された。
  それでも尚威力を持つ光線の、内三本が遙か後方で地面を引き裂く。その先の安否は──人が居ないことを、祈る。

  目の前で隙をさらす怪物めがけ、右の銃身を突き出す。
  開いた口腔に銃口を突っ込んで人差し指にあるスイッチを押し込むと、連動したマニュピレーターが銃の引き金を引いた。頭から体の真を貫かれ、対象が一撃で絶命する。

「大丈夫!?卯月ッ!!」

『その声……!?』

「それは……後で話す!」

「取り敢えず……乗って!!」

『えっ!?…ぅあっ!?』

  可能な限り優しく卯月をつまみ上げて、開け放ったコックピットへ無理矢理に引き込む。

  
  

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom