天使「こんにちは!」男「誰だお前は」(310)



男「お前、浮かんでるぞ」


天使「そりゃ天使ですからねー」


男「・・・信じられるかそんな事」


天使「そう言われましてもねぇ」


男(なんなんだこいつは・・・)


男(天使なんて、空想上のもんだろ)


男「きっと疲れてるんだな、寝よう」


天使「あ、じゃあその間に子守唄歌ってあげます」


男「いや、すごくいらない」


天使「ちぇー」

ダーマッ!

男「・・・」


天使「どうしたんです?」


男「お前のことだよ、全く意味が分からない」


天使「ですから、私は天使ですって」


天使「もっと頭を柔らかくしないと」


男「目の前にお前みたいのが居たら、誰だって同じ反応するだろ」


天使「つまらないですねー。それじゃ女の子からモテませんよ?」


男「・・・余計なお世話だ」


天使「よし、それでは本題に入りましょうか」

天使「今日はですねー」


天使「あなたにこれを受け取って欲しいのです」


男「何だこれ・・・箱?」


天使「開けてみてください」


男「・・・」パカッ


男「・・・なんだこれは」


天使「種です」


男「種だと?」


天使「それは生命の種という物です」


天使「あなたの想像から生命を創造できる、そんな種です」

男「まさか・・・そんなこと・・・」


男(ありえない、こいつの存在も言動すらも理解できない)


天使「あー!信じてませんね!」


天使「じゃあ・・・赤い種一つと、緑の種二つがありますよね」


男「あ、あぁ」


天使「ちょっと緑のを1つ貸してみて下さい」


天使「証拠をお見せしましょう」


男(証拠?)

天使「よいしょっと」ポイッ


男「・・・」


天使「どうです?この子の名前は知ってるでしょう?」


男(これは・・・ユニコーン・・・また空想上のものか・・・)


天使「この部屋狭いんで少し小さめに想像しちゃいました」


男「・・・」


天使「信じてもらえますかね?」


男「・・・こんなもの見せられたらな」

天使「それは良かったですー」


天使「よし、『戻れ』」


天使「はい、元通りですよ」


男「・・・どうやってやるんだ?」


天使「あぁ、説明しなければなりませんね」


天使「まぁ大雑把に言えば、種を投げる、それだけなんですが」


男「?」


天使「この時に重要な要素があります」

男「なんだそれは?」


天使「先ほども言った通り、これは想像からの創造を可能にする種です。つまり・・・」


男「想像しながら投げる・・・ってことか」


天使「はい、その通りです」


男「それだけでいいのか?」


天使「いや・・・まぁとりあえずやってみてください」


男(それなら・・・さっきのユニコーンを想像しながら・・・)ポイッ

男「・・・」


天使「・・・」


男「・・・おい」


天使「はい?」


男「何も起きないじゃないか」


天使「ふふっ、種のままですねー」


天使「まぁ当然の結果です」


男「どういうことだよ」

天使「今、あなたは何を想像しましたか?」


男「・・・お前が造ったユニコーンを想像していた」


天使「では・・・あなたはユニコーンの何を知っていましたか?」


男「?」


天使「色ですか?形ですか?餌ですか?雄か雌かですか?」


天使「あなたはユニコーンをほとんど理解していないままで、創造しようとした」


男「・・・あぁ」


天使「ここでさっきの話に戻ります」

天使「生命を創造するのに最も重要な要素」


天使「それは【対象物への理解】です」


男「・・・」


天使「私が最初にユニコーンを造ろうとした時、まず初めに動きを観察しました」


天使「その後に飼育し、ユニコーンについて理解を深めました」


天使「可愛いんですよ?彼らは知能が高くて、友達になれば背中に乗せてくれるんです」


天使「まぁこの世界にユニコーンはいないので、あなたがユニコーンを造ることは不可能ですが」


男「なるほど・・・」

天使「だから最初は構造の簡単な生物から始めるといいです」


天使「できるようになるまではだいぶ苦労しますが、初めができれば後は楽でしょう」


男「分かった」


天使「うん、こんなところですね」


天使「説明いっぱいしたらお腹減りました。なので私はここら辺で・・・」イソイソ


男「おい、ちょっと待ってくれ」


男「二つほど疑問があるんだが」


天使「はい?」

男「まず、この赤い種はなんなんだ?緑とはなにか違うのか?」


天使「・・・うーんと」


天使「それは・・・今のあなたには無理なので気にしなくていいです」


天使「まぁ保管しといてもらえれば嬉しいです」


天使「あ!どの種も食べれませんからね!すごい不味いですからね!」


男「誰が食うか、こんなもの」


男「・・・納得できないが、とりあえずこの話は置いておこう」


男「もう一つの質問だ。・・・なぜ俺にこの種を渡すんだ?」

男「なにか理由があるんだろ」


天使「理由・・・ですか」


天使「・・・」


天使「・・・最後の一歩を進められなかった者の・・・願い」


天使「それと・・・私のわがままでしょうね、それが理由です」


男(一体何のことを言ってるんだ・・・)


天使「・・・すみません、やっぱり帰りますね」ニコッ


男「お、おい!」


天使「それじゃ・・・」ヒュン


男「・・・」

ーーーーーーーーーー




男「さて」


男「俺はどうすればいいんだこれを」


男「今することと言えば・・・」


男「とりあえず赤い方は箱にしまっておくか」


男「箱自体を押入れに入れとけばいいだろ」


男「ここに入れて、と」


男「ん?これは・・・」

男「なつかしいな。子供の頃はよく見てたな、この動物図鑑」


男「参考になりそうだから出しておくか」


男「どれどれ」ペラッ


男「難しそうなもんばっかだな」


男「ここに載ってる簡単そうなのは・・・蟻・・・か?」


男「インターネットで詳しく調べてみるか」カタカタ

男「・・・出てきたけど」


男「蟻ってこんなに複雑な構造してたのか・・・」


男「・・・」


男「まぁ、やってみるしかないな」







天使「ふふっ、蟻ですか。最初に選んだ生き物は」


天使「やはり少しは変わってるんですかね」

ーーーーーーーーーー




男「・・・」ポイッ


男「・・・」


男「今度も無理か」


男「構造は理解できてると思うんだけどな」


男(それとも、何かやり方があるんだろうか)


男「・・・とりあえず日も暮れたし、飯でも作るか」


男「確か冷蔵庫に・・・あぁ、あったあった」


男「これを適当に調理して・・・」

~~~~~


男「うん、美味い」


男「やっぱ料理は簡単なのが一番いい」


男「けど・・・いつもよりなんかもの足りないな」


男「あれ?いつも・・・って俺どんなもん作ってたっけ?」


男「まぁいいか、ごちそうさま」

男「さてと、また挑戦だ」


男「とりあえず構造を整理してみるか」


男「何かやり方があるんだとしても、天使の奴は何も言わなかったからな」


男「・・・地道にやってくしかない」






天使(・・・)


天使(・・・やり方?そんなのあったっけ?)


天使(強いていうなら・・・don't think,feel)


天使(・・・ですかね!)

ーーーーーーーー




男「一週間練習した」


男「よし、今度こそいける」


男「頭に思い浮かべて・・・」ポイッ


蟻(種)「」


男「・・・できた・・・のか?」


男「動いてないけど・・・蟻だよな」


男「やっとできたか・・・」

男「想像の仕方にもコツがあるんだな」


男「頭の中で一旦蟻を組み立てて、そのまま種を投げればいいのか」


男「それにしても、本当に生きてるんだよな、これ」


男「とりあえず動け」


蟻(種)「」トコトコ


男「・・・うん、確かに歩いてるな」


男「命令のままに動くんだな」

男「元に戻すには・・・『戻れ』か?」


男「・・・また種に戻ったな」


男「それにしても・・・」


男「やっぱりこの種は本物なんだな」


男「俺でも創れるようになった」


男「一歩前進、てとこか?」



(・・・・した・・・・・・・ね)



男「ん?なんだ?」


男「・・・空耳か」


男「よし、そろそろ寝るか」

ーーーーーーーー




男「ふぅ」


男「あれからだいぶ練習したな」


男「あの時蟻は完成したと思ったけど、成功したりしなかったりで不安定だったからな」


男「だいたい一ヶ月で蟻1匹か・・・」


男「犬・・・とか創れるのはいつになんだろうな」


蟻(種)「」トコトコ


男「おっと、歩き回らせたままだったな」


男「よし、戻れ」

男「今度こそ、蟻は完成した」


男「次は何に挑戦しようか」


男「まだ哺乳類に手を出すのは早いだろう」


男「少しずつ段階を踏んでどんどん複雑な生き物を・・・」


男「・・・というか、やっぱり分からない」


男「この種は確かに素晴らしい。だけど、なんの意味があるんだ」


男「何かを創れたら、また何か。その繰り返しだろ」

男「天使のやつは・・・なんかよく分からないし」


男「どう考えたって俺には関係のないことだ」


男「また天使に話を聞きたいけど、あいつはいつ来るのか分からないしな」









天使「・・・」


神さま「なにを見ておるんじゃ?天使よ」


天使「あっ、神さま!」

天使「いや、少し現実界を見ていまして」


神さま「現実界?これはまたなぜじゃ?」ニヤニヤ


天使「いやぁ・・・ちょっと色々とありまして」


神さま「・・・ほう、隠し事か」


神さま「お前も生意気になったのう。つい150年前までは赤子だったのにのう」


天使「いいじゃないですかー」

神さま「・・・まぁ、考えてから行動をおこしたのなら、わしゃ何も言わぬ」


天使「・・・はい。分かりました」


神様「」ニヤニヤ


天使「ところで神様、なんでニヤニヤしてるんです?」


神様「・・・ほっほっほ」


天使「あー!ごまかしましたねー!」


神様「ほっほっほ、わしが隠し事したって文句は言えんじゃろ?」ニヤッ


天使「うーー・・・」

ーーーーーーーーーー




男「そろそろ夕食の準備でもするか」


男「・・・あれ?もう食う物ないな」


男「面倒くさいけど買いにいくか」

~~~~~


男「寒いな」


男「マフラーでもしてくればよかったかな」


男「確か棚にしまったままだから、今度出しておこう」



イラッシャイマセー

子供「おかーさんこれ買ってー!」

母親「仕方ないわねー」


通行人1「もうすぐクリスマスだねー」

通行人2「あー、確かにー。楽しみー」


アナウンス「本日当店ではクリスマスセールを実施しています。家族、恋人、友人へのプレゼントにぜひご利用下さい」


男(そうか、もうそんな時期か)

男(どうせ1人で過ごすのだから、特に何も思わないが)


天使『つまらないですねー。それじゃ女の子からモテませんよ?』


男(あいつの言葉がなぜか思い出される)


男(天使め・・・余計なお世話だ)



子供「おかーさんこれ欲しいやつじゃないー!」

母親「仕方ないでしょ、その人形が出てきたんだから」

子供「やだー!」


通行人1「そういえばさー、去年の春頃に・・・あれ?なんだっけ」

通行人2「なによー、気になるじゃない」

男(とりあえず買うものは揃ったな)


男(レジに行くことにす・・・)


男(・・・)




店員「またのお越しをお待ちしております」




男「買ってしまった・・・」


男「なんでだろう、思わず手にとっちゃったんだよな、このシュークリーム」


男「まぁ、後で食べるか」

~~~~~


男「蟻以外の生き物・・・」


男「うーん、参考になるような資料はあるけど・・・構造が複雑過ぎて億劫だ」


男「鳥とか挑戦してみるか」


男「えーと、鳥の項目は・・・ここか」


男「なるほど、鳥は種類が違っても構造はあまり変わらないんだな」


男「虫なんかそれぞれが全然違くて応用がきかなかったもんな」


男「とりあえず身近な雀とかから始めてみるか」






天使「・・・私もお腹減りましたね・・・」


天使「久しぶりに料理とかしてみましょうか!」


天使「えーと、塩を小さじ2杯と・・・」


天使「・・・小さじってなんですかね」


天使「なんか聞いたことあるけど忘れました」

天使「べ、別に塩なんていらないし!無調理そのままの食べ物が一番だし!」


天使「・・・うん、やっぱりリンゴですね。食べ物はそのまま食べるのが1番です」


天使「けど・・・【アレ】も食べたいです」


天使「けど【アレ】は買ってきてもらわないと食べられないんですよね、こっちには無いし・・・」


神さま「むしゃむしゃ」


天使「・・・!神さまそれは!」


神さま「むしゃむしゃ・・・これはわしのじゃ・・・」ごっくん


天使「(泣)」

ーーーーーーーー



男「なるほど、風切羽の有無が飛行の一つの条件なんだな・・・」


男「翼があれば飛べるってもんでもないってことか」


男「羽の一枚一枚を区別して想像するとなると、難航しそうだ」


男(ただ羽があれば飛べるのかと思ってたけどなぁ)


~♪


男「電話か」

男「はい、男です」


男「あ、お袋か」


男「あぁ、いつも通り振り込んでおいてくれ」


男「・・・仕事は・・・まだ決まってないよ」


男「・・・分かった、なるべく早く見つけるよ」ガチャ


男「・・・」


男(仕事をしないでどのくらいになるっけ)


男(前の仕事を辞めてから、もう働きたくないんだよな、なんでだろ)


男(働くことを体が拒否してんだよな・・・)


男(・・・もう少しこのままでもいいだろ)






神さま「天使よ」


天使「はい?なんですか?」


神さま「少しだけ現実を見るのをやめたらどうじゃ」


天使「何言ってんですか神さま、向上心の無い者は馬鹿なんですよ?」


神さま「いや、そういう意味ではない」


天使「?」

神さま「お主がその球を使って現実界を見ていると、わしが観れなくなるではないか」


天使「?・・・何をですか?」


神さま「紅白」


天使「・・・は?」


神さま「紅白」


天使「・・・千里眼でもなんでも使えばいいじゃないですか・・・」


神さま「それはダメじゃ!昔から紅白はコタツに入りながらその球を使って観ると決めてるんじゃ」


天使(そんなのこだわらなくてもいいじゃないですか・・・)

ーーーーーーーー




アケマシテオメデトウゴザイマス


男「明けましておめでとう」


男(って、テレビに言ったところでな)


男「今日もやることは変わらない」


男「あともう少しだな。もう少し雀の理解を深めてみよう」


男「調べることが一種の趣味になってる気がするな」カタカタ


男「なるほど・・・砂浴びは知っていたが蟻浴びなんてのもするんだな」


コンコン


男「ん?」

天使「明けましておめでとうございまーす」


男「・・・お前か」


男「なんか用か」


天使「ちょっと新年の挨拶に来ただけですよう」


天使(本当は神様が紅白観るって言い張ったからなんですけど・・・)


天使「さてと・・・」


天使「最近どうです?」


男「なんだその軽いノリは。まぁまずまずだ」

男「蟻は創れたんだ。今は雀に挑戦しているんだがな、もう少しってところだな」


天使「じゃあ蟻創ってみて下さいよ」


男「分かった」


男「ほら」ポイッ


蟻「」


男「・・・どうだ?」


天使「・・・そう、ですね」


天使「動かすことはできますか?」

男「もちろんだ」


蟻「」トコトコ


天使(動かす・・・ことはできましたね)


天使(うーん、練習し始めてから2ヶ月か・・・まぁこんなものなのかな)


男「どうした?」


天使「い、いえ、なんでもないです」


天使「動かすことができるんですね、その調子です」ニコニコ

男「そうか。よし、『戻れ』」


男「こんな感じだ」


天使「・・・早く雀を創れるといいですね」


男「おう」


天使「男さん」


男「なんだ?」


天使「頑張るのは良いんですけど、体調管理しっかりして下さいね?」


男「余計なお世話だ」


天使「またそう言って・・・本当に気をつけて下さいよー?」

天使「見たところ部屋も片付いてないですし、新年早々ダメ男ですねー」


男「余 計 な、お 世 話 だ」


天使「一人暮らしで大丈夫なんですかね。ちゃんと食べてます?」


男「簡単なものを作って食べてるよ」




(・・・・だよ・・・・・が・・)




男「ん?」


天使「はい?」

男「いや・・・なんでもない」


男「なんか食ってくか?作ってやるよ」


天使「いいんですか!?それじゃあ・・・」


男「なんだ?」


天使「【アレ】・・・ありますかね」


男「【アレ】?なんだそれ?」


天使「あ、そうでした」


天使「【アレ】は・・・あの柔らかいようでサクサクな生地、中はふわっと軽く、でも濃厚なクリームの・・・」

男「・・・もしかしてこれか?」


天使「!!それですそれです!!」


男「料理する必要なかったな」


男「というかお前ってシュークリーム好きだったのか」


天使「おかげさまで大好きなんです!」むしゃむしゃ


男「買ってきたのすっかり忘れてた」


男(買ったのは1週間くらい前だし、まぁ大丈夫だろ)


天使「おいしーです」むしゃ

男「お前らの世界にはシュークリーム無いのか?」


天使「無いんですよー」


天使「神様は人の姿になれるからいつでも買えるんだけどなぁ・・・」ブツブツ


男「ん?なんだって?」


天使「あ、こっちの話です」


天使「それでは、そろそろおいとましましょうかねー」


男「ちょっと待て」

天使「あ、そうでしたね。ごちそうさまです。ありがとうございました!」


男「いや、別にそのことはいいんだ」


男「聞かせてくれよ、この種について」


天使「・・・」


男「じゃあシュークリームのお礼、ってことで」


天使「えー・・・」


天使「・・・まぁいいでしょう」

天使(とは言ったものの・・・)


天使(困りましたね、今説明しても・・・)


男「・・・おい」


天使「・・・はい、分かってます」


天使(・・・まぁ、大丈夫でしょう)


天使「さて」


天使「その種自体は最初に言った通りです。生命を創造する際の想像から創造への媒介みたいなものです」


男「あぁ、それは理解してる。俺が気になるのは色の違いだ」


男「緑と赤。一体何が違うんだ」

天使「・・・単刀直入に言います」


天使「あなたの手にしているその緑の種は、いわゆる練習用です」


男「練習用・・・?」


天使「はい。やり直しが何回でもできるんです」


天使「蟻を創ろう、それを戻して今度は雀を創ろう、それを戻して今度は・・・」


天使「そうやって練習していくんです、来たるべき本番・・・赤の種のために」

男「本番だと・・・赤の種だと何が違うんだ」


天使「緑の種の逆です」


天使「つまりは・・・生命が固定されます」


天使「赤の種は一度生命になったら、二度と種には戻りません。その生命として生き、寿命に達したら死にます」


男「本物の生き物になるってことか」


天使「はい。それが緑の種との違いですね」


男「そうだったのか・・・」

天使「・・・今、種はどこにありますか?」


男「この緑以外のやつは、そこの押入れにしまってあるぞ」


天使「そうですか」


天使「・・・赤の種のことは・・・最初に私は言いましたよね、『今のあなたには無理だ』と」


天使「しかし今は違います。あなたは生命を創造する力を得ている」


天使「だからこそ、だからこそ私は今一度言います」


天使「あなたは今の状態で赤の種に触れてはいけません」


天使「絶対に、絶対にです」


男「わ、わかった。触らない」

男(なんで・・・)


男(なんでそんなに必死な顔をするんだ・・・)


天使「そうしていただけたら嬉しいです」ニコッ


天使「それでは今度こそ帰りますね」


男「おい、まだ話がある」


男「俺にこれを渡した理由は・・・一体・・・」


天使「シュークリームひとつで情報ひとつ。等価交換はあなたも理解してるはずですよー」


男「等価・・・交換・・・」


天使「・・・」ニコッ


天使「・・・それでは」ヒュン







神様「今年は白組か」


神様「今年も良い年じゃったの、わしのおかげかの」


神様「・・・天使が呆れて出て行ったけど、何しとるんじゃろ」


神様「どれ、少し天使の一日を見てみるかの」

神様「ほうほう、真っ先にシュークリーム屋に向かったのう」


神様「本来わしらは食べなくても生きていけるというのに、なぜあやつはあんなに食欲があるのじゃ」


神様「たまに食べるのが飽きも来ないし、いいんじゃがのう」


神様「天使はまだ店の上ををうろうろ飛んでおるな」


神様「羽を隠さないと大衆の前で姿を現すのは禁止なんじゃからな」


神様「と言っても、まだ隠し方を教えてないからあやつには買えまい」


神様「人間を怖がらせたらお仕置きじゃからの」プンプン

神様「む、諦めてどこかに向かったか、どこじゃ」


神様「ほう、前に話していた男の家か」


神様「ほっほっほ」ニヤニヤ


神様「それにしても・・・」


神様「理由はどうにせよ、若者達が何かを理解しようとする、一生懸命な姿勢はいつの時代も変わらないのう」


神様「わしも若い頃は・・・」


神様「ほっほっほ」

ーーーーーーーー




男「・・・」


男「本番・・・か」


男「試してみたいけど、あれほど念を押されたら・・・触れないな」


男(押入れは迂闊に開けないようにしよう)

男「・・・」


男「天使がなんでこの種を俺に渡したのか」


男「今のところ確信できるのは、あいつが俺に練習をさせているってことだ」


男「何かを俺に創らせたいのか・・・いや、あいつなら自分で何でも創ってみせるだろう」


男「俺が創れるのはまだ蟻だけだぞ」


男「まぁ・・・あいつが何を考えてるのかは分からないけど」


男「俺は地道に練習していくだけだな」




天使「ただいまです」ヒュン


神様「おぉ、おかえりなさい」


天使「一応・・・明けましておめでとうございます神様」


神様「ほっほっほ、一応じゃな」


神様「年の数え方などはわしらも使わせてもらっておるが・・・」


神様「まぁ結局は人間の取り決めたこと、わしらには関係ないことじゃ」


天使「・・・神様は紅白だって見るくせに」ボソッ


神様「ん?何かな天使よ」


天使「なんでもないですようー」

ーーーーーーーー




雀「」


男「・・・」


男「完成・・・か?」


男「・・・よし、飛んでみろ」


雀「」パタパタ


男「ふぅ、やっとか」


男「鳥についてはだいたい理解できたな」

男「ひとまず小休止ってとこか」


男「はぁ」ゴロン


男「サイズを大きく想像したらあれに乗れるかもな」


男「・・・」


男「蟻と雀か」


男「緑の種は二つあるんだし、同時に創造するなんてこともできるだろうか」


男「いや、相当練習積まないと到底できそうにないな」


男「先が全く見えなくてモチベーション上がらないな」


男「・・・元からそんなものはないけどな」





天使『わー!今日も美味しそうですねー!』


天使『いただきます!』


天使『・・・あれ?これ味がしませんよ?』


天使『ねぇ?・・・ってあれ?』


天使『二人ともどこに行ったんですか?』


天使『・・・置いてかないでくださいよ』






天使「・・・ん」


天使「なんだ、夢か」

天使「覚めなきゃ良かったのに・・・もう一回寝よう」


天使「はぁ・・・」


神様「おぉ天使、ここにおったか」


神様「む?どうした天使よ、今日はやけに静かじゃな」


天使「い、いえ!少し・・・思い出に浸っていただけです」


神様「ほほう、思い出とな」


神様「わしも長いこと生きておるが、この歳になると忘れたことの方が多い気がするのう」


天使「そうなんですか」

天使「神様の昔ってどんなだったんですか?」


神様「そうじゃのう、お主と同じくらいの頃はもうちょっと落ち着いていたのう」ニヤニヤ


天使「あー!なんですかそれ、まるで私がうるさいみたいに!」


神様(それがうるさいと言うんじゃ・・・)


天使「もう!」


神様「これこれ、ヘソを曲げるでない」


神様「どれ、一つ話をしてやろう」

神様「お前がまだ小さい頃じゃ、そりゃあうるさくてのう」


神様「あまりにもうるさくてわしも仕事にならなかったんじゃ」


神様「そこでじゃ、お前に生命の種を渡してみたんじゃ」


神様「まぁ間違って口に入れても不味いだけで安全じゃからのう」


神様「するとどうじゃ、お前は種で遊び始めたんじゃ」


神様「これで静かになると安心してたらのう」


神様「お前がいつの間にか2人になってたんじゃ」


神様「さすがにわしも驚いたのう・・・不完全とはいえ、幼くして天使を創ったんじゃから」

神様「お前の成長した姿を想像するとワクワクしたんじゃがのう」


神様「お前が2人になったらさらに騒がしくなると気づいて」


神様「・・・わしはお前からそっと種を取り上げたんじゃ」


神様「今となってはそれも杞憂・・・1人でもうるさいんじゃからのう」


神様「しかしな、あの時にわしは決めていたんじゃ」


神様「わしを継ぐのはお前しか居ないとな」


神様「ほっほっほ・・・ん?」


天使「むにゃ」zzz


神様「呆れたもんじゃ、わし今けっこう大事なことを言ったんじゃがのう」


天使「むー」zzz

ーーーーーーーー
ーーーーーーーー



「なぁ、ここじゃないみたいだぞ?」


「ちょっとずれちゃいましたねー」


「やっぱりおっちょこちょいだな」


「ふふ、そうです、その通りです」


「ははは」


「えーと、それでは・・・任務を果たしましょう」


「おう!」



ーーーーーーーー
ーーーーーーーー

男「節分の日か」


男(子供の頃は、歳の数だけ食べられる豆が楽しみだったが)


男「・・・今は、至って平凡な一日だとしか思わないな」


男「今日も練習だ」


男「せっかく鳥の構造を理解できたんだし、雀以外も創ってみたいものだ」


男「ちょっと図鑑で調べてみるか」

男「・・・」ペラッ


男「どの鳥がいいとかはないんだがな・・・」


男「・・・ここに載ってあるやつを順々に3つくらい挑戦するか」


男「構造はだいたい同じなんだし、1週間を目標にしよう」


(・・・た。・・・・ま・・る。)


男「・・・なんだよ、またか」


男「寝不足だな」


男「天使も体調管理とか言ってたし、気をつけとくか」

~~~~~


男「思い出したんだけど」


男「俺はいつも同じ緑の種を使ってるけど、もう一つの方はほとんど使ってないな」


男「なんの違いもないし、困る事は無いんだが」


男「二つ持っとく必要性も無いからな、今度天使に返しとくか」


男「ん?そういえば赤の種は一つだけか」


男「失敗出来ないものなら、赤の種が二つあればいいのにな」


男「まぁ天使のミスだろうな、そそっかしい奴だし」


男「さて、そろそろ寝るか」





神様(そろそろじゃな・・・)


天使「どうしたんですか?神様?」


神様「おお、居たのか天使よ」


神様「・・・そろそろ始まるんじゃよ」


天使「何がです?」

神様「ほれ、見てみい」


天使「これは・・・チラシ?」


神様「バーゲンセールじゃな、シュークリームの」


天使「*」


神様「久しぶりに買ってきてあげるかのう」ニコッ


天使「本当ですか!神様大好き!」


神様「ほっほっほ」


天使「~*」


神様(・・・始まり・・・いや、あやつらにとっては、やっと終結したってとこじゃの)ニヤッ

ーーーーーーーー




男「・・・」zzz





ーーーーーーーー





ガシャンッ!!


男「!!」


男「な、なんだ!」


男「これは・・・」


男(矢・・・なんで・・・)


男「一体誰がこんなことを・・・」


男「外を確認しなきゃ・・・いや、もし狙われてるなら・・・」


男「カ、カーテンだけでも閉めておこう」

男(誰かいるのか?音は何もしないが・・・)



シーン




男「・・・」




男「・・・何も・・・起きないな」

男「しかし、これはどういうことなんだ」


男「子供のいたずらってこともないだろう」


男「ここら辺に弓矢なんて扱ってるところもない」


男「・・・分からないな」


男「・・・ガラスが散らばってるから、このままじゃ駄目だな」


男「とりあえず片付けるか」





天使「!!」


天使「どういうことですか!」


天使「一体あれは・・・」


天使「どっちにしろ、確認にいかないと!」ヒュン

男「タンスが壊れたな」


男「結構使い慣れたものだったのに・・・仕方ない」


天使「お、男さん!」ヒュン


天使「男さん大丈夫ですか!」


男「・・・天使か」


男「見ての通りだよ」


天使「少し部屋を見せて下さい」


男「ああ、いいけど」

天使(・・・)


天使(やっぱり・・・この矢は・・・)


天使(だけど・・・ますます分からない)


男「これは・・・この種のせいなのか?」


天使「え・・・いや・・・」


男「いきなり種を渡されて、まさか矢で狙われることになって・・・」


男「・・・別にお前を責めるつもりはないんだが」


天使「・・・」


男「俺はどうしたらいいんだよ」

天使「・・・少し・・・時間を下さい」


天使「私にも分からなくて・・・」


男「・・・」


男「今夜はここに居ても安全なのか?」


天使「そう・・・ですね、もしものことを考えて・・・」


天使「男さん、私の手を握っててください」


男「一体なにを・・・」ギュッ


天使「避難です、私の家に」


男「え?お、お前の?」


天使「そうです、いきますよ」ヒュン

一旦休みます
ちょっとしたらまた始めます


って見てくれてる人いるんでしょうか…

乙~
見てるよ

ありがとうございます

再開します

ーーーーーーーー




天使「男さん、もう着きましたよ」


男「・・・あぁ」


男「お前といい、あの種といい、非現実的なものに耐性は付いたと思ってたが」


男「まさかこんな場所があるなんてな」


天使「こっちです」


天使「ここが、私の家です」ガチャ

天使「片付いてないけど・・・まぁ安全ではあると思います」


男「意外と・・・普通なんだな」


天使「さぁ、現実ではもう夜中です」


天使「今日はここを自由に使ってください」


男「・・・お前はどこで寝るんだ?」


天使「えー・・・私は少し調べることがあるので」


天使「おやすみなさい」

~~~~~



天使「おかしい・・・なんでだろう」


天使「しっかり保管してあったし、数も合ってた」


天使「使われた形跡もないし・・・」


天使「じゃあ、なんで・・・」


天使「なんで私の矢が・・・男さんの家に・・・」

ーーーーーーーー




天使「おはようございます」


天使「どうですか?眠れましたか?」


男「あぁ・・・そこそこな」


男「それで、どうするんだ?」


天使「考えたんですけど、こっちで少し様子を見ましょう」


天使「その間、男さんはここで生活してもらって」

男「それでお前がいいなら、そうする」


天使「はい、大丈夫です」


天使「食べ物とかは・・・私が用意しますので安心してください」


男「わかった」


天使「それじゃあ、時間もありますし私の友達を紹介しますね!」


男「?」


天使「外に出ましょう」ガチャ


天使「おーい!帰ってきたよー!」


ユニコーン「・・・」トコトコ


天使「あ!来ましたね」

男「これは・・・」


天使「男さん!前に言ったでしょう?」


天使「友達のユニコーンです」ニコッ


男「すごいな・・・前に見たのとそっくりだ」


天使「ふふっ、当たり前ですよ、あの時は私がそっくりに創ったんですもの」


ユニコーン「・・・」スッ


男「ん?なんか擦り寄って来たな」


天使「すごいですね、もう懐いてくれてます」


男「懐いてるのか、これ」

天使「この様子なら大丈夫ですね」


天使「男さん、私は少し出かけて来ますね」


男「あぁ」



~~~~~



神様「む?なんじゃ」


天使「あのー・・・ですね、そのー・・・」


神様「なんじゃ、はっきりせい」

天使「た、食べ物をたくさんください!」


天使「できれば人間の好みそうなものを・・・」ごにょごにょ


神様「お主の食いしん坊もついにここまで来たか」


神様「ならん、そんなにたくさん与える必要はない」


天使「お願いですよぅ・・・」


天使「ならせめて羽の隠し方を・・・」


神様「それはもっと先に学ぶことじゃ」

神様「どうしたんじゃ?そんなに腹が減っている訳でもなかろうに」


天使「うっ・・・えと・・・」


天使(こっちに人間連れて来たらいけないってなってるしなぁ・・・)


神様「なんじゃ、お主人間を連れて来たのか」


天使「!!」


天使「え?神様なんで分かったんですか?」


神様「神は全能なのじゃ、ほっほっほ」

神様「して、お主・・・規律は知っておろうな?」


天使「はい・・・」


神様「ならよい、お仕置きじゃ」


天使「い、嫌です!やめて!」


神様「ほっほっほ」ペシペシ


天使「痛い!お尻ぶたないで!」


神様「ふん、まぁこれ位で許してやろう」ペシッ


天使「イタッ!最後のが一番痛いです・・・」

神様「それくらいで済んで良いと思いなさい。ほれ、食べ物じゃ」


天使「え?い、いいんですか?」


神様「他のところの神はうるさいからばれないようにするんじゃぞ」


天使「ありがとうございます・・・!」



~~~~~



天使「ただいまです」


男「おう」

天使「それでは夕食にしましょうか」


男「まだ明るいけど?」


天使「ここには昼も夜もないんですよ」


天使「えーと、料理はできないんでそのまま食べてください」


男「そのまま食べられるものの方が少ないがな」


男「なんで生肉とか生魚とか生ものばかりなんだよ」


天使「いいんですよ!そのままが1番なんです!」

天使「あ、リンゴもありますよ」


男「じゃあ今日はそれを食べるか」


男「だけどずっとリンゴじゃ駄目だろう」


男「天使、火を使えるところあるか?」


天使「あ、はい。一応そこにありますが・・・」


男「明日からは俺が作るよ」


天使「本当ですか*ありがとうございます!」

天使「明日から楽しみです」


男「別に特別なものは作れないからな」


天使「もう1年近く料理されたものを食べてないんですよ・・・」


天使「だから特別なものじゃなくても嬉しいです!」


男「・・・そうか」


天使「とりあえず今日はリンゴ食べましょう」


男「そうだな」


天使「いただきまーす!」

ーーーーーーーー




天使「1週間が経ちました」


天使「特に何も起きなかったですね」


男「じゃあ俺は家に帰るのか?」


天使「男さんの料理美味しいから帰したくないんですけどね・・・」


天使「安全なようなので、帰りましょうか」


天使「じゃあ、手を握ってください」


男「あぁ」ギュッ


天使「それではいきますよ」


天使「それ!」ヒュン

~~~~~



男「荒れてるな」


天使「あの時片付けないままここを出ましたからね」


天使「まずは片付けましょうか」ポイッ


天使(種)「・・・」


天使「さ、片付けてください」


天使(種)「・・・」テキパキ


男「お前・・・自分まで作れるんだな」

天使「なんでか分からないけど小さい頃から自分は作れたんですよね」


男「自分に命令するってのもおかしな話だ」


天使「よし、『戻れ』」


天使「では、片付いたようなので私は一旦帰りますね」


男「あぁ」


天使「それでは!」ヒュン


男「・・・」


男「俺は・・・種の練習でもするか」

ーーーーーーーー




神様「む?あの人間は帰ったのか?」


天使「はい、帰しても安全だと判断しました」


神様「ふむ、一度話してみたかったが」


天使「そうなんですか?別にいつでも連れてきますよ?」


神様「いや、無駄なことはしなくてよい」


神様「そんな暇あったら仕事せい」


天使「なんか他の天使と比べて私の仕事量多くないですか*」


神様「・・・気のせいじゃ」

ーーーーーーーー




男「よし、できた」


男「鷹は比較的短い時間で完成したな」


男「けど雀と違って肉食だったから消化器官の構造は少し違ってて苦労したな」


男「さて、次に創るのは・・・あれ?」


男「・・・天使のやつ、図鑑をどこにしまったんだ」


男「あっという間に片付けられたから、どこに何があるのか分からなくなった」


男「・・・探すか」





天使「うーん、分からない・・・」


天使「私のものは私以外には見つからないようにしてあるし・・・」


天使「一旦整理してみましょうか」


天使「男さんが寝ていたところ、ガラスを突き破って矢が飛んできた」


天使「私が来た時には男さんの家の周りには誰も居なかった」


天使「そして・・・飛んできた矢は、厳重に保管していた私のものだった」


天使「・・・分かんないです」

天使「何か悪者が居るのだとしたら・・・」


天使「・・・必殺技とか身につけといた方がいいですかね」


天使「なんかこう・・・光線的な・・・」


天使「おりゃ、とうっ」


神様「出るわけないじゃろうが、ばかたれ」


天使「うわ!もー、いつから居たんですかー」


神様「最初からじゃ、お主が手から光線を出そうとしてるのがいたたまれなくなっての」

天使「神様は何か必殺技ありますか?」


神様「必殺技なんて格式張ったものは持ち合わせてないのう」


神様「その気になれば全てをなかったことにできるがの、ほっほっほ」


天使「す、全てって・・・」


神様「文字通り、全てじゃ」ニヤッ

天使「・・・」ゴクリ


神様「まぁそれやったら他の神が怒ってわしの存在もなかったことになるがのう」


天使「・・・話の次元が違い過ぎますね」

ーーーーーーーー




男「この引き出しの中にあるのか?」


男「・・・ないな」


男「よくもこんな狭い部屋で見つからないようにできるもんだ」


男「もしかしたらあのタンスか?」


男「どれ」スッ


男「・・・ここにもない」


男「仕方ない、今度天使が来たときに探させよう」

男「というか、このタンス壊れちゃってたな」


男「矢が直撃したんだもんな」


男「とても直せそうにないし・・・捨てるしかない、か」


男「中の服とかを一旦出すか・・・」


男「ん?これは・・・マフラーか」


男「そういえば冬辺りに出そうと思って、結局出してなかったな」


ズキッ


男「・・・ッ!」

男「頭が・・・」


(は・・・プレ・・・・・・よ)


男「また・・・」


(・・・・・で・・)


男「なんなんだよ・・・これは」



(ーーーー大事にしてよね、それ)



男「・・・!!」


男「今・・・のは・・・!」


男「くっ・・・」


バタッ

これで半分位です
今日はここまでにしますね
明日も多分同じ時間に書き込むと思います

乙!
待ってる

それでは再開します

ーーーーーーーー
ーーーーーーーー



『なんだこれ』


『箱?・・・なんか入ってるし』


『赤いのと緑のが2つあるな』


『・・・なんか分からないけど、とりあえず帰ってからあいつにも見せてみるか』


天使『だーー!ちょっと待った!』


『!?』

『空から・・・飛んできた*』


天使『それは私のものです!さぁ返しなさいー!』


『え、えーと・・・これはなんなの?ていうかあなたは?』


天使『あぁ!人間は面倒くさいですね!私は~』




天使『~という訳です!』


『あんたは天使で、これは・・・生命を・・・創造・・・』


天使『そうです!分かったら早く返してー!』


『ちょ、ちょっと待った!』


『面白そうだから少し貸してくれないかな』

天使『だーめーです!人間に使わせるなんて・・・』


『か、代わりにこれをやる!』


天使『・・・なんですかそれは』


天使『・・・』パクッ


天使『・・・』もぐもぐ


天使『・・・もっと下さい』


『いいぞ、だけど等価交換だ』


天使『そ、それは・・・』


『ほら、もっとあるぞ』

天使『・・・し、仕方ありませんね・・・』


天使『少しなんですからね!」


『分かった分かった。別に悪いことには使わないよ』


天使『それにしても・・・これは美味しいですね・・・』


天使『名をなんというのですか?』


『え?俺?俺は・・・』


天使『違いますよ!この食べ物のことです』


『あぁ、それのことか』


『それはな、シュークリームっていうんだ』

天使『ほうほう、これはそういう名なのですか』


『それが好きなやつがうちに居てな、家にもたくさんあるぞ』


『良かったら来るか?』


天使『ま、まぁ人間の生活視察というのも悪くはないでしょう』


天使『別に食べ物に釣られたわけではないですから!』


『はいはい』

『ただいまー』


『・・・あれ?あいつ出かけてるのか』


天使『さぁ!出すもの出してもらいましょうか!』


『分かった分かった、ほら』


天使『いただきます!』


天使『うまうま』


『よく食べるなぁ』


天使『いやー、美味しいですねー』

天使『あ!そういえばあなたの名を聞いてなかったですね』


『ん?あぁ』


『俺の名前は男って言うんだ、よろしくな』


天使『パッとしない名ですねー。シュークリームの方がよっぽどスマートな名です』


男『それはないだろ・・・』


天使『それで・・・このシュークリームが好きな人間とは?』


男『あぁ、なんか出かけてるみたいで・・・』



『ただいまー』

男『お、帰ってきた』


『ねぇ男ー、裏の通りの猫がさ・・・ん?あれー?私のシュークリーム食べたでしょー!』


『ちょっとー、私のなんだから・・・あれ?』


『・・・えっと、どちら様?』


天使『信じるかは知りませんが私は~~~という者です』


男『帰ってくる時に色々とあったんだ』


男『まぁ女も仲良くしてやってくれよ』


女『へー、よろしくね天使ちゃん!』

天使『よ、よろしくお願いします』


天使(なんかこの人間たち順応早くないですかね・・・)


男『それでな女、この天使からこんなものをもらったんだ!』


天使『ち、違います!貸してるだけですよう!』


女『なにそれー、赤と緑だね』


男『これは生命の種という物でな・・・』


天使『~絶賛説明中~』

女『・・・へー、すごいね!』


天使『悪用は・・・!』


女『じゃあこれがあれば何でもペットにできるじゃない!すごーい!』


天使『・・・しなさそうですね』


男『なぁ天使、どうすればこの種を使えるんだ?』


天使『むー・・・まぁ約束ですからね、教えましょう』


天使『人間に使えるかは分かりませんがね』

ーーーーーーーー
ーーーーーーーー




天使「ですからー、私も手から光線出したいです!」


天使「神様だけずるい!」


神様「わしは全能じゃからな、ほれ」バンッ


天使「うわ!危な!!」


天使「もう!こっち向けて撃たないで下さいよ!」


神様「ほっほっほ」


天使「全能っていいなぁ・・・」

天使(神様なら本当になんでもできちゃうんだろうな)


天使(・・・ん?なんでもできる?)


天使(私の隠したものも、見つけられる?)


天使(・・・)


天使(じゃあこれまでのことは・・・)


神様「・・・」


天使「あのー、神様?」


神様「・・・なんじゃ?」

天使「ちょっと確かめたいんですが」


神様「わしは現実世界の調律で忙しいんじゃが」イソイソ


天使「今までずっと私に向けて光線出してたじゃないですか!」


神様「ふむふむ、今日も世界はうまく回っておるのぅ」シラー


天使「ねぇ神様?この前の男さんのことなんですけど」


神様「男?あぁ、あの人間のことじゃな」


天使「男さんの家が弓矢で襲われたんです」


天使「それも・・・私の弓矢で」


天使「私の弓矢は私しか使えないようにしていましたし・・・」


天使「だけど・・・だけど神様なら!」

神様「む!天使よ、なにやらその男の様子がおかしいようじゃぞ」


天使「ちょっと、話を逸らさないで・・・え*ほ、ほんとだ!」


天使「なんでもう次から次に・・・すみません神様!いってきます!」ヒュン


神様「・・・」


神様「・・・ほっほっほ」


神様「これは運命、決して外れることはない一本道じゃ」


神様「まぁ引き返すことはできるんじゃがのう、ほっほっほ・・・」

ーーーーーーーー
ーーーーーーーー




男『会社に行ってくるよ』


女『今日はいつ帰るの?』


男『分からないなー』


男『けど、この前の契約が上手くいって昇進できるかもしれないんだ』


女『ふふ、よくできました、頑張ったね』


男『ありがとう、もっと頑張らなきゃな』


女『そんなに気張らないで』ニコッ


男『あ、薬はまだ足りてるか?足りなかったら買ってくるけど』

女『んー、まだ平気だよー』


男『そうか、分かった、じゃあ行ってくる』


女『いってらっしゃい』



~~~~~



天使『こんにちはー!』


女『あら、天使ちゃん、久しぶりー』


天使『久しぶりですねー』


天使『最近どうです?』

女『この前ハムスター創れたんだよー』


天使『おー、上々ですね、男さんは?』


女『男ったらまだ蝶に手こずってるのよ』


天使『初めができればスムーズなんですけどねー』


女『ねー!・・・まぁ仕事で忙しいみたいだし、仕方ないかな』


天使『そうなんですか・・・』


女『あ!今から料理するんだけど食べてく?』

天使『わぁー、いいんですか?』


女『いいに決まってるじゃない』


天使『すごいですねー、私も料理できるようになりたいです』


女『あ!じゃあ天使ちゃんも一緒に作ってみようよ!』


天使『え?私がですか?』


天使『うーん・・・』


天使『・・・何事も挑戦ですね!やります!』


女『よし!じゃあ早速やってみよう!』

女『まずはね、材料の分量から用意していくの』


天使『ふむふむ』


女『今日は・・・卵を2個』


天使『任せとけ!』


女『砂糖大さじ3杯』


天使『・・・このくらいか!』テイッ


女『隠し味の塩小さじ1杯』


天使『え?隠し味?こ、小さじ?』


女『牛乳適量』


天使『ち、ちょっと待って下さい!』

女『ん?どうかした?』


天使『私には分からない単位がバンバン出てきて理解できません・・・』


天使(適量って・・・完全に勘じゃないですか・・・)


女『あー、そっかー』


天使『料理はまた今度にさせてもらいます』


女『そうだね、じゃあ私が作っちゃお』


女『~♪』


天使『なんて俊敏で無駄のない動き・・・』

女『できたよー、ホットケーキ』


天使『おいしそうです!』


女『それじゃ食べよっか?』


天使『はい!いただきまーす!』


女『ふふ、いただきます』


天使『柔らかくておいしーです!』


女『やった、褒められた//』


天使『毎日食べたいくらいですよー』


女『天使ちゃんは食べるのが好きなんだねー』

天使『私は食事はしなくても平気らしいんですけどね』


天使『おいしいものは、おいしいんです!』


女『ふふふ、また来た時も何か作ってあげる』


天使『わー!ありがとうございます!』


女『ふぅ、ごちそうさまでした』


天使『あれ?もういらないんですか?残ってますよ?』


女『・・・うん、ちょっと作りすぎちゃったかなー』


天使『なら私が!』もぐもぐ

天使『ごちそうさまです!』


女『お粗末様です』


女『食器は私が片付けとくから、のんびりしててー』


天使『そうしたいんですけどねー、この後少し忙しくて』


天使『そろそろ帰ります』


女『そっか、じゃあまたねー』


天使『一旦さよならです!』ヒュン




女『・・・さてと、片付けよっと』


女『あ、そうだそうだ』


女『朝の分飲んどかないとね』

ーーーーーーーー




男『ただいま』


男『ん?あれ?女ー?』


男『どこに居るのかな・・・寝室か?』ガチャ


男『お、いたいた』


女『むにゃ』zzz


男『ははは、幸せそうな寝顔だ、このままにしておくか』


男『とりあえず風呂に入って、それから飯にしよう』

~~~~~


男『・・・ごちそうさまでした』


男『さて、片付けて・・・』


ガチャ


女『あ、おかえりなさい』


男『ただいま、寝てても良かったのに』


女『ごめんね、それ片付けるよ』


男『いいよ、今日は俺がやる』


女『えー、でも・・・』

男『いいから座ってて』


女『・・・うん』


男『はい、コーヒー入れたよ』


女『ん、ありがとー』


男『・・・今日はどうだった?』


女『大丈夫だったよ、ちゃんと薬も飲んだし』


女『あ!そういえば今日天使ちゃんが来たんだよ』


男『お、久しぶりだな』


女『なんか忙しいみたい、すぐ帰っちゃった』


女『それでね、ホットケーキを一緒に作ろうとしたんだけどね、天使ちゃんたら・・・』

ーーーーーーーー




女『今日は朝早いね』


男『仕事が忙しくてな、残業できない分朝にやっとかないと』


男『じゃあ、疲れたら寝とくんだぞ?』


女『うん、疲れたらねー』


男『飯だって、簡単なものなら俺も作れるし無理しなくても・・・』


女『だめだよ!私が作るのー!』


男『分かった分かった、それじゃ行ってくる』


女『いってらっしゃい』

~~~~~


女『洗濯物も終わったし、掃除も終わったし』


女『買い物に行く途中に猫ちゃんと会えたし』


女『セールで安い卵買えたし』


女『うん、私はいい主婦である!』ドヤッ


女『猫ちゃんは関係ないか』


女『・・・暇だなー、シュークリーム食べよ』

女『やっぱりこれが一日の楽しみよね』むしゃむしゃ


女『食べ終わったら編み物完成させよっと』


女『ふふ、もうすぐクリスマスー♪』








男『はい、ここと契約を結んで・・・』


男『必ず成功させます』


男『・・・ふぅ、忙しいな』


男『けど・・・女のためにも頑張らないとな』

ーーーーーーーー




女『私たちもどこかに行こうよー』


男『別に室内で過ごすクリスマスがあってもいいんじゃない?』


女『寒空の中で熱い愛を育むカップルを見て私もほかほかしたい』


男『なにその目的』


男『ほら、目の前にほかほかのコタツがあるぞ』


女『なんか違うんだよなー、コタツはぬくぬくなんだよなー』


男『わがまま言わないの』

女『ねぇ・・・駄目?』


男『上目づかいしたって駄目だ』


男『それに、外に出て体が冷えたらどうすんだ』


女『むー・・・分かった、我慢する』


男『ごめんな、来年一緒にほかほかしよう』


女『約束だからねー』


男『そうだ、はい、プレゼント』


女『わ!ありがとう!』


男『開けてみて?』


女『どれどれ・・・』

女『わー!手袋!かわいい!』


男『買うのが恥ずかしかったよ//』


女『早速明日から使わせていただきます!』


女『じゃあ・・・私からも!』


女『はい!プレゼントだよ!』


男『おぉ、ありがとう』


男『マフラーか、暖かそうだ』


女『私が編んだんだよー!』

男『すごいな、いつの間に』


女『ふふ、すごいでしょ!』


女『大事にしてよね、それ』


男『あぁ、大切にする』


男『それじゃ、夕飯にしようか?』


女『そうだね!』

ーーーーーーーー
ーーーーーーーー




天使「・・・さん!・・・さい!」


男(・・・ん・・・誰だ・・・)


天使「大丈夫ですか!?男さん!?」


天使「男さん!起きてください!」


男「・・・て、天使か」


天使「男さん!良かった・・・」


天使「一体何があったんです!?」


男「・・・・・・マフラー」

天使「マ、マフラー?それってまさか・・・」


天使(これは・・・男さんがあの日にもらった・・・)


男「・・・女がくれたものだ」


天使「えっ*い、今、女って・・・」


男「マフラーを見つけたら・・・思い出した・・・」


天使(そんな・・・)


男「・・・なんでこんなに大事なことを忘れてたんだ」


天使「・・・」


天使(記憶が戻ってしまっている)


天使(失敗だ・・・私が痕跡を消し忘れなければ、こんなことには)

男「天使、お前のことも思い出した」


男「なんでお前は黙ってたんだ!?なんで俺は記憶を失っていたんだ!?」


男「なんで・・・」


天使「・・・」


男「そうだ!女はどうした!今どこに居るんだ!」


天使「・・・」


天使「そこは・・・まだ思い出してないんですね」


男「・・・どういうことだ?」


天使「いいでしょう、こうなってしまっては仕方ありません」


天使「全てを話します」

男「ああ、教えてくれ」


天使「・・・その記憶はおそらく一昨年の記憶です」


天使「そして・・・そうですね、去年の春頃です・・・」









神様「ふむ、佳境じゃな」


神様「天使が全てを話そうとしておる」


神様「まぁ天使にも把握しきれていない部分はあるんじゃが」


神様「どれ、わしもこの球で少し過去を覗いてみるかの」

ーーーーーーーー
ーーーーーーーー




天使『じゃあそろそろ夜も遅いですし、この辺で!』


男『いいんだぞ別に居てくれても』


女『そうだよー!まだいいじゃん!』


天使『気持ちは嬉しいんですけど・・・また忙しくてなってきて・・・』


天使『けっこう重労働なんです・・・』


女『そっか、大変だね』


男『まぁ、いつでもいいから来てくれよ、待ってるから』


天使『ありがとうございます、それではまた・・・!』ヒュン

女『今度はいつかなぁ』


男『3人で集まれなくなりそうだな、俺も仕事だ』


女『えー、またー?』


男『ごめんごめん』


男『だから明日からは遅くなりそうだ』


女『残業できるようになったのは良いことやら悪いことやら・・・』


男『お前の体調が良くなってきたんだから良いことだろ』


女『ふふ、だけど残業はやだなー』


男『まぁまぁ、勘弁してやってくれよ』

男『あ、そういえば薬切れてたんだっけ?明日買ってくるよ』


女『うん、けどそろそろ飲まなくても・・・』


男『いけません』ビシッ


女『いてっ、ちぇー・・・』








女『・・・ねぇ、男?』


男『ん?』


女『・・・いつも迷惑かけてごめんね』


男『・・・ばか、迷惑なんかじゃないよ』

ーーーーーーーー




ザー


男『傘取ってくれないか?』


女『はい』


男『それじゃ行ってくる』


女『いってらっしゃーい』



~~~~~



ザー


女『んー、雨かー』

女『けど今日は買い物に行かなきゃなー』


女『うわ、今日セールやってる!急がなきゃ!』


女『・・・よし、行ってきまーす』ガチャ



ザー



女『きゃ!水たまり踏んじゃった・・・』


女『もー、雨きらーい!』


女『全く・・・雪なら良いんだけどな』


女『早くクリスマス来ないかなー』


女『ふふっ、楽しみー』



アリガトウゴザイマシター




女『よし、買い物終了』


女『お昼はカレーでも食べよっと』


女『おやつはもちろんシュークリームだよね♪』


女『たくさん買っておいたし』


女『おっと、もうこの水たまりにははまりませんよーだ』

女『~♪』


女『あれ?あそこに居るのなんだろ?』


子猫『・・・ミィ・・・ミィ』


女『こ、子猫・・・、すごい弱ってる・・・』


女『きっといつもの猫ちゃんの子供だ・・・』


女『早く・・・早くしないと・・・』


女(動物病院は・・・!急がないと!)


女『子猫ちゃん!すぐ着くからね!もう少し頑張って!』

ーーーーーーーー




女『はぁ・・・はぁ・・・』




女『はぁ・・・もう少しで・・・』




女『子猫ちゃん・・・頑張るんだよ・・・』




女『はぁ・・・はぁ・・・』




女『!!・・・げほっ!』

女『ぐっ・・・胸が・・・』




女『けど・・・もうすこ・・・げほ!げほっ!』




女(やばい・・・本格的にきた)




女『げほっ!げほっ!』ヨロッ




バシャッ




子猫『・・・ミィ』

女『お願い・・・もう少しだから・・・走らせてよ』


女『もう少し・・・もう少し・・・』


女『げほっ!』


女『・・・だめ・・・なの?』


子猫『・・・ミ・・・ィ』


女『ごめ・・・んね・・・』

女『私・・・げほっ!・・・無理みたい・・・』



女『あなたは・・・助かったかもしれないのに・・・』



女『・・・私のせいだね』




女『ごめんね・・・ごめんね・・・』






女(・・・こんなに走ったのはいつぶりだろう)




女(今まで運動できなかったしなぁ)




女(自分の体が今更になって悔しい)




女(あんなに気をつけて、男も頑張ってくれて面倒みてくれて)




女(なのに・・・なぁ・・・)




女(・・・いやだよ)




女(まだ・・・やりたいことだって沢山あるのに!)




女(・・・死にたくない・・・生きていたい・・・)





女(神様・・・助けてよ・・・)





女(・・・そうよね・・・神様なんて居ない)





女(・・・あぁ、もう全身ずぶ濡れだなぁ)





女(今日のおかず、あの通りに置いてきちゃった、どうしよう)






女(男に怒られちゃうよ・・・)




女(ごめんね、男)








女(ははっ・・・私・・・いつも謝って・・・ばかりだなぁ・・・)









ザー




女『』

ーーーーーーーー




天使(通りがかった人が女さんを見つけて、救急車を呼んだらしい)


天使(けど・・・息が止まってて、病院に運ばれた時には既に・・・)


天使(・・・)


男『』


男『』


天使『男・・・さん』


男『』


天使『・・・』

天使(あれから男さんが・・・まるで生きてないみたいに)


天使(仕事も辞めちゃって・・・慰めることもできない)


天使(私だって、私だって!・・・すごく悲しいけど・・・)


天使(けど・・・男さんはもっと)


天使『・・・あの、男さん?』


天使『今日はもう帰りますね』


天使『明日も来ますから、待っててください』


男『』


天使『・・・失礼します』ヒュン


男『』


男(どうして・・・)


男(あと少しで治るところだったのに・・・)


男(なんでこんなことに・・・)


男(・・・俺のせいだ)


男(残業なんてしないで、今まで通りに早く帰ってれば・・・)


男(そしたら・・・女も助かったはずだ、そうだ、そうに違いない)


男(俺のせいだ・・・俺の・・・)



男『女・・・』


男『・・・ごめん』

ーーーーーーーー




天使『』ボーッ


神様『ほれ、仕事をサボるでない天使よ』


天使『あ、すみません』


天使『』ボーッ


神様『まったく、困ったもんじゃ』


神様(どれ、ちと何があったか視てみるかの)

神様(・・・ほぅ、そういうことじゃったか)


神様(その後は・・・む!これはこれは)


神様(なんと不幸な・・・そしてちょっとむかつくのぅ!)


神様(わしはこういうのは好かん)


神様(・・・よいしょっと)


神様『どれ、天使よ、こっちにきなさい』


天使『え?あ、はい』

神様『お主にはまだまだ天使としての修行をしてもらわなきゃならん』


神様『そこで、こやつを創れるようになりなさい』


神様『ほれ、ユニコーンじゃ』


天使『えー・・・ユニコーンってすごく複雑じゃないですか・・・』


天使『それより羽の隠し方教えて下さいよ』


神様『それはまだじゃ、つべこべ言うでない』


天使『ちぇー、わかりましたよぅ』

ーーーーーーーー




天使『窓、開けますね』


天使『・・・良い天気です』


天使『男さん、風が気持ちいいですよ?』


男『』


天使『・・・』


天使『そうだ!部屋の片付けしましょうか!』


天使『これはここにしまって、そこの棚には・・・』


天使『こういう大きいものは押入れにしまっちゃいましょう』ガラッ

ポトッ


天使『?』


天使『これは・・・生命の種ですね』


天使『懐かしいですね・・・、私がこれを落としたのを男さんが拾って』


天使『男さんが種とシュークリームの取り引きをしてきて』


天使『それで女さんとも知り合えて・・・』


天使『あ、すみません・・・やめましょう』

男(・・・)


男(種・・・か)


男(結局女の方が上手く創れていたな)


男(女は動物好きだからな、努力もしてたし)


男(・・・生命を創造する種)


男(・・・)






男『・・・人間は?』

天使『え?』


男『その種で、人間を創造することができるんじゃないのか!?』


天使『!!』


男『そうだ、それならまた会える・・・またもう一度・・・』


天使『む、無理です!不可能です!』


男『なんでだ!?できるはずだろう!』


天使『・・・』


天使『確かに創造できますよ、人間というものを』

天使『それは生物的には確かに人間です』


男『生物的・・・?』


天使『思い出して下さい、今まで創造してきた生き物たちを』


天使『すべて・・・命令しなければ動かない、そうだったはずです』


男『・・・』


天使『人間は創造できます』


天使『しかしそれは、生物的な人間であって、人間的な人間ではないんです!』


天使『心が無いんです!』


男『心・・・』

天使『形だけの女さんでいいなら、私がとっくに創造してます・・・』


天使『人間の心というのは・・・それを創造したものを私は知りません』


天使『人それぞれの心を完璧に理解するなんて、不可能なんです』


天使『残念ですが・・・私にもできません』


男『なんでだよ!せっかく助けられると思ったのに!』


天使『・・・すみません』


男『・・・いい、俺がやる』


男『俺がやってやるよ』

天使『無茶です!人間という形でさえ創造するのは難しいんですよ?』


男『関係ない、やるといったらやるんだ』


天使『そんな・・・』


男『お前は人間の形は創れるんだろう?だったらそれを教えてくれればいい』


天使『・・・』


天使(確実に無駄なことになる・・・けど、男さんがそれで生きる気力が出るなら・・・)


天使『・・・分かりました、できる限り教えましょう』


天使『しかし・・・これはゴールのない道を延々と走り続けるようなものです』


男『覚悟はしてる』


天使『・・・それではまずは個々の細胞構造からお話しします』

~~~~~
~~~~~





天使『違いますって、頭から想像を始めると難しくなるんですよ』


天使『人間に限っては、心臓から外へ外へと想像した方が楽なんです』


男『分かってるんだけど、それがなかなかできないんだよ』


天使『それをやると、自分で言ったんでしょう』


天使『まぁこんな短期間で創れるようになるなんてのが無茶なんですけど』


男『いいから、もう一回だ』


天使『心臓の辺りからですよ!』

~~~~~
~~~~~





天使『あれから1ヶ月』


天使『上出来です、まさか本当に創れるようになるなんて』


天使(・・・執念と希望があるからこそか)


男『まだ終わってない』


天使『はい、終わってません』


天使『しかし、ここからは私は何も教えることはできません』


男『ああ、分かってる』


男『ここからは1人でやる、やらせてくれ』

天使『え?教えることはできませんが私も協力しますよ?』


男『天使はいい、女が死んだのは俺のせいなんだ』


男『俺がやらなきゃいけない』


天使『男さんのせいなんかじゃ・・・!』


男『いいから』


天使『でも・・・』


男『ッ!いいからもう帰ってくれ!』


天使『・・・』


天使『分かりました・・・』ヒュン



男『・・・ごめん』

~~~~~
~~~~~





男『よし』


男『女のことは俺が一番分かる、すぐに俺が生き返らせてやる』


男『人の心なんて理解しなくても、女の心だけ理解してれば・・・』

~~~~~
~~~~~





男『なんでだ!なんで出来ないんだ!』


男『何か足りないのか?それとも女の心を理解するだけじゃいけないのか?』


男『くそったれ!やってやるよ!』

~~~~~
~~~~~





男『なんで出来ない・・・なんで・・・』ブツブツ


男『女はどう感じる?どう考える?』ブツブツ


男『・・・』


男『・・・俺の知らないところで』


男『・・・女は一体どんな世界を見てたんだ・・・』

~~~~~
~~~~~





男『・・・』ヨロッ


男『はぁ・・・はぁ・・・』


男『夏か・・・暑いな・・・』


男『いやいい、俺の身体なんか』


男『もう少し・・・もう少しで何か掴めそうなんだ・・・』


男『はぁ・・・はぁ・・・』ヨロッ

~~~~~
~~~~~





天使『・・・男さん・・・大丈夫かなぁ』


天使『様子を見に行きたいけど・・・男さん怒ってたもんなぁ』


天使『・・・』


天使『そうだ!神様のあの球で男さんの様子を見ればいいんだ!』


天使『えーと、神様どこにしまったんだろう』


神様『なにをしておる、天使よ』


天使『わわ!か、神様!』

天使『な、なんでもないです』


神様『すぐ仕事をサボりおって・・・おしおきじゃぞ?』


天使『いやです!許して!』


神様『ならば早くユニコーンを創造できるようにしなさい』


天使『あ、それならもうできますよ?』


天使『ほらっ』ポイッ


神様(・・・此奴の創造における才能には目を見張るのぅ)


神様『よろしい、確かに完成しておる』


天使『これでしばらくは自由時間でいいですよね?神様?』

神様『うーむ、なんか気に食わんが認めなければのぅ』


神様『ほれ、下界を見たいんじゃろう?貸してやろう』


天使『あ!ありがとうございます!』


天使『・・・ってやっぱりばれてたんですね』


神様『ほっほっほ』


神様『わしはまだやることがあるでの、それじゃあの』


天使『後で返しますねー』


~~~~~


天使『よし!男さんの様子を見てみよう』

天使『男さんと最後に会ったのは夏前くらいでしたか・・・そこから順々に見てきましょう』


天使『・・・あぁ、やっぱり大変そうですね』


天使『人間の心の一般法則を見つけなければいけないんですものね、女さんだけを考えても無理です』


天使『・・・10日経っても進歩はなしか、じゃあもう最近の様子を見てみましょう』


天使『・・・うーん、ここでもまだ進歩はなさそうですね』


天使『やっぱり無駄な試みだったのかな・・・』


天使『えーと、最近の様子は・・・』

天使『・・・ん、誰かと喋ってますね』


天使『誰でしょう、友達でしょうか』


天使『あ、男さんがすごい剣幕で怒ってる・・・』


天使『なんでだろう・・・ってええっ!種になった!!』


天使『今の人は種だったんですか*』


天使『信じられません!創造したものと話すなんて!』


天使『まさか・・・成功したのですか!!』


天使『・・・いや・・・男さんの様子が変だ・・・』

天使『少しも嬉しそうじゃない』


天使『恐らく・・・まだ何か欠陥が・・・』


天使『しかし!創造したものが喋るとは!これはすごい進歩です!』


天使『このままいけばもうすぐ・・・』


天使『あ!男さん!!』


天使『男さんが倒れた!』


天使『よく見ると・・・すごい痩せてる』


天使『きっとほとんど何も食べてないんだ・・・』


天使『あの気温でこの衰弱ぶりは・・・まずいです!』


天使『今の映像が4時間前・・・早く行かないと!』ヒュン

~~~~~
~~~~~





男『・・・成功したかと思った』


男『会話は出来たんだ・・・だけど・・・』


男『確認出来た感情は少しの怒りと戸惑い、他は無い』


男『あんなの・・・あんなのは人間じゃない』


男『もう・・・無理かな・・・』


男『ははっ・・・身体も限界だ・・・』

男『さっきまでは立てたんだけどなぁ・・・もう力が入らないな』


男『やっぱり・・・俺のやってきたことは無駄だったのか・・・』


男『・・・』


天使『男さん!!』ヒュン


男『・・・おぅ、よく来たな』


天使『しっかりして下さい!目を閉じちゃ駄目です!』


男『いいんだよ・・・俺はもう手遅れだ』


天使『嫌です!絶対に死なせませんから!』


男『ははは・・・悪いな』

男『俺はここで終わりだ・・・』


天使『女さんも・・・男さんも・・・私を独りにさせないでくださいよぉ・・・』グスッ


男『ごめんな天使・・・後はお前がやってくれ』


天使『おどござん・・・嫌ですよぅ』グスッ


天使『自分でやるって・・・言ったじゃないですかぁ・・・』


男『あぁ・・・でももう・・・』


男(・・・・・・)


男『・・・そうだな、俺がやらなきゃな』

男『天使、そこの種を一つ取ってくれ、赤の方だ』


天使『え?・・・あ、赤ですか?』


天使『一体なにを・・・はっ』


天使『・・・まさか』


男『ああ、そのまさかだ』





男『今から俺を創る』





天使『!!』

男『天使、これから言うことを黙って聞いて欲しい』


男『俺はまだ不完全にしか創造できない、だから今から創る俺はほぼ人間ではない』


男『そいつが・・・女を創造できるようにして欲しい』


天使『・・・』


男『それじゃ・・・頼んだぞ』ポイッ


天使『・・・分かりました』


男『はは・・・これで・・・少しは足掻けた・・・かな』ガクッ


男『』


天使『・・・男さん』グスッ


天使『私が・・・必ず・・・』

男(種)『これはどういうことだ、なんで俺がもう一人居るんだ』


男(種)『いや関係ない、早く女を創造できるようにならないと』


天使『男さん・・・すみません』


男(種)『おい、何をするん・・・』ガクッ


天使『・・・辛いですね、記憶を消すというのは』


天使『しかし・・・男さんは女さんを想い過ぎていた』


天使『きっと、それじゃあ人間の心は理解できないんです』


天使『人間の心の一般法則を理解するには・・・』


天使『そうですね、まずは女さんの居た痕跡を失くさないと・・・』

天使『いや、その前に・・・』


天使『・・・男さんの供養をしないとですね・・・』





~~~~~
~~~~~





天使『よし、早速取り掛かろう』

天使『人々から女さんについての記憶を消して・・・ん!』


天使『はぁ・・・はぁ・・・やっぱ疲れますね』


天使『普段サボってたツケですね・・・よし、次は・・・』


天使『女さんの物的痕跡・・・これはまた苦労しますね』


天使『片っ端から見つけていきますか』

~~~~~



天使『恐らく・・・これでほぼ大丈夫ですね』


天使『女さんの親族は既に亡くなっていたんですね・・・女さんの実家というものは既に無かったです・・・』


天使『さて、最期にこの部屋ですね』


天使『男さんは寝かせていますし、今のうちに仕上げましょう』


天使『まずは女さんの衣類を片付けて・・・っと』


天使『そこにある男さんと二人で写っている写真は・・・これも仕方ないですが片付けましょう』

天使『後は・・・あ、そうだ』


天使『忘れちゃ駄目でしたね、冷蔵庫にずっと保存してあるシュークリーム』


天使(・・・また涙が)グスッ


天使『いけない、早くしないと・・・』


天使『えーと、他には・・・』


天使(あそこのタンスって探しましたかね?)






男『・・・ん・・・』

天使『!!』


天使『うわ、もう男さんが起きちゃう!』


天使(・・・落ち着け、私)


天使(いいですか、私と男さんは赤の他人です)


天使(今までのことは全てなかったことに、何も知らないふりをするんです)


天使(泣いてちゃだめですよ、どんなにつらくても)


天使(男さんの願いは私が叶えるんです!)


男『ん・・・ん?』






天使『こんにちは!』


男『誰だお前は』







ーーーーーーーー
ーーーーーーーー

天使「赤の種はもう一つありました」


天使「不完全ではありますが、それは今人間となり私の目の前にいます」


男「俺が種で・・・女は・・・」


天使「先ほど言ったとおり、もう亡くなっています」


男「ああ・・・そんな・・・」


天使「だから私は男さんに種を渡したんです」


天使「これが・・・私の計画の全てです」

男「嘘だ・・・嘘だ・・・」


男「女が・・・死んでるなんて・・・」


天使「残念ですが・・・」


男「仕事をして家を空けたくなかったのも・・・」


男「あの時理由もなくシュークリームを買ったのも・・・」


男「全部・・・全部女のために・・・」


天使「・・・身体の持つ記憶ですね」

天使「女さんを想う気持ちを、私が完全に消せてなかったのなら」


天使「・・・私のやったことは最初から無駄だったのかもしれないですね」


男「あぁ・・・あぁぁぁぁ!!」


天使「・・・泣いたってもう無理なんです」


天使「あなたが女さんのことを完全に思い出してしまった、だからもう手遅れなんです・・・」


天使「もう・・・終わりですね」ヒュン


男「嘘だ・・・女ぁ・・・」グスッ

ーーーーーーーー




天使(同じ記憶を二度消そうとすると障害が起こる可能性がある)


天使(そもそも消した記憶が戻るなんてこと・・・完全にイレギュラーです)


天使「はぁ・・・」


天使「これから私はどうしたら・・・」


神様「む?帰っておったのか」


神様「それで、わしに聞きたいこととはなんなのじゃ?」

天使「それなら・・・もういいんです」


天使「聞いたところで・・・今は何をする気も起きません・・・」


神様「なんじゃ、腑抜けおって」


神様「ほれ、やり方を教えてやろうか?」バンッ


天使「・・・」ヒョイッ


天使「はぁ・・・・・」


神様「なんじゃ、つまらんのう」


神様「男という人間のところに居なくていいのかのぅ」


天使「男さんなら・・・泣いていて、私はどうすることもできず・・・」

神様「・・・あー」


神様「わしにはなぜ泣いてるのか分からんが」


神様「ふむ・・・涙というのは美しいものじゃのう」


神様「嬉しくて泣く、悲しくて泣く」


神様「なんとも本能的で純粋な人間の感情じゃ」


神様「誰かを想って泣ける、わしが人間を尊敬する理由のひとつじゃ」


神様「言いたいことは・・・それだけじゃ」

天使「・・・」


天使「・・・」


天使「・・・行かなきゃ」


天使「ありがとうございます、神様」


天使「私はやるべきことができました!」ヒュン


神様「・・・はて、なんのことかな?」ニコッ



~~~~~



天使(神様は言ってた)


天使(泣くということは・・・人間の感情だと)


天使(なら・・・まだ遅くない!)

ーーーーーーーー




男「どうすればいいんだよ・・・」グスッ


男(俺は・・・女のために生きてたんだ)


男(きっと記憶をなくしていた間も・・・)


男(だけど・・・女を創れる希望が消えたなら)


男「俺が生きる意味なんて・・・」


天使「あります!!」ヒュン


男「!!」

天使「あなたは生きなくてはいけません!」


天使「今も、これからもです!」


男「・・・今更なに言ってんだよ、お前が終わりだって言ったんだろ」


天使「・・・男さん」


天使「あなたはなんで・・・泣いてるんですか?」


男「ッ!馬鹿にしてんのか!」


男「あんなこと聞いたら誰だって・・・悲しくて・・・自分に腹が立って・・・」

天使「・・・そうです、当たり前です」


天使「男さん、さっき私が言いましたよね」


天使「男さんは不完全なままで創造されたと」


男「・・・」


天使「違いました、あなたは不完全なんかじゃない」


天使「私・・・聞いたんです、泣くことは人間のすばらしい行為だと」


天使「そしてあなたは泣いている、女さんを想って泣いている」


天使「なにも不完全なんかじゃない」


天使「立派な・・・完全な【人間】じゃないですか」


男「俺が・・・」グスッ

男「でも・・・でも、そんなのなんの役にも立たない」


男「俺が人間だからなんだっていうんだ・・・」


天使「・・・ここからは私が考えた仮説です」


天使「最初、男さんは確かに不完全だった」


天使「笑わないし、泣かないし、感情の起伏はなかった」


天使「しかし今、男さんには感情がある」


天使「これは・・・男さん自身が無意識に創り出したと、私は考えます」


天使「記憶が戻ったのをきっかけに、創り出されたのでしょう」

天使「・・・正直私にも分かりません、消した記憶が戻るなんてことも、感情が生まれるなんてことも初めてのことです」


天使「だけど・・・もし、その感情が創り出されたものなら」


天使「男さんは今、感情を創造できる状態にある」


男「そんなこと言われたって・・・分かるわけないだろ」


男「それに・・・仮説が正しいとしたら、俺が感情を完璧に理解できるまで時間をかけたほうが・・・」


天使「駄目です」


天使「生まれた感情は次第に自然になっていくでしょう」


天使「感情が無意識化してしまったら・・・今度は本当に終わってしまう」


天使「だから!感情を意識できる今しかないんです!」

男「お、おい天使、なんで赤の種を・・・」


天使「緑で練習してる時間なんてありません、今から創造します」


天使「男さんは感情だけでいい」


天使「それだけに集中してください」


天使「記憶と身体は・・・私に任せてください」


男「別々になんて・・・そんなことができるのか*」


天使「・・・あーもう!分からないですよ私だって!」

天使「初めての経験ばかりです!不安だらけですよ!」


天使「でもやるんです!」


男「・・・そうだな、やらなきゃな」


男「今度は俺だけじゃない」


天使「そうです!私だって居るんです!」


男「よし、じゃあどうすればいい?」


天使「・・・私が種を握ります」


天使「男さんは・・・その上から私の手ごと握ってください」

男「わかった」


男「・・・こうだな」ギュッ


天使「いいですか?なんとしてでも思い出すんです」


男「あぁ、今思い出してるよ」


男(・・・)


男(記憶が戻った時・・・女が既に居ないと聞いた時、俺はなにを思った?)


男(・・・決まってる、あれは絶望にも近いほどの悲しみだ)


男(同時に・・・俺が何もできなかったことと、それを忘れていたことが悔しくて、怒りさえ覚えた)

天使「男さん!大丈夫なんですか*」


男(・・・あぁそういえば・・・もう駄目かと思ったときに天使が来てくれて)


男(俺は人間だと、そしてまだ希望があると言ってくれて・・・)


男(あの時感じたのが・・・喜びなのかな)


天使「時間ないんですって!黙ってたら分からないですよ!」


男「・・・なぁ・・・天使」


天使「なんですか*思い出せたんですか*」


男「いや・・・そういうことじゃなくてさ」

男「なんか・・・結局お前が一番頑張ってたんだなぁって思ってさ」


男「迷惑かけたな、ごめん」


天使「・・・そんなこと」


天使「私・・・楽しかったんです、男さんと女さんと一緒に過ごす時間が」


天使「私がやってきたことは・・・確かに亡くなった男さんの願いを叶えるためもありますが」


天使「でも・・・結局は私のためなんですよね」


天使「また二人が一緒に居られるように・・・それだけを思って・・・」


天使「だって私・・・二人のことが大好きなんです」グスッ

男「・・・」


男「そうか・・・これが・・・」


天使「?」グスッ


男「・・・ありがとな、天使」


男「お前の気持ちを聞いてさ・・・」


男「今俺は・・・きっと嬉しいんだろうな」ニコッ


パァァァァ


天使(た、種が光って・・・)

天使「お、男さん!」


天使「タイミングは・・・きっと今です!」


天使「いいですか男さん*」


男「おう!」








男・天使「いっけぇぇぇ!!」







ーーーーーーーー

ーーーーーーーー





男「はぁ・・・はぁ・・・ど、どうだ*」


天使「・・・!お、女さん!」





女「・・・」





男「・・・お、おい」


天使「女・・・さん?」

女「・・・」


パタッ



男「!!」


天使「女さん!!」


女「・・・むにゃ、もう食べられないよ・・・」zzz


天使「・・・食べられない・・・ですって」


男「・・・は、はは・・・なにかの夢をみてるらしい・・・」


天使「やった・・・やりました・・・」


天使「やりましたよ!男さん!」


男「ああ!やったな!」

天使「夢をみてるなんて!信じられません!」


天使「あぁなんて言えばいいんでしょう!私、今すごく興奮しています!」


天使「成功したんです!やっと・・・やっと!」


天使「そうだ!消してしまったみんなの記憶を戻さないと!それに隠しておいた女さんの物や写真も!」


女「・・・んー」zzz


男「ははは、天使、少し静かにしといてやろう」


天使「あ、女さんが少ししかめっ面になってますね、すみません」


男「けど、それも感情のある証拠だな」


天使「はい、安心です」ニコッ

天使「いやー、それにしても本当に良かったです」


天使「男さんの記憶が戻ってしまった時はどうしようかと・・・」


男「俺だって、家に矢が飛び込んできた時はどうしようもなかったぞ」


男「おかげでタンスも壊れたしな」


天使「そういえば・・・結局あの矢は一体・・・」


天使「・・・まぁ!今となってはどうでもよく思えますが!」


神様【馬鹿者、どうでも良い訳ないじゃろうが】

天使「え!か、神様*」


男「なんだこれは、頭に直接聞こえてくるぞ」


天使「いきなりどうしたんですか?」


神様【ふむ、この場で説明してもよいが・・・こうやって話すの疲れるんじゃよ】


神様【とりあえずこっちへ来なさい、ほーれ】


男「か、体が浮いて!」ヒュン


天使「うわ!私は自分で行けますってばー!」ヒュン

ーーーーーーーー




男「いてっ!」ドスン


神様「ほっほっほ、来たか」


天使「神様が無理矢理連れてきたんじゃないですかー」


男「またここか・・・」


天使「それで、一体どうしたんですか?」


神様「うむ、わしはさっきお主らが禁忌を侵したところを目撃してのう」


天使「そ、それは・・・」


男「禁忌?」

天使「えっと・・・黙っててすみません」


天使「実は・・・一度亡くなった生物を、生き返らす形で創造するのはいけないことなんです」


天使「特に人間のように世界を回す重要な要を担う生物を生き返らすのは重罪です・・・」


神様「そうじゃ、人間を生き返らすと調和が著しく乱れるんじゃ」


男「そんなことをしたのか俺たちは」


神様「今回ばかりはお仕置きどころじゃ済まんことじゃのう」


天使「うう・・・」


神様「そこでじゃ天使、そして男よ」


神様「お主らで世界を調律してきなさい」

天使「・・・!そ、そんな!」


天使「調律ってまさか・・・」


神様「うむ、消してきなさい」


男「・・・なにをだ?」


神様「そんなの決まっておろう」




神様「その女という人間じゃよ」




男「!!」

天使「無理です!できません!」


神様「ほっほっほ、ならばわしが消しに行かねばならんことになるのう」


男「てめぇ!黙って聞いてれば!」


男「女を消す*せっかくまた一緒に暮らせるのに!」


神様「掟じゃ、人間には理解できないじゃろうが」


神様「さ、急がねばのう」


神様「ふむ、既に存在してしまった今の女という人間を消しても、さらに調和が乱れるだけじゃな・・・」


男「おい!!無視してんじゃねーよ!!」

神様「女が創造された瞬間を消せばまだましかのう」


男「くそっ!!黙れ!!」ダッ


天使「だ、駄目です男さん!」ガシッ


男「離せ!離せよ!!」


天使「離したら男さんが先に消されちゃいますよ!」


神様「よし、天使よ」


神様「女が創られる瞬間の過去に行って消してきなさい」


天使「・・・いやです」

神様「ほれ、時間を飛べるようにしてやろう」パァァ


男「くそ!くそぉぉぉ!」


神様「行きと帰りと2回分じゃ、それと・・・」


神様「ほれ、お主の弓矢も持って行きなさい」


天使「・・・え?」


神様「よしよし、準備はできたな」


神様「よいか天使よ、女が創られた原因を考えてから行動を起こすんじゃぞ」


天使(・・・原因?神様何を言って・・)

神様「それから、あー・・・」


神様「お主は愚か者じゃからな」


神様「決してシュークリームのバーゲンセールの日になんかに飛ぶでないぞ」


神様「・・・良いな?」ニヤッ


天使「・・・!」


神様「ほっほっほ、それでは早く行きなさい」


男「俺は絶対行かないからな!!」


神様「元気なことじゃのう」


天使「行きますよ男さん!」


男「なんでだよ天使!まさか本当に女を・・・!!」

天使「・・・行くんです!」ヒュン


男「おわっ!」ヒュン



~~~~~



神様「・・・やっと行ったか」


神様「全く、なんとも世話のかかる人間じゃ」


神様「そもそも最初に禁忌を侵したのはいつじゃ?・・・それは男が創造されたときじゃ」


神様「わしが調律していなければ今頃世界は乱れきっておるわい」


神様「・・・さて、天使が気づいたのなら」


神様「・・・わしは二度目の調律に取り掛かるかの、ほっほっほ」

ーーーーーーーー




男「どうしてだよ!三人で一緒に居られると思ったのに!」


天使「はい、そのつもりです」


男「それならなんで女を消しになんか・・・」


天使「・・・」


天使「神様は・・・私に色々なことを教えてくれます」


天使「そんな時はいつも、神様はニヤニヤしながらウインクするんです」


天使「だからさっきのも何か意味が・・・」

天使「・・・」


天使「神様は原因を考えろと、それから行動しろと言っていました」


男「女が創られた原因なんて、もともとはお前が種を落としたからで・・・」


天使「確かにそうですが・・・それだと、シュークリームのバーゲンセールのくだりが意味不明です」


男「そうだよな・・・バーゲンセールはそんな前のことじゃないしな」


男「というか、むしろ最近のことだ」


天使「そうですね、つい10日ほど前のことです」


天使「うーん、それでも分からないです・・・あと神様は何か言っていましたっけ・・・」


男「いや、それ以外には何も言ってなかったぞ」

天使「そうですよね・・・」


天使「あ、そういえばこの弓矢もありましたね、正直邪魔なだけですが」


男「弓矢・・・か」


男「・・・あ」


男「なぁ天使」


天使「はい?」


男「10日前ってさ・・・確か、俺の部屋に矢が入ってきた日だよな」


天使「そう・・・ですね、忘れてました」


天使「でも、矢が原因で女さんが創られたと考えるには無理が・・・」


男「・・・いや、関係があるぞ!」

天使「え*ど、どんなですか?」


男「・・・矢が入ってきて、1週間ほどお前の家に避難して」


男「それから家に帰ってきた後、お前が俺の部屋片付けただろ?」


天使「まぁ、正確には種に片付けさせたんですが」


男「・・・あの時何がどこに仕舞ってあるのか分からなくて、家中を探してたんだ」


男「そしたら、見つけたんだよ」


男「・・・女がくれたマフラーを」


天使「・・・あ!分かりました!」

天使「マフラーを見つけて、男さんは記憶が戻った!」


男「ああ、それこそが原因だと思うんだ」


天使「そうです!きっとそうですよ!」


天使「今考えると、記憶が戻らなければ女さんが創れたかどうかは分かりません」


男「記憶が戻ったのはマフラーを見つけたから!」


天使「マフラーを見つけたのは荒れた家を私が片付けたから!」


男・天使「「家が荒れたのは矢が入ってきたから!!」」


天使「神様はきっとこのことを言ってたんです!」

男「つまり今から行くべき過去は10日前だな」


天使「そして私が矢を射ち、男さんの記憶が戻るきっかけをつくればいい」


天使「やっと分かりました、私の矢が男さんの部屋に入ってきた理由が」


男「それじゃ・・・行くとするか」


天使「・・・男さん、ちょっと聞いてください」ヒソヒソ


男「ん?」


天使「神様がなんで分かりにくく私たちに伝えてきたのかの理由ですが」

天使「おそらく・・・秘密裏に行動しろということでしょう」


天使「神様にも立場がありますし・・・」


男「そうか、表向きは女が創られた過去で女を消しに行くことにしないとな」ヒソヒソ


天使「まぁ・・・私は神様の言う通りな愚か者のおっちょこちょいなので」ニヤッ


男「はは、そうだな、期待してるよ」


天使「それでは・・・掴まってください」ニコッ


男「あぁ」ギュッ


天使「・・・行きます!」ヒュン

~~~~~



男「なぁ、ここじゃないみたいだぞ?」ニヤッ


天使「ちょっとずれちゃいましたねー」ニヤッ


男「やっぱりおっちょこちょいだなー」


天使「ふふ、そうです、その通りです」


男「ははは」


天使「えーと、それでは・・・任務を果たしましょう」


男「おう!」


天使「どれどれ、向こうの方の男さんは・・・」



「思い出したんだけど」


「俺はいつも同じ緑の種を使ってるけど、もう一つの方はほとんど使ってないな」


「なんの違いもないし、困る事は無いんだが」


「二つ持っとく必要性も無いからな、今度天使に返しとくか」


「ん?そういえば赤の種は一つだけか」


「失敗出来ないものなら、赤の種が二つあればいいのにな」


「まぁ天使のミスだろうな、そそっかしい奴だし」


「さて、そろそろ寝るか」




天使「ひどいですねー男さん」


天使「赤の種が一つなのを疑いもなく私のせいにしてー」


男「はは、仕方ないだろ、まさか自分が赤の種だなんて思わないし」


天使「そうですよね・・・」


男「さて、向こうの俺が寝たら行動を起こすか」


天使「あ、それじゃ・・・それまで少しお喋りしましょうよ」


天使「ちょっと聞きたいこともありますし」


男「?」

天使「男さんは自分が赤の種だと聞いて、どうも思わないんですか?」


天使「男さん何も言わないんで少し気になります」


男「うーん、そうだな・・・」


男「やっぱり少しはショック受けたな」


天使「やっぱり・・・」


男「でもさ、それよりも女が死んでたことのショックが大き過ぎて・・・」


男「正直なところ、今聞かれるまで考えたこともなかったよ」


男「自分のことより女のことだ!とかキザなことを言ってみたり」ニヤッ


天使「・・・ふふっ、なんですかそれ」

天使「でも・・・それを聞いて安心しました」


天使「自分は種だったのかー、なんて言って落ち込んでたらどうしようかと思ってました」


男「ははっ、俺そんなこと言うイメージ?」


男「まぁ・・・俺は今落ち込むなんてことはあり得ないよ」


男「俺は生きてるし、女も生きてる、それでいいんじゃないか?」


天使「あー!そこに私も入れて下さいよぅ!」


男「あ、忘れてたわ」


天使「男さんが冷たい・・・まさかまた感情が!」


男「おいおい、適当なこと言うなよ」

天使「ふふふ・・・あっ、もう寝たみたいですよ」


男「じゃあ・・・向こうの俺に喝入れてやるか!」


天使「そうですね!この弓矢で・・・」


男「あ、そうだ天使」


天使「はい?」


男「タンスに当てないようにしてくれよ、けっこう愛着あるんだよあれ」


天使「ふふ、お任せ下さい、私の腕前をなめないで下さいよ」


男「お、なんだか頼もしい」

天使「それじゃ、3つ数えたら放ちます」


男「よし!任せた!」


天使「1・・・」


天使「2・・へ、ヘクチッ」ビュン



ガシャンッ!



「な、なんだ!」



天使「・・・えへへ」

男「・・・」ゴツン


天使「痛っ!だってー・・・」


男「何が私の腕前を見ろだ、タンスにクリーンヒットじゃねーか」


男「やっぱり壊れる運命だったのかな・・・」


天使「で、でも!これでやるべきことはやりましたし!」


男「まぁ・・・そうだな」


天使「じゃあ、帰りましょう」


男「おう、手を貸してくれ」


天使「はい」ギュッ

男「よし、それじゃ帰るか」


天使「・・・あ」


男「?」


天使「えへへ・・・シュークリーム買ってきません?」


男「・・・」ゴツン


天使「痛っ!さっきより痛いです!」


男「帰るぞ」


天使「ちぇー」ヒュン

ーーーーーーーー




天使「着きました!」ヒュン


神様「おお、天使よ」


天使「神様!やりましたよ!」


男「えっと・・・さっきは悪かった、ありがとう神様」


天使「ほっほっほ、なんのことじゃろうか」


天使「なんのことって、神様の言ったとおりに過去に行って女さんを・・・」


神様「これこれ」ゴツン


天使「痛っ!なんで*」

神様「ふむ・・・男よ」


男「?」


神様「あー、確かお主は、今まで何事もなく女という伴侶と暮らしていたんじゃったな?」


男「何事も・・・なく」


神様「・・・そうじゃ、何もなかったんじゃ」


神様「ほっほっほ、つまりは・・・そういうことじゃ」ニヤッ


男「・・・おう、ちゃんと理解した」


神様「ふふふ、それでよい」


神様「それに比べて天使ときたら、全くもって愚かじゃ」

神様「喋り過ぎは災いを招くぞ、天使よ」


天使「だからって叩かなくてもいいじゃないですかー!」


神様「ほぅ、ならば次からは蹴りでも入れてみるかの」


天使「いやですー!」


神様「さてさて、そろそろ戻ってはどうかな男よ」


神様「既に待ちくたびれておる、ちゃんと説明してあげねばの」ニコッ


男「・・・あぁ!」


天使「じゃあ行きますかー!」


男「よし!」ギュッ

神様「ほっほっほ、行っておいで」


神様「そうじゃ、天使よ」


神様「少し話があるからの、お前は早く帰ってくるんじゃぞ」


天使「・・・?分かりました」


天使「それじゃ神様また後でー!」ヒュン


男「ありがとな!」ヒュン




神様「・・・若いっていいのう」

ーーーーーーーー




天使「さ、着きましたよ」


男「なんで家の前なんだ?」


天使「だって・・・なんか、ただいまって言いたいじゃないですか」


男「確かに、家で誰かが待ってくれてるのは嬉しいな」


男「じゃあ・・・」ガチャ


男「ただいま、女」


天使「ただいまです!」


女「・・・」zzz

男「はは・・・また寝てんのかよ」


天使「もー、相変わらずですね」


女「・・・はっ!」パチリ


男「お!起きたか女」


女「んー」


女「おかえりなさい、男、天使ちゃん」


天使「ただいまです」


女「ねぇねぇ、私買ったものをどこかに置いてきちゃったみたいなの」


女「いつの間にか家で寝てて・・・」

男「あー、えーっと・・・」


男「おい天使、女の記憶はどこまで創造したんだ?」ヒソヒソ


天使「実は・・・人間が亡くなった後に放出される21gの情報というのがありまして」ヒソヒソ


天使「女さんを創造する時に、そこから亡くなる直前の記憶だけ消去して女さんに戻しました」ヒソヒソ


男「・・・お前なんかすごいことしてたんだな」ヒソヒソ


女「ねー、男ー?」


男「・・・じゃあ・・・今までのことを全部説明するか」ヒソヒソ


天使「そうしましょう」ヒソヒソ


男「えっと・・・あのな女、実は・・・」

~~~~~



男「・・・という訳なんだが・・・」チラッ


女「」ガーン


天使「分かりやすくショック受けてますね、無理もないけど」


女「ガーン」


男(もはや口からも出てるな・・・)


女「そっか・・・私一回死んじゃったんだね」


男「うん・・・ごめんな」


女「ううん、大丈夫」

女「だって・・・男も同じなんでしょ?お揃いだね!」ニコッ


男「ああ、お揃いだな」


天使「あー、また私だけ仲間はずれですー!」


男「ははは、悪いな天使」


女「ふふっ、男、いじわるしちゃだめでしょ」


天使「そう言っといて女さんも笑ってるじゃないですか!」


天使「まったくもう!」


女「ふふっ、ごめんね天使ちゃん」

天使「まぁ・・・許してあげましょう」


天使「シュークリーム5個で!」


男「おい、それは欲張り過ぎだ」


女「じゃあ今度買っておくよー」


天使「わーい!久しぶりに食べれますー!」


女「その時は私も一緒に食べよっと」ニコッ


天使「みんなで一緒に食べましょう!」

女「私もそろそろシュークリームを摂取しないと持病が・・・」


男「いやいや、それは関係ないだろ」


女「本当だもん!げほんげほん!・・・ん?あれ?」


天使「あ、女さんの病気ならもう大丈夫ですよ?」


男「・・・え?」


女「なんでなんで*」


天使「だって・・・わざわざ悪いところまで完璧に創造しなくてもいいじゃないですか」ニコッ


男「天使・・・お前すごいよ」

女「じゃあ・・・私もう我慢しなくていいの?いっぱい走れるの?」


天使「ふふっ、大丈夫ですよ、転ばないようにしてくださいね」


女「・・・*ん!」グスッ


男「ありがとう天使」


天使「はい!そう言っていただけたら私も嬉しいです!」


男「あ、そういえば何か神様が話すことあるって言ってなかったか?」


天使「そ、そういえば!」


天使「じゃあ私は帰りますね!」


女「次までにはたくさん買っておくからね!」


天使「約束ですよー!」ヒュン

ーーーーーーーー
ーーーーーーーー




男「・・・静かだな」


女「うん、天使ちゃん行っちゃったしね」


女「いつでも元気いっぱいみたいだね」ニコッ


男「あー、でもあいつも色々と悩んでたみたいだぞ」


男「結局一番頑張ってたのは天使だったな」


女「そうだね、けど・・・」


女「男だって頑張ってくれたんでしょ?」


男「・・・まぁな」

女「ねぇねぇ、私が死んじゃってた間のこともっと詳しく教えてよ」


男「教えるっていったって・・・」


女「じゃあねー・・・ご飯はちゃんと食べてた?」


男「えーっと、最初の方は作ってたんだけど、段々と面倒になって・・・」


女「やっぱりー、絶対面倒臭がると思った!」


男「はは、ごめんごめん」


女「これからはより健康に気を使わなきゃね、野菜三昧に挑戦ちゃおっと」


男「うわぁ・・・緑の種で鳥でも作って食べようかな」

女「ふふ、天使ちゃんが言ってたでしょ?種は不味いって」


男「そういえば言ってたな・・・もしかしてあいつ食ったのか」


女「というか、鳥なんて創れるようになったんだね」


男「ああ、言ってなかったか」


男「記憶が戻る前だったんだけど、天使がいきなり種を渡してきてさ」


男「なにも教えてくれないから、ただ黙々と種の練習してたら鳥も創れるようになったんだ」


女「すごいなぁ、いつの間にか抜かれちゃった」


女「ま、それもそうだよね、私は
男に創られたんだし」


男「俺も俺に創られたらしいけどな」ニヤッ


女「ふふ、ややこしいね」

女「そういえば、まだ感情を創造できるの?」


男「いや、多分無理だな」


男「天使の言った通りだ、俺自身の感情が自然になっちゃったんだ」


女「じゃあ私もまだ男に追いつけるね!種の練習頑張らなきゃ!」


男「おいおい、あんまり興奮し過ぎると・・・あ、もういいのか」


女「治ったからね!だからたくさん騒ぐの!」


男「しーっ、夜中なんだから勘弁してくれ」


女「なんでよー、つまんないなぁ」


男「明日な、明日たくさん騒いでいいから」


女「じゃあさ!明日散歩しようよ!うーんと遠くまで!」

女「あとはピクニックとか遊園地とかも行きたいなぁ!」


男「うん、絶対行こうな」


女「うん!絶対だよ!」


男「はは、楽しみだな」


女「本当だよ、私・・・今すごい幸せなの」


女「できなかったことが一気にできるようになったんだもん」


男「ひとつずつ、一緒にやっていこう」


女「うん、そうだね」


男「じゃあ、明日のためにも寝るとするか?」


女「そうしよっか」

~~~~~



女「ふふっ、布団あったかーい」


男「そんなにくっ付くなって」


男「さ、電気消すぞ」パチッ


女「はーい」








男(・・・ふぅ、疲れた疲れた)


男(久しぶりに布団が狭いな)


男(・・・まぁ、それが幸せなんだけどさ)


男(・・・よし、寝るとしよう)


女「・・・男、まだ起きてる?」

男「ん?どうした」


女「ううん、起きてるかなーって思って」


男「ははは、なんだよ」


男「早く寝ろよー?」


女「・・・」


女「ねぇ男?」


女「私、生きてる」


男「?」

女「病気で何もできない時と違って、生きてるんだって思えるの」


女「それに男のおかげで・・・私はこれからもずっと生きていける」


女「だからさ・・・」


女「・・・ふふっ、いつもありがとう、これからもよろしくお願いします」


男「・・・はは、お互い様だ」


男「側に女が居てくれる、それがこれからもずっと続く」


男「一度失ったからこそ、もう手放したくないんだ」


男「だから・・・一緒に居てくれてありがとう」


男「もちろん、これからもな」ニコッ


女「・・・うん!」

ーーーーーーーー
ーーーーーーーー




神様(ほっほっほ、やっとか)


神様(長かったのう・・・)


天使「ねぇ神様ー、話ってなんですかー?」


神様「うむ、そうじゃったな」


神様「その話とは別に、今回の事でいくつか教えておかねばならんことがある」


天使「?」

神様「まず、わしが人間について最も素晴らしいと思うことがなんだか覚えておるか?」


天使「覚えてます、誰かを想って涙を流せることですよね?」


神様「そうじゃ、わしはそう思っとるんじゃ」


天使「私もそう考えています!」


神様「ほっほっほ、では・・・わしが人間について最も愚かだと思うことはなんじゃろうか」


天使「え、えーと・・・誰かを想わないこと?」


神様「うーむ、惜しいところじゃ」

神様「わしはな、感謝すべき場で謝罪をする人間がむかつくんじゃ」


天使「む、むかつくって・・・」


神様「あの二人なんてまさにそうじゃ、典型的なむかつく人間じゃ」


神様「挙げ句の果てにはお互いに感謝の言葉もなく死におるんじゃから目も当てられん」


神様「だからの・・・すこーし運命の行き先をズラしてやったんじゃ」ヒソヒソ


天使「・・・え?」

神様「ほれ、女が死んだ時・・・お主はやけにボーッとしておったろ?」


神様「だから視てみたんじゃよ、未来をな」


神様「その未来はなんとも不幸での、女も男も死に、お主はめっきり静かになりおってのう」


神様「お主にそうなられるとこっちも困るんでな」


天使「じゃ、じゃあ神様は最初から・・・」


神様「ほっほっほ、お主の頑張りようを影で見守るのは意外と楽しかったぞ」


天使「・・・かなわないなぁ」


神様「まぁ全ては丸く収まった訳じゃ」

神様「さて、本題じゃ」


神様「お主は今回のことで人間を創造した、1人でではないがな」


天使「ま、まさか・・・処罰は勘弁してください・・・」


神様「最後まで話を聞け愚か者」


神様「そもそも何故人間を生き返らせることが最大の禁忌であるか考えたことはあるか?」


天使「え・・・調律がどうのこうのじゃ・・・」


神様「まぁそれもあるんじゃがな」

神様「わしらの世界の者が人間を生き返らすメリットなんぞはない、無駄に罰を受けるだけじゃ」


神様「だがお主はその禁忌を犯した、何故じゃろうか」


天使「それは・・・」


天使「・・・男さんと女さんが、これからも幸せに過ごしていけるようにと・・・」


神様「ふむふむ」


神様「よろしい、それが聞きたかった」


天使「え?」

神様「自分が罰を受けてでも、それでも生き返らせたい人間がいる」


神様「それほど人間を好きになれる」


神様「その意志の有無が、神になるための第一関門じゃ」


神様「そうであろう?毎日毎日人間のために世界を調律するのは、人間が好きな者にしかできぬ」


天使「え?え?」


神様「ほっほっほ、羽の隠し方を教えてやろうかの」


天使「え!教えてくれるんですか*」


天使「なんか分からないけど・・・わーい!」ビューン

神様「ほっほっほ、どこかへ飛んで行きおった」


ユニコーン「」トコトコ


神様「おお、そうじゃったの」


神様「既に肉体の修復は済んでおる」


神様「後で子犬に戻してあげよう」


ユニコーン「」コクッ


神様「ほっほっほ、良い子じゃ」








神様「・・・さぁ、あの二人の人間達の時も進み始めた」


神様「今回のことで天使も大きく成長した」


神様「ほっほっほ、愉快じゃ愉快じゃ」


神様「・・・さてと」


神様「わしも大好きな人間のため、今日も世界を調律してやるかの」ニヤッ


fin

終わりました。
読んでいただいた方ありがとうございました。

乙!
楽しかった

天使ちゃんのその後をちょっと見てみたいなぁ…

ありがとうございます

更新できるのが夜しかないので明日また書き込みます

面白かった!
乙乙!



~ちょっとした続き~




神様「お主は下手くそじゃのう」


神様「有る物は無くならぬ、だから不可視にするんじゃと何度言ったら・・・」


天使「いきなり羽を見えなくしろって言われてもできる訳ないじゃないですかー!」


天使「てっきり羽は取り外せるんだと思ってたし・・・」ブツブツ


神様「お主は自分の身体を機械だとでも思っとるのか」


天使「あーあ、これからはシュークリーム買えると思ったのに、これじゃいつになるのか・・・」ポイッ

神様「・・・」


天使(種)「どうしました?」


天使「聞いて下さいよー、神様がまたいじめるんです!」


天使(種)「えー!またですか?」


天使「やれって言われていきなりできる訳ないのに」


天使(種)「そうですよねー!神様ひどい!」


天使「神様いじわるー!」


神様「ええい、うるさい!うるさいわ!」

神様(心をもつ生き物の創造はまだ先の段階だというのに・・・)


神様(教える前に創れるようになりおって、全くもって騒がしい)


天使「女さんを創った時、男さんの手から伝わってきたんですよ」


天使「おかげで感情の理解が深まりました!」


神様「なるほど・・・ってこれ!生意気にわしの心を読むんじゃない!」


天使「えへへー」


天使(種)「神様さっき私のこと騒がしいって思いましたねー!失礼です!」


神様(心に関しての能力が全体的に底上げされておるのう)


神様(これから此奴の前では閉心術を使わねばならんな)

神様「ほれほれ、つべこべ言わずにさっさと練習せい」


天使「はーい」


天使(種)「じゃあ私は戻りましょうか?」


天使「そうですねー」


天使(種)「それじゃあまた今度です!」


天使「それでは・・・【戻れ】」


神様「ふぅ・・・やっと居なくなったか」


神様「記憶はちゃんと保存したか?」


天使「もちろんですよ」

神様「まぁ別にしなくてもいいんじゃがな、居たらうるさいしのう」


神様「さぁ、羽を消してみい」


天使「もう一回お手本見せて下さいよー」


神様「・・・仕方ないのう」パッ


神様「ほれ、わしの羽が見えるようになったじゃろ?」


天使「はい」


神様「そしたらこうして・・・こうじゃ」パッ


天使「だからその過程が意味分からないんですってー!」


神様「ほっほっほ」

ーーーーーーーー


女「男ー、買い物行こうよー」


男「ん?いいけど、買う物あったか?」


女「今日は卵が安いんだよねー、荷物持ちお願いね」ニコッ


男「うわぁ・・・鬼嫁・・・」


女「いいから行くのー!」グイグイ


男「わわ、分かった分かった」


天使「こんにちはー!」ヒュン

男「おお!天使か!」


女「天使ちゃん久しぶりだねー」


天使「やっと時間が取れたんです・・・」


男「大変そうだな、少しやつれたか?」


天使「そうなんですよー、多分神様のせいですね」


男「はは、違いないな」


天使「それに最近はシュークリームも食べてないですし・・・」


女「そうなの?これから買い物行くけど買いに行く?」


天使「行きます行きます!」

男「俺が買ってきてやるよ」


天使「ふっふっふ、結構ですよ男さん」


天使「そもそも今日こっちの世界に来たのはこのためです!」


女「その羽を隠せるようになったの?」


天使「え、ええ、まぁ」


天使(今のところ長くて5分ですけど・・・)


天使(男さんたちの買い物が終わる頃に羽を隠せばなんとか・・・)


男「じゃあ行くとするか」


女「はーい」

~~~~~


男「なぁ、これとか美味しそうじゃないか?」


女「日持ちしないでしょ、無駄な物は買わないの」


女「セールの時はセールの物だけを買う、節約しなきゃね」


男「はは、かなわないな」


女「そういえば天使ちゃんは?まだ来ないの?」


男「店に入る前に『人間の服に着替えてきますねー』って言ってどっか行っちゃったからなぁ」


女「まぁ私はレジ行ってくるから、ちょっと待っててー」


男「うん、分かった」

男「さて、暇だ暇だ」


男「天使のやつ何してんのかな」


男「いくらなんでも着替えるのにそんな時間はかかんないだろ」


男「ま、俺らが帰る頃には来るだろ」


~~~~~


男「と思ったけど来る気配がない」


女「おまたせー」


女「あれ?まだ一人?」

男「うん、あいつ遅いな」


女「外に出てみようか」


男「そうだな、どこかに居るかもしれない」テクテク


女「あ、卵割れないように持ってね」テクテク


男「はいはい、分かりましたよ」


天使(・・・)


天使(あ、来ましたね)


天使(それじゃあ・・・こうして・・・)パッ


天使(急がないと!)ダッ

男「ん?なんか物凄い勢いで子供が走ってきてる」


女「女の子みたいな格好してるけど・・・天使ちゃんじゃない?」


男「なにやってんだあいつ、服間違えてるぞ」


天使「少し待っててください!」タタタッ


女「狙い澄ましたかのように一直線にデザートコーナーに行ったね」


男「レジに向かったけど・・・混んでるな」


女「すごいもじもじしてる」


男「なんであんな焦ってんだろーな」

男「あれ?あいつの背中・・・」


女「・・・見えてきてるね、羽」


男「他の人もチラチラ見てる、やばいんじゃないか?」


女「あ、天使ちゃんも羽のこと気づいたみたいね」


天使「~!」


天使「~~~!」ピカッ


男「」


女「」


天使「ふぅ・・・危なかった・・・」

天使「よし、時間を止めたままお金払って出てけばいいでしょう」イソイソ


男「」


女「」


天使「あ、男さん達も止まっちゃってました」ポンッ


男「うわ!天使!」


女「天使ちゃんがいきなり目の前に!」


天使「えへへ・・・羽見えちゃいました」

男「おいおい、これお前がやったのか」


女「皆動いてないね」


天使「今私が時間を止めてるんですよ」


男「これ大丈夫なのか?」


天使「大丈夫ですよー多分」


神様【愚か者!許可無く時間を止めおって!】


天使「わわ!か、神様!」


男「久しぶりに聞いたなこの声」

女「なにこれー?頭に響いてくる」


神様【教える時に悪用するなと念を押したじゃろうが】


神様【私利私欲に走った挙句調律を乱すとは・・・お仕置きじゃな】


天使「ごめんなさい!お仕置きは嫌です!」


神様【勘弁ならぬ、戻ってくるんじゃ】


天使「うわ!強制転移はやめて下さいよー!」フワッ


天使「お、男さん!女さん!すみません帰ります!」

男「お、おう、またな」


女「ふふっ、また来てねー」


神様【ほれ】


天使「やめてーーー・・・」ヒュン


男「・・・大変だな」


女「・・・うん」


女「それより・・・これどうするの?まだ止まったままだけど」


男「・・・神様がなんとかしてくれるだろ」

女「そっか、じゃあ大丈夫なのかな」


男「まぁ・・・俺らは・・・」


女「・・・ふふっ、帰ろっか?」


男「ああ、そうしよう」


女「今日の夕ご飯はねー・・・」テクテク


男「お!それは美味しそうだ・・・」


女「~~~」


男「~~~」


終わり

今度こそ完結です

リアルタイム乙!

乙乙!!
リクエスト応えてくれてアリガト

面白かったよ





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