QB「嘘」 (85)


・本編及び外伝キャラ
・魔女生前

このへんが出る、ほのぼの日常短編集

多分

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 「結局、匣に残ったのはオイラ達にとって希望だったのかよ」

 「それはまだわからないし、そうである必要も無いよ」


―――
――



  ▶◆◀   ▷◇◁



 みんながこちらを見ている
 みんながわたしを見ている

 嘘を吐かないと
 演じないと
 騙さないと


・みんなは観客
・わたしはピエロ



  ▷◇◁   ▶◆◀


病院の屋上から見る空には、いくつかの白い綿菓子が泳いでいた

明日は雨になるかもしれない。 そうしたら、ここにも来れない


そうなる前に、早く吹いてしまおう

ポーチの中のシャボン玉セットを取り出そうとした彼女の背中に、声がかかる


 「やあ、容態はどうだい?」


手を止め、声の主に顔を向ける

柔和な笑みを浮かべた無表情が映り、少女も表情を消してそれに応える



 「いま、お父さんが検査の結果を聞いているところなのです」

 「なるほどね」

 「……どんな結果かも、だいたいわかるのです」
 
 「だろうね」


表情を少しも動かさず、軽い答え


 「それじゃあ、また様子を見に来るよ」
 
 「それを聞きにきただけなのですか?」
 
 「まあね、僕は今日付き添いでここまで来ただけだし。 それに、あまり邪魔をするのも悪いだろう?」
 
 「……わかってるのなら、声をかけないで欲しかったのです」
 


少女に非難の視線を向けられ、会話の相手が悪かったよ、と口先だけの謝罪を呟く

そのまま背を向け、その場を去って行った


 「はあ……」

 
手元のポーチに視線を落とし、溜息をつく。 しばらくはこれもお預けだろう

先ほどの会話の相手である少年と入れ替わるようにこちらへ歩いて来る父親が、とても疲れ切った表情を浮かべていたからだ


―――
――

ほのぼの……?

少な
また明日

人が死ななければほのぼの、いいね?

 
 人は嘘をつく。それは、とても悪いことだ
 


  ♪♫♩  ♪♫♩


バイオリンのことばかり考えている幼馴染がいる


小学生の時からずっとそうで、友達の約束よりバイオリンの練習を優先することなんて日常茶飯事だった

いつもそんな感じだから、周りのみんなもあいつはバイオリンのことしか頭にない奴だとからかうようになった


バイオリンバカと言われても、あいつは少し困ったような表情をするだけ

それどころか、嬉しそうな笑みさえ浮かべ、バカはひどいよ、くらいしか言わなかった


一方であたしはそんなことがあると、いても立ってもいられなくって、代わりに言い返してやろうと口喧嘩を起こすことが常だった

冷静になって考えれば、あたしのそんな反応が面白くてそれは続いていたようなものだとわかるはずなのに




 ――こら、ちゃんと言い返さないとダメじゃない


     ――でも、バイオリンのことしか考えてないのは本当のことだよ


 ――それじゃだめなのっ!



あいつの頭がバイオリンで一杯だなんてこと、あたしが一番よくわかってた

だからこそ、あたしはそれを認めたく無くて、意固地になっていたのかもしれない



 ――もう……やっぱりあたしがいないとダメなんだから



あいつの中での私の存在がどれだけちっぽけになっても、この立ち位置だけは譲りたくない



     ――そうだ、さやか。 ぼくね、また新しい曲を弾けるようになったんだ! また聞きに来てよ!



無邪気な笑顔を浮かべ、とても嬉しそうに私に語る

そんな彼の笑顔が、大好きだったから

期待



 ……だけど、その“好き”はどこまでが<本当/嘘>で、
   どこまでが<本当/嘘>なのかは、今もわからない



  ♪♫♩  ♪♫♩



―――
――



 ――見滝原中学校、屋上――


空と地を分けるように、濁った白のカーテンが横たわっている

そろそろ雨が降りそうだ。 傘を持って来ていただろうか――上に向けていた視線を戻し、上条恭介が今朝の自分を思い起こす

そんな彼の目に、この場に似つかわしくない、いや、あるまじき物が映る


様々な修飾語を除き、率直に書かれていたことを要約すると、巨乳か貧乳か、という一文

そう表紙が主張している見るからにいかがわしい雑誌

辛うじてR18ではないが、学校に持ち込んで良いモノではない
 


とりあえずその記号やめろ



 「……何をやってるんだい」

 「やあ、恭介」


少年が読んでいた雑誌を閉じ、恭介へと目を向ける


 「どちらがいいかいい加減決めろ、と押し付けられたのさ」


中沢を始めとしたことあるごとに絡んでくる級友たちを思い浮かべ、納得する


どちら、というのはまあ、そういうことなのだろう


 「君はどっちが好みなんだい?」

 「えっ、いや……どっちでもいいんじゃないかな」

 「なるほどね……君のフェチズムは胸以外にあるということか」

 「いっ、いや、そうじゃなくて! その……ちょうど良い大きさが、ちょうど良いんじゃないかな……」





何を答えさせられているんだろうと顔が熱くなるのを感じる

言ってることが全くの嘘ではないから尚更だ


そう、ちょうど良い具合にフィットするものが好い


弦の張り方だってそうだし、やはりハリがある方が……と考えたところでまるで自分が変態であるかのように思われ、恭介はそれ以上先に進まないことにした


 「ふむ……ところで、そのちょうど良い大きさ、というのは何の用途におけるものなんだい?」

 「よ、用途?」


予想外の問いに素っ頓狂な声をあげてしまう

勘弁して欲しい、何とか上手く誤魔化せないものか


さっさと切り上げてしまえばいいものを、真面目に考えようとするところに生来の真面目さが伺える



 「こら」


低い声が耳朶を強かに撫ぜ、恭介の身体が思わず強張った



また明日、おやすみ

おねむ早いな。乙。

中条きよしの『うそ』でも歌うのかと

^)ノ



 「さ、さやか?」


腰を手に当て、眉間に皺を寄せながらこちらを睨みつける少女の名を呼ぶ

ああ、これは叱る時の態勢だ。 今までの記憶がぐるぐると脳内を駆け巡る


この状況をどう言い訳するか
元凶の少年を見やると、涼しい顔をして先程現れた少女、美樹さやかに声をかけている


 「せいっ」

 「おっと」


鉄拳制裁というわけではないが、さやかの鋭い手刀を軽い身のこなしで少年が避ける


 「避けるなっ!」

 「どうしてだい?」

 「あんたがそんなもん持ってるからでしょ!」

 「そう言われてもね」

 「あんたはともかく、恭介まで変なことに巻き込まないの」

 「彼だって興味が無いわけでは無いみたいだけど」
 
 「えっ」

 「そっ、それは、ほら、その、恭介だってそういうお年頃だし……いや、だから! そうじゃなくて!!」

 
 




 「そういえば、さやかと恭介は幼い頃からの付き合いだったね」

 「付き合いというか、まあ……」

 「だとすると、ちょうどいい大きさというのはさやかのを参考にしているということかな?」

 「へっ?」

 「なんでそうなるんだよ!」


さやかが完全に虚を衝かれる傍ら、恭介が慌てて否定の反応を返す


 「違うのかい?」

 「と、当然だろ……大体、さやかは幼馴染だし……」

 「確かに幼馴染だけどさ……」


話の内容の大体は想像がついているのだろうか、さやかが拗ねたように口を尖らせ、ぽつりと呟く


 「そうだよ、幼馴染にそんな目を向けられるわけないだろ」


ダメ押しの一言。 さやかが何かを言おうと口を開きかけるが、すぐにため息をつき、肩を落とす

そんな彼女の様子に、恭介が首を傾げる


 「ふむ。 となると、君に身近な人物……まどかや仁美が当てはまるかな」

 「いや、その二人はさやかの友達であって……しかも同級生だ、そんな目で見れるわけがないよ」

 
 





鹿目さんはともかく、志筑さんはスタイルはいい方なのかなと思う


ただ、同級生のような身近な人間、ましてや幼馴染をそういう目で見るのはあまり良くない気がする

まあ、さやかは妹のようなものだけど――こう言うと、あたしが姉でしょ!と怒られそうだ


何にせよ、罪悪感が邪魔をするものだ


恭介はそう思ったが、言葉にするのはやめにしておいた

根掘り葉掘り聞かれてボロを出してしまうのは困るし、何より


 「そういうことなら……うん、仕方ないか……うん……」


などと呟いているさやかを刺激する結果にはなりたくないからだ





 「そうだ、恭介。 傘持ってきた?」


感触という観点からも二者の比較をする必要がある、などと不穏なことを言い残して件の少年が去り、微妙な空気だけが残される

それを打ち破るように、さやかの一言


 「ああ……忘れた」

 「やっぱり、しっかりしなさいよね」


ため息をつき、苦笑する


 「仕方ないなー、わたしが貸してあげるよ」

 「いいのかい? それじゃあさやかが……」

 「わたしはまどかにでも入れてもらうから」



変わってないな、こうやってお節介なところも

いらないと言っても、きっと引き下がらないだろう


 「でも……」

 「風邪でも引いたら、練習できなくなるよ?」


やっぱり、変わってない

そして、それに甘えてしまう自分も


さやかと同じように苦笑しながら、僕は

 「ありがとう、さやか」

と伝えた


―――
――



――
―――


 ――教室――



件の少年が一足先に屋上から去った後、向かうは二年生のとある教室


 「――と、いうわけなんだ」


頼みたいことがある、と前置きし、屋上での出来事をかいつまんで一人の少女に説明する

桃色の髪に赤いリボンを結んだ相手の少女、鹿目まどかは最初こそ穏やかな笑顔を浮かべながら話を聞いていたが、内容を理解していくうちに表情が困惑と恥じらいのないまぜになったものへと変化していった


 「えっと……つまり、わたしの、おっ、じゃなくて、胸を、その……」

 「そんな大層なことじゃないよ、感触を確かめるだけさ」

 「十分大事だよ……」

 
同級生たちより一回り小さい体をさらに縮こませながら、呆れたような、咎めるような言葉を漏らす


 「と、ともかく、そういうのは、めっ! だからね!」

 
まるで弟を叱るように、人差し指を立てて言う


 「君を頼りにしてたんだけど、まあ仕方ないね」

 
 




大きい方には心当たりがあるから問題ないが、と不要な情報を付け加える

 
 「もしかして……ほかの人に頼もうとしてない?」
 
 「何かいけないのかい?」
 
 「だ、ダメだよ!」
 
 「どうしてだい?」
 
 「そ、それは……」


どうしたものか、と周りに目をやるといつもと違う彼女の様子が気を引いたのか、少なくないクラスメイトがこちらを窺っていることに気付いた

ここでこの話を続けるのも得策では無い、そう判断し、耳元へと口をやる


 「あ、後でわたしの――」

 「鹿目さん」

 「ひゃいっ!?」


背後から掛けられた声に驚き、氷水を首筋を垂らされたがごとく背筋がぴんと張る


 「えっと……あの、呼んでます……」


腰まで伸びた、夜色の美しい黒の長髪を持つ、眼鏡の少女

転校生でもある暁美ほむらがいつものように控えめな態度でおずおずと教室の入り口を差した


 「あっ、ご、ごめんね!」


ありがとう、暁美さん、と短く感謝を伝える

一方のほむらはそんなまどかに小さく会釈をし、視線を戻して


 「……へんたい」


口を開こうとした彼とすれ違い様、そう言い放った


 「誤解だと思うんだけどなあ」


―――
――





書きためのストックが……
ではまた

.          /. : : : : ,'  l : : : : : : : : ∨////>
          /: : : ,.| :::/  |: /、 : : : : : : ∨/// ひとりぼっちは寂しいもんな……
          イ: : : / |::/、  ,|/ _ヽ: : : : : : ∨/
          |: : : 「示ミ    爪/心 「: : : ハ l  いいよ、一緒にいてやるよ
.         八: : :i ヒぅリ     V)ツ^,: : :/ぅ 八
          ヽ人(⊃     ⊂⊃厶ィ =彡:|    (時給9000円、食事代別)
            ≧=‐-^r‐v‐=≦_(: : : : : : l
            /: : :/ /::{0}::::{{ i : : :¦: : :'
            /: ,' :l__{:::::。:::::::Y__|: : : :l: : /
.          /: /: /::::}:::::。:::::::|l::∧: : :l: /
          /: /: /:::::/::::∧:::::::|:::∧.:/ /



 「んー……」


予想通りというか、予報通りというか

土砂降りの雨を教室の窓から眺めながら呻く


傘は恭介に渡したし、頼みのまどかはまさかの部活

仁美はお稽古ごとで忙しいし、最後の手段である予備を持って来ていないという有様


 「ま、いいけどね」


まどかの持っていた可愛らしい傘を思い浮かべ、二人はきついかもしれないし、と一人で納得する


仁美が綺麗という形容詞なら、まどかは可愛い、愛くるしいという言葉が当てはまる

あんな風に女の子らしいほうが、男の子は好きなのだろうな、と柄にもないことを思ってしまう

まあ、私には縁遠い言葉だけど


 「仕方ない、職員室ででも……」
 

溜息に二重の仕方ないという言葉を載せて吐き出す

雨が伝う窓に向けていた視線を教室へと戻すと、ちょうど教室へ入りかけてた人物と目が合った


 「やっぱりまだ帰ってなかったんだね、さやか」





 「あれ、恭介? 帰ったんじゃなかったの?」

 「さっき鹿目さんを見かけたから、もしかしたらと思って」

 「あー……なるほど」

 「傘、返したほうがいいかな」
 
 「職員室で借りれると思うから、大丈夫だよ」
 
 「それだったら僕が借りてくるよ、元々さやかの傘なんだから」

 
恭介が傘を差しだす。 男女兼用の、可愛げのかけらもない平凡な傘

まどかの傘とは大違いで、およそ年頃の女の子が持つような物じゃないと自分でも思う


今回と同じように、傘を忘れてきた誰かさんに当時私の愛用していた音符の描かれた傘を貸してあげようと言ったら、丁重に断られたことがある

それから、こういう傘を選ぶようになった
 

 「まあ、そうだけど……」
 

恩を着せるつもりは毛頭ないけれど、すこしは素直に人の世話になってもいいんじゃないだろうか


 「二人とも、まだ帰ってなかったんですか」


どうしようかと考えていると、我が担任である恋愛連敗記録絶賛更新中の早乙女先生が現れ、これから雨が強くなるばかりだから、と早急に帰宅するよう勧告する

 
 




 「あ、そうだ先生」
 
 「職員室の傘も全滅してしまいました。 ですから二人とも、その貴重な傘を重々手放さぬように」
 
 「え、ちょっ」
 

先手を取られ、何も言い出せないままにさっさと教室を追われる

立ち去りざま、先生は妙に優しい視線をこちらに向けていた


 (は、はめられた……)

 「職員室の傘って、そんなに人気なのかな……さやか?」
 

ちんぷんかんぷんなことを言い出す恭介をよそに、私は去っていく早乙女先生の背中に恨めし気な視線を浴びせ続ける


 「早くいこうよ、まだ雨は強くなるって先生も言ってただろ」
 

不意に手を握られ、そのまま玄関へと向かう


 「あ……」


久しぶりに感じる、幼馴染の体温

手の先から伝わる熱が、じんわりと体に染み込んで行く感覚

顔が熱くなり、鼓動が早くなるのを感じる


 「でっ、でも、傘、一つしか」
 

久しぶりに感じる、幼馴染の手の感触

昔と違って、硬くて、力強くて

そんなに運動が好きなほうじゃないのに


様々な感情が、胸に詰まる


 「無いものは無いんだから仕方ないよ、早く帰ろう」


こちらを振り向きもせずに、私を引っ張って行く

昔は、あたしのほうが力は強くて、恭介を引っ張り回していたのに


複雑な表情を浮かべながら、それでも頬を赤らめているだろう私の顔を見られなかったのは幸いだった

 
 

小さい胸のことならクーほむに聞けば良いと言おうとしたら眼鏡かけてた


…………


咄嗟に握ったその手は、思ったより小さくて、柔らかくて

僕の記憶のそれとは、違っていた


…………



傘を差すために、恭介が手を離す。 離れて行く温もりが名残惜しい


 「持とうか?」


恭介の肩口が雨に濡れているのを見て、つい声をかける


 「大丈夫だよ。 それに、さやかが持ったら腕が疲れると思う」


その言葉に、話す恭介の横顔を見上げる

あまり意識しなかったけど、もう私より大分背が高くなったんだ


不意にこちらへと向けられた彼の視線から逃れるように目を逸らし、取り繕うように口を開く


 「やっぱ、男の子ってすぐ大きくなっちゃうんだなー」

 「まあ、成長期だからね」

 「会った時はこーんなに小さかったのに」

 「それはさやかもだろ」

 「そりゃそうだけど。 でもさ、あたしのほうが大きかったよ、昔は」

 「……そういえば、『あたしは今日からお姉ちゃんなのだー!』って言われたこともあったな」

 「うぇっ!? 何でそんなことは覚えてるかなー? 所々抜けてるくせにー」

 「抜けてるって……」

 「 ま、今だとあたしが妹になるのかな」

 「そうかもね」

 
 




 「じゃ、今日からお兄ちゃんって呼ぼうかな。 ね、きょーすけおにーちゃん♪」

 「えっ、そ、それは、えっと……まあ、うん」


しどろもどろになりながらの返事に、傘を叩く雨もびっくりな湿っぽい視線で返す


 「……ふーん、こういうのがいいんだ」

 「い、いや、そうじゃないよ、たまにはさ」

 「たまには、ねえ……」

 「あ、いや、ほら、僕って一人っ子だからね」

 「きょーすけおにーちゃんが変態になっちゃって、さやかちゃんは悲しいなー」

 「酷いよさやか……」


困惑の声に彼の表情を伺うも、どこなくにやけてるのが分かってしまい、小さくため息をつく


やっぱり、甘えてくれる子の方がいいのかな


 「そんなんだから、屋上でも変なのに捕まっちゃうんだよ」

 「あ、あれは仕方ないだろ……まさかあんなところで……」


屋上での出来事を思い起こし、何となく気まずい雰囲気が流れる


 「……あ、あのさ、やっぱ、その、興味あるの?」

 
 




呟いてから、自分の言葉に後悔する


 「へっ? な、何がだい?」

 「や、興味あるのは当然だと思うよ、うん。 そうじゃなくて、えーと……」

 「無いとかあるとかじゃなくて、その……」


気まずい雰囲気が濁流のようにのたうちまわっている

このままではまずい。 何とか取り繕わねば


 「ほ、ほら、最近あたしも大きくなってきちゃってさー」

 「えっ」


恭介が鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔をする

いやいや、そうじゃない。 何を言ってるんだあたしは


 「はっはーん、信じてないでしょー。 確かめてみるー?」

 「えええっ!?」


なんちゃってー、と締めるつもりが恭介の声で引っ込んでしまった

向こうの方も顔を赤くしながらうろたえている

たくさんの観客を前に落ち着いて演奏できる恭介でも、こんなに慌てることもあるんだな、などと妙に客観的な感想を持ってしまう


 「まあ、ほら、あたしも第二次性徴期だしね! うん!」


強引に話をまとめ、軌道修正を試みる


 「あ、そういえばさ、何で屋上まで出て行ったの?」

 「え? ああ、ちょっと考えたいことがあって……」

 
 




その返事に、いつものことか、と納得する

たまにふらっと一人になって、またすぐ戻ってくる

恭介の癖みたいなものだ

考えたいこと、というのもすぐにわかる


 「変わってないなー、そういうとこは」

 「そうかな?」

 「そうだよ」

 「そっか」


それからしばらくは、他愛の無い会話が続いた


最近はこんな練習をしているとか、クラシック界は今どうなってるかとか、そういった類のことをあっちが話して、私はそれに相槌を打つ


恭介ほどでなくとも、一応の知識は私にだってそれなりにある

だからこそ成り立つ会話だと、自分ながらに思う


 「感謝しなさいよー? この話についていけるのって、あたしくらいなんだから」

そう冗談めかして言うと、

 「本当だね、さやかがいてくれて良かったよ」

と、軽い答えが返ってくる


そう言ってくれるだけで、私はとても嬉しいし、単純なようだけど、少しばかり舞い上がってしまう

だから、このままでいいと思う


この立ち位置で、離れることも、近づくこともなく、このままの関係でいれるのなら

 
 



  ♪♫♩  ♪♫♩

人は嘘をつく。それは、とても悪いことだ

だけど、真実だけを話して生きることはできない

それほど、強くはできていない

  ♪♫♩  ♪♫♩



 ……あたしが家に着いても、雨が止む様子は無かった

 



はい。
まあ見ての通り例の契約システムが無い状態での日常短編集です

「」の前に名前を入れたほうがいいのかもと思わんでもない

意味がわからんマジつまんねーわ
こういうの書いてる時ってどういう感じなの??

なんつーか目が滑る文章だな

全く脳内再生できない

名前入れたほうが読みやすいかも

書かなくていいです


                      ――自称“未来から来た少女”A氏は語る

.       ,':..:..:..:..:..:..:../:..:..:..:..:..:/:..:..:..:..:..:..:..:..:/:..:..:..:/:..:..:..:..:/:../:..:..:..:..:..:..:..:.ヽ
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―――
――



ひとり、軒先で雨を避けながら、迎えの車を待つ


外でのお稽古事があった時は少し時間をずらして貰っている

一人でもの思いに耽ることのできる、短くも貴重な時間


何を考えようか、考えることはたくさんある

ピアノの課題曲、次はどんな花の生け方を、テストはどうだろうか……

考えることはたくさんある。 言い聞かせるようにして、考えを巡らす


ふと気配を感じ、そちらに目をやる

幽玄と雨模様に佇む、白い影

現実と虚構の境目が崩れて行き、今まで居た世界から切り取られるかのような感覚に襲われる


 「――やあ、仁美」

 
 




長年の知人であるかのような親しみの篭った声に、現実へと引き戻された


 仁美「……珍しいわ、こんなところで」


口調を取り繕うことも忘れ、率直な感想を述べてしまう


目の前の少年は、学内でもよく見かけるし、会話も少なからず交わした相手であることからそれなりに親しい知人であるのは確かだ

とはいえ、私的な付き合いはあまり無い


何の用か、と聞こうとする前に、相手が用件を伝える


 「少し、聞きたいことがあってね」


聞きたいこととは何だろう

“私のこと”では無いだろうとは思う。 私の“していること”であっても

志筑仁美と会話する人間は、一部を除いてそうなのだから


 仁美(さやかさんと上条くんのことかしら、それともまどかさんと暁美ほむらさん?)


もしかして、私と同じ習い事をしたいのかも、などと下らない考えを打ち消し、問い返す


 仁美「聞きたいこととは、何でしょうか?」

 
 




  ◆◇◆


 仁美(私の願いを教えて欲しい、ですか……)


ベッドにもぐりこみ、少年の言葉を反芻する

結局あの場では、その問いに答えが出せないまま迎えが来て、気が付けば彼もいなくなっていた


 仁美(どうしてそんなことを聞くのかしら)


その場では聞き損ねたが、当然の疑問だ

そのことについては今度聞くにしても、こちらもそれなりの回答を用意しておかねばならない


自分の答えを持てないのを、質問に質問を返すことで誤魔化そうとする

そういった愚行に走るのは彼女のプライドが許さなかった


 仁美「私の願い、私のやりたいこと……」


候補はある。 しかしどれもしっくりこない

 
 





 仁美(はあ……情けないわ)


両親だけでなく、様々な人たちから期待されているという自負はある

将来のことを考えていて偉いなどと、友人たちにも評されている


なのに蓋を開けてしまえば、志筑仁美という人間は自分の願望さえもまともに持ちえない人間である


あの少年は、それをわかっていてこんな質問をしたのだろうか?

適当な答えで手を打つべきだろうか?

あのガラス玉のように澄んだ紅い視線は、それが本意でないことを見通すだろう


そもそもあの少年は何者なのだろうか?

組も、学年すらもわからない

けれども、仲良くしてくれているし、悪い人間ではないはずだ


ただ一つ、名前だけは知っている

自らそう名乗っていたし、変わった名前だと思う。 キュゥべえ、というのは







                    ――結局この日は、まともに眠ることができなかった

 
 




―――
――



  ――後日、正午――


とある喫茶店。 店主の意向で、飲料よりもデザートに力をいれており、女性客が多い

そこに一組の少女たちがいた。 少年と共に


少女たちは非常に似通っていて、違う存在でありながら、同じモノに端を発していた

いわゆる双子であり、便宜上その区別をつけるために、片方は姉で、片方は妹とされている


  落ち着いた雰囲気の姉、

  あどけなさの残る妹、


  赤を基調とした、和風の大人しい服装、

  白を基調とした、可愛らしい洋服、


  髪を後ろに束ね、前髪は切りそろえており、

  髪を後ろに束ね、額を露わにしており、


  髪型について曰く、整えていたいから、と

  髪型について曰く、楽をしたいからと、と

 
 




   姓は双樹、

   名はルカ、

   名はあやせ、


             ――そんな、双子であった




 「ん~♪」

 「……ふむ」


双子の片割れ、妹のあやせがおいしそうにケーキを頬張る姿を、もう片方の姉であるルカが眺めている

その様子をまた、特に何の感情もなく少年が眺めていた

あやせとルカ、どっちがじゃない方芸人なのか

つまんね

期待

                       _  __         _,-/¨>、
                  ,-、_/7// /;/〉/7-/.7、_ム/ /:.  /ミ-、
             ノ ̄/ '´  // /:////:::/ /:/ / /`7ァェ_/ ,/ 7
            ./⌒,,.-==-ヽV /:////::./ /:/ / /`/ /、/ / 〉/-,
           ヽ//      ヽ匸`゙'‐'- '、〈./_/_/`/ /、/ /、// /〉/ヽ__
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               l  `゙'、`、     .l.`}:::::::./ /:::::::::::::::::::,-、ノ_=‐'´ ̄ヾヽ __)
              l    ヽヘ   l:二∨ /-、::::::::::_ナ彡'´       .} {´ 」-、
                ',     ヽヘ  l_ソ⌒`ヽ-、,`=//           l l _ノ 今日はワタシタチの日ダワ
     ,-=‐- 、        ' ,       ヽ丶 lヽ⌒ヽミヽフ'´.            ,.┴'‐-'
     ノ  \ ヽ       ヽ.     Vヘl三ヽ,ィ<≡=-‐''" ̄ ゙̄'''7' ´
    く     ヽ l         \:....   l ll{/'´             /
     \  \ l_ヘ         へ ::::mnv'、          ,.イ
      ` -( `ヾ ∧            〉}メ{{:::::::........ _ . -=''"´
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          `丶、 丶_    _ム}},'}{ l            /´   ̄ヽ
              `ー- ニ二{゙==={―――-----‐=--―    }
                   __〕 ,-‐'==‐- ....,,__〃 ̄ヾ}ー--=/

                     / -=、ヽ           `  ̄´ヘニ _ノ´
               _.。ャぁリゝ、__...イ
             O ̄ ̄ ̄ ̄\ ∧

                        ヽ∧
                          `O

  ※時間は本場欧州基準



      ††    ††


 いずれこうなることは、予想できていた


 双つの樹が白い死を受け入れたように、永遠はこの世に存在し得ない


 片方は流してしまおう、禍の担い手として

 片方は此の世と彼の世の瀬に、いつでも逢えるように


      ††    ††




 ルカ「美味しそうですね」

 あやせ「欲しい? あげないけど」


あやせの言葉に少し肩を落とすルカを見て、少年が手元のケーキを一口大に切り分ける


 キュゥべえ「……くうかい?」

 あやせ「なぁに、それ」


少年がフォークに刺したケーキをルカに差し出す

その呟いた言葉に、あやせが疑問を呈した


少年曰く、知人の物真似だよ、ということだ


 ルカ「で、では、お言葉に甘えて……」


しばしの逡巡の後、ルカが差し出されたケーキを口にする


 ルカ「はむ…………洋菓子はあまり食べませんが、たまには良いですね。 しょーとけーきでしたか」

 あやせ「ショートケーキだよ」


ルカの言葉をあやせが訂正する

その訂正にどんな意味があるのだろうかと疑問に思う少年に対し、ルカがいたずらな視線を向ける

 
 




 ルカ「では、お返しです」


そういって差し出されたのは、プラスチック製の楊子とわらび餅

ケーキなど洋風なものだけでなく、和風、中華風など様々なデザートを用意しているこの店ならではの商品である


 キュゥべえ「いいのかい?」

 ルカ「もちろん」

 キュゥべえ「それじゃあ……」

 ルカ「いかがですか?」

 キュゥべえ「……うん、美味しいと“思う”よ」

 ルカ「ふふ、そうでしょう」


嬉しそうにくすくすと笑う姉といつもの表情を崩さない少年を交互に見て、あやせが一言


 あやせ「……ずるーい」

 キュゥべえ「何がだい?」

 あやせ「私にも一口ちょうだーい」

 キュゥべえ「君と僕は同じものを頼んでいるじゃないか」


猫撫で声のおねだりも、ばっさりと一言で切り捨てられる


注文に際し、何でもいいと言った彼に対してじゃあ同じのを、と言ったのは他でもないあやせ本人


 あやせ「そういうことじゃないんだけどなぁ……むぅ」

 ルカ「おやおや、拗ねてしまいましたね」

 あやせ「イジワルはスキくなーい」

 キュゥべえ「やれやれ」


不機嫌そうにほおを膨らまし、そっぽを向く妹

姉は苦笑を浮かべ、少年はため息をつく

 





 あやせ「そっか、間接がダメなら直接してもらえばいいんだ」

 キュゥべえ「何の話だい?」

 ルカ「そ、そのようなこと……駄目ですよ」

 あやせ「えぇ~、どうして?」

 ルカ「むーどというものが必要ですからね」


胸を張って答える姉に対し、今度はあやせが何とも言えない表情を浮かべる


 あやせ「そんな悠長だとわたしたち死んじゃうと思うけどなぁ」


生まれつきの事情から、この二人で生きていくにはいくつかの中身を犠牲にせざるを得なかった

最近潰れた“双樹家”の遺した財産で保ってはいるが、そう長くはないだろう


 ルカ「それは、確かに……ですが……」

 キュゥべえ「……そういえば、体の調子はどうなんだい?」

 あやせ「んー……最近は大丈夫かな」

 ルカ「特にこれといって問題はありませんね」

 キュゥべえ「しばらくは問題なさそうだね、まあ」


一拍起き、言葉を繋げる


 「――もうすぐ、君たちとの契約も一段落するしね」

 




しばしの他愛無い話の後、少年が席を立ち、姉妹が残される


 あやせ「沙々にゃんとデートかぁ」


彼の座っていた所を眺めながら言葉を漏らす


 あやせ「いいなぁ~」

 ルカ「どちらのことでしょう?」

 あやせ「両方かな」


話題の主、優木沙々と姉妹の間には少なからず交流が存在していた


特別に具体的な理由はそこにはない


ただ、自らを取り巻く外界に対する屈折した嫌悪感という、漠然な共通点の下に同類であるという薄弱だが確かな繋がりを持っていた


 ルカ「あれで彼女も、案外と彼を動かすのが上手ですからね」

 あやせ「確かにそうかも」


でも、と言葉を切る

二つ目のケーキに載っていた苺を手に取り、クリームを舐めとってから


 あやせ「もうすぐ期限切れじゃない?」

 ルカ「ええ、恐らくは」


やっぱり、と言いもって苺を口に含み、咀嚼する


そこで話は一段落し、しばらく無言の食事が続いた


 





 あやせ「……いつも、半分ずっこだったよね」

 ルカ「ええ、本当に欲しいものは。 いつも」


妹の呟きに、姉はまるでその言葉が出るのをわかっていたかのように合わせる


 あやせ「上下かな? 左右かな?」

 ルカ「お任せしますよ」


半分ほど残ったケーキをフォークで刺し、丸々持ち上げる


 あやせ「いいなぁ、欲しいなぁ」


もう一人の座っていた席に目を向けながら、言った


 「――あの子」


―――
――

乙?
改行減らしてくれると嬉しい


       ††       ††


 火事でみんな死んじゃったけど、“双樹”って結構な家柄だったみたい

 放火か、失火か。 原因は未だわからないようですが


 逃げ遅れた人たちは動けないままゆっくり焼かれちゃって、すごい形相だったのよね
 焼けすぎちゃったから顔の判別も付かなくて、困ってるみたい

 逃げ果せたはずの残りも、全員が凍死してしまいました
 早く行方が見つかれば良いのですが


 残ったのは、背中合わせで産まれ出てきた

 忌子である私達だけ、ということです
           

       ††       ††
 



―――
――


  「モテモテじゃねぇか、ハーレムでも作る気かい?」


喫茶店から少し離れたところで、知った顔に呼び止められる


キュゥべえ「そういうわけではないけど、別にそれでも構わないよ。 ジュゥべえ」


白い髪、白い肌、無表情な自分と対照的な、黒い髪に褐色の肌、よく表情の変わる顔
ただ目の色だけが等しく紅い、唯一の肉親


ジュゥべえ「言ってくれるぜ、体一つで足りてんのか?」

キュゥべえ「足りているとは言い難いね、一つの体で行動するのはやはり非効率的だよ」

ジュゥべえ「誰にでも手を出すからだな、いつか刺されちまうぞ」

キュゥべえ「総当たり以外に手段はないし、こればっかりは仕方無いよ」

ジュゥべえ「長くかかりそうだな……で、手がかりは掴めそうなのかよ」

キュゥべえ「難しいところだね。 君が何か覚えていてくれれば良かったんだけど」


とはいえ、こちらも記憶がしっかりしてるわけではない
ただ、世界から感じる違和感だけを知っている

それは世界の方が変わってしまったのか、それともこちらが囚われただけなのか


ジュゥべえ「やっぱ兄ちゃんの記憶違いじゃねえのか?」

キュゥべえ「それはないはずだよ。 もしそうだとしても、記憶を違えた理由をはっきりさせる必要があるしね」

ジュゥべえ「ふーむ……けどよ、やっぱにわかには信じられねえぜ」


ニセモノの世界ってのはな、と言葉を続ける


キュゥべえ「……誰かが嘘をついている、それは間違いないよ」

 


やっと区切り
改行はさすがに増やしすぎたか……

きっと>>1の脳内では色々と設定があったり情景が広がったりしてるんだろうけど全く伝わってこない
ひたすら淡々と意味不明な台詞を並べてるだけにしか見えない

>>69
その辺はこれからいろいろとわかってくるんじゃないの?
とりあえず最後まで読んでみようぜ

最後まで読む気にならない

沙々にゃんのAAが見つからなかったので沙々にゃんに腹パンします


    ◉ ◉    ◉ ◉


有象無象を観測し、候補に干渉し、その二つのプロセスを経て、嘘吐きを見つけ出し、その願望に起因するであろうこの世界を制御するに至る
それが、当面の目的

とはいえ、やることは恐らく、変わっていない
彼女たちの願いを叶えていく、それだけだ

ただ、行動するのは自身だし、何より深く関わらないことには嘘吐きかどうかがわからない


そう思って行動しているし――この身体もそれに適した器なのだと、そう判断した


    ◉ ◉    ◉ ◉
 



―――
――



 「遅いですよ」


こちらを見つけて開口一番、優木沙々の言葉
座っていたベンチからぴょんと降り、呆れたような視線を寄越す


 キュゥべえ「約束の時刻ちょうどじゃないかい?」

 沙々「はぁ~……ダメですねェ、そんなんじゃ全然ダメですよ」


平均より頭一つほど下の、けして発育の良いとは言えない小さな体が大げさに肩を竦める


 沙々「いいですかぁ? こういう時はわたしより早くに来ておいて、下僕としてこのわたしに尽くす意思表示をはっきりとするべきなんですよ」

 キュゥべえ「君の僕になった覚えはないけど……それにしても早めの時刻を指定すればいい話じゃないか」

 沙々「アホですかあなたは。自発的に行動することが重要なんですよ?」

 キュゥべえ「わけがわからないよ」

 沙々「本当にダメですねぇ。ま、私は心が広いから許してあげますよ」

 キュゥべえ「……一応、感謝はしておくよ」

 沙々「くっふふ、それでいいんですよ」


では、と言葉をつなぎ、こちらの手を取る


 沙々「行きますよ、わたしの荷物持ちができることを光栄に思ってくださいねっ」

 キュゥべえ(やれやれ……)


 




優木沙々に連れられた先は、服屋や飲食店を始めとした、様々な業種の店が立ち並ぶショッピングモール

再生可能エネルギーの積極的な導入や、AR、ストアオートメーション、バリアフリーなどにおいて最新の技術が用いられており、近年における見滝原周辺の急速な発展のシンボルの一つでもある


 キュゥべえ「僕まで中に入る意味は無いと思うんだけど、選ぶのは君なんだし」


女性の、それも大人向けの服を扱う専門店に引っ張り込もうとする彼女に声をかける


 沙々「何言ってるんですか、選ぶのを手伝わせてあげるんですよ?」

 キュゥべえ「別にその必要は……」

 沙々「ほらほら~、これとかどうですかぁ?」

 キュゥべえ「……サイズが大きい、というか君の体型には合わないように見えるけどね」

 沙々「うっ……そっ、そんなことないですよぉ! 着てみればわかりますからぁ!」


ムキになって反論する沙々の声に、店員が一人やってきた
これ幸いと沙々が試着をしたいと告げるが、店員は困ったような笑みを浮かべながら沙々とこっちの顔に視線を彷徨わせる

買い物客ではなく、保護者からはぐれでもした兄妹に見えたのだろう


 「えっと……試着はどなたが……」

騒いでる子供の対処は、どうも苦手のようだ
 
 沙々「……もういいです」

 




 沙々「も~っ! 何なんですかあの態度は!」


沙々が小さな体を精一杯に使って不満を訴える
どこか小動物的なその言動も、彼女を幼く見せる一因と推測できるが、口には出さない


 キュゥべえ「あの店舗が想定してる客層から外れていたのだと思うよ。仕方ないさ」

 沙々「わたしだって中学生なんですけどねェ……」

 キュゥべえ「それでもだよ。ついでに、中学生になってまだ数ヶ月じゃないか」

 沙々「それはそうですけどぉ」

むぅー、と頬を膨らませる。いつものこととは言え、中々難しいものだ

 キュゥべえ「ほら、あの手の店舗の方が、君に合うんじゃないかい」

 沙々「ずいぶんと幼稚な店ですねェ……ま、いいでしょう」

 キュゥべえ(珍しく素直だな)

 沙々「あなたの趣味に合わせてあげますよ、ロリコンさん♪ くふふっ」

 キュゥべえ「その判断はおかしいよ。ただ僕は適切な」

 沙々「ささっ、行きますよ~」

 キュゥべえ「……はあ」

 



    ●●    ●●


人生という舞台において、自分はスポットライトを浴びるような存在などでは無く、ただの端役がせいぜい

優木沙々はそう思っているし、わざわざ光の下に歩み出ようという気も無い
その方が気楽だし、舞台の主役などは適当におだてて利用してやればいい程度としか考えてない

何より、端役にしか過ぎない自分にも、今はモノズキな付き人がいる


 (……何を考えてるのか、いまいち掴めませんけどね)


真意はどうあれ、こちらの願望に幾らかは応えてくれるし、負の感情をぶつけてくることもない

ひどく居心地の良い相手だと感じている
そしてその居心地の良さは、自分たちのようにともすれば舞台を追われてしまいそうなデキソコナイだからこそ提供され得たものであると思っていた


 (たまには労ってあげるのも、主人としての義務ですかねぇ、くふふ)
 
 「ーーあら、奇遇ね」


だから、彼に一人の女――スポットライトを占有するにふさわしいほどに麗しい――が自分より先に声を掛けるのを見て、彼女の心はひどくかき乱された

日常ではいつも感じていても、彼の庇護のもとでは感じないような劣等感や嫉妬などを、思い出してしまった

 





 「貴方でも、休日は買い物に出たりするのね。驚いたわ」


騒音の中にあっても、その声は聞く者の心を確実に捉える

声の主に目をやる。真珠が彩ったかのような銀の髪、全てを見通すかのようなエメラルドの視線
モデルでもやっているのかと思うほどのスタイルの良さ
すらりと伸びた手足に、豊満な双丘、それらがバランスよく配置された姿勢のいい長身

わざと体型のわかりにくい服装を選んでも、それらは隠し通せるものではなかった


 「君がここにいることの方が驚きじゃないかな、織莉子」


周りの人間たちも、無意識に彼女という存在を知覚する
天から贈り与えられたカリスマという才能のもと、その少女――美国織莉子は、人を魅きつけてやまない


 「あら、私だってショッピングは嫌いでは無いわ?」




一方で、彼女の話し相手であり、異常としか思えないほどに存在が曖昧で希薄な少年は、すぐに彼らの記憶から抜け落ちて行った


    ●●    ●●


メンヘラJCJSたちの面倒を見ながら犯人を見つけるだけのほのぼのSSだったんだ、寝よう

永遠に寝てろ

―完―

保守

続きを頼む、まってるから。

お断りします

つまんね

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