モバP「パズルリング」 (43)




―事務所―



加蓮「……」ペラ ←雑誌

まゆ「……」チクチク ←編み物

裕子「……」カチャカチャ ←知恵の輪

加蓮(さて……)

まゆ(どうしましょうかねぇ……)

裕子(さいきっくひらけゴマ!アバカム!)







SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1397655362



北条加蓮(16)
http://i.imgur.com/sSfXAQr.jpg

佐久間まゆ(16)
http://i.imgur.com/257XEZ1.jpg

堀裕子(16)
http://i.imgur.com/FkLvnWC.jpg






―――



加蓮(事務所に来たらまゆと裕子しかいなかった)

まゆ(事務所でPさんを待っていたら裕子さんと加蓮さんが来ました)

加蓮(裕子は今度一緒にCDデビューする同期だし、ほっといても勝手にサイキックを
   やってるから別にいいんだけど、問題はまゆなんだよね……)

まゆ(裕子さんは以前温泉のお仕事を一緒にやりましたし、気にしなくてもひとりで
   サイキックをしているからいいんですけど、問題は加蓮さんですねえ……)






加蓮(いや、別にまゆのこと嫌いじゃないよ?ただあんまり喋ったことないっていうか、
   接点がないんだよね。同じ歳だし事務所で会えばあいさつはするけど、向こうも
   アタシに話かけてこないし)

まゆ(加蓮さんはまゆと同じ歳ですが達観されているといいますか、いつも一歩退いた
   ところから冷めた目で他の子達を見ているんですよねえ。加蓮さんは何を考えて
   いるのか、まゆはわからないです)

加蓮(それにまゆって凛とあまり仲良くないし、凛と一緒のユニット組んでるアタシの
   こともそんなに好きじゃないんじゃないかな。奈緒はまゆとうまくやってるけど、
   アタシそんな器用なことできないし)

まゆ(それに凛さんと微妙な関係のまゆは、加蓮さんや奈緒さんにとって良い印象では
   ないでしょうねえ。奈緒さんはまゆに気を遣ってくれますが、加蓮さんはいつも
   他人事みたいな顔してますし)





加蓮(でもこのまま黙ってるのもカンジ悪いなあ……)

まゆ(でもかといって、この状況はよくないですねえ……)



加蓮・まゆ((気まずいなあ……))






裕子「さいきっく力技!フン!グヌヌーッ!」ギリギリ…

加蓮「……」

まゆ「……」

裕子「はぁ、はぁ…… おかしいな、昨日はこれで外れたのに……」





加蓮「裕子」

裕子「どうしましたか加蓮ちゃん?もしや加蓮ちゃんも超能力に興味が……」

加蓮「うるさい」ピシャリ

裕子「んな!? 」ギョッ!!

まゆ「さいきっく力技って、あなたいつも最後はそれじゃないですか。そろそろ微妙な
   リアクションを取るのに疲れてる年少組に気づいてあげてはどうですかぁ?」

裕子「まゆちゃんまで!? 」ギョッ!!





加蓮「だいたい知恵の輪がサイキックトレーニングになる意味がわからないんだけど。
   こんなのただのオモチャじゃん」ヒョイ

裕子「これはただの知恵の輪ではありません!外すと超能力が宿る特別な知恵の輪です!
   海外の通販番組で紹介されていたのを5万円で買いました!」エッヘン!!

加蓮「バカじゃないの?どう考えても騙されてるでしょ」カチャカチャ

裕子「そう言うならその知恵の輪を外してみてくださいよ!アメリカの超能力職人が
   ひとつひとつ念力を込めて作った特製品ですから簡単に外せないはず……」

加蓮「はい。外れたよ」カチャン

裕子「」





まゆ「速いですねえ加蓮さん。1分もたってないじゃないですか」マジマジ

加蓮「昔ハマってた時期があってさ。これ結構簡単なやつだよ。もう一回つないだから
   まゆもやってみたら?」サッ

まゆ「ええと…… ここをこうして…… あ、外れました」カチャン

裕子「」





加蓮「まゆの方こそ速いじゃん。こういうの得意なの?」

まゆ「加蓮さんが外しているのを近くで見てましたし、それに複雑な編み物に比べれば
   これくらい手元を見なくても出来ますよぉ」ニッコリ

加蓮「器用なんだね。で、どう?超能力に目覚めた?」

まゆ「特に変わりませんねえ。その様子を見ると加蓮さんもまゆと同じみたいですね。
   やはり騙されたんじゃありませんか裕子さん?」





裕子「ふふ…… ふふふふふ……」

加蓮「どしたの?5万円ムダにしたのがそんなにショックだったの?」

裕子「ムダじゃありません!それに誰が知恵の輪がひとつって言いましたか!? 」ドサッ!!

加蓮「なにこのバッグ。すっごく重いんだけど何が入ってるの?」ズッシリ

裕子「この知恵の輪は50個セットなんです!これを全部外して超能力に目覚めるんです!
   世の中そんなに甘くありませんよ!」ビシッ!!





まゆ「通販グッズに頼ろうとした裕子さんに言われたくありませんねえ。こんなに沢山の
   知恵の輪、まゆ初めて見ましたよ」ジャラジャラ

加蓮「これだけの知恵の輪いつも持ち歩いてたら筋肉はつきそうだね。もしかしてそれで
   超能力パワーアップってオチじゃないよね?」ジャラジャラ

裕子「たまたままぐれでひとつ外せたくらいでインチキ扱いされては困ります!いくら
   加蓮さんでもこんなにあれば手も足も出ないでしょう!」フフン♪
   
加蓮「はい、2つ外せたよ。これであと47個だね」カチャン、カチャン

裕子「え……?ま、まさか全部外すつもりですか……?」オソルオソル

まゆ(あら……?)






加蓮「雑誌読むのも飽きたし、あんたのサイキックトレーニングに付き合ってあげるよ。
   何十個外そうがムダだと思うけどね」カチャカチャ

裕子「む、無理しなくてもいいんですよ加蓮ちゃん、これだけの数の知恵の輪、一週間
   かかっても外れませんよ……」オロオロ

加蓮「1個1分ペースで外せば1時間もかからないでしょ。それよりも外した知恵の輪
   つなげといて。どんどん外していくからね」カチャン

裕子「あわわ…… 外し方がわからないのにつなげ方なんて……」アタフタ

まゆ「貸してください裕子さん。まゆがつなげてあげますから」スッ

加蓮(ん?)





まゆ「Pさんが戻って来られるまでならお手伝いしますよ。頑張りましょうね♪」ニッコリ

加蓮「じゃあまゆにお願いしようかな。飽きたらいつでもやめてもいいからね」フフッ

裕子「ふ、ふたりとも、サイキックはロマンですから『あればいいなあ』って憧れも
   魅力のひとつですからね……?」ビクビク







***



加蓮「はい10個目。まゆお願い」サッ

まゆ「わかりましたぁ」パシ

加蓮「……」カチャカチャ

まゆ「……」カチャカチャ








加蓮「……意外だったよ。まゆが付き合ってくれるなんて」

まゆ「そうですかぁ?まゆはこういうの好きですよぉ」

加蓮「まゆはPさんに関係あることしか興味ないと思ってた」

まゆ「うふふ、もちろんそれはそうですが、まゆも四六時中Pさんの事だけを考えている
   わけではありません。加蓮さんと同じ16歳の女子高生ですから、おいしいお菓子や
   おしゃれなファッションも興味ありますよ」ニッコリ




加蓮「そういえばそうだったよね。まゆって絶対に学校の制服で事務所に来ないから、
   アタシと同じ女子高生だって時々忘れちゃうよ」

まゆ「モデル時代の事務所の習慣で、ファッションのTPOにはいつも気を遣うように
   教え込まれましたから。制服は学校で着るものであって、仕事場で着るものでは
   ありません。まゆの考えを押しつけるつもりはありませんけどね」

加蓮「しっかりしてるんだね。アタシはそんなの気にしなかったことなかったなあ。
   学校終わったら寮によらずにそのまま事務所に来ちゃうし」



まゆ「加蓮さんの方こそ、そんなに知恵の輪が好きなんですかぁ?いつもの加蓮さんなら
   裕子さんのサイキックトレーニングに付き合ったりしないと思いますけど」クス

加蓮「別に好きってワケじゃないけど、こうしていると何となく安心するんだよね。
   アタシってこういうので遊んでる方がリアル感じるからさ」

まゆ「リアル、ですかぁ?」ピクッ





加蓮「うん。小さい頃から病院のベッドの上でさ、知恵の輪とかルービックキューブとか
   ひとりで遊べるものは一通りやり込んだよ。そうやってずっと病院で生活してきた
   からアイドルやっている今の自分があまり実感なくて、今も全部夢じゃないかって
   時々思うんだよね」カチャン

まゆ「……」

加蓮「あ、ごめんねこんな暗い話しちゃって。もちろんアイドルの仕事は楽しんでるよ。
   今度ソロでCD出すことになって、ようやくアイドルの自分もリアルなんだって
   受け入れられるようになってきた感じ。アイドルになって結構たつのにね」フフッ





まゆ「いいじゃないですか。まゆも自分がアイドルだって時々信じられなくなりますよ。
   後先考えずにPさんを追いかけて東京まで来てアイドルになりましたから、1人に
   なると自分はまだ仙台のモデルなんじゃないかって思ったりします」

加蓮「へえ、まゆでもそんな風に思うんだ。なんか意外」カチャン

まゆ「今も東京の街はあまり詳しくありませんねえ。ハンズには編み物の道具を買いに
   よく行きますけど、まゆが知ってる場所はそれくらいでしょうか。もっと色々と
   見て回りたいんですけどねえ」カチャカチャ





加蓮「……今度案内してあげよっか?アタシも東京の隅から隅まで知ってるワケじゃ
   ないけど、一応ホームだし」

まゆ「いいんですかぁ?」加蓮「ただし」

加蓮「ウチのリーダーには内緒だよ♪」ニヤリ

まゆ「それはもちろん♪」ニッコリ



 アハハ… ウフフ…



裕子「ぐすっ、さいきっく大弱り……」カチャカチャ ←1個目








―――



加蓮「はい30個目。まゆ大丈夫?」サッ

まゆ「問題ありませんよぉ。集中してる時は10時間くらい編み物してますし」パシ

加蓮「うへ、アタシには無理だわ。そんなに集中力もたないよ」カチャカチャ

まゆ「でも加蓮さん、知恵の輪始めてそろそろ30分ですけどペースが落ちませんねえ。
   集中出来てるじゃないですか」カチャリ






加蓮「ウソ、もう30分たったの?ちょっとペース上げるよ」カチャカチャ

まゆ「まゆも頑張らないといけませんねえ」カチャカチャ

加蓮「……」カチャカチャ

まゆ「……」カチャカチャ





加蓮「ねぇまゆ」

まゆ「なんですかぁ?」

加蓮「ウチのリーダーのことだけどさ」

まゆ「相手がPさんじゃなかったら、まゆも応援してあげたいんですけどねえ」

加蓮「まだ何も言ってないんだけど」

まゆ「まゆの早とちりでしたかぁ?てっきりそういう話かと思ったんですけど」

加蓮「まあ、全部間違いってワケでもないけどさ」





まゆ「加蓮さんはどうなんですか?」カチャリ

加蓮「アタシ?」カチャカチャ

まゆ「まゆは正直、加蓮さんが一番要注意だと思っているんですがねえ。リーダーさんは
   まだまだアプローチに慣れていないし、奈緒さんは照れがあって素直になれない。
   ですが加蓮さんの動きだけは読めないんですよねえ」ジロリ

加蓮「そう?ただのアイドルとプロデューサーに見えない?」シレッ






まゆ「Pさんは加蓮さんに優しいですからねえ。加蓮さんが少し体調を崩されただけでも
   大騒ぎしますし、よく加蓮さんのご実家にも行ってるみたいですし。もうとっくに
   家族ぐるみのおつきあいをされているんじゃないですか?」ジト



加蓮「そんなんじゃないって。プロデューサーはアタシのことを手のかかる妹ぐらいに
   しか見てないよ。顔を見たら体調のことを聞くし、くしゃみひとつでトイレまで
   ついて来ようとするし、パパとアタシのアルバム見て一緒に泣くし……」ムスッ







まゆ「大事にされていますねえ。加蓮さんはPさんの事をどう思ってるんですかぁ?」



加蓮「ん?フツーに好きだけど?」サラリ



まゆ「……そこまではっきり言われると、まゆもどう返していいのかわからないです」






加蓮「でも今はアイドルの自分を大事にしたいんだ。アタシは自分が出来る事がそれほど
   多くないのを知ってるからね。女子高生をやって、アイドルをやって、休みの日は
   友達と遊んで。今はそれでいっぱいいっぱいだよ」

まゆ「アイドルになると普通の子はだいたい自信過剰になって、勘違いをした挙句に失敗
   するのですが。かといって卑屈になっているわけでもないし、加蓮さんはどこまで
   いっても強くて冷静ですねえ」

加蓮「アタシに言わせてもらえば、まゆやウチのリーダーがどうしてそこまでリスクの
   高い事を平気でやれるのかわからないよ。同じユニット組んでるアタシと奈緒は
   毎回ハラハラしてるんだけど」ジロ

まゆ「ちなみに先ほど、加蓮さんはまゆに何を言おうとしていたんですかあ?」





加蓮「あんまりウチのリーダーを刺激しないでくれるって言おうと思ってたんだけど、
   やっぱいいや。アタシもPさんのこと好きだし、まゆにどうこう言えないし」

まゆ「すみませんねえ、こればかりはまゆも譲るわけにはいけませんので。加蓮さんも
   出来ればこのまま大人しくしていて欲しいのですが……」

加蓮「どのみち今アタシがどう動いても、Pさんはアタシを恋愛対象として見ないから
   ダメだよ。ソロで結果を出して、トップアイドルになって、CGプロの顔だって
   胸を張って言えるくらいになってからかな」ニヤリ





まゆ「やはりあの3人の中で一番の強敵はあなたでしたか。今度CDデビューしますし、
   これを機に一気に危険な存在になる可能性がありますねえ……」ブツブツ

加蓮「さぁ、どうかな?これで40個目……と。ラスト10個だよ」カチャン



裕子「はっ!? アイドルとしては、あえて外せないフリをして場を盛り上がらせるのも
   アリなのでは…… さいきっく演技!オーノー!」カチャカチャ ←1 個目






***



裕子「こうしてこうして…… やったぁっ!外れたぁっ!」カチャン

加蓮「おめでと裕子。こっちもちょうど終わったみたいだよ」

まゆ「はい、50個目です。お待たせしました」カチャリ

裕子「え!? もう50個外しちゃったんですか!? 」ギョッ!!






加蓮「ジャスト1時間だったよ。まゆも付き合ってくれてありがとね」

まゆ「いえ、まゆもいい暇つぶしになりましたよ。ところで加蓮さん、ネイルが少し
   剥がれてませんかぁ?」

加蓮「ホントだ。あーあサイアク、昨日塗ったばかりだったのに。もう知恵の輪なんて
   二度とやんない」

裕子「そんなっ!? これから私に教えてくれるんじゃないですか!? 」





加蓮「ヤダよめんどくさい。まゆに教えてもらったら?」

まゆ「まゆもしばらく遠慮したいですねえ。さすがに飽きました」

裕子「ひどいっ!? 」







 ガチャ



奈緒「おーっす、お待たせ加蓮」スタスタ

凛「何それ?知恵の輪やってたの?」スタスタ

加蓮「あ、来た来た。それじゃアタシ行くから。まゆ、それじゃ今度ね」スクッ

まゆ「はい。楽しみにしてますよぉ♪」ニッコリ

奈緒「……」

凛「……」






神谷奈緒(17)
http://i.imgur.com/ewBPGnM.jpg

渋谷凛(15)
http://i.imgur.com/3kyqnop.jpg







加蓮「行こっか2人とも。今日は第三スタジオで合同レッスンだったよね」スタスタ

奈緒「なあ、まゆと何の話してたんだよ。まさか決闘とかしないよな……?」ヒソヒソ

凛「まゆちっちゃいけど強いよ?加勢しようか……?」ヒソヒソ

加蓮「なんでもないよ。それより凛の方こそしっかりしてね。アタシと奈緒もこれから
   ソロの活動が多くなるし、いつまでもフォロー出来ないよ」クス







 ワイワイ キャイキャイ



まゆ「うふふ、 凛さんには頼りになるお姉さんがいてうらやましいですねえ。敵に回すと
   厄介ですけど、味方になればあれほど心強い方はいません。裕子さんのおかげで
   それをはっきり知る事が出来ましたよ」チラ

裕子「さいきっく力技!フンガー!ヌン!」ギリギリ…

まゆ「はぁ…… もう少し頑張りましょうよ。いくら引っ張っても外れませんからね。
   まゆと加蓮さんをつなぐより簡単だと思いますよ」ヤレヤレ



おわり






 ここまで。何となく16歳が3人揃ったので全員出してみようかなと思ったのですが、
数が多すぎてやめました(19人)。Paは3人しかいないんですけどね。今回は文字通り
加蓮とまゆのつなぎ役になってもらったユッコですが、良いキャラなので今度はもっと
メインで書きたいなあ。加蓮もユッコもCDデビューおめでとう!では



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