勇者「見守る愛もある…」(840)



王「では頼んだぞ勇者よ」

勇者「はっ。無事に魔王を倒した暁には、例の件を頼みます」

王「わかっておる。お前の弟と娘の結婚を認めよう」

勇者「ありがたき、お言葉……この勇者、ただいまを持って出発します!!」




酒場


勇者「すまない。共に旅をしてくれる者を探しているのだが」

店主「ちょい待ち……あー、っと。武道家、戦士、商人、ちょうど三人居るね、資料見るかい?」

勇者「……」

勇者「それで構わない。明日には出発したいのだが、それまでに集まるか?」


店主「二階の待機スペースに居るから、今すぐにでも呼べるけど……明日で良いの?」

勇者「であれば表で待っていよう。すぐに呼んでくれ。契約は私が直接行う」

店主「了解」



15分後。



女武道家「へぇ~っ、アンタがボク達を雇おうとしてる奴?」

女戦士「やめとけやめとけ、オレ達は相当な気分屋だぜ? まっ、どうしてもってんなら、1000000000ゴールドで考えてやるよ」

女商人「戦士……貴女の言葉は現実味が無さすぎる。300000000ゴールドにして置くべき」


勇者「……」

勇者「武器を構えなさい」



武道家「……はっ?」

勇者「私は勇者。これから天を握ろうとする魔王の野望を打ち砕きに行く」

戦士「勇者!? お前みたいな痩せこけた奴がか?」

勇者「旅の途中途中で得た宝は全てお前たちにやろう。それで納得できたら仲間になって欲しい」

商人「納得できなければ?」

勇者「3対1だ……それで私が勝ったなら、この旅に着いて来て貰う」



武道家「ボク達が勝ったら?」


勇者「支度金として王からそれなりの額を受け取っている。それをお前達にやろう。そして着いて来いとも言わん」


戦士「カッ、おもしれぇ!! やってやるよっ。商人も良いよな」

商人「……問題ない」



勇者「さぁ、掛かって来なさい」スッ

戦士「ん? 腰の剣は飾りか?」e鉄の剣

勇者「抜く必要が有ると判断したら抜かせて貰おう」

武道家「開始の合図は?」e鉄の爪

勇者「お好きにどうぞ」

商人「こっちは全員で戦う」e悪のそろばん

勇者「お好きにどうぞ」



戦士「大怪我じゃ済まないかも知れないが……良いんだな?」ジャキ


勇者「お好きにどうぞ」

勇者「と、言うかな。私が『その気』なら、既に三度は殺しているぞ?」


戦士「チッ、行くぞ!! オレ達の超絶連携技を喰らえッ!!」



戦士「泰山天狼剣!!」

武道家「真狼牙風々拳!!」

商人「絶・天狼抜刀牙!!」


勇者「……」

勇者「激流を制するは静水」スゥゥッ


商人「っ!?」

武道家「コイツ、ボク達のウルフコンビネーションを……」

戦士「避けやがった」


バキン、バキン、バキン。


勇者「擦れ違い様にお前達の武器を砕いた。此にて決着としよう」



勇者「では、私は旅に出るとしよう」

戦士「お、おい! オレ達はどうすんだよ!?」

勇者「戦いの他、ダンジョンのトラップ。一人では厳しい場面も有ると考えて仲間を集めようとしたが……」

商人「……なに?」

勇者「まさか今の者達がこれ程に弱いとは思わなかった」

武道家「はぁっ!?」

勇者「だから着いて来なくて構わない。もし着いて来たいと言うのなら、礼儀を弁えた上、師匠と弟子の関係を取る」



戦士「弟子になんかなるわけねぇーだろ!!」

武道家「ボク達を舐めんな!!」

商人「貴方は一人で旅をするべき……」


勇者「そうか。そうしよう」



 勇者、旅立ちの街を出発


 最初の目的地、北の街サザンクロスへ。



   森のフィールド


虎「グオオオオッ!!」


 野生の虎があらわれた。


勇者「むっ?」


虎「ガアアアアアッ!!」ガバァッ


勇者「……」

勇者「……」クワッ

虎「!!?」ピタッ

勇者「よしよし」ナデナデ

虎「くぅんくぅ~ん」ゴロゴロ


勇者(魔物と言えど……無駄な殺生は避けねば)



勇者(それと)チラッ


戦士「……」

武道家「……」

商人「……」


勇者(着いて来てるな……さて、どうしたものか)




 サザンクロス キングの根城



兵士「キング様、勇者と名乗る者がこの入街許可を求めておりますが、いかがなさいましょう?」


キング「なに、勇者? フッ……アイツか。終に使い走りまで落ちたようだな。良かろう、許可を出せ」


兵士「はっ、では早速向かいます」ダッ


キング「くくっ、久し振りだな……あの雑魚がどこまで成長したか見てやろう」



 サザンクロス 入り口検問所


兵士「キング様から許可が出たぞ」

勇者「ならば、そのキング様に挨拶へ行かねばなるまい」

勇者「……それと、もし女の三人組が後から現れたら通してくれ。私の仲間だ」


兵士「女の三人組だな? わかった。さっさと行け」

北斗の拳?

>>19
トキってカッコいいよな



応接間


キング「久し振りだな……今は勇者と呼んだ方が良いかな?」

勇者「……」

勇者「この街には盗賊が頻繁に現れ、人々から強奪を繰り返していると聞いた」

キング「そんな事か? だからこうして外壁を高い壁で覆い、唯一の入り口には検問を設けているだろう?」



勇者「それにしては、随分と被害が頻繁に出ているようだが?」

キング「……キサマ、何が言いたい!?」


勇者「まさかと思うがキングよ、その盗賊……お前が指揮しているのではあるまいな?」

キング「ふっ、バカげた事を。盗賊団のアジトは掴んでいる。近々向かうつもりでいたが、せっかくだ……勇者に頼むとしよう」



キング「まさか、イヤとは言わぬよなぁ、勇者?」

勇者「……良いだろう。盗賊は私が何とかしよう」

キング「ほぅ、断るかと思ったが……まぁそうだよなぁ? 昔から俺に一度も勝てた試しがないキサマでは、逆らえんよなぁっ」

勇者「……」



勇者「……」

キング「アジトの在処は検問所の兵士が詳しく知っている。聞いて向かうがいい」


勇者「承知した。勇者として、この街を救うとしよう」ザッ


キング「……」

キング「行ったか……」パチン



忍兵士「はっ、ここに!!」シュタ

キング「先にアジトへ出向き、俺からの伝令を伝えろ」


忍兵士「して、内容は?」

キング「今から勇者がそちらへ向かう。発見しだい……殺せ」

忍兵士「御意!!」バッ


キング「変に勘ぐらなければ生かして置いたものを……バカな奴だ」



 盗賊のアジトへ 山間部の峠



勇者「あれが脇道の宿屋……と言う事は、話し通りならこの近くらしいが」

勇者「だが陽も沈んで来た。今日はここに泊まるとしよう」


宿の中へ


勇者「すまない、宿泊希望だ。部屋は空いているだろうか?」

ババア「フェッフェッフェッ、一部屋なら空いとるよ」ゴゴゴゴゴ



ババア「四人一部屋でいいんだね?」

勇者「……はぁぁっ。それで構わない」

勇者「いつまでも隠れてないで出て来なさい」


ガサガサ


戦士「流石は勇者だな」

武道家「ボク達の尾行に気付くなんて」

商人「男と相部屋でも文句ない。むしろ私達と一緒に寝れる運を凄いと思うべき」



  一時間後 宿の一室


勇者「つまり、お前達は私の弟子として着いて来ると言うのだな?」

商人「そう」コクリ

勇者「では弟子としての条件を述べるとしよう」

戦士「条件だぁ?」



勇者「まず一つ、私の事は勇者では無く、『師』または『師匠』と呼べ」

勇者「私とて未だ若輩者の身だが、そこの関係を曖昧にしては、お前達は何も私から覚えようとしないし、教えを乞おうともしない……有り体に言えば成長しない」


戦士「……」チラッ

武道家「……」コクッ

商人「……」コクッ

戦士「ああ、分かったよ。これからはアンタの事を、師匠……そう呼ぼう」



勇者「よし。ではもう一つ。これからの旅では私が絶対だ。どんなに理不尽に思えようとも、必ず私の指示に従って貰う」


戦士「……」チラッ

武道家「……」コクッ

商人「……」コクッ

戦士「それもオッケーだ。アンタの弟子で居る間は、アンタ……師匠の指示には従うよ。これで良いかい?」



勇者「そうか……」


勇者「それなら私も、弟子で在るお前たちを命懸けで守る事を誓おう」ニコリ


戦士「なっ!?」カァァッ

武道家「よ、よくそんな恥ずかしっ、こと、い、言えるよねっ」カァァッ

商人「よろしく」



 トン、トン。


勇者「ん?」

ババア「フェッフェッフェッ、夕食をお持ちしました」

勇者「ああ、入ってください」


ババア「しつれい、いたします」ゴゴゴゴゴ



戦士「にしても、随分と背の高いばあさんだなぁ」

武道家「てか、ガタイも良いよね?」

商人「健康の秘訣を聞くべき」


ババア「フェッ、フェッ、本日は珍しい酒が入りましたので、食前酒にお酌しますじゃ」トクトクトク

勇者「……」



武道家「あの~、ボク達は未成年だから、師匠だけ飲んでください」

ババア「あら、そうなのかい? それならお兄さん……どうぞ」


勇者「……」

勇者「ご婦人。その酒、まずは貴女が飲んでみてくれないかな?」



ババア「フェッ!? お客様の酒を飲む訳にはいきませぬよ」

戦士「そうだぜ師匠? 乾杯仲間が欲しいなら、オレらがジュースでしてやるって」

商人「ビールだめなんで、オレンジジュースください」


勇者「……」

勇者「ご婦人。私はお願いしているのでは無い。命令しているのだ!!」キッ



勇者「それとも……その酒を、飲めない理由でも有るのかな?」


ババア「……フッ」

ババア「よくぞ俺の変装、そして毒酒を見破った!!」バッ


勇者「お前のような、でかいババアが居るか……」


刺客「俺こそが鉞殺界平等術の使い手よぉっ!! この二本の草刈り鎌から逃れるすべなどないのだぁ!!」



戦士「鉞殺界平等術だって!?」

武道家「鉞殺界平等術と言えば、無慈悲として有名な暗殺拳……どうしてこんな所に」


商人「ここは四人で一斉に飛び掛かるべき」


勇者「……」

勇者「お前たちは下がっていなさい。私が一人で戦おう」スッ


武道家「でも師匠!?」

勇者「見る事もまた戦いだ」


勇者「暗殺者よ、着いて来るがいい」バッ

刺客「窓から外に飛び降りやがった!! にがさねぇぜ勇者!!」バッ



 宿の庭園 



勇者「ここならば」

刺客「広い場所なら、俺の技を避けれると思ったかぁ~? あぁん?」


勇者「来なさい」スッ

刺客「こいつっ、スマシやがってぇっ!! 死ねぇぇぇっ!! 鉞殺界平等術究極最終奥義、二刃擲刺刺死嚥翔殺ッ!!!」



商人「ッ!!?」

戦士「草刈り鎌を高速で、しかもブーメランのように投擲して扱っている!!?」


勇者「……」

勇者「激流に逆らえば呑み込まれる。むしろ激流に身を任せ同化するのだ」


武道家「それでも師匠は避けないっ、引かない!? 逆に鎌へ、刺客の方へ近付いているぅっ!!?」




 ここで、戦士、武道家、商人は信じられないものを見た。


 ジョジョが飛来する凶器をすり抜けたのである。それもまるで朝食のクロワッサンにコーヒーを合わせるがの如く当然にっ!!


 これには流石の刺客も驚きを隠せない。物体が物体を素通りするなど在ってはならない事なのだっ。



ジョジョ風のナレーションを書こうとしたらジョジョと書いてたぜ……



勇者「発ッ」

刺客「ぐはっ!? まさか、戻って来る鎌までも避けるとは」ズザァ

刺客「だが、今ので完全に俺を怒らせたようだな? さっきのが最速だと思っているのだろう? 違うねっ!!」

刺客「更に五倍まで速度を上げられるのだっ、今度こそ死ねぃ勇者!!」


戦士「これは、客観的に見れるから気付けたが……」

武道家「師匠の動きは、何て柔らかいんだっ」



勇者「……」

勇者「忠告しておこう、先ほどの技はもう使わない方がいい」



刺客「くくっ、怖じけずいたのかぁ!?」ジャキ


勇者「聞かぬか……さらばだ」スタスタ


刺客「待てっ、どこに行きやがるっ」

刺客「死ねぇぇぇっ!! 鉞殺界平等術究極最終奥義、二刃擲刺刺死嚥翔殺ッ!!!」ブンブン



商人「鎌が……」


刺客「あるぇっ? 何で鎌が検討違いの方向に飛んで行くんだぁ?」

キュルキュル

刺客「戻って、来る、鎌を、キャッチ、しないと、キャッチ、キャッ……」ザシュッ

刺客「ぐひゃあああああ!!」


勇者「忠告はしたが。私の攻撃で、感覚が狂っていた事に気付かなかったようだな……」



勇者「さて、明日は早い」

戦士「……って、ここで、さっきの部屋で寝るつもりか師匠!?」

勇者「そうだ。まぁこの宿には他客の気配が無いから誰も泊まっていないだろう。それぞれ違う部屋を使うといい」

商人「師匠……私と言う情報体は、改めて貴方を尊敬に値する人物だと決定した」

勇者「……こちらこそ」

勇者「明日から、よろしく頼む」ニコッ





  翌日 宿の一室


チュンチュン


勇者「……」ムクッ

勇者「それぞれ別室にした筈だが……」

戦士「くー、くー」

武道家「すぅっ、すぅっ」

商人「くんか、くんか」



勇者「ほら、起きろ。今から戻るぞ」

武道家「うにゅ……おはよう、ししょー」

戦士「ふあぁ~っ、戻るってどこにだ?」

商人「……んっ、略さずに、んん~~っ、しっかり、と……教えるべき」コクリコクリ



勇者「サザンクロスへ、キングの根城へ戻ると言ったのだ」

商人「ボケるには早い師匠。まだ盗賊は倒してない」

勇者「……」

勇者「その必要は無くなった。先に表で待っている。お前たちは二十分で支度しなさい」



 サザンクロス キングの根城




キング「くくっ、距離を考えれば、そろそろ勇者の死んでいる頃か……建前上の手紙でも書かねばなるまいな」


バン!!


キング「ッ!?」

キング「誰だッ!!? 応接間と言えど、ノックをしろと教えてあるだろうっ」



勇者「……」

勇者「キングよ、ただいま戻った」

キング「勇者っ!? だぁ~とぉ!?」

キング「よくぞ使命も果たせずにおめおめと戻って来れたなっ!!」



勇者「なぜ私が使命を果たしてないと分かる?」


キング「なっ……そ、それはっ、時間だ!! こんなに早く帰って来れる筈がない!!」

勇者「勇者の事が信じられないか? ふっ、それはそうとキングよ……昨日ここで私を盗み見ていた者の気配は感じぬが、今日は休みか?」

キング「キサマ、まさかっ!?」

勇者「どうやら単独行動だったようだが……変装してまで私の命を狙って来た理由を聞きたいなぁ、キング!!」スッ



キング「……」

キング「くっ、ふっ……」

キング「ふははははははははっ」


キング「仕方ない、俺が直々に相手をしてやるぞ勇者よ」スッ

勇者「やはりお前が盗賊団の親玉だったか」



キング「キサマが知る必要はない……あの頃のように跪かせてやるぞ、あの頃のようになっ!!」

勇者「……」


─────────────


    十五年前


幼勇者「……」



幼キング「もう姫に近付くのは止めろっ!!」バキッバキッ

幼弟「ぐぅわっ」ドサッ


幼勇者(またやられている……助けないと)ザッ


幼姫「何をやってるのよ!! だいじょうぶ幼弟?」タッタッタッ

幼弟「うん……」



幼勇者「もうやめるんだっ」

幼キング「ああ? お前も弱いクセにいちいち出て来てムカつくをだよっ」ドカッバキッ

幼勇者「ううっ」ドサッ

幼弟「にいさん……」

幼姫「もう我慢できませんっ、父上に頼んで、貴方をこの街から追放しますっ」

幼「なにっ!? 幼姫、俺はお前が好きなだけなんだっ、弱っちぃコイツらより、俺を好きになれ幼姫!!」



幼姫「悲しい人……例え貴方が国の王になろうとも、私は貴方を好きになりません」

幼キング「ぐうっ、コイツらか……コイツらが居るからぁっ!!」ドゴッバキッ

幼弟「うわぁっ!?」

幼勇者「くっ……」

幼姫「やめてぇっ、幼弟をこれ以上イジメないでっ」



─────────────


勇者「……」

勇者(同じ女性(ひと)を愛し、共に散ったキングよ……同情はするが、お前は道を誤った!!)


勇者「私は、あの頃の私では無い。掛かって来るがいい……いや、掛かって来いっ、キング!!」ザッ



戦士「ししょ~っ!! 城の中に居る兵士はみんな眠らせたぜ」ダダッ

武道家「って言うか、兵士は殆どいなかったからすぐに終わったけどね」

商人「らくちんぽ ん……」


勇者「ふっ……盗賊のアジトに、兵士を割き過ぎたようだな」

キング「チッ、まぁいい。この俺をお前らの国のハリボテ王と一緒にせん事だなっ、行くぞっ!!」バッ



キング「ちぇああああああ!!」キャオラ

勇者「むっ!?」スゥッ


戦士「あのキング、なんて鋭い手刀突きの連打だ……」

武道家「でも、師匠もそれを紙一重で避け続けてるっ」


キング「死ねぇい、勇者ぁぁぁぁっ!!!」ズダダダダダッ



勇者「……」

勇者「ふんっ!!」ガシッ

キング「なんだとっ!? くっ、あの頃の勇者では無いなっ!!?」


商人「師匠がキングの突きを見切って手首を掴んだ」

戦士「勝負ありだな」



勇者「勝機」バッ

キング「こっ、この俺がぁっ!!」グラァ


勇者「激烈双弾八卦掌!!」ドゴォォン


キング「ぐはぁっ!?」ドサッ


武道家「師匠の攻撃が……」

商人「通った」



勇者「命までは取らん……」


キング「ぐっ、くくっ、俺に生き恥を晒せと言うのか?」ヨロヨロ


勇者「そうでは無い。この国の民に謝罪するのだ」

勇者「お前の行った事は悪だが、これ程の街を作り上げた手腕は素晴らしい。もう一度やり直せ……キング」



 冷めたハートじゃ 愛せやしない

 待ち続けても 夜明けは来ない


キング「姫……お前の愛が欲しかった」


 一人立つ silent fighter

 暗闇にゆれる炎の中で 夢を求めて


キング「は、ははっ。お前の思う通りにはいかん!! さらばだっ、勇者ぁぁぁぁっ!!!」ザシュゥゥッ



キング「フッ……」ドサァッ


 do survive! 渇いた心が

 do survive! 求めて泣いてる


武道家「ッ!?」

戦士「手刀で自分の首を切りやがった!?」


 do survive! 明日さえ見えずに


勇者「姫への愛、このサザンクロスでしかと見届けた……」


 終わることのない 旅路の果てで



戦士「なぁ師匠、これからどうすんだ?」

勇者「この国はキングの恐怖政治……兵士は皆、不本意ながら盗賊紛いな事をしていたのだ。まずは真実を知らせねば」

勇者「そして、キングの墓を建てる」

武道家「こんな奴の墓をですか?」


勇者「同じ……女を愛した男だからだ」



商人「……」

商人「っ?」タタタッ

商人「あっ……戦士、武道家、このテラスから街を見下ろして」

戦士「ん、なんだよ?」

武道家「なぁに商人?」タタッ


勇者「……」



戦士「なっ、これはっ!?」

武道家「街の建物の配置が、上から見下ろすと姫の名前になってる!?」

勇者(キング……)

勇者(この街を姫へ贈りたかったのだな……)




      数日後


 サザンクロス キングの根城



,



  街の中央広場にて演説


新キング「前キングはその悪行ゆえ、勇者様に討たれた……しかし立てよ国民、これは終わりなのか? 否、始まりなのであるっ!!」


国民達「おーーーっ!!」



武道家「……今度のは、しっかりとした王みたいですね師匠?」

勇者「そうだと、願いたいな」

戦士「理由は教えないのか? 師匠なら、なんでキングが盗賊紛いな事をさせてたのか知ってるんだろ?」

勇者「……」

勇者「許せ。これは墓場まで持って行く」



勇者「さぁ、出発だ」スッ

商人「次はどこ?」

勇者「東へ向かう。トロルとオーガの混合生物が支配し、人々を奴隷のように扱っている街が在るらしい。そこを解放する」

商人「トロル、オーガ……鬼。データベース照合。『鬼哭街(きこくがい) カサンドラ』、了解」




 キングの根城サザンクロス解放


 鬼哭街カサンドラへ


,




  森のフィールド ムーの大森林


武道家「ふぅっ、ふぅっ」

戦士「なんだよこの森……歩いても歩いてもモンスターばっかで抜け出せねぇぜ」

商人「お陰で私達のレベルは上がってる」

戦士「まぁ、戦ってるのは殆ど師匠一人だけどな」



勇者「……そろそろか」

勇者「次はお前達だけで戦ってみなさい」

戦士「えっ?」


ガサガサッ


フシギソウ「ソヴゥゥゥゥゥッ!!」

アダマン「ピギィィ!!」


野生のフシギソウがあらわれた
野生のアダマンタイマイがあらわれた


戦士「よっしゃ、やってや……」


?「危ないっ、近接真空魔法!! シャオ!!」バッ

スパンスパン

フシギソウ「」ボトボト

アダマン「」ボトボト


勇者「!?」

武道家「敵が……」

商人「悲鳴を上げる間も無く細切れになった」



?「大丈夫か?」ニコリ

戦士「あ、ああ……」


?「……」

僧侶「俺は僧侶、魔物に教われてると思い助けに入ってしまったが……」チラッ


勇者「……」

僧侶「そっちの奴を見るに、余計な事をしてしまったようだな」


勇者「いや、礼を言おう。貴方は一人旅かな?」

僧侶「……」

僧侶「僧侶、と言っても派閥が有ってな。そして大きく六つの派閥に別れている」

僧侶「魔王が現れた時、それぞれのトップが会合し、『派閥の垣根を越え、力を合わせて魔王を討とう』……となったんだが」

勇者「裏切りか?」

僧侶「ああ。最初から賛成しないならまだしも、一度賛成し、今更になって和を乱すと有っては、俺はソイツを殺さなくてはならない」



勇者「その目的で単独行動を?」

僧侶「まぁ他にも幾つか目的は有ったし、一人の方が動き易いからな」

僧侶「ふっ、喋り過ぎたか……じゃあ俺は行くとしよう」ヒラヒラ


武道家「ししょ~。ボク達も行こうよぉ」

勇者「そうだな」


僧侶「っとそうだ。名前を聞くのを忘れていた。何かの縁だ、教えてくれないか?」

勇者「……」

勇者「私は、勇者だ」



僧侶「なにっ」ピクッ

僧侶「勇者だぁ!? だが成る程……相当な手練れの風格が有る筈だぜ、お前が勇者とはなぁっ」


戦士「なんだアイツ、雰囲気が!?」

僧侶「勇者現れし時、神の使い乱れると聞く。古臭い古文書なんざ信じてはいないが……剣を抜け勇者!!」キッ

勇者「お前の剣と俺のシャオクロス……どちらが強いか確かめてみたい」

>>93

× 勇者「お前の剣と俺のシャオクロス……どちらが強いか確かめてみたい」

○ 僧侶「お前の剣と俺のシャオクロス……どちらが強いか確かめてみたい」



勇者「……」

勇者「私の剣は人を救う為に存在する救世剣。その剣で人を傷付ける事はできん」

勇者「お前が悪人ならば話は別だが、そうは思えないからな……」


僧侶「そうか……だが、余計に試したくなった。意地でも剣を抜いて貰うぞ?」スッ

僧侶「ふぅ~~~ッ、シャオッ!!」バッ



戦士「あの僧侶、一瞬で距離を縮めたっ!?」

武道家「避けて師匠!!」


勇者「……」

僧侶「どうしたっ、避けねば大変な事になるぞ!!」シュン



勇者「……」

僧侶「……」


勇者「……」ニコリ

僧侶「チッ!!」ピタッ


僧侶「なぜ避けようとしない? なぜ剣を抜かない!?」

勇者「ならばこちらも聞こう。なぜお前の攻撃には殺気が無いのだ?」



僧侶「なっ!?」

僧侶「ははっ……寸止めするつもりだったのも見切られていた訳か」

僧侶「その人物の力量を見るなら、剣を見ずに拳を見ろとは良く言ったもの……勇者よ、お前のは大きく、大切な者を包み守ろうとする手だ」

勇者「私はこれでも医学の道を目指していた身。魔王を討った後は医者として各地を旅しようと思っている」

勇者「そんな者の手に、血の匂いが染み付いてしまっては駄目だろう?」



僧侶「医者……だ、と?」


勇者「この時代にと笑うがいい。魔法が有れば、確かに外傷や後天的な病は治るかも知れぬ」

勇者「だが私は、魔法では救えぬ者……そんな者達に手を差し伸べて救いたいのだ」


僧侶「……」ギリッ

僧侶「勇者よ、頼みが有るっ!!」

戦士「なんだよ、急に師匠へ土下座したぞ?」



僧侶「俺の妹を……妹を診てやってくれ!!」

勇者「お前の妹を?」

僧侶「ああ、お前の妹は生まれつき目が見えんのだ。何かしらの治療方法が見付かると思い僧侶の道に着いたが……この地位になってなお何も見つからない」

武道家「魔法も万能じゃないからねぇ」



僧侶「頼む勇者!! 神仏に祈ろうと、魔法を極めようと、治らないんだ……頼む、診るだけでもっ」


商人「ペッ。私達は魔王を倒すべく旅をする宿命。そんな寄り道は……」

勇者「よかろう」

商人「!?」

商人「そう。まずは身近な困ってる人を助ける。これが勇者一行の基本」


僧侶「すまぬ、勇者よ……」


勇者「魔法が発達し、怪我や病気が簡単に治療される時代。故に医学は廃れ、志す者も居なくなった」

勇者「だからこそ、その魔法で治療できない者は諦められる。私はそんな者達の、最後の希望で在りたい」ニコリ

勇者「とは言ったが、完全に治せると断定は出来ない。それでも私が診療して構わぬのだな?」

僧侶「……頼むっ、頼むっ!!」



勇者「では行こうか? して、場所は?」

僧侶「この森を抜けてすぐの、アイリと言う街だ」

勇者「……」

勇者「ちょうどカサンドラへの道中だな……よし、さっそく向かおう」



 鬼哭街カサンドラの道中


 水鳥の街アイリへ


,




 水鳥の街アイリ 僧侶の家



僧侶「妹ぉぉぉぉぉおお!!」バンッ

妹「えっ、兄さん!?」

妹「もう……私の部屋に入る時はノックしてって言ってるじゃないですかっ」フラフラ

僧侶「立たなくて良いっ。そのまま、ベッドに腰掛けてろ」



妹「え、えっ? あの……はい」チョコン

僧侶「……」ニコッ

僧侶「勇者、頼む」


勇者「分かった。診るだけは診てみよう」

勇者「妹さん。不快に思うかも知れないが、少しの間だけ我慢して欲しい」スッ

妹「?」

僧侶「その方は勇者で在り、お医者さんでも在るんだ。我慢……できるな?」

妹「お医者、さん? はぁ……兄さんがそう言うなら。ジッとしてます」



勇者「では、失礼する」



勇者「……」

妹「……」アーン

勇者「……」

妹「……」ベェー

勇者「……ふぅ」


勇者「あい分かった。結論から言おう……これは治療が可能だ」



妹「っ!?」

僧侶「本当かっ!? じゃあ早速……」

勇者「慌てるな。治療は可能だと言ったが、今すぐにでは無い。『ハイポーション』と言う調合薬が要るのだ」

僧侶「ハイポーションと言えば、ポーションに多種の自然物を混ぜ合わせて作ると言われる……あの?」

勇者「……」コクッ

勇者「そしてもう一つ。この妹さんが、本当に目を治したいと思っているかどうか」



妹「……」

僧侶「何を言ってるんだ勇者!? 妹は生まれからずっと目を治したいと泣いて来たんだぞ? だから俺だって妹を支えて来たし、こうやって治療法を探したりして来たんだ」

勇者「……」

勇者「妹さん……私が治療を行えば99%、ほぼ完治する。それでも……良いのかな?」

妹「……」

僧侶「だから何を言ってるんだ!? これ以上、俺の妹を侮辱すると……」

妹「このままで、いいです」

僧侶「妹!?」

>>110


× 妹は生まれからずっと
○ 妹は生まれてからずっと




僧侶「何故だっ!? いつも目が見えるようになりたいと、俺の腕の中で泣いているじゃないか!?」

妹「……」

妹「……ふ」

妹「だって、だって兄さん? 私の視力が復活したら、兄さんの腕の中で泣く事もできなくなってしまう」

僧侶「えっ?」

妹「私の視力が復活したら、兄さんが私の事を考える時間が減ってしまう」



僧侶「……」

僧侶「違うな」

妹「違わない!!」

僧侶「違う。確かにお前からの好意は感じていた……だが、目を治さないのはそうでは無いだろ?」

妹「っ」ビクッ

僧侶「お前は怖いんだよ……目が見えるようになる事がな」


僧侶「これまでは『見えない』で済んでいた事が、これからは形を覚え、名前を覚え、最初からのスタートだ」

妹「……」

僧侶「それは大変な事だろう。オタオタして子供にも笑われるだろう」

妹「……」グッ

僧侶「だがそれでも俺は、お前に光有る世界を、色彩豊かに輝く世界を見せてやりたいんだ!!」

僧侶「大丈夫……俺は傍に居る。そして俺の姿も見て欲しい。妹よ……俺の居る世界へ、来い!!」



妹「兄さ……」

妹「おにいちゃん……」ポロポロ

僧侶「俺の腕でいつでも泣け、愛する妹よ」ギュッ


僧侶「勇者、頼む……治してきれっ」

勇者「……」

勇者「分かった。では早速調合に入ろう。隣の部屋を借りても良いかな?」

僧侶「ああっ。材料は何でも言ってくれ。寺院から俺が取って来る」



 翌日 妹の部屋


勇者「これにて処置は完了となる」

妹「すぅー、すぅー」


僧侶「この包帯は、いつ取れるんだ?」

勇者「……」

勇者「数日後、激痛が訪れ、その激痛が引いた後に視力が回復して行くだろう」

僧侶「激痛、か……妹に堪えれるか?」

勇者「僧侶よ、お前が傍に居て手を握ってやるのだ」ニコリ



勇者「それとハイポーションの原液を置いてゆく。じゅうぶんに回復するとは思うが、万が一の時には、今日やったようにきっちりと量り、300倍に薄めて使いなさい」

僧侶「助かる……興味本意で聞くのだが、これを原液のまま使ったとしたらどうなるんだ?」


勇者「……」

勇者「ハイポーションは強力な細胞活性促進剤。まず死んだ方がましだと思える激痛が訪れて、それを堪えれば、凄まじい身体能力を手に入れられる。そして数日の後……死ぬ」

僧侶「成る程、強すぎる薬は毒と言う訳か……頭に入れて置こう」



勇者「ふっ、妹を、大切にな」ニコリ

勇者「では私は、寝てる弟子達を起こしてカサンドラへ向かうよ」


僧侶「……」

僧侶「勇者よ、約束しよう。魔王を倒す時には必ず駆け付け、お前の手助けをすると」



 水鳥の街アイリ 僧侶の家を出発


 再度 鬼哭街カサンドラへ


,



 鬼哭街カサンドラ 巨大牢獄



奴隷「話が違うじゃないか!! 今日まで働けば妻は解放するって言ったろ!!」


オーガ「ああん? 聞こえんなぁっ!! フンッ!!」ドンッ

奴隷「ッ!!? ぐはぁっ……」ドサッ

オーガ「これで貴様ら奴隷も分かっただろ? このオーガトロル様に逆らうとどうなるかがなぁ!?」


奴隷達「……」ブルブル

オーガ「わかったら地下炭鉱へ行けい!! 病で働けなくなったら解放してやるわっ!!」



ゴブリン「オーガ様~っ」タッタッ

オーガ「ああん? なんだぁ?」

ゴブリン「勇者一行が、カサンドラへ向かって来ているとの情報が入りました」

オーガ「……」ニヤリ

オーガ「やっと来おったか? とっくに『アレ』は完成していたと言うのになぁっ」

オーガ「ガア~っハッハッハッ!!」




 カサンドラ300メートル手前 林の中


戦士「作戦はどうするんだ師匠?」

武道家「あの高い鉄格子の壁をよじ登るとか?」

商人「ユニーク。あの鉄格子には、高確率で電流が流れていると考えるべき」

武道家「むっ」


勇者「……」

勇者「一先ず夜を待とう。警戒が薄まれば夜襲。変わらぬようなら早朝に仕掛ける」



勇者「そして作戦だが……」

武道家「……」ゴクリ


勇者「門番をしている二匹のモンスターが見えるな?」



デスストーカー「……」

カンダタ「……」



商人「どっちも覆面をして巨大な斧を持ってる」コクッ



勇者「私があの二匹の注意を引きつつ突破する。お前達は後から入り住民を解放するのだ」

戦士「分かった……けど、師匠は?」

勇者「私はオーガを叩き潰す」

勇者「元凶を断ち、この街を真の意味で救わなくてはな」



戦士「一人で大丈夫なのか? オレ達だってそれなりに……」

勇者「心配するな」ニコリ

勇者「優先して救うべきは弱者だ。全員助け終えたなら、その時に増援として来なさい」

戦士「……師匠」

武道家「ボク達を残して死なないよね?」


勇者「ここのオーガに倒されるようでは、勇者として旅立とは思わないよ。さぁ、私が見張りをしているから、お前達は仮眠を取りなさい」



商人「……」ジィーッ


勇者「……」

勇者「ふふっ。よかろう」

勇者「次による村は私の産まれ故郷。ここを無事に解放したら、そこでしばし休息を取ろう」ニコリ

戦士「本当だな? ここを乗りきったら、次の村で師匠は休むんだな?」

勇者「約束だ」コクリ


武道家「……じゃ」

商人「寝る。おやすみ」コテッ



勇者「……」


勇者「ああ……」


勇者「約束だ……」


,




  翌日早朝 カサンドラ入り口 大扉前



デスストーカー「んっ?」

カンダタ「おい、そこの男!! 何を素通りしようとしている!? 止まれっ」ジャキ


勇者「……」

デスストーカー「何だお前は? 奴隷志願者かぁっ? ウヒャヒャッ」



 ガサゴソ


戦士「師匠はどうやって突破するんだ?」

武道家「門番二匹に、門自体の高さが凡そ40メートル……」

商人「しかも門は内側からしか開かない。鉄壁」




勇者「……」

カンダタ「しかし、こんなにヒョロくちゃ奴隷にもなれんぜぃ? 俺達はもう仕事が終わる時間だから、死体の処理とか面倒を起こしたくないんだ。見逃してやるから帰りな」シッシッ



勇者「ハイヤーッ!!」ズドンッ

カンダタ「ぐえええええええ!!?」



商人「!?」

戦士「まるで打ち上げ花火みてぇに敵を空高く蹴りあげた!?」


勇者「踏み台にさせて貰うぞっ」ダンッ


武道家「更に跳んで、蹴りあげた敵を足場にして二段ジャンプ!?」

戦士「これは……」

商人「門の高さを越える!?」



カンダタ「あぎゃっ!!」ズデン

デスストーカー「おい、寝転がってる場合じゃねぇぞ!? 早く伝えないと俺らが……ん?」


ゴゴゴゴゴ


デスストーカー「スイッチが押されて門が開いた? まさかっ!?」

勇者「私を追って来るがいい。オーガに侵入者を許したと知られたくないのだろ?」シュタ


デスストーカー「テメェ!!」ダダッ

カンダタ「待ちやがれ、ブッ殺してやるっ!!」ダダッ




商人「……」

武道家「ボク達も行こうっ」

戦士「ああっ」コクッ

商人「奴隷の地下収容所は街の西側。中に入ったら壁伝いに走る」



勇者「……」タタタッ

勇者(街の中央広場。ここがベストか)ピタッ

カンダタ「ヒー、ヒーッ……やっと観念して止まったかこのヤロウ」

デスストーカー「この巨大戦斧で、胴体を真っ二つにしてやるぜっ」



勇者「……」

勇者「よかろう」

勇者「そのナマクラで私を切れるかどうか、試してみるがいい!!」スッ


デスストーカー「死ねぃ!! 戦斧闘術奥義、猛牛青龍斬!!」ズバァァッ

カンダタ「戦斧闘術奥義、青龍猛牛斬!! このクロスコンビネーション、どう避けるぅぅう!?」ズバァァッ



勇者「……」

勇者「ふん!!」ピタァッ


デスストーカー「なっ!? コイツ……」ググッ

カンダタ「俺達の斧の刃を、人差し指一本ずつで受け止めやがった!?」ググッ


勇者「どうした? 指一本も切り落とせないのでは、私の身体を切る事などできんぞ?」



カンダタ「ぐっ、コイツ……」



 ドシーン ドシーン ドシーン



カンダタ「!!?」ブルブル

勇者「むっ!?」


オーガ「なんだぁ? 朝早くから、ずいぶんと騒がしいじゃあねぇか?」

デスストーカー「お、お、おっ、オーガ様ぁぁっ!!?」



カンダタ「い、今すぐにコイツを仕留めますので、どうかお休みになっていてくださいぃぃ!!」ガタガタ

デスストーカー「どうかここは我々にお任せをッ!!」ブルブル


勇者「……」

オーガ「ああん? 聞こえんなぁ……六触手葬場鞭」グゴゴゴ



カンダタ「オーガ様の肩から鞭のような触手がぁぁぁ!!」


オーガ「役立たずは……」ブンッ

デスストーカー「ひぎゃっ!?」メギャン


オーガ「要らん!!」ブンッ

カンダタ「うげぇっ!?」ボムギッ



オーガ「フフッ」ジロリッ

勇者「……」

オーガ「お前が勇者か?」

勇者「……だと言ったら?」


オーガ「門番が二人掛かりで勝てない訳だ」

オーガ「だが、この広場に空いた『巨大な穴』を見ろ勇者ぁぁああ!!」



勇者「これは……」


オーガ「この穴は貴様の『墓』だっ」

オーガ「ここで勇者が死に……」

オーガ「このカサンドラの恐怖伝説を、より強固なものとするのだぁ!!」


勇者「こんなものの為に民を働かせていたのか……」グッ

勇者「来いオーガよ!! 私が直接お前の相手をしてやろう!!」スッ




 ダッダッダッダッ


ホブゴブリン「オーガ様、我々もお手伝い致しますっ!!」

オーガ「お前らは見ておれ、勇者は俺一人で充分よっ!!」

ホブゴブリン「はっ。よしゴブリン共ぉっ、勇者が逃げれぬように、オーガ様と勇者の回りを囲むのだぁっ」

勇者「……」

勇者(手下達がリングロープの役割を果たすか、よかろう!!)



オーガ「ククッ、いたぶり、なぶり殺してやる……六触手葬場鞭!!」シャァァッ


勇者「これはっ!?」シュルシュル


ゴブリン「オーガ様の鞭が勇者の手足に巻き付いて動きを封じたぞぉ!!」

ウェアウルフ「ヒャハァーッ!! これで勇者はおしめぇーだぁーっ!!!」



オーガ「執念胴衣……そして必殺のぉっ」

ゴブリン「執念胴衣が出たぞ!! オーガ様の右肩が金剛石のように硬くなるぅぅっ」


オーガ「ボンバー、タックルゥッ!!!」ズドォォッ

ウェアウルフ「アレは恐怖のボンバータックル!? あの技を食らって立ち上がった者は未だにかつていねぇ!!」


勇者「ぐはぁっ!!?」ドゴォッ


ホブゴブリン「勇者のヤロウ、まともに喰らいやがったぜ!!」



勇者「はぁっ、はぁっ……」ヨロヨロ

オーガ「ほう、まともに受けても立ち上がるか? だが、それが精一杯のようだな!?」


オーガ「オラッ!!」ブンッ

勇者「ぐっ!?」ドゴッ


オーガ「ガハハハッ、宣言通り、じわじわとなぶり殺しだっ!!」



オーガ「恐かろう?」ブンッ

勇者「つッ!?」ドゴッ


オーガ「恐くて声も出せんのかぁ? ああん!?」ブンッ

勇者「ぬうぅっ」グラァッ



オーガ「ガーッハッハッハッ!!」ドンッ


勇者「うぅっ……」ガクガクッ

勇者「……」


ゴブリン「勇者の奴、とうとう気を失いやがったぜぇ!!」

ウェアウルフ「オーガ様、そろそろトドメを刺してやってください」



オーガ「フッフッフッ。ではこの技で葬ってやるとするか」

オーガ「執念胴衣……そして必殺のぉっ」


勇者「……」


ウルフ「ヒャハァー!! 勇者の最後だぁっ」


ウェアウルフ「勇者の、最後だぜぇ」


ウェアウルフ「勇者の、勇者、の……」スパンッ


ウェアウルフ「ゆう、しゃ……」ボトッ


ウェアウルフ「あれ、なんで俺、俺の頭が、体から、離れちまってんだ?」ゴロゴロ



戦士「五月蝿いぜワン公」シュッ

武道家「ししょ~~っ!! 救出終わったよぉ~~っ!!」



勇者「……」ピクッ

勇者「そうか、ならばこんな芝居も必要あるまい」


勇者「はあああああああああああッ!!!」ブチブチブチッ


オーガ「なにッ!? 俺の葬場鞭を引き千切っただと!!?」

オーガ「だが、例え勇者とて、俺の本気のボンバータックルに堪える事は不可能なはずっ!!」



勇者「私にしてみれば、先ほどの門番もお前も変わらない」

オーガ「なんだとぉ?」


勇者「一本だ!!」ピッ

勇者「この右手の人差し指一本で、お前の技を破ってやろう」


オーガ「ぐぎぎっ……もう許さんぞっ!!」



 youはshock 愛で空が落ちてくる

オーガ「ボンバー、タックルゥッ!!」ドドドッ

 youはshock 俺の胸に落ちてくる

勇者「ほおぉぉぉぉっ、漠竜独指突!!」ピタァッ

 熱い心 クサリでつないでも 今は無駄だよ

商人「師匠が指一本で敵の突進を受け止めた!!」

 邪魔する奴は 指先ひとつでダウンさ



勇者「どうした? 私をなぶり殺しにするのでは無かったのか?」ズブズブ

 youはshock 愛で鼓動早くなる

オーガ「ぐぎゃああああああ!?」

 youはshock 俺の鼓動早くなる

ゴブリン「ああっ、オーガの金剛石の肩に勇者の指が突き刺さってゆくぅっ!!」

 お前求め さまよう心 今 熱く燃えてる

勇者「この技で逝くがいい!! 漠竜独指突、百連撃!! ずあああああああ!!!」ダダダダダダダダッ

 全てとかし 無惨に飛び散るはずさ


オーガ「ぎぃぃやああああああッ」ドシーン


 俺との愛を守る為 お前は旅立ち

オーガ「いでぇよぉっ」ゴロンゴロン

 明日を 見うしなった

ゴブリン「オーガ様っ、そっちは穴ですぅっ!!」

オーガ「アレ!? そんなバカなァァァッ!! グヒャッ」ヒューッ


 微笑み忘れた顔など 見たくはないさ

勇者「どうやらその穴は、私では無く、自らの墓標となったようだなオーガよ!!」


 愛を取り戻せ……


,



戦士「見張りもみんなここに集まってたから、すげぇ楽だったぜ」タタッ

武道家「師匠、残りの奴はどうするの?」eイーグルクロー

商人「悪は滅すべき」e正義のそろばん


勇者「……」

勇者「私の答えは決まっているよ」ニコリ



戦士「……答えは?」e破邪の剣

勇者「それはな」

勇者「カサンドラに居る魔王の手下達よ!! 命が惜しくばここから立ち去るのだ!!」

勇者「そして東へ行け!! 東の外れに魔族達が集まって暮らす街が在る!! そこで人間との共存方法を学ぶのだ!!」


ゴブリン「……」

ウェアウルフ「……ヘッ」

ホブゴブリン「我々に退路は無い!! ここで貴様を殺す!! 全員で掛かれ、生かして帰すな!!」



奴隷「そいつは……」

奴隷「こっちのセリフだ!!」ゴンッ


ホブゴブリン「ッッ!!?」ドサッ

奴隷「こちとら肉体労働ばっかでな、無駄に筋肉は付いてんだ。オーガ以外にゃ負けねぇ!!」

奴隷「みんな、俺達の街を取り返そうぜーっ!!」


奴隷達「オオオオオオオっ!!!」



奴隷「オラッ!!」ドゴッ

ゴブリン「ぎゃぴっ!?」ドサッ


戦士「……」

戦士「どーすんだ師匠?」

勇者「……」

勇者「もはや我々の役目は終わった。後は任せよう、人々の裁量も捨てたものではないからな」ニコリ



 鬼哭街 カサンドラ解放



 勇者の故郷 奇跡の村へ


,



  夕暮れ 河原の野宿地



 パチパチ パチパチ

武道家「ししょ~。魚が焼けたよ」

勇者「腹が減っているのだろ? まずはお前達が食べなさい。私は最後で良い」ニコリ


戦士「あ……」チラッ

商人「実行」チラッ



武道家「だねっ。ボクはししょ~の右側♪」ヨリヨリ

戦士「じゃあオレは師匠の左側だな」ヨリヨリ

商人「私は……師匠の膝の上」ポンッ

勇者「……」

勇者「ど、どうしたんだお前たち?」



商人「まずは私から。はい師匠……あ~~ん」


勇者「……」

商人「あ~~ん」


勇者「……」

商人「あ~~ん」ウルウル


勇者「い、いただこうかな」パクッ



戦士「なぁ師匠? オレらは弟子だけど子供じゃねぇぜ?」クッツキ

武道家「そうそう♪ 守ってくれるのは嬉しいけど、いつもいつも甘やかされるのは、そんなに嬉しくないかな?」クッツキ


勇者「むっ……そ、そうか?」

商人「師匠の事、私達はまだよく知らない。だから師匠の昔の事など、主に恋愛部分を話して欲しい」



勇者「……」

勇者「ふっ、私も人の子。恋愛だってしたさ。年下だったが、母のような優しさで全てを包んでくれる人だった」

戦士「へぇ~。で、告白はしなかったのか?」

勇者「彼女は私の弟が好きでな。弟も彼女が好きだ。私の出る幕は無いさ……」

武道家「でもでもっ、好きだったら思いを伝えるぐらいはっ」



商人「いくじなし」


勇者「……」


勇者「見守る愛もある…」


勇者「彼女と弟が幸せになれれば、私はそれで良いのだ」





,



ひとまずここまでが前編と言う事で一区切りです

続きは後日ここか、別スレ立てて書きますm(__)m



  勇者の故郷 奇跡の村


?「くそっ、何が魔法だ!! 医学こそが発展の道だと言うのに、こんな田舎の村に飛ばしやがって!!」

?「んっ?」


少年「ゲホッ、ゲホッ」

少女「少年!! ううっ……どうしたら」オロオロ



?「おい、どうしたんだ?」


少女「あ、あのね、少年がお菓子を食べたらねっ……」

少年「ゲホッ、ゴホッ」


?「……」

?「ふむっ、どうやらノドにに詰まっただけらしいな」



?「背中を叩くぞ? フッ!!」トン

少年「がはっ!! ゲホッ……はぁっ、はぁっ、なおっ……た」

少女「良かったね少年!! あのっ、ありがとうございます」ペコリ

?「気にするな……」


母「少年!!」タタタッ

少年「あ、ママ!! ぼく、この人に助けて貰ったよっ」



母「……」ジィー

母「もしかして勇者ちゃんかい?」

?「いや、俺は……」


母「ほら、近くに住んでる母だよっ。今は魔王討伐の最中なんだろ? この村には長く居れないのかい?」


?「……」

?(そうか、俺は勇者に似てるのか。しかも勇者は魔王討伐の最中。ここに寄る確率は低い)



偽勇者「いや、しばらくはここで休んで行く予定だよ」ニコリ

偽勇者(ここなら『実験』が出来そうだ。くくっ……誰もこの俺を邪魔する事などでかぬぅぅ)

偽勇者「それと、俺の家を教えてくれないかな? 久し振りだから、なんか忘れちゃって」


母「へ? ふふっ、相変わらず変な勇者ちゃんだねぇ。ついておいで」


偽勇者(良い木偶がたくさんできそうだ)ニヤリ




,




 奇跡の村手前一キロ地点



勇者「……」


戦士「……」

武道家「……」

商人「ユニーク」

戦士「なぁ師匠、なんでそんな格好してんだ?」



勇者「今の私は勇者だ。村の者に気を使わせる訳にも行くまい。それに私も……静かに休息したいのだ」

武道家「ふ~ん、だからそんなボロを被ってるんだね?」

勇者「まぁそうだな。泊まるのは安宿になるだろうが、その代わりにこの辺を案内してやろう。綺麗な花がさく大木が在るのだ」ニコッ

商人「師匠、嬉しそう」

戦士「何だかんだ言っても、故郷だしな」





  勇者の故郷 奇跡の村




勇者「……」


戦士「あの、花が咲く木は……」

商人「バカ。木は伐採されてこんなクソ田舎には似合わない下品なデザインの診療所が建ってる。戦士は少し察するべき」

武道家「ししょう……落ち込まないでください」

勇者「時は流れるものだ。仕方ないさ」



勇者「今日は宿に戻るか……明日になったら美味しい野葡萄の場所へ案内しよう」ニコリ

武道家「さんせ~♪ 宿の人が温泉が有るって言ってたし、ボク入りたい」

戦士「マジか? 温泉なんてひっさしぶりだなぁ」


商人「師匠も入る?」

勇者「そうだな」

商人「私達と?」

勇者「それは遠慮して置こう」




 深夜 宿の温泉 露天風呂



勇者「ふぅぅっ……生き返るな」チャプン

勇者「マナーは悪いが、少し、寝るか……」


 ガラガラッ


武道家「やっほーししょー!!」

戦士「背中を流しにきたぜ~っ」

商人「つまり泡姫」


勇者「……」


商人「みんなタオル巻いてるから目を逸らさなくても平気」

勇者「呆れているのだ……」



戦士「まぁまぁ師匠、あがってあがって」グイグイ

勇者「……」

勇者「では、流して貰おうか」ザパーッ

武道家「いいからだしてるねぇししょー♪ ここに座って」グイグイ



商人「私が師匠の背中をソープする」

商人「んしょ、んしょ」ゴシゴシ

戦士「おっ、じゃあオレは左腕っと」ゴシゴシ

武道家「ボクは右だね~♪」ゴシゴシ



商人「どう師匠? 気持ちいい?」


勇者「……」

勇者「ふぅっ、誰かに施されるのは初めてだが……」

武道家「だが?」ゴシゴシ

勇者「心地よいものだな……ありがとう」ニコリ



戦士「へへっ。本当はさ、もちっと『サービス』しようかって話しだったけど、師匠が怒りそうだからヤメたんだ」ジャブジャブ

勇者「……」

勇者「いや、お前達がやりたいと言うなら止めんよ」

戦士「へっ、そうなの?」

商人「戦士、だから言ったはず、師匠はムッツリ……」


勇者「お前達が色仕掛けの訓練をしたい、と言うのならだがな」

戦士「ああ、ふふっ。やっぱそうだよな」

商人「戦士、だから言ったはず。師匠は尊敬すべき人格者だと」





  翌日 宿の前


戦士「今日もそれを被ってんだな?」

勇者「ここに滞在してる間はな……」

武道家「それでししょー、今日はどこに連れてって来れるんですか?」

勇者「ん? 今日はこの地方に生っている莓と葡萄を摘んで食べる」

商人「莓狩り了解。楽しみ」




 時間は戻り 数日前 診療所




村民「勇者様、宿泊していた旅人の男を連れて来ました」

旅人「どこだここはっ、離せぇっ!!」

偽勇者「ふむっ、いい締まりをしている……よし、コイツにしよう。手術台の上に乗せて固定するのだぁっ」

村民「はっ!!」

旅人「手術!? や、やめろっ、助けてくれぇ!!」ジタバタ



偽勇者「フッフッフッ、お前はこの勇者の手で生まれ変わるのだっ、恨まれる筋合いなどないわぁっ!!」バキッ

旅人「ぐはっ!?」ガクッ


偽勇者「これで静かになったな。さっさと運べぇっ!!」

村民「……」

村民「あ、あの勇者様? これで私の子供達は……」

偽勇者「んん? ああ、お前の家族には手を出さんでやろう」



偽勇者(この男は従順だと思っていたが、意見を言うようになって来たな……そろそろ『きる』か)


村民「ありがとうございます!!」

村民(妻、息子、娘、すまない。こんな父を許してくれっ!!)グッ


偽勇者「気にするな。お前はよく働いてくれるからな」




 奇跡の村近く 深緑の森 湖畔


武道家「湖に足だけ浸けるの冷たくて気持ちいいですよ~!! ししょーもどーですかぁ~?」チャプチャプ

勇者「いや、私は……」

戦士「し~しょう!! 休息、するって言ったよな?」ガシッ


勇者「……」

勇者「では、お嬢さん達とご一緒しようか」ニコッ

商人「こっちこっち」グイグイ



武道家「ほらししょー、小さい魚がたくさん寄って来るよ~♪」チャプチャプ

勇者「ほぉ……これはケアリーフィッシュだな」チャプン

武道家「ケアリーフィッシュ?」

勇者「皮膚表面の古い角質を食べてくれる」



武道家「うっ、それじゃあボクの足が汚れてるみたいだよぉ……」チャプチャプ

勇者「ははっ、毎日歩き旅をしてるのだ、仕方ないさ」

武道家「フォローになってないです」ガクッ


戦士「商人は足浸けないのか? 冷たくて気持ちいいらしいぞ?」

商人「戦士こそ。足具を外したんだったら……」

戦士「お、オレは冷たいの苦手だから良いんだよ」



勇者「二人とも浸かりなさい」

戦士「……」ビクッ

商人「……」ビクッ

武道家「ほ~ら、戦士と商人も魚にパクパク啄まれたらぃぃよ」


戦士「……」チラッ

商人「……」

商人「……」コクン

戦士「わかったよ!! 傷だらけの足を見せれば良いんだろ見せれば!!」ヌギヌギ


商人「がんばって」ヒラヒラ

戦士「お前も脱ぐんだよタコ!!」


商人「きゃぁぁぁぁっ!! ぃやぁぁぁぁぁっ!!」

戦士「うるせー!!」




   ──────。



 ……っ。



勇者「静かにっ、遠くから声が聞こえる!!」

戦士「えっ?」

商人「あ、はい」




少女「ひっく、ひっく……」ポロポロ

勇者「……」タッタッタッ

勇者「こんな所で泣いて、どうしたのかな?」ニコッ

少女「ふぇっ? うぅっ……うぇぇん!! パパがぁっ、パパがぁ!! うわぁぁぁぁぁん!!」ダキツキ

勇者「……よしよし。安心するまで泣きなさい」ナデナデ




    数十分後


少女「……」ギュッ

勇者「落ち着いて来たかな?」ナデナデ


戦士「で、そのガキはどうすんだ?」イライラ

勇者「そう急かすな。ねぇ少女ちゃん? 泣いてた理由を、教えてくれるかな? こう見えてもおじさんはね……」

勇者「勇者なんだ」バッ



少女「え……ゆう、しゃ、さま?」

勇者「そうだ。この勇者が、少女ちゃんの悩みを聞いてあげよう」ニコッ

少女「う、そ……殺さないで、殺さないで、コロサナイデ」ガクガク
勇者「ん? 私は殺したりしないよ?」

武道家「少女ちゃ~ん、この人はね? これまでずっと困ってる人を救って来た凄い人なんだよ?」



戦士「ほれっ、勇者様の顔をよく見てみな。優しそうな顔してるだろ?」グイッ

少女「あうっ」

勇者「……」ニコリ

少女「本当だ……村の勇者様と、ほんのちょっと違う」



勇者「村の勇者? そんな者が居るのか?」

少女「うん。最初はみんなのケガを治してあげてたのに、今はね……今は、人を、殺してたの……ぐすっ」

少女「それでね、勇者様と村の勇者様は、顔もそっくりだよ?」


商人「……」

商人「情報を結合簡略して解答を出すと、村には師匠の偽者が居て悪さをしてる」



少女「それと、私のパパも、パパもぉぉぉっ!!」


勇者「……」

勇者「民の涙は国の血だ」

勇者「となればこの勇者、行かねばなるまい!!」




 奇跡の村 偽勇者の診療所



村民「そっ、そんな勇者様!! 話が違います!!」


 手術台の上

妻「……」


偽勇者「うるさいっ、この勇者に逆らうかぁ!!」バキッ

村民「うぐっ」ドサッ

村民「さ、逆らうなんて、そんな……」



偽勇者「ならば何故、娘を村の外へ逃がしたぁっ!!」

村民「!?」ビクッ

偽勇者「気付かないとでも思ったかぁ? どうせ他の街に助けを求めさせ、この勇者の諸行をチクろうとさせたのだろぅ?」


村民「ぐっ……」

偽勇者「まぁいい。そろそろ潮時だと思っていた所だ。この女で最後の人体実験をして、村から消えるとしよう」



村民「貴様ぁ!! それでも勇者か!!」ダッ


偽勇者「ふんっ!!」ドゴッ

村民「うごっ!?」


偽勇者「学習しない奴よ。お前達の命は、この新薬の完成!! 延いてはこの勇者が世界へ名を残す為の礎になるのだぁ!!」

偽勇者「それとな……俺は、勇者では無い。お前たちが勝手に勇者と呼んだから乗っかっていただけよ」

村民「なっ!? なんて、事を……」



偽勇者「そう悲しむ事は無い。数多き犠牲のお陰で……」パクッ

偽勇者「ふしゅる~~~っ!! この、スペシャル筋力増強剤が完成したのだからな!!」ムキムキッ


偽勇者「どれ、力試しに、お前の首をネジ切ってやろう」ドシーンドシーン


村民「すきにしてくれ」

村民「娘、息子、妻……すまないっ」




 バンッ!!



偽勇者「ん!? 誰だぁ!?」


娘「パパぁ~!!」トテトテ

村民「む、娘ぇっ!!」ギュッ


勇者「……」

勇者「人の涙を食い物にする」

勇者「貴様は断じて、勇者では無いッ!!!」



村民「!?」

村民「ゆ、勇者様が二人!?」

娘「パパっ、いま来たのが本物の勇者様だよっ!!」


偽勇者「お前が勇者か……確かに、俺と同じ顔をしている」



偽勇者「だが……このスーパーパワーになった天才に、勝てる訳などないのだぁっ!!」ダッ


勇者「……」スッ

勇者「せぃやぁぁっ!!」ドンッ


偽勇者「ぎひぃっ!?」ドテーン

偽勇者「ぐっ、くくっ……さすがは勇者だ。だがなぁっ」バッ


勇者「ッ!?」



偽勇者「動くなぁ!! 動けばこの女の首をへし折るぞっ!!」ギュッ

妻「……」

村民「つ、妻ぁぁぁぁっ!?」

偽勇者「村民よっ、妻を助けたくば、お前が勇者を殺すのだ!!」


村民「なっ!?」

勇者「なんたる外道……」ググッ



偽勇者「そこに立て掛けて有る鉄の剣を使えぃ」

妻「……」

村民「ゆ、勇者様……私、はっ、どうしたら」

娘「勇者さまを殺しちゃダメだよパパっ!!」


勇者「……」

勇者「村民よ……私を殺しなさい」ニコリ



勇者「見られていては殺し難かろうから、後ろを向こう……さぁ」クルッ

偽勇者「ぐっひっひっ、それでこそ勇者だ!! 早く殺せ村民」


娘「パパっ!!」

村民「わたし、は……私はぁぁぁぁっ!!」ガッ



村民「うおおおおおおお!!」


偽勇者「なぜ俺に掛かって来る!?」

勇者「ッ!? 止めるのだ村民よっ!!」


偽勇者「バカがっ、死ねぃ!!」ドスンッ

村民「ぐはぁっ……」ドサッ



村民「……」

娘「パパぁぁぁぁっ!! イヤぁぁぁぁぁっ!!!」タタッ


勇者「ほおぉぉぉぉっ……でりゃあぁぁぁぁぁああ!!」カッ

偽勇者「げひっ!? げひゃぁぁっ」


 ドゴーン ガラガラガラガラ

 壁を突き抜けて外まで蹴り跳ばされる偽勇者


勇者「貴様には、地獄すら生ぬるい!!」




偽勇者「くっ、だがこの薬を飲めば……」ゴクリ

偽勇者「更に超人になれるのだぁ!! これで勇者など相手にならぬわぁっ」ムキムキムキムキッ


勇者「……」

勇者「確かに相手にならんな……その程度では、私の相手にはならん!!」スッ




 桃色に 染まりゆく 東雲を追いかけて
 疾走する欲望マシン あなたを乗せて


偽勇者「なんだとぅ!? この天才の拳を喰らぇ!!!」バッ

勇者「フンッ」パシッ


 風に舞い かおる髪 もうちょい体よせ合いたい
 あいつは血まなこ 憎しみ燃やす


勇者「懺血到悔拳!!」ズドンッ

偽勇者「ゴハァッ!? ぎっ、ぎぎっ……」グラグラ

偽勇者「お、俺の、か、からだがっ、萎んで行くぅぅぅっ!!?」プシュゥゥッ



 怪物に心を バリバリ食いちらかされて
 思わずあなたを 奪っちまったんだよ


偽勇者「また薬を飲まなくては!!」

勇者「させんっ!!」ジャキン

勇者「はぁぁぁぁっ!!」ザスンッ


 この広い世界の中 2人しかいないような
 寂しさかみしめ 胸かきむしる


偽勇者「ひぃぃぃっ、俺の指がぁぁぁっ!?」ボトボト


勇者「これで薬は飲めまい……」


 getaway getaway オレはピエロ
 ひたむきで滑稽な 逃亡者


偽勇者「萎むのが止まらないぃっ、こ、これ以上萎んだらぁぁっ!!」プシュゥゥッ


 涙は流さないでおくれ
 悲しいけど美しいのがlife


偽勇者「た、たしゅけ……あばっ!!」パンッ


 暗い未来は もう描かない
 夢のスピードは もうゆるめない


勇者「萎縮するスピードに耐え切れず身体が崩壊したか」


 getaway getaway 地の果てまで
 こわいもの全部 ふきとばせ
 何もかも 新しい瞬間
 後ろはふりかえらないで



武道家「ししょー!! やっぱり荷物倉庫に遺体が沢山あったよ~っ」タッタッ

戦士「うおっ!? 壁に穴が空いてる……って師匠、剣を抜いたのか?」

商人「それに、泣いてる……」


勇者「……」

勇者「ここで散って行った者達の為に、私ぐらいは泣いて涙を添えても良かろう」ツゥッ




   診療所内


娘「パパっ、パパっ!!」ギュゥッ
妻「しっかりしてアナタ!!」


村民「……」

村民「妻よ、目が覚めたのか?」

村民「ダメな、とーちゃんで、ごめんなぁ……家で寝た切りになってる息子にも、変な薬を飲ませ続けてすまないとっ、ごふっ!!?」




娘「パパっ!?」

妻「あなたっ!?」

村民「どうやら、お迎えが来たようだ……」

村民「最後は偽者の勇者を手伝って馬鹿な事をしたが、それ以外は……」


村民「幸せだったぞお前たち」ニコッ


,




 勇者の故郷 奇跡の村解放


 砂漠の国 ジャガンノートへ


,



 フィールド 海沿いの砂浜



戦士「なぁ、師匠? あの男の子は助かったかなぁ?」

勇者「……」

勇者「適切な薬を与えたつもりだ。あれから継続して家族が世話をして上げてれば、今頃は歩けるまでになっているだろう」


武道家「お父さんの分も、生きて欲しいよね……」

勇者「ああ。父親の方は、腹部に風穴が空いて手の施しようが無かったからな」



商人「師匠は……あの村に残らなくて良かったの?」

勇者「確かに私の故郷だが、あの村は偽者とは言え『勇者』にすがり落ちた。復活する時まで勇者を頼ったのでは、いずれまた落ちる」


商人「手厳しい」

勇者「厳しい事だが、もはや私の出る幕は無かろう。他の国からも救援が来ると言うし、時間は掛かるだろうが必ず復活するさ。私に出来るのは信じるだけだよ」



勇者「それに……」

商人「魔王」

勇者「うむ。奴を野放しにいつまでも留まっては居れん」


戦士「で、次はどこに向かうんだ師匠?」

勇者「この先の港で船に乗り、海を渡ろうと思う」




 ザッパーッ


勇者「むっ!?」




 海の中からモンスターが襲ってきた!!


シビレクラゲ「しびれ~」バッ

ゼニガメ「かめー」バッ

サハギン「さっは」バッ



戦士「ひとーつ、人世の生き血を啜り!!」e破邪の剣

 戦士は破邪の剣を敵に向けて翳した
 灼熱の閃光がほとばしる!

ヤキクラゲ「…」プスプス


武道家「ふたーつ、不埒な悪行三昧!!」eイーグルクロー

 ズバーッ

ゼニガメ「……」イキヅクリ


商人「みっつ、見事にたたっきる!! あ、勇者一行!!」e正義のそろばん

 ザシュッ

サハギン「……」ハンギョ



 まもののむれを倒した!

戦士はレベルがあがった
武道家はレベルがあがった
商人のレベルはもうあがらない



戦士「へへっ、どーよ師匠?」


勇者「……」

勇者「よく、ここまで成長したな」

武道家「や、やめてよもぅ、照れるってばぁ……えへへ」ニヘラ



勇者「私の考え方は全て行動で示して来たつもりだ。そしてお前達は信念を貫くだけの実力を手に入れた。もはや、私が教える事は無い」

商人「……どう言う意味?」


勇者「これからは師弟の関係を止めようと思う」

商人「!?」タタッ

商人「それはダメ。駄目」ギュゥッ


勇者「……」

勇者「やはり止めるよ」



商人「……」ウルウル

戦士「ちょっ、待てよ師匠!!」

武道家「そうだよっ、そんな急に……」


勇者「……」

勇者「ここで師弟の関係は終わり」

勇者「そしてここからは、『仲間』として、よろしく頼む」



戦士「あっ」

勇者「もう師匠と呼ぶ必要は無い。これからは仲間として、勇者……と呼んで欲しい」ニコリ


武道家「うぅっ……でもぉ」チラッ

戦士「だよなぁ」チラッ


商人「ううん。これからも師匠……そう呼ぶ」



戦士「あははっ、オレも……かな?」

武道家「だよねだよね? ボクも師匠の方が呼びやすいし」


勇者「……」

勇者「うむ。呼びやすいならそちらでも良かろう。だが、もう我々は対等な仲間だ。それを忘れないでくれ」


戦士「はいよ」


戦士 武道家 商人
(それに、勇者だと世界中みんなの勇者様だけど、師匠なら私達だけの師匠だしね)




   港の船着き場



船員「すまねぇな、今朝出たばっかでよ。次の船が出るまで、後十日掛かるんだよ」


戦士「ここで足止めかよ。早く出発して来た意味がないな」

勇者「仕方有るまい。ここから歩いて半日の所に二つの街が在る。そのどちらかへ行き次の船まで滞在しよう」

武道家「う~ん。しょうがないよねぇ」



勇者「北へ行けば『金色の帝都』と呼ばれる魔王の進軍を退けた都に着く」

勇者「南へ行けば『鉄火面の街』と呼ばれる街に着く」

勇者「お前たちが決めなさい」


戦士「ふ~ん。それじゃ>>235にするぜ!!」


,



勇者「よし、帝都だな」


,

慣れない事すんじゃなかった…



  港の船着き場を出発


  金色の帝都へ


,





   金色の帝都 二年前


 帝の間

帝「北の国が先日の魔王軍との戦で大打撃を受けたと聞く……」

帝「賢者よ、この機に全軍を率いて北の国を制圧し、我が帝都の配下とするのだっ!!」


賢者「失礼を言いますが帝、その魔王軍が近々この都を攻めて来ると言う情報も入りました」

賢者「ここは我が軍を留まらせ、魔王軍を討った後に北へ攻めるのが得策かと」



帝「ならん!! 体制を建て直したらどうするのだ!! 今すぐに向かぃ賢者!!」

賢者「し、しかし、それでは都の守りが……」


帝「ええいっ、賢者!! 捨て子だったお前を拾い育てたのは誰だ? 言ってみろ?」

賢者「……」

賢者「それは、帝です……」



帝「私が救った命だ……ならば私の為に尽くすのが筋だろうが!!」

賢者「わかりました。そう言うので有れば、明日にでも北の国へ向かいます」


帝「ふん……わかれば良いのだ。だいたい、北の国も落とし切れずに撤退したと言うのに、すぐこの都に来る訳がなかろうが!!」


賢者「……」

賢者(俺は、俺は一体何の為にっ!!)ギュッ



賢者「都の守備はどういたしましょうか?」

帝「あん? 第六部隊だけ残して置けい」


賢者「そ、それでは余りにも……」

帝「……」キッ

賢者「いえ、仰せのままに。早速準備に取り掛かるので失礼します」




  翌日 北の国への進軍途中



団長「賢者様、この戦……大丈夫でしょうか?」パカラッパカラッ

賢者「何か不安が有るのか?」パカラッパカラッ

団長「はっ、私にはどうも上手く行きすぎて、裏があるような気がするのです」


賢者「……」

賢者「ふむ。例えば、だが。魔王軍が本来攻めたかったのは帝都だったとするならどうだ?」



団長「……」

団長「帝都に攻めたかったのに、北の国へ攻めた?」

賢者「ああ。だが、中心部で在る帝都さえ落としてしまえば、後は時間の問題なのだから、わざわざ端から攻める意味がわからん」

団長「それも、壊滅ギリギリまで追い込んで置きながら撤退してますしね」


賢者「人間の力を試してみたかったのか、それとも……」

団長「我々を……いえ、賢者様を帝都から離れさす事が目的か、ですね」



賢者「俺を、か?」

団長「はい。黙っておりましたが、昔の私はそれはもう血の気が多い性格でして、そして自分の力を過信しておりました」


賢者「お前ほどの実力が有れば、過信とは言わぬよ」

団長「ありがとうございます。ですが、そんな時に魔王と出会いました」



賢者「魔王と?」

団長「黒き巨大な竜に股がる魔王……触れる事さえ叶いませんでした。そして私に向けて言ったのです」


団長「『殺す価値さえ無い』、と。だから私は生きているのですが、正直……騎士としては終わりました」

団長「ですが賢者様、そんな時に貴方とも出会ったのです。貴方は強い……もしかしたら魔王と同等か、それ以上に」



賢者「……」

団長「魔王と対等に戦えるのは賢者様のみ」

団長「もしそれを魔王軍が知っていたら。北の国への攻撃が賢者様を帝都から離す作戦だったとしたら」


賢者「……私は、どうしたら良い?」

団長「全軍で戻りましょう!! もしもの時は、私の命にて責任を取ります!!」



賢者「いや、俺だけ戻ろう。お前は指揮を取り、このまま進軍、制圧に動いてくる」

団長「で、ですがっ!?」

賢者「お前はまだ若いではないか? 死すにはまだ早い……良いな? このまま進軍するのだぞ?」

団長「ぐっ……はい。賢者様の、命令とあれば」


賢者「ふっ」ニコリ

賢者「では、私は踵を返す!! ハイヤー!!」パカラッパカラッ



団長「賢者様、どうかご無事で……」



  帝都 入り口付近


魔王「なんだ……兵士共は出て来ぬのか?」

側近「そのようですね。魔王様の力を恐れて逃げたしたのでしょう」


側近(賢者を魔王様と戦わせない為に策を練ったとは言えないな。小賢しい手を魔王様は一番嫌う)

側近(しかし、あの賢者の力は危険過ぎるのだ。魔王様に万が一が有ってはいかん)

側近(お許しください魔王様……)



  城内 帝の間


兵士「帝様、お逃げください!! 魔王軍との戦力が圧倒的すぎます!!」

帝「け、賢者は何をしている!?」

兵士「……」

兵士「はっ? 賢者様は帝様の命を受けて北の国へ……」

帝「ええい、使えん!! 賢者、全く使えん!! さっさと呼び戻すんだ!!」


兵士(賢者様が居たから、帝にもなれたと言うのに……この男はっ!!)



  帝都 入り口付近



魔王「これだけ待っても出て来ぬか……」


デーモン「魔王様ッ、ここは我ら悪魔部隊にお任せください!!」

魔王「……」

魔王「好きにせい」


デーモン「ははっ!! 行くぞお前らっ!! 我々の力を人間どもに見せ付けてやるのだぁっ!!!」バッ

悪魔達「オオーーーーーッ!!」




デーモン「手始めに俺様の極大火炎魔法で燃やし尽くしてやるぜぇ!!」シュィィィン

デーモン「喰らえぃ、メラゾー……」



賢者「凍の輪!!」



デーモン「まぁぁアアァァッ!!?」ピキピキ

悪魔「ああ!! デーモン隊長の両腕がとつぜ凍ったぁ!!」

>>254

× 悪魔「ああ!! デーモン隊長の両腕がとつぜ凍ったぁ!!」

○ 悪魔「ああ!! デーモン隊長の両腕が突然凍ったぁ!!」



魔王「ムッ!?」


賢者「それほど燃やしたくば、まずは自らが燃えてみるがいい!!」

賢者「灼の輪!!」ゴォッ


デーモン「ぎぃやぁぁぁぁぁっ!!?」ボォォォッ


側近(あのデーモンを一瞬で灰に!?)


魔王「面白い……」ニヤリ

魔王「黒竜号ッ!!」


バハムート「ガオォォォォウ!!」スゥッ

魔王「フンッ」スタッ


賢者「魔王……」

側近(魔王様がバハムートの背中から降りた!? 背に乗ったままでは勝てないと思ったからですかっ!?)



賢者「……」ザッ


魔王「……」ザッ

魔王「どうした、来ぬのか?」


魔王「安心しろ。俺とお前の戦いに手出しはさせん」



賢者(伝わって来る力を見て取れば、俺と魔王はほぼ互角)

賢者(部下が手を出さないと有れば勝利も……最悪相討ちに持ち込む事もできるだろう)

賢者(だが……)チラッ


側近「……」キッ

バハムート「グルルゥッ」



賢者(勝ったとして、勝った後はどうなる?)

賢者(間違い無く残った部下達に帝都は攻め落とされ、民は皆殺しにされるだろう)


賢者「……」

賢者「魔王よ……」


魔王「なんだ?」



賢者「ここは引け」


魔王「はっ……くだらぬ。早く構えよ」


賢者「……」

賢者「勿論、ただとは言わん」



賢者「ぬおぉぉぉぉぉっ!!」ザシュゥッ

魔王「!?」

側近「自ら左足を切り落とした!!」


賢者「ぐっ……俺の、左足を、お前にくれてやるっ。これで引けい!!」ケンケン


魔王「……」

魔王「貴様の覚悟、しかと見届けた。今日は引いてやろう」バッ

バハムート「グウウッ!!」アタマニノセ



魔王「だが一つ忠告してやる」

賢者「……」ドサッ


魔王「貴様程の男をこんな風にしか扱えない王など、さっさと見捨てるんだな。でなければ、これより更なる災いが訪れ、この国は自滅するであろう」


賢者「世迷い言を……」


魔王「戻るぞ側近!!」

側近「はっ、全軍撤退だ!!」


賢者「……」


賢者「俺は……」


賢者「俺はっ!!」グッ


,



  現在 金色の帝都 入街門



戦士「ほ~~っ」

武道家「金色の……って割にはピカピカじゃないね」

商人「金色じゃない帝都に改名すべき」



勇者「これからしばらく滞在するのだ。この方が落ち着いてよかろう」

戦士「そうなんだけどさぁ……あっ、装備を新しくしたいんだけど師匠?」

武道家「ボクも~っ、ボクのステに武器が追い付いて来ない感じなんだよねぇ」

商人「私も新装備を所望する」


勇者「ふむ……そうだな、では皆で行くとするか?」



  金色の帝都 武器屋



店長「へいらっしゃい!! いい武器が揃ってるよ」


勇者「では、見させて貰おうか」


戦士「店長、エクスカリバーってあるか?」

店長「有るよっ」

武道家「じゃあ、アルテマウェポンは?」

店長「有るよっ」

商人「雷神最強の剣盾?」

店長「有るよっ」


店長「まずはこれが伝説の蛇龍、アルテマウェポンの爪を加工した手甲だ」ピカピカ

武道家「お~っ、なんて神々しい!!」




(;´д`)



戦士「これが噂に聞くエクスカリバーかぁ……へへっ、手にしっくりと馴染むぜ」ブンブン


商人「……」パリン

商人「雷神最強の剣盾じゃ私の力に着いて来れない。こっちのロトの剣を貰う」ジャキ


勇者「資金は貯めて有るから、お前たちは値段を気にせず好きな品を選びなさい」



戦士「師匠は……そのままで良いのか?」

勇者「ああ。恐らく魔王に最も通ずるのはこの剣だろう」


商人「♪」ブンブン

商人「?」

商人「店長、こっちの剣は何?」

店長「それは、ついこないだ手に入れた、念願のアイスソードよ!! だけど残念ながら売りもんじゃないんだ。悪いねお嬢ちゃん」


商人「……」

商人「?」

商人「店長、この剣が欲しい」

店長「えっ? いやっはっはっ、ありがてぇんだが、この剣は売れねぇよ」


商人「……」

商人「?」

商人「店長、私は、この剣が気にいった。この剣が欲しい」

店長「……」

店長「だからすまねぇなぁお客さん!! そいつは俺のもんなんだ」



商人「……」

商人「?」

商人「店長、私はお前の血で化粧がしたい」スッ



勇者「なにをしている?」ゴツッ

商人「痛い……」サスサス


勇者「ふむ。どうやらこのロトの剣、呪われているようだな」

店長「そっ、そうだったんですかい?」


店長「……」

店長「呪われた品を売ったとあっちゃあ、先代に顔向けできねぇ……このアイスソード、売ってやるよ」


商人「♪♪」



勇者「助かるよ」



店長「ただし、値段は安くしねぇぞ? ひゃっはー、しめて100000000000000ゼニーだぁっ!!!」



勇者「むっ」

勇者「安いな店長……気を使わせてすまない」ニコッ

店長「へっ、いい旅を続けてくれよ旦那」



  金色の帝都 城下町広場



武道家「これからどうするの?」

勇者「まずは宿を探し一息吐く……」

勇者「そしてたまには、旨い料理でも皆で囲もう」ニコリ

戦士「おう、さんせー!!」

商人「問題ない」ブンブン



大騎士「おい貴様らぁっ、ちょっと待てぇぇい!!」ドスドスドス


勇者「……」

勇者「私達かな?」


大騎士「そうだっ、帝様が貴様らをお呼びになっている!! 直ちに出頭しろぉ!!」



勇者「頼む態度では無いな……もし、断ったらどうするのだ?」

大騎士「なぁ~にぃっ、断るだとぉぉ!?」


大騎士「ふっふっふっ、呼べと命じられたのは後ろの女達のみ。男のお前は、殺しても良いと言われているのだぁっ!!」ジャキ

勇者「……」

勇者「来なさい」スッ



大騎士「しねぇぇぇい!!」バッ


商人「危ない師匠!!」ドン

勇者「なにっ!?」グラッ


商人「あっ……」ズバァァッ


戦士「商人!?」

武道家「しょ~~に~~ん!!」



商人「し、しょ……」ドサッ


大騎士「ちっ、女を殺しちまったぜ!! こうなりゃヤケだ、皆殺しにしてやる!!」


戦士「てめぇぇっ!!」バッ

武道家「長門の仇ぃぃっ!!」バッ


大騎士「大剣剣舞術!!」ブンブン


戦士「ぐはっ!?」ズシャァァッ

武道家「うそっ!?」ズバァッ



大騎士「次は貴様だぁ!!」バッ


勇者「くっ」

勇者「ぐああああっ!!」ズバァッ

勇者「……」ドサッ

戦士「……」

武道家「……」

商人「……」



大騎士「ぐはははっ!! 逆らうからこうなるのぁっ!!」グリグリ

勇者「……」



大騎士「があっはっはっはっ!!」

大騎士「があっはっはっはっ!!」




 ──パリンッ。


大騎士「はっ?」


 パリン、パリン、パリン、パリンッ!!!



大騎士「なっ、なんだ? 景色が崩れて……」キョロキョロ



商人「……」

商人「ジャスト十秒。いい夢は、見れたかよ?」



武道家「商人の得意技、幻覚蛇眼……マヌーサ」

戦士「いつ見ても恐ろしい技だぜ」ゴクリ


大騎士「ぐ、ぐぬぬっ……馬鹿にしやがってぇ!!」

大騎士「今度こそしねぇぇぇい!!」バッ





賢者「闘指気真空波!!」バァッ



大騎士「ぐへぇあぁっ!?」ドゴォォッ


商人「!?」

戦士「大騎士の野郎が、突然ブッ飛びやがった!!」



大騎士「け、賢者様……なんでぇっ」ドサァァッ


賢者「我が騎士団が剣を抜く時は、悪と戦う時か、弱き者を守る時だけだ。今回はそのどちらにも該当しない」


賢者「お前は出世を急ぎ過ぎている。少し……頭を冷やせ大騎士」

大騎士「賢者、さま……すいやせん、でし、た」ガクッ



賢者「……」

賢者「そなた達にもすまぬ事をした」



商人「ぺっ、絶対に許さな……」

勇者「許そう」

商人「!!?」


勇者「この帝都の王に頭を下げられたら、許さぬ訳には行くまい」ニコリ


賢者「ふふっ、世辞か? 片足が義足の王など何処に居る? 俺は賢者」

勇者「そうか。いや、私は本当にお前を王と思ったのだ」


勇者「この騎士ですら……」チラッ

大騎士「……」

勇者「お前の事は信頼しているようだからな」


賢者「コイツも、以前は真っ直ぐな騎士だったのだ……だが、最近まで帝の近くに置かれていた為に、少し考え方が拗れてしまった」

賢者「これから、ゆっくりと更正させて行くさ……」

賢者「それと、帝が呼んでいると言う件だが」


勇者「……」

賢者「この町に入る時にチェックと称した身体検査が有っただろ?」



戦士「あ~っ、アレな?」

武道家「女性だったけど、ヤケにベタベタ触って来たよね?」


賢者「あの場所には『鷹見の水晶』が置かれていてな、帝はもう一つの水晶から身体検査の現場を覗いているのだ」


商人「死ねゲスやろう」


賢者「そして気に入った女性が帝都に来ると、高い報償金を餌に夜を共にするよう迫って来る」



賢者「俺が知ったのはつい最近だが、知ってからは都へ来た者に忠告はするようにしている」

勇者「止めは、しないのか?」


賢者「その金は税金だが、旅人からすれば一度抱かれるだけで大金を手にする事も確か。選ぶのはあくまでも本人に任せている」


勇者「……」

勇者「そうでは無い。止めないのか? と聞いたのは、旅人の女性を……では無く、帝を、だ」



賢者「……」

賢者「俺はただの一兵士。帝に俺の言葉は届かん」

賢者「ここに現れたのも、大騎士の無礼と……」チラッ


戦士「なんだよ?」

武道家「なに?」

商人「……」


賢者「この者達が帝と会えば、帝の命が危ないと思ったからに過ぎない」フッ



弓騎士「け、賢者さまぁぁっ!!」タッタッタッ


賢者「弓騎士か、どうした?」


弓騎士「ま、まっ、魔王軍が帝都に攻めて来ましたぁっ!!」


勇者「ッ!?」

賢者「なにッ!!? 直ぐに全軍を城門に召集させろっ!!」

弓騎士「はいっ!!」ダッ



勇者「私は勇者!! 賢者よ、私達も力を貸そう」

賢者「お前がっ!? フッ……確かに、強い瞳をしている」


賢者「では頼むぞ? 我が軍が召集するまで俺と共に時間を稼いでくれ!!」

勇者「心得た!! お前達も行くぞ!!」

戦士「おっけー師匠!!」

武道家「新しい武器で風穴あけてやるもんね~っ!!」

商人「滅」




 金色の帝都 一キロ手前上空



 バッサバッサ バッサバッサ


雲の魔神「よし、そろそろ降下を始めろ!!」

山の魔神「帝都を奪う前に賢者を殺すのだ!!」


魔族達「オオオオオオオオッ!!」


炎の魔神「賢者など魔王様の手を煩わせるまでもない!!」

風の魔神「我ら五魔星が葬ってくれるっ!!」

側近「フフッ……」




側近(魔王様に認められるのは、私だけでいい……私、だけでっ)


側近「この海の魔神がお前を殺してやるぞ賢者!!」


側近「全軍、ピオリムとスクルトを重ね掛けしておけっ!! 賢者を殺し次第、帝都に攻めいる!!」



,



   帝都 入り口



賢者「俺と勇者一行が先に出る、門を開けろ!!」

兵士「はっ!! 開けろぉっ!!」



 ゴォォォォッ



街娘「賢者様……大丈夫、ですよね?」

賢者「お前達の願いが俺の力となる。必ず勝つと約束しよう」ニコッ

少年「賢者さま、おれも戦うよっ!!」

賢者「残念だがそれは無理だ……俺が全て倒してしまうからな」ナデナデ



戦士「賢者の回りに街人がみんな集まってんな」

武道家「凄い、人望だよね……」


賢者「民よ聞けい!! 俺がお前達の希望だ!! お前達が俺を信じてくれる限り、俺は絶対に負けん!!」


民達「おおおおおおおおっ!!」


賢者「では行くぞ勇者?」

勇者「……」コクッ



 金色の帝都 城門前


 ゴォォォォッ


賢者「今は部隊の大半が各方面へ出ているが、呼び戻す遣いは送った。それに魔族どもで黒くなった空を見れば、それぞれの判断で戻って来るだろう」

勇者「時間は?」


賢者「早ければ一刻。遅ければ二刻判」

勇者「……」

勇者「持ち堪えて見せよう」



勇者「信頼しているぞ、仲間達よ?」


戦士「へへっ、任せとけって師匠」eエクスカリバー

武道家「ボク達もだいぶレベルアップしたもんね」eアルテマウェポンの爪手甲

商人「私は魔族の血で化粧がしたい」e右手ロトの剣 e左手アイスソード



賢者「んっ?」

賢者「いや、上手くすれば時間を稼げそうだぞ?」



 バッサバッサ バッサバッサ


炎の魔神「お前が賢者か」タトッ

風の魔神「はっ、ただの人間じゃねぇか?」タトッ

山の魔神「甘く見るな。魔王様が唯一認めた人間なのだ」タトッ

雲の魔神「だとしても、我ら五魔星には勝てんがな」タトッ



 ゴゴゴゴゴゴゴッ


側近「……」タトッ

賢者「……」


 ゴゴゴゴゴゴゴッ


勇者(敵は随分と賢者へ執着している)

勇者(そして目の前に降りたのは五人。他の魔族も地に降りているが、遥か後方で待機している)

勇者(これは……そうか!?)



勇者「……」チラッ

賢者「……」コクッ


勇者「……」クイッ

戦士「……」コクッ

武道家「……」コクッ

商人「……」コクッ



側近「賢者とは因縁の有る私が一対一で戦う。お前達は手を出すな」

風の魔神「おいおいっ、そりゃねーんじゃないか?」


勇者「ふっ、お前はその者の優しさに気付かぬのか?」

側近「……」


風の魔神「なんだとぉ!?」

勇者「五魔星といったが、その者と他の四人にはハッキリとした実力差が伺える。つまりその者は、「邪魔だからすっこんでろ」と言ったのだ」



風の魔神「キサマァァッ!! よし、決めた!! まずはキサマを殺してやる!!」

勇者「他の三人も同時に相手をしよう。プライドが許さないのなら、順番を決めて置くのだな。すぐに終わる」スッ


賢者(挑発も上手い。流石は勇者か……ならば俺も、本気で戦わねばなるまい!!)


賢者「ぬあああああああッ!!」ビキビキ

側近「こおおおおおおおッ!!」ビキビキ




風の魔神「くくっ……我が拳は風を友とし、風の中に真空を走らせる。即ち風の刃」スゥッ

勇者「……」


風の魔神「フッ」

風の魔神「ヒャッハー!! 切れろ切れろぉぉっ!!」シュババババッ

勇者「ぐぅっ!?」



風の魔神「なんだ? ガードするので精一杯かぁ?」


風の魔神「トドメだっ!! 風戟光角拳奥義、真空旋風掌ッ!!」ドォォォォウッ


勇者「……」

勇者「はあっ!!」ダンッ


風の魔神「上に、跳んだ!?」



勇者「天翔ッ、闘指気真空波!!」バァッ


風の魔神「ぐぅへぇあぁぁっ!!?」ドゴォォン




賢者(アイツ、俺の技を一度見ただけで……)

側近「どこを見ている? お前の相手は私だぞっ?」




風の魔神「……」ガクッ


炎の魔神「おおおおおおおお!! よくも弟星、風の魔神をっ!!」ボォォォッ

炎の魔神「次は俺が相手だッ!!」


勇者「……」タトッ

勇者「いいのかな、お前一人で?」スッ

炎の魔神「うるせぇ!! 俺の前に立つ者は、この怒りの炎に包まれる!!」ボォォォッ




 金色の帝都城門 遥か前方位置



デスフリッター「風の魔神様がやられたっ!? ぐぬぬっ……我ら鳥獣部隊は先行して都を攻めるぞ!!」


鳥獣部隊「オオオオオオオオ!!」


暴れ牛鳥「待てデスフリッター!! 我らは決着がつくまで待機と指示が出ていただろ!?」

ドラゴンフライ「そうだぜ、お前の部隊だけ出るなんて勝手な行動は慎んでもらおう」



ポッポ「頭を冷やすのじゃデスフリッター!!」


デスフリッター「……」

デスフリッター「お前らが使える魔神達はまだ生きてるから良い……俺らの使える風の魔神様は死んじまったんだぞ!?」

デスフリッター「弔い合戦だ!! 鳥獣部隊、全軍突撃ィッ!!!」バッサバッサ




戦士「エクス──

 カリバァァァァァァァァァッ!!!

              」


武道家「燃え上がれボクのコスモ──

 アルテマ流星けぇぇぇぇん!!!

              」


商人「黄昏よりも昏きもの 血の流れより紅きもの 時の流れに埋もれし 偉大なる汝の名において 我ここに 闇に誓わん 我等が前に立ち塞がりし すべての愚かなるものに 我と汝が力もて 等しく滅びを与えんことを──

 ドラグスレイブッッ!!!

              」




デスフリッター「クッ、クェェェェエエ!!?」ジュゥッ


ポッポ「デスフリッター!?」



戦士「へっ、ここは通さねぇよ!!」ジャキ

武道家「どうしてもって言うなら」スッ

商人「私達を倒して進め虫けらめ」ジャキジャキ



暴れ牛鳥「なにぃっ!?」



武道家「ねぇ、ボク達のペンダントが光ってるよ?」ポワッ

戦士「初めて三人で行ったダンジョンで見付けたやつか」ポワッ

商人「体が暖かい……これなら、前に失敗したアレが使えるかも知れない」ポワッ



戦士「んじゃ、やってみるか……タイミングを合わせろよ二人ともっ!!」バチバチッ

武道家「うんっ!!」バチバチッ

商人「あ、せーーーーの!!」バチバチッ



ポッポ「生意気な人間どもめ、かぜおこしを喰らえッ!!」バッサバッサ


戦士 武道家 商人
「「「トリプルッ!! ギガッ、ディィィィィィィィィィン!!!」」」




 ドゴォォォォォォォォォォン!!!



側近「……」

賢者「卑怯とは言うまい?」


側近「ふふっ、私はお前を殺せればそれで構わん」スッ

賢者「そうか……ならば」スッ


側近 賢者
「「ただ、死合うのみ!!」」バッ



側近「賢者ッ、貴様は私のスピードに着いて来る事はできない!! この無限の蹴りを受けろっ」スゥッ

賢者「ぬっ!?」


側近「飛燕千烈脚!! あぁだだだダダダダダダダダァァ!!!」


賢者「お前が千の蹴りなら、俺は千の拳で迎え撃つ……」スゥッ

賢者「羅行千界拳!! づぇあぁたタタタタタタタタッッ!!!」



側近「甘い、甘い、あまぁぁい!!」ズドドドドドッ

賢者「ぬおおおおおおおッ!!」ズダダダダダダッ



側近「……」

側近「……」ニヤリ

側近「ちぃえああぁぁアア!!」ズドンッ

賢者「ぐはぁっ!?」ドサァッ



側近「ふふっ。あの頃ならともかく、片足を義足にした貴様では私に勝てない」


勇者「賢者っ!!」

賢者「来るなッ!! これは俺が招いた結末だ。俺の手で片を付ける」ググッ

賢者「側近、よ……お前は、賢者と呼ばれる者のみが扱える究極魔法を知っているか」スゥッ



側近「……」

側近「時間稼ぎのつもりか? つまらないハッタリを……」


賢者「……」

賢者「究極魔法。その名を、『マダンテ』と言う」


側近「まっ、マダンテだとぉっ!? いや……まさか、貴様が使える筈が無い!!」

賢者「俺の全魔力、そして魔術回路を破壊し、二度と魔法は使えなくなってしまうが……これもまた運命。従おう」ゴゴゴゴゴゴッ



賢者「本当は魔王に取って置きたかったのだが……」チラッ

勇者「お前の勇姿、しかと見届けた」

賢者「頼むぞ勇者よ。魔王を倒してくれっ!!」


側近「ちぃっ、マダンテなど使わせるかっ!!」バッ

賢者「ここでは被害が出る……場所を変えるぞっ、バシルーラ!!」ドンッ

側近「グウッ!!?」ギュワァーン



賢者「……」

勇者「……」コクッ


賢者「ルーラ!!」ギュワァーン


勇者「さて、こちらも終わらせようか」スッ

炎の魔神「……」ドサッ



山の魔神「こうなれば、我らが相手だ」

雲の魔神「言って置くぞ? 風と炎の魔神は我らの足元にも及ばない」


勇者「……」

勇者「掛かって来なさい」クイッ



雲の魔神「くくっ、我が拳は我流。我流は無形。雲のように掴み所の無い拳で、貴様は成す術なく倒れるのだ」スッ


勇者「側近とやらの実力は認めよう。尊敬もしよう。だが、私に取っては、側近か、それ以外か、でしか分けていない」

勇者「先に倒した二人と、これから倒すお前達は、私にとって何も印象が変わらない」


雲の魔神「チッ、言わせておけばぁぁっ!!」ギリッ

山の魔神「ペースを乱すな。同時に掛かるぞッ!!」スッ



山の魔神「フフッ……」ドシンドシン

勇者「……」


山の魔神「鬼の拳!!」ドォッ

勇者「遅いっ、はぁぁぁぁっ!!」ドスンッ


山の魔神「ぐはぁぁッ!? 凄まじい、威力だ」グラッ


山の魔神「だがっ!!」ガシッ

勇者「むっ!?」



山の魔神「力だけならばこちらも自信が有ってな……わざと攻撃させ、こうやって腕を掴んでしまえば」ニヤリ


勇者「くっ……」

山の魔神「今だ、雲の魔神!!」


雲の魔神「お前の命、無駄にはせん!!」ゴゴゴゴゴゴッ

雲の魔神「魔神クラウドが究極最終奥義ッ、超級武神覇弾!! 消し飛べぇぇぇぇっ!!!」ドゴォォォォォォッ



勇者「ッ!!?」

山の魔神「ガッハッハッ!! 共に地獄へ落ちようぞぉぉ!!」



 ズドォォォォォォォォォオオ!!!



 パラパラパラ

雲の魔神「……」

雲の魔神「消し炭も残らぬか……山の魔神よ、お前の意志、受け取ったぞ!!」グッ




雲の魔神「しかしこの俺が、たかが人間相手に……全魔力を消費するエネルギー波を放つ事になるとは」

雲の魔神「……」

雲の魔神「だが疲れたとは言ってられんか。早く後方部隊の指揮に戻らねば」バッ




 トタッ




雲の魔神「!!?」クルッ


勇者「……」

勇者「おしいな……」



勇者「魔法に頼らず、己が拳か武器を用いて掛かって来れば、私に勝てたかも知れぬものを」スッ


雲の魔神「な、なんで貴様が生きている!?」


勇者「魔王には魔法が効かぬ。何故なら、果てしなく高い対魔力数値を持っているからだ」

勇者「そしてそれは、この私も同じ事。私に魔法は効かん!!」



雲の魔神「魔王様の事を知っている……き、貴様はっ!?」

勇者「私の名は勇者」


雲の魔神「勇者だとっ、ぐぅっ……ギギッ、余計に貴様を殺す理由ができた!!」


勇者「……」

勇者「この剣を抜き、お前たちの忠誠心に捧げよう」ジャキッ



雲の魔神「そっ、その剣はぁっ!!?」


勇者「この剣は『夢想転生剣』。魔王の持っている剣と同じ物だ。そしてお互いに……必殺の一振りとなる」


雲の魔神「そこまで魔王様を知っていると有っては生かして置けぬ……」

雲の魔神「死ねぃ、勇者ぁぁぁぁぁっ!!!」バッ




 金色の帝都城門 遥か前方位置



魔族「ギャハァァァァッ!!」


戦士「くっ、どんだけ居るんだよ……キリがねぇぜ!!」ザッ

武道家「商人、残りのエリクサーは?」

商人「さっきので最後」



ポッポ「クククッ、もっと絶望的な事を教えてやろうか?」バッサバッサ

戦士「なにっ?」


ポッポ「ワシは変身能力を持つ種族でな、変身すると戦闘能力が爆発的に上昇する……」

武道家「そんなっ!!」


ポッポ「その変身を、ワシは後二回残しておる」ニヤリ

商人「もうおしまいだあ」ガクガクブルブル



ポッポ「ワシの変身を見せてやる!!」


ポッポ「ポッポモン進化~っ」バッサバッサ

ピジョン「ピジョンモン!!」バッサバッサ


ピジョン「生意気な人間共め、かぜおこしを喰らえっ!!」バッサバッサ





僧侶「ほぉぉぉっ、シャオ!!」スパァッ


ピジョン「おや、ワシの体が?」ズバズバズバッ

ピジョン「細切れになっとるぅ~っ!?」バラバラ


戦士「お前はっ!?」

僧侶「どうやら良いタイミングだったようだな? 勇者に借りを返しに来た」スタッ



僧侶「ベホマラー」


武道家「おおっ」キュイン

僧侶「これでやれるか?」


商人「援軍が来るまで堪える」キュイン




 北陸より更に北 離れ小島



側近「ぐっ!?」ギュワァーン

側近「どこまで飛ばしたんだ?」キョロキョロ



ギュワァーン

賢者「……」スタッ

賢者「ここなら、思う存分に戦えるな」



側近「……」グッ

賢者「……」スッ


賢者「ハァッ!!」バッ

側近「ふっ!!」パシッ


側近「てやぁっ!!」シュッ

賢者「トアッ!!」パシッ



側近「チッ!?」グラァ

賢者「好機!!」ガシッ


側近「ッ!!? 貴様、私の体を!? 離せッ!!」ドスッドスッ

賢者「ぐぅっ、死ぬまで離さんよ!!」




 時間の中で生きてる 孤独な囁き

賢者「側近、お前はここで俺と共に逝くのだ!!」バチバチィ

 手探りの中 覚えた ぬくもりと淋しさ

側近「魔力が大幅に上昇している……まさかっ、本当にマダンテを!!」


 まぶしく輝く お前の身体抱き寄せ 今


賢者「……」ニヤリ


 そうさ愛する人には 時代は流れ 徨う心に 明日は見えない



 光の中で揺れてる お前の微笑

側近「ひっ!? ぃやだ、死にたくない、魔王様ぁっ!!」

 足音だけをのこして 闇に消える シルエット


賢者「その愛、死して魔王へと届けよ!!」


 満たされ 羽ばたき 女神が背中向けて 今


側近「愛してますっ、魔王様ぁぁぁぁァァァアア!!!」

賢者「究極魔法、マダンテ!!!」カッ


 だから今日より 明日より 愛が欲しい
 夢より愛する君が欲しい 全てが・・・






 ドゴオオォォォォォォォォォォォォン!!!!




勇者「ッ!!? 空が……」

勇者「逝ったか、賢者よ……私は、私の役目を果たそう」


雲の魔神「……」ドサァッ



 ダダダッ

勇者「……」ピクッ



団長「敵は城門の前方凡そ一キロ!! 全軍突撃ィィッ!!」バッ


大騎士「おおおおおおおお!!」

騎士達「おおおおおおおお!!」


勇者「私も手伝おう」

団長「……」

団長「この魔神達は貴方が?」



勇者「賢者の助けが有ったから倒せた」

団長「え?」

団長「け、賢者様は!?」


勇者「……」

勇者「賢者は……」




賢者「俺は、ここに居る」スタッ


団長「賢者っ!!?」

勇者「ッ!? 賢者……生きて居たのか?」


賢者「フッ、神の気紛れか知らぬが、ルーラ一回分の魔力が残っていたのだ」


勇者「そうか……」ニコッ

賢者「心配を掛けたな、勇者よ」ニコッ





 数時間後、魔王軍の七割を殲滅し、三割を撤退させる事に成功した。



,



勇者「僧侶……すまない、礼を言う」

僧侶「ふっ、気にするな。俺は借りを返しただけだ。がんばったのはコイツらだよ」


戦士「へへっ♪」

武道家「ボクも強くなったでしょ?」ニコッ

商人「……」

商人「師匠、私はお前の血で化粧がしたい」


勇者「まだその呪われた剣を持っていたのか? 捨てて来るから寄越しなさい」バッ

商人「ああん」



僧侶「しかし良かったのか? かなりの待遇で歓迎すると賢者は言っていたが……」

勇者「すぐ近くの森に有るコテージハウスを借りた。しばらくはそこで、のんびり休息するよ」


勇者「それに……今は帝都に、外部の者が立ち入る時では無い」

僧侶「……」

僧侶「変わるといいな?」

勇者「変わるさ。何かを決意した目をしていたからな」




  金色の帝都 街の広場



男「賢者様だ!! 賢者様が戻って来たぞぉぉっ!!」

女「賢者さまぁぁっ!!」


賢者「ッ!? どうして民は避難していないのだ?」

兵士「もちろん、裏側から逃げるようにと言いましたよ? ですが……賢者様を置いて逃げる者は、誰一人としておりませんでした」ニコリ



幼女「ふぇぇっ、けんじゃさま~っ」トテトテ


 ギュッ


賢者「ふふっ、おお、ヨシヨシ。俺は無事だ、安心しなさい」ナデナデ

兵士「こんな幼い子供までが、賢者様の『義足』に怖がらず抱き着いているではありませんか……これほど民に愛されている方を他に知りません」

賢者「皆も聞けぇぇっ!! 兵は誰一人欠く事なく、そして俺も無事だぁぁぁっ!!」


民達「おおおおおおおおお!!」



賢者「そして、もう一つ聞いて欲しい!! 私はこの戦いで魔力を失った。後は絞りカスのような魔法が一度か二度……使えるかも知れないが、以前みたいに魔法は使えない」

賢者「よって、今日限りで賢者を止め、一人の兵士として生きようと思う!!」



 ダッダッダッ



帝「なにぃっ!! 賢者キサマ、魔力を失ったと言うのか!?」



賢者「……」

賢者「少し、離れていなさい」ニコリ

幼女「うん」トテトテ


賢者「はい。最早この俺は、賢者と呼ばれる存在とは程遠いでしょう」


帝「ぐぬぬっ……この、役立たずがぁッ!! 魔法が使えなくなってどうするぅ!!」バキッ

賢者「ぐっ!? すみません帝……」ドゴッ



帝「拾ってやった恩を仇で返しおってぇ!!」

賢者「……」キッ


帝「なんだぁ、その目は? 気に喰わんなぁ!! よし、決めた!!」

帝「民どもよ聞け、明日から全ての税金は五倍だ!! 反対する者はここで処刑する!!」



賢者「なッ!? 血迷ったか帝!!!」

帝「五月蝿い!! この俺さえ潤えばそれで良いのだ!! それと賢者、キサマは死刑だ!! ここで首を落としてやるっ」


帝「おい誰か、賢者を処刑しろ!!」


大騎士「……」

弓騎士「……」



帝「んっ?」キョロキョロ

帝「ちっ、おい団長、お前が賢者を処刑しろ!! 処刑しなければお前も同罪だ!!」


団長「……」

賢者「……」


団長「賢者様……」ニコリ

団長「どうやら私は目が疲れて見えなくなりました。ついでに、耳も遠くなり聞こえなくなりました」クルッ


帝「あ? だぁれが後ろを向けと言ったぁ!?」


兵士「俺もっ、団長と同じです!!」クルッ

大騎士「俺もっ!!」クルッ

弓騎士「俺もです!!」クルッ


男「……」

男「ああ~っ、何か耳に詰まって聞こえねぇやぁ」クルッ

女「ほんとぉだぁ。聞こえなぁい」クルッ

母「ほらっ、幼女ちゃんも」クルッ

幼女「きこぇなぁぃ」クルッ



帝「民どもまで後ろを!? どうなっている」


団長「賢者様? 『王が民を決めるのではなく、民が王を決める』。そう賢者様が私に言った言葉を、私は今でも覚えています」

団長「そして民が、我ら騎士団が、命を投げ出しても仕えたいと思うのは、一緒に死んでも良いと思うほど慕っているのはっ、この帝都でたった一人です!!!」


賢者「ッ!!?」

賢者「……」グッ


賢者「帝よ、最初で最後の通告だ。今貯まっている資金はお前にやろう。そしてその金を持ち、この帝都から去れ!!」



帝「なんだとぉっ!?」


賢者「思えば俺の判断も間違っていたのかも知れぬ。前帝に時期帝を決めるよう託された時、忠義などを感じてお前を帝に推薦するのでは無かった……」


帝「俺をっ、バカにするか賢者ァァ!!! 魔法を使えぬキサマなど、俺ですら殺せるのだっ!!」


帝「民どもと纏めて吹き飛ばしてやるっ、死ねぃ!! ベギラゴ……」バッ

賢者「これが、本当に最後の魔法だ!! 将の輪!!」バッ



帝「ひぎっ!?」ガクガク

賢者「塵も残さん!!」


帝「ぎひゃああああああああ!!!」ザシュュュッ



 ヒューッ



賢者「終わった……」スゥッ



団長「大役、お疲れ様でした」


賢者「これで、この帝都も変わるだろう」


団長「いえ、変わるのでは有りません。賢者様が、変えるのです」

賢者「……」

賢者「で、有れば、俺からも条件が二つ有る」



賢者「勇者一行を見ていて思ったのだが、あの者達は仲間だから強いのだ。仲間に強い上下関係が有ってはならない。よって……」

団長「よって?」


賢者「俺が魔法を使えなくとも、これからも俺を賢者と呼べ。どうも帝はしっくり来ない」ニコリ

団長「くすっ。はい、わかりました賢者様。そして、もう一つは?」



賢者「こちらは民達を見て思った。家族とはとても素晴らしいものだとな」

団長「あ、あのっ……」


賢者「団長よ、俺は子供が欲しい」

団長「……」


賢者「団長よ、美しい妻が欲しい」

団長「あぅっ……」



賢者「お前から好意を持たれていると感じたのは、俺の思い違いか?」

団長「けんじゃ、さまぁ……」カァァッ


賢者「それとも好意を持っていた俺の方だけで、貴女は……俺を好きではなかったのですか?」


 タッタッタッ

団長「わ、わたしもっ!! 私も一人の女として、貴方をお慕いしておりましたっ!!」ギュッ



賢者「そうか……」ニコッ

賢者「ありがとう、俺を好きでいてくれて、ありがとう」ナデナデ


大騎士「ひー、熱すぎて見てらんねぇよ賢者様」パタパタ

賢者「ふっ、すまぬな……」


賢者「再び聞けぃ民達よ!! 見ての通り、俺はこの者と結婚する!!」

弓騎士「おやおや、ふふっ」

兵士「何故か、泣けて来ます。やっと幸せに成られるのですね賢者様……」グスッ



賢者「俺の就任祝いと結婚祝いだ!! これから十日間、都を上げて祭りをするぞっ!!」

賢者「金の心配はするな、これまでに貯まっている税金を全て吐き出す!! 金は全て俺が出す!!」

賢者「これが俺からの、ただ一つのワガママだ!! 新たな都の門出をっ、民達の手で盛大に祝って欲しい!!」


民達「おおおおおおおおお!!」ワーワー


,




  それから数日後 森のコテージ


 勇者一行はコテージ庭の木々にハンモックを設置し、寝転がりながら皆で夜空を見上げていた



,



武道家「団長さんのウェディングドレス姿、キレイだってねぇ~」ゴロゴロ

勇者「ああ、そうだな」


武道家「ぼ、ボクも、魔王を倒したらウェディングドレス着たいなぁ」チラッチラッ

勇者「ああ、そうだな。世界が平和になったら、お前達は女としての幸せを見つけなさい」


武道家「うっ……微妙に話が通じてない気がする」ガクッ

商人「ザマァwwwwwwwwwwww」



戦士「ごほん……でさ、師匠」

勇者「どうした?」


戦士「見守るだけでいいって言ってたけど、師匠はもう……告白とか、本当にしないのか?」

勇者「……」

勇者「ああ、しない」



勇者「例えるなら、そうだ……お前達に、あの星座は見えるか?」スッ


戦士「あのヒシャクみたいなやつ?」

商人「杓」

武道家「神殿とかで、お清めの水を掬ったりするんだよね?」


勇者「うむ、北斗七星と言うのだ。ならば、その脇に在る小さな星も見えるな?」

戦士「う~ん、アレかな? 小さくてすぐに消えちまいそうだけど」



勇者「私はあの星でいい。北斗七星の横でひっそりと輝くあの星で……」



戦士「そっ、か……良いぜ師匠?」


勇者「……」

勇者「なにがだ?」


戦士「よっ、と!!」スタッ


 トテトテ


戦士「師匠が忘れられるまで、オレは二番で良いよ」ギュッ

武道家「~~~~~~~!!?」

商人「二番は私。戦士は今すぐ師匠から離れるべき!!」


 ワーワー ワーワー


勇者「ふふっ……」


勇者(私もいつか幸せになれるのだろうか?)

勇者(生きて、魔王を倒せるか?)

,





ひとまずここまでが中編と言う事で一区切りです

続きは後日ここか、別スレ立てて書きますm(__)m

長くなりそうなので、たぶん別スレかも。その時はリンク貼ります



なんか、ここだけで収まりそうなので、続きはここに書きますm(__)m


後編

勇者「言ったはずだ! あなたの全てを目指したと!!」



,



  金色の帝都 解放


  砂漠の街 セイントキングダムへ


,



 砂漠の街への道中 豪華客船の船上



戦士「お~~~っ」キョロキョロ

武道家「みてみてっ、ししょー!! イルカだよイルカっ、イルカがたくさん泳いでるよぉ~♪」


商人「師匠、こっち」グイグイ

勇者「ははっ、わかった分かった」



僧侶「フッ、元気が有るのは良い事じゃないか?」

勇者「有りすぎて困るがな……」


僧侶「それで勇者よ、これからの予定はどうなっている?」

勇者「まずは砂漠の国ジャガンノートへ向かい、そこを経由してセイントキングダムを目指す」


僧侶「セイントキングダム? 聞かぬ場所だな……」

勇者「最近になって出来た街だ。私はそこで噂の真実を確かめねばならぬ」




僧侶「うわさ?」

勇者「ああ。実は……」



乗客「キャァーーーーッ!!!」



僧侶「なんだ!?」バッ

勇者「ッ!!?」バッ


戦士「し、師匠!! あっちの空を見てくれ!!」

筆がめっちゃくちゃ遅いな



勇者「あれはっ……」

僧侶「黒い空が、近付いて来る!?」


武道家「あは、は……渡り鳥の群れ、じゃないよね?」

商人「だとしたら、私のデータベースには存在しない鳥類」

>>391

(;´д`)何個もスレ立てちまってるから……みんな同時進行なんだぜ




 豪華客船の数百メートル前方上空



改造ポッポ「魔王様!! あそこに乗っているのが反逆者です!!」ガチョンガチョン

魔王「ほぉっ……この魔王に反抗する者は、例え蟻でも許さん!! お前たちは船の真上まで行き待機だ。俺が一人で根絶やしにしてくれる!!」


魔王「ハイヤー、黒竜号ッ!!」

バハムート「グアアアアアアアアウ!!!」バッサバッサ



改造ポッポ(ククッ、ワシをこんな体にした報い……受けるがいい!!)




   豪華客船の船上



勇者「どうだ、残ってる者は居たか?」

戦士「いや、乗組員に聞いたら、みんな中に避難したらしいぜ?」

武道家「こっちは誰も居ないよ~っ」タッタッ

商人「こっちも大丈夫」


僧侶「どうやら、甲板には我々だけのようだな……」




戦士「にしても、何だよあのデカイ竜は!?」eエクスカリバー

武道家「まさか、あのまま突っ込んで来たりしないよね?」eアルテマウェポンの爪手甲

商人「沈まない。この豪華客船タイタニック号は絶対に沈まない」eアイスソード


僧侶「どう来ると思う?」スッ

勇者「恐らく……降りて来るだろうな」スッ




 バッサバッサ バッサバッサ



戦士「魔物の群れが上空に集まったぜ!?」

武道家「やっぱり竜も居るよぉ!!」


勇者「……」

勇者「ッ!!」

勇者「来るぞッ!! みんな構えるんだ!!!」




 ガアッ──


魔王「ガアッハッハッハッハァッ!!!」バァァッ



 ズドォォォォォォォォン!!!


魔王「ぬぅん!!」ドシーン


商人「っ!?」グラグラ

戦士「まさか、あんな高さから飛び降りて来るなんて!!」グラグラ

武道家「しかも、ちゃんと着地してる!!」

そのスレどこだ

>>400


深夜だけだと↓とか…

『脱出クエスト』※安価
『脱出クエスト』※安価 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1364892859/)

比良坂初音「聖杯戦争?」
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男「まいんちゃんが男だった…死にたい」
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勇者「魔王……」

魔王「んっ、キサマは?」


勇者「私は、勇者だ!!」

魔王「……」

魔王「なるほど、勇者となったか……キサマが相手と有れば、この魔王も全身全霊を賭けて戦わねばなるまい」ニヤリ



改造ポッポ「魔王様!! その前にあの男をっ、あの男を殺してください!!」ガチョンガチョン


僧侶「……」


魔王「……」

魔王「ポッポよ、うぬは誰の命令で降りて来た?」

改造ポッポ「へっ? あ、あのっ、それはっ!!」

聖杯戦争のやつ大好きですよ
続きをもっと



魔王「俺の命令を聞けぬ者は、我が魔王軍にぃっ……」ググッ

改造ポッポ「ひぃっ!? 魔王様、どうかお許しをぉぉっ!!!」


魔王「いらぬわッ!!」ゴォッ

改造ポッポ「ぴぎぃぃぃぃっ!?」バキィッ


 パラパラ パラパラ


改造ポッポの破片「ピーッ……ガガッ」



勇者「……」


戦士「おいおいっ」ブルッ

武道家「あのポッポを一撃でっ!?」

商人「物凄い剛拳」



戦士「でも……さ?」

武道家「うんっ!!」

商人「魔王が破壊する剛の拳だとすれば、師匠は隙を誘う柔の拳。遅れは取って無い」


勇者「宿命か……」スッ

魔王「フッ、この魔王は天を握るのだ。邪魔はさせん!!」スッ



僧侶「待てっ!! 魔王よ、最初の相手はこの俺だ!!」


戦士「僧侶の奴、師匠の前に!?」


勇者「ッ!? 下がるのだ僧侶!!」

僧侶「勇者……魔王の拳をそこからじっくり見て置け。俺は一発でも多く奴の攻撃を受ける……お前は、奴の攻撃を見切る事に専念しろ!!」スッ

>>405
完結はさせるので、
ゆ~っくり待っててくだしゃひ



勇者「しかし……」

僧侶「頼む勇者、お前は絶対に負けてはならない存在なんだ!! お前の、役に立たせてくれっ!!」


勇者「……」

勇者「分かった……その気持ち、受け取ろう。だが良いか? 少しでもマズイと思ったら下がれ!! 私と代わるのだ!!」


僧侶「フッ……」

僧侶「ああ、そのつもりだ。俺だって死にたくはない」



僧侶「と、言う訳だ。魔王……まずは俺が相手をしよう」

魔王「くだらぬ。準備運動にもならぬわ!!」


僧侶「構えないのか?」

魔王「お前は蟻を踏み潰す時に構えを取るか?」ニヤリ


僧侶(しめたっ!! 魔王は相当油断している!! これなら倒す事は出来なくとも……)



僧侶「ほぉぉっ……」スゥッ

魔王「……」


僧侶「シャオッ!!」バッ

魔王「むっ!?」スパァッ



戦士「見ろっ!! 僧侶の攻撃で魔王の頬から血が垂れている!!」

武道家「薄皮が裂けただけみたいだけど……でもっ!!」

商人「僧侶の攻撃が効いてる」



魔王「ガァッハッハッハッ!! なるほど……蟻よりはやるようだな?」スッ

僧侶「ぐぅっ!?」スッ



戦士「でも何であんな余裕の無い顔をしてんだ?」

武道家「シャオでもダメージを与えられたから、シャオクロスを使えば倒せるかも知れないのにっ」

商人「……」チラッ

勇者「……」コクッ

勇者「そうだ。恐らく今放ったのが、シャオクロスなのだろう」


戦士「シャオクロスで、あの程度なのかよっ!?」

武道家「えっ、えっ!? 僧侶さん大丈夫だよねししょー?」

商人「負ける。後は師匠の為にどれだけ攻撃に耐えれるか」


勇者「……」

勇者「僧侶……」



僧侶「……」

魔王「こぬのか?」


僧侶「フッ……出し惜しみはしてられんか」スゥッ

魔王「死ぬ前に全ての力を出し切るがいい。そして、安心して死ねい!!」



僧侶「ほぉぉっ……ならば受けよッ!! 究極最終秘奥義、断固断血残烈拳!!!」ダッ

魔王「ぬッ!?」


僧侶「しぃぃえぁぁぁあッッ!!!」ズオォォッ

魔王「……」

魔王「……」ニヤリ


魔王「フンッ!!」パシッ

僧侶「何ぃッ!!?」グラッ


戦士「ああっ!?」

武道家「僧侶の奥義が簡単にっ!?」


魔王「ふはァッ!!」バッ

魔王「禁じ手、剛昇竜ッ!!」ゴォォッ


勇者「いかん……あの技は!? 避けるのだ僧侶ぉぉぉっ!!!」



魔王「むぅん!!」ドゴォッ

僧侶「ぐはぁッ!!?」


僧侶「うぅ……」ドサァッ


魔王「剛昇竜の極意は内部破壊に有る。お前の命は後数ヶ月……その間は死の恐怖に怯え、そして俺の恐怖を回りに語り広げるがいい!!」

魔王「それが、この魔王の恐怖伝説として語り継がれるのだぁっ!!」



勇者「……」グッ

勇者「お前たちは僧侶を頼む」


戦士「わかったぜ!!」

武道家「うんっ!!」

商人「……」コクリ



勇者「はあああああああああ!!!」ゴゴゴゴゴッ


魔王「……」

魔王「他人の為に怒れる……勇者よ、お前は優しい男だ」


魔王「だがっ、優し過ぎるっ!!」

魔王「お前の優しい拳では、この体に傷一つ付ける事などできぬわっ!!」スッ


魔王「ぬおおおおおおおおッ!!!」ゴゴゴゴゴッ


勇者「……」スッ

魔王「……」ニヤリ


勇者「……」

魔王「……」



魔王「フッ、ここまでだな」


,



魔王「こんなにも脆い船の上では、人間共が気になって本気で戦えぬのだろ?」

勇者「このまま、去ると言うのか魔王!?」


魔王「我々が戦うには、それに相応しい場所が在る。俺はそこでお前を待とう」


勇者「……」

勇者「あの場所か……」

魔王「そうだ。それまで精々腕を磨くがいい!!」



魔王「ハイヨーッ!! 黒竜号!!!」

バハムート「グオオオオオオオウ!!」バッサバッサ


魔王「サラバだ勇者よ……フッ、ガァッハッハッハッハァッ!!!」ダンッ


勇者「……」

勇者「魔王……」



 バッサバッサ バッサバッサ


勇者「ここは引いたが、そのまま戦っていれば恐らく……」


戦士「早く来てくれ師匠!!」

武道「僧侶さんがっ、僧侶さんがぁぁっ!!」


勇者「ッ!!?」

勇者「すまないっ、直ぐに行く!!」ダダッ

趣味で書いてるようなのを無料で見てるのに遅筆だねぇと言うだけならともかく過信がどーのとか…

完結作品読み漁るかすればいいんじゃないですかねぇ…読み手様(笑)

>>428

誤爆してるぞ


僧侶「はぁっ、はぁっ……」

商人「師匠」


勇者「うむ。痛みを引かせる事しか出来ないが……」スゥッ

戦士「僧侶の腹に手を当ててどうすんだ師匠!?」

武道家「魔法でも治らないんだよ!?」


勇者「龍波呼吸法」パァァッ



僧侶「はぁぁっ……んっ? これはっ」

商人「起きた」


勇者「すまない僧侶。痛みは取ったが、魔王の言った通り……」

僧侶「フッ、気にするな勇者。一撃しか打たせてやれなかったが、魔王の攻撃は見たか?」

勇者「ああ。しかと目に焼き付けた」

僧侶「なら良い……良いんだ」



勇者「……」

勇者「街に着いたらキメラの翼を買おう。お前は妹の場所へ戻りなさい」


僧侶「……」

僧侶「そうだな。体から力が抜けて行くようだ……これ以上は一緒に居ても役に立てない」

僧侶「最後は、家族に看取られて逝くとしよう」ニコリ



戦士「くっ……ヒデェ事しやがるぜ魔王のヤツ!!」

武道家「……」

武道家「ねぇししょー? ししょーと魔王って、知り合いなの?」

商人「二人は『あの場所』で通じてた」


勇者「……」

勇者「確かに、以前から私は魔王の事を知っている」


戦士「だと思ったぜ……オレらが全員ブルってたのに、師匠だけは平然としてたからな」

武道家「二人は、どんな関係なんでしょうか?」

商人「タチネコ以外ならどんな関係も受け入れる」



僧侶「俺の事は気にするな。仲間に真実を語ってやれ」

勇者「……」

勇者「そうだな」ニコリ


勇者「ここで私と魔王の関係を語ろう。私の話を聞いた後に、どうすべきかはお前達が自分で決めなさい」

戦士「……」コクッ

武道家「……」コクッ

商人「……」コクッ



勇者「私と魔王は幼き頃、共に修行をしていた」


戦士「っ!?」


勇者「同じ師の下で習い、勇者となるべく修行していたのだ」

勇者「と言っても、私も魔王も捨て子だったのを、師が拾い育てただけなのだがな」


勇者「だがある時、私が水汲みから戻ると……」

武道家「……」ゴクリ


勇者「魔王が師を殺していた」

商人「な、なんだってー()」


勇者「私はそれまで魔王を人間だと思っていたが、そこで初めて魔族だと知ったのだ」



勇者「そう、あの時……」




  あの時──




勇者『どうして師を殺したんだ魔王!?』

魔王『一言で表すならば、魔族の血に目覚めた……そんな所か』

側近『お迎えにあがりました魔王様。使い魔のバハムートをお使いください』バッサバッサ

バハムート『グオオオオオオウ!!』



魔王『俺はこれから前魔王を殺し、俺が新たな魔王となる!!』

魔王『そしてこの地上を征服し、あの女をッ、全てを俺のモノとするのだ!! それが俺の野望!!!』


勇者『魔王よ、言ったはずだ……それは野望では無く愛だと!!』

魔王『ぬかせぃ!! 例えキサマで有ろうと、我が覇道を阻む者には死あるのみ!!』



勇者『どうあってもヤメぬか……』スッ

魔王『キサマもこの地で死ぬか? この老いぼれのようにな!!』スッ


師『……』グタリ


勇者『魔王ぉぉぉぉぉおお!!!』バッ

魔王『グハハハハハハハッ!!!』バッ




  ─────




勇者「……」

勇者「そうして魔王は新たな魔王となり、私は最後の仕上げを終え、別れて暮らしていた弟の住む国へと戻ったのだ」

戦士「そうだったのか……」

武道家「魔王と修行してたなんて、どおりでししょーは強い訳だよね」


勇者「だが奴も強い。そして僧侶へ繰り出した技を見て分かった……私と修行していた頃より数段力を増していると」

戦士「そんなっ!? それじゃあ師匠より強いってのかよ!!」

勇者「……」コクッ


勇者「しかし勝機は有る。それがこの無敵の剣、『無想転生剣』」

商人「魔王も背負ってた」

勇者「うむ。恐らく魔王は、この剣を鞘から抜けぬ」



僧侶「何故そう言え……いや、もう質問はよそう。俺はただ、お前の勝利を、世界の平和を願うのみだ」

勇者「その命、無駄にはしない。必ず勝つと約束する」


戦士「オレ達も最後まで手伝うぜっ!! なっ?」

武道家「うんっ!! 絶対に魔王を倒そっ!!」

商人「……」コクン



 砂漠の国ジャガンノート 城内のロビー



メイド達 バトラー達
「お帰りなさいませ使徒様」ペコリ


使徒「ふむ」


使徒「……」チラッ

バトラー達「……」ズラーッ


使徒「……」チラッ

メイド達「……」ズラーッ



使徒「……」タッタッタッ


使徒「……」ピタッ


使徒「おい、そこの女」

メイド「わっ、私でしょうか?」ビクッ


使徒「そうだ。前髪を上げてみろ」

メイド「それは……」



使徒「二度は言わん。前髪を上げて見せろ」

メイド「うくっ……はい」サッ


使徒「……」

使徒「その額の傷はどうした?」

メイド「こっ、これは転んでしまって!! ですが、すぐに治りま……」

使徒「要らん。この城に置くのは美しく完璧な者のみ」



使徒「お前は城から追放だ!! 奴隷どもの慰み者として落としてやれい!!」ユビパチン


黒服達「はっ!!」ザッ

黒服「さぁ、来るんだ!!」グイッ


メイド「いやぁぁっ!! 使徒様、お助けをっ、お助けをっ!!」

バトラー達「っ……」グッ

メイド達「っ……」グッ


使徒「くくく、ハハハ、ハァッハッハッハァッ!!!」




 砂漠の国ジャガンノート入国門前



戦士「あ~っ、やっと着いたぜぇ」パタパタ

武道家「アツいぃっ、早く宿で休もうよししょー?」パタパタ

商人「……」ダラダラ


僧侶「……」

僧侶「戦士よ、頼みが有るのだが」



戦士「あっ? どうしたんだ僧侶?」

僧侶「ほぉぉっ……」


僧侶「シャオ!!」バッ

戦士「ッ!? 何すんだよっ!?」パシッ


戦士「……って、アレ? 簡単に捌けた」

僧侶「やはり、俺はここまでだな。これだけ体が弱っていては、勇者の弾除けにもなってやれぬ」ニコリ



勇者「気にするな。残る余生は、お前の好きな場所、好きな者と過ごしなさい」ニコリ

僧侶「……」

僧侶「そうしよう。戦士もすまなかった」

戦士「えっ、あ、ああ……気にしてねぇよ」


僧侶「裏切りの僧侶には俺の手で天誅を下したかったが、ここで戦いからは身を引き、家族と……暮らすよ」



  ジャガンノート入場門


門兵「止まれっ!!」

門兵「このジャガンノートに入りたくば、チェックを受けてからだ!!」


戦士「チェックだぁ?」

武道家「また帝都の時みたいに触られるのかな?」

勇者「……」

勇者「審査を受ける理由を、聞いても良いだろうか?」



門兵「それは……」


使徒「それは」ザッ

使徒「俺から話してやろう」


門兵「使徒様っ!?」

僧侶「なっ!? キサマはっ!!?」


使徒「久し振りだなぁ……僧侶」ニヤッ



僧侶「裏切りの僧……使徒ッ!! 海を越えてこんな場所に居たか!?」

使徒「僧侶……俺はお前の血で化粧がしたい」スッ


商人「!!!!????」


僧侶「僧達の返り血で染まった赤き牙、この場で叩き折ってやる!!」スッ



門兵「使徒様ッ!? 戦うならば私が!!」ザッ

使徒「構わん……下がっていろ、手出しは無用だ」


勇者「僧侶、その体では……手を貸すぞ」スッ

僧侶「いや、これは俺の戦いだ!! 誰も手を出すなッ!!」

これは間違いなくダム破壊しますわ



僧侶「……」

使徒「……」


僧侶「ほぉぉっ!!」

僧侶「シャ……ぐぅっ!?」ガクンッ


戦士「ああっ!! 僧侶はもう跳ぶ事さえ……」

武道家「足をもつれさせてつまずくなんてっ!!」


使徒「ん!? ククッ……僧随一で華麗な技を誇った姿も、今は見る影も無いな」ニヤリ



使徒「つぇあぁぁっ……」

使徒「シャオ!!」バッ


僧侶「ッ!?」

僧侶「ぐああああああああ!!」ズバァァッ


僧侶「おぉ……」ドサァッ

商人「僧侶っ!!」

>>455

ギクッ



使徒「誰も俺を止める事はできぬ、飛翔拳を極めたお前でもなぁ僧侶!!!」


戦士「や、ヤロウっ!!」グッ

勇者「待つのだ戦士」スッ


戦士「えっ、師匠?」

武道家「なんで止めるのっ!?」

商人「獅子身中の虫」



使徒「ふっ……この街には美しい者しか入れぬ」

使徒「そしてお前らは……」


勇者「……」

戦士「……」

武道家「……」

商人「……」シナリ


使徒「なるほど……その強さ、美と表現するには充分らしい」

使徒「良いだろう、入国を許可する。教会でその死に損ないの葬式でもあげてやるんだなぁ!!」



使徒「ハァッハッハッハッ!!」ザッ


門兵「……」

門兵「よ、よし!! 通れっ」




戦士「なぁ、師匠!?」

勇者「……」

勇者「私たちが手出しする事を、僧侶は望んでいない」



僧侶「……そうだ」フラフラ

武道家「僧侶さん!!」タタッ


僧侶「心配するな。俺は僧侶……回復魔法の心得はっ、ベホマッ!!」

僧侶「……」シーン

商人「何も起きない」


僧侶「ホイミ」ポワワッ

僧侶「ぐっ、既にここまで魔力も失っていたかっ!?」



勇者「僧侶……」

僧侶「フッ、さっき言ったはずだ。俺は残りの人生を家族と静かに暮らすと。さぁ、宿へ行って休もう」ニコリ


戦士「くっ……んじゃ、行こうぜ」

武道家「そう、だね」

商人「買い物もする」




 砂漠の国ジャガンノート 宿の個室



僧侶「……」

僧侶「すまないっ」グッ


僧侶「妹よ、すまないっ!!」

僧侶「俺はっ、俺はぁぁぁぁぁっ!!」



 砂漠の国ジャガンノート 酒場



勇者「さぁ、好きな物を食べなさい」ニコリ

戦士「おーっ、メニュー表が凄い高い料理でいっぱいだぜ!! やっぱ肉だよなぁ♪」

武道家「だよねぇ、お肉がいいよねぇ♪」

商人「とりあえずオレンジジュース」



戦士「はっ、オレンジジュース? そんなのメニューに乗って……って、有ったな」


武道家「オレンジジュース、値段は……十万ゴールド!?」ガタッ


戦士「なんでステーキが三千ゴールドなのに、オレンジジュースが十万ゴールドもすんだよっ!?」


商人「飲みたい」



勇者「……」

勇者「ウェイター」チリチリン


ウェイター「はい、メニューはお決まりでしょうか?」

勇者「ステーキセットを四人前……」


ウェイター「ステーキセットを四人前」カキカキ

商人「……」ウルウル



勇者「と」

商人「!?」ガタッ



勇者「アイスミルクも四つ貰おう」

商人「……」ストン


ウェイター「ステーキセットとアイスミルクを四人分ですね? 少々お待ちくださいませ」ペコリ



勇者「あー、それと一つ質問をしても良いかな?」

ウェイター「えっ、あ、はい……どうぞ」


勇者「この酒とジュース類の高額な値段、そして席に着いても水が出て来ない所を見ると、ここでは水がとても貴重なのかな?」

ウェイター「っ!?」

ウェイター「あっ、あの……」



戦士「言っちまえよ」

武道家「この人、勇者なんだから安心して♪」


ウェイター「勇者様、ですか?」

勇者「そうだ」ニコリ

勇者「困っている事が有れば教えてくれ。もしかしたら、助けになれるかも知れぬ」



ウェイター「……」

ウェイター「注文もありますし、オーナーに一度確認して来ます」タタッ


戦士「あっ」

武道家「行っちゃったね……」

勇者「親切の押し売りも……良くはない、か。本当に困っていれば、あちらから話しに来るだろう」



 十数分後


ステーキ「お待たせ」ジュージュー


戦士「おーっ♪ うまそっ」カチャカチャ

武道家「あむっ♪ ん~っ、おぃひぃ」パクッ

商人「……」ソクッ


 ソクッ じゃなくて スクッ だった…

自分で小ネタを説明するのも寒いんで、気にしないでくれ…orz



勇者「……」

戦士「んっ、たへにゃいのかししょ?」モグモグ


勇者「ふふっ。幸せそうに食べるのを見ているだけで、私は腹が膨れてしまったよ」ニコリ

武道家「もぅ、なにそれぇ?」カチャカチャ


商人「食べないなら貰う」ソ ク ッ

勇者「うむ……お前たちはまだ若い。たくさん食べて大きくなりなさい」



勇者「私は、アイス……むっ!?」ピクッ

商人「もごもご、もごもごも?」


勇者「いや、なんでもない……」

商人「もぐっ」


勇者(近くで爆発的に魔力の増大を感じた……まさか僧侶、『アレ』をっ!?)

>>479

× 爆発的に
○ 爆発的な



ウェイター「こちらです」

オーナー「そうか……お前は仕事に戻りなさい」

ウェイター「はい」タッタッ


オーナー「……」

オーナー「すみませんお客様。私はこの店のオーナーでございます」ペコッ



戦士「んっ、どうしたんだ?」ゴクゴク

武道家「なにか相談でもあるの?」

商人「おち……アイスミルクは美味」ゴキュゴキュ


勇者「……」

勇者「私は勇者だ。困っている事が有るのなら話して欲しい。できるだけ力になろう」ニコリ



 食後 店内の奥 vipルーム



オーナー「実は……この街には水がありません」

戦士「はぁっ? メニューにはジュースやら酒やらが載ってたろ?」


オーナー「あっ、有るには有るのですが、私たちも水を法外な値段で買わなくてはならないのです」

勇者「元々はどのような生活を?」



オーナー「元々は……」

オーナー「元々は、この街の、国の中央には、美しい川が流れていたのです」


武道家「美しい、川……今は無いですよね?」

オーナー「ええ」コクッ

オーナー「川は遥か上流で塞き止められ、この街から消えてしまったのです」



勇者「……」

オーナー「国は塞き止めた場所にダムを造り、水はそこから何とか飲み水に足りるだけの配給制。それでも欲しいとなったら、国から買うしか……」


戦士「うっわ、ひでぇな」

武道家「生活に水は必需品なのに……」

商人「そんなに高いなら買わなければいい」


オーナー「水なんて、そんな大量に他から持って来られませんよ……」

オーナー「それに、水が無ければ洗濯も出来ない。体も洗えない。この街では汚れたまま生きて行く事はできません」


勇者「使徒と言う男が「美」と口にしていたが……」


オーナー「はいっ。ここ住民は定期的にチェックが、つまりどれだけ水を買ったのかが計られ、それに落ちるとダム増大工事のキツい鉱山作業送りにされてしまうのです」

オーナー「それはここから逃げ出そうとする者も同じ事……前は素晴らしい国だったのに、新たなトップがダムを造ってからおかしくなりました!!」



オーナー「あの使徒は最初、参謀としていつの間にか国主に仕え……そして国主はすぐに亡くなり、そのまま使徒が国主にぃっ!!」グッ


勇者「……」

勇者「なるほど。癌は理解した……だがっ、この話しを耳を立て、盗み聞いている者が居るっ!!」キッ


戦士「え」

武道家「どこどこっ!? 部屋には私たちしかいないよ?」キョロキョロ



商人「……」

商人「フッ」ニヤリ

商人「ようやく、気が付いたようだな勇者!! 私がスパイだっ!!」


戦士「!?」ガタッ

武道家「!!」ガタッ

扉の向こう「!!?」ガタッ



勇者「商人……」

商人「あ、はい……ユニーク失敗」ショボン

戦士「ふぅっ、なんだよビックリさせやがって」

武道家「もぉ、こんな時に冗談は言わないでよね」


 ガチャ ギィィッ

ウェイター「全く、驚かせるなよ……ここのスパイは私だ」



勇者「……」

戦士「……」ジィー

武道家「……」ジィー

オーナー「ウェイター、お前……」


ウェイター「あ」


商人「やれやれ……笑いは取れなかったようだが、マヌケは一人見つかったようだな」



ウェイター「ぐっ……バレてしまっては仕方ない!!」バッ

ジョーカー「私は使徒様の忠実なる右腕、ジョーカー。使徒様は裏切りを決して許さないっ!!」


オーナー「ひっ!? ほ、本物のウェイターはどうしたんだ!?」ガクガク

ジョーカー「んっ? ああ、居るさ……自宅にな。もう二度と動く事は無いが」ニヤリ



勇者「……」

勇者「ペラペラと良く喋る右腕だ……」ポキッポキッ


勇者「来なさい」クイッ


ジョーカー「フフッ……例え勇者とて、この暗殺爪戟術の地獄爪殺法を見切る事はできまい」ジャキン

オーナー「つっ、爪がまるで獣のように伸びたぁ!?」ブルブル

戦士「暗殺爪戟術!? あの無慈悲な殺人拳の使い手だって言うのかよ!!」

武道家「暗殺爪戟術と言えば、余りにも無慈悲過ぎて修得を禁じられたはずっ!?」

商人「無慈悲……」ゴクリ



ジョーカー「悪く思うなよ? お前たちが良からぬ行動したら即座に殺すよう、使徒様から仰せ付かっているのだ」スッ


勇者「……」スッ


戦士「師匠、珍しく怒ってるぜ」

武道家「うん。怒ったししょーの拳は……」

商人「余りにも無慈悲過ぎる!!」



ジョーカー「死ねぃ勇者!! 獣神爪戟掌!!」バッ


戦士「ああっ……獣神爪戟掌と言えば、暗殺爪戟術の中でも最も無慈悲と言われる技!!」

武道家「あんな無慈悲な技を出すなんて、なんて無慈悲な奴なのっ!!」

商人「むじひーーーーーーっ!!!」


ジョーカー「シャァァァァァアア!!!」

勇者「……」


勇者「ハッ!!」パシーン

ジョーカー「ぐへあっ!?」ドザァァッ


戦士「すげぇ……」

武道家「ただのビンタであの技を弾き返した……」

商人「無慈悲返し……」ゴクリ


ジョーカー「ぐっ、くくっ……私を怒らせましたね?」フラフラ

勇者「……」


ジョーカー「まぐれが二度も続くと思うなぁっ!! 獣神爪戟掌!!」バッ

勇者「……」スゥッ


勇者「フッ!!」パシーン

ジョーカー「ぷべらっ!!?」ドザァァッ



ジョーカー「ぐお、おっ、ぐぅぅっ……」フラフラ

勇者「ジョーカー……最後のチャンスを与えよう。もうこんな事は止めなさい。真っ当に生きるとここで誓えば、命までは取らない」


ジョーカー「……」

ジョーカー「流石は勇者……優しいのですねぇ」ニコリ


ジョーカー「その優しさ」

ジョーカー「ヘドが出ますよッ!!!」バッ



ジョーカー「つぅえあぁぁぁぁっ!! 獣神爪戟掌ッ!!!」

勇者「……」


勇者「悔い改めよジョーカー!!」グッ

勇者「禁じ手、剛昇竜ッ!!」ゴォォッ


勇者「打ち抜くッ!!」ズドンッ


ジョーカー「べろぶっ!!?」

ジョーカー「うぅ……」ドサァッ


勇者「ジョーカー、お前の命は後数ヶ月……さぁ、使徒の所へ戻り告げるがいい!! この国は、この勇者が解放すると!!」





   数年前 大聖堂院



大僧侶「ならん」

使徒「何故だ大僧侶!? この俺は僧の中で最も華麗で美しい技を持つ男!! それなのに何故だ!?」


大僧侶「……」

大僧侶「勘違いするなよ使徒? 何もお前が憎くて次期大僧侶に選ばないのでは無いぞ?」

使徒「それ以外に何が有ると言うのだ大僧侶!? 俺は誰よりも美しい……俺が成らずして誰が成る!?」



大僧侶「回りを見ず、自らしか認めようとしないその思い上がりだ!!」

使徒「なにッ!?」


大僧侶「ちょうど今、僧侶が燕谷で修行している筈だ。奴の技を見てみよ……そして僧侶よりも自分が上だと思ったらまた来なさい。その時はお前を大僧侶になれるよう支持しよう」


使徒「……」

使徒「言ったな? すぐに戻って来るぞ大僧侶!!」ダダッ



  僧侶の授業場 燕谷



 ヒューッ

僧侶「……」スゥッ


使徒(強風が吹く断崖の絶壁に片足で立っている!? こんな所で何をやっているんだ?)タッタッ

修行僧「ん? これは使徒様……燕谷に来るとは珍しゅうございます」ペコリ


使徒「礼は良い。僧侶はああやってずっと立っているのか?」

修行僧「はい。今日の様に風が強い日は『虹燕』が通りますゆえ、使徒様はその虹羽を取るおつもりなのです」



使徒「虹羽? 虹燕の尾に一枚だけ生えると言うアレか?」

修行僧「はい。虹羽は高級薬剤の材料にもなりますから」


使徒「巣に居る虹燕なぞ、すぐに捕まえられるだろうに……崖際に立っている意味が分からんな」

修行僧「それは僧侶様が……あっ、虹燕が来ました!! 実際にご覧になってください」


使徒「ふん……」



 ヒューッ

僧侶「……」

僧侶「はぁっ!!」ダンッ


使徒(跳んだ……だとっ!!?)


僧侶「虹燕よ、すまぬっ」スパァッ


修行僧「崖の上を飛ぶ虹燕の虹羽だけを、虹燕が飛んでいる状態で切り離す……何度見ても、僧侶様の『飛翔燕舞』は惚れ惚れします」

使徒「……」

使徒(美しい……)



使徒「はっ!?」

使徒(ぐっ……この俺が、一瞬とは言え目を奪われるとは!!)


使徒「ちぃっ!!」ダダッ

修行僧「あっ、使徒様!! 行ってしまわれた……」



使徒(畜生、畜生、畜生、畜生ッ、畜生ッ!!!)



 現在 ジャガンノート 使徒の寝室



使徒「はっ!?」ガバッ


使徒「……」

使徒「夢か、妙な時間に寝るものでは無いな」

使徒「僧侶……」



 バタンッ

ジョーカー「しっ、使徒様!? 大変ですぅっ!!」


使徒「……」

使徒「騒々しいぞ、どうしたジョーカー?」


ジョーカー「勇者の奴が、この街を解放すると言っておりますっ!!」

使徒「そうか、そろそろこの街にも飽きた処だ……お望み通り街を返してやろう」ニヤリ



使徒「カルタスに『あの指示』を出すとするか……」スタッ

ジョーカー「カ、カルタスですか? 私は何をすれば?」


使徒「……」

使徒「ジョーカー」

使徒「急ぎとは言え、ノックもせずに俺の寝室に入るのは……美しくないな」スッ

ジョーカー「へっ?」




ジョーカー「お、お待ちください!! 私は勇者の技で残り数ヶ月の命、せめて後は……」

使徒「……」


ジョーカー「待てよ使徒!! ここまで仕えたやった私に恩義は無いのかッ!!?」

使徒「俺の金を勝手に持ち出し、他国で豪遊している男が言う事か?」

ジョーカー「ッ!!? バレていたかっ……クソッ!!」ダダッ



使徒「醜い……」

使徒「逃がさんぞジョーカー!!」ダッ


ジョーカー「ちっ、こうなったらお前を殺してやる!! 獣神爪戟掌ッ!!」バッ

使徒「フッ、獣神爪戟掌!!」バッ




 ジャガンノート 道具屋




勇者「明日でケリを着ける。それぞれ必要な物を買いなさい」


戦士「あいよー、エリクサーくれぇ!!」

武道家「店員さ~ん、砥石……って有るかなぁ?」

商人「さとりの書ください」



勇者「私も見て回るか……」

勇者(あのアイテムが見付かると良いが……)




店員「あのごめんなさいっ」ペコリ

店員「さとりの書は、客寄せの為の展示品だから売れないの」


商人「……」

商人「……?」

商人「私は、欲しい。私に譲るべき」


店員「いや、だからこれはちょっと……」


商人「店員、髪が長くて綺麗」ツカツカ

店員「えっ? あ、ありがとう……」


商人「店員、おっぱい大きい」ツカツカ

店員「それは、あのっ……」ジリジリ


商人「店員、その太眉が個性的で素敵」ツカツカ

店員「わかったから、これ以上よらないでっ!!」グイグイ


商人「店員、店の奥へ一緒に行く」ガシッ

店員「ちょっ!? 離し……」ズルズル




店員「アッーーーーー!!!」




 シクシク シクシク


店員「お客さんヒドイ!! 鬼、悪魔、長門!!」ポロポロ




 パリン、パリン、パリンッ!!




店員「って、アレっ?」キョロキョロ

商人「ジャスト10秒。いい夢は……見れたかよ?」


商人「じゃあ、さとりの書ください」

店員「えっ? えっ!?」


商人「さとりの書、ください」ツカツカ

店員「ひっ!? はいどぅぞー!!」



商人「全く、太眉の女はどこでも迷惑を掛ける」


勇者「……」

勇者「商人」


商人「……」

商人「てんいんさーん、これお返ししまぁす!!」ササッ



勇者「……」

勇者(僧侶、そろそろ落ち着いて来た頃か? 時間を稼ぐのも楽では無いな)


戦士「師匠、オレは準備おっけーだぜっ」

武道家「ボクもっ♪」トテトテ



 ジャカンノート 宿の一室



 ドンドン ドンドン


宿主「お客さん!! さっきから大声を出して、どうしたんですか!?」



僧侶「ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ」

僧侶「ふぅっ、ん……ふぅぅっ。はぁぁっ」


僧侶「すまん、ちょっとした発作でな。もう治ったから心配しないでくれ」



宿主「本当に……大丈夫なんですね?」

僧侶「ああ、大丈夫だ」


宿主「……」

宿主「そう、言うのであれば」


 タッ タッ タッ タッ


僧侶「……」

僧侶「行ったか……」



僧侶「しかし、力が溢れ出す」グッ

僧侶「使徒……やはり俺は、お前を許せない」


 トン トン


勇者「私だ、入るぞ」ガチャ

僧侶「フッ。勇者……どうやら、気を使わせてしまったようだな?」


勇者「……」

勇者「やはり、ハイポーションの原液を飲んでいたか……」



勇者「魔王の技で数ヶ月に縮まった命で、更にハイポーションを飲んだのだ。僧侶、お前の命はもって……」

僧侶「言うな勇者!! 己の寿命を知れば、震え上がって何も出来なくなってしまうよ」


勇者「それまでの覚悟か……ならば、この街に巣食う癌の存在も教えねばなるまい」

僧侶「癌……何の事だ?」



   数分後



僧侶「……」

僧侶「ダム……なるほど、ここが見かけ倒しの活気に思えたのはこの為か」


勇者「うむ。よく見れば、街の中には川が通っていた窪みの跡が有る。間違いないだろう」

僧侶「……」グッ

僧侶「では、早速行くとしよう。街にも、俺にも、猶予は残されていない」



勇者「……」

勇者「先に使途を倒し、その上でダムへ向かうか? それとも先に……」

僧侶「いや、奴は知略の働く男。一方ずつ片付けていたのでは、考える時間を与える事になる」


僧侶「勇者達はダムを頼む。使途は……この俺が引導を渡す!!」

勇者「僧侶……」

勇者「任せたぞ僧侶!!」


勇者「……」

勇者「入って来なさい。我々はこれからダムへ向かい、少しずつ水を外へ流す」


 ガチャ


商人「……」コクッ

武道家「はいっ」


戦士「わかったぜ……」チラッ

僧侶「……」

戦士「でもよ、本当に僧侶一人で大丈夫なのかよ? さっきはオレにすら技を止められ……」



僧侶「戦士。そこに立っていてくれないか?」

戦士「おっ、またやんのかよっ? いいぜ、来なっ!!」ニヤッ


僧侶「ほぉぉっ……」スッ

戦士「……」


僧侶「シャオ!!」バッ

戦士「ッ!!?」


僧侶「……」ピタッ

戦士「お、おぁ、アレっ?」



僧侶「これは、俺が寸止めすると分かっていたから避けなかった……のかな?」ニヤリ

戦士「ぐっ……」


武道家「あははははっ♪ 戦士ってばダサすぎだよぉっ♪♪」バンバン

商人「ふ……」プルプルプルプル

戦士「うるせぇよチクショー!!」



勇者(技のキレが戻っている……これならば心配は無用か)


勇者「戦士、もう異存はないな?」

戦士「うぅっ……わかったょぉっ。勝てよな僧侶!!」

僧侶「ああ。安心しろ」ニコリ



勇者「よしっ、では行くぞっ!! 我々はダムへ向かうっ!!」


戦士 武道家 商人
「「「はいっ!!!」」」




 大陸北部 伝説の神殿跡地



北の勇者「くっ、なんて強さなんだ……みんな、最後の力を振り絞るぞっ!!」


女魔法使い「メラゾーマ!!」

女僧侶「バギクロス!!」

女賢者「イオナズン!!」


北の勇者「そしてこれが、勇者の力だっ!! ライッ、ディィィィィィン!!!」



 ドゴオォォォォォォォォン!!!


北の勇者「やったか!?」


 モクモク モクモク



極ポッポ「……」バッサバッサ



北の勇者「なっ、なにぃっ!?」

極ポッポ「この魔改造ポッポmarkⅢに対し、そのような攻撃は児戯に等しい……」

極ポッポ「北の勇者、期待ハズレだな。この体を試す練習台にもならんわ!!」



フリーザー改「ポッポ様!!」バッサバッサ

ファイヤー改「あの者達の始末は」バッサバッサ

サンダー改「我らポッポ四天王にお任せください」バッサバッサ

オニドリル改「ドリィー!!」バッサバッサ



北の勇者「くそッ、ロトの装備が有れば……みんな、退却だ!!」ダッ


フリーザー改「逃がさん!! ふぶき!!」ゴォォッ

ファイヤー改「だいもんじ!!」ボォォッ

サンダー改「かみなり!!」ビカァッ

オニドリル改「つつく!!」ツンツン



北の勇者「ぐわぁぁぁぁっ!?」

女魔法使い「きゃあぁぁぁぁっ!!」



極ポッポ「どうやら、ワシがかぜおこしを下すまでもなさそうだな」ギッチョンギッチョン


極ポッポ(許さんぞ勇者め、必ず地獄に殺す!! そして魔王にも、こんな体になった報いを受けさせてやる!!)



 ジャガンノート 使途の寝室



使途「……」

使途「そろそろカルタスに『アレ』を指示した時刻になるな」

使途「俺もここを出なくてはいかんか」


 バタンッ


使途「んッ!?」

使途「なっ、お前は……」



僧侶「衰えたな使徒」

使徒「きっ、僧侶……何故ここへっ!?」


僧侶「理由を、聞きたいか?」スッ

使徒「……フッ」ニヤリ

使徒「いいだろう!! 表へ出ろ僧侶っ、そこでトドメを刺してやる!!」




 ジャガンノートの北部 超巨大高層ダム



カルタス「ダイナマイトの設置を急げぇ!! 完了したら奴隷に構わず、即刻に爆破だ!!」


 ダッダッダッ


手下「はぁっ、はぁっ!! カ、カルタス様ぁっ!! ここに勇者が向かっておりますっ!!」


カルタス「なにぃ、勇者だとぉっ!!?」

カルタス(使徒様からは、勇者が来るのは今夜か明日だと連絡を受けたが……くっ!!)


カルタス「俺も出るっ、勇者をダムに近付けるな!!」ダッ



カルタス「手下ッ、お前は俺に付いて来い!! 前線で勇者を迎え討つ!!」

手下「……」カタカタ


カルタス「んっ、どうした? 聞いているのかっ!?」

手下「はい……き、きっ、聞いてっ、きいていまっ……はうばっ!!?」ドサァッ


カルタス「手下ぁっ!!?」


 ザッ

勇者「……」

勇者「さぁ、そこを退いて貰おう!!」



カルタス「ぐっ……」

カルタス(これは予想外だが、来ているのはコイツ一人……殺れる!!)


カルタス「くくっ、それはできぬ相談だ……キサマは今、ここで」ジャキン

カルタス「死ぬのだからなぁ」ニタァ

勇者「……」スッ



カルタス「この二刀青龍刀からなる回転剣舞術……キサマに見切る事は叶わん!!」ジャキッ

勇者「……」


カルタス「……」ジリッ

勇者「言い残す事は、それだけか?」


カルタス「ぎっ!? なんだとぉっ!!? ならば死ねぃ、回転剣舞六連斬ッ!!!」バッ

勇者「お前達のような悪党に、今日を生きる資格は無い!!」バッ



カルタス「ちぇいさぁぁっ!!」ブォン

勇者「……」パシッ


カルタス「チッ、おりゃりゃりゃりゃりゃりゃぁァァァァッッ!!!」ブォンブォン ブォンブォン

勇者「ほぉぉぉっ……」スゥッ



勇者「両翼断靭拳ッ!!」ズドンッ

カルタス「ぐひぇあぁぁっ!!?」ドサァッ



カルタス「おっ、俺の肩がぁぁっ!!」ガクガク

勇者「お前の両腕が上がる事は、二度と無い……もはや、刀を持つ握力すら残っていないだろう」スッ

カルタス「ぐっ、ぐぐぅ……」




 ドゴォォォォォォォォン!!!




勇者「むっ!!?」



カルタス「ふ、ガハハハハハハ!! どうやら間に合わなかったようだな!!」

勇者「次々と爆発が!?」


カルタス「ダムは崩壊する!! そして溢れ出す水は津波となって街を呑み込むのだぁ!!」

勇者「……貴様、どこまでっ!!」グッ


カルタス「おおっと、近付かない方がいい。俺の体にも無数のダイナマイトが巻き付けてあってな……例え両手が使えなくとも」ニヤリ


カルタス「この奥歯に仕込んだ起爆装置が有るのだぁぁっ!!」ガチッ

カルタス「勇者敗れたり!! 俺はカルタス、神をも欺くおと……」カッ


勇者「ぐっ……」バッ




 ドゴォォォォォォォォン!!!



 パラパラ パラパラ


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ


勇者「本格的な崩壊が始まってしまったか!?」



武道家「おぉい、しぃ~~しょ~~っ!!」ダッダッ

戦士「置いて行くなってぇ~っ!!」


勇者「っ!?」

勇者「来るなッ!! そこでエリクサーを全て出せ!! 氷結魔法準備!!」


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ


勇者「崩れるぞッ!!!」



勇者「水流には巻き込まれるなっ!! 私は右、お前たちは左側から魔力が尽きるまで撃ち続ける!!」


商人「了解ッーーーー!!!」

戦士「くっそ、オレ達だけが凍結魔法を使ったって……」

武道家「文句は後からだよっ!!」

戦士「わかってるっつの!!」



 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ


戦士「マジで来るぞっ!!」バッ




 カラッ…

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ



 ドゴォォォォォォォォォオオ!!!



勇者「ダムが崩壊したッ!!」

勇者「ぐっ、少しでも被害を食い止めるぞ!!!」バッ




戦士 武道家 商人
「「「おおおおおおおおおおッ!!」」」



戦士「左手からヒャダイン、右手からマハブフーラ……合体!!」パンッ

戦士「凍結旋風、マハヒャダーラ!!!」


武道家「凍気を……絶対零度まで高める!!」ギリッ

武道家「ダイヤモンドッ、ダストォォォォッ!!!」


商人「すぅぅっ……」

商人「かがやくいき、ふぅぅぅぅぅぅっ!!!」ブォォッ



 カチッ、コチッ、カチン


戦士「やったか……?」



 ガキッ バキバキッ

 ドゴォォォォォォォォォオオ!!!



戦士「ダメだっ!! やっぱ少しくらい凍らせただけじゃ、次々と押し寄せる水流にぶっ壊されて、そのまま流されちまう!!」

勇者「少しずつ、断続的にでもいい!! とにかく手を休めるなっ!!」


武道家「もうっ!! 頑張っちゃうよボク!!!」

商人「……」eソウルオブサマサ

商人「ブリザガ!! クイック!! ブリザガ!! クイック!!ブリザガ!! クイック!!ブリザガ!!」




 ジャガンノート 街の中央に走る河川跡地



使徒「……」タッ

使徒「ここなら良いだろう」


僧侶「……」

僧侶「使徒……お前の裏切りに、もっと早く気付くべきだった」スッ

僧侶「裏切りではない、知略だッ!!」スッ



僧侶「……」グッ


僧侶「ほぉぉぉっ……」

使徒「つぇあぁぁっ……」


僧侶「シャオ!!」バッ

使徒「シャオ!!」バッ



僧侶「ハァッ!!」スパァッ

使徒「クハハハハッ!!」スパァッ


僧侶「……」スタッ

使徒「……」スタッ


僧侶「……」

使徒「……」



使徒「ふっ……」ニヤリ

僧侶「ぬっ!?」ツーッ



使徒「僧侶、拳の技巧のみでは、この俺に傷を付ける事など……ぐはぁぁぁっ!!?」ズパァァッ

僧侶「さぁ、続けよう……」スッ



使徒「ぐぅっ……」ドサァッ

使徒(バカなっ!? 先ほど奴の技を見た時は、これほどのキレは無かった!!)フラフラ

使徒(この俺は、僧侶を越えたはずなんだっ!!)




 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ




僧侶「んっ? この地鳴りのように近付いて来る音は……」


使徒「くっ……」

使徒「ハァッハッハッハッハッ!! ダムを爆破したのだ!! この街は水に呑み込まれて沈むぞっ!!」


僧侶「なッ!?」


僧侶「人の皮を被った悪魔め……」ギリッ

僧侶「テメェの血は、何色だッ!!?」



使徒「フッ、ククッ……お前の死も時間の問題だなぁ僧侶」


 パシャッ パシャッ チャポッ


僧侶「ぐっ!?」

使徒「ほぅら、もう足元に水が浸透しつ来たぞ?」ニヤリ


使徒「飛翔拳の極意は高く舞い上がるその足に有る……だが、こうなっては最早跳べまい!!」

僧侶「飛翔拳を使うのはお前も同じ事……それでもこれは知略だと言うのか!?」



使徒「……」

使徒「俺が会得しているのは飛翔拳だけでは無い。暗殺爪戟術も同時に会得している」


使徒「よって……膝まで水が達していても、それらの技を組み合わせ……こんな事もできる」スッ

僧侶「ッ!!?」


使徒「つぇあぁぁっ……」

使徒「水衝ッ、爪烈波!!!」ズシャシャシャッ


僧侶「くっ……ぐあぁぁっ!!?」スパァッ


使徒「無様だな僧侶……水衝爪烈波は、鋭利な風に水圧を纏わせ全てを切り裂く、この状況だからこそ栄える技」


使徒「……」ニタリ

使徒「ヒャッハー!! 切れろ切れろぉぉぉぉぉっ!!!」ズババババババッ



僧侶「うぐっ、ぐおおおおおおおお!!!」ズバズバズバッ


使徒「俺も脱出しなければならないのでな、そろそろトドメを刺してやる!!」スッ


僧侶「うぅっ……」ヨロッ

使徒「ククッ……」


使徒「トドメだッ!! 水衝爪烈波!!!」



僧侶「……」

僧侶「……」キッ


give me your life

生き抜く戦いへ


僧侶「ほぉぉぉっ……」ググッ

僧侶「シャァァオ!!」ザッパァァッ


but i keep the faith of your life

迷わず踏み出せ


使徒「なにッ!? 水面を踏み台にして上空へ跳んだ!!?」


この身に宿した激情を

時代の流れに解き放て

拳に託した熱情を

友へと語り継げ


僧侶「俺が最後に見せるのは、飛翔拳の極意、飛翔燕舞!!」スーッ


果てない日々に

心 霞んでも


使徒「おおっ……」

使徒(美しい……)


紡いだ糸が

明日を繋ぎ止めてく


使徒(俺は、俺は……)

使徒(俺はお前を尊敬し……)


感じた愛も悲しみも

立ち上がる強さへと


使徒(そしてお前に、嫉妬していたんだ……)


変えるさ



僧侶「飛翔拳奥義!! 水鳥飛燕斬ッ!!!」

使徒「ぐはあああああああああ!!?」ズバァァッ


give me your life

生き抜く戦いへ


使徒「うあっ……見事だ、僧侶」フラフラ


but i keep the faith of your life

迷わず踏み出せ


使徒(僧侶……嫉妬に狂った醜い俺が、勝てる筈も無かった……この世でただ一人、認めた男)ザッパーン


激しく滾る血潮が今

運命(さだめ)を動かす



僧侶(使徒……俺もすぐに向かう)


僧侶「ぐっ!?」ザッパーン

僧侶(このまま流されて逝くのも良いが……)ゴボゴポ


僧侶(すまない勇者、後は頼む……)

僧侶「ッ!!!」ギュワーン





 水鳥の街アイリ 僧侶の家




 ドゴォォン


妹「きゃっ!?」

妹「何よ今の音!!」ガタッ


僧侶「……」フラフラ

僧侶「妹……」グラァッ


妹「兄さん!?」ダキッ



僧侶「妹……」ギュッ

妹「どうしたのよっ!? 全身が濡れてるしっ……」


僧侶「妹……」ポロポロ

妹「……」


妹「そっか、頑張ったのね兄さん」ギュウッ



妹「んっ……」チュッ

僧侶「……」


妹「一人ぐらい、一人ぐらい……」

妹「貴方を愛する女が居ても良いでしょ?」ポロポロ


僧侶「妹……」

僧侶「強く、なったなぁ」ニコリ



僧侶「妹……俺を、愛してくれて」

僧侶「ありがとう」


僧侶「……」

僧侶「……」ガクッ

妹「えっ?」


妹「兄さんっ!? 兄さんっ!!」

妹「いやあぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」




 ジャガンノート北部 超巨大高層ダム



勇者「……」

勇者(僧侶……逝ったか)グッ



戦士「ごめん、師匠……もう」ドサァッ

武道家「ボク、もっ……ごめん、なさい」ドサァッ

商人「ブリザガ!! クイック!! ブリザガ!! クイック!! ブリザガ!! クイック!! ブリザ……魔力切れっ」ドサァッ




勇者「……」

勇者「すまない僧侶……守れなかった」

勇者「この水流は、止まらない!!」グッ


勇者「一つの街も守れず……何が勇者だ!!」





  翌日 ジャガンノート 街内




戦士「水は……引いたみたいだな」

武道家「うん、水が流れてるのは元通りになった川だけ」

商人「……」

商人「けど、街は水浸し……」



 タッ


オーナー「勇者様……」


勇者「……」

勇者「すまぬ。なんと謝罪したらいいか……」


オーナー「謝罪? ははっ、私たちは勇者様に感謝こそすれ、謝罪して貰う事など有りませんよ」ニコリ



勇者「しかし……」

オーナー「言わないでください」


オーナー「これは、現状に不満を持ちつつも、自分達の力で動こうとしなかった我々への罰です」

オーナー「それに……被害者はいません。家具などは流されてしまいましたが、家は無事。水は戻りましたし、これから再建するでしょう」

被害者じゃなくて、亡くなった者は、だった…



オーナー「この街は、これから生き返るのです!!」

勇者「……」

勇者「そうか」ニコリ


オーナー「ですから勇者様は、くれぐれもこの事を気に掛けぬようお願いします」ペコリ

戦士「んじゃ、魔王をブッ倒したら、また肉を喰いに来るぜ!!」ニコッ


オーナー「はいっ、その時には盛大にもてなさせて貰います。今度はビールもお出しできますよっ」

商人「自分……ビール駄目なんで、オレンジジュースください」




 ジャガンノート 解放



 セイントキングダムへ



,



 巨大物塔 聖鳥獣慈寮 頂上 



 ピカッ ゴロゴロッ ゴロゴロッ


ドードー「……」

極ポッポ「お師さん……」





 セイントキングダムへ向かう道中 砂原



 まもののむれが あらわれた!


リザードン「リザァァァッ!!」

キングベヒモス「ベヒィィモ!!」

キラーマシン「ガガッ、ギギッ!!」



戦士「おっ」チャキッ

商人「待って……私が行く」スッ



リザードン「リザァァァッ!!」バッ

キングベヒモス「ベヒィィモ!!」バッ

キラーマシン「ガガッ、ギギッ!!」バッ


商人「……」

商人「渇ッ!!!」



リザードン「きゃんきゃん」

 まものは にげだした!


キングベヒモス「きゃんきゃん」

 まものは にげだした!


キラーマシン「だれかたすけてっ!!」

 まものは にげだした!


 商人はまもののむれを おいはらった!


商人「ふぅっ」



武道家「さすがは商人のニフラム……」

戦士「ああ。いつ見ても恐ろしい魔法だぜ」ゴクリッ


商人「?」


勇者「……」

勇者(強くなった……もはや魔王軍と言えど、この者達と対等に戦えるのは幹部クラスしか居まい)



戦士「ええっ……とさ、師匠?」

勇者「どうした?」


戦士「僧侶の葬式に、出なくて良かったのか? 僧侶の家まで行ったのに、妹にも会わないで外だけ見て戻るとかさ」

勇者「……」

勇者「遺言だった。妹の元へと帰った情けない自分は見ないでくれとな……恐らく、僧侶が弱音を吐き、涙を見せるのは妹だけだったのだろう」



戦士「はっ?」

武道家「う~ん、わかるようなわかんないような」

商人「男のプライ……」

商人「男の安いプライド」


勇者「……」

勇者「こればかりは、男にしか分からぬ事だな」ニコリ



勇者「それと……」

勇者「お前達にはこれを渡して置こうと思う」


武道家「なになにぃ♪ プレゼント?」

戦士「って、なんだこれ?」

商人「小さい……石ころ」



勇者「それはマジックストーン。魔力を込め念じる事で、石に封じて有る魔法を使用できる」


戦士「へぇ~っ、何の魔法なんだ? ルーラならキメラの翼が有るしな」

武道家「ベギラゴン、とか?」

商人「きっと回復魔法……」



勇者「……」

勇者「メガンテだ……」


戦士「はっ?」

武道家「えっ?」

商人「メガンテ……使用者の命と引き換えに大爆発を起こして自爆する魔法」



勇者「恐らく私だけの力では魔王に勝てぬ……故に、ここで最後の確認を取ろう。お前達の命を、私にくれ!!」


戦士「……」

戦士「あのっ、それってさ……魔王との戦いでヤバくなったら、この石を……つまり、メガンテを使えって言ってんだよな?」

勇者「そうだ。覚悟はここで決めろ……その瞬間に臆するようでは、ここから先に連れて行く事はできない」



戦士「……」

武道家「えっ……と」

商人「……」


商人「師匠?」ツカツカ

勇者「んっ?」


商人「あの二人はダメ、使えない。私と師匠だけで行くべき」グイグイ


勇者「……」

勇者「そうか、では二人で行くか?」

商人「♪」ギュウッ


戦士「うっ……」

戦士「うぅっ……」

戦士「ああああああ!! もうっ、オレも行くよ!! 命なんかとっくに師匠へ預けてるっつの!!」ダダッ


武道家「あ~ん、ボクもボクもぉぉっ!!」ダダッ

商人「ちっ」




 巨大物塔 聖鳥獣慈寮 王間 



ヨルノズク「ポッポ様、反逆を企てた二匹を連れて参りました!!」


カイオーガ「くそっ、離しやがれ!!」ジャラッ

ルギア「鳥風情が意気がりやがって!!」ジャラッ


極ポッポ「ふむ……」

極ポッポ「ヨルノズク、こいつらの鎖を外してやれ」



ヨルノズク「はっ!!」ガチャガチャ


カイオーガ「へへっ……」ニギニギ

ルギア「わかりゃいいんだよ鳥ポケ!!」ググゥッ


極ポッポ「どれ、人間達では試せなかった、新しいワシの力を試させて貰うとするか……」




ルギア「あっ?」

極ポッポ「二人掛かりで良い。このポッポに傷を付けれたなら、お前達を解放しよう」スッ


ルギア「……」

ルギア「おいおい、聞いたか?」ニタリ

カイオーガ「ああ、俺たち伝ポケブラザーズの恐ろしさを知らないようだな? 不意討ちで催眠術なんぞ喰らわなかったら、鳥ポケなんて敵じゃねぇんだよ!!」



ルギア「テメェをぶっ殺して、ここを乗っ取ってやるぜぇ!!」バッ

カイオーガ「伝ポケブラザーズの奥義を受けてみやがれッ!!」バッ


ヨルノズク「ッ!!? あ、あの技はぁっ!!?」

ヨルノズク「お逃げくださいポッポ様ぁぁっ!!!」バッサバッサ


極ポッポ「……」



ルギア「カァッ!!」クワッ

カイオーガ「カァッ!!」クワッ



ルギア カイオーガ
「「南斗ダブル破壊光線!!!」」ピギュゥーッ



極ポッポ「!?」



 ドゴオォォォォォォォォオオ!!!



 パラパラ パラパラ

ヨルノズク「ああっ……なんて事をっ……」



ルギア「終わったな」スタッ

カイオーガ「調子に乗るからだぜ?」スタッ



 モクモク モクモク



 ザッ

極ポッポ「……」

極ポッポ「この技は、煙を巻き上げる技か?」



ルギア「なにッ!?」ビクッ

カイオーガ「俺たちの技が、まるで効いちゃいねぇ!!?」


極ポッポ「しかし……」ツーッ

極ポッポ「頬に僅かばかり傷が付いたな」



ルギア「そっ、それじゃあ!!」

カイオーガ「俺たちは自由にっ!?」


極ポッポ「……」

極ポッポ「バカか?」


極ポッポ「このポッポに傷を付けた者が、生きて居られるわけ無かろう」ニタリ



極ポッポ「ふんっ」クンッ


カイオーガ「!!!??」ブクブクブクッ

ルギア「カッ、カイオーガの体がっ!?」


カイオーガ「おっ、おれの体がっ、膨らんで行くぅ……あ、あ゙、アッ、あじゃぱぁぁぁぁっ!!!」ブシュゥゥゥッ


 パァァン バラバラ バラバラ


ルギア「カイオーガァァァァァァッ!!!」

極ポッポ「きたねぇ花火だ……」



ルギア「よくもカイオーガをッ!!」キッ

ルギア「連続破壊弾を喰らえ!! だだだだだだだだだだだだぁっ!!!」ドドドドドッ


極ポッポ「……」



 ドゴオォォォォォォォン!!!



 パラパラ モクモク

ルギア「やったか?」



 シュン


極ポッポ「……」スタッ

ルギア「ッ!!?」


極ポッポ「……」

ルギア「……」ギリッ


ルギア「俺は『瞬歩』を極めているんだぞ? 俺より早く……いや、俺の後ろ何か取れる訳がねぇ!!」クルッ

極ポッポ「瞬歩? ああ、ピカチュウの電光石火にも劣るアレか?」



ルギア「破壊光線!! カァッ!!」チュドォォッ

極ポッポ「ハァッ!!」バッサバッサ


 ゴォォォォッ

ルギア「なにッ!? 俺の破壊光線をエアロブラストで掻き消しやがった!!」

極ポッポ「んっ? 勘違いしているな……」



極ポッポ「今のはエアロブラストでは無い。かぜおこしだ!!」ニヤリ

ルギア「かぜおこしだとぉっ!!?」


極ポッポ「そしてワシは瞬歩の上の上、『歩゚っ歩゚』を極めておる」

極ポッポ「したがって……」


 シュン

極ポッポ「お前の後ろを取る事など、造作も無い」スタッ

ルギア「ぐぅっ!!?」



ルギア「死ねぇぇぇぇっ!!」クルッ

ルギア「ハイドロポン……」


極ポッポ「遅いッ!! 聖鳥十字斬!!!」スパッ スパァッ

ルギア「げひゃあぁぁぁぁっッ!!?」ザシュゥゥッ


 ビチャ ビチャ


ルギア「うぅっ……」ドサァッ

極ポッポ「他愛ない」

急にギャグぽっくなったne

>>612
ソーダヨne-



 バタンッ

エアームド「ポッポ様!! 勇者達がここへ向かっているとの報告が入りました!!」


極ポッポ「……」

極ポッポ「来たか……この屈辱」ギッチョンギッチョン

極ポッポ「必ず返すぞっ!!」


極ポッポ「四天王を全員集めろ!! この聖鳥獣慈寮を勇者達の墓場にするのだッ!!」バッ

ヨルノズク「はっ!!」

エアームド「はっ!!」




 セイントキングダム 数百メートル手前 崖の上




武道家「ただいまっ」タタッ

商人「おかえり」

戦士「で、どうだった?」


武道家「……」

武道家「師匠が言ってた通り、幼い子供達が働かされてた」


勇者「やはり、あの噂は本当だったか……」



戦士「うわさ?」

勇者「うむ」コクリ


勇者「このセイントキングダムを支配している者の名は『聖者』。自らを神と名乗り、恐怖と暴力によって人々を支配する男……」

武道家「酷い。それって、魔王と変わらないよっ!!」


勇者「そして……」

勇者「修行時代では有るが、魔王と引き分けた男だ」

商人「!!?」ガタッ



勇者「聖者は魔王に決定打を与えれず、魔王もまた、聖者の秘密の前にどうしても倒せなかった」

戦士「あの魔王が……聖者って、そんな強い奴なのか?」

商人「だから魔王軍はここに攻めて来ない」


武道家「ねぇししょー? その秘密が有ると、ししょーも勝てないの?」




勇者「私は、聖者の体の謎を知っている」

武道家「それじゃ、魔王でも倒せない奴を、ししょーなら倒せるって事?」


勇者「……」コクリ

勇者「しかし……魔族も人間も一緒だな。大きな力を持つ者は、弱き者を虐げる。その者が倒されても、次々と現れては繰り返す」

勇者「賢者や僧侶は、例外も例外か……」



戦士「……」

武道家「……」

商人「……」


勇者「王との約束だ、弟の幸せの為だ、魔王は倒そう。この地は解放しよう」

勇者「だが……その後、魔王と言う絶対的な恐怖が居なくなった時、人々がどういった行動に出るか……私は魔王よりそちらの方が恐ろしい」



勇者「果たして……この世界を、人々を、一時の平和の為に救う意味が有るのか?」


戦士「あるっ!!」

勇者「……」


戦士「オレは師匠に命を賭けた。命を賭けて師匠を守るっ!! だから師匠は、オレが好きなこの世界を守る為に戦ってくれ!!」

商人「同上」


武道家「ボクは平和がいい、みんな仲良しがいい!! 命を賭けてししょーを守るから、ししょーはボクが好きなこの平和の為に戦って!!」

商人「激しく同意」


商人「私たちは師匠の平和を守る。師匠は世界の平和を守って」


勇者「……」

勇者「ふっ」ニコリ


勇者「仲間にここまで言われ、奮い立たない訳にはゆくまい……」

勇者「私は勇者だ!! 世界を救う理由はそれで充分!!」


勇者「聖者……楽な相手では無いが、ここで討つ!!」グッ





 聖者の神殿 巨大食卓



 バタンッ

鎧兵「聖者様!! 勇者が使徒の支配していたジャガンノートを解放し、ここへ向かっているとの報告が入りました!!」


聖者「……」カチャカチャ

聖者「ふむ」

聖者「あの小僧か……」ニヤリ


鎧兵「如何なさいましょう?」

聖者「放って置け。ここには『神の四神殿』が在る……どうせ俺の所には辿り着けぬ」



聖者「……」

聖者「だが……」


聖者「俺に楯突くのなら容赦はせん。その時はレジスタンス共々、勇者らを残らず殺せ!!」

鎧兵「はっ!!」


聖者(ついに来たか勇者……だが、誰で在ろうともこの俺を止める事はできん!! それが勇者で在ろうと、魔王で在ろうとな!!)




  セイントキングダム 街中



 ヒューッ

商人「……」

戦士「あー、なんつーかさ」

武道家「ゴーストタウン?」


武道家「労働場には子供達がたくさん居たのに……街には人影すらないなんて」

勇者「……」



戦士「……」キョロキョロ

戦士「ッ!?」


戦士「師匠、あっち!!」グイッ

勇者「んっ?」



 民家



ハンター「おいっ、子供を出せっ!! さっきここへ入って行くのを見たぜぃ?」ニヤリ

女「何かの間違いです!! この家の子供はもうおりません、帰ってください!!」



ハンター「ほんとぅかぁ~っ?」ジリッ

女「ほっ、本当です!!」ビクビクッ


ハンター「……」

ハンター「チッ、じゃあ次に行くか……」クルッ


 ザッ ザッ

女「……」

女「行っ、た?」



女「……」

女「ふぅぅっ……」


女「二人とも、タンスから出て来ていいわよっ」ニコッ



 ガチャ

女児「ほんとママ?」ヒョコッ

男児「もう居ない?」ヒョコッ



女「ええ、いないわよっ」ニコッ


女児「やった♪」トテッ


男児「……」

男児「?」

男児「あ」ビクッ


男児「まっ、ママっ!!」

女「どうしたの大きい声だして?」



女児「あわっ!?」ブルブル

男児「後ろだよママっ!!」


女「えっ、後ろっ?」クルッ



ハンター「……」

ハンター「よう」ニヤリ


女「そんなっ!? さっきあっちへ……」

ハンター「演技が下手くそなんだよ。ガキを隠してるってバレバレだったぜ?」



女「……」ギリッ

女「二人とも逃げなさい!!」バッ


ハンター「邪魔だババァ!!」ドガッ

女「きゃっ!?」ズザァァッ


女児「ママ!!」

男児「ママ!!」

女「うぅっ……にげ、てっ」



ハンター「ゲヘヘッ……ガキを二人も連れて行けば、確実に聖者の部下になれる。そしたら一生安泰よ!!」ザッ


女児「……」ブルブル

男児「……」ギュッ



 ポンッ ポン

ハンター「あん? 誰だ俺の肩を叩く奴は?」クルッ

勇者「……」



ハンター「お前も聖者の部下になる為に子供を拐いに来たのか?」

ハンター「ハハッ、残念だったな、ここのガキは頂いたぜっ」ヒョイッ

女子「うあっ!?」

男児「このっ、はなせ!!」ジタバタ


勇者「……」

勇者「置いて行け……」



ハンター「冗談キツいぜ、やっとこさガキを見つけたってのによ……ほらっ、他を当たんな」シッシッ

勇者「……」

勇者「置いて行け……」


ハンター「ギッ!! だぁ、かぁ、らぁ!! ここのガキは俺が……」

勇者「……」スッ



ハンター「……」

ハンター「わかったよ、がめつい奴だな……ガキを一人、分ければいいんだろ?」


勇者「両方だ。二人ともここへ下ろし、消えるがいい……命まで取るつもりは無い」

ハンター「あ? 同業だと思って優しくしてりゃ、さっきから調子に乗りやがって!! ここでお前を殺したっていいんだぜ!!?」



勇者「……」

勇者「良かろう、表へ出なさい」クイッ クイッ


ハンター「上等だッ!!」ブンッ


女子「わきゃっ!?」ドサッ

男児「うわっ!!?」ドサッ


ハンター「ガキども、ここに居ろ!! 逃げるんじゃねぇぞ? 逃げたらお前らの母親を殺すからなっ!!」



ハンター「へへッ」ザッ

ハンター「この俺は五手蝋拳の使い手よ!!」スッ

勇者「……」


ハンター「俺と戦って生きていた者は、今まで存在し……」


?「シャオ!!」スパァッ


ハンター「ましったっ!!?」ズシャアァァッ


勇者「むっ!?」

?「またゴミが沸いていたのか……」スタッ




キリ「俺の名はキリ。お前の名と、この街に来た理由を聞こう」

勇者「……」

勇者「私の名は勇者。聖者の覇道を止めるのは、私の宿命!!」

キリ「なにっ、お前が僧侶の言っていた勇者か!?」


勇者「……」

キリ「なるほど……フッ、真っ直ぐな目をしている」ニコリ



 タッ タッ タッ

武道家「ししょ~っ!! 他に襲われてる家は無かったよ」

戦士「こっちは一人ブッ飛ばして来た!!」

商人「異常なし」


勇者「そうか」ニコリ

キリ「……」

キリ「勇者よ、お前に見せたいものが有る。着いて来てくれるか?」




 地下 レジスタンスのアジト




キリ「みんな、戻ったぞ」


幼女「おかえり~」トテトテ

少年「おかえりなさいキリ様」

青年「こちらは特に変わりは有りませんでした」ペコリ




商人「無駄に広い」

勇者「ここは……」


キリ「ここは、聖者に対するレジスタンスの基地……と言うには、余りにお粗末だがな。核シェルターを拡張改修しただけさ」

勇者「なるほど、地上に人が少なかったのはこの為か」


戦士「おっ、浴場があんじゃん!?」

武道家「はいろはいろっ♪」タッタッ



勇者「……」

キリ「ははっ、構わんよ」


キリ「で、本題なんだが……勇者はここを見て何を感じた?」

勇者「レジスタンスの基地、をか?」

キリ「そうだ……聖者と戦う本拠地を見て、だ」



勇者「……」

勇者「少ないな」


勇者「子供は多い。若者も多い。だが……」


キリ「……」

キリ「手練れが少ない……そう言いたいのか?」


勇者「うむ」コクリ



キリ「……」

キリ「それが、こうやってレジスタンスなどでいつまでも燻ってる理由だよ」


キリ「聖者は言わずもがな強いのだが、その聖者に辿り着くには『四神殿(ししんでん)』を突破せねばならぬ」

勇者「四神殿……」


キリ「四つ目の神殿は聖者自身が守っているが、そこへ到達するには他の三つを攻略する必要が有る」



キリ「第一の神殿を守るのは、全てを切り裂く聖剣を持つ男……インドラ」


キリ「第二の神殿を守るのは、絶対零度の戦士……シヴァ」


キリ「第三の神殿を守るのは、神に最も近い虚人……ブッタ」


キリ「そして第四の神殿を守るのは、極星に選ばれし不死身の肉体を持つ帝王……聖者」



勇者「……」



キリ「俺が相討ちの覚悟で望めば、どれか一つは突破できるかも知れん……」

キリ「しかし、それで俺が力尽きては、このレジスタンスは即座に壊滅してしまう」


キリ「だからこうやって、末端の部下達から少しずつ駆逐しているのだが……」

勇者「聖者に取り入ろうとする奴らが、それ以上に多いと?」


キリ「そうだ。街の警備に時間を割いていては、いつまで経っても攻めに転じる事はできない」グッ




 ガタン


男「キリ様ぁっ、食料を大量に入手しましたぁ~っ!!」

若者「見てくださいっ、コンテナで11個も有りますよ!! これなら数ヵ月は食料に困りません」


キリ「……」

キリ「おおっ、こんなにどうしたんだ?」


若者「へへっ、聖者の食料補給部隊を襲ってやりました。一石二鳥ってやつです」



若者「最近のキリ様は自分の少ない食事まで子供に回して、ちゃんと食べてませんでしたよね? これなら心配いりませんよ」

キリ「そうだな」ニコリ



少年「おかえりパパ~っ!!」タッタッ

男「おう、ただいまっ」ナデナデ


男「ほらっ、このチョコパンを食べなさい」

少年「わ~い♪ おいしそぅ」



若者「キリ様も菓子パンをどうぞ」

キリ「では、いただこう。勇者も喰え……長丁場になるぞ?」


勇者「……」

勇者「そうだな、私もいただこうか」ニコリ


キリ「ふむ、これは旨そうな……」

キリ「んっ?」ピクッ

キリ「この匂いはっ!!?」クンクン




少年「おいしぃ♪」パクパク



キリ「みんな食べるなッ!! 毒が入っているぞ!!!」バッ

勇者「ッ!!?」


若者「えっ」

男「そんな、まさか……」



男「ハッ!?」

男「食べるなぁっ!!!」


少年「ふぇっ、どうして?」モグモグ


少年「こんなに美味し……」

少年「……」タラァッ

少年「あ、れ? げほっ、ゲホッ!! どうして、くちから血が出てくるの? パ、パ……」



男「おい、しっかりしろ!! おいっ!!」

少年「なん、で? ボクはっ……パンを食べた、だけ、なのに……」


少年「……」

少年「パ、パ……」ガクッ

男「うおおおおおおおおおおお!!!」ギュウッ


勇者「くっ」ダッ

勇者「……」

勇者「駄目だ、瞳孔が開き切っている……」



若者「おっ、俺達は、食い物を奪って来ただけなのに、なんで……」

キリ「恐らく、最初から毒を混入し、わざとコンテナを襲わせたのだろう」

若者「そんなっ……」ガクッ



キリ「勇者よ、これが聖者のやり方だ!! もはや、許して置く事はできぬ!!」

勇者「……」

勇者「行こう。子供の将来を奪う者……断じて許さん!!!」ザッ




武道家「あーっ、サッパリしたぁ!!」ワシャワシャ

戦士「マジ、最高の気分だぜっ!!」



勇者「……」



商人「んっ?」キョロキョロ

商人「……」


商人「むごい事をする……許すまじ聖者!!」グッ




 セイントキングダム 第一神殿の前




キリ「こちらは五人、対して聖者側は四人。更に言えば聖者側は各神殿に一人だ……五対一で確実に一人ずつ潰して行こう」

戦士「……」

戦士「少し卑怯ってか、気にいらねぇが……」


武道家「戦士、今はそんなこと言ってる場合じゃないよ」

戦士「わかってるって、クソ……」



勇者「よし、行くぞっ!!」ダッ

商人「イク」


武道家「ほらっ、置いてっちゃうよ?」ダッ

戦士「おい待てよっ」


キリ「……」

キリ(一見バラバラに思えるが、彼女らの瞳も真っ直ぐに未来を見詰めている)

キリ(こんな若者達が居れば、俺が第一線から消えても平気だろう)

キリ「頼むぞ、みんな!!」ダッ





    第一神殿




?「……」

?「来たか」



 ダッ ダッ ダッ



武道家「何ここ……神殿の奥から、金色の光が溢れてくるっ」

戦士「まぶしっ!?」

商人「……」eサングラス


勇者「むっ……この凄まじい闘気は!?」



キリ「奴は黄金の鎧を纏い、全てを切り裂く聖剣を持つ男……」



 ザッ

インドラ「黄泉の道へと送ってやるぞ……この、インドラがなぁっ!!!」



戦士「ッ!!?」

戦士「なにっ……インドラ、だって」


勇者「知っているのか戦士?」

戦士「……」ギリッ


戦士「ああ……」

戦士「インドラは、オレの兄貴だっ!!!」



インドラ「ほぅ、誰かと思えば」

インドラ「自ら修行を申し出たにも関わらず、早々に修行から逃げ出した……愚妹ではないか」ニヤリ



戦士「ぐっ……」

戦士「兄貴、アニキ、あにきぃぃぃぃっ!!!」



インドラ「止せ……貴様のような半端者に兄などと呼ばれるのは虫酸が走る」スッ


武道家「インドラが右手を頭上に振りかざした!?」

戦士「オレだって、ナルシスト野郎に妹とは呼ばれたくねぇよ!!」eエクスカリバー


戦士「……」

戦士「コイツとは、オレが一対一でケリを着ける!!」ジャキッ

戦士「師匠、みんな、先に行ってくれ!!」



勇者「冷静になれ戦士!!」

戦士「オレは冷静だよッ!!!」


勇者「戦士……」

戦士「……」

戦士「ごめん、なさい……」


インドラ「フッ、いつまで経っても成長せん奴だ」



戦士「……んだと?」キッ

インドラ「それにな、俺は誰もここを通すつもりは無い」ニヤリ


戦士「……」

戦士「頼む師匠、みんな……コイツはオレが抑えとくから、先に行ってくれ」

戦士「コイツはオレの壁なんだ、不甲斐ない過去なんだっ、一人で撃ち破らなきゃ……オレは先へ進めない!!」


インドラ「……」

インドラ「バカがッ!! 今しがた言った事も忘れたか!?」ゴゴゴゴゴゴッ



武道家「インドラの全身から、金色のオーラがっ!?」

商人「闘気、殺気、様々な力が合わさり渦巻いてる」ゴクリ



インドラ「俺は先へ通すつもりは無いと……」

インドラ「言った筈だッ!!!」



キリ「出るぞッ、奴の聖剣が!!?」



インドラ「エクス──」

インドラ「カリバァァァァァァッッ!!!」ブォン


戦士「あれは……ぐッ!!」バッ



 ズシャアァァァァァァァッ!!!



インドラ「……」

インドラ「だいぶ手を抜いたとは言え……間一髪では避けれたようだなっ」ニヤリ



武道家「あっ、ああ……大理石で出来てる床が、まるで豆腐のように!!?」

商人「しかも、切り裂いたのは手刀。出会い頭で振りかざした手を、そのまま降り下ろしたに過ぎない……」



戦士「……」

戦士「カッ、お前こそ相変わらずじゃないかインドラ?」

戦士「技の弱点が、未だに克服できてねぇぜ?」ニヤリ



インドラ「……」

インドラ「笑止な!! この技に弱点など存在しない!!」

戦士「もう一度、放ってみれば分かるさ……」スッ



インドラ「大した自信だな……良かろう」スッ

戦士「……」ジャキッ



インドラ「エクス──」

戦士「そこだっ!!」バッ



武道家「戦士がっ!?」

商人「インドラに向けて突っ込んだ」



インドラ「ッ!!?」

戦士「せいやぁぁぁっ!!!」ブォン

てす



インドラ「チッ!?」バッ



キリ「おおっ……」

勇者「インドラは技を解いて引いたか」



戦士「へっ、やっぱりな」ニヤリ

戦士「エクスカリバーは『溜め』を必要とする黄金の闘気を纏った手刀。それを降り下ろした時の鋭い衝撃波が、進行方向の対象物や床を離れた位置まで切り裂く技」


インドラ「……」

戦士「が、あくまでも剣じゃなく手刀だ……攻撃には使えても防御には使えねぇ」



戦士「近接で武器を振るわれたら、身を引いて避けるしかねぇのさ……」

戦士「これで分かったろ? オレは必ず勝つ!! だからみんな、早く先に行ってくれ!!!」



武道家「戦士、でもっ……」

勇者「行こう」

キリ「そうだな……我々は一刻も早く聖者を討たなくてはならない」



武道家「……」

武道家「追い付いてね、戦士?」

商人「この戦いが終わったら、一緒にオレンジジュース」


戦士「……」

戦士「ああっ!! 行けッ!!!」


勇者「よし、通過するぞ!!」ダッ

武道家「……」ダッ

商人「……」ダッ


キリ(もしかしてインドラは……いや、考え過ぎか?)

キリ「……」ダッ





 ダッ ダッ ダッ


インドラ「……」

戦士「……」


戦士「行ったか……」


戦士「割りぃな気を遣わせて……初めてアンタに感謝するよ」ジャキッ

インドラ「構わん。俺とて五人を同時に相手取るのは酷だと思っただけだ」



戦士「酷、か。無理……とは言わないんだな?」


インドラ「フッ」

インドラ「俺はインドラ、そして我がエクスカリバーに敵は無い……」スッ



戦士「……」

戦士「オレは、そんなお前の傲慢さが……だいっきらいだったよ!!」バッ

インドラ「奇遇だな、俺もお前の根拠の無い自信が……大嫌いだった!!」バッ





    第二神殿前



 ピカァーッ ゴロゴロッ ゴロゴロッ



商人「……」

商人「空が……」

武道家「うそ、さっきまで晴れだったのに」


勇者「……」

勇者(戦士、始まったか……)


勇者「よしっ、第二神殿へ入るぞ!!」ダッ





    第二神殿




?「……」

?「インドラは突破されたか」



 ダッ ダッ ダッ



武道家「ッ!!?」

武道家「神殿の床に……霜が張り付いてるっ!?」

商人「寒い」eホッカイロ


勇者「この異常低温……何か居るな」

キリ「第二神殿を守るのは、同じく黄金の鎧を纏う、絶対零度の戦士……」



 ザッ

シヴァ「お前たちの運命はここで凍り付く事になる……この、シヴァの手によって!!!」



武道家「ッ!!?」

武道家「シヴァ……先生」


勇者「知っているのか武道家?」

武道家「……」ギリッ


武道家「うん……」

武道家「シヴァはボクの、幼い頃の教師だったんだ!!」



シヴァ「……」

シヴァ「久し振りだね武道家、憶えの悪い君に教えるのは大変だったよ」


武道家「それでもっ、それでもシヴァ先生は、ボクが分かるまで何度でも教えてくれました!!」

武道家「それなのに……聖者なんかに協力して何してるんですかっ!?」


シヴァ「相変わらず、だな武道家……僕が受け持って来た学校で、クラスで、生徒で!!」

シヴァ「最も要領の悪いガキだ!!」

シヴァ「先生? そんな呼び方は止めて貰おう!!!」



武道家「うぅっ、先生」グッ

シヴァ「ふっ、何か答えさせたい事が有るのなら……このシヴァを倒してみろ!!」



シヴァ「はあぁぁぁぁっ……」ゴゴゴゴゴッ



商人「!?」ブルッ

キリ「床に氷が張って行く!?」


武道家「……」

武道家「先生、やっぱり凄い凍気です……でも、ボクだって成長したんだ!!!」



武道家「はあぁぁぁぁっ……」ゴゴゴゴゴッ


武道家「ダイヤモンド──」

武道家「ダストォォォッ!!!」ブォォォッ


商人「ダイヤモンドダストは冷気の波動を無数の礫として敵にぶつける。逃げ場は無い」



シヴァ「……」

シヴァ「ddか? ddはこのシヴァがお前に授けた技……それが、通じると思っているのか!?」バッ


シヴァ「ダイヤモンド──」

シヴァ「ダストォォォォッ!!!」ブォォォッ



商人「ddとddが!?」


武道家「っ!!?」

武道家「うわああああああああ!!?」ドゴォォッ


武道家「ぐあっ、うぐっ……」ドサァッ



シヴァ「……」

シヴァ「真の凍気とは、このようなものを言うのだ」ニヤリ



武道家「まだっ、まだまだっ!!」フラフラ


シヴァ「……」

シヴァ「答えろ武道家、絶対零度とはなんだ?」


武道家「……」

武道家「絶対零度とは……全ての物が凍結される、摂氏零下二七三・十五度の温度」



シヴァ「そうだ……」

シヴァ「そして、このシヴァの凍気は絶対零度。倒そうと言うのなら、絶対零度まで凍気を高めねばならない……お前にそれが出来るか?」


武道家「ボクは、ボクはっ!!」グッ

武道家「シヴァ!! 貴方の位まで、凍気を高めてみせるッ!!!」


シヴァ「……」

武道家「みんなっ、ここはボクに任せて先へ行って!!」



勇者「……」

勇者「武道家よ……この旅の中で、お前は劇的に成長した」

勇者「自分を、信じなさい」ニコリ

武道家「ししょー……」

武道家「はいっ!! 必ず追い付きます!!」



勇者「行くぞっ!!」ダッ

商人「……」

商人「待ってる」ダッ

キリ「気の効いたアドバイスは送れんが……死ぬなよ?」ダッ


武道家「ありがとう、みんな……」




 ダッ ダッ ダッ


シヴァ「……」

武道家「……」


武道家「止めない……んですね?」

シヴァ「考え事をしていた……」



武道家「考え事?」

シヴァ「お前の墓を永久凍土に作るとして、棺はどうしようかとな」ニッ


武道家「……」

武道家「考えても無駄ですよ? ボクが勝ちますからっ」スッ

シヴァ「ぬかせっ」スッ


武道家「……」

シヴァ「……」



武道家「はあぁぁぁぁっ!!!」

シヴァ「ハアァァァァッ!!!」



    第三神殿前



 ポツポツ ポツポツ ザァァーッ


商人「……」

商人「雨も強くなった」

勇者「ここを抜ければ、聖者の神殿か……」


商人「最初は戦士」

商人「次は武道家」

商人「順番的に」

商人「次は……」ゴクリ


キリ「さぁ、行こう!!」ダッ





    第三神殿




?「……」

?「来ましたか」



 ダッ ダッ ダッ



商人「ッ!!?」

商人「お前はっ!!?」


ブッタ「私はブッタ……初めまして、可愛らしいお嬢さん」ニコリ


商人「あ、初めまして……」ペコリ



勇者「……」

勇者「強いな」


キリ「奴は前二人と同じく黄金の鎧を纏う、神に最も近い男……ブッタ」


キリ「そして、俺の双子の弟だ!!」ギリッ

商人「そっち!?」



ブッタ「キリスト、会うのはいつ以来だろう……」

ブッタ「いや、今はキリ……だったかな?」


商人「……」

商人「師匠、早く先に行くべき」グイグイ


キリ「ブッタ……何故、聖者などに力を貸す?」

ブッタ「その質問、インドラとシヴァは答えたか?」スッ



キリ「……」

キリ「そうだったな……」スッ


キリ「勇者よ、先へ行くのだ!! そして必ずや聖者を倒してくれっ」


勇者「……」

勇者「分かった、ここは任せるぞ!!」


勇者「走れ商人!! 聖者の神殿は近い!!」ダッ

商人「……」コクリ

商人「がんばって」


商人「……」ダッ

商人のマヌーサフラグじゃなかったなんて

>>692

ジャスト>>692レスだ……

いい夢は、見れたかよ?




 ダッ ダッ ダッ


ブッタ「……」

キリ「……」


ブッタ「キリよ……人で在る事へ固執したお前に、私は倒せぬ」

キリ「ブッタ……神に近付く事へ固執したお前を、この俺が破る!!」






駄目や……
やっぱり微妙に収まりそうにないので、ここで次スレに移りますm(__)m

新しいスレを立てたらアドレス貼ります

えーギリギリまでやって無理なら次いけばよくね?
それかセイントまで終わらせてからにしよや
半端なとこで区切らないがいいよ

>>696

そだね。
取り敢えずゴールドセイント終わるまではここでやるよ





    第四神殿



 バッサバッサ バッサバッサ



極ポッポ「ホッホッ、勇者がここに来ると聞いた……手を貸してやろうか聖者?」スタッ

聖者「……」

聖者「誰だお前は?」



サンダー「ポッポ様は、勇者が避けて通るほど強いお方よ」スタッ

フリーザー「勇者はポッポ様との戦いを恐れて、このセイントキングダムへ迂回したのだ!!」スタッ

ファイヤー「だが安心するがいい。ポッポ四天王が力を貸してやるぞっ」スタッ

オニドリル「おにぃぃぃっ!!」スタッ



聖者「……」

聖者「鳥風情が……消えろっ」


極ポッポ「はっ?」


聖者「消えろと言ったのだ、この聖者の気が変わらん内になぁっ!!!」


サンダー「なんだとテメェ!! 椅子から立ちやがれっ、まずはテメェからぶっ殺してやる!!」


聖者「……」

聖者「救えん奴らだ……」

聖者「このままで良い。掛かって来い」クイッ


フリーザー「コイツ!? 椅子に座ったまま、しかも片手にワイングラスを持ったままで相手をしようと言うのか!?」



ファイヤー「ポッポ様、どうしましょう?」

オニドリル「鬼おこ!!」


極ポッポ「聖者……やはり人間か、馬鹿な男だ」ニヤリ

極ポッポ「ヤれっ、四天王!! 聖者を殺せッ!!!」



聖者「……」スッ

聖者「貴様らは、この聖者に触れる事さえ叶わぬ!!」ゴゴゴゴゴッ



サンダー「なんだっ!? 聖者を中心に空間が歪んで行くゾッ!!?」

極ポッポ「これは……世界の法則が乱れる!?」ゾクッ



聖者「フッ、決して戻れぬ異空間へと送り込んでやる……」ニヤリ

聖者「アナザーディメンション!!!」バッ




     第一神殿



戦士「うあああああああああ!!?」ズザァァッ

インドラ「ん? 先ほどまでの威勢はどうした?」


戦士「くそっ……懐だっ、懐にさえ入り込めればっ!!」フラフラ

インドラ「……」

インドラ「懐に入り込んだとて……」


インドラ「その折れた剣で、どうしようと言うのだ?」ニヤリ

戦士「えっ? 折れ……」



 バキンッ!!



戦士「なッ……俺の剣がっ、本物のエクスカリバーが!?」



戦士「くっ、ならっ!!」e破邪の剣

戦士「……」ジャキッ


インドラ「予備の剣で……血迷ったか?」

戦士「うるせぇっ!!」バッ



インドラ「フッ……」スッ


インドラ「エクス──」

インドラ「カリバァァァァァッ!!!」ブォン



 ズシャアァァァァァァァッ!!!




 バキンッ

戦士「ッ!!?」



戦士「そんなっ、一撃も耐えれな……」

戦士「ンンッ!!?」ズバァァッ



インドラ「安らかに眠れ、妹よ……」

戦士「あっ、あ、ァァ……」フラフラ


戦士「……」

戦士「しっ、しょう……」ドサァッ



戦士(エリクサー、エリクサーを飲めば……)

戦士(……)

戦士(ははっ。駄目だ、手が動かねぇや)



戦士(結局……)

戦士(子供の時もキツい修行に逃げ出して、今も任せろとか言っといて負けて)

戦士(何も変わってない。ずっと中途半端なままだオレはっ……)



戦士(ああ、そうだ)

戦士(聞いてたじゃねぇか、あの時)


戦士(あの時に……)




 ─────あの時。




勇者『最強の剣を持っている敵?』
戦士『うん。何でも切り裂く最強の剣を持ってる敵……師匠ならどう戦う?』



勇者『ふむ』

勇者『最強の盾を持つ……つまり矛盾は無しでか?』

戦士『そう、だな。その剣を防げる盾は存在しない。だから矛盾は無し』


勇者『……』

勇者『ならば、私の思い付く答えは二つだ』

戦士『えっ?』

戦士『てか、二つも思い付いたのか師匠!?』



戦士『おっ、教えてくれ!!』


勇者『……』

勇者『なんて事は無い。相手が最強の剣を持つなら、こちらも最強の剣を持って戦う』


戦士『こっちも、最強の剣を……』



勇者『そして、もう一つは』

戦士『もう一つは?』


勇者『こちらはもっと簡単だ。特に戦士……お前ならな』ニコリ

戦士『なっ、なんだよそれ……』

戦士『焦らさないで教えてくれよっ』


勇者『それはな……』



 ────そう、だったな。




戦士(オレにはまだ……)

戦士(まだっ!!)


戦士(やれる事が残ってる!!!)



 ザッ

インドラ「兄としての最後の務めだ……」

インドラ「お前の身体は、火葬にて丁重に葬ってやろう」



戦士「……」

戦士「……」ピクッ


インドラ「!!?」

インドラ「なにっ……まさかッ!?」


戦士「へっ、へへっ……」ググッ

戦士「近親相姦の趣味はねぇぜ? 触んなよクソアニキ」フラフラ



インドラ「フッ、フフッ……ハハハハハハハハッ!!!」

インドラ「小銭が足りずに、三途の川で追い返されたか?」


戦士「……」

戦士「カッ」

戦士「船渡しのババアは、男じゃねぇと連れてかねってよ!!」



インドラ「……」

戦士「……」


インドラ「エリクサー」

戦士「あっ?」


インドラ「エリクサーは有るんだろ? 待っててやるから使え。そのままでは戦いの最中に出血多量で死ぬぞ?」

戦士「……」


戦士「すまねぇ、アニキ……」

インドラ「礼はいい、早くしろ」


戦士「すまねぇが、エリクサーは……アニキを倒してから使わせて貰うぜ」ニッ



インドラ「そうか……」

インドラ「では、死ね」スッ


戦士「……」

戦士「ずっと、ずっとさ……考えてた」


戦士「ずっと半端なオレだけど」

戦士「半端に過ごして来たオレだけど」

戦士「何気無く半端にしてた訳じゃない」


戦士「全力で半端をやってたんだ!!」スッ

インドラ「ッ!? その、構えはっ!!?」



戦士「はああぁぁぁぁぁっ!!!」ゴゴゴゴゴッ



インドラ「……」

インドラ「戦士の闘気が爆発的に膨れ上がっている……いや、これは俺と同じ黄金の闘気!?」


インドラ「まさか、まさかッ!!?」


戦士「インドラ……お前が全てを切り裂く聖剣を持つのなら、オレもその聖剣を握るっ!!」


インドラ「ふっ……たかが数回見ただけで、俺の技が使えるかッ!?」

戦士「やってみりゃあ分かるさ……」



戦士「……」

インドラ「……」



戦士「エクス──」

インドラ「エクス──」




戦士「カリバァァァァァッッ!!!」

インドラ「カリバァァァァァッッ!!!」



 ズシャアァァァァァァァッ!!!



戦士「ッ!?」

戦士「ぐあああああああああ!!?」ドゴォォッ


インドラ「……」

戦士「があっ!? うぅっ……」ドサァッ



インドラ(戦士は吹き飛んだ……だがそれは、エクスカリバー同士の激突から来る衝撃波に奴の身体が耐えれなかっただけの事)

インドラ(エクスカリバー自体は、ほぼ完全に相殺していた)



インドラ「戦士……よくぞここまで強くなったな」

インドラ「技だけを見れば、どうやらお前は素晴らしいセンスを持っているようだ」


戦士「くっ……」フラフラ

インドラ「しかし!!」



インドラ「どう在ろうとも、このインドラに勝つ事はできん!!」

戦士「……」

戦士「違うね」


戦士「次にエクスカリバーを放った時、それはお前の敗北を意味する」



インドラ「二流戦士が、一人前に挑発するか?」

戦士「で、どうすんだ?」


インドラ「……」

インドラ「よかろう。俺の聖剣を、破れるものなら破ってみろ!!」


戦士(ありがとよアニキ……)



戦士「……」スッ

インドラ「……」スッ



戦士(エクスカリバーを使えるだけじゃ勝てない)

戦士(懐に入り込んでも、武器は全て破壊された)


戦士(師匠……)グッ




勇者『なんて事は無い。相手が最強の剣を持つなら、こちらも最強の剣を持って戦う』

戦士『こっちも、最強の剣を……』


勇者『そして、もう一つは』

戦士『もう一つは?』


勇者『こちらはもっと簡単だ。特に戦士……お前ならな』ニコリ

戦士『なっ、なんだよそれ……』



戦士(オレは)

戦士(どうしようも無く、半端者だから……)グッ





戦士「エクス──」

インドラ「エクス──」




戦士「カリバァァァァァッッ!!!」

インドラ「カリバァァァァァッッ!!!」



インドラ「例え一発目が相殺されたとしても、風圧で吹き飛んだ所へ、直ぐに二発目のエクスカリバーを放ってトドメを刺す!!」

インドラ「終わりだ戦士ッ!!!」



 ズシャアァァァァァァァッ!!!



戦士「ッ!!?」

戦士「……」

戦士「はあぁぁぁぁぁァアア!!!」ダッ



インドラ「突っ込んで来た!?」

インドラ「バカがっ、盛大に吹き飛……」



戦士「……」

インドラ「ばないっ!!?」


インドラ「ちぃっ!!」スッ

インドラ「エクス──」


戦士「させねぇよ!!」ガシッ

インドラ「ぐっ、コイツ、俺の腕をっ!?」



戦士「やっと掴まえた……」ニヤリ


戦士「オレを評価し過ぎたなアニキ?」

インドラ「……」

インドラ「なんだと?」


戦士「パワーも、スタミナも、スピードも、アニキには全て勝てねぇけど、戦士としては何も勝てねぇけど……」

戦士「けどなっ!! オレは半端な奴だぜ? どうして『一流を目指してる立派な戦士』だなんて思った!?」



 バチバチッ


インドラ「ッ!!?」

インドラ「これはっ、闘気では無い!!?」


戦士「オレはなアニキ? 純粋な戦士じねぇから、騎士道精神なんか知らねぇ」

戦士「だから戦士のアニキが相手でも、容赦なく使わせて貰うぜっ!!!」バチバチッ


インドラ「貴様ッ、まさかぁっ!!」



戦士「オレは魔法、戦士だからな!!」

戦士「手のひらから直接、盛大に送り込んでやるよっ!!」カッ


戦士「ギガ──」

戦士「ディィィィィィン!!!」




 ズドオォォォォォォォォッッ!!!




インドラ「ぐああああああああアアア!!!」



戦士「……」パッ

インドラ「……」


インドラ「戦士よ」

インドラ「見事だ」グラァッ


戦士「さよならっ、アニキ……」




インドラ「だがっ……」ザッ


 バリバリッ、バキィィン!!


インドラ「お前の魔法は、オレの鎧を砕いただけに過ぎない」



戦士「……」

戦士「えっ?」ビクッ


戦士「ウソ、だろっ?」

インドラ「……」


インドラ「フッ」ニコッ

インドラ「お前の勝ちだよ戦士……俺はこうやって、立っているだけで精一杯だ」



インドラ「早くエリクサーを飲め。そして仲間の後を追うがいい」

戦士「……」


戦士「本当に、立ってるだけで精一杯なのか?」

インドラ「……」

インドラ「本当だ」コクリ



戦士「本当の本当に?」

インドラ「……」

インドラ「しつこいな、無理やり飲ませてやる!! 来い!!」グイッ


戦士「やっ、やめろっ!! 離せぇぇっ!!」ジタバタ


インドラ(シヴァ、ブッタ……お前たちは、自らの使命を思い出せているのか?)





     第二神殿




武道家「……」eほしふるうでわ eキラーピアス

武道家「ふぅぅっ……」ジリッ


シヴァ「……」

シヴァ「どのような攻撃をしようとも、お前ではこのシヴァを倒せぬ」



武道家「……」


武道家「シッ!!」ダッ

シヴァ「……」スッ



武道家「たぁっ!!」シュッ

シヴァ「……」パシッ


武道家「わたぁっ!!」シュッ

シヴァ「……」パシッ



武道家「『ばくれつけん』!! アチョ~~ッ!!」スッ

シヴァ「むっ」


武道家「あぁだだだだだだだだダァッ!!!」ドドドドドドッ

シヴァ「……」

シヴァ「フリージングコフィン……」ニヤリ


武道家「だっ……」



 バリィィィィィィィィン!!!



武道家「ッ!!?」

武道家「先生が一撃で砕け……」


武道家「いやっ、違うっ!!」


シヴァ「……」スタッ

シヴァ「お前が攻撃したのは、鏡のように研ぎ澄まされた氷だ」



武道家「うしろっ!!?」クルッ


シヴァ「遅いッ!! 氷の棺の中で、永遠に眠れ武道家!!!」バッ



 バタァン!! ガチガチガチガチッ!!



武道家「ガッ……」カキィン

シヴァ「フリージングコフィンに閉じ込められた者は、凡そ17秒で生命活動を終える」

シヴァ「そして絶対零度の凍気を持たぬお前には、決して脱出できぬ技……」


シヴァ「思えば……お前に戦いを教えたのは間違いだったかも知れない」

シヴァ「教えた技はダイヤモンドダストしか習得できず、中途半端に力を着けたが故にこのような結末に至ってしまった」


シヴァ「学問だけを教えていれば……武道家よ、お前の棺は力尽きるまで生来守り抜くと誓おう。それが、自分自身への罰!!」グッ



 ……




武道家(……)

武道家(先生……やっぱり先生はスゴいです)


武道家(スゴい人なんですから、そんなに自分を責めないでください)

武道家(だから、ボクは、先生を救う為に……)



武道家「……」



武道家(ジャガンノートの時は、絶対零度まで凍気を高めようとしたけど、結局できなかった……)

武道家(それまで修行して来たのに、でもできなくてさ、何故だろうって、ずっと考えてた)


武道家(そしたら思い出したんだ。幼い頃に聞いた先生の言葉……)




 ────絶対零度に燃やす?




シヴァ『そう。凍気を極めるなら、内なる心を燃やすのだ』

シヴァ『しかし表面まで熱くはなるな。表はあくまでも氷……クールに徹しろ武道家』


武道家『クールに……』



シヴァ『心で泣け、笑え、怒れ!! しかしそれを悟られるな……』

シヴァ『お前はこのシヴァの後を継ぐ、氷の戦士となるのだ』


シヴァ『いつ、如何なる時も……』




 ────クールに徹するのみ!!




武道家(先生……)

武道家(ボクは貴方を救う為に)


武道家(貴方を超えます!!!)



 ピシッ

シヴァ「んっ、なんだ?」


 ピシピシッ バキバキバキッ

シヴァ「フリージングコフィンにヒビがっ!?」


シヴァ「……」

シヴァ「まさかっ……この土壇場で、絶対零度の凍気に目覚めたと言うのかッ!!?」




 ガキガキッ、バキィィィィィン!!!




武道家「はああぁぁぁぁぁぁっ!!!」ゴゴゴゴゴッ



武道家「……」タッ

武道家「先生……」



シヴァ「……」

シヴァ「フッ」

シヴァ「武道家、お前はようやく同じ土俵へ上がったに過ぎない……」



武道家「……」ジィーッ

 アルテマウェポンの爪手甲

武道家(ボクにはもう、武器は必要ないかな……)

武道家(今までありがとう。そして、ボクに力をっ!!)ギュッ



 … 武道家の武器は氷結し 粉々に砕け散った 巨大な魔力が膨れ上がる!



シヴァ「むっ……」スッ

武道家「この武器は壊れると同時に、一度だけの強力な魔法へと産まれ変わります」ゴォォォッ



シヴァ「そんなものが、通ずると思っているのか?」

武道家「……」

武道家「思っていません」


武道家「でも、ここまでの魔法を防げる技は一つしか無いはず」

武道家「その技をここで見て、ここで完成させます!!」


シヴァ「ッ!?」

シヴァ「……」

シヴァ「よかろう。ならばこのシヴァが放つ、最大の奥義を見せてやる!!!」



シヴァ「……」

シヴァ「コオォォォォォッ!!」ゴゴゴゴゴッ

武道家(凍気を極限まで高め……)


シヴァ「お前が会得できなかった奥義だ、しかと目に焼き付けろ!!」

武道家(両腕を頭上に掲げ、両手の指を左右交互に噛み合わせるようにして組み、握る……)


シヴァ「これぞ、究極の絶対零度……」スゥッ

武道家(そして、組んだ手を下ろしながら相手に向けて……放つ、絶対零度の波動!!)



武道家「行けッ、無加工の魔法爆弾!! アルテマッ!!!」バッ
シヴァ「無駄だ……」



シヴァ「オーロラ──」

シヴァ「エクスキューション!!!」




 ズオォォォォォォォォォオオ!!!




武道家「ぐぅッ!!?」


 ガキィッ、ガチガチガチッ!!

武道家「アルテマがっ、一瞬で凍った……」



シヴァ「……」スタッ


シヴァ「いつまでもどこを見ている?」

武道家「えっ?」クルッ


シヴァ「ハァッ!!」ドゴッ

武道家「うッ!!?」グラァッ


武道家「……」フラフラ

武道家「あっ……」ドサァッ



シヴァ「オーロラエクスキューションに隙は無い。どうして凍らされた魔法などに視線を向けた?」

シヴァ「敵から視線を切らせるな。それとも……今お前が師と呼んでいる人物は、そんな事も教えてくれなかったのか?」


武道家「……」

武道家「ぐぅ、うぅっ……」グッ


シヴァ「そうだ、立て武道家!! このシヴァを超えてみろ!!」タッ



武道家(ししょー……)




武道家『あのっ、どうやればししょーのように強くなれますか?』

勇者『……』

勇者『修行あるのみだ……』

武道家『あはは、ですよね~っ』


勇者『だが、ここぞと言う時、一時的に身体能力を高める方法ならある』



武道家『おっ、教えてください!!』

勇者『なに……呼吸を変えるだけだ』


武道家『呼吸を?』

勇者『……』コクリ


勇者『人は全力を出しているつもりでも、実は30%程しか力を出せていない』

勇者『しかし……この神龍呼吸法を使えば、残りの70%を引き出す事ができる』



武道家『すごぉい!! でも、何で一時的なんですか? いつもその呼吸をしてれば……』

勇者『死ぬぞ? 本来は体が危険だと判断して力にストッパーを掛けているのだ』

勇者『長時間の使用は体に負荷を与え、皮が裂け、血が吹き出し、内臓すら傷付けて行く』


武道家『……』ブルッ

勇者『だから、ここぞと言う時、どうしても負けられない時……その時に、一度だけ使いなさい』ニコリ



武道家「……」

武道家「すぅぅっ、はぁぁっ……」ザッ

シヴァ「むっ!?」


武道家「すぅぅっ」

武道家(体の中心へ全身の血液を集めるように息を吸い……)


武道家「はぁぁっ」

武道家(龍の形を描きながら息を吐く……)


武道家「すぅぅっ、はぁぁっ……」



武道家「先生……」グッ

シヴァ「……」


武道家「シヴァ!! 今ボクは貴方を超える!!」

シヴァ「超えてみろ……絶対零度の凍気を持つ、このシヴァをな!!」



武道家「はあぁぁぁぁぁっ!!!」ゴゴゴゴゴッ

シヴァ「コオォォォォォッ!!!」ゴゴゴゴゴッ


武道家「……」スッ

シヴァ(あの構えは!?)

シヴァ「……」スッ


シヴァ「いいだろう、ならば撃ってみろ!! このシヴァの奥義を!!」



武道家(シヴァ先生……)

武道家(先生から教わった凍気と技を、先生へ贈ります)



武道家「オーロラ──」

シヴァ「オーロラ──」



武道家「エクスキューション!!」

シヴァ「エクスキューション!!」



武道家「うおぉぉぉぉぉっ!!!」

シヴァ「ハアァァァァァッ!!!」




 ズオォォォォォォォォォオオ!!!




シヴァ「くっ」

シヴァ(押し切れないだと!?)

シヴァ(やはり武道家は、絶対零度の域まで凍気を高めていると言うのか!?)



シヴァ「僅かな時間で、よくぞここまで成長した武道家……確かに凍気のレベルでは、ほぼ互角と言っていい!!」

シヴァ「だがなっ、急激に身に付けた付け焼き刃では、オーロラエクスキューションを放ち続ける事はできん!!」



武道家「うぅっ……」ググッ


シヴァ(後15秒……いや、後10秒と見た。後10秒で武道家は力尽き、地面に膝を着く)ニヤリ




 ズオォォォォォォォォォオオ!!!




武道家「すぅぅっ」

シヴァ(なんだ?)


武道家「はぁぁっ……」

シヴァ(いや、気のせいでは無い!!)



武道家「すぅぅっ、はぁぁっ……」

シヴァ(武道家の凍気は、絶対零度に到達してもなお……上昇しているッ!!?)




 パキパキ、パキッ。

シヴァ「馬鹿なッ!? この黄金の鎧が、僅かずつだが凍り始めているっ!!?」


武道家「すぅぅっ、はぁぁっ……」ブシュッ

シヴァ「んっ? 武道家の体から血が?」


シヴァ「そうか、お前は命を削って不足分を補っていたか……」



シヴァ「ならばこちらも……」

シヴァ「命を賭けて応えねばなるまい!!」


シヴァ「受けよっ、我が全身全霊をッ!!!」カッ


武道家「すぅぅっ……」カッ

武道家「シヴァァァァァァッ!!!」



シヴァ「はあぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!」

武道家「はあぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!」




 ズオォォォォォォォォォオオ!!!




シヴァ「ッ!!?」

シヴァ「押されっ……」


シヴァ「ぐおおおおおおおおお!!?」ズドォォッ




 バキバキッ、バリィン!!


シヴァ「があっ!?」ドサァッ

武道家「はぁっ、はぁっ、はぁっ」


武道家「ははっ……」フラフラ

武道家「やった、先生を……倒した」




シヴァ「……」



シヴァ「……」グッ



シヴァ「ふぅぅっ……」ザッ

武道家「……」

武道家「えっ?」


武道家「なんで、そんなすぐに立ち上がれるのっ!?」


シヴァ「驚いたぞ武道家、まさか押し切っただけでなく、この鎧まで凍結させ破壊するとは……」ニコリ



武道家「……」ザッ

シヴァ「そう身構えるな。もう戦う気は無い……お前が救ってくれたんだ」


武道家「ボクが、先生を?」

シヴァ「……」コクリ


シヴァ「『黄金の鎧の呪い』から、確かにお前が救ってくれた」



シヴァ「さぁ、こちらへ来なさい武道家。回復してあげよう」ニコリ

シヴァ「そして仲間の待つこの先へ……急ぐのだ!!」


武道家「先生……」

武道家「はいっ!!」





      第四神殿




極ポッポ「ワシは、愛の為に戦おう……」バッサバッサ

聖者「ならば滅びるがいい、その愛と共に!!」スッ


極ポッポ「愛は滅びぬ!!」

極ポッポ「喰らえっ……ポッポ最大の秘技、ゴッドバードを!!!」バサァッ



極ポッポ「ゴッドバード、チェェンジ!!」ウィーン ギッチョン

極ポッポ「照準セェェェット!!」

極ポッポ「ライララァァァイ!!!」ゴォォッ



聖者「……」

聖者「フッ、愚かな……」ニヤリ


聖者「ギャラクシアンエクスプロージョン!!!」バッ





     第四神殿 手前




 ドゴオォォォォォォォォオオ!!!




商人「!?」ピタッ

商人「強大な魔法が、神殿の天井を突き破った」


勇者「……」

勇者「聖者……」



勇者「商人、さっき話した事は……」

商人「おぼえてる」コクリ


勇者「……」

勇者「よしっ」


勇者「行くぞ!!」ダッ

商人「了解」ダッ





      第四神殿




極ポッポ「ぽっぽぉ、ぽっぽぉ、ぽっぽぉ、ポッポが三時をお知らせしま……うがっ」ボトリ

極ポッポ「……」バラバラ バラバラ


聖者「薄汚いゴミが片付いたか……」


聖者「そしてっ」ザッ

聖者「よく来たな勇者……」ニヤリ




勇者「……」

商人「こいつが聖者」ザッ


商人「……」グッ

商人「メラゾーマ!!」ゴォッ

聖者「どこを狙っている?」



商人「薄汚いゴミを燃やした」

ポッポ残骸「……」ボォォッ



聖者「……」ニヤリ

商人「……」ニヤリ



商人「次は貴方」

商人「メラゾーマ!!」ゴォッ


聖者「この聖者に魔法は……」

聖者「効かんッ!!!」キィン


商人「!?」

商人「メラゾーマが鎧に弾かれた……」



勇者「商人」

商人「……」コクリ


勇者「聖者よ、次は私が相手になろう」スッ

聖者「成長したようだな勇者……だがっ!!」


聖者「貴様も、魔王も、この聖者には勝てん!!」



勇者「……」

聖者「……」ニッ


聖者「どぉぅれ、打ってみろ勇者……貴様がどれだけ強くなったか見てやろう」クイッ



勇者「ほぉぉっ……」

勇者「ハイヤァッ!!」バッ



勇者「フンッ!!」ブォン

聖者「……」キィン


勇者「ハァッ!!」シュッ

聖者「……」キィン



勇者「闘指気真空波!!」ゴォッ

聖者「……」キィン


勇者「ぐっ」バッ

聖者「効かん……」



聖者「効かん、効かん効かん効かん効かん効かんッ!!!」

聖者「全くもって、貴様の攻撃はこの聖者に通じはしない!!!」



勇者「……」

勇者「それはどうかな?」スッ


勇者「次の一撃は、聖者……お前が耐えること叶わぬ」

聖者「……」ピクッ


聖者「フッ」

聖者「面白い、やってみろ?」ニヤリ



聖者「そして、この攻撃でサービスタイムは終わりだ」

聖者「すぐに貴様らを塵にしてやるぞ? 俺が放つ最強魔法……ギャラクシアンエクスプロージョンでなぁっ!!!」



勇者「……」

勇者「聖者、お前は何も変わっていない」



聖者「何を当たり前の事を……」

聖者「地上最強は常に唯一!! この俺だ!!」


勇者「……」

勇者「やはり、あの頃のままか」ジリッ


勇者「はぁぁっ……」

勇者「多重幽現翔!!」ダンッ



聖者「むっ!?」

聖者(多重幽現翔……質量の有る残像を幾つも発生させて本体を見極めさせず、相手の周囲を縦横無尽に飛び回わり撹乱する技)



勇者「無数の虚実から迫る真実の拳、お前に見切れるかっ!?」ダンッ ダンッ ダンッ

聖者「……」


聖者「フッ」

聖者(本体は、右、左、上、また左……ククッ)

聖者(あの頃は手を焼いた技だが、今となっては恐れるに足らず!!)


聖者「勇者よ、貴様の動きは幾ら残像を加えようとも、今の俺を惑わす事などできん!!」スッ



勇者「ハァッ!!」バッ

聖者(来たッ!! 本体は……真正面!!)ニヤリ


聖者「もう遊びは終わりだっ、叩き落としてやるぞ勇者!!」バッ





聖者「んっ……」

聖者(勇者の仲間は、メラゾーマを放ったアイツはどこだ?)



聖者(ぐっ、しまった!! 勇者に気を取られて見失っ……)




商人「メラ──」

聖者「後ろかっ!?」クルッ



商人「ゾーマ!!」ゴォォッ

勇者「蹴り抜くッ!!」ブォン



聖者「ウごはァッ!!?」メリメリッ



聖者「馬鹿なっ……」ドサァッ

聖者(なぜ鎧が攻撃を弾かない!?)


勇者「聖者、お前の秘密は既に暴かれている……」

聖者(勇者!? まさか、俺すらも知らない鎧の秘密を知っていると言うのか?)


聖者「……」ググッ

聖者(ともかく、ここからは油断できんようだな)



聖者「ふぅぅっ……」ザッ



 バキバキッ、バリィィン!!



勇者「鎧が砕けたか……」スッ

聖者「確かに、俺の防御は突破されたが、それでもまだ半分」ニヤリ


商人「……」スッ

聖者「俺の攻撃を防がねば、勝つ事はできんぞ!!」



聖者「ギャラクシアンエクササイザーで鍛えた、この両拳を防がねばなぁっ!!!」ゴゴゴゴゴッ




勇者「これはっ!?」

商人「!?」ガクガク



聖者「まずは右拳で、貴様の仲間から葬ってやる……」スッ

商人「くっ、イオラ!!」バッ




聖者「燃え上がれ星々よ……」

勇者「いかん!? 避けろ商人!!」



聖者「ギャラクティカ、マグナム!!!」ブォン

商人「ッ!!?」ズドォッ



商人「あっ、ぁ……」ズブズブッ

聖者「フッ、腕が貫通したか……」


聖者「これではもう助からんな」ニヤリ

商人「……」ドサァッ



勇者「ぐぅっ、商人……」

聖者「次は貴様だ勇者、この左拳でトドメをくれてやる」スッ


聖者「今こそ光となり、勝利へ突き刺され……」

勇者「聖者ぁぁぁぁぁッ!!」バッ




聖者「ギャラクティカ、ファントム!!!」ブォン

勇者「ぐはぁっ!!?」ズドォッ
勇者「がッ……」ズブズブッ



聖者「仲間と同じ運命を辿ったな勇者」ニヤリ

勇者「……」ドサァッ



聖者「ハハッ、魔王はこの聖者が倒してやる……安心して眠れ!!」


聖者「ククッ」

聖者「ハハハッ」


聖者「ハァッハッハッハァァッ!!!」






 パリンッ──





聖者「は?」



 パリン、パリンパリン、パリンッ!!


聖者「なんだっ!? 空間がヒビ割れて……剥がれ落ちて行く!!?」キョロキョロ





商人「聖者……」

聖者「きっ、貴様、生きてッ!!?」クルッ



商人「ジャスト十秒だ……」

商人「良い夢は、見れたかよ?」ニヤッ




勇者「聖者……お前は変わっていない」

勇者「あの頃のまま、何も成長していない!!」



聖者「きっ、勇者ぁぁッ!!」ギリッ

聖者「ならばこの技を受けろっ!!」



聖者「我が右手に宿るのは究極の増幅魔力」バチバチッ

聖者「我が左手に宿るのは究極の消却魔力」バチバチッ



聖者「この二つを合わせて放つギャラクシアンエクスプロージョン……どう防ぐ勇者ぁぁッ!!!」ゴゴゴゴゴッ



勇者「聖者……」スッ

商人「……」スッ



聖者「はあぁぁぁっ、砕け散れぇぇぇぇっ!!!」バチバチッ バチバチッ

聖者「ギャラクシアン、エクスプロージョン!!!」バッ




 ゴゴオォォォォォォォォッ!!!




勇者「商人……」

商人「……」コクリ


商人「マホカンタッ!!」バッ



商人「お返しする」カキィン



聖者「なにッ!!?」

聖者「くっ……」ダッ




 ドゴォォォォォォォォオオ!!!




商人「避けた」


聖者「……」

聖者「信じられん……」フラッ


勇者「聖者よ、もはや勝負は着いた」



聖者「勇者……」

聖者「それはどうかな?」ニヤリ


聖者「貴様らはどう足掻こうと、この俺に破れて死すべき運命なのだ!!!」ゴゴゴゴゴッ

聖者「確かに、貴様らへ向けて放てば反射されるかも知れん……だがっ!!」バチバチッ バチバチッ


勇者「まさかっ!?」

商人「えっ? えっ?」キョロキョロ


聖者「貴様らの真下、つまり神殿へブツけても、爆発の衝撃で貴様らは死ぬ……無論、俺もただでは済まないがな」



勇者「……」

勇者「ここまでか……」スッ


勇者「私が何とかしよう。商人、ここから逃げなさい」

商人「や」ギュッ

商人「や」フルフル


商人「フバーハを使えば助かる」

勇者「これは、そんな次元では無い。聖者はこの周囲全てを消し飛ばすと言っているのだ」




聖者「クハハハハハッ、砕け散れ勇者ぁぁぁぁっ!!!」バチバチッ バチバチッ


勇者「ぐっ、ハァッ!!」ダッ

商人「あっ!? 師匠、ダメ!!」ドサッ




聖者「遅い遅い遅いぃっ!! ギャラクシアン……」

武道家「オーロラエクスキューション!!」ズォォッ




 ガチガチッ、ガキン!!

聖者「何ッ!? 俺の右腕が凍っ……」



戦士「エクスカリバー!!!」ブォン

聖者「ぐおおおおおおおお!!?」ズバァァッ


聖者「ガッ……」ガクッ



戦士「どうやら、いいとこで来たみたいだな」スタッ

武道家「ただいまししょー♪」スタッ


勇者「お前たち……」

勇者「……」


勇者「待っていた……」ニコリ



勇者「聖者、もう良かろう? 子供たちを解放し、皆に謝罪せよ。そしてこれからは民の為に尽くすのだ」

勇者「さすれば、命までは取らん」


商人「!?」

戦士「おい、師匠!!」

武道家「そっ、そんなの甘過ぎだよっ!!」



聖者「……」ヨロヨロ

聖者「そうだな……この力は、もう封印しよう」

商人「!!!??」



聖者「最後に、一つだけ聞いても構わんか?」

勇者「……」

勇者「なんだ?」



聖者「俺の鎧は、どうして壊れたんだ?」

聖者「この鎧が有ったから俺は力に傲り、実戦を積まずに経験が足らず……破れた」

聖者「その理由を聞きたいのだ、頼む勇者……最後に、教えてくれ」


勇者「……」

勇者「よかろう……」



勇者「お前が身に付けていた鎧は、物理攻撃も、魔法攻撃も弾く。しかし同時に……では無い」

聖者「……」


勇者「恐らく、物理を弾く性質と魔法を弾く性質は、その攻撃がヒットする瞬間に切り替わるのだ」

聖者「切り替わる……だから同時に攻撃され、砕けた?」


勇者「うむ。あの頃にお前と魔王が戦い、それを止めようと師が両者に魔法を放ち、その時に見たのだ」

勇者「魔王の拳が届き、師の魔王が掠めたお前の鎧……その右肩は、僅かに傷が付いていた!!」

聖者「ッ!!?」



聖者「……」

聖者「勇者よ、感謝する」

勇者「聖者……まずは傷を癒せ。そして、民へ謝罪するのだ」ニコリ



戦士「あーあ、おわっちまったよ」

武道家「これで一件落着だねっ」

商人「……」




聖者「勇者……俺へ変わってないと言ったが、俺も言わせて貰おう」

聖者「貴様も同じだ。変わっていない」ニコリ





聖者「そのヘドが出る甘さっ、あの頃のままだぞ勇者ぁぁっ!!!」ゴゴゴゴゴッ

勇者「聖者、お前は……」



聖者「むぅん!!」シュゥゥッ

武道家「とっ、溶けたっ!? 聖者の右腕を凍らせていた氷が一瞬で!!」


聖者「感謝するぞ……これで俺は更に強くなる事ができる」ニヤリ

戦士「それだけじゃねぇ!! エクスカリバーの傷も塞がってく!!」



聖者「なるほど、あの頃に気付いたのか……」

勇者「……」


聖者「ならば今の俺を見た時に、もう一つ気付くべきだったな」

聖者「俺の鎧が、今と昔で変わらぬと言う事に!!」


勇者「なにっ!?」



聖者「鎧は生きている……そして俺とは一心同体」

聖者「例え微塵に破壊されようとも、俺がその弱点さえ知れば、見事に克服して甦るのだ!!」



戦士「鎧の破片がっ!?」

武道家「聖者の体に貼り付き始めた!!」


聖者「クハハハハハッ!! この鎧が完全に修復された時……勇者、貴様に生き地獄を見せてやる」ニヤリ



武道家「ボクと戦士の技が大して効かなかったのは、もう克服されてからなんだね……」ジリッ


商人「それなら」スッ

戦士「まだ克服してねぇ方法で攻めるまでよっ!!」スッ


勇者「商人、戦士、下がるのだ!! 後は私が戦う!!」



商人「さがれないっ」


商人「イオラッ!!」バッ

聖者「むっ!?」


戦士「一発目で煙幕を貼ってからのぉ~っ」

戦士「もういっちょ、イオラッ!!」バッ



聖者「……」

聖者「フッ」


聖者「どうやら貴様らとの闘いで、レベルアップしたようでな……たった今、覚えたぞ」スッ

聖者「マホカンタッ!!」バッ



戦士「なッ!?」


戦士「ぐあああああああああ!!!」ドゴォッ

商人「きゃっ!!?」ドゴォッ



武道家「商人、戦士ッ!!」

勇者「……」


勇者「すぅぅっ、はぁぁっ……」

武道家「えっ!? し、しょー?」


勇者「すぅぅっ、はぁぁっ……」

武道家「この呼吸法はっ」



勇者「ふぅぅっ……」ポキッ ポキッ


勇者「聖者よ、私が相手をしてやろう」クイッ



聖者「ぬかせっ!! 既に貴様など相手に……」





「そこまでだ聖者!!」





聖者「ん、誰だっ!?」クルッ

勇者「おお……」



キリ「この神殿は元々俺が居た場所だ、返して貰うぞ!!」ザッ

聖者「生きていたか、キリ!!」




ブッタ「キリだけでは無い」ザッ

聖者「ッ!!?」


シヴァ「聖者、今こそ野望潰える時……」

インドラ「我らを相手に、生きていられるとは思わぬ事だな」


聖者「ぐっ、デモンズゴールドの呪いが解けたと言うのか!?」




「聖者……」ゴゴゴゴゴッ



聖者「とっ、言う、事はっ!?」




「聖者……」ゴゴゴゴゴッ





聖者「まさかっ、まさかぁっ!!」ガクガクッ

キリ「女神は、既に助け出したッ!!!」




女神「聖者、貴方の煉罪を裁きます」ゴゴゴゴゴッ

聖者「ぎっ、ぎぎっ……」


聖者「女神ぃぃぃっ、このまま消えて亡くなれぃ!!!」バチバチッ バチバチッ



女神「……」

女神「四神達よ、お行きなさい!!」バッ


キリ「はっ!!」ダッ

ブッタ「はっ!!」ダッ

シヴァ「はっ!!」ダッ

インドラ「はっ!!」ダッ



勇者「あれはっ!?」

武道家「聖者を取り囲んだ!!」




聖者「おのれっ、おのれぇぇぇっ!!!」


キリ ブッタ シヴァ インドラ
「「「「ゴッドエクスクラメーション!!!」」」」


聖者「ギャラクシアン……ぐおおおおおおおおお!!?」ガキィィッ


武道家「聖者が光の鎖で拘束されたっ!!」



女神「聖者……」

女神「この神槍ディスキャリバーが、貴方を円環の理から消滅させます!!」ジャキ


聖者「やめろ女神っ、ヤメロッ!!」


女神「……」ゴゴゴゴゴッ

女神「その身に刻め、神技ッ!!」ダッ


女神「ニーベルン、ヴァルスティー!!!」ブォン



 きらめく星座が おまえを呼んでる

 それは選ばれた 戦士の証


聖者「ぐほあぁッ!?」ザシュゥッ

武道家「黄金の槍が、聖者の心臓を貫いた……」


 ギリシャ神話のように

 まぶしい聖衣(クロス) まとって




聖者「めっ、女神ッ、まだ俺は死にたくない!! 助けてくれ!!」


 ああ 未来(あした)の空は ブルー

 どんな夢も 信じれば叶うよ


女神「その魂に、救済を……」


 ああ 心にしみる ブルー

 永遠の輝き



女神「ハレルヤ/ヒカリアレ!!!」バッ

聖者「……」ガクンッ


 ああ 見上げる空は ブルー

 熱い希望(のぞみ) 捨てるなと誓った


戦士「いててっ……どうなってんだ?」フラッ

商人「聖者が光になって、消えて行く……」



 ああ 忘れはしない ブルー

 永遠の輝き




勇者「聖者よ、お前は強かった……だが、力の使い方を間違えた」



武道家「空が……」

商人「晴れた」

戦士「これにて一件落着、だなっ」ニッ





ここのエピローグから先は

勇者「言ったはずだ…あなたの全てを目指したと!!」
勇者「言ったはずだ…あなたの全てを目指したと!!」 - SSまとめ速報
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こっちの次スレに書きますm(__)m


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