希「我が家のお猫様」 (51)

初夏


今年も暑い日々がやってくる


そんなある日


ウチの家の前に見慣れないものがおってん



それはな

とてもとても可愛いお猫様



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希「か、かわええ……」


三毛のお猫様は小さく「な~」と、とても可愛く鳴いてな



買い物袋に入っていた魚肉ソーセージをあげてみようかな、とビニル袋をガサガサと探ってみると


まるで餌が貰えるのを分かっているのか、すりすりと寄ってきた

凛ちゃんが猫が好きって言ってたけど、なるほどこれは……


希「ほら、魚肉ソーセージやで」


少しちぎってあげてみる


もぐもぐと食べてる食べてる

くすくす。えらい人懐こいなぁ


ノラなんかな?


首輪はついてないけど





三毛のお猫様は「ご馳走様でした」と言ったのか、小さく鳴いてどこかに行ってしまった


人でも猫でも行儀の良いのはウチ好きやで

今日もやってきた



ウチを見つけると足元まで駆け寄り、脚をすりすり


「なー」

希「んー?お腹すいたん?」

「なー」


この子、人間の言葉わかるんやないんかな?

確か牛乳が冷蔵庫に入ってたはずや


人間用やけど大丈夫……やんな?



希「牛乳飲む?」

「なー」



なんとなくやけど、ウチもわかるで


これは飲みたいって言ってるんやね


ちょっと待っててな。すぐ持ってくるから

希「えーと………この小皿でええか」

「なー」


おおっと


いつの間に上がりこんでたんよ。驚いたなぁ




はやく牛乳よこせー、って言わんばかりに脚にしがみついてきた


伸びた爪がウチの柔肌を傷つける


希「いたた……」


これで可愛くなかったら許さんかったけど


「なー」


可愛いから許す。だって可愛いは正義やん?

くんくん


牛乳をあげてみたけど


くんくんと匂いを嗅ぐばかりで食べないなぁ




たたた


あっ


どうやら、牛乳はお気に入りやないようやね


またおいで、ウチでよければいつでも相手になるよ

「なー」



いつでもとは言ったけど


まさか住み着くとは思わなかったよ



朝になるとフラッとどこかに行って、ウチが帰ってくる頃には戻ってくる


んでブラシかけて汚れを落として、ウチと一緒にご飯食べて一緒に寝て……



これがここ最近の流れやな

このことを皆に話すと凛ちゃんが目をキラキラさせてな


凛「希ちゃんの猫ちゃん見てみたいにゃー!」


って言うもんやから、今日は凛ちゃんと花陽ちゃんが来てるんよ


凛「で、猫ちゃんどこにゃー………?」



そんな怯えながら探されても……って


そういや、凛ちゃん猫好きなのに猫アレルギーやったね



本当もったいないなぁ


凛ちゃんのアレルギー治ったりせんかな

「なー」


すっかり家に馴染んだ三毛のお猫様がのそのそと出迎えてくれた



凛「わあぁー!可愛いにゃー!」



花陽ちゃんの後ろから凛ちゃんの嬉しそうな声


花陽ちゃんも可愛い可愛いって



くすくす。ウチからしたら皆可愛いんよ?

凛「思ってたより大きいけど、とても可愛い女の子だにゃ」


希「え?女の子ちゃうよ男の子よ?」


りんぱな「えっ、ええー!?」



おおっと、びっくりしたなもー



花陽「ほ、本当に男の子なの!?」


希「う、うん。ほら……」


お猫様を持ち上げて凛ちゃん達に見せる


凛「ほ、本当だにゃー!希ちゃんすごいにゃー!」

なんかようわからんけど


オスの三毛猫はかなり珍しいらしい


キミそんな珍しいかったんやね




凛「へ…………へくち!」


花陽「り、凛ちゃん……」


凛「平気にゃ………まだ」ゴシゴシ

凛ちゃんが目をごしごしこすりだした


アレルギーの症状が出始めたみたいやね



希「……今日はこれまでみたいやね」


凛「で、でもっ………へくち!」


希「ほら、きついんやろ?」


花陽「凛ちゃん……帰ろ?」


凛「嫌にゃ……へくち!もうちょっといるにゃ…」ゴシゴシ

希「また来てもいいから今日は帰り……な?」


凛「で、でも……」


「なー」テクテク


花陽「わわっ!?こっちきちゃだめだよぉ~……!」


凛「あ……あ……」フルフル


あかん。このままやたら凛ちゃんお猫様もふもふしてまう


希「凛ちゃんあかんよ」グイ

凛「ああ!希ちゃん放すにゃ!猫ちゃんが……猫ちゃんがぁっ!」


そんな今生の別れやないんやから





花陽ちゃんも必死に説得してなんとか帰ってもらったけど

「なー」

罪作りな子やね。キミは

それからほぼ毎日凛ちゃんが家にやってくるようになった



だいたいは花陽ちゃんと一緒やけど


休みの日には凛ちゃん一人でやってきて


アレルギーが酷くなるまでいたりしたなあ

凛ちゃんが来る度に猫じゃらしとかマタタビとか持ってきてくれて


猫の飼い方の本もたくさん持ってきてくれたなぁ




今日はお刺身あげるよー、って言ったら凛ちゃんがすごい剣幕で


凛「猫ちゃんにエビとかアワビとかあげちゃだめにゃ!」


って怒られてしもうてん


いやね、本当エビとあげなくてよかったよ



凛ちゃんが持ってきた本に書いてたけど、猫にあげたらいけないもん結構あって驚いたよ

お猫様は最近お気に入りの場所があってな



部屋の隅に置いていた座布団なんやけど


たまたまタオル置いていたら、いつの間にかに丸まってて


それからその座布団とタオルはお猫様専用





結構お気に入りの柄のタオルやったけど


これは冬になってコタツの出番になるまで取られたかな?

そういえば凛ちゃんと名前の話になってな


凛「ところでこの猫ちゃんの名前なんていうのかにゃ?」


希「あー………実はな」


希「まだ決めてないんよ」



凛ちゃんは「ええーっ!?」ってめっちゃ驚いてたけど、ペットの名前なんてなかなか思いつかんよ


実はμ'sの名前も一晩寝ずに考えたんやし


まぁ先は長いし、しっくりくる素敵な名前をつけるつもりやから


それまでは、キミの事は「お猫様」って呼ぶよ?

でも


キミと一緒にいられる時間は意外と短くて





ある日回ってきた回覧板


いつもなら軽く目を通して次の家に回すんやけど


回覧板に挟まってたある紙に目が止まってな





1分くらいかな


時間止まったよ

『迷子ネコ捜索』


オスの三毛猫探してます

名前 ミケ

年齢 5歳


赤色の首輪をしています





お猫様にそっくりで


結構近所で



居なくなった時期がウチにやってきた時期と同じで


違う



そうであってほしい



ほら、迷子の猫は赤色の首輪してるみたいやし


ウチとは関係ない




でも

ウチはお猫様を呼んでみたんよ


希「ミケ………?」


「なー」




すごく胸が痛かった



この子、本当にミケなん?


違うと思いたくて続けざまに


希「お猫様?」

「なー」


なんや



なんでも返事するやん



そう思いたかった





けどな


その日から不安で不安で


もしかしたらこの子がミケなんかもしれん


そんなこと思ってたら練習にも手がつかんで

凛ちゃんや皆にも心配されたよ


本当はどうすればいいかわかってる




わかってるけど


もし、お猫様が迷子の猫だったら


一緒にいられなくなる



寂しいやん。そんなの


でも……

答えは



これでわかる





回覧板に書かれていた住所


ウチはお猫様を抱えてやってきてな

希「ここ……やね」


ピンポーン、と呼鈴を鳴らす



誰も出ない


留守………かな?




きっと違かったんよ


これでいいんや


さ、帰ろう?

振り返ったとき


今までウチに抱えられて、おとなしくしていたお猫様が暴れだしてん


希「わわっ!?」


飛び降りたお猫様はタタタッ、とかけだして



近くにいた女性の足元まで走ったんよ

その女性はな


お猫様を見ると、とても嬉しそうに


「ミケ!」


ってな






涙が出てきたんよ


お猫様が本当の飼い主の元に帰れたからなのか

もうお猫様と一緒に暮らせなくなるからなのか

自分でもわからなくてな

ウチが回覧板見て、もしかして……って言ったらな


その女性は何度もお礼を言ってな



ウチはただ


よかったですね

とか

可愛いですよね



とかしか言えなくて

女性が謝礼金の入った封筒を持ってきたけど断ったんよ




でも、また会いたくて帰り際にな

希「あの……もしよかったら、今度遊びに来てもええですか?」

って聞いたんよ



するとな


その女性は申し訳なさそうに


「ごめんなさい。来週には引っ越してしまうの」


って


どうやって帰ったか覚えとらんで



ただただ





心にすっぽりと穴が空いたような

あの日を境に凛ちゃん達が家にくることはぐっと減ってな


まぁ、猫見に来てたようなもんやったからなぁ



それでも時々来ては猫の写真集やらテレビ番組やらを一緒に観てな





凛ちゃんがウチを励ましたり………な

もうすぐ夏も終わりそう



我が家からお猫様がいなくなってだいぶ経つんやな





あの子のお気に入りの座布団もタオルも


なんか動かせんくて、ずっとそのままや




せめて冬までいてほしかったなあ


コタツにみかんにお猫様。少し憧れていたんよ

そんなこと思いながら



いつもの日常に戻っていって


ライブや生徒会や学校や神社のお手伝い


わりと忙しい毎日を過ごしながら


家に帰って


ふと、座布団を見るとお猫様がな


「なー」って、お帰りなさいって




待っててくれる。そんな気がしたりな

そんなことないのに




もう、いつまでもこんな調子やったら気が滅入ってしまうよ


お夕飯作って、明日に備えなきゃな


明日はライブのリハーサルで朝からお出かけやから

しっかりせんとな




頬をパシンとたたいて気持ちを変えてみる


よしいけそうや



美味しいお夕飯作ろうとしてた時に


ピンポーンって

宅配便かな?


そう思って玄関の扉を開けると、どこかで見覚えのある人が




お猫様……いや、ミケの飼い主の女性やったんよ


女性は申し訳なさそうに


「この子を少しの間、預かってもらえませんか?」って

話を聞くと、仕事の関係で引っ越したのはいいが


また転勤になるらしく



でも次は社宅に引っ越すことになってペット禁止らしくて



頼れる親戚もいなくて困ってたみたいでな




ふと、ウチのこと思い出して


ウチの家を探してこうして来た……と



知人や親戚とかで預かってくれる人が見つかるまでの間でいいからって



ウチは二つ返事で了承したよ

なんや




キミも転勤族の家の子やったんやね



なんか親近感わくなあ



短い間かもやけど




またよろしくお願いするよミケ


我が家のお猫様



おわり

最後まで読んでいただきありがとうございました。
本当に文才ないのに今回はいつもと違う書き方に挑戦してみました。
多分次は今まで通りの普通のSSになるかと思います。

それと次は多分ほのうみです。

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