スライム「そして僕は過去に飛ばされた」 (17)
「この国から出ていけー!!」
「化け物め……お前たちがいるから、私達はいつまでも平和に暮らせないんだ!」
「うわぁあ!! 助けてくれぇ!」
「ひぃぃ……子供だけは、子供だけは!」
「……なぁ ━━━ よ」
「俺はあの死に際に言ったな」
「『破壊神を倒せたなら、もうお前は人間ではない』……とな」
「教えてやろう、 ━━━」
「この世界にお前の居場所はない」
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スライム「……」
━━━━━ ザァァァ……
スライム「……?……」ピクン
スライム「?」ポヨン
スライム「……?」プルプル
< 「あっ」
スライム「!」ぷるん
少女「見つけた……君がスライムだね」
スライム「?」
スライム「ピッ、ピギッ…ピキィー」
スライム「!?」
少女「集中して……ちゃんと動きを見て…」ブツブツ
スライム「~~っ」
スライム「ピキィー!」
少女「てやぁ!」ブンッ
スライム「!?」バコッ
< ボテッ!
スライム「~~~…」ヒリヒリ
少女「あ、あれ…あんまり効いてない…」
少女「『ひのきのぼう』なんだけど……あれー、昨日は一撃で倒せたのに」
スライム「……」
少女「でも、次でトドメ!」ブンッ
< ヒョイッ
スライム「…」ピョコン
少女「え?」
少女「……」
スライム「……」
少女「てやぁ!」ブンッ
< ヒョイッ
少女「えい!」ブンッ
< ヒョイッ
少女「回転斬りー!」ブンッブンッ
< ヒョイッヒョイッ
スライム「……」ピョコン
少女「……当たらない…何なのこのスライム」
スライム「ピィー」プルプル
少女「なんだか様子も他のスライムと違うし……」
スライム「ピッ、ピッ、ピキィー」
少女(……喋ってる、のかなぁ)
少女「……」
少女「か、帰ろうかな……もう充分特訓はしたし……」ザッ
スライム「ピッ!?」
スライム「ピキィー! ピキィー!」ピョン!ピョン!
少女「わっ、追ってきた!?」
スライム「ピィ…ピィ……」ノロノロ
スライム「……ピィ」パタッ
スライム「……」ゼェ…ゼェ…
< ガサガサッ
傷ついたスライム「……ピッ」
スライムベス「ピー?」
スライム「……」
スライム「…Zzz」
傷スライム「ピ,ピー…」ヤレヤレ
スライムベス「ピキィー」ホッ
━━━━━ 「起きな、兄ちゃんよ」
スライム「……ん…」
スライム「…………っ!」ピョコン
傷スライム「目ぇ覚めたみたいだな」
スライム「」
傷スライム「なんだそのツラは」
スライム「す、スライムが喋ってる……」
傷スライム「いーや、俺はいつも通りだぜ?」
傷スライム「お前がスライムの言葉を喋ってんだよ」
スライム「ピィ、ピキィー…?(え、えぇ…?)」
スライム「一体、どうして……」
傷スライム「『賢さの種』だ」
スライムベス「前例があるのよ、私が幼少の時に『変化の杖』とかいうので魔物になった人間がいてね」
スライムベス「私の母がその時、魔物になったは良いけど言葉が分からなくて困ってた人間に食べさせたのよ」
スライムベス「賢さの種、人間や魔物が食べればあらゆる知識や言語に対する理解が『早まる』効果を使ってね」
スライム「そ、そうだったのか……」
スライム(確かによく食べていたな……『皆』は)
傷スライム「寝てるお前さんに食わせといたらどうかと思ったら、案の定だったぜ」
スライム「でも…どうして僕が人間だと分かったんだ?」
傷スライム「眼だよ」
スライム「……目?」
傷スライム「アンタそっくりの眼をした男に会ったことがある、昔にな」
傷スライム「まぁ、覆面してやがったから眼しか印象にねえのかもしれねえけど」
スライム「……そ、そうか」
スライム(そもそも、僕は何故スライムになってるんだろう)
━━━━━ そしてこの日、僕は彼らスライムの夫婦の世話になる事となった。
━━━━━ 勿論、僕が何故人間になったのか。
━━━━━ それを知る術もなければ、手がかりも無いままだ。
━━━━━ ただ・・・。
━━━━━ この時の僕には、まるで夢の中にいる様に現実味が無かった。
少女「……」ムクッ
< 「アレルー! 今日から勇者として旅立つ日なのはわかってるでしょー」
< 「早くお城に行く支度しなさーい」
少女「うん、わかったよお母さん」
少女(……今日から、勇者…)
少女「すっきり寝れちゃったな…あんなに緊張してたのに」
< ゴソゴソ
少女「……」チャキッ
少女(今日から勇者なんだから、もうこの長い髪は必要ないよね)
少女「ばいばい」グッ
< バサッ
勇者母「おはよう、アレル」
勇者「おはよう、お母さん」
勇者母「今日はとても大切な日よ、ちゃんと準備は出来た?」
勇者「もちろん」
勇者母「……この日の為に、あなたの事は勇敢な男の子として育てたつもりよ」
勇者母「だから、私はこれ以上心配はしないし、あなたのことは信じてるわ」
勇者母「それでも旅立つ前に1つだけ約束して」
勇者「?」
勇者母「生きて……帰ってくるの、絶対に」
勇者母「あなたの父、オルテガは……魔王を倒すべく旅立った」
勇者母「各地で魔物達を討ちながら、あの人は最後まで私に手紙をくれたわ」
勇者「うん、小さい頃よく読んでくれたもんね」
勇者母「……最後に、あの人は『オーブ』の在処を探している事を告げて、手紙は来なくなったの」
勇者母「そして、オルテガは火山の近くで消息を絶ったまま……」
勇者「……」
勇者母「あなたの父は勇敢な人よ」
勇者母「でもね、忘れちゃ駄目」
勇者母「帰って来なさい、それが貴方の勇者としてではなく『私の娘』としての使命よ」
勇者「…うん!」
勇者母「……」ニコ
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