絵理「審」涼「査」愛「員!」 (28)


876プロ 会議室


石川「三人とも、集まったわね」

絵理「」コクリ

涼「」ドキドキ

愛「」ナニカナーナニカナー

石川「さて、今日の876プロの躍進はあなたたちの働きがなければなかったと言えるわ」

涼「色々ありましたねー……」

愛「876プロって、躍進してるんですか?」

絵理「多分」

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石川「この調子ならもうちょっと広い事務所に移転することもできるし、環境も更にいいものになるわ」

涼(環境かぁ……)

愛「楽しみですねー!」

絵理「……それで、私たちを集めたのは?」

石川「三人には、今度審査員をやってもらおうと思うの」

「「「審査員?」」」



石川「そろそろうちも所属アイドルを増やしていい時期なのよね」

涼「次期候補生を集める、ということですか?」

石川「そういうこと」

絵理「あの、社長?」

石川「何?」

絵理「事務所のスタッフは、増える?」

石川「なぜかほぼ今のままよ?」

絵理(あぁ……やっぱりセルフプロデュースになっちゃうんだ……)

石川「プロデューサーを募集してもなぜか来ないし」

涼(危険を察知してるんだろうなぁ……)


石川「それで、オーディションを開きたいと思うんだけど……その目玉として三人が審査員、というのを入れたいのよ」

愛「あたしたちが審査員で、みんな応募してくるんですか?」

石川「結構効果あると思うわよ。三人とも、今や事務所の顔だし」

涼「そうだったんですか?」

石川「言っとくけど涼、あなたが一番人気なのよ?」

愛「わぁ~! 涼さん、凄いです!」

涼「あ、ありがとう……なんだか照れるけど……」

絵理「分かる話だと思う」

石川「絵理も涼に迫る人気よ。二人ともファン層が広いから」

愛「絵理さんも! やりましたね!」

絵理「うん。……ありがとう?」



石川「涼と絵理が審査員。これは美味しいし、二人にとってもいい経験になると思うわ」

愛「……」ソワソワ

涼「愛ちゃん? どうかした?」

愛「あの、社長? あたしは?」

石川「え?」

愛「なんだか、あたしが審査員になることの、えっと、ヘルメット……じゃなくて、メリーゴー……」

絵理「メリット?」

愛「そう! メリットがいまいち分からないんですけど!」

石川「そうね。正直愛はデメリットの方が大きいから、本当は入れたくないのよね」フー…

愛「ガーーーーン!?」


石川「ノリで「入れちゃいます! 一緒にがんばりましょー!」とか言っちゃいそうだし」

絵理(……否定できない?)

石川「舞さんの大暴れがあるから、あなたにも似たようなイメージがついちゃうことがあるし」

涼(本質的には、似てるっぽいもんなぁ……)

石川「何より、愛に審査されると相手も不安の方が大きいと思うのよね――」

愛「社長ーーー! 社長は、社長はあたしがキライなんですか!?」

石川「ちゃんと審査できるの?」

愛「しますよーー! うわ~~~ん!」



絵理「実際、愛ちゃんは直感でいい人を引き当てると思うし、いいところを引き出すのもうまいと思いますけど?」

石川「うまくいくかしらねぇ……」

涼「そこまで不安なのに事務所の顔とか言ったんですか……?」

石川「二人にはまだ追いつかないけれど、愛も中々のものよ? ファンも二人の合間を埋めてるし」

絵理「合間……?」

石川「愛本人のファンだと、子供と――20後半~40前あたりの女性なんか多いのよ」

絵理「……そっか、オーディションに来そうにない人たちがメインなんだ」

石川「そういうことよ。ただ、いないよりはいる方が何かありそうだし、愛にも出てもらうことにしたわ」


石川「オーディションについてはこれから立ち上げるから、三人とも審査の要点とかまとめておいてね」

「「「はい」」」



涼「さて、どうしよっか?」

愛「要点って、どこを重視して見るか、ってことですよね?」

絵理「うん。基本は私たちもいつもやってること――ビジュアル、ダンス、ボーカル。この三つ」

涼「僕らがやるなら、それぞれの得意分野で見るってことでいいんじゃないかな?」

絵理「多面的に見るなら、全員がこの三要素を審査して話し合う必要があると思う?」ウーン


愛「けどあたし、そこまで詳しく見れる自信ないです……」

絵理「少しの感想でもいいから、まずは見ることが大切だと思う。私に分からないことでも、愛ちゃんなら分かるかもしれない」

涼「愛ちゃんに分からないことでも、僕が気付けるかもしれないしね」

愛「あっ! なるほどです! まさに協力! って感じですね!」

絵理「うん。そういうこと」ニコッ

涼「そのためには、オーディションまで少しでも勉強が必要になるね」

愛「時間を見つけて、みんなで教え合いますか?」

絵理「そういう時間が多く取れればいいけど……独学である程度進めてもいいと思う?」


絵理「知識や技術の交換も必要だと思うけれど、大事なのは、視点を分けることだから」

愛「えっと……同じことばかり気づいちゃうかもってことですか?」

涼「そうなっちゃうね。影響って、受けちゃうと意外と染み込んじゃったりするから」

愛「へー……」

絵理「オーディションまで、各自得意分野以外も勉強。だけど、集まれる時だけは、勉強会」

涼「それがベストかもね」

愛「はい!」


愛「そういえば、審査員ってあたしたちだけなんでしょうか?」

涼「社長は来るのかな?」

絵理(尾崎さんは……流石に来れないかな?)

絵理「多分、社長は確定だと思う。もしかしたら、他は私たちだけかも……?」

愛「わっ! 責任重大ですね!」

涼「規模にもよると思うけどね」


絵理「とりあえず、どうなっても、自分たちのスタンスは崩さない方がいい?」

涼「そうだね。あとは……何か注意することってあるかな?」

愛「注意することですか?」

涼「審査員なんて滅多にやるものじゃないし、ましてや候補生を選ぶとなると……」

絵理「言葉一つ気をつけなきゃいけない?」

絵理(あとで尾崎さんに聞いてみようかな?)

愛「うーーーーん……」


愛「……どこがダメって聞かれても、全部とか言わない方がいいかもしれません」

涼「そんなこと普通言わないと思うよ?」

愛「……」

涼「……言われたの?」

愛「はい……」

絵理(い、いくらなんでも、ひどい……)

愛「だけど、あのオーディションのおかげであたし876プロに入れたんですよねー」


涼(ここに来るまで、何十回もオーディション受けてたんだっけ……そう考えると、凄いキャリア、なのかなぁ?)

絵理「……えっと、愛ちゃん?」

愛「はい! なんです?」

絵理「……だ、大丈夫なら、で、いいんだけど。ここに来るまでに受けたオーディションの話、色々聞かせてくれない?」

涼「絵理ちゃん、それはちょっと」

愛「大丈夫です! これが役に立つなら、望むところです!」

涼「愛ちゃん、つらくない?」

愛「辛い思い出も、参考になるなら!」

絵理「大丈夫。無駄には、しない」

―――
――


愛「――それで、春香さんに紹介してもらいました! これで話は終わりです!」

絵理(途中からほぼ同じような話の繰り返しだったけど、オーディションに来る候補生の様子とか傾向を色々知ることができた)

絵理「愛ちゃん……ありがとう」

愛「役に、立ちます?」

涼「立つよ。きっと、大丈夫」

愛「なら、よかったです! お茶いれてきますねー!」パァァ

絵理(……こんなに落ちてたんだ、愛ちゃん)

涼「諦めなかったから、最後の最後に春香さんに見つけてもらえたんだね」


絵理(見つけてもらえた……)

絵理(……この世界には、色々な入口がある)

絵理(自分の力では、中々開けられなくても――)

絵理(誰かの一押しで、入ってこれる)

絵理(今度来る人たちには、いるのかな?)

絵理(そんな、一押しを必要と、願っている人が)



絵理(じゃあ、願っても、いいのかな?)

絵理(私が――)

絵理(――尾崎さんみたいに、いいのかな?)

涼「……絵理ちゃん、不安?」

絵理「……」コクリ


涼「不安なのは仕方ないよね」

絵理「涼さんも?」

涼「うん。だけど、きっと来る人たちはもっと不安だから」

絵理「……」

涼「僕らも、候補生も、形は違うけど、きっと最初だからね」

絵理「……だから、願ってもいいのかな?」

涼「願う?」

絵理「最初の一歩」


涼「いいと思うよ。だって、審査員だから」

絵理「そうだと、嬉しい?」

―――
――


愛「お茶いれて~、お菓子のせて~」

TV『――それで、初めて特別審査員っていうのになったんです』

愛「~~~~♪」

TV『アイドル続けて、初めての経験だったから、とっても緊張しました』

愛「……♪」

TV『だけど、オーディション受けに来たみんなの頑張りが、私にも伝わって、熱中しちゃって』

愛「――♪」

TV『隣の人に、ちゃんと審査しなきゃって言われちゃって。それで、その中に、とっても元気のいい子を見つけられたんです』

愛「絵理さーん! 涼さーん! お茶がはいりましたよー!」


後日


「「「中……止?」」」

石川「ええ、オーディションは中止よ」

愛「な、なんでですか!?」

石川「人が集まらなかったのよ」

涼「な、なぜ?」

石川「鬼の娘怖いだの、女装男装怖いだの、ネット怖いだの……そんな感じ」

絵理「……」

石川「というわけで! あなたたちはいつも通り、各々の活動に専念!」


おわり

876SS増えるのを祈りながら終わりです
愛ちゃん好きです

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