ベルトルト「死人の腕が・・・・・・」(133)

夜 男子寮

ワイワイ・・・・

ライナー「ハハ・・・」

コニー「それでよー」

ジャン「おい、コニー。これ」ポン

コニー「え? あー・・・・・なんだっけ、この本」

ジャン「はあ? 忘れたのかよ・・・・小説だよ小説、例の」

コニー「例の・・・・ああ! 透明人間の官能本か!!」

ザワッ

ライナー「?」

ベルトルト「?」

モブ「えーっマジかよ、ジャン、あの続編買えたのかよ!」

モブ「どうやって!? あれ、絶対手に入らないって言われてて・・・・!」

ジャン「あークソ、このバカ! 声がでけーんだよ、間違って教官の耳に入ったらどう責任とんだ!」バシッ

コニー「ご、ごめんって。でもやったぜ! 借りるぞ、ジャ・・・・あれ?」

ジャン「やっぱやめだ。これでお前に一番に貸すのは、どうも気に入らん。・・・・。オイ、ライナー」ヒョイ

ライナー「ああ」

ジャン「そういや、おまえ、こういう本読むのか? ・・・・まああんたの見た目なら、こんなもの
    買い放題かもしれねえけどよ」

ライナー「官能本か・・・・・期待してるとこ悪いが、俺も大したものは持ってないぜ。その、透明人間?
     とかいう本の話も初めて聞いた」

コニー「ライナーって、そっち系のジョークはよく言うけど、猥談は案外普通だもんなあ」

ライナー「あのな・・・・おまえら俺をなんだと思ってんだ?」

ジャン「ハハ・・・・。まあ、知らないなら丁度いいや。前編といっしょに、貸してやるよ」

ライナー「ああ・・・・そう言うなら、読んでみるぜ」

コニー「そういや、ベルトルトは?」

ベルトルト「え?」

コニー「ベルトルトはコレ読んだことあんのか? よく本見てるけどよ」

ベルトルト「いや・・・・・読んだことないよ」

ジャン「ふーん。じゃあライナーの次はベルトルトに貸すぜ」

コニー「えー! ち、ちょっと待てよ、俺いつになったら読めるんだよ!」

ハハハ・・・

・・


就寝前

ベルトルト「ただいま、ライナー。・・・・あ、例の本読んでいるのか」

ライナー「おう」ペラ

ベルトルト「おもしろい?」

ライナー「・・・・まあな」ニヤ

ベルトルト「・・・・楽しそうだね。透明人間って、なんなんだその官能本。透明人間になって女の子にそういうことするって話?」

ライナー「違う、痴女の透明人間たちに襲われるって話だ」

ベルトルト「そっちなんだ・・・・?」

ライナー「おまえ好きそうだと思ってな。明日読めよ。せっかく借りたんだしよ」

ベルトルト「イヤ僕は別に・・・・」

ライナー「こういうのは、協調性をアピールするためには必要だぞ」

ベルトルト「・・・・わかった、そういうことなら・・・・」

ライナー「ティッシュ用意しとけよ」

ベルトルト「ああもう、どっちなんだ! ・・・・僕、その本が湿ってたら絶対読まないからな」

・・

翌日の夜、男子寮

コニー「なあなあジャン、あの官能本さあ、ちょっとでいいから、エロいとこだけでも教えてくれよ!」

ジャン「はあ? 仕方ねえなー・・・・楽しみが減ってもしらんぞ。
    ・・・・・やっぱり、一番エロかったシーンは、夜寝ていたら透明人間の女らが、いっせいに襲ってくるってとこだな!」

モブ「おいおい、よく聞かせてくれよ!」

ワイワイ

ベルトルト「・・・・・・・」ペラ(『無数の腕に身体撫でられている。しかし金縛りにあったかのように、どこも
      動かすことはできなかった』)

ジャン「このホラーと官能が合体した感じがいいんだよな、この小説はよ」

モブ「そうだなあ、読んでるとゾクゾクするっていうか」

ベルトルト(・・・・・・『いつでもあなたにいたずらをしてやるから。そう言ってようやく腕は離れていった。しかし―――』。・・・・・)

ライナー「ベルトルト、消灯だとよ」

ベルトルト「あ、うん。・・・・」ジッ・・・・、パタン(『その人肌の温もりが消えるのに、言い知れぬ寂しさを覚えてしまった』)

ライナー「おやすみ」

ベルトルト「おやすみ・・・・」(『いつしか自分はあがくことをやめていた。その腕の熱に心を折らされてしまっていたようだ』)

フッ

ベルトルト(変わった話だった。・・・・・兵士してると、たくさん本が読めるのはいいな)

・・・

捏造注意

ベルトルト(あれ? ここは)

ライナー「ベルトルト、早く来いよ。もてなしの準備だ」

ベルトルト(故郷だ。・・・・・ああ、そうか・・・・今日は、遠くから来たお医者様をもてなすんだっけ?)

ライナー「しかし、大人はいいよな。もてなしの席で、お医者様と肉を食えるんだからさ」

ベルトルト「仕方がないよ・・・・・。僕ら子供は、今日は集会所でお留守番だ」

ライナー「マルセルみたいに、10歳になってリーダー役に選ばれれば、たまに呼んでもらえるらしいんだけどな。いいなあ」

マルセル「よう。なにが羨ましいって?」

ベルトルト「わっ、マルセル」

ライナー「・・・・俺もリーダー役になりたいぜ、マルセル。肉食えるだけじゃないにしてもよ」

マルセル「アハハ、まあ先だな。俺がいる限りは、誰にも役は譲らねえ。どーだ、これがリーダーの
     印のペンダントだぜ。うらやましいか」

ライナー「・・・・・」ムム

ベルトルト「ねえ、マルセル。今日いらっしゃるお医者様って、やっぱり・・・・」

マルセル「ああ。グリシャさんだよ」

・・

男「・・・・今晩は、朝まで集会場に待機しているように! 以上。マルセル、任せたぞ」

マルセル「ハッ」

男「そうだ・・・・どこかの身の程知らずが肉を食いたいなどと言っていたそうだが。おまえらのような
  未熟者に、そのようなことが許されると思うか! せいぜい、リーダー役になれるよう、戦士として
  巨人化の適正を磨く訓練に励むように」

ライナー「!」ムム

ベルトルト「・・・・・」アワワ

男2「オイ、豚の丸焼きがしあがったそうだ、行くぞ」

男「ああ。・・・・・あーいい匂いがするな」

バタン

ライナー「クソ・・・・・うらやましいな。早く立派な戦士になりたい」

ベルトルト「お肉食べたい・・・・」

マルセル「はは。ベルトルトは正直だな」

ライナー「なあ。マルセルはもう巨人化するための薬を投与されてるんだよな?」

マルセル「ああ、・・・・・まあな」

ベルトルト「いいなあ。故郷の「立派な大人」はみんな巨人化薬を射っているんだよね」

ライナー「そうだぜ。いざってときには、自ら巨人になって戦うんだ。そのために毎日、
     グリシャさんの開発した薬を吸っているんだ」

ベルトルト「大人になった巨人には、その薬がいるんだよね。よくわからないけど。
      今日も、グリシャさんは、その薬を持ってきてくれたんだよね?」

ライナー「グリシャさんは「契約」してるから、薬を売ってくれるんだよな、必ず」

マルセル「・・・・どうだろうな・・・・」

ベルトルト「?」

ライナー「しかし・・・・俺もこんななんの為かよくわからない訓練じゃなくって、マルセルみたいに巨人になって戦う訓練がしたいぜ」

マルセル「そんなこと言うなよ。すべてのことに意味があるんだぜ、ライナー」

ライナー「うーん。あんまり納得できねえけど・・・・・おまえが言うなら、信じるよ」

ベルトルト「ふああ・・・・しかし、眠くなってきたね」

ライナー「ああ、そろそろ寝る時間か。今日の復習するか」チャキ

ベルトルト「うん。えーっと、折りたたみ式ナイフ。ポケットか」チャキ

マルセル「おまえら、今日はなんの訓練したんだ?」

ライナー「俺は掌に切り傷」

ベルトルト「僕は小指・・・・・」

スパッ グサッ

ライナー「いてて。おお・・・・・・泣かなくなったな、えらいぞベルトルト」ドクドク

ベルトルト「うん・・・自分を傷つけるのも、戦士には大事なことなんだよね?」トプトプ

マルセル「ああ。・・・・・」

ベルトルト「こうして訓練して、僕が巨人の戦士になって・・・・任務を成功させれば、みんなずっと
      静かに暮らせるんだ」

ライナー「そうそう。俺たち、故郷にとっての正義のヒーローになれるんだ。まあ、おまえが怖くっても、
     俺がついてるから心配ないぜ」

ベルトルト「そうだね。・・・・まあ、決行まではまだ3年・・・・。途方もない時間があるんだ。今できることなんて、
      目の前の宿題くらいだよね」

ライナー「まあな。3年後なんて、俺たち、12歳と11歳になってるんだぜ。マルセルはもっと上だ! 
     それだけ大人になれば、なんでもできるよ」

マルセル「・・・・・・・・」

・・

マルセル「おい! おい、おまえら、起きろ!!」

ベルトルト「え? ・・・・・もう朝」

ライナー「なんだよ、マルセル」

マルセル「全員、外にでろ!」

ガチャ

子供「「?」」ゾロゾロ

スタスタスタ・・・・・  ピタ

ボオオオ・・・・ パチパチパチ

ライナー「・・・・・・なんだこれ、・・・・・壊滅してる?」

ベルトルト「うっ、変な臭い・・・・・っ、マルセルこれは?」

マルセル「ああ。これは人の死臭だ」

ベルトルト「ヒッ・・・!?」

ライナー「どういう、・・・・・なにがあったんだよ!?」

マルセル「・・・・・よく聞け。俺はさっき、息のある人に会った。
     グリシャさんの仲間が、延命の薬を保管している倉庫に火を放ったそうだ。
     ・・・・・昨日用の延命の薬を飲めず、大人は朝までに全員死んだ」

ライナー「・・・・・は? 延命? 死んだって・・・・・、嘘だろ。そ、その話をした大人は?」

マルセル「虫の息だ。見ねえ方がいい。細胞が次々壊れて、じわじわ腐っていく人間なんて」

ライナー「さいぼうぶんれつ・・・・・?」

マルセル「ああ、イヤ。戦士の最期なんて、見るものじゃない。わかるだろ」

ベルトルト「う、うう・・・・・そんな・・・・・」

ライナー「・・・・・俺たち、これからどうしたらいいんだ。子供だけで、なにができる」

マルセル「それだ! ・・・・・・大人がいなくなった以上、俺たちが大人だ。大人ならば、
     俺たちは巨人となり壁内に攻め込む使命を果たさないといけない! そうだろう!」

オ、オオ! ソ・・・・ソウダ!

マルセル「だから、このペンダントの鍵で・・・・・秘密の地下室に隠した巨人化薬を使うんだ!
     今日からは、俺たちが戦士だ!! グリシャもやはり悪魔の末裔だったということだ。同志の仇を!!」チャラ

オオー!!

・・・

ベルトルト(故郷に居た頃の夢・・・・。僕が戦士になる過程だ・・・・)

ガシッ

ベルトルト(!? なんだ、・・・・・手? たくさんの透けた手が、僕を掴んでいる・・・・・?)

腕『俺たちが死んで、おまえに託したっていうのに・・・・・!』

腕『おまえはのうのうと兵士をして、娯楽本を読んで、楽しそうだな・・・・・!?』

ベルトルト(こ、故郷で死んだ大人・・・・・戦士の先輩の腕だ!)

ベルトルト「・・・・・! イヤ、違・・・・・、ご、ごめんなさい、・・・・・ごめんなさい!」

ガシッ グイイッ

ベルトルト(たくさんの腕が、色んな方向に僕の身体を引っ張っている、い、痛い!)

腕『俺たちはいつでもおまえの側にはいるからな』

ベルトルト「ごめんなさ・・・・・も、もう、二度と馬鹿なことを考えませんから!」

・・・

ライナー「オイ、起きろ」

ベルトルト「!!」ガバ

ライナー「おい。大丈夫か。・・・・ひどいうなされようだったぜ」

ベルトルト「あ、ああ・・・・。大丈夫だ、僕、変な夢を・・・・・」

ライナー「そうか? まあ、落ち着いたら寝ろよ。まだ深夜だ」ゴロ

ベルトルト「ああ。おやすみ」

ベルトルト(妙な夢だった・・・・。故郷で死んだ大人たちが、僕を恨んで、身体を掴んで・・・・・)

ガシッ

腕『妙な夢だと』

腕『反省してないのか・・・・・!』

ベルトルト「!?」

ベルトルト(ま、またあの腕が!? 僕の身体を掴んで・・・・・ま、まだ夢なのか?)

腕『夢じゃないぞ』ガシ

腕『俺たちの意思は、常におまえの周りにあるんだ!』グイ

腕『おまえは、俺たちの命の代わりに生きているくせに、いまだにできそこないだな・・・・・!』ガシッ

腕『マルセルが生き残れば良かったのに!』グッ

ベルトルト(マルセル・・・・・)

腕『この目が悪いんだ。兵士の世界を羨ましがりやがって!』ギュウ

ベルトルト「!?」(て、掌で目を覆われて・・・・・遮られてしまった)

腕『今日から、おまえはこの目で生きるんだ』

ベルトルト(・・・・周りが薄暗く・・・・色あせて見える・・・・)

・・・・

ガバッ

ライナー「! お、おう、ベルトルト。どうした、起きたのか」

ベルトルト「あ、ああ・・・・、お、おはよう」(ゆ、夢か)ドキドキ

ライナー「おはよう。・・・・? ベルトルト」

ベルトルト「え?」

ライナー「おまえ、瞳の色が暗く見えるぞ。・・・・・・緑というか、真っ黒みたいだ」

ベルトルト「!?」

ベルトルト(・・・・なんだそれ、まさか、・・・・僕は、今もあの腕に、視界を遮られて・・・・?
      そうだ、言われてみれば、視界がすごく暗く見える)

ベルトルト「い、イヤ・・・・・そんなことないよ。変な夢は見たけれど・・・・光の加減だよ」

ライナー「変な夢か。さっさと忘れろよ」

ベルトルト「あ、ああ。・・・・っ」(! う、腕が、僕の身体をはっている、ライナーの言葉に怒ったのか・・・? い、痛い)

ライナー「・・・・・?」

腕『・・・・・』ググググ゙ッ・・・・

・・・

食堂

クリスタ「あ、おはよう」ニコ

ライナー「ああ・・・・おはよう」

モブ「・・・・・くそー、うらやましいぜライナー、朝からクリスタの笑顔を」

ライナー「ハハ、デカくて目立つ身体を持つヤツの特権かもな」

ベルトルト「・・・・・・ライナー、あそこの席をとった、よ・・・・」

腕『・・・・・』スウッ

ベルトルト(薄らと浮かんだ腕が、ライナーの首を絞めようと・・・・ッ)ゾッ

ベルトルト「ライナー! 早く食事をしよう、予習をしないと」グイ

ライナー「あ? ああ、そうだな・・・・」カタン

ベルトルト(よし・・・・・、とりあえず、腕は狙うのをやめたみたいだな)ドキドキ

クリスタ「ライナー、ベルトルト、ここ座ってもいいかな?」

ユミル「他みんな埋まってんだよ、見ての通り」

ベルトルト「!」

ライナー「ああ、もちろんいいぜ。なあ、ベルトルト」

ベルトルト「・・・・あ、ああ」

ベルトルト(うっ! う、腕が・・・・・僕の首を軽く絞めて・・・・・、し、仕方ないだろ、どう言えっていうんだ)ゾワゾワ

クリスタ「そうだ、ライナー、今日の訓練後空いてる?」

ベルトルト「!」

ライナー「ああ、特に予定はないが」

クリスタ「ライナーの馬、ちょっと気になるところがあったんだ。余計なお世話じゃなければ・・・・、
     いっしょに様子を見てもいいかな?」

ライナー「ああ、頼む。さすがクリスタはよく見ているな」

クリスタ「大事な仲間だからね。・・・・・ちょっと、ユミル! 変な音がすると思ったら・・・・・
     机の下でライナーの脚を蹴ってるでしょう!」ガシ

ユミル「・・・・・クリスタ・・・・、おまえって動物ならなんでも好きなのか?」

ライナー「どういう意味だ・・・・」ハア

クリスタ「ユミル! ごめんね、ライナー! 本当に、ライナーのこと大事な仲間と思っているから。
     ・・・・・じゃあ、そういうことで、よろしくね?」

ライナー「けっこ・・・・・ああ、わかった」

クリスタ(結構? ・・・・・じゃないのか、よかった)ホ

ユミル(ケツ・・・・だって・・・・? あの野郎・・・・)イラ

ライナー「なあクリスタ、もしよければ、街に馬具を・・・・・」

ベルトルト「っライナー!」

クリスタ・ユミル「「?」」

ライナー「ベルトルト?」

ベルトルト「あ・・・・二人ともごめんね。予習をしないといけないから、本当に早く食べてくれ!」

ライナー「・・・・・? ああ」

ベルトルト「頼むよ・・・・っケホ」(はあ、はあ・・・・・っ、話が弾むほど、腕に力が・・・・本当に、絞め殺されるかと・・・・・・)ドクッドクッ

・・

座学

教官「ではここを・・・・レオンハート!」

アニ「54.7km/sです」

教官「その通りだ。それで・・・・」

ミーナ「さすがだね、アニ」

アニ「別に・・・・」

ミーナ「今のって、なんの公式を使ってたの? ごめん、わたしここ苦手で・・・・次当たりそうだから・・・・教えて!」コソ

アニ「・・・・・。今のは、~~~で、ここの式を~~~だよ」

ミーナ「なるほど! さっすがアニ、大好き」

アニ「・・・・・。まったく、調子いいね・・・・」フッ

ベルトルト(・・・・・)チラチラ



アルミン(ベルトルトってよく彼女のことチラ見してるよなあ・・・・)チラ

ミカサ(・・・・アルミンが誰かをチラ見している・・・・・、誰を? ベルトルト・・・・いや、アニ!?)チラ

エレン(ん? なんかミカサ怒って誰か見てる・・・・・あ、アニか。もしや明日こそ夢のカードが・・・・)チラ

教官(アイツら座学中にレオンハートをチラ見しすぎだろ・・・・・)イラ

教官「レオンハート! さっきの答えに至るまでの式を、前に出て書け!」

アニ「? はあ」(なんかとばっちり受けた気がする・・・・)カタ

サラサラサラ

教官「よし、その通りだ。ここの公式が重要であるから、よく復習するように。戻っていいぞ」

アニ「はい」

スタスタスタ・・・・

ミーナ(アニ! さっすが、かっこいいよ~)グー

アニ「・・・・・」フッ

ベルトルト(・・・・最近、アニとミーナ、仲がいいな。・・・・・!?)チラ

腕『・・・・・・』スッ

ベルトルト(す、透けた腕が、アニの足首を掴もうとしてる! 階段式の教室なのに・・・・こ、転んだら、
      下手したら大怪我してしまう・・・・・)

スーッ

ベルトルト(ど、どうしよう、なんて言ったらいいんだ? あああ・・・・・)

腕『・・・・・』スウッ・・・・・

ガシッ ガシッ

アニ「!?」ガクンッ

ベルトルト「!」(アニ!)

ドサッ!!

ミーナ「あ、アニ! 大丈夫・・・・・、!」

教官「レオンハート、どうし、・・・・・・」

アニ「・・・・・。悪いね」ムク

ベルトルト「・・・・・・い、イヤ」(思わず、抱きとめるみたいにしてしまった・・・・・、ん?)ドキドキ

腕『それでいいんだ・・・・・おまえがそういう気持ちを抱いていいのはその子だけだからな』

ベルトルト「・・・・・」

教官「レオンハート、フーバー、怪我はないのか」

アニ「平気です。・・・・・。続けてください」スク

ベルトルト「だ、大丈夫です・・・・・」

モブ「ベルトルト、速かったな・・・・・アニのこと見すぎだろ・・・・・」クスクス

モブ「とっさに動けるなんてさすがだね」

ライナー「・・・・・・」

ベルトルト(アニを悪目立ちさせてしまった・・・・・)

アニ「ベルトルト」ボソ

ベルトルト「?」

アニ「首に、赤い跡がついてるけど、大丈夫?」

ベルトルト「え?」(まさか、さっき腕に首絞められた跡が?)「あ、ああイヤ、大丈夫」

アニ「ならいいけど」スタスタ

ベルトルト(・・・・・。あの腕、一体いつまで僕の周りにいるんだ・・・・)

・・

数ヵ月後

ベルトルト(この数ヶ月、ほぼ常にあの腕は僕の視界の中にある。・・・・・イヤ、いつも目隠しされているんだから、
      この言い方もおかしい)

ベルトルト(僕らが戦士らしくないことをすると、怒って僕らの身体を掴む。不思議なことに、
      この手は感触はしっかりと伝えられるらしく、掴まれた後には手のあとが赤くついてしまった。
      戦士の先輩がつけた跡だけに、巨人化能力で消すのが忍ばれて、僕は隠すのに困窮していた)

ベルトルト(この頃になると、104期の人たちもおかしさに気がつくようになって、あの本の
      影響もあって、『透明人間の痴女』がでるんだと噂になっている)

ベルトルト(・・・・・本当は、おっさんの幽霊なんだけど)

ライナー「おーい、消灯だとよ」

ベルトルト「あ、うん。了解」

フッ

・・・

ベルトルト(ここは・・・・また、故郷だ。・・・・大人がみんな死んでしまって、すぐの・・・・)

マルセル「いいか。生き残ったのは、俺たち子供18人だけだ」

子供「「・・・・・」」

マルセル「俺は作戦書をもらっている。3年後決行するこの作戦に必要な人数は3人。
     ・・・・あと2人、巨人化するヤツを選ぶから、すると残りは15人。
     変身訓練は、5回しか行えないことになる」

ライナー「5回? なんでだ」

マルセル「おまえたちは何も教えられてないが、巨人から人間に戻るには、人間を食べる必要がある。
     ・・・・・どこか街に協力を頼むことも考えたが、どこで壁内のヤツらとつながりがあるかわからない。
     下手な動きはしない方がいい」

ベルトルト「人間を食べる・・・・・? じゃ、じゃあ、僕らの誰かが・・・・誰かに食べられるってこと・・・・」

マルセル「それしかない。・・・・・作戦を決行しないと、俺たちの故郷は終わりなんだぞ」

ライナー「それはわかってるけどよ・・・・・・」

マルセル「みんなこうするのは嫌だが、決めなくてはならない。作戦を決行する戦士と、
     その代償になる戦士を。・・・・・・とは言っても、話し合って決めるのは困難だ。
     そこで。作戦を決行する予定だった俺が指名する。ライナーとベルトルトだ」

ライナー・ベルトルト「「!?」」

マルセル「決めた理由は単純だ。二人は大きい。大きなヤツは、それだけ生まれつき強いからな。
     そこは埋めようがない。いいな、二人とも」

ライナー「・・・・」

ベルトルト「そ、そんな・・・・・・で、できな・・・・・」ガタガタ

ライナー「ああ、任せてくれ」

ベルトルト「!?」

ライナー「俺は自分が決行する戦士になると信じていた。だが・・・・・みんなは、俺たちに命を預けてくれるか?」ギラ

子供「「・・・・・・」」ゾッ

「そ、そうだな・・・・3人は大きいから」

「怖いけど・・・・僕たちの命で強い巨人になって、故郷を勝利に導いてくれ」

マルセル「よし! 俺たち3人で、故郷に勝利を持ち帰る! 壁内のヤツらに復讐を、「子供たちはいるか?」

ベルトルト「!」ハッ

マルセル「・・・・・。あなたは・・・・」

グリシャ「話がある・・・・・・。こっちに集まりなさい」

・・

グリシャ「昨日、何があったか、知っているかな」

マルセル「・・・・あなたの仲間が延命薬の倉庫に火を放った」

グリシャ「そうだ。その前に・・・・わたしたちは交渉をしていた。この、無意味な復讐のループを止めるための」

ライナー「無意味な・・・・・?」ピク

グリシャ「やはりというか、交渉は失敗した。協力どころか、君らの親たちは、延命薬と似た効果を持つ薬を
     自ら開発していて、それでわたしはもう不要だと、殺そうとしてきたんだ・・・・・すでに子供をつくり壁内人類となったわたしをね」

ベルトルト「本当に・・・・・グリシャさんが・・・・悪魔の末裔・・・・・」

グリシャ「わたしたちも黙って殺される訳にはいかない。最終手段をとるしかなかった・・・・わたしの仲間は彼らから逃げながら、
     事前に調査していた薬の保管庫に火を放った。とても燃えやすい素材の薬だったから、
     あっという間に火が上がったよ。彼らは消火にやっきになり・・・・その間、わたしらは君らの元に火が及ばないよう尽くしていた」

ライナー「・・・・・・つまりそれは、!」グッ

マルセル「待てライナー」ス

グリシャ「・・・・君たちには、新しい世界を築いて欲しい。もう復讐も、訓練もやめるんだ。
     生き延びた君らがいたずらに死ぬことを、大人たちはきっと望まない。
     君らが変われば、必ずそれに賛同する大人が現れる」

マルセル「・・・・・グリシャさん」スタスタ

グリシャ「・・・・・。!」

マルセル「・・・・・!」ブンッ

グリシャ「ナイフを隠し持っていたのか・・・・」ガシ

マルセル「みんな持ってる。・・・・・俺たちは戦士以外の生き方なんか知らないんだ。
     俺たちには親もいない。戦士として生まれた、それだけだ。・・・・死にたくなければ帰ってくれ」

グリシャ「親はない・・・・・か。そうだったね。・・・・・。ではここでも交渉は決裂ということか」

・・

ベルトルト「はあ、はあ・・・・・」ズル

マルセル「よし、よかったぜ。ベルトルト。3回目だが・・・・確実に可動範囲は広がっている。この調子なら進撃できる」

ライナー「さ、ベルトルト。脚の付け根をだしな」

ベルトルト「うん。壁内に侵入してから、バレないためには、こういうところじゃないとね」

マルセル「墓を作れないからな。・・・・・ここに巨人化を解くために食べた同志の頭文字を刻むんだ」サクサク

ベルトルト「僕らずいぶん少なくなっちゃったね」

ライナー「昨日食べたやつは、騒がしいやつだったからな。静かになっちまった」

マルセル「心配そうな顔をするな。故郷の勝利のためだ。俺たちは正しいことをしているだぜ」

ベルトルト「9人目だ。ゲオルク・・・・ホラーツ・・・ヴァルター・・・・・」

ライナー「俺たちの側で、勝利するのを助けてくれるさ」

ベルトルト「そうだね・・・・・」

マルセル「跡、治さないように気をつけろよ」

・・

ベルトルト(故郷にいたころの夢・・・・・久しぶりだな。ちょっと前に見た夢の続きみたいだった)

ガシ

ベルトルト(! また、大人の腕が・・・・・・、あれ・・・・?)

腕『ベルトルト』

腕『俺たちの名前、まだ身体に彫っててくれてるんだね・・・』

ベルトルト(小さな手・・・・子供の手だ・・・・・まさか、僕が食べた子たちの腕が・・・・)

腕『ベルトルトが俺たちのことを強く思い出してくれたから、こうやって現れることができたんだ』ポン

腕『ベルトルトが困ったら助けてやるよ』ナデナデ

ベルトルト(どうしよう、・・・・・前の大人の腕みたいに、痛めつけることはないようだけど・・・・・)


腕『これからはベルトルトといっしょに過ごせるなんてうれしいよ』

腕『僕たち、戦士として、作戦が完遂するまで必ず側にいるからね』

腕『すぐそばにいるってわかるように、今日からは僕たちも目隠ししてあげるから、こうすれば
  悪魔の末裔の世界でも戦士を忘れずいられるだろ?』スッ

ベルトルト(小さい・・・・こんな8歳とか9歳の子を食べてきたんだな)

・・

イメージビデオの人かな?
違ったらごめん

>>35 はい、そうです

ベルトルト「!!」ガバ

ライナー「? おはよう、ベルトルト・・・・早いな」

ベルトルト「・・・・あ、ああ。・・・・・まだ、夜が明けたばかりみたいだね・・・・・」ゴシゴシ

ライナー「え? もう日は完全に登ってるだろ・・・・・この明るさなら」

ベルトルト「えっ」(そんな。全然まだ暗く見える・・・・)ゴシゴシ

ライナー「大丈夫か? おまえ、数ヶ月前もそんなこと言ってただろう」

ベルトルト(・・・・・)「あ、ああ。勘違いだったみたいだ、なんでもないよ」

ベルトルト(世界がどんどん濁ってるみたいに見えてる・・・・。さっきの夢の話を信じるなら、大人の手の上に
      子供の手が重ねられて、目を覆われてるのか? そんなまさか)

ライナー「無理するなよ? 今日は兵站行進だ。俺たちは、仲間を引っ張るくらいじゃないとな」

腕『仲間・・・・?』

ベルトルト(・・・・! 透けた子供の腕が、ライナーの側に浮いている。
      や、やっぱり、夢じゃなかったのか。まあ前回も視界が暗いとわかった時点で夢じゃなかったと気づかざるをえなかったんだけど)
      「そ、そうだね。それも協調性をアピールするためには必要だよね」

ライナー「まあな。・・・・・あ、おい、コニー! 昨日言ってた・・・・・」スク

腕『仲間は僕たちだけでしょ・・・・』スウッ

ベルトルト「あっ」(う、腕が、ライナーの服を掴もうと、・・・・っ)

グイ

ライナー「・・・・・? なんだ、ベルトルト」

ベルトルト「い、いや」(腕がバレないように、つい腕に重ねてライナーの服を掴んでしまった)

ライナー「ハハ。・・・・・なんだ心配してんのか? 兵士としてやってるだけだ、本気じゃない」

ベルトルト(・・・・・)ホッ(・・・・って違う違う)「わ、わかってるよ。ゴメン急に。行ってくれ」

ライナー「? ああ。・・・・・お、コニー。昨日のおまえの論文だ。読んでみたんだけど・・・・・」

腕『ベルトルト、いいの? ライナー、悪魔の末裔と仲良くしてるよ』

ベルトルト(・・・・・ああすることも、作戦の一部なんだよ。だから、もうああいうふうなことは)

腕『このっ、ライナーと仲良くするな!』

ベルトルト(え? ・・・・・・あ、あああ! 枕を持ち上げて、ベッドから落っことそうと・・・・・っ、間に合わない!)バッ

ボフンッ

コニー「おわっ!? ・・・・・な、なんだこりゃ、ベルトルトの枕?」イテテ

ジャン「・・・・ほお。この寝相は新作が期待できるんじゃねーのか? 天気観測日誌が要りそうだな」ニヤ

ライナー「イヤあいつはもう起きてたぞ・・・・・なにやってるんだ?」

ベルトルト「・・・・ご、ごめん、コニー! 枕、寝ぼけて、落っことしてしまったんだ」ヒョコ

コニー「おーいいよ、全然。ほら」ヒョイ

ジャン「やめてやれよベルトルトー、こいつの背を縮ませたら、なおさらおまえがデカく見えるんだぜ」

マルコ「おい、ジャン・・・・そういうこと言うなよ、コニーが怯えてるだろ・・・」

ジャン「俺はキースから初日に頭突きされて、微妙に縮んだ気がすんだよ・・・・・その証拠に頭突きなんざ
    縁のないおまえらはでけーじゃねえか」

コニー「あわわわ・・・・・」ガタガタ

マルコ「ジャン! 論理的な話でコニーを追い詰めるな! ほらコニー、手を。立って」ヒョイ

ジャン「悪い悪い、嘘だよ。ホラ、もう片方の手は俺が持つよ」ヒョイ

コニー「う、嘘だよな? 俺、そこまで小さくないよな」ムク

アルミン「おはよう、みんな。・・・・・・」

エレン「よ、おはよう。・・・・・・」

ライナー「あ、おう。おはよう。・・・・・・」

ライナー・アルミン・エレン(((連れ去られた宇宙人・・・・・)))

ベルトルト(ああ、もう! ライナーが兵士に交じるたび、腕がおかしなことするってのに・・・・・
      あの大人の腕より、子供な分、動きが軽率だぞ。ライナー、彼らと離れててくれないかなあ・・・・)イライラ

・・

エレン「おーい、ライナー、ベルトルト! みんなでカードゲームするんだ、やろうぜ!」

ライナー「おう、いいな。行こうぜ、ベルトルト」

ベルトルト「う、うん。・・・・!」チラ

腕『またライナーが悪魔の末裔と仲良くしている・・・・・僕らの任務のことは忘れちゃったの・・・・?』ガシ

ライナー「?」クル

ベルトルト(ま、またライナーの服を掴んで!)「あ・・・・・は、早くいこう、ライナー」ガシ

ライナー「ああ。おまえ、最近妙に俺の服を掴むな? どうした?」ハハ

ベルトルト「イヤ、そんなことないよ・・・・・うん」

腕『そうやって笑いかけてくれたのは、仲間の僕らにだけのはずじゃないか・・・・・・』ギュ

ベルトルト(ああもう! ライナーにそんなに触るなよ、ごまかすために僕まで触る羽目に
      なるのに!)ギュ「ほ、ほらほら、待たせちゃまずいよね」

エレン「おっそいなー、アイツら。ちょっとベッド見てくる」

アルミン「い、いや、待って。ちょっと待とう」

ジャン「そうだぜ、待とう」

マルコ(ガチすぎて、ジャンが「ベタベタして気持ち悪い」と茶化しもしない・・・・さすがの状況認識能力だ)

コニー「ライナーとベルトルト、なんかべたべたしてて妙に仲良さそうだよな~最近」

エレン「そうか? あんなもんじゃねえの、あいつら」

ワイワイ

ベルトルト「・・・・・こ、こうやって遊ぶのも、故郷に帰るためだよな?」

ライナー「は? まあ、そうだけどよ・・・・・」

ベルトルト「は、はっきり言ってくれ」グイ(そうしないと腕が納得してくれないんだよ!)

ライナー「・・・・ああ。これも故郷に帰るためだ」

ベルトルト「だよね」(ホラ、ライナーは立派な戦士だよ。腕も、もう離れていいよ・・・・)

腕『・・・・・・』

エレン「お。もう配っちゃったぜ。・・・・・さあ、来い、ライナー!」

ライナー「おう。どれにするかな~・・・・」ニヤニヤ

アルミン(ああ・・・・エレン、また顔にでちゃってるよ)

腕『・・・・・ライナーは悪魔の末裔と遊んで、楽しいんだ』

ベルトルト(し、仕方ないよ。いつも緊張してばかりじゃ壊れてしまうんだ。彼は元々社交的だし)

腕『だから楽しいんでしょ? ベルトルトは悪魔の末裔のことをちゃんと嫌おうとしてるのに』

マルコ「はい、次、君だよ。ベルトルト」

ベルトルト「う、うん。ええっと・・・・これかな」ヒョイ

コニー「よーし、次は俺だ。ジョーカー持ってんのかな? うーん・・・・ベルトルトっていつも冷や汗かいてるから、
    逆にどれが怪しいのかわからないんだよな・・・・」ヒョイ

ウワーッジョーカーダ!! ハハハハ・・・・コニー、マケタナ

腕『妬ましいよね、ベルトルトはいつも緊張してるのに、悪魔の末裔は心から楽しそうで』

ベルトルト(妬んでなんかないよ・・・・・彼らは被害者なんだから。彼らも楽しそうでも苦しんでいるんだ・・・・僕のせいで)

腕『え、被害者って? ベルトルトは悪事はなにもしてないよ。・・・・もしかして、僕らは正義の戦士じゃなかったの?』

腕『えっそうなの? 僕らは間違ったことをして、それで死んだの? じゃあ僕らってなんのために・・・・』

ベルトルト(ち、違うよ。君らはなにも悪くないよ。なにも知らない子供なんだから、仕方ないよ)

腕『そうだよねベルトルト』

腕『仕方ないんだよ。やっぱり、こいつらが悪魔の末裔だ。ライナーが惑わされないようにしないと!』スッ

ベルトルト(あ・・・・待って! な、なんだ。腕が・・・・カードを触っている?)ハラハラ

コニー「うわーっ負けちまった!」

ジャン「予定調和だな?。次はもっと楽しませてくれよ」シャッシャッ ピラピラピラ

コニー「ぐう・・・・」

ライナー「さて、次のカードは・・・・・、!?」

エレン「え!?」

アルミン「な、・・・・・」

ジャン「・・・・なんだこれ」

ベルトルト(カードに、落書きがしてある・・・・・血文字で・・・・・、)

マルコ「ジャン・・・・?」

ジャン「ばっ、ち、違うよ! 確かに俺が配ったけど・・・・・変な細工なんてしてねえって!」

コニー「よ、よくわからねーのは俺が馬鹿だからなのか? さっきは普通のカードだったよな?」

アルミン「文字だ・・・・みんな、カードを見せて」

ピラ

エレン「3、4文字ずつ書いてあるのか・・・・・一つの文章になってるのか?」

アルミン「・・・・・・。アクマノ、マツエ、イメキョ、ジンガ、ネダヤ、シニシ、テヤル」


マルコ「・・・・・!?」

コニー「え・・・・な、何語だ?」

ジャン「つなげて読むんだよ・・・・」

ベルトルト「・・・・っ!」(な、なにを・・・・なにをやっているんだ、あの腕。
      これは全部重要な作戦のキーワードなんだぞ、・・・・・ど、どうしよう・・・・・!)

エレン「こんなこと言いたくないけど・・・・・、最近の怪奇現象に関係してんのかな・・・・・?」

ジャン「はあ? そんなことあるわけないだろ・・・・。このカードには、巨人が根絶やしにする・・・・って書いてあるんだぜ。
    主語は巨人だ。巨人の幽霊が文字を書くとでも言いたいのか?」

アルミン「でも・・・・。今の短時間で、こんなことが起こるって、ありえないよ・・・・・。
     しかも、これ、血みたいだし。・・・・あ!」

ジュッ

コニー「・・・・・消えた」

ジャン「蒸発したのか・・・・」

マルコ「・・・・・まるで、巨人の血じゃないか」

腕『僕ら、基本的にベルトルトの身体の一部になってるから、君の血でこんなこともできるんだ』

腕『この文を見たら、ライナーも戦士の気持ちを思い出してくれるかな?』

ベルトルト(・・・・なんてことをしてくれるんだ・・・! 大事になったら、作戦に影響が・・・・)

アルミン「は、はは・・・・。どういうことなんだろう。まるで、この中に、巨人の血を持つ
     人がいるみたいじゃないか」

ジャン「オイ、んな意味不明な・・・・笑えねーぞ・・・・!」

ベルトルト「あ、あの」

ライナー「悪いな、みんな。実は俺の仕業なんだ」

ベルトルト「!?」

ザワッ

エレン「ら、ライナー?」

ジャン「んだよ、やられたなー。マジでびびっちまったじゃねーか!」ハハ

アルミン「え、で、でも、どうやって・・・・? それにどういう意味・・・・」

ライナー「これは手品グッズでな。路地裏で売っていたんだ、一定時間だけ見えるインクだとよ。
     それで・・・・書いてたのはちょっと違うんだ、アルミン。
     悪魔の末裔「の」巨人が。根絶やしにしてやる。っていう、悪い巨人をぶっ殺してやるぜって
     意気込みだったんだよ」

エレン「おお・・・・巨人を根絶やしか! いいな、俺も駆逐って言ってやりたいぜ」

ジャン「いっつも言ってるくせになに言ってるんだか。言っとくが、これはライナーだから許されるんだぜ」

ライナー「だが、こんなに驚かれるとはな」ハハ

マルコ「ライナーには適わないなあ・・・・まあ、君の仕業なら、納得だよ。さすが次席だね」ハハ

ベルトルト(・・・・・た、助かった。ライナーがいてくれてよかった)ホッ

腕『・・・・・・』

エレン「はあ、なんか安心したら眠くなってきたぜ。解散するか」

ジャン「そうだなー」

コニー「ふわあ」

ベルトルト「・・・・・・。ライナー」

ライナー「ああ。驚いたな、ベルトルト・・・・・」

ベルトルト「う、うん。そうだね」

ライナー「俺の仕業でないと、やっぱりおまえはわかっていたようだな。まあ、あいつらも
     無理矢理納得してたけど。苦しかったよな、やっぱり」ハハ

ベルトルト「い、イヤ・・・・・」

ライナー「しかし・・・・・・巨人が根絶やし、なんて、不気味な文章だったな。
     俺たちの故郷は巨人に根絶やしにされただけに・・・・」

ベルトルト「・・・・・。え?」

ライナー「『悪魔の末裔め、巨人が根絶やしにしてやる』。・・・・うあ、覚えたくもないのに、なんか
     頭に残っちまった・・・・。気分悪いぜ。・・・・・ベルトルト?」

ベルトルト「・・・・・・」(な、なんだって? 冗談言ってるのか? ・・・・・?)

腕『ライナーはやっぱりおかしくなったのか? ライナー、兵士と仲良くしすぎて、戦士じゃなくなっちゃったのか・・・・』

ライナー「ベルトルト、やっぱりおまえも気分が・・・・・」

ベルトルト「違う!」

ライナー「?」

ベルトルト「・・・・・あ、い、いや、違うよ。大丈夫だ。ハハ、ごめん」

腕『戦士じゃないなら、戦士に戻さないと』

腕『戦士を忘れるなんて、信じられない! ショック療法だよ、ベルトルト。目の前で、ベルトルトの腕切ってあげようか?
  再生してるとこ見せたら、驚いて思い出すはずだよ!』グイ

ライナー「本当か? 様子がおかしいぞ、早く寝床に・・・・」グイ

ベルトルト「やめろ、触らないでくれ!」

ライナー「え、・・・・・」

ベルトルト「あ、イヤ、ち、違うんだ。君に言ったんじゃない。・・・・・」

腕『戦士なら、ライナーの気持ちなんか気にしてちゃダメだよ』

腕『そうだよ。君ら、僕ら15人の肉で戦士になったんだから、作戦のこと考えてくれなきゃ困るよ』

腕『死者の言葉が聞けないの?』

ライナー「ベルトルト、おまえ変だぜ。教官に具合を見てもらったほうが」

ベルトルト「・・・・た、・・・・・頼むから、ちょっと、しゃべりかけないでくれ・・・・」グッ

ライナー「なに、耳を塞いでるんだ・・・・?」

アルミン「あれ、ベルトルト、耳が痛いのかい?」

エレン「なにか変なこと言ったのかよ、ライナー」

ライナー「俺は思ったことを言ってるだけだぞ・・・・・おかしなことなんか言ってない」

ジャン「オイオイ、ぐっすり寝た方がいいぜ。最近、いい調子で新作が誕生しているしな」ニヤ

コニー「心配だぜ、早く寝て体調を整えろよ、ベルトルト!」アワワ

マルコ「そうだよ、ベルトルト。・・・・ジャンの言葉は、コニーが翻訳したとおりだからね」

ジャン「おいマルコ、どういう意味だ」

腕『こいつらみんな早く殺そう!』

腕『ライナーがおかしくなっちゃう!』

腕『僕らとこいつら、どっちが大事なの!?』

ベルトルト「う、ううう・・・・・」グッ

ベルトルト(・・・・・だ、だれか・・・・・だれか助けてくれ・・・・)グルグル

・・・

続く

数ヵ月後

ベルトルト(解散式が終わった)

ベルトルト(僕はあの子供の声と腕に怯えて過ごしているままだ。彼らの声がやたら耳に痛いのは、彼らの言葉は
      戦士になったばかりの僕の言葉そのものだからで・・・・)

ベルトルト(あの頃の僕は怯えながらも、自分が正しいと信じていた。でも今の僕は
      もはや自分がなにをするべきかすらよくわからない)

ベルトルト(あの頃はよかった・・・・・導いてくれる人がいて)

ライナー「ベルトルト。式では元気なさそうだったが・・・・寝れそうか」

ベルトルト「ああ。大丈夫だ・・・・・」

ライナー「・・・・。おやすみ」

ベルトルト「おやすみ・・・・・」

ベルトルト(僕はライナーをどうすればいいんだ。・・・・・・もう次の作戦決行なのに、僕は一人でできるのか)

・・・

ベルトルト(・・・・ここは? 壁外だ。・・・・・僕ら、任務のために壁内を目指しているんだっけ)

マルセル「ベルトルト、起きたのか」

ベルトルト「! マルセル・・・・・」

マルセル「壁、だいぶ近づいてきたな。怖くないか?」

ベルトルト「怖いといえば、怖いよ。・・・・・こんなんで、僕、ちゃんと戦士ができてるかな?」

マルセル「・・・・・うーん、まだ半人前だな。本当の戦士になるのはこれからだ。まあ、いざってときは、俺が守るから、迷わず逃げろよ。
     おまえの大きさの巨人がいないと、計画の最終段階までいけないんだから」

ベルトルト「そんな・・・・・僕、一人じゃなにもできないよ」

マルセル「できるさ。おまえは、生きるためならなんでもできる」
 
ベルトルト「それは褒めてるの?」

マルセル「はは・・・・・ま、俺が最後の戦士として責任もって、おまえらを本物の戦士にしてやっから。安心しろよ」ハハ

・・

ギアアアアア!!! アァアアァァァア

ライナー「・・・・・・っ」ハア、ハア

ベルトルト「ライナー。ぼ、僕」ガクガク

ライナー「・・・・静かにしてろ」グイ

ベルトルト(マルセルが、食われてしまった。彼は、・・・・・彼だけが本物の戦士だったのに)

ライナー「・・・・・・・。・・・・・・静かになったな」

ベルトルト「・・・・・、うっ、ううっ」

ライナー「・・・・・・。すまないベルトルト、アイツ俺を庇って・・・・」ギュ

ベルトルト「う、う、うわあああん」グスグス

ライナー「・・・・・・・・・・・」ハア、ハア

ベルトルト(僕らはまだ大きいだけの子供だ。戦士のマルセルに認められるしか、本当の戦士になれる手段はなかったのに。・・・・・・ど、どうすれば)

ベルトルト「・・・・・・・うっ、うう、ごめんねライナー。君だって泣きたいだろうに」

ライナー「俺は平気だ。・・・・・ベルトルト。これからは、俺たち半人前同士、力を合わせよう」

ベルトルト「?」

ライナー「おまえは巨人化の才能はすごい。でも、トラウマで怖がりになって戦士らしくできない。
     俺は巨人化の能力はそこそこだ。でも、戦士になりたいって気持ちじゃ誰にも負けないぜ。

     だから、俺はもう泣かない。そうやっておまえを守ることにする。・・・・・・おまえは、巨人としての任務の決行さえしてくれればいい」

ベルトルト「・・・・・・・・・。・・・・・わかった・・・・・」

ベルトルト(・・・・・故郷に勝利を持ち帰れるのは戦士だけなのに、こんな中途半端な僕らがやって、大丈夫なんだろうか?
      イヤ、僕らはこれしかできないんだし、・・・・・・・死んでいった故郷の命がかかっているんだ。僕が手を汚さないと)  

・・

ベルトルト(マルセルが、夢にでてくれた。・・・・・・なつかしいな、久しぶりだ)

ガシ

腕『よ、ベルトルト』

ベルトルト「え」

腕『おまえにとっては久しぶりだな、俺はいっつもいたんだけど』

ベルトルト「・・・・・・ま、マルセル?」

腕『そうだぜ、マルセルだ』

ベルトルト「・・・・・・!! ほ、本当に君なのか。信じられない!」ガシ

腕『そう言ってくれた俺もやった甲斐があったってもんだぜ』

ベルトルト「やった甲斐?」

腕『うん。ベルトルトが死人の腕と通じ合えるのは、俺がおまじないをしたからなんだ』

ベルトルト「おまじない・・・・?」

腕『おまえたちに同志の頭文字を彫るとき、いっしょにな。死んだ人のことは、どうがんばっても、記憶から薄れるもんだろ。
  おまえたちが死人のことみんな忘れたら、故郷が本当に滅びちまうからな。それだけは防がなくちゃならねえ』

ベルトルト「・・・・・そうだね、・・・・・・最近のライナーは故郷を本当に忘れているようで、僕、どうしたらいいのか・・・・・」

腕『ああ、このタイミングでおまえと話せたのはラッキーだった。俺が側にいたら、故郷の勝利も近いってこと、忘れずにいられるだろ!』

ベルトルト「うん・・・・・。君は、なんだか今までの腕たちと違うね。腕は腕だけど・・・・割とハッキリしていて・・・・・本当に生きているみたいだ」

腕『あのまじないは、死人の記憶が新しいほど、ハッキリ現れることができるんだ。そして、より強い影響を与えることができる。・・・・・・・』ギュ

ベルトルト「マルセル?」

腕『俺、ずっと孤独でさ。おまえらの近くにいるのに、気づいてもらえなくて・・・・・だからこうして話せて、感極まっちまってな。
  これからは、おまえのためになんでもしてやるからな』
 
・・・

ベルトルト「・・・・・・」ムク

ライナー「おはよう。珍しくすんなり起きたな」

ベルトルト「ああ・・・・・、いい夢を見たんだ」

ライナー「よかったじゃないか。・・・・・さあ、支度をするぞ」

・・

壁上

ヒュウウウウ・・・・・

ベルトルト(とうとう、決行の日だ。ライナーとアニ、同志のため・・・・・・・僕がやらなくては)

ヒュウウ・・・・

ベルトルト「・・・・・、・・・・・」ハアハア

ベルトルト(怖い、・・・・・僕は、一体、何人殺すことに、)

腕『・・・・・』ドンッ

ベルトルト「!?」ガク 

ズルッ

ベルトルト「あ・・・・」(背中を押されて、落ち・・・・・)

腕『俺がついてる』

ベルトルト「・・・・」(マルセル、・・・・僕は、今度こそ本当の戦士に)ガリッ

ピカッ  ピシャアアンッ!!!

・・

数日後 調査兵団

ジャン「兵団入って・・・・すぐに壁外調査か」

アルミン「今は、この任務のことを覚えるしかないって感じだね・・・・・」

サシャ「でも、忙しくて仕方がない、という訳ではないんですね」

ライナー「イヤ、自分で勉強しようと思えば、キリがないさ。壁外についてはな」

アルミン「そうだね。・・・・・しかし、あえて情報を伏せているんだ。理由は、想像がつくけれど。
     今は・・・・・・、任務以外に僕らに考えて欲しいことがあるんだろうね」

ミカサ「エレンは、どうしているのだろう・・・・・」

コニー「そりゃ、わからないけどよ。・・・・・無事って情報は確かだし、心配しても仕方ねーよ」

ミカサ「そうね・・・わかっている」

クリスタ「ミカサ・・・・・」

ユミル「・・・・・・・」

ジャン「だが、このメンツは心強いな。上位がほぼ勢ぞろいじゃねえか」

ベルトルト(・・・・ほぼ・・・・・)

ライナー「そうだな。なんて言っても、俺がいるんだ。先に昇格しても文句言うなよ、ジャン」

ジャン「さすが、言うな」ハハ

ベルトルト(ジャン・・・・みんなも、なんとか緊張をほぐそうと・・・・・。・・・・・・・・)

ニャーン

ジャン「?」

サシャ「あれ、ね、猫?」

クリスタ「わあ、可愛い!」ダキ

ユミル「おいおい・・・・どっから入ってきたんだよ、実はガタ入ってんのか、この建物?」

ミカサ「わあ・・・・・久しぶりに見た。子猫なんて。可愛い」ナデナデ

ジャン「・・・・・・」キュン

ライナー「ずいぶん人懐っこい黒猫だな」

ベルトルト「・・・・・?」

猫『ベルトルト』ニャー

ベルトルト「!?」(ま、マルセル?)

猫『俺、他のと違って、なにかに乗り移ることもできるみたいだ』ゴロゴロ

ベルトルト(な、なにやってるの?)

猫『場の空気をなんとかしたかったんだろ? おまえがそれを望んだからやってるんだよ』ニャーン

ベルトルト(ええ、・・・・・ま、まあ望んだって言ったら望んだけど)チラ

猫『おっ、次はこうして欲しいんだな』ニャンニャン

クリスタ「わ! あはは、くすぐったいよ~、もう」モゾ

アルミン(く、クリスタの胸元に首を突っ込んで・・・・)ゴクリ

ジャン(どこ舐めてるんだ、どこを!)ゴクリ

ライナー(付き合いたい)

ベルトルト(はっ・・・・・、の、望んでない! 望んでないよ、よしてマルセル!)アワワ

猫『嘘つくことないだろ。おっ、次はこうして欲しいのかー』ニャー

クリスタ「わーっ、服の中に入っちゃだめだよ、アハハ」

ユミル「ったく、動物好きだなクリスタ。クリスタを今やらしい目で見ているヤツがいたら去勢するからな」

アルミン「み、見てない見てない」

ジャン「見てるわけないだろ」

猫『ベルトルト、うれしいか?』ペロ

ベルトルト(もういいよ! やめろ! 僕の気づかなかった深層心理まで暴くのは勘弁してくれ!)

・・

腕『あー楽しかった』

ベルトルト(勘弁してくれよ、マルセル、君ってそんなヤツだったっけ?)

腕『さっきも言ったけど、ずっと誰とも会話できず孤独だったからな。なんかハイになっちまって』

ベルトルト(・・・・・その気持ちは、なんとなくわかるけど)

腕『あと透明人間になったら物が触れるから、最高だぞ、これ。やりたい放題だ。・・・・この姿があれば、任務も楽に進められる』

ベルトルト(どういう意味だ?)

腕『ベルトルトが望めば、機密文書を持ってくることも、ジャマなヤツを殺すこともやるってことだ。
  ・・・・・俺はもう死んで戦士じゃないから、おまえが望むこと以外はしないけど』

ベルトルト(そ、・・・・・そんなことはしなくていいよ。だいたいライナーやアニになんて相談すればいいんだ)

腕『・・・・・相変わらず怖がりだな』

ベルトルト(僕は故郷に勝利を持ち帰ることは望んでるけど、それ以上のことはしたくないんだよ)

腕『おまえ・・・・壁を壊すのに失敗して、ずいぶん参ってるみたいだな』

ベルトルト(! まあ・・・・そうだね)

腕『消極的になる気持ちもわかるけど、・・・・・まあ、こういうのはフェアじゃねえか。とにかく、おまえが望めばなんでもしてやるからな』

・・

ライナー「ベルトルト、おまえ、最近妙にボーッとしてるだろ」

ベルトルト「えっ、べ、別にそんな・・・・」

ライナー「イイヤ。たまに、じーっと虚空を見つめてることがある」

ベルトルト(マルセルと話をする時間が、どんどん増えてるからな・・・・と、言っても、これをライナーに伝えたら余計に心配されるだろうし)

ライナー「おまえの心労はわかってるつもりだ。だが、本当に参っちまってるんなら、言ってくれ。力になる」

ベルトルト「う、うん・・・・・」

ベルトルト(君のことで悩んでるんだけど・・・・)

腕『・・・・・・任せろ、ベルトルト』

ベルトルト「!? ・・・・・」

ライナー「?」

ベルトルト「ライナー、僕は君にこそ言いたいよ。最近、現実逃避か知らないけど、女の子に鼻の下伸ばしすぎなんじゃないの?」

ベルトルト(え!? なんだこれ、口が勝手 に・・・・・ま、マルセル!?)

ベルトルト『ベルトルト、心配するな、大丈夫だ・・・・!』

ライナー「鼻の下伸ばすって・・・・・なんの話だ、いきなり」

ベルトルト「クリスタのことを見すぎって言いたいんだ。あまり彼女に入れ込むと辛いのは君だぞ!」

ライナー「おまえがそんなことを言うとは・・・・・・その驚きのほうが大きいが、まあ、言いたいことはわかる」

ベルトルト「・・・・・・・」

ライナー「わかってるよ。本気にするな。クリスタがかわいいっていうのは兵士に混ざるための方便だ」

ベルトルト「本当かい・・・・・?」

ライナー「本当だって。・・・・・なるほど、おまえは俺を心配して、いわば恋煩いみたいな状態だった訳か」

ベルトルト「『イヤそれは違う』」

ライナー「そんな力いっぱい否定すんなよ」

ベルトルト「ははは・・・・・・」

ライナー「・・・・・なんだ、ずいぶんリラックスしてるみたいに見えるな。心配して損したぜ」ハハ

ベルトルト「そうかい?」

ベルトルト(こうしていると、子供の頃を思い出して、楽しいな)

腕『ライナーは突っ走るヤツだから、こうしてたしなめてやんねーと。ケツひっぱたくと、必ず返すヤツでもあるから、
  うまく引っ張れるヤツがいれば、かなりの戦力になるんだよなあ』

ベルトルト(・・・・・さすがマルセルは、僕らの扱いに慣れてるね)

腕『ははは。よしよし、いくつになっても俺にとっちゃおまえは子供だからな』ヨシヨシ

ベルトルト「・・・・・」ホワーン

ライナー「?? ・・・・・・まあ、おまえが参ってるんじゃないならそれはよかった。アニがいなくて、キツイんじゃないかと思ってな」

ベルトルト「アニ・・・・・。彼女のことは心配だけど、任務のためだからね。たまに会うこともできるし」

ライナー「おまえ、訓練所でもたいていアニを見すぎだったからな」

ベルトルト「えっ、そ、そうだった? 不審だったかな・・・・・」

ライナー「不審というかな。アニの手なんか、座学で近くの席に座るとチラチラ見てたろ」

ベルトルト「そ、それは・・・・・。アニの白い手、アンカーの握りすぎで、左手中指が赤く腫れているから・・・・
      それが心配で毎回見ていただけで・・・・・」

ライナー「おまえ、それは・・・・見すぎだ。おまえ、本当に一つのことを気にするやつだな」

ベルトルト「そうかな・・・・・」

腕『そうだな』

ライナー「左手中指なあ・・・・・。まあ観察力があるともいえるから、いいんだけどよ」

・・

ベルトルト(ねえマルセル、君はずっと僕の側にいてくれるの?)

腕『どうだろう。おまえが俺を強く思いだしてくれれば、こうして現れられていられるはずだけど』

ベルトルト(側にいて欲しいな・・・・・すごく落ち着くよ)ゴロ

腕『うつぶせで寝てやがる。そんなうなじ見せつけるみたいにしてていいのかよ?』

ベルトルト(ああ、そういえば・・・・。巨人の弱点だから、生理的になるべく晒したくないものなんだけどね。
      でも逆にいえば、君がいるときしかできないじゃないか? だからやりたくなるのかも)

腕『本当にでっかい子供だな、おまえ・・・・・』

ライナー「おい。早く寝ろよ、ベルトルト。明日は南区に移動って話だ」

ベルトルト「ああ。・・・・なにをするんだろう、説明もないのは妙じゃないか」ムク

ライナー「さあな・・・・。わからねえが、従うしかない、それが兵士ってもんだ」

ベルトルト「そうだね・・・」

ベルトルト(ライナー、今日も兵士か。・・・・・あ)

コツンッ

ライナー「いて。・・・・・・なんだ? 教本が倒れてきやがった」グイ

腕『ハハハ』

ベルトルト(マルセルがやったのか。・・・・・・・はは)

腕『心配するなよ、なにか迷ったら、俺が正解のほうに背を押してやるんだからさ』

ベルトルト(そうだね。僕の視界は死人の手で暗くなっちゃったけど・・・・・君が僕を助けてくれるから大丈夫だ。
      僕には君しかいないよ。なんて言っても、故郷の生き残り・・・・・ライナーとマルセル以外は、みんな敵なんだから)・・・・・グウグウ

・・・

ベルトルト(・・・・・・壁の上だ)

ヒュウウウウ・・・・・・

ベルトルト(ああ・・・・・僕は、これから、初めて壁を壊すんだ。戦士として半人前なのに)

ガシ

ベルトルト(でもたくさんの命がかかっているんだ。やるぞ。・・・・・・悪魔の末裔って、どんな顔をしてるんだろう)

ゴゴゴ・・・・・・

ベルトルト(うわあ・・・・・・綺麗な景色だ。箱庭みたい。その中の・・・・・たくさんの小さな生き物が僕を見てる)

ベルトルト(化物を見たような顔をしている)

ベルトルト(化物・・・・)

ヒュウッ

ドゴオッ!!!

ベルトルト(・・・・・・・・・・)

ヒュウウウウ・・・・

ベルトルト(わあ・・・・・せっかくきれいにつくってたのに。滅茶苦茶にしちゃった)

・・

「うわあああ! 痛い! 痛いいい!!」

「お母さん! お母さんどこ!」

「おい! 俺が先だ!」

「うるせえ! てめえ俺をなんだと思っている!!」

「赤ちゃんがいるんです! 押さないでください!」

「もう、もうやめてくれ・・・・・・悪夢だ・・・・・・」

ベルトルト「・・・・・・・・」

アニ「・・・・・・・」

ライナー「・・・・・・。!」

老婆「あなたたち、親は?」

ライナー「・・・・・・・いません」

老婆「そう。ここは危ない。みんな気が立っているわ。こっちへ」

ライナー「・・・・・・」スク

老婆「わたしには、あなたたちくらいの孫がいてね・・・・・」スタスタ

アニ「・・・・・・」スタスタ

老婆「孫は、ここに来れなかったそうだから。あげようと思っていたお菓子、食べてちょうだい」スッ

ベルトルト「・・・・・・!」

ライナー「そんな・・・・・いただけません」

老婆「わたしが食べても仕方がないわ。お願い。悪くなってしまう」

ライナー「・・・・・・・」

老婆「お願い」

ライナー「・・・・・いただきます。ホラ、おまえらも」パキン パク

アニ「・・・・・・」ペコ

ベルトルト「・・・・・・」

ライナー「・・・・・・・」モグモグ

アニ「・・・・・・」

ベルトルト「・・・・・・・」

老婆「ありがとう、食べてくれて。・・・・・・っう、う”う・・・・・・! あら、いやね、・・・・・ごめんなさい・・・・・」ボロボロ

ベルトルト「・・・・・・!」ガタガタ

ライナー「・・・・・・。・・・・・ありがとうございました、おばあさん、!」

老婆「ええ、ええ。どうか、どうかあなたは元気に、元気に生きてね・・・・・!」ギュウ

・・・

ベルトルト「!!」ガバッ

ベルトルト(ゆ、夢・・・・・・・、壁を壊して、たくさんの死人を作った、夢・・・・・・)

ベルトルト「あ・・・・・」

腕『コノ、サツジンキメ』

腕『オマエガコロシタ』

腕『シメコロシテヤル』

腕『メダマヲエグッテヤル』

腕『シタヲヒキヌイテヤル』

ベルトルト「ひ・・・・・、ひっ!!」ガタン

腕『ココデオワリダ』ガシ

腕『ネジキッテヤル』グググ

グイッ グググ ギリギリ ギュウウ ガリガリ

ベルトルト「あ、・・・・・~~ぎっ!! あ”あ”あ”!! 痛い!! あああああ!!」

腕『メダマヲエグッテヤル』グチュッ

ベルトルト「ああああああああ」ビクッ

ライナー「・・・・・・ベルトルト? ・・・・ベルトルト!!」ユサユサ

腕『コカンヲツブシテヤル』ギュウウウ

ベルトルト「うがああああ」ドスッドスッ

ライナー「ベルトルト! ベルトルト! しっかりしろ、・・・・・血!?」ベト

ベルトルト「あああっ、あああ」バタンッバタンッ

腕『ウナジヲカジリトッテヤル』

ベルトルト「・・・・・・!!」

シュウウウウ・・・・・

ライナー「蒸気、・・・・・! ベルトルト、こっちを向け! しっかり気を持つんだ!」グイグイ

ベルトルト「・・・・・あ・・・・・。あああ・・・・・・っ」

腕『コロシ・・・・・・、ヒキチギ・・・・・』

腕『ツギデ・・・・・・、オワリ・・・・・・』

ベルトルト「ライナー、・・・・・ライナー・・・・・!」ガシ

ライナー「おまえ、コレ・・・・・どういうことなんだ!? イヤまずは修復しろ」

ベルトルト「あ、ああ・・・・・君、戦士に戻ったんだね!?」シュウウウ

ライナー「ああ。すまない、俺はまた・・・・・。皮肉だが、おまえのその光景の衝撃で思い出したようだ」

ベルトルト「助かった、・・・・・君が来てくれなかったら、僕は死人の言葉に気をやって、殺されていたかも」

ライナー「・・・・・今は修復に集中しろ。話は明日聞く」

ベルトルト「ああ・・・・」シュー

・・

翌朝

ライナー「ベルトルト、おはよう」

ベルトルト(・・・・・・ああ・・・・・・)

ライナー「どうした、寝不足か? 早く行くぞ」ハハ

ベルトルト(・・・・・悪魔の末裔の腕が現れて、マルセルも消えて。ライナーはまた兵士で・・・・・僕・・・・・、!)

腕『・・・・・・スコロスコロス』スッ

ベルトルト(目隠しを・・・・・視界がどんどん暗く・・・・・)

ライナー「ベルトルト?」

ベルトルト「!! なんでもない。そうだね、行こう。しっかりやらなければ」

腕『・・コロス・・・コ・・・・・・』フッ

ベルトルト(消えた・・・・・弱気になったら、腕に殺される。アイツらは、常に僕を狙っているんだ。)

・・

翌日、壁上

ライナー「俺は鎧の巨人で・・・・コイツは超大型巨人ってヤツだ」

エレン「疲れてんだよ、おまえ・・・・・。・・・・・はい行きますって・・・・・そんな訳ねえだろ?」

ライナー「・・・・・そうか・・・・・そりゃそうだよな、俺は・・・・・・・こんな半端なクソ野郎にならずにすんだのに。
     俺にはもうなにが正しいのかわからん・・・・・・だが、」グイ

ライナー「戦士として、役目を果たすことだ」

―――ズパッ

ライナー「・・うぁ・・・・!!」

ズパッ

ミカサ「エレン! 逃げて!!」ギラッ

・・

エレン「・・・・なあ・・・・・ベルトルト?」

エレン「オレの母さんが巨人に食われたときの話を・・・・・したよな?」

エレン「どう思った? ・・・・・あのとき・・・・・どう思ったんだ?」

・・

ジャン「・・・・・あんなことした加害者が・・・・・、被害者たちの前でよくぐっすり眠れたもんだな・・・・」

コニー「なあ・・・・おまえらは、今まで何考えてたんだ!?」

ミカサ「こいつらは人類の害。・・・・・・それで十分」

・・

アルミン「アニを置いていくの? アニなら今・・・・極北のユトピア区の地下深くで・・・・・・」

アルミン「拷問を受けてるよ」

・・

ベルトルト「はあっ、はあっ、はあっ」

ドドドドドドド・・・・

ベルトルト「ひっ・・・・・!」

ベルトルト(巨人の群れが襲ってくる)

ベルトルト(座標がエレンの元に渡ってしまった)

ベルトルト(立体機動装置は壊れてしまった)ダラン

ベルトルト(仲間は極北で拷問を受けている)

ベルトルト「・・・・・・・・・っ」

腕『モウオワリダ』ガシ

ベルトルト(前には巨人、後ろには死人の腕、身を引きたいのに、脚が掴まれて動かない)ググ

ベルトルト(みんなの言葉で、弱気になって・・・・・腕が、目隠しをして、視界もおぼろだ。戦えない、逃げられない、・・・・し、死ぬ)

ベルトルト「~~うあああああ!」

腕『オサキマックラダ』

巨人「アアアア」ゴオオオッ

ベルトルト(僕らはなにをしていたんだ? どうすればいいんだ? もう、わからない、わからないよ!)

ベルトルト「わぁあぁあ!!」 

腕『コノママクワレ、』

――――ガッ

腕『レ?』

ギイァァアアア!!

腕『・・・・・レ? レッ、レ、レ、レ、』

ベルトルト(え、・・・・・・目を覆っていた死人の腕が弾けていく)

――――

ユミル巨人「ぎぁああああああ!!」ザクッ

ベルトルト「・・・・・!?」ハッ

ライナー「・・・・・!」(ユミル・・・・!? チャンスだ、ここから突破する・・・・・!)

ドンッ ドスンドスンドスン

巨人「アアアア」

ベルトルト「うっ! ・・・・・・・!」チャキ グサ

巨人「オアアアア」ブシュッ

ベルトルト(・・・・・すごい、すごい)ハア、ハア

ベルトルト(危機にユミルが現れたら、そこで、世界がクリアに見えた)

ベルトルト(世界はこんなに眩しくて、身体はこんなに軽いものだったのか)

ベルトルト(嘘みたいだ。・・・・・・作戦が好転するなんて、身内でない誰かが助けてくれるなんて)

・・・

数時間後、ウォールマリア内

ライナー「・・・・・・」フラフラ

ライナー(目ぼしいものはこの程度か・・・・そろそろ、2人の合流地点に)

ライナー「・・・・・う」クラ

ライナー(クソ、・・・・・さすがにガス欠か・・・・・。少し、この軒先で休んで・・・・・・)ドサ

・・

アニ「ライナー、ベルトルト」

ライナー「アニ」(・・・・? ここは・・・・憲兵に行ったアニと、待ち合わせをしていたのか)

ベルトルト「久しぶり、アニ」

ライナー「よう・・・・憲兵団の暮らしはどうだ?」

アニ「別に、問題ないよ」

ベルトルト「相変わらずだね」

ライナー「ああ、よかった。で・・・・・・さっそくだが、壁外調査の資料だ」ピラ

アニ「ああ・・・・・・・。なるほど。・・・・・・わかった」

ベルトルト「君が一番負担のかかるところだけど、頑張ってほしい」

アニ「言われなくても」

ライナー「非常時には、予定通りの方法で、おまえに極力伝えるからな」

アニ「ああ、フードは被んないでくれよ。・・・・・まあ、アンタみたいなヤツはフードしてもすぐわかるだろうけど」

ライナー「ハハ。まあ俺ほどの体格の兵士は少ないよな」

アニ「違うよ。加齢臭がするんだ」

ライナー「するわけないだろ! おまえ、傷つくぞ・・・・」

ベルトルト「よしてあげてよ、ライナーは老け顔だけど、それを気にしているんだから・・・・」

アニ「わたしは老け顔とは言ってないけど・・・・」

ベルトルト「あっ」

ライナー「おまえらなあ」ハア

アニ「・・・・・ふふふ」

ライナー「・・・・・」

・・・

ライナー(ほんの数日前のことなのに、えらく時間が経ったように感じるな)パチ

ライナー(夢で見るとは・・・・・、さっきのアルミンの言葉に、存外動揺しちまってるのか)ムク

腕『・・・・・ライナー』スウッ

ライナー「!?」バッ

ライナー(な、・・・・・なんだ!? 白い腕が背後から・・・・・・これは夢か、・・・・・しかしこの声、まさか)

腕『ここは・・・・・寒いよ・・・・・暗くて、つらい・・・・・・』ツツツ

ライナー(指が首を這ってる。・・・・・・左手中指に、赤い腫れ・・・・)

腕『凍えちゃいそうだ・・・・・・ねえ・・・・・』ガシ

ライナー(・・・・・氷みたいな体温で、それでいて、小さい子供のような手が、首にかかっている)

ライナー「・・・・ア、」

腕『お父さんの約束! 守らなきゃいけないんだ! ・・・・・おいてかないで、一人にしないで!!』ギュウウウウウ

ライナー「・・・・・ア、ニ、・・・・・・」


終わり

欝注意

・・・

ライナー(・・・・・ここは・・・・・壁外か。そうだ、今日は・・・・)

ライナー「マルセルの地図の通りだな。『アニ』はこの先の集落にいるんだ」

ベルトルト「・・・・3人のうち誰かが欠けたときのために契約した、代わりの戦士がいただなんて」

ライナー「ああ。その・・・・・契約の証が、この青い紙だ」

ベルトルト「この紙を差し出したら、その『アニ』さんが協力してくれるんだね・・・・・」

ライナー「そうだな。じゃあ行こう、ベルトルト」

ライナー(なんとかこのまま任務ができそうだ、本当に・・・・奇跡的に。
     ・・・・・グリシャも、子供じゃ死ぬとタカをくくっていたから俺たちを殺さなかったんだろうな。
     やっぱり、犠牲になってきた戦士たちが俺たちを守ってくれているんだ。      
     そうだ、大丈夫・・・・・・これからは全て俺の独断になるが、必ず故郷に勝利を持って帰る)ギラ

・・

ベルトルト「この民家だね・・・・・」

ライナー「今日中に着いてよかった。アニと合流してからも、夜明けまで少し動けるぜ」スッ

ベルトルト「・・・・・」ドキドキ

ライナー「すみま「そうだ! いいぞーアニ!」

「さすが俺の娘だ! 今日教えたばかりの組手をこうも見事にこなすとは」

「はあ、はあ、・・・・・・お父さん、もういい?」

「ああ、復習は終わりにしよう。よくやった!」

「わ。もう・・・・・・、はあ、はあ、汗かいてるのに、よしてよ」

「なんだ、アニ、武道家は臭いなんて気にしててはいけないぞ。まあ、アニももう10歳、
 女性らしい気持ちがでたというのは、成長としてうれしいが・・・・」

「違うよ。加齢臭がするんだ」

「あ、アニは俺の臭いが嫌いなのか・・・・・」

「・・・・・別に、お父さんの臭いだから、嫌いとかじゃないけど・・・・・」

「よ、よかった。・・・・さあお風呂に入りなさいアニ。
 そ、それと、今は訓練の時間じゃないから、師匠じゃなくて父親として甘えていいんだぞ。い、いっしょにお風呂に入っても・・・・」

「よしてよ。もう、訓練のときと普段とじゃ、本当に別人だね」

「まあ、アニはわたしの大事な娘だから、」ハハハ・・・・・

ベルトルト「ラ、・・・・・ライナー」ギュ ガタガタ

ライナー「! あ・・・・・こ、こっちにこい、ベルトルト」グイ

タッタッタッタ

ベルトルト「はあ、はあ・・・・・、ほ、本当にあの家なの?」

ライナー「ああ、間違いない・・・・・。アニ、と呼んでいたしな」

ベルトルト「家族がいて、愛されてる、女の子・・・・・。そんな子をつれていくの・・・・」

ライナー「・・・・・・戦士っていうのは、普通の人じゃないんだから。仕方ないんだ」

ベルトルト「・・・・・・・」

コン、コン

「はーい」 バシャバシャ カタン 「どなたでしょう」

ライナー「・・・・・アニの契約の件で来ました」

「・・・・・・・」

ベルトルト「・・・・・・」ハラハラ

「・・・・君が戦士なのか」

ライナー「はい、俺たちは戦士です」

「・・・・・・・」

ガチャン ギイイ

アニの父「・・・・・・・・」

ライナー「これを」

アニの父「・・・・・青の・・・・・紙・・・・・・。そうか、とうとうアニも戦士としていくのか」

ベルトルト「・・・・・・・」ビクビク

アニの父「待っていたよ。・・・・・・やあ、大変だったね。疲れているだろう。歓迎するよ」ニコ

ライナー「・・・・・・・アニは」

アニの父「娘は風呂に入っている。・・・・・君らも今晩は一泊していきなさい。ベッドで寝たいだろう」

ライナー「いえ、俺たちは」

アニの父「頼むよ。・・・・・娘と最後の一晩を過ごさせてくれ」

ライナー・ベルトルト「「・・・・・」」

・・

ライナー「という訳で・・・・・これが、今の俺たちの現状です」

アニ「・・・・・・」

ベルトルト「・・・・・・」

アニの父「・・・・・・」スク

アニ「お父さん?」

アニの父「・・・・・そういえば、茶がまだだったな。煎れてこよう」スタスタスタ バタン

ライナー「・・・・・・」

ベルトルト「・・・・・・・」

アニ「・・・・・・・」

ライナー(・・・・・・何を話せばいいんだ。マルセルなら、・・・・・)「あのさ」

アニ「あなたたち、本当の戦士なんだよね?」

ライナー(本当の・・・・・・)「ああ」

アニ「そう。戦士って人に会うのも久しぶりだ。去年、戦士に選ばれて、巨人になる訓練を受けて以来」

ライナー「・・・・すでに巨人化の訓練を受けているのか」

アニ「うん」

ベルトルト「あんなに・・・・・君のこと愛してるお父さんが、よく許したね・・・・」

アニ「許すどころか、大喜びしてたよ。俺の娘が英雄に選ばれたって。村中の人がお祝いしてくれたしね」

ライナー「そうなのか・・・・?」

アニ「うちの村じゃそれが一番名誉あることなんだ。あと、お父さんは自分が格闘技で大成できなかったことを悔やんでるから、余計に浮かれてた」

ベルトルト「・・・・・・」

アニ「・・・・・戦士がなにかを知るまでは、ね」

ライナー「巨人になって戦うことか」

アニ「そう。それを知って・・・・・、笑えるよ、泣いて謝ってた、間違ってたって。そんなこと聞かれたら、村八分にあいそうなものなのに。
   それ以来、訓練以外は妙に甘やかしだして・・・・・それで、わたしも自分の運命を悟らざるを得なかった」

ベルトルト「それは・・・・・つらかったね」

アニ「・・・・・」

ライナー「・・・・・?」

アニ「試しに話してみたけど、結構普通だね、あなたら」フウ

ライナー「普通?」

アニ「もっと変な子たちだろうと思ってたよ、話なんか通じないような。・・・・・あんなおかしな訓練させる環境で育ったんならさ」

ライナー「おかしな、か・・・・・。それについては・・・・・。・・・・・俺たちもよくわからない」

アニ「? わからないって?」

ライナー「俺たちは故郷に来るまでのことをよく覚えてないんだ。
     だが、どこかで生まれて、恐らくそこでふつうの価値観を身に付けられるよう育てられ、そして故郷に送られた。
     だから、自傷が中心の訓練におかしさを感じていたのは俺たちも同じだ」

ベルトルト「潜入捜査も、任務だからね・・・・。普通の子に混じれる人材でないと駄目だからだと思う」

アニ「・・・・・。そう、あんたら、あそこで生まれたんじゃないんだ」ホッ

ライナー「ああ」(親の顔なんかは全く覚えてないから、なにかあるんだろうとは思うんだけど)

ベルトルト「それで、君は・・・・・故郷で去年、巨人化の技術を身につけたんだよね」

アニ「うん。大人たちに連れて行かれて、準備をしたよ。あんたたちがいつ来てもいいように」

ライナー(・・・・・二人はここで、いつ連れて行かれるかと思いながら、過ごしていたのか)

アニ「訓練の間のことは、必死すぎて、正直よく覚えてないな・・・・。あれ以来一回もあの姿になってないから、うまくできるか、」

ガチャ

アニ父「待たせてすまない、お茶だ。現状を話してくれてありがとうライナーくん。
    これを飲んだら、ゆっくり疲れをとってくれ。ベルトルトくんも」

ライナー「ええ」

ベルトルト「す、すいません」

・・

夜中、寝室

ミシ、ミシ、ミシ

ライナー「・・・・・・・」(やっぱり・・・・・)

アニ父「悪く思わないでくれ、悪く思わないでくれよ・・・・・・」ハア、ハア

ライナー「・・・・・・・」

アニ父「俺は契約を破る、あってはならないことをしようとしている、町民失格、クズ同然だ・・・・・だが、・・・・!」

ライナー「・・・・・・」

アニ父「どうしても・・・・・どうしても・・・・・! こんな現状で、・・・・・・こんな乳臭いガキたちに連れていかせて、
    大事な娘を犬死させる訳にはいかんのだ!」ガバッ

ライナー(お茶の睡眠薬、アレは俺たちを刺し殺して、アニを連れていかせないためだったんだ)バッ

アニ父「・・・・・! この、」

アニ「お父さん」

ライナー「!」

アニ父「あ、アニ・・・・・っ」ピタ

アニ「お父さん、なにしてるの」

アニ父「・・・・・あ、ああ、・・・・・・アニ、アニ・・・・・・!」カラン フラフラ

アニ「おとうさ、」ガシ

アニ父「すまなかった・・・・・・・・、俺が間違っていた・・・・・・」ギュウ

アニ「・・・・・・」

アニ父「・・・・・・、おまえを、・・・・・普通の女の子に、育れば・・・・・・」

アニ「・・・・・・」

ライナー「・・・・・・・」

ベルトルト「・・・・・・・」


・・

翌朝

アニ父「さあ、アニ、こっちへ」

アニ「? なに」

ライナー(・・・・・アニのお父さん、目を腫らしてる)

アニ父「戦士となるための、最後の儀式をするんだ。・・・・・アニ、巨人になれ」

アニ「今・・・・・ここで・・・・・? どうして?」

アニ父「もう、丸1年ほど巨人になってないだろう。確かめないといけない。一通り、習ったことを試すんだ。
    疲れて意識が朦朧となるかもしれないが・・・・・最後、巨人化を解くときには、契約している、こちらの方を頂くことになるから」

老婆「英雄の血肉となれるなら、喜んで」ケホケホ

アニ「・・・・・・ごめんなさい・・・・・・。わかったよ、お父さん。・・・・・。見といて、ライナー、ベルトルト」スッ

ガリッ ―――ピシャアアッ

ベルトルト「・・・・・・! 女の人の身体だ・・・・・・。・・・・・・! それに、格闘術を・・・・・」

ライナー「・・・・・」(すごい、・・・・・さすがみっちり仕込まれたってだけあるな。元々才能もあるんだろうが。
     これなら、女の子でも立派な戦士として戦える)

アニ父「・・・・・昨夜は・・・・・すまなかった」

ライナー「! ・・・・・いえ」

アニ父「おこがましいが、頼みがある」

ベルトルト「?」

ライナー「はい」

アニ父「アニにはいずれ、真実を伝えてくれ」

ライナー「は・・・・・?」

アニ巨人「アーーーー、アーーー、」ハア、ハア

アニ父「・・・・・・いかん、そろそろ限界だ。人間に戻らないと死んでしまう・・・・・自分の意識を失い、
    巨人としての本能で人間を食おうとしだすはずだ」

ライナー「はい。今の状態では記憶も、!?」

ダッ

アニ父「アニ! さあ、人をやめ、戦士となるんだ!」バッ

アニ巨人「アアアーーーーーー!」ヌッ

ライナー「なっ・・・・・」(人間を求めてるアニの前に飛び出して・・・・・)

アニ父「これが戦士としての最後の儀式だ! アニ! 必ず生きてここに帰ってくれ!」ガシ

アニ巨人「アーーーーーーキアアーーーーー」アーン

アニ父「ヒッ、・・・・・~~俺は! おまえの味方だ、・・・・・なにがあっても! 俺はおまえを愛し」バキッ

バリッ ボリッ 

アニ父「ぎっ・・・・・ぎゃあああ!!! あ、アニ、アニイ!! すまなかった、許してくれ、ゆるっ」ボキッ

グチュッ バリッ

ベルトルト「あ・・・・・ああ・・・・・」ガタガタ

ライナー「・・・・・・・」

ボリッ プチッ

アニ父「おごっ、・・・・・・アニ、あ”に”! あいし、・・・・・・ぐううっ、あぁぁあ”あ”」

ライナー(俺が巨人に襲われなかったら)

グチュッ ポキ

アニ父「あに、・・・・・・あ、・・・・・・・・、ああっ、・・・・・、・・・・・あ・・・・に・・・・」

ライナー(俺が逃げなければ、庇ったマルセルを助けていれば)

アニ巨人「・・・・・・・・」ゴクン ・・・・・・ガクッ 

シュウウウ・・・・・ ブチブチブチ

アニ「・・・・・・はあ、はあ、はあ」プチプチ

ベルトルト「・・・・・・」

ライナー「・・・・・・」

アニ「・・・・・・・はあっ、はあっ、はあ、・・・・・・・よかった、ちゃんとできたかな。・・・・・・」フラ、バタン

ベルトルト「・・・・・・・ら、ライナー」

ライナー「あの子は俺が背負う」

ベルトルト「え?」

ライナー「背負ってでも、壁を目指さないと。・・・・・俺たちは戦士として生まれたんだろ」

ライナー(アニの家族を奪ったのは、俺の判断のせいだ。ならばなおさら、俺は責任を果たし任務をやりきらなければ)グイ

ライナー「いくぞベルトルト。進撃するんだ」スクッ

アニ「・・・・・う・・・・・、おとう・・・・・さ・・・・・・」ムニャムニャ ギュ

ライナー「・・・・・・・・」

ベルトルト「アニ・・・・・・」

・・・

・恋愛描写あり

腕「ライナー」

ライナー「・・・・・・アニ?」パチ

腕「起きた。動かなくなったから驚いたよ」

ライナー「・・・・・・。本当に、アニなのか・・・・・。おまえ、その姿はなんなんだ・・・・・?
     まあなんにしても、首絞めといてよく言うな・・・・」

腕「おかげ様で我に返って、落ち着けたよ。屋内にも運んであげたから」

ライナー「こちらこそ失神したおかげで冷静になれたよ。・・・・・・なあ、おまえ、そんな姿ってことは・・・・・」

腕「・・・・・・・」

ライナー(アルミンの言葉はやっぱり嘘だったか、しかし・・・・)

腕「死んではないよ」

ライナー「!」

腕「仮死状態なんだ」

ライナー「・・・・なるほど、情報隠蔽のために結晶化したのか」

腕「ああ。結晶化して、死ぬ前の段階で状況を待っているんだ。調査兵団は結晶を砕けないからね。
  その経緯は今、話せないけど・・・・・時間がないから」

ライナー「時間がない?」

腕「ああ。こうして起きるのを待ってたのも、話を聞きたかったからってだけなんだ。お父さんの話を」

ライナー「・・・・・・・」

腕「生きてるのか、死んでるのか・・・・・。まあ嘘の下手なあんたらを見てればだいたいわかってたけどね。
  だが、さっき確信が持てたよ。アンタの寝言のおかげで」

ライナー「寝言を聞かれちまったのか。恥ずかしいな」

腕「わたしは戦士になるため、お父さんを食べた・・・・・・」

ライナー「ああ。そうだな」

腕「フォローしないんだね」

ライナー「また下手な嘘を言って欲しいか?」

腕「デリカシーがないヤツ・・・・・」

ライナー「俺ほどやさしい男もいないぜ」

腕「馬鹿なのかなんなのか・・・・・馬鹿なんだろうね」

ライナー「自己完結するなよ・・・・・」

腕「もういいよ。それでさ・・・・ライナー。もうちょっとわたしのことを強く思いだして」

ライナー「?」

腕「せっかくだから姿を全て表したいよ。あんたが強く思えば、ハッキリ現れそうなんだ。こちとら結晶の中で退屈しててね」

ライナー「時間がないとか言ってたくせに?」

腕「いいから。やって」

ライナー「わかったわかった。できるかわからんが。・・・・・・・」ムム

アニ「・・・・・ライナー」

ライナー「!」パチ

アニ「ほとんど全身、姿を現せれたよ」

ライナー「ああ。すごいな。本当にそこにいるようだ」

アニ「うん、知らなかったな・・・・・アンタ、ロリコンだったんだね」

ライナー「イヤ違う・・・・違うから・・・・・さっき見た夢の影響だ」

アニ「わかってるよ。これが・・・・・10歳のときの姿か。アンタと初めて会ったとき、わたしはこんなに小さかったんだ」

ライナー「イヤ、あんまり今と変わってねえぞ。まあケツは成長しっ」バシッ

アニ「本当にデリカシーがないヤツ・・・・。・・・・・あ、そうだ、この姿なら」ボフ

ライナー「うわっどうした・・・・・、なんでハグしてんだ。俺の兄貴っぷりについ、か?」

アニ「違うよ。加齢臭がしたんだ」

ライナー「するわけないだろ!」

アニ「抱きしめてくれない? 寒いんだ」

ライナー「ああ? まあ・・・・・おまえの身体、えらい冷たいもんな」ガシ

アニ「・・・・・・」ギュー

ライナー「なんだ一体、えらい熱烈だな」

アニ「心残りじゃないけど・・・・・このまま、結晶から出れないかもと思うと、どうもね。
   乙女がなにも知らずに終わるなんて、勿体無いじゃないか?」

ライナー「え、おまえ。俺をそんな目で見てたのか?」

アニ「お父さんみたいだなと思ってたよ」

ライナー「それは褒めてるのか・・・・・」

アニ「まあね」

ライナー「褒めてたのか・・・・アニは俺に恋をしていたんだな」

アニ「うるさい違うよ、ただ仲間なだけマシってだけ」

ライナー「ハハ・・・・・まあ、おまえもベルトルトも、妹と弟のように思っていたからな。そう悪い気はしないぜ」ギュ

アニ「あんまり抱きしめられると鳥肌たつな・・・・・」

ライナー「どうしろってんだよ・・・・」

アニ「しかし、すごい筋肉だね」ナデナデ

ライナー「ああ。このところロクに食べてないからなんか減ってる感じはするけど。・・・・・」

アニ「うーん・・・・」ナデナデ プチプチ カチャカチャ

ライナー「アニはいたずらっこだったのか? 脱がされてる気がするのは、俺の気のせいか?」

アニ「直に触った方があったかい」ピト

ライナー「うーん・・・・・」

アニ「少しあったまってきたよ」

ライナー「そりゃよかった・・・・・」

アニ「こっちのほうがあったかそうだね・・・・」カチャカチャ ジーッ

ライナー「待て待て。おまえ、下半身は勘弁しろよ。でかくなったらどうするんだ。責任とれんのか?」ペシ

アニ「・・・・・・」グイ

ライナー「オイオイ・・・・」

アニ「あったかい」ニギ

ライナー「よせよ。おまえ、後で思い出したら絶対死にたくなるぜ」

アニ「それは、状況によるんじゃない」ニギニギ

ライナー「ふざけるのは終わりにしてくれよ、アニ。その状況ってのを説明して、ん」

アニ「ん・・・・・・」チュ

ライナー「・・・・・? ・・・・・・」チュ、チュ

アニ「・・・・・・・はあ。こういう感じなのか。初めてだ」

ライナー「そうか、奇遇なことに、俺もそういう機会のない生活しててな。本当になんなんだ、さっきから? ベルトルトが知ったら憤死するぞ」

アニ「・・・・・・」ニギニギ

ライナー(また無視か)「子供の姿でそんなことされでも無駄だぜ、アニ。勃つわけないだろ」

アニ「クリスタが好きなのに?」ニギニギ

ライナー「クリスタはお前の中で子供枠なのか・・・・・?」

アニ「まあね・・・・ああ、もういいや。あんたと話してたら馬鹿らしくなってくる」パッ

ライナー「そりゃよかった。しかし今のおまえ、妙におしゃべりじゃないか。本当に退屈なのか?」

アニ「違うよ。よくわからないけど、今は考えてることが全部筒抜けみたいだからね・・・・・そのせいさ。
   ・・・・・ん? あんた、内股に刺青でもしてるの?」サワサワ

ライナー「ああ、それは・・・・・。故郷の人に彫ってもらった、おまじないみたいなもんだ」

アニ「ふーん。治さないでいたんだ」ツツツ

ライナー「まあな」

アニ「・・・・・・文字と・・・・、なんだろう、この不思議な記号みたいな、・・・・・・!!」ガリイッ

ライナー「いってッ、爪が、・・・・・・アニ?」

アニ「・・・・あ、ああっ!! あ、あああ、・・・・・・ぐうう・・・・!!」ギリギリ

ライナー「アニ、どうした!? ・・・・・結晶化の影響か!?」

アニ「ハア、ハア、ああ・・・・・。そうか、今は考えてることが筒抜けだった・・・・恥ずかしいな。違うよ、また拷問が始まったんだ」

ライナー「!?」

アニ「生きてる人間が一番怖いね。中央憲兵のヤツらが妙な技術で結晶を溶かして、連れてったんだ・・・・今、調査兵団はバタついてるからとかなんとか・・・・・。
   人じゃ死ぬようなことをされたから、意識が朦朧として、気がつくとアンタのとこに来てたんだ」

ライナー「拷問、って、アニ、おまえ・・・・・、どこにいる」

アニ「来れもしないのに言わないでよ。だいたいわたしにもわからない・・・・・。
   それで、ハハ、痛みは訓練で慣れてるから、口を割らないでいたら・・・・・明日は陵辱するって言いだして。
   アイツら、ド変態だよ。処女ってバレたら気味の悪い道具をたくさん見せて脅して・・・・・」

ライナー「・・・・・・!」

アニ「わたしも焼きが回ったな。仲間のアンタならまだマシだと思ってね。童貞なのに、無理させて悪かったよ」

ライナー「・・・・・ア、」

アニ「あのさ。アンタの怪力で絞め殺してくれない?」フラ

ライナー「・・・・・・。できるのか」

アニ「たぶん、実体に影響はでない・・・・気分の問題さ。言ったろ、情報隠蔽のための結晶化を、死ぬ前の段階で止めてるって。
   アレは本当なんだ。だから、わたしが「死ぬ」という強い意思を持ちさえすれば、
   延髄のあたりを細胞分裂で圧迫、破壊してすぐに死ぬことができる。この能力はいわば自殺スイッチだね。
    
   ただ何度試しても、意思の強さが足りてないのかできない。
   お父さんがいないなら、なおさら生きていても仕方ないしさ。死ぬっていう強い意思を持つため、首、絞めてくれない」

ライナー「・・・・・・・わかった」ス

アニ「・・・・・アンタ、わたしの言うことを大抵聞くよね」

ライナー「・・・・・・、!?」スカ

アニ「!」

ライナー「アニ、おまえ・・・・・触れなくなってるぞ、それに、よく見ると身体も透けている」

アニ「・・・・・・ああ。よくわかんないけど、もう消えちゃうのか。失敗したな、変に考えないで、さっさとやることをやるんだった・・・・・」

ライナー「・・・・・・・」スカ、スカ

アニ「いいよ、もう。・・・・・こういう失敗はもう何回目かな。ねえ?」

ライナー「こういう失敗?」

アニ「人間らしい気持ちを持つたび、選択を誤ってきたんじゃないか」

ライナー「・・・・・そうだな」

アニ「・・・・・本当に、戦士っていうのは難儀だね。こうして物を知って人間性を持つほど、選択を誤って、それで死に近づいていく。
   知性巨人は、子供のうちしか生きれないけど、なんにしてもこんな運命じゃ、無知でないとやってけないんだろうね。
   
   ・・・・・ああ、だから任務が延びすぎたんだ。壁内にいて人らしくなるほど、作戦もうまくいかなくなったんじゃないか。
   もういっそ、人らしさなんか元からないように育ててくれたらよかったのにね。でもそうしたらスパイ業ができないか。
   馴染むには、まわりと同調できる価値観がなきゃ。
  
   その矛盾をそのままにしたツケを払わされて苦しんで死ぬなんて、やっぱり戦士なんてロクなものじゃない」

ライナー「・・・・・ああ」

アニ「それにしても、仲間と馴れ合うのもまともにできないって・・・・・、わたしらの罪はどんだけ膨れているんだろう。
   とっくに死罪じゃ足りないくらいになってるのかな」

ライナー「・・・・・」

アニ「ライナー、あんたさ、・・・・・・・っぐ!!」ビクッ

ライナー「アニ」

アニ「あ、ぐ、ううう・・・・・! は、始まった、・・・・ああ、い、嫌だ嫌だ・・・・・っ」ブルブル

ライナー「・・・・・・!」

(ライナー(俺が巨人に襲われなければ))

アニ「~~い、痛い! あああ! 指が、爪が、お腹が、ああ、嫌だ嫌だ嫌だ! た、耐える・・・・・・、まだ、まだなの、・・・・・っおとうさ、」

ライナー「アニ!」バッ

(ライナー(俺が逃げなければ、庇ったマルセルを助けていれば))

アニ「もう耐えれない、でも死ねない。嫌だよ、ライ」

スカッ 

・・・・・シーン

ライナー「・・・・・・・・」ニギ

ライナー「・・・・・・・・」 

ライナー「・・・・・・・・」スク

ライナー(・・・・・急ごう)

ライナー(ユミルを故郷の陣営に連れていき、生贄にしなければ)

ライナー「俺はもう人として死んでいるんだ」

ライナー「この腕は、人を殺すためにあるんだから」


終わり

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