奴隷「存在意義」 (29)

奴隷商「──ぃ。──はい。誠に申し訳ありませんでした!」

奴隷商がつい先程まで奴隷を所持していいた男に向かって頭をペコペコ異国の人形のように下げている。

男は先週、奴隷を買い取った貴族である。

貴族「また同じようなことがあれば貴様はこの場所での商いはできないものと思え!」

奴隷商「…十分承知しております。次こそは良質な奴隷を揃えて参ります故、今回はご勘弁を…!」

貴族「ふん、…ではそこの奴隷を貰おうか」

そういって指差した先にいたのはまだここに来てまもない戦争によってすべてを奪われた戦争孤児であった。

奴隷商「ッ!その奴隷は先の戦敗国の貴族であり…」

貴族「これでどうだ?」

そういって差し出した袋のなかには遠目でも解るような大きさの金貨袋だった。

奴隷商「そういうことでしたら!どうぞこれをお引き取りくださいませ!」

貴族「おい」

貴族は奴隷商の言葉を聞くと従者に奴隷を連れてこさせた。

貴族「よろしくな…っ」

貴族は挨拶と同時に奴隷を殴る。執拗に。これはあいつなりの主従関係の示し方なのだ。

絶対の暴力と恐怖を相手に刷り込む。
ドカッ!ボゴォ!メキッ…

貴族奴隷「あっ…!う…!い…ゃ!」

貴族「…行くぞ」




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従者は無言で貴族についていく。

奴隷は首に鎖をつけられまるで飼い犬のように人権なんてものはないと本人に教えつけるように惨めに痛みに耐えながら引かれていく。

奴隷商「あれは高値で売れた!今月はこれだけで黒字になった」

奴隷商「ん?お前まだいたのかさっさと牢屋に戻れ目障りだ。それとも『処分』されたいのか?あ?」

奴隷「は…はい」

処分の二文字が重くのし掛かる。

この国に奴隷制度ができて社会の様相はガラリと変わった。

貴族は奴隷を私利私欲のために使い捨て、自らの残虐性を、誇示するため処分と言う形で奴隷をただの肉塊に変える。

政府は裏で奴隷に関する裏金を大量に徴収していることが、加速度的に今の奴隷制度が完成した。

奴隷を「これ」呼ばわり。
人権なんて合ったものではない。
ただの使い捨て。

それが今のこの国の奴隷に対する基本的なスタンスである。

従者は無言で貴族についていく。

奴隷は首に鎖をつけられまるで飼い犬のように人権なんてものはないと本人に教えつけるように惨めに痛みに耐えながら引かれていく。

──

奴隷商「あれは高値で売れた!今月はこれだけで黒字になった」

奴隷商「ん?お前まだいたのかさっさと牢屋に戻れ目障りだ。それとも『処分』されたいのか?あ?」

奴隷「は…はい」

処分の二文字が重くのし掛かる。

この国に奴隷制度ができて社会の様相はガラリと変わった。

貴族は奴隷を私利私欲のために使い捨て、自らの残虐性を、誇示するため処分と言う形で奴隷をただの肉塊に変える。

政府は裏で奴隷に関する裏金を大量に徴収している為、政府は見て見ぬふりをし、結果今の奴隷制度が完成した。

奴隷を「これ」呼ばわり。
人権なんて合ったものではない。
ただの使い捨て。

それが今のこの国の奴隷に対する基本的なスタンスである。

>>3
訂正

昔見た物語にこんな一節がある。

『人は幸せだから生きている』

なら私は今、生きているんだろうか?

永遠に奴隷という身分を押し付けられ、逃げることさえ叶わないこの環境下で幸せになどなれるのだろうか?

この様な自問自答をもう何百回も繰り返し、出てきた答えは否である。

では、この奴隷という私の『存在意義』は?

奴隷「……そんなものは…ない」

バスで書いてるせいでIDがコロコロ変わってすいません。

ある時奴隷を買いに来たとは思えないような、云うならば場違いな男が現れれた。

男は並べられている奴隷をどこか焦るように、怯えるように選んでいた。

奴隷商はこの男を見つけると品定めをする。

身に付けている服装、装飾品、高慢さ、気品など、あらゆる面でこの男からいくら吹っ掛けることができるかを計算する。

奴隷商「いらっしゃいませ、本日はどのようなものをお探しで?」

ニコニコと人が良さそうな笑顔を顔に張り付けて奴隷商は男に話しかける。

男「あ、あぁ。今日はこのぐらいの金で奴隷を一人…」

奴隷商「お客さん…ここは奴隷市ですよ?そんなものでは…その、少し…」

男「そ、そうなのか?相場はこれぐらいと聞いたんだが…」

奴隷「…」

あの男が差し出した貨幣は欲を言わなければ奴隷を一人変える値段であった。

が、奴隷商も出来るだけ男から金を引き出そうとする。

男「じゃあもう少し出すよ…」

そういってポケットから出した銀貨を見て奴隷商はまあ、満足という表情で、

奴隷商「では、その値段ならこれをどうぞ」

指差した先を見て男の顔が曇る。

男「え?あれ…ですか」

そういって男は私を見る。
私の番か。半分死んだような心でその男を見つめる。

奴隷商「えぇ!あれは名のある貴族の娘でして、手に入れるのに苦労しまして!」

嘘だ。私は偏狭な村で育ち、人拐いに捕まりここにいる。

奴隷商は相場以上の値段で安物の私を売ろうとしている。つくづく商売人である。

奴隷商「それで、どうします…?お買い得ですよ?」

男「あ、えー…、ま、まぁ」

男は私に疑いの目を向ける。
どこからどう見ても私は貴族ではない。

奴隷商「はい、毎度!お買い上げありがとうございます、ちなみに返品は受け付けませんので飽きたらそちらの方で処分をお願いしますね!」

男「あ、ちょっと…」

奴隷商は聞こえないふりをしながら私を檻から出す。

その際私に顔を近づけ、

奴隷商「お前は今日から貴族出身だ。…分かってるな?」

自分に不都合なことは喋るな、ということである。

私は無言で軽く頷く。

奴隷商「はい!どうぞ、これからもご贔屓にー」

無理矢理私を男に押し付け申し訳程度の会釈をする奴隷商。

男「……」

奴隷「……」

男「ついてこい…」

奴隷「…はい」

奴隷商は気持ちの悪い笑顔を振り撒きながら、こちらを見ている。

大方、中古品を高値で売れたことが嬉しいのだろう。

奴隷「……」

──

男「ここだ…。入って、…いや、入れ」

奴隷「はい」

男の家は足しかに屋敷と言えば屋敷なのだが通常とくらべて小さく、どこか薄汚れていて、寂れた雰囲気を纏っているような気がした。

男「今日からお前はこの家の奴隷だ。命令を聞かなかったら、…処分する」

奴隷「承知しました。ご主人様」

感情を込めず機械的に返事をする。

男「じゃあ最初は掃除だ。終わったら言え」

奴隷「承知しました。ご主人様」

男は出ていくと奴隷は配られた掃除道具を持ち掃除し始めた。

何年も掃除していなかったのか、所々に埃が積もっている。

奴隷はボロの雑巾で隅々まで拭き掃除をする。

奴隷は「…ふぅ」

比較的短い時間で掃除を終えると男を呼びに行く。が、どこにいるのかわからない。

声を出して呼ぶこともできたが、大声を出してお仕置きされることを避け一つ一つ部屋を確かめることにした。

コンコンコン

奴隷「ご主人様」

いない。

コンコンコン

奴隷「ご主人様」

ここもいない。

次の部屋をノックしようとしたとき奥の部屋から男でてきた。

男「終わったのか、早いな」

奴隷「はい。ご主人様」

男「…」

男は返事を聞き少し眉根をよせた。
しかしそれだけである。

男「次は飯を作れ一つは普通に作り、もう一つはなるべく消化のいいものを」

この屋敷には男の他にもう一人いたのか。屋敷を歩き回っている限りでは見かけることはなかった。

しかし別に驚くことではない。
消化にいい料理を思い出しながら厨房に向かった。

材料は一通りあるようで、奴隷はなるべく美味しくなるように調理する。

一方は肉をメインにして野菜をあえつつ、もう一方は胃の消化にいいように限界まで食材を煮込んだ煮物にした。

匂いにつられてやってきたのか男が食卓につく。

奴隷は男の分の料理を運び終えると、もう一方の料理を運ぼうとする。

男「それはまだ運ばなくていい、お前は余り物を食え」

奴隷「承知しました。ご主人様」

男「俺が食べ終わるまでそこで待て」

奴隷「承知しました。ご主人様」

男「…それと、俺のことをご主人様と呼ぶのは止めろ男様と言え、あともうちょっと普通にしろ」

普通とはどのようなことだろうか、
奴隷は今一つ理解が出来ないような顔で男を見る。

男「返事は『はい』でいい」

奴隷「はい」

男「では、食う」

カチャ……カチャ
とナイフやフォークが皿に当たる音や男の咀嚼音だけが聞こえてくる。

そして野菜に手をつけようとしたとき男は少しだけ顔をしかめ

別の料理に食べ出した。

奴隷「……」

好き嫌いがあるのか。次からはあの野菜は出すまいと記憶する。

男「──ッ」

男「おい!奴隷ェ!」

ビクッと、体を揺らし無言で男に向かう。

男「今笑ったか?」

奴隷「……いえ」

奴隷は次の料理にあの野菜を出すまいと思っただけで決して笑ってなどいない。

男「ふっ、ふざけるなぁ!!」

ボガッ!

男は奴隷を殴り付ける。

奴隷「っ」

何だというのか。本当に自分は笑ってなどいない

男「ぁっ…」

奴隷の顔は殴られ、赤く腫れている。

男は殴られた奴隷を見ると、どこか後悔したような表情をし、そのまま部屋から出ていった。

奴隷は普段から無表情のままで過ごしている。あまり感情を表に出すことはなく、余程のことがない限りは大丈夫のはずである。

はずというのは鏡も何もないのでただの予測でしかないわけであるが。

それ以外に考えられることと言えば男の被害妄想が強い可能性である。

どちらにせよ、次からは気を付けようと肝に誓う。そうでなければ次はもしかすると…。



最後に言われた命令は『待て』である。

どこかの犬ではないが、これを破るとまた殴られるのかもしれない。

奴隷はひたすら待つ。
殴られた顔がズキズキと痛む。

……

どのくらい時間が経っただろうか。
立っているのにも正直疲れたと感じ始めたとき。

男が出ていった扉から顔色の悪いお婆さんが出てきた。

男母「あら、あなたが男が引き取ったっていう奴隷さん?」

奴隷「はい」

男母「そう、あ、私男の母親です。これからよろしくね」

男母「……」

チラリと奴隷の顔にある痣に男母の視線が移る。

男母「それはもしかして男が?」

奴隷「…」

奴隷は少し逡巡する。
その様子を見逃さなかったのか、

男母「そう…」

男母「私から言っておきましょうか?」

奴隷「い、いえ!大丈夫…です」

そんなことをされた暁には自分は確実に処分される。
普通にやっていたと思っていたのにいきなり殴られたのだ。
男は母親に注意され逆上するだろう。

奴隷の勢いに面食らったのかこれ以上この話題については話さないようだ。

男母「そう?まあまた何かあったら言ってちょうだいね」

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