モバP「天使がくれた時間」 (61)

あるところに一人の男性がいました。



その男性は、特定の趣味も持たず、恋人を作る気もなく、朝起きて仕事に行き、帰って寝る。


また起きて仕事に行き・・・という日々を繰り返していました。


同年代に比べれはそれなりにいい収入だったおかげで、生活には満足していたようです。


これは、そんな男性がある女性に会ったお話です・・・



?「今日も一日が終わったなぁ。さーて、帰って寝るかぁ。」テクテク



ちひろ「ちょいとそこの道行くお兄さん。そう、そこのあなたです」チョイチョイ


  ふと黄緑色の服を着たOL風の女が、こちらを見て手招きをしていた。

  怪しいと思いつつも、相手が女性だったので危険性は低いと思ったのと

  仕事先の関係者だった場合無視するのはまずいだろうと思い、その女性へと近寄った。



ちひろ「あなた、今の生活に満足していますか?」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1396868375

?「は?」


  なんだ、ただの宗教の勧誘だったか。


  こういう相手は相手をしないのが一番だ。適当にあしらって逃げよう。


?「満足しているので、他人に口出しされるようなことはなにもないですねぇ。」



ちひろ「本当ですかぁ?」

  

ちひろ「人生というのはお金だけでは満足のいくものにはならないものです。」



  しつこい勧誘だなぁ。と思いつつも不思議と彼女の言葉に耳を傾けていた。



?「お金を稼いで、そこそこいい部屋に住んで、時々贅沢な食事とお酒を飲めれば、俺は満足できますがね。」



ちひろ「たしかにそういう生活も素敵だとは思うんですけど、それだとあるものが得られていないんですよ。」



?「あるものってなんですか?」



ちひろ「よくぞ聞いてくださいました。それは 煌き です。」



?「 煌き ですか?」

ちひろ「そうです。人によってはそれさえあればほかの全てのものがいらないと感じるくらいすごいものなんです。」



?「全てって・・・今の生活もですか?だったらそんなものはいらないですよ。」



ちひろ「ふむ、なかなか強情な方ですねぇ・・・あっ、そうだ!」



ちひろ「これからあなたに 煌き を見せてあげます。が、全てはあなたのせいですからね」ニッコリ



?「一体何を言っているんですか・・・」



  突然、あたりが真っ暗にかるのを感じた。


  さっきまで目の前にいた女性も見えなくなるくらいに。

  
  次に目を覚ました瞬間、目に入ってきた光景は見慣れない事務所の一室だった・・・


・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・



モバP「うぅ・・・何が起きたんだ・・・」



ちひろ「大丈夫ですか、プロデューサーさん。急に倒れ込んだので心配しましたよ。」



モバP「あっ!あんた、俺になにをしたんだ!」



ちひろ「えっ、私ですか。何もしていませんが・・・」



モバP「嘘を付け!煌きがどうこう言って話してたあの夜のことだよ!」



ちひろ「???プロデューサーさんとは今日が初対面のはずですよね?ひょっとしてどこかでお会いしたことがありましたか?」



モバP「そもそもあんた一体何者なんだよ・・・」



ちひろ「???自己紹介ならさっきしたと思うんですけど・・・まぁいいか。もう一度しますね」



ちひろ「私はアイドル事務所 CGプロダクション の社員の一人の 千川 ちひろ です。


    主な仕事はプロデューサーさんのアシスタントということになっています。」

モバP「プロデューサー?俺が?」



モバP(どうなってるんだ・・・夢でも見ているのか・・・)



モバP「そうだっ!手帳!いつもの俺ならスーツの内ポケットに・・・あった!」パラパラ



モバP「なんだよ・・・これ・・・」

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○月△日


明日から念願のプロデューサーだ。

新しくできたばかりの事務所で社員が社長と俺とアシスタントの三人だけってのが不安だけど

一から自分で作り上げていくのかと思うとワクワクする。



重要※遅刻しないように目覚ましをセットしておくのを忘れないよう。



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モバP「たしかにこれは俺の字だ・・・」

モバP「他になにか・・・手がかりになるようなものは・・・」



モバP(これは、住所か。引越し先、新住所と書かれている。確認に行かないと・・・)



モバP「すいません!ちょっと出かけてきます!」ガチャ



ちひろ「あっ、どこに行くんですか、プロデューサーさーん!スカウトにでも行くんですかー」



ちひろ「そろそろ我が社のアイドル第一号が来るっていうのに・・・」


・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・



   手帳の住所の場所に行って俺は愕然とした。


   二階建ての見るからにオンボロの安アパートがそこにあった。

   
   洗濯機が屋外の扉のすぐ横においてあり、駐車場はおろか駐輪場もなかった。   


   ポケットに入っていた鍵のキーホルダーについていた部屋番号の扉に鍵を差し込むと

   
   カチャリ、とこれまた安っぽい音を立てて扉が開いた。

   
   部屋の広さは8畳あったが、台所には卓上コンロが固定されているだけ

   
   トイレはあるが、風呂はなかった。

   
   唯一の利点といえば、事務所まで歩いていける距離というところだけだった。



モバP「ははっ、これが俺の部屋だっていうのかよ・・・」 


   急に、これが現実なんだという実感が湧いた途端、涙が出てきた・・・


   我慢しようと頑張っても涙が止まることはなかった。


   何分くらい泣き続けただろうか。


   一頻り泣いたら頭がスッキリとして、ある考えが頭の中に芽生えていた。

モバP(絶対こんな生活から抜け出してやる!そのためなら、どんなことだってやってやる!!)  

    

モバP「そうと決まれば事務所に戻って仕事だ!」




・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・




ガチャ


モバP「ただいま戻りました」



ちひろ「プロデューサーさん、おかえりなさい」ニコッ



モバP「すみません、急に出て行ったりして・・・」



ちひろ「いえいえ、なにか事情がおありだったんでしょう。

    それに出かける前よりスッキリした顔をして戻ってきてくれてちょっと安心しました。」ニッコリ



モバP「今後は、このようなことがないよう務めさせていただきたいと思います。」ペコリ

ちひろ「あのー、プロデューサーさん。プロデューサーさんに会わせたい人がいましてですね・・・」


?「ふーん、アンタが私のプロデューサー?ま、悪くないかな」ジロジロ



モバP(なんだ、この女子高生は・・・まさか・・・)



ちひろ「こちらは我が社の所属アイドル渋谷 凛 ちゃんです。」



渋谷 凛「今日からよろしく。」



モバP「・・・」ジー



凛「な、何?私の態度が気に入らないの?不愛想なのは生まれつきだから・・・」



ちひろ「そ、そうですよ。プロデューサーさん。凛ちゃんはこういったスタンスの子でして・・・」

モバP「渋谷ぁ!・・・いや、凛っ!!」ガシッ



凛「ちょっと、プロデューサー!いきなり肩掴まないでよ。びっくりするじゃない・・・」ドキドキ



モバP「俺はお前を絶対にトップアイドルにしてやる!」



凛「は?」



ちひろ「えっ?」



モバP「お前がトップに立つためならどんなことにも協力するし、なんだってやってやる!」



凛「いきなり何を・・・」



モバP「だから、お前も俺に協力して欲しい。力を貸してほしい。頼む!!」



凛「・・・プロデューサー、私、熱苦しいのって苦手なんだよね・・・」



モバP「あ、あぁ、すまない」



凛「でも、そういうの嫌いじゃないよ。」


凛「トップアイドルか。いいね。やっぱり目指すなら頂上だよね。」



凛「こんな私でよければ、これからもよろしくお願いします。」ペコリ



モバP「あぁ、頼りにしてるぞ、凛。」



ちひろ「私も精一杯アシストさせていただきますので、いつでも頼ってくださいね。」ニッコリ




モバP(こうして俺は凛のプロデューサーになった

   当面はこの仕事をやっていくことを決意した

   凛の人気が上がれば事務所の利益に、
   
   事務所の利益は俺の給料に

   これほどわかりやすい構図はない。

   だから凛にはトップアイドルになってもらわなくてはいけない

   きっと簡単にはいかないことばかりだろう

   だけど、この女の子の前で大見得を切ってしまった

   なら、やるしかないだろう・・・)




モバP「シンデレラガールスプロ一同ー!」


凛「ト、トップアイドル目指してー」テレテレ


ちひろ「がんばるぞー!」


三人「オー!!!」

とりあえず、ここで一旦中断

ちょっとだけ再開

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

前川 みく「にゃあああ、負けたにゃああああああああ。」


凛「ま、悪くはなかったかな」


みく「覚えていろにゃ!」










ちひろ「プロデューサーさん、今日も事務所に来ているんですけど・・・」



モバP「あー、ノラ猫が住み着いてますねぇ。」



みく「みんにゃー、お茶がはいったにゃ。もちろんみくは猫だから、ぬるめのお茶にゃ」ドウゾー



モバP「ホントにぬるいな、これ。・・・前川さん・・・いい加減諦めてもらいたいのだが・・・」



みく「前川っていうにゃ。みくはしつこいから、ここのアイドルになるまでお茶くみでもなんでもして待つにゃ。」



モバP「いや、俺は凛に付きっきりだし、うちには他にプロデューサーがいないから無理なんだが・・・」

ちひろ「その場合プロデューサーさんが二人を見ることになりますねぇ。」



凛「いいんじゃない。それで。」



モバP「・・・凛はそれでいいのか?」



凛「私もだいぶレッスンや仕事に慣れてきたからね。一人で出来そうなことはプロデューサーがいなくても、なんとかやってみるよ。」



モバP「すまない、凛。」



凛「・・・でも、忘れないでね。私のプロデューサーでもあるってことをね。」



モバP「みく、そういうことだ。親御さんの許可さえ降りればCGプロはお前を歓迎するぞ」



みく「本当かにゃ。ふにゃ~~Pちゃん大好きにゃ~。」ダキッ



モバP「お、おい。抱きつくな!」


凛「・・・」イラッ



凛「私、犬の躾ってしたことあるんだけど、猫の躾ってしたことないのよね。上手くできるといいんだけど」ゴゴゴゴゴゴ



みく「にゃっ!にゃんだか凛ちゃんが怖いにゃぁ~」ビクビク



ちひろ「ふふっ、なんだか賑やかになりましたね」

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・


三船美優「あの・・・三船美優と申します・・・宜しくお願いします・・・」


凛「綺麗な人だね。ひょっとして、プロデューサーの好みのタイプだったりする?」


モバP「残念ながら、仕事に私情は挟まないタイプなんでな。それに、職場内恋愛なんてロクなことにならないからなぁ。」


凛「ふ~ん。じゃあさ。もしも、もしもだよ。私がアイドル辞めるって言ったら、付き合ってくれる?」


モバP「・・・馬鹿なこというなよ。まだトップアイドルになってないだろ。」


凛「冗談だよ。ちょっと聞いてみたくなっただけ。」


愛海「うひひ~、こりゃまた素晴らしいおっぱいが来たねぇ~。やっぱり、この事務所は天国だよ~」


モバP「馬鹿がもう一人いたようだな・・・新人さんにはパワハラになるからやめろと言い聞かせているのに・・・」


凛「・・・・・・」


美優「あ・・・あの・・・これは一体・・・///」


愛海「ん~、これはこの事務所ならでは挨拶みたいなものだから気にしないで~」モミモミ


モバP「そんな挨拶、世界中どこを探してもないわっ!」ゴンッ!


愛海「いった~い!プロデューサー!私のお団子が三つになったらどうしてくれるのさ!」モミモミ


モバP「それでも揉むのをやめないのな、お前は・・・」

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・



楓「今日はプロデューサーのお宅で宅飲み・・・ふふっ」


美優「よろしかったんでしょうか・・・お邪魔しちゃって・・・」


モバP「本当は駄目ですけど、事務所で飲まれるよりはマシだと判断したまでです。」


モバP「幸いお二人共まだデビュー前。スキャンダルになる可能性も低いでしょうから。」


モバP「あと和久井さんとちひろさんは仕事が終わり次第、合流するそうですよ」


楓「話には聞いていたんですけど、本当に事務所に近くにあるんですね。」


モバP「おんぼろアパートですけ、文句は言わないで下さいね。」


楓「この距離なら、酔いつぶれて寝ちゃっても、遅刻の心配はありませんね。」


美優「プロデューサーさんのお宅で・・・お泊り・・・///」


モバP「 絶  対  泊 め ま せ ん か ら ね !」


楓「あら、残念」


モバP「あぁ、そうだ。家に着いたらお二人で先に始めてもらっていて構わないので留守を頼まれてくれますか?」

美優「お出かけ・・・ですか?」


モバP「はい。俺の部屋、風呂がないので銭湯に行ってるんですよ。今の時間なら、まだやってるので行ってこようかと。」


楓「銭湯・・・おっきいお風呂・・・」


美優「じゃ、じゃあ・・・私たちも行きますか?」


モバP「お二人は帰ってから自宅で入ればいいのでは・・・?」


美優「恥ずかしいのですが、ちょっと汗をかいてしまったようで・・・///」


楓「プロデューサー。女性はそういうところも気にするものなんですよ。」


モバP「・・・そういうことなら仕方がないですね。確かタオルやシャンプーも売ってた気がするから手ぶらでも大丈夫だったはず」


楓「それじゃ、行きましょうか。ふふっ。」






モバP(女性は風呂が長いというのは、本当だったんだなぁ・・・

   俺はとっくに上がって、銭湯の入口で二人を待っているんだが・・・

   そろそろ三十分が経過しそうです・・・)

美優「すいません、お待たせしました。」


モバP「あれ?楓さんは?」


美優「扇風機の前で変な声を出して遊んでいたので、もうそろそろ出てくるかと・・・」


モバP「なにやってんだ、あの人は・・・」


美優「・・・なんだかこうしていると、昔見た映画のワンシーンみたい・・・」


モバP「あー分かりますよ。下町の貧乏だけど仲のいい夫婦ってやつですね。」


美優「私が奥さんで、プロデューサーさんが旦那さん・・・ってなにを言ってるんでしょうか、私は・・・///」


楓「ふぅ~、いいお湯でした。次は温泉がいいですね。」


モバP「それじゃ楓さんは大きな子供って感じですかね。」


美優「・・・ふふふっ。面白い設定ですね、それは。」


楓「何の話ですか???」




・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

とりあえずここまで

モバP「杏ー。仕事行くぞ!」


杏「プロデューサー、仕事なら昨日もしたでしょ?だから今日はオフなんだよ。」


モバP「ほら、飴やるから」


杏「私がいつも飴で動くと思ったら大間違いだよ。今日という今日は動かないからね。」


モバP「そうか・・・じゃあ仕方ないな。おーい!!きらり!ちょっと来てくれ!!」


杏「ちょ。ずるい!それは卑怯だよ!」


きらり「にょわ~☆Pちゃん、呼んだー?」


モバP「さぁ、選べ、杏。きらりんルームに行くか、仕事をするか」


ワイワイガヤガヤ                                            


友紀「野球モノマネ~。これだ~れだ。」

巴「なんじゃ、姫川。そのゴリラみたいな動きは?」

友紀「ヒント。カープの選手だよー」

巴「・・・・・・・・・!あ、あれは結果的になったからトリックプレーええんじゃ!」

ワーワーギャーギャー


小梅「こ、この写真の・・・女の人の肩のところにね・・・」

輝子「フヒ・・・フヒヒ・・・」

乃々「机の下で心霊写真とか・・・むーりぃー・・・」




ちひろ「いつの間にかうちも大所帯になりましたね。そろそろ事務所の移転も考えないと。」


凛「なんだか信じられないね。最初は私たち三人で始まったのに。」


ちひろ「プロデューサーさんは、あの日の言葉を叶えるために頑張ってくれました。」


ちひろ「今のこの光景は、私たちの夢に向かって確実に進んでいる証拠ですよ。」


凛「うん・・・そうだね」





・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

モバP「やっぱり二人も来たか。」


凛「もちろん。この事務所には思い入れがあるからね。」


ちひろ「ここに来られるのも今日で最後ですから。

    今、私が持っている鍵をビルの管理人さんに返したら、もう入ることはできません・・・」


モバP「こんなに静かだったんだな・・・ここって」


凛 「最近は仕事も入ってないのに事務所に集まってくる人たちが増えたからね」


ちひろ「あっというまに時間が過ぎていったような気がしますねぇ。」


モバP「最初は凛一人で手一杯だったのが懐かしいです。」


凛「ここが私たちのスタートラインだったんだ・・・」


凛「そうだ、プロデューサー、ちひろさん」


モバP「どうした?」


ちひろ「なんですか?」


凛「覚えてる?私たちが初めて会った日のことを」


モバP「そりゃ、もちろん」


凛「そっか・・・それじゃあ・・・・・・」


凛「ふーん、アンタが私のプロデューサー?ま、悪くないかな。」


モバP&ちひろ(!?)


凛「何?私の態度が気に入らないの?不愛想なのは生まれつきだから・・・」


モバP「・・・・・・・・・」


凛「・・・ねぇ、覚えているなら私の相手をしてよ。結構恥ずかしいんだから、これ」


モバP「・・・凛」ガバッ


凛「ち、ちょっと、プロデューサー・・・あの時は抱きしめてなんかなかったじゃ・・・」


モバP「俺はお前をトップアイドルにする。今、ここでもう一度約束するよ・・・」


凛「プロデューサー・・・・・・」


ちひろ「もちろん、私も協力しますよー。お二人のためですから」


凛「うん・・・これからも宜しくお願いします」ポロポロ


凛「格好悪いなぁ・・・私の茶番で笑って終わるはずだったのに、泣かされるなんて・・・」


モバP「そんなことはないぞ。凛は俺の最高のアイドルだ。」



・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

ちひろ「凛ちゃん・・・屋上にいたんですか。」


凛「今日は天気がいいからね。それに屋内にいると息苦しくなるからね。」


ちひろ「やっぱり、あのお話のせいですか?」


ちひろ(今朝、社長室に呼び出された私はある報告をされました。

    それはプロデューサーさんと美優さんが正式にお付き合いすることなったという話でした。

    美優さんの活動は数ヶ月をかけて徐々に減らしていき、仕事がすべて終わり次第、引退&入籍する予定だそうです。

    所属アイドル達には秘密ということになっていたのですが、    
   
    プロデューサーさんが、凛にだけは隠し事をしたくない。祝ってほしいということで、

 
    本人が直接伝えたそうです。)



凛「なんとなくだけどね。こうなる予感はあったんだ。」


ちひろ「いつからですか?」


凛「一番最初に会った時から。女の勘ってやつかな。まさか、当たるとは思ってなかったけど」

ちひろ「凛ちゃんはプロデューサーさんのことが好きだったんじゃないですか?」


凛「今日のちひろさんはやけに積極的だね。言いにくいことばかり聞いてくる。」


ちひろ「口に出して吐き出してしまったほうが、楽になることもあるんですよ。特に、こういった想いは。」


凛「それじゃ、言わせてもらうけど。今でも好きだよ。プロデューサーのことは。

  でも、私の好きって、例えるなら学校の先生とか近所の年上のお兄さんに抱く好きだったんだと思う。

  プロデューサーとは一緒にいたいとは思うけど、正直、結婚したり家庭を築くってところまでは考えてなかったかな。

  まだまだ子供だったんだね、私・・・」

   

ちひろ「つらいですか?」


凛「うん。子供の恋心でも失恋は失恋だからね。でもね、うれしいこともあったんだ。」


ちひろ「なんですか?」


凛「大切な人が幸せになろうしている。そんな姿を見ているだけで、あぁ、よかったと思ってる自分がいるんだ。

  だから、私は胸を張ってプロデューサーのことを祝福してあげられる。それがうれしいんだ。」


ちひろ「強いですね。凛ちゃんは。弱音を吐くかと思って身構えていましたが」


凛「私にはまだやるべきことがあるからね。プロデューサーへ、最後の最高の贈り物を用意するっていう。」


ちひろ「目指せ、トップアイドル。ですか。」


凛「そう。だから立ち止まってはいられない。弱音なんて吐いてる暇なんてないんだ。」




・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

とりあえずここまで。
今日中には完結させます。

モバP(最近時間が過ぎていくのがとても早く感じる。)


モバP(プロデューサーになって、事務所が大きくなって、結婚して、そして・・・)


モバP「ただいまー」


美優「おかえりなさい。あなた。」


モバP「今日は体調はいいのか?」


美優「えぇ、お医者さんにも診てもらいましたけど、問題はないそうですよ。」


モバP「そうか。それはよかった。」


美優「そういえば実家からこんなものが送られてきました。」


モバP「なになに・・・ベビーカーに子供が口に入れても大丈夫な積み木に子供用の椅子って・・・気が早すぎるだろう。」

モバP(美優は最近目立つようになったお腹に手を当てて、微笑んでいる。

   その姿は母親そのもので、出会ったころのオドオドとした印象はもうない。

   今となっては懐かしい思い出だ。

   懐かしいといえばもう一つ思い出すことがある。

   あのぼろアパートだ。

   驚くべきことに結婚後、美優の妊娠が発覚するまであの部屋で二人で住んでいた。

   元々破格の家賃というだけで住み続けていたのだが、

   美優曰く、不便な方がお互いを近くに感じられる。らしい。)


モバP(思い返せば本当に幸せな日々だった・・・

   願わくば、こんな日常がずっと続きますように・・・)






・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

凛「プロデューサー、私たちとうとうここまで来れたんだね・・・」


モバP「あぁ、今日と明日、二日間にわたって行われるCGプロ総動員のドームライブ。

   ようやくここまで辿り着くことができた。」

凛「なんだか、今になって体が震えてきちゃった・・・これから本番だっていうのに・・・」


モバP「大丈夫だ、凛。お前たちなら成功させるって、俺は信じてる。

   お前の全力を、お客さんに見せつけてやれ!」


凛「うん。、行ってくるね。」


ちひろ「さぁ、プロデューサーさんも。閲覧席が用意されてるそうなので行きますよ。」


モバP「そうですね。あいつらのこと、最後まで見守っててやらないと。」


ガチャ

モバP「あれ?閲覧席ってここであってます?他に誰もいないんですが・・・」


ちひろ「うちの事務所だけの単独ライブですからねぇ。
   
    社長も他の関係者のお偉いさんのところに行ってるみたいですし。」


モバP「貸切状態ですか・・・随分と偉くなったもんですね、俺たち。」


ちひろ「見てくださいよ、プロデューサーさん!」


モバP「えぇ、しっかりと見てますよ。あいつらの姿・・・」


モバP「本当に輝いているように見える・・・照明や演出だけじゃない、

   引き寄せられるような輝きが、一人一人から発せられてるようだ・・・」


ちひろ「そうですねぇ、みんな綺麗ですね・・・」


ちひろ「でも、輝いて見えるのはアイドルだからってわけではないんですよね。」


モバP「どういう意味ですか?」

ちひろ「ライブに来ているお客さんと、プロデューサーさんとでは見えているものが違います。」


ちひろ「それはプロデューサーさんが彼女たちのいろんな姿を見てきたからです。」


ちひろ「努力して、笑って、悔しがって、喜んで、怒って、泣いて・・・」


ちひろ「そういった姿を知っているから、彼女たちの姿を見て心が動かされているんですよ。」


モバP「そうですね・・・その通りだと思います。」


ちひろ「真剣に彼女達と向き合ったからこそ、気がつけたことなんですよ。」









ちひろ「以前のあなたのように、ただなんとなく生きていただけでは、気がつけなかったでしょうね。」

モバP「以前の・・・?ちひろさん、なにを言っているんですか・・・・・・・・・」


ちひろ「覚えていませんか?初めて会った夜のことを。」


モバP「ま・・・まさか・・・・・・ちひろさん・・・・・・・」


ちひろ「本当は、もっとささやかな幸せを経験してもらうつもりだったんですけど・・・

   思った以上に熱血漢で驚きましたよ。最初の印象はもっとドライな人だったんですけどね。」


モバP「あなたは一体、何者なんですか・・・?」


ちひろ「そんなことはどうだっていいじゃないですか。」


モバP「・・・まぁ、聞きたいことは色々とありますが、ちひろさんには感謝していますよ。」


モバP「今の幸せがあるのも、ちひろさんのおかげなんですから。」


ちひろ「ん~、お礼を言われるっていうのはちょっと違う気がしますね。」


ちひろ「これから、あなたが聞きたくない言葉を伝えなくてはいけませんから。」

ちひろ「夢の時間は終わりですよ。プロデューサーさん」


モバP「えっ・・・」


ちひろ「明日の夜、あなたは元の世界に戻ります。」


モバP「待ってください!、どういうことですか、それ!!」


ちひろ「今までのことは、仕事帰りのあなたが見ていた夢とでも思って頂ければよろしいかと。」


モバP「妻・・・美優は!凛は!他のみんなは!生まれてくる子供はどうなるんですっ!!」


ちひろ「あなたには関係のなくなることなので、ご心配なく。」


モバP「そんなことって・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


モバP「どうして、こんなことを・・・俺が何をしたっていうんだ!!」


モバP「お願いします!!ずっとこちらの世界に居させてください!!お願いします!!

   俺にできることはなんでもします!!なんでも差し出します!!だから・・・」

ちひろ「これは、あなた招いた結果なんです。」


ちひろ「やり甲斐を感じることのできる仕事 信頼できるパートナー

    愛する人 自分を愛してくれる人

    きっと沢山の幸せな思い出ができたでしょう。」


ちひろ「それは、あなたが頑張って作り上げてきたものです。」


ちひろ「どの思い出もキラキラと眩く輝いて見えるでしょう。」


ちひろ「思い出すだけで、胸が熱くなり、幸せな気持ちに浸れるでしょう。」


ちひろ「多くの出来事があったはずなのに、思い返すととても短い時間で過ぎたことに感じるでしょう。」


ちひろ「閃光のように、煌めいて見えたでしょう。」


ちひろ「そのことを私はあなたに知って欲しかったんです。」

ちひろ「煌きは一瞬です。永遠には続きません。」


ちひろ「私は、煌きを見せるための舞台は用意できますが、差し上げることはできないんです。」


モバP「お願いします!!お願いします!!お願いします・・・・・・・・・・・・・・」


ちひろ「・・・・・・・・私は先に事務所に戻っていますね。忘れないでくださいね、明日の夜、私たちが初めてあった時間ですから。」


モバP「うぅ・・・・・・・・・ぁ・・・・・・・・・」


ちひろ「元の世界に戻ったら、次は御自分の力で、煌きを掴み取れるよう頑張ってくださいね。」





モバP(それからのことは覚えていない。放心状態でいたところを凛が見つけたらしい。

   疲れが出ただけと誤魔化し、明日の打ち合わせをして、家に帰った。

   俺の様子がおかしいことに、美優は気がついていたようだったが何も言わなかった。

   聞かれても答えられるわけがなかったので助かった。本当によくできた妻だった。

   その日の夜は一晩中美優を抱いて眠った・・・・・・・・。)

ー次の日ー

モバP「それじゃあ、行ってくるよ。」


美優「はい。お仕事頑張ってくださいね。」


モバP(最後の一日だというのに、俺には何をしていいのかわからなかった。

   だから、普段通りの過ごし方をしようと決めた。)


モバP「なぁ、美優。」


美優「どうしましたか、あなた。」


モバP「愛しているよ。これまでも、これからもずっと・・・」


・・・・・・・・
・・・・・・

凛「ねぇ、プロデューサー。お願いがあるんだけど」


モバP「なんだ?」


凛「ライブが終わったらさ。きっと私、すぐに泣くと思うんだ。

  でも、みんなの前で泣くのは恥ずかしいじゃない。

  だから、ステージの袖で待っててくれないかな。

  プロデューサーの胸を貸して欲しいんだ。」


モバP「そんなことか、お安い御用だ。」


凛「うん。頼んだからね。」


・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

モバP(残りの時間まであと5分か・・・ライブはまだ終わりそうにない。

   凛と約束したんだ。約束を果たすまで、絶対にここから離れない。

   絶対にここから離れない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

   絶対にここから・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

   絶対に・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

   絶・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・         

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)


・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

まるでテレビを消した時のように、暗闇と静寂が広がっていた。

誰も歩いていない薄暗い路地。そこに一人で立っていた。

あまりに突然の事だったので、驚く暇もなかった。

あぁ、戻ってきたんだ、と思った瞬間、胸が苦しくなった。

もうみんなには会えないと考えただけで、視界が滲んだ。

体に力が入らず、ふらふらと夜の街を彷徨った。

頭は何も考えられない。考えたくない。

どのくらい歩いただろうか。

ふと、目の前にあったコンビニのポスターが目に入った。

ある三人組のアイドルグループのライブチケットの宣伝ポスターだった。

一人は両手でピースサインを作り、可愛らしい笑顔を浮かべている

もう一人は溌剌とした姿で、いたずらっぽく笑みを浮かべている。

そして、最後の一人を見たとき、また悲しくなってしまった。

俺は彼女のことを知っているが、彼女は俺のことを知らない。

もう一生、触れ合うこともないだろう。

再び、歩き始める

気がつくと、駅前の広場に来ていた。

歩くのに疲れたので、ベンチに座り、しばらくの間項垂れていると、

一人の女性が声をかけてきた。


?「あ・・・あの・・・・・・大丈夫・・・ですか?」


?「きゅ、救急車呼びましょうか。」


どうやら他の人から見た俺は、救急車が必要なほど体調が悪そうに見えるらしい。

相手をするのも面倒だが、病院に運ばれるのも嫌だったので仕方なく顔を上げた。

モバP「あぁ、・・・ご心配なく・・・気分が悪いだけですk・・・」

返事をするため、相手を見たとき、言葉を失った。


?「そう・・・ですか・・・。それは、よかったです・・・」

言葉は弱々しく、人見知りだろうに、おそらく勇気を出したのだろう。

お酒が入っているのか、その女性の顔はやや赤くなっていた。

今すぐにも抱きしめたい、と思った。

でも相手は俺のことを知らない。初対面の人間なんだ。

ジロジロと相手のことを見ていてしまったらしく、女性は困った顔で


?「あ・・・あの・・・なにか?」


モバP「いえ・・・あなたは飲み会の帰りですか。」

無理矢理な話題作りだと、自分でも思うがどうしても話がしたかった。

一分でも、一秒でも長く。


?「あ・・・はい。会社の同僚と女子会だったんですけど・・・一次会で抜け出してきちゃんだんです・・・」


モバP「女子会ですか?」


?「えぇ、こんな日に女子会っていうのも・・・お恥ずかしいんですけどね・・・」


あぁ、そういえば。今日は24日だったか


?「って、私、何を言ってるんでしょうか・・・」

モバP「・・・突然、こんなことをお願いするのもおかしいんですけど、少しだけ話し相手になっていただきませんか?」


?「え・・・」


モバP「お時間はあまりとらせませんので。」


?「・・・分かりました。私でよろしければ・・・」


モバP「ありがとうございます。では・・・」


それから俺は夢の中で会った女性のことを話した。

今、言葉にして伝えないと、彼女とはもう二度と会えないような気がしたから。

きっと頭がおかしい人だと思われるだろう。

それでも、構わなかった。

初めは、人見知りだけど、それを治したいと頑張ってステージに立ったこと。

次に、自宅で友人と集まってお酒を飲んだこと

一緒に銭湯に行ったこと。

狭いアパートで二人身を寄せ合って暮らしたこと。

新しい家に引っ越して、二人で家具を選んだこと。

職場の仲間に囲まれて盛大に行われた結婚式のこと。

妊娠をしていろんな人から祝福されたこと。

思いつく限りのことを話した。

女性は初めは戸惑ったような顔をしていたが、俺の様子になにか感じるものがあったのか

時には驚いて、時には笑って、時には泣きそうになり、最後まで真剣に聞いてくれた。



?「・・・不思議です・・・あなたのお話を聞いてると、なんだか他人事とは思えなくて・・・」


モバP「変なことに付き合ってしまって申し訳ない。おかげで楽になりましたよ。」

言葉にしたおかげで、本当に幸せだったんだ、と再確認させられる。

それと同時に、あの幸せな日々は帰ってこないんだ。という諦めがついた。

今は辛いだろうけど、貴重な経験をさせてもらった。

ありがとうございました。ちひろさん。






?「あ、あの・・・」

?「あなたのお話に・・・そのですね・・・興味が湧きまして・・・ですね。

  もしよろしければ・・・もう少しお話しませんか?」





おわり

元ネタはニコラス・ケイジ主演の「天使のくれた時間」という映画です。

元ネタの方は大金持ちの独身男が、昔別れた恋人と結婚して子供もいるけど貧乏な世界を体験させられ、

お金じゃ買えない幸せが、世の中にはたくさんあるということに気がつくお話です。

中途半端な終わり方ですが、この後二人がどうなったかは読んだ方の想像にお任せします。

誤字修正

>>52

×モバP「変なことに付き合ってしまって申し訳ない。おかげで楽になりましたよ。」

○モバP「変なことに付き合わせてしまって申し訳ない。おかげで楽になりましたよ。」

本当はもっと結婚後のラブラブした感じを出したかったのですが
書く気力がなくなったので断念しました。

HTML化依頼出してきます

渋谷凛(15)
http://i.imgur.com/5TL4Wko.jpg
http://i.imgur.com/beyGOj7.jpg

前川みく(15)
http://i.imgur.com/icv3hpX.jpg
http://i.imgur.com/ovtrRty.jpg

三船美優(26)
http://i.imgur.com/LqydeHp.jpg
http://i.imgur.com/4nw3u5M.jpg

棟方愛海(14)
http://i.imgur.com/0fshOXh.jpg
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高垣楓(25)
http://i.imgur.com/nrmd3Bw.jpg
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