京太郎「ここが龍門渕か……でっかいなぁ」 (233)

※キャラ崩壊があります

京太郎「まさかこんな所に来ることになるなんて……」

ポワンポワンポワンポワーン

久「須賀くん、ちょっといいかしら?」

京太郎「あっはい」

久「須賀くん、あなたバイトを探してるのよね?」

京太郎「えぇまぁ……なんで知ってるんですか?」

久「須賀くん、私を誰だと思ってるの?私は部長なのよ」

京太郎「答えになってない気がするんですが」スガダケニ

久「須賀くん、それで丁度私の知り合いが、活きがいい男子高校生を探してるの」

京太郎「えっ、なんスかその危ない匂いがする感じのヤツ」

久「須賀くん、そう心配しなくとも大丈夫よ。ちゃんと身元がしっかりしてる人だから」

京太郎「身元がしっかりって……それ普通のことだと思うんですが」スガダケニ

久「須賀くん、なに?私の言うことが信じられないってわけ?」

京太郎「まぁ、端的に言えばそういうことになりますね」

久「須賀くん、あなた生意気になったわねぇ。入部当初はもっと従順で、それこそ犬みたいだったのに」

京太郎「いくら犬でも、馬車馬のように働かされたら多少は学習しますよ」

久「須賀くん、まぁそれは今はいいじゃない。そこでね、その人に須賀くんを紹介したら、是非とも面接してみたいって申し出があったの」

京太郎「えっ、もう紹介したんですか?俺の許可もなく?」

久「須賀くん、面接に行ってきてくれないかしら?私の顔を立てると思って」

京太郎「今の俺に行かせたら、わざと部長の顔に泥を塗りたくる結果にしますよ」

久「須賀くん、あなたうそぶくわねぇ。でも面接先を聞いても、まだそんなことが言えるかしら?」

京太郎「そういえばどこなんですか?」

久「須賀くん、相手は龍門渕よ!」

ポワンポワンポワンポワーン

京太郎「ってな感じらしいけど、龍門渕が俺なんかを面接すんのかホントに……」

京太郎「まぁなんだかんだ言いつつも、ノコノコやって来ちゃってんだけどね、もう」

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京太郎「にしてもでっかい門だなぁ、ふちに龍がいる……これがホントのりゅうもんぶち」

京太郎「呼び鈴は……ここか」ピンポーン

京太郎「……やっぱりさっきのギャグ、ちょっと安易s――」

謎の声『キサマの作戦目的とIDは!?』

京太郎「えっ」

謎の声『キサマの作戦目的とIDは!?』

京太郎「え、えーっと……バイトの面接に来ました、清澄高校麻雀部の須賀京太郎です」

謎の声『……チッ』

京太郎「」

謎の声『門を飛び越えて入れ!以上!』ガチャ

京太郎「えっ……あ、あの……切れてる」

京太郎「つーか飛び越えて入れって……えぇぇ……」

イッポウソノコロ

衣「クソッ、清澄の部長め……!まんまと掴ましおって!」ダンッ

透華「ちょっと衣!先程のは一体なんなのですの!?」

衣「むっ、とーかか。何事もない、気にするな」

透華「気にいたしますわ!なんなのですの!お客様に対してあの態度は!?」

衣「奴は客などではない。なんの力も持たない虫ケラだ……いや、こういっては虫ケラに失礼か」

透華「ほ、本当になんなのですの……?」

衣「話せば長くなるが……(キンクリ)ということだ」

透華「つまり、先日私たちが乗ったジェット機がテロの標的になった際、ジェット機に潜入したテロリストを殲滅したまではよかったが、仕掛けられた爆弾の解除に間に合わず」

透華「その爆弾を抱えて高度12000mから飛び降り爆発したハギヨシ。皆がさすがのハギヨシもここまでか……と思う中、全身を複雑骨折したものの、なんとか一命を取り留め」

透華「今は復帰に向けて治療に励んでいるハギヨシの代わりとなる、臨時の執事を探している我々に、そのことを知った清澄の竹井さんが、それならばとご紹介していただいた男子部員の方が先程参られ」

透華「その方が呼び鈴をならした際、たまたま手が空いていた衣がそれに対応し、その際に衣が望んだ答えをその方がおっしゃらなかったため、門を飛び越えろと伝え」

透華「今に至る……ということですのね?」

衣「あぁ、その通りだ。まったく……ハギヨシならばあのような期待はずれの応答はせぬぞ!」ダンッ

透華「この……お馬鹿さん!」ペチ

衣「な、なにをするとーかっ!?殴るならちゃんと殴れっ!!」

透華「衣……あなたは大きな間違いを二つおかしていますわ!」ビシィ

透華「まず一つは、執事は一日にしてならずということ!そしてもう一つは!ハギヨシはこの世に一人だけということですわぁーっ!!」

衣「!!」ズガガガガーン

透華「確かに……確かにハギヨシならば、衣の望む通りの答えを返したことでしょう……」

透華「ですがっ!それはハギヨシがハギヨシであるが故に導き出した答え!すなわち、ハギヨシではないバイト志望の方が、ハギヨシの答えをおっしゃるわけがないということッッッ!!!!」ビシィ

衣「ま、まさかそんな……そんなまさか……こ、衣が間違っていたというのかっ……!?」

透華「間違う……それ自体は決して悪いことではありませんわ。ですが、誰かを傷つけてしまったというならば話は別……」

透華「さぁ衣、そのバイト志望の方にこたびの非礼をお詫びしましょう。私もおともいたしますわ」

衣「な、なぁとーか!衣は一体どうしてこの失態を詫びることが出来る!?こうなったらもう自ら腹をかっさばき、臓物を差し出すしか……!!」

透華「そ、それは少しやりすぎですわね。普通に謝れば大丈夫ですわ、きっと」

イッポウソノコロ

京太郎「なんとか入れた。人間、やれば出来るもんだなぁ」

京太郎「あっ、面接まで時間がない……とりあえず先を急ごう」

謎の声「おい!そこのお前!」

京太郎「えっ、あっはい」

謎の声「お前の作戦目的とIDは!?」

京太郎「えっ、また?」

謎の声「お前の作戦目的とIDは!?」

京太郎「ば、バイトの面接に来ました、清澄高校麻雀部の須賀京太郎です」

謎の声「バイトの面接だぁ?そんな話聞いてねぇぞ!」

京太郎「そう言われても……」

謎の声「さてはお前、この屋敷の財宝を狙う賊だな!?」

京太郎「い、いやいや違いますよ!本当にバイトの面接に来ただけですから!」

謎の声「問答無用!くらえっ、メタルブランディング!」ブォンブォンブォンブォン

京太郎「うおっ!?……い、いきなり物干し竿振り回し始めたぞ、この人……!?」

イッポウソノコロ

透華「それで、その件のバイト志望の方はどちらにいらっしゃいますの?」

衣「まだいるとすれば、恐らくは正門の前だ」

透華「ですが……そちらにはいらっしゃりませんわね」

衣「そうか……ならばもう、帰路に就いたのかもしれん」

透華「左様ですわね……ならばお詫びはまt――こ、衣!」

衣「ん?どうかしたのか?」

透華「こ、この純と戦っておられる方が、件のバイト志望の方じゃありませんの!?」

衣「純と戦っているだと?ふっ、なにを馬k――こ、こやつは!?」

透華「その反応……やはり、この方ですのね!?」

衣「あ、あぁこやつに間違いない!しかしなぜ敷地内に……」

透華「そんなこと今はどうでもよろしいですわ!早く止めなければ、バイト志望の方がメモリブレイクされてしまいます!」

衣「そ、そうだな!急ごう!」

イッポウソノコロ

謎の声「きゅ~」バタン

京太郎「な、なんか倒せた……人間、やればできるもんだなぁ」

京太郎「気絶してるけど、敷地内だし大丈夫だよな?とりあえず、壁にもたれかかさせておこう……」

京太郎「……さぁ、気を取り直して今は先を急ごう!」

京太郎「にしても広い庭だなぁ……手入れが大変そうだ」

謎の声「ちょっと!そこの君!」

京太郎「えっ」

謎の声「君の作戦目的とIDは!?」

京太郎「あっ、バイトの面接に来ました、清澄高校麻雀部の須賀京太郎です」

謎の声「バイトの面接?聞いてないなぁ、そんなの」

京太郎「とりあえず賊とか強盗ではないです」

謎の声「えっ、そうなの?」

京太郎「えぇまぁはい」

謎の声「まっ、だからといって見ず知らずの人間を通すわけにはいかないね!」

京太郎「えぇぇ……またかよ」

謎の声「ボクとの対決は手品だよ!バイト志望くん!」

京太郎「手品?」

謎の声「そう!まぁボクは純くんみたいに力があるわけじゃないから、どうしても自らのフィールドに持ち込みたくなるよね」

京太郎「つーか俺、手品なんかほとんど出来ないんですが」スガダケニ

謎の声「弱かったり、運が悪かったり、なにも出来ないとしても、それは勝負を受けないことの言い訳にはならないよ!」

京太郎「勝負の前提が出来ない場合は、十分言い訳になると思うんですが」スガダケニ

謎の声「というわけで勝負開始だ!ミュージックスタート!」

謎の声「ちゃらららららーん♪ちゃらららららんららーん♪」

京太郎「あっ、自分でやるんだ」

イッポウソノコロ

透華「あっ!こ、衣!あちらにましますのはもしや!?」

衣「純!?純ではないかっ!!おい純!!しっかりしろっ!!」

純「こ、衣に透華か……へへっ、情けねぇザマァ見せちまったな……」

衣「それ以上喋るな!傷口が開く!」

純「いや、傷なんざねぇよ」

透華「それにしても、武術においてはハギヨシの次に腕の立つ純がやられてしまうとは……なにがどうしたとおっしゃりますの?」

純「話せば長くなるんだが……(キンクリ)ということだぜ」

透華「つまり、ここで洗濯物を干していると、あちらからなにやら怪しげな金髪の男性が近付いてきて、その方に作戦目的とIDを聞けばバイト志望の清澄高校麻雀部員で」

透華「そのような話を聞いていなかった純は、そのバイト志望の方を不法侵入した、我が屋敷の財宝を狙う賊と判断し、バイト志望の方を懲らしめようと戦いに躍り出た」

透華「しかし、バイト志望の方の華麗な身のこなしに純の攻撃が次々と空を切り、劣勢を強いられる。ですが、バイト志望の方は一向にこちらに攻撃を加えようとはしない」

透華「それに対し業を煮やした純は、なぜ攻撃をしない、本気で戦えと糾弾。恐らく渋々放ったであろう一撃が、見事に純にクリーンヒット」

透華「バイト志望の方の『あっ、やっべ』との声を聞いたのを最後に気絶してしまった……ということですのね?」

純「あぁ、それで間違いねぇ。まったく……こんな不運と踊っちまうなんざ、オレもヤキが回ったみてぇだぜ」

透華「ともかく今は安静にしているべきですわ。恐らく大丈夫だとは思いますが、そうすることに越したことはありませんもの」

純「すまねぇ、そうさせてもらう」

透華「では衣、早くそのバイト志望の方を見つけn――衣?」

衣「とーか、衣は今燃えている……我々は既に未来を掴んでいる!そしてこれからも掴み続ける!」

透華「こ、衣?なにをおっしゃっていますの?」

衣「純!そやつは一体どこへ向かった!?」

純「気絶してたから知らねぇよ」

衣「あっ、そうだったな」

イッポウソノコロ

謎の声「ふぅ……ボクの手品はこれで終わりだよ」

京太郎「おぉ~……凄かったです」パチパチ

謎の声「へへっ……まぁ、これでもまだ本気じゃあないけどね。さっ、次は君の番だよっ!」

京太郎「ホントにやんなきゃダメなんですか?」

謎の声「ダメ!男の子なんだからさぁ、手品のひとつくらい出来るでしょ?」

京太郎「男がみんな手品なんて出来るわけn――いや、股間を大きk――いや、やっぱりこれを言うのはやめよう」

謎の声「そのほうが賢明だね」

京太郎「とりあえずやってみるか……ヘイッ!ミュージックスタート!」

京太郎「ドゥンドゥンドゥンドゥンドゥンドゥンドゥッドゥーン♪ドゥンドゥンドゥンドゥンドゥンドゥンドゥッドゥードゥーン♪」

謎の声「あっ、マリックのなんだ」

イッポウソノコロ

純「えっ、マジでバイト志望のヤツだったのか!?」

透華「えぇ、清澄の竹井さんからご紹介を賜りましたの」

純「そうか……んなら、わりぃことしちまったな……」

衣「そう思うのであれば、純も衣とともに詫びを入れればよい」

純「衣もアイツになんかしたのか?」

衣「あぁ……衣は、許されざる咎を背負うてしまった……!」ギリギリ

純「で、なにがあったんだ?」

透華「まぁ……つっけんどんな態度をとった、ということですわ」

純「そんだけ?許されざる咎って……そんな気にするようなことじゃねぇだろ」

イッポウソノコロ

謎の声「う、嘘だ……あんなことありえない……!」

京太郎「なんとか手品が成功した。人間、やればできるもんだなぁ」

謎の声「あんなこと出来るなんて人間じゃないよ!」

京太郎「言い方がひどいですね……勝負はどうします?」

謎の声「あ、あぁ……もう君の勝ちでいいよ」

京太郎「やったぜ!」キュピーン

謎の声「ねぇ、本当にアレが手品なら、教えてもらってもいいかな?」

京太郎「いいっスけど、後でもいいですか?今、それなりに急いでまして」

謎の声「あっ、そうだったの。それじゃあまた後でね」

京太郎「はい、じゃあ失礼します……そろそろ夕暮れだ、先を急がないと」

京太郎「……ん?俺のセンサーが反応している……こっちだ!」ダッ

とりあえずここまで

このあと少し悩んでるんでコンマで決めてもいいでしょうか?

じゃあ直下判定で

01~50:智紀と知り合い
51~00:透華と知り合い

コンマ判定に付き合ってくださってありがとうございます
じゃあ智紀と知り合いで書いてきます

京太郎「恐らくはこの辺りに……」キョロキョロ

謎の声「そこの人……」

京太郎「い、いたぁぁぁぁぁぁ!!!!」

謎の声「えっ」ビクッ

京太郎「あっ、バイトの面接に着ました、清澄高校麻雀部の須賀京太郎です」イケメンスマイル

謎の声「あ、あぁうん……須賀、京太郎……?」

京太郎「あっはい。……それがなにか?」

謎の声「もしかして……須賀、京太郎……?」

京太郎「えぇ、間違いなく須賀京太郎ですが」スガダケニ

謎の声「私のこと、覚えてない……?」スチャ

京太郎「ま、まさかお前は……サワムラー!?」

サワムラー「やっぱり……私をそう呼ぶのは、あなたくらい……」スチャ

京太郎「おぉ、久し振りだなぁ!えぇー、何年振りだ?」

サワムラー「最後に会ってから、もうかれこれ四年くらいになる……」

京太郎「あー、もうそんなになるのか……ワールドカップ一回分か」

サワムラー「見ない間に、大きくなったね……」

京太郎「サワムラーも……でっかくなったな!」

サワムラー「えいっ……」ベチンッ

京太郎「ブフッ」ガクンッ

サワムラー「いくらなんでも露骨すぎ……ギルティ……」

京太郎「な、なにこの威力……女の子のビンタの威力じゃない……!?」ビリビリ

サワムラー「私の本気はこんなもんじゃない……」

京太郎「これよりまだ上があるっていうのかッッッ!?!?!?」

イッポウソノコロ

純「お、おい二人とも!あそこを見てみろ!」

透華「あちらにましますのはもしや!?」

衣「一っ!怪我はないかっ!?」

一「あっ、みんな……どうしたのさ?」

透華「その台詞をおっしゃりたいのはこちらのほうですわ!」

純「国広くんもアイツにやられたのか!?」

一「やられたっていうか……そうだね」

衣「一までも負かされたというのか……!これはいよいよ、本物の気配が漂ってきたぞっ!」

一「まぁ純くんみたいな負け方じゃあないけど」

純「悪かったな!ひでぇ負け方でよ!」

透華「というか、純とバイト志望の方の戦いを見ていたのならば止めるべきですわよ!」

一「いやー、ボクが止められそうな感じじゃなかったし……でもそのことについては、悪いなって思ってはいるよ」

衣「それで一は一体、どのようにして彼奴に負かされたというのだ!?」

一「話せば長くなるんだけど……(キンクリ)ということだね」

透華「つまり、純との戦いを見てバイト志望の方に興味を抱いた一は、バイト志望の方が純からある程度離れたことを確認」

透華「その上でバイト志望の方に接触し、手品での勝負をしかけた。その際、バイト志望の方のほとんど手品が出来ないという発言から、自らの勝利を確信」

透華「一が手品を披露した後、バイト志望の方の番となり、どんな悪あがきをするのかと高見の見物に入ったところ、バイト志望の方が手から無限に唐揚げを出しはじめ驚愕」

透華「こんな相手に勝てるわけがないと意気を消沈した一は、自ら負けを認め、後で教えてもらう約束を交わした後、バイト志望の方に先へ進むことを許諾……ということですのね?」

一「うん、その通りだね。いやー、アレには驚いたなぁ。だってタネも仕掛けも分からないんだもん」

衣「か、唐揚げ……だと……!?」ゴクリ

純「いやいやなんだよ、手から無限に唐揚げって」

一「ほんとに凄かったんだって。みんなも見たらきっと驚くよ?だって手から無限に唐揚げが出てくるんだもん」

透華「しかし、なぜそのような手品をバイト志望の方は?」

純「それはほらアレだろ?唐揚げいっぱい持ってたからだろ」

一「そうは見えなかったけど……隠してたのかな?」

衣「……お前たちッッッッッ!!!!!!!!」ゴッ

透華「」ビクッ

純「」ビクッ

一「」ビクッ

衣「それ以上、唐揚げの話しはするでないっ!お腹と背中がくっつくであろうッッッ!!!!!」グゥー

透華「あー……」

純「あー……」

一「あー……」

イッポウソノコロ

京太郎「そういえば、お前はここでなにしてるんだ?」

サワムラー「ここは私の住居兼職場……」

京太郎「えっ……こ、ここに住んでんの!?」

サワムラー「詳しい話は……(キンクリ)ということ……」

京太郎「へぇー、なるほど……俺が引っ越してからそんなことが」

サワムラー「私がネトゲ廃人にならなければ、こうしてまた会うこともなかった……」

京太郎「いやー、世界は狭いっていうかなんか……なにがあるか分からんもんだな」

サワムラー「本当にここでバイトする気……?」

京太郎「まぁ一応はそのつもりだけど……そうなったらよろしく」

サワムラー「私の指導は厳しい……歯を食いしばるためのマウスピースを用意すべき……」

京太郎「ミスする度にあんなビンタをされたら、ホントに身が持たないんですが」スガダケニ

サワムラー「ミスは罪……罪は許されない……」

京太郎「新人に対しては、もっと寛大な心で迎えるべきだと思います」

サワムラー「ちゃんとした新人だったらそうする……でも、あなただけは話は別……」

京太郎「なんでピンポイントで俺だけ別なんだよ」

イッポウソノコロ

一「あっ、あれってハクビシン?」

衣「タヌキであろう」

純「アライグマじゃね」

透華「イタチですわ」

イッポウソノコロ

京太郎「とりあえず話はあとにして、そこを通してくれ」

サワムラー「だが断る……」

京太郎「なんでだよ」

サワムラー「ここを通りたくば、私を倒してみよ、青二才……」

京太郎「ほほう……しばらく会わない間に言うようになったな」

サワムラー「勝負方法は分かってる……?」

京太郎「あぁ……俺とお前の勝負っつったらアレしかねぇ……!」

サワムラー「今の私は、あの頃の私とはまるで違う……毎日キーボードを叩き、マウスをクリックし、牌を握り続けて鍛えてきた……」

サワムラー「あの血のにじむような絶え間ない努力が、ようやく実を結ぶ……全てはこの瞬間(とき)のために……!」

京太郎「そんな御託はどうでもいい。さぁ、さっさと始めようぜ……指相撲をよぉっ!!」

イッポウソノコロ

透華「智紀もバイト志望の方も見つかりませんわね……」

純「そもそもなんで智紀を探してんだ?」

透華「今までの流れから鑑みるに、次にバイト志望の方が現れるのは、智紀がいる場所の可能性が高いから……ですわね」

一「でも、今までの流れ通りなら、ボクたちが着く頃には、彼はもういないんじゃない?」

透華「うぐっ……そ、それは行ってみなければ分かりませんわ!」

衣「いずれにせよ、進むしか道はない。我らはもう、運命を選んでしまっておる」

透華「左様ですの!衣のおっしゃる通りですわ!」

純「ま、そうだな……ここで待ってたって見つかりゃしねぇ」

一「ボクもああは言ったけど、別に移動することに不満はないよ」

衣「ならば行こう!衣たちはようやく、探し始めたばかりだからな。この果てしなく広い、龍門渕の庭を……」

イッポウソノコロ

京太郎「指相撲に勝った。人間、やればできるもんだなぁ」

サワムラー「おかしい……こんなことは許されない……」

京太郎「よっしゃ!揉ませい!」ワキワキ

サワムラー「えいっ……」ベチンッ

京太郎「ブフッ」ガクンッ

サワムラー「そんな約束はしていない……」

京太郎「そ、そうやってすぐ……力で訴えるのはよくないぞ……」ビリビリ

サワムラー「昔はこんなのじゃなかったのに……思い出が、どんどん汚れていく……」

京太郎「成長してるんだよ、俺も。……とりあえずもう行くわ」

サワムラー「待って……最後に一つだけ……」

京太郎「なんだよ?」

サワムラー「帰ったら、しっかり冷やしたほうがいい……明日には、腫れてると思うから……」

京太郎「えっ、そんな力で殴ってたの?」

イッポウソノコロ

一「あっ!あそこに誰かいるよ!」

透華「あちらにましますのはもしや!?」

純「あの長い黒髪にキラリと光るメガネは間違いねぇ!」

衣「智紀!?智紀ではないかっ!!気を確かに持てっ!!」

智紀「意識はしっかりしてる……気絶なんてしない、純じゃないんだから……」

純「なんでオメーらはオレをdisってくんだよ!」

透華「この様な所に佇まれて、なにがどうしたとおっしゃりますの?」

一「ともきーも彼にやられちゃったの?」

智紀「話せば長くなるけど……(キンクリ)ということ……」

衣「なるほど……」

純「なるほど……」

一「なるほど……」

透華「なるほどですわ……」

智紀「えっ」

智紀「透華、説明は……?」

透華「説明?なにをおっしゃっていますの?」

智紀「今までだったら、透華がキンクリされた部分を説明してた……」

透華「私、そのようなことはしておりませんわ。ねぇ?」

衣「あぁ、しておらん」

純「おう、してねぇな」

一「うん、してないよ」

智紀「いや……いやいやいやいや……」

衣「ともかく!智紀の話によれば、彼奴はこの屋敷の正面玄関へ向かったようだ!」

純「ここからならちけぇし、急げばまだ間に合いそうだな」

一「まぁ、勝手に屋敷に入ったりはしないだろうけど。彼が本当に賊や強盗じゃなかったら……だけどね」

透華「とにかく急いで、バイト志望の方の元へ向かいますわよ!敷地内にいながらお客様を待たせるなど、龍門渕の名折れですわっ!!」

智紀「……まだ納得がいかない……」

イッポウソノコロ

京太郎「ここが玄関か……ようやく着いたな」

京太郎「もう夜だけど……ま、まぁまだ大丈夫だろ!」ピンボーンピンポーン

京太郎「………………」

京太郎「………………」

京太郎「………………」

京太郎「……出ないな」ピンポーンピンボーン

京太郎「………………」

京太郎「………………」

京太郎「………………」

京太郎「……留守かな?」

イッポウソノコロ

智紀「あっ……みんな、あそこ……」

透華「あちらにましますのはもしや!?」

純「あの金髪と清澄の制服は間違いねぇ!」

一「ほのかに香る、この香ばしい唐揚げの香りはっ!?」

衣「キサマが清澄から参った、バイト志望の須賀京太郎かっ!?」

京太郎「」

京太郎「えっ……えっ?」

今日はここまでです

次回は未定です

ありがとうございました

透華「話せば長くなりますが……(キンクリ)ということですわ」

京太郎「なるほど、よく分かりました」

透華「今までの無礼な態度の数々、この屋敷の主人として、そして友人として、お詫び申し上げますわ……」フカブカ

京太郎(あっ、この人も角生えてる)

京太郎「いえいえそんな、謝らないでください。別に怒ってないっスから」

透華「左様ですの……ご理解頂き、誠にありがとうございますわ」

純「オレも……その……すまんかったな。いきなり、棒振り回しちまって……」ポリポリ

京太郎「いえいえそんな、むしろ謝るのは俺のほうですよ。殴っちゃってすみませんでした」ペコリ

純「あぁ、気にすんな。傷もねぇし、もう痛みもねぇからな」

一「ボクもごめんねー。いきなり勝負しかけちゃって」タハハ…

京太郎「いえいえそんな、ていうか逆に、手品が見れて楽しかったですから」

一「あっ、そう?楽しんでくれたならよかったよ。やっぱり手品は、楽しむものだもんね」

智紀「とりあえず皆が謝ってるから謝る……なんかごめん……」

京太郎「おい、逆にムカつくぞそれは」

衣「と、とーか……」クイクイッ

透華「衣……そう心配せずとも大丈夫ですわ!ちゃんと心を込めてお詫びすれば、私たちのように、きっと許していただけますわよ」

衣「う、うむ……お、おい!」

京太郎「はい?……あっ、さっきのお嬢ちゃんじゃないか。どうかしたのかい?」

衣「お、お嬢ちゃんだとっ!?衣は高校二年生だぞ!?お嬢ちゃんなどではないっ!!」

京太郎「えっ、小学二年生?」(難聴)

衣「違うっ!こ・う・こ・う二年生だっ!!それはもう難聴のレベルではないぞっ!?」

京太郎「高、校……?またまたぁ~。そんな嘘ついたって、お兄ちゃん騙されないぞっ☆」キュピーン

衣「衣は本当に高校二年生だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」ウワァーン

京太郎「……ホントなんですか?」

透華「えぇ、衣は正真正銘の高校二年生ですの」

純「衝撃的だが事実だ」

一「突拍子もないけど事実だよ」

智紀「悲しい事実……」

透華「残念ながら事実ですわ」

京太郎「う、うせやろ……!?」

衣「ちょっと待て、お前たち!悲しいとか残念って、一体どういう意味だそれはぁっ!?」

京太郎「す、すみませんでした!先輩なのに子供扱いしてしまって!」ペコリ

衣「……分かったならばもうそれでよい。だが、二度目はないぞ?」

京太郎「は、はい!申し訳ございませんでした!」ペコリ

衣「もうこの話は終わりだ……次は、衣が謝る番だ」キリッ

京太郎「えっ、俺なにかされましたっけ?」

衣「正門のことだ。あの時、対応したのは衣だった……」

京太郎「あぁ、あの時の……もういいですよ、気にしないでください」

衣「そういうわけにはいかんっ!今はもう癒えたかもしれんが、あの時確かに衣はお前を傷つけた……!」

衣「本当に申し訳なかった!この通りだっ!」ドゲザ

京太郎「えっ」

透華「こ、衣!?」

純「おいおい、マジかよ……!?」

一「あららららら……」

智紀「………………」ピロリン

京太郎「いやいや、やめてください!なにしてんですか!?」グイグイッ

透華「そうですわっ!須賀さんだって、困っていらっしゃいますわよ!?」

純「だな!それは逆に引くぞ!」

一「う、うん!みんなの言う通りだよ!」

智紀「衣がそこまでする必要はない……」ピロリン

衣「いいんだ!こうでもしなければ、衣の気がおさまらんっ!」グググッ

京太郎「も、もう大丈夫です!もう十分伝わりましたから、早く頭を上げてください!俺がすげぇ悪者に見えますから!」グイグイッ

透華「はぁ……まったく、衣には参りますわね」ヤレヤレ

純「こうなるとテコでも動かねぇもんな……」ヤレヤレ

一「頑固ってのも考えものだよね……」ヤレヤレ

智紀「意志が強いのはいいんだけど……」ピロリン

京太郎「えっ!?ちょっ、なんでそんな急に諦めてんスか!?は、早くやめさせないと!!」グイグイッ

衣「もうちょっと!もうちょっとだけっ!!」グググッ

京太郎「なんでここで駄々こねるんスか!?意味分かりませんよっ!!」グイグイッ

智紀「………………」ピロリン

京太郎「テメェはなにさっきから写メ撮ってんだよサワムラーァ!!」

京太郎「はぁはぁ……やべぇ、マジ疲れた……」

衣「はぁはぁ……うむっ!」ピッピカピーン

京太郎「もう……気は晴れましたか?」ハァハァ

衣「あぁ、実に晴れやかな気分だ!こんなに晴れやかなのは、三年ぶりくらいだ!」

京太郎「そうですか……ならよかった」

透華「これで無事、全て終了いたしましたわね!」

京太郎「えっ」

透華「えっ、まだなにかありまして……?」

京太郎「いやあの、面接……」

透華「あらまっ!」アンビリーバボー

透華「す、すっかり忘れていましたわ!ど、どういたしましょう!?」

京太郎「なら今日はもう遅いですし、都合のいい日を教えてもらえれば、また伺いますが」スガダケニ

衣「まぁまぁ待て待て……もう合格でよいではないかっ!なぁ!?」

京太郎「えっ」

純「あー……まぁいいんじゃね?」

一「特になにもないかな」

智紀「どうでもいい……」

透華「あなたたちがよろしいのならば……私は別にどちらでも」

京太郎「……雑だなぁ」

京太郎「あの……ホントに合格でいいんですか?」

衣「衣がいいと言っておるのだ!いいに決まっておる!それに智紀の知り合いだっ!」

透華「あなたの合格に誰も不満をおっしゃらないということは……つまりそういうことですわ。あと智紀のお知り合いの方ですもの」

純「わりぃ奴じゃあなさそうだしな。まぁ智紀の知り合いだし」

一「やっぱり、男手があるのとないのとじゃ全然違うからね。それとともきーの知り合いだもん」

智紀「今は確かに人手不足……ついでに私の知り合いだから……」

京太郎「じゃあその……不束者ですが、よろしくお願いします」ペコリ

透華「こちらこそ、よろしくお願いいたしますわ」フカブカ

衣「うむっ!よきにはからえ!」

純「もしわかんねぇことがあったら言ってくれ。遠慮しねぇでいいからな」

一「なんてったって、ボクたちは先輩だからね。どーんと頼ってくれていいよ!」

智紀「でもさっきも言ったけど、容赦はしない……」

京太郎「みなさん、お心遣い感謝します……不祥、須賀京太郎、一刻も早く一人前になってみせますっ!」キュピーン

透華「さっ!これで本当に全て終了いたしましたし、中へ入りましょう!いい加減、肌寒いですわっ!」

衣「あぁ!それに夕餉の時間だ!衣は先に食堂で待っておるぞ!」ガチャ

純「あー、そういや腹減ったな。オレも衣と待ってるわ」ゾロゾロ

一「待ってたって、そんなすぐにご飯出来ないよ?ボクはそれまで、手品の練習でもしてよーっと」ゾロゾロ

智紀「おい、麻雀(デュエル)しろよ……」ゾロゾロ

透華「さぁ、須賀さんも中へどうぞ。暖かいですわよ?」

京太郎「あっ、すみません。俺はそろそろ帰ろうと思います」

透華「あら、左様ですの……まぁ、荷造りなどありますものね」

京太郎「えっ、荷造り?」

透華「えぇ、お引っ越しなさるのですから」

京太郎「引っ越し?誰がですか?」

透華「誰って……須賀さんですわ」

京太郎「俺、引っ越しするんですか?」

透華「え、えぇ……さっきから、なにをおっしゃっていますの?」

京太郎「俺もよく分かりません。一体なにがなんだか……」

透華「えーっと……須賀さん、うちにお勤めになられますのよね?」

京太郎「あっはい」

透華「となりますと、うちにお住みになられますのよね?」

京太郎「えっ……俺、ここに住むんですか!?」

透華「……もしかして、まだご説明していなかったかしら?」

京太郎「は、はい。初耳です」

透華「あらまっ!」アンビリーバボー

透華「い、今からご説明いたしますので、中へどうぞっ!」ガチャ

京太郎「あっはい。お、お邪魔します……」バタン

透華「……(キンクリ)ということですわ」

京太郎「なるほど、よく分かりました」

透華「唐突ですし、いろいろとご都合があるとは思いますけれど……うちにお住みになることは可能ですの?」

京太郎「それは大丈夫だと思います、えぇ」

透華「随分と簡単にお決めになりますわね……清澄からは遠いですし、ご両親もご心配なさるのではありませんの?」

京太郎「確かに学校が遠いのはアレですけど、今も近くはないですから……親はむしろ、ここに住むって言ったら喜ぶと思います」

透華「ご、ご両親がお喜びに?」

京太郎「はい。龍門渕とコネを作る、またとないチャンスだ!とか言いながら、率先して荷造りするんじゃないですかね」

透華「さ、左様ですの……ならば、うちにお住みになるということで、問題はありませんのね?」

京太郎「はい、大丈夫です。お気遣い感謝します」ペコリ

透華「いえいえ……では早速、須賀さんのお部屋へご案内いたしますわね」

京太郎「あっ、すみません。使用人になるのに、逆にお手をわずらわせてしまって……」

透華「そうお気になさることありませんわ。手前味噌ですが、この屋敷は広いですし、勤め先を案内するのは雇い主として当然ですもの」

透華「それと……須賀さんは使用人ではなく、執事ですの。そこを間違って頂いては困りますわね!」

京太郎「えっ、なにか違うんですか?」

透華「その違いを見つけるのもお仕事のうち、ですわよっ!」ビシィ

京太郎「は、はい……努力します」

透華「こちらが、須賀さんのお部屋ですわ!」ドーン

京太郎「アイヤー……広いですね、これはまた。俺ん家のリビングより広いですよ」

透華「うふふ、そんなご冗談をおっしゃるなんて、須賀さんったら面白い方ですわね」ウフフ

京太郎「えっ」

透華「あっ、ち、違いましたのね……申し訳ございませんわ」

京太郎「……今感じたこれが、越えることのできない絶対的な壁、というものなんでしょうか?」

透華「さ、さぁ……私にはよく……と、ところで!大体いつから、こちらにお住みになられそうですの?」

京太郎「まぁ、そうですねぇ……この部屋、もう大体物が揃ってますし、明日には住めそうです」

透華「明日なんて昨日の今日ですわよ?本当に大丈夫ですの?」

京太郎「これだけ揃ってれば、あとはちょっとのお金と明日のパンツがあれば大丈夫ですよ」

透華「左様ですの……では、こちらをどうぞ」チャリン

京太郎「……これ、この部屋の鍵ですか?」

透華「左様ですわ。一応マスターキーは私が管理しておりますが、なくさないようにしっかり管理をお願いいたしますわね」

京太郎「あっはい、分かりました。では確かに……門と玄関の鍵はないんですか?」

透華「門と玄関はどちらも、網膜と指紋認証ですの。それとご心配ならさずとも、もう須賀さんは登録済みですわ」

京太郎「えっ、いつの間に」

透華「智紀が写真を撮っていましたでしょ?」

京太郎「えっ、あのタイミングで!?あの時まだ採用するか決まってなかったっスよね!?ていうか指紋はいつ!?」

透華「細かいことは気にしない!それが龍門渕のスタイルですわっ!」ビシィ

京太郎「全然、細かくないと思うんですが……」スガダケニ

透華「お仕事の内容につきましては、明日から順番に我々がご説明いたしますわね」

京太郎「あっはい、分かりました。よろしくお願いします」

透華「とりあえず、これで本当に事前の説明は終了いたしましたわ。多分、恐らくは、きっと……なにかご質問などはありまして?」

京太郎「いえ、特にはなにもないです」

透華「左様ですの。須賀さんは、もうこのままお帰りになられますのよね?」

京太郎「はい。一応荷造りと家族とかに説明をしないといけませんし」

透華「左様ですの。……お帰りは、お一人でもおよろしいでしょうか?」

京太郎「あぁはい、大丈夫ですよ。行きも一人でしたし」

透華「本来ならば、須賀さんをきちんとご自宅までお見送りしなければいけませんけれど、何分今は、その……」

京太郎「あぁ、気にしないでください。ていうかむしろ、もう遅いですし女の子に送られると、逆にその子の帰り道が心配になります」

透華「ご理解して頂き、感謝申し上げますわ」フカブカ

京太郎「いえいえそんな……それじゃあ、もうそろそろ帰ります。明日は何時くらいから来ればいいですか?」

透華「明日は、そうですわね……お引っ越しもありますし、須賀さんにお任せいたしますわ。ただこちらへ向かう前に、一言ご連絡を頂けるとありがたいですわね」

京太郎「あの、どこに連絡すればいいんですか?」

透華「……もしかして、まだお教えしていませんでした?」

京太郎「あっはい」

透華「あらまっ!」アンビリーバボー

透華「い、今からお教えいたしますので、今少しお待ち頂いても!?」

京太郎「はい、大丈夫ですよ」

透華「えぇーっと……あっ!」

透華「そ、その……紙とペンを持って参りますので、また少々お待ち頂いても……」

京太郎「えっ、赤外線で飛ばさないんですか?」

透華「赤外……線……?」

透華「よもや、最近の携帯電話にこの様な機能が備わっていたとは……迂闊でしたわ」

京太郎「まさか知らなかったとは」

透華「こういうことは、今までハギヨシか智紀に任せっきりでしたもので……お恥ずかしい限りですわ」

京太郎「そんなに気にすることないですよ。誰にだって知らないことはありますし、もう今は知ってるんですから」

透華「……お気遣いいただき、感謝申し上げますわ」フカブカ

京太郎「いえいえそんな……明日来る前に、ここに電話すればいいんですね?」

透華「えぇ、お願いいたしますわ」

京太郎「分かりました。じゃあそろそろ、ホントに帰りますね」

透華「はい……長々とお時間を割かせてしまい、申し訳ございませんわ」

京太郎「いえいえそんな、その分は楽しませてもらいましたから。それじゃあ、明日からよろしくお願いします」

透華「こちらこそ、よろしくお願いいたしますわ。お帰りの道中、お気をつけなさってくださいね」

京太郎「はい。じゃあ……また明日」ペコリ

透華「えぇ、また明日」フリフリ

今日はここまでです

次回は未定です

ありがとうございました

京太郎「……ということになりました」

久「あらー……ほんとに?」

まこ「まさか京太郎が龍門渕にのう……」

京太郎「俺もまさかですよ」

久「ごめんなさいね。私、ほんとに受かるなんて思ってなかったわ」アッハッハ

京太郎「だったら、俺に無断で紹介しないでくださいよ」

久「万が一だってあるじゃない。ギャンブラーなら、乗らなきゃダメでしょ?」

京太郎「1/10000の賭けに俺を使わないでほしいんですが」スガダケニ

まこ「まぁまぁ、もう受かったんじゃけえ。そう怒らんでもええじゃろ」

京太郎「俺、前から言おうと思ってたんですが、そうやってまこぴーが甘やかすから、つけあがるんじゃないですかね。この人」

まこ「甘やかしてなんておるか。あとまこぴー言うな」

久「そうよー、まこは怒ったら怖いんだから」

京太郎「染谷先輩が怖かったら、部長なんて賽の河原の鬼レベルですよ」

久「鬼だなんて失礼しちゃうわねぇ~。議会長権限で退学にするわよ?」

京太郎「うわぁ、権力にまみれてやらぁ。鬼よりひでぇや」

久「あなたって、ほんとに先輩に対する敬意ってものが足りないわね」

京太郎「いくら俺だって、尊敬する人くらい選べますよ」ハハッ

まこ「ほんに仲ぁええのう、おんしらは」

まこ「ところで、咲にはもう言うたんか?」

京太郎「いや、まだです。これから言います」

まこ「なんで言うておらんのじゃ。普通、わしらに言う前に、言うとるもんじゃぞ」

京太郎「一応最初に言おうとは思ってたんですけど、今日はなかなか時間が合わなかったんですよ」

久「電話かメールじゃダメなの?」

京太郎「それも考えたんですけど、ちゃんと面と向かって言ったほうがいいかなと思って」

まこ「まぁ引っ越すんじゃけえ、確かにそっちのほうがええな」

久「ふ~ん……まっ、いいんじゃない?どうでも」

京太郎「全然興味ないっスね」

まこ「自分のことじゃないけえの、久はそういうヤツじゃ」

京太郎「そんな人が全校生徒のトップに立ってるなんて、この学校はおかしい」

久「いいじゃない。ちゃんと議会長としての仕事はしてるんだから」

京太郎「麻雀部の部長としての仕事は、ほとんどしてないっスけどね」ハハッ

まこ「風越のキャプテンを見習ってほしいもんじゃな」フフッ

久「ぶぅ~、なによ二人して。そんなにイジメなくてもいいじゃない」

まこ「でもまぁ……わしは、おんしには麻雀に集中してほしいと思っとるけえ」

京太郎「ああは言いましたけど、俺も別に今のままでいいとは思います。麻雀打ってる時の部長は、それなりに好きですし」

久「二人とも……じゃあ私が麻雀に集中できるように、部室の掃除と牌譜整理と雀牌磨きお願いね」

まこ「おう、そこ立てや竹井。ワレの人生キンクリじゃ」

京太郎「全裸の俺と一緒にロッカーに閉じ込めんぞ、竹井」

久「や、やぁねぇ!ちょっとした冗談じゃない!」

優希「じゃじゃーん!優希ちゃんの登場だじぇー!」バーン

和「ゆーき、ドアはもうちょっと静かに開けましょうね。みなさん、お疲れさまです」

咲「お疲れさまです。京ちゃん、もう来てたんだね」

京太郎「おう。あっ、ちょっといいか?みんなに話があるんだ」

咲「えっ、なにかな?」

優希「おっ、相談か?」

和「私への愛の告白ですね。お断りします」

京太郎「ちげぇよ。TPO考えろよSOA」

咲「えぇっ!?ち、違うの!?」

優希「違うのかっ!?」

和「ち、違うんですか!?」

京太郎「ちげぇよ。なんでそう思ってんだよ、お前ら。俺、引っ越すの」

咲「えぇっ!?ひ、引っ越すの!?」

優希「て、転校するのかっ!?」

和「あっ、そうなんですね」



久「う~ん、空気ねぇ~。私たち」

まこ「わしはもう慣れとる。雀牌神経衰弱でもするか?」

久「いいわね。字牌は二倍、赤は五倍よ?」

まこ「分かっとる。わしを誰だと思うとるんじゃ」

京太郎「いや、転校はしないぞ」

優希「そ、そうか……なら別にいいじぇ!」

咲「よくないよっ!えっ、じゃあ誰が朝、一緒に登校してくれるの!?」

京太郎「大丈夫だ、もうお前は一人で歩いていける」

咲「じゃあ誰が朝、私の歯磨きの仕上げをしてくれるの!?」

京太郎「大丈夫だ、もうお前は一人で歯を磨ける」

咲「じゃあ誰が眠れない夜、枕元で昔話を読んでくれるの!?」

京太郎「そんなこともあろうかと、ここに俺が主な昔話を読んで録音したCDがあります」スッ

咲「じゃあ誰が寝苦しい夜、私のなだらかな丘の上にヴィックスヴェポラップを塗ってくれるの!?」

京太郎「そこまではしてない」

咲「してよっ!!」ゴッ

和「咲さんは、相変わらず子供のようですね」

優希「子供か?アレを子供って言葉で片づけていいのか?」

和「体型が、ですよ」

優希「その発言は、私にも突き刺さるじぇ……」



久「はい、赤五筒はいただきね」

まこ「くっ……じゃが、まだ赤五萬と赤五索がある!」

優希「引っ越すってどこに引っ越すんだ?」

京太郎「龍門渕だよ」

咲「えぇっ!?り、龍門渕!?」

和「龍門渕って、あの龍門渕ですか!?」

優希「お前、いつそんなコネを……」

京太郎「昨日な、バイトの面接行ったんだよ。そしたら働くなら住み込みでってことになって」

咲「そ、そうなんだ……よく受かったね」

和「本当によく受かりましたね」

優希「まさかお前がなぁ……よく受かったな」

京太郎「まっ、これも俺のあふれ出るポテンシャルがそうさせたんだろうよ」

咲「自惚れないでね」

和「自惚れないでください」

優希「自惚れてんなよ、犬ごときが」

京太郎「ちょっとその反応はひどくない?」



まこ「っしゃあ!これで赤五萬と赤五索はわしのもんじゃ!」

久「ぐぬぬ……ま、まだ勝負は始まったばかりよ!」

和「いつから引っ越すんですか?」

京太郎「今日だよ」

咲「えぇっ!?き、今日!?ナウなの!?」

京太郎「ナウじゃない、トゥデイだ」

優希「そんな昨日の今日で引っ越しとか、大変じゃないのか?」

京太郎「それがな、向こうの人がもう物がほとんど揃ってる部屋を割り当ててくれたから、服とか以外に持って行く物がないんだよ」

優希「そうは言っても、いろいろ必要だろ?ホントに大丈夫なのか?」

京太郎「うん。荷造りは昨日のうちにほとんどすんだし、足りない物があっても別に取りに行けるから」

優希「まぁそれならいいんだけど……」

和「心配性ですね、ゆーきは。相手が須賀くんだからですか?」

優希「ち、違うじょ!誰がこんなバカ犬の心配なんかっ!!」

京太郎「そうか、心配してくれてたのかお前。名前の通り優しい奴だな」ナデナデ

優希「じぇっ!?な、なでるなー!!」

咲「……優希ちゃん!」

優希「な、なんだ?」

咲「私からメインヒロインの座を取らないでっ!!」ゴッ

優希「そ、そんな謂われない怒りをぶつけられても……」

和「咲さん、最早幼馴染みは、負けヒロインフラグですよ」

咲「うるさい、そこ!余計なこと言わない!」

優希「咲ちゃん、その反応は認めてるってことになるぞ?」

京太郎「あの子は、初めて会った時からものを深く考えない子だったから」



久「まさか同点とはね……」

まこ「こんなもん軽い奇跡じゃ」

久「さっ、あなたたち!もう話は終わったでしょ?」

まこ「そろそろ部活始めるけぇの、卓につきんしゃい」

優希「よぉーっし!のどちゃん、勝ったらそのおっぱいをもらうじぇ!」

和「なら私が勝ったら……この私が、ゆーきから貰うものなんて、なにもありませんね」

優希「おぉう!?なんだぁ、ケンカ売ってんのか!?」

咲「あっ、私はあとでいいんで、お二人が入ってください」

久「そう?悪いわね」

まこ「すまんな」

咲「いえいえ……ねぇ、京ちゃん」

京太郎「どうした?」

咲「その……頑張ってね」

京太郎「……おう。ありがとな」

咲「もし辛いこととか、悲しいこととか……困ったことでもいいから、なにかあったら私に相談してね?」

京太郎「あぁ、頼りにしてるぞ。お姫様」ナデナデ

咲「うんっ!えへへ……」

久(イチャイチャしちゃって……)タンッ

まこ(イチャイチャしよって……)タンッ

優希(イチャイチャしやがって……)タンッ

和(あぁ、今日も息を飲む美しさですね……私ったら)タンッ

咲「でも、ほんとに大丈夫?上手くやれそう?」

京太郎「確かに心配がないわけじゃないけど、大丈夫だと思う。みんないい人たちだし、それに幼馴染みもいるから」

咲「へぇ~、幼馴染みが……えっ」

咲「……は?」

咲「えぇっ!?わ、私も龍門渕に住むの!?」

京太郎「えっ、そうなの?」

咲「違うの!?」

京太郎「いや、俺に聞かれても分かるわけないだろ」

咲「だってさっき、幼馴染みがいるからって言ったでしょ!?」

京太郎「あぁうん、言ったな」

咲「それって私のことだよね!?」

京太郎「あっ、あー……そういうことか。違う違う、咲じゃないぞ。また別の幼馴染み」

咲「なんだ、そうだったんだ……もう!最初からそう言ってよ!」

京太郎「ごめんな、勘違いさせて」

咲「全くだよ、ほんとに……ってぇぇっ!!」

咲「べ、別の幼馴染みぃ!?そっちのほうが問題大きいよっ!!」

久(うるさいわねぇ……)タンッ

まこ(うるさいのぉ……)タンッ

優希(うるさいじぇ……)タンッ

和(もしも神がいるのだとしたら、とても残酷な方ですね……だって私に、美貌と頭脳と才能の全てを授けたのですから)タンッ

咲「はぁ!?なに!?なんなの!?私から、負けヒロインフラグすら、奪おうというの!?」

咲「じゃあなに!?じゃあ私はなんなの!?これじゃあただのヒロインだよっ!!」ダンッ

京太郎「咲、ちょっと落ち着こうぜ。クールになれよ」

咲「私はいつだって落ち着いてるよ!クールビューティーといえば宮永咲、ってとある界隈では有名なんだからっ!!」

京太郎「それ、どんだけ屈折した界隈だよ」

咲「それで付き合いは!?一体どれくらいの時間、付き合いがあるのっ!?」

京太郎「えっ、付き合い?えぇーっと……こっちに引っ越す前だから……十二年?くらいかな」

咲「じ、十二年!?二桁!?私たちの三倍の年数、付き合いがあるの!?なにその当てつけっ!!」

京太郎「多分、それくらいだと思う。家が隣で、物心つく前から家族同士で付き合いがあったから」

咲「はぁっ!?なに!?家族公認なの!?私なんてまだ、京ちゃんのお父さんを見たことすらないんだよっ!?」

京太郎「見たってそんな面白いものでもないぞ?ただのおっさんだし」

咲「そういう問題じゃないよっっっっ!!!!!!」

久(早く話、終わってくれないかしら……)タンッ

まこ(さっさと話、終わってくれんかのう……)タンッ

優希(とっとと話、終わってほしいじぇ……)タンッ

和(この指なんて、まさに白魚のよう……いえ、きっと白魚よりも美しいに決まっていますね。白魚なんて見たことありませんけど)タンッ

咲「……分かった!もう分かった!はっきりと分かった!」

京太郎「なにが?」

咲「私も龍門渕に行くっ!その京ちゃんの旧・幼馴染みを倒すっっっ!!!!!」ゴッ

京太郎「やめろ、争いはなにも生まないんだぞ?」

咲「少なくとも、私のこの気持ちは晴れるよ!京ちゃん!案内してっ!!」

京太郎「えー、嫌だよ。案内なんて」

咲「なんでよっ!?現・幼馴染みより旧・幼馴染みのほうが大事だって言うの!?」

京太郎「そういう問題じゃねぇ。これから住み込みで働こうって所に、そんな敵意丸出しのヤツを案内出来るわけないだろ」

咲「じゃあいい!もういいもん!私、勝手に行くからっ!!」

京太郎「おいやめろ。迷い迷って国外にいることになるぞ」

咲「大丈夫だよ!私、そこまでひどくないし、京ちゃんの後つけるからっ!!」

京太郎「それでも迷って終わりだろ」

久(そうね、迷って終わりね)タンッ

まこ(そうじゃな、迷って終わりじゃな)タンッ

優希(そうだじぇ、迷って終わりだじぇ)タンッ

和(そうですね、迷って終わりですね)タンッ

咲「じゃあ私にどうしろって言うのっ!?」

京太郎「どうもするな。部活が終わったら、まっすぐ家に帰ってじっとしていなさい」

咲「それじゃあ、いつもと変わりない日常と一緒だよっ!!」

京太郎「咲……あのな、よく聞いてくれ。いつもと変わりない日常っていうものは、ホントはとても得がたいものなんだ」

京太郎「お前はその、得がたいものをもう既に持ってる。それを壊すようなことなんてするもんじゃあない」

咲「そんな言葉で騙されるような私じゃないよっ!!」

久「ちょっと、咲!あなたさっきからうるさいわよっ!?」ガタッ

優希「そうだじぇ!これじゃあ全然麻雀に集中できないじょっ!!」ガタッ

まこ「話すんはええが、周りのことも少しは考えんか」

咲「あ、あぅ……すみませんでした……気を付けます……」

京太郎「ほら、だから落ち着けって言ったのに」

和「あなたも同罪ですよ。……いえ、須賀くんのほうが罪は重いですね」

京太郎「えっ」

優希「のどちゃんの言う通りだじぇ!このバカ犬ぅ!」

まこ「おんしが煽らんかったら、咲もああまでうるさくはならんかったからのう」

久「そもそも須賀くんが、龍門渕にバイトの面接行かなきゃこうはならなかったんだし」

咲「そうだよ!この元凶ちゃんッッッ!!!!!」キョウチャンダケニ

京太郎「なにそれひどい」

久「というわけで、須賀くんに罰を与えます!」

京太郎「異議あり!判決内容はあまりにも理不尽です!」

和「意義を却下します」

京太郎「聞く耳まったくねぇな、おい」

優希「当然だじぇ!」

まこ「当然じゃな」

咲「当然だよっ!」

京太郎「俺、今ここを出て行けたら、清澄を出る喜びを感じられそうだよ」

今日はここまでです

次回は未定です

ありがとうございました

ちなみにsageなのに特に理由はありません

今後突然ageになったりするかもしれません

久「というわけで、須賀くんには、私たちを龍門渕に案内してもらいます!」

まこ「異議なしじゃ」

優希「異議なしだじぇ」

和「意義ありません」

咲「むしろ全面的に賛成ですっ!」

京太郎「いや、無理ですよそんなの」

久「あら?あなた、私にNOを突きつけられる立場だと思ってるの?偉くなったものねぇ~」

京太郎「俺の意志どうこうの問題より、あちら方が許可しないでしょ」

久「わっかんない子ねぇ、まったく……それをなんとかするのがあなたの役目でしょ?なんのために龍門渕に、あなたを送り込んだと思ってるの?」

京太郎「えっ、俺を面接に行かしたのって、そのためだったんですか?」

久「いえ、違うわよ?私は普通に、落ちたあなたをあざ笑うためだけに、面接に行かせたんだから!」

京太郎「やっぱ鬼よりひでぇや、この人」

まこ「そしてわしは、そんな京太郎に新たなバイト先として、うちを勧めるつもりじゃった」

京太郎「あっ、ありがとうございます。フォローしてくれようとしてくれてて」

咲「わ、私も落ちたって聞いてたら、慰めてたよ!落ちて当然だったって!」

京太郎「咲さん……言いたいことは分かるけど、それはマズい」

優希「私は京太郎が落ちてても、タコスを食べるじぇ!」

和「私は須賀くんが落ちてても、自らを愛でます」

京太郎「いつも通りだな、お前らは」

久「とにかく!須賀くんが受かった今、これを有効に使わない手はないわ!去年の長野県代表と、一戦交えるチャンスよっ!」

京太郎「どうせ部長のことですし、それだけじゃないでしょ?」

久「えっ」

京太郎「あっ、ホントにそれだけなんスね」

久「違うわよ!……そ、そう!あとはアレよ!高そうな壷を割ったりとか、高そうな絨毯を破いたりとかぁ……そ、そんな感じよっ!!」ビシィ

京太郎「なんスかその意味のない嘘」

咲「私には京ちゃんの旧・幼馴染みを倒すっていう、目的のほうが大事だけどね!」

優希「私は龍門渕特性の高級タコスを食べるほうが大事じぇ!」

和「私は、龍門渕のみなさんに、私の美しさを誇示するほうが大事です」

京太郎「おい、一年ども。お前らロクでもねぇな。もっと麻雀に対する情熱を燃やせよ」

まこ「これでも麻雀強いっつうんじゃから、不思議じゃのう」

京太郎「神様って残酷ですよね」

和「神なんて、そんなオカルトありえません」

京太郎「お前それ、さっきの麻雀中の発言と矛盾してんじゃん」

和「は?なんの話ですか?」

京太郎「いやだから、麻雀中にもしも神がいたらなんとかって言ってただろ?」

和「言ってませんけど?」

京太郎「いや、言ってたって」

久「言ってたわね」

まこ「言っとったのう」

優希「言ってたじぇ」

咲「言ってたよね」

和「そんな……いくら私の声が美しいからって、みなさんに幻聴を聞かせるほどだなんて……」

京太郎「なんで認めねぇんだよ」

久「さぁ、須賀くん!そろそろ龍門渕にまで、案内してもらおうかしら!」

京太郎「だから無理ですって。俺の立場も考えてくださいよ」

久「ぐぬぬ……いいから案内しなさーい!!」ジタバタ

京太郎「うわ、駄々こね出したよこの人……いくつだよ……」

まこ「すまんが、連絡だけでもしてみてくれんか?それで無理だったら諦めるけえ」

京太郎「まぁ、まこぴーの頼みなら……どの道、連絡しないといけませんから、ついでに聞いてみます」

まこ「すまんのう、恩に着る。あとまこぴー言うな」

久「ねぇ、なんで私の言うことは聞かないのに、まこの言うことは素直に聞くの?ねぇなんで?」

京太郎「自分の胸に手を当てて考えてみてください」

久「……並ね」

まこ「普通じゃな」

優希「無いじょ……」

咲「緩やかに雪が降りそうなほどのなだらかな丘」

和「ご覧の通りです」ドヤァ

京太郎「サイズの話じゃねぇよ。あと、なんでみんなしてやってんの?それと和、いい加減揉ませてくれない?」

和「美しく揉めるというのなら、揉ませてもかまいませんけど?」

京太郎「む、無理だ……今の俺には、欲望のままにこねくり回すことしか……クソォッ!!!」ダンッ

咲「わ、私のだったら、欲望のままに揉んでもいいよ!」ドキドキ

優希「わ、私も別に……その……」モジモジ

京太郎「お前ら揉めるほどないだろ。なんの冗談だよ」ハハッ

久「うわっ、最低」

まこ「クズ以下じゃな」

和「生きる価値ありませんね」

咲「殺すよ?マジで」

優希「自分の腸を引きずり出されるのを見ながら死ぬと、一体どんな気持ちになるんだろうな?」

京太郎「今のは悪かった。ごめんなさい」ペコリ

京太郎「……ということなんですが」スガダケニ

透華『なるほど……清澄の麻雀部の方々がこちらに来たいと……』

京太郎「無理ですよね?無理でいいですから。むしろ無理って言ってください」

透華『……いえ、是非お受けしたいですわ』

京太郎「えっ」

京太郎 「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっ!?!?!?!?!?」

透華『す、須賀さん?いかがなされましたの?』

京太郎「あっいや……すみません。でも、ホントに大丈夫なんですか?別に気を使わなくてもいいんですよ?」

透華『気を使うだなんて、そんなことありませんわ。むしろこちらとしても、対策をとれるなら、早くとっておきたいですもの』

京太郎「えっ、でも龍門渕って前の長野代表なんですよね?そんなとこが対策とるなんて……ウチってそんな強いんですか?」

透華『それが分からないから、ですわね。強いと分かっている相手よりも、実力が未知数な相手のほうが恐ろしいもの、ですわ』

透華『それにそちらには、原村和やインターハイ王者である宮永照の妹さんがいらっしゃるとお聞きします』

透華『そのお二人の実力を体験するだけでも、こちらとしては充分な価値がありますわ』

京太郎「宮永って……咲のことですか!?あいつがそんな人の妹だったとは……」

透華『あとそれから、須賀さんをご紹介して頂いたご恩もありますものね』

京太郎「その恩には別に、報いるほどの価値はないと思いますが……まぁとりあえず、許可がとれたって伝えておきますね」

透華『えぇ、お願い申し上げますわ。日時はいかがいたしましょうか?』

京太郎「あっ、それはそちらの都合のいい日で大丈夫です。元々、こっちから言い出したことですし」

透華『左様ですの。では……日時は明後日のお昼、ということでおよろしいでしょうか?』

京太郎「あっはい、それで大丈夫です。では、よろしくお願いします」

透華『こちらこそ、よろしくお願い申し上げますわ。……ところで須賀さんは、本日は何時頃にこちらに着くか、もうお分かりになりまして?』

京太郎「あっ、えっと……今から部活抜けて、荷物取ってだから……大体六時くらいには着くと思います」

透華『六時ですね、分かりましたわ。お待ちしておりますわね』

京太郎「はい、待たせないよう急いでいきます」

透華『お荷物もあるのですから、多少遅れたとしても怒りませんから、どうぞご安心なさってくださいな。……では、そろそろ失礼させて頂きますわね』

京太郎「あっ、すみません。長い間電話に付き合わせちゃって」

透華『いえいえ、お気になさらないでおよろしいですわ。また屋敷でお会いしましょう』

京太郎「はい、それではまた」

京太郎「電話してきましたよ」ガチャ

久「あら、それでどうだったの?」

まこ「まぁ無理じゃろ」

優希「まぁ無理だろうな」

和「まぁ無理でしょうね」

咲「たとえ無理だったとしても、私は行くよっ!」

京太郎「それがなんと、来てもいいとの許可を頂きました」

久「えっ」

まこ「えっ」

優希「えっ」

和「えっ」

咲「えっ」

久・まこ・優希・和・咲「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっ!?!?!?!?!?」」」」」

京太郎「まぁそうなるわな」

久「ほほほ、ほんとにい、行ってもいいの!?」

京太郎「はい。是非お受けしたいって言ってましたね」

まこ「そうじゃ、これは夢なんじゃ。目が覚めたとき、わしはまだ12歳。起きたらラジオ体操に行って、朝ご飯を食べて、涼しい午前中にスイカを食べながら宿題をして、午後から友達とプールに行って、思いっきり遊ぶんじゃ……」

京太郎「ところがどっこい……夢じゃありません……!現実です……!これが現実……!」

優希「うおぉー!楽しみで今から腹が鳴るじぇー!!」グゥー

京太郎「鳴らすなら腕を鳴らせよ」

和「私のことについて、なにか言っていませんでしたか?」

京太郎「そういや、和と咲の実力がなんとかって言ってたな」

和「そうですか……やはり私の美しさは、もう既に龍門渕にまで轟いているようですね」

京太郎「確実にそういうニュアンスではなかったぞ」

咲「京ちゃん、楽しみにしててね!私が旧・幼馴染みを倒して、京ちゃんの真・幼馴染みであることを証明してあげるからっ!!」ゴッ

京太郎「もうこの際だし、やる気になるのはいいけど、そもそも俺の幼馴染みが、麻雀やってるかどうか分からないぞ?」

咲「やってなくても関係ないよ!舞台に引きずり出すんだから!」

京太郎「ひどく横暴だなぁ。これは魔王のそしりを受けても仕方ない」

まこ「それじゃあ、今から行ってもええんか?」

京太郎「あっいや、明後日のお昼です。あちら方が、その時間なら都合がつくらしいので」

優希「なーんだ、今からじゃないのか。拍子抜けだじぇ」

和「楽しみは後にとっておいたほうが、それが訪れたとき、より感動を味わえるものですよ」

咲「えぇー、でも私、好きなおかずは最初に食べるよ?」

和「結構いいこと言ったのに、すごく薄っぺらい理由で否定しないでほしいですね」

久「ででででも!あ、明後日ってすぐよね?に、二回寝たらもう来るのよね……?」

京太郎「そうですね。今日と明日寝たらもう明後日です。龍門渕に行く日です」

久「どどどどうしよぉぉぉぉぉぉ!!!!!や、やっぱり菓子折りとか持ってったほうがいいかしら!?」ワタワタ

京太郎「そりゃあわざわざ会ってくれるわけですし、手土産の一つくらい持って行くべきでしょ。俺も今日持って行きますし」 

優希「ていうか、なんでもうテンパってるんだ?」

咲「麻雀中はあんなに大胆なのに……」

まこ「久は麻雀関係以外の、突発的な出来事に対しては、メンタルが豆腐並にやわっこい性格なんじゃ」

和「ややこしい性格ですね……とりあえず、美しくはありません」

久「あああ、でも!な、なにを持っていけばいいの……?庶民のお菓子なんて、きっとお口に合わないだろうし……あわわわわわわ」ワタワタ

京太郎「別にちゃんとしてれば、なんでもいいんじゃないですか?そういうのは気持ちの問題ですし」

久「き、気持ちったってねぇ!そんなの伝わらなきゃ意味ないじゃないっ!!」クワッ

京太郎「そんないかんともしがたい文句を言われても……」

まこ「ちなみに京太郎は、なにを贈るつもりなんじゃ?」

京太郎「俺は羊羹ですよ、三万円の」

久「さささ三万円っ!?そ、そんな高いもの贈らなきゃいけないのっ!?高校生がそんなお金、ポンと払えるわけないじゃないのよぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」ウワーン

まこ「おう、金で解決するつもりか?」

優希「気持ちの問題なんじゃないのか?」

和「さっきの言葉、一気に薄っぺらくなりましたね」

咲「た、たとえ気持ちをお金で解決しようとしても、私は京ちゃんの幼馴染みだよっ!……引きはするけど」

京太郎「いや、そんなつもりまったくないから!相手が相手だし、それにこれからお世話になるわけだから、出来る限り良いものを贈ろうってだけだから!」

京太郎「はぁ……俺、そろそろ龍門渕に行かなきゃいけないんで帰りますね」

まこ「おう、気ぃ付けんしゃい。金の亡者」

優希「龍門渕でタコスの腕磨けよー。金の亡者」

和「ついでに美しさも磨いたらどうですか?まぁいくら磨いたところで、金の亡者が私に美しさで敵うわけありませんけど」

京太郎「それマジでやめてくれない?ホント謂われないし、結構リアルにヘコむ」

咲「こ、これからは京ちゃんじゃなくて、金ちゃんって呼んだほうがいいのかなぁ……?」

京太郎「やめてっ!京ちゃんって呼んでっ!俺、京ちゃん大好きっ!」

咲「そ、そこまで言うならそのままにしておくね……」

久「ね、ねぇ須賀くん。龍門渕の人たちに、なにが欲しいか聞いてきてくれないかしら……?あっ、も、もちろん私が聞いたってのは秘密で!」

京太郎「まぁいいですけど……それでもし、もっと高いものが出たら、どうするんですか?」

久「そ、そのときはそのときよ!もう土下座でもなんでもしてやるわっ!!」

京太郎「じゃあ、全裸で逆立ちしながら庭を一周しろって言われてもするんですか?」

久「ふぇっ!?や、やだぁ……そんなの出来ないぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」ウワーン

京太郎(あっ、めんどくさいぞこの人)

咲「むっ……京ちゃんのあの顔は、なにか失礼なことを思ってる顔だ!」

優希「そうなのか?よく分かるな」

咲「うんっ!なんてったって幼馴染みだからねっ!」ドヤァ

まこ「大方、久の反応をめんどくさがっとるんじゃろうなぁ」

和「実際、端から見ててもめんどくさいですからね。あの部長の相手は、本当に遠慮したいです」

京太郎「まぁ……困ったら、自分の好きなものを贈ったらいいんじゃないスかね?」

久「自分の好きなもの……?」グスグス

京太郎「そういうものなら、自分で善し悪しを判断出来ますし、そもそもこういうのに答えなんてないですから」

久「でも、私の好きなものって、謀事を企むことなんだけど……」グスグス

京太郎「あ、あー……じゃあその……し、諸葛亮の本とか贈ればいいんじゃないスかね?」

久「そんなもん贈って喜ぶ女子高生がどこにいるのよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」ウワーン

京太郎「ほ、他になにかないんですか?」

久「……麻雀」グスグス

京太郎「あー……じゃあ好きな食べ物とかは?」

久「……もろきゅう」グスグス

京太郎「もろきゅう……予想のななめ上だなぁ」

久「もういい……もう私は、全裸で逆立ちしながら庭を一周するわ……」グスグス

京太郎「と、とりあえずちゃんと、欲しいもの聞いておきますから!安心してください!」

久「ほんとに……?ちゃんと聞いて教えてくれないと、ひどいんだからね……?」グスグス

京太郎「はい、ちゃんと聞いて教えますから……俺、もう行ってきますね」

久「うん、行ってらっしゃい……」フリフリ

京太郎「じゃあそういうことなんで行ってきます。二回目ですけど」

まこ「おう、気張れよ。京太郎」フリフリ

優希「強くなるんだじょ。京太郎」フリフリ

和「お達者で。須賀くん」フリフリ

咲「……よしっ!それじゃあ行こっか?京ちゃん」

京太郎「なんでこう次から次に問題が生じるんだよ、まったく」

咲「ん?どうかしたの?」

京太郎「どうかしたの、じゃねぇよ。なにナチュラルに一緒に行こうとしてんの?」

咲「だってついてくって言ったでしょ?」

京太郎「ならせめて、俺にバレないようにしろよ。ていうか、明後日会うんだから今はいいだろ」

咲「ダメだよ!今日と明日で急速に仲が良くなったらどうするの!?男女が一つ屋根の下だなんて、間違いが確実に起こるんだよっ!?」

京太郎「男女ってそもそも、俺の幼馴染みが女だなんて言ってないだろ」

咲「あっ……じゃあ、男の人なの?」

京太郎「ううん、女だよ」

咲「じゃあ間違い起こるじゃん!結果、私が正しいんじゃん!!」

京太郎「ていうか、間違いが起こる前提がまずおかしい。俺がそんな間違いをおかすと思うか?」

咲「思うよ!むしろ、京ちゃんだからこそ心配なのっ!!」

京太郎「信用ねぇな、おい」

咲「当たり前でしょ!?ずっと和ちゃんのおっぱいしか見てない人を、信じることなんて出来る!?」

まこ「一理あるな」

優希「むしろ全理あるじぇ」

久「そもそも麻雀部入ったのだって、和目当てだったものね」

和「この美しい私をずっと見ていたいという気持ちは痛いほど分かりますけど、さすがに見すぎです。それも下劣な視線で」

京太郎「仕方ないだろ。男の脳みそは金玉なんだ」

咲「言い訳がド下ネタって、ほんと最低だよっ!!」

京太郎「それにな?男はいつだって夢と希望を追い求めるもんだ。そしておっぱいには、夢と希望が詰まってる」

咲「なんでさらに下ネタで言い訳を繰り返すの!?」

京太郎「いやおっぱいは上半身じゃん。上だよ」

咲「そういう問題じゃないよっ!!」

京太郎「もうさぁ、マジで諦めてくれよ。いい加減時間ないんだよ」

咲「いーやっ!絶対、京ちゃんについてく!私の決意は、さっきよりもより強固なものになったからねっ!!」

京太郎「……咲ぃっ!!」ガシッ

咲「ぴゃっ!?ど、どうしたの……?」

京太郎「なぁ咲……俺はな、文学少女のお前でもなく、迷子センターで子供相手にアタフタしてるお前でもなく、麻雀を打っている時のお前だけが好きなんだっ!」

咲「えぇっ!?き、京ちゃんが私を……好きぃっ!?」

京太郎「あぁ、普段のお前じゃなくて、麻雀を打っている時のお前だけがだ!だから俺は、お前にもっと麻雀を打ってほしい!もっと強くなってほしい!もっと……俺を好きにさせてほしい」

咲「う、うん……私、もっと麻雀いっぱい打って、もっと強くなる!それで、もっと京ちゃんを好きにさせたい!」ポワポワ

京太郎「そうか……なら俺についてこないで、ここで部活が終わるまで麻雀打ってくれるな?」

咲「うんっ!いっぱい打つ!」ポワポワ

京太郎「それで部活が終わったら、優希か和のどっちかか、もしくは二人と一緒にまっすぐ家に帰って、家の中でじっとしておいてくれるな?」

咲「うんっ!じっとしてる!」ポワポワ

京太郎(ちょろいぜ)

久(ちょろいわねぇ)

まこ(ちょろいのう)

優希(ちょろいじぇ)

和(ちょろいですね)

京太郎「じゃあ俺はもう行くけど、みんなと楽しく麻雀打ってろよ。じゃあな」ガチャ

咲「うんっ!行ってらっしゃーい!」フリフリ バタン

咲「……はっ!?」

咲「あれっ!?私、騙されてないっ!?」

久「ようやく気付いたのね」

まこ「だがしかし、あまりにも遅いのう」

優希「でも、気付くだけマシだじぇ」

和「人を信じる心は美しいですが、人を疑わないのはいただけませんね」

咲「私の純情につけ込んで騙すなんてぇ……!!」ワナワナ

咲「京ちゃんのバカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!ゴホッゴホッ」

まこ「荒れとるのう」

優希「まぁ、気持ちは分かるじぇ」

和「これに懲りて、少しは疑うということを覚えてくれればいいんですけど」

久「でもまっ、これも青春の一つよ」

咲「はぁ……それじゃあ、麻雀しよっか!」ゴッ

久「ついに顕在したわね、咲の中の魔王がっ……!」

まこ「京太郎め、とんでもないもん残していきよって……」

優希「さぁ、本日の生贄のお時間がやってまいりました。今日は一体誰が、咲ちゃんの餌食となるのでしょう。お楽しみに!」

和「わ、私は美しいからきっと大丈夫ですね……(震え声)」

咲「部長は確定としてぇ……あとは……」

久「えっ!?ち、ちょっと待ちなさいよぉ!!ななななんで私は確定なのよっ!?」

まこ「ついに麻雀に対してもヘタレたのう」

優希「もう部長のメンタルはボロボロだじょ」

和「やっぱりめんどくさい人ですね。美しくありません」

咲「染谷先輩と優希ちゃんね!さっ、早く卓について!」

まこ「あぁ……」

優希「あぁ……」

和「っしゃあぁぁぁぁぁ!!!!」グッ

咲「あっ、和ちゃんはこの対局が終わったら、部活が終わるまで私とマンツーマンで打ってもらうからね?」ゴッ

和「」

和「やはり、この世に神なんていない……いるのは、魔王だけなんですね……」ヨヨヨ

今日はここまでです

書きためが尽きたので次回は本当に未定です

もしなにか見たい展開などがあれば書いて頂けるととてもありがたいです

ありがとうございました

【徹底解明 原村和はいかにしてナルシシズムに目覚めたのか】

和「はぁ……今日も美しいですね、私」

京太郎「鏡に向かって自画自賛とか、モー娘のリーダーかよ、お前」

和「あの方よりも私のほうが美しいです」

京太郎「そんなん聞いてねぇよ。初めて会った頃は、普通の可愛らしい巨乳でうぶな優等生だったのに……」

和「あの頃はまだ、私は自らの美しさに気が付いていなかったんです。まったく美しくありませんね」

京太郎「出来ることなら、気付いてほしくなかったなぁ。一体なにがお前をそうさせたんだ」

和「なにって……私に気付かせてくれたのは、須賀くんじゃないですか」

京太郎「は?俺?えっ、なに?俺のせいで和がそうなったって言うの?」

和「せいというか、おかげですね。覚えていないんですか?」

京太郎「まったく記憶にございません」

和「一人の女を根本から変えたというのに、それを覚えていないというのは、男としていかがなものかと思いますよ」

京太郎「誤解が生じそうな言い方するなよ」

和「ですが事実です。はぁ……まったく仕方がありませんね。ではこの美しい私が、美しい記憶を美しく語って差し上げましょう。より美しく」

京太郎「美しい美しいうるせぇな。最後の絶対余計だろ」

和「あれは、まだ咲さんが麻雀部に入部する前のことでした……」

ポワンポワンポワンポワーン

京太郎「ういーっす、お疲れさまですー」ガチャ

和「あっ、須賀くん。お疲れさまです」

京太郎「あれ?原村だけなのか。他は?」

和「部長は生徒会のお仕事、染谷先輩は実家のお手伝いで、今日は来られないそうです」

京太郎「あぁー、そうなのか。片岡は?」

和「ゆーきは、面子が揃わないなら行く意味がないって言って、もう帰ってしまいました」

京太郎「あぁー、そうなのか。不真面目だな、片岡は」

和「まったくです。ほんとにゆーきったら……」

京太郎「それに比べて真面目だな、原村は。こうやってちゃんと来てるんだし」

和「部活に所属しているんですから、来るのは当たり前です」

京太郎「それが真面目だってことだよ」

和「………………」カチッカチッ

京太郎「………………」ペラリ

和「………………」カチッカチッ リーチッ

京太郎「……ん?」ペラリ

和「………………」カチッカチッ ツモッ

京太郎「ほほう……」ビリッビリッ

和「ふぅ……須賀くん?なにをしているんですか?」

京太郎「プレイボーイの袋とじ開けてる……よしっ!」

和「あぁ、プレイボーイの……って、ななななにをやってるんですかっ!?そ、そんないいいいかがわしい雑誌を、学校で読むだなんてっ!!」

京太郎「おいおい……プレイボーイがいかがわしいだなんて心外だな。購買で売ってるんだぞ?」

和「えっ、こ、購買で売ってるんですか!?い、いいんでしょうか……」

京太郎「だからまぁ、それだけちゃんとした雑誌ってことだよ。気になるなら、自分の目で確かめたらどうだ?ほら」バサッ

和「な、ならちょっとだけ……」ドキドキ

京太郎「おやおや、原村さんも好きだねぇ。えぇ?」ゲヒヒ

和「からかわないでください!雑誌丸めてひっぱたきますよ!?」

和「……なるほど。確かにちゃんとした雑誌ですね」

京太郎「だろ?まぁ、男向けであることはいなめないけど」

和「この方って、清純派で人気のアイドルですよね?こんな方も載ってるんですね……」

京太郎「あぁー、そうだな。でも俺、あんまりこの子好きじゃないんだよ」

和「そうなんですか?こんなに綺麗なのに」

京太郎「俺からしたら、この子より原村のほうが綺麗だよ」

和「えっ」

和「わ、私がこの方よりも美しいとでも言うんですか、須賀くんはぁっ!?」

京太郎「えっ……お、おう。ていうか、大体のアイドルとか芸能人より、原村のほうが綺麗だと思うぞ」

和「そそそそんなオカルトありえませんッッッ!!!!!!」

京太郎「えっ、なんか怒ってない?」

和「怒ってませんッッッ!!!!!!」

京太郎「そ、そうか……ま、まぁ確かに、そんなオカルトはありえないかもな」

和「そ、そうですっ!私が芸能人の方より美しいだなんて、そんなオカルト……」

京太郎「違う、そうじゃない」

和「鈴木雅之ですか?」

京太郎「違う違う、そうじゃ、そうじゃなぁ~い~♪……なにやらせんだよ」

和「私も別に、やれって振ったわけではないんですけど……でも、そうじゃないってどういう意味ですか?」

京太郎「あっ、いやさ。オカルトって幽霊みたいに、見れも触れもしないもののことだろ?」

和「えぇまぁ……確かに、そういった類の総称ではありますけど……」

京太郎「だったら原村が綺麗だってのは、オカルトなんかじゃないだろ。現に俺は原村が見えてるし、こうやって触れる」スッ

和「す、須賀くん……って、なに胸を触ろうとしてるんですかっ!!」ペシッ

京太郎「痛っ。……あーあ、イケると思ったんだけどなぁ」

和「いけまけんっ!まったくもう……」

ポワンポワンポワンポワーン

和「……とまぁ、あの日から私は、自らの美しさに気が付いたんです」

京太郎「おう、結構回想なげぇな。でもまぁ確かに、そんなこともあったなぁ」

和「思い出しましたか?」

京太郎「うん。まさかアレがきっかけだったとは……ただ和を口説いただけなのに」

和「残念でしたね。もしあそこで触ろうとしたのが胸じゃなくて顔だったら、私は須賀くんに落とされてたかもしれませんけど」

京太郎「……なぁ和。お前が綺麗だってのは、オカルトなんかじゃないだろ。現に俺は和が見えてるし、こうやって触れる」スッ

和「今更同じことをしたところで、須賀くんなんかにこの私が落とせるわけないじゃないですか。バカなんですか?」ペシッ

京太郎「そんなもん、やってみなきゃ分かんねぇだろっ!」ダンッ

和「それくらい、やらなくても分かってほしいものですね……でもまぁ、少なくともあなたは、私が知ってる男性の中では、美しいほうではありますけど」

京太郎「えっ、なにその唐突なデレ。と、とりあえず揉ませい!」ワキワキ

和「……私が変わったのだとしたら、須賀くんも随分変わりましたよね」

京太郎「えっ、そ、そうかなぁ?」テレテレ

和「なんで照れてるんですか、気持ち悪い……少なくとも初めて会った頃は、そんなに欲望に忠実な発言はしていませんでした」

京太郎「おいおい、それは変わったんじゃないぞ。慣れただけだ」

和「だったらなおのことタチが悪いですよ」

今回は番外編です

本編はもう少しかかります

相変わらず次回は未定です

申し訳ございません

和がナルシストなのはこういうことがあったからということでご納得頂けると幸いです

展開に対して様々なご意見をお寄せくださり誠にありがとうございます

お寄せくださったご意見は出来る限りなんらかの形にしたいと思います

ご感想のほうもお寄せくださりありがとうございます

全て非常に励みとなっております

それではありがとうございました

トコロカワッテ

京太郎「なんとか時間に間に合った。人間、やればできるもんだなぁ」

京太郎「そういや、もう俺の網膜と指紋を登録してるらしいけど、どうやって開けるんだ?」

京太郎「……まぁいいや、普通に呼び鈴鳴らそう」ピンポーン

衣『キサマの作戦目的とIDは!?』

京太郎「あっ、須賀です。こんばんは」

衣『おぉ、須賀か!さすが、時間通りだな!今開けてやる!』

京太郎「すみません、お願いします」

ギギギ- ゴゴゴー ドドドー ガシャーン

京太郎「すげぇ音なるな、これ……あっ、開きました。ありがとうございます」

衣『そうか!では中で待っておるぞ!』ガチャン

京太郎「さて……今日からお世話になるわけだし、気合い入れないと。とりあえず粗相のないようにしよう」

京太郎「……あとは特になにも思い浮かばない!」

京太郎「何度見てもでっかいなぁ、この屋敷は……果たして俺は、これに慣れることがあるのだろうか」

京太郎「まぁいいや……青春スイッチオーン!」ピンポーンピンポーン

衣「おぉ、昨日振りだな!待っておったぞ!」ガチャ

京太郎「すみません、待たせちゃって。にしても、随分開けるの早かったですね」

衣「まぁ、待っておったからな!さぁ、衣についてくるがよい!」

京太郎「あっはい。お邪魔します」

衣「ん?お邪魔します……だと?それは違うぞ、須賀よ」

京太郎「えっ」

京太郎「……あっ、失礼しますですね。すみません」ペコリ

衣「違う!そういうことではない!ここは今日から、お前の家となるのだぞ!?」

京太郎「えっ、それじゃあ……あっ、ごめんくださいか!す、すみません、重ね重ね……」ペコリ

衣「だから、そういうことではない!なぜ段々と遠くなっておるのだっ!お前は、家に帰ってきたとき、ごめんくださいなどと言うのかっ!?」

京太郎「言いませんね……あっ、あー!ただいまってことですかっ!なるほどっ!!」

衣「うーむ……衣もさっきまではそれが適当だと思うておったが、現にお前の口から聞いてみると、なんだか衝撃が足らんな……」

京太郎「挨拶に衝撃もなにもないと思うんですが」

衣「……なぁ、「お~い、今帰ったぞ~」と言うてみてはくれぬか?」

京太郎「えっ、まぁいいですけど……お~い、今帰ったぞ~」

衣「うむっ!やはりそれが、須賀に一番しっくりくるな!」

京太郎「いくらなんでも慣れすぎじゃないスかね?こんなの酔いどれ親父ですよ」

衣「おい、とーか!須賀が参ったぞっ!」バーン

京太郎(ちびっ子高校生はみんな、ドアを勢いよく開けなきゃいけないのか?)

透華「衣、いけませんわ。扉はもっと静かに開きませんと」

京太郎(そして敬語キャラは、それに対してツッコまなきゃいけないのか?)

京太郎「こんばんは。今日からお世話になります」ペコリ

透華「どうもこんばんは、ですわ。こちらこそ、よろしくお願い申し上げますわ」ペコリ

京太郎「あとこれ、つまらないものですが……」スッ

透華「あらまっ!これはまた大きな……お心遣い、ありがとうございますわ」ペコリ

京太郎「いえいえ、ほんの気持ちですから」

衣「中身はなんなんだ?」

京太郎「羊羹ですよ」

衣「なに!?羊羹だとっ!?つまりお菓子かっ!?」

京太郎「あっはい。……もしかして嫌いでしたか?」

衣「いいや、逆だ!衣はお菓子が大好きだっ!!」ワーイ

京太郎「そうですか!いやー、よかった……」

透華「うふふ……よく衣の好きなものが、分かりましたわね?」

京太郎「そんな、たまたまですよ。あんこが嫌いだったら、どうしようかと思いましたよ」

透華「またまた、ご謙遜なさって」

京太郎「いやホントに偶然ですよ。なんの下調べもしてませんでしたから」

衣「須賀よ……たとえそうであっても、そこは調べたと言うべきだぞ。嘘も方便だ」

京太郎「あっ、す、すみません……今度からはそうします」

透華「で、でも!正直であるということは、とても素晴らしいことですわ!」

衣「そのフォローはいささか苦しいぞ、とーか」

透華「と、ところで!須賀さんのお荷物はそれだけですの?」

京太郎「あっはい」

透華「お引っ越しのお荷物にしては、随分と少ないように見えますが……」

衣「またあとで、こちらに荷物が届くのであろう」

京太郎「いや、ホントにこれだけですよ。あとで届くものもないです」

透華「えっ」

衣「えっ」

京太郎「……なにかおかしいですか?」

透華「あ、あの……余計なお世話かもしれませんが、本当にこれだけのお荷物でおよろしいのですの?」

衣「トランク一つだけとは……浪漫飛行でもするつもりか?」

京太郎「そんなつもりはないですよ。もう部屋に大体揃ってましたし、これだけあれば充分です」

透華「……まぁ、須賀さんがおよろしいとおっしゃるのならば、我々はなにもおっしゃることはありませんけれど……」

衣「もし、部屋になにもなかったとしたら、一体どれだけ増えるんだ?」

京太郎「そうですねぇ……その場合だったら、さすがに倍くらいにはなりますかね」

透華「それでもトランクお二つですわよ!?」

衣「若者の荷物離れというのは深刻であるな……」

京太郎「そういえば、他のみなさんはいないんですか?」

透華「今はまだお勤め中ですわね」

京太郎「あっ、俺もなにか手伝いに行ったほうがいいですか?」

衣「まぁまぁよい。さすがに引っ越し初日から仕事をさせようなどとは、誰も思うておらん」

透華「それにもうすぐ終業時刻ですの。ですので、須賀さんがご心配されることはありませんわ」

京太郎「そういうことならいいんですが……ちなみに仕事ってどんなことなんですか?」

透華「掃除や洗濯などの一般的な家事から、屋敷の修繕修復といった仕事や、セキュリティシステムの管理など、ですわね」

京太郎「はぁー……随分と幅が広いんですね」

透華「須賀さんには明日から、その全てを体験して頂くことになりますわ」

京太郎「えっ」

京太郎「その……家事とか修理ならまだ出来そうですけど、セキュリティの管理ってそんな専門的なこともするんですか?」

衣「まぁお前の言いたいことも分かる……だが人間、何事も挑戦だ!」

透華「やればできる……とても素晴らしい言葉だとは思いませんか?」

京太郎「ま、まぁ……やるだけやってみます。どこまで出来るかは分かりませんが」

透華「そうご心配ならさずとも、きっと大丈夫ですわ。だって須賀さんですもの!」

衣「あぁ、須賀はやる男だ!……いや、漢と言ったほうが適切であるなっ!出来ないことなどなにもないっ!!」

京太郎「うわぁ……なんかすげぇ買い被られてる。期待が痛いなぁ……」

純「はぁー、終わった終わった。……アレ?須賀じゃん。よう」

一「あっ、ほんとだ。ようこそ、須賀くん」

智紀「うわっ、マジでいる……引くわ……」

京太郎「あっ、お疲れさまです。お邪魔してます。あと引いてんじゃねぇよ」

衣「歓迎しとるのう、智紀よ」

透華「本当、智紀が歓迎なさるとは珍しいですわね」

京太郎「えっ、皮肉ですか?」

透華「いえいえ、本心からの言葉ですわ。智紀は普段、お客様とお会いしても、無言がほとんどですもの」

衣「あとはまぁ、せいぜい会釈をするぐらいだ。だがそれも、年に何回もあるものではない」

一「それが普通の挨拶を通り越して、いきなり冗談だもんねー。びっくりだよ」

純「ありゃきっと、内心飛び跳ねてるくらい喜んでるぜ」

京太郎「えっ、そうなんですか?……そうなのか?」

智紀「……黙秘権を行使します……」

透華「あらあらうふふ」ニコニコ

衣「強がりよって」ニヤニヤ

一「素直じゃないなー」ニヨニヨ

純「いや逆に素直だろ」ニマニマ

京太郎「まぁ嘘はついてないっスもんね」ニタニタ

智紀「ちょっ、なにその生暖かい目……やめて……」

透華「さっ!一通り智紀をからかい終えましたし、そろそろお夕飯といたしますわ!」

智紀「なに……?私をからかうとご飯が美味しくなるの……?スパイスなの……?」

京太郎「いやこの場合、スパイスってより食前酒みたいなののほうが近いと思う」

智紀「そこの訂正はいらないから……」

純「まぁ、からかわねぇよりかはうまくなるだろ」

一「そうかなぁ?料理が全部甘酸っぱくなっちゃうかもよ?」

衣「おっと、それは困るのう……だが、それもまた一興であるな!」

透華「左様ですわ。味わってみようではありませんの、青春の味というものをっ!」

透華・衣・純・一「「「「あっはっはっはっはっ!!!!!」」」」

智紀「もうみんなからかいすぎ……いい加減、私だってしょげる……」イジイジ

京太郎「別にいいだろ、楽しんでくれてるんだし」

智紀「よくない……私は楽しくないもん……そもそも、あなたが来なければこうはならなかった……」

京太郎「お前、うちの部長みたいなこと言うな。なんでみんなそう、俺を悪者にしたがるだよ」

智紀「これに関しては、全面的にあなたが悪い……謝罪と賠償を要求する……」

京太郎「賠償ったって、なにすりゃいいんだよ?」

智紀「髪の毛を緑色にすればいい……」

京太郎「それがなんの賠償になんだよ」

智紀「少なくとも笑える……」

京太郎「おい、憂さ晴らしと賠償は違うぞ」

透華「本日はことさら、腕によりをかけませんといけませんわねっ!」フンスッ

京太郎「えっ、料理するんですか?」

透華「えぇ、料理は私の担当ですわ!」

京太郎「あっ、そうなんですか。てっきり、専属のシェフかなんかがいるもんだと思ってましたよ」

透華「確かに、そのような方がいらっしゃった時期もありますが……やはり家でのお食事というものは、家人が作るものよりふさわしいものはありませんの」

衣「それに家によく知らない人間が出入りするというのは、あまり好ましいことではないからな」

純「まぁうちには、他人に対して気難しいヤツも多いし」

一「特にともきーとかね」

智紀「私の心の扉は堅い……開かせられたら大したもの……」

純「おっ、そんじゃあ須賀は、大したヤツってことか」

一「もう須賀くんに対しては、ともきーの心の扉は自動ドアだもんね」

衣「うむっ!愛されておるのう!」

透華「よきかなよきかな、ですわっ!」

透華・衣・純・一「「「「あっはっはっはっはっ!!!!!」」」」

智紀「……ねぇ、これいつまで続くの……?一段落ついたんじゃないの……?」

京太郎「いや、俺に聞かれても分かるわけないだろ」

透華「時に須賀さん、なにかお好きな食べ物やお嫌いな食べ物はございますの?」

京太郎「えっ、あっいや。特にそういうものはないです。大概なんでも食べます」

透華「左様ですの……では今なにか、お食べになりたいものなどはございませんの?」

京太郎「今もまぁ特に……あっいや、おんn――いや、やっぱりこれを言うのはやめよう」

一「そのほうが賢明だね」

純「あぁ、ちげぇねぇ。もし言ってたら、オレの拳がうなってたぜ」

智紀「でもそう思うこと自体問題……最低……」

衣「須賀もやはり、一人の男……いや、雄ということか」

透華「さ、さすがにそのお望みは、叶えられませんわね……」

京太郎「止めたってのに、ちゃんと伝わってるなぁ……まぁ、俺はなんでもかまいませんよ」

透華「左様ですの……それでは、あなたたちはなにか、お食べになりたいものはございますの?」

衣「ハンバーグ!エビフライ!」ガタッ

純「ステーキ!5kg!」ガタッ

一「パスタ!オシャレなの!」ガタッ

智紀「中華……!激辛……!」ガタッ

京太郎「急に主張が強いっスね、みなさん」

透華「ふむふむ、なるほどなるほど……よく分かりましたわ。それでは……本日は、お野菜を中心とした和食といたしますわねっ!!」

衣「いつも通りではないかっ!!」ダンッ

純「お前、もうそれ決めてただろっ!?」ダンッ

一「ボクたちに聞いた意味はあったのっ!?」ダンッ

智紀「食権乱用、許すまじっ……!!」ダンッ

透華「文句がおありならば、どうぞお食べにならなくておよろしいですわっ!!」ゴッ

衣「こ、衣はただ意見を述べたまでだ……(震え声)」ストンッ

純「す、ストレス解消だよ、ストレス解消……(震え声)」ストンッ

一「ぼ、ボクが透華に文句を言うわけないじゃないか……(震え声)」ストンッ

智紀「ち、ちょっとした冗談……(震え声)」ストンッ

京太郎「俺、今この瞬間に、ここの力関係が一気に分かりました」

透華「さて、それでは今から取りかかりますので、今少しお待ち頂きますわね」

京太郎「手伝いましょうか?」

透華「いえいえ、お気持ちだけで充分ですわ。それでは、失礼いたしますわね」バタン

京太郎「あっ……みなさんは、料理の手伝いとかしないんですか?」

衣「あぁ、せぬぞ。というか、させてもらえぬ」

京太郎「えっ、させてもらえないってどういうことっスか?」

純「透華にはなんか、ポリシーみてぇなのがあんだよ。晩飯は普段働いてるオレたちに対しての、感謝の気持ちの表し方みてぇななんかそんなの」

京太郎「へぇー……立派な人ですね」

一「ほんとにね……もし、ご主人様が透華じゃなかったら、ボクたちはもう、ここを出てってるかもしれないし」

京太郎「俺今、つくづく初バイトがここでよかったって思ってます」

智紀「それと……透華以外、誰も料理出来ないのも……理由にあるかも……」

京太郎「えっ、マジで?ホントに誰も料理出来ないんですか?」

衣「なにを言うか、須賀よ。卵を割るくらい造作もないわ」ドヤァ

純「オレだって、レンジでチンくらい出来んぞ」ドヤァ

一「やだなぁ、レモンを搾るくらいは簡単にこなすよ」ドヤァ

智紀「かく言う私も、カップ麺くらいは余裕……」ドヤァ

京太郎「手伝わせてくれないのは、誰も料理出来ないって理由のほうがでかいですね。確実に」

京太郎「ていうか、それでいいんスか?女子高生ですよ?料理の一つもロクに出来ないなんて、恥ずかしくないんですか?」

衣「むっ、なんだ須賀よ。そういうお前は、料理が出来るとでもいうのか?」

京太郎「普通の男子高校生の並には出来ますよ、そりゃあ」

純「おい、なんだよそのふざけた基準」

一「そもそも、普通の男子高校生なんて、料理まったく出来ないでしょ」

智紀「カップ麺を作れるかすらも危うい……」

衣「せめて食器を洗えるようになってから、衣たちに意見を述べてほしいものだな」

京太郎「おう、すげぇナメられてんな。じゃあ確かめてみてくださいよ。明日にでも、俺の手料理、振る舞ってあげますよ」

純「おっ、言ったな。逃げんじゃねぇぞ」

一「吠え面をかく須賀くんを見るのが、今から楽しみだよ」

智紀「ほんとに食べられるものを作れるのか、はなはだ疑問……」

衣「須賀の料理を食ったせいで、死んでしもうたら笑えんな。あっはっはっ!」

京太郎「ホントマジで覚えてといてくださいよ」

ピンポンパンポーン

透華『龍門渕透華より皆様方にお知らせですわ。お食事のご用意が出来ましたので、食堂のほうにお集まりになってくださいな』

ピンポンパンポーン

衣「おっ、出来たか!さぁ、夕餉の時間だーっ!」ビューン ガチャバタン

純「おい、待て衣!そんなに急ぐと転んでケガすんぞ!」タッタッタッ ガチャバタン

一「まったく、落ち着きがないんだからあの二人は……それじゃあ須賀くん、案内するね」

智紀「迷わないよう、私たちについてきて……」

京太郎「あっ、どうも。ていうか館内放送あるんですね」

一「あぁ……まぁうちは広いから、みんなに一気に知らせようとしたら、ああいうのが便利なんだよ」

京太郎「へぇー……二人も使ったりするんですか?」

智紀「たまにね……私が使うと、聞き取りにくいって言われるけど……」

一「ともきーは声小っちゃいからね。まぁそのうち須賀くんも、使うんじゃないかな?」

京太郎「な、なんか緊張しますね、そういうの……」

京太郎「あっ、そうだ。全然関係ないんですけど、門とかドアってどう開ければいいんですか?俺のはもう登録されてるって聞いたんですけど」

一「あぁ、インターホンの隣に透明な板がついてたでしょ?」

京太郎「あっはい。ありました」

一「そこを右手の親指で押して指紋が認証されると、今度は網膜認証用のカメラが出てくるからそれを見つめてね。それで――」

智紀「網膜がちゃんと認証されたら……錠が開く……ちなみに、門もドアも手順は同じ……」

京太郎「へぇー、そうなのか。ありがとう、教えてくれて」

智紀「うむ……苦しゅうない……」

一「……ちょっと、ともきー。最後だけ取らないでよ」

智紀「残念……言ったもん勝ち……あっ、それでここが――」

一「ここが食堂だよっ!どうかな?道覚えられそう?」

京太郎「あっはい、ありがとうございます。道覚えるのも大丈夫だと思います」

一「うんうん、そっかそっか。それならなによりだよ」

智紀「……一、人の発言を最後だけ奪うとか……それはちょっとリアルに引くわ……」

一「それ、ともきーが言えることじゃないよね!?」

京太郎「……あの、入らないんですか?」

一「ん?……あぁいや、ボクは須賀くんがどんな入り方するのかなーって、見てるだけだから」

京太郎「えっ」

智紀「あなたのことだからきっと、さぞ面白い入り方をしてくれるはず……」

京太郎「いや、ちょっ、なにその無駄に高いハードル?もう新人いびりが始まってんの?」

一「いやいや!新人いびりだなんてそんなことないよっ!ただ……ボクたちと一緒に働く人が、つまらないわけないよね?」

智紀「もし、私たちのお眼鏡に適わなかったら、どうなるかは分からない……メガネだけに……」メガネキランッ

京太郎「お前のそのダジャレのおかげで大分楽になれたわ。それじゃあ入りますね」ガチャリ

衣「おぉ!これは一と智紀と須賀ではないか!」

純「遅かったな、お前ら。なにしてたんだよ?」

京太郎「二人にここまでの道を案内してもらってたんです。あっ、どうぞ二人とも」

一「……ねぇ、須賀くん」

京太郎「あっはい」

一「まったく面白くないよっ!?どういうことっ!?」プンスカ

智紀「ハードルをくぐるどころか、スタートからゴールまで、トンネル掘って渡ったレベル……」プンスカ

京太郎「そもそも、部屋に入るだけで面白いことが起こるなんて、期待しないでほしいんですが」

一「それでも、須賀くんならやってくれると思ったんだもん!もうっ!拍子抜けだよっ!!」プンスカ ストンッ

智紀「あなたは子供の頃からそうだった……人の予想を下回り、期待を無駄にする……なにも変わってない……!」プンスカ ストンッ

京太郎「いくらなんでも怒りすぎじゃないですかね?俺、その怒りの矛先になってる自覚まるでないっスよ」

純「須賀……お前、なんちゅーか……苦労してんな、早速」

衣「須賀よ……これに懲りず、これからも精進してほしい」

京太郎「あぁ、いやまぁ大丈夫ですよ。こういうのわりと慣れてますから……それじゃあすみませんけど、俺ちょっと雉撃ちに行ってきますね」バタン

衣「雉撃ち……?雉撃ちとはなんだ?須賀は猟師なのか?」

純「いやアレだろ。便所だろ、便所」

一「ち、ちょっと純くん。食事の場なんだから、ちょっとはごまかしてよ」

智紀「純はデリカシーなさすぎ……」

純「あっ、すまんすまん。わりぃわりぃ」

透華「あら?須賀さんはいらっしゃいませんの?先ほど、お声が聞こえた気がしましたけれど……」

純「あぁ、須賀なら便j――」

一「お花を摘みにねっ!お花を摘みに行ったんだよ!!」

透華「あら、左様ですの」

智紀「ちょっと、純……今さっき言ったのに……」

衣「純よ、お前は反省という言葉を知らんのか?」

純「すまんすまん!うっかりしてたわ!……ってか、アイツどこにあるのか知ってんのか?」

透華「あっ、そういえば……どなたかお教えいたしましたの?」

一「ボクは教えてないね」

智紀「私も……」

衣「衣もだ」

透華「あらま、左様ですの……ちゃんと見つけてくだされれば、およろしいのですが……」

純「まっ、分かんなかったらまたここに戻ってくんだろ」

京太郎「み、みなさんっ!」ガチャン

純「ほーら、噂をすればだ」

一「あっ、ほんとだ」

智紀「こういうときだけ、予想通り……」

衣「純、お前……エスパーであったのか!?」

純「そんな大層なもんじゃねぇよ」

透華「あの須賀さん、その……お化粧室の場所が、お分かりになりませんでしたの?」

京太郎「い、いえそういうことじゃないんですっ!……ってぇっ、割烹着っっっっ!?!?!?」

透華「えっ、えぇ……左様ですが……なにか?」

京太郎「いやその……い、意外だったので。でも……いいですね、割烹着」

透華「えっ、さ、左様ですの……」テレテレ

京太郎「はだk――あっいや……エプロン至上主義でしたけど、この姿を見せられたら、割烹着についても考えないといけませんね」キリッ

透華「さ、左様ですの……なにについてお考えなさるのかは、お聞きしないでおきますわね……」ヒキッ

純「んでよぉ、須賀。お前結局場所分かったのか?」

京太郎「えっ、場所?場所ってなんスか?ていうか俺、なんのためにここに来たんですか?」

一「そんなのをボクたちに聞かれても困っちゃうよ」

智紀「なに……?もう痴呆が始まってるの……?」

衣「うーむ……若者の短期記憶力離れは深刻であるな……」

京太郎「あっ、そうだ!思い出した!さっきここに、俺が来ませんでしたか!?」

純「おう。ってか、いんじゃん今」

透華「確かに今、いらっしゃりますわね」

京太郎「いや、今の話じゃなくてさっきの話ですよ!ついさっき!ちょっと前に、俺がここに来ませんでしたか!?」

一「なになに?もしそれで来たって答えたら、「バッカモーン!そいつがルパンだ!追えーっ!!」とか言っちゃうの?」

京太郎「あっ」

一「えっ……も、もしかして当てちゃった?」

智紀「まさか……いくらなんでもそれはない……ねぇ、ないよね……?」

京太郎「えっ」

衣「うむっ!須賀は常人とは違うところにいるからなっ!およそ常人の思慮の範疇には届かない、とても高尚な考えがあるに決まっておるっ!!」

京太郎「……ば、バッカモーン!そいつがルパンだ!追えーっ!!」スタコラサッサ バタン

純「あっ、逃げた」

透華「この空気に耐えきれなかったのでしょうね……」

一「うわー、ボク当てちゃったよ。悪いことしちゃったなぁ」

智紀「気にしないでいい……あれくらい、逆にいい薬……」

衣「この状況で結局やりきるとは……やはり須賀はただ者ではないなっ!!」

京太郎「いやー、やっちゃいましたね。俺」ガチャリ

純「おっ、お前よく戻ってこれたな。あんだけやらかしたのに」

京太郎「まぁ、あれくらいで傷つく俺じゃあありませんから……一応聞きますけど、どうでしたか?」

一「そうだなぁ……須賀くんは、ボクたちに戸惑いしか残せてなかったよ」

透華「一のおっしゃる通りですわね……その……須賀さんに対して、失礼ではございますが……」

京太郎「あー、やっぱそんな感じなんですね。すみませんでした」ペコリ

衣「まぁまぁ謝ることはない。衣たちを楽しませようと思っての行動であったのだろう?」

京太郎「それはまぁ……はい、そうです」

衣「ならばよいっ!次に向けて精進するのだぞっ!!」

智紀「次があるかどうか問題だけど……」

京太郎「俺もどちらかと言えば、ないほうを願いたい」

透華「さっ、それでは本当にお食事にいたしますわよ!須賀さんは、こちらにどうぞ」スッ

京太郎「あっ、すみません。隣、失礼しますね」

透華「いえいえ、どうぞ……それではみなさん、お手を合わせて!いただきます、ですわっ!」

衣・純・一・智紀「「「「いただきますっ!」!」。」……」

京太郎「いただきます。にしても、すごいですね……この量を一人で作るなんて」

透華「毎日のことですもの、もう慣れましたわ」

京太郎「慣れたっていっても、大変だったり、嫌になったりしたりしないんですか?」

透華「確かにそういう日もございますが……私だけが弱音を吐いて、投げ出すわけにはいきませんもの」

透華「それに今は、私がお料理を投げ出すと、もう誰も作れませんから……」

京太郎「あぁ……その、お疲れさまです」

透華「いえいえ……さっ、どうぞお食べになってくださいな!」

京太郎「あっはい、いただきます。……あっ、おいしい!すごくおいしいです!」

透華「あら、左様ですの!須賀さんのお口に合いまして、なによりですわっ!!」

今回はここまでです

お待たせいたしまして申し訳ありません

次回もまたお待たせすることになると思います

気長にお待ちいただけるとありがたいです

それではありがとうございました

【徹底解明 宮永照、その実態とは】

照「よ、ようやく着いた……」ヘェハァ

照「ここに咲が……たのもー」ガチャリ

京太郎「あっ、おつk――えっ、誰?」

照「私は宮永照。白糸台高校女子麻雀部三年。ついでに咲のお姉ちゃん」

京太郎「咲のお姉ちゃん……?あっ!ていうことは、インターハイ王者の!?えっ、なんでそんな人がうちに!?」

照「あなたは誰?」

京太郎「あっ、お、俺は清澄高校麻雀部一年の須賀京太郎です。ついでに咲の幼馴染みです」

照「咲の幼馴染み……?」

京太郎「えぇまぁ一応」

照「でも私はあなたを知らない」

京太郎「まぁ初対面ですから……お茶いれますね」ガタッ

照「あっ、ありがとう。でもお気遣いなく」

京太郎「そういうわけにも行きませんから。突然でしたけど、お客さんですし」

照「こちらこそ突然の訪問なのに、なんの手土産もなくて申し訳ない。全部食べちゃった」

京太郎「いえいえ、お気遣いなく……えっ、全部食べた?」

照「ねぇ、お茶まだ?のど乾いた」

京太郎「あっはい。すぐいれます」

照「……暇……てるてる坊主を作ろう」

照「………………」テテテー

照「………………」ルルルー

照「………………」テテテー

照「………………」ルルルー

照「……飽きた」ポイッ

照「遅い……見に行こう」タッタッター

照「……あれ?いない」

照「むむっ、あっちから気配がする」タッタッター

照「……あれ?いない」

照「むむっ、今度はあっちから」タッタッター

照「……あれ?いない」

照「むむっ、あっちから甘いものの匂いがする!」キュピーン

照「これは行くっきゃないっ!!」ビューン

イッポウソノコロ

京太郎「お待たせしましたー。どうぞ粗茶ですが……って」ガチャリ

京太郎「……あれ?いない」

京太郎「なんだ、帰ったのか?……だったらなにしにきたんだ、あの人」

京太郎「ていうか、なにこのてるてる坊主?あの人が作ったのか?……まぁいいけど」

キョウチャンデンワー キョウチャンデンワー キョウチャンデンワー キョウチャンデnピッ

京太郎「はいもしもし、須賀ですが」スガダケニ

咲『あっ、もしもし京ちゃん?私わたしー』

京太郎「なんだ咲か、どうした?」

咲『特に用はないよ。ただ、京ちゃん今なにしてるのかなって』

京太郎「今?今は部室で一人だよ。さっきまでお前のお姉さんいたけど」

咲『あっ、お姉ちゃんいたの?ごめんね、お世話になっちゃって……ってえぇっ!!』

咲『お、お姉ちゃん!?お姉ちゃんがそこにいたの!?ほんとにっ!?』

京太郎「うん、マジだぞ。自分でそう言ってたし、なにより角があった」

咲『あわ、あわわわわわ……な、なんでどうしてお姉ちゃんが清澄に……い、今どこにいるか分かる?』

京太郎「さぁ……お茶出そうと思ったらもういなかったし、帰ったと思う」

咲『……ねぇ、お茶出すのにどれくらい時間かかったの?』

京太郎「えっ、えーっと……五分ちょっとくらい?十分はかかってなかったと思う」

咲『あぁ……じゃあダメだよ。お姉ちゃん、三分以上待てないから』

京太郎「おう、ウルトラマンかよ」

咲『だから多分……待ちくたびれて京ちゃんを探しに出た挙句に、迷ってるんじゃないかな?今』

京太郎「えっ、迷ってんの?……似たもの姉妹だなぁ」

咲『京ちゃんお願い!お姉ちゃんを見つけてあげてっ!』

京太郎「それはかまわないけど、どこにいるのか見当もつかないぞ?そもそも、まだ学校にいるかどうかすら」

咲『お姉ちゃん、甘いものが好きだから、多分甘いもののあるところにいると思うよ!』

京太郎「甘いものがあるところにいるって、なんかアリみたいだな……」

咲『ちょっと京ちゃん!私のお姉ちゃんをそんな風に言わないでっ!失礼だよっ!!』

京太郎「あっ、ごめんごめん。確かにそうだな」

咲『そうだよっ!お姉ちゃんはアリなんかじゃなくて、もっとこう……甘いものが好きな妖怪みたいな感じだからっ!』

京太郎「お前のほうが失礼じゃねぇか」

京太郎「つったってなぁ……甘いものなんてどこにあるんだよ」

京太郎「……あっ、放送で呼び出してみるか?」

京太郎「いやでもな……どこかに呼び出したとしても、そこに行く途中でまた迷ったら意味ないし……」

京太郎「……まぁいいや、とりあえず地道に探してみるか。そんで見つからなかったらまた考えよう」ガチャリ

優希「じぇっ!」ビクッ

京太郎「あっ、優希。お疲れ」

優希「お、おう、お疲れ……びっくらこいたじぇ」

京太郎「あぁ、ごめん。今部室誰もいないぞ?」

優希「えっ、そうなのか?相変わらず集まり悪いな……お前、どっか行くのか?」

京太郎「あぁうん。ちょっと咲に頼まれて、アイツのお姉さんを探さないといけないんだ」

優希「咲ちゃんのお姉さん?そんな人いたのか……初耳だじぇ。なんでそんな人がうちにいるんだ?」

京太郎「さぁ……なんで来たのかは俺も知らない。なぁ、それっぽい人どっかで見なかったか?白糸台の制服を着てるんだけど」

優希「あっ、それなら見たじょ」

京太郎「えっ、見たの?どこで?」

優希「文化部棟のほうで見たじぇ。今さっき見たところだから、多分まだいるんじゃないか?」

京太郎「おう、マジか。ありがとう、それじゃあな」タッタッター

優希「おう、気をつけてなー」フリフリ

優希「さてと……タコス買って帰ろう……はぁ……」トボトボ

イッポウソノコロ

照「……全部貰っちゃった」モグモグ スタスタ

照「……おいしい」モキュモキュ スタスタ

照「……やめられない、止まらない」モッチモッチ スタスタ

京太郎「あっいた。おーい!そこの人、お待ちになってぇ~!」タッタッター

照「ごっくん……あっ、京ちゃん」ゴックン ピタッ

京太郎「えっ、京ちゃん?」ピクッ

照「京太郎だから京ちゃん。嫌だった?」

京太郎「いや、別に嫌なわけじゃないですけど……ていうか、なんですかそれ?」

照「これはお菓子。ここの料理部の人に貰った」テッテテテッテーテールッテルー

京太郎「あぁ、お菓子ですか。あれ?うちって料理部あったか……?」

照「ここの料理部の人たちは変なかっこだね。エプロンじゃなくて白衣着てるなんて」

京太郎「それ、料理部じゃなくて科学部ですよ。ていうかなんで、科学部がお菓子なんて作ってんだ」

照「なんかこれね、常人なら砂糖吐いて死ぬレベルの甘さらしいよ」

京太郎「えっ、そんなの食べて平気なんですか?」

照「うん。むしろ甘さが足りない」キリッ

京太郎「あぁ……ごめんな、咲。お前が正しかったよ」

照「京ちゃんも食べる?一個ならあげる」

京太郎「えっ、いいんですか?で、でもな……」

照「どうかしたの?」

京太郎「その、正直興味はあるんですけど……常人なら砂糖吐いて死ぬんですよね?だからちょっと怖くて……」

照「うん。でも大丈夫。私は死んでない。だから京ちゃんも死なない」ドヤァ

京太郎「なら……ちょっとだけ、貰ってもいいですか?」

照「うん。じゃあはい、あーん」スッ

京太郎「えっ」

照「あーん」グイッ

京太郎「ぐ、グイグイ来るなこの人……あ、あーん……」パクッ

照「どう?おいしい?」

京太郎「……あぁ、まぁ普通d――んっ!?」

京太郎「ヴェッ!ヴォッ!ヴァッ!ヴォホヴォッホ!!ヴァエッ!!ヴェアウェッッッッ!!!!!!!」ゴホッゴホッ ペッペッ

照「えっ、ちょっ、どうしたの?怪鳥のものまね?」

京太郎「はぁはぁ……や、やっと落ち着いてきた……」

照「大丈夫……?」サスサス

京太郎「あ、ありがとうございます……あの、まだあのお菓子ってあります?」

照「うん。あるよ、ここに」モッサリ

京太郎「没収します」ヒョイッ

照「あっ!ダメッ!返してっ!!」ピョンピョン

京太郎「無理ですよ、それは。こんな明らかに体に悪いもの食べさせられません。これは俺が責任を持って処理ます」

照「そんなこと言って、一人占めする気なのは分かってる!」ピョンピョン

京太郎「俺がまだこれ食べるわけないでしょ。さっきのリアクション見ましたよね?」

京太郎(しかしまぁ……揺れないなぁ……そこも似たもの姉妹か)

照「……返して」ギュルルルルルル

京太郎「それは……神砂嵐!?」

照「返さないと、これが京ちゃんを襲う」ギュルルルルルル

京太郎「凄んだって無駄ですよ。俺、究極生命体(アルティメットシイング)ですし」

照「嘘。ジョジョはフィクション。ありえない」ギュルルルルルル

京太郎「神砂嵐出してる人には言われなくないなぁ」

京太郎「あっ、ていうかそもそも、なんのためにここに来たんですか?」

照「あっ、そうだ。私、咲に会いに来たんだった」

京太郎「咲に会いに?」

照「うん。咲に借りてた本が見つかったから、それを返しに来た」

京太郎「そのためにわざわざ、長野まで来たんですか?律儀ってかなんというか……」

照「それとついでにお母さんから、お父さんの誕生日プレゼントを渡してって言われた」

京太郎「それ、本命とついで逆じゃないですか?……いや、娘にとってみれば、父親なんてついでか」

照「それで咲はどこにいるの?京ちゃん知ってる?」

京太郎「あぁ、咲ならもう帰りましたよ」

照「えっ」

京太郎「お父さんの誕生日だから、今日は豪勢な料理作るんだーって言って」

照「そ、そんな……嘘でしょ……」ショボボボン

京太郎「そんなショックに受けることですかね?家に行けば会えるじゃないですか」

照「そうだけど……ここから家まで、どう行ったらいいか分かんない……」ショボボボン

京太郎「あっ、それなら送りますよ。咲の家は知ってますから」

照「ほんとに?お願いしてもいい?」

京太郎「えぇ、もうまるっとお任せください!この須賀京太郎が、お姉さんを完璧に送り届けますっ!!」ドンッ

照「なんで自信満々の人って、逆に頼りなく見えるんだろうね」

京太郎「お姉さんって、元々こっちの人なんですか?」

照「そうだよ。今は東京にいるけど」

京太郎「……もしかしてなにか特別な、俺が気軽に聞いちゃいけないような、複雑な家庭の事情とかあったりします?」

照「ううん。普通にお母さんの仕事の事情」

京太郎「あっ、そうなんですね」

照「お母さんが一人で東京行くの寂しいからって、私がついて行った」

京太郎「なんでまたお姉さんがついて行ったんですか?」

照「そのときはまだ咲は小さかったし、お父さんもこっちで仕事があったから、私が行くしかなかった」

京太郎「へぇー、さすがはお姉さんですね」

照「そう、私はお姉ちゃんの鑑。私以上のお姉ちゃんはいない」ドヤァ

京太郎「でもその割には、咲からお姉さんのこと聞いたことないですが」

照「えっ、咲、私のこと話してないの?」

京太郎「えぇ、少なくとも俺はそうです」

照「えっ……嘘……なんで……ショック……」ショボボボン

京太郎「あっ……ま、まぁ、アレじゃないですかね?お姉さんインターハイ王者ですし、もしかしたら咲は、引け目みたいなの感じてたかもしれませんよ?」

照「本当にそんなことを思わせてたりしたなら、インターハイで手を抜けばよかった……」

京太郎「それはそれで余計に、咲はお姉さんのこと話さなくなると思いますよ」

京太郎「あっ、着きましたよ」

照「あっ、ほんとだ。京ちゃん、ありがとう」

京太郎「いえいえ、こんなのお安いご用ですよ」

照「お礼にこれ、あげる」

京太郎「えっ……なんですか、これ?」

照「てるてる坊主。それを私だと思って大事にして」

京太郎「大事にって、吊したりしたらダメってことですか?」

照「ダメ。ゼッタイ。そんなことしたら呪う」

京太郎「やけに怖いですね……具体的に、どう扱えば満足なんですか?」

照「具体的にいうと、毎日これにおいしいお菓子をお供えすればいい」

京太郎「あっはい、分かりました。ていうか、ホントお菓子好きなんですね」

照「うん。お菓子は素晴らしい。心を潤して満たしてくれる」

京太郎「まぁ麻雀って頭使いますもんね」

照「そう、そういうこと。それじゃあお別れだね。バイバイ京ちゃん。またね」フリフリ

京太郎「あっはい、また。さようなら」フリフリ

ヨクジツ

京太郎「あーあ、空から降ってきた巨乳でかわいい家庭的な女の子が、いきなり俺に惚れたりしねぇかなー」

咲「朝からなんてこと考えてるの、京ちゃん……爽やかさの欠片もないよ」

京太郎「あっ、おはよう。咲」

咲「おはよう、京ちゃん。昨日はごめんね、お姉ちゃんのお世話させちゃって」

京太郎「いや、別にいいよ。お前のお姉さん、良い人だったし」

咲「そっか、それならよかった」

京太郎「ていうかお前、なんでお姉さんがいるって言わなかったんだよ」

咲「えっ、あぁ……別に理由なんてないよ。ただタイミングがなかっただけ」

京太郎「引け目とか感じてたんじゃないのか?」

咲「あはは、そんなことないよ。麻雀はすごいけど、それ以外は普通のお姉ちゃんだもん」

京太郎「じゃあマジで、黙ってた理由は特にないのか?俺が簡単に聞いちゃいけないような、姉妹間の複雑な事情とかないんだな?」

咲「ないよ、そんなの。ていうか仮にあったとしても、京ちゃんにそんなこと言うわけないでしょ」

京太郎「咲の隠しごとを聞き出す方法くらい、俺にもあるぞ」

咲「へぇー、そんなのあるんだ……ちなみにどんな方法か、聞いておいてあげる」

京太郎「抱きしめて耳元で「俺のこと、信じてくれないのか?」って涙声で言う」

咲「えっ、そんなことしてくれるのっ!?」

京太郎「まぁ、隠しごとがあった場合はしてたかもな」

咲「じ、じゃああるよ!ていうかむしろ、隠しごとだらけだよっ!隠しごとといえば宮永咲だよっ!!」

京太郎「マジでホントに隠しごとだらけだったら、咲との友達付き合い考えるわ」

咲「あっ、じゃあないよ!隠しごとなんて、一つもないよっ!清廉潔白といえば宮永咲だよっ!!」

京太郎「いやお前、潔白ではあるかもしれないけど、清廉ではないじゃん」

今回は番外編です

照は多分本編には出ないのでこういう形になりました

これでご満足して頂けるとありがたいです

本編はもうしばらくかかります

お待たせいたしまして申し訳ございません

それではありがとうございました

純「なぁ、須賀。肉くれ肉」

透華「こらっ、純!食べ物をねだるだなんて、卑しいですわよ!ご自分の分で我慢なさい!」

純「いいじゃねぇかよ、ちょっとくらい。別に全部貰おうだなんて思ってねぇんだから」

京太郎「まぁまぁ、俺は別にかまいませんから……はい、どうぞ」

純「おう!……って、一切れだけかよ。マジでちょっとだな……まぁいいや、あんがと」

透華「純!頂いたのですから、もっとちゃんとしたお礼を述べなさい!まったくもう……須賀さん、誠に申し訳ございませんわ……」ペコリ

京太郎「いやいや、ホントに大丈夫ですから。俺、ここじゃ多分一番年下ですし、ついでに新入りでもありますし」

透華「たとえそうであっても、礼節は重んじるべきですわ!まったくもう……」

京太郎「そんな怒らないでくださいよ。折角のかわいい顔が台無しですよ?……いや、怒った顔も素敵ですね」キリッ

一「うわー……なんて典型的なセリフなの、須賀くん」

衣「よく笑いもせず、むしろ決め顔で言えるものだな……」

智紀「あんなセリフ……リアルに聞く日が来るとは、思ってもみなかった……」

純「ありえねぇよ、ありゃあ。鳥肌立っちまったじゃねぇか」

透華「も、もう!須賀さんったら、お上手ですわねっ!」ウフフ パシパシ

一「そんで間に受けちゃうもんねー、うちのご主人様は」

衣「衣ははなはだ、とーかが将来、男に騙されないかが心配だ……」

智紀「お嬢様として以前に、女として、男に対する警戒心が薄すぎ……」

純「これもう、女子校育ちってだけが理由じゃねぇよな」

京太郎「あの……この際だから言いますけど、俺まだみなさんの名前ちゃんと分からないんですよ」

透華「えっ」

衣「えっ」

純「えっ」

一「えっ」

智紀「えっ」

京太郎「だからその……言いにくいんですけど、自己紹介してくれるとありがたいです」

透華「えっ……じ、自己紹介がまだなんてそんな……」

衣「い、いやちょっと待て!とりあえず思い出してみようっ!」

純「あー……してねぇ。うん、少なくともオレはしてねぇわ」

一「……ボクもしてないや。うわぁ、うっかりしてたなぁ……」

智紀「その点私はもう十四、五年前に済ましてる……さすが私……出来る女……」ドヤァ

京太郎「えっ、俺らって自己紹介したっけ?」

智紀「……覚えてない……でもきっとしてる……なぜなら私は出来る女……」ドヤァ

京太郎「まぁ別にどっちでも、お前は今更自己紹介しなくてもいいぞ」

智紀「……それはそれで、なんか釈然としない……」

透華「す、須賀さん!この度は誠に申し訳ございませんわっ!!」ガタッ フカブカ

衣「須賀よ、実に申し訳ないっ!この非礼、なんとして詫びればよいかっ……!」ダンッ

一「須賀くん、ごめんね……ていうか、今まで名前で呼ばれなかった時点で気付くべきだよね……」ハァ

純「須賀、わりぃな。すまんすまん」

京太郎「あっいえ、別に怒ってるわけじゃないですから。謝らないでください」

透華「そうはおっしゃりましても、自己紹介をしていないのは、常識外れもいいところですわっ!」

京太郎「ま、まぁほら、面接の日はいろいろありましたし、忘れてても仕方ないっスよ」

純「とりあえず、今から自己紹介すりゃあいいんだろ?」

京太郎「あっはい、お願いします」

純「じゃあ……俺は井上純だ。まぁ、今更だけどよろしくな」スッ

京太郎「あっはい、よろしくお願いします、井上さん」ニギニギ

透華「で、では次は私が……私は龍門渕透華ですわ。もうご存知かと思いますが、この屋敷の主人ですの」スッ

京太郎「あっはい、どうもお世話になります、龍門渕さん」ニギニギ

衣「次は衣であるな……衣は天江衣だ。人よりすこしばかり小さくはあるが、れっきとした高校二年生だ」スッ

京太郎「あっはい、それはもう重々分かってます、天江さん」ニギニギ

一「最後はボクだね……ボクは国広一。ほっぺに星があるけど、別にジョースターの血族じゃないからね」スッ

京太郎「あっはい、丁度聞こうと思ってたんでありがたいです、国広さん」ニギニギ

智紀「ついでに私も……私は沢村智紀……ちなみに、裸眼視力は0.3……」クイッ メガネキランッ

京太郎「その情報はいらないぞ、サワムラー」

智紀「この流れでその呼び方とは、釈然としない……」

京太郎「じゃあ他にどう呼べばいいんだよ」

智紀「みんなみたいに、名字にさん付けすればいい……」

京太郎「なんかお前をそう呼ぶのは癪に障る」

智紀「私はあなたのその態度が癇に障る……」

京太郎「あっ、そうだ……みなさんってなにか、欲しいものとかありますか?」

透華「欲しいもの、ですの?なぜまた突然、そのようなことを?」

京太郎「いやまぁ、ちょっと気になって……特にこれといった理由はないですよ」

透華「左様ですの。欲しいもの、ですのね……」

智紀「私は希望が欲しい……光の届かない闇の奥地でも輝き続ける希望が……」

純「オレは夢だ。一生をかけてでも自分の全てを投げうってでも叶えたいほどの夢が」

一「ボクは勇気かな。絶望的な逆境の最中でも前を向いて進み出せる勇気が」

衣「衣は自由であるな。誰にも干渉されず全てを自らで決めねばならない痛みを伴う自由が」

透華「私は愛ですわね。万物を別け隔てることなく暖かく包み込める大いなる愛が」

京太郎「あの……もっと他にないですか?」

智紀「じゃあ運動神経……バク転とかしてみたい……」

純「だったら絵心だな。せめて人並にはなりてぇし」

一「それじゃあ器用さかな。手品師は器用であることに越したことはないからね」

衣「ならば身長だ!身長身長身長っっっ!!!!!!」

透華「でしたら超能力ですわね。使えたのならば、きっととっても便利ですわ」

京太郎「すみません、聞き方が悪かったですね……もっとこう、ちゃんと形としてあるものでお願いします」

透華「形としてあるもの……とおっしゃりますと、本当に物とおっしゃりますのね?」

京太郎「あっはい、そういうことです。それで出来れば、高校生でも気軽に買えるレベルだったらありがたいです」

智紀「なに……?もしかして、プレゼントしてくれるの……?」

京太郎「いや、そういうわけじゃねぇよ。ただ今時の女子高生が、どんなものを欲しがってるのか知りたいだけ」

一「ん……?それってつまり、気になる女の子になにかプレゼントしたいけど、なにをプレゼントしたらいいか分かんないから、ボクたちに聞いて参考にしようってこと?」

衣「ほうほう……須賀も色を知った、ということか」

透華「あらまっ!さ、左様ですの?」

純「おい、相手誰だよ?清澄のヤツか?えぇ?」

智紀「私も気になる……私のこの、お眼鏡に適う相手なのか……」メガネキランッ

京太郎「いやその、そういう相手は特にいないですから。あとそのギャグ、二回言うほどのものじゃないぞ」

一「ほんとに?じゃあなんで、ボクたちの欲しいものなんて聞くの?」

京太郎「興味とか好奇心みたいな感じですよ。それだけです。ていうかそう言ってるじゃないっスか」

一「……なーんか納得出来ないんだけど」

純「別に裏があってもよくね?秘密聞き出そうってわけでもないんだから」

透華「左様ですわね。むしろなにか裏がおありだったとしても、私たちの欲しいものをお聞きなさっているのですから、そこは逆にご期待してもおよろしいかと存じますわ」

一「まぁ……それもそうだね。疑っちゃってごめんね」

京太郎「いえいえ。まぁ唐突でしたし、仕方ないっちゃ仕方ないですよ」

衣「しかし、真に物でかつ高校生でも気軽に買えるもので、欲しいものと言われてもな……」

智紀「そうパッとは思い浮かばない……」

京太郎「あんな前置き並べた希望とか自由が、パッと思い浮かんだ人の台詞とは思えませんね。それは」

純「まぁオレは、食いものだったらなんでもいいぜ。ステーキだったらなおさらだ」

衣「なに?そういうものでもよいのか?ならば、衣はハンバーグとエビフライだっ!」

一「食べ物ならボクはパスタかな。あっ、スパゲッティじゃないよ」

智紀「激辛中華……本場、四川の味……」

透華「……あなたたち、そんなにも私の料理にご不満がありますのね」プイッ

純「あっ、いやマジで不満はねぇよ。ただなぁ……」

衣「いくらおいしい料理といえど、こう毎日同じではさすがに飽きてしまうものだ。我々は食事に対して、変化という名の刺激を求めておる」

一「まぁ……言いにくいけど衣の言うとおりだね。でも透華には感謝してるよ」

智紀「そう……私たちの透華に対する感謝は、空よりも高く、海よりも深い……」

京太郎「そういうことですから、機嫌直してください。龍門渕さんには、やっぱり笑顔でいてほしいですし」

透華「す、須賀さん……分かりましたわ。須賀さんがそこまでおっしゃるのならば、私も機嫌を損ねている場合ではありませんわね」ウフフ

純「おい待てコラッ!てめぇらコラッ!!どういうこったよそりゃ!?」ガタッ

衣「須賀っ!お前はなにを最後にいい所取りをしておるのだっ!!」ガタッ

一「透華も透華だよっ!ボクたちの言葉よりも、昨日今日会ったばかりの須賀くんの言葉のほうがなんで響いてるのさっ!!」ガタッ

智紀「わりと恥ずかしいこと言ったのに……許すまじ……!」ガタッ

透華「ちょっとした冗談ですわ。あのようなことをおっしゃられましたのに、少しも仕返しが出来ないだなんて癪ですもの」
 
透華「ですが、しかとあなたたちのお言葉も、私の五臓六腑に染み渡っていますわっ!」ビシィ

純「まぁ、それならいいけどよ……」ストンッ

衣「衣は最初から透華を信じておったぞ!」ストンッ

一「ボクも別に疑ってたわけじゃないからね?ほんとだからね?」ストンッ

智紀「今回は特別に許可します……」ストンッ

透華「ご納得頂いてなによりですわ。あっ、勿論須賀さんのお言葉も、ですわよ!」ビシィ

京太郎「ははっ、それならなによりです」

透華「しかし、あなたたちのおっしゃられることもごもっともですわね……私に洋食のレパートリーがあればおよろしいのですが……」

衣「ハギヨシがおれば、この問題もなんとかなるのだがな……」

京太郎「誰ですか?そのハギヨシって人」

純「ここで働いてる執事だ。なんでも出来るすげぇ万能な」

一「……うん。確かにそれ以外に、どう説明していいか分かんないね。とにかく素敵滅法なんだ」

京太郎「さらに謎が深まるばかりなんですが」

智紀「そんな万能素敵滅法執事も、爆弾には勝てなかったよ……」

京太郎「えっ、爆弾?おい、急にどうした?」

透華「実はつい最近……(キンクリ)ということがございましたの」

京太郎「」

京太郎「えっ、人間なんですか?」

衣「そうだ……と思う。ハギヨシも人の子だ。多分、恐らくは、きっと」

透華「ですが人間である、という確証はございませんわね」

純「改造人間だったりしてな。仮面ライダーみてぇな」

一「えっ、悪魔じゃないの?よく、あくまで執事ですからって言ってるし」

智紀「それなんて黒執事……私は宇宙人だと思う……」

京太郎「もし人間じゃないなら、改造人間でも悪魔でも宇宙人でもなんであろうと、もうほとんど関係ないと思うんですが」

透華「あっ、そうでしたわ!須賀さん、明日はなにかご用事などありまして?」

京太郎「いや、特になにもないですよ」

透華「でしたら明日、我々とともにハギヨシのお見舞いに行って頂けませんか?」

京太郎「あっはい、いいですよ。俺も会ってみたいですし」

京太郎(どんな筋肉モリモリマッチョマンなのか見てみたいし)

透華「あら、左様ですの!それはなによりですわっ!」

衣「これでハギヨシにも、須賀を紹介できるな!」

一「果たして須賀くんが、ハギヨシさんに認めてもらうことが出来るのか楽しみだね」

純「認められなかった場合はどうなるんだ?」

智紀「そりゃあもう、ハギヨシさんのなんかすごいパワーでやられて終わり……」

京太郎「おい、怖いこと言うなよ……だ、大丈夫ですよね?」

透華「えぇ、ご安心下さってかまいませんわ。ハギヨシはとても穏やかで、気立ての良い人物ですもの」

衣「それに須賀なら大丈夫だ!須賀がハギヨシに認められないなど、そんなことは万に一つもない!なんといっても須賀であるからなっ!!」

京太郎「あ、ありがとうございます……なんでそんな買いかぶられてるのか、ホントよく分かりませんけど……」

衣・純・一・智紀・京太郎「「「「「ごちそうさまでしたっ!」」」」」

透華「お粗末様でした、ですわ」

京太郎「食器、洗いましょうか?」

透華「あっ、いえいえ。そのままで結構ですわ。私がやりますので」

京太郎「いやいや、そういうわけには行きませんよ。ご飯作ってもらったのに、食器洗いまでなんて」

透華「でも……食洗機に入れるだけですわよ?」

京太郎「それでもですよ。むしろそれなら、俺も安心して出来ますし余計にやります」ガタッ

透華「左様ですの……では、お願いいたしましてもおよろしいでしょうか?」

京太郎「はい!どーんとお任せください!」ドンッ

透華「うふふ、頼もしいですわね。あっ、くれぐれも食器を落として、十数枚を割りましたり――」

衣「うぐっ!」グサッ

透華「食洗機を壊しましたり――」

純「うぐっ!」グサッ

透華「お台所を泡だらけにしましたり――」

一「うぐっ!」グサッ

透華「水道を壊し、屋敷を水浸しにしましたり――」

智紀「うぐっ!」グサッ

透華「などなどいたしませんよう、ご注意お願い申しあげますわね?」ウフフ

京太郎「あっはい……ていうか、そんなことしたんっスか、あなたたちは。料理できないどころの話じゃないっスよ」

京太郎「食器洗いが終わった。人間、やればできるもんだなぁ」

透華「あら?もうお済みになられましたの?」

京太郎「えぇまぁ……食洗機に入れて洗い終わるの待つだけですし……あと、食器しまったんですけど、これでよかったですか?」

透華「あらま、そこまで……えぇ、まったく問題ありませんわ。さすが須賀さんですわね」

京太郎「それならよかったです。それじゃあ……俺はそろそろ、荷物の整理してきますね」

透華「ここからお部屋まで、どうお行きになればおよろしいかお分かりですの?」

京太郎「あっ、どうでしょう……でもまぁ、大丈夫だと思います。迷っても歩いてれば着きますよ」

透華「そんなこともあろうかと、屋敷の地図をご用意しておきましたわ!」ババンッ

京太郎「えっ……それはまた、随分準備がいいですね」

透華「実はあの台詞を一度おっしゃってみたくて、ご用意しておきましたの。これで夢が一つ、叶いましたわ。須賀さんのおかげですわね」ウフフ

京太郎「それならなによりです。いまいち俺が、なにしたかは分かりませんけど……しかしこう、地図で見るとより広さを実感しますね」

透華「客観的に見ることができるから、でしょうか?」

京太郎「そうなんですかねぇ……まぁそもそも、家の地図があるって時点で、相当広い気もしますが」

京太郎「……このたまにある、青い扉と赤い扉ってなんですか?」

透華「あぁそれは、男女別で分けていますの。青は男性専用、赤は女性専用ですわ。実際の扉も、青と赤に色分けされていますの」

京太郎「へぇー、そうなんですか。じゃあ赤い扉の部屋には入れないんですね」

透華「いえ、絶対に異性禁制というわけではございませんわ。中にいらっしゃる方にご同意を頂けましたら、中へ入ってもおよろしいのですの」

京太郎「あっ、そうなんですね」

透華「えぇ。須賀さんのお仕事の都合上、赤い扉の部屋に入らなければならない場合もございますから」

京太郎「なるほど……分かりました。ありがとうございます」

京太郎「じゃあ地図ももらいましたし、部屋に行きますね」

透華「分かりましたわ。もしなにか、お分かりにならないことなどがございましたら、どうぞお気軽にお電話くださいな」

京太郎「はい、分かりました。それじゃあ失礼します。おやすみなさい」ペコリ

透華「えぇ。おやすみなさい、ですわ」フリフリ

透華「さて……私は、そろそろお風呂へ入ることにいたしましょうかしら」ガタッ

シバラクシテ

京太郎「おっ、ここだ俺の部屋。あっ、扉が青い。デザインじゃなかったのか、これ」ガチャリ

純「おう、遅かったな。待ちくたびれたぜ」

一「あっ、お邪魔してるよ。お構いなく」

智紀「自分の部屋だと思って、ゆっくりすればいい……」

京太郎「えっ」

京太郎「ちょっ、なんでいんの?」

純「おいおい、そりゃまた随分とご挨拶だな。えぇ?」

一「まぁ鍵が開いてたから、かな?」

智紀「閉まってたとしても、開けて入ってたけど……」

京太郎「誰一人、俺の質問にちゃんと答えてくれてないんですが」

今回はここまでです

お待たせいたして申し訳ございません

また明日の夜に来ます

それではありがとうございました

京太郎「……まぁこの際、もういるのはいいですよ。でもせめて許可取ってくださいよ。青い扉って女人禁制なんですよね?知ってるでしょ?」

純「まぁまぁ、そうカッカすんなって。お菓子やるから」スッ

京太郎「男子高校生がお菓子で釣られるわけないっスよ!」

一「なら仕方ない……万国旗出してあげるから落ち着きなよ」スーッ

京太郎「万国旗見たら落ち着くなんて聞いたことないっスよ!」

智紀「じゃあ……タブレットあげる……」スッ

京太郎「なら許す!全て水に流すっ!」

京太郎「……ってこれ、ウルトラブックじゃねぇか!さすがにもらえねぇよ!」

智紀「いいよ……もう使わないし……ていうか、直せないくらい壊れてるし……」

京太郎「じゃあこんなもんゴミじゃねぇか!!」

純「しっかしまぁ、テンションたけぇな。うぜぇ」

一「そうだね。須賀くんって、もっと大人しいと思ってたけどウザいんだね」

智紀「昔からそう……基本的にウザい……」

京太郎「ちょっと騒いだくらいで、それはひどくないですか!?俺だってヘコみますよっ!!」

純「だったらオレが叩いて直してやるよ」

一「やだ……純くんってSだったの?」ヒキッ

智紀「調教するつもりとは……思いもよらなかった……」ヒキッ

京太郎「正直……そういうの嫌いじゃないですよ、俺」キリッ

純「いや、なんで今の流れでそうなんだよ!?つーかお前、Mかよっ!?」

京太郎「で、ホントなにしに来たんですか?だべりに来ただけなんですか?」

一「ほんとは、須賀くんの荷物をチェックしに来たんだよ」

京太郎「俺の荷物をチェック?どういうことですか?」

智紀「いかがわしいものや、危険なものを持ち込んでいないか確認する……」

京太郎「そんなもんないぞ。服と学校で必要なものしか持ってきてないし」

純「そんな言葉でオレらが納得するわけないだろ。ホントはあるんだろ?な?」

京太郎「いやマジでないっスよ。いくら俺でも、そんなもん持ってきませんって」

一「これじゃあ、らちが明かないね……須賀くん、観念して荷物見せてくれないかな?」

智紀「ついでに、整理手伝ってあげるから……」

京太郎「うーん……まぁ、荷物見せるのはいいですよ。でも手伝うのは結構です」

純「えっ、手伝わなくてもいいのか?」

京太郎「だって食洗機壊したり、泡まみれにしたり、水浸しにしたような人たちに手伝ってもらうなんて、そんなの安心できませんよ」

一「いや、普段はもっとちゃんとしてるからね!?」

智紀「あれはここに来てすぐのこと……そこに色々な偶然が重なっただけ……不幸な事故……」

純「それに一回だけだぞ。オレたちがあんなことしでかしたのは」

京太郎「一回だけでも偶然でも、しでかしたことが問題だと思いますが」

一「ま、まぁ分かったよ……須賀くんがそこまで言うなら手伝わないから……でも、荷物は見させてもらうよ?」

京太郎「あっはい、それはどうぞ見てください」

一「それじゃ失礼して……どれどれ……」ガサゴソ

智紀「ふむふむ……」ガサゴソ

純「ほうほう……」ガサゴソ

京太郎「なんか……女の子がよってたかって荷物あさってるの見ると興奮しますね。それが自分のだと特に」

一「えっ、なにその特殊性癖……」

純「お前……それ以上言うと、オレの拳がうなるぞ?」

智紀「それは純粋に引くわ……」

京太郎「いいですねぇ、その目!その戸惑いで揺れる目で見られると、さらに俺の興奮がたk――」

純「ドゥルァッッッ!!!!!」ブンッ

京太郎「グァヘッ」バツンッ ドサッ

純「あぁ……うなっちまったぜ、オレの拳が」

京太郎「い、息が……こ、これ……マジなヤツだ……!!」ゴホッゴホッ

一「よかったね、一発だけで済んで」

智紀「残念でもないし当然……」

京太郎「も、もうちょっと……心配とかしてくれても……いいんじゃないですか……」ヘェハァ

京太郎「あー、まだちょっと痛むな……」サスサス

純「謝んねぇからな」プイッ

京太郎「あぁ、気にしなくていいですよ。むしろ、お礼を言ってもいいくらいです」キリッ

純「な、なんだお前……マジでMなのかよ……」

智紀「私の幼馴染みがこんなにMなわけがない……」

一「あっ、昔は違ってたんだね。……いやでも、まだ目覚めてなかったってだけじゃ……」

京太郎「それでどうです?なにか持ってきたらいけないものとかありました?」

純「えっ?あぁ……特にねぇな、そういうもんは」

智紀「ほんとに服と学校関係のものだけ……非常につまらない……」

一「でもさぁ……ボク、この服はいかがわしいものよりひどいと思うよ?」

京太郎「えっ、俺の服、ダメなんですか?」

一「いや、ダメっていうか……須賀くん、なんなのこの服?ふざけてるの?」

京太郎「えっ」

純「確かにこりゃひでぇな……でもこれ、全部家着だろ?まぁ家着にしたってひでぇけど」

京太郎「いや、ガンガンよそ行きなんですけど」

一「えっ」

純「えっ」

智紀「えっ」

京太郎「えっ、そんな驚くようなことですか?」

智紀「昔は、こんなんじゃなかったのに……どうして……」

京太郎「あぁ、あのときはまだ、親が用意してくれてたから」

一「えっ」

純「えっ」

智紀「えっ」

京太郎「いや、そこはそんな驚くところじゃないでしょ。小学生のときの話ですよ?」

一「須賀くん……よく一旦帰っても、制服のままで来てくれたね。ありがとう!」ガシッ

京太郎「えっ、そんな感謝されることですか?」

智紀「これはよくやったと言わざるを得ない……拍手を送ろう……!」パチパチパチッ

純「あぁ……でかしたな、須賀っ!」バンバンッ

京太郎「な、なんか照れますね……えへへ……」

一「でも別に褒めてるわけじゃないから、勘違いしないでね」

智紀「そう……最悪の事態を回避したことに対して感動してるだけ……」

純「おう、調子乗ってんなよ、須賀」

京太郎「また、すごい手のひら返しですね……ずっと空気だったのに、決勝点決めた途端に賞賛される、フォワードの評価みたいですよ」

一「そんなことより、ちょっと私服着てみてくれないかな?」

純「えっ、マジか国広くん。ど、度胸あるな……」

智紀「度を超えた冒険心は、身を滅ぼしかねないよ……?」

一「そうは言うけど、二人とも気になるでしょ?ほら、怖いもの見たさみたいな」

京太郎「怖いもの見たさってなんなんですか?俺の服、ハロウィンの衣装なんですか?」

一「それでどう?着てくれるかな?」

京太郎「着るのは別にいいですけど……釈然としないなぁ」ヌギヌギ

純「ちょっ!お前、脱ぐならオレら出てってからにしろよっ!」

京太郎「あっ、気にしないでいいですよ。俺も気にしませんし」ヌギヌギ

純「お、お前が気にしねぇからって、それだけの問題じゃねぇだろ!おらっ、行くぞお前らっ!!」ガシッ

一「えっ、あっ、ちょっ」ズルズル

智紀「な、なにも引きずらなくても……」ズルズル

純「須賀ぁ!てめぇ、ちゃんと着替えてから呼べよ!?フリじゃねぇからなっ!!」バタンッ

京太郎「なんとまぁ、ウブな反応を……新鮮だなぁ」

京太郎『着替え終わりましたよー』

純「はえーな、ホントにちゃんと着てんだろうな……」

一「純くん、疑いすぎじゃない?……ともきー、準備はできた?」

智紀「いつでもオーケー……何枚でも撮れる……」キラーン

純「そんじゃあ……そろそろ行くか」

一「う、うん……なんだろう、ドキドキしてきた」

智紀「た、ただ私服を見るだけなのに……張りつめた緊張感が……」

純「開けるぞ?いいな?……そぉい!」ガチャン

京太郎「あっ、どうですか?着てみましたけど」クネクネ

純「」

一「」

智紀「」カシャ

京太郎「そんな無言で写真撮っちゃうくらい魅力的なのかい?えぇ?」クネクネ

純「」ポロポロ

一「」ポロポロ

智紀「」ポロポロ

京太郎「えっ」

京太郎「えっ、な、なんで泣くんスか!?急にどこか痛くなりでもしたんですか!?」

純「あぁ……急に激しい痛みを訴えやがったぜ……心がなっ……!」ポロポロ

一「須賀くん、そんなっ……!……あぁ、誰か……これは悪い夢だと言ってっ……!」ポロポロ

智紀「ごめんなさい……!本当にごめんなさい……!私が全部悪いのっ……!許してほしいなんて思わないからぁっ……!」ポロポロ

京太郎「ちょっ、えっ、なにその反応……ど、どうしろっていうんだよ……」

純「須賀、すまん……もう一度制服に着替えてくれ……頼むっ……!」ポロポロ

一「このままじゃ……気持ちの整理がつかないよっ……!」ポロポロ

智紀「見てほしいなら見てるからっ……!だから早く、前のあなたに戻ってっ……!」ポロポロ

京太郎「いや、泣いてるヤツに見られてもな……」

智紀「じ、じゃあ出てく……!すぐ出てくからっ……!」ビューン ガチャン

純「お、オレも!こんな須賀を見るのは、もう耐えられないっ!」ビューン

一「ま、待ってよ!ボクだって、今すぐ逃げ出したいんだからっ!」ビューン バタンッ

京太郎「ひでぇ言われようだな、おい……」

京太郎『着替え終わりましたよー』

純「……ついに来たか……」

一「ははっ、見てよこれ……ボク、ずっと震えが止まらないんだ……」ガクガクブルブル

智紀「気持ちは分かる……でも、私たちはもう後戻りできない……逃げることは、出来ない……」ギュッ

純「……開けるぞ?いいな?……そぉい!」ガチャン

京太郎「あっ、どうです?やっぱり制服姿も魅力的でしょ?」クネクネ

一「あっ……い、いつもの須賀くんだっ!いつもの須賀くんがここにいるよっ!!」

純「あぁ~……なんか落ち着いたら、力が抜けたわ……」ヘナヘナ

智紀「なぜか……心なしか、ちょっとかっこよく見える……」

京太郎「おっ、なんだ?デレ期か?」

純「あぁ、確かに。いつも通りだけど、ちょっとシュッとして見えるな」

一「うん、そうだね……ちょっとキリッとして見えるね」

京太郎「えっ……な、なんかそう素直に褒められると、やっぱり照れますね」エヘヘ

智紀「でもこの感覚……前のテストで最下位の人が、次のテストで平均点取ったのを見たときの感覚に似てる……」

純「あぁうん!それだ、それだ!なんか感じたことあるなって思ってたんだよ!」

一「そうそう!「あっ、なんだ。やれば普通にできるじゃん」みたいなアレねっ!」

京太郎「上げて落とすなぁ、ホントに……そこは別に満点でいいじゃん、もう」

智紀「明日……お見舞いが終わったら、服を買おう……」

京太郎「えっ、服?誰の?」

純「察せよ、お前のに決まってんだろ」

京太郎「俺の?そんな大丈夫ですよ。これだけ持ってきたんですし」

一「須賀くんが持ってきた服、制服と下着以外、今から全部没収して捨てるよ」

京太郎「えっ」

純「まっ、仕方ねぇわな。堪忍してくれ」トントン

京太郎「えぇぇ……いくらダサいったって、奪い取り踏みにじるこたぁないでしょ……」

智紀「言い方悪すぎ……危険物を適切に処理するだけ……」

京太郎「それも大概じゃねぇか。なんだよ、危険物って……爆発でもすんのかよ、俺の服」

京太郎「あっでも、服を買いに行くって言っても、俺そんなにお金持ってませんよ?それでもある程度、数揃えられるもんなんですか?」

一「あっ、お金の心配はしなくていいよ。ボクたちが払うから」

京太郎「えっ……えっ?おっ……マジっスか?」

純「お前、見るからに顔変えんなよ……まぁ、無理矢理お前の服捨てるわけだし、それぐれぇはするよ」

京太郎「なんかすみません……ありがとうございます。でもそうか……じゃあ、どんな服買おうかな?」ウーン

智紀「あなたに服を選ぶ権利はない……調子に乗るなよ、等身大着せ替え人形風情が……」

京太郎「えっ」

一「そもそもあれだけ言われてどうしてまだ、自分に服を選べる権利があると思ってるの?ちょっと頭、おめでたすぎじゃない?」

京太郎「えっ」

純「須賀ぁ……お前マジいい加減にしろよ?んなクソみてぇなことに、オレらの金使わせるわけねぇだろ?あぁコラ?」

京太郎「……できればもうちょっと、穏やかに諭してもらえませんか?」

一「とにかく須賀くんは、服買うまで外出は制服だからね」

京太郎「それは別にいいんですけど、全部持ってかれたら家着すらないんですが」

純「じゃあ、オレの服貸してやるよ。オレのだったらサイズも合うだろ」

京太郎「えっ、いいんですか!?」ガタッ

智紀「ダメ……よくない……」

京太郎「えっ!?」

純「えっ」

一「ともきーの言う通りだよ、純くん!いくら図体の大きな男女だからって、男の子に自分の服を貸すだなんて、そんなの女子高生のすることじゃないよっ!」

智紀「しかも自分から言い出すなんて……女として枯れすぎ……」

純「お前らバシバシ言いにくいこと言ってくるな……須賀の気持ちがちょっと、分かっちまったじゃねぇか」

京太郎「あの、借りるのがダメだったら、今日全裸かパン一のどっちかしかないんですが」

一「うん、だとしたら選択肢は一つだよね。なんで全裸が選択肢に入ってるのかな?」

智紀「かと言って、パンツ一丁も問題ある……悩ましい問題……」

純「ならもう仕方ねぇ。須賀の服の中から、一番マシな組み合わせ見つけて、それを部屋着にするっきゃねぇな」

一「うわぁ……またこれ見なきゃいけないのか……なんかもう、目がシバシバしてきたよ」

智紀「こ、この中から……これは骨が折れる仕事になる……」

純「下手したら朝までかかるかもな……あー、まったくたりぃーなぁー!」

京太郎「そんなに嫌なら、そんなことしなきゃいいんじゃないですかね?もう俺が適当に選んで、それ着ますよ」

純・一・智紀「「「そんなこと、絶対に許さないっ!!!」」」

京太郎「まさか服選びの提案で、そんなプリキュアみたいなセリフを言われるとは思いませんでしたよ」

京太郎「それでどうです?決まりましたか?」

一「下は決まったけど、上がなかなか決まらないね……」

京太郎「下ってこのジーパンですか?部屋着にジーパンってどうなんですかね……?」

純「しゃあねぇだろ、マシなのこれしかねぇんだから。他のズボンはお前……な、なんなんだよこれ……」

京太郎「今更引かないでほしいんですが。もう散々漁ったあとじゃないですか」

智紀「むしろ、どうしてこの中にそのジーパンがあるのか……場違い感が半端ない……」

京太郎「ホントは違うズボン持ってこようと思ってたんだけど、洗濯中だったからそれしかなかったんだ」

一「いやー、グッジョブだね。須賀くんのお母さん」グッ

智紀「おばさんに対して、賞賛の気持ちしかわかない……拍手を送ろう……」パチパチパチッ

純「あぁ、まったくだ!感謝感激雨あられだぜ、こりゃあようっ!」

京太郎「……まぁ、親を褒められて悪い気はしませんけど、理由が納得行かないなぁ」

一「ていうか、普通のジーパン買えるセンスがあるのに、どうしてこうなったの?」

京太郎「それ、俺が選んで買ったヤツじゃないんですよ。清澄にいる幼馴染みが選んだヤツです」

智紀「は……?えっ、幼馴染み……?そんなの聞いてない……」

京太郎「だって別に言う必要ないだろ、そんなこと」

智紀「いや、そんなことはない……ホウレンソウ、とても大事……!」

純「つーかよ、一回普通のヤツと服買いに行ったんだろ?なのになんでひどいままなんだよ?」

京太郎「買いに行ったっていうか、店で渡されるんですよ。「私と出かけるときは、絶対これを着て!」って言われて」

智紀「ち、ちょっと待って……私……?えっ、女なの……?」

一「……ん?なんかその言い方、買いに行ったの一回だけじゃないように聞こえるんだけど」

京太郎「あっはい、そんなのが年一回くらいあります。毎回、「京ちゃん!買いものの季節だよっ!」って誘われて」

智紀「は……?き、京ちゃん……?えっ、ちょっ、なにそれ……」

純「へぇー、ちゃんとした幼馴染みじゃねぇか。大事にしろよ」

一「そうだね。その話を聞いただけでも、しっかりしたいい子だって分かるよ」

京太郎「あっ、ありがとうございます。まぁ実際の咲は、結構ぽんこつなんですけどね」ハハッ

智紀「な、名前呼び……嘘でしょ……私なんてまだ、サワムラーって呼ばれてるのに……蹴り技主体でもないのに……」

一「それじゃあまぁ……そろそろ話を戻して、部屋着の上を決めないとね」

純「だな。もういい加減時間もおせぇし、そろそろ決めねぇと明日に響く」

智紀「ま、待って……ちょっと色々衝撃的すぎて、まだ処理が追いついてない……ねぇ、どういうことなの……?」

京太郎「どういうことってなにが?」

智紀「だからその……清澄の幼馴染みのこと……どういうことなの……?」

京太郎「なぁ、それあとにしてくれないか?俺もとっとと服決めて、風呂入りたいんだよ」

智紀「えっ……もういい、分かった……」ムスー

一「うーん……あんまり首突っ込まないほうがいいかと思ってたけど、これじゃ逆効果だったかな……?」

純「ん?国広くん、どうかしたのか?」

一「あっ、大丈夫だよ。純くんには関係ない話だから」

純「……なんか、微妙にバカにされた気分なんだけど」

一「さてっ!それじゃあ気を取り直して、早く服を決めよう!」

京太郎「今、服選びどうなってるんですか?」

一「今は一人ずつこれがマシっていうのが決まってて、そこからどれに絞るかってところだね」

純「オレはこれだ」スッ

智紀「私はこれ……」スッ

一「ボクはこれだね」スッ

京太郎「うーん……なんかどれもピンと来ませんね」

一「まぁ来られたらそれはそれで困るんだけど……」

純「……なぁ須賀、お前この中だったら一番どれが着たい?」

京太郎「えっ、そうですねぇ……国広さんのヤツですかね」

一「えっ」

純「んじゃあ、国広くんのはなしだな」

京太郎「えっ」

一「そ、そんな……嘘でしょ……」ガクッ

京太郎「そ、そうですよ。どうしてですか?」

智紀「あなたのすこぶる悪いセンスが選んだものがいいわけがない……それくらい、言われなくても分かるべき……」

京太郎「あぁ……そういや散々言われてるな……なんで気付かなかったんだ、俺……」

一「ま、まさかそんな……ボクのセンスが一番須賀くんに近いだなんて……」

純「まぁ、国広くんのセンスもなかなかだからな……なぁ須賀、この二つだったら、どっちのが着たいんだ?」

京太郎「いくら俺でも、その質問にちゃんと答えるほどバカじゃないですよ」

純「……じゃあ、どっちのが嫌だ?」

京太郎「いや、質問逆にしても一緒ですからね」

智紀「もう純のでいい……それに決めよう……」

純「えっ……でもいいのか?お前」

智紀「別にこんなのどうでもいい……早く決めて終わりにしよう……」

純「お、おう……じゃあ須賀、お前の部屋着これだから」スッ

京太郎「あっはい……なんかわざわざすみません、みなさん」

一「いいよ別に、ただのおせっかいだしね」

純「そういうこったな。オレらが好きでやったことだ」

智紀「じゃあ私……お風呂入ってくるから……」スタスタ バタンッ

京太郎「えっ、ちょっ、俺も風呂……」

一「ありゃりゃ、ともきーご機嫌直角だねぇ……」

純「なぁ、どうしたんだ?アイツ」

京太郎「俺、なにかしました?……もしかしてあいつ怒らせるほど、俺ってダサいんですか?」

一「なんで二人とも、気持ち分かってあげられてないの……清澄の幼馴染みのことだよっ!」

純「清澄の幼馴染みって須賀のか?」

京太郎「咲のことですか?」

一「そうだよ、その咲って子のこと!随分気にしてたじゃん、ともきー」

京太郎「あぁ……まぁ確かに、なんか聞きたがってましたね。でもそんな気になるもんですか?」

一「君って大概めんどくさい子なんだね……それくらいは自分で考えなさいっ!」ビシィ

一「ほら、ボクたちもお風呂入るよ。ともきーのフォローしなきゃね」スクッ

純「お、おう……よく分かんねぇけど分かった」スクッ

一「須賀くんもお風呂入って、ちょっと落ち着いて考えてみれば?」

京太郎「えっ、こ、混浴ですかっ!?」ガタッ

純「なわけねぇだろ。女湯と男湯に分かれてるに決まってるだろ」

京太郎「クソォッ!どうせそんなこったろうと思ったよっ!!」ダンッ

一「そんな分かりきったこと、露骨に悔しがることじゃなくない?」

今回はここまでです

次回は未定です

またお待たせすることになると思います

申し訳ございません

それと訂正があります

「家着」の部分は全て「部屋着」と訂正いたします

それではありがとうございました

【ちょっとおまけ】

一「ところでさぁ、純くん。ズボンはどうかと思うよ?まぁ、デニムパンツをジーパンって言っちゃう、ボクが言えることじゃないかもしれないけど」

純「えっ?だって、ズボンはズボンじゃん。他に言い方ないだろ」

一「あるよ、パンツとかボトムスとかさ」

純「は?……いや、パンツは下着だろ?それにボトムスって、キリコ・キュービーかよ」

一「それでもパンツって呼ぶの!あと、ボトム『ズ』だからね?怒られるよ?」

純「誰に怒られるんだよ」

一「そりゃあ……なんか色んな人たちにだよ。とりあえず!女子高生なんだから、服の言い方くらいちゃんとしたほうがいいよ?」

純「……なぁ、国広くん。女子高生であることを気にするヤツが、自分のこと『オレ』って言うと思うか?」

一「……それもそうだね。まったくだよ」

京太郎「あと、キリコ・キュービ『ィ』ーですよ」

一「うわっ!い、いたの?」

京太郎「そりゃいますよ。俺も風呂入るんですから」

純「お前もかよ……細けぇなぁ、おい」

京太郎「むしろ細かいからこそ、ちゃんとしないといけないんですよ。ややこしいですが」

純「はぁ……ままならねぇもんだな……」

一「ところでさ、須賀くん。例の清澄の幼馴染みの子が選んだ服、まだ持ってきてるの?」

京太郎「いや、あのジーパン以外持ってきてませんよ」

純「お前……選んでくれた服くらい持ってきててやれよ」

京太郎「でも、俺のセンスじゃないんですもん。どうせならセンスに合った服を、持ってきたいじゃないですか」

一「うわぁ、なんだろ……すごく腹が立つ」

純「おう、歯ぁ食いしばれや須賀。鉄拳制裁だ」グググッ

京太郎「な、なんでですか!?理不尽ですよっ!!」

純のズボンの言い方と咲さんが選んだ服についてはこれでご納得いただけるとありがたいです

続きはまだ全く出来ていません

申し訳ございません

次の投稿時期は未定です

それではありがとうございました

京太郎「あーあ、混浴出来ると思ったのに……せめて、女子高生の味が染みたお湯を飲みたかったなぁ」

京太郎「……まぁいいやもう。後悔先に立たずだ」

京太郎「それで、えーっと……なんかやることあったかな?荷物はもう片付けたし……」

京太郎「あっそうだ、欲しいもの聞いたし、部長に連絡しないと」プルルルルルル ガチャ

京太郎「あっもしもし、部長。須賀ですが」スガダケニ

久『一体なによ、こんな時間に。嫌がらせ?』

京太郎「部長に嫌がらせするためだけに、電話するほど俺は暇じゃないですよ。ちゃんと別の理由もあります」

久『ちょっと待ちなさい。別の理由があるってことは、本来の理由はなんなのよ?』

京太郎「それは今はいいじゃないですか。ハハッ」

久『よくないわよ、もう!なに笑ってんのよ!』

京太郎「まぁまぁ……それで聞いておきましたよ、欲しいもの」

久『あら、そうなの?それはまぁ……ありがと。で、なにが欲しいって?』

京太郎「えっとねぇ……ステーキとハンバーグとエビフライとパスタと中華料理です」

久『えっ』

京太郎「あぁあと、パスタはスパゲッティじゃダメみたいです。中華も激辛のヤツがいいとか」

久『いや、ちょっ、ちょっと待って……な、なにそれ?』

京太郎「なにって、龍門渕のみなさんの欲しいものですが」

久『なんか私が思ってた感じと違うんだけど……』

京太郎「予想通りにならないから面白いんですよ。ほら、麻雀と同じです」

久『そうなのかもしれないけど、あなたに言われるとはらわたが煮えくり返るわね』

久『ていうか、手土産がそんなのってどうなの?』

京太郎「別にそんな、手土産にこだわらなくていいんじゃないですか?恩を返す形なんて、色々あると思いますし」

久『そうねぇ……でもどの道、どう用意すればいいか分かんないわ。ねぇ、どうすればいいの?』

京太郎「作ればいいんじゃないっスか?」

久『簡単に言うけど無理よ、そんなの。それにお邪魔するお宅の、お台所を借りるっていうのもねぇ……』

京太郎「じゃあ、どっかに食べに行っておごらりゃいいじゃないっスか」

久『やっぱりそれが、一番現実的なのかしら……ね、ねぇ、お店ってファミレスでも大丈夫かしら?』

京太郎「いやダメでしょ。せめて一つでも星とかないと」

久『えっ、ほ、星ぃっ!?むむむ無理よそんなのっ!!お、お金だってないし!!そそそそれにっ!!今からじゃ予約だって取れないでしょっ!?』

京太郎「部長!ガンバッ!!」

久『やめなさいよバカッ!そういう無責任な応援が、一番頭に来るのよ私はぁっ!!』

京太郎「じゃあどうしろっていうんですか?」

久『須賀くん!なんとかしなさいっ!!』

京太郎「俺、そういう無責任な命令が、一番頭に来るんですが」

京太郎「まぁでも、そんなに悩むんなら、もう全然違うのをプレゼントすればいいんじゃないですか?」

久『……全然違うのってなによぉ……?』

京太郎「もうマジでなんでもいいと思いますよ?よっぽどのものじゃない限り、ちゃんと喜んでくれますって」

久『よ、よっぽどなもの……め、メモ帳ってどうかしら?』

京太郎「まぁ……実用的ではありますよね」

久『ちなみに、白いチラシの裏をホッチキスでまとめたものなんだけど』

京太郎「あー、そりゃあよっぽどのものです。残念ですね」

久『えっ、じゃあダメなのっ!?そんな……一体どうすれば……』

京太郎「もう普通の菓子折りにしましょう。普通の」

久『えっ、でもそれじゃあ――』

京太郎「でももじゃあもない!菓子折り贈る!はい決定っ!!」

久『ちょっ、ちょっと待ちなさいよ!なに勝手に決めてんのよ!?』

京太郎「だってもう、強引にでも決めないと一生決まらないでしょ!はい、普通の菓子折りで決定!そして俺はもう寝るっ!!おやすみなさいっ!!」

久『だ、だからまt――』ブチッ

京太郎「……電話じゃなくてメールにすればよかったな……ダルいわ」

京太郎「まぁこれでぐっすり眠れるかも」

京太郎「ふぁ~あ……マジで寝よう。明日何時起きか分かんないけど、とりあえず寝坊しないようにしないと」

智紀「………………」ガチャバタン

京太郎「えっ」

智紀「話がある……」スタスタ

京太郎「えっ……えっ、なんなのいきなり?の、ノックしろよ」

智紀「必要ない……」ストン

京太郎「いや必要だから。全裸で寝るタイプかもしれないだろ、俺」

智紀「それはそれで、ちょっと興味がある……」

京太郎「えっ……じ、じゃあ見る?今」

智紀「今はそれどころじゃない……もっと重要な話がある……」

京太郎「えっ、重要な話?なんだよそれ」

智紀「あなたの清澄の幼馴染みのこと……」

京太郎「咲のことか?」

智紀「そう……なんなの……?」

京太郎「いや、なんなのってなんだよ。答えようがねぇよ」

智紀「どういう関係なの……?」

京太郎「どういう関係……まぁ同級生で部活も一緒の幼馴染みかな」

智紀「じゃあ、どれくらいの付き合いなの……?」

京太郎「俺がこっちに越してきてからだから……四年目?」

智紀「は……?四年目……?それだけなの……?」

京太郎「うん。中学からの付き合いだからそれくらい」

智紀「ほんとにそれだけ……?引っ越す前から私に隠れて、友情を育んでたりしてないの……?」

京太郎「マジで中学からだって。なんで疑ってんだよ」

智紀「それ、幼馴染みじゃなくない……?」

京太郎「えっ、そうなの?」

智紀「そう、確実にそう……それはただの中学からの友達……幼馴染みとは雲泥の差……」

京太郎「いやでも、咲が「もう私たちは、完璧に幼馴染みだねっ!」って言ってたぞ」

智紀「騙されてるから、それ……」

京太郎「まさか。俺が咲みたいなぽんこつに騙されるかよ。ハハッ」

智紀「その油断が、戦場では命取りになる……」

京太郎「大丈夫だよ。俺、多分弾当たんないタイプだから」

智紀「そのさなんとかって子に、はっきり言ってあげるべき……」

京太郎「咲な。二文字なんだから覚えてやれよ。言ってあげるってなにを?」

智紀「幼馴染みじゃないってこと……あなたの幼馴染みは、今までもこれからも私だけってことも……」

京太郎「えぇー、やだよそんなの。咲に怒られそうだし」

智紀「……いいから、言いなさい……」ムッ

京太郎「やーだよーだ」ベロベロバー

智紀「えいっ……」ベチンッ

京太郎「ブフッ」ガクンッ

智紀「聞き分けの悪い子は嫌い……」

京太郎「お、お前……いくらなんでも、舌出してるときはダメだろ……」ビリビリ

智紀「なんで私のいうことを聞いてくれないの……?」

京太郎「なんかとりあえずダメだろ。俺が言うようなことじゃない。あと、波風立たせたくないし」

智紀「なんでそういうとこは勘が鋭いの……セクハラ大魔神なのに……」

京太郎「おい、勘とセクハラ関係ないだろ」

智紀「そもそも……どうして、そんな関係になったの……?」

京太郎「どうしてって言われてもなぁ……気付いたらそうなってたんだよ」

智紀「それでもなにかきっかけはあるはず……思い出して……」

京太郎「きっかけねぇ……俺って、小学校卒業とほぼ同時に引っ越したじゃん?」

智紀「うん……」

京太郎「ってことは、中学に行っても友達とかいないじゃん?」

智紀「うん……まぁそうだと思う……」

京太郎「でまぁ、引っ越しとか初めてだったし、これからどうしようとか思ってたんだよ」

智紀「それで……?」

京太郎「それで……クラス見渡してみたら、誰とも話してなくて、ずっと本読んでるヤツがいたんだ。それが咲」

智紀「そこから、どうして仲良くなったの……?」

京太郎「最初は、咲も俺と同じで転校生だって思ってたんだよ。だからまず、転校生同士で仲良くなろうって思って話しかけたんだ」

智紀「転校生だったの……?」

京太郎「ううん、普通に友達がいなかっただけみたい。転校生と同じレベルで」

智紀「それって……ちょっと辛すぎない……?」

智紀「……ねぇ……その子、どんな子……?」

京太郎「どんな子……ぽんこつだけど麻雀がすげぇ強くて、物理的にほっとけないような子かな?よく分からん」

智紀「その紹介を聞いた私のほうが、よく分からないんだけど……」

京太郎「あと、お前とちょっと似てるかも」

智紀「えっ……ど、どこが……?」

京太郎「雰囲気とか?なんかまぁそんなの」

智紀「……どういうこと……?」

京太郎「さっき、ずっと本読んでるって言っただろ?お前もさぁ、ずっとゲームしてたり漫画読んでたりしてたじゃん?」

智紀「まぁ……否定はしない……」

京太郎「だからまぁ、そういうところが似てるなぁって。顔とか体つきとかは、全然似てないんだけど」

智紀「ふーん……」

京太郎「もしかしたら……俺が仲良くしようって思ったのも、お前と雰囲気似てたってのがあったからかもしれない」

智紀「……そうなんだ……ふふっ……」

京太郎「まぁ、お前みたいなヤツの扱いには慣れてたし」

智紀「例えそうでも、その言い方は腹が立つ……」

智紀「でも……これでちょっとすっきりした……」

京太郎「あっ、そうなの?機嫌直ったのか?」

智紀「まぁ、うん……それでも一つだけ、腑に落ちないことがまだある……」

京太郎「えっ、なんだよ?」

智紀「京ちゃんって、なに……?あと、なんで名前を呼び捨てなの……?」

京太郎「おい、二つじゃねぇか」

智紀「そんな細かいことはどうでもいい……早く質問に答えて……」

京太郎「さっきからさぁ、質問が漠然としてて、答えにくいんだよ」

智紀「……じゃあ、質問を変える……そう呼び合うようになったきっかけはなに……?」

京太郎「またきっかけか……そうだなぁ……」

京太郎「そういえば、中三のクラス分けのとき……」

ポワンポワンポワンポワーン

京太郎「よう、宮永」

咲「あっ、おはよう須賀くん」

京太郎「お前、もうクラス分け見た?」

咲「見たよ。私も須賀くんもどっちも三組」

京太郎「えっ、また一緒なのか。結局、三年間ずっと同じクラスだな」

咲「そうだね……また一年間、よろしくお願いします」ペコリ

京太郎「これはこれは、ご丁寧にどうも。こちらこそよろしく」ペコリ

咲「そ、それでね須賀くん……その……ちょっと頼みたいことがあるんだけど……」

京太郎「おう、なんだよ?」

咲「そ、そのっ!その……ね……き、今日から須賀くんのこと、京ちゃんって呼んでもいいかなっ!?」

京太郎「うん、いいよ」

咲「えっ、軽っ!?わ、私の一世一代の決心が……」

京太郎「別に呼び方なんて、そんなの好きにすればいいって思うし」

咲「そ、そうなんだ……じ、じゃあさ……私のことも、さ、咲って……呼んでくれない?」

京太郎「うん、分かった。いいよ」

咲「や、やっぱり軽い……なんかもう、悩んでた私がバカみたい……」

京太郎「今更なにそんなこと言ってんだよ。ハハッ」

咲「むっ!ちょっと、それどういう意味っ!?」

京太郎「まぁまぁ……ていうかそろそろ行こうぜ、咲」

咲「あっ……う、うん!それじゃあ行こっか……き、京……ちゃんっ!」

京太郎「お前さぁ、そんな恥ずかしがるなら、別に変えなくてもいいんじゃねぇの?」

咲「い、いいの!まだ慣れてないだけだからっ!これからすぐ慣れるから大丈夫っ!!」

ポワンポワンポワンポワーン

京太郎「ということがあったなぁ」

智紀「……なにその惚け話……ふざけてるの……?」

京太郎「いや、きっかけ聞かれたから答えただけなんですが」

智紀「それでも……やっぱりそんな話は聞きたくない……」

京太郎「じゃあどうしろっていうんだ」

智紀「努力すべき……」

京太郎「努力うんぬんでどうにかなる問題じゃねぇだろ」

智紀「あなたなら、やればできる……」

京太郎「龍門渕に来てから、やたら買いかぶられてるなぁ……」

智紀「……ねぇ……私もあなたのこと、前みたいに呼んでもいい……?」

京太郎「ん?いいよ。ていうか、そう呼んでなかったのか?」

智紀「うん……そう呼んでいいか分からなかったから……」

京太郎「今更そんなの、気にすることないだろ。好きにすりゃよかったのに」

智紀「じゃあ好きにする……京くんも私のこと、名前で呼んで……」

京太郎「おう、分かったよ。智紀」

智紀「……なんか違和感がすごい……」

京太郎「呼ばせておいて感想がそれなの?」

京太郎「ふぁ~あ……眠っ……俺もう寝るわ」

智紀「そう……それじゃあ私も……」ゴロン

京太郎「えっ、なにしてんの?」

智紀「眠ろうとしてる……おやすみ……」メガネスッ

京太郎「いやちょっと待て。えっ、なに?ここで寝る気なの?」

智紀「うん……悪い……?」

京太郎「いやお前、悪いどうこうよりそんなの間違いが起きるぞ。なんだ?それが望みなのか?」

智紀「そんなことは望んでない……もし、私を襲ったら、京くんの人生が終わることになる……」

京太郎「なんだよそれっ!それじゃあ期待させるようなことすんなよっ!!」

智紀「好きにしたらいいって言ったのは京くん……」

京太郎「違う!そういう意味じゃない!それなら俺も好きにするぞっ!!」

智紀「私はそんなこと言ってないからダメ……身から出た錆……」

京太郎「クソォォォォォォ!!!!!俺にはどうすることも出来ないのかっ……!?」ダンッ

智紀「もう諦めて一緒に寝るべき……ほら、早く……」

京太郎「……なぁ、乳首にデコピンするくらいは大丈夫だよな?」

智紀「なんでそれが、大丈夫だと思ってるの……ダメに決まってる……」

京太郎「まぁまぁいいだろ?ちょっとだけ……先っちょだけだから。先っちょだけ」

智紀「ゲスすぎ……もうほんと最低……信じられない……幻滅どころの話じゃない……生きてて恥ずかしくないの……?気持ちが悪い……」

京太郎「案外あっさりしてるな……もっと言ってくれてもいいんだぞっ!」

智紀「………………」

京太郎「……黙んなよ。虚しくなるだろ」

今回はここまで

展開が思いつかないのとバイオハザードばっかりしていたせいで遅れてしまいました

申し訳ございません

次回は未定ですがもう少し早く投稿出来ればいいなと思います

それではありがとうございました

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