ユーリ「俺、アスピオに引っ越すことにするわ」 リタ「へ?」(322)

■テイルズオブヴェスペリアが題材のssです。
■ユーリとリタのカップリングなので、嫌な方は戻る推奨
■エンディング後のお話で、なるべく原作に忠実になるよう書いてます。
■二人がくっつくまでの過程が非常に長い。とっとといちゃつけって人には向かない。
■エロ成分はありません。脳内補完でお願いします。
■一応創作キャラ(町の人など)はいますが、物語にはあまり絡んできません。
■矛盾点やらキャラ崩壊があったら申し訳ない。
■話自体は半分以上書き終わり、全て保存してあります。読みたいって言ってくれる人がいれば、どんどん投下していきます。
■もしも需要があったら後日ピクシブにも投稿する予定です。そっちのほうが読みやすいかも。


世界が星食みの危機から救われた後
ラピードは下町の番犬として
エステルは絵本作家として
カロルは凛々の明星の首領として
レイヴンは騎士団とギルドの橋渡し役として
パティには海精の牙の首領として
ジュディスはバウルと共に世界中を駆け巡る旅人として
フレンは騎士団長として
皆がそれぞれの道を自分で選び、自分の意思で歩いていた。
これは、そんな世界で共に同じ未来を歩んでいこうと決めた二人のお話

――――――帝都ザーフィアスの下町

ユーリ「大丈夫かよ、じいさん」

下町で暮らす長髪の青年、ユーリ・ローウェルは怪我をした老人を背負い歩いていた。

ハンクス「あいたたた・・・」

ユーリ「ほら、もうすぐじいさんの家だぞ」

ワピード「ワン!」

ハンクス「...すまないの」

――――

ユーリがつれてきた医者がハンクスの診療を開始して、10分ほどの時間が経過した。

医者「安心してください。
   歩けなくなる程の怪我じゃないですよ」

ユーリ「だとさ。
    よかったな、じいさん」

ラピード「ワン!」

医者「ただ、少しですが骨にヒビが入ってますね。
   なので2、3週間は安静にしてください。」

ハンクス「そうか。
     ありがとな、お医者さん」

医者「では私はこれで
   お大事に」

そう言って医者はハンクスの家を後にした。

ユーリ「...なんか浮かない顔してんな、じいさん」

ハンクス「...ちょっとな」

ハンクスはベッドに座りながら、うつむいている。

ユーリ「俺が手伝えることがあるかもしれねえから話してみな」

ハンクス「...実はの、わしの友人が今アスピオに訪れていると手紙で知らせてきたんじゃよ」

ユーリ「アスピオ? 帝都には来ないのか?」

ハンクス「いそがしい奴でのう。
     やつは数日後にはダングレストに戻らねばならんから、ザーフィアスには来られないんじゃよ」

ユーリ「それで、その友人がどうかしたのか?」

ハンクス「わしはそやつから金を借りておっての。
     未だに返しておらんのじゃ」

ユーリ「金? いったいいくら借りたんだ?」

ハンクス「5万ガルドじゃ」

ユーリ「...結構な額だな」

ハンクス「...昔困っておったときに助けてもらったんじゃ。
     やつは滅多に帝都の近くに来ないからの。
     なかなか会う機会が無くてな。
     ようやく返せると思ったらこのありさまじゃ」

ユーリ「つまり、そいつに金を返せないから浮かない顔をしてたと」

ハンクス「そういうわけじゃ。
     ものがものだけに、他人に頼むわけにもいかんから自分でも届けるしかないんじゃよ」

ユーリ「...その他人っていうのに俺も入ってるか?」

ハンクス「...まさかお前さん、わしの代わりに金を届けるつもりか?」

ユーリ「そういうわけだ。
    で、俺に頼む気はあるか?」

ハンクス「...お前さんのことは信頼しとるよ。
     だからといってあまり迷惑をかけるわけにもいかん」

ユーリ「気にすんなじいさん。
    ちょうどハルルとアスピオに住んでる仲間に会いにいこうかと思ってたしな」


ハンクス「そうか・・・
本当はあまり甘えたくないが、今を逃すと次はいつになるかわからんからの。
     頼んでもいいか、ユーリ」

ユーリ「任せときな。
    ラピード、俺が帰ってくるまでじいさんの世話を頼んでもいいか?」

ラピード「ワン!」

ハンクス「ありがとうな、二人とも」

ユーリ「俺が帰るまでくたばるんじゃねぇぞ、じいさん」

ハンクス「いいから黙って行ってこい」

――――

しばらくして、ユーリは出発の準備を整え帝都の門をくぐった。
町の外に出ると、まるで出発を祝福するように暖かい風がユーリを迎える。

ユーリ「(さてと、それじゃ行きますか。
    確かじいさんの友人は数日経ったら出発しちまうんだったな。
    ならハルルは帰りに寄るとして、先にアスピオに向かうか)」

こうして物語は始まった。

―――――学術閉鎖都市 アスピオ

ユーリはアスピオに到着し、宿屋にいるハンクスの友人を訪ねていた。

ハンクスの友人「そうか、ハンクスがか」

ハンクスの友人は、ハンクスと同様の年老いた男性だった。

ユーリ「ああ。確かに届けたぜ」

ハンクスの友人「あぁ、ありがとうな。
        あいつにもよろしく言っといてくれ」

ユーリは無事ハンクスの友人にお金を届け終わり、これからどうするか考えていた。

ユーリ「(さて、どうするか・・・
とりあえず、まずはリタの家に寄ってくか)」

リタとはアスピオに住む魔導師の少女、リタ・モルディオのことである。
かつてユーリは彼女を含む八名と一匹の仲間たちと共に旅をしていた。

ユーリ「確かこの家だったな
    おいリタ、いるかー?
    俺だ、ユーリだ」

ユーリはかつて訪れたリタの家の前に立ち、ドアをノックする。

ユーリ「(・・・返事がねぇな。

    どっかに出かけてるのか?
    あの引きこもりが珍しいこった)」

ユーリがそう思い、ドアから目を離した直後、一人の少女が勢いよく出てきた。
それと同時にドアは大きく開く。

ユーリ「うおっ!?」

ユーリはとっさに後ろへ飛び退いた。

ユーリ「危ねぇなぁ・・・」

リタ「あーごめんごめん。
   ってあんたユーリじゃない」

勢いよく出てきた少女はリタであった。

ユーリ「押し扉なんだから気をつけろよな...」

リタ「だからごめんって。
   で、何の用?
   私急いでるから手短にお願いね」

ユーリ「急いでるって・・・
    ん? 何だその大きい荷物は?
    遠出でもすんのか?」

リタは、大きく膨れたリュックを背負っている。

リタ「ちょっとコゴール砂漠にね」

ユーリ「コゴール砂漠って・・・
    まさか一人で行く気じゃないだろうな?」

リタ「あー・・・うん」

コゴール砂漠は気温が異常なほど高く、迷いやすい地形をしている。
その上魔物も存在しているため、非常に危険な場所である。

ユーリ「誰かに一緒に行ってもらおうとは思わなかったのか?」

ユーリは問い詰めるようにリタに言う。

リタ「・・・やることはただの植物の採取だから一人で大丈夫よ。
   それに同行者を探してる時間も惜しいし」

ユーリ「エステルには頼まなかったのか?
    すぐ近くに住んでるから、誘うのに大した時間もかからないだろ?」

リタ「今エステルはヨーデル殿下の補佐をやってるから、ハルルにいないの」

ユーリ「じゃあエステルは帝都にいるのか?」

リタ「いいえ、殿下と一緒にダングレストまで出張中だとか」

ユーリ「・・・ならエステルには頼めないか。
    とはいえ一人じゃ助けてくれるやつがいないだろ。
    もしものことがあったらどうするつもりだ」

リタ「大げさだっての。
   この私にもしものことがあるとでも思ってんの?」

リタはユーリたちと共に旅をし、様々な場所を巡った。
その経験は、幸か不幸かリタに1人でも危険な場所に行くことができるという自信をつけさせた。

ユーリ「自然をなめんなって言ったのはお前だろ」

リタ「・・・よくそんな昔の言葉覚えてるわね」
  
ユーリは無言でリタを睨みつける。
リタにはそれが話をそらすなというメッセージに感じられた。

リタ「・・・仕方がないじゃない。
   薬品の調合に必要な植物はあそこにしか生えてないんだから」

ユーリ「そんなもんより命のほうが大切だろうが・・・」

リタ「だから大げさだってば」

ユーリは呆れた顔をする。

ユーリ「・・・・・・はぁー
    仕方ねえ、ついていくか」

リタ「へ?」

ユーリ「だから、俺がコゴール砂漠までついていくって言ってるんだよ」

リタ「あ、あんた私に構ってる暇なんてあんの?」

ユーリ「ある」

リタ「・・・本当に?」

ユーリ「本当だ。
    丁度さっきやらなきゃいけないことをやり終えたとこだからな」

リタ「・・・まぁ、ついてきたいって言うなら別にいいけど」

ユーリの顔を見るのが恥ずかしいのか、リタは顔を横に向けながらそう言った。

ユーリ「決まりだな」

会話の後、二人はすぐにアスピオの出口へ向かった。

アスピオって最終戦前に洞窟が崩落して町がなくなってなかった??


記憶違いだったらごめん

――――

リタ「外も久しぶりね」

アスピオから出た直後、リタはそう呟きながら両手を頭上に伸ばし、深呼吸をする。

ユーリ「二人だけっていうのも少し心許ないな。
    他にも同行してくれそうなやつを探すか」

リタ「他って?
   がきんちょとおっさんは多忙なのか音信不通よ。
   ジュディスとパティは世界中巡っててどこにいるのかもわかんないし。
   フレンについてははあんたのほうが詳しいんじゃない?」

ユーリ「フレンは最近連絡がとれねえ。
    騎士団の再編で手一杯なんだろうな」

>15

いえ、そのとおりです。
書き忘れましたが、このssの中ではED後から半年程が過ぎ、ある程度アスピオの復興が進んでいます。
そのため、人が住めるまでに街が回復しています。
きちんと前もって書いておくべきでした。
ご指摘ありがとうございます。

>15
書き忘れましたが、私はゲームをプレイしてから数年経っていて、記憶が曖昧になっているかもしれません。
もう一度やりたいのですが、残念ながら現在PS3もXBOXも持っていません。
今回の投稿は、矛盾点や気に入らない点などを他の人にチェックしていただくという目的も兼ねています。
みなさんの意見を参考に書き直し、後日完全版を投稿しようと考えています。

リタ「犬は?」

ユーリ「ラピードにはしばらく下町を離れられない用事がある」

ユーリはラピードにハンクスの世話を頼んでいた。

リタ「・・・暇なのあんただけみたいね」

ユーリ「・・・仕方ねえな。
    俺とリタの二人で行くか」

リタ「(っ・・・二人!?)」

リタは動揺し、顔を赤くする。

ユーリ「とりあえずノール港まで行くか。
    あそこからノードポリカへの船があるんだって?」

リタ「・・・・・・」

ユーリ「リタ?」

リタ「・・・えっ、ああ。
   確かにあるわよ、船」

ユーリ「そんじゃ、行きますか」

―――――ノール港までの道中

リタ「(・・・二人旅だってのに全然動揺してないわね、こいつ
    今更驚くことでもないけど)」

二人だけの旅ということを意識してから、リタはしばらく動揺していた。
しかし、それとは対極に全く動じないユーリを見ているとそんな自分が馬鹿馬鹿しく思えた。

ユーリ「そういえばお前、俺たちと別れてから何をしてたんだ?」

リタ「アスピオの再建と魔道器に変わるものの発明よ。
   機械とか薬品とかね。
   そういうあんたは何してたの?」

ユーリ「帝都の下町で以前どおりの生活を送ってる」

リタ「また住所不定、無職の生活を送ってたの?」

ユーリ「その言い方はやめろ」

リタ「いい加減そのふらふらした生活はやめたほうがいいと思うけどね」

ユーリ「・・・しばらくしたらカロル先生のとこに戻るつもりだ。
    大体、生活ならお前も問題があるだろ。
    屋内にこもってばっかでないでちっとは外にでろ。
    軟弱になるぞ」

リタ「あんたみたいに肉体労働が専門じゃないから、このままでいいの」

そんな他愛のない会話を続けながら二人は歩き続けた。

~小ネタ~

リタ「あんたってなんで全身黒の服装なの?」

ユーリ「汚れが目立たないから」

リタ「なんで長髪なの?」

ユーリ「切るのが面倒だから」

リタ「あんたってダメ人間ね」

ユーリ「風呂入ってから言え」

―――――コゴール砂漠

二人は長い時間をかけ、コゴール砂漠に到着した。

リタ「採取完了っと」

コゴール砂漠に着いた二人は、順調に植物の採取を進めていた。

ユーリ「なんかやけに魔物が少ないな。
    おかげで苦労せずに済んだが」

リタ「だから一人でも大丈夫って言ったでしょ。
   ・・・よし、これだけあれば十分ね」

リタは採取した植物を保存用の容器に入れた後、そう呟いた。

ユーリ「終わったんならとっとと帰ろうぜ。
    こんなとこに長居は無用だ」

ユーリは砂漠の高い気温によって疲労していた。

リタ「分かってるわよ」

それはリタも同様であった。

―――――水と黄砂の町 マンタイク

ユーリたちは植物の採取を終えた後、マンタイクの宿屋に宿泊していた。

ユーリ「おいリタ、飯ができたぞ」

ユーリは夕飯ができあがったことを知らせるため、リタの部屋を訪ねていた。

ユーリ「リタ、聞いてるか?」

何度呼びかけても、リタから返事は返ってこない。

ユーリ「・・・ったく、入るぞ! リタ」

そう言ってユーリはリタの部屋に入る。
それと同時にベッドで横になっているリタがユーリの目に映った。

ユーリ「なんだ、もう寝ちまったのかよ。
    ・・・一応声はかけてみるか」

ユーリはリタのすぐ隣まで歩み寄る。

ユーリ「おい、リタ
    飯が―――」

言葉を発した直後、ユーリはリタの異常に気づく。
顔が赤く、額に汗をかき、息は荒く、苦しそうな表情を浮かべている。

ユーリ「おい! 大丈夫かリタ!
    どうしたんだ!?」

リタからの返事は無い。

ユーリ「・・・くそっ
    待ってろ、すぐに医者を呼んでくる」

ユーリは全速力で医者を探しに行く。

ユーリ「おい、リタ
    飯が―――」

言葉を発した直後、ユーリはリタの異常に気づく。
顔が赤く、額に汗をかき、息は荒く、苦しそうな表情を浮かべている。

ユーリ「おい! 大丈夫かリタ!
    どうしたんだ!?」

リタからの返事は無い。

ユーリ「・・・くそっ
    待ってろ、すぐに医者を呼んでくる」

ユーリは全速力で医者を探しに行く。

ユーリは呼んだ医者に、リタの様子を見てもらっていた。

ユーリ「・・・リタは大丈夫なのか?」

医者「・・・あんたたち、コゴール砂漠に入ったのか?」

ユーリ「ああ、植物を取りに中央部まで行った。」

医者「・・・間違いなさそうだな」

医者は苦虫を噛んだような顔で言う。

ユーリ「どういうことだ?」

医者「・・・最近新種のサソリがコゴール砂漠で繁殖しているらしくてな。
   この嬢ちゃんはそいつに刺されたんだよ」

ユーリ「・・・サソリに刺された?
    リタはそんなこと一言も言ってないぞ」

医者「刺されたって感じなかったんだろうな。
   タチの悪いことに、繁殖したのは数センチの小さなサソリなんだ。
   針はもっと小さいから、痛みを感じにくい部分に刺されたら、気づかないこともある」

ユーリ「(砂漠の魔物の数がやけに少なかったのは、そのサソリの影響か?...)」

違和感を感じた時点で、一度砂漠から引き返すべきだったとユーリは自分を責める。

ユーリ「・・・このまま症状が悪化するとどうなるんだ?」

医者「ほぼ間違いなく死ぬ」

ユーリ「!?」

一瞬、ユーリの頭の中が真っ白になる。

ユーリ「治るのか!?」

医者「なんせ新種だからな・・・
市販のポイズンボトルじゃまず治らない」

ユーリ「どうすればいい!?」

医者「実は薬自体は完成してるんだ。
   ただ、最悪なことに今は在庫が切れている」

ユーリ「どこにいけば手に入る!?」

医者「ここから一番近いところでノードポリカだ。
   すぐに町までの馬車を手配しよう」

ユーリ「・・・恩に着る」

医者「急いだほうがいい。
   嬢ちゃんの体力だと3日ともたないかもしれん・・・」

――――

診療を終えた後、ユーリは早急にリタを背負いで馬車に乗った。

ユーリ「耐えてくれよ、リタ」

リタ「うぅ・・・」

ユーリはリタを馬車の荷台に寝かし、御者に出発の準備が整ったことを伝える。

医者「気をつけて行くんだぞ」

ユーリ「世話になった」

ユーリはリタと共に馬車の荷台の上に乗る。

――――

診療を終えた後、ユーリは早急にリタを背負いで馬車に乗った。

ユーリ「耐えてくれよ、リタ」

リタ「うぅ・・・」

ユーリはリタを馬車の荷台に寝かし、御者に出発の準備が整ったことを伝える。

医者「気をつけて行くんだぞ」

ユーリ「世話になった」

ユーリはリタと共に馬車の荷台の上に乗る。

御者「よし、出るぞ」

ユーリ「頼む」

馬車は全速力でノードポリカへ続く道を走る。
そんな中、ユーリはひたすら自分を責め続ける。
軽率であった、怠惰であった、傲慢であったと。
後悔の念は尽きない。
だが、一つだけ後悔せずにすんだことがある。
それは、リタを一人で行かせなかったということ。

―――――ノードポリカまでの道中

御者「あと三、四時間で着くぞ!」

馬車は休まず走り続け、ついにノードポリカの近くまで来た。

ユーリ「よし、踏ん張れよリタ!
    あと少しだからな!」

今まで暗かったユーリの表情は、明るさを取り戻す。

御者「・・・嘘だろ」

しかし、その明るさはすぐに消え失せることとなる。

ユーリ「どうした?」

御者「空を見てみな・・・」

ユーリが空を見上げると黒い巨大な雷雲が近づいていた。

御者「・・・悪いが雨になったら速度は下げざるを得ないぜ。
   地面が滑りやすくなるからな。
   全力疾走中に転倒したら、荷台も馬も使い物にならなくなるかもしれねえからな」

ユーリ「くっ・・・」

ユーリたちをあざ笑うかのように雷雲はうなりをあげる。

ユーリ「くそっ!・・・」

ユーリは雷雲を睨みつける。

御者「できるだけ急ぐが、雨が降ってきたらどうしても速度は下げなきゃいけねぇ。
   すまねえな兄ちゃん」

そして雷雲を見た数十分後、冷たい大雨が降る。
天に見放され、落胆するユーリ
しかし容赦なく、さらなる不幸がユーリたちを襲う。

――――

ズゴオオオオォ!!!

御者「うおぉぉ!?」

ユーリ「なにっ!?」

轟音と共に馬車の目の前にある木に雷が落ちる。
それと同時に、馬車の行く手を阻むよう木が倒れ落ちる。

御者「危ねぇっ!」

御者はとっさに手綱を引く。
それと同時に馬車は激しく転倒する。
転倒した衝撃で荷台は壊れ、全員が地面に投げ出された。

御者「いってぇ・・・
大丈夫か兄ちゃん?」

ユーリ「・・・なんとか。
    リタは・・・
    リタは大丈夫か?」

ユーリは辺りを見回す。

リタ「ううぅ・・・」

ユーリ「リタ!」

幸いにもリタはユーリの近くにいた。

ユーリ「・・・息はあるな。
    良かった、本当に・・・」

ユーリはリタの顔についた泥をやさしく手で払う。

御者「悪いな兄ちゃん・・・
   馬が足を痛めちまった。しばらくは歩くことすらできねぇ。
   ・・・もう嬢ちゃんを運んでやれねぇ」

御者はそう言った後、強く握りしめた拳を地面に叩きつける。

ユーリ「・・・俺が運ぶ」

御者「えっ?」

ユーリ「俺が背負っていく」

御者「この悪天候の中をか!?
   まだノードポリカまで80km近くあるんだぞ!」

ユーリ「他に方法はねえ・・・」

御者「・・・・・・そうだな、今はそれしかないか。

   俺はここで待つ。
   もし後ろから馬車やら騎手やらが来たら、兄ちゃんたちを拾ってくれるよう頼んでみる。
・・・気をつけて行けよ」


ユーリ「ああ。
    世話になった」

ユーリは冷えきったリタを背負い、全力で走り出す。
一秒でも早くノードポリカへ着くために。

――――――謎の暗闇の中

リタ「(・・・ここはどこ?・・・暗い)」

リタは暗闇の中、一人佇んでいた。

リタ「(・・・どこまで続いてるの、この暗闇)」

どれだけ周囲を見回しても、一点の光もない。
それどころか、リタ以外の存在が無いように感じられた。

リタ「(・・・なんなのよ、ここ)」

歩けど歩けど何も見えてこない。

リタ「(・・・本も実験器具もない・・・知り合いも友人もいない)」

リタは活力を失い、その場に倒れこむ。

リタ「(・・・なんだか眠いわね。
    もう寝ようかな。
    なんとなく眠ればここか脱出できる気がするし)」

リタが目を閉じようとしたそのとき、どこからともなく声が聞こえてきた。

・・・お・・・リ・・・!

リタ「(...ん?)」

・・・しっか・・・ろ・・・タ!

リタ「(...誰かが叫んでる?)」

リタは立ち上がり、声がするほうへ歩みだした。

・・・目を覚ま・・・リタ!

リタ「(...この声、聞き覚えがある?)」

・・・リ・・・!・・・リタ!

リタ「(そうだ、この声は...)」

・・・リタ!・・・リタ!

リタ「・・・ユーリ?」

そう呟きながら、リタは目覚めた。


――――

――――

ユーリ「リタ!!
    目が覚めたのか!」

リタ「・・・・・・ここは?」

リタは見覚えがない寝室のベッドの中にいた。

ユーリ「良かった・・・良かった・・・」

そう呟きながら、すぐ隣に立っていたユーリはその場に倒れこむ。

リタ「ちょっ、ユーリ!
   どうしたの、一体?」

ユーリ「・・・すぅ・・・すぅ」

ユーリは寝息を立てていた。

リタ「・・・何で寝てんのよ、こいつ」

???「むしろ今まで起きてたほうが不思議だよ」

リタ「!?」

見知らぬ男性が突然寝室の入り口に現れ、リタは驚く。

リタ「あ、あんた誰!?」

???「私は医者だよ。
    ノードポリカのね」

リタ「医者?
   ・・・ってかなんで私たちノードポリカにいんの?」

医者「・・・そこで寝てる彼の代わりに説明するよ」

―――――闘技場都市 ノードポリカ

医者「――というわけだ」

リタは医者から今に至るまでの経緯を聞いた。

医者「大したものだよ、この青年は。
   あの大雨の中、君を担いで何10kmも走り続けたんだからね」

医者はリタがいる寝室にあるもう一つのベッドにユーリを寝かせる。

リタ「...」

医者「しかも走り終えた後、彼は君が目覚めるまで眠らない、ずっと傍にいると言ったんだ。
   さすがに泥だらけの体は不衛生だから、体を洗ってから君の寝室に入ってもらったけどね」

医者は立ちながらゆっくりと語る。

リタ「そう...」

医者「感謝するんだよ。
   彼がいなかったら今頃君は生きていない」

リタ「...ええ。
   あんた...じゃない、あなたも助けてくれてありがとう」

医者「どういたしまして」

――――

ユーリ「...っリタ!!」

リタ「びっくりするから人の名前叫びながら起きないでよ...
   おはよう、ユーリ」

ユーリはあれから眠り続け、半日後に目を覚ました。
窓からは朝日が差している。

ユーリ「リタ!...
    良かった、無事だったか」

ユーリは起き上がり、リタがいるベッドのすぐ近くまで駆け寄る。

リタ「まあね。
   ...お医者さんから今まで何があったか聞いたわ。
   なんか悪かったわね、迷惑かけちゃったみたいで」

リタは下を向きながら言う。

ユーリ「...全くだ。
    体調はどうだ?」

リタ「大丈夫よ。
   全快だわ」

ユーリ「本当か?
    無理はするなよ」

リタ「本当だって」

何度リタが大丈夫と言っても、ユーリは安心することができなかった。

ユーリ「(もう後悔はしたくないからな...)」

ユーリは医者を呼び、リタに異常がないか徹底的に調べてくれと頼んだ。
医者はリタの診療を始め、十分ほどで終えた。

医者「...心配ないね。
   快調だ」

リタ「ほらね」

ユーリ「(...良かった)」

――――

リタとユーリは医者と共に、ノードポリカにある診療所の出口にいた。

ユーリ「世話になった」

リタ「ありがとう」

医者「どういたしまして。
   もう二度と危ない場所に近づくんじゃないよ」

ユーリ「だとさ」

ユーリはリタを見る。

リタ「わかったわよ。
   近づかないわよ・・・できるだけ」

ユーリ「・・・・・・・」

ユーリの冷たい視線から逃げるようにリタは歩き出す。
故郷であるアスピオに向かって。

―――――学術閉鎖都市 アスピオ

リタ「ここまで長かったわ」

ユーリ「まったくだ」

アスピオに到着したユーリたちは、まっすぐにリタの家に向かう。

リタ「愛しの我が家にようやく帰ってこれた」

ユーリ「それはめでたいことで」

リタはドアを開け、自宅に入る。

リタ「あがっていきなさいよ。
   お茶くらい入れるわ」

ユーリ「それじゃあ、遠慮なく」

リタ「っと、その前に」

リタはコゴール砂漠で採取した植物を取り出す。

リタ「先にこれを片付けないとね」

ユーリ「俺をもてなすよりも、それを片付ける方が優先なんだな・・・」

リタ「仕方ないでしょ。
   今までの苦労はこれのためだったんだから」

――――

ユーリ「なかなかいけるな、このお茶」

リタ「気に入ってもらえたようで良かった」

ユーリとリタは椅子に腰掛け、お茶を飲んでいた。

ユーリ「ところで」

リタ「ん?」

ユーリ「お前、これからも研究のためなら危険な場所に行くつもりか?」

リタ「・・・」

ユーリ「無言は肯定ってことでいいんだな」

リタは、ばつがわるそうな顔を下に向ける。

リタ「仕方が無いじゃない。
   これが私の生きがいなんだもの・・・」

ユーリはため息をつく。

ユーリ「・・・止めろとは言わねえよ。
    ただ、一人で危険な場所に行くのは絶対に避けろ」

リタ「・・・分かったわよ」

もしもリタが一人で砂漠に行っていれば、リタは間違いなく死んでいた。
そう思うリタは、ユーリの言葉に素直に従う。

ユーリ「約束だからな」

リタ「はいはい、約束します」

リタは少し面倒くさそうに返事をした。
リタのその返事は、ユーリを少しいらつかせた。

ユーリ「・・・約束を破ったらフレンに頼んで騎士団にお前を監視してもらう」

リタ「なっ!」

リタは思わず立ち上がる。

ユーリ「どうした」

リタ「何よそれ! そんな束縛された生活嫌よ!」

ユーリ「約束を守ればいいだけの話だろ」

リタ「う・・・」

ユーリ「なんだ?
    ハナから約束なんか破る気だったのか?」

リタ「・・・違うわよ。
   ・・・いいわ、それで構わない」

リタは破ったときの罰も聞かずに約束をしたことを後悔した。

――――

それから約30分の時間が経過した。

ユーリ「さてと、そろそろ下町に戻るかな」

ユーリは立ち上がる。

リタ「もう行くの?
   もう少しくつろいでいけば?」

ユーリ「そうしたいところだが、一応俺がした仕事の報告を待ってるやつがいるんでね。
    あんまり待たせすぎるのも悪いからな」

リタ「そう・・・」

リタは少し暗い顔をした。

ユーリ「おっ、なんだ?
    寂しいのか」

リタ「っ!」

リタの顔が少し赤くなる。

ユーリ「図星か?」

ユーリはにやにやと笑みを浮かべている。

リタ「・・・そんなわけないでしょ。
   バカっぽい」

ユーリ「そりゃ残念」

―――――

ユーリはリタの家の出口に立っていた。

ユーリ「それじゃ、またな」

リタ「うん、また」

ユーリはリタに背を向け、歩き出す。

リタ「・・・ユーリ!」

ユーリ「ん?」

リタはユーリを呼び止める。
そして

リタ「・・・一緒に来てくれて、ありがとう」

ユーリ「・・・どういたしまして」

旅の間、リタはずっと言いたかった言葉をようやく口にした。

~小ネタ~

ユーリ「なぁ、リタ」

リタ「なに?」

ユーリ「帝都にモルディオの屋敷ってのがあるんだが、
    あれはお前とは無関係なのか?」

リタ「あーあれね。
   騎士団のお偉いさんが私が帝都で研究するための場所として提供したのよ」

ユーリ「!!」

リタ「私はアスピオのほうが居心地がよかったから、住まなかったんだけどね。
   結局空き家同然になったわけよ」

ユーリ「・・・・・・どうして!!」

リタ「なっなによ?」

ユーリ「住んでないならどうして俺にくれなかった!?」

リタ「・・・・・・」

ユーリ「せめて貸してくれてもよかっただろう!」

リタ「・・・一生家なしで生活してろ」

ここまでで第一部完です。
書きあがってるのは第三部までですが、第六部まで作る予定です。
二人がくっつくのは第五部くらいになると思います。
需要があればこれ以降も投下しますが、ないようならここまでで打ちきりにしようかと考えています



需要はここにありというか俺得過ぎて困る

テイルズのssたぁ、久々だな。
ヴェスペリアではユリリタが一番好きだから嬉しいわ。二番目にユリジュディね。

>62
コメントありがとうございます。
一人でも読みたいという方がおられるなら、どれだけ叩かれても投稿は続けます。
自分と同じようにユリリタが好きな人がいる限り、頑張ります。

>63
自分もユリリタが大好きです。
いつまでたってもヴェスペリア2が出ないから、自己完結するために今回のssを書きました。

俺もテイルズではユリリタに一番ハマってたわ。懐かしい

需要はもちろんあるぜ

どうやら読んでくださる方々がいるようなので、最終部まで投稿を続けたいと思います。
とりあえず今日一日で第三部まで投下します。
半角スペースが消されたり、点が小さくて読みにくい部分もあるみたいなので修正を加えてから投下します。
また、皆さんから指摘された矛盾点などを修正した完全版も、後日投下していきます。

>65
コメントありがとうございます。
自分と同じようにユリリタ好きの方がいてくれて嬉しいです。
何度でも言いますが、読みたい人がいる限り投稿は続けます。

ある程度修正が終わったので、第二部を投下していきます。

―――――帝都 ザーフィアス

帝都ザーフィアスの下町には宿がある。
その宿の屋根の上に一人の青年と一匹の犬が立っていた。

ユーリ「なぁ、ラピード」

ラピード「ワウ?」

ユーリ「下町も平和になったよな」

ラピード「ワン」

ユーリ「フレンが騎士団長になってから嘘みたいに治安は良くなった。
    もう、俺がいなくてもこの町は大丈夫だ。
    そう思うだろ? ラピード」

ラピード「ワゥ・・・」

ユーリ「旅に出ようと思う。
    お前も来るか? ラピード」

ラピード「ワウ、ワウ」

ラピードは首を振る。

ユーリ「ん? 下町を離れたくないのか?」

ユーリがそう言った瞬間、ラピードは屋根から飛び下りた。
ユーリが屋根から地面を見下ろすと、そこにはラピードとラピードに寄り添う犬がいた。

ユーリ「・・・いつの間に身を固めたんだよ。
    お前も隅に置けねえな」

ユーリは屋根から飛び降り、ラピードの方を向く。

ラピード「クゥン...」

ユーリ「わかってるっての。
    旦那がふらふら旅してたら嫁さん泣いちまうからな」

ラピード「ワン」

ユーリ「いつか戻ってくる。
    またな、ラピード」

ラピード「ワン!」

ユーリは旅立つ。

―――――学術都市 アスピオ

リタ「よーし、読破っと」

そういいながら、また一段リタは本の山を積みあげる。
リタはユーリと別れた後、相変わらず家にこもって読書と研究漬けの日々を送っていた。

リタ「さてと、今からどうしようっかな」

――――屋内にこもってばっかでないでちっとは外にでろ
ふと、ユーリの言葉がリタの頭に浮かんだ。

リタ「・・・余計なお世話だっての。
   でもまぁ、気分転換に散歩してみるのも悪くないかもね」

リタは家から外に出てしばらく歩いた。
すると、ある魔道師たちの会話が耳に入った。

魔導師1「なぁ、知ってるか?
最近クオイの森で発見された遺跡のこと」

魔導師2「ああ。
     二、三日後には騎士団が正式に調査しにいくらしいな」

リタは会話の内容が気になり、魔道師たちに歩み寄る。

リタ「・・・ねぇ、その話詳しく聞かせてもらえる?」

―――――

リタ「なるほど、地下に遺跡ね」

魔道師1「らしいぜ。
    最近見つかったとか」

リタ「二、三日後には騎士団が調査しに来るのね?」
    
魔道師2「あぁ、それは確かだ」

リタ「(・・・騎士団のやつら、私に黙って行くなんて腹立つわね。
    まあ前に同行を拒んだ私も悪いけど)」

リタはかつて、フレンがとある遺跡を調査するため自分に同行を依頼し、それを拒んだことを思い出す。
リタはそのとき、フレンのことをほとんど知らなかったが。

リタ「ありがと、いいこと聞かせてもらったわ」

そういってリタは足早にその場を去る。

魔道師2「調査って言うか視察だけどな。
    遺跡の中に入るのはその一週間後くらいになるんじゃねえかな。
    ってもう聞いてねえか」

―――――リタの家

リタは自宅にて、クオイの森へ向かうための準備をしていた。

リタ「騎士団なんかに先をこされてたまるかっての。
   あいつら貴重なものを取ったり壊したりするかもしれないし。
   ・・・フレンが騎士団長になったから昔ほど酷くはないと思うけど」

リタはせっせと準備を整えた。

リタ「それじゃ、行きますか」

――約束だからな

リタ「あっ・・・」

リタはユーリとの約束を思い出す。

リタ「(一人で行くな、か。
    とはいえエステルはまだハルルに帰ってきてないし・・・
    ユーリに同行を頼むにも、帝都まで行ってたら騎士団に先をこされかねない・・・)」

リタはしばらく悩んだ後、結論を出す。

リタ「ごめん、ユーリ」

一人で行くという結論を

―――――クオイの森

リタ「さてと、遺跡はどこかしら」

リタはクオイの森に到着し、遺跡の入り口を探していた。

リタ「最深部まで来ちゃったか・・・
   見つからないわね、遺跡」

周囲を見回していると、リタは一箇所だけ周りと違う色の地面に気づいた。

リタ「これは・・・」

リタは念入りにその部分を調べた。
すると、スイッチのようなものを見つけた。

リタ「・・・わっかりやすいわね。
   なんで今まで発見されなかったんだか」

リタはスイッチを押す。
すると、リタの前方の地面が開き、地下へと続く階段が現れた。

リタ「そんじゃ、気合入れて行きますか」

―――――クオイの森 地下遺跡

リタ「案外明るいわね・・・」

地上の光を上手くとりこんでいるのか、地下遺跡内の明るさはリタの想像以上のものだった。

リタ「これなら魔術や機械で光を灯す必要もないわね」

そう言ってリタは進み始める。
遺跡の内部はどこまで歩いても一本道が続いているため、リタが迷うことはなかった。
遺跡に入ってから三十分ほど歩いたところで、リタはドーム状の空間にたどり着く。

リタ「行き止まりってことは、ここが最深部?」

その空間から前方へ繋がっている道は無く、リタはそこを最深部だと判断した。

リタ「それじゃここを調べて終わりにしましょうか」

――――

リタ「はー・・・
   結局目新しいものは無かったわね。
   建築に使われてる資材はシャイコス遺跡と同じものばっか。
   無駄足だったわ」

四時間ほどを費やし、リタはようやく探索を終えた。

リタ「日が暮れない内にとっとと森を出よ・・・」

そうリタが呟いた瞬間、どこからともなく魔物が現れる。

リタ「!?
   ・・・何こいつ? 今までどこにいたのよ」

突然現れた魔物は、今までリタが見たことのない奇妙な形をしていた。

リタ「なんだか知らないけど、関わり合う気なんてないわよ。
   じゃあね!」

リタはその場を立ち去ろうと走り出す。
しかし、同じ形状の魔物が何匹も現れ、リタを取り囲む。

リタ「くっ・・・
   やるしかないようね」

リタは魔術を放つべく、詠唱を行う。
しかし、詠唱が終了しても魔術は発動しない。

リタ「どういうこと?
   ・・・まさかこいつらマナに何かしらの影響を及ぼしてるっていうの?」

魔導器が消滅して以来、リタはマナを利用する魔術を使用している。
そのため、リタはマナが不安定な状況では魔術を上手に発動することはできない。

リタ「こうなったら鞭で戦うしかないわね・・・」

リタが武器を構え接近戦を試みたそのとき、魔物たちは魔方陣を展開する。

リタ「なっ!
   嘘でしょ!?
   あんたらだけは魔術を使えるっていうの!?」

リタはなんとか魔術が発動する前に逃げようと、魔物たちの間を抜けて走り出した。

リタ「くっ・・・間に合えっ!」

――――

リタ「・・・もう追ってこないようね。
   ・・・助かった」

リタは魔物の群れから逃げることに成功し、遺跡の出口へ向かって歩き続けていた。

リタ「二度と来ないわよ、こんなとこ」

リタは足早に遺跡を立ち去ろうとする。
しかし

リタ「な、何よこれ?」

来るときは通れた道が、崩れた岩によってふさがれていた。

リタ「まさか、さっきの戦闘の衝撃で崩れたっていうの?・・・
   いいわよ、魔術でふっとばしてやる」

リタが魔術を使おうと詠唱を唱えたそのとき

リタ「!!」

先ほど戦った魔物が後方から近づいてくるのが見えた。

リタ「(まずい、隠れなきゃ)」

リタは崩れた岩の影に隠れる。
しばらくすると、魔物は逆方向を向き、去っていった。

リタ「(まさか・・・
あいつらマナに反応して接近してくるの?)」

リタの推論が正しければ、リタが魔術を使用すると魔物を引き寄せることになる。
そうなると、うかつに魔術を使用することはできない。

リタ「(冗談じゃないわよ。
    一本道だからここを通るしかないってのに・・・
    情けないけど魔術が使えないなら騎士団が来るのを待つしかないわね。
    確かあと二、三日で来るんだっけ?
    ・・・非難した相手に頼らなきゃいけないなんて、あたしも落ちぶれたもんね」

リタは目の前にある崩れた岩を自分の腕力では動かせないと判断し、騎士団が来るのを待つことにした。

――――

リタ「(・・・もう三日はたったでしょ。
    ・・・なんで来ないの)」

リタが地下遺跡を訪れてから三日が経過した。
しかし、騎士団が訪れている気配は無い。

リタ「(こうなったら自力で脱出するしかないか・・・)」

リタがそう考えたそのとき、後方に魔物の群れが見えた。

リタ「(なっ・・・)」

魔物はリタに気づいてはいない。
しかし、リタと魔物との距離はわずか50m程度である。
前方の道は崩れた柱でふさがれ、リタに逃げ場はない。

リタ「(冗談じゃないわよ、今魔術なんか使ったら瞬く間にあいつらに囲まれるわ・・・)」

――――

リタ「(・・・もう限界かしら)」

リタが遺跡に訪れてから六日が経過した。
リタはなんとか魔物に気づかれずにいたが、食料も水も尽き果て、リタは立つ力さえ失っていた。
その上魔物たちは移動することなく、未だにリタと約50mほど離れた場所に留まっていた。

リタ「ったく、もっと離れなさいってのよ。
   あんたらが近くにいると魔術が発動すらしないのに。
   ・・・はぁ、ここが私の死に場所か」

崩れた柱はリタの腕力では動かず、武器を用いても破壊することはできなかった。
魔物に気づかれないよう細心の注意を払い、他の脱出路がないか調べたが何も見つけられない。
他にもリタはあらゆる手を尽くしたが、結局ここから脱出することができずにいた。

リタ「あいつの言うとおり、誰かと一緒来るべきだったわね。
   ・・・今更後悔したって遅いけど」

リタは様々なことを考えていた。
本のこと、研究のこと、アスピオのこと
そして、大切な仲間たちのこと

リタ「(なんか、いろいろ考えてたら眠くなってきちゃった。
    ・・・やることもないし、寝よ)」

――――――謎の暗闇の中

リタ「・・・・・・まーたここか」

リタはいつか訪れた暗闇の中に再び入っていた。

リタ「どーせ誰もいないし何もないんでしょ。
   単に見えないだけかもしれないけど」

リタがそう呟いた瞬間、一人の人間が暗闇の中に現れた。

リタ「!?
   ・・・誰?」

リタは慎重にその人物に歩み寄る。
暗闇の中でも、何故かその人物の顔ははっきりと見えた。

リタ「・・・あんた、どっかで見たような」

かすかにリタの記憶の中に、その人物の姿は残っている。
そして、リタにはその人物はとても親しく感じられた。
何故ならその人物は

リタ「・・・お、お母さん!?」

亡くなったリタの母親だったから。

リタ「どうしてここに・・・」

そうリタが呟いた途端、リタの母は暗闇の中に身を沈めていく。

リタ「ま、待ってよ!」

リタがその言葉を言い終わると同時に、リタの母は完全に姿を消した。

リタ「・・・何よ、これ」

リタが途方に暮れていると、新たな人物が前方に現れた。
リタはその人物に歩み寄る。

リタ「・・・今度は誰?」

そこにいたのは、わずかにリタの記憶に残っていた人物
リタが生まれてすぐ、どこかへ去っていってしまった人物

リタ「・・・まさか、お父さん!?」

リタの父であった。

リタ「・・・どうして・・・何で今ここにいるの?」

リタの父もまた、暗闇の中に消えていく。

リタ「待ってよ、答えてよ!」

そして母と同様、リタの父は完全に姿を消した。

リタ「何よ、二人とも・・・」

リタは力を失い、その場に座り込む。

リタ「勝手にどっかに行っちゃって・・・
   ・・・・・・一人に、一人にしないでよ!
   私を一人にしないでよおぉ!!」

リタの瞳から涙が零れ落ちる。

リタ「うっ...ぐすっ...」

リタがうなだれていると、再び新たな人物が目の前に現れた。

リタ「・・・・・・何よ。
   誰だか知らないけど、どうせあんたもどっかに消えるんでしょ?
   とっとと私のいないとこに行きなさいよ」

リタはこの人物もすぐに消滅するだろうと思った。
しかし

リタ「ん・・・
   ちょっ、何よ!?」

その人物は消えるどころかリタの手をつかみ、リタと共に走り出す。

リタ「何なのよ、一体!?
   あんた誰よ!?」

その人物は何も答えない。

リタ「無視してんじゃないわよ・・・
   ・・・・・・あれは?」

リタの手をつかんだ人物が走り出した方向には、一筋の光が差していた。

リタ「何あれ?・・・
   明るくて、暖かい」

走り続けると光は大きくなり、徐々にリタの手を掴んでいた人物の姿が浮き彫りになる。

リタ「・・・・・・あぁ、そうかあんただったのね。
   全身黒いから暗闇の中じゃ見えなかったじゃない、バカ」

そして目の前に光が満ちた瞬間、リタは目を覚ます。

リタ「・・・おはよう、ユーリ」

~小ネタ~

ユーリ「リタ、モノマネゲームしようぜ」

リタ「へ? 何それ?」

ユーリ「フレンとやってた遊びでな。
    お互い交代で三十秒くらいモノマネをして、先に相手を笑わせたほうが勝ちっていうゲームだ」

リタ「なにそれバカっぽい。
   やんないわよ、そんなの」

ユーリ「お前が勝ったら荷物持ってやる」

リタ「だからやんないって」

ユーリ「・・・確かに賢いモルディオさんは負ける勝負はしないよな」

リタ「やっすい挑発ね」

ユーリ「・・・学者のモルディオさんは一般人の低俗な遊びにはつきあわないよな」

リタ「・・・・・・」

ユーリ「・・・ユーモアよりもロジックを優先するモルディオさんは――」

リタ「ああ、もううっさいわね!
   やればいいんでしょ! やれば!」

――――

ユーリ「じゃあ俺の先行で」

リタ「とっととやりなさいよ」

ユーリ「それじゃ・・・・・・
    そんなこと言われても、僕にはわからないよ!」

リタ「!?」

ユーリ「いたたた、ひどいよ! リタ!」

リタ「(・・・カロルのマネね)
   ・・・っ・・・くっ」

ユーリ「(おっ来てるか?)」

リタはなんとか笑いをこらえる。

リタ「(・・・あー危なかった)
   次は私の番ね」

ユーリ「あぁ・・・
    (負けとけばモノマネしなくて済んだものを)」

リタ「じゃあそうね・・・・・・
   もう、ユーリったら!」

ユーリ「!?」

リタ「駄目ですよ、そんなことしちゃ!」

ユーリ「(・・・エステルのマネか)」

リタ「さぁ、私にもみもみされたい人は居ませんか~?」

ユーリ「(・・・っ!・・・耐えろ、俺)」

リタ「・・・どうやら駄目みたいね」

ユーリ「(危ねえ・・・)
    じゃあ次は俺か」

リタ「どうぞ」

ユーリ「・・・ミーのトゥルーパワー! 受けてみよ!」

リタ「(・・・これってイエガー?)」

ユーリ「これをルックした人はディープなアビスへプリーズよ!」

リタ「・・・・・・うっざ」

ユーリ「あら、お気に召さないようで」

リタ「まあね。
   じゃあ私の番か」

ユーリ「どうぞ」


リタ「・・・ユーリィ、会いたかったぜ」

ユーリ「!?」

リタ「俺様よりも大事なことなんて、お前にはないはずだ・・・」

ユーリ「・・・・・・」ブルブルブル

リタ「ちょっ、あんた大丈夫?」

ユーリ「あいつだけは・・・ザギだけは・・・止めてくれ・・・」

リタ「わ、悪かったって!
   ほら、荷物持ってあげるから! ね!」

そこには涙を流す、二十代の男がいた。

――――

ユーリは崩れた岩を破壊し、リタの元へ駆けつけていた。

ユーリ「リタ、大丈夫か!?」

リタ「大丈夫・・・とは言い難いわね」

ユーリが発見したリタは衰弱しきっていた。

ユーリ「今すぐ水と食料を出すからな!」

リタ「その前に・・・あいつらに気づかれる前に逃げて」

ユーリ「あいつら?」

リタが指差す方向を見ると、ユーリの目には今まで見たことがない形状の魔物が写った。

リタ「危険な連中だから・・・早く、逃げて」

ユーリ「わかった。
    つかまってろ」

そう言ってユーリはリタを背負い、走り出す。

――――花の街 ハルル

クオイの森から抜け出したユーリは、リタを休ませるためハルルの宿屋を訪れていた。
ユーリたちがハルルに訪れてから、三日の日々が経過した。

ユーリ「ようやく顔に生気が戻ったな」

ユーリは安堵の症状を浮かべる。

リタ「いっぱい食べてぐっすり寝たからね。
   それで、どうしてあんたはクオイの森にいた訳?」

ユーリ「昨日俺はお前の家を訪ねたんだよ。
    んで、お前が留守だったから町の人間にどこにいるか聞いて回った。
    すると、ある魔術師がお前がクオイの森で発見された遺跡の話に興味を持ったって教えてくれてな」

リタ「それで、もしかしたらと思ってクオイの森まで来たと」

ユーリ「そうだ、情報提供してくれた魔術師には感謝しとくんだな」

リタ「・・・ええ」

リタはアスピオに帰ったら、その魔術師にお礼をしに行こうと思った。

ユーリ「それより・・・お前約束破ったな」

リタ「!!」

先ほどの安堵の表情から一変、ユーリは今怒りに満ちた表情をしている。

ユーリ「・・・何か言い訳でもあるか?」

リタはユーリと目を合わせることが辛くなり、下を向く。

リタ「・・・リタ・モルディオに二言は無いわよ。
   騎士にでも何にでも私の生活を監視させたらいいじゃない」

ユーリ「よし、いい心掛けだ。
    じゃあ早速・・・」

ユーリの目には、強気な言葉とは裏腹にうつむくリタの姿が映る。

ユーリ「・・・そんなに嫌か?」

リタ「・・・あんたが私の立場だったらどう思う?」

ユーリは自分が騎士に監視される生活を想像した。

ユーリ「・・・たしかに辛いこと、この上ないな」

リタ「でも約束は約束だから・・・
覚悟はできてるわよ」

ユーリ「・・・・・・」

ユーリはしばらく考えた。
そしてある結論を出す。

ユーリ「俺、アスピオに引っ越すことにするわ」

リタ「へ?」

~小ネタ~

リタ「効かねぇ納豆」

ユーリ「ん?」

リタ「効かねぇ納豆」

ユーリ「・・・」

リタ「効かねぇ納豆(笑)」

ユーリ「・・・イラッ」

リタ「効かねぇ納豆(冷笑)」

ユーリ「(・・・・・・うぜえ)」

リタ「ふふふ」

ユーリ「・・・・・・
    にゃ~ん(笑)」

リタ「!?」

ユーリ「にゃ~ん(爆笑)」

リタ「き、効かねぇ納豆!」

ユーリ「にゃにゃ~ん」

今日も不毛な争いは続く。

ここまでで第二部完です。
半角スペースと全角スペースが見分けられなくて、ところどころ修正ができてないようです。
読みにくくてすみません。
第三部は1,2時間後に投下する予定です。



リタの武器は帯と本じゃなかったっけ

>101
コメントありがとうございます。
リタは帯、鞭、蛇腹剣などの武器を使用しています。
私はローズウィップなどの武器が鞭に分類されると考えています。
帯だと威力が低く、蛇腹剣だと殺傷力が高すぎるため、現時点でリタは鞭を使用しているという設定です。

読みたいと思ってくれる人たちを待たせるのも嫌なので、少しづつ投下していこうと思います。
それでは、第三部をお楽しみください。


――――

ユーリ「だから、アスピオに引っ越すって言ってるんだよ。
    騎士団に監視されるより、近くにおせっかい焼きが一人住むほうがマシだろ?」

リタ「いやいやいや、下町はどうすんのよ?」

ユーリ「フレンが騎士団長になってから下町はすっかり平和になってな。
    俺はお払い箱ってわけだ」

ユーリは慌てるリタとは対照的に、淡々と語る。

リタ「いや、だからといって他にすることがないって訳でもないでしょ?」

ユーリ「ギルドの一員としてカロルのとこに戻ろうと考えてはいた。
    その前に世界を旅して回るつもりだったけどな」

リタ「ほら、やることあるじゃない」

ユーリ「まあな。
    だがそんなことよりお前を見守るほうが大事だ」

リタ「!?」

ユーリ「ほっとくとお前いつ死ぬかわかんねえからな」

リタ「・・・わ、私のためにアスピオに永住するつもり?」

ユーリ「少なくともお前が一人で危険な場所へ行くことをやめるまでは住むつもりだ。
    永住はしないで済むと思うがな、多分」

リタ「何もそこまでしてくれなくたって・・・」

ユーリ「なんか勘違いしてるようだから言っておくが、これは約束を破った罰だからな。
    お前に拒否権はない」

リタ「・・・・・・はぁ、分かったわよ。   
   好きにしなさい」

ユーリ「そうさせてもらう
    同じ街に住んでれば、遠出するときいつでも誘いにこれるだろ?」

リタ「・・・そりゃ、まあね」

ユーリ「それでも一人で危険な場所に行くようなら、騎士団に監視してもらう」

リタ「分かったわよ。
   ・・・そういえば犬は?」

ユーリ「あいつは下町で身を固めた」

リタ「嘘!?」

ユーリ「本当だ」

リタ「あの犬意外とやるわね・・・」

ユーリ「まったくだ」

リタ「・・・で、あんたアスピオに住む場所と稼ぎ口はあんの?」

ユーリ「これから探す」

リタ「・・・呆れた」

――――学術閉鎖都市 アスピオ

ユーリ「それじゃあ仕事と借家を探すか」

リタ「・・・ねぇ」

ユーリ「何だ?」

リタ「なんにもやることないんなら、私の助手やってみない?」

ユーリ「助手?
    俺がか?」

ユーリは自分で自分を指差し、そう言う。

リタ「助手っつっても大したことはやんなくてもいいわよ。
   せいぜい実験器具の運搬、実験内容の記録、食事の用意、部屋の掃除ってとこね」

ユーリ「それなら俺でもできそうだか・・・
    お前、人を雇う金なんてあるのか?」

リタ「なんか今までの功績が認められたのか、国が研究費を増やしてくれたのよ。
   普通に暮らせる額でいいなら、そこから給料として払ってあげるわ」

ユーリ「大したもんだな・・・お前」

リタ「私を強く支持してくれたフレンのおかげだけどね。
   で、どうすんの?」

ユーリ「・・・それならお前の見張りもできるしな。
    よし、やろう」

リタ「見張りって・・・まあいいわ、決まりね。
   あと、借家は私が昔使ってた実験室を使ってもいいわ。
   ちっさい建物だけど、寝泊りするだけなら十分よ。
   私の家から近い場所にあって便利だし。」

ユーリ「何から何まですまねえな」

リタ「まぁ、元はといえば私のせいだし」

――――

それから数日後
ある一人の女子が笑みを浮かべながらアスピオを尋ねていた。

エステル「(ようやくリタに会えますね。
     ん~楽しみ)」
   
彼女の名前はエステリーゼ・シデス・ヒュラッセイン
親しい間柄の人間からはエステルと呼ばれている。
彼女もまたユーリたちと共に旅をした仲間の一人である。

エステル「着きましたね」

エステルは共に旅を続けるうちに、親友とも呼べる間柄となったリタの家に訪れていた。

エステル「リタ、いますかー?」

そういいながら、エステルはリタの家のドアをノックする。
すると、ゆっくりとドアは開かれた。

ユーリ「はいよー・・・ってエステルじゃねえか」

エステル「え、ユーリ?」

エステルという言葉を聞き、リタは急いで駆けつける。

リタ「エステルじゃない!
   帰ってきたのね!」

エステル「ええ、リタ」

リタ「立ち話もなんだからこっちにきてよ。
   ほら助手、お茶入れて」

ユーリ「はいよ先生」

エステル「(・・・助手?)」

エステルは事態を飲み込めず、しばらく混乱していた。

―――――リタの家

エステル「なるほど、そういうわけだったんですね」

リタはエステルに、ユーリがアスピオに住むに至るまでの経緯を話した。

リタ「本当に心配性でしょ、こい――」

エステル「リタ!」

リタ「はっ、はい?」

エステルの表情は怒りに満ちている。

エステル「・・・どうしてそんな無茶をしたんですか?」

リタ「いや、あの、その・・・」

エステル「もう少しで死ぬところだったんですよ!
     どうして一人で行こうとしたんですか!?
     ユーリがいなければ今頃どうなってたか!」

リタ「・・・・・・」

エステル「研究よりも大切なものがあるでしょう!
     大体リタは―――」

ユーリ「そこまでだ」

怒りに身を任しているエステルをユーリが止める。

リタ「・・・ぅ・・・」

エステルはリタが目に涙をためていることに気づく。

エステル「・・・・・・・・リタ」

ユーリ「・・・茶、切らしたから買出しに行ってくるわ」

そういってユーリはリタの家から出る。

リタ「・・・ごめんなさい」

エステル「いえ、私のほうこそ言い過ぎました・・・」

―――

ユーリ「(そろそろ和解しただろ)」

買出しを終えた後、そう思いながらユーリはリタの家のドアをあける。
そこには笑みを浮かべて話し合う二人の女子の姿があった。

リタ「あっ、ようやく帰ってきたわね。
   早くお茶入れてよ、助手」

エステル「ちょっとリタ、ユーリをこき使いすぎです。」

リタ「いいのよ、こいつは私に雇われてるんだから」

ユーリ「・・・へいへい」

ユーリは元気なリタの姿を見て、安心した。

エステル「ところでユーリ、ハルルにお花見に来ません?」

ユーリ「花見?」

エステル「ええ、他の皆も手紙で誘ったんですよ。
     全員、丁度今日から一週間後に都合がつくからその日に集まる予定です」

ユーリ「ほう、そりゃいいな」

リタ「私も行くわ」

ユーリ「花見は研究より優先するのかよ・・・
    よし、是非参加させてもらおう」

エステル「決まりですね」

―――――花の街 ハルル

それから一週間後

レイヴン「ほらーもっと飲みなさいよ、せ・い・ね・ん」

ユーリ「しつけーなぁ、おっさん」

パティ「酔ったらうちが面倒見るのじゃ、ユーリ」


カロル「いたたた、ぶたないでよリタ」

リタ「うっさい、ちょっとギルドが有名なったからって調子に乗んな!」

エステル「ちょっと、リタ・・・」


ジュディ「あなたも隅に置けないわねぇ・・・」

ラピード「ワ、ワン」

フレン「相変わらず賑やかだなぁ、皆」

ユーリはかつての仲間たちと共に、花見をしていた。

レイヴン「...で、どーして青年はアスピオに住んでるの?」

ジュディ「それについては私も詳しく聞きたいわね」

エステル「!!」

リタ「!!」

ユーリ「!!」

エステル、リタ、ユーリは顔を見合わせ、小声で話す。

エステル「どうしましょう...言います、あのこと?」

リタ「やめて、お願い、間違いなく何人かに説教される。
   そうなったら雰囲気ぶち壊しよ」

ユーリ「...仕方ねえな」

そう呟いた後、ユーリは話しだす。

ユーリ「下町が平和になったから、俺は旅にでてたんだよ。
    んで、アスピオに訪れたらリタが助手を募集してるって言っててな。
    暇だったから手伝ってるってわけだ」

リタ「(...まぁ嘘は言ってないわね)」

レイヴン「なんだ、そうだったの」

カロル「暇なら凛々の明星に戻ってきてよ!」

ユーリ「カロル先生は今、一人でがんばらなきゃいけない時期なんだよ」

カロル「なんだよそれー」

パティ「暇ならうちのギルドにも来て欲しいの」

ユーリ「お前も自分の力でギルドを再建してみるんだ」

パティ「むー...試練の時ってことじゃな」

ジュディ「てっきり私は二人が付き合ってるのかと思ったわ」

リタ「!!」

ユーリ「違うっての・・・」

パティ「そうじゃ、ユーリはうちと結ばれておるのじゃ」

ユーリ「それも違う」

フレン「助手っていつまでやる気なんだ、ユーリ?」

ユーリ「新しい助手が見つかるまでかな。
    俺は臨時のお手伝いさんだし。
    ・・・俺のことよりラピードに奥さんのことでも聞いてやれよ」

レイヴン「おっそうだ!
     くそーわんこめ、先を越しやがって!」

ラピード「ワ、ワゥ・・・」

エステル「(・・・話をそらしましたね)」


          [番外編] 王様ゲーム


ユーリたちが花見をしている最中、レイヴンが突然声を上げた。

レイヴン「王様ゲーム!!」

リタ「は?」

ユーリ「突然何言い出すんだよ、おっさん」

レイヴン「だーかーらー王様ゲームしましょうよ~」

エステル「王様ゲーム、ですか?」

ジュディ「あら、おもしろそう」

パティ「悪くないの」

リタ「何言ってんのよ。
   どうせおっさんのことだからいやらしいこと考えてんでしょ。
   私はやらないわよ」

レイヴン「あらら~リタっち負けるのが怖いのね?」

リタ「だっ誰が負けるって?」

カロル「リタ、むきにならないでよ・・・
    ていうか王様ゲームに勝ち負けとかないんじゃ・・・」

そんなこんなで一同は王様ゲームをすることになった。

――――

レイヴン「王様の命令は絶対だ、いいな!」

フレン「法の範囲内でお願いしますよ」

レイヴン「わかってるってば。
     ・・・そんじゃー行くわよー」

                王様だーれだ?

エステル「あっ、私が王様です」

リタ「よかった。
   まともな人に当たって」

フレン「なんなりとご命令を、エステリーゼ様」

ユーリ「お前仕事と遊びは分けろよ・・・」

エステル「それじゃあ、一番の人に得意な歌を歌ってもらいます」

レイヴン「お、いいねぇ。
     さて、一番は誰かな」

リタ「・・・・・・」

リタは一人うつむいている。

ユーリ「・・・そうか、お前かリタ」

リタ「・・・仕方ないわね。それじゃあこれを歌うわ」

GAP
作詞:M氏
作曲:K氏
編曲:S氏
歌:リタ・モルディオ

*[GAP 森永理科]で検索するとニコニコ動画で聞けます。
*youtubeで[gap 瀬戸の花嫁]と検索すると聞けます。

――――

ユーリ「・・・上手いな」

カロル「・・・驚いたよ」

エステル「聞き惚れました、リタ」

ジュディ「本当、もう一回聞かせてほしいくらい」

リタ「もう勘弁して」

レイヴン「はい、それじゃ場も盛り上がったところで」

            王様だーれだ

フレン「おっ当たりだ」

カロル「フレン、何を命令するの?」

フレン「そうだな・・・
    それじゃ七番の人に肩をもんでもらおうかな」

レイヴン「なーにーそーれー普通すぎてつまんなーい」

リタ「おっさんは黙ってろ」

パティ「それで、七番はだれかのう」

ジュディ「私よ」

フレン「それじゃお願いするよ」

――――

フレン「なかなか上手だね」

ジュディ「よくお父さんの肩をもんであげてたから」

レイヴン「ジュディスちゃんにもんでもらえるなんていいなー」

ジュディ「・・・結構いい体してるのね
     好きよ、私」

ジュディはフレンの耳元で呟く。

フレン「はっ、はいっ!?」

ジュディ「ふふふ・・・」

フレン「も、もういいよ。
    ありがとう」

ジュディ「あら、そう」

ユーリ「(・・・フレンの奴、遊ばれたな)」


レイヴン「はいはい次いくわよー」

                   王様だーれだ

ジュディ「あら、運がいいわ。
     私よ」

レイヴン「ジュディスちゃーん、おっさんは五番よー
     肩もんであげるー」

カロル「・・・レイヴン、お願い少し黙って」

ジュディ「それじゃあお花見が終わるまで、六番と三番に手をつないでもらおうかしら」

ユーリ「六番は俺だが・・・」

リタ「!!」

レイヴン「あらあら、動揺してるところを見ると三番はリタっちみたいねー」

リタ「・・・そうよ」

パティ「うらやましいのじゃ、リタ姐」

ユーリ「・・・しょうがねえな」

ユーリはリタの隣に座り、リタの手を握る。

リタ「!!」

ユーリ「・・・結構照れるな、これは」

フレン「ユーリのそんな表情、始めて見たよ」

カロル「リタ、顔真っ赤だよ」

リタ「うっさい」


―――「生っすか!?SPECIAL」から数日後、CGプロ事務所

あの大型生放送から数日、どうもアタシのPさんの様子がおかしい。
なんていうか…微妙に距離を取られているような。

「おはよ、Pさん」

「ん、おはよう。今日は奈緒はレッスンだったな。トレーナーさんたちには言ってあるからな、ほんじゃ!」

「あ、ちょ、Pサン!」

一例をあげるとこんな感じ。

表向きは別にいつも通りなんだけど、どうにも事務連絡以外でアタシと関わるのを避けている気がする。

「今更奈緒とイチャイチャすんのが恥ずかしくなったんじゃないの?」

「この間の『生っすか!?』を見て改めて惚れ直したとかさ」

「お前らなぁ…アタシは真面目に相談してるんだ!」

なんかモヤモヤして、レッスンの合間に凛と加蓮に相談してみたんだけど、からかわれるばっかりで大失敗だよ!


うおおおお、作者さんすいません、更新する欄をまちがえて誤爆してしまいました!

ほんとうにすいません!

レイヴン「もー見せつけてくれちゃってー
     張り切って行くわよー」

               王様だーれだ?

レイヴン「・・・きた
     ついにおっさんの時代がきたあああぁぁぁ!」

ジュディ「レイヴン、私の番号は四番よ」

レイヴン「まじで!?
     じゃあ四番の人、おじさんのほっぺにチューしてちょうだい」

レイヴンがそう言った瞬間、辺りが静まり返る。

リタ「・・・おっさんって本当にバカね」

レイヴン「え?」

ユーリ「・・・嘘に決まってるだろ」

ジュディ「嘘じゃないわ、番号を見間違えたのよ。
     ごめんねレイヴン、私の本当の番号は八番よ」

レイヴン「えっ・・・じゃあ本当の四番は?」

カロル「・・・・・・・・・」

レイヴンが周囲を見回すと、体を震わせるカロルが目に映った。

>127
いえいえ、気にしないでください。

>>130
ありがとうございます・・・。
私、ヴェスペリア好きです、がんばってください!

カロル「・・・・・・僕・・・・・・4番」

レイヴン「な、なし!
     今の命令取り消し、無効!」

ジュディ「あら、取り消しなんてルール聞いてないわよ」

パティ「そうじゃそうじゃ」

ジュディとパティは二人がかりでレイヴンの体を押さえつける。

レイヴン「ちょっ、何やってんの二人とも!?」

リタ「さーてカロル、王様がお待ちかねよ」

そう言ってリタはカロルを羽交い絞めにする。

>131
ありがとうございます。
気が向いたらでいいので読んでいってください。

カロル「やっやめて!
    助けて、ユーリ、フレン、エステル、ラピード」

ユーリ「・・・王様の命令は絶対、だしな」

フレン「・・・違法行為ではない・・・かな」

エステル「・・・リタに命令を聞かせた以上、私には止める権利がありません」

ラピード「・・・zzz」

カロル「嘘だ・・・こんなの嘘だ・・・」

リタ「さぁ観念なさい」

ジュディ「行くわよー」

パティ「行くのじゃー」

カロル「いやああああああぁぁぁぁぁ!!!」

レイヴン「のおおおおおおぉぉぉぉ!!!」

――――

エステル「大丈夫ですか、カロル?」

カロル「・・・・・・・・・・・・・・」

フレン「レイヴンさん、生きてますか?」

レイヴン「・・・・・・・・・・・・」

ユーリ「だめだな、こりゃ」

リタ「ちょっと罪悪感が出てきたわ」

ジュディ「ちょっとお二人さん、手はどうしたの?」

ユーリ「おっ、忘れてた」

リタ「!!」

ジュディ「王様の命令は絶対、でしょ?」

リタ「わ、分かってるわよ」

ユーリ「はいよ、リタ」

そういってユーリは手を差し出す。

リタ「・・・はい」

リタはその手を握る。

ジュディ「ふふ・・・」

パティ「むー、うちもユーリと手を繋ぐのじゃ」

ユーリ「ははっ、両手に花だな」

ラピード「・・・zzz・・zzz」

今日もハルルの樹の花は咲き誇っていた。

――――

花見を終えた後、皆はハルルの宿に宿泊していた。

リタ「・・・」

皆が寝静まった後、リタは一人ハルルの樹の前に立っていた。

――てっきり私は二人が付き合ってるのかと思ったわ

リタ「まったく、あの女余計なこと言っちゃってくれて」

ジュディ「あら? 誰のことかしら?」

リタ「!?
   ・・・なんであんたこんなとこにいんのよ」

ジュディ「寝付けなくってね、あなたと同じで」

リタ「そう・・・」

ジュディはゆっくりとリタに近寄る。

ジュディ「あなた随分とユーリと仲良くなってるわね。
     今日ほとんど彼の隣にいたじゃない。」

リタ「あいつは私の助手だから、話すことは多いの。
   そうなったら必然的に近づくでしょ。
   ってかあんたがあいつと手を繋げとか言うから隣にいたんでしょ」

ジュディ「そういえばそうだったわね。
     でも、ユーリと話してるときのあなた本当に幸せそうだった。
     あんなに笑ってるあなたの姿、見たことないわよ」

リタ「い、言い過ぎだって」

ジュディ「・・・あなた、ユーリのこと好きなんじゃない?」

リタ「なっ、何よ突然!?
   そんなわけないじゃない!」

ジュディ「あら、あなたパティがユーリに抱きつく度に不機嫌な顔をしてたじゃない」

リタ「っ、嘘!?」

ジュディは慌てふためくリタの姿をみてにやにやと笑う。

リタ「あっ、あんたカマかけたわね・・・」

ジュディ「あら、私嘘は苦手よ。
     それで、実際のところどうなの?」

リタ「・・・・・・まぁ、一緒にいてほしいとは・・・思うけど。
   でもそれだけじゃ、あんたの言う好きとは呼べないんじゃない?」

ジュディ「・・・そうね、それだけだと恋愛感情を持ってるってことにはならないわね」

リタ「でしょ」

ジュディ「ただ、あなたはユーリに自分だけを見て欲しいって思ってない?
     もしそうだとしたら、それは立派な恋愛感情だと思うわ」

リタ「そんなことは思ってないわよ」

リタは鼻で笑う。

ジュディ「どうかしら?」

リタ「思ってないっての。
   ・・・もう寝るわ」

ジュディ「ええ、おやすみなさい。
     ・・・ねえリタ」

リタ「何?」

ジュディ「ライバルは多いかもしれないけど、頑張ってね。
     お姉さん、応援してるわよ」

リタ「・・・何わけわかんないこと言ってんだか。
   大体誰がお姉さんよ、ったく」

――――

翌日

カロル「それじゃ、またね」

レイヴン「皆酒を飲むならおっさんを誘ってちょうだいねー」

パティ「ユーリ、皆、また会いにくるのじゃ」

ジュディ「楽しかったわ。
     また集まりましょう」

フレン「何か困ったことがあったら騎士団を頼ってくれ。
    ではまた」

ラピード「ワン!、ワン!」

――――

ユーリ「皆、行っちまったな」

リタ「嵐のような連中だったわね」

エステル「でも楽しかったです」

ユーリ「そうだな。
    さて、帰るかリタ」

リタ「・・・そうね」

エステル「ユーリ」

ユーリ「ん?」

エステル「私、これからもヨーデルの補佐をするつもりです。
     だから、しばらくはあちこちを飛び回らなければいけません。
     ・・・リタのこと、頼んでもいいですか?」

ユーリ「おう、頼まれた」

リタ「何話してんの? 二人とも」

ユーリ「大したことじゃねえよ。
    さ、行こう」

―――――学術閉鎖都市 アスピオ

リタ「・・・今日はここまでにしますか。
   ユーリ、いる?」

ユーリは十分ほど前に買い物にでかけ、未だに帰ってきていない。

リタ「仕方ない、自分でやるか」

リタはそう言って、実験器具を片付ける。

リタ「ちょっと散歩してこよ」

実験器具を片付け終え、リタは気分転換に散歩に出かけた。

――――

リタ「あれは・・・ユーリじゃない」

リタが十分ほど歩くと、100mほど離れた場所にいるユーリに気がついた。

リタ「ユ――」

リタの目にはユーリと会話をする若い女性の姿が映った。
その瞬間、ユーリ呼ぼうとしたリタは口をとっさに閉じた。

リタ「(・・・だれ、あの人?)」

ユーリと女性は、楽しそうに会話をしている。

リタ「(・・・・・・っ)」

リタは走り出した。
まるでその場から逃げ出すように。

――――

それから数日後

リタ「最近、あんた買い物から帰ってくるの遅いわね」

ユーリ「あぁ、ちょっと用事があってな。
    悪い」

リタ「・・・あんたのプライベートに口出しする気は無いけどさ
   仕事はしてもらわないと困るわ」

ユーリ「そりゃそうだよな。
    なるべく早く済ますようにするに気を付ける」

リタ「ならいいけど
   ・・・ねぇ?」

ユーリ「なんだ?」

リタ「あんた、この街で私のほかに親しい人っている?」

ユーリ「・・・お前、俺が友達作れない人だと思ってるのか?」

リタ「そんなこと言ってないわよ。
   ただ、ほんのちょっとだけあんたの交友関係が気になるだけよ」

ユーリ「・・・雑貨屋とかよく行く店の人間とは仲がいいと思うけどな。
    あと近所の住人とはほぼ毎日会話してる。
    その他にもいろいろあって知り合いになった連中もいるな。
    こんなもんだ」

リタ「そう・・・」

ユーリ「・・・自分から聞いたくせに素っ気ねえな。
    お前こそ、この町では誰と親しいんだ?」

リタ「あんただけよ」

リタはほとんど聞こえないような小さな声で言った。

ユーリ「ん? なんて?」

リタ「・・・特に親しい人はいないわよ」

ユーリ「・・・そうか」

――――

リタ「何よあいつ
   あれからほぼ毎日あの女に会いに行ってるじゃない」

リタは二人の男女の姿を見つめていた。
楽しそうに話すユーリと若い女性を

リタ「(・・・痛い)」

リタは自分の頬をつねる。
痛みを感じ、これは現実だと理解する。

リタ「・・・別に、あいつが誰と仲良くしようが私には関係ないわよ」

そう呟き、リタはその場を立ち去る。

――――

ユーリ「なぁリタ、なんかお前最近元気ないんじゃないか?」

リタ「・・・別に」

ユーリ「ならいいが・・・
    なんか困ったことあったら言えよ。
    俺じゃあ力になれないかもしれないけど、一人で抱え込むよりはマシだろ?」

リタ「・・・あんたって誰にでも優しいわよね。
   そりゃあんたを好きになる人間も出てくるわけだ」

リタは小声で言う。

ユーリ「ん? なんだって?」

リタ「何も困っちゃないわよ」

ユーリ「・・・そうか。
    ・・・なぁリタ」

リタ「何?」

ユーリ「今晩、俺の家に来てくれ」

リタ「はぁ?
   なんで?」

ユーリ「大切な話がある」

リタ「!!」

その言葉を聞いた瞬間、リタの頭の中で嫌な記憶が蘇る。
ユーリと楽しそうに話す、若い女性の姿が

リタ「・・・話ならここですればいいじゃない」

ユーリ「ここじゃだめなんだよ」

リタ「意味わかんない」

ユーリ「とにかく、待ってる」

リタ「待ってるって・・・
   そんなわけわかんないこと言うような奴の家に行かないわよ、私」

ユーリ「それでも待ってる」

リタ「・・・何よ、それ」

ユーリは家の出口に向かって歩き出す。

リタ「ちょっと、どこ行くのよ?」

ユーリ「外でやらなきゃいけないことがあってな。
    今日の仕事は終わったからいいだろ?」

リタ「・・・そうね、あんたの好きにすればいいんじゃない」

ユーリ「待ってるからな」

そう言ってユーリは出て行く。

リタ「・・・・・・」

――――

ユーリが去った後、気分が沈んだリタは体を丸めベッドで寝ていた。

リタ「・・・・・・大事な話、ね。
あの女と暮らすから、私の助手はやめるって言いたいのかしら」

――あなた、ユーリに自分だけを見て欲しいって思ってない?
ジュディの言葉がリタの頭に浮かぶ。

リタ「ははっ、そんなわけないじゃない・・・
そんな・・・わけ」

リタの瞳に涙が浮かぶ。

リタ「・・・・・・あんたが正しかったわクリティア女
   ・・・・・・私」





リタ「あいつが好き」

リタ「どれだけわがまま言っても聞いてくれるあいつが好き・・・
   辛いときに駆けつけてくれるあいつが好き・・・
   バカやって私を笑わしてくれるあいつが好き・・・
   ずっと私の傍にいてくれるあいつが好き・・・」

そういいながらリタは涙を流し続ける。

リタ「なんで・・・なんで今更気づくのよ。
   バカじゃないの、私
   もう手遅れじゃない」

そう呟きながらリタは泣き続ける。

――――

どれだけの時間が経過しただろうか。
気づくと夜になっていた。

リタ「・・・いいわよ、行ってやろうじゃない」

リタは覚悟を決めた。

――――

リタはユーリの家の目の前に立っていた。

リタ「(・・・どこの誰だか知らないけどやってくれたわね。 
いいわ、今回は勝ちを譲ってあげる。  
    ・・・でもね)」

リタは拳を強く握り締める。

リタ「(必ず私が奪い返してみせる。
    あいつが最後に選ぶのは、この私よ)」

リタは強い思いを抱きながら、ユーリの家のドアを叩く。

リタ「仕方ないから来てあげたわよ」

ユーリ「・・・そうか、入ってくれ」

扉越しにユーリの声が聞こえた。

リタ「ふぅー・・・」

リタは深呼吸をし、息を整える。

リタ「行くわよ」

リタは扉を開ける。





ユーリ「 誕生日おめでとう、リタ!」

魔術師数名「おめでとう!」

若い女性「おめでとう!」

リタ「・・・・・・・・・は?」

扉の向こうに待っていたのは想定外の景色だった。

――――ユーリの家

ユーリ「――というわけだ」

この数週間、ユーリはアスピオの住人の手を借り、自分の家を飾りつけリタの誕生日を祝う準備をしていた。

リタ「・・・なんであんた私の誕生日知ってんの?」

ユーリ「アスピオに住むとき、役所へ住民登録しに行ってな。
    そのとき役人の目を盗んでお前の住民票を見た」

リタ「・・・なんでそんな犯罪を犯してまで私の誕生日を知る必要があるのよ」

ユーリ「今日お前を驚かすためだよ。
    直接本人に誕生日を聞いたら、遠まわしに祝いますって予告してるようなもんだろ。」

リタ「・・・バカの極みね、あんた」

魔術師1「おいおい、せっかく祝ってくれたユーリに対してそれはないだろ」

リタ「バカにバカっつって何が悪いのよ。
   てか、私あんたたちとあんまり話したことないじゃない。 
   よくそんな奴の誕生日を祝う気になるわね」

魔術師2「つれねえこと言うなよ。
    同じ町に住んでる仲だろ」

リタ「あんたら町の住民全員の誕生日を祝うつもり?」

面識がある人間との会話を終え、室内を見回すとリタはある女性に注目した。
それはユーリと楽しげに会話をしていた若い女性だった。

リタ「・・・あんたは?」

リタはその女性に話しかける。
すると、その女性は優しく笑いながら口を開く。

若い女性「始めましてリタさん。
      私、最近引っ越してきたの。
      来週開店する花屋で働いてるから、気が向いたら会いにきてね」

リタ「は、花屋?」

ユーリ「そうだ、今日この部屋に飾り付けてある花は全部この人が用意してくれたんだ。
    新婚さんだってのに、お前の誕生日を祝うためにわざわざ手伝ってくれたんだぞ」

リタ「し、新婚?」

若い女性「ええ、夫と花屋をやってるの。
     夫はまだこの町に来てないから、後日紹介するわね」

リタ「・・・・・・・・・」

ユーリ「花だけじゃなくて料理とかも手伝ってくれてな。
    この数週間、ほとんど毎日俺はこの人と相談してたもんだ。
    悪いな、手間をとらせちまって」

若い女性「いいのよ、楽しかったし」

ユーリ「ん、どうしたリタ?
    よくみると目が赤いじゃねえか。
    一体どうし――」

リタ「らあああぁぁぁ!!」

ユーリ「ぐおぉぉ!?」

リタはユーリにボディブローを叩き込む。

ユーリ「・・・何を・・・しやがる」

リタ「うっさいこのバカ!、バカ!、バカ!」

若い女性「あらあら、仲がいいのね」

――――

ユーリ「あーいってぇ・・・」

リタ「だからごめんって言ってるじゃない」

ユーリとリタは誕生日を祝い終えたあと、二人でアスピオを散歩していた。

ユーリ「・・・なんか、元気になったように見えるんだが」

リタ「・・・おかげさまでね。
   疲れがふっとんだわ」

ユーリ「そりゃよかった」

リタ「・・・ねえ、ユーリ」

ユーリ「ん?」

リタ「ずっと私の助手でいてくれない?」

ユーリ「ず、ずっとか?」

リタ「ええ」

ユーリ「・・・凛々の明星と掛け持ちでいいなら」

リタ「決まりね」

ユーリ「あと、長期休暇はもらうからな。
    世界を旅するための」

リタ「いいわよ。
   ただし、その旅私もついていくわ」

ユーリ「それは構わねえが・・・
どうしたんだ、急に」
   
リタ「・・・気づいたのよ」

ユーリ「何に?」

リタ「・・・今は教えてあげない」

ユーリ「なんだよ、そりゃ」

リタ「そのうち言うわよ。
   ・・・ねぇ、ユーリ」

ユーリ「ん?」

リタ「これからも、よろしくね」

ユーリ「・・・ああ、よろしくな」

そして、ユーリとリタは共に歩き出した。

~小ネタ~

ユーリ「リタ、ポーカーやろうぜ」

リタ「なによ急に」

ユーリ「近所のやつからトランプもらったからよ」

リタ「・・・まあ、今暇だからいいけど」

ユーリ「で、罰ゲームはどうする?」

リタ「罰ゲームねぇ・・・
   一勝負が終わるごとに考えればいいんじゃない?」

ユーリ「それでいいか」

――――

ユーリ「ワンペア」

リタ「スリーカード」

ユーリ「あー負けた」

リタ「じゃあ罰ゲームは・・・
   それじゃポーカー終わるまで女口調で話して」

ユーリ「! ・・・なんだそりゃ!?」

リタ「なんだそりゃ、じゃなくてなによそれ、でしょ」

ユーリ「分かった・・・わよ」

リタ「ん? なんて?」

ユーリ「分かったわよ、もう!
    やればいいんでしょ!」

リタ「あっはっは」

――――

ユーリ「ツーペア」

リタ「フラッシュ」

ユーリ「くっ、また負けた・・・」

リタ「そうね・・・それじゃ今度は髪型をおさげにして」

ユーリ「へ?」

リタ「早く結んでよ、髪」

ユーリ「・・・・・・」

――――

リタ「あっはははははは!
   あんたすっごく可愛い!」

ユーリ「(・・・ちくしょう)」

リタ「それじゃ、次行くわよー」

ユーリ「(調子に乗りやがって・・・後悔させてやる)」

――――

リタ「フォーカード
   (どうよ、勝てないでしょ?)」

ユーリ「・・・ストレートフラッシュ」

リタ「なっ 嘘!?」

ユーリ「さてと、どうしてくれようかしら」

リタ「くっ」

ユーリ「・・・それじゃあ、今日一日中語尾ににゃんってつけて頂戴」

リタ「はあ!?
   なにそれ、あんた変態じゃないの!?」

ユーリ「あら? なんて言ったのかしら?
    聞こえなかったわー」

リタ「・・・この・・・悪趣味男!・・・にゃん」

ユーリ「!!・・・・・・・」

リタ「分かったわよにゃん!
   やってろうじゃないのにゃん!」

ユーリ「・・・やめてくれ」

リタ「はい?」

ユーリ「だから、語尾ににゃんとかつけなくていいから」

リタ「・・・あら? あんた顔真っ赤じゃない? にゃん」

ユーリ「・・・・・・」

リタ「なに? 照れてるの?
   かわいいにゃん、ユーリにゃん」

ユーリ「・・・もう耐えられねえ」

リタ「ちょっ、逃げるな! にゃん!」

その後ユーリとリタは何時間もアスピオを走り続けた。
その日以来、おさげのユーリとにゃんにゃん叫ぶリタの姿はアスピオの伝説になっている。

第三部は以上です。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
ご意見、ご指摘を書いていただければ幸いです。

話自体は第六部までありますが、全ての部の草案や構想は既にできあがっています。
あとは清書していくだけなので、一日一部くらいのペースで投下しようと思います。

リタは猫耳着けてれば、そのうちユーリが襲ってくれるんじゃない(´ψψ`)


ジュディスとリタの関係はバレるんですか?

>170
コメントありがとうございます。
ユーリの性格からすると、私はリタが猫耳をつけていたら恥ずかしくてむしろ逃げていくのではないかと思います。
意外と奴も狼かもしれませんが。

ジュディとリタの関係は今のところはバレない予定です。
ちなみに、リタとユーリがメイン話なので、今回のジュディは脇役です。

やっぱりユリリタと言えば猫耳ネタじゃけど、何時になったらリタは猫耳してくれるんですか。そしてまたニャンと言わせてほしい。
めっさ支援。

>172
コメントありがとうございます。
申し訳ないのですが、今のところ猫耳のリタは出ない予定です。
要望が多いよう(3,4人くらいのかたが希望する)なら番外編で書くかもしれません。

紫炎。 
猫耳の番外編も見たいです。

>174
コメントありがとうございます。
なかなか猫耳リタを出すためのアイデアが浮かばないです。
よっぽど需要があれば書きますが、書けたとしても結構後になりそうです。

支援してくださる方々、お待たせしました。
第四部を投稿します。

――――謎の暗闇の中

ユーリ「・・・ここは?」

ユーリは真っ暗な場所にいた。

ユーリ「明りも何もねえな・・・」

ユーリがこれからどうしようかと悩んでいると、一人の男が現れた。

ユーリ「・・・っ、お前は!」

ユーリの目の前に現れたのは、アレクサンダー・フォン・キュモール
かつてユーリが殺した男だった。

――――

リタ「ユーリ!、ユーリ!」

ユーリ「っ!?」

リタ「ようやく目を覚ましたわね・・・」

ユーリはいつのまにか、自分が寝ていたことに気づいた。

ユーリ「・・・なんだ、夢か」

リタ「夢なんかどうでもいいから、とっとと実験を手伝って」

ユーリ「へいへい」

――――

リタ「今度マンタレイクに行くことになったから」

ユーリ「ん?」

リタ「マンタレイクにいる魔術師の実験に協力することになったのよ」

ユーリ「・・・危険なことはしないだろうな」

ユーリは少し声を低くして話す。

リタ「しないわよ」

ユーリ「ならいいが・・・」

リタ「あんたにも同行してもらうから」

ユーリ「はいよ、出発はいつだ?」

リタ「明日」

ユーリ「・・・もっと早く言え」

―――――水と黄砂の街 マンタイク

リタ「到着っと」

ユーリ「宿屋の部屋を予約してくる」

リタ「頼んだわよ」

ユーリはマンタレイクの宿屋に向けて歩き出す。
ユーリが宿屋の近くに来たとき、一人の女の姿が目に移った。

???「・・・・・・・ぐすっ」

ユーリ「(・・・泣いてるのか?)」

ユーリは女性に声をかけようと歩み寄る。
しかし、ユーリは女性の顔を見て、足を止める。

ユーリ「(・・・この顔、どこかで見たような)」

???「・・・うっ・・・アレク・・・サンダー」

ユーリ「!!」

ユーリは女の言葉を聞いて思い出す。

ユーリ「(・・・こいつ、キュモールの姉じゃねえか)」

女の名前はミムラ・フォン・キュモール
ユーリが殺したアレクサンダー・フォン・キュモールの姉である。

ユーリ「(・・・・・・)」

ユーリは早足にその場を去る。

――――謎の暗闇の中

ユーリ「まーた来やがったか」

ユーリは再び暗闇の中でキュモールと対面した。

ユーリ「死んでもわざわざ夢の中までくるなんてご苦労なこった」

キュモールはただ黙っている。

ユーリ「・・・言っとくが、俺は間違ったことをしたとは思ってねえからな。
    ・・・許されるとは思ってねえが」

キュモールは沈黙を保つ。
しかし、キュモールはユーリから眼を離さない。

ユーリ「・・・お前は罪の無い人の命を、身勝手な理由でいくつも奪ったんだ。
    自分だけは助かるべきだったとか、虫のいいこと考えてんならとっとと消えろ」

キュモールからの返事は無い。

ユーリ「・・・今日、お前の姉を見たよ。
    泣いてたってことは意外と仲が良かったのか?
    ・・・お前にも家族が、大切な人がいたんだよな。
    生きて欲しいと思っている人間がいたんだよな。
    ・・・どうしてその気持ちを自分が犠牲にしてきた人間に分けてやれなかった」

――――

リタ「起きた?」

ユーリ「ん・・・」

ユーリはベッドの上で目を覚ました。

リタ「なんかうなされてたわよ」

ユーリは自分が寝汗をかいていることに気づく。

ユーリ「変な男に見つめられる夢を見てたからな」

リタ「そりゃ災難だったわね」

ユーリたちがマンタレイクに訪れてから、すでに三日が経過していた。

リタ「今日、マンタレイクを出るわよ」

ユーリ「もう実験は終わったのか?」

リタ「ええ。
   これでアスピオに帰れるわ」

ユーリ「ようやくこの暑さから開放されるな」

リタ「・・・ねえ、最近のあんた大丈夫?
   少しやつれてる気がするんだけど」

ユーリ「・・・この暑さのせいだと思うけどな」

リタ「そう・・・
ならとっとと帰りましょう」

―――――学術閉鎖都市 アスピオ

リタ「ようやく帰ってこれた」

二人はアスピオに帰ってきた。

ユーリ「町のやつらに帰ってきたって伝えてくる」

リタ「私もついてくわ」

ユーリ「お前が知らない奴にも会いに行くが、いいのか?」

リタ「ええ。
   (...見張っとかないといつ誰に取られるか分かんないし)」

――――

魔術師1「よう、お二人さん」

魔術師2「久しぶりだな」

リタ「ええ、久しぶり」

ユーリ「元気そうでなによりだ」

四人はリタの誕生日以来、よく会話をする仲になっていた。

魔術師1「確かマンタレイクに行ってたんだっけ?
     ご苦労さん」

リタ「あんたらもアスピオにこもってないで、外にでなさいよ」

ユーリ「お前がそれを言うのかよ...」

そうして他愛のない会話を続けていると、ある話題が挙がる。

そうして他愛のない会話を続けていると、ある話題が挙がる。

魔術師1「話は変わるが二人とも、
    この数日間帝都で起こった連続強盗殺人事件を知ってるか?」

ユーリ「!!」

リタ「知らないわ。
   マンタレイクまでその話は届いてないわね」

ユーリ「誰が殺されたんだ!?」

魔術師2「落ち着けよユーリ
    狙われたのは全員貴族だ。
    お前と親しい下町の住民に被害はない」

ユーリ「・・・そうか良かった。
    ・・・貴族が死んでもいいってわけじゃないが」

ユーリはふぅと息を吐く。

魔術師1「何でも、犯人は悪政を働く貴族ばかりを狙って強盗殺人を繰り返してたらしいぜ。
     しかも帝都で捕まる前から、似たような犯罪をしてたらしい」

魔術師2「処刑される寸前まで、犯人は自分が正しいって叫んでたらしいぜ。
     俺はどっちもどっちだと思うがな」

魔術師1「だよな。
     殺したほうも殺されたほうも、結局は自分だけの価値観で他人を苦しめただけだよな」

ユーリ「・・・・・・」

リタは一瞬ユーリの顔を見る。

リタ「・・・聞いてて楽しい話じゃないわね。
   もう止めてくれる?」

魔術師2「お、悪かったな。
     じゃあ俺たちは用事があるんで」

魔術師1「またな」

――――

それから数日後

リタ「あんた、本当に大丈夫?
   日に日に衰弱していってるじゃない。
   食事もほとんどとらないし」

リタはユーリの青白い顔の見ながら話す。

ユーリ「気にするな・・・
    ただ体を絞り込んでるだけだ」

リタ「絞り込んでるって・・・」

ユーリ「少し外の空気を吸ってくる」

リタ「・・・私も行くわ」

ユーリとリタは外へ出た

――――結局は自分の価値観で他人を苦しめただけだよな
その言葉がユーリの頭から離れない。

リタ「あんた・・・またなんか一人で背負い込んでるんじゃない?」

ユーリ「違うっての」

リタ「・・・この前の事件の話、気にしてんの?」

ユーリ「!!」

ユーリは動揺を隠し切れなかった。

リタ「・・・やっぱり」

ユーリ「・・・・・・」

リタ「あんた自分とあの事件の犯人重ねてるんでしょ?
   ・・・ばっかじゃないの」

ユーリ「・・・」

リタ「悪政を働く奴だけを狙ったって言っても、結局は金品の強奪が目的だったんでしょ。
   あの犯人は私利私欲で動いてたの、あんたとは違うわ。
   だから、あんたは気にせず今までどおり生きてりゃいいのよ」

ユーリ「・・・・・・・言われなくてもそうするつもりだ」

リタ「ならよし」

ユーリ「リタ・・・ありがとな」

リタ「・・・あんたが使いものにならないと私の研究に支障をきたすから」

リタは言いながら後悔する。
何故自分は素直になれないのか、と

ユーリ「ははっそりゃそうか」

リタ「さ、帰るわよ」

ユーリ「はいよ、先生」

二人はリタの家に向けて歩き出す。

ユーリ「(・・・そんなに単純に割り切れるものじゃねえんだよ)」

――――――謎の暗闇の中

ユーリ「なるほど、俺を呪い殺そうってか。
    大した執念だな」

ユーリは今日も暗闇の中にいる。
目の前にはもはや見飽きたキュモールが立っている。

ユーリ「今日はお前も来たか」

どこからともなく、ラゴウが現れる。

ユーリ「・・・結局俺もお前らと同じだよ。
    自分一人の基準で人の生死を決めちまったんだからな」

キュモールとラゴウはただ佇んでいる。

ユーリ「・・・けじめ、か」

―――――リタの家

リタ「・・・・・・っ!」

寝ていたリタは突然目を覚ました。
時計を見ると、リタが目を覚ました時間は、いつも起床する時間の約二時間前だった。

リタ「・・・なんだ、まだこんな時間か
   ・・・寝よ」

リタは再び眠ろうとする。
しかし、何故だか寝付けない。

リタ「(・・・何だろ、妙な胸騒ぎがする)」

リタはふと、ユーリの顔を思い浮かべた。

リタ「(・・・嫌な予感がする)」

リタは起き上がり、ユーリの家へ向かった。

―――――ユーリの家の前

リタ「ユーリ、おきてるー?」

リタはユーリの家のドアをノックする。

リタ「・・・こんな早朝に起こすのも迷惑よね」

リタは自分の家に戻ろうかと思ったが、
どうしても胸騒ぎが収まらないのでユーリの家に侵入することを決意する。

リタ「合鍵は・・・持ってきてるわね」

ユーリの家は元々リタの実験室であるため、リタは合鍵を作っていた。
リタはユーリの家の合鍵を鍵穴に差し込み、鍵を回そうとする。

リタ「・・・?
   回らない?
   ・・・まさか、開いてるの?」

リタはユーリの家の扉を押すと、扉は開いた。

リタ「入るわよー
   あれ・・・ユーリがいない?」

扉の向こうにユーリはいなかった。

リタ「・・・何これ」

リタがユーリの家の中に入ると、机に封筒が置かれていた。
遺書と書かれた封筒が。

リタ「・・・冗談でしょ」

リタは封筒を手に取り、中にある手紙を読む。
そして、手紙を読み終えると同時にリタは走り出した。

―――――アスピオの地下

ユーリ「・・・ここらへんでいいか。
    ここなら人も滅多に来ないだろ」

ユーリは間違いなくリタが自分の遺体を探しにくると考え、
リタが安全に来れる場所、少なくとも周囲に魔物がいない場所を死に場に選んだ。
それが、以前タルカロンが浮上したことによって生じたアスピオの地下だった。

ユーリ「遺書にはアスピオの地下で死ぬって書いておいたからな。
    俺の遺体を見つけるのに大した苦労はしないだろ」

ユーリは自殺するために用意した毒薬を取り出す。

ユーリ「リタに感謝しねえとな。
    助手をやってるうちにいろんな薬剤に詳しくなっちまった」

ユーリは天井を見上げ、今までのことを思い出す。
子供のときのこと
騎士団にいたときのこと
下町で暮らしていたときのこと
星食みの危機を防いだこと
そして、共に旅した大切な仲間たちのこと

ユーリ「悪いな、皆
    思っていたよりも俺は弱かった。
    ・・・・・・もう、楽になりてえ」

そしてユーリは毒薬を口に運ぶ。

ユーリ「さよならだ」

ユーリは毒薬を飲み込み、目を閉じた。

――――――謎の暗闇の中

ユーリ「よう、お出迎えしてくれるのか」

ユーリは再び暗闇の中に立つ。
そこにはキュモールとラゴウがいた。

ユーリ「すぐそっちに行ってやるよ。
    ・・・もっとも、お前らは俺と一緒にいたくなんかないだろうがな」

キュモールとラゴウは相変わらず無表情で立っている。

ユーリ「・・・行くか」

そう呟き、ユーリはキュモールとラゴウの方へ向かって歩き出す。

ユーリ「!?」

突然頭上から雨が降り、ユーリは驚いた。

ユーリ「な、なんだ?」

雨は激しく降り注ぐ。
しかし、その雨は温かく、光を帯びている。

ユーリ「・・・一体どうなってやがる」

雨が降り始めると、頭上から光が差す。
その光は周囲の暗闇を消していく。

ユーリ「・・・どうやらまだ死ねないらしいな」

そう呟いた直後、ユーリは目を覚ました。

――――

リタ「ユーリ!、ユーリ!」

目を覚ましたユーリは横になり、リタの膝枕に頭を乗せていることに気づく。
ユーリの目には、大粒の涙を流すリタの顔が目に映る。

ユーリ「・・・さっき降っていた雨の正体はこれか。
    ・・・よう、リタ」

リタ「!・・・良かった・・・間に合った」

リタはユーリに解毒薬を飲ませ、ユーリの命を救うことに成功する。

ユーリ「・・・良くねえよ」

ユーリのその言葉はリタの逆鱗に触れる。

リタ「・・・あんた・・・本当にふざけんじゃないわよ!」

そう言ってリタはユーリの頬を全力で叩く。

ユーリ「・・・ってぇ・・・どうやら現実みたいだな」

リタ「なんで! なんでこんなバカな真似をしたのよ!」

ユーリ「うるせえな・・・
    死なせてくれよ」

リタ「いい加減にしろ!」

リタは強く歯を噛み締める。

ユーリ「・・・気づいたんだよ。
    結局俺も今まで殺してきたやつらと変わらなかったってことに」

リタ「・・・あんたは罪の無い人を助けるために悪人を殺めたんでしょ。
   あんたとそいつらは全然別物よ!」

ユーリ「違わねーよ。
    自分一人の基準で人の生死を決めた。
    俺とあいつらがやったことは同じだ」

リタ「・・・・・・」

ユーリ「俺は生きるべき人間じゃないんだよ」

リタ「・・・・・・もう考えなくていい」

リタは全身に力が入り、身体が震えている。

ユーリ「なに?」

リタ「あんたはこれから考えなくていい!
   自分が生きるべきかどうかなんて考えなくていい!」

ユーリ「・・・何言ってんだ?」

リタ「あんたの命は私が預かる!
   私が手放さない限り、死なせない!」

ユーリは一瞬、かつてレイヴンに同じようなことを言ったなと思い出す。

ユーリ「だから何を・・・」

リタ「自分は生きるべき人間じゃないとか言うんなら、私があんたを生かしてみせる!

   自分一人の基準で人の生死を決めたことを後悔してんなら、
   世界中の人間にあんたが殺した奴らが生きるべきだったか死ぬべきだったか聞いて回ってやるわよ!

   それで、もしあんたを否定する人間の方が多いのなら、
   何年かけてでもわたしがあんたの正しさを証明して、世間を納得させてやる!

   過去を思い出して死にたくなるのなら、私があんたの嫌な記憶を全部消してやる!

   だから・・・だから、生きなさいよ!」

ユーリ「・・・・・・」

リタ「そんなくだらないこと考えてないで、生きなさい!!」

しばらくの間、沈黙が流れる。

ユーリ「・・・・・・ははっ」

ユーリは思わず笑い出す。

リタ「何がおかしいのよ」

ユーリ「なんだよそりゃ、俺は自分の命すら好きにできねえのかよ」

リタ「そうよ・・・それがあんたの本当の罰よ」

ユーリ「!・・・」

リタ「自殺することがあんたの刑だと思ってるんなら大間違いよ。
   あんたの本当の罰は、他人に自分の命を握られることよ。
   それが問答無用で他人の命を奪ったあんたにはふさわしいわ」

ユーリ「・・・人の刑罰を決めるなんざ、神にでもなったつもりかよ」

リタ「そうよ、あんた専用の神にね」

ユーリ「ははっ、ますます可笑しいな」

リタ「私は大真面目よ」

ユーリは先ほどの笑い顔から一変、真剣な顔つきになる。

ユーリ「なぁ、リタ?
    なんでお前はそんなに自信があるんだ?
    まるで自分が成すこと全て正しいと思ってるようじゃねえか」

リタ「自信? んなもんないわよ。
   それに自分がやってることが正しいのかもわかんないわ」

ユーリは呆気にとられる。

リタ「ただ、私には私が間違ってたらエステルが私を正してくれるって言う確信があるわ」

ユーリ「・・・エステルが間違ってたら」

リタ「そんときゃ他の誰かが止めてくれる」

ユーリは開いた口が塞がらない

ユーリ「お前・・・無責任にも程があるだろ」

リタ「ぶっちゃけどうでもいいのよ、自分が正しいかどうかなんて。
   私は自分と親しい人間が幸せになるならそれでいいわ」

ユーリ「!!」

ユーリは今まで忘れていた、大切なことを思い出したような気持ちになる。

リタ「・・・自分の好きな人が幸せになってくれるなら、私はそれでいい。
   自分の大切な人が生きてくれるなら何だってやる。
   その結果殺されたって悔いはないわ」

ユーリ「・・・・・・」

リタ「あんただってそうだったんじゃないの?
   そのために生きてきたんじゃないの?」

ユーリ「・・・ははっ、全くだ」

リタ「死んだらもうあんたの大切な人たちを幸せにできないわよ。
   ・・・それでいいの?」

ユーリはしばらく間を置いた後、目を閉じながら首を横に振る。

ユーリ「・・・いいわけないな」

リタ「というわけで、あんたはただ生きてればいいのよ。
   主に私を幸せにするために」

ユーリ「・・・なんだよ、結局自分のためかよ」

ユーリは再び笑い出す。

リタ「当たり前でしょ」

ユーリ「はははっ・・・
    あー、悩んでるのがばかばかしくなっちまった」

リタ「・・・とにかく戻るわよ」

――――ユーリの夢の中

ユーリ「よう、また会ったな」

気づくとユーリは、キュモールとラゴウの前に立っていた。

ユーリ「相変わらず無表情だな、お前ら」

男たちは何も答えない。

ユーリ「・・・そうだよな。
    大切な人たちが幸せになってくれるなら、それでいいよな。
    ・・・そのためになら、俺はお前らにどれだけ憎まれようと構わねえ。
    好きなだけ出て来いよ」

キュモール「・・・・・・・」

ユーリ「ま、無駄だがな。
    俺の命はもう神様に預けちまったからな。
    もう、俺もお前らもどうにもできねえ」

ラゴウ「・・・・・・」

ユーリ「お、今日はここまでみたいだな。
    じゃあな」

そういってユーリは歩き出す。
今まで明り一つなかった空間に現れた、一筋の光に向かって。

ユーリ「・・・本当は、もっといい結末が選べたのかもしれねえな。
    ・・・済まなかった、二人とも」

そしてユーリは光に包まれる。
ユーリはその日以来、二度とキュモールとラゴウに会うことはなかった。

―――――リタの家

あれから数日後、二人は何事もなかったかのように暮らしている。

リタ「ほら、早くフラスコ取って」

ユーリ「はいよ」

あれから数日後、リタとユーリはいつもと変わらない日々を過ごしていた。

ユーリ「・・・なあ、リタ」

リタ「なに?」

ユーリ「・・・やっぱり、なんでもない」

リタ「何よ、それ」

会話の後、リタは本を取るため本棚の前まで来る。

ユーリ「・・・取ってやろうか?」

リタは自分の身長より高い場所にある本を取ろうとしている。
必死に背伸びをしながら。

リタ「大丈夫よ、私だって背が伸びてるんだから」

ユーリ「(・・・本当かよ)」

リタ「う・・・あっ!」

背伸びを続けていると、リタはバランスを崩し倒れる。

ユーリ「あぶねえっ!」

ユーリはリタに駆け寄り、リタを受け止める。

ユーリ「・・・なんとか間に合った。
    おい、大丈夫か、リタ?」

リタ「も、問題ないわ」

ユーリはリタを抱き抱える。

リタ「・・・?
   もう離しても大丈夫よ」

リタがそう言っても、ユーリはリタを離さない

リタ「ど、どうしたのよ」

ユーリ「・・・本当にいいのか?」

リタ「な、何が?」

ユーリ「本当に俺の命をお前に預けていいのか?」

リタ「!・・・・・・」

ユーリ「重荷になるだろ? 
    ・・・いいのか」

リタ「・・・リタ・モルディオに二言はないわよ。
   それに、あんたの命なんか軽いもんよ」

ユーリ「・・・ありがとよ」

そう言って、ユーリはリタを離す。

ユーリ「これからもよろしくな、リタ」

リタ「・・・ええ、よろしくねユーリ」

~小ネタ~

ユーリ「なあリタ」

リタ「なに」

ユーリ「お前が開けるなって言ったあの引き出し、何が入ってるんだ?」

リタ「・・・なんでもいいでしょ」

ユーリ「俺にも秘密か?」

リタ「誰にだって人に言いたくない秘密くらいあるでしょ」

ユーリ「・・・・・・」

――――

ユーリ「(・・・よし、寝てるな)」

ユーリはリタが昼寝をしている隙に引き出しを開けようとする。

ユーリ「・・・っ、鍵が閉まってやがる。
    あいつ俺に見られたくないからって鍵付けやがったな」

ユーリが引き出しの中身を見るのを諦めようとしたそのとき

ユーリ「・・・これは」

ユーリは引き出しの上に鍵が置いてあることに気がついた。

ユーリ「・・・片付け忘れたのか?
    ふっ、ついてるぜ」

ユーリは引き出しの鍵を開ける。

ユーリ「人に言いたくない秘密か・・・確かにあるだろうな。
    でもなリタ、俺はお前の事を一つでも多く知りたいんだよ。
    たとえそれがどんなものであったとしてもな。
    ・・・この引き出しの向こうにどんな未来が待ち受けていても、俺はお前を受け入れてみせる。
    行くぜ、リタ!」

ユーリはうっとうしい茶番を終えて、引き出しを開ける。
するとその中には一冊の本があった。

ユーリ「・・・なんだこりゃ。
    猫の図鑑か?」

ユーリは引き出しの中身が大したものでなく、がっかりした。

ユーリ「こんなものなら隠さなくても・・・
    ん? 奥にもう一冊本が・・・」

ユーリが引き出しの奥にある、もう一冊の本を手に取ろうとしたそのとき

リタ「くたばれええぇぇぇぇ!!」

ユーリ「ぐおおおぉぉぉ!?」

リタはユーリのわき腹に全力で蹴りを入れる。
ユーリは吹っ飛び、倒れた。

リタ「はぁ・・・はぁ・・・なにやってんのよこの犯罪者!」

ユーリ「わ・・・悪かった」

リタ「うっさい!
   一生寝てろ、このバカ!」

その翌日

花屋の奥さん「あら、いらっしゃい、お二人さん」

ユーリ「おっす」

リタ「調合用の植物買いに来たわ」

ユーリとリタは花屋を訪れていた。

リタ「あったあった。
   これよ」

花屋の奥さん「はい、お預かりするわ」

リタはお目当ての植物を買おうとしたそのとき

花屋の奥さん「そういえば、私があげた恋愛必勝マニュアル本は役立ってる?」

リタ「!!」

花屋の奥さん「あれのおかげで私は旦那を落とせたといっても過言じゃないわよ」

ユーリ「マニュアル? 旦那?
    一体なんの話だ?」

リタ「近づいてんじゃないわよこの犯罪者あぁぁぁぁ!!」

ユーリ「どおおおぉぉぉ!?」

リタはユーリを蹴り飛ばす。
不幸中の幸いにも、吹っ飛んだユーリの体は店内の商品や壁ににぶつかることはなかった。

花屋の奥さん「ふふっ、余計なお世話だったみたいね。
       あんなものなくてもあなたならきっと大丈夫よ」

リタ「・・・この状況のどこが大丈夫なのよ」

ユーリ「・・・・・・ぁ・・・ぁ」

ユーリは二度とリタの引き出しに触れなかったという。

以上で第四部は終わりです。
次回はいよいよ二人がくっつく予定の第五部です。
第五部の投稿は4/8のpm9~10時を予定しています。
引き続き、ご意見、ご感想を書いていただければ幸いです。

おつー

リタの啖呵が完全にプロポーズにしか見えないから困る

>219
コメントありがとうございます。
確かにリタが好きな相手にしか、この啖呵はでないでしょうね。

>219
コメントありがとうございます。
確かにリタが好きな相手にしか、この啖呵はでないでしょうね。

支援してくださる方々、お待たせしました。
予定した時間より大分早くなりましたが、第五部を投下します。

―――――リタの家

リタ「バカ言ってんじゃないわよ」

ジュディ「ふふ」

ジュディはバウルと共に世界中を旅をしている途中、アスピオに到着しリタの家に寄っていた。
彼女の正式な名前はジュディス
彼女もまた、ユーリたちと共に旅をした仲間の一人である。
ジュディとリタは椅子に腰を掛けながら二人っきりでガールズトークを楽しんでいる。

ジュディ「それで、前に私がハルルで言ってたことは正しかった?」

リタ「!!」

リタは顔を真っ赤にする。

ジュディ「どうやら間違ってなかったようね」

ジュディは笑みを浮かべる。

リタ「・・・そうよ・・・あんたの言うとおりだった。
   ・・・気づいてなかっただけで、私はあいつに自分だけを見て欲しいと思っていたわ」

ジュディ「そう。
     それで、あれから3ヶ月程経ったけど、何か進展はあったの?」

リタ「・・・特には」

ジュディはその言葉を聞き、目を閉じながらふぅと息を吐く。

ジュディ「素直になれない性格って大変ね」

リタ「違うわ。
   ・・・怖いのよ」

リタは下を向きながら話す。

リタ「もし、あいつが私のことを好きじゃなかったら・・・
   もし告白して断られたら一緒にいられなくなるんじゃないかって。
   ・・・そうなるくらいなら今のままでいい。
   それでも十分幸せだから」

ジュディ「でもそんなことを言っていれば、
     いつかユーリは他の誰かに取られるかもしれないわよ」

リタ「・・・・・・」

ジュディ「そうなったらきっと後悔するわね。
     想いを伝えればよかったって」

リタ「・・・・・・分かってるわよ、言われなくても」

リタは辛そうな表情を浮かべる。
ジュディにとってそれは耐え難い光景だった。

ジュディ「・・・・・・分かったわ、お姉さんが一肌脱いであげる。
こういうのはあまり他人が介入すべきものじゃないと思うけど」

しばらく悩んだ後、ジュディはそう言う。

リタ「・・・何をするつもり?」

ジュディ「あなたを手伝うって言ってるの」

リタ「ちょっ、ちょっと!
   あんた、あいつに私があいつのこと好きだって言う気!?」

リタは思わず立ち上がる。

ジュディ「そんな野暮なことしないわよ。
     私はほんの少しあなたをサポートするだけ」

リタはその言葉を聞いて落ち着いたのか、再び椅子に腰掛ける

リタ「・・・別に、自分の恋愛くらい自分でどうにかするわよ」

ジュディ「私はあなたの苦しそうな姿を見てるのが嫌なの。
     とりあえずユーリに気になってる女性がいるかどうか聞いてみるわ。
     それくらいならいいでしょ?」

リタ「・・・まぁ、それくらいなら」

ジュディ「決まりね。
     しばらくしたら買い物を終えてユーリが帰ってくるでしょ?
     そしたら・・・そうね、あなたはしばらく町の図書館にいてくれる?」

リタ「ん? どうして?」

ジュディ「私とユーリを二人っきりにしてほしいから」

リタ「・・・なんで?」

ジュディ「もしユーリの好きな人があなただったとしても、
     ユーリはあなたの名前を言えないでしょ。
     あなたがすぐ近くにいたら」

リタ「!!・・・
あいつが私を好きなわけ・・・ないと・・・思うけど」

リタは顔を赤くしてそう言う。
ジュディはその姿を見て微笑む。

ジュディ「あら、聞いてみないと分からないじゃない。
     とにかく、お願いね」

リタ「・・・分かった。
   ・・・ねえ」

ジュディ「何かしら?」

リタは恥ずかしそうに呟く。

リタ「その・・・ありがとう」

ジュディ「どういたしまして」

―――

ユーリ「帰ったぞ」

ジュディ「おかえりなさい」

ユーリは30分程の時間をかけ、買出しを終えて戻ってきた。

ユーリ「あれ? リタは?」

ジュディ「用ができたっていって出て行ったわよ。
     30分くらいは戻ってこないんじゃないかしら」

ユーリ「・・・用?
    なんだ一体?」

ジュディ「さぁ?
     でもせっかくだから、リタが帰ってくるまで二人で話しましょう」

ユーリ「・・・そうだな」

ユーリは自分とジュディのカップにお茶を入れる。
ジュディにカップを手渡し、ユーリは椅子に腰掛けた。

ユーリ「なぁ、ジュディ」

先に口を開いたのは、ユーリだった。

ジュディ「なあに?」

ユーリ「リタって俺のこと、どう思ってるんだろうか」

ジュディ「!!」

ジュディはユーリの予想外の言葉に驚く。
思わずお茶をこぼしそうになるほどに

ジュディ「ど、どうって・・・いうのは?」

ユーリ「いやまあ・・・その・・・好きかどうかってことだよ」

ユーリは照れながらそう言う。

ジュディ「・・・好きっていうのは男としてって意味で?」

ユーリ「・・・まあ、な」

ユーリは恥ずかしそうに斜め下を向く。


ジュディ「・・・私はそうかもしれないって思うわね。
     あなたといるときのリタはすごく幸せそうだから」

ユーリ「そ、そうか!」

ジュディは少年のように喜ぶユーリを見て、目を丸くする。

ジュディ「・・・どうしてそんなこと聞くのかしら?」

ユーリ「いや、まぁ、その・・・
    察してくれ」

ユーリは再び照れながら言う

ジュディ「・・・・・・」

―――――

リタ「ただいま」

リタはきっかり30分で自宅に戻ってきた。

ユーリ「おかえり」

ジュディ「おかえりなさい」

リタ「さて、そろそろお腹が空いてきたわね」

ユーリ「そうだな、じゃあ飯を作るか。
    ジュディも食っていくか?」

ジュディ「そうしたいけど、バウルが待ってるからもう行くわ。
     宅配の仕事もあるし」

ジュディは世界を旅する傍ら、宅配や護送などの仕事も行っていた。

ユーリ「そうか。
    見送るよ」

ジュディ「見送りはリタだけで十分よ。
     ユーリはリタのために料理を作ってあげて。」

ジュディはリタを見て、ウインクをする。

リタ「そっ、そうね。
   私お腹ペコペコだし」

ユーリは自分が邪魔なのだなと気づく。

ユーリ「へいへい。
    また来いよ、ジュディ」

―――

ジュディとリタは町の出口に向かって歩いていた。

リタ「・・・それで、その、
   ・・・どうだった?」

ジュディは満面の笑みを浮かべる。

ジュディ「心配ないわ」

リタ「へ!?」

ジュディ「安心して。
     全てうまくいくわ」

リタ「・・・それって・・・まさか」

リタが目を輝かせていると、いつのまにか二人はバウルがいるところに来ていた。

ジュディ「見送りはここまでで大丈夫よ」

そう言ってジュディはバウルに飛び乗る。

リタ「ちょっと、もっと詳しく言ってよ!」

ジュディ「後は自分で頑張りなさい。
     お姉さん応援してるわ」

言い終わると、ジュディはバウルと共に飛び去っていった。

リタ「・・・ったく、肝心なことは言わないんだから」

―――――リタの家

――――全てうまくいくわ
あれから数10分後、リタはジュディの言葉を思い出し、身悶えをしていた。

リタ「(あの言葉ってどういう意味なのよ。
    まさか、まさか・・・)」

ユーリ「飯できたぞー、リタ」

リタ「はっ、はいいいぃぃ!?」

今一番会いたいような会いたくないような、リタはそんな人物に突然声をかけられ驚く。

ユーリ「・・・何をそんなに驚いてるんだ?
    飯、できたぞ」

リタ「わ、わかったわ」

―――――

二人は食卓についている。

ユーリ「なあ、リタ」

リタ「なっ、なに?」

ユーリ「・・・お前、俺といるとき幸せか?」

リタ「ぶっ!」

リタは思わず噴出す。

リタ「な、何よいきなる!?」

突然の言葉に驚き、リタは呂律が回らない。

ユーリ「そんなに動揺しくなくても・・・
    ジュディが俺といるときのお前が幸せそうだっていうから、聞いてみたくなってな」

リタ「(何言ってくれてんのよあの女・・・)」

ジュディに怒りを抱きながら、リタは汚れた食卓を拭いている。

ユーリ「・・・答えたくないなら言わなくていい。
    今の質問は忘れてくれ」

リタはしばらく沈黙していたが、小声で話し出す。

リタ「・・・・・・幸せよ」

ユーリ「ん? 何て?」

リタ「だから・・・幸せだってば!」

ユーリ「!」

リタ「幸せじゃなかったら半年以上も一緒にいないわよ、まったく」

リタは真っ赤になった顔をユーリに見られたくないので、横を向きながらそう言った。

ユーリ「そうか・・・」

リタ「そうよ・・・」

ユーリ「リタ」

リタ「何よ」

ユーリ「俺も幸せだ」

気恥ずかしそうに、しかし嬉しそうにユーリはそう言う。

リタ「!!」

リタは再び噴出す。

リタ「バ、バッカじゃないの!」

ユーリ「事実だから仕方ないだろ」

――――全てうまくいくわ
リタの頭に言葉が思い浮かぶ。

リタ「・・・・・・あっ、あのさ、ユーリ」

ユーリ「ん? 何だ?」

リタ「あんたと私って相性いいと思わない?」

ユーリ「...相性?」

リタ「ほ、ほら、笑いのツボとか興味をもつ話題とか似てるし、
   性格もお互いさっぱりしてるところとか合うし、
   味覚も結構似てるし」

ユーリ「・・・確かに
    (・・・味覚は若干違う気がするが)」

リタ「だからさ、試しに私と・・・
   私と付き―――」

フレン「リタ!、ユーリ!、いるか!?」

フレンはリタの家のドアを勢いよく開け、叫ぶ。
突然の来客であった。

―――――リタの家

フレン「――というわけなんだ」

フレンはリタに現存の結界を強化するため、帝都まで来てくれと頼んでいた。
ちなみに、魔導器が消滅して以来、現在使用されている結界には精霊たちの力が利用されている。

フレン「最近周辺の魔物が凶暴化してるんだ。
    今は何とか防げているが、ここままだと街中に魔物が侵入するかもしれない」

リタ「ふーん、そうなの・・・」

リタは先ほどフレンにいいところを台無しにされたため、不機嫌な表情をしている。

フレン「どうか頼むよ」

ユーリ「俺からも頼む。
    下町の連中を危険な目に遭わせたくない」

ユーリから頼まれると、リタは非常に断りづらい

リタ「・・・分かったわよ」

フレン「ありがとう、リタ」

リタ「ただし必要な設備やら機材はできるだけそっちで揃えてよ。
   あと、助手としてこいつも連れて行く」

ユーリ「だとさ、フレン」

フレン「ああ、問題ない。
    結界の詳しいことについては城内の魔道師に聞いてくれ。
    許可証を渡しておくよ。
    これがあれば場内を自由に出入りできる。
    では僕はこれで」

ユーリ「もう行くのか」

フレン「ああ。
    リタの他にもダングレストやヘリオードにいる魔導師や科学者も呼ぶつもりだからね。
    急がないといけない」

リタ「帝都にはいつ行けばいいの?」

フレン「できれば今すぐにでも来て欲しい。
    準備が整ったらすぐに発ってくれないか?」

リタ「まったく、せわしないわね。
   分かったわよ」

フレン「ありがとう、ではこれで失礼するよ」

――――

フレンが去った後、リタとユーリは出発する準備をしていた。

リタ「あれと、これと、それと・・・」

ユーリ「ほらリタ、武器忘れてるぞ」

二人は必要なものをリュックやポーチに詰め込む。

ユーリ「なあ、リタ」

リタ「なに?」

ユーリ「さっきの会話の続きだが」

リタ「!!」

リタは動かしていた手を止める。

ユーリ「確かに俺たち相性がいいよな。
    この半年間、夜寝るとき以外は同じ場所で暮らしてるだろ。
    ほとんど同居してるって言えるよな。
    長期間それが続けられるってことは、かなり息があってるよな」

リタ「ま、まあね」

ユーリ「それに・・・一緒にいて楽しいし・・・
    その・・・さっきお前も幸せだって・・・言ってくれたし」

ユーリの顔は赤くなる。

リタ「・・・・・・」

リタの顔も同様に、赤くなる。

ユーリ「・・・もしも、もしもで良かったら、試しに俺と付き――」

カロル「ユーリ! 大変なんだ!
ギルドに戻ってきて!」

カロルはリタの家のドアを勢いよく開け、叫ぶ。
ユーリは小さくため息をつき、リタはカロルを睨みつける。

―――――リタの家

カロル「――というわけなんだよ」

カロルはギルド同士の紛争に巻き込まれる人々を救う活動をしていた。
しかし、自分だけでは手が足りず、ユーリに助けを求めにきたのだ。

カロル「ドンにバルボス、イエガーとベリウスもいなくなっちゃって、
    ギルドを纏める人がほとんどいないんだよ。
    そのせいでたくさんのギルドが紛争を起こしてるんだ」

ユーリ「・・・今までそんなことなかったのに、なんでこのタイミングで紛争なんか起こったんだ?」

カロル「・・・星喰みが去った直後は、皆で街やギルドを復興するために協力し合ってたんだ。
    でも、ある程度落ち着いたら、縄張り争いとか権力争いが始まったんだよ」

リタ「バカばっかりね」

カロル「こうしてる間も無関係な人間が争いに巻き込まれてるんだ。
    お願いだよユーリ、一緒に来て」

ユーリ「・・・・・・」

ユーリはリタの顔を見る。

リタ「・・・行ってやんなさい」

リタは軽く笑いながらそう言う。

ユーリ「・・・カロル、俺は明日帝都までリタを送り届ける。
    その後でお前の元に駆けつける」

カロル「ユーリ、ありがとう!」

リタ「ったく、感謝しなさいよカロル
   私の助手を貸してあげるんだから」

カロル「・・・ユーリはリタのものじゃないでしょ」

カロルのその言葉を聞いた瞬間、ユーリとリタは顔を見合わせる。
そして、笑い出す。

カロル「・・・何が可笑しいんだよ」

――――

カロル「じゃあ僕は先に行ってるね」

そう言った後、カロルは一枚の紙をユーリに渡す。

カロル「ここに書いてある住所が活動拠点だから」

ユーリ「おう。
    ダングレストだな。
    了解だ」

カロル「それじゃ、待ってるよユーリ」

そう言ってカロルは駆け足で出て行った。

リタ「・・・ったく、どいつもこいつも」

リタはため息をつく。

リタ「(せっかくさっきはいい雰囲気だったのに・・・
    どいつもこいつも邪魔してくれちゃって)」

ユーリ「なあリタ」

リタ「なに?」

ユーリ「今夜デートしよう」

リタ「・・・・・・・はい?」

リタは自分の耳を疑った。

―――――アスピオの街

あれから数時間が経ち、アスピオは夜になる。

リタ「デートって言っても、結局アスピオの街を一緒に歩くだけじゃない。
   普段と変わらないわね」

ユーリ「そんなつれねえこと言うなよ」

二人はデートという名目で、アスピオの街を歩いていた。

リタ「(・・・なんでわざわざデートって言葉を使ったのよ。
    単なる気まぐれとかじゃないでしょうね)」

ユーリ「アスピオって風情がある街だよな。
    暗いところでほんのりと光る街灯とか綺麗だし。
    橋とか家とかの形も洒落てる」

リタ「星食みの直後は町中崩壊してたから風情もなにもなかったけどね。
   あそこからここまで再建するのは苦労したわ」

リタは当時のことを思い出し、目を閉じながらふぅと息を吐く。

ユーリ「今この街があるのはリタたちのおかげだな」

リタ「あんなに肉体労働をしたのは、あのときが始めてだったわ」

会話続けながら歩いていると、二人は人がほとんど来ない下層部まで来ていた。

リタ「いつの間にかこんなところまで来ちゃったわね」

ユーリ「そうだな・・・」

リタ「地下は行かないからね」

ユーリ「・・・その節はご迷惑をおかけしました」

二人は立ち止まる。
そして少しの沈黙が流れる。

リタ「・・・しばらくお別れね」

ユーリ「ああ」

リタ「・・・・・・」

リタは少し暗い気分になり、うつむく。

ユーリ「永遠の別れってわけじゃないだろ。
    あんまり重く考えなくてもいいさ。

リタ「・・・そうよね」

ユーリがそう言っても、リタの暗い気分は晴れない。
ユーリはそんなリタの目の前に立つ。

ユーリ「・・・なあリタ」

リタ「なに?」

ユーリ「お前が一番好きな場所ってどこだ?」

リタ「・・・場所ねぇ」

リタは少しの間考え、答える。

リタ「やっぱりアスピオね。
   ここが一番落ち着くわ」

ユーリ「そうか、ならよかった」

リタ「よかったって何が――」











ユーリ「好きだ」

リタ「・・・え?」

ユーリ「お前が好きだ、リタ」

リタ「・・・・・・」

リタは衝撃のあまり動けずにいた。

ユーリ「・・・1人の女性として好きだ。
    ずっと一緒にいてほしい」

リタ「・・・・・・・本当に?」

ユーリ「本当に決まってんだろ」

リタはその言葉を聞き、泣き出す。

リタ「・・・うっ・・・ぐすっ」

ユーリ「お、おい?
    リタ?」

リタはユーリに抱きつく。

ユーリ「ど、どうした?」

リタ「あたしも・・・あたしも好き」

ユーリはその言葉を聞き、安堵の息を漏らす。

ユーリ「そりゃよかった・・・
    てっきり好きって言われたのが嫌で泣いてるのかと思っちまった」

リタ「そんなわけないでしょ!」

そう言ってリタはユーリを小突く。

ユーリ「・・・いてえな」

リタ「大体言うのが遅いのよ。
   私は3ヶ月前にはあんたを好きになってたってのに」

ユーリ「!!
    マジかよ・・・
    悩んでた時間全部無駄だったじゃねえか」

ユーリは疲れきった表情をする。

リタ「・・・あんたはいつから私のこと好きだったの?」

ユーリ「いつからかは、正直はっきりとわからねえ。
    ただ、自覚したのはこの前俺が自殺しようとしたときに止めてくれたときだな。
    ・・・俺はお前が言ってくれたあの言葉が本当に嬉しかった。
    こいつだけは手放したくないって、そう思ったよ。」

リタはユーリの胸に顔を埋める。

リタ「・・・なんでさっき好きな場所を聞いたの?」

ユーリ「そりゃ、告白された瞬間ってのは一生の思い出になるだろ?
    だからできるだけお前が好きな場所でしたかったんだよ」

リタ「・・・私があんたを振ってたら、私の好きなアスピオに嫌な歴史が刻まれてたけどね」

ユーリ「お前に振られてたら、俺は二度とアスピオには来ないと誓っただろうな」

リタとユーリは顔を合わして笑う。

リタ「ねえ、ユーリの好きな場所ってどこ?」

ユーリ「ん?
    ・・・帝都の下町だな。
    あそこが俺の故郷だし」

リタ「じゃあ結婚式は帝都でしてあげる」

リタはユーリに聞こえないような小さな声で言う。

ユーリ「ん? 今なんて?」

リタ「なんでもない。
   さ、デートを続けましょう」

ユーリ「そうだな」

リタはユーリに向かって手を伸ばす。

リタ「・・・・・・・繋いで」

ユーリ「ああ、喜んで」

ユーリとリタは手を握り合い、歩き出す。

―――――帝都 ザーフィアス

あれから翌日
2人はアスピオから出発し、帝都ザーフィアスへ向かった。

リタ「送ってくれてありがと」

ユーリ「助手として当然の義務を果たしたまでだ」

ユーリは無事にリタを帝都まで送り終えた。

ユーリ「それじゃ、行くな」

ユーリが歩き出そうとすると、リタは無言でユーリの腕を掴む。

リタ「・・・・・・」

ユーリ「・・・そりゃ俺だって一緒にいたいけどさ。
    今も罪の無い人が危険にさらされてるからな。
    行かなきゃならねえ」

リタ「・・・・・・死んだら許さないから」

ユーリ「俺の命はお前に預けたんだ。
    死にたくても死ねねえよ」

ユーリは微笑む。

ユーリ「お前こそ、死ぬんじゃねえよ。
    フレンに全力で守らせるから、大丈夫だと思うが」

リタ「あんたがいないと死ぬかもね」

リタは拗ねるような言い方をする。

ユーリ「・・・・・・」

リタ「・・・嘘だって。
   とっとと行って、とっとと戻ってきなさい」

ユーリ「了解だ。
    ・・・なあリタ」

リタ「ん?」

ユーリ「好きだ」

リタ「!!」

不意打ちのようなユーリの発言にリタは驚く。

リタ「・・・知ってるわよ」

ユーリ「そりゃ昨日言ったばかりだからな」

リタは頭を掻き、その後ユーリの顔を見る。

リタ「・・・私も好きよ」

リタは照れながら、そう返す。

~小ネタ~

ユーリ「なぁ、そろそろ手を離そうぜ」

リタ「嫌」

ユーリはリタに告白した後、デートを続けていた。
告白の後、ずっと手を繋いでいた二人は、人目につく場所に出ようとしていた。

ユーリ「間違いなく誰かに見られるぞ」

リタ「・・・ふーん、あんた私が恋人だって他人に知られたくないんだ。
   私が彼女だって思われるのが嫌なんだ」

ユーリ「そんなわけねえだろ!」

ユーリはそう叫び、強くリタの手を握る。

リタ「!・・・じょ、冗談だって。
   ・・・・・・でも、私はあんたと手を繋いでたいのよ」

ユーリ「お前が望むならそうするが・・・
    どうなっても知らねえぞ」

そう言ってユーリとリタは歩き出す。

――――

花屋の奥さん「あらあらあら!
       やったのね、リタちゃん!」

リタ「・・・うん」

ユーリ「俺たち今日から付き合い始めたんで、よろしく」

花屋の奥さん「まあ! 今日はなんてめでたい日なんでしょ!
       お祝いしなきゃ!」

リタ「・・・大げさよ」

ユーリ「ありがとな、祝ってくれて」

――――

街の男1「お、おい!
    リタが男と手を繋いでるぞ!」

街の男2「はぁ? 何をわけのわからない・・・
     うおおおおお! マジだ!」

リタ「・・・・・・」

ユーリ「・・・・・・」

――――

街の女1「嘘でしょ・・・リタに先越されたっていうの・・・」

街の女2「しかも相手はかなり格好いいじゃない!
     いつの間に捕まえたのよ!」

リタ「・・・・・・」

ユーリ「(・・・・・・半年前からいたっての)」

――――

リタ「・・・・・・ねぇ」

ユーリ「・・・・・・どうした」

リタ「・・・・・・手を繋ぐの止めましょ」

ユーリ「・・・・・・だから言っただろ」

すみません、投稿ミスしました。
本来268には以下の分を入れる予定でした。

――――

魔導師1「エンダアアアアア」

魔導師2「イヤアアアアアア」

リタ「(・・・・・・あいつら)」

ユーリ「(・・・・・・覚えてろよ)」

――――

リタ「・・・・・・ねぇ」

ユーリ「・・・・・・どうした」

リタ「・・・・・・手を繋ぐの止めましょ」

ユーリ「・・・・・・だから言っただろ」

―――――アスピオの街

ユーリ「久しぶり、だな」

あれから約1年後、ユーリはアスピオに戻っていた。
ギルド同士の紛争は終わり、ダングレストとその周辺の町は平和を取り戻したのだ。

ユーリ「ったくフレンのやつ、リタをこきつかいやがって」

ユーリはダングレストから寄り道せずに帝都へ向かったが、そこにリタはいなかった。
何故なら、リタは新たな結界を設置するために世界中の町を飛び回っていたからだ。
新たな結界を設置することは、フレンのリタに対するお願いであり、命令でもあった。

ユーリ「魔導師は騎士団に従わなければならない、か。
    面倒な規則もあったもんだ」

リタは様々な手段を使って不規則に町から町へと移動している。
そのため、ユーリはリタを追いかけて多くの町を訪れたが、未だにリタと合流できずにいた。

ユーリ「・・・あらかた探したが、どうやらアスピオにもいないみたいだな。
    次はハルルにでも行ってみるか」

―――

ユーリ「懐かしいな」

ユーリは自宅の前にいた。
出発する前に、自宅の様子を見ておこうと思ったのだ。

ユーリ「ほこりまみれになってなければいいがな」

そういってユーリは自宅の鍵を回そうとする。
しかし

ユーリ「・・・?
    回らない?
    ・・・まさか!」

ユーリが予想したとおり、ドアは開錠されていた。
ユーリがドアをゆっくり押すと、そこには白衣を着た背丈160cmほどの人物がいた。

ユーリ「(・・・こんな小さい建物を狙ってくるとはな)」

ユーリは自宅に侵入している人物の背後に立ち、剣を突きつける。

ユーリ「泥棒するならこんなとこじゃなくて、もっと立派な建物を狙うべきだったな」

泥棒?「・・・ふふふっ」

ユーリ「何が可笑しい?」

泥棒?「いや、初めてあんたと会ったときもこんな感じだったなって思い出してね」

ユーリ「!?」

泥棒?「そういやあんたには言ってなかったっけ?
    私がここの合鍵持ってることも、今は白衣を着ていることも」

ユーリ「・・・まさか」

白衣を着た人物は振り返り、笑みを浮かべた。
一年前とは見違える姿になった彼女がそこにいる。

リタ「おかえり、ユーリ」

その言葉を聞いた直後、ユーリは剣を後ろに投げ捨て、目の前のリタを抱きしめた。

以上で第五部は終了です。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
引き続き、ご意見とご感想を募集します。
幸運にも明日は休みなので、今から最終部を清書します。
4/9の午前には投稿する予定です。

ふと気になったのですが、このssを読んでくださっている方は何人くらいおられるのでしょうか?
コメントで自分は読んでるぞ、と書いていただければとっても嬉しいです。
人数が多いと、作者のやる気が上昇して最終部を書く速度が上がるかも。

>276
ありがとうございます。
引き続き頑張って執筆します。

このSSが完結しても、ヴェスペリアSSを書いてください。


次はリタが猫耳でユーリに甘える?誘惑?してくる話を見てみたいです

>278
ご意見ありがとうございます。
執筆を依頼してくれるということは、お話の内容が気に入ってもらえたということみたいですね。
ありがとうございます。
私がユリリタの次に好きなのはレイヴン、ジュディスのカップルです。
仮に書くとしたらその二人となりますが、需要はありますか?
ちなみに私は自分が気に入ったカップリング以外は書かない主義です。
そこだけは決して譲らないのでご了承ください。

>279
猫耳の人気に嫉妬
すみませんが、最終部には猫耳リタは出ません。
しかし、どうやら3人以上の方が猫耳リタを望んでるようなので、
後日投下する番外編にて書かせていただく予定です。
いつになるかは分かりませんが。

〉〉280
サンドバックに三散華・追蓮しながら待ってるよ。

>281
サンドバック「効かねえ納豆」

期待せずにお待ちください。

すみません、読み返してみると、またまた投稿ミスをしていたようです。
以下の文を263の下に投稿する予定でした。


ユーリ「・・・・・・何度言われても慣れそうにないな」

ユーリは顔を赤くする。


ユーリ「それじゃ、行って来る」

リタ「ええ。
   ・・・必ず戻ってきなさいよ」

ユーリ「ああ、必ずな」

そう言ってユーリは歩き出す。
リタはユーリの背中が見えなくなるまで、その場を動かなかった。

>>280
>>1さんユリリタでもレヴィジュディでもヴェスペリアSSならなんでもいいです。

>>284
分かりました。
ただ、私自身、今後忙しくなるので、果たしていつ取りかかるのか、
いつ完成するのかも分かりません。
ヴェスペリアそのものがお好きなら、ゲーム以外にもドラマCD、小説、映画などをオススメします。
同じヴェスペリア好きのあなたに幸あれ。

ならば俺は壁に嚙烈襲しながら待ってるよ。

>286
壁「いたたた、ひどいよ!」

半年、それとも一年かかるか分かりません。
最悪書けないかもしれません。
せっかく期待していただいているのに、力足らずで申し訳ない。

支援してくださる方々、お待たせしました。
いよいよ最終部を投稿します。
どうぞ最後までお付き合いください。

―――――帝都 ザーフィアス

フレン「ユーリが結婚か。
    ははっ、未だに想像ができないな」

レイヴン「本当、びっくりよね」

カロル「しかも相手はあのリタなんてね」

かつてユーリと共に旅をした仲間たちは、帝都ザーフィアスに集まっていた。
ユーリとリタの結婚式に参加するために。

フレン「そうかな?
    僕は花見で見たときから、ユーリが結婚するならリタだろうなって気がしていたんだ」

レイヴン「さっすが青年の親友
     青年がリタっちに好意を持ってることを見抜いてたのね」

フレン「確信はなかったけど、そんな気はしてたよ」

カロル「それにしたってあのリタだよ?
    僕、ダングレストでユーリがリタと付き合ってるって聞いて唖然としたよ」

レイヴン「確かに驚いたけど、あの二人、相性はいいと思うよ」

カロル「・・・そうかな?
    ・・・僕、3回くらいユーリに考え直したほうがいいって言ったよ。
    リタが彼女だったら間違いなく尻に敷かれるって。
    ・・・・・・ん? 2人ともどうして上を向いて――」

リタ「覚悟!!」

カロル「ぎゃああああぁぁぁ!!」

いつの間にかカロルの背後にいたリタは、カロルの頭に全力のチョップを叩き込んだ。

――――

カロル「・・・まだ痛いや」

リタ「なんならもう一発くらう?」

レイヴン「どうしてここにいるの、リタっち?
     あと4時間くらいで挙式でしょ?」

リタ「その前に親しい人には挨拶しとこうと思ってね」

フレン「メイクとかはいいのかい?」

リタ「あー私化粧とか嫌いだからこのままで行くつもり。
   髪も短髪だから、大して整えることないしね」

カロル「リタって本当に変わらないね・・・」

レイヴン「そんなことないって。
     いやー、綺麗になったよリタっち、いやマジで」

フレン「確かに。
    前は少女だったけど、今は女性って感じがするね」

リタ「・・・あんたらに言われても嬉しくないんだけど」

―――――結婚式場の近くの公園

パティ「・・・うっ・・ぐすっ」

ジュディ「大丈夫?」

エステル「このハンカチ、使ってください」

パティ「う・・・ありがとうなのじゃ」

ジュディ「罪な男ね、ユーリも」

結婚式に呼ばれた女性陣は、式場の近くの公園にいた。
パティはユーリが他の女性と結婚することになったのが辛くて泣いている。

パティ「・・・・・・いい加減立ち直らねばならんの」

ジュディ「・・・そうね。
     男は他に何人でもいるのよ。
     くよくよしてるくらいなら新しい出会いを求めたほうがいいわ」

パティ「・・・ユーリほどの男はそうそういないのじゃ。
    ・・・じゃが、うちはそのユーリに幸せになって欲しい。
    ・・・リタ姐にも」

エステル「!・・・パティ」

ジュディ「強いのね、あなた」

パティ「・・・ふふーそうじゃろう。
    それでは男たちに会いにいってくるのじゃ」

そう言ってパティは駆け出す。

エステル「ふふっ、良かったです」

エステルは優しい笑みを浮かべる。

ジュディ「・・・ごめんなさい」

ジュディは突然エステルに謝罪する。

エステル「? どうして謝るんです?」

ジュディ「私、リタを手伝っちゃったから。
     ・・・ユーリと結ばれてほしくって」

エステル「・・・だから、どうして謝るんですか。
     むしろあなたはいいことをした――」

ジュディ「ユーリのこと好きなんでしょう? あなたも」

エステル「!!」

しばらくの間、沈黙が流れる。

ジュディ「・・・本当に罪な男ね」

エステル「・・・気づいてたんですね」

ジュディ「ええ、大分前にね」

エステルは、目を閉じる。

エステル「・・・いいんです、もう」

ジュディ「本当に?
     ・・・私がいなければ、もしかしたら今頃ユーリはあなたと一緒にいたかもしれないわよ」

エステル「それはありえません」

エステルは、小さく首を振る。

ジュディ「・・・最初からリタに譲るつもりだったのね。
     でも辛すぎるわよ、そんな人生」

エステル「譲ったんじゃありません。
     負けたんですよ、完璧に」

ジュディ「・・・負けた?」

エステル「私はリタよりもユーリと一緒にいる時間が長かったんです。
     しかも、ユーリと二人っきりになる機会は何度もあった。
     それなのに、見ることができなかった」

ジュディ「・・・・・・」

エステル「・・・見ることができなかったんですよ。
     リタと話しているときにしかでない、ユーリのあの幸せな表情が」

ジュディ「・・・エステル」

エステル「・・・結局は相性の問題だったんです。
     助けがあったとかなかったとか、そんな些細なことは関係ないんですよ」

ジュディ「・・・・・・」

エステル「パティだって立ち直ったんです。
     私だけ、くよくよしてるわけにはいきません。
     それに、大好きなリタとユーリが幸せになるのは正直嬉しいんです」

ジュディ「・・・皆、私よりよっぽど強いのね」

エステル「あら、ジュディは強いですよ。
     心も身体も」

2人は顔を合わせて笑う。
そうしていると、1人の男と1匹の犬が歩み寄ってくる。

ユーリ「お、ここにいたのか」

ラピード「ワン!」

エステル「ユーリ、ラピード!」

ジュディ「ごきげんよう」

ユーリ「おう。
    2人とも元気そうで何よりだ」

ラピード「ワン!」

エステル「ええ、元気で、しかも強いですよ」

ジュディ「ふふふっ、そのとおりね」

2人は再び顔を見合わせ笑う。

ユーリ「・・・なんかあったのか?」

ジュデイ「あなたには教えてあげないわ」

エステル「ふふっ、そうですね」

ユーリ「なんなんだよ、一体・・・」

ラピード「クゥン・・・」


―――――結婚式場

フレン「おめでとう!
    ユーリ、リタ!」

ラピード「ワン、ワオーン!」

エステル「おめでとうございます!
     2人とも!」

カロル「おめでとう!
    ユーリ、スーツ似合ってるよ!」

レイヴン「おめでとさん!
     いやー感慨深いわ!」

ジュディ「ドレス姿、とっても綺麗よリタ!」

パティ「ユーリ、リタ姐、幸せになるのじゃ!」

ユーリとリタは仲間たちが見守る中、結婚式場の入り口から祭壇へ向けて、赤い布の上を歩く。
寄り添い、手を繋ぎながら2人は進む。

ユーリ「ようやくここまで来たな」

リタ「長かったわね、本当」

祭壇に到着し、ユーリとリタは向かい合う。
しばらく間を開けて、ユーリは口を開く。

ユーリ「リタ、好きだ」

リタ「・・・知ってる」

リタの顔は少し赤い。

ユーリ「流石だな」

リタ「・・・ユーリ、好きよ」

ユーリ「・・・・・・やっぱり慣れねえな」

ユーリの顔はリタよりも赤くなっている。

リタ「ずっと、一緒にいましょう」

ユーリ「ああ、喜んで」

そして2人の唇は重なる。

――――帝都ザーフィアス 出口

ユーリ「さて、新婚旅行はどこへ行こうか」

挙式を終えたユーリとリタは、いつもの格好で帝都の出口にいた。

リタ「世界旅行でいいんじゃない?
   あんた、したがってたでしょ」

ユーリ「何年かかるかわかんねえぞ・・・」

リタ「仕方ないじゃない。
   あんたを雇うとき、長期休暇はあげるって約束したんだから」

リタは微笑みながら、そう言う。

ユーリ「・・・それじゃ、お言葉に甘えさせてもらいますか」

リタ「決まりね。
   ほら、手」

ユーリはリタが差し出した手を握る。

そして2人は歩き出す。

ユーリ「リタ」

リタ「ん?」

未来に向かって、歩き出す。

ユーリ「これからも、よろしくな」

リタ「ええ、よろしくね」








共に選んだ1つの道を、2人で歩き出す。

以上で最終部は終わりです。
ここまで読んでくださってありがとうございます。

さて、皆さんにお聞きしたいのですが
1.ぶっちゃけここはつまらないという部分
2.この展開は無理がある、矛盾があるという部分
3.番外編を書くとしたらどんな話がいいか?(今のところは猫耳リタにする予定)

この3つのうち全て、もしくは1つ以上をお答えいただければ幸いです。
皆さんの意見を参考に修正した文章を完全版とし、
一人でも多くのユリリタ好きに満足してもえるような作品にして投稿します。

ただ、投稿する場所はSS深夜VIPではなく、1人でも多くのユリリタ好きに見てもらうため
場所を変えてSS速報VIPにしようかと思います。
見つけやすいようスレタイは変えません。
また、読み直したいという方がいればピクシブあたりにでも投稿し、アーカイブ化しようと思います。
ただ、修正版はおそらく話の本筋自体は変わらないと思うので、
SS深夜VIPで読んだ内容と全くと言っていいほど同じになるでしょう。
それも何なので、今まで支援してくれた方々だけのために、
修正版の最後には長めの番外編を一本追加する予定です。
それでは、今日のところはここまでで。


全てのユリリタファンに幸あれ。

バウルって飛び乗れるサイズだっけ?

>309
ご指摘ありがとうございます。
エアリアルジャンプ(空中ジャンプ)があればぎりぎり乗れるかもって大きさですね。
しかし、普通に考えると掴まってよじ登っていくいくのが自然ですね。
修正させてもらいます。

番外編は、ある日リタに突然猫耳と尻尾が生えて、甘えん坊な性格になる話を見てみたいです。

>311
ご意見ありがとうございます。
丁度アイデアが出てきて、猫耳尻尾付きリタがユーリに甘える話が書けそうです。
ただ、作者が私ということで、お話の内容は私の個性が出たものになります。
つまり、題材は皆さんに指定していただいて構いませんが、お話の展開などは全て
私が考えたものになります。
なので、100%、>311さんが望むものにはならないと思います。
申し訳ありませんが、私は自分が気に入る展開でなければ書かない主義です。
趣味で書いてる以上、そこだけは譲らないのでご了承ください。



気になった点は遺跡に閉じ込められたリタを救出するシーンでそれほど離れてない距離で岩壊す程の変化があったら流石に魔物も反応するんじゃないかとは思ったな

そういえばユリリタといえば某理想郷で連載してる長編物も良いよね

何が言いたいかといえばもっとユリリタ増えろ

>313
ご指摘ありがとうございます。
>岩壊す程の変化があったら流石に魔物も反応するんじゃない
仰るとおりですね。修正しておきます。

>某理想郷で連載してる長編物
私、気になります。
もし良ければURLや何で検索すれば出るかなど教えていただけないでしょうか

>もっとユリリタ増えろ
本当ですよね。
もっとあれば私みたいな素人がssを書かずに済んだものを。

支援してくだる方々へ
伝え忘れましたが、修正版の投稿は4/12もしくは4/13を予定しています。
場所は深夜ではなく、一人でもユリリタ好きに見てもらうためss速報vipに変える予定です。
スレタイは変えません。

そんなことしなくていいからとっととこっちで猫耳の
番外編書けよって方もおられるかもしれませんが、
なかなか執筆が捗らず、結局完成するのは4/13くらいの予定です。
まずss速報vipへ4/12に修正版を投稿し、4/13にそのまま速報vipで番外編を乗せる予定です。
しかし、速報vipであまりにも需要が無い、もしくは炎上するなどの事態が発生すれば
おとなしくこっちで番外編だけ乗せて終わりにする予定です。
あちこち移動して済みません。

取り敢えずお疲レイア~

>317
どういたしましティポ

>>314

漆黒夜想曲でググれば出ると思う

ユーリ騎士団時代(映画版)の時間軸から始まってその時にリタと出会ってたらみたいな原作再構成物で現在ラストダンジョンの所まで連載してる

当然原作から外れまくってるし、一部設定やキャラに改変が入ってる(特にエステル)けどそういうの気にしないならオススメ

一応ユリリタだと思うけどこのスレみたいに甘甘じゃなくて現時点ではリタの片思いなのでそこは注意かな

>>319
返信ありがとうございます。
暇ができたら是非読んでみたいです。

支援してくださる方々へ
現在ss速報vipで投稿しています。
4/13にはそちらで皆さんからリクエストをもらった番外編も載せるです。
もうこちらのスレは終了したものとして、削除依頼を出そうかと思います。
こっちで番外編を載せろよという意見がありましたらコメントください。
今まで応援してくれてありがとうございました。

こっちで番外編を載せろよ

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