錬金術師「面倒だけど経営難に立ち向かう事になった」(881)

 
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――――【 とある国の小さな錬金術店 】


…ボー

錬金術師「…」

錬金術師「…」

錬金術師「…」


錬金術師「暇…だな」

 
ポリポリ…モグモグ…

錬金術師「この町に夢だった錬金用品店を開店して早3年…」

錬金術師「最初のうちはチラホラお客もいたが、今は1ヶ月に数人くるかこないか…」

…ポリポリ

錬金術師「小さなバターピーナツが今の俺のささやかな楽しみか」ポイッ

ポリッ…ゴクンッ

  
That's where the story begins!
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【錬金術師「面倒だけど経営難に立ち向かう事になった】
―――――――――――――――――――――――
This shop will open soon.

 
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ガチャ…ガランガラン!!
 
錬金術師「お…客ですか!?いらっしゃいまーせー!」ガタッ


女店員「私ですよ。言われてた品物のお届け、終わりました」


錬金術師「あぁそう…」ハァ

女店員「…そこまで私が来て嫌な顔をされるのも、少し腑に落ちませんけどね」

錬金術師「ハハ…こっちの話こっちの話。で、いくらになった?」

 
女店員「…驚いてみたけど、毎月こうじゃないですか。慣れましたよ」ハァ


錬金術師「毎月ギリギリながら、よくやってこれたよ。運が絡んだのもあるかもしれないけど」

女店員「っていうか、運しかないじゃないですか」

錬金術師「…」


女店員「オープン当初から手伝ってますが、よくココまで持ったと思いますよ」

錬金術師「お前それ、店員の言葉じゃないよね」


女店員「だって…、"お客"としてまともに来店したのほとんどいないじゃないですか」

 
錬金術師「…」

女店員「腕はあるのに、こんな小さな町にお店を出すからいけないんですよ」

錬金術師「き、厳しいこというねえ…」ピクピク

女店員「でもまあ、大きな町だと競争に負けてすぐに閉店かもしれませんが」アハハ!

 
錬金術師「こ…この…」

女店員「なんですか!」

錬金術師「言わせておけば…悪戯してやるぞコラァ!」ガバッ

女店員「きゃーーー!!」

ドタドタ!!

 
錬金術師「俺だってこのままじゃ悪いとは思ってるんだっつーの!」

女店員「じゃあしっかり働いてくださいよ!」

錬金術師「しっかり道具を作っても、それを買う客がこねえんだよ!」

女店員「売り込みしないからですよ!もっと前に前に行かないと、道具なんて売れません!」


錬金術師「む…、そ、そりゃお前…」

女店員「なんですか」


錬金術師「世界を冒険している奴が、ようやくこの町を訪れて…」

錬金術師「前の町よりもいい装備だ!周辺の魔物を倒して売ったお金で装備を整えようとか…」

 
女店員「…」ピクピク

錬金術師「…ね?」

女店員「そ…そんな都合いいゲームみたいなこと起きるはずないでしょーが!!」


錬金術師「えーっ」

女店員「えーじゃないです!お金がほしいなら、売る努力くらいしてください!」

錬金術師「…はぁ」

女店員「私だって生活かかってるんですから。はー…何でこんなところで私働いているんだろ…」

錬金術師「ふんっ。果報は寝て待て!こうしてれば、いつか仕事が…」

女店員「寝て上手くいくなら、この世は寝てる人ばっかになるでしょうが!」

 
…ガチャッ

冒険者「店は開いているか?錬金製品の店と見たんだが、金を弾むからお願いがあるんだ」


錬金術師「…ね?」

女店員「う、うっそ~…」

 
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女店員「お茶をどうぞ~」ニコニコ

…コトッ

冒険者「あ、あぁすまん。妙に愛想のいい店員だな」ズズッ

錬金術師「はは…うちの店員の元気の良さも売りなので…」


冒険者「そ、そうなのか」

 
錬金術師「それで、ご用件とは一体?」

冒険者「この近くに鉱石脈の洞窟があるのはご存知か?」

錬金術師「そりゃもちろん。たまにお世話になってますよ、深くまでは探索しませんがね」

冒険者「…本当か!それなら話が早い。鉱石を掘る採掘道具がほしい」


錬金術師「採掘道具を?ありますけども、見たところ冒険者さんですよね?」


冒険者「ちょっと理由があってな…クエストを受けていてな…」

冒険者「あの鉱山の鉱石をほしがってる依頼主がいて、いざ意気揚々といったんだが…」


錬金術師「ふむ」

 
冒険者「鉱石が思った以上に硬くて、普通の道具じゃ採掘できなかったんだ」

冒険者「この周辺じゃ一番近い道具屋を探したところ…ココだったというわけだ」


女店員「…店長」ボソボソ

錬金術師「なんだ?」

女店員「そういう理由だったら、普通もっとうちにお客来ますよね?」

錬金術師「こないってことは、うちの評判が悪いか全然知られてないか、だろ」

女店員「…」シクシク


冒険者「で、どうだろうか。売ってもらえないか?」

錬金術師「そりゃもちろん売りますよ。一式でいいですか?」

冒険者「助かる。急なお願いだったから、製作に時間を要するかと思っていた」

 
錬金術師「これでも一流の錬金師ですからね!」

冒険者「それでは即金で。いくら必要だ?」

錬金術師「一番いい一式で20万ゴールド、一番下で3万ゴールドから…」


冒険者「…50万ゴールドある。これで2つ、一番いいのを頼む」スッ

…ドンッ!!チャリチャリンッ


錬金術師「すぐに用意いたします!」ダッ

ガサガサ…ガサゴソゴソゴソ…!!


女店員「…」

 
ダダダダッ…ズザザァ…

錬金術師「お待たせしました!コンパクトにもできる、最新品です!」スッ

冒険者「ありがとう。いい店だと、仲間にも教えるよ」

錬金術師「いえいえ!ごひいきに~!」


冒険者「ではまた」ペコッ

カツカツカツ…、ガチャッ、バタンッ…


錬金術師「…」

錬金術師「…う、売れたぁぁ~!」

 
女店員「…未だに信じられませんけどね」

錬金術師「夢じゃないぞ、夢じゃない!ほら、半額、今月の給料だ!」ドンッ!!

女店員「当たり前です!ってか先月も本来の半分以下しか貰ってないので、全部貰います」


錬金術師「…マジ?」

女店員「マジです」


錬金術師「…」

女店員「…」

錬金術師「また今月ははんぶ…」

女店員「お店、やめますよ?」

 
錬金術師「全部、渡します」

女店員「それでよろしい」フンッ


錬金術師「ぢ、ぢくしょ~…」

女店員「でもほら、さっきの方が仲間にいい噂広めてくれるとか言ってましたし…」

錬金術師「あ~」

女店員「もしかしたら、これからグングンお客が来て…大金持ちになるかも!」

錬金術師「それならいいんだけどなー」


女店員「ほらほら、そんな顔しないで。少しお金分けますから…」

女店員「新しい錬金品の生成の研究してくださいよ」

 
…チャリンッ!!

錬金術師「…」

女店員「…」


錬金術師「バターピーナツ買ってくる!」ダッ


女店員「おい」


…………
………
……

 
――小さな町にある、小さな小さなお店。

適当な店長と、働き者の店員でそれなりに楽しくやっていたこのお店。

…だったはずだけど…

あの冒険者に道具を売ったことで波乱が訪れることになってしまう。


それがわかったのは、大金に喜んだ2日後の朝だった…。

本日はここまでです。ありがとうございました。

期待してる
ちなみに1ゴールド=1円位って認識でいいのかな?

マスターは…?

早速の感想等有難うございます。

>>22
そうですね。その認識でOKです。
>>24
自分のほかの作品に関しては、まだ未定な部分もありますので…申し訳ないです。

それと記述漏れでしたが、シリーズ作品ではなく、
今回も新作という名目なので、よろしくお願いします。

この話wikiと繋がってんの?

皆様有難うございます、投下致します。

>>32
新作という名目なので、繋がり、他の作品との直接的な関連はありません。

 
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――――【 2日後 】

チチチ…


錬金術師「…」

錬金術師「…」

錬金術師「…暇だ」


女店員「暇ですねぇ」

 
錬金術師「この2、3日…。お前のいう事を信じて店を早く開けているというのに…」


女店員「だ、誰だってそう思うじゃないですか!」

女店員「あんな大金をサクっと出す冒険者の仲間、もっとお客として来てくれるかなと!」


錬金術師「実際は閑古鳥鳴いてるけどな」

女店員「むむ…」


錬金術師「お前の給料下げるか」ボソッ

女店員「はい?」

錬金術師「月で20万以上貰ってるのなんて稀だぞ稀」

 
女店員「そんなの知ってますよ。私だって、本当は中央都市の一流企業に行きたかったんですから」

錬金術師「多少の賃金の高さはあったが、よくこんな店に働いてくれたわ」

女店員「中央都市に行くつもりでしたが、色々あって町に残りましたし…」

錬金術師「…知ってるよ」ボソッ

女店員「え?」


錬金術師「何でもねーよ。つーか、最近"社長"顔出さないな」

女店員「そういえば出しませんね」

錬金術師「親父とはいえ、最初の取引先も用意してくれたし、社長と認めざるを得なくなった…」ハァ

 
女店員「お父さん、一大企業の社長ですしね」

錬金術師「俺は俺で楽しくやってるんだから、俺に構うなっつーのな」

女店員「店長に社長って、未だに仕組みが少し慣れませんけどねぇ」


錬金術師「よくある話だよ。雇われ店長と社長で…」

錬金術師「…」

錬金術師「…誰が雇われ店長だコラァ!俺は自分で立ち上げたのに、親父が色々お節介するから!!」


女店員「店長、落ち着いてください」

錬金術師「あ、はい」

女店員「今はとにかく目先の事ですもんね。お客さん来ないかなぁ~…」

 
錬金術師「まぁ仕方あるめぇ。ほら座って、バターピーナツ食う?」スッ

女店員「…頂きますけど」ポリポリ


錬金術師「味、どう?」

女店員「え?美味しいですよ…っていうか、いつものより…香ばしい…」

錬金術師「だろ?」

女店員「ついに料理に目覚めたんですが?」モグモグ

錬金術師「俺が?」

女店員「だってこんな美味しいの、市販品じゃ売ってませんよ」ポリポリ

 
錬金術師「あ~このバターピーナツに関してなんだけど、店の奥の倉庫に箱みたいなの置いたんだけど…」

錬金術師「一晩かけて、俺の錬金術で作った新しい製品なの。見た?」


女店員「えっ!いつの間に?知りませんよ。」

女店員「っていうか、それがこのバターピーナツと関係が?」ポリポリ


錬金術師「うん。バターピーナツ作るやつ造った」ポリポリ

女店員「へ~…。お料理を作る製品まで作れちゃうんですね」

錬金術師「すげーだろ?美味いし」

女店員「そうですね…」


錬金術師「…」

女店員「…」

 
錬金術師「…」

女店員「…ところで、これを作るお金はどこから?」

錬金術師「お前の給料」

女店員「へぇ~…そうなんですか」

錬金術師「うん」ポリポリ


女店員「…」

女店員「え゛っ?」


錬金術師「だからお前の給金から…」

 
女店員「…」

ヒュッ、ゴツッ!!!…ドサッ

錬金術師「」


女店員「し…信じられない!!」

錬金術師「し、舌かんら…」ビリビリ

女店員「もーーーっ!!ど、どうしていっつもそうなんですか!!」

錬金術師「い、いやコレはお前にも必要なものだと…」

女店員「本当にお店やめますよ!?私も生活あるんだって言ってるのに!!」


錬金術師「…ぐっ、ご、ごめん…」

女店員「店長のバカは死んでも治らないなら、一人になれば分かりますか!?」

錬金術師「ちょっ!見捨てるのはやめて!もうしないから!」

 
女店員「何度目ですか!あぁ~~!もう!!」

錬金術師「本当に悪かったって!」

女店員「少しの間、私はお店を離れます!その間にゆっくり考えることですね!」

錬金術師「あああ!悪かったって、一人は寂しいからゴメンて!!」

ギャーギャー!!


…コンコン

女店員「!」

錬金術師「!」


女店員「こんな時にお客さん!?」

女店員「はい、どーぞ!!」


錬金術師「せ、せっかくのお客さんなんだからそんなツンケしなくても…」

 
ガチャッ…ギィィィ…

???「邪魔するよ」

錬金術師「…あ!」

女店員「あぁっ!」


親父「…朝っぱらから騒がしい事だ」


錬金術師「お、親父…じゃなかった社長!」

女店員「社長~!店長何とかしてくださいよ、全く言うこと聞かないんですよぉ!」

錬金術師「こ、このてめ!」

 
女店員「挙句の果てに、人の給料使い込んで、こ、こんなバターピーナツを作る物を造って…!」

錬金術師「お前も美味いって食ったんだから同罪だ同罪!」

女店員「…も~!!」


親父「…まぁ落ち着け二人とも。今日はそういう愚痴やらの話を聞きに来た訳じゃないんだ」

女店員「ふぇ?」

錬金術師「偵察じゃないのか?じゃあ何の用事だよ」


親父「お前ら…一体何をやったんだ?」ニコッ

女店員「え?」

錬金術師「え?」

 
親父「…この近くに、鉱山があるのは知っているな?」

親父「そこら辺一帯の鉱物が荒らされ、許可証がいる場所まで掘り尽されていたそうだ」


錬金術師「…ん?」

女店員「…?」


親父「普通じゃあり得ない速度で、一晩でなくなっていたそうだが…」

親父「お前の作った、この店の印を刻んである採掘道具を持った人間がいたそうだが…知らんか?」


錬金術師「…」

女店員「…」

 
親父「知らないならいいんだが…」

親父「盗賊団に錬金術品を提供し、それで被害を出した場合ー…。賠償責任があるのは知っているな?」

親父「正直に言ってくれないか」ニコッ


錬金術師「…ちょ、ちょっちょ…ちょっと…待っててくださいね…親父さん…」ガタガタ

女店員「店長…、ちょっと奥に…奥に行きましょう…」ブルブル

ダッ…ダダダダダダッ!!

ガチャッ、バタンッ!!

 
錬金術師「やべえやべえやべえ!!」

女店員「完全にこの間のお客じゃないですか!!冒険者じゃなくて、盗賊団…!?」

錬金術師「どうすんだよぉぉ!!逮捕じゃすまないぞ!!」

女店員「相手の素性も考えず、パっと売っちゃうからぁぁ!」


錬金術師「い…いい、今さらだっつーの!」

女店員「も…もうこれは、"知らない"で通すしかないです」

錬金術師「知らないで通すのは無理だ…。いっそのこと、泥棒の仕業でいいんじゃないか!」

女店員「そ、それで通りますかね…」

錬金術師「通すしかないの!」

 
…ガタッ

錬金術師「!」ビクッ

女店員「!」ビクッ


錬金術師「…ま、まさか」クルッ


親父「…」


錬金術師「おお、親父ぃ!!」

親父「やっぱりな…。そんなことだろうと思ったぞ」ハァ

錬金術師「ここ、ここここ…これには深いわけがぁぁ!」

親父「今さら、弁解の余地があるわけないだろう」

錬金術師「ぐぅぅ~…!」

 
女店員「しゃ…社長さん…。私たち、どうなっちゃうんですか…」

錬金術師「逮捕されるのか…?」ブルブル


親父「おそらくお前らの仕業だろうと思って、既に鉱山の管理者には話をつけてある」

親父「処罰らしい処罰にはならないようにした」


錬金術師「お…恩に着るわ親父…」ヘナヘナ

親父「…」

錬金術師「てっきり監獄にぶち込まれるのかと…はは…は…」

 
親父「その代わりだが、この店は潰す。お前は俺の会社で、普通に働け」

錬金術師「え゛っ」

女店員「!」


親父「お前の腕の良さは分かってる。それを買うと言ってるんだ」

錬金術師「で、でも…個人商店は俺の夢で…」

親父「自由にしたのが、この結果だ!本来なら前科者…。俺の顔を潰したのと一緒だからな!」

錬金術師「…っ」


女店員「わ、私はどうなるんでしょうか…」

親父「君は悪いが、今日で去ってもらう。本日まで本当にご苦労だった」

 
女店員「く…クビですか…」

錬金術師「ま…待ってくれよ親父!悪いのは俺なんだから、女店員も他に使ってやってくれよ!」


親父「腕があればいいのだが、ただの店員というのではな」

親父「それに、こうなったのはお前の責任もあるんだぞ」


錬金術師「そ、そりゃそうだけどさ!」

親父「…」

錬金術師「あまりにも不憫じゃないかよ!いきなりじゃなく、チャンスをくれても…!」

 
親父「潰したくない、女店員も守りたい。不祥事はなかったことにしたい…そういうことか?」

錬金術師「…っ!」

女店員「…」


親父「都合のいいことを…。既にお前は社会の掟に反しているんだぞ?」

親父「それを俺が助けた。お前らは俺に逆らう余地は何もない!!」


錬金術師「…」ビリビリ

女店員「うぅっ…」ビリビリ


親父「分かってくれるか?分かってくれるな」

 
錬金術師「…」

女店員「…」

親父「…」


錬金術師「じゃ、じゃあさ…。もし、俺がこの店をもっと大きく出来たら…存続してもいいか…?」

親父「何だと?」

錬金術師「こ、これからはきちんとやるから…。まだ夢を追わせて欲しいっていうか…」

親父「この期に及んで…まだそんなことを…」


錬金術師「お、俺はいいよ。だけど、女店員はしっかり着いてきてくれたし…」

錬金術師「それに応えたい。こんな風になるまで、結果を残せなかったのは悪いと思うけど…!」

 
 
親父「お前な…」

錬金術師「…頼む」ペコッ

親父「…」

錬金術師「俺はアンタの息子だし、その血は流れてる。本気でやれば、絶対に上手くいくと思う」

親父「血を引いているのは、その技術を見れば分かる」


錬金術師「必ず結果を出す!親父の面目のために、"さすが親父の子だった"と言われるようにするから!」


親父「…」

錬金術師「…」

女店員「店長…」

 
…クルッ

親父「様子は見に来る。もし、俺の目に適う結果がなかったら…」

親父「その時は一発で潰す。覚悟しとけ」

カツカツカツカツ…


錬金術師「親父…ありがとうっ!!」

女店員「ありがとうございます!」


錬金術師「…あ、親父そうだ!ひとつ聞きたいことが!」

親父「あん?」

錬金術師「親父の目に適う結果っていうのは…なんだ?」


親父「それも含めて考えろ。それなりの時間はやる。また来るからな」

ガチャッ…バタンッ…

 
錬金術師「…」

女店員「…」

錬金術師「…」

女店員「…」

シーン…


錬金術師「あ…あぁぁ…怖かったぁぁ!面倒なことにしやがってぇぇ…」ヘナヘナ

女店員「え、えぇぇ!?」

錬金術師「ん?」

 
女店員「普通そこは、"これから頑張ろう"とか、"心を入れ替えて頑張る"とかじゃないんですか!?」

錬金術師「いや頑張るけど、怖かったじゃん」

女店員「…」ピクピク


錬金術師「それにお前に手伝ってもらってるのに、いきなりクビだとか…」

錬金術師「予定外な迷惑かけるのを悪いと思ったっていうのは、本心だ」


女店員「店長…」

錬金術師「まぁまだプランも何もないが、どうしたもんかね」

女店員「何も考えてないのに、大口叩いたんですか…」

 
錬金術師「この瞬間を乗り切れば、なんとかなるかなと思って必死こいた」

女店員「…」

錬金術師「しかしなぁ…目に適う結果って、どういう事だろうな」


女店員「そりゃやっぱり、お金でしょう」

錬金術師「わーお」

女店員「わーおって…。普通、結果っていったらそういうことでしょう」

錬金術師「そうだよな~…。そうなんだよなー…」

女店員「じゃあ頑張って売り込んで、働きましょうよ」


錬金術師「はぁ…仕方ないか…」

女店員「私も手伝いますから…ほら、立って!」グイッ

 
錬金術師「とと…」

女店員「フラフラしないでくださいよ。早速、会議といきましょうね」

錬金術師「会議だ?」

女店員「どこにどう売り込むか。あーでもその前に、鉱山管理者に謝りにいかないと…」


錬金術師「いくのか…」

女店員「元はと言えば、私らの責任でしょう…。もしかしたら仕事も舞い込むかもしれませんし」

錬金術師「それを言われたら仕方ないわな…」

女店員「じゃ、行きますよ」

 
錬金術師「も、もう行くのか!?」

女店員「善は急げです。今日は平日ですし、鉱山にも人がいるでしょうし!」

グイッ、グイィッ…


錬金術師「わ…分かったから!押すなって!」

女店員「早く行きますよ!!」グイグイ

錬金術師「押すなっつーに!」

…………
………
……

本日はここまでです。ありがとうございました。

皆様有難うございます。投下いたします。

 
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――――【 鉱石採掘場 】


カーン…カーン…


鉱夫「出たぞ~!」

鉱夫「おーい!もっともってこい!」

鉱夫「向こう側だ向こう側!管理人が呼んでたぞー!」

ガヤガヤ…ザワザワ…


錬金術師「おやおや…」

女店員「わぁ~活気がありますね!」


錬金術師「この体育会系という、空気…。嫌ですわ…」

女店員「もっと男らしく、一緒に働いたらいいんじゃないですか!」

錬金術師「勘弁してくれ…」


ザッザッザッ…

錬金術師「おや」

管理人「見ない顔だなーと思えば、社長の息子さんじゃないですか」

錬金術師「あ、管理人さん。ど、どうも…」ペコッ

管理人「こんな鉱山へ、どうしましたか?」


錬金術師「い、いやぁ~…一応謝りに…です」

 
管理人「…あぁ」

錬金術師「こ、この度は申し訳ありませんでした」

管理人「いいんですよ。社長にすでに被害分のお金は頂きましたから」


女店員「…店長」ボソボソ

錬金術師「ん?」

女店員「知らなかったんですけど、ここも社長が運営してるんですか?」

錬金術師「いや違う。ここは親父が大きい取引をしている鉱山のひとつなんだ」ボソボソ

女店員「なるほど」

 
管理人「まぁ、もう損害分のお金も頂きましたし、別にお気になさらず」

管理人「鉱脈の深く、超高価な希少鉱石を持っていかれたとなると問題でしたが…」

管理人「浅いところで持っていかれたので、被害は少なく済みましたから」


錬金術師「その被害の賠償なんですが、親父は一体幾ら支払ったんでしょうか…」

管理人「2000万ゴールドですよ」

錬金術師「うんうん…そのくらいでしたか」

管理人「はい。ですから気にするほどじゃありません」


女店員「…」

錬金術師「…」

 
女店員「に…」

錬金術師「2000万ゴールド!?」


管理人「微々たるものです。希少鉱石を持ってかれたら、数億…数兆の被害だったかもしれませんよ」

錬金術師「あは…ははは…」

女店員「店長と50万で泡吹いてたのが情けなく感じる…」ハァァ


錬金術師「親父はそれを何も言わずポーンと出したんですか?」

管理人「えぇ」

錬金術師「思った以上に親父のやつ、金持ってるんだな…」

 
管理人「そりゃそうでしょう。この大陸の全てに交易を展開するグループの社長ですし」

錬金術師「そ、そりゃそうか…」

女店員「…」


管理人「そういうことで、特に気になさらないでください」

錬金術師「…は、はぁ」


女店員「…」

女店員「あっ!そうだ、管理人さん」


管理人「はい」

 
女店員「今、入用の道具とかないですか?錬金術の技術で、パパっと作っちゃいますよ!」

錬金術師「お、おい」

女店員「そういう理由もあって来たんでしょーが…」ギロッ

錬金術師「はい…」シュン


管理人「入用の道具ですか…」

女店員「はい。うちのダメ店長は、やる気はないですけど技術は一級品なんです」

管理人「はは、そうかもしれませんね。今回のも、息子さんの道具のせいらしいですし」

女店員「そんな技術を使って、是非安く作らせて頂きますので。今回の謝罪もこめまして!」

管理人「ふむ…、確かにそれはうちにとっても有難い話かもしれませんね」


錬金術師「ちょちょっと、女店員そんな勝手に」

女店員「…」ギロッ

錬金術師「はい」

 
管理人「ふーむ…。道具ですか…」

女店員「はい。是非、うちの錬金術品店で、やらせていただきたいと思っています」


管理人「…」ウーン

女店員「…」

管理人「…」

女店員「ありませんか…?」


錬金術師「ないみたいだ。さ、俺らは一旦お店に戻って…」


管理人「錬金師さんに頼みたい仕事はあるっちゃありますが、ちょっと…あれは…」

女店員「全力でやります。教えてください」

 
錬金術師「…あるんですね」


管理人「…うーん。とりあえず見てもらったほうが、ありがたいですね」

女店員「行きます。ほら、店長!」ギロッ

錬金術師「はい…」

………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 鉱山 坑内エレベーター 】


ガコンッ!!グウォーン…


錬金術師「…」

女店員「わあ~…こんな高度技術なものも、使っているんですね」

管理人「社長さんのおかげです」

女店員「へぇ~…」

 
錬金術師「親父が経営してる事業には、錬金師を扱う部門もあるからな」

錬金術師「丁度、新しい技術の試験運用でココに当てはまったからだろうよ」


女店員「なるほど」

管理人「そうですね。コレのおかげで、鉱脈の深い部分の往復が楽になりました」

女店員「凄い技術だなぁ…」


グォングォングォン…チーン!


管理人「着きましたね。では、こちらです」

 
カツ…カツ…、ザッザッザッ…

女店員「…」キョロキョロ

錬金術師「…」

女店員「…」

管理人「少し暗いですが、気をつけてくださいね」


女店員「あっ、はい」

錬金術師「…ふーん」チラチラッ

女店員「…どうしたんですか?そんなチラチラして」

 
錬金術師「やってほしい仕事ってのは大体分かった」

女店員「えっ」


錬金術師「このフロアの鉱洞、恐らく岩盤か何か…どっかで詰まってるんだな」

錬金術師「恐らくそこを破壊してほしいとかそういうことじゃないのかね」


女店員「はぁ…店長、そんな適当な」


管理人「…ご名答です。さすが社長の息子様だ」

女店員「えぇっ!!」


錬金術師「…っ」キーン

錬金術師「洞穴で大声だすな!声が響く!」


女店員「す、すいません…」

  
錬金術師「…」

錬金術師「はぁ…これは無理ですわ。女店員、戻ろう」クルッ


女店員「ちょっ!店長!?」

錬金術師「やれることならやろうとしたが、こりゃ無理だ」

女店員「そうやって、面倒だから逃げようとしてるんでしょ!」

錬金術師「バッカ、ちげえっつーの!この岩を見ろ」コツン

女店員「硬い岩ですね。でも、爆薬とか錬金術の仕組みで何とかできるんじゃないですか」


錬金術師「…管理人さん、説明してやってくれませんかね」

 
管理人「はは…。女店員さん、この辺の岩盤は一度ヒビが入ると連鎖的に割れてしまうんですよ」

女店員「!」

管理人「ですので、下手するとこのフロア自体が崩れてしまうんです。それで手こずってしまって…」

女店員「そ、そうだったんですか」


錬金術師「どうしてもというなら、親父に頼んでみるといいかもしれませんよ」

錬金術師「親父の機関なら、この程度だったら何とかできるはずです」


管理人「…それならいいんですが、あのエレベーターの導入で予算がなくなってしまいましてね」

女店員「今回の被害の賠償金で何とか出来るとか…」

錬金術師「賠償額はあくまでも、本来取引するはずだった鉱石の値段。別にプラスになったわけじゃないだろ」

 
女店員「そ…そうですか…」

管理人「そうですね、やっぱり無理ですよね。わざわざココまで来てくれて有難うございます」


錬金術師「…」

女店員「そこまでのものなら、うちの店長じゃ無理ですよね…」

錬金術師「…」ピクッ


女店員「こんな店長に逆に案内して頂いて、こっちが恐縮でした」ペコッ

管理人「いやいや」


錬金術師「お、お前…今、なんつった…」

女店員「えー?」

 
錬金術師「こ、こんな店長だの、うちの店長に無理だとぉ!?」

女店員「自分でも言ったじゃないですかぁ!」


錬金術師「…管理人っ!」

管理人「は、はい」


錬金術師「案内してください…俺が解決してみませますよ。代わりに報酬は頼みました」

管理人「!」


女店員「…♪」ニヤッ

  
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――――【 深 部 】

ザッザッザッ…ピタッ


管理人「ここです。この岩盤の奥に、鉱脈が続いているのですが…」

女店員「わ…でっか…」

錬金術師「なるほどなるほど…。これは確かに厄介な代物…」


ザッザッ…

錬金術師「で、このヒビと…処置跡があるようですが、これは?」

 
管理人「あぁそこは別の業者さんに頼んだんですが…失敗してしまって」

錬金術師「…」

管理人「…?」


錬金術師「この階層、フロアにはどれくらいの人が?」

管理人「今はこの階層にはいませんよ」

錬金術師「それは良かった。もう持ちませんよ、この応急処置も」ポンポン


管理人「!」

女店員「!」

 
錬金術師「いやぁ酷い処置だ。二流の施術にも程がありますよ」サスサス

女店員「ちょ、ちょっと適当なことを!」

錬金術師「…やってみるか?」

女店員「え?」


錬金術師「…この岩の部分の金属の留め金を、軽く引っ張ると…」グイッ

女店員「えっ」

管理人「えっ」


グググッ…バキャンッ!!

管理人「と…」

女店員「とれたぁぁ!?!?」

 
パキパキパキ…

錬金術師「あらら、ヒビが」

女店員「ちょちょちょ!!く、崩れるんじゃないですかぁあ!!」

管理人「な、何をしてるんですか!!」


パキッ…ビキビキビキッ!!!


錬金術師「…」

女店員「生き埋めにされるー!?」

管理人「逃げましょう!」

 
錬金術師「…」

錬金術師「あわてなさんな、二人とも」


管理人「へ?」

女店員「え?」


ズズズズッ…ズズゥゥゥン!!!パラパラパラ…


錬金術師「…ねっ?」

女店員「岩盤が奥に崩れて…」

管理人「し、自然洞が現れた…!」

  
錬金術師「あのヒビの部分、奥に傾いてたし…」

錬金術師「まぁ全体的に見渡しても、俺の製品を使わなくても大丈夫だと思ってね」


女店員「…」

管理人「…!」


錬金術師「何をしたわけじゃないけど、これは一応…施術したことになるんですかね?」

管理人「そ、そりゃあもちろん!!」


錬金術師「毎度、ありがとうございました」ニカッ

  
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――――【 管理人室 】

コチ…コチ…

女店員「…遅いですね。今回の報酬、緊急会議をすると言った切り戻ってきませんね」

錬金術師「困ってるんだろ。あんな形で解決してしまったからな」

女店員「でもやっぱり、店長凄いじゃないですか。本気でやれば」


錬金術師「あんな簡単なことに気づけない現場の人間も人間だ」

錬金術師「それに、あんな展開じゃなかったら面倒でやっちゃいないっつーの」

  
女店員「錬金術って、あらゆることに精通してないと難しいんですよね…」

錬金術師「そりゃそうだ」

女店員「…実際、頭いいんですもんね。勿体ない」

錬金術師「何が勿体ないだ」


女店員「少しの努力で色々出来るのに、それをバターピーナツを作るのに回すとか…」ハァ

錬金術師「美味いからな、仕方ない」ハハハ!

女店員「…はぁ」


錬金術師「それよりこれで幾ら貰えるかな~。普通なら数百万なんだが」

女店員「数百万!?」

 
錬金術師「本来、総がかりな錬金用品が必要になるからな。それなりに投資もいるはずだし…」

女店員「でも、今回は金属のボルト引っこ抜いただけじゃないですか」

錬金術師「ありゃ俺が捻りを加えて抜いたからだ」

女店員「え?」


錬金術師「あのまま放置してたから、こっち側に倒れて、あのフロア全体が落盤…。崩れていた」

錬金術師「何度も言うが…現場の人間があんなんじゃ、そのうちここも潰れるんじゃねーの」フワァ


女店員「あ、あはは…」

 
…ガチャッ

管理人「お待たせいたしました」


錬金術師「あ、どーも」

女店員「お帰りなさいです」


管理人「…報酬に関してですが。今、役員とご相談したのですが…」

錬金術師「100万も貰えますかね」

管理人「そ、それが…。ボルトを抜いただけで渡すわけにはいかないと…」


錬金術師「…」

女店員「…」

 
管理人「た、大変申し訳ありません!!」

錬金術師「…」

女店員「…」


管理人「本当に申し訳ありません…」


錬金術師「…まぁ」

女店員「…?」

錬金術師「そんな気はしてた。役員さん方の考えることはいつもそうだしな」

女店員「店長…」

 
錬金術師「わざわざ役員に相談してくれただけ感謝するよ。女店員、帰るべ」ガタッ

女店員「は、はい」


管理人「あ、ちょっとお待ちを!」

錬金術師「はい?」

管理人「お金は出すことは出来ませんでしたが、個人的な気持ちとしてこれを…」スッ

錬金術師「何ですこれ?」

管理人「あけてみてください」


錬金術師「…」

ガサガサ…ペラッ…

錬金術師「…あぁ」

 
女店員「なんですか?」ヒョイッ

錬金術師「採掘許可証…か」

女店員「採掘許可証?」

錬金術師「この鉱山の採掘許可証。えーと期限と採掘許可の場所は…」


管理人「無期限と、採掘許可は全域指定にさせていただきました」


錬金術師「…ふむふむ、無期限と全域指定ね」

錬金術師「…」

錬金術師「無期限と全域指定?」ピクッ

 
管理人「自分は一応、ここの管理人ですし、そのくらいの許可は出来ます」

錬金術師「いや有難い話だが…いいんですかね?100万より高くつくかもしれませんよ」

管理人「お気になさらず。私が管轄する場所で、死人…事故を起こさなかったお気持ちですので」

錬金術師「ふーむ、じゃあ…ありがたくいただいておきます」

管理人「…」ペコッ


錬金術師「じゃ、今度こそ帰ろう」

女店員「あっ、はい!」


ガチャッ…バタンッ!

……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ザッザッザッ…

錬金術師「…採掘許可証て。無期限なのはうれしいが…金がよかったなー」ハァ

女店員「まぁ結果オーライですよ。これで素材の入手は楽になりましたし」

錬金術師「金がなかったら次のことも出来んだろうが…」

女店員「まぁそうですけど…」


錬金術師「んー…」

女店員「…」


錬金術師「女店員、お前…鉱夫にならね?」

女店員「…は?」ギロッ

 
錬金術師「い、いやそういう意味じゃない!睨むなって!」

女店員「じゃあどういう意味ですかねぇ…?」


錬金術師「鉱石を素材として、余ってる棚で売るのはどうかと思ってな」

女店員「…なるほど!」


錬金術師「幸い、俺の道具があればいくらでも鉱石は掘れる」

錬金術師「夜の短い時間だけでも、ある程度の働きで鉱石は入手できるだろ?」


女店員「う~ん…でも…」

錬金術師「なんだ?」

女店員「そもそもお店に人が来ないのに、鉱石を置いても無駄じゃないですか?」

錬金術師「そこは広告でも出せばいいだろ。安定した供給とはいかないが…」

 
女店員「広告って…。どうやったらいいか分かってるんですか?」


錬金術師「なんなら町中や町はずれで、冒険者に対して路上販売…で…」

錬金術師「あぁ!これでいいじゃん!」


女店員「え、路上販売ですか」

錬金術師「違う違う。鉱石販売と看板に書いて、俺の店に案内させりゃいい」

女店員「あ~」

錬金術師「錬金術店としても商売できるし、鉱石の安価提供は宣伝になる」

女店員「いいじゃないですかそれ!」


錬金術師「あ、でもな~…」

女店員「どうしました?」

 
錬金術師「それはそれで忙しくなったら、俺の休む暇がなくなるからな…」


女店員「店帰って、早く看板作りましょう」

女店員「…ね?」ニコッ


ズリズリズリ…

錬金術師「え、笑顔が怖い!っていうか引っ張るな!おいこら!」


女店員「さぁ~前向きに、一歩ずつお店を盛り上げていきましょー」グイグイ

錬金術師「ひぇぇ…!」

………
……

本日はここまでです。ありがとうございました。

皆さま有難うございます。投下致します。

 
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


女店員「さぁ、看板を作ってください」

錬金術師「マジですか」

女店員「マジです」

錬金術師「へいへい…」


女店員「真面目なんだかどうなんだか…。発想力もあって頭もいいのに…」ハァ

錬金術師「それに腕もいいのに!」

女店員「うるさいですよ!」

錬金術師「はい」

 
女店員「鉱石を並べるってことは、棚の掃除も必要ですね」

錬金術師「看板作ってる間に頼んだ」

女店員「当然です。えーと…ぞうきんぞうきん…」ゴソゴソ


錬金術師「あぁそうだ。空いてる棚っつっても、入口のところじゃなくてだな…」

錬金術師「入口から一歩進んだ所にあるのと、空いてる場所交換してくれ」

錬金術師「あと、お前の目線の一つ上の棚の部分で頼む」


女店員「え?しばらく花形として売るなら、入口のほうがいいんじゃないですか?」

錬金術師「入口とショーケースには錬金の製品を置く。そうしたほうが客にもわかりやすい」

女店員「あぁ…」

 
錬金術師「あと、お前の背の一つ上が男の平均的な目線だ。そこのほうが目立つ」

女店員「入口でも目立っていいと思うんですけどね」

錬金術師「入口で立ち止まる客はいるか?普通、入って一つ先の目線にあるものに気づきやすい」

女店員「…なるほど」


錬金術師「元々広くない店だが、そういう配慮で客のニーズに応えるのも…」

女店員「無駄に知識はあるんですけどね。そういう風にいつもやってくださいよ」ハァ

錬金術師「…」


女店員「早く看板作らないと、バターピーナツの生成機、没収しますよ!」

錬金術師「わかりましたよ!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…ゴシゴシ…ビシッ!!

女店員「…よし!」キラキラ

女店員「綺麗になったぁ!棚をしっかり掃除したのはしばらくぶりだからなぁ」

ギュッギュッ…ジャバァ…


女店員「店長!看板のほうは…」クルッ


錬金術師「…ハッ!」パクパク

女店員「…」

 
錬金術師「つい…バターピーナツが食べたくて…」ポリポリ

女店員「…」

錬金術師「お…怒ってる…?」モグモグ

女店員「怒った方がいいですか…?」

錬金術師「…静かなほうよりは」


女店員「いい覚悟です…、ではお言葉に甘えて…」ゴゴゴゴ!!


錬金術師「待てーーーっ!冗談だ冗談!もう看板は出来てる!」

女店員「えっ?」

錬金術師「ほら、そこだ!見ろ!」

"Welkome to alchemist SHOP"

 
女店員「…」

錬金術師「…な?」


女店員「…」

錬金術師「どうした?」


女店員「あの…ウェルカムの文字…間違えてます」


錬金術師「えっ」


………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
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――――【 次の日 】


…ガチャッ!

女店員「おはようございます」

錬金術師「おー、おはよう」ポリポリ

女店員「昨日は看板とかも作りましたし、今日はその準備ですかね?」


錬金術師「あ~看板な。街道にもう刺してきた」

女店員「えっ」

錬金術師「ちょっと夜に用事あって、ついでにな」

女店員「ちょちょ、刺しても売る物品ないじゃないですか!」

 
錬金術師「あるある。もうそれも少し夜中に採掘してきた」

女店員「はいっ?」

錬金術師「だから、採掘ついでに街道にぶっ刺してきたの」

女店員「行動早っ!」


錬金術師「だって後々じゃ面倒じゃん。昼間から外でたくないし」

女店員「そういうのは、面倒っていうより"良い行動"っていうんですよ」

錬金術師「どっちでもいいや。バターピーナツ食う?」スッ

女店員「あ、それじゃ少しだけ…」

…ポリポリ

 
女店員「うーん…お客さん来ますかねえ」

錬金術師「来ないことはないと思うぞ」

女店員「随分と強気姿勢ですね」

錬金術師「そりゃそうさ。鉱山までわざわざ登らないで、かつ安価に手に入るんだ」ポリポリ

女店員「安価提供は魅力ですしね」

錬金術師「無料で採掘許可、使うのは身体だけ。だから安価提供もできる」

女店員「そこは錬金術の製品様様ですね。普通はピッケルやらで肉体労働ですし」


錬金術師「簡単に自動でゴリゴリだ。運ぶのにはちと肉体的疲労が伴うがな」

女店員「本来、採掘許可証とか今回売る鉱石はどれくらいの価値とか収支になるんですか?」

 
錬金術師「自由探索域の採掘許可証は1ヶ月で普通20万ゴールド」

錬金術師「希少鉱石も含めて、一般人が採掘できるのは月換算でその誤差からややプラス程度だな」

錬金術師「だから、普通に販売しているのを買った方が実は肉体労働費を別で安くもある」


女店員「ふむふむ」


錬金術師「うちで今取り扱えるのは、採掘洞の地下1、2階くらいまでだし…」

錬金術師「普通に鉄鋼、たまに銀、稀にエレクトラムじゃないか」ポリポリ


女店員「それはプラスになりうるんですか?」

錬金術師「鉄鋼の純素材が末端グラムでえ~…」

女店員「…」

錬金術師「面倒くせぇ!今の相場用紙も貰ってきたからコレ見ろ!」ポイッ

 
女店員「わわっ、乱暴な!」

錬金術師「バターピーナツうめぇ」モグモグ


女店員「全く…。えーと…」

女店員「…」

女店員「…えぇ?」


錬金術師「…」


女店員「や…安っ!!」

 
錬金術師「くははっ、希少鉱石以外はその辺の浅い自然洞窟でも採れるしな」

錬金術師「鉄鋼はいいところ、月の売り上げで10万ゴールドいくかいかないかだ」


女店員「でも、これだと本当に2000万以上の賠償金の価値があったんですかねぇ」

錬金術師「あん?」


女店員「ほら、この間の冒険家の2000万は浅い場所で採掘されたとか言ってたじゃないですか?」

女店員「これ見る限りはそんな価値ないなーと」


錬金術師「嘘だろ、浅い場所なんて。面目もあるし、表向きでそういっただけだって」

女店員「!」

錬金術師「そういうもん」

 
女店員「へぇ…そういうもんですか…」

錬金術師「それより相場表見てみな。俺が採掘したのは銀とエレクトラムも含まれてるぞ」
 
 
女店員「あっ、はい。えーと…銀とエレクトラムは妙に高いですね」

錬金術師「その辺からはグンと値段があがる。30万いくかなーってところだな」

女店員「なるほど、希少鉱石ほど値段の伸びも爆発的にあがるんですね」

錬金術師「そりゃな。だが需要も限られるし、売れるかどうかは客層によって変化する」


女店員「じゃあ客層を需要の多い人にして、希少鉱石を採掘すればガッポガッポじゃないですか?」

錬金術師「…バーカ」

女店員「なっ」イラッ

 
錬金術師「お前死にたいの?」

女店員「どういう意味ですか」


錬金術師「希少鉱石は、地下深くとか、一定の環境下じゃないと生成されないんだ」

錬金術師「だから、この間の岩板の奥や…坑内エレベーターのもっと地下深くにあるんだよ」


女店員「行けないんでしょうか?」

錬金術師「無理無理。魔物とかいだろうし、毒ガスみたいなのもある。死んじゃうっつーの」

女店員「そうですか…」

 
錬金術師「だから、新しい自然洞や地下深い鉱脈が見つかったら冒険者に依頼するんだ」

錬金術師「先に冒険者に洞窟内の探索や掃除をしてもらい、俺ら錬金術製品で更に整備し…」

錬金術師「さらに採掘する鉱石やらを調査、管理人が採掘プランをだしつつの~…」


女店員「もうわかりました!無理なんですね!」


錬金術師「は、はは…。無理じゃねーが、深い階層に潜る時は傭兵が必須になるな」

女店員「先の冒険者の探索や掃除が終了してもですか?」

錬金術師「どっから魔物が湧くかわからねーし、契約として必須になる」

女店員「なるほど…。今はまだ、そこまでのお金ありませんよね…」

 
錬金術師「先ずは目先の鉱石を売って、希少なのが出たらそれもしっかり売りさばく」

錬金術師「それを基本にして、他のことにも目向ければいい」

錬金術師「焦ってやった商売なんざ、そうそう成功するもんじゃねーからな。眠い…」フワァ…


女店員「なんか、そういう説明されると無駄にムカつきますね」

錬金術師「なんでだよ!」

女店員「出来るなら最初っから色々やってくださいよぉ!」

錬金術師「今回のは、あの盗賊団の事件があったからこそ契約できたんだっつーの!」

女店員「そうじゃなくて、いっつもそうやって考えて働いてくださいって事です!」


錬金術師「いいんだよ、普段はのんびりで!つーか考えても身体がついていかん!」

女店員「身体って…、そういう事の為に私がいるんじゃないですか!」

 
錬金術師「…」

女店員「…」

錬金術師「あ、なるほど」ポンッ

女店員「ちょっと」


錬金術師「でも考えるのにも糖分いるし、面倒じゃん」

女店員「本当に潰されますよお店。でもまぁ、今は考えてくれてるのでいいですけどね…」

錬金術師「そうそう。今が大事」

女店員「良い事言ってるようですけど、全然ダメダメですからね」

錬金術師「へいへい」

 
…コンコン

女店員「!」

錬金術師「おっ」


ガチャッ、ギィィ…


お客「失礼します。やってますか?」

女店員「あ、え…えーと…?」


錬金術師「いらっしゃいませ!」

女店員「あっ、そ、そっか。いらっしゃいませ!」

 
錬金術師「なんで固まった」ボソボソ

女店員「なんか自然にお客が来たの、どれくらいぶりだと思ってるんですか」ボソボソ


お客「良かった、やってましたね。早速なんですが、鉱石を売ってると看板を見て…」

錬金術師「あぁありますよ。そこの棚にあるのが見本で、数はこちらで承ります」

お客「鉄鋼と銀と…エレクトラムですか」

錬金術師「まだ少ないですが、"今日の入荷"はそれだけなもんで」


女店員「えっ、まだそれしか採掘できな…」モガモガ

錬金術師「シーッ!次にまた来てくれる客かもしれないんだからいいんだよ!」


お客「ふむ…銀とエレクトラムはどの程度の品でしょうか」

 
錬金術師「エレクトラムは純度8対2、一般的なものですね」

錬金術師「銀は原石のままで何ともいえませんが、精錬することも可能です」

錬金術師「その場合は、92.5%からコインシルバーレベルまで落とせます」


お客「なるほど。考えたら錬金屋ですものね、その場で精錬もできますか」

錬金術師「あっはっは、任せてください。腕はいいので」

お客「じゃあどうしようかな…」ブツブツ


女店員「店長、店長。92とか、コインシルバーとかなんですか」ボソボソ

錬金術師「お前もっと勉強しろよ。純度の話で…純銀で扱うか、アクセ精製用にするかとかだ」

女店員「む…むぅ…」

 
お客「ふむ…」

お客「じゃあ、お願いがあるのですがいいですか?」


錬金術師「あ、どうぞどうぞ」


お客「実は自分、隣の町で鍛冶屋を営んでるんですが…」

お客「どうにも自分の素材を売買してたルートが潰れまして。ここの鉱山の鉱石を求めに来たんです」


錬金術師「なるほど」


鍛冶屋(お客)「とにかく売る物を作らないといけなくてですね…」

鍛冶屋「鉄鋼でもなんでも、鉱石類の素材を安く提供して頂けるならすぐにでも欲しいんですよ」

鍛冶屋「精錬に関しても問題なさそうですし、是非、鉄鋼から分けて頂きたいと思います」


錬金術師「そういうことでしたら、精錬品を提供させていただきます」

 
鍛冶屋「ありがとうございます!」

錬金術師「いえいえ。自分らも売りたいと思ってましたし、丁度いいです」

鍛冶屋「あのー、それと、もしよければなんですが…」

錬金術師「はい?」


鍛冶屋「固定の供給ルートの確立とか難しいでしょうか」

錬金術師「あ~…」

女店員「…やりましょう!」


錬金術師「…」

…ゴツッ!!

女店員「」

 
錬金術師「ちょっと黙っててくれるかな」

女店員「い…痛い…」


鍛冶屋「はは…。やっぱり厳しいでしょうか」


錬金術師「まだ手探りで始めた部分もあり、安定した供給は難しいですね」

錬金術師「もう少し待って頂ければ確立も出来そうですが…」


鍛冶屋「多少の時間がかかっても、近場でルート確保が出来るならお待ちしますよ」

錬金術師「そうですか…。それなら、こちらも前向きに考慮します」

鍛冶屋「ぜひお願いします。あーそれじゃ、今ある鉱石だけ全部頂けますか?」

 
錬金術師「もちろん構いません。それとルート化は無理ですが、代わりに今後、お店に寄って頂けるなら」

錬金術師「隔日…、隔週かな。そうなりますが、取り置きといった事もさせて頂きますよ」


鍛冶屋「あ…た、助かります!」


錬金術師「そのうち安定してきたら、交易馬車などを使ってルートとして供給します」

錬金術師「それまではこの方法で、契約という形でいかがでしょうか」


鍛冶屋「では、その数に応じて2週間毎の契約でどうですか?」

錬金術師「構いません」

鍛冶屋「ありがとうございます!」

 
錬金術師「それでは、今ある全ての鉱石を精錬致しますので…」

錬金術師「今回の支払いは60万ゴールドです」


鍛冶屋「わかりました。こちらに」

…ドンッ!!チャリンッ…


錬金術師「では少々お待ちください。女店員、そこの鉱石袋持ってきてくれ」

女店員「あ、はいっ」

ゴソッ…タッタッタッタッタッ…

……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 倉 庫 】


錬金術師「あーあー、面倒だけど仕方ねえ。鉱石精錬すっか…」

女店員「ルート契約で、あの人だけにもっと卸しすれば良かったんじゃないですか?」

錬金術師「だからお前はバカだっつーんだよ」

女店員「むかっ」


錬金術師「いいか、ルートによる供給の契約っつーのは、リスクも伴うんだ」

女店員「?」

錬金術師「いわゆる固定契約でな、確かに利益も生むが状況によっちゃ減益…借金になるかもしれん」

女店員「どうしてですか?」

 
錬金術師「一定以上の供給を固定して、それ以下の場合は俺らで穴の部分を埋めるっつーことだ」

女店員「うーん…?」


錬金術師「だーかーらー…、例えば鉄鋼30kgを毎週提供するとして」

錬金術師「それ以下の25kgだった場合、本来提供するはずだった5kgっていう穴があくだろ」


女店員「そうですね」


錬金術師「その5kgで、あの鍛冶屋がその鉄鉱石を使う契約を別に請け負ってた場合…」

錬金術師「俺らのせいで出来なかったってことで、その責任が連鎖的に俺の店に来るわけ」


女店員「あ~なるほど…」

 
錬金術師「だから、ルート契約だけはしない。俺らがあくまで有利に進めるようにしたっつーこと」

女店員「確かに今回の契約なら、私たちに不利は尽きませんしね」

錬金術師「本当に安定してるなら、ルート契約で利益増やしたほうがいいんだけどな」

女店員「でも同じ数だけ供給したら、利益はそう変わらないんじゃないですか?」

錬金術師「さっきの責任転換が出来る分、多くのお金を払ってくれるんだよ」

女店員「なるほど…」


ガサガサ…ゴロゴロッ!

錬金術師「さってと、これで鉱石は全部出したか。そこの木箱とってくれ」

女店員「これですか?はいどうぞ」スッ

錬金術師「ありがとさん」

ゴソゴソ…パカッ

 
女店員「ごほっ、ごほごほ!埃が…」

錬金術師「しばらく使ってなかったしな。鉱石を精錬するには、簡易精錬かまどが便利だ」

女店員「ふむ…」

錬金術師「そのうち忙しくなったら手伝ってもらうから、やり方見てろ」

女店員「は、はい」


錬金術師「この山なりの一番上に鉱石を乗せて、一番下の部分に…」

錬金術師「"小火炎魔法っ"」パァッ

…ボォンッ!!


女店員「!」

錬金術師「火加減はまぁ…そこは慣れ。鉄鋼から練習しろ」

女店員「は…はい」

 
錬金術師「強すぎると不純物も混ざって純度が低く」

錬金術師「弱くてじっくりなら、確実に不純物を取り除き純度を高くして精錬できる」


女店員「難しいですね…」


錬金術師「慣れれば、高火力で純度を高く出来る。はぁっ!」パァッ

ゴォォォッ…!!

女店員「わっ…鉱石が溶けていく…」


錬金術師「精錬のやめ時は、溶けだして光沢が出始めたらそこで火を消す」

 
女店員「…はい」

…キラッ

錬金術師「ここだ」パチンッ

ボシュンッ!!カキンッ、コロッ…コロコロコロ…

女店員「これが精錬したての鉄…。綺麗ですね…」


錬金術師「やめ時も間違えば、脆く崩れちまう。早すぎると精錬がされてない」

錬金術師「不純物だって混ざるかもしれないし、そこは要練習だな」


女店員「は、はい!」


錬金術師「…って、なんで普通に教授してんだ俺は」

錬金術師「俺が教えるなんて、柄にもないことをー…」

 
女店員「凄い…、私もやってみようっ…」キラキラ


錬金術師「…」

錬金術師「ま…いいか」


…………
………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 20分後 】


ゴソゴソ…ゴトンッ!!

錬金術師「お待たせしました。こちらで全部になります」

鍛冶屋「おぉ早かったですね」

錬金術師「腕だけは自信ありますから。では確かに60万ゴールドを頂きました」


鍛冶屋「では鉱石を確かに。では、また2週間後に来ますので宜しくお願いします」ペコッ

錬金術師「少なからずの精錬済みの鉱石等、用意しておりますので」

鍛冶屋「はい。それでは失礼します」


ガチャッ…バタンッ!

 
女店員「…」

女店員「ふーっ…売れましたね!」


錬金術師「在庫なくなっちまった」

女店員「良い事じゃないですか」

錬金術師「鉱石の素材屋としても看板出して、ないとかどんな話だよってね」

女店員「あはは…」


錬金術師「はぁぁ…仕方ねえなぁ…」

女店員「?」

錬金術師「表に本日終了の看板だしとけ。鉱石の在庫確保しに行くぞ」

女店員「まだ午前中ですよ!?」


錬金術師「途中で飯でも買って、今日は採掘だ。これからの分が間に合わん」

女店員「…そうですけど」

 
錬金術師「お前の考えてた、"仕事"だぞ」

女店員「…それもそうですけど」

錬金術師「なんだ乗り気じゃないな。私は店員だから使ってくださいとか言ってた癖に」

女店員「いや~…店長がいざ働くとなると不思議で…」


錬金術師「…」

女店員「ねっ?」


錬金術師「"ねっ?"じゃねえよ!取引相手がいる限りはしっかりその分はやるっつーの!」

錬金術師「ほら行くぞ」グイッ


女店員「は、はいっ!」

………

……

本日はここまでです。ありがとうございました。

皆さん有難うございます。投下いたします。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 鉱山・管理人室 】

ザッザッザッ…

錬金術師「ふぅ~ついたついた」

女店員「管理人室?直接採掘洞に行くんじゃないんですか?」

錬金術師「ちょっと用事あるんだ。まぁ来い」

…コンコン

管理人「どうぞー」

…ガチャッ


錬金術師「失礼しますよ」

管理人「あぁ息子さん。どうしましたか?」

 
錬金術師「おかげで、鉱石も売れましてね」

管理人「そりゃよかったですねぇ」

錬金術師「それで、ちょっとご相談に来ました」

管理人「ふむ…何でしょうか」


錬金術師「採掘に関して、人手が欲しいんです」

管理人「人手ですか?」

錬金術師「その場その場でいいんで、俺らが採掘したのを運ぶ人間が欲しい」

管理人「ふむ」


錬金術師「採掘するのは簡単なんですが…」

錬金術師「採掘現場から、俺の店まで運ぶのは量が多いと厳しいんですよ」

 
管理人「あ~確かにそうでしょうね」

錬金術師「そこで、俺らが鉱石を採掘したらそれを店まで運んでほしいんです」

管理人「…ふむふむ」

女店員(なるほど)


錬金術師「いかがでしょうか」


管理人「…悪い話じゃないですね。それだけなら、こっちの事業にも支障はないですし」

錬金術師「では呑んで頂けますか」

管理人「それなら役員を通さずとも、私だけで許可できます」

錬金術師「ありがとうございます」ペコッ

 
管理人「賃金はいかほどにしましょうか」

錬金術師「1回辺り、往復込みで3万ゴールドでお願いしたい」

管理人「3万ですか?高いですね…もっと安くてもいいのですよ?」

錬金術師「その代わり、希少鉱石の紛失や破損などの保険代として取ってほしい」

管理人「…なるほど」


女店員「ど、どういうことですか?」


錬金術師「…あの許可証は、希少鉱石の出る鉱脈も可能なわけだろ?」

錬金術師「もし今後、俺たちの採掘が拡大したら希少鉱石も入手できる可能性は高いわけ」

錬金術師「その際、運搬で問題があったら責任を負ってほしいっていうことだよ」


女店員「あ~なるほど」

 
管理人「んまぁ…確かにそれなら合理的な値段かもしれません」

錬金術師「それでもこちら側が高いのは承知してほしいです」


管理人「…わかりました。断る理由もありませんし、その条件で構いません」

錬金術師「感謝します」

管理人「いえいえ。それではお二人で来たということは今日から?」


錬金術師「そうですね。夕方には採掘も終わりますので…」

錬金術師「その頃までに準備してもらえると有り難いですね」


管理人「わかりました。準備しておきます」

錬金術師「それでは」ペコッ

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 採掘洞 地下1階 】


ウィイイン…グォングォン…ガコンッ!!


錬金術師「さーついたぞ。面倒くせーけど」

女店員「いきなり採掘洞に来ましたけど、道具とか持ってないですよ?」

錬金術師「その階層ごとに構内事務所っつーのがあってな。そのロッカーに入ってるよ」

女店員「準備いいですね…」


錬金術師「昨晩きた時点で、全部準備しといたんだよ」

女店員「面倒くさがりなのに、用意周到で頭も良くて…本当に訳わかんない人ですね」

錬金術師「店員さん。そういうのは、思ってても口にしないもんじゃないんですか」

 
女店員「いいんですよ!」

錬金術師「はい」


ザッザッザッザッ…

女店員「あっ!あそこが事務所ですか?」

錬金術師「そう。無人だから、勝手に入っていい。一番端のロッカーから道具入ってるから」

ザッザッザッ…ガチャッ…ギィィ…

カチャカチャッ…ガチャッ…


錬金術師「さーてさて、ほら…お前の」ポイッ

女店員「わわっ」ガシッ

錬金術師「俺のはこれ。どっちも軽量化してあるから使いやすいぞ」


 
女店員「確かに軽いですけど…、これで鉱石掘れるんですか?」

錬金術師「俺の錬金製品を舐めてるのか?」

女店員「あ~でも確かに、店長が採掘して鉱石持ってこれるくらいだし、私にもできますね」

錬金術師「…」


女店員「じゃあ、採掘現場までレッツゴー!」

錬金術師「はぁ…」


…………
………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 6時間後 】


女店員「はぁ…はぁ…」ストンッ

錬金術師「さすがに疲れたな」

女店員「休憩を取りながらとはいえ、さすがにクタクタですよ…」

錬金術師「普通なら数日かかるようなのを、俺の製品のおかげであっという間に終えたしな」ニヤッ


女店員「自慢する元気があるならもっと採掘してください」


錬金術師「嫌です」

女店員「この…」

 
ザッザッザッ…

管理人「おふたがた~!」


錬金術師「ん…」

女店員「あっ、管理人さんですよ」


管理人「うっわ、こんなに採掘したんですか!?」

錬金術師「時間は無駄にありましたし。夕方までとは言いましたが、さすがに疲れましたよ」
 
管理人「ひえ~…。確かに、息子さんの錬金製品は導入したくなりますねこりゃ」


錬金術師「…息子さん息子さんというのもいいですが、店長と呼んでもらった方が…」

管理人「あっ、失礼しました」

錬金術師「はは…本当はいいですけどね。錬金術師でも、息子でも。慣れてないもので」

管理人「では店長とお呼びしますよ」

 
錬金術師「はは、申し訳ない。よろしくお願いします」


管理人「しかし…店長さんの採掘道具、大したもんですねえ」

錬金術師「自動で回転する道具ですからね、魔石さえ補給すればいくつでも掘れます」

管理人「どんなに素晴らしくても、役員を動かさないと導入は至らないんですがねぇ」ハァ

錬金術師「世界でも初ですよ~、こんな早い採掘道具」

管理人「あはは…相談してみます」


錬金術師「ところで管理人さん、何か用事があったんじゃ?」

管理人「あっ、そうでした。おーい!こっちだ!」


ザッザッザッ…ピタッ

新人鉱夫「し、失礼します」ペコッ

 
錬金術師「こちらの青年は?」


管理人「新人で入った子なんですが、いかんせんドジも多くて力がなくて…」

管理人「運搬で基本を学ばせつつ体力面も育てるつもりで、手伝わせようと思いまして」


錬金術師「…確かに鉱夫にしては少し体が細いですね」

新人鉱夫「す、すいません…」

錬金術師「いや運んでくれるだけ有り難いよ」

新人鉱夫「一生懸命頑張ります!」


管理人「えっと…じゃあ、新人鉱夫くん」

新人鉱夫「は、はいっ」

 
管理人「ここで採掘されて落ちてる鉱石を全部一か所に集めて…」

管理人「この人のお店、さっき教えた住所まで運んでもらえるかな?」


新人鉱夫「ぜ、全部一人でですか!?」

管理人「このくらいやってもらわないと。さっ、頼んだよ」

新人鉱夫「がんばります…」

ザッザッザッ…ゴソゴソ…


管理人「では、お二人はあと戻ってもらってれば…。届けさせますので」

錬金術師「だ…大丈夫ですかね彼で。スゲー不安なんですが」

管理人「責任は負います。貴重な人材ですので、育てたいんですよ」

錬金術師「そ…そうですか…」

 
女店員「見てて危なっかしいですね…」

錬金術師「大丈夫かアレ…」

管理人「…」


フラフラ…

新人鉱夫「…お、重い…」

新人鉱夫「よいしょ…」ググッ

新人鉱夫「あっ!」ポロッ

…バキッ!!

 
錬金術師「ば、バカッ!それは貴重なエレクトラム…」

女店員「早速、責任を負う保険適用の場面になっちゃいましたね」

管理人「ま…まぁこれからに期待しますので…」ピクピク


錬金術師「そんじゃ代金等は後日改め、まとめて請求と支払をしますね」

管理人「よろしくお願いします」

錬金術師「運搬をお願いする時は、管理人室に先にあいさつに伺いますので」

管理人「わかりました。今日はわざわざありがとうございました」


錬金術師「いえいえ。それじゃ、帰るぞ」クルッ

女店員「あ、はいっ」ダッ

………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夜・錬金術師の店 】


錬金術師「さてさて、面倒くせーけど始めるか…」

女店員「何するんですか」

錬金術師「久々に、収支…、現金出納帳とか帳簿っつーのか。つけないとな」ハァ

女店員「珍しい!」


錬金術師「お前やってくれよ」

女店員「え~…収支管理ですよね?」

錬金術師「そういうこと。小まめに記載しとかないと忘れるわ」

 
女店員「よく分かりませんよ」

錬金術師「はぁ~…。仕方ない、俺が書くか…」

ペラペラペラ…


女店員「…」

女店員「…どんな感じなのかな~」チラッ


錬金術師「…」

女店員「ちょっ、これ書いたのオープン当初だけじゃないですか!」

錬金術師「面倒だったから…つい」ハハハ

女店員「…」ピクピク

 
錬金術師「今日から書きますよ…へいへい…」

女店員「1日毎に書くんですか?」

錬金術師「いや、収支に変動があった場合だけだな」

女店員「なるほど」


錬金術師「とりあえずここ2、3日の分だけまとめる」

女店員「っていっても、あの日からはほとんどプラスですよね」

錬金術師「バターピーナツ製品が大きなマイナスだが」

女店員「あれ幾らかかったんですか…」

錬金術師「40万」


女店員「ば…」

女店員「ばっかじゃないんですか!?!?」

 
錬金術師「うぇえぇ…耳が痛いから大声出すなって!」

女店員「よ…40万って、最初の儲けほぼ全部丸投げじゃないですか!」

錬金術師「そもそも俺の採掘道具作るのに15万以上かかるしな」

女店員「じゃあプラスマイナスでゼロ…、むしろマイナスなのかな…。頭が…」フラフラ


錬金術師「はっはっはっ!まぁこれからこれから!」

女店員「…不安でしかありませんよ」


錬金術師「それじゃ軽く帳簿つけておくわ」

女店員「本当によろしくお願いしますよ…はぁ…」

 
錬金術師「~♪」カキカキ

ペラッ…カキカキ…


女店員「それじゃ私は掃除だけして、今日はあがりますよ」

錬金術師「はーいご苦労様」


…コンコン

女店員「…あれ?」

女店員「…こんな時間にお客?っていうかクローズの看板出したはずなんだけど…」

女店員「はーい、どうぞー?」

 
ガチャッ!

新人鉱夫「ひぃひぃ…お、お待たせ致しましたぁ…」

女店員「…新人鉱夫さん!」

錬金術師「…あ」


新人鉱夫「こんな時間になって申し訳ありません…」ハァハァ

新人鉱夫「採掘洞で割った鉱石以外は全部持ってまいりました…」ゼェゼェ


錬金術師「あ~…ご苦労さん」

女店員「ご苦労様でしたっ!」ニコッ


錬金術師(忘れてた)

女店員(忘れてました)

 
新人鉱夫「それじゃ…えっと…置いておきますね…」フラフラ

錬金術師「管理人さんに宜しくな」

新人鉱夫「はーい…では…」

ガチャッ…バタンッ…


錬金術師「…」

錬金術師「あーそうだったそうだった。完全に忘れてた」ハッハッハ!


女店員「て、店長はひどい人ですね?私は忘れてませんでしたよ?」

錬金術師「それは自分も忘れてたって言ってるのと一緒だろーが」

女店員「あはは…」

 
錬金術師「どれどれ…鉱石は酷い傷物とかはないかね…」

カツカツカツ…ゴソッ

錬金術師「ふむ。まぁ見た感じは大丈夫そうだな」

女店員「少し心配でしたけど、良かったですね」

錬金術師「まぁな」


女店員「それじゃ改めて私は掃除して帰りますね」

錬金術師「はいよ、ご苦労さん」

女店員「明日の予定とかありますか?」

ジャバァー…ゴシゴシ…


錬金術師「予定かー。鉱石を売らない事には何もないし…」

錬金術師「店を留守にするわけにはいかないし、女店員がまた採掘してくっか?」

 
女店員「マジですか。私、今日のでも結構…腰に"キてる"んですが…」ズキズキ

錬金術師「くっくっく…、情けないやつめ…」ズキズキ

女店員「私と一緒に腰抑えてるのに、説得力がないにも程があるんですが」


錬金術師「…」

女店員「…」


錬金術師「ま…明日は…」

女店員「のんびりとお店で販売でいいですね…」


………
……

 
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・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
【 現時点でのお店の経営収支 】

■収入
・販売関連110万ゴールド

■支出
・バターピーナツ生成器40万ゴールド

■収支合計
・プラス70万ゴールド

【 現時点でのお店の経営情報 】

■お店
・平屋1階建て
・狭い倉庫

■販売物
・採掘道具20万ゴールド
・鉱石類(鉄鋼1000、銀5万、エレクトラム20万ゴールド)
・バターピーナツ(サービス)

本日はここまでです。ありがとうございました。

皆さま沢山の感想等有難うございます。投下、開始致します。

 
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――――【 2日後 】


錬金術師「ふぁ…」

女店員「昨日はお客さん、そこまで来ませんでしたねぇ」

錬金術師「結構来ると思ったんだがな~。ま、腰痛くて動けなかったし助かったが…」

女店員「帳簿見せてくださいよ」

錬金術師「ほいよ」ポイッ

…バサッ!


女店員「何も投げなくても…。えーと、どれどれ…」

女店員「…」

 
錬金術師「別に変わっちゃいねーよ。現時点で利益70万だが」

女店員「…軽く言ってますけど、70万って相当な額じゃないですか」

錬金術師「とはいっても、ただ採掘して売っただけだしな、雑費引いてないし純益とは言い切れない」


女店員「何はともあれ、これで私の給料もバッチグーですね」

錬金術師「月末ね」

女店員「わかってます!」

錬金術師「さてどうしたもんか。在庫はあるが、鍛冶屋が来るのはおおよそ10日後だし」

女店員「また店でぼーっとバターピーナツ食いですかね」

 
錬金術師「んー…」

女店員「…」

錬金術師「そうだお前、余ってる鉄鋼で、倉庫で精錬の練習してきたら?」

女店員「あっ、なるほど」


錬金術師「鉄鋼なんざ腐るほど在庫あるし、上手くできたらそのまま商品になるし」

女店員「はーいっ♪」タッ

タッタッタッタッタッ…


錬金術師「くれぐれも火の扱いには気を付けてなー」

女店員「わかってまーすっ」

タタタタッ…

 
錬金術師「…」
 
錬金術師「ふむ、これでゆっくりと休める」

錬金術師「俺は俺で店番くらいだし、バターピーナツでも食べてるか…」ポリポリ

錬金術師「あいつがいると、どうにも何かと急かされる」


…ガチャッ!

???「こんにちわ~」

錬金術師「おや。いらっしゃいませー」


建築屋「愛されて100年の道!あなたの町の、建築屋さんです!」

錬金術師「…あぁ?」

建築屋「雨漏りやお店の拡大など、何かありませんか?外回り営業中なんですよ」

錬金術師「…客じゃねえのか。いらんいらん」シッシッ

 
建築屋「旦那、そんな邪険に扱わないでくださいよ」

錬金術師「つーかお前、この町でやってるくせにうちに1回も来たことないじゃねーか」

建築屋「最近、まともに販売業務をしたと噂を聞きまして♪」


錬金術師「…」

錬金術師「と、とにかくいらん。何かあったらこっちから声をかけるから帰れ」


建築屋「…そうですか?」

錬金術師「そうです」

建築屋「それじゃ仕方ないですね…。何かあったらぜひ、一報を」

錬金術師「へいへい」

ガチャッ…バタンッ!

 
錬金術師「一昔前は、建築とかは営業ナシでどんどん仕事あったみたいだが…」

錬金術師「どこも不況ってやつなのかね」

錬金術師「…それより少し、女店員は上手くいってるのか見てやるか…」クルッ


…ボォンッ!!!

錬金術師「!?」


女店員「きゃ…きゃああっ!火、火が止まらないです~!!」

女店員「あああっ、他の道具に火がぁぁ!」

女店員「て…店長!助けてください店長~~っ!!」

ゴォォォッ!!ボォンッ!!

 
錬金術師「…」

錬金術師「…」

錬金術師「…建築屋さ~ん!!まってくださ~~い!!」

………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 30分後 】


モクモク…プスプス…


錬金術師「はぁ~はぁ~…」

女店員「火力を少し高めようとしたら、なんか爆発起きて…」ショボン

錬金術師「多分、製品作る際の燃料か何かに引火したな」

女店員「ごめんなさい…」


錬金術師「俺が見てないで起きた事故だし、仕方ないでしょ」

女店員「うぅ…」

 
錬金術師「つーか、壁はなくなったし天井穴空いてるし…」

錬金術師「そっちのほうどうするかだわ」


女店員「どうしましょう…」

錬金術師「ナイスタイミングだったといえ…」チラッ


建築屋「ありがとうございまーす!!」キラキラ


錬金術師「やっぱやめるか」

建築屋「なんでですか!」


錬金術師「え~…だって…。まぁこれで広くなった感じするし」

錬金術師「オープンなお店!みたいな」

 
建築屋「泥棒に狙われ放題じゃないですか!」

錬金術師「あ、そうか」

建築屋「まぁ安くしときますよ。倉庫以外にも修復する場所はあります?」

錬金術師「だからないっつーの!」

建築屋「わかりました」


錬金術師「…」

錬金術師「…あ、うーん。あのさ…もうちょっとだけ倉庫広くできるか?」


建築屋「広くですか?」

錬金術師「あとで土地の権利書見せるが、もっと本来は広く設計できるのよ」

建築屋「ふむ」

 
錬金術師「これからどうせ、在庫も増やすつもりだったし」

錬金術師「修復ついでに、今より少し広くしてもらえないかなと」


女店員「修理代はまだしも、広くするだけのお金あるんですか?」

錬金術師「いくらくらいかかる?」

建築屋「ん~…」

錬金術師「安くしてくれ」


建築屋「今のサイズで修復すると大体4、50万ですが…」

建築屋「一回り大きくするとサービス込みで60万…ないし70万ですかね~」

 
錬金術師「…70万?」

女店員「…」

錬金術師「70万…ね」


女店員「70万…」

錬金術師「…」

女店員「…」


錬金術師「う、うーん…。うちの店員に払う給料も考えると少しきついよーな…」

女店員「…店長」

錬金術師「ん?」

 
女店員「元はと言えば私のせいですし…気にしないでくださいよ…」ボソボソ


錬金術師「あそう?じゃあ、是非70万でお願いします」キッパリ

建築屋「わっかりましたー!見積書さっそく作ってきます!」


女店員「…ちょ、ちょいちょいちょい!!」

錬金術師「ん?」

女店員「いや、その…えっとですね?確かに私のせいでなったし、それは納得なんですよ」

錬金術師「うん」


女店員「だけど、その、もうちょっとこう…」

女店員「いつも頑張ってくれてた女店員の為だから今回は…とか少し考えたり…」

女店員「もうちょっと、気を配って…。いや私のせいで文句もいえないんですが…」

女店員「何ていうか…あぁぁっ!」

 
錬金術師「…そうか、分かった」

女店員「!」

錬金術師「女店員はいつも頑張ってたからな…。確かに倉庫も欲しいが…」

女店員「店長…」

錬金術師「今回はお前の給料のためにー…」

女店員「…」ドキドキ



錬金術師「やっぱり遠まわしに言うの面倒。倉庫の拡大お願いします」クルッ

建築屋「へいありっしたぁ!さっそく見積もりとってきます!」ダッ!!


女店員「」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


錬金術師「はーっはっはっはっはっ!」

女店員「そんな笑わなくてもいいじゃないですかぁ!」

錬金術師「だって、精錬の失敗で倉庫吹き飛ばした奴なんて聞いたことねえよ!」ハハハ!

女店員「うぅぅ…」


錬金術師「ま、倉庫でっかくなるし…。在庫の確保も出来るし結果オーライ」

女店員「私の責任ですが給料なくなったら生活が…」

錬金術師「どうせ来週末には鉱石が売れるし、それで払うから安心しろ」

女店員「店長…」ウルウル


錬金術師「ただし責任は現場にいなかった俺と、お前で折半な」

錬金術師「お前の給料は今月、半分以下の10万ね」

 
女店員「…も、文句はいいませんよ。いえませんし」

錬金術師「うむ」

女店員「は~…。家にある服とか売らなきゃ…。家賃やらの支払もあるし…」

錬金術師「売り上げがありゃ、その分の働きで支払いもするから安心しとけ」

女店員「はーい…」


…ガチャッ!!

建築屋「ちぁーっす!」


錬金術師「お、来たか。見積もりどうだった?」

建築屋「きっかり70万ですなー。よければサインをお願いします」ペラッ

 
錬金術師「はいよ」

ペラッ…サラサラッ…


建築屋「あざっす!工期に関して要望あります?」

錬金術師「出来るだけ早いほうがいいな。来週くらいまでに仕上がるか?」

建築屋「来週っすか。ん~…」

錬金術師「来週末に取引あってな、それまでに店として経営再開したいんだ」

建築屋「作業は倉庫だけなんで、営業は出来るんじゃ?」

錬金術師「1個しかない倉庫と在庫が燃えカスになった状態で営業する店がどこにある」


女店員「元々客なんかいませんけどね」ボソッ

錬金術師「…」

 
建築屋「わかりました、善処します。では明日から取り掛かりますよ」

錬金術師「すまん」

建築屋「いえいえ。では、一旦会社に戻って計画たてますね」

錬金術師「はいよ」

建築屋「では、失礼します」

ガチャッ…バタンッ!


女店員「…」

女店員「店長、店長」


錬金術師「ん?」

女店員「倉庫吹き飛びましたけど、とってきた鉱石は無事だったんですよね?」

錬金術師「少し溶解しちまったが、まぁ大丈夫だ。倉庫に袋で詰めてある」

 
女店員「じゃあ明日からどうします?来週末までお休みですか?」

錬金術師「他の残ってるの道具やらを野ざらしにするわけにはいかないしなー…」

女店員「しまえる所ないですもんね」

錬金術師「親父の知り合いとかに置いて貰ってもいいが、癪だし」

女店員「癪て」


錬金術師「…」

錬金術師「…そうだ、いいこと考えた」


女店員「えっ?」

錬金術師「…」ニタッ

女店員「なんですか、その不気味な笑みは…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 女店員のアパート 】


ガシャッ…ガラガラガランッ!!!

錬金術師「初めて来たが、結構広くて綺麗じゃないか」

女店員「そんな音たてて荷物置かないでくださいよ!下に響く~!」

錬金術師「壁も薄そうだよな」コンコン

女店員「隣の人、気難しい人なんだから叩かないでくださいい!」


錬金術師「とりあえず今後も使いそうな道具だけ置いとくよ」

女店員「私のせいだから文句も言えませんが、ちょっと意見をいいですか?」

錬金術師「何よ」

 
女店員「多分というか、確実というか、絶対に店長の家のほうがでかいですよね?」

錬金術師「ん?」

女店員「いや、うちのアパートに置くなら、絶対に店長の家のほうが大きいでしょうと」

錬金術師「あ~…」


女店員「私の寝る場所すら危うい感じなんですが、店長の家に置くわけにはいかないんでしょうか」


錬金術師「…」

錬金術師「だって俺の家、爆発したし」


女店員「…へ?」

錬金術師「だからお前が燃やしたでしょ。俺、家なき子だよ今」

女店員「…はい?」

 
錬金術師「俺、あそこの倉庫に住んでたし。狭かったけどさ、上のほうに布団とかあっただろ」

女店員「そ、そういえばありましたが…」

錬金術師「あれ俺の布団。研究とか開発しながらいつも寝てたしな」

女店員「ちょっと待ってください、一軒家とかアパート住まいとか、実家暮らしとかじゃないんですか?」


錬金術師「親父の施し受けたくなくてな」

女店員「え…。じゃあ、これからどうやって過ごすんですか?」


錬金術師「お前、"自分のせい"で倉庫吹き飛ばしたって言ったじゃん」

女店員「はい」

錬金術師「だから…ね?」

 
女店員「…」

女店員「冗談ですよね?」


錬金術師「俺は朝ご飯あまり食べないけど、お前が用意してくれるなら食べるから」


女店員「うそ…でしょ…」


錬金術師「あ、バターピーナツ器も持ってきたぞ。食う?」


女店員「…」

女店員「いりません~~っっ!!」


………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夜 】

女店員「…はいどーぞ。お待たせしました」ハァ

錬金術師「うむ、よきにはからえ」

女店員「お金がないんで野菜炒めとご飯ですけどね」

錬金術師「他のおかずはー?」


女店員「お金ください。自分の家に戻ってください」

錬金術師「いやー美味しそうだな!!」

 
女店員「よろしい」

錬金術師「…」モグモグ

女店員「…」モグモグ


錬金術師「…」ゴクッ…

女店員「…店長」

錬金術師「ん?」

女店員「さっき聞きそびれましたが、明日からどうするんですか?」


錬金術師「あ~」

女店員「採掘するにしても、多い量を保管する場所はないですし、お店は工事ですし」

 
錬金術師「休みのほうがいい?」

女店員「きちんと週2で頂いているので、別にどっちでもいいですよ」

錬金術師「売る在庫は鉱石だけだと寂しいしなー。けど面倒だしなー…」

女店員「明日から手伝いますので、小さな物でもいいので売るの増やしましょう」


錬金術師「…まじで?休みたくない?」

女店員「むしろ今からでもいいですけどね!」

錬金術師「…夜だよ。眠いよ」

女店員「…」


錬金術師「在庫集めっつったって、今動ける範囲限られてるし」

女店員「なんか宛とかないんですか」

 
錬金術師「ない」

女店員「はやっ」


錬金術師「この町は親父の傘下もいたりするし、あんま動きたくないってのが本音」

女店員「それなのに、よくここにお店出しましたね」


錬金術師「それに関してはちょっと長くなるが、俺は少し前にきちんとした研究機関では働いててな」

錬金術師「そこで給料は貰ってたから、初期費用は自分の貯金から出したんだ」


女店員「自分で費用出して、わざわざ社長さんのいた場所にお店を出したんですか?」

錬金術師「すでに親父の傘下がいたって知らなかったの!」

女店員「なるほど…」

 
錬金術師「しかも、周囲の土地は買い上げられるし」

錬金術師「取引先の準備までしてくれるし、社長って呼ぶしかない状況になったって言ったろ」ハァ


女店員「…なんだかんだで社長は店長を心配してるんだと思うんですけどねぇ」

錬金術師「違うね」

女店員「えっ?」

錬金術師「親父…、社長は俺の腕がほしいんだよ」

女店員「腕?」


錬金術師「あの日、俺の下で働けって言ってただろ?」

女店員「言ってましたね」

 
錬金術師「親父自身、俺が親父のことを好きじゃないのは知ってるだろうけど…」

錬金術師「嫌いと分かっていても、俺の錬金師としての腕が欲しいんだ」


女店員「嫌いと分かってるのに、援助してくれたりするんですか?」

錬金術師「だからだよ」

女店員「?」


錬金術師「親父が俺に色々すると、俺が嫌がる。そして店を潰したいんだ」

錬金術師「行き場をなくして、自分の下に働かせたいってことだろ」


女店員「あ…なるほど…」

 
錬金術師「んなのに負けないで、いつか親父に対抗できるようにでっかい店にだな…!!」

女店員「その意気で、お店もがんばりましょう!」

錬金術師「…といいたいんだが、何せ俺は面倒くさがりだ。だからのんびりやってる」ハハハ!!

女店員「…」

錬金術師「…」


女店員「ところで、何で社長を嫌うんですか?」

錬金術師「まぁ色々あるんだよ。金持ちの子だとか、昔から抑えられた生活だとな」

女店員「お金があれば、もっとふんぞり返りそうですけどね」


錬金術師「そりゃ金があれば偉い格好するわ。だけど俺の金じゃねーだろ」

 
女店員「…そういうところ、妙に律儀ですよね」

錬金術師「とりあえずそういうこと。それに、親父が好きじゃない理由はそれだけじゃないんだ」

女店員「他にも理由が?」

錬金術師「財閥ってわけでもないが、今の地位に登るのに随分と酷い事もしてきてな」

女店員「ひどい事…」

錬金術師「口じゃ言えないような事もたくさんしてきたし、俺はそれを幼い頃からずっと見てきた」

女店員「犯罪行為ってことですか…」


錬金術師「そう。それで人生を落とされた人間もたくさん見てきた」

錬金術師「で、そんな一面も知ってるから親父のいる本社には勤めたくないし、アイツの手先にもなりたくない」

錬金術師「今はどうなのか知らないが、犯罪の片棒なんて担ぎたくないっつーの」

 
女店員「店長…」

錬金術師「…何ていうかな。だから俺はこの町で…」

女店員「この町で…?」


錬金術師「!」ハッ

錬金術師「…何でもない。気にするな」


女店員「気になるじゃないですか!」

錬金術師「そのうち話はするから、気にするなっての!」

 
女店員「も~…」

女店員「…」

女店員「…って、話戻しますけど!明日からどうするんですか!」


錬金術師「ん~…」

女店員「…」

錬金術師「あ~、んじゃ…ちょっと明日付き合え」

 
女店員「どこにいくんです?」

錬金術師「隣町」

女店員「何をするんですか?」

錬金術師「行けばわかる」

女店員「は、はい」


錬金術師「…あぁ、そうそう。あともう1つ」

女店員「何ですか?」

錬金術師「お風呂どうすんの?」

女店員「!」

錬金術師「寝る場所はなんとか確保したけど、着替えとか風呂は」

 
女店員「…」

錬金術師「先にお風呂どうぞ」ニコッ

女店員「…」

錬金術師「あ、興味ないですから!大丈夫ですから!」


女店員「お…落ち着いて考えたら…」

女店員「年頃の男と女子が一緒の部屋って、ダメじゃないですかぁ!」


錬金術師「子供か」

女店員「だ、だって!」

錬金術師「落ち着け」

 
女店員「落ち着けって!」

錬金術師「お前の貞操を危機にする気はないっつーの」

女店員「…」

錬金術師「普段の俺を見て、そういう人間に見えるか?」

女店員「た、確かに疎そうっていうか、そんな感じはしますが…」


錬金術師「疎いって。ま、まぁそうだろ。安心して風呂に入って来い」

女店員「う~…」

錬金術師「まだ俺はご飯食ってるから、先に風呂入って来いよ」


女店員「…わかりました」

 
ガタッ…トコトコトコ…

女店員「おとなしく食べててくださいよ!」

錬金術師「へいへい」

女店員「…」


ガチャッ…バタンッ…


錬金術師「…」

錬金術師「…」

錬金術師「…」

錬金術師「…ここで引き下がったら、男が廃るってもんだよな!」スクッ

  
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

パサッ…

女店員「はぁ~…。何でこんなことになっちゃったんだろ…」

女店員「あのままクビにしてくれたほうが良かったかも…」

カチャッ!

女店員「とりあえず汗流して、ゆっくり休もう…」


キュッキュッキュッ…シャアアアッ…!!

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

錬金術師「失礼しまーす…」

ガチャッ…ギィィィ…

錬金術師「シャワーに集中しているようですね~…」


コソコソ…

錬金術師「きちんと脱いだものは、カゴに入れてるのか…偉い偉い…」

錬金術師「あとは突撃でもして驚かせて…」


女店員「はぁ~…でも…店長め!」


錬金術師(む…バレた!?)ビクッ!!

 
女店員「う~ん…。一応、私を思って言ってくれたのには違いないし…」


錬金術師(独り言か…びびったぁぁ…!)


女店員「今がどんな状況でも、少しでもやる気を出した店長に応えないといけないよね…」

女店員「頑張るところは頑張ってるし、私も出来ることはしっかりやろう!」


錬金術師「…」


女店員「店長、私の言葉を気にしすぎて、ご飯も美味しくなかったかな…」

女店員「そうだよね。そういう人じゃないし…あがったら謝ったり、デザートとか作ってあげようかな」


錬金術師「…」

女店員「うん、そうしよう!さっさとあがらないと!」

 
錬金術師「…」

錬金術師「…戻るか」

……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

トコトコ…

女店員「ふぅ。シャワー浴びてきましたよ」

錬金術師「おー。ご飯食い終わったから、洗って置いといたぞ」

女店員「えっ、私がするからいいのに!」


錬金術師「今は居候の立場だしな。そのくらい」

女店員「店長…」

 
錬金術師「気にするなって」

女店員「…」

錬金術師「それより、女店員」

女店員「はいっ」


錬金術師「俺のデザートは、何でもいいからな」


女店員「…」

女店員「…え゛っ?」

 
錬金術師「…え?」

女店員「何で、そのことを知ってるんですかねぇ…?」ゴゴゴ


錬金術師「そりゃお前、俺が風呂に…」

錬金術師「…」

錬金術師「あっ」


女店員「…す、少しでも信じた私がバカでしたぁぁ!!!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
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・・・・
・・・
・・

本日はここまでです。ありがとうございました。

皆さま有難うございます。投下開始致します。

 
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 次の日 】


…ズキズキ

錬金術師「気が付いたら次の日だった」

女店員「本来なら覗きで拘束なんだから、殴りで許されただけマシッ!」


錬金術師「…くそっ!覗いてはいないっつーの!」

女店員「問答無用!」

錬金術師「ぬぬ…」

 
女店員「追い出してもいいんだけど…?」ギロッ

錬金術師「ごめんなさいでした」

女店員「よろしいっ」


錬金術師「…」

錬金術師「ところで…ため口になりました?」


女店員「そのうち、敬えたら敬語に戻してあげる」プイッ

錬金術師「…何てこったい!」


女店員「で、これからどこに行くんだっけ?」

錬金術師「隣町ですー」ブスーッ

 
女店員「具体的なことを教えてほしいんだけど?」

錬金術師「行けばわかるっつーの!」

女店員「もうすぐ着くし、いっか」ツン

錬金術師「…」

女店員「本当にきちんとした仕事なの?」


錬金術師「…まぁな。俺のいた研究機関があるんだよ」

錬金術師「そこなら何か請け負えるかもしれねーし、もう1つ用事がある」


女店員「何?」

錬金術師「ちょっとしたことだ」

 
女店員「うーん…?」

錬金術師「んま、損はさせねえよ。とりあえず着いてこい」

女店員「はーいっ」


ザッザッザッザッ…
 
…………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 隣町・錬金術研究機関 】


…コンコン

???「はーい」


ガチャッ!ギィィ…

錬金術師「失礼」


???「…ああっ!先輩!」

錬金術師「お?」

???「僕ですよ、見習師だった!」

錬金術師「あ~!はいはい!」

 
錬成師「今は錬成師ですけどね♪」

錬金術師「…マジで?」

錬成師「先輩が機関を抜けてから、成長したんですよ~」

錬金術師「すげぇな…、まだそんな時間たってねーだろ?」

錬成師「へへ~。で、お隣の方は?」


女店員「このアホ店長の店員です、よろしくね」ニコッ

錬成師「アホ店長って」ハハハ!!


錬金術師「うっせ!」

 
女店員「でも、錬成師って…。錬金師じゃないの?」

錬金術師「そりゃ俺だ。錬金術師だが」

女店員「それは知ってるけど、なんていうの…どういうこと?」

錬金術師「説明面倒。見習師…じゃなかった、今は錬成師か。説明よろしく」


錬成師「はいはいっ!錬金術に関して昔は誰でも"錬金術師"と名乗る事が出来たんですが」

錬成師「今は世界共通で、実力に応じて階級制度を設ける事になったんですよ」


女店員「軍みたいな?」


錬成師「そうですね。一番下が見習師、錬成助手、錬成師、上位錬成師…」

錬成師「錬金術助手、錬金術師、高位錬金術師など…まぁ沢山あります」

 
女店員「うわぁ頭が痛い」

錬成師「その中でも、先輩は最高位のマスターなんですよ」

女店員「て、店長がマスター!?」

錬成師「うちの研究機関きってのエースですからねぇ♪」


錬金術師「おい、マスターは違うだろ。もう機関長に譲ったはずだ」

錬成師「機関に属してなくても、僕らにとってはマスターの地位は揺るぎませんよ」

錬金術師「研究機関に属してればマスターの称号もあるが、俺はもうやめたんだ」

錬成師「僕にとってはずっと尊敬してるマスターですよぉ」


錬金術師「…悪い気はしねえな」フン

女店員「普通そこは"勝手に言ってろ"とかじゃないの」

 
錬成師「あはは…相変わらずですねぇ先輩」

女店員「いつもこんなんで苦労してますよ」

錬成師「分からなくもないです」クスクス

錬金術師「お前ら…。っていうか、機関長はいないのか?」


錬成師「機関長は今でかけていますよ。そういえば、どうしてココへ?」


錬金術師「あ~…。ま、説明すっか…」

……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


錬金術師「…っていうわけ。機関にこれば仕事もあるかなーってな」

錬成師「そんな事になっていたんですね…」

錬金術師「で、仕事ない?」

錬成師「う~ん…。うちでは困ってることもないですしねぇ…」


錬金術師「そうか…」

錬金術師「あ~それとさ。コイツにちょっと簡単な術を教えてやってほしいんだ」グイッ


女店員「!」


錬成師「術ですか?」

 
錬金術師「こいつ、俺のせいでもあるんだが倉庫吹き飛ばしちまったのよ。過剰錬成で」

錬成師「吹き飛ばした!?」

女店員「め、面目ない…。っていうか、もう1つの目的ってそれ!?」


錬金術師「簡単な術でいいから、精錬がある程度できるレベルまで教えてやってくれない?」

錬金術師「初心者用の道具もあるし、それくらいならすぐ覚えさせられるっしょ?」


錬成師「今は特にやってる事もないですし、いいですよ」

錬金術師「助かる」


錬成師「いえいえ、それくらいなら」

錬成師「…」

錬成師「あっ!そうそう、先輩!」

 
錬金術師「あん?」

錬成師「もしかしたら、副機関長ならいたかもしれませんよ」

錬金術師「お?」

錬成師「あの人なら研究対象も国から請け負ってますし、先輩の請け負える仕事もあるかも…?」

錬金術師「マジか。わかった、ちょっと行ってくるわ」クルッ


女店員「え、ちょ…私は?」

錬金術師「お前は錬成師に少し基本でも教わっててくれ。行ってくる」

ガチャッ…バタンッ!

 
女店員「…」

錬成師「…」

シーン…


女店員「い…いつもいい加減過ぎる!はぁ~…」

錬成師「貴方も先輩に振り回されているんですねぇ」アハハ!

女店員「そうなんですよ~…。全く…」

錬成師「でも、あの人は何だかんだで実力もあって、才能に恵まれていて羨ましいです」

女店員「それは思います。無駄に才能がある気がします…」

 
錬成師「まぁとりあえず、先輩に言われましたし、簡単な術の準備でもしますかぁ♪」

ゴソゴソ…


女店員「…」

女店員「錬成師さん、でしたっけ?」


錬成師「はいはい?」

女店員「本当にあの店長が、マスターの地位だったんですか?」

錬成師「そうですよ。何をやらせても凄い錬成とか、異端な発想を持って次々実績をあげましたから」

女店員「へぇ~…」


錬成師「将来、世界を背負うような錬金術師になるハズでした」

錬成師「それなのに、面倒だからもう止めると最高位の称号を捨てようとしたんです」

 
女店員「…ふむふむ」

錬成師「当然、周囲は止めました。ですがあの人ですから…聞くわけがないじゃないですか?」

女店員「あははっ、確かに!」


錬成師「研究機関を止めるというのは、称号の剥奪になります」

錬成師「ですが、その功績を認められて本来禁止されている"錬金術師"の名を語ることは許されたんです」


女店員「…そんな凄い人には見えませんよねぇ」

錬成師「確かに壮大な錬金術を目の前でやって貰わないと、先輩の凄さは分からないでしょうね」

女店員「凄さねぇ…」

錬成師「あっ、そうそう。それなら、これを見てもらったほうがいいかもしれません」

 
カツカツカツ…

錬成師「このショーケースに並んでいる鉱石の数々を見てください」コツン

女店員「綺麗な石が並んでますね」


錬成師「その中でもこれ…。この鉱石は、先輩が原石から精錬したものなんですが…」

錬成師「通称"オリハルコン"。世界で最も高価といわれる鉱石です」


女店員「わぁ~…。でも、ただの高い石の鉱石じゃないんですか?」

錬成師「オリハルコンは魔石の最上位。それを精錬するのには、普通の精錬器では行えません」

女店員「じゃあ何が?」

錬成師「オリハルコンは原石毎に特性が違い、その度に新しい精錬溶炉を準備しないといけないんです」

 
女店員「へ?じゃあ、わざわざ精錬器も錬金師で作るんですか?」


錬成師「そういうことです。オリハルコンの精錬の密度は50%で一人前」

錬成師「60%で世界でも指で数える程しかいないと言われています」


女店員「店長が精錬した、このオリハルコンは…?」

錬成師「96%。後にも先にも、これ以上の完璧な仕上げはあり得ないでしょう」

女店員「…!!」


…ガチャッ!!

錬金術師「ういーっす」

錬成師「あ、お帰りなさい」

女店員「お帰り」

 
錬金術師「なんだ懐かしい物見てるな」

錬成師「凄いでしょーって話してたんですよ」

錬金術師「そんなの適当にやれば誰でも出来る。それより、女店員」


女店員「は、はい。…あっ!な、何?」ツン


錬金術師「副機関長に、仕事がないか頼んでみたんだがー…」

女店員「何かいいのあった?」


錬金術師「…裏切り者のお前に任せる仕事等ない。出ていけ!!」

錬金術師「って、怒られちゃった」エヘヘ

 
女店員「」

錬成師「」


錬金術師「まぁそうなるかなーっては思ってたんだけどネ」

女店員「隣町まで無駄足だったってこと…?」

錬金術師「怒るなよ!」

女店員「…」


錬金術師「まぁ仕方あるめぇ」

女店員「じゃあこれからどうするの?」

錬金術師「どうするって…いわれてもなぁ」ウーン

 
錬成師「確かに最近は暇でしたし、本当にないのかもしれませんよ」

錬金術師「ふーむ…」

錬成師「あとまだ、女店員さんに基本は教えてないんですが…」


錬金術師「あーんじゃさ、ちょっと俺、町のほうに出てくるから」

錬金術師「その間、女店員に基本教えといてやってくれない?」


錬成師「わかりました」


女店員「店長、どこかに行くの?」

錬金術師「隣町ついでに、あの鍛冶屋に挨拶してこようと思ってな」

 
女店員「あぁ、なるほど…」

錬金術師「お前はその間に精錬暴走しないくらいに教えはしてもらっててくれ」

女店員「失礼な!もう爆発は起こさないんだから!」

錬金術師「じゃ、行ってくる」クルッ


錬成師「お気をつけて~」

女店員「見てろ~…戻ってきた頃にはびっくりする腕前になっててやるんだからね!」


錬金術師「ははは、その意気で頼んだ」


ガチャッ…バタンッ…

………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 隣町の鍛冶屋 】

…コンコン

鍛冶屋「はいよー、どうぞー」

ガチャッ!


錬金術師「どもーっす」

鍛冶屋「おや、錬金のお店の!」

錬金術師「数日ぶりですね。お元気でしたか?」

鍛冶屋「うははは、そんな変わりませんよ」

錬金術師「そりゃよかった」

 
鍛冶屋「しかし良くわざわざ、うちの店に。どうかしましたか?」

錬金術師「近くに用事があったので、ついでに探して訪れた次第です」

鍛冶屋「なるほど。お茶の一杯でも出しますかね…よっこらしょっ」ガタッ

錬金術師「あぁすぐに行くのでお構いなく!」

鍛冶屋「あ、そうですか?」


錬金術師「それより、あの鉱石はどうなりましたか?使えました?」

鍛冶屋「問題なく使えましたよ。いい素材をありがとうございます」

錬金術師「次回の納入希望は、来週末でしたよね?」

鍛冶屋「そうですね」

 
錬金術師「分かりました。まだルートとしては結べませんが、精一杯やらせてもらいます」

鍛冶屋「お願いします。今の頼りは貴方のお店だけですから」ハハハ


錬金術師「ところで、ルートの際はどれくらいの希望とかありましたか?」

錬金術師「先日は聞きそびれてしまったので」


鍛冶屋「えーと…、希望としては鉄鋼以上、金以下で」

鍛冶屋「相場の1.2倍の値段の買取で、鉄鋼50kgを含め合計150万ゴールド以上の仕入れをお願いしたい」


錬金術師「希望する種類の鉱石ではなく、金額量によっての仕入れを?」

鍛冶屋「仕事は早いほうで、依頼だけは沢山入るんですよ。質より量が欲しいんです」

 
錬金術師「…なるほど。それなら早い段階で何とかなるかもしれませんな」

鍛冶屋「本当ですか!?」

錬金術師「はい。ところで仲介として自分が入ってますが、直接仕入れに鉱山にはいかないのですか?」

鍛冶屋「あそこまで結構距離があるのでねぇ…。馬車の運搬も遠くてバカになりませんし」


錬金術師「なるほど…では、何かしらの情報や目途がたったらお知らせいたしますよ」

鍛冶屋「ぜひ」ペコッ

錬金術師「それでは失礼致します」


鍛冶屋「またお越しくださいね!では来週末に、改めてこちらから行きますので」

錬金術師「お待ちしております」

ガチャッ、バタンッ!

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

トコトコトコ…

錬金術師(ふーむ…やはり、今の現状では色々と厳しいな)

錬金術師(バターピーナツ食ってたほうが楽だ)

錬金術師(…そもそもこうなったのは、あの冒険者モドキのせいだ…いらつく!)


トコトコトコ…

 
錬金術師(…これからどうするか。1週間以上店がオープンしないのは、やはり痛手)

錬金術師(とはいえ、在庫を確保するに動こうにも倉庫が使えない…)

錬金術師(…)

錬金術師(つーか、倉庫の費用70万ってでけぇよなぁ…)

トコトコ…


錬金術師(銀行に借りて、一時的な倉庫でも借りて、そこで在庫貯めしておくか?)

錬金術師(しかしリスクが伴う。週末には金は入るし、急ぐこともないんだが…)

錬金術師(それと、道具の一部吹き飛ばしちまったし…。その修理費用もあるし…。はぁ~…)

………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 研究機関 】

ガチャッ!

錬金術師「ただいま。挨拶してきたぞ」

女店員「あ、お帰りなさい店長」

錬成師「お帰りなさい!」


錬金術師「精錬、ちったぁマシになったか?」

錬成師「初心者用かまど4つ、簡易型のかまど3つ、鉱石数キロが無に帰りました」


錬金術師「」

 
女店員「私、才能ないのかな…」ショボン

錬成師「魔法の加減の問題なんですが、どうも思ったより微調整が苦手なようですね」 

錬金術師「火魔法自体は使えるのに、勿体ない話だよな」

錬成師「そうですねぇ…」


女店員「魔法くらい誰でも使えるものかと」

錬金術師「苦手なやつとか、使えない奴だっているんだ。その中では恵まれてるって話」

女店員「出来るだけ手伝えるように、精錬くらいやりたいんだけどなぁ…」


錬金術師「時間のうちに出来なかったのは残念だが、今度、俺がついて教えてやるよ」 
 
錬金術師「のんびりやりゃいい。幼い頃から錬金術を学んでるならまだしも…」

錬金術師「大人になっていきなり学ぼうとしても、難しいとは思うしな」

 
錬成師「そうですね。のんびり、確実にやっていけばいいと思います」

女店員「う~…」


錬金術師「つーか、話は変わるが…やっぱりダメだな。考えたが出来る事がない」

女店員「えっ」

錬金術師「どうにも…来週までは休みだな」

女店員「そっかぁ…」


錬金術師「倉庫が出来たら販売再開も出来るんだが…」

女店員「仕方ないか…」

 
錬成師「手伝える事なら手伝うので、是非また来てくださいよ」

錬金術師「研究機関に何かあった時に手伝ってもらえると、楽にはなりそうだな」


錬成師「今回の事は、機関長にも報告しておきますので」

錬成師「機関長なら先輩だと言えば、手伝ってくれるはずですよ」


錬金術師「そうだといいんだが…。じゃあ女店員、暗くなる前に帰ろう」

女店員「うん。じゃ、錬成師さん有難うございました」

錬成師「何このくらい。また遊びに来てくださいね」


錬金術師「おう。じゃあな」

女店員「失礼しました」


……………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 数時間後・女店員のアパート 】


…ボスンッ!

錬金術師「あ~…歩いた歩いた!疲れた~!」

女店員「どんだけ体力ないんだか…」

錬金術師「俺は体力派じゃねーんだっつーの!」

女店員「はいはい」


錬金術師「あ、晩御飯は何作るんだ?何でもいいぞ~」

女店員「野菜炒め!!」

錬金術師「またかよ!」

 
女店員「外で寝てもいいんだけど…?」

錬金術師「やっべえ、俺、女店員の野菜炒め超好きなんだわ。待ちきれないわ」

女店員「よろしい」ニコッ


錬金術師「…」

錬金術師「どうしたもんかなぁ」ハァ


女店員「何が?」ゴソゴソ

ジャー…トントン…


錬金術師「経営に関してだよ」

 
女店員「やれることやればいいとは思うんだけど…」

錬金術師「あればな。やれることがあればやるが、どうもなぁ」

女店員「何か考えてる事とかは?」


錬金術師「とりあえず細いだろうが、パイプは持てた事はいいことだな」

女店員「パイプ?」

錬金術師「繋がり。管理人のいる鉱山、鍛冶屋、建設屋、錬金術研究機関とか」

女店員「あぁなるほど」

錬金術師「研究機関を除いては信頼もないが、一応パイプっつーことにはなる」

女店員「ふむふむ」

 
錬金術師「錬金術ってのはあらゆることに精通して成り立つ事業だし…」

錬金術師「繋がりあるとはいえ、こう停滞する期間があるとどうもなぁ」


女店員「…」

錬金術師「路上販売でもいいが…うーむ」

女店員「営業をしてみるとか…」

錬金術師「営業だ?」

女店員「もっとパイプを広げるために、この期間に挨拶回りに行けばいいかと」

錬金術師「…ふむ」


女店員「もっとも、今まで私がやってきたことだけど…ね」ギロッ

錬金術師「キコエナイ」

 
女店員「やる気が少しでもあるなら、営業したほうがいいんじゃないかなー」

錬金術師「やる気はない」キッパリ


トコトコトコ…グイッ

女店員「どの口が言っているのかなー…」ギリギリ


錬金術師「い、いでででぇ!もみ上げ引っ張るんじゃないぃ!」バンバン!!

錬金術師「ま、待て待て待って!やる気はないが、やるしかないのは分かってるから!!」


女店員「じゃあ安心っ」パッ

ドサッ!

錬金術師「いたいっ!」

 
女店員「最初から素直にきちんとしてればいいのに」ハァ

錬金術師「店長のもみあげを引っ張るとは、何て店員だ」

女店員「晩御飯はもうすぐ出来るから大人しくしててね!」

錬金術師「はいはい!」


女店員「もう…」

錬金術師「仕方ねぇ、道具の整備でも軽くしておくか…」ゴソゴソ

ガラガラ…キュッキュッ…

錬金術師「…」

 
女店員「ん~明日からの営業、どこ回るの?」

錬金術師「どうすっかな。遠くに行く程じゃないし、本当に嫌だけど地元からだな」

女店員「大体はもう私が回ってるんだけど…」


錬金術師「なら町はずれとかに行ってもいいだろう」

錬金術師「そっちのほうが親父の傘下がいなそうで回りやすい」


女店員「なるほど」

錬金術師「ま、とりあえず明日から探してみればいい」


女店員「うん」

女店員「あ…あと。次覗いたら本当に追い出して、逮捕してもらうからね」


錬金術師「覗いてないっちゅうに!」

 
女店員「…わかったの?わかってないの!?」

錬金術師「はい」

女店員「よろしい」


……………
………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
…それから数日、営業を行ったがこれといった成果を上げることは出来なかった。

結局、ただただ時間過ぎていき、気が付けば新たな倉庫が完成する日が訪れていた。


そして―……

本日はここまでです。ありがとうございました。



>>269
気になったんだが…研究機関を止めるじゃなくて辞めるじゃないか?

ありがとうございます。投下致します。

>>298
多忙で修正も含めてあまり見直しも出来ないもので、そういう指摘はありがたいです。
ありがとうございます。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 週明け 】


錬金術師「…結局、成果も何もありませんでしたと」

女店員「私としては、今日で工事が終わってくれてひとり暮らしが戻って嬉しいかな」ニコッ

錬金術師「お…おう」

女店員「それより、どんな感じに倉庫が出来上がったか見に行こっ!」

錬金術師「へいへい」

……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 錬金術師のお店 】


キラキラキラ…!!

女店員「あれー!?前よりなんか、お店の色合いが綺麗に…」

錬金術師「っていうか、光ってるな…」


タッタッタッタッ…

建築屋「へい旦那!工期、約束通り終わらせましたぜ!」


錬金術師「おい」

建築屋「へい!」

錬金術師「なんで、俺の店がキラキラしてる。一体どうした」

 
建築屋「雨風に弱い造りも見受けられたんで、倉庫に防水塗装をしたんですけどね」

建築屋「どうも色合いが変で、全部に塗っちゃいました」ハッハッハッ!!


錬金術師「新築同様になったのは嬉しいが、余分な金はないぞ…?」

建築屋「サービスですよ。今後とも、うちの会社をどーぞよろしくってことで!」

錬金術師「…それなら有り難くお礼を言う」

建築屋「いえいえ!それより、倉庫を見に来て下さいな!」

錬金術師 「はいよ」

 
ザッザッザッ…ガチャッ…!!

女店員「…外は綺麗なのに」

錬金術師「ふむ」

女店員「中は相変わらずだった。外とのギャップが凄い」

錬金術師「んな事より倉庫だ倉庫」


トコトコトコ…パァッ!!

錬金術師「!」

女店員「わっ!」

建築屋「どーですか!?」

 
女店員「わぁ…いい香り…」スゥゥ

建築屋「新品の木材使ってますからねぇ。雨風に強い塗装ですし、新しい材木ですので良い香りなんですよ」


錬金術師「ふむ。見た目だけじゃなく、収納も使いやすそうだ」ゴソゴソ

建築屋「収納力も上げておきましたよ」

錬金術師「余ってた鉱石類があったろ?あれどこだ?」

建築屋「道具とは別に…ここです」グイッ

…パカッ!


錬金術師「お~床下収納か」

建築屋「これはサービスですけどね」

錬金術師「いや有難い。これで分別も楽になるな」

 
女店員「いい感じ~。心機一転って感じで!」


錬金術師「さて…これでコレを広いスペースに置けるぞ。よっこらしょっと」

カツカツカツ…ゴソゴソ…ゴトンッ!


女店員「…その荷物は?」

錬金術師「バターピーナツ生成器」

女店員「あぁ…そう…」

 
錬金術師「おま…バカにしてるだろ!」

女店員「それなりに美味しい物は出来るナライインジャナイノー」

錬金術師「棒読みかよ」

女店員「前も言ったけど、そんな物に40万ゴールドも…普通かけないからっ!!」


錬金術師「これがどんなに素晴らしい発明か、わかってないようだなぁ」チッチッ

女店員「どこの世界にバターピーナツ器を作る錬金術師がいる」

錬金術師「いるだろう…世界にただ一人!」キラキラ


女店員「で、建築屋さん。改めて請求額の詳細を教えてほしいんですけど」

建築屋「へ?え、えぇ!前の見積書通りでー…」


錬金術師「無視かよ」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


錬金術師「…70万の入った袋ですよっと」

…ドサッ!

建築屋「へい確かに!では、また何かあれば町のほうにお願いしますネ」

錬金術師「はいはーい。どうもどうも」

建築屋「ではまた~」

ガチャッ…バタンッ…


錬金術師「ふぅ…」

女店員「あーなんかやっと落ち着けた…」ハァ

 
錬金術師「これで素材集めにも勤しめるな」

女店員「これで最低でも、鉱山で採掘すれば在庫も増やす活動が出来るし…」

錬金術師「今までの儲けは吹き飛んだが仕方ない」

女店員「余ってる在庫が売れる宛はあるんだから、週末の収支に期待かな?」

錬金術師「そーいうこと」


…コンコン

女店員「あっ、早速お客かな?どうぞ~!」

錬金術師(おかしいな、まだオープンの看板は出してないんだが…)

 
…ガチャッ!

カツ…カツ…カツ…ピタッ


親父「…」


錬金術師「…」


女店員「…」

 
錬金術師「お…親父っ!?!?」ガタッ!!

女店員「社長~~!?」


親父「店が改装してるから何事かと思えば…」

親父「倉庫の拡張だったのか。今日で工事が終了したようなので寄らせて貰った」


錬金術師「も、もう結果の査定に来たのか!?」

女店員「は…早い…」

錬金術師「まだ成長段階で…。ようやくパイプも見つけて、これからなんだよ!」


親父「…落ち着け」ハァ

錬金術師「…む?」

 
親父「一体どうしたものかと見に来ただけだ。1ヵ月もたたんうちに評価をする訳がないだろう」

錬金術師「そ…そうか…」ホッ


親父「何があったかは知らんが、倉庫の拡張か」キョロキョロ

親父「それだけの儲けと、今後の目途がたっているということだな?」


錬金術師「一応な。まだ安定したわけじゃないが」

親父「ふむ。これからどうなるか楽しみだ」クルッ

錬金術師「もう行くのか」

親父「ただの様子見だ。結論をしに来たわけじゃないと言っただろう。それに俺も暇じゃないのでな」

 
錬金術師「…」

女店員「…」


親父「また来る」

ガチャッ…バタンッ…


錬金術師「…びっくりした」

女店員「何だかんだで心配してくれてるっていう感じがするんだけどなぁ」

錬金術師「ただ面白がってるだけだろ!」

女店員「…もう」

 
錬金術師「それよか、営業も失敗したし金も今は底をついてる状態だ」

錬金術師「余ってる在庫の鉱石を引き取りは今週末だし…」

錬金術師「店は午後4時まで開ける。それまでなら鉱石もちょくちょく売れるだろ」


女店員「午後4時以降は?」

錬金術師「採掘だな。ここしばらくのメインは鉱石になりそうだし」

女店員「午前中から働いて、午後から夜まで鉱石掘り…」


錬金術師「それに関してなんだが、午前出勤がいいか午後出勤がいいか選べ」

女店員「え?」

 
錬金術師「さすがに丸1日働かせるつもりはないぞ」

錬金術師「午前中から午後4時前までの販売業務か、午後の採掘かだ」


女店員「…そんな手軽でいいの?」

錬金術師「そんなの毎日やってたらぶっ倒れるだろ」

女店員「そりゃそうだけど…」

錬金術師「全部やりたいなら、俺としては断らないが」ハハハ

女店員「全部やるにきまってるでしょ!」


錬金術師「…え?」

 
女店員「今までまともに仕事らしい仕事してなかったんだから」

女店員「やっとやることも明確になってきて、断るわけがないでしょう」


錬金術師「…」

女店員「つらい時は休むから、付き合える分は付き合わせてもらうから♪」

錬金術師「辛いぞ?」

女店員「構わないってば」

錬金術師「…」

女店員「大丈夫だから」

錬金術師「…体の疲れが見えるようなら、すぐに休ませるからな?」

 
女店員「…うん!」

錬金術師「じゃあ、宜しくとしか言えないぞ」

女店員「当たり前っ!」

錬金術師「はは…」


女店員「じゃ、新しい出発に少しお茶でも準備しちゃおっかな♪」

錬金術師「おう、よろしく頼むぜ。じゃあ俺はお茶菓子のバターピーナツでも…」


…コンコン


錬金術師「!」ビクッ!

女店員「!」ビクッ!

 
錬金術師「ま、また親父が来たのか!?」

女店員「どどど、どうしましょう!」

錬金術師「と…とりあえず、どうぞ~…」


…ガチャッ!

???「どーも」


錬金術師「あれ…」

女店員「社長さんじゃない…?」


銃士「銃士と申します。錬金用品店と看板を見て寄らせて頂きました」

錬金術師「…お客さんだったか」ホッ

 
銃士「まだオープンにはなっていませんでしたが、人の出入りが見えたので良かったかなと」

錬金術師「あ~…。ま、もう開けるかなと思ってたのでいいですよ」

銃士「すみません、ありがとうございます」

錬金術師「で、銃士さんと申しましたか。一体どのようなご用件でしょうか?」


銃士「実は私、世界を回るハンターとして生計をたてているのですが…」

銃士「この付近で長年付き添ったこの武器が、ついに悲鳴をあげてしまいまして」

ゴソゴソ…ゴトンッ!!


錬金術師「ほう、珍しいですね。古い型の銃…マスケットですか」

銃士「恥ずかしながら、父の代から愛用していまして。これのメンテナンス、修理をお願いしたい」

 
錬金術師「ふむ…」

女店員「…店長」

錬金術師「ん?」

女店員「銃って聞いたことないし、ハンターって何か教えてください」


錬金術師「そこだけ敬語かよ。もっと敬え」

女店員「"覗き"」ボソッ


錬金術師「えっとね、銃っていうのは魔法と違って遠距離から敵を射抜く為の武器だ」

錬金術師「魔法弾とか、実弾で相手に合わせて戦える…まぁ弓に類似した武器だな」


女店員「なるほど。ハンターというのは?」

 
錬金術師「簡単にいえば魔物、魔獣とかを討伐した素材で生計をたててるってことだ」

錬金術師「高価なものは高価だし、冒険者に近いんじゃないかね」

錬金術師「厳密に言えば違うが、生業としては似ているところがある」


女店員「ふむぅ…。そういうのに疎かったから、きちんと調べたりしないとなぁ…」


銃士「今は普通の動物を狩りして生活したりもしますけどね」アハハ

錬金術師「はは。えーと…それじゃマスケットを少し拝借しますね」カチャッ

銃士「どうぞどうぞ」

 
女店員「でも錬金術関係で、武器を直せるの?武器って鍛冶屋のイメージのよーな…」

錬金術師「そもそも銃っていうのは錬金師らが開発した武器で、すべての基本だ」カチャカチャ

女店員「そうなんだ」

錬金術師「最近では錬金師だけじゃなく、サードパーティから弾丸やら販売してるがな」ゴソゴソ

女店員「銃自体は有名なんだ?本当に勉強しなくちゃ」ハァ…


錬金術師「いや。まだまだ剣や槍、弓なんかにも名前でも負けてるから知らないのは仕方ない」

錬金術師「だが将来的にはこの銃が武器の主流になるのは間違いないだろう…っと、よし」カチャンッ!!

…ゴトンッ!!


錬金術師「一通り見終わりました。激しい消耗で、内部が磨り減ってますね」

銃士「射程が短くなったり、軋みもあるんですよね。どうにかできますか?」

 
錬金術師「うーん…。正直、この銃は古すぎて部品自体の入手が難しいんですよ」

銃士「やはり…」


女店員「部品が難しいって…。作ってあげられないの?」

錬金術師「その素材がもう入手が出来ないんだ。この時代の銃は、パーツ毎の組み合わせが複雑でな」

女店員「?」


錬金術師「ひとつの部品を組み合わせるのに、またその外す部分のパーツを作らなきゃならん」

錬金術師「1つ2つの素材なら手に入るが、内部が磨り減ってたら着火部分も切り替えないとアカンし」

錬金術師「1個の部品が貴重なのに、全体を揃え直すとなると、まず不可能だな」

 
女店員「なるほど…」

錬金術師「申し訳ありませんが、言った通り、このパーツは用意できません…。無力で申し訳ない」

銃士「いえ…。多分そうじゃないかなとは思ってましたので」

錬金術師「…」


銃士「では、新しい銃の開発などはお願い出来るでしょうか?」

錬金術師「新しい銃?」


銃士「このマスケットのパーツを使って、新しい銃を作ってほしいんです」 
 
銃士「使える武器がないと、商売あがったりなんで」

 
錬金術師「ふむ…。でもこれはお父さんのなんでしょう?いいんですか?」

銃士「もう亡くなりまして、その遺品ですし。パーツだけでも使って、使える物にしてくれるだけで嬉しいです」

錬金術師「それは可能です。わかりました」

銃士「ありがとうございます!」


錬金術師「作るなら、最新式のがいいですかね?それともこのままマスケットが?」

銃士「オススメがあれば、それにして貰っても大丈夫です」


錬金術師「このマスケットは一発一発の充填式ですみたいですが、連射式にしても?」

銃士「構いません。連射式でも、クセで充填してしまいそうですが」ハハ

錬金術師「ははは、わかりました。では、1日ほど時間を貰えますか?」

 
銃士「い、1日で出来るんですか?1週間以上かと思ってみてたんですが」


錬金術師「元にどうしても戻せというなら、素材の関係でそのくらいかかりますが…」

錬金術師「今のパーツを利用して新規も組み合わせていいなら、1日くらいで出来ますよ」カチャッ


銃士「…思った以上に良いお店のようですね。本当に助かります!」

錬金術師「いえいえ。町のほうに宿はありますし、明日の朝にでも改めて来てください」

銃士「よろしくお願いします!」


錬金術師「料金のほうですが、材料費と手間賃で30万ほどでいかがでしょうか」

女店員「30万!?」

錬金術師「…何よ」

 
女店員「武器ひとつの修復…いえ、新規とはいえ30万もするんですか!?」

銃士「あはは…お嬢さん落ち着いてください。30万は安いほうですよ」

女店員「そ、そうなんですか?」


錬金術師「新品でゼロから造れって言うなら120万はかかる。見たところ、魔弾も使ってますよね?」

銃士「えぇ。やっぱりわかってましたか」


錬金術師「女店員、覚えとけ。魔弾を放つ銃を造るための技術は確立されていなくてな」

錬金術師「造れる技師はそうそういないんだ。しかも魔弾を耐えるパーツも高価だし…」

錬金術師「そういった理由から、魔弾も扱える銃自体の値段が跳ね上がる」

 
女店員「ふぇ~…」


錬金術師「この消耗跡から、魔弾は使うみたいだし100万もとろうとしたんだが…」

錬金術師「思ったより魔弾で消耗するパーツは疲労もなかったし、それを調整し直して使えば安く済みそうなんだ」


女店員「そういうこと…」

錬金術師「まぁ、任せてください、銃士さん」

銃士「では、30万と申されたので一応前金で10万。残りの20万は明日お渡しいたしますので」

錬金術師「前金…よろしいんですか?」

銃士「古い銃ですし、なんだかんだで面倒ですしね。失敗しても文句はいいませんよ」

 
錬金術師「はは、腕を信じてください。では、改めて明日また来て下さい」

銃士「ありがとうございます。失礼いたします」

ガチャッ…バタンッ!


錬金術師「はぁ。銃の手入れと製作なんて久しぶりだわ」カチャカチャ

女店員「店長、銃まで作れたんだ」

錬金術師「だから錬金師の基本だって。分解してパーツだけ取って…と…」

ガキン!ゴトゴトッ!


女店員「店長は銃を使えるの?」

錬金術師「昔の錬金師達は、作る以上は自らで使えたらしいが…俺にゃ無理だな」ハハハ

 
女店員「…」ジトッ

錬金術師「なんだよその目は」

女店員「マスターの地位を持つ錬金術師が、歴史の始まった武器を使えないって」

錬金術師「そういう時代は終わったの!錬金師はもう、戦いより開発メインなの!」

女店員「…」


錬金術師「つーかさ、俺、今日は一日この仕事に取り掛かかりつつ店番するからさ」

錬金術師「鉱山に銃士から頂いた前金の10万もって、管理人とこに仕事しに行って来いよ」


女店員「仕事?」

錬金術師「鉱石の在庫、売れる売れない関係なく増やしておこうと思ってな」

  
女店員「それはいいけど…。10万も一緒に?」

錬金術師「それに関してはちょっと待ってろ」スクッ

ペラッ…サラサラッ…


錬金術師「…」

女店員「…」


カキカキ…ギュッギュッ

錬金術師「よし。この手紙も一緒に持っていけ。管理人に渡せばわかる」

女店員「…うん?わかった」

錬金術師「採掘はお前が疲れたタイミングで止めていいから。無理はすんなよ」

 
女店員「わかった。じゃ、早速行ってくるね」

錬金術師「はいよー、気をつけてな」

女店員「…?」


ガチャッ…バタンッ…

…………
………
……

本日はここまでです。ありがとうございました。

銃が貴重って事は、時代背景は結構前な感じなのかな?

ありがとうございます。投下致します。

>>335
その辺は少しずつ本編にて…。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 鉱 山 】


カーン…カーン…!!ガヤガヤ…


女店員「わぁ~、相変わらず凄い熱気!」

ザッザッザッ…

管理人「…おや」


女店員「あっ、管理人さん!」

管理人「こんにちわ。女店員さんでしたね…あなた一人ですか?」

女店員「あ、そうです」

 
管理人「珍しいですね。鉱石の採掘に?」

女店員「そうなんですけど…。ちょっと、この手紙を管理人さんに渡せと…」スッ

管理人「誰からですか?」ペラッ

女店員「うちの店長からです」


ペラッ…

管理人「…」

管理人「…ふむ」


女店員「中身読んでないんですけど、どんな内容でしょうか?」

 
管理人「えーと…うちとの契約覚えてますか?」

女店員「えーと、確か1回、3万ゴールドで運搬をするっていう…」

管理人「そうです。それに加えて、あの新人鉱夫クンを1日、貴方の為に付けてほしいそうです」

女店員「えっ?」


管理人「10万ゴールドを預けたから、それで対処してほしいと」

女店員「店長…か、勝手なことを…」

管理人「まぁ、心配だったんじゃないですか」

女店員「へ?」


管理人「私どもが管理してるとはいえ、採掘は危険なことには変わりませんし」

管理人「彼自身、女性である貴方の身を案じてのことかもしれません」

 
女店員「…」

管理人「こちらとしては断る理由もないですし…わかりました。おーい!!」


タッタッタッタッ…

鉱夫「どうしました管理人さん?」

管理人「仕事中にすまないな。新人鉱夫君がどこにいるか知らないか?」

鉱夫「あ~…アイツですか。アイツは今、地下3階で次回納入分の採掘してるはずです」

管理人「呼んでもらえるか?」

鉱夫「わかりました。少し待っててください」

タタタタッ…

 
管理人「少し待っててくださいね」

女店員「ありがとうございます。それと~…管理人さん」

管理人「はい?」

女店員「ここの鉱山って、どういう仕組みで運営してるんですか?」

管理人「仕組みですか?」

女店員「次回納入分とか、色々…」


管理人「あ、なるほど。私共は、採掘グループという経営会社でやってるんです」

管理人「そこの配下の管理人が私。店長さんのお父さん、社長には大口取引をしています」


女店員「なるほど」

 
管理人「中小企業との取引も多いですが、個人売買に卸す事もしばしば」

管理人「ですがやはり、契約内容的に個人売買は少ないですけどね。山の奥っていうのもありますし」


女店員「確かにココは少し遠いですよね」


管理人「道も安定しませんし、運搬だけでも一苦労です」

管理人「お宅とのような運搬もやらせて貰っている契約もありますが、高くつきますよ」


女店員「でしょうね…」

管理人「どうです?今度是非、定期の卸しと運搬で契約など」

女店員「そ、そういうお話は店長とよろしくお願いします」

管理人「ですね」ハハ

 
ザッザッザッザッ…ピタッ

新人鉱夫「あ、あの!お待たせしました!」

管理人「お、来てくれたか」

新人鉱夫「はい。呼ばれたので…どうしたんですか?」

管理人「んーと、今の仕事はあがっていい。変わりに、この人の手伝いをしてほしいんだ」


女店員「久しぶりですね」

新人鉱夫「あっ、久しぶりです!」ペコッ


管理人「今日の君のノルマは、別の人に任せるから今日の仕事はコッチで頼む」

新人鉱夫「わかりました」

 
女店員「ごめんね、わざわざ来てくれて」

新人鉱夫「いえいえ。やれることなら手伝わせて頂きますので」

管理人「じゃ、お願いね。女店員さん、こき使ってやってくださいな」ハハ


女店員「いえいえ…あはは…。じゃ、行きましょうか新人鉱夫さん」

新人鉱夫「はいっ」


………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 採掘洞 地下1階・校内事務所 】


カチャカチャ…ガチャッ!

女店員「はいっ、新人鉱夫くんの分」スッ

新人鉱夫「ありがとうございます。これが店長さんの開発した自動採掘機ですか?」

女店員「軽いですよね」

新人鉱夫「これであの数を簡単に掘っちゃうんだもんなぁ…」


女店員「他の鉱夫さんはこういう楽なのは使わないんですか?」

新人鉱夫「自動採掘機はあることにはありますが、希少鉱石くらいしか使いませんねぇ」

 
女店員「もっと普及させれば作業スピードも上がるのに」

新人鉱夫「やっぱり予算問題が一番なんでしょうねえ」

女店員「そうなのかなぁ…」


新人鉱夫「とりあえず今日は鉄鋼をメインに採掘ですか?」

女店員「そうですね、出来ればエレク…エレキ…なんたらも採れたらいいんですが」

新人鉱夫「エレクトラムですね。じゃあ少し奥に行きましょうか」

女店員「あはは…道案内は宜しくお願いします」ペコッ


新人鉱夫「任せてください」

ザッザッザッザッ…

 
女店員「~♪」

新人鉱夫「…」

ザッザッザッ…


女店員「そういえば、この辺は魔物とか出ないんですか?」

新人鉱夫「そうですね。このフロアでは見た事ありませんし、地上に近いので多分いませんよ」

女店員「地下に深く潜る程、魔物とか危険なフロアがあるんでしたっけ?」

新人鉱夫「地下3階辺りから、魔物を見かける事はあります」

女店員「襲われたりしないんですか?」

新人鉱夫「襲われますよ」

女店員「えっ!」

 
新人鉱夫「でもそういう場所は一人じゃ採掘しませんし、地下4階くらいまでは強力な相手は出ませんね」

女店員「あぁ…」

新人鉱夫「この鉱山は地下7階、更に深い場所もありますが整備もされてませんし危険です」

女店員「一般的にいう、希少鉱石は何階から採れるんですか?」


新人鉱夫「5階から僕らでも対処仕切れない魔物が現れます」

新人鉱夫「坑内エレベータは5階までで、それ以上の6,7階は歩きじゃないと行けません」

新人鉱夫「魔力のあるクリスタル、アンバー等といった希少鉱石はその辺にあります」


女店員「オリハルコンなんかはないんです?」

新人鉱夫「どうでしょうねぇ。地下7階以降は、契約してる冒険者じゃ太刀打ち出来ないんですよ」

女店員「太刀打ち出来ない?」

 
新人鉱夫「魔物が強すぎて、ここだけの話、死亡者も結構な割合で出てるんです」

女店員「え…えぇ…」


新人鉱夫「自然洞も更に広がり始めますし、危険なガスも充満します」

新人鉱夫「魔物に太刀打ちできる強さと、その洞窟を攻略できる装備があれば希少鉱石も手に入るでしょう」


女店員「…思ったより大変なんですね」


新人鉱夫「そうですね…。ただ、広い自然洞にはそういった希少鉱石も眠ってますし」

新人鉱夫「よっぽど、冒険家がはびこる表世界より、地下世界のほうがロマンもあるかもしれませんよ」


女店員「ロマンかぁ…」

新人鉱夫「より危険がありますが、それだけの価値はあると思います」

 
女店員「うーん…」

新人鉱夫「僕もまだ地下4階が最高ですし、地下7階に行った人は稀ですね…」

女店員「そのうち、うんと強い冒険者でも雇って行ってみたいなぁ」

新人鉱夫「あはは、そうですね」


ザッザッザッ…ピタッ

新人鉱夫「さて、この辺なら採掘できるはずです。精一杯お手伝いしますよ!」

女店員「運んでもらうのもその分増えますけどね」

新人鉱夫「…が、がんばります!」


…………
………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 数時間後 】


グィィィン…プスンッ…

女店員「あ…」

新人鉱夫「あ~…。どっちも採掘道具のエネルギーが切れましたね、予備の魔石は?」ゼェゼェ

女店員「これで魔石は打ち切りですし、終わりですね」ハァハァ


新人鉱夫「終わりですかぁ~!ふぅ~…」ストンッ


女店員「今回もだいぶ掘ったなぁ」キョロキョロ

 
新人鉱夫「普段やってる作業と効率が全然違くてビックリしましたよ」

女店員「やっぱり楽でした?」

新人鉱夫「楽ってもんじゃないです。これさえあればいつまでも採掘出来る気がしますよ」

女店員(無駄に良い物造れるんだから店長は…全く…)


新人鉱夫「それじゃ、運びますか?」

女店員「お願いしますっ」ペコッ

ゴソゴソ…


新人鉱夫「よいしょ、まず全部集めないと…」

女店員「…」

新人鉱夫「ふぅ…ふぅ…」ゴロゴロ…

 
女店員「…」

女店員「ん~…新人鉱夫さん」


新人鉱夫「何でしょうか?」

女店員「新人鉱夫さんは、何で鉱夫になるとしたんですか?」

新人鉱夫「ああぁ、親も鉱山関係だったので、斡旋じゃないですけど就職させてもらいました」アハハ

女店員「結構つらい仕事だと思うんですが」


新人鉱夫「体力勝負ですし、辛いのは辛いです。歩合制なところもありますし」

女店員「歩合制ですか?」

新人鉱夫「どれだけ採掘ノルマをあげられたか、ですね。基本給に加え、結果に応じた給金ということです」

女店員「なるほど…」


新人鉱夫「まぁでも、基本給自体が15前後、寮などは別なので暮らすには不自由がないですね!」

女店員「へぇ~…」

 
新人鉱夫「では逆に聞きますが、女店員さんは何故、あの店長のお店に?」

女店員「あ~…」

新人鉱夫「…?」


女店員「私は元々、中央都市への一人暮らしと就職希望だったんです」

新人鉱夫「へぇ…、じゃあ何故この町に?」

女店員「ずっと住んでた地元ってこともあるんですけど、家がちょっと貧乏で…」アハハ

新人鉱夫「仕事に行くという理由なら、1,2か月くらいの住むお金があれば暮らしを出来たのでは?」


女店員「その最初のお金も出せないくらいの事情があって…」

女店員「仕方なく地元で探した結果、あのお店に誘われて、しかも条件良くてぬるっと…」

 
新人鉱夫「運命的な出会いってことですね!」


女店員「運命…。あの店長と…」

女店員「…あり得ないです!たまたま偶然ですよ!あの変態グウタラ店長となんて!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
錬金術師「ヘックショイ!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

女店員「そ、そりゃあ頭もいいですし、私を拾ってくれたっていうのは嬉しいですが…」ブツブツ


新人鉱夫「あはは…」

女店員「って、話してても運搬は終わりませんよね。拾うの手伝いますっ!」

新人鉱夫「ありがとうございます」ニコッ

…………
………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 2時間後・錬金術師の店 】

ガチャッ!!

女店員「はぁ~…はぁ~…」

新人鉱夫「ひぃひぃ…」

…ドサッ!


錬金術師「おぉっ。おかえり」


女店員「鉱石の在庫、確保ぉ~…」

新人鉱夫「はぁ~…疲れたぁ…」

 
錬金術師「新人鉱夫もご苦労サン」

新人鉱夫「いえいえ、これくらい…」


女店員「で…。私らが頑張ってる間に、きちんと銃はやったんでしょうね…」ギロッ

錬金術師「もう終わったから寝てた」

女店員「」


錬金術師「思ったより単純でなぁ。パーツも揃ってたから簡単だったし」ハハハ

女店員「無駄に仕事が早いんだから…」

錬金術師「請け負った限りはきちんとやるっつーの」

 
新人鉱夫「それじゃ、僕はこれで~…」

女店員「あっ、お手伝いありがとうございましたっ」

新人鉱夫「いえいえ仕事ですから!では、失礼致します!」

ガチャッ…バタンッ…


錬金術師「しっかし、随分と集めてきたな…」ゴソゴソ

女店員「でしょー!」

錬金術師「…しかも、かなり良い鉱石だ。一級品だぞこれは」キラッ

女店員「なんか新人鉱夫さんが目利きしてくれて」

錬金術師「ははぁ、なるほど」

女店員「あと手紙通り、10万は渡してきたから」

錬金術師「はいよ、ありがとさん」

 
女店員「ところで銃の完成品はどこに?」

錬金術師「ん?」

女店員「一度、どんなものかなって見てみたくて」

錬金術師「あぁ。ほら」

…ゴトンッ!


女店員「うわっ」

錬金術師「マスケットより随分小さめの、最新式のに組み替えたがな」

女店員「こんな小さなので、魔物とか相手に出来るの?」

錬金術師「大きけりゃいいってもんじゃないぞ」

女店員「小さくてもいいってもんじゃないでしょ?」

 
錬金術師「…」

女店員「…」


錬金術師「…使ってみたいの?」

女店員「!」ピクッ

錬金術師「仕方ねぇなあ、試して撃ちで1回な。ほら、外行くぞ」

女店員「う、うんっ!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ヒュウウッ…!!

錬金術師「うぅっ、外は少しまだ冷えるな」ブルッ

女店員「で、どうすればいいの、どうすればいいの?」ウキウキ

錬金術師「あそこの正面にデカい岩があるべ?」

女店員「うん」


錬金術師「まず両手で構えて、フロントサイトをリアに合わせてだな…」

女店員「…?」

 
錬金術師「…わかりませんね、はい」

錬金術師「ちょっくら失礼」グイッ

…ギュウッ


女店員「…きゃあぁっ!」ビュッ

…ゴツンッ!!

錬金術師「」


女店員「あっ」

錬金術師「い…痛ぇなこの野郎!!」

女店員「きゅ、急に後ろから抱きつくから!」

 
錬金術師「意外と反動があるから、初めて撃つのは一応、後ろから押さえないと危ないんだよ!」

女店員「あ…そ、そうなの…?」

錬金術師「おー痛ぇ…」ズキズキ

女店員「ご、ごめん…」


錬金術師「いや何も言わなかった俺も悪い。…んじゃ、いいか?」

女店員「う、うんっ」

錬金術師「んじゃ改めて失礼」

…ギュッ
 
女店員「うぅ…」

 
錬金術師「…別に嫌なら一人撃ちもさせるが…」

女店員「う、ううん、慣れてないから何となく…」

錬金術師「そ…そうか。じゃあサッサと教えるか。銃の上のデコボコわかるか?」

女店員「うん、分かる」


錬金術師「先と手前があるんだが、そこから覗いて岩が見えるようにしろ」

女店員「んん~…」

カチャッ…カチャカチャ…


錬金術師「見えたか?」

女店員「見えた!」

 
錬金術師「そしたら、トリガ…って言っても分からないな。その指の部分を引くんだ」

女店員「わ、わかった」

錬金術師「あぁ待て。さっきも言ったが一応衝撃もあるし、きちんと押さえろよ」

女店員「うん」


錬金術師「せーのっ」

グイッ!バァンッ!!!……バキィンッ!!


女店員「ッ!!」

錬金術師「おふっ」

 
女店員「い、岩が大きく削れた!」


錬金術師「この小さな穴から、弾丸っつーのが発射されて命中して爆散する」
 
錬金術師「小さな銃だろうが、威力の高さはあのくらいだ。大きさによらんだろ?」


女店員「これが銃…。手が痺れたぁ…」ビリビリ

錬金術師「一緒に撃って良かったな。一人だったら逆に吹き飛んでたかもな」ハハハ

女店員「む、むぅ…」

錬金術師「はははっ」


女店員「ところで…店長」

錬金術師「ん?」

 
女店員「いつまで抱き着いてるんですか…?」

錬金術師「おふっ」

女店員「銃の凄さは分かったんで、もう大丈夫です!」

錬金術師「そ、そうか。悪い悪い」パッ


女店員「…」

女店員「それにしても銃かぁ…」


錬金術師「気に入ったのか?」

女店員「これくらいなら、私にも扱えるかなーって」

錬金術師「何、冒険者にでも転向したいんか?」

 
女店員「い…いや、そういう訳じゃなくて…」

錬金術師「ん~?」


女店員「もし私が少しでも戦えれば、もっとお店に素材も入るし…」

女店員「盛り上げられるかなーって思って」


錬金術師「…」

女店員「…」

錬金術師「はぁ~…」

女店員「何故ため息」

 
錬金術師「いや、何となく。そこまで考えていたとは思わなかったからよ」

女店員「そりゃ考えるでしょう。明日すら見えないお店なんだから」

錬金術師「…」

女店員「話を戻すけど、そういうことだから銃が欲しいなって」


錬金術師「…却下」

女店員「何で!」

錬金術師「女性向きの銃ならいくつでも作れるが、お前にゃダメだ」

女店員「…素材を入れたいっていっても?」

錬金術師「ダーメ」


女店員「えー…」

錬金術師「餅は餅屋。冒険者稼業は冒険者やハンターに任せておけってことだ」

 
女店員「うーん…」

錬金術師「はぁ~…。心配だっつーことだよ言わせるな」

女店員「え?」


錬金術師「仮にも、俺はずっとお前をずっと近くで見てきたんだぞ?」
 
錬金術師「お前がそういう事は無理だっていうのはわかってるつもりだ」


女店員「…」

錬金術師「そ、それに…大事な店員だし…」ボソボソ

女店員「え?何て?」

錬金術師「大事な…」ボソボソ

女店員「きこえない!」

 
錬金術師「大事な店員だし、身内の女性だから危険にさらしたくないの!!」

女店員「!」

錬金術師「ほら、さっさと戻るぞ!!」クルッ


女店員「…」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
管理人「私どもが管理してるとはいえ、採掘は危険なことには変わりませんし」

管理人「彼自身、女性である貴方の身を案じてのことかもしれません」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

女店員「…そっか」


錬金術師「…何してるんだ!風邪ひく前に中に入っとけ!」

女店員「今行きまーす♪」

 
錬金術師「んお、何で敬語に戻った?」

女店員「まぁまぁ♪」


…気持ち悪いな!

ちょっと!

う、うそうそ!気楽だったって事で…

折角少し敬おうと…

少して…

まぁ…

…………… 
…………
………
……

本日はここまでです。ありがとうございました。

皆さま有難うございます。投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 次の日 】

コンコン…

錬金術師「はいどうぞー」

ガチャッ!

銃士「おはようございます、昨日はありがとうございました」


錬金術師「おっ、いらっしゃいませー」

女店員「おはようございますっ」

 
錬金術師「出来ていますよ。オート式にしましたが、使い勝手はそのままのはずです」

…ゴトンッ!


銃士「おぉ…!」

錬金術師「サービスですが、特製の弾丸も作っておきました」

銃士「えっ、いいんですか?」

錬金術師「その代わり使用感が良かったら、また是非」ハハハ

銃士「ははっ、そういうことですか。商売上手だ」


女店員「いつもそうだと良いんだけど」

錬金術師「…」

 
銃士「それではコチラ、約束の残り20万です」スッ

錬金術師 「はい確かに」

銃士「いやぁ助かりました、これで直ぐに稼ぎに戻れます!」

錬金術師「いえいえ。また近くに来た際には、またお立ち寄り下さい」


銃士「ぜひっ!では、失礼します」ペコッ


錬金術師「ありがとうございました」

女店員「ありがとうございました~!」


ガチャッ…バタンッ…

 
錬金術師「…」

錬金術師「ふぅ~!」


女店員「今日もまた、少なからず儲けは出た…のかな?」

錬金術師「そうさな。あと週末には鍛冶屋も控えてるし儲けは確実に出るな」


女店員「やっと波に乗ってきた感じ♪」

錬金術師「段々やることが増えて面倒になってきた感じ…」


女店員「ちょっと」

錬金術師「はい」


女店員「まぁでも、1日に平均来客数が1人ってさ…」

女店員「お店として終わってる気がしないでもないんだけど…」

 
錬金術師「ん~…立地条件は最高なんだけどな」

女店員「このお店が?」


錬金術師「鉱山があるから製錬業、その山々に現れる魔物に対する道具の開発業」

錬金術師「中央都市から離れている分、貴重になるポーションとかも買う人は出てくるし」

錬金術師「薬品開発ってのも割りと有りかもしれねーな」


女店員「薬品開発?」

錬金術師「薬、ポーションの生成のことだ。俺らの仕事の1つでもあるんだぜ」

女店員「僧侶とか聖職のほうがそういうイメージが強いんだけどな?」

錬金術師「そりゃヒーリング魔法によるモノだな」

 
女店員「ポーション開発も錬金師がやっちゃうの?」

錬金術師「そうそう。ドーピング薬なんかも作れちゃうんだぜ」

女店員「…」

錬金術師「…どした?」

女店員「錬金術って無駄に万能っていうか、本当に何でも出来るんだなと…」


錬金術師「いやいや、普通は専門特化よ」

女店員「専門特化?」


錬金術師「錬金術関係には、とにかく"研究者"という名前が一番当てはまるな」

女店員「確かにそんな感じはするかな」

 
錬金術師「薬品、武器、生活用具、とにかく何でも研究開発するんだ」

女店員「ふむふむ」

錬金術師「前に言った錬金師の階級は覚えてるか?」

女店員「もちろん」


錬金術師「その階級毎に研究開発できる資格があってな」

錬金術師「その課題をクリアすれば上の階級称号が授与されるわけよ」


女店員「なるほど」

錬金術師「もちろん、その階級に達していない人が研究をするのはタブーなわけ」

女店員「ってことは、事実上マスターの地位を得ていた店長は…」

 
錬金術師「基本的に何でも研究したし、全部合格点に達したから」

錬金術師「流通してる物は、ほとんど何でも開発出来るよーん!!」ヘラヘラ


女店員「…」ジトッ

錬金術師「何だよその目は」

女店員「いえ何でも」ハァ


錬金術師「ご、ごほん。とにかく俺は何でも出来るってことだ」

女店員「ポーションとか薬関係は、今ここで生成できないの?」

錬金術師「それこそ素材がないと無理」

女店員「素材っていうと、野草とか?」

錬金術師「そうそう。簡単なものだとその辺に生ってる実や雑草とかでも作れるんだが」

 
女店員「その辺の実や雑草からも…」


錬金術師「使えるのを判別して組み合わせて、漬けたり砕いたり…」

錬金術師「そうすりゃ解熱作用だの体力回復薬だの、何でも作れるわな」


女店員「へぇ~」

錬金術師「ま、その辺は階級関係なく素人販売もあるから注意しないといけないんだが」

女店員「なるほど」

錬金術師「俺にかかれば、最高の調合でポーションなんざボンボン作れ…」


女店員「…」

ジー…

錬金術師「…!」ハッ

 
女店員「さぁて、倉庫も空いてる事だしポーション素材でも探しにいこっか!」ニコッ

錬金術師「いやだ」

女店員「…行こう?」

錬金術師「いやだ」

女店員「何で!」


錬金術師「お、怒るなって!別に行きたくないわけじゃないんだ!」

女店員「今行きたくないって言ったじゃん」

錬金術師「そういうことじゃなくて…」

女店員「じゃあどういうことー?」ジトッ

 
錬金術師「い、今は店空ける訳にいかんだろ?」

女店員「まともにお客来ないのに」

錬金術師「うぐっ」グサッ


女店員「だったら明日のために売れる物を確保したほうがいいんじゃないの?」

錬金術師「う、うーむそれは分かるんだが…」

女店員「…」


錬金術師「銃士みたいなお客が来るかもしれんだろ?」

女店員「それはそうだけど…」

錬金術師「行くにしても早めに店を閉めてからにしようぜ」

女店員「…わかった」

 
錬金術師「そんな顔するなって!やる事はやるから!」

女店員「本当?」ジー

錬金術師「やりますよ!」

女店員「じゃあいっか」


錬金術師「まぁ今日こそは、お客が沢山来てクタクタに疲れて野外活動は出来ないがな」ククク

女店員「そうなればいいんですけどね」


…………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夕 方 】


カァ…カァ…

錬金術師「一人も来なかった」

女店員「見事なまでの"フリ"になったわけで」


錬金術師「マジで行くの…」

女店員「折角倉庫を拡張したのに、使えないのは勿体ない!」

錬金術師「そりゃそうだけどよ…」


女店員「じゃあ出発出発!」

錬金術師「…待て」

女店員「?」

 
錬金術師「やっぱり明日にしようぜ」

女店員「はぁ?」

錬金術師「よく考えろ、夕方から山に入るのは自殺行為だ」

女店員「あ…確かに…」


錬金術師「本当は夜にしか咲かない夜光草とかあるんだが、素人じゃ危なすぎる」

女店員「それは…うん…」

錬金術師「魔物やら魔獣やらに襲われたら俺らは一発でアウトだろ?」

女店員「うっ…」

 
錬金術師「夜行性のも多いし、いくなら朝。だろ?」

女店員「言われてみれば…」

錬金術師「じゃあそういう事で明日な。今日は店は終わりでいいか」フワァ…

女店員「うん」


錬金術師「そういう事も含めて話すと、本当に冒険者の存在が欲しくなってくるよなぁ」

女店員「確かに…」

錬金術師「こういう素材収集も、ハンターや冒険者がいれば楽なんだが」

女店員「契約できないの?」


錬金術師「前も言ったが金がかかる事と、契約する知り合いもいない」

女店員「あ~そっか…」

 
錬金術師「いや、ギルドとかの冒険者組合に要請を出せばいいんだが…」

女店員「やっぱりお金がかかると」

錬金術師「そう…」

女店員「はぁ…」


錬金術師「…」

女店員「…」


錬金術師「…あっ」ポンッ

女店員「えっ?」

  
錬金術師「よく考えたら…少しのお金あるなら、あそこに行けばいいんだ」

女店員「冒険者の宛てが?」

錬金術師「いや違う」

女店員「じゃあ何?」


錬金術師「…"市場"」

女店員「…あぁっ!」


錬金術師「市場なら、俺らみたいなのに安く素材を売ってくれるじゃん」

女店員「っていうか今まで何で気づかなかったの…」

錬金術師「そりゃ金ないし、行く意味もなかっただろ」ハハハ

 
女店員「…」

錬金術師「…」

女店員「…」

錬金術師「…すいませんでした」

女店員「はい。って、私も店員なのに考えが及ばなかったのは悪いんだけど…ごめんなさい」


錬金術師「痛みわけってことで!」

女店員「うんっ」

 
錬金術師「んじゃ~、明日の朝改めて市場目的でいいな」

女店員「だね」

錬金術師「それじゃお疲れさま、明日は朝5時に店な」

女店員「早っ!」

 
錬金術師「当たり前だ、それでも遅いくらいだ」

女店員「だよねー…うん、わかった!」

錬金術師「久々の収支もはっきりしたし、今日は収支付けもしねえとな」フワァ


女店員「じゃっ、明日に備えて早く寝よう♪」

錬金術師「はいよー、お疲れサン」

女店員「お疲れ様~」

……………
…………
……

 
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・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
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・・・・
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【 現時点でのお店の経営収支 】

■収入
・販売関連140万ゴールド

■支出
・バターピーナツ生成器40万ゴールド
・倉庫拡張費用70万ゴールド
・鉱山のバイト代10万ゴールド

■収支合計
・プラス20万ゴールド


【 現時点でのお店の経営情報 】

■お店
・平屋1階建て
・少し広い倉庫

■販売物
・採掘道具20万ゴールド
・鉱石類(鉄鋼1000、銀5万、エレクトラム20万ゴールド)
・バターピーナツ(サービス)

■その他
・装備類の修理等(時価)

本日はここまでです。
最近多忙の為、大量更新ができておりませんが、少しでもお付き合い頂ければ幸いです。

ありがとうございました。

皆さま沢山の感想・意見等有難うございます。楽しんでいってもらえれば嬉しいかぎりです。
それでは、投下致します。

  
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――――【 次の日・早朝 】

チチチ…

錬金術師「おはよう」

女店員「おはよう♪」


錬金術師「朝から元気だねぇ…」

女店員「そりゃ色々見に行けるのは楽しいし」フンッ

錬金術師「あぁ、そう…。女の人は買い物が好きだからねぇ」フワァ…

 
女店員「それにもう週末も近いし、鉱石が売れてくれればやれることが増えそうだし♪」

錬金術師「確かにな」

女店員「今回の市場でいい商品が見つかれば、今後も手に入るし~」

錬金術師「今日の目的は薬品の素材だし、そこまで金はかからないだろ」

女店員「そうなの?」


錬金術師「薬品調合はどっちかっつーと、素材の知識とその技術に金が支払われてるって言っても過言じゃない」

錬金術師「1本200ゴールドで販売されてるドリンク類の原価は50ゴールドだ」

錬金術師「まぁ人件費や雑費絡んで200だし、俺らの販売だと100とか150で売れるかもしれんな」


女店員「それで利益出るのかなぁ?」

 
錬金術師「原価より少しでも高ければ利益は出る」

錬金術師「それに大手販売店とかと比べたら、俺らみたいなのはそうしていかないと売れないんだよ」


女店員「逆のイメージもあるんだけどな。大手だと安いっていうイメージもあるんだよね」

錬金術師「確かに人件費を削ったり、卸値を目玉としてそのまま販売したりはするな」

女店員「利益ってあがるのかな?」

錬金術師「大手っていうブランド力もあり、販売物の多さ、まぁ儲けの手段は色々ある」


女店員「うちもそのくらい大きくなったりしないのかなー」チラッ

錬金術師「小さくチマチマやってても利益は充分にあがるから良いの!」

 
女店員「むぅ…」


錬金術師「だけど前に言った通り、この周辺にライバル店みたいなのはないし、ポーションは貴重だ」

錬金術師「その分、それを逆手にとって高値でも売れるんだがな」


女店員「なるほどねぇ…」

錬金術師「さぁ市場の朝は早い。馬車に乗っての少し遠出になるし、さっさと行こうか」クルッ

女店員「うんっ!」


…………
………
……


 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 大型馬車 】

パカッ…パカッ…


女店員「早朝だといつも込んでる馬車も空いてるね~」

錬金術師「…」


女店員「でも早起きって気持ちいいなぁ」ウーン

女店員「店長もそう思うでしょ?」クルッ


錬金術師「…」グー…

 
女店員「寝てるー!!」


錬金術師「んおっ!?な、なんだどうした!」ビクッ!!


女店員「い、いえ。早起きは気持ち良いなぁと思ったら、横でダウンしてたので」ゴホンッ

錬金術師「朝早く起きたって何にもなんねぇよ」フワァ

女店員「早起きは三文の徳っていうでしょ」

錬金術師「…」

女店員「だから、起きたら起きたで今後の事とかしっかり話し合うとかー…」


錬金術師「早起きは三文の徳ってさ、元々は"早起きしても三文の徳"にしかならない」

錬金術師「そういう意味なんだぜ?」

 
女店員「…そうなの?」

錬金術師「そうなの」

女店員「…」

錬金術師「ってなわけで、寝たほうが徳なのだ」


女店員「はぁ…」

錬金術師「どうせ大金持って行くワケじゃないし、市場に行ってもいまいちなぁ」

女店員「20万って大金だと思うんだけどな~…」

錬金術師「そうか?市場だと普通に数百万ゴールドの取引もあるし…」

女店員「出来る所から、買える素材から一歩一歩が大事!」

錬金術師「まあ…そうだな」

 
女店員「どんなのが売ってるんだろぉ…。私、そういうところ行った事ないし少しワクワクする♪」

錬金術師「賑やかで、安く素材が売ってるただの広場って感じだ」

女店員「楽しそうだなぁ」

錬金術師「別に薬品関係じゃなくても、何か良い物が売ってたら買えばいいとは思うし」

女店員「うんっ。…あ、そうそう」

錬金術師「ん?」


女店員「今から行く場所は山の中なの?…どんどん山奥に行ってるっぽいけど」

錬金術師「海が近くて、山のふもと」

女店員「ふむふむ…」

 
錬金術師「どっちの素材も手に入る、"麓村"っていう場所だ」

女店員「あ、聞いたことあるかも。ここから1時間くらいだっけ?」

錬金術師「そう」


女店員「ちょっとした遠出で、いつもと違うからワクワクする♪」

錬金術師「景色でも楽しんでてくれ。俺は寝る…」グー…


女店員「…もうっ!」

………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 麓村・市場 】


…ストンッ!!

錬金術師「ふわぁ~…着いたぁ~…」グググッ

女店員「う~ん朝日が気持ちいい!」


ザワザワ…ガヤガヤ…!!


錬金術師「おーっ、朝から盛況なことでなぁ」

女店員「うわっ、凄い人の数!」

錬金術師「こんなもんだ。さて、何かないか探しに行くか」

 
トコトコトコ…

女店員「すっごーい…!見たことない物とか沢山ある!」キラキラ

錬金術師「気になったモンがあったら教えれ。寝ぼけ半分でよく見えん」ゴシゴシ

女店員「…」


トコトコ…

青年「いらっしゃい!いらっしゃいませ!そこのお嬢さんとお兄さん!」

女店員「!」

青年「何をお探しで?山の幸に海の幸、うちは安いですよ~!」

女店員「へぇ~、どれどれ♪」

青年「これとか見てくださいよ!」スッ

  
女店員「わっ、お花?」スッ

青年「アカノミのお花ですよ!調合すれば回復薬になるんです、お安くしますよ~!」

女店員「へぇ~綺麗だなぁ…。店長、これとかどう?」


錬金術師「…」スヤスヤ


女店員「…ちょっと!!」

錬金術師「!」ハッ

女店員「この花とかどーうーでーすーかー!!」

錬金術師「…ッ!」キーン


青年「はは…」

 
錬金術師「う、うっせぇなぁ!!見せてみろ!!」グイッ

女店員「あっ!」


錬金術師「…」ジー

錬金術師「…おいアンタ」


青年「はい?」

錬金術師「これは一輪幾らだ?」

青年「一輪、2000ゴールドです!」

錬金術師「たけぇ」


青年「これでもギリギリですよ?一般販売だと5000ゴールドはくだらないんですから!」

 
錬金術師「じゃあ聞くが、これはいつ採った花だ?」

青年「えっ」ドキッ


錬金術師「お前この花の特徴知らないだろ」

錬金術師「3日たったアカノミの花は茎の部分に染みが出る。見ろ、ハッキリ出てるじゃないか」グイッ


青年「あっ…」

錬金術師「これで2000ゴールド?ぼったくりもいいところだ」

青年「…」

錬金術師「アカノミの花は新鮮さが命。安くすれば買わない事はないぞ?」


青年「…」

青年「わ、わかりました。一本1000ゴールドでかまいません…」

 
錬金術師「それなら頂こう。全部欲しいな、幾らだ?」

青年「30輪ありますので、3万ゴールドになります」

錬金術師「…ほい」チャリンッ

青年「はい、確かに。ありがとうございました」ペコッ


錬金術師「あとアカノミはあるのか?」

青年「ありますよ。1つ3000ゴールドになります」

錬金術師「そっちはそのままでいいや、2つくれ」

青年「はいっ。ありがとうございます」

ゴソゴソ…スッ


錬金術師「ありがとさん。じゃ、また今度」

青年「ありがとうございました!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

トコトコトコトコ…

女店員「店長、さすが…。花にも精通してるなんて…」

錬金術師「ん?」

女店員「やっぱり知識は身を助けるってことなんだな…」


錬金術師「アカノミの花はエキス抽出が必須なのに、腐りかけの花を買っても仕方ねーしな」

錬金術師「俺みたいなのにかかれば、そのレベルからでも抽出できるが」


女店員「知識と技術の差の勝利ってこと…か」

錬金術師「そーいうこと。それと、ほれっ」スッ

女店員「これって…アカノミ?」


 
錬金術師「そう。歩きながらでも食っとけ」

ガブッ…シャリシャリ…

錬金術師「おっ、こりゃ上等なアカノミだ。甘くてうめぇ」

女店員「美味しいの…?」

錬金術師「食ったことないの?」シャリシャリ

女店員「このまま丸ごとってのは余りないかな…」


錬金術師「アカノミはフルーツの1つで、栄養満点でな。弱い毒ならこれで解毒できるし」

錬金術師「朝に食べると、朝食の代わりになり得るくらいのパワーはある」


女店員「へぇ~…!でも、花のほうもポーションに使えるんだよね?」

錬金術師「そう。実と花は効能が違うからな。実はこのままでいいが、花は抽出が必要ってことだ」

 
女店員「へぇ…」モグモグ

錬金術師「…」シャリシャリ


トコトコ…ピタッ

女店員「…あっ!」

錬金術師「ん?」ゴクンッ


女店員「店長、ちょっと欲しいものがあったかも…」

錬金術師「何よ」

女店員「あれなんだけど…でも、アレは自費で買ってくる!」ダッ

錬金術師「あっ、おい!」ダッ

 
タッタッタッタッタッ…

女店員「すいませーん!」

初老の爺「んむ?はいはい」


…タタタッ

錬金術師「はええよ足…」ハァハァ

錬金術師「何が欲しくて、どれを見つけたって…?」ゼェゼェ


女店員「この本を見つけたから!」

錬金術師「ん~?」

 
女店員「"錬金術入門"!」ズイッ

錬金術師「あ~…」


女店員「おじいさん、この本幾らですか?」

初老の爺「あーそれは安くして5000ゴールドだったかなぁ…」

女店員「買います!」チャリンッ

初老の爺「はいはい、毎度~」


錬金術師「…」


初老の爺「はい、ではこちらの本をどうぞ。ありがとうございました~」ペコッ

女店員「ありがとうございます♪」

 
錬金術師「お前…そんなに本気で勉強したかったのか?」

女店員「だから、少しでも役に立てるようにしたいって!」

錬金術師「…」


女店員「今まで、ほとんど営業ばっかりで、働いてる身なのに錬金術に関してほとんど知らなかったし…」

女店員「出来る事なら手伝いたいし、少しでも店長がやる気出したなら手伝うしかないでしょ!」フンッ


錬金術師「…はは」

女店員「何笑ってるの」


錬金術師「いや何でも。んじゃさ…ちょっと予定変更だ、お前馬車乗り場に先に戻ってろ」

 
女店員「もう帰るの?」

錬金術師「ちょっと予定変更なだけだ。すぐ戻るから、先に行っててくれ」

女店員「そうやってサボる気じゃ…」ゴゴゴ

錬金術師「ちげえって!本でも少し嗜みながら待っててくれ!」

女店員「…わかった。さぼったらダメだからねっ!」

錬金術師「はいはい!」


女店員「じゃ、またあとで~」

タッタッタッタッ…


錬金術師「…行ったな。さて、探すか」

…………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 30分後 】

 
錬金術師「…お待たせっ!!」

…ドサッ!!ガシャァン!!!

女店員「きゃあっ!」ビクッ

錬金術師「重かったぁぁ!」

女店員「お、お帰りなさいって…今の凄い音は何!?」


錬金術師「はぁ…はぁ…。この袋だよ…」ポンッ

女店員「この袋に何入ってるの?」

錬金術師「いいものだよ…」ゼェゼェ

女店員「いいもの…?」

 
錬金術師「戻ったら分かるって。あと、もう持ってきたお金ないから」

女店員「」

錬金術師「お、怒るなよ!!必要投資なんだから!!」

女店員「本当に…?」

錬金術師「本当本当!ほら馬車も来たし、店に戻ろう!」


女店員「怪しい…」ジー

錬金術師「いいから馬車に乗って帰るぞ!店に行ったら見せてやるよ!」

女店員「むぅ~…」


…………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 1時間後 錬金術師の店 】


錬金術師「…よいしょっと」ドサッ!

女店員「はぁ~、結構歩いたなぁ」

錬金術師「アカノミの花くらいしか成果なかったなぁ」

女店員「あっ!そういえば、さっき買ったの見せてくれる!?」


錬金術師「いらねえもんじゃねえよ!袋を開けて見てみろ!」

女店員「…」

ゴソゴソ…、ガシャガシャッ!

女店員「こ、これって金属?鉄か何か?」

 
錬金術師「鉄じゃねえし、ただの金属じゃねえぞ。火炎に耐性のある特別な金属だ」

女店員「?」

錬金術師「簡単に言えば、火を通さないのよ」

女店員「火を通さない金属?これをどうするの?」


錬金術師「これを炉に融解させて張り合わせて、新しい炉を作ってやる」

女店員「!」

錬金術師「いくら火を強く放っても、これで炉が壊れたり暴走したりすることはないはずだ」カチャカチャ

女店員「もしかして…私のために?」


錬金術師「お前以外に使う奴がどこにいるよ」

錬金術師「もうじき、鍛冶屋に大量に精錬して渡さないといかんし、手伝ってもらおうかとな」

 
女店員「あ、ありがとう…!」

錬金術師「本まで買って勉強とは、そこまで本気とは思わなかったしな」

女店員「私、一生懸命頑張る!!」


錬金術師「炉が出来たら、隣で見ながら教えてやるよ」

錬金術師「あと聞きたい事があったら適当に聞け。答えられる範囲で答えるから」


女店員「うんっ!」

錬金術師「ただ、出来ない事もあるからそれは教えられんぞ」

女店員「出来ないこと?」

 
錬金術師「前に言った、階級とその制限技術の覚えてるか?」

女店員「確か、階級毎に研究できる対象が限られてるとか…」

錬金術師「そう。それもあるから教えられるのはえーと…ちょっとその本見せてみろ」

女店員「あっ、うん」スッ

錬金術師「…」

ペラペラペラ…パサッ


錬金術師「あ~…この本少し古いな。機関に属しないと研究できない対象も入ってるぞ」

女店員「え、本当に?」

錬金術師「このページにある、銃以降のページの一般人の研究は、今は禁止事項だ」

女店員「えーとじゃあ…このページの前まで出来るってこと?」

錬金術師「そういうこと」

 
女店員「ふむふむ…」

錬金術師「客も少ないし、軽く錬金術の勉強とでもいくか」

女店員「是非っ!」ズイッ


錬金術師「や、やる気だな。えーと…今の錬金術は、基本となる術式の流派が4つあるのは知ってるか?」

女店員「ううん知らない…。4つもあるの?」


錬金術師「"アレキサンドリア錬金術"」

錬金術師「"アラビア錬金術"」

錬金術師「"スコラ錬金術"」

錬金術師「そして一般生活に欠かせない"イアトロ化学"の4つだ」


女店員「へぇ!そんな流派があるんだ」

 
錬金術師「まぁ歴史みたいなもんだから知らなくてはいいがな」

錬金術師「唯一、精通しなければならないのは"アレキサンドリア錬金術"の基礎になる」ビシッ


女店員「基礎?」


錬金術師「アレキサンドリア…もとい、アレク錬金術において四大元素というものがある」

錬金術師「それは今の錬金術のアルケーとなっているわけで…」


女店員「待って待って待って!わかんない!」

錬金術師「あぁスマン…。錬金術の基本は、四大元素と繋がりがある。それは知っているか?」

女店員「魔法の事よね?」

錬金術師「少し違うが、そう思ってもらっていい。火、地、風、水がアレク錬金術の四大元素になる」

 
女店員「火、地、風、水…」


錬金術師「そして、"ストックホルム・パピルス"という本が存在するんだが…」

錬金術師「それは73種類の宝石と、金属変性法が7種類、着色方法が70種類記載されている」

錬金術師「いずれ、その方法を少しずつ覚えてもらう事にはなるかもな」


女店員「頭痛い…」


錬金術師「まぁそういう風に、各4つ基本のアレク、アラビア、スコラ、イアトロ…」

錬金術師「その基本に、更に基礎があって成り立っているのが錬金術だと思ってもらっていい」


女店員「4つの基本に、更に基礎があって、その技術も違うってことー!?」

錬金術師「そうなるな」ハハハ

女店員「覚えられないよ…」

 
錬金術師「今は覚えなくていい。ただ、こういうものだと認識だけしておけ」

女店員「わ、わかった」


錬金術師「そして話は変わるが、錬金術が発展していく中で、最大の目標としていた物は知っているか?」

女店員「目標?」


錬金術師「そう。人ってのは、研究が進むと欲が出るもんでな」

錬金術師「過去の錬金術を学んだ者達は"ある2つ"の目標を見出した」


女店員「それって…?」ゴクッ


錬金術師「あらゆる物質から黄金を作り出す技術。そしてエリクサーの生成だ」


女店員「あ、金は知ってる!でも、エリクサーは知らないかな」

 
錬金術師「エリクサーってのは、不老不死になると言われる伝説の霊薬だ」

女店員「不老不死!?」


錬金術師「黄金の生成においては、発展した技術のおかげで現実的になった」

錬金術師「だが、エリクサーは夢物語のままって感じかねぇ…」


女店員「エリクサーは作れないってこと?」


錬金術師「さぁな。俺でもそれに関しては俺でもよく分からん」

錬金術師「つーか、エリクサーは世界共通で研究を禁止されている事項の1つだ」


女店員「禁止されてるって、マスターとかの地位に関係なく?」

錬金術師「そうだ。理由が分かるか?」

 
女店員「ん~…技術が発展してきて作れそうになってきたから、不老不死になると問題だから?」

錬金術師「ははは!確かに、出来たら出来たで問題だわな!」

女店員「じゃあ出来てないってことか…。う~ん…」


錬金術師「じゃあヒントをやろう。不老不死だと確認する為には、何が必要だと思う?」


女店員「そりゃ、人が死ぬかどうかで…。あっ!」


錬金術師「…わかっただろ?」

女店員「人体実験!?」

錬金術師「せいか~い。でもな、表向きは禁則事項だが、裏じゃ普通に行われてるって話だ」

女店員「…!」

 
錬金術師「まぁ…エリクサーに限らず、ポーションや薬品研究は100%人体実験は絡んでいる」

錬金術師「今は人体といかなくとも、生物実験は行われているという事実があるには違いないがな」


女店員「それが錬金術の顔の1つなんだね…」ブルッ

錬金術師「と、怖い話もあるが、基本的には錬金術は人の為の技術。そう思って触れ合う事だ」

女店員「うん…」


錬金術師「さてと!お話は一旦終わりで、少し店番を頼むぞ。俺は炉を作ってくるわ」クルッ

女店員「わかった、看板出してくるね!」

錬金術師「おうっ」


……………
………

本日はここまでです。

今回はやや話の内容が細かかったので、少し補足致しますと、4つの錬金術は実際に歴史上に研究されてきた
流派が元になっております。また、四大元素等も実際にあるものを元にさせて頂きました。
興味がある方は、少し調べてみても良いかもしれません。

それでは、有難うございました。

おつー
流派って初めて知って、ちょっと興味わいたなぁ

皆さま有難うございます。

>>449 お言葉等、ありがとうございます。少しでも楽しんでいってください。

また、自分の過去作品との繋がりは何とも言えませんが、本編にて見て頂ければうれしく思います。

それでは投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 お昼過ぎ 】


錬金術師「おーい!」

女店員「はいはーい!」

タッタッタッタッ…


女店員「なになに?」

錬金術師「…見ろ、新しい炉の完成だ!」ビシッ!!

女店員「あっ!」

 
キラキラ…

錬金術師「この速さに加え、完璧なまでの仕上がり…。出来すぎる自分が怖いぜ…」フラッ

女店員「…」

錬金術師「何だよその目は」

女店員「…」

錬金術師「その目はやめてくれ、その目は。俺が悪かった」

女店員「…」


錬金術師「さ、さて!ちょっとそこの前に座ってくれ!」

女店員「うん」

錬金術師「そこの上に、鉄鉱を乗せて下から魔法を放ってみろ」


女店員「威力の調整とかは…」コロンッ

錬金術師「自分の感覚でいいが、少し強めで大丈夫だ」

 
女店員「う、うんっ。小火炎魔法…!」パァッ

…ボォンッ!!ゴォォ…!!


女店員「あ、あれ…。中々鉄鉱の周りが剥げないね…」

錬金術師「…少し弱い。もっと強くしていい」

女店員「でもこれ以上強くしたらまた…」

錬金術師「それに耐えるように作ってある。思い切ってやれ」


女店員「わかった…知らないよ…?」

錬金術師「とにかくやってみろ」


女店員「…えぇいっ!!」パァァッ!!

 
カッ…ボォォォォォオ!!!シュウウ…

女店員「!」

錬金術師「…」ニヤッ

女店員「いつもみたく炉が壊れたり、火花が散ったりしない!」


錬金術師「中に魔法を吸収するような仕掛けも作っておいた」

錬金術師「外に漏れないし、目いっぱいやっても問題はなさそうだな」


女店員「…ありがとうございます、店長」

錬金術師「気持ち悪い」

女店員「」

 
錬金術師「もう敬語はいいよ…なんか変だ」

女店員「折角人が店長に敬いを持ったのに!」

錬金術師「はは…」


女店員「えーと、それでどのタイミングでやめればいいんだろう?」

錬金術師「もうちょっと輝く艶色になったらだな。タイミングを自分で見極めてみろ」

女店員「うん」


ボォォォッ…トロッ…


女店員「こ、ここっ!」ピタッ

カツーン!カツンカツン…コロンッ…

 
錬金術師「…」

…ヒョイッ、ジー

女店員「出来たっ!ど、どうかな…?」

錬金術師「精錬純度は75%ってとこだな、早すぎた」

女店員「うーん…少し溶け出して光ったから、そのタイミングだと思ったんだけど…」


錬金術師「光るタイミングは、本当にキラリと光る。一度俺がやってみせるから見てろ」

女店員「うん」

ゴソゴソ…コロンッ

錬金術師「鉱石をセットしたら、小火炎魔法っ!!」パァッ

カッ…ボォォォオッ!!!


錬金術師「ここまでは一緒だが、溶け出した後に一瞬、キラっと光る。そこを目安とするんだ」

女店員「…」ジー

 
ボォォォ…、トロッ…

錬金術師「溶け出したな。この次の瞬間だ」

…キラッ

女店員「!」

錬金術師「ここだ!」ピタッ


カチーン…コロンッ…コロコロ…

…ヒョイッ

錬金術師「…うむ。これが精錬純度はほぼ100%だ」

女店員「今の見てわかった…と思う…」

錬金術師「鉄鋼はもっとも簡単な部類。全ての基本になるわけだし、練習として何度もやるんだ」

女店員「うんっ」

 
錬金術師「今回は俺がしっかり見ててやる。つーか隣でやることあるしな」

女店員「やること?」

錬金術師「せっかく市場で花を買ってきたんだから、エキス抽出してポーションにするわ」

女店員「なるほど♪」


錬金術師「どこに道具しまってたっけなぁ…」

ゴソゴソ…ガサガサ…


女店員「…そういや店長」

錬金術師「ん~?」

女店員「いつも道具を出すけど、どれくらいの物が常備されてるの?」

錬金術師「あぁ、教えてなかったっけか?」

女店員「そこまで詳しく聞いてないかも」

 
錬金術師「えーと…精錬用品、薬品生成キットとその調合キットだろ…」

錬金術師「あと、上級練成術用の素材を知るための本を含めた情報本に、魔法の増幅用具…」

錬金術師「そんなもんだな」


女店員「それだけ?」

錬金術師「あとは勉学してきた知識と技術で何でも生み出す」トントン

女店員「もっと知らない物もあるのかなーと思ってた」

錬金術師「欲しいと思った道具、物は造る。そうすりゃいいだけだしな」


女店員「…」


錬金術師「何だその"最初からやる気を出していれば"という目は!」

 
女店員「よくわかってますね」ニコーッ

錬金術師「はい」


女店員「でも、凄いとは思ってるんだからね、店長のこと。何でもこなせるっていうイメージがついたしね」

錬金術師「何でもって訳にはいかんが、一般的に錬金術に求められる事は出来るつもりだ」

女店員「だよねー…凄いなぁ…」


錬金術師「お前はその右腕となる為に、今から勉強するのだ!!」ビシッ

女店員「が、頑張る!!」


錬金術師「…あ、あら?」


女店員「え?」

錬金術師「いや、"何で私が店長なんかの右腕に"とか言うのかなと…」

 
女店員「今までは何も出来ないと思ってたり、出来ても自分から動いてくれなかったから…」

女店員「でも、最近の店長はやる気になってくれてるし、ちょっとカッコイイなとか…」ブツブツ


錬金術師「…」ピクッ

女店員「能ある鷹は爪を隠すじゃないけど、普段が普段だったし、今は何をしても凄いと思うし~…」

錬金術師「…」ピクピクッ

女店員「今は、少しだけだけど、店長がうちの店長で良かったなって思ってる!」


錬金術師「ふん…ほめても何もでねえぞ…」クルッ

女店員「うっ…」

 
錬金術師「ただ、いつもより頑張って最高クラスのポーションでも造ってやるだけだからな!!」

錬金術師「ふん~♪ふんふんふ~ん♪」


女店員(さすが店長…。ちょ、ちょろい…)


……………
………

かなり短めですが、本日はここまでです。ありがとうございました。

また、次回の更新は4月18日予定(2日後)になります。

それでは失礼致します。

今日だよな?

皆さまスレの盛り上がり等、有難うございます。非常にうれしく思います。

>>483
申し訳ない、少しでも多く投下したいのですが、やはり立て込んでおりまして。
今日まで短縮の投下となります。

投下開始いたします。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 数十分後 】


コポコポ…コポコポ…


女店員「うわっ、何それ怪しい」

錬金術師「怪しいて。薬品生成キットの普通だっての」

女店員「なんか物語に出てくる、悪い魔法使いみたいな…」

錬金術師「…」


女店員「それで花のエキスを採るの?」

錬金術師「そっ。お前はいいから練習しとけ」

女店員「うん…、火炎魔法っ!」パァッ!!

 
カッ…ボォォォ…!!

女店員「…」


ゴソゴソ…カチャカチャ…

錬金術師「えーと…後は清水が必要だった筈だけどないんだよな…」

錬金術師「仕方ない、別の調合で先に作ってから…」ブツブツ


女店員(調合に夢中になってる間に、純度100%を造って驚かせてやる!)

トロッ…キランッ!!

女店員「…ここだっ!」ピタッ

…カツーン!!コロコロ…

女店員「うーん…」


錬金術師「…純度90%くらいか。さっきのよりは全然いいぞ」

 
女店員「えっ」

錬金術師「えっ?」


女店員「…調合に夢中で、こっちを見てないのかと」

錬金術師「音とか、少し見れば出来は分かる」

女店員「むぅ」

錬金術師「自分でやるのもいいが、少し気になった所は聞けよ」


女店員「うん。じゃあもう1回…小火炎魔法っ!」パァッ!!

ポッ…ボォォォ…!!


錬金術師「とにかく回数だ。自分で感覚をつかまない事には、どうにもならんしな」

女店員「むむむ…」

  
ボォォ…トロッ…

女店員「…」

トロトロ…キラッ…!

女店員「…ここだっ!」ピタッ


…カチンッ!!コロコロ…


女店員「これで…どう!」

錬金術師「…いい音だったな。ギリギリ合格点ってところか」

女店員「やったあ!どんどん100%に近づけちゃうんだから!」


………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 1時間後 】


女店員「はぁ…はぁ…」

錬金術師「…少し休め」

女店員「もう少しで出来そうな気がするから…もうちょっとだけ…」ハァハァ

錬金術師「体に負担かけてもいいことねーぞ」

女店員「あと1回だけ…」


錬金術師「…」


女店員「…小火炎魔法っ…!」パァッ

ポッ、ゴォォォ!!

 
女店員「…ッ」

ゴォォォ…トロッ…

女店員「…」

トロッ…キランッ…!!

女店員「こ、ここぉっ…!」ピタッ


カチィンッ!!!コロンッ…コロコロ…


女店員「こ…これでどう…」ゼェゼェ

錬金術師「…おめでとう。今の音は純度はほぼ100%だ」

女店員「や…やった…」フラッ

 
錬金術師「おっと」ダッ

…ダキッ!!

女店員「なんか眩暈が…」

錬金術師「魔法の使いすぎだアホ。倒れるまで使う奴がどこにいる」ハァ


女店員「でも、感覚を覚えたから…!」

女店員「これで少しは役に立てるかなぁ…」


錬金術師「あぁ、そうかもな。いいから少し休め」


女店員「うん…ごめん…」

女店員「…」スヤッ

 
錬金術師「…本当に最高純度をわずかな時間で叩き出すとはな」

錬金術師「少しだけ見直したぜ」フッ


女店員「見直されるのはアンタでしょ!!」

錬金術師「ゴメンなさい!」ビクッ!!

女店員「全く…」ムニャムニャ


錬金術師「なっ…!」

錬金術師「…ね、寝言かこんちくしょ~!!謝っちまったよ!!」


女店員「えへへ…」スヤスヤ…


錬金術師「本当に寝てるのかコイツ!くっそ、布団出してやるか…」

錬金術師「ちょっとだけ地面に置かせて貰うぞ」

スッ、ゴロンッ…

 
錬金術師「えーと…あったあった。布団敷いて…」
 
ゴソゴソ…パサッ

錬金術師「ふんぬっ!よいしょっと!」グイッ

女店員「…」スヤスヤ

錬金術師「おいしょっ!」

…ドサッ!!


女店員「…」クゥクゥ


錬金術師「さて、俺は調合の続きでもするかねぇ」

錬金術師「…静かにな」


……………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 しばらくして 】


女店員「ん~…」パチッ

…ムクッ

女店員「…」

女店員「…あっ!」ハッ


錬金術師「…起きた?」

女店員「わ、私あのまま寝ちゃってたの!?」

錬金術師「元気そうで何よりです」

女店員「ごめんなさい!今何時!?店番とかもあったのに…!」

  
錬金術師「いいから少し休んでろ。魔力を使って枯渇ギリギリだったんだ」

女店員「うぅ…」

錬金術師「つーかほれ。これを飲みなさい」スッ

女店員「これは?」

錬金術師「アカノミの花のポーションだ。マナの回復にも効果がある」


女店員「出来たんだ!っていうかうわぁ…紫色だ…」トプンッ


錬金術師「ライフポーションは赤。マナポーションは青」

錬金術師「どっちの効果もあるポーションは紫になる。それだけだ」


女店員「怪しい色だなぁ…」

 
錬金術師「そんな言うなら飲まなくてもいいし!」

女店員「いただきまーす」グビグビ


錬金術師「」


女店員「ん?」

錬金術師「いきなり飲むのかよ!」

女店員「だって店長のポーションだし、大丈夫でしょ」

錬金術師「む…」

女店員「お~…なんか沸きあがってくる感じがする…」パァァ


錬金術師「即効性もあるが、少しそのまま休んどけ」

 
女店員「うん…ごめんね…」

錬金術師「いいさ。つーか、お前が寝てる間にポーション出来たし店に見本品置いてくるわ」

女店員「どれくらい出来たの?」

錬金術師「一輪の花から出来るのは2本分。60本出来たし、上等だろ。あ、今飲んで59本になったか」

女店員「1本いくら?」


錬金術師「一般価格では高級品だし、3000ゴールドはくだらないな」

錬金術師「だけど周辺にはここまでの高級ポーションをそろえる店もないし、5000ゴールドで置いてみるわ」


女店員「高っ!!」

錬金術師「売れなきゃ値段下げるし、いいんだっつーの!」

女店員「っていうか私、5000ゴールドもするの一瞬で飲んだの…」

 
錬金術師「役得役得。いいからお前は休んでろって」

女店員「役得…」

錬金術師「ふわぁ…。つーか眠いわ…。休むっていうか、お前そのまま寝ちまえ。泊まってけ」

女店員「え?」


錬金術師「もう深夜2時なの…。夜道は危険だし、泊まれってこと」フワァ

女店員「し、深夜2時!?」

錬金術師「近所に迷惑なので声を荒げないでぇ…」キーン

 
女店員「だ、だって私が練習してたのまだ昼過ぎとかその辺で…」

錬金術師「魔力をなくす寸前まで練習してたら、そりゃそんくらい倒れこむわ」

女店員「って、まさか私のことずっと介抱してくれて…?」

錬金術師「さぁ~な。いいから休んでろって…」


女店員「ち、ちょっとまって…。って、あれ…?」フラッ

女店員「なんかまた眠気…が…」

…ドサッ

女店員「…」クゥクゥ


錬金術師「まだ疲れは取れてないし、慣れないポーション飲んだ副作用で眠くなったのよ」

錬金術師「…お休み。俺は今日は24時間開店コースかなぁ…。明日の朝の店番は任せるからな…」


カツ…カツ…カツ…

………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
【 現時点でのお店の経営収支 】

■収入
・販売関連140万ゴールド

■支出
・バターピーナツ生成器40万ゴールド
・倉庫拡張費用70万ゴールド
・鉱山のバイト代10万ゴールド
・ポーション素材(アカノミの花/アカノミ)3万6000ゴールド
・火魔法耐性の金属片16万4000ゴールド

■収支合計
・0ゴールド


【 現時点でのお店の経営情報 】

■お店
・平屋1階建て
・少し広い倉庫

■販売物
・採掘道具20万ゴールド
・鉱石類(鉄鋼1000、銀5万、エレクトラム20万ゴールド)
・ライフマナ回復ポーション5000ゴールド
・バターピーナツ(サービス)
・装備類の修理等(時価)

本日はここまでです。今回も短めの更新になりました。
明日から通常更新に戻りたいとは思いますが、まだ未定です。
(更新自体は致します)

それでは、失礼します。ありがとうございました。

皆様有難うございます。投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 次の日 】

チチチ…チュンチュン…

女店員「…」

女店員「…」

女店員「…はっ!」ガバッ!!!


女店員「あ…あれ…」キョロキョロ

女店員「ここは…」

 
カツカツ…

錬金術師「…起きましたか」

女店員「店長っ!」


錬金術師「よっぽど薬を飲みなれてないのか、魔力枯渇がいたかったのか…」

錬金術師「もうお昼前ですよ、お嬢様」


女店員「う、うそっ!」

錬金術師「はは…」

女店員「ご、ごめんなさい!本当にごめんなさい!!」

錬金術師「いやいいよ…。つーか俺がもう眠いっす…」フラフラ


女店員「ま、まさかずっと店番しながら私の看病を…」

女店員「えとっ、私が店番するから、休んで!もうこのまま店番するから!!」

 
錬金術師「お前、風呂とかシャワー浴びたいっしょ…?その間の時間くらいはまだ頑張るからよ~…」

女店員「そんな事言ってる場合じゃっ!」

錬金術師「お前なぁ…徹夜とか俺には普通なの。それに何のためのポーションだと思ってるんだ…」ククク

女店員「!」


錬金術師「一本は高いが、自分のためだ。一本くらい飲んで、今日1日を乗り切るぜ…!!」

女店員「…!」


錬金術師「頂きます…」スッ

グビッ…グビッ、グビグビッ・・・

錬金術師「ぷはぁっ!!」


女店員「げ、元気になった?」

 
錬金術師「くくく…この全身を駆け巡る力っ…!!見ろ!もう疲れなど吹き飛んで…!」

フラッ…ドサッ!!


女店員「」


錬金術師「う、うお…体が重い…!?」

女店員「あのー…まさかとは思うんだけど、副作用に当たったとか…」


錬金術師「な…何だと…!そんな訳がない…、俺は割りと昔は飲んで徹夜しててポーションには…」

錬金術師「慣れて…い…て……」

錬金術師「…」グオォォ…


女店員「」

 
錬金術師「…」フガフガ…

女店員「…交代ですね。店長、ありがとっ。おかげですっかり休めちゃったよ…」

錬金術師「…」スヤスヤ

女店員「迷惑かけてごめんなさい。しっかり店番するから…」

スッ…


女店員「風邪ひかないように、布団かけて…と。さっ、私が頑張る番だっ!」フンッ

女店員「よぉっし、店番だぁぁ!」

…………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夕 方 】

カァ、カァ…


錬金術師「む…」パチッ

錬金術師「…」

錬金術師「お、俺としたことが寝ていただと…!?」

錬金術師「いかんっ、お客が来て、女店員がてんやわんやに!」バッ

ダダダダダッ…

 
錬金術師「女店員、客はどうだ!?」

女店員「誰も来ませんでした」

錬金術師「ですよね」 
 
女店員「あはは…」


錬金術師「ふわぁ~…、すっかり寝ちまってたか…」コキコキ

女店員「私も寝てたし、迷惑かけたし…ごめんなさい…」

錬金術師「いやいいんだ。ただし、もう無茶はするんじゃないぞ」

女店員「うん…ごめん」

錬金術師「いいっつーの。つーかもう夕方とか、店閉める時間じゃねーか」

女店員「今日もお客はゼロ、か」

 
錬金術師「仕方ないのかねぇ。看板も立てたし、少しずつ規模も拡大したんだが…」

女店員「何ていうか、きっかけがないなと」

錬金術師「きっかけ?」

女店員「お店が流行るイメージとしては、何か大きなきっかけがあってヒットするイメージがあって」

錬金術師「あ~…」

女店員「独自性というか、何ていうんだろ…」ウーン


錬金術師「確かに、言いたい事はわからんでもない」

女店員「この辺で、何か大きく変わるきっかけがないとー…」


…ウ~!!!!ファンファンファン!!!

 
錬金術師「…!?」

女店員「な、何の音!!外から聞こえる!?」

錬金術師「外に出てみるぞ!まさかとは思うが…!」ダッ

女店員「一体何!?」


ダダダッ…ガチャッ!!


ウゥゥゥ…!!ファンファンファン…ウ~…!!!


女店員「何なのこの音!」

錬金術師「サイレンだ…。こりゃ鉱山で何かあったな!」

女店員「鉱山で!?」

錬金術師「緊急的なサイレン…。恐らく落盤の類じゃないか」

 
女店員「えっ…ど、どうするの!」

錬金術師「いやどうするも何も、俺らじゃ出来ることが」

女店員「ないの!?」


錬金術師「…」
 
錬金術師「…なくは、ないか」


女店員「!」

錬金術師「お世話になってる場所だし、行ってみるぞ」

女店員「うんっ!」
 

………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 鉱 山 】

ファンファンファン…!!!


管理人「急げ!!人数が足りてない!!」

管理人「エレベータもストップしている!旧洞入り口から頼む!」

ザワザワ…

鉱夫「し、しかしあそこも落盤の危険が…」

管理人「大きく回れば安全な道があったはずだ!急いでくれ…!」

鉱夫「は、はいっ!」

タタタタッ…

管理人「くっ…なんてことだ…」


ザッザッザッザッ…

女店員「…管理人さぁん!」

錬金術師「やはり、事故か…」

 
管理人「お、おふた方っ!!」

女店員「凄いサイレンの音が聞こえてきて…。一体どうしたんですか!?」


管理人「地下5階で落盤か事故があったようで…」

管理人「事実確認を急いでいますが、まず間違いないでしょう…」


錬金術師「そんなフロアで事故が…」


管理人「冒険者と鉱夫も何名か巻き込まれたようで、エレベーターも事故の影響で停止…」

管理人「旧洞の入り口からしか道がなく…。一刻の猶予も許さない状況だというのに!」


女店員「管理人さん、新人鉱夫さんとかは巻き込まれたり…」

管理人「…」

女店員「まさか…」

管理人「…」

 
女店員「新人鉱夫さんも…巻き込まれたんですね…」

錬金術師「…」


管理人「本来なら行くべきレベルではありませんでした。ですが、今日は人手不足でどうしても…」

管理人「どうなっているか全く把握できないし…どうしたらいいのか…!」


錬金術師「…管理人さん、落ち着いてください」

管理人「お、落ち着けられる状況じゃ!!」


錬金術師「私を誰だとお思いで?エレベーター、見せて頂けますか」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 1階・坑内エレベーター 】

ザッザッザッ…

管理人「こちらです。完全に明りの部分も消え、動かない状況でして…」

錬金術師「…ふむ」

管理人「落盤の影響か、なぜか動かないんですよ…」


錬金術師「地下5階が崩れたんでしたよね?このエレベーターは地下5階まで続いているんですか?」

管理人「そうです。6階以降はエレベーターは設置出来ませんでした」

錬金術師「じゃあ恐らく、地下5階の緩衝器が壊れて停止したのかもしれませんな…」


管理人「緩衝器?」

女店員「…緩衝器?」

 
錬金術師「本来はエレベーターが停止する際、オーバーランという状態が起きないようにするものですが…」

錬金術師「ここの緩衝器は、乗ってるカゴの部分が過大な衝撃を受けないようにする物のようです」

錬金術師「それが落盤か何かで外れたか、壊れたか…」

錬金術師「いずれにせよ、恐らくそれのせいでしょう。安全装置が作動し、完全に作動停止したんじゃないでしょうか」


管理人「直せませんか?」

錬金術師「さすがに地下5階にある物をここから確認したり直すのは…」

管理人「…っ」


女店員「店長、何とかならないのかな…」

錬金術師「ん~…」

管理人「何か手があれば是非、教えて頂きたい!」

 
錬金術師「…乗るカゴ自体はどこにあるか分かりますか?」

管理人「恐らく、地下5階にあるかと…」


錬金術師「カゴが目と鼻の先にあったなら、イジってどうにか出来たかもしれませんが…」

錬金術師「制御装置自体が見たところ、完全に停止していますし、ここでどうこう出来る問題じゃなさそうです…」


管理人「そうですか…」

錬金術師「…申し訳ない」

管理人「いえ…」


…キラッ


錬金術師「…ん?」

管理人「え?」

 
錬金術師「あれは…。ちょっと待ってください」ダッ

タタタタッ…ヒョイッ

錬金術師「エレベーターの予備のパーツ…。滑車とブレーキングか…」

錬金術師「これはいつのですか?見たところ新品ですよね?」


管理人「それはいつも必要になる可能性があると言われ…」

管理人「予備として、エレベーターを設置の際にそこに置いておきました」


錬金術師「なるほど。ふむ…」

女店員「何か思い浮かんだ?」


錬金術師「エレベーターの制御するケーブルにコレを括り付けて…」

錬金術師「一番下まで手動で降りることが…いや、無理か…」


女店員「無理なの?」

錬金術師「ん~地下5階か…。管理人さん、どれくらいの深さがあるんですか?」

 
管理人「かなり深いです。坑道が広がる部分をワンフロアとして、1つの階層が30から50メートル」

管理人「合間での天然洞窟を突貫させた部分もあり、深さでいえば500メートルはくだらないかと…」


女店員「ご…500メートル…」

錬金術師「参ったね…。さすがに俺の手も体力も、そこまでは持たないわ…」

管理人「鉱夫に頼めば体力もあるし、いけるのでは!」

錬金術師「ダメだ。技術がないし、いざとなった時に対応できる力がない。危険すぎる」

管理人「…そ、そうか」


女店員「いい案だと思ったのに…」

錬金術師「冒険者クラスがいれば何とかなったろうに…くそっ…」

 
管理人「あの…わざわざ考えて頂いて有難うございました」

管理人「道がないなら、やはり旧洞から回り、エレベーターの再起をかけたいと思います」

管理人「その時の為に、再起の方法をー…」


錬金術師「いや、少しお待ちを。必ず今すぐ方法を考えて…」


ザッ…ザッ…ザッ…

管理人「おや?」

女店員「ん?」

錬金術師「…足音?」クルッ

 
ザッザッザッ…ピタッ


銃士「…クエストついでに鉱山に訪れたら、何やら厄介なことになってるようですね。店長さん」


錬金術師「…銃士さん!?」

女店員「銃士さん!」

管理人「ど…どなた?」

本日はここまでです、ありがとうございました。

皆様有難うございます。投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

錬金術師「…というわけです」

銃士「なるほど、そういう状況でしたか」

錬金術師「はい。あなたはなぜここに?」


銃士「えと…一旦は町を離れたのですが、依頼がありまして…」

銃士「鉱山付近に討伐に来た時に、サイレンを聞いたもので訪れた次第です」


錬金術師「ふむ…。内容は先程話しした通りですが、いかんせんここで手詰まりです。情けない…」

銃士「…」


管理人「少し前に、本部に伝えたので救出には向かっているはずですが…」

管理人「遠すぎる上に、現状が把握できていない…。今も苦しんでいるかもしれないというのに!」

 
錬金術師「…一旦、管理人室に戻って状況の整理等をしたほうがいいかもしれません」

管理人「そうですね、戻りましょうか」


カツカツカツ…カチャカチャ、ガチャン!!

銃士「えっと、この滑車とブレーキングはこうして使うんですかね?」


錬金術師「ちょっ!」

女店員「!」

管理人「銃士さん!?」


銃士「これでもハンターですし、大丈夫ですよ。一番下まで行ったら何をすればいいんですか?」


錬金術師「…危険ですよ」

銃士「そこに助けられる可能性があるなら、この身体を使っても惜しくはないです」

 
錬金術師「…素直にお願いしたい状況ではあります。本当に、いいんですか?」

銃士「はい、もちろん」ニコッ


錬金術師「…」

女店員「店長、どうするの…?」


銃士「時間がないんでしょう?どうすればいいか教えてください!」

錬金術師「い、一番下に着いたら恐らく暗闇の可能性が高いです。灯りはありますか?」


銃士「ライターによる、小さな火なら」

 
錬金術師「それで充分です。では、エレベーターのカゴの下に、恐らく大きなバネが数個あるはず…」

錬金術師「破損している場合は、それを銃で弾いて、完全に吹き飛ばしてください」

錬金術師「ただ外れているか、落盤した岩等が塞いでいた場合はそれを取ってください」


銃士「わかりました」


錬金術師「最後に、どちらかの処理が終わったら制御装置のオレンジ色に光るスイッチがあるはず」

錬金術師「それを押して頂ければ…動くはずです」


銃士「万が一、完全に電源が落ちていた場合は…?」

錬金術師「地下5階に閉じ込められる。他の面子と同じように」


銃士「…」

 
錬金術師「だから、危険を犯してまでやることは…」

銃士「行って来ます。期待せず待っていてくださいね」バッ

ピョンッ!!…ギャギャッ…ギャアァァッ!!!

…ガキィン!!バチバチ…


錬金術師「ちょいっ!!」

女店員「飛んでったー!!」

管理人「えぇぇぇっ!!」


ガチィン……ギギッ…ギャッ……!!


錬金術師「…音が離れていく。うまくブレーキを利用しているか」

女店員「この弾けるような音は?」


錬金術師「ブレーキングを直接動かしてるから火花が散ってるんだ」

錬金術師「ワイヤーは頑丈だし、それくらいじゃ切れる事はない。だが、手の負担が…」

 
女店員「じ、銃を使ってる人だもん!大丈夫だよ!」

錬金術師「…」

管理人「…」

ギャッ…バチバチッ…カチィン…

カチン……

……




錬金術師「…音が止んだ。火花も見えなくなったか」

管理人「竪穴(たてあな)式に伸びているので、音が聞こえなくなるというのは…」


錬金術師「恐らく一番下に着いたんでしょう」

錬金術師「無事に着いている事と…あと、エレベーターが動いてくれるのを願うのみ…!」

 
…シーン

女店員「…何も聞こえないね」

錬金術師「銃の音も聞こえないな。岩で緩衝器が塞がれていただけだったのか…それとも…」

管理人「…」ゴクッ


…ヴン…


錬金術師「むっ」

女店員「今、エレベーターが少し動いたような…」


ヴ…ヴゥゥゥン…!!!


錬金術師「…動いた!上手くやってくれたんだ!」

女店員「銃士さんも無事だって事だよね!?良かったぁ!!」

 
管理人「や、やった!!これで助けに行ける!」

グォオオオン…!!!ガコンッ!


錬金術師「エレベーターが来ましたね。自分たちも下まで行きましょうか」スッ

管理人「その前に私はエレベーターが動き始めた事を伝えてきます!」

錬金術師「それがいいでしょう。では、自分はエレベーターの調整を行うため、先に下に行っています」

管理人「わかりました!」


女店員「店長、急ごう!」

錬金術師「いやお前はココにいろ」

女店員「えっ?」

錬金術師「ダメだ」

女店員「…何で!」

錬金術師「危ないからだ。分かるだろ?」

 
女店員「わ、私だってやれる事が!」

錬金術師「お前にエレベーターの仕組みは分かるのか?」

女店員「うっ…」


錬金術師「これからどういう展開になるのか分かるか?救出の方法は?」

錬金術師「俺と一緒で体力はないんだろ?何かあった時に自分で身を守れるのか?」

錬金術師「知識はあるのか?いざという時に、動けるか?」


女店員「…」

錬金術師「…分かるだろ」

女店員「店長…」

錬金術師「それに管理人さんにはアシスタントもいるんじゃないんですかね?」チラッ


管理人「あ…あぁそうです!ちょっと人手不足で、アシスタントとして手伝ってくれませんか!」

女店員「…はい」

 
錬金術師「ってなわけで、早速お前は管理人さんの手伝いにいってきなさい」

錬金術師「俺は地下5階まで行って来ますよっと」

…カチャンッ、ポチッ

錬金術師「…ではでは」


グォォォン…!!


女店員「店長、気をつけて!!」

錬金術師「はいはーい」フリフリ


グウォォォ……ォォォ………

…ォォ…………

…………

 
女店員「…行っちゃった」

管理人「では、一旦管理人室に戻って本部への連絡と現状を改めて伝えましょう!」

女店員「あ、はい!」


ミシッ…


管理人「…ん?」


ミシミシ…グラグラグラグラッ!!!

管理人「うわっ!」

女店員「きゃあああっ!」

 
管理人「地震…!?そこから離れて!早く外に!」

女店員「で、でも店長が!!」

グラグラッ…!!


管理人「自分の身を守れずして、どうにもなりませんよ!!」

女店員「で、でもっ!!」

ズズズゥン!!!

女店員「何の音!?」

管理人「また落盤…?洒落になってないです、早く離れ…っ!!」


…バチンッ!!!

女店員「きゃあっ!明かりが消えた…ど、どうしたんですか!?」

 
管理人「…停電!?最悪だ…、これじゃ鉱山としての機能が…!」

女店員「え、エレベーターはどうなってるんですか?店長は!」

管理人「エレベーターは動きませんし、私たちも危ないです!早く逃げないと!」

女店員「店長~~っ!!!」ダッ


管理人「危ないです!」ガシッ

女店員「で、でも店長が、エレベーターが!」

管理人「少しの時間があったので、無事に下にはいるはずです!」

女店員「で、でもぉ…!」


管理人「今は落ち着いて行動することです!それに、下に行った彼らが何かをしてくれるかもしれない!」

 
女店員「うっ…で、でもぉ…」

フラッ…ドシャアッ… 

管理人「…とにかく落ち着きましょう。貴方まで何かあったらどうするつもりですか!」

女店員「うぅっ…」


ザッザッザッ…


管理人「…んっ」ピクッ

女店員「足音…?」

管理人「だ、誰ですか!まさか魔物…!?」

女店員「…」


 
ザッザッザッザッ…ポウッ

女店員「えっ…あ、明かり…?」ハッ


ザッザッザッザッ…ピタッ

???「事故、地震の火災の連鎖とは不幸なものだ」

???「…何やら面倒なことになっているようだな、全く」


管理人「…あ、貴方は!」

女店員「!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 鉱山・地下5階 】

モクモクモク…

錬金術師「げ…ゲホゲホッ!!」

銃士「店長さん!大丈夫ですか!」

錬金術師「危ねぇ危ねぇ…、地震もセットで来るとはな…」

銃士「別の場所で落盤がまた起きたようですね。オマケで停電ですか」


錬金術師「完全にエレベーターは停止だな。補助電源すら落ちやがったみたいだな」

銃士「どうしましょうか。助けに来たはずなのに、まさか助けられる側になるとは…」

 
錬金術師「参ったね。まさかワイヤーを伝って数百メートルも昇れんしなぁ…」ウーン

銃士「…しかし暗いですね。小さな明かりじゃ足元もおぼつかない」

錬金術師「空気を燃焼させるわけにもいかんし、火は控えましょう」

銃士「そうですね。一旦消します」フッ


錬金術師「うおっ、真っ暗だ」

銃士「それに、遠くで地響きがする。落盤が続いてるのか…」


錬金術師「エレベーターを動かす魔石があったはず。それを取り出して、明かりにしましょう」

銃士「できるのですか?」


錬金術師「元々明かり用に変換されているはずなので、すぐに明かりになりますよ」

錬金術師「えーと、どこだったかな」

 
フラフラ…コケッ

錬金術師「!」

…ドシャッ!


銃士「うわっ!?」

錬金術師「も、申し訳ない。一緒に転ばせてしまったか…暗闇で分からなかったもので」

銃士「いえ、お気になさらず…」

錬金術師「えーと、どこかな」

モゾモゾ…

銃士「!」 
 
錬金術師「この辺だったかな、何だこの布は…」

銃士「そ、それは私の服で…ちょっ、ちょっと!」

 
錬金術師「んん?」ゴソゴソ

銃士「待って…ちょっと、ちょっ…!」

錬金術師「あぁ銃士さんの服でしたか、申し訳ない。じゃあこっちか」

ゴソッ…グイッ!!

銃士「!!」


錬金術師「あったあった!これだ、今明かりを点けますね」


銃士「…ま、待って待って!!」

錬金術師「?」

銃士「そ、その…あの…」

錬金術師「どうしました?」

 
銃士「待って下さい、今は明かりは…!」

錬金術師「何を言ってるんですか、暗いままでは危険です。点けますよ~」カチッ

…パァッ!! 


錬金術師「ほーらほらほら、明るいほうがいい感じで」クルッ

銃士「…」

錬金術師「…」

銃士「…」カァァ

錬金術師「…」


銃士「…」

錬金術師「…ごめんなさい」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


錬金術師「…女の方だったとは。思いっきり服を引っ張ってしまって申し訳ないです」

銃士「いえ…気にしないで下さい」

錬金術師「う、う~む…」


銃士「…」
 
銃士「お、男に近い格好をしていた訳などは聞かないのですか?」


錬金術師「あ、そうだ。それなら一つ…」

銃士「は、はいっ」

  
錬金術師「謝りたい。あなたに、危険な役をさせてしまったことを」ペコッ

銃士「えっ」

錬金術師「女性だと分かっていたらあんな事、絶対にさせませんでしたから」ハァ

銃士「ですが、やれる人がやるべきでした。今更謝ることもありませんよ」


錬金術師「…結果として、こうなってしまいましたがね」ハハ…

銃士「そ、そうですね。男性の格好について等は…」

錬金術師「大体分かっておりますよ。別に女性だからといってどうもありません」ハハハ!

銃士「…!」


錬金術師「ま、とりあえず今は動かないほうがいいんでしょうけど…どうしたもんか」ウーン

銃士「…」

錬金術師「ちなみにですが、ちょっともう1つご質問してもよろしいですか?」

銃士「な、何でしょうか?」

 
錬金術師「実力の程はどれくらいでしょうか。気に障ったら申し訳ない」

銃士「実力ですか?」

錬金術師「地下5階は、恐らく魔物の出現するエリア。腕がなければ探索は難しいでしょう」


銃士「あぁ…なるほど」

銃士「これでも中央国のギルドに属するので、出来るほうだとは思っております」アハハ


錬金術師「ふむ!」

銃士「幸い武器はこの間、新調して頂きましたので戦いやすく、実力もアップしたかなと!」

錬金術師「…では、少しだけ行きたい場所があるのですが」

銃士「どこでしょう?」


錬金術師「この5階フロアにあるであろう、構内事務所です」

錬金術師「そこならば、明かりの確保やフロア自体の制御装置がある可能性が高いので」

 
銃士「なるほど、向かってみますか。魔物はお任せください」

錬金術師「宜しくお願いします。恥ずかしながら、体力には自信がないもので」ハハ…

銃士「はい、任せてください!」カチャンッ


ザッザッザッザッザッ…

ザッザッザッ…

ザッザッ…

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 一方、少し前・女店員サイド 】

 
ザッザッザッザッ…ピタッ

???「事故、地震の火災の連鎖とは不幸なものだ」

???「…何やら面倒なことになっているようだな、全く」


管理人「…あ、貴方は!」

女店員「!」

 
親父「…」


管理人「し、社長さん!」

女店員「社長さん、どうしてここに!」

 
親父「うちにも連絡が入った。隣町まで用事で来ていたものでな」フン

女店員「…」

親父「状況を察するに、俺の息子が地下へ閉じ込められた、そういうことか?」

女店員「は、はい…」

親父「…」

女店員「無事なのかどうか、エレベーターは動かないし…一体どうしたら…」グスッ


親父「俺の息子はくえない奴だ。これくらいで死ぬ奴じゃない」

女店員「社長さん…」

親父「身内の心配より今は、最短のルートを再び確保し、全てのフロアにエネルギーの供給が必要になる」バサッ

管理人「しかし、その救出を行う面子が到着するまでに時間が!」

 
親父「うちの会社も支援させて頂こうと思う。ここは大事な取引相手なのでな」

管理人「ほ、本当ですか…!」

親父「最高クラスのギルドに所属する冒険者を派遣させていただこう」

管理人「た…助かります…!助かります…!」

女店員「社長さん…」


親父「それともう少しで到着するが、フロアの復旧に一役買う奴をココへ呼んだ」

女店員「この状況で復旧をさせる…?一体誰が…」


親父「"妻"の女錬金術師だ」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 錬金術師サイド・構内事務所 】


…ガチャッ!!

錬金術師「ふぅ…魔物が出なくて助かった」

銃士「そうですね」


錬金術師「制御装置はあるはこれか…。補助装置も完璧に落ちてやがる…適当な仕事を」ブツブツ


銃士「銃のこともですが、結構色々詳しいですよね」

錬金術師「はは、これでも色々と勉強してきましたから」

銃士「私の父が冒険者だったように、親も錬金術の勉強などを?」

 
錬金術師「父親は違いますが、母親の血筋がそうなんですよ」

銃士「血筋ですか?」


錬金術師「母方がですね、女が生まれると、代々同じ名前を引き継いで来た錬金術師の一家で…」

錬金術師「親父を嫌ってた俺は、母方と同じ道を選んだわけです」


銃士「すごいですね…道理で物知りのはずだ」

錬金術師「俺からしたら、銃士さんも冒険者…ハンターの血筋としては羨ましいですよ」

銃士「羨ましい?」


錬金術師「親父も母親も内勤派で、ずっとそうやって育ててこさせられました」

錬金術師「自分は冒険にも憧れもあった時期がありまして、そしたらどんな人生だったのかなと」アハハ

 
銃士「…まだ若いですよね?これからじゃないですか!」

錬金術師「はは、銃士さんはおいくつですか?」

銃士「私は24です」

錬金術師「今年で自分は25になります。もうこのまま生きていく事を決意した歳ですよ」ハハ

銃士「…全然若いじゃないですか!」


錬金術師「いえいえ。さて、制御装置はあったので魔石を外して…と」グイッ

…ガチャンッ!!コロンッ!


錬金術師「ふーむ…制御装置のメインはやはり1階に繋がってる…か」

錬金術師「ここじゃ直接いじっても意味ないか。フロアの明かりだけでも確保したかったんだが」

 
銃士「フロアの明かりは確保できませんか」

錬金術師「…残念ながら。1階にあるメイン装置を復旧してもらえれば、何とかなるかもしれませんが」

銃士「…この合間にも、このフロアで苦しんでいる人がいるかもしれないというのに!」


錬金術師「時間は待ってくれない…か。ちょっと手伝ってほしいことが」

銃士「いいですけど…何でしょうか?」

錬金術師「この飛び出てるケーブル、銃で壊しちゃってくれます?」

銃士「壊すって…い、いいんですか?」


錬金術師「ケーブルが欲しいのですが、鍵がないと取り外しできないので…」

銃士「わかりました。兆弾に気をつけてください!」カチャッ

グイッ…ガォンガォン!!バキィン!!

 
錬金術師「うひょー音が響く!ありがとうございます、これで取れたっと!」グイッ

ブチブチッ!!ペリペリッ…

錬金術師「この魔石を、引っ張り出したケーブルを合わせて…」

錬金術師「置いてあるピッケルに巻きつけて…っと!」

カチャカチャ…クルクルッ…


銃士「…?」

…ビシッ!!

錬金術師「よっし!出来た!」

銃士「それは?」

 
錬金術師「もう明かりには困りませんな、ここを押せば…」パチッ

…パァァッ!!

銃士「うっわっ!!眩しい!!」

錬金術師「はははっ!制御装置の魔石を使った明かりなので、凄い明かりですね!」

銃士「エネルギーは結構時間も持つのですか?」

錬金術師「大きさから言って、点けっ放しでも数週間持ちますよ」

銃士「おぉ!」


錬金術師「さて、これで洞窟を進めますね。落盤の兆候は見極めますので」

錬金術師「もう少しだけ付き合って頂けますか?」


銃士「…当たり前です」ニコッ

……………
………

本日はここまでです、ありがとうございました。

皆さん有難うございます、投下開始致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 地下5階・深部 】 

ザッザッザッ…

錬金術師「…」

銃士「…」


ザッザッザッザッザッ…

錬金術師「魔物はまだ出ないか…、いい事だけど逆に不気味だな」ゴクッ

銃士「それに落盤した現場が見えてこないですね。結構歩いたハズなんですが」

錬金術師「そうですね…んっ?」

ピチャン…サァァ…

 
銃士「…水?」

錬金術師「地面を少しだけ流れている…。もう少し先が事故現場かもしれないですね」

銃士「!」

錬金術師「急ぎましょう。嫌な予感がする!」ダッ

銃士「はい!」ダッ


タッタッタッタッタッタッ…ズザザァ…


錬金術師「…!」

銃士「!」

 
ザァァァ…ザバァンッ!!

錬金術師「こ、これは…」

銃士「な…何てこと…。こんな地下に川!?」


ザバァンッ!!サァァ…ジャボジャボッ…


錬金術師「恐らく地下水の壁を叩き割って、地下水が一気に染み出したんじゃないでしょうか」

錬金術師「そして坂になっていた坑道を一気に落ちている…」

錬金術師「まるで巨大な川だ…。これに巻き込まれたら…」


銃士「じゃ、じゃあこの辺で採掘をしていた人たちは…」

錬金術師「流されたのでは…。この水量、とてもじゃないが耐えられる代物じゃない…」

 
銃士「落盤と地震の原因はこれってことですか?」

錬金術師「恐らく。地盤も緩んだんでしょう。しかもこの流れた先は…」チラッ

…ゴォォォッ!!!ザバァンッ!!

 
錬金術師「流れが途切れているように見える…。恐らく竪穴でしょう。真下へと落下しているようだ」

錬金術師「これ以上は進めない…、俺らがどうなるか分からないですよ…」


銃士「…っ」」

錬金術師「残念ですが…戻りましょう。この周辺も危険だ」

 
銃士「仕方ありませんね…」

錬金術師「事務所まで戻り、この事を伝える策かいい案でもー…」クルッ


イービルアイ『…カァッ!!!』


錬金術師「!!」

銃士「なっ!!」

錬金術師「魔物!?」

銃士「い、いつの間に!このフロアに上級の魔物がいるなんて!」カチャッ


イービルアイ『カァァッ!!』パァッ

ビュッ…ブワァァッ!!


錬金術師「…風魔法!?いかんっ!!」

 
…フワッ

銃士「!」

錬金術師「か、身体が浮いたって…これじゃ川に落ちっ…!!」ハッ


ジャアァ…ザボザボォンッ!!


銃士「うぷっ!」ザバァン!!

錬金術師「ぷはぁっ!やべえ!!銃士さん、手を!」ジャバッ!!

銃士「店長さん!」

…ガシッ!!


錬金術師「あの竪穴に落ちたら終わりだ!」

銃士「で、ですがこのままでは!!」

 
錬金術師「…ゴツゴツした岩なら、さっき作ったライトで!!」バッ!!

…ガキィン!!ガガガガッ!!!

銃士「そ、そうか、ピッケルでしたか!」


錬金術師「止まったが…す、水圧がぁ…ぐううぅっ…!!」グググッ

銃士「そこに上がれる場所があります!そこに店長さんからあがってください!」

錬金術師「お、俺はダメだ…。力が持たない…」ギリギリ

銃士「…ッ!」 
 

錬金術師「俺を伝って、上がってくれ!早く!」

銃士「で、ですが!」

錬金術師「どっちも流されちまう!早くっっ!!」

 
銃士「くっ…失礼っ!」グイッ

錬金術師「ッ!」ミシミシ

銃士「うぐぐっ…」ググッ…
 
 
…フヨフヨ

イービルアイ『…』


銃士「!」

錬金術師「最悪だ…くっそ!!」

銃士「店長さん、少しだけ衝撃に耐えてください…火弾を放つ!うらぁぁっ!」カチャッ

カチッ、ガォンガォン!!

 
イービルアイ『!』

ブチュッ!!ベチャッ!!!ボォンッ、ボォォンッ!!!!

イービルアイ『…』

ヨロッ…ザボォンッ…


銃士「…よし!」

錬金術師「銃士さん…早く…ッッ!」ミシミシ

銃士「あっ、今すぐに!ぐうぅっ!」ググッ

ガシッ!!ヨジヨジッッ…ゴロンッ!!


銃士「はぁ…はぁ…!上りきった…!」

錬金術師「よ…よし…」

 
銃士「店長さん、手を!」

錬金術師「…っ!」ガバッ

…ガシッ!!


銃士「おりゃああっ!!」グイッ!!

錬金術師「っつぅ…!」

銃士「もっと力を入れて!!死にたいの!?」

錬金術師「わかってる…よぉぉ…!!」グググッ

…………
………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…ドサッ!!

錬金術師「はぁ~…はぁ~…」

銃士「ごほっ、ごほごほっ…!はぁ、はぁ…」


錬金術師「た、助かったぜ…ありがとうさん…」ゼェゼェ

銃士「こちらこそ…」ハァハァ


錬金術師「はぁ、はぁ…。くそっ、川を移動しちまった。戻るに戻れない状況になったか…」

銃士「気づかなかった私のせいか…申し訳ない…」

錬金術師「こんな状況じゃ、誰のせいもあるものか」ハハッ

銃士「…店長さん」

 
錬金術師「堅苦しいのはナシ!生死を切り抜けた仲なら、店長でいい!なんてな!」

銃士「じゃ、私も銃士で!っていうか年下だから別に構わないのか…」

錬金術師「くくっ…」

銃士「あはは!」


…ザッ


錬金術師「!」ピクッ

銃士「物音…そこの陰か!何者だ!」カチャッ


???「…ひっ!」


銃士「人か…?魔物か!出てこなければ撃つ!」

 
ザッ…ザッ…

新人鉱夫「あ…あの…」ビクビク


錬金術師「…新人鉱夫!?」

新人鉱夫「あぁ!店長さん!?」

銃士「むっ、店長の知り合いか?」スッ


錬金術師「お前、この川に飲まれたんじゃ…」

新人鉱夫「向こう側に休憩室代わりの中継所があって、そこで休んでる間に…こんな…」ブルブル

錬金術師「…そうだったか。新人鉱夫、生きていてくれて本当に嬉しいぞ」

新人鉱夫「た、助けに来てくれたんですか…?」

 
錬金術師「そのつもりだったが、生憎こんな状況でな」グッショリ

銃士「戻ろうと思っても戻れない状況。情けない話だよ」ハハ…


錬金術師「って待て。新人鉱夫、お前が休んでいる間って…他に鉱夫か冒険者の助かった奴はいるのか?」

新人鉱夫「い、いえ…。その…」ガタガタ

錬金術師「…落ち着いてくれ。ここで何があったか説明ができるのはお前だけなんだ」

新人鉱夫「…っ」


錬金術師「一旦、その休憩室とやらに連れてってくれるか?このままでは風邪を引いてしまうからな」

新人鉱夫「あ、はいっ…」

………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中継所 】

ゴゥンゴゥン…パァァッ…

新人鉱夫「…」


錬金術師「…驚いたな。ここは僅かだが明かりが点くのか」

新人鉱夫「ち、地下6階も近いので…、独自の装置で設定していて…。狭いですが…」

錬金術師「なるほど。山小屋みたいな存在ってわけか」 

新人鉱夫「はい…。施設というより、明かりと椅子と机しかありませんが…」


錬金術師「あぁ、待て。話す前にそうだ…銃士」

銃士「ん?」

 
錬金術師「このままだと体力を奪われるだけだ。服を脱ごう」

銃士「…」

錬金術師「あ…」

銃士「い、いや。ハンターたるもの、恥かしさより体力だし…大丈夫だ、うん…」


錬金術師「そ、そこの棚にある、布を引いて隠してくれ」

錬金術師「俺の作ったこの魔石の近くに置いておけばすぐに乾くはずだ」


銃士「わ、わかった…」

ゴソゴソ…

 
新人鉱夫「…?」

錬金術師「ん、不思議そうな顔してるな」

新人鉱夫「隠すとか何やらとか…何の話かなと…」

錬金術師「…新人鉱夫、ちょっとそこのカーテン代わりにした布、ゆっくりと覗いてみ」ボソボソ

新人鉱夫「え?」

錬金術師「いいからいいから」


カツカツ…

新人鉱夫「一体何が…」パサッ


銃士「…」

新人鉱夫「…」

 
銃士「え…ちょっ!やだっ!」

新人鉱夫「えぇぇっ!!」

銃士「き、着替えてるんだから待っててよ!」


新人鉱夫「ご、ごめんなさいぃぃ!」

ダダダッ、ズドォン!!ゴロゴロ…!!


錬金術師「くくく…」

新人鉱夫「じょ、女性の方だったらそう言って下さいよ!!」

錬金術師「何だしっかりしゃべれるじゃないか。少しだけ、元気出たか?落ち着けたか?」

新人鉱夫「あ…」

 
錬金術師「辛い現状かもしれないが、話をしてくれないか」

錬金術師「今、ここで起こっている事を知っているのははお前だけなんだ」


新人鉱夫「…」

錬金術師「頼むぞ」


新人鉱夫「…はいっ」

本日はここまでです、有難うございました。

皆様有難うございます。
投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

銃士「全く、人の着替えを何だと思っている!」

錬金術師「はは、すまなかった。だが、新人鉱夫は元気が出たようだ。ありがとう」

銃士「む…」


新人鉱夫「あはは…す、少しだけ…」


銃士「…人の体を見といて、"少し"だけ元気というのも微妙な気分だが」

錬金術師「大丈夫だ、俺も見たが、凄い元気になった」

銃士「…セクハラ!」

錬金術師「…す、すまんっ!」

 
銃士「まぁ見られたモノは仕方ない。さっさと何が起きたか話を聞こうか」ストンッ

錬金術師「…いい性格してるよなー」

銃士「このくらいではないと、世界を旅なんてしてられないからな」ハハハ


新人鉱夫「はは…。じゃあお話してもいいでしょうか」

錬金術師「頼む」


新人鉱夫「えっと…僕らは冒険者3人、先輩2人と5階で採掘をしていました」

錬金術師「あそこの水流が発生している場所か?」

新人鉱夫「はい。ですが、崩れる可能性はあったと知っていたので、修復作業も行っていたんです」

錬金術師「…知っていただって?それなのにあんな水流を発生させたのか」

 
新人鉱夫「…見ませんでしたか?イービルアイのせいなんですが」


錬金術師「!」

銃士「!」


新人鉱夫「最近、このフロアにも上級の魔物が発生するようになって…」

新人鉱夫「だから冒険者も多く付き添ってもらいました。ですが、修復作業中に大量に現れ、襲われ…」

新人鉱夫「魔法によって壁が粉砕し、みんな流されたようでした…」ブルブル


銃士「その時、君は中継所にいたのか?」


新人鉱夫「はい。さっき言った通り、僕は体力がないもので休むように言われて…」

新人鉱夫「窓越しに、起きた事を見ていました。見ていたけど…隠れてるしかなくて…!」

 
銃士「…仕方ないことだ。命あっただけでも、儲けモノと考えるべきさ」

新人鉱夫「そうでしょうか…」

銃士「命がけの仕事をしているには変わりない。君には運があった、そう考えたほうがいい」

新人鉱夫「…っ」


錬金術師「それともう1つ聞かせてくれ。あの水流の落下している竪穴はどこに繋がっている?」


新人鉱夫「あそこから地下6階に下りる梯子があったのですが、アレで流されてしまって」

新人鉱夫「あの水圧だと、恐らく未探索の地下7階ないし…天然洞窟まで流されたのでは…」

 
錬金術師「竪穴の下に向かう他の道はあるのか?」

新人鉱夫「この中継所を更に進んだ場所に、天然洞窟があり、遠回りではありますが…」

錬金術師「救出に向かう時はそのルートになりそうか」フゥッ

新人鉱夫「そうですね…って、行く気ですか!?」


錬金術師「おいおいバカ言うな…。6階以降はそれなりの装備がないと無理に決まってる」

錬金術師「今後、救出隊が来た時に伝える為に聞いたんだよ」

錬金術師「あーそれと、あの水流…とても戻れるモノじゃない」


新人鉱夫「…そうですね」


錬金術師「そして、今の俺らは生きてここを脱出すること。地上への道はないのか?」

 
新人鉱夫「旧洞を通れば行く事はできます。ですが、かなり遠い上に危険ですよ…」

錬金術師「危険?」

新人鉱夫「この辺はある程度整備されたフロアですよね。旧洞は全く手付かずなので、魔物の住処になってるんです」

錬金術師「…なるほど」


銃士「ある程度なら倒しきれるけど、数が多いと厳しいかもしれないな」カチャッ


錬金術師「銃弾の残りは?」

銃士「実弾が200、魔法弾が火炎が49、氷結が50」

錬金術師「魔法弾がこころもとないか」

銃士「どれくらいのペースで魔物と会うか分からないけど、ちょっと不安な要素かも…」

 
新人鉱夫「このまま、ここにいれば助けは来るのでしょうか?」


錬金術師「正直分からん。エレベーターが完全に停止している可能性が高い」

錬金術師「復旧する時間も分からないし、前に進んだほうが堅実かもしれない」


銃士「進むとしても、旧洞の道が分からないがどうするつもりなんだ?」

錬金術師「あっ、そうか。新人鉱夫は分からんのか?」

新人鉱夫「僕自身は分かりません。ですが、恐らくそこの棚に…」

錬金術師「ん?」

新人鉱夫「何かあった時の為に、地図などを残しているはずです。探してみます」スクッ

ゴソゴソ…

 
銃士「じゃあ…旧洞を進むってことでいいのかな?」

錬金術師「それしかないだろうしな。気乗りはしないが」ハァ

銃士「わかった。全力で支援するよ」チャキッ

錬金術師「…頼む。今、戦いで頼れるのは銃士だけだからな、命を預けるぞ」


銃士「!」ピクッ


錬金術師「ん?」

銃士「あ、いや…」

錬金術師「どうしたんだ?」

 
銃士「そ、その…ギルドに入ってるとはいえ、周りは優秀な人ばかりで…」
 
銃士「私を少しでも頼る!って余りなくてさ…」

銃士「こう正面で言われると少し恥ずかしいなーなんて」アハハ…


錬金術師「おいおい、頼むぞ。銃士を信じるしか俺らは道がないんだからな」ククク

銃士「…うん。頑張るよ」


ゴソゴソ…バサバサッ!!!

新人鉱夫「ごほっ、ごほっ!あったあった、ありましたよ!」パサッ!!

モワモワッ…!!

錬金術師「げほっ!狭いから埃がたつと酷いな!」

銃士「げほげほっ!」

 
新人鉱夫「えっと、これを見てください」

…バサッ!!モワァッ


錬金術師「なんだ、随分と古い地図だな。大丈夫なのか?」


新人鉱夫「確か旧洞が使われなくなったのは6年前の6月6日」

新人鉱夫「この地図の記載された日付、旧洞が閉鎖される半月前のようですね」

新人鉱夫「大丈夫だと思われます」


錬金術師「…ろ、6年前の6月6日ですか」

新人鉱夫「はい。それが…何か?」

錬金術師「いや何でもない…。んーと、それじゃ、地図と道はお前に任せたぞ」


新人鉱夫「えっ」

錬金術師「えっ?」

 
新人鉱夫「ぼ、僕が案内するってことですか!?」

錬金術師「当たり前だろ。何を言ってるんだ」

新人鉱夫「で、でもでも!まだ未熟で、道も滅茶苦茶に案内しちゃうかもしれないんですよ!」

錬金術師「それならそれまで。ここにいる中で、一番熟練しているのはお前だ」

銃士「その通り」コクン


新人鉱夫「い、いやいやいやいや!絶対に店長さんのほうが長けてますよ!!」


錬金術師「…あん?」

新人鉱夫「絶対に頭もいいですし、地図も読めますよね!僕に命をかけることはないですよ!」

錬金術師「…」

新人鉱夫「銃士さんも、未熟な僕よりは絶対に店長さんのほうが安心してー…」

 
…グイッ!!!

錬金術師「…おい」

新人鉱夫「ひっ!?な、何をするんですか!く…苦しい…」ググッ


錬金術師「お前は、いつまで未熟なつもりなんだ」

新人鉱夫「えっ…」

錬金術師「お前は、経験の蓄積というものを全く分かっていないんだな」

新人鉱夫「い、いやいや。僕に経験なんて…。少し専門に詳しいくらいで…」


錬金術師「お前はずっと未熟なままでいいのか?こういうのを一つのチャンスと思わないか?」

新人鉱夫「思えませんよ!!」

錬金術師「…未熟なままでいいということか」

新人鉱夫「そうも…思いません…。いつか、大きく、頼りがいのある人間になりたいと思っては…!」

 
錬金術師「あん?お前の未熟じゃないっていう考えは、"頼りがいのある人間"なのか?」

新人鉱夫「は、はいっ。先輩方や、管理人さんのように…」


錬金術師「あぁ…、じゃあ、お前は意外と未熟じゃなかったわ」パッ

新人鉱夫「うわっ!」ドサッ!!


錬金術師「俺はお前を頼りにしている所があるからな」

新人鉱夫「…店長が?まさか!」


錬金術師「ほらなんだ…お前が持ってきたあの鉱石覚えてるか?」

新人鉱夫「は、はい」

錬金術師「俺はあそこまで良い品を久しぶりに見た」

新人鉱夫「ぼ、僕の鉱石?」

錬金術師「そうだ。あの輝く原石…、お前が選んで採掘したんだろう?」

 
新人鉱夫「そ、そうですが…」

錬金術師「お前は、自分で未熟だと思っているだけだ。持ってる実力は相当なもんのはずだ」

新人鉱夫「…」


錬金術師「確かに体力はないかもしれないし、臆病かもしれん」

錬金術師「だが、俺から見たら羨ましい選眼力がある上に、お前自身気づいてないだけで勇気もある」

錬金術師「まぁ…言い換えれば考えないバカなのかもしれないが」


新人鉱夫「ゆ、勇気…?」


錬金術師「暗闇の中、得体の知れない俺に近づいてきた事もだし、この状況で旧洞の案を見出せたこと」

錬金術師「そもそもこの地下へきている時点で相当なモンだぜ」


新人鉱夫「…っ」

 
銃士「なぁ…新人鉱夫クン」

新人鉱夫「は、はい」


銃士「私はさっき言った通り、冒険者ないしハンターではあるが、君と同じ未熟だとは思っている」

銃士「だが、君らを守ろうと思っている。君は、私らを守ろうと思ってくれないのか?」

銃士「全員が助かってほしい、生きてほしいとは思わないのか?」


新人鉱夫「い、いえっ!それは違います!!全員で助かりたいと!」


錬金術師「…俺は確かに地図は読める。だが、お前ほどの専門的な技量はない」

錬金術師「重い依頼ですまないと思うが、ここにいる3人、それぞれが踏ん張る所なんだよ」


新人鉱夫「…」


錬金術師「頼む。お前の力が必要なんだ…」スッ

新人鉱夫「あ、頭なんて下げないでください!!」

  
錬金術師「…」

新人鉱夫「…わ、わかりましたから!!わかりました!!」

錬金術師「…いいんだな?」

新人鉱夫「は、はい…。そこまでいわれたら…やるしかないですよ…。いえ、やらせてください!」


錬金術師「ありがとう。あぁ、それとな…」

新人鉱夫「はい…?」


錬金術師「俺はお前の事、認めてるのは本当だ」

錬金術師「今後、店の為に、お前を採掘要員として指名し続けるつもりだったからな」ククク


新人鉱夫「…!!」

 
銃士「はははっ!それじゃ、お願いするからね!」

錬金術師「3人、力を合わせるぞ!」

新人鉱夫「はいっ…!任せてください!」


錬金術師「さて、出発するか!!絶対に生きて脱出するぞ!!」


銃士「あぁっ!」

新人鉱夫「はいっ!!」


…………
………

本日はここまでです、ありがとうございました。
更新速度が下がっており、蛇足なところもありますが、宜しくお願いいたします。

皆様有難うございます。投下致します。

 
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――――【 旧 洞 】

ゴォォ…ポチャンッ、ポチャンッ…

ザワザワザワッ…


錬金術師「…」

銃士「…」

新人鉱夫「…」


ザッザッザッザッ…

 
錬金術師「道が酷いな…」

新人鉱夫「整備されてないだけじゃなく、長い年月で洞窟の質も変わってるようですね」

ザッザッザッ…ドロッ…

錬金術師「泥っぽくて、少し何か臭うな」

新人鉱夫「鉱石の一部が酸化しているんでしょう。上を見てください、面白い物もあります」


錬金術師「ん?」チラッ

銃士「何?」チラッ


…キラッ!!


錬金術師「…山サンゴか!」

新人鉱夫「あはは…さすがです。説明は不要ですね」

 
銃士「いや私には説明がほしいのだが…」


新人鉱夫「あ、そうでしたね。炭酸塩鉱石の霰石といいまして、圧力があれば鉱石化します」

新人鉱夫「つまり、鉱石の赤ちゃんみたいなものですよ。厳密には違うんですが」


銃士「ほぉ…初めて見たぞ…」


新人鉱夫「それと…この辺は、6階、7階への天然洞窟が発見される前までは最下層でした」

新人鉱夫「それなりの鉱石もまだ眠っているはずです」


錬金術師「どこらへんの鉱石があるんだ?」

新人鉱夫「ダイア、クォーツ系、アンバー…希少鉱石もゴロゴロしてるはずです」

  
錬金術師「なら、見つけたら教えてくれ。少し持って帰ってもバチはあたらんだろう」

新人鉱夫「えぇ、もちろん。例えばそこにも、クォーツの頭が見えてますね」

錬金術師「なぬっ!」バッ


キラキラ…

銃士「ふむ…これか?」コツン

新人鉱夫「はい。採掘できると思いますよ」


錬金術師「くくく…ここであったが100年目。クォーツ、ゲットだ!」グワッ

ブンッ…ガキィンッ!!!

錬金術師「いてぇっ!!硬っ!!」

 
銃士「凄い音がしたね…。そんなに硬いの?」

錬金術師「いってぇぇ…手がしびれた…。この硬さは、俺の自動採掘機がないと…」ビリビリ

新人鉱夫「…ちょっとそのピッケル貸して頂けます?」

錬金術師「あ、あぁ」スッ


新人鉱夫「少し古いピッケルですが、充分使えますよ。周りを削るようにして、そぎ落とすんです」ブンッ

ガキィンッ!!ガキンッ!!ガキッ、ガキガキガキィン!!!パラパラ…


新人鉱夫「よし、あとは手で引っ張るだけです」グイッ

…バキィンッ!!

新人鉱夫「ふぅ。どうぞっ」スッ


錬金術師「お…おう…」

銃士(…へぇ)

  
新人鉱夫「今の相場だと結構しますね。」

錬金術師「まっ、一応こうして採掘出来るものはしながら行こう」

新人鉱夫「手伝えることなら手伝いますからっ」


…ザザザザッ!!

錬金術師「…む」ピクッ


銃士「この音は…いけない!下がって!」バッ

錬金術師「!」

新人鉱夫「どうかしたんですか?」


銃士「新人鉱夫くん、耳をすませてみて」


ザザザザ…ゾゾゾ…!!!


銃士「洞穴の中でこの音…いきなりクライマックスかもね」タラッ

 
錬金術師「これは集団音か?」

銃士「うん。1匹じゃない、2匹、3匹…。銃弾が限定されてるってのに厄介な敵が出たか…」

新人鉱夫「集団の音…、まさか、ファイアーアント…!?」

銃士「…そのまさかだろうね」


錬金術師「ふぁ、ファイアーアント…巨大な化物蟻か!」

新人鉱夫「…早く逃げないと!敵いませんよ!!」


銃士「かなり近い。逃げて間に合うか…?」

新人鉱夫「集団で襲われたらひとたまりもありませんよ!!」

 
ザザザッ、ゾゾゾゾゾッ!!!!

新人鉱夫「た、食べられてしまいます!!」

銃士「乱射しつつ下がるべきか、店長!一旦下がってー…」


錬金術師「ふーむ…」カチャカチャ


銃士「な、何のんきにライトいじってるの!!」

錬金術師「銃士、ちょっと銃を貸してくれる?」

銃士「使えるの!?」

錬金術師「いいから早く!もう目の前にいるんだから!」

ザザザザッ!!!!

 
銃士「…わかったよ!信じるからね、はいっ!」スッ

錬金術師「ありがとさん」カチャンッ


ゾゾゾゾゾッ!!!

ファイアーアント『キィィッ!!』


新人鉱夫「姿が見えましたよぉぉ!!!」

銃士「でっかっ!!気持ち悪っ!!店長、早くぅぅ!!」


錬金術師「お前ら目を閉じて、耳ふさげよ~」ガチャンッ

銃士「え?」

新人鉱夫「え?」

 
錬金術師「いっせーの…」カチッ


…バァァンッ!!!!!パァァァッ!!!ビリビリビリ!!!
 

銃士「ま、眩しいっ!!」パァッ!!

新人鉱夫「み、耳がぁぁぁ!!」キーン!!


ファイアーアント『!!!』


錬金術師「…自分でやっといてスゲー強烈」クラクラ

銃士「一体何をしたの!?」

錬金術師「まぁ、見ろよ。ファイアーアントの集団は逃げてくぜ…」フラフラ


ザザザゾゾゾ…

ザザ…

 
銃士「本当だ…」

新人鉱夫「今の音と光は一体何をしたんです!?」


錬金術師「ライトにつけてた魔石を、銃の魔弾のシリンダー部分にケーブルで繋げて」

錬金術師「思いっきり威力をあげつつ、ライトの発光と銃弾を発射したんだ」

錬金術師「アント系の魔獣は、暗闇だろうが何故か"目"を持って感知する失敗した種族だからな」


銃士「光で脅したってこと?じゃあ、音をあげた意味は?」

錬金術師「そりゃお前、独自の進化してたら困るからだよ」

銃士「そ、それをあの一瞬で判断して行動を…?」

錬金術師「結構時間あったじゃないか。音がした時点で少し浮かんでたけど」

銃士「…!」

 
新人鉱夫「す…凄い…」


錬金術師「あ、銃返すよ。ありがとさん」スッ

銃士「あ、うん」カチャッ

…ジュゥゥゥ

銃士「あ…熱~~っ!!」ポイッ!!


錬金術師「あ、すまん」

銃士「何かめちゃくちゃ発熱してるんだけど!」ジンジン

錬金術師「無理やり底上げしたから、中身黒こげかもしれん…」

銃士「」

錬金術師「まぁ使えるし、あとで無料メンテナンスします…」

銃士「お願いします」

 
新人鉱夫「と、とりあえず進みますか?」

錬金術師「んだな。この辺はアントもいるし、さっさと抜けよう」

新人鉱夫「はい。こちらです」

銃士「また今の敵が出ない事を願うよ…。また同じことをしたらバラバラになりそうだ」


錬金術師「っていうか、もう1度出たら今の技効かないし、俺ら死んじゃうよ」ボソッ


銃士「…早く抜けよう!!」

新人鉱夫「急ぎましょう!!」


錬金術師「はは…」

…………
……

 
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――――【 同時刻・女店員サイド 】


…グビッ

親父「うまい珈琲だな。気分が落ち着く」フゥッ

女店員「」

管理人「」


女店員「…の、のんびり珈琲飲んでる場合ですか!」

親父「じゃあ、お前はできる事があるのか?」

女店員「そ、それは!」


親父「俺らの今の立場をわかっているのか?」

女店員「立場…?」

 
親父「君は仮だが、俺と管理人は指示する立場だ」

親父「落ち着いて行動出来ないリーダーが、人助けを出来るか?」


女店員「た、確かに…」

親父「それに珈琲は頭が冴える。落ち着く為にも、君も飲んだほうがいいんじゃないか」

女店員「…」

管理人「し、社長さん…。しかし、女店員さんの気持ちも察してあげてください…」


親父「それは俺に対する意見と取っていいのか?」ギロッ

管理人「うっ…」

親父「…どうなんだ?」

 
管理人「…も、申し訳ありません」ペコッ

親父「それでいい」

女店員「…」イラッ

親父「二人とも立っていないで、一杯どうだ。俺が淹れてやろうか」


女店員「それでも…ですか…」ボソッ

親父「うん?」

女店員「それでも、あなたはお父さんですか!!もっと心配してあげてもいいんじゃないですか!!」

親父「…息子のことか?」


女店員「地下に閉じ込められているのと一緒なんですよ!!」

女店員「魔物だっているのに、何かあったらどうするとか…色々考えないんですか!」

 
親父「君が、信頼できるハンターと一緒にいるはずだと言っていたではないか」

女店員「それとこれは!」


親父「それに、何かあってほしいからそう考えるのか?」

親父「それとも心配する自分に酔っているのか?」

親父「何が変わる訳でもない。今は最善の為に落ち着くべきだと言ったまでだ」グビッ


女店員「…ッ」ブルッ

管理人「社長さん…その辺で…」

 
女店員「あ…貴方なんか頼らない!!私一人で何とかするんだから!!!」ダッ

管理人「あっ、女店員さん!」
 
親父「…やれやれ、困った娘だ。だからクビにするべきだと言ったのだ」


ダダダダッ、ガチャッ!!!

女店員「今行きます、店長っ!!」

…ドンッ!!!

女店員「きゃあっ!?」


???「…おやおや、ごめんね。大丈夫?」

女店員「いたた…ご、ごめんなさい」


管理人「おや、どなたでしょうか?あっ、救出隊の方でしょうか!?」

 
???「ごめんなさいね、私は救出隊じゃないんだ」

???「あそこにドカ座り社長の知り合いだよ」ハァ


女店員「え…社長さんの知り合い?」クルッ


親父「来たか、女錬金術師」


女店員「!?」

管理人「!!」


女錬金術師「アンタに偉そうに名前を呼ばれる覚えはないね」

親父「お前は俺の妻だろうが」

女錬金術師「いつの話を。まだ離婚してないだけで、もうアンタのことは何とも思っちゃいないよ」

親父「離婚していないということは、夫婦だろうが」


 
女錬金術師「…そんな事はどうでもいいんだ。息子のことを聞かせてくれないかね」

親父「…ふん」


女錬金術師「相変わらず…。あっ、それよりすまなかったね。大丈夫かい?」

女店員「あ、ありがとうございます。大丈夫です…」

女錬金術師「話は少し聞こえていたよ。意地の悪い事を…ごめんね」

女店員「いえ…」


親父「そんな奴との話はいらん。今は俺の大事な取引相手を助ける為に手を貸せ」

女錬金術師「息子はどうでもいいっていうのかい」

親父「大事じゃないとは言わん。だが、取引相手を助ける事はアイツを助けるのと一緒のことだろう」

 
女錬金術師「…息子を助けたいんだって言いなよ」

親父「同じ事だとしか言わん」

女錬金術師「…」

親父「…」


女店員「…」オロオロ


親父「早く手を貸すと言え。お前が息子を放っておく事はないはずだ」

女錬金術師「息子を助ける事は手を貸す。だが、アンタに手を貸す気はならないね」

親父「息子を助けるというなら、復旧に手を貸すことだぞ。同じだ」

女錬金術師「私を誰だと?息子を助けたら手を切る事だって出来るんだよ」

親父「他の生きているかもしれない面子を切り捨てるというのか?」

女錬金術師「昔の私じゃないよ」

親父「…貴様」

 
女錬金術師「あんなバカは放っておこう。管理人さん、息子を助け出す手段を教えてくれるかい」

管理人「あ、は…はい…」


女錬金術師「文句を言うなら、そこの能無しの分からず屋に言ってくれるかい」

女錬金術師「悪いけど、他の人らの為に手を貸す気はなくなったよ」


管理人「…」

女店員「そんな…」

…スッ

女錬金術師「なんて、そう聞こえとけば、少しは苦しむだろうからね」ボソッ

女錬金術師「普通に助けには協力するよ、安心しておくれ」ボソボソ


管理人「!」

女店員「!」

 
女錬金術師「さぁ、案内してもらおうか。"息子を助け出すまで"復旧を手伝うよ!」

管理人「…はいっ!」

女店員「お願いします!」


親父「…ッッ」ギリッ!


…………
……

本日はここまでです、ありがとうございました。

皆様ありがとうございます。
短めですが投下致します。


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――――【 錬金術師サイド・旧洞 】

…ガォンガォンッ!!!

バッド『キィィッ!!』

ドシャッ、ドサドサッ…


銃士「はぁっ、はぁ…!凄い数…」

錬金術師「大丈夫か?」

銃士「全然余裕!というか、連射式にして貰ったお陰で助かったかな」

錬金術師「連射式もだが、その腕前…安心して見てられるな」

銃士「ふふっ、ありがと♪」

  
新人鉱夫「えと、少しずつですが鉱石も増えてますし、道も地図の通りだし問題はないですね」

錬金術師「このまま脱出できればいいんだがな」

新人鉱夫「そうですねぇ…」


銃士「弾丸の残りも現時点ではそこまでの問題はないかな」

銃士「でも歩き通しで結構疲れてきたかも…」ハァッ


錬金術師「俺は余裕だぜ」ジンジン

銃士「さっきから足のマッサージを繰り返している人が何を」


新人鉱夫「うーん…僕は歩きなれてますが、二人は不慣れですからね…」

新人鉱夫「途中で休める場所があればいいのですが」

 
錬金術師「旧洞には、中継所だの構内事務所っていうのはないのか?」

新人鉱夫「詳しくは分からないのですが、この地図を見てください」ペラッ

錬金術師「うん?」


新人鉱夫「この三角のマークは、構内事務所ないし中継所地点のマークなんです」

新人鉱夫「現存してるかは分かりませんが、この付近にもあるようなので、確認しましょう」


錬金術師「頼む。もしかしたら素材か何かもあるかもしれないしな」

新人鉱夫「ですね。行きましょう」


………
……

 
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ガチャッ、ギィィ…


錬金術師「…ひどいな」

銃士「屋根も、ガラスも割れている。この散らばっているのは保存食を食べ散らかした後ね」

新人鉱夫「魔物か何かの仕業ですか?」

銃士「恐らくね。それと…余り休めるという場所でもなさそうだよ」スッ

新人鉱夫「え?」

銃士「見て。魔物の足跡…、それに排泄物。恐らく縄張りにしてるみたい」

 
錬金術師「…人が来なくなった場所によく起こる現象だな。自然の摂理か」

銃士「うん…。離れたほうが良さそうだね」

錬金術師「次の休憩できそうなスポットは地図でどれくらいだ?」


新人鉱夫「えっと…意外と近いですね」ペラッ

錬金術師「わかった。そっちまで行ってから一息つこう」

新人鉱夫「そうですね…そっちのほうが良さそうです」コクン

銃士「賛成だ」コクン


錬金術師「っと、何かないか調べてから~っと♪」ゴソゴソ

 
ガサガサ…ポロッ、ゴトンッッ!!

錬金術師「ぬおっと、落としちまった」

銃士「凄い音、何を落としたの?」

錬金術師「ん~…?何だこれ?」ヒョイッ

…トプンッ


錬金術師「瓶詰めの緑の液体?」

銃士「それは?」

錬金術師「分からん。ってよく見たらこの棚、奥の方は全部そればっかじゃねえか!?」


ドロッ…トプンッ…


銃士「!」

新人鉱夫「!」

 
銃士「…何これ、気持ち悪い」ゾクッ

錬金術師「一部は割れてるな…。明かりを少し強めよう」クイッ


パァァ…ドロッ、ポタッ、ポタッ…


銃士「うわっ!」

錬金術師「なんじゃこりゃ!」

新人鉱夫「一部が割れて地面に染み出してる…。棚の下が緑色に染まってるじゃないですか!」


銃士「店長、これが何か分からないの?」

錬金術師「瓶詰めの液体ってのは専門だが、こりゃ見たことないタイプだ」

銃士「店長が分からない液体って…」

 
錬金術師「ビンが少し特殊だな、普通の閉め方じゃない」キュッキュッ

銃士「無理やりねじってるように見えるね」

新人鉱夫「聞いたことないですよ、こんなの…」


錬金術師「…とにかく離れたほうがいい。次の場所へ向かおう」

銃士「うん」

新人鉱夫「急ぎましょう」クルッ

…パキッ!!

新人鉱夫「ん?」

 
錬金術師「どうした?」

新人鉱夫「なんか白いの踏みました。何でしょうこれ」ヒョイッ

錬金術師「気にするな。とにかくココを離れよう。気味が悪い」

新人鉱夫「はいっ。一応持って行こう」ゴソッ


銃士「地上までは確実に進んでいるし、安全第一に進んでいこう」

錬金術師「うむ、当たり前だ」

新人鉱夫「…いきましょう」

ザッザッザッザッザッ…

…………

……

 

……
…………

…ゴトンッ!!トプンッ…

ゴトッ…ゴトゴトッ…ガチャンッ!!!

…ドロォッ…ズズッ…ズズズ…

……ベチャッ…

ズズ……

……

本日はココまでです、有難うございました。

皆様ありがとうございます、投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 女店員サイド・坑内エレベーター1階 】
 
カチャッ、カチャカチャッ、カチッ!!

女錬金術師「~♪」

チャキンッ!!ポチポチ…


女店員「す、すごい」


女錬金術師「主回線が完全に落ちてたから、部品の取替えだね」

女錬金術師「魔石のエネルギーヒューズが飛んでるねぇ」

女錬金術師「普段、どんな部下にエレベーターの作業をさせてるんだか」フン


親父「…」イライラ

 
女錬金術師「管理人さん、もうすぐ直るよ」

管理人「ありがとうございます、ありがとうございます…っ」

女錬金術師「だったら、エレベーターの稼動と共に救出に向かわせる鉱夫に連絡でもとってきなよ!」

管理人「あっ、そうですね!いってきます!」ダッ

タッタッタッタッ…


女錬金術師「さて、もう少しだ」カチャカチャ

女店員「店長も凄かったけど、女錬金術師さんも凄いですね…」

女錬金術師「ははっ、ありがとうよ」


親父「…取引相手だ。全員を救うように復旧させろ」

女錬金術師「それはアンタが"息子を救う"と言ったらだと言っただろう」

 
親父「だから息子を救うことも、鉱夫たちを救うのも一緒だろうが!」

女錬金術師「息子を息子と思わない人の手助けなんかしたくないね」

親父「…本当に他の命を見捨てる事ができるというのか?」

女錬金術師「できる」


親父「くっ…」ギリッ


女店員「じょ、冗談なんですよね?」ボソボソ

女錬金術師「他の人も救うように復旧はするさ。安心しとくれ」フフッ

女店員「はい♪」

 
タッタッタッタッタッ…

管理人「みんな、こっちだ!」

カチャカチャッ

鉱夫たち「はい!」

鉱夫たち「ようやく動けますね」

鉱夫たち「鉱夫長、装備の準備は万全です!」

鉱夫長「女錬金術師さん、有難うございます。これで救出にいち早く駆けつけられますね」


女錬金術師「うんむ。もう少しだけ待っておくれ」


親父「…」

親父「…ん?」ハッ

親父「おい、女錬金術師」

 
女錬金術師「なんだい」

親父「お前、俺にウソをついたな?」

女錬金術師「何のことか分からないね」


親父「これだけの鉱夫を向かわせるという事は、少なくとも他の面子の救出にもなるはずだ」

親父「貴様、、俺をだましたな」


女錬金術師「ふん」

親父「貴様ぁ…」

女錬金術師「バレちゃ仕方ないね。少しはいい薬だったろう」

親父「…ッ」

 
鉱夫長「女錬金術師さん、社長さん、息子さんの話も聞かせて頂きました」

鉱夫長「下手に動いたりしてなければいいのですが」


女店員「店長のことですし、色々動いてそう…」

女錬金術師「あの息子だからね…」

管理人「店長さんですしねぇ…」

親父「バカ息子だからな」


鉱夫長「み、皆さん口をそろえて…」ハハ…

 
女錬金術師「どんな状況かは分からないけど、きっと大丈夫さ」

鉱夫長「下手に落盤やらで、旧洞に逃げ込んでなければいいんですが」

女錬金術師「あっちも危険なのかい?」

鉱夫長「落盤の危険だけでなく、魔物の住処になってますしね」


管理人「鉱夫長は俺がココの担当になる前から長くここに勤めていたから詳しいんだよな」

鉱夫長「そうですね。一番キャリアは長いですよ」

管理人「今更だが、旧洞からの救出はやっぱり難しかったか?」

鉱夫長「難しいなんてもんじゃないですね。"アレ"もありますし」

管理人「…アレ?」


鉱夫長「あっ!いや、何でも!」

 
管理人「…俺が知らない事があるようだな」

鉱夫長「き、気にしないでください!」

女錬金術師「鉱夫長サン、そういう不安要素は埋めておきたいんだけどね」

鉱夫長「し、しかし今更関係のない話じゃないですので!」


女店員「店長のことですし、もしかしたら旧洞なんかから脱出を試みてるかも、なーんて」

女店員「さすがに店長は頭がいいから、危険なことはしませんよねぇ」アハハ


管理人「…」

親父「…」

女錬金術師「…」

女店員「…」

鉱夫長「…」

 
女店員「…しそうですね」ボソッ


女錬金術師「鉱夫長、話を聞かせてくれないかい。アレって何か、大至急ね」ギロッ

鉱夫長「…」

女錬金術師「頼むよ」


鉱夫長「じ…時効にしてくれますか?」


女錬金術師「時効?」

管理人「お前、犯罪でもしたっていうのか!?」


鉱夫長「ち、違いますよ!俺が直接関係あるわけじゃないし、問題になるなんて思わなかっただけで…!」

管理人「一体何をしたんだ!」

 
鉱夫長「時効にしてくださいよ…」

鉱夫長「い…今から十数年前、地下5階で暴れていた魔物がいました」

鉱夫長「余りにも強力な相手だったので、有名だった騎士に頼んで討伐してもらったんです」


管理人「それで?」


鉱夫長「ですが、完全に消失することが無理だったので、バラバラにして魔力の瓶に封じ込めたんです」

鉱夫長「封印の効力は十年そこらで切れるので、その時は改めて別の冒険者に封印してほしいと言われました」

鉱夫長「しかし、そこは使われなく封鎖されることになり、放置されることになったんです」


管理人「…そんな話きいたこともないぞ」

女錬金術師「その効力が切れて、魔物が解き放たれている可能性は?」

鉱夫長「高いです…」

 
女店員「ちょっ…それじゃ店長がもし旧洞にいっていたら!?」

鉱夫長「襲われているかもしれません…」

女店員「…」フラッ


親父「その魔物とは一体なんだ」


鉱夫長「す…」

鉱夫長「スライム…ですよ…」


親父「!」

女錬金術師「!」

管理人「!」

女店員「え?」

 
管理人「す、スライム!?そんな魔物がこの洞窟にいるのか!?」

女店員「え…スライムってゲームとか絵本に出てくる可愛い魔物じゃないんですか?」

管理人「そりゃ物語に書かれてるだけのものですよ!!」

女店員「えっ?」


女錬金術師「…スライムは打撃が効かない、かなり厄介な相手」

女錬金術師「属性によっては魔法も無効。特に地下深い洞穴なんだ…無敵に近いんじゃないかね」

女錬金術師「食する時は、相手を覆うようにして体を引き伸ばし、体内に引き込む…」

女錬金術師「捕らえられた生物は、もがき苦しみ、溶かされ…骨だけが残る…」


女店員「え…」

女錬金術師「こりゃ悠長なこと言ってられないね…」

 
管理人「洒落になってないですよ…」

鉱夫長「申し訳ありません…黙っていて!!!」


親父「スライムなんて滅多に見ない魔物、あのバカが知っているはずはないな…」


女錬金術師「私だってほとんど見たことないからね」

女錬金術師「自分の液体を体に付着させ、その匂いを追ってチャンスと同時に捕食する」

女錬金術師「万が一、匂いが付着していても襲われるまでは時間がある…まだ、きっと大丈夫…きっと」


女店員「て…店長…」

ヘナヘナ…ドサッ


管理人「あっ、女店員さん!」

女店員「ど…どうなっちゃうの…」

 
女錬金術師「…よし、一時的だけどエレベーターはこれで動くはずだよ!」ポチッ

グォンッ…パッ、パッパッ!!!


管理人「明かりがついた!」

女錬金術師「急いで、息子がどういうルートを進んでいるか把握してきておくれ!」

管理人「お前たち、頼んだぞ!鉱夫長、わかってるな」


鉱夫長「…はい」

鉱夫たち「急ぎましょう!仲間の安否が心配です!」


グオォォォ…グォングォン…チーン!!


女錬金術師「エレベーターが来たよ!頼んだからね!」

 
鉱夫長「行ってきます、皆さん」ビシッ

鉱夫たち「いってきます!」


管理人「気をつけて…」

女錬金術師「…」

親父「…」


…………
……

本日はここまでです、ありがとうございました。

皆様ありがとうございます。投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 錬金術師サイド 】

ザッザッザ…ピタッ

錬金術師「ふ~…はぁ、はぁぁ…」ゼェゼェ

銃士「結構…歩いてきたよね…」ハァハァ

新人鉱夫「さすがに僕も疲れてきました…」ハァハァ


…グチュッ…


錬金術師「結局ここまで、まともに休憩できる場所もなく…」

錬金術師「その場その場で腰を落としただけだったしな…」

 
銃士「また腰を下ろす?」

錬金術師「んー、あとどれくらいなんだ…?」

新人鉱夫「地図によればもう直ぐ、地下3階付近地点…でしょうか」ペラッ

錬金術師「いつになったら地上が見えるんだ…」


…クチュッ……



銃士「でもそこまで歩いたんだから、頑張ろうっ!」

錬金術師「うむ…」

新人鉱夫「ゴールは近いですから!」

錬金術師「それは分かってるんだながなぁ…」ゼェゼェ


銃士「でも、スタミナが奪われてるだけで良かったね」

銃士「これが敵に攻撃を受けてたら、本当に動けなくなってたんじゃないかな」

 
錬金術師「…かもな。もう少しだけ頑張るか」

銃士「その意気っ!」

錬金術師「あぁ頑張るよ」スクッ


銃士「さっ、出発だ!」

…グチュッ………


銃士「…ん?」ピクッ

錬金術師「どうした?」

銃士「今、何か音が聞こえたような…」

錬金術師「音?」

 
…グチュッ……

銃士「ほら、また!」

錬金術師「いや聞こえないぞ。新人鉱夫は聞こえたか?」

新人鉱夫「いえ…」

錬金術師「ほら、気のせいじゃないのか?」


銃士「気のせいなのかな…」


錬金術師「…いや、銃士が俺らよりそういう事に敏感なのは分かる」

錬金術師「一応、調べるか」


銃士「わかった。でも歩き回るのは危険だし、ちょっとみんな静かにして」シッ

  
錬金術師「…」

銃士「…」

新人鉱夫「…」


シーン…

……

 
……グチュッ…ドロッ…!


錬金術師「!」

銃士「今、聞こえたよね!」

新人鉱夫「ぼ、僕も聞こえました!」

 
錬金術師「何の音だ?また水か何か近くを流れてるのか?」

銃士「…水の音じゃないよ。この音、まさか…」

新人鉱夫「まさか?」

銃士「いや、あり得ないか。でも…」


錬金術師「…何の音だと思うんだ?」


銃士「ずっと前にギルドで上級討伐クエストを受けに行った時に聞いた音なんだけど…」

銃士「スライムの音にすっごい似てた気がする…」


錬金術師「…スライム?ま、まさかそんな訳ないだろ」

銃士「だよね。こんな場所にいるわけないよね」

 
ドロッ…

新人鉱夫「ん?」ピクッ

新人鉱夫「…」

…ビチャアッ…

新人鉱夫「…ちょっ」


錬金術師「きいっとただの水の落ちる音だって!さっさと進もうぜ!」


新人鉱夫「ちょっ…ま、待って…」


銃士「うん、出発しよう!」

錬金術師「さぁ行こう!」

銃士「うん」

ザッザッザッ…グイッ!!

 
錬金術師「おわぁっ!!」ドシャア!!

銃士「店長!?」

錬金術師「いって…何かに引っ張られてコケたんだよ!」クルッ


新人鉱夫「…て、店長…待って…」ギュウウッ

 
錬金術師「ってお前かよ!俺の服を掴んで何してんだよ!」

新人鉱夫「ご、ごめんなさいでも…」ブルブル

錬金術師「何よ!」

新人鉱夫「そ、そのあの…た、助けてください…」ガタガタ

錬金術師「何が!」

 
新人鉱夫「あ、あああ…あの…下…」ビクビク

錬金術師「下?」チラッ

銃士「下?」チラッ


ドロォッ…グチュッ…、グチッ

スライム『…』

ベチャッ…


錬金術師「…」

銃士「…」

新人鉱夫「ぼ、僕の靴を掴んで…動けないです…」ブルブル


錬金術師「…銃士、どうすればいい」

銃士「新人鉱夫、落ち着いて。下手に刺激させちゃだめだ」

新人鉱夫「は、はい…」

 
銃士「恐らく、靴から捕食しようとしてる。物理は効かないから、魔弾の処理になるんだけど…」

新人鉱夫「ど、どうすれば…」

銃士「魔弾で燃やしたり、凍らせたりしたら伝導凍結で新人鉱夫まで凍っちゃうから…」

新人鉱夫「えぇっ!」


スライム『!』ピクッ


銃士「声を出しちゃだめだ…!」

新人鉱夫「は、はい!うぅっ…」

銃士「まずはゆっくりと、靴を脱いで…」


新人鉱夫「はい…、は、早く抜け出したい…!」ゴソゴソッ!

 
銃士「ば、ばかっ!慌てて脱がないで!」

 
スライム『!』ピクピクッ

…ドロッ、グワッ!!


銃士「あっ!」


スライム『ッ!』

ドロォ…ジュゥゥゥ…!!!

新人鉱夫「…あ、熱い!!!うわぁぁっ!!」バババッ!!!


銃士「だめだ!そんなに暴れたら!!」

 
スライム『…ッッ!!』

ドロォッ…ガバァッ!!!

新人鉱夫「ひっ、の、飲み込まれるぅぅ!!うわぁぁぁ!!」


銃士「くっ!!」ダッ

錬金術師「ま、待て銃士!!」


…ドンッ!!

ドサッ…、ズザザザァ…

ジュウゥゥ…!!!


…ボトッ

本日はここまでです、ありがとうございました。

ありがとうございます、投下致します。

 
新人鉱夫「うわああっ!」

銃士「うあっ!」

ズザザッ…!!

新人鉱夫「あ…、足がついてる…よかったぁ…」ヒクッ


銃士「いたた…あれ?私、新人鉱夫を突き飛ばしたはずなのに、何で私まで吹き飛んでるの」

銃士「…」

銃士「!」ハッ


錬金術師「…ッッ!!」

 
銃士「店長!?」

新人鉱夫「え…店長!?」


錬金術師「参ったぁぁ…、右足を思い切り削られた…」

ズキン…ズキン…


銃士「店長、私をかばって…!?」

錬金術師「お前がケガしたら倒すもんも倒せないだろが…」ジンジン

銃士「…っ」

錬金術師「右足を落としはされなかったが、代わりに右足の肉の一部と、装備の一部を食いやがった…」


スライム『…』

…ペッ!!ボトボトッ!!

 
錬金術師「俺の装備はスライムさんの口には合いませんでしたか…はは…」ズキズキ

銃士「しゃべらないで、血が出てない分まだいいけど、ひどい傷…」

錬金術師「俺よりも先に、あのスライムを…」


スライム『…』トプッ

ドロッ…グワッ!!!


銃士「くっ、凍結弾っ!!」ババッ

ガチャンッ!!カチッ、ガォンガォンッ!!!!


…ブチュッ!!

スライム『!』

 
銃士「凍れぇぇ!!」

ガォンガォンガォンッ!!!ブチュブチュッ!!


スライム『…ッ!!』

カキッ…キキィン…

銃士「効いてる…、うらぁぁっ!」

ガォンガォンッ!!カキィンッ…!!


スライム『…』

ビキッ…ビキビキ…パキンッ…

 
銃士「はぁ…はぁ…」

錬金術師「凍結したか…」

銃士「…これくらいで倒せる相手だとは思えない。早く離れよう!」


錬金術師「わかってるんだが…くそっ!」ズキズキ

銃士「歩けないか…。肩を!」グイッ

錬金術師「情けない…」

銃士「…守ってくれてありがとう。情けなくなんかない」

錬金術師「…」


新人鉱夫「僕は右肩を。僕のせいですよね…ご、ごめんなさい…」グスッ

 
錬金術師「この状況だ、誰が悪いもないから気にするな…。まずは離れるぞ」

新人鉱夫「は、はいっ!」

ポロッ…コロンッ

銃士「ん、新人鉱夫のポケットから何か落ちたぞ」

新人鉱夫「あっ、さっき拾った石みたいなやつ…」


…ヒョイッ

銃士「…これ、魔物の骨だぞ」

新人鉱夫「ひぃっ!?」

銃士「あそこがスライムの巣になっていたんだな。そこで食べかすを吐き出していたんだろう」

新人鉱夫「そそ、そんな物捨てちゃってください!」

銃士「やれやれ、すっかりスライム恐怖症だな」ポイッ

 
新人鉱夫「うぅ…」

銃士「じゃ、行こうか」

錬金術師「上手く歩けねぇや、情けない」

ヒョコッ、ヒョコッ

銃士「情けないばっか言わないの。情けなくなんかないんだから」


錬金術師「はは…こんな足じゃ歩くのも面倒くせえな…」

錬金術師「平和にバターピーナツを食って過ごしてたはずの俺が、大冒険だ」ククク


銃士「夢が叶ってるんじゃないの?」フフッ

錬金術師「冒険ってのは、いつもこんなピンチなもんなのか?痛いんだな冒険は…」ズキズキ

 
銃士「はは、冒険者なら当たり前だよ」

錬金術師「そうなのか…、なら俺は店で静かに過ごしてるほうで充分だ」ハハハ

銃士「店長は、やっぱりお店にいてこその店長なのかもね」

錬金術師「そうかもなぁ。ぐっ!」ズキンッ

銃士「大丈夫!?」


錬金術師「大丈夫大丈夫…。さぁ、行こう…」


…………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ザッザッザッ…

錬金術師「はぁ、はぁ、はぁ…」


銃士(あれから大分歩いたが…。顔色が悪い…早く医者に見せねば…)

銃士「新人鉱夫、あとどのくらいで地上なんだ?」


新人鉱夫「待ってください…」ペラッ

新人鉱夫「えと…、ここはもう地下200メートル付近ですので…」

新人鉱夫「この辺に今の洞窟と、本洞と繋がる場所があります!」


銃士「そうは言っても復旧していなければエレベーターも使えないだろう」

 
新人鉱夫「そ、そうか…」

錬金術師「待て…あれからかなり時間がたっている。もしかしたら復旧も進んでいるかもしれん…」

新人鉱夫「…行ってみますか?」

銃士「そこまで行って、復旧していなければ無駄足。店長の衰弱が進むだけだ!」


錬金術師「…ち、近くまで行って明かりがないか見よう」

錬金術師「明かりが確保されていればエレベーターは稼動しているはず…」


銃士「…わかった」

新人鉱夫「はい、案内します」

  
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

新人鉱夫「えっと、あそこを曲がった先が本洞があるはずです」

ザッザッザッ…

銃士「頼む…復旧していてくれ…」


…パァッ!

新人鉱夫「あっ!」

銃士「あっ!」


錬金術師「ど、どうだ?目が霞んでよく見えないんだ…」

銃士「明かりがある!!復旧してるよ!」

錬金術師「お、おぉ…」

 
新人鉱夫「急ぎましょう!」

錬金術師「おう…!」

銃士「これで地上に戻れる、早く店長の治療をしなければ!」

錬金術師「注射痛いんだろうなぁ…」ハハ

銃士「何言ってるんだか…」


ドロッ…チュプンッ…


銃士「!」

新人鉱夫「えっ…」

銃士「ま、まさか今の音は…」クルッ

 
モゾモゾッ、ドチュッ…

スライム『…』
 

新人鉱夫「で、出たーーー!?」

銃士「こ、ここまで来てまた!」

錬金術師「洒落にならねえぞ…」


銃士「…また凍らせてやる!凍結弾装填っ!」ガチャンッ!!

銃士「食らえっ!!」

カチッ、ガォンガォン!!

 
スライム『!』

ブチュブチュッ!!カキカキン…!!


銃士「ふん、またそうやって凍っていろ」


スライム『…』

スライム『…』ブルブル

…バキャアンッ!!!

スライム『…』トプンッ


銃士「!」

 
新人鉱夫「ちょっ、今度は一瞬で砕かれましたよ!?」

銃士「まさか耐性を持ったのか!?」

錬金術師「ずっと地下深くで生きてきた猛者だ…、違う成長を見せているんだろう…」


銃士「新人鉱夫、店長を連れて早くエレベーターに!撃って凍らせながら時間稼ぎをする!」

新人鉱夫「わかりました!」

錬金術師「い、急ぎたいんだがな…足が動かないんだ…」ズキンッ


銃士「食らえぇぇ!!」カチッ!!

ガォンガォン!!カキィン!!

スライム『…』

 
銃士「うらあぁっ!」

ガォンガォンッ!!カキン…バキャアンッ!!


銃士「…耐性が高くなってる!凍結時間がどんどん短くなっていく!」

錬金術師「ぐっ、目の前だっつーに…!」

銃士「くそっ!凍って!!」

ガォンガォン…カチッ、カチッ!!


銃士「あっ…!」

錬金術師「弾切れか、火炎弾はあるか…?」

銃士「あるけど、意味があるかどうか…」

錬金術師「属性攻撃があるだけマシだ、使ってくれ」

銃士「…わかった」

 
スライム『…』トプンッ


銃士「火炎弾装填っ!」カチャンッ

銃士「凍結がだめなら、燃え尽きてくれ!」 

カチッ、ガォンガォンッ!!…ボン、ボオンッ!!!


スライム『!』

ボォォォッ…ジュルジュル…!!


銃士「…効いてる?」

スライム『…ッ』ブルブル

 
銃士「わずかながら燃えて動きが止まってる…どんどん撃つよ!」

ガォンガォンッ!!!ゴォォッ…ボォンッ!

スライム『…ッ』

ドロッ…ブチュッ…!!


錬金術師「新人鉱夫、復旧は完全にしているか?エレベーターまではどのくらいだ…!」

新人鉱夫「復旧はしているようです!キョロキョロ

錬金術師「エレベーターまでの距離は!」

新人鉱夫「このペースで歩けばすぐです、がんばって下さい!」


錬金術師「わかった…!」

 
銃士「くっ…店長、スライムがもう耐性が付いてきてる!!何て早さなの…!!」

ガォンガォンッ!!ブチュブチュッ!!

スライム『…』

モゾモゾ…ドロドロッ、トプンッ…


銃士「元々銃弾のダメージはないし、早くエレベーターに!」

錬金術師「…ッッ!!」

ヒョコッ、ヒョコッ


新人鉱夫「死にたいんですが、早く立って、しっかりしてください!!」

銃士「店長!!」

錬金術師「く、くそおぉぉ…!!」

本日はここまでです、ありがとうございました。

皆様ありがとうございます、投下致します。

 
スライム『…』

ズリッズリッ…


錬金術師「もうダメだ、お前らが早くエレベーターに逃げてくれ!」

新人鉱夫「何を言っているんですか!」

銃士「ここで弱気になるなっ!!もう目の前で逃げられるんだ!!」


錬金術師「俺が食われれば多少の時間稼ぎになんだろ、負傷を犠牲に冒険者が生きるための術だろ…?」

銃士「それはそうだけど!」

錬金術師「1人の犠牲で2人が助かるんだ、それで充分だ」

銃士「わ、私は店長も一緒に助かってほしいんだ!!早く立てっ!!」


錬金術師「痛みを通りこしてもう動かねーんだ…。捨て置いてくれ、頼む…」

 
銃士「…ッ」

新人鉱夫「…っ」


スライム『…』

ズリッ…グチュッ、ズリッ、ズリッ…


錬金術師「…早く行けって!!」

銃士「す…捨てるくらいなら、最後まで一緒に逃げる!新人鉱夫、肩を支えて!」

新人鉱夫「そうですね…店長を死なすわけにはいきませんよね!」

グイッ!!

錬金術師「お前ら…!」

 
銃士「私たちを巻き込みたくないなら、自分の足でしっかり歩いて!」

錬金術師「む、無茶いいやがるな…。人生をかけた決断を何だと思ってやがる…」ハハ…

銃士「…グダグダ言ってないで、歩く!」ググッ

新人鉱夫「行きますよ、店長ぅ…!」ギリギリ


ザッザッザッ…!!

ズリッ…ズリッ…

ザッザッ…!!

…ズリッ…


ズリッズリッ、ズリッ!!…トプンッ…

スライム『…』

 
銃士「くっ、追いつかれた…もうだめ…!」

錬金術師「だから逃げろと言ったんだ!」

銃士「冒険者たるもの、覚悟はあったんだけどこんな場所とはね」ハハッ

新人鉱夫「…うぅっ!わかっていたけど怖い!!」


スライム『…』

グニュグニュ…クワッ!!!
 

錬金術師「ちっ…ゲームオーバー、か」

 
ビュンッ!!…ドゴォンッ!!!バキバキィンッ!!!

スライム『!?』

パラパラッ…


錬金術師「…へ?」

銃士「ど、どうしたの?」

新人鉱夫「スライムが大きく吹き飛ん…だ…?」
 

錬金術師「一体何が…」ハッ

 
ザッ…ザッ…ザッ…!

鉱夫長「…無事でしたか!」

鉱夫たち「おーい、こっち側に生存者!店長さんたちだぞー!!」

ワイワイ、ガヤガヤ…


新人鉱夫「鉱夫長、皆さん!」

鉱夫「おー、新人鉱夫!無事でよかったな!」

新人鉱夫「いえ…」グスッ

鉱夫「早くエレベーターで救助者を上に逃げろ!後は任せてくれ!」

 
錬金術師「お、お前ら一体何をした?属性抵抗の高いスライムを吹き飛ばすなんて…」


鉱夫長「スライムの存在に気づいた我々に、到着した錬金師さんが武器をその場で準備してくれました」

鉱夫長「抵抗力が高いをの考えられるから、錬金用品で特殊な加工を施したのをすぐに作るからと」


錬金術師「…見せてくれ!」グイッ

カチャカチャッ…

錬金術師「こ、これを短時間で!?何て完璧な仕上がり、魔石を利用した魔力を放つ装備か…」

錬金術師「ここまでのものを作り上げる錬金師…いるのか…」


鉱夫長「"女錬金術師さん"が早急に準備して下さったんです」

 
錬金術師「…」

錬金術師「母が…ここに?」ピクッ


鉱夫長「はい」

錬金術師「…マジ?」

鉱夫長「はい」


錬金術師「…」

銃士「?」

新人鉱夫「?」


錬金術師「なぁ、あとはその武器がありゃスライムは倒せるよな?」チラッ


スライム『…』グニグニ

 
鉱夫長「え、えぇまぁ…」

錬金術師「…新人鉱夫くん、銃士さん」ポンッ

銃士「?」


錬金術師「死闘をしてきた中、また悪いがあと少し…母が来る前に、俺をここから逃がしてくれないか」

銃士「へ?」

新人鉱夫「お母さんに会わないんですか?」

錬金術師「そ、それは別に気にしないでくれ。早く逃げねば!」ガタガタ

銃士「急にどうしたの?」


錬金術師「ま…待てっ!母がいるっつーことは…それを伝えた奴がいるな…」ピーン

錬金術師「まさかとは思うが、親父も一緒に来たり…じゃなかったら俺がここで事故に巻き込まれたなんて…」ブツブツ

 
銃士「一体どうしたの?落ち着いてよ!」

錬金術師「まじで逃げよう、早く…いででっ!」ズキズキ

ググッ…

銃士「あっ、ちょっと無理しないの!傷がひどいんだから!!」


錬金術師「親父もだが、母親も俺は苦手なんだよ!!優しいのは優しいんだが、ちょっと違う優しさっていうか!!」

錬金術師「嫌いじゃないが、今の俺を見たら絶対に…」


…ザッ!!

女錬金術師「"俺を見たら絶対に…"なんだい?」ニコッ


錬金術師「で、でたー!!!」

 
タッタッタッタッ…

女店員「あ…あぁぁっ!店長ぅぅ~!!」

錬金術師「あっ!」

女店員「ぶ、無事だったんですね、良かったぁぁぁ~!!」

ダダダッ、ダキッ!!

錬金術師「おふっ」

女店員「し…死んじゃったのかと、思って…うぅぅ…」


錬金術師「人を勝手に殺すな!」

女店員「無事でよかった…店長…」グスグス


錬金術師「いつっ…」ズキンッ

女店員「?」

 
銃士「女店員さん、足を見てやって」

女店員「え?」チラッ

…ジクジク…ドロッ…

女店員「!?」


錬金術師「ちょっとバカやってなぁ、さっきまで痛みすら通り越していたんだが…」

錬金術師「助かったと安心したら、また痛みがぶり返してきたわ」ハハハ


女店員「ちょちょちょ、笑いごとじゃないでしょこれ!」オロオロ

錬金術師「大丈夫だって。すぐ死ぬわけじゃないし」

女店員「そういう問題じゃないぃ!」

 
ザッザッザッ…

親父「随分な事故に巻き込まれた割りには、生きていたようだな」

錬金術師「はぁ…傷の痛みが増しそうな方までいらっしゃる」

親父「ふん」


銃士「…何だかんだで心配してみんな来てくれてるじゃない」

銃士「いい家族に見えるけどね?」


錬金術師「どうだかな…。っていうかそれより早くここから逃げー…」

…ガシッ!!

錬金術師「ひぃっ!」

女錬金術師「忙しそうなところ悪いんだけど、ちょっといいかい?」ニコッ

錬金術師「えっ」ドキッ

 
女錬金術師「見たところ、その傷はスライムにやられたもの。応急処置をなぜしてないんだい?」ゴゴゴ

錬金術師「そ、それはココに辿りつくまでの時間を考慮しつつ、応急処置を行う場面ではないと判断して…!」

女錬金術師「日本語がバラバラだねぇ。応急処置を出来る道具は十分にあったはずだよ?」グイッ

錬金術師「ひ、ひぃぃ!」


女錬金術師「銃士さんといったかい。その銃の火炎弾、ちょっと1発もらえるかな」

銃士「へ?あ、いやいいですけど…どうぞ」スッ

女錬金術師「これを使えば、スライムの溶解による感染症を防ぐ効果もあることを知ってたはずなんだけどねぇ」

カチャカチャッ…サラサラッ…


錬金術師「ま、待て!話せば分かる!それだけはやめ…母さん力つえぇ!!」グググッ

女錬金術師「毒による化膿が始まってるじゃないか、早く傷口に処置しないと」

ググッ…ミシミシッ!!

 
女店員「あわわ…」ガタガタ

銃士「な…なな…」ブルブル

新人鉱夫「ひぃぃ…!」

親父「…」プイッ


女錬金術師「火炎薬莢の中身を開けて、傷口に落として火をつけて…と」

女錬金術師「気絶したら運んであげるからね」ニコッ


錬金術師「や、やめ…!」

…カチッ…

錬金術師「あぁぁぁっ!!」

 
ボォンッ!!!ジュウウウッ…!!!

錬金術師「」

ドサッ…!


女錬金術師「あら…本当に気絶しちゃったよ」


銃士(そ、そういう事だったか店長…。安らかに眠ってくれ…)

女店員(合唱…)

新人鉱夫(地獄から抜け出したのに、地獄にいってしまわれた…)


…………
………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

本日はここまでです、有難うございました。

皆さまありがとうございます。

おふっ…、実は誤字をしていたのは気づいていたのですが、修正前に書き込み…
更に書き込んだ誤字を忘れていたという事態。申し訳ないです。

投下、開始いたします。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…パチッ

錬金術師「…」

錬金術師「どこだ、ここは…」ムクッ


女店員「あっ、店長!」

錬金術師「お?」

女店員「目が覚めたんだ…良かった…」

 
錬金術師「…俺は気絶してたのか。ここは…どこだ?」


女店員「鉱山の怪我人が運ばれる治療室。一等室なんだって」

女店員「足には痛み止めを塗ったから、少し落ち着いてると思うんだけど…大丈夫?」


錬金術師「大層な扱いでございますな。足は今までほど痛くないが…俺はどれくらい眠ってたんだ」


女店員「3、4時間かな?女錬金術師さんが、すぐに目覚めるから大丈夫だって言ってたんだけど…」

女店員「心配だったから傍にいたんだ」


錬金術師「…そうか。ありがとな」

女店員「ううん」


錬金術師「他の人らはどうした?」

女店員「事故に巻き込んだ人らの補償とか、地下の状態とか、色々話があるみたいで管理人室だよ」

 
錬金術師「あれからずっとか!?」

女店員「なんか色々問題があるとかなんとか…」

錬金術師「仕方ない、俺らもいくか」ググッ

女店員「まだ動いちゃだめでしょ!」

錬金術師「…当事者がいたほうが話も進むかもしれんだろ」

女店員「そ、それはそうだけど…」


錬金術師「銃士やらを巻き込んじまったのは俺の責任もある」

錬金術師「勝手に動いて迷惑かけたのもな。とりあえず肩貸してくれ。管理人室にいこう」


女店員「う~ん…わかった」

………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 管理人室 】

コンコン…ガチャッ

錬金術師「失礼します」


管理人「あっ、店長さん!」


錬金術師「長く寝ていたようで、気分がすっきりしたぜ」フッ

女錬金術師「あのくらいの痛みで気絶していた子が何を言ってるんだい」

錬金術師「…」

 
銃士「店長、傷のほうはもう大丈夫なのか?」

錬金術師「大丈夫大丈夫。もう余裕で歩けるぜ」フッ


女店員「私に肩貸してくれと悲願した人が何を言ってるの」

錬金術師「…」


新人鉱夫「店長さん、改めてこんな事に巻き込んですいませんでした」

錬金術師「気にするなよ、無事でよかったぜ」フッ


親父「こいつは自分から足を突っ込んだんだ、いちいち謝ることはない」

錬金術師「…」


 
管理人「ま…まぁまぁ!こうして無事に会えたんだから良かったってことで!」

錬金術師「はは…。で、今はどういう話になってたんです?」

管理人「それが…」


親父「事故を起こしたのは管理人の不届きだ。管理人と現場の人間の解雇の話になっていた」

親父「それと、救出に向かうといって問題を起こしたハンターのギルドの脱退に関してだな」


錬金術師「はっ!?」


銃士「…。」

新人鉱夫「…。」

管理人「…。」

 
錬金術師「ちょ、ちょっと待ってくれ。それは…」

親父「おかしいことを言っているか?」

錬金術師「おかし…くは、ないけども…」


親父「管理人が前もって魔物の情報や、水量の調査を行っていれば被害は出なかったはずだ」

親父「その銃士とやらも、自らの行動で被害を増やしたのには代わりないだろう」

親父「もちろん、お前にも責任はあるのは分かっているな」ギロッ


錬金術師「か、管理人は仕方ないとしても、銃士の救出に関しては善意だろうが!」

錬金術師「それに新人鉱夫も、あんな状況じゃ仕方なかっただろう!」


親父「善意で起こした問題だから、責任はないというのか」

親父「新人鉱夫も、他の仲間が流されるのを黙ってみていたという。責任はゼロか?」


錬金術師「…そ、それは…」

 
管理人「いいんですよ、店長さん。自分の管理の不届きが事故につながったんです」

新人鉱夫「僕も、もっと勇気を出せば…」

銃士「…私の起こした問題だもの、仕方ないよ」


錬金術師「…地下で水に流された他の人らはどうなったんだ」


親父「全滅だ。軍から応援で調査したが、無残にも魔物に荒らされていた」

親父「元々、毒ガスが充満してるような天然洞窟で生き残れというのが無理な話だがな」


錬金術師「…っ」

 
親父「まぁ…これでも寛容なほうだぞ。大事な取引をさせてもらっている相手、全ての費用は俺が持つことにした」

錬金術師「…費用を持っても、この人らの普通の生活は戻らないんだぞ」

親父「そんなのは知った事ではない。責任は負う、それが普通だろう」

錬金術師「不届きは仕方ない。だけど、銃士は関係ないんだ…大目に見てくれよ!」


親父「なら、銃士のギルドに責任を負わせるか?」

親父「あなたのギルド員が面倒を起こし、その為に要救助者が遅れをとり、殺されました…と」


錬金術師「!」


親父「だから寛容だといっただろう。銃士はギルドに所属する技量がなかった、だから辞めろといったのだ」

親父「それだけで俺が責任の1つを負うというのだ。それ以上に何を望む」

親父「また同じような問題を起こしたら、困るのは銃士だけでなく…ギルド全体の信用にかかわるんだぞ」

 
錬金術師「…何も、言えねぇ…」ギリッ


親父「俺は仕事に戻る。それとお前の店だが…必ず結果を出せ」

親父「出せないのなら、あの時の賠償を全てお前に被せ、店にいれないようにする事も可能だ」

親父「その店に働いている、その大事な女店員も悪評でどこにも就職できないかもしれんな」

親父「では、失礼する」


ガチャッ…バタンッ…!


錬金術師「ぐっ…!」

女店員「店長…」

錬金術師「何が結果を出せだ、出してやるっつーんだよ!!」

 
…ガチャッ

親父「あぁ、そうだ。1ついい忘れたことがあった」

錬金術師「っと、戻ってくるのかよ!なんだよ!」

親父「お前らがもし、新人鉱夫を旧洞に逃がさなかったら…全滅していたかもしれんな」

錬金術師「あん?」


親父「あそこの場所、今やイービルアイの巣でな。救助隊が苦労したらしい」

親父「…そこの判断は少しだけ褒めてやろう。ではな」

ガチャッ、バタンッ!!


錬金術師「…ふん」

 
ガタッ…ゴソゴソ

女錬金術師「じゃ、私も自分の店に戻ろうかね。錬金術師、頑張るんだよ」

錬金術師「…わかってるよ」

女錬金術師「そういえば自動採掘道具も少し見せてもらったが、精進はしているようだね。安心したよ」

錬金術師「当たり前だ」


女錬金術師「それと…アイツの言葉は嫌味のようだけど、正しい」

女錬金術師「アンタは立派な大人だし、責任に関しては私がどうこう言う問題じゃない」

女錬金術師「だけど私はアンタの母親…、困った時は来ていいんだからね」


錬金術師「あぁ…」

 
女錬金術師「じゃあ…またね」

錬金術師「…じゃあな」


ガチャッ…バタンッ…


錬金術師「…」

 
管理人「じゃあ自分も辞表を書かないとなぁ…。次はどこに転職するか」ハハ

管理人「では、ちょっと本部や幹部に説明してきますので。失礼します」

ガチャッ、バタンッ


新人鉱夫「ぼ、僕は親に顔向けできませんよ…」

銃士「…ギルドを脱退か。素材の売買は安くなっちゃうけど、生活はまだ腕があるから大丈夫…なのかな」ハァ


錬金術師「…これからどうするつもりなんだ」

新人鉱夫「とりあえずクビですからね…。寮も出ないと…うぅ…」

銃士「元々家なき子だし…いいんだけどさぁ…。ちょっと立ち直るには時間がいりそう…」アハハ…

 
女店員「…」

女店員「店長、ねぇねぇ」


錬金術師「あん?」

女店員「あのさ…」ボソボソ

錬金術師「ん…」

女店員「これで…これだから…」ボソボソ

錬金術師「…」

女店員「…っていうのはどう?」


錬金術師「…い、いやいや。無理だって」

女店員「でも、見殺しにするのといっしょだよ?」

錬金術師「そりゃそうなんだが、いくらなんでも無理だ」

 
銃士「?」

新人鉱夫「?」


女店員「でも彼らがいれば、来月末には安定した収支が出るかも」

錬金術師「…それまでの金はない。週末に入るのは200万前後だが、純益とは違うだろう」

女店員「初月無料とか…」

錬金術師「労働とわりにあわねーだろ!」

女店員「だめかな…あはは…」


銃士「…何の話をしてるの?」

  
女店員「いっそのこと、うちで雇えないかなーって思いまして」

銃士「えっ、私たちを?」

女店員「はい。ハンターさんがいれば素材も集まるし、新人鉱夫くんがいれば鉱石も安定するし」

新人鉱夫「僕は、目の前の働き先があれば飛びつきますが…」

銃士「別にいいけど、住むところもないし…」


女店員「どっちも店長と一緒の倉庫とか…」アハハ…


銃士「そ、それはさすがに恥ずかしいかなー…」

女店員「恥ずかしい?」

銃士「あっ、そうか。私は女だと知らないんだっけ」

女店員「えぇっ!?」

 
錬金術師「そうそう。そいつ女性だぞ」

女店員「そ、そうだったの!?」

銃士「男装っぽいけどね。さすがに男に囲まれて住むのは恥ずかしいかな」ハハ…


錬金術師「それにお金も来月末まで出せないし、生活できないだろう」

女店員「む、むぅ…」


銃士「お金は別に貯蓄があるから、来月末まで待てるけど…」

新人鉱夫「僕も忙しかったですし、大丈夫ですよ」


錬金術師「金はあっても、安定して住むところがないだろう。宿暮らしという訳にはいかんし」

 
女店員「女性同士なら、私の一緒のアパートとかどうでしょ♪」

銃士「えっ」

女店員「別にかまいませんよ、シェアみたいなの少し夢だったりしたんです♪」

銃士「か、構わないならいいが。私も少しそういうのには興味があるし…」


新人鉱夫「そしたら僕は、店長と一緒に…?」チラッ

錬金術師「…店の少し広くなった倉庫だぞ寝る場所」

新人鉱夫「僕が一緒に寝ても構いませんか…?」

錬金術師「おい、誤解の生まれるような言い方はやめてください」

新人鉱夫「あっ、すいません!」

  
女店員「じゃあ決まりじゃないの!?」

錬金術師「…本当にいいのかよ」


銃士「行き場がない以上、面倒を見てくれるなら構わないよ。店長なら身を任せてもいいと思う」

新人鉱夫「同じです。僕でも、やれない事がないわけじゃないですし」

女店員「…ねっ?」

 
錬金術師「はぁ…。仕方ないな…」ポリポリ

女店員「そ、それじゃあ!」


錬金術師「はいはい。新しく店員、2名様をご案内…ですか」

 
女店員「…皆さん!」


銃士「うんっ。よろしくね、店長!」

新人鉱夫「一生懸命がんばります、よろしくお願いします!」

女店員「皆さん、よろしくお願いします!」


錬金術師「ふっ…これでバターピーナツを食べてサボる生活に戻れるな」ボソッ


銃士「…店長?」チャキッ

新人鉱夫「店長さん?」

女店員「店長?」ギロッ

 
錬金術師「あれっ、なんか雇ったの失敗だった気がする」


銃士「へぇ~…新しい店員の前で堂々とサボるんだ…」

銃士「暗闇で無理やり服を脱がされ、女性だとわからせるような行動をとっ…」


錬金術師「わーっ、わーっ!!」グイッ!!

銃士「もがもが!」

錬金術師「さぁみんな、頑張ろうな!」


銃士「ぷはっ、それでよろしい!」

女店員「…何かあったのね。あとで聞かせてもらおうっと…」ギロッ

錬金術師「さぁ皆さん、僕もやる気を出すのでドンドン頑張りましょうネ!!」

 
銃士「えっと…じゃあ、今日から何かするのか?」


錬金術師「いや、手続きだの引越し作業だの、休みたいとか色々あるしなぁ…」

錬金術師「週末明けに来てくれないか。来週の月曜日なんかがいいな」


銃士「それでお願いするよ。私は一旦ギルドに戻って、今回のを報告したりしてくるしね」

新人鉱夫「僕も色々ありますし、では月曜日にもう1度来ますね」

錬金術師「うむ。ではご苦労さん。またっ」


銃士「またっ!」

新人鉱夫「はいっ!」

ガチャッ…バタンッ…

 
錬金術師「…」

錬金術師「はぁ~全員行ったか。何かすげー面倒なことになってきたな」ポリポリ


女店員「まぁまぁ、これで規模も大きくなるし♪」

錬金術師「そりゃそうなんだが…」

女店員「あ、週末までに仕上げる鉱石も早くやらないといけないね」


錬金術師「決死の生還後に、もう仕事の話っすか」

錬金術師「あ~でも時間もないし、今日からやるか。新しい鉱石も手に入ったし」


女店員「うんっ」

錬金術師「じゃっ、店戻るぞ!」

女店員「…あ、待って」

 
錬金術師「うん?」

女店員「肩、貸すから」グイッ

錬金術師「くく…ありがとさん」


女店員「じゃあ、さっきの銃士さんの話をじっくり聞かせてもらいながら帰ろっか♪」

錬金術師「えっ」

女店員「銃士さんの暗闇の服とか全部聞こえてたからね♪」

錬金術師「ちょっ、まっ…」

………………
…………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

本日はここまでです。また、次回で最終回となります。
(今回は少し違う最終回ですので、詳細は明日に)

それでは、ありがとうございました。

沢山のコメント等、有難うございます。
投下の終了後、今後の展開はあとがきに載せるのでよろしくお願いします。

では、投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 週 末 】 

…ガチャッ!!

鍛冶屋「お久しぶりです。おりますか?」


モゾモゾッ、ヒョコッ、ヒョコッ…

錬金術師「いらっしゃいませ、お待ちしておりました」
 
鍛冶屋「あれ、足を引きずってますね…。どうかしたのですか?」

錬金術師「はは、恥ずかしながらケガをしてしまいまして」

鍛冶屋「あら…、大丈夫ですか?」

錬金術師「大丈夫ですよ」ハハ

 
鍛冶屋「そうですか、それならいいのですが…」

錬金術師「えっと、鉱石の件に関してですよね?」 

鍛冶屋「はい。週末にご用意して頂けているということで、来てみたのですが…」

錬金術師「もちろん準備しておりますよ。女店員ー!」


女店員「はーい!」

モゾッ…ドサッ!!


錬金術師「このケガのせいで、全部自分がやり切れませんでした」

錬金術師「ですが、この店員も相当な腕前なので手伝っていただきました。問題はないと思います」


鍛冶屋「ほぉ!店長さんがそういうなら大丈夫でしょう、お幾らでしょうか?」

 
錬金術師「それがその、一部稀少鉱石も入手しまして…」

鍛冶屋「!」

錬金術師「詳細はまとめたので、こちらをご覧ください」ペラッ


鍛冶屋「どれどれ…」

鍛冶屋「…」

鍛冶屋「…ほう、これは…」


錬金術師「高額なものもあるので、全てを買っていただくと250万ゴールドになります」

鍛冶屋「はは、これじゃ持ってきた現金じゃ足りませんね」

錬金術師「選んでいただいた物だけ買い取っていただいても結構ですので」

 
鍛冶屋「小切手での支払いが可能なら、買わせて頂きますよ」

錬金術師「おぉ、それは有難い!」

鍛冶屋「いえいえ、それじゃあちょっと準備しますので…」

ゴソゴソ…


錬金術師「…」

女店員「♪」


…コンコン

錬金術師「おや?」

女店員「鍛冶屋さんに次いでお客さん?」

 
ガチャッ、ギィィ…

銃士「やっ、店長!」

新人鉱夫「こ、こんにちわ~」


錬金術師「…お前ら!来るのは明日だろ?」

銃士「早く用事も終わって暇になったし、今日から働こうかなと思って」

新人鉱夫「同じくです。迷惑でしたか…?」


錬金術師「いや迷惑じゃねーけど、明日からの準備で進めてたんだが…」

銃士「今日からでも大丈夫よ。私のする事は冒険者やハンター系の、今までと一緒のことでしょ?」

新人鉱夫「僕は僕で、鉱石関係とかでしょうし」

 
錬金術師「ん~…まぁ待ってくれ。今の取引が終わったら言うわ」

銃士「ほい」

新人鉱夫「はいっ」


鍛冶屋「よし…これでサインは終わりました。急にお店が賑やかになりましたね?」

錬金術師「恥ずかしながら、規模を少し大きくすることに"なってしまいまして"」

鍛冶屋「…なってしまいまして?」

錬金術師「まぁ気にしないでください」ハハ

鍛冶屋「はは、そうですか」


錬金術師「あ、そうそう。店員の増員で、鉱石のルート供給の確保が現実的になってきました」

鍛冶屋「おっ!」

 
錬金術師「この新しいメンバーで、色々試すつもりです」

錬金術師「ですから、もう少しだけお待ちください。出来る限りルート供給を確保するつもりですので」


鍛冶屋「よろしくお願いします!」

女店員「では、こちらが今回の鉱石になります」

ゴソッ…ドスンッ!!

鍛冶屋「おっとっと…ありがとうございます。では、次はいつ頃に来れば宜しいでしょうか?」


錬金術師「そうですねぇ、こちらから早い段階で連絡をいれるのでお待ち頂ければ」

鍛冶屋「わかりました。頑張って下さいね」

錬金術師「ありがとうございます」

 
鍛冶屋「それじゃ、失礼します」ペコッ

ガチャッ…バタンッ…


錬金術師「ふぅ~…。取引は何かと疲れるよなぁ。見てただけのお前らもそう思うだろ…」


女店員「ありがとございましたっ!」

銃士「ありがとうございました」

新人鉱夫「あ、ありがとうございましたっ!」


錬金術師「…」

 
錬金術師「…」

錬金術師「…」


錬金術師「…ありがとう、ございました」

…ペコッ

  
女店員「…」クスッ

銃士「ふふっ」


新人鉱夫「あ、そういえば店長さん。管理人さんが、今の職場を自主退社になったじゃないですか?」

錬金術師「うむ」

新人鉱夫「別の鉱山で、補助からですけど働けるかもしれないとかなんとか言ってました」

錬金術師「へぇ、よかったじゃないか」

新人鉱夫「だから、是非そのうち挨拶にでもって」

錬金術師「ま、そのうちな」

 
銃士「さて…じゃあ、仕事でも教えてもらおうかな!」

錬金術師「どうするかねぇ…。つかその前に、今日の帳簿をつけておくわ」

女店員「帳簿?まだ店は開けてるでしょ?」

錬金術師「んー…折角だし、歓迎会を開こうかと」


銃士「へぇ、嬉しいね」

新人鉱夫「優しいですね!」


女店員「ちっちっちっ…皆さん…」

銃士?」

新人鉱夫「?」

 
女店員「店員の先輩として教えておきます。これは…」

…グイッ!!

錬金術師「おふっ!」

女店員「ただサボりたい、店長の間違った美学です」

錬金術師「ちょっと女店員さん」


銃士「なるほど、メモをしておこう」

新人鉱夫「覚えておきます!」

錬金術師「ちょっと君たち」

 
女店員「というわけで、歓迎会は夜!今は仕事、仕事!」

錬金術師「仕方ねえなあ…じゃあ、全員が揃ったのを簡易に祝して…ほいっ」


…ドンッ!


女店員「これってこの間、店長が造ったポーション?」


錬金術師「これから宜しくってことで、少し手を加えた、美味いポーションにして準備しといたんだよ」

錬金術師「副作用は出来るだけ抑えておいたから、ただ元気が出るポーションにしたから安心しろ」


女店員「無駄に準備がいいんだから」ハァ

錬金術師「…それって褒めてるの?」

女店員「もちろん、いい意味で♪」


錬金術師「くく、そうか。じゃあ、それぞれ持って、乾杯するか」

 
銃士「いいね!」スッ

新人鉱夫「こういうのは初めてですよっ」スッ

女店員「じゃあ私はコレッ♪」スッ


錬金術師「じゃ、俺はこれで。みんな、いいか」スッ


女店員「うん」

銃士「いつでも」

新人鉱夫「はいっ!」

 
錬金術師「まぁ…その、色々あると思うが…」

錬金術師「これからよろしくな!乾杯っ!」


女店員「乾杯!」

銃士「乾杯!」

新人鉱夫「乾杯っ!」

…カァンッ!!


女店員「♪」グビッ

銃士「ん~」グビグビ

新人鉱夫「…」ゴクゴク


錬金術師「…」ジー

 
女店員「ぷはっ!美味しい~!」

銃士「ブドウかな?すごい美味しい…店長は料理にも長けてそうで羨ましいよ」プハァッ

新人鉱夫「これで元気になれるとか、美味しくてすごいです!」


錬金術師「…え、お前ら"全員美味しいの?"」

女店員「だって美味しく仕上げたんでしょ?」

錬金術師「ま、まぁな。それじゃ、俺はちょっと全員の仕事の準備を」ガタッ

女店員「…待って」ガシッ

錬金術師「ひぃっ!」

 
女店員「"全員美味しいの?"って、どういう意味か説明してもらおうかなぁ…」

錬金術師「うまかったら、うまかったでいいじゃないの!」

女店員「気になりますよねぇ、銃士さん」

銃士「…確かに気になる物言い。教えてもらおうか」チャキッ


新人鉱夫「…じょ、女性の皆さんが怖いです!」ガタガタ


錬金術師「何でもないです!本当に何でもないです!」

女店員「…銃士さん、拷問の手段って知ってます?」

銃士「最初から激痛がいいか、徐々に激痛がいいか」


錬金術師「痛いのしかないじゃない!ちょっと待ってぇ!は、話すから!」

女店員「なぁに?」ニコッ

 
錬金術師「そ、そのな…素材を手に入れる際に…」

錬金術師「一つだけ、想像しがたい味のがあって…ポーションの強化練成したんだけど…」

錬金術師「味見したら、とてつもない酸味で、かつ緑くさい…もう、想像できない物が…」


女店員「それが、店長の目の前にあるコレね…」

錬金術師「はい」

女店員「それを黙って、私らの誰かに飲ませようとしてたわけだ」

錬金術師「はい」


女店員「…飲んで」

錬金術師「はい。…えっ?」

 
女店員「飲んで」ニコッ

銃士「男らしさを見せるんだ、店長」ニコッ

錬金術師「助けて新人鉱夫!!」


新人鉱夫「頑張って下さい…」ブルブル


女店員「さぁ…どうぞ…」ググッ

錬金術師「あっ、ちょっと待って、そんな近づけないで、あっ…ちょっ…」


女店員&銃士「召し上がれ♪」


錬金術師「…いやぁぁっ!!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
面倒くさがりの店長が経営する、とある町の小さなお店。

今日も明日も経営難で、お客は1人来れば万々歳。

店長は今日も、お店でのんびりバターピーナツをポリポリ頬張る。

そして店員たちに怒られる…。


新たなメンバーたちと繰り広げる経営劇は、どうなっていくのか。


…それはまた、次のお話で…。

 
【 現時点でのお店の経営収支 】

■収入
・販売関連340万ゴールド

■支出
・バターピーナツ生成器40万ゴールド
・倉庫拡張費用70万ゴールド
・鉱山のバイト代10万ゴールド
・ポーション素材(アカノミの花/アカノミ)3万6000ゴールド
・火魔法耐性の金属片16万4000ゴールド

■収支合計
・250万ゴールド

 
【 現時点でのお店の経営情報 】

■お店
・平屋1階建て
・少し広い倉庫

■店員関連
・店長補佐1名
・ハンター1名
・鉱石採掘師(鉱員)1名

■販売物
・採掘道具20万ゴールド
・鉱石類(鉄鋼1000、銀5万、エレクトラム20万ゴールド)
・ライフマナ回復ポーション5000ゴールド
・バターピーナツ(サービス)
・装備類の修理等(時価)

 
It is not time to close a shop!
―――――――――――――――――――――――
【錬金術師「面倒だけど経営難に立ち向かう事になった】
―――――――――――――――――――――――
Continues to the next story....Don't miss it!
 
 
【 E N D 】

 
■あとがき

読んで頂きまして、有難うございました。

打ち切りのように終えましたが、毎回"1000"以内の書き込みに抑えようとしていることで、

区切りのいい部分で「一旦終了」という形で最終回とさせて頂きました。


現行中、何度か書かせて頂きましたが最近とても多忙になり、満足な更新が出来ない状況でした。

それでも読んで下さった方々に、改めて感謝致します。
 
 
前作にも言えることですが"1000以内"の終了を目安としてしまっていることで、

後半の展開が加速気味になったりしているのは、読んで下さる方々に申し訳ないと思っております。

 
また、新作を含めて書かせていただく場合はコチラ等にご報告させて頂きます。


尚、過去にないことなのですが、"新経営編"として、

こちらの作品は今後、新スレを含め続編を"不定期"で書いていくつもりではありますので

よろしくお願いいたします。

(多忙で今までのペースで掲載が出来なくなるいうのも最終回の理由でありますが)


それでは、ありがとうございました。

 
>>755
追記

「合唱」が「合掌」で修正です。
申し訳ありません。

某サイトから おもしろかったのできました
次回作も楽しみに待ってます

私も某サイトから。

面白い!!続きをひたすら希望します!!

皆様、沢山の感想等、大変嬉しく思います。
本日より、不定期で連載を再開しますので、どうぞよろしくお願いいたします。

>>846 >>847
おぉ…ありがとうございます。ちょっとでも楽しんでいってくださいネ!


まず、気になっていた点の<修正分>をあげておきます。

>>773

錬金術師「ちょ、ちょっと待ってくれ。それは…」

親父「おかしいことを言っているか?」

錬金術師「おかし…くは、ないけども…」


親父「管理人が前もって魔物の情報や、水量の調査を行っていれば被害は出なかったはずだ」

親父「その銃士とやらも、自らの行動で被害を増やしたのには代わりないだろう」

親父「もちろん、お前にも責任はあるのは分かっているな」ギロッ


錬金術師「か、管理人は仕方ないとしても、銃士の救出に関しては善意だろうが!」

錬金術師「それに新人鉱夫も、あんな状況じゃ仕方なかっただろう!」


親父「善意で起こした問題だから、責任はないというのか」

親父「新人鉱夫も、他の仲間が流されるのを黙ってみていたという。責任はゼロか?」


錬金術師「…そ、それは…」

>>774

管理人「いいんですよ、店長さん。自分の管理の不届きが事故につながったんです」

銃士「…私の起こした問題だもの、仕方ないよ。それに自分で辞めようと思ったんだ」

新人鉱夫「僕もです」


錬金術師「…自分で?」

銃士「うん。今回のようなミスがあったら、ギルドに迷惑かけちゃうから…」

新人鉱夫「僕も、僕がもっとしっかりしていれば皆を救えたかもしれないと思ったので…」ブルッ


錬金術師「…そんな事する必要ないだろう!銃士は次に間違いのないようにすればいい!」

錬金術師「新人鉱夫は、お前のせいじゃないと認識するべきだ!事故は事故、防ぎようがなかった!」

>>775

新人鉱夫「…いいんですよ」

銃士「大失敗には変わりないからね」

錬金術師「…っ」


親父「自分から責任を感じて辞めるといってるんだ。別に気にすることはないだろう」


錬金術師「…地下で水に流された他の人らはどうなったんだ」


親父「全滅だ。軍から応援で調査したが、無残にも魔物に荒らされていた」

親父「元々、毒ガスが充満してるような天然洞窟で生き残れというのが無理な話だがな」


錬金術師「…っ」

>>776

親父「俺は仕事に戻る。それとお前の店だが…必ず結果を出せ」

親父「出せないのなら、あの時の賠償を全てお前に被せ、店にいれないようにする事も可能だ」

親父「その店に働いている、その大事な女店員も悪評でどこにも就職できないかもしれんな」

親父「では、失礼する」


ガチャッ…バタンッ…!


錬金術師「ぐっ…!」

女店員「店長…」

錬金術師「何が結果を出せだ、出してやるっつーんだよ!!」

>>780

管理人「じゃあ自分も辞表を書かないとなぁ…。次はどこに転職するか」ハハ

管理人「では、ちょっと本部や幹部に説明してきますので。失礼します」

ガチャッ、バタンッ


新人鉱夫「ぼ、僕は勢いよく辞めると言ったものの、どう親に顔を出していいか…」

銃士「…ギルドを脱退か。素材の売買は安くなっちゃうけど、生活はまだ腕があるから大丈夫…なのかな」


錬金術師「本当にやめるつもりなのか?これからどうするつもりなんだ」

新人鉱夫「寮も出ないといけませんし、どうするから少し考えます。鉱員としては再就職できると思いますし…多分」

銃士「元々家なき子だし、いいんだけどさぁ。どうするかは風の吹くところかな…」アハハ…

修正分は、先ずはこれで終了です。

それでは、短めながら本編の再開をいたします。

 
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 1週間後 】


…ボー

錬金術師「…」

錬金術師「…」

錬金術師「…」


錬金術師「暇…だな」

 
ポリポリ…モグモグ…

錬金術師「ふーむ…」

錬金術師「とりあえず店員らが帰ってくるか、客来るか…それまで暇だな」

…ポリポリ

錬金術師「この美味いバターピーナツが、今の俺のささやかな楽しみか」ポイッ

ポリッ…ゴクンッ

…ガチャッ!!

錬金術師「おっ!?客ですか!?いらっしゃいませー!」ガタッ


女店員「私でした」

銃士「ただいま」

新人鉱夫「ただいまです!」


錬金術師「あっ、君らでしたか…。で、どうだった?」

女店員「一週間もかかったけど、私がやってきた基本業務の説明は一通り終わりかな?」

錬金術師「1週間も説明がかかるくらい俺の知らない所で営業してたのに、この客足だ」プッ

女店員「バターピーナツ作るやつ、怖そうかな♪」

錬金術師「女店員さん、さすがですわ。俺の知らないところでの営業努力、賞賛ものですわぁ…」スリスリ

 
女店員「よろしいっ」


錬金術師「…」

錬金術師「まぁいいです…。でさ…銃士と新人鉱夫、ちょっと来て」

銃士「ん?」

新人鉱夫「何でしょう?」


錬金術師「今更なんだけど、これ雇用契約書。目通しといて」ペラッ

銃士「やっとか!どれどれ…」

新人鉱夫「えーっと…」


錬金術師「ぶっちゃけ、今のうちじゃソレが最低金額。あとは歩合制にするつもり」

 
銃士「最低15万…、充分だよ」

新人鉱夫「もっと少ないのかと!」

錬金術師「あ、よーく見て。営業厳しいとき色々変動するような契約書だから。"今のうち"ってのは、本当に今のこと」


銃士「何…」ペラッ

銃士「…」

銃士「な、なるほど。最低金額の誤差が起きるが、その誤差はゼロまであると…」ピクピク


錬金術師「まぁ逆に、伸ばす時も無限大って考えくれ」

錬金術師「適当な経営な部分もあるし、君らが働いた分、還元はするつもりだし」

 
銃士「ふふっ、なるほど。今までの私の仕事とそう変わらないわけだ」

新人鉱夫「僕もそうですね」


錬金術師「君らにやってもらう事も今までと変わらないつもりだ」

銃士「わかった。素材収集だな?」

新人鉱夫「僕は鉱石採掘…と」

女店員「私は店長の補佐かな」


錬金術師「ま、そうだな。俺が欲しい物があるときはそれをメインで集めてもらうことになると思うが」

錬金術師「あと、えーと…そうだ。君たちに渡すものがある」ゴソゴソ

 
銃士「渡すもの?」

女店員「変なのじゃないでしょうね」

新人鉱夫「なんでしょうかっ」


錬金術師「まずは新人鉱夫。自由採掘許可証はお前に預けとく」ポイッ

新人鉱夫「あ、はいっ!」パシッ

錬金術師「あと、このパーツを自動採掘機に繋げろ。前の時間の1,5倍、採掘の魔力が持つようになる」

…ゴトンッ!!

新人鉱夫「本当ですか!?」

錬金術師「パワーも微量にあがるし、使いやすくなると思うぜ」
 
新人鉱夫「わかりました!ありがとうございます!」

 
錬金術師「んじゃ次は銃士。これ、作っといたぞ」

ゴソゴソ…、カチャカチャッ

銃士「これは?」

錬金術師「氷結弾、火炎弾、雷撃弾。それぞれ100ずつ準備したから遠慮なく受け取っちゃって」

銃士「おぉ…ありがとう!」

錬金術師「あと、足りなくなりそうなら幾らでも作るから」


女店員「無駄に準備いいんだから…」

錬金術師「無駄て」

女店員「いい意味でね♪でも、そういう所は店長の良いところだと思うよっ」

 
錬金術師「ふっ…もっと褒めろ。敬え、わが前にひれ伏すがいい!!」

女店員「バターピーナツ生成のやつを壊…」

錬金術師「申し訳ございませんでした。あとな、お前にはこれをやるよ」ゴソゴソ

女店員「えっ、私にも何かっ?」ウキッ

錬金術師「くく…これだ!店長補佐のネームカード!」バッ

女店員「いらない」


錬金術師「…」

銃士「おぉう、一刀両断…」

新人鉱夫「…ひぃぃ!」

 
女店員「…」ハッ

女店員「う、うそうそ!ありがとう!きちんと付けるから!」


錬金術師「まぁ…これは冗談なんだけどな」ポイッ

女店員「」

錬金術師「ははっ!さすがにこんなの使い道ねーしな!」


女店員「やっぱりバターピー…」

錬金術師「ごめんってば!!本当はこっち、これだから!」スッ

ジャラッ…キランッ!

女店員「何、これ…?ネックレス…?」

銃士「うわっ、キレイな石が付いてるな」

新人鉱夫「それは、ロッククリスタル!…ですよね?」

 
錬金術師「新人鉱夫、正解。よっぽど高いもんじゃねーが、俺が精錬したやつだ」

錬金術師「ボーナスとまではいかんが、新しい店員も迎えて、その何だ…、初代店員記念で一番力をいれた」ハハッ

キラキラ…

銃士「凄いな…、さすがの腕前だ店長」

新人鉱夫「ロッククリスタルは透明度が高い分、割れやすくて難しいんですよ…」


女店員「これ、私がもらってもいいの…?」


錬金術師「お前の為にだっつーの。正直、使い道のあるプレゼントが思い浮かばなかったから、アクセにした」

錬金術師「普段お前はネックレスとかつけねーし、どうしたもんかと悩んだんだが…どうだろうか」

 
女店員「嬉しい…ありがとう…。大事にするね…」ギュッ

錬金術師「ネームプレートはいらない?」

女店員「うん、いらない…」

錬金術師「」


銃士「…あははっ!」

新人鉱夫「はは…」


錬金術師「…無理やり付けてやる!」グイッ!!

女店員「きゃーきゃー!」

 
錬金術師「ぐっ、この!」グイグイッ

女店員「ちょっ、どこ触ってるの!!変態!!ばかぁぁ!!」ブンブン

ギャーギャー!!


銃士「…仲のいいことでね」

新人鉱夫「…」

銃士「…」

新人鉱夫「…いいなぁ」ボソッ


銃士「…」

銃士「新人鉱夫クン、お姉さんにも同じことやってみる?」ニヤッ


新人鉱夫「え、えぇぇ!?」

 
銃士「赤くなって、ウブだねぇ!」


錬金術師「ん?ウブ?」ピタッ

銃士「ん?」


錬金術師「銃士、お前さ…そう言ってるけどさ」

錬金術師「あの時、服を脱がさないでーとか暴れ…」


銃士「わーっ、わーっ!!今後はお姉さまキャラで通すつもりなんだから!」

錬金術師「くくく…」


女店員「もーっ!!何なんですか、このお店はぁぁ!」


錬金術師「…こんな感じが俺の店、なんじゃねーの?」ハハハ!!

女店員「…はぁ。賑やかで、楽しくていいとは思うんですけどね…」

錬金術師「ん~…まぁ、仕事は仕事でやるけどな。さて、一息いれたところで早速の業務でも言い渡すかねぇ」ペラッ

 
銃士「…おっ、いよいよ仕事だね」

新人鉱夫「何でも言ってください!」

女店員「…」


錬金術師「では、仕事の内容のはっぴょ…!!」

…コンコン!!


錬金術師「…」

錬金術師「…」


…コンコン!!

 
銃士「…お客じゃないのかな」

女店員「何てタイミングの悪さ」

新人鉱夫「こういうのを、持っているっていうんですよね!」


錬金術師「ぐ…」ブルブル

錬金術師「はい、どうぞ!開いてますよ!!」


…ガチャッ!!

???「失礼します~」

本日はここまでです。ありがとうございました。

皆様ありがとうございます。
誤字等の指摘、助かります。

また、1000までいってから新スレをたたせようとしましたが、
展開的に繋がりが見にくくなるため、やはり新スレをたたせて頂きました。
錬金術師「経営難に立ち向かう事になった」女店員「その2!」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1399980352/l50)

よろしくお願いします。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年05月01日 (木) 01:02:39   ID: xTtS0l9Q

新作期待してる!

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