【艦これ】18歳なりたて提督 対 酒を飲ませたがる軽空母(水母)軍団 (67)

××鎮守府の提督は、今年で18になる。

「艦隊の総司令官」という地位につくには若すぎる年の彼であったが、しかし何のこたぁない。ただの親のコネである。七光りである。

だから学生でいうと大体高校生に当たるであろう提督の軍事における才能はまぁ、なんというか、無能といっても語弊はなかったのだがそこはそれ。××鎮守府は敵も寄り付かないそれはそれは辺境の地であった。

しかも当の本人は親から甘やかされたただの馬鹿、「え? 俺が提督? ××鎮守府で一人暮らし? ウェーイww」とかいってノリノリである。

この馬鹿の顔色が真っ青になり、任命した父親の責任が問われる日があるだろうと予想した人間もいたのだが、しかしやっぱり敵は来なかった。ヲ級もレ級も来なかった。

そういう訳で、××鎮守府の高校生提督はその存在を許されているのである。


※軍事系には疎いのでそこらへんの設定お察し

※時代は現代設定

※お酒は二十歳になってから




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1396625244



―朝―


チュンチュン


提督「……ねっみ」


鎮守府の朝は早い。というか軍隊というやつの朝は基本早い。

しかしこの提督は前述の通り高校生である。遊びたいざかりの彼にとっては、深夜こそがメイン・フィールドだ。

だからいつだって、朝は提督にとって辛い時間帯だ。


提督「……さっさと歯磨いて、服着替えてメシにすっか……」


朝日の輝かしい光と湿気を少し孕んだ潮風を運んでくる窓を背にして、提督はベッドからむくりと起き上がる。


提督「……あ」


――と、そこで彼は気づいた。

そう。何を隠そう今日は彼の誕生日であったのだ。


提督「ヤベー、俺今一瞬自分の誕生日忘れかけてた。ボケてんのかな、老けたんかな……」ブツブツ


男にとって、18歳という年齢はツタヤの暖簾は堂々とくぐれるわコーヒーブラックで飲んでもいきがってると思われないわ車の免許は取れるわなんやらかんやら……でまぁとにかく結構デカい一つの区切りではないか。

そんな自分に訪れた新たなる一つの区切りを忘れてしまうとは何事か――そう思いながら、提督は服を着替え始めた。


提督「(俺が、18ね……)」


これからこんどこそ、正真正銘、ホントのホントに大人の仲間いりなんだなぁ……なーんてことを考える提督。

しかし彼は知らなかった。今日と言う彼の18歳の誕生日が、どのようなものになるかなんて――。




―ちょっと後:食堂―


千歳「……」ニコニコ

提督「……」


朝飯の時間である。

提督たるもの(そして成長期たるもの)たくさんご飯を食べなさい……という××鎮守府のちょっと過保護な一同によって、彼の朝食はいつだって豪華だ。


提督「……あの、千歳さん」

千歳「はい? なんですか、提督?」ニコニコ


しかし何やら今日は違う。具体的には、飲み物が違う。

いつもは果物系のジュースが置かれる彼のテーブルの左側。そこには――何だか凄いいかつい名前をした茶色の一升瓶がでんと鎮座していたのだ。


提督「こ、これは……なんなんでしょうかね? コレ……」


提督はその茶色くてイカついナイスガイ(一升瓶)の不自然さに耐えかねて、思わず秘書艦娘の千歳さんに尋ねた。

彼女は先程から一升瓶にツッコミもせず、むしろ笑顔をいつもよりきらり輝かせていて――それがまた彼には不安だった。まさかこれを飲めと言うんじゃないだろうかという気がしてならなかったのだ。


千歳「うふふふ……コレ、ですか?」ニコニコ

提督「は、はい。コレ」

千歳「うふふふふ」ニコニコ

提督「(何だこの人……怖い……)」


千歳おねぇは中々答えてくれなかった。ただ笑顔をさらに輝かせて、「もう、分かってるくせに」みたいな笑い声を発するだけであった。

勿論、この一升瓶の正体なら提督も知っていた。だが問題なのはこれを朝食の場に置いた意味である。




提督「ま、まさか俺にこれを飲めとか、そういうアレなんですかねこれ」

千歳「……」ニコニコ

提督「(あ、なんか本当にそうっぽいぞこれ)」


さっきから「それ」だの「あれ」だの「これ」だの指示代名詞が多いが、それだけ提督の困惑が表現されているということにしていていただきたい――さて。

彼は確かに混乱していた。眼前にいる秘書艦のお姉ちゃんが酒好きなのは知っていたが、何故今日は自分が朝から飲むことになっているのか。

もしかしてこの人酔っているのではと思った18歳の提督であったが――しかしここはまず、普通の対応をするべきであろうと思った。


提督「い、今は朝ですよ!? こんな時間に呑んだら後々に支障が……」

千歳「そんなこと言って、提督に支障が出るような仕事なんてないじゃないですか」

提督「!!」


図星であった。


千歳「書類作業とかもぜーんぶ私達に丸投げしちゃうし」

提督「!!!」


図星であった。




千歳「うふふふ、でもいいんですよ。別に怒ってませんから。それよりも……ささ、お酌しますからどうぞ」

提督「い、いやいやいや! それでも今はマズイ……っていうか! 俺まだ未成年だし!」


提督の言葉は的を射ていた。彼は今日で18歳。まだまだ酒を呑むには二年ほど足りない。

悪い大学生ならもうお酒を飲んでいるだろうが、最近のサークルの新歓だってそんな悪いことはさせない……そしてついでに、彼は酒を呑んだことがない。

そういう訳で、彼のその否定の言葉はもっともであった。


提督「ホラ、俺やっぱそんな……仕事してなくても一応提督だし! やっぱ何? 軍隊のフーキが? 乱れちゃうっしょ!」

千歳「……提督」

提督「はい?」

千歳「私はね……提督の将来が不安なんですよ」ササッ

提督「はぁ」


千歳が、一升瓶を手に取りながら言う。


千歳「提督が将来もっと立派な地位に就いた時にね、付き合いで酒を飲むことがきっとあるでしょう……」キュッキュッ

提督「……」

千歳「そういった時に提督が酒に酔い潰されてしまわないか、私は毎日心配で心配で……知ってます? 海の男は皆、酒に異様に強いんですよ? そりゃもー歴戦の兵達は酒もグイグイいくんですよ?」キュッキュッ……ポン

提督「はぁ……だ、だからって朝に飲ませようとしなくても……」


一升瓶の蓋を開けながら、千歳は言葉を続ける。




千歳「私は提督のことが心配でこういう行動に出てるんです! ……いえ、私だけじゃありません……鳳翔さんや隼鷹さんも提督の将来を心配してるんです!」コポコポ…

提督「それっていっつも千歳さんと一緒に酒の付き合いしてるいつもの面々じゃあ」

千歳「しゃたらーっぷ! ……提督ももう18です。ここらが酒に挑戦してみるいい区切りなんじゃないかというのが私達の結論なんです!」コポコポコポ…

提督「そ、そこに俺の意思が介在する点は!?」

千歳「ないです!」コポコポコポ…

提督「えー!?」

千歳「ですからこれが私の、私達の提督に送る誕生日プレゼントなんです! ハッピーバースデー提督! はいどうぞ!」サッ


千歳は言いながら、提督にお猪口をずいりと差し出した。

彼はそのいきなりの行動に面食らったが――しかし知っていた。彼女の行動の真意を。


提督「……千歳さん。俺には分かってますよ」

千歳「……こ、このお酒を私も後でご一緒したいってことをかしら? もしそうなら流石提督、ご慧眼です……」

提督「いえそうじゃなくて……っていうかそういう魂胆だったんだ……千歳さん。実は別に俺のことを思ってとかじゃないんでしょう?」

千歳「!? な、なんのことでしょう?」

提督「どーせ昨日呑んでる時に、『いやーもうそろそろ提督もこの中に入れたいわねー』『もう18歳だしいけるんじゃないかしら』みたいなノリになったんでしょう!」

千歳「!!!」


彼の言葉に、千歳があからさまに動揺した。どうやら図星であったようである。




千歳「ま、まさか見破られるなんて……!」

提督「やっぱり……そんなこと昨日まで全然言ってなかったから変だと思った! 酔っ払いのノリ怖ッ!」

千歳「くそう、隼鷹さんが『誕生日を理由にして押し押しでいったら酒のんでくれるっしょ。飲ませたら後はまぁー……なぁなぁで?』って言っていたから成功すると思っていたのに……」

提督「そして酔っ払いの悪知恵が汚い! ……ええい!」


提督はそこで慌てて立ち上がり、千歳に背を向けた。逃げるんだよォォォーッの構えである。


提督「俺は自慢じゃないけど今まで酒とか飲んだことねーし、『酒は20まで飲まない』って決めてるんだ! 悪いけど千歳さん、その誘いは断らせてもらうぜ!」ダッ

千歳「ああっ……わ、私から逃げてもまだ第二第三の刺客が必ず現れますからね!」

提督「何ソレ怖い! ……くそう、こんな酔っ払いのしょーもねー理由だけで俺の『酒処女(バージン)』を奪われてたまるか! 俺の初飲酒はリーガロイヤルホテルの高級和食店と決めてるんだー!」


そうして18歳なりたてホヤホヤの提督は暁の空に向かって逃亡した。

果たして酒を飲ませたがる酔っ払いの延長線上の一同から、彼は逃れることができるのであろうか! 別に逃れんでもいいって? そりゃまぁそうだ!





ポツーン


千歳「……行っちゃった。じゃあとりあえず……」

千歳「このお酒、もったいないから飲みますか!」ニッ


こんなスレですいません 千歳おねぇがお酒自分で飲むのも大好きって設定最近知りました

軽空母とか水母とか大好きなんでそこらへんのキャラメインでやります >>1が満足したらオチに入って終了させようかと思います

とりあえず意味もなく安価します ↓1で会いたい【軽空母or水母】お願いします 次書きます 勿論千歳もう一度でも可です

それでは乙でした

どうも 安価で加賀と千代田きたんでいきます 加賀さんは軽空母ではないですが、折角なので書きます 一人ずつの量は少ないですが勘弁してください

あ、あと>>1は艦これの小説全然読んでません 何かあっちではボーキサイトの飯? とかあったらしいですけどこっちはまぁ皆食事も普通ということで……

後このスレは別に艦娘を酔わせるスレとかではないです ほんとです 酔ってる人もいるけど、皆そうではないです

―午前8時―


ガンダムでいうとトリントン基地のそれ以上ぐらい辺境の地である××鎮守府は、何故か土地面積だけは異様に広い。

提督は食堂から逃亡した後、走って走ってどこかの廊下にたどり着いていた。


提督「や、やれやれ……いくら仕事がないからって18になって酒盛りについていけるかってんだ……ん?」


ぶつぶつと呟いていた彼は、そこで廊下を歩く人影を発見する。

青袴が印象的であり、何故この××鎮守府にいるのかよく分からないエリート中のエリート艦娘。


提督「――加賀さん!」

加賀「……おはようございます、提督」


そう。皆大好き一航戦の加賀さんである。




―加賀の部屋―


加賀「……そうですか、それは災難でしたね」

提督「全く、仕事をしない俺がいうのも何だけどちょっと滅茶苦茶だよな本当!」


提督は加賀の部屋に移動して、事情を説明していた。

彼は加賀のことが嫌いではなかった。一航戦というエリートの彼女だったがその役職から抱かせるイメージよりかは遥かに付き合いやすいし、なにより機嫌がいい悪いの判断が割とあっさり可能だ。


提督「(大体いっつも決まった時間に飯を食って、その直後はご機嫌になってるんだよなこの人)」

加賀「私の顔に、何か」

提督「いえなんでも」

加賀「……とにかく、今は外に出るのはマズイでしょう。ここにおられたら如何ですか」

提督「え、マジで? いいの?」

加賀「緊急時ですから」

提督「おおー……」


きっと今日の朝食は加賀さんの好物が出たんだろう、と思いながら提督はその厚意に甘えることにした。




提督「へぇー、加賀さんの部屋ってこんなのだったんですか」

加賀「……少し、散らかっていますが」

提督「いや、全然綺麗だと思うけど(俺の部屋は魔界になってるしな、今のところ)」

加賀「……ところで、提督」

提督「はい?」


そうして殺風景な加賀の部屋に視線をきょろきょろとさ迷わせていると、唐突に加賀が声をかけてきた。

彼女はどこから取り出したか、炊飯器(象印製)を彼の前に置く。


加賀「話を聞いてると朝食も摂っておられないようですので、食事でもいかがですか」

提督「ええっ!? いや、それは嬉しいけど……て、ていうかその炊飯器は一体……」

加賀「自炊用です」

提督「え、でもいっつも食堂に行けばご飯が……」

加賀「自炊用です」

加賀「自炊、用、です」

提督「……そっか」


何か色々あったようだが……それよりも、提督にはもっと驚くことがあった。目の前の艦娘の加賀というやつは、彼の知る限り「人に優しくする」ことはできても「人に自分の飯を食わせる」ということはしないタイプである。

そんな食に対する心意気ならゴローちゃんにも負けない彼女が、今提督に「ご飯どうですか?」と勧めてくる。


提督「(な、なんかそこまで優しくされると正直不気味だ……)」


提督の心を朝の千歳おねぇに対するものと同じぐらいの不安の雲が覆ったが、しかしそれも一瞬のことであった。




提督「……じゃあ、ありがたく戴きます!」

加賀「……」ススッ


何のかんの言っても彼はまだ18歳。押し寄せる食欲の波には勝てなかった。

彼の言葉を聞いた加賀は、静かに炊飯器(象印製)から米を茶碗に盛った――二つ分。


提督「あ、加賀さんも食べるんだ」

加賀「いけませんか?」

提督「いえ、全然大丈夫です」


ブレねーなこの姉ちゃん、と思いながら提督は箸を使って近くにあった沢庵をご飯の上に載せた。

鹿児島産の黄色いアイツと新潟県産の白いアイツが、青を基調にした茶碗の上で美しいコントラストを描き出す。

それを口にいれると、シンプルながらも味わい深い風味が提督の口に広がり――


提督「うん、うまいゾ!」


彼は、思わず荒岩家の人みたいな語尾の付け方をしてしまった。

先程まで走っていて腹が減っていた影響もあるのだろうか、提督はそのシンプルな味に魅了された。


提督「やっぱ飯はホカホカの白米に限るな!」

加賀「私もそう思います」モグモグモグモグモグモグモグ…

提督「そして加賀さん飯食うスピード異様に速ェ! 部活帰りの中学生みたいだ!」

加賀「おかわり」シュン

提督「凄い……しゃもじを取った手が速すぎて見えない……!」




むしろ自分が食いたかったんじゃないのかといわんばかりの速度で、炊飯器(象印製)の米をたいらげていた加賀だったが――突然、そこでピタリと動きを止めた。


加賀「……」

提督「ど、どうしたの加賀さんいきなり止まって」

加賀「……いえ、忘れていたことがあって。提督、喉は渇きませんか?」

提督「ああ、そんなこと……そういえばちょっと渇いてるかな。ありがとう、貰うよ」

加賀「はい、それでは……」


加賀はそう言うと、提督の座っている前にお猪口を置き、どこからか提督の大きい瓶を取り出した。

瓶の中にある液体の色は黄金色。窓から差し込む太陽光に照らされ、ぎらりと怪しい色を放っていた。


提督「へぇ、結構大きい瓶ですね」

加賀「1800ml、酒瓶の大きさですから」コポコポ

提督「ふーん……うわ、なんか凄い独特の匂いがする」クンクン

加賀「お酒とよく似た匂いでしょう。でも甘い味がする……そうですよ。私は飲んだことがありませんが」

提督「そうなんですか……因みにこの飲み物、名前は?」

加賀「梅酒」

提督「どっせい!!」ガッシャーン


提督は、お猪口を床に投げた。




提督「あ、あぶねー……梅酒ってお酒に良く似たっていうか酒そのものじゃねーか! 加賀さん、何をするんです!」

加賀「……ちっ」

提督「ああっ、し、舌打ちだと!?」


まさかの加賀さんまで酒を飲ませにかかるという緊急事態に、提督は恐怖した。


提督「ま、まさか貴女まであののんだくれ軍団の一員だったなんて……!」

加賀「失礼なことを言わないで下さい。私はお酒なんて飲みません」

提督「じゃ、じゃあどうして……」

加賀「……」


提督の言葉に、加賀は静かに窓を見て言った。


加賀「千歳さん達に言われたんです。『提督にお酒飲ませたらホラ、もう飲み会とかでお酒飲めとか言わないから!』……と」

提督「そんだけ!? たったそれだけで俺の酒処女は奪われかけるの!? ていうか本当にめっちゃタチ悪いなあの人達!」

加賀「『それだけ?』……失礼な。お酒を飲むとその分食べる速度が落ちるでしょう」

提督「は、速さって……普段からそんなに速く食べれるのに、何をそんな必死になってるんですか!?」

加賀「提督」


加賀が、普段よりもさらに真剣な顔で提督を呼ぶ。




加賀「一つだけ、今後の為に僭越ながら教えておきたいことがあります」

提督「は、はぁ」

加賀「提督、貴方がもし誰かと二人で焼肉屋の食べ放題に割り勘で行くとしましょう」

提督「や、焼肉? を? 食べ放題で、割り勘?」

加賀「はい……その時、相手も自分も食べる量は大体同じだとします」

提督「??? は、はぁ」


加賀のいきなりの例え話に混乱しながらも、提督は頷いた。


加賀「この状況で肉が焼けた後に普通に食べれば、二人の食べる量はどうなりますか?」

提督「……えっと、普通に半分ずつになると思いますけど」

加賀「そうです――しかし、もし相手より自分の方が二倍速く肉を食べれるなら?」

提督「!!」

加賀「さらに言うなら、『相手が肉を食べるよりも先に全ての肉を食べれるのなら?』」

提督「!!!」

加賀「いいですか提督――


――食事は、速度です(meal is speed)」


提督「……な」


提督「何ソレ超どうでもいい!!」


あ、因みに赤城さんは「スピードより一回の量」の人です。


―午前10時―


提督「ええい、右も左も敵だらけか……!」


焼肉は速度だとかなんとかのたまう加賀おねーさんから逃れ、18歳提督はその辺を警戒しながらうろうろしていた。

疑おうと思えばこの鎮守府内の全てが敵になったような気もするが、しかし希望を捨ててはいけないと彼は思った。


提督「そうだ……どーせあの酔っ払い達のことだ、時間が経てば何もなかったことにできるだろう……そうだ、部屋にでも帰るかな」

?「提督!」

提督「えっ?」


とりあえずは今日一日を凌ぎきれば大丈夫、と思いながらすたすたと歩く提督の腕を突如掴む者がいた。

朝提督が絡まれた秘書艦娘、千歳と似た服装をする彼女。千歳型二番艦の彼女の名前は――。


提督「ち、千代田さん!?」

千代田「早く、こっちこっち!」グイグイ


そう。姉思いの千代田ちゃんが提督の腕を引っつかみ、どこかしがへ連れて行こうとするではないか。

いきなりの急展開である。何が何だか分からないまま、提督は千代田に廊下の隅に引きずりこまれた。




提督「ちょ、ちょっと待って……いきなりで訳分からないんですけど! 何だ、何が起こったんだ? 誰か説明してくれよォ!」

千代田「そんなレイズナーみたいなのは後でいいから! ホラ、両手出して!」

提督「こ、こう?」


展開に完全に置いてきぼりにされる提督が、千代田の言われるままに両手を出す。

千代田はその手を片手だけで力強く、まるでロックするかのように握った。


千代田「これで、手は動かないよね!」

提督「え、そ、そりゃまあ」

千代田「ならよし……でやっ!」


その言葉を聞くや否や、千代田がもう片方の手に持っていたビールを缶ごと提督の顔面に押し付ける。


千代田「おねぇの為に……提督、大人しくイッキしなさい!」

提督「げげーッ! やっぱりコイツもかー!?」


どいつもこいつも皆敵だらけじゃねーか! と思いながら提督はビールから逃れる為首を思いっきり横に曲げた。

彼の耳元を、黄金の液体がメガ粒子砲のごとく通過していく。




提督「あ、危ねー……や、やってくれたなこのウルトラシスコン! いきなり酒を飲ませにかかるとは、最早自分の目的を隠すことすらしないんですか!!」

千代田「くそ、『何が何だか訳が分からないまま酒を飲ます作戦』は失敗か……なら次、『四肢の自由を奪いつつ酒を口に流し込む作戦』で……!」

提督「次の作戦名怖ッ! と、というかそんな、いっつも千代田さんは千歳さんの酒癖にブーブー言ってるじゃないですか! 何こんな時だけ滅茶苦茶協力してるんですか!」

千代田「だって、おねぇがどうしてもって言うんだもの……」

提督「ち、千歳さんが言ったら、(一応の)上司にまで酒を飲ませるのか!?」

千代田「うん、まぁ。あんまり提督に対してその、良心の呵責とかないし」

提督「……」

千代田「……」

提督「……そっか」


割と提督には容赦の無い女、千代田と対峙した18歳。

千歳おねぇのためなら何でもしかねない強敵に苦戦を強いられた提督だったが、しかし勝機はある。


千代田「まぁそういう訳で、容赦なくいかせてもらうわ! 提督、覚悟!」シャキーン

提督「うわ、こいつ何本ビール持ってるんだ……で、でも千代田さん!」

千代田「何よ」

提督「そんな風に俺がお酒の味を覚えちゃうと、お前の愛しの千歳おねぇと凄く仲良くなっちゃうぞ!」

千代田「!?」


その言葉を聞き千代田が固まった瞬間を狙って――提督は後ろへと駆け出した。


千代田「ああっ、て、提督! 今の言葉訂正して訂正!」

提督「訂正できん! 何故なら飲みにケーションとは世界最強の共通言語、仲良くなるのには造作もないことよ!」

千代田「ぐ、ぐぐぐ……もー! 提督のばかー!」


今日はこれで終わりです

最初はこういう風に「素面で皆が提督に酒を飲ませようとする」っていうのにするつもりでしたが、皆さんのレスを見てちょっと変えることにします(というかそっちの方が面白いし……今日の正直全然面白くないし……)

それでは乙でした 別に安価はしませんが、また書いてほしいキャラありましたらドゾー

どうも

この鎮守府において提督がタメ口で話しかけれる艦娘はずいほーとりゅーじょーぐらい、というどうでもいい設定です



―正午―


提督「いくらなんでも逃亡し過ぎてちょっと疲れてきた……つーかもう昼飯だし……部屋には相変わらず帰れてないし……」


よりにもよって誕生日にこんな過酷なマラソンをやらなければならないことに半ばげんなりしながらも、提督はずんずんと廊下を、部屋を、名も無き逃亡道を突き進んでいく。

しかし段々と疲れてきたし(提督が)、段々とこの逃げるばっかりの流れに飽きてもきた(>>1が)。

そういう訳で新展開。イケてる18歳提督は、ここで頼れる仲間の存在を思いつくのであった。


提督「……そうだ、瑞鳳だ! アイツならきっと俺のことを助けてくれるに違いない!」


瑞鳳。基本的に提督よりも年上が多い××鎮守府の中でも、同年代といっても差し支えの無い数少ない艦娘の内の一人である。

年齢が近いこと――艦娘の年齢設定がどうなっているかなんて私は知らないですよ本当に今超無責任なこと書いてますからね――もあり、無闇やたらと酒を勧めてくることもないように彼には思われた。


提督「よし、ナイスアイデアだ俺! 展開上なんか仕方なく思いついたような気がしないでもないが、まぁそれはそれでどうでもいい!!」ダッ


細かいことは気にしないという、今この状況では非常にありがたい性格の18歳提督。

彼は決心を固めると、早速瑞鳳の部屋向かって歩を進めるのであった。




――そして、今。

瑞鳳は提督の腿の上に座り、彼の体に指を這わせていた。


提督「な、なあ……瑞鳳……」

瑞鳳「なぁーに、てーとくー?」


提督の言葉に、瑞鳳が猫のような甘えた声色で反応する。

どうしてこうなってしまったのか、提督はあまり覚えていない。多分キング・クリムゾンとか使われたのだろう。

とにかく彼に分かるのは「今瑞鳳に腿の上に座られてなんか色々されていること」だけであった。勿論普段からこんな感じではない。


提督「今お前、明らかに酔ってるよな」

瑞鳳「酔ってないよぉー?」

提督「顔赤いけど」

瑞鳳「酔ってないってばぁー」

提督「凄い体も熱いけど」

瑞鳳「やだー、てーとくセクハラー?」

提督「ちゃうわー!」


こうしている間にも腿の上で瑞鳳は何かもぞもぞ、指でさわさわしており提督は色々と精神的に磨耗していく。




提督「(と、とりあえずコイツに自分が酔っている事を自覚させて、腿の上から引き剥がさないと……)」

提督「い、息だって酒の匂いがするし、絶対酔ってるぞお前! 落ち着け!」

瑞鳳「だから酔ってませーん」

提督「酔ってる奴は皆そう言うんだよ! 桂枝雀(2代目)だって言ってたぞ!!」

瑞鳳「そんなに酔ってるかきになるならぁー……ふぅー」フーッ

提督「!!」


瞬間!

即頭部に存在する隠された性感帯、提督の耳に容赦なく瑞鳳の可愛い口から息が吹きかけられた!!

背筋に甘い電流が走り、提督は思わず『風の流法(モード)・耳息嵐』に「あひぃ」と情けない声をあげた!!


提督「な、何をするだァー!」

瑞鳳「だってー、酔ってるかどうか息を嗅いだらわかるんでしょー?」

提督「い、息を吹きかける場所が違うだろ……!!」

瑞鳳「うひひー」

提督「うひひーじゃないぞオイ!!」


酔っ払いにちょこんと乗られている瑞鳳が、そこで徐に飲み物の入った缶を取り出した。

この飲み物の中身は一目見ただけでは分からないが、しかし展開的に考えて提督はその中身を悟った。コレはアレである。あの、なんかあのアレである。




瑞鳳「てーとくー、これ飲む?」

提督「ノマナイヨ」

瑞鳳「喉、かわくでしょー?」

提督「カワカナイヨ」

瑞鳳「ジュースだよー?」

提督「ウソツケコラ」

瑞鳳「もー、ノンアルコールなのにー」

提督「やっぱ酒じゃねーかオイ!!」


提督の言葉を無視して、瑞鳳はへらへら笑いながら缶のプルトップを開ける。

瑞鳳はソレを自分でぐいっと口に含むと――そのまま提督に唇を重ねた。


提督「!!!」


一点! そして一瞬! ほんの一点の死角(発想的な意味で)だった!

提督が「まぁとりあえず液体を飲むこと避けておけばいいだろう」と思っていたその一点! 瑞鳳は、この一瞬を逃さなかった!

提督は瑞鳳が「酔ったら天才」だということを 再び(?)思い知らされた!




瑞鳳「ぬふふふふ……これでてーとくの『酒処女(バージン)』はわたしのものー」ヌフフフ

提督「……いやッ! 今のはノンアルコールなんだろ!? じゃあギリセーフだ! ギリギリセーフ!」

瑞鳳「そして初ちゅーもわたしのものー」ニュフフフ

提督「……それは、そうだね」


初めてのキスは、お酒の味でした――。

酔っ払いに汚されるといううらやまけしからん奪われ方をした提督は、段々とレイプ目を晒しはじめていた。

提督は今のズギュウウウンの所為で、抵抗の余地はないと悟ってしまったのである。


提督「(終わりだ……後はもう瑞鳳に成されるがまま酒を呑まされ、俺の『酒処女(バージン)』が『酒飲み(ビッチ)』へと化してしまうんだ……)」

?「うおらーッッ!!」バーンッ!!

提督「!?」


その時、瑞鳳の部屋の扉がばーんと開け放たれ一人の人間が現れた。




?「……んっふっふっふっふ……」

提督「お、お前は……龍驤!!」

龍驤「せやでー!!」ババーン


外から現れた艦娘、それは関西弁が特徴的な龍驤ちゃんであった。

何でこの部屋に現れたのか、それは提督にはどうでもいい。>>1も特に考えていない。

とにかく大事なことは、提督にとって龍驤ちゃんがこの状況下において、救済の女神にも等しい存在だということなのである!!


提督「おお……龍驤!! 助けてくれ!! このままじゃ俺が酒ビッチに!! 黒ギャル酒ビッチになってしまう!! でもセルビッチ水産の作品は大好き!! エロい!!」


提督が微妙に自分のズリネタを暴露しながらも助け舟を求めると、龍驤はえへりと笑って口を開いた。

普段とはちょっと違いだらしなく開かれた彼女の口の中から洩れたその声は――。


龍驤「うぃ~~……ひっく」


提督「アッ」


龍驤の顔は赤く、よく見れば目が据わっている。足元も何やらおぼつかなく、ていうかなんか片手にガッツリ一升瓶を握り締めていた。

提督は思った。「あ、コイツ酔ってるな」と。




龍驤「あっはっはっは! キミィ、元気しとるかー!?」

提督「助け舟かと思っていたら泥舟だってござる……死にたい……」

瑞鳳「あ、龍驤だぁー。ちょっとー、わたしとてーとくの魅力的空間のじゃましないでよー」ブー

龍驤「あーだいじょうぶだいじょうぶ!! ぜーんぜんウチ邪魔する気ないから!!」

提督「じゃあオメー何しにきたんだよ……助けねーなら帰れよ……」

龍驤「ウチあれやから! 今日は『鎮守府のど自慢大会』の練習に来ただけやから!! という訳で一番軽空母龍驤!! クリスタルキングの『大都会』歌うでー!!」

提督「め、滅茶苦茶だ……」


いきなり現れていきなり歌いだす龍驤をよそに(本当に何しに来たんだろうコイツ)、瑞鳳と提督は言葉を交わす。




瑞鳳「という訳で初酒も体験したわけだしー……次のステップ、行っちゃう?」

龍驤「テンテンテンテンテンテンテン、デケデーン、デケデェーンッ、デケデェーン、デケデェーンッ、デケデェーン……(イントロ)」

提督「つ、次とは……?」

龍驤「あゥッあァ――ッッ!! はッてッしッなッいィーッ!! ゆゥめをおーいーッ、つづけェーてぇぇーッ!!(高音)」

瑞鳳「んふふふふふ……私から提督への誕生日プ・レ・ゼ・ン・ト」シュルシュル…

龍驤「あゥッあァ――ッッ!! いッつッのッ日ッかァーッッ!! おおぞらッかけェェェッめェぐゥるゥ――!!(高音)」

提督「ちょ、瑞鳳……なんでお前服を……」

龍驤「うらぎィるるィのォことばァにィー……こきょうォはなるェェ、わずかなのぞみォォ……もとめェさすらうゥ、おれなのさァッ……(低音)」

瑞鳳「ね……提督、わたしの『格納庫酒』……のんでくれる?」ジッ

龍驤「みィしるるァぬゥ、まちではァァァァ……きたいとォ、ふあんがァー……ひィとつゥにーなァってェー……すぎゆくゥ、ひびなどォーわからないィー……(低音)」

提督「か、『格納庫酒』ってお前……つーかそれよりさっきから龍驤うるせー!! 微妙に邪魔!!」


自分で自分の服をはだけさせた瑞鳳が、提督の目をじっと見つめながら白い指先をその体に這わせる。

酒の熱で淀んだその瞳は、妖しく暗い光をぼうと放っていた。




提督「そ、そーいうことを酔っててもやっちゃ駄目だろ! 年頃の女の子が!!」

瑞鳳「……どうしてぇ?」ボーッ

提督「どーしてってお前……そりゃ……も、もっと自分を大事にするもんだろうが! ちゃんとその、相手とかも選んで……」

瑞鳳「いいよ」

提督「イイヨー!?」


腿の上にのっていた瑞鳳が、提督の体へとずいっと体重を預ける。

陶器のような白い肌をした華奢な瑞鳳の体が、提督の体に熱を与えていく。


瑞鳳「私ね、提督だったら全然いいよ。提督、ちょっと馬鹿だし危なっかしいところもあるけど……私、優しいから好き」

提督「はわわわわ……」

瑞鳳「ね、提督は私のこと好き? 私のこと……もらってくれる?」

提督「ちょ、おま、それは……」

龍驤「きゃんゆせれぶれぇーいとッッ!! きゃんゆーきすみィーとゥなァーいッッ!!」

提督「おい龍驤!! 小室ソングはやめろ!! マジで!!」


説明しよう!! 小室ソングとは、ちょっとその場の男女をそれっぽい気分にさせてしまう恐怖の音楽なのだッ……はどうでもいいとして。




提督は酒を飲む飲まない以前に18歳のオトコノコである。つーかもっと言うなら童貞である。

女性に面識のない彼はこういう状況にとことん弱く、つーかむしろ「流されたままヤッちまうか」と思ってしまうぐらいであった。


瑞鳳「ね、てーとく……どうなの?」

龍驤「うぃーッ、うィるらァーぶッ、ろォーんぐろォーんぐたーいッッ!!」

提督「ぐ、ぐぐぐ……」


バックから流れる小室ソング(安室奈美恵)に、目の前には自分のことを好きだと言ってくれる少女。

誘惑過多のこの状況であったのだが、しかし提督は思い出した。


提督「(……いやッ! 俺は初体験はホテルバリアンリゾートのスイートルームと決めてるんだ!!)」


そう、コイツはこんな女性の多い職場で18まで童貞こじらせているだけあって、やたら初体験のシチュエーションに拘るタイプであったのだ。

正直ヒくわ、とか思ってあげないでほしい。彼のその妙なコダワリのお陰で、今この場から逃げることができるのだから。


提督「……ぐぐぐッ!! すまん瑞鳳!! 許せ!!」バムッ

瑞鳳「きゃっ」


提督は瑞鳳のことを優しくその場に倒し、それだけ言い残すと部屋から逃亡した。

やはり童貞は強かった。彼の童貞力がある限り、まだまだ××鎮守府も安泰だろう……きっと。


今日は以上です

今日ので何かやりたいことはやれた感なので、次で終わりにしたいと思います 全キャラ書けなくてごめんなさい

こんばんは

これで最後の最後です 最後に千歳贔屓をしてるのは、>>1が千歳が艦娘の中で一番好きだからです



―夜―


提督「あー疲れた……もうこれ以上は無理だ。さっさと部屋帰って寝よう……」ゼエゼエ


逃げて逃げてさらに逃げて。

果てなき逃亡道を邁進していた提督だったが、しかし流石に疲れ果て部屋に帰ることを考えはじめていた。

いや、厳密には先程からずっと「とりあえず部屋に帰ろう」と思っていたのだが、何故かその度彼は艦娘達による執拗な酒攻撃を受けていたのである。


?「ふっふっふ……」

提督「!!」


そして今。

空を黒く深い闇夜が覆い尽くそうとするこの時間になってもまだ、部屋に帰ろうとする提督の前に立ちふさがる者がいた。


提督「あ、あなたは……祥鳳さん!!」

祥鳳「提督、申し訳ありませんがここから先は通すわけにはまいりません……さぁ、この酒を飲んでもらいます!!」


そう。××鎮守府の艦娘が一人、サラシのねーちゃんこと祥鳳である。

長い黒髪がチャーム・ポイントの彼女が今、提督の前に一升瓶を持って立ちはだかったのだ。




祥鳳「この酒を飲みたくなければ、今すぐここから立ち去ることを勧めます!!」

提督「……」


祥鳳の呂律はしっかりしており、また足元もふらついていない。

顔色も奇妙なことにはなっていないし――とにかく、祥鳳は酔っていないと提督は結論づけた。


祥鳳「さー提督! どうするのですか! 飲みますか、それとも逃げますか!?」

提督「……」


酔ってはいないものの、祥鳳は何やら元気である。

一升瓶を片手に飲むのかー飲まないのかーを言って、何故か彼女は随分といきいきしていた。


提督「……はぁ」ヘタン


その元気な姿を見た途端――提督は思わずその場にへたりこんでしまった。

彼は相手が元気なだけに、余計自分の疲れを意識してしまったのだ。


祥鳳「あ、あれ? 提督? どうかしたんですか?」

提督「もう……なんか……どうでもいい」

祥鳳「ええッ!?」

提督「かったりぃ……もう酒とか本当にどうでもいい……飲ませたらいいじゃん、飲ませたら……」ゴロリン




それは、提督の本心であった。

18歳は疲労していた。無駄に酒を飲まされかけ、廊下を疾走し、なんか食事とみせかけて酒を飲まされかけ、廊下を疾走し、なんかいきなり酒をかまされ、廊下を疾走し、童貞の危機をなんか味わい、バックで小室bgmを流され、そして今また酒を飲まされかけている。

提督はもう、なんか、めっちゃくちゃ面倒になっていた。


祥鳳「て、提督……そんなこと言わないでくださいよ! あ、ホラ……じゃあ必殺の『何が何だか訳が分からないまま酒を飲ます作戦』を……」

提督「それさっきやりました……」

祥鳳「ええッ!? あ、じゃ、じゃあ色仕掛けしかないですね……提督に私の魅力アピールを……」

提督「それもさっきやりました!!」

祥鳳「えええ――ッ!?」


サラシの艦娘はその場に倒れこむ提督に驚愕した。

まさか自分の元にやって来た元気印の18歳が、ここまでかったるそうにするとは思っていなかったようである。


祥鳳「そんな……酒ネタさえ振れば必ず提督は逃げてくれるって……それを追ってさえいれば絶対部屋には入れないで済むって……!」

提督「誰がそんなこと言ってたんですか……もういいですよ。酒でもなんでも飲みますから、さっさと部屋に帰らせて下さい……」

祥鳳「そ、それは……困ります! 提督にはもうちょっと外にいてもらわないと!」

提督「……ん?」


18歳の提督はその時、祥鳳の発言を酷く妙に感じた。

いや、彼女の発言だけではない。酔っていた瑞鳳と龍驤を除いた千代田といい加賀といい、どうにも彼に「酒を飲ます」以外の意図があるように感じられるのだ。




提督「あの、祥鳳さん……」

祥鳳「は、はい?」

提督「……もしかして、なんですけど……そもそも皆俺に酒を飲ませる気なんてないんじゃあ……」

祥鳳「どきっ!」


彼女の反応を見た提督は、急いでその場に立ち上がりそして走り出した。


祥鳳「ああっ、駄目です提督!」

提督「でぇーりゃー!!」


『ガチャンッ!』


そして彼が自分の部屋の扉を勢いよく開けると、そこには――。


千歳「……あ!」


『提督 誕生日おめでとう!!』の垂れ幕が張られた提督の部屋の飾りが、今まさに出来つつあった――。



……

…………


提督「……全く、こういうことなら早く言って下さいよ!!」

千歳「だって、誕生日パーティはやっぱりサプライズにしておきたいでしょう?」

提督「だからって、何酒を飲ませるみたいな搦め手でくるんですか! めっちゃ頑張って逃げちゃったじゃないですか!!」


全ては提督のサプライズ・パーティーの為であった。

その準備をするためだけに、千歳達は必死こいで彼を部屋から遠ざけようとしていたのであった。


千歳「でも提督、本気にしたでしょう? 『酔っ払いが俺に酒を飲ませようとしてるー』って」

提督「ぐっ……ま、まぁ確かに真実味がありましたからね。でも、それじゃあなんで瑞鳳達はベロンベロンになってたんです?」

千歳「ああ、あの二人は口が軽いというか……隠し事が出来ない性質でしょう? 機密性を保つ為、彼女達には酔ってもらいました」

提督「微妙に容赦がない!!」


口封じの為に酒を飲まされた同年代の親友に提督が思いを馳せながら、ともかく誕生パーティーは始まった。


千歳「でも、提督ももう18なんですね……大人の階段、着実に昇ってますねぇ」

提督「まぁ、俺ももうそろそろ一人前の男になれたって感じですかね」

千歳「ふふふふ……」ニッ


提督の言葉に、千歳は笑ったまま何も言わなかった。

彼女の手にはグラスが握られている。室内灯に照らされ七色に反射するその器の中身には、美しく透き通った透明の液体が入っていた。




提督「……千歳さん、お酒飲んでるんですか?」

千歳「ええ……提督も、飲みたいですか?」


千歳のその言葉に彼は「まさか」と言いかけて……しかし、そこで口を止めた。


提督「……やっぱり、貰っていいですか」

千歳「あら。未成年なんでしょう、提督?」

提督「一杯だけなら……セーフだと思いますよ」

千歳「ふふ、何ですかその理屈?」


提督と千歳はそこで互いの顔を見合わせ、にこりと微笑みあった。

今日の、今までの色々が全て美しい思い出であるような、そんな二人の笑みであった。


千歳「それじゃあ一杯」

提督「はい、一杯」


提督の持った器に、透明な液体がこぽこぽと注がれる。

部屋に漂う液体独特の馴れない臭気さえも、何故だか提督には素晴らしいものに感じられた。


提督「じゃあ……行きます」

千歳「うふふふふ……お誕生日おめでとうございます、提督……」


提督はグラスに波紋を描く液体をしばらくじっと見つめ続けてた後、えいやとソレを飲み干した。

独特の苦味を持った液体が、彼の喉を通り――。


千歳「……あ、水で割るの忘れてた」

提督「エンッ!!!」バタムッ

千歳「て、提督ー!!」


――18歳は、度の強いアルコールを飲み干しその場にブッ倒れた。



提督「うーん、うーん……うーん……」

千歳「提督、大丈夫ですか……?」

提督「……ん?」


数分後。

千歳に揺すられて、提督はゆっくりと目を開けた。


提督「あ、頭が痛い……」ガンガン

千歳「ごめんなさい提督。お酒に慣れていないのに……」


千歳のフォローも聞いているのか聞いていないのか、提督はただ頭を刺すような痛みにぐぬぐぬ唸った。


提督「な、なんちゅう誕生日だ……コレ……」ガンガン

千歳「……まぁ、とりあえずその……アレですよね」

提督「アレ?」


提督が頭の痛みに耐えながら、千歳の方を向く。

彼の視線を受けながら、千歳は静かに言った。


千歳「――お酒は、二十歳になってから!!」


提督「……せやな!!」


※お酒は20歳になってから。未成年者の飲酒は法律で禁止されてます。本当ですよ。




「18歳なりたて提督 対 酒を飲ませたがる軽空母(水母)軍団」

完!!


これにて終わりです

正直このスレはクソスレだと思いますが、しかし千歳はもっと色んな艦これメディアに露出すべき素晴らしい人材だと思います 皆さんもSSで是非彼女を出してくれると嬉しいです

このSSまとめへのコメント

1 :  じゅんよう   2015年02月03日 (火) 01:24:03   ID: 26feP7gy

「」

2 :  ひよう   2015年10月01日 (木) 17:03:45   ID: MuEfjEjk

「」

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom