海未「七不思議?」 (303)

絵里「そう、二宮金次郎の像が動くとかいうあれよ」

海未「……そんなの迷信に決まっているじゃないですか」

絵里「それはそうなんだけど、生徒の間で凄い話題になってるの」

絵里「それこそ、誰かが広めたんじゃないかってくらいにね」

海未「どうしてそんなものが……」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1396542425

穂乃果「私も一つ知ってるよ」

凛「凛もー!」

花陽「わ、私も聞いたことがあります」

にこ「海未、もしかしてあんた知らないの?アイドルたるもの、流行には敏感じゃないと駄目よ」

希「ウチももちろん知っとるよ」

海未「皆まで……」

穂乃果「よーし、それじゃあ、知らない海未ちゃんのために私がお話してあげよう」

海未「いえ、別にいいですが」

海未「そんなことより、早く練習をですね」

穂乃果「えー、そんなこと言わずにさ……ね?」

凛「凛からもお願いするにゃー」

海未「…………はぁ、しかたありませんね」

海未「少しだけですよ?」

穂乃果「やったー!」

穂乃果「じゃあまずは私から」

穂乃果「私たちの学校の理科室にある骨格標本なんだけどね、なんと……本物の人の骨が使われてるらしいんだよ」

穂乃果「なんでそんなことになっているのか……昔、骨格標本を作ってる工場で働いてる人が滑って硫酸のプールに入っちゃったんだって」

穂乃果「その人は必死でもがいてたんだけど、どんどん肉が溶けていって、骨が剥き出しになって……」

穂乃果「結局、助けが来た時には骨だけになってたんだ」

穂乃果「こんな事件があったなんでばれたら、会社が潰れちゃう」

穂乃果「そう思ったそこの社長が、骨を骨格標本に使って証拠を隠滅。事件をなかったことにしちゃったんだって」

穂乃果「その時の作業員の骨でできた人体模型が私たちの学校に流れてきたの」

穂乃果「そして、夜な夜な動き回って、自分の肉体になるものを探してるらしいよ」

穂乃果「もしも……その骸骨に捕まえられちゃったら……」



穂乃果「…………体のお肉が削ぎ取られちゃうんだって」

穂乃果「だから真夜中の理科室には絶対に近づいたら駄目だよ」

凛「怖いよかよちん~」ギュッ

花陽「確かにちょっと怖いかも……」

穂乃果「でしょでしょ!私も聞いた時結構怖かったんだ~」

真姫「馬鹿馬鹿しいわね」

海未「真姫?」

真姫「七不思議なんてあるわけないじゃない、そんなデタラメ話の何が楽しいのよ」

にこ「あれ~?もしかして真姫ちゃん、怖いの~?」

真姫「はぁ?」

穂乃果「えー!?真姫ちゃん、怪談話苦手なの!?」

凛「夜中にトイレに行けなくなっちゃう?」

穂乃果「ごめんね、真姫ちゃんが本当は怖がりだったなんて知らなかったんだ……」

にこ「にこは平気だけどぉ、真姫ちゃんが可哀想だし、もうこの話は止めよっか?」

真姫「……っ!」

真姫「七不思議なんて全く怖くないわよ!」

真姫「上等よ!それなら今度は私が話してあげるわ!」

真姫「全員、恐怖のどん底に叩き落としてあげるんだからね!覚悟なさい!」

穂乃果(ちょろい)

凛(ちょろいにゃー)

にこ(ちょろいわね)

海未(真姫……)

真姫「いい?よく聞きなさいよ」

真姫「この校舎の二階にあるトイレなんだけど、昔凄い事件があったのよ」

真姫「被害にあったのは一人の女の子」

真姫「彼女はソフトボール部に入っていて、大会が近いから泊り込みで練習していたの」

真姫「練習が終わって、皆疲れてぐっすり眠ってたんだけど、彼女は夜中に目が覚めちゃった」

真姫「明日も練習がある、そう思って眠ろうとしたんだけど、トイレに行きたくなってしまった」

真姫「真夜中の校舎は怖かったけど、我慢できないし、しかたなく行くことにしたのよ」

真姫「そして、トイレに入って用をたした所で、紙が無いことに気づいたの」

真姫「どうしよう、紙がない」

真姫「そうやって焦って所に、声が聞こえて来たの」

真姫「赤い紙が欲しい?青い紙が欲しい?」

真姫「助かった、部活の友達がいたずらをしているのだろう」

真姫「そう思った彼女は、こう言ってしまった」

真姫「赤い紙をください」

真姫「次の日、その女の子の死体が発見されたわ」

真姫「目は恐怖に怯えていて、顔は引きつっていて、身体中が血塗れになっていたらしいわ」

真姫「まるで……赤い紙を被せられたように……ね」

真姫「ふふ、死にたくなかったら、不用意に二階のトイレに行かない方がいいわよ?」

「「「「…………」」」」

穂乃果「凄い!凄いよ真姫ちゃん!今のお話とっても怖かったよ!」

凛「凛、もうあそこのトイレ使えない……」

にこ「へ、へぇ、結構やるじゃない」

真姫「ふふん、まあ真姫ちゃんにかかればこんなものね!」

真姫「さ、次は誰の番かしら?」

真姫「生徒会長なんだし、色々知ってそうな絵里はどう?」

絵里「…………」

真姫「絵里……?」

パタン

真姫「ちょ、え、絵里!?」

海未「……気絶していますね」

にこ「あれで気絶って、なにやってんのよ」

希「まあえりちは怖いもの嫌いやしな」

希「ほら、えりち、起きて」ユサユサ

絵里「う、うぅん……」

絵里「……あら、皆、おはよう?」

穂乃果「絵里ちゃん、今は放課後だよ」

絵里「……そうみたいね」

にこ「あんた……今時怖い話で気絶なんて普通しないわよ?」

絵里「き、気絶なんてしてないわよ?」

絵里「ちょっと日頃の疲れが溜まって寝ちゃっただけなの」

絵里「怖い話なんて全然平気なんだからね?」

「「「「…………」」」」

海未「それにしても、どうしてわざわざこんな話をしたんですか?」

穂乃果「そうだよ、絵里ちゃんからこんな話が出るなんて珍しいよね」

真姫「生徒の中で広まってるからって、生徒会がどうのこうのするわけでもないんでしょ?」

絵里「そのはずなんだけど……ね」

絵里「その話が保護者の人にも伝わっているらしくて、学校に問い掛けの電話が増えてるらしいのよ」

絵里「このままじゃ、学校の存続にも影響するんじゃないかってくらいにね」

穂乃果「じゃあ廃校になっちゃうの!?」

絵里「今はまだ大丈夫よ」

絵里「でも、もしもこのまま悪い噂が流れ続けたら……その可能性もでてくるかもしれない」

海未「そ、そんな馬鹿な話が……」

希「あるから困ってるんや」

絵里「せっかく学校が決まったんだもの、こんな理由で廃校だなんて、絶対に認められないわ!」

絵里「事件を解決するためにも、皆で力を合わせて、噂を流した犯人を捕まえるのよ!」

絵里「皆、いいわね?」


「「「「おー!」」」」

ことり「…………」

海未「ことり?」

ことり「え、あ、海未ちゃん?」

ことり「ごめんね、ことり、ぼーっとしててお話全然聞いてなかった……」

ことり「どうかしたの?」

海未「ことりの様子がおかしかったので、どうしたのか気になりまして」

海未「何かあったんですか?」

ことり「えーと、ちょっと考え事……心配かけてごめんね?」

海未「いえ、別に構いませんが……大丈夫ですか?何かあったらいつでも言ってくださいね?」

ことり「うん……ありがとう、海未ちゃん」

絵里「それじゃあ、明日から調査開始よ!」

穂乃果「よーし、私が絶対犯人を見つけちゃうんだから」

凛「凛だって負けないよ!」

花陽「どうやって探すんだろう……」

希「ウチのスピリチュアルパワーで犯人を……!」

にこ「にこの美貌で、犯人をメロメロにしちゃうんだから!」

真姫「……馬鹿馬鹿しい」

海未(本当に大丈夫なんでしょうか、これは)

キーンコーンカーンコーン


海未「すっかり遅くなってしまいましたね」

海未「まあ、弓道部に顔を出していたので仕方ありませんか」

海未「私も早く帰らなくてはーー」

ことり「海未ちゃーん」パタパタパタ

海未「…………?」

ことり「よかった、まだ残ってたんだ?」

海未「はい、今ちょうど弓道部の練習を終えたところです」

海未「どうかしましたか?」

ことり「うん……海未ちゃんにちょっとお願いがあって」

海未「お願い?」

ことり「えっとね」


ことり「今夜、学校に来てくれないかな?」

海未「学校に?どうしてですか?」

ことり「学校の七不思議を解決するため……かな」

海未「七不思議って、今日絵里が話していた?」

ことり「うん、その七不思議」

海未「……そんなものあるわけないじゃないですか、時間の無駄ですよ」

海未「それに、夜の学校に忍び込むのは校則違反です」

ことり「それはそうなんだけど……最近だと目撃情報まで出て来て、収集がつかなくなっちゃってるらしいの」

ことり「お母さんも、最近その事で忙しそうだし……夜の学校に行ってなんにもなかったら、なんだ嘘だったんだね、ってなるんじゃないかと思って……」

ことり「海未ちゃん……駄目?」

海未「全く……仕方ないですね」

海未「今回だけですよ?」

ことり「本当!?ありがとう!」パァァ

ことり「えへへ、やっぱり海未ちゃんは優しいな」

海未「集合はどうしますか?」

ことり「んー……0:00ぐらいに校門の所に集合でいいかな?」

海未「大丈夫ですよ」

ことり「それじゃあ決まりだね」

ことり「ことり、お母さんに呼ばれてるからそろそろ行くね」

ことり「またね~」パタパタパタ

海未「はい、また夜に」

海未(………………)

海未(その場の流れでOKしてしまいましたが、大丈夫なんでしょうか)

海未(もしも見つかったら大変なことになるのでは……)

海未(ですが、なにもなければ、噂が嘘だと言うことの証明にもなりますし、廃校も阻止できます)

海未(こうなったら腹を括るしかありませんね)

海未「………………」

海未「本当に、何もないといいのですが」

今回はここまで、適当に更新するからよかったら読んでくれ

ーーーー0:00

海未「待ち合わせ場所は校門で良かったですよね」

海未「……今更ですが、施錠されているのでは?」

ガラガラガラ

海未「えっ、開いた?」

ヒョコ

ことり「こんばんは、海未ちゃん」

ことり「ちょっと驚かせちゃったかな?」

海未「もう、驚かせないでください」

海未「というか、どうやって開けたんですか?」

ことり「えへへ、校門の鍵をちょっとお借りしてきちゃいました」

海未「…………ばれたら怒られますよ?」

ことり「その時は一緒に謝ってね?」

ことり「それより、その手に持ってるのは?」

海未「これですか?竹刀ですよ」

海未「何もないとは思いますが、万が一のことが起きた時のために用意しておきました」

海未「それと、念には念をいれて色々ともってきました」

海未「懐中電灯等も、無いと不便ですからね」

ことり「…………」

ことり「もしかして海未ちゃん、ちょっと楽しんでる?」

海未「!?」

海未「そ、そんなことはありません!」

海未「いいですか、『転ばぬ先の杖』という言葉もありますように、何が起きても対処できるようにするのは日常でも当然のことなんです」

ことり「そ、そうだね……」

ことり(ま、慌てて言い訳しちゃう海未ちゃんも可愛いからいいや♪)

ことり「えーと、それじゃあ行こうか?」

海未「そうですね、では探索を始めましょうか」

コツコツコツ

海未「まずは何処に行くんですか?」

ことり「うーん、まずは理科室にしよう」

海未「理科室と言うと、動く骨格標本ですか?」

ことり「うん、あるかどうかを確認するだけだし、わかりやすいかなって」

海未「そうですね、きちんと保管されていれば、噂は嘘ということになりますからね」

ーーーー理科室前

海未「着きましたね」

海未「どうですか、きちんと置いてありますか?」

ことり「うーん、窓からだと影になって見えないなぁ」

海未「ふむ……教室の中に入らないと確かめられないのは厄介ですね」

海未「鍵なんて持っていませんし……」ガタガタ

ガラッ

海未「え……?」

ことり「開いたの……?」

海未「……掃除当番の、鍵の掛け忘れですよ」

ことり「そ、そうだよね、たまたまだよね!」

海未「……中に入りますよ」

ガラガラガラ

海未「中は暗いですね、ことり、教室の電気を付けてもらえますか?」

ことり「そ、それが……電気がつかないの」

ことり「ね、ねぇ、これって……もしかして……」

海未「……夜になると、節電のためにブレーカーを落としてしまっているのかもしれません」

海未「懐中電灯もありますし、ゆっくり進みましょう」

ことり「う、うん……」

コツコツコツ

ことり「えっと、確か骨格標本は人体模型の隣におかれてたよね」

海未「そうですね、確かこの変に……あ、人体模型がありましたよ」

ことり「それじゃあその横に骨格標本さんが……え?」






ことり「ない……?」

海未「そ、そんなはずかあるわけ……」

ことり「で、でも、本当にここには無いんだよ?」

海未「……きっと、先生が授業に使うために持って行ったんですよ」

海未「もしくは、誰か愉快犯の仕業に違いありません」

ことり「それが今日、たまたま重なったって言うの……?」

海未「……っ」

ザァァァァァァァァァァァ

海未「あ、雨……?」

海未「そんな……今日から明日にかけては雲一つない快晴のはず」

ことり「う、海未ちゃん、早く行こうよ、なんだか怖いよぉ」

海未「……そうですね、ここにいてもしかたありませーー」

ピカッ

ことり「ひっ!?」

海未「なっ!?」


ケタケタケタケタケタケタ


ことり「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

ことり「が、骸骨が!骸骨が動いてる!?」

海未「落ち着いてください!そんなことあるわけーー」

ことり「じゃああれはなんなの!?」

海未「…………っ!」

海未(雷の明かりで見えたのは、紛れもなく私達が探していた骨格標本)

海未(そして、今懐中電灯で照らしだされているのも)

海未(一体どうなっているんですか!?)

海未(いえ、焦ってはいけません、こういう時こそ落ち着かなくては)

海未「……私の側から、離れないでください」

ケタケタケタケタケタケタ

カツン カツン

海未「嗤う髑髏……と言った所でしょうか」

海未「ゆっくりと歩いてきて、余裕のつもりですか?」

ことり「あ……あ……もう駄目だよ、ことり達、肉を削ぎ落とされちゃう……」

海未「……大丈夫です、絶対に、私が守ります」

チャキ

カツン カツン

ことり「相手はお化けなんだよ!?もうどうにもならないよ!」

海未「穂乃果の話を聞いた時、一つ疑問に思ったことがあるんですよ」

ことり「な、何を?」

海未「どうして骨格標本なんかに負けるのかと」

ことり「え?」

海未「相手は筋肉も持たないただの骨です。人間に勝てるわけがありません」

ことり「な、何を言ってるの?」

海未「つまりですね……」



海未「こういうことですよ!!!」

ヒュ

ガシャン!

ことり「え……?」

バラバラバラ

海未「……思ったより、あっけないですね」

ことり「た、倒しちゃったの?竹刀で?」

海未「普通に考えて、倒せないわけがないんですよ」

海未「ことりも、筋肉のないひょろひょろの生き物なんかに負けないでしょう?」

ことり「う、うん。で、でもお化けは違うんじゃーー」


ケタケタケタケタケタケタ


ことり「ひっ!?」

海未「うるさい!」

ガシャン!

海未「頭を砕かれては、もう嗤えませんね」

ことり「う、海未ちゃん……」

海未「いいですか、最初から諦めていてはいけません」

海未「相手もこの世界に存在する以上、なんらかの弱点は存在するはずです」

ことり「……無茶苦茶だよ、海未ちゃんはどうして落ち着いていられるの?」

海未「ふふ、私も少し混乱していますよ」

海未「ですが、私が落ち着きを無くしてしまったら、二人とも危険に陥ってしまっていたでしょうからね」

ことり「そうだけど……」

海未「それに……守ると言ったでしょう?」

ことり「……///」

海未「ですが、厄介なことになりましたね」

ことり「え?」

海未「『動く骨格標本』が本当に起こったのであれば、他の七不思議も本当のことになるかもしれません」

海未「ですから、今のこの学校にいるのはとても危険です」

海未「私は、おとなしく帰るべきだと思いますが」

ことり「……そうだね、ことりも、そう思う」

海未「……決まりですね、ではーー」


ない……

海未「え……?」

ことり「っ!?」


ないよ……なんで……?


海未「だ、誰ですか!?」

ことり「こ、これって……」

海未「知っているのですか!?」


どうして見つからないの……?


ことり「あ……あ……う、海未ちゃん……あれ」ガタガタ

海未「あれ……?」

隠したんだ……私が嫌いだから……


海未「……生徒?こんな時間に?」

ことり「ち、違う……!海未ちゃん、早く逃げないと……」


私が……気持ち悪いから……


海未「これも、七不思議の一つなんですね」

ことり「う、うん……」


もう見つからないんだ……でも欲しいよ……


海未「それでしたら……」

ことり「う、海未ちゃん……?」


お願い……誰か、頂戴……


海未「こんばんは、あなたは何が欲しいんですか?」

ことり「駄目っ!!!!」

海未「え……?」


…………それはね



お前の手足だよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!

海未「っ!?」

ことり「海未ちゃん!逃げて!」

ギュッ

ことり「!?」

海未「走りますよ!絶対に離さないでください!」

ことり「……うん!」


ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!


海未「くっ、すごい速さで追って来ますね」

ことり「……!海未ちゃん、この教室に!」

海未「わかりました!」

ガラガラ ピシャ

海未「…………追って来ない?」

ことり「……うん、この教室には、入ってこれないんだ」

海未「どうして、そんなことを知っているのですか?」

ことり「七不思議にね、そういうお話があるの」

ことり「可哀想な、女の子のお話が」

海未「そうだったんですか……」

ことり「ことり達……このまま死んじゃうのかな」

海未「…………」

海未「すいませんが、その話を私に教えてもらえないでしょうか?」

ことり「え?」

海未「彼女をなんとかしない限り、学校から出られません」

海未「ですから、なんとかして、解決策を出さないといけないんです」

海未「二人で考えれば、きっと助かる方法が見つかりますよ」

ことり「……うん!」

今回はここまで、遅くてすまん

昔々、ある所に一人の女の子がいました。

その子は容姿に恵まれず、人付き合いも苦手で、次第に皆から虐められるようになりました。

でも、そんな彼女にも友達がいました。人形のマリちゃんです。

辛い時、悲しい時、いつでも彼女の側にいてくれる唯一のお友達でした。

マリちゃんのおかげで、彼女はこの辛い現実に耐えられていたのです。

でも、ある日虐めをしているグループのリーダーが、彼女がマリちゃんに話しかけている所を目撃しました。

そのリーダーは新しいおもちゃを見つけたとばかりにその女の子から人形を奪い取りました。

女の子も必死に抵抗しましたが、勝てるはずもなく、マリちゃんはそのまま奪われてしまいました。

女の子は悲しみました。でも、今度はその嘆きを聞いてくれる友達はいません。

次の日、なんとかして返してもらうために学校に行った彼女の机に、何かが置かれていました。

それは、両手両足を切断された、無惨なマリちゃんの姿でした。

海未「……酷すぎます」

海未「そんなことが、許されていいはずがありません!」

ことり「うん、ことりもそう思う」

ことり「でも、今はそんなこと言ってる場合じゃないよ」

海未「……そうですね、ついかっとなってしまいました。申し訳ありません」

海未「続きをお願いします」

ことり「うん」

彼女はその場で泣き出しました。そして虐めらグループのリーダーに、手足を返して欲しいと泣きながらお願いしました。

リーダーは笑いながら言いました。校舎に隠した……と。

彼女は必死で探しました。

授業をサボり、夜は家に帰らず三日三晩探し続けました。

しかし、右手と左足は、どうしても見つかりませんでした。

女の子は悩みました。

このままではマリちゃんは元通りにならない、どうすればいいのか。

その時、ある考えが少女を横切りました。
それはーーーー

ことり「…………」

海未「それは……なんですか?」

ことり「それは…………」




ことり「手足が足りないのなら、奪ってしまえばいいと」

海未「どういうことですか?」

ことり「……次の日、学校で二つの生徒の遺体が発見されたの」

ことり「一人は虐めグループのリーダーの子」

ことり「身体は刃物で伐り刻まれていて、全身血塗れの状態」

ことり「そして、右手と左足が、切断されていたの」

海未「っ!」

ことり「もう一人は虐められていた女の子」

ことり「屋上から飛び降りたみたいで、身体中の骨が変な方向に曲がっていたの」

ことり「でも、腕だけは違ってた」

ことり「絶対に離さないっていうかのように、人形をずっと抱きしめていたの」

ことり「右手と左足に人の部位がついた、歪な姿をした人形を」

海未「…………」

ことり「でも、この話はこれで終わりじゃないの」

海未「え?」

ことり「何ヶ月かして、皆が事件を忘れてしまった頃、一人の生徒が忘れ物を取りに来たの」

ことり「教室に入ると、女の子が一人『ない……ない……』って探し物をしていました」

ことり「見かけない子だなって思いながらも、同じ忘れ物を探す仲間だなって親近感が湧いたその子は話しかけてしまいました」

ことり「あなたの探し物はなんですか……って」

ことり「次の日、その子は血塗れで発見されました」

ことり「虐めグループのリーダーみたいに、右手と左足を切断された姿で」

ことり「あの子がこの教室に近づかないのは、ここがその虐められていた場所だから」

ことり「今になっても、虐められていた時の記憶を忘れられないまま、人形の手足を探しているの」

海未「……手足は虐めっ子の物を付けたんじゃないんですか?」

ことり「それじゃあ駄目なの。人の手足を付けた人形なんて、海未ちゃんも嫌でしょ?」

海未「ふむ……」

海未「その人形は何処にあるんですか?」

ことり「えーと、確か、逃げてる間にいつのまにか持ってるって聞いたけど」

海未「そうですか、それなら」

ガサガサ

海未「……ありました、これですね」

ことり「ひっ!?」

海未「確かに、右手と左足がありませんね」

ことり「今までも、頑張って手足を探した人達がいたらしいんだけど、皆見つけられずに……」

ことり「……私達、このまま殺されちゃうのかな」

海未「そんなことはさせません」

海未「私に考えがあります」

ガラッ

海未「……いませんね」

ことり「どっかに行っちゃったのかな?」

ことり「えっと、それで、何処に行くの?」

ことり「手足の隠されてる場所がわかったの?」

海未「いえ、それはわかりません」

ことり「え?それじゃあどうして外に?」

海未「それはーー」

あああああああああああああああああああああああああ!!!!!!

海未「走りますよ!」

ことり「はい!」

タタタタタタ

かえして……かえしてよぉぉぉぉぉぉ!!!

海未「流石に、あれを相手に竹刀を振るいたいとは思えませんね」

ことり「ね、ねぇ、この後どうするの?」

海未「部室に向かいます」

ことり「え?」

海未「話は後です!今は走ることに専念してください!」

タタタタタタ

バタン

海未「棚の端にある、青い袋を出してください」

ことり「は、はい!」ガタッ

ことり「これだよね……中身は……」

ことり「!」

海未「私が扉を抑えています。その間に……お願いできますか?」

ことり「……やってみる」

あああああああ!!!

バンバンバンバン!!!!!

海未「っ……!」

あけて!!あけてよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!

海未「っ……凄い力ですね」

海未「ですが、ここを通すわけにはいきません」

どうしていじわるするのぉぉぉぉぉぉぉぉ!?!!??

わたしはなにもしてないのにぃぃぃぃぃぃ!!!!!!

海未「…………」

どうしてわたしだけひどいめにあうのぉぉぉぉぉ!?!

わたしのともだちをかえしてよぉぉぉぉぉぉ!!!!!

海未「いい加減にしなさい!」

海未「あなたの境遇には確かに同情します」

海未「ですが、その後あなたがしたことはなんですか!?」

海未「人を殺し、手足を切断し、それを自分の友達にくっつける」

海未「それを何度も繰り返した!」

海未「そんなあなたに悲しむ権利などありません!」

海未「恥を知りなさい!」

うるさいうるさいうるさい!!!

みんなしんでしまえ!!!

ガンガンガンガンガンガン!!!!!!

海未「くっ……もう扉が……!」

ドガン

海未「あぐっ!?」ドサッ

あはははは!!!いじめっこみっけ!!!

海未「……っ」

わたしのともだちをうばったつみーー



ことり「待って!!」

ことり「これを、あなたに返します」スッ

…………え?

マリ……ちゃん?

嘘、元通りになってる……?

ことり「完全にではないけど、縫い目も気にならないようにしてあるから」

ことり「これ以上、悲しいことはしないで」

ことり「マリちゃんも、あなたにこんなことをして欲しくはないはずだよ」

あ……あ……

ごめん……なさい

ごめんなさいごめんなさいごめんなさい

私が弱かったから……マリちゃんを守れなかった

私がもっとしっかりしていれば、こんなことにはならなかったの

本当に……ごめんなさい

海未「…………」

ことり「…………」

あの…………

海未「……なんでしょうか」

ありがとう……ございました ニコッ



スゥゥゥ

ことり「消えちゃった……ね」

海未「はい……こんなにも上手くいくとは」

海未「あっさりしすぎていて、逆に少し怖い気もします」

ことり「……きっと、優しさに触れたからだよ」

ことり「今まで、皆から冷たくされてきたんだもん」

ことり「だから、元通りじゃなくても、許してくれたんだよ」

海未「……そうですね」

ことり「それにしても驚いたよ、まさか他の人形の手足を移植するなんて」

ことり「普通に手足を探そうとは思わなかったの?」

海未「……今までの犠牲者達も、皆必死に手足をを探していました」

海未「ですが、それで失敗しているということは、そう簡単には見つからない、もしくは存在していないということなんです」

海未「それならば、違和感がないように付け替えてみればどうかと思ったんです」

海未「歪でなければいいと聞きましたしね」

ことり「……やっぱり海未ちゃんは凄いなぁ」

ことり「ことりなんて、何処にあるんだろうってばかり考えてたのに」

ことり「そういえば海未ちゃん」

海未「はい、なんでしょうか?」

ことり「どうして部室に人形なんて置いてたの?」

海未「えっ」

ことり「…………」

海未「いや……それは……その……」

ことり 「じー」

海未「…………いつも頑張っている誰かさんにプレゼントしようかと」ボソッ

ことり「え?」

海未「な、なんでもありません!行きますよ!」

ことり「ま、待ってよ~」

ガチャ

海未「とりあえず、今日はもう帰りましょう」

海未「これ以上は危険です」

ことり「…………ねぇ」

海未「どうしました?」

ことり「七不思議、全部確認しよう」

海未「……話を聞いていましたか?」

海未「これ以上は危ないと言ったんですよ」

海未「さっきのも、たまたま人形があったから良かったものの、一歩間違えば死んでいたかもしれないのに」

ことり「わかってるよ……」

ことり「でも、幽霊にも、苦しんでる子がいるんだなって思うと、ちょっと可哀想かなって……」

ことり「だから、なんとかして成仏させてあげられたら……少しは報われるんじゃないかな」

ことり「ことりの我儘なのはわかってる。でも、このまま放置しちゃうのも、なんだか……」

海未「…………」

海未「仕方ないですね」

ことり「!」

海未「七不思議が本当だと解った以上、放置しておいては危険ですからね」

海未「学校の存続にも関わってきてしまいます」

海未「それなら、今の間に解決してしまいましょうか」

ことり「海未ちゃん……」

海未「ただし、私が危険だと判断したら、すぐに引き返します」

海未「いいですね?」

ことり「……ありがとう」

今回はここまで

海未「それで、次は何処に行くんですか?」

ことり「うーん、次は音楽室がいいかな」

海未「音楽室というと、誰もいないのに鳴りだすピアノでしょうか?」

ことり「うん……これも、可哀想な女の子のお話があるの」

海未「……話していただけますか?」

ことり「うん」

昔、一人の女の子がいました。

文武両道、才色兼備、家は地元の名士で、人柄は良く、誰にでも優しい彼女は皆から好かれていました。

そんな彼女が好きなものはピアノでした。

休み時間やお昼の時間、少しでも暇ができたら、すぐに音楽室に行ってピアノを弾いていました。

甘くて優しいメロディー、儚げな表情、憂いを帯びた瞳、そこにあるのは幻想的な風景。

いつの間にか、音楽室には多くの人が集まるようになっていました。

近日行われる世界的な演奏会、そこでも輝けるだろう、と誰もが信じ、期待していました。

しかし、そんなある日、悲劇が訪れました。

演奏会の前日、彼女は事故にあってしまったのです。

すぐに病院に運ばれ、一命は取り留めたものの、腕は折れ、耳は聞こえなくなり、もう音楽を続けることは不可能になってしまいました。

彼女は泣きました。お見舞いに来てくれた友人にも会わず、ただ、ひたすら泣き続けました。

そして、事故が起きてから3日後…………



彼女は、窓から飛び降りて自殺してしまいました。

海未「……可哀想ですね」

ことり「うん……本当に、可哀想」

ことり「もし海未ちゃんが事故にあったら……同じように自殺しちゃう?」

海未「……わかりません」

海未「ですが、もしそれで皆が悲しむのなら、したくはありませんね」

ことり「…………」

海未「すいません、続きをお願いします」

ことり「……うん」

皆は悲しみました。

もう二度とあの音楽を聞けないのか。

彼女の姿を見ることができないのか。

ピアノには花が添えられ、皆が彼女の曲をもう一度聞きたいと毎日願っていました。

そんなある日、一人の生徒が廊下を歩いていると、音楽室からピアノの音が聞こえてきました。

それは昔聞いた、あの優しいメロディーにそっくりで、その生徒は急いで音楽室に行き、扉を開けました。

すると今までなっていたはずのピアノがピタッと鳴り止んだのです。

音楽室には誰もおらず、ピアノも蓋が閉じられていました。

これは、人間の仕業ではない。

そう、彼女は戻ってきたのです。

皆に音楽を届けるために。

だから今でも彼女は弾き続けるのです、誰にも見つかることなく、一人きりで。

海未「ふむ……」

ことり「どうかしたの?」

海未「……いえ、少し気になる所がーー」

ポロン

海未「!?」

ことり「!?」

~~~~~~~~~♪

海未「これは……」

ことり「音楽室……?」

海未「行きますよ!」

ことり「うん!」

タタタタタタタ

~~~~~~~~~♪

海未「まだ鳴っている……!」

ガラッ

シーン

ことり「誰も……いない?」

海未「そんなはず、あるわけが……」

海未「……いえ、幽霊ならありえるのですね」

ことり「……どうしよう、海未ちゃん」

海未「どうしよう……とは?」

ことり「姿が見えないんじゃ、どうしようもないんじゃないかなって」

海未「そういうことですか、それなら呼んでみればいいんじゃないのでしょうか」

ことり「え?」

海未「聞いていますよね?出てきてください」

海未「貴女にお話があります」

ことり「う、海未ちゃん、そんなので出てくるわけが……」

…………何か、御用でしょうか?

ことり「!」

海未「こんばんは、先程ピアノを弾いていたのは貴女ですね?」

はい、そうですが……

海未「呼び出しましたよ」

ことり「……海未ちゃん、凄い度胸だね」

海未「そうでもありませんよ。それより、何か成仏してもらう方法は考えてあるのですか?」

ことり「う、うん……このお話は女の子が戻ってきた理由で考えが割れてるの」

海未「理由?」

ことり「さっき話した、皆がお願いしたからって理由ともう一つ、演奏会に出られなかった悲しみから幽霊になったって考えもあるの」

海未「なるほど」

ことり「一生懸命練習した曲が、誰にも聞かれずに終わってしまうのなんて嫌だもん」

ことり「今までも誰かが来ると、途中で弾くのをやめちゃってたし、きっと最後まで誰かに聞いて欲しいんだと思うの……」

海未「つまり、彼女に曲を弾いてもらおうということですね」

ことり「うん」

ことり「えっと、もし良かったら何か弾いてもらえませんか」

…………

ことり「駄目……かな?」

……わかりました

それでは、一曲お付き合いください

ことり「はーい」

海未「…………」

ことり「海未ちゃん?どうかしたの?」

海未「……いえ、なんでもありせんよ」

ポロン

~~~~~~~~~♪

ことり「優しい音色……」

海未「…………」

ことり「これだけ綺麗に弾けるなんて、凄いよね」

海未「……そうですね」

ことり「…………」

海未「…………」

~~~~~~~~~♪

トン

パチパチパチパチ

ことり「とっても上手だね」

……ありがとう

ことり「…………」

…………

ことり「あ、あれ?」

どうかしたの?



ことり「成仏……しないの?」

……しないよ、私はピアノが好きだから、いつもここにいるだけ

ことり「え……?」

だから、気を使わなくていいよ

私は幸せだから

ことり「で、でも……」

ことり「…………」



海未「そういうことですか」

ことり「え?」

海未「少しうるさくなりますが、我慢してくださいね」チャキ

ことり「鉄パイプ……?」

……な、何をするおつもりですか?

海未「ふふ、少し解体工事をするだけです……よッ!」ヒュッ

ガシャン

ことり「う、海未ちゃん!?」

なっ!?

バキッ ガチャン

やめてください!ピアノが壊れてしまいます!

ガチャ ガラン

海未「はあっ!」

バキン

ガラガラガラ

あ……あ……

海未「ふぅ、結構疲れますね」

ことり「海未ちゃん、なんでこんなこと……」

海未「……彼女を成仏させるためですよ」

ことり「え?」

海未「ほら、いつまでも悲しんでるフリをするのはやめなさい」

海未「貴女を縛る鎖は、もう無くなったんですよ」

…………っ

ことり「どういうこと?」

海未「この方は、元からピアノなんて好きじゃなかったんですよ」

ことり「え……?」

海未「憂いを帯びた瞳……このフレーズがどうにも気になっていたんですよ」

海未「もしも本当にピアノが好きなら、もっと楽しそうに弾くはずではありませんか?」

ことり「そういえば……そうだよね」

海未「そう、それではなぜ彼女は寸暇を惜しんで練習していたのか」

海未「それは、皆に期待されていたからでしょう?」

…………

海未「それが地元の名士の御息女ともなれば、お家の方からの期待も大きかったでしょうね」

海未「そして、心の優しい彼女は、平気を装って努力をするしかなかった」

海未「皆の期待を裏切らないように」

海未「そして、死んでもなお、皆の期待に応えようと、こうしていつまでも音楽を奏で続けている」

……違います、私は、本当にーー

海未「それなら、どうして悲しそうにピアノを弾いていたんですか?」

え……?

海未「先程の演奏時も、表情は暗く、優しいメロディーの中に悲痛な心の声が聞こえてきました」

それ……は……

海未「今ここに、貴女に期待する人は誰もいません」

海未「家族も、友人も、学校の同級生も、演奏会を楽しみにしていた人々も、誰もいないんです」

海未「だから、自分を縛り続けないでください」

海未「もう、自分を偽らなくてもいいんですよ」

………………初めは、本当に楽しかったんです

私がピアノを弾くと、皆がにこにこ笑ってくれました

でも、その内上手に弾くことだけを求められて、演奏会にも行かさせられて……だんだんピアノが苦痛になってきて……

でも、誰も私の気持ちには気づいてくれなかったのです

辞めてもいいんだよ、って言ってくれる人はいませんでした

皆が見てたのは、私という人間の上辺の部分だけだったんです……

だから、ありがとうございます……私のことを理解してくれて

きちんと私のことを見てくれて

ずっと一緒にいてくれた皆が気づかなかったことを、初対面の人に気づかれるなんて、おかしな話ですよね

きっと、貴女は人の痛みが解る、優しい人なんですね

海未「買い被り過ぎですよ、私は優しくなんてありません」

謙虚な所も素敵だと思います

もしも生きてたら、交際を申し込んでるぐらいには……

ことり「!」

海未「……褒め言葉として受け取っておきますよ」

あはは、フラれちゃいましたか……

やっぱり、初恋は実らない物ですね

海未「…………」

ことり「…………」

そんな顔しないでください、私も最後には救われましたから

それでは、そろそろお暇させて頂きます

そうだ……今更だとは思いますが、気をつけてくださいね

七不思議には、一歩間違えれば死に直結するものもあります

どうか、貴女が無事でありますように……

本当に、ありがとうございましたニコッ

スゥゥゥ

ことり「消えちゃった……」

海未「満足したのでしょう」

ことり「人気なのに孤独なんて、とっても悲しいよね」

海未「ええ、誰にも気づかれない苦しみ……私にも解ります」

ことり「海未ちゃんにもあるの?」

海未「…………失言でしたね、忘れてください」

ことり「でも……」

海未「そんなことより、一度休憩にしませんか?」

ことり「休憩?」

海未「はい、長丁場になるかもしれないと思いまして、いろいろ持ってきたのですよ」

ことり「…………海未ちゃん、やっぱり楽しみにしてたんじゃ」

海未「そ、そんなことはありません!必要だからこそ持ってきているんです!」

海未「そんなことばかり言っていると、お菓子あげませんよ!」

ことり「そ、それは大人気ないんじゃ……」

海未「何か言いましたか?」

ことり「ナ、ナンニモイッテマセン」

海未「それならよかった、それじゃあ休憩しましょう」ニコニコ

ことり「ハーイ」

今回はここまで

海未「お茶をどうぞ」カチャン

ことり「ありがとう……」

ことり「あの……海未ちゃん」

海未「なんでしょうか?」

ことり「そのお茶っ葉、わざわざ持ってきたの?」

海未「はい、もちろんそうですけど」

海未「ああ、お茶請けがあるか心配だったんですか?」

海未「大丈夫ですよ、きちんと用意してありますから」

海未「全く、食いしん坊さんですね」フフッ

ことり「あはは……」

海未「余り焦らすのも悪いので、出してしまいましょうか」

海未「どうぞ召し上がってください」コトン

ことり「……え?」

ことり「ケーキ……?」

海未「はい、チーズケーキですよ」

ことり(日本茶にチーズケーキって……海未ちゃん……)

ことり(しかもあれだけ走り回ってドタバタしてたのに、全く形が崩れてない……)

ことり(海未ちゃん、恐ろしい子)

海未「どうかしましたか?」

海未「遠慮せずに食べてくださいね」

ことり(ま、いいか)

ことり「いただきまーす」パクッ

ことり「ん~美味しい♪」

海未「喜んで頂けたのならなによりです」

ことり パクパク

海未 パクパク

ことり「……ねぇ、海未ちゃん」

海未「なんでしょうか?」

ことり「海未ちゃんは、このまま変わらなければいいのにって、思ったことある?」

海未「……先程の女子生徒のことですか?」

ことり「……うん」

ことり「あの子は、ただ皆が喜んでくれるのが嬉しかっただけだったんだよ」

ことり「でも、周りの人はそうは思わなかった」

ことり「あの子の才能を無駄にしないように、ピアノが上手になるように、一生懸命練習させた」

ことり「もちろん、悪気があったわけじゃないと思うよ? 子供を成長させたいって思うのは、親なら当然のことだもん」

ことり「でも、そのせいで大好きだったピアノを嫌いになっちゃうのは……なんだか悲しいよ」

ことり「あの子だって、変わりたくはなかったと思うの」

海未「……あの子は、皆に笑顔になって欲しかっただけでしょうからね」

海未「変わりたくはなかったでしょうね」

海未「ですが、変わること全てが、悪いことだとは思いません」

ことり「え……?」

海未「例えば、スクールアイドル」

海未「廃校を阻止するために、言い換えるのなら、学校の未来を変えるために、μ'sはできました」

海未「これは悪いことではありませんよね?」

ことり「それは、自分達で始めたことだから」

海未「……私は最初はいやだったんですけどね」

海未「ですが、今では練習も、ライブも、楽しみになっています」

海未「私の勝手な予測ですが、あの子は一生懸命になりすぎて、周りを見ることができなくなっていたんだと思うんです」

海未「きっと、あの子の演奏で笑顔になっていた人は、大勢いたのですから」

ことり「…………」

海未「そんなに考え込まないでください、変わらないことが悪いとは言ってはいませんから」

海未「 そうそう、そういえばファッションセンスは昔から変わっていませんよね?」

ことり「ファッションセンス……?」

海未「はい。子供の頃からミニスカートや可愛い服装が大好きですよね?」

ことり「うん、ことりは昔からずっと可愛い物が大好きだから」

海未「……そのせいでμ'sの衣装も裾が短かったり、ひらひらで可愛い物が多かったりするんですよ」

海未「とても恥ずかしいので、ちょっとはおとなしめの物に変えて頂けないでしょうか?」

ことり「……ふふ、だーめ♪」

ことり「海未ちゃんのわがままで、衣装は変えられません」ニコニコ

海未「そ、そうですよね……」

ことり「海未ちゃん」

海未「はい、なんでしょうか?」

ことり「あの……ありがとう」

海未「……感謝される程のことではありませんよ」

ことり「もう、ことりのお礼くらい、きちんと受け取ってくれてもいいのに」

海未「…………」

海未(変わることは悪くない、ですか)

海未「……どの口が、そんなことを言ってるのでしょうね」

ことり「え?」

海未「なんでもありません、それより、次は何処に行くんですか?」

ことり「うーんと……お花を摘みに……」

海未「トイレですか? 真姫が言っていた、赤い紙の……?」

ことり「え、えーと、そ、そうじゃなくて……ね?」モジモジ

海未「…………っ」

海未「も、申し訳ありません///」

ことり「///」


ーーー
ーー

海未「それで、どうしてわざわざ噂のトイレにくるのですか……」

ことり「ちょうどいいかなって思って……あはは」

海未「全く……」

ことり「えーと、それでね」

海未「?」

ことり「その……怖いから、一緒に入って……?」

海未「…………えっ」



海未「えええええええええええええええ!?」

海未「む、無理です!」

ことり「で、でも、このままじゃ我慢が……」

ことり「海未ちゃぁん……」ウルウル

海未「ぅ……ぁ……」

海未「わ、わかり……ました///」

パタン

ことり「は、恥ずかしいからこっちは見ないでね///」

海未「は、はい……」

パサッ

チョロチョロ

海未「…………」

海未(心頭滅却心頭滅却心頭滅却心頭滅却心頭滅却心頭滅却心頭滅却)

ことり「んっ」

海未(というかどうしてこの学校には音姫がないんですか!?)

海未(くっ……見えない分、逆にーー)

ことり「海未ちゃん!」

海未「っ!? なななななんですか!?変な妄想とかそんなことは全くーー」

ことり「ち、違うの、紙が……!」

海未「……紙が、消えている?」

ことり「そんな……入った時はきちんとあったのに」

赤い紙が欲しい? 青い紙が欲しい?

ことり「ひっ!?」

海未「!」

赤い紙が欲しい? 青い紙が欲しい?

ことり「あっ………ああああーー」

海未「静かに」スッ

ことり「むぐっ」

海未「落ち着いてください」

ことり「で、でも!」

海未「……この怪談についてはもう知っていますよね?」

ことり「知ってるけど……」

海未「私も真姫の話を聞いて少し調べてみたのですが、このように相手に質疑応答を求める物は、答えないのが最良とされているようです」

ことり「どういうこと?」

海未「つまり、こちらが質問に答えなければ、何もできないということです」

赤い紙が欲しい? 青い紙が欲しい?

海未「現に、今も同じ質問を繰り返すだけでしょう?」

ことり「本当だ……」

海未「今の間に……っと」ガサゴソ

海未「トイレットペーパーです、どうぞ」スッ
ことり「あ、ありがとう///」フキフキ

ことり「えっと、それで、この後どうするの?」

海未「ふむ……私が調べた所では、被害から逃れる方法しか書かれていませんでした」

海未「それに学校内の噂でも、他の物と違って、怪異ができた理由がありません」

海未「ですから、とりあえず声のする隣の個室を覗いてみましょう」

ことり「そ、そうだね……」

ガチャ ガチャ

海未「……鍵がかけられていますね」

赤い紙が欲しい? 青い紙が欲しい?

海未「うるさいッ!」

バキッ

ゴトン

海未「これで入れますよ」

ことり(扉さん可哀想)

海未「さあ、正体を見せなさい!」

海未「……あれ?」

ことり「誰も……いないね」

赤い紙が欲しい? 青い紙が欲しい?

海未「……声は、トイレの中から聞こえてきていますね」

ことり「うーん……実態がないと、どうしようもないよね」

海未「いえ、そうでもないかもしれませんよ」

ことり「え?」

ことり「何か思いついたの?」

海未「ええ、上手くいくかどうかはわかりませんが」

海未「私の予想なんですが、今このトイレは異世界に繋がっているんだと思います」

ことり「異世界?」

海未「はい、異世界です」

海未「とある動作をすることによって、異世界への扉が開く」

海未「そういった怪談を聞いたことはありませんか?」

ことり「えっと、魔の十三階段とか……?」

海未「はい、そういった類の物です」

海未「それは十三段目を踏むという動作。そして、こちらはお花を摘むという動作」

海未「それらが扉を開く要因だと思うんですよ」

海未「まあ、あくまでも私の考えですが」

ことり「でも、異世界に繋がっているとして、どうするの?」

ことり「お花を摘む度に扉が開くんじゃ、防ぎようがないんじゃ……」

海未「はい、そこで考えたのは、入口を無くしてしまえばいいと思ったんです」

ことり「入口を無くす……? どういうーー」

海未 チャキ

ことり「」

赤い紙ーー

海未「悪霊退散ッ!!!」ヒュッ

ガッシャァァァァァァン パリィィィン

パシャパシャ

海未「……これで、もう出てくることはないでしょう」

ことり「…………」

海未「……? どうかしましたか?」

ことり「え、えーと……海未ちゃんは勇気があるなって」

海未「そうでしょうか?」

ことり「うん……いろいろとね……」

ことり「それより、これで本当に解決したの?」

海未「多分解決したと思います」

海未「あのトイレは、こちらの世界とあちらの世界を結ぶ門の役割をしていたんですよ」

ことり「だから、トイレを壊しちゃえば、もう門は開かないってこと?」

海未「はい、その通りです」

海未「その証拠に、声はもう聞こえてこないでしょう?」

ことり「本当だ……」

ことり「やっぱり、海未ちゃんは凄いね」
海未「そんなことはありませんよ」

ことり「ううん、そんなことあるよ。いざとなったら凄いんだもん」

ことり「いつもはむっつりさんなのにね」

海未「いえ、決してそのようなことはありませんが」

ことり「……ことりのお花摘みの音聞いて、えっちな妄想したくせに」

海未「し、していません! 私は無罪です!!」

海未「そんなことより、早く次の場所に行きますよ!」

海未「もう折り返し地点は過ぎましたから、残りもパパッと終わらせましょう」

ことり「はーい」

今回はここまで

海未「それで、次はどこに行くんですか?」

ことり「うーん、プールにしようかな」

海未「プールというと、浮かび上がる人影とかでしょうか?」

ことり「ううん、もっと怖くて、恐ろしい物だよ」

ことり「そして、可哀想な女の子のお話」

ある所に、一人の水泳部員の少女がいました。

彼女は大会でも入賞する程の実力の持ち主で、部員の中でも一番泳ぎが上手でした。

ただ、勝ち気な性格からか、他の部員を下手だと馬鹿にしていたため、皆からは嫌われていました。

でも、彼女は気にしていません。

次の大会でもいい成績を残す。

それが彼女の目標で、他の部員の考えなど、どうでもいいと思っていたからです。

しかし、大会当日、彼女は不運に見舞われました。

激しい練習のせいか、体調を崩してすごい高熱がでてしまったのです。

それでも大会は止まりません。彼女は病気の体に鞭をうち、大会へと参加しました。

結果は惨敗。

いつもなら負けるはずのない、同じ学校の水泳部員にも勝てませんでした。

今まで実力で黙らせていた他の部員は、ここぞとばかりに彼女を詰りました。

「そんな実力であんな大口を叩いてたなんて最低ね」

「所詮井の中の蛙だったってこと」

「あんな順位取って、生きてて恥ずかしくないの?」

彼女は必死で体調が悪かったと弁明をしましたが、誰も聞きいてれくれません。

事実なんて意味のない物。

皆にとって重要なのは、彼女を責めることだったのです。

これを機に虐めが始まります。

悪口は勿論、着替えがなくなる、暴力をふるわれる、酷い時には水着が切り刻まれていることがありました。

大会のショックも合間って、強気な少女は次第に弱っていきました。

そしてある日、とうとう耐えられなくなり、彼女はプールの中で自殺をしてしまいました。

海未「…………」

ことり「……可哀想、だよね」

ことり「いくら他の人を馬鹿にしてたからって、自殺にまで追い込まれちゃうなんて」

ことり「それに、大会だって、病気のせいなのに……」

海未「……それは、どうなんでしょうね」

ことり「え?」

海未「続きを、お聞きしてもいいですか?」

ことり「あ、ごめんね……」

海未「いえ……」

彼女の死は、部員の皆に大きな衝撃を与えました。

[ピーーー]つもりはなかった、そんな罪悪感が生まれたのです。

しかし、しばらくするとその罪悪感も薄れていき、彼女の存在は次第に忘れられていくのでした。

そんなある日のこと、一人の部員が遅くまで練習していました。

大会が近いため、必死で練習をしていたのです。

しかし、灯りがないため、夜の練習はできません。

そろそろ帰ろうかな、とプールを出ようとした時、誰かに足を掴まれました。

他の部員は皆帰った、それなら誰が自分の足を掴んでいるのか?

そう思いながら恐る恐る水面に目をやると、自殺したはずの少女が水中で笑っていたのです。

思わず悲鳴をあげるけど、誰も助けにくる人はいない。

そして、抵抗も虚しく、彼女は水の中に引き込まれてしまいました。

ことり「これでおしまい」

ことり「この子は虐められた仕返しをするために、幽霊になったの」

海未「……いつの時代も、こういうことがあるんですね」

ことり「うん……」

海未「解りました、行きましょう」

海未「こんなことをしても意味がないと、教えてあげないといけませんね」

トン トン トン

海未「…………真っ暗ですね」

ことり「そうだね……これじゃ調べられないね」

ことり「……そうだ! 確か、倉庫に大きなライトが入ってるはずだよ」

海未「懐中電灯ですか?」

ことり「ううん、そうじゃなくて、もっと全体を照らせるような大きいの」

海未「そんなものがあるのですか?」

ことり「うん、何かあった時のためにって」

海未「なるほど、それじゃあ倉庫からそのライトを引っ張ってくるとしましょうか」テクテク

ことり「あ、でも倉庫には南京錠がかけられてーー」

バキンッ

ことり「」

海未「すいません、聞き逃してしまいました。もう一度言ってもらえますか?」

ことり「……なんでもないよ」

ガラガラガラ

海未「まさかこんな便利な物があるとは思いませんでした」

ことり「助かっちゃうよね……っと、コンセント繋いだよ」

海未「ありがとうございます。では」カチッ

パァァァァァァァァ

海未「おお、随分明るくなりましたね」

海未「しかし、遠目に見ただけではプール中の様子までは解りませんか」

海未「近づいてみます」

ことり「で、でも、危なくない?」

海未「確かに危険ですが、このままでは解決できませんからね」

ことり「そうだけど……」

海未「では行きますよ、私から離れないでくださいね」

ソロソロ

スッ

海未「……ライトがあっても、水の中は見にくいですね」

海未「波のせいで余計に見にくくなっています」

ことり「え……波?」

ことり「誰もいないはずなのにどうして波が……?」

海未「そういえば……」

ニタァ

海未「ッ!?」

ガシッ

あはははははははははは!!!

グイッ

海未「あぐっ!?」

バッシャァァァァァン!!

ことり「海未ちゃん!?」

グググググ

あなたも引きずりこんであげる

海未「っ……凄い力!」

ことり「な、なんとかしないと……!」

無駄よ、プールの中で私に勝てる人はいないんだもの

海未「こんなことをして……貴女は満足なんですか?」

私に説教する気? 立場をわからせてあげるわ

グイッ

海未「っ!?」

海未「ゆ、指が……もう……!」スルッ

あはっ

ことり「海未ちゃん!!」ガシッ

ことり「っ……」

海未「このままでは貴女まで……!」

海未「手を離してください!」

ことり「駄目!」

ことり「ことりが海未ちゃんを守らなきゃ!」

……吐き気がする友情ごっこね

友達なんて、必要ないのに

海未「貴女みたいなのはそうやって……」

海未「見下ろしてばかりだから勝機を見落とすッ!」

ガシッ

竹刀!? どこから取り出して……!

海未「突きぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

ゴスッ

おぐっ!?

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!

海未「今の間にプールから……」パシャン

海未 ハァハァ

ことり ハァハァ

海未「ありがとうございます、助かりました」

ことり「ううん、海未ちゃんが無事でよかった」

……よくも私を攻撃してくれたわね

弱いくせに……弱いくせに……!

絶対に許さない!

あなたたち二人とも殺してやる!

海未「許さないのは、こちらの方ですよ」

はっ! あんたになにができる!

プールの中で私に勝てるわけないでしょ!

海未「勝つ? 何を言ってるんですか?」

海未「今から始まるのは一方的な攻撃ですよ」

ことり「え……?」

何言ってんの? そんなことできるわけーー

海未「貴女は、プールの中から出られますか?」

え?

トン トン トン

海未「貴女はずっとプールに拘っているように見えます」

海未「殺された子も、プールの中に引きずり込まれました」

海未「私が来た時も、ずっとプールに身を潜めていた」

海未「だから思ったんですよ、もしかすると、プールから出られないんじゃないかって」

ピタッ

ことり「海未……ちゃん?」

だったらなんだっていうの?

ライトの近くに行っちゃって、これなら目が眩むとか考えちゃってるの?

海未「いえいえ、そんなことは考えていませんよ」

海未「力の調整を考えていたんです」

力の調整? あなた、まさか……!

海未「近所迷惑になりますから、あまり大きな声は出さないでくださいね?」ニコッ

ひっ!?

海未「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」ヒュッ

ガッシャァァァァァァァァァァン

ヒューーー

バッシャァァァァァァァァァァン‼‼

あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!?!!??!?!!?!

ことり「…………」ブルブル

海未「ふふ、水の中から出られないのであれば、電気を流してあげれば逃げ道がないと思ったのですが、上手くいきましたね」

海未「ライトがあって助かりました」

ことり「……さ、流石に可哀想じゃないかな」

海未「このくらい当然の報いですよ」

海未「今の間にプールの水を抜きますよ」

ことり「えっ」

海未「ほら、行きますよ」

ことり「う、うん……」

コポコポコポ

ズズッ

海未「水が無くなりましたね」

海未「それでは、本人にお話を聞くとしましょうか」

ことり「うん……」

海未「ほら、起きなさい」パンパン

っ……ぁ……

海未「おはようございます、いい夢は見られましたか?」

…………悪夢よ

どうして私がこんな酷い目にあわないといけないの……?

朝早くから夜遅くまで、毎日練習した

皆が遊んでる時だって、私は一人で練習してた

それなのに、一回体調を崩したせいで酷い成績をとって、皆に馬鹿にされて、虐められて!

幽霊になったと思ったら暴力女に酷い目に合わされて!

誰も私を助けてくれない!!

こんなの不公平よ!!

海未「甘えないでください!」

っ!

海未「体調を崩した!? 貴女はそれでもスポーツ選手ですか!?」

海未「大会が近づいてきたのならそれに合わせて体調管理をするのは当たり前でしょう!」

海未「そんな努力もしていないのに不公平だなんて言う資格、貴女にはありません!」

海未「皆に虐められたのだって、貴女の態度が問題だったのでしょう!」

海未「それなのに全て人のせいにしないでください!!」

……うるさい

うるさいうるさいうるさい!

それならどうすればよかったのよ!

海未「本当に解らないんですか?」

海未「誰かに助けて欲しいのなら、貴女も誰かに手を差し伸べればよかったんですよ」

え……?

海未「貴女には水泳の才能がありました」

海未「それなら、伸び悩んでいる人を見下すのではなく、アドバイスをしてあげれば良かったじゃないですか!」

私は嫌われてたから、そんなこと誰もしてほしくなんか……

海未「そう思ってるのは、貴女だけですよ」

海未「本当に上手くなりたい人は、どうやったら上に行けるのかを知りたいんです」

海未「もちろん、全員が全員というわけではありません」

海未「ですが、そうやって考えていれば、絶対にこんなことにはならなかったはずです」

海未「貴女だって……本当は皆と仲良くしたかったのでしょう?」

…………そう、なのかもね

ずっと一人で、水泳のことしか考えないようにしてたけど、本当は皆と仲良く遊びたかったのかな

海未「…………」

なによ、驚いた顔して

海未「……いえ、こんなにすんなりと認めてもらえるとは思っていなかったので」

…………初めて、なのよ

海未「え?」

私のことをちゃんと解ってくれて、叱ってくれるのは、貴女が初めてなのよ

避けるか、嫌悪するか

皆の私に対する態度はそれだけだった

だから、誰かにきちんと叱られるのは初めてなの

だから、その…………




ありがとう ニコッ

海未「!」

ことり「!」

ねえ、貴女、名前は?

海未「園田海未です」

海未……いい名前ね

海未、貴女を私の恋人にしてあげるわ、光栄に思いなさい

ことり「え!?」

海未「……お気持ちだけ頂いておきます」

なによ、私じゃ不満だっていうの?

海未「私には、既に大切な人がいますので」

ことり「…………」

そう……それならしかたないわ

それじゃあ……さ

私の、友達になってくれる?

海未「はい、勿論ですよ」ニコッ

……ありがとう

それじゃあ、そろそろ消えようと思うんだけど……海未

海未「なんでしょうか?」

……負けんじゃないわよ

海未「……はい」

それじゃあ、また来世で会いましょう

さようなら ニコッ

スゥゥゥゥ

ことり「……あの子も、本当は寂しかったんだね」

海未「ええ、本当は皆と一緒にいたかったのに、プライドが邪魔をしていたのでしょう」

海未「私も……ああなっていたのかもしれませんね」

ことり「……海未ちゃんは、違うよ」

海未「それは、皆がいてくれたからですよ」

ことり「…………」

海未「それよりも、濡れてしまったので着替えたいのですが、更衣室に行ってもよろしいでしょうか?」

ことり「更衣室に……?」チラッ

ことり「……うん、大丈夫。行こう」

ことり「流石に、濡れたままだと透け透けでちょっとえっちだもんね」

海未「あ、あんまりみないでください!」

海未「早くいきますよ!」スタスタ

ことり「待ってよ~!」タタタタ

今回はここまで

バタン

海未「それにしても、今回は本当に焦りました」パサッ

海未「助けて頂いて本当にありがとうございます」

ことり「ううん、お礼を言うのはことりの方だよ」

ことり「事件を解決してるのは、全部海未ちゃんなんだもん」

ことり「やっぱり、海未ちゃんは凄いよ」

海未「そんなことはありませんよ、たまたま運が良かっただけです」キュッ

海未「ところで、どうして先程から時間を気にしているのですか?」

ことり「え?」

海未「いえ、何度も時計に目をやっているので、どうかしたのかと」

ことり「えっと……次の七不思議のことで……」

海未「次の七不思議がどうかしたんですか?」

ことり「その……場所がここなの」

海未「なっ!?」

ことり「あ、でも大丈夫だよ」

ことり「ここのお話は時間が決まってて、4時44分にならないと起こらなーー」

ジィィィィィィィィィ

ことり「え?」

海未「時計の針が勝手に……!?」

ピタッ

ゴーン ゴーン ゴーン

ことり「4時44分……」

海未「……その後は、どうなるんですか?」

ことり「……ロッカーが開いて」

キィ

ことり「中から……殺人鬼が……」

スタン

ニャァ

みーつけた

海未「っ!」

あはっ! ヒュッ

海未「はぁっ!」ヒュッ

キィン

グググググ

殺してやる

海未「……っ」

海未(なんて力……このままでは押し切られてしまう!)

ことり「う、海未ちゃん……」

ことり「な、なんとかしないと!」キョロキョロ

ことり「……あれは」

海未「く……」

海未(まずい……!)

お前のせいで

海未「え?」

ことり「海未ちゃん!どいて!」

海未「! やぁっ!」キィン

サッ

っ!?

ボォォォォォォォォォォ

がぁっ!?

ことり「海未ちゃん、大丈夫?」

海未「助かりました、ありがとうございます」

海未「それにしても、ライターとスプレーで擬似的な火炎放射器にするなんて……一歩間違えば自分が大怪我していたんですよ?」

ことり「うん……でも、海未ちゃんを助けなきゃって必死だったから……」

海未「……ありがとうございます」

ことり「そんなことより早く逃げないと!」

海未「そうですね、急ぎましょう」

違う……

海未「え?」

ことり「海未ちゃん?」

海未「……いえ、なんでもありません」

タタタタタタタ

ガラッ

バタン

海未 ハァハァ

ことり ハァハァ

海未「なんとか逃げ切れましたね」

ことり「そうだね……」

海未「今回の話を、聞かせてもらえますか?」

ことり「うん」

ある所に、二人の姉妹がいました。

お姉さんは姉御気質で皆から頼られる、面倒見のいい人でした。

ある日、妹の友達が、更衣室で物が無くなったり、視線を感じたりすると相談にやってきたのです。

その子は姉妹と仲がよく、お姉さんは二つ返事で引き受けました。

この事件もすぐに解決するだろう、皆がそう信じて疑いません。

しかし、結果は皆の予想しない形で幕を引くことになったのです。

相談があった次の日、更衣室で一つの遺体が発見されました。

相談に来た女の子が、無惨にも殺されてしまったのです。

そして、その傍に佇んでいたのは、返り血で赤く染まったお姉さんでした。

ことり「妹の友達に起きた異変はお姉さんの仕業だったの」

ことり「お姉さんはロッカーの中に潜んでいて、見つかったから殺しちゃったんだって」

ことり「そして、その後、お姉さんは自殺」

ことり「妹さんは、お姉さんが殺人鬼だって虐められるようになって転校」

ことり「そしていつからか、更衣室にはお姉さんの幽霊がでるようになったの」

ことり「人を……殺すために」

海未「…………」

ことり「これが、お話の内容」

海未「…………」

ことり「……海未ちゃん?」

海未「……少し、妙だと思いませんか?」

ことり「え?」

海未「どうして、このお姉さんは殺しをしたのですか?」

ことり「えっと、それは見つかったから……」

海未「覗きがばれたくらいで殺人をするなら、世の中は殺人犯だらけですよ」

海未「それに、返り血で染まっていた……ということは、なんらかの武器、先程彼女が持っていた日本刀でしょうか、を持っていたということになります」

海未「日本刀を持って覗きに行く人なんて、存在するんでしょうか?」

ことり「……いない、よね」

海未「…………」

海未「お前のせいで……違う……」

ことり「え?」

海未「先程、彼女が言っていた言葉です」

海未「この話、何か裏があると思います」

海未「一度、図書室に行きませんか?


ことり「いいけど……どうして?」

海未「調べたいことがあります」

ーーーー図書室

ガラッ

パタン

ことり「見つからなくてよかったね」

海未「そうですね」

ことり「それで、何を調べるの?」

海未「……学校で昔起きた事件を調べたいと思います」

ことり「それって、お話にでてきた……?」

海未「はい、あの殺人事件についてです」

ことり「どうして……?」

海未「詳しくは見つけてから説明します、手分けして探しましょう」

ペラッ ペラッ

海未(あの言葉が本当だとするのなら)

海未(彼女はただの殺人犯ではない)

海未(確証を掴まないと)

海未「……! ありました!」

海未「こちらに来てください」

ことり「うん」

○月×日

更衣室で殺人事件が起きた。

被害者はソフトボール部の女の子。

練習熱心で毎朝誰よりも早く来て練習していたらしい。

事件現場には血が散乱しており、凶器には日本刀が使用されたと考えられる。

近くに小型のナイフが落ちていたが、こちらには血の痕もなく、事件には無関係と断定。

加害者の女の子は、その死体の横にいた所を発見され、 言い逃れできないと思ったのかその場で自殺。

また、加害者には妹がおり、図書委員をしている。

海未「…………」

ことり「……お話の通り……だね」

海未「いえ、そうでもありませんよ」

ことり「え?」

海未「私の推測通りなら、今回の不思議の噂には間違いがあります」

ことり「……どういうこと?」

海未「七不思議の話は、誰が作るのですか?」

ことり「それは……いろんな人?」

海未「そうですね、いろんな人が作ります」

海未「実際に体験した人、伝聞で知った人、調べていて発見した人、面白半分で作った人」

海未「そして、今は話通りに幽霊が出たとなると、この話を作った人は実際に見た、もしくは話を聞いた人でしょう」

海未「そして、話を作るために、過去に何があったのかを調べた」

海未「そして勘違いをしてしまったんですよ」

ことり「海未ちゃん……? 何を言ってるの?」

海未「過去に起きた事件ですが、殺された女の子に起きた異変はお姉さんの仕業ではありません」

ことり「え?」

海未「しかし、これで本当に納得させられるのでしょうか……?」

海未「ふむ……」

ことり「う、海未ちゃん……?ことり、何も解ってないんだけど……」

ことり「……あれ?」ガサッ

ことり「…………! 海未ちゃん!」

海未「どうかしましたか?」

ことり「こ、これ!」スッ

海未「これは……!」


お姉ちゃんへ


海未「……手紙、ですか?」

カンカンカン

海未「!」

ことり「こ、この音……」

ガラッ

どこにいる

ことり「ひっ……」

海未「静かに……こちらに来てください」

トントントン

ことり「どうするの……?このままじゃ見つかっちゃうよ」

ことり「なんとか隙をみて逃げ出さないと……」

海未「……そうですね、それなら隙を作りましょう」

海未「まあ、逃げ出す必要はありませんけどね」

ことり「え?」

トントントン

海未「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」ヒュン

ドゴォォォォォォォォン

ドンドンドンドガァァァァン

があ"ぁぁぁぁぁぁぁぁ!?

海未「本棚のドミノ倒し、一度やってみたかったんですよね」

ことり「…………」

海未「このまま燃やしたら、解決できるような気もして来ました」

ことり「学校が燃えちゃうよ!?」

海未「冗談ですよ、それでは話を聞くとしまーー」

ガタン

うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

ことり「そんな!?」

海未「吹き飛びなさいッ!」ヒュッ

ドゴォォォォォォォォン

ヒューーーーーーン

ドガァァァァァァァァン‼‼

っ!? ごはっ!!?!??!!

パラパラパラ

ことり(本棚って飛ぶんだ……)

海未「……本棚に倒さたのに動けるとは思いませんでしたよ」

海未「ですが、流石に本棚に突撃されては、耐えられませんでしたか」

ことり「……あの本棚、廊下にまで突き出てるような……」

ぅ……ちき……しょう……

犯罪者なんかに……

ことり「え……?」

海未「やはり、そうでしたか」

ことり「どういうことなの?」

海未「言ったでしょう、彼女は異変と関係がないって」

海未「彼女は、妹の友達を守るために、ロッカーの中にいたんですよ」

ことり「そう……だったの?」

ことり「で、でも、それならどうして殺したの……?」

海未「……おそらく、小型のナイフに関係があるのでしょう」

海未「きっと、殺されそうになったから殺してしまった……そうですよね?」

…………

……あの時、私は犯罪者を捕まえるために先に更衣室に来ていた

でも、ずっと待ってても犯罪者は来なかった

変わりに来たのは……

海未「被害者の女の子、ですね」

ああ……

出るタイミングを見失って、気づかれないようにやり過ごそうとしたんだが、何かに気づいたのか、私のいるロッカーに近づいてきたんだよ

そして、開けた

今思うと、本当に馬鹿だったと思うよ

日本刀持ってロッカー隠れてる人間がいたら、誰だろうと犯罪者にしか見えないもんな

彼女は護身用のナイフを取り出して、私を刺そうとした

殺されそうになった私は反射的に手元の日本刀で……

海未「…………」

ことり「…………」

笑えるよな、守ろうとした相手を殺しちまうだなんて

しかもその時になんて言ったと思う?

ごめんなさい、だぜ

もうわけわかんなかったよ、どうして殺したやつに謝るんだっての

おまけに妹は私のせいで虐められて転校になったらしいじゃねーか

最低な人間だよ、私は

きっと、妹も、私を恨んでるんだろうな……

海未「そんなことはありませんよ」

え?

海未「これを、図書室で見つけました」

海未「妹さんからの、あなたへの手紙ですよ」

妹が……?

海未「はい、これです」スッ

海未「きっと誰にも言えず、1人で悩んだ末に書いたのでしょう」

海未「妹さんの気持ち、受け取ってあげてください」

お姉ちゃんへ

お姉ちゃんがあの子を殺してしまったと聞いた時は耳を疑いました

事件のことは学校中に広がっていて、お姉ちゃんは皆から悪者扱いされています

でも、私はお姉ちゃんが悪者だなんて思いません

お姉ちゃんはいつだって、皆のヒーローなんだもん

だから、今回のことも、きっと何か理由があるんだよね?

こんなことを書いても意味がないことは解っています

でも、一つだけ言っておきたいんです

例え皆がお姉ちゃんを信じなくても、私だけはずっとお姉ちゃんを信じています

天国で待っています

……ははっ、馬鹿な妹だな

こんな私を……ずっと信じてくれたのかよ……

すっと恨まれてるかと思ってたんだかな……

海未「あなたを恨んでる人なんて、誰もいませんよ」

……慰めんなよ、私が殺したあの子は、絶対に私のことをーー

海未「恨んではいませんよ」

え……?

海未「彼女は最後にこういったそうですね」

海未「ごめんなさい、って」

……ああ

海未「きっと、彼女は気づいたんですよ、貴女が犯人じゃなかったのだと」

海未「そして、見たんですよ、貴女の顔を」

海未「今みたいに、後悔と涙でくしゃくしゃになった顔を……ね」

…………っ

海未「さあ、どうするんですか?」

海未「このまま成仏するのか、それとも強制的に成仏させられるのか」

海未「好きな方を選ばせてあげますよ」

……成仏するよ、もう本棚をぶつけられるのはごめんだ

それに……あいつらに詫びをいれにいかなきゃなんねーし

迷惑かけて悪かったな

しかしお前強いな、私が負けたのは初めてだよ

よかったら私のーー

海未「お断りします」

……最後まで聞けよ

ことり「むー……」

あんたは……

ああ、そういうことかよ、全くモテモテで羨ましいことだ

んじゃそろそろ消えるよ

ありがとな ニコッ

スゥゥゥゥ

ことり「消えちゃった……ね」

海未「はい、そうですね」

ことり「ちゃんと、妹さんと会えるかな?」

海未「ええ、きっと会えますよ……」

海未「ですが、一つ気になることがあるんです」

ことり「……? 気になること?」

ことり「それって、どうして七不思議が起きるのが4時44分なのってこと?」

海未「それはおそらく、彼女がロッカーに隠れた時間、もしくは見つかった時間でしょう」

ことり「それじゃあ、日本刀を持ってた理由?」

海未「犯人撃退用でしょう」

ことり「うーん……話が間違ってたこと?」

海未「きっと、話を作った人も皆と同じように勘違いしていたのでしょう」

ことり「…………わかんない」

海未「妹さんからの手紙、覚えていますか?」

ことり「うん……」

海未「手紙の最後に『天国で待っています』という言葉がありましたよね」

ことり「それがどうかしたの?」

海未「お姉さんが先に死んだのであれば、待っているのはお姉さんの方ではありませんか?」

ことり「あ……」

海未「そう、待っていますということは、お姉さんがまだここに幽霊として存在していることを知っているからでる言葉なんです」

海未「それに、この手紙が書かれてから誰にも気づかれずにこんな所に残っているなんて、いくらなんでもおかしすぎですよ」

ことり「じ、じゃあ妹さんは……もしかして……」

海未「…………」

ことり「…………」

海未「やめましょう、これ以上深入りしてもいいことはなさそうです」

ことり「そ、そうだよね、もう解決したもんね、あはは」

海未「それじゃあ最後の七不思議を解決しに行くとしましょう」

海未「場所はどこですか?」

ことり「……場所は屋上だよ」

海未「屋上……μ'sが練習している場所じゃではありませんか」

ことり「うん、そうなの」

海未「わかりました、それじゃあ行きましょう」

海未「そして、全て終わらせましょう」

ことり「…………うん」

今回はここまで

キィ

バタン

海未「今夜は満月ですか」

ことり「うん……月が綺麗だね」

海未「確かに、とても綺麗ですね」

ことり「……むぅ」

海未「それより、最後はどういった怪異が起きるのですか?」

ことり「…………」

海未「? どうかしましたか?」

ことり「……なんでないよ」

ことり「お話するね、最後の物語を」

ある所に、とても仲のいい二人の女の子がいました。

交代でお弁当を作ってきて食べさせあったり、放課後は二人きりでデートしたり、毎日が綿飴のように甘くて幸せでした。

先輩と後輩という関係でしたが、年齢の差なんて二人には特に気にすることではありません。

大事なのは、その幸せな時間だからです。

しかし、永遠に続くと思われたその日々に、終末の鐘が鳴り響きました。

先輩の卒業式が、行われたのです。

後輩は泣きながら先輩に縋り付きました。
行かないで欲しい、側にいて欲しいと。

そんな後輩を見兼ねたのか、先輩はこう言ったのです。

今夜、学校の屋上で待ってる。

後輩が屋上に行くと、そこには先輩の姿がありました。

空には雲一つなく、満月が綺麗に輝いています。

先輩はぎゅっと後輩を抱き寄せると、安心させるように語りかけます。

私は君のことが好きだ。だから泣かないで欲しい。大丈夫、ずっと一緒にいるから。君に永遠の愛を誓おう。

それを聞いた後輩は、嬉しさで心が満たされました。

私も先輩が大好きです。

泣きじゃくりながら必死にそう伝えると、先輩の顔にも笑みが広がります。

二人はどちらからともなく顔を寄せ合い、誓いのキスをしました。

そして、二人はずっと一緒に、幸せに暮らしました。

ことり「それ以来、満月の夜に屋上で告白すると、恋が成就してずっと幸せでいられるって言われてるの」

海未「…………これが、最後の話なのですか?」

ことり「うん……驚いた?」

海未「ええ、今までと同じように何か恐ろしい事件が起きたものとばかり考えていましたので」

ことり「……もしそうだったら、不思議じゃなくて、怪談になっちゃうよ」

ことり「今までのお話が、可哀想な怖いお話ばかりだったから勘違いしちゃうかもしれないけど、不思議って言うのは、怖いって意味じゃないの」

ことり「本当かどうかわからない、説明ができない未知の物」

ことり「だから……ね、悲しい話だけじゃなくて、一つくらい幸せなお話があってもいいと思うの」

海未「……そうですね、ですが、これでは最後の七不思議は確認できませんね」

ことり「本当に……そう思う?」

海未「え……?」

海未「どういうーー」

ことり「ことりはね、ずっと海未ちゃんをみてたの」

ことり「いつも凛としてて、皆の憧れで、ことりが困った時は助けてくれて」

ことり「今日だって、海未ちゃんがいなかったら、ことりは死んじゃってたって思う」

ことり「まるで王子様のように、ことりを守ってくれる」

ことり「でも、カッコいいだけじゃなくて、可愛い所もあって」

ことり「鏡の前でポーズの練習をしたり、恥ずかしくなると顔を真っ赤にしちゃったり」

ことり「いつからか、そんな海未ちゃんを見るたびに胸がきゅんってなるようになっちゃったの」

ことり「だから……聞いてください、私の想いを」



ことり「私は、海未ちゃんのことが好きです」

ことり「私と付き合ってください」





海未「お断りします」



ことり「え……?」

ことり「そんな……どうして?」

海未「どうして、ですか」

海未「だって」







海未「貴女は本物のことりじゃないでしょう?」

ことり「え?」

ことり「う、海未ちゃん、何をーー」

海未「姿形は完全にことりのままです」

海未「ですが、歩幅、発音、癖、重心の位置、私との距離」

海未「他の部分は、ことりとは全く違います」

ことり「っ!? そんなの!」

海未「解るわけがない……と思いますか? ですが私には解るのですよ」

海未「私が何年ことりと一緒にいると思うんですか」

海未「それに、まだ不可解なことがあります」

海未「今日のことりは考え事をしていて皆の会話を聞いていませんでした」

海未「それなのに七不思議の話題が出たのはどうしてでしょうか?」

ことり「それは……確かにぼーっとしてたけど、ちょっとは耳に残ってたし……」

ことり「それに、悩んでたのは七不思議のせいだったから……」

海未「……もう一つ、音楽室の女の子ですが」

海未「あの子は『貴女が無事でありますように』と言いました」

海未「二人いるのに、私の無事だけを祈るというのはおかしいとおもいませんか?」

ことり「そんなのわかんないよ!」

ことり「海未ちゃんのことが好きだからそう言っただけかもしれないのに!」

ことり「なんでそんなことで疑われないといけないの……?」

ことり「お願い……ことりのことを信じてよ……」ポロポロ

海未「…………確かに、ここまでは全て私の思い違いの可能性もあります」

海未「ですが、貴女が偽物だという決定的な証拠があるんですよ」

ことり「え……?」

海未「変わること、変わらないことの話をしたのは覚えていますね?」

ことり「う、うん……」

海未「その時、私はこう言いましたよね」

海未「『子供の頃からミニスカートや可愛い服装が大好きですよね?』と」

海未「そして貴女はそれについて肯定しました」

ことり「……それが、なんなの?」

海未「教えてあげましょう、ことりがミニスカートを好んで穿くようになったのは、私と穂乃果に出会った後」

海未「つまり、ことりの服装の趣味は変わる物だったんですよ」

ことり「そんなっ……!?」

海未「……それを知らなかった貴女が、ことりであるはずがありません」

海未「貴女が……七番目の不思議ですね?」

ことり「…………」

ことり「………ふふ」

ことり「あは……」

ことり「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」

ことり「流石海未ちゃん! 場を和ませるための話題だと思ってたけど、まさか私を嵌めるための罠だったなんて!」

ことり「途中から私のことを『ことり』って読んでくれなくなったのもそのせいだったんだね!」

ことり「上手くいってたと思ってたのになぁ……」

ことり「ま、ばれちゃったらしょうがないね」

ことり「正解だよ、海未ちゃん。私が最後の七不思議」

ある所に、可愛らしい双子の姉妹がいました。

二人はとても仲が良く、同じ服を来て、同じ趣味を持ち、いつも一緒にいました。

しかし、ある時その時間は壊れてしまいました。

一人の先輩が、二人の前に現れたのです。

容姿端麗、周りの人とは異なる大人っぽい雰囲気に、二人はすぐにその先輩のことを好きになりました。

そして

先輩と姉が、付き合うことになりました。

その日を境に今までの生活ががらっとかったのです。

いつも一緒にいた姉は、大好きな先輩の所に行ってしまい、一人になる時間が増え、たまに話すと先輩との惚気話ばかり。

妹にとっては、毎日が地獄のようでした。

しかし、そんな日々も終わりが見えてきました。

そう、先輩の卒業式です。

姉が先輩に泣きつくのを見ながら考えます。

どうしてあの位置にいるのは私じゃないのか。

どうして先輩は姉を選んだのか。

夜、何処かに出かけようとしていた姉を妹が問いただしました。

姉は答えました。

屋上で先輩と待ち合わせしている、と。

この時、妹の中に悪魔のような考えが過ぎりました。

ーーーー姉の代わりに行けば、私を愛してもらえる。

次の瞬間、姉は床へと崩れ落ちました。

妹が屋上に行くと、そこには先輩の姿がありました。

空には雲一つなく、満月が綺麗に輝いています。

先輩はぎゅっと妹を抱き寄せると、安心させるように語りかけます。

私は君のことが好きだ。だから泣かないで欲しい。大丈夫、ずっと一緒にいるから。君に永遠の愛を誓おう。

それを聞いた妹は、嬉しさで心が満たされました。

それは妹が一番欲しかった言葉。

私も先輩が大好きです。

泣きじゃくりながら必死にそう伝えると、先輩の顔にも笑みが広がります。

二人はどちらからともなく顔を寄せ合い、誓いのキスをしました。

そして



そして気づきました、この幸せな時間は直ぐに終わりを告げると。

先輩と姉が別れない以上、明日にでも妹が入れ替わっていたことがばれてしまうでしょう。

嫌だ、離れたくない、私はずっと先輩と一緒にいたい。

そんな想いが、妹の心を取り巻く。

しかし、現実は非常だ。この温もりはもうすぐ離れてしまうだろう。

だから、この温もりを永遠に感じたくて
先輩、私と一緒に……死んでください。

そうして、二人は屋上から身を投げた。

しかし、少女の願いが叶うことはなかった。

ことり「私は一人、幽霊になってこの世界に取り残された」

ことり「そして、こうやって他人の姿を真似して、馬鹿な人達を私の世界に閉じ込めるの」

ことり「自分の恋人が入れ替わってもわからない、馬鹿な奴らをね」

海未「……先程の選択肢、『はい』と答えたら私もそうなっていたのですね」

ことり「そうだよ。まさか見破られるとは思ってもみなかったけどね」

ことり「今まで気付いた人は一人もいなかったのに」

ことり「ことり、ますます海未ちゃんが欲しくなっちゃった」

海未「……その姿と声で言われると、少し嬉しいので困りますね」

ことり「それなら私のことを好きって言ってよ」

ことり「膝枕、食べさせ合い、恋人繋ぎ、エッチな御奉仕……海未ちゃんがしたくてもできなかったこと、なんでもしてあげるよ」

海未「お断りします。私は、偽りの愛になど興味はありません」

ことり「そう……残念だなぁ」

ことり「それなら、無理やりにでも従わせてあげる!」

ヒュッ

ことり「っ!?」サッ

ことり「……弓なんて、いつの間に出したの?」

海未「常在戦場。いついかなる時も気を抜いてはいけませんよ」

ガチャ

バタン

ことり「……へぇ、逃げるんだ」

ことり「いいよ、海未ちゃん。鬼ごっこしよっか」

ことり「捕まえたら、二度と逆らう気が起きなくなるくらいたっぷり虐めてあげるから」

ことり「せいぜい足掻いてみせてね?」

トントントン

ことり「海未ちゃんどこー?」

ことり「隠れてないで出ておいでよー」

ことり「それとも幽霊が怖くて腰が抜けちゃった?」

ことり「小心者のヘタレ海未ちゃんならしょうがないかな」

ことり「あははははははははははは!!」

ヒュゥゥゥゥゥゥン

ガッシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!

ことり「わっ!?」

ことり「な、なんで壁に木が突き刺さって……?」

カツンカツンカツン

海未「小心者のヘタレ……」

ことり「っ!?」

海未「随分と好き放題言ってくれるじゃないですか」

ことり「か、かくれんぼはもう終わり?」

海未「ええ、終わりですよ」

海未「鬼ごっこ、しましょうか」ニコッ

ことり「ひっ!?」」

海未「ちょっせぇぇぇぇぇぇぇ!!!」ヒュッ

キィィィィィィィィィン!

ヒューーーーーーーーン

ことり「え、ち、ちょっと待っーー」

ことり「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

ドォォォォォォォォォォン!!!!

ダダダダダダダダダダダダダ

ことり「はぁ……はぁ……」

ことり「海未ちゃんの馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

ことり「なんで幽霊が逃げなくちゃ行けないの!?」

ことり「普通は逆ーー」

ドォォォォォォォォォォン!!

ことり「ひぁっ!?」

ことり「こ、殺される……このままじゃ殺されちゃう……」

ことり「なんとかしないと……」

ことり「ん……教室……?」

ことり「ここなら!」

ガラガラ

ピシャン

ことり ハァハァ

ことり「こ、ここなら……」

ことり「!」サッ

ドォォォォォォォォォォン!!

ガラガラガシャンパリーン

ことり「と、扉が……」

海未「鬼ごっこは、もう終わりですか?」

海未「チェックメイト、ですね」

海未「もう貴女に逃げ場はありません」

海未「おとなしく成仏してください」

ことり「……逃げ場がない?」

ことり「ふふ、海未ちゃんは追い詰めたつもりかもしれないけど、それは違うんだよ」

ことり「追い詰められたのは、海未ちゃんの方」

フワフワッ

海未「……机や椅子が浮いた?」

海未「まさか、これは……」

ことり「ふふ、知ってるかな、ポルターガイストって」

ことり「私は物を自由に動かせるの」

ことり「あんまり手荒なことはしたくなかったけど、しょうがないよね」

ことり「ちょっとだけ、痛い目みてね」

ことり「えいッ!」ヒュッ

ヒュォォォォォォォォォォォ

海未「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」ヒュッ

キィィィィィィィィィィィィィィィン

ことり「え?」

ヒュォォォォォォォォォォォ

ガッシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!

パラパラパラ

ことり「ぽ、ポルターガイストを打ち返した……?」ブルブル

ことり「こんなこと……ありえない……」

海未「無駄だとわかりましたか?」

ことり「ひっ!? い、いや! 来ないで! 来ないでぇぇぇぇぇ!」ヒュンヒュンヒュン

海未「はぁッ!」キィンキィンキィン

ヒューーーーーーーン

ドォンドォンドォン!

海未「……これで、終わりですか?」

ことり「ぁ……ぁ……」

ことり「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」ダッ

海未「おや、ナイフを隠しもっていたんですか」

海未「それは危ないですね」ヒュッ

バチン

ことり「ぁぅ!?」

カランカラン

ことり「っ……」

海未「万策尽きましたか?」

海未「でしたら、覚悟を決めてください」チャキ

ことり「ぅ……ぁ……」ペタン

ことり「ぐすっ……」

ことり「お願い……許して……」ポロポロ

ことり「ことりは、ただ寂しかっただけなの」

ことり「向こうの世界は、ことり以外誰もいない……」

ことり「だから、一緒にいてくれる人が欲しかっただけなの!」

ことり「解ってるよ、こんなことしちゃいけないって」

ことり「でも、それでも……」

ことり「一人ぼっちは……もう嫌なの」ポロポロ

海未「…………」

ことり「なんでも……するから」

ことり「海未ちゃんの命令、なんでも聞くから」

ことり「足でもなんでも舐めるから、性処理道具にでもなんにでもなるから」

ことり「だから……助けて……ください」

ことり「海未ちゃん……お願い!」

海未「……っ」





ことり「優しすぎるよ、海未ちゃんは」

ヒュッ

ゴシャ ベキボキ

海未「あぐっ!?」

ことり「あはははははははは! 駄目だよ海未ちゃん! 気を抜いたら!」

ことり「その右腕、もう使えないね」

ことり「形成逆転……かな?」

海未「くっ……!」

ことり「さあ、楽しい楽しいダンスタイムといこうか、海未ちゃん」

ことり「無様に踊ってよ」

ヒュンヒュンヒュン

海未「ふっ……やっ!」

ヒュンヒュン

海未「はっ!」サッ

ことり「あははは! 上手上手!」

ことり「流石はスクールアイドルやってるだけのことはあるね」

ことり「でも……さ」

ヒュッ

バキッ

海未「がっ!?」

ことり「物理的に、よけきれるわけないじゃん」

ヒュッ

ゴッ

海未「うぐっ!」バタン

ことり「はい、終わり」

ことり「なんだか呆気ないね」

海未「ぅ……っ……」

ことり「『悔し涙を浮かべてる海未ちゃんのほうが、かっこよくてすてきで美しい』かぁ」

ことり「その気持ち、とってもわかるよ」
ことり「ほら、もっと鳴いてよ」ゴスッ

海未「っぁ!?」

ことり「ふふ、もう言い返すだけの気力も残ってないのかな?」

ことり「よいしょっと」

海未「っ……ぁ……!」

ことり「どう? ことりに馬乗りされてる気分は?」

ことり「興奮しちゃった? 痛めつけられてたのに?」

ことり「海未ちゃん、とんでもない変態さんなんだね」

ことり「あはははははははははは!!」

ことり「それじゃあ、海未ちゃんを手に入れた証として、えっちしよっか?」

ことり「誰が海未ちゃんのご主人様か、ちゃんと教えてあげないといけないからね」

ことり「ふふ、海未ちゃんを調教かぁ……ゾクゾクしてきちゃった」

海未「…………ぃ」

ことり「ん? 何か言った?」

海未「まだ勝負はついていないと言ったのですよ!」カチッ

ピカァァァァァァァァァァァァァァ

ことり「っ!? うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

ことり「目が……目が……!」

海未「はぁッ!」ゴスッ

ことり「うぐっ!?」

ことり(まずい……ポルターガイストでガードしないと……!)

ことり「っ!」ヒュンヒュンヒュン

タタタタタタタタタタタタ

ことり「……え?」

ことり「……逃げた?」

ことり「…………」ギリッ

ことり「まさかフラッシュライトを隠し持ってたなんて……」

ことり「最高だよ……海未ちゃん」

ことり「ますます欲しくなっちゃた……な」

ことり「と、そんなこと考えてる場合じゃなかった」

ことり「今がチャンスなんだし、早く海未ちゃんを捕まえないと」

タタタタタタタタタタタタ

ことり「さーて、今度は何処に行ったのかなー?」

ことり「ん……?」

ことり「家庭科室……かぁ」ニヤァ

ことり「いくら急いでても、扉は最後まで閉めきらないとね」

ことり「海未ちゃんはここかなー?」ガラッ

ことり「ん……ちょっと臭ーー」

ヒュン

ことり「っ!」サッ

ことり「……扉を開けた所を狙い撃ち……かぁ」

ことり「失敗して残念だったね?」ニヤニヤ

ことり「ふふ、今度こそ逃げ場はないよ?」ピシャン

ことり「隠れてないで出てきたら?」

ことり「今ことりの物になるのなら、優しくしてあげるよ?」

ことり「…………返答無し、かぁ」

カツンカツンカツン

ことり「それじゃあ、お望み通り無理やり犯してあげるよ」

ことり「海未ちゃんみーつけーー」バッ

ことり「あれ……?いない……?」

シューーーーーーーーー

ことり「この音……この臭い……まさか!?」

ガラッ ヒュッ
ことり「っっっっ!?」

ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンンンンン!!!!!!

ことり「うぁぁぁぁぁぁぁ!」

パリィィィィィィン

ことり「……っぁ、なんとか、避けられ……」

ことり「え…………?」

海未 チャキ

ことり「……ああ」

ことり(弓はガスから気を逸らさせるためのブラフ)

ことり(扉を開けると勝手に放つようにしてあったんだね)

ことり(そして、家庭科室に火種を入れて爆発させる)

ことり(必死で脱出した所を、待ち構える……かぁ)

ことり「……海未ちゃんと、ずっと一緒にいたかったなぁ」

海未「チェストォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!」ヒュッ

ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!

パラパラパラ

ことり「…………」

海未「まだ、やりますか?」

ことり「……ううん、もういいかな」

ことり「身体中が痛くて、もう動けないもん」

海未「…………」

ことり「ねぇ、最後に、屋上まで連れて行ってもらえないかな?」

海未「……いいですよ」フワッ

ことり「……お姫様抱っこなんて初めて」

ことり「最後に、いい思い出ができちゃったね……」

海未「…………」

ガチャ バタン

ことり「……綺麗な月」

ことり「月はいいよね、いつまでたっても変わらずに、綺麗なまま」

ことり「人の心は、どうして変わっちゃうんだろうね」

海未「…………」

ことり「今まで……さ、何人の人を私の世界に連れ込んでも、心が満たされなかった」

ことり「愛の言葉を囁かれても、えっちなことをしても、満足感は得られなかった」

ことり「どうして……だろうね」

海未「…………」

ことり「ねぇ、海未ちゃん、一つだけ聞いてもいいかな?」

海未「なんでしょうか?」

ことり「どうして、私に付き合ってくれたの?」

海未「と、言いますと?」

ことり「私が本物じゃないって解ってたのならさ、わざわざ学校に来る必要もなかったわけだよね?」

海未「ああ……そういうことですか」

海未「それは、貴女が寂しそうだったからですよ」

ことり「え……?」

海未「私にお願いする貴女が、助けを求めているように見えたのです」

ことり「……助け、かぁ」

海未「はい。そして、今までずっと一緒にいたのは、貴女が優しいからですよ」

ことり「……私は優しくなんてないよ」

海未「いえ、優しいですよ」

海未「七不思議から、皆を解放してあげようとするくらいには」

ことり「っ!?」

海未「私を貴女の世界に引き込みたいだけなら、わざわざ他の七不思議なんて見る必要なんてありません」

海未「本当は……ずっとこの世界に繋がれた皆を、助けてあげたかったんですよね?」

ことり「…………」

海未「先程、満足感が得られないと言いましたが、それも当然のことでしょう」

海未「貴女は、本当はそんなことをしたくはないのですから」

ことり「……そんなこと、ない」

海未「いいえ、ありますよ。本当は誰かの愛を奪いたくなんてない」

海未「私のことをちゃんと愛して欲しい」

ことり「っ!?」

海未「誰かの愛を奪ったとしても、貴女自身が愛されるわけではありません」

海未「その人が好きなのは、貴女に似た誰か」

海未「貴女自身を見てくれる人は、いなかったのでしょうね」

ことり「…………どうして」

ことり「どうして……海未ちゃんは……そうやって、気付いちゃうの?」

ことり「嬉しいよ……私のことを解ってもらえて……でも悲しいよ……海未ちゃんは、私のことを好きになってはくれなくて……」

ことり「こんなの……辛いだけだよ……」ポロポロ

ことり「…………」

ことり「……ねぇ、海未ちゃん」

海未「……なんでしょうか?」

ことり「私と、一緒に暮らさない?」

海未「お断りします」

ことり「即答しないで、ちゃんと考えてよ!」

ことり「海未ちゃんのためなんだよ!?」

海未「私のため……?」

ことり「私、知ってるよ。海未ちゃんは、ことりちゃんのことが好きなんでしょ?」

海未「……だとしたら、なんだというのですか?」

ことり「それじゃあ、ことりちゃんはどうなの?」

海未「…………っ」

ことり「このまま上手く行けば、確かに付き合えるかもしれない」

ことり「だけどそれと同じくらい、失敗する確率もある」

ことり「告白に失敗して疎遠になるかもしれない」

ことり「誰かに先を越されて、他の人と付き合っちゃうかもしれない」

ことり「そんな不安ばかりの世界、海未ちゃんも嫌でしょ!?」

海未「…………」

ことり「でも、私なら……」

ことり「私ならできる! 海未ちゃんの願いを叶えてあげられる!」

ことり「海未ちゃんが望むことをなんでもしてあげる、海未ちゃんだけのことりになれる!」

ことり「だからお願い、私を選んで!」

ことり「私とずっと一緒にいてよ!」



海未「お断りします」

ことり「な、なんで……?」

ことり「どうして?」

ことり「海未ちゃんだって振られるのは怖いでしょ?」

ことり「ことりちゃんと一緒にいたいんでしょ?」

ことり「それなら……なんで……」

海未「だって……」



海未「それだと、貴女が可哀想じゃないですか」

ことり「え……?」

海未「確かに、貴女をことりとして受け入れてしまえば、私にとっては幸せなのでしょうね」

海未「ですが、それでは貴女はどうなるのですか?」

海未「無理やり自分を偽り、永遠に愛されることのない」

海未「そんな地獄の世界に貴女は追いやれる程、園田海未は人間を辞めてはいませんよ」

ことり「……そっかぁ」

ことり「本当に、優しすぎるよ……海未ちゃんは」

ことり「痛いくらいに……」

ことり「結局、私は最後まで自分のことしか考えられなかった……」

ことり「そんな私が、海未ちゃんの隣に立つなんて、無理な話だったんだよ」

海未「…………」

ことり「そんな顔しないでよ……私は、海未ちゃんに感謝してるんだから」

海未「え?」

ことり「ありがとう、海未ちゃん」

ことり「私のことをちゃんと見てくれて、理解してくれて」

ことり「誰かに解ってもらえるのって、とっても嬉しいことなんだね」

ことり「それじゃあ、私もそろそろ行くよ」

ことり「今日の冒険、短かったけど、とっても楽しかったよ」

ことり「もし来世があるのなら、今度こそ海未ちゃんの恋人になってみせるから」

ことり「覚悟しててね?」

海未「ふふ、楽しみにしていますよ」

ことり「……ああ、それともう一つ」

海未「?」

ことり「私って、やっぱり奪うのか好きみたいなの」

ことり「だから……さ」スッ

海未「な、なにをーー」


チュッ

海未「なっ!??!?!」カァァ

ことり「あはははは、海未ちゃん可愛い」

ことり「これで海未ちゃんのファーストキスは私の物だね」

ことり「最後にいい思い出ができたよ」

海未「貴女って人は……」

ことり「もう、怒らないで」

ことり「私の……最後のわがままだから」

海未「…………」

ことり「それじゃあ、またね」

ことり「本当にありがとう」

ことり「大好きだよ、海未ちゃん」ニコッ

スゥゥゥゥ

海未「……全く、最後まで困らせてくれますね」

海未「私も楽しかったですよ、貴女との七不思議体験は」

海未「もしも現世で会えていたのなら、友達になれたかもしれませんね」

海未(そういえば、あの子は勘違いしていましたけど、私は別にファーストキスという訳ではないのですよね)

海未「まあ、でも」

海未「それを言うのは、野暮というものですよね」

海未「天国で、幸せになってくださいね」


ーーー
ーー

海未「ふぅ、昨夜は流石に疲れましたね」

海未「ですが、日々の生活を疎かにするわけには行きません」

海未「今日も一日頑張らないと」

ことり「海未ちゃーん!」パタパタパタ

海未「ことり、おはようござーーっ」

ことり「えへへ、おはよう」

ことり「……あれ? どうかしたの?」

海未「い、いえ、なんでもありません///」

海未(き、キスをしたせいで恥ずかしくてことりの顔が見れません……!)

海未(い、いえ、ことりとではないのですけど、姿形はことりなわけでして……)

海未(し、しかもトイレにも一緒に……///)

海未(いけません、思い出しては!)

海未(ああ、でも私は……)

ことり「……海未ちゃん?」

穂乃果「おーい! 海未ちゃん、ことりちゃん!」

ことり「穂乃果ちゃん、おはよう」

海未「お、おはようございます」

穂乃果「おはよう、二人とも」

穂乃果「……あれ? 海未ちゃんどうかしたの?」

ことり「うーん、ことりが来た時からこうなんだよね……本当に大丈夫?」

海未「だ、大丈夫です! それよりも、早く学校に行きますよ!」

穂乃果「はーい」

トントントン

穂乃果「それにしても、七不思議の噂を広めたのって誰なんだろうね?」

ことり「うーん……わかんない」

穂乃果「わかんないかぁ……海未ちゃんはどう思う?」

海未「そうですね……」

海未(火のない所に煙は立たぬ)

海未(七不思議なんて、知ってる人が広める以外の方法なんてないでしょう)

ことり「海未ちゃん?」

海未「……きっと、誰かに気付いて欲しかった、寂しがり屋の子ですよ」ボソッ

ことり「え?」

海未「なんでもありません。誰なんでしょうね、犯人は」

穂乃果「うーん、海未ちゃんもわからないかぁ」

海未「はい、こういうものは、犯人の特定は難しいですからね」

海未(それに、もう全て終わったことです)

海未(これ以上、話が広がることはないでしょう)

海未「と、そろそろ学校ですよ」

穂乃果「本当だ! ……あれ?なんだか騒がしくない?」

ことり「本当だ……何かあったのかな」

海未「そんなまさか……おや、あそこにいるのは絵里ですね」

穂乃果「本当だ、おーい、絵里ちゃん!」

絵里「おはよう、三人とも」

穂乃果「騒がしいみたいだけど、何かあったの?」

絵里「ええ、それがね……昨夜に強盗が入ったみたいなの」

海未「なっ!?」

ことり「そんな……」

海未(鉢合わせはしなかったようですね、危ない所でした)

穂乃果「何か被害にあったの?」

絵里「それなんだけど……」

絵里「まず理科室の骨格標本が壊されてたの」

絵里「音楽室はピアノが壊されていて、真姫が呆然としてわ」

海未(ん……?)

絵里「トイレも一つだけ叩き割られてるのが見つかった」

絵里「照明用のライトがプールの中で壊されていて、水は全て抜かれてる」

絵里「図書室は本棚が片っ端から倒されてたわ。本棚が壁から突き出してるのも見つかってる。一体どんな道具を使ったのか」

海未(こ、これって……)

絵里「そして家庭科室、まるで爆発があったみたいに全体が焼け焦げてたわ」

絵里「外の廊下も床に凄いヒビがあるし」

絵里「それに、校庭の木が何本も折られていて、校舎の中で発見された」

絵里「教室の中が散々に荒らされてる所もあったわ」

絵里「私たちの部室も、扉が壊されていたし」

海未「…………」ダラダラダラ

穂乃果「そんな……許せないよ、そんな酷いことするなんて!」

ことり「そうだよ……これじゃあ皆が可哀想だよ」

絵里「……海未? 凄い汗だけど大丈夫?」

海未「は、ははははい! なんでもありません!」

海未「全く誰なんでしょうね、犯人は、あはは」

絵里「今日は恐らく休校ね」

絵里「もしかすると、このまま廃校なんてことも……」

ことり「そんな!?」

穂乃果「そ、そんなの絶対嫌だよ!」

絵里「でも、こんなことがあったら……ね」

穂乃果「むぅぅ……こうなったら」

海未(嫌な予感が……)

穂乃果「海未ちゃん、ことりちゃん! 私達で犯人を捕まえるよ!」

海未(やっぱり……)

海未「いえ、そんな危ないことーー」

ことり「 そうだよ、こんな酷いことをする人を放置してたら皆が危険だもん」

海未「うっ……」グサッ

穂乃果「うん……全く、犯人の顔が見てみたいよ」

海未(貴女の目の前にいるのですが)

穂乃果「そうと決まれば、早速皆で会議だよ!」

穂乃果「私、皆を部室に呼んでくるね」タタタタ

絵里「…………また、騒がしくなりそうね」

海未「……そうですね」

海未(はぁ……どうすればいいのでしょうか)

ギュッ

海未「え……?」

海未「ことり……?」

ことり「えへへ、海未ちゃんに元気のお裾分けだよ」

ことり「何があったのかは知らないけど、そんなに一人で悩まないで」

ことり「ことりじゃ力になれないかもしれないけど、一緒に悩んであげることくらいならできるから……」

海未「……ありがとうございます、ことり」

海未(……全く、私が励まされ立場になってどうするのですか)

海未(あの子の言っていた通りにならないためにも、気を引き締めなければ)

ことり「それじゃあ、行こっか」

海未「はい、参りましょう」

海未(でも、今はまだ)

海未(この優しい日常を)

海未(私を受け入れてくれるこの世界を)

海未「楽しんでいても、罰はあたりませんよね?」



END

これで終わりです。こんな駄文に付き合って頂きどうもでした。
レスくれた人もありがとね。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年04月29日 (火) 20:57:25   ID: 92pIPjki

元ネタはぬ~べ~かな?
続き楽しみにしている(`・ω・´)ゞ

2 :  凛ちゃん好きの874さん   2014年05月28日 (水) 18:27:06   ID: 0usHSCcU

海未ちゃんが一番怪しい……

3 :  うみ推しの774さん   2014年06月01日 (日) 02:29:50   ID: bmOxca0n

乙!
すごく楽しませてもらいました!

4 :  SS好きの774さん   2014年06月02日 (月) 02:36:21   ID: od24PsO1

とても良かったです!

5 :  SS好きの774さん   2014年06月02日 (月) 23:00:22   ID: ZcX5zBbZ

途中から読んでて身体の力が抜けました…
でも面白かったです(^_^)
乙(≧∇≦)

6 :  SS好きの774さん   2014年06月08日 (日) 09:12:34   ID: aiV7UPjL

おもろかった〜

7 :  花陽推しの774さん   2014年06月10日 (火) 10:10:54   ID: ScMtfEge

文才ありすぎでしょう!!面白すぎです!!神ですね。

8 :  SS好きの774さん   2014年07月28日 (月) 21:31:34   ID: c3f5K3bM

面白いけど
読んでて
あれ?海未ちゃんってこんなにかっこよかったっけなった!
でもかっこいい海未ちゃんも可愛い!

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom