真姫「は……?西木野真姫……君…?」 (134)

ラブライブssです。

TS要素が若干含まれます。

全編を通してシリアス注意。

文章として酷い箇所が幾つもある可能性がありますが、御勘弁下さい。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1396438684

 Welcome song!
 ひとつになる心
 だからここが私たちの――――。








…部室…

真姫「どう…かな」

穂乃果「…………」

真姫「う……」

にこ「……」

真姫「あ、あの…」

絵里「……」

真姫「ね、ねえ…」

凛「……」

真姫「だ、だめ…?」

ことり「……」

真姫「うぅ…」

花陽「……」

真姫「ご、ごめんね。ま、また作り治すわ

希「……」

真姫「なんとか言いなさいよ……」

海未「みんな、どうして黙ってるんですか?」

真姫「海未の作詞は良かったのに…私の、作曲が……ごめん。作り直すから…」

穂乃果「違うよ」

穂乃果「良すぎて…」

穂乃果「良すぎて言葉が出ないんだよ!!」

にこ「悔しいけど、良いと思うわ」

絵里「悔しいって何よ…」

希「とりあえずみんなええと思ってるよ。真姫ちゃん」

真姫「……良かった…!」

真姫「今回は途中までだし、録音したやつだけど、もう完成してるの。でも右指を怪我していて今はピアノを弾けないのよ」

真姫「治ったらFULLで私が聴かせて上げるわね」

穂乃果「真姫ちゃんのソロ!?」

真姫「ま、まあそうなる、わね」

穂乃果「やったー!!!」

真姫「は、はあ?」

穂乃果「真姫ちゃんの歌さ!好きなんだ!!」

真姫「あ、あっそ……!」

希「顔真っ赤やでー」

真姫「うるさいわね!」

海未「では曲のことはそれで進めて行きましょう。では、PVの撮影ですが…」

海未「そうですね……とりあえず、イメージが大切です。絶景が沢山乗ってる本でも見てみましょう」

絵里「どういう繋がりよ…」

海未「イメージが大切なんです」

にこ「珍しく熱いわね」

海未「では、取ってきてくれますか?」

海未「じゃあ、にこと真姫でお願いします」

真姫「え?」

にこ「はぁ!?なんで私が」

にこ「自分で取りに行きなさいよ!!」

海未「やることがないのでしょう?」

にこ「う……仕方ないわね」

真姫「はぁ…別にいいけど」

真姫「でも私、見ての通り右指を怪我してるの」

海未「そういえばそうでしたね。では他の人に――」

真姫「――あ!にこちゃん、本くらい一人で持てるわよね!?じゃあ行きましょ。私と」

にこ「は、はあ?急にどうしたの」

真姫「いいから!」

真姫(にこちゃんと二人…やった…やった!)

海未「うーん、まあにこが頑張れるならお願いします」

真姫「大丈夫!」

にこ「なんであんたが!?」

希「なんや真姫ちゃん、嬉しそうやなー?」

真姫「はぁ?な、何言ってんのよ、意味わかんない!」


にこ「はぁ…なにしてんの、真姫ちゃんさっさと終わらせるわよ」

真姫「あ、うん」

希「真姫ちゃん、ちょっとええ?」

真姫「なあに?早くしてくれる?」

希「――チャンスやで、ここで告白するとええよ」

真姫「な……!うるさーい!!」

…図書室…

真姫「どれよ……」

にこ「あーんもうイライラするわねー」

にこ「海未に見つからないーって言えば変わって貰えるかな」

真姫「駄目でしょそんなの」

にこ「にこー疲れたからぁー…真姫ちゃんさがしてー」ギュー

真姫「んもう!暑いわよ」

真姫(どどどどどうしよう、にこちゃんに、抱きつかれてる!?頭がおかしくなりそう)

真姫「……」

にこ「真姫ちゃーん?」


真姫「ほら、早く探すわよ」

にこ「はぁ、このにこにー悩殺テクニックでも真姫ちゃんは落とせなかったか…」

真姫(にこちゃん、可愛い…)

真姫「何バカなこと言ってるの」

真姫「あ、こんなのあるんだ」

にこ「なにそれ難しそうね」

真姫「医療系のやつね。ふーん珍しい」

真姫「以外と色んな本があるのね――痛っ!」

にこ「大丈夫!?」

真姫「右指普通に使っちゃったわ…不便ね…本も持てないなんて。これじゃあ右手が無いようなもんじゃない」

にこ「体育で張り切りすぎたんじゃないのー」

真姫「運動は、出来ないのよ…」

にこ「50m何秒?」

真姫「……な、なんで言わなくちゃいけないのよ!!」

にこ「--秒くらい?」

真姫「……--秒よ」

にこ「…あ……うん。ごめんね……うん」

真姫「何よその目は!」

にこ「べっつにぃー?」

にこ(歩いた方が早いレベルなんじゃ…)


真姫「でも…!!体力は割とあるんだから!!」



にこ「はいはい。あれ?なにかしらこれ」

真姫「ん?」

にこ「コミック百合姫…?」

真姫「なにそれ」

にこ「漫画、みたい」

にこ「見てみよーっと」

真姫「なんで漫画なんて図書室にあるのよ…」

にこ「な……」カァァァァアア

真姫「なに?どうしたの?」

にこ「だ、だめ!これは見ちゃだめなやつ!!」

真姫「そんなこと言われると見たくなるじゃない!貸して!」

にこ「だめだって!真姫ちゃんまだ15でしょ!?」

真姫「どういう意味よ!?いいから早く貸しなさい!」バッ

にこ「あぁっ……」

真姫「どれどれ…?」


真姫「……!?」


真姫「うっ……ご、ごめん」カァァァア

にこ「えっと、どうしよう、絵里に言っとくわね」

真姫「ええ……」


にこ「……探そうか」

真姫「う、うん」


にこ「……」

真姫「……」

真姫(なんかすっごい気まずい……なんでよりによってあんな本が図書室にあるのよ!)

にこ「ねえ真姫ちゃん!」

真姫「は、はい!?」

にこ「何驚いてんのよ…まあいいわ。見てあれじゃない?」

真姫「あ、多分そうね。でも結構高いとこに」

にこ「じゃあ台持ってくるわね」


にこ「これでよしと」

真姫「私の方が背高いし、私がやった方がいいんじゃない?」

にこ「馬鹿にしないで欲しいわ。私だってこのくらい…」

にこ「ん~、あと、ちょっと」

真姫「ほら、早く代わってって言えばいいのに」

にこ「んぐぐ~、うわっ、ちょっ、きゃあっ!」ガタガタ


真姫「にこちゃん!?」バッ

にこ「あいたた…ありがとう真姫、ちゃん……?」

真姫「あ、うん」

真姫(馬乗りする形になった訳だけど…えっと、どう、しよう)

真姫(にこちゃん、こんなに無防備で……)

真姫(私、おかしく、なるかも)

にこ「は、早くどいて、くれないかな」

真姫「……」

にこ「真姫ちゃん?」

真姫「にこちゃん、身体小さいね」

にこ「へ?」

真姫(可愛い)

にこ「真姫ちゃん?…ちょっ、ちょっと、顔近い、よ?」

真姫(可愛い、可愛い。どうしよう、止まれ、ない。どうしよう)

真姫「にこちゃん…可愛い」

真姫(目をキョロキョロさせて、唇も震わせちゃって、可愛い。可愛い。可愛い)

にこ「真姫ちゃん、どういうつもり?えっと、さっきのみておかしくなっちゃったの?」

真姫「違うよ。にこちゃんが悪いの」

真姫「あんな本見てるのに、こんなに無防備にしてるのって、そういうことでしょう?」

にこ「はぁっ!?」

真姫「ごめんね、にこちゃんの気持ち分かってあげられなくて」

真姫(シャンプーの匂い…が…いい匂い)

にこ「どういう、意味」

真姫「私はいつでもにこちゃんを見てたのに、全然気付いてくれなくて」

真姫「にこちゃんは可愛くて、いい匂いがして、小さくて、ちょくちょく抱きついたりしてきて。そんなの我慢しろってのが無理なのよ。私が悪いんじゃない。全部全部にこちゃんのせいなんだから」

真姫(私、何言ってるんだろう)

真姫「だから、だから、伝えたかったの」

にこ「……」

真姫「にこちゃんを、見ているだけで、にこちゃんに触れる度に胸がきゅーんとなってどうしようもなくなるの」

真姫「ねえ、辛いよ。にこちゃん」

にこ「やめて…」

真姫「嫌なら、本気で抵抗したら?」

真姫「流石の私も本気で抵抗されたら抑え付けるのは無理だもの」

にこ「う……一回だけ、一回だけなら」

真姫「…ありがと」

にこ「うぅ」フルフルフルフル

真姫「んっ…」チュッ

 鳥がついばむようなキス。お互いの唇が触れるか触れないかの、キス。
 それで終わるはずだった。


 でも私は、そんなんじゃ終われなかった。

 私の中で燃え上がっていた炎は消えるどころかさらに勢いを増していった。



にこ「も、もうやめて…」

真姫「はぁ…はぁ、無理もっとしたい」

真姫「ん、んぅ、チュパ、くちゅ、んはぁ」

にこ「や、やめっ!真姫ちゃん、一回だけって!!うぅっ、はぁぅ」

真姫「んぅっ」

にこ「はぁっぅ」ゾクゾク

にこ(やば…真姫ちゃんの舌が…ダメ…)

真姫「舌絡ませると気持ちいいの?もっとやってあげる」

にこ「はぁ、ン…!も、もうやめへ…、んんぅッ」

真姫「ふぅ…ン、気持ちいい?」


にこ「んちゅぅ、はあっっ、…っっぅちゅぷっ、んちゅ、ンンぁッ!」


にこ「ふぁっ!ンぁん!ッ……もう、やめてぇ。どうしたの?あんっ、あぁっ、真姫ちゃんふぅん、ンンンっ!変……だよ」

真姫「変じゃないわ」

にこ「第一、私は女よ!?ひゃあっ!…やめっ…やめて……ンンッ、何、欲情してんのよ!?」

真姫「それは、お互い様でしょ?」グイッ

にこ「ひゃんっ!」

にこ(真姫ちゃんの、膝が、股の間に…!)

真姫「男だとか女だとかそんなの関係ない。私はにこちゃんだからこんなことしてるの。他の人になんてしないわ」

真姫「ねえ…もっと、気持ちよくしてあげるね?」

にこ「くぅっ、んン、ダメ、ダメだから。気持ちッ……」

真姫「感じてくれてるの?嬉しい、私で感じてくれてるのね!」

真姫「はぁッ…ぅん。ぬちゅ、くちゃくちゅ、うぅン!」

にこ「やめてっ…それ以上…はぁぁんッ…ダメっ、本当に、これ以上、ダメだってぇっ!!」

にこ「ふぁっ!真姫ちゃん…ダメっ、ぬちゅ、ちゅぷじゅぶ、ふぁぁっヤバッ…いやぁッ」

にこ(イッちゃ…う)

にこ「ふぁぁぁっ!あぁっ!んぁぁっ!!あぁんチュプんんっ!はぁぁんっ!」ビクビク

にこ「ぷはぁ……ちょっと…どういうつもり…!?一回って言ったじゃない」

真姫「キスだけでイっちゃった?普通の女の子はそんなすぐにイけないわよね?普段から開発してるのかしら」

にこ「あんたの…せいでしょ」

真姫「まぁ、もっと、してあげるね」スゥッ

にこ「人の話を…!!」


にこ(スカートの中に手が…!?)

真姫「いっぱい気持ち良くなって?立てなくなってもおんぶしてあげるから」

にこ「くっ…!!いい加減にして!!!!」ドンッ









真姫「え……?」

真姫(痛い………蹴られた?)

真姫「どう、して?」

にこ「はぁはぁ、どういうつもりよ…」

真姫「どういうつもりって……」

真姫「違うの、ただ、私はにこちゃんが好きで…」

にこ「私は女よ」

真姫「そんなの、関係ない…!」

にこ「私にはあるの。少なくとも女に欲情するような人……気持ち悪いったらありゃしない」

にこ「私は、真姫ちゃんのこと嫌いじゃないし、せめて一回くらいならいいかもしれないって思ったわ、それなのに」

真姫「……」

にこ「なんでそんなに欲情してんのか知らないけど、もうこんなこと一切しないで。気持ち悪いから」

真姫「違うの、違う…の」

にこ「欲情して猿みたいに私に襲いかかってきたくせに?あの時のあんたの顔、酷いもんだったわよ」


にこ「こういうことがしたいなら、適当に男捕まえて勝手にやってればいいわ。真姫ちゃんは可愛いし、男なんてすぐ釣れると思うわよ」

にこ「まあ、とりあえずこのことは誰にも言わないから、安心して」

真姫「……」

にこ「µ’sの関係がギクシャクするのは嫌だから、あんたとは普段通り接するけど、もうこんなこと絶対辞めて」

真姫「嫌だ…嫌いにならない、でよ」

にこ「泣きたいのは私なんだけど?」

にこ「襲っておいて何言ってるのよ」

にこ「じゃあ、先行ってるから」

真姫「待って…待ってよにこちゃん…!待ってよ!!」

真姫「普段通りなんて、無理よぅ…!」

真姫「うぅ、えっぐ、うぁぁあああああああ!」


希(あちゃー……)

希(どんな感じになっとるかと思ったら…まさか真姫ちゃん早まってまうとは)

希(本当、不器用やなあ)

真姫「うっ、うっ、うえぇぇ、ひっく、ぐすっ」


希「何泣いとるんや?」

真姫「の、希!?」

真姫「な、泣いてなんかない、わよ!」

希「涙止まってへんよ?」

真姫「これは、これは違う、の…!!」


希「……」

真姫「見てたの?」

希「うん」

真姫「……私、どうすればいいのかしら」

真姫「にこちゃんに嫌われちゃった…うぅ」

真姫「なんで、どうして…」

希(こりゃ相当重症やなあ)

真姫「もうにこちゃんと顔合わせられない…!」


希「なあ真姫ちゃん。一つ聞いていい?」

真姫「ぅぅあ…えぐっ、ひっく、うあぁっ」

希「まあ、聞いてるか聞いてないかはどっちでもええんやけど」

希「ねえ、真姫ちゃん」

希「自分が男だったら、そう思ったことは、ない?」

真姫「……?」

にこ『私は女よ』

希「ちょっと泣き止んだなぁ」

真姫「からかって、るの?」

希「そんなつもりやないよ」

希「これ、あげる」

真姫「ぐす…なによ、これ。お札?」

希「――願いが、叶うかも、よ?」

真姫「ふざけないでっ!!」

希「そんな願いに奇跡と、チャンスを」

真姫「もういい!私の願いなんて!!今、さっき!叶わなくなったばかりなの!!」

希「ありゃりゃ。怒らんでって」

真姫「あなたね……喧嘩、売ってんの?」

真姫「人の失恋見て!それをからかって!……何が、何が!楽しい、のよぅ……ひっく」

真姫「もう、いいわよ!」バッ

希「あ!ちょっと真姫ちゃん!……行ってもうた」

…部室…


海未「あ、希遅いですよ」

希「ごめんなー、あれ?真姫ちゃんは?」

にこ「……」ビクッ

穂乃果「さっき凄い勢いで帰って行ったよー?」

ことり「なにかあったのかな…」

希「ふぅん…」

にこ「まあ、いいんじゃないの?色々ありそうだし」

絵里「何事もないと良いんだけど」


…翌日一年教室…


希「花陽ちゃん。真姫ちゃんは?」

花陽「あそこだよ」

希「ありゃ、寝とるやん」

凛「朝からずっとあんな感じで…話しかけても全然反応しないのー」

希「やっぱ見た目通り引きずるタイプみたいやな…」

凛「…?」

花陽「真姫ちゃんが授業中も眠ってるとこなんて見たことないから…何かあったのかな…」

希「……なんでもないんやない?じゃあね」

…放課後校門前…


希「死んだ顔して…なにしとんの?」

真姫「……帰るの」

希「練習あるんよ?」

真姫「……」

希「おっと、行かせんで」

真姫「どうして」

希「練習あるって言ったばかりやけど?」

真姫「練習…嫌よ…」

希「どうして」

真姫「……うぅ…ひっく…」ポロポロ

希「ちょっ…いきなり泣かんでよー」

真姫「にこちゃんにあんなことしちゃって…!嫌われたし!どうやって顔見せればいいのよ!!!」

真姫「辞める……もう、私が居ても、迷惑するだけ」

希「……ちょっとついてきて」

真姫「……」

希「いいから」

…路地裏…



真姫「こんなとこ連れて来て、なんのつもり?」

希「昨日言った続き、覚えとる?」

真姫「…最低よ…あなた」

真姫「人の傷口をそんなに抉りたいの?そうやって、そうやって楽しむような人だったの!?」


希「うーん……傷つけてしまったかな。仕方ないなぁ、ウチのスピリチュアルパワー、真姫ちゃんに分けてあげるわ」

希「お札は…かばんの中にあるみたいやね」

真姫「……え!?」

真姫「お、お札が光って……な、なに?」


希「………」

真姫「ちょ、の、希?なに、これ?」

希「真姫ちゃん」

真姫「」ビクッ

希「あなたはこれから、夢を見る」

希「でも忘れんといて。――これは夢やから。現実より理想の形で自分の身体も作られる。それは現実と異なる物になる」

真姫「ど、どういうこと?…」

希「行くで」

希「希パワーたーっぷり注入!」

希「はーいプシュッ☆ 」

真姫「え!?な、なに?え?これ、な、なにこれぇ!!!」

ヴゥゥゥン

真姫「希!あなた!これは、何――」

ヴゥゥゥン

真姫「……ぅ……ぁ…の、ぞ……」

真姫(そして、光の渦が私を包んで行った)




希「ふう、久しぶりに疲れたなぁ。真姫ちゃんを保健室に運んでーそれからは神社かなー」


 真姫ちゃんは無事気を失ったようだ。これはウチが出来る最大限のこと。このままだと、きっと真姫ちゃんは、µ’sは、崩壊していったから。



夢を、真姫ちゃんに夢を見て貰うのがきっと一番いい形だとウチは思ったんだ。






パレードに誘われて――。
君と踊る――。

…………………

真姫「う……眩し……」


先生「おい、西木野なに寝てるんだ」

真姫(授業中?どういうこと?)


真姫「あ、はい。すみません」



真姫(……え?)


真姫(声…が…)



隣の生徒「珍しいね、西木野君が居眠りなんて」

真姫「西木野……君?」

隣の生徒「何か変だった?」

真姫「い、いや…別に」

真姫(私の声が……声が…低い…?)

真姫(西木野…君?どういうこと)


真姫「先生、ちょっとトイレ行ってきます」バッ


真姫「な……」


真姫(なんで、音ノ木坂に、男子生徒がこんなに居るの…!?)

先生「早くしてこい」

真姫「あ、はい」


…廊下…


真姫「これはどういうこと?」

真姫「意味がわからないわ。私の声は低くなっている。それに、胸も……ない」

真姫「股に感じる違和感は、きっとそういうこと…?」

真姫「トイレってどうやってやるのかな……」

真姫「それに、音ノ木坂が……共学になっている……何故」

希『これは、夢だから』

真姫「どういうこと…?夢?でも、私は確かに…痛みも感じる」

真姫「とりあえず、トイレに…」

真姫「男子トイレがある……こっちでいいのよね」

真姫「……なんだか、複雑な気分ね」

真姫「鏡、鏡と」

真姫「……!!」

真姫「これが、私?」

真姫「男……ね。で、でも結構かっこいい、かも?」

真姫「」ポー

真姫「いけない、見とれてたわ。さ、流石私ね!男になってもかっこいいなんて!」

真姫「……そんなこと言ってる場合じゃ…」

真姫「とりあえず戻ろう…」

…放課後…


凛「西木野くーん!!部室行こー!!!」

真姫「え、え?」

凛「んー?」

凛「早く行こうよー」

真姫「えっと部室って……?」

凛「µ’sの部室ー!!!」

真姫「は、はあ?」

凛「早く行くのー!」

真姫「ちょ、ちょっとー!」

花陽「凛ちゃんばっかりずるい……」

…部室…

真姫「ちょっと!なにすんのよ?」

穂乃果「あ、西木野君ー」

海未「こんにちは」

ことり「どうしたの?凛ちゃんとそんなにあわてて」

真姫「わかんないわよ!穂乃果も何か言ってあげて!」

凛「えへへー」

穂乃果「え…穂、穂乃果…?あ、うん。うん。そう、だね」カァァァァア

海未「えっと、どういうことですか?西木野君と穂乃果はそういう……」

穂乃果「えっと…いきなり下の名前で呼ばれると…私、恥ずかしいって言うか…なんというか」モジモジ

真姫(こ、この反応は何…?本当に穂乃果なの?すごく女の子っぽくて、いつもより可愛いような)

ことり「急にどうしたの?あと、西木野君、どうして女の子の口調になってるの?」

真姫「え!?あ、そうだった…えとごめん」

真姫(一応私、男だったのね…)


真姫「穂乃果、一つ聞いていい?」

穂乃果「え!?あ、うん!私に答えられることなら!」

真姫「私……俺って前まで穂乃果のことなんて呼んでたっけ…」

穂乃果「高坂って……」

ことり(あんなに下の名前で呼んで貰ってる…羨ましい)

真姫「そうだったっけ……じゃあ今日からみんなのこと下の名前で呼ぶよ」

海未「どうしたのですか?急に」

真姫「そっちの方が呼びやすいかなって。駄目かな?」

海未「いえ!むしろ歓迎です!」

真姫「それならいいんだけど」

真姫(なんだが、いつもよりみんなの反応が素直な気がするわ。というより私がいじられなくなった…?)

真姫(というか、私の立場って一体…普通ここに居ては駄目よね)

真姫「じゃあ俺帰るよ」

凛「えー?どうして?」

真姫「どうしてって…」

ことり「練習あるよ?」

真姫「いやでも、俺が練習って……どういうこと?」

海未「いつも通り、私たちの練習を見てもらおうかと……」

穂乃果「西木野君もµ’sの一員なんだから、練習はサボっちゃダメだよ?」

真姫(µ’sの、一員…?男なのに…?ということは、私はµ’sだけど表で踊る8人をサポートする…的な立ち位置なのかしら)



真姫「あ、うん。わかったわかった、ごめん忘れてた」

海未「全く……」


ガチャ

希「お、西木野くんやーん!!」ギュッー

真姫「ヴェェ⁉︎な、なに!?」

真姫(せ、背中に柔らかい大きな何かが押し付けられ、て!?ここここれは…!)

真姫「や、やめてって…!」

真姫(当たってるよ!?当たってるよ希)

希「クス…当ててるんだよ」ボソッ

真姫「え?」

希「んー?お気に召さない?残念やなぁ…」

にこ「………何、馬鹿なことしてんの希ちゃん」

希「馬鹿なことってなんや。にこっちもしてみれば?」

にこ「……私は…いい、わよ」

真姫(に、にこ、ちゃん……。どうすればいいの)

真姫「こんにちは二人とも」

穂乃果「あれ、絵里ちゃんと花陽ちゃんは?」

希「えりちは生徒会の仕事が忙しくて来れないって」

凛「かよちんは…なんかわからないけど来れないって言ってたにゃー」

海未「わからないって…まあいいです。では練習始めましょうか」

…屋上…


海未「ワンツーワンツー」

真姫(なるほど……違う目線で皆を見てみると、以外と面白いわね)

真姫(にこちゃんのステップが…遅れてるわね)

海未「では、休憩して下さい」


真姫「あの、えっと、ちょっといい?にこちゃん」

周り「…ちゃん?」

真姫「あ、えーと、なんだかにこちゃんの場合はそっちの方が呼びやすいっていうか!なんというか…」

真姫「そう!小さくてなんだかちゃん付けしたくなるの!」

にこ「……どうせ私は色んなとこが小さいですよー」

真姫(あ、あれ?怒ってこない…?というかいつもより怒って…る?)


真姫「ごめん…ちゃんづけは辞める」

にこ「…謝らないで。虚しくなるだけだから」

 いつものように突っかかって来ないで、淡々と思ったことを口にするにこちゃんは新鮮だった。それと同時に、計り知れない距離を感じた。


真姫「えーと…にこ、のステップ見てて思ったんだけれど。全体的にワンテンポ遅れてるようだよ」

にこ「……」

真姫「だから全体的にワンテンポ早くすることを意識して…」

にこ「……なるほど、分かったわ。ありがとう」

真姫「うん…」

真姫(どうして、どうしてこんなにも他人行儀なの?私たち、µ’sの仲間じゃ、ないの?)

希「西木野君」

真姫「希?」

希「にこっちのこと、やろ?」

真姫「な、なんのこと?」

希「にこっちは、そんなに明るい性格やないし、素直でもないからなぁ」

希「男の子と喋ったことほとんどないみたいやし」

希「唯一喋れるのが西木野君だけやから、にこっちには優しくしてあげて?な?」

真姫「……」

希「きっと内心は西木野君と話せて嬉しい!!って舞い上がっとるはずや」

にこ「希ちゃん……聞こえてるわよ」

希「これはこれは…」

にこ「別に、西木野君と話せて嬉しいとか、そんなの、無いんだから!」

にこ「希ちゃんのせいで勘違いしちゃうでしょ!?」

にこ「あと、西木野君以外の男の子とも喋れるわよ!!」

希「その割りには話してるとこみたことないけどなぁ?話しかけられても吃ってるし」

にこ「……ぅ」

真姫「にこ、以外とヘタレなんだね」

にこ「うるさーい!!!」

…音楽室…



凛「あれ?かよちんだー」

穂乃果「帰ったんじゃなかったの?」

花陽「ちょっと用事があっただけ!」


凛「ごめんねー、帰ったのかと」

希「えりち、生徒会の仕事大丈夫?ウチに言ってくれれば手伝うのに」

絵里「大丈夫よ。でも何かあったらお願いね」


真姫「えっと…俺は何をすれば…」



絵里「…?何言ってるの?いつも通りピアノを弾いてくれればいいのよ?」

ことり「なんだか今日の西木野君おかしいよ?」

真姫「そんなことないって!ちょっとド忘れしただけ!」

海未「疲れてるんですか…?」

真姫「大丈夫だから!」

真姫「で、何を弾けばいいの!?」

海未「えっと今日は……」

穂乃果「きっと青春がきこえる!!」

海未「穂乃果?」

穂乃果「えへへ、いいでしょ?最近やってなかったし!」

希「ええやん!」

海未「もう勝手に決めないで下さい!」

ことり「まあまあ」



真姫「ふぅ、じゃあ、行くよ」

真姫(そういえば、指……治ってる…)

真姫(久しぶりだけど、大丈夫かしら)

 ~~~~~~~~♪



真姫(普段は歌いながら弾いてたけど、弾くことだけに集中すると色々な音が聴こえるわね)

真姫(みんな、綺麗な声)

真姫(でも、なんだろう。なんだか寂しいような。私もµ’sの一員。そう言ってはくれたけれど、なんだか払い切れない壁がある。そんな気分)

真姫(穂乃果は流石に上手いわね。海未は少し声を張りすぎな気もするけど…。ことりは…あの声は地声なの?)

真姫(絵里も本当に上手いわ。希は…うん。にこちゃんも音外れてるわね)

真姫(凛は…なんとも言えないわねー。花陽は、普段の声とは別物ね)

穂乃果「ふぅー!やっぱり歌うのって楽しいね!!」

海未「西木野君、どうでしたか?」

真姫「うーん……」

真姫「まあ二年生はことり、三年生は希とにこ」

真姫「ことりの声は武器にもなるけれど、合わない曲もあるかもしれないから、そういう時は声色を変えられる方がいいわね」

ことり「はーい」

真姫「希は…うん、がんばって」

希「なんでウチはそんなに適当!?」


真姫「にこは……所々音が外れることがあるわ」


真姫「ことりは声のことだから自分でやって貰えばいいし、希とにこはちょっと練習が必要かもしれない」


真姫「個人レッスンをします」

ことり「わ、私は…?」

真姫「ことりはいいや。この二人の方が問題だから」

穂乃果「もしかして……二人きりで…?」

真姫「…?そうだけど」

ことり「…!?わ、私も個人レッスン、受けたいな!!」

真姫「え?声色変えるくらいなら自分でも出来るでしょう?」

ことり「うぅ…」

穂乃果「わ、私も歌下手だよ!?私も個人レッスン受ける必要が、あ、あると思うなぁ」

真姫「いや、穂乃果は上手いから」

絵里「わ、私も確認の為に…」

真姫「絵里も上手いでしょ?」

絵里「……穂乃果…諦めるしかないわ……」

穂乃果「絵里ちゃぁん」


真姫「じゃあ希とにこは今度鍛えるから」

にこ「…………」

希「ま、西木野君と二人きりでレッスン出来るならウチは大歓迎やー」

ことり&穂乃果&絵里(ずるい……)

希「にこっち、不満そうやな?」

にこ「…別に」

真姫「…………」

翌日部室


真姫(家族の構成なんかは変わっていなかった。やはり変わっているのは音ノ木坂が共学になっていること、私が男になっていること)

真姫(それ以外には若干性格が違うことくらい)

穂乃果(二人きり…西木野君と二人きり……!)

穂乃果「なに考えことしてるの?」

真姫「いや、なんでもないよ」


穂乃果「」ポー

真姫「な、なに?」

穂乃果「あ、いや、別に」

穂乃果「ね、ねえ西木野君」

真姫「ん?」

穂乃果「日曜日さ、どこか行かない?」モジモジ

真姫「……?」

穂乃果「嫌ならいいんだけ、ど……」

真姫「別に、いい…けど」

穂乃果「本当!?」

真姫「う、うん」

穂乃果「やった!!やった!」キャピキャピ

真姫「そんなに騒ぐこと?」

穂乃果「あ…ごめんね」

穂乃果「後さ、勘違いとか…してない、よね?」

真姫「はぁ?」

穂乃果「その、えーと……みんなとじゃなくて………」

穂乃果「ふ、二人きりがいいなぁ、とか……思ったりして…」ボソボソ

真姫「え?何?」

穂乃果「うぅ……」

真姫「聞こえなかったんだけど…」

穂乃果「ふ、二人きりで行きたいの!!」グイッ

真姫(顔、近い)

真姫「あ……うん。分かった」カァァァア


真姫(穂乃果って、こんなに可愛かったっけ…)

ガチャ

にこ「……邪魔した、わね」

穂乃果「え!?」

真姫「にこちゃん!?ち、違うんだって!」

にこ「何が違うんだか……」

にこ「あとちゃん付けは辞めて」

真姫「ごめん、咄嗟に…」

真姫「穂乃果と俺はそんなんじゃないから」

穂乃果「そんなに、そんなに必死に否定しなくても、いいのに……」ボソッ

にこ「まあ別に、あんたが誰とどんな関係になっても私はどうでもいいけど」

真姫「」ギリッ

真姫「俺だってにこが誰とどんな関係になったってどうでもいいから!」

希「なあに怒鳴り合ってんねん」

絵里「喧嘩は辞めなさい。にこ、みっともないわよ」

にこ「ふん……」

にこ「西木野君が悪いんだもん」

真姫「なんだって?そっちが悪いんでしょ!?」

穂乃果「あぁもう!ストーップ!はい、終わり!仲直りして!ね!」

真姫「……」

にこ「……」


絵里「なんか、二人とも前より仲良くなった?」

真姫&にこ「なってない!!」

絵里「ほら」




真姫「はぁ、どうでもいいけど、希。希はいまからレッスンするから」

希「はーい」

真姫「にこは週末挟んで、月曜日にやるから」

にこ「はいはい」

真姫「希行くよ」

希「はーい」

…音楽室…


真姫「あーあーあーあーあー」

希「あーあーあーあーあー」

真姫「……ふざけてるようにしか聴こえないんだけど」

希「真剣なんやけど」

真姫「うーん…」

希「というか西木野君はなんでそんな高い声出るん?多分ウチより高いとこまで歌えるんじゃない?」

真姫「あーうん、なんでだろうね。なんか出せるの」

真姫(発声的には大分違うけど、コツを掴んじゃえば男でも高音域まで出るものね。まあ歌に使うってなると、やっぱり音域は狭まるけど、µ’sの歌くらいは原キーでもなんとか…)

真姫「なんか、キャピキャピしてるというか…もう少し落ち着いた感じでやってみてくれる?」

希「うーん…まあやってみるわ」

希「ねえ西木野君」

真姫「ん?」

希「にこっちのことなんやけど」

希「もしかして…にこっちのこと、好き?」

真姫「……!」

真姫「そ、そんなわけないでしょ!!!」

希「ふーん、じゃあ穂乃果ちゃんか」

真姫「はぁ!?」

希「仲よさそうやし」

真姫「そんなんじゃないって!」

希「まあ、どっちにせよ。にこっちはヘタレやし、不器用やから自分から動かないとダメやで」

希「まあ不器用さで言ったら、同じくらいかもしれんけどな」

真姫「……」

にこ『私は女よ』

真姫「今の私は…男」

希「穂乃果ちゃんとかはグイグイ来そうやなー」

希「いくら、穂乃果ちゃんやにこっちが可愛いからって襲ったりしたらダメやからな」

真姫「…っ」


 何気なく言った言葉なのかもしれない。それは私にとってはとても重要で、思い出したくもない事実だった。

希「あ、ウチは別に襲われてもええよ?西木野君、ウチを襲ってみるー?」

真姫「……馬鹿なこと言ってないで練習するわよ」

希「はぁーい」

真姫の家


真姫「にこちゃん……」

真姫「女だった頃と違って、距離をすごく感じる」

真姫「にこ、ちゃん。好き……」


真姫「メールだ。穂乃果…から?」


穂乃果メール「西木野くーん。明後日のことなんだけどー」

真姫「そういえば、そんな約束してたわね」

穂乃果メール「駅に集合でいいかな?」

真姫メール「いいよー、集合時間は?」

穂乃果メール「11時頃で!」

真姫メール「了解ー」

日曜日駅前


真姫「とりあえず部屋にあった男物の服着て来たけど、こんな感じでいいのかな…」

真姫「まあ遊ぶだけだし、そんなに気負いする必要ないわよね…」



穂乃果「お待たせー」

真姫「穂乃果。……!?」

真姫(あれ、なんか、可愛い。すっごく)

真姫(服も合宿の時より気合入ってるし、それに……お化粧…してる? 初心者にありがちな濃い化粧じゃなくて、男受けしそうなナチュラルな化粧)

真姫(意外と化粧とか慣れてるのかな? でもあっちの穂乃果は化粧なんて…)

真姫「化粧とかするんだ。可愛いね」

穂乃果「え!?あ、ありがと……何もしないで来るのは失礼かと、思って……」

真姫「そ、そう…」

真姫(私何も考えずに適当に来ちゃったんだけど…)


穂乃果「じゃあ行こっか」


穂乃果「あ、お昼ご飯食べようか!」

真姫「そうだねー、どこがいいかな」

穂乃果「最近さ、話題のパンケーキ屋さんがあるんだよ!!でも男の子って甘い物をお昼に食べることってないのかな…?」

真姫「んー、好きな人も居ると思うけど。少なくとも俺は好きだよ」

穂乃果「本当!?じゃあ行ってみようよ!」

パンケーキ屋



穂乃果「並ばないで入れたのはラッキーだったかも」

真姫「そうなの?」

穂乃果「うん、人気らしいから」


穂乃果「あ、来たよー」


真姫「す、すごいね」

真姫(大量のクリーム。これ、食べれるかしら)

穂乃果「うわぁ!おいしそー!」

真姫「ボリュームあるね…」

穂乃果「普段あんこしか食べてないから洋菓子っておいしーよねー!」

真姫「じゃあ、食べてみよう。はむっ。…!」

真姫「おいしい」

真姫「あんまり甘くなくてびっくり」

穂乃果「でしょ!?あ、こっちのやつ食べさせてあげるね」

穂乃果「はい、あーん」

真姫「……なんだか恥ずかしいな」

穂乃果「うっ……」カァァァァア

穂乃果「勢いでやっちゃったけど、確かに、恥ずかしい、ね」

穂乃果「もーう!気にしないで、あーん!」

真姫「あ、あーん」チラッ





にこ「え………」

にこ「くっ……!!」バッ




 窓際の席に座っていたことが災いした。
 ちょうど穂乃果が私の口にパンケーキを入れた時、それをにこちゃんに見られてしまった。


 本当に一瞬。
 チラリと目線を動かした時、確かにそこににこちゃんは居た。



 それに穂乃果は気づいていないようだった。



 にこちゃんは穂乃果が気がつくよりも前に走り去って行った。

真姫「あ……どうしよ…」

穂乃果「あれ?おいしく、なかった?」

真姫「ううん、おいしい」

真姫(見られた。どうしよう見られた。また今度、説明して…)


穂乃果「ねえ西木野君、周り、カップルばかり、だね」

真姫「え……そ、そうだね」

真姫(……まずいわよ、穂乃果。そんなこと言ったら、流石の私でも気づいちゃうわよ……)


真姫(この積極的だけれど、時々モジモジする変な態度に、言動、シチュエーション。つまり、穂乃果は私を……)


穂乃果「私と、そんな風に見られるのは、嫌……かな?」

真姫「え?いや…別に」

真姫(女だった頃は、人との距離がわからない用な天然小悪魔って表現が相応しかったけれど…)

真姫(ちゃんと男の前じゃ距離感を掴めるのね)

穂乃果「ご、ごめんね!変なこと言っちゃって!!」

真姫「いや…」

穂乃果「あ!クリームついてるよー?」ペロ

真姫「ひゃっ!」

穂乃果「あ…いや、だった?」

真姫「嫌…じゃないけど」

穂乃果「良かった~ふふ」

真姫(ダメだ、この子距離感なんて分かってないわ……)

夕方帰り道


穂乃果「今日は楽しかったね!」

真姫「そうだね」

穂乃果「ねえねえ!また今度遊ぼうね!」

真姫(また今度…か)


真姫「そう……だね」



穂乃果「………ふふ」

真姫「どうしたの?」

穂乃果「なんだろう。なんだか、西木野くんと居ると、安心するって言うか。なんだろう」

真姫「あはは、どういうこと?」


穂乃果「………」

真姫「穂乃果…?」

穂乃果「あのさ…西木野くん……」

穂乃果(言わなきゃ…言わなきゃ…自分の、気持ちを)

穂乃果「えっと…さ…」


 怖かった。
 これから何を言われるのか、大体分かっていたから。



 でも何故だろう。何故怖いなんて思うんだろう。



 また関係が壊れてしまうから?
 前と同じ状況には戻れなくなるから?



真姫「あ、そういえばさ――」



穂乃果「――西木野くん」ジッ




 私達の歩みが止まった。

 確か、もうすぐ、穂乃果の家。




 穂乃果の目は真っ直ぐ私を捉えていた。

 逃げられなかった。

みんなビッチ

見てるよ

穂乃果「私、私ね」

穂乃果「さっきも言ったけど、西木野くんと居ると、安心するの。話してて楽しいし、もっと、もっと一緒に居たいって思う。だから、だから私は――」



 ダメだよ、穂乃果、もう。それ以上言っちゃうと――。


 私はこの時分かった。




穂乃果「私は西木野くんが好きです。私と――付き合って下さい」





 言われる側って言うのは、言う側と同じくらい辛いんだって――。



 私は男になってから日が経っていないけれど、きっと穂乃果は男としての私を、ずっと見て来ている。



 その築いてきた期間を、私は潰してしまうんだ。


 穂乃果がその言葉を口にした時点でもう前の関係には戻れない。

 私がどんなリカバリーをしたとしても、だ。

 私が、私が好きなのは――。


真姫「……」

穂乃果「……」


真姫「――ごめんなさい」



穂乃果「……」ギリッ

真姫「ごめん…」

穂乃果「そっか……はは…そうだよね。ううん、大丈夫。ごめんね!嫌な思いさせちゃって!!」ウルウル

穂乃果「私は大丈夫!西木野くんみたいなかっこいい人と釣り合うのはもっと可愛い人じゃないとだよね!」

真姫「そういうことじゃ――」


穂乃果「また明日から、µ’sの仲間としてよろしくね!!じゃあ、またね!!」タッタッタッ

真姫「待って…あ、行っちゃった」


 どう言おうと、穂乃果を傷つけてしまう。それが辛かった。

 現に穂乃果は泣いていた。

 でも私にはどうすることも出来ない。下手に何かをすれば、もっと、傷つけてしまうかもしれないから。


 もし私がにこちゃんに、気持ちを伝えたら、こんな気持ちになるのかな。



真姫「ごめんね、穂乃果……」



 何故こんなにも早く関係性が動いてしまうんだろう。

翌日





真姫(あんなことがあった穂乃果とどう顔を合わせればいいの?顔合わせないで帰る?そっちの方が気が楽なんだけど)


真姫(あー…そういえば今日はにこちゃんの個人レッスンがあったんだった)

真姫(にこちゃんに二人で居たとこ見られて誤解とかされてるわよね)


凛「西木野くーん!!!」

真姫「うぇ!?凛かぁ」

凛「びっくりしたぁー?」

真姫「当たり前だろ」

花陽「西木野くん、おはよう」

真姫「花陽、おはよう」

凛「なんだか考えごとしてる顔だったにゃー」

花陽「何か悩みごと?」

真姫「い、いや…そんなことないから」

凛「ふーん、そっかー」

花陽「何かあったら言ってね」


凛「ん!?あ、にこちゃんだー!ギュー!」

にこ「うわっ凛ちゃん!?」

凛「驚いたー?」

にこ「当たり前でしょ!?朝の弱ってるとこに人が一人突進してきたら!!」

凛「えへへー」


真姫「……誰にでもあんなことするの?」

花陽「まあ…一応は」

真姫「やめさせた方がいい気がするよ」

花陽「うぅ、善処、します」


真姫「……」

にこ「……」

真姫「お、おはよう」

にこ「……おはよう」


凛「あれ?なんか二人の間に大きな壁がある!?」

花陽「り、凛ちゃん私達だけ先に行こ!!」

凛「ど、どうしてにゃー!?引っ張らないで!ちょっとぉー」

にこ「あれ…二人がいない」

真姫「先に行ったんじゃない?」

にこ「待ってくれても良かったのに」

にこ「」スタスタ

真姫「ちょっ…!先行かないでよ」

にこ「どうして」

真姫「そりゃ…友達なんだから一緒に登校すれば…」

にこ「まあ別にあんたがそう言うなら」カァァッ

真姫(やっぱり、私のことは嫌いなんだろうか。露骨に避けられたらそう思わずには、いられないわよ…)



真姫「……」スタスタ

にこ「……」スタスタ


周り「」キャピキャピ

にこ「ごめん、私と通学しててもつまんないわよね」

真姫「え!?いや、そんなことないよ。俺は、楽しい、し」

にこ「……てかこんなとこ見られたら勘違いされるんじゃないの?」

真姫「は?なんのこと?」

にこ「……」

にこ「あんたさ、勘違いさせるのは本当、やめて」

真姫「は…?」

にこ「ああもう!」


にこ「……その気になっちゃうじゃない」ボソッ

真姫(怒らせちゃった……?私何かしたかな…)

にこ「まあいいから!早く行こ」

真姫「あ、うん」

真姫(あと、なんだか違和感を感じる、ような。にこちゃんだけど、にこちゃんじゃないような。そんな感じがする)

真姫「ねえ、にこちょっと聞きたいことが」

真姫「なんで常に素でいるの…?」

真姫(私が感じた違和感はにこちゃんの言動と態度だった。男になってからというもの、ふざけたにこちゃんを見たことがない)

にこ「あんた、なに言ってるの…?」

真姫「いや……」

真姫(気のせい、か)

真姫「今日レッスンあるんだから覚悟きときなよ」

にこ「う…はいはいー」

部室


真姫「にっこにっこにー」ボソッ

ことり「なにそれ西木野くん」

真姫「え!?いや…なんでもないよ」

ことり「ふーん」

真姫「…知らないの?」

海未「……?」

真姫「あ、いや知らないならいいの。知らないなら」

真姫(やっぱり、私の思っていた通りなのかもしれない)

真姫「ねえちょっとにこについてなんだけど……」


ことり「なんだか珍しいね?」

真姫「ちょっと…ね?」

真姫「にこってさ自分のことなんて言ってる?」

海未「なんでしたっけ?」

ことり「普通に私って言ってる気がするけど?」

海未「それが、何か?」

真姫「自分のこと名前で呼んだり、とかは?」

ことり「うーん…」

海未「聞いたことがないですよ」

真姫(やっぱり…)

真姫「た、例えばだよ?例えば」

真姫「――にこにーって言ったり、とかは?」


希「なになにー?」

真姫「うわぁ!!!」

希「にこっちのことそんな興味あるんー?」

絵里「希、西木野くんが困っているでしょ」


希「ええやんー、西木野くん何の話してたん?」

西木野「ど、どうでもいいだろ!?」

希「ことりちゃーん?」

ことり「あ…いや…」チラッ

真姫「……」

希「ことりちゃんて胸結構おっきいいよねえ…」ワシワシ

ことり「ひぃ!ごめんね!話す話すからぁ!!!」

真姫「ことり!?」


ことり「えっとね!?ただ、西木野くんがにこちゃんの一人称を聞いてきただけだよ!!」


希「ふーん、案外普通やな」

絵里「何を想像したのよ…」



にこ「…何をはしゃいでんのよ」

希「あ、噂をすれば」

にこ「は?」

希「西木野くんがなー、にこっちのことことりちゃんと海未ちゃんに聞いてたんよー」

真姫「はぁ!?違うでしょ!?ただ一人称聞いただけ!」

にこ「……」

絵里「にこも大変ね」

にこ「…っ、本当よ!」

にこ「てか一人称ってどういう意味よ」

真姫「え?いや、なんとなく」

にこ「なんとなくって…」

希「なんとなくでも気になるもんは気になるんやね」

真姫「希は少し黙って」

穗乃果「こーんにちはー」


真姫「っ………!!」


希「……?」

にこ「……?」

穗乃果「あれ?どうしたの?」

希「ちょっと色々話してたんやけどなー」

真姫「……」

絵里「西木野くんどうしたの?急に黙って」

真姫「う、うん…」

穗乃果「……」




にこ(なんだか二人の間の空気が違うような。昨日はあんなに楽しそうに……)


穗乃果「……にこちゃん今日西木野くんとレッスンでしょー?」

にこ「え?そうよ」

穗乃果「西木野くん!にこちゃんを徹底的に鍛えてあげてね!」


真姫「……」


真姫(……いつも通りに…まるで何も無かったみたいに。すごいよ、本当に穗乃果は凄い人ね)

真姫「任せておいて」

絵里「そういえば希のレッスンの成果はどうなったのかしら」

希「ウチ?ウチはなあー」

希「なんか適当に終わらされてしまったんよ」

希「ウチのことなんてどうでもいいって」シクシク


穗乃果「酷い…!酷いよ西木野くん!!」

真姫「いや…なんか希が変な話しだしたから早く終わりたかったの」

海未「変な話?」

真姫「あ…なんでもないよ」



海未「…そうですか」


にこ「どうでもいいけどさー、早く始めない?レッスン」




真姫「…じゃあ行こうか」

…音楽室…



真姫「じゃあ発声練習…から」

にこ「うん…」

真姫「あーあーあーあーあー」

にこ「……」

真姫「ちょっと…声出してよ」

にこ「真姫」

真姫「…え?」

にこ「女の子みたいな名前ね」

真姫「バカにしてんの?」

にこ「思っただけー」

真姫「そんなことより始めるわよ」

真姫「あーあーあーあーあーあー」

にこ「……」

真姫「だから…やる気あるの?」



にこ「……ねえ」

男に姫は無いよな...

真姫「ん?」

にこ「日曜日のこと、だけどさ」

真姫「……」

にこ「西木野くんてさ、穗乃果ちゃんと付き合ってるん、だよね?」



真姫「…違うよ」

にこ「え…?」

真姫「私と穗乃果は、そんな関係じゃない」

にこ「そう、なんだ」

にこ「なんか、ごめん」

にこ「凄く楽しそうにしてたから…」

真姫「変に素直だね」

にこ「す、素直で悪い!?」

にこ「私、結構楽しみにしてたんだけど。このレッスン」

真姫「え…?」

真姫「そ、そう…」

真姫(どどど、どうしよう…)

にこ「悲しいけど…まともに話せる男子、西木野くんしかいないし……」

真姫「……」

にこ「西木野くんはいいわよね。かっこいいし、きっと可愛い子からモテるんだろうなぁ」

にこ「私なんて、µ’sの他の人と比べると取り柄もないし…」



真姫「――にっこにっこにー!」

にこ「…?」

真姫「辛気臭い顔なんて似合わないよ。笑って。ほら一緒に!」

にこ「え?え?」

真姫「ほら!にっこにっこにー!」

にこ「に、にっこにっこー?」

真姫「もーう!!こっちもこんなの恥ずかしいんだから!!」

真姫「にこのせいだから!!」

にこ「は、はぁ!?意味わかんないわよ!?」

真姫「もう!ネガティブなのは似合わないから、にっこにっこーって常に言ってろ!」

にこ「いやいや意味わかんない」

真姫「アイドルは人を笑顔にする仕事。その為には自分も笑顔じゃないと…ね?」

にこ「……励まして、くれたの?」

にこ「あ、ありがとう…」

真姫「…………」

真姫(勇気を……今言わないと)


真姫(私に勇気を、下さい)

真姫「にこはさ、そんな小さい身体をしてるけど、誰よりもみんなのことを見えていて誰よりも人のことを考えて行動出来る」

真姫「それに、常に努力して、アイドルであろうとよりよくなろうとしてがんばってる」

にこ「う、うん……」

真姫「そんなにこを見ていると、勇気を貰える、元気になれる」

真姫(頑張れ、頑張れ、私)


真姫「……だから私はにこのことが――」


にこ「――西木野くんはさ!!!」

真姫「――?」

にこ「穗乃果ちゃんのことが、好きなんでしょ?」

にこ「私と違って歌も上手いし、明るくて一緒に居て楽しそうだし」

にこ「私に、なに変なこと言おうとしてるの?やめて、期待させないで!」

にこ「どうせ、どうせ、違うんだから!!やめて!!!勘違いしちゃうよ……!」



にこ「穗乃果が好きなんでしょ?楽しそうにしてたもん!」

にこ「ごめんね、私レッスンいいや。じゃあ」

真姫(離れて行く、また、また離れて行く。嫌だ。嫌だ嫌だ!!)

真姫「っ!!」ガシッ

にこ「離して!」

真姫「好きなのは!!私が好きなのはあなた!!!」

真姫「西木野真姫が好きなのは穗乃果じゃない!矢澤にこだよ!」


真姫「好き。好き、です」



にこ「本当……?」

真姫「本当だよ」

にこ「また期待させてるだけ…?私の勘違い?」

真姫「ううん」

にこ「本当に本当?私のことを?」

真姫「うん。というか、何度も言わせんな!」

真姫「そっちの…気持ちを、聞かせてくれない?」


にこ「……ずっと」

にこ「――好きだった」

にこ「でも西木野くんはかっこいいし、モテるし、周りに可愛い子ばかりいるし、私じゃ絶対ダメだって…うぅひっぐ」


真姫「にこちゃん…」ギュッ

にこ「もう、その呼び方は辞めてって……」

真姫「いいでしょ?もう恋人なんだから」

にこ「う、うぅ」




………………



真姫「あの…近くない?」

にこ「だってピアノ弾いてるとこ近くで見たいし」

真姫「ちゃんとレッスンもしなさい」

にこ「ふふ」

真姫「ねえみんなにはなんて言おう」

にこ「んー…」

にこ「秘密にしようか」

真姫「バレそうな気もするけど…」

にこ「うーんその時はその時で」


真姫「……」

にこ「ねえ……キス、しようよ」

真姫「は、はぁ!?」

にこ「私のこと好き、でしょ?」

真姫「うん…」

にこ「じゃあ、はい」


 にこちゃんはそう言って私の前で瞼を閉じた。それは警戒心も全て無くして私に委ねてくれたということでいいんだろうか。

 勇気で明日は変わるんだね。


真姫「ん……」

真姫(ど、どうしよう。めちゃくちゃ緊張して、どうしよう。にこちゃんが待ってるのに)


にこ「ふふ」

にこ「えい」チュッ

真姫「んっ……え…?」


 気がついた時にはにこちゃんの唇が私に触れていた。


にこ「私が先輩なんだから、私からするのは当然でしょー?」

真姫「こ、心の準備ってものが!!」

にこ「じゃあ…もう一回してみる?」

真姫(勇気を!勇気を!頑張れ!私!)

 再び閉じられた瞼。無くなった警戒心。

真姫「好きだよ…にこちゃん」チュッ



 そこで視界は暗転した。




 渦は、まだ、消えない。

……………………


穗乃果「……ゃん!……ちゃん!…真姫ちゃん!!」


真姫「ぅ…な、なに……」

穗乃果「真姫ちゃん!?みんな!真姫ちゃんが目を覚ましたよ!!」

凛「真姫ちゃん大丈夫!?凛心配したんだよ!?」

花陽「良かった……」

ことり「真姫ちゃん、大丈夫?私たちのことわかる?」

真姫(…え…あれ…私。にこちゃんと、キスを……)

真姫(ここは……?)

海未「起きあがっちゃダメですよ!!目が覚めたばかりなんですから!」


真姫「……?」


真姫「ここ、は…?」

絵里「学校の保健室よ。希が学校の外で倒れているところを見つけてくれたのよ」

真姫「え……」

 身体が激しく怠かった。
 そして身体に激しい違和感を感じた。

真姫「あ、れ……声……」


絵里「どうしたの?大丈夫?」


真姫「え、ええ…」

真姫(女の、声)

真姫「ねえ、絵里、俺って、男?」

 私の言葉を聞いて絵里はすぐに怪訝な表情を浮かべた。私はそれで全てを察することが出来た。

真姫「そっか…女か」

絵里「ねえ本当に大丈夫?」

穗乃果「きっと一時的に記憶がおかしくなってるんだよ!」

真姫「……」

海未「今日の練習は中止にしましょうか。真姫がこんな状態では…」

ことり「それがいいね」

凛「真姫ちゃん!送っていくよー!」

穗乃果「私も行くー!!!」



真姫「ありがとう、でも大丈夫よ。もう身体も怠くないから」

凛「ダメだよ!」

穗乃果「そう!ダメだよ!」

真姫「う……じゃあお願い」



真姫の家


真姫「ありがとう」

凛「お大事にね!」

穗乃果「お大事に!!」



真姫(私の身体は女に戻っている)


真姫「どういうこと……」


希『これは、夢やから』


真姫「夢…?」

真姫「あの、世界は夢だったっていうの…?」

真姫「じゃあ…今いる世界は……」

にこ『私は女よ』

真姫「……!!」

真姫「そんな……そんな……うぅ」ポロポロ

真姫「ごめんね…ごめんね、にこちゃん」


真姫「……希…希に聞けば何かわかるかも!!」

真姫「でも希はどこに……」


真姫「神社……神社ね。あそこしかない」

神社



希「あれー?真姫ちゃん?大丈夫?」

希「外で話してたら真姫ちゃんが倒れてしもてなー。困った困った」

真姫「……」

希「わざわさウチに会いに来たん?」

真姫「そうよ…」


真姫「あなた、何か知っているでしょう?」

希「…?」


希「大丈夫…?」

希「にこっちのことは…早まりすぎたんよ……でもまたいつか…」

真姫「そのことじゃない…!確かにあれは、どうかしてたわ」

真姫「私は夢を見ていたの。ひどく鮮明な夢」

真姫「そこでは、私は男で、穗乃果に告白されて、にこちゃんとの距離があって、でも、最終的ににこちゃんと……」


希「……」

真姫「私、どうかしているの?」

希「それが本当だとしたら、スピリチュアルやね」

真姫「希が……希が夢をみせたんじゃないの?」

希「ウチにはなんのことかわからんよ」

真姫「……」

希「ただ、希望は捨てないで」

希「真姫ちゃんは辛いと思う。でも、にこっちもきっと、真姫ちゃんに言いたくて言ったんじゃ、ないと思うよ」

真姫「っ……そんなこと……」

希「じゃあ、ウチはまだやることがあるんや」

真姫「……そんなこと、分かってるわよ…」

真姫「メール…?」

にこメール「話があるの。今から会いたい」

真姫「何よ……話って……」


真姫メール「私と話すことなんてあるの?」

にこメール「いいから、お願い」

真姫メール「…どこで?」

にこ「…どこがいい?」

真姫メール「はぁ?そんなの……」

にこ「じゃあ学校に来てよ。部室に」

真姫メール「分かった…」




真姫「一体、何を…」

……部室……


真姫「もう日が暮れて来たわね…」

真姫「遅い……」


にこ「ごめん…待ったよね」


真姫「……」

真姫(さっきまで夢で会っていたから私は、すぐにでも抱きつきたい。でも、このにこちゃんは…)


にこ「……ふぅ」


真姫「何よ…いきなり」

にこ「……」

真姫「……あ…、あの、じゃあさ私から話していいかな」

真姫「今日は、ごめん」


にこ「もう、過ぎたことでしょ…?」

真姫「うん…」

にこ「にこはぁー、ぜぇーんぜん気にしてないよ?ほらそんな暗い顔してないで!!にっこにっこー!って!」

真姫「はは…」

にこ「な、なんかツッコミなさいよ!!」

真姫「いや…はは、やっぱりにこちゃんだ」

にこ「はぁ?」

真姫(やっぱり私の好きなにこちゃんだ……明るくて、元気をくれる…)

にこ「まあ、話ってのはさ…」

にこ「もう先に言われちゃったんだけど…」

にこ「今日はごめん」

真姫「え…?」

にこ「私、ちょっといきなりのことで怖くなって…本当はあんなこと言うつもりなんて無かったのに、本当にごめん」

真姫「いや、悪いのは、私だし…」

にこ「まぁ、でも?にこにーの可愛さを目の前にして、ああならない方がおかしいって言うかぁー?真姫ちゃんは当然の行動を取ったんだよ!」

真姫「なによそれ!!」

にこ「だってにこは可愛いもーん、それを馬乗りになっちゃったら、仕方ないよねー?」

真姫「うぅー、悪かったわよ!!」

にこ「ねえ、私のこと好き?」

真姫「は、はぁ!?」

真姫「な、ななななに言ってんのよ!」

にこ「好きじゃないのに、あんなことされちゃったんだ……」


にこ「好きぃ、にこちゃん、好きぃとか言いながらキスしてきたのはどこの誰ー?」

真姫「う、うぅやめて……」

にこ「で?にこのこと、好きなの?」

真姫「好き…」ボソッ

にこ「えー?なあにー?聞こえなーい」

真姫「好きって言ってるでしょう!?なに!?私をからかいたいだけ――」

チュッ


真姫「――ふぇ……?」


にこ「わ、私も、好き」



真姫「え…?え…?」

真姫「嘘……」ポロポロ


にこ「何泣いてんのよ!?」

真姫「嬉しく、て」

真姫「嫌われたと思って、うぅ、にこちゃんにあんなことして、もう前みたいに喋れないって…そう思って…」

にこ「もう!大げさよ!」

真姫「だって…だってぇ」

にこ「私も恥ずかしいんだから…」


にこ「ま、まあ私と真姫ちゃんは今日から恋人ってことでいいのよね?」

真姫「こ、恋人…」

にこ「何?照れてる?」

真姫「あ、当たり前でしょ」


にこ「真姫ちゃんかわいー」

真姫「からかわないで!」

真姫「あんなんじゃダメ」

にこ「え?」

真姫「あ、あんな不意打ちじゃ満足、出来ない」

真姫「もう一回、キス、したい」

にこ「あ、いや、それは……」

真姫「いいでしょ?」グイッ


真姫「来て、にこちゃん。先輩でしょ?先輩からするのは当然でしょ」

にこ「う、うん…。でも改まってってなると恥ずかしすぎて…」

真姫「……」

にこ「行く、よ」


にこ「ん~~……」


真姫「えいっ」

チュッ


にこ「ふぇっ!?い、今、今ぁ!!」

真姫「仕返しよ!!」

にこ「私からするはずだったんじゃないの!!なんで真姫ちゃんからするのよ!!!」

真姫「じゃあ……さ」


真姫「もう一回、する?」



 時間なんてそこには存在しないんじゃないか、そんな風に思った。

…翌日…



穂乃果「え、えぇぇー!???」

凛「にこちゃんと」

花陽「真姫ちゃんが」


みんな「付き合ってるー!?」


希「どういうことや!?逆転満塁ホームラン!?」

絵里「前々から仲が良いと思ってたけど…」

絵里「ハラショー」

海未「アイドルは恋愛禁止なんじゃ…?」

にこ「ぅ……お、女の子同士ならノーカンよ!!」

絵里「なによその超理論」

ことり「本当!?」

にこ「え、えぇ」

ことり「ありがとうにこちゃん!!」

海未「にこ、その言葉、忘れないで下さいね」

穂乃果「え?なになに?」


にこ「…穂乃果も大変ね」

真姫「そうね…」


穂乃果「あ、そういえば真姫ちゃん!新曲完成してるって言ってたよね!?」

真姫「え?ま、まあ」


絵里「聴かせて欲しいわね」

穂乃果「真姫ちゃんのソロー!!!」

真姫「はぁ…仕方ないわね」

凛「真姫ちゃんのソロだにゃー!!!」

希「真姫ちゃんは上手いからなぁ」


真姫「いや…そんなにハードル上げられると…まあ自分でも得意だたは思うけど、第一絵里も穂乃果もほとんど私と変わらないじゃない…」


にこ「上手いって自覚はしてるんだ…」


真姫「自信は必要よ!!!」

真姫「じゃ、音楽室に行くわよ」



音楽室




穂乃果「ワクワク」

凛「ワクワク」

にこ「ちょっとー真姫ちゃんに一番近いとこは私ー」


真姫「なに?にこちゃん嫉妬してるの?」

にこ「…っ!わ、悪い!?」

真姫「わ、悪くないわよ!!私も好きだもん!!にこちゃんと近くがいい!!」


希「あの…ええかな?」

真姫「はっ…!」

にこ「はっ…!ごめん」

絵里「人前でノロけるのもいいけど…ほどほどにね」

海未「じゃあ、にこが真姫の近くに行くとして。あ、穂乃果は私の隣に…」

ことり「いやいや穂乃果ちゃんは私の隣に…」

穂乃果「私が真ん中に行けばいいのかな?」


ことり「まあ…それでも」

海未「いいですが…」


凛「大変だねぇかよちんー」

花陽「そ、そうだね」



希「二年生組は先が思いやられるなぁ」

絵里「ふふ、そうねー」

希「なあえりち、さっき超理論とか言ってたよね?」

絵里「言ってたけど?」

希「本当は女の子同士ならいいって思ってたんやろー?」

絵里「まあ…そうじゃなきゃ…ね?希」

希「ふふふ、そうやね」


真姫「じゃあ、いい?」


穂乃果「うん!!」


真姫「じゃあ、かけ声を」


穂乃果「µ’s!!!」


 ピアノに手を添える。
 一瞬、激しい違和感に襲われた。
 何か大切なことを忘れているような、そんな気分。


 ただ、これもきっと杞憂だろう。



 手にした幸せは、もう逃さない。

穂乃果「――Music S.T.A.R.T!!」




 Welcome song! ひとつになる心




 だってパーティー終わらない
 だってパーティー終わらない
 まだまだ――で思い切り歌うよ



 パレードに誘われて
 君と 踊る
 光の渦は消えない
 ずっとね、消えないー



 Welcome song!
 ひとつになる心
 だからここが私の――。




 


 Never ending stage――。






fin

おつ
かませほのか……

以上です。


希のスピリチュアルパワー以外には矛盾がないように頑張ったつもりです。

ここまで読んでくれた皆様に感謝を。


希「国立音ノ木坂学院µ’sのある日の出来事」
http://ex14.vip2ch.com/i/responce.html?bbs=news4ssnip&dat=1394638655

にこ「真姫ちゃんが新しいことを覚えたらしい」
http://ex14.vip2ch.com/i/responce.html?bbs=news4ssnip&dat=1394909747

真姫「海未が新しいことを覚えた?」ことり「なになになんのこと?」
真姫「海未が新しいことを覚えた?」ことり「なになになんのこと?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1395428120/)




もしよろしければ、是非。



>>67
全員真姫ちゃんに告白させようとしましたが、長くなるので辞めました。

>>68
ありがとうございました。

>>116
ほのまきが好きな方には申し訳ないです。




次はのぞえり書きたいですが、アニメ始まると色々設定更新がありそうなので不安です。次書いた時にはよろしくお願いします。では。


うみにこ見たい


男になる必要はあったんだろうか

お疲れ様
なんだか男になる必要があったのか良くわからなかったけど
ハッピーエンドだからよかった


良かった

>>84
字を変えようと思ったのですが、そのまま行った方が分かりやすいかと思いまして。

>>119
検討しておきますね。

>>120
一応意味があるようにしたつもりですが…分かりにくく書いてしまったかもしれません。

>>121
ちなみにハッピーエンドにしたつもりは、ありません。最初の方と最後の方をよく読んで頂くと、わかるかも…?です。

>>122
ありがとうございます。

指が治ってるってこと?
脳トロだからよく分からん

ことりちゃんの声にやられてしまったのか・・・


新しいこと覚えたシリーズ好き

王道だな

>>124
と、言うことは…?
希ちゃんの言動に注目です

>>125
正解です

>>126
ありがとうございます

>>127
ありがとうございます。



また次書いた時に、よろしくお願いします。今回はちょっと分かりにくくしてしまいました。本当に申し訳ありません。では。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年05月06日 (火) 21:50:16   ID: 6uSsZ-70

面白かったけど指が治ってるってことは、と、ことりの声にやられた、って?
見返したけどわからなかった…

2 :  SS好きの774さん   2014年05月18日 (日) 02:29:19   ID: W45HtnDi

夢から戻って来てない

3 :  SS好きの774さん   2014年07月05日 (土) 06:57:29   ID: 2mNogznr

ことりの声にやられたって… つまりどうゆうこと?

4 :  SS好きの774さん   2014年09月13日 (土) 02:42:25   ID: fMGuOmwU

自分が男になった世界の夢見た後、女の子同士の恋愛が許容されてる夢に移動したって事?いかんほのかかわいいなにもかんがえれないかわいい

5 :  SS好きの774さん   2014年09月21日 (日) 20:01:58   ID: iXM8Tudq

にこまきの間にほのかが入ること多いよね

6 :  SS好きの774さん   2015年04月07日 (火) 11:34:45   ID: 0ohei_co

突然謎解き提示されても高低差ありすぎて耳キーンなるわ

7 :  SS好きの774さん   2015年09月03日 (木) 18:23:47   ID: ee2blVKe

ことりの声にやられたの意味がわからん

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