天使「死んでください!」(203)


男「……嫌だ」


天使「つべこべ言わず死んでください!」


男「理不尽だな」


天使「あなた、度胸無いんですね」


男「度胸の問題じゃねぇ。そもそもいきなり『死んでください』って言われて『ハイ』って答える奴いるか?」


天使「私は見た時無いですが…先輩の話によると何人かいたそうですよ。主に自殺する前に聞いたらしいですけど」


男「そりゃそうだ」


天使「じゃあ、どうすれば死んでくれるんですか?」


男「いや俺、まだ死ぬ気ないぞ」


天使「そこを何とかお願いしますよ~お代官様~」


男「お主も悪よのう…って意味わからんコントさせるな」


天使「実は私…多額の借金がありまして、あなたが死んでくれないともう後が無いんです。家でお腹を空かして待っている2人の娘達の為にも…どうか死んでください!」


男「すまん、これっぽっちも同情しないぞ」


天使「この人でなし!変態!露出狂!」


男「人が用を足してる時に現れておいて何を言ってんだ」カチャカチャ


天使「それにしても……ここまで私に驚かない人初めて見ましたよ。ていうか見える人が初めてですけど」


男「まぁ、昔から見たくないモンまで見える体質だからな。今更天使のコスプレをした幽霊が現れても憂鬱にはなるが驚きはしねぇよ」


天使「えっ?私本物の天使ですけど?」


男「………確かに羽と天使の輪っかみたいなのが見えるが…嘘だろ?」


天使「ホントですって。ほら、免許証もあるし」つ天使免許証


男「………で、その自称天使様がどうして俺の前に現れていきなり『死んでください』って言ってんだ?」


天使「ほら、天使を逆から言ってみてください」


男「…しんて」


天使「しんてしんてしんて……死んで!」


男「無理矢理だな、オイ」


天使「冗談はこれぐらいにして、本当は死神のアルバイトをしてまして」


男「天使が死神のアルバイト?」


天使「はい、自給がいいので」


男「マジか」


天使「じゃあ説明もしたんでそろそろ死んでください」


男「ノリが軽いわ」


天使「死ぬのって意外といいもんですよ?」


男「だから俺は見える体質って言ったろ?大概の幽霊は苦しんでたぞ」


天使「それは天使が仕事をサボって天界に連れてってあげないからです。地縛霊とかは違いますけど、俗に言う浮遊霊がそれです」


男「お前らのせいかよ!!」


天使「現世に未練も何も無いのに天界に行けないなんて…かわいそうですよね」


男「そう思うなら仕事しろ仕事!!」


天使「だからこうして死神の仕事を…」


男「天使の仕事だよ!!」


天使「ええーダルいー」


男「ええーマジでー」


天使「死神は自分で人間を殺せるのですが、天使って自分では人間を殺せないんですよ。そもそも殺すという発想が浮かばないらしいです。天使は高貴な存在ですから」


男「どの口が言ってんだ?」


天使「殺せないので人間が寿命や事故等で死ぬまで待ってないといけなくて、飽きて天界に帰る天使がほとんどなんです。そのおかげで最近は仕事しないで太って飛べない天使ばかりなんですよ」


男「もうこれ以上天使のイメージを下げないでくれ」


天使「その点私はちゃんと死神のアルバイトをしてますから、天使の中でも優等生の方なんです!」ドヤッ


男「いや、天使の仕事をしろよ」


天使「さあ、早く死んでください!」


男「人の話を聞け!」


天使「はぁ…めんどくさい人間に関わっちゃいましたね」


男「俺のセリフだ。ていうかお前って今は死神なのか?」


天使「だから天使だって言ってるじゃないですか。あなたって意外とバカなんですね」


男「正直ぶん殴りたいが今は質問を続けるぞ。じゃあお前は俺を直接殺すことは出来ないんだな?」


天使「はい、そうです」


男「じゃあこのまま俺に憑いてても意味なくねぇか?俺まだ死ぬ予定ないし」


天使「………おおっ!なるほど!」


男「バカはどっちだ」


天使「でも確か…」ポンッ


男(魔法みたいなので本を出しやがった…本当にただの幽霊ってわけじゃなさそうだな)


男「おい、何読んでんだ?」


天使「死神ルールブックですよ。天使が死神のアルバイトをするのって特殊なんで色々と注意事項が書いてあるこの本を貰ったんです」ペラペラ


天使「あっ、ありました!『死神は一度人間に憑いたらその人間が死ぬまで憑いてなくてはならない。アルバイトであってもこの規則は破ってはならない。ていうか破れないのでよろしく~♪』と、いうことで私はあなたが死ぬまで傍に居ないといけないんです。わかりましたか?」


男「」


天使「ん?死んだんですか?」


男「放心してんだよ!てかお前は何でそんなに冷静なんだよ!!」


天使「??ちょっと何言ってるかわからないですよ」


男「俺が悪いみたいな言い方すんな!」


男「だからお前は俺を直接殺せないんだろ?」


天使「はい。天使なので」


男「で、お前は俺が死ぬまで傍に居ないといけないんだろ?」


天使「はい。死神のアルバイトなので」


男「で、俺は自殺する気など微塵も無い」


天使「………あっ」


男「気づくのおせぇよ!」


天使「お願いします!死んでください!」ズザァァ


男「もの凄い勢いで土下座したな。ま、死なないけど」


天使「そんなぁ!?なら…これでどうですか!?ホラホラ!何ならパンツの下も見せますよ!」バッ バッ


男「見せなくていいわ!帰れ!」


天使「帰れないんですよ!!」ピエーン


男「てか俺の前の人達はどうやって殺してたんだ?」


天使「天使の仕事の時は、テレビのニュースなどで死んだ人を見つけてから現世に来て天界に連れて行ってあげてました。で、死神のバイトの第一号があなたです。たまたまここを通ったら深い溜息をついたあなたが居たので、これから自殺するのかと思いまして…どうしてあんな溜息ついてたんですか!?まぎわらしいですよ!!」


男「用を足してたら、いきなり天使のコスプレした女がトイレの壁をすり抜けて現れてみろ!!溜息も出るだろうが!!」


天使「一体私はこれからどうすれば…」ウルウル


男「とりあえずさっきの本に何か解決策が書いてないか調べてみろよ」


天使「そ、そうですね。きっと抜け道があるはず…」ペラペラペラ


天使「ふむふむ…『アルバイトの方には簡易折り畳み鎌を配布してます。これで君も一人前の死神だ!人間をバンバン殺しちゃお~♪』…あっ、本に付録としてくっ付いてましたね」


男「………」


天使「………」


男「とうっ!!」バッ


天使「ああ!?私の鎌が!!」


男「そして便器にポーイ!」パッ


ジャーーー


天使「ああああああああ~~~~~!?」


男「折り畳み式で良かった…」ホッ


天使「何するんですか!?あれが無いとあなたを殺せないんですよ!?」


男「殺されない為に捨てたんだ!!」


天使「早く追いかけないと!」スルッ


男「いってら~」フリフリ


男(…そういや俺から離れられないって死神のルールにあったけど大丈夫なのか?)


ガチャ


天使「」ゼェ ゼェ


男「…お早いお帰りで……で、何でここで倒れてんだ?」


天使「あ…あなたから離れたら急にち…力が抜けて…」ハァ ハァ


男「なるほど…俺から離れるとお前が死ぬってことか。頭の輪っかや羽も無くなってるし」


天使「わ…輪っかと羽は天使の力の象徴ですから…そ、それより…力を……」ハァ ハァ


男「そんなこと言ってもなぁ……離れると力が抜けんなら近づけばいいのか?試しに手を握ってみるか。どうだ?」ギュッ


天使「も……もっと!」グイッ


男「うおっ!?」


天使「あ~生き返りますぅ~」ギュゥゥゥゥ


男「そうか…」


天使「ふぅ…とりあえずはこれで動けます。ありがとうございました」


男「おう…お前って意外と大胆なんだな」


天使「へ?………ななななななな何してんですか!?///」パッ


男「お前から抱きついてきたんだろ」


天使「や、やっぱり人間のオトコは性欲の塊なんですね!この変態!」


男「さっきトイレでパンツ見せてきた奴に言われたくねぇよ」


天使「ぐっ…あ、あれはテンパっていたのでノーカンです!」


男「それよりまずは現状を把握するぞ」


天使「な、何であなたが命令してるんですか?」


男「お前がバカだからだ」


天使「ひどいっ!?」


男「とりあえず俺からどれくらいまで離れられるかやってみろ」


天使「わかりましたよ…」トボトボ


天使「………ぐっ、ここら辺でもうギブです」ハァ ハァ


男「玄関のとこまでか…かなり範囲が狭いな。7mぐらいか?」


天使「ま、また力を…」フラフラ


男「それでこれだと5mぐらいがベストの距離だな」ギュッ


天使(手を握るだけだと回復が遅い…)ハァ ハァ


男「…マジでめんどくせぇな」ダキッ


天使「なっ!?///や、やめてください!!」


男「いいから黙って力を回復させろ」ギュゥゥゥ


天使「ぐっ…///」


男「………」ギュゥゥゥ


天使「……も、もう終わりました!///」パッ


男「はぁ…これからは俺の5m範囲内から出るなよ」


天使「うわぁ…あなたって彼女を縛り付けるタイプなんですね」


男「物理的にそうさせてんのはお前だ」イラッ


天使「………あっ、お父さんならどうにか出来るかもしれません!」ポンッ


男「天界と電話出来んのかよ」


天使「……あれ?繋がらない…何でですか?」


男「俺に聞くな」


天使「電波が悪いのでしょうか?」


男「それより死神のルールブックを俺に見せてくれ。何かこの状況を打開するヒントがあるかもしれないし」


天使「どうですか?何か解決策ありましたか?」


男「………いや、無さそうだな」ペラペラ


天使「そんなぁ~…」ガクッ


男(解決策は無かったが死神については大体理解した。まず死神は人間をランダムに選んで殺すことで人間が増えすぎるのを防いでいる。だが最近はそれでも追いつかないほど人間が増えているからアルバイトを募集していた。で、そのアルバイトが天使であるこいつ。

次に殺す方法。鎌を使わず普通に人間を病気や事故死等に出来るらしい。どっかの漫画のノートみたいな道具も必要無く、その能力を持っている者が死神と呼ばれている。あの折り畳み鎌はその能力を持たせる道具で、鎌として物理的に殺すことはもちろん出来ない…鎌である必要性ゼロだな。

そして死神は殺す人間に憑いて、その人間が死ぬまで傍に居ないといけない。これは積極的に人を殺す為に作られたルールで、基本的に死神はいつでもすぐに殺せるからまったく問題無いんだが……天使のこいつにとっては大問題ってわけだ)


天使「お腹空きました~」グゥ~


男「…お前、自分がどういう状況に置かれているのかわかってんのか?そもそも天使って飯食うのかよ」


天使「人間の勝手なイメージを押し付けないでください。天使だって食事をしますし、ウンコだって出します」


男「わかったから下品なこと言うな。お前も一応女だろ」


天使「天使に性別はありませんよ」


男「へぇ~そうなのか」


天使「まぁ、私は女性ですけど」


男「例外もあるってことなのか?」


天使「はい。私は最初から天使だったわけじゃなく、元々人間だったんですよ」


男「つまり…死んであの世に行ってから天使になったってことか?」


天使「その通りです。さらになんと!人間から天使になった人は過去を含めても私だけなんです!」ドヤッ


男「ふ~ん…(こいつって実はかなり凄い奴なのか?)」


天使「それよりごはんまだですか~?」グゥ~~~~


男(前言撤回、やっぱだらしない奴だ)


男「今作ってやっから、ちょっと待ってろ」


トントントン ジューー 


男「おーい、できた……ぞ」


天使「オー!面白いですねこの漫画!」


男「めっちゃくつろいでんな…」


男「ほら、とっとと食え」ゴトッ


天使「わあ~!美味しそうですね!」パアァ


男「美味しそうじゃなくて美味しいんだ。食ってみろ」


天使「いっただっきま~す!」パクッ


天使「ん~~♪本当に美味しいです!まさか、あなたは料理人さんなんですか!?」


男「ちげーよ。こんな体質持ってっから、めんどくせぇけど幽霊を成仏させることもあってな。その内の一人に凄腕のコックがいて『俺が満足する料理を作ったら成仏してやる』とか言い出して、ソイツから色々と料理を教わったんだ。ま、結局満足する料理は作れなかったが俺の熱意を買ってくれて成仏してくれたんだけどな」


天使「へぇ~…偉いですね。あなたのような人間のおかげで天使は楽できます。ありがとうございます」ペコ


男「お前らの為にやってんじゃねぇ!」


天使「じゃあ、あなたは何の為に幽霊を成仏させているんですか?」


男「……お前に教える義理はねぇよ」


天使「えー気になりますよ~」


男「いいから食え。冷めたら不味くなんだろ」


天使「それはいけませんね!あっ、ちなみにあなたが言う成仏は御札とか使いましたか?」ガツガツ


男「いや、そんなもん使ったこと無いが…」


天使「ならその幽霊さん達は成仏してないですよ」モグモグ


男「はあ!?マジで!?」


天使「はい。ちゃんとした御札を使えば人間でも成仏させることが出来ますが、それ以外だと不可能ですから」


男「じゃ、じゃあ…あいつらはどうなったんだ…?みんなちゃんと居なくなってたぞ…?」


天使「おそらくあなたが説得した後に別の天使が天界に連れてったんだと思います」


男「い…今までの俺の努力は…無駄だったってことかよ」ガクッ


天使「…無駄なんかじゃありませんよ。地縛霊のほとんどが未練と言う名の鎖が解けたら自分で天界近くの上空を彷徨うので、天使が見つけやすくなります。つまりほとんどあなたが成仏させたことになります。それに天使が地縛霊を天界に連れて行く時は基本的に無理矢理なので痛みを伴いますし、人間が御札で除霊なんて拷問と一緒なんですよ」


男「じゃあ…一応俺のやってきたことに意味はあったのか」


天使「それだけじゃありません…幽霊さん達はあなたのような心優しい人と出会えてとっても嬉しかったんだと思います。きっとあなたに感謝してますよ」


男「…死んでるのにか?」


天使「はい。死んでるのにです」ニコ


男「………」


天使「ん?どうかしましたか?」


男「いや…何でもねぇ」


男(何か今、懐かしい感じがした…そう、まるであの子に励まされてるような感じが……)


男「……なぁ、向こうに行った奴らはどうしてんだ?元気にしてるのか?」


天使「天国行きの人達は天国で幸せに暮らしてます。地獄行きの人達は魂を浄化して、また別の魂として現世に転生します。ちなみにどちらの人達も天界についた瞬間に現世の記憶が無くなるんですよ」


男「へぇ~…でも、現世で人間が増加してるってことは地獄行きの人間の方が圧倒的に多いってことなのか?」


天使「いえ、違います。死ぬのは人間だけじゃないんです。虫や動物から人間に転生、その逆もまた然りです。新たに生まれる魂もありますし」


男「言われてみればそうだな。動物達の霊もたまに見るし」


天使「基本的に動物達は死ぬとすぐに自分達で天界に来ますし、動物が浮遊霊や地縛霊となるのは珍しいんですよ」


男「ふ~ん……なぁ、聞いておいてあれなんだが、そういうことって人間の俺にペラペラ喋っていいもんなのか?」


天使「駄目に決まってるじゃないですか。そんなことしたら私、天界追放されちゃいますよ」ハハハ


男「………」


天使「ハハハ………はっ!しまった!?」


男「お前は天才的なバカだな」


天使「い、今の話は忘れてください!」


男「いや、無理だろ」


天使「ききききき、きっと世に広がらなければ大丈夫なはずです!…多分…おそらく……そうあって欲しい…」ズーン


男「…ま、ちょうどよかったと思えよ。どうせ俺から離れられないんだしさ」


天使「うわぁ…お前は俺無しでは生きられないってヤツですか。ナルシストなんですね」


男(フォローしてやったのに、こいつ…)イラッ


男「とりあえず俺は風呂入ってくる。テキトーにくつろいでろ…って言わなくてもくつろぐか」


天使「ま、待ってください!」


男「ん?幸い俺の家(部屋)は狭いんだから風呂ぐらいなら離れても大丈夫だろ?それとも…一緒に入りたいのか?」


天使「ち、違いますよ!!」


男「じゃあ何だってんだよ?」


天使「考えてみれば私、あなたの名前を聞いてなかったんですよ」


男「そういやそうだったな…俺は男だ」


天使「じゃあ男さん、お風呂場で転んで頭を打って死んでくださいね」ニコ


男「遠慮する」


風呂場


男「ふぅ……これからどうすっかなぁ」


男(日常生活に支障が来たさなければどうにかなるんだが…どう考えても来たしそうだな)


男「……ま、なるようになるか」ザバァ


ガチャ


男「おい、出たぞ。お前も入るか?」


天使「zzZ」スヤスヤ


男「勝手に布団敷いて寝やがって…こいつには危機感が無いのか?それと歯磨いてから寝ろよな」


天使「もう食べられませんよ~…むにゃむにゃ」


男(……ま、気持ち良さそうに寝てるし、このまま寝かしてやるか。部屋は狭いが何とか横になって寝れるし)ゴロン


男(天界か……親父やおふくろ、じいちゃんは元気にしてんのかなぁ。それに…あの女の子も……)


男「……zzZ」

今日はここまで


ベタベタな話で逝く予定です


ではまた

期待

ベタベタな話は大好きです
期待

いいじゃん


期待


____________________


チュン チュン


天使「zzZ」


男「…おい、邪魔だ。起きろ」


天使「ぅ~ん…あと12時間…」ゴロン


男「ホントに天使ってだらけてんな」ゲシッ


天使「ふぉえ!?朝ごはんの時間ですか!?」ガバッ


男「お前は食うことしか頭にねぇのか?」


天使「……あれ?何で私はこんな所で寝てたんでしょうか?」


男「洗面所に行って、とっとと脳みそ洗ってこい」


バシャバシャ


天使「…そうでした。私、あの人の傍に居ないといけないんでしたね」フキフキ


天使(これからどうしましょう……ずっとこのままなんてありえないし、やっぱり男さんに死んでもらうしか…)


男「おい、朝飯出来たぞ」


天使「おおっ!朝からお味噌汁に魚に納豆!シンプルな和食でいいですね!……やっぱりありえなくもないですね」ジュルリ


男「何の話だ?」


天使「いえ、何でもないです。それより早く食べましょう!」ウキウキ


男「このままいくとお前太って飛べなくなるぞ」


天使「ふぅ…美味しかったです!ごちそうさまでした!」


男「ごちそうさま…さて、会社に行くか」


天使「えーこんな状況なのに仕事に行くんですか?」


男「当たり前だ。お前には悪いが俺の生活に合わせてもらうぞ」ゴソゴソ


天使「…ちなみに仕事って何をなさっているんですか?」


男「毎日パソコンと睨めっこしてる普通のリーマンだ」


天使「うわぁ、究極につまらなそう…そうだ!今日は休みましょう!」


男「断る」


天使「じゃ、じゃあその仕事を辞めましょう!」


男「もっと断る。てかタダ飯食ってるお前にそんなことを言う権利はねぇ」


天使「ぐっ…!」


男「まぁ、そこまで嫌なら留守番しててもいいが…」


天使「出来ないってわかってるクセに…そんなことしたら私死んじゃいますよ!」


男「なら黙って会社に行くぞ」


天使「……わかりましたよ」シュン


____________________


男「………」スタスタ


天使「暴走した車が突っ込んできたりしませんかね?」フワフワ


男「来たとしても絶対に避けてやる。てかお前、翼無いのに飛べるのか?」


天使「はい。あれは天使の証みたいなモノで、飛ぶためについてるわけじゃありません。今は少しでも力の消費を抑えたいので輪っかと一緒に仕舞ってます」


男(翼って飛ぶためのもんだろ…色々とおかしいぞ、こいつら)


男「それと…本当に他の人からお前の姿は見えてないのか?」


天使「はい。そもそも普通の人は天使を見ることなんて出来ないので、私が見えるばかりか触ることも出来るあなたがおかしいんですよ」


男(俺がおかしいのは否定しないが……ま、あいつら(幽霊)の時と同じ対応をすれば何とかなるか。なるべく外では喋らないようにしねぇと…)


男(今日も混んでるな…)スタスタ


天使「ほら皆さん!男さんを包丁で刺すチャンスですよ!」


男(……うぜぇ)



マモナク、デンシャガマイリマス



天使「皆さん、男さんを押さないでくださいね。べ、別にフリじゃないですよ?………何で押さないんですか!?『押さない』は『押せ』ですよ!!」


男(何一人コントしてんだ?このバカ天使は…)


ガタンゴトン ガタンゴトン


天使「きゃあー!皆さん!この人痴漢ですよー!」


男(ちょっと疲れたって言ったから手を握ってやってるのに、こいつは…!)イラッ


____________________


男「………」カタカタカタ


天使「ワッ!!」


男「……パソコンから顔出すな。邪魔で見えねぇだろ」


天使「だってつまらないんですもん…」フワフワ


男(想像以上にうぜぇ…)イライラ


部長「男、今度の会議で使う資料だが…」


男「出来てます」サッ


部長「さすがだな。お前は仕事が早いから本当に助かるよ」


天使「男さ~ん、そろそろお腹が空きましたよ~。ごはん食べに行きましょうよ~」グゥ~


男「お前…昨日から食うことしかしてねぇぞ」


部長「ん?何か言ったか?」


男「(やべっ!)いえ、何でもありません!」


天使「あぁ…お腹がへりすぎて死にそうです…もう死んでますけど」グゥ~~~


男「…部長、ちょっと外回りに行ってきます」


____________________


スタスタ


男「…お前、天界でもそんなに大食いだったのか?」


天使「いえ、どちらかと言うと私は小食なんですが…こっちでは異常なくらいお腹が空くんです」グゥ~


男「…もしかしたら天使の力が弱まったせいで腹が減るようになってんのかもしれねぇな」


天使「きっとそれが原因ですよ!そう、これは私の意思とは無関係なんです!」グゥ~~~~~


男「ここまで説得力がないのも珍しいな」


天使「それよりさっきから携帯で電話してますけど…相手の方と話さなくていいんですか?」


男「相手はお前だ。こうしてればお前と話してても不自然に見られないだろ?お前の声は俺にしか聞こえないんだし」


天使「なるほど、さすが男さんですね!」


男「…一つ質問していいか?お前、そもそも物に触れられないのにどうやって飯食ってたんだ?」


天使「ちょっと待っててくださいね。ほいっ!」シャキーン!


男「……いきなり飛ぶのやめて変なポーズすんな」


天使「元々見えるあなたには何も変化してないように見えますが、これで私は現世の物に触れるようになったんですよ」


男「へぇ~」


天使「天使の力も使わないのでとても楽なんですが…一つ欠点がありまして…」


男「欠点?」




「い、いきなり女性が現れた!?」

「何あれ?何かのコスプレ?」




天使「普通の人間にも見えるようになるんです」


男「そういうことは先に言え!!」


____________________


男「はぁ…近くに服屋があって本当に助かった…」


天使「どうですか?似合ってますか?」クルクル


男「……まあまあだな(これぞ馬子にも衣装ってヤツだな)」


天使「さあ!気を取り直してごはんタイムです!」


スタスタ


男「お前、昨日はあんなポーズしてなかったのに飯食ってたってことは、ポーズは必要ないんだろ?」


天使「よくわかりましたね。このポーズには特に意味はありません!」シャキーン!


男「振った俺が悪かった。こっちまで変人に見られるからもうやめてくれ」


男「もう一つ疑問に思ったんだが…お前は天使なのに現世のモノに触れる、つまり人間のようになった方が天使の力を使わないって矛盾してねぇか?」


天使「それは昨日も言いましたが私が特殊なんです。まず、天使と幽霊って同じだと思いますか?」


男「…思わないな」


天使「その通りです。天使は天界で生まれ、幽霊は現世で死んだ魂。人間からしたら両方とも実体の無いモノに見えますが、天使には体があり、幽霊には体が無いんです。では何故体の無い私は天使になれたのでしょうか?」


男「…体を作ってもらった、もしくは体に近いモノをキグルミみたいに着ているとかか?」


天使「…正解です。要するに空っぽの体に憑依してる状態です(男さんの間違える姿を見たくて質問形式にしてるのに…悔しい!)」


男「でも、それが天使の力を使わない理由になるのか?だって天界で作られた体なら天界のモノなんだし、天使の体とそう違わないんじゃないのか?」


天使「いえ、この体は天界のモノで作られてません、現世のモノで作られてます。つまり、人間の体とほぼ同等なんです」


男「…何でそんなことしてんだ?」


天使「簡単なことです。現世の魂は現世のモノじゃないと受け付けないんです。だから私は特別に人間の体を与えられ、天使の力を死に物狂いで覚えたんです。そして、天使の力で天使の体を再現していたんです。ちなみにあと数十年経てば天使の力が体に馴染み、完全に天使の体になるんです」


男「ややこしいな…つまり、お前が天使の状態で居るってことは、平常時も金髪の戦士で居るってことか?」


天使「あっ、昨日読んだ漫画ですね!そうです…私は激しい空腹によって目覚めた伝説の天使なんです!」


男(てことはお気楽そうにフワフワ浮いてても、かなりの力を消費してるってことか…出来るならこの状態で居させてやりたいが………はぁ、しょうがねぇか)


天使「聞いてます?ボケたのにスルーされると一番傷つくんですよ?」


天使「……あっ!ここのお店でお昼を食べましょうよ!」


男「…普通のリーマンが昼から回らない寿司屋で飯食うと思うか?却下だ。ほら、ラーメンか牛丼でも食いに行くぞ」スタスタ


天使「えーここにしましょうよ~」ジタバタ


男「駄々こねても無駄だ。絶対にそこには入らねぇぞ」スタスタ


男(……ん?静かになった…あきらめたのか?)クルッ


天使「」ゼェ ゼェ


男「……お前って底抜けのバカなんだな」ハァ…


天使「……はっ!大トロ!?」ガバッ


男「もうツッコマねぇぞ」


天使「…あれ?ここは…お寿司屋さんじゃないんですか?」キョロキョロ


男「気絶してる奴を背負って店に入れるか、バカ。とりあえずこの公園の近くの屋台でホットドックを買ったからこれでも食え」


天使「…一個ですか?」


男「当たり前だ」


天使「そうですか…わかりました、我慢します…」ズーン


男「(……はぁ、俺ってホント損な性格してんな)おい、俺の分も食っていいからそれで我慢しろ」


天使「ありがとうございます!男さんは天使のようなお人ですね!」


男「まったく嬉しくねぇ。むしろ悪口に聞こえる」


天使「あ~食べるって本当に幸せですね!」モグモグ


男「天界の飯って不味いのか?」カキカキカキ


天使「美味しいですよ。でも、圧倒的に現世のごはんの方が美味しいです!食材の活きが違います!」


男「ふ~ん…」カキカキカキ


天使「…さっきから男さんは何を書いてるんですか?」


男「これか?…退職願だ」


天使「えっ?会社辞めちゃうんですか!?」


男「まあな」


天使「どうしてですか!?朝言ったのは冗談ですよ?」


男「そんなのわかってるって…」


天使「ま、まさか…会社を辞めて自殺するつもりですか!?」


男「……そうだ。そうすればお前は晴れて自由だろ?」


天使「だ、駄目ですよ!自殺なんて絶対に駄目です!!」


男「死んでくれってお願いしてた奴の言葉とは思えないな」


天使「た、確かに最初は本気で死んでほしかったですけど…やっぱりそんな簡単に命を捨てちゃいけません!あなたは生きてないといけないんです!」


男「そうするとお前はずっと俺の傍にいることになるぞ。それでもいいのか?」


天使「…はい。あなたがヨボヨボなお爺さんになって寿命で亡くなるまで、私はずっと傍に居ますよ。それが天使である私の仕事ですから」ニコ


男「……死神のバイトのクセに」


天使「だから自殺しないで生きてください!」


男「いや、そもそも俺は自殺する気なんてねぇぞ」


天使「……えっ!?で、でも…さっき自殺するつもりだって…」


男「嘘に決まってんだろ。俺がお前の為に自殺なんてするはずないだろ?」


天使「さ…最低です!見損ないました!!本気で心配したのに…」


男「ああ、最低のことをしたな。すまん、悪かった」


天使「…何であんな嘘をついたんですか?」


男「……どうしてもお前の気持ちを聞いておきたかったんだ」


天使「私の気持ち?」


男「ああ。さっきのお前のプロポーズを聞いて俺の決意も固まった」


天使「なっ!?ププププ、プロポーズじゃないですよ!///あ、あくまで天使の仕事としてあなたの傍に居るだけです!///」


男「そんなのわかってる。だから俺もお前の傍に居るって決めたんだ」


天使「ええっ!?そ、それって本当に私のことが…?///」


男「そんなはずねぇだろ。要するにとりあえず今の会社は辞めるってことだ」


天使「べ、別に辞める必要は無いんじゃないですか?」


男「…元々やりたい仕事じゃなかったんだ。お前がいいキッカケになった、ありがとな」


天使「どういたしまし…て?」


男「何で疑問系なんだよ」


天使「いえ、何でお礼を言われたのかわからなかったので…」


男「…ほら、退職願を出しに行くぞ」


天使「は、はい…」


天使(何か胸がチクチクする…)


___________________


天使「男さん、本当に会社にはもう行かないんですか?」


男「そうだな…退職願はちゃんと出したが、即日退社は基本的に出来ない。ま、有給を利用するから、後は最後の挨拶しに一回行くだけだ」


天使「それで今後は…」


prprpr


男「ん?何の音だ?」


天使「あっ、私の携帯がつながったみたいです!ちょっとお父さんと話してきますね」タタタタタッ


男「あまり玄関の方には行くなよー死ぬぞー」


男(…俺もあいつに電話しておくか)


天使「もしもし、お父さんですか?」


『娘よ、久しぶりじゃな』


天使「お父さん!実は今、現世で困ったことが起きてまして…」


『全部わかっておるわい。人間の傍から離れられなくなってしまったんじゃろ?』


天使「はい…それでお父さんの力でどうにか出来ないかと…」


『無理』


天使「えー」


『天使のルールならまだしも死神のルールじゃからな…一応、魔王に話を聞いてみるが、それまで男の傍に居なさい』


天使「わかりました……」


『…どうしたんじゃ?いつもより元気がないぞ?』


天使「う~ん…自分でもよくわからないんですが、私が憑いてる人間が今日会社を辞めたんです。それが私のおかげって言われて……胸がチクチクするというか、まるで喉に魚の骨が刺さってるような感じがするんです…」


『それは……罪悪感じゃな』


天使「罪悪感?」


『そうじゃ。男はお前さんのおかげじゃなくて、お前さんの為に会社を辞めたんじゃ。少しでもお前さんの負担を減らす為、天使の力を使わせないでなるべく一緒に居る為に…』


天使「私の為…」


『そもそも何故こういう場合の対処方法が明確にされてないか…わかるか?』


天使「それは…滅多に起きないからじゃないんですか?天使を見ることが出来る人間はそうそういませんし…」


『それもあるが…明確にされてない本当の理由は、すぐに人間が天使を殺す為じゃ。その場から離れればすぐに天使は死ぬからのぅ』


天使「…そうですよね。私を殺すチャンスなんて山ほどあったのにあの人は…」


『殺すどころか助けたんじゃろ?良い人間に憑いたな』


天使「……はい」


『じゃあそろそろ切るが、男が仕事を辞めたことは気にするんじゃないぞ。あいつは優しい奴じゃから決してお前さんを咎めたりしないし、経済面も問題ないはずじゃ』


天使「えっ?もう男さんのことを調べたんですか?…そういえば男さんの名前も既に知ってましたし…」


『あっ……そ、そうじゃ!娘がオトコと同居するんだから調べるのは当然じゃろ!』


天使「ど、同居じゃありませんよ!衣食住を共にするだけです!」


『それを同居と言うんじゃよ』


天使「と・に・か・く!私と男さんは何も関係ありませんからね!」


『わかったわかった。じゃあしばらくはまたこっちと連絡出来なくなるが心配するんじゃないぞ。いつでもワシが見守っとるからな』


天使「はい…ありがとう、お父さん」


『それと孫は最低でも2人以上―プツン!


天使「ふぅ…まったくもう///」ガチャ


男「おう、終わったか」


天使「は、はい…」ソワソワ


男「…どうした?もう腹減ったのか?」


天使「お、お腹は減ってますけど違いますよ!」


天使(お父さんのせいでどうしても男さんを意識しちゃう///ただでさえ公園であんなことを言っちゃった後なのに…)


男「それでどうだったんだ?」


天使「それが…お父さんでも無理でした。それで一応お父さんが閻魔大王様と話をしてくれるそうですが…」


男「閻魔大王って…また凄い名前が出てきたな。閻魔大王って偉い奴なんだろ?」


天使「はい、地獄を統べるお方です。死神達の上司でもあります」


男「その閻魔大王と話が出来るお前の親父は…一体何者なんだ?」


天使「あれ?言ってませんでしたか?私の父は神様です」


男「…神様ってあの?」


天使「はい、あの神様です。あっ、緑色の宇宙人じゃありませんよ?」


男「そんなのわかってるわ。一旦その漫画から離れろ」


天使「まぁ父親と言っても血は繋がってませんけどね。天界に来た時に拾ってもらったんです」


男「じゃあ…人間の体を作ってもらったのも…」


天使「はい、お父さんに作ってもらいました。それに天使の力もお父さんに教わりましたし」


男(こいつが特別な理由がわかった。だが…その神様の目的がわからない。何で普通の幽霊を天使にしたんだ?ただの女好きなのか?それとも…)


天使「それより男さん、仕事を辞めてしまって今後の生活はどうするんですか?経済的にキツイのでは…」


男「金なら心配いらない。貯金もあるし、いざとなったら親父達が残してくれた遺産を使えばいいし」


天使(なるほど、お父さんはこれのことを言ってたのか…)


天使「その遺産ってどのくらいなんですか?」


男「あー…数えた時ねぇな。そもそも通帳開けた時もねぇし」


天使「えっ?使ってなかったんですか?」


男「ああ。今まで一銭も使ってない。高校も奨学金を利用したし、それも自分で働いて返した」


天使「逞しい人ですね…でも、どうしてそのお金を使わなかったんですか?」


男「使いたくなかったんだ…親父達が俺に残してくれた唯一のモノだから…」


天使「……じゃあ使わないようにしましょう!私も男さんと一緒に働いて稼ぎますから!」


男「お前…」


天使「私、意外と役に立ちますよ?ほら、今日だって……あれ?」


男「邪魔しかしてねぇな」


天使「あ、明日こそはきっと役に立ちますよ!期待しててください!」


男「……ああ、一応期待しといてやるよ」クスッ


天使「あっ…男さん今笑いましたね?男さんの笑った顔初めてみました。可愛い笑顔でしたよ~」ニヤニヤ


男「……お前、晩飯抜きな」


天使「そんな!?」ガーン


男「冗談だ、ちゃんと食わしてやるさ。だがその代わり条件がある」


天使「な…何ですか?」


男「頼むから風呂に入ってくれ。正直くせぇ」


天使「もう少しオブラートに言えないんですか!?デリカシー無さ過ぎですよ!」


お風呂


天使「まったくもう…あれじゃ彼女なんか出来ませんよ!………そもそも男さんって彼女いるんでしょうか?両親が亡くなってることもさっき知りましたし、考えてみれば年齢も聞いてない……私、男さんのこと何も知らない」


天使「もっと……男さんのことが知りたい」


天使(………って、これじゃ本当に男さんに恋をしてるみたいじゃないですか!?///…やっぱりこの胸のチクチクは罪悪感なんかじゃなくて恋なんじゃ…)


ガタッ


天使「の、覗きですか!?」



チゲーヨ



天使(い、今の聞かれてないですよね…?)


男(タオルとパジャマを置きに来ただけなんだが…悪いことしちまったな)


天使「で、出ました」ホクホク


男「おう、パジャマはそのジャージで我慢してくれ。明日、他の生活用品と一緒に買うから」


天使「い、いいですよ!天使の服を着ますから!」


男「あれは目立つから駄目だ」


天使「で、でもお金が…」


男「無趣味で彼女も居ない高卒の25の会社員が、まあまあ給料もいいのにこんなボロアパートに住んでんだぞ。貯金があるに決まってんだろ。親父達の遺産を使わなくても当分は大丈夫だ」


天使「そ、そうですか…」


天使(ふむふむ、男さんは25歳で彼女は居ないと…ん?)スン


天使「わあー!今日はステーキですか!」パアァ


男「特売の安い肉だけど退職祝いに少しだけ豪華にしたんだ。俺は風呂に入ってから食うが…俺の分、ちゃんと残しておけよ」


天使「…ぜ、善処します」ジュルリ


男(おそらく食うだろうな…ま、本当の俺の肉は冷蔵庫にとっといてあるからいいけど…)ガチャ


天使(いくら貯金があるとはいえ、いつまでも甘えるわけにはいきません!私も頑張って働かないと…と、言ったものの男さんから離れられない身である私が出来る仕事って…あるんでしょうか?)モグモグ


天使「………」パク モグモグ


天使「あっ、男さんの分のお肉を一切れ食べちゃいました……こ、これは全部食べて証拠を隠滅した方がいいですよね?絶対そうした方がいいはずです!では、いただきます!」ガツガツ




男(予想通り過ぎる…さて、さっさと風呂入ってビール飲むか)


天使「ぷはぁ!」


男「…何でお前も飲んでんだよ」ゴクゴク


天使「だってビール飲めばおつまみ食べていいって言いましたよね?」ゴクゴク


男「正確にはつまみは酒飲みの為の食べ物って言ったんだけどな。てか食った後にビール飲んだらデブコースまっしぐらだぞ?」


天使「私、アルコール弱いんですよ!」ドヤッ


男「人の話を聞いてねぇし、ドヤ顔することじゃねぇ」


天使「そういえば男さんのご両親っていつ亡くなられたんですか?」


男「脈絡も無くブッ込んできたな……ま、これから一緒に生活すんだから話しておくか。親父とおふくろが死んだのは…25年前だ」


天使「えっ?だって男さんは25歳じゃ…」


男「………」


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25年前、俺が生まれてから一週間後。その日、俺とおふくろは退院し、我が家に帰宅した。

家の中でどんな会話が交わされてたかはわからない…だが、その日は家族三人で過ごした最初で最後の日だった。



ボォォォ…



その日の夜、放火魔が俺の家に火をつけたんだ。



ボオオオオオオ!



火はすぐに燃え渡り、俺らを閉じ込めた。


男(0歳)『おぎゃー!おぎゃー!』


母『…安心しなさい、男』ギュッ


父『そうだぞ…お前だけは私達が絶対に守ってやるからな』ギュッ



家は全焼、父と母は…俺を抱きしめながら死んでいたそうだ。

そして俺は…



男『おぎゃー!おぎゃー!』



二人の腕の中で奇跡的に生き延びた。

俺に残されたモノは一つだけ。親父達が俺の為に生まれる前から貯めていた通帳のみ。それがさっき言ってた遺産だ。


その後俺は唯一の身寄りであるじいちゃんに引き取られた。



男(7歳)『じいちゃん、いってきます!』


じいちゃん『気をつけるんじゃぞ~』



俺はじいちゃんが大好きだった。じいちゃんも俺をいっぱい愛してくれた。

親の居ない俺にとって、じいちゃんと過ごした7年間は人生で一番幸せな時間だった。



男『じいちゃん、ただいまー!……じい…ちゃん?何でこんな所で寝てるの…?』



そう…じいちゃんも俺が7歳の時に前触れも無く突然…死んだ。


男『嘘だ…嘘だ!じいちゃんは死んでない!だってじいちゃんの霊が見えないもん!』



俺は小さい頃から幽霊がハッキリと見えていたから、じいちゃんの死を受け入れることが出来なかった。



男『ねぇじいちゃん…本当に死んじゃったの?なら何で何も言わないで成仏しちゃったの?……僕、これからどうすればいいの?』



じいちゃんが死んでも不思議と涙が流れなかった。

その理由は簡単だ。



男『…待ってて、じいちゃん。僕もすぐにそっちに行くね』



幽霊が見える俺にとって『死』とは最後では無いとわかっていたからだ。


少女『駄目だよ!』


男『えっ?』



そんな俺に話しかけてきたのは一人の女の子だった。

だが彼女は普通の女の子ではなかった。



男『君は…この公園の地縛霊だよね?いつもブランコに乗ってた…』


少女『うん!私も君がそこの道を通るたびにチラって私を見てたの気がついてたよ。いつも話しかけたかったんだけど君はこの公園で遊ばないし…』


男『ごめんね。僕、いつも家でじいちゃんと遊んでたんだ』


少女『さっき聞いてたけど…そのおじいちゃんはもう…』


男『うん…昨日、死んじゃったみたい』


少女『みたい?』


男『死んだら幽霊になるでしょ?ならじいちゃんは僕に会ってから成仏するはず…そうじゃないと僕は……じいちゃんに嫌われてたってことになっちゃう…』


少女『…私は逆だと思うな。成仏したってことはこの世に未練がないってことでしょ?きっとおじいちゃんは君なら一人で大丈夫だと思ったから何も言わないで成仏したんだよ』


男『……それでも、一言ぐらい声を掛けてくれたっていいじゃん』


少女『それは……私もそう思う。なら、私が成仏してそのおじいちゃんを君のかわりに叱ってきてあげるよ!だから…君は死んじゃ駄目。死ぬって君が思ってる以上に辛いことなんだよ…』


男『…うん、わかった。じゃあ、僕のかわりにじいちゃんをいっぱい叱ってあげてね!』


少女『うん、任せて!じゃあ行ってくる!……あっ、私成仏出来ないからここに居るんだった』


男『アハハハ!君って面白いね!』ポロポロ



自然と涙がこぼれた。笑いながら涙を流した。

俺はこの時初めてじいちゃんの死を受け入れた。


男『……ありがとね。慰めてくれて』ゴシゴシ


少女『ううん、私もありがと。こんなに誰かと喋ったの久しぶりなんだ。あー楽しかった』


男『…ねぇ、明日もここで会えないかな?』


少女『えっ!?…いいの?』


男『僕がお願いしてるんだよ』


少女『も、もちろんいいよ!じゃあここで待ってるね!また明日~!』フリフリ


男『うん、また明日~!』フリフリ



その後俺は毎日のようにその女の子に会いに行った。


男『君ってどうして成仏しないの?』


少女『それが…私にもわからないんだ。もうずっとここに居るから生きてた頃の記憶もほとんど無いし…』


男『君って僕よりずっと年上!?』


少女『そうよ!』エッヘン!


男『言動から年下だと思ってた…』


少女『ひどいっ!?せめて同い年でしょ!』ガーン



彼女は幽霊なのにいつも明るく元気で、表情がコロコロ変わるとても優しい子だった。



少女『私ね、男くんと出会うまでずっと一人ぼっちだったんだ。誰とも話せないし、この公園から出ることも出来ない…本当にさみしかった…』


男『僕は君に気づいてたのに話かけなかった…ごめんね。前に幽霊に話しかけたら「お前も呪い殺してやる」って言われた時があって怖かったんだ…』


少女『安心して、幽霊にそんな力無いよ。だから…これからは私みたいにさみしそうな幽霊が居たら話しかけてあげてね。成仏させられたら一番だけど…』


男『…君には成仏してほしくないな』ボソッ


少女『え?何?』


男『わ、わかった!なるべく声をかけてみるよ!』


少女『ありがと!じゃあまた明日ね!』


男『…ごめんね、数日は来れそうにないや』


少女『そうなんだ…』シュン



じいちゃんが死んで身寄りが居なくなった俺は施設に入れられた。

施設では掃除や年下の子の面倒をみるなどの当番が決まっていた為、公園に行けない日もあった。


男(早く明日にならないかな~早く少女ちゃんに会いたい……あぁ…やっぱり僕は彼女のことが…///)



俺は彼女に恋をしていた。



男『少女ちゃん!久しぶり!』


少女『う、うん…』


男『ん?どうしたの?』


少女『な…何でもないよ…』


男『…嘘はつかないでよ。何か悩みがあるんだったら僕に言って。力になるからさ』


少女『…ありがとう。実は……私が成仏出来ない理由というか、私の未練がわかったの…』


男『えっ!?』


少女『私、生きてる時に誰かを好きになった事が無かったんだ…それが私の未練…』


男『つ、つまり…誰かを好きになれば成仏しちゃうってこと?』


少女『うん…』


男『それって本当なの?何でそんなことがわかるの?』


少女『それは………』



俺は気づいてなかった。この時既に、彼女を縛り付けていた鎖が壊れていたことに…



男『…話せないならそれでいい。けど…君はもう誰も好きにならないで』


少女『えっ?』


男『お願い…これからずっと誰も好きにならないで。恋なんてしちゃ駄目だよ』


少女『お、男くん…?』


男『だって…だって……君に会えなくなるなんて…僕、絶対に嫌だよ!!』


少女『………わかった。約束するよ、男くん。私は恋なんてしない…誰も好きにならないよ』


男『…ありがとう』



俺は一生片想いのままでいいと思ってた。



男『少女ちゃん、また明日ね~!』フリフリ


少女『…さようなら、男くん』フリフリ



でも…その想いは叶わなかった。


少女『男くん……今までありがとね』ニコ



次の日、俺はいつものように彼女に会いに行った。

しかし…そこに彼女の姿はなかった。



男『誰も好きにならないって…約束したのに…』ポロポロ



俺の恋は両想いとわかった瞬間に終わりを告げた。


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男「それから俺は彼女との約束を守って、積極的に幽霊を成仏するようになった…」


男(……って、何でここまで詳しく話してんだ?初恋の話なんて今まで誰にも話したことねぇのに…こいつと居ると何か調子が狂うな)


男「あー今の話は忘れてく…れ?」


天使「zzZ」ガー ガー


男「……ったく、ホントだらしねぇ天使だな。さて、テーブル片付けて布団しいてやるか。あっ…こいつ、二日連続で歯磨いてねぇ。そもそも天使って虫歯になるのか?」

今日はここまで


伏線?何それおいしいの?状態でお送りしております
書き溜めがもうすぐ完結するので、明後日ぐらいに全部投下し終わると思います


ではまた

支援


いいね

天使がアホかわえぇw

内容面白いし、一気投下なのも嬉しい


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チュン  チュン


天使「おっはよーございまーす!男さん、朝ですよー!早く起きて朝ごはんを作ってください!」ガバッ


男「……一度やりたかったのはわかったから、とっとと顔洗ってこい。お前が邪魔でテーブルが出せねぇだろ」


天使「はーい」


男(あいつ…昨日の話、どこまで聞いてたんだ?)ヨイショ


天使「男さん、今日の朝食は何ですか!?」ワクワク


男「食パンと目玉焼きだ」


天使「…からの?」


男「そうだな、牛乳もつけてやるか」


天使「ひどいっ!私を餓死させるつもりですか!?」


男「ちゃんと食わしてんだろ。これが不満なら朝食抜きだ」


天使「いただきます!」パクッ


男「はえーな」


天使「まだ昨日のお肉の香りが残ってますから、それを嗅ぎながら食べれば…」モグモグ


男「お前は犬か?」


天使「ごちそうさまでした…」グゥ~


男「お前の腹は自粛という言葉を知らないらしいな」


天使「男さん、デザートとか無いんですか?」


男「……少し試してみるか」グイッ


天使「えっ?」


男「………」ダキッ


天使「………ええっ!?な、何をするんですか!?///」


男「そろそろいいか?」ギュゥゥゥゥ


天使「よ、よくわかりませんがもう十分です!///」


男「よし」パッ


天使「い…いきなり抱きしめないでくださいよ!ま、まだ私達恋人じゃないんですから…///」ボソボソ


男「小声で何言ってんだ?それよりまだ腹は減ってんのか?」


天使「へ?そういえば……まったく減ってませんね」


男「やっぱり天使の力不足も影響してたか…これからは定期的に天使の力を補給しろよ」


天使「つ、つまり…頻繁に男さんに抱きつけと!?」


男「ま、そういうことになるな」


天使「い、嫌です!それならたくさん食べた方がいいですよ!」


男「そうなると俺の貯金だけじゃ厳しいから、親父達が残してくれた遺産を使うことになるな…」


天使「ぐっ……昨日の話を聞いたらそんなことさせられるわけないじゃないですか」


男「なら我慢して補給しろ。別に手を握るだけでも補給できんだから」


天使「わ…わかりましたよ…」


男「じゃあ着替えて行くぞ」


天使「行くって…どこにですか?」


男「新しい仕事に決まってんだろ」


天使「えっ?」


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天使「ここって…お寺ですよね?」


男「ああ」


天使「男さん、お坊さんにでもなるんですか?」


男「ちげーよ。それこそお前が餓死すんだろ」


天使「確かに…」


男「ここに居る知り合いに仕事を仲介してもらうんだ」


友「よっ、お久しブリーフ!あっ、お前はボクサーパンツ派だったか」


男「……別の奴に頼むか」


友「ごめんごめん!冗談だから帰らないで!」


友「いやー、お前が仕事を辞めたって聞いた時は驚いたよ。まぁ今はそれ以上に驚いてるけど……」チラ


天使「?」


友「まさか男がこんな可愛い彼女を作るとは…」


男「彼女じゃねぇ。助手だ助手」


天使(可愛いは否定しないんですね///)


友「こいつ、結構モテるのにずっと彼女作らないから、ソッチ系かと思って狙ってたんだが…」


男「おいクソ坊主、冗談でも言ってて気持ち悪くねぇか?妻子持ちのクセに…」


天使「あの…お二人はどういう関係なんですか?」


男「ただの同級生だ。中学と高校が一緒で特別仲がいいってわけでも無い」


友「ひどくね!?俺達マブダチだろ!霊が見える少年と坊さんの息子が仲良くなるのは必然だろ?」


男「そんな必然はねぇ。それより仕事の話をするぞ。詳しくは昨日話した通りだ」


友「相変わらずマジメだねぇ…仲介料は2割じゃなくて1割でいい。むしろお前目当てで尋ねてくる人が大勢いるから、こっちは利益しかないんだ」


男「悪いな、助かるよ」


友「で、さっそくだが5件ほど頼めるか?」


男「今日は予定が入ってるから無理だ。明日から本格的に始める」


友「予定って…デートか?」ニヤニヤ


男「…一応そうことになるか」


天使「えっ!?///」


友(ほう…冗談でもそういうこと言う奴じゃないんだが…意外と本気なのかもな)


友「じゃあせっかくのデートの時間を潰すちゃうのも悪いし、住所が書いてある資料を取ってくるからお前が自分で連絡して行ってくれ。ここの宣伝も忘れんなよ」スタスタ


男「おう、わかってるよ」


天使「…男さん、結局何の仕事をやるんですか?」


男「除霊だ。昔からあいつによく依頼されててな。これを機に本格的に仕事としてやるつもりだ」


天使「なるほど、男さんにピッタリの仕事ですね」


男「元々お前らの仕事なんだけどな」


天使「うっ!」グサッ


____________________


天使「あ、あの~…これからどこに行くんですか?」


男「昨日言っただろ?お前の生活用品を買いに行くって」


天使(デートってそうことですか…)シュン


男「ほら、行くぞ」スタスタ


天使「あっ…ま、待ってください男さん!」ギュッ


男「……何でいきなり手を握ってんだ?」


天使「お、男さんが言ったんじゃないですか!頻繁に天使の力を補給しろって…」


男「…確かに言ったな」


天使「こうしてれば離れる心配も無くなりますし、天使の力も補給出来るので一石二鳥です!」


男「…珍しく正論だな。これで飯代が浮くなら我慢するか」


天使「我慢って…酷いですよ!」


男「ほら、行くぞ」


天使(もう…男さんは女心がわからない鈍感野郎です!)


男「大方必要なのは買ったか。じゃあ帰るぞ」


天使「せ…せっかくなので、もう少しだけ遊びましょうよ」


男「………帰ってもやることねぇし、今日ぐらいはいいか」


天使「やったぁー!」


男「で、どこか行きたいとこあるか?」


天使「じゃ、じゃあ…回らないお寿司屋さんで!」ジュルリ


男「遊ぶとこにしろ」


____________________


天使「わあー!お魚さん達がいっぱいで綺麗ですねー!」


男「…意外だな。お前なら絶対に水族館でのNGワードを言うと思ったんだが…」


天使「あっ、今もの凄く失礼なこと言いましたね!私だって常識が備わっているんですよ!」ドヤッ


男「欠けてるもんだと思ってたわ……で、どの魚(ネタ)が一番好きなんだ?」


天使「ここには居ませんけどやっぱりマグロが一番好きですね!ちなみにこの水槽には寿司ネタになるような魚は居ないんですよ」


男「なるほど、だからNGワードを言わなかったのか。納得」


「そろそろイルカショーが始まるよ!早く行こうよ!」


天使「男さん、今の聞きましたか?私達も行きましょう!」ワクワク♪


男(ホント元気な奴だな…)


ザッバァーン!


天使「おおー!見ましたか!?今のイルカのジャンプを!」キラキラ


男「あー見てる見てる」


天使「いつもそうやってクールぶって…こんな時ぐらい楽しまないと損ですよ?」


男「…表情に出てないだけで、お前が思ってるよりは楽しんでるから安心しろ」


天使「そうなんですか?」


「それでは誰かにステージに出てお手伝いしてもらいましょう!お手伝いしたい方、手をあげてくださーい!」


天使「はーい!はいはいはーーーーい!」ピョン ピョン


男「オイ、待て。もし選ばれたらどうなるのかわかって…」


「じゃあそこの元気な女性の方、前に出てきてくださーい!」


男「」


天使「やったぁー!」


男「お前、何も考えてないだろ…」


天使「へ?」


「あの…彼女さんお一人だけなんですけど…」


天使(すっかり忘れてました…ステージに上がると男さんと離れすぎて完全に私、死んじゃいます…)


男「……お、俺達はラブラブカップルでいつも手を繋いでないと死んじゃうんですよ~!な?」ギュッ


天使「そ、そうです!リアルに死んじゃうんですよ!だからこのままやらせてください!」ギュッ


「わ、わかりましたよ……では!このラブラブなお二人に手伝ってもらいまーす!初めての共同作業を暖かく見守ってあげましょう!(リア充爆ぜろ!もしくはイルカに食われろ!)」


男(公開処刑を受けてる気分だ…)


天使「き、来ますよ……」ドキドキ


「どうぞ!」


天使「えーい!」バッ
男「ほーい」バッ


バッシャーーン!


天使「おおーー!!私達の合図で一斉にジャンプしましたよ!」キラキラ


男(……ま、喜んでるみたいだしこれぐらい我慢してやるか)


____________________


天使「今日は本当に楽しかったですね!」


男「ああ、そうだな」


天使「あれ?男さんなら『疲れただけだ』とか言って場を白けさせると思ったんですが…意外ですね」


男「うっせぇ。俺だって人並みに幸福を感じたりするに決まってんだろ」


天使(えっ!?つ、つまり…今日は私と居て幸福を感じてたってことですか?///)


男「でもお前はもう少し考えて行動しろ。水族館のことはもちろん、勝手に一人でエスカレーターに乗ったりしやがって…俺が階段をダッシュで上らなかったらお前死んでたぞ」


天使「すいませんでした…」シュン


男「…お前は目を離すとすぐに死にそうになるから、これから外に出る時はなるべく今日みたいに手を繋いでおくぞ」


天使「はい…(情けない…これじゃまるで子供じゃないですか)」シュン


男「…反省はこれぐらいにして、最後に待望の回らない寿司でも食うか」


天使「回らないと言ってもスーパーのお寿司ですけどね」


男「嫌なら食うな」


天使「誰も嫌とは言ってません、ありがたくいただきます!」


男(飯の時は本当に元気になるな…)


天使「ふぅ、ごちそうさまでした!」


男「これでも十分うまかっただろ?」


天使「はい、とっても!」


男「これぐらいなら毎日とは言えねぇが、週に何回か買ってやってもいい」


天使「本当ですか!?」パアァ


男「だがそのかわり、回らない寿司屋には今後絶対に行かねぇぞ。それが嫌なら一回だけ回らない寿司屋に連れてってやるが、その後の人生で寿司は食べられないと思え」


天使「ぐっ…量か質かの究極の二択ですね…」


男「そうでもねぇぞ。お前がどっちを選ぶか俺にはわかってるし」


天使「……量の方でお願いします」


男「おう、予想通りだな。ま、一生はさすがにかわいそうだから、10年に一度ぐらいなら連れてってやるよ」


天使「それってまさか…10年後も一緒に居ようっていうプロポーズですか!?///」


男「物理的にそうなってんだろうが。それとも俺に35になるまでに死ねと言うのか?」


天使「……私を見捨てて自由になるって選択肢は無いんですね」


男「…そんなことするかよ。とにかくこれから長い付き合いになるんだ。今日からいくつかルールを決めるぞ」


天使「ルールですか?」


男「おう、さっき食いながら思いついたんだ。まずお前は今後なるべくその状態で居ろ。食費の為にも天使の力を使うな」


天使「了解です!」


男「二つ目、寝る前に必ず歯を磨け。お前の歯ブラシはちゃんと買ってやったから間違えるなよ」


天使「りょ、了解です!」


男「三つ目、お前の寝る場所は押入れだ」


天使「了か……えっ!?い、嫌です!」


男「冗談だ、さすがにそれはしねぇよ。狭いとはいえ幸い二人で横になって寝れるし。ほんっとギリギリだけどな」


天使「そういえばこの二日間、男さんより先に寝て後に起きてたので気にしてませんでしたが…男さんってどこで寝てたんですか?」


男「お前の横で布団無しで雑魚寝だ」


天使「こ、この狭い空間で二人で寝てたんですか!?///」


男「しょうがねぇだろ。俺の布団を占領しといて何ほざいてんだ」


天使「す、すいません!」


男「そんなに俺と寝たくねぇんなら、お前は今日買ったこの寝袋で寝ろ。それなら廊下でも寝られるだろ?」


天使「廊下は嫌ですよ!硬いし冷たいし…私はお布団で寝たいです!」


男「我侭な居候だな…ま、最初からそうするつもりだ。俺が寝袋使って廊下で寝る」


天使「それも駄目です!男さんにはこれ以上迷惑はかけられません!」


男「じゃあどうしろってんだよ」


天使「い…一緒に布団で寝ましょう!」


男「…は?」


天使(ど、どうしてこうなったんでしょうか……)


男「それじゃ電気消すぞ」


天使「は、はい!」


男「…本当に一枚の布団で一緒に寝るのか?」


天使「て、天使に二言はありません!」


男「(変なとこで意地張りやがって)…じゃあ入るぞ」


天使「ど、どうぞ…」ドキドキ


モゾモゾ


天使(お、男さんが直ぐ後ろに…///)


男「………」


天使「………」


天使(緊張して全然寝れませんよ!)


天使「………お、男さん寝ましたか?」


男「いや…まだ起きてる」


天使「へ…変なことしないでくださいよ?」


男「ああ、安心しろ。絶対にお前を襲ったりしねぇよ」


天使「…それはそれで傷つきますね」


男「じゃあ襲ってやろうか?」


天使「け、結構ですよ!///」


男「どっちなんだよ…めんどくせぇ奴だな」


天使「ど、どうして男さんはそんなに落ち着いていられるんですか?」


男「…お前にまったく興味無いからだ」


天使「ひどいっ!?」ガーン


天使(やっぱり男さんは私のことを女として見てくれてないんだ…)シクシク


男(正直言うとめっちゃムラムラしてっけどな…こいつが寝たら寝袋持って廊下で寝るか)


男「(……静かになったな)おい、寝たか?」


天使(残念ながらまったく寝られませんよ…)


男(よし、廊下に行くか)ゴソゴソ


天使(えっ?男さんが布団から出ていく…まさか廊下で寝るつもりですか!?と、止めないと…)


男「…そういやもう一つ、お前に伝えてなかったルールがあったな」


天使(毎日お風呂に入れとか、高いお肉は一人一枚とかでしょうか?)


男「俺はお前を死なせない…それだけは絶対に守るから安心しろよ」


天使「………」


男(……起きてる時にこんなくせぇこと言えねぇな)スタスタ


天使「…ありがとうございます、男さん」


男「(起きてたのかよ…マジで最悪)…今のは忘れろ」


天使「嫌です。絶対に忘れません」


男「…勝手にしろ」スタスタ


天使(ふふふ、廊下に逃げましたね)クスッ


天使「……私も男さんの傍を絶対に離れませんよ」


男(……勝手にしろ)

今日はここまで


書き溜めは全部終わったんですが、眠いので明日にします
明日早く帰って来れたら完結させる予定です


ではまた

乙!
天使ちゃんマジ天使


え、もう終わってしまうん?
天使かわいいよ天使

無駄に長くなるよりはマシだけど…最近面白いスレが少ないだけにちょっと残念

>>1って前に死神ss書いた時ある?

>>122
死神モノは書いた時ありません


____________________


一ヵ月後


ピンポーン♪


大家「はーい、どちら様ですか?」ガチャ


男「先日お電話いただいた除霊師の男です」


天使「その助手の天使です!」シャッキーン!


大家「えっと…」


男「気にしないでください。それよりさっそくですが部屋を見せてください」


大家「は、はい」


ガチャ


大家「こちらがその部屋です。この部屋で自殺した人なんて過去に居ないんですが、入居者の話だとまっ白な服を来た若い女性の霊が出るらしいんです…」


男「………誰も居ない」


大家「夜にならないと出ないらしいです」


男「(そこまで待ってるのもめんどくせぇな…)おい、どこに居るかわかるか?」


天使「もちろんです!」ゴソゴソ


天使「パンパカパ~ン!幽霊探知機~!」つ棒


大家「…ただの棒ですよね?」


男「はい、一応棒が無くてもわかるはずなんですが…あれ(ダウンジング)にハマってまして…」


天使「こっちから感じますね……ムムッ!」ピコーン!


男「慈英さん、居たか?」


天使「はい!ここの押入れの中に…」


男「…居るのか」


天使「そこは『居るんです!』って言わないと駄目じゃないですか!」


男「じゃあ、開けるぞ」


天使「スルーですか!?」


女「zzZ」スヤスヤ


男「…寝てるな」


天使「…寝てますね」


大家「そうなんですか?」


男「おい、悪いがちょっと起きてくれ」ユサユサ


女「ぅ~ん…まだ明るいから嫌」ゴロン


男「…まるでどっかの誰かさんみたいだな」


天使「だ、誰のことでしょう?まったく心当たりがありませんね」


男「こういうタイプにはこれが一番だな」ゲシッ


女「うぎゃ!?」


天使「いつも私をそうやって起こしてるんですか!?」


男「ああ」


天使「ひどいっ!?もっと優しく出来ないんですか!?」


男「ならこれから毎日、優しく目覚めのキスで起こしてやるよ」


天使「そ、それは遠慮します!///」


男「……自分で言っておいてあれだが、想像しただけで気分が悪くなってきた」


天使「さっきから酷すぎますよ!!」


大家(イチャイチャしてるよ、この人達…)


女「…勝手に私の部屋に入ってイチャイチャしないでよ」


男「イチャイチャしてねぇよ」


大家(幽霊にも言われたんだ…)


男「いいから押入れから出ろ。ちょっと話がある」


女「…嫌よ」


男「お前に拒否権はねぇよ」グイッ


女「なっ!?どうして私に触れるの!?」


男「そういう体質なんだ」ポイッ


女「ふ~ん…今回は本物なのね」フワフワ


男「…俺の前に他の方にも依頼したんですか?」


大家「えっ?は、はい。テレビにも出てる有名な除霊師さんで、ちゃんと除霊出来たと言っていたんですが…」


男「インチキだったと…最近多いので気をつけてください。あっ、一応これ渡しておきます」

大家「これは…広告ですか?」


男「はい。そこのお寺の坊さんが宣伝しろとうるさいので…幽霊関係で困ったらぜひそこのお坊さんにご相談を。それ以外でも気軽に遊びに行ってください」


天使「お寺で何して遊ぶんですか?」


男「坊さんの頭に落書き」


女「やることが幼稚だわ。それより私を無視して営業しないでよ」


男「おお、すまん。忘れてた」


女「それであなた達は…私を成仏させに来たの?」


男「その通りだ。で、さっそくだがお前の未練とやら教えてくれ」


女「へ?この前来た人みたいにお札とか使って成仏させるんじゃないの?まったく効かなかったけど」


男「こいつ(天使)が居るから無理矢理成仏させることも出来るが、お前だって出来るなら未練なく成仏したいだろ?」


女「ええ、まぁ…」


男「もちろん駄々を捏ねるなら強行手段をとる。でも基本的に俺達は無理矢理成仏させない。だからお前の未練を聞かせろ。俺達がそれを解消して未練なくお前を成仏させてやるよ」


天使「男さんを遠慮なくパシリとして使っていいんですよ」


男「お前は少し黙ってろ」


女「…あなた達、変わってるわね」クスッ


男「変わってるのはこいつだけだろ?」


天使「幽霊に触れる男さんもかなりの変わり者ですよ」


大家(………幽霊が見えないからまったく話についていけない)


女「でも…あなた達には悪いんだけど、私自身にも未練が何なのかわからないのよ。わかってたらこんな部屋にずっと居ないわ」


男「そこは大丈夫だ。そういう地縛霊って結構多いから慣れてる」


天使「その場合、まずはあなたが亡くなった経緯とかを聞いて未練を見つけます」


女「私が亡くなった経緯…それ、話さないと駄目?」


男「ああ。辛い死に方をした場合、それが未練って可能性もあるからな」


女「わ、わかった…話すわよ。今からおよそ60年前、私はここに建っていた家に住んでいた。ちょうどここが私の部屋よ」


男「…大家さん、このアパートを建てる前にあった家の資料ってありますか?出来ればそこに住んでいた人達の資料もあると助かるんですが…」


大家「は、はい!わかりました、とってきます!」タタタタタタッ


男「…話を続けてくれ」


女「当時私には結婚を前提に付き合ってた彼氏が居て、両親が出かけてる隙に彼を家に連れ込んだの。そしてその日…彼が私に告白してくれた」


男「………」


女「嬉しかった…人生で一番嬉しい瞬間だったわ。そしてその夜…私は彼と愛し合う前に体を綺麗にする為お風呂に入った。嬉しすぎて舞い上がっていた私は…私は…!」


男「…転んで頭を打って死んだ、と」


女「そうよ!足元にあった石鹸を踏んじゃったのよ!!死んだ瞬間に『ギャグ漫画か!!』ってツッコんであげたわ!!」


男「お前、ツッコミのセンスあるぞ」


女「ありがとね!まったく嬉しくないわ!」


天使「前に男さんに冗談で言いましたが、本当にそんな死に方した人が居たんですね…笑える死に方だったのが未練なんでしょうか?」


男「う~ん…違うな。確かにもっと綺麗な死に方をしたかっただろうけど、地縛霊になるほど強い未練なんだ。そんな馬鹿げたことじゃないだろ」


女「笑えるとか馬鹿げたとか言わないでよ!だから言いたくなかったのに…」シクシク


男「それにここは風呂場じゃなくてこいつの部屋があった場所だ。その線は薄い…お前、処女ってわけじゃないよな?」


女「な、何でそんなこと聞くのよ」


男「いいから答えろ」


女「…既に彼とヤッて貫通済みよ」


男「ってことは彼氏とヤれなかったことが未練って可能性も低い」


女「じゃあ私の未練って一体…」


男「…おそらく、その彼氏と結婚出来なかったことがお前の未練だな」


女「………うん、そうね。彼と幸せになりたいと今でも思ってるし…」


天使「それって解消するの無理じゃないですか?だって60年前なんですよね?」


男「見た目から20代前半ってとこだろうから…少なく見積もっても80歳ぐらいか」


天使「死んでるか、もしくはヨボヨボのおじいちゃんですね…」


女「そ、そんなぁ…」ガクッ


男「………」


大家「あの~資料を持ってきました」


男「…ここにあった家に住んでた人の資料ありましたか?」


大家「はい、これです」


男「………よし、その彼氏のとこに行くぞ」


天使「そうですね」


女「えっ?」


男「行きたくねぇのか?」


女「い、行きたいけど…どうやってここから出ればいいのよ」


男「それはこっちが何とかする。だが、少し痛みを伴うぞ。それでも…行くだろ?」


女「…ええ、もちろんよ!」


男「よし。じゃあ大家さん、これから彼女をこの部屋から解放するので、少しだけ外していただけますか?」


大家「は、はい!」


女「…何が始まるの?」


天使「フッフッフ…封印されし我が力を見せる時が来ましたね!」ニヤリ


男「お前は少し漫画を読みすぎだ。いいからとっととやれ」


天使「わかりましたよ…ほいっ」ポンッ


女「………な、なに?その大きなハサミは…」


天使「これであなたをここに繋ぎ止めてる鎖をチョン切るんです!」シャッキーン!


男「結構痛いらしいから我慢しろよ」


女(めっちゃ怖い…)ブルブル


天使「鎖を見える眼鏡をしてと……じゃあいきますね」チャキッ


女「あ…やっ…」


バチンッ!


ぎゃあぁぁああ~~~~~!!


____________________


天使「…大丈夫ですか?」


女「大丈夫じゃないわ…処女膜を破られたぐらいの痛みよ」


天使「…やっぱり最初って痛いんですか?」


女「ええ…ってあなた、あの人と同棲してるんでしょ?まだなの?」


天使「ま、まぁ…私と男さんはまだそんな関係じゃありませんので…」


女「そうなの?とってもお似合いに見えるけど…」


天使「あ、ありがとうございます///」


女「人って簡単に死んじゃうのよ…伝えられる時にちゃんと自分の気持ちを伝えた方がいいわ」


天使「わかってますよ……あっ、でも私は既に一回、死を経験してますよ」


女「えっ?あなたって幽霊なの?でも…体があるよね?」


天使「私は幽霊から天使なったんです」


女「ふ~ん……て、天使!?あなたが!?」


天使「はい。私も頑張ればあなたみたいにフワフワ浮けますよ。壁だってすり抜けられますし、ほら」スルッ


男「バカやろう、人目のある場所でそれ(天使の力)を使うなって言ってんだろ」ゴツッ


天使「す、すいません…」シュン


男「周りの人達から見たら、いきなりお前が消えたように見えるんだぞ、まったく…」


女「それで彼の居場所はわかったの?」


男「…ああ。お前の血縁者に聞いて調べたところ…彼が眠ってる場所がわかった。お前が死んで数年後、事故に巻き込まれたんだとさ」


女「そうだったんだ……知らなかった」


男「…もう鎖を切ったんだ。このまま成仏させることも出来るが…どうする?」


女「……彼に会いたい」


男「そうか…わかった。墓の場所は聞いたから今から行くぞ」


女「これ以上あなた達に迷惑をかけたくないから住所を教えて。一人で行ってくるわ」


男「気にすんな、これが俺達の仕事なんだ。それにちょうど俺もそこに用事があったし…」


天使「えっ?」


____________________


女「…ここで彼が眠ってるのね」


男「ああ…正確に言うと魂は天界に行ってるけどな」


女「それでも…こうやってまた、彼に会えた。今はそれだけで十分よ…」ポロポロ


男「……彼と二人きりで話したいこともあるだろうし、俺達は少し外す。終わったら呼んでくれ」


女「ええ…わかったわ。彼に会わせてくれて…本当にありがとね」


男「…どういたしまして」


天使「はい…はい、それじゃお願いしますね、お父さん………ま、まだデキてませんよ!///」ピッ


天使「まったくもう…毎回毎回『孫はデキたか?』って聞いてくるんだから…///」


男「終わったか?」


天使「は、はい!」


男「それでどうだ?いけそうか?」


天使「はい。本当はそんなことしちゃ駄目なんですけど、私がお願いしたら即答でOKでした」


男「もっとしっかりしろよ、神様……ま、今回はそのおかげで俺達の我侭が通ったんだけどな」


天使「それより男さんの用事って何なんですか?」


男「…ここは俺の育った町なんだ。毎月一回この町を訪れて、じいちゃんの家を掃除してんだ」


天使「そうだったんですか…」


男「そして……」スタスタ  ピタッ


男「…ここに俺の親父とおふくろとじいちゃんが眠ってる」ス…


男「三人とも、久しぶり…今は変な同居人が居るけど、俺は元気にやってる」


天使「初めまして、男さんのお父さん、お母さん、おじいさん。私がその変な同居人です」


男「そこは否定しないんだな」


天使「男さんに合わせてあげたんですよ」


男「…親父達はここに居ないってわかってるのに、墓を見るとつい話しかけちまうのは何でだろうな」


天使「それだけ男さんは三人のことを想ってるんですよ。その強い想いはきっと天界に届いて…はいないですが」


男「そこは嘘でも届いてるって言えよ」


天使「それでも彼らがここに居るって思えることが、家族として一緒に居られる時間が短かった男さんの、心の拠り所になっているんです」


男「…そうかもな」


天使「………これからは私がなっていいですか?男さんの心の拠り所に…」


男「お前…」


天使「いつも迷惑しかかけてませんけど…それでも私なりに大切な男さんの助けになりたいんです」


男「…意味わかって言ってるのか?」


天使「はい……好きです、男さん。これからもずっと傍に居させてください」


男「……物理的に離れられないのにそれを言うのか?」


天使「そうですけど…やっぱり自分の気持ちを伝えておきたかったので」


男「そうか…ありがとな」


天使「………それだけですか!?私今、告白したんですよ!?」


男「ああ、YESとしか言えない告白をな」


天使「そういうことじゃなくて、男さんが私をどう思っているかが聞きたいんです!」


男「だからYESとしか言えないだろ?」


天使「だからそうじゃないですよ!男さんは私のことが好きなんですか!?」


男「YES、YES」


天使「軽っ!!せっかくのいい雰囲気が台無しですよ!」


男「墓地で告白しといて雰囲気も糞もねぇだろ」


天使「ぐっ…」


女「…あなた達って本当に変わってるわね」クスクス


男「そっちは終わったのか?」


女「ええ、お邪魔だったかしら?」


男「そうでもねぇよ。じゃあ成仏の準備をしろ」


天使「はいはい、わかってますよ!」プンプン!


女「…怒らせちゃったわね」


男「後でちゃんと機嫌直すから心配ねぇよ」


女「…何だかんだ大事に想ってるのね」


男「うっせぇ」


女「…こ、これで本当に天界に行けるの?」


天使「はい。その風船が天界に行く為のカーナビ兼ETCになるので、絶対に外さないでくださいね」


女「こんな小さな風船一個って…凄い不安なんだけど…」


男「でも、こいつらしいだろ?」


女「…そうね」クスッ


天使「それ、どういう意味ですか?」


女「…二人とも、本当にありがとう。これで悔い無く逝けるわ。私の分も二人幸せになってね」


男「お前もこれから幸せになるんだよ」


女「えっ?」


天使「詳しくは言えませんが天界である人が待ってます」


女「ま、まさか…本当なの…?」


男「ああ、アフターケアだ。今度はヘマすんじゃねぇぞ」


天使「幸せになってくださいね」


女「…ええ。私、幸せになるわ。二人とも、天界で待ってるわね」ニコ


フワフワ…


男「……逝ったな」


天使「はい。天界に着いた瞬間、現世の記憶は無くなります…それでもあの二人はきっとまた結ばれますよね?」


男「…わからねぇぞ。もしかしたら、彼氏は天界で他の奴と結ばれてるかもしれねぇし」


天使「あっ……その可能性は考えてませんでした」


男「ま、それでもいいんじゃねぇか。今度はちゃんと自分の気持ちを伝えることが出来るんだから…」


天使「そうですね……男さんは自分の気持ちを私に伝えなくていいんですか?」


男「…イイんです!」


天使「今それをやるんですか!?」


____________________


スタスタスタ


男「…いつまで不貞腐れてんだよ」


天使「男さんが悪いんですよ!」プンプン!


天使(結局、おじいさんの家を掃除してる時も何も言ってくれなかったし…本当は私のこと好きじゃないんでしょうか?)トボトボ


男「………おい、こっちだ」


天使「えっ?そっちは駅の方向じゃないですよ?」


男「ちょっとだけ寄り道させてくれ」


天使「…いいですけど」


天使「こ…ここは……」


男「ああ…俺が前に言った、あの幽霊の少女が居た公園だ。ま、お前は聞いてなかったみただけど…」


天使(何ででしょうか…初めて来るはずなのに…懐かしい……痛っ!)ズキッ



『私ね、男くんと出会うまでずっと一人ぼっちだったんだ』



天使(こ、これは…!?)


男「俺は正直、あの子のことがまだ忘れられない。だから今まで女を本気で好きになることが出来なかった。だが……お前は別だ」


天使「お、男さん……」ズキッ



『私、生きてる時に誰かを好きになった事が無かったんだ…それが私の未練…』



天使(この記憶は…私?)


男「お前と居ると、あの子と一緒に居る時みたいに心から安心する…幸福を感じるんだ」


天使「ちょ…ちょっと待ってください…!」ズキッ


男「…駄目だ、最後まで言わせろよ」



『………わかった。約束するよ、男くん。私は恋なんてしない…誰も好きにならないよ』



天使(思い出した…私は…)


男「俺は今この瞬間、あの子を忘れようと思う。そして、これからはお前だけを見て、お前だけを愛す。だから天使…これからも俺が死ぬまで傍に居てくれ」


天使「………」ポロポロ


男「…泣いてないで何か言えよ。恥ずかしいだろうが」


天使「違う……忘れなくていいんですよ…男さん」


男「……何を言ってんだ?」


天使「たった今、全てじゃないけど思い出しました…私の初恋の相手があなただってことを…」


男「………嘘…だろ…?じゃあ…お前が……」


天使「はい……私があの時の女の子…少女だよ、男くん」ニコ


男「……ははっ、お前に惹かれるわけだ。ずっと好きだった女なんだから…」


天使「ぅ……うわああああああん!会いたかったよ、男くん!!」ダキッ


男「今再会したってわけじゃねぇけどな……俺もずっと会いたかったよ、少女ちゃん…」ギュゥゥゥ


____________________


スタスタスタ


天使(あーどうしましょう…幸せすぎてこのまま天に昇っちゃいそうです!)ウヘヘヘ…


男「…ニヤけ過ぎだ」


天使「そりゃニヤけちゃいますよ!男さんが私を二回も好きになってくれたんですから///」


男「人生最大の汚点だな」


天使「も~照れ隠ししなくていいですよ。告白した後に言っても何も意味もありませんし」


男「うぜぇ……そもそもお前が約束破ったのが悪いんだろ」


天使「そ、そんなこと言ったってしょうがないじゃないですか…約束する前に男さんのことが好きだって気づいちゃったんですもん。それにあの約束は卑怯です!男さんは私を好きになってもいいのに、私は男さんを好きになっちゃ駄目ってことですよ!」


男「でも、お前は約束したよな?」


天使「うっ…しましたけど…」


男「それに別れも言わずに居なくなったし…俺がどんだけ悲しんだと思ってんだよ」


天使「本当に申し訳ありません……ですが、そんなに私と離れるのが嫌だったんですか?」ニヤニヤ


男「今はめっちゃ離れたい」


天使「ひどいっ!?」ガーン


天使「でも…そんなこと言ってももう離しませんよ。離れたら死んじゃいますし…」ギュッ


男「冗談に決まってんだろ…俺だってもうこの手を離さねぇよ」ギュッ


天使「えっ?ト、トイレやお風呂もですか?」


男「ああ、離さない。寝る時も…シてる時もな」


天使「そ、それはさすがに離してくださいよ///」


男(親父、おふくろ、じいちゃん……俺は今、最高に幸せだよ)


男「…ん?あの煙…近くで火事か?」



「おい!向こうで飲食店が火事になって、隣の家が丸ごと燃えてるぞ!しかもまだ中に人が居るらしいぞ!」

「行ってみようぜ!」



男「………」


天使「お、男さん…」


男「…俺達も行くぞ」


____________________


ボオォォォオオオ!


男「こりゃひでぇな…」


オギャー  オギャー


「こ、子供の声がするぞ!消防車はまだなのか!?」

「早く助けてあげて!」



男「………」


天使「…だ、駄目です!」


男「まだ何も言ってねぇだろ」


天使「でも行くつもりなんですよね?」


男「ああ…見たところ周りに親は居ない。つまりあの家の中に親と子が残されてるってことだ……出来すぎだと思わないか?でも…これも運命ってヤツなのかもな」


天使「確かに男さんの境遇と同じような出来事が偶然起きてますが…これは男さんには関係の無いことです!」


男「確かに関係ねぇ。でも……もうわかってんだろ?生憎俺は残念な性格をしてんだって…」


天使「…そうですね。ホント残念なほど優しすぎますよ」


男「俺が行くってことはお前も行くってことになるが…」


天使「……わかってます。私が絶対に男さんを死なせません」


男「悪いな…付き合わせちまって」


天使「いえ…じゃあ行きましょう!」ギュッ


男「…ああ!」ギュッ


____________________


赤ちゃん「おぎゃー!おぎゃー!」


母親「ごめんなさい…生まれたばかりのあなたを、こんな目に合わせてしまって……でも、私の命に代えてでもあなただけは守ってみせるわ…」


ザッ


男「はぁ…はぁ…」


母親「あ、あなたは…?」


男「い…いいから逃げるぞ!」


母親「…無理です。私は足を怪我してしまって動けないんです。だから、この子だけでも助けてやってください!」


男「そ…それじゃ意味がねぇんだよ!その子が大人になるまで傍で成長を見てやるのが親ってもんだろうが!二人とも助けるに決まってんだろ!」ヒョイッ


母親「…あ、ありがとうございます」ポロポロ


男「礼は助かってからにしろ!天使、抜け道を教えてくれ!」


天使「はい!男さん、こっちです!」フワフワ


母親「だ…誰と話してるの?」


男「俺の……居候(パートナー)だ!」


天使「当て字がおかしくないですか!?せめて恋人にしてください!」


タタタタタタッ


男(このままなら行ける!)


ドオォォオオオン!!


男「なっ!?」


母親「て、天井が!?」


天使「男さん!!」


男(せめて二人を…!)バッ


グチャ


男「はぁ…はぁ…や、やっちまったな…」


天使「お、男さん…下半身が…」


母親「わ、私達のせいで…ごめんなさい」ポロポロ


赤ちゃん「おぎゃー!おぎゃー!」


男「……て…天使、お前一人で…この人達を助けろ…」


天使「い、嫌です!男さんを見捨てるなんて出来ません!それに私は男さんの傍を離れることが…」


男「大丈夫だ……い、言っただろ?俺は…お前を…ぜ、絶対に……死なせないって……頼む」


天使「で、でも…」


男「頼む…」


天使「………わかりました」スタッ


母親「えっ?いきなり女性が!?」


天使「私につかまっててください!」ヒョイ


タタタタタッ


男「……ありがと、な…」ニコ


天使「はぁ…はぁ…」ヨロヨロ


母親「だ、大丈夫ですか!?」


天使(ち…力が抜けて……)


フッ…


天使「!!……一気に行きますよ!」ダッ


母親「えっ?」


天使(男さん、こんな形で守ってもらっても…嬉しくないですよ…)タタタタタタッ


ザッ


天使「はぁ…はぁ…」


「で、出てきたぞ!!あ…あれ?入ってった男の人は…?」



母親「は、早くあの人を助けてください!まだ中に…」


天使「無駄です…男さんはもう…」


母親「そ、そんな…私達の代わりにあの人は…!」


赤ちゃん「おぎゃー!おぎゃー!」


天使「…男さんみたいな優しい人に育ってくださいね」クルッ


タタタタタタッ


母親「えっ!?あ、あの…!」


バサッ


母親「…天使の羽?」


____________________


天使「男さん……こんな黒焦げになってしまって…」


男「」プスプス…


男「……これじゃさすがのお前も食えねぇな」


天使「食いませんよ!!ていうか、自分の遺体でボケるなんて不謹慎すぎます!」


男「これぞ本当の…幽体離脱~」


天使「幽霊になって自由になりすぎですよ!」


男「ここは炎がうるさいから、とりあえず外に出ようぜ」フワフワ


男「改めまして…俺、死んだわ」


天使「軽っ!?もう男さん!いくら幽霊になるってわかってるからって、無茶しすぎですよ!」


男「反省してまーす」


天使「まったくしてませんよね!?」


男「それよりあの二人は助かったか?」


天使「はい、ちゃんと助けました」


男「そうか…よかった」


天使「よかったじゃないです!男さんは死んじゃたんですよ?」


男「おう、お前が死ね死ね言うから死んでやったんだぞ」


天使「いつの間にか私のせいになってませんか!?」


男「さて…ここで喋ってるのもあれだし、天界に行くか」


天使「えっ!?」


男「何で驚いてんだ?死んだら天界に行くのは当たり前だろ?」


天使「そ、そうですけど……天界に行ったら男さんの記憶は無くなってしまうんですよ?」


男「わかってる…だが、いつまでも浮遊霊してるわけにはいかねぇだろ?いつかは天界に連れてってもらうんだ。だったら俺は他でもないお前の手で、天界に連れてってほしいんだ。あっ、風船はやめろよ」


天使「………嫌です、行きたくないです…」


男「…ほら、いつまでも我侭言ってないで行くぞ!」グイッ


男「空を飛ぶって気持ちいいもんだな」フワフワ


天使「嫌だ…離れたくない…」


男「…まだ言ってんのかよ」


天使「だって…やっと好きだと伝えられたのに…ずっと一緒に居られると思ったのに…」ポロポロ


男「…これからもずっと一緒だ。俺は二度もお前を好きになったんだぞ?例え記憶が消えても、絶対にまたお前を好きになる。俺を信じろ」


天使「男さん……私にベタ惚れじゃないですか」ポロポロ


男「ああ…お前もそうだろ?」


天使「…はい。私も男さんにベタ惚れですよ」ニコ


男「じゃあ心配ねぇな…さぁ、俺を天界に連れてってくれ」


天使「はい…手、離さないでくださいね」ギュッ


男「死ぬ前に言ったろ?もう離さねぇって」ギュッ


天使「離したから死んだじゃないですか…」


男「良いとこで揚げ足を取るな」


天使「じゃあ…行きます!」バサッ


男「羽ばたく必要ねぇだろ。翼無くても飛べるんだから」


天使「男さんだって良いとこでツッコんでるじゃないですか!」


バサッ バサッ


天使「…この雲を抜けたら天界です」


男「そうか…」


天使「男さん……私への想い…忘れないでくださいね」


男「ああ…記憶が消えてもこの想いだけは絶対に忘れない。約束する…」


天使「ありがとうございます……男さん、大好きですよ」


男「俺もだ…昔も、今も、そして…これからもずっと愛し続ける…」


天使「…じゃあ、行きます」


____________________


スタッ


天使「……着きました」


男「………」


天使(もう男さんは私のことを覚えてない…)


天使「は…初めまして男さん!私は天使と言います!」


男「…おい、ちょっと待て」


天使「いきなり変なこと言いますが、実は私達恋人だったんですよ?それはそれはラブラブなカップルだったんです!ほ…本当ですよ?…信じてください…」ポロポロ


天使(やっぱり…さみしいですよ、男さん…)


男「………話を盛るな。そこまでラブラブじゃなかっただろ」


天使「ラブラブだったじゃないですか!……えっ?ま…まさか…!?」


男「ああ…記憶が消えてない」


天使「よ゙……よ゙がっだでず~!!」ボロボロ


男「さっきから泣きすぎだ。いい加減泣くのを止めろ」


天使「だって……これからもずっと一緒に居られるんですよ。嬉しすぎて涙が……止まってきましたね」グスン


男「止まるのかよ」


天使「それにしても…どうして男さんは記憶が消えなかったんでしょうか?」


男「知らん」


天使「…さっきからちょっと冷たくないですか?」


男「……ここに来る前に散々くせぇこと言ったから…恥ずかしいんだよ」


天使「あーなるほど、照れ隠しですか。男さんはホント照れ屋さんですね」ニヤニヤ


男「うっせぇ、記憶が消えると思ってたんだからしょうがねぇだろ…」


天使「ほらほら、好きなだけ私に愛の言葉をかけていいんですよ?」


男「……少女ちゃんの頃は可愛かったのになぁ」


天使「ひどいっ!?」ガーン


神様「お前達は本当に仲が良いんじゃな」


天使「あっ、お父さん!」


男「………はぁ?」


神様「娘よ!会いたかったぞ!」ダキッ


天使「私も―バキッ!


神様「ぎゃふんっ!」ズザァァァ


天使「お父さん!?ちょっと男さん!何でいきなりお父さんを殴ったんですか!?」


神様「久しぶりの再会で顔パンは無いじゃろ…しかもグーで…」ヒリヒリ


男「いいからどういうことか説明しろ、じいちゃん」


天使「…えっ?じいちゃん?」


神様「昔は『じいちゃん大好きー!』って言って、よく抱きつきおったのに…じいちゃんはお前をそんな子に育てた覚えは無いぞ!」


男「途中で育児放棄したからこうなってんだろが」


天使「えっと…これはどういうことですか?」


男「信じられないかもしれないが、こいつは俺のじいちゃんなんだ」


神様「じいちゃんをこいつ呼ばわり!?」ガーン


天使「お父さんが男さんのおじいさん……つまり私は男さんの叔母で、昼ドラのような禁断の恋をしてたってことですか!?」


男「お前は少し黙ってろ。ややこしくなる」


神様「そこはワシも賛成じゃ」


男「賛成してないで説明しろ」


神様「はい」


神様「始まりはそう、今から数千年前の夕暮れ時じゃったな……」


男「…もしかして回想に入ろうとしてるか?」


神様「そうじゃ。ワシと妻の運命の出会いから入って…」


男「長い。箇条書きで短くしてくれ」


神様「そ、そんなぁ!?この日の為に約三時間の紙芝居を作っておいたのに…」ガクッ


男「そんな長編映画観れるか」


神様「読むのも練習したのに…一人六役なのに…」シクシク


男「…はぁ、後で見てあげるから今は簡潔に説明してくれよ、じいちゃん」


神様「本当か!?」パアァ


天使「よかったですね、お父さん!」


神様「うむ、男は基本的に困った人を放っとけない性格だからのう」


男「ホント残念な性格だよ…」


神様「では始めるぞぅ…


・数千年前、ワシは人間に恋して子供が出来る。その子孫がお前。

・お前は隔世遺伝によりワシの血が濃く出た為、幽霊とか天使とかに触れる。

・身寄りの無いお前がかわいそうで、人間の体を着てじいちゃん(仮)になる。

・7年後、天界を離れすぎた為、魔王に拉致られる。お前が心配で戻ると体は既に葬式済。

・その後は気づかれないようにこっそり見守る。

・お前に恋した少女を天界に連れて行く。

・ワシが彼女の『お前と過ごした記憶』と『お前への想い』だけ残す。その後、娘として育てる。


以上じゃ」


男「一分かからなかったぞ。よくこれを三時間に延ばせるな」


神様「ワシと妻のロマンスをたっぷり描いとるからのぅ」


男(聞くの苦痛になりそうだな…)


男「要するに俺は神と人間のハーフってことか?」


神様「ざっくばらんに言うとそうじゃ。まぁ神と言っても天使とそう変わらんがのぅ」


天使「男さんの記憶が消えなかったのもその為だったんですね…」


男「こいつを死神のバイトとして、俺の所に向かわせたのもじいちゃんの仕業なのか?」


神様「それは違うぞ。本当にたまたまお前と再会を果たしたんじゃ。ワシはもっとロマンチックな再会をさせようと計画を練ってたんじゃが…まぁ、あれはあれで運命的な出会いじゃったろ?」


男「出会い頭に『死んでください』のどこが運命的なんだ?」


天使「そもそもトイレでしたからね…それも使用中…」


神様「…やっぱりウン命的な出会いじゃな」


男「やかましいわ」


天使「そういえば私を天使にした理由って何ですか?」


神様「可愛い曾曾曾曾曾曾曾曾曾曾……曾孫の幸せの為じゃ、これぐらいしてやらんとな。それに可愛い娘も欲しかったし」


男「ロリコンかよ…でも普通の人間を天使にしたりして問題ないのか?」


神様「ノープロブレム!」


閻魔大王「問題大アリよ」


神様「ま、魔王!?」


閻魔大王「人間に恋するわ、その子孫と暮らす為天界をほったらかすわ、人間を勝手に天使にしたりするわetc…とにかく問題行動しか起こしてないわよ、このジジイ。毎回女神達に泣きつかれて呼び出される私の身にもなりなさいよ」


神様「す、すまん…」


男「…うちの祖父(仮)がいつもご迷惑をかけてすいません」ペコ


閻魔大王「あら、この人の子孫にしては礼儀がなってるじゃない。あなた、死神になってうち(地獄)で働かない?何なら私の夫にしてもいいわよ?」


天使「ちょっと閻魔大王様!?」


男「嬉しいお誘いですが…お断りします。俺はこれから天使になるつもりです。そしてこいつの傍に居たいんです」


閻魔大王「…愛されてるのね、天使ちゃん」


天使「…はい///」


男「…ついでにこの人の教育もしたいので」


神様「それってワシのことを言ってるのか?」


男「当たり前だ。俺がこれからみっちりと二人に常識を身に着けさせてやるから覚悟しとけよ」


神様・天使「ひぃい!?」


閻魔大王「全力で支援するわ」


男「じゃあまずは……じいちゃんの作った紙芝居を見てやるか」


神様「やったぁー!」


男「その後、ちゃんと仕事をするんだぞ。じゃないと見てやらないからな」


神様「はーい…」シュン


閻魔大王(絶妙な飴と鞭ね……ん?)


男(本当は二人きりになりたいんだが…)


天使(男さんともう少しイチャイチャしたかったなぁ…)


閻魔大王「…残念ながらそれは上映中止ね。死神と女神がトラブルを起こしちゃったらしいから、ちょっとこのジジイ借りるわよ」ズルズル


神様「ちょっ、魔王よ!離せぇい!」ジタバタ


閻魔大王「少しはあんたも気を使いなさいよ。今は二人きりにしてあげなさい」


神様「…意外とお前も空気読める奴じゃのぅ」


閻魔大王「あんたが読めなさすぎるのよ」

追いついた

爺ちゃん生きててよかったーーーー

・・・神に生きてる死んでるの区別があるかは謎だが


男(…気を使わせちまったか?)


天使「行っちゃいましたね…」


男「…なぁ」


天使「何ですか?」


男「天界って結婚とかあんのか?」


天使「ありますよ。でも、結婚してもしなくても永遠に一緒に暮らすことが出来るので、基本的に結婚しないで恋人同士のまま同棲してる人がほとんどです」


男「離婚率ほぼ0%ってことか」


天使「結婚率もほぼ0%ですけどね」


男「じゃあ……俺らも同棲でいっか」


天使「えー!そこは『結婚しよう!(キリッ)』って言うとこですよ!」


男「(キリッ)は余計だ」


天使「…じゃあ、結婚はしなくてもいいです。私は男さんの傍に居られるだけで十分ですから」


男「……するに決まってんだろ」


天使「ふっふっふ、そういうと思いましたよ~男さんは私を手離したくないんですからね?」ニヤニヤ


男「…ああ、お前は前科があるから不安なんだよ。また急に俺の前から居なくなるんじゃないかって…」


天使「あっ……あの時は本当にすいませんでした!でも…もう安心してください。絶対に離れませんから」


男「…そうしてくれると助かる」


天使「じゃあ私の…いえ、私達の家に行きましょう!」ギュッ


男「……手を繋ぐのも慣れたな」


天使「そうですね。凄まじいフィット感ですよ!」


男「お前のバカさ加減の安定感ほどじゃねぇよ」


天使「家に帰ったら、男さんが死んじゃった記念お寿司パーティーをやりましょう!」


男「やんねーよ。てか天界に寿司ネタあるのか?」


天使「そこは男さんの技量でカバーを…」


男「技量でどうこう出来る問題じゃねぇ」


天使「……ふふふ、本当にこれからもこうやって楽しく二人で居られるんですね」


男「ずっとそれだと疲れるから、たまには普通にしろよ」


天使「検討します」


男「する気ねぇだろ」


天使「そんなことありませんよ!じゃあ男さんに一つ、普通に伝えたいことを言いますね」


男「おう、何だ?」


天使「男さん……死んでくれて…ありがとうございます」ニコ


男「…何だよそれ。普通のことじゃねぇし、笑って言うことじゃねぇだろ」


天使「私らしくていいじゃないですか!」


男「まったくお前って奴は……どういたしまして」ニコ



Fin

これで完結です


見てくださった方々、ありがとうございました


ではまた何処かで

おつ


やっぱベタな展開もいいよなあ


ハッピーエンドでよかった
ギャグも面白かったし

天使になれたことだし、火事で死んだと思って悲しんでる親子や友人にフォローしてほしいわ


普通に面白かった
こういうの見ると毎回思うんだが、最後の〆からタイトル取ってるの?


タイトルが始まりと終盤に繋がってるのか


やっぱり天使ちゃんはマジ天使

乙!最後にタイトルと合わせる作品は凄い感心する

最後までブレずにベタベタな展開だったな
だが、それがイイ!

やっと追いついた。
乙!

乙!

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