【シュタゲSS】Mr.ブラウン「岡部、ちょっといいか?」 (36)

ブラウン「なんだ、岡部だけか……」


岡部「どうかしましたか、Mr.ブラウン」


ブラウン「だから天王寺さんと呼べといつも……まあいい、このあとヒマか?」


岡部「えぇ、予定は何もないですが……」


ブラウン「だったらちょっと付き合えや」


岡部「え?」

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岡部「ここは……」


ブラウン「桜の穴場って奴だ」


岡部「たしかに見事ですね……」


ブラウン「ほう、おまえにも桜の良さがわかる頭があったんだな」


岡部「俺をなんだと……ところでこの場所は?」


ブラウン「俺の恩人に教わった場所さ」


岡部「そうですか……」


ブラウン「そこの芝生にでも座ろうや」


岡部「分かりました」

え?

ブラウン「おまえも飲むか?」


岡部「俺は未成年ですって」


ブラウン「まあ一杯くらいいいじゃねえか、大学生だろう?」


岡部「じゃあ一杯だけ……」


ブラウン「そうそう、世の中素直なのが一番だぜ?」


岡部「そうですか……」


ブラウン「まあいいじゃねえか、乾杯」


岡部「乾杯」

ブラウン「どうだった?」


岡部「苦いだけです……」


ブラウン「はは、おまえにはまだビールははええみたいだな」


岡部「そうみたいですね」


ブラウン「大仰な口をきいても下は子供並みってことだな」


岡部「……ほっといてください」


ブラウン「まあいいじゃねえか」


岡部「そういえば恩人にこの場所を教わったと言っておられましたが……」


ブラウン「なんだ、興味あるのか?」


岡部「いえ、別に」


ブラウン「ウソでも興味あるっていいやがれコノヤロー」


岡部「きゅ、急に撫でられたら、痛いですって」


ブラウン「まあいい、話してやるから心してきけよ?」


岡部「……はい」

え?

ブラウン「あれからもう何年になるのか……」


そういって俺はぽつぽつとあの人との思い出話を始める


妻と家をあの火事で失ったこと


すべてを失って路頭に迷った俺に救いの手を差し伸べてくれたこと


綯を加えた3人で一緒に暮らしていたこと


一緒にここに花見に来たこと


そして……


亡くなったこと……


岡部はただただ黙って聞いていた

ブラウン「せっかくの酒が不味くなっちまったな……」


岡部「そんなことないですよ」


ブラウン「お前にはわかんねえだろうが!」


岡部「大切な人を失う悲しみは俺にだってわかります!」


ブラウン「なんだと……?」


岡部「俺の話を聞いてください」

岡部「あれは去年の夏のことでした……」


そういって岡部は語り始める


一緒にいるあのねーちゃんが殺されたこと


去年からよく来るようになったあのねーちゃんが殺されたこと


他にも多くの人間が死んだこと


自分がタイムリープでそいつらの死に何度も触れたこと


中には俺が死んだなんてのもあったな……


所詮いつもの与太話だろう


まあ酒の肴にはちょうどいいか……


しかし岡部の目は冗談というにはあまりにも真剣な目をしていた


適当なところで冷やかしてやろう


そんなこともできないくらい岡部の顔は真剣だった


結局俺は最後まで聞き入ってしまっていた……

ブラウン「おめえも大変だったんだな……」


岡部「はい……」


それっきりお互いに黙り込んでしまう


気まずい沈黙だ……


何か話題はないか……


そして俺は心にある決意を固める


岡部を呼び出した本当の目的だ

ブラウン「なんで俺があのバイトを雇ったか知ってるか?」


岡部「バイト戦士をですか?」


ブラウン「そうだ」


岡部「ブラウン管が好きだからなんじゃ……」


ブラウン「そんなわけねえだろ」


岡部「え?」


ブラウン「似てるんだよ、あの人に……」


岡部「そうなんですか?」


ブラウン「人の心配はするくせに自分の心配事は最後まで心にしまっておく」


ブラウン「それこそ墓の下までな……」


岡部「はあ……」

ブラウン「だからあの嬢ちゃんをの力になってやってくれねえか?」


岡部「え?」


ブラウン「俺が言うのもおかしいかもしれねえけどよ……」


ブラウン「なんだかその……娘みてえなもんでよ……」


岡部「ふふ……」


ブラウン「てめえ今笑いやがったろ?」


岡部「そ、そんなめっそうもない!」


ブラウン「まあいいか……」


ブラウン「とにかくあいつの力になってやってくれねえか?」


ブラウン「おまえの方が話しやすいだろうしな……」


岡部「……わかりました」


ブラウン「じゃあよろしく頼むぜ?」


岡部「ええ……」

いいね

ブラウン「よし、そうと決まったら祝杯だな!」


岡部「え?」


ブラウン「とっておきの日本酒に山菜の天ぷらもあるから飲もうぜ!」


岡部「だ、だから俺は未成年だと……」


ブラウン「俺の酒が飲めねえってのか?」


ブラウン「どうなんだ、おう!?」


岡部「謹んでお受けいたします……」


ブラウン「そうそう、若いうちは素直な方がいいよな!」


岡部「はい……」


ブラウン「じゃあ改めて乾杯!」


岡部「乾杯……」

ブラウン「どうだ、美味いか?」


岡部「ええ、すごく!」


ブラウン「ほう、この酒と天ぷらの美味さが分かるとはな……」


岡部「な、なんですか……?」


ブラウン「お前も日本人なんだと思ってよお」


岡部「な、何を当たり前のことを……」


ブラウン「まあまあ、今夜は二人で差し向かいでのんびりいこうぜ」


岡部「そうですね、月も出てきましたし……」


ブラウン「月見酒に雪見酒とは風流の極みじゃねえか」


岡部「そうですね」


ブラウン「また付き合ってくれるよな」


岡部「ええ、適度な範囲でですが……」




「桜、綺麗だな……」



「そうですね……」






おわり

短かったですが読んでくださったかたありがとうございました

月の綺麗な夜に桜をみながら親子で一献

ある意味究極のぜいたくと言えるのではないでしょうか?


この二人は実の親子ではありませんがそんな感じだったらいいなと思いまして……



感想とか質問とかあればどうぞ

明日答える予定です

主は麦酒派?日本酒派?ワイン派?

ミスターブラウンが岡部の子供でしたー!
ってSSがあった気がする


俺ものんびり花見したいなー

>ブラウン「大仰な口をきいても下は子供並みってことだな」
下は子供並み(意味深)


花見はこの間してきたけどやっぱりこの時期はあのくらいの活気があった方がいいね

岡部「そういえば……」


ブラウン「どうかしたのか?」


岡部「どうして日本酒なのかと思いまして……」


ブラウン「なんだ……そんなことか」


岡部「え?」


ブラウン「さっきの天ぷらをまず食ってみな」


岡部「はい」


ブラウン「次にビールを一口」


岡部「はあ……」


ブラウン「どうだ?」

岡部「な、なんとも独創的で……」


ブラウン「ものすごく苦いだろ?」


岡部「……はい」


ブラウン「それが普通の味覚だ」


岡部「そうなんですか?」


ブラウン「『春には苦みを盛れ』って言葉を知ってるか?」


岡部「いえ……」


ブラウン「冬に溜め込んだ老廃物を排出する作用が山菜にはあるんだ」


ブラウン「特にさっき食べた天ぷらのふきのとうなんかはその最たるもんだな」


岡部「そうなんですか?」


ブラウン「そのままでは苦くて食べにくい山菜を天ぷらにして苦みを和らげて食べやすくしてるんだよ」


ブラウン「それを苦みのあるビールと合わせたらどうなった?」


岡部「苦かったです」


ブラウン「そうだな」

ブラウン「じゃあ次は同じことを日本酒でやってみな」


岡部「はあ……」


ブラウン「どうだ?」


岡部「なんだかすっきりして……」


ブラウン「無理に言葉にする必要はねえんだ」


ブラウン「ただお前が美味いと感じたらそれでいい」


岡部「美味かったです」


ブラウン「お、ならいいじゃねえか」


岡部「そうですね」

岡部「でもなんでこっちは美味かったんですか?」


ブラウン「酒にも相性ってもんがあるんだよ」


岡部「酒に相性ですか?」


ブラウン「たとえば寿司を食うときにワインを飲む奴がいたらどう思う?」


岡部「ちょっと合わなそうな……」


ブラウン「俺も試したことはあるがあれは絶望的だったな」 ※あくまで>>1の友人の感想です


岡部「そうなんですか?」


ブラウン「ああ、魚の生臭さが強くなってな……」


岡部「なるほど……」

ブラウン「逆にチーズなんかにはワインとかの方が合うぜ?」  ※あくまで>>1の(ry


岡部「つまり料理によって合う合わないがあると?」


ブラウン「まあそういうこった」


ブラウン「それぞれの料理にはそれぞれに合う酒がある」


ブラウン「それでいいと俺は思うぞ?」


岡部「俺もそう思います」


ブラウン「とは言っても今日初めて飲んだようなお前には分からないだろうがな!」


岡部「うぐ……」


ブラウン「まあいいじゃねえか!まだまだ人生は長いんだしだんだん学んでいけばよ?」


岡部「そうですね」

岡部「でもあなたがそんなことを知ってるとは思いませんでした」


ブラウン「俺だって最初から知ってたわけじゃないさ」


岡部「そうなんですか?」


ブラウン「俺には優秀な先生がいたからな」


岡部「先生?」


ブラウン「さっき話しただろう?」


岡部「あ……」


ブラウン「その人に色々習ったんだよ」


岡部「そうでしたか……」


ブラウン「おいおい、そんな顔すんじゃねえよ、酒が不味くなるしよ」


岡部「はい……」

ブラウン「いいか?人間てのはいつか死ぬもんだ」


ブラウン「それはどうあがいても揺るぎようのない事実だ」


ブラウン「そうだな?」


岡部「はい……」


ブラウン「願わくば桜の木の下で死にたいって思う奴もいる」


ブラウン「願わくば海を見ながら死にたいって思う奴もいる」


ブラウン「願わくば家族に見守られて死にたいって奴もいる」


ブラウン「だけど俺はあの人みたいに幸せそうに亡くなった人は知らない」


ブラウン「だからお前も幸せに死ねるように生きればいいじゃねえか」


ブラウン「少なくとも俺はそう生きてるぜ?」


岡部「はい」

ブラウン「だいたい一緒にバカみてえに騒げる仲間がいるんだろ?」


ブラウン「それは大事にしろよ?」


岡部「はい」


ブラウン「とまあ説教くさくなっちまったわけだが……」


ブラウン「どうも年を取ると説教くさくなっていけねえ……」


岡部「い、いえ!」


ブラウン「まあこんなバカ話は散り行く桜とともに忘れてしまおうや」


岡部「でも……」


ブラウン「だったら心の中に酒と一緒に流しこんじまいな」


岡部「そうですね」


ブラウン「じゃあ改めて乾杯するか」


岡部「はい」




「「乾杯」」



こんばんは

以上でこのスレでの投下予定のSSは全て終了です

読んでくださった方、ありがとうございました


>>18
>>1は下戸です
なので酒の感想は友人に飲んでもらったのを聞いたのを参考に書いています
体質的におちょこ一杯で救急車騒動になりかけたんですよね……
ただ専門店で働いていたことがあるので日本酒に関してならある程度知識があります

>>19
あのSSは名作でしたよね

>>20
ワンカップやドクペ片手に桜並木を歩いて適当な所で一杯やるのも乙なものですよ
>>5
ブラウン「大仰な口をきいても下は子供並みってことだな」は
ブラウン「大仰な口をきいても舌は子供並みってことだな」に補完をお願いします

>>21
活気がある場所で一緒に騒ぐのも静かな所を気の置けない友人や恋人と歩くのもまた一興ですよね


何か質問や感想などがあればどうぞ

今夜にでもレスがあればそれに返信してHTML化依頼をする予定です


同じ日本の酒でも焼酎にはチーズにあう物もあるんだよな
色々試してみるのも面白いよ

>>32
そうですよね
飲み会なんかで騒ぐのもいいですがちびちび飲むのも好きです
>>1は飲めませんが……

また何か思い浮かんだらスレ立てするかもしれません

読んでいただいたみなさんありがとうございました


ブラウンとオカリンの相性いいね
連日の雨と風でだいぶ桜散って悲しい

こんばんは

本来は自分なりに綺麗に完結させたスレでこんなことを書きたくないんですが書かせてください

見たくない人は気分を害されてしまったらすいません


いくつかのまとめサイト様でこちらのスレをまとめていただいています

たいへんありがたいことです

ただ、いずれも自分が>>31で指摘した>>5の6行目の訂正を反映させた所はありませんでした

できれば訂正を反映させてくれると幸いです

ただし、魔王と勇者のSS物語様はこのスレのまとめ記事
http://maoyuss.blog.fc2.com/blog-entry-4421.html
を削除してください

サイト内の※欄にて指摘しましたが対応されていないので……

また、今後、このトリップも含め別トリップでも自分が立てたスレをまとめるのは禁止します

自分が愛着を持って立てたスレをあのようにされては我慢できません

関係ない皆様には不快な思いをさせてしまいすいません

どうかご理解いただければ幸いです


>>34
自分も昨日花見に行ったら桜吹雪と通り吹雪で大変な目に合いました
やっぱり散ってしまうのも風情があるとはいえ寂しいですね


失礼します

改変せずに転載するのが流儀だからね

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