渋谷凛「ふーん、剣士か」 (40)

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渋谷凛「ん……すぅ……」スヤスヤ


??「……てください……様……!」


凛「んー……」ムニャ


??「……起きてください、剣士様!」ユサユサ


凛「えー……どうしたの、お母さん……学校、今日は休みだよ……」ムニャムニャ


凛「……え?」パチッ




??「おはようございます、凛ちゃ……じゃなくて、剣士様!」


凛「え、ちひろさん?って、ここはどこ……ん、剣士様……?」


千川ちひろ「はいっ!いよいよ今日、魔王を倒しに行かれるのですね!」


ちひろ「ああ、やっと魔物たちに襲われる心配をしなくて済むのですね……」シミジミ


凛「……?」


ちひろ「ああ、そうでした!剣士様の剣と防具はこちらに!」


凛「え……ちょっと待って、ちひろさん」


ちひろ「ほらほら、武器や防具は装備しないと意味がありませんから!」


凛「ま、待ってちひろさん!あっ……服、脱がしちゃ……きゃっ!?」




凛「……ふーん、本当に私、剣士なんだ……悪くないかな」


ちひろ「さあ、行ってらっしゃいませ剣士様!ご活躍、期待していますね!」


凛「う、うん……えっと、行ってきます?」


ちひろ「あ、その前に……旅のお供のスタミナドリンクは」


凛「行ってきます」スタスタ


ちひろ「あ、ちょっと待って凛ちゃ、剣士様……うーん、買ってもらえませんでしたね……でも!」


ちひろ「魔王を倒した伝説の剣士様が泊まった宿として売りだせば……ふふ、ふふふふ……!!」


凛「うーん……何だかゲームの世界みたいだけど……どうしたらいいのかな」


凛「魔王を倒すって言っても、場所が分からないし……ん?」



『↑魔王の城 直進30マス』



凛「えっ、マス……?」


凛「……あ、遠くにマス目が見える。すごろくみたい……でも、サイコロは」


ボフンッ


凛「……出てきたけど、なにこれ?」


凛「どの面も同じ数字になってる……あ、そういうことか」


凛「振ってみよう……えいっ」ポイッ


カラカラカラ……


[3]


凛「最初は3か……」


フワッ


凛「きゃっ?!えっ、体が……!!」


ビュンッ!!


凛「きゃぁぁぁぁぁっ!?」



ヒュウウウウウ……


ピタッ


凛「な、なにこれ……マスの所まで飛ばされたんだけど」


凛「って、そうだ。ここは……」


『シノの酒場』


凛「……えっ?」


――シノの酒場


ガチャッ


凛「あの……誰かいますか?」


??「あら、いらっしゃい……」グビッ


凛「あ……本当に志乃さんだ」


柊志乃「ふふ、待ってたわよ剣士様……」ゴクゴク


凛(この世界でもずっとお酒飲んでるんだ……)


志乃「ここは魔王を倒す者同士が集まる酒場よ……飲んでく?」グビッ


凛「志乃さん、私未成年なんだけど……」


志乃「ソフトドリンクもあるわよ。はい、メニュー」


凛「じゃあ、ウーロン茶……って、待って!魔王を倒す者が集まるって……!」


志乃「ほら、あそこにもいるわよ」


凛「……えっ?あれって」


??「はぁー……もう分かんないよ……うぅ……」


島村卯月「あぁー……凛ちゃん、未央ちゃん……私、どうしたらいいの……?」グスッ


凛「う、卯月?!」




卯月「えっ……もしかして凛ちゃん、ですか……!?」


凛「うん、もしかして卯月も」


卯月「うわあぁぁぁぁっ!!凛ちゃーんっ!!!」ギュウッ


凛「ど、どうしたの卯月?!」


卯月「だって、朝起きたら変な宿にいて、気付いたら勇者になってて……」


凛「……卯月もなんだ。私もそうだったよ」


卯月「ほ、本当っ!?」


凛「なんとなくだけど……魔王を倒したら、元に戻れるんじゃないかな」


卯月「そうだけど……外は魔王の手下がいっぱいいて……あっ、そっか!」


卯月「凛ちゃん、一緒に行きましょう!」


凛「うん……卯月がいると、頼もしいよ」


卯月「えへへ……もう、大丈夫です!」


卯月「勇者卯月、頑張りますっ!!」




志乃「ふふっ、素敵な友情に乾杯……」グビグビ


凛「……志乃さん、ありがとう」


卯月「魔王を倒しに、行ってきますっ!」


志乃「ええ、頑張ってね」


凛「じゃあ、先に進もうか」


ボフンッ


卯月「えーっと……じゃあ、これにしましょう!」


カラカラカラ……


[3]




フワッ


凛「……あ、やっぱり?」


卯月「きゃっ……あれ、凛ちゃんもだったんだ」


凛「うん……もう少し、まともな移動にしてほしかったかな」


卯月「あはは、そうだね――」



ビュンッ


ヒュウウウウウ……


ピタッ


凛「うぅ……移動だけで酔いそうだよ……」


卯月「そうですね……って、ここは?」




『ライブハウス東郷』



卯月「……なんだか聞いたことある名前だね」


凛「うん」


――ライブハウス東郷


ガチャッ


凛「あの、誰かいますか……?」


??「ああ、まいったな……ん、いらっしゃい」


卯月「えっと、どうしたんですか、あいさん?」


東郷あい「いや、今日のライブの出演者が魔王軍にやられて来られなくなってね……困っていたんだよ」


凛「そうなんだ……」


あい「どうしたものか……そうか、君たちに出てもらえば……!」


あい「いや、君たちはどうやら勇者様御一行のようだし、無理か……やはり、ライブは中止に」


卯月「……凛ちゃん!ライブ、出ようよ!」


凛「えっ?」


あい「ほ、本当かい!?助かるよ……さあ、早速こっちに来てくれ!」


凛「ちょ、ちょっと待って……はぁ」


――ホール


卯月「えへへ、なんだかわくわくするねっ!」


凛「う、うん……それより大丈夫かな、この装備だと踊るのは不安なんだけど」


卯月「大丈夫、絶対大丈夫だよ!」


凛「……そうだね。悩んでも仕方がないか」





ワァァァァァァッ……!!!



凛「じゃあ……残していこうか、私たちの足跡……!」


卯月「さあ、楽しいステージの始まりですよっ!」


凛「♪~~」スタッ


タンッ


凛「……っ!」ドサッ


卯月「凛ちゃんっ!?」


凛「大丈夫……卯月、続けて!」


卯月「う、うん……!」




あい「む……やはり、無理があったか……」


あい「成り行きとはいえ、彼女たちには申し訳ないことを……」


??「すみませーんっ!遅くなりましたーっ!!」


あい「……き、君は!」


??「ええっ、ライブ始まってるのっ?!急がなきゃっ!!」



ズキッ


凛(うっ……さっき転んだ時、少し捻ったかな……)



チラッ


卯月(凛ちゃん……ここは私が、頑張らなきゃ……!!)


卯月「え、えっと……次の曲は……!」




??「やっほー!みんな、お待たせーっ☆」


本田未央「スーパースターは遅れて登場するものだよ……ね、しぶりん、しまむー!」


凛「み、未央……!」


卯月「未央ちゃん、どうしてここに……!」


未央「ふっふっふ……二人とも、今はライブに集中だよっ!ミュージック、スタートっ!!」カラカラカラ……


[3,3,3]


未央「へへ……みんな、行くよっ!」


未央「燃やせ友情~♪パッションはミツボシ☆☆★」


ワァァァァァァァァァァァァッ!!!!!


ミオチャァァァァァァンッ!!!!



未央「みんな、ありがとーっ!」


ワァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!




凛「すごい……」


卯月「未央ちゃん、さすがですねっ」




あい「いやはや……助かったよ。なんとお礼をしたらいいものか……」


未央「いいのいいのっ!私達も楽しかったもん!ねっ?」


凛「……うん。未央のおかげだよ」


卯月「未央ちゃん、格好良かったよっ!」


未央「へへ……二人がいたから、頑張れたんだよっ」


あい「今日は本当にありがとう……魔王の討伐、頑張ってくれ」


凛「……うん。ありがとう、あいさん」


卯月「えへへ、行ってきますっ!」


未央「……えっ?しぶりんにしまむー、勇者だったの!?」


凛「うん、そうだけど……」


未央「ずるーいっ!!私も行くよっ!!」


卯月「ええっ!未央ちゃんも一緒に来てくれるの!?」


凛「……ふふっ、これでニュージェネレーションが揃ったね」


未央「私はあんまり戦える格好じゃないけど……ライブなら任せてよっ!」


卯月「うんっ!未央ちゃん、頼もしいねっ!」


凛「それじゃ……行こうか、卯月、未央」


凛「魔王を倒しに、ね」


卯月(それから、私達三人はサイコロ任せに旅を続けて)




凛「あ……宝箱だ」


卯月「でも、どうやって開ければ……」


未央「そっか、サイコロだよ!」カラカラカラ……


[3,4,6]


未央「ふっふっふ……えいっ!」ガチャッ


卯月「やった!やりましたよっ!」


凛「中身は……サイコロ?」


未央「サイコロ……何に使うの?」


卯月「……さあ?」


卯月(時には危険な目にも遭いましたけど)



小関麗奈「アーッハッハッハッハ!ここで会ったが百年目よ、覚悟しなさいッ!」


凛「麗奈……そこをどいて」


麗奈「なッ、何よ……ッ!このアタシが、そんなんで怯むとでも……ッ!!」


未央「ふっふっふ……これでもくらえーっ!」カラカラカラ……


[2,3,5]


凛「ていっ!」ザシュッ


麗奈「ちょ、待ってッ……きゃああぁぁッ!?」


卯月「それっ!」グサァーッ


麗奈「うッ……お、覚えてなさいッ!!」


卯月(順調に旅を続けたのでした)



凛「また宝箱?」


未央「さーて、次もスーパースター未央ちゃんにお任せ……」


ガチャッ


未央「あれっ?」




輿水幸子「フフーン!!宝箱だと思いましたか?このボクでs」


バタンッ


幸子「フギャーッ?!」


凛「さ、次行こうか」


卯月「り、凛ちゃん……ちょっと可哀想ですよ?」


――魔王の城


未央「ついにここまでやってきたねっ」


卯月「うぅ……なんだかドキドキしてきました!」


凛「大丈夫だよ。ここまでやって来れたんだから」


卯月「……うんっ」


未央「へへ……さあ、出てこい魔王っ!」




??「クックック……我が城に光が差すことは無し……」


神崎蘭子「勇者達よ、我が力にて――闇に飲まれよ!」


凛「あ、やっぱり蘭子なんだ」


蘭子「……蒼き剣士よ、如何したか?」


凛「ううん、なんでもないよ……さあ、始めようか」


凛「行くよっ!」カラカラカラ……


[2,3,4]


卯月「えいっ!」グサァーッ


蘭子「ククク……我がヴェールの前には全てが無力なり……!!」


凛「……効いてない!?」


蘭子「――我が呪われし右手には、炎を」


蘭子「我が聖なる左手には、氷を!」


バシュンッ


未央「きゃぁっ!?」


凛「未央っ!」


蘭子「フフフ、魔王の力に跪きなさい……っ!!」


卯月「一体、どうしたらいいの……?」


未央「らんらんが纏ってるヴェール、なんとかしないと……でも」


凛「――諦めちゃ駄目だよ、卯月、未央」



凛「卯月はずっと、不安だった私を励ましてくれた」


卯月「!」


凛「未央は私達のピンチに駆けつけて、助けてくれた」


未央「しぶりん……!」


凛「二人のおかげで、私達はここまで来れたんだ……だから、私は諦めない」


凛「どんなに困難でも……私は、私達は――負けない!!」カラカラカラ……


[2,5,6]


凛「……はぁっ!!」ザシュッ


蘭子「ぐっ……ま、まさかヴェールが……破られた!?」


卯月「凛ちゃん……!」


蘭子「しかし、我が力の前には赤子も同然――塵へと、帰れ!!」


バババババシュゥッ!!!!


未央「く、来るよっ!!」


凛「……っ!!」バッ




ワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!


凛「……?」


卯月「え……?」


未央「ま、まさか……!!」


「凛ちゃーんっ!!大丈夫かーっ?!」


「卯月ちゃんには指一本触れさせないぞー!!!」


「未央ちゃん、俺達が三人を守るから……魔王に勝ってくれーっ!!」


ワァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!



蘭子「な、何が起こっているの……!?」


卯月「みんな……!」


未央「ありがとう……っ!」


凛「――行くよ、卯月、未央!」


卯月「うんっ!」


未央「もちろんっ!」


蘭子「クッ、これしきのこと……我が力にて全てを無へと還すのみよ!!」


凛「それはどうかな……っ!」カラカラカラ……


[2,3,5]


凛「えいっ!」ザシュッ


卯月「とりゃぁっ!」グサァーッ


未央「それっ!」バシィッ


蘭子「……ま、まさか……!!!」



凛「これで……どう?」


蘭子「ぐはっ……我が覇道は潰えぬ……何度でも蘇るわ……!きっと……!!」


蘭子「うぅ……」バタリ


凛「……これで終わったのかな」


未央「や、やったんだよね、私達!」


卯月「凄いですっ!本当に勝っちゃうなんて……!!」


未央「いやー、一時はどうなることかと思ったよー」


凛「本当だよ……二人のおかげかな」


卯月「ううん、凛ちゃんのおかげだよ!」


未央「いやいや、しまむーも頑張ったでしょー!」


凛「……ふふっ、やっぱり私達、誰が欠けても駄目なのかもね」


未央「……うん。二人がいるから、私も頑張れたんだよっ!」


卯月「えへへ……二人とも、大好きですっ!」ギュウッ


未央「わーっ!しまむー待って!苦しいよ……っ!」


凛「もう、卯月ったら……ほら、二人とも」



凛「一緒に帰ろう?元の世界へ」



――――――――――――――――――――


パチッ


凛「あれ……っ?」


凛「……事務所?って、毛布掛かってる……」


パサッ


卯月「えへへぇ……勇者、頑張りますっ……」ムニャムニャ


未央「ふふふ……スーパースターの……未央ちゃんだよー……」スヤスヤ


凛「……?」




P「おはよう、凛」


凛「おはよう……もしかして、私寝てた?」


P「そりゃあもう、ぐっすりと」


P「寝るのはいいんだけど、企画書握りしめて寝るのだけは勘弁してくれよ」


凛「あ……ごめん」


P「ま、いいけどさ。レッスン帰りに三人を呼び止めた俺も悪かったし」


P「それで……どう思う、その企画書」


凛「うん……やってみたいかな」


凛「あ、でも卯月と未央と三人一緒で、だよ」


P「ああ、そのつもりだよ……他に人を増やすかもしれないけどな」



P「……勇者御一行が魔王を倒しに行く……うーん、何かもう一つ足りないよなぁ」


P「あ、囚われのお姫様とかいいんじゃないかな」


凛「それじゃあ、囚われのプロデューサーにしようよ」


P「……え?」


凛「ふふっ……大丈夫。私がちゃんと、助けに行くから」


P「お、おう……」


凛「だから、プロデューサー……私が迎えに行くまで、ちゃんと待っててね?」

以上で終わりです

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